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1974-02-27 第72回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十七日(水曜日)    午前十時十九分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 福永 一臣君    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 松本 善明君       加藤 紘一君    小林 正巳君       坂本三十次君    深谷 隆司君       宮澤 喜一君    三宅 正一君       金子 満広君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         法務省矯正局長 長島  敦君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  相川  孝君         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         外務省経済局次         長       西田 誠哉君         水産庁海洋漁業         部審議官    米澤 邦男君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     大久保直彦君 同月二十六日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     竹中 修一君   小林 正巳君     地崎宇三郎君   深谷 隆司君     丹羽喬四郎君 同日  辞任         補欠選任   竹中 修一君     加藤 紘一君   地崎宇三郎君     小林 正巳君   丹羽喬四郎君     深谷 隆司君     ————————————— 二月二十六日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国とアイルランドとの  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国スペイン国との間の条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号) 同日  世界連邦樹立の決議に関する請願(粟山ひで君  紹介)(第二二八四号)  同(田中伊三次君紹介)(第二三七五号)  同(前田正男紹介)(第二三七六号)  同(戸井田三郎紹介)(第二四〇七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  国際情勢に関する件について調査のため、参考人出頭を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 木村俊夫

    木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野清君。
  6. 水野清

    水野委員 最初に、外務大臣にお伺いをしたいのですが、最近、日本国内経済状態悪化するに伴いまして、外貨準備がだんだん減っております。そして国際収支悪化ということが云々されておりますが、政府部内でこういう経済情勢を背景に、対外援助の拡大が困難であるというような見解があるように聞いております。  この問題について少し伺いたいのでございますが、まず第一に、外務大臣となさいましては、この経済援助方針というようなものをどう考えていらっしゃいますか。それからついでにこの際伺いたいのは、援助条件内容であります。昨年も政府はこれまでの日本経済援助ひもつき援助であるという国際的な批判の中で、なるべくひもつきでない、アンタイド援助を拡大していくという方針でやっておられましたけれども、この点についてもやや後退議論政府部内で出ているようであります。この辺についてお話を承りたいと思います。
  7. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国外国理解信頼の中で生きていかなければならぬわけでございますので、繁栄を一人占めするわけにもまいりませんが、同時にわが国が困難に直面した場合に、外国理解協力を得て克服をしていく方途を探らなければならぬことも当然だと思います。したがいまして、経済協力の問題は、わが国の国是といたしまして非常に大切な柱の一つであると心得ております。これをやってまいる上におきましては、第一にまず世間並みのことを考えなければならぬ。したがって、国際機関等援助の額、それから援助条件につきまして一つ目標を設定すると同時に、各援助国の相互の比較を通じて援助の額の増額あるいは条件緩和等について勧告が行なわれてまいりましたことは御案内のとおりでありまして、われわれとしてはできるだけその道標というものに近づけるような努力は怠ってはならないと思います。  しかしながら一面、わが国援助供与能力というものを踏まえてかからなければならぬわけでございまして、その点につきまして、いま水野委員が御指摘のように、資源危機からの影響といたしまして、わが国援助供与能力が乏しくなるのではないか、通常の輸出契約さえ実行できるのかどうかというようなことが危ぶまれるような状況になり、あるいは大幅な外貨準備の激減を来たすというような事情を招来いたしておりますので、そういう面から自分の力をよくはかってやるべきじゃないかということは、当然われわれが考慮しなければならないことであると考えております。そこで、外貨準備国際収支悪化に伴いまして政府部内でそういう議論が出てきておるのも当然でありますし、まじめにこれは検討してかからなければならぬ問題であると思っております。しかしながら、経済協力それ自体は短期的に見て国際収支マイナス要因にはなりますけれども、長期的に見た場合に必ずしもそうとは言えない、プラスの要因に転化していく因子を含んでおりますので、一がいに経済協力について冷え込んだ態度をとるということは私はあまり賛成しないわけでございます。  それから、こういう状況になってまいりますと、条件につきましても、いま御指摘のように渋い条件に傾斜しがちなこともまた人情の自然でございますが、いままでの世界の大勢から申しますと、わが国先進国に比べまして条件がずっときびしかったわけで、ようやく相対的に少ない政府援助を、開発援助をふやすとかその条件を緩和するとかアンタイイングを一般化するとかいうような方向でやってきた日本が突然またUターンをするということはいかがかと思うのでありまして、政府としてはその点はいまの風潮に安易に妥協してはいけないのじゃないかと私は考えております。
  8. 水野清

    水野委員 実は大蔵省の方にもおいでいただく予定だったのですが、私はちょっと指示を忘れたのですが、去年外貨準備が非常に大幅にふえたときにも、援助外貨準備の問題というのは別問題であるという議論が横行して、あまり改善をされなかったという現実状態があります。これは経済協力局長にひとつ伺いたいのですが、これは外務省より大蔵省の問題なんでしょうが、国際収支がいいときでもこれと別だ、今度は悪いときはそう言っても金がないものはしようがない——金がないものはしようがないわけでありますけれども、そういう議論で、どうも日本対外援助というのは一歩前進二歩後退みたいな感じを対外的に与えていて、私は非常にまずいと思うのです。その辺について、外務省事務当局はもう少し積極的にほかの官庁との話し合いをしていただきたいと思いますが、具体的な努力をしていらっしゃるかどうか、伺いたいと思います。
  9. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 いま水野先生指摘のように、昨年外貨がたくさんありました時代に経済方策というような問題を討議されましたときに、アンタイドを実施するということのほかは、援助を、いま大臣お答えになりましたように直接援助外貨準備の問題は関係ないということで、あまりその新方策の中に取り入れられなかったということは事実でございますが、ただそういうこととは別に、現実に昨年の援助の実績は伸びてまいっておりますし、今後も、事のいろいろな御批判もございますでしょうが、中東諸国等に対します援助の約束もだんだんふえてまいりますことでございますので、各省とも適時に連絡をとりながら、何と申しましても対外経済協力と申しますものの目的は、日本の利己的なものではなくて、発展途上国経済開発を促進して一日も早くいわゆる先進国との経済格差をなくするというところが目標なわけでございますから、わが国国際収支その他、いろいろな条件のいかんにかかわらず逐次援助を増大していくように努力をなお続けたいというふうに事務当局としても考えております。
  10. 水野清

    水野委員 経済局に伺いたいのですが、この間政府が発表した四十九年度の経済見通しを見ますと、長期資本収支、四十八年度今年度は七十八億ドルの赤字なんですが、来年度は四十四億ドルの赤字に圧縮することができるというような見通しを立てておられます。この長期資本収支というのは対外援助だけでないことは十分承知をしておりますし、私はその中の明細を手にしていないのですが、どうも財政当局は、実際には対外援助をかなり圧縮することによって日本国際収支のバランスをとっていこうというふうに考えているのじゃないかという懸念一つあるわけです。この点についてひとつ伺いたいと思います。
  11. 西田誠哉

    西田説明員 ただいま水野先生質問の点でございますが、私ども大蔵省から必ずしも長期資本収支見通しのこまかい具体的内容を聞いておるわけではございませんが、いままでどちらかと申しますと、非常に日本が、約二百億ドル近い外貨準備があったということから、海外投資民間投資でございますが、不動産その他、あるいはまあいわゆるレジャー産業、こういったものにも比較的自由な投資を認めておった。したがいまして、むしろどちらかと申しますとそういったいわば不要不急、直接日本産業関係のない面での投資というものを抑制していこうということで、直接対外援助の面で抑制するということではないと私ども了解いたしております。
  12. 水野清

    水野委員 お話はそういうことだというふうに私も想像しますが、逆な意味にいうと、最近日本企業国内企業環境がむずかしくなってきている。公害問題がやかましい、あるいは労賃もそう安くなくなってきている。その他企業仕事をする意味においては日本国内のほうがどうも最近海外より不便だという考え方が出てきています。そして海外投資民間投資はふえる一方です。特に最近の石油危機以降、私は減るのかと思ったら逆にまたふえる傾向にある。  そういう中で、この長期資本収支の見込みだけでは、明細がなくて議論するのはおかしいのですが、実際は逆な傾向にあるわけです、民間投資海外投資は。不動産の取得みたいなものは押えることができるでしょうけれども、いわゆる企業海外進出という形のものはむしろふえる傾向にある。そのかたわら、長期資本収支の総合的な数字は半分近くに減らそう、こういう政府見通しの中には、私はどうも海外経済協力を圧縮するんじゃないかという懸念を持ってしようがないのです。私も財政当局にこういう公的な場所でなくて質問したら、そうではございませんと、こう言っていますが、どうもそのような気がしてしようがないのです。少しいまの御答弁では見通しが甘いですよ。大臣はきわめて慎重で、いままでのとおりの方針日本対外経済協力というのは非常に重要なことだから長期的な視野でやろうとおっしゃっておられますが、金を出すほうはどうもそう考えてないきらいが非常にあると思います。これは大臣にひとつ、この点では財政当局ともう少し慎重なといいますか数字の上でも詰めた役所間の議論をしていただいておかないと、だんだん現実的な問題になってきたら金がないからこの辺でやめてくださいというようなことになる可能性がありますので、これは私は申し上げるだけにとどめておきますが、十分御検討いただきたいと思います。  それでは次の質問に移ります。御承知のように、昨年以来の石油危機の問題は、私たち政治経済社会全般にわたっていま日本を大騒ぎさしておりますが、東南アジア諸国をはじめそれ以外の発展途上国、特に産油国でない非産油国の間では私どもが考えている以上のいろんな苦しい問題に追い込まれております。石油のある国は御承知のように外貨が入ってきますが、石油のない国は石油を買う金も倍あるいは倍以上の三倍ぐらいの支払いをしなくちゃいけない。さらに今度は先進国から機械とか、日本のような国から肥料とかあるいはいろいろな近代工業製品を買わなくちゃいけない。それらの品物がさらに値上がりをしていて金は出る一方であるというような状態にあることは御承知のとおりです。  その中で、日本は特に東南アジア諸国とはいろいろな形で経済関係を持っておりますが、向こうのほうからいいますと、たとえば肥料であるとか合成化学繊維であるとかあるいは塩化ビニールのような石油製品であるとか、こういうものについては日本当てにしております。私が手にした資料で見ましても約五〇%以上いまのような品物を、工業製品日本依存をしているという国が東南アジア諸国には非常にたくさんあります。  ところが、日本国内経済情勢は御承知のとおりで、日本国内でもかなり品不足傾向にある中で、こういうものをカットしていったらどうだというこれは別のまた、具体的にいえば通産省あたりではそういう議論が出ております。外務省としては、この問題についてよほどしっかりやっていただかないと、われわれも国内現実にいろんな肥料であるとか化学繊維であるとか、さっきの塩化ビニールのようなものも不足している現状で、われわれの周辺のいろんなところからも外国輸出するよりは品物を確保してくれという陳情をかなり受けております。それだけに生産官庁通産省あたりではむしろ出したくないという傾向があるように私は感じるわけです。田中総理がこの間東南アジアに行かれたときも、この問題については田中総理自身各国から要望を受けております。必ず日本当てにしておりますからよろしくお願いしますよということをいわれております。あるいは行かない国からでもそういうことをいってきているはずであります。  そういう中で、外務省としてはどういう対策を具体的にとっておられますか、まずそれからお伺いしたいと思います。
  13. 大平正芳

    大平国務大臣 去年の十一月、十二月という段階におきましては、石油輸入量が段階的に減るということが一般的に懸念されておりまして、そうなった暁におきましては生産が落ちざるを得ない。生産が落ちた場合においては、物価対策等から申しまして内需優先にならざるを得ないのではないかという懸念が非常に濃厚になりまして、いま御指摘東南アジア地帯中国等肥料でございますとか合成繊維原料でございますとかいうようなものの供給が危ぶまれるのではないかということが現実の問題になりまして、総理の御訪問にあたって、私ども各国要請とこちらの供給体制を突き合わせまして、何としてもその需要に応じなければならぬ、もし応じられない場合に代替品をどのように考えていくかというようなことまでいろいろ検討したわけです。  ところが、ことしに入りまして、石油の分量につきましてはよそよりも輸入順便に確保できたということになってまいりましたし、電力や油の節約が行なわれましたけれども、これは生産に直接どれだけ実体的に響くかということになってまいりますと、響く部面もございますけれども節約をしても肉を切るというようなところまでいかなくて済んでいる企業が多いと聞いておるわけでございまして、ことしになりましてそういう心配はやや緩和してきております。  したがって、問題がいま出てまいりますと、われわれは内需輸出かという点で具体的な、国内官庁との間でいろいろ御相談しなければならないケースを心配しておったのでございますけれども、そういうことはいま非常に切実な課題としては出てきておりません。もし出てまいった場合には、肥料のように法制上も内需優先ときまっているようなもの、これは手のつけようはございませんけれども、そういう与えられた条件のもとでどのように輸出契約を実行していくかということにつきましては、外務省としても十分配慮いたしまして、こと欠かないように供給をはかってもらわなければならぬという立場で鋭意折衝していくつもりでおりますが、現在私のところにはまだ具体的なケースとして、切実なイシューとしては出てきていないのです。それで安心していいとはまだ完全に思っていませんけれども、いま生産は比較的順調に運んでおるのではないかと私は見ておりますが、もし事務当局のほうに話があるケースがございますれば、お聞き取りをいただきたいと思います。
  14. 水野清

    水野委員 事務当局に伺いたいのですが、こんなことはおわかりのことだと思いますが、日本もことしはたとえば動物のえさの原料であるトウモロコシとかマイロみたいなものを、たとえばタイ国あたりには非常に期待をせざるを得ない実情です。農作物だけ期待しておいて、肥料——これは中国に対してもそうです。ことしは農作物を非常に期待して買いたいという、もちろん民間べースですが、いろいろなオファーを出しております。農作物だけもらって肥料もやらない——やらないというのはおかしいですが、肥料期待の数量だけおつき合いできませんということになれば、ここに一種の日本——最近日本海外の評判が非常に悪いようです。  悪いということはいろいろ理由もあろうと思います。私たちも反省すべき点が大いにあると思いますが、たとえばこの間田中総理東南アジアに行かれて、タイやインドネシアで民衆の騒擾みたいなもので非常に苦労なさいましたが、ともかくその国の政府日本政府に対して信頼をし、その国の社会構造に問題があるのでしょうが、社会上層部政治経済上層部日本に対して期待をしておるということだけはまだつながっておると私は思うのです。ところが、どっちかといえば、そういう層が日本からの工業製品に非常に依存しておるから日本に対して期待もしておるし、民衆はいろいろ日貨ボイコットのようなことをやっておるけれども、彼らからいえば、また日貨がなかったら逆に困るわけですから、期待をしておるのに今度はその期待をしておる工業製品も思うにまかせないような輸出になってくる。輸出の量が押えられたり、あるいは価格問題でも私は出てくると思うのです。日本国内でも物価がたいへん上がっておる時期ですから、たいへんなことだと思いますが、価格問題でも問題が起こってきておる。  そういうことを少し積極的に洗い直していただく必要があると私は思う。通産省数字だけではだめですよ。通産省通産省立場でやっておるのですから、外務省外務省としてむしろ出先公館を使ってきちっとした要望というものを洗い直しておいて、そして通産省としっかり話をする、私はそういう態度が必要だと思うのです。  いま私の隣におられます鯨岡委員からこういうお話があったのですが、先般三木副総理中近東においでになったときに、サウジアラビア向こう相手国政府石油供給緩和の問題について話をされたときに、困るのは実は日本だけではない、サウジアラビアと同志であるアジアアフリカ諸国東南アジアのいろいろな国、そこの石油だけ見てやればいいということではなくて、日本石油がないということは、そういう国に対する工業製品供給にこと欠くことになるのだ、そういう影響をあなた方は御存じですかという話をされて、サウジアラビアを説得をされた。  そういう発言にもかんがみて、この問題はひとつはち巻きをして、しっかりやってもらいたい。もっと言え、こういう鯨岡さんのお話もございましたので、私もそう思います。いかがでございますか。
  15. 西田誠哉

    西田説明員 ただいま水野先生から御指摘のありましたようないろいろな点、特に昨年の十一月、石油危機が起こりまして以来、御指摘のたとえば肥料であるとか合成繊維、あるいは合成樹脂塩化ビニール、こういったものを日本期待しております国、特に東南アジアあたりからいろいろと要請があったのは事実のようでございます。これにつきまして、その国の経済現状、対日依存度、こういったものを在外公館を通じましていろいろと調べまして、その結果につきまして通産省あるいは業界のほうに、こういう問題点があるから十分配慮してほしいということは外務省としてもいたしております。さらに御指摘中近東、サウジあるいはクウェート、イラン、こういった国からもいろいろと日本から入る原材料、特に当時でございますから昨年の暮れごろ、いろいろ配船ぐあいでなかなか荷物が入らないというようなことを大使館を通じて申してこられたケースもございます。これなどもどものほうから各商社、そういったところを通じましていろいろとお願いをしておるということで、直接この原材料不足というものがその国の国づくりとそれから失業問題、雇用の問題にも結びついてまいりますので、そういう経緯があるほか、これはヨーロッパのほうも当時同じような状況にございまして、ヨーロッパのほうから同じ状況期待できない、やはり日本期待したいといういろいろな要請もございましたので、こういう点十分配慮しながら私どもやってきたということでございます。  最近、具体的に非常に困っておるという話は聞いておりませんが、ただいま大臣からお答えございましたように、具体的な話が大使館その他を通じて来た場合には、通産省なりあるいは関係省、それから民間の団体を通じて処置をしていきたいというふうに考えております。
  16. 水野清

    水野委員 私の聞いているところでは、たとえばシンガポールあたりプラスチック工業日本から材料が行かないから操短をしたり工場をやめているところがあるという話も聞いているのです。これがやはり日本から品物が来ないからわれわれは職業を失ったんだという発想に結びがちなんですね。私はよく注意をしていただきたいと思うのです。ただ大使館を通じてというのじゃなくて、むしろそういう観点から一ぺん出先公館現地情勢を調べ直さして、外務省としていろいろな資料をそろえた上で、私はほかの官庁と交渉をされるのが妥当じゃないかと思います。なおもう一つ伺いたいことがあるのですが、時間がないので、要するに操短をやったり工場を休んだりしているところがあるということを頭に入れて、それがどういう社会的影響があるかということも頭に入れてやっていただきたいというふうに思うわけです。  次に、アジア局長に伺いたいのですが、最近のカンボジアの戦況が非常に悪くなって、プノンペンのまわり十キロぐらいまで包囲されておりますけれども現地邦人対策、まあ伺ってみると、邦人対策というけれども実際は新聞社の方と大使館の方、大使館の方は仕事で行っておられるのでしょうが、大使館の方、あるいはごく一部の現地の人と結婚した人とかいうようなことですが、まずひとつその実情を承りたいと思います。
  17. 高島益郎

    ○高島政府委員 現在プノンペンにおります邦人といたしましては、大使館の館員が八名とそれからその夫人が一名、合計大使館は九名でございます。それから現地との合弁会社の職員が三名、報道関係者が夫人一名を加えまして六名、合わせまして十八名でございます。それ以外に商社員二名と短期滞在者三名とが二十一日現在おりましたけれども、まだ現状では未確認ですが、商社員二名につきましては二十二日、それから短期滞在者三名につきましては二十六日、それぞれプノンペンを離れたはずでございます。そうだとしますと、現状では十八名おるというのが現状でございます。
  18. 水野清

    水野委員 この引き揚げの対策についてひとつ万全を期していただきたいと思います。  それからもう一つ、これは去年の夏前でしたか、「ライフ」か何かの特派員ですか、一ノ瀬さんというカメラマンがアンコールワットの写真をとりに行って行くえ不明になった。そのことでこの委員会でも石井委員から御質問があったのですが、その後この一ノ瀬カメラマンの行くえについて外務省は続けて努力をしておられるかどうかということもあわせて明快にひとつ承りたいと思います。
  19. 高島益郎

    ○高島政府委員 一ノ瀬カメラマンにつきましては、昨年十二月十八日の本委員会におきまして石井先生の御質問に対して私、お答えした経緯がございます。その中で、当時、いわゆるカンボジア王国民族連合政府と接触した結果、われわれの得た回答では、普通の外国人記者は逮捕しない方針だ、もしかりに逮捕され、処刑されることがあるとすればそれは罪を犯した場合だけだ、そういう説明がございまして、その後もこの一ノ瀬カメラマンの行くえについていろいろ手を尽くしておりますが、最近われわれの得ている情報によりますると、このカンボジア王国民族連合政府のほうから、はたしてこの一ノ瀬カメラマンが報道関係者であるかどうかという点について確認を求めてまいりました。そのため、わがほうといたしましては、この一ノ瀬カメラマンの身分を証明する文書、それからこの人がカメラマンでございますのでいろいろ雑誌等に寄稿した写真等をつけまして先方に提出してございます。これに対しまして先方から回答がございまして、先方の政府のほうといたしましては、一ノ瀬カメラマンの所在その他につきまして政府のしかるべき担当者に調査方を命じた、またその結果が判明次第わがほうに知らせるというような趣旨の回答を得ております。
  20. 水野清

    水野委員 そうすると、いまのお話は、一ノ瀬さんというカメラマンが生存しているということに非常に確信がある、こういうお話なわけですか。
  21. 高島益郎

    ○高島政府委員 生存している確認をまだ得ているわけではございませんけれども、いずれにしましても、先方の政府のほうで十分調査をして、その結果判明次第すぐにわがほうに知らせるという回答を得ているだけでございますので、はっきり生存しているかどうかという点までは遺憾ながらわかりません。
  22. 水野清

    水野委員 時間がありませんので以上で質問を終わりますが、先ほどの国際収支の問題について、国際収支悪化したからといってこの対外援助を細めていくというようなことのないように、あるいはまた似たような問題でありますが、日本国内経済情勢が悪いからといって工業製品輸出についてしぶっていくというようなことが起こってまいりますと、これは日本は非常にかってな国だということが、国際的に最近だいぶいろいろいわれているようですが、浸透してまいります。ゆゆしきことであると私は心配をしております。どうぞひとつ外務大臣によろしく御配慮をいただきたい。御要望を申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  23. 木村俊夫

    木村委員長 河上民雄君。
  24. 河上民雄

    ○河上委員 初めにお尋ねしたいと思っておりますことは、最近、回教国首脳会議というものが開かれまして、その決議に関連いたしましてパレスチナ解放機関、PLOに対する政府の取り扱いについてお尋ねしたいと思います。  この問題につきましては、先般、石野委員から御質問がありまして、政府外務省からは、情勢を見て態度をきめたいというような趣旨の御答弁があったように記憶するのでありますけれども、その後回教国首脳会議が開かれまして、そのいろいろの決議の中で一番注目されますのは、パレスチナ解放機関、PLOがパレスチナ国家の唯一の合法的代表であるということを確認した点だと思うのであります。こういうような世界の諸情勢から、日本態度の決定が迫られつつあるということだけはお認めになると思うのであります。  そこで、まずPLOというものの性格について、外務当局ではどういうふうに考えておられるかを初めにお伺いしたい。
  25. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 PLOという一つの機関ができましたのは一九六四年と了解しております。これは中東紛争が起こりまして、パレスチナ問題が起こり、約三百万人のパレスチナ人、これの中の一部がコマンド活動を開始いたしました。それがいろいろな諸団体、数ははっきりつかめないのでありますが、あるいは三十といい五十といい、非常に多くの団体があるやに聞いております。こうした団体を、ある意味の統合と申しますか、そういう意味で、まとめて全パレスチナを糾合する組織ということを目標にいたしまして、それらの諸団体のワクとして、完全な結合体というふうにはなっておらないようでございますが、一応ワクとしてPLO、パレスチナ解放機関というものができ上がったというふうに聞いております。  このPLOが、もちろん傘下には穏健派から過激派、いろいろな団体があるわけでございまして、こうした団体がそれぞれの自己の考え方に基づいて活動をするという状態が続いておりますが、河上先生御指摘のとおりに、だんだんと中東問題が進展をしてくるという現状におきまして、パレスチナを代表するものが何であるかということが当然問題になるわけでございます。  その結果、昨年十一月のアルジェにおきますアラブ首脳会議、これも全加盟国が参加したわけではございませんが、とにかくこの首脳会議で、PLOをパレスチナの代表というふうに認め、またさらに二十二日から二十四日までの回教国首脳会議で同じような決議がされたということでございます。  なお、アラブ世界の中にもいろいろな意見があるやに聞いておりまして、完全に代表するものかどうかということにはまだ議論があるようでございます。趨勢といたしましては、先生御指摘のとおりのように動いてきておるというふうにわれわれも了解したいと思っております。
  26. 河上民雄

    ○河上委員 それでは条約局長にお尋ねしたいのですが、このようなPLOのような国家——国家ではないけれども、国家的な一種の連絡機関というものについて、国際法上どういうふうに理解しておられるか。たとえばECというようなものもあります。これもいわゆる国家ではないと思いますけれども、しかし、これも最近の情勢の中で国家にひとしいような取り扱いをするようになっておるわけですね。PLOの場合とECの場合では若干違うと思いますけれども、このPLOのようなそうした新しい性格を持った国際的な代表機関というものが、国際社会に、現在の流動期、変動期にはどうしても出てくる。それを無視することは、結局国際問題を正しく理解する、またあるいは解決していく方法ではないと思うのであります。そういう点を、政治論もございますけれども、一体こういうものをどういうように理解しておられるか、条約局長のお立場で御意見を承りたいと思います。
  27. 松永信雄

    ○松永政府委員 PLOの法律的な性格と申しますか、機構自身につきまして、それがどういう法律的な根拠ないし構成をもって形成されているかということについて、私どもまだ十分に詰めた的確な検討はいたしておりませんけれども、ECの場合との対比において考えますと、ECの場合には、いわゆる欧州共同体の創設ということを目標にしまして加盟各国がそれぞれ主権の範囲内において一定の主権を共同体に移管していくという国家間の条約締結され、それに基づいて設立されております欧州の諸国間のものでございますけれども、そういう意味におきまして、国家主権の移譲ないし移管というもの——現在の状態においてはそれは部分的でございますけれども——内容とする国際機関であるというふうに私どもは見ているわけでございます。それに対しましてPLOの場合には、そういう国と国との間、あるいは政府政府との間の条約に基づいてそれぞれの国の主権その他の権限の移譲というものを内容にしているものではないのじゃないか。  ただし、政治的には、いま御指摘にもありましたように非常な重要性を持っているということはわかりますけれども、ECの場合とPLOの場合は法律的には非常に違った形成の過程と申しますか、内容を持っているものではないだろうか、こういうふうに見ております。
  28. 河上民雄

    ○河上委員 このECの駐日代表部を今秋から認めるという協定を結ばれたように報道されておりますけれども、こういう場合は外交特権を与えるわけでございますね。やはりECというもの、そういう実体があるからそれに対応した形でやっているのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  29. 松永信雄

    ○松永政府委員 ECとの間におきましては、いま御指摘がございましたように駐日代表部の設置を認め、それに対しまして特権的な地位を認めるという方向で話が進められております。これはいま申し上げましたように、ECとの協定によって認めていくということにいまなるかと思います。したがいまして、当然、国際法上あるいは国内法上そういう地位を認めるというふうには考えておりませんで、これは条約に基づいてそういう地位を認めるということを考えているわけでございます。  PLOにつきましては、そういう考え方が成り立ちますかどうか、いまにわかには申し上げられませんけれども、ECの場合とは基本的な性格、法律的な性格が違ってくるのじゃないか、その点がやはり問題になるだろうと思います。
  30. 河上民雄

    ○河上委員 国際法上の性格の違いというものは私もよくわかりますが、政治的に見た場合、ECというのは、では非常に固まったものであるかというと、必ずしもまだそうでなくて、今度の石油消費国会議の小委員会のような会議にも、ECの代表部は、フランスが参加しなければ参加しないというようなことをいっておるけれども、実際にはEC加盟国は参加している。こういうわけで、政治的にはまだ一種のこんとん状態というものは脱していないと思うのですね。しかし、やはりECというものの実体があるという判断に立たないと、駐日代表部も認めるには至らないのじゃないでしょうか、いかがでございますか。
  31. 松永信雄

    ○松永政府委員 先ほど申しましたように、ECの場合には、一定の分野ではございますけれども各国がそれぞれ本来ならば主権の決定の作用として自分できめていくという事項を、ECという一つの共同体に移管しているという実体があるわけでございます。
  32. 河上民雄

    ○河上委員 先ほどPLOにつきましてはまだいろいろ異論もあるというような中近東局長お話でございましたけれども、しかしやはり、先ほど御指摘のありましたように、去年の末からことしにかけまして、アラブ諸国、あるいはアラブ諸国が主軸をなすような大きな国際会議で、これを唯一の合法機関であるときめておるのを見てもわかりますように、やはりこれを認めていくことが、現在の中東問題の解決の一つのかぎではないかと思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  33. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 仰せのとおりでありまして、PLOという一つの組織に近いもの、これがだんだんと周囲の趨勢からして前面に押し出されてまいります場合、当然これを無視するというわけにはまいりません。ただ、これは日本の云々する問題ではないかもしれませんですが、パレスチナ難民三百万、そのうちのPLO傘下というのが、人数ははっきりわかりませんが、三万から五万ぐらいといわれております。しかしながら、現在パレスチナの問題につきまして、これをいかに代表していくかということが一つの大きな問題でございまして、こうした問題を含めまして、おそらくジュネーブ会議が再開されますれば、そこでいろいろな討議が行なわれていくというふうにわれわれは見ておるわけでございますが、その推移を見ながら、この問題の扱いというものを検討していきたい、かように考えております。
  34. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、日本政府としては、自分のほうの主観に基づいて、この機関が代表機関であるというようにきめるつもりはなくて、あくまでそのパレスチナ人あるいは中東諸国の間の世論というものの落ちつくところを見てから考えたいということでございますか。
  35. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 このパレスチナの問題は、私、パレスチナ人自体の問題であり、アラブの問題であり、中東の問題であるというふうに考えるわけでございまして、いま日本がこれに対しまして早計に結論めいたものを出すというのはいかがかと存じます。
  36. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、この前のアルジェで開かれましたアラブ首脳会議あるいは今回の回教国首脳会議というようなものは、そういうパレスチナあるいはアラブあるいは中東の人たちの意思決定の機関であり、またプロセスであるというふうにはお考えでないのですか。
  37. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 アルジェのアラブ首脳会議は、不参加の国もございますし、元首の出なかった国もあるわけでございます。しかしながら、一つのアラブの元首会議として、これは十分われわれは重視しなければならぬと思います。それから回教国首脳会議も、これは当然非常に有力な会議でございまして、その結論をわれわれが尊重しないということでは全くないのでございます。そもそもわが国のパレスチナに対しまする考え方というのは、一九七〇年以来の国連におきますパレスチナ人の自決権を承認する決議、これにつきましてもわれわれ賛成投票を続けておりまして、見方によりましては、欧米よりも数歩先んじておるというふうに考えております。そういう立場を堅持しながら事態の推移を見守りたいと申し上げたのが私の気持ちでございます。
  38. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、事務当局のお考えはある程度わかりましたが、大平外務大臣にお伺いしたいのですけれども、二四二号決議の中では、パレスチナ民族の自決がうたわれているわけでございますけれども、これに賛成しておる日本政府としては、当然、民族自決に理解を持ち、また、その民族自決の実現に賛意を表し、協力をするにやぶさかではないというふうにお考えだと思うのですが、そういう場合に、やはりこのPLOという、今回回教国首脳会議でもパレスチナ人民を代表する合法的な機関であるという、こういうふうに規定づけられましたPLOの存在というものを、当然重視しなければならぬと思うのでありますが、外務大臣はいかがお考えでいらっしゃいますか。
  39. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 いま御質問の中の前半についてちょっと事実関係を御説明さしていただきますが、安保理決議二四二の中には、パレスチナ難民問題の公正な解決という形で取り上げられておりまして、パレスチナ人の自決権ということは、この安保理決議の内容には入っておりません。自決権につきましては、二十四回の総会以来五回にわたりまして総会の決議という形で出ておりまして、これに対しては日本は終始賛成いたしております。
  40. 河上民雄

    ○河上委員 わかりました。それじゃ、大臣
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 日本としての関心事の一つは、中東和平がどういうプロセスを経て達成されてまいるかということでございますが、これにつきまして日本は、二四二の決議につきまして、こういう解釈を踏まえて、それが誠実に実行されることによって和平が達成されることを期待するという姿勢をとっておるわけでございます。したがって、これからジュネーブ会議が開かれまして、順次中東和平が実現の途についていくことを期待いたしておるわけでございますが、その過程におきまして、パレスチナ問題がどのように処理されてまいるかということにわれわれも深い関心を持っておることに間違いはございません。ただ中近東局長からも申し上げましたように、これはパレスチナ人がまずどう考えるか、そしてアラブ、中近東諸国がこれに対してどのように対処してまいるかという点を、私どもは今後注意深くウォッチしていく必要があると考えておるわけでございまして、日本政府がただいまの段階で、こうあるべきであるということにつきまして具体的な提案をするというようなそそっかしいことはいたさないつもりでおります。  それから、第二の問題は、過去にもそういうまぎらわしいケースがあったわけでございますが、PLOの代表が日本国に参るとかというようなことが将来出てこないとも限らぬ。それからPLOの代表部を東京に置くとかというようなことが起こらないとも限らぬと思っておるわけでございますが、PLOの代表部云々というような問題につきましては、先ほど条約局長お答え申し上げましたように、これはECというようなかたまったものとはまだ考えていないわけでございまして、もしありとすれば、入国問題というような面での接触が起こり得るのじゃないだろうかと考えております。そういう問題につきまして、いままでは私の記憶ではPLOの代表だからという理由で拒否したことはないと私は思っておりますが今後どういう態様で出てまいりますか、そういうケースが起こった場合、政府として適正に処理していかなければならぬのではないかと考えております。
  42. 河上民雄

    ○河上委員 いまの大臣の答弁では、必ずしもはっきりはしませんけれども、PLOの代表が日本に来た場合、入国を過去においてそういう理由で断わったことはないが、今後起こり得る問題については適正な処置をとりたい、こういう御答弁だったように思うのですが、それはPLOの代表部を日本に認めるとか、何かPLOを合法的な機関として声明などで承認するとか、こういうこととは関係あるわけですけれども、必ずしもそれを意味しなくても、PLOの代表が日本に来られた場合には、これに対して適正な処置をとりたい、こういうように伺ってよろしいわけですか。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 日本との関係を考えた場合に、そういうケースが起こり得るのじゃないかと考えておりますが、そういうケースが起こった場合に、政府部内で相談して適正な措置を講じようということなんでございまして、まだ起こっておりませんので、起こった場合は、政府として適正な措置を講じるべきではないかと私は思っております。
  44. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ、それが一つ政府の意思表示の機会になるかと思うのですけれども、この問題は、大臣の言われんとするところはある程度理解できるような気もしますので、次の問題に移ります。  核拡散防止条約を今国会に提出、批准を求めるというのが政府態度であったと思いますし、内閣総理大臣の施政方針演説の中ではあまり触れられておりませんが、外務大臣の演説の中ではそれが触れられたように記憶いたしております。これは今国会中に批准を求められるのかどうか、そのことを大平外務大臣に伺いたいと思います。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 批准を求める前に、政府がやらなければならぬことを政府はいたすべきであると思っておるわけでございます。私が外交演説で申し上げたのは、将来の批准に備えまして、まず政府はこの条約に署名の際、政府声明で強調されております中の一つでございます原子力の平和利用の面での平等性の確保のための保障措置協定を締結するため準備を行なうことが、まずわれわれの当面やらなければならぬことだと心得ておりますと、こういうことで、いま科学技術庁と折衝をいたしておるところでございます。核防条約の批准そのものは、この協定がわがほうにとって満足のいく形で締結されたあとで、その他署名の際に提起された諸問題等総合的に考慮をいたしまして、高度の政治的判断をまって決定すべきものと思っておるわけでございます。  この保障措置協定の交渉でございますが、昨年まで数次にわたって予備交渉的にやってまいっておるわけでございまして、まずこのことをやって、批准をお願いする前提になっておるいろんなことを一つ一つ片づけていくということをまず精力的にやらなければならぬのではないかと思っております。  したがって、今国会に批准を求めるかどうかということでございますが、そういうことが早くできればいいのでございますけれども、いまのところ、私といたしましては、当面のやるべき仕事をやらしていただいて、それが満足すべきものであることをまず確かめさしてもらいたいと考えておりまして、いま、いつ御提案できるかというような点については、確たるめどをまだ持つに至っておりません。
  46. 河上民雄

    ○河上委員 それではひとつ、いま少し技術的なことになるかもしれませんが、核兵器の不拡散に関する条約、これの第八条ですか、改正と再審議の項の第三項に、この条約の効力発生後五年が経過したときに再審議をする、レビューの会議を持つということがうたわれております。効力発生は一九七〇年の三月五日でございますけれども、それから五年後といいますと来年の三月五日ということになりますが、もし今国会に出ない、そして来国会、来年の国会ということになりますると、三月までですから、非常に冒頭にならざるを得ないと思うのですが、これが批准が成立するかしないか、また全く別の問題でございますけれども、こういう形でもしこれが間に合わない場合は、この会議日本としては出席できないのではないかという気がするのでありますが、この条約から見ましてこういう問題はどうなるのか、あるいは来年のそういうレビューの、再審議の会議に備えていろいろ準備の会合が開かれるのではないかと思うのですけれども、これに日本は、署名はしておりますが、そういうまだ批准していないという段階でそういう準備の会合に出られるのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  47. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 この条約八条三項に書いてございます条約の再検討会議は、来年の五月に開催されることがきまっております。それからこの再検討会議に至るまでの準備の会議というものを一応予定されておりますが、その第一回の会議がことしの四月ということに大体きまったようでございます。この条約のたてまえから申しますと、再検討会議またはその前の準備会議に参加するのは、この条約の加盟国であるということが一応はっきりしておりますが、現在、その準備会議を含めまして、どういう国がこれに参加するか、どういう議題を討議するかという予備的な話し合いの過程におきまして、NPT、この条約に加盟していない国でも条約の運用上非常に重要な関係を持つ国については何らかのかっこうで入れたらどうかという議論が一部にあるということを聞いております。これは法律的にわれわれは権利を持つわけではございませんけれども、このような考え方があるということは、やはり日本のこの条約に対する重要性を認識している結果ではないかと思います。  それから、明年五月の再検討会議に出席できるかどうかということでございますが、御指摘のように、それまでに条約についての国会の御承認が得られれば問題ないと思いますが、かりにそれまでの時期に御承認が得られない場合でも、国内の手続が進んでいるということが、日本をしてこの条約に加入させるための一つの大きな理由づけになるのではないかという期待は持っております。
  48. 河上民雄

    ○河上委員 そうしますと、まだ批准が成立してなくてもそういう準備をしていれば出られるという、そういうふうに判断しておられるわけですか。
  49. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 非常に個人的な希望でございます。
  50. 河上民雄

    ○河上委員 それでは国際的にそれが認められるかどうかは全くわからぬわけですね。  大平さんにお伺いいたしますけれども、そういうような状況であっても、いまお話のありましたように、高度の政治判断に立ってきめていきたいという態度には変わりはないのか。大平さんは何か先ほど来そそっかしいことは私はやらぬというお話でございましたけれども、こういうような一種の技術的な、少し時間的な制約というものがあるわけですけれども、それにもかかわらずマイペースでいく、こういうようなお考えでございますか。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 まずこれは政府だけの都合でまいりませんで、国会の御承認を求めなければならぬわけでございまするし、事柄自体はわが国の安全保障にとりまして基本的な問題でございますので、十分理を尽くしてクリアしなければならない問題だと思っております。したがって、準備会議がどうのこうのということだからわがほうでこうするということは、本末転倒だと思っておりまして、まず国内を固めてまいることが先決だと思います。
  52. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、海洋法会議がことしの六月行なわれるのでございますけれども、この問題は日本の漁業にとりましても非常に重要な意味を持っていると思いますので、まだ少し時期が先だということがあるかもしれませんが、ここでこの海洋法会議に臨む政府態度を伺いたいと思います。  ここでは先般御質問申し上げましたように、大陸だなについての議論がなされるのではないかと思いますが、同時にいわゆる領海、あるいはことばをかえて言いますと領海等の関係において排他的な経済水域というような問題も当然議論されると思うのです。これらについて、外務省ではどういうようにお考えになっておられるか。これは漁民が非常に切実に心配している問題だと思いますので、大陸だなについて、たとえばいまの大陸棚条約では、水深二百メートルというようなことが一応うたわれておりますけれども、一部では五百メートルというような説もございますし、いろいろあるわけです。それらについてのお考え方とそれから領海の幅員及びこれとの関連における排他的な経済水域の幅について、日本政府はどういうような主張をするというおつもりでありますか、明らかにしていただきたいと思います。
  53. 杉原真一

    ○杉原説明員 この六月から行なわれます海洋法会議の実質会議で、領海あるいは大陸だなについて非常にたくさんの提案が出ておるわけなのでございます。ただし領海につきましては、大多数の国が十二海里という線で取りまとめをしようということに意見がまとまりつつある。と申しますのは、実は領海が広がりますと、それに伴って従来公海部分が残っていた海峡が領海の制度に服するということになって、船舶の航行問題がからんでくる。そういう意味で、先進海洋国側としては、単純に十二海里をそのままのむというわけにはいかないというような事情もございます。また後進国側にいたしますと、十二海里だけではまだ資源の取り囲みという趣旨からいって不足である、したがって領海の十二海里は資源管轄権の二百海里と込みでなければ受け取れないというような趣旨で、先進国、後進国の間で必ずしもまだ十二海里一本にまとめるというところまではいっておりません。しかしそれが大勢になっていることはまぎれもない事実でございます。  大陸だなの御質問の諸点につきましても、現在の一九五八年の大陸棚条約におきます大陸だなの範囲の規定が必ずしも明確な定義でないこともございまして、非常にたくさんの新しい提案が出てきておるわけでございます。その中で一番数多くの支持を得ておると申しますのは、後進国が由として支持いたしております沿岸国の管轄権を単純に二百海里の外まで及ぼす、これは生物資源及び海底鉱物資源ともに二百海里までは、海底の事情がどうなっていようと沿岸国の管轄権のもとに服するのだという説と、それから先住の先ほど御指摘になりましたように、水深と距離とを組み合わせた説、五百メートルの水深と百海里の組み合わせ、それから二百メートルの水深と四十海里の組み合わせ、そういうふうに組み合わせた考え方、それからさらに自然延長論というものに基づきまして従来の大陸棚条約ですでに大陸だなの端の端までもうすでにわれわれは権利を得ているのだという見解に基づいて、非常に大きな大陸だなを持っておる国々が広い大陸だな、これは二百海里の外にまで及んだ場合でも沿岸国の管轄権が及ぶという説をなしている国々も十ばかりございます。以上申し上げたのは大体広い大陸だなを主張する国で、これが数の上では現在多数を占めておるということは申せるのでございます。  他方、それでは海を持っていない国、内陸国その他をはじめとして広い大陸だなによって利益を必ずしも得ない諸国、それらの国からは、それはあまりにもひど過ぎる、したがって領海の外については中間的な、あるいは妥協的な特殊の海域を設ける、中間海域と一応申しておりますが、このような中間的な海域においては、沿岸国が一応の権利は持つが、その利益の一部は国際社会に還元しなければならないというような説をもって提案をいたしております諸国もございます。  このように非常にたくさんの国がそれぞれの利益に基づいて各種の提案をいたしておりまして、現在大陸だな付近の問題については、どれが最終的に条約に盛り込まれることになるか、いまのところまだ予測困難な状況でございます。わが国といたしましては、現在のところ、従来の大陸棚条約における必ずしも明確でない基準にかえて、距離基準一本で大陸だなの範囲をきめるというのが適当だろう。そして、その場合に、相対する国あるいは隣接国との境界線の問題については、中間線をとるというふうな提案をいたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、今後まだ非常に流動的な情勢に対処して日本の利益が守られるとともに、世界のすべての国の利益が公平に守られるような解決方法が生まれてくるように共同して努力していきたい、そういうふうな気持ちでおりますことを申し上げておきます。
  54. 河上民雄

    ○河上委員 いろいろ御説明をいただきまして参考になりますけれども、いままでもいろいろな説がたくさんございます。それに対して日本政府はどういう態度をとるつもりかというお答えが全然なかったのでございます。一体それはいつごろまでに——会議に出る、出た上であちこち廊下とんびのように聞いて回って、大体この辺がということではないと思うのですが、いつごろまでに日本政府としての一つ態度ですね、それがまあ大勢から受け入れられるか受け入れられないかは別として、日本政府態度をいつごろまでにまとめるつもりですか。一つのめどを伺いたいと思います。
  55. 杉原真一

    ○杉原説明員 会議自身は、先ほど申し上げましたように、非常にたくさんの項目について非常に複雑な各国の利害が入り乱れておりまして、ことしのカラカス会議ではおそらく条約の採択まではまいらないだろうと一般に予測されております。したがいまして、来年のウイーン会議で、あるいはそれ以後の会議まで、会議の終結は伸びるのだろうと思われているのでございますが、といって、日本がその間最後まで何らの対策、あるいは確定した提案を持たずに臨むというわけにはまたまいらないわけでございます。  それで、それに関連いたしまして後進国と申しますか、開発途上国側は、この四月にもうすでに百八カ国に招請状を発しまして、ナイロビで基本的な線での合意を得たいという意味での閣僚会議を開くことになっております。先進国側といたしましても、そのような情勢に対処して、少なくも開発途上国側の数による押しつけというものに対抗し得るような共同の提案をいたさなければならないということで、内々、われわれ先進国側といたしましても、どこが最終的に守れる線であろうかということを、やはり同じくカラカス会議前に腹づもりをつくりたいということでいま協議をやっておるわけであります。したがいまして、それまでには、日本としてもどこまでは守らなければならないというふうな点についての慎重な検討が必要になってくると考える次第でございます。
  56. 河上民雄

    ○河上委員 昭和四十三年の外務委員会でもこの問題は論議されておりますが、そのときに政府の説明員の方の御答弁では、一九六〇年の会議日本政府は、いろいろな案がたくさん出ましたけれども、アメリカ・カナダ案、米加案に賛成しているわけです。それは領海は六海里、それから漁業水域が六海里、それから五年間の実績のある国については、十年間に限って漁業の継続を認めるというような案に対しまして、日本政府が賛成しておるようでございます。高島さんの御答弁でありますけれども、今回は、この前の政府態度には必ずしもこだわらずに検討するのかどうか、その後もいろいろな新しい情勢が起こってきております。特に開発途上国におきましては、天然資源の恒久主権という考え方が非常に強くなってまいりまして、それは単に石油だけではなく、漁業の資源についても同様のようであります。  そういう従来の、漁業ことに遠洋漁業に対しましては先進国の主権侵害であるという見方さえとっているわけですね。一九六〇年とはだいぶ事情が違ってきておりますけれども、このころの政府態度とは違った態度で臨むというおつもりのように受け取れるのでありますが、いかがでありますか。
  57. 高島益郎

    ○高島政府委員 私、領海条約及び公海条約を審議いただいた際にここで答弁さしていただいた経緯がございますので、ちょっと補足させていただきます。  一九六〇年における海洋法会議の段階におきましては、実は領海を六海里にして、その先にさらに漁業水域を設ける案というのが、当時としてはたいへん進歩的な案であったと思います。しかしその後、結局領海の幅員についての確定ができませんで失敗いたしまして、領海条約とはいいながらも領海の幅員についての規定がない条約が採択されました。自来領海の幅員についても非常な困難が生じております。  一つは、ソ連等を中心とします十二海里の主張をする国、それからさらに伝統的な三海里を依然として主張する国、こういう国の対立がずっと続きまして、最近はそれがさらに進展いたしまして、いまや十二海里というのは国際的には一つの、一般的に認められた領海として確定してもいいのではないかというような風潮になってきております。先ほど杉原審議官から御説明がありましたのも、実はそういうその後の情勢の進展をとらえての発言だったと思いますので、私ども政府といたしましては、これは私どもの所管ではありませんけれども、そういう国際的な一般の情勢を踏まえて今後の会議に臨みたいということだろうと思います。
  58. 河上民雄

    ○河上委員 いま高島さんの御答弁でもわかりましたように、一九六〇年のときには非常に進歩的な案だと主観的に思ったものですら、もはやこれは大勢である、そうしてさらに世論はそれを乗り越えて広がりつつある。また当時よりもいまのほうが開発途上国の構成メンバーにおける比率も高まってきておるでしょうし、天然資源に対する恒久主権という概念も非常に強く次第に固まりつつある、いまは主として石油の問題だけがクローズアップされておりますけれども、漁業資源の場合も、日本人の動物性たん白の摂取量の五三%を水産物に依存しているわが国としては、これは石油に並んでもっと重視しなければならない問題だと私は思うのです。いや日本は三海里説だというようなことを言っていても、結局押し流されてしまって、結果的には日本としてはどうしようもないような事態を招くということになるおそれがあると思いますので、むしろ開発途上国が言っておりますところの天然資源に対する恒久主権というような主張を十分に認めて、あるいはそういう水産資源の管理保護についての主張というものを十分認めた上で日本の国益というものをはかるという姿勢に転換しないと、結果的にかえって日本の漁業に、あるいはそこで働いている漁業労働者に非常な大きな被害を与えるのではないかというふうに私はおそれるわけです。  そこで、たとえばいまはまだ十二海里の領海説が一般化しているということでありますが、排他的な経済水域の観念については二百海里というのがかなり強くなってきているわけです。もちろん私はことしの会議でこれが決定するとは思いません。思いませんけれども、その主張が多数を占めた場合に、そのこと自体がそれぞれの開発途上国の主張に一つの論拠を与えて、まだ国際法的に認められていないけれども、それに基づいて日本の遠洋漁業との間にトラブルを生ずるというおそれは十分あると思うのです。その点いかがでございますか。  二百海里の排他的経済水域がもし認められた場合、日本の漁業に与える影響、たとえば漁獲高はどのくらい減るとか、あるいはもしそういうことになった場合にわれわれとしてはそれでも魚はとらなきゃいかぬといった場合に、一体どういう様態で開発途上国の主張との調和の中で日本の国益を主張するということが可能になるのか、たとえば向こうが主張する排他的経済水域の中でとった魚はこれを輸入するというような形をとるのか、そういうようなことについて、水産庁なり外務省では一応の腹づもりとしてどういう見通しを持っておられるか、これをここで明らかにしていただきたいと思います。
  59. 米澤邦男

    ○米澤説明員 最近の実績によりますと、わが国の漁獲量というものは大体年間約一千万トンということになっております。二百海里ということは、かりに世界の多数ということとなりますと、これが世界的に制度として実施されるということになりますと、どこに基線が引かれるかとかこまかい問題はあるかと思いますけれども、われわれが現在行なっております試算によりますと、そのうちの大体四十数%、約五〇%弱でございますけれども、そういうものが外国の沿岸から約二百海里以内の水域で現在漁獲されておるということになるわけでございます。先生から御指摘がございましたように、もちろんこれが直ちに制度化されるということについてはわかりませんが、万一制度化されたというような場合には、この取り扱いがわが国の食糧政策の基本問題としてきわめて重要な問題になるわけでございますけれども関係国との入漁協定の問題であるとか、あるいは漁業協力というような形を通して日本の実績の確保につとめたいと思っておりますが、実績問題がどう扱われるかということは海洋法会議一つの大きな未解決のむずかしい問題だというぐあいに考えております。それからもちろん現在もかなり行なわれておりますけれども、合弁会社というような形で沿岸国と共存する、共栄するというような形でわが国の漁業実績をはかっていくような方途も講じなければならないだろう、かように考えておるわけでございます。
  60. 河上民雄

    ○河上委員 大平さんにも御意見を伺いたいのですけれども、いまの事務当局お答えでも明らかなように、海洋法会議というのは日本の漁業に対して非常に大きな影響を与えると思うのでありまして、そしてそれに伴って今後外交的な折衝が非常に必要になってくると思うのです。したがって、ここでひとつそういう問題について哲学を明らかに確立しておくことが無用のトラブルを避ける基本的に必要なポイントだと思うのです。したがって、大平さんに伺いたいのでありますけれども日本政府としては開発途上国のいわゆる天然資源に対する恒久主権という考え方に対し十分な配慮を払って、日本の国益を主張するという態度で今後臨まれるのかどうか。  と同時に、過去十数年の日本の漁業に対する政策というのは、まず沿岸漁業を捨てて沖合い漁業に移り、沖合い漁業がもうだめになったからというので、今度は遠洋漁業に移る、こういうふうにやってきたところ、今度は遠洋漁業がいまお話のように日本の漁獲量の実に五〇%近くがそれに抵触するというような事態を生んでいるわけです。そうなってまいりますと、ここ十数年にわたって行なってきた日本政府の漁業政策というものについて、大平さんとして、政府の当局者としてどういうような反省をしておられるか、それを伺いたいと思うのであります。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへんむずかしい問題でございます。資源保有国、とりわけ開発途上国の保有しておる資源について主権を主張する、それはよく理解できます。みずからの資源を活用することによってそれらの国々がみずからの量見で国づくりをやっていこうというアスピレーションといいますか、そういうものが尊重されなければならぬと思います。日本としてはそういうものに対して十分理解を持って当たるべきである、これはもう申すまでもないことと思います。その場合、それを軸にいたしまして、そういう国々とわが国がどういう形でタイアップしていくかということがわれわれとして考えるべき問題ではないかと思うのでございます。そういう国々のそういうアスピレーションに基づいてまず計画を立て、それを実行に移してまいる場合に、計画能力あるいは資本の調弁あるいは技術の充当、そういった点につきましては、彼らもそれを望むわけでございますので、そういう面でわが国として実行可能でしかもフェアな一つタイアップの方式を編み出していかなければいかぬのじゃないかと考えます。  それから第二点の漁業の問題でございますが、仰せのように、だんだん漁業水城が狭くなってまいるという中で、これからどのような脱出をはかってまいるかということは、日本の漁業の命運にとりまして非常に大きな課題であると思うのでありまして、私、その方面の専門家じゃございませんので、何ともりっぱな御提言はできないわけでございますが、前提は狭くなるものだという覚悟の上に立たないといけないと思うのでありまして、そういう制約を頭に置いて、そこでその不利をどう克服するかということがわれわれの課題であろうと思うのでありまして、その具体的な方策につきましては、それぞれの専門領域において精力的に御検討いただかなければならぬことではないかと考えます。
  62. 河上民雄

    ○河上委員 狭くなるというようなことを覚悟してというお答えでございましたが、ここで特に希望しておきたいのは、大臣の所管ではないかもしれませんけれども、他人の庭先を乱獲するというか、荒らすということよりも、まず日本の周辺の、たとえば瀬戸内海とか、そういう非常に豊富な漁場をつぶして工業化、生産第一主義で来た、その基本的な出発点の誤りというものが、今日こういう形で報いられているのだということを十分認識して、今後のこういう問題に当たっていただかないといけないのじゃないか、何か予測もしない外圧が来たというようなことではいけないのじゃないか、こういうふうに私は思いますので、その点、国内の環境の保全、あるいは生産第一主義の政策の失敗というものを十分認識して、この問題に当たっていただきたい、こういうふうに思います。  最後に、最近の新聞で拝見したのでありますが、アメリカ兵の麻薬の密売団が首都圏の五つの基地をまたにして動き、かなり多くの米兵が逮捕されたということが伝えられております。これは、ここしばらく、これは新聞の切り抜きだけでございますが、いろいろな情報をずっと見てまいりますと、昨年の暮れにも米軍の基地に密売網が発見された。あるいは首都間だけではなく、沖繩でもそういうことがしばしば発覚しておる。こういうようなことでごさいますが、この問題について、実際にどのように検挙されておるのか。最近の数字でけっこうでございますけれども、検挙数はどうなっておるのかを、まず初めに伺いたいと思います。
  63. 相川孝

    ○相川説明員 ただいまの御質問お答え申し上げます。  私の手元に昭和四十七年と昭和四十八年の米軍を中心といたします麻薬事犯の検挙状況という数字がございますが、これによりますと、四十七年で、大体アメリカ軍人、軍属関係で、麻薬取締法あるいは大麻取締法違反という関係で二百二十四人を検挙いたしております。それから四十八年に入りますと、同じく米軍人、軍属関係で三百七十六名の検挙を見ております。  それから、御指摘のございました米兵を中心といたします麻薬密輸事犯でございますけれども、概要について申し上げますと、神奈川県警察本部並びに横須賀警察署の捜査関係者が、四十八年の八月中旬ごろから、横須賀市内におきまして米兵を中心とする麻薬の密売があるという情報によりまして、米軍の捜査当局とも緊密な連絡をとりながら捜査を進めたわけでございます。その結果、大量のヘロインやモルヒネあるいは大麻等が米軍人によって密輸されており、しかもこれらが末端の消費春、特に米軍人を中心とする消費者のところへ密売されているという事実の全貌が明らかになっております。  これは幾つかの事件から成り立つものですけれども一つはアメリカ海軍の第七艦隊のオクラホマシティー号というのがございますけれども、ここの乗務員が四十八年の八月ごろシンガポールに寄港いたしておりまして、その際モルヒネを四百二十五グラム入手いたしまして、これを船内で一部使用したほか、残りを横須賀港から国内に密輸入しております。そして乗り組み員その他の者に密売しているという事犯でございます。  それからもう一つは、横田基地所属の米軍人が、同じく四十八年の八月ごろ休暇を利用しましてバンコクへ行きまして、そこでヘロインを五百グラム入手しまして、基地に持ち帰りまして、これを同じく基地内の米軍人に密売していたという事犯でございます。  それからもう一つは、同じく横田基地所属の米軍人でございますけれどもタイ国におります同僚と連絡をしまして、これは四十七年の九月ごろから四十八年の五月ぐらいの間にかけまして、軍事郵便を利用して、ヘロインを十八キログラム、それから大麻をやはり十九キログラムぐらい国内に密輸入いたしたような事犯がございます。そのほか小さいものもございますけれども、最近、私どもの麻薬取り締まり関係では、かなり大がかりな密輸入あるいは密売事犯であると言うことができます。そしてこの関係者につきましては、昨年の夏から神奈川県で鋭意捜査を進めまして、結局現在までに被疑者を三十二名検挙いたしております。  この内訳を申し上げますと、大体米国の軍人の方が三十名、その他が二名ということになっております。この三十二名につきましては、それぞれ必要な取り調べを行ないまして、現在身柄づきで二十五名を検察庁に送っております。そして目下この中には取り調べを継続している勾留中の者もあります。  大体そのような状況でございます。
  64. 河上民雄

    ○河上委員 まあいま米軍の方が逮捕されているということでしたが、そういう人たちが逮捕されたあとの処置は、どうなっておりますか。取り調べが終わったあと、どういうふうにしておりますか。過去の事例でけっこうでございますけれども……。
  65. 相川孝

    ○相川説明員 私どもは、必要な捜査を遂げまして、取り調べが完了いたしますと、事件の態様といいますか、内容によりまして、これを検察庁に送致をいたすわけでございます。自後、検察庁におきまして、刑事処分その他をきめていただくわけであります。
  66. 河上民雄

    ○河上委員 そういうわけですが、そのあと身柄は最終的には米軍のほうへ渡しておるのですか。そして結局米軍の方なる者はアメリカへ帰ってしまっておるのですか。そういう追跡調査はどうなっておるのですか。
  67. 相川孝

    ○相川説明員 法務省のほうでお答えしていただくのが適切かとも存じますけれども、まあ私ども麻薬取締法の関係について申し上げますと、検察庁へ送りまして大体三分二ぐらいのものが起訴になっておるようでございます。それから大体三分一ぐらいが起訴猶予というような形になります。そして起訴されますと、私どもがいろいろ検察庁関係からお聞きします限りにおきまして、起訴された者の大半は懲役刑が科されておるようでございます。それから若干の者は罰金刑、ただし執行猶予がつく者も相当数あるやに聞いております。
  68. 河上民雄

    ○河上委員 いま懲役刑というお話がございましたが、読売新聞によりますと、横須賀刑務所に収容されている外人は、これはどうもめしの話をして恐縮ですけれども、食費は日本人の場合は百二十二円で外国人の場合は二百八十三円だ、向こうさまはたいへんからだが大きいのでそのぐらいの食費が要るというようなお話でございますが、一体こういうことは事実でございますか。またその外人というのは、一体白人だけを意味しているのか、日本人でない者をすべて外人といっているのか。
  69. 相川孝

    ○相川説明員 警察関係で扱いますものは、先生よく御存じのように、私ども逮捕いたしますと、これを留置場に普通勾留といいますか身柄を拘束いたします。私ども持ち時間が大体四十八時間でございます。そうしますと、あとは検察庁に身柄を送りまして検察庁の手持ちの身柄ということになるわけでございます。ですから、警察といたしましては、留置場の経費というのは、一日の留置人の食料を幾らかけたらいいかというのが大体きまっておりますけれども、いま一日二百二十七円でまかなうということになっております。ただし、これは国のほうからの基準でございまして、県によっては若干これにプラスして、まあ留置人の基本的人権といいますか、こういうようなものの配意もいたしておるわけでございます。なお、この二百二十七円プラス若干の県費というようなものにつきましては、日本人もそれから外国人も原則として区別しているということはございません。  なお、検察庁に身柄を送りましたあとにつきましては法務省のほうからお答えがあるかと思います。
  70. 長島敦

    ○長島政府委員 法務省のほうは拘置所と刑務所を管理しておりますが、こういう事件で起訴されますと、大体身柄が拘置所のほうに入ってまいりまして、その拘置所にいるうちに裁判が確定いたしますと、今度は刑務所に入るということになるわけであります。  そこで、外人と日本人の食料費の問題でございますけれども、これは一般的に外人の中で風俗習慣が日本人と非常に違っているという外人を対象にいたしまして、先生先ほど御指摘のように、ある程度の食料費の差がございます。そういう意味でございますので、外人といいますのは日本人と同じような食生活になじまない外人ということで考えておるわけでございまして、主としてそういう意味では白人になりますけれども、白人だけでなくて、食生活が非常に違っているというものはやはりその外人の中に含めてやっておるわけでございます。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 非常に常識的な受け取り方かもしれませんけれども、人間が食うめしぐらい、そう特に倍も差をつける必要があるのかどうか、非常に疑わしい問題だと思うのです。まあそれは少しわきに入った話かもしれませんが……。  いま、お答えの中でも出てまいりました具体的な事例でございますけれども、米軍の軍事郵便物にまぎれて麻薬が取引されておる、送られておるというような事実がありました。この米軍の軍事郵便物については、いわゆる地位協定、関税の特例などによりまして税関の検査が免除になっているわけです。こういう点を考えますと、いまの麻薬の問題というのは、日米安保条約に基づく米軍の存在と体質的に非常に深く結びついていると思うのです。この昭和四十七年九月のハワイにおける田中・ニクソン会談に基づく共同声明の中でも、たしか十項だと思いますが、その中では、特に「両者は、麻薬その他の危険な薬品の不法取引きの規制についての、すでに両国間で行なわれている緊密な協力を一層強化拡充することに合意した。」こういうようなくだりもあるのでして、一国の総理あるいは大統領がわざわざこの共同声明の中で麻薬の問題を触れるというまで重大問題になっておることが、ここで暗示されていると思うのです。  この最近起こった一つの事件の中に、アメリカ兵が軍事郵便物にまぎれて直接麻薬の取引きをしているという事実に対して、またそういう公用物以外の——まあ公用物の中へ入れているかどうか知りませんが、この公用物以外の私物の郵便物もこの中に入っておるのかどうか、またこういうような事実について、今後アメリカとの間にこういう抜け穴があるので困るということで、あらためてこの点についてもっと積極的に協議をする意思があるのかどうか、それをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  72. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 税関検査の問題につきましては、地位協定の十一条に規定がございまして、その中で税関検査を免除されるものとして「公用の封印がある公文書及び合衆国軍事郵便路線上にある公用郵便物」ということに規定されてございます。したがいまして、税関検査を免除されます軍用郵便物は、あくまでも「合衆国軍事郵便路線上にある公用郵便物」ということに限られるわけであります。軍事郵便を使っていまのような麻薬密輸というふうな反則が行なわれますと、これはまさに乱用、悪用ということになるわけでございまして、このようなものは一般の郵便物と同様の検査を当然受けているはずでございますけれども、何らかの関係で間違いが起きたのだと思います。  それで、麻薬の問題につきましては、先ほど首脳会談コミュニケを御引用でございましたけれども、米側といたしましてもかねて非常に神経を使っておりまして、このような不祥事件が起きないようにあらゆる努力日本側と協力をしてやってきました。したがいまして、従来からも税関当局者間あるいは厚生省の麻薬担当者間あるいは警察当局者間、それぞれのパネルの密接な協議というものが行なわれております。  しかしながら、今後ともますますそのような密接な協議というものは十分強化されなければいけないと思いますし、また日米間の問題といたしましても、私どもはかねて合同委員会その他の場におきまして、麻薬事犯の処理ということについて十分米側と協力を行なっていく、今後ともそのような考えをもって問題に取り組んでいきたいと思います。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 では終わります。
  74. 木村俊夫

    木村委員長 松本善明君。
  75. 松本善明

    ○松本(善)委員 ベトナム民主共和国との国交が昨年樹立されて以来の大使館設置問題について、外務大臣外務省当局のお話を伺いたいと思っております。  これは国交が樹立をされたので、当然早急に大使館を設置して、外交関係が密接にいくようにすべきだと思いますが、この基本方針について、まず外務大臣にお伺いしたいと思います。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 できるだけ早く双方に実館の設置を急ぎまして、当面の二国家の問題についての話し合いを進めたいものと考えております。
  77. 松本善明

    ○松本(善)委員 現在ベトナム民主共和国への大使館の設置については、いつごろまでにどのくらいの規模のものをつくるという考えでおられるか、お話しいただきたいと思います。
  78. 高島益郎

    ○高島政府委員 昨年十月十九日に政令をもって在北ベトナム大使館を開設いたしました。これは国会閉会中であったものですから、現在新しく法律案を提出いたしまして、この政令で設置した大使館をフォーマルにするといいますか、形式的に法律上の大使館として設置するように手続中でございます。現在、ハノイ大使館の要員として二名、ラオスのビエンチャンに待機させておりまして、先方の受け入れ体制整い次第、ハノイに大使館の実館を設置する方針でおります。  最終的にどの程度の規模とするかという御質問でございますけれども、私ども現在のところ、大使を含めまして七名程度の大使館をつくりたいというように希望いたしております。
  79. 松本善明

    ○松本(善)委員 その法案は今国会にはどうするつもりですか。
  80. 高島益郎

    ○高島政府委員 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案ということでこの国会に出してございます。
  81. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、もう一つお聞きしたいのは、ベトナムからの入国問題であります。  この間、南ベトナムの解放青年連盟のチャン・バン・アン、ホン・ハーという二人の人が民青同盟の大会に来るということで入国を申請したのですが、それが入国できなかったわけですけれども、これはいままでの中国とか朝鮮民主主義人民共和国からの入国その他との関係、あるいは臨時革命政府側からの入国もいままでにありました関係から考えましても、やはりもっと拡大をしていく、入国をどんどん認めていくという方向でなければならないと思います。この臨時革命政府側からの入国申請について、日本政府としてはどういうふうに考えているのか説明をいただきたい。
  82. 高島益郎

    ○高島政府委員 この問題はこれまでも再々国会で御質問ございまして、政府としては一貫して、具体的申請がなされた段階でケース・バイ・ケースで検討し、決定をするという御答弁をしていると思います。入国問題一般につきましては法務省が主管いたしておりまして、法務省が最終的な決定権を持っているわけでございますが、その過程におきまして、こういうわが国との関係のない国からの入国につきましては、外務省に協議がございまして、その協議の段階で、われわれ外交的見地から意見を申しておりまして、それらを総合して法務省が最終的に判断して決定するということでございますので、私のほうで、こういう人たちの入国問題一般について外務省がこうだということを言う立場にちょっとございませんが、外交的見地から申しますと、こういう国交のない国の人であっても、それがいやしくも政府承認と解釈されるようなことにならない限りは、原則としては外務省立場から異議を申し立てるということは通常ないというふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  83. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうしますと、臨時革命政府側からの入国についても、外務省側からするならば原則として異論はないと伺っていいのでしょうか。
  84. 高島益郎

    ○高島政府委員 いろいろ形式上の問題もからんでおりますので、具体的になかなか申し上げられませんけれども、国際慣例上、そういう国の人が日本に入国するということが何か外交的に政府承認意味するようにとられる場合というのが具体的にどういう場合かという点については、いろいろ具体的なケースに応じて御説明しなければなりませんので、一般論としてしか申し上げられませんのですけれども、要するに政府承認と見られるようなことになっては困るというのが外務省立場でございます。
  85. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは国交が樹立していない状態での政府からの、たとえば中国の場合や朝鮮民主主義人民共和国の場合を考えれば一見して明らかですけれども、そういう場合でも認めているわけですね。ですから、そういう点でいうならば、臨時革命政府側からの入国について特に別個の扱いをする必要はないように思うし、日本の外交上あるいはその他の国の立場から見ましても、それを断わるということについての合理的な理由が、私はどうしても納得がいかないわけですが、その点についてはいかがお考えですか。
  86. 高島益郎

    ○高島政府委員 先ほども申しましたとおり、これは外務省として、入国問題一般についての政府立場を説明する権限がないものですから、再三繰り返して申し上げておりますけれども外務省立場として、国交のない国に対する一般的態度のワク内で考えておりますので、PRGについて特別な考慮をしているということはございません。
  87. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、こう伺っていいですか。国交回復前の中華人民共和国あるいは朝鮮民主主義人民共和国からの入国申請と同じように考えて差しつかえないものと外務省としては考えているというふうに考えていいでしょうか。
  88. 高島益郎

    ○高島政府委員 やはり一般論としては、国交のない国の人の入国問題という立場で考えておりまして、あとは個々に、具体的にケースに応じて検討するということでございまして、それ以上のことはちょっと申し上げられません。
  89. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、やはり入国問題というのは、どんな人の場合でも、特別の場合でない限りできるだけ入れていくという方向が私は正しいと思うのです。このことについて、過去中国の場合も、それから朝鮮民主主義人民共和国の場合も、あるいはベトナム民主共和国の場合も、そのたびごとにずっと国会でのいろいろな論議が積み重ねられてきたわけであります。いまこの臨時革命政府の問題について問題になっておりますけれども、この歴史的な経過を見ましても、やはりこれは拡大していくという方向で進まなければならないと思います。この点についての外務大臣のお考えを伺いたいと思うのです。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、人が交流いたしまして理解が深まるということ自体はけっこうなことなんでございます。またそういう世界であってほしいと私どもも願うわけでございます。  ただ、現実の問題といたしまして、たとえば朝鮮半島には二つ政権があって、対話を持っておるものの、対話のある対立というような状態になって微妙な状態にあるわけでございます。私ども北鮮とのおつき合いを考える場合におきましても、そういう状態を踏まえてやらなければいけませんので、いまアジア局長申しましたようにケース・バイ・ケースで、このケースを認めた場合にどうだろうかという検討をいわばしていっておるわけでございますが、一般的にスポーツであるとか学術であるとか経済であるとかいうような面においてはまずよしとしていこうじゃないかというようなところまでだんだん来て、あなたがおっしゃるように漸次拡大の方向をとってきておるわけでございます。ベトナムにおきましても、サイゴン政府をわれわれは唯一の正統政府として認めておる立場があるわけでございまして、PRGと人の交流が本来望ましいからといって、これを日本政府の判断で諾否をきめる場合に、ああいう状態にあるということを頭に置いて考えてまいるということでございますので、交流それ自体は望ましいことだと考えておりまするし、できたら前進的なことで拡大をはかりたいとは考えておりまするけれども現実の諸条件というものを十分吟味しながら用心深くやってまいりたいと考えております。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 基本方向を拡大していかなければならぬということを言われたことはけっこうなことだと思うのですけれども、サイゴン政府についての見方は、私と外務大臣とは全く違っていて、私どもはかいらい政権と見ておりますけれども、問題は、先ほど来のアジア局長の御答弁から見ましても、承認をしていない政府、外交関係を樹立してない政府のもとからの入国であってもいままで認められてきているわけですね。日本政府としては認めるという態度をとってきているわけですね。にもかかわらず、いま特別扱いをしているのはどこに原因があるのか。二人の青年代表が南ベトナムから臨時革命政府側であるけれども日本に入国申請をして入ってくるということについて、私は日本として認めて一向に何ら差しつかえないのじゃないか。そこのところで、なぜそういうところにこだわらなければならないのだろうかということについて、これは国民だれも関心を持つことではないかと思います。こういうことはやはり改めるという方向に——いま御説明を聞きましても、この議事録が公になりましても、なぜ日本政府はそういう措置をとったのだろうかということについてはだれも納得できないのじゃないか。むしろ変えるべきことではないかというふうに感ずるのが国民一般の考えではないかと思います。  そういう意味でお聞きをしておるわけですから、近い将来にそういう方向に再検討されたいと思いますが、その点についてもう一度外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 承認の前触れというか何といいますか、承認にかかわるようなことにならないようにという配慮は、われわれがサイゴン政府を、あなたと御意見は違いますけれども、認めておる以上は、サイゴン政府日本との関係というのをきちんとしていかなければならぬ立場におるわけでございますので、サイゴン政府立場を考えた場合に、政治的な色彩を持つというようなものについては日本政府として考えなければならぬ筋合いのものでないかと思うのであります。北鮮の場合なんかも大体そういう政治的な色彩を持つものは御遠慮願うようにいたしておるのもそういう配慮からでございますが、そのあたりはまあちょっとあなたのお考えとわれわれの考えと距離があるところでないかと思いますけれども……。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣、ちょっと整理をして伺っておきますが、もちろん大臣と私の政治立場は違うことは明白なんですけれども、だから議論をしておることかもしれません。しかし、いまのお話では、臨時革命政府承認したというふうにとられるといけないからという話が出ているわけですけれども、しかし、いままでの歴史からするならば、日本政府は蒋介石政権だとか、それから現在でも韓国の政府を唯一正統政府と考えている、にもかかわらず朝鮮民主主義人民共和国とかあるいは中華人民共和国から入国を認めてきた経緯があるわけですね。ですから、臨時革命政府側からの入国を認めたからといって、私のほうは臨時革命政府との外交関係を樹立すべきだというふうに考えていますけれども、しかし、日本政府として入国を認めたからといって、じゃその政府承認ということには直接にはいかないのじゃないか。そうだとすれば、入国問題については、それは態度を変えてしかるべきではないか、こういうことを言っているわけです。その点は外務大臣外務省当局の説明の立場から私は問題の提起をしているのだけれども、そういう点での再検討はできませんか。
  94. 高島益郎

    ○高島政府委員 私どもPRGからの入国を全然認めないという立場ではございませんで、すでに昨年六月に認めて、来ている人もございますし、今後も、大臣おっしゃったように、何か政府承認ととられるような、そういうふうに解釈されるようなふうにならない範囲で入国はもちろん積極的に考えていきたいというふうに思います。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 まだ不十分とは思いますけれども、しかし、拡大をしていく、できるだけ積極的に認めていく方向だということで、今後の問題に対処をしていきたいと思います。この点はこの程度にしたいと思います。  それから、カンボジアの問題ですが、きょうの委員会でも御質疑がありましたが、いわゆるロン・ノル政権がプノンペンのごく一部しか支配をしていない。これはもうカンボジアの状態から見るならば非常に圧倒的な部分は支配をしていない状態になっているというふうに私どもは考えているわけです。プノンペン周辺でもいろんな事態が起こっている。だからこそ前の国連総会でもカンボジアの代表権問題が問題になり、そしてこの問題について日本政府はロン・ノル政権を積極的に支持するという立場からいろいろ国連外交を展開されたということが報道されております。私どもはそういうことはやはり正しくないのじゃないだろうかというふうに考えているわけですが、この点についての政府の考え方を伺いたいと思います。
  96. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 昨年の総会でカンボジア問題が取り上げられましたときの日本政府の考え方というものは、カンボジア問題の解決にあたっては、当事者同士の平和的な話し合いによって解決をはかるべきであって、外部からの干渉はこれを排すべきである、特に当事者同士の話がきまる前に国連がこれについて何らかの決定を行なうということは、平和的な当事者による話し合いを阻害するおそれがあるというのが日本を含めて共同決議案を提出した国の、特にアジアのASEAN諸国及び日本、それから太平洋地域のニュージーランドの基本的考え方でございます。この考え方は今日も変わっておりません。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 その考えでいきますと私は間違うんじゃないかと思いますが、中国の場合を考えれば、中国の国連代表権問題で日本政府立場は間違っているということは、明白に国際場裏で明らかになったわけですね。それと同じ問題なんです。これはほかの場合でもいろいろ問題になっていることは明らかです。そのロン・ノル政権がカンボジアの国民をほんとうに代表しているかどうかという問題が問題です。話し合いがつくまでは国連できめるべきではないというような議論は、中国の代表権問題の議論の経過を見るならば、これはもう明らかだろう、そういう議論では通用しなくなっているということは明らかだろうと思います。  現在においてもまだロン・ノル政権をカンボジア国民を代表する政府だというふうに考えている根拠、私はこれを伺いたいと思うのです。
  98. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 先ほどお答えしました点、若干補足させていただきますが、国連におけるカンボジア問題に対する対処のしかたにおきまして、わが国が特にロン・ノル政権を支持する、あるいはシアヌーク政権を支持するという立場をとったわけではございません。先ほど申しましたような考え方から、これは当事者同士の平和的な話し合いによって解決するべき問題であるということが日本の考え方で、これをちょっと補足させていただきます。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、代表権問題というのは、私どもは軍事力によってロン・ノル政権はかろうじて存続をしているものだというふうに見ていますけれども、いまの政府立場でいきますと、どういう事態になりましてもロン・ノル政権の代表権——この間のような問題は、日本政府の側から考えるならば、本来これは国連で問題にすべきことではない、いわゆる代表権問題というのは問題にならないという考えになるのですか。話し合いがつくまでは論ずべきではないということであれば、永久にどういう事態になろうとも、カンボジアの代表権問題については日本は反対ということになっていかざるを得ない。そういう態度でいいのかどうかという問題なんですがね。どうですか。
  100. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 昨年の総会でこの問題が出ましたときに、最終的にリベリアでございましたか、この問題は来年の総会まで審議を延期すべきであるという動議が表決に付されまして、採択された結果、昨年の総会ではそういった実質問題についての討議はございませんでした。ことしの総会の議題としていま仮議題の中に入っておりますので、実質問題の審議はことしの総会で行なわれるというふうに理解しております。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 その経過は知っていますよ。知っていますけれども、実際には延期ということでロン・ノル政権の命脈を延ばすための工作がなされ、それはしかも日本がその中心的役割りをになったというふうにいろいろいわれているわけです。形はそういう形になっているけれども、実際はロン・ノル政権をどう見るかという問題がやはり一番大きい問題だ。今後の実質的な論議に入るについての日本政府態度をきめる上でも非常に重要な問題だと思うのです。もう一度中国問題と同じ醜態を日本政府がさらすかどうかという問題になろうかと思うのです。  そういう意味で聞いているのですけれども、ロン・ノル政権をいまカンボジアの国民を代表しているというふうに見る根拠はどこにあるか。それについての政府の見解はどうなっておるかということを聞きたいのです。
  102. 高島益郎

    ○高島政府委員 おそらく松本先生の御疑問は、一九七〇年のシアヌーク解任自体が問題であって、したがって、そういう解任の結果引き続いている現在の政府が有効なものと認められないという立場かとも思いますけれども、私ども一九七〇年三月十八日のカンボジア国会におきますシアヌーク解任は、憲法のワク内で行なわれたものであるというふうに考えておりまして、現在プノンペンを支配しています現在の政権、すなわちロン・ノル政権ですが、これをカンボジアの合法政府として承認し、これと外交関係を持っている、そういう立場でございます。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、どういう事態になっても、実質的にカンボジア国民の信頼を失っていて、ごく一部しか支配をしてないという状況になってもずっとロン・ノル政権を支持していく、日本政府立場はこういう考え方なんですか。事態の変化にかかわりなく……。
  104. 高島益郎

    ○高島政府委員 これは現状をどういうふうに認識するかという問題にも関係するかと思いますけれども、私ども現在、なるほどプノンペン市自体は、市の周辺十キロないし十五キロのところまで解放戦線側が来ておるということはよく承知しておりまして、先ほども質問がありましたとおり、かなり在留邦人等に危険が及ぶ可能性があるという状態ではございます。しかし現状において、プノンペン市が完全に混乱状態にあって、ロン・ノル政府がこれを支配しておらぬというふうには私ども見ておりませんで、現在の状態がある限りは、やはりこれと国交を続けていくという立場を維持せざるを得ないというふうに思っております。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣にお伺いしますが、総理東南アジアを旅行されて非常にデモにあったり、いろいろ事件が起こりました。これについては、日本の独占資本の海外進出が横暴きわまるものであるということも一つありますけれども、しかし日本政府の外交がアメリカと全く一体になっている、あるいは現地の反動政権と完全に一体になっている、国民の信頼を失っている反動政権を常に支持をしている、そういう外交の基本的なあり方が、問題になっているたとえばカンボジアならカンボジアの国民だけでなくて、東南アジア全体に影響している。日本政府の外交的立場というのはアメリカと全く一体じゃないか、アメリカと一緒になった軍事政権、民主的な政権とはとても言えないものと一体じゃないか、こういう批判がああいうような大きなものになり、批判になって発展をし、またその対日批判というものが現地の反動政権に対する批判としてもまた発展をする。これは経過を見れば明らかなんじゃないか。こういう点の反省をしなければならぬ。いまのカンボジアのロン・ノル政権に対する態度というものは非常に典型的なものだと私は思うのです。この点についての外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、私どもアジアの平和を考える場合に、現在の平和に対するワク組みというものを維持してまいるこれを軽々にこわさない、これが重要な柱だと考えておるわけでございます。アメリカと日本が安保条約を結んだり、あるいはアメリカ軍のプレゼンスがアジアに続いておるということ、これをどう評価するかという問題、これについては私とあなたとは意見が違いますけれども、われわれの考え方では、それはそれなりに一つの平和を維持してまいる場合の要素として、これを軽々に考えてはいけないのじゃないかという立場をとっておるわけでございます。  アメリカと同調するとかアメリカに追従するとかいうことをよく言われますけれども、われわれはアメリカに追従する精神があって、したがってその次にアメリカと安保条約を結んでおるというような論理の展開ではなくて、アジアの平和というものを考える場合に、どういう条件をつくり上げて維持してまいることが大切かというところからわれわれは考えておるわけでございまして、その結果がアメリカと協調するという結果になりましても、そのことをもって直ちにアメリカ追随だとかなんとか言われるのは、私はいわれない批判であろうと思っておるわけでございます。  平和という問題はたいへんむずかしい問題で、曇りなき青空のような平和を望むわけでございますけれども、なかなかそうはまいりませんで、現実に現在より悪くない状態をまず維持していって、そしてさらに平和の固めを、かたきところを一歩どうして進められるかというぎりぎりの問題がわれわれの課題ではないかと思うのでありまして、そうやすやすと現在のワク組みをくずしてかかるということは、決して平和に通じる道ではなくて、平和をこわすことになりかねないのではないか。そういう点が松本さんと私との間には確かに考え方が違うのじゃないかという感じがいたします。  それはそれといたしまして、東南アジアその他における対日批判というようなものの柱にそういうことがあるのではないかということでございますが、これはまた東南アジアの対日批判というような問題それ自体 非常に複雑な要因を持っておりますので、一がいにこういうことだからこうだと簡明直截に割り切ることはやや性急に過ぎるのじゃないかと私は考えております。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣の見解はとても同意できませんし、私はそういう方向では民族自決権というか民族解放運動が広がっていくアジアやラテンアメリカあるいは中東、そういうところの支持を日本政府は受けることができないと思いますが、この点についての議論はこの程度にいたします。  最後に、ちょっと聞き落としたのがありますので……。べトナムの大使館設置の問題について、実館設置の時期は大体いつごろになるのか、そのことをお答えいただきたいと思います。
  108. 高島益郎

    ○高島政府委員 わがほうといたしましてはできるだけ早い機会に実館を設置したいということで、先方ともいろいろかけ合っておりますけれども、何ぶん先方の受け入れ体制がほんとうに欠けておりまして、実館を設置するにも場所がない。ホテルにも、お客さん、一般の旅行者の部屋はとにかくとしまして、ホテルの中に実館を持たせるという余裕はとても先方にないというような話でありまして、たいへん残念ですけれども、いまの段階でいつという見通しはまだ立て得ない状況にございます。しかし、これはわれわれとしましては、できるだけ早い機会に実館を設けたいというようなことでせっかく交渉をいたしたいと思います。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本側としての目標も持てないのですか。目標をどのくらいにしているか。
  110. 高島益郎

    ○高島政府委員 これは一にかかって先方の受け入れ体制に依存しているということがございますが、私のほうとしては、幾らおそくても本年じゅうという目標は持っておりますが、その時期はなるべく早いほうがいいというふうに思っております。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  112. 木村俊夫

    木村委員長 永末英一君。
  113. 永末英一

    ○永末委員 昨年十月十九日の本委員会で私は大平さんに、日中航空協定は、日中間の実務協定を結ぶ順序でいえば第一番にくるべき重要な性質のものであるから慎重に検討して結論を急いでほしいという注文をつけておきました。その大平さんは一月に訪中されてこの問題についていろいろと先方と協議をされたようでございますが、さて二月九日の自民党総務会に「日台路線の取り扱いについて」と称するものが示され、この基本を自民党の総務会は了承されたと新聞は伝えております。この外務、運輸両省案という日台路線の取り扱いというものは一体どういう性格のものであるか、外務大臣からお示しを願いたい。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 外交の仕事政府が責任を持ってやらなければいかぬことでございまして、党に責任を転嫁するわけにいかぬと思います。しかし問題は、政府がやるにつきまして党の了解を得ておく必要があると考え、党におはかりした結果、そういう党議がきめられたわけでございますので、私としてはそれを踏まえてこの問題の処理をしなければならぬと考えております。
  115. 永末英一

    ○永末委員 それをあなたのほうの党で論議されている過程で、この中に含まれている六項目はワンパッケージであって、その中のどれをなぶってもいかぬのだ、こういう旨の御発言をあなたがされたと伝えられているわけでございますが、ワンパッケージなんて聞きますと、何かあなたと中国側との約束の内容がこれであるかのごとき印象を受けるのでございますが、その間の事情を御説明願いたい。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 日台路線の維持を正常化後の状況のもとでどのようにやってまいるかということは、日本政府がきめなければならぬ問題だと心得ておるわけでございます。北京と台北は御案内のように対立した形になっておるわけでございまして、正常化後のそういう現実を踏まえて、日本政府が結局これは片づけなければならぬ問題と思っておるわけでございます。そういう中で政府としては、こういうやり方でいけばこういう現実の中において一方において日中航空協定は結ぶことができ、こういうことで日台路線の維持は可能でないかと考えたわけでございます。あくまでも日本政府の考え方でございます。  しかし、正常化をやりまして、日中間に公然たる外交関係がある中で、日本政府が決断をして日台路線を維持——日台路線を維持するということは中国も了解をいたしておるわけでございますけれども、これをどのような態様において維持していくかについては、先方も重大な関心を持っておるわけでございますので、私といたしましては中国側が根本的に理解できないというような姿のものは、これはなかなかできないわけでございますので、基本的な問題について意見の交換を十分遂げておく必要を感じて訪中をしたわけでございまして、基本的理解はお互いに得たと私は思っておりまして、それを踏まえた上で、日本政府としてこういう構造を持った措置をやれば、この二つの命題を解くことができるのではないかと考えて、あの当時党に提示したということでございます。  パッケージ云々でございますが、一つ一つ別なことでなくて、全体として両方の要請、日中航空協定を結ぶということと日台路線を維持するということの両方を両立させるには、ここに書いてあるようなことが必要でなかろうかという意味で、一つ一つばらされたのではなかなか仕事にならぬのじゃないかという意味で申し上げたわけです。
  117. 永末英一

    ○永末委員 これに基づいて台湾側と民間の人が交渉に行こうとしておると思うわけです。政府が台湾と交渉する限りではないと思いますからね。そうですね、政府が交渉するのではない。あくまでも台湾と日本との関係民間関係であるから、民間の人が相手方の民間の人と交渉してやっていく。  その場合に、あなたが言われるこの六項目というのがそのまま認められないかもしれませんね、相手の民間から。しかし、あなたがいま言われたように、ワンパッケージなんというようなことをわがほうの政府外務大臣が考えているとすると、このうちの何ほどかがくずれたら、そうすると、日中間の航空協定はできないものだと考えておられるのかどうか、伺いたい。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 日中間の航空協定はでかさなければいかぬと思っております。それから日台間の航空路線も維持しなければならぬと私考えておるわけです。そのことが第一命題でございますから、それに役立つように考えていけばいいわけなんでございまして、いまから両方と交渉しなければいかぬわけでございまして、どういう場面にぶつかりますか、それはわかりません。観念論をやっておってもあまり生産的でございませんので、交渉をやってみようと思っているわけです。
  119. 永末英一

    ○永末委員 私は、あなたの心がまえには賛成しているのです。交渉しなければいかぬ。ただ、交渉にあたって、何か動かすべからざるワンパッケージがぽんと出てきて、このことについての内容で論議がされておるという状態について、最初あなたが言われたような政府の持つ外交権と照らし合わせながら、ふと疑義を感じましたので、質問しているわけなんです。  もう一つ伺いたいのは、これは中国側との約束ごとではなくて、日本政府がお考えになったことですね。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 党に提示したのも、外務、運輸両省案として出しておるわけで、中国案なんて響いてありませんよ。日本政府の考えた案です。
  121. 永末英一

    ○永末委員 中国側の案なんて言っていません。中国側とこんなことを相談されたのかどうかと聞いている。これは外務、運輸両省案であることは了承しておりますよ。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 だから、日中間の外交関係が持たれておる以上、相互の信頼関係の上でわれわれ実務協定もいろいろやってまいらなければいかぬわけでございますから、基本的な問題について隔意ない意見の交換を遂げておく必要を感じて、それで遂げてきました。私としては、そういう感触を踏まえた上で政府案をつくったつもりでおるわけでございまして、責任は全部日本政府にあるわけです。
  123. 永末英一

    ○永末委員 自民党の総務会は、いろいろないきさつの結果、これの基本を了承されたと新聞は伝えておるわけです、私は内容は知りませんがね。そうすると、いま外務大臣としては、これから中国に対しては政府間交渉、台湾との間には民間の方が交渉されるという形で、この日中航空協定締結のための交渉が始まるわけですが、あなたは自民党員として、自民党という政党がもうすでにこれで完全なフリーハンドを与えたとお考えですか。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 これは政府と自民党の間のことでございまして、永末さんはじめ国会の方々に御心配をいただく筋じゃないと思いますけれども、せっかくの御質問でございますので、自民党といたしましては、基本は了承するが、これは政府が実行するにあたっては、党の首脳とよく相談しながら慎重に対処してくれということなのでございます。したがって、これから事を運ぶ段階におきまして、問題点につきましては私としては、党の首脳と相談しながらやってまいるというつもりでございます。
  125. 永末英一

    ○永末委員 私は、何もあなたの党の総務会の中のことをちっとも伺いたいと思いません。ただ、あなたがおっしゃったように、外交権のある政府、その政府は、いま政党政治でございますから、自民党によって構成されている。しかし、相手国のある問題、しかも、相手方が二つもあるような問題の内容について、一つの党だけで議論して、そうして何かそれによってくくられているような印象をもし相手方に与えるとすると、相手方は複数でございますから、それに対して何か言われたときに非常に迷惑をするのは国民全体でございますわね。その外交の手続の運び方、そのことについて私は少し疑念を持っておるわけです。  もっとこまかい、ワンパッケージとかそういうことではなくて、基本だけで——事務的なことまできめてからかかられるような外交を外務大臣が運ばれるのだろうか、こういう点について私は疑義を持っているわけなんです。もっと与党と政府との関係は、大筋だけのことでやられるのが、外から見ておりますと、望ましいのじゃないかと思いますが、あなたの御感覚はいかがですか。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 冒頭に申し上げましたように、外交のほうは政府が責任を持ってやらねばいかぬわけでございまして、一〇〇%政府の責任でございまして、その責任に変わりはございません。したがって、自民党とわれわれとの間の問題は、内輪の問題でございまして、公の問題としては政府が表に立つわけでございますので、各野党の皆さんをはじめ国民から批判を受けるのは私であると考えて、そういう心がまえで処置してまいります。
  127. 永末英一

    ○永末委員 この六項目が世に明らかになりまして、その中で、たとえば三項目、「日本政府は「中華航空」がその意思に反して社名と旗を変更することは求めないが、社名と旗の性格に関する日本政府の認識を別途明らかにする。」というようなことが書いてあるわけですね。これは何か読み方によってはよくわからぬのですが、ある新聞がこれに対して、政府首脳というのがこの一月十七日に明らかにしたというので書いてあるのは、わが国は、青天白日旗を国旗とはみなさないというようなことが書いてあるわけですね。これは人のしるしについて何かわれわれがそういうことでものを言えるのかどうか。青天白旗日という旗がございますが、それは台湾を中華民国として国家承認をしておる国あるいは中華民国といっておる台湾の政府にとっては、これは国旗でしような。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 中華民国政府は三十八カ国から中国を代表する政府として認められている政府承知しております。したがって、いうところの青天白日旗が国旗でないなどという僭越なことは私ども申したことはございません。
  129. 永末英一

    ○永末委員 日本政府との関係においては、あれはそうすると何になりますか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 日本政府中国を代表する政府として中華人民共和国政府を認めて、それと正規の国交を結んでおるという立場にあるということでございます。それから御推察を願いたいと思います。
  131. 永末英一

    ○永末委員 世の中にははっきりものを言われぬこともありますね。一足す一がすぐ二になるというのはわかりやすい論理でございますが、三にはならぬ、一にはならぬということで推測せなければならぬこともあるかと思いますが、現実の問題として、まだ中国日本との間には海運協定はございませんね。海運協定を結ぶときにも同じ問題が起こると思いますが、大平さんはその同じ問題を今度と同じようにやられるおつもりですか。
  132. 高島益郎

    ○高島政府委員 海運協定もできるだけ早い機会に中国との間に締結したいということで申し入れはしてございますけれども、まだ先方からの交渉に応じてもいいという返答が参っておりませんので、現状では交渉が始まった場合にこの問題がどういうふうに処理されるかということまでは、まだわがほうとしては考えておりません。
  133. 永末英一

    ○永末委員 香港では青天白日旗を掲げた船と五星紅旗を掲げた船とが一緒にとまっている光景を見ることがあります。飛行場には五星紅旗をデザインした飛行機と青天白日旗をデザインした飛行機とが同じ飛行場にとまっておった風景もございました。これからの交渉でそういう場面を想定していないようでございますが、いまアジア局長から言われた海運協定を結ぶについては、わが国の港にそういうデザインのついたきれをひるがえした船が入ってくるわけでございまして、この辺のところもよくお考えをいただいておかねばならぬと思います。これから進むことでございますので、一応あなたに問題点を投げかけておきます。  もう一つ伺いたいのは第二項目、日本側は企業については日本航空が日台路線に就航しないようにする、こういうことですが、どういうものがわがほうの日台路線を担当する民間企業になるのでしょうか。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 それは日本の航空政策の問題でございまして、私からお答えすべき問題ではないと思います。
  135. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、外務省は考えぬということですか。航空政策だから運輸省関係の者が答えるべきであって、外務省は所管外、こういうことでございますか。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 運輸大臣の問題だと思います。
  137. 永末英一

    ○永末委員 それなら運輸大臣の出席でも求めておけばよかったですね。しかし大平さん、あなたは国務大臣ですからちょっと伺っておきたいのですが、日航という会社は四五%政府出資、すなわち国民が出資している会社ですね。したがって、もしこの新しい民間会社を日台路線を担当する会社としてつくるといたしました場合に、全然日航が参加しない場合、そうしますといままで国民が資本を出してやった、そしていわば権利でございましょうね、これはようもうかっているという話ですが、その権利がなくなるということになりますから、国民は損をしたことになると思われませんか。国務大臣として伺います。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 日航という会社は民間企業でございますけれども政府が相当出資しておることも承知いたしておりますが、国内の幹線路線とそれから海外の路線を広く運営いたしておるわけでございまして、また将来国内外を通じてどういう路線が日航の運営になりますか、そういう問題もあろうかと思うのでありまして、日航の株主の立場におきましては、現状、将来をにらんで総合的に御判断になられるのではないかと思います。
  139. 永末英一

    ○永末委員 大平さん、最後の総合的に御判断になられるというのはちょっとよくわからなかったのですけれども、あなたは政府の国務大臣の一人ですから、出資をしている政府側の役員でございまして、そうしますと判断されるのはあなたでしょう。あなたも十数分の一の判断の力をお持ちでございまして、私が心配いたしておるのは、航空政策というものがございましょうが、問題をしぼってそこの点、つまり出資をしておる国民、政府という側だけに立って考えるならば、もし日航が持っておりましたこの日台路線というものが、全然日航の参加しない会社になったり、あるいは日航の出資が何割かという持ち分になってしまえば、その分だけ国民が日航に出資をしておった権利といいますか、あるいはそのことによって日航が欠損してくれば、その欠損は出資しているものの側にはね返ってくるわけでございまして、そういうことが一体出資をしている政府側として当然のことと考えられるのか、望ましくないことと考えられるのか、この辺をひとつお答え願いたいと思います。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうのは総合的に航空政策上判断して措置すべきものと考えておりまして、外務大臣たる立場でとやかく言うべき性質のものではないと思います。
  141. 永末英一

    ○永末委員 国務大臣大平さんは外務大臣としてはお答えにならぬそうでございますので、この問題はいずれ運輸大臣を本委員会に呼びまして、きっちり詰めたいと思います。本日の質問は終わります。
  142. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる三月一日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十八分散会