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1974-03-06 第72回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月六日(水曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 松本 善明君       足立 篤郎君    大久保武雄君       小坂善太郎君    小林 正巳君       坂本三十次君    原 健三郎君       深谷 隆司君    大久保直彦君       渡部 一郎君  出席政府委員         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         外務政務次官  山田 久就君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君  委員外出席者         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 仁賀 定三君         外務省国際連合         局外務参事官  野村  豊君         文化庁文化財保         護部記念物課長 古村 澄一君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   土井たか子君     久保 三郎君   大久保直彦君     岡本 富夫君 同日  辞任         補欠選任   久保 三郎君     土井たか子君   岡本 富夫君     大久保直彦君 同月六日  辞任         補欠選任   深谷 隆司君     瀬戸山三男君   大久保直彦君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   瀬戸山三男君     深谷 隆司君   矢野 絢也君     大久保直彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその  生息環境保護に関する日本国政府とソヴィエ  ト社会主義共和国連邦政府との間の条約締結  について承認を求めるの件(条約第三号)  渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその  環境保護に関する日本国政府とオーストラリ  ア政府との間の協定締結について承認を求め  るの件(条約第四号)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその生息環境保護に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約締結について承認を求めるの件及び渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境保護に関する日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  3. 石井一

    石井委員 まず最初に、渡り鳥外交の基本的な姿勢をお伺いいたすわけでございますが、一昨年米国と渡り鳥条約を結ばれ、それからただいま当委員会ソ連オーストラリア二国との同じ条約を審議しておるわけでございますけれども、この一連渡り鳥外交を推進することによる日本外交のメリット、基本的な外務省としてのまず姿勢と申しますか、この点からひとつお話しいただきたいと思います。
  4. 山田久就

    山田(久)政府委員 御承知のように、近年われわれの住む自然環境というか、人間環境、そういうものの保護ということが世界的に非常に関心が高まってきておりますることは御承知のとおりでございます。日本といたしましても、こういう情勢については積極的に大きな役割りを演じていかなければならない、こう考えております。この渡り鳥は、御承知のように自然環境の中においては切っても切れない重要な関係を持つ立場に立っておるというような事情からいたしまして、この渡り鳥条約締結ということに積極的な姿勢をもって臨むことは、自然保護に対する日本世界人類に対する立場を鮮明ならしめるという上において非常な意義があろうと思います。  したがいまして、そういうような意味において、第一にはそういう基本的な態度を示すという点の意義、それからもう一つは、こういうものをやっていくについては何といっても国内におけるつまり国民関心協力というものに待たなければならないわけでございまして、そういう意味において、国民自身のこのことについての関心というものを高めて、つまり協力的な一つの雰囲気、体制姿勢というものを強化するということになっていくことは、それ自身非常に大きな政治的な意義があると考える点が第二点。それから第三には、いまの全般的な自然環境保護というようなこと、これはどうしても国際協力を必要としているわけでございまして、アジア太平洋、この地域、関係方面の同様の関心協力を深めていくということによって全般の体制をつくり上げるということが目的を達成する上に不可欠の条件である。そういう意義のあるものに対して積極的な態度をとるという日本態度を鮮明にすべきだということで、このものに対して外交的にも積極的な姿勢をとるべきだといってやっているような次第でございます。
  5. 石井一

    石井委員 日本が地理的にアジアあるいは大洋州、太平洋をも含めて渡り鳥のかなめの位置にある、こういうことでありますから、ひとつそういいう立地的な条件を生かして、広範な鳥獣保護国際ネットワークをつくっていくことは、環境上も非常にいい。そういうことからそういう国際ネットワーク構想環境庁考えておるといわれておりますが、いま外交的な基本的な姿勢をお伺いいたしましたけれども、環境庁としてはそういう構想を持っておられて、それを日本外交と調和させながら強力に進めていきたい、こういうお考えですか。
  6. 江間時彦

    江間政府委員 お答えいたします。  ただいま政務次官お答えになりましたように、渡り鳥といいますのは、単に日本だけではなしに、諸国間を行ったり来たりする鳥であります。それから渡り鳥の持っている性格考えますと、こういうものの存在が最もよく自然をあらわす指標にもなる。さらに現在見直されております非常に経済的な価値もさることながら、非貨幣的な価値を再認識するというような世界的な風潮もございます。そういうふうな意味で、国際間においてはできるだけ渡り鳥を通じて条約を結び、保護をはかるというのがこれからの方向だと考えまして、われわれ意欲的にその方向を進めたいと思っておるわけでございます。また国内的にもできるだけ条約によるとよらざるとにかかわることなく、十分な措置をとっていきたいというつもりでございます。
  7. 石井一

    石井委員 政府は、アメリカソ連オーストラリアに次いで他の諸国ともこれらの条約の予備的な交渉を進められておるのか、またあるいは国内的なそういう検討を進められておるのか、そういう点について、現在の進捗状況というものをひとつお教えいただきたいと思います。
  8. 山田久就

    山田(久)政府委員 これまでのところは、御承知のように、一昨年アメリカとの同条約を署名し、また昨年十月の十日にソ連と、そしてことしの二月豪州と、こういうことで進んでまいっておるわけでございまして、ここで考え得るのはまあ当然中国という問題になるわけでございますけれども、いずれは同じような方針でそういうところに進んでいくということになると思います。ただ、中国との間には一連実務協定というようなものを、ちょうど始めたばかりでございまするので、先方とのいろいろな意見を交換しつつ漸次そういうところにいこう、こう考えております。ただいまのところはそういうところでございます。  ただ、ソ連の場合にも、そして豪州の場合にも、この種の条約をつくったのは日本とのが最初、こういうことで、いわばその点においてはわれわれがいい意味でイニシアチブをとってきておるという点は非常に評価されていいのじゃないかというふうに考えております。
  9. 石井一

    石井委員 中国とは当然この問題が、実務協定締結された後に持ち上がってくると思うのでありますけれども、これについて一説には、ここにも非常に鳥が多く、二百種以上のものが確認されておるというふうなことを聞きますけれども、この間の一連政治外交交渉において、いずれはこういう問題も取り上げるというふうなことが議論されたのかどうかということが一点と、それからもう一つは、民間ベースでこういう話し合いが進んでおるやに聞くのでございますけれども、そういうふうな点で、何らかの具体的な動きというふうなものを外務当局としてはつかんでおられるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  10. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。  中国との一連話し合い、従来から行なわれております話し合いの経過におきまして、渡り鳥保護に関して話し合いがあったかという御質問でございますが、現在のところ渡り鳥保護に関しまして中国側と具体的に件名が出て話し合ったという事実はございません。  それから、民間の間でこういう渡り鳥保護に関する特別の動きがあるかどうかのお尋ねでございますが、この点に関しましては私も実はつまびらかにしておりません。あるいは担当、環境庁のほうでお聞き及びのことがあるかもしれませんが、私どもとしてはまだ聞いておりません。
  11. 仁賀定三

    仁賀説明員 民間ベースのお話でございますが、三年前に経済視察団中国を訪れました際に山下同友会専務、その方があちらの要人と会われまして、こういったことを進めたらどうかという接触があったと聞いております。
  12. 石井一

    石井委員 私も何年か前に新聞で、正常化前ですから中国の問題がそう大きくなってないときに、何か鳥の問題が報道されておったのをうすうす記憶いたしておりますけれども、何かあれですね、あとで触れさせていただきたいと思いますが、この分野政府よりも民間のほうが進んでおると言ったらあれですけれども、非常に民間の中にそういう活発な動きがあるということでありますけれども、これはこれでひとつ大いに政府もそういう姿勢で臨んでおられるわけですから、お進めいただいたら非常にけっこうかと思うのであります。  そこでまず、国内予算措置について多少お伺いをしておきますが、非常に鳥の保護に関する予算というものは少ないものである、行政措置というものは非常にまだまだ至らない、立ちおくれが多いということが指摘されておりますが、たとえば四十八年度の環境庁予算を見ると、鳥類関係では庁費として大体一億三千万、その中に鳥類保護対策費がわずかに七千七百万である、こういうふうに私の調査では出ておるわけでありますけれども、四十九年度の予算において、二国とこの条約締結し、さらに国際協力を進めようという場合に、どういう措置がとられたのか、お伺いしたいと思います。
  13. 江間時彦

    江間政府委員 先生指摘になりましたように、現在の時点では鳥獣保護関係予算は必ずしも多いと言えません。四十九年度におきましては、先生がおっしゃいました一億三千四百万に対応する総額といたしまして一億四千五再六十一万五千円というものを計上いたしました。そのおもなるものは国設鳥獣保護区の増設であるとか、あるいは鳥類観測ステーション拡充整備であるとか、あるいは野鳥の森の設置であるとか、絶滅のおそれのある鳥類保護をはかるいろいろな調査費であるとか、さらには水鳥保護をはかるための湖沼を調べる経費であるとか、そういうたぐいのものでございます。先生のおっしゃるような趣旨に沿ってさらに拡充してまいりたいと思うわけでございます。  ただ、この三年間だけをとって見ますと、政府かなり力を入れておりまして、大体この三年間で十倍に伸びたというようなことにはなっております。
  14. 石井一

    石井委員 十年間に十倍に伸びたのかもわかりませんが、昨年から本年にかけて大きく新しい国際条約締結されようとしておるときに、国家予算の伸びから見て特に環境その他こういう分野が重視され、公共投資が繰り延べされた年に、まだまだ基本的な姿勢としてそこの上の実績というものがこれは認められないような気持ちがするのでございますけれども、これで十分やっていけるのですか、いろいろの調査というものに対して十分ではないというふうにお考えなのか、その辺のところはどうですか。
  15. 江間時彦

    江間政府委員 非常にお答えがむずかしいわけでございますが、少なくとも現在の段階におきましては、四十九年度の予算で十分なことをしてまいりたい、将来の問題としてはさらにこれをふやす方向考えてまいりたい、そういうふうに思います。
  16. 石井一

    石井委員 渡り鳥標識調査実態調査などはすべて鳥類民間専門家の手にゆだねられておるというふうに私は伺っておりますけれども、民間団体に依存しておることによって、これでその目的が果たせられておるのか、それとも今後政府としてはもう少しその辺に重点を置いて、予算面実施面でも進めていこうとしておられるのか、この実態はいかがですか。
  17. 江間時彦

    江間政府委員 先生のおっしゃいました調査は一九二四年以来農林省の手で始められた調査かと思います。現在はわれわれの手元で予算をとりまして、山階鳥類研究所事業委託しまして、大体事業量としまして年間約八千羽の渡り鳥標識をつけておるわけでございます。  ただ、事業性格といたしまして、公務員みずからがやるよりも、やはり国が財政措置を行ないまして、民間の有識者あるいは熱心な方々に委託をしてやっていただくほうがいいのじゃないかというふうに考えております。  なお、条約を契機といたしまして標識調査拡充強化することにいたしております。昭和四十七年以降三カ年計画で全国に三十カ所の観測ステーション網整備しておるところでございます。今後とも積極的にこれをやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  18. 石井一

    石井委員 私が指摘しておりますように、わが国のこの分野における方法というものは、何か外部にたよっておるというふうな姿勢がうかがえてならぬわけでありますけれども、やはり実際にこれの万全を期すためには、継続的に、学術的に正確なデータを収集していくというふうな体制づくりが非常に欠けておる、そういう指摘がなされておる向きがあるわけです。いままでの環境庁からの御答弁は、もう万事うまくいっておるんだというふうな印象を受けるのですが、こういう席ではもう少し率直に、こういう点は困っておるんだ、こういう点はもっと補強すべきなんだ、やはりひとつ前進しようという姿勢でこの条約に取り組んでおるわけですから、当然そういう御答弁が、もし満足されておるならけっこうでありますけれども、出てきてしかるべきだと思うのであります。  そこで、もう少し具体的にお伺いしますが、特に指摘される面は、鳥類保護あるいは自然保護専門官の不足が非常に大きい、こういうふうにいわれておるのですが、いま専門官が何名環境庁におられるのか、内部あるいは外部もあると思いますが、特に私は内部の問題について伺っておるわけです。  それからその次に、鳥類保護員拡充技術者養成国内体制の具体的な整備というふうな問題に関して、いままでどおりでいいのか、あるいはここをこういうふうに改善しなければ、これらの条約というものが十分に全うできないとか、この辺についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  19. 江間時彦

    江間政府委員 先生の御指摘専門官の点でございますが、非常にお恥ずかしいわけでございますが、専門官というのは現在われわれのところでは、いわゆるそういう正式の肩書きを持った専門家はおらぬわけでございます。この点につきましても、われわれ今後いろいろ努力をしてまいりたいと思います。さらにこの種の技術者養成についても、できるだけ努力をしてまいりたいと思っております。
  20. 石井一

    石井委員 そうすると、現時点においては、ほとんど外部に依存をする形でやってまいった、そして内部では非常にそういうスペシャリストに欠けておる、しかし今後これらの養成拡充というふうなことに関しては積極的に取り組んでいく姿勢環境庁の中にあるのだ、そういうふうに理解していいわけですか、それともこれまでどおりのやり方で、これは日本的方式として、そういうやり方のほうがかえってやりやすいのだというお考えなのか、どうなんですか。
  21. 江間時彦

    江間政府委員 現在われわれのやっていることは必ずしも十分でない、これを大いに拡充してまいりたいという姿勢でございます。
  22. 石井一

    石井委員 日ソ日豪付表に、標識で確認された鳥と、標本とか写真などで確認された鳥の数が、ここへ二百八十七と六十六ですか、あげてありますが、そこでこの一条に出ております一項の(a)による鳥類、足に標識をつけて確認するという数はどれくらいか。それからその次の(b)、ここにいろいろと説明がついております。写真その他でこれは確認するのでしょうが、その信頼に基づいて確認された鳥は何種類くらいずつあるのですか。
  23. 江間時彦

    江間政府委員 日ソ条約におきましては、(a)に該当するものが二十二種類、それから日豪協定では五種類、それ以外のものは(b)に該当するというふうになっております。
  24. 石井一

    石井委員 これはしろうとの考えですけれども、非常に数が少ないというふうに思うのですが、この点に問題はないのですか。
  25. 仁賀定三

    仁賀説明員 足輪で確認いたします作業でございますが、これは日本では、先ほど局長お答えいたしましたように、順次数をふやしております。ソ連でつけた足輪日本のほうに渡り鳥がやってまいっております。あるいは豪州でつけたものが渡ってまいる。そういうお互いの国でつけたものを合計して、いままで両国で確認されたのがそういう数字であるということです。今後とも条約に伴いまして、両国ともこの面の調査を充実したいということで私ども話し合っておる次第でございます。
  26. 石井一

    石井委員 いま私は条約に賛成の立場で種々質問をしていったわけでありますけれども、この条約からくるデメリットとでも申しますか、たとえば日ソ渡り鳥条約の指定の保護鳥であるアトリの大群が、九州地方の佐賀でしたかその他の農産物に対して、たいへんな被害を与えたというふうなことが報道されておったこともございますけれども、これは地元の農民にとってはたいへんなことである。この点、今後これを推進していく場合に、この保護鳥というものに対して、あくまでも保護していくというのか、ある程度そういうふうな被害というものは、お互い認識のもとに、何らかの規制捕獲といいますか、そういうふうな方向でいくのか、この点はどういうふうにお考えなんですか。
  27. 伊達宗起

    伊達政府委員 私のほうからは、条約文からの御説明をいたしたいと思います。  第二条をごらんくださいますと、渡り鳥捕獲等を禁止してはおりますけれども、例外を認めることができるということになっておりまして、特にただいま御指摘のような農産物への害というようなものにつきましては、第一項の(b)で「人命及び財産保護するため」という規定がございます。その財産というところで、農産物に対する害を及ぼすような事態が発生する、また害を及ぼすような鳥がいるということになりますと、その害を排除するという限りにおきましては、それらを捕獲するということは、条約の違反ではないというふうに解釈しております。  実態面につきましては、環境庁のほうから補足があると思いますが、条約面からはそういうことでございます。
  28. 江間時彦

    江間政府委員 先生がいま御指摘になりましたアトリの件でございますが、たまたま前回は、例年いつも渡ってきます場所と違うところに来たというので、短期的な混乱があったことは事実でございます。また、われわれ必要な限度で捕獲することを許可いたしたわけでございます。結果的にはそれほど鳥に大きな被害を与えることなく、また住民にもそれほど大きな被害を与えることなく、処理できたというふうに考えております。
  29. 石井一

    石井委員 確認しておきますが、そうすると、この条約があるといっても、独自の政府立場で、この二条に従ってこれを捕獲するというふうなことができ得る、そういうことになっておって、いま言ったような国内資源保護とかなんとかということには万遺憾なきような形になっている、こういうふうに考えていいわけですね。
  30. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのように考えてよろしいと思います。
  31. 石井一

    石井委員 それではもうあと二、三点だけですが、お伺いします。  これに関連いたしまして、直接の問題ではございませんが、態度がはっきりしておりましたら、ひとつお答えをそれぞれからいただきたいと思いますが、一九七二年六月の国連人間環境会議準備会議で提唱された国際湿原保護条約に対する日本態度はどういうことになっておるのですか。
  32. 野村豊

    野村説明員 いま先生の御指摘のございました条約は、一九七一年のイランラムサールでできました国際湿地保護条約のことかと存じ上げております。この条約は、水鳥の主たる生息地でございます湿地のうち国際的に重要な湿地のリストをつくりまして、国際的に協力いたしましてこれを保護管理いたそうという趣旨でございまして、いま申し上げましたとおり、一九七一年の二月にイランラムサールというところで作成されたわけでございます。現在ユネスコ本部で署名のために会合されておるわけでございますが、いまのところこの条約に署名いたしました国はイランとフィンランド、イギリスの三カ国でございます。したがいまして、この条約はまだ発効はしておらないという状況でございます。  しかしながら、この条約趣旨は、本日御審議いただいておりますところのいろいろな渡り鳥条約趣旨にも非常に通ずるものがございまして、自然保護渡り鳥保護認識に立つものでございまして、われわれといたしましては、この条約にも積極的に参加協力していくという考え方のもとに目下部内で検討さしていただいておるという段階でございます。
  33. 石井一

    石井委員 次に、野生動物国際取引に関する条約を批准してない点ですが、一九七三年三月に署名された絶滅のおそれのある野生動物国際取引に関する条約を批准してない理由はどういうことなんですか。
  34. 野村豊

    野村説明員 いま先生の御指摘のございました条約は、ワシントンにおきまして作成されました通称野生動植物取引規制条約かと存じ上げます。この条約は、いま先生の御指摘ございましたとおり、絶滅のおそれのある野生動植物輸出入及び海からの移入を規制いたしまして、そのための国際体制をつくろうという趣旨でございます。わが国は昨年、一九七三年の四月三十日に署名いたしたわけでございます。政府といたしましては、この条約趣旨を尊重いたしまして、できる限りすみやかにこれを批准すべく目下関係各省と協議中でございまして、その準備を進めておるわけでございます。しかしながら、この条約を批准いたすにあたりましては、必要な関係国内法令整備その他その輸出入に伴いますところの税関その他のチェック、その他のいろいろな体制をつくり上げるというようなこともあるわけでございます。特にこの条約付表に掲げられておりますところの保護の対象となっております標本というものは数百にものぼるということでございまして、そういった標本の識別とかそういった技術的の問題もございますので、そういったものも含めましていま検討中でございます。  ちなみに、この条約は批准した国はまだ一カ国もございません。したがいまして、そういった意味でこの条約はまだ発効はしておりませんけれども、いま申し上げましたとおり、いずれ国会の御承認を得るようにわれわれといたしましては目下準備をいたしておる、検討いたしておるという段階でございます。
  35. 石井一

    石井委員 昨年でございましたか一昨年でございましたか、大石環境庁長官のときにストックホルムかどこかで国連環境会議というのが開かれまして、環境問題が非常に急激に関心を集めておったときでありますからわれわれも非常に関心を持って見ておったわけです。たまたま私のほうの市長が、いま革新になりましたが、それの随員で行ったりしたから特によく記憶をしておるわけですが、それは冗談といたしまして、第二回の国連人間環境会議の開催時期、その予定地、これを本年の第二十九回の国連総会で決定されるというふうに伺っております。わが国は公害最先進国なんて言われているわけですから、そういう意味で、こういう会議わが国政府としては積極的に誘致されようとしておるのかどうか、そういうことが外務当局検討され、今回の国連会議に対してそういう形で臨まれようとしておるのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  36. 山田久就

    山田(久)政府委員 わが国は非常にこの問題に関心を持っているわけでございまして、すでに第二十七、二十八回の国連の総会で第二回の会議日本招致という意向を明らかにしていることは御承知のとおりでございます。ただ、これが一応明年というようなことになっているわけですけれども、いろいろなこれまでの準備その他の点から、もう少しいろいろな体制が整ってからやったほうがいいのじゃないかという意見もございまして、時期はあるいはちょっと延びるというようなことになるような条件も起こっておるようでございまするけれども、こまかい点、ひとつ関係官のほうから答えてもらいたいと思います。
  37. 野村豊

    野村説明員 いま山田政務次官から御答弁のございましたとおり、わが国は、この第二回の人間環境会議の問題につきまして非常に積極的に取り組んでおるわけでございます。いま御指摘のございましたとおり、この人間環境会議につきましては、七二年の第二十七回国連総会の決議によりまして、この問題につきましてはことし開かれますところの第二十九回国連総会で決定するということになっておったわけでございます。しかしながら、御承知のとおり第一回の人間環境会議が七二年ストックホルムで開かれまして、いろいろ環境基金とかあるいは管理理事会とかできたわけでございますけれども、何ぶん国連という大きな機構でございまして、準備といいますか、活動そのものがまだ緒についたということでございまして、場合によってはその決定はおくれる可能性もあるかもしれないというふうに見込まれるわけでございます。この問題につきましては、わが国といたしましてはすでに申し上げましたとおり、非常に積極的な意向を表明しておりまして、先ほど申し上げました七二年の第二十七回国連総会でございますとか、それから七三年の環境計画管理理事会でございますとか、あるいはまた昨年の二十八回の国連総会におきまして、この第二回の会議日本に招致したいということを非常に強く表明しておりまして、その実現のためにいま積極的な働きかけを行なっておるわけでございます。  そういう状況でございまして、まだそのほかわが国以外にはメキシコ等がこの会議を招致したいという考えもあるやに聞いておりますけれども、そういった国との調整もございますけれども、いずれにいたしましても、わが国といたしましてはこの会議をぜひ日本に招致したいというふうに考えておる次第でございます。
  38. 石井一

    石井委員 ほかのどの国がやはり同じような気持ちでこの会議を誘致したいという希望を持っておるのですか。非公式に表明されたものでもけっこうですが……。
  39. 野村豊

    野村説明員 現在までに表明されました国といたしましては、日本以外ではカナダとメキシコがあったわけでございます。カナダは一九七二年の六月の人間環境会議のときにもそういったことを申した経緯がありましたけれども、その後カナダのほうはあまりこの環境会議につきましては拘泥しておりませんで、特に現在はそれを招致したいという意向は示しておりません。先ほど申し上げましたメキシコがやはりこの会議を招致したいということを内々言っておりまして、したがいまして、そういった問題につきましてはやはりメキシコ等含めまして、かつまた国連の事務局も含めましてそういった問題を調整しながらやっていきたいというふうに考えております。
  40. 石井一

    石井委員 これで終わりますが、ただいま議題となっておりますこの二つの渡り鳥条約ソ連における、あるいはオーストラリアにおける批准の状況はどういうふうになっておりますか。これを最後にして私の質問を終わらせていただきます。
  41. 伊達宗起

    伊達政府委員 批准の状況でございますが、オーストラリアにおきましても、またソ連におきましてもまだ批准の手続と申しますか進行中で、批准は終わっておりません。豪州側におきましては、条約締結は女王の大権事項でございまして、議会の承認と申しますか、そういうものは必要とされておらないのが憲法上のたてまえでございますけれども、一九六一年ごろから重要な条約につきましては法案をつくるとかないしは動議提出というような形で議会のあらかじめ同意を取りつけておくというような方式が慣行となっております。本協定につきましてはそのような手続をとることなく、行政評議会、これは内閣に相当するものでございますけれども、そこでの批准はできるという手続になっているように承知しております。またソ連のほうにおきましては、もちろん済んではおりませんが、憲法によりますれば、批准権者は最高会議幹部会になっておりまして、これも時期を合わせてわりにスムーズに批准ができるように聞いております。
  42. 木村俊夫

    木村委員長 河上民雄君。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 本日の議題の二つの渡り鳥条約につきまして数点お尋ねしたいと思います。  まず初めに、たしか昭和四十七年にアメリカとの渡り鳥条約の審査が行なわれましたが、それと比べて今回の二つの条約は、その条約の構成あるいは内容において特に変わった点がございましたらお示しいただきたいと思います。
  44. 山田久就

    山田(久)政府委員 実質的には内容はほとんど違っておりません。ただ、この保護の精神とか目的等について、それぞれの国の立場からいろいろ表現が違う。人間の生活環境保護ということに重きを置くことと違って、趣旨は同じだけれどもちょっと違った表現を、たとえばアメリカでいえば、レクリエーション上、芸術上、科学上、経済上大きな価値を有する天然資源であることというような点を基礎にして、目的環境保護といいますか、そういう点が違っている程度で、基本的には違っておりません。
  45. 河上民雄

    ○河上委員 それではちょっとお伺いいたしますが、オーストラリアとの間の渡り鳥条約にはパプア・ニューギニアへの適用に関する交換公文がついております。これを見ますと、パプア・ニューギニアが近くオーストラリアから独立するのではないかと思います。そういうように承知しておりますが、それに伴ってこの渡り鳥条約の適用について交換公文がかわされているのだと思います。これによりますと、パプア・ニューギニア地域への適用についてはパプア・ニューギニアの同意が条件になっております。ところが現在パプア・ニューギニアは、あの島の西のほうは西イリアンという名前でインドネシア領になっておりまして、東の北のほうの部分は国連の信託統治で豪州、南のほうが豪州の属領のような形になっております。この場合、現在の地位というものは非常に違っているわけですね。今後これが二つ一緒になって独立するのだろうと思うのですが、そういうようなやや複雑な情勢になっておりますけれども、この交換公文でパプア・ニューギニア政府という表現がなされておりますけれども、性格の異なるものが二つ一緒になるということを考えてみますと、このパプア・ニューギニア政府というものは一体どういう性格を持っておるのか。  たとえば具体的にいいますと、軍事、外交は依然としてオーストラリアが握っているのかどうか、かつて昔の英連邦がオーストラリア、カナダなどの軍事、外交権についてイギリスの女王が握っていたように、そういうような状態になるのかどうか、そういうようなことについてちょっとお伺いしたいと思います。
  46. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。先生指摘のように、パプア・ニューギニアの歴史というものは若干異なっておりまして、パプアは確かに現在オーストラリアの属領ということになっております。それからニューギニアのほうは国際連盟当時もオーストラリアの委任統治領でございましたが、国際連合が発足いたしますと、オーストラリアを施政権者とする国連の信託統治地域ということになってきたわけでございます。しかしながら、オーストラリアといたしましてはこれを単一の、つまり自分の属領と、国連の信託による信託統治地域を単一の地域といたしまして統治をしたいという希望を表明いたしまして、一九四九年に国連承認を得まして、それ以来国内法でパプア・ニューギニア法という法律に基づきましてこれを単一の地域として統治してまいったわけでございます。その後、御承知のように独立をさせるという方向に進んで、すでに昨年の十二月一日以来自治権を分かち与えまして、防衛及び外交に関する権限以外はパプア・ニューギニア政府というものを発足させまして、それに権限を与えている、そのような状況になっております。
  47. 河上民雄

    ○河上委員 そうしますと、このパプア・ニューギニア政府の同意というのは、いろいろ文句はありますけれども、パプア・ニューギニア政府が独立したあと、あらためてこの渡り鳥条約に関して日本政府とパプア・ニューギニア政府との間に再交渉の必要があるのかないのか、全くオーストラリア政府との話し合いだけで、あとオーストラリア政府とパプア・ニューギニア政府の間のやや内部的な話し合いだけでいいのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  48. 伊達宗起

    伊達政府委員 国際法上非常にむずかしい御指摘があったわけでございますが、私どもといたしましては、この条約性格、内容、渡り鳥保護ということからいたしまして、一般国際法上は、かりに近くパプア・ニューギニア政府が独立いたしました際には豪州政府との取りきめによりまして、パプア・ニューギニア新政府とそれから豪州との間に独立の際に承継の取りきめが行なわれることを要請しているわけでありますけれども、そこで承継されて差しつかえないものではないかというふうに考えております。もっともこれは向こうのオーストラリア政府とパプア・ニューギニア政府との間の承継を取りきめる条約といいますか、協定、約束でございまして、これは日本が全然拘束されるわけはないわけでございます。したがいまして、その時点に至りましたならば、またパプア・ニューギニア政府豪州政府との承継関係の取りきめの内容等を見つつ、私どもとして新たにパプア・ニューギニア政府協定を結ぶかないしは単に承継関係の確認をもって済ませるか、そういうところの判断をして処理したいというふうに考えております。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 これは非常に大事なことをいまおっしゃったのですけれども、その問題について日本側が一方的にこういうふうにするということをきめられないわけですね。つまりパプア・ニューギニア政府オーストラリア政府との間の権利義務の承継に関するある取りきめができない限りは、はっきりしないと、もし逆に承継は自動的に行なわれないのだというそういう取りきめがオーストラリア政府とパプア・ニューギニア政府との間になされた場合には、日本政府はあらためてこの条約についてすら——あるいはもっと経済的ないろいろなコミットがあるかもしれませんが、経済援助とかそういうような問題になったら、なおそういうことが出てきますが、その場合には、日本政府はあらためてパプア・ニューギニア政府との間に取りきめを結ばなければならない、そういう可能性を残しているようないまの御答弁であったように思うのですけれども、その点もう一度正確に。
  50. 伊達宗起

    伊達政府委員 若干ことばが足りなかったようでございますが、パプア・ニューギニアとオーストラリアとの間に、パプア・ニューギニアの独立に際しまして承継関係が、何を引き継ぐかの取りきめが行なわれるということは、ただ単に予想しておるだけでございまして、私どものその時点におきます判断の資料といたしまして、そういうものを見た上で具体的な処理のしかたをきめたいというふうに一般的には言えるわけでございますけれども、私どもといたしましては、一般国際法上当然に承継されてしかるべきものであるという理論上の立場はとってございます。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、この交換公文は当然そういう継承がなされるということを暗示しておるものであって、日本政府としては、もしあらためてやってくれと言われたときに、いやこういう交換公文があるじゃないかということで、われわれのほうはもう当然継承されるものだと承知していた、いまさらそう言われても困るというふうに反論できる根拠はこの交換公文にあるのかどうか。そうしないと、われわれがこの国会で、かりに内容的におそらく全会一致というような形に過去の経緯から見てなるかもしれませんけれども、そうした場合に、実はこういう部分についてはこういう問題があとから出てきたということではたいへん困るわけなんです。その辺ひとつ……。
  52. 伊達宗起

    伊達政府委員 私どもといたしましては、ただいま御説明申し上げましたように、一般的に承継されるべきものであるという立場でございますので、この交換公文は当然にその論拠として重要なものであるというふうに考えております。
  53. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ、ちょっとそこのところ、理論的にはやや何か争点の余地を残しておるような感じを受けるのでございます。  このことばかりやっておってもどうかと思いますけれども、いまのところは、何しろオーストラリア政府とパプア・ニューギニア政府とは非常に友好的な関係にあるのだ、独立後もあるし、現在独立する過程においても友好的な関係にあるのだという前提に基づいてこの条約が進められておるわけなんですけれども、大体、独立という場合には、過去の経緯から見まして、非常に敵対的関係を媒介として行なわれることが多いわけですね。ですから、理論的には必ずうまくいくのだという前提では、ちょっとあぶなっかしいように思うのです。その点ちょっと、この交換公文を拝見した限り非常に不安な感じを私は受けたものですから御質問しているわけですが、もう一度お願いいたします。
  54. 山田久就

    山田(久)政府委員 御承知のように、豪州とニューギニア、いまのパプア・ニューギニアですね、これはあの種の信託統治を受けたあるいは属領が独立する場合の例としては、たいへんよくやっている優等生だというふうにいわれておって、その関係は非常にいいわけです。かてて加えて、国際法上の、条約上のたてまえからいえば、外交権はいまの豪州にありまするから、したがって、この渡り鳥条約は当然パプア・ニューギニアに適用されるというたてまえをとってしかるべきものであるけれども、しかしながら豪州国内関係から、これはあらかじめ、自治を獲得した政府外交権は代表しているということによって、そういうふうにやっていく、これが自分らの義務である、こういうたてまえをとって、念には念を押しているというかっこうでございまするので、したがってそういう意味では、御懸念のようなことはないのだろうと思います。  一般的に見て、多数国間条約と、新しい植民地なんかが独立のときも、政治的でないものには一般的には原則として引き継ぐという国際上の慣例にもなっておりますし、それにかてて加えて、いま申し上げたような交換公文というものも行なわれている。交換公文そのものは、それが終わってしまえば、目的を達すればなくなるということですけれども、効果の点については、いま言ったような豪州との政治的ないままでの関係、それからこういうものをやっているという意味では、御懸念のような点は最も少ないというようなことになるのじゃないか、こういうふうに思っております。
  55. 河上民雄

    ○河上委員 パプア・ニューギニアというと、いままでわが国では非常になじみの薄い地域のようでございますけれども、私、最近非常に個人的な経験ですが、オーストラリアから女子学生がいま東京へ留学してきておるのです。その方はパプア・ニューギニアから来ておられるわけなんですね。オーストラリア人というので白人が来るかと思ったら、黒人の方が来た、こういうようなことで、初めて、パプア・ニューギニアというのを非常に身近に感じたようなことであります。そんなことでちょっと、ここに出ておりました交換公文が将来どういうふうになるかということについてお尋ねしたわけです。  要するに、結論からいいますと、独立後もオーストラリア政府、パプア・ニューギニア政府との関係、つまり軍事、外交についてはオーストラリア政府が責任を持つという点から見まして、あらためて日本政府としてはこの条約に関し、もう一度再交渉する必要はないというふうにお考えであるというふうに伺ったのですが、それでよろしいわけでございますね。
  56. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのように御了解いただいてよろしいと思います。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、内容に少し入って伺いたいと思いますが、昭和四十七年のアメリカとの渡り鳥条約の審査の会議録を拝見いたしますと、ストックホルム会議では野生動植物保護条約案が取り上げられるだろうというようなことで、そのことが論議されておりますけれども、その後これはどういうふうになっておるか、またこういうふうに二国間の渡り鳥条約との関係、そしてまた、そういうような条約が将来二国間の渡り鳥条約の基本になるような意味合いを持つのかどうか、それについて伺いたい。
  58. 伊達宗起

    伊達政府委員 ストックホルム会議野生動植物保護に関する条約というものが予定されたということでございますが、先ほどもちょっと政府側からの御答弁にございましたように、野生動植物取引規制でございますとか、それから国際条約といたしましては、さらに国際湿地保護条約というようなものができ上がっているようでございます。いずれにいたしましても、これらの条約趣旨は、渡り鳥を含めまして野生の動植物を保護していこうということでございますので、その趣旨におきまして、日米渡り鳥保護条約、それからここに御審議願っております日本渡り鳥保護条約と同一のものであろうと思われます。その間でどういう関係にあるかということになりますと、二国間と多数国間の条約でダブって保護の規定がきめられるということになりましても、事柄が保護ということを目的とするものでありますので、別に保護がますます手厚くなるということで、特に差しつかえはないのではないかというふうに考えて二国間条約も進めますし、また先ほど御答弁申し上げましたように、多数国間の条約にも加入のために前向きに検討しているという状況でございます。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 条約をここでかりに結びまして、もしここでかりに二つの条約を結びますと、一応三カ国との間に二国間条約が結ばれる、こういうことで鳥類、また人間としての生活環境保全の意味でも非常にけっこうなことだと思いますが、ただすでに御承知のとおり、ここ十数年にわたって進められております高度成長政策によって日本列島全体が公害先進国という汚名を受けるような状態になっていることは、ストックホルム会議でも世界的に明らかにされたところでございます。そういう中で、一方では渡り鳥条約を結んで鳥類保護につとめるということを国際的に約束するわけでありますけれども、その裏づけになる渡り鳥生息地環境を真剣に保全するために措置をしているかどうか、一方ではめちゃくちゃにしながら、他方では国際的な約束をするということになりますると、この国際的な約束は非常に誠意のあるものではないということになってしまうと思うのであります。  そこで一つの例として、干がたのことを伺いたいと思うのであります。日本の代表的な干がたとして、むつ小川原、それから東京の葛西、愛知の汐川、三重の木曾川などございますが、兵庫県内で私の選挙区の隣になりますが、浜甲子園のケースがございます。ところが、そういういま名前を幾つかあげたところも、同時に日本の代表的な開発計画の適用地になっているわけですね。こういう問題をどうするかということは、実は渡り鳥条約をほんとうに誠実に履行するということを天下に声明するゆえんでもあろうと思うのですね。  兵庫県の浜甲子園の場合は、これはもう御承知のとおり代表的な渡り鳥生息地であります干がたなんですけれども、ここはちょうど民有地になっておりますので、業者による埋め立て申請がもうすでに出ておる。ところが、環境庁の委託による日本鳥類保護連盟の調査報告書によりますると、浜甲子園のこの干がたの状況というのは次第に悪くなってきているということがはっきりと出ているわけです。この日本鳥類保護連盟というのは民間の団体ですけれども、国から費用を出して、委託費を出してやっている。そこではっきりとこれは非常に困った状態になってきているということを言っているわけですね。  そうなりますと、政府の政策は、一方ではそういうことを、破壊を推し進め、他方では推し進めないまでも破壊を防止することはできないという状態で、はたしてこれでこの渡り鳥条約をほんとうに履行する誠意があるのかどうかということになろうかと思うのです。この浜甲子園の埋め立て問題に対して政府はどういうように対処するおつもりか、いま日本の法体系ではこれを永遠に差しとめることは非常にむずかしい。そこで一体政府はどうするおつもりですか。
  60. 江間時彦

    江間政府委員 先生がいま御指摘になりました浜甲子園の干がたでございますが、われわれが調べましたところでも、現在鳥類が大体八十四種類ほど生息しておるということが知られておるわけでございます。ただ、面積はあまり広くなくて、わずかに一ヘクタールにすぎない干がたでございますが、現在どんどん干がたがなくなって非常にわれわれ憂慮しているのが現状でございます。  御承知のように、ここにつきましてもやはり埋め立て計画があるようでございます。われわれ、県に対しましてこの計画をできるだけ変更させるように指導してくれということを強く働きかけまして、県のほうではどうやらその方向で動いてくれておるというようにわれわれは承知しております。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 そういう問題が起こった場合に、法的には渡り鳥生息地をほんとうに守っていく、その武器があなた方にあるのかどうか、なければこうすべきであるというような御意見があるのかないのか、その辺をお伺いしたい。
  62. 江間時彦

    江間政府委員 自然環境、なかんずく干がたを守る法令でございますが、これにつきましては自然公園関係あるいは自然環境保全をしなければならない地域、そういう明瞭な地域につきましては、われわれ法律を基礎にいたしまして規制をすることが可能でございます。さらに最近では公有水面埋め立てにつきましての規制も強化されまして、これにつきましてもわれわれ法令を根拠にすることができると思います。  そのほか公共関係の大きなプロジェクトにつきましては、事前にわれわれのほうに協議が来るということになっておりまして、それにつきましても十分発言ができる。そういう地域からはずれまして事実上われわれが非常に困ったなというような区域がないことはないわけでございますが、そういうところにつきましても事実上の行政指導でかなり強い発言をやっておるというような現状でございます。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 たとえば青森県のむつ小川原などの開発大計画に対して、それは困るというようなことを言われたことがありますか。
  64. 江間時彦

    江間政府委員 現在まだあの計画は具体的にわれわれのほうに相談が来ておるという段階ではないと思うわけでございますが、これにつきましてもわれわれ十分環境アセスメントを行ないまして、もし悪い影響があるということならば十分対処してまいりたいと考えております。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 あの問題はだいぶ前からナショナルなレベルでも、あるいは地方のレベルでも大問題になっているわけですね、選挙をやったりなんかして。あなた方のところに来ていないから私のほうじゃまだ発言する機会じゃないというようなことをやっておられると、さあ、どうですかと意見を聞きに来たときには、もうすでにすべてが進んでしまっておる、予算もついてしまっておるということになってしまうのじゃないかと思うのですがね。そういう点もっと本気でやられるおつもりでないと、気がついたときには干がたは全然ない、ただ条約だけがあるというようなことになりかねないと私は思うのですね。  もしほんとうに条約締結し、またそれを急がれるというならば、そういう点をもっとはっきりされる必要があろうと思う。現に浜甲子園の問題でも、兵庫県としては一生懸命やっておられるようですけれども、しかし、要するに防ぐのにやっと一ぱいだという状態なんです。業者がやると言ったらどうしようもないというような状態になってきているわけですね。ですから、地方がやっておるから何とかなるでしょうということじゃ済まないと思うのですが、その点もう一度。
  66. 江間時彦

    江間政府委員 おっしゃるように、過去の経緯から見ますと、すべての計画が設定されまして、事実が進行して、そうしてわれわれのほうに協議が来るときには、もうすでに手おくれだったといったようなことも間々ございました。われわれその点十分反省いたしておりまして、最近では十分な情報を収集いたしまして、計画も早期の段階でわれわれ介入いたしまして、事実上の指導をやるということにいたしております。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 ひとつぜひそういうふうにしていただきたいと思います。  かつておたくのほうで、一方で自然の干がたが減っていく。そこでそれを補う意味で人工の干がたをつくろうということを計画なさいまして、これでたとえば東京都の葛西沖で鳥のための人工干がたをつくるという計画があるということも、モデル計画としてたいへん自信を持って計画を発表されておるのであります。ところが、その後これにはどのくらいの金がかかったのか、またあとで伺いたいと思うのですけれども、そういうように非常にバラ色の期待を多くの人に持たせたのですけれども、実際には鳥はどんどん減っている。あまり来ないということなんですね。それはなぜかというと、なるほど外形的には同じような干がたをつくったけれども、やはり鳥はえさがあって来るわけでして、えさになるべきものがそこに生息しないということから、結局金のむだ使いになってしまっているということがあるように聞いているのですけれども、その点の経過を御説明いただいて、今後の反省を述べていただきたいと思います。
  68. 仁賀定三

    仁賀説明員 いまの御指摘になりましたのは、千葉県の内陸につくりました干がたの例かと存じます。それから現在進行中とおっしゃいます例は、東京都の葛西沖の例かと存じます。  千葉県で行なわれました例は、過去の日本におきます一例といいますか試みであったわけでございますが、現状はさほどうまく活用される状態になってないのではないかということを私どもも聞いております。内陸につくります場合のいろいろなそこにおける教訓も得たという感じがいたしております。それから東京都の場合は、外海に面して目下計画中で、事業が行なわれております。  私ども各所の干がたを見てまいりますと、たとえば先ほど御指摘になりました兵庫県の浜甲子園にいたしましても、たしかあれはもとは工場あと地のような形でございまして、いわゆる砂質の干がたではなくて石がらの干がたで、コンクリートの割れた石がらの干がたであった。それから過去の埋め立て地を見てまいりますと、その埋め立てが行なわれる過程で相当の大量の鳥が集まってきておる。埋め立てが完全に終わって水がなくなるとまた別でございます。やはり天然の干がたというのは長い歴史でつくられたものでございますので、最もいい状態になっておると思いますが、人工的につくれないかとなりますと、いろいろな例を参考にしながら今後とも私どもやっていけば、一〇〇%完全かどうかは別といたしまして、可能だろうと考えております。  ただ、この種のものは世界的にも例があまりございませんで、今後とも私どもいろいろと学識経験者の意見も参考にしながら、そういうことが必要な場合、適切に対処してまいりたい。あえてそれがいいということではなくて、必要な場合には適切に対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 いまちょっと聞き漏らしましたが、千葉県の内陸の干がた、それから東京の葛西沖の干がた、これにどのくらいの金を投じておられるのか。いまお話がありましたように、必ずしも活用されていない。人間ですと、政府がつくったからというのでなるべく活用するようにしますけれども、鳥のほうは正直ですから、政府が幾ら金をかけたからといって、それに情にほだされてそこに集まるということはないわけです。その辺どのくらいでしょうか。
  70. 仁賀定三

    仁賀説明員 ちょっと手元に金額がどのくらいかかったかという資料がございませんが、もし必要であれば後ほどまた……。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 しかし、大体はおわかりと思うのですが……。
  72. 仁賀定三

    仁賀説明員 過去県が主体でやっておりまして、未確定ですが、おそらく数億という金がかかったかと思います。東京都の場合は、これも金額的にまだ十分承知しておりませんが、面積が非常に広うございます。したがいまして、相当大きな経費の投入になるだろうと考えております。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 具体的な金額を伺えないので非常に残念ですが、私、あとで食い違ったからといって責任を追及するつもりはないので、大体幾らくらいかかったということを正直に言っていただいたほうがありがたいのですけれどね。
  74. 仁賀定三

    仁賀説明員 ちょっと覚えておればあれなんですが、十分資料もありませんので……。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 じゃまたあとで資料を出していただきたい。
  76. 仁賀定三

    仁賀説明員 はい、早急に調べます。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 いまのお話で、世界でも類のない試みであるというおことばでありましたけれども、鳥類の生息する場所というか遊ぶ場所というか、そういうようなものは、人間が計画したらそのとおり集まってくれるとか、五十億かけたからちょっと行ってみようかというようなわけじゃないわけです。そうなってまいりますと、結局はやはりいま残っているものを保存することに同じ金をかけたほうがいいのじゃないか、そういうふうに私は思うわけです。いま数億というお話がありましたが、それならむしろ五億かけて、いまほうっておけば開発業者によってつぶされてしまうようなものを買い上げたほうがいいのじゃないか、買い上げ費をふやしたほうがいいのじゃないかということを私は申し上げたいのです。そうでないと、やってみたけれども失敗した、一方自然のものはどんどん破壊されていく、こういうことでは非常に困るのじゃないかと思うのです。  そこで、そういう生息地とかいうものの買い上げ費というものはどのくらいになっておるか。非常に具体的な例を一つ申し上げますけれども、同じ兵庫県に氷ノ山というところがございまして、この氷ノ山にイヌワシの生息地がある。これがやはり民有地になっているのじゃないかと思いますが、地元ではこれを買い上げてほしいという要請がしばしば私どものところにも来ておるのです。おそらくおたくのほうにも来ておるのじゃないかと思うのですが、こういうような問題。いま申しましたように、人工干がたをつくるために非常な巨額な金を費やすよりも、いまある自然を保全するために買い上げ費をふやしたほうがいいのじゃないか、私はそう思うのです。文化庁の買い上げ費あるいはよその役所の買い上げ費、これに類する買い上げ費はどのくらいになっておるか、そして氷ノ山のような件は県はどういうふうにいま考えておられるか、それを伺いたいと思います。
  78. 江間時彦

    江間政府委員 現在国立公園の特別保護地区、それから第一種の保護地区というものにつきまして、六十億円ほどの年間予算を買い上げ予算として持っております。目下のところ、鳥獣保護地域にまでその対象を広げようということで、その内訳について関係当局と折衝中というのが実情でございます。
  79. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃ氷ノ山の件はそういう中で処理していただけますか、ことしといわぬまでも。
  80. 江間時彦

    江間政府委員 先生のおっしゃいました案件もわれわれの頭の中に入っておりまして、できるだけその方向努力してみたいと思います。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 それから、これはいまの鳥類の問題と直接関係はないのでございますけれども、これは文化庁の仕事になるかと思うのですが、記念物の買い上げ費が非常に少ないわけですね。文化庁のほうでは、高松塚古墳のように非常に価値のあるもののためにはごそっと金を出す。しかし二級、三級、A、B、Cと分けるとB級、C級のものが都市の周辺なんかによくあるわけですね。で、私が前から感じておりますのは、神戸市にも天王山というところで古墳が群をなして発見されているわけなんですが、文化庁のものさしによればあまり価値がない、したがっていま買い上げるわけにいかぬ、こういうことなんですけれども、そういうことで非常に都市環境一つのよりどころになっております緑のところがやがて開発業者によって荒らされてしまう、開発されてしまう、手をつけられてしまうというような問題があるわけですね。  そういう場合に、この鳥類生息地の問題とも関連が若干ありますけれども、そういう記念物もそういう自然保護というものとかみ合わせて、もう少し考えられないだろうか。たとえC級あるいはB級の記念物であっても、これは鳥類生息地として適切であるというような観点から、あるいは都市環境の保全という観点から、それを加味して買い上げの対象にできないものだろうか、私はそう考えるのですが、そういう点についてどういうようにお考えでいらっしゃいますか。
  82. 古村澄一

    ○古村説明員 文化庁の記念物課長でございます。  文化庁でやっております仕事といたしましては、史跡、名勝、天然記念物というものを、地域を定めて指定をいたす、そして指定されたところにつきましては現状変更を規制するということに法律上なっておるわけでございます。したがいまして、規制されますと権利が抑制されますので、その代償として土地の買収をするということについて四十九年度の予算案では三十七億円の補助金の予定をいたしております。なお、そのほか開発公社等によります先行取得というものを進めていって、後年度国庫補助の道を開くということもやっておりますので、四十九年度におきましてはかなりの買い上げ額が出てくるというふうに考えております。  いま先生の御指摘になりました都市環境とのかね合いの問題でございますが、史跡等、あるいは天然記念物に指定されております鳥の生息地等の買収をいたしましたことが、ひいては都市環境の構成に役立つというふうなことはあろうかと思いますが、積極的に都市環境のほうをつくっていくというためになかなか補助金の運用はしにくかろうと思っております。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 いまのお話ですと問題は二つあるわけで、記念物あるいは鳥類生息地の問題では指定するということが一つあるわけですね。それからもう一つは、指定した場合の買い上げ費が、指定してもなかなか買い上げ費が十分ない。たとえば文化庁で記念物の買い上げ費はどのくらいですか、いま。
  84. 古村澄一

    ○古村説明員 現在、昭和四十八年度におきましては三十億円の補助金でございます。四十九年度におきましては三十七億円の案でございます。
  85. 河上民雄

    ○河上委員 わかりました。そうすると、高松塚古墳の買い上げなどは二十億ぐらい使っているのじゃないか、もっと使っているのですか。
  86. 古村澄一

    ○古村説明員 高松塚古墳の主要部はほとんど国有地でございまして、あそこに買い上げ費として使いましたのは六百万程度でございます。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 ああそうですか。その場合はたいへん幸運なわけですけれども、もしあれが民有地であったら相当の金をつぎ込まなければいけないということになりますので、三十億台でしたら一カ所か二カ所で終わってしまうおそれもあると思うのです。そこで、もう少し買い上げをふやすということと、指定をかなりぎりぎりのところで指定するのじゃなくて、やはり将来的な計画も含めて必要があれば指定するという考え方になっていただくことが必要じゃないかと思う。  鳥類の問題につきましても同様だと思います。昭和四十七年のアメリカとの渡り鳥条約の審議の際出てきております数字によりますと、鳥の足に標識をつけた実態調査によりますと、日本では八千羽しかいない。アメリカでは百万羽もいる。日本の近隣の国でもたとえば韓国でも五万羽、フィリピンが四万羽、こういうようなことで、日本だけ八千羽と極端に少ないということは、やはりこの日本列島が鳥の生息地として、彼らから見てあまり好ましくない状態にあるということを非常に明白に物語っていると思うのです。そこでやはりこの条約を忠実に履行するためにはそういう開発優先の姿勢を改めていくことが必要ではないかというふうに私は思いますし、生息地保護するためにももっと指定をふやすということと、それから買い上げをふやす、そして同じ金を使うなら、人工的なことをやるよりも現在あるものを大事にするということを明らかにしていただきたいと思います。いかがでございますか。
  88. 江間時彦

    江間政府委員 先生がおっしゃいましたように、開発が非常に進んでおります結果、鳥類の生息が時々刻々と難儀になっているということも事実だろうと思うわけでございまして、先生の御趣旨を体しまして鳥類保護のためにできるだけの努力をしてみたいと思います。
  89. 河上民雄

    ○河上委員 以上で終わります。
  90. 木村俊夫

    木村委員長 松本善明君。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 この条約締結がされても、国の保護、政策がちゃんとなされていなければならないということはいままでも論じられているわけですけれども、鳥類保護についての現状を日本政府としてはどういうふうに考えているのか、それをまず初めに伺いたいと思います。それからついでに、それについてどういう対策をとろうとしているかということを伺いたいと思います。
  92. 江間時彦

    江間政府委員 一般的に、自然を保護するというためには自然公園法及び自然環境保全法という二つの法律がございまして、この地域に関連する限りにおきましては、かなりいろいろな開発についての規制が行なわれておるわけであります。さらに公有水面埋め立てであるとか、あるいは公共的な大きなプロジェクトにつきましては、われわれの手元にその協議がくる、チェックをするという仕組みになっております。さらに鳥獣保護につきましては鳥獣の狩猟そのものを規制するという形で行政が行なわれておりますし、さらに鳥獣保護区の設定であるとか諸種の行政措置は行なっておるわけでございます。いままでいろいろな先生方の御指摘もありましたように、開発が進みまして鳥類生息地域が脅かされるという傾向がございまして、われわれはこの規制をさらに強化するという方向で行政運営を行なっておるというのが実情でございます。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま自然環境保全法についての話もありましたが、その話もしますが、まず私が伺いたいのは、鳥類保護がうまくいっているのかどうかということについて聞きたいと思うのです。
  94. 江間時彦

    江間政府委員 うまくいっているかどうかということになりますと、価値判断の問題になります。非常にお答えがむずかしいわけでありますが、一般的な状況からしますと、野鳥の生息状況その他は一般的に必ずしもいいほうに向かっていないというふうに思います。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまも干がたの話が出ましたけれども、海辺の千がたの開発、埋め立てから干がたを守るということですね、これは一番重要なことだと思うのです。環境庁は四十七年に干がたの調査を十カ所やったと思いますが、これは全部総合開発で、コンビナートの建設計画で埋められてしまうということになっていると思います。こういう結果について環境庁としてはどうしようと思っているのですか。
  96. 江間時彦

    江間政府委員 確かに干がたが日本全体で見ますと残り少なくなっている、しかもその相当部分が開発案件にひっかかっているというようなことから、われわれといたしましては、できるだけ鳥類の生息する干がたは守っていく方向で事を処理いたしたいと考えております。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 守っていくといっても、干がたがほとんどみんなそういう開発でだめになっているのが現状でしょう。だから、あなた自身も、うまくいっているというふうには必ずしも言えないということを言われた。自然環境保全法ができたときに附帯決議が出ましたね。附帯決議では「政府は、原生自然環境保全地域の指定にあたっては、残された貴重な原生の自然状態にある地域について、もれなく指定するよう努めること。」ということになっている、そういう鳥類保護といううようなことに必要な地域は全部指定しなくちゃいかぬ。本来そういうものではないか。それはどうですか。
  98. 江間時彦

    江間政府委員 鳥類保護のために自然環境保全法の地域指定をする必要があるかどうかは別といたしまして、おっしゃるように鳥類保護のために干がたを守る必要があるならば適切な処置をとっていかなければならないと思います。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 この指定にいままでされていますか。
  100. 仁賀定三

    仁賀説明員 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律というのがございまして、そこで鳥獣保護区の指定という形で、私ども目下鳥の生息地保護につとめておるところでございます。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の言うのは、自然環境保全法案の附帯決議でいう「原生自然環境保全地域の指定」がされているかということを聞いておるのです。
  102. 江間時彦

    江間政府委員 自然環境保全法のほうは、どちらかといいますと植生その他いわゆる原生的な自然を守っていくという趣旨から立法されたものでございまして、むしろわれわれは鳥類保護のためには鳥獣保護法その他の一貫した行政でやっていったほうがいいのではないか、そういう意味でいわゆる自然環境保全法の指定というものはやっておりません。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはついでに聞いておくのですけれども、近く指定をするという計画がありますか。
  104. 江間時彦

    江間政府委員 きわめて近い将来に自然環境保全法に基づきます地域指定を五、六カ所ぐらい考えております。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 二月四日に全国自然保護連合から環境庁に、渡り鳥の渡来地とか生息地保護、それから特殊鳥類の拡大、違法行為の監視体制の強化等々について保護対策の申し入れがあったということが報道されていますけれども、これについて環境庁としてはどういうふうに対処をしようとしておるのか、御説明いただきたい。
  106. 江間時彦

    江間政府委員 そのような申し入れがあったことは事実でございます。大体申し入れの趣旨はわれわれの行政方針と一致しておるというふうに考えておりまして、意欲的にその方向で進みたいと思っております。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 保護対策について若干、専門家から聞いた点でただしておきたい点を伺っておこうと思うのですけれども、狩猟鳥として三十二種の鳥類が指定されているということですが、その中に、世界的に貴重な存在になっているニュウナイスズメやアマミヤマシギなどが入っていると思います。このニュウナイスズメというのは日本でもほとんど見られないような状態だというふうに聞いています。こういう貴重な鳥類をなぜそのまま狩猟鳥にしているのか、そういうことについてはどういうふうに考えているか伺いたいと思います。
  108. 仁賀定三

    仁賀説明員 アマミヤマシギでございますが、この鳥は鹿児島県の奄美大島に住んでおるということで、地域がある程度限定されております。私どもも今後その生息状況を十分把握するようにつとめたいと考えておりますが、当面の措置といたしまして、鹿児島県知事の権限で捕獲禁止の措置をとっていただこうかということで、目下鹿児島県と打ち合わせ中でございます。  ニュウナイスズメということでございましたが、私どもが承知しておる範囲では、ニュウナイスズメはむしろ群をなして非常に大量に日本の国にやってくるというふうに理解しております。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 さらに、ヨシガモ、 エゾライチョウ、ウミアイサ、カワアイサ、こういうようなものについても保護の対策をとるべきだという意見が私たちのところに寄せられているのですが、ニュウナイスズメの問題も含めて、やはりそういうことをあらためて検討する必要があるのじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  110. 仁賀定三

    仁賀説明員 いま御指摘になりました数種の鳥がございます。私ども狩猟鳥獣の指定を環境庁長官がやっております。四十六年に、それまで指定されておりました狩猟鳥獣の中から、鳥類で二十四種、獣類で一亜種をその指定からはずしまして、現在のような指定鳥獣種類になっておるわけでございます。私ども生息状況というものに絶えず今後も留意をしまして、生息状況に応じて勘案しつつ、また自然保護審議会の意見を十分お聞きしながら狩猟鳥獣というものを適切に今後ともきめてまいりたいと考えております。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 特殊鳥類として二十八種の鳥類に対して、売買だとか輸出入規制が行なわれているということですが、ニホンイヌワシのように、日本のイヌワシか外国のイヌワシか専門家でも見分けることが困難だといわれている鳥があるようですが、そして外国のイヌワシだといえば取り締まれないというようなことがいわれている。そういう鳥としてはダイトウミソサザイもあるということ、そういうような話が私どものところに出てきているわけですけれども、そういう問題についてやはり鳥類保護というこういう条約を結んだ機会ですから検討されなければならないと思いますが、その点についてはどう考えていますか。
  112. 仁賀定三

    仁賀説明員 御指摘のように、鳥類、種の段階、亜種の段階いろいろございますが、亜種の段階その他になりまして非常に見分けのつきにくい鳥類がございます。それで特殊鳥類二十八種類を指定いたしましたので、それらの行政が円滑にいきますよう、目下詳細な二十八種についての図鑑、それから類似の鳥との判別のしかた、そういう判別図鑑というものを私どもが作成中でございます。これも県等に配布しまして適正を期したいというふうに考えております。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは国会で論議されるまでもなく、こういう鳥類保護の仕事だとか研究に携わっている人たちの意見を恒常的に聞いて、そして国会で論議されるまでもなく保護されているという状態にしなければならぬと思うのですが、そういう点ではどういう体制をとっているのですか。
  114. 江間時彦

    江間政府委員 鳥類保護につきましては、われわれできるだけ前向きの姿勢でいくということには変わりございませんし、特に最近鳥類種類がだんだん減ってきておる、あるいは生息数が減ってきておるという徴候がございますので、さらにこの種の行政を強化してまいりたいと思っておるわけでございます。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務省に伺いますが、先ほど来も同僚委員質問にもありましたし、私いま質問して、鳥類保護の状態というのは決して日本でいい状態ではない。そして干がたも全部つぶされていっているという方向にある。こういう条約を結ぶこと自身はそれはけっこうですけれども、条約を結んでも実際には日本では、日本渡り鳥が来たときには、みな決して保護されてない、こういう状態になれば、やはり日本国際的な信用にもかかわるわけですし、それは単に結ぶだけだということになるわけです。これは私はそう簡単なことではないと思うのです。いまのいわゆる高度成長政策のもとでの開発政策というものが無制限に行なわれていきました場合には、この条約は形だけあって内容はないということになりかねない。私はそういう無責任なことになってはこれはならないと思うわけです。あらためて私はこの条約についてのこの審議の最中に、これは国民に対してもそれから国会に対しても、その点の心配はないということについての具体的な方策が提示されるべきだと思う。そういうことなしに条約だけ通していくというわけにはいかないと思うのです。そういう点について、外務省はどういうふうにしようとされているか伺いたいと思います。
  116. 山田久就

    山田(久)政府委員 いまお話しの点はごもっともなことです。しかしながら、この条約のメリットといいますか、そういう点で、先ほど私、申し上げたわけですけれども、国内においては、どちらかというと最近高度成長に伴ってそういう方面の努力が欠けてきて、ここで大いにやらなければいけないという一般の空気があるわけですから、それに即応してやはり国際的な体制をつくっていくことの一環として、特に日本国内でそれに対する国民意識をこういう国際約束をしていくことによって深めていく。内容ができてないのにまずいじゃないか、そういう点の御指摘があるかもしれませんけれども、しかしながら、そういうことをつくり上げていくということによって、条約環境保全の努力をするということを約束しているわけですから、したがって、そういう体制日本国内においても強化していくということに著しく貢献するということには私はなると思いますし、それから現実的にはそういう体制と空気を深めることによって、渡り鳥等の保護にそうでないときよりも一そう寄与するという結果をもたらすことにはなると思います。  ただ、いま御指摘のような点でございますので、こういう条約上に関連して、なおさらそういう角度からもひとつ国内においてこういう面についての努力を進めるということの必要、全く同感でございまして、それについては外務省立場からもひとつ国内官庁とそういう点からくる一つ認識の徹底といいますか、あるいは努力措置を一そう徹底するということについて、さらに対策を講じたいと思います。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう国内体制についての対策を強化をするという御意思はけっこうだと思いますが、その具体的な措置について、私はきょうすぐということではありませんけれども、環境庁やその他関係の省庁とも相談をして、そして政府としてこの条約を批准するにあたっては、こういうふうにして実効措置をとっていこうと考えているということについての具体的な答弁をされるべきだと私は思うのです。  きょうは、私はその点を次回に留保して、それまでに外務省のほうでしっかりした方針をつくっていただいて、大臣からでも次回に答弁をしていただきたい。このことを申し上げまして、きょうの質問はこれで終わります。
  118. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  119. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは環境庁の方が時間がないそうですから、そちらの関係を先にお伺いいたします。  本年二月四日、自然保護の住民運動団体である全国自然保護連合から環境庁長官あてに、渡り鳥保護条約に関する意見書が提出されております。右意見書の中に五項目にわたる要望事項がわが国鳥獣行政の不備を端的に示しておりますが、一つ渡り鳥等の生息地保全の具体的措置に欠いているという点、二つは特殊鳥類譲渡規制法に指定された現行二十八種類を増加しなければならないという点、三、鳥獣輸入証明書の発行が輸入業者の手にゆだねられているという欠点、四、かすみ網の密猟対策に全く対策が欠如しているという点、五、鳥獣保護員の監視体制が全く不十分であるという点、五項目にわたって問題が出ているわけであります。  それを拝見しますと、さらにひどい話がたくさん書いてあるわけでありますが、たとえて申しますと、小鳥をかすみ網でとることの違法行為をだれが監視するかというと、全国三千人にわたる鳥獣保護員が監視することになっているそうでありますが、このうちの、三千人の半分は猟友会、つまり鳥獣をつかまえるほうの人たちが任命されておる。だから、例はちょっと適切でありませんけれども、どろぼうに十手を渡してどろぼうをつかまえるという徳川時代のやり方と非常に似ているわけであります。こういう発想法のお役所がいらっしゃるというのに、このすばらしい条約をおつくりになったこのアンバランスに対して、私はどうも妙な気がせざるを得たいわけであります。国内法の対策が不備だと先ほどから何人かの議員によっても指摘されまして、私もそう思うわけでありますが、国内法が不備なのじゃなくて、不備というのは乏しいので、多少あるというのが不備なのでありますが、これはアウトである。国内法は全くとんちんかんの部類に属するのだと言ったほうが私は適切なのじゃないか、こう思うわけであります。  そこで、端的に伺うのでありますが、これらをどう認識されておるか、国内法に対して関係諸法令あるいは法律等を整備なさり、これに対する対策を立てるおつもりがあるのかどうか、それはいつごろなさるおつもりがあるか、かためてお答えを願いたいと思います。
  120. 江間時彦

    江間政府委員 先生が御指摘になりましたように、鳥獣保護する役割りの人の中に狩猟をやる人が相当いるということは事実でございます。ただ、私らが調べましたところによりますと、鳥類についての知識を持っておる方は主としてそういう方である。またその狩猟をなさる方は必ずしも鳥獣保護について不熱心な方ではない。むしろ場合によっては非常に熱心な方が多いということも事実のようでございまして、そこら辺はこの種の社会における特殊な条件であろうかというふうにわれわれは認識いたしております。まあそこら辺のことにつきましては、十分われわれも検討してまいるつもりでございます。  それから、現有の鳥獣保護につきましての法制につきましては、先生がおっしゃいましたように、かなりな点について問題があることも事実でございまして、現在自然環境保全審議会の部会におきまして、いかなる点について改正をすべきかということを検討しておる最中でございます。
  121. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これが十分な体制でないという。まあ外務省が出してくる条約、法案というものの中にはいろいろおもしろいものも出てくるけれども、これぐらいみっともないのを堂々と出したのは外務省始まって以来ではなかろうかと私は思うのです。  それで私、講釈するつもりはないのですけれども、あなたいまたいへんなことをなさろうとしているわけなんですよ。悪いけれども、私は日本国憲法からちょっとあなたに議論をしてみたいと思うのです。憲法第九十八条に最高法規、条約及び国際法規の遵守という項があります。第一項には「この憲法は、國の最高法規であって、その條規に反する法律、命令、詔勅及び國務に關するその他の行爲の全部又は一部は、その効力を有しない。」第二項には「日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」こうなっているわけですね。おそらく御存じだと思うのです。  ところが、日本国がこうやって他国との間に結んだ条約がある。そうすると、それは日本国の憲法より上位に立つか下位に立つかについては国際法上、あるいは学者によって問題はいろいろある。しかしながら憲法を除く国内法に関していうならば、締結された国際的な法規、国際法規というものは、おそらく国内法規の最高峰に位置するものとしてこれを遵守し、そして少なくともその内容というものが国内に及ぶように措置をしなければならぬわけですね。この点については、外務省の方々からの御説明によればその解釈は間違いなかろうと私は思うのです。  ところがあなた、これだけの法規をつくった、この鳥に関するものがつくられた。これはわが国内法に優先して、これからとうとばなければいかぬわけだ。いいですか。ところがあなたは、鳥獣行政に対してはだいぶ不備があるからと、まあ多少それはお認めになった。だからいま審議会にかけているところだ。それではいけないんだよ、そんな答弁では。審議会にかけたというのは、こんなことが結ばれないときには審議会にかけたで済ましておられる。あなは局長でしょう、政府委員ですよ。政府委員としては、関係国内法が不備であるということは、こうした条約を結ぶ以上は許されないことなんだ。即刻それに対処して、これにふさわしいところの国内関係法令の整備に当たるということがあなたの義務でなければいけない。そうでしょう。  そうすると、あなたはここへ来て何を答弁しなければいけないかというと、あなたはここで立ち上がったとたんに、この進歩的なこういう条約を結んでいただきました以上、関係国内法規については急速にこれを整備いたします、少なくともこれらの鳥が日本に来て焼き鳥にならぬように私は誓いますとかなんとか言わなければならない。そうでしょう。ところがあなたは、その重大性をさっきからわかってないじゃないか。だから私は言っているのだ。時間がないから課長に答弁させるなんてさっきおっしゃったらしいけれども、もってのほかだ。そんなことじゃ全然わかってない。いいですか。条約というのは結んだらたいへんなことになる。条約を結んだら国内法を全部直さなければいけない、国内法がだめな場合は。そうでしょう。  そうしたら、あなたがここで言わなければならぬ答弁は、私がもう申し上げた。あなたはどうお答えになりますか。もうこんなふうに丁寧な質問というものはあり得ないと私は思うけれども、言わざるを得ぬから申し上げたんです。いま当委員会では条約に関しての取り扱いをめぐって、この間から論戦が続いている最中なんです。だから特にやかましく申し上げるのだけれども、こういう国際法規を順守することを誓った日本国憲法がある以上は、あなたは国家公務員としてこれに対して急速な対策を立てるということをお誓いになるのが当然だと思うが、どうですか。
  122. 江間時彦

    江間政府委員 私は、今回審議をお願いしております条約とそれから国内法との関係で、国内法がこの条約に照らして直ちに抵触するということを申し上げたわけではないのでございますが、いろいろ、われわれ本来的に鳥獣保護行政を考えます場合に幾つかの問題点があるので、意欲的に目下それと取り組んでおるということを申し上げたわけでございまして、いろいろな点を御指摘いただきまして意欲的に鳥獣保護行政を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  123. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういう答弁しかしようがないのかな。関係法令を整備しますかと私、聞いたのです。同じことばで答えていただきたい。
  124. 江間時彦

    江間政府委員 おっしゃる方向努力いたします。
  125. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私が申し上げた五つの点について、早急に整備なさるおつもりがありますか。
  126. 江間時彦

    江間政府委員 先生がおっしゃいました五つの点について簡単にお答えいたします。  まず第一点でございますが、鳥獣保護区の設定だけでは開発行為は十分規制できないということは御指摘のとおりでございます。いままで設定されております特別保護区域、さらに今後積極的にこういうふうな鳥の渡来地などにつきましてさらに特別保護区を設けていくつもりでおります。  それから第二点でございますが、現在絶滅のおそれのある鳥類二十八種及び亜種を特殊鳥類に指定しておりますが、今後、鳥類の生息状況調査を積極的に進めまして、審議会の意見を聞きながら、これらの指定について対処してまいりたいと思っておるわけでございます。  それから第三点でございますが、現在わが国に生息しております鳥類と類似の鳥類が輸入される場合には、御指摘のように混乱を招くことがあるわけでございます。この問題を解決するために輸入証明書の発行を適正化することとか、あるいは輸入の規制を行なうというような対策を講じる方向で今後積極的に検討してまいりたいと思っておるわけでございます。  それから第四点のかすみ網でございますが、この具体的な規制方法につきまして通産省がいろいろ検討をいたしておりますが、われわれといたしましても、その方向協力してまいりたいと思うわけでございます。  それから第五点の鳥獣保護員の問題でございますが、これにつきましても、御指摘の点は十分私も念頭に置きまして対処してまいりたいと思うわけでございます。
  127. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ようやく御答弁がかみ合ってきましたから、今後はまた別な話をしますよ。  ここのところに烏の名前がたくさん出ているわけですね。それで私、この鳥の名前を見まして、ちょっとびっくりするぐらい食欲を感じるような鳥が多いわけです。これは日本においては大半が焼き鳥の原料ですね。現に猛烈な勢いで日本国民が食べているものばかりですね。これは日本政府として今後これを食わないというふうに約束なさるのはそれはかってだけれども、おそらくはそこにいらっしゃる政府委員の方々も、料理屋に行けば平然として食う、ここではおごそかにこれを審議するという矛盾を来たすのではないかと私は思っておるわけですね。  だから、やりようによっては、一つはこれはどうしても焼き鳥の原料として食べたいからこれはここのところに入れるべきでないという議論が一方にあってしかるべきだし、逆にいけば、これは焼き鳥の原料にされ過ぎているから焼き鳥に関しては規制をしてもらいたいというふうに、通産省にやらすのかどうか知らないけれども、行政はそちらの方向かどちらかをカバーしなければこれはもうナンセンスなことになる。私はその辺これは非常に愉快な条約だとは思っております。あなたはいまどちらの方角でこれをやろうとされているか、それをちょっと御披露いただきたい。
  128. 江間時彦

    江間政府委員 環境庁としては、できるだけそういうものは食用に供しない、保護に専心するという方向でまいりたいと思います。
  129. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務省はどういう考えなんですか。
  130. 伊達宗起

    伊達政府委員 外務省といたしましても食べない方向でまいりたいと思います。
  131. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 こういう法案をつくられたからそういうように御答弁になるしかないだろうとは私は思うけれども、ちょっとこれはその辺行き過ぎというか、考え方がちょっといいかげんだったのじゃないかと思うのですね。まだこの付表については確定されてないのですから、将来そうしたことは含まれて考える必要があるのではないかと私思うわけでありまして、今後こういった面については十分考慮の余地があるのじゃないか、私こう思うのです。いかがでしょうか。
  132. 仁賀定三

    仁賀説明員 いま食用に供するというお話が出ましていろいろあったわけでございます。実は私ども鳥獣行政といたしましては、狩猟鳥獣とそれ以外とに分けて、それ以外が保護鳥になっております。狩猟鳥獣が狩猟の適正な期間において適正な狩猟が行なわれてそれが食用に供せられていることは事実でございますし、その状態は各国同じ状態でございます。  いまかすみ網という議論が出ました。かすみ網は私ども使用の禁止をいたしておりまして、過去一番かすみ網が問題になりまして、おっしゃいますように非常に大量に食用に供せられたわけでございます。かすみ網の取り締まりにつきまして、かすみ網を使用禁止にし、あるいはそういう捕獲規制というのが、先ほど御指摘のように山で非常に取り締まりにくいという中で、ヘリコプターを飛ばしたりいろいろな努力をしていま取り締まりに当たっておるわけでございますが、御案内のように、かすみ網は戦前農家の方々が冬場の自分らの仕事、いわゆる職業の一つとして一般的に風習として行なわれておったわけであります。そういうふうに一般的に夏働き冬そういう仕事をするという風習が法的にも認められ、風習としてもあったのを、このところ法律的に禁止し、いま積極的にその絶滅につとめておる次第でございます。一昨年も総理府令の一部を改正いたしまして、そういう不法捕獲を取り締まるにはやはり食べているところを取り締まるのが一番だということで、不法捕獲物の加工品の譲渡譲受も取り締まりの対象にするというふうに改正をいたしまして、各県を指導いたしまして、食料品を扱っているところの取り締まりも昨年から積極的にやらしておるという状況でございます。
  133. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では局長はお忙しいですからここで退席してくださっていいわけですが、最後に一つだけ伺っておきますが、要するにこの鳥獣保護というものに傾斜していくということはわかりますが、それが他の日本の伝統的習慣となっている問題と衝突していて、それがよく調整されないままに条約が先行する、それはわが国として困った事態を招く。したがって、この辺は十分今後、この条約付表については相当程度の修正その他ができ得る形になっておりますから、穏当な形で国内法の整備とともに再検討していただく、こういうことをお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  134. 江間時彦

    江間政府委員 確かにおっしゃいますようにわれわれの実生活とたてまえとの間に若干の矛盾があって、特に古い慣習と矛盾する面もございまして、われわれそこら辺はできるだけ調整の努力はして参ろうかとは思っております。  付表の点につきましては、これはいま直ちにわれわれ今後の検討に供するかどうかということは、よく部内的に検討いたしましてまいろうかと思っております。
  135. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それじゃ局長御退席してけっこうでございます。  今度は外務省のほうに伺います。  まず非常に妙な話から伺うわけでありますが、気になさっている方もありますので、非常に妙な話を一つ伺います。  衆議院外務委員会昭和四十四年六月六日の審議によりますと、当時戸叶里子議員はこの付表の「付」の字に対しまして精細な議論をいたしております。こざとへんのある「附」の字とこざとへんのない「付」の字という有名な議論をなさったわけであります。そして、さんざん議論がありまして、慣行的にはこざとへんのつくのを使っているのだという御説明であります。ところがこざとへんのないほうがまた使われているという点についてのいろいろな釈明が行なわれておるわけでありまして、結局いいかげんなことばの使い方について政府が釈明をし、その際高島説明員より、同じ国会の同じ会期中に出す条約においてことばが違うというのは非常にふていさいなことであり、今後できる限りそういうことのないようにしたいという旨の発言があって、終わりになっているわけであります。  私はそれほど問題にするべきことではなかろうとは思いますが、ここにある「附」の字、ソビエトとの条約のほうはこざとへんがついている。オーストラリアのほうはついていない。まるで当委員会委員の注意力を検査するかのごとくわざわざ並べて挑戦されておる。これは深い意味があられたのか私は伺いたい。こういう奇妙な細工を一々なさるというその神経について私は伺いたいのであります。一ぺん間違ったらそういうのをきちっとするというようなことは非常に大事だと思うのですが、この両条約は手続その他非常に妙な点がたくさんある。だからまずそこから御返事ください。
  136. 伊達宗起

    伊達政府委員 たいへん痛いところを御質問いただきまして、別に他意がございましてこういうことを故意にしたわけではございませんので、その点御了承を得たいと思います。  実はこれは、日ソのほうは昨年の十月に署名された条約でございまして、この時点におきましては、いまだ日本におきます法令における当用漢字の音訓表と送りがなのつけ方及びその後に引き続きまして法制局——法制局と申しますと法律、条約の審査、それから法令用語の私どもの中では一番権威のあるところでございますが、その法令に用いる漢字をどうするかという点につきまして検討中であった段階でございました。したがいまして、従来の用例に従いまして、「附表」の「附」の字もこざとへんをつけたままのもの、これは従来どおりに従いまして日本語の本書をつくり、ソ連との間に署名を行なったわけでございます。ところがその後、この豪州との協定はことしに入りまして署名をされたのでございますが、その際に、法制局において日本文を審議いたしておりますときに、内閣法制局においてその後の検討、文部省と連絡しつつ検討してまいりました漢字の用例につきまして、今後こざとへんのつきました「附」という字は、「附則」「附属」それから「附帯」「附置」「寄附」、その五つ以外にはこざとへんは用いない、つまりこざとへんのついた「附」の字は用いないというふうにきまりまして、今国会に上程されております条約、法律すべてこの原則に従って行なわれているように聞いておりまして、日豪条約はそのような事情によりまして、この「附表」の「附」の字を取った、こざとへんのない「付」の字で本書が作成され、豪州との間で署名をされた。  そういう事情にございますので、前四十四年におきますこざとへんにつきましての論議の際に当時の高島参事官から、同一国会において「附」の字を異なったものを使うのはまことにみっともないから今後避けたいと申し上げた次第ではございますけれども、それはその当時問題となりましたベルギーとの条約で「附加税」の問題としてこざとへんがついておったというようなことがあって、ただいま御説明申し上げましたような、理由もあまりなく不統一に使っておったという点を高島参事官としておわび申し上げたわけでございまして、今回も、ぶていさいではございますが、ただいま申し上げたような事情がございますので、御了承を得たいというふうに思っております。
  137. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃ、そういうことは十分お気をつけをいただいているとは思いますけれども、今後の御注意を喚起したいと思います。  それではその次、まだ変な話があるのですがね。今度は妙な話なんですね。このビラビラ、これは一体何事ですか。委員長、これはまことに奇妙な話なのです。われわれが資料をちょうだいしたのですね。そうすると、オーストラリアのほうについては、渡り鳥のこの条約の提案理由の説明書、これがある。それから協定本文がある。それから英文の協定本文がある。それから今度はその協定説明書がある。そこへパプア・ニューギニアへの適用に関する交換公文がある。これは和文のがある。それに英文のがあるのです。私のいただいたのはこれがばらばらになっておりますが、当初に配付された分は、これがくっついて印刷されています。私がもらったときには、これはわざわざ切り離して製本し直されたのです、外務省は。そして、その後このビラビラが入ってきたのです。  これは何かというと、「四十九年三月一日 (条約の四) 訂正 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境保護に関する日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件附属印刷物のパプア・ニューギニアへの適用に関する交換公文中 英文を削る。」こうなっております。これは「削る。」というのです。この珍妙な細工ですね。最初はくっつけて印刷した。次にはばらばらに製本した。そして今度は、これは本ものじゃないと叫ぶ。これは事務上のエラーであるというふうにおっしゃるおつもりなのか何か知りませんけれども、何でこんなみっともないことを続々なさるのか。それとも英文というのは当委員会に不要なものと思われているのか。英文というものは、当委員会委員に見せるとまたこの間のように数十カ所のエラーが発見されるので、今後原文というのは見せない方針になられたのか。また、これは両文ともが正文であるにかかわらず、当委員会に対しては日本文しか見せないことを内規上きめられたのか。まことに珍妙なやり方ですね。  それなら、こちらのソビエト政府のほうはどうかといいますと、確かにソビエト政府のほうについて、条約の本文はロシア文でちゃんとこれは入っておるわけですね。これは何も削除の処置はしていない。こちらは日本文との比較が入っておる。またオーストラリアのほうに関しましては、これは条約本文に関しては両方を一緒に加えてくる、交換公文だけは英文はとってしまう。これは何か意図的なものを感ずるわけでございまして、ひとつ御説明いただきたい。
  138. 伊達宗起

    伊達政府委員 確かに御指摘のような、何と申しますか問題があるわけでございますが、多少時間的に先生の誤解を招くような結果になったのではないかと思いますが、ただいま先生政府側に何か意図があるのではないか、ないしはみっともないことではないかということにつきましては、御説明申し上げ得ると思うのでございます。  委員会への配付資料といたしまして本文である英文、このパプア・ニューギニアの交換公文だけについて申し上げますが、決して本文である英語の先方書簡というものを削除するという趣旨ではございませんので、当初は、と申しますか、どういうふうに御説明申し上げたらよろしいか、国会に提出しております資料といたしましては、英文と日本文とを従来別々の紙に印刷いたしまして、セパレートし得るような状況にいたした上で国会に配付をし、そのものが国会事務局におきまして、委員の方は除きまして、他の一般配付議員の方々に渡る際には、協定文も交換公文も英文を除いた全く日本文だけのものを配付している慣行になっているそうでございまして、その際に当初私どもがお届けした資料の中に、ここにございますが、英文と日本文とを合本したとじ方をして配付申し上げたというものがあるわけでございます。これが一般の諸先生に一般配付になりまして、これは従来の慣行と違うということが国会の事務局から御指摘がございまして、従来の慣行と違うのでどうするかという問題となったわけでございます。  なぜ英文が一般に配付されないかの点につきましては、私どもつまびらかにはいたしませんけれども、従来の慣行と違うということになりますと、私どもといたしましては、わかりました、それではこの合本になりましたのを改めまして、別々に英文と日本文とを分けたものをつくります、それを委員会において配付いたしていただいて、委員会では英文のついたものを、つまり別冊になった英文のついたもので御審議いただくという了解で処置したわけでございます。  その際に、一般に配付、すでに議員の先生方に渡っております、この合本になりました部分の英文というものは削除する必要があるというふうに国会の事務局のほうから御要望がございまして、この合本になった分の英文を従来の慣行に合わせるために削除するという意味で、削除というものを差し上げたわけでございまして、決して英文を委員会での審議の際に省くとか、従来の慣行に反したことをやろうという意図はなかったわけでございます。  事情は以上のとおりでございますので、御了承をお願いしたいと思います。
  139. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 お話を聞けば、いろいろいきさつがあったのは私もわかりました。なるほどと思うような、しごくお役所風のやり方でこんなことになったのはわかりました。  だけれども、くだらないことを熱心に仕事をされておるのだなという感じを押えられないですね。こんなものが合本になっていたからといって、分かれていたからといって、わざわざこんなもので修正するなんという教条主義というか、官僚主義というか、お役所主義というか、そんなことに熱意があったら、小鳥がつかまらないように、焼き鳥にならぬようにもう少し熱意を持っていただいたほうがいいんじゃないかと私は思う。これは少しくだらなさ過ぎると思うのですね。  そこで、交換公文に関しては日本文のみを提出してきたという慣行、それは私は今後改めていただきたいと思うのです。なぜかといえば、当委員会の審議中しばしば問題になりましたように、交換公文の中には、条約扱いをして審議をしなければならぬものが明らかにあるわけでありまして、その取り扱いも委員会できめなければならぬ場合すらあるわけであります。そうしますと、提出の以前にすでに交換公文の分に関しては本文を渡さないということがあれば、当委員会の審議に差しつかえる。したがって、交換公文で当委員会に提出される場合は、原文と両者をともに提出していただくようにお願いしたい。これは委員長、ぜひそのようにお計らいいただきたい。いかがでございますか。
  140. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。  先生の御要望ではございますが、御指摘をまつまでもなく、当委員会での御審議の際には必ず原文を添えて従来ともに提出いたしておりますので、今後ともそのようにさせていただきたいと思います。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では政務次官に最後にお伺いするわけでありますが、これはむしろ御要望でありますが、いままで私がずっとこうやって述べ立ててきました。この中で明らかになりましたように、今回鳥類保護に関しては画期的な条約が二条約誕生いたしたと私は評価をいたしておる立場であります。しかしながら、鳥類保護に関する国内的な措置並びに鳥類だけでなくてむしろ人類の環境汚染に関してはもっともっと問題があるわけでありますが、この場合はとりあえず鳥類のほうに狭めて言うならば、国内的な措置に数々の欠陥があることは、もはや明らかであります。したがって、政府当局を代表して、こうしたものに関し、所要の国内措置をとるということに関し表明をしていただきたいと私は思うわけでありまして、これをぜひお願いをしたいと思うわけであります。  それから次に、第二の点として、私の要望は、この審議を通じて、外交問題に関しての数々の取りきめが諸外国との間で行なわれるのは当然でありますが、その取りきめが先行して、少なくとも今後において国内措置に大幅な立ちおくれのあるような場合、しかるべき慎重な打ち合わせというものが必要であろうと思うわけであります。先ほどの焼き鳥論争に関して言うならば、むしろその辺拙速をもって急がれた感を濃くするわけでありまして、今後こうした点についてはしかるべく十分の配慮を持たれるよう、お取り計らいを願いたい。  この二項について、まとめて政府を代表して御意見を伺いたいと思います。
  142. 山田久就

    山田(久)政府委員 条約は同時に国内法的な効果を持つということでございますが、にもかかわらず、国内法の整備というものをそれについてやっていくということは、これは通常そういうふうにして行なっているところでございます。したがいまして、これは主として捕獲の禁止というようなことを中心にしているものでございまして、先ほど御指摘をいただいた点、非常にごもっともでございますので、たとえば行政上の実施の面等で非常に適切、実効を欠いているような点が非常に多いのじゃないかと思いますけれども、そういう点をも含めまして、国内法の整備の足りない点についても、さっそく連絡をとりまして、そういう点政府として検討するというふうに考えていきたいと思います。
  143. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 けっこうです。以上で終わります。
  144. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる八日金曜日、午前九時三十分理事会、午前九時四十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十五分散会