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1974-04-03 第72回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月三日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 勝澤 芳雄君   理事 小此木彦三郎君 理事 大竹 太郎君    理事 斉藤滋与史君 理事 中村 弘海君    理事 野中 英二君 理事 井上  泉君    理事 野坂 浩賢君       片岡 清一君    唐沢俊二郎君       左藤  恵君    太田 一夫君       久保 三郎君    紺野与次郎君       沖本 泰幸君    松本 忠助君       渡辺 武三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 徳永 正利君  出席政府委員         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         運輸政務次官  増岡 博之君         運輸省航空局長 寺井 久美君         運輸省航空局技         術部長     中曽  敬君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      枇杷田泰助君         運輸省航空局飛         行場部管理課長 服部 経治君         運輸省航空局技         術部検査課長  川井  力君         航空事故調査委         員会事務局長  笠松好太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  航空の危険を生じさせる行為等処罰に関する  法律案内閣提出第八二号)      ————◇—————
  2. 勝澤芳雄

    勝澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出航空の危険を生じさせる行為等処罰に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小此木彦三郎君。
  3. 小此木彦三郎

    小此木委員 私たち国会審議を慎重にやらなければならないことは言うまでもありませんけれども、このたびの航空の危険を生じさせる行為等処罰に関する法律案審議に際しては、この審議をすること自体もどかしいといっては語弊がありますけれども、率直にいって国民の生命を尊重し、飛行中その他の安全を確保するために一刻も早くこの法案を通したい、通さなければならないということは与野党を超越した思いであると私は思うのでありますが、そこでまず、今国会において承認を求めておりますモントリオール条約とこの法律とはどんな関係があるのか、わかりやすく説明してもらいたいのであります。
  4. 寺井久美

    寺井政府委員 お答え申し上げます。  モントリオール条約と申しますのは、航空機航行の安全を阻害するような犯罪に対して、これを国際的に各国が厳重に処罰していこうということでございまして、この中で実は現在の国内法でカバーできない二つの点がございます。一つ業務中と申します概念が入っておりまして、これは現在の航空法その他の航行中というよりも広い概念になっておりまして、これがはみ出すために国内法手当てをしなければならない。もう一つはいわゆる国外犯処罰規定、これがやはりカバーできないということになりますので、この二つの点を国内法整備いたしまして、モントリオール条約の批准を行ないたい、こういう関係になっております。
  5. 小此木彦三郎

    小此木委員 ではその東京条約、へーグ条約、その加入国の数と未加入国のおもな国はどこであるか、それを教えていただきたいと思います。
  6. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。  東京条約は六十六カ国が現在加入しておりまして、加入国のおもなものと申しますと、大体中南米大半の国、西欧諸国大半の国、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ベルギーフランスギリシア、アイスランド、ポルトガル、スペイン、英国等でございます。それから東欧圏ではハンガリー、ポーランド、ユーゴースラビアそれだけでございます。大洋州ではオーストラリアニュージーランドアジアでは日本のほか、パキスタンフィリピンシンガポール、タイ、韓国中近東及びアフリカでは、キプロスイスラエル、ヨルダン、サウジアラビア、リビアサハラ及びサハラ以南アフリカ諸国ではかなり多くの国が入っております。  モントリオール条約加入国は四十九カ国ということになっておりまして、米州諸国につきましてはカナダアメリカ、アルゼンチン、ブラジル等々が入っております。西欧もほとんどの国が入っておりますが、現在まだ未加入の国といたしましては、ベルギーフランス、スイス、西独がございます。ソ連圏諸国では、先ほど申し上げましたほとんどの国が、ソビエト連邦も含めまして入っております。大洋州ではオーストラリアニュージーランドが入っております。アジアではパキスタンフィリピン韓国それからモンゴルが入っております。中近東アフリカではキプロス、イラン、イラク、イスラエル、ジョルダンが入っておりまして、最近リビアも入ったように聞いております。サハラ以南アフリカ諸国では、カメルーン、チャド、ガーナ、それから象牙海岸、ナイジェリア、ニジェール、南ア連邦、そういうところが入っているおもな国でございます。
  7. 小此木彦三郎

    小此木委員 そうすると、東京条約ヘーグ条約に続いて、今度のモントリオール条約わが国加入できたとすると、要するに、今回のこの法案が成立したとすれば当然その条約が批准され発効するわけでありますけれども、そういたしますと、その三つがワンセットになったと考える場合に、これでいわゆるハイジャック防止ということに完璧を期すことができるのか。もっと具体的にいえば、現行法並びに現存する条約あるいは今回の法律条約、それでもなおかつ不備なものがあるとすればどのようなケースが想定されるのか。  具体的にいえば、たとえばテルアビブ空港乱射事件のようなケース、さらにはギリシアアテネ空港ローマ空港における事件のように、乗客が搭乗以前に起きたような、あのような乱射事件、これが全部適用されて、いわゆるあらゆる意味ハイジャック防止できるのか、そこらあたりを伺いたいのであります。
  8. 寺井久美

    寺井政府委員 この三条約に加盟いたしまして、それに基づく国内法整備ができたら、あらゆるハイジャック類似行為というものが防止できるかという御質問でございますが、ハイジャック防止対策といたしましては、まず何と申しましても犯人機内へ乗ること、あるいは武器弾薬等機内へ持ち込むことを防止するのが最も必要なことであろうかと存じます。したがいまして、機内持ち込み手荷物検査の強化あるいは、主要空港におきましてX線を使いました手荷物検査等々の対策を講じてこれに万全を期するわけでございまして、これらの実施面防止策と相まちまして、この三条約並びにそれに基づきます国内法整備によりまして、東京条約関係では機長権限を強化いたしましたし、またヘーグ条約関係ではハイジャックそのもの国際犯罪として処罰するというような手当てをいたしております。また、今回のモントリオール条約におきましては、航空の安全を阻害するような犯罪というものを処罰対象といたしておりますので、これら三条約並びにそれに伴います国内法整備によりまして、相当この防止に効果をあげることが期待できるというふうに考えております。  それで、ただいま御指摘ローマにおける乱射事件というような事件も、これが航空機航行の安全を阻害するということでございますれば、当然に今回のモントリオール条約の関連の犯罪としてその対象になるというふうに考えられます。
  9. 小此木彦三郎

    小此木委員 要するに、東京ヘーグモントリオール、それが機長権限ハイジャック防止そのもの、さらには航行の安全、この三つを基調とするものであるという答弁であるわけでございますけれども、先ほどこのモントリオール条約の未加入国ベルギーフランス西独等、おもなものがある。そういうことを考えると、率直にいって日本はなぜもっと早くこの条約に加盟する作業を進めなかったのかという疑問が当然わいてくるわけでございますが、この点はいかがなものですか。
  10. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。  この条約は七〇年に成立いたしました条約でございますが、発効いたしましたのは昨年、七三年の一月でございます。それから考えますれば、約一年二カ月ほどたっているわけでございますが、ヘーグ条約ハイジャック防止条約の際の日本加入のしかたと比べますれば、確かに若干時日をかけたと思いますけれども、特におそくなったというわけではございません。先ほど運輸省航空局長のほうからお答えもございましたように、実際上国外犯規定ということと、それからもう一つ業務中という概念が新たに、航行中という概念よりもやや広い概念が導入されておりますので、わが国の法のたてまえ上、はたしてそれが妥当であるかどうかということを慎重に検討したのに時間がかかったということでございます。
  11. 小此木彦三郎

    小此木委員 モントリオール条約の第三条に「各締約国は、第一条に定める犯罪行為について重い刑罰を科することができるようにすることを約束する。」とあるわけでございますけれども、一体その「重い刑罰」というものはどういうことをいうのであるか。逆に軽い刑罰というのはどの程度のことをいうのであるか。さらに「約束する」ということばがありますけれども、その「約束」ということばは法的にどのような効力があるのか。  時間がありませんので、もう一つまとめて聞きますけれども、先ほど条約の未加入国のことについて質問したわけでありますけれども、今度のこの条約加入国と未締結国との関係と申しますか、そういう場合の犯罪者の取り扱いというものをわれわれは非常に心配するのです。ということは、たとえばかつての「よど号事件のような場合を想定いたしますと、ああいうような場合に立ち至ったときに犯人をもしも未加入国のほうに航空機が持っていってしまった場合に、その犯人は当然「重い刑罰」ということにならない結果になってしまう。そういう場合は一体どうなるのか、そこをよく説明してもらいたいのであります。
  12. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  先ほどの「重い刑罰」とは何かということでございますが、条約自体も何をもって重しとし、何をもって軽しとするということはきめておりませんで、条約自体がそれぞれの国の刑罰体系の上で重いとする刑罰を科することを義務づけているわけでございまして、そういう意味において各国の判断にまかせておるわけでございます。したがいまして、わが国にとりましては重い刑罰といえば一番重いのは死刑であるということに相なるわけでございます。しかしながら、当然に死刑をすべて科するということではなくて、それぞれの犯罪の類型に従って上は死刑から無期懲役あるいは有期の懲役というふうに区別すべきものと考えております。  次に、未加入国があった場合に、ハイジャック関係刑罰が軽くなっておるというものをどういうふうにすればいいのかという問題でございますが、先ほども申しましたように、各国はそれぞれの歴史的、文化的、経済的な条件に基づきましてそれぞれ刑罰体系を定めておるわけでございますので、それ以上、条約自体も統一してこの刑罰にしようということはきめておらないわけでございますし、ましてや未加入国の問題でございますから、それぞれの国がそれぞれの体系に従って重きあるいは軽きとわれわれが考える刑罰を科することはやむを得ない次第でございますが、幸いに刑法の第五条という規定がございまして、外国確定判決があった場合においてもわが国刑法を適用して裁判することを妨げないという規定がございます。したがいまして、たとえばその犯罪人日本に来て、日本裁判権行使することができるという場合に、たとえ外国確定判決を受けておりましても、それが日本裁判権行使を妨げることにはならないわけでございますので、軽いと考えるならば、あらためて裁判をして重き刑を科することができる手当て刑法の第五条にございますし、そういう手当てを妨げるものじゃないことはこのモントリオール条約の第五条あるいはヘーグ条約の第四条に明記してございますので、そういう意味においてわが国裁判権行使という面から見れば、軽きものを重くすることは可能であるという法制になっております。
  13. 小此木彦三郎

    小此木委員 「よど号事件のような場合に、未加入国犯人が入ってしまった場合重い刑罰というものはできないわけでしょう。そうすると重い刑罰というものをしないということですね。そういう場合には加入国がそれを放置したままでいるのかどうかということを聞いたわけですが、それに対して説明がなかったようですが、ついでにそれを聞きますけれども、そうするとそういうようなことが、するしないということはともかくとして、まあそれもお答え願うわけでありますけれども、そういうようなことを想定して、国際的に国際間のそのような犯罪防止のために加入国が未加入国に対して入るべきだというような働きかけをしているのかどうか、そこらもちょっと説明しておいてください。
  14. 伊達宗起

    伊達政府委員 「よど号事件のような場合にどうなるかというまず第一の御質問でございますが、これにつきましては未加入国でございます以上条約上の義務は当然負ってないわけでございまして、したがいまして、もし日本から犯罪人引き渡し請求をする場合にも、条約上の権利に基づいてこれを請求するということはできず、通常の犯罪人引き渡しのための外交交渉ということになると思います。したがって、未加入国がそれに応じてくれればこれによって日本犯人を連れ戻して重い刑罰を科することができますが、これが応じてくれないということになりますと、現在の「よど号事件の結末がそうでありましたように、処罰ができないという状態が現出するように思います。  それから未加入国に対して加入するように慫慂するという点につきましては、国連の場、ICAOの場におきまして特に——ICAOと申しますのは国際民間航空機関でございますが、その場においてこの条約加入方を促進するように米加入国に対して勧奨しておるということでございます。
  15. 小此木彦三郎

    小此木委員 未加入国に対して条約に入ることを慫慂するということは当然国連としてすべきであると思いますし、日本でも独自にそういう考え方を強力に未加入国に対して働きかけるべきであると私は思うものでございます。  そこで問題を転じまして、わが国におけるハイジャック防止体制というものは現状はどうなっているのか。これは犯罪を水ぎわで防ぐという意味から現場における措置等、法的な措置を含めて御答弁願いたいのであります。わかりやすく言えば、たとえば空港において身体検査なりあるいは荷物の検査をする、そういうときに特権を持った人が、そういうことをさせないと言う人があるかもしれないし、また人権尊重をたてにとってそういうことを拒否する人もあるかもしれない。そういう人たちに対して法的な規制あるいは措置はどういうものがあるか、それも含めて御答弁願いたいと思います。
  16. 寺井久美

    寺井政府委員 まず法制面でございますが、先ほども御説明申し上げましたように、東京条約ヘーグ条約関係航空法の一部改正あるいは航空機の強取等の処罰に関する法律の制定をお願いしまして、こういう国内法の手配を行なっております。また今回、現在御審議をお願いしておりますこの関係国内法整備ができますと、三者一体となりまして法制的な整備が一応完了する。  現場でじゃ具体的にどうしているかということでございますが、まず空港に出入いたします部外者、これを厳重に規制していくことが必要でございます。航空機に乗りますお客につきましては、手荷物あるいは所持品検査を実施しております。特にことしの一月から、利用者の多い空港につきましては新型の検査機を導入いたしまして、これはエックス線による透視でございます。このエックス線による透視によりまして手荷物の内容が大体わかる。疑わしいものはさらに開披点検をするというようなことをやっております。また身につけておりますものにつきましては高性能の金属探知器をつけまして、それで容量以上の反応を示す旅客につきましてはさらにボディチェック等も併用して行なっております。さらに、このチェックインをしますいわゆる受託手荷物と申しますものにつきましても、各航空会社がカウンターで携帯用金属探知器等による検査を実施いたしますほか、開披点検を行なっております。  これらに関連いたしまして先生も御指摘になりましたけれども、非常に特権のある方、あるいは外交官のようなのがいい例だと思いますがそういう方、あるいは人権を主張してボディチェックはいやだとおっしゃるような方につきましては、極力ボディチェックに応じていただくように指導をお願いをいたしておりますが、同時にこの運送約款を改正いたしまして、どうしてもボディチェックに応じないあるいは手荷物開披チェックに応じないというような方でこれはあぶないと判断されますれば、運送を拒否するというような運送約款の改定を行なっておりまして、これらを実際上円滑に運用いたしますことによりまして、危険な凶器あるいはそういうハイジャックを行なうような可能性のある方を排除することができるであろうというふうに考えております。
  17. 小此木彦三郎

    小此木委員 そうするといまの説明の中のハイジャックにあったときの、というよりもハイジャック防止するための経費のことになりますけれども、いまの説明の中の防止のためのいろいろな経費、これは一体国が持つのであるか、航空会社が持つのであるかということを説明してもらいたい。ということは、ハイジャック防止しようと思えば思うほどよけい金がかかることであるし、また金がかかってもハイジャック防止する措置はしなければならないけれども、その場合の経費はどこが持つのか。  時間がないからもう少しまとめて聞きますけれども、もっとそれを突っ込んでいった場合に、さらにそのハイジャックにあったときの責任というものは、一体国にあるのか、航空会社にあるのかという問題も出てくるわけです。被害者は当然乗客であることは言うまでもありませんけれども、考え方によっては航空会社にもありさらには国にもあるのだということになってくる。これを具体的に言うと、かつて「よど号事件のときに、犯人乗客を釈放するかわりに、身がわりとして当時の運輸政務次官山村新治郎先生をよこせば乗客を出す。これは明らかに犯人国側の人を求めてきたわけです。もしも人でなく、これは田村元政務次官にそういっちゃ失礼でありますけれども、犯人が金を要求してきた場合、身のしろ金を要求してきた場合に、それは一体国責任になるのか、航空会社責任になるのか、どちらが出すのか、わが国の場合と外国の場合を含めて御答弁願いたいのであります。
  18. 服部経治

    服部説明員 先生前段の御質問につきまして、私御答弁申し上げます。  ハイジャック防止のための経費負担をだれがすべきかという問題につきましてはいろいろ意見がございます。実際問題といたしましては、欧州の各国それから東南アジアの一部におきましては、警察当局がその責任を負って国費でもってこれを実施いたしております。それから一方アメリカカナダ中南米諸国オーストラリア、それからまた一部の東南アジア諸国におきましては、各航空会社責任であるということで、各航空会社経費負担におきまして、この安全検査業務が実施されております。わが国の場合でございますが、私どもの現時点での考え方というのは、こうした問題に対処する第一義的な責任者は、あくまで航空会社であるという立場に立ちまして、航空会社経費負担におきまして、この安全検査というものを実施してもらっておるわけでございますが、昨年の四十八年度予算におきまして、そういう航空会社経費負担の軽減をはかるというような趣旨から、国もこれに対して一部の補助をするというような仕組みをとってまいりまして、昨年度は三億七千万円ほどの国費支出をいたしました。四十九年度につきましては二億七千万円ほどの支出を予定いたしております。前段につきましてお答え申し上げました。
  19. 枇杷田泰助

    枇杷田説明員 後段の点についてお答えいたしますが、身のしろ金の請求があった場合に、航空会社か国かどちらに払う責任があるかという御質問でございますが、この点については、法律上身のしろ金を払うという義務はございません。事実上犯人のほうから航空会社のほうに払えとかあるいは国、政府に対して払えとかいうふうな請求が事実上ございまして、それに対して人命尊重立場から事実上どのように解決するかという問題でございまして、法律上支払う義務がそこで発生するという筋合いのものではないように考えます。
  20. 小此木彦三郎

    小此木委員 法律上身のしろ金を払う義務はないということでありますけれども、現実に身のしろ金を払わなければ人間の命が助からないということに結果としてはなるわけでありますけれども、そういう場合、それが航空会社の経済的な限界を越えたときにいろいろの保険制度があると思うのです。民間保険制度国家の創設した保険制度、そういうことに関してわが国の例と外国の例を説明してもらいたいのであります。
  21. 寺井久美

    寺井政府委員 ただいま先生指摘保険関係でございますが、日本の場合、これは保険航空会社保険会社保険会社もその保険会社によりましていろいろ条件が違っておるわけでございまして、日本航空の場合を御紹介申し上げますと、事故に関する保険、それに上積みいたしましていわゆる戦争ハイジャック等保険をかけております。これは機体に対する保険、それから第三者乗客等に対する保険等に分かれておりますが、それは機体のほうは損害保険でございまして、乗客第三者に対しては責任保険であるというようなかっこうになっておりますので、ちょっと身のしろ金はこの中に入らないわけでございます。  それから身のしろ金が保険制度となかなか合致しないというような点につきましては、これは非常に保険料率が高くなってまいるというようなことで、こうしたものまでも含んで、国家保険制度というようなものがアメリカあるいはドイツ、フランス等につきましてはあるように聞いております。アメリカの場合を申し上げますと、戦争保険という名前のもとにこうした保険をかけさせておりまして、総保険料が、ちょっと古いのでございますが、一九七〇年現在で保険料が六百四十万ドル、保険額が三十二億ドルというふうになっておりまして、アメリカ航空会社パンアメリカントランスワールドノースウエスト等がこれに加入いたしております。
  22. 小此木彦三郎

    小此木委員 いまの戦争保険という話が出ましたけれども、要するに、飛行機が爆破されたときあるいは見舞い金、そういうもので航空会社負担限界というものがあってもそういうような保険でカバーできる、しかし法的には払う義務がないといっても、現実犯人釈放金いわゆる身のしろ金を要求した場合、それに応ずれば当然限度がある保険金額をカバーする意味で、外国での例のあるような保険制度というものをわが国もやはり考えなくてはならないと思うのでありますけれども、この問題をもう少し突っ込んで聞きたいのでありますが、私の質問時間は二十分まででありますので、大臣にちょうどおいで願いましたので、この問題は途中ですがやめまして、大臣に二、三聞きたいことがあります。というのは、この間起きましたシンガポール並びクウェート日本大使館占拠事件で、日本航空機長並びに操縦士たち救出におもむいたのでありますが、あの救出命令というものは、一体政府運輸省が出したのであるか、日航が出したのであるか、そしてまた、もし機長乗務員たちがその救出命令というものを拒否した場合に、一体政府日航はどうするつもりであったのか、それを聞きたいのであります。
  23. 徳永正利

    徳永国務大臣 急遽あの事件に対しまして対策本部が設けられました。これは理由のいかんにかかわらず、運輸大臣対策本部長ということになるそうでございます。そういうふうに閣議の了解事項か何かできまっているようでございます。でございますから、私が対策本部長になったわけでございますが、日航よりほかに飛べる飛行機がないものでございますから、全日空も近距離の外国チャーター便、臨時便なんかでは飛んでおりますけれども、実際向こうに飛ぶということになりますと、日航よりほかにないわけであります。そこであれは命令というものではございません。私は日航に対しまして、こういう事件に対してしかじかかくかくのことであるから、ひとつ御了承の上、御理解の上御協力をと要請したわけであります。したがいまして、日航側がこれに協力してくれたということでございます。ただ途中であの事件にはあわただしい時間の間にいろいろの出入りがあったわけでありますが、日航の社長を呼びまして協力方を要請したところ、日航の社長は、私は協力を要請されましたけれども、これはもう日航としてはこういう事件に対しては、自分のほうでは、手続上はともあれ、命令だというふうなつもりで受け取ってこれに協力をいたします、こういうことでございました。  それではその要請を拒否したときにはしからばどうだということでございますが、実際飛べるパイロットを持っておるのは日航だけでございますから、拒否された場合にはどうかということに対しましては、私は全く処置なしということでございます。したがいまして、日航は常にそういうふうなことで御協力をしていただきたいし、また御協力をお願いしたいということで常々話し合いをやっておりますけれども、当時機長会等の決議もございましたように、いろいろこれには将来問題があろうかと思いますが、しかしこういう危難に際しまして、きっと私は要請を受けてくれるというふうに考えております。
  24. 小此木彦三郎

    小此木委員 大臣が、あれは命令でなく協力要請なんだ、その協力要請にこたえた日航機長たちの気持ちにしてみれば、それはおれたちがやらなければだれもやれないんだという崇高な使命感に基づくものであると私は解釈するわけでありますけれども、私はいかに日航という会社が半官半民の会社であるとはいいながら、この仕事は一部でいわれるような光栄ある大役というようなねぎらいのことばや田中首相が主催したところの慰労会、そういうことだけでは済まされないことだと思うのです。ある意味では戦争中の特攻隊や決死隊のような覚悟を持たなければああいう死地へおもむくことはできない。それゆえに、最悪の場合国が家族に対してどういう補償をするのかということだけでも、私はこれは片づけられないことだと思うのです。それゆえに、また日航機長会があのような声明書を出したということも、これも当然だと思うのであります。さりとて今後あのような事件が続発した場合に、いまの御答弁の中で拒否された場合は処置なしだということになれば、国は早急にこの対策を慎重に考えなければいけないと思うわけであります。  そこでついでに関連して私は聞きたいのでありますけれども、これは仮定の問題でありますが、いま世界のある特定な地域でもって戦争が起きた、そこに在留邦人がたくさんいる、何らかの形でもって政府がこれを救出に向かわせなければいけない、当然航空機か何か考えられるわけです。そういう際に航空機がそこにおもむく、とすれば日航に頼む以外にない。そういう場合は、政府は一体その操縦士、家族、航空会社にどのような補償をするのか、これは関連する問題でありますけれども、一応この際大臣考え方をただしておきたいのであります。
  25. 徳永正利

    徳永国務大臣 まことに仮定の問題を想像してのお答えでございますから、いろいろことばに詰まるわけでございますが、かりにそういうようなことがどういう時点で、どういうところで起きたと仮定いたしますと、まあ近距離なら別といたしまして、はるかかなたで、中近東というような場所を指定してはまことにぐあいが悪いですが、とにかく日航しか飛べないというようなところでございますと、これはもう日航にお願いするよりほかにしようがない。まあその場合万間違いのないような救出もやらなければなりませんし、また手当てもしなければならないと思いますけれども、それじゃ間違いが起きたときどうするかということでございますが、これはもう国の責任においてやることでございますから、いま私ここにどういう法律を適用するとかどういう手だてがあるということを思い当たりませんけれども、これはもう万全の策をとってまいらなければならないと思う次第でございます。
  26. 小此木彦三郎

    小此木委員 では、最後に一言大臣の決意を伺いたいのでありますが、とかく世間は過ぎ去った災厄と申しますか、ああいうような事件で、機長たちが果たした役割り、済んでしまうとけろりと忘れてしまいがちなものでございますが、われわれはあの功績というものをあらためて見直してあげなければいけないと同時に、この問題ももっと慎重にじっくりと取り組んでいかなければいけないと思うわけであります。  そこで先ほどワンセットの条約と申しましたけれども、まだまだこれが完ぺきでないにしても、この法案のような罰則規定整備というものがハイジャック犯罪防止の上に非常に大きな意義ある対策であるということは言うまでもないことであります。「よど号事件から始まってシンガポール、沖繩事件、そこに至るまでに国民が飛行機に乗るということに対して、飛行機に乗るとハイジャックが起きるから、そういうハイジャッカーにあうからということで、非常に危機感を持つようになってしまった。そういう意味からいけば、そういう危機感を持たせないで安心して飛行機に乗れるような体制をつくってあげるのが、国及びわれわれの責任だと思うわけでありますが、そのためにはこの法案を一日も早く審議して通さなければならないということもありますが、この点についての大臣の決意を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  27. 徳永正利

    徳永国務大臣 先ほど来お話がございましたような救援におもむいてくれた日航の人々に対しましては、これはもう使命感に燃えた一つの決死的行為といっても過言ではないと思います、この点につきましては私どももほんとうに心から感謝を申し上げている次第でございます。  なお、しからばこの対策に対する決意ということでございますが、もちろんこうした間接的な予防と申しますか、こういう法律各国とも批准し、これによってそういう問題を未然に防ぐということも一つの方法でございましょう。それがためにいま御審議をお願いしている最中でございます。  それと同時にやはりやるほうは、犯人たちも命をかけていることでございますから、なかなかこれは未然に防止するためにはいろいろの問題があろうと思います。  それがためにはまず持ちものの点検——私は沖繩で事件が起きたときにほんとうに考えました。これはもう手で持つものは全部一ぺん預かったらどうだ、これがかりにまた事件が起きるということになりますと、これはもうそれよりほかに手がないじゃないか、座席はつぶしてもやむを得ぬじゃないかというくらいまで切実に考えたわけでございます。事件がああいうふうな解決をしましたから、けろっと忘ているわけじゃございません。これは一体どういうふうな方法があるかということを日航、国内線会社当局にも、また航空局当局にも真剣に具体策を検討せよということを申しております。事前に乗り込むときにそういうものをまずチェックしていかなければならぬ。三月五日に約款も一部改正いたしまして、身体検査もひとつやらしていただく。いろいろな不愉快な方もあろうと思いますけれども、しかしそれによって間違いが起きたらたいへんでございますから、そういうようなことも含めて、そういうような問題が起こらないように決意を新たにし、初心に返ってこの問題の未然防止ということにもひとつ全力を尽くしてまいりたい。またあわせて御審議いただきまして、法律等によりまして、これはもう国境を越えてこの問題の防止のために努力をしてまいりたいと思う次第でございます。
  28. 小此木彦三郎

    小此木委員 わかりました。  質問を終わります。
  29. 勝澤芳雄

    勝澤委員長 次に、野坂浩賢君。
  30. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんから、大臣に直接お伺いいたします。  この法律ですね、いま小此木先生からもお話がありましたが、このモントリオール条約の批准によりまして国内法整備をはかる。このモントリオール条約の批准国は私は四十九カ国というふうに承知しておりますが、その後ふえる傾向があるかどうか、そしてその見通し、動き、こういうものについてとりあえずお話をいただきたいと思います。
  31. 寺井久美

    寺井政府委員 この条約の加盟国がふえる傾向にあるかということでございますが、例を申し上げますと、本年一月現在では四十三カ国でございました。三月末現在四十九カ国になったわけでございまして、各国ハイジャック関連の防止につきまして非常に関心がございます。やはり徐々にふえていくというふうに御理解いただいてよろしいのじゃないかと思います。
  32. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでこのモントリオール条約を受けて国内法整備をされるわけでありますが、この国内法整備にあたって、今度の法律の中身を見ますと、大体三条と六条、これが新しく出ておるもので、他は航空法にそれぞれあるものであります。したがって、これを新しく法律として出すまでもなく、航空法の中にこれを入れればいいじゃないか、こういう意見もございますが、それについてはどのようにお考えになっておるか。
  33. 寺井久美

    寺井政府委員 航空法の中で処理をすれば可能ではないかという御意見でございます。確かに航空法そのものが航行の安全を中心としてでき上がっている部分が多うございますので、そういうことも考えられるわけでございますが、実は現在の航空法は主として飛行機が飛んでおる間のことを対象といたしまして、したがって、飛行中あるいは航行中という概念が定着いたしております。ところがこの条約では、先生指摘のとおり業務中という新しい概念が入ってまいりました。これは飛行機が出発を準備いたしましてから着陸後二十四時間というかなり広い幅になっております。この概念が実は航空法の中にございません。したがいまして、この概念航空法全体を整理するということは非常に作業量も多くなりますし、急いで国内法手当てしてこの批准に即応するという点で、時間的にかなり無理があるというのが一点でございます。それから国外犯処罰規定、これは実は航空法で非常になじみがたいものでございまして、やはり単独の国内法として整備をしたほうがよいのではないかという政府部内の結論になりまして、こういう形でお願いをしておるという次第でございます。
  34. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この附則の一に「この法律は、民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約日本国について効力を生ずる日から施行する。」こう書いてありますが、この法律民間航空に限るわけでありますか。自衛隊機とかあるいは保安庁の飛行機とか警察の飛行機、あるいは民間のそれぞれの小さな飛行機、こういうものもすべて含まれるわけでありますか。どういうぐあいになりますか。このモントリオールの場合は民間航空の安全に対するということがはっきりしておりますが、どうでしょう。
  35. 寺井久美

    寺井政府委員 御指摘のとおり、モントリオール条約そのものは民間航空対象にいたしておりますので、これは軍用機は入らないわけでございますが、今回国内法整備関係でお願いしておりますこの法案は、定期航空機のみならずその他の民間航空機あるいは自衛隊の飛行機、警察の飛行機というものも対象に相なります。そもそも航空法の中から関係の条文をこちらに移してございます。航空の安全という概念の中で特に民間航空は大切でございますが、その他の航空機を排除しなければならないという特段の理由もございませんので、国内法のほうは全部対象になるというかっこうになっております。
  36. 野坂浩賢

    ○野坂委員 全部対象になっておるということでありますが、それでは国内法の問題についてお尋ねをしたいと思います。  航空法の百四十二条、ここの五条にあるわけでありますが、このモントリオール条約の二条の(b)には「飛行前の準備が開始された時から、着陸の後二十四時間を経過する時まで、業務中のものとみなす。」こう書いてございます。いまわが国の飛行機がそれぞれの目的地に向かって出発をし、あるいは到着をするということを考えてまいりますと、二十四時間たたないですべて立っておるのではないか。二十四時間というのは国内法としては長過ぎるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけです。現実に二十四時間滞留する。たとえば英国のようなところでは基地というような性格もあって、その程度ある場合もありますが、大体において二十四時間というのは現実よりも非常に長過ぎる、こういうふうに思います。それまでたとえば機関士とかあるいは乗員、整備士、こういう人たち責任を持たせる、またそういうことがあれば処罰をされるということになれば、むしろ責任の範囲外にあるのではなかろうか、こういうふうに思うのですが、その見解についてはどのようにお考えですか。
  37. 寺井久美

    寺井政府委員 この「業務中」と申しますのは着陸後上十四時間、かなり長い時間を対象といたしておりますが、これが長過ぎやしないかという御指摘でございます。そもそもこういう概念が出てまいりましたのは、航空機、特に民間航空機の運航の形態から考えて、それが継続して運航されるという点に一つの問題のとらえ方があったように考えられます。  飛行機が飛びます前にいろいろな整備点検がございますが、われわれAチェック、Bチェック、Cチェック、Dチェックというようなことで言っております。まず状態の点検、これは飛行時間三十五時間ないし七十時間ごとにAチェックと申しますのをやっております。それからBチェックというのは一般的な点検でございますが、これは大体三百時間ごとにやっております。Cチェックと申しますのは予防整備で、千三百時間から千六百時間ごとに行なっております。それからDチェックと申しますのはオーバーホールでございますが、これは大体一万時間ないし一万二千時間。こういう飛行前点検のうち、Cチェック、Dチェックは大体基地で行なうものでございますが、Aチェック、Bチェックと申しますのは大体飛行継続中に行なわれる性質のものでございます。したがいまして、飛行に不可欠な点検、補給というものを対象に考えますと、大体二十四時間ぐらいの時間をとっておく必要がある。確かに先生指摘のように、二十四時間もたたないで二、三時間程度で次の目的地へ向かって飛んでいくという状態がございますが、これは、一つの飛行の形態の中で継続しておるというとらえ方をいたしております。したがいまして、この二十四時間が必ずしも長過ぎるというふうには考えられませんし、この程度の余裕を持っておけば飛行の一つの形態として安全性が確保できるということでこのような概念規定されたというふうに考えております。  それから、この間整備その他で整備士が責任を付加されるではないかということでございますが、整備士がその職務の遂行上当然行なう任務につきまして、これが短い時間であろうと長い時間であろうとその職務上の責任というものは同じことではないかというふうに考えております。このために特に責任が付加されるという性質のものではないのではないかというふうに思っております。
  38. 野坂浩賢

    ○野坂委員 第三条は故意犯、第五条は過失犯ということになろうと思いますが、第五条の二項にあります二十万円の罰金というのは従来は十万円だったのですが、二十万円になりましたのはどういう理由なのか、まずそういうことを……。
  39. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘のとおり、従来航空法では十万円であったものを今度の法律で二十万円に上げたわけでありますが、端的に申しましてこれは刑法の百二十九条に過失住来危険罪、汽車、電車、艦船の関係で転覆とか破壊とかいうことが過失によって起こされた場合に、業務に従事する者につきましては現在法文の上では千円となっておりますが、罰金等臨時措置法の関係でこれは二十万円以下の罰金ということに読みかえるべき事柄でございますが、この百二十九条と今回の過失による航空機の転覆という犯罪とは罪質を同じくするのみならず、その犯罪の重さにおいても同じであるというふうに考えますと、今回の改正にあたりましては、刑法の百二十九条の第二項に合わせて罰金を二十万円にするのが相当であるということでございます。
  40. 野坂浩賢

    ○野坂委員 刑法百二十九条に基づく罪質なり犯罪が同じ性格であるからそうしたということでありますが、過失というと、過失が起きないようにしていかなければならない、そのための航空の環境は一体どうなのかということを調査あるいは精査をしてみる必要があろう、こういうふうに思うわけであります。  大臣も御承知だと思いますが、これから私たち現場も見せていただくわけですけれども、いま、滑走路がこうある。ここに出発の飛行機が待っておるということでしたけれども、民間の皆さんが騒音公害その他でうるさいという非常にきびしい批判もございまして、これが最近はこういうふうに置かれておる。これが出発をしますと、今度はこう入って滑走路から出ていく、こういうことになっておるようですね。ここに初めからおって入ってまいりますと、大体三十秒ぐらいしかかからないようでありますが、ここにおって一ぺん曲がってこう出ていくということになりますと二分ぐらいかかるのではなかろうか、こう思うのです。これがこう次々飛行機がおりてまいりますから、大体二分間おき程度におりてくる。こういうことになると非常に事故が起きやすい環境にある、こういうことが一つであります。  もう一つは、今度飛行機の型式が大きくなったのですね。大型機に変わってまいりましたが、操縦士の皆さんなり従業員の皆さんにお尋ねをいたしますと、乱気流ができて、微風なり無風のときには二分ないし四分間その乱気流がある。風が吹いておるときには二分間程度でそれが除去されるけれども、無風状態なり微風状態の場合にはそれに入った場合非常に危険であるということが言われておるわけであります。それについては十分検討をしてみなければならぬじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、それについての見解と、それからこの二項にあります「業務に従事する者」という者はだれとだれとだれなのか、はっきりしてもらいたい、こう思うわけです。
  41. 寺井久美

    寺井政府委員 まず、先生指摘の環境関連でただいま大阪で行なっておりますローリング・テークオフの関係の御指摘だというふうに拝察いたしますが、御存じのように東京、大阪ともに実は航空機の離発着回数を制限いたしております。この制限をいたしましたのは、東京と大阪と発生的には多少理由が違いますけれども、管制官の側から見まして、ある時間にあまり多くなってはとてもさばけない、あるいはそういう時間が数時間続いてはやはり疲労度が激しいというような意見がありまして、これらを十分検討をした結果、現在のような体制で離発着回数を制限いたしておりまして、このために、非常に空港が込んで発着が遅延をしたというような状態は実はあまり発生いたしておりません。ひっくり返して申しますと、東京、大阪につきましてはこうしたかなり厳重な発着規制を行なっております関係上、安全上から申し上げますとかなり安定した運航ができているという状態になっております。  そこで大阪の例でございますが、飛行機がスタートいたしますのに確かに先生指摘のように、かなり手前でとまってそれから発進をして滑走路に入るということでございますから、滑走路の横にとまっておって入って発進をするよりは時間がかかるのは事実でございます。時間がかかるということを前提にいたしまして管制の間隔をとっております。同時に、大阪の場合は、タワーの上におります管制官にも飛行場の中の航空機の移動態様がわかりますと同時に、飛んでまいります、着陸をしてくる飛行機がわかりますように、実は工業用テレビをつけまして、下で詳細な着陸機の動向をつかんでおりますから、それが同時に上の管制官にもわかるというような体制をとりまして、大体六マイル程度の間隔をとって飛行機を出発させております。したがいまして、この与えられました間隔の中でやってまいりますので、それ自体非常に安全上問題があるというふうに私ども考えられないわけでございまして、安全の面から十分の間隔をとって運用しておる。逆に申しますと、それだけ時間がかかりますから、多くの飛行機を詰め込めないという結果になるわけでありまして、大阪につきましては騒音の問題がございましてそういう出発のしかたを現在のところせざるを得ないという状態でございます。  さらに、ローリング・テークオフでよく誤解がありますけれども、飛行機が出発いたします際に、最初一たん滑走路の末端で静止をいたしまして、ちゃんと滑走路の中心線上に自分の飛行機が乗っているかどうかを確かめるというのが一つの出発のしかたでございます。これをやらないでうっかり横からすべり込みまして、そのまま走っていって、滑走路の路面の状態が悪くてはみ出すというケースがございますが、大阪の場合は非常に微速で動きながら約三百メートル滑走路上を動きまして、この間にアラインメントをきちっととって、それからエンジンをフル回転させて出発するというふうになっておりますので、その点も、私どもの考えといたしましては問題がないというふうに考えております。
  42. 野坂浩賢

    ○野坂委員 航空局長からそういうお話がございましたが、運輸大臣も、東京なり大阪空港というのは、安全かつ、そういう時間的なふくそうはない、こういうふうにお考えでございますか。
  43. 徳永正利

    徳永国務大臣 私は航空機のみならず、すべて万般同じでございますけれども、特に航空機は、安全の面では、これは念には念を入れた上にさらに〇・何%の誤差もあってはいかぬと思うのです。そういうことで、航空局の職員にも、それから現場航空会社の皆さん方にも、この点はもう厳重にやってくれ、安全なくして航空機の輸送というものはないと私は思うのです。したがいまして、そういう面においては十分専門的な知識を駆使して間違いのないようにということで、念には念を入れておるつもりでございます。  なお、いま御指摘になったような点も、そういうような結果、万々にも間違いはないという確信のもとに、取り運んでいると私は信じておるわけでございます。しかし、こういう面につきましては、いろいろな疑問点を一つずつ今後もつぶしていかなければならぬ。みんなが御安心いただけるような安全方法をとっていかなければならないと思う次第でございます。
  44. 寺井久美

    寺井政府委員 先ほどの御質問で、最後のところのお答えが実は落ちましたので、補足させていただきます。「その業務に従事する者」というのは具体的にどういうものが考えられるかという御質問でございましたが、この中には操縦士、航空士、航空機関士、航空通信士、航空整備士、航空工場整備士、航空交通通信官、航空管制官、航空管制技術官、その他航空保安業務に従事する職員等が含まれるというふうに考えております。  それから後方乱気流の問題につきましては、私どもも鋭意検討いたしておりまして、現在の段階では、現在の程度の大型機の混入度と申しますかの割合の範囲内におきましては、現在の基準であまり大きな問題はないというふうに一応判断いたしております。  ただ、今後大型機がふえてまいりますと、やはりそれなりに間隔を広げなければならぬという問題が出てまいります。それはどの程度に広げればいいかというような点につきましては、まだ目下検討中でございます。
  45. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣が、念には念を入れて、そういう間隔も十分とってと、こういう話がありましたが、昭和四十八年の八月七日あるいは四十一年の三月四日、そういうときにも相当事故が起きております。私がお願いといいますか、申し上げておりますのは、いまも局長からお話がありましたように、だんだん大型機になってまいります。今度小型機から大型機にかわったのが三十一便か三十二便あろうと思うのです。そうすると、必然的に乱気流も起きる。間隔が二分おきということになりますれば、そういう乱気流に巻き込まれるおそれもある、こういうことが当然考えられるわけですが、いま運輸大臣は、念には念を入れて、だいじょうぶだというふうに判断しておられるようですが、羽田は一日に何便あるか御存じですか。
  46. 徳永正利

    徳永国務大臣 私、大体四百四、五十便じゃないかと思いますが、正確な便数は存じておりません。
  47. 野坂浩賢

    ○野坂委員 確かに四百五十便から四百八十便ぐらいだと思いますが、そういう大型機になる時代でありますから、そういう間隔については、処罰だけを高めていくということよりも、そういう過失犯が起きることのないような環境整備のほうが優先をし、それが交通安全の主体的な任務だろう、こういうふうに思いますので、そのような点については十分御検討いただきたい、これが一点。  それから、時間もございませんが、エアバスを就航させておる。この間二月でしたか、トルコ航空のエアバスがフランスで落ちた。この事故についても、何かドアのかぎをかけておったけれどもどうだったかというような話もありますが、そういう事故原因はどうだったかということが一つと、いまは東京−札幌あるいは東京−福岡−沖繩、こういうところが就航されておるようですが、それは絶対に安全なのか、また大阪空港のほうでは、エアバスを就航させることによって便数がそれだけ少なくなるのではなしにプラスされるのだ、こういう認識のようですが、今後エアバス就航にあたって完全に安全なのだという確固たる運輸大臣の自信と、それを就航させる場合にはそれに見合う便数というものは減便になる、こういうふうにはっきり言えるかどうか伺いたいと思います。
  48. 徳永正利

    徳永国務大臣 最初の、罰を食わすよりも環境について十分配慮せいということでございますが、全くそのとおりだと思います。全く同感でございます。そういう予防措置がとられてこそ安全を期し得るのでございまして、この点についてはきょうの御指摘をさらにもう一ぺん私かみしめまして万全を期したいと思っております。  それからエアバスの問題でございますが、エアバスは、DC10というのはアメリカでもいろいろ問題を起こしておりますし、フランスでもやったわけでありますが、私はいまの状態で日本にDC10が飛んでおったらやめさせようと思ったのです。幸いにDC10は飛んでおりませんから、その点は安心したわけじゃございませんけれども、別にしておきまして、エアバスはいままでの飛行機よりもいろいろな点において、後ほどまた説明させますけれども、まず安全である、これがいままでの飛行機より安全でない——いままでの飛行機だって安全に違いないわけでございますけれども、何か問題が、大きいがために、大きなやつが飛んでいくのですから、問題があるというようなことがかりに一点でもあったら、私はこの飛行機は飛ばすべきでないと思うのです。しかしいままでより以上に安全度については二重、三重のチェックをして安全度を増しているということがまず第一点でございますし、騒音の問題に対してもいままでより低い、それから人数もよけい運べるというようなことで就航を、フランス事件その他がございましていろいろ心配の向きもございましたけれども、そういう面は十分配慮の上で就航を許可したわけでございます。  それから大阪空港についての減便の問題でございますが、これは大きな飛行機を入れればそれだけ人間がよけい運べるわけでございますから、これがために飛行機の発着回数をいままでと同じようなことでやるということはございません。これは人間がいまの飛行機の倍運べるわけでございますから、便数は大型機を入れたためにそれの半数になる、これは間違いなくお約束いたします。何か万博のときに約束して、約束が守れぬということで不信の念もあったようでございますし、またあるようでございますが、地域住民に不安を与えるようなことがあってはいかぬと思います。この点は間違いなく減便をいたします。ここで明確にいたしておきます。
  49. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私はあと三十分あるわけですが、時間がございませんので、きょうはこれで一応終わらせていただきます。
  50. 勝澤芳雄

    勝澤委員長 次に、紺野与次郎君。
  51. 紺野与次郎

    ○紺野委員 最初に、新しい航空事故の問題についていろいろお聞きしたいわけです。大臣に聞きたいわけですけれども、その前に航空局長に一点、きわめて具体的な点についてお聞きしたいと思います。  それは、いまも問題になりましたが、エアバスがいよいよ四月一日から札幌−福岡に就航して、国内にだんだんこれが採用されるような形勢になってきた。そこで、つまり事故との関係や何かでやはりこの法案も出ているわけですから聞くのですけれども、パリでは非常に大きな犠牲者が出ました。けさの新聞でも一部これらのことについてまだ補償の問題なんかも片づかない、非常に複雑な問題があるというふうなことも報道しているところがあります。ところで、あれと同じエアバスがパリのときのようなことで事故が起きた場合に、日本の国内においてもしもああいった規模のことが起きた場合には、はたしてどの程度の被害が起こるのかという状況について、一体想定をしていろいろ慎重に研究しているのか、この点についてちょっとお聞きしたいのです。
  52. 寺井久美

    寺井政府委員 先生の御質問、非常に御答弁がむずかしいことになりますが、パリの事故自体の原因がまだはっきりわかっておりません。貨物室のドアが不備であったのではないかというようなうわさはございますが、最終的にどういうことであの事故が起こったかという原因はわかっておりませんので、これに対する具体的な対策というものは実はまだ考えられないわけでございます。  ただ、このような大型機が墜落をするというケースを考えました場合には、当然のことながら乗客の生命は、乗客が助かるという可能性は非常に少ないわけでございまして、これはまあ普通の航空機が落ちましても同じことであります。ただ多少乗客の数が多いことでございます。私どもは大型機、特にこのエアバスと称せられる大型機の安全性につきましては、非常に慎重に検討をいたしておりますし、これが従来の航空機よりもさらに安全性が担保されるという技術的な進歩もございまして、より安全性が高められておる。たとえば一つの系統が死んでもこの代替の系統があるという仕組みになっておるそうでございまして、こういうことで安全性が非常に高いということでございますので、私どもといたしましては、こういう飛行機が事故を起こさないように、あらゆる万全の措置を講じましてこの運航を認めていくということをいたしております。技術的なこまかいことにつきましては、別途技術部長から御説明させていただきたいと思いますが、そういうことで従来の航空機にまさるとも劣らぬ安全性を持っておるということ、それからやはり何と申しましてもエンジンの音が静かであるという、この二点が新機種の採用をいたします際に非常に考慮いたしました点でございまして、これがやはり安全度をより高めていくことの一助になると確信いたしておる次第でございます。
  53. 紺野与次郎

    ○紺野委員 いまの説明はただ飛行機がより安全であると考えるというだけのことで、実際にこれは事故のほうをわれわれは問題にしているのです。ですからもしも日本のような過密地帯において、あのパリの郊外において一キロにわたって森林がなぎ倒されて機体及び乗客の死体が散乱するという事態が起きたわけですけれども、ああいうものが過密都市の上空等々において起きた場合にはどれほど大きな災害になるか。ただ乗客が四百九十名とか五百名とか、その人たちの大きな数字というだけで済まされない。上と下とこれはくっついているわけですから。日本のような特殊なそういう状況のもとでああいう事故が起きた場合には、それははかり知れない惨禍になるんだということをほんとうに真剣にあなた方が検討しているのかどうかですね。この点ちょっとわからない、いまのあれでは。そういうことは上だけ見て下は見ない、こういうことだと思う。だからこそ大阪空港周辺の人たちが非常に大きな心配をしているわけであって、そういう点があるわけで、やはりこの法案が出されているということから見て、そういうふうに上も下も全面的にこの問題の検討をして、そして航空の安全ということを全体として考慮するという英断的な態度がなければやはりだめではないか。こういう点で大臣に、エアバスを飛ばすにあたってそういうふうな全面的な態度でやるかどうかということについて、ここでひとつお聞きしておきたいと思います。
  54. 徳永正利

    徳永国務大臣 お話のように、これはエアバスばかりではございません。いまのジェット機だって過密都市の上に落ちたらたいへんなことになると思うのです。その点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、飛行機のことでございますから、上を飛ぶのでございますから、これはもうことばであらわすことのできないぐらいの安全対策というものに確信を持ってやらなければいけないことだと思います。したがいまして、乗っている人はもちろんのこと、市街地をよけてできるだけそういうふうな方法をとるように、また今日でもやっているわけでございますが、その点につきましては、もう先ほど来申し上げましたように、念の上にも念を入れ、その上にもまた念を入れて、安全ということについては十分な対策を練り、さらに確信を持った上で飛行をさせなければならないと思います。これは十万分の一とか二十万分の一といったら、二十万べんに一回は落ちるということでございますから、そういうようなことすら考えられぬぐらいのことは安全度においては念を入れ、さらにそういう面において確信を裏づけて飛ばさなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  55. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それで、法案の第五条の過失犯の規定について最初お聞きしたいと思うのです。  航空機事故原因のうち、航空従事者の過失によるものは一体どの程度あるのか。また、この過失は、パイロットによるものと整備士によるものとの区分でやってどういうふうなことになっているか、ちょっと聞きたいと思います。
  56. 寺井久美

    寺井政府委員 昭和四十三年から四十八年までの間におきましてわが国で発生いたしました事故件数は三百十件ございます。このうち十九件はまだ調査中でございますので原因が判明いたしておりませんが、この中で過失が原因となったものは百九十九件ございます。過失のうち、操縦士によるものが百九十三件、整備士によるものが六件でございまして、この過失による事故のうち百七十九件は定期航空以外の分野で発生いたしたものでございます。
  57. 紺野与次郎

    ○紺野委員 事故原因の中でやはり過失によるものが非常に多いということの原因は、どういうところにあると思いますか。
  58. 笠松好太郎

    ○笠松説明員 お答えいたします。  操縦士の過失による事故のうち大半が人的過誤、ヒューマンエラーによる過失でございます。そのほか、規定を順守しなかったということ、それから操縦室内で乗り組み員の間の調整が悪かったこと、それから飛行のマネージメントが適正を欠いたこと等が考えられます。  以上でございます。
  59. 紺野与次郎

    ○紺野委員 大体そういうふうに個人のいろいろの過誤によるものというふうに判断することが多いようでありますけれども、私は、やはり機体の構造上の問題あるいは整備体制の問題、そういうものがこういう事故につながるというふうなことがむしろ多いのではないかというふうに考えます。したがって、今度の法案を見る場合も、いわゆる罰則だけを急いで、機体の構造上の問題あるいは整備体制の問題等々について、不問に付するということがあってはいけないのではないかというふうに思うのです。これはあとで具体的に問題を提起してやってみたいと思います。いままでにも機体の構造上の欠陥ということを運輸省が事前につかんでおけば、事故が起きなかっただろうと思うようなことはありませんでしたか。
  60. 笠松好太郎

    ○笠松説明員 お答えいたします。  機体構造上の欠陥を事前に知っておったならば防げたと思われる事故ということでございますが、事前に知っておりますれば必ず修理、改修をいたしまして、そうしませんと航空の用に供することはございませんので、欠陥を事前に知っておったならば防げたと考えられる事故の事例はございません。
  61. 紺野与次郎

    ○紺野委員 もう一つ、あるいは航空従事者の整備の労働者ですね、そういう面からもここは問題だというふうに指摘されておったにもかかわらず、放置されておって、それが原因になったというふうなことはありませんか。
  62. 笠松好太郎

    ○笠松説明員 先ほど航空局長のお話のように、過失事故のうち、整備士の過失による事故が六件ございましたが、これらはみな全部事故調査の結果、原因として出てきたものでございまして、事前に過失を知っておったならばどうだったかということはちょっと言えないと思います。
  63. 紺野与次郎

    ○紺野委員 たとえばパリで起きた今度のトルコ航空のエアバスの墜落は、先ほどもちょっと話がありましたけれども、つまり貨物室のドアの欠陥ということがすでに指摘されておったのですね。それを指摘されておるにかかわらずやらなかったということが、事故につながったということがいまでは最も多く認められているところであります。それからモスクワ空港での事故についても、やはり同じような欠陥が災いしている、こういうふうなことやなんかも漸次明らかになりつつあります。でありますから、こういう点で、今後とも機体の欠陥、構造上の問題があるということがすでにわかっている、そういうときに、直ちに改善命令を出して迅速に——ぼやぼやしていると事故が大事故につながるわけでありますから、そういうことがいろいろな点からわかっている場合には、責任を持って迅速に改善命令を出すかどうか、この点ひとつ大臣、答えていただきたい。
  64. 徳永正利

    徳永国務大臣 それはもう仰せまでもございません。これは当然のことでございまして、今日までもそういうような方針でございますし、今後もお説のような方針で臨むつもりでございます。
  65. 中曽敬

    ○中曽政府委員 いま大臣の御説明、もうちょっとふえんさしていただきたいと思います。  私も、もちろん事故原因がはっきりいたしまして、そして構造上にこうこう欠陥があるというふうなことがわかりました場合には、これは問題なく、私どものほうではTCDと申しておりますけれども、耐空性の改善指示を出しておりまして、当然しかるべき改修をやらせておりますが、そういった事故原因がわからない場合でも、最近では世界各国のいろいろなそういった機体の構造上の欠陥の情報流通システムというものが非常に発達しておりまして、同じ型式の機材につきまして、外国のどこそこでこういうトラブルがあったというふうなことがわかりますと、私どもは直ちにそれをキャッチいたしまして、しかるべき改修をやらせる、つまり事故の原因がわかった段階で初めて手を打つというふうなことじゃなくて、必ずしも事故につながらないトラブルにつきましても同様な措置をとっておる、こういうことでございます。
  66. 紺野与次郎

    ○紺野委員 じゃ、具体的に申しましょう。ボーイング747SR及びロッキード一〇一一トライスター、こういうものが四月から運航されておる。ところで、ほんとうにこのエアバスが安全を確認しているのかどうか、この点について具体的に私お聞きします。  運輸省は耐空証明を出しているといま言いましたね。であればひとつお聞きしたいのですが、非常の場合の着陸設備の基準、それはどういうふうに定められているのか、四−六の項ですね。これをひとつ読んでください、「航空機及び装備品の安全性を確保するための技術上の基準。」
  67. 川井力

    ○川井説明員 お答えいたします。  航空法の十条第四項に「運輸大臣は、第一項の申請があったときは、当該航空機の強度、構造及び性能が、運輸省令で定める安全性を確保するための技術上の基準に適合するかどうかを検査し、これに適合すると認めるときは、耐空証明をしなければならない。」ここにあります航空機の強度、構造及び性能が運輸省令で定める安全性を確保するための技術上の基準、これが省令の附属書という形で定められております。さらに詳細な附属書の実施内容につきまして航空局長達、一般に市販されておりますが、耐空性基準と呼ばれるものがありまして、それに基づきまして検査を実施いたしております。
  68. 紺野与次郎

    ○紺野委員 非常着陸の際の設備ですよ。四−六項ですね。これはどうです。
  69. 川井力

    ○川井説明員 失礼いたしました。いま申し上げました耐空性の技術上の基準の中に非常着陸という項がございまして……
  70. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それを読んでください。これは重要だから。——ありませんか。
  71. 川井力

    ○川井説明員 「四−六 非常着陸設備」これを読まさせていただきます。「四−六−一 航空機は、非常着陸の際の衝撃及び火災に対して、航空機内にある者を保護することができるようにしたものでなければならない。四−六−二 航空機は、非常着陸の際に、航空機内にある者がすみやかに脱出できるような設備を有するものでなければならない。」これが非常着陸設備に対する省令の内容でございます。
  72. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では、今度は耐空性審査要綱の四−七−二−三、これではabcdeとずっとありますけれども、そのうち特に重要であると思うのでabcdeまでひとつ読んでほしいのです。
  73. 川井力

    ○川井説明員 まことに申しわけありません。ただいま資料を持ち合わせておりません。   〔紺野委員、資料を渡す〕 「四−七−二−三 乗客定員が四十四人を越える飛行機にあっては、四−七−二−四に規定する場合を除き、所要の乗組員数を含めて、証明を得ようとする最大定員が九十秒以内に飛行機から地上に脱出できることを実際の試験により証明しなければならない。  試験時に使用するスタンドや斜面の通路の幅が、実際の非常着陸状態に主翼から降りるのに利用できる機上設備の通路の幅より大きくない場合には、この項のhで認められるスタンドや、斜面を使用する脱出者は、これらスタンド、斜面上に降りたときに、地上に降りたものと認められる。  試験は次の条件で行なわなければならない。  a 試験は、夜間暗黒中で、あるいは昼間に夜間の暗黒を摸して、非常燈火系統のみ使用し、かつ、胴体片側の非常脱出口及び非常脱出装置で要求されるもののみ使用し、飛行機は正規の地上状態で着陸装置は下げの位置で行なわなければならない。  b 全非常装備品を、当該装備品に規定された限界どおりに装備しておかなければならない。  c 各出入口とびら、出入口及び内部の各とびら及びカーテンは、正常離陸を摸した形態でなければならない。  d 安全バンド及び必要に応じて肩バンドは、しめておかなければならない。  e 正常な健康状態の人を、次のとおりの割合で代表的乗客としてとう乗させなければならない。  (a) 女性は少なくとも三〇パーセントいなければならない。  (b) 六十才を越える年令の人が約五パーセントいなければならない。そのうち女性も比例して含ませること。  (c) 十二才未満の児童が少なくとも五パーセント以上、かつ、一〇パーセント以下いなければならない。その年令については各年令の人口構成に比例させること。」 以下、fからiまで規定されてございます。
  74. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では何年何用どこでこういうことをあなた方は試験をエアバスでやられましたか。九十秒以内に脱出することができるというそれを証明しなければならないとなっているのだけれども、そういう証明をいつどこでやりました。
  75. 中曽敬

    ○中曽政府委員 耐空性の先生指摘の問題につきましての基準は先ほど検査課長が読み上げましたとおりでございますが、耐空性のこういった基準に合格しているかどうかというチェックは、私どもといたしましては、われわれの一応航空法上の先ほど申しましたような諸基準に照らしてチェックいたすことになっております。ただ、実際の問題といたしまして……。
  76. 紺野与次郎

    ○紺野委員 していますか。いままでにしましたか。もう飛んでいるのですよ。
  77. 中曽敬

    ○中曽政府委員 ちょっと申し上げます。アメリカと私どもの政府との間に耐空性互認協定というのを昭和三十八年でございますが結びまして、そして相互に、日本でつくります飛行機あるいは、アメリカでつくります飛行機、そういったものについての耐空性の互認の取りきめをしておるわけでございます。それをまず一つ前提として申し上げなければならないと思います。  そこで、たとえば747のただいまの非常脱出試験についてどういう確認をわれわれがやったかという御質問でございますが、これは先ほど申しましたようなそういったお互いの互認協定——実はICAOICAOと申しますと国際民間航空機関、このICAOの場におきましても同様のことでいろいろと会議が持たれまして、とにかく世界各国お互い飛行機というものはどこの国でも、日本の国の飛行機がアメリカへ行ったりヨーロッパへ行ったりしますが、そういった関係がございますので、同じような基準でやっていこうということが実は前提になっておりまして、そういったことからアメリカとの間に特に互認協定を結んでいるわけでございます。  そこで、私どもは一機一機飛行機ができましたときにはいわゆる耐空検査というのをやっております。耐空証明を出すための検査をやっておりまして、われわれ検査官をアメリカの製造工場に派遣いたしましてそうして検査をやっておるわけでございますが、その場合に、先ほど申しましたお互いの手をある程度省いて確認ができることはお互いに確認しようじゃないかということで、ただいまの脱出試験につきましては、昭和四十四年十一月十六日に脱出試験を実はアメリカで行なっております。
  78. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それは日本が。
  79. 中曽敬

    ○中曽政府委員 アメリカで行なったわけでございます。そこで、そのデータを私どもといたしましては十分取り寄せまして、互認協定がございますのでお互いに資料の交換ということができることになっておりますので、それを通じまして、私どもとしてはこの非常脱出試験の確認ということを、ただいまの読みました基準と合致しておるということを確認しておるわけでございます。
  80. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それが無責任証明というのだよ。そうでしょう。これには夜間、そして女性も三〇%、六十歳をこえる年齢五%、十二歳の子供、これはアメリカ日本人で違いますよ。いいですか。機械に対する反応、いろいろの飛行機に対する訓練、こういう点から見て全く違う。しかもどういう専門家がやったかもわからない。われわれ日本の国土の中で、日本人を使って、そうしてこういう基準に基づいてやはり慎重にやるということがこの規定を設けたゆえんでありまして、どこかでやった、いろいろの文化的な、あるいはいろいろの素養上でも違う、こういうものでやったもの、それで済ませるということは、これはとんでもない無責任証明ですよ。そんなお互いに互認する協定があるからといって、それでのがれることできません。われわれは日本人です。そこに何人かの外国の人がいてもいいでしょう。しかし、特にエアバスですよ。落ちたら普通の飛行機とは何倍も違う被害を出すような、そういう飛行機であればあるほど最善を尽くすと大臣言ったでしょう。そうしたならば、そんな日本国内で試験もしないのに、どこかの国で試験したものを、互認協定、条約があるからそれにただ乗りしたというようなことで済ませますか。どうですか、一体。当然これは日本人のこの規定に合ったようなやり方でやり直して、そうして国民に対して、だいじょうぶならだいじょうぶとかこういう欠陥がありましたとか、そういうことでやらなければならないのじゃないですか。どうです。とんでもないことですよ。
  81. 中曽敬

    ○中曽政府委員 この脱出試験につきましては、先ほどの基準にも書いてございましたように、子供を何人乗せるとかあるいは六十歳以上の老齢の人を何人乗せるというふうな基準がございましたですが、そういった基準に合わせましてやはり実際の脱出試験をやっておるわけでございます。これは、飛行機というものは、先ほど申しましたように、日本の飛行機でございましても外国人を乗せる場合もあるわけでございます。また、外国の飛行機でございましても日本人を乗せる場合もあるわけでございます。したがいまして、そういったことでございますので、日本人で試験をやらなければならないというふうには私どもは思いませんで、一般的にこういった耐空性の試験というものにつきましては、先ほど申しましたように世界同じ基準でやっておるわけでございます。同じ基準でやっておりますので、ある一国において脱出試験が行なわれまして、そうして先ほど申しました片側のドアから九十秒以内に脱出できなければならないという基準がございますけれども、そういった基準に十分合格しておるということを、私どもは詳細なデータを取り寄せまして確認しておるわけでございます。現に、これは最近行なわれました試験がございますが、そういった試験にも私どもの検査官を派遣いたしまして、アメリカに派遣いたしまして立ち合わせておりますが、そういったことで、われわれといたしましては十分——これは世界的な慣行でございますので、たとえば日本に限りませんで、フランスでもドイツでもイギリスでも、たとえばアメリカでつくられた飛行機につきましてのこういった脱出試験につきましては、特にそういったそれぞれの国において脱出の試験をやるというふうなことは一般的にやっておりません。そういった実情を踏まえまして、私どもは十分脱出が可能である、九十秒以内の基準に合致するというふうに確認いたしまして、耐空証明を出しておる次第でございます。
  82. 紺野与次郎

    ○紺野委員 じゃ、大臣はもう間もなく退席のようですけれども、このことについてはやはりみんな心配しておるわけですね。アメリカでパスしたからいいというふうな、あとで私この構造の欠陥を申し上げますけれども、やはりやらなければいけないということなんです。それは、あなたおれば申し上げますけれども、あとで航空局長その他に私申し上げますが、ただ、この際、私はそういう慣行で済まされることじゃない。非常に重大ないま不安の焦点でもあるから、そういう点でこの基準によって実験を公開してやってもらいたいと思うのですが、どうですか、大臣だけお願いします。
  83. 徳永正利

    徳永国務大臣 先ほど来御説明申し上げているように、互認協定によってその点は確認して、ICAOの世界の慣例にならってやっておることでございますから、私はさらにどうしてもこれをやらなければ証明が出せぬという性質のものではないと思います。  しかし、おっしゃるように、日本人と西洋人は体格も違いますし、案外日本人のほうがはしっこいかもわかりません。そういう意味では早く脱出できるかもわかりませんが、すぐこれをやらなければ飛ばさぬということじゃなくて、またそういうようなことも、安全間違いないと思いますけれども、やってもいいじゃないか、訓練でございますから、これはなかなかおもしろい訓練だろうと思います。またそういう機会を得てやるということは、必ずしも私は反対ではございません。また、適当な時期にやってみるということも一つの方法じゃないかというふうに考えるわけでございます。
  84. 紺野与次郎

    ○紺野委員 ところで、今度はこれをやはりやる必要があるということについて少し申し上げたいと思います。  これは労働組合とか何かでぜひやれという正論もありますが、同時に一般の雑誌ですね、航空情報、これでエアバス・ジャンボの特集をしておる中で、その道の専門家の方々ですね、ボーイング747について関山明氏と編集人藤田氏が次のようなことを指摘しておる。「キャビンを二階建てにすると、乗客数の割に機体の寸法を小さく、機体重量も小さくできるが、不時着などの緊急脱出の際に、二階の乗客を短時間に脱出させるのがむずかしく、」こう言っている。同じ特集で今度は十条正樹という人は、「エアバス・ジャンボの客室装備」というところでこういうことを言っております。「このような太い胴体が生まれたきっかけは、もちろん大勢の乗客を収容するためであるが、通常大勢の乗客を収容するためには、客室を太くするより上下二層にする方が構造的に有利であり、ワイドボディのはしりとなったB747も、最初の計画はこの二階建て案であった。しかしこの二階建て案は乗客の緊急脱出にはきわめて不便であり、九十秒以内に全員脱出するのが困難な上、床下貨物室が非常に小さくなるという欠点が発見されたため、ボーイング社では主客室を一階建てにする方針でB747を設計することとなり」こういうふうに指摘しております。  でありますから、二階建ての脱出というものは非常に困難であるということは、最初から専門家によって問題にされておったのです。いいですか。ですから、実際にはこういう形での二階席を一応は設けることをアメリカ連邦航空局が承認したそうですけれども、アメリカで実際に二階席を販売しているかどうか、その例があるかどうか、ちょっと聞きたい。
  85. 中曽敬

    ○中曽政府委員 私どもちょっと調査が行き届いておりませんで、二階席についてどういうような販売のしかたをしておるかわかりません。
  86. 紺野与次郎

    ○紺野委員 大臣、もう帰られてもけっこうです。  それで、要するにアメリカは売ってないですよ、この二階の客室は。売っておりません。売っているのは、残念ながら日本イスラエル韓国です。韓国並みですよ。いいですか、航空行政を韓国並みにあなた方はしているのですよ。こういう欠陥が現実にあるということです。したがって、当然これらのあれを再検討して、九十秒以内にほんとうにこれが脱出できるかどうかということを、大臣もそれはやってみるほうがいいということを言われましたけれども、あなた方にもう一ぺん聞きます。どうです、する必要があるでしょう。
  87. 中曽敬

    ○中曽政府委員 私どもといたしましては耐空証明を出すにあたりましては、確信を持ちましていままでの実績、データ、そういったものを十分精査いたしまして、確信を持って耐空証明を出したつもりでございます。したがいまして、もちろん、今度新しく脱出試験をやるということに相なりますれば、それを何と申しますか、あとづけといたしますか、というふうなことに相なると思いますけれども、とにかく私どもといたしましては、ただいま現在におきましては十分なる確信を持って脱出が可能である、九十秒以内の基準を満足することができるというふうに思っておる次第でございます。
  88. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それが大間違いだというのです。  さらに今度は聞きます。航空法の百四条の運輸省の運航規程ですね。これを認可を受けるようになっておるのですけれども、これは緊急脱出の機長の任務ということについて、いま問題になっているエマージェンシーエバキュエーションですか、この緊急脱出の際の機長の任務について、運輸省が認可をした運航規程というところを読み上げてほしいと思うのです。
  89. 中曽敬

    ○中曽政府委員 航空法施行規則第二百十六条「運航規程及び整備規程」という条項がございますが、その運航規程の中のチという項に「緊急の場合においてとるべき措置等」というふうな条項がございますので、そこを読ませていただきますが、「発動機の不作動、無線通信機器の故障、緊急着陸等の緊急事態が発生した際に各事態に応じて航空機及び乗客の安全を確保するために航空機乗組員、運航管理者その他の職員がとるべき措置並びに救急用具の搭載場所及び取扱い方法が明確に定められていること。」、(紺野委員「その中の機長の任務。」と呼ぶ)——運航規程と申しますのは、それぞれの会社でいまの施行規則二百十六条に書いてございますような条項を盛り込みましたそれぞれの内容のものを各航空会社がつくることになっておるわけでございます。したがいまして、先生がおっしゃっておりますところの運航規程の内容ということになりますと、それぞれの会社、それぞれの型式の飛行機によって違いますので、しかもこれ各会社でつくりますものでございます、で、私いま手元にございませんので、先生がおっしゃっております意味がよく理解できないのでございますけれども。
  90. 紺野与次郎

    ○紺野委員 あなたはわからないのですね、ずいぶん確信を持っているようなことを言っているけれども。それじゃだめですよ。  それで今度は航空機運用規程というものがそれに基づいて出ていますね、会社で。そこでの非常脱出の際における機長の任務というものを日本航空の場合でひとつ読んでみてください。ありませんか、そういう重要なものを。
  91. 中曽敬

    ○中曽政府委員 先ほど申しましたように運航規程並びに運用規程それぞれにつきましては、ただいま手元に持っていないのでございます。たいへん膨大なものになりますので持ってきておりませんので、ちょっと先生の御要請にこたえることができないのでございますが……。
  92. 紺野与次郎

    ○紺野委員 ではそれは資料をあとで出してもらうということを委員長にお願いします。  では私のほうの一つの例を出しますよ。これは「航空機運用規程 二−四−三 緊急着陸時における乗員の任務 機長」でこういっている。「一、緊急脱出の必要性について判断し、方針を決め、エバキュエーションシグナルを操作する等して、必要な指令を出す。二、速やかに客室へ行き、脱出の見通しについて判断し、全員の脱出を指示する。(必要に応じ付近のメガホンを使用する)三、客室全般における脱出の指揮をとり、後方客室へ移動する。四、可能なすべての援助を行ない、全員の脱出状況を確認し、E2デューティーに加わる。五、乗客が機の付近から退避するよう指示する。六、必要に応じクラッシュアクスを携行する。注、万一、メーンデッキへ移動が不可能な場合には、アッパーデッキの全員をクルー・サービス・ドアから脱出させ、退避する。」こうなっているのです。それで、とれと航空法との関係をお聞きしますけれども、二階に乗客がいまのあれで十六人ありますね。そのほか乗務員が五人ぐらいいる、こういうエアバスですね、これがいよいよここでいっているような、主としては火災の発生と煙が充満してくるというふうな事態に際して脱出しなければいけないということになっているのですけれども、その場合にどういうふうに二階の乗客を退避させるのか、あなた方非常によくわかっているのでしょうけれども、ちょっと説明してください。
  93. 中曽敬

    ○中曽政府委員 普通の場合でございますと、二階席におりますお客も下のドアから脱出するというたてまえになっておるわけであります。私どもが一応確認いたしました脱出試験の結果に基づきましても、二階席におりました乗客も十分九十秒以内に下の脱出口から脱出するということを確認しておるわけでございますけれども、先生指摘のように、もし下のほうが煙が充満いたしたりいたしまして下から逃げることが危険であるという場合には、747の場合には二階席のコックピットのわき、右側のほうでございますけれどももう一つ脱出口がございます。そこから実は脱出することも可能でございますので、いざという場合にはそこから乗務員の誘導に基づきまして脱出できますように、実は訓練をおさおさ怠りなくやらしておるわけでございますが、常にそういう緊急着陸のような場合には、一名の客室乗務員を二階に配置いたしまして、そういった誘導が可能になるように配置をしておるわけでございます。そして先ほど申しましたように、絶えずそういった誘導が的確にできるように日ごろの訓練をやらしておるということが実情でございます。
  94. 紺野与次郎

    ○紺野委員 ところがその右側の、それがクルー・サービス・ドアでしょう、そうですね。そうするとこれは片側だけなんです。下のほうは全部左右対称に通路ありますけれども、もし片側が何かに傾斜して出られないというふうに片一方ふさがれたときにも片一方はちゃんと出られるというシンメトリーというか、両方同じ均衡的にやはりつくられている。ところが上のほうにはそうなっていない、片一方だけ。片一方ふさがれた場合どうなります。そこの通路がふさがれた場合、いろいろなあれで使えないという場合、そういうことはあり得るといっております。どうするのですか。
  95. 中曽敬

    ○中曽政府委員 私の説明がへたであってちょっと御理解いただけないようでございますけれども、通常は二階席のお客も下へおりて下からおりるというふうになっておるわけでございます。しかし緊急の場合、非常に煙が充満して下へおりるのが非常にちょっと若干の危険を感ずるというふうな場合には、上もあるので上からも脱出ができるのですよということでございます。しかしながらなおかつ上のほうの脱出口から脱出できない場合には、これは下から逃げざるを得ないと思います。
  96. 紺野与次郎

    ○紺野委員 ところがこの規程によれば、機長の場合も副操縦士の場合も機関士の場合にも、最後のところで「万一、メーンデッキへ移動が不可能な場合には、」こうありまして、実際にメーンデッキの一階に行けない場合を想定して十分書いてあるわけです。ですからそれができない場合、当然今度はその右側の通路から出なければいけないとあなた言うわけでしょう。それもできない場合どうなるのか。構造上に欠陥がある。下ならばちゃんと両方ついているのに片一方にしかないのです。わかりますか。どうします、その場合。
  97. 中曽敬

    ○中曽政府委員 どうも私の説明がへたなのかもわかりませんが、(紺野委員「下は行けない場合ですよ」と呼ぶ)下はいけないのでも、下にはやはり乗客がおりまして、下からはやはり乗客が出なければいかぬわけでございますね。そういう場合に下と二階との間は階段でつながっておるわけでございます。二階が全く隔離されておるわけではございませんで、階段がつながっておるわけでございます。したがって、煙が若干ございましても下におりることは可能なわけでございます。しかしながら、下からおりるより上からおりたほうが手っとり早いという場合もありましょうから、そういった場合には上からもおりることができるのです、こういうわけでございますけれども……。
  98. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それはあなたよく見ていない。いいですか、「万一、メインデッキへ移動が不可能な場合には、」と、こういっている。「不可能な場合には、アッパーデッキの全員をクルー・サービス・ドアから」誘導する、こういっているのです。だから煙が——煙だけではなくて火炎も、この場合に、火がそこから吹き出してくるという場合もあるということをいっております。そういう場合に、そこへ飛び込んでいけということはできないのです。そういうことを想定してこれはいっているのです。そこに二重構造というか、二階構造の一つの大きな落とし穴があるのだということもあなた方考えなければいけない。  それから、あなた知らないようだから言いますけれども、左側のほうにはもう一つのエスケープハッチという小さな窓があって、そこからわずか五個のエスケープリールというのがくっついている。五人分だけある。これにぶら下がると、こうやって、ステンレスの何かありましてね、輪っかがくるくると回転しまして五人は下におりることができる。しかし五人分だけだ、こうされております。こういうふうな欠陥がやはりあるのです。これはどうです。ハッチの点わかりましたか。
  99. 中曽敬

    ○中曽政府委員 コックピットクルーですね、つまり、乗務員用の脱出口としましてそのハッチがあるということは承知しています。
  100. 紺野与次郎

    ○紺野委員 まあ、片方がふさがれた場合に、乗務員五人用ぐらいのものしかない。あと十六人販売しているのですよ。国民の皆さん、ここは快適ですといって売っているわけなんです。それはいいのですか。
  101. 中曽敬

    ○中曽政府委員 先ほど申しましたように、下におりられないような場合には上からも出ることができる。それは乗務員と一緒に十六人の二階席におるお客を脱出させることができるわけでございます。緊急の場合には乗務員あるいはお客の別なく一番手近なところから逃げることが一番安全なわけでございますので、そこら辺のところは、乗務員用のハッチ、コックピットにたまたまあるわけでございますけれども、乗務員だけがおりるハッチでございますよということでございませんで、もちろんお客も、乗務員の先ほど申しました誘導によりましておりることができる、おりなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  102. 紺野与次郎

    ○紺野委員 あなたは堂々めぐりして、何も解決していない。下も火炎が出てのがれられない。右側も、いわゆるクルー・サービス・ドアですね、これも使えないような場合に、左側の小さなハッチから出るのは、五人分の設備しかない。そうすると、五人は出ても十六人は残るというふうな欠陥があるということは、致命的欠陥がこれにはあるのだということがこれで明らかであります。  それで私は、今度は別の面から欠陥を指摘しますけれども、それは、先ほど機長の行動が、やはりこういう事態に際しては上の通路から出ることになりますね。これを見てみますとそうなっております。下にも行けない場合にはアッパーデッキの全員をクルー・サービス・ドアから脱出させ、退避するというふうになっております。  ところで航空法のほうではどうなっているか、航空法の七十五条それから百五十二条、これはどういうふうに書いてあるか、ちょっと読んでください。
  103. 中曽敬

    ○中曽政府委員 航空法の七十五条でございますが、「機長は、航空機航行中、その航空機に急迫した危難が生じた場合には、旅客の救助及び地上又は水上の人又は物件に対する危難の防止に必要な手段を尽し、且つ、旅客其の他の航空機内にある者を去らせた後でなければ、自己の指揮する航空機を去ってはならない。」それから百五十二条「機長が第七十五条の規定に違反して、自己の指揮する航空機を去ったときは、五年以下の懲役に処する。」
  104. 紺野与次郎

    ○紺野委員 だから、こういうことで、この二階建てのキャビンのある航空機は、機長が、下から火が吹いてきたとか通路がふさがれた、そうすると今度は、そのわきっちょから一緒になって出てしまう、こういうことなんです。ところが実際には、航空法のこの規定によって、機長は、船長と同じように飛行機のずっと下のメインデッキを通って、そうして最後のE2デューティー、A、B、C、D、Eの一番おしまいのEのしっぽのところから、全部見届けて、そうして最後に出なければならないというふうに航空法では規定しているんです。そうして、そういうことをしない場合には五年以下の懲役に処する、こうなっているんです。だから、このことと、ここであなた方が得々として、会社もわれわれの指導のもとにこういうりっぱな運用規定を持っているんだ。だから安全だと言うけれども、このとおりやって、いまみたいな事態が起きた場合には、機長懲役五年——これは構造上だ。彼の人格的なあるいは個人的ないろいろの事態によってきまるんじゃないんだ。こういう欠陥飛行機ですね、そこに乗客を乗せるあるいはそういうものをつくったというところから、必然的にこういうことが、罪人として罪を全部ひっかぶって社会的に葬られていくようなこういうものになっているということなんです。あなた方、それで責任をとっているんですか、お聞きしたいですね。
  105. 中曽敬

    ○中曽政府委員 私どもといたしましては、とにかく航空法上の規定に基づきまして諸般のチェックと申しますか、審査と申しますか、そういったことをやっておるわけでございますが、一応ただいまのような七十五条の規定、それに基づきます百五十二条の規定、これも同じ一連の航空法規定されている規定でございます。そういった一連の航空法上の規定に基づいて、われわれ並びに運行会社といいますか、エアラインのほうもやっているということでございまして、要は航空機の安全といいますか、あるいは非常事態が突発した場合には、航空法上に規定されましたしかるべきそういった行動基準に従ってやっていく、もって乗客の安全を期するということにあろうかと思いますので、われわれとしましても、あるいは運行会社のそれぞれの乗務員につきましても、あるいはそのほかのいわゆる運行従事者につきましても同様のことがいえるのではなかろうかと思います。
  106. 紺野与次郎

    ○紺野委員 いままでずっと法文の上からも、事実の機体構造上からも、いろいろな点から見て、これが大きな欠陥があるということがもう明瞭であります。  それから、あなた方の行政指導も支離滅裂、前とうしろが合っていない。また、日本の中での航空行政としても首尾一貫しておらない。ただ条文の上で、あるいは文字の上でやっているけれども、実際の事実に即して研究されておらないということですね。これは明瞭だ。もう暴露しています。破綻していますよ。だから、そういう点からいって、私は最後にまとめますけれども、このエアバスが、このような二階建て構造というものは、すでに専門家が、危険である、脱出困難であるということを言っているとおり、この点から見て、もう一度運輸省は耐空証明をやり直す必要がある。これを直ちに検討してもらいたい。  それから、さしあたって二階建ての座席は、韓国並み、イスラエル並み、そうして日本、この三つだけやっているわけですけれども、これはやめてもらいたい。少なくとも二階建ての販売を直ちに中止せよ。  それから三点は、航空機運用規程を、いまのようなこの規程を改める必要がある。そして機長航空法七十五条に違反しないで済むような規程をつくる必要がある。そうしなければ、機長が全乗員に安全を最終的に見届けて責任を果たすということはできません。そういうふうにしなければならない。そういうふうに運用規程をやはり現在のものを改めるようにしてもらいたい。  それから、いろいろな点から見て結論的に言えることは、やはり二階建てキャビンのエアバスは就航を中止するのが正当であるということなんです。あなた方は太鼓判を押して、絶対に落ちませんよ、音も小さいですよということを言っているけれども、やはり欠陥があるのだ、こういうことができなければ。いま私が言ったようなことがみごとにできるならば、それはいいでしょうけれども、なかなかこれがすんなりといくようにも思えない。そういう点でやはり一番安全なことは、あのような構造上に欠陥があるエアバスはやらないようにしてもらいたい。  以上の四点について最後に御返答をもらって、一応私の質問を終わります。
  107. 寺井久美

    寺井政府委員 四点についてお答え申し上げます。  耐空証明をやり直せということでございますが、耐空証明そのものにつきましては、私どもはこれは十分耐空証明として互認協定に基づきます点もございますが、現在のところはこれをやり直す必要はないというふうに考えております。  それから二階席の販売の中止につきましては、先ほど大臣もその脱出の実験というものを考えてもよろしいという御発言がございましたけれども、これは十分にそういう点も考慮いたしまして、現在のところ私どもは客室乗務員の誘導によって脱出可能であるというふうに判断いたしておりますが、これは適当な時期にそういうことをテストいたしまして最終的にきめたいというふうに考えます。  三番目の運用規程云々につきましては、技術部長のほうからお答えさせていただきますが、それで、最終的にこの二階建てのエアバスは欠陥であるという御指摘でございますが、これは主としてその七十五条の、機長が一番最後に乗客の脱出を確認した上でなければ機体を離れてはいけないという規定の関連での御指摘であろうかと存じます。もちろん、機長乗客の安全を確認した上でなければ機体を離れてはならないという精神は、乗客の安全に目的がございます。物理的にたまたま操縦席から客室に行けないというような事態が発生いたしますれば、機長の指揮のもとに客室乗務員が措置をかわってとることになると思いますが、機長機体外に出ましても最終的に外側からでも確認ができる、あるいはそこから出てまた別の入り口から入るというようなことも場合によっては可能でございますので、要するにこの法の精神は、機長乗客の安全を確認をするというところにございますので、その精神から見て、物理的に不可能なような場合にまで機長の罪を追及するというようなことには相ならないのではないかというふうに考えております。
  108. 紺野与次郎

    ○紺野委員 物理的と言ったね。その物理的な欠陥を直すようにしたらどうか。
  109. 寺井久美

    寺井政府委員 これはもちろん考えなければいけないと思いますが、現在の構造で全く機長がおりられないということはあり得ないので、機長が最終的にコックピットを離れるにいたしましても、そういう不時着、非常事態ができました場合には、コーパイを連絡におろすとか、いろいろな手だてがあるはずでございまして、全く途絶をするというのはよほど異常な状態でなければ考えられないのではないかと存じます。
  110. 紺野与次郎

    ○紺野委員 以上のように大きな欠陥がエアバスにある。この点についてはもっと政治的な判断を下して、その前に十分な検査をやると大臣も言いましたけれども、控え目に言ったと思うけれども、これをやはり試験するということは認めたわけでありまして、ぜひ近いうちにそのことを行なって、そしてあらためて検討してもらうように重ねて要求して私の発言を終わります。
  111. 勝澤芳雄

    勝澤委員長 どうも御苦労さんでした。      ————◇—————
  112. 勝澤芳雄

    勝澤委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  航空の危険を生じさせる行為等処罰に関する法律案審査のため、委員を派遣いたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 勝澤芳雄

    勝澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の氏名、員数、派遣期間、派遣地、その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 勝澤芳雄

    勝澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明四日木曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十六分散会