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松浦参考人 最初に、現在の実験に対しては、NHKといたしましては国のプロジェクトに協力するという立場でやっておりますので、その点を前提として申し上げます。
そういうことでありますけれども、NHKとしてどう実験衛星を使いたいのかという点を最初に申し上げます。
現在までにNHKは、
全国にあまねくテレビジョンを受信できるようにということで、四十八年度末で千八百九十六地点に、これは総合と教育の二つありますから、その倍の送信機を置きまして九八%弱の人口カバレージを達成しております。残りは百万ちょっとだということでございますが、従来の置局並びに共同受信
施設でそれを解消していくといたしましても、なお三十万近くの散在世帯についてはどうにもならないという状態が予見されるわけでございます。その置局が終わります時期が、大体もう数年のうちに置局の好適地はなくなる。しかしテレビジョンの国民生活への浸透という点から考えますと、まあ理想をいえば一〇〇%カバーしなければならないという義務が課せられておりますし、現にこれは毎年度の国会の逓信
委員会におきましても、
政府並びにNHKに対して難視解消に格段の努力をするようにという決議がなされておりますので、この情勢は今後も変わることがないと思われるわけです。
さて、そうやって努力をしておりますが、この約千九百地点の中でどういう状態になっておりますかというと、一次、つまり非常に大きな局が四十一局、二次プランの局が三百四十局、残りの千五百十五局というのは微小局でございますが、いわゆる
電電公社のマイクロウエーブを使いまして直接良好な絵を送信をしております地点というのは、五十六地点にすぎません。そこからダイレクトに、
あとは全部
放送波を使っているわけでございますが、その
放送波を使って、一段でまた再
放送しておるという局を入れまして七百七十七局でございますから、両方入れても八百三十三局が、ほんとうの意味でいえば良好な画質をごらんになっているわけです。
あとの局は、二段中継からはなはだしいのは七段中継ということで、
放送波を受けてはまた出す、それを受けてまた出すということで、率直に申しますれば少し甘い絵をごらんいただいている。もしこの実験が進展いたしまして、
放送実験がいいということになりますれば、これらの地点に対してダイレクトに——いま
放送波を受信しておるわけですから、直接にNHKの手によって衛星受信をするならば、これは一段の受信になるというところから、非常な良好な画質改善が期待できます。これはあくまで実験でございますから、直ちにそれを実用化するというわけではございませんけれども、そういうことに要するいろいろな問題、あるいは費用の問題、技術開発の問題ということが、この実験の中で当然行なわれるべきであろう、こういうふうに考えているわけでございます。
で、これの費用といたしましても、その残存わずか二十五万のために
放送衛星をやるのではなくて、これらの世帯数を全部入れますと、東京都の世帯数より多い約三百万世帯についての効果が期待できるわけですから、これは先ほど電監
局長が申し上げましたように、実験
段階ですぐにそうなるということにはいまのところなっておりませんが、そういう可能性は非常にございます。
それからさらに、直接受信ということが、特に
都市難視の問題と関連して究極的な解決策であろうということは、何人も考えるわけでございます。東京でも三十数度、つまり日本の、
放送衛星でいきますと北のほうでも三十数度、南のほうでは五十度でございますから、ビル陰の影響並びにビルの反射の影響が大体建物の高さ程度におさまる。現在はちょうど水平でございますから数十キロ伸びるわけですが、それによる被害の状況はたいへん少なくなるということも、これは将来の問題として十分予想されるわけです。
それから、現在の実験の百ワットというものと将来のものは、別に一キロになるわけではございませんで、ぽつぽつでございます。これは、衛星でございますから、非常に強いものを出せば近隣諸国へのいわゆる漏れというものも出てまいりますので、そう大きくはできないわけで、現在国の費用でやっておりますこの開発が直ちに次の問題にきわめて——まあ開発要素なしにやっていける、
発展できるというのが技術的な見通しでございます。
それから二段目の御質問の、なぜ早くやるか。すでに電監
局長から
お話がございましたけれども、御質問がございますので補足さしていただきますと、この軌道位置を占有する、実験衛星によって占有して陣取りをしちゃうという意味よりは——赤道上は非常に広うございますから、それはおっしゃるとおり余地はあるわけでございますが、そういうことよりも、少なくともこの
放送衛星、通信衛星について、どういうふうに軌道位置を使い、周波数を割り当てるかという国際的合意がまだなされていないわけでございます。七一年の主管庁
会議で行なわれましたのは周波数帯の配分にとどまっておりました。この周波数帯の実際日本への割り当て、あるいは通信衛星、
放送衛星の軌道位置をどういうふうにきめるのかという技術的な国際的な合意というものをやる
会議が、これはその後確定したわけですけれども、一九七七年の四月以前に第一回を少なくとも行なうということも確定しておるわけです。これは五十一年度以内ということでございます。そういたしますと、すでに米国あるいはソ連というような、これは直接
放送衛星ではございませんけれども、通信衛星あるいはそのほかの宇宙開発にすでに実績を十分持っておる国々、それから非常に連携のよろしいヨーロッパ諸国というようないわゆる工業的に進んだ国々の中で、日本のみがそういう実際の体験なしにもしその
会議に臨んだときに、従来も
関係者が非常な努力をなされてかなり国際的発言力がございますけれども、この問題についての迫力と申しますか、現実の問題——それはデータをもらってくればいいということでございますが、御承知のとおり技術の問題はデータだけではございませんで、そのプロセスと申しますか、過程の知恵というか力というものが非常にものをいうわけでございますので、そういうようなところの問題も勘案すると、一番望ましいのは五十一年度である。もっと早いほうがいいのですけれども、可能性のあるという点からすると五十一年度である。
なお付言いたしますけれども、二、三年おくれでそれでは上がるのかという問題でございますが、これは現在のN
計画が百三十キロが限度である。そして現在の実験がいずれも三百五十キロ前後である。三百五十キロ前後と申しますのは、いま予定されておりますソー・デルタというやつで、上がる限度が七百キロでございます。七百キロが地上から上がっていく。そうすると、その上で、途中で消費してしまう重量と静止したときの重量の兼ね合いでございますが、必ずしも三百三十キロか三百五十キロかというのはいまのところ確定できませんけれども、いずれにしろその程度でございます。その程度のものへ持っていこうとするととても数年というわけにはいかないのではないか。そうすると、先ほど申し上げたような国際的なこまかい取りきめが行なわれてしまい、さらにそれからということになりますと、技術的な積み上げもないまま十年をたつということは、それから追っかけようと思ってもちょっと追っかけられない状態になるのではないかというようなことが、五十一年度をおきめになった
一つの背景にあるのではないかということをつけ加えさせていただきます。