○穂崎
説明員 まず第一に、先ほど御
質問になりました移住についての
考え方につきお答えいたします。
海外移住と申しますのは、基本的には国民の個人幸福の追求の手段として海外移住が行なわれるわけでありまして、
政府はこれに対して必要な援助を与えるということで従来推移してきたわけであります。ただ、その問題の中に、この国際
協力事業団に海外移住
事業団を吸収したという点についてちょっと触れたいと思いますが、従来移住はさっき申し上げましたような国民の幸福の追求手段ということで、いわば個人のイニシアチブを尊重してやっているわけでありまして、今回海外移住
事業団が国際
協力事業団に入るに際しましても、この基本的な
考え方は全然変えてはおりません。
ただ、すでに移住百年になりますが、アメリカにもおりますしブラジルにもおりますし、中南米等至るところに
日本人がおりまして非常に活躍しておるわけでございます。百年たってみますと、現在日系人約百四十万といわれますが、これら移住者が移住先国で多大な経済的、社会的な貢献的をしております。
たとえば、ブラジル等におきましてはコショウを
現地に植えてこれを大きくしたのは
日本人でございますし、あるいはジュートを大きくしたのも
日本人でございますし、その他ブラジルで有名なコチア
産業組合のような日系の農業協同組合をつくったのも
日本人でございますし、あるいはブラジルでは連邦の
大臣がすでに二人も出ておりますし、議員もおります。そういうことでいろいろその国におきまして非常な活躍をし、いわば国際
協力と申しますか、そういう一面において非常に大きな
役割りを果たしておるという認識がだんだんできてきたわけでありまして、そういう観点もとらえまして、移住というものは個人の幸福追求プラスそういう国際
協力という二つの面があるということを認識しておるわけでございまして、そういう面をとらえて、今度の国際
協力事業団の中でさらに移住を生かしていこうという考えでございます。
そこで、移住というものがそういう
考え方であり、国際
協力の中に移住を位置づけるということでございまして、いままでわれわれが移住者を援護するにあたりましては、その移住者個人の幸福追求ということから移住者に対する援護として認識してきたものを、今後はできる限りその移住者の属する
地域の
地域開発との
関連も考えながらやっていったらどうだろうか、こういう考えを持っておるわけであります。その業務が国際
協力事業団の業務と一致すれば、これは確かに相手国の経済
開発にも役に立つであろうし、同時に移住者の利益を伸ばしていくということにも役に立つのではなかろうか、こういう認識を現在持っておるわけでございます。
それが移住の
考え方でございますが、先ほど海協連の要望書の中に移住者の定着、安定のためのインフラと申しますか、
関連施設の
整備というような問題について要望があるとおっしゃいましたが、これにつきましては従来、海外移住
事業団が、御
承知のように移住者のために道路をつくったり学校をつくったり病院をつくったりしてやっているわけでございます。
ただ、率直に申しまして予算が十分でございません。そのためにいろいろ移住者の方から要望がある点は私たちよく存じております。今後われわれといたしましては、こういう
一つの大きな
事業団に入ったということと、先ほど申し上げました
地域的な
開発もやるというような
考え方もあわせまして、やはり移住
地域のそういう
関連施設の
整備というものは強く念頭に置いて仕事をしなければいかぬ、そのように考えております。
それから、次に御
指摘のありました老人対策の問題ないしは移住者に対する医療、教育の問題でございます。
最初、医療、教育の問題に触れますと、先ほど申し上げましたように 海外移住
事業団が直営している移住地におきましては大体病院をつくっております。それから
日本から医者を
派遣しております。それから教育については、これはあくまで
現地の法制に基づく教育でございますので、向こうの
政府で教育をやるわけでございますけれ
ども、やはり移住
地域というのは相当へんぴなところがございますし、それからいろいろな観点から向こうの
政府の金も十分でないという点もございますので、場合によりましては学校
施設の援助もいたしますし、それから
先生の給料の援助とか、そういうことをやっておるわけでございます。
それから老人対策でございますが、これは非常にむずかしい問題を含んでおりますことは、確かに
現地ブラジルで、主としてブラジルでございますけれ
ども、一世、二世の間に断絶があるというようなことから、かりに生活に困らないにしても、とにかく子供から離れて生活して精神的に困っている、精神的に非常に窮迫している
状態にある方、あるいは経済的にも困っている方といろいろあるわけでございます。
これにつきましては
現地に
日本人の慈善団体が三つばかりございまして、それが主として
日本人の困った人たちを収容しておるわけでございます。中には職業的な補導をやっておるところもございますが、
政府としましてはこの団体に対しまして保護謝金というもので、ちょっといま数字は記憶しておりませんが、年間ある
程度の金を出しております。
で、さらに進みまして、こういう老人をどうすべきかという問題につきまして、ここ数年来注目を浴びておりますので、われわれといたしましては、今年度国会で御
承認いただきました予算の中で老人問題の実態について
調査するということをまずやっております。実態について
調査した結果どういうふうにするかということについては、いま腹案はございません。
ただ、ブラジルの
政府としましては、かつて
日本が老人対策について何かやりそうだというようなことが
新聞に出ました場合に、東京の大使館の館員が訪れまして、
日本政府は何か
自分でそういうことをやるつもりがあるのだろうか、実は
自分の国は社会福祉については一生懸命やっているつもりだということで、
政府が直接これに手を加えるということに対して非常な懸念を示しておったこともございますので、われわれとしましては、
政府としてこれに何かしなければいかぬという必要は認めておりますが、そのやり方につきましてはいろいろと考えてやらないと、やはりブラジルとの関係という点から問題が起こるのではないか、そのように思っております。まず実態
調査をいたしましたその上でどういうふうな対策をとるかということは考えたいと思いますが、問題認識は十分に持っております。
それから最後に、海協連の中の地方海外協会の業務の委託の問題でございますが、実は昔、いまの海外移住
事業団ができます前は、そういう地方海外協会が移住者の募集であるとかあっせんとか、いろいろそういうことについて仕事をやっておったわけでありますが、移住
事業団になりましてからは移住
事業団が各府県に支部を置きまして、現実にそれを引き継いでやったわけでございます。最近、移住
事業団の各府県の支部が廃止されまして、全国が十ブロックに分かれまして、一部の府県にはなお支部を置いてやっております。
われわれが今後海外協会、これは各県によって海外協会のある県とない県がございますけれ
ども、これをどのようにわれわれの仕事の中にとらえていくかということにつきましては現在検討を加えております。やはりこういう地方海外協会というものでありますれば、移住だけではなくて、海外知識の普及とか
外務省に関係の深いいろいろな仕事をやっていただくのも
一つの方法じゃないか、そのように考えておりますので、これに対しましてどのような業務を委託するかというようなことにつきましても、なおしばらく検討してみたいと考えております。
以上でございます。