○渡部(一)
委員 ここにありますのは「外資問題調査団報告書」と称して、外務省の提示された書類であります。通産大臣お急ぎのようでありますから、通産大臣に対する御質問をまとめて申し上げるわけでありますが、この項目の中の第七項に、多国籍企業に対して「税制上の問題点としては、いくつかの国にまたがる親子会社間における各種の操作により、本来ならばある国の子会社に帰属すべき利潤が親会社または他国の子会社に移転される可能性が存在する。かかるポテンシャルな利潤の移転は、第一に脱税
行為であり、また第二には子会社の株主のうち、親会社以外の人々の利益を侵害するものである。したがって、今後外国企業の
日本への進出が一段と活発化する際には、特にこの点の監査を厳重にし、かかる弊害が生じないように配慮する必要がある。現にドイツの国税庁はこの点の監査を徹底させるために非常に大きな努力を払っているとのことであった。その他の点でも国際的大企業は一
国内のみにおいて
事業活動をおこなっている企業に比べて、税負担上の弾力性を持ち有利である可能性がある。例えばドイツでは法人税
課税における配当軽課措置の結果、配当を本国に送金して、これを子会社に再投資する外資系企業は、
国内企業よりも有利であるといわれている。したがって、今後税制を
改正するにあたっては少なくとも外国系企業が
国内企業よりも有利とならないよう配慮すべきであろう。」と述べております。これは外務省の報告であります。
ところが、ここにあげたのは確かに通産大臣の御所管でない税金の問題があるわけでありますが、親子会社の親会社が子会社の利益を侵犯し、その子会社の株主の
保護ができないというのは通産行政そのものの問題だと思うわけなんですね。またこうした傾向を助長するやり方が大蔵省にはすでにあらわれておる。これは大蔵省において私のほうに前
委員会で御提出をいただいた四十九年三月二十三日付の資料であります。大蔵省は海外の
事業所等の調査に人を派遣しているわけであります。どれぐらい出ているかというと、四十六年度で二回、四十七年度で三回、四十八年度で三回。人員は延べ人員にして——延べ人員というと普通はよほどすごいたくさんの数字が出るのですけれども、これはこの三年間に六人、六人、八人であります。こういうことで海外
事業所の税の更正決定あるいは脱税
防止あるいはその指導等ができるわけがないですね、こんな程度で。また親子会社間の税金の操作なんということはこれで押えられるわけないのです。そういう
方針にあるわけですね。
そして、またもう一回この本に戻りますが、「企業の実情の把握については、諸外国では
政府が従来企業の実態をつかむ資料や統計を入手していなかったことに対する反省が起こっているが(ドイツ、英国、カナダ、オーストラリア等)、
わが国においても外国企業の比重が大きくなった場合、その実態を把握できない状態は望ましくないので、少なくとも
国内企業なみに有価証券報告書程度の企業の実態に関する資料、統計を
政府が入手しうるような制度を
整備するよう検討すべきであろう。」こういうふうにしるしてあります。
ところが、今度石油の問題で通産大臣はこの国会開会中、たいへん御奮闘されたというか御苦労なさったというか締め上げられたというか、御苦労なさっているのを私も横でうかがって同情しているわけでありますが、
日本にあるエッソの出店あるいはガルフの出店、モービルの出店、これはもう有価証券報告書どころではない、全部わからない。そしてアメリカの国会においてこれらの企業がぼろもうけしたということが報告されたのでどのくらいもうかったかわかり、非常に不快な思いをされたことも明らかだろうと私は思います。外資問題の調査団の報告は、新しいものでなくて四十三年のものでありますが、その後遺憾ながら適切な対策が立ってないということを遺憾とするわけであります。これに一々御答弁をいただく時間はなさそうだと思いますから、これは御
理解を得るにとどめまして、もう一つ申し上げておきたい。
日本政府は、このような巨大企業に対してまるきり目をつぶって、考えない、見ない、言わない、つまり見ざる、言わざる、聞かざるというのに近い態度で今日までやってこられておる。これはアメリカ
政府そのものが巨大企業に乗っ取られてしまって、大統領ですら巨大企業の代表であるという現状から比べれば、
日本はまだ救える余地がある。少なくとも巨大企業の代表とは直接的にはまだ見えないぐらいのきき目があると私は思う。自由民主党
政府は、その意味でこの問題についてもう少し適切な対策を立てねばならぬと私は思っているわけであります。
私はそのためにも申し上げるのでありますが、
経済関係閣僚協議会というのが三十三年の六月に発足をいたしているようであり、四十年八月に名前は変わったということでありますが、内閣
審議室の担当で
経済関係の閣僚が協議をなさるシステムもある。また、それを受けて勉強なさるシステムがある。ところが、これがテーマになったことを遺憾にして私は存じない。存じておらないのは、私の情報量が不足だというよりも、これほど大きな問題についてたいしたことをそこで論じられておらない。
日本政府は巨大企業といかに取り組むかという姿勢がなければ、この外資問題調査団の報告書にもあるようにあらゆる問題点が起こってきて、通産行政も税務行政も事実上はナンセンス化してしまうという時代が全面的にやってこようとしておる。いまですらナンセンスな部分が山ほどある。有力なる
経済閣僚である中曽根大臣がこれぐらいのことは御存じないわけはないと私は思っているわけなんです。中曽根大臣がどうして放置されているかというのは、逆にいうと中曽根大臣は巨大企業の味方となって、この際自分の将来の政治的方向を決定されるかと考えるのが一番
理解は早い。
しかし、私はそう言っているわけではない。私は、この問題を契機にして、二重
課税防止の問題を扱うにあたって、これはとんでもないエラーというよりも抜本的エラーとでもいうべきものだと思う。したがって、中曽根大臣はこの問題について取り組む前向きな姿勢を示されるだけではなくて、その対案なり対策なり機構なりを
整備されて持ち出される必要があるのではないか。私は大所高所からの議論としてきょうあえて申し上げるわけなんです。大臣の御決意なり御意見なりをこの際伺いたいと思っております。