○
東中委員 長官にお伺いしておきたいのですが、いま参事官の話を聞いておりますと、こういう共産主義、社会主義あるいは全体主義、参事官が常識的に
考えておるということと、これは何かよくわかりませんけれ
ども、いわゆる民主主義というものとの
関係を理解させることが、
自衛隊の忠誠心を核心とする堅固なる志操を涵養するために必要なんだという
立場、これをとっておるわけですが、長官、そういうことでいいとお思いですか。事は思想なんですからね。先ほど言いました、
自衛隊公報第一六七三号、
昭和四十五年八月十五日土曜日、
陸上幕僚監部発行の公報です。そこに載っておる
陸上自衛隊の
教育訓練実施に関する達の一部を改正する達、
陸上幕僚長陸将山田正雄、
陸上自衛隊達第一一〇-一-八号、その中に「生徒課程」の
教育基準として項目がずっと書いてある。そして「
教育実施上の準拠」の中に、いま言った第二、第三学年、「国家と国民の基本的
関係を理解させる」とか、先ほど言ったようなことが書いてある。これの
内容は詳細には見てこなかったけれ
どもと言っておるが、これ自体の存在は否定されていない、こういうものです。そして大体、その主義、思想の
関係を理解させるというふうなことが精神
教育についてやられることによって、志操堅固になったとか、国家に対する忠誠心が高まってくるのだ。――共産主義と民主主義との
関係を理解することがどうして国家に対する忠誠心を高め、そして堅確な志操を涵養することになるのか。これはまさに思想
教育をやっておるわけですね。こういう体系でいいのかどうか。
長官御存じないようですけれ
ども、いまの論議を聞いておられて、これじゃ
自衛隊が思想
教育をやっていることになりますよ。しかも、きわめて常識的にという形で特定の――思想なんというものは、そういう常識的にきめつけてやるようなものじゃないのですね、本来、性質は。思想、良心の自由というのは
憲法で保障されているわけですよ。
自衛隊員といえ
ども保障されているわけですよ、基本的人権なんですから。それを職務行為としてやる、職業としていろんな戦術上の訓練を受ける、通信訓練を受ける、あるいは
匍匐前進をやる、これは、肯定するかどうかは別として、それはわかります。しかし、思想、良心の自由という内心の問題について、思考問題についてこういう、共産主義とか民主主義とか社会主義とかいうことの
関係をいうことによって、それが国家に対する忠誠心を高めることになるんだという、こういう
自衛隊のあり方というものあるいは
教育のあり方というもの、これは根本的に
考えなければいかぬ問題ではないか。大学でいろいろそれぞれの見解、学説に立って講義をする。それは聞きに行く人は、聞きたければ聞けばいいんだし、いやなら聞かなければいいんだから。そういう性質のものです。職務行為として公務員に対する、それを理解することが義務だという形で出されてくるというところに重大な問題がある、こう思うのですが、長官ひとつ……。
あともう一点だけ申し上げて、その点についての
検討をしてもらいたいと思うのですが、たとえば猪木正道氏、
防衛大学校の校長さんでありますが、この人の出している、これは隊内資料でありますが、「
防衛を
考える」というのと合わせて「政治思想について」というのがあります。これはコピーしたものでありますけれ
ども、これを見てみると、「政治思想というと、
諸君はすぐに、たとえばマルクス主義であるとか共産主義であるとか、あるいは社会主義であるとか無政府主義であるとかを
考えると思います。しかし政治思想はほかにもたくさんありますから、一回で一通りお話をするということになると、それはほとんど不可能です。そこで重要な点だけを取り上げて、私の
考え方を
諸君にお話して、
諸君の勉強の助けにしてもらいたいと思います。」ということで、これは校長としての講義あるいは訓話か、まさに精神
教育じゃないかと思うのですが、こう言っている。これを見ますと、こういうことになっていますよ。
保守主義と自由主義というのは、人類数千年間の歴史の結晶のような思想で、これはいいものであるという論旨です。もっともっと学ぶべき点がある。
日本では保守主義と自由主義を名のっているのは自由民主党である。一方、共産主義については、「共産主義とは何か、ということならば、十分ぐらいでその
内容をいえます。これは一人か二人、あるいは三人ぐらいの人が
考えたことですから、この
内容はどうせそうたいしたことはない」こういう話であります。さらに、「プロレタリア革命が起こって、それからプロレタリアート独裁がはじまる。プロレタリアート独裁といっても、実はプロレタリアート独裁という名の下に共産党が独裁するわけです。」「共産党の独裁とは、実は共産党の中央
委員会の独裁であり、またその実態は共産党のボスの独裁である」、はっきりそう言っております。しかもそれが印刷にしてあるわけです。さらに、共産主義とは、狭い
意味の民主主義を推し進めるためのものである、これはヒットラーの
考え方、すなわちファシズムも、現在の共産主義思想とたいへんよく似ている、こういう発言があります。さらに「現代の共産主義とは何ぞや」「私は、それは“共産党”である、と答えたらいいと思います。」というように言っています。
ここで、先ほど共産主義と書いてあるけれ
ども、一方では防大の校長が、共産主義とは「それは“共産党”である、と答えたらいいと思います。」「共産党というのは、
国会には十四議席しかありませんけれ
ども、党員の数は三十万人もおりまして、」「これはたいへん特異な――まあ政党といっても普通の政党ではない――政党なのです。これは、秘密の戦闘集団であるという性格をもっております。」とやっているんですよ。
これは、防大の校長が防大生にやっておってこれなんですから、これがさっき言ったカリキュラムで民主主義と共産主義との
関係、それを理解させることが国家に対する忠誠心を高めるものである、こういうことになってくると、これは
自衛隊というのは、この前、特定政党を誹謗しあるいは特定の政党を支持するというような参考資料は排除するというふうに言われた点からいって、これは明らかにおかしいじゃないか。その点長官、そういう
考え方を持っている人がおるなら、それはいいですよ。個人でそう思っている……それは、ぼくは間違っていると思うし、哀れな主張をしていると思います。それはそれぞれの
考え方の自由でいいでしょうけれ
ども、それを
防衛大学の校長として、一学者としての見解じゃなくて校長として、そして職務行為として
自衛隊員にそれを理解させる、
自衛隊員がそれを理解しなければいけないんだということになったら、これは反共集団の、あるいは反共産党の
立場での
自衛隊づくり、それが国への忠誠心を涵養することになるんだ、こういうことになっていくと思うのです。長官、どうでしょう。