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1974-05-15 第72回国会 衆議院 外務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十五日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 福永 一臣君 理事 水野  清君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 松本 善明君       足立 篤郎君    瓦   力君       小坂善太郎君    小林 正巳君       國場 幸昌君    三枝 三郎君       坂本三十次君    深谷 隆司君       福田 篤泰君    宮澤 喜一君       村岡 兼造君    土井たか子君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  山田 久就君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   大久保武雄君     國場 幸昌君   加藤 紘一君     三枝 三郎君   田中 龍夫君     村岡 兼造君   福田 篤泰君     瓦   力君 同日  辞任         補欠選任   瓦   力君     福田 篤泰君   國場 幸昌君     大久保武雄君   三枝 三郎君     加藤 紘一君   村岡 兼造君     田中 龍夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  欧州共同体委員会代表部設置並びにその特  権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委  員会との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一〇号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国とアイルランドとの  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国スペイン国との間の条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号)  日本国ベルギー王国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(条約第一号)(参  議院送付)  航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第二号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  欧州共同体委員会代表部設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本善明君。
  3. 松本善明

    松本(善)委員 まず、EC代表部設置するということになりました経過をお話し願いたいと思います。
  4. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 御案内のとおり、わが国EC委員会との接触は昔からございまして、現に、関税交渉を何回かいたしました際に、EC委員会交渉し、その結果を関税譲許その他の協定として取りまとめまして、国会の御承認を仰いだことが多々ございます。それ以降、EC側日本との接触は年を追って緊密になってまいりまして、最近におきましても、マルファッチ委員長あるいはオルトリ委員長ないしソームズ副委員長等来日、あるいは大平外務大臣等EC委員会訪問という接触が続けられてまいりまして、その間におきまして、EC側から、ぜひとも日本との関係接触をさらに強化するために委員会設置いたしたいという希望が表明されてきたわけでございます。先般オルトリ委員長来日の際に、大平外務大臣との間にその方向で協定交渉を行なおうということ、それからその内容につきましても概略の線が出てまいりまして、その後、鋭意条文を詰めて、現在御審議願っております協定を作成したという経緯になっております。
  5. 松本善明

    松本(善)委員 EC代表部仕事EC加盟諸国外交代表部仕事との違いはどういうことになるか、その点を説明願いたいと思います。
  6. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 ECができましたのは、御案内のとおりローマ条約にその規定がございまして、ローマ条約の中で、各国政府が依然として所管しております事項と、ECという一つ統合体が所管しております事項とが区分けされております。EC各国の意向といたしましては、すでにほぼ完成をいたしております関税同盟、あるいは共通農業政策——共通農業政策のほうはまだ完成の段階には至っておりませんけれども、こういうものに加えて、だんだんとEC全体として取り扱っていく分野を広げていこうということで話が続いております。したがいまして、現在におきましてEC委員会の所管となっております一番大きな分野は、関税ないし貿易、こういった分野でございます。  たとえば関税につきましては、ローマ条約にございますEC共通関税を動かすことは、あるいはまたその共通関税に関しまして対外的交渉を行なうことは、EC委員会権限ということになっておりまして、そのほか、関税以外の貿易問題にりきましても、共通通商政策なるものをつくるということを目標に、各国からEC委員会のほうに、貿易政策の面につきまして、ことにその対外交渉の面につきましては、権限が移されつつございます。その内容は、まだ完全に移されたわけではございませんで、ある分野につきましては、各国政府が依然として権限を持っているという分野も残されておりますけれども傾向としてはそういうことに相なっております。
  7. 松本善明

    松本(善)委員 わが党としては、ECがヨーロッパの帝国主義諸国同盟であるという点では批判的な見解を持っているわけですけれども代表部設置をするということ、そしてそれが日本で活動するということについては賛成だということを言って私の質問を終わります。
  8. 木村俊夫

  9. 土井たか子

    土井委員 まず、国際連合特権及び免除に関する条約というのがございますね。これは昭和三十八年に採択されているわけでありますが、それと今回のやはり問題になっておりますウィーン条約等々において、外交官特権及び免除に関しては具体的な明記規定があるわけでありますが、これは国際条約外交官に対して特権あるいは免除については具体的な規定を設けるということは、いわゆる慣習的な問題として確認されているというふうに考えてようございますか。
  10. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。   一般国際法上の慣習法根拠といたまして、外交官に対して特権が与えられるというふうに御了解いただいてけっこうだと思います。私どもといたしましては、ウィーン条約というのは、その慣習法もとにいたしまして、若干の創設的規定もございますが、その根源はやはり慣習法もとにしてそれを法典化したものであるというふうに理解しております。
  11. 土井たか子

    土井委員 ただ、いまおっしゃったことは経過としてはあったかと思いますが、ウィーン条約そのもの慣習法じゃないですね。明記条約なんです。したがいまして、ウィーン条約という条約が、過去のように慣習によって、あるいは慣習法確認し合いながら特権免除を問題にするのではなく、ウィーン条約という明記条約規定に従って特権免除ということを問題にしたという理由はどの辺にあるわけでありますか。
  12. 伊達宗起

    伊達政府委員 ウィーン条約ができます前は、外交官に与えられる特権免除というものにつきまして、一般慣習法上それぞれの国において与えられていたわけでございまして、したがいまして、成文法がない限りにおいてやはり各国間に若干のでこぼこがあるという現象が生じていたわけでございます。だんだんと国際関係というものが組織化されていく傾向にございます現在におきまして、やはりこれは法典化をして、国家外交官に与える待遇というものをはっきりと明確に確認しておくことが必要なのではないかということでウィーン条約ができたものでございます。  したがいまして、御指摘がございましたように、ウィーン条約締結国家の間におきましては、ウィーン条約に基づいて外交特権が与えられるということができると思います。
  13. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、過去においてあった国際慣習に対する各国認識上のでこぼこというものを、この条約締結することによって一応整理をして、お互い中身について具体的に確認をするというふうな意味明記規定のある条約に  ついては存在するわけでありますね。したがって、そういう点からひとつお尋ねしたいことが今回のこの問題についてはあるわけです。  この欧州共同体委員会代表部設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定の第三条によりますと、「ウィーン条約に従って与えられる特権及び免除に相当する特権及び免除」というふうにあるわけでありまして、私、よくこの中身がわからないのです。「ウィーン条約に従って与えられる特権及び免除」ならばわかります。これはウィーン条約そのもの規定しているところでありますから。しかしながら、ここにある「相当する特権及び免除」というのは一体どういう中身なのか。こういう例がほかにございますか。
  14. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  例があるかという御質問に対しまして、私、ちょっといま資料を持っておりませんので、例があるかどうかはっきりお答えできないのでありますけれどもEC代表部に対しますこの第三条の規定につきましては、御承知のようにウィーン条約におきましては「外交使節団」ということばが出ておりまして、政府機関代表部というようなことばが出てきておりません。したがいまして「外交使節団、その長及び職員並びにこれらの者の家族構成員でこれらの者の世帯に属するもの」といいますのと、それから「委員会代表部、その長及び職員並びにこれらの者の家族構成員」で云々というものとは、形式的に、非常に形式的でございますけれども同一のものではなくて、機能的に見て、委員会代表部というものが外交使節団に相当するものであって、また代表部の長はウィーン条約に定めます外交使節団の長に相当する。それからその次に代表部職員につきましても、たとえば委員会側では代表部次長というものがございますれば次長、その他一等書記官あるいは補佐官というような称号を使用するのではないかと思いますけれども、それも外交使節団における参事官書記官外交官補等に相当するものであるというふうに私ども考えられます。  したがいまして、代表部、その長、職員並びに家族が享有する特権免除というものも、この外交使節団の組織、人的構成に対応させた、それに相当するものを与えるのだというふうな意味で、このように「相当する」ということばを使ったものでございます。
  15. 土井たか子

    土井委員 いまおっしゃったような御答弁からしますと、それは外交代表団構成メンバー並びにその地位に対しての確認が、いわゆるウィーン条約にいうところに相当するというふうに理解してよろしいというにとどまると思うのです。  ここであくまで問題になるのは、もちろんそれに伴って考えられる特権免除の問題でありますけれども、その構成員そのものに対する認識とその構成員に対して認めるべき特権免除というのは、私は別問題だと思うのですよ。特権免除という問題は、人権尊重であるとか、国際外交上どういうふうな取り扱いをやるかというような問題にかかわり合いがある、言うまでもなくたいへん重要な問題でありまして、大体一連の権利に対しての制限なりあるいは特にこの特権を認めるというふうな場合については明記規定が必要であるというのは、法治国家における常識なんですね。特に特権を与えるとか、あるいは権利を剥奪するとかいうふうな、権利かかわり合いのある問題については明記規定を置くということがいわゆる法治国家における大原則だと私は思うのです。国際間においてもこの問題がやはり確認され合っていいのではないか。  今回こういうふうな条文の体裁からしますとめんどうだから、この「特権及び免除に相当する」というふうな表現になってしまって一々明記をなさらなかったのであろうかとも私は考えながらこれを見たわけでありますが、やはり特権免除というものは、中身は具体的に明記されることが本来は好ましいというふうに私自身は考えているわけでありますけれども、その辺はどのような御認識をお持ちでいらっしゃるのですか。
  16. 伊達宗起

    伊達政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、代表部というものと外交使節団というものとが形式的にはことば表現からいいまして同一でない。したがいまして、ウィーン条約におきまして外交使節団に定められております、はっきりとした特権免除、それと同等のものとして、それに相応するものに、ウィーン条約に定められている待遇及び免除を与えましょうという意味で、「相当する」ということばを使ったものでございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 どうも明確なお答えじゃないと思うのです。  それでは、ウィーン条約に従って考えていきますと、たとえば三十四条では御承知のとおり租税免除の条項がございます。外交官に対しての租税免除する法的根拠として、ウィーン条約三十四条はあるわけであります。今回、租税免除というものに対しても、この第三条に従ってウィーン条約にいうところに相当する租税免除考えていこうということになるわけですね。こういう表現というものは、具体的な例に合わせて考えた場合にはたしてどういうことになるのでしょうか。  ウィーン条約にいうところの租税免除内容同一のものを考えるということになるのか。それとも臨機応変に、「相当する」ということは、これは本来は、日本語で書かれていないと思いますけれども日本語でいう場合の相当するというのは、通常恣意的判断中身に伴っております。これでなければならないということでなしに、抑揚があると思うのですよ。だから、租税免除ということについても、「相当する」という表現ではたして的確といえるかどうか。私はかなりの問題が出てこようと思うのですが、いかがですか。
  18. 伊達宗起

    伊達政府委員 ただいまの御質問の点に関しまして、実際の適用に関しましては全く同一のものを、たとえば租税免除につきまして適用するということでございまして、その範囲は、別に「相当する」というので恣意的な裁量が加わるというものではございません。
  19. 土井たか子

    土井委員 その辺もまことに不的確だと思うのですけれども日本国際機構外交官特権免除について具体的に規定している協定を結んでいる例はほかにどういう例がございますか。
  20. 伊達宗起

    伊達政府委員 先ほど先生が御指摘になりました国際連合特権免除条約、その他国際機関と結んでおります例といたしましては、OECD特権免除アジア生産性機構に関する特権免除等々多々ございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 そういう特権免除の場合にも「相当する」という表現が使われておりますか。たとえばウィーン条約規定するところに相当する特権免除というものを、この協定によって確かめようという表現がございますか。
  22. 伊達宗起

    伊達政府委員 たとえばOECDとの特権免除協定におきましては、ウィーン条約を援用することではなく、御指摘のように個々の特権及び免除条約内で列記してございます。これはウィーン条約の定めます特権免除よりも若干狭い範囲特権免除OECDに与えているということから、列挙主義をとっておるということでございます。
  23. 土井たか子

    土井委員 それでは、ウィーン条約に比べると若干狭い範囲特権免除ということを問題にしたという例からいたしますと、今回、OECDなり、それから先ほど言われたアジア生産性機構なりに比べまして、ECの場合は特権免除範囲が、いま申し上げた他の二つ協定に比べると特に広いということになるわけでありますね。それはウィーン条約に従って考える。——従ってじゃなくて相当するという表現でありますけれどもウィーン条約によるということをおっしゃっているらしいですから、したがって、その範囲は広くなるということでありましょう。  なぜほかのOECDなり、アジア生産性機構との間に取りかわされておる協定に比べまして、ECの場合には、特権免除について今回は具体的明記規定を用意せず、「相当する」という表現で、なおかつ他の二つ協定に比べて特権免除の幅が広いということになったわけでありますか。
  24. 伊達宗起

    伊達政府委員 EC、つまり欧州共同体と申しますのは、私ども考えによりますと、単なる国際間の協議機関という意味での国際機関ではなく、一つ政治統合をも指向する、経済統合もとより政治統合をも指向する一つ国家連合ないしは一つ統合体を構成するものであり、先ほど経済局長から御説明しましたように、全部ではございませんが、国家主権行使考えられる部分につきまして、その一部分を経済共同体ないしは原子力共同体ないしは石炭鉄鋼共同体というものに権限を集めまして、そこで国際間におきまして主権的な権利行使をさせるという仕組みになってございます。したがいまして、その意味におきましては国家に準ずる地位欧州共同体は持っているものである。  そのような立場から、特権免除に関しましても、国家に準じた特権免除待遇をその代表部に与えるということにしたわけでございます。
  25. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁というのはいろいろな問題を持つわけでありますが、経済的な欧州共同体のみならず政治的な共同体であるという認識は、これは外務省見解としてははっきりさせていただきたいと思います。これに対しては賛否両論あるわけでありますから、経済的共同体のみならず政治的共同体だという認識日本が持っているということを確認させていただいていいですね。外務省当局はそういう見解で今後事に当たられるということをはっきり確認させていただいていいですね。それがまず一つです。  それから、国家に準ずるというのはどういうことですか。国家に準じて考えてよろしいというのは、国際間においてはどういう取り扱いをするということになるのですか。国際間において国際法の主体はどういうふうに認識されるかという問題に非常にかかわり合いを持ってまいりますから、国家に準ずるというのは具体的にいうとどういうことかという御説明もひとつ賜わりたい。  以上、二つです。
  26. 伊達宗起

    伊達政府委員 政治統合に関しましては、私のいま申し上げましたことばづかいが足りなかったかもしれませんが、指向するということばを使ったつもりでございまして、現在欧州共同体というものが政治統合体であると申し上げたわけではございません。  その次に、国家に準ずるというふうに申し上げたのでございますが、これはあるいは国家に相当すると申し上げてもよろしいかと思いますが、EC共同体といたしまして、国際間ではっきりいたしますのは、国家というものがどのような国際法上の主体性を持っておるかということの一番典型的な発現といたしましては、たとえば条約を結ぶということがございます。ECも、共同体に移譲された事項につきましては、三共同体ともそれぞれ共同体の名において条約締結することができるということでございます。
  27. 土井たか子

    土井委員 国家と同等とか国家に準じてということを国際機構に対して認めるのは事実上無理が生ずるという場合があることは、これはお互いによく知っているところです。たとえば、いまのECについていうと、EC加盟している各国間で利害が相反して、いまたいへんなさなかでしょう。ECの今後はどういうふうになるのかということに対して、だれしも一まつの不安を持って見ていますよ。  そういうときに、これを国家として考えていいんじゃないかとか、国家に準じて考えていいんじゃないかとかいうことは、私は、実際の取り扱いの上でたいへんないろいろな支障あるいは間違いを来たすもとになると思うのです。国家というものは、国家意思主権を通じて明確に外部に対しては披瀝されるわけでありますから、国内におけるいろいろな抗争というものは背景にありながら、しかし国家主権意思というのは一つですよ。だけれども国際機構における意思というものは、内部において各国家間の利害が相反した場合には、この国家意思は競合しているということを考えなければならぬ。だから国家意思一つじゃない。場合によったら二つ、三つ、四つというふうにも分かれていくのが、国際機構におけるところの国家意思存在そのものであります。  だから、国家に準じて考えるとか、国家として取り扱うというのは、そういう事実関係取り扱いの上からいうとまことに無理が生ずるわけでありますけれども、この際そういうふうな考えはどのように整理なすったのでありますか、伺わせていただきたいと思います。
  28. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 ECの中でいろいろ意見対立があることは事実でございます。それからまた、現在EC構成国政治情勢も、ちょうど選挙その他がございまして、安定しているとは申せませんし、かつ相互の間の意見対立も、そのときによって違いますけれども、非常に顕著になっていることもございます。  ただ、ローマ条約に基づきまして、一定の範囲では共同体国家主権を移譲したということを申してもよろしい分野がございます。たとえばEC共通関税でございますが、この共通関税は九カ国同一関税を持っているわけでございまして、たとえばこれを上げたり下げたりするということはEC理事会権限になっているわけでございます。したがいまして、この共通関税に関しまして関税交渉するという場合の相手方は共同体になるわけでございまして、現にわが国も幾つかの条約を、共同体相手国にして、国家に準ずるものとして締結して、国会の御承認を得た例もございます。  そういう意味におきまして、限られた分野におきましては、EC共同体一つ意思を持って対外的に当たるという例が出てまいりまして、先ほども申し上げましたように、そういう分野をどういうテンポでどの程度まで広げていくかということがいろいろと部内で論議の対象になっておるわけでございますが、いま申し上げましたように、一部につきましてはすでにそういうような事態に相なっておるという趣旨でございます。
  29. 土井たか子

    土井委員 一部についてはそういう趣旨になっているというふうなことをおっしゃっておりますが、基本的な場合においてはたいへんにいま激動のさなかにあるということはお互い確認し合わなければならない問題をはらんでいるのがEC田状なんですね。現に四月一日なんというのは、外相理事会イギリス側がこれに対しての加盟の再交渉というものを具体的に出しているわけでありますけれども、これに対して、いまその中でも、わけてもフランスであるとか西ドイツ等々の態度というのはきわめて批判的であります。批判的というよりも、むしろ激烈きわまる反対論というものを展開しているのがあの中で渦巻いている一つの事実なんですね。これなんかは、いまおっしゃった関税の問題ももちろん一部の問題としてありますけれどもECの今後を考えた場合に、基本的な問題に触れることを提起していると思うのですよ。  だいじょうぶだという楽観論も一部にはあるようでありますけれども、そういう問題に対して日本外務省としてはある程度の見通しをつけ、整理をした上で先ほどの御答弁が出てきたというふうに私は考えるわけでありますから、したがって、その点についてのお考えをただしているわけであります。少し御説明賜わりませんか。
  30. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、EC内部でいろいろ意見対立もございますし、かつ英国政府は、EC共同体に対します再交渉ということを主張しているわけでございます。再交渉具体的内容についてはまだ提示されていないようでございますが、そういう政治的な立場を持っております。これに対しまして、必ずしも再交渉がうまくいくかどうか、これは保証がございません。内部での対立が非常にあることは十分私ども注意深く見守っていかなくてはいけないことだと思います。  ただ、いままでのEC共同体の歴史を見ますと、たとえばフランスの前大統領のドゴール大統領の時代に、ECが相当の長期間にわたって非常な危機に遭遇したという例もございます。その後徐々にではございますが、簡単に申しますと、またよりを戻したようなこともございまして、一時は共通通貨というものをつくろうとか共同フロートをやろうとかいうようなところまで至ったこともございます。それはまたいま若干くずれたわけでございますが、時の経過とともにいろいろと内部意見対立が非常に表面化する場合とECの統合が比較的順調に進んでいく場合といろいろございますが、その点につきましては今後どういうふうに発展するか、これは部外におります日本政府としてあまり予言することは差し控えたいと思います。  しかし、少なくともローマ条約というものが存在し、そのときの経緯がございますけれども各国ばらばらではなしに、EC加盟国共通にやっていこうという分野が広がりつつあって、それが大きな意味で逆転はしていないというのが現状でございます。将来も紆余曲折があるかと思いますが、そういう方向に進むことも考えられるし、冬眠状態に置かれるということも、それはないとは申し得ないと思います。  いずれにいたしましても、私どもことに経済関係におきましては、交渉相手といたしましてEC共同体、特にその委員会というものと日々接触をしているわけでございます。現在まではブラッセルにおきましてこの委員会接触を積み重ねておるわけでございますが、政治統合がどの程度進展するかいなか、あるいはまた経済統合がどういうテンポで進展するか、あるいは非常にむずかしい状態になるかどうかいろいろございましょうと思いますが、少なくとも現在までECにゆだねられております事項につきましてはやはり日々接触していく必要がございまして、たとえば国際会議におきましても、ある会議、たとえばガットにおきましてはECのスポークスマンが一本で発言いたしまして、EC加盟国はうしろに控えているという例もだいぶ出てきております。他の国際機関におきましては各国が独自の発言を行なうという場合もございます。それは内容いかんによるわけでございますが、すでにEC共同体の所管となっております事項につきまして今後とも接触を深めていかなくてはいけない、かよううに考えている次第でございます。
  31. 土井たか子

    土井委員 これはあとで外務大臣が御出席のとき、さらに少しお伺いしたい点を保留しながら、いま一点だけ具体的に確認をしておきたいのは、いま英国が再交渉について出している正当な条件とは具体的にどういうことを問題にしているのであるか。そしてそれについては、この条約そのものに対しての改正なり修正なりをはたして必要としないで何とか解決できるという見通しがあるというふうに外務省考えていらっしゃるかどうか。その辺について少し御理解をなすっているところを聞かしていただきたいと思うのです。
  32. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 英国の現政府は、政権につきます前から共同体との再交渉を行なうということを宣明いたしておりまして、先般の閣僚理事会でも、英国政府は、再交渉を行ないたい意思を明らかにしている−わけでございます。  それではどういう分野についてどの程度の再交渉を行なうかという英国側の政府の正式意図表明はまだ行なわれていないと承知いたしております。ただ想像されるところでございますと、特に共通農業政策の分野につきまして、これは再交渉が必要だということをいっております。そのほか、地域開発問題等もいろいろと言及されております。  その再交渉内容条約改正、つまり英国の共同体に加入します際の条約改正を必要とするかあるいはまたECの個々の分野におきます共通政策の改変にとどまるかということにつきまして、いまだ明らかにされておりません。イギリス側は必要に応じて条約改正までも持ち込むかのごとき印象を与えるような説明も一方においてはなされておりますし、先ほど指摘もございましたように、フランスとかドイツとかいうような国では条約改正ということではとても話に応じられないのではなかろうか。ただ共通政策の手直しということにつきましては話し合いをやってもいいのではなかろうかというような非公式な説明が行なわれているわけでございます。  いずれにいたしましても、本件は英国側から具体的な内容が明らかになり、それに対しましてECの正式機関がどういう対応で交渉するかということできまる。そういう時期がいずれ到来するかと思いますが、現在のところは、その内容が明らかにされておりません。
  33. 土井たか子

    土井委員 まだ具体的に内容が明らかにされていないというふうなことで、それに対しては外務省当局は、今後どういう動きになるかということに対しては、まだ予測の限りにあらずというふうなことが一言で言えるわけでありますね。それを確認させていただいて、次に行きたいと思います。
  34. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 私どもいろいろな場合を想定しまして、いろいろな仮説を設けて研究いたしておりますけれども、これがうまくいくとかまずくいくとかと予測するのは、事務当局としては差し控えさせていただきたいと存じます。
  35. 土井たか子

    土井委員 それはわかりますが、ただ事実について何がどういうふうに進行しているかということについては、的確な情報に基づいて的確に理解し把握をするということは、何といっても私は必要最小限度の問題だと思うのですね。だから、そのことについて一つ確認をさせていただいたわけであります。  さて、先ほど少し質問の中にも出てまいりました、また御答弁をいただいた中にもあったわけでありますが、すでに日本国際機関であるアジア生産性機構あるいはOECDとの間に特権免除協定を結んでおりますが、これはECについて尊重すると同様にOECDについても尊重しなければならない。それからアジア生産性機構に対しても、日本の国としては尊重するという立場で結ばれた協定だというふうにまずは理解しているわけです。  ところで、このアジア生産性機構について結ばれた特権免除協定を見てまいりますと、その第四条の三項という個所で、車両によって生じた損害について第三者が提起する民事訴訟手続にはこの特権免除を適用しないというふうな規定がございます。こういうふうな例は、アジア生産性機構との間に締結されている協定にのみ存在するわけでありまして、いままで日本が他の国際機構との間で結んでまいりました協定の中には存在しないように私は認識しているわけでありますが、この辺はどういうことでありましょう。
  36. 伊達宗起

    伊達政府委員 APO、アジア生産性機構との特権免除協定には御指摘のような協定がございますが、他の特権免除協定には、はっきりしたことは申し上げられませんが、おそらくこの規定は欠いておると思います。したがいまして通常、訴訟、裁判権、管轄権は免除されておるというふうに了解しております。
  37. 土井たか子

    土井委員 いまアジア生産性機構との間に結ばれております協定のように、明確な規定はないというふうに私は理解しておるわけでありますが、いかがですか。
  38. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのとおりでございまして、アジア生産性機構の御指摘のこの第四条三項の規定はございません。
  39. 土井たか子

    土井委員 そこでお伺いしたいのですが、日本でこの外交官特権を有している人たちによるところの交通事故件数というのは、一体どれくらいあるのでしょうか。特に、人身事故について具体的に数字がわかっていれば、ひとつここではっきりとお答えいただきたいと思うのです。
  40. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。  人身事故では、重傷、軽傷を含めまして、昨年は二十四件ございます。一昨年は三十件、さらに昭和四十六年には三十五件、そのようなことになっております。
  41. 土井たか子

    土井委員 なかなかそれはおろそかに考えることができないたいへんな数だと思うんですよ。したがいまして、それに対してどういうふうな処置をしているかというのが、当然私は問題になってくると思います。特に被害者の立場からすれば、これはどのような事後処理がこれに対してとられているかというのは、たいへん大きな問題になってくると思うのですよ。いままでにそういう問題に対しては、どのような処理がなされてまいりましたのでしょうか。
  42. 伊達宗起

    伊達政府委員 この間の事情はつまびらかにしておりませんが、裁判管轄権を免除されている関係もあり、外交官の起こしたこのような事故に対しましては、訴訟の手続はとり得ない。したがいまして、示談ということで多くの場合解決されているというふうに承知しております。
  43. 土井たか子

    土井委員 その示談をする当事者は、だれとだれでありますか。
  44. 伊達宗起

    伊達政府委員 被害者と加害者、両当事者間であると思います。
  45. 土井たか子

    土井委員 おかしいですね。加害者というのは、この場合、それに対しては特権免除がある立場の人間じゃないですか。どうです。
  46. 伊達宗起

    伊達政府委員 特権免除と申しますのは、裁判管轄権から免除される。したがって、民事訴訟にしろ刑事訴訟にしろ、その訴訟手続の対象にならないということでございまして、すなわち民事の場合には、民事責任をその国の法律によって手続上問われないということでございまして、やはり人間として、自動車事故の過失によって人に損害を与えたという事実は存在するわけでございますので、その意味におきまして、示談ということで解決するのは普通のことであると思います。
  47. 土井たか子

    土井委員 裁判権が免除をされている場合、示談というのは別口だというふうにお考えですか。
  48. 伊達宗起

    伊達政府委員 別口であるかという御質問でございますが、つまり訴訟手続によらないで話し合  いで解決をするという意味で、私は示談と申し上げたわけでございます。
  49. 土井たか子

    土井委員 そういう例については、しからば外務省は、具体的に把握なすっているでしょうか。どういう交通事故について、どういう示談があって、具体的にはどういう損害賠償の中身でもってこの問題は解決したというふうなことです。
  50. 伊達宗起

    伊達政府委員 申しわけございませんが、私のところではその件数、具体的な事例について詳細を承知しておりません。
  51. 土井たか子

    土井委員 これは正確にいうと、アジア生産性機構については、いまおっしゃった示談というものは免除できないと思うのですよ。示談については、進めなければならないと思うのです、ここにはっきり「車両によって生じた損害について第三者が提起する民事訴訟手続には適用しない。」とあるのですから。示談というものは大きくいうと一つの民事訴訟手続なんですよ。  したがいまして、そういう点からいうと、これを大きく考えていった場合に、他の条約にはこういう明記の手続がない、他の協定にはこういう明記の手続がない。そこで、逆にこの解釈をしまして、いま示談についてもこの免除があるというふうに考えることも、事実解釈の上では可能なんです、拡大解釈すれば。  したがいまして、いまおっしゃいました外務省見解は、これは大事ですから、ひとつ確認させていただきますよ。そして確認した以上は、それについて被害者、日本国民の中にある、しかも人命に対して危害が加えられたわけでありますから、場合によったら命を落としているという場合もあるのですから、これに対して、どういうふうな示談というものが具体的になされたかというのは、外務省当局としてやはり把握しておいていただく必要があると思うのですよ。いま具体的に、それに対してはあまり把握がないようでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  52. 伊達宗起

    伊達政府委員 示談というのは、確かに民事訴訟手続上もございますが、先ほど申し上げましたように、私のことばづかいが悪かったのでございまして、私が示談と申し上げたものは、訴訟手続に乗らない当事者間の話し合いという意味で申し上げたまででございます。  なお、具体的な事例を把握しておるかというのは、私のところ、条約局では当然のことながら把握をしてございませんが、外務省といたしましては儀典官において詳細な事例を全部掌握しているとただいま聞きました。ただいまこの席で御説明申し上げるわけにはまいらないが、別に御説明申し上げることができるということでございます。
  53. 土井たか子

    土井委員 ただ、少し確認をしておきたいのは、示談というのは、被害者があれが加害者であるということを加害者に対して認識している場合にできることであります。これは外交官によりましては、この刑事裁判権、民事裁判権、行政裁判権の免除があるということを認識することを広く解釈をして、当て逃げ、ひき逃げというものをやっても通告しない。これは具体的にいうと、被害者からすると加害者がだれであるかというのがわからぬままであるという例というものが必ずあると思うのですよ。  したがいまして、外務省が掌握なさる場合も、私が加害者だということを良心のある外交官が被害者との間に話をして示談を進めた例として初めて掌握なさるけれども、これに対してひき逃げ、当て逃げであって、これは全然加害者に対してはあとつかめなかったという例については追っかけようがないのです。しかし外交特権という名においてこれは当て逃げをしようがひき逃げをしようがこの罪は免れるという認識がなきにしもあらずだと私は思うのですよ。その辺ははっきりとひとつ確認をしておかなければならないように思います。  そこで、ちょっとお伺いをしたいのですが、ウィーン外交会議で民事請求権の審議に関して決議というのがあったようでありますけれども中身はどういうことでしょう。
  54. 伊達宗起

    伊達政府委員 内容は、簡単に読み上げてみますが、ウィーン会議におきましてウィーン条約が採択されたのでございますが、それの中で外交使節団構成員という者に対して裁判管轄権からの免除を定めている点につきまして、この免除がこの構成員個人に利益を与えのではなく、外交使節団の任務の遂行を確保することからこの免除が牛じているものである。したがって、外交特権に基づく免除の主張は、ある場合においては接受国にある者が法律によって受けることができる救済をその者から奪うものであるとの——ただいま申し上げましたように、自動車事故のような場合に被害者が救済を受ける権利を奪うものであるという点に留意をいたしまして、派遣国は、自分の外交使節団の任務の遂行が妨げられないときは、その接受国にある者の民事裁判権については構成員に対しての裁判管轄権からの免除を放棄するように、またそのような免除が放棄されないときには、請求権の正当な解決が行なわれるように最善の努力を払うということを趣旨としております。
  55. 土井たか子

    土井委員 いま御説明なすった中にも少し出てくるわけですけれども、本来外交官が接受国の民事裁判権から免除されるということの結果、外交官が交通事故を起こした場合には、事故の被害者から損害賠償を請求する機会を奪うことになることがたいへんに問題になって、こういう決議というものがもたらされたように私は理解しているのです。しかし、あくまでこの決議は決議でありまして、勧告にしかすぎぬのでしょう。派遣国にそのような義務を課する性格のものではないわけですね、決議というのは。したがって、こういうことは、お互い同士ある場合には心して少し常識を働かして考えようではないかという程度に、端的に言うととどまると思うのですよ。法的義務は何らないのですね。  しかし、先ほどから私が申し述べておりますアジア生産性機構との間の協定というものは、その辺に対して非常に認識をしたがゆえにこういう具体的条文が置かれたといういきさつがあると私は思うのです。つまり、民事裁判権から免除されるということの結果、外交官が交通事故を起こした場合には事故の被害者から損害賠償を請求する機会を奪うことになるという場合が多々ある。そこ  で、そういう点に対してはひとつ具体的な明記規定を置いて、決して損害賠償の請求権というのを奪うことになりはしないということにはっきりしようじゃないかという意識が大いにこの背後にはあったと思うのですよ。こういう認識があったからこういう条文ができたのだろうと私は思う。  そういう点からしますと、いまのウィーン条約等々についても、これは特に私は標識なんかの問題が一つはかかずりあってくるであろうと思います。なぜこういうことを言うかというと、これは外交特権を具備している車であるという認識は、やはりその車に掲げられている標識をもって客観的に人は認識をするわけでありまして、その特権を具備している車であるかどうかということは、標識を通じて人は知るわけでしょう。したがいまして、今回のECについて標識の問題はどうなるかというのは、実はこういう問題にもかかわり合ってくるわけですよ。  これはウィーン条約によりますと、二十条だったと思いますが、「国旗及び国章を掲げる権利を有する。」とございますね。ECの場合の国旗及び国章を掲げる権利ということ、これに相当するということになると思うのですが、どういう取り扱いをなさるのですか。
  56. 伊達宗起

    伊達政府委員 御指摘のように、ECの場合にはEC旗とかあるいはECの標識というものを国際連合のように所有しておりませんので、そういうものを掲げることはないと思います。自動車の場合には、御承知のように外交団に対しては青色のプレートでマル外と表示し、かつある種の代表部に対しましてはマル代という青色のナンバープレートをつけております。このEC代表部につきましては、まだその点、自動車のプレートについてどうするかは詳細担当当局と詰めてはおりませんが、私どもといたしましては、青色のプレートでマル代という標識になるものと思っております。
  57. 土井たか子

    土井委員 今度ECの代表団が日本に参りました場合に、万々そういうことがあってはならないと思うのですが、しかし、交通事故を起こさないという保障はどこにもないのです。そういう場合に、一つは、やはりその車自身が標識によってどういう車であるかということがわかるようにはっきりしていただきたいと同時に、そういう交通事故が、好ましくないですけれども、起こった場合、この被害者が請求をしても加害者がそれに応じない場合には外務省としてはどういう措置を講じられるかをここにお答え願いたいと思います。
  58. 伊達宗起

    伊達政府委員 当然のことながら、わが国の国民の利益を守るという意味におきまして、従来ともそのような場合には外務省関係外交官ないしはそのような特権を持った者を招致いたしまして、いろいろと被害者の立場も考慮して正当なる解決をはかるように説得をするということもいたしておりますし、かつてはまた、今度は一般国際法上の問題となりますけれども、そのような場合、どうしても解決がつかない場合には国際法上にいうペルソナ・ノン・グラータとして国外退去をしていただくということになると思います。
  59. 土井たか子

    土井委員 これは具体的にはそういうことになるであろうと思いますが、しかし、どこまでも私はひっかかるのは、ウィーン条約に相当する特権免除という、その相当するの中身なんですよ。こういうこと一つ一つがやはり相当するという問題にからんでいくわけです。したがいまして、ウィーン条約そのものじゃない、しかしウィーン条約の中にいうところに相当する特権免除ということを今回問題にしようという。相当しない特権免除というのがそれじゃはたしてあるのかどうか、この辺ひとつ確認しておきたいです。
  60. 伊達宗起

    伊達政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、「相当する」というのは、外交使節団長というものがウィーン条約規定されておりますが、その使節団長に対するウィーン条約規定されている待遇が、代表部の長に与えられるという、つまり代表部の長が使節団長に相当するという意味で「相当する」ということばを使ったのでございまして、内容そのものは、相当する限りにおきまして同一のものが与えられるというふうに私ども考えております。
  61. 土井たか子

    土井委員 再度言うようでありますけれども権利義務の問題はやはり明定の規定を置くということが法治国家においては原則なんですから、国際間の信義ということを問題にしていった場合にも、やはりこういう特権免除の問題に対しては明記規定を置くということが本来好ましいのです。それをわざわざ明記規定を用意しないで、「相当する」ということで今回取りかわされた協定というものは、これはやはりめんどうくさいからわざわざ明記規定というものを一切省いたというふうに解釈されてもこれはいたし方がないと思うのですよ、ある意味からすれば。  しかし、ここで一つ確認しておきたいです。それは、どこまで詰めていったって、もうすでに調印は済みましたとおっしゃるであろうと思いますから、いまさら書きかえはできませんとおっしゃるであろうと思いますから、一つ詰めておきたいのは、これを前例となさるかどうかです。こういう可能性がどの程度あるかということは問題でありますが、OAPECあるいはOPEC等々に対して日本代表部を設けるということが具体的に話が詰められて問題になってきた際、やはり特権免除という問題が当然出てこようかと思います。ほかの国際機構についても同様。  今回はウィーン条約に相当するということで特権免除を問題になさるわけでありますから、あとあと、これから結ばれていく国際機構との間、国際組織との間での代表部に対する特権免除についても、これを前例としてお考えになるということがあるのかないのか、これを前例としないということがここではっきり言い切れるのかどうか、ひとつそのことを確認したいです。私は、本来これは好ましくないという意味で言っているのです。
  62. 伊達宗起

    伊達政府委員 問題は、「相当する」ということばの適、不適があるかと思いますが、ただいまの御質問に対しましては、ECというもの、EC代表部というものが、外交使節団にイコールなものであるという考えに立ちまして、すなわちEC代表部の長その他の者に対して与えられる特権外交特権であるということを決心いたしまして、この条約を結んだわけでございます。したがいまして、そのような場合には、やはりウィーン条約があるわけでございますので、一々ウィーン条約規定を列挙するということは今後もしないかもしれないということは申し上げられるのでございます。  したがいまして、その音一味におきまして、これを絶対に先例としないかとおっしゃられると、実は御指摘の点は十分注意いたしますけれども、一一列挙して条約文として長く掲げるようにするかということにつきましては、ただいまちょっと申し上げられないのでございます。
  63. 土井たか子

    土井委員 こういう特権免除権利中身を具体化するということでありますから、やはり「相当する」というふうな抽象的というかあいまいというか、考え方によったら恣意的判断もこの中においては可能であるがごとき取り扱いというものは、やはり本来好ましくないということを、これはひとつ確認しておいていただきたいです。
  64. 伊達宗起

    伊達政府委員 恣意的判断が加わり得るような条文規定するということはたいへん好ましくないことであることは、私どもも同感でございます。
  65. 土井たか子

    土井委員 あと五分でお願いしますという紙が来ておりますから……。  そこで、せっかく大平外務大臣が御出席になりましたので、私は三問だけ質問したいのです。  一つは、二月の十九日から二月の二十三日までの間、ECオルトリ委員長日本を公式訪問されておりますね。あのときに外務大臣とのお話しの結果、日本としては、日本EC、それからアメリカの三者宣言の形が望ましいと考えていることに変わりはない、しかし、日本との間で宣言をつくろうとのECの提案に対しては話し合いに応ずるというふうな姿勢で臨まれたというふうに私たちは理解しているのです。それに対しましてオルトリ委員長は、ECの態度は多国間の宣言は好ましくないということだというふうな意思も表明されているやに私たちは受けとめています。  そこで、このECとの間に日本は、今後協調していくために何らか具体的な取りきめを行なう用意をお持ちになっていらっしゃるかどうかの問題です。ひとつこのことをまず伺っておきます。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 日本ECとの間で一般的な宣言とか取りきめとかいうようなものは考えていないわけでございまして、それぞれ具体的な問題が出てまいった場合に、EC日本の間で取りきめの必要がある場合にわれわれは検討しなければなりませんし、あるいはマルチの場を通じまして、EC日本が協力し合うという場合もあり得ようかと思いますけれどもEC日本だけに適用される一般的な取りきめ、宣言というようなものは考えておりません。
  67. 土井たか子

    土井委員 一般的な宣言はお考えになっていらっしゃらないのですか。そして具体的な、たとえば通商問題であるとかエネルギー問題であるとか等々の問題について、特にECとの間でお互いが情報交換をするとか、それから全体的な調整を通商問題、エネルギー問題等々についてするという意味での共同宣言なり、あるいはもう一つ形を進めて協定なり等々を結ぶというふうな用意は現にないというふうな御答弁でございますか。
  68. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 通商問題につきましては、かつてよりEC側から日本との間に二国間の取りきめを結びたいという希望が表明されていたことは事実でございますが、たまたま多数国間のガットにおきます通商交渉が行なわれておりますので、その中で解決したらどうかということで、しばらく二国間の通商協定を結ぶ話はたな上げになっておるというふうに御理解いただきたいと思うのです。  それから、エネルギーにつきましては、随時情報、意見の交換はいたしておりますけれども、現在のところEC日本との間でエネルギーに関します協定を結ぶことは考えておりません。  なお、本件につきましてもOECDその他多数国間の場でいろいろ話が出ておりますが、そういう場におきましては、EC日本は随時意見の交換あるいは情報の交換をいたしております。
  69. 土井たか子

    土井委員 その次に、四月二十四日にキッシンジャーアメリカ国務長官が安川駐米大使との間で会談を持たれているわけですが、その中で、御承知のとおりキッシンジャー米国務長官が大西洋憲章というものは事実上はたな上げだというふうな向きの発言があったように聞いております。これについてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカとヨーロッパの間でもう一度協力関係というようなものを締め直す意味で宣言を考えられて交渉を持たれておったことは承知いたしております。一つはNATOとの関係において、あるいは一つECとの関係におきまして、アメリカがそういう話し合いの場を持たれておったことはございますが、その話はどうも内外の事情にはばまれて、当初期待いたしたようなテンポにおいて進捗を見ていないというようにわれわれは見ておるわけでございまして、それがたな上げになるのかならぬのかということにつきましては、米欧間の問題でございまして、私がとやかく言うべきものではないと思いますけれども、どうも遅々として話は進捗していないようだということは承知いたしております。
  71. 土井たか子

    土井委員 そこで、そういう問題もございますが、現にアメリカとECとの間がスムーズにうまくいっているかというと、なかなかそうでないという事情がだんだんございます。  具体的なことを申し上げますと、これはすでに報道の中にも出てまいっているわけでありますけれども、イギリス、それから西ドイツの軍事不協力の具体的な例が出るに及んで、アメリカが態度をかなり硬化させておるというふうな例もあるわけです。  イギリスの軍事不協力の例ということになりますと、キプロス共和国にあるアクロテリのイギリス空軍基地の使用をアメリカに対して拒否したというのが具体的にあるわけであります。昨年の十一月にはロンドンタイムズという新聞を通じてイギリスはこれまでアメリカがアクロテリの基地からSR71偵察機を飛ばすのを許可していたのを拒否したというわけであります。御承知のとおりにSR71というのはたいへん速い速度のマッハ三という快速で、わが国では沖繩にもいたことのある例のスパイ機であるU2の後継者としてたいへん有名な飛行機ですね。このイギリスの取り扱いというのはわが国の沖繩に対しての取り扱いと対比しますとたいへん対照的だと思うのです。  もう一つの例は、西ドイツの例のプレマーハッフェンで行なっている戦車など軍事資材をイスラエルの貨物船に積み込むことの中止をアメリカに対して西ドイツが行なったことであります。これはわが国においては相模原の戦車の例を思い起こすわけでありまして、ずいぶんまたそれとは対照的であるということを問題にせざるを得ません。したがって、こういう一連の事実もかんでいるように思うわけでありますけれども、その間の実情からいたしまして、アメリカとECとの関係、それからその中におけるわが国の今後のあり方、特に外務大臣は親米外交ということを基軸にしながら外交姿勢というものをいままで続けられている、また今後もおそらくそうありたいと願っていらっしゃるであろうと私自身は考えるわけでありますが、そういう中で、今回ECに対して特権免除のこういう協定を特に結んだというふうなメリットがどの辺にあるかということもひとつ最後にあわせてお聞かせいただいて終わりにしたいと思うのです。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 米欧間の安全保障上の協力が一部で進み一部で停滞しというような事情があることはわれわれも知らないわけではございませんけれども、これは米欧間の問題でございまして、日本外務省としてそれをとやかくコメントする必要もないと私は思うのでございます。  私ども考えておかなければならぬことはまさに日米関係をどのように切り盛りしていくかということだと思うのでございます。日米関係は、いま土井さんが御指摘のように、私は手がたく維持し充実さしていくべきであると考えておるわけでございます。しかしこれは、何もアメリカさんのおっしゃることをうのみにしていくという意味では決してございませんで、日本日本立場で、アメリカはアメリカの立場で十分討議を遂げて、実行可能なことを着実にやってまいり、できないことはできないわけでございますが、進めてまいるものであろうと思っております。  しかし、EC代表部日本にお迎えするということにつきましては、このことと別に関係はないのでありまして、ECのいまの世界経済に占めております地位にかんがみまして、ECはいまアメリカに代表部を持っておりますし、一南米のチリに持っておりますし、三番目の代表部日本に持ちたいという希望を持っておるわけでございます。一つの超国家的な機関でございまして、わが国ECは非常に立場が似通っておりますし、かかえておる問題もよく似ておりますし、いま申しますようにECの世界経済に占める位置、世界の貿易の四割も占めておる巨大な経済圏でございますし、わが国ECとの間で、今後貿易の問題、資源の問題、投資の問題、環境問題、通貨の問題、その他いろいろな問題も含めましていろいろ討議すべき問題は山ほどあると思うのでございまして、これはこちらからもお願いしたいところでございますので、そういう意味合いにおいて今度の代表部設置をお願いいたしておるわけでございまして、日米関係と直接のかかわり合いを持ってこの代表部を認めるという意味では決してない。そういうことで考えておる措置ではございません。
  73. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  74. 木村俊夫

    木村委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  75. 木村俊夫

    木村委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  欧州共同体委員会代表部設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  76. 木村俊夫

    木村委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  78. 木村俊夫

    木村委員長 所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件、及び所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上両件を議題といたします。  両件に対する質疑は去る十日終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  79. 石井一

    ○石井委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております両条約に関し、賛成の意を表明するものであります。  近年、わが国経済の著しい発展により、通商の拡大化と経済の開放が促進され、国際間における資本、技術、企業及び人的資源の交流が活発化しております。またわが国の数次にわたる資本自由化への努力により対内外投資も増加傾向を強めております。  わが国は、昭和二十九年にアメリカと租税条約締結して以来、今日まで二十六カ国とこの種条約締結、今回アイルランド及びスペインとの間についてもOECDモデル条約に即して締結したわけであります。  また、わが国としては後発国と租税条約締結する場合、その締結を通じて両国間に発生する二重課税の排除という基本原則に立ちながらも、租税面からこれら諸国の実態に即したみなし税額控除などの規定を導入することにより、経済開発分野に対し協力しようとするもので、アイルランド及びスぺインとの条約にもこの種条項を設け、両国の要請にこたえているわけであります。  特に最近における国際経済の変動が激しいため、国際間取引も多岐にわたり、複雑多様化しております。このため、企業の国際化も促進された反面、巨大化した国際企業の世界的所得に対する捕捉をはじめとし、租税回避の問題あるいは国際間にまたがる親子会社間の恣意的な移転価格による支払い税額の圧縮など、課税関係の適正化問題などが発生しております。  かかる事態に対処し、租税条約においては、特殊関連企業条項による所得計算の適正化、あるいは利子、使用料条項を通じての不当利益操作の防止、もしくは情報交換規定の活用等により、適正課税措置の実施、運用がはかられているのでありますが、アイルランド及びスペインとの両条約においてもこれら条項を設け、その適正な運用をはかろうとするものであります。  アイルランド及びスペインとの間の条約締結は、二重課税の排除を通じ、両国間との経済、技術、文化の交流を促進せしめるのみならず、租税条約網の拡充に資することにもなり、租税分野における適正なルールの確立と国際協力の緊密化をもたらし、これが国際経済の発展に大きく寄与するものであることは申すまでもありません。  よって、わが国とアイルランド及びスペインとの両条約締結に対し、賛成の意を表明するものであります。
  80. 木村俊夫

  81. 松本善明

    松本(善)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました二つ租税条約締結に反対の態度を表明いたします。  これらの租税条約の主要な役割りは、事業所得、投資所得等海外進出企業が国外で得た利益を守ってやることにあり、大企業の経済進出を促進することであります。  今日、日本の大企業は、新植民地主義的海外進出と本格的な多国籍企業を目ざしており、いま重要なことは、海外進出大企業がタックスヘブン等を利用した海外子会社の脱法的な行為等による荒かせぎを規制することであります。ところが政府は、このような大企業の海外での脱法行為に対して、徹底的な取り締まりと対策をとっておりません。この政府の態度は、租税条約で大企業の海外利益を擁護しようとする態度と軌を一にしています。  日本共産党・革新共同は、平和五原則、平等互恵、全人類の社会進歩のための海外経済技術協力をもちろん否定するものではありませんが、これら条約は資本進出を擁護するものであり、経済的に強力な国がおくれた国に進出することになる本のでありますので、反対するものであります。
  82. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  83. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、公明党を代表して、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約、並びに所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約に対し、反対の意を表するものであります。  一九七〇年代の国際経済は、激動の時代に突入し、エネルギー資源問題あるいは食糧危機問題の顕在化は、工業消費国間の協調体制に大きなひび割れを生ぜしめ、今回の国連の資源特別総会に驚ける開発途上国は、経済自立を目ざし新たな国際経済秩序を求め、独自の歩みを展開し始めております。  このような潮流は、戦後二十五年間の世界経済の運営の原理であった大企業、超大企業による自由、無差別の原則についての基本的な問い直しが行なわれているものであり、それはすなわち、工業的先進国の今日までの経済政策に対する挑戦であり、そして経済成長思想や自由化原則に基づく物的生産の量的極大化や無原則な価格メカニズムに対する挑戦であるのであります。  したがいまして、かかる時期に、わが国は、GNPの大きさがアメリカに次ぐ規模に到達したという虚構の上に立ち、国民福祉の犠牲のもとに従来の国際的ワク組みの中で企業の海外進出を無条件に支持するということについては、十分の反省と検討を要するのであります。  今回わが国において、アイルランド、スペインとの間で租税条約締結することにより、二十八カ国にのぼる国々とこれらの条約締結されるわけでありますが、これらの背景に対応する条約であるかどうかにつき基本的な問い直しが行なわれなければならないのであります。私は本委員会において、これらの諸問題について数々の疑問と問題点を指摘したのでありますが、いずれにおいても明確なる回答はなく、この問題の大きさを示しているものであります。  すなわち、わが国が、これら租税条約締結するにあたり、その準拠すべきモデル条約は現在OECDの財政委員会で再検討が行なわれている段階であり、すでに多くの問題点があることは、そのモデル条約の改定交渉の途上明らかにされているところであります。  しかも一九七二年五月には、この財政委員会租税委員会に改編され、租税条約の乱用問題だけの検討のみならず、租税政策全般に関して広く討議、研究が進められているということは、国際経済の現状からして当を得たものであります。しかし、その結論は、今日に至るまで依然としてまだ出ていないばかりか、基本的な問題点について不合意である点に留意をしなければならないのであります。このようなときに、数々の問題点を含む本条約に対し、わが国政府が率先して本条約締結促進に熱意を示すことは、異常な事態として疑念を抱かざるを得ないのであります。  すなわち、本国会におけるわが公明党の代表委員たちの予算委員会をはじめとする追及において、たとえばトーメン、丸紅、日商岩井等のごとく、世界各地に子会社、支店網等を一社当たり九十カ所から百二十カ所に及ぶ拠点を設けた会社につき種々の追及を行なったわけでありますが、これらの会社は、五百人から八百人に及ぶ人員を派遣し、海外法人を隠れみのとして、裏帳簿による不正利得あるいは経理、価格、在庫操作等による悪質な組織的脱税行為を行なったことが明白にされ、そしてそれは国内法に違反するのみならず、国際法、特に租税条約網の陰の中において行なわれたということを注目しなければならないのであります。  すなわち、本社及び支店あるいは親会社対子会社の関係において、社内移転価格、トランスファープライスが、ある場合にはオーバーインボルビングし、ある場合はアンダーインボルビングし、これら本社あるいは多国籍企業によるところの国際経済機能に対する打撃というものは、いまや隠微な形で進行するのみか、顕在化し、国民生活に対する打撃となってはね返っているのであります。  すなわち、このような租税条約網というものは、本来二国間における企業の二重課税を防止するという意味合いをもってスタートしたものでありますが、いまやこの租税条約網は、全世界において多国籍企業が合法的と称する脱税を行なうのにその手をかし、いわんや子会社の株主の利益を損壊するような側面さえも持っているのであります。  また、多国籍企業は、これら租税条約網のおかげで、国内同一企業会社よりもはるかに有利なる税法上の特典を受け、そのほか税法上のみならず営業あるいは資金あるいは労務あるいは技術等において、大幅な有利さを持っていることを考慮するならば、多国籍企業問題に対するわが国政策の基本というものが那辺にあるかを疑われてもやむを得ないものであります。  したがって私は、本委員会において多国籍企業に対するわが国通産政策あるいは大蔵政策につき種々質問をいたしたわけでありますが、これらに対して明確なる回答はなく、むしろ現状の問題の大きさというものにかまけてこれに対して的確な御答弁がなかったことはきわめて遺憾であります。これら多国籍企業間の問題というものが国際経済体系の根本を動揺しせめ、国際的脱税行為をはじめとする不備なる国際条約の合法面を装った不正行為を次から次へと前進せしめている現段階におきましては、これら国際課税上のトラブルを調整し、租税負担の公平化をはかるということは、わが一国のみの問題点ではなく、世界的な問題点として、国連的レベルにおける問題点として、あらためて課税原則というものを再確認することが必要であると考えるものであります。  国際間における二重課税防止をするということの意味合いが大きいという、そういう一点だけの回答をもって、そして小さな点に問題点を矮小化することによって本条約を強行し、推し進めるということでは、今後のわが国の外交の基本方針に対してもなおかつ打撃を与えるものと信ずるものであります。その意味で、わが国が今後世界諸国との間で友好親善を促進し、平和外交を推し進める際には、これら一連の租税条約群に対し、現状時点における国際情勢の変化を考慮せずにそのまま推し進めるということは、むしろ世界諸国との間に基本的な不信を惹起し、友好を阻害する要因となり、また南北問題を激化せしめる要因になるのではなかろうかと憂えるものであります。  私は、かかる時点において先進工業国の一員としてのわが国が、いわゆる多国籍企業の世界的企業を支援するの形で、こうした形で国際経済体制を維持擁護する立場に立つことに対し、深い疑問を持つものであります。そしてわが国は、さらにわが国の先進大企業に対し、海外巨大企業と化し、先進多国籍企業というものの一環に立つことを推し進めるという方向も、またわが国の外交方針に対し、一定度の大きな緊張を巻き起こすものになると憂えるものであります。  先日の例によりますれば、ザイールにおいて、ある自動車会社がその国から合法的な形で国有化するべき申し出があったのに対し、その問題は小さな事件ではありましたけれども、問題点は鋭く惹起しているのであります。すなわち多国籍企業はいかなる国家内における紛争においても、本土側政府の無条件の支持を取りつけられない、また本国は受け入れ国に対する内政干渉を放棄するという意味のカルボ原則というものをわが国は採用すべきであることも私は本委員会指摘をいたしたわけでありますが、外務当局からは検討する旨の意思表示はありましたけれども、これまた御返事がなかったことはまことに遺憾であります。  これらの原則を幾つか考えれば、わが国の外交はいまや手放しで独立権の侵害、後発国に対するところの容赦なき、仮借なき経済収奪への道を直進することにもなりかねないと思うのであります。私は、ここで一転してわが国外交が世界経済の中の新しい秩序と新しい緊張緩和を目ざすためには、ここで多くの提案が行なわれなければならないと思います。  その第一は、多国籍企業問題につき、国連においてこれについて十分の討議をなすべきこと、多国籍企業に対して情報センターを設け、これを国際的にその情報を集めること、現在のような一国租税当局の能力をもってしては多国籍企業のその広範な租税に対して何ら有効的の措置がとられないことはすでに明らかであり、政府報告書にさえ明らかであります。したがって、私はそのような意味の情報センターというものを確立することをわが国は率先指導すべきであると思うのであります。  それから次に、わが国の独禁法はすでに国内独禁法としても問題でありますが、国際的な立場から見るならば、国際的な独禁法立法が必要であることはすでに明らかであります。その国際的な独禁法の検討に対し、わが国はいま率先して提案々なすべきものであります。  またわが国は環境規制あるいは国際的な投資の問題あるいは子会社に対する課税の問題、そうした問題についても国際的な十分の討議を提案すべきときが来ていると思うのであり、それらに対してわが国は今日まで行なったような国内における大企業保護政策というものを国際的に及ぼすべきものではなく、財務当局、経済関係当局並びに外務省の間の十分の討議と検討が行なわれなければならない時期が来ているのではないか、こう提案をいたすべきものであります。  わが党といたしましては、これまでの租税条約群に賛成した立場を本委員会よりこれに対し反対の意思表示を表するゆえんは、私がいま述べたとおりであります。そしてこの提案は、明らかに今日における国際的な収奪行為あるいは国際企業と民衆との間の利益の背反というものに対し鋭く考察いたしますとき、当然の行動ではなかろうかと私はみずから判断をいたすものであります。  その意味で、私は今回の租税条約の審議あるいは今後の租税条約審議に対しましては十分の御検討を賜わり、今回におかれては当局における研究不足はむしろ目立ったのでありますが、この租税条約群についてはあらためて全面的な再考慮と、日本外交の中の、経済外交の中の多国籍企業問題に対する明快なる判断というものを今後に要望いたす次第であります。  以上をもちまして公明党を代表し、本二条約に対する反対の討論といたします。
  84. 木村俊夫

    木村委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  85. 木村俊夫

    木村委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  86. 木村俊夫

    木村委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました両件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  88. 木村俊夫

    木村委員長 日本国ベルギー王国との間の文化協定締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、順次政府から提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣大平正芳君。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました日本国ベルギー王国との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。  わが国に対しましては、昭和四十四年以来ベルギー側より文化協定締結したい旨の申し入れがありましたが、わがほうといたしましては、この協定が両国間の相互理解と友好に資することを考慮してこの申し入れに応ずることとし、昭和四十五年十一月以来交渉を行ないました結果、昭和四十八年五月四日にブラッセルにおいて、わがほう本大臣と先方ヴァン・エルスランド外務大臣との間でこの協定に署名を行なった次第であります。  この協定内容は、戦後わが国締結いたしましたフランス、イタリア、英国等との間の文化協定内容と類似しており、諸分野における両国間の文化交流を奨励することを規定しております。  この協定締結は、両国間の文化交流の発展に資するところ大であると期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。  わが国は、わが国航空企業により南回り欧州路線の一環としてギリシャへの乗り入れを確保し、かつ、同国との友好関係の緊密化に資するとの見地から、昭和四十七年十月に同国政府と航空協定締結のための交渉を行ない、その結果合意が成立しましたので、昭和四十八年一月十二日にアテネで協定の署名を行なった次第であります。  この協定は、わが国とギリシャとの間の定期航空業務を開設することを目的とし、業務の開始及び運営についての手続及び条件を規定いたしますとともに、両国の航空企業がそれぞれの業務を行なうことができる路線を定めているものでありまして、わが国が従来締結いたしました多くの航空協定と形式、内容ともにほぼ同様のものであります。  この協定締結により、両国の航空企業は、安定した法的基礎の上において相互に乗り入れを行なうことができることになるのみならず、わが国とギリシャとの間の友好関係も一そう促進されることが期待されます。  なお、この協定は、昭和四十八年の第七十一回国会に提出されましたが、同年六月一日ギリシャにおいては王制を廃止し共和制への移行が行なわれ、国名もギリシャ共和国と変更されました。当時新政府の本協定に対する態度についての見通しが直ちには立たなかったので、結局国会での御審議も行なわれず、審査未了となりましたところ、その後ギリシャ側といたしましてはこの協定をそのまま早期に発効させたいとの意思を有することが明らかとなりました。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  90. 木村俊夫

    木村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  両件に対する質疑は、後日に行なうことといたします。  次回は、来たる十七日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十一分散会      ————◇—————