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1974-05-23 第72回国会 衆議院 決算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十三日(木曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 井原 岸高君 理事 唐沢俊二郎君    理事 松岡 松平君 理事 綿貫 民輔君    理事 久保田鶴松君 理事 原   茂君    理事 庄司 幸助君       赤澤 正道君    宇都宮徳馬君       吉永 治市君    稲葉 誠一君       野間 友一君    坂井 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         運 輸 大 臣 徳永 正利君  出席政府委員         法務省民事局長 川島 一郎君         大蔵大臣官房会         計課長     片山  充君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省証券局長 高橋 英明君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         通商産業省機械         情報産業局長  齋藤 太一君         中小企業庁計画         部長      吉川 佐吉君         運輸大臣官房会         計課長     杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         運輸省自動車局         長       中村 大造君         運輸省航空局長 寺井 久美君         建設省道路局長 菊池 三男君  委員外出席者         林野庁業務部長 須藤 徹男君         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         会計検査院事務         総局第三局長  桜木 拳一君         会計検査院事務         総局第五局長  中村 祐三君         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         日本国有鉄道常         務理事     内田 隆滋君         日本国有鉄道常         務理事     伊江 朝雄君         日本国有鉄道電         気局長     尾関 雅則君         日本輸出入銀行         総裁      澄田  智君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団理事)   北原 正一君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団工務第二部         長)      小河原藤吉君         参  考  人         (日本銀行理         事)      渡邊 孝友君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  佐々木邦彦君         参  考  人         (東京証券取引         所理事長)   谷村  裕君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 五月二十一日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     竹村 幸雄君 同日  辞任         補欠選任   竹村 幸雄君     稲葉 誠一君 同月二十二日  辞任         補欠選任   中尾  宏君     長谷川四郎君   中村 弘海君     西村 英一君 同日  辞任         補欠選任   西村 英一君     中村 弘海君   長谷川四郎君     中尾  宏君 同月二十三日  辞任         補欠選任   田代 文久君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   野間 友一君     田代 文久君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十六年度政府関係機関決算書  昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (運輸省所管日本国有鉄道大蔵省所管、日  本輸出入銀行)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  この際、おはかりいたします。  運輸省所管日本国有鉄道審査のため、本日、参考人として日本鉄道建設公団理事北原正一君、工務第二部長小河原藤吉君の御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見の聴取は委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 それでは、運輸省所管日本国有鉄道について審査を行ないます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。唐沢俊二郎君。
  5. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 運輸省並びに国有鉄道に若干の質問をいたしたいと思います。  国鉄の四十六年度の赤字は二千三百四十二億円、四十七年度末における累積赤字は一兆一千四百十一億円、長期借入金及び債券発行残高は三兆七千百九十一億円、また四十六年度から四十八年度までの一般会計出資金は四千二百四十五億円が繰り入れられているような現状であります。  このような赤字借金財政の中で、昭和四十七年四月一日から四十九年五月二十日までの違法なスト及びサボタージュによる旅客、貨物収入減収は六百四十億円となっておるのでございます。  国民に対して多額の財政負担と多大な不利益を与えている実情に対しまして、国鉄当局及び監督官庁である運輸大臣所見を承りたいと思います。この問題につきましては、過日、本会議でも私、質問をいたしました。責任者の方に簡単に御答弁をいただきたいと思います。
  6. 徳永正利

    徳永国務大臣 膨大な財政赤字を持っておりまして、財政問題等について憂慮すべき問題をかかえておることは御指摘のとおりでございます。  なおまた、これが、いまお話のございましたように違法なストを繰り返すことによっていろいろな御迷惑をかけ、また国鉄当局に対しましても財政的なマイナス点を積み重ねておることも御指摘のとおりでございまして、この点につきましてはまことに遺憾でございます。  申すまでもなく財政再建は、やはり労使の安定した関係確立が必要であると思います。それにつきましては公共企業体等関係閣僚協議会を設けまして、鋭意これらの問題の検討に政府としても前向きに取り組んでおる次第でございます。
  7. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答え申し上げます。  国鉄財政再建のために政府並びに国民の異常ともいえるようなお助けをいただいている間におきまして、四十七年から現在までに約四百五十億といったようなストによる損害を出したということは、まことに申しわけない次第でございまして、心からおわびする次第でありますが、要はいかにしてかくのごとき違法のストをなくするか、あるいは全然なくすることが早急には不可能ならば、この回数をいかにして減らすかということで非常に苦慮いたしておる次第でございますので、また御指示だの御高見を伺いながら、われわれも極力努力してかようなことを繰り返さないという心算でございますので、御了承を願います。
  8. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 非常なむずかしい問題で、運輸大臣国鉄総裁も非常に腐心をされておることはよく存じておるわけです。また、国鉄職員皆さま仕事が非常に危険な、緊張度の高い、しかも不規則な仕事であることもよくわかっております。そういう職員の方の処遇を改善して、さらに将来希望の持てる国鉄にして、皆さんに喜んで仕事をしていただくようにわれわれも努力をしなければいけないと思っておりますが、しかし、違法なことは違法でありますので、これだけははっきりした処置をとっていただきたいと思うわけであります。  さらに一つ、関連をいたしまして、国鉄のどなたでもけっこうなんでありますが、私どもは貨物収入減収ということを非常におそれておるわけであります。四十七年度にかなりまた減りましたが、その後こういうストライキや何かがあると、あまり輸送が安定しないということから荷主さんがだんだん離れていくような傾向があると思うのでございますが、その点につきまして、どういう傾向なのか、またどういう対策を講ぜられるのか、もしできましたら伺いたいと思います。
  9. 伊江朝雄

    伊江説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、荷主からいたしますと、不安定な輸送ということで、確かに信頼感を一部失った傾向がございました。私ども、それに対して非常に苦慮いたしておりますが、たとえばこういったストがあらかじめ予定されます場合には、事前に荷主さんと御連絡をとりまして、ものによりましては先送りの輸送をやっていただく、あるいはものによりましては、今回特に運輸省当局の御指導によりまして、本来国鉄にかかるべき緊急輸送物資トラック輸送に代替させるというふうな措置で、一応は荷主の要望に幾らかおこたえできたわけでございますが、今後ともこういうふうなことがございますと、確かにトラック輸送国鉄輸送の二またを荷主さんとしては自衛策として講じなければならない。こんな状態が続いていることは事実でございます。  今後は、先ほど総裁が御答弁申し上げましたとおり、こういった事態を少なくするように努力するとともに、また輸送につきましても、極力緊急物資あるいは固定の荷主輸送についての万全を期すべくいろいろと考えてまいりたい、かように考えております。
  10. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 次に、軌道補修用機械等のことについて伺いたいと思うわけでございますが、これは国鉄にお伺いいたします。  国鉄軌道修繕方式を、従来の人力を主体とした方式から、軌道保存近代化をはかるために軌道補修用機械、たとえばマルチプルタイタンパーとか軌道モーターカーとか、犬くぎ打ち機とか犬くぎ抜き機とか、まくら木更換機等機械があるわけでありますが、昭和四十六年度、四十七年度合計九十四億円で購入して、北海道、四国両総局及び二十七の鉄道管理局に配備してあるわけでございます。  昭和四十七年度の年間作業計画延長が五百三十四万四千メートル、日数が九千九百二十三日に対して、年間作業実績延長が七十九万七千メートル、日数が二千八百三十四日となりまして、比率は延長計画と比べまして一五%、日数が二九%で、稼働状況が非常に悪いようでございます。  この稼働の悪い原因、及びこのような高価な機械を購入するには直ちに活用できるよう受け入れ体制を整え、遊休化することのないようつとめるべきであろうと存ずるわけでございますが、まず稼働の悪い原因をお伺いいたしたいと思います。
  11. 内田隆滋

    内田説明員 先生も御承知のように、保線作業というのは非常に重労働でございまして、作業環境も悪いということで将来の展望、また現在におきましても、いわゆる昔の線路工手、現在の軌道掛でございますが、このなり手がないということがございます。したがって、将来の国鉄の運営を考えますときには、どうしても保線作業の大部分機械化していく、それからそれによって職員に対しても魅力ある職場にするということが必要でございます。そういうことを前提といたしまして、四十五年度から全国的に保線機械化ということに踏み切りまして、いまお話のありましたように機械を購入してこれを全国に支給いたしまして、これの運用をはかったわけであります。  ただし、国鉄輸送現状というものは外国と非常に違っておりまして、保守間合いが非常に少ないという問題がございます。また、いわゆる軌道補修関係人間というのは機械に習熟するのに非常に時間がかかるというようなことがございまして、御指摘のように稼働率が非常に悪いというのが現状でございます。しかし、稼働率が悪いからといって機械を使わせなければ、いつまでたっても習熟しないという問題がございます。また保守間合いの問題につきましても、ダイヤ改正ごとに逐次機械が入れるような間合いをとっていくというようなことをやってまいりたい。現状では確かにそういうように悪いわけでございますが、管理局によっては相当の成果を逐次あげておりますので、いましばらく長い目でこれを見ていただきまして、保線現場を改善してまいりたいというふうに考えております。
  12. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 いま一番高いのは人手だといわれておりまして、金利は一割だが人は三割だというようなことをいわれておるわけであります。そうでなくとも機械化近代化は当然進めらるべきでございまして、その意味では御趣旨はたいへんけっこうである、全面的に賛成をいたします。また、急になかなか変わるものではないわが国の国情とか保守実情も、いま内田理事から承りました。事情はよくわかるわけでありますが、いかんせん、やはり稼働率が低いということは、むだがある、効率的でないという批判のそしりは免れないと思うわけでございます。そういう意味で、今後非常に努力をされると思うのですが、具体的にどういう方向へ持っていかれるおつもりなのか、今後の対策についてあわせて伺いたいと思います。
  13. 内田隆滋

    内田説明員 先ほども申しましたように、まず間合い確保、これは国鉄の本社に間合い確保委員会をつくりまして、大ダイヤ改正ごとに一時間なり一時間半の、機械が十分使えるような間合いをつくるということをやっておるわけでございまして、すでに東海道、東北線につきましてはそういうような間合い確保しておりますが、全国的には今後ともそういうことで、まず間合い確保する。それから二番目には、いわゆる機械化保線に従事する職員の教育、これはいろいろございますが、まず中央学園それから地方の鉄道学園等を通じて、基本的に取り扱いを指導する幹部を養成する。その幹部によりまして、各現場におきまして講習会を行ないまして全員に浸透させる。もう一つ機械整備の問題がございます。やはり取り扱いになれないものですから必要以上に機械をこわす、しかもその整備に時間がかかっているために機械稼働しないという問題がございますので、この整備人間を充実していくというようなことが、今後の具体的な方針だと思います。
  14. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 過般、私、交通視察各国を回ったのですが、鉄道と申しますか国鉄というのですか、各国では最も進んでいると認めておるわけでございまして、われわれが視察に行くと向こうから聞かれるほうがむしろ非常に多いわけで、非常な誇りを感じて帰ってきたわけでございますが、そういう事情もおくみ取りいただいて、他国に先がけて新しい技術を次々と駆使していただきますようお願いをいたします。  それから、ひとつ工事のことについてお伺いをいたしたいわけでございます。これは中央東線の塩嶺トンネル工事のことでございます。これは後ほど、御関係のある原先生から詳細御質問もあると思うのでありますが、私も、毎週通過をしている人間といたしまして、お伺いをいたしたいのでございます。  岡谷塩尻線線増工事は、四十一年十一月に運輸大臣の認可を受けております。いまから約八年くらい前でございます。ところが岡谷市内の三沢、橋原地区反対があって、やっと昨年の十一月に塩尻側から着工したというような状態でございまして、実に八年もかかって、厳密にいうとまる七年でございますが、足かけ八年かかっておるような状況でございます。その後も、地元との話し合いがなかなか円満に進捗しておらない。ついに測量は、岡谷市側は航空測量をやられたはずでございまして、これが三月末ぐらいに完成されておるんじゃないか、やがて成果物もそろそろ完成されると思うわけでございますが、この間の事情につきましてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  15. 内田隆滋

    内田説明員 事情はいま先生の御説明になったとおりでございます。実質的には、約八年にわたりまして非常な反対がございまして、工事ができなかった。ただ、最近の情勢といたしましては、県、市並びに関係市議会等のおきましては、現在の国鉄計画を推進することで皆さん意見がまとまっておりますので、そういう意味では、地元の諸先生をはじめとしてほとんど御異論はないということでございますので、今後とも、関係反対している二町村の説得をぜひやってまいりたいというふうに考えております。
  16. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 まあ政府もそうですが、政府関係機関あるいは国鉄さんもそうだと思うのでありますが、計画したことは、なるべく計画どおり実施されるということが私は当然だろうと思うのです。いろいろ事情もございます。また原先生からもお話があると思うのでございますが、われわれはこの塩尻岡谷を通って出てくるわけでございますけれども、これはわれわれの長野県のまん中の、中信地区と申しておりますが、中信地区のほんとうに七十年か八十年の悲願でございまして、塩嶺さえあけばあと二十分か三十分早く東京に行けるんだ。現在はわれわれは、大きいことを言うときは、日本の中心である、へそである、まん中であると言っておりますが、逆に言いますと、近いいなかといわれておるわけであります。沖繩でも二時間数十分で行けるんだ、福岡でも一時間十分ぐらいで行ける世の中に、われわれのところは東京から、日本の首都から行こうとすれば、どんなに短くともどうしても三時間半以上時間がかかる。これはやはり日本列島改造にも関連するのでございますが、公平の原則からいって認められるべきではない。少なくともよその地区とそんな差のないようなそういう地帯にしなければいけないということは、これは悲願でありますし、われわれもよく理解できる。実際問題、われわれの地区では、これは超党派、住民全員賛成していることであります。それが、通過する二地区反対によって延び延びになっている。個人の利益公共利益の問題がからんでくる非常にむずかしい問題であろうと思うのです。しかも、反対しておられるところを聞きますと、反対はあることはあるが、ある党がこれを扇動しておって、その地区も、大部分の方はこれをもちろん承認をしておられるようにわれわれは聞いております。市長さんも賛成ならば、いまのお話のように、市議会皆さん賛成をしておられる、そのような事情にあるものを、なぜこんなに延ばさなければいけないか。待てば海路のひよりでなくて、待っておっても年々歳々これはむずかしくなるだけであって、私は、実際に勇断をもって当たらなければこれを推進することは非常にむずかしい、かように思っておるわけであります。  一方、その新しい路線を開くにあたりまして反対される方の気持ちもわからないわけではない。だから、そこの地域住民の方に対しては、十分な環境整備なり、何らかの措置を講じて差し上げたい、こういう気も反面あるわけであります。しかし、ただのんびりいつまでたってもできぬということはいけない。  実際、出先の方々あるいは岐阜工事局の方が一生懸命努力されておるのはわかるのでございますが、こういう公共利益と私の利益の相反する問題につきまして、総裁はどのようにお考えになっていらっしゃるか、ちょっと所見伺いたいと思います。
  17. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答え申し上げます。  塩尻までの複線電化といったような工事は、先生の御指摘のように非常に急を要する仕事でございまして、われわれとしては、かかれば最少の時間において完成したい、かように考えるのでございますけれども、そのルートをきめる当初におきましても、線路が数本もある場合に一々、あなたのほうはどうだ、あなたのほうはどうだといったような形のお約束は御協議できませんけれども、大体村長さんであるとか皆さまの御意向を体して、地元方々意向も体して、技術上とかあるいは路線の使命ということで路線をきめる。今回の場合は、岡谷を離れて反対ルートとわれわれが考えているルートは三百メートルか四百メートルくらいしか離れていないことなので、大局というか、地元の利害とかなんとかという観念から見てもそう大差があるわけではないし、われわれの技術上とかいろんなことでおきめを願っているのだから、是が非でもわれわれのルートに御賛成願いたいというので、極力御納得をお願いしているのでございますが、遺憾ながら現在の時点におきましては、まだ完全な御納得がいただけていないということでございますので、こういう時代で、公共事業だから私権は待てということも、われわれの立場としてはそうむやみに振り回せるわけのものでもないので、できるだけ先生の御指摘のような地元方々立場にも立って、でき得る施設はやるとかなんとかというようなことで御納得を得て、当初の計画の五十三年度というまでには完成いたしたい、かように考えております。
  18. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 いよいよ問題は煮詰まってきたと思うわけでございます。何といっても、話せばわかるということもありますが、話し合いがなければだめでありますし、また、話し合えば誤解が解消して話が進展するということも考えられるのでございますが、これはどなたからでもけっこうですが、知事さんのあっせんとかあるいは市の理事者議員さんを通じて、地区の方と同じテーブルに着いて、国鉄側国鉄側趣旨を徹底される、主た地域住民の声も十分よく聞いて反映できるような、そういう場がほしいと思うわけでございますが、その場をつくるためにどのような努力をせられているか、伺いたいと思います。
  19. 内田隆滋

    内田説明員 先生の御指摘のとおりだと思います。それで、協議の経過といたしましては、四十五年から四十八年の間に非公式の話し合いというのは、地元の代表とは月に一、二回、それから県、市関係とは月に一回というようなことで、もちろん国会議員先生等ともお話し合いを進めてまいったわけでございますが、残念ながら、地元方々と公式な場面で同じテーブルに着くということにつきましては、どうしても話し合いがつかずに、いままで同じテーブルに着いたことがない。文書では過去におきまして約十五回ぐらい、いろいろな御説明を申し上げておるわけでございますが、そういう機会に恵まれないというのははなはだ残念だと思います。  先生も御承知のように、いろいろのトラブルもございましたが、一応現地の詳細な測量もできるようになりましたので、これを機会に具体的な環境整備というものをあわせて、具体的な案を地元に提示することによりまして、同じテーブルに着いて徹底的な話し合いをしていく。地元の方も、環境整備等の具体的なものを御提示申し上げればわれわれの誠意もわかっていただけるのではないかというふうに、現在は考えておる次第でございます。
  20. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 時間がなくなりましたので、最後に、運輸大臣総裁答弁をいただきたいと思うわけでありますが、本件についてまだ建設大臣事業認定がおりてないのです。これではやはり国鉄の姿勢がはっきりしない。地元と折衝する場合もやはり迫力がない、説得力がない、かように考えるのであります。一日も早く建設大臣事業認定をおろしていただきたいと思うのでありますが、それにつきまして大臣並びに総裁の御努力をぜひともお願いしたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  21. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答えします。  御指摘のとおりでございまして、建設省事業認定というのは、われわれも建設省と連絡いたしまして、早くお出し願うような交渉を進めておりますので、できるだけ早くちょうだいしたい、かように思いますが、地元との交渉といったようなものは、そういうことをやることによって常に常に好転するのかというと、必ずしもそうじゃない場合もあって、われわれが逡巡しておったというようなきらいも多分にあるのでございまして、それらは御了解願うと同時に、今後はそういうこともひとつ極力進めていきたい、かように考えます。
  22. 徳永正利

    徳永国務大臣 この件につきましては、四十三年に申請を出しておるようでございます。まあでき得ることならば円満な話し合いによってこれが解決することが望ましいことでございまして、今後も、先ほどお話のございましたような、知事なりあるいは市長なり、そういう仲介を入れて同じテーブルに着いて、お互いに忌憚のない意見を披瀝してそこから一致点を見出していくという努力は積み重ねてまいらなければならぬと思いますが、なお事業認定につきましても、いつまでもこれを放置するわけにはまいらぬことだろうと思います。国鉄がすでに出しております事業認定については、私どもも十分理解をして、これの促進に当たりたいと思っております。
  23. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 以上で終わります。
  24. 臼井莊一

    臼井委員長 庄司幸助君。
  25. 庄司幸助

    ○庄司委員 周知のとおりいま私鉄運賃の値上げ申請が出ておりますが、これは普通運賃で二六・九%、通勤定期で四五・三%、通学定期が三〇%、非常に大幅な値上げ申請が出ております。  そこで、きょうお伺いしたいのは私鉄の赤字の問題で、赤字か黒字かの計算上の問題です。これをどう考えるか、その点でおもに鉄道監督局長からお伺いしたいのですが、あと運輸大臣からも御答弁願います。  まず第一番目にお伺いしたいのは、私鉄のいわゆる既設線ですね、この沿線の私鉄による土地買い占め、この状況をお調べになっているかどうか、お調べになっていればどの程度なのか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  26. 秋富公正

    秋富政府委員 私鉄の財政状況につきましては、私のほうでは省令で会計規則をつくっております。これによって私鉄の鉄道部門につきましては詳細なる資料を持っておりますけれども、兼業部門につきましては私のほうといたしましてはいわば権限外でございまして、いま御指摘のいわゆる土地の取得状況ということにつきましては、運輸省といたしましてはこれを承知いたしておりません。
  27. 庄司幸助

    ○庄司委員 つかんでおられないということですね。私がちょっと調査した範囲でも、非常に広大な面積を保有しておるわけです。これはほかのいわゆる不動産専業の会社と比べても、相当多い買い占めです。それからあがる利益、これもばく大なものです。たとえば東急でありますとか西武でありますとか見ますと、ほとんど不動産営業部門、同じ会社の中で計上されている、この利益になっているわけですね。いまお答えのとおり、運輸省もまた私鉄各社も、鉄軌道部門と不動産部門の切り離しをやっているわけです。しかし、不動産部門のもうけ、これは鉄道があるから地価が上がってもうかっていくんだ、これは常識だろうと思うのです。運賃が赤字だ、黒字だ、これを考える場合、こういった不動産部門のもうけもやはり考慮に入れるべきではないかと思う。これが一般国民の偽らない感情なわけです。その点どうお考えになるのか、これをひとつお示し願いたいと思うのです。
  28. 秋富公正

    秋富政府委員 先生のただいまのような御指摘、こういったような議論がございますことも事実でございます。しかしながら、いわゆる鉄道と申しますのが永続してこれを存続し、さらに発展してまいりますためには、やはり鉄道プロパーと申しますものにおいて収支相償うということでございませんと今後の発展性ということも認められません状態でございます。私たちといたしましては、やはり鉄道といたしまして収支相償うように原価計算をいたしますし、またその将来のことを考えておるわけでございまして、もしかりにいわゆる他の兼業部門というものを合わせていたしますと、兼業部門が非常にいい場合にはそれで運賃を低くするか、逆に兼業部門が非常に悪い場合には運賃をそのためにまた上げるかというような問題もございますし、また、これを一本で考えますと、どうしても企業体としましてはそういった収支のいい部門にさらに企業活動を進めていく、あるいはそのほうに投資を進めていくということになりまして、長い目で見た場合に鉄道プロパーの存続ということには決していい影響がないと考えておりまして、私たちとしましては、鉄道プロパーで収支相償うように原価計算をいたしますし、また運賃についてもそういうふうに認可していきたいと考えております。
  29. 庄司幸助

    ○庄司委員 しかし、実態論から見れば、いわゆる私鉄が土地造成その他土地の買い占め、これをやりながら鉄道を延ばしていっている、これは現実の姿なんですね。ですから、不動産部門と鉄軌道部門というのは一体不離の関係になっているわけですね。現実はそうなんです、あとで詳しく論議してもいいのですが。そういう現実論に立つ場合、実態論に立った場合、私鉄が不動産の買い占めあるいは、買い占めといってことばが悪ければ取得ですね、これをどんどんやっているという実態、これは全然お調べにもならないで、いま言ったような肯定的な考え方で進まれるのは、私は国民納得しないだろうと思うのです。実態もつかまれないでどうして、長期的な観点に立ってみればどうこう、こうおっしゃるのか、私には理解できないですね。なぜ調べないのか、調べもしないでなぜそういうことが言えるのか、この辺理解つかないのですが、御説明願いたいと思います。
  30. 秋富公正

    秋富政府委員 現在運輸省におきましては、大都市の交通問題ということにつきましては絶えずこれを検討してきておるわけでございまして、東京周辺あるいは阪神におきましても、あるいは中京、名古屋地帯あるいは九州の福岡方面ということにつきましても、それぞれ、運輸省にございます都市交通審議会におきまして昭和六十年までのいわば路線網といいますものを御審議いただきまして、その答申もそれぞれいただいておるわけでございまして、これに基づきまして、現在それぞれ鉄道の新しい路線の建設ということの整備を行なっているわけでございます。これは一般に公表いたしておるわけでございまして、どの方にも周知していることでございます。  一方、いわゆる鉄道の建設によります地価の高騰あるいは値上がりということにつきまして、これは国鉄、私鉄を問わずでございますが、そういった開発者利益の遷元ということにつきましては、これまたいろいろと問題がある点でございまして、私たちも、いわば開発者利益の還元ということをすべきではないかという点につきましては、いろいろと検討をしておるものでございます。しかし、これはたとえば税制の面でいたすべきか、あるいはいわば開発者負担というような形でいたすべきか、いろいろと問題がございまして、なかなか問題でございますが、実現ができていないということが実情でございます。  一方におきまして、私鉄の会社が土地を所有している場合もございますし、あるいは全然そういったものを所有していない場合もございます。あるいは別個の会社でそういった土地を持っている場合もございます。しかし、これはただいま申しました、それ以外の一般の不動産会社あるいは一般の地主と同じような立場で、私たちはこれを、いわば開発者利益というものについての還元をどう処置していくべきかと考えるべき問題と考えまして、たまたま私鉄の会社がその兼業部門で土地を持っている場合に限ってこれを運賃にはね返らせるということは、必ずしも妥当なことでもないし、また鉄道を将来繁栄させていく措置でもないと考えております。
  31. 庄司幸助

    ○庄司委員 開発者利益の還元を考えておる、こういう御答弁もあるのですが、開発者利益を還元するならば、たとえば東急のあの田園都市線なんか見ても、明らかにもう不動産屋さん的な性格と鉄軌道部門がみごとに融合して、共同で東急の会社全体の利益をあげているわけですよ。しかも、あそこに住宅をお求めになる方は、一時期は一坪当たり取得原価が二百円とか三百円、こういうもので買ったものが、いまではもう何十万もする。相当の開発者利益があるわけでしょう。これは、あそこの田園都市線を利用なさる方が、もうすでに会社に差し上げているわけですね。そして今度は、鉄軌道部門が赤字だからといって、いわゆる受益者負担の原則でまた運賃でよけい取られる。こんな不合理な話はないだろうと思うのですよ。だから、いろいろあなた方おっしゃいますけれども、いろいろなことをおっしゃっても、実態はこうなんです。  たとえば西武鉄道の場合申し上げますけれども、西武沿線の埼玉県の所沢、入間、飯能、こういう市では、西武がもう相当の土地買い占めをやっているわけです。飯能市では五百三十五ヘクタール買い占めをやっています。これはもう飯能市の全体で買い占められた土地の七〇%を西武が占めている。これは明らかに鉄道があるがゆえに買い占めを進め、そこに高い値段で住宅地をお求めになる方が相当ふえている、こういう関係になるだろうと思うのです。この辺に、分離して考えるということについて国民納得できない理由があると思うのです。  その辺で運輸大臣国民納得できる線といえば、土地を買ってない会社は別ですが、いわゆる不動産部門の利益を運賃算定の基礎の中に入れる必要がある、その上での赤字、黒字の論議を展開する必要があるのじゃないかと思うのです。これは大臣からひとつ御答弁願います。
  32. 徳永正利

    徳永国務大臣 いまいろいろお話がございましたように、いろいろな考え方があると思います。土地ばかりではございません。デパートを経営している会社もございますし、あるいはまた、その他の事業を経営している会社もあるわけでございます。しかし、その経営がかりに非常にうまくいっているときはその利益を鉄軌道部門に入れろ、赤字になったときには鉄軌道部門がそれを受け持つかということになりますと、これもまた、たいへんな問題を起こすことになると思います。土地の問題も同じでございまして、私は御指摘になるお気持ちは十分理解できますけれども、運賃算定にあたりまして、そういうものを総合してものを考えたがいいのか、あるいは別に考えたがいいのかということは、十分考慮を要するものだと思います。したがいまして、私どもといたしましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、鉄軌道部門はそこだけの収支を厳密につかんでいくのがよろしいというふうに判断いたしまして、そういう方向で進めてまいっておるわけでございます。
  33. 庄司幸助

    ○庄司委員 現在の情勢は、大臣も御存じのとおり、内閣あげて、狂乱する物価の対策に取り組んでいる最中ですね。それから国民もまた、この狂乱する物価で非常に困惑している最中です。福田大蔵大臣の話によると、一応、高値安定ですが安定した。しかし、それが今度また火を吹く可能性を持っている。その要因は石油の三月の値上げです。それから、もう一回値上げしてもらいたい、こういうことを石油会社はいっているわけですね。それから今度は電力料金の値上げ、これは認可になりました。参議院が終わりますと、今度は国鉄運賃の値上げ、それから消費者米価の値上げ、こういうものが相次いで押し寄せるわけです。そうすると、これはもう悪循環を起こして、いわゆる狂乱物価の第三段ロケットが発射される、こういうふうに国民は心配しているわけです。  ですから、私は、将来の問題は一応おくとしても、今度の私鉄運賃の改定に際して、たとえば今度限りの措置としても、この計算上の問題ですね。しかも私鉄は、四十六年度、四十七年度、四十八年度あたり、猛烈に土地を買いまくったわけです。これは私鉄だけではありませんけれども、いわゆる狂乱する土地価格に拍車をかけているわけです。しかもその中からばく大な利益をあげているわけです。いろいろ造成費用はかかるにしても、一坪三百円ぐらいの土地がとにかくもう数十万円になっているわけでしょう。ですから、いまの物価情勢にかんがみて、たとえば、原則論はあとでゆっくり論ずるとして、今回限りの措置としても、現状を見れば、運賃改定に際しては、私鉄の不動産部門を持っておられるところ、こういうところについては、不動産部門からあがった利益をもって赤字を克服して、そして開発者利益の還元を私鉄利用者にはかってあげるのが、いまの内閣が取り組んでいる物価問題の対策上からいっても大事な問題じゃないかと私は思うのですが、この点、大臣からひとつ御答弁願いたいと思うのです。
  34. 徳永正利

    徳永国務大臣 先生お話、私もよくわかるわけでございますが、しかし、そのように開発部門からの収益というものを、こういう物価狂乱のさなかに今度限りでもひとつやってみぬかという御提案だと思うわけでございますが、しかしながら、そういうものはやはり別途、たとえば税制の面でございますとか、いろいろ国会でも御審議いただいておるわけでございますけれども、そういう面で始末をつけるべきだというふうに考えるわけでございます。この鉄軌道の部門の収益というものは、やはりそういうものとの混同と申しますか、どんぶり勘定的なものの考え方ということには、私はいま直ちに賛成し得ないものでございます。
  35. 庄司幸助

    ○庄司委員 いま内閣が出している方針、とにかくもう物価の値上げは極力抑制する、総需要抑制までやっているわけですね。その一環としての公共料金の抑制、これを内閣として当然やらなくちゃならぬのじゃないかと私は思うのですよ。個々の部門で、運輸大臣運輸大臣、農林大臣は農林大臣、てんでんばらばらのことをやっていかのでは、内閣の物価抑制というのはかけ声だけじゃないか、私はこういうふうに感ずるわけです。時間もありませんから先に進めます。  今度は東急の問題で少し伺います。  東急の田園都市線が認可されましたね。これは申請が三十一年九月二十八日にあって、三十五年九月二十日に認可されたわけです。三十八年十月十一日から着工して四十一年四月一日に開通しているわけです。これは東急の資料ですが「74とうきゆうのしおり」、これに財務諸表が出ております。これで見ますと、昭和三十七年度末、これは田園都市線が認可されたあとですが、これと四十七年度末の比較が載っているのですね。  この貸借対照表で見ますと、いわゆる流動資産の中で占める不動産業土地建物の比率が非常に多くなっているのです。流動資産が八百七十八億円余ある中で、不動産業土地建物が五百六十三億円余です。それからそれに付随した建設仮勘定、建物なんか途中で建てているもの、これが三百四十一億円です。それからほかの会社に投資した分、これが約四百億円です。合計で千三百億円。これは非常にふえているわけですね。こういった東急が、鉄軌道部門にも二百八十七億円ぐらい固定資産として投下しておりますが、非常に不動産関係の投資が多かったことを物語っておりますね。  これに対して負債の部を見ますと、長期借入金が約二十六倍ぐらいにふえているのです、三十七年対比で。百五十七億円から千百五億円にふえています。それから、もちろん社債もふえています。  それで、こういった長期借入金や社債がふえていく、そうなると利子分が相当な額になってくるわけですね。この利子分が一体どういうふうに今度の値上げの申請にあたって案分されているのか、この辺、局長さんわかりますか。
  36. 秋富公正

    秋富政府委員 私のほうは地方鉄道業の会計規則によりまして、先ほど申し上げましたように、鉄道部門につきましてはその詳細を把握いたしておりますが、それ以外の兼業部門、たとえて申しますとバス事業でございますとか、あるいは不動産事業、こういったものにつきましても、その総額というものについてはこれを承知しておるわけでございます。  ただいま御質問のいわゆる支払い利子の問題でございますが、私たちこれを査定いたします場合に、全部門につきましてこれを固定資産の額に案分いたしまして、それぞれこれを負担さしておるのでございます。したがいまして、鉄軌道部門と申しますものは、当然その固定資産も大きいわけでございますが、御指摘の不動産部門、これの固定資産につきましてもそれ相応の案分をいたしまして、これを確保しているものでございます。  なお、今後の事業報酬につきましては、これはいわば一般の鉄道部門におきます自己資本あるいは借り入れ金、それぞれの予想配当額あるいは金利というものを踏まえまして事業報酬というものを算定いたしまして、これをかけていくわけでございまして、いわゆる不動産部門の金利、これを鉄道部門にかけるというようなことはいたしておりません。
  37. 庄司幸助

    ○庄司委員 それじゃ予想配当の配当分はどうなります。
  38. 秋富公正

    秋富政府委員 現在の配当は、鉄道部門は四十六年、四十七年、四十八年いずれも赤でございます。しかしながら、いまの十四社の中で二社が九分の配当、他の十二社は一割の配当をいたしておりますが、これはいわゆる不動産部門の収益によりまして配当を行なっているわけでございます。  それで、今後の配当を一体どう予想するかという問題でございますが、先ほど申しました自己資本に対しましてはその配当の問題、借り入れ資本につきましては金利の問題、こういったことを踏まえまして八・五%とか八%とか、こういった事業報酬を算定する次第でございます。
  39. 庄司幸助

    ○庄司委員 配当は、これは東京急行電鉄株式会社として一本で配当するわけですね。鉄軌部門が赤字であろうと黒字であろうと、配当は一律だ。ですから、そういった一律の予想配当ですね、これも含んでやはり値上げの申請の基礎にされている。この辺やはり問題だと思うのですね。  それから、先ほど何か、四十七年度も鉄軌部門が赤字だ、こういう御説明がありましたが、これを見ると、営業利益では十億円黒字ですね。十億二千三百万、これは黒字です。それから、四十八年度は私はわかりませんが、四十六年度もおそらく黒を出していると思うのですよ。それが、この利子や配当やその他があるために赤字に転化されている、こういう問題があると思うのです。  ですから、先ほどから論議しているように、私はやはりこれはどうしても——こういった東急の事例を見ると非常に明らかなんですが、田園都市線ですね、これを建設していく過程で土地の買い占めを進める。しかも、いわゆる土地区画整理組合ですか、これをつくりながら東急はやっていったのですね。しかも、その地権者の持っている土地の大体一割は東急が持っている。こういうかっこうで地権者会のリーダーシップをとっているわけですよ。明らかに田園都市線とあの辺の東急多摩ランドやなんか、こういうものは、一体のものとして東急が計画したものだ。一体のものとして計画したのですから、やはり鉄軌部門だけを値上げするということは、どう考えても私は不当に見えてしかたがないわけです。  もう時間がありませんから、その辺でこの問題やめますが、やはり運輸大臣、この点は、私さっきから申し上げているように、国民がどうしても納得できない点です。だから、ぜひこういう不動産部門でもうけた私鉄については、たとえ今回限りといえども、改定にあたってはこれらの利益も含めて改定の指標にする、これを強く要望しておきます。  それから、あとは簡単な問題ですが、東北新幹線工事局ですね、ここでいまトンネル掘りが相当やられています。宮城県の白石市の蔵王トンネル、ここは前に参議院の岩間正男議員からも皆さん方追及を受けたわけですが、若干の解決は見つつあります。しかし、この間、ここの飲料水がかれたために国鉄側がトンネル内からくみ出している飲料水、これが宮城県衛生部の調査によりますと、PHが九・四出たというのです。これは、おふろをわかして入るとからだがぬるぬるになるくらいの強アルカリ性なんですね。そういう中で子供さんが下痢を起こす事例も出てきておる。それからもう一つは、これも驚くべきことですが、大腸菌が検出されている。現地を調べてみたら減菌装置が作用していなかったというのですよ、かっこうだけはつけておるけれども。だから、国鉄当局は非常に新幹線急いで、工期どおり無理やりに進めようとしておりますが、こういう住民のこうむった被害についてはなかなか手の打ち方がおそいのです。  それから、かんがい用水について言うならば、かんがい用水もかれました。これが白濁しているのですね。調べてみたら珪酸ソーダが大量にドラム管で積まれている。これは原工区というところで使ったらしいのですが、この珪酸ソーダというのはいわゆる凝固剤ですね。こういうものがかんがい用水にまじってどんどん排出されているわけです。しかもそれに対する対策は、かっこうだけの沈殿池が一つ、小さくあるだけですね。これじゃ何にもならないと思うのですよ。  それから、同じようにこの新幹線トンネルの工事で水がかれた地区で、これは五月十七日まではパイプ引っぱったらしいですが、パイプが足りないなどといってなかなか引っぱってもらえなかった。現に引っぱってもらったところでも水の量はまことに微々たるもので、もっと先まで伸ばせない。これは水争いまで起きるような状況があるんです。パイプが足りないなんて、あの膨大な新幹線工事をやっている国鉄が、あんな細いパイプが一キロ、二キロ足りないなんてばかな話ないだろうと思うのですよ。岩間参議院議員に対して運輸大臣国鉄総裁も、もう全責任をもって補償なり修復やります、こう言っているわけでしょう。それがパイプをどこへ行っても寄せ集めようがないなどといっているのですよ。こういった事態をどういうふうに解決なさるのか、この点だけ簡単に伺っておきます。
  40. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答え申し上げます。  東北新幹線の蔵王トンネルの掘さくに関する渇水の問題でございまして、われわれはトンネルを掘るときに必然的に水の流れやすい穴を掘るわけですから、飲料水がかれたり、かんがい用水がかれるということが間々起こるのでございますが、御指摘の蔵王トンネルに関しましてもそういう現象が起こって御迷惑をかけているということは、はなはだ申しわけなく存ずるのでありますが、子のトンネルから出てきた水、あるいはその付近の水を飲料水に充当するということにつきましても、御指摘くださいました白石の保健所といったようなところにもその分析を願いまして、これならいいだろうというようなことでやっておりましたところ、最近大腸菌が出てきたというようなことがございましたので、それはストップして、現在のところはタンクで飲料水を運んでおるというような状態でございます。それから、かんがい用水に関しましては、例のとおりトンネル掘さくの工事に使う水どめでございますね、その間の珪酸分とかなんとか流れてきてかんがい用水を汚濁したということでございますので、これも、もとにおきましてこいつを中和するというような方法をとっておりますが、工事中はそういったあらゆる手を、パイプが足らぬとかいっておしかりを受けておりますが、あらゆる手を打って、現実に御迷惑のかからぬようにして、しかもトンネルができ上がりましたら、永久の水道をつけるとか水源を見つけるとか、かんがい設備をするとかいたしまして、御迷惑のかからぬようにし、なおかつ性質上、かんがい用水が足らなくなったということに対しては減収の補償をするといったようなことがたてまえになっておりますので、先生いろいろ御指摘願いまして、大体そういうことなんでございますが、われわれとしてもずるけているわけじゃございませんので、極力そういった本質的な、飲料水、かんがいといったような、地方住民に関しましては生活の根源のような問題なんで、これはひとつ一生懸命でやる所存でございます。  なおかつ御説明が必要ならば、担当の者が来ておりますので、ひとつ御説明させます。
  41. 庄司幸助

    ○庄司委員 もう時間参りましたので終わりますが、これは国鉄総裁に厳重に御要望しておきたいのですが、同じような事例がまた大和町の落合という地区で起きているんです。水が一たんかれて、また出だした、飲んでみたら吐いてしまった、こういう事例もあるんです。ですから、最後に申し上げたいのは、このトンネルを掘る、あるいは路線を敷く、その場合は万全の対策をまず事前に立てて、もう大体いままでの事例でわかっているわけですから、トンネルを掘ればどうなる、路盤の関係ではどうなる、あるいは新幹線がピアを建てればどうなる、これはわかっているわけですから、前もって対策を立てて、そしてかかっていただきたい。そして、それでもなおいろんな事故や災害が起きた場合は万全な補償をする、これを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  42. 臼井莊一

  43. 野間友一

    野間委員 新幹線網の強化ということはよくいわれますけれども、私たち共産党はそうではなくて、いま必要なのは国民の足をどう守っていくかということ、つまり具体的には在来線の拡充強化ということを唱えてまいりました。このことが石油危機を契機にしてモータリゼーション、これらの反省という声がいま深刻になってきたと思うのです。国民の足として安全上の問題、それから大量輸送あるいは運賃、こういう点からして、いま急速に在来線の拡充強化を進めていかなければならぬ、私たちはこう思うのです。  こういう点について、時間の関係で具体的に入りたいと思いますけれども、和歌山線の複線電化、これについては、ことしの三月二十三日に参議院の予算委員会において、前田議員質問に対して総裁は次のように答えております。和歌山線の電化については、和歌山の通勤圏それから大阪のベッドタウンであるので、「輸送要請とにらみながら電化複線と申しますか、そういうものを積極的に検討していきたい、」こういう答弁総裁はいたしております。また「電化とかなんとかを進めざるを得ないものだろうと思います」こういうことも言っておられます。こういうことからいたしますと、これはまさに「積極的に検討していきたい、」こういうような答弁をされておりますけれども、これは私は、前向きの答弁として評価するわけです。  そこでお聞きしたいのは、具体的にこの和歌山線、これは和歌山市の東玄関にあたるわけですけれども、ここに通ずる和歌山線の複線電化、これらを具体的に現時点でどのような構想を持っておるのか、まずお聞かせ願います。
  44. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答え申し上げます。  前に私、発言いたしましたのは、そのまま現在もそのとおり信じておるのでございまして、御指摘の和歌山線は、根幹の私鉄とかなんとかたくさん——南海であるとか関西線のごときは入っておりますけれども、全部御承知のように電化されておりまして、電化されていないのは和歌山線あるいは桜井線のようなものが残っておりますけれども、こういったものが島のようなかっこうで残りますと、これは車両の運用とか列車の運用にもはなはだ都合の悪い面も多々あるということで、これは将来は必ず電化しなくちゃいけない区域である。しかし、電化いたしますのには地上の固定施設に相当金がかかりまして、参考までに申し上げますと、単線でもキロ当たり四千万とかなんとかいう金がかかりますので、これはやっぱり、相当輸送量が太いところから先やるのはある程度やむを得ませんので、今年度は王寺−五条、これを電化にかかりたい、かように考えております。
  45. 野間友一

    野間委員 これは総裁から、積極的に検討したいというような答弁もありますから、これは単に官僚答弁でなくて、具体的にいま話ありましたけれども、それ続いて近い将来必ず複線電化するというふうにひとつやっていただきたいということを要求します。  時間の関係で次に進みますけれども、無人駅の問題です。これは局長でけっこうだと思いますが、昼間帯、それから下り最終四二一列車ですね、これらが通過駅になっておる。これについて地元ではかなり、とめろという——特に昼間帯の場合、あの沿線に高等学校がずいぶんあります。粉河高校、伊都高校あるいは奈良高校等々。これらが大体五千名ばかり学生がおると思いますけれども、そのうち無人駅を利用しておる学生が約四分の一。これは私たち共産党の藤沢弘太郎さんという人がいろいろ調べたわけですけれども、大体千五百から千六百名くらい、この無人駅利用の希望があり、また利用できるという情勢にあるわけです。そういう意味から教育上、これは経済的な負担の問題、それからその学生のほかにも病院通いあるいは婦人の出歩きというような点からして、当然これらについてとめるべきである、こう思うわけですね。  その点について、七月のダイヤ改正の時点でこれらの見直し、手直しをしたいというのが、住民と天鉄との話し合いの中でいわれております。とりわけ、当面緊急に私が要求したいのは、利用人口の多い中伊降あるいは紀伊小倉駅、これらについて、あるいは紀伊山田については四二一列車、この七月のダイヤ改正の際、いま申し上げた下り最終あるいは昼間帯、これを全部とめるという方向で七月のダイヤ改正がなされておるのかどうか、検討がされておるのかどうか、この点について答弁を求めます。
  46. 伊江朝雄

    伊江説明員 御指摘のような運行状況になっておることは事実でございまして、御承知のとおり、私どもは全列車をとめないわけではございません。昼間帯、データイムの非常にすいているときに通過する、これは地元の御要望ではやはり五条から和歌山方面への列車のスピードアップをしてほしい、こういう御要望が片一方に非常に強うございまして、そのために、ラッシュの時間を除きまして、昼間帯はスピードアップするために停車駅を幾つか減らしたということでございまして、御指摘のとおりに七月の時点において、その後の乗降人員の調査もいたしておりますので検討したい、かように考えております。
  47. 野間友一

    野間委員 その検討というのは具体的に、とめる、そういうことを言っておられるのか。  それからもう一つ、ついでにお聞きしますけれども、この四二一あるいは四二二、これは一往復ですね、まだ客車列車ですね、これについてスピードアップの問題とか、あるいはドアの開閉等の安全の問題、これをぜひ早急にDC化してほしい、こういう要求も強く出されておりますけれども、この点についてもあわせてお答え願います。
  48. 伊江朝雄

    伊江説明員 前段のお答えでございますが、紀伊小倉、それから中伊降、これはいままで停車回数が非常に少なかったのを、最近改正いたしまして停車をふやしました。これは御承知のとおりだと思います。いま私が検討すると申しましたのは、もちろん停車駅をふやすという方向で検討いたしたいと思います。  第二点の客車列車、これは先生承知のとおり、通勤時間帯、やはり御利用が多うございますので、八両で客車を運転しておると思いますが、これは当分の間はこのままにしたい。ただし、ドアの開閉が自動的じゃございませんので、安全上の問題につきましては、御承知のとおりと思いますが、車掌を二名乗せておりまして、その間の十分な御誘導ができるように体制をとっております。そのまま続けたいと思っております。
  49. 野間友一

    野間委員 この間、旅客課長でしたか、来てもらったときには、一両年中にはDC化する、こういうことをもう聞いたわけですけれども、ちょっといまの局長答弁と違いますので、もう一ぺん念のため聞いておきます。
  50. 伊江朝雄

    伊江説明員 ディーゼルは、やはり新しい車を逐次入れていくのは、これは全国どこの線区でも同じでございますが、ただいま御指摘の客車の八両編成につきましては、当分の間はこれで対処したい、こういうことで、この八両全部DCにかえるという計画はいまのところ持っておりません。
  51. 野間友一

    野間委員 これについても、ちょっといま私が聞いたのとは違いますので、ぜひそういうDC化する、それから八両編成等々の問題については、これはDC化するという観点に立ってぜひ早急に検討を進めるように要求をしておきます。  次に、いまの自転車の見直しで、この和歌山線の沿線の各無人駅、あるいは有人駅もそうですけれども、ここにバイクとかあるいは自転車を乗り継いで、それから列車を利用するという客が非常に多い。ところが自転車置き場がない。あってもこれは有料である。しかも国鉄のこの駅の周辺には土地が遊んでおるというのがあるわけですね。具体的に言いますと紀伊小倉とかあるいは笠田、こういうところにあるわけです。これらの点について、私は、ペンペン草がはえるような状態で放置しておくのは、これはどうかと思うのです。そこで、まあ管理上の問題があろうかと思いますので、たとえば地方自治体が管理に責任を持つ、そして自転車とかあるいはバイクの置き場として住民が利用するという方向で積極的にこれは考えるべきである、こういうふうに思いますけれども、この点いかがですか。
  52. 伊江朝雄

    伊江説明員 駅前広場はやはり乗客の皆さまの御利用に供するということを前提に考えるべきだと思いますが、御指摘の紀伊小倉のほうは、確かに用地はございますけれども、道路からのアプローチが全然ないというふうな非常に困難な問題があるそうでございます。これは先生も御指摘のとおり、やはり地方自治体の皆さまと御協議の上で前向きに検討してまいりたいと考えております。
  53. 野間友一

    野間委員 前向きにというのは、こういう用地があって、なおかつ、これが住民、お客さまの利用に便利であるという場合には、地方自治体あるいは住民と協議をして、そうして利用できるものは利用するという方向で検討したい、こういうふうに理解しましたけれども、それでよろしいですか。
  54. 伊江朝雄

    伊江説明員 地元皆さまの御要望はいろいろございますので、やはり町当局の責任の方とよく協議したい、かように考えております。
  55. 野間友一

    野間委員 それからダイヤの改正について、数をふやせという要求ですね、特に昼間帯、これも昼間はまだかなり数をふやす余地はあるというふうに思うのですけれども、これらについて七月あるいは近い将来、タイヤをふやす——これはいま人口が非常に急増しているわけですね。そういうような点について、どうなんでしょうか、いまそういう腹案というか、そういうような検討があるのかないのか。
  56. 伊江朝雄

    伊江説明員 七月時点におきましては、ダイヤの列車本数の増ということは考えておりません。これは沿線人口のふえももちろんございますけれども、利用人口は実はむしろ減っているわけでございまして、減っておりますけれども列車回数はそのままに据え置いております。したがいまして、いま二十一往復ございますけれども、当分はこれで対処できるのではないかと考えております。
  57. 野間友一

    野間委員 それについても早急にふやす方向で検討していただきたいということを、これまた強く要望しておきます。  それから、時間がありませんので、最後にまとめてですが、無人駅がいまかなりふえております。たしか和歌山線で、和歌山県内では九つだと思いますけれども、これを有人化せよ——これは乗車人口が一日八百なければだめだという一応の基準があるそうですけれども、こういう基準にこだわらずに、これまた有人化すべきである、この点についてもさらに検討していただきたい。  それからホームの延長ですね、これについては、ある駅では、ホームがなくてお年寄りがドアからころげ落ちてけがをする、こういう事故も起こっておりますので、余地があるところもあるわけですから、ホームの延長をぜひ早急に検討していただきたい。  それから駅舎の問題についても、雨ざらしの中で、しかも無人の中で乗りおりしておる。こういったことも含めて、これは在来線の強化の一環として、この和歌山線の見直しもぜひしていただき、そうしていま指摘申し上げたようなこういう点についても、ひとつ早急に再検討して、しかるべく住民の要求にこたえるという方向でひとつ検討していただきたいと思いますが、最後に答弁を求めておきます。
  58. 伊江朝雄

    伊江説明員 御要望のかなえられる点とかなえられない点がいろいろあると思いますが、やはり地元の御利用の状況、それから全国的にもたくさんそういうふうな御要望もございますので、それとのにらみの問題もあると思います。そういうことで検討してまいりたいと思っております。
  59. 野間友一

    野間委員 それじゃ最後に総裁、あなたがいまお答えになったり、あるいは局長がいま答えられたこと、あなたは総裁として、これは最高責任者ですから、いまお答えになったようなことについてこれを積極的に受けとめて、そうして実現のために努力するという姿勢で臨んでいただきたいと思いますけれども、その点についての答弁を求めておきます。
  60. 藤井松太郎

    藤井説明員 国鉄国民の足を預かって輸送をいたしておりますので、御利用になる皆さんが便利になることは何でもやらなくちゃいかぬというふうに考えておりますけれども、これはただでできるわけではないので、金の問題なんかにも触れますので、そういう問題も踏まえて、可能なものは御趣旨のような努力をいたしたい、かように思います。
  61. 野間友一

    野間委員 終わります。
  62. 臼井莊一

    臼井委員長 原茂君。
  63. 原茂

    ○原(茂)委員 最初に、四十六年度の会計検査院の勧告の出ております問題についてお伺いをいたしまして、あと、先ほど唐沢委員質問になりましたような塩嶺トンネルそのほかの問題につき、同時に中央本線と大体同じようなところを、狭いところを通りあるいはクロスするというような、地元にとって大きな問題になっております中央高速自動車道ですとか長野県諏訪のバイパスの問題等にも触れて、終わりたいと思います。  第一にお伺いいたしたいのは、国有鉄道に対する主管局長説明書の中にあります電子計算機の導入と磁気テープの使用状況について、国有鉄道からはこれに対する回答が出ておりますが、その後どのように実施されておりますかをお伺いをいたしたいのと、先ほど四十七年十一月現在と現時点における電子計算機の使用状況を別室で実はお伺いいたしまして、これならいいなという大体理解をいたしましたので、この数字についてのお答えはけっこうでございますから、基本的な方針として、四十六年度の会計検査院の指摘に対する対策がどのように進められてきたかということだけお答えをいただいて、次の問題に入ります。
  64. 尾関雅則

    ○尾関説明員 検査院の御指摘にございましたのは、一つは、レンタルにするか買い取りにするかという考え方の問題が一点でございます。それからもう一つは、磁気テープの二千四百フィートというものの使用しかないけれども、実際はそんなに使っていないのでもっと短いのを仕様化したらどうか、二点でございます。  それでその後、御指摘によりまして直ちにもっと短い仕様書をつくりまして、そんなに長く使わないで済むものは短いものを購入して使うということに改めております。  それから、レンタルにするか買い取りにするかという考え方の問題でございますが、一般に、電子計算機のレンタルを続けてまいりまして継続使用が三年半ぐらいを上回りますと、最初から買い取ったほうが有利だということになりますので、購入時点に三年半ないし四年以上使うということがわかっておるものは、これは初めから買い取るということにいたしております。また、レンタルを続けておりまして三年を経過しまして、今後もなお一年以上も使う見込みがあるというものはその時点で買い取るということを進めてまいりまして、御指摘いただきました四十七年の時点で八十一台の電子計算機があったわけでございますが、そのうち二十四台が当時レンタルでございましたけれども、御指摘によりまして六台買い取りにいたしまして、御方針に沿うように措置をいたして現在に及んでおります。  以上でございます。
  65. 原茂

    ○原(茂)委員 当時勧告のありましたことを、いまの方針で変えていかれるということがわかりました。  先ほどもお聞きしましたが、四十七年現在あるいは今日現在、今日でいうと九十九台ですか、国産と外国製の内訳はどうでしょう。
  66. 尾関雅則

    ○尾関説明員 四十七年当時で、八十一台のうち外国製は二台でございます。これは非常に古い時代に使用したものでございまして、他は全部国産でございます。
  67. 原茂

    ○原(茂)委員 たいへんけっこうだと思うのですが、特にこの中で日立の大型の試作機を大胆に取り入れて運用されているようですが、たいへんいいと思うのですが、近い将来一番大きな容量のものが必要になるとすると、IBMでいうと一体どういう程度のものが必要になるのか。現在使っている大型のもの以上の大型は要求しないのか。近い将来やはり大きなものが想定されるというなら一体どの程度のものなのかが一つ。  それから、その場合でも、必ず国産化でやっていくんだ、外国製は使わないというようなお答えが願えるかどうかが二つ。  それから、ついでにお伺いしたいんですが、プッシュホンを通じてみどりの窓口の業務をするというようなことがつい先日電信電話公社で聞かれたんですが、そういう計画がいま進行しているのか。現にどっかすでにやっているのか。近い将来、いまやっている以上に、どことどこの駅でいつごろプッシュホンによるみどりの窓口の業務をやろうとしているか。  局長さん、電気関係できっとおわかりだろうと思うので、この三つお答えいただきたい。
  68. 尾関雅則

    ○尾関説明員 国産か外国機かという問題でございますが、国鉄は国の機関でございますし、当然国産を中心にして使っていくというふうに考えております。  それから、近い将来どのくらい大きなのが必要かというようなお話でございますけれども、国鉄の業務というのは、世界的に見ましても非常に膨大でございますので、どうしても非常に大きな電子計算機がほしいのでございます。しかし、国産ということを考えまして、従来、大型の計算機あるいは中型の計算機を数台組み合わせて使う、それで一つのシステムとして使うというような機能のシステムというものも相当研究をいたしまして、国産機の使用をいたしております。どうしてもやむを得ない場合に外国機を使うということも将来は絶無とは申しませんけれども、できるだけ国産の大型のものを使ってまいりたいと考えております。  それから、先生のいまお話にございましたIBMでいったらどのくらいのがほしいかという御指摘でございますが、いまIBMの一九五というのがございます。これは非常に大きなコンピューターでございますが、当然あの程度以上のものが国鉄には要求されるだろう。近い将来、新幹線のネットワークのトータルの管理であるとか、さらにもっと座席予約が進むというようなことを考えますと、非常に大きなものがほしくなるということは容易に想像できるというふうに考えております。  それから、最後の御指摘でございますプッシュホンのシステムの問題でございますが、これは先生指摘のとおり、現在システム開発中でございます。しかし、これは世界的にも初めての試みでございますので、最初から非常に大きなもので大規模にやるということをいたしませんで、実は東京都内を対象にいたしまして実験的に、東京に発着する特急列車というものを対象にしまして、それも一日の座席容量にして五万ぐらいというような規模の小さな中等程度のもの、これは実はいままで座席予約に使っておった計算機を再用しまして、それで実験的にことしの暮れぐらいからやってみたいなと思っております。これはまだいつからオープンするかといったら、まだ実は部内でも決定しておりません。電電公社さんともまだそこら辺で協議をしている段階でございますので、決定ではございませんけれども、おおむねの腹づもりとしては、ことしの秋ぐらいから実験的に少しずつやって、世の中に非常に受け入れられれば将来こういうものをふやしていく、そして国民皆さんに便利に使っていただくというふうなことを考えております。  以上でございます。
  69. 原茂

    ○原(茂)委員 将来試験的にプッシュホンを使っていこうとするみどりの窓口を五万、十万、二十万に拡大しようとしたときに、一体現在持っている電算機のどれが使えるのですか。
  70. 尾関雅則

    ○尾関説明員 将来本格的になりますと、これは本体の計算機というのは、プッシュホンで御予約いただきましたお客さまが、どの区間の切符を何人、どんな、たとえばグリーン車であるとかないとか、そういうようなことを記録しておくコンピューターは中央に一台あればよろしいのですが、プッシュホンでやりとりをされておりますお客さまに声で返事をお返しするというところにもコンピューターが要るわけでございます。これはその地方ごとに、大都市中心ごとにそれぞれ置いていかなければいけない。音声応答装置と申しておりますが、そういうものはたくさん地方にも要るようになるんじゃないかというふうに考えております。これはそうしませんと全部市外通話を負担していただかなければいけなくなりますので、そのようなシステムになるだろうと考えております。
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでにコンピューターに関してお伺いしておきたいのですが、現在実稼働は平均どのくらいしているのでしょうか。  私のお伺いしたいのは、電算機を使っていても各省庁にあるものは——これはあとでまた別の機会に専門にお伺いするつもりですが、たいへん遊んでいる時間が多い。もったいない。だから、ある意味ではこういうものを各省庁間で共同で使えるようなシステムを考えていかないと、各省庁がかってに電算機の大中小を、レンタルだ、買い取りだといってやることは国家的にたいへん不経済だという心配がありますので、一体、現在皆さんのほうでは実稼働率はどのくらいか。
  72. 尾関雅則

    ○尾関説明員 国鉄で使っておりますコンピューターの応用範囲というのは非常に多岐にわたっておりまして、みどりの窓口をはじめ、あるいは操車場、ヤードと申しますが、ヤードのコントロール、あるいは新幹線の運行管理、いろいろな面に使っておりますが、大ざっぱに申し上げますとリアルタイムシステムでありますマルスンとか——マルスというニックネームがついておりますけれども、みどりの窓口のようなシステムでありますとか、ヤードは二十四時間、一年三百六十五日とめることができないわけでございます。みどりの窓口は閉鎖している時間はございますけれども、夜中はきょうの列車の台帳を消してあしたのやつを仕込むという作業をやっておりますので、これは二十四時間、三百六十五日連続で稼働しているとお考えいただいていいと思います。  先生指摘の一般の事務処理用、これは管理局に一台ないし二台ずつございますが、これは月間の時間でいいまして五百時間以上使っております。月三十日といたしまして七百二十時間ですから、五百時間というのは相当よく使っているほうだと考えております。  以上でお答えにいたします。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 たいへん稼働率がいいほうですね。  そこで、最後にこの問題でもう一つ伺いしたいのは、これはむしろ希望、その方向だろうと思うのですが、管理系統の同じものは同じ機種を使っていくという方向に大体あるようですが、そうでないところもまだ、これは新しい古いの関係で、あるんだろうと思うのですが、将来とも、やはりそういうことには十分な配慮をしていく必要があるだろうというのが一つ。これは私の希望です。  それから最後にもう一度お伺いしておきたいのですが、たとえば一番大型のものといって一九五相当のものがという御発言がありましたが、これに対する国産化への試作なり研究なりが現に行なわれているんでしょうか、そこまではまだいってないんでしょうか。
  74. 尾関雅則

    ○尾関説明員 先生指摘のとおり、同じような業務、たとえて申しますと鉄道管理局でやっております給与計算をはじめとする事務処理、あるいは旅客への販売、みどりの窓口系統のような業務、あるいはヤードのコントロールのような業務、いろいろ業務の種類がございますが、同じような業務はできるだけ同じような機種にするように考えております。現在なお二、三完全にそうなっていないところもございますが、今後コンバージョンの機会等をつかまえまして、そのような方向に持ってまいりたいというふうに考えております。   〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  それから二番目のお話でございますけれども、私も最近ちょっと勉強不足で、具体的なお話は確かに存じませんけれども、通産省の御指導等で非常に超大型の電子計算機の開発ということは、相当国の助成等もございまして進んでおるように承っておりますので、近い将来にいまの規模の数倍のコンピューターが出現するんじゃないかということを期待しております。  以上でお答えにかえたいと思います。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。  次の問題に移ります。  先ほど御質問のありました塩嶺トンネルの問題でございますが、大体今日までの経過はよく私、頭に入れております。しかし、いただきました資料で見る限り、四十五年度がゼロ、四十六年度ようやく一千万、そうして四十七年度四億八千万、四十八年度二億九千万、四十九年度以降七十二億九千万、こういう予定で進めるのだと、こうおっしゃっていますが、まず第一に、この工事費は大体この予定どおりにいきそうでございますか。
  76. 内田隆滋

    内田説明員 地元とのいわゆる協議、これが完全に済めば、あとは工事だけの問題でございますので、考えられるような工程で進め得るというように考えます。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 私は、四十九年度以降七十二億九千万かかるんだという、この積算の根拠の中に用地関係費がどのくらい入っているか、こまかいことを存じませんが、現在のようなあの状況を見ますと、思い切ったドラスティックな決意をしませんとあれ以上進展しない、するにしてもたいへん大きな社会問題が頻発をするだろうというおそれを感じているわけです。しかし、私の立場で言うなら、原則的には早期に開通すべきであるという立場を今日以後もとっていくわけでございますから、反対ではありません。こういう状況になりましたときにわれわれの態度としましては、少しでも地元住民の納得のいくような条件をかなえてやるということがわれわれのなすべき仕事になっているわけであります。当然、これを開通しようとなさる国鉄当局にしても、やはりそのことには相当な関心がおありだろうと思う。ですから、いまの四十九年度以降七十二億九千万、こう言っておりますが、相当ゆとりがあって、そのような決意をしても、だいじょうぶ、大体やっていける額なんだというふうに理解されるのでしょうか。私はやはりある程度、ここらに問題の焦点がしぼられていくだろうと思う。  現在、地元状況は、確かに反対期成同盟が会合を持つと非常に大きな力になり、雰囲気をつくっておりますけれども、やはり条件的にもうここまで来たら協力をしようという考えの人々も多々あることを実は仄聞しているわけであります。であれば、私は、そういう人々が萎縮して発言できないような状況に長く置いておくことは、問題を紛叫させ、こじらせ、陰にこもって、たいへん悪い深刻な事態が起きる危険があると思うのです。いま非常に大事な時期なんで、まず、この協力もやむなしと考えている諸君に対して大胆に、彼らが満足する、彼らにとにかく納得してもらえるような条件というものが打ち出されなければいけないという、こういう時期だと思うのです。じんぜん手をこまねいて、そのうち何とか納得してくれる側が自然に多くなるだろう、回りから見てみますとそんな期待でも持っているように見えるのですが、どっこい、そうはいかない。いまはアクションをだれが起こすかというなら、この協力をしてもと考える、ひそかに決意をしている多くの反対同盟の中の諸君に対して力をつけてやる、そのことを当局がアクションを起こさなければだめだ、こういう時期だと思うのですが、そのことを含めて、予算はこれでいいのか。それから、いま私が申し上げたような時期だとするなら、それら反対同盟の中にある数多くの、自分たちの条件が満たされるならばやむなく協力してもと考えている人々に、どんな決意で一体どうやって勇気づけるのか、この事態を現在進めていく一番のかぎはそこにあると考えますが、いかがですか。
  78. 内田隆滋

    内田説明員 まず予算の点でございますが、これは今国会に提出した予算でございますので、最近の物価の値上がり等を考えますと、当然相当上がるというふうにお考えになっていただいてけっこうだと思います。  それから、先生の御指摘になった環境と鉄道との調和という問題でございますが、この点はもう先生の御指摘のとおりでございまして、われわれとしても十分な環境施策、騒音、振動等の問題あるいは町の交通等を勘案いたしまして、調和した鉄道施設になるように十分なことを考えてまいりたいというふうに考えております。先ほども御答弁いたしましたように、実際には詳細な図面をいまつくりつつあるわけでございまして、この図面に基づきまして実際の設計をいましておるわけでございまして、その中でそういう問題も十分詳細に検討をしてまいり、地元に御提案して、誠意をもってこの問題を解決してまいりたいというふうに考えております。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 ぜひそうしなければいけませんので、具体的にはまた別個にお話をいたしますが、先ほども唐沢委員の御質問にございましたように、建設省工事認定に関しては、先ほど御答弁があった程度でまだ推移しているという状態なんでしょうか。ちょっと手ぬるいのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  80. 内田隆滋

    内田説明員 基本方針といたしましては、やはり唐沢先生の御指摘のように、これは何も収用法による強権を発動するという意味ではなくて、国としてこの工事は妥当なんだということを証明する一つのよすがというふうにわれわれは考えておりますので、そういう意味ではなるべく早く事業認定をいただきたいというふうに考えております。また、われわれといたしましても建設省に日参いたしまして、この問題を早く事業認定をおろすようにお願いしているわけでございまして、建設省のほうもこの点は十分認識しておられますので、そう遠くない時期に事業認定はおりるものというふうに考えております。
  81. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでもう一度この問題、最後にだめ押しをしておきますが、確かに強権発動はすべきではない。いまその段階ではない。やるならもっと早いほうがよかった。いまではちょっとおそ過ぎる。いまやると非常に深刻な事態が起きます。したがって、先ほどから申し上げていますように、建設省に日参をして工事認定の問題の解決をはかることを急がなければならないが、同時に、その認定がおりるまでになすべきことは、やはり国鉄の側が、環境問題なり個人の補償の問題なり自治体全体に対する問題なりを、大胆な案を提示するということがないと三すくみになってしまいますから、どうしてもそれをまずやる。そして認定、こういうスケジュールでいくべきではないかと私は思うのでありますが、もう一度その辺の順序と決意をお伺いしたい。
  82. 内田隆滋

    内田説明員 現在線と申しますか、狭軌の線路の新設は、日本全国で相当至るところでやっておるわけでございます。この場合、やはり住宅地のまん中をやむを得ず通るというような場合もしばしばございます。そういうようなものに対する環境改善の考え方というものにつきましては、相当シビアに、思い切ったことを現在やるつもりでございます。したがって、この場合につきましても、先生がおっしゃられましたように、従来の考え方とは全く変わったような案を考えて提示いたしたいというふうに考えております。
  83. 原茂

    ○原(茂)委員 くどいようですが、そのあと工事認定という順序でなければいけないと思います。いまそれはお認めになったと思う。大事なことであります。  そこで、大胆な案をいつお出しになる予定ですか。とにかくそれが待たれて待たれて、問題の解決のネックになっているわけですから、いつその案をお出しになりますか、示すべきです。そしてわれわれもそれを中心にして、地元民の説得なりその他やるべき仕事をやっていくというような、われわれのなすべきことを皆さんとともにやっていきたい、こういう前提ですから、いつまでに出すかをひとつこの際しっかりお答えいただきたい。無期限ではもうだめです。
  84. 内田隆滋

    内田説明員 これは関係の市、県等と、先生方も含めまして十分御相談申し上げて、出すべき時期等については決定いたしたいというふうに考えております。いまの状態ではなかなかそういう事態ではないように思いますので、やはり地元理事者も入れてテーブルに着くようなことができるということがまず前提だと思いますので、その辺も勘案いたしまして提案をしてまいりたいというふうに考えております。
  85. 原茂

    ○原(茂)委員 これは総裁にお伺いしたいのですが、およそ仕事をやろうというのに、環境の整うのを待って、それからいつごろということをきめるのだ。——どんなに困難な事業であろうと、総裁の側からいうなら、事業を遂行しようというからには、その困難を一応も二応も積み上げながら、いつという期限を設定して初めて最大の努力がそこに傾けられる。いまのような御答弁で従来もずっとそうだった。今日まで、この問題を考えるともうすでに足かけ十年、これはもう国鉄側にもミスが一ぱいありました。けしからぬことが一ぱいあった。岡谷市市長などにも手抜かりがたくさんありました。地元の側の理解の点においてまた、不十分な点もあったかもしれません。いずれにしても今日までの経過全部を、当局よし、その意味では自治体はよしというような前提には立っていません。非常に問題が多いし、あやまちをおかし過ぎてきた。だからここまでこじれてきたのですが、かといって、いま言ったように三者、四者が同じテーブルに着こう着こうといってなかなかに着けないで今日に至っているときに何をなすべきか、ある程度わかっているのですから、大体の様相、要求、あるべき姿というものを素案として大胆に、こんなものでいかがですかという案をぶち出して、初めて今度はテーブルに着くことができるのだ。何にもなくて、従来と同じような行ったり来たりの経過だけをたどりながらそこでテーブルに着く、そのことが先でそれから案が出るんだ、しかもそれに期限を置かないでこの問題を進めようとする。いかなる事業といえども、どんな困難があろうとも、皆さんがかつてやったことのないような隧道をつくろうとしても、むずかしい技術問題がある、破砕帯だ何だかんだといいながらも必ず期限は設定している。仕事はおよそそうですよ。それがなくてやっていこうという態度が、いままでずっとここまで引っぱってきた。私は期限を設定させるべきだと思う。総裁の決意がそこにあって、そうしてそのためにいまネックは何だというなら、三者、四者がテーブルに着こうという、着くための素案というものは大胆に当局が出していいと思う。出すべきだと思う。この二点、総裁からお答えいただきたい。
  86. 藤井松太郎

    藤井説明員 塩嶺峠の工事の施行に関しまして、いろいろ御心配かけてまことに申しわけないと思いますが、ただいまの御発言のように、いろいろな問題がからみ合って現況に至っておるのでございます。  これは、こっちの素案としてこれはどうだということはきわめて容易であるけれども、国鉄は何も地元の方のおっしゃる要求を全部値切ろうとかなんとかいうようなしみったれな考えはございませんけれども、国鉄公共事業でございますので、あそこで何をやるか知りませんが、こういう案を示しましたら、御同様なところではやはりそれを示さないとおさまらぬというようなことがございますので、地元方々テーブルに着いて御意見を伺うこともいいのだが、われわれが出すということになると、やはりそういう心配をすると、地元方々にはお気に召さぬようなものを出さざるを得ないような形になる。それでは出したことの意味をなさぬというようなことで、これは私どものほうも非常に苦慮いたしておりますので、しかし御発言の趣旨はまことにけっこうなので、そういう前向きというか建設的な意味合いにおきまして、われわれもひとつ御叱咤を仰いで早く解決しなければいかぬ、かように考えておるのでございます。  いまここでどうだということはきわめて容易だが、ほかで全国的にバランスがとれるかということ、しいて言えば、先生のお気に召さぬかもんれぬけれども、現在われわれが持っておるルート反対される方の御提唱になるルート、三百メートルくらいしか離れてないのですね。したがって、環境とかなんとかいうような、私は何もそいつに手を打たぬとは言っていないけれども、そういう大きな問題をつかまえるのなら、どっちを通ったって同じじゃないかということも言えぬことはない。これは必ずしも言おうということじゃないですよ。したがって、そのようなことを勘案して、いずれにしても両者の主張を合わせて早く解決するより手はない。  しかし、県当局地元の自治体の方々も非常な御熱意を持って御協力賜わっておるので、この方々の御意思も伺う必要があるということになってくると、もう先生のおしかりを受けたような、一体期限がなくて戦争するつもりかというようなことになりますが、そういうことを十二分に承知して、できるだけの努力をいたすということで御理解を願って、御支援を賜わりたい、かように思います。
  87. 原茂

    ○原(茂)委員 何の交渉にしたって、仕事を進めようという主体がやはりある程度たたき台を出すということは、前進させる第一歩なんです。たたき台も何も出さない。全国のバランスをとった最大のものでいいじゃないですか。そういうものをたたき台としてやはり大胆に出す。それを中心にまたいろいろとディスカッスが行なわれていくようにすべきだ。この点についてもう一度回答をいただかないと、どうもいままでのように、理事さんと同じようにずるずるといってしまうだけで、これは問題の解決にならないと思います。  ついでに……。総裁からいまのような、どういう例をとらえようとあるいはどんな理由があろうと、現段階では三百メートルくらいしか離れていないのだから、どっちとったっていいじゃないかという意見もあるなどと総総裁の口から出たことは大問題だ。もうこれはとらえられてたいへんなことになります。もう一度……。取り消さなければなりません。
  88. 藤井松太郎

    藤井説明員 三百メートルの件は取り消しますが、きょうは非常にわれわれのごシンパの方であるということで申し上げたので、それは取り消します。  それから、たたき台でございますが、素案を、これは地元の方にはお気に召さないようなことになるかもしれませんが、われわれはとにかく全国的のバランスとかなんとかいって、ここまでは最大限度でございますが、御賛同願えませんかといったような話は、さっそく進めることにいたします。
  89. 原茂

    ○原(茂)委員 けっこうです。ぜひお願いします。  次いで、中津川線・下呂線の問題をお伺いしたい。  これはもうだいぶ古く二十六年以来、三十二年調査線編入、現在に至っているのですが、先日資料をちょうだいしたいと思うので、資料の要求をいたしまして、人を通じてちょうだいいたしました。これがそうです。一枚だけよこした。それの4の「現況」というところにこう書いてある。「全区間の測量・設計中であるので、詳細については不明である。」こんなばかな回答がありますか。私はめったに皆さんと、けんかなんかもちろんしようと思っていませんが、むしろ、こういう質問を申し上げながらも、できる限り前向きに事が進むように、ある意味では協力すべきことは国会議員として協力をしようという前提で、いつも質問はいたしております。こういう立場からいいますと、この古い飯田−下呂線に関して詳細は不明である。——現に実際に地元には、神坂隧道その他で工事らしい調査が始まってもいるのですよ、金をかけて。それをこんな回答のしかたありますか。大きな前提問題として、総裁どう思いますか。総裁答えてごらんなさい。こんなばかな回答のしかたがあるかどうかを答えてごらんなさい。当局者じゃなくていいですよ。総裁だって、こんな回答が来たら許さないでしょう。
  90. 徳永正利

    徳永国務大臣 全般を監督しております運輸大臣としてお答え申し上げたいと思います。  いま御指摘のような点につきましては、原先生の直接質疑応答に立ったのはこれが初めてでございますけれども、御経歴なりお人柄なり、そういうようなことは十分承知しておるつもりでございます。  御要求の資料に対してそういうふまじめな資料を提出するというようなことは、まことに遺憾なことでございまして、今後国鉄なりあるいは鉄建公団なり、そういうことのないように十分注意してまいるつもりでございます。
  91. 原茂

    ○原(茂)委員 あと十分注意していただきたい。とにかく貴重な時間を使って、私どもが真剣に考えて、少しでも前進をと考えるときに、こうしたふまじめな回答をよこすことのないように、重ねてお願いをいたしておきます。  次に、全体完工の見込みはいつに見ているでしょうか。先ほどの話ではありませんが、全然完工の見込みございません、いつ終わるかわかりません、こういうのでは仕事にならないわけですから、完工の見込みというのはいつごろに見ていますか。  ついでに、建設省は総額二百億を見込んでいたはずですが、一体、その完工の時期がいつになるか知れませんが、現在のような状況でなおかつ二百億で完工できますか。
  92. 北原正一

    北原参考人 鉄道建設公団の理事北原でございます。  まず、中津川線の金額でございますけれども、これは実は昭和四十一年の十二月でございますか、運輸大臣から工事実施計画の認可がおりまして、そのときの総工事費が百四十二億ということになっております。その後物価の変動等ございますので、かなり上がると思いますけれども、実は最終的な総工費の改定をまだいたしておらないわけでございます。今後の物価の騰貴ということも大きな問題ではございますが、非常に大きな問題は、神坂トンネルにただいま着工いたしておりますけれども、その神坂トンネルには大きな断層が幾つかございます。神坂断層でございますとか阿寺断層でございますとかたくさんございまして、非常に苦労するかと思われますので、その辺で工費がかなりふえるのではないかというふうに考えておりますが、二百億でありますとかいう数字は、まだ公式に出しておりません。今後そういうことを見まして、百四十二億ではちょっと足りないかと思っておりますので、ふやしてまいりたいと思います。  そういうことでございまして、かなり地質が悪いことが想定されますので、時期はかなり長くかかるというふうに考えておるわけですが、もう一つは、いわゆる地方開発線でAB線というものでございまして、今後の予算のつき方というのも非常に関係してくるかと思われます。このトンネル自体は、近所に中央高速道のトンネルがございまして、これは実質的に六、七年かかっておりますので、それよりも私のほうのトンネルのほうが長うございますので、何とか最新の技術を駆使いたしまして、中央高速道にそう負けないような工期でやりたいと思うのでございます。これは私が技術者としてそう思うのでございまして、そのほかに予算の関係もございますので、いつまでというのはまだ最終的にきめておらないわけでございます。これが一番工期が制限されますので、その間にほかの、その前後のほうの工事をそれにあわせてやるということは、技術的には可能だと思います。一応そういうことでございます。
  93. 原茂

    ○原(茂)委員 いまどのくらいの予算が使われているか内訳は御存じだろうと思いますので、あえてこまかく申し上げませんが、神坂トンネルの現在水平ボーリング等やりながら進めている一日の速度が約三メートルくらいで、約一キロ三百二十くらいがすでにもう済んでいるはずです。この調子でいくと四十年くらいかかるのですね、トンネルをずっと終わるのが。いまの予算で割っていきますと、そうなりませんか。ですから、極端に言いますと、これはことによるとやる気がないのじゃないか、どこかでほうっちゃうんじゃないかという地元の不安は大きいのです。  こまかいことをいろいろお伺いするよりは、必ずやるという方針でやっておりますというのか、総裁がわからなければ、皆さん総裁にその内容を教えてもけっこうですから、総裁からその決意を伺いたい。うっかりするとこれは放棄されるのじゃないかという非常な不安がある。この状態ではとにかくトンネルだけで四十年かかるじゃないか、これでどうなるのだろう。この地元住民なり長野県全体としても、五十三年長野国体がある、五十三年長野国体までには何が何でも営業開始をしてもらいたいというのが切なる要望なんです。われわれもそのために何とかして、皆さんにお願いをして、完工、営業開始が五十三年にできるようにということを念願してものを申し上げているのであります。第一に、絶対放棄しない——現在の予算の状況からいったら、放棄しないどころか実質的に放棄と同じ状態でしか手がつけられていない。だが五十三年国体がある。中央道が七、八年かかっているので、あれから見てどうもというような調子ですと、五十三年国体、営業開始なんというのはとてもじゃないが及びもつかないという回答にも通ずるわけであります。私はこういう問題を、じんぜんといいかげんに延ばすべきじゃないと思う。  そこで、担当のえらい方々お話しいただいて、三つに分けてお答えいただく。絶対に放棄しない、やり遂げる、どんな状況があろうとこれは方針として必ずやりますということが一つ。もう一つは、予算措置がどうなるのか、現状に照らして今後どういう方針でしからばいくのか。第三に、五十三年国体、営業開始は絶対やっていただきたいができますか。三つに分けて……。
  94. 秋富公正

    秋富政府委員 先生承知のとおりAB線につきましては、運輸省といたしましてもこの予算獲得に努力いたしているわけでございます。四十九年度は三百五十億でございますが、昨年は三百三十億、その前は二百億円というふうに、非常にこの問題には重点を置いて予算も獲得してきている現状でございます。で、これにつきまして鉄建公団とともどもいろいろ計画をするわけでございますが、運輸省といたしましても、国会におきましても決算委員会におきましてもいろいろと御指摘もございましたし、総花的にすべてをやっていっていつでき上がるかわからないということではだめだ、もう少し投資の効果を早めろという御指摘もございまして、いわば重点的に工事を進めておるわけでございます。そのいわば重点的にいたしておりますものがすでに昨年、本年とだんだんでき上がっております。このいわばいま重点にいたしております第一グループと申しますか、これが大体五十年、五十一年、五十二年というところに相当完成してくるわけでございます。そういたしますと、そういった資金量と申しますものを次の第二グループというものにさらに投入していく、一方において絶対額もふやしていただく、こういうことでAB線の建設を進めておるわけでございます。  ただいま御指摘の中津川線でございますが、ただいままでの予算の投入と申しますものは、御承知のとおり決して満足すべきものではないということは、私どものほうも十分承知いたしておりますが、これは絶対に放棄するということはございません。これははっきり申し上げます。  それから今後の進捗状況でございますが、これは全般的に申し上げましたように、第一グループの重点化しておりますものができ上がってまいりますと、その工事を——たとえで申しますと、現在でも二十億、三十億というものを一線に投入いたしておりますが、それができ上がりますと、それを新しい線のほうにさらに移していけるということでさらに重点的に進めてまいります。  が、ただいま最後に御指摘の、五十三年度にでき上がるかどうかという点につきましては、ただいま申し上げましたように、絶対の金額の伸びの問題、それと第一グループの完成の時期ということも見ながらいたしてまいらなければいけませんが、私の率直な考えでございますと、なかなかむずかしい問題ではないかと考えております。
  95. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。むずかしい問題ではないかとおっしゃるだけで、とてもできませんという回答がございませんので、ここでは陳情申し上げておきます。是が非でも五十三年国体に間に合わすように、やればできる決意でひとつおやりをいただくように、陳情を申し上げておきます。  次に、北陸新幹線のことをちょっとお伺いしたしたいと思います。  北陸新幹線はまだまだ少し時期尚早で、先のことはあまり言う状況にはない、こういうことにきっとなると思うのです。ただ、現在皆さんがAルート、Bルートを選定しております。両方ともBルートでいくのだという方針は変わらずに今後堅持されていくでしょうか。
  96. 秋富公正

    秋富政府委員 北陸新幹線につきましては、運輸省といたしましては鉄道建設公団に工事実施を命じておりまして、現在鉄道建設公団におきまして工事実施計画を策定中でございます。ただいまのAルートとかBルートとかいうような点につきましては、私、まだ鉄建公団のほうからも報告を受けておりませんが、私たちとしましては、いわゆる公害問題環境の保全ということにつきましても十分に配慮しながら工事を進めていくべきだと考えておりまして、現在五整備計画につきまして、国鉄、鉄建公団にそれぞれ指示いたしておりますが、それぞれの線につきまして国鉄、鉄建公団で検討中でございます。  御指摘の北陸新幹線につきましては、鉄道建設公団が現在いろいろと調査いたして、整備計画工事実施計画の策定中の段階でございます。
  97. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたを私まだよく存じ上げていないのだけれども、四十八年十月二日に、国有鉄道と鉄建公団がこういう書類を出していますよね。これは国鉄が出しているのですよ。その中に、とにかくいずれの二つのルートともにBルートがよろしいからBルートを選定したと書いてある。この方針は変わらないかと聞いているのに、まだ関知していませんとは何ですか。
  98. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいま先生お持ちのものは、私どものほうで、五調査線につきまして国鉄と鉄建公団に共同の調査を指示いたしましたので、その調査報告書のことと考えております。
  99. 原茂

    ○原(茂)委員 そのとおりですよ。選定したと書いてあるのですよ。  このことをお伺いするということを、これも言ってあったはずなんですがね。いやしくもこの種の報告書を出しておいて、このA、B両ルートが二つともにあるのだが、Bルートを選定したという、しかも理由が全部書いてある。こっちはこれだけ難工事がある、こっちはこれだけメリットがある、デメリットがある、なにがあるというようなことを書いて、そうして四ページにわたってそのことが書いてあるのでしょう。AルートになるかBルートになるかが、これは、こういうものをいやしくも発表すると、住民にとってはたいへん大きな影響が起きるというので、事前に関心を持ち、論議をされて、もうすでにこれは古いのです。もし全然責任ある御答弁ができないようないいかげんなものであるとするなら、非常に人騒がせな調査報告書だということになる。これはきょうお答えいただかなくてもけっこうですから、あとで電話ででも、これをよくごらんになった上で回答をいただきたい。よろしゅうございますか。
  100. 藤井松太郎

    藤井説明員 新線は、建設公団と日本国有鉄道と分担して行なっておりますので、中津川であるとかいま先生指摘の線は、実は私は知らぬとは申し上げませんが、建設公団がやっているということでございまして、それからそのAルート、Bルートの御議論は、運輸大臣の命令を受けまして私どもは整備計画をつくりまして、建設審議会にかけたというので、A、Bを比較した結果、Bが先生指摘のようにまさっておるからBでいくんだということで、建設審議会の御承認を得ているはずである、私はかように考えております。
  101. 原茂

    ○原(茂)委員 けっこうです。
  102. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいま私、昨年の十月二日に国鉄と鉄建公団が運輸大臣に出しました調査報告書、これを見まして、先生の御指摘の問題明確でございましたので、御答弁させていただきます。  いわゆるAルート、Bルートと申しますものは、琵琶湖の東側を通るか西側を通るかという問題でございます。この問題につきましては、国鉄、鉄建公団ともにいろいろと地質の調査あるいはそのキロ数、時間の問題、すべての点を検討いたしました結果、現在琵琶湖の西側を通るという路線を決定いたしたことは事実でございます。また、この点はさらに、整備計画を決定いたしましたときも明確になっている問題でございまして、私が先ほど、なかなかちょっとと申しましたのは、そこの問題ではございませんで、それ以外の一般にかかっておりますルートで詳細にどうなるかということでございまして、たいへん御答弁が不十分でございましたことをおわび申し上げます。
  103. 原茂

    ○原(茂)委員 けっこうです。それがその方針で、今後整備計画等の審議に入っていただくということがわかりました。  次に私、大臣に御意見を聞きたいのですが、ずいぶん古くから私はこういうことを言ってきたのです。いやしくも今日、大気汚染その他公害等を考えていきますと、非常に問題は重大だし、この対策一つとしては、自動車にしても脱硫装置の完備をもって何とか空気汚染をしないようにというようなことも、相当重大な課題として今日進展を見ています。だが、どんなに脱硫装置を完成したからといって、ゼロにするわけにはいかない。というようなことを考え、まだまだ脱硫装置が完全ではないという状況を見る限り、いまでもなお私の考えは変わらないのですが、ずばり言って、わが国の輸送の問題に関して中距離以上の貨物自動車の輸送は禁止すべきだ、中距離以上の貨物輸送に関してはすべて鉄道によるべきだ、こういう大原則、この狭い日本でこれほどに汚染をされ、地球全体の汚染がおそれられている今日の段階では、そのことをやはり基本的な問題として検討していただくことが必要ではないかというように考えるのですが、いかがでしょうか。
  104. 徳永正利

    徳永国務大臣 私ども、原則的には先生の説に全く賛成でございます。ただこれ、禁止するかというところまで踏み切るにはまだいろいろな問題があろうと思いますけれども、長距離は海運あるいは鉄道、近距離はもうやむを得ず車、こういうような運送体系に総合交通体系を組みかえるべきだ、見直すべきだということに関しましては、全く同感でございます。
  105. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう前提は、ひとつ大臣、思い切って大転換の構想を打ち出していただいて、早期にその基本方針が具体的に国家的な検討のできるようにぜひ御努力をお願いしたいと思うのですが、もう一度その決意のほどをお願いしたい。
  106. 徳永正利

    徳永国務大臣 ただいま総合交通体系の見直しを審議会に諮問いたしまして、御答申をいただくことになっております。しかし、これがすぐ右から左に出てくるとも、時間的にいろいろな問題があろうと思いますけれども、いまの御趣旨につきましては私は全く賛成でございまして、この点につきましては今後明確に議論のたたき台になるような提案をしてまいりたい、かように考えております。
  107. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。  そこで、林野庁にきょうおいでいただいているのですが、須藤さん、おいでになっているのですね。ちょっとお伺いしたいのですが、特に現在では長野県に関連してほとんど残っているのですが、この林鉄です。森林鉄道。緑を守る、水を守る、空気をきれいに、林野庁の大きな国土保全の十大使命、こういう使命を果たそうというときに、林鉄を廃止してだんだん自動車道路をつくっては、急峻な、無理な、非常に困難な工事をして林道を開設して、そうして自動車に転換をしようというのが今日林野庁の方針だといっても過言でないと思う。いま申し上げたような、大臣の決意の表明もありましたようなたてまえからいっても、最も大事な緑を、その一番密生している中を仕事仕事仕事として走っていくその林鉄を、やはり何とかして電化するということに重点を置いて、自動車輸送に切りかえるということは時代逆行な方針なんだ、こういうふうに考えられてなりませんが、王滝本線にしても鮫川線にしても白川線にしても、全体でとにかく六十三キロぐらい。もう廃止したのはすでにたくさんある。私は惜しいことをしたと思うのであります。今後廃止すべきではない、絶対廃止してはいけない、こう思いますが、いかがですか。
  108. 須藤徹男

    ○須藤説明員 お答えいたします。  森林鉄道を従来自動車道に切りかえておりますが、最盛期には六千キロくらいございました。いまお話しのとおり、現在では長野営林局王滝営林署管内に六十三キロ残っておるわけでございます。  これはなぜ森林鉄道から自動車道に切りかわってきたかと申しますと、もちろん自動車が非常に発達したということが第一の原因でございますけれども、もう一つは山の作業を非常に効率的に実施する。つまり森林鉄道でございますと、そこからまた機械を使うということがなかなかむずかしいわけでございまして、自動車道路でございますと、そこから作業道等が簡単につけられるということで、従来から自動車道に切りかえてきておるわけでございます。  いま御指摘の王滝のこの六十三キロにつきましても、五十一年度で運材を廃止をするということにいたしておりまして、すでに代替道路も大部分でき上がっておるわけでございます。したがいまして、御指摘の電化というようなお話もわからぬことはございませんけれども、林野庁といたしましては、一応関係市町村の御意見も十分聞きまして、そうしてその切りかえを円滑に進めていきたいということで現在進めておるのでございます。
  109. 原茂

    ○原(茂)委員 部長さんはそういう御答弁、基本方針だからなさるんでしょうが、ですから、きょうは長官においでいただいて、もう少し詰めたお話をしたいと思ったのですが、いまのようなお話は、やはり高度経済成長を主体にした日本の政治、経済の運営の時代における考え方なんであります。今日は人命だ、環境だ、緑だ、空気だ、水だといっていることに主体を置く政治へ移行したんだ。政府がそのことを宣言している。事実またそうでなければいけないのであります。そういうときに、地元住民との話し合いがあった、あるいは非常に効率的な面もあるというだけで——すでに方針がきまって非常に古いんです、この問題は。古ければ古いほど見直しをする時代にいま来ているわけでありますから、私はこの林鉄廃止の問題に関しては、正式に政府として再討議をすべきだと思うのですが、大臣、いかがですか。所管ではないのですけれども、先ほどの方針、意見が一致したわけでありますが、そういう確認からいって、経済成長本位の考え方だけで林野行政が林鉄廃止に向かっていることはおそるべき時代錯誤だ、こういうふうに現段階では考えるべきだと思うのですが、大臣お聞きになっていての感想をお聞きして、大臣がもし私と意を同じにされることがあるとするならば、私は、林野庁長官なり農林大臣にも、大臣を通じてこのことを強くお話しおきをいただきたいように思いますが、いかがでしょうか。
  110. 徳永正利

    徳永国務大臣 省資源の立場からも、あるいはまた公害の立場からも、私先ほど、先生の御意見に全く同感の意を表したわけでございます。この森林鉄道の問題は、またこれはいろいろな歴史があろうと思いますけれども、それはそれといたしまして、原則的には、私はやはり、いま小回りがきく、非常に便利だということだけを、経済的な効果を追っかけるということのみに終始するのはいかがかと思いますし、先生の御意見は農林大臣によく私はお伝えいたしたいと思います。  都市の交通問題にいたしましても、チンチン電車がいま盛んに輸出されておるというような状況で見直される時期に来ております。   〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 そういうような問題も考えあわせまして、交通問題、運輸問題、物流問題というものはどういう機関によってどういうふうにすべきかということは、もう一ぺん立ちどまって考える時期に来ておる、私はかように考える次第でございます。
  111. 原茂

    ○原(茂)委員 総裁にお伺いするのですが、いまの営林署管内六十三キロの林鉄が電化されることは可能ですか。場所も線路もわからないでしょうな。だれかわかりますかね。電化されることを、私はこうすれば可能だという案を持っていますが、国鉄のほうで参考意見としてお聞きしたい。電化が可能かどうか。わずか六十三キロです。
  112. 藤井松太郎

    藤井説明員 参考意見なんで、あまり責任のないことを申し上げてもあれでございますが一要するに、いかなる地形でも鉄道は走っておるので、これを電化することは不可能だということはございませんが、ただ、その付近に利用できるような電源があるのかどうかといったようなこと。これとても、送電線を金に糸目をつけずに持ってくるということなら話は別なので、経済的といったら先生の御意思にだいぶ触れるのでございますけれども、主としてそういうことで従来は、可能だ、不可能だという議論をしておったものと私は思います。
  113. 原茂

    ○原(茂)委員 これは総裁、参考までに言っておきますが、経済的に云々というおことばがちょっとあったので、参考意見で言うのですけれども、林野庁は四十八年度六百億という初めてというような黒字を出したのですね。これはそうでしょう。とにかく材が異常な値上がりをして、しかも高値安定、わずかに下がりましたけれども、一時から見ると非常に高いままでずっと推移して、今後もまた国際的に見ても推移すると思う。非常に膨大な黒字が出るという状況にすでに転化してきたということを考えますと、総裁のそういうお話、たいへんありがたいのですけれども、もう根本的に見直すときが来たし、実際には電源はそうむずかしくございませんので、という意味で御意見を伺ったのでありますが、部長さんには申しわけありませんが、時間の都合でこの問題に関するやりとりを打ち切らしていただいて、大臣の先ほどの御答弁に御期待を申し上げておく、そう思います。  次に、中央高速道路、これがまた現在、塩嶺トンネルが問題になっておりましたり、中津川線が問題になるというところと平行交錯を行なう、たいへん重要な高速道路がいまできるわけでございますが、この高速道路の現況についていろいろとお伺いをいたしたいわけでございますが、どうでしょうか、ざっくばらんに言って、いつ中央高速道路が完成するというお見込みでございましょうか、先にそれを……。
  114. 菊池三男

    ○菊池政府委員 中央高速道路の完成がいつごろになるかという御質問でございます。  もう御承知のように、中央高速道路は高井戸から小牧まで行っております。そのうち、もうすでに供用開始しているところが二カ所ございます。御承知のように調布と大月の間、それから瑞浪と小牧の終点のところでございます。そこで大体百キロ近くが供用されております。全体が三百五十キロのうちの百キロでありまして、残りの二百五十キロくらいがいま鋭意工事中でございます。  全体の計画といたしましては、私どもは、昭和五十二年度までには全部終わって全線供用開始ということにまいりたいということで鋭意進めております。個々の個所的には、四十九年度中に終わる個所、そして供用開始する個所もございますし、あるいはまた五十年度、五十一年度と逐次供用を延ばしてまいりまして、最終的に昭和五十二年度に全線開通という目標でいま工事を進めております。
  115. 原茂

    ○原(茂)委員 こまかいことをお伺いするようですが、諏訪−辰野間はいつになったら完成しそうですか。
  116. 菊池三男

    ○菊池政府委員 この全線のうちに非常に工程的に苦しいところが二カ所ございます。一つは、いまの先生お話の諏訪−辰野間、それからもう一カ所は甲府の勝沼と昭和町、あるいは韮崎と言ってもよろしゅうございますけれども、その間でございます。  後者の甲府のところにつきましては、これはバイパスをいまやっておりますので、これはバイパスを使えば交通の支障がないと思いますけれども、この諏訪−辰野間につきましては、これができませんと全線開通ということに非常に支障になります。そういう意味で、私どももこれをもう早急にやりたいということで、いまいろいろ地元方々とお話し合いを進めておりますけれども、これはルート発表したのは、もう四十五年ぐらいに路線発表いたしまして、センターぐいも打ってというところでありますけれども、その後反対と、もう少し路線を山の上のほうに上げろというようなことから、いままだ了解点に達しておりませんけれども、やはり早く了解点に達しませんと、五十二年度完成ということが非常に苦しくなりますので、この点についても特に重点的に話し合いを進めていきたいというふうに考えております。
  117. 原茂

    ○原(茂)委員 五十二年度完成で、諏訪−辰野間も現在の努力のあり方ではやっていけるんだ、こういうふうに見てよろしゅうございますね。それが一つ。それをお答えいただきます。  それから、いまの勝沼−昭和町間ですが、二十号線のバイパスを当座は使う。本線はどうするのですか。やはりいつの時期かにはやるのですか。いつごろやる予定でございますか。
  118. 菊池三男

    ○菊池政府委員 最初お話し申し上げましたように、昭和五十二年度までには全線やりたいということでございます。ただ、そのうち非常に工事の難航しておるところが二カ所ある、それが先ほど申し上げた二カ所でございます。したがいまして、私どもはやはり昭和五十二年度までに完成するということは、あくまでただいまの目標は捨てておりません。ただ、非常にむずかしいということから、そうなった場合でも甲府のほうはそういうバイパスがあるので、ある程度交通は流れるということを申し上げただけでございます。ただ、いまの諏訪のところ、諏訪と辰野の間につきましても、これはやはりまだ地元方々との話がついておりませんので、これがなおこのまましばらく過ぎますと、やはり工事をやるにはある程度の期間が要りますので、五十二年度完成は、このままずるずるいくと非常に苦しくなってまいると思いますけれども、いまの段階では、早く話がつけば五十二年度までにはできるであろうという想像をしております。
  119. 原茂

    ○原(茂)委員 まあ五十二年完成を目標におやりいただく、ぜひ御努力をいただきたいのですが、いま言った二カ所について問題がある、そのために、もし五十二年以後にそれが延びるというようなときには、部分的な供用の開始ということはあり得るのですか、しますか。
  120. 菊池三男

    ○菊池政府委員 部分的な供用開始はあり得ると思います。現在でも大月と調布の間は供用しております。それから小牧と端浪がしております。それから逐次、もしできれば本年度中に恵那山トンネルを含んで松川ぐらいまでは供用したいと考えております。それから、逐次でき上がったところはやはり有効に使っていただくために、部分的な供用ということはあり得ると思います。
  121. 原茂

    ○原(茂)委員 現在、部分的供用がたぶん行なわれるだろうと思いますし、そうしていただきたいのですが、それは二車線だと思う。それが四車線でこの中央高速道路全体が完成する時期はいつになりますか。
  122. 菊池三男

    ○菊池政府委員 中央高速道路につきましては全部四車線でやっております。ただ、恵那山のトンネルにつきましては、とりあえず二車線しか掘っておりませんけれども、これはまた引き続き二車線を掘るということで、その恵那山のトンネルだけは、五十二年度までに完成するかどうか、これはちょっと疑問でございます。二車線はできる。それ以外のところは全部四車線で完成でございます。
  123. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、大月 八王子間で二車線でずいぶん長い間やりましたよね。ああいうことはもうない、完全に四車線でやる、こういうことになりますね。
  124. 菊池三男

    ○菊池政府委員 恵那山トンネル以外は初めから四車線でございます。中央道の以前の形のような供用はいたしません。
  125. 原茂

    ○原(茂)委員 危険がなくてたいへんけっこうです。もしあれをやるんだったら、やるべきではない、こう申し上げようと思ったのです。非常に危険ですよね。たいへんけっこうだと思います。ぜひそういうふうにお願いをしたい。  それから、これに関連して長野線の現状、見通しを簡潔にお答え願いたい。
  126. 菊池三男

    ○菊池政府委員 長野線につきましては、昨年に整備計画が出されました。そこで整備計画が出されますと、公団に施工命令を出しまして、公団で事業に着工するということになるわけでございますけれども、長野線につきましては、御承知のように塩尻のところで若干ルート反対の問題がございます。したがいまして、まだ公団が現地に行って工事にかかるというところまではいっておりませんけれども、これは県あるいは地元というところといま話し合いを進めておりまして、これはなるべく早くきめて工事にかかりたいと思っておりますが、整備計画が出てから工事が完成するまでに通常七年ぐらいかかっておりますので、早くなってもでき上がる時間はそのぐらいの見当になろうかと思います。
  127. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。  その塩尻周辺におけるルートの決定ができないというのに関連して、諏訪の同じく国道二十号のバイパスの問題がある。そのことを最後にお伺いしたいのですが、現在でも都市計画の決定を見ていない地域があるはずでございますが、そういうことを含めて、いつごろこの諏訪バイパスというものを完成させようという目標でおいでになるのか。
  128. 菊池三男

    ○菊池政府委員 ただいまの諏訪バイパスは国道二十号線のバイパスの問題でございます。これは全線がおそらく二十数キロから三十キロぐらいになると思いますが、そのうちの二十キロぐらいがもうすでに都市計画の決定を四十七年にいたしております。これは茅野、諏訪市、それから下諏訪町という部分にかかる分で、岡谷の分がちょっと入っているだけで、あと岡谷部分の都市計画決定はまだできておりません。私どもも、これをできるだけ早く都市計画を決定して、そして着工したいということでいま進めておりますけれども、これは市あるいは議会等は比較的早くやってほしいという話がありますけれども、地元との話がまだついておりませんので、現在ではそのまままだ着工に至らないということでございます。  いつごろできるかというお話でありますけれども、茅野と上諏訪の付近につきましては、今度の高速道路のインターチェンジができますので、それとの関連において早急にやらなければならないということで、これはまた地元方々のほうもだいぶ賛成が得られまして、まだ一部反対というところございますけれども、もう事業は着工しております。これはもうそのまま、私どもは今度の五カ年計画の五十二年度までには全部終わるつもりでおります。それから先の諏訪市あるいは下諏訪町というところにつきましては計画決定してありますけれども、その後地元反対が点々とありますので、なかなかその話し合いがつかずに、着工は非常にむずかしい段階でありますので、いつごろできるかという御質問でございますけれども、私どものほうも早くはやりたいけれども、ちょっといまのところは見通しがない。現道が非常に狭いですから、できるだけ早くやらなければいけないと思いますけれども、ちょっといま見通しは、はっきり申し上げることはできません。
  129. 原茂

    ○原(茂)委員 こまかいことはこの委員会で申し上げるべきではないと思いますから申し上げません。いまおっしゃったとおりに、茅野であろうと下諏訪であろうと諏訪市であろうと、部分的とはいいながら、世帯数にして全体で約四百三十ぐらいの反対がある。岡谷に至ってはもっとあります。というような問題がありまして、塩嶺トンネルではありませんけれども、この問題を反省してみると、これは国のこの種の工事の進めるルートがきまっているからそうなるんだというのでしょうが、やはりもっと先に地元意見というものが吸い上げられて、それが自治体、県そして建設省というように完全に掌握できるような方式、やり方を今後とも考えませんと、どうしても——上からこう、ぱっと発表された、それで集まれと言われた、説明会があった、そのときにぼうっとして聞いていた、黙っていたから賛成だろう、こういってどんどん進められて、そして市が、県が大体いいんだというようなことになったというのが真相なんです。具体的には、通学の子供の安全の問題だ、それ、何だという問題が非常にたくさんあります。したがって、地元反対をしている理由にも非常に貴重な意見がございます。これを無視してやることは、小さな塩嶺問題を幾つかまた引き起こすことになるわけだ。全国的にも例があるでしょうが、そういうことのないように私なども協力いたしますから、したがって、県がいいと言ったから国のほうじゃこれを進めるのだ、いいんだというような状態で、急ぐからといって進めることのないように、必ず私どもにも十分な説明をいただいて、お打ち合わせをした上で納得ができたときに、地元といわゆる国、県、自治体の間のコンセンサスが得られる努力をいたしますから、その時点でなければやらないということをここで確認をしておくにとどめたいと思うのですが、いかがですか。
  130. 菊池三男

    ○菊池政府委員 先生のおっしゃるようなやり方、ごもっともと思います。私どもも、先ほど申しましたように、これは都市計画の決定をしております。都市計画決定はこれは県知事がやるわけでありますけれども、地元の市あるいは議会等につきましても、その都市計画決定については十分意見を申し出るチャンスもございまして、そういうことできまった路線でございますので、本来ならばそのままとんとん——地元の方、これはほんとうの直接道路に関係ある方の反対はございますけれども、そういう意味ではやはり都市計画決定していることに沿っていくべきであろうと思いますけれども、さりとて、反対反対というところに強行することもできませんので、できるだけ地元の方の納得していただくような、これはまた公害の問題いろいろありますので、そういう対策等についても十分お打ち合わせして納得していただいて、工事を着工していきたいと考えております。
  131. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。
  132. 臼井莊一

    臼井委員長 坂井弘一君。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 日本航空株式会社につきましては、最近とみに企業体質の強化がなされているようでありまして、ちなみに、過去十年間の年度別の売り上げを見ますと、昭和三十八年が三百八十七億、三十九年が四百六十二億、四十年が五百二十五億、四十一年が六百七十一億、四十二年が八百四十五億、四十三年になりますと一千七十億、四十四年が千三百七十四億、四十五年が千六百三十四億、四十六年千九百億、四十七年二千二百億、業績はずいぶん目ざましいものがございました。ここでこの配当でございますが、いわゆる日本航空法第十条によりまして、民間持ち株に対する年率配当が八%以内の場合には政府所有株に対する配当の免除がされております。しかし、このような業績から見まして考えますと、この辺で政府持ち株に対する配当は当然なされてしかるべきではないかということが考られるわけでございまして、配当率を見てみますと、昭和三十八、三十九両年度はございません。四十年度から順次四十一、四十二、四十三年、この三カ年間につきましては年六分でありました。四十三度以降本年に至るまで年八分、これが六年にわたって年八分ということであります。つまり八分でございますから、政府持ち株に対する配当の免除ということになるわけであります。  そこで、大臣にお尋ねしたいわけでありますが、このような最近の経営内容から見まして、政府に対しても当然この配当金を支払わせるようにすべきではないかというような見解を大臣が示されたようでございますけれども、まず、この際あらためてひとつ、そうした点からの大臣の方針について具体的にお伺いいたしたい。
  134. 徳永正利

    徳永国務大臣 八分以下の配当につきましては政府の配当をちょうだいしないということは、御指摘のとおりでございます。しかし、日本航空もだんだんと国際競争力がついてまいりましたから、私は配当のことについても政府の出資に対しまして検討をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  しかし、経常利益を見ますと、今後どういうふうにこれが動くかということを見ますと、油の値上がりによって非常に大きな打撃を受けておるようでございますし、いま直ちにこれがどうこうということは、これから先のいろいろな経営状況等をにらみ合わせまして考えていかなければならぬと思いますが、原則的には私は、もう国際競争力がついているんだからひとつ検討してみたい、かように考える次第でございます。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 大臣、検討したいという御意図は、政府に対しても配当金を支払わせるという方向での検討ということであろうと思うのですが、その場合二つの方法があろうかと思います。  一つは、やはり日本航空法第十条を改正するということ、もう一つは、この規定をそのままに置いておきまして、その範囲内で何らか配当金が取れるような方法を考えるというようなことだろうと思いますけれども、そうした方法等につきましてもなお具体的な考えをお持ちの上で検討をされているということでございましょうか。
  136. 徳永正利

    徳永国務大臣 御指摘のように二つ方法があると思いますが、そういうものをあわせましていま検討を命じているところでございます。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 検討中だそうでございますので、これ以上この問題に触れませんが、どうかひとつ前向きで検討していただきたいし、もう私からくどくど説明申し上げるまでもなく、やはり国民の税金によって、金の部分政府出資として、日本航空を今日まで体質強化、国際競争力に十分伍し得るまでに成長を来たしたという資本構成は、国民の血税による部分もずいぶん高いわけでございますから、その辺をよく御検討されて、いまの前向きの方向の結論を急がれるように要請しておきたいと思います。  次に、実は自動車の排出ガスの問題でございますが、いわゆる五十年規制を目ざしまして使用過程車、いわゆる中古車に対しましていろいろな形の自動車排ガス規制、そのための指導なり具体的な方法を講じられているようでございますけれども、最末端に参りますとなかなかいろいろな困難があるようでございまして、所期の目的というものが完全に果たされているかどうか、私は実は非常に疑問に思えてならないわけであります。  まず、その前提といたしまして四十八年一月に運輸省令が改正されまして、四十八年四月三十日までに点火時期の調整、排出ガス減少装置の取りつけが使用過程車、いわゆる中古車に義務づけられたわけでありますけれども、どうも一般ユーザーの方々は、一体どのような装置をつけたならばよろしいのか、かなり迷っている向きもあるようであります。もちろん運輸省におきましては、排出ガス対策済、点火時期調整、こういうステッカーを貼付するように指導されていらっしゃる。しかしながら、これが必ずしも徹底されたとは今日なお言いがたいのではないか。  と申しますことは、その間にいろんな公害規制、光化学スモッグ等の脅威から、この排出ガスを何とか追い出さなければならぬ、防止しなければいけないということで、いろいろな機器、装置、これらがあちこちで考案され、それが発売される。そういう中で、私ここにちょっと持ってきたんですけれども、これなんかを見ますとずいぶん性能がよろしいんですね。これは「シンコウハイスター」で、別な話になるかもわかりませんが、完全に二〇%はガソリンが節約できます。百円ガソリン時代といいますけれども、二〇%節約できれば八十円で済む、こういうことであります。いろいろな形で新聞等を通じて宣伝これつとめているようでございまして、なかなか好評さくさくのようであります。ただ、非常に迷いがありまして、ほんとうに二〇%少なくなるのかということ、同時にいま運輸省が盛んに五十年規制を目ざして、この排出ガスの規制、そのための装置の取りつけ、これを義務づけていらっしゃる、そういう中で、ここにもいろんなことがうたわれているわけでありますけれども、私どうもわかりませんので、はっきり教えていただきたいと思うのですが、たとえば、これを見ますと「一酸化炭素除去九八%、炭化水素除去(アイドル時一六三%、窒素化合物、遅角装置との併用で除去率五五%」こういうようにうたってあります。これは運輸技術審議会の指定するところの浄化性能から見まして適切と言えるんでしょうかどうでしょうか。
  138. 中村大造

    中村(大)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の四十八年規制のうちでの、いわゆる使用過程車についての排出ガスの減少のための規制につきましては、昨年からこれを実施しているわけでございますけれども、この方法といたしましてはいわゆる排出ガス減少装置というものをつける。その場合に、その排出ガス減少装置は、これは運輸省令で定めまして、いわゆる運輸大臣が指定をいたしました装置をつけることを義務づけておるわけでございまして、これは四十八年の五月から来年の三月までの間に順次、地域とそれから排気量の大きさに従いましてつけていく、こういうことにしておるわけでございます。したがいまして、まず運輸大臣の指定を受けました装置をつけることを義務づけられておるわけでございまして、そのためには運輸大臣あてにそういう指定の申請をお出しいただきまして、それによって私どもが審査をして指定をする、こういうことでございます。  したがいまして、先生指摘の装置につきましては、いわゆる公的といいますか第三者的な機関によってその効果を測定し証明しておるというものではございませんので、私どもとして、それが私どもの考えておる規制値をカバーするのに適切な装置であるかどうかということをここで言明申し上げることはたいへんむずかしい、こういうように存じます。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 ここに運輸技術審議会の答申がございますね。a、b二つございますが、一つは「炭化水素七%以上及び窒素酸化物二〇%以上をそれぞれ低減させるものであること。」「b、炭化水素又は窒素酸化物のうちいずれか一方の成分を三〇%以上低減させるものであること。」この二つの要件が必要である。いま私、このシンコウハイスターのうたい文句の数字を申し上げたのですけれども、これは合わないと思うのです。だから、この審議会の答申にぴったり合うものですか。つまり、これが合うものであれば合格するだろう、合わないとすれば不合格だ、私はそう思うのですが、それはいかがでしょうか、こう聞いているわけであります。
  140. 中村大造

    中村(大)政府委員 そのデータは、私ども確認いたしておりませんので、何とも申し上げかねますけれども、もし、私どものほうでそれを公的な検査機関によって測定いたしまして、それが先生指摘のようないわゆる規制値に合致しないものであれば、これは当然成規のものといいますか、合格品、こういうことはできないと思います。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 ここに宣伝紙があります。「日本車両検査協会の厳密な検査をうけてその基準のすべてに合格したのはシンコウハイスターで、現在ガソリン車用として適用されるのはハイスターただ一社となっている。」——日本車両検査協会の厳密な検査を受けて、その基準に全部合格しておりますか。
  142. 中村大造

    中村(大)政府委員 私どもは、その検査協会のほうから合格したという、そういうふうな報告はもちろんいただいておりません。したがって、その点については何ら確認をいたしておりません。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 まだ続きがありますが、「使用過程車(中古車)の浄化装置として運輸省技術審議会では運輸大臣に対し指定機種に認定するよう申請しているもので、公害防止機種としてすぐれているとされており、間もなく指定される見通しである。」——間もなく指定されますか。
  144. 中村大造

    中村(大)政府委員 いまだ申請を受け付けておるという事実はございません。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 運輸技術審議会から申請が出ておりませんか。
  146. 中村大造

    中村(大)政府委員 これは運輸技術審議会からの申請ということではなくて、そういう製品を開発し、製造して、これを販売しょうという場合に運輸大臣の指定を受けるということでございますから、そういうメーカーでございますか、そういうものが運輸大臣に対して指定の申請をする、こういうことになろうと思います。
  147. 坂井弘一

    ○坂井委員 私、なぜこのことを聞くかといいますと、大臣、聞いておいていただきたいのですけれども、先ほどの質問にもございましたが、確かに公害防止というのは非常に重要なことであります。特に自動車の排気ガス対策、これはもう運輸省においても、今日まで前向きで取り組んでこられました。しかしながら、五十年規制といわれるたいへんきびしい規制がなされる、そういう中で、この種のようないろいろな機器装置というものがあちこちでつくられ、それが販売される。一体どれがいいのか、その選択にユーザーは非常に迷っております。特に義務づけもあるわけです。そういう中で、また一方においてはいわゆる省資源、燃料の節約、これも時代的な至上課題であります。とりわけ、二〇%もガソリンが節約されるのだというなれば、これはだれしも飛びつくでしょう。  私は、この商品がインチキであるとかないとかいうことをここで議論しているのでは決してありません。しかし、このような、いいのか悪いのかわかりませんが、シンコウハイスターと称する——額面とおりなら非常にりっぱなんだ。これがどんどんと販売されております。すでに県庁でもこれを採用しておる。これを見ますと、県警察の車もこれを使ったかのような、こういうもの外すね。東京都でもガソリンの節約が三六・八%外きた、こういうこと。したがって、こういう機備を取り扱おうというので、特約店の獲得合戦があちこちに起こっておる。しかし反面、非常に心配な面もある。あれは、前にマークIIといいましたか、あれはインチキ商品だったというわけで、あとになってらく印を押されて大混乱を起こした。これがそれと同じだとは、私は決してきめつけているわけではありません。しかし、過去のそうした経緯から考えまして、いささか心もとない点、ある。二〇%もガソリンが節約できるということが間違いないとするならば、これはまさに国家的な大発明です。しかし、もしそうでないとするならば、このようなものをつかまされて自動車に取り付けたら、これはたいへんな迷惑であります。インチキ表示ということになる。きょうは公取はおいでになっていらっしゃいませんのでお尋ねはできませんけれども、通産省ももちろん関係あるでしょうが、やはり直接的な監督官庁として運輸省は、こうしたものがいま出ておるとするならば、即座に検査なり調査をされまして、いいか悪いかその判断を早くされるべきであろう、こう思うのですけれども、その辺はいかがでございますか。
  148. 中村大造

    中村(大)政府委員 その装置が、いわゆる排出ガスの減少効果のほかに、油の節約になる装置である、こういうキャッチフレーズをつけておるようでございますけれども、そういうことになりますと、これはいわゆる私どもが指定いたしております排出ガス減少装置そのものではなくて、別のものか、あるいはそれにプラスアルファしたものか、その辺が非常に問題になる点であろうと思います。  私ども、昨年から、こういうふうな排出ガスの減少装置について指定制度をとってまいったわけですけれども、これにつきましては、いわゆる官庁側、それから民間ディーラー、いわば総動員いたしまして、相当これの周知徹底をはかったつもりでございますけれども、なお、いわゆる整備工場なりあるいはユーザーのほうで、もしその趣旨なり内容なりについて不徹底のために、先生指摘のような混乱を起こすということはきわめて遺憾でございまして、私どもは、そのような装置を製造いたしておりますメーカーに対する直接的な行政指導ということもございますけれども、それを使います場合は、当然整備工場においてそれを装置するわけでございます。したがいまして、整備工場においては、そのものが、運輸省において指定をしている装置との関係においてどのようなものであるかということについては、当然これを承知しているわけでございまして、もしその点について不案内である、不徹底であるということがあれば、私どもは早急にこの点についての徹底をはかるようにしたいと思いますし、またその装置のメーカーにおかれては、当然そういうものについて何らかのオーソライズをとるというためにも、公的な機関において評価試験を受けるという必要があろうかと思います。
  149. 坂井弘一

    ○坂井委員 私、あえて意見とし、あるいはある意味でお願いとして申し上げておきたいと思いますが、待っていて、それでよかった、悪かったというような判断は、そういう消極的なお考えはおやめいただきたい。これは実際ユーザーは、いいのか悪いのかわからないわけですね。また整備工場にいたしましても、自信をもって太鼓判を押しますとも言えないでしょうし、あるいはだめだとも言えないでしょうし、いずれにしても、何となく心理的に飛びつきますよ。ほんとうに二〇%節約できる、ガスは出ない、排ガスは少ない、いいものに違いないだろう、ものはためしだ、一回つけてみようか、こういう心理というものが非常に大きな混乱を起こす。ある人は太鼓判押す、ある人はだまされた、こうなる。その間にもどんどんこれが販売されていく。しかもその販売方法においても、かなりな問題がかつてはあった。そしていよいよ、問題だ、けしからぬ、それからようやく行政指導に乗り出しましょうというようなあと追い行政はおやめいただきたい。もっと勇気をもってやっていただきたい。いいのか悪いのか、少なくともこうしたものが現実に出回っているわけでありますから、それならば一度、運輸省としても、通産省とよく連携をとりながら、直ちにこれを調査、検査いたしましょう、検査の結果はかくかくしかじかでありますと客観的に述べればいいではありませんか。少なくともこの機種についてはこれこれの性能を有しております、それならばユーザーは、消費者は安心して、それを選択するもしないも自由でありましょう。しかし、判断する基準がどこにもない。これを信ずるしかない。そうすると、インチキであったとか何だかんだというようなことが起こってくる。しかし、自動車のそうした部品屋さんであれ、販売店、特約店、いろいろなそういう業界にもあれやこれやの波紋が広がって、そこで要らざるあつれきが起こる。そういうことを避けるためにも行政がやはり積極的に前に乗り出して、そして指導し、そこに適切な行政の実際的な動きというものがあってしかるべきではないかということを申し上げているわけであります。どうかそういう意味において、再度お聞きしておきますが、ひとつ前向きに積極的に取り組んでいただきたい。いかがでございましょうか。
  150. 中村大造

    中村(大)政府委員 先生指摘の点につきましては、通産省をはじめ関係の行政省とも十分協議をいたしまして、積極的に前向きに対処してまいりたい、こういうように思います。
  151. 坂井弘一

    ○坂井委員 問題を変えますが、会計検査院にお尋ねいたしたいと思います。  四十八年の十一月に国鉄総裁あてに出されておりますところの「しゅん功図及び保守台帳の作成について処置を要求」をいたしておるようでありますけれども、この内容のあらまし、それからその後これがどう改善されましたかどうですかについてお答えをいただきたいと思います。
  152. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 ただいま御質問の「しゅう功図及び保守台帳の作成について」昨年の十一月二十二日付で日本国有鉄道総裁あてに会計検査院法第三十四条の規定により是正処置の要求をしたのは、昭和四十七年度決算検査報告の九八ページ以下に詳細記述してございますが、その内容を簡単に申し上げますと、国鉄におきましては数多くの工事を実施しておるわけでございますが、そのあと始末といたしまして、でき上がった工事のしゅん功図をあとあとの保守のために整備して残しておく、こういう作業一つございます。それからもう一つは、保守台帳と申しまして、これは施設別に、たとえば線路施設がどのくらいな数量でどの程度の財産価格を持っているかというようなものを一々台帳に記載して残しておく、こういうことをやっておるわけでございまして、この二つは確かに鉄道の運営上大切なことだというふうに思っております。  しかしながら、その作業実情を私どものほうで検査いたしましたところ、前段のしゅん功図につきましては、工事のときにつくりました図面を、外部の会社に発注いたしましてまた同じように手書きでこれをトレースして、浄書と申しますか、そういうような作業をしておる。これにつきましては、現在マイクロフィルムというような経済的で、しかも能率的な方法があるのであるから、これにかえるべきじゃないか、そうすれば、相当額の節約ができるという点が第一点でございます。  それから保守台帳につきましては、鉄道の施設は種々ございまして、端的に申しましてピンからキリまでいろいろあるわけですが、そのうちの重要施設については、従来どおり保守台帳にあげることは必要だと思いますけれども、たとえば私どものほうで簡易な施設というようなものにつきましては、これを重要施設と同じように手数をかけてやることはないのではないか、これはまあいってみれば簡単に一覧表にあげておいても、実際の保守の上においても支障がないのではないかというようなことで御意見を申し上げたわけでございます。  これに対しまして国鉄当局では、あとのほうの保守台帳につきましては——その前に、実は私どものほうのたてまえといたしまして、この案件に限らず、このように院法の三十四条によりまして処置要求をしたものにつきましては、昨年じゅうに発したものはことし、すなわち昭和四十九年の九月末現在で当局に正式の報告を求めて、その時点でその後どういうふうに是正されたかという報告を徴しまして、これを四十八年度の検査報告に掲記しておるというたてまえをとっておりますので、現段階ではまだ正式の報告を徴してはおりませんけれども、非公式に聞くところによりますと、前段のマイクロフィルムのほうにつきましてはもうすでに四十八年度中に実施しているというふうに聞いておりますし、後段の保守台帳につきましては現在いろいろ作業をしていただいて、これも四十九年度中には実施できるというふうな報告を、これは略式でございますけれども、聞いております。  以上でございます。
  153. 坂井弘一

    ○坂井委員 ずいぶん長い間むだなことをなさってこられたのですね。マイクロ写真なんというのは常識化されているわけでありますが、この設計図をわざわざ手書きしてまた複写するというようなむだな作業を、きわめて非合理的なことを長いことやっていらっしゃった。私はこのことについて、目くじら立ててやいのやいのという気持ちは実はありません。ありませんが、少なくとも国鉄財政再建というたいへん大きな課題をかかえている中で、すみずみにこまかく目を届かす、こまかい部分についてももっと節約しましょう、合理化していきましょうという考え方というものがきわめて欠如しておるのではないかというような点が、実は気にかかるわけであります。マイクロ写真にすれば簡単に済むでしょう。それがなされてこなかったということですね。親方日の丸的な考え方が中にあるのじゃないかという気がして実はなりません。一方においては、われわれから言うならば、これはむしろ国鉄職員に対する不合理な合理化運動というようなものを押しつける中で、こういう子供でもだれでもわかる、一足す一は二であります、こうすればこれだけのものが節約できますというようなことに目をそむけてきたといいますか、おざなりに流されてきた。ここのところをうんとひとつ注意をしてもらいたいと思うわけであります。  国鉄さんにお尋ねいたします。鉄建公団さん、お見えじゃないかと思いますが、実際に改善されたでしょうか。
  154. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答え申し上げます。  マイクロフィルムにつきましては、先生指摘のとおり、わが国に導入されてもう十年以上たっておると思いますが、当初は御承知のとおり小さいフィルムにとりますので、見るときに拡大装置があって見なくてはいかぬ、現場へ持っていって見るわけにいかぬというような、これは半ば言いわけみたいな議論になりますけれども、特殊なものもあるけれども、一般論的にいったら、小さいものにすれば保管するのにも便利だし、見るときは拡大して見ればいいのだということで、特殊な、むやみに図面が大きくてフィルムにとれぬようなものは除いて、漸次、可能なものはフィルムに直すということを原則的にやっておりますので、ひとつその点は御了承願いたい、かように思います。
  155. 坂井弘一

    ○坂井委員 総裁、思い切ってやってくださいよ。これはずいぶん問題があるようです。国鉄OBのかなりえらい人がこういう会社をつくっているのですな。そして自動的に流れていくわけですね。一説によりますと、これだけで相当多数の社員をかかえて、会社としてほとんどこれを主体にしてやっているところもあるようであります。ですから、いきなり切ってしまいますと会社はお手あげです。しかし、長い間何となく救われてきましたこういう——あえて言うならば国鉄一家の中での一つの悪だと私は思う。こういうところにまさに勇気を持ってメスを入れて、だれから見ても正常な、少なくとも会計検査院に指摘されることのないような健全な体質に改めていきませんと、やはり同じものがほかにも幾つかありますが、一つの例として申し上げたわけでありますけれども、これはなかなか根深いですよ。中にはどうしてもマイクロ化できない部分もあるというようなことをいっておりますと、あれもこれもみなそうだ、結局もとどおりだということになりかねませんよ。したがって、そういう意味におきましても、ここで総裁、あるいは鉄建公団、きょうはお見えでございませんけれども、特にいまのような厳正な態度と決意をもって臨んでいただきたいと思いますし、同時にまた会計検査院に対しましても、この報告を求められれば、それなりにさらに実際的な効果があったかどうか、ないし、そうした点にいままでの長いしきたりもあることでございますからかなりな困難があるとするならば、そうした辺の事情等についても十分慎重に検討する中でよりよい方向を、さらに検査院の立場で助言なりをされるように特に望んでおきたいと思います。  本日本会議がございまして時間がございませんので、きょうはこれにて質問をとどめておきたいと思います。
  156. 臼井莊一

    臼井委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十五分休憩      ————◇—————    午後三時三十九分開議
  157. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管及び日本輸出入銀行について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本銀行理事渡邊孝友君、全国銀行協会連合会会長佐々木邦彦君、東京証券取引所理事長谷村裕君の御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  また本件審査に関し、国会法第七十二条の規定による最高裁判所長官の指定する代理者から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱い委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  160. 臼井莊一

    臼井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  161. 原茂

    ○原(茂)委員 久しぶりに、尊敬する大蔵大臣にお目にかかりまして、四十六年度を中心の決算について少しくお伺いしましたあと、何といっても、だれでも認める最高有力者の大蔵大臣でございますので、一、二の問題についての政治的な見解をお伺いしたあと、日本熱学の問題につきまして、法制的にもあるいは制度的にもこのような問題がどうだろうという具体的な質問を申し上げて終わりたい、こう思うわけでございます。  最初に、各公庫の財務会計制度について四十五年度以来の実績を見まして、多くの人もそう思うでしょうが、私もこれはどうかなと思います問題を二点、お伺いをいたしたいと思います。  その第一は、すでに行管から勧告の出ております問題ですが、それに対しまして、大蔵省のいわゆる勧告に対する回答というのが四十九年の一月三十一日に出されております。それを見ましても大体の方向はわかりますけれども、まず第一に「滞貸償却引当金の処理について」、現在のいわゆる一般金融機関とは違う、単なる営利を目的とする事業とは違うという公庫のたてまえから、その処理について勧告が出されているわけであります。こう申し上げれば、その勧告の内容はあえて読み上げる必要はないと思いますが、大蔵省の回答の末尾に「各公庫について見れば、おおむね設立以来相当の時日が経過しており、しかもこの間の貸倒れ実績が予想より低いものも多い実情は否定できないので、昭和四十八年度決算以後繰入れ限度乃び累積限度等について見直しを行うこととしたい。」こういうふうに回答は結んでいるわけでございますが、これは見直しをいたしました結果、結論的には本来、私どもが要求したいと思いますのは、引き当て金を立てるというような処理にすべきではないかと考えておりますが、そのことをやるのか、あるいは繰り入れ率を変更をして——開銀その他民間の金融機関もすでにことしは千分の十になっていますが、現行は千分の十五のままになっているわけでありますが、この繰り入れ率を下げる。開銀並みに千分の十にする、あるいはそこまではいかないが十二にするというようなことのどちらかだろうと思うのですが、その滞貸引当金の処理について、今後の方針をまず第一にお伺いをしたい。
  162. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 実はいま御指摘の問題につきましては、私が昨年十一月の二十五日まで行政管理庁長官をいたしておったわけでありまして、その間に行政管理庁といたしまして大蔵省に勧告いたした、こういう記憶があるわけであります。その勧告をした意味は、これはいろいろありましょうが、私といたしましては、繰り入れ率が高い、したがって損益というか、損が生ずる額が多くなる、また益が生ずる額が少なくなる、そういう影響を持つわけでありますから、それに対しましては、国庫としてそのしりについて責任を持つという立場にありますから、国庫の負担を減少させるというためには、そういう高い繰り入れ率を採用しておくということは妥当じゃないんじゃないか、こういうような気持ちであったわけであります。それに対しまして大蔵省がただいま御指摘のような回答をいたす、こういうことになったのですが、お尋ねの点につきましては、これは繰り入れ率の引き下げを行なう、こういう方法で対処したい、かように考えております。
  163. 原茂

    ○原(茂)委員 少なくとも千分の十二以下にするという理解でよろしゅうございますか。
  164. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そのように心得ております。
  165. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。  次に、退職手当の処理についても勧告が出されておりまして、これも勧告の内容は、なるほど仰せのとおり当時の責任者でございますので、よく御存じのようです。これはどうなんでしょうか。「なお検討することとしたい。」と大蔵省は回答をなさっておいでになるのです。どういう方向で検討なさるのでしょうか。従来どおりなんでしょうか。これはやはり現金主義の原則で規制されていることなどの関連で問題があるので、従来どおりにやるとか、いや、そうではなくて、引き当て金制度を新たに設けることにするとか、そのどちらかだろうと思うのですが、その検討の方向はどちらにいきそうなんでございましょう。
  166. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 いまの御指摘の問題につきましては、もう御承知のとおり公庫の職員の給与制度、給与のあり方というのは、予算で規制されておるというところから、必ずしも民間と同じ引き当て金制度をつくることがいいという結論には、現在のところは達しておりません。したがいまして、何らかの形で勧告の趣旨に沿った結論を出そうと思っておりますが、いまのところはまだ、そういう具体的な制度というところまでの結論には立ち至っておりません。
  167. 原茂

    ○原(茂)委員 これはやはり検討は検討で、方向がいまのように説明があったわけですが、時間がありますと、この問題についてもう少し意見をお伺いし、私も申し上げたいことがあるんですが、この勧告に対する検討の内容をお聞きして、希望としてはやはり引き当て金制度を設ける方向でいくべきではないかと私は考えておりますので、そのことだけを申し上げて、この問題は終わりにいたします。  次いで、現在の経済の情勢を見ますと、特にまた電灯料金を中心の、十月になりますと国・私鉄をはじめ米、その間凍結価格の解除が何品目にも及ぶ。ムードとしても、大蔵大臣がたいへん苦労をされて狂乱物価を一応押え込んだ、こういう時期がもうすぐまた何かもとに返って、再度、狂乱ではなくて、今度は怒濤物価みたいな状態になる。無政府物価というほど危険な物価の荒れ方が予想される。こういう状況の中で政府の側で打つべき一番大事な手は、日銀、大蔵省等がすでにきのうもおとといも御相談をしているようでありますが、依然として今後抑制策、引き締めを堅持するということが大前提でないと、とてもじゃありませんが大きな問題になるだろうと思うのです。今後まだまだ予想されるような公共料金の相次ぐ引き上げがある。それに関連して起こるであろう波乱的な物価の上昇の続く限りは、抑制策は堅持する、こういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  168. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そういう御理解でけっこうだと思います。つまり、いま物価につきましては、これを動かす要因として、需給の要因とコストの要因と二つあるわけでございますが、その需給の要因で異変が起きたのであります。つまり、先は物価高である、インフレであるという認識のもとに投機活動が活発化する、そこで仮需要というものが起きてきた、それが物価体系を混乱させる、狂乱状態出現、こういう経緯になってきたわけですが、これに対しましては総需要抑制政策をとりまして、大体この狂乱状態は鎮静した、こういうふうに見ておるのです。物価段階は新しい段階、つまり別の要因をかかえた段階、コスト引き上げの要因が幾つかある、そういうことにどういうふうに対処するかという段階に来ておる、そういう理解でございます。  そういう時点におきまする新しい対策は、いろいろ考えてみたのですが、結局これも狂乱物価に対する対策、つまり総需要抑制政策を主軸としなければならない、こういうふうに考えております。そうしますと、過去の半年間の実績に見られるように、総需要抑制政策下では諸物価が下落の傾向をとる、今後といえども総需要抑制政策を堅持するにおきましては物価は下降傾向をたどるであろう、こういうように見るのであります。ところが、今度は別にコストの面から引き上げる、そういう作用がある。その物価を引き下げる作用と引き上げる作用とがかみ合いながら、相殺しながら推移する。ここ半年間の物価状態というのはそういう状態になってくるであろう、こういうふうに思うのです。  コスト引き上げ要因としては、何としても賃金問題が非常な重圧でございます。賃金に比べればさほどの影響力はないわけでありまするけれども、電灯料金の引き上げの問題、国鉄、私鉄の料金の改定の問題、あるいは消費者米価の改定の問題、そういうものが相続いて行なわれざるを得ないような情勢下にあるわけであります。そういうコスト要因から理論的にこのくらい物価が上がるであろう、これは一応計算はできます。できますけれども、そのとおりには上げさせない。つまり、総需要抑制政策をもってその引き上げ圧力というものを消していくわけであります。できるだけ消して、コスト要因というものが物価体系に悪影響を及ぼさないようにしたい、こういうふうに念願しながら最善の努力をしていきたい。  それらのコスト要因がそういう形において解決され、対処されるならば、秋ごろには大体、とにかくわが日本経済を動かす大動脈である石油の輸入価格が四倍になった、その四倍になりました新しい事態のもとにおける新価格体系というものが形成されるだろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  169. 原茂

    ○原(茂)委員 現在おっしゃるとおりの状況で、今後もまた努力をされるわけでございましょうが、私は、歯どめの切れた公共料金の状態なり、いま仰せのとおりのコスト・プッシュ・インフレといえるような原因が大きく出てきている等を考えますと、いろいろ複雑な問題はあるにいたしましても、今後新たに打つべき手は二つあるのじゃないかという感じがするのであります。  一つは、所得政策が真剣に検討されていい時期が来たんじゃないか。所得政策を、何でも反対だ、これは賃金抑制というところにウエートを置くんだというなら、なるほど反対論が非常に強く出てくるでございましょうが、しかし現在英国の新労働党が行なっているような、あれも新しい所得政策でございますが、大胆な、しかも非常にきめのこまかいああいうやり方もあるでしょうし、日本には日本に適した方法があると思いますので、所得政策はやはり検討に値するもの、こういう立場で早急に十二分に検討して、日本的な現状況に合致する所得政策のあり方はどうかというようなことが、ひそかにあるいは公然と、各省ごとにあるいは各機関ごとに検討されているやに思うのですが、大蔵大臣としては所得政策についてどうお考えでございましょう。必要の第一の手段だと思うのです。
  170. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま申し上げましたように、これからの物価問題を考える場合におきまして、賃金問題は非常に大きなウエートを持ってくるだろうと思うのです。これは企画庁の一応の試算でございますが、今回の三〇%賃上げが物価に一〇%くらいの影響がある、こういうことのようです。それから電力料金の引き上げがどのくらいあるかというと〇・五だ、また消費者米価はどうだといえば〇・四である、あるいは国鉄の運賃がどのくらいだ、また〇・四である、私鉄運賃がいわれるようなところへいったらどうなる、これは〇・一だ、こういう。しかし賃金問題は、これは今回のことは、物価がとにかく上がってしまった、そういう事態でありますのでかなり大幅になりましたけれども、もうできたことですし、しようがない。これは、そういう賃金の三〇%アップ、それに基づくところの物価押し上げ圧力というものを消すくふうをするほかはない、こういうふうに考えておるのですが、さて、これからの日本経済のあり方ということを検討する、つまり物価問題をある程度新価格体系下で安定さした、こういう後における日本経済の運営ということを考える場合におきましては、賃金と物価の相関関係というものを真剣に考えなければならぬ、これが私は最大の問題だと思うのです。この問題できめ手さえ出てきますれば、私個人といたしましては、日本経済の前途にはそう心配するところはない、これほどまでに考えておるわけであります。したがって、これからの経済運営の焦点の最大の問題は、来年の春闘までの間に、賃金と物価の関係をどうするか、こういう問題について明快な決断をする、こういうことだろうと思うのです。  そこで、そういう状況下におきまして所得政策ということが論議されるのですが、所得政策といいますと、これは世界的な用語といたしますと非常に幅の広い内容を持つことばでございます。ところが、遺憾ながらわが国におきましては、所得政策というとすぐ賃金統制を連想する、こういうような状態でありますので、所得政策ということにつきまして賛成であるか反対であるか、非常に端的に聞かれますと、私は、その答えは非常に慎重たらざるを得ないのであります。つまり、賃金を統制するということは、物価が統制下にありまして安定されたという状態、これと相並行せざるを得ない。そういう物価に対する規制、こういうものがきちんとしておるということを前提としないで賃金の統制ということを考えるわけにはいくまい、こういうふうに考えます。ところが、物価のほうを法的にそういうふうな規制をする、これは私は実際問題として不可能だろうと思うのです。でありますので、国家権力が介入いたしまして物価や賃金の統制をする、これはちょっと考えられないことじゃないか。しかし、さらばといって、賃金と物価の関係をこのまま放置しておくということになりますと、これはたいへんなことになる。  そこでどうするかということになりますれば、私は、非常に民主的な形におきましてガイドラインというか、そういう形ができ上がるのが一番好ましい、こういうふうに考えておるのであります。つまり、物価と賃金はどういう相関関係にあるのか、また相関関係のあり方によっては賃金と物価というものにどういうふうに対処していくべきかということについて、国民全体が深い理解を持つ。特に使用者と従業員、この両者が理解を持つ。そういう中において自然に、こんな程度でなければならぬな、またそういうガイドラインというか、でき上がった一線を逸脱して行動するという経営者あるいは従業員、そういう行動はこれは反社会的な行動であるというとらえられ方、そういうものができ上がるような国民的雰囲気、そういうものを逐次つくっていく。それが成功するということになりますと日本経済の前途というものは非常に明るくなる。これが経営者のためでもあり、また従業員のためでもあり、したがって日本経済のためでもあり、日本国家のためである、こういうふうな理解でございます。
  171. 原茂

    ○原(茂)委員 いま大臣の仰せになった構想が、すなわち、いま考えられる大蔵大臣としての日本的な所得政策への国民的なコンセンサスを得ようとする手段、方法なんだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  172. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私としてはさよう考えております。
  173. 原茂

    ○原(茂)委員 いまガイドライン、ガイドポストお話もありましたが、見方によってはもうすでに日本では、世界的に前例のある、ある意味における所得政策への一歩を一方的に経営の側は踏み出しているというふうにすら、私は現在を考えております。ある部分はもうそういうふうなカテゴリーに入る一歩を踏み出しているようにすら思えるという状況ですから、所得政策というのはやがて、仰せのとおり日本的なものを、やはりいま言ったコンセンサスを得ながら醸成し、早期に賃金、物価の関係を指導する体制をつくる、こういう考えには同感でございます。  そこで、前段にも申し上げたように、そのときに必要なことの第一は、やはり賃金統制というところにウエートがあるのでないということが一つ。もう一つは、現在、低所得階層に対する福祉問題が非常に国家の課題になっているわけでありますが、一体、この低所得階層といわれる人々をどうその所得政策の中に位置づけるかということが、日本的といわれる中の非常に重要な課題になるだろう、こういうふうに私は考えておりますが、この問題だけでいま多くの時間をとろうとは思いませんが、私はそう考えておりますことをもあわせてお聞きとりをいただきたい。  もう一つの現時点における手段として何があるか。私は諸般の情勢を考えました結果、やはりいろいろな複雑な要素はあるにいたしましても、いつやっても同じことでございますので——四十六年、四十七年ごろ予算委員会で、私、当時大蔵大臣の現大蔵大臣にお伺いしたことがありましたが、デノミネーションが、現在のような状況の中においては最も効率的に作用する時期が来たのではないかというふうに考えますが、デノミを現在の経済とのからみ合わせの中で早期に考慮していく段階だとお思いになりませんかどうかを二つ目にお聞きしたい。
  174. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 デノミに関する御所見につきましては、私は原さんと考えがまるきり違うのです。つまり、デノミということは、通貨の呼称を変更するというほんとうに形式的なことなのです。ですから、いま貨幣価値がたいへんどうもうまくない状態だ、そういう状態の中ですから、取引の額も膨大になる、それからいろいろの計数整理もややこしい、そういうような状態でありますから、これはもう少し簡素にいたしましてもいいわけでございまするけれども、ところが、これが形式的な通貨の呼称というふうにすなおに受け取られない傾向があるのであります。あるいは通貨価値そのものの切り下げであるなんというようなとらえられ方、これはちょっと考えられないことでありまするが、実際はずいぶんそういうとらえられ方がある。そういうことを考えますときに、いま物価問題が非常にデリケートな段階であり、物価がどうなんだろう、早く安定させてもらいたいという国民全体の希望、そういう環境の中で通貨の呼称の変更を行なうというと、いろいろな思惑を引き起こしまして物価問題を混乱させるおそれがある、こういうふうに考えておるわけであります。したがって、ただいま、このような安定しない物価状態におきましてデノミ政策を行なうということは妥当でない。こういうふうに考えておるわけであります。ただ、長い目で見た問題として、もう物価問題は安定いたしました、それから日本円の対外通貨価値ももう動きません、こういうような状態になった——これはいつになりますか、なるべく早く来ることを期待いたしますけれども、そういう際には、取引の合理化というような見地からデノミという措置は必要になってくる、こういうふうに思っておりますが、当面私は、デノミということをやる、あるいはそれが流布されるということだけでも、これは物価政策にたいへん悪影響があろうというふうに考えますので、はっきり申し上げますが、まことに恐縮でありますが、ただいまの、デノミをやったらどうだという御所見には反対いたします。
  175. 原茂

    ○原(茂)委員 当時大臣が、記録を見るとわかりますが、やがてデノミは必要だと思う、いまは適当でない、こうお答えになった、まだこびりついていまして……。  私は逆に、呼称の単価が非常に高く、物価に対して何か高物価という影響——事実、高物価ではある、高くなったことは事実。これを鎮静しよう、下げようという努力政府がなさっている。大衆に与える鎮静化という冷やすような効果を考えても、デノミほどの効果はほかにないじゃないかというような感じがいたします。これはほんのわずか一部分を申し上げるのですが……。それから国際的にも、私はいまイタリア、日本の経済の現状をとらえ、通貨の安定の度合いを見まして、やはり、現在が適当でないようには私には思えない。国内の諸情勢などから判断して、かえって毒を毒で制するということばは悪いのですが、デノミというものをここで思い切って考慮する時期が来たように思う。しかし、いま現在は妥当でない、仰せの御意見はお聞きいたしましたので、それでけっこうでございますが、いつやってもデノミというのはいろいろ複雑な反響、複雑な要素をかかえる問題でございますから、その時期の設定はむずかしいのですが、どうかデノミというものをお忘れなしに、一番効果的な薬として使えるときがあるならデノミは真剣に検討さるべきものだという考えを持っておりますことだけ御記憶を願って、この問題は終わりたいと思うわけであります。  次いで、つい先日大蔵大臣が生産者米価の大幅な引き上げはやむを得ないという御発言がございました。同時に消費者米価の問題にも少しお触れになったわけであります。しかし、いずれにしても消費者米価を考える時期は七月だというお話があった。  現在、農民の切実な要求——時期的に言っても、肥料の適期適作ではございませんが、何と言ってもいまならまだ、農家経済の基本的な計画、農家経済のウエートは米価にあることは間違いありません。場所によってはまるで違っておりますが、大まかに言ってそういうものだということは間違いないわけです。その米価がどうきまるかということは農家一年の大計に非常に大きな影響を及ぼすわけであります。ですから、時期の七月というのは、例年そうだからというだけではなくて、こういうような物価の状況の混乱している中であればあるほど、やはりこの七月という時期を、いろいろ政治的な配慮がおありなんでしょうけれども、その政治的な配慮を強く農民の側で配慮をしていただくなら、この米価の七月決定、諮問、こういうのを、いまここでなるべく早急におやりいただくことのほうが私はいいのじゃないかと思いますので、もう一度大蔵大臣の御所見を伺っておきたいと思うのであります。
  176. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 生産者米価の決定は、大体御承知のとおり七月ないし八月に行なわれておるわけであります。ことしだけ特例的にこれを繰り上げて決定する必要があるか、こう言いますると、私はその特別な理由は見当たらぬと思うのです。むしろ今日のような賃金、物価、そういうものの変動の激しいそういう際こそ、取り入れが始まる、その前には米価をきめなければならぬ、その米価をきめる最近の時点における賃金、物価のデータというものを持って適正な価格をきめるという配慮をしなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。そうすると、例年どおり七月ないし八月、こういうことになってくる。  まあ、これだけ物価が動いており、賃金も御承知のように春闘、たいへんな状態です。まだ春闘の結末、山は越えたものの、まだ全部終わったというわけでもない。そういうふうに動きつつある賃金、物価、その成り行きというものが全部米価の中に織り込まれて決定されるということが、適正な米価が決定されるということにつながっていくのではないか、さように考えております。
  177. 原茂

    ○原(茂)委員 それもわかりましたが、私の意見も、これもまた申し上げておきたいのだが、確かに賃金、物価がまだ固まったわけではない。そういうものを十分取り入れてという理由は一応も二応もわかります。しかし、米価が最終的に決定されるときには、それほど精密な、厳格な意味での、時間的にも計算的にも努力をされた、その固まりである価格というものが、大きく政治的に最後の段階ではぽかっと動かされて、いまおっしゃったようなことがどこへ行っちゃったのだか、何のためにあれをやったのだかわからないほどの、最終的な政治的な判断の米価決定が毎年なされていることを私は知っているわけであります。ですから、われわれ、もちろん大臣も御存じだろうと思いますが、そういうことをまのあたり毎年見てまいりますと、いまおっしゃったような、なるほどこまかいデータは必要だろう、事実理論的にはそのとおりだと思いながらも、どうもそれだけではなるほどなという承服をしかねるという気持ちでございますことを申し上げておくわけであります。ぜひできる限り配慮をして、七月以前、早期に米価決定ができ得るものならそうしていただくように、これもお願いを申し上げておきたいと思う。  そこで最後に、日本熱学、エアロマスター、この問題に関しまして、五、六点いろいろと、大臣なりその他日銀なり法務省なり最高裁の御所見を、これから逐次お伺いをしたいと思います。  この二十日に起きました日本熱学、エアロマスター、いずれも牛田社長が同一人で経営をされているわけでありますが、これに対していろいろと、おととい、きのう、きょうに至れば至るほどある意味の疑惑が持たれておりまして、何かこう食い逃げ、計画、そういったような疑いさえあるというので、関係方面でもその方面からの調査をするなどと報じられておりますことは御承知のとおりでございますし、倒産の原因でございますとかその他についていろいろ申し上げなくても、すでに言われているとおりでございます。特に牛田社長を中心にした、いま疑惑を持たれております諸案件に関しては、当然、道義的にも法的にも今後十分糾明さるべきだと思いますし、糾明されるだろうと思いますので、いま私はそのことに触れようと思うのではありません。ある意味では一般論として、日本熱学を例にとりながらいろいろとお伺いをいたしてみたい、こういうふうに考えておるわけであります。  まず、この問題について、二カ月後ぐらいになると更生法の適用に入るかどうかがわかりそうだという新聞報道がございました。二カ月ぐらいたつとわかりそうだ。この種の問題はやはり、そうは言っても非常に内容が複雑で、取引、下請関係等非常に多く、多岐にわたっておりますから、そう短期間では財務の内容だけでも調査ができないから、二カ月は早いほうなんだということになるのかもしれませんが、しかし、関係人にいたしますと、下請なり取引先にいたしますと、二カ月たって破産になるのかあるいは更生になるのかというような不安が二カ月も続くということは、中小企業にとっては特にこれは精神的にもたいへんな苦痛を与えるということになることを、私も体験をいたしております。その意味では、この二カ月ぐらいたつというのが少し長過ぎるように思うのですが、これを縮めるようなことはできないものだろうか。もっと早く更生開始その他をするしないを、電子計算機もあるのですし、必要があれば人手をうんと動員してもいいのですから、何とかしてもっと、一カ月なら一カ月に更生適用の成否を決定するというようなことにすべきではないかと思うのですが、それができないのかどうか。現状に照らして御説明をまずちょうだいしたいと思う。
  178. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 御指摘の御批判につきましては、重々ごもっともでございます。特に関係方々につきましては非常に御不安が多いということも、ごもっともなことと存ずるわけでございますけれども、会社更生手続は、御承知のとおり会社の再建が可能かどうかということについてのある程度の見通しを立てた上で開始決定をすることになるわけでございまして、その関係で、現在の会社の状態その他について十分な調査もしなければならない。また、更生決定をいたします場合には管財人をあわせて選任する必要があるわけでございますが、その会社の管財人として適当な方を人選しなければならない。そういったような問題について十分裁判所として検討しなければならないわけでございますが、御承知のとおり、裁判所はその方面に関しましては必ずしも十分な知識を持っているわけではございませんので、その間いろいろな方々の御意見等も伺いながら事実の調査等も進めていくというような状態にございますので、ある程度期間がかかりますことはどうもやむを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。しかし、二カ月は長過ぎるのではないかという御批判は十分私どもとしてもわかるわけでございますので、今後はできる限りその点についての十全な配慮をしていくように努力してまいりたい、そう考えます。
  179. 原茂

    ○原(茂)委員 順不同になりますが、つい先ごろ日銀の総裁が、この倒産案件は金融引き締めが影響した倒産ではない、経営の放慢によるものだという疑いが強い、したがって特別融資などを考慮する必要はない、こういう新聞に対する発表をなさっておいでになるのであります。しかし関連倒産等を考えると、中小企業に対して銀行筋の適切な指導をするようにはしなければいけないというような意味のこともつけ加えておいでになりましたが、日銀にお伺いをするのですが、この特別の融資をする必要がない、特別融資をする必要があるという限界は、何によっておきめになり、どこがその判断をなさるのかということをまずお伺いしたい。
  180. 渡邊孝友

    ○渡邊参考人 総裁の対新聞発言、ちょっと正確には私記憶しておりませんけれども、この日本熱学の問題が起こりましたときには、やはりこれまで業績をあげておった企業でございますし、ただ金融引き締めのために倒産するというようなことは避けたい、基本的には常にそう考えているわけでございますので、問題が起こりまして関係金融機関お話を伺ったわけでございますが、それを総合判断いたしますと、原因はもう御承知のとおりで、過度の急激な成長策をとり過ぎたというところに原因がありまして、関係金融機関の御意向も、何ともこれは救いようがないということであったわけで、総裁の御引用になりましたことばもそういう趣旨だったと私は思うのでございます。
  181. 原茂

    ○原(茂)委員 私のお伺いしていることに的確な、二つに分けた答弁がございませんでした。しかし、大体意のあるところはわかります。  そこで前へ行くわけですが、日本熱学なりエアロマスターは、確かに放慢経営で急膨張をして、しかも今月一日に一部上場をして、二十日に倒産、これはいろいろ証券業界の問題も含まれておりますし、とにかく考えさせる貴重な事案の一つだと思うのです。ですが、日銀総裁のいう、そういう事情だから特別の金融措置、救済措置を考える必要はない、熱学とエアロに対してはそのことを言いましたが、熱学、エアロの二百件、千件に及ぶ下請取引先は、金融引き締めによる打撃も、この種の放慢経営の親会社の悪さによって受けた打撃も、区別すべきではないと思うのですが、いかがでしょうか。
  182. 渡邊孝友

    ○渡邊参考人 基本的にはおっしゃるとおりだと存じます。総裁の申しました趣旨も、この日本熱学については何ともしようがないと、また原因等からいたしまして、すべきでもないという意味もあったかもしれませんけれども、ただ、常に私どもとしては、こういう引き締め下にありまして、ある企業の倒産それにつれまして、健全にまじめに経営している企業が、単にある企業の倒産のあふりを食って、あるいはそれに対する債権の焦げつきというようなことで破綻を来たすようなことは極力ないようにしようということで、かねがね支店を動員しまして金融機関に連絡して、努力しているところでございます。
  183. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの後半の、総裁のおっしゃったことも後半、関連倒産に関してはやはり十分考えてやる必要があるから考えようと、こうおっしゃった。中小企業ということばも暗にそこにあるわけであります。いま私が前段に申し上げましたように、打撃を受けた千二百社の取引先、下請という中には、松下精工をはじめ、むしろ熱学なりあるいはエアロよりももっと世間的に信用もあり、大きな企業もある。それがやはり七億なり六億なり五億なり、ずうっと大口がずらりと今度は債権を持つに至ったわけであります。そのときにそういうものの段階を——いま国の立場で中小企業とは従業員何名、資本金幾ら、売り上げが幾らか知りませんが、何かこう変なワクがあって、そこで中小企業のワクをきめている。そうすると、千二百社の中の、そのいま打撃を受けている、金融引き締めの打撃もこの種の打撃も、同じ打撃を受けている善意のこの被害者に対して、どこかで線を引いて、おまえのところは中小企業倒産関連を救ってやる特別融資の対象にしてやらない、おまえのところはするというけじめをつけるのですか、どうでしょうか。
  184. 渡邊孝友

    ○渡邊参考人 この倒産の連鎖といいますか、影響というものは非常に区々でございまして、関係を持っている企業数というのは、おっしゃるとおりかなり大きな数にのぼっております。その状態は区々だと思いますが、これらにつきましては、もうそのそれぞれについて関係金融機関がそのケース、ケースで考えるということでございまして、その中で大きなところは、特別な措置ということも要しないでやっていけるというようなところももちろんございますし、ただ中小だけに限って考えるということではございません。全体につきまして、今度の関連のあるものすべて、いま取引金融機関で調査中でございます。そのそれぞれについてその影響を極力防止しようということでございます。
  185. 原茂

    ○原(茂)委員 明確なお答えがきっぱりとはおできにならないようでありますが、大体意味はわかります。  日銀はやがて、関連倒産を防ぐように、中小企業を中心に救済の各銀行に対する指導的な役割りを果たすに違いないし、そうなされるでしょう。それを受けた銀行の側にお伺いをしたいんですが、私は、やはりこういう問題の起きたときに銀行は、国が法律、制度のもとにどんな手を打つかということをただ待っているのでなくて、進んで、経済問題を中心の社会不安というものを、大きな企業である銀行としては、少なくとも自分の肩に一部をにないながら不安を解消するという、企業そのものに公的な、道義的な責任があると思う。その意味においては、国の特別融資法がどうのこうのということばかりを待たずに、銀行自体が積極的に現時点における千二百社の救済、金融措置というものを独自の立場で、従来の前例がどうのこうのでなくて、新しい道義的な責任感の上から考える。社会不安を除く。大企業の公的な責任の一つとしてそれをおやりになるということが必要だと思うのですが、銀行協会からおいでいただいておりますので、佐々木会長さんにひとつお伺いをしたい。
  186. 佐々木邦彦

    ○佐々木参考人 お答えをいたします。  まさにおっしゃるとおりです。私どもといたしましてもいろいろ当局のお考えを伺いますけれども、その前にも毎日、毎日いろんな問題が、関連の下請から出てまいっております。私どもは、いまお話しのように、そういった下請が今度の親会社の倒産によって困ることがないようにできるだけの配慮をいたしたい、こういうつもりで対処いたしております。現に、銀行によりましては、すでに親会社の倒産のために不渡りを出す寸前までまいりましたのを、救済資金を出しておりますケースも現実にございます。お話しのとおりに私どもは考えております。
  187. 原茂

    ○原(茂)委員 押して恐縮ですが、佐々木さんにお伺いしますが、ついおととい、関連倒産第一号として、ヨシタケ商事が千二百万円で倒産をいたしました。これはどうなんでしょう。
  188. 佐々木邦彦

    ○佐々木参考人 お答えをいたします。  私のほうはヨシタケ商事に取引がございませんので、実情はよく存じません。ただ、私は考えますのに、ヨシタケ商事の倒産が直接は日本熱学の倒産に関係があったのかもしれませんけれども、その問題を抜きにいたしましても、なかなか再建がむずかしい、こういう判断をいたしたのではないかと思いますけれども、これは私は具体的な事実を存じませんので、想像でお答え申し上げた次第でございます。
  189. 原茂

    ○原(茂)委員 全銀連関係の銀行との取引もございます。それからほかの理由で、二熱学の問題がなくても放漫でつぶれたんじゃないだろうかというような判断をしようと思えば、どこの企業にだって、百点満点で企業の経営をやっているような経営状態なり経理の実態なりが、一体日本じゅうどこにあるかといいたいのであります。ありません。因縁をつけようと思えば必ずつくのであります。だから、一時救済して、いまおっしゃったような観点からの検討も十分にし、刺激を与え、そこが更生することが大事でありますから、十分に一そういうことを言っていただくことはいい。つぶしたあとじゃだめなんで、その前に、千二百万円ぐらいだったらやはり手当てをして助けておいて、そうして、いまおっしゃったのかもしれない何らかの理由があるとするなら、そのことを直ちに改めるように三カ月、四カ月の期間を置いて、そうして改まらないときに、やむを得ないというのでその後に処置を講ずるというようなことが、いわゆる銀行の公的企業としての社会的道義の責任の持ち方だと私は思うので、こまか過ぎるようですが、もう一度見解をお伺いしたい。
  190. 佐々木邦彦

    ○佐々木参考人 お答えをいたします。  いまの先生お話も、私は気持ちとしてはよくわかります。銀行と申します以上は、いまのお話のように、千二百万で不渡りを出した、それを一応不渡りを出さないように救済をしておいて、そうして少し時間をかけてもゆっくり、その会社の再建ができるかできないか、これを判断すべきではないかというふうな御趣旨かと思います。その御趣旨も、私にわからないわけではございません。ただ、おそらくは本件の場合は、取引銀行が従来から内情をよくつかんでおりまして、千二百万だけ出したのでは再建ができない、これ以上どれだけ要るかわからないというふうな判断をいたしたのではないかと私は考えています。  こういうときでございますから、申し上げるまでもなく、私どもといたしましても、こういった親会社の倒産に関連したもの、あるいはその他のものでも、できるだけ救済の手を差し伸べれば再建ができる見込みのあるものについては、従来もそうでございましたが、今後も一そうそういった手を差し伸べていきたい、こういうふうに考えております。
  191. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 たまたまヨシタケ商事の名前が出ましたので、ちょっとここでお答えさしていただきたいと思います。  実はヨシタケ商事はまだ倒産いたしておりませんで、不幸にして第一回の不渡り手形を出したという段階でございまして、現在取引停止処分には至っておりません。  先生も御指摘のように、非常に中小企業、いろいろなところに取引がございますので、たとえば信用金庫、信用組合等に手形が回ってまいりまして、それが何らかのかっこうで不渡りになるということは間々あり得ることでございます。したがいまして、現在の段階といたしましては、これがこの日本熱学に伴う直接の関連であるというようなことであるのならば、もちろん万全を期する措置をとっていきたい、かように考えております。
  192. 原茂

    ○原(茂)委員 もうすでに熱学の十八日、十九日の状況と同じで、ヨシタケさんの場合でも、まわりでは倒産扱いをしておるのですね、不渡りが出ますと。停止処分をしないというだけであって。銀行がそれであるなら積極的に、いま私が前段に申し上げたような趣旨で手を伸べていくというようなことになっていない。なかなかに現在までの状況というのはそうしにくい関係にあるのであります。これは当然だと思います。何でもかんでもそんなことをしたら、たまったもんじゃございません。しかし、この熱学の問題を中心に千二百社の下請なり取引先などを考えたときには、いま申し上げたような、いま佐々木さんのお答えのありましたような、そういうたてまえで十二分な救済措置あるいは適切な指導というものを行なっていただけるということをお約束していただけるなら、関連しているいまの千二百社の皆さんもそのつもりで、銀行に対して実情を訴えながら先へ先へと相談にいくことも可能だろうと思うのですが、そのように確認をしてよろしゅうございますか。
  193. 佐々木邦彦

    ○佐々木参考人 けっこうでございます。
  194. 原茂

    ○原(茂)委員 これはもう一面、違った面からは、投資家の保護という点を、やはりこういう問題が起きるたびに考えなければいけません。現在の経済情勢からいくと、もうここ三、四カ月来非常に倒産件数があるわけでございますから、今後また抑制は続けていく、引き締めは堅持する、しかも相当大きな物価その他の上昇による影響が出てくるというようなことを考えますと、まだまだ熱学なりエアロばかりでなくて、何かこう不吉な予感がされてならないわけであります。たいへん不幸な事態が多く来るような気がしてなりません。こういう状態が考えられますときには、やはり投資家もまた、あれよあれよといっておるうちに株券が紙きれになっちゃった、こういうのじゃたまったもんじゃございませんから、やはり投資家の保護という観点からも問題を十分考えておく必要があるだろうという意味では、先ほど実は関係者から説明をちょうだいしましたので、問題は、もうあまり時間がありませんから申し上げようとは思いませんでしたが、年一回以上の決算と商法が規定をいたしましたその一回以上でいいということになりますと、現在年二回決算をやっておるところも一回のほうにどんどんとなっていくだろう、こう思うのであります。年一回になりますと、やはり熱学の場合なんかを考えましても、二部上場してまだ一年九カ月、この一日に一部上場になって二十日目にああいう状態になった、まだ二部上場から一部へ二年たっていないというようなことを考えたときに、やはり投資家大衆の側からいうならば、年二回の決算、株主総会というようなものが、大衆の目の前にきちっと経理の公開がされる仕組みと、法律的には大蔵省の管理監督のもとに年二回会計の報告がある、経理の報告がある、それを十分見ればいい、こういっているのとはたいへん実は違うのでありまして、投資家自体にやはり納得をしてもらう、投資家も関心を持ちながらその決算に年二回十分に注意を払うというような機会を与える意味からいっても、年一回以上というのを、私はこの商法を逆に改正して、年二回決算というようにすべきではないか、こういう極端な考えも投資家保護という立場では浮かんでくる、こういうことを申し上げましたら、いや、それはこうこう、こういう理由でというので説明が一応ございました。しかし、私の考えはやはりこういう点でどうもまずい、逆に投資家保護にならないんだというような理由を、もう一度ここで正式にお答えをいただきたい。
  195. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 年一回決算がいいか、年二回決算がいいかというのは、法務省の問題でございます。私のほうは投資家保護というたてまえといたしましては、有価証券報告書といったようなものを決算期ごとに出していただいております。現在も一年決算の会社が約半分ございます。二回決算しておるところとほぼ同数でございますが、昭和四十六年に証取法改正をいたしまして、年一回決算の会社でも、六カ月を経過したときにはそこで半期報告書を出せということにいたしまして、したがいまして、年二回決算と同じように、財務内容の公表はすることにいたしております。ただ、成規の決算手続きを経ておりませんので、半期報告書のほうが若干簡単にはなっております。したがいまして、今後、一年決算の会社がふえていく、また大勢はそうなるというような動きにつれまして、私のほうも半期報告書の内容をもっと充実するといいますか、検討していきたい、そのように考えております。
  196. 原茂

    ○原(茂)委員 非常に大事な問題なんですが、時間がございませんので、それもそのとおりお聞きして、できる限り厳重な年二回の監査、検査というものの内容を当分の間はもっとこまかくしていただく以外にない、これはお願いいたしておきます。  それから、一部上場の基準の中にいろんな問題がありますけれども、経理内容というものが基準の中に入っていないことはどうかなと思うのですが、これはどうか。  それからもう一つは、一部と二部を統合していくほうがいいんじゃないか。いまのように一部、二部、これを別に上場しているという理由が非常に希薄になってきたのと、むしろ監督、指導、大衆の保護というような観点からいうなら一部、二部は統合すべきではないかというように思いますが、ずばりお答えいただきたいのですが、いかがでしょう、二つの問題。
  197. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 二部ができましたのは昭和三十六年のことでございまして、当時は店頭にございましたいろいろな銘柄を吸収いたしまして、一応二部ということで、当時は取引所における売買管理等、若干手きびしく見ておりました。その後、二部に対する上場基準といったようなものが改正されまして、だんだん二部に上場するのを、いわば格上げになったといいますか、しっかりしたものが来るというようなことになりまして、現在では、一部と二部との間で売買管理についてはほとんど差はございません。一部は信用取引の対象になり、二部はならないという点が一番大きな違いで、ほとんどそのくらいでございます。あとは資本金の大きさとか売買高とか、あるいは株主数といったようなものの差でございますので、取引所におきましては、四十六年ごろでございますか、政策委員会を開きまして、将来は一部、二部というものは統合したほうがいいんじゃないかという一応の結論は出しております。  ただ、そうしますと、現在の二部の上場基準というもので二部と一部とが並べて扱われていいのか、いや、そうではあるまい、そうしますと現在二部の上場基準を上げなければいかぬのじゃないか、そういうようなことになりますと、現在二部に上場されておりますもので、新たにつくられるであろう基準に達しないような企業が出てまいります。そういうものを廃止しなければならぬのかというような問題になり、それの経過規定といったようなことも技術的にはむずかしいのではなかろうかということで、一応二部と一部は統合するほうがいいんではないかという取引所内部における意見はほぼ固まっているようでございますけれども、まあ、技術的な問題というようなことで見送ってきているというふうに聞いております。
  198. 原茂

    ○原(茂)委員 これは大臣、いかがですか、見送って見送ってずっといるのじゃなくて、いま一部、二部の統合問題に関しては、一応のめどをつけて、期限的にいつごろまでにどうするという答えを出すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  199. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今回の事件によりまして、いろいろと考えさせられるところがあるわけなんです。その中の一つとして一部、二部問題というものもあるわけです。これらは大衆投資家の保護というような見地から見ましてどういうふうにしたらいいだろうか、まあ、期限をつけるというところまでまだ自信を持っておりませんが、とにかく早急に検討を始める、かように考えております。
  200. 原茂

    ○原(茂)委員 最後に管財人の運用、といっては恐縮ですが、並びに管財人を中心にした制度についてお伺いをしてみたいのであります。  私、基本的に、申し上げたいことを先に言うのですが、国家的な一つ機関を設けて、管財人を広く学識経験者というものを中心にセレクトをしまして、やはり国の立場で千人なり二千人を常時プールする。人間をプールということばがいいかどうか知りませんが、そういう制度にしておいて、そうして、このような事案の起きたときにはもう直ちにぴしっと機能的に仕分けができて、職能的な学識経験者が別にきちっと登記されておりまして、この人が直ちにこの問題に関与できるかどうか検討をして、これで適当だと裁判所の御判断がありましたら直ちに任命ができるという制度をおとりになることが必要ではないかというたてまえでお伺いをするのであります。それが一つ。  それから同時に、管財人に対して、管財人がオールマイティではありませんので、特に大きな事案に関しては正式に管財人代理というものをつける。これは山陽特殊鋼の例でぴしっとつけましたとおっしゃるに違いないのですが、確かにそれも知っています。しかし、大きなもの、小さなもの、あるいは中くらいな企業のあり方等に関しても、同じようにこの思考、考え方というものはぴしっと設定をして、そうして管財人代理というものをちゃんと置き、その人も、何千人かを選んでおいて、経理担当、あるいは技術製造担当、営業担当というふうに、管財人の補助的な役割りをする人をつけない限り、管財人が弁護士さんであられたり、あるいはまた、なるほど学識経験者であられたり——非常に適切な裁判所の任命がいま行なわれていることは知っていますが、なかなかにそれがきまるまでが時間がかかっていけない。これはたいへん時間がかかりますし、裁判所も御苦労している、同時にまた、現在、債権債務者の側でもこの点で非常に苦労するという点がありますから、二つ目には、代理制度を置いて、これも大きく全国的にプールをしておいて直ちに発動できる、機能別に、職能別にきちっと補助的な役割りをする人を管財人につけてやれるということを考えるべきではないか。  それからもう一つ、最後に、その管財人なり管財人代理に義務として、社会的な、公的な、道義的な責任として、やはり銀行が必ずその中に入らなければいけないという制度的なものをつくる必要があるだろうと私は思うのであります。ある問題によっては、銀行の側で、とてもじゃないがいやだ、もう三拝九拝してもまだだめだという場合もあって、ついに銀行側がオーケーをしない、何らの協力もしない場合があるのです。私は、特にメインバンクの場合にはもう必ず責任を負うんだということをきちっとしておいて、そうして管財人に、あるいはその代理のほうにでも、どちらかにはメインバンクから必ず出るという責任がある前提で、常時取引をするその取引先に対する適正な指導、ある意味の責任まで公的に、道義的に、精神的にそれを負うような形にそれを通じてなることのほうが望ましいという副次的な作用も考えて、やはり銀行は制度的に必ず管財人あるいは代理人というものになるのだという義務を負わせるということが必要ではないかというふうに思うのですが、現在の運用はこうなっていますという説明をいただく、同時に、制度的に、いま言った、そういうふうに改正すべきではないかということを、おのおのの立場でこの三点についてお答えをいただきたい。
  201. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 現在の管財人の運用につきましては、御指摘がございましたように、弁護士さんになっていただく場合がかなり多いわけでございます。会社更生と申しますのはやはり会社の再建のための手続でございますので、管財人といたしましては、会社の経営能力をお持ちになっていらっしゃる方が一番望ましいわけでございます。また一面におきまして、更生手続自体がきわめて法律的に厳格な手続にのっとって行なわれますことと、債権の回収等の法律的な事務を非常にたくさん含んでおるという関係から、法律家に入っていただくことが望ましいわけでございます。そのほかに経理事務とか会計事務等に練達な方が加わっていただくことが一番よい。そういう三者の構成で更生手続が運用できますのが理想的であるということは、お説のとおりでございます。また法律もそういう制度を予定しておるものと考えるわけでございますが、何より費用との関係もございまして、会社の内容なりあるいは規模なりに応じまして人選を行なわざるを得ないという面も一方にはあるわけでございます。そういったような点で、裁判所といたしましては比較的弁護士さんにお願いするのがしやすい立場にはあるということもございます。また、会計事務、経理事務にごたんのうな方にお願いするということも比較的容易なことであろうかとも思われるわけでございますが、会社の経営能力においてすぐれておられて、しかも更生会社の経営のために全力投球をしていただくという方を管財人にお願いするということが非常にむずかしい。現実の問題としてはむずかしい問題で、裁判所といたしましてもその点で最も苦労しておるわけでございますが、確かにお示しのような構想が生まれましたならば、裁判所としては運用面においてはたいへんありがたいわけでございます。制度的なものとして設けるについては、あるいはまたいろいろな難点もあるのではないかということも考えますけれども、裁判所として運用面でできる限りにおいての改善の努力というのは今後一そう進めてまいりたいと考えます。
  202. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 会社更生事件におきまして、管財人の選任がなかなかむずかしい場合があるということは、私も話に聞いております。これをどのようにしたら選任がしやすくなるかということは、私、事実を必ずしも詳しく承知しておりませんので、なお研究してみたいと思いますが、裁判所の運用によって改善されるという方法、あるいはさらに進んで制度的に、先生おっしゃるような何らかの仕組みを考えるかという問題があろうかと思います。  現在の運用におきましては、最高裁判所のほうから御説明がありましたように、弁護士の方を選ぶ、あるいはまた債権者団体の御推薦の方を選ぶ、こういうような方法が最も多くとられておるようでございます。しかしながら、たとえば東京に例をとりますと、東京の地方裁判所における年間の会社更生事件というのは大体二十件くらいがいままでの平均だそうでございます。そして弁護士会のほうからは、こういう方が管財人として適当であるというような名簿を出しておられまして、それは数百人載っておるそうでございます。会社によりまして、非常に規模の小さい会社、それから大規模の会社、いろいろでございますので、その中からどういう方を管財人に選ぶかということは、裁判所としてはそのリストを見ただけでもなかなか判断がつけにくいという事情もあるようでございましても、もう少し何らかしやすい方法があるかということは実務上非常に痛感されておるところのようでございます。  それから管財人代理、これは多くの事件において、管財人のほかに管財人代理というのをつけておるようでございますが、小さな会社になりますと、報酬の関係もございますので一人にしておくとかいうような場合もございまして、いろいろ具体的事情に応じなければならないというむずかしい面もあろうかと思います。なお、そういった点につきましては最高裁判所にもよく事情伺いまして、私どもといたしましても、はたして制度の改正が望ましいかどうか、そういう点を含めまして検討さしていただきたいと考えます。  それから、銀行関係者を必ず入れるという必要があるかどうかは、ちょっと私、即答いたしかねますが、実際の運用から見ましても経済人、特に銀行につとめておられたというような関係の方が管財人あるいは管財人代理になっておられるようなことが多いようでございまして、そういう点は確かに十分に配慮する必要があるというふうに考えております。
  203. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わりますが、一日も早く熱学なりエアロ関係皆さん再建ができるように祈念するわけでありますが、大臣から、いま私か申し上げたような点について——十分な回答が制度的に得られませんでしたが、裁判所の側ではそういう制度ができれば望ましい。大臣、法務大臣とも十分にこれは話していただいて、私がいま提案したような制度的な変革を早期に実現する努力をしていただきたいと思うのですが、大蔵大臣から所見を伺って終わりたいと思います。
  204. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今回の日本熱学工業株式会社の倒産事件、これは非常に遺憾な事件でございますが、こういう遺憾な事件から、いろいろと国の行政をやっていく面におきましての考えなければならぬ問題を示唆している、こういうふうに思うのであります。ですから、先ほどから原さんの御指摘のいろいろな問題があります。そういう問題を含め、広範に、是正を要するものがありますればこれを検討し、結論を得たい、かように考えます。
  205. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。終わります。
  206. 臼井莊一

  207. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 福田さんにお尋ねするのですが、この前、たしか閣議か何かで福田さんが、いまの選挙は非常に金がかかって困る、何とかしなくちゃいけないというふうなお話をされたということが出ておったんですね。私も非常に共感を覚えるのですが、そういう点についての福田さんの発言の真意といいますか、なり何なりというものをまず最初にお聞かせを願いたい、こういうふうに思います。
  208. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、今日の日本社会の風潮というものを非常に心配しているのです。つまり、金さえあれば何でも片づくんだ、こういうような社会風潮ですね。私は財政演説でも申し上げた。金さえあれば、物さえあれば、自分さえよければという今日の社会風潮、これを何とかして終わりとしなければならぬ、こういうふうなことを申し上げましたが、やはりそういう社会風潮の中で行なわれる政治、この政治に非常に金がかかる。これは、私はまず政治からそのような風潮をなくしていかなければならぬ、そういうふうに考える。また政治の中で、政治行動の最も象徴的、代表的な選挙、これが、ただいま行なわれようとしておる選挙の事前行動を見ますると、まことにこれはたいへんなことになってきた。五当三落などということが大っぴらに言われるような状態のもとでの事前運動です。これを放置しないで、何とか措置できないものか。警察にも能力はある。そこで全部やるというわけにもまいらぬ。しかし一罰百戒ということもありまするから、とにかくこの行き過ぎ、はでな事前選挙運動というものを放置しないで、取り締まり体制に移るべきだ、こういうような趣旨のことから閣議で発言もしたわけなんです。  私は、とにかくこの選挙、つまり政治活動の中の象徴的な選挙にたいへんな法外な金がかかるというような事態を放置しておくということは、これはもう国の基盤にも関係してくるような大きな問題にこれから発展してくる、こういうふうに思いまして、非常に心配しております。またいろいろ御教示を仰ぎながら、私も一政治家としてそういうことにつきましては重大な関心を寄せていきたい、かように考えております。
  209. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も福田さんのおっしゃるとおりだと思うのです。思うのですが、ちょっと私ども、立場が違いますからあれですけれども、どうもお話を聞いているとさっぱり具体性がないですね。何とかしなければいけない、何とかしなければいけない。警察に取り締まってもらうだけじゃちょっと能がないですね。それじゃちょっと福田さん、なかなか総理大臣に……。失礼失礼、話が飛びましたが、いずれにしても、ちょっと具体性がないですね。具体的にそれじゃあなた自身がどういうふうにするのか。いまのこういう選挙のやり方、政治のやり方が間違っている、まずいんなら、どうやって直すのかということをまず——せっかく発言をされた御趣旨は、ぼくはそのとおりだと思うのですよ。ごりっぱだと思うので、どうやってどうするのかということのお話がなければ、何となくお聞きするというのも私のほうも不本意になってくるんですね。それをはっきりとした、もう少し何かありませんか。お聞かせ願えませんかな。
  210. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 金のかからない選挙という問題につきましては、まず制度の問題があると思うのです。つまり、今日の選挙法が個人本位の選挙制度になっている。そこに私は非常に大きな問題がある、こういうふうに思います。これはもう政党本位の選挙制度に衆参議員の選挙を通じて改変をすべきである、こういうふうに思います。こういう選挙制度、これは各政党の間の共通の土俵をつくるわけでありますから、もとより十分に論議を尽くした上でなければならぬとは思いまするけれども、とにかく政党本位の選挙制度に選挙制度を改正すべきである、こういうことです。  それからもう一つの問題は、選挙運動自体の取り締まりということが徹底しない。私は町村国家公安委員長にも申すのですけれども、現行の制度ではどうにも手が出ませんと、こう言う。手が出るように、出し得るように改正すべきである、こういうふうに思います。  まあ選挙制度並びに選挙運動についてはそうですが、同時に私は選挙資金、この問題があると思うのです。とにかくいま、金がずいぶんかかる。そんな金がどこから出てくる。そういうような過程を通じまして私が特に心配しておりますものは、政治の公正というものが害されやしないか、こういう問題です。それからもう一つは、これは政治じゃない。今度は選挙です。選挙が選挙自体の公正を害する。つまり金のよけいあった人が当選をする。こういうようなことになってくる。そこから生まれる議員が行なう政治というものがはたして公正ないい政治になってくるか、こういうことを思うんです。そういうことを思いますと、この選挙資金という問題、これは各党、立場なんかにそうこだわらぬで、いままでのいきさつなんか振り捨ててお互いに相談し合わなきゃならぬ問題になってきておる、こういうふうに思うのです。  私の考え方は、これはもう大蔵大臣じゃないのです。私の私見です。私は、選挙資金の徴収の制度、まあ選挙資金を集める制度、これは根本的に変えたらいいと思うのです。つまり、急に一足飛びというわけにもまいりませんけれども、企業献金、こういうふうなことをだんだんと制限し、将来はなくする。それから個人献金というか、こういうものを助成をする。こういうような方向で諸制度を改正するというようなことですね。まあ選挙資金の集め方、使い方、いろいろ問題はありまするけれども、選挙制度とそれから資金制度、この両面にわたっての制度改正を必要とする、こういう見解です。  しかし、制度を変えたばかりで今日の政治風潮、政治土壌というものが改革されるかというと、私はそうは思わぬ。これはやはり政治を運営するわれわれ議員というものがもう少し考え直さなきゃいかぬ。同時に国民にもそういうことを呼びかけまして、国民の選挙の、また政治の真正というか、そういうものに対しましての理解を求めるというようなことですね。やはり政治風土、政治風潮というものをわれわれみんなが努力して変えていくということがなければ、制度を幾ら変えてみてもこれはただ単に絵をかいただけだ、こういうことに終わるおそれがある、私はかように考えています。
  211. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それで私は、大臣ということばを使わなかったのですよね。福田さんと、こう言ったのですよね。あなたのお考えを聞きたかったからわざわざそういうことばづかいをやったのですけれどもね。  話はよくわかるのですが、そうすると、選挙資金というもの、あるいは政治資金というものがたくさんかかる。まず現在の政党、その中でも政治をとっているのは与党ですわね。それの中で、まず政治資金が具体的にどこからどういうふうに入ってきて、何に使われておるかということを明らかにするのが政治を正しい方向に向ける第一歩だ、こう私は思うのですよ。だから、福田さんのところだけでもいいというか、それはまあ別として、そこだけでもそういう点をまず明らかにするだけの決意がなければ、いまおっしゃったようなことをおっしゃっても言うだけの話だ、こういうふうに私は思うのですがね。たいへん失礼な話で恐縮ですけれども、あなた御自身だけでもいいし、あるいはあなたのあれでも何でもいいですが、そういう点について、自分たちの金がどこから入ってきてどういうふうに使われているのかということを国民の前にはっきりさせることが必要じゃないか。私はそこから政治が出発するんじゃないか、こう思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。いや、それはまだ時期が早いとおっしゃるんでしょうか。ほかもやるんならおれのほうもやるけれどもと言うんですか。
  212. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私もなま身の政治家ですからね、そう素っ裸でというわけにはまいりません。やはり同僚もおる。そういう中におきましての私自身の政治行動というんですから、やはり同僚各位と相談をして、そして共同の歩調をとるということが必要なことは、これは御理解が願える、こういうふうに思いますが、とにかく私は、いまの政治風土、政治風潮、金さえあればという風潮、これは根本的に変えていく必要がある、そういうふうに考え、何とかそういうふうな風潮をつくり上げたいものだなと考えておるのですが、同時に、その風潮を背景として制度の改正をする、そして金のかからない公正な選挙が行なわれるというふうにいたしたいと思います。
  213. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あまり立ち入った、失礼なことを聞いてはいけませんから、私も限度をわきまえてお聞きいたしますが、そういうふうに金のかかる政治、どこから集まってくるのか集めてくる、こういう政治を現実に日本の中でやっていて、そうしてあなた、何とかの反省だとか、これから徳育が必要だとかそんなことを言ったって、国民は、何を言っているか、そんなばかなことを言うな、おまえたち、まず自分たちで姿勢を正せ、こういうことで、そんなこと信頼しないんじゃないですか。そういうふうに徳育の問題だとかなんとか、幾つかの反省だなんて出てくると、話が変なふうになってくるかもわかりませんけれども、金のかかる政治をやり、そういうようなことを現実にやっている人がそんなことを言ったってだめじゃないですか。その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  214. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 稲葉さんの御批判は御批判で伺っておきますが、私がそういう意欲を持っておる、何とかして金のかかる政治体制というものを改革したいという熱烈なる意欲を持っておるということを、はっきり申し上げます。
  215. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その熱烈なる意欲を具体的な形で生かしてもらいたい。どうもほかに何か遠慮して、ほかがやらないからおれのほうだけやっちゃ損だというような考えでもないでしょうけれども、そんなことはあまり関係ないんじゃないかと思いますが、あまり立ち入ってもいけませんから、じゃ別のことをお聞きいたしますが、実は私はきょう、本会議で福田大臣の——今度は大臣です。——説明を聞いておったのです。質問の中にデノミの話が出ました。それから五万円札の話が出ましたね。ぼくは、この二つを一緒に質問したのは、これはおかしいと思うのですよ、質問が。それはそうだと思うのですけれども、いずれにいたしましても、その前、所得政策の問題がいまちょっと出ましたね。ぼくは、所得政策なりデノミについての考え方はちょっと違うのですが、ほかの国で、イギリスやその他の国でいわゆる所得政策というものが成功していないわけでしょう。その原因は一体どこにあるというふうにお考えなんでしょうか。あるいは成功しているんですかな、それは。
  216. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 通説といたしますと、あまり諸外国では成功しない、こういうことのようです。成功しない原因は、やはり物価が安定しないで賃金だけを何とかくふうをしようという、そこに無理があるんだろう、こういうふうに思います。私は、物価と賃金というものは切り離して処理することはできない。もちろん地代だ、家賃だ、配当だ、そういう問題もありまするけれども、総合的に申しまして物価と賃金、これが片手落ちの処暑を受けるというところにこれが成功しなかった理由があるんじゃないか、私自身はそう考えております。
  217. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると物価の問題で、いま需給の問題あるいはコストの問題二つに分けて大臣言われているわけですよね。この二つだけの分け方でいいのかどうか、ちょっとぼくは疑問なんですが、そこで一体今後の物価の見通しの中で、大臣の話を聞いていると、もう狂乱物価は終わったので、まるで物価の問題は終わったようなことも言われる——言われるというか、とり方によってはそういうふうにとれるようにも聞こえるかと思うと、また、いや、物価は安定しないんだというふうな意味のことにもとれるような発言もあるように聞こえるのですよ、私の聞き方が悪いかもわかりませんけれども。それで、私はこの前も言ったんですけれども、物価が今後どうやって変化をしていくかということの中で一番大きな問題は、やはり参議院選挙終わった後にどういうふうになっていくかということが一番大きな問題だと私は思うのです。しかし、それはあなたのほうはなかなか答えないですよ。答えると選挙のときに不利になるからというので、選挙に逆用されるからというので答えないんだとぼくは思うんだ。そうすると、逆に聞きますと、大臣、それじゃ今後下がっていくというふうに思われる物価はどんなものがあるんですか。
  218. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まあどういう商品が下がるとか上がるとか、こんなことを私が申し上げたら、またそれをもとにして投機が起こりますから、そんなうっかりしたことは私は申し上げられません。ただ、いままでの総需要抑制政策をとった結果下がったおもな商品は何だ、こういえば、鉄なんか顕著に下がっている。繊維なんかも半値近いところまできている。木材も下がってます。セメントも下がりました。いわゆる総需要抑制政策が直接関連するようなものを軸といたしまして、かなり商品市況というものが下がってきている、これは御承知のとおりだと思いますが、私は、これから先も総需要抑制政策を進めればそういう傾向を持つだろうと思うのです。ところが一方におきまして、今度はコスト要因が出てくるわけです。総需要抑制政策は、これは需給対策としてスタートしたわけでございますけれども、これからコスト要因というものが出てくる。そのコスト要因にどういうふうに対処をするか。  まあ物価対策としては二段階あると思うのです。一つは、この狂乱という状態を討伐する時期、これは需給調整の時期ですね。それから第二段階は、これは狂乱というほどの状態じゃないが、静かに物価を押し上げる力、つまりコストアップ、この問題にどういうふうに対処をするか、こういう時期、この二つの段階があると思うのです。その第一段階の対策はおおむねもう終了した、こういうことを申し上げているんです。第二の段階に入っておる、こういうことを先ほども強調したわけであります。
  219. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その第二の段階の物価の上がりといいますか、「こうとう」というか、「こうとう」という「こう」は高いという意味じゃない、昂騰かもしれませんが、それはどういうふうな状態になったら終わるんだろうかということ、あるいは終わらないで、このままの状態でずっと物価は静かな昂騰を、しのび足かどうかは別として、そういう形で続けていくんだろうか、こういうことについてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  220. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 コスト要因がこれからの物価を一つは動かす、そのコスト要因として動かす力は、押し上げるほうの力になります。ところが押し下げる力があるわけだ。これは総需要抑制政策でありますね。これは需給の関係からそうなってくる。その二つの力が相殺し合いながら物価が動いてくるというのがここ数カ月の見通しじゃあるまいか、そういうふうに見ておるわけであります。  それで、その殺し合いの結果、相殺をし合ったその結果がどういうふうになってくるか、私もいま予断はいたしかねますが、その辺が、まあとにかく輸入石油の価格が四倍になりました。その後を受けての新しい物価体系ということになってくるだろう。そうしてその後は、秋以後は、これはまあ大体新価格体系で動いていく。ただ、その新価格体系がそのままでずっと動いていくのかというと、そうじゃない。これは国際要因というものがあります。この国際的な要因だけは、幾ら手を打ってもなかなかこれを防ぎとめることはできまい、こういうふうに思います。  ですから、需給の問題について手が打たれた。それから次いでコストの引き上げ要因がある、それに対しましても手を打つ。そこで新価格体系ができる。その新価格体系というもの、これはまあとにかく政府とすれば国際価格、国際物価水準、それ以下に押えていくということになれば、まあ国民も御理解をいたしていただける、そういうことに相なるのではあるまいか、私はそういうふうに考えております。
  221. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのコスト引き上げ要因に手を打つということですね、この具体的な意味というか、方策というのはどういうことなんでしょうか。これは結局賃金の抑制、賃金の上がるのを抑制をする——との程度かは別ですよ。抑制するということにつながる、こういうような理解でよろしいのでしょうか。
  222. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私はこの数カ月のことを申し上げているのです。つまり、数カ月間にコスト引き上げ要因がいろいろある。それにどういうふうに対処するか。一方において総需要抑制政策をとる。そしてコスト要因によって引き上げになる物価、これを引き上げる力というものを減殺をする、こういうことを申し上げているのです。  いま稲葉さんが賃金問題に触れられましたが、このコスト要因の中で賃金要因というのが非常に大きいのです。これはいろいろの試算がありますが、大体いま出ておるのは、米価がかりに予算で予定しておるとおり上がれば〇・四である。国鉄が法律できめられておるような上げ方になれば〇・四の影響力がある。それから電力料金、これが〇・五の影響力があるというのですが、賃金のほうは三〇%上げになりますと一〇%の物価押し上げの要因になる、こういうふうに見られるわけなんです。  しかし賃金問題、これはもう大体大山が越えてしまって、できちゃった。しかたがないです。このしかたがない賃金の引き上げ。それからまた電力料金ももうきまってしまった。そういうものが物価に影響を及ぼさないようにどういうふうにやっていくかということが、当面この半年間の課題になってくるわけですが、一つは私は、そのコストアップの影響力というものを消す、それは何といっても総需要抑制政策による物価押し下げの力、これだと思う。それからもう一つは企業側にある。企業が合理化を行なって生産性をあげる。賃金は上がったけれども、生産性をあげるということで賃金の上がり、これを全部吸収するということはなかなかむずかしかりましょうが、ある程度とにかく合理化努力によって吸収していく、こういうことじゃなかろうか。企業家にもそういうお願いをしなければならない。同時に、政府は総需要抑制政策を堅持して物価引き下げ影響力というものを強化していかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  223. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの問題は基本的な非常に大きな問題ですから、別な機会にまた問題になると思うのです。  さっき原さんも質問されました、たとえば日本熱学の倒産の問題ですね、これはここだけの問題というよりは、むしろ日本の証券取引なりあるいは投資者の保護というか、いろいろな問題としてとらえないと問題の解決にはならないんだというふうにも思うわけですが、せっかく谷村さんおいでになっておりますので、まず、証券取引所のほうから先にお伺いをいたしたい、こう思うのです。  この問題の中で証券取引所が、第一部への指定がえですか、三週間で倒産になるような企業の実体を見抜けなかったということ、このことはあなたのほうも、新聞なんかで見ると、おれのほうには関係ないんだということを言われておるようにとれるのですが、証券取引所としてはこういう点についてどういうふうに考えるのか。それから投資家全体に対する保護というか、そういうことを考えれば、審査機能の充実というか、そういうふうなもので企業の内容の開示というのですか、ディスクロージャー、こういうふうなものを今後どういうふうに考えていかなければいけないのか、こういうことについて谷村さんのほうから一応先にお答えを願いたいと思います。
  224. 谷村裕

    ○谷村参考人 問題が二つございます。  まず第一の、私ども東京証券取引所に上場しております株式、それが二部から一部に移ったというそのあとにこういう問題が起こった、それに際して取引所は十分な何か調査なり何なりをしておったのかというのが第一点になろうかと思います。  すでに原議員も御質問がございましたが、取引所といたしましては、取引所に上場いたしますときにはかなり詳細に財務内容、経営状況等について上場の適否を審査いたします。私が従来かかずらっておりましたいろいろな仕事のしかたから見ましても、取引所における上場に際しての審査というのはかなり厳重に行なわれていると私は思います。しかるに、先ほどもお話が出ましたが、いわゆる二部から一部に移るというときには、内容的と申しますか質的な配慮ということは一切いたしておりませんで、たとえば株主数とか資本金額とかそういった形式的な基準だけで見ておる、これが実態でございます。  それで御指摘のように、世の中では、ただいま稲葉議員は正確に二部から一部に指定がえした、こうおっしゃいましたけれども、どうも二部というのは一部より低いんだとか、一部になると昇格したんだとかいう、内容的にも一部、二部には差があるかのように受け取られていること、これは私どもとしては不本意でございますが、ある程度事実でございます。そういうふうに受け取られております。  さような意味において、私どもは、先ほども証券局長が御答弁くださいましたように、本来上場ということはあっても、その中で内容的な、質的な区分はしない、たまたまそういった形式的な区分によって二部と一部とが分かれているという、そういう基本的な態度をとっておりますために、御指摘のような問題の意識があったと思います。これについては、先ほど証券局長も御答弁申し上げましたように、私どもは将来その区別はなくすべきだという方向で考えておりますが、いまおっしゃいました、内容がもっともよくわからぬのかという問題これについては、取引所としては、一たん上場しましたものについて優劣をそのつどつけて、上げたり下げたりするということをとるべきではない。一たん上場したものは、これは別の角度から投資家全般の方々が御判断くださる。取引所において一つ一ついい、悪いという格づけをするというのは、取引所の性格上望ましくない、かような考えから実は出ておるわけでございます。  そこで第二の御質問になりますが、もっと取引所は上場会社について十分な審査をすべきでないか。常時というとやや行き過ぎになるかもしれませんが、世間でもいわれておりますことは、もっと上場会社の内容なり、さらに進んでは資金繰りなどに至るまで把握しておくべきではないかというふうな御議論もあるかもしれないのでありますが、私どもはその点では、取引所といたしましては、取引所の手によって常時会社の内容、営業内容、経理内容等を分析し、調査する、審査するという体制をただいまとっておりませんし、またとるべきではないと考えております。しかし、いま稲葉委員がおっしゃいましたように、できるだけ会社が投資家に対して正確に、その事業内容、経理内容等についてディスクロージャーをする、開示をする、そのこと。また、何か問題があったときには、必ず正確な情報を広く一般に提示するようにする。このことは大事なことであると思って、そのことは一生懸命やるようにいたしております。  これが一般的な、御質問に対する一つ、二つ、その両点に対するお答えでございます。
  225. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで大蔵省にお尋ねをするのですが、いまこのことで問題となっているのに三つの点があるわけですね。  一つは、昨年末の有価証券報告書に粉飾があったのではないかということが一応いわれておる。それから二番目は、昨年末の時価発行増資の際の有価証券届出書に虚偽の記載があったのではないか、あるいは重大な記載漏れがあったのではないか、こういう点が二つ目ですね。それから三つ目は、何か株価の操作があったのではないかということがいわれておる。私はわかりませんよ。人の名誉を傷つけてはいけませんから。そういうことがあったのではないかといわれておるので、この点について大蔵省としてはどのように把握をしておるのか。あるいはいままで——急なことであるからあれですから、いま言った問題点等を今後どういうふうに調べていって、事実関係を明らかにしようとする意図なのか、これを大蔵省からお答え願いたいと思います。
  226. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 初めの二つの昨年末の有価証券報告書、これは実は三月に出てきておりまして、まだ私どもは審査はいたしておりません。それから有価証券届出書、昨年の年末における増資の際に出されました届出書でございますが、これは公認会計士の審査を経たものでございまして、適正であるという意見がついております。そして、これはまだ当時は資本金が十億になっておりませんでしたので、近畿財務局のほうで審査をいたしました。その限りにおきましては粉飾があったということはございません。  それから、株価の価格操作があったのではないかという疑い、これが新聞などでいわれておりますが、大体価格操作があったかなかったかというようなことは、それぞれの取引所におきまして売買審査室というのがございまして、通常毎日の取引において目を光らせておりまして、ややそれらしいなというようなものがあれば念査をし、注意をしたりしております。それで、いままで通常の審査、これは毎日続けておるわけでございますが、従来通常の審査をやっておりました段階では、価格操作があったということでひっかかったことはございません。ただ今日、これは一番目、二番目、三番目ひっくるめての話でございますけれども、今日倒産いたしますと、こういう状態になって振り返ってみれば、これはもう一度念査してみたらよかったのではないかというふうには思っておりますので、有価証券報告書について虚偽記載があったかなかったかというようなことは、これから調べるつもりでございます。  それから価格操作については、それぞれの取引所において、またさかのぼって調査を始めたと聞いております。
  227. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの三つのうちの三番目の問題は、これは谷村さんのところの管轄になりますから、谷村さんからお願いいたしましょうか。
  228. 谷村裕

    ○谷村参考人 一口に株価操作といわれるのがいかなるときにどういう形で起こったか、いろいろな類型があるかと思いますが、簡単にいたすために、たとえば昨年十二月に公募増資を行ないますあのときに、一体価格操作らしきものがあったかどうかということは、私どもは、何も日本熱学に限らず、すべてそういった公募増資あるいは公開と申しますか時価発行等が行なわれますようなときには常に注意して見ておるという態勢をとっております。その一定基準に照らしまして値動きがいいかどうかということをフォローするわけでございますが、私どもの売買審査を担当しておりますところがきわめて厳格に審査いたしましたただいままでの結果では、昨年の増資時においてはさようなことはなかったというふうに記録されております。  それから第二番目に、今回の一連の金融不安等の説が流れ始める前後というようなときに、どのような売買上のあるいはいわゆる取引所取引における、まあ相場の何と申しますか、いろいろ、あったかといったような意味でもしお聞きになっているんだとすれば、その点についてはいま証券局長も申しましたが、私どもとしては、問題あるかもしれないと思って調査に、審査と申しておりますが、取りかかっております。これだけはお答え申し上げておきます。
  229. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何か、きのうあたりわかったことのようですが、子会社ですかエアロマスターが大阪市場で九日に八十万株をイギリスのマーチャントバンクの何とかという会社、そこに売ったとかなんとかいう話がありますね。これはぼくもしろうとでわかりませんが、具体的にはこういう事実をまず大蔵省はどういうように把握しておるのかということと、あるいは証券取引所でもいいのですが、どういうふうな問題点を含んでおるのか、ことに外国との関係がありますから、そこら辺はどういうふうに考えるべきものなんでしょうか。どちらでもけっこうです。
  230. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 五月九日にエアロマスターがナショナル証券を通じて外国に八十万株クロス商いがあったということは、事実のようでございます。  何が問題になるかということですが、一つは、その売られた株が社長名義の株であったということのようでございます。そのうわさといいますか、非難の対象としては、社長ともあろう者がこの際、株を売るとは何だと、こういうことなんだろうと思うのですが、証取法に百八十九条というのがございまして、会社の役員あるいは大株主というものが、ある特殊の地位ないし知識を利用して半年以内に売買してもうけた場合には、そのもうけを会社が請求返還させることができるというのがございまして、これは社長名義の株だから案外そういうことがあるんじゃないかという疑いが一つございます。  それからもう一つのほうの、買った先が外国人で国際的にどうかというような問題でございますけれども、これは私は何とお答え申していいのか、外国の投資家でございまして、あるいは日本熱学というものが隆々としておるということで買いが入って、それに売ったんだということであるならば、別段、日本人だから、外国人だからということにはならないんじゃないかとは思います。ですから、その場合に、中に立った人とか何かがうそを言ったとかどうとかいうことがあれば別でございますが、買い手が外人だったからといって特別に問題になるということはないんじゃないかというふうに思っております。
  231. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは買い手が外人だって、そんなことは関係ないのですが、そういう意味じゃなくて、たとえば、倒産が考えられるというか経営状態が非常に悪くなっている、そういうのにそれを知って売ったという場合には、それは日本人に対してやったと同じことなんですが、ことに対外信用という面で問題が起きるのではないか、こういうことを聞いておるわけですね。だからこれは、その当時の状況はどういうふうだったんですかね。その売った日時においてはどのような経営状態だったという、そこら辺まではまだつかんではいないわけですか。いずれにしてもその点について答えていただきたいと思います。
  232. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 今度の倒産の全貌がわかっておりませんので、五月九日現在でどういう状態であったかということは、私どもはまだつかんでおりません。
  233. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何かそういう全体を聞いていますと、大臣、いわゆる大衆投資家ですね、大衆投資家というのは、自分でしっかりやって、自分で判断してやらなければいけないのだ、損したらおまえが悪いのだ、おれのほうは知らないよというふうに、これは変な俗なことばですがね、どうもそういうふうに聞こえるのです。資本主義とはそういうものだといえばそうかもしれませんが、そこはそれだけでいいのでしょうか。  大臣、どうお考えでしょうか、あるいは私の理解のしかたが間違っているかもわかりませんが……。
  234. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まあ大衆投資家自身がみずから当該会社の状態を適正に判断する、こういうことも、そういう環境になっていなければならぬ大事な問題だと思いますが、同時に、大衆投資家自身じゃほんとうはよくわからない、そこで証券会社にいろいろ状況なり意見を聞く、こういうことだろうと思うのです。だから、証券会社自身がよほどこの企業の内容とかなんとか勉強をしておく、そういう必要があるんじゃないか、そういうふうに思います。ですから、大衆投資家自身の勉強も必要だが、同時に、それを補佐するというような立場にある証券会社においても十分勉強しておく、その勉強に十分こたえられるような制度、環境というものが整備されておる、こういうことが必要ではないか、さように考えます。
  235. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大蔵省としては、いま言った投資家自身も問題ですが、証券会社がそういうふうに大衆投資家に対して親切に実態というようなものを——実態を明らかにしろといったって、なかなか無理だと思うのですよ。それは資本主義経済だから、企業の内容まで立ち入ってやるわけにいかぬからできにくいかもわかりませんが、そういうふうなことについては、証券会社に対してはどういうふうな指導をやっているのですか。
  236. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 それは、やはり実力を向上し、発行企業体と常時密接な連絡をとって情報を収集し、正確な判断を下せるような力をつけろということを言っておるわけでございます。
  237. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それには違いないですけれども、何だかあれですな。それは資本主義とはそんなものかもしれませんけれどもね。  そこで、ちょうど銀行協会の会長さんがおいでになっていますのでいろいろお聞きをしたいのですが、これは大臣にもあとでお聞きしたいと思うのですが、銀行の公共性ということについて、銀行協会としてはどういうふうにお考えなんでしょうか、これが一つです、問題は。  二つ目は、どうもぼくはよくわからないのですが、いろいろな利潤をあげているので、ベストテンなんか見ると銀行が入っているのですね。銀行がどうしてそんなにもうかるのだろうかというのは、ぼくは疑問なんですよ。ことばは悪いですよ、ことばは悪いけれども、金貸しというと非常に軽蔑のことばですよね。だけれども、銀行というと、いかにもえらいりっぱなもののようにみんな思っているかもしれませんけれども、日本人間はね。その銀行は、利益があってはいけないとはいわないけれども、非常に利潤をあげておられる。しかも、その利潤はどこから出てくるのだろうかといったら、大衆預金者の金利が低い、貸し出すのが高い、いろいろなその他の理由があるでしょうが、そういうことを中心にして利潤があがっている。しかも、インフレによって大衆預金者というものは、貨幣価値が下がるから大きな損をする。こういうふうになってくると、大衆預金者というか、そういった人の犠牲において銀行が金をもうけておる、どうもこういうふうにしかとれないのですよ、大筋は。で、もうかった金をどこかへ献金しているということになるかもわかりませんけれども、選挙のたびにうんとたくさん出すらしいけれども……。  そういったことを考えると、一体、公共性というもの、それから利潤をあげているということ、それから大衆預金者の保護ということから見て、預金金利の引き上げその他のこと、これについて銀行協会としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  238. 佐々木邦彦

    ○佐々木参考人 お答えをいたします。  銀行の公共性という点についてでございますが、銀行も社会的な存在でございます。したがって、社会と調和をとりながら銀行は仕事をし、そして銀行は発展をしていくということを私どもは考えております。したがいまして、社会の経済情勢その他の変動に応じまして、私どもの考えも変えてまいりたい、こういうふうに思っております。  率直に申しますと、ただいま預金者のお話がございましたが、高度成長を目ざしておりました時分は、各企業が国際競争力をつけなければいけないというふうなことで、私どもはむしろ、考え方の重点を資金を需要される側に置いてものごとを考えておりました。それが今度は安定成長になりまして、福祉社会ということを目ざさなければなりませんので、私どもは従来の考え方を変えまして、預金者に従来よりもっと重点を置きました考え方でものごとを判断をしていきたい、こういうふうに考えております。  ですから、具体的に申し上げますと、先ほど日本熱学の問題、あるいは最近の経済情勢にかんがみまして中小企業のお話が出ておりますが、私どもは以前と違いまして、最近は、貸し出しの面におきましても中小企業に非常なウエートを置いてまいっております。以前は、全体の貸し出しの中に占めます中小企業の比率、これは非常に低うございましたけれども、最近では四〇%程度まで上がってまいっておる。現在のような非常に引き締めのひどいとき、これが数年前でございましたら、そのひどい引き締めを中小企業にもっぱらしわ寄せをしまして、苦しい中にでも、先ほどお話しいたしましたような事情で、率直に申しまして大企業のほうへの資金の回し方が多かった。最近ではそれを逆にいたしております。  非常に具体的な話になりますけれども、最近のような非常な苦しい引き締め下では大企業の要資に対しまして、私どもが実際の貸し出しを実行いたしておるその充足率は一〇%を切っております。しかし中小企業には、苦しい中にも希望の三〇%近い充足率、こういうふうなことで実行いたしてまいっております。  いろいろ理屈はございましょうけれども、銀行の公共性は、そういった面を考えまして、そのときどきの経済情勢に合わせまして、私どもは銀行らしい行動をとっていくということであろうかと思います。  それから、銀行のもうけ過ぎというお話がございました。まさにお話しのように、たとえば所得番付、ときどき出ますが、上位のほうに銀行が顔を出しております。それは景気のいい悪いにかかわりませず、銀行は大体常時相当な利益をあげておるということは事実でございます。  ただ、それならば銀行の利益率は非常に高いのかということになりますと、これは先生も御承知だと思いますが、非常に低いものです。しかも、その利益率はだんだん低くなってきております。それは扱っております金額が非常に大きゅうございます。だから利幅は、たとえば三年ばかり前に比べますならば、銀行全体平均いたしますとほぼ半分に減っておると思います。にもかかわらず、量がふえておりますから、利益の絶対額が大体御承知のようなことになっておりますわけでございます。  そういった意味で、いまお話しの、インフレは進んでおる、大衆の預金は目減りしておるというお話が出ましたけれども、銀行がそれだけ利益をあげておるのならば、その利益の一部を吐き出して預金者に還元して、もっと高い預金金利をつけられるのではないか、こういう御趣旨かと拝察をいたしました。私ども全く、世間の方がそういうお感じをお持ちになるのはもっともだと思います。しかし、いま申し上げましたように、銀行の資金の量は非常に大きゅうございます。具体的にこの席で私どもの富士銀行の数字を持ち出しますのはいかがかと思いますけれども、まあ大ざっぱに預金が五兆円ございます。非常に簡単な数字をあげてみますと、世間ではこういうインフレで目減りをしておるときだから、一〇%以上の預金金利をつける預金も考えてみたらいいんじゃないか、こういうお話がございます。そこで、かりにすべての預金を現在よりも一%ぐらい金利を上げたのでは、預金金利を上げたなというお感じはお持ちにならないと思います。しかし、五兆円の預金につきまして一%金利を上げますならば、それによって生じます銀行の負担は年間五百億でございます。かりに銀行預金を上げるといたしますと、現在すでに一つの金利体系ができておりますから、ほかの預金とのかね合いをどうするかという問題はございますけれども、そういった問題を抜きにいたしましても、銀行の力だけで預金者が御希望になるような目減りの補てんということは、実際問題としては困難であろうかと思います。しかし、私どもは、その中でも全体の金利体系を考えながら、許されるのであれば何かできるだけの還元をいたしたい、こういうつもりでいろいろ検討はいたしております。それにつきましては、たとえば新しい商品を開発するとかこういったこともございますけれども、これがまたすぐ全体の金利体系に関連をするということにもひっかかってまいりますので、なかなか名案がなくて苦慮いたしておりますというのが実情でございます。  御質問に全部お答えいたしましたかどうかわかりませんが、一応これでお答えにさしていただきたいと思います。
  239. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間が来ましたのであれですが、何というか、ことばは悪いけれども、あなたの銀行側の宣伝というか、そういうふうなあれみたいになってしまったのですけれども、ぼくはいろいろな問題はまだあると思いますね。そういうつもりでおいで願ったのではないけれども……。  大蔵大臣、いまいろいろお話がありましたけれども、金利体系いろいろありますね。それはそれとして、現実に勤労者が、所得は上がったとしても、預金をしておる。預金性向というのは、日本は世界でも一番高いでしょう。二〇%くらい行っていますか。そういう人たちが、インフレということばがいやなら、物価の高騰によって非常に損をしていること、これは事実でしょう。認めざるを得ないでしょう、その部面に限って問題をとれば。それを補う道としては、やはりそういうふうな面での預金金利の引き上げということも一つの方法ではないでしょうか。全体の金利の体系をどうするか、これまたいろいろな議論があるとしても、そういうようなことをすることによって日本の経済全体がどういうふうな影響を得るのですか。そこでは、やはり大衆預金者の保護ということも、大蔵省自身ももっと考えていいのじゃないですか。その点については大臣どういうふうにお考えでしょうか。時間がありませんからそれだけお聞きしておきます。
  240. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そういう議論を国会でも何回も伺うのですけれども、これは結局、インフレ下におきまして預金者が損をした、これは争う余地のないことであります。しかし、その預金というものは強制されたものではありませんけれども、任意の預金ではございますけれども、とにかく任意であるといえども、預金をした人が損をしたということは事実であります。そういうことに対しまして何らか手を打てないか、こういうことですが、いろいろ考えておるのですが、結局、インフレにとどめをさす、これ以外に名案はないのです。  たとえば貯金金利をうんと上げたらどうだ、こういうことがいわれますが、そういたしますれば、結局今度は貸し出しの金利を上げなければならぬ、こういうことになるのです。貸し出しの金利を上げるならば、先ほどから御議論のありました物価を押し上げるコスト要因、これが一つまたふえてくるわけですから、そう簡単に踏み切るわけにもいかぬ。また、それでは政府財政で補てんしたらどうだというと、これは国家財政上ゆゆしい問題です。それだけの金があるならば、預金者に対してそういうことをする以前に、いわゆる社会弱者に対する対策ということを強化しなければならぬ、こういうことにもなるわけです。また、財政で補てんするというその補てん資金というものは膨大なものでありますから、その膨大な補てん資金、これはまた、インフレ対策から見て一体どうなのだという問題もある。この問題、考えに考えておるのですが、結局、インフレを早く絶ち切るほかはない、これが結論でございます。
  241. 臼井莊一

    臼井委員長 庄司幸助君。
  242. 庄司幸助

    ○庄司委員 私も、日本熱学の事実上の倒産で、投資家や下請関連中小企業が被害が非常に大きいだろう、こういわれておりますので、問題を二つにしぼって伺いたいと思うのです。一つは浮動株主とおたくの専門用語で言っておりますが、まあ一般投資家ですね。この一般投資家を保護する対策の問題で伺いたい。第二点は、下請関連中小小業の連鎖倒産の防止のためにどのような対策を打つか、この二点にしぼって伺いたいと思うのです。  この日本熱学の株の発行状況を調べてみますと、時価発行が上場以来四回やられておりますね。千四百二十一万株、そのうち公募が約半分の七百二十万株です。四回目の株の発行の際、浮動株主、一般投資家が千九百人から一躍三千二百人にふえた、こういわれております。ですから千三百名ほど、約七割がふえた。こういった昨年十二月に株を買った人、七百二十円で買ったわけですが、これが紙くずになってしまったわけです。  問題は日本熱学の時価発行ですね。これが四十七年八月から急激にふえているわけです。それからもう一つは、これはジュリストという雑誌の記事でありますが、日本の株式の発行の中で、時価発行が四十七年末から急速にふえている。しかもそのうちで、プレミアムの分が総資金調達額の六三%になっている、こういう数字があるわけです。これに対しまして四十七年十二月と四十八年二月には、山一証券あるいは大和証券その他二社によって、計四社によって時価発行についてのルールがきめられたはずです。このルールの問題はあとでお伺いしますけれども、この日本熱学の場合に限って言うと、四十七年八月から四十八年十二月までに四回、ほぼ半年ごとに時価発行しているのです。これは証券取引所の関係の四社できめたルールから見ると、違反しているんじゃないかと思われる節があるのです。これは一年に一ぺんというルールがあったように私見たのですが、半年に一回発行している。こうしたものを認めてきたのはなぜなのか。こういうことがずっと繰り返されますと、私は、今度の日熱のような事態が起きると大衆投資家の保護にはならない、そう思うのですが、これは東証の方と、それから大蔵省の証券局長からひとつお答え願いたいと思うのです。
  243. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 時価発行が四十七年にたいへん盛んに行なわれまして、ただいま先生おっしゃいましたように、四十七年中のプレミアムが六十数%であるとか、あるいは時価発行そのものがふえたということは事実でございます。その場合に、四十七年ごろ若干行き過ぎがあるんではないかというようなことから、四十八年の二月に主力の引き受け証券会社が自主的なルールをつくりました。そのルールはいろいろございますが、その中に、いま先生指摘の、時価発行は間隔を一年にするのを原則とするというのがございます。日本熱学が四十七年八月及び四十七年十二月、四十八年六月、四十八年十二月と四回やっておって、そのルール違反ではないかという御指摘でございますが、このルールの取り扱いといたしまして、上場のために市場で公開するものはこれにカウントしないということでございます。四十七年の八月と四十八年の六月の時価発行は、それぞれ大阪取引所、東京取引所に上場するために、その上場するためには必要最低限の公開株というものが要請されますので、その要請にこたえるべく時価発行したというのがこの二つでございます。したがって、純粋の意味でと申しますか、普通の時価発行増資というのが四十七年の十二月と四十八年の十二月に行なわれたということになりまして、これは一年間隔をもって行なわれたということになるわけでございます。
  244. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでは東証さんのほうはあとでいいです。そうしますと、そこでもまたふしぎな問題が出てくると思うのです。これは結果から見れば上場をねらって増資をした、その増資の目的は運転資金の獲得にあったようです、これはあとで数字を申し上げますが。すでに去年の十二月ごろ借り入れ金が大体一・七倍くらいにふえていたという事実があるのですね。そうすると、すでに警戒信号が出ている。そういうところが、上場をねらっていわゆるカウントアウトをちゃんと計算に入れて、それでいわゆる発行の届け出あるいは認可を求めるとかこういうことをやっているわけでしょう。そして近畿財務局がこれを許可したということになると、私は、大蔵省もこういう監督上の問題指導上の問題にやはり相当の問題があるんじゃないか、こう思うのです。その辺どう思われますか。
  245. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 企業の増資に関しましては、大蔵省は、認可もあるいは許可も承認も、そういうことは一切タッチしないことになっております。そういう権限は持ち合わせておりません。私どもが関与いたしますのは、増資をする場合、それは広い意味の、小さな増資ではございませんで、ある一定規模以上の増資でございますが、そういう場合には有価証券届出書というものを作成して提出しなさいということになっておるわけでございます。その届出書を受理するというのが私どもの権限でございまして、増資を認可するとかあるいは承認するといったようなものではございません。
  246. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは、いわゆる大衆投資家が一株七百二十円で買ったものが紙くず同様になっている重要な問題なんですよ。この間も協同飼料の問題が問題になりました。そういう事例がありながら、依然として、こういう届け出制だから、受理すれはいいんだ——受理した際、数字がちゃんと出ているのですね。たとえば、これは四十八年五月の届け出の書類ですが、手取り金の使途は、「手取概算額十二億四千万円は運転資金に充当する。」毎回これは書いてあったはずです。そういう点からも、この会社少しおかしいのではないかというような配慮をするというのが一般投資家保護のたてまえじゃないかと私は思うのですよ。その辺非常におかしいし、これから大蔵省にもやはりその点にも意を用いていただきたいな、こういうふうに私は思っておるわけです。  それで、次の問題に移りますが、これは東証の方にお伺いします。  四十八年十二月の場合ですと、公募が二百万株、それから無償が四百七十六万株発行しております。資本金を三億三千八百万円ふやして、いわゆる一部上場の基準の十億円に乗せたわけですね。このときは借り入れ金が、先ほども申し上げましたが、一年前の約一・七倍に達して危険信号が出ていたはずなんですよ。先ほど申し上げた日興証券、野村証券、大和証券、山一証券、この四社の時価発行のルールの申し合わせ、これの二番目のほうに、「時価発行増資の引受けにあたって」「使途を確認し、増資の緊急性、重要性を勘案して発行を調整」「確認の方法」としていろいろありますが、その中に「資金繰状況について会社に提出を求める」こういうルールが四証券できめられておったはずですが、この資金繰り、お調べになったのかどうか、これをひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  247. 谷村裕

    ○谷村参考人 あらかじめお断わり申し上げておきますが、東京証券取引所は、流通市場の関係を公正かつ妥当な価格形成ということあるいは取引ということを任としてやっておりますが、発行市場すなわち、いま庄司委員が御指摘になりましたようなことについて、直接には関係いたしておりません。さような意味におきまして、たとえば時価発行が十二月時点でどういう内容のものとして行なわれたかということ、そのこと自身について、たとえば幹事会社であるところのアンダーライターが、どのように内容を見、そしてそれを金額も時期も適当と認め、そしてまた一般の、おっしゃったような意味での投資家の方々にそれを広く公募していただくという、それを扱ったかということについて、直接に私どもは存じておりません。  ただ、私どもが二つのことを申し上げることができると思います。  第一は、時価発行については、先ほど庄司委員も御指摘になりましたように、目先だけで働くというようなことでなしに、大衆投資家のことも考え、会社の内容のことも考えて慎重にやるべきであるということを、常々東証としては申しております。そのことは、ちょうど昨年の三月でございましたか、衆議院の大蔵委員会におきまして前理事長でありました森永氏が、冒頭にこの問題についての見解を述べておりますところに尽きております。その点については、いま庄司委員が御指摘になった点を十分に踏まえてやってもらいたいということを、私どもは強く要望いたしております。  それから第二に、山一でありましたか、主幹事会社と申しますか、引き受け会社が、やはり増資にあたりましては相当内容的にはよく見ていただきたい。そしてそれを投資家の方々に御紹介するときにも、そこではいわゆる商売のしかたといって、よく俗に推奨とかあるいはいろいろなことをいって投資家に勧誘をいたしますけれども、その辺についてもぜひ慎重であっていただきたい、このことも私どもとしては申し上げております。  具体的にそのときにどういう審査をやってどうであったかということは、私どもの直接関するところでないので、私の立場からはお答え申し上げることはできませんが、以上二点だけ私の立場からお答えを申し上げておきます。
  248. 庄司幸助

    ○庄司委員 あなたがおっしゃったとおり、森永理事長さんは昨年の三月九日の衆議院大蔵委員会で御発言なすっています。「時価発行を行なうにつきましては、将来の事業発展と収益力について確固たる見通しを持ち、増資後は、経営努力によって収益を増加し、株主に対し適正な配分を行ない、長期的には株主に十分に報いなければならない」「証券会社におきましても」——いまあなたおっしゃったとおり、途中略しますが、「安易に妥協をしたり協力したりすることがないように、的確厳正な選別を行ない、投資家の信頼にこたえ、証券市場の健全な発展に資することのできる正しい時価発行の定着に一段の配慮をすること」こう言っています。ですから東証の理事長さんの立場からすれば、これは国会の委員会で、委員質問に所信を問われて答えているんですね。ですから、心がまえとしては、当然山一さんなりあるいはその他の証券会社さんに対して、東証としてはこの心がまえで絶えず臨んでなければならないはずですね。ところが、今度日本熱学のような事態が発生して、オール運転資金というような事例が続々出てくるんですね。このいわゆる資金繰りについても、調べたのか何なのか全然わからないような状況なんですね。だから、森永さんがああいう発言をしたからには、私は、現在の東証の幹部もこういう精神で証券会社を指導する責任があると思うのです。その点どうなんですか。
  249. 谷村裕

    ○谷村参考人 私は、森永前理事長に交代いたしましたが、森永氏と同様の考え方を持っております。そして、もっと極端なことを言わせていただければ、森永さんに負けないどころか、もっとそれ以上に強い気持ちを持ってこの問題を考えております。  ただ、日本熱学という一つの企業が十二月時点においていかなる評価を一般的にされておったかということ、そしてそれの評価が、具体的な内容を個々に検討していった場合に、はたして当たっていたか、当っていなかったか。資金繰りがたとえ運転資金に向けられるものであっても、それは急膨張している会社が運転資金繰りをするために自己資本をふやしていくという方法をとっていくということが、はたして経営上堅実であったかなかったかという、その個別の具体的な判断の問題になると思います。その具体的な判断に対しては私は慎重であってほしいということを念じますけれども、そのときははたして慎重を欠いていたか、いなかったかという問題は、これはあとになって、御指摘のように確かに見そこなったという面もあるいはあるかもしれないと思いますけれども、私は弁護するつもりはございませんけれども、当時の当事者としてはでき得る限りの最善を尽くしていただいたものと思っております。しかし、それだけではまだ不十分、今後ともそういうことの間違いのないようにぜひやっていただきたいと思います。  それからまた、具体的に日本熱学という会社の、たとえば技術力、設備力、そしてまた開発力、そういったものを総合して考えましたときに、なるほど当面資金繰りの破綻から銀行取引停止ということになり、更生会社ということになりましたけれども、またこの日本熱学という会社が今後においてどのようにこの姿を変えていくかという問題は、私はそう簡単に、もうだめになってしまったとかあるいは紙くずになってしまったとかいうふうにきめつけていいかどうか、これもまだ私どもには、実態は洗ってみなくてはわからないことであろうかと思います。  余談になりますが、東証に上場になっておりました会社で、資金繰りの破綻その他から会社更生の手続をとったものもございます。そのときは私どもは、上場廃止の手続をいたしました。しかし、その中には、再び社運を盛り返して、いろいろな方々のお世話によってまた立ち直ってきたものもあるわけでございます。その辺は、先ほども稲葉委員が御指摘になったように自由私企業体制というものの中で起こるいろいろな有為転変と申しますか、盛衰隆替と申しますか、さようなことが多少はあるかと思います。その点についてその発行会社なり東証なりが、全くがんじがらめにその会社の行動について一々つつくということも、なかなか問題であろうかと思います。しかし、いま庄司委員の御指摘になったような意味で、ほんとうにこういう点は大事な大事なポイントでございますから、これは東証だけではなくて証券界全体は、こういった問題に対する対処のしかたとして、さらにより一そうしっかり、そういった面について大衆投資家のためにつとめなければならないということを、私、こういう機会にまた思いを新たにしている次第でございます。
  250. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は、あなたの新聞紙上での発言を伺ったり、それからいま稲葉委員に対する御答弁でも、まあ一部と二部との間というのは審査は形式的だ、投資家が優劣を判断するものだ、だからリスクは投資家でやりなさいといわれんばかりの、そういうふうに解釈されんばかりの御発言をなすっているんですよ。それでは私は、証券取引法のあの第一条の目的、この趣旨を体しておられないだろうと思うのですよ。まあきめつけて申しわけありませんがね。  そういう点から、私は、森永理事長さんがあの協同飼料の場合でああいう精神を述べられたんですから、やはり日本熱学については、もう具体的にああいう精神が東証としても発揮されるべきだった、こう言っているんです。だから、その辺率直な御反省ですね、これをひとつお願いしておきます。これはいいですね。
  251. 谷村裕

    ○谷村参考人 私の申し上げ方が、何と申しますか、たいへん突っ放したような言い方であったとしたならば、私の不徳のいたすところでありまして、決してさようなつもりはございません。証券市場のよりよき発展のために、そして投資家の保護のために、私どもというものを含めまして、おっしゃるとおりの意味での投資家保護のために、いかに十分な企業内容の開示等の手あるいはそれ以外の手も通じましてやっていかなければならないかということ、これは十分に反省いたしております。  また同時に、私どもが単に、いま一部と二部は形式的で実質的には区別はないんだ、だからどうでもないんだというふうなことを言うているだけで済まされる問題ではない、これも御指摘のとおりだと思います。したがって、たとえばいま現に一部、二部というのがあるとすれば、その二部から一部に指定する際には、もう一ぺん東証としてもその指定のあり方について、いままでのままでよかったかどうか、反省して検討しようじゃないか、かように考えております。これも、いま庄司委員の御指摘になった点にこたえてわれわれが反省して、これから内部的にも検討しようとしているところでございます。たいへん御激励のことばを賜わりまして、ありがとうございました。
  252. 庄司幸助

    ○庄司委員 まあ激励か叱責かはまた別でありますが、私がここでやはり考えるのは、幹事証券会社の問題なんですよ。株の取引というのは馬券とは違うわけですから、馬券の場合は何も法律で定めたようなあっせん所があるわけでもないし、のみ屋を法律で定めてあるわけでもありませんから、相当の責任持った体制が必要だろうと思うのです。その点で幹事証券の場合、ややもすると自分たちの実績をあげるため、業績をあげるため手数料にさえなればいいのだという気持ちが動いて、シカを追う猟師山を見ずの立場になりがちだということを聞いているのです。これはまさに大番のギューちゃん的な精神ですね。そういう古い、いわゆる証券会社の体質がいまだにありとするからば、たいへんなことだと思うのですよ。今度の場合、そういう上場についての主幹事会社の山一さん——山一さんといえば、一ぺん倒産して世間を騒がせた一つの、こんなことを言って申しわけありませんが、前科者でありますから、こういう気分が今度の日本熱学の場合あったのではないか。これはやはり東証の指導が不十分であったし、また大蔵省の指導監督、監査ですか、こういうものも私は十分じゃないと思うのですよ。大蔵省当局、涼しい顔でいま聞いていらっしゃいますけれども、その辺でひとつ幹事会社の問題点、これは東証の理事長さんと証券局長、問題点がないかどうか、ひとつお答え願いたいと思います。
  253. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 証券会社が幹事会社になる、先生指摘のように手数料収入とか云々とかいうことがございまして、なりたがるというような競争、そういう傾向にあることはいなめないことでございます。私どもとしましては、そういう過当競争といいますか、そういったようなことから大衆に迷惑をかけてはいけないというようなことで、節度ある引き受けをしろとか、あるいは十分発行会社の内容を把握できるような力をつけろとかいうようなことはかねがね言っておることでございます。それで、理想に遠いかもしれませんけれども、昔に比べればずっと力もついてきておりますし、今回の場合におきましても、山一が昨年の十二月に間違いをおかしたかとうかは——たぶん私は十分なる審査をし、引き受けたものと信じておりますけれども、御指摘のような傾向が昔はあった、しかしだんだんなくなりつつあるということではないかと思います。
  254. 谷村裕

    ○谷村参考人 先ほど申し上げましたとおり証券取引所は、発行に携わる幹事会社についての監督とか指導とかいう直接の立場にはございませんけれども、証券界にある一つの大事な事業体といたしまして、いま証券局長が言われたような意味における発行を引き受ける幹事会社のあり方、行動のしかたというものについて、森永理事長が去年言われたことをさらに徹底して要望いたし、またそれについて側面的にやっていきたいと私は思っております。
  255. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうしますと証券局長、具体的に、山一が主幹事会社でこういう事態になっちゃったんですから、このことについて、四十八年十二月の増資の際に山一がとった審査の態度であるとか審査の内容、それから株主にどういうふうなすすめ方をしたのか、こういうことを山一を呼んであなたのほうでお調べになって、当委員会に発表していただけますか。
  256. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 山一の昨年の十二月の審査なり引き受けぶりといったようなものを調査するつもりではございます。ただ、その結果ここで発表するかどうかということは、ちょっと検討さしていただきたいと思います。
  257. 庄司幸助

    ○庄司委員 十二月に七百円くらいだったこの株価が三月には千五百円になったのでしょう。これは明らかに異常なことです。しかも十二月時点での借り入れ金の額は、当然調べてしかるべきなんです。前の年の一・七倍になっているのですから。資金繰りについても調べると、ちゃんとルールにも書いてある。山一も参加をした。そういう異常な状態にあるということを、もし調べもしないで大衆投資家に優良株であるという宣伝をして売り込んだのであれば、これはまさに詐欺的な行為になるんですよ。だから、大衆投資家のリスク負担は当然なんだというような考えじゃなくて、今後ともあり得ることですから、これをやはり他山の石にしてもらわなければいけない。そのために山一を呼んで調べて、その教訓を国会に報告してもらうのは当然だろうと思うんです。あなたの権限だけで御発表できないのなら、大蔵大臣、この問題どうですか。ひとつ当委員会に報告してもらいたいのです。
  258. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 山一のとった措置につきましては、調査の上、必要がありますれば御報告をいたします。
  259. 庄司幸助

    ○庄司委員 大臣、必要があればというのは、あなたのほうで必要だと考えればとお考えになられると困るのです。委員会のほうで必要だ——これは委員長、その点でひとつ理事会でもお取り計らい願いたいのですが、当委員会として要求した場合は出していただけますね。
  260. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 当委員会が要求いたしますればおこたえ申し上げます。
  261. 庄司幸助

    ○庄司委員 それからもう一つ。五月十五日から十七日にかけて連続三日間ストップ安になりましたね。この際東証理事長の谷村さんが日本熱学の社長を呼んで事情をお聞きになったと聞いておりますが、これは間違いありませんか。
  262. 谷村裕

    ○谷村参考人 私は直接聞いておりませんが、市場、そういった上場会社の内容についてその動きを担当いたしております星野常務が、その三日間にわたって——星野常務のみならず、その下におります上場部の責任の地位にある職員が、重役連を呼びまして事情聴取しておりますし、また、最後には社長からも事情を聞いております。
  263. 庄司幸助

    ○庄司委員 この際熱学の社長が金融面で不安はないとあなた方にお答えになったと聞いておりますが、それもそのとおりですか。
  264. 谷村裕

    ○谷村参考人 さような説明を私どもは聴取いたしました。
  265. 庄司幸助

    ○庄司委員 これはうそだったことは、いまになれば明確なんですね。あなた方はうそをつかれたわけです。しかもその上、牛田社長は東証で記者会見して、同じことを新聞記者の皆さんにおっしゃったようですね。だからこれは、新聞記者の皆さんもだましたわけです。これは非常に悪質だとお思いになりませんか。
  266. 谷村裕

    ○谷村参考人 私は、あるそういった上場会社の社長の言動に対していろいろの批判を加えることはできるだろうと思います。また、そのときに実際どういう状況でその社長が動いておったか、ほんとうに金策をしておって、かけ回っておった実情であったろうとは思います。その段階で、もはやうそのことを言っていたのか、うそでないつもりで一生懸命やっていたという段階であったのか、その辺になってまいりますと、それは結果論としてうそをついたことになってしまったという事実が残っていると思います。それで私どもは、そのときの社長の言明に対して信頼もできなかったのでありますが、それをその時点で直ちにうそだともきめつけかねていたという、これは事実でございます。いまとなっては、おっしゃるとおり、うそをつかれたという事実になっております。
  267. 庄司幸助

    ○庄司委員 たいへんややこしい御答弁ですが、うそをつかれた、これは明確です。  それで、私は、疑わしいからお呼びになったのだろうと思うのですが、そのお呼びになっていろいろ聞いて、不安はないと答えられてそれを了承した東証側の態度、これはやはり軽率のそしりを免れないのじゃないかと思うのですよ。疑わしいから呼んだわけでしょう。また、うわさもあっただろうし。ところが、社長のことばをそのまま信用なすって、十分な調査も裏づけもないまま、そうかということになったのでは、これは責任のある人が言っているのですが、証券会社や東証が取引さえあればもうかるのだということが頭にあるからこういうことになるのではないかとおっしゃっている方も実際あるのですよ。だから、そういう姿勢の問題も私は反省していただきたいと思うのです。  時間がありませんから先へ進みます。そこで、今度はタイムリーディスクロージャーの問題に移りたいと思うのですよ。  私も、有価証券報告書とか、あるいは臨時報告書、これをときどき拝見しておりますが、これではやはり、資金繰りの問題とかもっと内部の立ち入った問題これはちょっとわからないわけです。その点でタイムリーディスクロージャーの問題、これはやはり早急に具体化して、いままでのような協同飼料や今度の日本熱学のような教訓に照らしても急ぐ必要が私はあると思うのですね。具体的にこういう経験を踏まえたものをつくる、その辺どういうふうになっているのか。これはひとつ谷村さんからお願いします。
  268. 谷村裕

    ○谷村参考人 従来とも東証といたしましては、会社の営業の状況あるいはその他株価に対して影響を与えるような重大な問題がありますときには、事情を聴取する。そしてそれが一般投資家に広く知らせておいたほうがいいものについては、即時に開示してもらうということをやっておりました。私どもがいま考えておりますことも、そういうことを一定の条件に当てはまったときだけというような限定でなしに、さらに企業として一般投資家のためにタイムリーにそういうものをやってもらいたいということを再び三たび呼びかけようと思って、この間までちょうど、その手紙を出すといいますか、呼びかける文案を用意しておった、そういう段階でございます。具体的にどういうときにどうだというふうにいろいろケース、ケースはございましょうけれども、いま庄司委員のおっしゃったような心がまえはさらにこれから強めてまいりたいと思っております。
  269. 庄司幸助

    ○庄司委員 何かその点で大蔵省から具体的な御指示か何かありましたか。
  270. 谷村裕

    ○谷村参考人 大蔵省のほうからは、やはりそういうことをしっかりやるように、東証が音頭をとって従来にも増してよくやるようにせよということを、私が着任して早々に言ってまいりましたので、それから、どういう形でどういう呼びかけ方をするかといったような内部的な検討を加えておりました。私どもとしては、近く、そういうことについての東証からとしての呼びかけを、もう一度はっきりとするつもりでおります。
  271. 庄司幸助

    ○庄司委員 それはあれでしょう、四十九年の一月二十四日の証券局、この通達といいますか、何という文書かわかりませんが、そのことじゃないですか。
  272. 谷村裕

    ○谷村参考人 一月二十四日と申しますとちょうど私が就任した日でございますが、庄司先生たいへん詳しいようですが、ちょっと私、通達とかなんとかいう形ではなしに、担当の方々、大蔵省の方々が、私どもの事務当局やさっき申し上げました担当の常務にいろいろと連絡をして、そういう方法等について打ち合わせをしておった段階であったように私は記憶いたします。何かその通達云々が、ちょっと私にはわかりません。
  273. 庄司幸助

    ○庄司委員 証券局長どうですか。
  274. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 一月二十四日付の通達というのは記憶にございません。
  275. 庄司幸助

    ○庄司委員 こういう文書があるのですね。    取引書におけるタイムリーディスクロージャーの取扱いについて            四九・一・二四証券局  1 取引所は、当面の措置として、上場会社に関する情報のタイムリーディスクロージャーについて、次の内容を含む内部取扱基準を設けること。   (1) 上場有価証券管理基準第三条に規定する「売買取引管理上必要と認めて照会を行なう」の場合の具体的基準を定めること。   (2) 同第二条、第三条または第五条に基づく上場会社からの通告または報告の内容について、取引所が必要と認める場合には当該上場会社に公表を求めることとし、公表を求める場合の基準及び公表の方法について定めること。   (3) 公表を求めた場合に、要すれば公表の内容が一般投資家に周知されるまでの間売買取引の停止を行うこと。  2 立会場内外における上場会社に関する情報の収集、管理(市場部と上場部の連絡等)の体制を整備すること。 云々と、こうあるのですね。これは大蔵省の用せんに書いてありますよ。これを出されたことないのですか、局長
  276. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 通達というような形で出したことはございません。それは、いま担当の者に聞いてみましたら、そういうことを担当しておる課長補佐が一応メモとしてつくったものであるということでございます。
  277. 庄司幸助

    ○庄司委員 それは、大蔵省当局のオーソライズされたものだというものですね。
  278. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 私は見ておりません。
  279. 庄司幸助

    ○庄司委員 こういうものが課長補佐さんか何かから出される、それを局長知らないでこういうものを出すのですか。
  280. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 それは、タイムリーディスクロージャーというものをどういうふうにつくるかということをお互いに研究するときのたたき台として出ておると思います。
  281. 庄司幸助

    ○庄司委員 たたき台か何かわかりませんけれども、こういうものがおたくから出されて、たとえば「公表を求めた場合に、要すれば公表の内容が一般投資家に周知されるまでの間売買取引の停止を行なう」こういうことを検討しなさい、それから具体的基準をきめなさい。照会する場合に、こういうことが一月二十四日に、一係官のあれにしろ、東証当局に提起されて、一月二十四日から検討されていれば、もっと事態はやはり変わったんじゃないかと思うのです。その検討が、何か小田原評定のように堂々めぐりしていたのか、あるいは全然意に介さないでやられていなかったのか、これは東証さんどうですか、その辺。
  282. 谷村裕

    ○谷村参考人 大事なことでございますから、当然そういったことについて事務当局レベルで相互に検討を重ね、どうだこういう案では、こういう点はなかなか基準を一律につくることはむずかしいかもしれません、いや、そうするとどうだ、こうだという議論は重ねられていたことを、私は承知いたしております。そして私は、これは当然大事なことでありますので、証券局長とも、このいまおっしゃったメモについてという意味ではなくて、タイムリーディスクロージャーのあり方、やらせ方、発表のさせ方、そしてそれが場合によっては売買停止という、いままではあまりなかったことでございますが、そういうことも伴う問題であるとして、私も十分承知しておりました。そして、まさにそういったことについて私どもとしての呼びかけをしようと思っていたやさきでございます。
  283. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは証券局長、大事な問題なんです。いま谷村さんもおっしゃったとおりなんですね。しかも日本熱学の事例に照らせばまさに大事な問題なんです。これを早急に、いつごろまでに具体化してもらえるのか。これは非常に今後の株式市場のあり方にとって大事な問題だと思うので、めどを早くつけてもらいたいのです。その辺のめどはいつになりますか。また出てくるかもしれませんよ、こういう事態は。
  284. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 タイムリーディスクロージャーが非常に大事なことであるということは私も重々承知しておりますし、そのように考えております。したがいまして、いま先生がお読みになったこまかい内容は私は承知してなかったのでございますけれども、タイムリーディスクロージャーを早急にやったほうがいいだろう、やりなさいということは、理事長にも取引所の方にも常々申しておりました。この間、ほぼこんなことでいいかなという、まとまった案を一度見ました。私、それはやや不十分な点があるのではないかというので、もう少し詰めてみたらどうかというので差し戻したことは記憶にございます。したがって、もう事務当局の間での検討はほぼ済んでおると思いますので、遠からず取引所のほうから上場会社のほうに、依頼状といいますか、要請が行なわれるものだと思っております。
  285. 谷村裕

    ○谷村参考人 いま証券局長の言われたとおりでございます。
  286. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは大臣にお伺いしたいんですが、実はタイムリーディスクロージャーですね、これは早急に具体化すると、それは一つの前進なんです。しかし、それでも私は壁が一つ残るんじゃないかと思うのです。というのは、銀行の場合ですと、大衆の預金を、金を貸す立場ですから、相当厳重に調べるわけです。場合によっては、特に中小企業に対しては過酷なほど調べるわけですが、しかし、証券取引所やあるいは幹事会社あたり、実際上場会社に行ってこういうものをひとつ開示しなさいといっても、力関係でなかなか開示されないケースがやっぱりあるんじゃないかと思うのですね。こういう壁があると私は思うのです。その辺で、やはり大衆投資家を保護するために何らかの法的なバックアップが必要じゃないかと私は思うのですが、その辺、大臣どうお考えになりますか。
  287. 谷村裕

    ○谷村参考人 大臣にお答えいただきます前に、まず私が先に補足して、逆になりますが申し上げておきますけれども、法的な基礎というふうにおっしゃるのも一つの考え方であるかと思います。現在の状況におきましては、私どもは上場会社との間に一つの約束をいたしておりまして、そうして東証としては、君のところの株式を東証に上場して広く一般投資家に投資の対象としていただくからには、ひとつこれこれこういうルールを守ってもらいたい、あるいは約束を守ってもらいたいというところに、その適時適切にひとつ開示をやってもらうという条項が一つ入るという形において、一つの相手方に対する拘束という形になっております。もしいまおっしゃった意味が、さらに立ち入り検査とか臨検検査とかいう、そういう構限を含む問題であるとしますれば、これはいまの私どもの権限としてそこまではいっていないということを申し上げておきます。
  288. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 谷村理事長から申し上げたことで御理解願ったと思います。
  289. 庄司幸助

    ○庄司委員 どうも大臣、たよりないですね。こういう問題になると。田中内閣きっての財政通といわれる大臣が、どうも谷村理事長の言われるとおりなんですね。もう谷村理事長も、時間ですからお帰りになってけっこうです。どうもすみません。  それでもう一つ、今度はいわゆる関連企業との関係とか社員との関係の問題でお聞きしたいんですが、何か、従業員の社内預金が八千万円ほどあった。これは牛田社長の話によると、全部使っちゃったということなんですね。それから給料も五月分については月賦払いになるかどうかわからないなどと、こういっているわけですが、こういう従業員の債権の保全あるいは基本的な問題である賃金ですね、この保全のために、大蔵当局どのような措置をとられるか、あるいは通産もいらしていると思いますが、その辺ひとつお伺いしたいのです。
  290. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 日本熱学の資産あるいは負債の全貌につきましては、まだ詳細はわかりません。これから管財人の選定というようなことで、漸次その辺は把握し得ることと思います。もう御承知のことと思いますが、更生法の適用を受けました場合には、これは優先債権として給料あるいは社内預金が取り扱いが受けられるものと考えております。いましばらくその実態について推移を見てみたい、かように考えております。
  291. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで下請あるいは関連倒産事業、これが大蔵省に聞くと三百くらいじゃないかという話もあってみたり、あるいは新聞の情報だと千社以上だ、こういう話もある。この辺、正確な数字をおわかりになりませんか。
  292. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 いずれにしても最終的な数字というのは現段階ではつかみ得ないわけでございます。ただ、私どもが正確なものとして考えておりまして、たとえば債務総額四百五十億、あるいは下請業者何百社と申しておりますのは、こういう事態になります直前において金融機関の側において把握した十二月末の数字でございます。したがいまして、十二月から今回の事件に至るまでの間に急膨張いたしておりますので、おそらくそれはかなりふえておるだろうということで説明した数字でございます。  なお、詳しい数字につきましては、さらに中小企業庁がより最近時点において把握しておられるということも聞いておりますので、中小企業庁からお答えいただいたほうが適当かと思います。
  293. 庄司幸助

    ○庄司委員 中小企業庁、ひとつ……。
  294. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 通産省と中小企業庁では、日本熱学、それからその子会社でございますエアロマスターの倒産につきまして、主として関連中小企業者の連鎖倒産防止という観点から債務関係実情調査をいたしてまいりましたが、けさ詳細な債権者名簿を大阪、東京通産局から送ってまいりましたが、それによりますと、中小企業関係の債権は、日本熱学の場合に件数で申しまして千四百七十六件、エアロマスターが二百五十一件、合計千七百二十七件でございます。
  295. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで、その負債総額何ぼになりますか、それぞれ。
  296. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 日本熱学が三百二十二億円でございまして、このうち中小企業関係が百三十六億でございます。それからエアロマスターが百五十八億円でございまして、このうち中小企業関係が四十五億円、合計いたしますと四百八十億で、うち中小企業が百八十一億という額になっております。それで、新聞に報道されました額が六百三十億でございましたので、これより小さくなっておりますけれども、これは同族関係の債権等がまだ未確認でございますので、そういうものが抜けておりますので、新聞等に報道されましたものよりやや小さくなっております。  なお、さらに調査を続行中でございます。
  297. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間が参りましたので、最後にお伺いしますが、これらの中小企業の下請関連に対するいろいろな措置は講ずる、これを伺いましたので、再びはやりません、私が一つ心配な点があるのです。それはヨシタケ商事の事例も出ましたけれども、通産大臣の告示、そうして市町村長の認可ですか認定ですか、そういうものがないとだめだ、そういうことで時間がかかっておる間にいろいろなうわさがうわさを呼んで、やはり不測の事態が中小企業に出てくる可能性があると思うのです。不渡りしなくていいものも不渡りのうき目にあう。その辺の経過的な弾力措置、これをどのようにおとりになるのか、これはひとつ銀行局長でございますか、あとは中小企業庁関係あたりからもお答え願いたいと思います。
  298. 吉川佐吉

    ○吉川政府委員 倒産関連保証につきましては、すでに関係の保証協会に二十二日、きのう連絡をしてございます。正式には二十五日の告示で両社を倒産会社に指定いたします。それによって倒産関連保証が中小企業者は受けられるわけでございますが、ただいまなるべく迅速にやれというお話、それにつきましては、中小企業庁としても強力に指導をしてまいりたい、こう存じております。
  299. 庄司幸助

    ○庄司委員 最後に大臣、いままでのやりとりいろいろお聞きになっただろうと思いますが、この大衆投資家の保護の問題ですね、やはり現在の制度やあるいは現在の証券会社の考え方あるいはルール、こういうものの中に相当の欠陥があることが明確になったと思うのです。その点でひとつ大臣として、今後二度とこういう事態を起こさないための御所信をお伺いしたいわけです。
  300. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今回の事件はまことに不幸なことでありましたが、こういうことを再びしないということを期しまして、この事件をよく調査し、そうして制度的にあるいは運用上足らざるところあれば直す、他山の石となす、こういう姿勢で臨みたい、かように考えております。
  301. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  302. 臼井莊一

    臼井委員長 坂井弘一君。
  303. 坂井弘一

    ○坂井委員 大臣に最初に一言伺っておきたいのでありますが、実は私は、当面する経済政策の達成目標は二つだと思うのです。一つはいわゆる物価の安定化、いま一つは不況転化への歯どめ、この二つにつきましては、これは同時に等重視して解決しなければならない問題ではないか。しかしながら、昨年末来の石油ショックを機にしまして、どうも政策的な対応がおくれてしまった。オーバーキルもあえておそれとしないで、とにもかくにも不況はさておいても物価安定、これに集中せざるを得なかったというのが実情、実態ではなかっただろうか。そうした中で福田大臣も、とにもかくにも物価安定は至上課題であるし、かつ、きわめて短期決戦でもって物価の安定を期するんだという言明をされた。しかしながら、先ほどから議論がありますように、いわゆるコスト引き上げ要因、対するに総需要抑制、これをもって相殺しようというようなことに相なってまいりますと、ますますいわゆる不況の波というものをもろにかぶるのは中小零細企業であるというようなことで、現実にたいへん深刻な事態を迎えております。  そこで、その問題はきょう議論する時間が実はございませんので、いわゆる物価安定ということにつきまして、先ほど大臣の御答弁を伺っておりますと、いわゆる国際要因、これは無視できない、確かにそうでしょう。したがって、物価安定といいましても、国際的な物価水準、そこまで持っていきたい、こういうようなお答えがあったようであります。かつては、昨年の十一月以前の物価水準、そこまで戻したい、それがいわゆる物価安定の具体的な価格の水準である、こういうことで来られたと思うのですが、いま御答弁伺っておりますと、国民に具体的に納得のいく、非常にわかりやすい、物価安定というのは一体いつの時点で物価をこれくらいまで下げるのだというお答えがなかなか出ない。  そこで、率直に伺うわけでありますけれども、いま申しました私の考え方、そうした中から、大臣はこの物価の安定ということにつきまして、再度ここでひとつ言明いただきたいのでありますが、いつ、どの水準まで下げる、それが物価安定だ、こうした、きわめて国民にわかりやすい御答弁をひとつちょうだいしたい。
  304. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、物価は大体一つの山を越えたと思うのです。つまり、もう狂乱という状態は大体克服した、こういうふうに思っているのです。あとまあ、コスト要因に対してどういうふうに対応するか、こういう問題です。そういうので、安定ということばのとり方でありますが、狂乱鎮圧が安定だというんなら、それは大体もう安定の方向だともいえるわけでございますが、私はしかし、コスト要因というのは幾つかありますので、これはなかなか容易ならざる問題だ、こういうふうに考えております。先ほども申し上げたとおり、これは総需要抑制政策を取り続ける、そこで物価引き下げ要因というものを強めていく、同時に引き上げ要因がありますから、それを相殺する、こういうことになるわけであります。  そこで、いま坂井さんは、物価を下げる下げると言うが、とにかく日本経済の大動脈である石油の輸入価格が四倍になった、そういう要素を考えると、これはとても引き下げるなんということはなかなかむずかしいです。私は、コスト要因がいろいろある、そのコスト要因を総需要抑制政策でどこまで殺せるか、その辺の問題だろう、こういうふうに思うわけでありまして、私が一番関心を持っておりますのは、そういう物価引き下げ要因に対処し得たその後が大事なんだ、その後の物価がその水準から、国際価格という問題はありまするけれども、その目標を越えましてそう多く動かない、こういう状態になればまずまず安定だ、そういうふうに考えております。
  305. 坂井弘一

    ○坂井委員 大臣、私はなおコスト要因が進行するだろうと思うのですね。とりわけ、公共料金の相次ぐ値上げというものが控えておりますし、そういう中でおそらく、物価安定といいましても、高値安定どころか、なおじりじりと物価がつり上げられていくのではないかという点を実は非常におそれるわけであります。したがって、きょう大臣のきわめて基本的な、しかしながら、私に言わしめれば考え方が非常にあと向きだと思いますが、基本的にわかりましたから、いずれ場所を改めましてこの問題については議論をいたしたいと思います。よろしくお願いいたしたいと思います。  先ほど来、日本熱学の倒産にからみましてずいぶん議論がされてまいりました。夕刊の報ずるところによりますると、けさ、ある株主が日本熱学を相手どりまして、株価操作、詐欺である、粉飾決算で資金集めをしたではないかというわけで、大阪府警捜査二課に告発をしたということが報ぜられております。伝え聞くところによりますと、大阪府警ではすでに相当以前から、日本熱学にきわめて問題ありといたしまして内偵をしてきたようであります。いよいよ、けさほどの告発を受けまして本格的な捜査に乗り出そうということであるようでございますが、大蔵省にお聞きいたしますが、警察からは、告発を受けたということにつきまして大蔵省は連絡を受けていらっしゃいますか。なおまた、そうでありとするならば、これは警察に対して全面的な協力体制の中でこの事態を早急に解決しなければならぬ。少なくとも、先ほど議論の中にずいぶん出てまいりました大衆投資家、この利益を何としても保護しなければなりませんし、同時にまた、多くの債権者、とりわけ、この関係いたしますところの中小企業者、こうした方々に対するきわめて前向きの手厚い援護ということは早急にやらなければならぬ、こう思いますので、いまの告発を受けた警察からの連絡ありやいなや、なお、ありとするならば、この問題に対処する大蔵省の決意のほどを一言お聞きしておきたいと思います。
  306. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 警察から、告発を受けたというような連絡はまだ聞いておりません。  それから、もしそういう事実になりまして警察当局が調査をし、いろいろなことをやる場合に、私のほうに協力依頼があれば全面的に協力するつもりでございます。
  307. 坂井弘一

    ○坂井委員 告発を府警が受けたということは事実のようであります。協力依頼があれば当然のことだと思いますが、なおやはり大蔵省は大蔵省の立場で積極的に協力する姿勢をもって臨んでいただきたいということを要請いたしておきたいと思います。  さて、私のきょうの本題でありますところのアラスカパルプ株式会社に対する日本輸出入銀行の融資につきましてお伺いしたいわけでありますが、まず、この日本輸出入銀行の海外投資に関します貸し付けにつきましては、これは当然のことながら、きわめて債務の返済の確実性の高いもの、そうしたところに輸銀は今日まで融資をしてきたようであります。したがって、その回収も非常に確実性が高い。これは当然のことでしょう。しかしながら、一部におきましてこの資金の貸し付けが、きわめて遺憾なことながら多額の焦げつきを来たしたという事態が実はございますので、そのことについてお伺いしたいわけであります。  アラスカパルプ株式会社、問題の会社でありますが、この会社は一体どのような経緯で設立された会社なのか、まずその設立の経緯についてお伺いをいたしたいと思います。
  308. 澄田智

    ○澄田説明員 私からお答え申し上げます。  アラスカパルプ株式会社は、終戦後わが国の森林資源が、戦争中あるいは戦後を通じまして非常に過伐になったというようなこと、あるいは外地の資源を喪失したというような事情によりまして、森林資源に対して将来の見通しがいろいろな点で非常にむずかしい、こういう事態がございまして、それで、当時政府と民間と協力いたしましてアメリカ合衆国政府交渉をいたしまして、アメリカ州の針葉樹の資源の伐採権、これをもらうように働きかけました。それが同時にアラスカの地域開発にもなる、こういうような見地からアメリカ政府の積極的な協力を得まして伐採権を確保できました。ただし、この森林資源は、アメリカ側は、これを木材のまま日本へ持っていくのでなくて、現地において化繊用のパルプ並びに製材品としてつくって、そして日本にこれを輸出するように、こういうのが条件になっておりました。昭和二十八年にこのような状況を背景にこの事業に着手したわけでございます。  アラスカパルプ株式会社は、アラスカに子会社を三つ持ちまして、そしてパルプ工場を一工場、それから製材工場を二工場持って、その払い下げを受ける国有林、その地区並びにその他の地区から原木を伐採して、そうしてパルプを製造する、並びに製材を行なう、こういう事業を営んだわけでございます。  本事業につきましてはこういう背景でございましたので、この事業に対して日本輸出入銀行から融資をするにあたりまして、三十一年三月に閣議了解を、政府においてはそういう手続をとられまして、それで「アラスカに於けるパルプ事業の推進について」というようなことで、その中におきまして、「この事業は日米両国にとって、相互の利益となるのみならず、日米経済協力の具体的なあらわれでもある」、そういうようなこととして、今後アラスカにおけるパルプ事業の推進に政府努力をする、こういう了解があったわけでございます。  ちなみにこの事業は、日本の戦後における本格的な海外投資事業の第一号ということになったわけでございます。ところが、その後、針葉樹のみならず広葉樹についても、これを活用して化繊用のパルプにすることができるというような技術開発が行なわれ、また合繊が非常に発達をして化繊の需要がそれほど伸びないというようなこともございまして、市況がずっと停滞をしておりました。それに加えまして、現地におきます労務費が高騰をするというような、そういう事情もありまして経営が非常に苦しくなってまいりました。その間、再度にわたってこれの業績の立て直しのための努力をやってまいったわけでございます。たとえば増資を行ないまして、三十五億から七十億円でございますが、資本金の増資を行ないました。さらにその増資を半額減資をして、さらに再び七十億に増資をする、こういうような措置をとったりいたしてまいりましたが、たまたま四十七年になりましてアラスカ州の公害規制の基準が非常にきびしくなりまして、そして公害防止の設備を新しくやらなければならない、もしこれをやらない場合には操業を三分の二に落とさなければならない、こういうようなことになりまして、それを契機といたしまして、もしこの際に債務につきまして特段の措置をとるということがないといたしますと、会社の経営は全く行き詰まる状態である、こういうふうなことになりましたために、政府といろいろ協議をいたしまして、四十七年の九月に一連の元本及び利払いの繰り延べ措置をとった次第でございました。  その後、森林の木材の価格が四十八年から上昇をしてまいりました。さらには、最近に至りましてパルプの価格も非常に上昇をしてくるというようなことで、ここへきて経営が初めて、実質的には初めてと申し上げていいわけでありますが、黒字になる、こういうような事態になりました。一部繰り上げ償還の措置をとっておるわけでございます。このような状態が続きますならば、今後、当社の再建、これに伴ってすでにとりました繰り上げ償還というような措置をさらに今後も続けていくようなめども立ってくる、かように存じている次第でございます。
  309. 坂井弘一

    ○坂井委員 御説明がございましたが、このアラスカパルプ株式会社につきましては、アメリカのアラスカ州における国有林、これの払い下げをまず受けるということでもって閣議了解までなさっていらっしゃるようでありますね。簡単に、閣議了解は一体いつで、どんな内容であったか御説明いただきたいと思います。
  310. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 昭和三十一年二月十日付の閣議了解でございます。「アラスカに於けるパルプ事業の推進について」という表題でございまして、ちょっと簡単な文章でございますので読み上げますが、「今後の化学繊維部門におけるパルプ需要は、ますます増大するものと思われるが、わが国の森林資源の実情からすれば、国内パルプにその多くを期待することは困難である。幸い、数年前よりアラスカの産業開発とわが国に対するパルプ資源の確保を目的として、アラスカにおけるパルプ事業が計画されていたところ、このたび、米国政府の配慮により国有林の払下が決定した。この事業は日米両国にとって、相互の利益となるのみならず、日米経済協力の具体的なあらわれでもあるので、両国にとり喜ばしいことである。このため、政府は、今後アラスカにおけるパルプ事業の推進に努めることとする。」  以上でございます。
  311. 坂井弘一

    ○坂井委員 この閣議了解に基づきまして日本輸出入銀行法、これを改正をした。つまり海外投資の融資を含める。直接の動機と申しますか、輸出入銀行法が改正される、その根拠になった非常に大きな一つがこの閣議了解に基づいた、こう解しているわけでございますが、それでよろしゅうございましょうか。
  312. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 これの案件が直接の動機というわけではございません。むしろその当時の実情から、三十年、要するに経済の復興再建の時代を脱していよいよ成長という時代に入った、その時代の要請からというように理解しております。
  313. 坂井弘一

    ○坂井委員 率直にお答えをいただきたいと思いますが、重ねてくどいようでございますが、つまり改正の一つの理由となったと解して間違いないと思いますが、いかがでしょうか。
  314. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 確かに当時こういう案件が必要であった背景がございましたわけでございますから、したがいまして、そういうような背景を含んで輸銀法の改正が行なわれたということであろうかと考えております。
  315. 坂井弘一

    ○坂井委員 それではお答えいただきたいと思いますが、このアラスカパルプ株式会社に対する貸し付け額、これをひとつ年月別に御説明いただきたいと思います。
  316. 澄田智

    ○澄田説明員 アラスカパルプ株式会社に対する日本輸出入銀行からの貸し出しでございますが、三十二年の七月、このときに八十七億円の貸し出しを行なっております。さらに三十四年の七月におきまして三十一億六千八百万円の貸し出しを行なっている。第三回目の貸し出しといたしまして昭和四十二年三月、十四億四千万円の貸し出しを行なっている、かようになっております。
  317. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうしますと、貸し付けの総額は百三十二億七千六百万円でございますか。
  318. 澄田智

    ○澄田説明員 貸し付け総額は百三十三億八百万円、かようになっております。
  319. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。百三十三億八百万円、これが総額でございます。返済された元本及び利息、これはいつ、幾ら償還されておりますか。
  320. 澄田智

    ○澄田説明員 元本の回収でございますが、昭和四十四年の三月に三千二百万、四十九年三月、十一億九千万、したがいまして、これを合計いたしました十二億二千二百万というのが元本の回収額でございます。それから利息の入金でございますが、これはこの間ずっとにわたりまして四十四億五百万円の利息の収入の入金がございます。
  321. 坂井弘一

    ○坂井委員 そういたしますと、貸し付け総額が百三十三億八百万に対しまして、元本で返ったのが三千二百万と十一億九千万、合わせまして十二億二千二百万。利子は一銭も入っていないということでしょうか。
  322. 澄田智

    ○澄田説明員 利息が、これはこの間にわたりまして合計して、私先ほど御答弁申し上げましたが、四十四億五百万円利息の入金がございます。利息を払ってもらっております。
  323. 坂井弘一

    ○坂井委員 利率は年利で何%でしょうか。
  324. 澄田智

    ○澄田説明員 年四・五%でございます。
  325. 坂井弘一

    ○坂井委員 もう一度元本に戻りますが、そういたしますと、百三十三億八百万から十二億二千二百万円償還されたといたしますと、貸し付け残高は百二十億八千六百万円、こういうことでございましょうか。
  326. 澄田智

    ○澄田説明員 そのとおりでございます。ただ、端数をちょっと私先ほど省略して申し上げましたので、端数の分を加えますと、現在の残高は百二十億八千五百七十万ということでございます。
  327. 坂井弘一

    ○坂井委員 これはほとんど焦げついてしまったようなことでございますが、回収がこうして焦げついたという主たる理由というものは何でしょう。
  328. 澄田智

    ○澄田説明員 先ほどちょっと申し上げましたが、その主たる理由と申しますと、まず当時化繊用パルプが非常に需要されておった、そういう環境で始まったわけでございますが、化繊用のパルプの原料としまして、技術革新によりましてこのアラスカの場合のような針葉樹だけでなくて広葉樹が利用可能となりまして、そのため針葉樹資源の利用価値がそれだけ相対的に低下をしたというのがまず一つございます。  それからさらに、わが国の繊維産業におきましても逐次化繊から合繊への転換が進められまして、繊維産業全体としては非常に伸びたのでございますが、化繊用パルプに対する需要というのがほぼ横ばいに推移したわけでございます。こういうような事情から、化繊用パルプの販売価格、これは国際価格によって日本へ販売をしておった、こういう形をとっておりますが、これが長期間にわたりましてきわめて低迷をいたしまして、むしろ三十年の初めから三十年代にかけてはずっと下がってきておったわけでございます。その間種々の合理化対策も会社としてはやったわけでございますが、この間にアメリカにおける労賃の上昇というものが相当ございまして、これを吸収し切れない、こういう状態になってきておったわけでございます。その間増産をすることによるコストダウンをはかりましたし、先ほどちょっと申しましたが、倍額増資もいたしまして自己資本を充実する。さらには、一度減資をいたしまして、そうしてもとの金額で増資をする、そういう措置をとって負担の軽減につとめたわけでございます。  その後、さらに四十年代に入りましてからは木材のほうも非常に不況になる、そうしてさらに労賃の上昇のほうが続く、こういうことで非常に損益の状態が悪い状態、ずっと赤字を続けるという状態で四十七年までまいったわけでございます。たまたま四十七年に入りますと円の切り上げがございました。それによって、ドル建てで日本に輸出をしておりましたために、それだけ割安になってまいりまして、そういうコスト要因からいって価格の競争力が非常に強くなってきた。それからパルプの市況が上向いてまいりました。さらに、四十七年の秋以来木材が非常に高騰をしてきた、こういうような状態がにわかに最近になって出てきた、こういうことでございますが、それまで、四十七年までのところはずっと市況が非常に低迷して、赤字を累積してきておった、こういうのが、今日に至ってそうして債務の繰り延べを必要とする、そういうふうに至った事情でございます。
  329. 坂井弘一

    ○坂井委員 いずれにいたしましてもこの貸し付けは失敗した、つまり、多額の百三十三億になんなんとする輸銀の資金がこげついたということを私は申し上げているわけであります。返済の期限はいつだったでしょう。
  330. 澄田智

    ○澄田説明員 当初の期限は四十九年の十二月末でございました。
  331. 坂井弘一

    ○坂井委員 冒頭申し上げましたように、輸銀の融資につきましては、債務が確実に履行される、非常に確実性の高いところに融資をするのがたてまえのようであります。一方におきます経済協力基金、これは前にも東カリマンタンに対する融資案件、このことで幾らか議論をしたわけでありますが、パイオニア的な色彩がかなりあって、基金の金の回収についてはそうした性格上かなりむずかしい面もあったようであります。対するに輸銀の金がこうしてこげつく。本年末までに返済されなければならぬものが大半こげついてしまった。利息の返済にいたしましても四十四億五百万、長い期間でありますので相当な多額にのぼっております。  輸銀の融資案件の中でこのような事例というものはほかにございますか。
  332. 澄田智

    ○澄田説明員 このような形で債務の元本の返済の繰り延べを行なう、そういう例はほかにはございません。
  333. 坂井弘一

    ○坂井委員 そこで、輸銀のほうでは四十七年の九月でございましたか、貸し付け条件の変更を行なっているようでございますが、その変更の内容について御説明をいただきたいと思います。
  334. 澄田智

    ○澄田説明員 当時の貸し付け金の元本は百三十二億七千六百万でございましたが、これと、これに付帯して今後発生する利息につきまして昭和五十二年まで五年間を据え置きといたしました後、十八年間にまず元本を優先弁済させる、次いでその利息を返済させるということで、昭和五十二年まで据え置き、自来十八年間繰り延べということにいたした次第でございます。  なお、その時点におきまして支払い期日が到来済みで未収となっております利息が当時三十一億二千四百万円ございました。これにつきましては、いま申し上げました元利金の弁済が終了した後にこれを一括または分割して支払わせる、こういうようなことになっております。  なお、輸銀の融資は協調融資という形をとりまして、ほかに民間銀行、興業銀行と長期信用銀行でございますが、この両銀行が一緒に融資をしておりまして、元本が二十四億三千百万、それから未収となっている利息が十一億一千二百万となっておりますが、これらも輸出入銀行と同様な方法で元本及び利子の繰り延べ、こういうことをいたした次第でございます。
  335. 坂井弘一

    ○坂井委員 そういたしますと、この返済につきましては二つであったかと思いますが、まず一つ目の元本、輸銀分約百三十三億、これにつきましては、今後発生する利息につきましても昭和五十二年九月から十八年間というわけでありますから昭和七十年まで、その間に元本を優先して分割弁済せしめる。いま承っておりますと、元本優先でありますから、利息についてはそのあとということになろうかと思いますが、この間の利息はどれぐらいになりますか。同時に、利息は七十年以後、こういうことになるのでしょうか。あるいは七十年までに元利とも弁済させるということになるんでしょうか。
  336. 澄田智

    ○澄田説明員 四十七年九月の時点におきまして約百三十三億の未払いの元本につきましては、これを五十二年まで据え置きまして、それから以降元本を優先して先に分割弁済する、この期間が十二年間でございます。そうしてそのあと六年間でこの間に発生する利息につきまして弁済させる。この元利両方の弁済が七十年の九月に終了する。こういうふうな方法で返済させるというふうにいたしておるわけであります。  なお、先ほど申しました四十七年九月時点においてすでに期間が経過をしておって未払いになっておりますその利息でございますが、この分は七十年以降において一括弁済もしくはその時点において協議をして返済せしめる、こういうことになっております。
  337. 坂井弘一

    ○坂井委員 利息が幾らぐらいになるんでしょう。計算はされていらっしゃいますか。
  338. 澄田智

    ○澄田説明員 元本繰り延べ期間中に発生いたします利息は、合計いたしまして六十三億ということに相なります。
  339. 坂井弘一

    ○坂井委員 六十三億、たいへんな額でございますね。いずれにいたしましても、元本百三十三億とこの六十三億を合わせまして百九十六億でございますか、これが昭和七十年までに分割弁済される、こういうことになるかと思います。  二つ目の、すでに経過しておりますところのいわゆる未収利息でございますが、輸銀分が約三十一億ございますね。これが七十年以後の弁済ということになると思うのですが、孫利子はつかないのですか。
  340. 澄田智

    ○澄田説明員 これにつきましては特に孫利子というものは徴収いたしませんで、三十一億二千四百万、この分につきまして七十年の時点において返済せしめる、こういうことでございます。
  341. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは孫利子はとれないということでしょうか。それとも孫利子については特に免除いたしましょうということに相なるのでしょうか。
  342. 澄田智

    ○澄田説明員 当時の時点におきまして、これの再建につきまして種々協議をいたしたわけでございます。もちろん政府とも十分協議をいたしましたし、それから協調融資の銀行であります興業銀行及び長期信用銀行とも十分相談をいたしまして、まあこうした場合に通常とられます措置といたしましては元本及び利息の繰り延べである、あるいは未払いの利息があればそれも繰り延べる。ただ、孫利子をとるということは、再建を目的のためにこういう措置をとるわけでございますから、そういう意味で、その再建に資するため、通常こういう場合に孫利子をとるということをいたしておりませんので、今回においても孫利子をとるということはいたさない。特にアラスカパルプに対する措置において、孫利子の徴収ということに全然触れておりません。ということはとらない、こういうことになるわけでございます。
  343. 坂井弘一

    ○坂井委員 たいへん寛大な、特別な配慮をされたようでございますね一これ、たいへんな額になりますね。元本が百三十三億、それからその百三十三億に発生するところの利息が六十三億、それからすでに経過いたしております未収の利息が約三十一億、三つ合わせますと二百二十七億、これが最終は昭和七十年以降になる。本来、ことしの末に全部回収されていなければならぬはずなんですね。ずいぶん先の気の長い話になるわけですが、私はこのことについて少し調べてみました。  確かに森林資源の確保ということは国家的に非常に大事な問題であろう。少なくともこの種の事業を海外において手がけたその動機ということについては、これは理解するに私決してやぶさかではございません。非常に大事なことであろう、こう認識をいたしております。しかしながら、この種の事業の遂行にあたっていささか慎重性に欠けたところがあったのではなかろうか。これはあるいは結果論かもしれません。しかしながら、この経緯の中で私は実はそのような感じをいたすわけでございますが、それはさておきましても、はたして今後、昭和七十年、あと二十年、あるいは七十年からまだ先、これだけの長い将来にわたる時間の経緯の中では、またどのような経済変動あるいは国際的な資源問題等に対する新しい事態の発生ということ、これが絶対ないという保証はどこにもない。したがって、そうした点を先々考えてまいりますと、少なくともこの輸銀の融資につきましては、申し上げるまでもなくわれわれ国民の血税をもってまかなわれているわけでありますので、一方においては国家的な資源確保という非常に大事な問題はあることは当然のことではございますけれども、かといってこの貴重な財産というものを回収できない、焦げつかしたというようなことになりますと、これはまた一面においては国家的なたいへん大きなマイナスであります。ある意味ではむだづかいに終わってしまったということにもなりかねないというわけでありますので、どうかひとつこれからの見通しは的確に立てられる中で、具体的にやはり当然融資をされておりますところの輸出入銀行さんのほうで慎重にかつ間違いなく回収できるようなそういう態度で臨んでいただきたい。  とりわけこのアラスカパルプの会社構成を見てみますと、大手の化繊メーカーそれから大手の商社、そういうところが大株主でありまして、それで化繊の価格をたたくときはたたいて、そして値くずれをして一つのこうした失敗の原因をつくった、一つはそれがあったと思うのですね。うまくいかなくなった。今度そのしりぬぐいは全部政府だ、輸銀だというようなことであったならば、これはたまったものじゃありません。  そういう点も考え合わす中で、どうかいま申し上げましたような点に十分ひとつ御留意をいただきながらこの資金の回収に当たっていただきたい。こう思いますので、まず輸出入銀行総裁から御所見なり御決意のほどを承っておきたいと思います。
  344. 澄田智

    ○澄田説明員 ただいまお話のございました輸出入銀行の融資に対する態度といたしまして、その国家的な当該の案件の意味というものを十分に認識し、それに対して輸銀の融資によってその目的を達成する、しかし、それと同時に、その回収については万全を期すという点につきましては、仰せのとおりでございます。今後とも十分その点については努力をしてまいりたい。ことに本件につきまして、本件の今後の回収につきましては特段に注意をしてまいりたい、かように思います。  二、三、ただいまお話しの点につきましてつけ加えさせていただきますと、七十年以降ということになっておりましたが、最近、先ほど申しましたように、にわかに非常に市況がよくなってまいりました。これは化繊パルプ、それから木材、両方でございます。その結果初めて実質的な黒字が出た、こういう状態でありますので、優先弁済をさせまして、その結果、最後の二年分を優先弁済させた、こういうことになりますので、これが二年短縮になる。こういうようなことで、なるべく本件のような場合には、そういった業況の好転と相まって早くその回収につとめる、こういうことにいたしたいと思っております。  それから化繊用パルプの価格でございますが、発足当時、三十二年当時はドン当たり百九十ハドルというようなことでございましたが、それがその後下がってまいりまして、国際市況が百六十ドル台、こういう時代も、三十六、七年ごろでございますが、ございました。輸入側は商社、合繊メーカーでございますが、輸入側はこういった国際価格でこれを輸入をいたしておりました。ところが、これが四十八年、債務の繰り延べ措置等をとったそのあとでございますが、にわかに世界の市況も高騰してまいりました。四十八年の下期においては三百三十九ドルというようなことで倍をちょっとこしている、こういうような状況でございます。今後の市況等はいろいろな要素がございます。木材の価格もまた一方、上がっております。今後そういったような状況でまいりますればかなり予定より早く回収も可能ではないか、かように考えておりますが、資済確保というそういう目的は十分達成できるように、業績はそういう意味で順調にいくようにいうことを配慮しながら、同時に早く回収につとめる、かような考えでおります。
  345. 坂井弘一

    ○坂井委員 この際、会計検査院に、この融資案件についての検査院としての見解を承っておきたいと思うのですが、検査院はかなり注目をしておられるのではないかと思うのですが、質問書等も出していらっしゃらないようでありますし、調査をなさっていらっしゃるのか、いかがなことなのか、同時に見解を承っておきたいと思います。
  346. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 ただいまの日本輸出入銀行のアラスカパルプ株式会社に対しまする海外投資金融の案件につきましては、輸出入銀行のいわゆる大口貸し付け案件の一つということでございまして、私どもといたしましては、毎年の輸出入銀行の検査にあたりましては特に関心を払いまして検査を続けてきているところでございます。しかし、先ほど来輸銀当局のほうから種々御説明がございましたような事情でございますので、ただいま先生からも御指摘がございましたように、私どもといたしましては、会計検査の立場といたしまして特にその融資が違法または不当であるというような見解には達しておりませんので、輸銀の検査の際にはできるだけ回収に努力されるようにという口頭の注意はしてまいりましたけれども、文書をもって質問を発遣するという段階には至っておりません。しかし、当局におきましてもその回収に大いに努力いたしておりますので、私どもといたしましては今後の検査にあたりまして、先生の御趣旨を十分体しまして検査を続けていきたいというふうに考えております。
  347. 坂井弘一

    ○坂井委員 大臣、お聞きのとおりであります。もう多くを申し上げませんが、いずれにいたしましてもこの件は非常に特殊な件であったかと私は思いますが、輸銀の大口融資の中でこの種のような焦げつきが出た、しかもこれが閣議了解に基づいて、そしてその後の経緯を踏まえながら、いまのようなことでもってあとまだ二十年、昭和七十年、非常に気の長い話になるわけでありますが、きわめて手厚い配慮の中でこの資金の回収がされようとしておる一方におきましては、ずいぶん議論がされてきたわけでありますけれども、中小企業等につきましては、ある意味では非常に過酷な金融の引き締め、それに伴うところの回収がなされておるというような実態というものをひそかに見比べるときに、だれしもがこうした大手商社あるいは寡占大手等が多額の輸銀の金——原資は国民の血税であります。それが焦げついても、このような手厚い保護のもとにゆうゆうと経営が維持できる、たいへんうらやましい限りであろうと思います。したがって、きわめて素朴なあるいは率直な国民感情からいたしましても、そうした不公平というようなことがあってはならぬと私は思います。したがって、そういうような見地に立って、大臣としてこの融資案件に対するさらに的確なる、厳正なる今後の御決意を含めてお伺いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  348. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話の筋は、私も全く同感でございます。  本件につきましては、先ほど澄田総裁からその貸し付け金の回収につきましてのかたい所信の表明がありました。大蔵省といたしましては輸銀をその方向で十分指導してまいりたい、かように考えます。
  349. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  350. 臼井莊一

    臼井委員長 次回は明二十四日金曜日、午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十四分散会