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1974-05-24 第72回国会 衆議院 決算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十四日(金曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員   委員長 臼井 莊一君    理事 井原 岸高君 理事 唐沢俊二郎君    理事 松岡 松平君 理事 綿貫 民輔君    理事 久保田鶴松君 理事 原   茂君       赤澤 正道君    中尾  宏君       中村 弘海君    吉永 治市君       稲葉 誠一君    田代 文久君       津川 武一君    坂井 弘一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         厚生大臣官房会         計課長     木暮 保成君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省援護局長 八木 哲夫君  委員外出席者         文部省大学学術         局医学教育課長 齋藤 諦淳君         厚生省年金局年         金課長     坂本 龍彦君         会計検査院事務         総局第三局長  桜木 拳一君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   田代 文久君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   津川 武一君     田代 文久君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十六年度政府関係機関決算書  昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (厚生省所管)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、厚生省所管について審査を行ないます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  3. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは、四十六年度に発足いたしております社会福祉施設緊急整備五カ年計画の現状を先にお伺いして、そのあと年金支給の問題について一件お伺いをし、そうして三番目に四頭筋短縮症の問題をお伺いし、最後に中国における遺骨の問題についてお伺いをするという順序で進めてまいりたいと思いますので、お願いをしたいと思います。  最初に、あまりこまかいことをお伺いしないように資料として数字をちょうだいいたしておりますので、その問題についてだけお伺いをしたいのですが、いまの五カ年計画、四十六年度発足から今日までの経過の中で予定どおり進んでいないというものだけちょっと——大体予定どおり一〇〇%いっている、五カ年計画の終点が五十年ですね、現時点において進んでいないものというやつだけ、ちょっと御説明をいただきたい。
  4. 高木玄

    高木(玄)政府委員 昭和四十六年度を初年度といたします社会福祉施設緊急整備五カ年計画を樹立いたしまして現在も実施中でございますが、四十八年度末におきまして予定どおり進捗していないというものについて申し上げますと、まず養護老人ホーム、それから重度身障者施設重症心身障害児者施設、こういったものは予定どおり進捗いたしておりません。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 ちょっともう一度。
  6. 高木玄

    高木(玄)政府委員 養護老人ホーム、それから重度身障者施設重症心身障害児者施設、こういったものが予定どおり進捗していない施設でございます。
  7. 原茂

    ○原(茂)委員 身障者療護施設はいいのですか。
  8. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これは重度身障者施設の中に含まれますので、これも予定どおり進捗いたしておりません。
  9. 原茂

    ○原(茂)委員 私がいただいている資料、どんなものが来ているのかおわかりになっているのだと思うが、これにはちゃんと別項に起こして書いてある。中に含んでなんかない。——けっこうです。わりあいにほかは、まあ大体進捗しているようですから、進捗状況あるいは全体の問題は他のときに譲ります。  いまの、おくれております理由は一体何でしょう。四項目、簡潔にひとつ。
  10. 高木玄

    高木(玄)政府委員 これは端的に申しまして、一つはその計画樹立以後におきまして新しく在宅対策が非常に重視されてまいりまして、その在宅対策との関連で、要収容人員見直しが必要になってきたというようなことが、この計画のおくれている大きな理由であろうかと思います。
  11. 原茂

    ○原(茂)委員 見直しを必要とするようになったというのは、この五カ年計画人員数字が多過ぎたから見直すのですか、少な過ぎるから見直すのですか。どっちなんでしょうか。
  12. 高木玄

    高木(玄)政府委員 この社会福祉施設整備計画につきましては、先般も、厚生大臣の私的な諮問機関でございまする社会保障長期計画懇談会からこれについての御意見がございまして、この長期計画懇談会におきましても、この五カ年計画を新しい観点からの見直しを求めておられるわけでございます。その求めておられる中には、要収容人員が当初予定したよりも少ないと見込まれるものと、それからその逆に、かえって需要が非常に増大している、この二通りがございます。
  13. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでいまの、ことし二月に出されました、有沢さんが座長をやっております私的な諮問機関意見書が出ていますが、その意見書の別記の中に、おっしゃるとおり二項に、「従来の施設収容偏重考え方から脱皮し、在宅福祉対策重視考え方を明確にすべきこと(在宅サービスの拡充と並んで、通所通園施設整備一つの重点とすること)。」という、おっしゃるとおりの意見が出ているわけであります。これは非常に重要な問題なんで、やはり自宅にいて家族の中で、また家族も、入園をさせて手放すよりは手元に置いて——これは人情で、しかも、ある意味ではかゆいところに手の届く手当ても療護もできるというように考えますので、非常に重要な問題として取り上げなければいけないと思うのでありますが、これは意見書が出ました。この意見書厚生省は取り上げて、具体的にいつどのようにこの問題が前進することになるのか、大体その方向としてはどんな考えおいでになるのか、現在と照らしてどの程度のものをやろう、こういうお考えなのかをお答えをいただきたい。
  14. 高木玄

    高木(玄)政府委員 長期懇談会の御意見を踏まえまして、これまでの社会福祉施設緊急整備五カ年計画見直し検討作業を現在急いでおるところでございます。私どもの気持ちといたしましては、これをできるだけ早く新しい五カ年計画を策定いたしまして、関係審議会の議を経て、明年度予算編成にはこれを間に合わしたい、こういうつもりで進めておる次第でございます。
  15. 原茂

    ○原(茂)委員 大体の内容はどのくらいふやすつもりか。
  16. 高木玄

    高木(玄)政府委員 いまのところまだ具体的に数字が詰まっておりませんが、方向といたしましては、非常に現在需要の多い寝たきり老人施設、それから重度心身障害児施設保育所、こういったものをさらに重点的に整備する必要があろうか、かように考えておる次第でございます。
  17. 原茂

    ○原(茂)委員 同時に、通所通園施設整備に対してはどうなりますか、子供の通うやつですね。
  18. 高木玄

    高木(玄)政府委員 懇談会の御意見にございますように、通所通園施設というものの整備も今後はかってまいらなければなりませんが、同時に施設整備と並行して、先ほど先生御指摘のように、在宅福祉対策充実という面についてさらに力を入れてまいりたい、並行的に進めてまいりたい、かように考えております。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、いまの在宅の場合、完全なおとなが一人、ほとんど仕事をすることができずに付き添っていなければいけない人に対する手当地方自治体からは、金額は違うけれども、まちまちに出ているのですが、国はそこまでまだ踏み切っていない。やはりこれは地方自治体にまかせきりじゃいけないので、せっかくこうして報告書意見書に基づいて確かにこれは重要だというのでお取り入れになるなら、やはり在宅という、当然付き添いが生ずる、その人に対する手当。それから二つ目には、通園通所をしよう、子供を送り迎えをする、これは健康な、幼稚園に行く、保育園に行く子供を運動がてら連れていくのと違うのでありまして、この人々に対してもやはり家族に対する手当というものが何がしか配慮さるべきだろうと思うのですが、まず第一の、在宅療養に関するこの看護者手当を国で当然めんどうを見なければいけない、地方自治体にまかせきりではいけない、何がしかは出すべきだとこう思いますが、大臣いかがですか。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 重度身体障害者方々につきましては、すでに御承知のように特別児童扶養手当というのを出しておるわけでございまして、たしか昨年は六千五百円でございましたが、一万一千三百円に増額することといたしまして、その関係法律をただいまの国会に提案をいたしました。これは衆議院を通過していま参議院に行っておるところでございます。そこで、実はこの在宅の問題については、一応一万一千三百円というふうに引き上げることにしておりますが、はたしてそれだけでいいのか。この手当性格は介護料的なものでございますが、いままでのこの制度国民の受け取り方は、在宅手当としては受け取っていないのですね、感じとしては。そこで、有沢さんのこの答申がございましたので、やはりこれはもう少しはっきりと、収容しておる方々に要する国の金との均衡がありますものですから、やはりこれは在宅手当を出すべきじゃないかというので、今回在宅手当として三千円をその一万一千三百円に上積みしまして、在宅手当ということで、特別福祉資金ということで出すことにいたしました。これがやはり在宅手当への一歩前進だと私考えております。もちろん今度の金額は少ないのですが、いままでそういうことをやっておりませんでしたので、新しく在宅手当方向を目ざして出発した、こういうわけでございます。そこで、私としては今後とも、この三千円の在宅手当の増額、そういったふうな問題に努力をして、施設に収容するというばかりじゃなしに、やはりこの在宅手当ということを十分考えていく必要がある、かように考えておる次第でございます。
  21. 原茂

    ○原(茂)委員 おことばを返すようですが、やはり施設に収容すれば相当額がかかる。     〔委員長退席綿貫委員長代理着席〕 これに見合って在宅手当二つ種類があって、現在約一万四、五千円になるのですが、これが私は、それ全体がやはり施設に入っていれば当然かかるやつの見合いなんで、ほんとうに働けば働ける人が完全に看護に当たっているという状況を見れば、ごらんになっていると思うのですが、看護手当というものが別途に創設されてしかるべきだと私は思うので、大臣の御意見をお伺いしているのであります。ただ在宅手当の三千円を増額しようという、もうそれとは打ち切って、看護手当というものが別途あっていい。専従しているんですからね。これはもう当然別項考えなければいけないだろうという意味大臣の御所見をお伺いしたい。
  22. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 すでに御承知だと思いますが、この重症心身障害児を国の施設に収容しておりますと、実は月十七、八万かかっているのです。在宅の方は、いま申し述べましたように一万一千三百円でございましたが、今度三千円ふやして大体一万四、五千円、五千円にはちょっと足りないというところまで来たわけでございます。これは福祉資金という形で出しておるわけでございまして、もちろんそれは看護ということも入れておるわけでございますが、はたしてこれは、そういうふうに看護だとかいろいろ項を分けてやったほうがいいかどうかということで、一応福祉ということで出しておるわけでございますが、福祉資金として出しておる内容についての性格ですね、そういうことについては、もう少し私のほうも研究さしていただきたい、かように考えております。しかし、私どものほうの在宅手当というのは、そういう子供をお世話する、やはり看護という意味も当然あるわけでございますので、それをどういうふうにはっきり性格づけてやったほうがいいのか、あまり性格づけないで、在宅だとか看護だとか、何もかもひっくるめた福祉給付ということでやったほうがいいか、いろいろ問題あると思います。しかし、お話しのような性格は十分あるわけでございますから、そういう点については十分検討を続けてまいりたいと思います。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございます。そういうふうにお願いをしたんですが、特に、施設へ参りましても、人件費人件費としてある。同じように、施設で、一人の重症児に一人の人がついているわけではないわけです、そうでなくても足らないわけですから。家庭においては一人に一人つくという理想的な状況になるというなら、当然人件費に見合った看護手当というものが別途にあっていいと思う。まして金額が少な過ぎますから、金額が多ければこんなこと言わないのですが、少な過ぎますから、私は、名目としてもやはり看護手当というものがこの重症者に関しては、この在宅療養の場合にはあってしかるべきだというように考えておりますのでそう申し上げておりますので、その方向検討をしていただくようにできませんか。
  24. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いまの名前は福祉給付金ということにしておりますが、その内容等をもう少し分析いたしまして、そうした意味も含めた名称にすることはできるかどうか、その辺十分に検討さしていただきたいと思います。
  25. 原茂

    ○原(茂)委員 次に年金の問題に入るのですが、一点だけ。年金の現在の支払いというのは三カ月ごと支払いをしております。これを、前の三カ月分を次の三カ月のしょっぱなにもらうんですね。だから、言い方によってはあと払いだ。現在のような状況の中では、あと払いと先払いではたいへん違う。もらう側にすると非常にそういうことが真剣に考えられていますので、そこで二月の二十七日ですか、おたくの横田さんですか、年金局長、きょう何か御用でおいでにならないが、その横田さんと参議院のあそこで、私ども党本部横山国民生活局長ほか、枝村議員参議院の四人の議員も含め、全国代表者百名が一緒に会見をいたしまして、その問題を取り上げてお願いをいたしたわけであります。それに対して明快なお答えが実は横田年金局長からございまして、このように記録されております。年金支給は三カ月ごとあと払いであるが、あと払いでは年金価値が下がってしまう、前払いか、毎月払うべきではないかという要請が強く出されたのに対し、答弁は、「関係省庁とも十分協議して、後払いにならないよう検討することを約束します。」とお答えをいただいたのであります。その検討をして、前向きでどういう答えが出ておりますか、お答えを願いたいと思います。代理の方……。
  26. 坂本龍彦

    坂本説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、年金支払いが現在、たとえば厚生年金で例をとりますと、二月、五月、八月、十一月という月に、それぞれその前月までの分を支払うということになっております。したがいまして、これを御要望といたしまして、過去の、前月までの三カ月でなくて、その支払い月を含めて、それから将来に向かっての三カ月分ぐらいを支払うというような形にできないかという御要望があったわけでございます。  私どももこの支払いの問題につきましては、ほかにもいろいろと御意見、御要望を承っておりまして検討を重ねておるわけでございますが、やはりこの年金仕組みといたしまして、一定の受給要件というものを定めまして、その受給要件に従って年金受給権というものがあるかどうか、これを確認をいたしまして、さらに年金の額あるいは実際に支払うべき金額、これはいろいろと年金の額の一部について支払いを停止するというような条項があったりいたしますので、そういったものを各支払い期ごとに正確に把握いたしまして、支給額を確定した上で支払っているというわけでございます。     〔綿貫委員長代理退席委員長着席〕  もし、現在の年金仕組み前提といたしまして、将来の期間に対して前払いをするということになってまいりますと、年金受給権を失権した場合——これはいろいろ理由かありまして、受給権者がなくなった場合のほかに、身分関係の変動でございますとか、就職をいたしましたとか、いろいろあるわけでございます。そういった場合に、払い過ぎになっているというケースが恒常的に出てまいるわけでございます。そういたしますと、やはりその返納事務というものがどうしても発生いたすわけでございまして、過払いに対して返納をしていただくという事務が非常に大量に出てまいりまして、これは現在の事務処理システムから見ても非常に困難な点がございます。さらに、受給者の方にいたしましても、一たんお受け取りになったあとで、法律の規定でございますからお返しくださいということになると、やはり非常に御迷惑をかけるというようなことがございまして、この前払い方式をとるということはかなり困難な面があるわけでございます。  一方、そこまでいかなくても、当月払い、つまりいまの方法でまいりますと、たとえば二月、三月、四月分を五月に支払う、これを三月、四月、五月分まで五月に払うという方法にできないかというような御意見もあったわけでございますが、この場合におきましても、やはり受給権の確定ということを前提にいたしますと、今度は五月分の支払いにつきまして、どうしても事務的に一月ばかり時間がずれてまいりますので、結局今度は六月払いにずれ込んでしまうというように、実益という面でもなかなかむずかしい面がございまして、いろいろと検討を重ねたわけでございますが、現在の年金制度システムからいきますと、直ちに採用するということはなかなかむずかしい状況にあるわけでございます。  しかし、この問題が出てまいりましたのは、やはり今日のようないろいろと、物価の状況でございますとかそういった理由年金生活者の方の生活がなかなかたいへんであるということで出てまいったわけでございますので、私ども年金支払い方法のみならず、年金制度充実ということにつきまして十分検討し、年金生活者生活の安定、福祉の向上という方向で今後ともできるだけ努力をいたしたいというような考え方を持っているわけでございます。
  27. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題は、横田局長がそういう約束をしたわけですから、した以上は、協議をしたら、いまおっしゃったような理由になるかどうか知りませんが、こういう理由でこうなりました、こういう方向にいたします——最後にあなたが結んだように、年金受給者の苦しい生活考えると、やはり何らか近づくように考える必要があるだろうとおっしゃったとおりの答えが出るのか。いずれにしても、約束した以上はそれに対する結論を出すという習慣をつけなければいけませんから、そういう意味では、お帰りになったら局長によく言ってもらって、早期協議をすべきところは協議をして、そうして、こういうことになりましたという返答をしなさいということを言ってください。そうしませんと、何だか政治というもの全体に対する国民の不信がそういうことからも出てくるわけですよ。だから、約束したら返事はぴちっとするということにぜひしてもらうように、早期に正式の回答をちょうだいするように、お願いをしておいてください。  次いで、大腿四頭筋短縮症につきまして、この間、大臣滝沢局長社労委員会でいろいろと御答弁をちょうだいいたしました。あのときに申し上げた調査班人員、それからそれが局長にはまだよくわかっていないというお話でしたから、あとでその内容をちょうだいしましょうというのが、まだ届いていません。これは引き続きまだ大きな問題になりますので、局長も約束したんだから調べて、どういう経歴で、どういう人が何人で、調査班がどういう構成になっているのだということを、私のところにリストをちょうだいするようにお願いしたいのです。そのことを申し上げた前提は、やはりもっともっと大規模な、現在の医学界の悪弊である、縦割りは非常によくできているのだけれども、いわゆる横の機能的な連携というものが非常に弱いというものをこの際承知の上で大プロジェクトチームをつくって、この問題の調査に当たらないと、後手後手になっていけないじゃないか。もう問題は古いのだから早くやるべきじゃないかという論理から、いま言った調査班メンバーをぜひ見せていただきたい。もちろん整形外科学会が中心でつくられているのだろうと思うのですが、やはりそのメンバー等もある程度われわれにも、しろうとしろうとなりにまた違った角度から、なるほどこれならいいかなあということを検討したい、こう思いますので、これは別途お届けをいただくようにお願いをしたい。  あの日にまだもうちょっとと思いました件の二、三をここでお伺いしたいのですが、さしあたり全国調査を行ないたいという御発言もありましたし、私もそのことを要望いたしました。それはいつごろ、きわめて計画的に制度的に全国的な調査をおやりいただけるか、それが一つ。  それから研究班についての問題は、いまの資料をちょうだいしてから後刻お尋ねをいたしたいと思う。  もう一つ二つ目にきょうお伺いしたいのは、山梨においても福井においても、長野県岡谷においても、あるいは名古屋においても、実際に高橋先生、その他厚生省調査をしようといたしましても、患者に対して施療をしたお医者さんから、その病歴をそのまま全部データを見せてもらうことができないということが、今日この問題の調査の大きな支障になっているというように聞いていますが、そういう事実はございますか。お医者さんから病歴を出してもらう、当然私は出す義務があると思うのですが、なぜそれが出ないのか。長野県の場合にはなかなかにこれは出しておりません。山梨県の場合にもそれを出していない。少なくとも実際にこの種の問題を起こしたと見られる施療をせられたお医者さまが、何といってもその病歴というものをぴしっとデータを示していただく協力的な態度が——現に潜在患者としてはかつて見ない、数万人になるだろうといわれてすでにそれが常識化している。まだそれがふえつつある。しかもその注射を受けた者が十七、八歳、骨の伸びのとまるまではこうした難病に取りつかれっぱなしで、何回となく手術をしなければいけない。そして不具者と同じような生活状況に追い込まれつつあるというようなことが現に進行している状態を見ますと、医者の側だって進んで協力して——とにかく不勉強で、間違ってこういう注射液を、かぜといって、熱が出たといっては打ってしまったというような間違いあるいはそこつというような、結果がわかろうとわかるまいと、とにかくそういう大きな人道的な上からいっても、早期にその病歴データというものはぴしっと出してくれるというようなことをしてもらえないものだろうか、させられないのか。厚生省としてぜひやらしてもらいたい、全部出さしてもらいたい、これが非常にいまのかぎになっているということが二つ目。  それから三つ目に、各所で今日まで、その地域における医師の所属する医師会示談に持ち込んで五十万円出した、七十万円やった。もらうほうももらうほうで、七十万円でもって何だか文句言っちゃ悪いと思って、これだけの金額をもらえばなおると思ったのかどうか知らぬが、それで示談にした例がたくさんある。この示談ということを厚生省は知っているのかどうか。この種の問題をやはり行政的な指導をして、その示談で解決することのよしあしではなくて、五十万だ七十万だという金額で解決できるような問題でないことが現にもうわかっているわけですから、そのときにはそういう誤ったやり方に対しては、医師会に対して厚生省としても何かの指導的な役割りを果たしていただく必要があるだろう。現にいまでも示談に持ち込もうという動きが個人の医師からもあるし、医師会からも行なわれつつある。これはもらったほうもあとでいやな思いをするし、出した医師会のほうも全くあとでむだになるだろうと私思いますので、これは的確な指導をすべきではないかというふうに考えることが三つ目であります。  それから、一番最後にこの問題でお答えをいただきたいのは、注射液の溶血性の問題についてでございます。現在、これは東北大の赤石教授が百九十種の注射液調査をしまして、百十九種が溶血性がある。もちろん溶血性も、弱溶血性もあり強溶血性があり、強溶血性がこの種の問題を起こしている。クロマイほか二つの、特に注射液三種類が最もこの短縮症患者に使われたという実績もある。この溶血性というものが注射液の中にあるのに、現在はそれが薬事法によっても、薬局方によっても何ら表示をされていない。注射液一つも溶血性ありということが書いてない、表示されていないままに放置されている。これは厚生省として緊急に何らかの強力な指示をして、注射液に対する溶血性の有無というものがきちっと明示されるようなことだけはせめてやらないといけないのじゃないかということが一つ。  それから、万が一この注射液による大腿四頭筋短縮症という原因があるのだということが厚生省調査によって明瞭になれば、第二のサリドマイド事件と同じような大きな問題に発展する可能性がある。国と製薬会社の責任は当然問われなければいけない重大問題になるだろうと思いますし、私、しろうとでわかりませんが、これはたぶんその方向に発展していくんじゃないだろうかというような感じすらいたします。そこで、この十七日私が御質問申し上げておりましたあの最中に審議会があって、その副作用調査会で、厚生省も御諮問になって検討をされたようでございますが、その検討の結果は、どうもまだ、この注射液による溶血性によるのが原因だと断定することは時期尚早だというような答えが出たように仄聞しているんですが、一体副作用調査会における審議の結果がどうなったのか。  いま私が一ぺんに申し上げましたが、この溶血性問題を通じてやがて結論は出ますが、結論が出たときには大問題になるんじゃないかと思いますが、そうお思いになりますかどうか。  それから、今日の段階では少なくとも注射液に対して溶血性の有無の表示をきちっとさせるということが必要ではないかと思いますことを、最初から申し上げますと六点に分けて、一括御答弁をいただきたい。
  28. 滝沢正

    滝沢政府委員 先日も社労における先生からの御質問の中で、研究班資料につきましては、確認をいたしませんでたいへん失礼をいたしましたが、秘書の方に届けてございますけれども、その内容は、先生御指摘のような大きなプロジェクトチームという問題については、現実の問題として四十九年度は医療助成金の中で主として治療法の開発——原因につきましては、後ほど薬務局長から溶血性の問題等お答えがあると思いますけれども、これらの問題を含めまして研究を総合的に進めるということでございまして、整形外科医を中心として日大の佐藤整形外科学の教授を班長にいたします研究班をつくりまして、これが病状の時期に応じた治療法の開発、それから先生御指摘のように子供の成長に応じた治療法の開発、こういうふうな形で、主として当面は治療の問題に中心を置いて進めたいと思うのでございます。  実態の全国調査につきましては、医療関係者の御意見を聞きましても、やはり全国的に各診療所等も含めての調査はきわめて困難でございますので、主たる整形外科にこれらの患者が参る場合、そのケースがどの程度あるかということをこの研究班で実施していただくことにいたしております。三歳児検診等で実際はどの程度つかめるか。親の気持ちといたしましても、身体に障害のある子供を一般的な健康診断などにはなかなか連れてまいらない場合もございますので、そういう点のことも踏まえますと、当面医療機関を通じての調査をいたしたいと考えております。  それから病歴の問題につきましては、法律的には医師の医療にかかわる秘密保持の立場から、病歴について、一般的にはこれを公開するという形をとることは困難でございますが、今回の山梨県の事件のような場合につきましては、山梨医師会として県の委嘱を受けまして、全患者病歴を詳細に点検いたしたのでございまして、特に生後何カ月で初回注射を受けたか、それと重症度との関係、注射回数と重症度との関係、注射日数と重症度との関係、注射液重症度との関係、こういうようなことで、中には軽症で、平均注射本数よりはるかに少ない注射によってかえって重症となっておったり、反対に重症の例の方が、平均注射回数よりも多い注射を受けながら軽症である、重症例よりも平均注射回数が多いにもかかわらず軽症であるというような例も含めまして、この点が解明されれば、この原因の究明がさらに明快になるであろうということは、溶血性の問題等が新たに提起されてまいっておりますので、これらとの関連が、原因究明の研究としては今後の重要な課題だと思うのでございます。  岡谷の例につきましては、先生御指摘のように、先生の地元の問題で、現実にそのカルテの問題等が提出されないということでありますならば、私は県を通じまして、医師会としてこのような重要な課題に対する対処のしかたを、山梨県と同様に考えていただくことについて検討いたしたいというふうに思っておるわけでございます。  それから示談の問題でございますが、これにつきましては、一般的に医療事故の場合の示談というケースはかなり多いのでございます。先生が後段に原因論に触れて、いろいろ将来への発展をお考えになりながら、現在示談で済ましておるという姿に対する御批判があることは十分わかるわけでございますが、一般的に日本医師会としては、医療事故に対して、百万円以下の場合は各県ごとにそのような医療事故の保険制度に基づいて対処いたすほか、なおそれ以上の大きな事故に対しましては、日本医師会会員であるものに対して一倍円までの範囲における医療事故に対する補償金の保険制度が創設されて、発足いたしております。  私は金額の問題ではないと思いますけれども、今後この医療の内容と原因、結果、こういうものを踏まえて、示談で済ましておるという空気に対する先生の御批判につきましては、十分わかるわけでございます。福井県等においても、二、三年前の話でございますけれども、平均的には幾らに相当しますか、総額約八百万円相当を一つの医療機関から親に支払ったという事例を聞いておりますので、そのように示談のような形でおさめているという事例はわれわれも承知いたしておるわけでございますが、やはりこのケースにつきましては、今後の原因究明の発展とのかね合いにおいて解決するのが妥当であろうというふうに考えるわけでございます。  溶血性問題につきましては、薬務局長よりお答えがあると思います。
  29. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先生の御質問の中の医薬品、注射薬の溶血性等の問題につきましてお答えいたします。  御指摘の大腿四頭筋短縮症に関連いたしまして東北大学の赤石教授から御指摘がありましたのは、御承知のように注射薬液のPH、それから浸透圧、溶血性、そういった問題について何らかの情報が必要ではないか、組織障害と関係があるのではないかというような意味の御指摘であったと承知いたしております。私ども、さっそく赤石教授から、私どもの担当の専門職員が直接お話も伺いまして、御意見内容承知いたしました上で、中央薬事審議会の副作用調査会、これは東大名誉教授の吉利先生を座長といたしまして、二十二名の各分野の臨床の専門家で大体構成されておりますが、そういったところで御検討いただきまして、PHと浸透圧につきましてはできるだけ人体の体液に近いことが望まれるわけでございますけれども、医薬品の特性によりまして必ずしもそういうふうにできない、そういうふうにいたしますと、効力が減殺されるものがございますので、そういったものについてはできるだけ早く品質の安定をはかると同時に、生体の条件に近づける努力をする。それからその数値につきましては、できるだけ早く添付文書の性状の項に記載するようにということで、これは技術的に数値のとり方がいろいろあるようでございまして、確立された内容でないとこれまた役に立たないことになりますので、どういう形で記載させるかを至急衛生試験所等にも相談いたしまして、検討いたしております。  それから溶血性の問題につきましては、調査会の御意見といたしましては、溶血性の高い注射液が組織障害を起こす可能性が高い、そういうふうに直ちに結びつけることは、先生の御指摘のようにまだちょっと言えないのではないか。いま医務局長からお答えいたしましたように、注射の本数と障害というものがかなり違っておる例もあるというようなこともあるわけでございます。ただ、やはり赤石先生の御指摘のとおり、溶血性が組織障害の程度を知る一つの医薬品の指標になる、そういう意味先生御指摘のように、何らかの情報を医師に提供するということは必要であろうということでございます。そういう意味注射液による組織障害の可能性と申しますか、おそれを調べるための試験方法を至急確立いたしまして、その試験方法に基づいて、そういうおそれのある注射液について何らかの統一的な情報を添付文書に記載させるということが必要であるという御意見をいただいておりまして、その試験方法の確立につきまして、専門家の御意見もいただきながら、至急検討を開始しておる段階でございます。できるだけそういったことを早く結論を得まして、統一的に添付文書に記載させるように指導いたしたい、そのように考えております。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 溶血性の問題だけは、いま私が申し上げたように、少なくとも調査段階だから、結果が出てから添付書類に云々というのじゃなくて、やはり注射液そのものに溶血性ありというぐらいな表示はさせるようにしておいたほうが、医者によってはもう注意して使わない、病気によっては避けておこう、勉強してもう避けている人が一ぱいいるのですが、経過措置としては注射液にそういう表示を緊急にやる必要があるのではないかというのが一つ、もう一度お答え願いたい。  それからもう一点は、滝沢局長のお話にありました、メンバーのリストを私のところに届けていただいたそうで、これはたいへん申しわけないのですが、まだ秘書から聞いていない。私が忙がしくて飛び回っているせいで、これは怠慢でしたからおわびをして、あとでよく見ます。  いまの病歴の問題ですが、山梨県の場合、県段階でちゃんと掌握してきちっと見ている、こうおっしゃる。ところが、県だとか医師会はそれを自由に見ることができても、患者の側の保護の立場に立つ、たとえば高橋先生のような場合でも、患者自体が高橋先生と一緒にそれを要求していっても全部拒否されているのが実情なんです。実情はそうされているのです。しかも長野県の場合なんか、岡谷の場合なんかにはその数すら正式に言わない。こういう問題の調査、あるいは真剣に、これを自発的に、患者とともに何とかしょうといって調査にあたろうとするときには、医者でない限り見せてもしようがないでしょうが、この種の先生が見せろと言ったときには、その病歴はやはりちゃんと見せる。県庁が見せようと、どこで集約して見せようと、個人の医師が見せようとかまいませんが、見せるようにすることがどうしても必要だという意味です。お調べいただくとわかりますが、それは拒否されています。それが非常に大きな障害になっていますので、この点は局長、もう一度よく調べて、即刻そういうことがないように手配をしていただくということだけ、この二点、もう一度お二人から一点ずつお答えいただきたい。簡潔にお願いします。
  31. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ちょっと先ほど御説明が不十分であったかと存じます。  実は赤石先生の溶血性の試験は、たしか赤血球とまぜてあと遠心分離機にかけるというような方法をおとりになったように伺っておりますが、溶血性を示す指標としてどういうものを使うか、また溶血性自体の試験方法についてもいままであまり報告もございませんで、確立されておりません。  それからもう一つは溶血性と、今度起こっておりますのはこれは筋肉の組織障害でございまして、その溶血性が強いということは、必ずしも筋肉のネフローゼと申しますか、壊死を起こすという可能性と直接結びつくかどうかという点について、臨床の専門の先生方のかなりいろいろの御議論がございまして、したがって、表示をいたします以上は、お医者さんがその数値を見まして、医療上通常の医学常識に従いましてそれが役に立つものでないと、溶血性だけと申しましても、溶血性と組織障害とが必ずしも結びついていない段階ではかえって医療上の混乱を起こすおそれもあるのではないか、そういうことも考えられますので、いま申し上げました二点の試験方法につきまして、これは至急、なるべく正確な方法を確立いたしまして記載させるようにしたい、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。できるだけ早くいたしますように努力をいたします。
  32. 滝沢正

    滝沢政府委員 一般的にカルテの取り扱いでございますが、これにつきましては、要求して、渡さなければならないということにはなっておりませんが、本人に対して診療内容について十分説明する義務はあると思うのでございます。高橋晄正先生という具体的な例が出ましたが、第三者に対しては、これは秘密保持の立場から、これをお見せするというようなことについては、一般的には医師であるといえとも第三者という立場——これはまた裁判とかいろいろの事態が別になれば、それぞれの関係でそれぞれの法律なり規則に基づいて提示がなされるということになろうと思うのでございます。  それから岡谷の場合非常に特徴的でございますのは、百十二名の検診をいたしました結果、要治療者が八名でございます。二百数十名に及ぶ山梨の場合がほとんど一医療機関に集中しておって、それから福井の場合もいままでの集団発生はほとんど一、二の医療機関に集中しているという実態でございますのに、岡谷の場合はこの八名が五つの医療機関に分布しておるという点、それから要観察が十六名ということ。そのほかに中野保健所管内から、信州大学の検診の結果、要治療と判定されたものが一名出ておるということで、私は、今回の長野県の事例は、わが国全体にこのような問題の発生というものを予測される一つの重要な問題を提起しておると思うのでございまして、この点については県当局とも十分連絡いたしまして、医師会長にもお願いいたしまして十分な調査をしていただく。山梨の例のように一人一人の注射回数等が整理された調査が完了いたしておりますので、この点については県のいろいろの判断もございましょうが、私の立場では非常に貴重な事例で、貴重と申しましてはいろいろ意味が受け取り方があると思いますけれども、今回の大腿四頭筋の事例としては医療機関が多数にまたがっておるということは、注射液の問題、あるいは回数、年齢、注射部位、そういうことも含めて非常に将来の参考になる事例であろうと思うので、この点について詳細な調査お願いいたしたいというふうに思っておりますし、また、われわれの調査班としてもこの問題は当然調査の対象にする考え方に立ちたいと思っておるわけでございます。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わりますが、いま局長のおっしゃった中でうなずけないのは、医師といえども個人の病歴を見せることはできない、当然そうあってしかるべきである。しかし、今回のよう一に国家的にこの問題の究明に当たろうといっているときに、高橋先生患者の保護者のような立場で一緒に行って見せてくれというときに、それを見せないということはあってはいけないと私は思う。患者が行って、そうしてカルテを中心にひとつ説明を願いたいと言ったら、そこに高橋先生がいようが滝沢先生がいようが、拒否をするということはおかしいじゃないですか。そうしてはいけないということなんです。まして私は今回これほど——将来大問題になります。いままでのサリドマイドその他の多くの事案がございますが、それにも増して大問題になると、私はいやな意味で確信をしておりますが、何とか早くしてやらなければいけないというつもりで、皆さんもそのお考えでいるということになれば、当然のこと特別な、たとえば厚生省の了解のもとに何か添書でも持っていって、患者が行かなくても、この問題に真剣に取り組む先生方に対してはひとつ何とかして協力してやってくれという手配をしてやってでもやらなければいけない状況だろうと思う、現段階は。そういう状況ですから、患者と一緒に行ったときにそれも拒否する。患者全体が集団で行こうと個人で行こうとどうしようと、それに先生がついて行ったときに、そのカルテ中心に説明をしないというようなことはあってはいけないだろうと私は思うのですが、その点、くどいようですが、もう一度お答えをいただくのと、最後大臣から、お聞きのとおり、前回もお話を伺ったのでありますが、この問題は相当慎重に、しかも急速に大型な制度的な調査研究が進められませんと、非常に被害が潜在的に拡大をしている現状で、医師のほうはもうこりて勉強をして、まあまあ間違ってもかぜだ、熱が出た、クロマイだというようなばかなことをするような先生はもうないと思う。たとえ小児科であろうと普通の内科であろうと、ないと思うのですけれども、しかし、何といってもこの問題はきちっと厚生省を中心に、こうしなければいけない、こうあるべきだということと、何といっても患者を救済するのが第一義ですから、患者救済のためにはこうする、ああするということを特別に育成医療の問題にしてもやっていただくようにしなければいけないと前にもお願いいたしましたが、そういう意味ではもう一度大臣から思い切って、厚生省医務局長が担当でおやりになればいいと思うのでありますが、医務局長中心の大型なこの問題に取り組む姿勢が厚生省内にできて、そうしてそれを推進していくという御決意を承り、それを実行に移していただくようにお願いをして終わりたいと思いますので、まず局長から、次いで大臣から決意のほどをお伺いして終わります。
  34. 滝沢正

    滝沢政府委員 重ねて、具体的な場面を設定した場合の医師の協力について御要望がございましたが、この点につきましては、先ほど御説明いたしましたように、診療内容について説明することは義務はあると思うのでございまして、ただその場面場面の判断で医師がこれをどのように取り扱うかについて、われわれといたしましても強制的にお願いすることは困難でございまして、カルテを要求できる場合は、訴訟が行なわれたときに、裁判所が証拠保全の手続上これを強制することはできるのでございます。先生の御趣旨はよくわかりますが、この辺につきましては県のほうを通じまして、医師会なりあるいは個々の医師の具体的な判断、お気持ちなりを検討した上で、われわれも県の衛生部長を通じましてこれらの問題にできるだけ——要は全体を解明することが重要な問題でございますので、それぞれの医師の判断をお聞きした上で、どの程度のお考えを持っておるのか確かめて協力するように努力いたしたいというふうに考えております。
  35. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 大腿四頭筋短縮症のこの問題は、私は非常に重要な問題だと受けとめております。当初、実は私のほうも山梨とか福井とか、その程度の県だけかな、こう思っておったのでございますが、いろいろ調べてみますというと、そのほかにも長野にもあり、山形にもありというふうなことで、全国的にまたがっておる大きな問題だと思います。それは単に薬の問題なのか、あるいは個別的な医者の医療事故なのか、その辺もまだはっきりしていない面もあるわけでございます。  そこで、この点は私は非常に重要な問題だと受けとめておりますので、先ほど局長からもお答えいたしましたが、診療機関を通じて全国的に実態を把握する、これをまず急速にやりたいと思います。それと同時に、今回研究班を組織することにいたしたわけでございますが、その原因の究明はもとよりのこと、治療方法の解明等につきましても、厚生省においてできるだけの予算も注ぎ込みまして、全力を尽くして当たってまいりたいと思います。  それからまた、そういうふうな子供さん方の救済につきましては、先般の社労委員会でもお答えいたしましたが、できるだけ患者の個別的な家庭の事情、経済の事情等も十分頭に描きながら救済に全力を尽くしてまいりたい、かように考えております。  いずれにせよ、この問題は、私は相当やはり大きな深刻な問題だと思いますので、私もそういう決意でこの問題の究明に当たってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。  終わります。
  37. 臼井莊一

    臼井委員長 稲葉誠一君。
  38. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 最初に、医師の国家試験の問題が事前に漏れた、こういうふうなことの事態について、それからこの医師の国家試験にどういう問題点があるか、それに対して今後どういうふうに改善をしなければならないか、そういう点について、最後の、どういうふうに改善しなければならないかという点については、これは大臣のほうからまとめてお答えを願いたいと思います。あと政府委員でもけっこうですが、全部大臣答えてもけっこうです。
  39. 滝沢正

    滝沢政府委員 本年四月に行なわれました五十七回の医師の国家試験に関しまして、問題が漏洩したというふうな報道がございまして、厚生省に対しましても電話、投書等があったのでございます。大学に対しても協力をわれわれとしては至急求めまして、資料、情報の入手につとめたのでございまして、それからの分析、調査を行なうほかに、試験の結果につきましても集計をいたしまして種々の角度から分析を行ないましたが、現在までのところ、今回の試験についての不正行為があったと認められる事実は確認できないのでございまして、今後具体的に不正の事実が明らかにされた場合には、医師法の十五条にございます規定に基づきまして厳重に対処していくつもりでございます。ただ、この調査の過程におきまして、昨年の秋に行なわれました五十六回の医師の国家試験に関しましての情報がございまして、調査を行なってきたのでございますが、試験問題の事前漏洩というにはさらに事実の関係が明らかにされる必要がある状態でございまして、われわれの行政の範囲では限界がございますので、警察当局に調査お願いしておるというのが現状でございます。  改革につきましては、総括的には大臣からもお答えがあると思いますけれども、われわれとしては、全体を通じての抜本的な改善の問題は、春と秋という日程ができておりまして、当面秋の国家試験につきます改善策につきまして主として考えました点は、今回の事件にかんがみまして、百二十七人という試験委員が全部出題をするという仕組みは、これは責任をどうしても軽んずる傾向ができますので、今回、その百二十七名の任命しておる試験委員の中から三十四名を限定いたしまして、筆記試験の問題の作成を担当いたしてもらい、この委員名は公表するということにいたしております。そのほかに、試験委員長あるいは副委員長については、試験委員百二十七名の互選の形をとっておりましたが、責任を明らかにするために、医師部会の御意見を聞いた上で厚生大臣が委嘱するという形にいたしました。  そのほかにも、先生、問題点として、あるいは医学教育と国家試験の問題というようなことも意識に持たれるかと思いますが、そのとおりでございまして、国家試験のあり方、問題の作成のレベル、こういうようなものを含めまして、諸外国で実施しておりますような方式等も参考にいたしまして、これらにつきまして抜本的な改善をはかりたいというふうに考えて、審議会の御検討を引き続きお願いすることにいたしておるわけでございます。
  40. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 医師の国家試験の問題が事前に漏れたではないかといったふうな一部新聞の記事の報道があり、その後また私どものほうにたくさんの投書その他が参ったわけでございます。私ども厚生省におきましては、できるだけの努力をいたしまして、学校におけるいろいろな資料の提出も求めまして調査をいたしたわけでございますが、私どもは司法警察権を持って捜査しておるわけではございませんので、確実に漏れたという証拠をつかむというところまでは、断定するまでには至りません。しかし、こういうふうな問題でございますので、警察当局にもさらに厳正な調査お願いをいたしておりまして、警察当局におきましても必要な調査をいたしておると承知いたしておるような次第でございます。  そこで問題は、こういうふうな国民の健康と生命を預かる医師という職責、これはもうきわめて重要な問題でございます。その医師として仕事をやれるようになるかなれないかという重要な国家試験でございますから、あくまでもこれは厳正に行なっていかなければならぬ、いやしくも国民に一点の疑惑も抱かすようなことがあってはならない、こういうふうな考えでこの問題の処理に私は当たってまいりたいと思います。役所内で必要なことがありますならば処分もしなければなりませんでしょうし、実態の調査についても厳正にやっていかなければならぬ問題であろうと思います。  しかし、それだけじゃなしに、やはり今後試験の制度のあり方について国民から疑惑を抱かせないように、この際やっぱりはっきりした改善策を打ち出すということが最も大事な問題だと思います。いま医務局長から御説明ありましたように、百数十人の人々が出題をし、そしてまた幹事の委員の方がまた別にあってというようなことで、何と申しますか、試験問題を回り持ちして歩くような形になっておりまして、しかもまた責任の所在がどこにあるんだかはっきりしないというふうな問題もあります。それの試験委員長は各私大の回り持ちだと、こういったふうなこともあったりいたしますので、責任の所在を明らかにするということ、それから大ぜいのそういう人々に出題させなくても、責任をもって出題をし得る人を限定してやっていくということであれば、それもいいことであります。さらにまた、これは国家試験でございますから、厚生省が責任を持つというのでなければなりませんので、各私立大学の先生方回り持ちでやっていくんだというやり方はどう考えてもおかしい。そこで、厚生大臣のほうから直接試験委員長お願いするというようなことにして、問題の作成について厳正にすると同時に、それが漏れないように責任の所在を明らかにするというようなことで、自後の改善策を確立していくようにいたしたいと思います。  したがって、過去のいろいろなそういう問題の究明も大事でございますが、要は、将来国民医師の国家試験に疑惑を抱かせないようにするということが基本である、こういう考え方で当面の秋の試験の問題につきましても改善の策を講じましたが、恒久的な対策につきましても、医師部会等の御意見も聞きながら、国民に疑惑を抱かせないような試験制度の確立に努力をいたしてまいりたいと、かよう考えておる次第でございます。
  41. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 一応それはそれとして、時間の関係もあるものですからAF2の問題に入りたい、こう思うのですが、このAF2とかトフロンとか、私どもが聞いても、率直に言ってよくわからないんですよね。だから、ひとつまず、これはだれですか、わかりやすく、しろうとにわかるように、あまり長く説明されても困るけれども、ちょっと説明してください。
  42. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御質問になりましたAF2、あるいはトフロン、これは同じ物質でございまして、普通AF2といっておりますが、商品名がトフロンということになっております。これは殺菌剤でございまして、とうふ、あるいは魚肉練り製品あるいはハム、ソーセージ、そういった肉製品に、防腐作用を持ったものとしてその使用が認められている物質でございます。
  43. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、この国立遺伝研究所というのが三島にあるんですか、これがどういうものかということをまずお聞きしますが、そこから四十八年三月十三日付で、そこの代表、部長をやっているんですか、田島弥太郎という方ですね、その方のお名前であなたあてに手紙が来ておるということがいわれているのですね。それは「まだ研究は完了にいたらないが、AF−2が強力な突然変異作用をもつことが判明したので、この物質がソーセージその他の加工食品の防腐剤として広く利用されている現状にかんがみ、人間に対し遺伝的危険性が憂慮されるので、至急検討の上善処されるよう御注意申し上げる。」という趣旨だ、こういうのですが、それはそのとおりかどうかわかりませんよ。  まず、国立遺伝研究所というものはどういうものかということが一つと、それから、そこからいま私の読み上げたような、これは全体の中の要約でしょうから多少違うかもわかりませんが、趣旨の手紙が、あなた、局長あてに来たかどうかということですね。それに対してあなたのほうは一体どうしたのかということをお聞きをしたいと思います。
  44. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 第一点の国立遺伝研究所のことを申し上げますと、これは文部省の所管の研究所でございまして、生物の遺伝の研究を行なっておるというふうに聞いております。  それで、昭和四十八年二月に、国立遺伝研究所の賀田という先生でございますが、賀田博士から私のほうに対しまして、食品添加物のうちAF2のバクテリア、細菌に対する突然変異性を発見したとの通報を受けたわけでございまして、その内容は、ただいま先生から御指摘になったような大体の内容でございます。  この情報に基づきまして、厚生省では昭和四十八年の三月及び五月に、この手紙をよこされました賀田先生をはじめといたしまして、遺伝、病理、毒性、微生物学などの専門家を招集いたしまして賀田先生からその研究の内容の報告をお聞きいたしたわけでございます。で、この研究の内容を開くと同時に、今後どういうふうにこの問題を取り扱ったらいいであろうかということを検討いたしたわけでございまして、この結果、研究班を設置して、賀田博士らの行ないました研究をさらに完全なものと申し上げましょうか、さらに追及する必要があるというような提案がその際なされたわけでございます。  そこで、四十八年九月に食品衛生調査会の添加物部会と毒性部会の合同部会が開催されたわけでございますが、その両部会にこの三月及び五月の研究班の結果を御報告申し上げまして、今後の取り扱いを御相談いたしたわけでございますが、この研究班を設置する必要があるであろうという御意見が出されたわけでございまして、この御意見に基づきまして食品衛生調査研究委託費という、われわれそういった研究を行なうための委託費を持っておりますが、これを四十八年度分として支出いたしまして、九月二十六日にこの研究班を発足させまして、その後この研究を実施している、かような経過になっております。
  45. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この賀田というのは、謹賀新年の賀に、たんぼの田という人ですね。田島さんというのは部長なんですか。まあ、どちらのあれでもいいのですが、その人の名前で来て、それに対して厚生省からは何ら返事もしなかった、こういうのではないのですか。それが一つ。  そのためにこの国立遺伝研究所では、そのころ新聞社の方にいろいろ前もってお話しをしながら、その内容をお話しした。新聞に出たのは九月二十二日ですか、そういうようなことに経過はなっておるのではないですか。いまあなたのおっしゃったのとはちょっと違うようにも思うのですが……。
  46. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 その、昨年われわれが受け取りました文書に対しましての回答は出しておりません。これは先生御指摘のとおりでございますが、この貴重な御意見をちょうだいしたわけでございますので、賀田先生にも御出席願いまして、厚生省のほうでいろいろ研究班を編成いたしまして御検討を願っておる、かような状況でございます。
  47. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは三島のほうの内部の連絡が、あるいはちょっと悪かったのかもわかりませんね。よくわかりません。田島さんが何かアメリカへ行くとかなんとかいうことでごたごたしておったか何かですね。  それはそれとして、もう一つ、この薬が四十年五月六日、第八回の添加物と毒性の合同部会で、認可というんですか許可というんですか、そこでいろいろ決定されたようですけれども、そのときに付帯条件というのが五つついていますね。付帯意見ならわかるけれども、こういうような条件を満たした場合に初めてそれを認可するというか許可するということで、そういう付帯条件というものが五つついているのですね。それが何かはあと説明してもらいますが、それはちゃんとした実験をされた結果を見て決定してよかったのじゃないですか。どうもそこら辺のところが釈然としないという議論が一つありますね。  それから、その付帯条件というものが全然履行されてないのじゃないですか。たとえば、まあいろいろのがありますが、それはあなたのほうで説明してもらいましょうか。一、二、三、四、五、五つあるけれども、生体内変化の問題、それから食品中における化学変化の追及、それからダイコクネズミの雌についての慢性毒性試験だとか、二世代に及ぼす影響、腸内細菌に及ぼす影響とか、いろいろありますね。これをその後、その会社ではどういうふうに実験というか、やったのですか、どういう報告が来ていますか。
  48. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 このAF2が食品衛生調査会で審議されまして、第八回が昭和四十年五月六日、これは先生御指摘のとおりでございますが、その五月六日の添加物・毒性合同部会で審議をされまして、ここで一応の結論を得て答申を得たわけでございまして、この答申に基づきまして厚生大臣が添加物として指定をする、かような経過をたどっておるわけでございます。  それで、昭和四十年五月六日のこの合同部会におきまして可決される際、ただいま先生御指摘の五つの付帯条件がついたわけでございます。  もう一度申し上げますと、生体内変化、それからダイコクネズミの雌についての慢性毒性試験、二世代に及ぼす影響、食品中における化学変化、五番目といたしまして腸内細菌叢に及ぼす影響、かような五つの付帯条件がつけられたわけでございますが、この際の議事録を見ておりますと、「できれば期限を附して指定し、その間に指定基準にそった試験を行なうべきものと考えるが、法規的に期限付指定が不可能であるので、次の試験を行なうことを条件として認める」これはその当時の記録でございますけれども、一応指定をしておいてこの条件を満たすような実験をさらに継続すべきである、かような御答申であったわけでございまして、この五つの付帯条件のうち、その後四つの付帯条件につきましてはすでに報告を受けておるわけでございます。その一つのできていない付帯条件が、最後の腸内細菌叢に及ぼす影響という点で、この実験がまだ完了いたしておりません。ただ、これは、いろいろな学者の御意見等を聞きました場合に、試験方法そのものがまだ非常に未開発であってなかなかこの実験ができないということでございまして、現在いろいろ実験を継続中でございますが、五番目の付帯条件についてまだ結論を得ておりません。他の四つにつきましてはすでに報告を受けている、かような状態でございます。
  49. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その報告を受けているというのは、どういう報告を受けているんですか。問題はそこですよ。実際はやってないんじゃないんですか。やってないという報告、あるいはやったとしてもきわめて不完全な形での報告を受けているんじゃないですか。それを一応説明してほしいし、あとで全部その報告を資料として出してほしいのですが、それも問題ですね。  それから、いま腸内細菌に及ぼす影響とかそういうふうなことは、いま学問的にできないということがわかっているんなら、そんなものを付帯条件にするのはおかしいじゃないですか。なぜそんなにまで急いでやらなければならなかったかということですよ。これは会社側から頼まれたのでしょう。それが一つの問題じゃないんですか。  それからもう一つは、四十年の七月にWHOとFAOの新しい基準に沿ってきまるんでしょう。だから、きまるときびしくなるからその前にきめないといけないというので、あわててやったんじゃないですか。それが一つ理由でしょう。  それからもう一つは、何か会社側の特許の関係で、特許が切れちゃうから、いまのうちに許可にならないと、ほかの業者が一ぱい入ってきてやられてしまうから早くしてくれと頼まれたのでしょう。はっきりしなさいよ。
  50. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 この付帯条件のうち四つの実験につきましては、すでに学会等にも発表されたものでございます。それで、この報告につきましてはまた後ほど先生にお届けいたしたいと思っております。
  51. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ここで一応要点だけ発表してよ。あまりこまかいやつはわからないけれども
  52. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ちょっと経過を申し上げます。  それから、この判定基準をめぐっての問題でございますが、FAO、WHOの食品添加物の判定の基準というものがあるわけでございますが、これは時間的な経過で申し上げますと、確かにただいま先生御指摘のような経過をたどっておるわけでございますが、すでにその案につきましてはわれわれのほうでも当時手に入れておったわけでございまして、審議会の審議の中におきましては、このWHO、FAOの判定基準案に従って検討を行なっているというふうに聞いております。
  53. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あとでこまかいそういうような報告や何かは出してもらいたいと思うのですが、私の聞いている範囲では、たとえば食品中における化学変化の追及なんかも十分に行なわれてないんじゃないですか。それからダイコクネズミの雌についての慢性毒性試験というのも、許可後にも行なわれてないんじゃないですか。これは第一、付帯条件ですよ。付帯意見なら話はわかるけれども、付帯条件をつけてこういうふうなことをやったらば許可するなんて、そんなのはおかしいですよ。それを全部やって、完全なものを確認してから許可するのがあたりまえですよ。それでなかったら、もし人体にいろいろな害があったら厚生省はどうするのですか。おかしいよ、それは。それは大臣、どういうふうに考えるのですか。大臣いま聞いてなかったかもわからぬけれどもあとで聞いてまとめて答えてもらいたいけれども、おかしいよ、これは。だからこれは疑惑を持たれるのですよ。まあ、あとでまた聞きますがね。  それから、よくわかりませんが、手続がこれまた問題のようにいうのもあるんですがね。今度、郡司という人の裁判がありましたね。これは無罪になった。この無罪のなり方についていろいろ議論があるわね。厚生省厚生省なりにおれのほうが勝ったんだと言うかもわからぬし、こっちの人はこっちが勝ったと言うかもわからぬ。まあ勝ったということばは俗なことばだけれどもあとでぼくのポイントを説明しますがね。それは別として、この裁判に出た資料厚生省から裁判所に出したAF2に対する学者たちの研究資料、これは半分ぐらいは作成年月日も何にも入ってないし、厚生省で受け付けた年月日も記入されてないというんじゃないの。どうです、その点は。わからなければあとでもいいけれども
  54. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 どの資料がいつ受け取られたか、こまかい点、現在ちょっと手持ち資料がございませんので、また後ほど調べまして御報告を申し上げます。
  55. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 四十九年の四月二十五日に東京地裁で郡司篤孝という人の裁判があった。この人は「危険な食品」という本を書いた人だ。この人の偽計業務妨害の裁判があって、これは無罪になった。確定した。調べたら確定したそうですね。そのときにあなたのほうから出した資料というのは、半分ぐらいは、いま言ったように作成年月日も記入されてないし、厚生省の受け付け年月日も記入されてないというんですね。これはあとで調べてください。  それからもう一つの問題は、厚生大臣諮問機関として食品衛生調査会というのがあるんでしょう。これには食品衛生調査会運営規程というのがあって、そういう省令があって、その規程では六つの部会を置くことになっており、三条では「調査会において、別段の定めをした場合の外は、常任委員会の議決を調査会の決議とする」というふうになっているんだけれども、この常任委員会にかけられてないんだということをいう人がありますね。  それから、食品衛生調査会が諮問という成規な手続をしないで行なわれているんだということをいう人もあるんですがね。もっともあなたのほうの小島という食品化学課長は、諮問されたようなことを言ってはいるんですがね。裁判所に提出された書類とか裁判所が厚生省に照会した結果によっても、AF2については諮問の手続はとられておらないというふうにいっておるんですよ。これはどうですか。まあどっちかの間違いかもわかりませんが、いまわからなければ、あとでもいいですから調べてください。
  56. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 AF2の指定の際、食品衛生調査会に諮問したかいなかという点でございますが、これは正式の諮問の形をとっていないことは事実でございます。当時の取り扱いといたしまして、必ずしも常任委員会にかけるというような取り扱いをしていなかったものもあるようでございますが、そういったことで、当時現実の姿といたしましては正式の諮問の形はとっておりません。で、法律的に、こういった添加物の指定に際しまして食品衛生調査会の答申を得てこれを決定するというのは、昭和四十七年の食品衛生法の改正のときにそういうふうに明文化されたわけでございます。
  57. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 厚生省に国立予防衛生研究所というのがあるんですか。これはまああるんでしょう。そこの人たちが、本件に関連をして何かことしの五月に発表することになっているんですか。これはまだよくわかりませんが、これは目黒にあるんですね。この国立予防衛生研究所の食品衛生部の三人の方が、名前は言いませんが、AF2の毒性について食品衛生学会で報告をするということが伝えられておりますね。これはどういうふうになったのですか。  これを見ると次のようなことを報告するようにとれるのですがね。一つは、AF2というのは、日光直射と加熱でトランス型からシス型に変わり、また成分不明の分解産物を生ずる。それから、AF2の水溶液を水蒸気蒸留して得られる蒸気中にAF2が証明される。AF2をモルモットの皮膚に塗布六十日で、その挙動の狂暴化と肝細胞の核分裂像の増加が見られる云々と、いろいろなことをいっております。これはどういうふうになったんですか。
  58. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 厚生省の付属機関として国立予防衛生研究所、これは主として細菌あるいは伝染病のほうの研究をやっておる研究所でございますが、これがございます。その中に食品衛生部という部がございまして、そこの三人の研究員からAF2の、これはただいま先生の御指摘になりましたような内容のこともございましたが、そのほかにも肝臓内における分解、こういったものを含めまして、この五月十六日に日本食品衛生学会、こういう学会がございますが、その学会に発表をしております。  その内容につきましては、主といたしまして、従来このAF2という物質が肝臓で分解されまして毒性がなくなるという、これは大阪大学の宮地教授でございますが、宮地教授の論文があったわけでございます。これに対する実験をやったわけでございまして、この分解産物を使って、しかもそれをこの例は体外に取り出した細胞でございますが、培養細胞を使いましてその毒性を検査した、かような実験でございます。
  59. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いままでAF2が認められた、そして毒性がないというようなことは、いまあなたのおっしゃった宮地先生の鑑定が中心ですね。この裁判でもほとんどそうだ。そうすると、いま言ったように国立の遺伝研究所、それからあなたのほうの食品衛生部、予防衛生研究所でも、しろうと目にもいま言ったような毒性がないと断定はできないような形の問題が出てきているのじゃないですか。その点はどういうふうに考えられますか。
  60. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 この毒性の判定の問題は非常に学問的な問題も含んでおるわけでございますが、この国立遺伝研究所あるいは国立予防衛生研究所で実験いたしましたこの実験は、国立遺伝研のほうでは大腸菌及びカイコを使っての実験でございます。それから国立予防衛生研究所のほうの実験は、胎児の細胞、ヒーラー細胞と申しておりますが、そういった体外に取り出して培養いたしました細胞を使っての実験でございます。  先ほど先生御指摘のFAO、WHOの専門家委員会の評価のしかたの中でもいっておるわけでございますが、そういった物質の毒性を調べる際には、代謝系とわれわれは言っておりますが、たとえば肝臓なら肝臓でそういった物質がどういうふうに分解するか、そういった代謝系を持った動物を使っての実験をもとにして判断をしなければならない、かように判定基準がなっておるわけでございまして、その体外に取り出した細胞あるいはそういった代謝系を持たない細菌とか下等動物を使っての実験をそのまま哺乳動物には当てはめることができないという、かような判定基準になっておるわけでございますが、そういった基準はございますけれども、細菌なりあるいはカイコ、そういった生物に対するいろいろな作用というものは非常に貴重な実験結果でございますので、こういった実験結果等も今後早急に食品衛生調査会に提出いたしまして御検討を願う予定にしております。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 何だか、聞いていても歯切れが悪いですね。ぼくらはそういう点よくわからないものだから、聞いていてごまかされてしまうわけだけれども。  この裁判の中にも出てくるのですが、判決の理由の中に、AF2指定の当否について裁判所が判断していますね。こういう事件を裁判官が判断したからといって、それがオールマイティだという見方はしません。裁判官になかなかそこまでは無理だと思うのです、こういう特殊な事件だから。その中でもこういうふうに言っているんじゃないですか。「「AF−2」指定の当否について。若干の疑問点はあるが、ただちにAF−2の指定が不当であるとはいえない。これまでのところ、人体に有害であると断定する資料はないが、今後そのような資料が現われないという保障もない。」こう言っているんですね。  これもわかったようなわからないようなところがあるけれども、そうすると、今後そのような資料があらわれないという保障はないわけですね。大臣、人体に有害であるというような資料があらわれたということ——一〇〇%確実な形であらわれるかどうか別ですよ。そういうふうに疑われるようなものがあらわれたときには一体どうするのですか。そこら辺をきちっとしておかないと、事件が起きてしまってからではもうらちがあかないんじゃないですか。そこを大臣、どういうふうに考えますか。
  62. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 AF2の問題は、これは非常に科学的な問題でございまして、私どももほんとうはわからないのです。率直に言いましてわからないのです。これは学問的なことですから、私はほんとうは理解できません。ただ、問題は、宮地教授の論文が土台になって食品添加物として指定をされているわけであります。これに対して予研の研究員からいろいろな意見が出たり、それから遺伝研究所のほうからも意見が出たり、こういうわけでございますので、この問題はやはり科学的な問題ですから、科学的の場ではっきりさせていただくというのが私は一番適当だと思うのです。  そこで、実は今度食品調査会のほうの人選をだいぶ変えまして、新しく発足させることにいたしましたので、私はこの食品衛生調査会に、宮地論文並びにこれに反対の意見、そういうものを全部テーブルの上にのせまして再検討してくださいということをお願いをいたしました。その結果、どうもやはりこれは疑わしいなとか、これはやはりまずいぞとかいう、いろいろなそういう意見が出たら、これはやはり使用を禁止する以外にありません。これは私がかりに、それは安全性がないだとか安全性があるんだとか言ってみたって、これは国民は信用しませんよ、私はほんとのしろうとなんですから。ですから、食品調査会において科学的に再検討していただく。それは大体学者さん方でございますから、いろいろな研究の前提条件とかその他みんな理解できる問題でございますから、調査会の専門家の方々に再検討お願いいたしまして、しかもその結果をなるべく早く出してください、その結果を待って、疑わしければ使用を禁止する、それはやむを得ない、私はかように考えておる次第でございます。
  63. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 問題は、そういうのを待ってきめるということじゃなくて、そういうことがかりに厚生省自身の判断の中で考えられるならば、いまの段階で使用について禁止をするとかあるいは自粛を求めるとか、そういう形をやっていかないと、あとでとんでもないことになってしまうんじゃないですか。それが一つですよ。いいですか。いつも厚生省は、そういう点について後手後手に回っているんじゃないの。  もう一つ、判決宣告後に、裁判官がこれは訓戒をしたわけだ。これは別に法律的な効力があるわけじゃありませんからね。それは郡司さんという人に対して、いろいろ将来のことを確かめたり何かしているのですが、その中でもこういうことが出てきておりますね。「被告人の評論活動の警世的意味は、裁判所も評価しないわけではなく、食品添加物の許可・指定は、国民の健康にとってまことに重大なものであるから、関係当局は、その取扱いにあたり、国民の健康にいささかの不安も与えないよう、また、審議過程や毒性に関するデーターを公開して広く学識経験者の批判をあおぐような配慮をすることが望ましい。」こう言っておりますよ。  ここですよ、問題は。いままで厚生省がいろいろ苦心はしてきたんでしょうけれども、すべてが密室の中でそういうことが行なわれている。そうじゃなくて、その審議の過程や毒性に関するデータを公開して広く学識経験者の批判を仰ぐ、こういうフランクな態度が厚生省に必要ではないか、こう私は思うのです。この点については大臣どういうふうにお考えでしょうか。
  64. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 食品についての安全性の問題毒性の問題については、専門調査会においていろいろ検討を願うという仕組みになっておるわけでございますが、その調査会におけるいろいろなそういう結論を出すまでの必要な資料は、私はできるだけ公表していいと思っているのです、これは学問的な問題なんですから。しろうとがかってなことを言うのは別です、これは。そういう議論はあまり取り上げる必要はないと思いますが、専門家の批判を受けるということは、私はいいことだと思うのです。そういう意味において、私は今後できるだけ公表していくということは筋ではないか、かように考えております。  したがって、今度のAF2の問題などについても、その大阪の先生意見もありますし、反対の意見もあるというなら、それはやはり食品衛生調査会で科学的に十分検討していただいて、そしてこれを必要があったら発表する、私はそれでけっこうだ、今後ともそういうふうにいたしたいと思います。それが国民の食品に対するいろいろな——しろうとまでいろいろなことを言うわけですから、これはしろうと意見によって迷わされてはいけないと思うのです。ですから、科学的に正しいと思うならば勇気をもって発表する、私はそれは正しいことだ、かように考えております。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 しろうと意見に迷わされてはいけない、これは一つ考え方ですね。考え方だけれども、その根の中にひそんでいるのは、それはやはり官僚独善の考え方だな。国民に対する蔑視とは言わないけれども、そういう行政のあり方が問題を起こしてきているんじゃないか。しろうとの声だって、それは聞くべきものはやはり率直に聞かなきゃ……。この事件のことで、この本のことであなた方のほうはだいぶ頭に来ているんだと思うのだ。おそらくしゃくにさわっているんだろうと思うのだけれども、それはそうじゃないんで、家庭の主婦なり実際に扱っている人の声というものをやはり率直に聞くというのが、これは役所の態度ですよね。しろうとだからだめなんだ、おれたち専門家なんだ、おれたちがやるんだという考え方は、これは筋がおかしいと思う。また、大臣もそういう意味で、いま私が言ったような意味で言ったのではないと私は思います。思うけれども、それはちょっと危険な考え方だというふうに私は思うのです。  もう一つ出てくるのは、いろいろなものがありますが、パンの中に入っている、これはプロピオンというのですか、これは昭和三十八年に使用が許可になったのですか、これはどうなんですか、これもまた毒性が——ただ毒性という意味ですよ。毒性といったって許容量の問題もあるし、それはあなた、そこら辺のところはなかなかむずかしい問題ではあるけれども、その問題。  それから、パンの漂白の問題でいろいろ問題が出てきて、学童給食の場合だけは漂白しないようになったのですか。そこら辺のところはどうなんでしょうか。これは危険性とかなんとかないのですか。
  66. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 プロピオン酸の問題と漂白剤の問題、これはちょっと別の問題でございますが、このプロピオン酸は、これは世界的に非常に広く使われている添加物でございまして、これはWHO等でも非常に繁用されている添加物でございますので、WHO等でも非常にこの毒性の研究は進めておるわけでございまして、この、わが国において行なった実験におきましても、またWHO等で行ないました実験結果等によりましても、添加物としては非常に毒性の低い添加物というふうにわれわれ理解しておりますし、世界的な食品の流通ということからWHOが一日の最大摂取許容量と  いうものもきめておりまして、現段階におきましては、この許容量の範囲内でわれわれも使用を認めておる、かような状況でございます。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いろいろな食品の問題については、もちろんしろうとの人というか、国民全体が関心を持って、いろいろな本やなんか出ていますね。これはあなた方から見ると、何だこんな本は、科学的な根拠はないじゃないかというのはあるかもわかりませんよ。あるかもわからないけれども、それはそれなりに、やはり真実をうがっているものもあるのですから、そう一がいに、しろうとの言うことはだめだ、だめだという形で言っちゃうのは、これは私はおかしいと思うのです。  そこで、厚生白書を見たのですが、これは大臣、通告してないのですけれども、いいでしょう、こんなことはわかるでしょうから。四十八年の厚生白書を見ると、「転機に立つ社会保障」と書いてあるのです。「転機に立つ」とはどういう意味なんです。社会保障がどうして転機に立っているのだろうか、意味がちょっとよくわからない。内容を見てもわからない。
  68. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 まず、そのしろうとの話、私の気持ちを申し上げますと、科学的な議論になっておる問題でございますから、科学的な議論であるならば、やはり科学的に究明をしていただきたいということを言うているだけなんです。科学的な議論に対して、そう言っちゃ悪いですが、科学的な知識のない方が立ち向かってみてもどうにもなりませんね。科学的な議論ならばやはり科学的に議論していただく、これが私は筋だ、こういう意味なんです。だから、私がかってに判断するのはよろしくない、私は自分でそう思っているのです。私はほんとうに科学的には知らないんです。だから、安全性があるかないか、そういうことを判断する知識もございません。知らないんです、率直に言って。ですから調査会の専門家の方々お願いをしたい、こういうことを申し上げているだけでございます。ですから、その点は、しろうと方々がまた、生活体験を通していろいろ不平不満を訴えられる、私はそれはけっこうだと思っております。  それから、「転機に立つ」ということは、厚生行政というものは飛躍的に発展してはまいりましたけれども、形だけではない、中身のあるものにしていかなければならぬ。一応昨年、いろいろ皆さま方の御協力をいただいて、福祉の政策も非常に進展をしてまいりましたが、中身において不十分な点があるのではないか、中身の充実方向にいま厚生行政は転換していくべきではないか、こういうふうな趣旨に理解をいたしておるわけでございます。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは、厚生省として、中身のあるものの実現のためにうんと努力していただきたい、こう思うのです。その点については、ぼくは与党とか野党とかを抜きにして、国民の立場に立って十分努力しなければなりませんし、それは私どももお手伝いさしていただきたい、こう思うのです。  そこで、話は前に戻るのですが、医師の問題でこの前、文部大臣に聞きましたときには、十万人に百五十人というのはどうも再検討を要するのではないか、これはもっと上げる必要があるのではないかということを文部大臣は言っていたんですよ。それであなたとよく相談したいというようなことを言っておったのですが、その基準が一つです。  それから、この厚生白書を見ましても、全体としていま百十何人というところですかね、基準は。それで七大都市に多いわけでしょう。ほかに少ないとか、いろいろ問題がありますね。聞くところによると、五十八年度までに百五十人の割合にするんだとかいうのですが、その具体的な計画がどうなっているのかということ。  それからもう一つ問題になるのは、私ども朝早く起きて町なんかに行きますと、もう朝五時ごろから、小児科の前だとか歯医者さんの前を人が一ぱいいるんですよ。これは順番の札を待っているわけだ。ぼくもこの前、耳を悪くしてちょっと行ったけれでも、二時間待ちましたよ。順番の札をもらうのにね。そういうふうにみんな待たせられて、病院へ行くのに一日がかりです。そういうときに、開業医の人たちの立場とそれから公的病院——国立だとかその他の公的病院が一ぱいありますね。公的病院をつくるとすぐ開業医の人は反対をするというのも、ぼくはちょっとおかしいと思うんだけれども、いずれにしても、その開業医の人たちの分野とそういう公的病院の分野というものをはっきりされて、そうしてどの程度、どういうふうに医師充実していくかということについての考え方があれば、お聞かせを願いたいというふうに思います。
  70. 滝沢正

    滝沢政府委員 医師の偏在の問題は確かに具体的にはかなりございまして、人口十万単位で見ますというと、人口の急増地帯については完全に追いつかないための偏在、たとえば千葉、埼玉というようなところもございます。それから沖繩のように、人口の変動がないのに基本的に医師の不足しているという実態もございます。先生にも申し上げてございますように、昭和六十年で大体十万対百五十という医師の確保を当面お願いいたしまして、文部省におかれましても積極的な国公立の医大の設置あるいは一部私立医大の認可等によりまして、現在の一学年定員約六千九百というこのままで推移いたしましても、六十年には百五十四、五十八年で百五十台に入るという見込みが立っております。  各国とも、医師の必要数をどの程度に把握するか、設定するかということについては、適切な判断なり研究はいろいろあるようでございますが、多くは、大体人口に対する対比でもって計画を立てておられます。フランスにおきましてもアメリカにおきましても、大体一九六九年代の約二倍というのを将来の目標にいたしております。わが国におきましても、自民党の文教部会等を中心にいたしまして、まだ医大のない県に医大を設置するということで、これが進みますと、将来、一学年定員が現在の七千近い数字から八千台に入るというのが、ちょうどアメリカやフランスの倍増する——アメリカがちょうど日本の人口の約倍でございまして、その日本の八千という計画がアメリカでは一万六千くらいの計画を持っておりますので、そういう点では合致すると思うのでございますが、問題は医師の分布であるとか、あるいは後段御質問の機能の問題というようなことが、わが国において今後の重要な課題でございます。  わが国におきましては、医療法に基づきまして医師の標榜科名、内科とか小児科とかという医師の広告制限の条項がございまして、それに基づいて医療法で標榜する科名を認めておりますが、これに伴いますところの医師の資格制度については、諸外国に比しまして専門医あるいは標榜医に該当するような手続が十分になされていないという批判がございます。したがいまして内科、小児科というような標榜が一人の医師によってなされる。外国では小児科は小児科という専門制をやはり標榜していく、この辺のところに根本的な一つの問題点はあろうと思います。しかしながら、公的私的を含めまして、わが国においては医師の選択については、イギリスのようなホームドクター制、病気になったら自分の登録してある医師にまず相談して、そこから専門医に回されるという仕組みがございませんで、選択に自由性がございますので、非常に下世話なことばを使いますと、人気のある町のお医者さんには門前市をなすというような形をとるというようなこともございます。  それから公的と私的の機能の分化は、これはやはり公的については、資本投下を必要とするような困難な医療、あるいは先駆的に開拓すべき医療、あるいは一部医師の教育研修病院としての機能、こういうようなものはやはり公的な病院を中心に進める必要がございます。そういう点で、患者自身の行く先を公的病院であるとか、あるいは大病院はもう開業医をろ過して、通ってからでないとだめだというような議論はしてみましても、現状の社会情勢なり国民の医療に対する態度からいきますと、これをにわかに改めることは困難でございますし、また、そのこと自体が、国民制度的にあるいは法律的に強制することは非常にむずかしい問題だろうと思うのでございます。  いずれにいたしましても、われわれといたしましては、当面ある生活圏というようなものを中心にして、これをかりに医療圏と呼びますならば、広域市町村圏というような自治省の考え方どもございますし、そういうような生活の場というものを中心にした広域的な範囲において医療が、ほぼ常識的な医療は完結するようにしたいというのが地域医療計画考え方でございまして、そのときの機能は、そこに公私を問わずそれぞれ持っておる機能というものを十分生かしていただきたい。あるいは足りない分野がございますればそれも充足するように、たとえばその地域ではどうしても白内障の手術をするようなお医者さんがいないというような地域があるとするならば、少なくとも目のそのような手術ぐらいはできるようにしようとか、何か医療のレベルにおいての目標を定めました地域医療計画というものを策定するという方向で進んでおります。たとえば小児の外科というような非常にむずかしい手術は、これは大体県的に考えるか、あるいは東北ブロックで何カ所か可能のようにしていく。こういうようなことも踏まえまして公的と私的の医療機能の分野というものを、いわゆる国民に強制する立場じゃなくて、医療の質と量の問題とを勘案しながら整備していきたいというのがわれわれの考え方でございます。
  71. 臼井莊一

  72. 津川武一

    津川委員 精神障害者の治療体制を整備する、それの障害になっているものを排除するという立場から、若干の質問を展開してみます。  一番最初に、患者が治療を受ける環境、外来に通う場合、入院している場合、その患者がいろいろな意味で、心配なく治療を受けられるような治療環境が必要かと思うのですが、こういったことに対して厚生省の方針がありましたら聞かしていただきたいと思います。
  73. 滝沢正

    滝沢政府委員 精神障害者の問題でございますので、率直に申し上げますと、患者さんが外来、入院等で医療を受けられる環境について、わが国の現状の反省と将来の問題点という角度から私は申し上げてみたいと思うのでございますが、わが国の精神医療は、率直に言って、過去の姿はどちらかというと収容中心主義と申しますか、すべて入院させればいいというような概念が少し強かったように思うのでございます。最近の予算上の統計その他からいきましても、精神衛生法に基づきますいろいろな措置によって外来の患者数の増加が目立ってまいりまして、入院が一時よりも減少していくというような傾向は見られます。そういうことは私はたいへん好ましい方向であると思うのでございますが、その場合においてわが国の医療機関の受け入れは、どちらかというと精神医療は精神専門病院中心でございまして、もう少し一般病院の中に精神科的な医療というものを積極的に導入していく、そして専門医療機関との体系的な連携をもって対応することが必要であろう、そうすることによって、内科的な疾患とだけ見られない、そこに精神の問題も影響している内科疾患というような見方が、わが国の医療の中ではまだ十分でない。総合病院という中に精神科というものを入れていないということ。たいへん私率直に申し上げますと、私の担当している事項の中で総合病院という規定の中には、内科、外科、産婦人科、耳鼻科、眼科というふうなものは条件として入っておりますが、精神科が入っていないということは、私は少なくとも問題点で、将来の課題であろうというふうに思っております。
  74. 津川武一

    津川委員 古いことわざを持ち出す必要はないのですが、健全なる精神は健全なる身体に宿るという。精神障害者のいろいろの悩みや治療をおくらせているものに身体的な病気があるので、これはそういう点で総合的立場に立って精神障害者の治療をやるということがぜひ必要ですが、最近、去年の九月です、厚生大臣、精神科医全国共闘会議編「国家と狂気」という本が出ております。この中の二五三ページ、患者は病院で反管理闘争を起こしなさい、反治療闘争が原則である、院内諸規定を撤廃させる、すぐさま患者の武装、組織された暴力をつくれ、こういうのがあるのです。こういう医学を患者の中で許していいのかどうか。これは厚生省と文部省に答えていただきます。
  75. 滝沢正

    滝沢政府委員 先生の例示されましたその本を拝見いたしておりませんが、先生のおっしゃることは、特定な考え方方々が入院患者というものに対して、いまの入院医療に対する批判という意味も含めてのお考えだろうと思うのでございますが、やはり少なくとも精神医療も、他の一般医療と同じように医学に基づきまして行なわれるものでございますので、そのような考え方の程度なりあるいは現在の精神医療に対する批判というものは、いろいろの角度から、学問でございますからあり得ようと思うのでございますが、先生の御質問なり例示された趣旨から申しますと、かなり現状というものを極端に変えていこうというふうなお考えが出ているように思うのでございますが、この点につきましては、過去において精神病院というものは全部閉鎖制であったというものが、一部新しい試みとして開放病棟というふうなものがなされたというふうな事例を考えますと、いろいろな改善していくという方向をすべて否定することはできないと思うのでございますけれども、非常に極端な場合については、わが国の医学、医療の観点から十分この点については慎重に考える必要があろうというふうに思うのでございます。
  76. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 医学の中で精神神経科関係にも、もちろんまだ未開拓の分野もあろうかと思いますけれども、長い間じみちな研究に基づいて一定の治療方針があるわけでございます。その医師の治療方針に基づいて患者の治療に当たる。その際には当然適切な管理のもとに患者も服すべきである。そのことによって患者の身体的、精神的な疾患を適切になおすということは当然必要である、このように考えております。
  77. 津川武一

    津川委員 文部省、私の話したことを聞いてくれたのですか。私の指摘していることは、精神医学の内容として患者に武装させろということです、反治療闘争を起こさせろということ、こういう医学を——それは医学だから、何をやっても自由だろうけれども、これで日本の学問なり患者の医療が、患者にとってしあわせな社会復帰ができるのか。研究だからいいよ。意見だから自由だよ。だけれども、国家行政としては意見を持たなければならぬ。その意見を聞いているんです。いかがです。
  78. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 いま申しましたように、長い間のじみちな医学の研究がございまして、その積み上げで学界の皆さんが適切に評価されるかどうかということが私ども行政を行なう際の一番の指針になる、このように考えておる次第でございます。
  79. 津川武一

    津川委員 文部省のその立場が問題を混乱せしめている。現に東大の赤れんが、中で何をやられているか。二年前の予算委員会で私は指摘して、調べてこいと言った。あそこでは刃物医療、患者に刃物を持たしている。患者を武装させようという形で。こういう、いまあなたたちの、研究者の自由だからといってこの刃物医療を許しておくところに、あそこの患者が刃物で武装している。治療を拒否している。この現状を許しているのが、はしなくも教育課長のいまの答弁であります。二年前に指摘したことを調べたのか。このまま放置していくのか。放置しては絶対いけないのだが、いかがでございますか。
  80. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 二年前の委員会で、大学学術局長が刃物医療ということばを使いましたですけれども、これはいわゆる刃物医療と、私どもがそういうように俗っぽいことばで聞いておりまして、学問的にそういうものがあるのかないのか、学問的にそういう表現があるということは、私ども寡聞にして聞いていなかったわけでありますけれども、俗っぽい、私どもしろうとのことばとしてそのように答えたのであろう、こう考えておるわけでございます。  その後赤れんがにつきましては、大学学術局長から東大の学長に対しまして、積極的な措置を講じてすみやかに事態の改善をはかられるよう格段の努力お願いしますと、文書で依頼もしておるところでありますけれども、実態は先生御指摘のように、なかなか力及ばないでおるというのが現状でございます。
  81. 津川武一

    津川委員 文部省、あなたたちの、こういう刃物を持って患者が武装をするという状態、それを放置しておく、見のがしておくことに、こういうことが始まっているのであります。二年前に指摘してもまだこのままだ。したがって、すみやかにこの状態を調べて、この状態を解決するように処置して本委員会にまた報告してほしい、これが一つ。  質問を続けていきます。  精神病、精神障害者もしくはアルコール中毒、薬物中毒などの治療をするために、家族の協力がぜひ必要だと思うのです。家族とよく話し合いをして、医療の内容説明する。患者を病気に至らしめたものも検討する。患者を病気から立ち直らせる要素を検討する。社会復帰を検討する。こうなってくると、家族とよく相談しなければならぬ。医者も病院も一緒にやらなければならぬ。政府も、家族患者のことを案じてやる行為というものを支持してあげなければならぬ、こういう立場が必要だと思うのですが、こういうお考えをお持ちになっているのかどうか。この点で全国患者さんの家族が会などもつくっておりますので、これはやはり育てて、この人たちの意見を聞くことは、いい医療をするために、また患者の人権を守るためにきわめて必要と思うのですが、医療における患者との協調、共同、患者の組織の育成、これに対して厚生省はどのようにしておりますか、答えていただきたいのです。
  82. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 精神障害者の置かれている特殊な事情からいたしまして、精神障害者の家族の会というのは非常に重要なものだと思っております。中央には全国の法人組織の家族会がございますし、またそれぞれ各都道府県にも同じような仕組みがございます。したがいまして、私ども精神衛生対策の推進にあたりましては、こういう家族会の方々の御意見も十分拝聴しながらやっているところでありますし、また各都道府県におかれましても同じような方法をとって推進につとめてきているところでございます。
  83. 津川武一

    津川委員 厚生省の意向がよくわかりました。  ところで、先ほどの本です。この二五四ページに、患者を同意して入院させた、二十九条を申請した、この家族患者の敵である、病気をなおすことの敵である。家族との対決を家族会との組織的対立として表現していけ。官制家族会粉砕。こうして家族と対決せしめている。こういうのがこの人たちの言う精神科医全国共闘会議の医学なんです。こういう医学の意見発表も研究もそれは自由でしょうけれども、いま厚生省答えた方針からいって、こういう医療方針はどう思いますか。
  84. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 私、寡聞にして先生のその御本はまだ拝見しておりませんけれども、それはそれとしまして、やはり精神障害者の置かれた特殊な状況にかんがみまして、やはりその家族の方が、医療機関なり保健所なりあるいは私どものような行政機関とも十分連携をとって、精神障害者の健康回復に当たっていくということは非常に大事なことだと思っており、今後ともそういう方針で臨むつもりでございます。
  85. 津川武一

    津川委員 そうすると、同意入院させた人また二十九条を申請した人は患者の敵ではない。ああいう見方でなく、家族患者とよく相談して医療を進めていく、こういう考え方ですか。
  86. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 患者家族が一体になって、やはり精神障害者の健康回復につとめていくべきだと思っております。
  87. 津川武一

    津川委員 こういう、家族を敵として患者を組織して、あの東大の赤れんがでのさばらしている、これが精神科医全国共闘会議です。文部省、東大の赤れんがの実態を御存じでこのまま放置しておくつもりですか。
  88. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 去る四十七年の三月九日に東京大学総長あてに、積極的にこの改善措置を講ずべきであるということを文書で依頼いたしまして、その後再三病院長あるいは医学部長に、私ども局長なりあるいは担当の課長なりがいろいろ御相談をしながら指導していただいておるわけでございます。  その私どもの対策の方針といたしましては、赤れんがに入院する患者を当分の間他の医療施設に転移させるような措置はとれないだろうか、それから、診療科として正常な診療活動が行なわれる計画を逐一立てて、一つ一つ階段を登るように善処していけないものであろうか、そういうことをお願いしておるわけであります。それに基づいて病院長は再三両者と協議をして努力をしておられるようでございます。文部省としても、大学病院の管理を直接行なっておるわけではございませんので、管理責任者である病院長に指導をする、この手段で今後とも措置を続けてまいりたい、このように考えておる次第でございます。  それからなお、先ほど、いわゆる刃物の療法についての具体の事実については、先生に御報告いたしませんでしたけれども、その直後調べましたところ、四十七年の九月六日午後一時四十分ごろ、精神科の入院患者が清掃の担当者の竹田喜代子さんという人に刃物による恐怖感を与えた、そういう事故があったわけでございます。その事故を病院のほうで調べていただきまして、先生御指摘の点についても触れながらいろいろしたわけでありますけれども、それ以後はこういう事故は聞いていない、そういう実態でございました。  なお、その際に、それをいわゆる刃物療法というかどうか、これはまさにいわゆるということでありまして、医師がそういうように使うのか使わないのか、その辺になりますと、私ども事務的な面ではどうしてもそこのところ定義づけはむずかしい、そういう状態でございましたので、御報告いたします。
  89. 津川武一

    津川委員 二年間もまだその状態を続けさしておいて、さっきの刃物療法が続いているか続いていないか、事故が起きなければいいのじゃなくて、患者が持っているか、こういうふうに家族を敵とする患者の組織があるので、現実にこれを調べて、すみやかに報告してほしいと思うのです。  質問を続けていきます。作業療法ですが、日本の精神障害者の療法の中で薬物療法が非常にいまよくなりまして、非常によかったと思います。その次に心理療法、レクリエーション療法、作業療法、こういうものが最近加わってきて、局長がさっき話したみたいな、われわれも少し愁眉を開いている現状なんです。この作業療法が二月一日から点数化されましたけれども、多少条件がきびしかったりして、まだ問題があります。この精神科領域における作業療法をどう評価し、今後どう広めていくか、厚生省の方針を知らしてほしいのです。
  90. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 精神障害の方々の治療の最終目的は、やはり健康で実社会に入って活躍される、そこまで治療することだと思います。したがいまして、通常でございましたら病院の中で、いわゆる医学的な治療だけでいいわけでございますが、精神障害者の方につきましては、一定の回復をした場合には、それに加えて、一定の治療指針に従いながら、作業療法というか実社会に近づけるための療法を続けるということは、非常に大事なことと思っておる次第でございます。したがいまして、私ども厚生省でも、この作業療法ということを非常に重く考えております。  その一例といたしまして、特に昭和四十九年席から初めての試みといたしまして、従来はただ精神病床に助成をするということをやっておったわけでございますが、四十九年度に新たに、社会復帰をするための特別の施設全国に三カ所つくる計画をしております。将来こういう施設をさらに拡充強化していって、一方、幸いにして社会保険の点数の中にも入りましたし、この作業療法につきましてはこれから一段と力を尽くしていきたいと思っておるところでございます。
  91. 津川武一

    津川委員 私も、先ほど話したとおり、作業療法は患者の治療、社会復帰のために非常に大事なものと思うのです。  ここに、先ほど話した精神科医全国共闘会議、  一緒に、その指導のもとにやっている人たちの二つの文書を私は持っているのですが、この中にこう書いてある。現実の実態としての作業療法は、まさに強制労働、使役として、患者にとっての治療とはいわれない。病院管理、抑圧の道具である、こういうふうに作業療法を規定づけています。また、作業療法は反医療的だ、作業療法は解体せよ、作業療法は刑事政策である、こういうふうにいって、作業療法をぶちこわしにかかっておる。こういう人たちがいるのです。これも見解として、作業療法に対する自分たちの研究としては自由であります。現実にこういうことが精神病院内で行なわれている、これはよろしいですか。
  92. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 私、そういう実態があるかどうかよく存じませんが、相当数の病院が、作業療法につきましてはきわめて熱心にやっておられます。しかも作業療法というのは、先生承知のとおり、医師の指導のもとに作業療法士が当たることをたてまえとしております。一定の治療方針に従って行なわれる作業療法でございますから、いわゆる半強制労働というような意味合いは持つべきはずもなく、また私どもも、そういうような作業療法でなくて、真の医学的な作業療法のための指導には今後とも当たっていくつもりにしておる次第でございます。
  93. 津川武一

    津川委員 先ほども一番最初に触れましたように、精神障害者を治療して社会に復帰させる、できることならば精神障害者を出さないように予防措置をする、その点で現行の精神衛生法第二十九条の強制収容などにかなりの問題を含んでおりますが、現在の精神衛生法は何を目ざしておるのか、どういうふうに運営されているのか、どこに問題があるのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  94. 三浦英夫

    ○三浦政府委員 御承知のとおり現行の精神衛生法は昭和二十五年に制定されたものでございます。この精神衛生法の目的といたしますところは、まず精神障害者の医療、保護、あるいは精神障害が出ないようにする予防等についてのことを書き、それを目的としておるところでございます。具体的な内容といたしましては、精神病院あるいは病床の整備、精神衛生センターの業務、あるいは精神鑑定医の問題とか、さらに、いま先生御指摘の二十九条のいわゆる措置入院制度とか、通院の措置の問題さらにこれを円滑にするための公費負担の制度、そういうものが織り込まれてでき上がっていることは御承知のとおりでございます。  もちろん昭和二十五年に制定された法律でございますので、二十数年はたっておりますから、さらに改善検討を加えていくものもあるかと思いますが、それはそれといたしまして、基本的には精神衛生法というのは、精神障害者の治療、医療あるいは予防対策には十分貢献をしてきておりますし、私どもといたしましてもこの精神衛生法に基づく対策の充実は今後ともはかっていくつもりにしておる次第でございます。
  95. 津川武一

    津川委員 例の全国共闘会議は、精神衛生法が人間を牢獄にぶち込む一つのとりで、方法、手段だ、こういうふうに評価して、この粉砕を叫んでいるわけです。これはまたあとで触れるといたします。  そこで、いま話された精神病院——精神病を予防して、障害を治療して患者の悩みをやわらげ、家族の苦悩を取り除いて社会復帰させるために、精神病院の役割りは非常に大きいと思います。この精神病院というのは、あらゆる形で総合的な診療をできるようにせしめなければならないと思うわけです。そこで、特に精神病院の改善に対して、先ほど局長がちょっと言われていましたけれども、重ねてひとつ方針を明らかにしていただきます。
  96. 滝沢正

    滝沢政府委員 精神病院の改善策については、施設等の面からの対応のしかたがあろうかと思います。まだ不燃性のものに建てかえていない精神病院があるということも含めまして、公衆衛生局のほうで補助金、融資等をもちまして、また私的医療機関に対しましては医療金融公庫等の融資をもちまして、施設設備の改善には努力いたしておるわけでございますが、私は一番基本的には、精神科の医療の従事者、医師を含めまして従事者の全体の向上と申しますか、精神医療に対する理解と治療、総合的にチームとして精神医療を推進していく内容、資質を高める必要がある。これは一般的な医療関係者に言えることだと思うのでございまして、決して特段精神衛生のことに強調することの必要はあるいはなかろうかと思います。一般論として言うべきであろうと思うのでございますが、特に精神の医療というものが、非常に医学の中でも社会学的な、心理学的な分野というものに広くまたがる問題であるだけに、ガンであるとかあるいは外傷であるとか、外科的な治療であるとかいうような、目の前に具体的にあらわれた障害の改善という目に見えていく問題と、精神障害者というものに対応していく医療の内容から考えますと、全体的に医療機関の今後の運営については、施設設備よりも一そう重要なのは、やはり関係者の精神医療に対する資質の向上が重要であろうというふうに思っておる次第でございます。
  97. 津川武一

    津川委員 総合的な医療ができるようなものに整備していくように、また精神科のお医者さんが内科、小児科、二つの科を標榜しているという話も、先ほど前委員の質問に出ておりましたけれども、内科、精神科というのはかなり多い。それから婦人科から転科してやっている人たちも多いので、私は、そういう精神科のお医者さんの再教育といいますか、もっと能力を高めること、これが一つ大事だと思います。  もう一つは、医者だけでなしに看護婦、看護士、作業士、ケースワーカー、いろいろな人たちの相談、チームワーク、それで患者、そして患者家族、地域、そういうものの共同医療、チームワーク医療、総合医療というものが必要と思いますが、この点はいかがでございます。どうされております。
  98. 滝沢正

    滝沢政府委員 精神科の医師の質の問題は、先生おっしゃるとおり非常に今後も重要な課題でございますが、実は量の問題についても、わが国の医療というものの将来を展望いたしますと、伝染性疾患は御存じのように減少し、いわゆる代謝性疾患等を含めた個人の——社会的に外部から伝染してくるという結核その他の病気が減少し、内部から個人の生活、あるいは一部遺伝的なものもありましょうが、そういう内部から発生していく慢性疾患、特に慢性疾患というようなものが重要な課題でございますが、さらに将来を展望いたしますと、国民の医療の中できわめて重要なのは、やはり精神科の関係の医療というものが、どこの国を問わず、これは重要な課題であろうと思うのでございます。  先ほど御指摘のございましたアルコール中毒とかいろいろな具体的な社会的な問題を背景に持つ疾患もさることながら、一般的には人間の健康問題で将来とも重要なのは、一そう重要になってくるのは、精神科的な疾患、あるいは人間の健康というものを精神的な面からのアプローチによる医療の解決という態度なり、しかた、方法論というものがきわめて重要になってこようというふうに予測されるわけであります。そういう場合に、先ほど申し上げましたように、精神科担当の医師というものも、専門制を含めまして、先生御指摘のような、わが国に専門医的な制度あるいはそれを標榜する場合の条件というようなものに一定した制度がございません。したがいまして、御批判がございましたようなケースも確かにあると思うのでございます。そういう点から、医師の養成計画全体の中で、特に精神の関係の医師の養成というものは特段と重視する必要があろうと思うのでございますし、チームワークという立場からは、それぞれの医療関係者の精神医療に対する理解と資質の向上を考える必要があるわけでございます。  特に、先ほど地域性ということを先生が例示されましたが、私は、精神障害の問題の治療に当たる医療機関というものが、地域社会において十分理解してもらうことが医療機関としての機能の立場からも必要でございましょうし、また精神障害者というものに対する社会一般の理解の向上というものも必要であろうと思うのでございます。  この卑近な例でございますけれども、開放病棟というものをかなり、二十年以上前だと思いますけれども、初めて試みたときに、精神病院というものは、精神障害者が閉鎖されてかぎがかかっているから、おれたちは安心だというのが地域社会の人たちの考え方だったわけです。それを今度一部病棟を開放して、いつでも外に出られるという仕組みにしたことに対して、そういう決心をするためには当時の先輩たちは、その地域の住民の皆さま方の理解を得ることにたいへんな御努力をしたというふうに承っておるわけでございまして、やはりそういう病院周辺の皆さま方の御理解という狭い範囲ばかりじゃなく、広く精神障害者に対する国民の理解というものを向上させていくことが、今後の国民の健康の問題、医療の問題の中の一番中心になり、一番ベースになる。精神医療というものが最後に残る。非常に極端な言い方をすれば、ほかの疾病はかなり解決できるめどがあっても、精神障害者の問題というものが、人間の精神障害という範囲を含めた精神の疾患というものが、われわれ人間の健康問題の最終的な問題として重視されていく必要があるというふうに考えますので、今後医療機関の整備のみならず、そのような医師の確保あるいは専門的な医師の確保というものを、大学の医学教育の中で文部省にも御協力いただき、われわれはやはり精神医療の向上というものには相当の力を注いでいく必要があるというふうに思っておるわけでございます。
  99. 津川武一

    津川委員 そういう態勢で、ひとつ齋藤厚生大臣、精神病の治療が最後にならないように、いま局長が言う一番最後に解決されるというのではなく、一番最初に解決しなければならぬので、ここでひとつ厚生大臣の精神病患者に対する方針、決意を伺わしてもらってから進めます。
  100. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来医務局長から御答弁申し上げましたように、精神医療の問題は機能を総合的にやっていかなければならぬ、こういう考え方でございます。したがって、先ほど来いろいろお述べになりましたように、家族方々の協調、協力もいただかなければならぬし、療法としては、薬物療法だけではないし、作業療法だとかいろいろなことを総合的に行ないまして、精神の健康を回復し、社会復帰ができるようにやっていくべきものであって、厚生省としても今後とも大いに力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  101. 津川武一

    津川委員 そういうあり方を進めなければならぬときに、この精神科医全国共闘会議「国家と狂気」で、精神病とは、自分の要求を満たされない人が体制とぎりぎりぶつかっていって、極限になったのが精神病だ、病気でない、精神医学は要らない、治療は要らない、精神病院は。こういっているのです、彼らは。精神病院は監獄だ、精神科医は監獄の中の看守だ、また精神科医は国家暴力代行執行人だ、したがって精神科の任務は一日も早く、入院している患者を治療しないで出すことだ、新しく入ってくるのを入院を拒否することだ、新しい精神科の治療の研究を阻止することだ、こういうことをいっているわけです。精神病院は解体しなければならぬ、これを解決するために、精神病院を解体する戦術として、一つには——厚生大臣、気を悪くしないで聞いてくださいね。政府要人を拉致するということだ、患者を蜂起させることだ、患者を暴力で立ち上がらせることなんだ、患者に武装蜂起させることなんだ、これがこの中の理論。この理論を持った連中が、仲間を関西方面から集めて、昨年の一月十八日、群馬大学の精神科の病棟にどろぐつでなだれ込んだのです。ひどいのです。この群馬大学、先ほど厚生省が地域医療をやる、作業療法をやる、みんなでチームワークでやる、そして心理テストをやる、心理療法をやる、社会医学をやる、一つの模範的なところなんです。この立場からいうと一番じゃまになる病棟なんです。これになだれ込んじゃったのです。そしてちょうどそのとき、脅迫されているという妄想を持っている、暴徒が襲い来るので不安になっておった患者が、一生懸命お医者さんの治療で回復し始めているところへ、この連中がなだれ込んでプラカードを持ってやってしまった。そこで患者の病状が一ぺんに悪くなってしまった。  もう一つ、これは別な例だけれども、二回入院して、退院して、三回目にまた発病した。今度、家族を竹刀でなぐる、棒でなぐる、めちゃくちゃになぐる。家族は保健所と地域の人と相談してこれを入院させた。よかったわけです。患者さんの気持ちがほっとした。そうしたら、患者を入院させないこと、入院を拒否すること、治療しないで退院させることというので、こいつを退院させてしまった、こういうことが公然と行なわれている。  この状態を文部省はどうするのか。知っているのか。この連中が、精神科の教授、助教授連中の講義を学生が聞くことを実力で拒否している。したがって、昨年の六月から三月まで、まだ授業が行なわれていません。精神科の研究なんというのはおかしいというので、精神科の研究がこの連中の暴力でとまっております。これがこの人たちの行きつくところです。文部省はこれを知っておるのか、どうするのか、答えていただきます。
  102. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 群馬大学等で起こった事件の概要と申しますか、あらましは、私どもも大学から報告は受けておりましたですけれども、いま先生御指摘のような、患者の具体的なそういう治療とのかかわり合いということについては、私ども実は必ずしも十分捕捉をしていなかったわけでございますけれども、ただ、過日も国立大学の病院長会議がありまして、そこにおきましても、とにかく大学の教育研究上も、さらに一般の患者を対象とする診療機関としての性格上からも、十分適切な管理をされるようお願いしたわけでございます。そういう形で今後とも指導をし、文部省としてもあるいは助言をしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  103. 津川武一

    津川委員 重ねて言うが、この一派は、患者に武装せいといっている。この一派は、家族を敵だといっている。この一派は、精神病院は監獄だといっている。この一派は、精神衛生法は監獄へ人を送り込む法律だといっている。そして、こいつを解体せいというんだ、要人を拉致して一暴力をもって精神病院を解体せいといっているんだ。これを放置しておるから、昨年の一月の十八日からまだ今日、問題が解決されていない。これは、なまやさしいことではそんなことが解決されるはずない。一体にこの連中は何だかというんだ。われわれはこれをトロツキストと呼びます。一九六八年、六九年の大学闘争のときに、ヘルメットをかぶってゲバ棒を持って、大学をぶちこわして貴重な資料を焼いて、そして内ゲバとしてたくさんの人を殺したんです。私たちが調べただけでも、現在学生の登校が自由にできないのが、法政大学、明治大学、同志社大学、京大など。それから学内において現在実際暴力とテロの、リンチの危険があるところは、北大、早大、横浜国立大、広島大など三十。こういう形の中で学生が三十数人殺され、四千数百人けがしております。こういう情勢を政府は流してきた。いまの行政管理庁長官の保利さんが自民党の幹事長のときに、こういう連中を泳がしておいたほうが日共系の人たちが伸びかいからといって泳がしておいた。まだ文部省は泳がしている。     〔委員長退席綿貫委員長代理着席〕 今度は、そういう点で、暴力をふるって人を殺したので、立つ瀬がないのでたてこもっているのが、今度は精神病院なんです。そして、ここでこういう策動をしている。現在、群馬大学の精神科の治療も医育も研究も阻止されてしまっている現状です。これをどうするのか、このまま放置しておくのか、具体的に教えてほしい。早急に対策を立てて私たちのところに報告をしてほしい。これをもう一回文部省に答えていただきます。  厚生大臣、国務大臣としてこの状態はほうっておけないと思うので、最後に、国務大臣としてこういう状態にどう対処するか答えていただいて、私の質問を終わります。
  104. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 もろもろのそういう地方の大学、特に精神病棟においてそういうことが行なわれているということを、実はきょう初めて承りました。まことに遺憾きわまることでございます。こんなことをやっておったのでは、患者の不幸ばかりじゃなくて、国家全体の秩序というものは乱れていくと私は思います。よく文部大臣承知していると思いますが、十分連絡をとりまして、こういうことに対して徹底的な改善措置を講ずべきものである、私はさように考えております。
  105. 津川武一

    津川委員 文部省は実態をすみやかに調査して、私たちも握っているけれども、把握も共通にしなければならぬから、すみやかに調査して私たちに報告する、対策を打つ、打った対策を報告する、この点、約束できますか。
  106. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 あらためて群馬大学のその事件について調査をいたしたい、このように考えております。
  107. 津川武一

    津川委員 終わります。
  108. 綿貫民輔

    綿貫委員長代理 坂井弘一君。
  109. 坂井弘一

    ○坂井委員 いま問題になっております食品添加物のAF2についてお尋ねしたいのでありますが、申し上げるまでもなくAF2はハム、ソーセージあるいはチクワ、とうふ等々、広く使用されているわけでありますが、このAF2、つまり殺菌剤の毒性につきまして、去る十六日の国立予防衛生研究所の研究発表の結果、この毒性が立証された。従来AF2の毒性につきましては、複数の学者から染色体に突然変異を起こすという警告が出ておったわけでありますが、国の研究機関においてもその毒性が立証されたということになりますと、これははなはだ安全性に欠く、きわめて食品衛生上憂慮すべき、権威のある毒性の立証であるといわなければならぬと思うのですが、そこで、先ほどからの議論を聞く中で幾つかの問題についてお伺いしたいわけであります。  まず食品衛生法におきまして第四条、つまりこの趣旨は、疑わしきものは使用しないというのが立法の趣旨、目的であると思うわけでありますけれども、この第四条の解釈について厚生省はどういう見解に立たれるのか、まずその辺をひとつ明確に御答弁をいただいて、以下順次お尋ねをしてまいりたいと思います。
  110. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 AF2の毒性につきまして、去る十六日の食品衛生学会で国立予防衛生研究所の研究者から発表されたことにつきましては、先生御指摘のとおりでございまして、この取り扱いにつきましては、今後食品衛生調査会等でも十分御検討を願う予定にいたしておるところでございます。  ただ、この食品衛生法第四条の解釈でございますが、先生御指摘のように、われわれの食品衛生行政を担当する立場といたしましては、やはり疑わしいものは使用しないという、こういった原則に立っておるわけでございます。  さらにもう一つ申し上げますと、やはり食品は本来自然の姿であるべきであるという原則があるわけでございまして、本来食品でないような化学物質その他のいろんな物質を食品に加えることは、できるだけこれを避けるという基本的な態度でわれわれ食品衛生行政を進めておる段階でございます。
  111. 坂井弘一

    ○坂井委員 第四条の二項を見ますと、「厚生大臣は、一般に飲食に供されることがなかった物であって人の健康をそこなうおそれがない旨の確証がないもの又は」云々とありまして、「食品衛生調査会の意見をきいて、その物を食品として販売することを禁止することができる。」こうなっておりますね。食品衛生調査会におきましては、四十年の五月にこのAF2の指定答申をきめる際に、先ほども議論がありましたが、これを見ますと、できれば期限をつけ、その間に指定基準に沿った試験を行なうべきものであると考えるが、法的には不可能なので、次の試験をすることを条件に認めることとする、こういうことですね。条件は、AF2の生体内、食品内変化、それから次の世代への影響等と五項目のいわゆる付帯条件が付されておる。  これは四十年の五月でございますから、すでに八年間の期間の経過というものがあるわけですけれども、この五つの付帯条件のことにつきましては、今日まで調査されてこられたのでしょうか。
  112. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 昭和四十年五月に食品衛生調査会の毒性部会と添加物部会の合同部会を開きまして、御答弁を願ったわけでございますが、その際、先生御指摘の五項目の付帯条件がつけられたわけでございます。その後、鋭意この付帯条件を満たすような実験を行なったわけでございまして、ただいま先生お読みになりました一から四までの付帯条件につきましては、すでにそれぞれの研究機関から報告を受けておる段階でございます。ただ、第五番目の「腸内細菌に及ぼす影響」につきましてはただいま実験を続行中でございますが、これはその当初におきまして、腸内細菌に対する影響の測定方法というものがまだ確立されていない。これは現段階においてもまだ完全に確立されたものではございませんけれども、そういったことがございまして、この付帯条件の五番目の条件につきましては、まだ完成された報告を受けておりません。
  113. 坂井弘一

    ○坂井委員 従来、食品衛生調査会からの答申で、ある種のそうした食品添加物を大臣が答申を受けて認可する場合に、この種のような付帯条件が付せられるというようなことは間々あるのでしょうか。
  114. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 かような追加すべき実験というような形での付帯条件はほとんどございません。
  115. 坂井弘一

    ○坂井委員 つまり、このような追加すべき付帯条件が付されたということは、この安全性についてはさらに確実性を要するという趣旨で付帯条件が付されたということであろうと私は思う。その後において、最近とみにこのAF2の安全性が非常に疑問視される。少なくとも、先ほどの宮地論文というものがこのAF2の有力な使用の根拠になったわけでありますけれども、それらに対して学問的に異説を唱える人が複数以上あらわれてきておるということ。同時に、国の研究機関におきましてもその毒性が立証されたということ。きわめて安全性に乏しい、毒性が強いのではないか、この染色体に及ぼす影響、あるいはまた発ガン性もあるのではないかというきわめて憂慮すべきそうした意見等々、これらを勘案いたしますと、先ほど大臣しろうと考えは控えたほうがという御意見であったように思うのですが、これは専門的な学者の間にそのような意見の対立があり、少なくともその間に実験の結果毒性が高いと立証されたということになりますと、疑いこれきわめて濃厚であるという判断をすることは、学問的であれ、しろうとであれ、そういう立場は違っても、少なくとも国民の健康、生命、安全、これをつかさどるところの厚生省においては、この際、そのような疑いがあるということであるならば、一時的に使用を禁止して、そうしてさらに食品衛生調査会に再度調査を求める、中止した上において求める、これが私はまことに至当な措置であろう。食品衛生法第四条に規定されるところの、疑わしきは使用せず、この立法の趣旨に沿う措置ではないか、こう考えるわけでありますけれども大臣いかがでしょうか。
  116. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 九年前に添加物として使用を認めたのは、宮地論文がその基本的な資料になっておったということは私も承知をしております。これに対して、昨年は国立遺伝研究所から意見が出されてまいりました。しかもまた、ことしになりまして予防衛生研究所の職員三人の意見が出たわけでございます。  そこで、宮地論文に対しての反対の科学的な意見、それを全部食品衛生調査会のテーブルの上にのせまして科学的に判断をしてもらう。したがって、これを添加物として今後とも使用を継続さしていくのか、ここで中止するのか、あるいは、禁止しないまでも使用基準というものを今度はきめてやったほうがいいというのか、その辺のところを、せっかく科学的な調査会というものがあるわけでございますから、私が先に判断するよりも、調査会において学問的に判断をしていただいて、その結果を尊重して措置するということがやはり食品衛生法のたてまえだと私は理解をいたしております。したがいまして、調査会のほうで、これは毒性があるという結論が出なくても、疑わしいという結論が出れば、私はそれで禁止をする、こういうわけでございますから、調査会にせっかくいまお願いしたばかりです、お願いいたしましたから、その調査の結果を待ってその措置をする、こういうふうにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 きわめて慎重に対処されようとされる大臣のお考えに対して、私はここであえていちゃもんをつけるという気持ちはさらさらございませんけれども、しかしながら大臣、私とは、残念ながらちょっと意見を異にいたします。少なくともこの種の、非常に衛生、生命の安全にかかわる重要な問題なるがゆえに、この際はやはり大臣が、まさに勇断をもって一時使用の中止を命じて、しかる上において衛生調査会において慎重な検査をさせる。これは学者の意見でございますから、もし学問的に安全性はある、毒性はないということが立証されれば、まさに安心してこれは食生活に供することができる。また、それが国民の衛生、健康上非常に有用にAF2が働くということであれば、これに越したことはないと私は思う。しかしながら、いまあらわれておる問題は何かというと、少なくともAF2については学者の意見として、また国の機関であるところの国立予防衛生研究所においても、きわめてこの毒性は高いのではないかということが指摘される段階においては、これは学者の意見を待ってとか、研究会があるのだから研究会に再度研究を命じて、その結果を得てというようなことを言っておりますと、これは先になってえらいことになる心配があるのです。  そこで、再調査を衛生調査会に依頼をいたしておるようでございますけれども、いつごろその答申を得られるのでしょうか。
  118. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま大臣から御答弁いたしました点、その再調査に二つの点があろうかと思うわけでございます。一つは、このAF2というものの毒性を基本的に洗い直すといった問題、それと、現時点においてこのAF2の使用をまず禁止しておいてその毒性を再検討すべきである、こういう二つの点で大臣が御諮問になっているというふうにわれわれは理解しておるわけでございまして、その基本的に洗い直すということにつきましては相当時間がかかるのではなかろうかと思いますけれども、まず禁止すべきであるかないかという諮問に対しての御意見につきましては、早急に御意見を出していただくようにわれわれからもお願い申し上げておるわけでございまして、ここ数カ月のうちに結論を得るようにお願い申し上げております。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 二つあるということはわかりますが、禁止すべきかどうかについては数カ月のうちに——これか早急ということになりますと、数カ月という時間の経過はきわめて貴重だと思いますよ。現に、たとえばこのAF2を使用しておりますところのとうふの製造業者、とうふ屋さん、これは神経性の障害だとか皮膚炎が続出をしておるという、この実態についてはお調べになっていますか。
  120. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 東京大学の高橋晄正氏からそういった報告がなされていることも存じておりますし、また栃木県の例でございますが、県のほうの衛生部を通じましてわれわれのほうにも報告が参っておりまして、この報告を受けると同時に、国立の試験機関及び厚生省のほうからも係官を派遣いたしまして、その実態を調査いたしたことがございます。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 実態を調査されたということでありますれば、厚生省調査の結果の見解はいかがでございますか。
  122. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 当時、その患者さんを診察、治療いたしましたお医者さん等の御意見も聞いたわけでございますし、また国立の研究機関におきましても種々検討いたしまわけでございますが、その時点におきます調査の結果では、直ちにこれをAF2の毒性と結びつけることは不可能だ、かような結論になっております。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 農林省ではAF2に対する行政指導をしておりますね。どういう内容でございますか。
  124. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 これは農林物資規格法に基づいての指導というふうに聞いておりますが、それでなお、この農林物資規格法の中で地域食品の認証制度というものがございまして、略称地域JASというふうにいっておるようでございますが、この認証制度に基づきまして昨年七月二十三日と二十六日に、この専門家で構成されております委員会検討をいたしたようでございまして、昨年八月に、この専門委員会の結論に基づきましてとうふの認定基準の準則を作成いたしまして、これを各県に通知したというふうに聞いております。  現在の状況を申し上げますと、この農林省のほうから出ました準則の通知に基づきまして、現時点におきまして、山形、新潟、静岡の三県におきまして、当日売りのとうふに限りましてAF2の使用をとめているというふうに聞いております。これは農林省のほうにも聞き合わしたわけでございますが、現段階で当日売りのとうふだけに限定をしているということでございまして、一般的な基準といたしましては、非常に広い流通過程をとっておりますものですから、やはり現段階ではまだ全面的な使用の禁止ということは考えていない、かように連絡を受けております。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうしますと、これは少なくとも厚生省と農林省と、そうした実際のAF2の使用にあたって行政指導上の食い違いというものが最末端においては起こってきますよ。一部の府県でありますが、当日売りのとうふはこれを禁止する。じゃ、それが厚生省に問い合わせが来たら、厚生省はどう回答されますか。農林省からそういう行政指導があった、厚生省いかがですか。やはりこれは厚生省ですよ。一番信頼のある厚生省に問い合わせをされた場合に、どう回答されますか。
  126. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先ほど、食品衛生の基本的な姿勢について私、御答弁申し上げたわけでございますが、やはりわれわれの基本的な立場といたしましては、こういった食品添加物をできるだけ使わないようにするという態度をとっておるわけでございまして、われわれといたしましてもできるだけそういった流通機構の整備等によりまして、こういった添加物をできるだけ使用しないで済むような方法を講じてまいりたいと思っておるわけでございます。したがいまして、われわれとしては、指定はしておりますけれども、これはあくまでも、使ってもよろしい、使う場合にはここまで使ってよろしい、こういうような規定でございまして、そういうふうに規定しておりましても、できるだけ使わぬで済むような方向で業界の指導に当たっておるわけでございますが、今後ともさらにそういった点につきまして十分配慮しながら行政を進めてまいりたいと思います。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 つまり、大臣、混乱が起こってくるということを心配するわけですよ。心配ないのかあるのか、毒性があるのかないのか、これがいまの段階でわからないわけです。確かに大臣おっしゃるとおり、学者の専門的な意見の中に食い違いがあるわけでございますから、それらは衛生調査会においてその再調査の結果を待つ、これは確かに一つ考え方であるし、それなりの手続が必要ということは私はよくわかります。わかりますが、いまのように、厚生省としても、できるだけ使わぬほうがいいのじゃないか、こういう指導をなさる。あるいは農林省は、一部の府県に対してはとうふへの使用をおやめなさいという指導がなされる。一体どこのだれの言うことを聞いたらよろしいのか。その辺のところの混乱というものがさらにAF2の不安を一そうかき立てるという結果になりかねない。現実にそのような事態が各地において起こりつつあるということ。こういう実態から見て、やはりこれに対する最終的な決断というものは早く厚生省がなさるべきである。むしろその辺の事態も私は非常に憂慮するわけであります。  厚生省のほうでは、さきには——昨年秋、国立遺伝学研究所の田島形質遺伝部長が、AF2が遺伝子に突然変異を起こす危険性があるという発表をいたしましたですね、その事実を知ったか知らずかどうか知りませんが、その後厚生省は各都道府県に対して、安全性については心配ないと、この田島部長の、危険性があるという発表を否定されるような通達を出していらっしゃる。     〔綿貫委員長代理退席委員長着席〕 したがって、これの使用を認めよう、継続しようというところは、これをたてにとりまして、厚生省が太鼓判を押しているからだいじょうぶだ、こういうことになりますね。かと思えば、いまになってみれば厚生省は、できるだけ使わぬほうがいいだろうと、またこうなる。こういう行政の矛盾といいますか、あり方というものが、非常に大きな行政、政治に対する不信ということにも結びつきかねない。しかも、生命ということに対する直接的な重要な問題である。すべての人たちの食ぜんにこのAF2があらわれてくるわけでありますから、それだけにまた不安は一そう強い。しかも、その場限りでなくて、これが遺伝性があるということになってくると、きわめて長い将来を考えた場合にずいぶん心配がなお深い。かつても森永砒素ミルクか、であれ、いろいろな問題がたくさんあったわけでありますから、それだけに非常に神経過敏になっておるということでありますので、大臣、先ほどの答弁、わからぬことありませんけれども、この辺でほんとうに全く大臣の裁量で一時的に中止なさって、即刻にもう総力をあげて、各研究機関を総動員してでも、まず一時中止をしてこの毒性の解明の早急な結論を得る、そういう腹組み、御決意には大臣、お立ちになりませんか。いかがでしょう。
  128. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは先ほどもお答え申し上げましたように、先生とは手続の面で多少やり方が異なるわけでございますが、この食品衛生調査会が九年前に、まあ条件はつけるにいたしましても、使用さしてよろしい、こうこの調査会が言っているわけなんです。でございますから、やはり調査会に対して、もう一回研究しなさい、こういう反対の意見が出てきたんですよ、あなた方が九年前に五つの条件をつけるにしても、使用してもよろしい、こう言ったのです、しかし、こういう学問的な反対意見が出てきたんですよ、だからこの際もう一回あなた方も、昔はいいと言ったのだから、しかしその点についてもう少し再検討しなさい、このほうがすらっとしてむしろいいのじゃございませんでしょうか。私はむしろそう思うのです。  それで、その使用を禁止するかどうかを含めてこの調査会の意見を聞く。そこで、局長は五カ月とか数カ月とか言っていますが、数カ月かからぬでも、これは私はできると思うのです。これは学者さん同士ですからね。私のようなしろうとが、その論文を何ぼ見たってわかりませんよ。しかし専門家の学者は、そのぐらいのことは判断できると思うんですよ。と思いますので、局長は数カ月と言っていますが、私も聞きながら、数カ月じゃおそいと思って聞いていたんですよ、ほんと言うと。そんなことじゃおそ過ぎますよ。しろうとがやるなら、これは何年もかかるでしょう、その論文を読んで批判するなら。ところが専門家と称する、日本の最高級の学者さん方が研究するんですもの、そのくらいのことが数カ月もかからなければわからぬなんという学者さんでは、私はおかしと思うんです、ほんと言うと。というわけでございますから、私は何カ月かわかりませんが、なるべく早く使用を禁止するかどうかを含め、さらにまた使用させるとするならば、その使用基準を設定することをも含め、そして早く結論を出すようにしてもらいたい。私はそのとおりだと思う。国民は心配していますよ。国会でこういう議論になる。これはなるほどそうかなあ、学者さんもいろいろ意見を言っているんだなあ、これはすぐ伝わっていきますからね。これは国民、みんな知っていると思うんですよ。でございますから、まあその点はひとつ私におまかせをいただいて、やり方の手順は、やはり調査会が安全だと言ったんですから、その調査会に再検討させる、そして使用を禁止させるかどうかも含めて早く結論を出させるようにいたします。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 調査会だって神さんじゃないんですね。あやまちもあるかもしれませんよ。あやまちを改むるにはばかることなかれでしてね。大臣、実はたいへん心配しているわけですよ。ハム、ソーセージはもう子供には食べさせられないというんですね。これはやめましょう。それからおとうふもあぶないらしい、これも食わぬでおきましょう。AF2の入ってない食品はどんなものだろうか、そんなような声もあるんですよ、ほんとうに。そういうことでもって、おとうふ屋さんがまた心配しているわけです。とうふを買ってくれなくなった。魚肉の加工品あるいは畜肉の加工品、みんな右へならえでありますね。こういうことは、何も国会で議論するからこれがだんだんだんだんと国民が心配をかき立てられるというのじゃなくて、やはり国民自身は食品公害等については非常に敏感でありますね。なぜかといいますと、かつてのいまわしい幾つかの経験があるからです。それだけに、おかあさんたちなんかは特に神経をとがらしておりますから、それならばそれらしく早く結論を得る。いま大臣、そんなもの三月もかかるはずないだろう、——これは三月なんて言わないて、ほうとうに三日ぐらいで出してもらいたいと思いますね。大体AF2を使っているのは日本だけでしょう。韓国へ輸出しているそうですね。世界のどこでも、ほかではそんなの使ってないというように聞いているのですけれども、あやまちであれば訂正していただきたいと思いますが、もしこのAF2を禁止した場合、これにかわるような添加物はございますか。どうなんでしょう。
  130. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 韓国に輸出しているかいないかにつきましては、ちょっと私もつまびらかでございませんけれども、ほかの諸国におきましては、この添加物は使用いたしておりません。これは事実でございます。ただ、これは御承知のように、わが国のある製造会社が特許をとっている製品でございまして、そういった商取引上の問題もあろうかと思いますが、現実問題といたしましては、わが国のみで使用いたしておるわけでございます。  この代替品があるかいなかという問題でございますけれども、諸外国におきまして、特にハム、ソーセージ等、畜肉加工品はわが国より諸外国のほうがその消費量等も非常に多いわけでございまして、これに外国ではどういうふうな処置をとっているかということを申し上げますと、諸外国では亜硝酸ソーダというものを使っておるわけでございます。わが国でも従来亜硝酸ソーダを使っておったわけでございますけれども、従来のわれわれが得ておりますデータでは、亜硝酸塩とAF2との毒性、特に発ガン性という点について比較いたしました実験では、むしろAF2のほうがその毒性が低いのではないかという考え方を持っておるわけでございまして、その結果わが国では、亜硝酸塩の使用を非常に少量に限定いたしまして、それにかわるものとしてAF2を使ってまいったわけでございますが、そういった点につきましても、今後さらにもう一度再検討お願い申し上げたいと思っております。ただ、とうふにつきましては、これはわが国独特の食品でございまして、そういう意味において外国でAF2を使うという、そういった食品がないわけでございますけれども、ただいままでの実験の結果では、とうふにつきましてはいまのところ代替品がまだ見つかっていない、かような状況でございます。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 並行して十分研究、検討を進めていただきたいと思うのです。少なくともこれだけAF2の毒性あるいはその安全性というものが危険視されておるさなかでございますので、これを禁止するということは、これを緊急の課題とするかどうかということについては非常に大事な、早く結論を終えなければならぬ問題ではありますけれども、また一面において、そうであるとするならば、同時にこれがだめとするならば、これにかわる食品添加物を諸外国等も含めまして研究するなり調査する、そういう情勢に対して敏感に対応していくという行政というものがなければならぬと私は思いますので、その辺のところはひとつ厚生省においても万抜かりなく進めていただきたいと思うわけです。  それで、この際ですのでひとつお聞きしておきたいのですが、これはどれぐらいつくられているのですか、上野製薬の特許にかかるものですけれども
  132. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 このAF2そのものが、食品添加物だけに使われているわけでもございませんで、動物のえさにも一部使われている。えさと申し上げましょうか医薬品と申し上げましょうか、そういったふうに使われておるわけでございまして、食品添加物そのものに使われている正確な量は、われわれもまだ十分把握いたしておりませんが、年間の製造量を申し上げますと三トン、かように把握いたしております。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 それから、この際一言触れておきますが、一昨年食品衛生法が改正されましたね。それによりまして食品衛生調査会では、企業に関係するような人は入れない、やはり純粋に学術的な立場で、とこういうことに相なりました。ところが、この食品衛生調査会の委員に上野製薬の監査役が入っていますね。越智勇一という人です。この人は二月で任期が切れたはずですけれども。ここできめているのでしょう。こういうところに上野製薬の監査役が入っているのです。そういうことを今日まで見のがしてきた。見のがしてきたのか、うかつで気がつかなかったのか、どっちにしましても、これは好ましいことではありませんね。だからなお心配するわけです。不安になるわけです。この方はどうされるのですか。もしおやめになるとすれば新しい人の任命ということになろうと思うのですけれども検討されていらっしゃるのでしょうか。
  134. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 越智先生の任命につきましては、二年前に任命いたしておるわけでございますが、その任命の時点におきましては上野製薬の監査役に就任はしておられなかったわけでございます。その発令の時点におきましてはわれわれ十分確認いたしたわけでございますが、その後監査役に就任されたという事実があとでわかったわけでございまして、その点、われわれ気がつかなかったという点については非常に残念に思っておる次第でございます。  さらに、去る二月十五日にこの調査会の委員が任期切れになったわけでございまして、すでに新しい委員会委員の発令を行なったわけでございますが、そういう事態がわかったものでございますので、越智先生は新しい委員会委員としては入っておられません。かような措置をとっております。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 後任者は慎重にしてください。  それからもう一人おりますね、聖城稔さん。この方は食品衛生協会の理事をやっていらっしゃる。業界といえば常にそういう代表的な方でございますからね。この人も食品衛生調査会の委員をやっていらっしゃる。ちょっと疑義を感ずるんですがね。委員として適格でしょうか。
  136. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 食品衛生協会の理事でございますが、食品衛生協会そのものは、会員は各企業でございます。これは先生御指摘のような企業の集まりでございますけれども、食品衛生協会の目的が民間の立場から食品衛生行政に協力をしていこう、かような団体でございますので、われわれ従来、これを業界の代表とは考えていなかったわけでございますが、そういった疑念も間々あるわけでございますので、新しい委員会委員といたしましては再任の手続をとらなかったわけでございます。したがって、新委員会委員としては任命いたしておりません。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 いろいろ申し上げましたが、大臣諮問機関の非常に大事な食品衛生調査会だとぼくは思うのですよね。特に、一昨年わざわざ食品衛生法を改正して、そして企業とそういう結びつきがある人はまずいからこれは排除しなければいかぬということになったのでしょう。それがこのように、お二人の名前もあげてたいへん失礼だったかとは思いますけれども、厳正を期さなければならぬ調査会の人的構成のメンバーにそういう方を加えるということは、これはやはりおやめになったほうがよろしいであろうと思います。  まあ、いまそうした御答弁を得ましたのでこれ以上申し上げませんが、また一方では、これも厚生省の技官であります食品衛生第一室長の河端さんですか、この方も食品衛生調査会の委員でございますね。二月に、上野製薬から依頼されたようですが、神戸まで行きまして、AF2の安全性についての対話集会、ここでお話をされていますね。公務出張じゃなかったらしい。無断で行かれたらしい。これは大臣も、たいへん遺憾だということを言明されたようでございますがね。ただ、ここで話をした内容が、これまた問題ですね。まあ厚生省のお役人さんですし、食品衛生調査会の委員メンバーの一人でもありますからね。このAF2の安全性について、まあ認定しましたから、AF2は危険だなんて言うはずはないですよ。ないですが、少なくともAF2の安全性についてという対話集会に出席し、そこで意見を述べるには決してふさわしい人ではない。調査会の委員でもあります。で、この際ついでにちょっと聞いておきたいのですけれども、お話しされた内容はお聞きになったですか。聞いておりませんか。それも一度よくお聞きになったらいかがですか。それも聞かれたほうがいいと思いますよ。  幾つか申し上げましたけれども、それらを含めまして、これからもっとこの種の新しい、ある意味では新薬でございますか、食生活も最近とみにいろいろな形で多様化していくわけでありますので、そういう中でいろいろな食品添加物が生まれてくると思います。それだけに、やはりこの調査会等においては慎重であり、厳正でなければならぬ。もって国民の生命、健康に対して一切の不安をなからしめるようなそういう機関として健全に運営されなければならぬと思いますので申し上げたわけであります。その点をよくひとつ御留意いただきたいと思います。  最後に、簡単にもう一点お尋ねしておきたいと思いますが、実は塩化ビニール使用のスプレー式の殺虫剤でございます。これまた肝臓ガンのおそれがあるというわけで出荷停止、それから製造の停止まで含められたのでしょうかどうでしょうか、私ちょっとつまびらかでございませんのでお尋ねするわけでありますが、二十日か二十一日に厚生省が正式に製造停止、これをメーカーに申し渡されたというように承知しておるのですが、メーカー側は製造停止ということを承諾したのでしょうか。
  138. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いま先生から御指摘がありましたのは、スプレーの基剤といたしまして塩化ビニールを含んでおります家庭用の殺虫剤のことだと思います。本年の一月にアメリカで、ビニール製品の製造に従事していた労働者が肝臓肉腫で死亡したということがはっきりいたしまして、アメリカの労働省でデータの収集を行ないまして、いろいろいきさつがあるわけでございますが、結論的に申し上げますと、いままでの労働衛生としての工場内の塩ビの基準を引き下げるというような措置を行ないまして、それに伴いまして、ことしの四月二十二日医薬品及び化粧品中の成分としての塩化ビニールについての規制をする、またそういった医薬品、化粧品あるいは殺虫剤、そういうものの登録の停止それからメーカーに対する回収を要請するというような措置をアメリカでとられたわけでございます。私どもといたしましては、そういったアメリカのナショナルレジスター、官報に相当するものだと聞いておりますが、そういうものを五月九日に入手いたしまして、直ちに駐米日本大使館を通じまして、外務省を通じてでございますが、正式なデータの送付を依頼いたしますと同時に、それから同様の症例が発見されたといわれておりますイギリス、西独にも照会をいたしております。  ただ、これは事が重要でございますので、とりあえず断片的な資料をもちまして、五月十七日の薬事審議会の下部組織であります副作用調査会、これは東大の吉利先生が座長で臨床の専門家のお集まりでございますが、そこで収集いたしましたデータ検討いたしまして、結論を得るということではございませんけれども、従来考えられていたよりもかなり毒性が強いおそれがある、ただ最終的には正式のデータがないと具体的な評価が困難であるがというようなお答えをいただきまして、とりあえずその翌日十八日に、メーカーの団体であります日本殺虫剤工業会それから防疫殺虫剤協会、そういった団体の責任者を招致いたしまして、関連メーカーに対して、正式の措置は後日としても、こういう国民の健康に非常に影響を及ぼす問題でもあるのでとりあえず、製造、出荷、つまり新しいものを少なくとも市場に出さないという意味の自粛方を要請いたしますと同時に、昨日実はアメリカから関連資料が参りましたので、できるだけ早い機会に先生方の御都合を調整していただいて調査会を開きまして、その御結論に基づいて正式の措置をとるかどうかということを決定いたしたい、そのように考えております。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 そういたしますと、とりあえずはやはり製造も中止するようにという要請はされているわけでございますか。
  140. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 さようでございます。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 つまり要請でありますので、メーカー側はこれに対する回答としては、製造中止いたしますということには相なっておらない、つまり自粛というぐらいの意味でしょうか。
  142. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これはメーカーの団体としましては、とにかく重要なことであるので御趣旨に沿うように協力いたしますという御回答をいただいております。  なお、ちょっとふえんさせていただきますと、一方におきまして、ちょうどシーズン入りでございますし、家庭用の殺虫剤が非常に品薄になるということになりますと、非常に環境衛生上も、また家庭生活を快適にするという点からも支障がございますので、フレオン等を使いまして塩ビの入っていないスプレーもかなりあるわけですけれども、塩ビの入っておるものも多うございますので、それにかわるものとして塩ビを使わないものを厚生省に製造承認の申請をする、その場合には、これは行政措置に伴うものでございますかち、できるだけ手続を簡略にして、あとの補充ができるような措置をとるということも、同時に私どもで手配してございます。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりましたが、そうしますと、出荷の停止も、これも協力しましょうということだろうと思いますが、商品の回収ということについてはいかがですか。
  144. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 実は薬事法の規定では、適当でない、いわゆる法律用語で申しますと不良医薬品あるいは衛生上不適当な医薬品につきまして、それぞれの所有者に廃棄を命ずるという規定はあるのでございますが、回収というのは、これは行政措置としては行なっておりますが、法律上ないわけでございます。ただ、それぞれの末端の小売り商等で廃棄するということは、技術的にもたいへんでございますし、財政的な負担の問題もございますし、監視も行き届かないということで、それにかわる措置としてメーカーに回収を指示するということを慣例上行なっておるわけでございまして、したがって、回収させるということは、そのものにつきましての衛生上不適当であるという結論が出た段階での法律の発動にかわる措置という形になりますので、これはいま申し上げましたデータに基づいて調査会のしっかりした御結論を得た後に行なうという考え方をとっております。ただ、メーカーの方としては、衛生上非常に重要なことであるということで、何社かの方は販売サイドにも要請いたしまして、しばらくなるべく売らないようにというような指導をしておられるところもあるように聞いております。私どもはそこまでは、いま具体的にお願いをいたしておりません。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 いずれ早急にこの結論が出るのでしょうが、その結果、廃棄ということが最末端ではなかなか容易ではないということになりますと、やはり回収ということにならざるを得ないのではないかと私は思うわけでございますが、そうなった場合に、やはり回収しましても、相当な量だろうと思いますし、とりあえずはその倉庫であるとか、あるいはただ回収したものをそのまま置いておくわけにもいきませんから、これを何らかの形で廃棄処理をしなければいけないということにもなろうかと思うのですが、そういう体制についてまでいま御検討されていらっしゃいますか。
  146. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 結論がまだ、どういう御答申をいただくかはっきりいたしませんので申し上げませんでしたが、万一そういう事態になったときに備えまして、これはいま先生御指摘のように、一つは高圧ガス取締法の適用を受ける品物でございますので、多量に集積いたします場合には、高圧ガス取締法あるいは消防法等で危険物の取り扱いとして制約があるわけでございます。それから、これは処理いたしますにも、ただふたを取ればガスになって飛んでいってしまうわけでございますから、一ぺんに底を抜いて液を流し出すというような特殊な処理が必要でございまして、しかも塩ビを含んでおるということで技術的にもなかなか問題点があるということも、担当の専門家から聞いております。そういうことで、もしそういうことになった場合にはどうすべきかどいうような点につきましては、局内あるいは産業廃棄物の処理を担当いたしております環境衛生局のほうとも内々の御相談はいたしまして、もしそうなった場合にどうするかというような手当てについては並行して検討いたしておる段階でございます。
  147. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間がだんだん参ったようでございますので終わりたいと思いますけれども最後大臣に、私、私見を交えながら大臣の御所見を伺っておきたいと思います。  いまの塩ビ使用の殺虫剤にしましても、塩ビの毒性ということがいまになって諸外国でいわれ出した。アメリカからそのデータなり情報を得まして、そして急遽いま製造あるいは出荷あるいは回収等々まで考えなければならぬという事態になってきた。どうもあと追いのような感じがしてなりませんし、あるいは先ほどのAF2にいたしましても、今日に至って混乱を来たしめておるというようなこと等々考えますと、確かに最近の生活様式なり食生活そのものが非常に化学物質、化学薬品、化学的なそうした添加物であれ、非常に多様化し、高度に進んできたという中で、おのずからそうした新薬等の登場も、これは必要性があるといえばそれまでのことでありますが、それだけにまた、反面注意しなければならないことは、確かに便利だ、確かに食生活の改善はされた、生活様式が非常に合理化されたというメリットの反面、あとにくるものがそのようなきわめて健康なり生命そのものを害するような、まさに取り返しのつかないような事態があらわれるということ、このこととのかかわり合いにおいて、やはりそうした新薬等についてはきわめて慎重な態度でなければならぬ。したがって、新薬等の採用、認定、許可にあたっては非常に慎重にしていただきたいということ。同時に、少なくともそうした毒性、危険性というものが幾らかでもあらわれた場合には、ちゅうちょすることなく、疑わしきはこれを使用せずという、これは大原則に立っていただいて、勇断をもって、一時的にでもすみやかにその使用を中止をして、製造なりも中止をして、そして安全性の確認を直ちに行なうという行政の態度であっていただきたい、これを私は実はこいねがうわけでございますが、大臣の御所見を承りまして、質問を終わりたいと思います。
  148. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 化学物質が薬なりあるいは食品添加物なりに非常に使われるようになってまいったことは御承知のとおり。そういうことでございますから、私ども生活において大きなメリットがあるわけでございますけれども、その反面またいろいろなデメリットが出てくる、こういうわけでございまして、私ども、やはりこのメリットとデメリットの調整をどういうふうにはかっていくか、私はこれは非常にむずかしい問題だと思うのです。  そこで、こういう問題の調査研究というものは、実際のところもう日本一国だけでできなくなりました。特にWHOというものができましてから、国際的な立場において各国がお互いに情報を交換し合うというふうなやり方にしておるわけでございます。したがいまして、今後とも私どもは、国際的な立場においてこういう調査研究を厳重にやっていく、お互いの情報を交換する、こういうやり方の体制は進めてまいりたいと思いまずし、同時にまた日本国民は、特に食品衛生に対して非常に関心が強い。日本の国民の関心というものは諸外国以上です。そういうことも十分に頭に描いて、いまお述べになりましたように、疑わしきは使用させない、これがやはり大原則でございますから、今後とも私どもは添加物については、いまその効能の再検討というものをやっておるわけでございますし、新しいものについてもそういう態度できびしく臨んでいく、こういうふうにいたしたいと思っております。  なお、当面のいろいろな問題につきましては、それぞれ必要な手続を経まして、禁止するものは禁止する、こういうやり方で進んでまいりたいと思います。
  149. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  150. 臼井莊一

    臼井委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十五分散会