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1974-04-05 第72回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月五日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 福永 一臣君 理事 水野  清君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君       足立 篤郎君    大久保武雄君       加藤 紘一君    小坂善太郎君       小林 正巳君    坂本三十次君       石野 久男君    正森 成二君       渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         外務政務次官  山田 久就君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         通商産業審議官 森口 八郎君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         農林省農林経済         局国際部長   山田 嘉治君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      森山 信吾君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   金子 満広君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   正森 成二君     金子 満広君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際協力事業団法案内閣提出第五七号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国とアイルランドとの  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国スペイン国との間の条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号)  民間航空の安全に対する不法な行為防止に関  する条約締結について承認を求めるの件(条  約第八号)  業務災害の場合における給付に関する条約(第  百二十一号)の締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  欧州共同体委員会代表部設置並びにその特  権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委  員会との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一〇号)  千九百六十七年七月十四日にストックホルムで  署名された世界知的所有権機関設立する条約  の締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)  千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百  十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五  年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月  二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一  日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日  にストックホルム改正された工業所有権の保  護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条  約の締結について承認を求めるの件(条約第一  二号)  千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百  二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四  年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十  月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は  誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千  八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千  九百六十七年七月十四日のストックホルム追加  協定締結について承認を求めるの件(条約第  一三号)  千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九  十六年五月四日にパリ補足され、千九百八年  十一月十三日にベルリン改正され、千九百十  四年三月二十日にベルヌ補足され、千九百二  十八年六月二日にローマ改正され及び千九百  四十八年六月二十六日にブラッセル改正され  た文学的及び美術的著作物保護に関するベル  ヌ条約締結について承認を求めるの件(条約  第一四号)  千八百九十六年五月四日にパリ補足され、千  九百八年十一月十三日にベルリン改正され、  千九百十四年三月二十日にベルヌ補足され並  びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九  百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九  百六十七年七月十四日にストックホルムで及び  千九百七十一年七月二十四日にパリ改正され  た千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的  著作物保護に関するベルヌ条約締結につい  て承認を求めるの件(条約第一五号)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  民間航空の安全に対する不法な行為防止に関する条約締結について承認を求めるの件、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)の締結について承認を求めるの件、欧州共同体委員会代表部設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定締結について承認を求めるの件、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで署名された世界知的所有権機関設立する条約締結について承認を求めるの件、千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルム改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約締結について承認を求めるの件、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千九百六十七年七月十四日のストックホルム追加協定締結について承認を求めるの件、千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九十六年五月四日にパリ補足され、千九百八年十一月十三日にベルリン改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌ補足され、千九百二十八年六月二日にローマ改正され及び千九百四十八年六月二十六日にブラッセル改正された文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件、及び千八百九十六年五月四日にパリ補足され、千九百八年十一月十三日にベルリン改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌ補足され並びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十一年七月二十四日にパリ改正された千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件、以上各件を議題とし、順次政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣大平正芳君。
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました民間航空の安全に対する不法な行為防止に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、国際民間航空機関の主催のもとに一九七一年九月モントリオールで作成されたものであります。その内容は、航空機破壊行為等犯罪と定め、これらの犯罪行為につき重い刑罰を科し得るようにすることを約束し、犯罪行為が行なわれた国、航空機登録国犯人の所在国等関係国による裁判権設定義務について規定するとともに、各締約国は、犯人関係国に引き渡すか、または自国の権限のある当局に事件を付託すべきこと等について規定するものであります。  この条約締結することは、民間航空の安全を確保する見地から有意義と認められますとともに、この分野における国際協力を推進する見地からもきわめて望ましいことと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六四年に国際労働機関の第四十八回総会で採択されたものであります。その内容は、労働にかかる事故及び職業病の場合に支給される給付について、保護対象者の範囲、給付の事由並びに給付の種類、内容、水準及び支給期間等のほか、給付に関連するスライド制支給の停止及び不服の申し立て等について規定したものであります。  わが国におきましては、主として労働者災害補償保険法及びこれに基づく政省令により、条約趣旨は充足されているところでありますが、この条約締結することは、わが国における労働者に対する災害補償確保をはかる上からも、また、労働問題の分野における国際協力を推進する上からも、有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、欧州共同体委員会代表部設置並びにその特権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委員会との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、欧州共同体委員会側のかねてからの希望により、欧州共同体委員会代表部設置並びにその特権及び免除に関する協定締結するため、昭和四十九年一月以来交渉を行ないました結果、昭和四十九年三月十一日にブラッセルにおいて、わがほう安倍駐ベルギー大使欧州共同体委員会側オルトリ委員長との間でこの協定に署名を行なった次第であります。  この協定は、本文四カ条からなり、欧州共同体委員会代表部日本国における設置に対する日本国政府の同意、欧州石炭鉄鋼共同体欧州経済共同体及び欧州原子力共同体が、日本国において、それぞれ法人格を有すること、これらの共同体が契約、財産取得等を行なう能力を有し、このことに関し、委員会によって代表されること、委員会代表部、その長及び職員並びにこれらの者の家族は、日本国が接受する外交使節団、その長及び職員並びにこれらの者の家族に対し外交関係に関するウィーン条約に従って与えられる特権及び免除に相当する特権及び免除を享有すること等を内容といたしております。  この協定締結によりまして、欧州統合を目標としてその基礎を固めつつある欧州共同体わが国との関係は、一そう緊密なものとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで署名された世界知的所有権機関設立する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六七年ストックホルムにおいて開催された知的所有権会議において採択されたものであります。  この条約により設立された国際機関は、広く知的所有権全般保護促進目的とし、あわせて工業所有権及び著作権保護に当たっている諸同盟間の管理面での協力確保する役割りを有するものであります。  したがいまして、わが国がこの条約締結し、この機関に参加することは、知的所有権分野における諸国間の協力に資する上で有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルム改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六七年ストックホルムにおいて開催された知的所有権会議において採択されたものであります。  この条約は、工業所有権保護に関する従前のパリ条約改正し、発明者証出願優先権主張基礎として認めるとともに、世界知的所有権機関設立と相まってパリ同盟管理機構を近代化することを主たる内容とするものであります。  わが国は、従来からパリ同盟に参加してまいりましたが、わが国がこの条約締結することは、近代的な内部機構を備えた新たなパリ同盟活動に参加することとなり、工業所有権保護のための国際協力促進する上で有意義であると考えられます。  なお、発明者証出願優先権主張基礎として認めることにつきましては、わが国としては目下必要な国内法改正を行なうべく前向きに検討中であります。したがいまして、政府は、この条約の第二十条第一項の規定に基づき、さしあたりは、わが国の批准の効果が同条約の第一条から第十二条までの規定には及ばないことを宣言するという方針で同条約を批准いたしたいと考えております。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千九百六十七年七月十四日のストックホルム追加協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定及びその後の改正協定加入書の寄託にかかる事務を、従来のスイス政府から、世界知的所有権機関に移管することを主たる内容とするものでありまして、その趣旨は、知的所有権保護目的とした諸条約に関する事務手続の統一をはかるとの見地から望ましいものと考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九十六年五月四日にパリ補足され、千九百八年十一月十三日にベルリン改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌ補足され、千九百二十八年六月二日にローマ改正され及び千九百四十八年六月二十六日にブラッセル改正された文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  著作者権利国際的保護をはかるため、一八八六年に初めてベルヌ条約と呼ばれる文学的及美術的著作物保護万国同盟創設二関スル条約が作成され、これがその後、七回にわたって補足改正されて今日に至っております。  このブラッセル改正条約は、一九四八年にブラッセルで開催されたベルヌ条約改正会議で作成されましたが、戦後の新しい時代に即応するように一九二八年のローマ改正条約に比べて、著作物保護期間著作者の死後五十年とすることを義務づけ、放送権内容を詳細化し、朗読権を新たに規定するなど著作物権利保護の一そうの充実をはかったものであります。  わが国は、一八九九年以来、ベルヌ同盟一員となっておりますが、このブラッセル改正条約につきましては、一九七一年に旧法を全面的に改正した新著作権法が施行されましたので、いまやこれを締結する体制が整うに至っております。わが国がこのブラッセル改正条約締結することは、著作者権利保護に関する国際協力促進する見地から有益であると考えられます。  なお、この改正条約締結に際しては第二十七条(3)の規定に基づき、翻訳に関する従来の留保を一九八〇年十二月三十一日まで維持する宣言を行なう方針であります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、千八百九十六年五月四日にパリ補足され、千九百八年十一月十三日にベルリン改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌ補足され並びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十一年七月二十四日にパリ改正された千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  一八八六年に作成されたベルヌ条約文学的及美術的著作物保護万国同盟創設二関スル条約)は、その後、七回にわたって補足改正されて今日に至っており、この一九七一年に作成されたパリ改正条約は、ベルヌ条約の最も新しい改正であります。  このパリ改正条約は、著作者権利保護に関する諸原則、ベルヌ同盟の組織及び運営近代化等について規定するとともに、特に、開発途上国経済的、社会的、文化的発展必要性を考慮して、翻訳権複製権について開発途上国のために便宜をはかる措置を講じたものであります。  わが国は、一八九九年以来ベルヌ同盟一員となっておりますが、わが国がこのパリ改正条約締結することは、著作者権利保護における国際協力促進する見地から、また、開発途上国との友好関係促進する見地から有益であると考えられます。  なお、この改正条約締結に際しては第三十条(2)(a)の規定に基づき、翻訳に関する従来の留保を一九八〇年十二月三十一日まで維持する宣言を行なう方針であります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上、八件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 木村俊夫

    木村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日行なうことといたします。      ————◇—————
  5. 木村俊夫

    木村委員長 次に、国際協力事業団法案議題とし、政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣大平正芳君。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました国際協力事業団法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案趣旨につきましてはすでに本会議において御説明したとおりでございまして、政府は、開発途上地域等経済及び社会発展に寄与し、国際協力促進に資するため、国際協力事業団設立して、この事業団開発途上地域に対する技術協力実施及び青年海外協力活動促進に必要な業務開発途上地域等社会開発並びに農林業及び鉱工業開発に必要な資金供給及び技術提供を行なう等の業務、並びに中南米地域等への海外移住の円滑な実施に必要な業務を行なわせようとするものであります。  次に、この法案概要を御説明申し上げますと、この事業団資本金は、当初資本金としましては、設立に際して政府から出資される四十億円と、この事業団承継される海外技術協力事業団及び海外移住事業団に対する政府出資金等との合計額約二百二十四億円でございますが、このほか政府は、必要があると認めるときは、事業団に追加して出資することができるものとしております。この事業団には、役員として総裁一人、副総裁二人、理事十二人以内及び監事三人以内を置き、また、業務運営に関する重要事項審議するため、総裁諮問機関としまして、四十人以内の委員で構成される運営審議会を置くことといたしております。  この事業団業務といたしましては、第一は、従来、海外技術協力事業団が行なってまいりました条約その他の国際的約束に基づく技術協力実施に必要な業務及び条約その他の国際約束に基づき海外協力活動を志望する青年開発途上地域へ派遣すること等の業務であり、第二は、海外移住事業団が行なってまいりました移住者援助及び指導その他海外移住の円滑な実施に必要な業務であります。次に第三は、新規業務でありまして、開発途上地域等社会開発並びに農林業及び鉱工業開発に必要な資金供給及び技術提供を行なう等の業務であります。この新規業務特徴について申し上げますと、第一の特徴といたしましては、この事業団は、日本輸出入銀行及び海外経済協力基金から資金供給を受けることが困難な事業につきまして円滑な資金供給確保しようとするもので、具体的には各種開発事業に付随して必要となる関連施設であって周辺の地域開発に資するものの整備、ないし試験的事業であって技術の改良または開発と一体として行なわれなければその達成が困難であると認められるもの等を対象としております。第二の特徴といたしましては、このような資金供給を受ける事業等に必要な技術提供をあわせて行なうこととしており、資金技術の一体的な結びつきをはかることとしたことであります。第三の特徴といたしましては、条約その他の国際的約束に基づきまして開発途上地域政府等からの委託を受けて事業団みずからがこれらの地域開発に資する施設等整備事業を行なうこととした点であります。さらに、第四の業務といたしましては、ただいま申し上げました技術協力業務社会開発農林業及び鉱工業開発業務に従事する技術者充実をはかるため、これら技術者の養成及び確保事業を行なうこととしております。  このほか、事業団事業年度事業計画等の認可、財務諸表、区分経理、借入金及び債券、余裕金の運用、罰則等について規定いたしております。  なお、附則におきましては、海外技術協力事業団及び海外移住事業団の解散及びこれに伴う権利義務承継並びに海外貿易開発協会からの一部権利義務承継等について規定しております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  7. 木村俊夫

    木村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  8. 木村俊夫

    木村委員長 引き続き本案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石井一君。
  9. 石井一

    石井委員 ただいま議題となっております国際協力事業団法案に関しまして、質疑を進めたいと存じます。  最初に二、三点基本的な問題をお伺いいたしまして、所用がおありのようでございますから、政務次官とおかわりいただいて質疑を続けたいと存じます。  そこでまず最初に、日本のGNPが非常に巨大になっておる、これをどういう使途で使うのかということは、世界の注目を集めておるところでございます。そうして経済協力ということを歴史的に考えてみましても、一九六〇年代の後半は南北問題が非常に顕著になり、わが国援助の額が少ないということに対する後進国の突き上げが非常に多かったわけでございますけれども、最近の傾向といたしましては、今度はその援助のやり方その他が多少行き過ぎであるとか、その国の実情に合っていないというふうな面もありまして、かえってそういう行為反日感情をあおっておるというような面もございます。それからさらに国内の問題として考えられますことは、いわゆる物価の高騰であるとか、個人主義の横行というふうなことがございまして、国際協力に対するわが国の世論の動向、理解というふうなものが、まだまだ非常に欠けておる。  そういう時期にこの協力事業団法案というふうなものが提案されたわけでございますが、だから私が指摘しておりますのは、国際的な要因あるいは国内的な背景というふうなことから考えましても、経済協力ということは非常に重要であるけれども、やはり一つの転機にきておる、こういうふうなことを考えるわけでございまして、今後この事業団というものを完成いたしましても、その内容あるいは実施ということが非常に重要な意味を持ってくる、こういうふうに思うのでございます。  まず、最初の第一問は、こういうことを背景にいたしまして、政府海外経済協力ということに対して、国民の理解、積極的な支持というふうなものをどういう形でさらに訴えていこうとしておるのか、この国内問題に対する政府の基本的な考え方を率直にひとつお述べいただきたいと存じます。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国経済協力は少ないじゃないかという御批判が一部にありますが、量的に申しますと決して少なくはないのでありまして、GNPの一九七二年を見ましても〇・九三%というのは恥ずかしくない数字でございます。けれどもこの内容にわたりますと、民間協力が非常に多くて、政府援助が非常に少ない。政府援助はGNPに対しまして〇・二一%、DAC平均で〇・三四%に比較いたしますとたいへん遜色があるわけでございます。  したがって、まず第一にわが国といたしましては、非常にグラントエレメントの高い政府援助を質量両面にわたって改善していくことが、国際的な責任を果たすゆえんであるということを、国民にまず理解をしていただかなければならぬと思うのであります。そうすることによって、わが国の国際信用を培養維持し、わが国経済がグローバルなベースを持つに至っておる今日でございますので、国際的な理解と信頼がなければ、運営維持がむずかしいということについて、十分徹底した御理解をいただいて、そのためにはこういう方向で経済協力の質量両面にわたって改善をやってまいるのであるということを、御理解いただくような方向で施策をしていかなければいかぬと思います。  しかし同時に、いま石井さんが御指摘のように、わが国経済協力に対する海外の批判がたいへんきびしくなっておりまするし、それを受けて、国内でもきびしい論議が繰り返されておりますることは御案内のとおりでございまして、私ども海外の経済協力を進めるにあたりまして、正しい批判に対しましては耳を傾けてまいらなければなりませんが、それが誤解であったり、誤認であったりすることについては、それを解明いたしまして、国民の理解を、一そう彫りの深い理解をいただくように努力しなければならぬと考えております。
  11. 石井一

    石井委員 援助に対してさらに積極的にお進めになるということ、それからまた海外でのいろいろの動向に対しても的確に対処するということもわかりましたが、私が第一点で主張いたしておりますことは、国内に対するPRなり説得、世論の盛り上げという、そういう支持というものがないと、こういう事業団というものはなかなかりっぱな機能を果たし得ない。私は、そういう面でまだまだ政府としてなすべき問題がたくさんあるというふうに考えるわけでございまして、この点は結論が出る議論でもございませんから、次へ進ましていただきますけれども、まず基本的な問題として御指摘をし、御要望をしておきたいと思います。  そこで、いま大臣もちょっとお触れになりましたけれども、また昨日の本会議でも議論になっておったところでございますけれども、わが国経済協力なり技術協力というものが、ややもすると、政府というよりも民間というものが主体で行なわれておるというふうな面がございまして、非常に商業主義的である。日本援助しておるというけれども、結局は自分の国の利益のためにやっておるという、こういう風潮が最近特に強いわけであります。したがって日本政府としての援助は、今後いわゆる基本的な社会開発面に向けていくのか、あるいは技術協力的な、そういうテクニカルな面に向けていくのか、この辺はやはりこの時点で、そういうふうな声をも参考にして考え直すべき時期がきておると思うのでありますけれども、開発途上国経済発展の土台づくりに協力をするという考え方が政府の基本的な姿勢ですか。この点はいかがですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 民間の協力であれ、政府ベースの協力であれ、共通のベースは、受け入れ国の計画に従い、計画に即し、自助努力にささえられた計画に即しまして、その国の国づくりに応分の寄与をするというところに置かなければならぬことは当然だと思うのであります。そのベースははずしてはならないことだと考えております。  そして民間ベースの経済協力におきましては、これは先方の当事者とこちらの当事者が民間ベースでフィジビリティースタディーを十分遂げて、お互いの協力でやってまいるわけでございますから、とやかく政府が言うべき性質のものではございませんけれども、先ほど申しましたように、国内外の鋭い批判があるわけでございますので、現地の事情を十分きわめて、現地の社会に十分慣熟した方法において、マナーにおいて、オーダリーな姿でやっていただかなければならぬと思うのでございます。  政府のほうの開発援助につきましては、いま石井さんが御指摘のように、これは社会開発はもとよりでございますけれども、とりわけ民生の安定に寄与するような教育であるとか、医療であるとかいう方面に特に力を入れて、相手国の民生の向上という点に力点を漸次移していかなければならぬのではないかというように私どもは考えております。
  13. 石井一

    石井委員 大臣に、もう一問お伺いしますが、国際協力をさらに積極的に推進するために国務大臣が新設されたわけでございますけれども、この事業団の主管は外務大臣そのものでございますが、この新しい大臣とこの事業団との関係はどういうことになるのか。また、新しく設けられた大臣と外務大臣との所管の分野はどういうふうになるのか、この点ひとつお答えいただきたい。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 いま内閣法改正の形で閣僚一名の増員が提案されて御審議をいただいておるわけでございますが、この大臣と国際協力事業団とは直接の関係はございません。監督権はいわゆる経済協力大臣にはないわけでございまして、この経済協力大臣の任務は、総理大臣の命を受けて、経済協力全般の促進をはかるという機動的な任務でございまして、みずからが行政組織の中に一部局を持ちまして、固有の権限を持って事に当たるというものではないわけでございます。  それから、外務大臣との関係でございますが、これは外務大臣ばかりではございませんで、ほかの国務大臣との関係にも通ずるわけでございますが、外務省をはじめ各省の設置法上の権限は全然侵していないわけでございます。したがいまして、外務大臣がその権限に基づいてやってまいる仕事、そしてその責任において遂行すること、そういう仕事について側面から促進する仕事をやっていただくのが経済協力大臣でございまして、権限的には何ら抵触する面を持っていないわけでございまして、事実上は同じ閣員でございますから十分な連絡協調をはかってまいらねばいかぬことは当然でございますけれども、権限的には従来の権限を全然一指も侵していないわけでございますので、さようひとつ御理解をいただきたいと思います。
  15. 石井一

    石井委員 新設の経済協力大臣は、たとえば対外的な問題で、この間中近東政策でいろいろの特使が三十億にのぼるいわゆる政府からの援助というものを約束しましたが、こういうものを調整するのに重点があるのか、それとも各省にまたがっておりますそれぞれの独特の事業というものを調整する国内的なそういう調整に当たるのがおもなのか、この点はいかがでございますか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 国の内外を通じまして経済協力事業促進をはかっていくということを任務とされるわけでございますから、それは国内に限るわけでは決してございません。しかしながら、この大臣が国外に出て行動される場合は、外務省におきまして、特派大使等の形においてお出ましいただくわけでございますので、外務省との間に何らフリクションが起こることを私どもは予想いたしていないわけでございまして、国の内外にわたりまして、既存の権限と関係なく、経済協力事業の円滑かつ効果的な推進役として総理の命を受けて機動的に行動されるというのが、この協力大臣の任務であると私は承知いたしております。
  17. 石井一

    石井委員 それでは政務次官まだお見えになっていないようですが、政府委員のほうからお答えをいただきますが、海外協力事業団ができたということによって、これまでいろいろな事業団なりグループがそれぞれの立場で仕事をしておったわけでありますけれども、さらに新しい業務を加えたというものがありますか。
  18. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 お答え申し上げます。  法案の第二十一条というところに業務の範囲というものがございますが、その業務の範囲の中で一号、二号、三号、四号、五号、六号、七号と、七つの区分がしてございますが、そのうちの第三番目にあります業務は、従来行なっておりませんでした新しい業務を書きあらわしたものでございます。  簡単に申し上げますと、三号、業務の中にも、五種類ほどございますが、いわゆる周辺インフラに関します業務、仕事に対してお金を貸すことであるとか、試験的業務に関してお金を貸す、または投資をすることであるとか、または委託を受けて社会開発農林業鉱工業等に関する施設の整備事業をやることであるとか、そういうことのために、技術指導、調査等を行なう。そういうようなことが新しい事業として書かれてございます。
  19. 石井一

    石井委員 その問題について、もう少し掘り下げて後ほどお伺いすることにいたします。  そこで、海外移住事業団が統合されたということも一つの大きな問題なのでございますけれども、この新しい事業団に統合されたことによって、移住事業をもっと飛躍的に拡大するとか、海外移住に関する理念に新しい発想の転換があるのかどうか、これはいかがですか。
  20. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 今度の新しい国際協力事業団の中に、海外移住事業団が統合されたわけでありますが、海外移住に関する理念は従来どおり変わっておりません。すなわち、従来われわれが考えておりましたのは、海外移住というものは個人が自分の発意に基づいて自分の幸福の追求の手段として新しい土地へ発展していくということでございます。ただ、そういう理念ではございますけれども、従来われわれが海外移住の国際的な役割りとして考えておりましたことは、ブラジルでも、すでに皆さん御承知のように、日本人のブラジルにおける移住者というものは非常に高く評価されておりまして、これがいわばブラジルの経済発展の大きな役割りを果たしておるということと同時に、日本とブラジルとの関係をよくする、深くするということにも役立っておるわけでありまして、そういう意味の国際協力という一つの新しい観点をとらえまして、この点で海外移住と今度の事業団との結びつきがあるのではなかろうか、このように考えておるわけであります。  それから、今度の事業団に入りまして、移住について飛躍的な発展ないしそういうことを考えておるのかという御質問でございますけれども、これにつきましては、われわれ従来、海外移住事業団のやっておることにつきまして、いろいろな御批判があることはよく知っておりますし、われわれといたしましては、率直にこれらの批判を受けなければいかぬ、このように考えております。したがいまして、今度の新しい事業団に入るにあたりましても、われわれは、いままでの移住業務というものの批判を受けながら、これを新しく刷新する、あるいはいままで足りなかったものを強化していくという面で新しい事業団の中での海外移住業務役割りを考えていきたい、このように思っております。
  21. 石井一

    石井委員 移住の問題も、あとでもう少しお伺いしたいことがありますが、そこで青年海外協力隊ということが特筆されておる。これも非常に将来のことを考えて、まことに重要なものだと思うわけでございますが、従来、総理府などを中心に青年の船だとか、いろいろこれまで企画が行なわれておるわけでありますが、これを特にここに併合したのはどういうことか、さらに総理府あたりのやっておるプロジェクトとの重複は、どういう形で調整していくのか、これをお伺いしたいと思います。
  22. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 石井先生御指摘のとおり、先ほど申し上げました法案の第二十一条の第二号というところで、日本青年海外協力隊の活動を、法文上新たに書きあらわしたわけでございますが、この青年協力隊の事業と申しますのは、従来から海外技術協力事業団の中で、外務大臣の認可を受けてやっておった事業をそのままの形で法文に書きあらわしたことでございまして、その他総理府等でやっておられますいわゆる青年運動との重複は全くないわけでございます。主として日本国の若い人たちで技術を身につけて、海外においてその技術を役立てようというような青年を各地から募集いたしまして、若干の期間の訓練の後にそれぞれの要請のある技能のところで働いていただく。その際には、先方政府日本政府との間に協定をつくって、取りきめをつくっておくというような形になっておりますことは、従来と全く変わりはないと存じております。
  23. 石井一

    石井委員 この事業団目的と同様の目的を持っておる日本輸出入銀行及び海外経済協力基金がありますが、この二つから資金の出ないものについて事業団がやるということになっておりますけれども、それはどういうものが出ないのか。これはしろうとの考え方からいいますと、飛躍した議論になるかもわかりませんが、それなら日本輸出入銀行なり海外経済協力基金の制度を変えることによって金の出るようにすれば当然できたということにも逆説的になるわけでありますけれども、ここに新しい第三の範疇をつくらなければいけなかったそういうプロジェクトというものはどういうものであり、その理由はどうであったか、この点を御説明いただきたいと思います。
  24. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 本法案の本会議におきます趣旨の御説明並びに先ほどの大臣の読まれました提案理由説明の中でも触れておられますとおり、この事業団のねらいといたしますことは、民間の経済協力政府経済協力との間のより一そう密接な結びつき並びに資本協力技術協力との間のより一そう密接な結びつきということをねらいとしたものでございまして、この事業団を新設することによりまして、すべての国際協力と申しますか、経済協力と申しますか、そういうものを統合してしまおうというような考え方でつくったものではないわけでございまして、たとえて申し上げますならば、先ほど申し上げました第二十一条の三号に書いてございますとおり、経済協力基金と輸出入銀行等からお金が出て、そのいわゆる中心になる部分の仕事はやっておるけれども、その周辺において社会開発もしくは農林業等々の付随的な関連業務をやってあげれば、なお一そう住民の福祉に役に立つというような場合には、この事業団が出ていって必要な資金を供与するというようなことを考えておるわけでございまして、その点において、いまの民間との密接な連絡とか、技術資金との密接なつながりとか、そういうものを保っていって、より一そうわが国経済技術協力の拡充につとめようというのが趣旨とするところでございます。
  25. 石井一

    石井委員 そこで、もう少し基本的な問題をまずお伺いしますが、今度の石油危機というふうな問題で、確かにアラブ諸国に対する協力がまだこれまで少なかったというふうなことも考えられるわけでございますけれども、それかといって移住だとかなんとかいうふうなことになりますと、やはり地域が限定されてくるということですけれども、新しい事業団においては、特にこういう地域に対して重点を置いていくとか、そういう構想があるのかどうか、たとえば東南アジアに対する援助というものは、かなりこれまで足跡を残しておるので、今後はこちらのほうにウエートを変えていくとか、その辺の地域的な問題はどうですか。
  26. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 本法案の第一条、目的というところに書いてございますように、この事業団は、開発途上にある海外の地域についての、いま申し上げましたような、従来から海外技術協力事業団がやっておりました仕事、それから若干はみ出しますが、いまの新しく入りましたものでは、「開発途上地域等」と書いてありますので、若干仕事をやる範囲を広げる考えはございますが、特にそれが現在どこというふうな特定の国を考えておるというほどの固まった考え方はまだございません。ただし従来から海外移住事業団がやっておりました仕事につきましては、第一条、目的の中でも「中南米地域等」というふうに限定を付してございますので、その点につきましては、主として中南米地域等ということになるかと存じます。
  27. 石井一

    石井委員 しかし、このエネルギー危機その他というふうなことも考えて、アラブに対する従来にない積極的な姿勢をこの事業団からは出していこうという、そういう含みがあるだろうと思うのですが、その点は、これ以上追及しないことにいたしまして、ただ、この間、昨年の十二月からわが国の特使というものがどんどんと出ていきまして、中近東を回った。そうして三十億ドルにのぼる経済協力を約束した。しかし、その後の対応が非常におそいということで、まあ徐々に進んでおる面もあろうかと思いますけれども、アラブのことわざに、私もたずねてそれを聞いたのですけれども、いわゆる口先は雲、行動は雨だ、日本から雨は一つも降らない、雲ばっかり出てくる、こういうふうな批判もあるわけであります。こういうことから、やはりせっかく援助をするという場合でも、ほんとうに向こうの事情に合ったタイムリーなことをしなければいかぬ、当委員会でも経済協力に対する基準というものをきめなければいかぬというふうなことが、しばしば議論されておるわけですけれども、こういうことについて、事業団との関連で、どういう基本的な経済協力の考え方を持っておられるのですか。
  28. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のように、わが国の対外経済協力が、従来タイムリーでなかったという点は批判を受けてまいったところでございまして、その点につきましては、今後ともあらゆる努力を払って改善をいたしたいと考えておりますが、本事業団の創設も、やはりそういう意味ですでにいろいろ技術協力が行なわれておって、そこへ資金協力がなかなか結びついていかないというような点の欠点を、この事業団によって改めることができるのではないかというふうに存じております。  また、ただいま御指摘のアラブ諸国に対します各特使等のお回りになりましてお約束になりましたことにつきましては、現在鋭意関係諸国と、たとえばプロジェクトの詰めであるとか、それからまた一つの約束された金額の中で、どういうような形の取りきめを結ぶかというようなことについて、話し合いを進めておる最中でございます。
  29. 石井一

    石井委員 次に、多国間協力と二国間協力という問題ですけれども、特に資源の問題に関連して、バイラテラルなアプローチよりも、いわゆるマルチラテラルな形での経済協力関係というものをやらない限り、今後の大きな世界経済の動向、オイルダラーというふうなことを考えても、深刻な問題というものは解決しないというふうなことがいわれておるわけです。  当面しかしこの国際協力事業団というのはバイラテラルな、ものだけを考えておるのだろう、こう思うのでありますけれども、その点をお伺いしたいのが一点と、それからマルチラテラルな経済協力ということを考えた場合に、わが国の周辺にはどういう組織なり機構というものがあって、これを推進しておるのか、この点を関連してひとつお答えいただきたいと思います。
  30. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先生御指摘のように、この事業団を創設いたしました主たる目的は、わが国経済技術協力を従来より一そうやりやすくするということが主たる目的ではございますが、従来からもやっておりましたのですが、技術協力の場合に、専門家を多数国機関に派遣するということは可能でございまして、今後もそういった、たとえばバンコクに、エイシアン・インスティチュート・オブ・テクノロジーというのがございますが、そういうところに技術者、専門家を派遣するというようなことは従来やっておりましたところでございます。  第二番目の、わが国の周辺にどういうような多国間の援助機関があるかという御質問でございますが、これにつきましては、周辺ということの意味と、多国間援助機関ということの意味とがいろいろに受け取られますが、一番重要であると私どもが考えておりますのは、もちろんアジア開発銀行でございます。それから周辺かどうかというような問題もございますが、わが国の周辺の開発途上国にまで手を伸ばしておりますものの中には、世界銀行、それからいわゆる第二世銀というIDAというものもございますし、それからエカフェ等ではいろいろな議論も行なっておりますし、それからいま申し上げました、たとえばアジア技術センターとでも申しますか、AITというものとか、それから国際稲研究所というのがフィリピンにございますが、そういうようなものとか、いろいろな意味で技術協力経済協力をやっている機関が多数に存在しておるということでございます。
  31. 石井一

    石井委員 次に、国内にも二国間あるいは多国間に対するいろいろのこういう仕事をやっておる機関がございますが、いまここで六つ、七つの事業目的がございましたけれども、貿易面であれば、このほかにもたくさんの組織がある。移住はあまりないかもわかりませんけれども、経済協力でも、研究機関から協力機関実施機関というようないろいろなものもほかにもある。この辺が重複しても無意味な面もあるし、その辺の調整というふうなものも必要ですけれども、国際協力事業団事業を今後どんどん推進していく上において、国内的なこれらとの協調、連携というのは何かそういう制度があるのか、そういう審議会というふうなものがあるのか、これに対してはどういう考え方で進んでいかれるのですか。
  32. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の、その他の経済技術協力のための諸機関というものの中には、民間でやっておりますものと、それから政府でやっておりますものと両様あるかと存じます。政府でやっておりますものの例といたしましては、たとえば海外経済協力基金でございますとか、日本輸出入銀行でございますとか、こういうのが政府に非常に近いものでございますが、そういったものとは、たとえば法案の中にも規定がございますように、そういういまの申し上げました二つの機関からは、非常勤の理事をこの事業団に出すというようなことで、相互補完的に、先ほど先生からも御指摘ございましたように、たとえば経済協力基金の手の届かないところへこの事業団が手を尽くすというようなかっこうでやってまいりたいと思います。  また、民間でいろいろな機関が存在しておりますが、そういうものとは今後とも十分に相互補完的に、あるいは緊密な連絡をとってやってまいりたいと思いまして、そのためには、適格な学識経験者からなる運営審議会等も法案規定されておりますので、それを利用してやってまいりたいと思っております。
  33. 石井一

    石井委員 機構の内部についてはまたあとでお伺いすることにしまして、そこでこれもまた一般的な質問ですけれども、先ほど大臣とも議論いたしたのでありますが、東南アジアにおける反日攻勢というふうなことが、特に昨今問題になっておるわけでありますけれども、これはやはり民間が前へ出ていくというところに一つの問題点がある。したがって、政府の指導なり政府主導型の経済協力というふうなものをうまく進めていかなければいかぬということなのでありますが、政府にはそれだけの十分な資金というものがない。さっきも〇・二、三%とかというふうな御答弁がありましたけれども、だから金額をふやすということよりも、民間企業に対する適切な誘導、勧告、指導、こういうふうなものをもう少し強力にして、官民一体となってやりませんと、この実があがらない、こういうことなんですけれども、私はいま政府部内なり、そういうふうなものの連絡ということを聞いたのですが、民間と事業団との協力体制、こういうふうなものも当然考えておられると思うが、この点はいかがですか。
  34. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 石井先生御指摘のとおりでございまして、たとえば農業問題につきましても、民間のいろいろな団体がございますので、そういった機関とも十分に協調して、今後この事業団事業を進めてまいりたいというふうに存じております。  御指摘のとおり、発展途上国におきます日本の民間の方々のいろいろな行動についての批判が出てきておるということもございますけれども、政府の行ないます仕事といえども、かなりの場合、民間の人にたよらざるを得ないわけでございますから、あれは民間であるといって、ただ黙過するわけにはまいらないと存じますので、今後ともそういう点につきまして、いろいろ協調という点に気をつけてやってまいりたいと思っております。
  35. 石井一

    石井委員 私が次々に出しております問題は、これはすべて経済協力基礎になる重要な問題だと思います。そうしてこの事業団設立されようとしておるこの時点に、こういう問題を洗い直して、ある意味では制度化し、行政のベースに乗せることによって、いま起こっておるいろいろの問題というものを、私は特にひとつ積極的に是正していただきたいと思います。  これを一つ要望しておきまして、それからもう一つ、今度の事業団の主管大臣は外務大臣ですけれども、たとえば農林大臣とかそれから通産大臣というのが共管する部門というものがたくさんあります。そうすると、各省間の援助行政に関する業務の分担あるいは整理統合というふうなことで、やはり事務的に、この辺がお互いが責任をなすり合うというふうなこと、あるいは回避するというふうなことによって、何といいますか、かえって事業団はできたけれども、非常に非能率になり、効率があがらぬという、こういうふうな点も私は憂慮するわけでありますけれども、こういうことに関しては、どういう打ち合わせをされ、どういう配慮を今後されていこうとしておるのか、この点はいかがですか。
  36. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先生御指摘の問題点は、大きく分けていわゆる主管、共管大臣という問題と、それから関係省間の協議、調整という問題とに分かれ得るかと思うのでございますが、主管大臣と申しますか、主務大臣につきましては、この法案の第四十三条に規定がございまして、役員、職員その他管理業務部面については外務大臣が主務大臣である、それから従来の海外技術協力事業団、それから海外移住事業団がやっておりました仕事につきましては外務大臣、それから新規の業務の中で農林業に関するものについては外務大臣及び農林大臣、それから同じく鉱工業に関します部分につきましては外務大臣及び通商産業大臣というふうに規定してございますし、それからまた大蔵大臣をはじめとする関係大臣との協議の規定が法文上あらわれているところもございますが、法文上でなしに、実際上いろいろな点で、先生御指摘のように、各省と御相談を申し上げて、いま御指摘のような、責任のなすり合いとか抜け落ちとかいうようなことが生じないように、十分な協議をやってまいりたいというふうに考えております。  この点につきましては、従来、海外技術協力事業団がやってまいりました仕事につきましても、ほぼ同様なことが起こっておりまして、相当多数の省と常に協議をしながら仕事を進めていくという体制ができ上がっておりますので、その点をさらに今後発展拡充して粗漏のないようにつとめてまいりたいと思っております。
  37. 石井一

    石井委員 農林省なり通産省が公団構想を推進しておったときに外務省はあまり乗り気でなかった。ところが急にと申しますか、この設立に賛成をしたと、こういうふうに漏れ聞いておりますが、こういう事実があったのか、また、そうであれば、どういうことによってそういうふうに積極的な方向に進んだのか、この辺についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  38. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 わが国経済協力、あるいは技術協力と申したほうがこの際適切かと思いますが、政府レベルの技術協力は、これまで存在しております海外技術協力事業団を通じて一元的にやってまいるということが、わが国の基本的な政策であったわけでございまして、農林省あるいは通商産業省においてお考えになりました構想の中で、そういう一元的な処理ということに若干変わった考え方が出てまいったといようなこととか、その他若干の点もございまして、外務省といたしましては、その構想について反対の議論を申しておったわけでございますが、その後、この国際協力事業団ということによりまして、それらの省でお考えになりました——お考えそのものは非常にりっぱなお考えであったわけでございますが、それが一元的に処理できるような形になりまして、そういうものを新事業団に組み入れてやっていくというそのやり方については、外務省としてもきわめて積極的に対処してまいって、各省と十分に御相談の上、この事業団法案を作成するに至ったと、こういう経過でございます。
  39. 石井一

    石井委員 業務の中に新しく強調されておる社会開発とか、青年海外派遣とかというふうなものを、これは非常に顕著なのですけれども、それ以外に、たとえば農林業を入れたのなら、なぜ水産を入れないのかとか、それからそれ以外に無償資金協力業務というふうなものを含めておらないというふうな、こういうところがでこぼこにこの業務がなっている面がありますね。もし統合されるというなら、もう少しこの辺スムーズに整理されるべき問題もあったのじゃないかと思いますけれども、この辺の理由をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  40. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の無償協力につきましては、従来から外務省に予算をいただきまして、外務省が自分でやってまいったわけでございますが、しかし、無償協力の中には、非常に技術協力に近い部面もございまして、この点につきましては、この新事業団の構想が考えられます前から、すでにそういった非常に技術協力に近い部面、たとえば先ほど申し上げました第二十一条の中に書いてもございますが、第二十一条の一号の業務、これは海外技術協力事業団がやっておりました業務でございますが、その中のハの機材の供与といったようなものは、これは非常に無償協力に近い場面でございますので、そういったものを今後ともだんだんこの事業団で拡充していくという考え方からすれば、その辺の調整は今後ともさらに続けてまいらなければいけないというふうに考えております。  それから、水産業につきましては、昭和四十八年度予算で初めてこの水産業に関します国際協力というようなものを実施するための予算が、政府ベースにつきましては外務省に、それから民間のベースのものにつきましては農林省につきまして、その結果、民間法人でありますところの海外漁業協力財団というものがつくられまして、目下各国に調査団を出したりいろいろ仕事をしておるわけでございますので、まだ発足したばかりでございますものですから、この財団の仕事の発展ぶりをもう少し注意深くながめていきたいというふうに現在のところでは考えておるわけでございます。
  41. 石井一

    石井委員 いまの御答弁は、そうすると今後そういうふうな業務をどんどんと統合していくと、こういう構想であると受け取っていいのですか。
  42. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 もしできることならばというようなあるいはただし書きを申し上げたほうがいいかもしれませんが、現在のところでは、まだそういうふうな方向に向かえるものかどうかの判定がはっきりつきかねておる、特に水産業等を今後どうするかということについては、いま申し上げました財団の仕事、それから外務省についておりますやや無償協力的な水産関係の仕事・そういうものの発展が今後どうなっていくかという点を見ながら、さらに考えを続けていきたいというふうに考えております。
  43. 石井一

    石井委員 通産省、農林省はお見えですか。——いまの議論に関連いたしまして、たとえばこれ以外に海外貿易業務として海外貿易開発協会とか、あるいはいまの水産も農林省でございますが、それから石油開発公団とか金属鉱業事業団とか、こういろいろございますですね、こういうふうにそれぞれの所管で海外協力をやっておる団体がどういうものがあるのか、通産省から一応思いつかれるところを、重要なこういう問題をひとつ列挙してみていただきたいと思います。
  44. 森山信吾

    ○森山説明員 お答え申し上げます。  ただいまの石井先生の御質問でございますが、通商産業省におきまして、海外で経済協力関係をやっております事業団、公団等を列挙いたしますと、まず石油開発公団がございます。これは海外におきます石油開発に必要な探鉱のための融資を中心とした業務を行なっております。それから第二番目に金属鉱業事業団がございます。これは金属鉱物を対象にいたします探鉱の融資事業をやっております。  この二つはいずれも政府機関としてやっておるわけでございますが、このほかに民間の海外活動に対します協力機関といたしまして、海外貿易開発協会という財団法人組織がございまして、実は先ほど石井先生御指摘の通産省におきまして昨年度予算要求の際に出しました公団のベースになっておりますのがこの海外貿易開発協会でございまして、今度の事業団の新しい業務の中心になっております周辺インフラに対する融資等は当協会でやっておる業務でございますので、との内容をちょっと御説明させていただきたいと思います。  この海外貿易開発協会昭和四十五年の二月に設立された協会でございまして、主たる業務は四つございます。一つは、周辺インフラに対する融資でございまして、通常合理化資金の融資というふうに呼んでおります。それから第二は、開発試験事業に対する融資でございまして、第一番目と第二番目の融資事業が今度の新しい事業団に移る、こういうふうに考えております。それから第三の事業開発輸入金融でございまして、わが国の企業が発展途上国におきまして開発いたしました産品、これが国際的に割り高になりがちでございますので、これを日本に輸入するために比較的低利の金を融資をするという開発輸入資金金融を第三番目の業務にしております。それから第四番目の仕事といたしまして中小企業の海外投資の金融、これがございまして、ただいま申し上げました第三番目の業務と第四番目の業務海外貿易開発協会にそのまま残すということにいたしまして、先ほど申し上げましたように第一と第二の業務を新しい事業団承継する、こういうことを考えておるわけでございます。
  45. 石井一

    石井委員 ちょっと農林省の問題に入ります前に、いまの第三と第四の部門というのは金融問題であるから性格が違うので、これは独立して業務をやるというのか、それとも将来やはり関連があるので国際協力事業団のこの構想の中に挿入していきたい、こういうふうな考え方があるのか、この点はどうですか。
  46. 森山信吾

    ○森山説明員 お答え申し上げます。  ただいま海外貿の機能を四つ申し上げましたが、第一番目と第二番目の業務は全くこの新設を予定されております新しい事業団の機能と合致する点でございますので、抵抗なく承継できると思うわけでございますが、第四番目の中小企業の海外投資金融につきましては、これは直接日本の中小企業が海外に進出する場合に金を貸すという仕組みでございまして、新しい事業団の融資機能が間接的な融資機能、こういうことになっておりますので、事業団でやるのはちょっと実体的にそぐわないのではないかということでございますので、これはやはり別個の財団でやったほうがいいのではないか、こういう考えを持っております。  それから輸入金融でございますが、これは一つは輸入金融は輸入政策と一緒にやるべきではないかという議論がございます。それともう一つは、今度の事業団が海外に出かけていきまして、資源を収奪する、こういうような印象を与えてはまずいという配慮もございまして、輸入金融は別個の機関でやったほうが事業団の本体のためにもよろしいのではないか、こういう感じがございますので、この二つは事業団とは別個に切り離して別個に運用させていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  47. 石井一

    石井委員 通産省にもう一問お伺いしますが、国際協力ということになりますと、エネルギーの問題金属資源の問題は切っても切れぬということになるわけですが、いまの御答弁のこれらの資源国に対する印象と申しますか、そういう配慮も必要ですけれども、この二つの公団、事業団との関係というものは全くないのか。石油と資源、これと国際協力事業団との関係はどういうふうになるのですか。
  48. 森山信吾

    ○森山説明員 お答え申し上げます。  石油開発公団と金属鉱業事業団については、先ほど申し上げましたようにそれぞれ特定の業種につきましての探鉱資金融資ということでございまして、この事業団とは直接的な関係はございません。ただし、海外でこういった経済協力業務を行なう、こういう問題がございますので、それぞれ別個の観点から動くということは当然避けるべきでございまして、そのメカニズムにおきましては当然国内で一元的に管理されるべきではないかということでございまして、対象はそれぞれ変わっておりますけれども、運営の際にはそれぞれ協調的に、精神論としましては同一歩調をとって運営すべきである、こういうふうに考えております。
  49. 石井一

    石井委員 それでは先ほどの質問に関して、農林省のほうからお答えいただきたいと思います。
  50. 山田久就

    山田説明員 お答え申し上げます。  農林省の関係で民間の海外経済協力に関する団体といたしましては、農業の関係では財団法人で海外農業開発財団という団体がございまして、これは四十四年八月に設立されております。これは民間経済界が中心になりまして、政府は毎年五千万ないし六千万の補助金を出しております。東南アジアを中心とする開発途上地域におきますところの食糧等の農産物の増産その他海外農業の開発協力するという目的をもちまして、やっておる仕事といたしましては、農業技術者の養成及び確保、情報の収集及び提供、並びに調査研究といったようなことでございますが、この中の第一の項目、農業技術者の養成及び確保ということが今度の国際協力事業団の一つの新しい事業として特に力を入れてまいろうということになっておりますので、政府といたしましては、この財団のやっております農業技術者の養成、確保に関する事業は実質的に今度の新しい事業団のほうへ吸収をしたいというように考えております。  したがいまして、そういう関係におきまして、この財団は今後そのまま残りますか、あるいは解散して別の団体になるということになりますか、これはいずれも民間のことでございますのではっきりいたしておりませんけれども、この財団は存続するとしても相当性格が変わってくるものであるというように考えております。  それから、先ほど御指摘がございました漁業に関しましては経済協力局長から御答弁がございましたように、昨年になりまして財団法人海外漁業協力財団というものができておりますが、これは漁業交渉が行なわれまして——最近御承知のように、日本の漁業水域、漁船が入りますところの水域の確保ということが漁業交渉等で非常に問題になっております。そういう関係におきまして、漁業交渉の一環といたしまして、相手方に対して漁業協力をしてあげないと、さような日本の漁船の水域確保がなかなか困難であるというような観点において、この財団が漁業協力を相手の国に対して供与するというような特殊な任務を持っておりますので、漁業交渉との関連におきまして、そういった交渉の推移に応じまして迅速かつ弾力的に対処できるためには、こういった財団のスタイルがいいのじゃないかというようなことを考えておりますし、先ほど協力局長から御答弁ありましたように、何せ昨年できたばかりでございますので、この財団の業績というものをしばらく見守っていきたいというように考えておるわけでございます。  ただ、一般的な国際協力の一環といたしまして、従来、海外技術協力事業団によりまして、一般的な漁業に関する技術協力が行なわれておりますので、これはもちろん新しい事業団にそのまま承継されて行なわれることになると思います。
  51. 石井一

    石井委員 もう一つ、移民に関してこの機会に伺っておきたいと思うのですが、移住事業団が統合されるということにもやはり一つの問題があるようでありますが、この際に建て直すべきところは大いに建て直してもらいたい、こういうふうに考えるわけです。先般も当委員会でありましたか、移住事業がうまくいってなくて、ブラジル、南米あたりでは移住した人が非常に路頭に迷っておるというようなケースがある。ところが向こう側の政府の救済なりそういうふうなものに移民であるために当てはまらぬ、こういう議論もあったようでありますけれども、ブラジルのサンパウロ等に日本の移住民がコロニアという形をつくって生活をしておる。これはやはり現地社会に対しても非常に悪い印象を与えておるのではないか。これは基本的な問題で、事業団と直接に関係がないと言われるかもわかりませんが、この移住の問題点についてその後調査をしたのか、また具体的な何らかの手を打たれたのか、この点について御答弁いただきたいと思います。
  52. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 御質問の点が、まず第一にコロニアの問題だといたしますと、コロニアと申しますのは日本人町でございますが、これは確かにサンパウロにございます。移住者は当初移住地に入りまして、いろいろな理由で移住地よりもむしろ都会のほうがいいということで都会へ出てくるわけでございますが、私の見ますところではサンパウロにあります日本人町自身が現地社会に受け入れられてないということはない、むしろあとでも申し上げますが、現地におります日本人の両親はいなかで暮らしておりますが、子供はみんな高い教育を受けまして町へ出、ブラジルの社会でも非常に高い位置を占めておるということで、日本人は時のたつに従いまして、一世から二世、三世へ移るに従いましてだんだん現地社会に同化しておる、このように考えるわけでございます。  それから、そういう問題ではなくて、一般的に移住者というものが移住地で日本人だけで固まっているということにもし問題を限るといたしますと、これはブラジルとの間には移住協定日本移住者を出しているわけでありまして、事業団が移住地を買うとか、あるいは向こうのブラジル政府から提供を受けまして、その移住地へ日本人を入れるということで当初から日本人はそこへかたまることになっておるわけでございますけれども、ただ移住者社会といえども、これは現地にある社会でございまして、子供たちの教育は皆向こうの政府がつくりました学校へ入りまして、そこで現地の教育を受けるわけであります。そこで大きくなりますと、さっき申し上げましたようなことで、だんだん町へも参りますし、あるいは現地で父のもとの農業を継ぐわけでございますけれども、この点につきましても、日本社会と現地の社会というものは確かに移住当初にはそういうこともございますけれども、やはり時のたつに従いまして、現地社会との同化という面もうまくいっているのではないかと思います。  それで、こういう問題につきまして、われわれ具体的に総合的な調査ということはやったことはございませんが、もちろんふだんからそういう問題につきましては、現地との関係というものをよく考え、かっこのような事業団ができましてわれわれが移住業務を進めるにあたりましても、やはり移住者に対する援助というものが現地の周辺社会にも利益が及ぶというような形で、少なくとも現地の人々からとやかく批判をされないような形で進めたい、このように考えております。
  53. 石井一

    石井委員 いま通産、農林それから移住ということについて部分的にお話を伺ったのですけれども、何か簡単に組み込めるものだけは組み込んだけれども、問題のあるものはみな残してある、こういうような形のようにも見受けられます。私は、国際協力というふうなものの効果を最大にあげるというためには、これらの問題は非常に関連が深いし、このあたりの相互の密接な連携と協調というものが非常に必要である、こういう感じがいたしてなりません。そういう意味で、きょうは専門的にこの辺を深く突っ込んでいくまでの時間的余裕もございませんけれども、これはもちろん当委員会で後刻野党の皆さん方からも大いに問題として出てくる点だろうと思いますけれども、国内の従来の業務というふうなものが分けにくいとか、そういうふうなややセクショナリズム的なものを排して、国際協力の実をあげていただきたいと特に思います。  先ほど外務省あるいは両省間にもいろいろの紆余曲折があったということもお伺いしたわけですが、それを認められたのかどうか、それに対する答弁は必ずしも満足すべきものでなかったように感じるのですが、そのことはこれ以上申し上げません。  それから、私が先ほど外務大臣にお尋ねいたしました新設の経済協力の推進の大臣が今後さらに総理の命を受けて国際経済協力に従事されるということですが、ところがこの事業団とは関係がない、こういう御答弁でありました。ところが話を聞いておりますと、いまそれぞれのお立場から御答弁になりました。複雑にふくそうしております資源の開発経済協力技術協力、移住の推進、貿易の促進、こういうふうなものこそ新設の経済協力の大臣が整理統合をする、外務大臣と協力しながらやるという姿勢があってもいいのですが、その辺の答弁も必ずしも明快でない、こういうふうな感じがいたすわけでございますが、これは政府のレベルというよりも、非常に政治的な問題も含まれておると思いますけれども、この点も今後時間がたつにつれてひとつ御調整をいただき、この辺はもう少し明快な答弁の出るような形にしていただきたい、こういう印象を私は強く持っておることをここにつけ加えておきたいと思います。  そこで、これから各論に入るわけですが、まず最初に、この事業団の正式の英語の名称はどういうのか、OTCAとかなんとかアブレビエーションで言いますとこれはどういう形になっておるのですか。
  54. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 英語の名称につきましてまだ正式にきめたわけではございませんが、国際協力事業団というのをそのまま英語に訳しますとインターナショナル・コーポレーション・エージェンシーというようなことばになるかと思います。日本という字をはっきりさせるためにその頭にJというのをつけてJICAというようなことばを使うのが適当ではなかろうか、ほかにいろいろな考え方もございますが、ということで目下まだ検討中であるということでございます。
  55. 石井一

    石井委員 インターナショナル・コーポレーション・エージェンシーということだとアメリカのICAと同じになるわけですね。アメリカのICAといえば、要するに昔第二次世界大戦直後物資のないところへICAのマークを張って、日本にもたくさんありましたけれども、特にこれらの国々にたくさんあった。Jがつくにいたしましても、何かもう少し知恵がないものか。ICAがその次に何かUSOMとかいう名前に変わりましたけれども、ICAという印象はいい面もあろうかと思いますが、その後の反日感情その他というふうなことを考えますと、非常に悪い面も残っておる、こういう感じがいたしてなりません。わが国では、国際協力事業団でけっこうですが、外国での仕事をする場合に、外国の名前のほうが非常に重要だ、こういう感じがいたしますので、この点も、これを変えろとまでは申し上げませんが、もう少し知恵が出し得るのじゃなかろうかという感じがいたしますので、一つ申し添えておきます。  それから今度は、法案についていろいろ拝見しておりますと、いろいろなところで疑問が出てくるわけで、これは逐次やらしていただこうと思いますが、まず、第四条の四十億の資本金、これは政府が出資するというか、民間の資本の活用というのは一切考えないのかどうかということ。  それから、第二点は、附則第六条四項、附則七条四項、附則八条五項と書いてありますが、これの内訳はどうなっておるのか、事業団それぞれから出資をされるのだろうと思うのですけれども、これのバランスはどうなっておるか、この点をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  56. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 まず、御質問の第一点でございますが、法律の表面には、新事業団資本金は四十億、及び附則に書いてある事項というふうに書いてございますので、その点なかなかおわかりにくいかと思いますが、それ以外に民間のものを認めないのはどういうわけかというのが第一点であったかと思いますので、そちらのほうからお答え申し上げます。  この事業団は、いわゆる特殊法人ということでございますので、その特殊法人としての性格から、かりに民間の出資を認めるようなことをやりましても、出資者に対します権利とか、そういうことを認めることがやりにくい。また非常に公的な色彩の強い技術協力というような国際協力にかかわる業務を行ないますので、民間がこの事業団そのものに出資をするということは、必ずしも適当ではないというふうに判断をいたしておりますが、ただ、民間の資金というようなものも将来調達して、この事業を拡大するというような場合には、法案の第三十一条で借入金というようなこともございます。それからまた債券の発行というようなことも規定されておりますので、そういう点で利用していきたいというふうに考えております。  それから第二点でございますが、附則にあらわされているものはどういうものをさしておるのかという点では、四十億円のほかには、まず第一番目に、海外技術協力事業団から承継される資本金で、昭和四十九年度予算に計上されたものまでも含めまして約三十七億円ほどございます。それから海外移住事業団から承継される資本金は、同じく四十九年度分をも含めまして約七十三億円ほどございます。それから日本貿易振興会の資本金から、いまの海外開発協会の関係で、減資して引き継がれるものが、同じく四十九年度分を含んで七十四億円ほどございます。したがいまして、その全部の合計、四十億の分も含めての合計でございますが、全体で二百二十三億円余り、二百二十四億円近くの金が資本金となっておるということでございます。
  57. 石井一

    石井委員 事業団職員総裁が任命すると十七条にはなっておりますが、これの割り振りはどういうふうになっていますか。
  58. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 おおむね現在存在しております海外技術協力事業団海外移住事業団等の職員が引き継がれるというようなかっこうになるのがたてまえでございますし、そのほかまた、先ほど通産省のほうから御説明のございました海外貿易開発協会業務のうちの一部もここへ引き継がれますので、そのための職員も引き継がれる。それから農林省の御指摘になりました海外農業開発財団の関係についても、同じようなことが言える。それにまた、この四十九年度予算の中で出資金は四十億でございますが、そのほかに、交付金として十億円が計上されておりますので、その点から来ます人員の増ということもございます。そうしますと、それらのものを全部合わせますと、およそ千人ぐらいというのが、ここの職員の数というふうに勘定ができるわけでございます。  いま申し上げました技術協力事業団につきましては、大体四百五、六十人というのが現状でございます。移住事業団につきましては、四百三十名程度というのが現状でございます。それから海外貿易開発協会につきましては、現在の職員は十八名でございますが、そのうちどれだけがこちらへ入ってくるかは、まだ、仕事の関係でございますので、私どもよく承知いたしておりません。また、農業開発財団につきましても、現在の職員は役員を含めて九名でございますが、このうちどれだけがこちらへ入ってまいりますかも、仕事の関係からまだはっきりいたしておりません。
  59. 石井一

    石井委員 そこでこれらの人々は、やはり国を代表して、対外折衝に当たるという非常に重要なポストなんですけれども、従来、たとえば一時、何と申しますか、OTCA内でトラブルがあって、十分の受け入れができなかったというようなこともございます。この際、全くこれまでと同じような形で移管されるのかどうか。移住団は移住団で、そこにはお互いの差なり、レベルの違いというようなものもいろいろあるのじゃないか、こういうようなことも思うのでございますけれども、またそれが公務員の待遇、その他とどういう形になっておるのかというふうな面、簡潔でけっこうですから、お答えを願いたい。  それと、この際、ひとつ資料要求をしておきますが、いま大ざっぱに言われました千名の方がどういう役職の分布になっておって、また、その待遇というふうなものがどういうふうになっておるのか。これは、いま説明を求めておっても、たくさんの人々ですから、あれですけれども、事業の遺憾なきを期すためにこの資料をひとつ当委員会に御提出を後刻いただきたいということも要求さしていただきたいと思います。
  60. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の待遇、それからまた、特に技術協力事業団につきましては、組合等の関係とかというようなことが、従来から問題にされたということも事実でございますが、そういう問題につきましては、今後この事業団を構成するにあたりまして、種々検討を続けていかなければならない問題がたくさんございますので、目下鋭意検討中でございますから、また、もう少し検討が進みましてから、お答えをさしていただきたいと存じております。  それから、ただいま御要請のございました資料は、できます限り作成いたしまして、御提出さしていただきたいと思います。
  61. 石井一

    石井委員 いまの資料の中に、職員の皆さんの平均年齢であるとか、そういうふうなものも一目瞭然、わかるようにしていただきたいと思います。千名に対して、それぞれのバイオデータを求めておる、そういうことではございませんけれども、その点、よろしくお願いします。  その次に、第二章の八条以下のところでございますけれども、人材の確保ということが非常に重要であると同時に、これを指導される役員の方々、こういう人々の構成がどうなってくるのかということ、これは事業の遂行上、非常に重要な問題です。事業団の代表権がどうなっておるのか、それからここにかなりの人数の理事が書いてございますが、この人選はどういう人々を想定し、考えられておるのか、この点はいかがですか。
  62. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の諸点、何ぶんにもこの法案の作成中、先ほど申し上げましたようないろいろな関係省間の話し合い等々、いろいろな問題がございましたために、まだ検討が十分に進んでおりませんので、現在の段階でどういう人間を当てはめるというような点は、もう少しお答えを猶予させていただきたいと思いますが、理事の数が十二名となっておりますのは、すでに現在存在しております海外技術協力事業団理事が四名、それから海外移住事業団理事が四名おる、その二つの事業団が当事業団に合併されるという点で、それに新しい業務がつけ加わるというようなことから計算して十二名という数字が出ております。
  63. 石井一

    石井委員 従来どおりの事務所で同じような事務をとっていくのか、それともやはり統合したということになれば、一つの統合した形で新しく発足するのかということ。  それからいまの質問に関連いたしまして、常に問題になりますのはお役人の天下り人事ということ、これは予算委員会で常に問題になってくるわけですね。いまのお話だと、これまでやっておられた方がそのまま理事に移られる、こういうふうなことのようにも聞き取れるわけですけれども、やはりここは在野の有能な人々というふうなものも大いに登用してこの任に当たってもらいたい、こういう感じがいたすわけですが、この点はいかがですか。
  64. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 事務所につきましては、現在海外技術協力事業団の入っております事務所はアジア経済研究所と共有というような形になっておりますし、移住事業団の入っております事務所は借用をしておるものだと聞いておりますので、その二つは比較的近い場所にはございますが、二つに分かれておるのは不便であろうかとも存じて、その点についても、その借用等の問題も予算の問題等もございますので、現在なお検討中でございます。  それから、先ほどの答弁で理事の数について御説明申し上げましたのは、私どもことばが少し足りなくて、現在の両事業団理事の数が四名ずつであるということのみを御説明申したわけでございまして、必ずしも現在の人間がそのまま新しい事業団理事になるということを意味したつもりではございませんので、御指摘のように、官民の適材適所主義ということで貫いて検討を続けていきたいというふうに考えております。
  65. 石井一

    石井委員 代表権の問題はどうですか。
  66. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 この事業団の代表権につきましては、法案の第九条に書かれております。対外的な代表権は総裁がこれを持つわけでございますが、副総裁二人が置かれますので、その副総裁につきましては、総裁が定めるところに従って制限的に対外的代表権を有するという形になります。ただし、総裁並びに副総裁がすべて欠員になったような場合であるとか、事業団とこの総裁または副総裁との利益が相反するような事項が発生した場合、その場合には監事が事業団を代表するという特例的な場合が考えられております。
  67. 石井一

    石井委員 この第十五条を読んでおりまして、「事業団総裁又は副総裁との利益が相反する事項については、総裁及び副総裁は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。」こういう規定はあんまり見ない規定だと思うのですけれども、こういう規定を特に設けられたのは、やはりいろいろの機構が一挙に統合したという形の中から、こういうことを想定してこういう配慮をしておられるのか、この十五条について御説明を求めます。
  68. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の第十五条の規定につきましては、特にこの事業団の場合にそういったむずかしい問題が起こることを想定したわけではございませんで、従来そういった先例もあるということでございます。たとえば、これは海外経済協力基金法の中でございますが、その中にも第十六条に「基金と総裁との利益が相反する事項については、総裁は、代表権を有しない。この場合においては、監事が基金を代表する。」というような規定が設けてございます。  で、具体的な例はどんな例があるかということも、必ずしもそういった例が事実発生するというようなことはないかとも思いますが、この事業団総裁の持っている土地とか家とかを買おうとか、そういうふうときに総裁の意見を入れたのではぐあいが悪いというような場合を考えておるという次第でございます。
  69. 石井一

    石井委員 その次に、十条の日本輸出入銀行の理事海外経済協力基金理事、これを入れた理由はどうなのか、おそらく先ほど私が質問しました件と関係があろうからそういう形になろうと思うのですけれども、私が後ほどお伺いしようと思っております運営審議会、この構成とも関連をしてくるわけですけれども、この事業を確実に推進していくためにはやはり幅広い理事構成というふうなものが要るのですが、この十条に関しての私の質問にお答えいただきたいと思います。
  70. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 第十条におきまして、非常勤の理事をそれぞれ海外経済協力基金及び日本輸出入銀行から出していただくということは、まさに御指摘のとおり、この事業団の行ないます業務が、海外経済協力基金及び日本輸出入銀行の行なっております業務と非常に密接な関連がございますことは、本法案の第二十二条等をごらんになればよくおわかりいただけることと思いますが、そういったような意味から、輸銀並びに基金の理事が新事業団理事を兼務して円滑な運営をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  71. 石井一

    石井委員 それでこの第三章の十九条以下の運営審議会は四十名の委員で組織する、こういうことですけれども、これはどういう機能を果たすのか、またどういう人々をこの委員に任命しようとされておるのか、この点はいかがですか。
  72. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 通常こういった種類の事業団には運営審議会というものが置かれますが、その例にならってこの事業団にも運営審議会を置いたわけでございます。この事業団はそもそも政府の行ないます国際協力に関する諸政策ばかりでなく、民間の国際協力とも非常に密接な関係を持つ仕事を行なうわけでございますので、官民のそういった方面での知識を持った方々の意見をこの事業団の仕事に十分に反映させて、そしてこの事業団の適正な運営をはかる必要があるということを考えてこの運営審議会を設けたわけでございます。  従来の海外技術協力事業団及び海外移住事業団にもそれぞれ運営審議会がございまして、その委員の数はおのおの十五人でございました。しかもそのメンバーはそれぞれ違った方式で選ばれておりますので、重複している者は必ずしもありませんので、そういった意味を含めて、この事業団業務の範囲がいまの二つの事業団よりもさらに広がっておるというような意味から、全体の人員を四十名ということにしていただきたいと存じておるわけでございますが、実際にどういう人間をここに選ぶかということにつきましては現在なお検討中でございます。  御参考までに申し上げますと、海外技術協力事業団運営審議会のメンバーは、従来、関係省の次官並びに若干の民間の方々、有識者でございましたが、海外移住事業団のほうでは主として民間の有識者から選ばれておったという経緯がございます。
  73. 石井一

    石井委員 いまOTCAその他三つ、四つの組織、団体のスタッフに関する資料を要求いたしましたが、いまのこの理事に関連いたしまして、特にヘッドになる人々ですから非常に重要だと思いますけれども、現在の組織における理事構成はどうなっておるのかということ、そうしてさらに今後これが国際協力事業団理事になるのかならないのか、その点が問題がありますけれども、これに関する資料も同時にひとつ御提出いただきたいと思います。  その次は第二十一条ですが、特に業務の中で、先ほど御答弁がありました新しい問題として取り上げられた農林業鉱工業開発協力、これは一番問題があり、議論の焦点になるわけでございますけれども、たとえばこの第三号のイ、ロに書いてある規定による資金供給は一体これはだれに対して行なわれるのか、これはいかがですか。
  74. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 この出資もしくは融資の対象はどこかという御質問でございますが、これは従来の海外経済協力基金法の場合とほぼ似たような考え方でございまして、法文上は対象がどこにあるかということは書かれておらないということは、どこでもいいということになりますが、実際上には本邦の法人ということを当面の対象として考えております。
  75. 石井一

    石井委員 その要件その他というのは、本邦の法人なんといったらだれでも出せるということで、まことにあれですが、そういう細目があるのですか。
  76. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 本邦法人に対して貸し付けると申しましたが、その場合の貸し付けあるいは出資をする制限は、第二十二条に掲げてあるような制限の条項に服するわけでございます。
  77. 石井一

    石井委員 途中ですけれども、時間が来たようですから……。国際情勢でこれぐらいの時間をいただくとたいへんありがたいのですが、これで一応きょうの質問を終えたいと思います。      ————◇—————
  78. 木村俊夫

    木村委員長 所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件、及び所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。渡部一郎君。
  79. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 租税の二重課税防止条約に関し、先日の委員会で種々討議を繰り返したわけでありますが、この条約の中には多数の問題点があることがすでに明らかにされております。関係されております外務省当局あるいは大蔵省の当局の御説明によりますれば、本条約は二国間の租税の二重課税に対して、今日まで二十六カ国にわたりこの条約締結によって二重課税防止されたことはその名称のとおりであります。しかしながら、その二重課税防止条約というものがOECDモデル条約をもとにして、二十年前から改定作業中であり、しかもその改定作業の間、種々の問題点が発見され、そして今日の情勢に対応しないという問題点は条約締結者の間でも表明されているとおりであります。しかも企業の画期的な活動発展により、特に問題とされるのは、多国籍企業の発展により、この二重課税防止条約が実際的にはその多国籍先発企業の大きな利益を擁護し、そして後発多国籍企業あるいは後進国の企業の活動に打撃を与えあるいは一般的な民衆の利益というものについては考慮されていない面を前回の委員会で指摘をいたしたわけでありますが、その点についてはほとんど確たる反論もなく、必要なる措置がとられなければならない旨、明らかになってまいったわけであります。  このような観点から、私は総括して申し上げたわけでありますが、この多国籍企業をどう考えるか、多国籍企業問題に対して国際的な活動政府として方向性が明示されないならば、本条約はかえって先発多国籍企業を擁護するだけの条約に成り下がる、また今日までの二重課税防止条約が、少なくともそうした意味合いを持ってきたという件に関しては御理解をいただけるだろうと思うわけであります。その意味で租税の二重課税防止条約のたぐいに対し、いまや抜本的に考え直さなければいけない、また多国籍企業の取り扱いについても考え直さなければいけない時代に来ているのではないか、こう思ったわけでありまして、それが本委員会に通産大臣及び外務大臣の御出席を要求し、また大蔵大臣の御出席を要求した理由であります。  そこで私は、実際いままで述べたこの多国籍企業の問題に対してどう考えるかというところあたりから、通産大臣の前向きの御見解を伺っていきたい、こう思うわけであります。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、租税の二重課税防止条約は、国際経済発展させるために必要な条約であると思います。国際経済を先進国相互、あるいは先進国、発展途上国、あるいは発展途上国相互、そういうふうにマルチナショナルに発展させていくために、二重課税防止条約というものが人間の英知で生まれて、これがかなりそういう意味において、世界経済を繁栄させるために貢献しておるものであると確信しております。  多国籍企業の問題は、この問題と若干関係しておりますけれども、問題はむしろ多国籍企業のマヌーバーにあるように思います。われわれも多国籍企業については重大な関心を持っておりまして、政府としてもかつて、いまの澄田輸銀総裁を団長にして調査団まで派遣をしてその実体を究明したところであり、かつまた、アメリカのドルが非常に弱くなった際に、多国籍企業を放置しておいてアメリカはそれでドルが弱くなったと言っておれるのかというような非難を、日本をはじめECの国々もやった経験もあり、多国籍企業自体というものは、歩き出しますというと、その原所属国家の主権を放れて一人歩きしていくという性格もあります。でありますから、OECD等におきましても、これが問題になって検討を加えられていると聞いております。  私ら通産省といたしましても、そういう以上のようなことを踏まえて、多国籍企業がいかに正しくあるべきか——多国籍企業は必要であり、また有益であると思います。問題は、その欠点をどう克服して正しいあり方、軌道に乗せていくか、そういう問題にある、こう考えております。
  81. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 予想どおりの御答弁のようで、私の心配もそこにあったわけであります。真正面から議論して恐縮でありますが、そうすると、いま言われたことは大きな矛盾を含んでいるわけであります。二重課税防止条約というものによりまして、多国籍企業こそが利益を受けるわけであります。そして、その多国籍企業のコントロールに対して、どうやら通産省は何も考えておられないのではないかという節がある。  と申しますのは、基礎的な多国籍企業に対するお考え方、多国籍企業が一人歩きすると国家の主権を脅かすほどの存在になる点の御認識、それは私はいいと思うのでありますが、そうしますと、税金の問題でこの租税二重課税に関するこうした条約ができるということは、多国籍企業を激励するだけのことではないかと私は指摘しているわけであります。  それは無数の実例がありますが、いま申し上げるのはめんどうですから、今度の予算委員会において、矢野質問の中で提示された問題をたった一つあげて申しますならば、業界第七位の商社トーメンは、本社と米国トーメンとの間で、食料を仕入れたように装って架空経費を払ったり、架空の国際電報で送金したというような、非常に拙劣な手口ではありますけれども、これによって十三億円の裏金をつくった旨指摘が行なわれました。また、これはほんとうにそうした電報を打っていたテクニックについては、当時国税庁においてはそれを明らかにすることはできていなかったようでありますが、こうした形で本社から送金する、利益の一部を水増ししたり上積み分をプールしたりしたこの手口というものによって、相当多数の経費が隠された。また丸紅飯田においては、こうした形において十八億円が累積された。また日商岩井は、アメリカにおいて現地法人を巧みに取り扱い価格を引き上げたということは、もう御理解のとおりであります。  そうすると、いまの御発言は、多国籍企業に対して、これはもうあまりにも無防備な御発言ではないかと思うわけでありまして、国際経済発展させる面と阻害させる面、特に国家主権に対しては重大な影響があるのではないか。それに対する基礎的な考え方が通産省になければ、大蔵省当局は取り締まりもできない、考えることもできないとすでに述べております。つまり、多国籍企業を尊重するほうに行くのか、これはいかぬというほうに行くのか、あるいは多国籍企業問題について打ち合わせ会をやるのかやらぬのか、そうしてそれについて政府方針をどうするのか、いまだ通産省は明快でありません。そして単なる質疑応答のときは、考え方は出ますけれども、対案が出ていないというのは私は遺憾だと思います。その点をいかにお考えであるか。私は、この意味では、これがこの物価国会といわれた今国会の締めくくりになる議論になるだろうと思うわけでありまして、これに対する御見解を明らかにしていただかなければいかぬと思います。
  82. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 通産省ではっとに、多国籍企業に関する研究会を部内において開きまして、これをどう処理すべきかいま検討しておるところでございます。方向としては、監視し、適正な規制を加えつつこの発展を期する、そういうことになるのではないかと思います。  二重課税の問題に関しましては、二重課税があっていいということでは世界経済は阻害されるので、やはり二重課税防止ということが必要であると思います。問題は、そういう条約その他の網をくぐって脱法行為を行なったり、あるいはそれに類似すると思われる行為を行なうこと自体をわれわれは規制し監視しなければならないというふうに考えます。
  83. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 OECDのDAC、すなわち開発援助委員会の推計によりますと、DAC加盟諸国の直接投資残額は、一九六六年で九百億ドルでありましたが、一九七〇年には千三百億ドルに増大しているといわれております。このような国際投資活動が国際経済の中で強大にふくれ上がってくるという事実、これにまず御注目をいただかなければいかぬと思うのです。この投資残高がこういうふうに強大にふくれ上がっている事実につき、すでにたくさんの研究が述べられております。  たとえば日本ではあまりもてはやされてはおりませんけれども、アメリカの某大学においては、その問題について取り扱いが行なわれ、一般的大企業群が発展するスピードとこの多国籍企業群が発展するスピードは大体二・五倍の開きがある旨、アメリカ系企業においてこれを示しております。  その理由は何かというと、一つは、技術あるいは資材等を輸入する際に非常に優位であるというようなこともありますが、主たる要因としてあげられているのが税金の問題であります。その税金の問題で一番けしからぬのは、決算時期をずらせることによって利益金を次から次へ適当に動かすことによって、その租税を払う時期に当たった租税国からお金を散らすという形で租税回避することが可能であります。また、タックスヘブンという租税天国、そのタックスヘブン国に対して本社を移動させる、事業所を移動させる、こうしたことがまた可能であります。またこれは脱法ですらない。またタックスヘブン国の大半は二重課税防止条約を結んでおらないので、二重課税防止条約を結んでいる、タックスその他労務関係、資材関係等を含めて適当な国に本社、事業所を移し、そこに資本を集中するという形で利益を移す、こうしたことが行なわれております。  そうすると、二重課税防止条約はまさにそれを意味しておる。スペインとアイルランドについて今回議論がされているわけでありますが、これらの国々における現在述べられている企業はほとんど小さなものでありまして、しかも、日本国の多国籍企業になりかかっている小さな企業が多いわけでありますが、この日本国の多国籍企業、またその大きなねらいを持っていることは言うをまたないのであります。  そうすると、いま研究会を部内でやっている、監視して適正な規制を加えるとおっしゃいますけれども、現実は何もやっていない、現実は何も行なわれていない。そしてひたすらこうした事業を放置するということは、日本国内でいわれている大企業対小企業の戦いだけでなくて、多国籍企業の先発国と後発国の日本との利害というものは、明確に対立するものであります。こうしたことに関して、もう少し御理解いただかなければいかぬのじゃないか、こう思っておるわけであります。この辺、いかがお考えですか。
  84. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その御指摘はもっともなことであると私らも思います。日本にはまだIBMみたいな大きな多国籍企業はございません。IBM自体はアメリカの公取か何かで分割論が出てきているということも聞いております。そのほかアメリカにはそういうような巨大な多国籍企業が非常に発達しておりますが、その弊害も非常に出てきておると思います。日本におきましても、大体商社筋等が将来発展すればそういう可能性を秘めているとわれわれも警戒をしておりまして、先ほど申し上げましたのは、一人歩きしだすと国を離れて歩いていってしまう、そう申し上げました辺について、われわれとしても非常な警戒を持って、いろいろその筋を検討しておるのが現状でございまして、今後われわれはその検討の進めぐあいによりまして、あるいは法的にあるいは行政的に必要に応じて適切な措置をとりていこうと考えておるのが現段階であります。
  85. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は大臣はおそらく御理解いただいておるとその辺思いますが、それに対する適切な措置がとられていないという責めはかぶらなければいかぬと思います。今国会においてさんざん議論された国際的な買い占め、売り惜しみの波に対して、予算委員会その他においては重要な指摘ではありましたけれども、それがほんとうに指摘されないまま今日に来、そしていまこうやって伺えば、対応策がないことが明らかであります。そうすると、私は非常に遺憾とせざるを得ない。  二重課税防止条約審議にあたって、二重課税防止の部分と多国籍企業の議論とは分けろという議論が確かにあるわけであります。それは本質的には話は二つの構造のものだという議論があるのは、私は理解をいたしております。しかし、その多国籍企業をはじめとする国際的な巨大企業に対して、税をどうかけるか明示しておかなくて、そして片々たる二重課税防止条約締結していくということは、小を撃って大を野放しにするそういう基礎的な考え方ではないかと私は思うわけであります。それは日本国としてももう非常に遺憾なことであり、そして国際的なバランスの上からも、バランスを欠いていることじゃないかと私は思うわけです。  そしてもう一つ申し上げるならば、時間もそうあるわけではないのでまとめて申し上げますが、わが国の対外直接投資残額が七〇年度に三十六億ドル、七一年度に五十四億ドル、七二年度の十二月に六十二億ドルと、こう急増いたしております。そうすると、こうした対外直接投資というものが急速調に伸びているということ自体が、世界経済におけるわが国の国際投資活動の増大を意味しておる。それは投資されるほうの国家群から見れば、当初こそはその進出を望むとしても、その後進多国籍企業保持国とでもいいましょうか、そういう国から見ればエコノミックアニマルが出てきたという非難を回避することはできない。エコノミックアニマル日本といわれるのはあたりまえのことになってしまう。この辺を全く考えられないで、エコノミックアニマル問題を取り扱おうとしたら、これは収拾つかなくなるのじゃないか、私はそう思うわけなんですね。  したがって対外投資活動に対し、政府は今日まで補助金を出すとか税制上の優遇措置をとるとか、そういったことを一貫してやってこられた。特に通産省はあらゆる非難を押えながらも、そういうことで先進多国籍企業保有国に対して、日本企業を多国籍化するために実質的に援助をされ続けてこられた。ソニーをしてアメリカソニーを進出させ、そしてブラジルソニーを設立させ、新日鉄をしてブラジルのウジミナスに製鉄所をつくらせるというようなやり方で、次から次へと多国籍企業化されるために、あらゆる税制あるいは通産指導の形でそういったことをやってこられた。それでバランスがとれるかという問題について考えなければいけないと私は思うのです。  一つは後進国の立場から、一つはこれ以上巨大企業を世界が保有するために、世界の各国群が巨大多国籍企業の下敷きになってしまって、コントロールを失った議会というものになっていくことに関して、両方の面から考え直さなければいけないのではないかと私は思うわけなんです。特に本国会における予算は約十五兆円であります。ところが三菱商事一社の今期予算は十五兆であります。こうした十五兆と十五兆を単純に比較することは、一方は予算の性格を持ち、一方は取り扱い高の性格を持つのですから話が違うかもしれませんが、そういう巨大規模を持つものをすでに育て上げられた日本は、そういう巨大商社群に対して指導、コントロールの実を失い始めておる。そしてコントロールをするのは、ここしばらくのわずかの時間しかあり得ないだろうと私は思うわけです。こうしたことをどうお考えでおられるのか、重ねてでありますが、伺います。
  86. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 最近における世界の目ざましい変化は、われわれとしては新しい事態として、新しい観点から検討を加えなければならぬと思っております。一面において衛星とか宇宙通信というものがあり、あるいは大型ジェット機が開発され、そういう面が著しく進んで、国と国との間が狭まって、地球が不動産化してくる。そういう面においては多国籍企業というようなものが発生して、これが拡大していくという必然性がもうあると思います。ちょうど封建時代の関所がなくなるようなもので、商業機構が発達するような要素は、ちょっと類似している要素があるわけだと思います。が、一面、そういうことになると、資源ナショナリズムというようなものが片っ方で発生してくる。  そういうような地球的スケールにおける非常に国際的な条件の変化が起きておるので、多国籍企業というものも不可避にいま出てきておる。自由経済社会において、そういうものだろうと私は思います。それだけにそのまま放置していいという問題ではないのであって、公明党の皆さんが御指摘のポイントは、まさにわれわれに非常に大事な研究課題をお与えいただいたものと思っています。われわれはかねてからそういう意味において、政府でも使節団を派遣したり通産省でも研究会をつくってその検討をやっておる最中でございますが、御指摘の点はまさにそういう変化に対応すべき政治ないし行政の態度を求められておられると思いますので、われわれもこれを誠実に検討して適切な処理をしていきたいと思っております。
  87. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣にひとつお答えいただかなければならぬのですが、通産大臣はきわめて率直に問題点を指摘されたように私思います。そうすると、この二重課税防止条約は、外務省として一生懸命当委員会に出されているわけでありますが、きわめて問題点がうしろ側にたくさんありまして、結局根本の問題が解決されないで、さまつの条約を出してきているわけですから、これは一体いま出すことに意味があるのかどうかきわめて疑わしいということにもならざるを限ない。大蔵省もそうおっしゃった。通産大臣もおっしゃった。外務省だけが張り切ってこれを通そうとする。そして理由がよくわからない。私はどうもうなずけない。  私はそこで、いまのことに対して御返答を求めるのではなくて、この間から外務省としてはOECDのモデル条約について変更のお話し合いがあったことは御存じのとおりだと思うのです。そしていまOECD内でこの多国籍企業問題についてお話し合いが続いているのも御存じだろうと思うのですね。わが国政府のそれに対する態度というのは、多国籍企業問題を含む問題について、国際経済に内在する問題について議論されているのに対して、日本政府方針は、どうも私が調べた限りでは、OECD側とそれから一緒に参加しておるアメリカ側との議論をながめておるというのが適切な言い方じゃなかろうかと私は思うのです。それで日本政府としては、世界の大勢に順応するというような言い方でぼやっと見ているというような状況になっておる。  御議論があれば承りますが、そうした状況の中でこの租税の二重課税防止条約をこんなにがんばらなければならぬ理由は何か、私はきわめてわからない。むしろそれよりも、租税の二重課税防止条約を通すにあたっては国内措置を緊急に急がなきゃならぬものがものすごくたくさんあるわけであり、外務省の国際経済に対する態度を確立する必要があると私は思うわけなんですが、途中でありますが、外務大臣、ひとつお答えをいただきたい。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 多国籍企業の成長という問題は、通産大臣も言及されましたように、戦後の新しい顕著な現象でございまして、これをどのように受けとめていくかという受け皿が世界経済のいままでの仕組みの中にはなかったわけでございます。われわれは貿易の面で自由な拡大のためにガットというマルチな仕組みをつくって、それに加盟いたしまして応分の貢献をいたしておるわけでございますが、多国籍企業というものをめぐってマルチな受け皿をつくっていくということについて世界はまだ準備ができていないわけでございまして、各国ともこれをいま検討を始めておるのが今日の状態だと思います。  そういう状態の中で二重課税防止条約をお願いする意味はどこにあるかということでございますが、これは申すまでもなく二国間の条約でございまして、この二国間におきまして二重課税防止されるということは、経済交流をはかっていく上におきましての不安を除去いたしまして、それだけの積極的な意味があると私は思うのであります。けれども、あなたが御指摘のように、三つ以上の国にまたがるような場合におきましては、たとえこの条約に特殊関連企業条項とかあるいは情報条項とかいろいろなことがございましても、この状態をとらえてまいるにはおのずから限界があることはわれわれも重々承知いたしておるわけでございまして、したがって、これに対応する道は二つあると思うのでございます。  一つは、いままでのような二国間の租税条約網を無限に拡充して、そのネットワークを充実さしてまいりまして、水も漏らさぬような仕組みをたんねんにつくり上げていく道が一つあると思います。もう一つは、国際的な約束をマルチのベースでつくりまして、そのワク内におきまして各国が秩序ある行動をやってまいることによって、多国籍企業がもたらした租税の逃避あるいは不均衡等を防止してまいるということだろうと思うのであります。  いずれにいたしましても、これには実態をよく究明しなければなりませんし、国際世論がそのように漸次関心も高まり熟成してまいりまして、そういう仕組みをだんだんつくり上げていく機運が出てこなければならぬと思うのでありまして、私どもといたしましては、そういう点に視点を置きまして、鋭意検討を重ねていくべきものと思うのであります。  ただ、繰り返し申し上げますけれども、そういう段階におきましても、いま御提案申し上げておるような二重課税防止条約というものは、二国間のものでございますけれども、それだけのメリットはある、どう考えてみてもデメリットはない、そう思われますので、そういう意味におきまして、不完全なものではございますけれども、国際経済交流の立場から前進したものであるという御評価を賜わりまして御承認を願いたいと思っております。
  89. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ここにありますのは「外資問題調査団報告書」と称して、外務省の提示された書類であります。通産大臣お急ぎのようでありますから、通産大臣に対する御質問をまとめて申し上げるわけでありますが、この項目の中の第七項に、多国籍企業に対して「税制上の問題点としては、いくつかの国にまたがる親子会社間における各種の操作により、本来ならばある国の子会社に帰属すべき利潤が親会社または他国の子会社に移転される可能性が存在する。かかるポテンシャルな利潤の移転は、第一に脱税行為であり、また第二には子会社の株主のうち、親会社以外の人々の利益を侵害するものである。したがって、今後外国企業の日本への進出が一段と活発化する際には、特にこの点の監査を厳重にし、かかる弊害が生じないように配慮する必要がある。現にドイツの国税庁はこの点の監査を徹底させるために非常に大きな努力を払っているとのことであった。その他の点でも国際的大企業は一国内のみにおいて事業活動をおこなっている企業に比べて、税負担上の弾力性を持ち有利である可能性がある。例えばドイツでは法人税課税における配当軽課措置の結果、配当を本国に送金して、これを子会社に再投資する外資系企業は、国内企業よりも有利であるといわれている。したがって、今後税制を改正するにあたっては少なくとも外国系企業が国内企業よりも有利とならないよう配慮すべきであろう。」と述べております。これは外務省の報告であります。  ところが、ここにあげたのは確かに通産大臣の御所管でない税金の問題があるわけでありますが、親子会社の親会社が子会社の利益を侵犯し、その子会社の株主の保護ができないというのは通産行政そのものの問題だと思うわけなんですね。またこうした傾向を助長するやり方が大蔵省にはすでにあらわれておる。これは大蔵省において私のほうに前委員会で御提出をいただいた四十九年三月二十三日付の資料であります。大蔵省は海外の事業所等の調査に人を派遣しているわけであります。どれぐらい出ているかというと、四十六年度で二回、四十七年度で三回、四十八年度で三回。人員は延べ人員にして——延べ人員というと普通はよほどすごいたくさんの数字が出るのですけれども、これはこの三年間に六人、六人、八人であります。こういうことで海外事業所の税の更正決定あるいは脱税防止あるいはその指導等ができるわけがないですね、こんな程度で。また親子会社間の税金の操作なんということはこれで押えられるわけないのです。そういう方針にあるわけですね。  そして、またもう一回この本に戻りますが、「企業の実情の把握については、諸外国では政府が従来企業の実態をつかむ資料や統計を入手していなかったことに対する反省が起こっているが(ドイツ、英国、カナダ、オーストラリア等)、わが国においても外国企業の比重が大きくなった場合、その実態を把握できない状態は望ましくないので、少なくとも国内企業なみに有価証券報告書程度の企業の実態に関する資料、統計を政府が入手しうるような制度を整備するよう検討すべきであろう。」こういうふうにしるしてあります。  ところが、今度石油の問題で通産大臣はこの国会開会中、たいへん御奮闘されたというか御苦労なさったというか締め上げられたというか、御苦労なさっているのを私も横でうかがって同情しているわけでありますが、日本にあるエッソの出店あるいはガルフの出店、モービルの出店、これはもう有価証券報告書どころではない、全部わからない。そしてアメリカの国会においてこれらの企業がぼろもうけしたということが報告されたのでどのくらいもうかったかわかり、非常に不快な思いをされたことも明らかだろうと私は思います。外資問題の調査団の報告は、新しいものでなくて四十三年のものでありますが、その後遺憾ながら適切な対策が立ってないということを遺憾とするわけであります。これに一々御答弁をいただく時間はなさそうだと思いますから、これは御理解を得るにとどめまして、もう一つ申し上げておきたい。  日本政府は、このような巨大企業に対してまるきり目をつぶって、考えない、見ない、言わない、つまり見ざる、言わざる、聞かざるというのに近い態度で今日までやってこられておる。これはアメリカ政府そのものが巨大企業に乗っ取られてしまって、大統領ですら巨大企業の代表であるという現状から比べれば、日本はまだ救える余地がある。少なくとも巨大企業の代表とは直接的にはまだ見えないぐらいのきき目があると私は思う。自由民主党政府は、その意味でこの問題についてもう少し適切な対策を立てねばならぬと私は思っているわけであります。  私はそのためにも申し上げるのでありますが、経済関係閣僚協議会というのが三十三年の六月に発足をいたしているようであり、四十年八月に名前は変わったということでありますが、内閣審議室の担当で経済関係の閣僚が協議をなさるシステムもある。また、それを受けて勉強なさるシステムがある。ところが、これがテーマになったことを遺憾にして私は存じない。存じておらないのは、私の情報量が不足だというよりも、これほど大きな問題についてたいしたことをそこで論じられておらない。  日本政府は巨大企業といかに取り組むかという姿勢がなければ、この外資問題調査団の報告書にもあるようにあらゆる問題点が起こってきて、通産行政も税務行政も事実上はナンセンス化してしまうという時代が全面的にやってこようとしておる。いまですらナンセンスな部分が山ほどある。有力なる経済閣僚である中曽根大臣がこれぐらいのことは御存じないわけはないと私は思っているわけなんです。中曽根大臣がどうして放置されているかというのは、逆にいうと中曽根大臣は巨大企業の味方となって、この際自分の将来の政治的方向を決定されるかと考えるのが一番理解は早い。  しかし、私はそう言っているわけではない。私は、この問題を契機にして、二重課税防止の問題を扱うにあたって、これはとんでもないエラーというよりも抜本的エラーとでもいうべきものだと思う。したがって、中曽根大臣はこの問題について取り組む前向きな姿勢を示されるだけではなくて、その対案なり対策なり機構なりを整備されて持ち出される必要があるのではないか。私は大所高所からの議論としてきょうあえて申し上げるわけなんです。大臣の御決意なり御意見なりをこの際伺いたいと思っております。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 多国籍企業の問題については二つのポイントが必要であると思います。  第一は、やはり国際的規制であります。これは将来は多国籍企業の規制あるいは誘導に関する国際条約のようなものができないと、各国がばらばらに押え込んでも一方を押えるだけであって、他方に抜け穴があるという関係になるのではないかと思います。ですから、OECD等で論議がされていると思うので、そういう点については国際協力をさらに進めて、いかにして国際協調でこの問題を取り扱って、将来必要あらば協定条約までマルチナショナルでつくっていくかということを検討すべきであると思います。  それからもう一つは国内的規制でありまして、これはいままで御指摘になったようなポイントをわれわれとしても税制面や運用面、経理面等についてもう一回よく検討し直して御期待にこたえるようにしていかなければならない、そのように思います。
  91. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あまりいい答弁とはいえないけれども、きょうの段階ではやむを得ないかもしれないと私は思いますが、これは御検討いただくだけではなくて、その規制をするために、これほどの大問題ですと——橋をかけることですら建設省と自治省の間で打ち合わせと相談が行なわれ、大蔵省にも相談する。国際協力事業団法案がいまかかっておりますが、国際協力事業団法案ですら農林省と外務省と通産省とがあれほどまでに相談され、機構までつくられ、覚書きまで交換されて話をされる。  私は日本政府のいまのあり方は、小さいことだけ熱心だと痛感しておる。小さな脱税だけには懸命である。大きな脱税には知らぬ顔。大きい問題はきらいである、小さいのはよいことだということばがあるけれども、小さい問題だけ熱心である。だからこういう大きな問題は、いま国際的規制が必要だというふうに中曽根さんが言われたのは大きな前向きだと思うけれども、お隣の席の大平さんにそれをお話になるチャンスは私は永遠になかろうと思います。その一メートルの距離は永遠に結ばれない。国内的規制が必要だというが、大蔵省や国税庁と話すはずがないと私は確信をいたしておる。絶対に打ち合わせしない、全くやらない、それは今日までの経験に徴して明らかです。したがって、中曽根大臣に対する私の不満は、お話だけという感じがする。お話だけでやる気はない。この委員会だけ早く突破して商工委員会に早く戻りたいというだけだ。私は残念に思っている。  だから、これは申しわけない言い方だけれども、大臣がほんとうにそれをやるという確約がなければ、私はお話でだまされてこれで終わりなんですね。確実な話が何にもないのです。ここのお話だけだ。評論家の説法であるとみて差しつかえない。いつまでにどういう機構をつくって、どういうように検討して、どういう答えを出すというのがなければ大臣のお答えにならないのじゃないでしょうか。そうでなかったら、私は文化人としての評論に対する敬意を表したとしても、大臣の御答弁としては承るわけにいかぬ。ひとつお答えをいただきたい。
  92. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はいま渡部先生の話を聞いていろいろ啓発されたところであります。それで非常に重要な問題であるという認識をますます深めたわけであります。したがいまして、この問題に取り組まなければいかぬという考えを非常に強く持ったとたんにいまのような御発言があったので、これはやめなければいかぬかなと非常に失望したところでもあります。自分は誠意を持ってやろう、そういう気持ちでおるので、通産省におきましても今度の機構改革によりまして国際企業課というのをわざわざつくって、これは調査団の報告等もあってそういう課をつくって、入るほう出るほう、ともにこれをどういうふうに規制していくかということを専門に調査させ、立法あるいは政策立案等をやらさせておるのであります。ただ、できたてでございますから、まだ活動は不活発でございますけれども、しかしいま御指摘のような点につきましては私たちも真剣に検討し、われわれの考え方がまとまればほかの省にも呼びかけ、どうせこれは各省共通して取り組まなければならぬ問題で、そういう意味の各省連合の研究会なり検討会なり、いずれわれわれのほうがそういう考えでまとまりましたら申し出をしてやるにやぶさかでございません。
  93. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それではきょうの通産大臣とのお話では、通産大臣が大いに前向きになられたところですから、きょうはお忙しゅうございましょうから、私は通産大臣に対する質疑はこの辺でとどめたいと存じます。  ただ、もう一つ申し上げておきますが、当委員会で外務大臣にあとまだがっちり申し上げるわけでありますが、その中で中曽根大臣に御記憶いただきたいことが一つあります。それは、多国籍企業が出ていきますと、本国の支持をどうしても期待したくなるという状況が生まれてくるわけであります。日本の進出企業は日本国援助を当てにする、護衛を当てにする。それが受け入れ国に対する内政干渉となって大きなしくじりをしたというのは、アメリカでもいやな先例がある。たとえば南米におけるUSフルーツのごとき、革命戦争に介入するだけでなく、CIAの手先などと悪口をいわれておる。そういうものが出てくるわけであります。したがって、本国は受け入れ国に対する内政干渉を放棄し、海外子会社が本国に対して保護を求めないことを保証する、いわゆるカルボ原則というのが、いま国際的に問題になっておるところであります。このカルボ原則というのは、そういう名前で呼ばなくてもけっこうでありますけれども、こうしたことは早く明らかにしておかないと、日本の投資残高が百億ドルに向かって進みつつある段階では、非常に大きな問題となるだろうと一つは思うわけなんです。  それからもう一つは、タックスヘブン国に類似する国家群におけるわが国企業体の進出についての統一見解であります。これは、必ずしも大蔵省当局と通産省当局でゆっくり打ち合わせが行なわれたという問題ではないが、現実としては非常に大きな問題点が急速に起こりつつある問題です。ですから、これらについては早く御検討いただかなければいけない。  それから、西ドイツにおける付加価値税のシステムというものが、多国籍企業に対して非常に有効な働き方をしている旨の指摘がすでにあり、西ドイツは、その意味ではこれらの多国籍企業の進出の非常に大きな、ある意味の被害国であると同時に、対応策もある意味ではわが国より一歩進んでおる。この情報はもっと急速に集められたほうがいいのではないかということを、私はとりあえずの話で思っているわけであります。その辺もひとつお含みいただいたらどうか。御検討に資するために申し上げるわけでありますが、本条約審議にあたって御要望しておきたい、そう思うわけであります。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま御指摘になられましたポイント等につきましては、通産省といたしましてもよく勉強いたしまして備えていきたいと思います。
  95. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それじゃ時間がないようですから、外務大臣に対する質問はこの次に持ち越さしていただきます。
  96. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる八日月曜日、午後一時三十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時二十四分散会