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1974-05-08 第72回国会 衆議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月八日(水曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 水野  清君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 松本 善明君       足立 篤郎君    加藤 紘一君       坂本三十次君    田中 龍夫君       福田 篤泰君    石野 久男君       高田 富之君    土井たか子君       三宅 正一君    金子 満広君       大久保直彦君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  山由 久就君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         運輸大臣官房観         光部長     高橋 寿夫君  委員外出席者         警察庁警備局参         事官      星田  守君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省アメリカ         局外務参事官  深田  宏君         農林省農林経済         局国際部長   山田 嘉治君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      森山 信吾君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際協力事業団法案内閣提出第五七号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止
  3. 木村俊夫

    木村委員長 速記を始めて。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  4. 河上民雄

    河上委員 新聞によりますと、外務大臣はこのたびアメリカに行かれてキッシンジャー国務長官とも会談されるというようなことでございますが、その目的につきまして、この当外務委員会に若干の報告をしていただくのがしかるべきだと思いますが、どういうような御予定で行かれるのか、一言伺いたいと思います。
  5. 大平正芳

    大平国務大臣 かねてニューヨークにあります日米協会から、再々にわたりまして、総会出席の上、講演をするようにという依頼を受けておったわけでございます。日米関係に深い関心協力を続けていただいておるそうそうたるメンバー各位の強い要請でもございますので、事情が許すならば、日本の外相といたしまして、その御要請を受けるべきでないかと考えておったわけでございます。準備都合もございまして、二カ月ほど前に会員に周知する必要もあるということでございまして、私といたしましては、国会がその段階で終了いたしておりますことを祈念しながら、内閣の御了解を得て承諾いたしたのでございます。  その機会に、日米間の間断ない対話の一環といたしまして、当然のこととして米国首脳とはお話し合いを持つ責任があると考えて、先方の都合も伺っておったのでございますが、一応その講演と相前後いたしまして、国務長官とのお話し合いができる機会が得られそうでございます。しかしながら、日米間にいまとりたてて火急の問題はないわけでございまして、私といたしましては、あらかじめ議題を設定するようなことなく、双方共通関心を持っておる諸問題につきまして、きわめてフランクに話をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  国会末期の非常に忽忙なときでございますので、日程を詰めまして、最小限度任務だけは果たさせていただきたいというように考えております。
  6. 河上民雄

    河上委員 いま大臣からお話がありましたし、すでにお約束をされたことのようでございますので、それをいまここで、本来は問題にすべきかもしれませんが、とやかく申しませんけれども、ただ、最近資源総会が終わりまして一応の結論が出たようでございます。私は資源総会の開かれるときにも大臣に強く申し上げたわけでございますけれども、今回の資源総会はある意味において日本の死活に関する重要な会議であったと思うのであります。今後その意義はときとともに大きく見えてくるのではないか、こういうように私は思うのです。残念ながらこの資源総会には、大臣国会でお忙しいということで出席されなかったばかりか、外務大臣にかわる閣僚も派遣されることがなかったのであります。  私が新聞などで拝見するところ 今回の国連資源特別総会には各国とも非常に責任ある立場の者を派遣しておる。アフリカの五カ国は全部大統領、中国、ユーゴの二カ国は副首相、中国の場合は鄧小平氏が行っておられるわけですが、ソ連、フランス、西ドイツなど五十二カ国は外務大臣、その他の閣僚を派遣した国が十一カ国こういうようなことで日本だけが、水田さんですが、要するに一議員が行かれた。こういうようなことでございまして、私はどなたが行ったということを言うわけじゃありませんけれども、やはりいまの国連資源総会に対する熱意としては、責任ある立場の者が行かなければならないのじゃないかと思うのです。  私が総会前に警告をしたように、各国とも非常に重要な立場にある者を送っておるのです。今後こういう閣僚の海外における会合への出席については、やはり重要度というものを考えて、もう少し慎重に事をはかるべきではないかと私は思うのでございますけれども、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  7. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、当面の政治責任をになっておる政府といたしまして、まず責任ある閣僚が重要な国際会議に出てまいってその責任を果たすということは当然の任務であると考えております。今後もいま河上さんおっしゃったように取り運んでいくべきだと考えております。  今次資源特別総会でございますけれども、こういう種類の特別総会が持たれたことは国連の史上におきましても初めてでございますし、新しい世界経済秩序の基礎を据えるという意味におきまして、この特別総会の持つ意義は御指摘のように非常に重大だと考えております。したがって、まず総理大臣、副総理あるいは私が出てまいるのが当然の道行きであると私も考えて、いろいろ日程のやりくりをいたしたわけでございますけれども、その時点におきまして物理的にどうしても至難な状況でございましたので、私どもよりは経験も貫禄もございまする水田氏をわずらわすことにいたしたわけでございます。  資源問題というのは、ひとり外交問題ばかりでなく、経済各般にわたって非常にすそ野の広い大問題でございますので、いま政府与党ポリシーボード責任を持たれておる方をわずらわすことは決して不自然ではないと考えたわけでございまして、決してこの総会を軽視したという意味ではないわけでございます。  しかし同時に、この特別総会で示された構想は、これから国際政治の場におきまして息の長い道程を経て逐次秩序の創建に取り組んでいかなければならない問題でございますし、今回だけの問題ではないわけでございまして、この資源問題が国際的な舞台において取り上げられる機会はこれから多々あることと予想されておるわけでございます。政府といたしましては、この問題につきましては、終始その重要度にかんがみまして最大限の配慮を加えて、内外の期待にこたえるに足る代表団をもって対応してまいらなければならぬと考えておりますので、その点につきましては特別に御理解をいただきたいと思います。
  8. 河上民雄

    河上委員 これは、いま大臣も言われましたが、やはり派遣される人の貫禄とかそういうような問題じゃなくて、当面の政治責任を負っている人が行くというのがたてまえじゃないかと思うのです。今後こういうようなミスを繰り返さないように対応いたしまして、資源総会――きょうは実は韓国における二学生逮捕事件について外務省の御意見を承りたいのでありますけれども、その前に国連資源総会の問題について二、三お尋ねをさせていただきたいと思います。  まず第一に、今回資源特別総会で採択されました宣言行動計画に対する政府態度、コメントはどういうものであるか、それを事務当局から伺  いたいと思います。
  9. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 宣言につきまして、最終の本会議でいわばコンセンサスという形で採択されましたときに、日本代表がこの中の三つの点につきまして意見表明を行なったわけでございます。宣言それ自身は約二十の原則が入っておりますので非常に大部のものでございますが、その大部分については日本は賛成できるけれども、残った三点について一応日本考え方を述べたいということで申したわけでございます。  第一の点は、天然資源恒久主権関連いたしまして、開発途上国国有化権利を持つという点に関連してでございます。わがほうの基本的な考え方は、従来の国連総会における資源問題の決議に表明されておりますように、開発途上国資源当該国経済発展あるいは国民の福祉の向上のために利用し、処分する権利があるということは当然でございます。ただ、これを国有化する場合に、その国有化のしかたについて問題があるという意見を表明してきたことは、前の外務委員会の席でも申し上げたかと思いますが、国有化の場合には、国際法によって問題を解決するのだということを、この恒久主権関連して、一言で言えば日本考え方として表明したわけでございます。  第二の点は、価格のリンクといいますか、つまり開発途上国が輸出する一次産品価格と、先進国から輸入する、主として工業製品価格相関関係を自動的にリンクしたいというのが開発途上国側の強い主張でございましたが、日本としては、そのような自動的なフォーミュラが必ずしも問題の解決に資するかどうか疑問である、むしろ交易条件の改善という形で、できるだけ先進国後進国が共同の作業として、新しいフォーミュラを見つけるべきじゃないかという観点から、日本考え方を述べたわけでございます。  第三の特恵でございますが、開発途上国側考え方は、プリファレンシャルということばをよく使っておりますが、特恵的かつノンレシプロカル、つまり一方的な、開発途上国のみが受けるという意味ノンレシプロカル特別待遇先進国側は義務として提供すべきであるという考え方に立ったわけでございますが、わがほうの代表は、これについての意見表明は簡単に申し上げますと、開発途上国に対する何らかの特別な措置が必要であることは十分認識するけれども、しかしその特別なフェーバラブルな措置は、可能であり、かつ適当の場合に初めて効果があるという意味意見表明を行なったわけでございます。  それから、行動計画につきましては、宣言を受けたかっこうで、非常に長い大部の包括的な項目を掲げておりまして、これについては、時間も十分なかったという関係で、審議が十分に尽くされておらないために合意されない点が非常に多かったわけでございます。したがいまして、この行動計画がやはりコンセンサスで採択されました場合に、わがほうは、その中の幾つかの項目について留保ないし意見表明という形で日本側考え方を述べたわけでございます。詳しいことは省略さしていただきますが、たとえば原材料の問題あるいは一般貿易の問題、多角的貿易交渉の問題、それから国際通貨開発融資の問題、あるいは技術移転問題等項目について、若干日本側考え方を述べたわけでございます。
  10. 河上民雄

    河上委員 大体わかりましたが、この問題について、次のこれらの問題を含めてですが、国連資源総会は、今後も作業は続けられると思うのですが、こういうような論点について、今後日本政府としてはどういうように自分の主張を伝えていくつもりなのか、それからまた、いつごろまでに国際的にこういう一つ結論が出るとお考えになっているのか。
  11. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 ただいま申し上げましたように、宣言行動計画につきましては、各国意見表明はありましたものの、一応コンセンサスということで採択されておりますので、これはこれとして一応完結したものと考えております。  ただ、この行動計画関連いたしまして、今度の会議で一番問題になりましたのは、最近の経済危機を契機として非常に困窮している開発途上国、特に石油その他の一次産品資源もない、非常に困った国がございますので、そういった国に対する特別な救済措置をどうするかということが非常に大きな問題になりました。したがいまして、この行動計画議論の過程に起こりましたこの問題は、行動計画の一部というかっこうで、最終的に採択されたわけでございますが、これにつきましては、各国とも何らかの特別な措置をしなければならないという点については、合意ができました。  ただ、その措置の中で一番核心になりますのは、特別の基金各国自発的拠出のもとにつくる、そのために委員会をつくって、今後その機構なり運営方法を検討させるということが、いわば宿題として残ったわけでございます。この基金機構その他の運営につきましては、いま始まっております経済社会理事会審議をされまして、そこで各関係機関、特にIMFとか世銀とか、関連国連機関協力を得て、一つの仕組みをつくって、それを来年の一月一日から発足させるということが一つ宿題として残されております。
  12. 河上民雄

    河上委員 それでは国有化については、その原則は認めるけれども、国際法にのっとってやってほしい、こういうふうな希望を出したということでございますが、最近ザイールですか、日本会社国有化の対象になった事件もございますが、そういうような問題について、日本政府は、大体それを認めて、これで満足すべきものだとお考えになっておるのか。また、その他私ども知らない問題で、いろいろ起こっておるかもしれませんけれども、そういう国有化はすでに行なわれているわけですね。そういう問題について、政府はどういう態度をとっておられるか。
  13. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 ザイールの問題につきましては、私も必ずしも所管でございませんけれども、いまの国有化の問題との関連で申し上げますと、伝えられるところによりますと、国有化にあたって当該投資をしておる会社との間に話し合いを進めるということがあったかと思います。つまり日本資源総会を含めまして、国有化の問題について関心を持っておりますのは、国有化の際の補償の額の決定あるいはその支払い方法、ないしはそれについて争いがあった場合にどういう関係法規でこれを解決するかという点でございます。  その観点から申しますと、ザイールの件につきましては、当事者同士がこれから補償について話し合いを進めるというふうに伝えられておりますので、当事者同士の満足のいく合意ができますれば、日本側考えている基本的な姿勢のワク内でおさまるのじゃないかというふうに思われます。
  14. 河上民雄

    河上委員 もし無償没収とか、そういうような問題が起きて、日本政府としては、これは国際法に合致しないというような判断をする場合には、いわゆる外交上の保護のような行動に出るのかどうか。
  15. 松永信雄

    松永政府委員 ただいまのザイールにおきます、まあザイール化の問題に関連してのお尋ねかと存じますが、ザイール化問題自体につきましては、これから関係者間で話し合いが行なわれるということであろうと存じます。したがいまして、その話し合いの推移を政府としてもよく見守っていきたいというふうに考えているわけでございます。  仮定の問題としまして、いま御質問がありましたように、たとえば無償没収というようなことが行なわれるという事態が、もしかりに出てまいりますれば、それはいわゆる私権ないし財産権というものが無視されるという結果が出てまいりますので、その際には、政府としても、相手国政府に対して、しかるべき申し出その他を行なうということになるかと思います。
  16. 河上民雄

    河上委員 過去の歴史においては、無償没収という例はあるわけです。これはもちろん今日の開発途上国の要求とは違って、いわゆる革命が起こったときに、すでにそういう事例があるわけですが、そういうことがしばしば、たとえばソ連の場合などはシベリア出兵というような問題を引き起こしているわけですし、そういうようなことがないようにするということは、これは非常に重要なことだと思うのです。そういう保障を求めるという原則を一方で持ちながら、そういうような危険がないようにするにはどうしたらいいか、そういうようなことについて政府はある程度の準備といいますか、そういうものはおありでしょうか。
  17. 松永信雄

    松永政府委員 それは一般論として申し上げますれば、国有化あるいはザイール化のように、アフリカ諸国において近時かなり見られる現象でございますけれども、そういう事態が起こりました場合には、これは国連におきまして議論されましたように、国有化そのものはその国の主権の問題として決定されるべき問題であろうというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、それに伴って行なわれます保障その他の問題も、第一義的にはその国の国内法に従って行なわれるべきものであろうというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、あらかじめそういう事態を予想して、それに備えて政府がいろいろな措置をとるということは、必ずしも適当ではないのではないか。もし万が一にも財産権が尊重されないというような事態が出てきますれば、それに対応して、その事態に相応するしかるべき措置を講じていくというふうに考えるべきではないかと存じております。
  18. 河上民雄

    河上委員 いまの局長の御答弁は、ある意味においては、ある特定の状況下に当てはめて考えた場合には非常に重要な発言になるおそれもあると思うのですが、いまそういう仮定のことであまり強くいろいろ言うてもどうかと思いますけれども、一応その御答弁は留保させていただきます。  次に、今資源総会では、領海の問題も若干議論されたように聞いておるのですけれども、日本政府領海につきまして最低限度十二海里説というものを大体認める方向にあるわけでしょうか。
  19. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 領海の問題は、今次の資源総会では全然議論されておりません。それだけ申し上げておきます。
  20. 河上民雄

    河上委員 今度は海洋法会議が近くそうこうしているうちに開かれるわけですけれども、領海の問題については、大体いま政府はどういう態度をとっておられますか。
  21. 松永信雄

    松永政府委員 国際法上確立されております領海幅員は三海里であるという立場をとっております。
  22. 河上民雄

    河上委員 しかし、十二海里説が大体有力になる、そういう場合に日本政府だけ三海里説でがんばり通せるかどうか、その点はどうですか。
  23. 松永信雄

    松永政府委員 御指摘のごとく、現在多数の国が三海里以外の六海里でありますとか、十二海里あるいはそれ以上の国の領海主張しております。三海里の領海主張し、その制度を実施している国は、世界各国の趨勢の中においては少数の国になりつつあるというのが現実でございます。  そこで政府といたしましては、国際的な合意条約あるいは協定等によりまして国際的な合意によって領海幅員が変更されるということがなされれば、これについて異議を唱えない、また日本国としてはそれに従うという方針でございます。
  24. 河上民雄

    河上委員 もし十二海里説が国際的に認められ、日本政府もこれに従った場合、津軽海峡は、これは十二海里説でいきますとどういうことになりますか。
  25. 松永信雄

    松永政府委員 その場合は双方からの十二海里で海峡が埋まりますから、いわゆる国際海峡になるわけでございます。
  26. 河上民雄

    河上委員 その場合の航行の自由は、たとえば外国軍艦航行の自由というのはどういうようになりますか。
  27. 松永信雄

    松永政府委員 これも実は一般論として申し上げますことを御了承をいただきたいと存じますけれども、国際海峡におきます外国の船舶ないし軍艦通航をどう規制していくかという問題につきましては、まさしく来たるべき海洋法会議においていろいろな議論が行なわれるものと想定いたしております。  大きな海洋国側といたしましては、なるべく航行の自由、まあ公海におきますような航行の自由に近い自由というものを確保していきたいという要請があるのに対しまして、沿岸国側要請といたしましては、航行の安全でありますとかあるいは公害問題、海洋汚染防止のための規制といったような観点から相当な規制が加えられるべきであるという要請が出てまいるわけでございます。その間におきましてどういうバランスをとって通航ないし航行の問題を調整していくかというのが、来たるべき海洋法会議におきます大きな問題点になって論議されるだろうと思っております。  政府といたしましては、各国主張、論議を十分聞きながら、慎重に対処してまいりたいと考えているわけでございます。
  28. 河上民雄

    河上委員 この津軽海峡の場合は、アメリカ軍艦であればこれは日米安保条約で自由に航行できると思いますけれども、それ以外の国の軍艦の場合は、もしこの十二海里説をとった場合には、いまおっしゃったように埋まってきますから、そういう場合、どういうような状況になるでしょうか。これは仮定の問題だと言われればそれまでですけれども、間もなく海洋法会議でそういう方向が打ち出されることはもうほぼ確実なわけですので、伺っておきたいと思います。
  29. 松永信雄

    松永政府委員 これも一般的に申し上げざるを得ないわけでございますけれども、一般的な考え方といたしましては、現在の津軽海峡がかり日本領海になるという場合に、外国軍艦がそこを通過いたします場合には、いわゆる無害通航の問題として処理していくということになるかと考えられます。
  30. 河上民雄

    河上委員 それでは資源総会についての質問はこの程度にさしていただきまして、この前、すでに外務省でも御承知と思いますが、韓国において二人の日本人学生の方が逮捕せられた。そして  いまだに身柄の自由を保証できないでいる。また、その身が安全であるかどうかも日本政府としては確認できていないように伝えられておるのでござ  いますけれども、この問題について少し伺いたいと思います。  これはまことに、日本人外国へ行きまして、このように一言の弁明もできずに逮捕せられるというような事態が起こりますことは、この二人の学生の方だけの問題ではなくて、日本人全体の問題だと思うのでありますが、まず、この緊急措置令、この二人の学生が逮捕せられた理由というものは、政府としてはどのように確認しておられるのでしょうか。
  31. 高島益郎

    高島政府委員 在韓日本大使館がこの両名につきまして韓国当局任意取り調べを行なっているということを承知しましたのは四月八日でございます。それ以後韓国政府は、当初、緊急措置第四号違反容疑任意取り調べをしておるので、これによって処罰するということには、まず九〇%ぐらいならないだろうと思うけれども、ごく短時日の間取り調べをするのでそれに協力してもらいたいという話がございまして、わがほうとしましては、韓国側のパブリシティーをなるべく与えないで早期解決するという方針を一応信頼いたしまして、事態を静観して、随時韓国政府に対しまして早期解決要請してまいった次第でございますけれども、その後韓国政府当局は、新事実、新しい重大な容疑を発見したということでございまして、二十二日両名を逮捕することになったという通報を受けました。  現在まで韓国政府側から説明を受けた範囲内で両名の違反容疑を御説明いたしますと次のようになります。ただ、これにつきましては、わがほうとしてはまだ具体的な事実等についても説明が十分でないので、いまなお具体的な事実及びその事実がどういうふうに緊急措置第四号と関連するのかという点につきまして説明を要請いたしております。そういう条件のもとで、現在までわがほうがわかっております両名についての緊急措置第四号についての違反容疑というものを御説明いたします。  まず、太刀川氏につきましては、昨年末以来いわゆる全国民主青年学生総連盟の指導者である李哲と接触してきた。そうしまして四月一日、同じく総連盟の指導者柳寅泰にデモの計画を聞いた。この点につきましては、わがほう大使館員が四月十二日に両名に面会した際に、本人からも確認いたしております。  それからまたこの点は確認いたしておりませんけれども、韓国政府側の捜査の結果といたしまして申し述べておりますことは、この太刀川氏が金を与え、活動計画を支援した、そうして暴力革命の計画を激励、扇動したということをいっております。それからさらに四月三日、デモの現場写真をとり、ビラを携行した。この点はわがほう大使館員が本人から確認いたしております。五日、当局に通報することなく出国しようとしたという事実がございまして、この点も本人から確認いたしております。  なお別な問題で、太刀川氏はいわゆる観光ビザで韓国に入っておりまして、学生デモその他の取材活動を行なったことは韓国の入国管理法違反であるということでございます。  それから、早川氏につきましては、やはり同様に昨年末から、先ほど申しました全国民主青年学生総連盟の柳寅泰及び李哲と数回接触しているということでございまして、特にこのうちの柳寅泰氏に接触しているということにつきましては本人も確認いたしております。四月一日太刀川氏にデモの情報を伝達し、太刀川氏に柳寅泰を紹介した。これも本人が確認いたしております。  それから先ほどの太刀川氏と同じことでございますけれども、金を与え、活動計画を支援した。またさらに暴力革命の計画を激励、扇動したと申しております。四月三日、デモの現場でビラを太刀川氏に手交した。この点は本人も確認いたしております。  なお、早川氏は柳寅泰氏が学生運動の指導者であることは知っていたが、全国民主青年学生総連盟という組織の最高指導者であるということは知らなかったというふうに述べております。  以上でございます。
  32. 河上民雄

    河上委員 いまの逮捕理由は、これはほとんど全部向こう側が言っておることでございますね。
  33. 高島益郎

    高島政府委員 いま私が本人も確認しておりますと申しましたことは、わがほう大使館員が本人に面会した際に本人から確認したことでございます。
  34. 河上民雄

    河上委員 いま本人から確認したということを局長は何度も言われたのでありますけれども、それはどなたがどこで面会して確認をしたのか、聞いたのか。
  35. 高島益郎

    高島政府委員 これは大使館員の担当官でございます手島書記官というのがおりまして、これが任意取り調べ中に両名と治安局で面会することができまして、その際、両名からいろいろそういう話を聞いたときに本人から確認したということでございます。
  36. 河上民雄

    河上委員 その手島一等書記官ですか、その方は、駐韓国日本大使館員でございますね。
  37. 高島益郎

    高島政府委員 そのとおりでございます。
  38. 河上民雄

    河上委員 その方は外務省の方ですか、それとも他の機関からの出向の方ですか。
  39. 高島益郎

    高島政府委員 大使館の館員というのはすべて外務省の職員でございます。そういう意味で、手島書記官も外務省の職員でございます。
  40. 河上民雄

    河上委員 いわゆる外交官試験を通って行かれた方ですか、それとも他の役所からの出向の方、これはたくさんおられるわけで、通産省からも、いろいろなところから行っておられると思うのですが、そういう方ですかということを伺っておるわけです。
  41. 高島益郎

    高島政府委員 警察庁から外務省に出向しまして、外務省から大使館の館員、一等書記官として勤務しておる人でございます。
  42. 河上民雄

    河上委員 局長に重ねて伺いますけれども、そういたしますと、そのお二人に接触しておる方はその手島書記官ただ一人でいらっしゃいますか、それともほかにも大使その他の大使館員の方が接触しておられますか。
  43. 高島益郎

    高島政府委員 現在までこの両名に大使館の館員が面会できたのは四月十二日手島書記官が一回だけでございますので、そういう意味でほかにはございません。
  44. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、大使館員が接触されたのは四月十二日ただ一回であるということ、そして正式に逮捕に切りかえたあとは全く接触ができないということ、それから大使館員で接触しておられる手島書記官は警察庁の出向の方である、そういうことはいまの御答弁で確実と思いますけれども、いかがですか。
  45. 高島益郎

    高島政府委員 そのとおりでございます。  ただ、大使館員がこの両名に面会する問題につきましては、再三再四韓国政府側要請いたしておりまして、現在まだ成功いたしておりませんけれども、韓国側の言い分では、逮捕されてから送検するということになるまでの間の面会というのは非常にむずかしいという話でございますけれども、わがほうといたしましては、やはり何といってもこの両名の容疑事実をはっきり確認する必要がある、どういう理由で逮捕され、どういう理由でこれから処遇されるかという問題については非常な関心を持っておりまして、何としてでもこの事件早期解決ということを目的としまして、早く面会するように要請いたしておりますが、先方は現在のところ、弁護人を選任し、弁護人ならば面会できるようになるということでございまして、いまだに大使館員による面会というのは成功いたしておりません。
  46. 河上民雄

    河上委員 それで、いま手島一等書記官が本人から確認したという内容は、韓国政府から通報のあった内容の一部と全く一致しておるのか、それともそれは全く新しい、大使館員なるがゆえに聞かれた一つの新しい情報であるのか、その辺のことを、ちょっとわかりにくかったので確認したい。
  47. 高島益郎

    高島政府委員 先ほど私が申しました本人も確認しておりますという点につきましては、これは全体の容疑事実の一部でございまして、むしろ韓国側が重要な新しい容疑と申しておりますのはそういう点じゃなくて、先ほど申しましたように、金を与えたりあるいは活動計画を支援したり、暴力革命の計画を激励一扇動したと韓国政府が言っておるその点が韓国側のいう重大な容疑ということでございまして、私どもといたしましてはこの点を実は問題にしておりまして、どういうことを具体的にいつやったのかということを確認する必要があると思っておるわけでございます。
  48. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、日本政府としては、逮捕理由の全貌について、通報されたものをもって事実と合致しているかどうかまだ確認はしていない。確認は急いでおるけれども、確認していない。  その問題と、もう一つは、それは妥当なものと考えるかどうか、ですね。日本政府としては、これは非常に妥当していない、逮捕に当たらないと考えて釈放の尽力をしておられるのかどうか。その辺の判断はいかがでございますか。
  49. 高島益郎

    高島政府委員 これは、この事件はあくまでも韓国の内部で起こった事件として処理されているわけでございまして、わがほうといたしまして、この両名がどういうことをいつやったかという点については何ら材料を持っておりませんので、一切の予断を持っておりません。ただ、しかし、両名はいずれにしても日本人でございますし、韓国では外国人でございます。そういう人たちが緊急措置というような法令に違反してこういう目にあっているということは、何としてでも早く解決して、この事件に終止符を打つということが必要なわけでございますので、そういう観点から努力しているわけでございまして、特別な予断を持ってどうこうしているということは実はしておらないわけですし、またできない相談でもございます。
  50. 河上民雄

    河上委員 いま局長のお話でございますけれども、内政干渉にわたるおそれがあるというようなこと、あるいは向こうがきめることだからというようなお話でございますが、それでは日本政府がこの問題について登場できる要件は何か。つまり、外交保護権を行使できる構成要件は何と考えるか。こういうような事態だから日本政府はいま言ったような問題、外国で起こった事件であるけれども、日本政府としてはこういう条件が整えば外交保護権を行使できるのだという一つの構成要件があると思うのですね。そういう構成要件は何だとお考えになっておられますか。
  51. 松永信雄

    松永政府委員 一般国際法上の問題としてのお尋ねでございますけれども、いわゆる外交保護権を発動いたします要件ないし基準といたしましては、自国の国民が相手国において十分な国内法上の救済が得られないとか、あるいはその手続、国内法を適用されるにあたりまして不法あるいは不当な取り扱い、あるいは非人道的な待遇を受けるというような事態が起こりますれば、これは外交保護権を行使して相手国政府に申し入れをし、そういうような事態を修正してもらうという措置を講じてもらうということであろうと存じます。
  52. 河上民雄

    河上委員 いまの御答弁、ある意味では一般論でございますけれども、非常に重要なことですので伺っておいたわけですが、いままで韓国政府日本人の逮捕について正式に通告する慣例を持ってきたかどうか、いままでもやみくもに逮捕してそれきりである。関係者がどうもいなくなったからというのでいろいろ調べてみたら、逮捕されていたということであったのか、そして今回は逮捕について正式に通告してきたのかどうか、それをお伺いしたい。
  53. 高島益郎

    高島政府委員 いま先生がおっしゃったように、日本人が逮捕されても何ら通告を受けないということはございません。逮捕された際には必ず大使館員に対しまして通報がございます。
  54. 河上民雄

    河上委員 それでは今度はソウルの大使館あるいは釜山の総領事館は面会を正式に要求してきたのか、それともいまのところ文書その他でなしに口頭、まあともかくほっておけないのでやっておるということでありますか、それともやや抗議めいた形で正式な要求をしておられるのでしょうか。
  55. 高島益郎

    高島政府委員 これは先ほどの外交的保護の問題とも関連いたしますけれども、要するに邦人が韓国政府当局によって逮捕されて取り調べられているという場合に、実際にほんとうにそのような逮捕に該当するような容疑事実があったかどうか、それからその場合におきましてもなおかつ公正な待遇を受けているかどうか、そういう点につきましてとにかくまずそういう情報を確実につかむことが必要でございますので、そういう観点から正式に面会の要求をしているわけでございます。これは文書によるということは必ずしも要件でございませんで、大使あるいは大使館員が韓国政府当局に対しまして両名との面会を正式に要求しているということでございます。
  56. 河上民雄

    河上委員 領事関係に関するウイーン条約というものがございますが、その三十六条の(b)項、(c)項によりますと、このように書いてあるのです。  「接受国の権限のある当局は、派遣国の領事機関の領事管轄区域内において、派遣国の国民が逮捕された場合、裁判に付されるために抑留若しくは留置された場合、又はその他の方法により拘禁された場合において、当該国民の要請があるときは、その旨を遅滞なく当該派遣国の領事機関に通報しなければならない。逮捕、抑留、若しくは留置又は拘禁されている者から領事機関にあてたいかなる通信も、接受国の権限のある当局により、遅滞なく、送付されなければならない。同当局は、当該者がこの規定に基づき有する権利について遅滞なくその者に告げなければならない。」これは(b)項です。  それから(c)項は「領事官は、抑留、留置又は拘禁されている派遣国の国民を訪問し、その国民と面談し及び文通し、並びにその国民のために弁護人をあっせんする権利を有する。領事官は、さらに、判決に従いその管轄区域内において抑留、留置又は拘禁されている派遣国の国民を訪問する権利を有する。ただし、領事官が自己のために行動することに対し、抑留、留置又は拘禁されている国民が明示的に反対するときは、領事官は、このような行動を執らないものとする。」こう書いてあるのです。  これからいいますと、今回逮捕せられたお二人の方について韓国政府は直ちに日本政府に通報しなければならないし、また日本の領事館員も直ちにこの接触を開始しなければならない、こういうふうになっているわけですし、またいろいろな手紙などを今回の場合でしたら手島一等書記官に託するとか、そういうようなことがあってもしかるべきだと思うのでありますが、ここに規定されているようなことがいまのところ行なわれておるのかどうかですね。  私、よくこれを見ましたら、残念ながら日本政府は批准しておらないのです。加入しておらないのです。おそらく韓国も入ってないのかもしれません。しかし、これは一つの国際慣例として当然認めているのではないかと私は思うのですが、その点いかがでございますか。
  57. 松永信雄

    松永政府委員 御指摘ありましたごとく、領事関係に関するウイーン条約日本韓国も両方とも当事国でございません。ですから現在この条約関係は、日韓両国間においては働いていないという状態でございます。この領事に関しますウイーン条約の諸規定、全部ではございませんけれども、国際法上すでに確立された原則であるというふうにはいえないと存じます。  いま御指摘がございましたたとえば面会する権利を有するという点について申しますと、一般国際法上、接受国が派遣国の領事官あるいは外交官からの面会申し入れに対して、これに応じなかった場合に国際法の義務違反であるというところまでは、いま現在の国際法のもとにおいては言い切れないのではないであろうか。ただわが国が結んでおります領事条約アメリカソ連あるいはイギリスと結んでおりますけれども、領事条約の中にはこの種の規定がございますし、また多くの国の間で結ばれております領事条約におきましても、こういう種類の規定が設けられておりますから、漸次この種の規定が国際法上実定法として固まりつつある、そういう方向に向かっているということは言えるかと存じます。  ただ、現在の時点におきまして、これがすべての国に適用される国際法上の確立された原則であるというところまでは言い切れないのじゃないか。現に、たとえばソ連との間でございますけれども、私の記憶しておりますところでは、領事条約が締結されますまでは、ソ連で逮捕されました日本人に対する面会の申し入れば、ソ連側がなかなか応じてくれなかったわけでございますが、領事条約が締結されましてからは、そういう状態というものがなくなってきております。  ですから、漸次そういう方向に向かっているということは言えると思います。
  58. 河上民雄

    河上委員 もしそういうことであれば、なぜ日本はこのウイーン条約に入っていないのかということがちょっと疑問になるのですけれども、いずれにせよ、まだ日韓の間で領事条約が結ばれていないとしても、やはりそういう方向で今回も折衝に当たるべきだと私は思うのです。  特に私が非常に心配することは、もうすでに逮捕されて――初めのうちは日本外務省新聞などの発表によりますと、非常に紳士的な任意取り調べを行なっているのだという韓国側の通報を信じておったところ、実はそうではなくて、かなり遮断された形できびしい取り調べが行なわれておる。しかも四月十二日、先ほど局長が言われましたように、両君に手島一等書記官が面会して以来、韓国政府はかたくなに面会要求に応じていない。そして四月の二十四日深夜に至りまして、これを逮捕に切りかえた。二十五日にその事実を発表しているわけですが、すでに四月の十二日以来そろそろ一月になります。私はこの間非常な拷問が行なわれているのじゃないか、そういう懸念を非常に感ずるわけです。  それを防ぐためには、やはり絶えず面会を求めて、責任ある人が面会すべきであるというふうに私は思うのであります。その点について外務省としてはどういう危惧の念を抱いておるか、また今後どういうふうに面会を、ただ求めると口で言うだけでなく、具体的にどうしたらいいとお考えになっておられますか。
  59. 高島益郎

    高島政府委員 いま先生御指摘のようないろいろな懸念もなきにしもあらずでございますので、私どもといたしましては、本人との面会をもちろん第一義的に求めておるわけでございますけれども、面会ができない段階におきまして、実際に、処遇につきまして再三再四先方に念を押しまして、その点については絶対に心配ないからということでございますので、私ども一応そのことばを信頼いたしまして、今後の成り行きを見守っているところでございます。  なお、面会につきましては、もちろん先ほど申しましたとおり、これからも執拗に求めていくわけでございまするけれども、先方の示唆によりまするいわゆる弁護人の選任、弁護人を選任することによって、弁護人ならば面会できるということでございますので、いまのところ弁護人の選任について、本人及び家族とも連絡をとりながら、その方法を現在とっておるところでございます。
  60. 河上民雄

    河上委員 それでは弁護人は、この場合、日本人の弁護人ですか、それとも韓国人の弁護人ということですか。
  61. 高島益郎

    高島政府委員 韓国の法令に従いまして、実際に弁護できるのは、外国人はできませんので、韓国人に限ることになります。
  62. 河上民雄

    河上委員 では、具体的にいま、そういう弁護人の選任または依頼、委託の見通しがおありでしょうか。それと、もしおありとするなら、いつごろまでにその体制が整うとお考えになっておられますか。
  63. 高島益郎

    高島政府委員 これは本人の意思及び家族のお考えその他を全部勘案しなければなりませんので、大使館としては、その中間に立ちまして、数名の候補者のうちから、適当と考える弁護人を選任するように、極力あっせんの努力をいたしております。
  64. 河上民雄

    河上委員 それでは、まだはっきりとした見通しがついてない、現在努力中であるということですね。  今回の容疑事実はいまだに実ははっきりしないわけですが、そして今回は太刀川さんあるいは早川さん、お二人とも韓国学生運動の取材をしようとしたということは、いろいろの報道からある程度察せられるわけでございますが、太刀川さんは、単に韓国学生運動だけではなく、ベトナムの状況やらその他世界の非常に現代的な問題のある事件に対する取材に意欲を燃やしておられる、今回たまたま韓国学生運動の実態をリポートしようということで行かれたように思われるのであります。  ところが、この一月に、日本新聞記者、特派員に対しましても、緊急措置令によって報道の自由の制限ということを韓国政府は通達してきております。それによりますと、本国で批判的な社説、解説を載せた場合でも、それに関与した特派員は処罰せられる、こういうことになっておるのですね。こういうことでありますと、もう正当な報道の自由というのは全くできなくなる。  今回関係せられましたお二人は、主として日本の週刊誌に非常にすぐれたリポートを次々報道しておられたのでありますけれども、新聞がこういう形でチェックされた、今度は週刊誌をチェックしようとしているというような感じを強く受けるのでありますけれども、一体こういうことを日本政府として認めることができるのかどうか。日本の国内で発行せられる新聞あるいは週刊誌における報道についてまで、このように報道が規制せられるという事態について、一体日本政府はどんなふうに考えておるのか。私はその点をまずはっきりさせないと、問題の解決にならないのではないかと思うのです。  さらに、最近新たに言ってきたところによりますと、日本国内における金大中救出運動をやっているグループの人々に接触したということが、朝連の秘密メンバーの操縦を受けたというような判断の材料になっているようでありますけれども、そうなると今度は、韓国で取材しただけではなくて、日本における取材まで規制せられる、こういうことになりはしないかと思うのであります。  一体日本政府は、そういうような日本の報道人、ジャーナリストの報道の自由について韓国政府がいま加えている報道規制、特に韓国のみならず日本国内における報道まで規制しようとしている。たとえば郭東儀さんというような人、この方は金大中救出グループの中心人物のようでありますけれども、この人に接触して取材したということをもって、朝連の秘密メンバーの操縦を受けたのだというふうに断定しているわけでありますけれども、こういうことになってまいりますと、韓国内だけではなく、さらに日本における取材活動まで問われておるというこういう事実に対して、日本政府はどういうようにお考えになりますか。
  65. 高島益郎

    高島政府委員 韓国に限らず、いかなる外国との関係におきましても、日本における言論、それは当然日本の法令に従ってのみ判断される問題で、この日本における言動を根拠にいかなる外国もこれを処罰する、その他法令の適用下に置くということはあり得ないことでございます。その点は、韓国政府に対しましても念を押してございまして、そういう点は絶対にないという確言を得ております。  それから、今回の事件関連いたしましても、たとえば早川氏は共産党員であったということになっておりまして、そのことがいかにも事件関係あるかのごとく聞こえましたので、わがほうとして特に念を押しまして、そういう事実と今回の容疑事実との関係を特に確認いたしましたところ、先方ははっきり、韓国側としては、両名が韓国内でどういうことをしたかという点だけが問題となっているという点を回答いたしてきておりまして、この点については何ら誤解はないと私ども確信いたしております。
  66. 河上民雄

    河上委員 お二人はそれぞれ家族をお持ちになっておられますし、早川さんは日本人の奥さんで向こうに住んでおられる。また、太刀川さんの奥さんは韓国人の方で、国籍はもうこちらに移る手続をとられたように伺っておりますけれども、いまのところ、韓国のお名前で向こうにおられるようでございまして、今回の取材旅行を機に日本へ奥さんを連れてきて、日本で新居を持たれる、こういう御予定であったというように伺っておるわけです。  大平外務大臣、早川さんの奥さんも非常にしっかりした方のようでございますし、また、太刀川さんの奥さんも、韓国人のすばらしい美人でございます。こういう方のまた新しい家庭の幸福というものもかかっているわけでございます。こういうような問題をうやむやのうちに過ごすということは、私は非常に大きな問題であろうと思うのです。昨年起こりました金大中事件にかかわったという容疑がかけられております金東雲氏の問題、金大中氏の再訪日の要請、そういうような問題、いずれもこの委員会で何度も論議されながら、いまだにはっきりとした結論が出ない。私はそういう経緯から見まして、こういう問題も、金大中事件も、もうそろそろはっきりさせていただかないといかぬと思うのでありますけれども、そういうことがもう近く一年になろうとしていることを考えますときに、今回の二人の日本人のジャーナリストの問題、あるいは日本人韓国研究者の問題をずるずるべったりに放置することのないように、はっきりとしていただきたいと思うのです。これはお二人の問題だけではなく、日本韓国の問題あるいは日本人全体の問題としてゆるがせにできないと思いますので、大臣のこの問題に対する強い解決に当たる決意を明らかにしていただきたいと思います。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国が隣国とのおつき合いでこの種の問題が生起してまいりましたこと、たいへん残念に考えております。けれども、起きた以上は、仰せのとおり国民の御納得がいくような処置を政府としてやってまいらなければならぬのは当然のつとめであると考えております。したがいまして、いま政府委員からも御答弁申し上げましたように、私どもまず容疑事実というものを詳細に把握いたしておりませんので、その点について先方の解明をいま求めておるわけでございまして、それを踏まえた上でわがほうの対応策を考えていかなければならぬと思います。しかしながら仰せのように、御両人いま逮捕されておるわけでございまして、この過程におきましてその取り扱いが人道的なものでなければならぬと思いますし、御家族の方々いろいろ御心配のこともわれわれよく拝察できますので、その点は遺憾のないように先方当局に要請をし続けておるわけでございまして、ただいままでのところ、その点については周到な配慮がなされておるように承知いたしておるわけでございます。  それから、面会、弁護士の選任等につきまして、ひんぱんな接触を通じまして、先方の了解を取りつけるように努力を重ねておるわけでございます。御両人、日本人でございますし、韓国にとりましては外国人でございますし、また仰せのように日韓両国の関係から申しまして、こういう問題が不当に長く未解決のままあるというようなことはたいへん残念なことでございますので、早期解決をしなければならぬということを基本の方針といたしまして、精力的に先方政府にただすべきはただし、要請すべきは要請をいたしておるわけでございます。政府の誠意と努力につきましては御理解をいただき、御声援をいただきたいと存ずる次第でございます。
  68. 河上民雄

    河上委員 いま大臣から御答弁がございました。何ぶんにもただ一回の日本大使館側の接触からもうすでに一月になんなんとするわけでございまして、私ども非常に心配いたしますことは、ほかの事件から考えられるのですけれども、拷問その他あってはならないようなことが行なわれているのではないかという心配もございます。何といっても安全の確認の意味からいっても、まず第一に面会を早くするように私は切望いたしまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。
  69. 木村俊夫

  70. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどから河上委員の御質問の中にも出てまいりましたが、太刀川さん、早川さんという二人の日本人学生韓国において逮捕されたということは、韓国の大統領緊急措置が内外人の区別なく韓国においては適用されるということを実証しているということになると思うのであります。  ところが、いまおそらくこの二人の日本人学生に対して問題にされているとおぼしき大統領緊急措置第四号について外国人も例外ではないというふうな具体的な規定というのは、私は外務省に要求をして手にいたしました大統領緊急措置の中身を読んでも出てまいりません。それからもう一つ、ここではっきりさせられなければならないことは、そればかりではなくて、大統領の緊急措置の第一、第二号が施行される際に、ソウル駐在の日本人の特派員に対して、韓国においては外国人も韓国国内法に従わなければならないというふうなことを政府当局がはっきり言い切っているという事実があるやに聞くのであります。  そこで、まずお伺いしたいのは、日本人以外の外国人で現在までの間この大統領緊急措置に違反するとして逮捕されたという例があるかないか、このことをまずお伺いします。
  71. 高島益郎

    高島政府委員 私ども承知している限りにおいては、そのような事実は聞いておりません。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 まず二人の日本人学生が逮捕されたということは、外国人――韓国から見た場合には外国人になるわけでありますが、これの取り扱いというものはたいへんに大きな意味を持つと私は思うのであります。  韓国国内法を観光ビザで入国した外国人に対して適用する。しかもそれを適用して逮捕をし、自由を拘束し、人身を拘束して、さらにこれからあと軍事法廷にかけられるかかけられないか、これが実はたいへんな問題になっていっているわけであります。したがいまして、そういう点からいうといま非常に微妙な段階であり、しかも特に日本外務省当局がこれに対してどういうふうな立場で、どういう態度で臨まれるかということがこの問題を左右する非常に大きな分かれ目になるだろうと私は思うのであります。  そういうことから考えまして、先に一つお伺いしたいことがあるのでございますが、二国間条約である場合、特にその条約の条文の中ではその条約についての停止あるいは廃止あるいは一部改正について何らの規定のない場合、これについて改正をしようとする場合、あるいは無効にしようとする、あるいは停止させようとする場合には、どういう措置が講じられるべきなんでありましょうか。
  73. 松永信雄

    松永政府委員 一般論としてお答えいたしますれば、条約を変更あるいは廃止します場合に、その条約の中にそれについての規定がない場合についてのお尋ねかと存じますけれども、両国間の合意によって変更等をするということが一般国際法上はできるというふうに思う次第でございます。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 合意に先立って、言うまでもないことですけれども、当事国の一方が他の一方の国に対してその意思あることを通告することから事は始まるわけでありますね。したがいまして、両国間でそのことに対しての協議を進めた上での合意ということに順序としてはなるはずでありますね。いかがでありますか。
  75. 松永信雄

    松永政府委員 当然その場合、申し入れないし協議が行なわれると存じます。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 さて、それで日韓基本条約なんでありますが、日本国韓国との間では、この二国間にかの問題の多い基本条約があるわけであります。この条約の中身は、一部停止あるいは失効あるいは変更はございませんね。いかがでございます。
  77. 松永信雄

    松永政府委員 韓国との間の基本関係条約につきまして、現在その内容の適用につきまして変更、停止等の措置がとられていないと考えています。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 そういう趣旨のほどが韓国側から示されたという事実もございませんか。
  79. 松永信雄

    松永政府委員 そのような事実は承知いたしておりません。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 この基本条約の第四条というところには「両締約国は、相互の関係において、国際連合憲章の原則を指針とするものとする。」というのが(a)項であります。それから「両締約国は、その相互の福祉及び共通の利益を増進するに当たって、国際連合憲章の原則に適合して協力するものとする。」というのが(b)項であります。  言うまでもなく韓国国連に加盟はいたしておりませんけれども、しかし、この基本条約からすれば、日本韓国、この両国間においては相互の関係を問題にする際に国際連合憲章の原則を無視してはならないということになっているわけですね。そうでございましょう。それで、この国際連合憲章からしますと、国際連合憲章の特に第一条の中身で、もうすでにはっきりと、「人種性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を」実現するように考えなければならないということになっているわけです。  そういう点からいたしますと、いま韓国国内法としてある大統領緊急措置一号から四号まで、さらにこの緊急措置がつくられた根拠と申しますか前提になっているのは例の七二年十月の非常戒厳令を布告してつくられた憲法で設けられている五十三条にその根拠はあるわけであります。こういう状態の中でつくられて、そして大統領の緊急措置、中身は一号から四号まで、これは、いま私が申しました国連憲章の「人権及び基本的自由」を実現するようにつとめなければならないという趣旨からすると、ずいぶん具体的に国連憲章の意にかなわない問題になってまいります。  いま外務省当局はこの緊急措置四号ということが問題になっている二人の日本人学生の逮捕問題をめぐって、基本条約四条という問題をどのように認識され、どのように韓国側に対していま問題解決に対する努力をされているか、お伺いしたいと思います。
  81. 松永信雄

    松永政府委員 御指摘韓国との基本関係条約第四条にありますいわゆる国連憲章の原則尊重の義務、これは日本韓国もお互いにその原則を尊重すべきことを約束しているわけでございます。したがいまして、韓国といたしまして、国連憲章に掲げます原則は当然尊重すべき立場にあると存じております。  ただ、いま御指摘がございました緊急措置令そのものにつきましては、これは韓国国内法の問題であろうかと存じておりますが、ある国が自国でどういう法律、法令を定めるかということは、まさしくその国自身が決定すべき問題であると考えますので、これを論評するということは差し控えたいと思います。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 いま私がお尋ねしているのは、緊急措置の中身について論評せよと言っているわけじゃないのです。現に、今回逮捕された二人の日本人学生についての取り調べの中身というものは、もう一つつまびらかではありませんけれども、しかしながら、日本国内における二人の日本人学生行動というのが決して無関係じゃない。しかもそれが韓国においては、かの地における緊急措置令ということで問題にされているのです。  いまこの日韓基本条約の四条から考えまして、お互いの国が、お互いの国内で基本的人権なり人身の自由なりを保障しようとすると、その国内の法によるべきである、これは言うまでもないことでありましょう。日本においては、日本国憲法というものがあるのです。日本国憲法の中で、日本国民に対しては日本国民としての自由、人権というものを保障しているわけでありますね。この日本国において、韓国における緊急措置令に該当するような行為があるかないかということが問題にされて、それがかの地、韓国において逮捕理由の中に入った場合にどうでありますか。これは論評じゃないですよ。日本の国内に、韓国緊急措置令がまかり通るということになるわけです。緊急措置令の中身が日本国憲法に違反しなければ問題にならないのですよ。しかし正面切って、これは日本国憲法違反だと思う。外国の法を日本国憲法に違反だ、違反でないと言うこと自身が、法の体系からするとおかしな話であります。しかし、現実の問題として、日本の国内でそれがまかり通るという現実があるならば、これをやはり問題にしなければならない。日本国においては、日本国憲法下における自由、人権保障ということをやるのがこれは政治の課題としては中心課題であり、大事な問題ですよ。  だから、こういうことに対して、一体どういうふうに考えていらっしゃるかという中身を実はお伺いできるであろうかと思っておったのですが、全然出てこない。いかがですか。
  83. 高島益郎

    高島政府委員 先ほど河上先生から同様な質問がございまして、その際はっきりお答えしたつもりでございますけれども、もう一回繰り返しますが、日本人日本における言動について、韓国も含めて、いかなる外国もそれを根拠にして処罰するとか、法を適用するということは全くあり得ないことでございます。法律的にも全くそういうことは考えられない問題でございます。  したがいまして、その点につきましては、韓国政府にそのような懸念が実はありましたので、そういうことはないことをはっきり確認する申し入れをいたしまして、そういうことはあり得ないということで返答を得ておりますし、また今回の事件関係いたしましても、先ほども申しましたけれども、日本共産党員であったということは何らか関係があるように受け取られましたので、そういうことが今回の容疑事実と何らかの関係があるというふうに考えられることは、非常にとんでもない話なんで、ぜひその点ははっきりしてもらいたいということを申し入れましたところ、先方の外務大臣のほうから、そういうことは絶対にあり得ない、韓国における行動についてのみ緊急措置に従って判断をするという回答を得ております。  したがいまして、先生御心配のようなことは、大体法律的にもあり得ない問題でございますし、私ども、そういうことは絶対に起こしてはならないというふうに考えております。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 一人の人間の行為というものが、ある地域においてだけ別行動が可能でありましょうか。私は、やはりその行動自身というものは継続性を持っておると思うのです。したがいまして、韓国における行動だけを問題にして、緊急措置にひっかかるかひっかからないかということを検討する際の裏づけには、必ずその個人の行動の全般が問題にされるのですよ。日本国内におけるこの二人の日本人学生行動が、まるでその場に無関係と言い切れる――理屈の上では、なるほどいまの御答弁というのは、理屈は理屈であります。しかし、現実の問題として、それは不可能なことですよ。したがいまして、韓国にその分だけを申し入れれば事足りるというお考えは、私は、まことに甘いと思うのです。  さらに申しましょう。日本における韓国人、在日韓国人、この人たちに対しては、――国籍は韓国であり、日本人でない。ただ、日本の国土に現在居住しているという意味で在日韓国人というわけでありますから、日本国憲法の直接適用対象にはならないかもしれませんが、この人たちに対しては、やはり日本国憲法の中身からすると、その精神に従って取り扱いをしなければならない。この人たちの人権にしろ、人身の自由にしろ、日本国憲法というものがどういうふうにきめているかということに従って、つまり日本国民に対して保障されている中身を準用するという意味で、いろいろな行政措置というものは行なわなければならない。これは学界における多数説なんですけれども、このことは外務省においても確認されていらっしゃるわけでありますか。
  85. 松永信雄

    松永政府委員 御質問の趣旨、実は私、的確につかめなかったのでございますけれども、わが国の憲法のもとにおきまして、一般的には内外人平等と申しますか、なかんずく基本的な人権等の問題につきましては、日本人であろうと外国人であろうと、差別を設けていないというのが現行憲法の趣旨であろうと存じております。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、問題は一そう明瞭になるのです。二人の日本人学生については、あくまで国籍は日本にあり、日本人ということでありますが、在日韓国人の中で、最近、国際基督教大学の助教授であるとか、財団法人海外技術者研修協会の職員であるとか、日本の大学に留学をしている学生であるとか等々が日本においての行動を問題にされて、韓国に行った場合に逮捕をされているという例が相次いで起こっているのですよ。こういう事実については確認されていますか。
  87. 高島益郎

    高島政府委員 国際基督教大学の先生が韓国において逮捕されたという事実は承知しております。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 あとに述べた海外技術者研修協会の職員の問題については、いかがです。
  89. 高島益郎

    高島政府委員 どうも失礼いたしました。先生のおっしゃったのは高乗沢さんのことでございますか。――この方もやはり日本におられた方で、韓国に行ったときに逮捕されたというふうに承知しております。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 それでは北海道大学の助手、これは公務員です。金詰祐さんの件も御存じですか。
  91. 高島益郎

    高島政府委員 よく承知しております。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 まだほかにあげだしたら枚挙にいとまないですよ。そして公にされていない、陰でそういう目にあっているという人はまだまだあると思うのです。日本に留学したことのある韓国人学者や日本の大学などに籍のある在日韓国人の学者、また日本の大学関係者韓国人留学生、研修生、そういう人たちの中に、韓国に行ったときにいずれも逮捕を受けるという例がこのところ引き続いて起こっているわけですね。  いま日本に学ぼうという意思をそれでも持っている韓国の人たちの間には、日本で学んだ韓国人はみんなスパイにされかねないという非常に不安な気持ちを持っているのです。それぞれの人たちが韓国に行ったときに逮捕されている中身というものはいずれも日本での行動が問題なんですよ。日本の国内における行動が問題なんですよ。いまの日本国内でどういう言動をやったかということが問題にされているのです。  先ほど外国人であろうと、人種、信条、性別、社会的身分、門地、これは憲法十四条にいうところでありますが、それによって差別されてはならないという憲法の中身というのは、あまねく外国人に対しても日本国内においては適用させてしかるべきだという御答弁があった。それぞれの外国人について日本の国内における行動をうしろで監視をして、常に探偵をし、スパイをして、そのことに対して十分に把握しているという事実がなければこんなことになりはせぬのです。したがいまして、いま韓国の人の中には、日本においてうかつにものが言えない、友だちすらも信用できなくなったという雰囲気がだんだん強くなってきている。一体このままでいいのでしょうか。私はた…へんなことだと思います。  そういう点からして、いま日韓基本条約の四条というものをあげましたけれども、その基本条約の四条に国連憲章という問題が出てくるわけでありますから、したがいまして、国連憲章の中には権利であるとか基本的自由というふうなものを尊重していくということが基本になっているわけでありますので、それからでも韓国に対して、いま申し上げたような中身をどのように外務省としてはいろいろと対策を講じられ、具体的に行なっていらっしゃるかということがたいへん問題になってくると私は思うのです。このことに対してはどういうふうにお考えになりますか。
  93. 松永信雄

    松永政府委員 ただいま御指摘がございました憲法第十四条――憲法についての有権的解釈を私が申し上げる立場にはないわけでございますけれども、この十四条では「すべて國民は、」云々という書き方をしておりまして、外国人が当然に入るという規定にはなっていないわけでございます。しかしながら、憲法全体の精神としまして一般的に申して内外人を差別しない、基本的な人権を外国人であるからということによって侵害されてよろしいということは現在の日本の現行憲法下においては認められていないということが趣旨であろうということを先ほど申し上げたわけでございます。ただいま問題になっております韓国にある日本人の問題につきましては、これはわが国の憲法とは直接の関係はないわけでございまして、これはあくまでも韓国の管轄権のもとに存在している事件の処置の問題だろうと思います。  ただその場合、わが国政府といたしましては、自国民、すなわち日本人韓国の法令の適用を受けるにあたって非常に不法、不当な待遇を受けるとか基本的な人権の侵害を受けるというような問題が出てまいりますれば、それは当然わが国といたしまして重大な関心を持たざるを得ないわけでございますから、そういう不当な待遇を受けないようにという配慮から、現在せっかく韓国政府との間でいろいろと話をし、また面会も求めているというのが現在の状況であろうと考えております。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 私の質問の趣旨にはお答えになっていらっしゃらないのです。日本の国内において日本国憲法が順守されるべきなんでしょう。その日本の国内における行動についていろいろとうしろからスパイ活動をされていることのために、その行動の中身というものが現に韓国において、韓国に行った場合にこの緊急措置で取り上げられて、違反ということで逮捕を受けて、そしてあと軍事法廷に引き出されるというふうなことになっていっているわけなんですよ。したがいまして、いま申し上げておるのは、日本の国内においてこういうスパイ行為あるいは行動の中身に対していろいろな監視を受けているというふうな事実がなければこうならないわけですから、その状態に対してどういうふうに取り扱いをお考えになるかということをお伺いしているのです。
  95. 松永信雄

    松永政府委員 私の申し上げましたのは、各国それぞれの体制がございますし、法令の体系もまた異なってくるわけでございます。韓国で施行されております法令が、日本の国内においてはそういう法令が存在しない、あるいはそういう法令が憲法違反であるからこれは認められないという関係は成り立たないと思うわけでございます。  ただ、韓国の法令が適用されるにあたりまして、日本人が不当な待遇を受けるというようなことがありますれば、それは先ほど申しましたように、まさしく外交保護権の問題として提起しなければならないだろう、こう考えておるわけであります。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 それでは先ほどの御答弁と非常に矛盾するのです。こういうことに対していろいろやりとりをやっている間に時間がいたずらに過ぎることは私非常に気にかかるのですが、いまの御答弁からしますと、在日韓国人に対しては憲法が保障する基本的人権を保障し得ずということになりますね、具体的には。
  97. 松永信雄

    松永政府委員 日本にあります外国人については、日本の憲法が自由でありますとか人権であるとかいうものを保障する、そして日本の管轄のもとにおきます限りにおきましては日本政府がそれに対して責任を持つということは当然であると思います。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 それが現にとれていないのじゃないでしょうか。いろいろ行動の中身に対して常に監視をされている、常にスパイされているということは、これは思想、良心の自由であるとか行動の、自由であるとか表現の自由であるとかこういう問題に対して大きくそがれるということになりはしませんか。現にそういうふうな気風が在日韓国人の中にだんだん強くなってきているのですよ。親友ですら信用できないということになってくる。一体だれを信じていいのか。日本に留学した結果、日本で学んだ韓国人というのはみんなスパイにされるかもしれないというふうなそういう危惧すら抱くようになってきている。こういうことは、現実日本国憲法が保障しているはずの基本的人権を在日韓国人に対して十分に行政の中で生かしていないということじゃないですか。いかがです。
  99. 松永信雄

    松永政府委員 御質問の趣旨と若干異なるのかもしれませんけれども、私は、日本の法令のもとにおいて罪とされていないことが外国の法令のもとにおいて罪とされる場合というのはあり得ると思います。その場合に、その国の法令が日本の憲法下では認められないから、したがって日本ではそのことが罪にならなくて処罰されないのが、その国に行ったら処罰されるということがあるからといって、日本における憲法の人権の保障がなされていないということはないのじゃないか、私はこう考えるわけでございます。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 それはさらに在日韓国人と交流のある日本人にも問題は及びますよ。日本国内におけるその日本人のいろいろな言動に対して、在日韓国人と交流があるという意味において、やはりいろいろとそれに対して監視されるという部面が出てまいりますよ。現にこの二人の日本人学生がいま韓国において逮捕されているというその取り締まりの中身というものは、これと無関係じゃないと私は思うのであります。日本国憲法からすれば当然違反をしているということが明白である事実に対しても、これに目をつぶってまかり通らせるということになっているじゃありませんか。そういうふうにお考えになりませんか。
  101. 松永信雄

    松永政府委員 先ほどアジア局長から御説明がありましたように、本件につきましては関係者、逮捕せられている日本人学生日本における言論ないし行動が逮捕の理由には該当しないということについて、韓国側から明確な回答を得ていると私は了解しているわけでございます。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 これはどうもどこまでいっても水かけ論のようであります。韓国問題になると何だか非常に弱腰で、タブー視されるというきらいが見えてならない。日韓基本条約については、条約が締結されればこれを順守するという義務があるわけですね。四条というものを少し的確に考えて、これを現実の問題についても生かすという努力を払ってこそ私は順守だと思うのでありますが、こういう点からしても、ほんとうに外務省自身もう少し人権尊重という認識を持っていただきたいと思うのです。  さて、いま問題になっておる二人の日本人学生についても、これは観光ビザということが問題になっているわけですが、パスポートには外務大臣名で「通路故障なく旅行させかつ必要な保護扶助を与えられるよう要望する」というふうに書かれてありますね。このパスポートを発行される場合には、そういうふうにこれから行く相手国に対して取り扱いを要望すると同時に、当人に対してはやはりいろいろと日本政府自身が注意を喚起する必要ある場合があると思うのです。  たとえば交戦地域に行く場合、これはわかり切ったような問題でありますけれども、しかしその場所は交戦地域として非常にあぶない、したがって避けてなるべく近寄らないようにとか、あるいは非常戒厳令のもとにある国に行く場合、あるいは非常事態宣言をしているような国に行く場合、いろいろと注意が必要だと思うのです。起こってしまってからあとの事後措置というのはある意味じゃおそいのでありまして、未然にそういう問題に対して防止する姿勢というのはどうしても必要だと思います。  そういう点からしますと、いまの韓国の状態というのは異常な状態といえると私は思うのです。少なくとも日本国憲法から考えればこれは異常な状態です。したがって、おそらく観光ビザで韓国に行く人たちというものも、先ほど申し上げたとおりに緊急措置の対象に絶対ならないという保証はどこにもないわけでありますから、したがいまして、こういう状況にあるということを知らせることが必要じゃないか。  また、これは外務省のみならず、私はきょうここに運輸省の方にもおいでいただいたわけですが、観光業者を通じていろいろと韓国の事情に対して、あとで申し上げますけれども、妓生観光などの宣伝を大いにやるとか、そんなことではなくて、少なくともいまの現実の状態をやはりしっかり知っておいてもらう必要があると私は思うのですよ。  それからまたもう一つ言いますと、いま韓国にあるところの居留民に対して、外務省当局としてはこれを保護する義務があるわけでありますから、こういう韓国状況の中で取り扱いをおのずと特に考えられなければならないと私は思います。  いま韓国に対して観光ビザで入られた結果がこういうことになっておるわけでありますから、特に私はこの問題をお尋ねしたいわけでありますが、パスポート発行についていまこういうふうな御配慮がありゃなしや。また、運輸省の観光部長さんには、観光業界に対してこういうふうなことに対する認識を喚起されておるかどうか、お尋ねをいたします。
  103. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 外務省のお答えはあとでいただくことにいたしまして、私ども運輸省の観光部といたしましては旅行業者というものを監督いたしております。したがいまして、外国におきまして日本の旅行者が起こしますいろいろな問題につきまして、必要がありますつど旅行業協会を通じまして通達いたしております。従来でも海外におきますいろいろな問題につきまして、外務省から私どもにお話がございまして、それを受けまして注意を出したこともございます。  たとえばヒマラヤの山でしろうとが歩き過ぎると心臓麻痺を起こして倒れるおそれがあるというふうなこと、そのたぐいの旅行者の生命身体等の安全に関する問題についての御注意がございます場合には、いつでもそれを直ちにいたしております。  ただいま問題になっておりますような緊急措置令との関係のことでございますけれども、この種の非常に外交上の配慮その他私ども運輸省のようなしろうとから見ては簡単にわからぬような問題につきましては、やはり外務省で御判断いただきまして、私どものほうに御注意がございますれば、直ちに旅行業協会に通達いたしますけれども、いままでまだいただいておりませんので、この点につきましてはいたしておりません。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 外務省のほうはいかがですか。
  105. 高島益郎

    高島政府委員 私、所管でございませんけれども、領事移住部長にかわりましてお答えいたします。  一般的措置といたしまして、外務省で旅券を発行し、海外に邦人が行かれる場合にあたりましてパンフレットを発行しておりまして、この中で一般的な注意は与えております。そのほか、特定の国に行かれる日本人につきまして特別な措置はとっておりませんけれども、これは日本人の旅行者自体の問題として、新聞、ラジオ、テレビその他を通じて、基本的な知識は当然持っていただかなければならないというふうに私ども考えておりまして、韓国に対しまして緊急措置の内容等について特別な周知の手段をとっておるということはございません。事実そういうことが、外務省として旅券発行業務との関連におきましてたいへん事務的に困難な事情もございまして、一般旅行者自体の自覚に強く期待しておるわけでございます。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 両方から非常に消極的な御答弁しかいただけなかったわけであります。旅行業者に対してのいろいろな行政指導あるいは注意を与えるということは、外務省見解をまってでなければできぬので、外務省からいろいろ御指導をいただくとおっしゃるけれども、外務省のほうの御答弁は、直接の担当者じゃないけれどもという前置きで、いまお伺いした限りにおいてたいへんに消極的です。  したがいまして、観光ビザでもって旅行者として韓国を訪れておる場合といえども、いつ何どきいまの緊急措置にひっかけられて逮捕されないという保証はどこにもないわけであります。だから、そういう点からすると問題はたいへん大きいと私は思うのです。旅行業者に対してはその点少し注意を喚起なさってしかるべきじゃないか。  ところが、そういう大事なことはむしろすっぽ抜けていて、そして運輸省と外郭団体である海外技術協力事業団が発表しております「済州島観光調査報告書」というのを見ますと、済州島の観光地の資源として、外国人旅行者に対するカジノ、ナイトクラブ、妓生パーティーというものがあげられています。大いに妓生パーティーを売り込まれて、そしてこの旅行先としての韓国隣接地域の比較をやっているわけですが、それについては、香港のナイトライフ、マカオのカジノ、台湾にはナイトライフ、韓国にはナイトライフ、カジノの魅力があるということを非常に評価されている。このナイトライフというのは、運輸省の観光課の新造語のようでありまして、中身はどうも吟味をしておりますと、売春と賭博を意味しているということらしいです。  かの地、この韓国に参りますといろいろこれに対しての宣伝があるようでありますが、中には、妓生のサービスが満点、男性の天国というふうに書いてあるのまである。もっと露骨なのがある。いま金浦空港に入る外国人は、日本人が九〇%、アメリカ人はそれに比較してわずかに六%にしかすぎないのです。そのほとんどが観光客で、そのうち七〇%が日本男性ということになっているのです。  で、先ごろ、これはキリスト教の矯風会などが中心になられて、これに対して妓生観光反対という立場から業者の行動基準についてしっかりしてくださいというふうなことを申し入れられたようでありますが、運輸省の観光部とされては、これに対してどういうふうにおこたえになっていらっしゃいますか。
  107. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 まず、済州島の件からお答え申し上げますけれども、済州島の地域開発の問題につきまして、日韓定期閣僚会議の席上で韓国側から要望がございました。それを受けまして海外技術協力事業団、ここが主宰するところの調査団を派遣いたしまして、その報告書の文面にいま先生御指摘のような誤解を招くような文言がございました。すでに昨年決算委員会等でも問題になったことがございます。したがいまして、その調査につきましては、その後再度再検討いたしまして、現在正式報告書からはそういった誤解を招くような文句は全部消してございます。もちろんこれはことばだけ消せばいいということじゃございませんで、もとのほうも誤解を招くような施設をしないように、十分調査団としては韓国側にアドバイスをしたと思います。  それから二番目の問題の、昨年来問題になっておりますいわゆる妓生観光の問題でございますけれども、韓国には、日本から近いものですからたくさんのお客さんが行きます。昨年は四十一万人ほど行きました。年々ふえております。そして、この人たちが団体行動をする方が多いものですからよけい目立つということもございます。基本的には、海外におきます旅行者の行動は旅行者一人一人の個人の自覚の問題でございますけれども、私どもといたしましては、やはりそういったことがいろいろ日本人に対するあらぬ誤解なり風評を生むということは好ましくないということから、やはり広く国民に対する一般的な旅行マナーの教育ということが必要だと思います。そのことが第一点。  それからもう一つは、そういったことだけではやはり時間がかかりますので、直接旅行業者に対しまして、少なくとも日本の旅行業者が事業の一部分としてこういったことを企画しあるいは宣伝し、あるいは援助する等のことは一切してはならないということを、昨年から再三にわたりまして通達を出しました。私どもその結果をフォローしております。そういたしますと、最近の資料等からも、一時ございましたようなたとえば妓生パーティーということばはなくなりました。一時、妓生パーティーということばを韓国式宴会と変えたりしておりました。それを、失笑を買いましたものですからそれもやめさせまして、一切ことばをなくしております。そして、お客さんからどんなにそういったものに対する要望がございましても、日本の業者としては一切関与してはいかぬということを強くいっております。現に、そういったことでかなり引き締まってきていると私ども考えております。  なお、これに関連いたしまして、旅行業界といたしましては旅行業綱領というものをつくりまして、その綱領の中でいまのようなことをお互いに相互監視するということをきめまして、いましばらく私どもは引き締めを続けて事態を静観したいと思います。
  108. 土井たか子

    ○土井委員 その御趣旨わかりますが、それならばひとつ行政指導をおやりになっている通達と、通達に従っての事後調査、それはいまお伺いすればまだ暫定的調査ということになるでしょうけれども、ぜひ資料としていただきたいと思うのです。委員長、それをお願いします。  さて、残り時間がごくわずかですからはしょって私は外務大臣にお伺いしたいことがあります。それはほかでもございません、沖繩返還協定第八条をめぐりまして少し昨今気にかかる問題があります。あの返還協定の第八条には「日本国政府は、アメリカ合衆国政府が、両政府の間に締結される取極に従い、この協定の効力発生の日から五年の期間にわたり、沖繩島におけるヴォイス・オブ・アメリカ中継局の運営を継続することに同意する。両政府は、この協定の効力発生の日から二年後に沖繩島におけるヴォイス・オブ・アメリカの将来の運営について協議に入る。」こうなっていますね。これは大体いろいろと、VOAそのものの存廃をめぐって議論があるところでありましたけれども、これはすでにこの協定を審議している途上はっきり確認されている状況としては、あとでこれも少し確認をしながら申し上げますけれども、はっきり撤去するということを前提に考えなければならない問題になっているはずであります。  ところで、伝えられるところによりますと、昨日アメリカ側といろいろ交渉が始まっている向きでありますが、この中味についてどういうふうなことがいま現に協議の中心課題となって、その見通しはどういうぐあいであるかということをひと  簡単にお聞かせいただけませんでしょうか。
  109. 深田宏

    ○深田説明員 かわって御説明申し上げます。  昨日と本日二日間にわたりまして、先ほど先生御指摘になりました協定八条に基づきます協議を行なっております。何ぶんそのまっただ中でございますので、先方との関係もございますので詳細御説明することは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、日本側といたしましては、この八条の規定の趣旨に従いましてボイス・オブ・アメリカの将来の運営についての協議ということで、日本側の基本的な考え方は六十七国会以来のいろいろな政府側の答弁を通じまして、すでに先生御存じでいらっしゃると思います。  アメリカ側は、昨日はこのボイス・オブ・アメリカ、これはアメリカの広報庁の海外放送部門を担当しておるわけでございますけれども、この放送は非常に一般的なものであって、特に外国からの苦情等も受けていないのだという程度の説明をしておりまして、いさいはきょうの午後に引き継がれているという状況であります。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、これは交渉がだんだん進展するでありましょうから、特にそういう意味を込めて確認しておきたいことがあります。  これは協定が審議されているさなか、このVOAは二年たったらその後の問題を相談するということですから、五年を待たずにこれを早くどこかに移すように対処せよというふうに考えなければならないのだけれどもどうお考えかという質問に対して、当時の佐藤内閣総理大臣の御答弁で、VOAというのは最初から実は問題があった。これは本来、日本の施政権下に返る場合に、外国の放送を許していない日本の電波法から見てこれは特例中の特例ということであるので、これの存在を認めない、やっている仕事がよかろうが悪かろうが、とにかく法制上そういうことは困る、こういうことでずいぶん強い交渉をした。しかし、そこまでの実を結ぶことができなくて、期限を限って存続を認めるということになったものだから、これをもっと短縮できないのか、二年たてばわれわれは交渉に入り得る、その際にわがほうの法のたてまえを十分説明する必要があるというふうな御答弁なんですね。  したがいまして、この基本姿勢はくずしてもらったら困るのです。向こうがさらに引き延ばしをやって、存続を認めてほしいということをたとえ言われたとしても、この佐藤内閣総理大臣答弁というものはもうはっきり残っているわけでありますから、政府見解が後に変節していなければ、このことに対してひとつ確認をしておきたいと思うのですけれども、まずこれを確認をさせてください。いかがです。
  111. 深田宏

    ○深田説明員 この協議に臨みますにあたりまして、私どもの基本的な考え方といたしましては、先ほど先生御指摘になりましたような従来の政府方針、それを変えておりません。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 もう一つ確認しておきたいのです。アメリカから金銭的援助がこれに対して要求されるようなことがあっても、それに対しては認めるべきでないというのがおよそその当時の協定審議の節での問題でありました。それは日本側に工事の援助を求めるというふうなこともあろうと思うけれども、その援助というものは単に協力というふうなもので、財政負担に関係のあるものではないというふうな意味で、これはたとえ向こうから金銭的援助が求められるようなことがあっても日本としてはそれに応ずるべきでないというふうな答弁であったわけですが、この点ひとつ確認させてください。
  113. 深田宏

    ○深田説明員 ただいま御指摘がありましたように、代替施設をつくって移転をするという場合の費用はアメリカ側が負担するという状態であります。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 それははっきり確認させてくださいよ。  最後に、このVOAが今後どういうふうに取り扱われるかというのは非常に大きな問題なので、私がふっと思ったことは、最近大平外務大臣アメリカにいらっしゃいます。これは突然出てきた問題、しかも国会審議の非常に大事な時期です。いらっしゃるということはわかったけれども、なぜいらっしゃるかというのはもう一つよくわからない。なぜいらっしゃるかということは、私はまだお伺いしておりませんし、いろんなものにもまだそれは報道として流されておりませんから、したがってわからない。いま沖繩返還協定第八条に基づくいろいろな交渉という問題もありましょうから、こういうこともかんでいるのかなとふっと私自身はかってに考えているわけでありますが、何を目的でアメリカにいらっしゃるかをひとつお答え願いたいと思うのです。
  115. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど河上さんの御質問にお答えしたばかりでございますが、実はニューヨークにある日米協会からかねて講演を依頼されておったわけでございます。再三お断わりしておったのでございますけれども、日米関係に従来非常に強い関心も持たれ、各方面にわたって御協力をいただいておる多くのメンバーの要請でもございますので、私といたしましては、できるならば日本外務大臣として参上いたしまして日米関係について私の考えておるところをお話し申し上げたいと考えておったわけでございます。ところがこれの準備が、二カ月前に予告しないといけないことになっておりまして、国会が延長になるかならぬか、どれだけ延長になるかわからない段階でございましたが、国会の展望をはっきりさせた上でお返事をするというのでは間に合わないわけでございまして、内閣と御相談の上、今度参るというお約束を一応いたしたわけでございます。  それが主たる任務でございまして、したがってトンボ返りで帰ってくるわけでございますが、せっかく参りますので、アメリカ政府の首脳とは特別いま火急に相談しなければならないという問題はございませんが、双方関心がある問題につきまして率直な話し合いをすべき責任があるのじゃなかろうかと思います。別に議題を持っておるわけではございませんし、ボイス・オブ・アメリカの話をしようとも思っていないわけでございますが、国務長官のアポイントメントは一応とってあるわけでございまして、ほかに他意はないわけでございます。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 これで時間ですから終わります。
  117. 木村俊夫

    木村委員長 金子満広君。
  118. 金子満広

    ○金子(満)委員 私の前に二人の委員からもう質問があったわけですが、韓国における日本人の二人の留学生の問題について、家族の方、親戚の方、友人の方々がたいへん心配されております。したがって私は、具体的な問題について最初に若干質問したいと思います。  まず、二人は自由が全く拘束されている、これは報道されているとおりでありますが、家族の自由は完全に保障されているのかどうなのか、この点を最初に伺いたいと思います。
  119. 高島益郎

    高島政府委員 私ども承知している限りにおきましては家族は自由でございます。
  120. 金子満広

    ○金子(満)委員 その自由ということは、外出も自由であり、そしてまた参考人あるいはその他の形での呼び出しなどそういうことをやられたことがあるかないか、その点はどうですか。
  121. 高島益郎

    高島政府委員 そういう事実は聞いておりません。ただ、ソウルの拘置所に拘置されているわけでございますけれども、差し入れ等には家族は行っております。しかし、これは全くその問題とは関係のない問題で、両人に対する差し入れのために拘置所に自発的な意思で行っているわけでございます。
  122. 金子満広

    ○金子(満)委員 家族が面会することはできないわけですね。
  123. 高島益郎

    高島政府委員 認められておりません。
  124. 金子満広

    ○金子(満)委員 それから、二人の問題については、自由は拘束されている。肉体的な問題ですが、拷問の事実があるかどうか、もう一つは健康状態がどうであるか、これを客観的に証明できる何かがありますか。
  125. 高島益郎

    高島政府委員 そういう先生の御心配のような事実はないように、韓国当局に対しまして特別な待遇を与えてもらうように要請しておりますし、韓国側のほうといたしましてもそういうことを申しておりますので、その点は万々心配ないと思っております。  それから健康状態でございますけれども、現在の段階においてはっきりした確証があるということは申し上げられませんが、十二日にわがほう大使館の館員が面会した段階におきましては全く問題ございません。
  126. 金子満広

    ○金子(満)委員 容疑の内容について、政府のほうでこの二人について具体的に何か掌握しているかどうか、それからもう一つは、取材のため金を出したというようなことを風聞するのでありますが、そうした事実があったかどうか、その点はいかがですか。
  127. 高島益郎

    高島政府委員 容疑の内容につきましては、先ほど河上先生の御質問に対しまして詳しくお答えいたしました経緯がございますが、私ども本人から確認した点を除きましては、具体的にそういう事実があったかどうかという点は全く韓国側の言い分だけでございますので承知しておりません。  それから、金につきましては、そういうことがあったということは韓国側から承っておりますけれども、一体いつ幾らだれに交付したかという点については承知いたしておりません。
  128. 金子満広

    ○金子(満)委員 金額のことについてもこれは風聞で私もよくわかりませんけれども、たいした額ではないということもいわれているのですが、その点は情報としてはどうなんですか。
  129. 高島益郎

    高島政府委員 われわれの感覚ではたいした額ではないように承っております。
  130. 金子満広

    ○金子(満)委員 それから次の問題は、二人及びその家族はもちろんパスポートを持って行っているわけですが、パスポートの期限はいつまで有効であるか、それからまた当然ビザが出ていると思うのですが、そのビザの期限がいつであるか、その点がおわかりになっておったらちょっと聞かしてもらいたいと思うのです。
  131. 高島益郎

    高島政府委員 両名の査証の期限については承知しておりません。ただ、最近私ども大使館を通じてやりましたことは、早川夫人につきまして期限が切れまするので、その更新の手続をお手伝いさせていただきました。それだけでございます。
  132. 金子満広

    ○金子(満)委員 早川氏の夫人のビザは、私も正確にはわかりませんが、聞くところによると五月中に切れるというお話のようであります。そうしますと、更新するか切れる前に帰国するかというような問題も当然出てくるわけでありますが、もし早川夫人が帰国を希望されるようなことがあった場合、外務省としては、当然韓国でいま自由が拘束されていないということであれば帰国も自由だと思うのですが、その点どのようなことになるかお聞かせ願いたいと思うのです。
  133. 高島益郎

    高島政府委員 早川夫人のビザにつきましては、韓国と折衝いたしまして五月三日に大使館員が保証人となって延長の手続を終わっております。もちろん、これは一応本人の希望に従いましてビザの延長をしたわけでございますので、日本にお帰りになるという場合には当然自由にお帰りになれるわけでございます。
  134. 金子満広

    ○金子(満)委員 延長の期限はどのくらいですか。
  135. 高島益郎

    高島政府委員 まだきまってないそうでございます。
  136. 金子満広

    ○金子(満)委員 昨晩早川さんの奥さんから昭島の実家に電話があったそうであります。自分と子供は元気である、その点は心配ないというお話だったそうです。そのときに弁護士の問題も出たそうでありますが、どういう弁護人を選ぶかというのはたいへん重要であり、むずかしい問題だと思うのです。韓国の中で弁護できる資格を持っているということが一つの前提になるのは当然だと思うのです。それからもう一つは、それではいま日本にいる弁護士で韓国で弁護ができる資格を持っている人がいるかどうか、これは日本弁護士連合会に聞けばわかると思うのですが、そのような点を調査したことがあるかどうか、お聞きしたいと思います。
  137. 高島益郎

    高島政府委員 弁護人の選任につきましては、早川夫人と御相談いたしまして、いろいろの候補者を当たっておりますけれども、現在までのところでは早川夫人の御希望によって在住といいますか韓国におる韓国人の弁護人の内から選任するという方針で進んでおりまして、いま先生が御指摘のような日本において韓国で弁護できるような資格を持った韓国人の弁護士という点につきましては、まだ調査しておりません。
  138. 金子満広

    ○金子(満)委員 この種の問題は、いまの韓国状況から見れば、二人だけで済むと考えるのは間違いだと思う。決して二人だけの問題ではない。そうした場合に、当然いま私が申し上げたような日本弁護士連合会などを通じてそのような点についても調査をしておくことは決してむだではないだけでなくて必要なことだと思うので、その点はぜひやっておいていただきたい、こういうように思います。  そこで、この早川それから太刀川両君を逮捕し、長期にわたって自由を拘束している、こういうことの根拠になったのは、明らかにされているように大統領緊急措置第四号だ。この緊急措置の内容は、これは全く驚くべきものである。それは全国民主青年学生総連盟、これに入った者はもちろん連絡をとった者も接触をした者も死刑、無期、五年の懲役、こういうようなひどい刑罰になっておる。しかも学生そのものも学校を欠席しただけで、理由を明らかにしておかなければこの逮捕の対象になる。しかも、これを逮捕する場合には令状なしに逮捕もできる、拘束もできる、捜査もできる。こういうようなひどい状況をつくり出すものである、こういうことが一見してわかるわけであります。  こういうようないまの韓国の状態は、だれが見てもこれは全く暗黒政治だ、全くファッショ的なやり方だ、こういうように思うのですが、このような状況のもとに、これは先ほども質問があったようでありますが、外務省が何の注意も何の調査もなく、パスポートを申請すればそのままどんどん出してやる。そして韓国のそういう内容についてはあまり知らせない。国会ではよく総理も自由と民主主義を基本にした国であります、こういうことを言われるのですが、ほんとうに自由と民主主義を基本にした国であるかどうか。この点については、そうだと言い切るのには相当神経がおかしくなければ言えないと思うのですね。  私は外務大臣にこの点は質問したいのですが、こういうような状況を、総理と別なことを言ってくれということを言うわけじゃありませんけれども、自由と民主主義を基本にした国であるという立場日本政府が見ているかどうか、この点を一言お聞かせ願いたいと思うのです。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 まあそれぞれの主権国家の体制はその国民が選ぶわけでございまして、世界各国それぞれ個性的な体制をお持ちのようでございます。私は外務大臣でございまして、人さまの国の体制をコメントすることは適当でないと思いますので、せっかくの御質問でございますけれども、ごかんべんいただきたいと思います。
  140. 金子満広

    ○金子(満)委員 客観的には事実は明らかであります。そういうことでファッショ的な暗黒政治が現に行なわれている。これはもう動かしがたい事実でありまして、どのように党派が違い立場が違っても、あの現実を見たら答えは一致すると思うのです。こういう点を明確にしておかないから、先ほども質問があったようですけれども、運輸省の直接監督下にある旅行業者などがバラ色の天国みたいなことを大いに宣伝してやっている。したがって事実は事実として明らかにする。これは何も批判をするとか内政に干渉するとかそういうものでなくて、事実を明らかにするという点では、外務省もその他政府関係各機関も明確にしておくように求めておきたいと思うのです。  この問題についての最後の質問は、見通しのことでありますけれども、軍法会議にかけられるか、かけられないかというのは非常に大きな問題であり、だれしも心配をしているところなんです。もう一つは、この事件は短期に解決のつくものなのかあるいは非常に長期にわたるものなのか、その点について外務省としてはきびしい外交的措置をとらなければならないと思いますけれども、-そして一日も早くこれを救出していかなければならぬことは当然でありますが、その点について見通しはと言ったら、困難だということはお答えになるだろうと思いますが、いかがですか。
  141. 高島益郎

    高島政府委員 いまの段階で見通しを申し上げることはたいへんむずかしい問題で、私も実はここである程度の見通しを述べ得れば非常に幸いでございまするけれども、本件につきましては私ども悲観も楽観もせずに、とにかく日韓両国関係のためにこのような事件早期解決して、事件が早く落着するようにということを目標にしまして鋭意努力しておるというのが現状でございますので、たいへん残念でございますけれどもいまの段階でもってどういう見通しになるかという点は差し控えさしていただきたいと思います。
  142. 金子満広

    ○金子(満)委員 では強力な外交的な措置をとることを求めてこの問題は終わって、次に、国連資源総会の問題、このことについて質問したいと思います。  御承知のように、資源総会は新国際経済秩序樹立宣言行動計画を採択したわけですが、これに対して若干の国々から保留意見あるいはコメントがされたというように報道されているわけですが、日本を含めてどのような国が保留またはコメントをしたか、その点を最初にお知らせ願いたいと思います。
  143. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 各国意見表明をしました対象は、先ほどの御質問に対してお答えしましたように、宣言行動計画、この二つであろうかと思います。  まず、基本的に全体としてどういう態度をとったかということを御参考までに申し上げますと、ヨーロッパ共同体、EC諸国は大体日本がとりました態度、つまり宣言については賛成、ただ二、三の点について意見表明をする、それから行動計画については非常に問題点が多いので、これについては幾つかの点について留保するという態度と基本的に同じ態度をとったわけでございます。ただ、アメリカはそれよりもややきつい態度をとりまして、全体に対して、これは必ずしもコンセンサスを反映しているものではない、つまり宣言行動計画コンセンサスという形では採択されたけれども、自分はそう思わないということで態度を全面的に留保しております。  それから、宣言だけとって申し上げますと、日本は先ほど申し上げましたように三点、つまり天然資源恒久主権関連する国有化の問題、それから価格のリンクの問題、特恵的な扱いの問題について意見を表明しておりますが、EC諸国の態度を申し上げますと、大体総じて日本態度表明をしました点と共通の点を意向表明しております。  ただ、国によりましてはそれ以外の点について意見を表明しているところもございます。たとえばドイツは生産者同盟といいますか、つまり生産者カルテルに関する項目がございますが、これについての意見を表明しております。それからフランス、オランダ、かつて植民地を持っておりました国でございますが、これらの国は、この宣言の中に植民地支配等による開発途上国の天然資源の損害に対する補償というような規定がございますが、これに対して意見表明をいたしております。それから米国は多国籍企業の点につきまして不満を表明いたしております。  それから次に、行動計画でございますが、これにつきましては、先ほど申しましたように、時間的な余裕が十分ないままにたくさんの問題、しかもむずかしい問題を扱っておりますだけに、日本としましても態度表明あるいは留保した項目が数項目ございますが、EC諸国の態度を見ますと、大体日本の意向表明しました点、あるいはそれプラス幾つかの点について意向表明いたしております。  項目がたくさんございますので簡単に申し上げますと、たとえば商品協定の問題あるいは産業構造の問題あるいは定期船の同盟コードの問題というような点について欧州の主要国が共通に留保いたしております。それ以外にたとえば通貨改革の問題あるいは特別引き出し権といいますかSDRのリンクの問題、それからIMFあるいは世界銀行の決定のメカニズムの問題、こういった点についてECの諸国がそれぞれ意見表明をいたしております。それから米国の態度でございますが、米国は、合意できない事項が非常に多いということをはっきり言っておりまして、特にその中で一次産品の商品協定の問題、それから価格関係価格あるいは市場のアレンジメントの問題、あるいはマーケティングの問題について特に不満をはっきりと表明いたしております。  以上が各国の主要な点についての意向表明でございます。
  144. 金子満広

    ○金子(満)委員 宣言については日本は賛成をして三つの点について意見を述べた、行動計画については保留ということですか。
  145. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 宣言につきましては、いま先生御指摘のとおりでございますが、行動計画につきましては、やはりコンセンサスということで形は採択されておりますので、日本も一応賛成ではございますけれども、ただその中の幾つかの点につきましては、これはのめない、困難があるという意味の留保を行なっておるわけでございます。
  146. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、宣言のほうは全体賛成で、三項目について意見を表明した、行動計画のほうは幾つかの点についてのめないから保留した、こういうことになるわけですね。  そこで、お伺いしたいのですが、これはコンセンサス合意ということで採択はされた。日本の場合は宣言については賛成して部分について意見を述べているのだということであれば、一体この宣言に拘束をされるのかされないのか、あるいはまた反対はしないが気に食わないところがあるので意見を述べたのだから、その点は実行をする場合にきわめて消極的にやるというのか、あるいはやらないで、悪いことばですけれども、ずるをきめ込んでしまうのか、そういう問題についてどのように考えますか。
  147. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 たとえば宣言につきまして三点日本意見表明いたしましたが、その中のたとえば恒久主権関連する国有化の問題につきましては、日本側態度表明としまして、国際法に従ってこれを処理するのだということを言っておりますので、そういう取り扱い方がなされる限りにおいて日本はこれに賛成するということになろうかと思います。
  148. 金子満広

    ○金子(満)委員 国際法の定めに従ってということになると、この宣言の中には国際法に従わなくてもいいという内容があるのか。そういうことはないと私は思うのです。そうすると言わなくともいいことまで言っているのですね。当然国際法に基づいてやるのであって、国際法に違反したことは初めからやらないほうがあたりまえのことなんですから、そういう点でこれは何となく歯切れが悪いのですね。賛成なら賛成とすっきりしてしまえばいいのですが、賛成だけれども意見を述べた。その意見は否定的な意見であるけれども反対ではない。これは宣言のほうです。片方の行動計画のほうは、賛成できない個所があるからこれは保留。これはもうやらないということなんですね。  いずれにしても、こういうような点を考えると、決議の性格というもの、それから決議の権威というものが一体どういうことになるのか。よく国連中心外交とか国連中心の何々とかいうことばをしばしば聞くのでありますけれども、その国連の今度の宣言行動計画というものの性格、権威というものを、国連局長、どのようにお考えになっていますか。
  149. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 宣言、またこの宣言を受けて実施の細目をうたいました行動計画の二つとも、いわゆる国際条約的な法律的な拘束力のあるものというふうにはとっておりません。しかし、これだけ多数の国が集まる国連特別総会におきまして多数の国の希望する一つ方向づけができます場合には、できるだけその趣旨を尊重するというのが加盟国の義務でなかろうかと思います。したがいまして、この宣言行動計画につきまして約二週間足らずの間に議論されました結果が、会期の関係もございまして、何らかの形で決着をつけなければならないということになりましたときに、問題点はあるけれども、しかしこれを表決のかっこうで締めくくりをするということは、南北の間の対立を深める結果になるのではなかろうかということから、主要関係国、議長等の努力もありまして、コンセンサスというかっこうで採択しようではないかということが、皆さんの合意するところになったわけでございます。ただ、コンセンサスという場合には、表決をしないだけに、黙っていれば、これを全幅的に賛成する、受諾するという形になりますために、これは皆さんの話し合いのもとに、各国がそれぞれの問題点については意見表明をすることにしようではないかという合意のもとに、こういう形式がとられたわけでございます。
  150. 金子満広

    ○金子(満)委員 法的拘束力はないというお話でありますが、国連というものを考えたときに、何らかの拘束力はある。何も拘束力がなければ、何もきめなければいいのですから、きめる以上、それはコンセンサスということから表決はとらなかったといっても、つくる以上、何らかの拘束力はある。その拘束力は、道義的拘束力と解釈するかどうかは別として、国連という舞台においてこのような宣言行動計画が出たのですから、やはりその線に沿ってこれを実行していくという点については、われわれは拘束力を受けているというように解釈しないと、もう法的拘束力はありませんから、単なる参考であります。聞く、聞かないは、それぞれの国が全く自由で、かってでありますというようにはならぬと思うのですね。  ですから、単なる参考と見ているか、法的でなくても何らかの拘束力がある、こういう点は国連局長、どうですか。
  151. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 単に参考というふうには思っておりません。やはりいま言われたような意味の、これをできるだけ尊重して、この方向に近づける努力をしなければならないというふうにわれわれはとっております。したがいまして、意見表明をいたしましたのは、単にこれがノーであるということではなくして、それぞれの国の国情もございますし、協力のしかたもございますので、できる限りそれに合った形の協力をするという意味意見表明でございます。
  152. 金子満広

    ○金子(満)委員 国連問題でもう一つ関連ですが、これはすでに報道されていることであり、ロンドンタイムズが三月三十日に報道した内容であり、日本の一般報道にも載っておりますローデシアの問題です。日本の企業が国連の経済断交決議を無視して、人種差別を行なっているローデシア、ここと長期にわたって大きな貿易を継続してやっている、このように報道されているわけです。これが事実であるならば、日本商社の悪徳商法というのは、国内ばかりでなくて、まさに国際的だ、非難の的になるのは当然だと私は思うのです。しかも、このロンドンタイムズは、悪徳貿易をしているものがトヨタ自動車と三井物産などであると名前をあげているわけですが、事実はどうなのか。この点についてお答えを願いたい。
  153. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 いま御指摘になりました具体的なケースとして伝えられているものにつきまして、通産省を通じまして事情を調査方依頼しましたが、その結果は、そういう事実なしという返事でございます。
  154. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、ローデシアと日本の企業は貿易関係一切なしと言い切っていいのですか。
  155. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 いままで私たちが通産省のほうから得ております回答は、そういうことでございます。  ただ、先ほど先生御指摘のように、南ローデシアとの間には、国連の安保理決議の全面経済制裁を受けましてわが国もこれを順守する義務がございまして、この安保理決議を受けました閣議了解で輸出入貿易を一切停止しております。したがいまして、日本の商社と南ローデシアとの間の貿易関係はないという前提でものを考えております。
  156. 金子満広

    ○金子(満)委員 この報道によりますと、国連指摘した内容として、日本政府の統計が出ています。日本は南アフリカ共和国から――南アフリカも同じ人種差別を行なって、国連の決議があり、ここに経済的な制裁を加えるということにはなっておるわけですが、この南アとの関係で、次のような数字が出ておるわけです。クロームの輸入でありますけれども、七一年に日本は七十一万九千六百四十九トンを輸入している。しかし、南アフリカ共和国の統計では三十五万三千三百七十五トンしか輸出していない。これは貿易をやっていること自身が問題でありますけれども、約半分の数字しか南アフリカは出ていない。  こういう中で、ロンドンタイムズの報道によると、南アフリカ共和国の証明でローデシアの産品がモザンビークを通して日本に来ているというようにとれる節があるのです。ですから、もしそうでないとすれば、その差はどこから入っているか。これは七二年の場合もそうであります。日本の統計は四十四万五千二百六十三トン、南アの統計では、南アから出たのは二十五万三千八十三トン、七三年は、日本の統計では六十一万九千トン、南アの場合には、まだ数字がここには出ておりません。とにかくばく大な差があるわけです。これはロンドンタイムズが言うように、ほんとうにローデシアの産品をモザンビークを通じて持ってきているのかどうなのか、もしそうでないとすれば、この差というものはどこから入ってきているのか、この点はいかがですか。
  157. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 この差がどこから出たかという点は、非常にむずかしいといいますか、なかなか日本においては捕捉しがたい事情があろうかと思います。  それからもう一つ、技術的な理由としまして、南アフリカは、統計上仕向け地主義をとっておりますのに対しまして、わが国は原産地主義をとつております。この辺も、あるいは技術的なことにしろ差の出る一つの原因ではないかと思います。  ただ、南アフリカの輸出統計とわが国の輸入統計に非常な差が出てくるということが制裁破りではないかという疑惑が生ずることを、われわれとしましても非常に懸念いたしておりますので、できるだけそのクロームが南アフリカ原産であるということを確保するための手続上の措置の強化ということを現在考えております。  現在は、南アフリカかち産品を輸入します場合に、南アフリカの原産地証明書が大体ついておりますけれども、それがほかの国からの品物にただ原産地証明書がついているということがかりに起こった場合には、この原産地証明書の信憑性というものが失われますので、実際に輸入される品物が南アフリカ原産であるということを確保するために、単にその原産地証明書だけではなくて、それ以外に南アフリカで入手できるような資料を、さらに輸入の場合には必要な資料ということで手続を強化できないかどうかということで目下慎重に検討中でございます。
  158. 金子満広

    ○金子(満)委員 たとえばローデシアの産品を南アフリカのある企業が買い取る、これを日本の企業がそこから買う場合に、原産地証明書というときに、これは全部南アフリカになりますか、どうですか。
  159. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 日本の商社が、ある品物を南アフリカから買います場合に、南アフリカのおそらく特定の輸出業者と契約すると思いますが、その品物について南アフリカの原産地証明書がついています場合には、日本の輸入業者は、これは南アフリカ原産ということで契約し、かつ引き取ることになると思います。
  160. 金子満広

    ○金子(満)委員 その場合、ほんとうに南アフリカ共和国の原産でなくて、その中にローデシアのものが入っていたとしても、これはいいということですか。
  161. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 その点は、日本の輸入業者にはなかなか捕捉し切れない点じゃないかと思います。つまり輸出業者が南アフリカ原産の証明書をつけている限りにおいて、日本の輸入業者は、これは南アフリカ原産であるということで契約し、かつ引き取るということになると思います。
  162. 金子満広

    ○金子(満)委員 ロンドンタイムズも、非常に巧妙な形でということがいわれているのですが、局長もいま、数字上の差が非常に大きい、この問題については捕捉し承がたいのだと言われましたけれども、私は、これはやる気になれば捕捉できると思うのです。それは小さな数字でなくて、とにかく七一年についても七十一万と三十五万ですからね、これはちょっと計算間違いというようなものではないと思うのですね。  ですから、これは調査をすべきだ。そしてほんとうにローデシアとそうした貿易行為、経済行為を行なっていないのだ、国連の制裁決議を破っていないのだということを天下晴れて言えるのだったら、その科学的な裏づけを出さなければいけない。これが実際上はできていない。ロンドンタイムズの報道の中にも、日本政府はこれまでもこの問題について国連から指摘されて取り締まりを強化するという約束をしていると書いてありますね。こういうことが過去にあったのかどうなのか、その点はいかがですか。
  163. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 国連の照会に対しましては、そういう統計差の問題も一応指摘されておりますので、わがほうとしては、南ローデシアの産品を輸入しているという証拠はないし、またそうは思ってないけれども、さらに取り締まりの面の強化をはかってそういう事実が起こらないようになお方式を検討したい、検討中であるということは、国連側には返事いたしております。
  164. 金子満広

    ○金子(満)委員 そういう中で、去年の八月、国連の制裁委員会日本政府に覚書を送った、そしていま外務省はその覚書について返事を事務総長に出すよう準備中である、こういうようにも報道されているのですが、こうした事実がありますか。
  165. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 その点につきましては、関係省とも鋭意協議しました結果を昨年の十二月に、先ほど申しましたような趣旨で、つまり取り締まり措置を強化する方法を検討中であるということで、国連のほうに返答をいたしております。
  166. 金子満広

    ○金子(満)委員 八月に来たものに対する回答として、検討中であるということをいま言われたわけですが、現在準備中である、これは全然ないことですか。
  167. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 検討いたしましたのをさらにフォローアップいたしまして、一つ関係省との間の協議、それからもう一つは、それを実施する場合にあるいはどういうふうなかっこうで実施できるか、特に南アフリカ政府協力も得る必要もございますし、またそういう取り締まり強化については非常に技術的な点もございますので、その点をわがほうの南アにおける公館に対しまして訓令を出して検討を依頼しているところでございます。
  168. 金子満広

    ○金子(満)委員 その去年の八月日本政府にあてられたといわれる覚書は、当然これは秘密のものじゃないと思うので、あとで提出していただきたいと思いますが、委員長、取り計らってもらいたいと思います。
  169. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 国連の制裁委員会の中身といいますか、これは一応たてまえ上非公開というか、クローズされているかっこうになっておりますけれども、いま先生の御指摘の点もございましたので、ひとつ検討さしていただきたいと思います。
  170. 金子満広

    ○金子(満)委員 ぜひこれは出していただきたいと私は思います。私は、ロンドンタイムズの報道の内容がかなり重要な内容を持っていると思う。それは日本の企業名まで出ているわけですね。そうしますと、一定の確証があってのことだと思うほうが当然であって、しかもローデシアから輸入しているものは、単にクロームだけでなくて、石綿とかたばこの問題まで出てきているのです。しかも、たばこの輸入についても、ローデシアのソールズベリーですか、たばこ輸出会社から三井物産が輸入をしている、こういうようなことまであるわけですね。  三井物産とか豊田自動車とか、こういう点については絶対にそういうような貿易の形跡もないということを国連局長ここで言い切れますか。ですから、国連がそういう覚書を出すこと、あるいはそういう勧告みたいなことを日本に言ってくることは筋が違うのだ、疑われては困る、こちらは潔白である、こういうことが断言できるのですか。
  171. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 いま御指摘のございましたたばこにつきましては、専売公社を通じまして調査の結果、そういう事実がないということがはっきりわかりましたので、それは国連に通報してございます。  それからトヨタ自動車の件でございますが、これも非常に慎重に通産省を通じて調べましたところ、トヨタの自動車の何台がどこに上がっているという事実がはっきりわかりましたので、したがいまして、先ほど言われたような制裁破りということはないということがわかりましたので、これも国連のほうに通報しております。
  172. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は、これは非常に大事な国際問題だと思うのです。国連局長の明言によれば、そういう事実はありません、日本は全く潔白であって、制裁破りのようなことは全くないのだ。ところが、国連のほうはあるという形で覚書を出しておる。そして八月にその覚書を日本に渡して十二月に一応返事はした、しかも現在まだそれを調べておる。こういうことになると、あまりにも時間がかかり過ぎるし、それほど潔白であれば抗議ぐらいすべきだと私は思う、ほんとうに潔白なら。何でその点をもたもたしているのか、時間ばかり食っているではないですか。  こうした疑惑は、単にロンドンタイムズだけじゃないと思うのです。アフリカの諸国だってそのことを同じ疑惑を持っていると思うのです。こういうことについて、国連に対して政府はどのような態度を表明するのか、ただそういうことはありませんと言うことだけで済ますのか、どうなんですか。ほんとうになかったら、もっとないということを天下に公表すべきだと思う。これは三月三十日のロンドンタイムズですよね。そして日本の一般紙にも報道されておる。そして四月に入ってからもいろいろの記事が出ておる。こういうことですから、外務省として、あるいは政府として、この問題はこうだという明確な態度表明というものをすべきだと思うのですが、その点どうなんですか。
  173. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 この問題のむずかしい原因は、南アフリカとの間の貿易関係は維持されているのに対し、南ローデシアとの貿易が国連の決議によりまして禁止されておる。したがいまして、南ローデシアの産品が周辺の諸国を通じて流れているのじゃなかろうか、それをどういうふうに捕捉するかというところに問題の本質があろうかと思います。日本は、南アフリカとの通常貿易は認めておりますので、したがいまして、南アフリカの原産地証明書がある限りこれに対する輸入というものは通常に行なわれているわけでございます。ただ、先ほど統計差で象徴されますような輸出と輸入の非常な違い、これがどこからくるかという点につきましては、わがほうとしても非常に関心がございますので、これは指摘をまつまでもなく、南ローデシアの産品日本に入らないようにするための措置の強化について、いま積極的に検討し、関係省との間の協議を通じまして、一案を実は詰めつつある段階でございます。  その措置の内容につきましては、まだ確定しておりませんので、国連の事務局にも的確なかっこうでは通報しておりませんが、取り締まりの措置の強化について目下検討中であるという趣旨のことを返答しましたのは、積極的に、本件についてできるだけそういうあらぬ疑惑のかからないように、つまり南ローデシア産品の輸入されないような措置をいろいろと思いめぐらし、またそれについて技術的な点を詰めておるというのが現状でございます。
  174. 金子満広

    ○金子(満)委員 指摘されるように、ローデシアに対する全面制裁の決議が安保理で行なわれた。この中には、貿易の禁止はもちろん、領事や通商代表を引き揚げるという内容まで出ているわけですが、領事とか通商代表は全部引き揚げているわけですね。
  175. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  176. 金子満広

    ○金子(満)委員 局長は事もなげに南アとの貿易は認めているのでありますということを言うのですけれども、南アについて、人種差別問題で国連がどういう態度をとっているか、当然御存じのことだと思うのです。私は去年、アフリカ開発基金の問題が討議されたときにもこの問題に触れました。五十二の企業が南アに入っているという事実も外務省から報告を受けました。国連の南アにとっている措置と、貿易はもう認めていますと何のためらいもなくすらすらと出るのですが、この辺の解釈をどうするのですか。
  177. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 南アフリカに対する措置につきまして、国連がいままでどういうことをしてきたかということを簡単に御説明しますと、一九六二年の総会の決議で外交、領事あるいは公的な関係の断絶を要請する決議案が出ましたが、わが国はこれに対して反対いたしたわけでございます。したがいまして、現在南アとの間には、総領事館を置いておりまして、領事関係はございます。  それから貿易関係につきましては、やはり六二年の総会で貿易関係を断絶すべしという決議案が出ましたが、わが国は反対いたしております。したがいまして、南アとの通商貿易を現在も日本は続けているわけでございます。  それから南アに対する海運、航空関係の停止の要請の決議案が、これも六二年に出ておりますが、わが国はこれに反対をいたしております。ただ、わが国と南アとの間には実際上航空路の開設はされておりません。船舶の航路は開設されております。  それから文化あるいはスポーツの交流関係でございますが、これは一九六八年と七一年の二回決議が出ておりますけれども、わが国は七一年の決議に対しては賛成いたしております。という意味は、日本政府は各種の民間団体に対してできる限り文化、スポーツの交流をしないようにディスカレッジする、法的規制は行なっておりませんけれども、できるだけディスカレッジするというのが日本のとっている立場でございます。
  178. 金子満広

    ○金子(満)委員 国連の決議というものに日本は反対したのだから全く拘束されないというわけで、すらすらこうやっているわけでありますけれども、そういう考え方の是非の問題だと私は思うのです。つまり、ローデシアの問題にしろ南アの問題にしろ、人種差別の問題は国連で一度ならず二度、三度と長期にわたって議論されていることである。そして特にローデシアのほうは全面制裁ですから、南アより非常にきつい内容になっている。南アについても国連の決議はされておる。いま、日本が南アの人種差別問題についてどういう態度をとっているかというのは、アフリカ諸国からは非難の的になっておると思うのです。これを国連局長外務省も知らないことはないと思うのです。在外公館をもし必要があって集めて、あるいはまた個々にいろいろの情報その他を聞く場合にでもこの点を考えなければならぬ。  去年私が同じ外務委員会質問したときに、南ア貿易については、これを押えるようには指導しているけれども、何ぶんにも企業がやることであります、そういう意味の回答がありました。こういうようにローデシアの問題が出てくると、今度は南アのほうは何のブレーキもないのですね。こういうようなやり方が、今度の国連資源総会における宣言行動計画、これに対する態度の中にも、私は共通した考えがあると思うのです。そして決議、行動計画の性格、権威というものについても、やれればやる、やれなければやらないでいいんだというようなことで、非常に軽く見ているのじゃないか、そういう点を私はどうしても思わざるを得ない。こういう点で私は、ロンドンタイムズのその報道した内容が、いまの国連局長答弁によりますと、全然うそである、全く捏造だということに聞こえてくるのです。  ですから、そういう点あれやこれや総合的に考えてみて、私がぜひ確かめておきたいのは、取り締まりを強化するということを先ほど局長は言われましたが、どこの何を取り締まるのですかね。この点をもう一度お知らせ願いたいと思うのです。
  179. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 南アフリカから輸入される品物が南アフリカの原産であるということを確保するために必要な手続上の措置の強化ということでございます。
  180. 金子満広

    ○金子(満)委員 それは調査して措置するということであって、取り締まりということじゃないでしょう。取り締まりということになるとどういうことになるのですか。
  181. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 取り締まりということは、これはできないと思います。つまり、日本の輸入業者が南アフリカの輸出業者からの契約で物を買うわけでございますから、結局その品物が南アフリカ原産であるかどうかということは、その輸出業者の出す書類といいますか、それを通じて、それが南アフリカ産品であるということをできるだけ確保する以外に方法はなかなかないのではなかろうかと思います。そういう意味の手続上の措置の強化ということで、つまり南ア側の協力を得るということで、目下鋭意、南アの公館に訓令して、技術的問題を含めて検討してもらっているところでございます。
  182. 金子満広

    ○金子(満)委員 もう一度この点は確かめておきたいと思うのですが、南ア産品という証明の中にローデシア産の物が入っていたとしても、日本政府としては関知しないし、そういうことがあってもやむを得ないというようにお考えになりますか。
  183. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 もし南ローデシアを原産とする品物が入っておれば、それは南アフリカの原産ではないわけでございますから、別物であろうと思います。ただ、日本がある品物を南アフリカから輸入します場合に、原産地証明書を要求しましたときに、一応南アフリカの規定にのっとった原産地証明書、つまりこれは南アフリカ原産であるという証明書が添付してあるものにつきましては、日本の輸入業者はこれは南アフリカ原産だというふうに考えざるを得ないわけでございます。
  184. 金子満広

    ○金子(満)委員 別の物である、つまりローデシアで出た物と南アで出た物、これは別の物である、これは当然ですわね。それを貿易する場合、原産地証明というときに、南アの企業がこれは南アの産品でありますという証明をとにかくした場合ですね、こちらはもうそれにはタッチしないということであると――南アもローデシアも人種差別の国なんですね。そして国連から非難をされ、指摘されている国なんですよ。そうしますと、日本の企業は非常にずるい、もう脱法行為もいいところだ。両方がいろいろ――両方がというのは、ローデシアと南アといろいろ話をつけてローデシアから逆に流す。それでこれが南ア産品として日本に来る場合にこれをチェックできないし、貿易企業としてはその南ア証明でいく以外にないのだということになると、これはえらいことになると思うのですね。  そういう意味で言えば、ローデシアとは何も貿易はありません、全く無傷であります、こういうことになるのですが、これは非常に大事な問題で、その内容に入ってまで政府として企業を指導し、また調査する、こういうようなことをやる気持ちがあるかどうか、その点、いかがですか。
  185. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 これは日本側の問題よりはむしろ輸出する南ア側の問題であろうかと思います。南ア側の単に原産地証明書だけでは必ずしも南アが原産のものだけに限らないというもしおそれがある場合には、それ以外の何らかの手続的な要件を加重することによって南ローデシアからの産品がまじらないような方法があるのかないのか、あればどういう方法が一番適当であるかということを、実は内々われわれで検討しているわけであります。それが先ほど私の申し上げた意味でございます。
  186. 金子満広

    ○金子(満)委員 時間がありませんから……。そこで外務省あるいは通産省その他政府関係の機関で、いま局長が言った点ですけれども、この報道によるとイギリスその他の国々六カ国に、役所の人というのだからどこかわかりませんけれども、六人を派遣したというようなことも書いてあります。そういうような事実はあるのですか。
  187. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 外務省、通産省を含めまして担当官がそういった国に回ったということはございます。
  188. 金子満広

    ○金子(満)委員 いつ回ってきたのか。帰ってきたらその内容を私は報告していただきたいと思うのです。これは外務委員会でなくとも、調査結果を当然文書でまとめておられることだろうと思いますので、これは秘密ではないと思うのですね。その点を委員長ひとつお計らい願いたいと思います。
  189. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 これは各関係政府との非公式な話し合いなども内容となっておりますので、たてまえ上は外に出さないかっこうでできておると思いますけれども、一応検討させていただきます。
  190. 金子満広

    ○金子(満)委員 では、その点はあとでまた個々にでも質問をしてただしておきたいと思いますが、いずれにしろ、この問題はほんとにでかい問題だと思うのです。日本政府の言っていることと、少なくとも国連局長の言っていることと、国連指摘していること、ロンドンタイムズ、それからイギリスの政府考え方指摘の問題、これは部分的な相違ではなくて、全然白と黒の相違なんです。こういう問題が現に国際的にも明らかになった以上、これはこのことの進展の状況によっては日本政府として非常に大事な責任問題になると思うのです。  私は、そういう意味からもこの問題は今後とも究明していきたいし、今後ともこの問題はわれわれが黙っていても国際的に究明される性質のものだ。そして企業の名前も幾つかあがっておる。その企業のことについても国連局長はノーという立場でこれは言い切っておるわけですが、これはもしそうでなかったときにはたいへんなことになるだろう。私はこういうことを警告もし、今後も究明をしていく、このことを申し上げて質問を終わりたいと思います。
  191. 木村俊夫

    木村委員長 この際、午後二時十分まで休憩いたします。     午後一時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時十三分開議
  192. 木村俊夫

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。永末英一君。
  193. 永末英一

    ○永末委員 四月の初めに韓国日本学生の早川、太刀川二君が逮捕されましたが、外務大臣、なぜああいうことが韓国で起こるのでしょうか。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 正確な事実関係について、いま韓国政府に照会をいたしておる段階でございまして、私どもまだ真相を十分掌握いたしていないので、いまの御質問に対して的確なお答えをまだできない段階でございます。
  195. 永末英一

    ○永末委員 韓国の政権が通常の政権と申しますか、わが国のような状態を通常といった場合に通常と申し上げておきますが、そうでございましたら、逮捕という行為があってから一月以上たっておりますのに、隣国の政府にその実情をつまびらかに知らせないということはないと思うのですが、どう思われますか。これで正常な日韓関係だとお感じになりますか。
  196. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもが直接接触を持っておりますのは外務部でございますが、事柄は治安当局のもとで捜査が進められておるようでございまして、御指摘のように速い速度で御通報がいただけない状態であることを非常に残念に思っておることは事実でございますが、鋭意努力をいたしておるところでございます。
  197. 永末英一

    ○永末委員 努力をいたしておるという大臣の言明は、そのまま受け取らざるを得ませんけれども、ともかく大統領緊急措置というような、言うならば通常の法律によらずして逮捕されているようでございます。しかも、その発表が外務部の発表ではなくて、中央情報部の発表によってしか知り得ない、こういうことでございますから、われわれ隣国におる者といたしましては、きわめて異様なことが韓国で行なわれているとしか察せられないのでございまして、一月以上待ってこの状態でございますが、この二君、日本国民でございますけれども、日本国民の生命並びにその安全について、外務大臣は確たる通報を一体いつごろ得られるというお見込みでございますか。
  198. 大平正芳

    大平国務大臣 生命とか安全とか、それから取り扱い上遺漏がないようにということにつきましては、先方も誠意を示しておるわけでございますので、私ども別に心配はいたしておりません。ただ、この事件の収束がいつの段階までに可能であるかという展望につきましては、いままだ見当はつきかねておる状況でございます。
  199. 永末英一

    ○永末委員 韓国の政権が自分の隣の国の学生を、どういう容疑か知りませんが、スパイ容疑であると伝えられておりますけれども、逮捕して一月以上その人々の母国の政府に内容を通告しない。そういう政権をつくらねばならぬような事情が韓国にあるのだ、こういうぐあいにわれわれ判断するのですが、そうでございますね。
  200. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておるように、それぞれの国がそれぞれの政権を選択いたしておるわけでございまして、それについて論評するという立場にないことは御了承いただきたいと思います。
  201. 永末英一

    ○永末委員 過般、北のほうの朝鮮民主主義人民共和国側が、アメリカとの間に平和条約を結んで、いままでのいわば対決状態を解消しよう、こういう用意がある旨の発表がされたと伝えられておりますけれども、外務大臣はこの北のほうの意思をどのように受け取っておられますか。
  202. 高島益郎

    高島政府委員 三月下旬、北朝鮮のほうから米国の議会に対しまして、いわゆる平和条約という提案をいたしまして、現在朝鮮にございます国連めもとでの休戦体制にかわる一つの仕組みを提案いたしております。  これは取り立てて新しい提案ではございませんで、前から北朝鮮のほうはそういう考えを抱いております。この目的は、それによってまず現在の休戦機構を廃止して、そのもとで国連軍を撤退せしめる。さらには米軍の撤退を促進する。そういうことによって北朝鮮と韓国との間の統一を希求するという構想だと思います。  これに対しまして米国のほうでは、直接政府に対する提案ではないという点も一つ問題点でございますし、またさらに、将来の統一という点を考えるならば、当事者であるべき韓国との協議も当然経なければならない問題であるにもかかわらず、そういうものを頭越しにいきなり米国の議会あてに提案をされたということについて、非常に不満と失望を持っておりまして、わが国といたしましても、朝鮮の平和的統一ということは、民族の統一の問題として強く希望いたしておりまするけれども、そのようなやり方ではたして朝鮮の統一ということが可能かどうかという点については、大体米国政府と同様な考えを持っております。
  203. 永末英一

    ○永末委員 北朝鮮側の意図についての外務省側の見解をお述べいただいたのでございますが、過般、シュレジンジャーアメリカ国防長官は、朝鮮半島に一個師団のアメリカ軍を残すことが自分の方針である、このように言っておられるわけでありまして、北側の意図の中に、これは共産主義国が西側との接触地点においていつも言うことでございますが、外国軍隊の撤退ということを、ある状態を緩和するについては必ず言うわけでございます。  さて外務大臣、一韓国側てはなお軍事政権的な色を濃くしておる。北側は、ある意味では平和攻勢をかけておる。アメリカ側の駐兵というのは、いまなお日本は、韓国、朝鮮半島の隣にある国でございますが、このあたり、北東太平洋の地域には必要だとお考えですか。
  204. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもがこいねがっておりますのは、現実のアジアにおける状況が、大きな動揺がなく、推移していくことであり、その過程において漸次平和的な共存が定着していくということをこいねがっておるわけでございまます。現在、アメリカ軍が朝鮮半島ばかりでなく、アジアに駐とんいたしておりますが、それ自体の評価については、いろいろ評価があろうと思いますけれども、アジアの安定をささえる意味におきまして、アメリカ軍の存在というものは、私は、好むと好まざるにかかわらず大切なことであると思っております。それは、そのことによって熱い事態が起こるのではなくて、そのことによってアジアの安定が確保できるからという意味において私は評価したいと思っております。
  205. 永末英一

    ○永末委員 力というのは、相手方の力と見合って存在し得るわけでございますから、大平さんの見通しでは、これはだんだん減っていくであろうと思われますか、強化されるであろうと思われますか。
  206. 大平正芳

    大平国務大臣 それはアメリカのポリシーにかかるわけでございまして、私が申し上げる問題ではないと思います。しかし、これまでの推移を見ておりますと、漸次縮小の方向をたどってきたことは事実でございまするし、最小限度の軍事的存在で平和が保障されれば、それは望ましいことであると思います。
  207. 永末英一

    ○永末委員 極東並びにアジアに対するアメリカの駐兵の量はアメリカが決定いたしますが、わがほうは日米安保条約でこれとのかかわり合いを持っておりますから、その意味合いで、日本政府考え国際情勢の推移に基づいて一定の要求をアメリカに出すのは、当然のことではないかとわれわれは考えます。  そこで、ちょっと方向を変えて伺いたいのですが、三木特使がせんだってアラブを訪問いたしましたときに、スエズ運河の再開、掘さくについて日本政府から金を出すという約束をしてまいりました。実行されておりますか。
  208. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 三木特使が昨年末にエジプトを訪問されました際に、スエズ運河の拡張工事のために三百八十億円――その拡張工事と申しますのは、スエズ運河を大体において北と南に分けまして、南半分の、しかもその第一期工事分ということで三百八十億円の円借款を供与することを約束されました。このお金は、いま永末先生がおっしゃったように再開ということではございませんで、スエズ運河を将来拡張するための工事のお金ということでございまして、現在のところで、いろいろスエズ運河をめぐる政治情勢の転換に伴いまして、大体再開が可能となってくるような情勢がもたらされてきつつございますが、その再開の直後に必要といたしますものは、まず沈船の引き揚げでありますとか、それからどろが詰まっておりますので、しゅんせつでございますとか、そういうようなことでございます。  こういった部分の工事は、日本以外の国が実行をするということになっておるようで、このために大体一年ぐらいの日子が必要とされるということでございますので、この三木特使のお約束になりました三百八十億円につきましては、現在のところ、まだ実際に正式のお約束の段階にも至っておりませんで、いわゆる政府政府の公式のお約束は、もうちょっと時間がたってからすれば足りるものというふうに了解をしております。
  209. 永末英一

    ○永末委員 重要な点でございますので、確認をいたしておきますが、二月のエジプトの半官紙アル・アハラムによりますと、大体八月ごろには再開をしようというので、進めておるというのでございますが、それについては、日本政府は何らコミットをしない、こういうことですね。
  210. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 いま先生御指摘のとおりでございまして、再開後の拡張工事のためのお約束でございます。
  211. 永末英一

    ○永末委員 さて、過般アメリカは、イギリスとの間に約束をいたしまして、そしてイギリスの領土でございますインド洋のちょうど中心部にございますジエゴ・ガルシア島に米軍の基地の拡張の約束を取りつけたと伝えられまして、この点につきまして、いろいろな問題が起こっておるのでございますが、アメリカは、一つには第七艦隊がここに常時停泊できるような港の拡張をやろうというのでございまして、第七艦隊につきましては、横須賀が航空母艦のいわゆる母港化をされておるというのでございますから、わが国との関係が非常に深くなります。外務大臣は、このジエゴ・ガルシア島の米軍の基地拡張工事について、どのような評価をされますか。
  212. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ジエゴ・ガルシアの拡張の問題につきましては、米側が言っておりますことは、この島が従来イギリス政府との約束によって海軍の通信施設として使われておりましたものを艦艇に対する支援施設の改善、滑走路の延長、給油施設、宿舎の増設、こういうふうな設備を施しまして、給油、補給のための施設をふやす、こういうことを考えておるというふうに聞いておるわけでございます。ただ、五月七日の米議会上院の本会議におきまして補正予算で計上しておりました二千九百万ドルというものが全額削除という決定を見ましたので、しばらくこの工事がどういうふうになりますか、もう少し見定めなければいけないと思います。
  213. 永末英一

    ○永末委員 いまの上院での削除がございますと、工事はできないと判断されておられますか。
  214. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米国議会におきまして、下院はこの補正予算を承認いたしておりますけれども、上院は別の意思を表明したわけでございまして、今後議会におきましてどういうふうな措置がとられるかまだはっきりしないと思います。  いずれにいたしましても行政府といたしましては二千九百万ドルの補正予算の要求をしておりましたものが、上院段階におきましてはこれが削除されておりますので、工事のほうは若干停とんするであろう、こういうふうに考えられます。
  215. 永末英一

    ○永末委員 ここにアメリカの基地の拡張、いま局長が申されたこと、補給なり、ことに滑走路の拡張というのは基地拡張の明らかな証拠でもございまして、二千九百万ドルを用意してここに人員を増員し、さらに補給施設を拡大する、給油施設を拡大するということは基地の拡張でございますから、その意味合いでは、もしアメリカの艦隊がここへ顔を出すということは、同時にスエズ運河の再開と見合ってソ連の艦隊が黒海、地中海方面からインド洋にきわめて容易に到達し得るという現象をもたらすわけでございまして、その意味合いで穏やかなインド洋にごたごたが起こってはならぬ、こういう感覚が沿岸諸国にはございました。  たとえばインドのガンジー首相、またインドネシアのスハルト大統領等もインド洋を安泰にしてほしいという意味での自分たちの意見を発表しておりますが、日本政府はインド洋がどうなってもいいのでございますか、大平大臣
  216. 大平正芳

    大平国務大臣 インド洋が波静かな大洋であることを望みます。
  217. 永末英一

    ○永末委員 そのためには日本政府としてはいま局長の話によりますと、上院で予算が削減されたというのですが、ニクソン行政府はここに基地の拡張をやろうという方針を持っていることは事実でございまして、それはもし第七艦隊がここになお足しげく行くといたしますと、わが国との関係が非常にこの地域について濃くなるのでございますが、望んでおるだけですか、何らかの日本政府としての意思をアメリカ政府に連絡されますか。
  218. 大平正芳

    大平国務大臣 これは米英間の問題であるし、また拡張計画自体が米国のきめる問題でございまして、日本政府としてこれについて何らかの意思表示をするというつもりはありません。
  219. 永末英一

    ○永末委員 大平外務大臣は外交と軍事力の問題についてはきわめて消極的な評価をしておられるようでございまして、わが国の場合、軍事力によって外交いたす可能性はほとんどございません。だから、その限りにおいては消極的な御判断をしておられても別段差しつかえはないと私は思います。思いますが、よその国は自国の持つ軍事力の上にその外交方針の多くの部分を立てて実行しておるという御評価がなければならないのではなかろうか。  でなければ、なぜ一体スエズ運河の再開が問題になり、このインド洋の孤島でございますジエゴ・ガルシア島における米英の基地拡張の協定が問題になるかということはわからぬのでございまして、わが国の方針が軍事力の上に成り立つ外交方針を立てないのだということと、ほかの国がそうやっていることとの違いはやはり認めていただかなければなるまい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  220. 大平正芳

    大平国務大臣 永末さんおっしゃるように、各国の軍事政策、外交政策、あるいはその関連等につきまして論評することはできない相談ではないと思いますが、日本といたしまして、いまあなたが提起されておる問題につきまして意思表示をすることが適切かどうかということはわれわれの問題なんでございまして、私の判断ではそういう必要はあるまいと考えております。
  221. 永末英一

    ○永末委員 最近防衛庁側の方針として伝えられておるところでは、非常に物価が上がって油も窮屈になったので、四次防は最初の計画どおりにやらないのだ、小さいところでとどめよう、こういう計画があるようでございますが、いまの外交とわがほうの持つ軍事力という観点においては四次防がどっちへころがろうとそんなことは大平さんの外交方針には無関係だと解釈していいのでございましょうか。
  222. 大平正芳

    大平国務大臣 私はかねがねわが国の既存の条約のワク組み、すなわち安保条約を軸といたしました日米間の取りきめというもの、またそれとの関連におきましてわが国の自衛力というものが漸次整備されておるということは、アジアのこの地域の安定をささえる一つの大切な要素であると考えておるわけでございます。したがいまして、安保条約は手がたくこれを堅持していく。  また、わが国の自衛力の問題につきましては、これを大幅に増強するとかいうことは必ずしも絶対に必要だとは考えませんけれども、これをなおざりにしでいいとは私は考えておりません。今日兵器の関係、軍事技術もだんだん発達しておるときでございますから、老朽化いたしたものを近代的に置きかえるだけでも、相当経費がかかることでございましょうから、今日防衛庁が計画されて遂行されているような整備計画というようなものは財政が許す限りはやっていただいたほうが望ましいと私は考えております。
  223. 永末英一

    ○永末委員 きょうアメリカとの間で協議になっていると伝えられております沖繩VOAの廃止は決定になりましたか。
  224. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩返還協定の中で沖繩にありましたVOAの取り扱いについての規定がございます。その協定第八条の中に、二年後に将来の運営について日米両国政府は協議に入るという規定がございますので、これに基づく協議を昨日行ない、本日これからまた行なうところでございますけれども、日本側といたしましては、協定の規定に従ってこの沖繩におけるVOAの将来の運営が固められていくということを考えて交渉に臨んできているわけでございます。
  225. 永末英一

    ○永末委員 私はまだベトナム戦争がございましたときにこのVOAを見に行ったことがございますけれども、その内容を聞きますと、ベトナム向けの放送、朝鮮向けの放送、中国向けの放送というのが電波の関係で主たる時間帯をとっておったように思います。  さてその後、ことに沖繩返還後このあたりの情勢は急変し、特にまた米中関係が急変いたし、ベトナム戦争は終わりました。だといたしますと、沖繩のVOAがその当時持っておった役割りというのはなくなったわけでございます。  また、わが国と中国との関係がすでに国交回復された以上、アメリカ側の意図に協力をする必要もさらさらなくなっておる。いま交渉の当事者でございますから、さらさらと話がされましたけれども、大平さん、もうVOAなどという対敵関係を前提にしたような、そういう放送をわれわれの領土内にアメリカに持つことを許す必要はなくなっているとわれわれは思うのですが、あなたはどう思われますか。
  226. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 VOAが行なっております放送は、ニュースでありますとかあるいは音楽でありますとか、そういうものを放送しているわけでございまして、米側はいわゆる敵性国家に対する宣伝的な、あるいは謀略的な放送ではないのである、こういうことを一貫して説明してきておるわけでございます。  日本側といたしましても、沖繩返還当時からの約束によりまして、それのモニターをずっとやってきておりますけれども、確かにニュースなり音楽なりが主でございます。米側の説明では、いわゆる冷戦時代に行なわれました敵性国家に対する謀略放送という性質のものでは全くないということを強調しておるわけでございまして、そういう意味でこれらのニュースというものが聞かれている人たちにある意味では喜ばれているということを、米側として言っているのでございます。
  227. 永末英一

    ○永末委員 なぜ、沖繩にそれがなければならぬのですか。沖繩になければならぬ積極的な理由を、日本政府はどうお考えなんですか。
  228. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩がアメリカの施政権下に置かれておりました当時から、VOAがあそこで放送をずっとやってきておりまして、その関係で沖繩返還の際に、VOAの処置につきまして日米間で折衝が行なわれました。その当時のいろいろな経緯にかんがみまして、暫定的な期間はVOAの放送を引き続き認めるということを協定に約束いたしたわけでございます。その協定によります運営を現に認めているわけでございます。
  229. 永末英一

    ○永末委員 私が申し上げているのは、経過を聞いているのではなくて、経過はもう万々承知をいたしております。それからの二年間の国際情勢の変化というもの、それから日本がいま置かれている地位というものから、アメリカに対して、日本政府はもうこのあたりで、協議の時期が来たが、五年と約束してあるけれども、もう廃止されたらどうかと言われる腹がまえを持っておられるかどうかを聞いている。これは大平さん、答えてくださいよ。
  230. 大平正芳

    大平国務大臣 沖繩返還協定のできばえにつきましては、いろいろな評価があろうかと思いますけれども、いやしくもこれが日米間でお約束になった以上は、この協定を踏まえて、誠実に履行してまいる立場日本政府はおるわけでございます。VOAというようなものがあそこにあっていいか悪いかという前提抜きの話ではなくて、すでに現にそこにあって機能しておるという経緯を踏まえて、われわれは返還協定という約束を念頭に置いて、これを今後どうしていくかということの交渉に入っているわけでございますので、私といたしましては、この協定の精神を踏まえて粘り強く交渉をしてまいるというのが、いま精一ぱいの気持ちでございます。
  231. 永末英一

    ○永末委員 もう時間が参りましたので、これでやめますが、大平さん、アメリカへ参られましたら、ぜひひとつ、日本の国内の世論の中には、二年間の国際情勢の変化というものを日本政府がちゃんと受けとめなければ、たとえ日本政府自体が日米安保条約の堅持なんて申しましても、実態が変わってくれば、アメリカ側の要望どおりまいらぬのでございますから、その辺を十分に申し伝えて、VOAは小さいような問題でございますけれども、アメリカの施政権下に、しかもあのときの状況アメリカが必要とした事態は、だれが考えたってなくなっておるのでございまして、そういうものをアメリカ主張するからといって受けておったのでは、それは日本政府がどんなに日米関係の好転を思ったって、その日本側のささえている地元がくずれてくるのだという、日本の世論の変化を十分にひとつ御説明を願いたいと思います。  終わります。
  232. 木村俊夫

    木村委員長 水野清君。
  233. 水野清

    ○水野委員 私は、最近の韓国における日本人の二人の逮捕事件についてこれから質問するわけでございますが、最初にこの質問がいろいろな意味で複雑に理解をされると思いますので、私の立場を正確に申し上げますと、実は私はこの質問をするのは、いまの韓国政府に対して特別な反感を持っているとか、あるいは内政干渉的な考え方を持っているからということで質問をするわけではないわけであります。  実は私は、この五月の初旬の連休の期間、韓国を旅行してきたわけであります。この逮捕者の周辺の人たちにも、何人かに会って直接接触をしてきたわけでございますが、一言にこの直接の問題を除いてほかの角度から申しますと、私は韓国の今度の旅行に際して、いまの政権が、日本では非常に統制的で、きわめて好ましくない政権のようにいわれておりますが、その面は別として、経済政策の面では私はかなり評価をしていい仕事をしているのではないかというふうに見てきたわけであります。  たとえば、これは政府委員の皆さんはむしろ私より御承知でしょうが、日本の経済協力でできた浦項の製鉄所、この運営も現在では一人の日本人もいませんが、りっぱに運営をしておりますし、経営的にも非常にうまくいっているようであります。あるいはその近くに、これは向こうの現代造船という名前の会社が造船所をつくっておりますが、私も意外であったことは、韓国人の人たちだけの手で三十万トンのタンカーをりっぱにつくり上げて、何隻もできている。こういう情勢、あるいは韓国国内の一般的な、これはきわめて表面的な面では、なかなかうまくいっているじゃないかという、私は率直な印象を持ったわけであります。  もちろんこのことは、これから私が伺う早川、太刀川両氏の逮捕事件とは違う問題でありますけれども、私は最初に蛇足を言うのはおかしいのでありますが、この事件を取り上げることによって、何か韓国政府に私は特別な反感をもって質問をするというふうに、現在の韓国の情勢自身がとられがちな情勢でございますので、その質問に先立って、私の自分の見解をまず申し上げるわけであります。  ところで、早川、太刀川両氏の問題に入りますが、実は私はソウルで、韓国政府の李乗禧さんという第一無任所大臣に会いました。約二時間近くも話をしたわけでありますが、私はこのときにも、今回の両氏の逮捕事件の問題は、日韓友好のために、韓国の法律に違反すると向こうは言っているわけでありますが、違反することいかんは別としまして、早期の釈放をすることが日韓両国の将来のために非常に望ましいことである。特に、両氏を将来軍法会議にかけるという可能性が非常に強いように受け取れましたが、軍法会議にかけるというようなことになりますと、これは日本の世論をきわめて刺激をすることになるだろう、これは私たちとしては望ましいことではない、できるだけこれを避けてもらいたいという要望をしたわけであります。  しかし、このときの李乗禧さんの回答は、かなりきびしい内容でございました。また、韓国国内の現在出されている新聞やその他の風評から見ても、この早川、太刀川両氏の釈放問題というのがなかなか簡単でないなということを私は率直に感じてきたわけであります。  その具体的なことをこれから申し上げますが、まず韓国政府韓国新聞などの記事によりますと、早川、太刀川両氏が、こまかい事実内容は別として、韓国側で言っていることは、両氏が北朝鮮からの指令で韓国学生運動と接触しているから、これは重大な国事犯である。大統領の布告の緊急勅令ですか、一号並びに四号に違反するのだ、こういう事実であります。外務省、あるいはこれは日本政府全体として法務省もそのうしろにおられる、警察庁もおられると思いますが、日本側としてはこの点をそうではないんだと――私は率直に言って、いろいろな事柄から、早川、太刀川両氏が北朝鮮の指令を受けたとかなんとかというふうな事件ではないというふうに私は見ているわけでありますが、そうでないんだといういろいろな証明あるいは証拠をたくさん突きつけて韓国側に交渉をしっかりなさいませんと、この問題はなかなからちがあかない。あるいは私の会った韓国政府部内の当局者でありますが、これは特に名前を申し上げるわけにいきませんけれども、自分の個人的な見解であるが、これは犯罪の事実よりももはや日韓両国間の政治問題であるという言い方で、それ以上私には言わなかったのでありますけれども、非常に意味の深い言い方を私にした人物もおります。  こういうことから、まず外務省としては、警察庁とか法務省とかその他と御連絡をおとりになって、たとえば早川さんの場合は三年前まで日本共産党に籍があった。これは日本共産党の当委員会の委員でもある金子先生も、新聞紙上で拝見しますと、言っておられるようでありますが、三年前に籍をとってある。早川さんは言語学者でありますが、それから韓国に渡航し、韓国のソウル大学内におけるこの人の行動は決してそういう北朝鮮から指令を受けたりするような行動ではないのだということは、家族の話であるとかその他日本における行動であるとか、いろいろなものを総合して私は証拠づけることができると思うのであります。そういうものをそろえておやりになっておられるかということをまず承りたいわけであります。
  234. 高島益郎

    高島政府委員 二十五日に韓国の中央情報部から一応この事件につきましての中間発表があったわけでございますが、この発表の中で早川、太刀川両氏についての言及がありましたので、そういう点について外務省としてさっそく捜査当局、関係当局に調査を依頼しましたけれども、捜査当局のほうからは、そういう事実は知らないということの回答を得ております。捜査当局のほうといたしましては、日本の法令のもとでのいろいろな学生活動その他についての調査は、各活動分子について調査していると思いますので、そういう観点からお願いしたわけでございますけれども、韓国側が問題にしているような事実については、捜査当局としては承知しておらないという回答を得ておりまして、その点については韓国のほうにもさっそく通報いたしております。
  235. 水野清

    ○水野委員 実は私の調べたところでは、早川さん自体の問題は比較的少ないわけでありますが、もう一つ早川さんは、韓国学生運動をやっておる、今度逮捕された人でありますが、柳寅泰さんという学生の団体の幹部と絶えず連絡をとっていた、韓国政府では大体こういうことを主張しておるようであります。ところが、私が早川さんの奥さんに会って話を聞いてみますと、自分の主人は韓国語の勉強をしておって、大学の中で韓国語による演劇活動をやっていた。その中で柳寅泰さんという学生と知り合った。また日本語を教えたことも一年ぐらい前にあるようである。しかし自分の知っておる限りは、というのはこの早川さん夫婦の住んでおるアパートに来たこともあるようでありますけれども、決して政治的な話をしたのを自分は知らないし、主人からも聞いていない、こう言っておられます。ですからこういう点も、早川夫人はソウルにおられるわけでありますから、大使館としても、この早川夫人の発言を正確に文書にしてお示しなさる必要があろうと思うのであります。これは御注意までに申し上げておきます。  もう一つ、今度は太刀川さんという方がおられます。この人は北朝鮮と連絡がある、韓国政府の取り調べ当局はそう思っておるようでありますが、その理由をいろいろ聞いてみますと、日本にいる民団の――民団と向こうでは言わないで、実はこれは朝鮮総連のスパイである、こんなような言い方をしておるわけでありますが、郭東儀という人がおります。これは金大中事件のときなんかにも名前が出てきた人であります。この人の指示を受けてソウルに潜入したのだ、そしていろいろと早川さんの紹介で地下の学生と接触をしたのだ、こういうことを言っておるわけです。  そこで、警察庁においでいただいたのですが、郭東儀という人は朝鮮総連の人なのか。日本では、この方は民団の人だ、こう言っておられます。自分で民団と言っています。かつて私のところに陳情に来た人の中におったのをあとで私も知ったくらいでありますが、警察庁としては、郭東儀という人を、韓国政府が言っておるように、朝鮮総連のスパイだとか、朝鮮総連の人間であるとかいうふうに見ておられるのかどうか、承りたいわけです。
  236. 星田守

    ○星田説明員 郭東儀さんという人につきましては、かつて韓国系の団体の役員でおられたことは存じております。しかし、昨年の五月ごろ民団から除名されたということを聞いておりますが、朝総連との関係につきましては、私どものほうではわかりかねております。
  237. 水野清

    ○水野委員 ですから、こういうことも外務省としてはしっかり韓国政府側に話をしていただきたいわけであります。  それから、太刀川さんという人は、学生でもあるわけですけれども、雑誌の名前まで言わないほうがこの席ではいいでしょうが、ある週刊誌の記者もやっておるわけです。そのことはアジア局長御存じですね。
  238. 高島益郎

    高島政府委員 よく承知しております。
  239. 水野清

    ○水野委員 そしてこの太刀川さんが、そういう関係もあって、たとえ郭東儀という人が朝鮮総連の北鮮系の人であったとしても、指示を受けるというような立場にあったとは思えないわけであります。外務省としては今後太刀川さんという人の釈放運動、釈放要求をされるわけでありますけれども、これについてどういうふうに見ておられますか、御意見を承りたいと思います。  太刀川さんという人は日本における郭東儀という人の指示を受けて動くような人物なのか、あるいはそれ以外の北朝鮮から指示を受けて動くような人物なのか、どうなのか。いま韓国ではこの人を逮捕しておいて、北朝鮮の指示で韓国に入ってきて学生に金を渡したとか、地下活動にいろいろな援助を与えたとかいうような言い方で逮捕をしておるわけです。それは御承知のとおりです。そういう事実のあるなしは別として、客観的にそう  いう人物だと思っておられるのかどうかということを承りたいのです。
  240. 高島益郎

    高島政府委員 私ども郭東儀さんが四月二十五  日に話した談話の内容というのを承知しておりますけれども、その中で太刀川氏が金大中事件以来私のところに取材に来た記者の一人である、であるけれども特別に何かを太刀川氏に対して依頼するというような関係はないということを聞いております。それ以外に私ども太刀川氏個人について調査するというような立場にはございませんし、そういう点については詳しいことは存じませんので、いま先生おっしゃるような、どういう人物だと思っておられるかという点については、実は私どものほうは現在のところははっきりした考えを持っておりません。
  241. 水野清

    ○水野委員 警察庁はどうですか。警察庁は太刀川さんが韓国政府の言うような人物だと思っておられますか。
  242. 星田守

    ○星田説明員 私どものほうといたしましては、先ほどお話がございましたように、外務省からこの二人の方の前科の有無について御照会があったときにお答えいたした内容に尽きるわけでございますが、前科もございませんし、虞犯者として私どもの視察対象になっておるというふうな人でもございませんので、私どもとしてはその旨いまのところではお答えをいたしておる状況でございます。
  243. 水野清

    ○水野委員 私も大体そうだとは思っていま質問をしていたわけですが、私は客観的にこういうふうに見ているのです。これは少し独断的になるかもしれませんが、この太刀川さんという人はある週刊誌の記者であって、日本の国内の取材活動と同じ動きをソウル市内でしてもいいのだ、本人はそういうふうな社会感覚を持っていたのじゃないかと思うのです。そこにこういう問題が派生した。いわば私は間に学生を紹介してもらいたいと言って、これはソウル大学の中で勉強しているのですから、早川さんとしては当然いろんな学生を知っているだろうと思うのです。紹介をした早川さんもたいへん迷惑を受けた。私が会った範囲では、早川さんだけでなくて、太刀川さんが会ったいろんな韓国の人たちもかなり、場合によっては職を奪われたというような人たちもあるように聞いています。非常に迷惑をした。  もっと具体的な言い方をすれば、この方は週刊誌の記者として、そうであったかどうかはわからないのですが、韓国学生運動の地下幹部との会見記でも取ろうとしてこういう活動をしておられたのではないかと思われる節が非常にあるわけであります。ただ、これが日本ではあたりまえのことでありますし、また韓国でもそうであってほしいわけでありますけれども、現在の韓国の政治事情というのはそんな甘いものではないということを太刀川さんはあまり御存じなかった。東京から飛行機に乗ればわずかの時間でソウルに着くわけでありますし、東京とソウルの間を行ったり来たりしているとその社会感覚のズレというものをおわかりにならないで取材活動をしたのではないか、私はそういうふうに感じるわけであります。  そこで、これは先ほど社会党の土井委員からの質問にもありましたし、いまここに運輸省の人には来てもらっておりませんが、ひとつこれは大臣にも聞いていただきたいのですが、どうもやはりいま、さっき土井委員の質問にもあったように、韓国へ行く人、これは韓国だけでありません、最近はどうも台湾のほうは日台航空路が切れたのでこの運休以降少なくなったそうですが、マニラに行く人でもバンコクに行く人でも日本人の旅行者のビヘービアというものが非常に悪い。これは思想問題でなくて、そっちのほうでもかなりはみ出す人が多いということです。ましていまの韓国の政治事態の中で思想的な問題をひっ下げて、たとえ取材であろうと渡航する人については政府としてあらかじめよく、おいでになる御本人に教育をするというといけませんが、事情をわからしてから行ってもらうという必要があろうと思うのであります。  アジア局長御存じのように、かつてカンボジアの戦争のまん中にアンコールワットの写真をとりに行って行くえ不明になったカメラマンがおりましたけれども、これも私は若干、この方にお気の毒ですけれども、周囲の状況を理解しないで飛び込んで行かれたことにやはり無鉄砲な点があると思うのです。  こういう点、これは私は言論の自由を束縛するとかそういう問題じゃなくて、御本人のために何か忠告をされるというようなことについてはお考えがございませんか。大臣、どうですか。
  244. 大平正芳

    大平国務大臣 二百数十万の方が海外に旅行されておるわけでございまして、それぞれりっぱな判断力、見識を持たれておる方とわれわれは推定するわけでございまして、政府が教育をするなんというのは多少おこがましいことと思うのであります。しかしながら、いま水野さん御指摘のように、行き先の国の特殊な事情につきましては、できることならば御理解をいただいておくほうが望ましいと思うのでありますが、ただ、何さま人が多いものですから、そういう仕事をこなしていくだけの人手もいませんし、手が回らなかったわけでございますが、しかし御指摘のように、そういう理解をまず持っていただいておるほうがいいということは間違いないことでありまして、そういうことがどこまでできますか、そういった点は一応われわれのほうでもひとつ検討をさしていただきたいと思います。
  245. 水野清

    ○水野委員 それから、これはいま表へ出ていないことでありますが、この早川さんと太刀川さんが逮捕されて、韓国の取り調べ当局、保安局の外事課というところで当初調べを受けていて、あとから拘置所へ行って、これはどういう組織が調べているのか私にはわからないのですが、四月の八日までに――これは大統領布告というのですか、緊急措置令第四号というものの第四項か何かにあるのだそうですが、人の国の法律で私よく勉強してないのですが、その中で、四月の八日までにいろんな国事犯であっても自白をした場合は無罪だというような内容があるのだそうであります。  私は諸般の情勢から、これは私のほうもそうだという証拠を私自身が持っているわけじゃありませんが、太刀川さん、早川さんの場合に、自分たちの知っていること、やっていることについてそんな犯罪意識というものを持たないでやっていたわけで、最初は任意出頭で取り調べを受けているわけですが、その間に、要するに四月の八日前に、地下に潜行している学生、李哲という人と柳寅泰ですか、二人と四月の三日か何かに会っているのですね。会ったことは会いました。会って七千ウォンという朝鮮のお金、日本のお金にすると四千五百円ぐらいですね、渡したとかなんとかいうことを自供しているわけですが、これは四月の八日前に自供をしたことならば、それ自体がこの緊急措置令の第四号の四項に当てはめれば無罪になると私は思うのです。  そういう点を韓国政府とお詰めになって、無罪である、だからこそ早く釈放なさいというような交渉をなすったことがありますか。
  246. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま水野先生が御指摘の該当条項は緊急措置第四号の第四項でございまして、これによりますと、「本措置宣布以前に第一項ないし第三項で禁止した行為を行った者は、一九七四年四月八日までにその行為の内容の全部を捜査、情報機関に出頭して隠すことなく告知しなければならない。上記期間中に出頭、告知した行為に対しては処罰しない。」こういうことでございます。もちろんこれは韓国国内法令でございますので、私どもはこの規定の解釈をいたす立場にございませんし、どういう場合にこれに該当して処罰されないことになるのか、そういう点についての有権的な解釈はもちろんできません。  しかし、私ども承知しているところによりますと、もちろん自白の全部ではございませんけれども、重要な部分につきましては、四月八日という時点においてではなくて、その後の時点で韓国政府が言っているようなことをした。これはもちろん韓国政府がそういうふうに言っているわけで、私ども本人から確かめたわけじゃございませんから何とも言えません。  しかし、いずれにしても、私ども承知しているところによりますと、八日以後の時点において韓国側が重大な容疑を新たに承知した、したがって逮捕に踏み切らざるを得なくなったのだというように言っております。そういうふうに承知しておりますので、八日以前の時点においてどのようなことを言ったのか、したがってその点については免責されるのかという点につきましては、必ずしもつまびらかにはいたしておりません。
  247. 水野清

    ○水野委員 こういう点は、二人の釈放について今後韓国政府と交渉の際、一つの手がかりになると思うのです。ですから、そういう点をしっかり踏まえて交渉していただきたい。  それから、大使館員が面会を求めて、四月十二日に一回会ったきり会っていないようですが、今後面会されるときに、そういう問題点であるとか、あるいは先ほど申し上げたように北朝鮮との関連の問題で、これはわれわれにとっては何でもないことでありますが、韓国国内では重大なことになるわけでありますが、その辺のことをしっかり証明づけて、ともかく早期解決するように私はお願いをしたいわけであります。  先ほど申し上げましたように、これでいよいよ軍事法廷でさばかれるというようなことになりますと、日本の国内の世論はなかなかいまのような程度では済まなくなってくる。かつての金大中事件のときのように、またいろいろな角度からこの問題が取り上げられていく。そしてひいては日韓関係について好ましくない影響を与える可能性もある。こう私は思って心配をしているわけであります。  次にもう一つ、これは別の問題で御質問したいのですが、ちょうどそこに経済協力局長がいらっしゃいますから伺いたいのですが、日韓経済協力の問題でございます。  実は私はソウルで金大中氏に会ったときに、金大中さんから、日韓経済協力というのは日本の大企業と韓国の一部の財界人だけを太らせるようなことをやっているというお話があったので、私は金大中さんのお見舞いに行ったのですが、それはぼくはそうは思わない、しかしきょうはあなたと議論しに来たわけでもない、拘束されている状態や何かを見に来たのだからということで何も論争しないで帰ってきたわけでありますが、実は私はその後に韓国の南部の工業地帯に行ってまいりました。先ほど申し上げたように浦項の製鉄所であるとか蔚山の造船所を見たり、あるいは前に国会でも取り上げられました馬山というところの中小企業団地その他に行ってみました。行ってみたらなかなかりっぱにやっているわけであります。私は経済効果というものもなかなか無視できないと思います。  たとえば私が見たこの三つのところだけでも、概算すると六、七万の韓国の人たちの雇用が行なわれている。低賃金だといわれていますが、周辺の韓国の企業の賃金と比べるとかなり高い。日本の賃金に比べれば非常に低いわけであります。むしろ周辺の企業からいえば、日本の企業が来て高賃金で人を雇うもんだから、われわれのほうは低賃金で人を使えないから困る、そういう苦情も出ているわけであります。これは余談ですが……。  ところで、こういう効果があるにもかかわらず、金大中さんの発言だけじゃなくて、韓国の民衆は、聞いてみると、どうも日本の大企業と韓国の一部の人たちだけがもうけていると、やっぱりそう思っているのです。そこで私はもう一ぺん、これは何でだろうということでいろいろ調べてみたのですが、実は韓国側にも日本側にもやはりこれまで反省すべき問題がある。韓国側に反省してくれということは、ひとの国のことですから言えませんが、日本側にも反省すべき点があったのじゃないか。  それは、まだほかにも韓国各地でやっていますが、これだけの経済協力をしているということ自体あるいはその効果というようなことについて、韓国政府では一言も国内で触れたことがない。浦項の製鉄所の竣工式で朴大統領が初めて、日本の技術協力、経済協力でこれが完成したというあいさつを入れたのだそうです。これが初めてだそうです。そのときも、大統領が行っても韓国新聞は書かなかった。これは基本的に韓国の方々が日本日本人に対して複雑な屈折した感情を持っているから無理もないなという気もするのですが、いままで、日韓の定期閣僚協議とか、その他経済協力のためのいろいろな段階の各クラスの会談をやっておられますが、そのときに、こういうことをやっているその経済効果というものをもっと韓国の民衆にあなた方説明してください、新聞にもPRをしてください――政府の広報その他であれだけの統制をした国家でありますから、やろうと思えばできるわけですね。そういう要求をなすったことがないのじゃないかという気がするわけであります。この点について、やったことがありますか。
  248. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 水野先生御指摘のとおり、私どもの行なっております経済協力韓国の民衆のためにほんとうに役に立っておるのだということを私どもがみずからPRするのもどうかというような感じで、その点について韓国側に善処を要望した回数は必ずしも多くはございませんが、しかしいままで、韓国のみならず他の発展途上国におきましても、日本の行ないました経済協力が、日本がやったということさえも忘れられている場合があまりにも多いのではないかということはかねがね気がついておりまして、最近かわりましたけれども、昨年末の閣僚会議の前に事務的な打ち合わせに参りました企画院の人間に対しましては、そういうことを考えてみたらどうかというようなことを提唱したこともございます。  その結果かどうかわかりませんが、実は最近経済企画院総裁の名前でそういった日本の経済協力のあとを振り返るようなパンフレットが先方で出版されておるということも聞いておりますし、先ほどおっしゃいましたように、浦項の製鉄所の竣工式の際には、日本の経済協力について大統領が相当長い時間をさかれたということもございまして、新聞にはあまりキャリーされませんでしたけれども、そのとき、浦項の職員並びに列席の相当多数の韓国人、日本人のお客さんがそれを聞いておりましたし、先般、東京大学の川野先生を団長に、日本の経済協力がどういう効果を発揮しているかというような調査団を韓国に出したということもございまして、こういうものの報告書もできましたならばさっそく内外にその要旨等を発表するということにしたいと思います。
  249. 水野清

    ○水野委員 これで質問を終わりますけれども、御巫さん、私はあまりいじめる気はないのだけれども、実はまだ足りないように思うのです。これはむしろ日韓友好のためにそれこそ定期閣僚協議あたりで、もっと韓国側日本のやったことを評価して、国民にすなおにそれを知らしてやってくれというお話を、大臣、ひとつ今度の機会には必ずやってぐださい。そういうことをしてもらえないようなら、たいへんまた御迷惑ばかりかけているようだから、日本からの企業の進出はなかなか御推薦できません、そう言っていいと私は思うのです。現に、金大中事件以来、今度は逆に韓国で別の工業団地か何かつくったのだけれども、日本から進出企業が来ないといって関係者が心配しているのですね。だからそう言ってはなにだけれども、わりあいに自分かってなところもあるわけです。  ですから、もう少し日本側も、この点についてこれまであまり強く主張されなかった。それも日本の経済協力というか、いろいろな工場ができたことや何かが韓国の民衆に評価されない原因の一つだろうと思うわけで、率直に私の申し上げることをいろいろな各段階の会議韓国側に要望されることが望ましいと私は思うわけであります。  これで質問を終わります。      ――――◇―――――
  250. 木村俊夫

    木村委員長 次に、国際協力事業団法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本善明君。
  251. 松本善明

    ○松本(善)委員 国際協力事業団法案関係して、まず対外援助についての根本的な考え方外務大臣に少し伺っておきたいと思うわけであります。  第一に私が伺いたいのは、わが国の対外援助の基本方針アメリカの対外政策との関係であります。これを一般的に外務大臣はどのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  252. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国の経済援助あるいは経済協力の基本方針でございますが、日本世界の中での一員といたしまして人並みの国際的義務を果たさなければならぬ立場におることは申すまでもないことでございまして、しかも先進国一つに数えられておるわけでございますので、先進諸国並みの経済協力日本の国際的義務としてやってまいらなければならぬと存じております。ただいままでのところ量的には遜色のない域に達しておりまするけれども、質的な面におきましては依然として先進諸国に見劣りがするという状況でございますので、この質的な改善ということに一段と力を尽くしていかなければならぬと考えております。  第二は、相手国の立場に立って相手国の自助努力にささえられた国づくりに協力するということであって、わがほうが経済支配をもくろんだり、わがほうの利益の追求のみに走ったりすることのないようにしなければならぬと考えておるわけでございます。  第三には、特定の政権のためにするというようなことではなくて、民衆の民生の安定、福祉の向上ということに寄与するようなラインで考えなければならぬ。したがって、ひとり経済、産業ばかりでなく、医療、教育、衛生あるいは各種の社会公共事業等に対しましても援助の手を差しのべていかなければならぬと考えております。  第二点のアメリカの援助とわが国の援助との関係でございますけれども、どういう意味で、どういうねらいで御質問になったのか私わかりませんけれども、アメリカの援助はアメリカの援助でございまして、日本の援助は日本の援助でございまして、私は特別に内面的関連があるものとは考えておりません。
  253. 松本善明

    ○松本(善)委員 少し古くなりますが、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明で「日本経済の成長に応じて、そのアジアに対する援助計画の拡大と改善を図る意向である」ということを総理が述べて、それから「総理大臣と大統領は、ヴェトナム戦後におけるヴェトナムその他の東南アジアの地域の復興を大規模に進める必要があることを認めた。」という部分があります。それからぞのときのプレスクラブでの佐藤総理の演説では「アジア諸国の国造りに対する経済・技術面での支援という分野においては、米国よりもむしろ日本の方が主体的な役割りを果すべきであると考えます」、こういう部分がある。この方針田中内閣も継承しているというふうに考えていいですね。
  254. 大平正芳

    大平国務大臣 日本が自主的にアジアの経済協力、経済援助について自分で判断し、自分で遂行してまいるということでございまして、共同声明にアメリカがそれに関心を示しておるということでございますけれども、アメリカ関心を持っておるからわれわれはそうするという意味では決してございませんで、自主的にそう考えておるという意味におきまして、仰せのとおり田中内閣としてもそういう方針を踏襲しておると御理解いただいてけっこうと思います。
  255. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう言い方を外務大臣はされますが、事実上日本の対外援助についてはアメリカは非常に歓迎している。むしろアメリカ要請にこたえてやっているというのが実態ではないかと思います。アメリカの外交教書あたりから見ましても、日本の経済協力については非常に高く評価されてきている。しかもそれが安全保障との関係で述べられておるということになってきております。  たとえば例をあげますと、一九七一年の教書では「全世界の安全保障または開発が第一義的にアメリカ関心事であると主張することは、もはや不自然であり、また不可能である。他の諸国の防衛と進歩は、第一に彼らの責任であり、第二に地域的責任でなければならない。」ということが言われており、また日本に関しては「対外援助という重要な分野においては、競争よりも協力ということが合言葉になっている。日本は、対外援助額を一九七五年までに国民総生産の一%にふやすつもりである、と昨年発表した。われわれは、日本が従来のように商業ベースの融資に大きな重点をおかずに、国際的、地域援助計画の面で指導的な役割を演じるよう期待している。」ということが言われております。  七二年になりますと、「今日、日本は、開発の必要に迫られている他のアジア諸国を援助する上で、大きな役割を演じ、しかもその役割が次第に増大している。この分野で長年指導的役割りを演じてきたアメリカは、日本の増大する寄与を大いに歓迎するものである。」こう言っております。  七三年になりますと、「他の工業諸国もこの種の援助に対する負担をふやしつつある。多角的な参加はもろもろの国際開発機関、アジア開発銀行、先進諸国間の協力を通じて増加している。」「このドクトリン」、ニクソンドクトリンですが、「このドクトリンを実行に移すことにより、われわれが現在も将来もこの地域にバランスのとれた軍事力を維持する平和国家としてとどまることがだれの目にもきわめて明らかとなった。」  こういう引用から見てもわかりますが、アメリカがいままでやっておりました海外へのドルのばらまき、あるいは軍事援助政策、そういうものを続けることができなくなってきた。それの肩がわりを日本に求めてきている、したがって、日本の海外援助の役割りが、そういうアメリカの侵略政策の一環をになうということに事実上なってきているというふうに見ざるを得ないのではないか、こういうふうに私は思うのです。  私がお聞きしましたのは、アメリカの対外政策との関係で、日本の海外援助をどう見ているのか。いま行なわれている海外援助というのは、アメリカがほとんど軍事援助をしているところに非常に中心的になされておるというふうに言っていいと思うのです。そのアメリカの対外政策と日本の対外援助についてどう考えているかということを重ねて伺いたいわけであります。
  256. 大平正芳

    大平国務大臣 第二次世界大戦のあと、アメリカはいわば世界における唯一の力を持てる国でございまして、自分の力で世界全体の軍事的な安定、経済的な安定を保障しなければならぬという願望もあり、誇りもあり、自信もあったわけでありまして、バックス・アメリカーナというものを地球上に打ち立てていかなければならぬという願いを込めて戦後経営にかかったと思うのであります。つまり、その段階において、軍事援助も経済援助もアメリカしかできなかったということでございますが、さすがのアメリカの力も無限ではなかった。ベトナムその他の政策も不如意に終わったわけでありまして、ドル自体も衰退の命運をたどるようになってきた。したがって、アメリカとしては、せっかく自分でいろいろやりたかったけれども、それが十分できなくなってきたというところに――西ヨーロッパであれ、日本であれ、自立経済を打ち立てて、しかも対外的な援助余力を持ってきた国ができたことを文字どおりアメリカが歓迎したことは、すなおに受け取っていいことと思うのであります。  そのことを松本さんは、アメリカの援助を肩がわりしたというように解釈されるわけでございますが、私はすなおに、そういうように見ないので、われわれがそういうことができる段階になり、やらなければならぬ段階になって、やるべきことをやれるようになったということにすぎないわけでありまして、アメリカの肩がわりというようにおとりになるのは、私はやや牽強付会になるのではないかというような感じがするわけでございます。  今後アメリカがどういう援助政策をとられるか、それはわかりませんけれども、日本といたしましては、わが国の援助能力というものをはかりながら、ひとりアジアだけでなくて、後発開発国その他の発展途上国を中心にグローパリーにわれわれの援助をすなおにやってまいる立場日本はなったのではないかと考えるわけです。
  257. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは私は、典型的な例としてベトナムの援助についてお伺いしたいと思うのであります。  ベトナムについては、南ベトナムのかいらい政権に対する援助のみがばく大に進められているわけです。このベトナム援助についての基本方針ですね、これを御説明いただきたいのです。  といいますのは、事実上アメリカの対インドシナ政策、ベトナム政策、これはきわめて侵略的なものであり、パリ協定にも違反するものを進めておると私は思いますけれども、それにやはり協力をするということになっていると思います。このベトナム援助についての基本方針をお聞かせいただきたいと思います。
  258. 大平正芳

    大平国務大臣 インドシナ半島に対するわが国の経済援助につきましては、本院を通じましてたびたび申し上げておるように、インドシナ半島全域を対象として考えますということであります。  それから、確かにベトナム戦争の結果もたらされた災禍でございますけれども、これをそのまま放置しておいていいというわけではないわけでございまして、わが国としては、これを撲手傍観すべきではないので、わが国の立場で応分の援助、協力をしてまいるというごとは当然の責任だと考えておるわけでございます。  それから第三には、しかし援助をやるにいたしましても、それだけの手順がついてこなければできないわけでございまして、北のほうとの間においては、この問題はまだ具体的にお話し合いをして実行する段階にまで立ち至っていないわけでございまして、それだけの財源は留保いたしてありますけれども、まだ実行に移っていないわけでございますが、南のほうにおきましては、具体的な計画が出てまいって、それを吟味いたしまして、可能なものから実行に移しておるわけでございます。  したがいまして、これまた私とあなたの見解の相違は、当然アメリカがやるべきものをこちらが肩がわりしておるというように私は考えていないということでございまして、当然日本としてやる  べきことではないかと考えておるわけであります。
  259. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、具体的にお聞きいたしますが、パリ協定は尊重するという立場は表  明されていると思います。このパリ協定によりますと、これは申すまでもないことですけれども、南ベトナムの臨時革命政府もこの当事者になっているわけです。民族和解全国評議会をつくる、そうして総選挙を展望する、こういうたてまえでできている。ところが、これが実際上むしろやられないで、さらに南ベトナムかいらい政権は戦争を続けているというのがいまの実情であります。  そういう中で南ベトナムについてだけの、サイゴン政権についてだけの援助を進めるということは、これは事実上サイゴン政権に対する援助になり、パリ協定の精神をじゅうりんをしていく、違反をしていく、こういうことになりはしないか。そういう意味ではアメリカ考えている意図と全く同じ、そういう意味ではアメリカから非常に歓迎をされる、それは客観的に見れば、いかに否定をされようとも肩がわり、しかも軍事援助の性格も持つ、そういうことになるのではないかというふうに思いますが、その点について外務大臣はいかがお考えでしょうか。
  260. 大平正芳

    大平国務大臣 これまた不幸にしてあなたと私と見解が違うわけでございまして、パリ協定では、あなたがお示しになられたとおりサイゴン政府とPRGと第三勢力が一緒になりまして和解評議会というものをつくって、南ベトナムの政治的主体をつくり上げていこうというブループリントはできておるわけでございます。そのことを私ども希望いたしますし、それを支持いたしておるわけでございます。  そのことと、ベトナムにある政権を外交的に認めるか認めないかということはまた別問題でございまして、私どもはサイゴン政府をベトナムにおける合法政権として認めておるわけでございます。ベトナム共和国というのは一つでありまするから、そこに二つの政府を認めるわけにはまいりませんのでサイゴン政府を認めておる。それで認めておる政権を通じまして援助するよりほかに分別はないわけでございまして、このことはパリ協定に沿わないものなどと私は夢にも考えていないのであります。
  261. 松本善明

    ○松本(善)委員 政権を認めているかどうかということと向こうに援助をしていくかということはまた別問題であろうかと思います。私はその点で押し問答をするよりは事実をお聞きしたいと思うのでありますが、サイゴン政権の予算、これについて軍事費の割合、それから海外援助の割合、数量、七三年と七四年について説明していただきたいと思います。
  262. 高島益郎

    高島政府委員 ベトナム政府の発表によります統計によりまして、七三年と七四年の軍事費の歳出における割合を御説明いたします。  この資料によりますと、七三年におきましては五三%、それから七四年におきましては四八%になっております。
  263. 松本善明

    ○松本(善)委員 それからその予算の中で外国からの援助、これは歳入のほうですが、その割合。
  264. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま申しました歳出とそれから軍事費との割合に占める比率の関係で申しました数字は、援助の費用は入っておりませんので、援助につきましては、私の手元に持っております資料としましては、七二年の資料だけでございまして、これによりますと、アメリカが五億四百万ドル、それからそれ以外の国が、日本を含めまして三千四百万ドル、そのうちで日本の援助額が九百六十万ドルということになっておりまして、日本のほかにはドイツ、フランス、オーストラリアが日本に近い数字の援助を行なっております。
  265. 松本善明

    ○松本(善)委員 七二年の資料しかないということであればやむを得ませんが、その比率は、外国の援助の予算の中に占めるこのパーセントは出ていますか。
  266. 高島益郎

    高島政府委員 パーセンテージは出ておりません。
  267. 松本善明

    ○松本(善)委員 前もって言っておいたのですけれども、怠慢だと思います。それは七二年では三二%です。  それで、大臣に伺いたいのは、いま軍事費については七三年と七四年の数字です。それから外国の援助額については、七三年と七四年がありませんけれども、七二年で三二%です。で、七二年の軍事費の歳出に占める比率は五九%。大体七三年、七四年も変わらないと思います。半分以上が軍事費であって、しかも三分の一以上が外国からの援助でまかなっている。これがサイゴンの軍事政権の性格なんですね。  で、この政権に対する援助、経済援助というものは、その直接の援助がどこに使われるかということは別としても、実際上、これは軍事費の援助という性格を持っている。私は、そういう政治的役割り、性格を持っているということは明らかではないかと思います。この援助が政治的な性格を持っておるということは、前の委員会でも大臣は、同僚委員の質問の中でお認めになりました。そういうような政治的な性格を持っているというふうに考えられませんか。
  268. 大平正芳

    大平国務大臣 まあパリの和平協定ができてまいりましたゆえんのものも、南北の間に一応の軍事的なバランスはとれたということで和平がもたらされたと思うのでありまして、こういう微妙な軍事的バランスを維持していく上におきまして、軍事費が相当ウエートの高い状態にあることは、悲しいかな現実であろうと思うのであります。そういう中で経済のバランスをとっていかなければいかぬ、内におけるバランスばかりではなく、対外バランスもとっていかなければならぬという意味におきまして、相当巨額の対外援助に依存しなければならぬということも、いまあの国といたしましてはある意味においてやむを得ない事態ではないかと思うのであります。  しかし、苛烈な戦争が終わりまして、まだ局地的に紛争がとだえたわけじゃございませんけれども、だんだんと人々の生産復帰が行なわれてまいり、生産力がふえてまいるに従いまして、非常に勤勉な国民でございまするから、新たなバランスの水準を回復してまいることは、私はそう遠くない時期にやり遂げるのではないかと思うのでありますが、現在は経済の内外のバランスをとっていく上におきまして、いま置かれた条件のもとにおきましては相当軍事費のウエートが高いということ、外国援助が巨額にのぼるということは避けられない事態ではないかと判断いたしております。
  269. 松本善明

    ○松本(善)委員 サイゴン政権のそういう財政的な性格というのは、それはやむを得ないのだということで弁護されたわけでありますが、そのサイゴン政権に対して日本が一方的に援助していく、巨額の援助をしていくということが、そういうような軍事的な政権を援助していく、そういう政治的な性格を日本の援助は持たざるを得ない、こうなっていませんか、そのことはお認めなりませんかと、こういう意味であります。
  270. 大平正芳

    大平国務大臣 したがって、私が申し上げましたように、インドシナ半島全体について援助を考えております。北のほうに対してもそれにほぼ相当するだけの援助をもくろんでおるわけでございますが、先ほど申しましたように、まだ具体的な実施計画を立てるまでに至っていないわけでございます。南越だけを援助してよろしいとは私は考えておりません。
  271. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはベトナム民主共和国のほうでは、この南ベトナムへの援助がどんどん進められていっている、そしてそのことについて批判をしておるということを大臣はどう考えられるかという問題であります。これはインドシナ全域を対象にしているということを一般的にはいいながらも、実際上は南ベトナムの政権だけの援助が行なわれておる。そしてその最大の原因は、南ベトナム臨時革命政府に対する敵視的な態度ですね。これはサイゴン政権に対して現在巨額の援助をするということは、必然的にそうならざるを得ない。そのことが最大の原因になっている。インドシナ全域を対象にしているといいながらも、実際上はそういう名目のもとにサイゴンの軍事政権を援助している、そういうことになっている。その事態について日本政府としては反省もしなければ、そのまま進めていくということになれば、これはパリ協定の実現は絶対できない。その点について外務大臣はどうお考えになっておるかということをお聞きしたいのであります。
  272. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、南越だけを援助しようといっているわけではなくて、北越にも相当の援助を、先方の御希望があればやらなければならぬということで用意をいたしておるわけでございますし、南越政府としては、北越に日本が援助していただくことはけっこうであるという態度でおりますし、北越のほうも、南越の戦後の状態において日本が援助してくれることを歓迎していただきたいものと私は思っております。  南越におきましては、先ほども申し上げましたように、パリ協定を実行する上におきまして民族和解評議会をつくっていくということはわれわれが望むところでございますし、これは南越政府もPRGもそのことのために努力をしていただかなければならぬわけでございまして、日本政府がとやかくいうよりは、その当事者である方々がパリ協定を順守して、南越に唯一の新しい政権をつくっていただくことが望ましいのであって、われわれよりは当事国がまずその気になっていただかなければならぬのじゃないかと思うのであります。  しかし、日本政府立場から申しますと、一つの国に二つの政府を認めるなんということはとてもできないわけでございますし、南越におきましてはサイゴン政府を相手にしてやっておるわけでございまして、そういうたてまえをとっておる以上、南越のサイゴン政府をパイプにいたしまして、その計画に従いまして援助してまいる以外に、ほかに道がないわけなのでございまして、南越でそれをどのように全体の福祉のためにやってまいってパリ協定を定着さしていくかという仕事は、南越政府もPRGもお互いに考えていただかなければならぬものでございまして、日本政府が命令するわけにいかぬと私は思います。
  273. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣は当然のことのようにサイゴン政権を通じて援助するのだと言われますけれども、パリ協定ができたあとにそういう形の援助はしない、それは民族和解評議会を通じてこのパリ協定が実施をされるということを期待をするという選択はあるはずだ、一方の側に対する軍事援助の性格を持つようなそういう援助はしない、民族和解評議会ができていくのを待つということは当然できるわけではありませんか。そういうことをしないで、いま援助を進めていくということの性格の問題があると思うのです。それは実際上パリ協定の精神に反して一方の当事者の立場を強めていく、それをサポートしていく。そういう立場ではないというふうに最初に言われたけれども、事実上はそういうことになっているということになりませんか。
  274. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたのおっしゃるように、パリ協定ができて、そうしてそれにのっとりまして民族和解評議会ができて、南越に新しい政権ができてから援助を考えるということも私は考えられる一つの選択であろうと思うのでありますが、それがいつどういう姿でどういう過程を通ってできるかという見当はつきませんし、いま戦争が終わったばかりで、難民は救援を待っておる状況でございますので、そういう状況を放置しておくということもまた許されない事情であるという意味で、われわれが承認をいたしておりますサイゴン政府を通じて援助をやるということが実際的にして可能な道であったというように御理解をいただきたいと思います。
  275. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は外務大臣の見解を了承するわけにいかないのですが、押し問答するよりは事実を聞こうと思うのです。  十月十六日にパリで世銀とアジア開銀の共同招請によって十五カ国と四国際団体の代表会議が開かれた。御巫経済協力局長出席をされたはずであります。これは秘密会議だというふうにいわれておりますが、一体ここではどういうことが話され、そしてどういうことがきまったのかについて御報告をいただきたいと思います。
  276. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 特に秘密会議というほどのことではございませんが、いわば非公式の会議で、よく世銀の主宰いたします会議で、特に部外の方がお入りにならないというような会議の種類であるというふうに思っております。  それから会議の性格は、いわばインドシナ全域に対する世界各国の経済協力をどういうふうな方法でやったならば有効にできるかという、その手段、方法について、従来からこの世界銀行の主宰いたします、いわゆる協議グループというようなものを構成しております諸国の大部分が集まりまして非公式に相談をしょう、その席上には援助の対象であるインドシナの諸国は入ってきておりませんで、先ほど松本先生御指摘のように、アジア開発銀行の副総裁と世界銀行の副総裁とが共同の主宰者になりまして、いま申し上げましたような諸国の代表約十五、六が集まって討議をしたということでございます。  その内容といたしましては、いま申し上げましたような、方法論でございまして、大体において、とにかくインドシナ全体について一つの協議グループというようなものを構成してみたらどうだろうか、それでもし必要ならばその下にまた各国別の小委員会のようなものをつくることも可能なのではなかろうかというようなことが討議されたわけでございますが、結局その会議一回だけでは結論が出ずに、それではまた来年もう一ぺん集まりましょうということで散会になったわけでございます。  その後、その予定されました来年、すなわちことしでございますが、ことしになりましてからは世界銀行の中の都合その他によりましていまだに第二回目が開催されずに今日に及んでいる次第でございます。
  277. 松本善明

    ○松本(善)委員 この会議では世銀の南ベトナム経済視察団の報告書が資料として配られましたか。
  278. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 資料として配られましたものはただ一つだけだと私は記憶しております。それは最初の開会の辞のようなものをカーギルという世界銀行の副総裁が行ないまして、その分だけがいわゆるプリペアードステートメントということで会議に配られたというふうに記憶しております。
  279. 松本善明

    ○松本(善)委員 資料として配られたというとちょっと語弊がありますが、世銀の経済視察団の報告書に基づいて討議がされましたか。
  280. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 世界銀行のグローベルという人が東南アジア方面の担当で、常時バンコク辺に駐在しておるというふうに聞いておりますが、この人を中心とする調査団のようなものの書きました報告書が、たびたび討議のベースにされたということは事実でございます。
  281. 松本善明

    ○松本(善)委員 世銀の報告書は、パリ協定が実施されないし無意味だ、そういう前提で貫かれているというふうに考えられるわけです。私は、そこでの討議が、そういうパリ協定を順守させるというようなことは全然問題にならない、これの実施というよりは、南ベトナムのかいらい政権に対する援助、こういう観点でなされたもの、こういうふうにいろいろ報道されているものから見て、そう思うわけです。この点についてはどうであるか、伺いたいと思います。
  282. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 政治的な問題をグローベルさんが取り上げるということは全くないわけでございまして、世界銀行は、その世界銀行のメンバーである国について、主としてその援助のことを考えるわけでございます。したがいまして、その調査団も、主として南ベトナムの調査を行なったものですから、その南ベトナムの調査についての結果というものが討議の中でたびたび人の口にのぼったということだけであったというふうに記憶しております。
  283. 松本善明

    ○松本(善)委員 この会議の報告書は当然に作成をされたと思いますが、それを御提出いただけますか。
  284. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先ほども申し上げましたように、この会議は非公式の会議でございまして、特にそのときには結論は出なかったと申し上げましたが、続いて第二回、あるいは必要ならばさらに第三回も開くことになるだろうということを最後に世界銀行の副総裁であるカーギルさんが述べまして会議を閉じたような次第で、したがいまして、その会議の、たとえば普通でございますと共同コミュニケのようなものが出る場合もございますが、そういうたものすらもなく、会議の報告書というものも全く作成されなかったわけでございます。
  285. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは会議の中でつくったという意味ではなくて、あなたが出席されて、外務省に対して当然にその会議の経過の報告書はつくられたのではないかと思います。その報告書を提出していただけるかということです。
  286. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 私自身、政府代表といいますか、非公式の会合でございまして、私自身は、そのときパリに参りましたのは、その前日に行なわれましたOECDの開発援助委員会の上級会議代表として参りまして、そのついでにこの非公式会議にも参加するようにということでございましたので、特にこの会議につきまして報告書を作成するというようなことはいたしませんでした。
  287. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣に伺いたいのですが、大臣はこのパリ協定がいまのサイゴン政権の態度のもとで実現するというふうに思っておられますか。
  288. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、北であれ南であれPRGであれ、パリ協定の当事者がこれを尊重されて具体的な実行に移っていくことを希望いたしておるわけでございます。それがどういう道行きをとつていくであろうかということについての憶測は、私にはまだわからないわけでございますので、御遠慮したいと思います。
  289. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、これはたいへん大事な問題でして、私は、先ほど民族和解評議会ができてから援助ということは一つの選択であるということを大臣が言われたけれども、そういう選択ではなくて、いまのサイゴン政権を援助していくということは、これはパリ協定の順守ができないようにしていく、結果としてそういうことになると思うのです。私は、この問題についての見通しなしに外務省が事を行なっているとは考えられない。それともこれは全く見通しなしでやっているのですか。
  290. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことをおっしゃいますけれども、パリ協定自体も第十四条で「南ヴィェトナムは平和及び独立の外交政策を追求する。南ヴィェトナムは、政治社会制度のいかんを問わず、独立及び主権に対する相互尊重に基づきすべての諸国と関係を樹立しかつ政治的条件を伴わない経済・技術援助をいかなる国からも受け入れる用意がある。将来における南ヴィェトナムによる軍事援助の受入れの問題は、」「総選挙ののちに樹立される政府の権限の下におかれる。」こういうことでございまして、「政治的条件を伴わない経済・技術援助」ということはパリ協定自体も予想しておることでございまするし、先ほど私が申しましたように、戦後の痛ましい災禍のあとをそのまま放置しておくということは耐えられない事態でございますので、私どもやっておることは私は別に間違いではないと考えております。
  291. 松本善明

    ○松本(善)委員 技術援助と言われますけれども、大臣も、これが一つの政治的意味を持っているということは、前回の委員会でも認められた。  それから、南ベトナムのボ・ロン・チューという下院議員の談話でも、これはこういうことを言っています。「南ベトナムのような国に援助を供与し、投資することが、一つの政治的立場を選択することになることを諸大国はよくわきまえている。」これはもうあたりまえの話ですよ。これはもう明白な政治的な立場の選択だと思うのです。  大臣は、これは全くの技術的なことで、政治的な意味のないことだというふうにお考えですか。
  292. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、われわれいわば政治的世界に生きておるわけでございますから、われわれのなすことが政治性を持たない、政治的でないなんていうことを強弁するつもりはないわけでございますけれども、私が申し上げておりますことは、いま私どもの政府がやっておりますことは、パリ協定に沿ったものであり、少なくともパリ協定に反したものではないわけであると私は確信いたしておるものであります。  しかもパリ協定を実のあるものにするかどうかというのは、各当事者がその気になって一生懸命にやっていただかなければならぬわけでございまして、東京政府がいかにがんばってもそれは手に負えないことでございますので、先ほども申しましたように、南ベトナムの二当事者の間におきましてパリ協定が尊重されることを心から希求いたしております。
  293. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣にもう少し事を分けて私はお聞きしたいと思うのですが、日本の援助が、直接軍事援助でなくても、そのことによってその政府、サイゴン政権が経済的な負担を免れて、そうして軍事費に予算を回すことができるということになるならば、これはそういう意味では、サイゴン政権を軍事的に援助するという政治的な性格を持ってくる。特にいまパリ協定締結後も戦闘が行なわれている。サイゴン政権は協定を順守しようとしない。こういう状態のもとでこの援助がなされていくというのは、このサイゴン政権を援助するということになっていく。  そういう意味では、パリ協定を実現するという方向のものではない。むしろ一方の側、民族解放戦線の側を、いわゆる南ベトナム、サイゴン政権が言っているいわゆる平定作戦、そういうことを援助するということになりませんか。ベトナムには二十万の政治囚がいます。毎日殺されている人もいます。私は、そういうことに日本の税金が使われてもらいたくないと思うのです。  そういうことについては大平外務大臣は、それは別問題だ、こういうふうに言って責任を免れようとされるけれども、そういうことが通るだろうか、こういうことなんです。それについては全くそういうような性格はないとお考えなのかどうか、もう一度重ねて伺いたいと思います。
  294. 大平正芳

    大平国務大臣 南ベトナムの政治の問題は、南ベトナムの方々の問題でございまして、私がとやかく言うべき問題ではないと思うのであります。日本政府立場は先ほどからも申し上げましたように、一つの国に対しましては、二つの政府は認めないのだというきわめてあたりまえの国際法的な立場をとっておるわけでございまして、そのラインに沿いまして、戦後の状態にかんがみて経済援助を日本の能力に従ってやっておるにすぎないわけでございます。南ベトナムの政治的運命、将来というものは南ベトナムの方々が真剣に考えていただくことを期待いたしております。
  295. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、とてもその答弁では納得できませんけれども、別の形でお聞きしたいと思いますが、三月の三十日にベトナムの援助について調印をされました。この実情について簡単に御報告いただきたい。
  296. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 ベトナムに対しましては先ほど来申し上げましたように、無償協力とそれに関連いたしまして有償協力、両方の用意をしてまいったわけでございますが、その仕組みを先方政府との交渉が漸次はかどりましたので、三月末に御指摘のように交換公文をサイゴンで取りかわしたということでございます。
  297. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはフランスよりも上回る計百三十三億円といわれておりますが、これはアメリカは別として、アメリカに次ぐものだと思います。非常に大きな力を入れているということになりませんか。
  298. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 いま申し上げました無償協力につきましては五十億円、残額が有償協力でありますが、有償の部分はいわゆる商品援助という形をとっておりますし、無償の部分につきましては、いわゆる難民を救済するために必要であるとか、緊急に農民の助けになるための農機具であるとかそういったようなものを贈与するための経済協力の形をとっておりまして、総額は先生御指摘のような数字になります。
  299. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣に伺いたいのですが、これだけ大きな援助、先ほど来大臣との間で私は討論をしてきました。政治的な性格が非常に強いと思うのです。そこで、本委員会で海外援助についてもどういうものを国会審議にのぼせるか、承認を求めるかという問題が論議をされました。  外務大臣が御説明された中では、第三番目のカテゴリーとして「法律事項又は財政事項を含まなくとも、「我が国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それ故に、発効のために批准が要件とされているもの」も国会承認条約として取り扱われるべきもの」であると考える。こういう見解が示されました。  要するに、政治的に重要であるという場合には国会の承認を求めるという見解が示された。南ベトナムのかいらい政権に対して経済援助を大きな形でやるということは、これは相当大きな政治的な意味を持っている。当然に与野党の中で議論のされなければならないものだ。私は、こういうものは当然に国会で承認を得て行なうというのが筋ではないか、そういうふうに考えますけれども、これはいまわずかの時間ですけれども、外務大臣と私がいろいろ議論をし合いましたけれども、それでも一致しない。それは政治的な意味が非常に大きいということの意味だと思うのです。  そういう性質の協定というものは、これは当然に国会の承認を得て行なうということにすべきではないかと思いますが、その点について大臣の見解を伺いたいと思います。
  300. 大平正芳

    大平国務大臣 政治的な意味の強弱というか濃淡というか、その点について松本先生と私との評価が違うわけでありまして、ベトナムと日本との間の基本的な関係にかかわるような重大な案件とは私は考えないことが第一点でございます。  それから、国会との関係におきましては、予算の形式をもちまして御審議をいただいて御承認を得た範囲で、行政権がその実行にあたって差しつかえない案件であると私は考えておるわけでございます。しかしながら、このことは決して国会を軽視するというようなつもりでは毛頭ないのでありまして、本日も御審議、御質疑をいただいておりますように、問題ごとにいろいろ御究明をちょうだいし、政府からもできるだけの資料を御提示申し上げて、御審議の便に供したいと思うわけでございます。  こういう現在やっているようなやり方で私は差しつかえないのではないかという判断を持っております。
  301. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣に伺いますが、南ベトナムにいまのような形での経済援助をするかどうかというのは、外交の基本路線にかかわると思いませんか。
  302. 大平正芳

    大平国務大臣 おことばを返すようでございますが、基本路線にかかわるほどのシリアスなものと私は考えていないのでございます。
  303. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はそういう認識では困ると思っています。パリ協定が実現をされるかどうか。つまり、これはどういうふうにしてパリ協定が実現され、ベトナムでの事態解決するかということは、国際問題としては非常に大きな、アジアの平和にとっては非常に重大な問題だと思うのです。その方策について、一方の当事者を支援をするということが、私は、日本の外交の平和的なあり方ということについては、根本的な路線にかかわると思うのですけれども、外務大臣がそういうふうな見解を持っておられるということについては、私はきわめて遺憾に思います。しかし、これは押し問答を繰り返しても始まりませんので、そのことを申し上げて次の質問をしたいと思います。  南ベトナムへはいろいろ企業が進出をしていますが、その進出の状況について通産省から報告をしていただきたいと思います。
  304. 森山信吾

    ○森山説明員 お答え申し上げます。  昭和二十六年から昭和四十八年度までの累計で申し上げますと二十二件ございまして、金額にいたしますと四百十四万ドルでございまして、その内訳を申し上げますと、支店の設置が一件、それから債権取得が一件ございまして、残りの二十件がいわゆる投資ということでございまして、製造業等に対する投資でございます。この金額は三百七十六万ドルということになっております。
  305. 松本善明

    ○松本(善)委員 どういう企業が進出をしていますか、おもなものをあげてください。
  306. 森山信吾

    ○森山説明員 最初に業種別に申し上げますと、製造業で一番大きなシェアを持っておりますのは、化学工業が四件ございまして、次いで機械の関係でございますが、電気機械が三件、それから一般の機械が三件、それから繊維工業が二件、こういう業種別の割り振りになっていますが、企業といたしますと、たとえばソニーでありますとかあるいは石川島でありますとか、あるいは漁業の関係で日魯漁業、こういったものがございます。
  307. 松本善明

    ○松本(善)委員 全部で何社ありましょうか。
  308. 森山信吾

    ○森山説明員 先ほど申し上げましたように、延べにいたしまして二十企業が出ております。
  309. 松本善明

    ○松本(善)委員 この企業に対する投資保険ですね、これはどうなっているのか説明してください。
  310. 森山信吾

    ○森山説明員 投資保険につきましては、昭和四十年以来引き受けを停止いたしておりまして、この間企業の進出がオールリスクで行なわれてきたわけでございますが、今年の一月以降受け付けを開始するということにいたしまして、ただいままでのところ一件一プロジェクト、これは一プロジェクトを二つの企業がやっておりますので、これは漁業でございますけれども、商社と漁業会社がコンビネーションを組みまして一つのプロジェクトを実施いたしておりますので、この二社に対して引き受けを実施いたしております。これだけでございます。
  311. 松本善明

    ○松本(善)委員 保険料率はどのくらいですか。
  312. 森山信吾

    ○森山説明員 保険料率は引き受け責任額に対しまして毎年〇・五五%、こういうことになっています。
  313. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣に伺いたいのでありますが、こういう企業が進出をしていって、民族和解評議会ができて完全に安定しているという状態になればともかく、いまの状態はまだまだ戦闘が続いていたりしておるわけです。この状態の中で投資保険が再開をされて、それできわめて低い保険料率で、むしろそういうふうにすれば企業の進出を容易にする、国民の税金で企業の危険を負担をしていく、こういう形で企業進出を南ベトナムへ進めていっている政策がとられている、こういうふうに見ざるを得ない。私は、そういうことはきわめて適切でない、正しくない、こういうふうに考えるわけですけれども、この点については、外務大臣はいかがお考えになりましょうか。
  314. 森山信吾

    ○森山説明員 先ほど申し上げました投資保険を再開いたしましたのは、全面的にこれを引き受けをするということでは実はございませんで、幾つかの条件つきで引き受けをやっております。たとえば地域の制限がございまして、治安上問題のない地域でございますとかあるいは業種の制限がございまして、ベトナム側におきまして、たとえば輸出振興等に寄与する、南ベトナムの経済発展に寄与するようなものについて適用するということでございまして、すべて申請どおりに保険の引き受けをやるということにはなっておりません。
  315. 松本善明

    ○松本(善)委員 制限つきとはいえ、ベトナムはそういう状態でパリ協定が実現をされていない、こういう実情のところです。やはり制限つきであっても適切ではない、そういう形で企業進出を進めていくわけですから、南ベトナムにそういう一形で進めていくというにはそれなりの理由を持って、どういう判断でそういうことをやっているのか、それが私が最初から言っておりますような、アメリカの対外政策との関係日本がどういう考えで南ベトナム援助を、あるいは海外進出というものを進めていくのか、そういう政治判断の問題です。これについて外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  316. 大平正芳

    大平国務大臣 対外投資の最近の数字をいま私、つまびらかにいたしておりませんけれども、八十数億ドルにのぼっておるのではないかと思いますけれども、決して先進諸国の中で多いとはいえない状況でございます。そのうち四百万ドル内外というものは南ベトナムに投資されておることが過大であると私は思いません。  それから第二に、どこに投資をして事業を営むかという選択、判断は企業体にゆだねられてあるのがわが国の体制でございまして、政府といたしまして特にこれを奨励するというような措置は講じていないわけでございまして、アメリカとの関係において、政府が対外投資に介入していくというようなことは一切やっていないことは御承知願いたいと思います。
  317. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本経済調査協議会の「インドシナ復興・開発の方途」でも、海外投資保険の適用についてきわめてリスキーな状態に置かれているということを述べているわけです。そういう非常に危険な状態に置かれているのにもかかわらず、投資保険を再開していくということは奨励ではありませんか。私は、そういうようなことがなぜ南ベトナムについてやられなければならないのかということの根本的な疑問なんです。それは何の疑問もないということで通るものですか。外務大臣の見解を伺いたいわけです。
  318. 大平正芳

    大平国務大臣 海外投資政策の問題の一環として投資保険という制度を政府考えたゆえんのものは、おそらく、私はこの立法に関係したわけじゃございませんけれども、日本人の海外経済活動というものを安定したものにしていこうということであろうと思うわけでございまして、南ベトナムばかりでなく、あらゆる地域にわたりまして、投資に若干の危惧を伴うという場合において、付保の便宜を与えたものと思うのでありまして、南ベトナムであるから特にここでこういう配慮をしなければならぬというように事を重大に私は考えな  いものであります。
  319. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはまことにおそれ入るのですが、南ベトナムはほかのところと何ら変わりない、そんな心配することはない、日本経済調査協議会が非常にリスキーな、危険の多い場所だというふうに報告しているそういうことも無視をしていく、別に南ベトナムをそう差別して考えることはないのだ、そういう政治判断でありますか。それは私は通る話ではないと思いますが、もう一度お聞きしたいと思います。
  320. 森山信吾

    ○森山説明員 南ベトナムに対します保険の再開にあたりましては、先ほど御説明申し上げましたように、限定的に考えるということでございます。この輸出保険は国民の税金で運営さしていただいている会計でございますので、いたずらに損失を起こさないようにという気持ちはございます。片やあらゆる国と友好的な経済関係を結んでいくというのが私どもの念願でございまして、それとのからみから地域の制限あるいは業種の制限、さらには金額の制限というものを考えまして、しぼりにしぼった結果妥当と認められるものについてのみ再開すべきではないか、こういう判断から再開に踏み切ったわけでございます。南ベトナムのみならず、その他の国々に対しましても同様な措置は従来もとってきておるわけでございます。
  321. 松本善明

    ○松本(善)委員 制限つきであろうとも、これは先ほど来論じておるとおりなんです。私は、この投資保険再開について、あるいは大臣が直接関与されたかどうかわかりませんけれども、あるいは関与されでないかもしれないと思いますけれども、いまの通産省の説明のようなことではとても納得できないのです。あらゆる国と仲よくしていくのだというような方針でないことが現に実行されておるわけです。私が問題にしたいのは、やはり大臣が南ベトナムについてはほかのところと何ら変わりはない、こういう判断でおられるということは、これは私は驚くべきことではないかと思うのですけれども、これは変わりませんか。
  322. 大平正芳

    大平国務大臣 南ベトナムが、パリ和平協定ができましたけれども、局地的に紛争が終息したという状況でないことは承知いたしておるわけでございます。したがって、ほんとうの意味において青空のもとで平和を享受するというような状況でないこと、それは私どもも重々知っておるつもりでございます。そういうことは投資保険の判断におきましても、所管官庁が常識的にお考えの上いろいろの制約を付してやられておることと思うのでございまして、特に南ベトナムにつきまして、投資保険をはじめといたしましていろいろな問題の処理にあたって、松本さんおっしゃるように非常に重大な配慮を加えなければならぬというほどには私は考えていないと申し上げたほうがよろしいかと思います。
  323. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はむしろ逆に、南ベトナムに特に重大な配慮をして、危険にもかかわらず日本政府は援助を強化していくという方針をとっておるのではないかというふうに思うわけです。  しかし、問題を次へ進めますが、南ベトナムのカムラン湾の開発については、政府はどういうふうに事態を把握しておるか御報告をいただきたいと思います。
  324. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 目下のところまだ政府として何らタッチしておりません。
  325. 松本善明

    ○松本(善)委員 事情を知ってもいませんか。知っている範囲で御報告をいただきたい。
  326. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 カムラン湾の工業化計画というようなものが存在して、それに関しましてベトナム政府が将来の問題として化学工業とかそういったものを興すのに適当な地域であるという判断をしておるということは承知しておりますし、また、たまたま近所に日本がつくりました発電所がございまして、そこからの送電線が、本来サイゴンに向かって送られるべきであった送電線が、たまたま戦闘のために切断されておりましたために、かわりにカムラン湾のほうに向かって送電線を別につくってほしいというような要請がありましたことは事実でございまして、それにつきまして、その送電線の部分だけについては政府はその工事を引き受けるというようなことは過去にござ  いました。ただそれだけのことでございまして、それから先、その先のプロジェクトの内容等の詳細は全く承知しておりません。
  327. 松本善明

    ○松本(善)委員 報道されているところによれば、重化学工業に最適だということで民間の調査報告がされているようでございます。いま御巫局長が言ったような方向で進んでいるようですけれども、そういう方向で重化学工業基地ができ、それからそのすぐそばにダニムの水力発電所がある。南ベトナム最大ということになると、こういう方向でいくのは南ベトナムの経済を支配していくという方向に、これはきわめて容易になっていくのではないかと思いますが、そういう点では、大臣、いかがお考えになりましょうか、日本の経済進出がそういう性格を持ってくるということについて。
  328. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先ほど申し上げましたように、そういったカムラン湾という場所がたまたまそういうプロジェクトを推進するのに適当な地域ではないかどいうことをベトナムの政府考えまして、それにつきまして民間の方々にその調査等を依頼したという事実はございますが、はたしてそれをそのとおりに実行するかどうか、こういった問題はまだこれから先にきめられるべき問題でございまして、先生おっしゃいますように、それをてこにして経済を支配するとかなんとかいうようなことを目下考えているということは毛頭ございません。
  329. 松本善明

    ○松本(善)委員 目下考えてなくても実際上そういう方向に行く可能性を十分持っているわけです。あるいは考えている人もあるかもしれない。  私はさらに伺いたいのは、こういうカムラン湾の開発とかアサハン計画などもいろいろ取りざたされておりますけれども、こういうものができていった場合に、国際協力事業団法案との関係ですね、これはどういうことになっていくだろうか、これについて御説明をいただきたい。
  330. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 国際協力事業団は、法案をお読みいただきますとわかりますように、第二十一条にこの業務の範囲が書いてございます。この業務の範囲の中で新しいものは、いわゆる三号業務と称せられる二十一条一項三号に書いてあるものでございます。  その内容はすでに御承知かと思いますが、第一番目にはいわゆる本体業務というものがございまして、それに対しましてすでに海外経済協力基金とかそういったところからお金が出ておる、そういう場合には、その周辺のインフラストラクチュアについてその事業団がお金を貸すことができるというのがいわゆる周辺インフラに関する業務でございます。  第二番目には試験的業務と申しまして、いままで全くやったことのないような新しいリスクを伴う、かつまた技術の改良、開発が必要となるような業務を必要とするような場合には、これに対してこの事業団が出資をしたり融資をしたりすることができる。  第三番目には、相手国の政府要請があって、またそれについてその国からこの事業団に対しまして、その国の中央政府または地方政府からやってほしいという要求がございました場合には、その委託を受けて、いわゆる受託業務と申しておりますが、仕事を自分でする。  そういったようなのがおもな業務としては新しいものでございますが、いま御指摘のような、かりにカムラン湾の工業化というものが進むというような場合を仮定いたしますと、どこに当てはまるか、それはそのときの情勢もいろいろあると思いますが、たとえば周辺インフラというようなものが必要になってくるような場合には、それによってその地方の住民の福祉がさらに貢献を受けるというような場合には、実施をされるような場合もあるいはあるかと思いますが、すべてこの本体の業務にかかわることでございます。  また二番目の試験的業務はこの場合にはおそらく関係がないことと思いますし、三番目に申し上げました受託業務というのは、これはそのあとの第二十二条にはっきり書いてございますように、相手国側にも日本側にもこの事業団以外には適当な事業主体が存在しないということがはっきりしている場合だけに限られるわけでございますので、いまのような場合に、はたして適用されるかどうか、これは全く未定の問題であるといわざるを得ないかと存じます。
  331. 松本善明

    ○松本(善)委員 関連施設の例ですね、これをあげてください。
  332. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先ほど申し上げました第二十一条の三号業務の中のイに掲げてございます、いわゆる周辺インフラと私が申し上げましたのを関連施設というふうにも読めるかと思いますが、その例といたしましては、たとえば、いわゆる本体業務というものがございまして、それに対して海外経済協力基金等から資金が出されて業務が行なわれる。しかし、その業務の行なわれておる場所に入っていくためにはその近くの海岸に港をつくらなければならない。その港をつくることによって、本体業務のその地方の住民に与える利益が非常に大きくなる、そういったような場合に、その港をつくるためにこの事業団がお金を貸すというような場合を想定をしておるわけでございます。
  333. 松本善明

    ○松本(善)委員 私がさらにお聞きしたいと思いますのは、その例ですね、港湾とか道路とかいろいろありましょうが、その例をできるだけあげてください。
  334. 森山信吾

    ○森山説明員 今度の事業団の新規業務になっております、ただいま外務省の御巫局長から御説明ございました点は、実は私のほうで財団法人海外貿易開発協会というものを昭和四十五年の二月に発足させまして、周辺インフラ等の整備の事業をやっておるわけでございます。それが今度の事業団に引き継ぎをされる、その業務が承継をされるというふうに私どもは考えておるわけでございますので、現在、海外貿易開発協会におきましてやっております例を具体的に申し上げてみたいと思います。  先ほど申し上げましたように、昭和四十五年の二月に発足以来、二十一件の関連インフラに対する融資を行なっておりますが、例をインドネシアにとってみますと、インドネシアの木材開発の場合でございますが、道路、桟橋、学校。  この学校は、木材開発をいたします周辺におきまして、この木材開発の業務に従事する従業員の子弟及びその周辺に村落として住まっておられます現地人の子弟の教育をするという意味の学校でございます。  それから診療所。この診療所も同じように、その従業員用の診療所及びその周辺の土地に住んでおられます住民の方の診療所。  それから教会。これはインドネシアでございますので回教の教会でございますが、礼拝堂という意味で、コミュニティーの一つの中心になる母体として教会に対する設立の資金をお貸しする。  それから簡易飛行場、スピードボート。このスピードボートといいますのは、島から島へ渡るための渡し船にモーターをつけたようなものでございます。  それから発電設備。そういったものを関連インフラといたしまして融資をしておるわけでございます。  したがいまして、今回はこういったものについて大体融資をしていくことになろうかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  335. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣に伺いたいのでありますが、いま伺いましたけれども、たとえばカムラン湾のような開発が行なわれる。先ほど通産省の経済協力部長は言いませんでしたけれども、たとえば南ベトナムでいえば、三井物産や三菱商事、三菱重工業あるいは丸紅とか、そういう日本でもいわゆる、今国会国会に喚問されているような大企業がどんどん進出しているわけですけれども、そういう企業で、本体業務で輸銀でありますとか海外経済協力基金などが受けられないものについて、その関連施設の学校とか診療所とかあるいは港湾とかあるいは礼拝堂に至るまで資金援助が受けられるということになりますと、これは一面、海外進出をする大企業は至れり尽くせりの保護がこれによって受けられるということになると思うのですけれども、この点については外務大臣はどういうふうにお考えになっておられましょうか。
  336. 大平正芳

    大平国務大臣 本来、採算的に申して投資の対象になるようなものでないものを、インフラストラクチュア部面等に対して融資の道を考えたということは、わが国の経済協力の質的な改善をそういう面ではかっていこうとするものでございまして、企業に奉仕しょうということではなくて、相手国の民生自立を助けていくことに主眼があるわけでございますので、私は経済協力政策の一つの発展であると考えておるわけでございます。  ただしかし、注意しなければならぬことは、そういう道が開かれたからといって、事柄、事業の実施がイージーに流れるということ、親方日の丸というようなことにならぬように十分気をつけなければならぬことは当然だと思うのでありますけれども、少なくともこの事業団がねらいとするところは、援助協力政策の質的な改善を志向したものであると御理解を賜わりたいと思います。
  337. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、こういうやり方では日本の海外進出に対する非難をなくすことはできないのではないかというふうに思っているわけです。やはり今国会でもたびたび論議をされました田中総理大臣が東南アジアを訪問したときに受けたいろんな批判ですね。ごうごうたる非難の中を回ってきたわけですけれども、その根本原因として、私はそういう小手先や技術的なものではないと思う。一つはやはりアメリカの支持をするところに集中的に援助がなされている。アメリカの対外政策と不可分の関係を持っている。そしてアメリカの支持するかいらい政権を事実上支持するというそういう役割りを持っている。だから、反日運動はそのまますぐその国のかいらい政権あるいはファッショ政権、そういうものに対する反対として発展をするという性質を持っていた。これを外務大臣も御存じと思いますけれども、その基本方向、これをやはり変えなければならないと思います。  もう一つは、やはり大企業の横暴、これは国内だけ横暴が論議をされました。これに対する大企業の進出を擁護するという形での海外援助、このやり方を変えていく、これがきわめて重要なことではないか。そういう意味では海外援助の問題は、私は根本的な反省がなされなければならない段階にきていると思うのです。この根本原因についてあらためて外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  338. 大平正芳

    大平国務大臣 松本さんと議論すると、どうもうまく調子が合ってこないので非常におっくうなんですけれども、まずアメリカの援助、アメリカが庇護する政権あるいは国、そういった国に片寄るということ、それはいけないじゃないかということでございますが、アメリカが援助し、肩入れをしておる国であろうとなかろうと、私どもといたしましては、日本の眼力でもってこれはやはり援助すべきであるかすべきでないか自主的に判断すべきでないかと私は考えます。  それから第二点でございますが、大企業、大商社というのがこのごろどうもたいへん悪者になっておるようでございますが、これも大企業、大商社、それが持っておる機能、能力が日本のためになり、民衆の福祉につながるものになればそれでいいんじゃないかと私は思うのでございます。大企業だから大商社だからいけないと頭からきめてかかることに対して、私、若干大企業や大商社を弁護するわけじゃございませんけれども、それはいけないと潔癖におきめになられることがツーマッチ潔癖でないかというようにぼくは思うのでありまして、それは事柄自体から判断いたしまして考えるべきことでないかと私は思います。なかなか御納得いただけないかもしれませんけれども……。
  339. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、現実には賃金が、東南アジアで進出している企業の日本での賃金の十分の一というようなことがある。それはチープレーバーであるという非難というものも山のようにあるのですよ。それから公害を持ち込んできているのじゃないかと、そういうことについての規制もない。そういうことについて規制をしていくということの方策を考えないで援助をふやしていく。関連施設までずっと援助をふやしていくということだけを考えているのがいまの実態ではないかと思う。この海外で批判を受けているのが大企業なんです。  基本的には、海外進出できるというのは大企業でしょう、もちろん小さいのもありますけれども。その批判を受けている原因がどこにあるか。それは国内で受けていると同性質のものが海外でもあるわけです。それについて規制をするということは政府としては考えないのですか。
  340. 大平正芳

    大平国務大臣 そこがまたあなたと意見が違うのです。一つ世界政府がありまして、それであそこはこうすべきでない、ああすべきでないという立場でいろいろやるのなら、あなたの言うような立論が成り立つと思いますけれども、今日の世界は非常に進んだ国もあればおくれた国もございますし、賃金の高い国もあれば安い国もあるし、失業が少ない国もあれば多い国もあるわけでございまして、そういう中で、たとえば企業が進出してまいるという場合に、郷に入れば郷に従えで、その国の労働立法、その国の環境立法、そういうものを守って、そしてその国の中で雇用の機会をつくって、その国の社会にとけ込んでいけばいいことじゃないかと思うのでございまして、日本に比べてあるいは賃金が安いからそこへ行くことはいけないなんということは、私はちょっとおかしい論理じゃないかという感じがするのであります。  問題は、相手国の政策に中立でなければならないと思うのでございまして、相手国の立場になって日本がいろいろ家父長的なおせっかいをやく必要はないじゃないかと思うのです。あなたの言われることを延長していくとそうなるのじゃないかと思うのです。環境の問題にいたしましても、チープレーバーの問題にいたしましても、それは相手国が相手国の立場に立ちまして、相手国の置かれた条件のもとで、そこに日本の企業が一つの評価と尊敬を受けるような存在であれば、私はそれでよろしいのじゃないかと考えるわけでございます。  それからまた、わが国の経済進出についてはいろんな批判があるわけでございまして、私は、これがなくなるなんということは、そんなに甘いことは考えていないのです。たとえば日本の企業が進出していって雇用の機会ができた人は喜ぶし、依然としてまだ失業で雇用の機会が得られない人は非常に不満を持つわけでございますし、日本の商社が出ていって近代的な商法をやることによって、旧来の商法をやっておった人が心よいはずはないのでありまして、問題はその国の中で進歩を考えていく場合に、前進的にその国の社会、その国の体制の中でどういう手順を踏んでその国のためになることを考えるかというように考えていくべきじゃないかと思うのでありまして、何もかも進出する側に立って、全部考えてこうするああするなんということになりますと、相手国の主権、自主性を侵すことにもなるのじゃないかということを私はむしろおそれるのであります。  また、アメリカ世界であまり評判がよくないというのも、アメリカの経済的プレゼンスというものあるいは軍事的プレゼンスというもの自体に第一圧迫感を感じるわけで、アメリカがいかにいいことをしても、これは人間ですから、あまりそれを快く受けないと思うのです。アジアにおける日本の経済的プレゼンスというものも若干似たようなところがあるのじゃないかと思うのであります。  経済進出をやる上におきましてはいろいろな非難はつきものだと私は思いますけれども、その場合、いま申し上げたような相手の国の立場に立って、相手の国の政策、行き方を尊重しながら、そこでその社会に定着し、愛されるようなものになるようにくふうしていけば、まずまずそれが考えられ得る現実的な姿のものになるのじゃないかというように私は考えるわけでございます。
  341. 松本善明

    ○松本(善)委員 その国の法律を守る、これはあたりまえの話であって、その進出をする相手の国に対してどういう法律をつくれとかなんとかということを言えと言っておるわけじゃありません。問題は、その進出している企業や何かが法律違反だということで問題になっているという例よりは、そうではないけれども全体として日本に対しての、海外進出が経済侵略であるとかもうけだけを考えておるとかという形の批判が起こっているのが現状だと思うのです。  そうだとすれば、それは相手国の法律にまかしておけばいいのだということでは済まないのじゃないか。日本政府としてそういう海外進出をする企業に対して規制考えるということは、相手国に迷惑をかけないというようなこと、いろいろな形での有形無形の被害を与えないということについての規制考えるのは当然ではないですか。そういうことを考えることが内政干渉になる、こういう御意見ですか。
  342. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことを私は否定しているわけじゃないのです。相手国のお立場、相手国の政策、相手国の法令を尊重し、相手国の慣行、そういうようなものも十分念頭に置いて、それにとけ込んでいくということをまず考えなければならぬことは当然のことと思うのであります。しかし、そのことを通じてわれわれがまたそこで経済的な支配、経済的な覇権をがむしゃらに求めるということであってはいけないので、そういうことをやらないで営々として事業をやっておることに対しまして、格段非難を受ける必要はないと思うのです。  経済的プレゼンス自体が往々にして反感を呼ぶことになるケースが多いということを申し上げておるわけでございまして、むしろそういうことにおびえて、萎縮してしまったらいかぬのではないかと私は考えるわけでございまして、われわれのマナー、エチケットは非常に大事だと思うのはあなたと全く同感だし、かの国におきまして、相手国におきまして、相手国の立場、相手国の法令を尊重していくということでもあなたと一致するところでございます。そしてわれわれが経済的な覇権をがむしゃらに追求するというようなことでなくて、まじめに事業をやってまいる以上は、別に私は悪いことをしておるとは思わないのでありますが、経済的プレゼンス自体が往々にして反感を呼ぶものであるということは忘れてならぬことではないかということを申し上げておるわけです。
  343. 松本善明

    ○松本(善)委員 今国会でたびたび議論になりましたが、反社会的な企業に対する融資規制ということが国内でも問題になりました。海外進出をする企業でそういう反社会的な行為をしたものについて、これを社会的に規制するというようなことは考えない、こういうお話でございましょうか。
  344. 大平正芳

    大平国務大臣 反社会的な企業とは何ぞやというようなことになりますと、これまた判定が非常にむずかしい問題じゃないかと思うので、私自身その問題についていろいろ検討したことはないのでありますが、それぞれの企業も世に信用をもって立っておるわけでございますから、反社会性を持った企業であるというらく印を押されることは非常にフェイタルなことであると思うのです。したがって、何をもって反社会性を持ったものであるかということがまず究明されなければならぬと思うのでございますが、それがみんなのコンセンサスを得て、確かにこういうものはいけないというゼネラルコンセンサスが得られるようなものができ上がるとすれば、それは確かに海外進出企業につきましても考えなければならぬことであると私は思います。
  345. 松本善明

    ○松本(善)委員 一部の進出しておる企業のために日本人全体が非難をされておるというのがいまの実情であります。総理大臣が行ったときの非難を思い起こすならば、私は早急にその検討をしなければならないのではないかと思うのです。外務大臣、そういうことを考えようというお考えはありませんか。
  346. 大平正芳

    大平国務大臣 田中総理の東南アジア訪問をめぐって起きましたデモその他をどのように見るかという見方は、私は私なりに持っておるのでありまして、あれを非常にエモーショナルに受けて、端的に受けた議論が多うございますけれども、東南アジアの社会自体に内在するいろいろな問題があるし、現地の政治状況自体の問題もございますし、日本に向けておるデモの姿をとっておりましても、実態はそこにはけ口を求めておるような場合もございますし、あれをどのように整理していくかというのは、私ども外務省にとりましても大きな課題でございまして、みんなで静かに検討をいたしておるところでございます。  しかしながら、わが国の経済進出につきまして問題がないと私は決して言わないわけでございまして、相当問題性をはらんでおると思うのでございまして、それは十分考えていかなければならぬと思います。しかし、それはまず立法措置等でやれるような性質のものではなくて、第一義的にはやはり進出企業自体に十分考えていただかなければならぬことが非常に多いわけでございますので、経済界におかれてもいろいろコード・オブ・ビヘービアというようなものをおつくりになって自制するのだと言っておられますけれども、まず政府がいろいろなことをやる前にそういうことが第一必要じゃないかと思うのであります。  それから、政府がお世話をするにつきましても、これはいわば行政指導をどういう範囲でどういう方法でやってまいることが実際的であり効果的であるかという点を賢明に判断していかなければいかぬと思うのでありまして、政府はまずそういうことに配慮するわけでございまして、対外経済進出規制について強権的な手段を私は考えるというようなことは、あまりりこうなやり方ではないのではないか。あまり効果的なものとは私は考えていないのでありまして、まず業界の自制、それから役所の賢明な行政指導、そして官民の間の語調のとれたタイアップというようなものが一番望ましいのではないかと私は考えております。
  347. 松本善明

    ○松本(善)委員 いろいろ伺いましたが、やはり私は大臣答弁について納得できない点がたくさんあります。やはりアメリカの対外政策の一環をになっておるという点でありますとか、大企業の海外進出を擁護する結果になる、こういうやり方が改まらない限り、基本路線が変わらない限り、私は日本の海外進出についての非難というのは消えないのじゃないか。それは部分的に外務大臣もお認めになった。非難をする人もある、それについてはあまりおそれなくてもいいという趣旨の発言をされたということは、これは注目すべきことであるというふうに思うわけですけれども、そういうやり方では、やはり今後の日本の海外援助は私は正しくないというふうに考えます。  きょうはこの程度の質問にして、一応これで質問を終わります。
  348. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる十日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会