○渡辺(武)委員 本日の委員会は、この
船舶職員法の問題について結論を出すということのようでございますので、私はその前に、大臣に対して基本的な考え方の確認をしておきたい、こう思うわけでございます。
まず第一番目に、そもそもこの
法律改正の基本的な考え方は、これはすでに御説明をいただきましたが、レジャー
ボートや
小型船舶等の
事故が増大をしておるのだ、そして、それは基礎的な
知識あるいは技能というものが欠如しておるのだ、こういう認識の上に立って、そうして
事故を
防止して、より
航行の安全をはかるのが
法改正の目的だ、こういう御説明があったと思います。
ところが、具体的にこの法案の
改正内容を見てまいりますと、一部は確かに安全のための前進措置が見られますけれども、一部は不安全な方向へ後退をしている部分があるのではないか。
御
承知のように、前者は従来適用除外になっておりました
小型船舶に対して、今回新たに
船舶職員法の適用をはかって、そうして有
資格者の
乗り組みを義務づける、こういうことがきめられるわけでございますから、この面で私はたいへん前進をしておるであろう、こう思うわけでございますが、同時に、実は従来、
先ほども問題になっておりましたように、五トン以上、二十トン
未満の
小型船舶に対して
丙種機関士の
乗り組みが義務づけられておりましたところが、今回この
法改正によってその義務づけが除外をされてしまっておるのです。
大臣も御
承知のように、この五トン以上二十トン
未満の
小型船舶といいましても、実は太平洋のまん中にまで出漁をするという実態があるわけでございます。いまは出港と同時に義務づけられておりますから乗っていきますが、この
法改正と同時にそれらを一挙におろしてしまってもいいのかどうか。ここに非常に問題があるわけでございまして、こういう面から見れば、これは安全を増進するために、そういう目的を持って
法改正をしようといっておきながら、片面はそういう不安全な方向が実は打ち出されておるのではないか。
そこでいろいろ私も調べてみました。どういうことになってきたかといいますと、これは海上安全
船員教育審議会というのがあって、ここへ大臣が諮問をされて、ここからの答申が実は出ておるわけでございます。実はその答申の中を見てまいりましても、この配乗別表の
改正については併記答申がなされておるわけですよ。乗せなくてもいいという意見と、一定
距離以遠に出漁するものについてはやはり
機関長を乗り組ませるべきだという二つの意見がこの審議会でもまとまらなくて、併記答申がなされておる。にもかかわらず、実際には法案が成文化されてまいりますと、この併記答申がいつの間にか
片方だけが採用されて
法改正がなされようとしておる、こういう状態であろうかと思います。
したがって、本来法が目的としておる、より安全な
航行をはかるために
法改正をするのだとおっしゃっておりますが、実は一面は非常に後退をしておる面があるのではないか。
これはこの前も
質問をいたしました。ところが
局長の
お答えでは、実は
エンジンの性能が非常に向上をしたのです、したがって、従来のような
機関士が乗っていなくてももう
エンジントラブルはありません、リモートコントロールもできるのです、こういうふうにおっしゃるわけでございます。私自身も実は小さいときから焼き玉
エンジンも知っておりまして、私自身、
機関士の
仕事をやったこともございますし、たいへんよく知っておるわけですが、現在のディーゼル
エンジンもよく知っております。したがって、焼き玉
エンジンとディーゼル
エンジンを比較すれば、確かに性能は向上したでございましょう。しかし、きわめて単純な
エンジンから非常に複雑な
エンジンヘと移行をしておるわけです。そういう面では、昔の
機関士のような簡単な
整備ではなくて、確かに複雑な微調整が必要な高度な
エンジンに変わっておるのです。したがって、本来
操縦士というもの、
船長というものが、
かじをとりながら計器だけ見ておれば十分に
エンジンの状態が把握できるかどうかについては、私は非常に疑問を持っておるのです。
これが
陸上ならば、自動車の
エンジンのメーターがついておりますね、
エンジン音が上がってきた、上がってきたといっても、何が原因で上がってきたかよくわからないのですよ。ボンネットのふたを取ってみて、そしていろいろ調べてみる、こういうことが必要なわけですね。
陸上は少し走らせれば
整備工場がありますから、そういうところへ入って見てもらうとか、いろいろできるわけです。
ところが海の上は、これは大臣も御
承知のように、非常に風波の影響を強く受ける、船が停止することによって危険度が非常に増大をする、こういうことが当然考えられるわけです。しかも
漁船というのは、一たん
エンジンをかけて出港をしますと、これはもう一週間も十日も、長いのは一カ月も
エンジンはかけっぱなしという状態になるわけですから、当然そういう問題が起こってくる。
百歩譲って、ほんとうに
エンジンが向上しただろうかというふうに見ていきますと、これは海上保安庁が出しておられる資料を見ればすぐわかるわけですね。海上保安庁が要救難
事故の
統計を出していらっしゃいます。ところが、私、毎年毎年の
統計表がここにあるわけですけれども、一向にその
機関故障の件数というのは減っていないのです。だから、本来
エンジンの性能がよくなって
機関故障はもうなくなってきたのですよ、こうおっしゃるならば、そのデータの裏づけがなければならない。実際には、海上保安庁が出しておるデータを見ますと、年々その件数というものは減っておりません。しかも要救難
事故の中で一番多い原因は
機関故障なんですよ。これは当然大臣が管轄をしていらっしゃる、いわば運輸省管轄下の海上保安庁が調べていらっしゃるわけですから、この資料にうそはないと思いますが、そういうデータしか実は出ていないのです。
したがって私は、より安全な方向でそれを考えていくとするならば、一挙になくしてしまうということではなくて、当然、ここの併記答申がされておるように、いわゆる一定
距離以遠に出漁するものについては、やはり
機関長を乗り組ませるべきである。こういうことが併記答申されておるわけですから、
あとはこの
距離が問題になってくると思うのですね。いま提案をされております原案は、もう最初からどこまで行っても乗せなくてもいいんだ、こういう原案なんです。これでは
法律を制定しようとする目的にも合致していないのではないか。
私は、ここに提案の
趣旨説明書もいただいておりますが、これをどういうふうに読んでいきましても、そういうことが出てこないんですよ。第一に、第二に、第三に、第四にと、こう項目別にあげていらっしゃいますが、実は肝心な配乗を取りやめるということは一言もここに書いてない。ずっと読んでいく限りは、いかにも安全面で非常に前進をさせるのだということばかり書いてあるのです。その隠された中に実はそういう不安全な方向に後退をしている面がある、こう考えるわけですが、この辺のところ、大臣どういうふうにお考えになりましょうか。