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1974-04-23 第72回国会 衆議院 決算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十三日(火曜日)     午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一 君    理事 井原 岸高君 理事 唐沢俊二郎君    理事 松岡 松平君 理事 綿貫 民輔君    理事 久保田鶴松君 理事 原   茂君    理事 庄司 幸助君       赤澤 正道君    吉永 治市君       田代 文久君    浅井 美幸君       坂井 弘一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         経済企画庁長官         官房会計課長  白井 和徳君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         林野庁林政部長 平松甲子雄君         気象庁長官   毛利圭太郎君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   藤井 直樹君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      柴田 益男君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       佐藤 真住君         気象庁予報部予         報課長     藤範 晃雄君         建設省都市局下         水道部長    久保  赳君         建設省河川局次         長       堺  徳吾君         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         会計検査院事務         総局第五局長  中村 祐三君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    川崎 精一君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   高木 廣一君         参  考  人         (海外経済協力         基金業務第二部         長)      長崎 一政君         参  考  人         (海外経済協力         基金業務第一部         次長)     清水 則夫君         参  考  人         (造水促進セン         ター常務理事) 村山 義夫君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     渡辺 惣蔵君   藤田 高敏君     大原  亨君   田代 文久君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     藤田 高敏君   渡辺 惣蔵君     稲葉 誠一君   小林 政子君     田代 文久君 同月十日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     小山 長規君 同日  辞任         補欠選任   小山 長規君     中村 弘海君 同月十二日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     山田 芳治君 同日  辞任         補欠選任   山田 芳治君     稲葉 誠一君 同月十五日  辞任         補欠選任   田村  元君     井原 岸高君 同月二十三日  理事田村元君同月十五日委員辞任につき、その  補欠として井原岸高君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十六年度政府関係機関決算書  昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書     〔総理府所管経済企画庁)〕      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事田村元君が委員辞任されましたので、理事が一名欠員になっております。  これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、井原岸高君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 昭和四十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管経済企画庁について審査を行ないます。      ————◇—————
  5. 臼井莊一

    臼井委員長 この際、おはかりいたします。  本件審査のため、本日、参考人として水資源開発公団から理事川崎精一君、造水促進センターから常務理事村山義夫君、海外経済協力基金から理事高木廣一君、業務第二部長長崎一政君、業務第一部次長清水則夫君の御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見の聴取は委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承を願います。     —————————————
  7. 臼井莊一

    臼井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  8. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは、水の問題を中心にお伺いいたしますのと、あとで、いま計画されております経済社会基本計画にからめまして排水の利用なり上下水道の問題なりを取り上げた上、最後に所得政策についてお伺いをいたしたい、かように思うわけでございます。  最初に、わざわざ気象庁からおいでいただきましたので、長官あるいは藤範さんから、昨年の気象条件、俗に干ばつぎみといいますか、降雨の量も少ないという状況が続いたわけでございますが、水全体を考えますときに、本年の気象状況というものは、俗に異常気象などといわれておりますが、見通しとしては、昨年と比較したときに、一体どういう状況で推移するとお見通しになっているのか。降雨量に対する見通しなり気象全体の傾向なりというものを、まずお伺いをいたしたいと思います。
  9. 藤範晃雄

    藤範説明員 お答えします。  昨年の夏は、その規模と広さにおきまして、干ばつ状況としましては昭和四年以来といわれるような状況でございました。  最近、たとえばことしの冬に無降水記録が続いたり、それから東北地方豪雪がございまして、これらも過去の記録の一位あるいは二位というふうな、非常にけたはずれな異常気象が起こっておるのは事実でございます。  近年、こうした異常気象が比較的起こりやすい傾向にあるというのは事実でございますが、ことしの見通しはどうかと申しますと、三月十一日に暖候期予報発表されまして、いまのところ梅雨については、西日本で平年よりやや早めにつゆに入りますが、その他の地方は大体平年並み。それで梅雨活動は、前半は比較的弱いものというふうに予想しております。それから梅雨期の後半に入りまして大雨のおそれがある。それからつゆ明け後は、西日本中心少雨傾向が予想されております。ただ、昨年の干ばつは非常に規模の大きなものでありまして、いまのところ私どもとしましては、昨年ほどに大規模なものというふうなことでなしに、西日本中心とした少雨傾向予測している段階でございます。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 降雨量全体の予想はどうなんですか。
  11. 藤範晃雄

    藤範説明員 お答えします。  西日本につきましては、大体七月の後半から八月についてやや少ない。それから北日本梅雨期間がやや長引くおそれがありますので、北日本につきましては、降水量は平年よりやや多めに予測しております。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 この気象全体を、いま、ことしを予想したり、昨年を顧みてまたことしを予想したりというようなことが繰り返されておるわけですけれども長期日本気象状況というものを観察しているだろうと思うのですが、私どもはしろうとでよくわかりませんが、たとえば北極圏における寒冷化が進み、赤道圏においてはむしろ暖熱化が進んでいくというような周期があって、その周期があるいは百年といい、あるいは八十年といい、そうしていま、いわゆる寒冷化が進んだ周期に当たっているので、長期的に見ても何か気象め異常というものがあることが前提のように取りざたされているのですが、この長期の何か周期的な、いままでの長い間のデータによる見通しというようなものはあるのですか。
  13. 藤範晃雄

    藤範説明員 お答え申し上げます。  長期見通しにつきましては、現在世界的にまだ研究段階でございますので、物理的基礎の正確な見通しというのは、現在ございませんが、たとえば、いろいろな研究者がいろいろの方法気温傾向などを予測しております。気象庁におきましても、そうした研究法一つとしまして周期外挿法というのがございまして、それに基づきましての予測をこの四月一日に発表したわけでございます。  ただいま先生が御指摘なさいましたように、気候長期変動というのは八十年あるいは百数十年というような非常に長いものでありまして、そういう長いものについての予測は、たとえば周期予報などでは、正確に予測することは困難でございますが、気候変動というスケールから見まして、ごく短期間と見られるここ十年あるいは十数年という程度のことにつきましては、周期予報でもある程度有効かという考え方を気象庁でとっております。  そういう意味におきまして予想した結果を申し上げますと、高緯度を中心世界の約三分の二程度地点ではまだ気温の低い状態が続きそうである、それから低緯度を中心に約三分の一の個所では気温高温傾向が続きそうであるというふうな結果が出ております。  申し忘れましたが、これは世界の五十九地点の資料についてただいま申し上げました数字でございます。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう長期見通しに立って見ますと、去年は異常だった、大ざっぱにいってことしはまずまず平年並みにいくのだ、こういうことなんでしょうか。何か異常が予想されるのですか。
  15. 藤範晃雄

    藤範説明員 お答えします。  ことしも、すでに一月には降水の非常に少ない状態太平洋側に出たり、それから東北地方では豪雪というふうな形で異常があらわれております。ただいまの暖候期に関しましては、現在のところ極端な異常というものは予想しておりませんけれども、ことしはちょうど太陽活動極小期の一年ないし二年前に当たりますので、そういう年にはわりあい極端な気象現象が起こる頻度が多いという経験がございます。そういう意味で私どもは、現在そういう状況になるかどうかを見守りながら、いまのところはまだ極端な異常気象予測してないということでございます。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一点、そういう異常がいまのところはわからないのですが、いろいろこれから検討をするのですが、いつごろになるともっと的確に、そういった気象状況の大きな意味地域別の異常というものはわかるのでしょうか。
  17. 藤範晃雄

    藤範説明員 気象庁におきましては、月の十日に一カ月予報、それから二十日に三カ月予報、それから月末にも一カ月予報を出しております。ですから、この一カ月予報あるいは三カ月予報発表段階におきましてできるだけその異常を予測したいと考えておりますが、現在のところ、まだ異常であるかどうかという結論を出すまでに至っておりません。(原(茂)委員「いつごろになるとわかるのですか」と呼ぶ)その徴候が出れば、短いのでは一カ月予報、長いのでは三カ月予報発表することになると思います。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一点、すみません。  日本降雨量というのは、世界、特にアメリカイギリスカナダなどに比べると、面積当たり二倍以上だといわれていますが、これはずっとその状態でいままでも来ているのですか。これからもとにかく、降雨量というものを面積当たりに考えると、日本の場合はアメリカなりイギリスなりカナダと比べて二倍以上の降雨量があるもの、過去のデータによってそういうことが言えるとお思いになりますかどうですか。
  19. 藤範晃雄

    藤範説明員 お答えします。  たとえばアメリカと、あるいはカナダ日本との地域差という点で、平均的な意味では非常に大きく変わるというふうなことはございませんが、年々の雨量についていいますと常に二倍というふうにはならないと思います。ただ、平均的な意味におきましてはほぼ二倍というふうな形での経過をたどるものと思われます。ただし、アメリカならアメリカ自身での多少の変化がございまして、現在ですとアメリカ東岸でやや雨の少ない傾向が出ているとか、あるいは日本の場合でも、現在、全体的な雨量としてはやや減少傾向にあるというのは事実でございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 気象庁、どうもありがとうございました。また自治省をやるときにちょっと、もう少し専門的にお伺いしたいことがありますので、きょうは、気象庁からお伺いするのを終わりたいと思います。  そこで、建設省が去年、広域利水調査の第二次報告というのを出したのですが、この報告は、もちろん、もう新聞にも出ておりますし、皆さんも、おつくりになってわかっているのですが、こういう利水計画の第二次報告からいいますと、水はやはり総量からいうと余るという計算になっていながら、現在の五百八十カ所のダムを全部完成したとしても、関東その他八地域においては、個別にはやはり水が非常に少なくなるという結論を出しているように思うのですが、間違いありませんか。
  21. 内田常雄

    内田国務大臣 建設省、がおりませんから、私は専門家ではございませんけれども、たとえば東京圏につきまして原さんがお尋ねのそのことを当てはめてみますと、東京圏というのは東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県でございますが、その人口が御承知のように約二千四百万人あるのです。その水を現在使っておりますのは、これは年でございますが八十五億立米。それに対しまして、この東京圏人口をほうっておきますと、昭和六十年には三千八百万人以上の人口になります。これは、御承知の新全国総合開発計画というものが昭和六十年を予想した数字でございますが、かりにそうなりますと、いまの八十五億立米のほか別にちょうど同量ぐらい、詳しくは八十四億八千万立米の水が要ることになるわけでございます。しかし、それの供給見込みというものは、いろいろなくふうをいたしましても、ちょうどその半分の四十三億立米くらいしか供給ができないということになりますので、やはり四十億立米以上の水が足りない、こういう結果になりますので、どうしようもない。  そこで、こういうほうりっぱなしの人口増加というものをいろいろな方向に向け変えまして、この増加傾向を鈍化させるあるいはさらに進んで分散させるというようなことをやってまいります場合に、国土総合開発計画等の線によりまして人口の増勢をある程度鈍化させました場合にも、なおかつ、昭和六十年には三千三百五十万人の人口がこの東京圏には住むことになる。そうした場合にも、水の総量は六十五億立米が必要だ。それに先ほど申しました四十三億立米を新しく補給いたしましても、なお二十二億立米という水が足りない。これはあらゆるくふうをしてもそういうことになりますので、人口調整というものがどうしても必要になってくる。その場合、水の総量をいまの四十五年の八十五億立米プラス四十三億立米ぐらいをふやした場合に、東京圏に住まい得る人口というものは昭和六十年で約三千万人弱、こういうようなことにならざるを得ないわけであります。  でありますから、これは人口分散も必要でありまするし、またダムその他の方法によりましてその利水方法を講ずるということのほかに、海水から水をつくるとかなんとかいろいろのことも講じなければ、いまの東京圏における人口をそのまま放置できない、こういうことになることが、新全国総合開発計画の総点検の結果わかっておるわけであります。  これをどうするかということにつきましては、何しろ新全総というものが御承知のとおり昭和四十四年ぐらいの計画でございますので、それをいま総点検をやっておりますから、来年ぐらいをかけましてさらにこれを新々全総といいますか、そういうような形で水のほうをふやすくふうを講ずるなり、あるいは入口の分散その他産業の分散等々のことにつきましてももう一ぺん全面的にやり返さなければならない、こういうところへ来ております。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣は博識だから、建設省にかわって御答弁いただいたんだけれども建設省来ているそうですからあとでまたお伺いしますが、大臣のお答えで、ある部分はよくわかりました。  私はお伺いをするたてまえを先に申し上げておきたいのですが、やはり水、特に生活用水あるいは工業用水と区別してもしなくても、水に関する対策だけは国家の至上命令として、いま政治課題としても第一に取り上げる時期が来ているのではないか。不足することが目に見えてわかっている。にもかかわらずその水の手当てというものが、確実にこうすれば手当てができるというしっかりした方針ができていない。ある意味ではこうすればいいはずなんだがといいながらも、一体それに幾ら金がかかるのか、一体どういう施設、どういう技術によってこうしたことが可能なのかということを模索中だというような状況だといって過言でないと思う。いやしくも水が一度ないということになりますと、これは何にも増して重要な課題になってきます。いま道路にいろいろ長期計画があって、何兆円使う、十何兆円使う、二十兆円使うなんという道路整備計画が次から次にできている。このほうはきちっとある時期が設定されて、技術的にも大体これでいける、どころじゃない、十分な経験を持っている。その計画道路に関しては進んでいるのですが、水をこれに比較してみますと、ある意味では道路より水のほうが大事だと思うのに、その水に関する国家的な立場での施策なり技術化なりが非常におくれているということを考えると、道路に思い切った金をかける、道路に思い切った力を注ぐそれ以上に、いま急務として水に対する対策に思い切った金を、思い切った技術を投入する、何にも増してこれが一番喫緊の要務ではないかという立場でお伺いをしているわけなんであります。  そういう意味からいいますと、第二次報告による六十年度を見たときに、まだまだ相当の不足がある。水の総量としては四十億なり五十億トン余るにしても、これは関東地方その他八地域を部分的に見ていくと水はたいへん欠乏するというような結論が出ている以上、これに対する手当てを最も急いでやらなければいけないだろうと思うのに、その点がどうも、われわれがなるほどと思うように進行していない、計画が、技術裏づけによって、予算の裏づけによってきちっと、ある目的の日時までにできることになっていない。それどころか、東京を含めて一番大きな利根川水系水利開発の問題などを見ましても、現在手直しといいますか、この状況になってから、もう一度再検討を要するといって再検討しているはずでありますが、一体その再検討がどのような答えをきちっと出したのか。いつになったらこの利根川水系開発というものが当初の目的どおりにできることになるのかということすら、一利根川水系をとらえてみても、国民の側からいうと非常に大きな不安がそのまま残されているのが現状だと思う。水に関する限りは国がやる以外にないのでありまして、当然大きな政治課題として、何をおいてもこれの解決急務だと思うのですが、大臣からはあとでお伺いいたしますので、建設省から、いま私が申し上げた大きな意味立場でどう考えてどう対処しようとしているのかをお聞きしたい。
  23. 堺徳吾

    堺説明員 ただいま先生指摘のとおり、われわれ、全くそのとおりと考えておるわけでございます。この問題は関係各省に非常にまたがっておる問題でございますので、建設省建設省なりに、建設省立場でもって水資源開発について十分に推進していきたいというふうに考えております。  先ほども指摘がございましたように、供給可能能力といたしましては、国全体としてはあるわけでございますけれども地域的には、御承知のように首都圏の約二十億トンをはじめとして、主要地域で約四十二億トンばかり不足するというようなわれわれの計算になっておるわけでございます。これに対しまして、やはりダム建設というものを強力に推進していくということがまず第一でございまして、そのためには、これまで水源地特別措置法のような立法措置でもっていろいろはかってきておる。それから多目的ダムの先行投資的なことについてもやるというようなことで一それなりの努力はしておるわけでございます。さらにダム建設とかそういうものと同時に、やはり既存の水利あるいは水の節約と申しますか、そういう利用の合理的な方法ということについても、これはそれぞれの分野にわたるわけでございますけれども、十分に今後検討していく必要がおるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは、せっかくおいでいたがいたんですから、勉強の意味で個々にお聞かせいただきたいのですが、東京都で、すでに導水路浮つくって、水を利根川から荒川へ持っていったのですか、これは四十三年か何かに完成して、現に水が使われているわけです。こういうような導水路を思い切って金をかけて大きく施設をするということが計画されない限り、私は、現在の問題の解決がなかなかむずかしいと思う。それだけじゃだめなんですけれども一つの例として聞くのですが、導水路というのは、大きな河川から河川に向かってこれを横につないでいくという思い切った長い工事をやるということを計画しているんでしょうか。導水路そのものだけお伺いしたい。
  25. 堺徳吾

    堺説明員 先生の御指摘されておりますとおり、河川河川を結ぶ、われわれのところでは流況調整河川ということを最近称しておるわけでございますけれども、現在利根川と江戸川を結ぶ緊急な導水計画を立てておりまして、さらに北千葉広域導水ということも計画しておるわけでございます。それから木曾川とか、さらに筑後川とか、そういう方面についても、いま逐次調査を実施しておるわけでございます。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう、たとえば東京都でやった利根川から荒川への導水路、あれはいまだったら、工事費幾らかかるでしょうか。——それをわざわざ聞いたのは、第二次報告を見ましても、こうしなければいけない、こうすべきだというようなことが書いてあるんですが、そのために幾らかかるんだということが発表になっていないわけですよね。私は、建設省にしても関係各省が、ある程度の、こうすればいいという技術的な解決方向というものは持っていながら、まだ、それを何年ぐらいで幾らかけたらできるかという計算が、いずれの場合でもほとんどできていない、そういう状態じゃないかと思うのでお聞きしているのですが、どうでしょうか、そういう私の言った状態なんでしょうか。ぴちっと、これだけの工期と工費をかければ、必要と思う導水路の、この河川、この河川の短絡は可能になる、幾らで、どのくらいの期間でというようなことまで、もう六十年度なら六十年度を目途にしてでも計算ができているんでしょうか。
  27. 堺徳吾

    堺説明員 第二次の広域利水調査報告で非常に大ざっぱな推算をしたわけでございますけれども、それによりますと大体八兆円を要するというふうに推算しております。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 あの当時の八兆円がいまでもそのままではないと思います。きっといまではもうちょっとかかるんだろうと思うのです。ここに、手元にあるんですけれども、あの第二次の報告のときの八兆円というものは、いま私が申し上げたような、まだまだやらなければいけない隠されたいろいろな計画というものが、金額に入ってきていないんじゃないかという感じがする。私はしろうとで、そんな計算はとてもできません。できませんが、トン当たりの水のコストというものは別の資料に出ていますが、そういうものから推定しましても、八兆円なんというものでこの計画全部ができるとはどうしても思えない。これは何か落としているのか、わからないのかじゃないか。まして、いまの八兆円というものを、工事をこれからしなければいけない大部分があるんですが、現在では、これは八兆円でできるはずがない。もっとやはりそのときそのときの計画を持つべきだし、持ったときに金額がぴたりと出てきていないと、こういうような報告を見ただけではわれわれは不安を感ずるだけで、たよりにならないという感じがするわけです。こういう点どうですかね。——きょう来られた建設省の方はどういう立場の方か、私知りませんが、河川次長ですね、もうちょっと適当な御答弁がいただけると思ったんですが、それじゃ、もう少し具体的にこまかくお伺いをしてみたいと思うのです。  水の問題の中で現在一番大きな問題の一つになっているのは、いわゆる工業用水をどういうふうに供給していくかという問題があると思います。現在のように工業用水が、上水道に使われるような生活用水と同じものがどんどん使われているということは、これはたいへんもったいない話だし、現在その半分ぐらいは再生利用という形で生かされているようですから、その点はいい。しかし、まだまだ工業用水の中に冷暖房用があってみたりいろいろしてますから、この意味では半分以上再生利用が可能だろうから、もっとそれもやるとして、それでもまだ、日本の水全体量からいいますと非常に大きな分野を工業用水が占めるわけですから——生活用水なんというものはおそらく一五%程度だと思う。工業用水のほうが倍か、それに近いくらい現在でも使用されていることを思うと、水の足らない日本においては、工業用水をいわゆる再生利用というところに重点を置いて、飲み水にはどうも使うわけにはいきませんが、そうでないものは排水の再生利用によって工業用水全部をまかなうというようなことをやはりしていくことが必要だと思うのですが、そういう点で何か考慮をしていますか。
  29. 柴田益男

    ○柴田説明員 御説明申し上げます。  工業用水につきましては、今後とも、先生指摘のとおり需要がふえてまいります。それに対する対策といたしまして、工業用水の使用を合理化して工業用水自体の使う水の量を減らしていく、そのためには、先生おっしゃいましたように、工場排水をもう一度回収して利用するという方向で現在試作を進めております。そのために、工業用水をたくさん使っておりますところの石油化学とか、あるいは紙パルプ工業とか等の業種につきまして、再生利用の実験を現在進めている段階でございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 いま実験しているところとその見通しを言ってみてください。
  31. 柴田益男

    ○柴田説明員 内容につきましてはあるいは造水促進センターのほうが詳しいかと思いますけれども、現在実験しておりますのは石油化学の排水につきまして日産五百トンのプラントをつくりまして、昨年度と四十九年度二カ年間にわたって活性炭処理の実験を行なっております。  それから紙パルプにつきましては、同じく昨年度と四十九年度の二カ年にわたりまして造水促進センターと山陽国策パルプの共同で、そのさらし用水の回収利用について実験を行なうべく、いまプラントを建設中でございます。  そのほかコンビナートの水の合理化ということで、これは実地検査をいたしまして一つのモデルづくりを行なっている段階でございます。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 それじゃ工業技術院から、淡水化の問題を先にお伺いしておきますが、いまの大分の海水の淡水化を日産十万トンという計画でおやりになったものが、大体来年の初めにその目的を達成する、でき上がる。その前に茅ケ崎で三千トンという小さいプラントをつくって、これが四十一年ですか、四十二年ですかから始まってほぼその目的を達成して、そこにおける研究の成果が大分に移されて十万トンのプラントというものを、大体これならいけるという設備をつくった。これは実際の水の量で日産十万トンできるわけではないんだそうですが、しかし、各部分部分の技術的な要所要所をきちっと、これなら十万トンいけるというものを研究し、しかもそれが、実際にどこへ移しかえても完全に何十万トンのプラントができるというところまですでに施設をやりながら、研究も進みながら、それが来年完成をする、目的を達成できる、こういう段階へ来ているそうですが、私、淡水化の副産物として出てくる、ある意味では汚染源といわれるものがどう処理されるかも同時に研究されていることを、先ほど聞きまして、ああ、そうだろうなと思ったのですが、菅原正巳先生に言わせると、海というのは地球の上のよごれのたまったものなのだ、したがって、このよごれのたまった水をきれいにして再生するということ自体、これはたいへん損なやり方だ、こういうやり方よりは、やはり水の再生処理というようなことに重点を置いたほうが、あるいは鉱山でいうなら、この地域にこれだけの鉱脈があるということがわかって、そこへ集中的に力をつぎ込んでいくというならいいのだけれども、どうも海というのは地球のあかがぐうっとたまり込んだものなので、それをきれいにして使おうということ自体不経済だし、たいへん非能率的なのではないか——そんな言い方じゃないのでしょうが、そういうような考えで菅原さんの御批判を聞いたこと  があるのですが、そういう点はどうなのですかね。この水のコストからいってもペイできるような、いわゆる海水の淡水化と副産物の汚染源としてのこれを処理して再利用を行なうということをあわせてやるならコストの点ではだいじょうぶだということになるのか、たいへん高い水になっているのか、それが一つ。  時間の関係で、あと続けて二つお伺いしておきますが、現在茅ケ崎に三千トン出ている水は、実際に蒸留水のようなきれいな水が三千トン出ている。これが捨てられっぱなしなのか。それから、やがて十万トンという大分の施設が完全稼働をしたというときに、実際には四万トンか二万トン程度しかいわゆる淡水としては出てこない。装置としては、技術的に十万トンこれでいいという装置がいわゆる研究施設としてはでき上がっているが、実際の水というのはやはり二万五千トンか二万トンぐらいしか使えないというのですが、この二万トンも、来年施設ができ上がって淡水が出たときに捨てちゃうのか、こういうものの利用をどういうふうに考えているのか。  それから、蒸発するときの必要な熱量というのを求めるのに一番理想的なのは、やはり火力発電所と一緒に併置して、それの熱い排水を利用して蒸留を行なっていくというようなことがいいというので、全国で何カ所かにそういった。プラントの小さいものが実際に行なわれているそうですが、一体どこでどの程度規模のものが実際に火力発電所と併置されて動いているのか。その場合に、熱い火力発電の排水、一応使われて出てくるその水と一緒に、濃縮された副産物の汚染源である、再生利用をしないでそのまま出した水が一緒に海に流されている、そのときの濃度というものは一体どの程度になって流れていくんだろうかというのを、四点一緒にお答えをいただきたい。
  33. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  まず最初に、海水から水をつくるという海水淡水化の技術が、エネルギーその他の関係から、あるいはよごれた水をもう一回真水にするというのは経済的に問題があるのではないかという趣旨の御質問でございますが、これにつきまして、私ども、問題はそのエネルギーの利用のしかたであろうというふうに考えております。先生も御指摘されましたように、私どもがねらっておりますのは、発電所のいわゆる排熱等を利用しまして淡水にしようということでございますので、もともと利用が行なわれてないそういうエネルギーをベースにいたしますので十分採算的に可能であるというふうに考えております。私どもプロジェクト出発当時には、トン当たり大体五十円台でできるという見込みを立てたわけでございますが、昨年来のエネルギーの価格高騰等によりまして、このコスト見通しを変更せざるを得なくなっておりますが、技術的には蒸発段数をふやす、その他の最適化設計をやりまして、これに十分対応できるようなやり方をとりたいと、目下見直し中でございます。  第二の、濃縮された海水の利用と申しましょうか、公害問題でございますが、これにつきましては、私どもの現在やっておりますプロセスでは、もとの海水より塩分で大体一%ぐらいの濃度の増加でございますので、それほど大きな増加ではございませんが、現在考えておりますのは、発電所で使用された冷却海水と一緒に薄めまして排出しようということで、これをやりますと大体五十分の一ぐらいに薄まりまして、自然の濃度とほぼ近い、変動幅で〇・〇六とか〇・〇七とかいう変動幅でございますので、自然に対する影響は非常に少ないというふうに考えております。  なお、排水する場合の最適の排水経路等につきまして、水槽実験によります拡散モデルを現在実験中でございまして、これらの措置を講じまして、いわゆる濃縮された海水によります公害の発生を極力防止するということは可能であるというふうに考えております。  それから第三番目に、現在使われております淡水化の現状でございますけれども、現在日本では、発電所と併設されましたものは二つございまして、一つ長崎の松島炭鉱で、約二千百万トンパーデーぐらいの水をつくっております。それから関西電力の姫路第二発電所で千二百トンパーデーの規模で、これも実用化されてございます。世界的に見ますと、やはり発電所と併置されたものは大体この程度規模でございます。なお、私どもがねらっております日産十万トンという規模は、規模の点では世界でも最も進んだ内容でございます。  第四の、実験によってつくられた真水を現在どうしているかという御質問でございますが、茅ケ崎におきましては、日産三千トンと申しましても連続的に生産しているわけではございませんで、数日運転して実験データを得て、それで中断するというようなやり方でやっておりますので、日産三千トンが三百六十五日出るというわけではございませんので、実験目的だけに使ってそのまま廃棄しております。  それから大分につきましては、やはり同じようなことでございますが、規模が大きくなるということで、再利用につきましては、目下近辺の発電所あるいは化学工場等と相談いたしまして、ある程度の有効利用、活用ができないかということを検討中でございます。ただ、これも毎日連続運転やるわけではございませんので、使用する側にとりましては非常に不安定な状況になりますので、技術的に可能かどうか、目下詰めている最中でございます。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 茅ケ崎はもう目的を果たしてしまったわけですね。あとどうなるのですか。
  35. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 茅ケ崎の実験は四十九年度で終わりましたので、私どもといたしましては茅ケ崎の今後の利用という問題はございませんが、ただ、いままでの付属のいろいろな設備がございますし、これらを有効に活用できないかということで、目下造水促進センター等がアプローチされているようでございます。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで先に、造水促進センターで現在再生をやっている状況、一体どのくらいの量を将来供給可能にする目的なのか、現在の実験の内容と将来の見通し造水促進センターから……。
  37. 村山義夫

    村山参考人 お答えいたします。  造水促進センターは、昨年の五月十日に、各方面の御賛同を得まして設立されました財団法人でございますが、御質問のありました現在の研究開発状況でございますが、一つは、東京都に協力いたしまして日産五万トンの下水処理水の高度処理、これは活性炭処理でございますが、そのプラントの建設にかかっております。これは昨年の七月からいろいろと基本設計に入りまして、この一月ごろに基本設計を終えまして、現在東京都のほうで詳細設計をやり、一部基礎工事の分につきましてはすでに入札発注を終わっております。これは四十八年度から三カ年計画建設する予定でございまして、第二年度目の四十九年度には大部分ができ上がる予定でございます。  問題は活性炭の吸着でございまして、使いまして性能の落ちました活性炭をさらに再生する、この炉の建設が一部五十年度に繰り延ばされるという予定になっております。  東京都のほうといたしましては、現在城北工業用水道といたしまして利根川系の水、これは大体四十万トンパーデーでございますが、これを給水いたしております。そのうちの一部に五万トンの水を五十年度中に給水したい、このように考えておられるようでございまして、私どももその運転にも積極的に協力いたしたい、このように考えております。  それから、先ほど通産省の柴田工業用水課長からお話がございました紙パルブ工場排水のほうの処理の実験でございますが、これは量は、先ほどお話がありましたとおり一日三百トンでございます。山陽国策パルプというところは、非常にたくさん岩国工場が使っておりまして、一日約三十六万トンくらいの水を使っております。その中で現在最も困っておりますのは、一つは公害対策、水質汚濁防止、こういう面からでございますが、これはKPのさらし排水でございまして、あそこの工場では、将来SPの生産設備は次第に縮小する方向でございますので、私どもはKPにつきまして、その汚染源となっておりますKPの再生利用、この実験を始めたわけでございます。これは一応四十八年度に半分くらいの装置の建設が終わりまして、現在試運転に入っているところでございます。四十九年度はさらに残りの装置を建設いたしまして、全部の設備の完成を待ちまして一貫した本格的な運転実験に入りたい、このように考えております。これは一応二カ月ということになっておりますが、実際の運転は五十年度までずれ込む予定になっております。これの一応実験が終わりますと、さらにそれをスケールアップするための基礎データ、それから大体どれぐらいの価格で水ができるか、こういったようなことの推定ができることになっております。  それから、石油化学工場の排水も同じようなことでございまして、これは大体今年の十二月くらいまでにその実験のめどをつけたい、このように考えております。それが終わりましたあとは、紙パルプと同様に、規模を大きくするために必要なデータというものが得られる予定でございます。  それから、下水処理水のほうでございますが、これは昭和四十七年三月現在の統計によりますと、四十六年度一カ年間に下水処理場で処理されました下水の量は四十一億トン余り、大体四十二億トンぐらいになっております。  下水処理場におきましては、大体最初にスクリーンによりまして粗大ごみを除きまして、それから沈砂池に導きまして砂等を沈下させます。それを一次処理あるいは予備処理と申しております。それから次に曝気槽に導きまして、空気を吹き込みまして、微生物の力をかりまして下水を浄化するわけでございます。これを二次処理あるいは本処理とか申しておりますが、これを終わりまして、BODが大体二〇PPMぐらいになりまして公共水域に放流されているわけでございます。ただ、全国の下水処理場で申しますと全体の八割近くぐらいしか、まだ二次処理をやっておりません。ほかは予備処理程度で終わっております。しかし、現在非常に急ピッチで下水処理場の整備が進められております。  現在の下水道の普及率は、四十七年三月現在で二五%程度でございます。それでも約三十数万トンの水が公共用水域に流されておるわけでございますから、私ども東京都に協力してやっております実証プラントの実験で好結果が得られますと——地方公共団体の方は非常に熱心でございます。特に大都市あるいは工業地帯をかかえておりますところは、下水の再生処理につきまして非常に御熱心でございます。したがいまして、その結果をまっていろいろと実用化が促進されるのではないかと思います。  もっとも、先ほど申しました四十二億トン、これがあるいは将来もっと、二倍にも三倍にもふえると思いますけれども地域の関係で消費地の関係もございます。全部がすべて有効に利用されるわけではございませんが、たとえ半分とか三分の一が利用されましても、わが国の水資源不足に大いに役立つのではないかと考えられます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 あと二点だけお伺いしたいのですが、現在、再生利用されることになった、完成された水のコストはどのくらいになるのですか。それが一つ。  それから、いま下水道の話があったのですが、下水道処理は、日本では第一次、第二次処理までは大かた行なわれている。アメリカ、スウェーデンあるいは日本でいうと多摩下水道ぐらいは、第三次処理をやっている。第二次処理でまだ取り切れない窒素だ何だというものは、第三次処理なら完全に取れるのだ、こういうことになっているのですが、そうなんでしょうか。
  39. 村山義夫

    村山参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  現在第二次処理までやっておりまして、BOD二〇PPMということで公共用水域に放流しておりますけれども人口の密集地帯ではそれでもさらに公共用水域の汚濁が進む、こういうことで、東京都等ではBOD八PPMまで下げる、そういった三次処理あるいは高度処理と申しますか、そういうことを導入しようとしているわけでございまして、これは先生の御指摘のとおりでございまして、日本ではまだその緒についたばかりでございます。したがいまして、いろいろな方法検討されておるという段階でございます。もちろん、金をかければ完全に除くことはできます。しかしながら、それぞれの用途に応じまして再生利用する場合を考えますと、要求される水質に応じて適当な処理を行なうべきではなかろうかと考えております。  それから価格の面でございますが、現在われわれがやっております下水の二次処理用水をさらに活性炭で処理する——その前には凝集剤を入れまして、凝集沈でん、ろ過、こういう処理が前処理としてつくわけでございますが、これは昭和四十七年三月くらいの価格と現在の、昨年あたりから非常に物価が高騰しておりますが、その以前でございますが、その価格で、五万トンパーデー、これくらいの規模で約二十円前後、二十一円から二十円。あるいはもう少し規模を大きくいたしますと若干安くなるということでございまして、物価の上昇後の影響というのはまだ十分に検討されておりません。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。  そこで、大臣にちょっとお伺いしたいのですが、水の危機ということは間違いないわけです。これは完全に目に見えているわけで、これに対する対策急務なんですが、水を地下からくみ上げる、それからこれを使う、こういう両方の問題。地下水をくみ上げるなら、地下水の涵養をすることが使う者に義務づけられるようなことを考える。何といってもいまは地下水というものを非常に必要としていますが、かといって、それが地盤沈下をもたらし、地盤沈下ばかりではない、逆に、地下水をくみ上げることで塩分が入ってきてみたり、ある種の汚染が行なわれたりということすら行なわれる。地下水というものは、ちょうどダイヤその他を掘り出したと同じように、一度くみ取ってしまったら、これがもう一ぺん補給されるまでには、長いやつは何十万年、何万年もかかるし、短いのでも二十年ぐらいかかるだろう、こういわれているわけですから、この水の問題を考えたときに、先ほど導水路の一例をあげたのですが、地下水に対しては、地下水だけをくみ上げる、地下水の涵養を義務づけるという、地下水法というような法律ができてももういいのではないだろうかという感じがするのですが、そういう点はどうでしょうか。
  41. 内田常雄

    内田国務大臣 それは、私は正直に申し上げまして、お答えを申し上げる準備がございません。  ただ、私どもがいままでつぎ込まれてまいった考え方によりますと、いまお話にもございましたが、地下水をくみ上げてしまうと地盤沈下になるということで、工業用水などでは地下水のくみ上げを極力制限する。これは法律がないかもしれませんが、行政指導でございましょうか、そういうことでやってきてまいる。井戸などにつきましても、特に地盤沈下のおそれのあるところにつきましては、その井戸水の量を制限してまいる。これは冷暖房用水などにつきましても同じようなことがいわれてまいりました。  そこで、先ほど来から問題になっております、よごれた水に活性炭法とかあるいは汚泥沈でん法とかいうようないろいろな処置を施しまして、もう一ぺん工業用水に回すということをできるだけやってまいることはもちろんのこと、天から降ってきた水を川を通じて海に押し流してしまって、それを飲料用水なり工業用水利用するパーセンテージというものは、今日まだ非常にその割合が少ないわけでありますから、ダムはもちろんのこと、それも上流のダムばかりでなしに、河口ぜきというものをつくって、そして上から降ってきた水を河川を通り過ぎて流してしまわないような方法が先決だろうというふうに、私どもは教え込まれてまいりました。しかし、先ほどの地下水の使用制限のことにつきましては、行政指導でなしに公害関連なんかで何か法律ができて、やってよろしいということではなしに、そういう公害関連の法律がありとすれば、それはなるべくやらせない。やった場合にはもう一ぺん水で補てんしておけということではなしに、やってはいけないという関係の法律のほうが先行しているように私は記憶がございます。これは関係者の方がおられますから、もし私のいまの説明が間違いである場合には補足していただきたいと思いますが、一応私から申し上げておきます。  経済企画庁の総合計画局長から、なお正確な答弁をさせます。
  42. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 いま長官のお答えのとおりでございますが、現在の法律としては、工業用水のくみ上げの制限についての法律と、それからビル用水についてのやはりくみ上げの制限に関する法律がございまして、それぞれこれによりまして、現在のたとえば工業用水の新設等も行なわれておるわけでございます。  ただいま御指摘のございました地下水の問題でございますが、これは何しろ、地下水がどういう形で存在し、またそれが補給されていくのかというようなことについての調査研究というような面で、まだわからない点がだいぶございますので、そういった点の研究を工業技術院その他やっていただいておるわけでございますが、こういった点が明確になってまいりまして、そして法律的に何らかの措置をとることができるということになってまいりますれば、いま御指摘のような形での法律ということが考えられるかもしれません。われわれは、現在までのところでは、まだそこまでの検討ができておらないというのが正直のところでございます。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 いま経企庁で水資源開発基本計画の手直しをやっているのじゃないですか。それはいつごろできるのですか。
  44. 藤井直樹

    ○藤井説明員 水資源開発基本計画と申しますのは水資源開発促進法に基づいてきめておるわけでございますが、これは各水系ごとにやっております。それで、現在その指定水系は五水系ございますが、最近におきましては、利根川の基本計画につきまして、一部楢俣ダムの問題がございましたので改定を行なっておりますが、全体として百三十トンの不足が考えられる、これに対して約百トンの供給源を現在まで確保しております。さらに、不足する三十トンにつきましては、現在各所のダムにつきましていろいろ検討を行なっておりまして、それについてある程度のめどがつくという段階になりましたら基本的な計画改定を行ないたい、そういう段取りを考えております。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 いつごろできるのです。
  46. 藤井直樹

    ○藤井説明員 四十九年度中に大体考えたいということでございます。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 それができましてからあらためて時間をとって、この水の問題だけはもう少し教えていただくようにしたいと思いますから、締めくくりをこれからしたいと思うのですが、現在五百八十のダム建設計画をされている。水資源開発公団からもきょうおいでいただいているのですが、これはどちらでもけっこうですが、現在のダム建設の予定、発表されているとおりの完成日時、発表されている当初の計画にあった工費で進められるのですか。ダム建設に約八兆円ということが当時いわれていましたが、現時点でも、工費において大体変わりがない、完成の日時においてはそのとおりいけるということになるのでしょうか。  特に長野県の味噌川ダムの問題を、時間がありませんからそれだけ、全体的なものをお答えいただいた上に、こまかい問題としては、味噌川ダム計画が予定どおりの五十二年あるいは五十四年でしたか完成ということになるのか、工費も当時いわれました二百十億円という工費で完成できるのか。現在、調査費がついてせっかく取り組んでおいでになるわけですが、これの見通しが一体延びないでいける、工費もあのとおりにいけるのだということになるかどうかをまずお伺いしたい。
  48. 川崎精一

    川崎参考人 お答えいたします。  先ほど八兆円のお話がございましたが、これは建設省全体で全国のダム調査したわけでございまして、私どものほうで現在直接やっておりますのは、基本計画に従って約二十八ぐらいのプロジェクトをやっております。  一般的に申し上げますと調査が二、三年、それから建設が三、四年というのが常識的な速度でございますけれども、ここ数年の現状を見ますと、いろいろ地域的な問題等もございまして、かなりおくれておるのは事実でございます。したがって、中には十年程度の日月を費やしてようやく完成にこぎつけるというようなダムも、最近はかなり出てきております。  それから味噌川でございますが、御承知のように四十八年の三月に基本計画がきまりましたので、私どものほうで昨年の七月に調査の事務所を開きまして、現地には十月に店開きをしたわけでございます。現在約一億五千万程度の予算で調査をいたしておりますが、いろいろ地元の皆さま方との話し合いが現在進行しておるところでございまして、具体的な立ち入りはまだいたしておりません。したがって少し時間がかかろうかと思いますが、近く納得を得られるような空気でございますので、そういう段階になりましたら極力調査を推進いたしたいと思っております。  工期でございますが、まあできるだけ早く促進をいたしたいと思っておりますが、やはり地質的な問題とか技術的な問題もございますので、この辺はことし一ぱい十分調査をいたしましてきめていきたいと考えておる次第でございます。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 予算は大体、先ほど言ったような予算でいいのですか。
  50. 川崎精一

    川崎参考人 現在私どもの見込みでは、二百億余りかかるのではなかろうかという予定でございます。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 次いで、諏訪湖の浄化の問題についてお伺いしたいのですが、まあだいぶ長くからやってきました。ある程度予算も、ごく微量ですがついて、下水道等の処理に入っていったわけですが、現在の状態からいきますと、これは百年河清を待つといいますか、なかなか諏訪湖の浄化というのはとんとん拍子にいきそうもありません。私は地元で諏訪湖の浄化を見ていて、やはりある程度の金をかければ相当早期に諏訪湖の浄化というものも可能になるだろう、こう思っているのですが、聞きますと、流域下水道は県がこれを担当する、広域下水道に関しては市町村だ、こういうことで従来とも処理をされ、今後もそれでいくのだそうでありますが、これは大臣、私がしろうと考えでちょっとおかしいなと思うのは、この広域下水道というのは市町村道みたいなものなんです。流域下水道というのは県道みたいなものです。国道がないのですね。いやしくも、これだけ大規模な流域下水道工事をやろうというときに、国道に相当する部分がない、国道に相当する考え方が欠けているという点が非常に問題だと思うのですよ。ですから、今日の流域下水道というものの考え方を、県単というのをこれを読みかえて、そうして現に県単で行なうものは、ちょうど広域下水道を市町村道と思われるものに読みかえていかないと——もう一つ抜けているのは、下水道が完備したというので、受益者がいやでもこれに参加をしなければいけないのですね。各戸が、最低でもいま二十万円かかるのですよ。本人は、これでもしようがない、がまんしようと思っているのに、下水道が完備するということで、国、県、自治体の間で計画が成立して、その工事がきめられて進んだというと、知らない間に、そこに住んでいる個人は最低でも二十万以上の負担をして、自分の家から広域下水道というところへ流れ出るまでの費用を負担しなければならない。そんな命はないからおれはいやだというと、どこにも捨てるところがなくなっちゃう。流れていくところがなくなる。いやでもそれに加えてもらわなければいけない。強制的にこの下水道を利用させられるのですね。個人が家の前にあるどぶというか、道路から自分の私道に相当するようなものを現在の広域下水道と同じように考えて、これは市町村が負担をする。そうして、その水道が出ていった中くらいの幹線になっている、いま流域下水道といわれるものの間にある、家からその中間をつないでいく、現在いわれているところの公共下水道というものを県単にしていく。県道と考える。それで、個人負担になっている、いやでもやらされる、そこには受益者負担の問題は別にして、これはやはり市町村道と考えて、現在の流域下水道というのは国道と考えて国が全部負担をするということを原則にすれば、私は、下水道工事は非常に進みが早くいくと思いますし、ある種の矛盾がなくなるだろうと思うのです。  御存じでしょうけれども、現在、個人の受益者負担というものが当然あるべきだというので、これは法律で何かきまっているかどうか知りませんが、きめられているらしくて、全国の約三〇%の市町村は受益者負担をさせないでいままでやってきたのを、それを今度は、受益者負担をさせないところには国の補助金は打ち切るというので補助をしなくなったために、せっかく全国の三〇%の地方自治体が受益者負担をさせないでやってきた工事を、今度は受益者負担を必ずさせるということに、ほとんど全国が悪いほうへ右へならえをしてしまっている。こんなばかなことがあるか、税金の二重取りじゃないかということで、御存じのように全国で約六つの市の住民が訴訟をして、いま裁判が進行中という問題——これは受益者負担、私も考えて、あるべきではない、税金の二重取りだと考えますが、このことも含めて、現在の公共下水道というものは、現在個人が負担をしているその部分に相当するものは市町村の負担にして、そしていま現に公共下水道として市町村が負担している分を県が負担をして、流域下水工事というものを県が負担している分を国が負担するという国道の考え方に改める。道路と同じように、いま国道が欠けているけれども、国道、それから市町村道、県道というような段階に、やはり下水道処理に対する基本的な考え方を変えていくことがどうしても必要じゃないだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  52. 内田常雄

    内田国務大臣 建設省から下水道担当の係官が見えておりますから、詳しいお話があると思いますが、あの諏訪湖の地域は、あれはたしか新産都市促進法の適用区域になっているはずでございます。あれにつきましては、申すまでもなく生活関連施設あるいは生産関連施設等につきまして、一般の地域よりも、ことに国が、あるものにつきましては利子補給、あるものにつきましては補助金の格上げ等をやりまして、特にそういう施設整備を進めておるはずでございます。  二つ申し上げることは、一つは、実は私はあなたの隣の県で、しかも学校はおたくの長野県に行っておったわけです。それで、あの辺を通るものですから関心が深いのですが、諏訪湖の周辺は、生活関連施設の整備は、全国の幾つかの新産都市のうちで、非常に早く進んでいるほうに属するはずでございます。  しかし、そのことを言ってみても、いまお話しのように、国道並みに引き上げたらいい、流域下水道というものを県の事業にして、国がわずかばかり利子補給だか補助金を引き上げた程度では筋が通らぬではないかというお話、これが二番目のお話になるわけでありますが、実は私、御承知のとおり、前に厚生省におったことがございます。これは、飲むほうの水道などでもこのごろ広域水道というようなことをやりますけれども、やはり国営水道というものはございませんで、水道というものは地方公共団体の市町村なり、場合によれば最近広域水道なんかは府県の事業にしまして、国がそれに対して助成をしておるというような形になっておるようでございます。しかし、生活関連の公共事業というものは、日本の国のこれからの国民生活の充実などに関連して、さらに進んだ考え方をとるような方向に行ってしかるべきだと私は思います。私は責任ある政府の一要員でございますから、原さんのおっしゃるとおり来年からいたしますとは申し上げられませんけれども、私なども含めまして国全体の考え方も、そういう方面にだんだん進んでいくのではないか。生産第一主義ではなしに生活第一主義、公共事業なども生活関連公共事業というもののストックを進めていく、こういうことになる方向に現に来つつありますので、おっしゃいましたことを私は銘記をいたしております。  ただ現状につきましては、課長か部長さんからお話をいたします。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 担当からお伺いするのなら、ついでにお答えいただきたい。  その前に、いま大臣がおっしゃったように、なるほど、前向きでそうなるだろう、そういう方向に行くはずだ、けっこうなんですが、私はぜひそう行かせるべきだと思う。上水道の場合も国営水道はない——国営水道にしろと言っているのではない。国営でなくていいから、国が全額を負担する、ちょうど国道並みの考え方で予算づけを行なった上で、その運営に関しては自治体が行なうという上水道があってよろしい。だから、上水道の場合でも、私は、やはり国道に相当する考え、県道に相当する考え、市町村道に相当する考え方が順次行なわれてしかるべきだということを申し上げているわけです。  ついでにお答えいただきたいのは、諏訪湖の浄化、あれはたしか下水道を中心にして六十年完成ということになっている。その前に一期、二期。三期が六十年ですが、現在の状態からいって工費が、おそらく現在きめられた工費の二倍か三倍かかるのじゃないかと思うのです。国の負担する、たしか三分の二ということになったと思いますが、その分の額も現在の倍以上にふくれ上がっていかなければ完成をしないというふうに思いますが、現在のきめられた予算がどの程度膨張するとお思いになるのか、六十年完成が可能か、こういう点をひとつお答えいただきたい。
  54. 久保赳

    ○久保説明員 まず、下水道事業全般の問題の中で、諏訪湖の流域下水道は現在県それから市町村で実施をしておるわけでございますが、それを道路でいえば国道並みあるいは市町村道を県道並みというふうに格上げをして進めるべきではないか、こういう御意見でございます。これに対しましては、事業の実施はともかくといたしまして、財政的な負担を、先生指摘のような趣旨に沿うのが適当であろうということから、流域下水道につきましては、特に処理場については従来二分の一でございましたが、それを四分の三というふうに今年度引き上げたわけでございます。パイプにつきましては同じく二分の一を三分の二というふうに引き上げまして、国の負担分を多くすることによってこの種の事業の解決をはかっていきたいということで、今年度からそういうふうな体系になったわけでございます。  それから、個人の負担が二十万円以上あるじゃないか、こういうような御指摘でございましたが、現在個人に負担をしていただいております分は、個人の宅地の敷地の中で下水道ができますと、従来敷地の中にありました排水の設備、これは個人の財産でございますが、その排水設備を直しまして、たとえば水洗便所も可能にするとか、あるいは台所、ふろ場等から出てくる汚水を全部集めて公共下水道のほうに流し込む、こういう設備でございまして、これはあくまでも個人の財産でございますから、それらを下水道ができるとあわせてつくっていただくことにしておるわけでございますが、個人の財産に助成をするというわけにはまいりませんので、現在では、公共団体に用から融資をいたしまして、その融資したものを原資にして個人に長期で貸し付けるということで実施をしておるところでございます。  それから、その次の問題は受益者負担金等の問題がございましたが、これにつきましては、あくまでも、そういう制度を採用するしないの意思決定は公共団体の条例で、根拠法は都市計画法でございますが、その採択をきめるということにしておるわけでございまして、先生が述べられましらような、受益者負担金制度をとってないところには国費が出ない、そういう仕組みではございません。  それから最後に、諏訪湖の流域下水道の総事業費がかなり上がるじゃないか、でき上がる見込み等についてはどうか、こういう御質問でございましたが、これは昭和四十六年度からスタートをいたしておりまして、その当時のお金で全体の事業費が百七十五億円ほどかかる予定になっておりましたが、御承知のように最近かなり物価が上がってまいって、建設資金がふえてきております。その状況も、現在の単価で言いますと四割程度上がるのではないかというふうに思っておりますが、まだ完全に建設資材の価格が必ずしも安定しておると思いませんので、百七十五億というものをかなり修正しなければできないのではないかというふうに考えております。  それから、その完成の時期でございますが、これは県が実施をするもの並びに市が自分の市域の中の下水道を実施するもの、あわせて総合的に進めますので、一応全体ができ上がりますのは六十年、これを目途に関係者と協力して進めたいというふうに考えております。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 いま御答弁の中で、受益者負担がないから補助金を打ち切るということはない、こうおっしゃいましたね。これは自治体はたいへん喜びます。現に、そう思い込んでいるのかどうか知りませんが、ほとんど右へならえで、受益者負担をたとえ百円でも二百円でもさせるということをすべてやっているのが現状です。一度お調べおきをいただきたい。だが、いまの御答弁で、そういうことはないのだということは、非常にありがたいことなので、これはさっそくに地方自治体にも伝えるつもりです。  それから、個人の財産になるという考え方ですが、たとえば家の前の道路のぬかるみのやつが、その道路が舗装されるということも間接的には、個人の財産とは言えないまでも、非常に大きく個人、住民の利益になるという意味で考えますと、私が言ったように、やはり国道、県道、市町村道という考え方でこの問題を解消していくということを考えたほうがいいのじゃないだろうかというふうに申し上げたわけですから、大臣のところでは、この点、もう一度よくお考えおきをいただきたい。  最後に、この問題でもう一つ。全国都道府県が公共下水道に対して補助をしているところと補助をしていないところがある。長野県の場合補助をしていない。している都道府県があり、していない都道府県があるのですが、私は、やはり都道府県が公共下水道に対しても、現在の地方財政の状況からいっていろいろな問題があるにしても、公共福祉ということを前面に政治課題としていくならば、法律であるいは何らかの方法で義務づけて、全国の都道府県が公共下水道に関する補助を出すべきであるということをきめるべきだと思うのですが、大臣いかがですか。
  56. 内田常雄

    内田国務大臣 その辺、経済企画庁の私としてはわかりませんが、そういうたてまえに変えるためには、補助の主体を都道府県にして、都道府県が補助したものに対しては国が幾らか埋めてやる、こういうかっこうをとれば、御要望のような点が全部満足されるわけでありますけれども、私の記憶違いでなければ、その公共下水道というものは市町村が事業主体で、市町村に対して補助を出しておる、こういうかっこうで、府県がその上に国と並んで補助を出すかどうかということは、その両者の公共団体の財政関係その他によっているのではないかと私は記憶をいたしております。  しかし、先ほどのことを繰り返しますと、これから日本の目標というものは社会福祉を高めたりあるいは生活関連の施設を充実したりすることにあるわけでありますから、必ずしもいままでの、昔のとおりな財政的な措置を、いつまでも同じような形で繰り返せば済むというものではございませんので、原さんの非常に進歩的な、また地方の実情に即した御要望を私は銘記をいたしまして、そういう御要望がありましたことを関係の向きにも十分影響させるようにいたしてまいりたいと思います。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がなくなりましたので、最後に所得政策について、結論的なことだけお伺いをしたいと思うのです。  本来、現段階における日本経済を考えますと、所得政策はいやでも爼上にのぼってくるだろうと思うのです。現に経済企画庁長官としても、これをタブー視することは間違いだというような発言が前にあり、それを中心にして企画庁に正式に、賃金、物価との関係における所得政策のあり方について検討を命ぜられたということも報道されています。いうところの所得政策が賃金抑制というところに重点が置かれるなら、これは断固反対しなければいけないと私どもも思いますが、しかし、所得全体の再配分という立場で——もちろん、税金の問題から配当の問題から賃金の問題から物価の問題に、あらゆるものを総合検討整理した上で所得再配分という形での、われわれが考える正しい意味での再配分が主体になるとするなら、われわれのみならず、国民といえどもあえて反対するものじゃないと私は思うのです。ですが、現在進行中の所得政策検討がどこにウエートが置かれ、どうされているかは大臣にお伺いしなければわかりませんが、現在のところ、大蔵大臣所得政策はとらぬと言う。経済企画庁長官にしても、所得政策をとにかく一応検討するというふうにお考えだろうと思うのですが、もうすでに経営の側からは所得政策が行なわれている。一方的に価格の指定をしてみたり、政府の価格におけるガイドポストができてそれによってある程度の物価の抑制を考えるという、指導的な、相当強い権限を持った役割りも果たし始めているこのことは、経営の側に対してはすでに所得政策が実施されているんだ。たとえば労働、賃金の側に対しては所得政策らしいものが、自発的に考えてくれる何かの期待があるのかどうか知りませんが、発言をされていない。確かにそのとおりだと思いますし、前段に申し上げたように、賃金抑制のための所得政策であっては断じていけないと思うのですが、現在の状況を考えると、現に所得政策が経営の側では一方的にもうすでにスタートをしているんだという考え方が正しいんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  58. 内田常雄

    内田国務大臣 これは論議をいたしますと非常に幅の広い論議になりますので、本日は省略をいたしますが、結論だけ申し上げますと、私は、あるいは政府は、賃金抑制の手段としての所得政策検討し、あるいはそれに沿った賃金抑制のガイドラインを打ち立てるという考え方は、全くございません。全くございませんが、わが国の賃金の資源になり、あるいは企業の利潤の資源になり、あるいは金利や地代の資源になるものは、毎年の国の生産力の増加といいますか、付加価値の増加といいますか、それを分母にして、それがいま申しましたようないろいろの分野に配分されるという形であることは間違いないわけでございます。従来は、企業のほうでも利潤追求だけやっておれば、それで日本の経済成長は行なわれ、またそれが日本の経済の発展にもつながって、フルエンプロイメント、完全雇用にもつながったでございましょう。あるいはまた賃金も諸外国並みに高くすればするだけ、それだけまた国内の購買力もふえたり、あるいは海外から買い入れる購買力になってもいいわけでありますが、それがわが国のたとえば自動車の普及を助けたり、電気製品の普及を助けたりして、国民全体の生活水準が上がっていき得たと思うわけでありますけれども、最近、ことにエネルギーとか、あるいはその他のアグリ経済運営のための基礎資源の海外からの供給というものの制約などを考えました場合には、いままでのように、企業は利潤追求でいけばいいんだ、あるいは勤労者は賃金の増加だけをやっていけば、それに引かれて資源やエネルギーの獲得も伸びてまいり、また日本の経済も成長していくといったようなそういうパターン、メカニズムではなくなってきつつあることは、これは、私どもがこれをながめた場合に、そういう状態の変化が行なわれていると思うわけでございます。他のことばで言えば、日本の経済成長率というものは適正な範囲に抑制せざるを得なくなり、あるいはまた生産性の増加というものも制約をされたり、それに価格をかけた付加価値の増加というようなものも、物価を上げない場合には当然制約をされてまいりますので、私は、そうした制約された付加価値の増加、生産性の増加というものがいかなる形で国民の各層に公平に分配さるべきかということを考えていかなければ、日本の経済社会というものの運営は不可能になってくるのではないか、かように思うものでございまして、繰り返しますと、賃金抑制の手段としてではなしに、そういう付加価値の配分を適正にするためにここであらためて検討する必要があると考えるわけであります。  しかし、こうして所得政策ということばがいろいろの意味にとられておりまして、一番狭い意味では、最初に申しましたように賃金を制約するための手段、ことに法規的手段をもってこれを制約するようなことにとられる場合もありますし、また一番広い意味においては、私がいま述べてまいりましたような、広い意味で国民的な合意や検討を進めていくということもこれは所得政策だ、こういうふうに定義づけられてもおりますので、私は、最も広い意味において皆さま方とともにこの問題を検討をしていく、その検討の結果どのように日本経済の新しい指導政策を打ち立てるかということは、それはまたあとの問題になる、かように考えながら所得政策のことについて関心を持っておる、こういうことでございます。これは私が詭弁を申すわけでもございませんので、ことに事業に御関係のある原さんは十分御理解いただけることと思いますので、いろいろまた御教示もいただきたいと思います。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 私がお伺いしたその一点が抜けているのですが、現在の経営の側は、資本の側といったほうがいいでしょうね、現状は所得政策にもうすでに一歩踏み込んでいる、そういうふうに見るべきだと思うのですが、どうかという点が一つ。  それから、ついでに最後にお伺いしたいのですが、所得政策検討に入るときに、いまの日本のインフレ物価の状況からいって一番参考になるのは、新しいイギリスの政権であるウィルソン内閣が新経済政策というものを発表しましたね、これの御検討はさぞされているだろうと思うのですが、この一つ一つが、実に日本の物価インフレを直ちに押え込むのには一番適切な方法ではないか。しかも、自民党政府といえども、これならやれる。ほんとうにインフレと取り組み物価を引き下げようという決意があるなら、このウィルソン内閣の新経済政策なるものを思い切って検討をして取り入れていただくことが、現在大きな政治問題になっている物価問題におそらく適切な力を入れたことになるだろう、こう思うのです。所得政策検討も必要ですが、イギリスの新内閣の打ち出した新経済政策というものは、まさに日本にぴったりしている。現在の日本でやらなければいけないことを彼が率先いまやっているというふうに私は見て、そのほうを先にやるべきではないか。要するにあれも新しい形の所得政策であることに変わりはありませんが、ああいう所得政策の概念あるいはああいう所得政策の予算への織り込み方、課税あるいは物価に対する統制というようなものが、日本に非常にぴったり適切に合っているものだというふうに、私は考えられてなりません。  このイギリスの新政策を検討しておられると思いますので、所得政策がいますでに違った意味で、日本の資本の側からは足を突っ込んでスタートしているということに現状認識をすべきだと思うのですが、それが一つイギリスの新経済政策を日本に当てはめて初めて企画庁長官としてのお役目が果たせるのではないか、インフレ物価に適切に対応できるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。これを最後に、やめます。
  60. 内田常雄

    内田国務大臣 あとのほうの、イギリスのウィルソン労働党内閣のとられている経済政策につきましては、これまた論議になりますので多くを申し上げませんけれども、参考になる点もございますが、いま原さんがおっしゃいましたような、全面的にあれがわが国のこれからの新しい経済指導政策として取り入れるべきパターンであるとは、実は残念ながら私は思っておりません。イギリスにおきましても、新労働党内閣が新しい政策をとり始めた結果、それが連鎖的に非常に国内の経済不安やあるいは物価の上昇やあるいは輸入超過やインフレを高めているような面もあるようでございまして、皮肉な言い方をいたしますと、ウィルソン内閣はあまり長い間政権をとっているよりも早くもう一ぺん解散に逃げ込んでしまったほうが有利だ、こういうこともいわれているようでございますので、他山の石として、進歩的なわが自民党は十分参考にはいたしますけれども、そのものずばりは、おっしゃるとおりには受け取り得ない面もある、私はかように思います。これは議論でありますから、あなたの御意見は御意見として十分承って、さらに勉強を進めたいと思います。  それから、いまの企業がすでに所得政策に入り込んでいるということについては、おっしゃる意味がよくわかりませんけれども、企業というものが今日社会的責任を持っております以上は、さっきもちょっと触れましたように、自分だけ利潤追求でもうければいいというものであってはならないわけでございまして、企業が生み出す付加価値あるいはその量的生産性の増加部分をどのように合理的に公平に配分すべきかということを、企業にも十分考えていただきたい。これは勤労者の賃金を押えつけるということではなしに、いま申しましたような意味において、企業家もともに、広い意味日本経済の今後の合理的で公平なやり方について考えてもらいたいと私は思っております。これは失礼な申し方もございましたでしょうが、お許しをいただきたいと思います。
  61. 原茂

    ○原(茂)委員 あとに譲ります。どうもありがとうございました。
  62. 臼井莊一

    臼井委員長 次は、庄司幸助君。
  63. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は、インドネシアに対する海外協力の問題でお伺いしたいと思うわけです。  昨年、この決算委員会で、対韓援助の問題で集中審議がやられたわけですが、その中で、いわゆる日本の経済援助が現地の住民の非常に大きな反感を買っているという点が、各委員から指摘されたわけであります。この間、田中総理がインドネシアを訪問されたわけですが、その際もやはり、学生デモその他にいわゆる大歓迎、これはカッコつきでありますが、されたわけです。田中総理に至っては、目の前で国旗を焼かれる、あるいはまたヘリコプターで脱出する、こういうように、対日感情が非常に悪化しているという事態をまざまざと見てこられたんだと思いますが、あの反日デモについてはいろいろの説もあります。軍部と経済企画院との対立であるとか、そういう説もあるわけですが、その底にあるものはやはり日本の海外援助、なかんずく日本の商社あるいは資本の進出に対して国民的な反感が強いということは、これは田中総理も目の前で見てこられたんだと思うのですが、その点で、対韓援助の集中審議以来、こういった海外援助のあり方の問題については、当然もうこの時期に一ぺん再検討して反省して出直す、これが非常に大事な立場じゃないかと思うわけです。  最初に一般論から御質問するわけですが、いわゆる海外経済協力基金を主管されている大臣から、あのインドネシアのいわゆる反日デモ、その底流にあったもの、この点についてどのような反省をなさっておられるのか、その反省の上に立ってどういう今後の方針でインドネシア援助を含めた海外援助を進められるのか、この辺、一般論ではありますが、最初まず伺っておきたいと思うわけです。
  64. 内田常雄

    内田国務大臣 先般、田中総理が東南アジアを訪問されましたときにおけるインドネシアの学生の問題などにつきましては、私は、それはどのような原因に基づくものか、またその状況判断などにつきましては、正直に申し上げましてよくわかりません。よくわかりませんが、しかし、次の二つのことは、日本の海外協力援助等を実行いたします際に、庄司さんのおことばを待つまでもなく、常に考えてまいるべきであると思います。  一つは、もちろん日本の海外援助というものは、日本を今日経済的にも繁栄させ、また国民生活をささえていくためにも、日本の単独の進め方だけでやっていけるわけではなしに、国際経済との協調ということ。また、それを踏まえて、かりに日本が経済的に成長してきた国であるとするならば、日本段階に及ばない発展途上国などについて日本ができ得る経済協力というものは、世界の各先進国とともに、あるいはまた特に日本の立っている経済的基盤というものから考えて、進んで経済協力を続けていくべきものであるということが一つ。  それから、その経済協力をやります場合に、わが国の立場だけから考えたひとりよがりの方向の経済協力ではなしに、経済協力を受ける国の国民や国家に十分受け入れられるようなそういう経済協力であるように、これは相手国の事情も年々違ってきてまいりますから、一つの固定した行き方ではなしに、いつも常に考え直しながらこの経済協力というもののあり方を進めていくべきだ。  この二つのことは考えなければならないと思います。インドネシアでああいう学生の騒ぎがあったからといって、インドネシアに対する経済協力をしばらくサスペンドしてしまうとか、停止してしまうとかいうようなことはやるべきではないように考えるものでございます。
  65. 庄司幸助

    ○庄司委員 実は、田中総理が帰国したあとの記者会見で、いわゆるこの反日デモについて質問を受けて、その際、正すべきは正す、こういうことはおっしゃっております。しかし、そのほかに、現地語の勉強が足りなかったとか、あるいは若い人の個人主義への反発があるとか、こういう、理由にならないような理由をあげておられたのです。やはり根本的に、ああいう反日デモが爆発するような底流ですね、これに迫るような反省がなされておらないというような受けとめ方を私はしておるのです。だから、この辺で今後の援助については、あれを教訓にして深くかみしめて出直す必要がある、こう思うのです。経済協力基金も、援助の分野では相当大きな役割りを果たしておるわけですから、これを主管する大臣として、田中総理のあのような反省でいいのかどうか、これは大臣とすればむずかしい御答弁になるかもしれませんが、その辺、一言お聞かせ願いたいと思います。
  66. 内田常雄

    内田国務大臣 実は私は、インドネシアに一度も参ったことがございません。したがって、最近のインドネシア国民や若い学生たちの動きや日本に対する感情というものに、はだをもって接したことがないわけであります。でありますから、私がここでいろいろ申し上げることは全く真実味に欠けてしまいますので、それはあなたのお話として、きょうの段階では承っておきます。  ただ、私どもがいろいろな新聞、雑誌等を通じて最近目にいたしますことは、田中さんが行かれた一月の段階と今日の段階と、そもそもああいう騒ぎはどういうところから起こってきたかというようなことにつきましても、当時の状態とかなり違った冷静な客観的な立場からの考え方が、インドネシアの国民あるいはまた第三国においても行なわれているようでございまして、やはりこういうものは、庄司さんがいま御批判なされたことの基礎になる一月のあの騒ぎのときばかりでなしに、その後の冷静になってきた現地並びに第三国のものの考え方ということも取り入れてまいらなければならない、取り入れてしかるべきであろう、このようにも私は考えますが、何にしても私は、ああいう騒ぎが起こっていることを決していいと思うものではございませんので、日本が発展途上国に協力する以上は、先ほども申しますように、現地の国民的共感を得るような方向を極力とってまいるのがいいのだということは間違いないと思います。
  67. 庄司幸助

    ○庄司委員 これから少し具体の問題についてお伺いいたしてまいります。  一つは、経済協力基金が扱っておりますいわゆるプロジェクト援助、あるいは商社その他の海外投資に対する輸銀の貸し付けなり、そういった問題について少しお伺いしたいわけです。  まず第一点でお伺いしたいのはプロジェクト援助の問題ですが、リアム・カナン・ダムという多目的ダムですね、これについては基金のほうから毎年援助が出ていたわけです。いま詳細申し上げますが、これは昭和四十三年度に二十億七千九百万円ほど貸し付け実行額で出されております。これは基金です。それから四十四年度、今度はダムの水力発電所、これに十七億円ほど出されております。それから四十五年度、今度は送配電網の建設事業として三億八千万円ほど出されておりますが、実はリアム・カナン・ダムについてはいろんな報道があるわけですね。  その一つだけ御紹介しておきますが、リアム・カナン・ダムというのは、水が毎秒百二十ないし百三十立方メートル流れている。ところが、これが利用されているのは発電機一台分ですね。それしか利用されていないで、あとの分はほとんどそのままダムから放流されている、こういう状況だということがいわれております。しかも、この発電所が約一万キロワットですか、こういったキャパシティーがあるにもかかわらず、ピーク時で四千キロワットしか発電されていない。ところが、この下流の農用地のかんがいにはこの水は一滴も利用されていないというのです。こういうダム、これはもちろんインドネシア政府自体の計画もあるのだろうと思いますが、こういうプロジェクトをつくる際もっと効率的な運用がなされないのか、こういう批判があるわけです。  このリアム・カナン・ダムについて経済協力基金、あるいはこれは外務省でもけっこうですが、こういう水が流しっぱなしになってむだになっているようなダムに相当の金額の援助をしている、こういうこと自体についてお調べになったことがあるのかどうか、まずこれから聞かしてもらいたいのです。
  68. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のリアム・カナン・ダムと申しますのは、カリマンタンの南のほうにございますダムでございまして、いわゆる三Kプロジェクトと申しまして、ジャワ島の東のほうにございますブランタス川という川に沿いましたカランカテス・ダムというのと、カリコント、これも川の名前でございますが、そこでのいろいろな計画と、このリアム・カナンの——リアムというのは右とか左とかいうようなそういう意味でございますから、カナンという川の名前でございます。その名前をとりまして、三つのKのついたプロジェクトというふうに申しておったわけでございます。  これは庄司先生承知かと思いますが、賠償をインドネシアに対して払っております時代から始められました事業でございまして、賠償の際におきましては、インドネシア政府の側にいろいろな事業計画を立てる主たる責任がございましたことは事実でございます。したがいまして、インドネシア政府の希望に従いましてこういうプロジェクトがスタートされたわけでございますが、そのスタートされたころから、南カリマンタンの開発計画というのはいろいろなアイデアがございまして、このリアム・カナンという川の下流地域のかんがい計画であるとか、さらにその下流の潮をとめてさらにもっと広くかんがいをする計画であるとか、いろいろなものがあったわけでございまして、これを南カリマンタン州の知事をしておられましたノールさんという方が非常に熱心に中央政府に説かれてすすめられたものでございます。ところが、中央政府でも、なかなかその方面に向かっての援助のお金など回すわけにはいかなかったというような事情がございまして、わずかにリアム・カナン・ダムの構築並びにそこにおきます水力発電所の建設ということだけが先へ進んでいっておる。  一番の問題点は、この川が海へ入ります地点おたりで非常に土砂の堆積が多くてしゅんせつをしなければいけないということがございまして、冨いこと、まずこの川のしゅんせつをすべきであるということが唱えられておりましたが、今年度のインドネシアに対しますプロジェクト援助の中でこの川のしゅんせつをやろうということがすでに決定しておりまして、このしゅんせつができ上がりますと港の使い方も十分に進んでまいり、いろんな荷物の搬入それから材木の搬出等々ができるようになって、それからだんだんにかんがいの計画等も進んでまいれば、いま御指摘のような、ダムはつくって、発電所もつくってみたけれども、多くの電力が使われないまま水が流れておるというような事態は、逐次解消していくものというふうに考えておりまして、そういう点に長い目で着目いたしますれば、リアム・カナン計画も必ずしもプロジェクト性を欠いておるというふうには言えないのではないかというふうに存じております。
  69. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは長い目で見ればと局長おっしゃいますが、ですから、こういう計画を策定する際、当然日本側とインドネシア側は協議するだろうと思うのですよ。その場合、やはり日本側としても長期の展望に立って、これは発電はやる、それから土砂のあれを食いとめる、それからかんがいにも使う、しかも発電についても当面何ぼ必要なんだ、将来はどういう工場が出て、あるいはどういう人口が集まって、どれぐらいの容量、キャパンティーの発電所が必要だ、こういう点もっと総合的に突き合わせて考える必要があるんじゃないかと思うのですね。その点で、これは「工事関係者の一人は「リアム・カナン・ダムが完成することは以前からわかっているのだから、それと並行してかんがいプロジェクトをとりあげるべきなのにまったくばかげている」と腹をたてダム、発電所は通産省、かんがいは農林省という日本側の援助体制に問題がある」こう指摘しているといわれております。  その辺で、日本側の経済援助に対する協議の体制、これが内部で意思統一が十分じゃないんじゃないか、こういう批判もあるわけです。これは、アジア経済研究所がインドネシア援助の実態を調査しておりますが、この中で「協力における意志決定と実施」の問題として、「意志決定と実施に関係する集団の数が多すぎる。」一つのプロジェクトの遂行のために援助供与国——まあ日本なら日本の意志決定機関と実施機関がある。それから受け入れ国側のそういう二つの機関がある。四者ある。この「意志決定は各省や」——各省というのは、日本の各省もあればインドネシアの各省もある。「各省や利害団体の妥協の産物として生れる。意志決定機関と実施機関との意志疎通がうまくゆかないのが通例である。結果は「無計画、非統一、非能率的な事業の集積」となる」こういうふうに述べられているくだりがあるのですね。これは外務省だけの責任ではないと思いますが、一体日本の、こちら側としてどうなっているのか、その辺ひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  70. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 ただいまのリアム・カナンの問題については、先生も御指摘のように長期的なプランというものが必要であるということは、当初から考えておったところでございますが、遺憾ながら、先ほど申し上げましたように賠償という時点から出発いたしましたために、そういった総合的な時間を組んでの計画の進め方にはなかなかなり得なかった。賠償が終わりまして、その後いわゆる普通の対インドネシア援助のワクの中に組み入れられました後におきましても、インドネシア側の経済企画院と申しますか、バペナスと俗称しておりますが、そこでのプロジェクトリストの中になかなか、先ほど申し上げましたようなしゅんせつというようなものが載ってこなかったというところに、むずかしい問題があることは事実でございます。ただ、日本側におきましては、いわゆるインドネシア援助協議グループというものが世銀の主宰でございまして、それを通じて、そこにおきます討議を通じてインドネシアに対して主として援助を行なっておるわけでございますが、その会議での対処方針というものの作成の段階におきまして関係各省が十分な連絡をとって協議をして、ことしはこういう。プロジェクトを取り上げていこうということをきめてやっておるわけでございまして、関係省間において御指摘のような意思の疎通を欠いておるというようなことは、あまり考えられないのではないかというふうに存じております。
  71. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから、このプロジェクト援助その他で、こういうこともあるのです。一九六三年に契約が成立しながら、七年も八年も機器が倉庫に保管されたまま眠っている、そういった西ジャワの米ぬか油の搾油工場、こういう事例もある。それから南カリマンタンの製紙工場、この辺も、二千二十万ドル支払って九〇%完成しながら、部品欠損や老朽などによって、十年以上たってもまだ操業できぬような工場もある。  こういう非常にずさんな援助が、どちらの責任かわかりませんがやられているということは、これは受け入れ国のインドネシアの国民からいってもまさにむだな援助であるし、ましてや供与国である日本の側からすれば、国民の血税である、ほんとうに年金やあるいは簡易保険の積立金からこの原資が出ているわけですから、こういうものがむだにされているのはたまらないわけです。その辺、そういったむだに眠っている問題やあるいはずさんな投資があった、こういう事例は一体幾らぐらいあるのですか。御調査なすっていますか。
  72. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のような、たとえば六三年ごろからの問題がございますとすれば、それは賠償によってインドネシア側が購入した資材が不幸にして御指摘のような状態でおったということであろうかと存じます。賠償の時代には、御承知のように、インドネシア側に対して賠償を支払うのが日本の義務でございまして、インドネシア側の立てた計画に従って義務を履行してまいるというたてまえになっておりましたので、あるいは確かに私も、現実に各所でそういうような不幸な事態になっているところを見まして、これは改善すべきであると感じたこともございますが、その後、今度は、一九六五年のインドネシアにおきます政変の後におきまして現在のような経済援助の体制ができ上がったわけでございますが、それから先はいまの御指摘のような形ではなしに、日本が援助を供与する際に、内政干渉というようなところまで至らないようなことに注意しながら計画を十分に練り上げて、しかもその計画が実際によく遂行されるように配慮をして、また一九六八年には、そういった過去におきます計画がほんとうに効果を発揮しているかどうか、そういうことの調査を行なうというようなこともやりまして、漸次改善につとめてまいったわけでございます。  ただ、御指摘のように、そういうようなプロジェクトが幾つどこにあってというようなことは、全面的に調査して数字を調べたというようなことはございませんが、六八年のいわゆる北島ミッションの報告書というのはすでに公にされておるところでございますので、これはそういう意味からごらんになっていただけるものというふうに存じます。
  73. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから私は、農業に対する援助の問題についてひとつお伺いしたいのですが、農業問題の援助についてアジア経済研究所の指摘を見ますと、どうも日本の農業援助というのは資源収奪型のこれは私のことばですよ、資源収奪型の農業援助の感があるのですね。ほんとうに現地の農民の役に立っている援助かどうかきわめて疑わしい点があるわけです。アジア経済研究所の指摘では、低開発国の農業開発に対する日本の民間協力——これは民間協力ですが、他の先進諸国に比べて非常に立ちおくれている。それはいわゆる肥料や農機具を売り込む分野あるいはトウモロコシなどの一次産品の開発輸入、これに関連する分野、あるいは砂糖などの加工に関連する分野、これには民間協力があるのだが、現地で在来からあるゴムやパーム、茶、コーヒー、こういう多年生のプランテーション作物についてはほとんど見られない。——ですから、要すれば日本の肥料や農機具をどんどん売りつける、それでもうける。同時に一方、飼料、こういうものを買ってくる。そして地元の在来のそういったものを育てるような努力がなされていない。こういうところにインドネシア国民の反感がつのる一つの原因があるのじゃないかと思うのですね。  それからまた私は、こういう話も聞いたわけです。いわゆる技術援助で技術者が参ります。ところが、ジャワならジャワの米について、化学肥料をどんどんぶち込むような日本型の農業指導をやるというのですね。そうすると、あそこは熱帯性の土地ですから非常に分解が早くて、確かに一時期は作物の実りはいい、しかし地力がどんどん低下してしまう。これは日本でも見られている現象ですが、日本より温度が高いだけに、地力が低下してだんだん不毛化する。こういう技術的な協力をやられているということも聞いているわけです。  それからもう一つは、いわゆる耕地をつくる、土地造成、これで、いままで表面に積もった腐植土、こういうものをブルドーザーでどんどんはがしてしまって、在来のいわゆる岩石まじりの土地が出てくる、そこへ化学肥料をまいてやるような指導がなされているというのです。これがインドネシアの地力低下につながっているという農学者の指摘もあるわけなんですが、その辺は一体どういう指導をやられているのか。  技術援助、技術援助といいながら、相手の国に迷惑をかけるようなこういう技術援助、実態に合わない技術援助がやられたのではかなわないと思うのですが、その辺、外務省と農林省がおそらく協議してやるのでしょうけれども、一体どういう実態になっているのか、お知らせを願いたいと思うのです。
  74. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 私は農業の専門家ではございませんので、私の答えが先生の御指摘の点にぴったりくるかどうか必ずしも自信がございませんが、まず、農業の分野におきます技術協力というものにつきましては、日本の海外技術協力事業団というものを通じまして技術協力を行なうのが普通でございますが、その際に農林省にお願いいたしまして、農林省の技術者をその専門家として派遣していただく、あるいは農林省にかつておられた方で民間なり地方なりに行っておられる方に専門家として行っていただく、そういういろいろなやり方をやって、やり方といたしましては、一つのプロジェクトを組んでやるとか、あるいは個々の専門家が先方の要請に応じて先方の農業試験場のようなところに入り込んでやるとか、あるいはまた農業省の中に入っていくとか、いろいろな形が見られるわけでございますが、そういった場合に必ず相手方の希望も聞き、また、そこの場所におきます気候条件、風土等につきましても十分な知識を得て後協力をするのが普通でございますので、御指摘のような、あるいは当初の時期において極端に収穫をあげるために地力が低下したというような事例が全くないとは申せないのかもしれませんが、そういうようなことは極力避けながらやってまいるというのが普通の形であると存じております。  インドネシアにおきます農業技術協力につきましては、いろいろな場面がございましたが、大きなものといたしましては東ジャワにおきますトウモロコシの開発計画でございますが、これは何も資源収奪というような形のものではございませんで、東ジャワにおきまして、トウモロコシをいろいろな試験的な植え方をしてみてそこのトウモロコシをふやす、増産するということに協力をしたというわけでございます。また西ジャワにおきましては、今度はお米の増産のお手伝いをしたわけでございますが、もちろん、お米の増産につきましては、日本がお米を買ってくるというつもりはございませんので、これが資源収奪といわれるはずのものではございませんが、ボゴールというところにございます農業試験場の技師などとよく連絡をとりまして、この周辺の地域でいろいろなお米を植えるための技術改良について協力をした、こういったのが政府レベルでやりました技術協力の大きな例でございまして、いずれもそういった場合には、先方の専門家とも十分に連絡をとっておりますし、先方の農民の希望を十分にかなえるようにやっておるというふうに存じております。
  75. 庄司幸助

    ○庄司委員 それがそうじゃないんですね。たとえば、トウモロコシの話をなさいましたが、向こうでは白いトウモロコシを食用につくっているのです。ところが、日本から行って、いわゆる飼料用の黄色いやつをつくれ。それも金になるならいいのですよ。しかし、小農民からいえば、まず自分たちの食糧を確保する、ここがいま一番大事なところなんです。あのとおりジャワで干ばつがあったりいろいろあって、不作の年が相当あるわけです。そういう小農民が自分の生活を安定させる、ここのところを主眼に置いて援助をやって、その上で生産力が発展して、いわゆる輸出向けの作物に転換していく、あるいはこれをつくっていくというならば、これがほんとうに現地住民に合った、現地に合った指導だろうと思うのですよ。それがどうも日本への輸出、特に最近そうなるだろうと思うのですが、田中総理も言っていますから。インドネシアでどんどん飼料作物をつくらせて、あそこから開発輸入をやるのだと言ったでしょう。こうなると、現地の農民の自主性を無視した資源収奪型というと少しオーバーになるかもしれませんが、そういう受けとめられ方をするわけです。  これは、やはり指摘の中にあるのです。しばしば指摘されることであるが、大規模なインフラ投資が、それを補完するような小規模な投資あるいはそれにふさわしい技術が与えられないままに、無為に近い状態に放置されるか、——これはダムの話だろうと思うのですが、あるいは所期の効果をあげられない例がある。それは、現にそこに生活する小農民にとって、その施設利用することの効果を知らしめる手段、そしてその効果をファームレベルで実現させる手段に欠いているからにほかならないのだ。食糧を安定的に供給する組織が整備されなければ、農民の関心事はもっぱら食糧生産の増大に向けられて、商品作物の導入には向なかないだろう。——専門家のこういう指摘もあるのです。  だから、外務省にしろ、農林省にしろ、こういった一貫した一つの援助政策を検討する機関が、体系的なものがいまのところございませんから、こういう問題点が所々方々にあるのだと思います。外務省なら外務省に、こういうものを調査研究するような専門家がインドネシアの大使館におりますか。
  76. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 日本の在インドネシア大使館には、農林省から書記官が出向しておられますし、またそのほかにいろんな問題につきまして、大使館の館員のほかに、いわゆる調査員という形で三名ほどの人間が常時滞在しておりまして、御指摘のようないろんな問題でそごを来たさないように、各地に行ってみたり、現場を見たり、また理論的な研究をしたりすることをしておりますし、またさらに、先ほど申し上げました技術協力のワクの中でも先方の農業省の中に人が入って、インドネシアの農業省の側と協力して農業計画を立てるということにつとめたりという努力を行なってきております。したがいまして、確かに御指摘のような各種の問題点がまだ残っていることは事実でございますが、今後も努力を重ねまして、そういった農民の希望に沿わないような経済協力は逐次なくなしていくように努力を続けてまいりたいと存じております。
  77. 庄司幸助

    ○庄司委員 外務省が言っております三名ぐらいの調査員とか、しかもこれは委託でしょう。これでは、海外援助の効果測定とかあるいはその他の調査が十分なされるはずはないと思うのです。ですから、その点でもっと外務省自体が本腰を入れてやらないと、この間の田中さんみたいな目にあうわけですから、十分注意していただきたい。  それから外務省で、海外経済協力白書ですか、何か調査報告は毎年出しておられるのですか。
  78. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 外務省では、現在のところそういった白書のようなものは出しておりませんで、むしろ通産省が「経済協力の現状と問題点」といった冊子を毎年発行しておられます。それから海外技術協力事業団が年報といったようなものを出版しております。
  79. 庄司幸助

    ○庄司委員 外務省は調査団を出されたわけでしょう。その調査報告はことし何か出るやに聞いておりますが、いつごろ出るのですか。
  80. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 調査団は各種のものが出ておりますので、どれを御指摘になっているかよくわかりませんが、多くの場合、調査団の報告書は、調査団が帰りましてからまとめまして、まとまり次第印刷に付して、公開できるものはできるだけ公開するということにしております。
  81. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでは、今度は木材の問題で少しお伺いしたいと思うのです。  これは経済協力基金からちょうだいした資料に基づいて見るわけですが、三井物産と王子製紙が組んで四十三年十二月にトリオマス・フォレストリ・デベロップメントというのをつくりましたね。これは九五・六%こちらの出資です。それから三井物産がミツゴローというおかしな名前の森林開発会社か何かをつくっています。これは九〇%基金から出ています。それからスマトラ木材、これは基金はついておりませんが、一〇〇%日本出資。それから四番目はカリマンタン森林開発協力、これが九十万ドルで九〇%日本側出資。それから三菱商事がバリックパパンの森林会社、これは基金から出ていますが、八〇%日本側出資。それから六番目は住友林業、これが七十万ドルで七〇%日本側出資で基金から出ています。それから新旭川、これが八〇%日本側出資で基金から出ています。もう一つあります。安宅産業、これは三三・三%ですが、こういう木材関係の商社なり会社なりがカリマンタンあるいはその他にどんどん進出しているわけです。  これについて、こういう批判があるのです。日本企業の進出の重点は、より豊富な天然林を持ち、開発規制のゆるやかなインドネシアへ向かった。インドネシアの豊富な森林資源は無尽蔵な財源視され、乱開発されたきらいがある。その点で、とりわけ日本による森林伐採、木材輸入は商社の民間ベースを主体としたため、そのエコノミックアニマルぶりがしばしば現地国からの批判の対象となった。輸入商社は日本の木材需給に合わせて現地の天然林をかってに切り倒し、あと地は荒野のままに放置してきた。——こういう批判があるのです。  これは基金から金を貸しているわけですから、こういう乱開発をどんどんやっている実態、これについてどういう規制をなさっていますか、指導なさっていますか、これをひとつお伺いします。
  82. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいま先生から御指摘のございました、インドネシアにおきまして、日本の商社が開発輸入のために合弁会社を設立しておるような事例があるわけでございます。  先生ただいま御指摘の、インドネシアにおいて日本開発が乱開発に陥っておるという御指摘でございますが、この点につきましては、いま先生指摘のような形の合弁会社というのは、東南アジアから輸入しておりますラワン材二千二百万立米くらいのうちで、まあ、インドネシアから入りますのが八百二十万立米くらいでございますが、その中で六十万立米くらいでございまして、あとは現地の資本が伐採をいたしましたものを買い取るという形で輸入をいたしておるわけでございまして、大かたは、その現地資本による伐採のしかたというものが、そのあと地の更新というものを必ずしも十分に行なっていなかったのではないかというふうに考えられるわけでございます。で、いま先生指摘の合弁会社につきましては、現地国政府で示されておりますところの伐採方法とかあと地の更新について、それらの指針というものに従って実施されておるというふうに承知いたしておるわけでございますけれども、近年開発が急速に進んだという点がございまして、そういう合弁会社についても、森林の保続なり培養への配慮が必ずしも十分でなかったという面はあろうかと思います。それから、現地資本による伐採の問題につきましては、伐採のみでなく、あと地の更新が確実に行なわれますように、人工造林であるとかあるいは誘導造林等による森林造成が、伐採と有機的連係を保って一体として行なわれることが望ましいわけでございますけれども地域によっては森林造成等の技術体系が必ずしも十分確立したとはいえないという実情にございますし、また多額の資本なり施設なりというようなものを要するということがございまして、そういう点で必ずしも十分でないというような実情にあるようでございます。  そういうようなことでございますので、私どもといたしましては、今後民間企業が木材の開発輸入に当たるというようなことになります場合には、森林資源の保続培養等の面で一そう万全を期するように指導を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  83. 庄司幸助

    ○庄司委員 ですから、これは通産省の経済協力部で出したカリマンタン班の報告があるのですね。この最後のほうに「今回の調査において、日本商社筋から報告された問題の一つに「日本が木材を収奪しているという国民感情がインドネシア国民の中に芽ばえている」ことが指摘された。日本側としては「先方が生産した木材を日本が買っているに過ぎないではないか」と」、いまおっしゃったようなことですね、「と反論できょうが、」と、ちゃんとその問題はわかっているのです。しかし、まあ問題は次のとおりだといって、いろいろあげているわけです。  この問題点というのは、これは明らかに、やはり日本とは質が若干違うにしても、やり方は同じような乱開発につながっているということです。これはどうしもインドネシア国民から反感を買う存在になると思うのは当然なのですね。しかも、経済企画庁で出されたと思うあの新経済発展計画ですね、あの中には明らかにこの南方材の輸入、これをもっとふやさなくてはならないという指摘もあるわけですね。ですから、私は、これはやはり政府と商社が一体となって乱開発されていった傾向がどうしてもいなめないと思うのですよ。だから、こういう態度はどうしても改めてもらって、やはり現地の自然を保護しながら、しかも森林資源を涵養しながら開発に進まないとうまくないのじゃないか、この点指摘しておきたいわけです。  これは指摘だけにとどめますが、時間もなくなったので、次に漁業問題ですね、これもやはり同じような問題点があるのです。  漁業については、これも政府のほうからちょうだいした資料によりますと、東邦水産が、これも九〇%日本側出資でミサジャ・ミトラ・カンパニー・リミテッド、こういうものをつくっております。それからトーメンと宝幸水産がトーヨー・フィッシング・インダストリー・カンパニー・インドネシア、これは九四%出資。それから日本水産と三菱商事、南方漁業開発が組んで、これも九〇%日本側出資で西イリアン漁業会社ですね、これをつくっている。それから日本水産と報国水産が日商岩井と組んで、これも八〇%日本側出資でイリアンの漁業会社をつくっている。それから大洋漁業と三井物産が組んで、やはり一つの会社をつくっています。これはどっちも八〇%。それから極洋がやはり進出している。それから日魯と三菱商事が組んで東インドネシア漁業会社というのですか、これも八〇%出資で出ております。  このいわゆるインドネシアに進出した漁業会社ですね、これがどういうことをやっているのかというと、ほとんどあの周辺のエビに目をつけて、エビの乱獲をやっている。  そういう点で、これも一つ報告書でありますが、この相手のパートナーがきわめて買弁的だというのですね。その出資者のほとんどは西イリアンの土豪とか陸軍の協同組合であるとか、これは陸軍は、あそこの軍隊は奇妙な組織で、屯田兵みたいな組織があるのですね。それから水産総局首脳部の現役や退官者の方々が現地のパートナーになっていて、何にも漁業知識もない。そこへ日本の大手の水産会社、大手の商社が乗り込んでいって、エビあるいはあの辺ではカツオもやっていますが、どんどんとってくる。まさに漁業資源を収奪してくるようなやり方ですね。これがやはり現地の漁民から反感を買っているという報告があるのです。  だから、こういう林業にしろ、漁業にしろ、農業にしろ、こういうやり方を続けていくならば、ますます私は、インドネシア国民の日本に対する反感、エコノミックアニマルだ、こういう反感がつのるのだろうと思うのですが、この辺で私はやはり、きょうは経済企画庁長官内田大臣から反省を込めて、ひとつどう今後展開されていくのか、ひとつ御所見を聞かせていただきたいと思うのです。
  84. 内田常雄

    内田国務大臣 そういう状態がありますならば、それは私は庄司委員のおっしゃるとおり、いろいろな経済協力に伴う資源の開発確保等につきましても、またそのための経済協力につきましても、留意しなければならない多くの点を含んでいると思います。  しかし、いま庄司委員がおあげになりました経済社会基本計画の中に、わが国の住宅建設その他木材需要等を考えるときには、国内産の木材だけでは足りないから、海外の木材の輸入、そのための経済協力の問題にも触れておりますが、その触れ方は、庄司さんがおっしゃったこととかなり違いまして、そういう場合に経済協力をして外材の輸入をするのだが、その場合には先方の地域開発なりあるいは関連施設の整備なり、あるいはまた森林資源の培養なり、そういうことを十分考慮すべきであるということをむしろうたってございます。これは恐縮でございますが、その辺のところをもう一度ごらんをいただけると幸いでございます。どこかにそのことが書いてありますので、私どものほうが今後経済協力、なかんずく発展途上国などにつきまして経済協力をする場合には、先ほど私が冒頭にもちょっと申し述べましたように、こちら本位の考え方だけでなしに、現地から十分受け入れられるようなことを考えるべきでありますが、そのことにつきましては、それが森林資源の開発であれ、あるいはまた農業資源の開発であれ、庄司さんのおことばを十分私は踏まえて、さらに関係各省そのつもりで当然やっていかなければならないことであるということをここであらためて私はお答えをいたしながら、私どもの自戒の資料ともいたしたいと思います。  ただ、実際は若干の誤解もあるようでございますので、全部が全部、こちらの経済協力の対象になっている事業というものが御批判の対象になっているようなやり方ではないということでもあるようでございますが、しかし、その辺は、庄司さんもいいかげんなことをおっしゃるわけではないわけでありますから、私は政府部内におきまして関係方面とも十分協力をし、ともに戒めてまいりたい考えます。
  85. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで私、最後に商品援助の問題についてお伺いしたいと思うのです。  これは一九六八年以降七三年までの数字ですが、インドネシア向けの商品援助、これが千百六十八億円、これは四十六年度だけでいえば約百九十七億円ですが、この商品援助についていろいろな批判が出ているのですね。批判というよりは非難です。これは田中総理に随行した記者団の座談会でもだいぶいわれているわけです。非常に粗悪な製品だ、あるいはすぐ使えなぐなるような船や自動車、こういうものを売っている。あるいは発電機を国際価格の二倍ぐらいの値段で売っている。そうして、もうけたのは日本の政商と相手国の一部特権階級で、一般国民にはほとんど恩恵がなかった。デモがここまで突っ走った大きな要因として、日本企業の大統領側近への接近があまりにも露骨であり、常識を越える巨額のリベートが裏から裏へと渡っていたことをあげねばならないということを言っている記者もいるのですね。これはこの間、いつかの週刊誌にも出ておりましたが、お名前はここでは出しませんが、ある有名な——記者の方の用語だといわゆる浪人ですね。昔、満州浪人とかなんかあったわけですが、その人が、石油に関連してどうもリベートをもらっているのじゃないかなどといううわさもある。これはまあうわさとしておきます。商品援助についても非常に疑惑が濃いわけです。  ですから、私は対韓援助の際も要求したわけですが、商品援助についてこういった疑惑が持たれているわけですから、どういう企業を経由して、どういう品物を何ぼで現地に売ったんだ、こういう点は当然政府が明らかにしていいんじゃないかと思うんですよ。しかも海外協力基金が出されている。原資になっているのは、さっき言ったように郵便貯金とかあるいは国民年金などの、零細な国民の積立金でしょう。その点、私はここに合計の額はちょうだいしたのです。各年度ごとの合計の額はあります。あるけれども、たとえば自動車が非常に高く売りつけられた、あるいはまたインドネシアではまるきり必要のない時間・メートル併用制のメーターがついたタクシーなんかまで輸出された、こういうでたらめな援助もあるわけですね。ですから、その点で、私はみなとは言いませんから、少なくとも、ずっと見て額の大きい肥料関係、硫安であるとか尿素であるとか。それから自動車、これも相当多いのです。それから、先ほど話にのぼった発電機。こういったものの数量であるとか単価であるとか商品名を明らかにして、契約企業名、それから契約年月日、こういうものをぜひ資料として当委員会に御提出願いたいと思うのです。これは担当がどこになるかわかりませんが、大蔵省が渋いという話もあれば、いろいろあるのです。
  86. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の商品援助、インドネシアに対します場合は非常に特殊な形をとっておりまして、一九六五年の政変の後に、六六年から緊急援助というのが開始されたわけでございます。それに引き続きまして六七年以降商品援助、プロジェクト援助等が並行して行なわれておりますが、これらは初めいわゆるBEといわれました、現在ではDKというインドネシア語の頭文字をとった形で行なわれておりますが、これは要するに、インドネシアの輸入業者がまずインドネシア政府に若干のお金を払って、DKといういわば一種の債券のようなものを買い取って、それをもちまして日本からいろいろな品物を輸入する、こういうシステムになっておるわけでございます。その輸入代金を今度はインドネシア政府に支払うときには、このDKの証書を持っていることによって日本政府が肩がわりといいますか、かわりに払うというかっこうになるわけでございますので、したがいまして、御指摘のような資料を出すことはまず不可能かと存じますが、ただ、御指摘のように、妙な、入り用もない自動車が入ったり、そういったような不当なことが行なわれないようなことになるのは、インドネシアの商人が自分たちで選んで買うわけでございますから、日本の側が無理に押しつけて売るわけではございませんので、御指摘のようなことは全く起こり得ないことでございますし、発電機の場合ですと、これはプロジェクトエイドの中でございますから、これは特定の発電所に必要な発電機が売られるということでございまして、全くそういった無用なものが売り込まれるというようなことは起こり得ないというふうに存じます。
  87. 庄司幸助

    ○庄司委員 ですから、私はいま、無用なものを売ったとかなんとか言ったのじゃなくて、どういう規格の、どこのメーカーの発電機を何ぼで売った——売ったというか、供与したのだ、これを出してほしい。これは商品援助からちょっとはずれますけれども。  それから、相手が買うのだから何ともしかたないのじゃないかというような御答弁の趣旨のようですが、これはわからないことはないだろうと思うのですね、日本側が援助しているのですから。政府が値段も調べないで、相手ほうだいだということはないわけでしょう。ですから、この自動車なり尿素なり、一トン何ぼだ、こういうものは政府が当然つかんでいる数字だと思うのです。それもつかんでいらっしゃらないのですか。
  88. 青木慎三

    ○青木政府委員 お答えいたします。  日本が支払いをするわけでございますから、その契約そのものはわかるわけでございますが、先ほど御巫局長から御説明いたしましたように、向こう側の輸入業者がこちらの輸出業者との間で契約で買っておるものでございますので、これは全く私契約と同じでございまして、その間に何か日本側が不正なことをするとかあるいは不要なものを押しつけるという余地は全くない、通常の個別取引と同じでございますので、たまたま入手し得ました資料でございましても、私契約の中身に入りますので、不正の入る余地のない資料を提出するのはごかんべん願いたいというふうに考えております。
  89. 庄司幸助

    ○庄司委員 実は対韓援助の集中審議の際も、出す出さないでだいぶもめたわけです。私契約だから出せない、これが当局の一貫しての態度なんですね。しかし、私契約だけれども政府の援助がついているわけですから、国民の血税が背後にあるわけですから、しかもそれについていろいろな非難が当該国の国民の中にあるわけですから、これは私は当然明らかにしてもらわないと、海外援助の決算についての討議に差しつかえがあると思うのです。ですから、これは委員長におかれて、ひとつ理事会で御検討を願って、ぜひ出していただく方向検討していただきたいと思うのですが、これは委員長にお願いします。よろしゅうございますか。
  90. 臼井莊一

    臼井委員長 理事会で御相談いたしましょう。
  91. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから最後に、実は経済協力基金の関係でこういう話があるのです。日本側から供与される経済協力基金の借款その他で、期限は大体二十年償還であるとか、七年据え置きとか、年利五分とか三・五%とかありますね。ところが、これがインドネシア側へ行くと、外貨借款がすべて中央銀行から転貸される制度である。そのため計画主体者は、インドネシア銀行に対して二十年償還で日本から行っておるものが十年償還に減ってしまう、それから七年据え置きが三年据え置きに減ってしまう、金利のほうは五%から一二%にぐっとはね上がる、こういう過酷な条件に変わってしまうのだということが、一つ報告書の中に出ているわけです。  これは非常にふしぎな話なんですね。せっかく日本の好意的な低利の援助をインドネシアの銀行がピンはねしているといわれてもしかたがないのじゃないかと思うのですが、この事実について何か御存じないですか。
  92. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 インドネシアに対します援助の中で、プロジェクト援助とそれからもう一つDLBSというのがございます。これは銀行システムを通ずる開発援助というふうに訳せるかと思うのですが、こういったものにおきまして、御指摘のような、日本から受け取った金利と、それから実際に使う人が受け取った場合の金利とに若干の差が出てくるような場合が、あるいはあるかと思います。しかし、これは先般インドネシアの大臣から説明を聞きましたところでは、一方、政府のほうで経理をきちっとしておりまして、そういった、そこで生じました差額というのは、政府がこれを開発事業に向けるというふうな仕組みになっておるという説明を受けております。
  93. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間がありませんから、これはこれでやめますけれども、基金がほんとうに七年据え置いて二十年償還にしてやって、成り立つように配慮しているわけでしょう、日本側は。それが三年に据え置きが削られ、十年の償還にされて、利子が上積みされる。これではせっかくの援助が所期の目的を果たせなくなると思うのです。こういうことをぬけぬけとやらしておいて、それで私は済まないだろうと思うのです。ですから私は、基金の運営に関して、これは相手国の主権の問題だといえばそれっきりなんですが、しかし、これは非常に重大な問題だと思うのですよ。やはり韓国の場合でも論議されたように、日本から非常に安い利息で行ったのが、向こうへ行くとまるで高利貸しみたいな金利に変わっていく事例も出たわけです。ですから、相手国によってこういう日本側の援助が、いわゆる独裁的な国家によってかってに使われる、これはやはりけしからぬと思うのです。これはぜひやめさしてもらいたいのですがね。その点ひとつ御答弁願います。
  94. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、このやり方はインドネシア政府の予算のやり方の問題でございまして、一般予算と開発予算という大きな二つのワクに大別いたしまして、一般予算の中で、支出の部面の中にはいまのような日本に支払います金利のパーセンテージをあげておきまして、片一方、収入の部面には、それより若干高いと思いますが、御指摘のようにたいへんな開きがあるとは思われませんが、それが計上されておって、その支出と収入の差額が、収入のほうが多かった場合にこれを開発予算に組み入れる。その開発予算の収入に組み入れられたものが、今度は開発予算の支出として開発事業に使われていく、こういう仕組みになっておるわけでございまして、決して、その間でだれかが不当なことをしておるというような仕組みになっておるわけではございません。しかもまた、これは日本の場合にだけ限ってやっておるわけではございませんで、各国から入ってまいります援助につきましてすべて同じような取り扱いを受けているというふうに説明を聞いておるところでございます。
  95. 庄司幸助

    ○庄司委員 もう時間がありませんからこれで終わりますが、これは私は納得できません。こういうものを長期の展望を持っていろいろやるのですから、二十年必要なんだから二十年でこちらが貸してあげたものが十年に削られ、利息が高くてはたいへんだろうと思うから五%ですね——原資の受け入ればいま七・五%でしょう。身銭を切っても安くしてやっておるのが一二%と七%もピンはねされておる。こういう事態は私は了承することができません。  時間がありませんから、これで終わります。
  96. 臼井莊一

    臼井委員長 次は、坂井弘一君。
  97. 坂井弘一

    ○坂井委員 海外経済協力基金の投融資の実態につきましてお尋ねしたいのであります。  まず、投融資の相手国をインドネシアに限定いたしまして、基金からインドネシアに対します投融資業務の実績、四十七年度末で、それも直接借款と一般案件の二つに分類されますが、直接借款はさておきまして、一般案件に限ってお答えをいただきたいと思います。一般案件の承諾額、貸し付け実行額、回収額、残高、トータルでけっこうでございますが、おわかりでございましたらば、海外経済協力基金高木理事から御答弁いただきたいと思います。
  98. 高木廣一

    高木参考人 お答え申します。  一般案件の四十七年度、承諾百六十二億円、実行が百六十億円、貸し付け残高が五百九十三億円、こういうことでございます。
  99. 坂井弘一

    ○坂井委員 承諾が百六十二億で実行が百六十億、残高が五百九十三億といいますと、金額的に合わない。
  100. 高木廣一

    高木参考人 承諾が百六十二億円でございます。そうして実行が百六十億円、二億円だけ残っているわけですね。そうして貸し付け残高が五百九十三億円でございます。
  101. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。  いかがでしょうか、インドネシアに対します一般案件の貸し付け、投融資につきまして、その回収はほぼ順調なんでしょうか。
  102. 高木廣一

    高木参考人 特別のものを除きまして、全般といたしましては順調でございます。
  103. 坂井弘一

    ○坂井委員 私ども調査によりますと、いま高木理事から特別のものを除きましてと言われました特別のものといいますと、カリマンタン森林開発協力株式会社に対する融資案件、これをさしておっしゃったのではないかと思われますが、このとおりでしょうか。——では、前段としてお聞きしておきますが、この一般案件の場合の融資条件でございますが、通常、償還期間それから金利、これは大体どのようになっておるのでしょうか。
  104. 高木廣一

    高木参考人 そのときの状況によって変化いたしておりますので、一般的には申し上げられませんですけれども、各種の条件をやっております。
  105. 坂井弘一

    ○坂井委員 では、後ほどカリマンタン森林開発協力株式会社に対する分に限ってお尋ねするといたしまして、その前に、このカリマンタン森林開発協力株式会社に対する融資は、いつから始まっていつまでで、その承諾額、貸し付け実行額、回収額、残高、それぞれお示しいただきたいと思います。
  106. 高木廣一

    高木参考人 お答え申します。  昭和三十八年から始まりまして今日に及んでおります。そうして貸し付け残高が二十六億一千七百万円、これは四十四年でございまして、現在では、利子その他を加えますと二十九億円ぐらいになっております。
  107. 坂井弘一

    ○坂井委員 承諾額が幾らで、貸し付け実行額が幾らで、それに対します回収額が幾らで、最後に残高は幾らかという順序でお答えいただきたいと思います。
  108. 高木廣一

    高木参考人 四十四年まで承諾いたしておるのですが、それの承諾額が二十八億円、そうして貸し付け実行額が二十六億九千五百万円、回収が七千八百万円ございまして、残高が二十六億一千七百円ということになっておるわけであります。
  109. 坂井弘一

    ○坂井委員 つまり、たいへんな額が焦げついてしまった、こういうわけでございますね。この事業は完全に失敗でしょうか。
  110. 高木廣一

    高木参考人 簡単に失敗とは申し上げられないのですが、これは昭和三十八年から始まりまして、このときにはまだインドネシアの森林開発ができておりません。そうして両方政府が非常な意気込みをもちまして、経済協力の模範的な一つの試みとして始まったわけであります。ただ、非常にパイオニア的な事業でございましたので、双方にも経験の足らぬところがあり、いろいろ困難が出てきたわけでございます。しかしながら、このいろいろの困難、経験が基礎になりまして、その後のインドネシアとのいわゆるPS方式による森林開発が順調にいっている。そういう点ではこの事業自身は非常な苦難をなめたのでございますが、これによってインドネシアの森林開発が始まって、その結果はインドネシアに非常な外貨をもたらし、そして、先ほどもお話しございましたように、あまり開発し過ぎてはというところまできたというのが実情でございますので、そういう経過を見ながら判断をしなければいけないんだろう、こういうふうに思います。
  111. 坂井弘一

    ○坂井委員 高木理事、そういう御答弁でよろしいのでしょうか。これは私はいささかいただけないのですね。それは納得できないです。少なくともカリマンタン森林開発協力株式会社、これに対します融資二十六億九千五百万を貸し付けて、回収されたのがわずかに七千八百万、残高が二十六億一千七百万、今日は利子を加えますと二十九億にもなる。この事業そのものは、PS方式は完全に失敗したのでしょう。PS方式の事業の中止されたのはいつですか。
  112. 高木廣一

    高木参考人 これは四十五年に、先方でもPS方式というのはもう新しくやらない、そして新しい規模にしろ、新しい形式にしろということで、先方としては新しいやり方を打ち出してきましたし、この事業自身はその後できた他のPS——これは四十二年ぐらいから始まったのはうまくいって、まだ続いてやっているのもございます、ほとんどもう終わりましたが。この件は最初両方がえらい意気込みでやりましたから、その後どういう形で——PSはもうできないということでございますので、過去二年ばかり非常に苦労して新しい方式を考えて、そして、とにかくパイオニア的な仕事であるけれども何とか有終の美をしたいということで、最近、新しい方式で進むというところまでこぎつけたわけであります。
  113. 坂井弘一

    ○坂井委員 最初のPS方式、つまり生産物分与方式、これが失敗に終わった。それでもって、いま理事のおっしゃる新しい方式と申されましたのはコントラクター方式、つまり請負方式、これでやろうとしている。まだかかってませんか。
  114. 高木廣一

    高木参考人 この四月末から大体動き得るめどがつきましたのが実情でございます。
  115. 坂井弘一

    ○坂井委員 おいおい申し上げたいと思いますけれども、社長さん、この間インドネシアまで飛ばれたらしいですね。これも御存じのとおりずいぶん経緯がありまして、協定を結び、実行契約まで結びながら今日までなおこの新しい方式が出発できない、たいへん難航しておりますね。  話はまた前後いたしましたが、回収されました七千八百万円、これはいつでございますか。
  116. 高木廣一

    高木参考人 回収されました金額は、残念ながら七千八百万円でございます。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 いつ回収されたのでしょうか。年月日をおっしゃっていただきたい。
  118. 高木廣一

    高木参考人 これは昭和四十二年の六月と四十二年十二月、四十二年十二月、合わせて七千八百万円。金額はそれぞれ二千二百万円、二千九百万円、二千七百万円でございます。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 PS方式が失敗いたしまして事業が中止されたのが一九七〇年六月、つまり昭和四十五年の六月、こういうわけでありますから、先ほどの御答弁のとおりだと思います。これは事業が失敗だということが——つまり、順序を追って申しますと、貸し付けたのは、最初は昭和三十八年が四億四千四百万、三十九年十億三千万、それから四十一年に五千六百万、四十二年に九億三千二百万、四十四年には二億三千三百万、合わせまして二十六億九千五百万、これが貸し付け実行額でございますが、この融資条件はどうなっていますか。
  120. 高木廣一

    高木参考人 FDCに融資いたしましたのは五%、回収期限十年でございます。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 二年据え置きでしょうか。
  122. 高木廣一

    高木参考人 これは実はいろいろのユニットがございまして、ユニット別にやっておるのでございますが、据え置き期間が、第一次の四億四千六百万の分に対しましては三年半、十億のものは、ナンバーツー、ナンバスリーの第一次が三年、据え置き期間はこうまちまちになっております。一年半から最長が三年半まででございます。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 個々につきましてはそれぞれ入り組んでおるようでございますが、第五ユニットまでありますね。そこで、平たくお尋ねしますが、つまり、二十六億九千五百万円の貸し付け額に対しまして回収をされたのがわずかに七千八百万円。その回収が四十二年の六月及び四十二年の十二月に七千八百万円あった、こういうわけでありますが、ほかは全部こげつきですね。そういうことになりますか。
  124. 高木廣一

    高木参考人 そのとおりでございます。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 それではお尋ねしますけれども、第一ユニットの分で追加したものがございますね。及び第二ユニットも追加されたようであります。追加貸し付け、これはいつ、及び金額をお示しいただきたい。
  126. 高木廣一

    高木参考人 第一ユニットの第二次融資は四十一年六月、承諾額は六千六百万円、期間は三年二カ月で据え置きが一年半。それからナンバーツーユニットの第二次が四十二年五月に三千五百万円やっております。これは期間が二年八カ月、うち据え置きが一年七カ月でございます。第一次、第二次はそのとおりでございます。  また、そのほかにユニットナンバーワンの第三次が四十四年一月に一億二千七百万円、ナンバーツーの第三次は四十四年一月一億一千八百万円、これは前者が期間四年十一カ月、据え置き一年十一カ月、それから後者が期間五年十一カ月で据え置き期間が二年十一カ月、こういうふうになっております。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 三十八年から貸し付けまして、その中で回収されたのがわずかに七千八百万円、しかも、これは四十二年の六月及び十二月であります。つまり、もう焦げついた、回収不可能であるというような状態にありながらも、四十四年に至りまして、いまお示しのとおり合計で二億三千三百万、これだけ第一ユニットと第二ユニットの追加分としてまた貸し付けをした。これはどういうわけでこういうことをされたのでしょうか。
  128. 高木廣一

    高木参考人 四十四年一月のユニットナンバーワン第三次とナンバーツー第三次は、再建をするための追加融資でございます。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 再建できなかったですね。全部失敗に終わった。  あらまし、私のほうから経緯を申し上げましょう。  インドネシアのほうはインドネシア林業公社、これはプルフタニといっています。このプルフタニと本邦企業ではカリマンタン森林開発協力株式会社、略称FDCといっております。これは三井物産、三菱商事外四十四社それぞれ出資いたしまして資本金十二億、設立が昭和三十八年六月の二十日、社長さんは橋本正次郎とおっしゃる元大蔵省のお役人であります。このカリマンタン森林開発協力株式会社、これが借り入れ人になりまして、そしてインドネシアの経営主体であるところのインドネシア林業公社、つまりプルブタニとの間で、カリマンタン州のうち北部地域約二百四十万ヘクタール、これを対象といたしまして、先ほど申しましたPS方式で事業を行なう、つまり森林を、南洋材を伐採いたしまして、一部は現地で製材加工される。しかし、その大部分は日本に輸出される。輸出されました、輸入されました材木が日本国内で販売されまして、そして基金から借りた金の返済に充てる。つまり、こういう生産物分与方式で経済協力をいたしましょうというわけで事業が始まったわけでありますが、いまも明らかになりましたように、完全にこの基金からの投融資、融資された金が返らない。焦げついた。どういうわけでこの事業が失敗したかということでありますが、失敗の主たる理由、これは何でしようか。
  130. 高木廣一

    高木参考人 このFDC事業を始めましたときは、日本はまだ南方林業開発経験がございませんでした。それから、このFDCの先方との協力体制につきましては、調査、全期作業計画並びに年次作業計画の作成、開発用資機材並びに労務、物資、クレジット、技術協力、丸太の買い付け、こういうようなあれになっておるわけでございます。  そうして、PSでございますから、こちらのほうが開発に協力しながら、その開発せられた木材を日本にも分けてもらえるという体制でございますが、当時、この事業が始まりましたころは、インドネシアとマレーシアの関係もよくなく、そうして、本来から言えば、マレーシアとの国境地帯から始めるというのは非常にまずいわけでありますが、PS方式でありました関係上、FDC単独ではなかなか言うことを聞いてもらえない。先方のほうも事業主体は自分のほうであるという考え方とか、そういうような両者の協調態勢というものがうまくいかなかった。また、南方林業開発について日本経験がほとんどなかったと言っていいくらいじゃないかと思うのであります。もちろん、初代のFDCの社長は元林野庁長官の三浦さんがなられ、日本としてはベストメンバーでやったわけでありますけれども、たとえば、持って参りました機械も、あの大きなラワン材を切るのには十分でなかったとかいうようなこともございます。その他、先方ももちろんでありますが、日本側におきましても非常な経験不足であったという点、その点で日本側としても非常に反省しておる、かつ責任を感じておるのですが、そういうことでこの事業が、先生がおっしゃったように失敗と言えば、この事業そのものについてはいままでのところ動かなくなったということでございますが、この経験は、他のPS方式には全部、非常な他山の石となってプラスにはなっておりますので、それからこの事業自身もこれで終わったのではなくて、先方との話し合いで、一千万ドル近い先方への貸し付けがございますが、これも返せる体制をつくる話し合いがまとまりまして、近く今月末くらいから新しい体制で動き出すということになったわけであります。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 いやに、他のPS方式の成功への一つの土台といいますか、なったというようなあれですけれども、ほかは確かにおよそ成功していますよね。一覧表がございますが、必ずしも満足とは言えませんけれども、南カリマンタン森林開発事業、これは貸し付け先は三井物産。それからインドネシアのプル島森林開発事業、これも三井さんですね。それからインドネシア中カリマンタン森林開発事業、これも三井さんですね。これらを見ますと、まあほぼ実効をあげつつある。これはPS方式成功ですね。  私は、いま申し上げておりますカリマンタン森林開発協力株式会社、ここがねらった地点がなぜ失敗したか、事業の中止のやむなきに至ったか、これははっきり言いますと、大体こういうところで森林開発事業のできるようなところじゃないということ。たいへんなところなんです。交通の便が悪い、通信はできない、最奥地である、もともとこの種の事業をするには不適地であった。これは基金さんからいただいた資料なんです。おたくのほうでこうおっしゃっている。しかもカリマンタン地区における完全なパイオニア事業である。失敗することが最初からわかっておるような地点なんです。こういうところに二十七億もの基金の金をぶち込んで焦げつかせた、結果はそうじゃありませんか。少なくともそのようなPS方式によって事業が着実にできるようなところではなかったということ。  三十八年以来今日まで、失敗したらその次はどうしたかといいますと、一九七〇年七月より一たん中止、中断ですよ。それから二年越えて、日本とインドネシア間の交渉の結果——これはもう外務交渉までいっているのですね。一九七二年八月二十三日に一般協定が調印されました。そして方式を変えましてコントラクター方式、つまり請負方式でやりましょう、このコントラクター方式によりまして事業を継続することに決定を見た。この本協定は、一九七三年三月二十二日調印の実行契約とともに、一九七三年六月十三日両国政府の承認を経て発効し、現在実行段階にある。  ところが、まだ実行してませんね。どういうことになったかといいますと、交渉相手たるプルフタニ、つまりインドネシア林業公社、これがもめまして改組問題が起こった。そしてこれがようやくにしまして、株式会社PTインフタニに改組されました。プルフタニがインフタニになった。本年二月に実施細目の交渉が初めて開始された。四月には事業が再開される見通しである。  いま理事は、四月の末ごろから再開される見通しが大体ついた、こういうことですね。はたしてこの再開が軌道に乗るかどうか、私はこれは非常に疑わしいと思う。つまりコントラクター方式、これにさらにサブコントラクター、つまり下請負をさせる。相手はだれかといいますと、香港国籍の会社ですね。何とおっしゃいますか。
  132. 高木廣一

    高木参考人 サブコントラクターは、ユナイテッド・インベストメント・アンド・ファイナンスという、香港にある会社でございます。最初はこれともう一つ、二社を考えていたのですが、結局この一社にやってもらうということになったわけであります。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 コントラクター方式でいきますと、まずプルフタニが事業主となるわけですね。FDCに事業を請け負わせる。つまり本邦企業です。カリマンタン森林開発協力株式会社、これが請け負う。請け負いましたFDCが、さらに下請負人、つまりサブコントラクター、これを指名する。その指名するサブコントラクターが、いまおっしゃいました香港国籍の会社ですね。ところが、この下請負人は、自己資金によって丸太を生産し、これをFDCに売り渡すと同時に、一定額のサブコントラクトフィーをFDCに支払う。FDCは、下請負人から受け取ったサブコントラクトフィーの中から、請負人としてプルフタニに対し一定額のコントラクトフィーを支払う。プルフタニは、この受け取ったコントラクトフィーを財源として、そのうちから一定額をFDCに対すろ負債の返済に充当する。これはたいへんうまい仕組みです。このとおりいったらまず失敗ない。全部フィーを置きながらいくわけですね。最終的には、どこが一番責任を持つかといいますと、下請負人、つまりサブコントラクター、こういうことなんだ。どれぐらいの一定額を積み上げていくかといいますと、一立米当たりUSドルで三ドル五十セント、そういうことで間違いないでしょうか。
  134. 高木廣一

    高木参考人 間違いございません。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうしますと、焦げつきましたこの基金の貸し付け資金、これが回収されるのにどれぐらいかかりますか。
  136. 高木廣一

    高木参考人 士二年とちょっとでございます。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 これまたずいぶん気の長い話。一立米当たり三ドル五十セントずつ。一立米といいますと三・八石でございますか、三ドル五十セントずつ積んでいくのですね。そうしてそれが、どれぐらいの量が日本に輸入されてくるかといいますと、三百三十四万立米かける三ドル五十セント、それで大体焦げつきの資金が回収できる、計算上こうなったのでしょう。  そこで伺いますが、一番最初に、つまりPS事業方式のときの対象面積は二百四十万ヘクタールありましたですね。それでもって百七万四千立米、これだけ輸入しましょう、そうすれば資金の回収はできる、大体こういう計画で進まれたらしい。ところがこれが、先ほど申しましたような理由によりまして失敗をした。今度のコントラクター方式、CS方式では開発対象面積が約二十万ヘクタール、十分の一に満たない。それでもってどれぐらい輸入するかといいますと三百三十四万。十分の一に満たない面積でもって、最初PSで計画しました輸入木材量の約三倍、それが大体十三年二カ月間にわたって日本国内に輸入をされる。一立米当たり三ドル五十セントずつつ積み上げておりますから、それでもって、焦げつきました二十七億ないし二十九億の基金の貸し付け額の回収を行なう。面積は少ないわ、量は多いわで、これはうまくいきますか。
  138. 高木廣一

    高木参考人 最初のときの二百四十万ヘクタールというのは対象目的地でございまして、今度の二十万ヘクタールというのは、地域を確定しまして、これを確定しますときにも、あらかじめそれだけの木材が十分あるかどうかということを慎重に調べまして、十分あるということでこの二十万ヘクタールをいたしましたのですから、十分木材があるという判断をしておるのでございます。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 かりに木材があるとしましょう。それで入ってきましても、御承知のとおり木材の需給関係というのは非常にむずかしいわけですね。相場商品であります。その限りにおきましては、国内の木材価格というものは、特に輸入価格を高くして持ち込んでもこれは売れない。大体国内相場、これに見合ったような価格でもって持ち込んでこなければなりませんね。すでに先月から比べますと三月は、これは総需要抑制策のきき目だということだそうでありますが、木材価格は国内相場で二%ぐらいダウンしましたですね。これが将来どういうような見通しになるか、これは軽々に予測はできませんが、しかし、少なくともこの十三年あまりという長年月の間、はたしてこのような、一立米当たり三ドル五十セント、これだけを返済額に充てるというような形でもってコンスタントに輸入がうまくいくかどうか、これは私は非常にむずかしいと思う。このサブコントラクターが途中で投げ出すんじゃないか、そういう心配もある。  いずれにいたしましても、PSで失敗した、だから、しかたないからコントラクター方式だと、やむなくこういう方式を思いついたんでしょうが、これによって、この焦げついた資金が完全に間違いなく回収できるという御確信はおありでございますか。もしできなかったらどうされますか。
  140. 高木廣一

    高木参考人 この方式は、先方政府ともこのプロジェクトの重要性にかんがみて最善を尽くそうというたてまえでやっておりまして、したがって、先ほど先生もおっしゃいましたように、日本政府まで入っていただいて、いろいろ話に加わっていただきましたし、また現地大使館と先方の農林大臣との話し合いとかいうこともございます。しかし、この事業が最初始まりましたころの木材価格というものは非常に悪かったわけです。他のPSが四十二年から始まったころはうんとよくなってきて、最近少し下がりましたけれども、初めのころから考えますと非常ないい値段になっております。こういう点で、われわれとしては一応——絶対とはわれわれも確信はないんですが、一応これでいけるんじゃなかろうかと、こう思っておる次第でございます。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 また協定のやり直しということになりかねぬと思いますね。そういう心配、多分にありますね。  会計検査院にお尋ねしますが、ざっとこのような調子で、これだけ多額な基金の金が焦げついてしまった、こういうことでございますが、会計検査院はおそらく御承知であろうと思いますが、これに対します調査なりあるいはまたそれに基づきまして何なりの勧告なり、あるいは意見なり、会計検査院としては基金ないし経企庁に対して表明されたようなことはおありでございましょうか。なければまた、見解というような形でお伺いしておきたいと思います。
  142. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 ただいまのインドネシアの東カリマンタンにおける森林開発事業の貸し付けば、これは海外経済協力基金としても相当多額の融資でございますので、従来から会計検査院といたしましては、その事業の推移、それからその債権の保全ということについては特に留意して検査をしてきたところでございます。残念ながら、ただいまのお話のように、事業が現在一時中断しているということで、当局も鋭意その再建策について努力しておるのでございまして、私どもとしては、まだその新しい回収方策が動き出しておりません段階でございますし、御承知のように会計検査と申しますのは事後検査というたてまえをとっておりますので、現段階でとかく意見を申し上げる段階ではございませんので、その点御了承いただきたいと思います。  なお、従来、この問題につきまして文書をもって、監督官庁である経済企画庁あるいは当貸し付けの責任者であります経済協力基金に対して特に意見を申し述べたということはございません。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 会計検査院にお願いしておきたいと思いますが、本件につきまして、これがやがてこの事業の再開のめどが立って、なお調査が大体完了いたしました時点で、会計検査院から当委員会に対してその経過なり結果、あるいはまた見解等につきまして御報告をいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  144. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 海外経済協力基金の貸し付け先に限らず、一般に国の財政資金の貸し付け先につきましては、権限上当然検査ができるという権限を持っておりませんので、その点検査上の支障はあるかと思いますが、ただ、そういう状況ではございますが、必要によっては相手方の了解を得て、事実上の金融機関が調査権限を持っている、それに乗って調査をさしていただいているという事情もございます。  それからもう一つ、本件の場合のように事業が外国において行なわれているという関係がございますので、この点は、基金が契約上海外の事業の状況を相手国の承諾を得て調査しているという報告をとって、いままで検討してきたわけでございますが、この点につきましても、検査院が外国の地に乗り込んでいくという点についてはいろいろ問題があろうかと存じますが、せっかく坂井委員の御趣旨もございますので、必要があれば、外務省当局を通じて相手国のそういった検査の協力を了解を得て実施することもできるんじゃなかろうか。これは直接本件に関係はございませんけれども、かつて外務省所管の海外技術協力事業団でございますか、これの施設の運営状況につきまして東南アジアの在外公館を実地検査いたしました際に、相手国の了解を得てそういう施設の運営状況を見せていただいたという事例もございます点を申し添えておきます。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 大臣にひとつ御見解を承って終わりたいと思いますが、確かにこの木材の輸入需要に対します有力な供給源を確保する、そいう意味合いにおきましては、この種の海外経済協力、これに対しまして基金の金を投融資するということは、開発途上国に対しますところの経済協力、産業の伸展、そうした面に寄与することはもちろんのことながら、やはりわが国の資源の確保という点から考えても、確かに一つの重要な意味があろうと私は理解しているわけでありますけれども、ただ、いま経緯をお聞きいただきましたように、最初からもう失敗するような場所、きわめて危険なパイオニア事業であった。奥地である、適地ではなかうた。あるいは日本技術というのは小径木中心でございまして、南洋材等の伐採技術は非常にお粗末であった等々いろいろな理由、あるいはマレーシアの紛争等々もありますが、いずれにいたしましても、基金の大事な金がこうして長年月にわたって焦げついた、こういうことは私はきわめて遺憾なことだと思います。これから新しい方式によって再開されるめどがついたということでありますけれども、これはやはり失敗させちゃなりませんし、したがって、そういう意味におきましては、両国間の問題でもありますし、きわめて慎重であらねばならぬと思います。したがって、より相手国、つまりインドネシアに対しましても、日本の経済協力が確かに実効あらしめたということでもって喜んでもらえる、お互い両国間がこれによって得るところがあった、こういうところで結実させなければならぬと思うわけでありますが、そうした観点から、ひとつこれはやっぱり長官にいまのような方向で——私はそう考えるわけでありますけれども、失敗を転じまして実のあるそういう結果を出すように、反省の上に立って決意なりを新たにしていただきたいと思うわけであります。御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  146. 内田常雄

    内田国務大臣 お話を承っておりました。経済協力基金の協力資金というものは、先ほどからもお話がございましたように、政府の一般会計からの出資あるいは国民の預貯金、積立金等を財源とする財政投融資でありますので、これが運用につきましては十分留意をしてまいるべきものであると考えることにつきましては、これは庄司さんや坂井さんと同じような意見を私は持つものでございます。  しかし、いま坂井さんのおことばにもありましたように、カリマンタン地域、これは未開発地域であり、また未経験な事業でもございましょうけれども海外経済協力の角度からも、またわが国の南方材の将来にわたる確保という意味からも——これは、私が責任を逃げるわけではございませんけれども、おそらく私などが関与いたしません、昭和三十何年代に始められたことだろうと思うわけでございますが、その結果が、先ほど来問題になりましたように、また基金当局からも説明がありましたような事情のもとに、最初の生産物分与方式というものが所期の期待どおりにまいらないで、新しい請負方式に移行して、さらに再建を期しておる。しかし、これにつきましてはもちろんインドネシア政府も十分了承で、私が承知をいたしておりますところによりましても、新しい森林公社というものは、これはインドネシア政府が全額出資の、まあ株式会社ではあるけれども、一種の特殊会社のような仕組みでありますことを考えますときに、インドネシアの政府もこの事態をおそらく遺憾に考えながら、しかもわがほうの協力というものを、何とか将来にわたっては成果を得られるようなたてまえをとっておることだと思いますので、基金当局にも一そうこの債権の保全あるいはまた事業の達成にいろいろなくふうをしていただきますとともに、また私どもも、事業そのものを監督しておるというわけではございませんけれども、いやしくも法律上、独立の法人でありますところの経済協力基金というものについて一般的な監督権があるわけでございますから、国会の皆さま方からの御指摘をまつまでもなく、監督責任といたしましても、そのことを十分心に銘じ、基金をも激励し、あるいはまた、きょうここに外務省の経済協力局長もお見えでございますから、それらのインドネシア政府当局とも必要ある接触をいたしながら、何らかこれの打開につとめてまいりたいと思います。  ただ、私は決してとんでもないことを申すつもりもございませんし、また、こういうことを申すと坂井さんからおしかりを受けるかもしれませんが、そもそも経済協力基金というものができましたのは、私などの記憶によりましても、また、この経済協力基金法の第一条によりましても、一般金融機関がなし得ないこと、そればかりでなしに、そもそも海外経済協力につきましていろいろな融資をする輸出入銀行、これは銀行という名前がついております政府の特殊機関でありますけれども、そうした輸出入銀行でさえもなし得ないような——これは冒険的なということばを私は言うわけじゃございませんけれども、たとえば中小企業金融公庫とか国民金融公庫も同じようなことばが使われておりますけれども、他の一般の金融機関が安全をとるために中小企業や零細企業に対してお金を貸し得ないような場合に、進んでこの中小企業金融公庫、国民金融公庫が金を貸すたてまえの文章がそれらの金庫、公庫法の冒頭にございますけれども、全く同じ字をこの経済協力基金は使っておりますので、だから国民に損害をかけてもいいということでは決してございませんけれども、非常に善意を持って、むずかしいことを承知をしながらこれに取り組んでまいったということもございましょうから、その点をも御理解をいただきながら、しかしこれは、金は国民、国家の大切な金でありますから、また、せっかく企業をやって二十数億円金を出しながら、現地の住民や現地の政府に反感を抱かせるようなことがありましては、これもかえって大きなマイナスをつくるわけでありますので、あれもこれも十分注意をいたしながら、この件につきましても、また類似の件につきましても、御批判をいただかないような方向で経済協力基金を監督したり、また運用していただくように、誠心誠意つとめてまいりたいと考えます。
  147. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  148. 臼井莊一

    臼井委員長 次回は明二十四日水曜日、午後一時理事会、午後一時十五分委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十五分散