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1974-02-28 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十八日(木曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 渡部 恒三君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       田中  覚君    戸井田三郎君       羽田野忠文君    八田 貞義君       渡辺 栄一君    小林 信一君       佐野 憲治君    岡本 富夫君       坂口  力君    折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         運輸省航空局長 寺井 久美君  委員外出席者         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部施         設課長     柳田 真司君         運輸省航空局飛         行場部長    隅  健三君         運輸省航空局飛         行場部騒音対策         課長      棚橋  泰君         運輸省航空局飛         行場部東京国         際空港課長   松木 洋三君         郵政省郵務局次         長       守住 有信君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   橋本龍太郎君     石井  一君 同月二十三日  辞任         補欠選任   石井  一君     橋本龍太郎君     ————————————— 二月二十二日  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三五号)  公害対策並びに環境保全に関する件(騒音対策  等)      ————◇—————
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害健康被害補償法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を求めます。三木環境庁長官。     —————————————     —————————————
  3. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま議題となりました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  大気汚染または水質の汚濁の影響により健康がそこなわれた人々の保護をはかるための公害健康被害補償法が、第七十一回国会において成立を見たところでありますが、本制度の実施に必要な費用のうち、慢性気管支炎等非特異的疾患にかかる被害者に対する補償給付支給等に要する費用につきましては、大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設等設置する事業者から徴収する汚染負荷量賦課金のほか、移動発生源分として別に法律で定めるところにより徴収される金員をもって充てることとされておりますので、今回、この法律案提案した次第であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  今回の法律案は、昭和四十九年度及び昭和五十年度の二年度にわたる措置として、大気汚染の原因である物質を排出する自動車にかかる費用自動車重量税収入見込み額の一部に相当する金額を充てることとし、政府は、その金額公害健康被害補償協会に対して交付することとしたものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  本案の質疑は、後日に譲ることといたします。  この際、暫時休憩いたします。     午前十時五十四分休憩      ————◇—————     午前十一時五十八分開議
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、三木環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。三木環境庁長官
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 昨日、大阪地方裁判所において、夜間飛行禁止等請求事件の訴訟に対する判決が行なわれました。  その内容については、目下詳細に検討しているところでありますが、今後の取り扱いについては、早急に関係省庁検討したいと思っております。  大阪国際空港は他の飛行場に比較し、深刻な環境条件のもとにあります。今回の判決を、航空機騒音対策を拡充する一つ契機として受けとめ、当面次のような措置を推進する必要があると考えており、この点に関しては、関係省庁と今後検討を進めてまいりたいと思っております。  一、関西地方は、関東地方とともに、日本交通中心であり、国際空港必要性を簡単には否定できませんが、他方、騒音問題の解決は重要な課題でありますから、将来新空港が供用された時点においても、なおかつ環境基準が達成できない場合は、廃止も含めて、空港問題を根本的に再検討する必要があると思います。  二、現空港発着便数を極力減少するとともに、特に東京大阪間のジェット機の大幅減少を行なう必要があると考えます。  三、空港周辺における防音工事移転補償等措置につき十分な効果をあげ得るよう現行の制度及びその運用に改善を加える必要があると思います。  四、現在の交通体系環境保全の面からの検討が十分ではありません。  さらに、資源問題の情勢変化もありますから、その点も考慮し、総合交通体系を抜本的に再検討する必要があると考えます。  五、空港建設にあたっては、立地についても、立地後も、騒音問題を十分に考慮し、空港周辺土地利用及び建築制限等規制措置をとるよう新しい制度を、この際、検討することも必要であると考えるものでございます。      ————◇—————
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  8. 島本虎三

    島本委員 委員長の許可を得まして、若干基本的な問題について長官並びに関係当局にただしてみたいと思います。  きのうの大阪地方裁判所判決、まあ率直に言いまして、私は十年前の判決を聞いているような気がしたわけであります。しかし、それにいたしましても、その後の長官のこの談話発表並びに本日ここに手元に配られましたこのような記事等につきましては、私どもはこれを評価して、早くその実現を急いでもらいたい、このことを希望しておきます。  ただ長官一つ申し上げたいことがあるのです。いま確かにこれは現在出ました。昭和四十九年二月二十八日にこれをちょうだいいたしました。あらためてこれを出したのでありまするけれども、しかし騒音で苦しんでいる住民のこの状態を見る場合には、やはりこの対策が不十分であった、これは環境庁としても、あらためてこの文章を高く評価する前に考えなければならない姿勢の問題でもあります。と申しますのは、長官は今後やはりこの線に沿って重大な決意があると思います。しかし、この住民騒音で苦しんでいる現状を見る場合には、いかにあの判決が出ましても、行政サイドの不十分さを私は痛感したわけであります。長官は、この点については十分それを考えながらのこの記事発表だと思うのでありますけれども、あらためてその姿勢について、もう一度私は確認しておきたいのであります。
  9. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のとおり、やはり行政サイドにおいても騒音対策というものに対して十分でなかったということの反省にも立って、この判決が行なわれたことを契機にして、一そう騒音対策を拡充していきたいと考えておる次第でございます。
  10. 島本虎三

    島本委員 あらためて過去のことを言うのもなんと思いますけれども長官はもうすでに四代目を迎えているのです、正規には三代目でございましょう。しかしながら、そのたびごとにやはりいろいろ談話発表されております。ここに私が申し上げたいのは、五十八国会昭和四十三年五月十日に、もう騒音規制法、これに対する附帯決議がつけられたのです。本日このようなことになる前に、すでに「政府は、本法施行にあたり、次の事項について措置を講ずべきである。一 飛行場騒音については、早急に対策の強化を計ること。」四十三年にこれが指摘をされているのです。そしてこれに対しては、はっきりその趣旨に沿うようにいたしますということを言われているのです。言われていながらも、きのうのあの判決、そのあと長官のいわば格調高いこの談話発表、また繰り返されたじゃありませんか。  これは四十三年ですよ。それを見る場合には、やはり行政のほうが先行している。幾ぶん裁判が先行した点があったかと思ったら、また逆戻りした。これはやはり行政サイド、この問題については責任を持たなければならないわけであります。こういうようなことを二度繰り返してはなりません。これは国会軽視になりますよ。はっきりこれはつけてあるのですよ。こういうようなことを予測して、もうすでに決議して、これは申し入れてあるのですよ。にもかかわらず、こういうような状態を再び三たび繰り返している。遺憾であります。今度だけは、こういうようなことがないようにしてもらわなければならないのです。この点について私は遺憾だと思うのです。なぜこうなったのか、そこに運輸省もおる、鉄道当局もおる。こういうような附帯決議をはっきりつけてあるのに、これをなぜこの趣旨に沿うようにやらぬのですか。それがいまの大阪空港騒音、これに対する一つ住民の苦しみにつながるじゃありませんか。私は、その態度はまことに遺憾に思います。  環境庁態度といっても俗なことばでいうと、遠山の金さんみたいなものでありまして、長官が一人いいからそのときに目についたものをばっさりやる。そのほかの問題はさっぱりあがらない。それじゃしょうがないじゃありませんか。今度の場合は副総理でありますから、この点はきちっとした姿勢でもって臨んでもらわないとだめなんであります。もうすでに四十三年にこのことをちゃんと警告してあるのです。にもかかわらず、依然としてこういうような態度である。長官、私はそれで遺憾なんです。ただし、いま長官の言ったその談話を評価するのです。評価したからといって、また同じことを繰り返されては困るのであります。じゃ四十三年は評価しなかったのか、こういうようなことにもなりましょうし、その後政府機関はこれをどうしたのか、こういうようなことにもなりましょうし、私はこの点どうも遺憾なんであります。二度とこういうようなことを繰り返さない、それと同時に長官がいま言われた、これを率直に守るようにしてやってもらいたい、このことであります。これをひとつ強く要請したいと思いますが、長官に、あえてもう一回決意を聞いておきます。
  11. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろ政府としても騒音対策は講じたわけではありますが、不十分であったことは反省しなければならぬ。こういう轍をまた繰り返すことなく、今度の判決一つ契機にして、積極的に騒音対策を進めていこうという決心でございます。
  12. 島本虎三

    島本委員 それと同時に、やはり空港周辺ということが今後大きな問題になるじゃありませんか、いわば騒音地帯。この騒音地帯に対しても住民の意思を尊重し、これを先行させるのか、飛行場設置を先行させるのか。いままでは残念ながら飛行場設置のほうが先行してきたのです。これからはやはり住民サイドに立って、住民合意を得、公聴会等においてはっきりこの結論が出るのでなければ、これをやってはならない。その公聴会のあり方も御用公聴会でないようにしてこれを進めなければならない、こう思っておるのであります。この点等についても、ひとつ長官格調高い所信発表してもらいたいのです。
  13. 三木武夫

    三木国務大臣 私は公聴会という制度を活用すべきだと思うのです。しかし、どうも公聴会というものがなかなかうまく運営されていない。これはやはりこの前も宇都宮で原子力発電のことの公聴会——私は非常にけっこうなことだと思って賛意を表したのですが、やってみると賛成と反対とがちゃんと分かれてしまって、別々の会場で、それでは公聴会にならぬのですけれども、集会を開いたという。何か公聴会という制度が、日本の中で健全に動いていくような仕組み、これを考えていかないと、地元人たち意向を聞くといっても、そういうような何か組織を通してやることでないと、ばく然としてしまいますから、公聴会制度というものが日本の土壌の中で健全に動いていくようなことは、われわれとしても考える必要があるわけです。  そしてその中で、お互いに賛否があっていいのですけれども、ディスカッションをやって、そうして皆の考え方を整理していくというようなことに公聴会を持っていかないと、何かそういうふうな一つ制度的なものができないと、地元意向を聞くということが有効に働かない場合が多いわけですから、島本委員の御指摘のように、公聴会制度日本という風土の中で、ひとつこれが健全に動くように持っていくために、われわれもくふうをいたしたいと思いますが、この点は島本委員にもいろいろと御協力を願いたいと思うわけでございます。
  14. 島本虎三

    島本委員 この公聴会制度は、最も民主的な運営一つ、こういうふうなことで取り上げられているわけであります。しかし、実際行政サイド運営は、単なる手続上の問題として公聴会をやったという、手続上の問題にしてしまって、これを処理しているのであります。したがって、この中には公聴会のほんとうの意味が盛られないままに行政サイドで一方的にこれを実施される、こういうようなことがいままであったのです。  したがって、そういうようなのは真に住民合意を得たということで、これをやられるが、しかし、実際は意見が幾ら出ても、それをやったという一つの証左にすぎない、こういうようなことで運営されているのであります。今後やはりこの点等については十分長官も考えていかなければならないはずのものであり、これは強く私は今回の判決を機会に要望したい点です。  それともう一つは、私は環境庁環境庁として発足する経緯、これは長官十分御存じだと思うのであります。今回の判決でも、環境権については、環境権は具体的な請求権として認められていなかったようでありまして、いわば行政サイドを主にした逃げの一手に回った、この感じさえあるのであります。少なくとも政治理念において環境権というものは、環境庁がある以上、はっきりこれを確立しなければならない。それがやはり現在は行政サイド的な運営しかここに行なわれない。したがって、いかに環境権を言っても、理念としては若過ぎる。または根拠立法がない。憲法においてすでにはっきりしているにもかかわらず、根拠立法がないということで軽んぜられる傾向がある。これは私は遺憾であります。  したがいまして、環境庁があるのですから、環境権があるということは、これは普通の常識じゃございませんか。私はそういうようなことからして、やはりどういうふうにして確立していくか、今後これに対してどういうふうに環境庁は対処していくのか、今回の判決契機にして重大な決意もおありになろうかと思いますが、長官のひとつ格調高い所信を聞かしてもらいたいのであります。
  15. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、しばしば申しておりますように、やはり政治目標としては環境権というものはあるという考え方でないと、これから政治がやっていけない。しかし、一つの法の概念として、環境権という広範な一つ権利というものを設定するためには、まだまだいろいろと考え方を整理していかなければ、直ちに法の概念として環境権というものの設定にはいまのところ無理があると思う。  しかし、日当たり——まあ日照権の問題とか、今度の場合でも環境権は認めなかったけれども静穏権というような静けさを求めるということに対しては、やや判決の場合にも、それに関連をするような判決も行なわれたわけでありますから、一つ一つの具体的な問題として、だんだんと積み上げられていってはおると思いますが、全部ひっくるめて環境権というものに対しては、その範囲、またその内容というものに対しては、もう少しやはり熟してこないと、法の概念としては、ここで制定することは、いまの段階では困難がある、こう考えておる次第でございます。
  16. 島本虎三

    島本委員 熟してくるのを待つ、どうすると熟すのか。そうすると住民運動が踏みにじられながらも、そのために戦う以外にはこれを確立する方法は手近にはない、こういうようなことになってしまうじゃありませんか。したがって、法的にもその理念としても、長官が先頭に立ってこの問題を取り上げて、そしてあらゆる方面からこれを追及していく。そうでなければ被害を受けた住民が、その環境権を振りかざして、あるいは法廷で戦い、あるいはもうすわり込んだりして、これが一つ権利として認められ、これが成熟してくるということになるのじゃありませんか。  これをただ座して黙って見ている環境権であるならば、環境庁長官としては、私はいまの答弁はまことに残念だと思うのです。長官は成熟するまで座して見ているのですか。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、法の概念として、環境権という一つ権利を設定することには、いまの段階では無理があると言ったわけですけれども、しかし環境保全というサイドからは、行政面においては、環境権というものは一つ人間権利として、そういうものは持っているという前提のもとに立って行政は推進していかなければならぬ。法の体系として環境権というものを設定するのには、この段階では無理があるけれども政治一つ目標としては、よい環境をみなやはり享受したいという考え方は万人共通のものであるから、その国民の願望にこたえるような環境保全行政を推進していかなければならぬと考えておるわけでございますから、何も座していろいろな環境破壊を見るというような、そういう消極的な態度ではないわけです。きわめて積極的な態度法律概念として、いまの段階では無理があるということで、行政の面においては、もう積極的に環境保全政策は推進していかなければならぬと考えております。
  18. 島本虎三

    島本委員 それでいまのような考え方で進めるのには、住民運動がやはり必要になってくるし、他のいろいろな環境を守るための運動というものが、これは成熟してこなければならない。私どもはそういうような住民運動をすこやかに育ててもらいたい、そしてよい環境をつくるための環境権憲法によって人間に与えられたというこの至高な権利として、これを確立させてもらいたい。そのことを強く要請しておきます。  それと同時に、いままでいろいろ概念だけは聞きました。具体的な大阪地方裁判所に提起されました判決、こういうようなことにつきましては、あとから土井木下岡本、それらの優秀なるメンバーから具体的に、皆さんに事情の開陳並びに質問があろうか、こう思うのであります。私はいま長官が言われました、その環境権といままでの談話中心にして、私が危惧することを、大阪ではございませんが、具体的にひとつこの問題に対して解明してもらいたいのです。  それは長官発言——長官はきのうおらなかったのですか、環境庁官房長は、いまいますかいませんか、聞いておったのです。他は参議院の公特のほうに行っていましたから聞けなかったでしょう。血のしたたるような実際の発言があったのです。と申しますのは、やはり長官発言を高く評価して、公害防止ができなければ、これ以上の開発はやるべきじゃない、これを住民は高く評価しているのです。長官、やはりそこが根本なんです。  ところが、環境庁環境基準WECPNL七十以上の地域は人が住むのに適さない、こういうようにあるのであるけれども成田空港の場合には、このいわゆるWECPNL、うるさ指数といっているのでありますけれども、この七十の地域内に千葉東北部、これは成田市やそれから下総町、大栄町や多古町等を含めますが、これらを中心にして房総半島から北は茨木県上空にも及ぶ。しかるに現在の空港公団騒音対策は、飛行直下から五百メートル——一キロの地点、これはWECPNL八十五以上である。そこに移転をさせているというんです。しかし移転してしまった場合には、当然防音工事その他自己負担でやらなければならない、こういう計画がありますか。こういうようなことが現に空港公団がやっているんだ、こういうようなことなんです。  長官の言っていることの裏をかくように行政サイドがこれを行なっているとすれば、これはもうとんでもないことであります。はたして、いま言ったような、この血のしたたるような、こういうような発言、これも信澤官房長は聞いておったはずです。こういうようなことをしなくちゃならないのであります。これが事実だとすれば、私はとんでもないことだと思いますが、一体これはどういうようなことでしょう。
  19. 信澤清

    信澤政府委員 昨日の私の発言に関連してのお尋ねでございますので、大臣から御答弁申します前に申し上げたいと思いますが、いま先生がお話しになりましたような切々たる訴えは、私も伺ったわけでございます。その際、私が感じましたのは、八十五ホンというのは、ひょっとすると昭和四十六年の十二月に私ども環境庁長官から運輸大臣に勧告をいたしましたあの数字をそのまま使っているんじゃないか。それで事足りるという形で諸般のことを考えるとすれば、それはおかしい。私どもが示しております環境基準は、ただいま先生もお触れになりましたように、住宅地域についてはWECPNLで七十という数字を示したわけでございますから、やはりこういう環境基準が示された以上、七十という数値が守られるような前提諸般の施策は進められるべきだ、こういうことを申し上げたわけでございます。
  20. 島本虎三

    島本委員 したがって、空港課長が来ておりますが、この点はどういうふうにわれわれ受け取ったらいいのですか。具体的な町名まであがっているのでありますが。
  21. 松木洋三

    松木説明員 お答え申し上げます。  先生ただいまの御指摘の件は、推察いたしますに成田空港の北側にございます野毛平という地区の件ではなかろうかと存じますが、まず一般論的に申し上げますと、新東京国際空港におきましては、空港敷地内の方々移転にあたりまして、約二十三の地区につきまして四百六十ヘクタール程度の用地を準備いたしまして、それぞれ移転を進めさせていただいてまいってきたわけでございます。これは先生ただいま御指摘のようなWECPNLで八十五以内というような地区ではないわけでございますが、先生ただいま御指摘野毛平地区につきましては、御指摘のとおり、実はただいま移転をしようとしておられる地区が、地区のおよそで申しまして半分くらいがWECPNLで八十五以上にひっかかってくる、こういうことでございます。  この移転は、実は空港公団ではございませんで、千葉県が騒音対策の一環として実はお進め下さっておられる件でございます。私どもといたしましては、できるだけ騒音の低い地区移転をしていただきたいという方向でものをかんがえておるわけでございますが、本件につきましては、千葉当局でもいろいろこの野毛平地区方々と数多くの会合を重ねまして、八十五WECPNLの外側に適当な代替地を見つけていただくように話し合いを進めてまいってきたわけでございますが、地区方々の御意見は、通勤農耕をいたしたいということと、それから地区方々の御意向、歴史的な背景とでも申しますか、地区の神社等との関係があるようでございますが、あまり遠くへ離れたくないという非常に強い御意向がございまして、音について県当局非常に御心配で、実際地区方々とも羽田空港に参って、音についても体験をしていただき、またその上でさらに話し合いを進めてまいったようでございますが、結局は、地区方々の御希望は、ただいま先生指摘のような現在の居住地から約八百メートルほど西側でございますが、この地区にお移りになりたいという強い御希望でございまして、結局千葉県といたしましても、その地区方々の御希望に沿った形で現在移転対策を進めておる、こういうことが実情であろうかと存じます。
  22. 島本虎三

    島本委員 もう現に、当然公害の被害を受けると発表されたこの数値に具体的に該当する、こういうところに移転をさしておる。その場所についても、県でやるならば、やはり今後環境庁としても十分連絡する必要があろうかと思います。公団としても十分話し合う必要があろうかと思いまするけれども千葉県選出の木原代議士が前に一回質問をしております。その質問主意書によっても、国自身もこれに対しては居住性には問題がある、こういうようにはっきり出しておる個所に、県自身が移転を進めておるこの矛盾相克は、やはり認めるべきじゃありません。  国は居住性に問題があると指摘されております。いま公団かと思いましたら、県がやっておる、こういうようなことであります。しかし、やはりそれも公団の責任にいずれはなるじゃありませんか。そういうようなことからして、長官が、こういう場合には特に騒音公害が解決されない以上、大阪ではこの空港というようなものに対しては考えなければならないということを最後はっきり言っておる。ところが、もうすでにこれと反対のことをやるということは、まことに重要でありますから、この点等について住民とのコンセンサスがないのじゃありませんか。やはりこれはつくる側並びに協力する側が一方的に、先ほど申しましたようないわゆる公聴会、民意、こういうようなものを別の方面へ、これを行政サイドでねじ曲げておる。この結果があとから全部騒音公害となって返ってくるわけです。当然そうなると、環境庁何しているのだ、こういうようなことになるのです。  大臣も、次官も——自民党のほうでは次官がたった一人しかいませんけれども、せっかくおるわけでありますから、こういうような点を十分考えて、いまから対処しておいてもらいたい、こういうように思うのであります。大臣、いま言っておる談話の片すみに、こういう事態がもうあるのです。こういうようなことをやっちゃいけません。厳重にこれは注意すべきであります。これについて、ひとつ今後の対策をあらためて新東京国際空港課長から伺いましょう。それと同時に、あとからこんなことをさせちゃいけませんから、大臣、県当局にも十分この点注意してやってほしい、こう思います。
  23. 松木洋三

    松木説明員 お答え申し上げます。  先ほど先生に御説明申し上げましたように、本件は実は野毛平地区方々と非常に数多くのお話し合いを進めた結果、どうしてもそういう御希望があって、実は次善、三善であるかもしれませんが、そういう方向へいま話が進んできたという事情はございます。ただ先生、今後の御方針ということでございますが、私どもといたしましては、もとより環境庁の新しい基準ももう出ておるわけでございますので、環境基準に沿って、将来に禍根を残さないような方向で移転を進めるべく、今後も地元方々とその線に沿って御相談を進めていくようにいたしたいと存じます。
  24. 島本虎三

    島本委員 同時に、この民間空港はまだまだたくさんございますが、だんだんジェット機を飛ばすような方向へ、これは運輸省では住民の意思にこたえるという意味で——これも住民の意思かとうかわかりませんが、だんだんそういうようにして飛行場を拡張しております。しかしながら、当然この公害対策をきちっとするのでなければ再びこういうような被害者が出てまいります。この点等に対する指導はどういうふうになっておりましょうか。
  25. 隅健三

    ○隅説明員 お答えいたします。  先生がおっしゃいました地方の第二種あるいは第三種の空港にジェット機を飛ばすというのはございます。いままでも、すでに広島空港におきましては住民の反対で、ジェット機が一応離着陸できる空港を整備いたしましたけれども、この実施をいたしておりません。また松山空港におきましては737という飛行機を727という、ちょっと大型の飛行機にかえるのに住民の皆さま方といろいろの話し合いをいたしまして、とことんまで話し合いをいたしまして、やっと一便727の飛行機を入れるというような経験をわれわれは持っております。  今後ジェット化の空港といたしましては、あるいは徳島あるいは高知というのがあるかと存じますけれども地区住民の方との完全なる了解ができない限りは、われわれは着工を強行するつもりは全然ございません。そのような方向で県当局とも十分連絡をいたし、指導をいたしております。
  26. 島本虎三

    島本委員 その際には、くれぐれも要請いたします。住民とのコンセンサスを得るために、ただ単なる行政手続にしないように、ほんとうに住民の意を体して、そしてそれを反映させた公聴会なり話し合いにするように、これだけは、もう強く私は要請しておきます。  あわせてもう一つ、この同じローカル空港、第三種空港は直ちにやれとか、新設のものは直ちにいまの基準に合わせなさいとか、ローカルの基準は、第二種空港の場合にはプロペラ機は五年以内にだとか、ジェット機は十年だとかと、こういう差をつけておるのです。やはりジェット機の場合は、もっと早くやるのでなければ飛ばしてはならない、こういうようなことになるのじゃないかと思うのですが、ジェット機の場合は依然として十年、第一種空港の場合、東京大阪、福岡——福岡まで入れても、これも期限を「十年をこえる期間内」というようなことになっております。こうなっていると、依然としてこれからまだまだ十年以上もがまんしなければならないということになり、これはもう年数に問題があるのじゃないかと思うのです。それが一つ。  時間の関係で、かいつまんで申します。  そのほかに、同じ空港でも防衛庁の施設、これを共用している飛行場があります、北海道の千歳のように。こういうような場合には騒音は出しつばなしになっているわけです。それを規制することはできないわけです。治外法権ではないといっても、やはり中にあるのは自衛隊の飛行機であります。航空自衛隊の飛行機でありますから、そのためには別な法律で損害の補償だけはする、がまんしなさいということになっている。民間も同じような法律がいまできております。しかしながら、この防衛施設を共用している空港、これらに対する考え方もこの際はきちっとしておかないと、将来やはりトラブルを起こす大もとになるのじゃないかと思いますが、これは、はっきり運輸省ではこの点、確立してありますか。
  27. 隅健三

    ○隅説明員 最初の、公聴会制度の実質的なと申しますか、これを完全に活用するということにつきましては、公聴会という——航空法にもその規定がございますが、それ以前にわれわれといたしましては、地方公共団体等と御一緒になりまして、地元住民の方の意見を十分取り入れて計画を進めていっております。  なお、今度の環境庁環境基準で既設空港の第二種空港につきましては、ジェット機についてはもう少し、十年といわず早いほうがいいというお話でございます。われわれといたしましても、四十九年度には函館、仙台、宮崎、松山というのを特定飛行場に指定する予定でございますし、ジェットの空港騒音対策については、さらに地方公共団体とも十分御相談をいたしまして、騒音対策を積極的に進めていくつもりでございます。  最後に、防衛庁との共用飛行場についての騒音でございますが、われわれが利用いたしております、先生指摘の千歳であるとか、あるいは小松、あるいは徳島のように、民間航空といたしましては、大体飛ぶ方向、飛ぶ機種が一定いたしております。しかし防衛庁のほうにおきましては、やはり特殊の性格から、飛ぶ方向だとかあるいは高度、そういうものがやや違っておるかと思いますが、この点は防衛庁とも十分相談をいたしまして、なお中公審で出されました勧告にも、防衛施設庁の空港についても言及をされておりますので、防衛施設庁とも十分相談をいたしまして、この共用空港騒音対策はさらに万全な方向で検討を続けていきたいというふうに考えております。
  28. 島本虎三

    島本委員 同じような行き方に新幹線があるのです。新幹線の場合でも、いろいろ名古屋周辺で、約十キロの地点でトラブルがある。もう裁判に移っている、このことも承っております。なぜ、この新幹線をつくる前に環境アセスメントと申しますか、環境調査をしてから、この計画を進めないのか。また、計画を進めながら、なぜ環境アセスメントをそこに導入するような方法を講じつつ工事を進めなかったのか、私は、これはまことに遺憾なんであります。なぜ環境アセスメントを確立してから実施しなかったのでしょうか。また今後、これに対してどういうようにお考えでしょうか。
  29. 柳田真司

    ○柳田説明員 新幹線の建設にあたって、なぜ環境アセスメントをやらなかったかという御指摘でございますが、ただいま一番問題になっております東海道新幹線は、実はこの建設に着手いたしましたのが昭和三十四年でございます。昭和三十四年当時は、スピードと安全ということに最大の主眼を置いて建設をいたしました。したがいまして、正直に申しまして、環境的な配慮は非常に薄かったということは事実でございます。しかしながら、その後、山陽新幹線の建設にあたりましては、東海道の騒音その他の反省を加えまして、構造あるいは運営のしかたその他にかなり配慮をしたつもりでございます。  新幹線の騒音につきましては、一昨年の十二月、環境庁長官から運輸大臣あて勧告がなされました。これは現在運営しております東京−岡山間に対する新幹線の暫定基準であるということでございますけれども、その勧告をいただきまして、鋭意この線に沿うべく努力をいたしておるところでございます。今後つくる新幹線につきましては、もちろん航空と同じように、現在、環境庁のほうでも新幹線の環境基準検討されておられますが、こういったものに適合しなくちゃいかぬ、それに合った新幹線を建設していかなければいかぬ、かように考えておる次第でございます。
  30. 角屋堅次郎

    角屋委員長 島本君にちょっと申し上げます。午前の理事会の御要請を御理解いただいておると思いますが、そういうことも含めて御質問を願いたいと思います。
  31. 島本虎三

    島本委員 今後の問題の重点は、やはり住民被害を及ぼさないということであります。しかしいろいろな基準そのものを見ましても、はたしてこれで被害がなくなるのかどうか。ことに現在行なっているのは、中公審のいわば緊急を要するとしての臨時の措置である、こういうようなことであります。今後恒久的な点は、すでに中公審に答申を求めて、いずれ答申が出される段階になっておるということのようであります。そうすると、いま臨時措置をしている、そのうちに今度は中公審からまた出てくる、この間にまた何年かのズレがある、こういうふうになると、その間行政は進んでも、困るのは住民ではございませんか。こういうようなことであっては困ると思うのであります。  したがって、私はこの問題については、はしょって聞きますが、住民から訴訟が出ている現在、現在の環境基準としては弱過ぎるんじゃないか、こういうふうにいわれておりますが、この点等については、環境庁はどのように受けとめておりますか。
  32. 春日斉

    ○春日政府委員 新幹線騒音について先生の御指摘どおり、その騒音問題が非常に重要性を加えてきておりまして、ただいまの御指摘のように四十七年の十二月に、運輸大臣に対しまして緊急対策を勧告いたしました。現在それに基づいて国鉄は防音壁の設置その他、所要の対策をとっておられるところでございます。また新幹線網は全国的な整備をいま進めておられるわけでございますが、この騒音問題は広範囲に及ぶおそれがありますので、私どもといたしましては新幹線騒音対策の長期的目標となる環境基準を先ほど御指摘どおり、いま中公審に諮問し、着々作業を進めておるわけでございます。  また新幹線については、騒音と並んで新幹線の振動が問題でございまして、この問題につきましても、昨年十一月に中公審におはかりしたところでございます。そしてこれらの結論をまって新幹線の騒音あるいは振動による被害について音源対策、いろいろな各種の障害防止対策等の措置を行ないたい、かように考えて努力いたしておるわけでございますが、現在の緊急対策に示しております八十ホンと申しますのは、これはあくまでマキシマム、最高限度を申しておりまして、それ以下にということを私ども申しております。  おそらく新しい環境基準は、この八十ホン以下にすべく私ども検討を加えておるわけでございますが、先生がおっしゃったように現在の緊急対策における八十ホンというのと、それから新しい環境基準との間に差が出てきて矛盾があるのではないかとの仰せでございますが、私どもあくまでこの緊急対策においても八十ホン以下になるべく押えるように、こういう要請をいたしておるわけでございます。
  33. 島本虎三

    島本委員 そこが大事なところなんです。確かにこれは八十ホン以下に住宅地帯にあっては音源対策をせよ、こういうようなことになっているんです。国鉄当局では防音壁の設置や改良をし、線路構造や車両を改良して、困難な場合には技術の開発をして八十ホン以下に押えたいと言うのです。やはり八十ホンなんです。八十ホンが原点になっているんです。一番上だとしても、やはり八十ホンと出ている以上、八十ホンに合わせているんじゃありませんか。そうだとすると、今度は八十五ホン以上の場合には、防音対策としては障害防止対策をせいということに指示してございましょう。それはもう民家の防音工事であり、建築の移転補償である、こういうようなことになっているわけです。  そうすると、八十一ホンから八十四ホンまではどうなんですか、これは。八十五ホン以上のものの対策は障害防止の対策としてはっきり載ってやる。八十ホン以下にせいという。八十五ホン以上の場合の民家の防音工事、建物の移転補償、これらはちゃんと盛られて指導している。しかし八十一ホンから八十四ホンまではどうなんですか、この辺は盲点じゃありませんか。私はこの八十ホン、八十五ホン以上の防音対策、こういうふうになりますと、この四ホンだけに盲点があることと、八十ホンでも現在ではこれじゃだめだといって訴訟さえ起きているでしょう。その騒音基準は、昼は六十五ホンにしてもらいたい、夜は五十五ホンにしてもらいたい。振動は昼は〇・五ミリ・パー・セコンドにしてもらいたい、夜は〇・三ミリ・パー・セコンドにしてもらいたい、こういうようなことです。もうすでに住民が自分らの健康を守るための要請と、官庁が、いかに環境庁といえども、これを官庁に指示させている数値の中には、これほどまだ隔たりがあるんです。  いま国鉄が一生懸命にやっているのは、この緊急施策に対して努力しているんです。しかし、このあとには当然恒久的な勧告が出るわけであります。この夏ごろに出るでしょう。そうした場合には、いままで合わしていた国鉄が、またしても恒久的なそれに合わせなければならないことになってくる。おそらくその間泣き寝入りするのは住民じゃありませんか。環境庁は、そういうような指導をしてはならないと思うのであります。私はそういうふうな観点からして、もっと国鉄はスピード化だけを専一にはかるのじゃなくて、住民のためにやる事業ですから、住民に迷惑をかけないということ、これを先行させるようにしてもらいたいわけであります。  いろいろ申しましたが、いま言った四ホンの差、これはどうなるのか。それとあわせて、いま住民の最も安全だという数値がはっきり出されて、訴訟にまで訴えられておりますが、これと現在の数値は相当隔たりがあります。官庁としてやっても、これは住民が受け入れられないということになりますが、こういうようなことに対してはどうなのか。  三つ目については、この中公審から出るころには、もうすでに国鉄としてはある程度緊急措置について工事を進めていますから、またその間にズレがくる、こういうようなことに対してはどう考えているのか、この三つについて、ひとつまとめて、それぞれから御答弁願いたい。
  34. 春日斉

    ○春日政府委員 ただいま御指摘になりました第一の問題でございますが、これは緊急対策として、とりあえずという趣旨でございます、八十ホンと申しますのは。したがって八十ホン以下にしろ、ただし防音対策等の該当者も多いであろうから、まず優先順位をつけて八十五ホンからと、こういうことでございまして、恒久的な環境基準としては、これから出てまいります。これは早急につくるつもりでございます。
  35. 柳田真司

    ○柳田説明員 先ほど私ちょっと申し落としましたが、暫定基準が八十ホンということで、八十ホンまでにすればこと足りるということは決して考えておりません。これはできるだけ低くしたいということで現在対策を進めております。  それから、これから民家の防音工事とか、あるいは民家の移転補償に応ずるといういわゆる障害防止対策を計画しておりますが、この際にあたっても、一回防音工事をしたら、またその環境基準が下がったために二度やり直さなくちゃいかぬというふうなことも予想されますので、やはり環境基準は、いずれもっと低くなるということも予見しながら、できるだけの対策を講じてまいりたいと、かように考えております。
  36. 島本虎三

    島本委員 じゃ、これで終わります。それにしても、長官、いま聞いたように、いろいろと長官としては注意をなすっており、所信発表格調高くなされておる。しかし、具体的には行政サイドでこのように行なわれている、このことは、おわかりのことだと思うのです。したがって長官としても、今後は道路や港湾、鉄道、飛行場はもちろんのこと、この事業着工前には環境破壊しないことを確めない以上、これを許可しない、こういうような強い態度で臨んでもらいたい、こう思いますが、最後に決意を聞いて私は終わります。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 計画のつどに環境アセスメントをして、そういう開発が、どのような影響を環境に与えるかということを十分にわれわれのほうとしては評価をいたしまして、どうしても環境保全ができないということになれは、その開発はやめなければならぬと考えております。
  38. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後三時四十八分開議
  39. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  40. 土井たか子

    土井委員 国を相手どって四年有半にわたります大阪国際空港夜間飛行禁止等請求事件についての第一審の判決が、昨日、大阪地方裁判所において下されました。この第一審の判決をめぐって、きょうは環境庁長官並びに運輸省、そうして郵政省のここに御出席の政府委員方々にお尋ねをしたいと思います。  まず、お尋ねしたいのは、健康被害にかかる問題なんですが、昨日判決が出ましてあと、現地にテレビ、報道の方々がたずねられまして感想をいろいろ聞かれております。私も現地でそのありさまをまざまざと見たわけでありますが、それまでぐっとこらえておられた気持ちを質問を受けた瞬間に、これでよいのでしょうかと一言言われて、それからあとはどっとあふれる涙を押えることができなかった現地の主婦が多かったわけであります。いままでこらえにこらえてきたこの忍耐というものがせきを切って流れて、この判決の結果、自分たちのいままでのがまんも報われ得なかったということに対する涙だと私は思うのであります。  環境庁長官も御承知のとおり、これは単に原告だけの問題じゃございませんで、いまあの大阪国際空港周辺に住んでおられる方々の中には、健康被害や生活被害を自分の暮らしの中に、連日連夜の被害の中で、この大阪空港の一日も早い解決を待ちながら生活をされている方々の人数が年々ふえていったわけであります。大体概算いたしまして、いま基準値以上の地域におられる方々は何と百七十万人をこえるといわれております。したがいまして、この判決の中身がどうあろうと、やはり国としては早急にこの大阪国際空港に対しての騒音対策を一日も早く具体化をしていかなければならない。このことは昨日、環境庁長官も、判決後の談話の中でさっそくるる述べられておるところであります。  ところで、健康被害について申しますと、提訴されてから裁判過程を通じて一貫して国側は、種々問題にされております貧血であるとか頭痛であるとか鼻血であるとかノイローゼであるとか等々のいろいろな症状に対して、これが航空機の騒音によるものであるという困果関係を否定し続けてまいりました。被告であるところの国の最終準備書面の中身を見ても、その事柄についてははっきりと因果関係を振り切っているわけであります。ところが、昨日の判決の中には、その点について、被害の中身は程度がさまざまであるけれども、このよって来たるところが航空機の騒音によるということを一応認めた形になっております。この問題については、判決がいかようであろうとも、やはりあの空港騒音直下で生活をしておられる方々の中に、心理的被害のほかに健康被害として難聴、胃腸障害、高血圧、流産、ノイローゼ、鼻血、貧血、頭痛その他等々の身体的精神的被害が現にあるという事実を否定するわけにはいきません。  そこで、この問題について、環境庁長官が今後厚生省なり運輸省なりに対して、どういう態度で勧告やあるいはいろいろな連絡をとりながら指導をされるのであるか、この点をまずお伺いしたいわけであります。  実はやがてこの特別委員会で、おそらく審議されるでありましょう健康被害にかかる一部改正の法律案を私たちはいま手に持っているわけでありますが、あの健康被害について問題にしていく場合には、少しむずかしい点があろうと思います。  たとえば地域指定の問題であるとか疾病指定の問題であるとか等々から考えてまいりますと、この大阪空港周辺のいろいろな健康被害について当てはめて考えてまいります際に、やはりむずかしい点があるであろうと思うのです。そういうことからしますと、やはり健康域の問題として、これをどう取り扱っていくかという非常に大きなこれからの課題が一つここにあると思うのですが、そういうことも含めて、ひとつ環境庁長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 私もテレビなんかで、子供たちが鼻血を出しているのを見たわけですが、今度の裁判では、健康被害との因果関係というものは一応否定された形でありますが、これは厚生省とも話し合って、そういう人たちを疫学的、臨床医学的に少しやはり調査をしたいと思うのです。そして、これがどういうことの結果そういう障害が起こったのか、今後これを疫学的、臨床医学的な調査を、われわれのほうでもやりたいと考えております。
  42. 土井たか子

    土井委員 疫学的、臨床医学的な調査ということになりますと、具体的には、かの地に診療班などを派遣して、その疫学的、臨床医学的な調査を進められるということでございますか。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 大学病院などもありますから、お医者さんに行ってもらうなり、あるいは患者の人に来てもらうなりして、そういう点から、まず診断から始まって、その原因の解明をしてもらいたいと思っております。
  44. 土井たか子

    土井委員 さらに具体的にお伺いしますと、いつごろからそういうことをお始めになるか、また具体的な構想がございましたら、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 これは各省に関係がありますから、まだ関係各省庁との連絡はとっておりませんが、私はそういうことで、厚生省とも関係があるわけですから、あるいはまた運輸省とも関係があるかも——あるかもでなしに、あるでしょうから、そういう関係省庁と連絡をとって、できるだけ早くそういうことが実現をするようにいたしたいと思っております。
  46. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問で、少し具体的にという問題でございましたが、時期につきましては、大臣のおっしゃったとおり各省の問題がございますので、これは一応省かしていただきまして、具体的に公害健康被害補償法の名前をお引きになりましたので、公害健康被害補償法でものを考えるときには、どのようなぐあいの基本的な進め方で考えておるかという点が、今後この調査を進める場合の一つの問題のポイントであろうと思いますので、それにつきまして骨子だけ申しますと、一つは実験的な問題でございますが、騒音のほうは実験的なものがかなりございます。  もう一つは疫学的な問題でございますが、従来は疫学的な調査が非常に十分ではございませんでした。これは騒音の曝露と影響と両方でつかまえなければなりませんが、訴えだけをつかまえても疫学調査にはならないということでございますので、それをどうするかという問題がございます。  三番目は臨床医学的な問題でございまして、先生のお話の鼻血とかそういう問題、きょうの朝も住民の方が言っておられましたが、どの臨床的な問題を研究対象とするかという問題が一つあるかと思います。  それから四番目は労働衛生上の治験でございますが、これは相当なものをそろえております。基本的にこの四つのものが、すべて完全にそろうということはなかなか望めませんが、まだ現在の段階では、実験と労働衛生がかなり詰まっておって、疫学と臨床に至っては、きわめてこの手がかりが得られないというのが実情でございます。
  47. 土井たか子

    土井委員 なかなか前途多難のような感じもするわけでありますが、ひとつこれは早急に各省御連絡をとっていただいて、可及的すみやかに着手をしていただくように申し上げる次第です。  さて、それと少し関連があるのですが、現地の騒音下の診療所、病院が診察や治療をやる際に十分にできないという状態に事実ございます。このことは、これはゆゆしい問題だと思うのですね。病院や診療所が十分なる診察や治療が施せないということ、これについて何らかの対策を講ずる必要があるんじゃないか。しかも早急に、やはりこれを機会に、昨日は繰り返し繰り返し環境庁長官は、これを契機として全身全霊を傾けて、ここで抜本的対策に取り組みたいというふうな御発言をしばしばされたわけでありますから、ひとつこの点についてもお伺いしたいのですが、いかがでございますか。
  48. 春日斉

    ○春日政府委員 御指摘のように、病院、診療所がその医療行為についてきわめて障害があるということは、私も十分察知できますので、これは航空機騒音防止法の改正等によりまして十分に処置するよう、運輸省ともよく連携をとってまいりたいと思っております。
  49. 土井たか子

    土井委員 その具体的に勉強なさる中身ですが、騒音防止ということに対して、これは発生源対策、つまりこの騒音対策の関係からいいますと、航空機の今後のあり方をどう考えていくか、空港の重要性についてどういうふうに考えていくかという問題もあろうと思いますが、さしずめこの診療所や病院に対する対策として、どういうふうなことを具体的に研究を進められるかというのを、もう少しお伺いしておきたいのです。
  50. 春日斉

    ○春日政府委員 まず、診療につきましては、聴診、打診あるいはレントゲン、手術等々、騒音に関する障害というものを防音工事によりまして、これは的確に防止しなければいけないと思います。  それから、病院、診療所に通院いたします患者の中で、特に静穏を要するような患者については、場合によればこれは転地等の処置もとらなければならないと考えております。これらにつきましても、十分運輸省とも相談してみたいと考えております。
  51. 土井たか子

    土井委員 さて、いろいろな対策を含めて、これは昨日の判決の中にも、判決要旨を読みますと明記されているわけでありますが、防音装置も含めて、かねてから地元住民が再三にわたって空港当局などに抗議や陳情を繰り返した結果、いろいろな対策がとられてきたといういきさつがある。したがって、被告の対策も、これを受けて現在までのところなされてきたということから考えると、被告、つまり国においてこういう結果が発生するということを予見したというふうに考えてよいというふうな事柄が、この判決要旨の中にはるる述べられているわけですね。それからいたしますと、これはさらに差しとめ請求の問題に少し移ってお聞きしてみたい点が出てくるわけですが、現に、夜は十時から朝は七時まで飛行機の発着を禁止しております。これはもう長官もよく御承知のとおりなんです。  ところが、これの根拠は何かといいますと、航空機騒音防止法に基づいて考えられた閣議決定なんですね。航空機騒音防止法によって見てまいりますと、告示も出すことができるはずなんです。けれども、いままでこの騒音規制について告示は一度も出されたことがない。その点は、この判決の要旨の中身にもはっきり書かれているわけでありまして、深夜の一機は昼間の十機に算定されている。したがって、深夜便については重々にいろいろ考慮を払わなきゃならない。環境庁長官昭和四十六年の十二月二十八日に運輸大臣に対して、この空港では午後十時以降の航空機の発着を行なわないように勧告して、運輸大臣はこの勧告に基づいて昭和四十七年の四月以降、午後十時以降の航空機の発着を緊急の場合以外は行なわないというふうにおきめになったという過去のいきさつがあるわけです。いままでこういう閣議決定に従って運営をなすってきた、そして告示にはよらなかったというふうな過去のいきさつについて、なぜであるかという点を、少し環境庁長官からお伺いをいたしましょう。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 政府委員からお答えをいたします。
  53. 寺井久美

    ○寺井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の、告示はなぜ行なわれなかったかという点につきまして、いきさつを御説明させていただきます。  その告示は時間あるいは離着陸の方向というものができるたてまえになっておりますが、航空機の運航の性質上、私これから時間について申し上げますが、必ずしも時間をきちんと守れないという性格を持っております。途中の気象状況等によりまして、予定した時間よりおくれるという可能性もございます。そういうことがございますので、——この告示は罰則を伴っておりまして、パイロットを規制することになりますので、パイロットの意思にかかわらず罰則の適用を受けるというような点に多少問題もございます。それから、航法等につきまして、経路を指定することは可能でございますが、航空機がその航路を忠実に守ったかどうかという確認の方法にもやや地上施設その他の面から問題がありますと同時に、航空機の側におきましても、確実にその経路を守ったかどうかを確かめる手段が現在のところ十分でございません。そういうことがございまして、現在までこの三条に基づく告示というのはやっておりません。  ただ、指導といたしまして、十時以後にわたらないようにダイヤを編成していくとか、そういう措置をとってまいりまして今日に至っております。  ただ、今回の判決等もございますし、十時以降の禁止ということにつきましては、時間につきまして告示をする可能性は検討させていただきたいと思います。  なお、ついでに、先ほど土井先生から御指摘のありました病院に対する防音工事その他につきましては、すでに四カ所ほど実施いたしておりますので、この際付言させていただきます。
  54. 土井たか子

    土井委員 告示の問題は中身が、いま御答弁のとおりにコースの問題もあれば乗員の都合の問題もある、またいろいろ航空会社の都合もある。しかし、そういうことでなしに、このいまの時間帯という問題は、これは告示で出したら出せたはずなんですね。いままで出そうとすれは、その問題に事限って言うと。それがいままでなされなかった理由はどの辺にあるかということをお伺いをいたしたいのです。
  55. 寺井久美

    ○寺井政府委員 私の御説明がやや不十分でまことに恐縮でございました。  一番大きな原因といたしましては、時間を確定いたしますと、遠距離を飛んでまいります航空機が、その時間内に着陸できないという場合が起こり得るわけでございまして、こういう点は罰則で縛るにはやや酷である、こういうことでございます。
  56. 土井たか子

    土井委員 それは、いまの閣議決定の中でも緊急の場合ということを除いて考えていらっしゃるわけでありますから、いまの御答弁の趣旨の中身は、緊急の場合は除くということでできるはずであります。いかがです。それでもなおかつ告示が出されなかったという理由を、もう一度お尋ねしたい気がします。
  57. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 法律の条文の運用のことでございますので、私からお答え申し上げます。  先ほどから局長がお答え申し上げておりますように、実はこの条文を制定いたしましたときには、これで告示を出して行なえるというふうに考えておったわけでございますが、その後政府部内で検討をいたしました際に、先ほど局長がお答え申し上げましたように、これが直接航空機を運航するパイロットに罰則がかかるということから、予見できない要素が非常に多いということで、これに刑事罰を科すということは非常にむずかしいという問題がございまして、いろいろ検討いたしたわけでございます。  経路につきましては、先ほど局長が申し上げましたように、現在の航空機の航法その他をもちまして、必ずその定められたコースの上を飛んでいるかどうかということについて、パイロット自体が明確に知り得るほど、航法装置が整備されていない。それから、これに罰則を適用する際に、違反したということを的確に把握する装置というのも、まだそれほど十分でないというような点から、これはむずかしい。  それから時間につきましては、たとえば国際線につきましては、出発地等の理由でおくれるないしは出発地を十分到着できるという予想のもとに離陸したにもかかわらず、途中の天候、その他で目的地に到達できない、ないしはパイロット自体が会社との関連において、はたしてそういう運航を拒否する権利があるかとか、いろいろそういう問題がございまして、時間の規制についても、告示で出すということはむずかしかったわけでございます。  ただ、その後、環境庁長官の勧告に基づきまして、東京大阪空港の時間規制をやったわけでございますが、その結果、大阪につきましては、特に騒音問題が非常に著しいということから、たとえば一分でも二分でもおくれるというような場合には、出発地の空港を飛び立たせない、ないしは国際線のように、先ほど申し上げましたような理由で国際線が数分でもおくれるような場合には、これを東京に回させるというようなことが、ある程度可能であるということで、ほとんど先生御承知のように、現在は十時以降については郵便機を除きまして、ぴたり守られておるというようなことがございますので、特に今回の判決契機といたしまして、局長が先ほどお答え申し上げましたように、大阪について告示を出すということの可能性については、前向きで至急に検討したい、こういうふうにお答えを申し上げておきます。
  58. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁を承っておりましても、事時間に関する限り、どうも納得のいく御返答じゃなかったわけです、なぜ告示が出されなかったかという理由については。飛行コースの問題やパイロットの問題や航空会社の時間の組み方等々あるでしょうけれども、この時間の中におさめるということを予見して組まれた中で、予見し得ない事情が起こったときには、これは調査をすればわかるわけでありまして、あとでそれが予見し得ないかくかくしかじかの事情があったという場合には、緊急の場合等に含めて考えていいと思うのですね。にもかかわらず、告示が出されなかったということについては、まだ不信をぬぐうわけにはまいりません。  今後この判決を受けて、十時以降午前七時まで飛ばせないということに対して、告示も御考慮をなさるようでありますから、ひとつ、その点は考えていただきたいと思うわけですが、ただしかし、ここで一つ申し上げたいのは、はたして今回差しとめ請求を原告側が出した、九時以降の飛行禁止という問題に対して、どういうふうにお考えになるかということであります。実は、あの空港周辺住民というのは、ここに空港があるということで、その後住まいをそこに移して移り住んでいる人たちじゃないわけでありまして、原告の方々の顔ぶれを見ますと、あそこが、空港が整備されて拡張される以前から、そうして日本にあの空港が返還されてプロペラ機がジェット機になって、ジェット機が大型化していく、その具体的な推移を全部はだで感じて生活してきた人たちであります。  そういうことから考えていきますと、通常、いまここにすわっていらっしゃる皆さま方が、二十四時間静かな環境のもとに生活なさっているのと同様に、あそこに住んでいる人たちにも本来二十四時間静かな環境の中で生活をするということは保障されてよいはずなんです。それがずいぶん航空機騒音のために阻害をされてきたわけなんです。だから私は、当然の要求として二十四時間静かな環境にしていただきたい、こうあってしかるべきだと思うのです。ところが非常にささやかな、その中でせめて午後九時以後翌朝の七時まで静かにしてもらいたいというこの願いが、今回はどうも聞かれなかったわけでありまして、相も変わらず閣議決定で出されております十時から翌朝の七時までは飛ばない、それ以前は以前と同じように飛行機は飛び続けるわけであります。環境庁長官は、やはり便数を減らしていくということを、今後努力を払うとおっしゃっておりますけれども、便数は減りましょうが、しかし時間は以前と変わらない。これはやはり何としてでも今後解決をしていかなければならない一つの問題点でありましょう。  判決もその中身で、深夜の一機は昼間の十機に算定されているということを認識しながら、昼間と夜とは違うということをるる述べていらっしゃる。しかもここで深夜といわれている中身については、深夜を一体何時から何時までと考えるか、これは個人差があろうと思うのです。小さな子供たち、老人、それから翌朝早朝から勤務につかなければならない方々、これはやはり八時ごろから深夜というふうに考えても無理じゃないということもございましょうし、また私のように夜長く起きていても平気な人間にしてみますと、八時、九時というのは、まだ宵の口だということにもなるかもしれない。しかし、やはりそこで生活をしている人たちの中で一番条件の弱い人に算定基準の基準値を置いて考えていくというのが、住民の生活に即応したものの考え方だと思うのです。  そういうことからしますと、あの周辺住民の中には乳飲み子もいる、幼児もいる、病人もいる、老人もいる、早朝から勤務につかなければならない人もいる。それを考えると、午後九時からあと飛行機が飛ばないということに対しては、これはもう非常にささやかな願いであり、遠慮しながら、最小限度のことをここに出された差しとめ請求だったというふうに私は考えているわけです。このことが現に振り切られてしまっているわけですが、環境庁長官、これについていかがお考えでいらっしゃいますか。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 地元の人とすれば、できるだけ夜間の飛行が短縮されることを希望されるのだと思いますが、私は音源といいますか、飛行機の便数を減らすとかそういうことで、できる限り騒音被害というものを最小限度にするために、最大限度の努力を払って、そうして大阪空港騒音というものの被害というものを、その結果を少し推移を見てみたいと思っておるので、いま直ちに、十時という勧告をいたしたわけでありまして、また引き続いて九時の勧告を出すという考えは、いまは持っておりません。
  60. 土井たか子

    土井委員 これは環境庁長官、昨日の判決の中にも公共性の名において受忍限度をはるかに越える騒音をまき散らすということは許されないという論旨が展開されているわけですね。そういう点からして、国がいままで十分に発生源対策、音源対策に取り組んできたかというと、そうでないという趣旨も述べられているわけです。たいへん不十分だった、これを不法行為としてはっきり認めているわけですよ。  しかも、その不十分な国の音源対策に対して、何がこの不十分さをそれなりに動かして、何とか対策を講じさせる方向に持っていったかというと、一にも二にも地元住民だったということが書いてあるわけです。再三にわたり空港当局に抗議や陳情を繰り返した、そこで国のほうもこれを受けて対策がなされてきたと書いてあるのです。そういう点からしますと、国の努力がいままでに十分なものでなかった、非常に不十分なものだったということは、これは確認をしなければならぬ問題です。それからしますと、これは九時から十時の差しとめという問題もありますけれども、これから音源対策として十分に取り組んでいく上から、こういう問題についてどうお考えかということを少しお尋ねしたい。  それは、どの空港も飛行機の着陸料については均一に取り扱われております。これを取り扱うのは、御承知のとおり「運輸大臣設置し、及び管理する公共用飛行場の使用料に関する告示」なんですね。この中では、羽田といわず伊丹といわず、日本全国にある空港は一律なんです。伊丹の場合は、昨日の環境庁長官の御発言の中を見てみますと、冒頭にもちゃんと出ておるわけですけれども大阪国際空港は、他の飛行場に比較し、深刻な環境条件のもとにある、こう書いてある。それからしまして、国の責任において航空会社がこの音源対策に対して十分に取り組むための財源を、今度ひとつ着陸料というものから持ってくるという必要がありはしないか、したがって、伊丹空港については着陸料の中身を上のせをするということ、いまあるところの現行告示ですね、「運輸大臣設置し、及び管理する公共用飛行場の使用料に関する告示」の中身をそういう意味において改正をして、そしてこれを音源対策環境保全対策に使用するということを考えてみる必要がありはしないか。一部には、何か航空料金の値上げにおいて、これを考えるという向きもあるようでありますが、航空会社の責任において、ひとつここでやってみるという必要がありはしないかということを思うわけです。このことについて、どういうふうにお考えになりますか。
  61. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの土井先生のお考え、私ども一つ考え方かと存じます。  現在御指摘のように着陸料というのは、飛行機の重さによって全国均一になっております。これは全国的に、ある意味の原因者負担で空港を整備していくということで、均一に料率がきめられております。今後こうした騒音対策をやっていきます上に相当膨大な財源が必要となりますので、これをどういう形で徴取するかということについて検討中でございますが、着陸料を空港によって変えるというのも一つ考え方だろうと存じます。どういう形で具体的に取りまとめますか、目下検討中でございますので、そういう先生の御示唆も取り入れさしていただいて、検討さしていただきたいと思います。
  62. 土井たか子

    土井委員 それでは、再度この点についてはひとつ確認しておきたいのですが、大阪国際空港については他の空港と違うのであるという認識のもとに、いま着陸料については特別の取り扱いを今後検討して、それを具体的にする、それをさらに生かして告示の中身を改正していく、こういう用意があるということでありますね。
  63. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま先生指摘の着陸料を特別に取るという形になりますか、あるいは別の形になりますか、現在きめておりません。目下検討中でございますが、着陸料を空港ごとに違った形にするということも一つ考え方であろうかと存じますので、そういう考え方検討の対象の一つにさしていただきたい、こういう意味でございます。
  64. 土井たか子

    土井委員 運輸省のほうはそういうお考えでありますが、環境庁長官、どのようにいまの問題については考えていらっしゃいますか。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 着陸料は、いまちょっと調べてみると国際線の場合、二万円から三十万円くらいになっているのですね。しかし、伊丹というものがほかの飛行場に比べて環境上の条件が一番悪いものですから、土井委員一つの御提案は非常に建設的な御提案だと思います。やはりあそこは何かそういう特別な防音装置などもしなければならぬわけでありますから、ほかの飛行場と特別な取り扱いをするような方法を考えて、それを財源として、防音対策を進めていく財源の一部として使用するということは、一つ提案としては非常に研究をするべき課題だと思いますので、運輸省ともそういう点で今後十分話し合って、何かはかの空港と変わったような方法を考えてみることば必要だと私は思います。
  66. 土井たか子

    土井委員 その問題については確認をしましたから、ひとつ御努力賜わりますように再度申し上げたいと思います。  さて、そういう周辺整備であるとか、それから音源対策そのものも基本的に大事な問題ですね。  もう一つは、やはり現に飛んでおります飛行機に対してその便数を削るとか、それから騒音を防止していくために飛行機の機種、エンジンを改装していくということ、これは非常に大事な問題なんですが、先ほど来何度となく環境庁長官は、この減便の問題について熱心に考える用意があるということをおっしゃっていらっしゃいます。これは一日、時間帯にしまして、先ほどちょっと私申し上げましたとおりに、夜間静かな環境をむちゃくちゃにこわして飛ぶのと、それから昼間どこに行きましても、あたりがざわついている時間に飛ぶのとでは、これは少し影響が違いはしないかと思うのです。したがいまして、間引きをするわけでしょう、減便というのは。間引きをするわけですから、その間引きをする場合にも、長官、ひとつ破壊の度合いがひどい時間帯からの間引きということを、まず念頭に置いてお考えいただきたいと思います。  そこで、長官から一言それについて御発言を賜わって、あと郵政省の方にひとつお尋ねをしておきたいのですけれども、昨日来、午後十時以降の郵便機は午前七時まで発着陸を一斉に停止いたしました。これは判決による中身を完全に実施すれば、そういうことになるということでありましょうが、しかし、ここに九時四十五分に一つ郵便機が夜飛ぶように相変わらずなりますね。先日来、三月一日付で郵便機の深夜便の廃止ということを言われたけれどもあと四便残る。この四便は飛行便としてやはり相変わらず飛ぶわけでありますが、そのうちの一便が夜九時四十五分に飛ぶということでございましょう。  これについては、まあ判決の中身が十時まで飛んでよいということになっているからというふうにお考えであるかもしれませんけれども、やはり今後いつまでもこれを認めていくわけにはいかないだろうと思うのですね。判決の中にも、代替措置というものが十分に講じられて、そして集配事務の合理化をはかることや、他の交通機関の利用などの方法によって、配達のおくれを最小限に食いとめることが可能だということも書いてあるわけですから、ひとつこの九時四十五分をはじめとして問題になる飛行便によるところの郵便配達というものを、今後どのように考えていらっしゃるかということを一言お伺いしたいのです。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 前段の御質問でありますが、全体を減らしたらいい、それは代替の輸送機関がある、新幹線もあるからでありますが、全体を減らす中で、できる限り夜間の飛行機を減らすような努力を運輸省にしてもらうように私からも要請をいたします。
  68. 守住有信

    守住説明員 おっしゃいますように一夜の十時から朝の七時までの全部合わせて八便、深夜の郵便機が飛んでおりましたけれども、きのうの夜からこれはもちろん差しとめておりますが、なお郵便の流れと申しますか、大体午後の四時ごろから八時ごろまでにお出しになる郵便というものが一日の郵便の引き受けの中の五割近くを実は占めておるわけでございます。  われわれといたしましては、それをなるべく早朝だとか、あるいはお仕事の途中だとかにお出しになるようなPRをいたしておりますが、客観的にはそういう状況になっておりまして、これをどうやって、それぞれの配達便へスピード化をはかっていくか、もちろん正確さの中でスピード化をはかっていくかをわれわれ努力しておるわけでございますが、大阪国際空港の特殊性ということにかんがみまして、深夜をやめることにいたしたわけでございますが、しかし、それでもなお七時近く、同じ早朝の場合でも七時寄りのほう、あるいは十時寄りのほうでございませんと、郵便物の速達化といいますか、それの効果、有効時間帯というのがどうしても夜中近く、あるいは早朝近くにならざるを得ないというふうな郵便の流れの構造があるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この中でどうやって伊丹の問題を念頭に置きながら郵便全体の流れの効率化、高速化をはかっていくかということに苦慮いたしておるわけでございますが、運送便の関係、その時間帯の効率化ということから、九時四十五分というふうな大阪から東京あてのものについては、そういう専用便にならざるを得なかったわけでございます。しかしながら、政府全体の中で、今後航空行政も含めまして、いろいろな問題の検討がなされていくと思いますが、私どもとしてもいろいろな研究、くふうを進めていきたいと思っております。
  69. 土井たか子

    土井委員 時間ということですから、あと一問だけひとつお尋ねして終わりにしたいと思うのですが、先般来、減便をするということになると、運輸省がさっそく出されるのは飛行機の大型化なんです。かつてジェットの大型化を進める際に住民には増便しないという約束で進められて、しかも増便されたといういきさつがある。したがいまして、今回エアバスを就航させることによって減便を何とか考えようということをおっしゃっても、なかなか住民はこれを納得しないというのは、私はいままでのいきさつからすると当然だと思うのですね。  それからまた環境庁長官東京——大阪便というのは代替機関として新幹線などがあるのだから、したがって、これをまず減便の対象として考えていくことは可能だ。極論すると、やがては大阪——東京間というのは、なくしたっていいじゃないかというお考えも、その奥にはおありになるのじゃなかろうかと私たちは考えているわけですが、こういう一つ一つの問題を何を基準に置いて考えるか、何より大事なのは、私は住民の立場、住民の意思だと思うのですね。この住民の立場や住民の意思というのを十分にくみ上げて今後の大阪国際空港対策というものを考えていくという上からしますと、いまの体制のままでいいかというと私はだめだと思います。  と申しますのは、あの地元住民方々が、いまこの意見をと考えられたときに持ち出されるのは大阪空港の事務所なんですよ。ところが、あの事務所の当局方々というのは当事者能力がないのです。本庁のほうにひとつ聞いてみませんととか、後刻これは運輸省の本庁のほうと相談をした上でとしか返答が返ってこない。だから大きな問題になりますと、なかなかこれは時間を要しているらしくて、返答を聞くことがあのジェット機と同じようには早くいきません。なかなかおそいのです。その間に事が深刻に進行してしまうということも間々あるのですね。また小口の不満を受けて解決方法を見出すという場合にも、どうもその点は空港事務所それ自身に責任の所在がないようでありまして、不十分な回答しかここからは引き出すことはできない。そこで今後はいろいろな賠償の折衝であるとか、それから健康被害の問題であるとか、移転の問題であるとか、それから代替地に対してのあっせんの問題であるとか、いろいろなことが国側から進められる、あの地域周辺の整備としては出てくるわけですね。  そこで大阪空港事務所についていままでどおりじゃなくて、地元と直接の窓口になる当事者能力というのを認めるような、運輸省設置法の一部改正ということにもなるかもしれませんけれども大阪国際空港の場合には特別な事情があるわけですから、したがいまして、それくらい思い切った対策というものを今後考えてみることが、どうしても私は必要だと思うのです。この事柄は、特に運輸省からきょうここに御出席の方に御答弁をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  70. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま御指摘のように、空港事務所に当事者能力がないということでございましたが、現在の航空局の組織といたしまして東京国際空港大阪国際空港は、事務所の中ではかなり大きな権限を持っております。ただ、事柄が非常に事務所限りで解決しにくい問題が多かったことも事実でございますし、それによって解決の結論がすぐには出なかったということも事実でございます。  ただいま御指摘のように、今後この周辺対策を含めましていろいろ地元との折衝量もふえてまいりますし、現地で解決しなければならない問題も出てくることも事実でございます。  そこで、私どもが現在考えておりますのは、騒音防止法の改正によりまして周辺整備機構というものが発足いたしますれば、そこで大部分のそういう業務は解決していけるだろうというふうに考えております。  それからもう一つ地元との連絡をより密にしなければならないということも御指摘のとおりでございまして、本省から月に数回出張っておりますが、これも何か定期的な、窓口のようなかっこうに組みかえていくことも確かに必要であろうと思って現在検討いたしております。
  71. 土井たか子

    土井委員 それではこれで終わります。しかし、きょうはどうも検討ばかりの答弁でありましてね……。研究と努力と検討、こればかりを聞かされるわけです。これはもういままで私は耳にたこができるほどお伺いしているわけでありまして、事ここに至ってまだそれがどうも変わってこない。同じように、相変わらず同じことを聞かされるというんじゃ、もううんざりするわけであります。これは地元住民にとってはいたたまれない問題だと思いますよ。十年をこえる早急な間に環境基準に対しての達成ということをやっていかなければならないという責任が一つあるわけですが、これとても、やはり具体的に一年一年年次計画でもってどういうふうに具体的にしていくのかということで、初めて私は地域住民にとっては納得できる問題だと思うんですね。五年や十年とばく然としておりますと、また慎重に検討とか、努力とか、研究でごまかされていくのじゃないかという実感が私は強いだろうと思うのです。  私も事実ここでいろいろ御答弁を承っておりますけれども、いつも努力と研究と、それから検討ということで、ああさようでございますかというわけにはいかない。ひとつこの問題は、きょうお答えになったことを十分に具体化していただきたいですよ。私もこうなった以上は執拗に食い下がりますから、とことん……(発言する者あり)女性というのは執念深いのが特徴であります。したがいまして、これはもうとことん食い下がりますから、ひとつそのことを御銘記くだすって、今後実行に一日も早く着手されんことをここに申し述べまして終わりにいたします。
  72. 角屋堅次郎

    角屋委員長 木下元二君。
  73. 木下元二

    木下委員 大阪国際空港夜間飛行禁止等請求事件、私どもはこれを大阪航空機公害訴訟というふうに呼んでおりますが、この訴訟の判決が昨日ありました。この判決がある直前の二十日の日に長官は、上京しました訴訟団に対しまして、世界でもこれだけ条件が悪い空港はない、判決を機会に住民被害をなくすため大阪空港にメスを入れ、根本的な対策を打ち出すという趣旨の約束をされました。約束でありますから、その根本的対策を示していただきたいと思います。
  74. 三木武夫

    三木国務大臣 一つには、新空港が実際に使えるようになっても環境の基準を満たし得ないときには、空港の廃止も含めて根本的に空港自体を考えるということも、いまのことではありませんけれども、基本的な考え方を示すものであります。  もう一つは、音源対策といいますか、東京大阪間の便数を極力減らす。ジェット機に対しても大幅にこれを減少する。幾らということについては、これは多少の時間をかしていただかなければなりませんが、大幅に削減をするということをいっておるわけでありますから、これも、現状において空港というものはやはり必要である、これを存続するという前提の上に立ったならは、一つには音源対策としていまのようなことが必要であるし、また地域住民人たちのために、いま航空機公害の防止に対しての法案を御審議願っておるわけです。この法案が成立をいたしますならば、特殊法人というものが設立されて資金を持って、防音の工事あるいはまた移転等もいままでよりも積極的に行ない得る条件ができるわけでありますから、こういう点で積極的に推進をしてまいりたい。これもまた解決案としては一つの必要な解決案でございます。  長期的にはいろいろ考えなければなりませんが、さしあたり、そういうことを考えることによって——やはり根本的といっても、全然空港を廃止してしまうというわけではないわけですから、音源対策と防音対策、これを徹底するということ、根本的に騒音対策を進めるということは、そういうことを積極的に推進していくことにほかならぬわけでございます。
  75. 木下元二

    木下委員 いま言われましたのは、環境庁長官談話の一から三までに書かれておることでありますが、この談話住民被害をなくすための根本的な対策としては、ちょっと考えにくいのではないか。もっとこれ以外に根本的対策があるのではなかろうかと思って伺ったのです。  一番最初に言われました問題、これは現在住民被害をどうするかということではなくて、将来の空港のあり方の問題であります。しかもこの問題は、判決があって新たに打ち出された方針というのではなくて、もうすでに昨年六月ころに運輸省のほうで示された考え方であります。この内容については、いろいろと問題がありますが、その内容については触れません。いまここで申したいのは、判決があって、長官がその判決を機に、住民被害をなくすために新たな根本的な考え方を打ち出す、そういうことを言明されたのですから、一年前に運輸省が言われた方針をここで言われても、住民のほうにしましても、とても納得できません。  それから二番目の問題でありますが、発着便数を極力減少する。ジェット機、東京——大阪間の大幅減少、これもきわめて抽象的でありまして、その具体的な内容については時間をかせということでありますが、こまかい数字はけっこうであります、おおよそどの程度のことをお考えになっておるのか明らかにしていただきたいと思います。  それから三番目の防音工事なり移転補償の問題。この防音工事なんというものは、運輸省としては、航空機騒音障害防止法の内容として考えておりますが、これも助成措置でありまして、しかも空港公害対策としては付随的な対策というふうに言っておるのであります。だから、これを改善するということが、この空港の根本的な対策というふうには考えにくいのであります。  そういう点から私は伺っておるのです。いまの点でありますが、まず二番の減少の問題おおよそどの程度減少されるというのか、もう少し伺いたいと思います。
  76. 三木武夫

    三木国務大臣 木下委員は、その対策というものは根本に触れてない、こう言うのですが、そんなに奇想天外なことがあるわけはない。やはり音源から減らし、また騒音を受ける人たち被害をできるだけ低減しようということになれば。それは全然あの空港を廃止してしまうということなら別ですよ。そういう廃止論に現在の段階で私どもはくみしないわけです。新空港ができるまではやっぱり存続するということであります。  しかも、第一は、あまり意味がないようなお話でありますけれども、しかし環境庁というものは、どうしても将来騒音被害をなくするために、できるだけ早い期間に環境基準が守れるような空港にしなければならぬ。ただお題目を言っているのではないんだ。新空港ができて、それでも環境基準が守れなければ、廃止なども含めて空港それ自体を根本的に考えるということは、これはやはり環境庁姿勢として無意味なことを言ったという木下委員のお説には、私はそう思わない。これはみな大阪空港の騒害防止に対して非常に熱心な運動をされておる方も廃止してくれという意見が現にあるわけですから、やはりそれにこたえる必要がある。どういう基本的な考え方をしておるかということは、無音心味ではない。  それから第二のお尋ねの幾ら幾ら便数を減らすんだということは、これは運輸省としてもいろいろ地元との間で話し合いをしていかなければならぬ問題もあるし、ここで運輸省自身としても——これは運輸大臣も大幅に減らしたいという考えですよ。ちょっとしたものではない。大幅に減便をしたいという考えです。それがちょっとした手直しぐらいだったら、ここで申し上げてもいいわけですが、大幅に削減をするということになれば、運輸省自体としても、これはいろいろな点を考えなければなりませんから、多少の時間をこの際かけるということは、やむを得ないことだと私は思う。  第三のも、これもたいしたことじゃないというお話でありますが、やはり現にそこに住んでいる人たちがおるわけですから、いままでは公共機関だけにしか防音の工事ができなかったのを、それを民家もみなできるようにする。そして移転などに対しても、いままでどうもそういう人の立場に立って——移転ということになればいろいろな経済上の問題も伴いますから、そういうことで、もう少しいままでよりも被害者の立場に立ち、積極的にやるために方式を変えたわけです。  私はその中で言っておるのは、これでうまくいかなければ運用や制度についても改善を加えるんだ、そういうことで現に被害を受けておる人の被害をできるだけ減少するんだということで、この考え方は、やはり評価を受けなければならぬ考えである。意味がないということには私は承服をいたさないものでございます。
  77. 木下元二

    木下委員 繰り返すようですが、一番最初の問題で私が言っているのは、新たに環境庁として方針を打ち出したというものではないじゃないか、これはもうすでに一年ぐらい前に運輸省のほうで出されたことなんで、これを焼き直して言われても、住民のほうは納得せぬではないかということを言っているのです。  それから三番目の防音工事等の問題についてはあとから伺うことにしまして、それでは、ここで意味があると思われますのは発着便数の大幅削減ということだと思います。ただ、これが具体性が出ておりませんのでわかりにくかったわけでありますが、この点については、さらに運輸省と詰めて大幅な減少をとにかく行なうんだということでありますが、多少の時間をかしてほしいということでありますが、一体どの程度先にこの点は具体化されるのでしょうか。これも住民が非常に待っておる問題であります。急いでおります。
  78. 三木武夫

    三木国務大臣 この場合、いついつまでといって日にちを切ることはできませんが、地元がこういう判決契機として騒音対策を積極的に進めていこうという場合のことを運輸大臣も私も発言をしておるわけであります。そういうことで、できる限りこれは早く結論を出すことが地元の要望にもこたえ得る道だと思いますが、何日ということになると、これはいろんな——それに対しては運輸省自身としてもこれはたいへんなことですから、思い切ってやはり大幅な削減ということになれは、どういうふうにこれを実際に具体化していくかということは、これはそんなに簡単な、あしたから半分にするといって、すぐにできるという問題でもないわけでありますから、多少の時間が要るということは、常識的にお考えになってもおわかり願えると思うのでありますが、日にちを切れということになりますと——私は約束は必ず守るということで、守れない約束はしないという私の信条でございますので、具体的に何日という日にちをこの段階で切ることは、これは私ども環境庁だけでできることじゃないですから、運輸省自身が主体的になってやってもらわなければなりませんので、そういうことで日にちは切れないが、できるだけ早くそれを具体化するということは、そのとおりに考えております。
  79. 木下元二

    木下委員 私は何日先なんということは少しも聞いていないのです。おおよそいつごろかと言っているのです。大体、環境庁は、たとえば可及的すみやかになどといって十年をこえる期間を定めたりするのですから、だから早くやるといったって五年も三年も先のことだとすれば困るわけなんです。だから聞いているのですよ。少なくともいつごろか、おおよそのことを言っていただきたい。
  80. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま三木長官のほうから、いつまでということは非常にきめにくいという御説明がございましたけれども、私ども大臣から命令を受けまして、どういう形で減便が可能であるかということを目下作業に入っております。御案内と思いますが、航空機の運航パターンというものは、かなり前広にきめませんと実現しがたい点もございますので、事務的にできるだけ早くそういう方向を見出したいと考えております。  ただ私どもが念願しておりますのは、音源対策の一環といたしまして、現用機よりもはるかに音の少ないいわゆるエアバスタイプを導入することによって、この減便の実現が促進されるというふうに考えております。
  81. 木下元二

    木下委員 できるだけ早くなんということでは回答になってないですよ。おおよそこの春以内とか春ごろまでとか、夏ごろまでとか、そういうことが言えないですか。どうして言えないんです。
  82. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま申し上げましたように、エアバスの導入につきましては地元との従前のいきさつもございまして、この導入について十分御理解を得るためにいま話し合いを進めております。この見通しがつきますれば、おおよそいつごろからということははっきり申し上げられます。また、このエアバスの導入が不可能になりました場合の手当てについても別途考えなければなりませんので、先生ただいま御指摘のように、おおよそいつごろということは確定的に申し上げられませんけれども、このすみやかにといいますのは、ここ数カ月のうちという意味におとりいただいてけっこうだと思います。
  83. 木下元二

    木下委員 そうしますと、その発着便数の極力減少とか東京大阪間のジェット機減少とかいうことは、これはエアバス導入ということなのですか。エアバスを導入する——実はエアバス導入についてはもうすでにそういう方針をこの判決前に運輸省発表しておりますね。新聞にも出ております。発表しておるのですよ。環境庁長官、それではあなたはうそをついたことになりますよ。この前の二十日に、住民に対してどう言われたのですか。住民に対して犠牲にならないような新たな公害対策、抜本的な公害対策を考える、この大阪空港は大きな欠陥がある、世界的にも珍しいような欠陥があるから、これに対して抜本的なメスを入れる、そう言われたのでしょう。もうすでにその前に運輸省発表しておるエアバス導入計画、それをやるのだということですか。それはもうそういうことではインチキじゃないですか。そのときに長官は、これは必ずやると約束をされまして、政治家はうそを言わない、一たん約束したら、これは必ずやります、こういうこともはっきり言われたのですよ。どうですか。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 思い切った減便をするのにはどういう方法をとるかということは、運輸省としてもいろいろ検討されて、その中にエアバスもあるのだと思います。やはりこのことは非常に専門的な問題でもありますので、環境庁としては騒音被害をできるだけ防止するためには便数を思い切って減らすべきである、その方法論については運輸省のほうで十分検討してもらいたいということを言っておるわけでありますから、運輸省として減便をする場合の方法論というものをいろいろ検討を加えておるものだと思います。前にちょっとそういう考え方が出たものは、それは実行もされてないのに、もう言ってはいけぬものだと私は思ってないわけです。それはそういう話が運輸省として、前に出た場合があるのかもしれませんが、そういう問題も引き続いて検討するということは可能で、一ぺん言ってしまったら——まだ実行されてないわけですからね。やはりそういう考え方というものは引き続いて検討するということはあり得ると思います。  きょうも陳情団の人たちと私が会っておった。そうして陳情団の人たちの言うことには、いままで大型機を入れるときに——万博のときですか、もうこれはこのときだけだと言っておいて、そうしてあとでそのときだけでなかったということに対する不信感を持っているのだ。エアバスの場合でも、これはもう思い切って便数を減らすのだと言っても当てにならぬというような発言があったわけでありますから、そういう不信感情もやはり解く必要があると思いますね。だから、いろいろこういうふうにして大幅な減便をするのだと言っても、こういうふうにしてということがなかなか信用されぬということになってくると、この問題というものは、エアバス一つとっても、エアバスをあそこの航路に使うことはなかなか困難になってきますから、運輸省自体がこれを減便するにしても、地元人たちとも話し合いをしなければならぬし、またこの信頼感というものを取り戻さなければならぬ、そういう前提条件はありますが、やはりこれだけ騒音問題にみな悩んでおることは事実ですから、地元の人と一緒になって、何とかその騒音被害を低減できぬかということで話し合えば結論が出ないものでもないと私は思うわけでございます。
  85. 木下元二

    木下委員 きょうの交渉でも話に出ましたけれども、エアバスのような大型機はかえって威圧感が伴う、あるいはまた事故の場合の危険もたいへん大きいので不安である、こういったことが言われました。あるいはまた風圧であるとか振動であるとかいったことも、従前の機種よりももっと被害が大きいという問題があるわけです。屋根がわらがずり落ちる、かわらどめをするといったことも出されたわけであります。こういうことでエアバスは住民が強く反対をいたしております。このエアバス導入というのは、まさに住民感情をさかなでするものであります。  運輸省に聞きたいのですが、この地元住民の了解なしにはエアバスは乗り入れをしないというこのことは、運輸省としては前に地元に対して約束をしておったことでもあるわけでありますが、このことは、ここでもはっきり確認されますか。
  86. 寺井久美

    ○寺井政府委員 私ども現在このエアバスの導入問題に関しましては、地元方々の御理解を得た上で導入したいというふうに考えております。
  87. 木下元二

    木下委員 私の質問そのものに答えてくださいよ。  地元住民の了解なしには乗り入れはやらない、こう聞いていいわけですね。イエスかノーかで答えてください。これは従前の約束を確認しているのです。
  88. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 地元に従来から申し上げておりますのは、大型機についてはいろいろ御理解不十分な点もございますので、地元の十分の御理解を得て入れたい、かように申しておるわけでございまして、私どもとしては誠意を尽くして——どもは大型機というのは騒音対策上非常にプラスになるということだと思っております。したがいまして、これについて地元が十分その点をわかっていただければ必ず御了解がいただけるということで、私どもはそう申し上げておるわけでございます。  なお大型機導入の問題につきまして、先ほどから非常に地元の方に強い御反対があるということをお話しでございます。私どもも十分了解をしておりますが、先ほどからのお話にございました環境基準というものを達成いたしますためには、私どもとしては環境庁審議会の御答申の方針に従って、環境基準を達成するのに一歩でも近づくという方向で努力をするということにしておりますが、そのためには減便だけでは達成できないわけでございまして、御承知のようにWECPNLという単位を使っておりますから——WECPNLという単位は飛行機を半分にしても三しか下がらないわけでございます。  その点大型の低騒音機というものを入れますと、そのWECPNLがたとえば五とか十とかというふうに下げ得るわけでございまして、そういう点を地元にはまだ十分な御理解を得られていないのではないかと思っておりますので、そこらの点についての十分な御理解を得た上で入れたい、かようなことに存じております。
  89. 木下元二

    木下委員 そうしますと、地元に対して了解を得るように努力をして、なお努力をしても了解が得られなかった場合は乗り入れを強行するということですか、そういうことですか。
  90. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 私どもが従来から再三申し上げておりますのは、御理解を得て入れたい、かようなことでございます。したがいまして、私どもは御理解を得るための努力を十分尽くすということでございます。しかし、その場合に、地元の御理解とは何かということでございますけれども、私どもは百人が百人、一万人が一万人全員の御了解を得るということが必ずしも御理解だとは思っておりません。地元全体として、これに対しての理解を示していただければ、それで私は理解を得たというふうに考えるべきだと思います。
  91. 木下元二

    木下委員 それはそれでけっこうですが、私が聞いているのは、そういうふうな御理解が得られなかった場合には乗り入れはしない、こういうことでしょう。もうあまりこういうことでやりとりしたくないのですがね、そういうふうに聞いていいんでしょう。
  92. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 再三申し上げておりますように、地元の皆さま方に大型機の利点について十分な御理解をしていただいて、その上で入れたいということについては変わりがないということを申し上げておるわけです。
  93. 木下元二

    木下委員 その点はもう幾らやりとりをしておっても、切りがありませんので、私の質問に対してまともにお答えいただけないというふうに了解して、質問を変えます。  エアバス導入計画というのはきわめて問題があるし、住民が強く反対をしておる。これを住民の反対を押し切って強行するというふうなことがもしあれば、これはほんとうにたいへんなことになると思うのです。こういうことは絶対にやめていただきたいと思います。しかも、これまでの住民との約束にも反することになるわけです。  この談話の中の二番の問題、発着便数の極力減少ということでありますが、このことと、まだほかにも対策としてはいろいろあると私は思うのです。たとえば根本的施策の一つとしまして、空港周辺のホンの規制問題というのがあります。これはWECPNLではなくて、一機ごとの規制数値をきびしく定めてこれを法律化するということは、最少限度必要ではないかと思います。どうでしょうか。
  94. 春日斉

    ○春日政府委員 一機ごとの騒音レベルをホンであらわして、それを制限しろという御提案でございますが、それは実行可能かと申しますと、これはなかなかむずかしい。すなわちエンジンそのものの改良に待たざるを得ないわけでございますので、わが国でエンジンを製造いたしておりませんので、それはむずかしいと申さざるを得ないと思います。  もちろん防音装置その他によりまして家の中の音量を減らす、ホンを下げる、こういう意味では賛成でございます。
  95. 木下元二

    木下委員 これはすでにやっているでしょう。法律化されてないけれども、また規制の数値は問題ですけれども、閣議了解の形で時間帯別規制というのをやっているのじゃないですか。これはもっともその飛んでいる飛行機の最大値に合わせたようなものであって、規制という点では不十分でありますけれども、しかし形としてはそういう一機ごとの規制というのをやっているのでしょう。     〔委員長退席、坂本(三)委員長代理着席〕 違いますか。
  96. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 お答えをいたします。  先生の御指摘のは、川西市におきます久代小学校の上におきますホン規制というものだと思います。それは先生の御指摘のように、いま行政措置として行なっております。これは御承知のとおり航空機のエンジンというのは、ある程度の音が出ざるを得ないわけでございますけれども、積載量その他を制限するというような操作によりまして、ある程度は離陸の際の音を下げるということが可能でございます。したがいまして、そういう意味で一応久代小学校の上での規制値を設けまして制限を行なっておるわけでございますが、私どもは当時としては環境基準がまだ制定されておりませんで、WECPNLというような単位その他の目安がなかった時代にそういう規制を行なったわけでございます。  ただ、これを法律で規制をいたすということになりますと、これは航空機というものは飛び方、そのときの状態その他によって必ずしもパイロットの思うとおりの音が出ているかどうかということは、なかなか確認がむずかしいという問題でございます。したがいまして、先ほど環境庁のほうから御指摘のございましたように、もしやるとしましたら、エンジンそのもの自体の音を出ないような規制を行なうということ以外に法律的にこれを取り締まるという方法はないわけでございます。したがいまして、ただいまの措置行政上の措置として指導で行なっておるということでございます。
  97. 木下元二

    木下委員 まあこれは幾らでも御都合で変更されるような、そういうふうな規制をやっても意味がないことなのでありまして、やはり私は、法律で規制をする、場合によっては罰則もかけられるというそういう制度をつくるべきだと思います。これはぜひ検討していただきたいと思います。  時間がありませんので次の問題に移りますが、運輸省は、このたびの判決でも示されました、大阪空港設置管理して、原告らに対して多大の犠牲を与えてきたという事実、原告らの人格権を侵害してきたという責任はお認めになるのでしょうか。なるかならないかの一言でお答えいただきたい。
  98. 寺井久美

    ○寺井政府委員 現在この判決についてどういう態度をとるかについては政府内部で検討中でございますので、お答えは差し控えさしていただきたいと思います。
  99. 木下元二

    木下委員 それでは、結局いまのお答えは控訴するかどうかわからないという趣旨だと思いますので、その点についてはもうそれ以上申しませんけれども、そうしますと、原告らに対して損害賠償の支払いを、国に対して命じたわけでありますが、原告らと同じように被害を受けた周辺住民に対して、どういう措置をとるかといった問題、あるいは原告らに対して、これから将来の関係についてどういった措置をとるかといった問題、こういうことについても、いまはお答えいただけないということですか。
  100. 寺井久美

    ○寺井政府委員 現段階におきましては、お答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  101. 木下元二

    木下委員 それでは、その関係の質問はしばらく保留いたしまして、きょうのところは聞きません。  質問を少し変えますが、あまり時間がありませんので、ちょっと聞きたいのでありますが、この航空機騒音環境基準ですね。「十年をこえる期間内に可及的速やかに」達成するという基準でありますが、日本語の通常用語としても理解しがたい表現でありますが、なぜこういうきわめて長期にわたる達成期間をきめたのか、これは一言で言うと、どういうことですか。
  102. 春日斉

    ○春日政府委員 きわめて長期にわたる準備と工事その他の施策が必要だという意味でございます。
  103. 木下元二

    木下委員 この環境基準の達成に十年をこえる期間を定めた例というのは、ほかにありますか。あるかないか……。
  104. 春日斉

    ○春日政府委員 ございませんが、窒素酸化物の場合は五年をこえ八年という例もございます。
  105. 木下元二

    木下委員 ないわけです。環境基準を定めながら、この騒音環境基準については、達成期間を経ても達成困難を予測して、その場合の対策を定めておりますが、そういうケースはほかにありますか。
  106. 春日斉

    ○春日政府委員 思い当たりません。
  107. 木下元二

    木下委員 一たん環境基準をきめましたならば、これはもう何よりもその達成に最善を尽くすべきことは当然であります。その達成を、これはもう当然至上命令とすべきであります。ところがこの場合は、達成期間を定めておいて、これで達成されなかった場合はどうするこうするというふうに、達成できないということを前提にいろいろな措置を予測しておるということであります。これは私は、もちろんほかにもこういうケースは見当たりませんし、全く不見識というほかないと思うのです。これは一体なぜでしょうか。何か環境庁は、航空機騒音のような公害をほかの公害よりも一段軽微なもの、そんな深刻な騒ぎ立てるほどのものではないというふうに見ているのですか。
  108. 春日斉

    ○春日政府委員 航空機騒音に係る環境基準の基準値と申しますものは、目標としてこれは非常にきびしいものであるという評価もあるわけでございまして、これはもう決してゆるいものではございません。したがいまして、騒音対策としては事ほどさようにむずかしいものである、こういうことでございます。
  109. 木下元二

    木下委員 数値そのものの内容を聞いているんじゃないですよ。環境基準、まあその内容についても若干問題がありますが、そうではなくて、その環境基準を達成するのにそういうふうな達成期間、「十年をこえる期間」「可及的速やかに」というふうなきめ方、しかも、達成できなかった場合は防音工事をやるというふうな、これは、地元住民からすれば全く愚弄された話ですよ。人を食った話ですよ。一体この「十年をこえる」とした根拠、これは何でしょうか。
  110. 春日斉

    ○春日政府委員 大阪国際空港のように対策が非常にむずかしいような場合、その達成期間は長期にわたらざるを得ないわけでございます。環境基準の基準値がゆるければ、この達成期間は必然的に短くなりますが、かなりきびしいものでございますゆえに長期にわたらざるを得ないわけでございます。     〔坂本(三)委員長代理退席、委員長着席〕
  111. 木下元二

    木下委員 この根拠はどうしても納得できません。この審議会でこの点について相当論議が深まったと思うのですけれども、一体どういう論議がされたのか、これはひとつその資料を提出いただきたいと思うのです。その上で、私はこの点についての質問もいたしたいと思います。
  112. 春日斉

    ○春日政府委員 審議会の論議は非公開になっておりますので、その詳しい過程につきまして御発表することは差し控えたいと思っております。
  113. 木下元二

    木下委員 審議会そのものは非公開でありましても、これはきわめて重大な問題であります。この「十年をこえる」とした根拠について、ある資料、いろいろ資料があるんではないですか。そういう資料をこの委員会に提出願いたいと思うのでありますが、委員長、この点について特に私は要求をいたしますけれども……。
  114. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ただいま木下君の御要請の件については、後刻理事会で相談をいたしたいと思います。
  115. 木下元二

    木下委員 それから防音工事の点、もう時間がありませんので最後に伺いますが、特にこの防音工事についても抜本策の一つとしてお示しになっているわけでありますが、一体それではどういう防音工事をしようとしておるのか。これまでの方向は、これは単なる助成であって、しかも一部屋あるいは多くても二部屋、しかも全額ではなくて七五%、こういうふうに聞いておるのでありますが、こういうやり方、方向に対して抜本的な改善を加える、こういうことですか。具体的な内容などわかりましたら述べていただきたいと思います。
  116. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先生御承知のように、ただいま航空機騒音防止法の改正案を国会に提出をいたしておりまして、先国会からの継続審議になっております。民家の防音工事につきましては、この法律の制定を待って実施するということになっております。したがいまして、本年度の予算も来年度に繰り越して使用せざるを得ないというふうに考えております。その場合に、一応政府の内部におきましての、予算の過程におきましての予算の見積もりの中身といたしましては、先生いまおっしゃいましたように七五%の助成ということで、当面一室、二年度目から二室ということで、当面一室でもいいから急いでというお方を優先して実施するということを考えております。ただ、詳細につきましては、防止法の成立を待ちまして、補助基準その他の中身において明らかにいたしたい、かように存じております。
  117. 木下元二

    木下委員 時間がありませんので……。これまでの方針の説明を聞いているのじゃないですよ。環境庁長官が、根本的な対策として、この点についての改善を進める、こう言われるから、これまでの方向に対してどういう改善策をとるのか、こう伺っているのです。  これは一室、二室ということでなくて、当然家屋全体について防音工事をやるべきですよ。長官、この点はいかがですか。これは当然防音工事をやるという以上は、家屋全体についてやる。一室、二室防音工事をやっても、そんなの救済になりませんよ。そしてこれは当然加害行為によってこういうことになったのだから、一部でも住民側に負担させるということでなくて、当然全額負担するべきですよ。
  118. 三木武夫

    三木国務大臣 従来は公共的な建物に限られておったのを民家へ伸ばしたということですが、しかし、これはいろいろと全体をやれというお説でもありますけれども、全体ということになると、かえって不公平な面も出てくるでしょうし、これをいろいろ検討した場合に、最初七五%ですか、そういう補助で行こうということに決定をいたしたわけでございますが、この点は、今後の検討すべき課題だと思います。
  119. 木下元二

    木下委員 長官、最後に伺いますが、これは民家にやるなんというのを最近きめたのじゃないですよ。もう去年から運輸省は、公共施設だけじゃなくて民家にやるという方向を出しているのですよ。そして七五%を国のほうで助成するという方向で来たのでしょう。これについて大きく改善をしていくという以上、この際、その改善案を具体化していくというのは当然のことなんです。いま検討されると言われましたので、ひとつこの点は、それこそほんとうに抜本的な改善の検討を願いたいと思うのです。それをしてもらわなければ、これはほんとうに、住民に対し、長官、約束を踏みにじったことになりますよ。この点は、かたく約束願いたいと思うのです。ひとつ国のほうが全額負担をする、そして一室、二室ということでなくて、全体について対象にして防音工事を進めていく、こういう方向でお考えいただきたい。
  120. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は、運輸省からお答えしたように、来年度の予算は、そういう編成をされておるようでありますが、将来の問題として、この問題は、今度は第三セクターの特殊法人もできるわけですし、これが実施をしていくというわけですから、従来よりも制度的にもよほど改善をされてくるわけでありますから、その内容についても、将来においてはもっと改善することを検討をいたしてみたいと考えております。
  121. 木下元二

    木下委員 それではその防音工事の点も含めて、あるいはそのほかいろいろな問題が残されましたけれども——この判決か出ましたけれども、先ほどのお話では、運輸省のほうはまだ控訴するかどうかわからぬというようなことも言っておるようであります。けれども、この判決を機会に、住民の立場に立って、ひとつ住民被害をなくしていく方向で抜本的な対策を講ずるということは、これはもうぜひとも具体的にお進めをしていただく、こういうふうに伺って、質問を終えたいと思うのです。よろしいですか。——終わります。
  122. 角屋堅次郎

    角屋委員長 岡本富夫君。
  123. 岡本富夫

    岡本委員 時間を節約する意味におきまして、簡潔に質問しますから、きちきちっと明確に答えていただきたいと思います。  まず、運輸省の航空局長さんに、今度の判決の結果——皆さんがこちらに参りまして、大臣に要求したことがあるのです。そのうちの一つは、夜間、要するに午後九時に飛行機の発着をやめてもらいたいということであったのですが、それが十時になったわけでありますけれども、この間は、御承知のように、一家団らんの時間であり、あるいは睡眠の時間、極力この時間には削減する。国際線あるいは郵便機——一歩譲って郵便機、これはしかたがないとしまして、ここの制限を考慮できないか。これをひとつお答えを願いたい。
  124. 寺井久美

    ○寺井政府委員 お答え申し上げます。  九時−十時の間のお話でございますけれども、私どもといたしましては、全体の離発着回数を減らすということで、目下検討をいたしておりまして、その結果、九時−十時の間の便数も減る結果になる可能性はございます。しかし、特に九時−十時だけを減らすということを当面考えておるわけではございません。
  125. 岡本富夫

    岡本委員 その点、運輸省航空局は、先ほど話があったと思うのですけれども、この九時までは何とかしんぼうしろというのですね。これは住民の切なる願いなんですよ。それが十時まで——きょうも見えまして、これを何とか十時までの間——国際線はいたし方がない、郵便機、これは一歩譲りましょう。その間において、何とか国内線ですか、これをひとつぜひ削減をしてもらいたい、こういう話だった。  あなたは、いま、特に九時から十時までを意識して削減する考えはないと言ったが、これは話にならない。あなたが、ほんとうに大阪伊丹空港の周辺に住んでいないから、そういう住民の立場に立った、要するに毎日毎日被害を受けておる人たちの立場に立ってないいまの答弁だと私は思う。どうですか、ちょっとこれは考慮できませんか。いかがですか、もう一ぺん……。
  126. 寺井久美

    ○寺井政府委員 私ども、もちろん九時−十時を減らす可能性は検討いたしております。しかし、先ほど申し上げましたように、音源対策全般としてこの問題は処理をしなければならない、したがいまして、九時−十時だけを引き抜いてみても、全体の量が減らなければ、これはやはり根本的に対策にならないのではないかというふうに考えておりまして、もちろん九時−十時の間に減らせるというものがございましたら、これは減らすべきでございます。  ただ、これはいろいろ、私ども考え方といたしましては、現地の住民方々の苦痛も考え、かつまた、その時点におきます利用者の便益ということもあわせて考えていかなければならない立場にございますので、先ほど申し上げましたように、一日の発着回数を全体として減らしていくということに基本的に考えておりまして、もちろん九時−十時もその結果減る可能性は否定いたしません。
  127. 岡本富夫

    岡本委員 この環境基準を見ますと、ホンではないわけですね、WECPNLですか、こういうことですから、どっちかというと薄めて基準をきめているように考えられるわけです。ですから、計算の上で一日の量がこうなったとか言いますけれども、大体いま一番ラッシュ時といいますか、夕方あるいはこの九時から十時には一分三十五秒に一機ずつ飛ぶ、そういうラッシュ時にずっとひっかかってくるわけですね。これは夕方の六時か七時ごろからもうなりますけれども、そういうことを考えますと——そしてまた昼はわりにすいているのですよね。ですから、皆さん調査に行きますと昼ですわ。十二時から二時か三時ごろ。全然だいじょうぶじゃないか、また、建て売りの家を買う人も、みんなそういう時期に行きますから、これはまずしんぼうできるということになって、夜になったら、これはもうたいへんなのです。  同時に、ひとつ九時から十時というのは、これはもう自分らの切なる願い——御承知のように工場も休まなければならない時代に、あるいは子供が勉強しなければならぬときでしょう、これに対しては、全体の音源対策の中から、削減の中から特に考える、こういう答弁くらいあなたできませんか。いかがですか、全体の中からそうなるかもわからない、それでは話にならないですよ。意識して、そこのところをカットして前へずらすとか、ほかへもっていくとか、こういうことは私は可能だと思うのですが、いかがですか、航空局長
  128. 寺井久美

    ○寺井政府委員 WECRNLの説明は追って騒音対策課長からいたさせますが、御指摘のように、夕方一つのラッシュ時になっております。特に六時、七時、八時、この辺が一つの山になっております。九時−十時というのは、その山をかなりおりた状態になっていると思いますけれども先生指摘のように、もちろんその九時−十時の間というものを、われわれは当然減らす場合に考えてまいります。しかし、先ほども申し上げますように、全体を減らさなければいかぬと思っているわけです。
  129. 岡本富夫

    岡本委員 九時から十時を減らす、これを削減するように考える、考慮する、しかしという、それは要らないですよ。いいですか、それはよけいなことだ。だから騒音対策、要するに減便の場合、そこのところは特に考慮する、これはできるのですからね、これから検討するのですから。  次にエアバス問題。このエアバス問題について、エアバスを一機入れると普通のジェット機を何機削減するか、ここのところをきちっと住民の皆さんに示さなければ、前、万博のときもそうだったのですが、727を入れれば、これを入れるのを認めてくれれば、必ずうんと削減できるのだ、こういう説明を、あなたがしたのじゃないでしょうけれども運輸省は現地でしているわけですよ。じゃ、減るのならばということで、そうすると、そうじゃなくて、どんどんどんどんふえているでしょう。  いままでの運輸行政というのは、もうとにかく安全対策だけ見て、入れるだけ放り込んだのですよ。それが、この間の連合審査のときも言いましたように、昭和四十二年一年間で九万五千回だったですか、それが十五万機以上になっちゃったのです。そのうちジェット機が前は四割だったのが今度は六割近くになってしまった。それはできるだけそこへ航空機の発着を、特にピーク時にこの飛行場ならどこまで使えるかというところに、あなた方の考え方があった。住民の意思は全然無視された。それでいまの住民の皆さんは、エアバスを入れたら、では何機減るのですかというのに、あなた明確な答えがなかったら、私は絶対に、先ほど騒音課長ですかは、住民の皆さんに御理解を得ますということでしたが、これでは御理解を得ないですよ。その点いかがですか。
  130. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの先生の御指摘、私ども全くそのとおりだと思います。エアバスを入れた場合に、それでは何機減るのかということについて、私どもはこれは地元に明示しなければいけないというふうに考えております。  減らし方その他につきましては目下検討中でございますが、まあ東京大阪のごとく新幹線等の代替輸送機関のございますところですと、おおむね半分に減らすことが可能だと考えております。
  131. 岡本富夫

    岡本委員 一機入れる計算で半分しか減りませんかね。ちょっと計算が間違えておるのと違いますか。ということは、いま日本航空は、これはPR紙も配ったり、あるいはまたテレビでもやっておりますよ、盛んに。エアバスを購入しました、快適な空の旅をなんてやっておるのです。ですから、もうすでに購入しておるわけでしょう。それをあなた方入れさせようとするわけですからね。しかし、それにしても半分にしか減らぬというのは、ちょっとおかしいですね。ちょっともう一ぺん……。
  132. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先生御承知のように、いま国内線に就航しております飛行機はダグラスのDC8型とボーイングの727型が主力でございます。DC8は約二百三十座席程度あるわけでございます。ボーイングの727−200というのは百七十八座席でございます。それに対しまして、現在導入を予定いたしております大型機はロッキードのL一〇一一が三百六十座席、それからボーイングの747SRが四百九十座席ということでございますから、ただいま申し上げましたように、実は全体で二分の一にするのも若干きついわけでございますけれども、新幹線等代替のあるところ、東京大阪についてはその便数の調整をうまくやって半分にいたしたい、かように思っておるわけでございます。
  133. 岡本富夫

    岡本委員 次は、これはいまの航空会社にどんどんお客を誘導すると申しますか、乗客を一生懸命集める宣伝をさせておるわけでしょう。テレビでもそうですし、また銀行ローンでも、とにかくいま海外旅行に行く人は、若い方々でも先にお金を払っていかない、銀行ローンであとから払うのですね。だから行きやすい。こういうようにして、どんどん使いやすいようにして、そうしてお客をたくさん集めるPRをして、そして乗客が多いからだと、こういうのは私はやめたほうがいいと思いますがね。そうすると、こんなに苦しんでおる皆さん方を助けることになると思うのですよ。この点については長官ひとつ副総理として。
  134. 三木武夫

    三木国務大臣 これは大阪東京間というものは新幹線もありますし、大々的な宣伝はやはりしないほうがいいと思います。
  135. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの宣伝でございますが、大阪地区につきましては、そういう宣伝はかなり控えておるはずでございます。
  136. 岡本富夫

    岡本委員 航空局長、控えておるようでありますと言われるが、あなたは航空会社と違う。あなた、日本航空ですか、全日空ですか。あなたはそれを取り締まるほうだ。だから、行政指導でそれは押える、こういう答弁をするのがあたりまえですよ。違いますか。
  137. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 ただいま局長が申し上げましたのは、大阪地区につきましては、以前から騒音問題がございますので、便数の規制をいたしております。そのような関係もございまして、大阪地区におきます観光宣伝、団体募集の宣伝というのは極力自粛するようにということは、再三航空会社のほうに指導をいたしておる、こういう趣旨でございます。  また航空全体におきましても、例の油問題以来、そういう団体募集等の宣伝は極力自粛するように、これも指導いたしております。  なお、御参考までに申し上げますと、航空機を利用されておりますお客の八〇%は、商用とかそういう何らかの用事があって御利用になる方でございまして、観光客は、団体等になりますから非常にはでに見えますので多いようでございますが、統計的には二〇%程度でございます。
  138. 岡本富夫

    岡本委員 その二〇%を削ると非常に助かるのです。これはもっと強く指導をしていただきたい。大阪東京だけというのじゃなくして、大阪から海外に行くやつもある、国際線も。ですから、これはひとつ極力そういった問題については航空会社を指導していただきたい。  それから次は、エアバス、四月から見切り発車しませんか。簡単にひとつ。
  139. 寺井久美

    ○寺井政府委員 四月一日から見切り発車というようなことは考えておりません。それまでに十分地元の御理解をいただけるように努力を続けたいと思っています。
  140. 岡本富夫

    岡本委員 そうすると、それまで地元の皆さんを説得する。先ほどから聞いていると、何か全部の人が賛成しなくても、ほんの一部の人が賛成すれば見切り発車しようというように、私には答弁が聞こえてならなかった。したがって、見切り発車はしないと、これ約束してもらったのですから、まあ、こればかりやっていてもしかたがない。了解しておきましょう。  次に、環境庁長官談話を見ますと、将来新空港が供用された時点においても、なお環境基準が達成されない場合は、廃止も含めて——空港をつくるのは、この大阪伊丹空港騒音住民が非常に苦しんでいるから新空港をつくろうというわけです。それを供用するという考え方、しかも環境基準——環境基準というのは、私、この前、当委員会でお話ししましたように、環境アセスメントもできてない。環境基準が達成されれば、もう絶対だいじょうぶだという保証はないわけです。ですから、私は、もう一歩進んで、新空港ができれば、こんなに長年苦しんだ大阪伊丹空港を廃止する、ここまでひとつ進んでもらわなかったら、抜本対策じゃないと思うのですが、いかがですか。
  141. 三木武夫

    三木国務大臣 岡本委員もあの地方の御出身ですが、やはりあすこに国際空港は要ると思うのですよ、大阪に。そういうことをしたら、あれをいま廃止してしまえば何もなくなるわけですから。したがって、いま新空港も夢物語ではないわけです。審議会ができて、そしていま盛んに検討を加えておるわけですから。そういう新空港が供用というのは、それが使われるようになればということで、ある期間空港なしということは私よくないと思うのです。やはり大阪、神戸の人たちが、ある時期は空港がなくてよろしいということは多数の意見ではないと私は思うのです。だから、新空港が使えるようになっても、なおかつ環境基準というのは、これはWECPNL七十といっておるわけですから、たいへんにきびしいわけであります。  こういうふうな環境基準というものが達成できないような状態であれば、これはやはり廃止も含めて、根本的に空港のあり方を検討しなければならぬ。なぜ歯切れよく廃止と言わぬかといいますと、やはりいまいろいろな、エンジンの改良も行なわれているわけですね。だから、それは新しい空港ができるまで相当な期間かかりますから、その間に、やはり航空機というものは一体騒音に対してどういう技術開発をするであろうか、そういうことも考えてみますと、あまりこの際に、相当将来のことですから、歯切れよく言うということは、かえって混乱を起こしはしないか。それはそういうことを、廃止になるのだと言ったら、あるいは地価にも影響したり、いろいろな点でやはり影響を与えはしないかと思いますので、断定的には私は言わなかったわけでございます。  要するにその時点において、要はやはり騒音被害地元人たちが受けなくて済むような空港にしなければなりませんから、それがどうしてもできないのだということならば、根本的に空港のあり方を考えなければならぬということであります。その間いろいろな変化があると思いますので、そういう選択の幅を広げた言い方をしたわけでございます。
  142. 岡本富夫

    岡本委員 私、新空港をつくるについては、環境基準が達成されない場合はできないとか、こういうのなら話がわかるのですけれども、新空港ができて供用された時点において、なお環境基準が達成されない場合は、廃止も含めて、空港問題を根本的に再検討すること。これを見ますと、新空港ができても供用するのだ、しかも環境基準が達成されればもういいんだ、こう逆にもとれるわけです。  それから、いままで十何年もほんとうに苦しんでいるわけですから、まだ——長官、地価に影響するというのは、飛行場がなくなると地価が上がるという考え方でしょうかね、これはもう今度規制しますけれどもね。その点、ちょっと私——空港ができれば、そうしたらいままで苦しんだここを廃止する、そういうことが検討されるのか、この点ひとつ……。
  143. 三木武夫

    三木国務大臣 これは環境基準が守られるようになれば、騒音被害はなくなるものですから、地元人たちがそのときにどういう意見を持ちますか、それはやはり大阪とか兵庫とかいうものの地元意向も尊重する必要があると思います。環境基準が守られるようになったら、そうすれば、その飛行場というものは予備的な飛行場として置いてもらいたいというような意見が出ないとも限らぬですよ。要は、騒音からくる被害というものをなくするということが目的でありますから、そういう場合もないとは言えないですからね。  だから、私が言っておるのは、将来のことですから、新空港をつくるということには、だいぶ時間がかかるわけですから、一方においては飛行機のエンジンの改良も行なわれる。そうして地元民の人たちも、そういう環境基準が守られた後においては、地元民の実際の騒音被害というものはなくなっていく。ですから、その時点においてどういう考えを持つかといういろんなこと、相当な時間の先のことを断言することは、やはり何か独断に過ぎると思うのです。できるだけ選択の幅を広げておく。しかし、その中には環境基準が達成できないならば、空港の廃止も含まれておるというところに、非常に環境基準を守るということに対する強い姿勢というものも、そこには出ておると思うのでございます。
  144. 岡本富夫

    岡本委員 環境基準というものが、私はこれは環境アセスメントもやっていないわけですから、はたしてほんとうに、これでだいじょうぶだろうかということが、まだこれは一つの目安であってわからない。同時に、私はなぜそう言うかといいますと、長官、この間私、連合審査のときにこの方々に、これから新空港をどういうふうに考えているんだというと、大体七月に答申が出るというんですが、それによって考えるんだというんです。十年なら十年かかったらできるということになれば、この地域におる人はもう十年しんぼうすればいいんだ、そうしたら私たちはこれから解放されるんだという希望がでてきます。いまだったら、全然これは希望がないわけですよ。いつまでたってもどうなるのかと非常に希望がないから、もうしんぼうできないというのが現在の姿なんです。だから私はこれをやかましく言っておるわけですが、その辺までしか答えられないでしょうから……。  次に、航空局長さんに。先ほども民家の防音装置について話がありましたけれども、あなたのほうが川西で民家の防音装置をしたモデルハウスをつくった。ところが、これは連合審査でもお話ししたんですけれども、これは一機一機になりますけれども、たとえば百ホンをその防音装置のつくられた部屋の中ではかりました数値が、これは川西市が一緒にはかっておるわけですけれども、キャセイ航空ですと百六ホン、タイ航空百六ホン、中華航空が九十六・五ホン、全日空でもB737ですか、これですと九十ホンとかあるいは八十九ホン、あるいは九十一、九十一、こうずっと平均して八十九・六ホンというような、これは九月の終わりから十月いっぱいをはかった数値なんです。ですから、この民家の防音装置をやれば、これはもう一〇〇%効果があるんだというような考え方ですね。どうも私、実際にはかった数値から見れば賛成できないんです。この点についていかがですか。
  145. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 お答えいたします。  先日の連合審査のときにもお答え申し上げましたけれども、私どものモデルハウスというのは、先生が何を意味しておられるかちょっと不明でございますけれども、おそらく私どもが直接やっておりますのは、国の予算で民家の防音工事を実施する前の事前調査といたしまして、実際の民家に防音工事、改造工事をいたしまして実験をいたしておるわけでございます。その実験結果は私どものほうでは大体最低二十デシベルないし二十五デシベルは下がるという実験結果が出ております。  先生は川西市とおっしゃいましたので、川西市は高芝と摂代のあたりに一軒ずつ二軒やっておりますが、そのどちらのデータか、ちょっと私のほうは明らかでございませんが、私自身見ましたのは摂代のほうでございますけれども、摂代地区でございました場合には、先生がいまおっしゃいました音は、ちょうど屋外のそこを通過する航空機騒音とほぼ同じでございます。これは、先日運輸委員先生方が現地を御視察になりましたときに、現地で測定いたしました音も大体そういう音でございましたので、それから二十ないし二十五デシベル下がるはずでございますから、そういうことはあり得ないというふうに思います。一度先生のデータを拝借いたしまして、川西市測定でございましたら、どういう点を御測定になったのか、一ぺんよく調べさしていただきたいと思います。  繰り返し申すようでございますが、私どもの実験工事といたしましては、屋外から二十ないし二十五デシベル下がる、非常に効果があがっておるというふうな実験データが出ております。
  146. 岡本富夫

    岡本委員 これはあとでもう一ぺん突き合わして——私はこれは現地でどうもならぬからというのでもらってきたのですからね。  そこで次に、この前小山環境庁長官に現地を視察していただいたときも、DC8は非常に音が高くて排気ガスが多い。これを見ますと、外国機なんですね。日本航空にもありますけれども、この外国機の問題について、音源対策あるいはまた排気ガス対策、これについてひとつ、たとえばタイ航空あるいは中華航空、大韓航空、キャセイ、こういうところに対して申し入れをできないか。外務省来ておりませんか。いかがですか。
  147. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま先生の御質問の趣旨がちょっとわかりかねるのでございますが、タイ航空とかそういうところに申し入れができないかという御趣旨の意味は二通りに考えられるのでございますけれども一つは、そういう音のうるさい飛行機は飛んで来るな、やめてくれということ。あるいはもう一つは、ICAOの民間航空機構で航空機の騒音につきまして一つ騒音証明制度というものを採用いたしております。これは運輸省におきましても、航空法の一部改正という形で御審議をお願いしておりますけれども、こういう騒音証明制度を持っていない飛行機は来てもらっちゃ困る、こういう言い方をするのか。どちらかではなかろうかと思います。  前者の場合でございますと、これは現在のところ、そういう飛行機は遠慮していただきたいということをかりに申しましても、これはおそらく効果がないというふうに考えております。それから後者の場合でございますと、騒音証明制度というものを実行いたすことになっておりますので、その線に沿って騒音証明を持った航空機でなければ入国しては困るということは、もし航空法の一部改正が成立いたしますと可能になります。
  148. 岡本富夫

    岡本委員 あなた、日本の国内の法律が変われば、こういった外国機に対して、そういった騒音証明ですか、こういうものをつけてくれとか、高い証明だったら何にもならないですね、音源対策をやろうとするのに。そういうような要請が国内法が変わればできるのですか、どうなんですか。いまそういう答えだったですね。
  149. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの御質問でございますが、ICAO加盟国の航空機でございましたら、国内法上、騒音証明を持っていない航空機につきましては、就航を拒否することができます。
  150. 岡本富夫

    岡本委員 いまも拒否することができるわけですね。ところが騒音と排気ガス、非常に多いのが外国機ですよ、特にDC8。
  151. 寺井久美

    ○寺井政府委員 少し混乱いたしましたけれども、要するに騒音証明制度が適用になる航空機につきましては、乗り入れを拒否することができます。
  152. 岡本富夫

    岡本委員 すみません、時間を食って。坂口君のところにちょっと食い込みますから。  騒音証明制度というのですか、騒音証明をつけられる航空機については、ということになりますと、DC8なんかは騒音証明をつけられない、こういうことですか、どうですか。
  153. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 ちょっと事務的に御説明いたしますと、現在のICAOの規定は、ICAOの規定ができましたとき以降、新たに生産される航空機については、すべて騒音証明制度を適用する、こういうことになっております。したがいまして、それ以後新たに生産される航空機につきましては、これは加盟国が騒音証明を要求すれば、それに従わなければ拒否することができる、かようになっております。しかし、DC8という飛行機はかなり以前に生産されておる航空機でございますから、その制度の適用はございませんので、現在の段階では、これを騒音証明の上から拒否するということは国際的にはできない、かようになっております。
  154. 岡本富夫

    岡本委員 それはしかたがないということになっているんだね。これはけしからぬね。  時間があれですから、次に、日台航空協定と日中航空協定の問題でいまもめておるわけですね。外務大臣の問題もあり、自民党さんの中ではもめておるという話ですが、日中航空協定というのは大体いつごろ結ばれるわけですか。ということは、住民の皆さんが、上海から直接大阪へ入らなければいかぬ、またふえるんじゃないかということで非常に心配しているわけですよ。その点の見通しをひとつあなたに答えてもらいたい。
  155. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生御承知のとおり、この日中航空協定の締結というのは、日中国交正常化後、日中両国政府において鋭意努力してまいりまして、できるだけ早い機会に締結したいという基本方針には変わりございません。先般、大平外務大臣が北京に参りまして、さらに日中間で話を詰めまして、大体こういう方針でもって日中航空協定を締結し、同時に日台間の路線を民間取りきめでもって維持したいという基本的な態度政府できめました。  現在、これからこの日台路線の維持を民間取りきめによってはかりながら、他方で日中政府間で航空協定の締結をしたいということで進めておりますけれども、たいへん残念ですが、いまの段階でいつごろできますかという点につきまして、はっきりした見通しを申し上げることはできません。
  156. 岡本富夫

    岡本委員 おそらく日中航空協定ができますと上海から大阪へ、こういうような御要求もあろうと思うのですね。あるいは、北京から成田へと。そういう場合に、日中航空協定ができたのだから、これはもう対外的なことを考えれば、しかたがないのだといってまた一機ふやす、また次ふやすというようなことになる。その場合、もしもそれがふえる場合は国内線を減らす、これくらいの強い措置運輸省ではとれるのかどうか。ひとつ、航空局で受け入れ態勢について見通しを聞かしていただきたい。
  157. 寺井久美

    ○寺井政府委員 日中航空協定に関連いたしましては、大阪騒音問題で増便が非常に困難であるという事情は、過去二度ほどの接触におきましても相手方に説明をいたしております。しかし、これは交渉ごとでございますので、大阪が絶対に出てこないというようなことは、この席でとやかく申し上げられませんけれども、私ども航空局の立場といたしましては、従来から航空交渉に臨みます際に、大阪というものはできる限り取引に出さないという考え方で処理いたしております。  最後に、先生御質問の、国内線を切っても入れるのかという点につきましては、私ども大阪におきますジェット機の離発着回数というもののワクの中で処理をすべきだというふうに考えております。
  158. 岡本富夫

    岡本委員 これは抜本的の対策だといって、いま四百五十回ですか、これをせめて半分にした、それで二百二十回になった、そこへ今度は日中航空協定ができたために、上海から入ってくるからまた入れる、こういうふうになりますと、せっかく減らしてもまたふえてくるのですね。ですから、根本的な問題は便数の削減ということでありますから、一ぺん削減したら、それを今度ふやさない。だから、一機入れるならば一機国内線を減らす、こういうような考え方で組んでもらわなければどうにもならないというのが、われわれの考え方なんです。これが一つ。  最後に、健康障害について、大臣はこれから被害調査をするのだというようななまやさしいお話でありましたが、先回当委員会でも私が、この航空機の大気汚染がジャンボは車の二千八百台だと言ったら、局長は二千七百台分だ、こう言って、まあ百台分削りましたが、しかし環境庁から調べて、これは羽田の場合ですが、一日に四百二十六便が吐き出した有毒ガスの総量は、すでに一酸化炭素十・一八トン、炭化水素六・二一トン、窒素酸化物三・一六トンに達している。同時に、伊丹大阪空港でも環境基準をはるかにこえておるというような、これは十一月八日の毎日新聞の記事ですけれども、「環境庁調べ」とこれに書いてありますよ。  そうすると、これだけ環境基準もこえ、またそれだけの排気ガスが出ておるわけですね。排気ガスにすると、東京、神奈川、千葉、埼玉各県で一日に排出される総量の〇・三%、あるいは炭化水素総量の〇・五%、窒素酸化物総量の〇・一七%を占める。東京、神奈川、千葉、埼玉ですから、相当広いところに対してこの割合で出ておるわけですからね。それが一ところに集まっているわけですからね。これで健康被害がないといえばおかしことですね。その点についての御見解をお聞きしておきたい。まず、航空局のほうから。
  159. 寺井久美

    ○寺井政府委員 新しくふえる場合には、すでにある便数を減らせという御趣旨でございますが、現在ジェット便につきまして二百六十離発着のワクの中で運営いたしております。将来これを減便いたしますから相当数減ってまいりますが、減ってまいりましたら、そのワクの中でやはり新しく入ってくるものは処理しなければいけない、こういうふうに考えております。
  160. 春日斉

    ○春日政府委員 たとえば私ども大阪空港におきまして実際に測定したことを申し上げますと、御承知のとおり飛行機の排気ガスは一酸化炭素とハイドロカーボンと、それから窒素酸化物でございます。硫黄酸化物はもちろん関係ございませんが、この場合飛行機のエンジンから出ます排気ガスと申しますものは、大容量の噴気で、非常に速いスピードで噴射いたしまして、PPMという観点から見ますと、非常に薄い排気ガスでございます。そして拡散率が非常に高いわけでございます。しかも飛行場で申せば非常に拡散率がいいわけでございますから、自動車のような局所濃厚汚染現象は非常に示しにくいわけでございます。  したがいまして、私ども大阪空港、これは東京空港と全く同じでございますが、調べた結果によりますと、大阪空港の場合ほとんど環境基準を満たしております。それから一般の大阪地域に比べまして格別に高いというようなことはないわけでございます。むしろ空港汚染地域に隣接しておって、もらい公害というような、いわば変動幅の中に吸収されてしまって、航空機排ガスの寄与度というものは、むしろはっきりと測定できなかったというのが実際でございます。
  161. 岡本富夫

    岡本委員 これで終わりますけれども局長、それは間違いです。こう飛びまして、上に上がっているところを調べているのだ。たとえば大阪のあの勝部地区、あそこへぼくたちは、あのときは佐々木運輸大臣とですか、——うあっととにかく顔へ一ぱいかかってくるのです。もうもうとまっ黒ですよ。家の中にも一ぱい入ってくるのですよ。そこへちょっと壁をつくっていますけれども、そんな壁ぐらいこたえないですよ。そういうところをはからずに、あなたはきれいなところをはかっているか、あるいはそれとミックスして、何といいますか、少なくしているか。自動車の排気ガスぐらいの騒ぎじゃありませんよ。自動車の排気ガスより少ないなんて、これはけしからぬ。ひとつもう一ぺん再調査をしていただきたい。これを要求しまして、きょうは終わります。委員長、ありがとうございました。
  162. 角屋堅次郎

    角屋委員長 坂口力君。
  163. 坂口力

    ○坂口委員 時間がたいへんおそくなりましたので、一問だけお聞きをさせていただいて終わりにしたいと思います。  大阪空港の公害訴訟判決がおりまして、この中にも多くの問題点が含まれているわけでございますが、簡単にいえば、けさからいろいろ御議論がありましたように、われわれの生活の便利さと、それから健康の守りとの対決でありますし、その調和点をどこに見出すかということであったと思うわけであります。今回の結果は健康の守りのほうにもある程度配慮をしながらも、しかし、さらに一歩公共性というものを高く評価したという結果ではなかったかと思うのであります。環境権の問題でございますとか、あるいは公共性の問題でございますとかいろいろの論点がございますが、その中で健康被害の問題というのは、その中の一つの大きな論点であったと思うわけです。  不快感でございますとか、あるいはまた思考の中断ですとか、あるいはまた睡眠障害というような、どちらかと申しますと、精神面におきましては、そういうふうな障害ありと認めております反面におきまして、住民の皆さん方から出ておりますような、たとえば胃腸障害でありますとか、高血圧ですとか、あるいは鼻出血ですとか、あるいは流産の原因になるとか、あるいは頭痛が非常に多く発生するとかいうような肉体的に結びついた面につきましては、十分な因果関係は現在のところは判定しがたいというような結末になっているように思います。その理由としてあげられておりますのが、騒音が連続的なものではなしに、間欠的、一過性のものである。だから現在の段階ではそう断じがたいという結論ではないかと思うのです。  確かに一面におきますと、そういうこともいえるかもしれません。個人的なことになりますが、私自身議員になります前に公衆衛生の場におりますときに、騒音の脳代謝に及ぼす影響を研究いたしておりました。そういう関係から申しますと、いろいろ言いたいこともあるわけでございますが、しかし、ここは医学会じゃございませんので、それはさておきまして、この結果を見ましたときに、精神面のことを一面で認めながら肉体的な面では認めていないということを見ますと、人間のからだにあらわれます症状と、それから騒音というものとの因果関係、いわゆる病因論的な結末をつける前に、やはりそれじゃ健康とはどう考えるのかという土俵をはっきりさせておかねばならない。それが何かぼんやりとしているという気がするわけであります。  夕べもテレビでどなたかがそういうことをおっしゃったということを聞きましたけれども、私も前からこの騒音の問題につきましては、そういうことを考えております。今後新幹線の問題でございますとかあるいは道路騒音の問題とかいろいろ騒音の問題が続いて出てまいります。  そこでこの際私は、環境庁としてはっきりしておいてもらわなければならないのは、行政の場で、あるいは政治の場で健康というものをどういうふうに考えていかれるかということによって、その施策というものもまた非常に違ってくるであろうと思うわけでございます。そういう意味で、きょうは環境庁の健康というものについての統一見解なるものを一応聞かせておいていただきたいと思います。きょうは、それ一点だけ聞かせていただいて終わりにしたいと思うわけでございます。  いわゆるWHOがいっておりますようなフィジカル・メンタル・アンド・ソシアルという三つの面からの健康という把握のしかたか。この判決の結果を見ますと、精神面と肉体面とを別々に考えておみえになるような気もいたすわけでございますが、それはやはり一連のもので、一方から言わせますと、これだけ不快感があり、いらいらし、睡眠障害があれば当然胃腸障害が起こり、血圧のほうに変化が来、鼻出血が起こってくる、そういうことが起こるのは当然のことだという議論が出るわけです。それを一面の精神面では認めておるけれども、それは障害としては認めるが、しかし肉体のほうは因果関係はわからないという、その辺判決が非常に微妙な結果になっておるわけでありますので、今後その点について健康というものをどういうふうに把握していかれるかということについて、ひとつそれだけをお聞かせをいただきたいと思います。
  164. 三木武夫

    三木国務大臣 この点は、土井さんとも約束しましたように、疫学的に、臨床医学的に、子供の鼻血が出るという人たちもおったわけですから、これは至急にそういうふうな調査をしたいと思っておるわけです。  健康ということについては、いま精神的な不快感などは疾病としていえるかどうかということは、ちょうど局長は医者、ドクターでもありますから、医者として答弁をするほうが私よりも適切で——環境庁とすれば生命、健康というものを人間の原点に返って守っていくということが環境庁の職務でございます。その健康とは何ぞや、精神的な不快感というものが、肉体的な健康とどういう関係を持つかということは、医学者の大気局長説明してもらうほうが適当だと思います。
  165. 春日斉

    ○春日政府委員 専門家の先生にお答え申し上げるのはじくじたるものがございますが、健康の定義はまさにWHOが出しております肉体的、精神的あるいは福祉——まあ社会的と申しますか、福祉と申しますか、その中には経済も入ると思いますが、それがそろって、初めてほんとうの意味の健康と言える、そういう有名な定義がございますが、それはもうまさにそのとおりであろうと思います。しかし、これを現実の騒音の問題と直接結びつけて論ずるということは、これはかなり問題点が出てくるわけでございます。  なぜかと申しますと、現在われわれはいろいろなストレスに取り囲まれておるわけでございます。われわれの日常生活で、しからばWHOのいうところの真の健康に値する者が何人いるか、おそらくわが日本において非常に少ないパーセントよりいないことになるだろうと思います。したがいまして、そういった一つの理想論と申しますか、定義としてはよろしいと思いますけれども、現実にわれわれがいま言っておる健康とか、あるいはその裏返しとしての疾病という定義は、またおのずから別な論議が必要であろうと思います。  それから健康と疾病と申しますものは、疾病の終局は死でございましょう。これは非常にはっきりいたしておりますが、じゃあ健康の終局は何か、これはまあ不老長寿かもしれません。あるいは天国かもしれませんが、そのいずれにいたしましても、健康と疾病の間には画然たる差があるわけではございませんで、常にそれは連続した一つのスペクトルの上にあるわけでございます。したがいまして、健康的な病人もあるでしょうし、あるいは病的な健康人もあるでございましょうし、その辺はそれぞれの個人差あるいは環境その他によって画然と分けることはできない、かように考えております。  常に健康と疾病あるいは病気、その定義の問題は医学の最大の命題であり、今後ともそれについて行なわれると思いますが、そういった解決と、実際の騒音問題の引き起こす疾病という問題とは、またおのずから違うレベルで論議する必要があろう、かように考えております。
  166. 坂口力

    ○坂口委員 さすがは専門家、たいへんむずかしい話でございまして、いささか理解のしがたいところもございますが、私がお聞きしたかったのは、健康というものをどう把握しているかということによって、環境庁として打たれる手がずいぶん違ってくるだろうということを私は申し上げたかったわけであります。  精神面あるいは肉体面というふうな、あるいは社会面というふうなばらばらな把握のしかたで、たとえば精神面には影響はあるけれども、肉体的にはこれははっきりわからぬから、これは害ではない、こういうふうな論法でいきますと、非常に間違った結果が出てくる。しかし、この三方からのものは総がらみで、これはすべてうらはらになっているものだという考え方で取り組んでいけば、やはりまた違った施策というものが出てくるであろうということを私は申し上げたかったわけであります。  騒音問題が非常に公害の中で大きなウエートを占めておりますし、これからますますこれが大きくなろうとしております。今回示されました、この大阪におきます判決は非常に大きな一石を投じたわけでございます。そういうふうな意味で、私はひとつ環境庁としてはWHOの話が出ましたけれども、いわゆる肉体的、精神的、社会的、やはりこの三方からの健康というものを踏まえて、住民の健康な生活の場が得られるかどうかということを考えてもらわないことには、私は何かこう結論が違った方向にいってしまいやしないか。たいへん現実離れした質問になりましたけれども、その一点は、今後の公害問題について大きな方向を示すものだと思いましたので、その一点だけお聞きしたわけであります。  私、申しましたのと、それから局長がお答えいただきましたのとは、同じ方向であると、こう理解をさせていただきまして、よろしゅうございますね。
  167. 春日斉

    ○春日政府委員 同じだと思います。  一言つけ加えさせていただきますと、騒音の場合、たとえば騒音によって直接起こる代表的な被害が難聴という問題、聴力消失という問題、それから引き起こされるものが精神的な障害、さらにその精神的な障害というものを引き金にいたしまして自律神経、交感神経の障害というもの、それから始まってまた肉体的な障害と、こういうふうに先生のおっしゃるとおり三者一体と、こういうことには全く同感でございます。
  168. 坂口力

    ○坂口委員 終わらしていただきます。
  169. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は、来たる三月五日火曜日午前十時理事会、午前十時半委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十七分散会