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1973-12-18 第72回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十八日(火曜日)    午前十時三分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 福永 一臣君    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 松本 善明君       小林 正巳君    坂本三十次君       深谷 隆司君    福田 篤泰君       石野 久男君    高田 富之君       土井たか子君    金子 満広君       柴田 睦夫君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     伊藤 参午君         外務省経済局次         長       西田 誠哉君         外務省情報文化         局文化事業部長 堀  新助君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 十二月十七日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     越智 通雄君   土井たか子君     竹村 幸雄君 同日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     小林 正巳君   竹村 幸雄君     土井たか子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  3. 石井一

    石井委員 一ノ瀬泰造さんという日本人のフリーのカメラマンが十一月二十二日、アンコールワットの付近で解放戦線側に逮捕され、その後革命裁判死刑宣言ということを受けた、こういう報道がございますが、外務省はこの情報についてキャッチされておりますか。
  4. 高島益郎

    高島政府委員 石井先生質問カメラマン一ノ瀬氏の問題につきましては、私どもの得ておる情報によりますと、カンボジア北部のシエムレアプ市のアンコールワット寺院写真撮影のため出かけていったところ、十一月二十二日以降消息を断って行くえ不明になっているという情報を十二月初旬プノンペンわが国大使館入手いたしております。ただいま先生お話しになりましたような、処刑されるかもしれないという情報につきましても、情報としては入手いたしておりますが、私どもその後の一ノ瀬カメラマンの動向につきましてあらゆる可能な手段を尽くしまして直接間接に情報入手努力しておりますけれども、まだ現在のところ確たる情報入手いたしておりません。
  5. 石井一

    石井委員 もしこの報道が事実であるということになりますと、以前にもすでに九名の日本人のジャーナリストあるいは民間人も含めて行くえ不明ということがあるわけでございまして、いわゆるこういう戦場で中立国報道関係者が次々に逮捕され、こういう状態になっておるということはまことに重大なことである。政府もいろいろ努力をされておると言いますが、たとえばどの程度の努力を今日までこれらの行くえ不明の日本人に対して積み重ねてこられたのか、この辺をひとつ御説明いただきたいと思います。
  6. 高島益郎

    高島政府委員 外務省がやっておりますことは二つございまして、一つ予防措置でございます。御承知のとおり、カンボジアにおける状況はきわめてこんとんとした状況にございまして、日本人生命、財産の安全が必ずしも保証され得ないという状況でございまするので、報道関係者の方も含めまして、なるべく現地に入らないようにということを一つ方針といたしております。もしかりに現地に来ました場合におきましても、常時大使館に御参集願いまして、いろいろ現地情勢説明をしたり、また、これに応じて適当な措置をとっていただくという方法を講じております。  したがってなるべく危険な地域と目されるようなところへは出かけていっていただきたくないというのが政府方針でございまして、その趣旨は常時在プノンペン在留邦人には周知徹底さしておるところでございます。  第二は、このような警告、予防措置にもかかわらず実際に事故が生じました場合にどうするかという問題でございまして、これにつきましては、わがほうが現在接触し得るあらゆる可能な方法を講じまして情報入手につとめるということ以上にどこのどういうところに接触しているかということにつきましては外交上の機微もございまするので、御説明を控えさせていただきたいと思います。
  7. 石井一

    石井委員 最近非常に緊張緩和というふうな時代だといわれておるわけでございますけれども、最近のいわゆるこの地区の情勢というのは何か再び緊迫した状態に向かっておる、こういうふうにも感じるわけでございますけれども外務大臣南ベトナム情勢というもの、最近の動きというものを、どういうふうに受けとめておられるわけですか。
  8. 高島益郎

    高島政府委員 先生の御質問カンボジアでございますか南ベトナムでございますか。
  9. 石井一

    石井委員 カンボジア並び南ベトナム、いわゆるインドシナ半島というわけです。
  10. 高島益郎

    高島政府委員 御承知のとおり、ベトナムにつきましては、一月の和平協定に基づきまして、その後協定に基づく措置がとられるようにわれわれ期待いたしておりますけれども、遺憾ながら現在における戦闘状態というものは必ずしも完全に終止しておりませんで、いまだに地方的な戦闘行為が行なわれているというふうに承知いたしております。  また、カンボジアにつきましては、いまだにその和平合意されておりませんで、現にプノンペンを首都といたしまする現在のカンボジアロン・ノル政府とこれに対抗いたします解放勢力が軍事的にも相対峙いたしておりまして、プノンペンの中はとにかくといたしまして、その周辺におきましては必ずしも行動は安全ではないというふうに伺っております。  ただ軍事的に、いま先生が御質問になったような、最近特に何か新しい動きがあるかということでございますが、私ども軍事的情勢について必ずしもつまびらかにいたしませんが、乾季を控えて解放勢力軍行動が活発化するのではないかというような情勢は得ておりますけれどもプノンペンをめぐっての軍事的対立状況というものは、依然として膠着状態であるというふうに伺っております。
  11. 石井一

    石井委員 カンボジア情勢の場合に、いろいろと政治問題がむずかしい局面に達しておるというふうにわれわれは理解しておるわけですが、事日本人行くえ不明者の追跡というふうなことに焦点をもしかりにしぼるといたしますと、いわゆるロン・ノル政権側接触は持っておられるけれども、もう一方のシアヌーク側にはほとんど接触を持っておられないのですか。この辺は、外交上の機密その他というおことばが先ほどございましたけれども、もう少しどのような誠意を持ってこの人道上の問題を政府は対処されようとしておるのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  12. 高島益郎

    高島政府委員 先ほど申しました情報入手した直後、私ども政府といたしましては、先生のいま御指摘のとおり、いわゆるカンボジア王国民族連合政府関係当局に対しまして、あらゆるルートから接触手段を講じ、これに対しまして、同カメラマン所在確認と、確認された場合の生命、身体の保護について特に配慮していただきたいということの要請を行なっております。ただ、先ほど申しました外交上の機微と申しますのは、どういうルートにおいてただいま申しましたカンボジア王国民族連合政府接触したかという点についてだけは控えさしていただきたいということでございます。
  13. 石井一

    石井委員 そういたしますと、わが国と正常なる関係を持っておる側だけでなく、そうでない側にも何らかの方法政府誠意を持っていろいろな方法接触をしておる、このことは確認をしてもいいわけでございますか。
  14. 高島益郎

    高島政府委員 そのとおりでございます。
  15. 石井一

    石井委員 先ほども申し上げましたように、一九七〇年の初頭に、四月から五月という時期でございますけれども、一挙に八名の日本人が行くえ不明になっております。そうしてその後、特にアメリカ関係した人が多かったようでございますから、全体で二十数名の行くえ不明者があるわけでございますけれどもアメリカ側なり国連側としては、ある程度の努力をいたしておるわけですけれども、これに対しての所在というものがいまだにはっきりしておらない。日本側もいろいろな外交ルートを通して努力をされておるわけでございますし、また、この辺の情勢というものは非常に微妙ですから、やりにくいというふうなこともあるのでございますけれども、なかなか事態解決に至っておらない。  これらの人々の家族のお気持ちなりそういうふうなことを考えますと、ほんとうに人道的にわれわれはいたたまれない気持ちになるわけでございますが、最近の一ノ瀬カメラマンの行くえ不明ということ、新しい事態がまた起こっておる、段階一つエスカレートしておる、こういうふうなことを考えるわけでございまして、私は、これまで政府もいろいろやってこられたと思うのでございますけれども、この時点にさらにもう少し積極的にこの問題に取り組むことができないだろうか。民間では救出委員会というふうなものもできておりますし、国連あたりにもいろいろな方法でこれを訴えておるわけであります。そのほかいろいろの方法が考えられると思うのでございますけれども外務大臣におかされましては、これをもうほんとうに人道的な見地から積極的に取り上げていただきたいということを私は重ねて強く要望をいたしておきたいと思います。  それからまた、この問題は、与党野党を問わず共通して日本人の願いだ、私はこう思うのでございますけれども外務委員長におかれましても、これまでこの委員会でもたびたび議論はいたしてまいりました。そしてそれなりの形式的といったらことばが悪いですけれども努力政府当局におかれてはされてまいったわけでございますけれども、何らその問題の解決という核心には一切触れておらないというのが現在の姿でございます。私はそういう意味で、この点何らかの形で野党の議員の皆さん方とも御協議をいただきまして、外務委員長におかれましても、ひとつ積極的なステップをとっていただきたい、こういうことをこの席で要望をしておきたいと思うのでございますが、まず、大臣から、何かこの問題に関する御所見、それからまた今後の決意というふうな問題について、ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの趣旨はよく私ども理解できるところでございます。政府としてなすべき非常に大事な仕事であると承知いたしております。したがいまして、関係国はもとよりでございますけれども国際機関その他に対しましても、打つべき手を遅滞なく打ちまして、可能な限り努力を続けてまいったわけでございますけれども、今後も一そう力をいたしまして、御期待にこたえなければならぬと考えております。
  17. 高島益郎

    高島政府委員 一言補足させていただきます。  先ほど私から、先方解放勢力側にもあらゆるルートを通じて接触しているということを申し上げましたけれども先方からは、具体的に一ノ瀬カメラマンがどうなっているという情報にはまだ遺憾ながら接しておりませんが、一般的説明といたしまして、カンボジア王国民族連合政府の政策としましては、普通の外国人記者を逮捕しない方針だ、かりに逮捕され処刑されるということがあるとすれば、それは罪を犯した場合に限られるというような説明は受けております。ただ、先ほど申しましたとおり、遺憾ながらまだ現実にカメラマン具体的消息については情報を得ておりません。
  18. 石井一

    石井委員 この一ノ瀬カメラマン出身地は佐賀県の武雄市ということですが、武雄市議会でも、救済のための決議をいたしておりまして、外務省なり厚生省をはじめあらゆる機関接触を持っておる、こういうことでございますけれども、この点も申し添えまして、政府の積極果敢な御努力をひとつ重ねてお願いを申し上げておきます。  なお、外務委員長にも御提案を申し上げました件でございますが、この点についても御善処をひとつお願い申し上げたいと存じます。
  19. 木村俊夫

    木村委員長 石井君のただいまの御要望に沿うよう、後日理事会で協議いたしたいと思います。
  20. 石井一

    石井委員 次に、核防条約の問題について数点お伺いをいたしたいと存じますが、昨今の参議院の予算委員会などにおきましても、総理が核防条約批准に踏み切るんだというふうな御発言があったようでございまして、内外で反響を呼んでおりますが、この時期に批准しようとする理由についてまずお伺いいたしたいと存じます。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 この条約署名した際の政府声明におきまして指摘されました諸点につきましては、署名当時に比較いたしまして相当な改善が認められる状況にあると思います。特にわが国が重視いたしました原子力平和利用における他の締約国との実質的平等性につきまして、これまで行なってきました国際原子力機関との予備交渉におきまして、実質的平等性確保について原則的な合意が見られておりますので、わが国条約批准のための諸条件が漸次整ってきたように考えられるのでございます。  さらに、明年の二月には条約検討会議準備会議が開かれる予定でございますし、明後年には再検討会議が持たれることになっておりまして、その会議におきまして、核軍縮あるいは原子力平和利用における国際協力の推進、さらには保障措置実施状況等につきましてわが国発言権確保して、わが国に有利な条約の運用をはかるためには、わが国がこれに参加する必要があるわけでございますけれども、これに参加するためには、やはり批准前提にならなければならぬと思うのでございまして、したがいまして政府としては、できるだけ早く批准を願いたいという考えでございまして、目下必要な準備を急いでおるところでございますが、しかし、いつごろ国会批准をお願いするかということの具体的な時期の問題につきましては、まだいつごろお願いできるようになるかという点につきましては、いまの段階ではまだお答えできないわけでございます。ただ、できるだけ早くそれに至る準備を整えたいものと、いませっかく検討を急いでおるところでございます。
  22. 石井一

    石井委員 各国での動きなり特にユーラトム諸国でのこの条約に対する非常に活発な動きなどについても承知をいたしておりますし、またいま大臣の公式的な見解も拝聴いたしましたわけでございますが、それにいたしましても、これは非常に大きな問題を含んだ非常に政治的な問題だとわれわれは考えております。与党内におきましてもいろんな議論があるということも大臣はよく御承知のとおりでございますが、この時期にやはり積極的になられたというその理由といたしまして、いま御指摘になりました理由以外に、たとえば昨今の核エネルギー資源世界的枯渇の問題、こういうふうなものも何らかの形である意味では政府をそういう気持ちにさせた動機になっておるのではなかろうかということを私かってに推察をいたします。それからまた、たとえばこれに対してはっきりした意思表示をしておらないのはもう日本だけであるというふうな状態、こういう状態の中から、他国からの外圧と申しますか要請と申しますか、そういうふうなものもここ数カ月のうちにかなりあったのではなかろうか、こういうことも私かってに推察いたすわけでございますが、こういう点について、もう少し国民にわかるように、何か思い当たられる節がございましたらひとつお話を伺っておきたいと思いますが、いかがですか。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘がありましたように、産業エネルギー確保が緊切な課題になっており、その場合原子力発電必要性が新たな脚光を浴びておるということはいま御指摘のとおりでございます。そのためにはやはり必要な濃縮ウラン供給確保前提になるわけでございまして、そういう観点から申しますと、条約早期批准が望ましいということはあなたの御指摘のとおりだと私は考えております。それから各国状況でございますが、イタリアとかあるいはドイツなどはすでに具体的な日程を立てて批准への用意をいたしておるようでございまして、わが国態度というものが国際的な注目の的になっておりますことは御指摘のとおりでございます。  したがって、われわれといたしましては客観的に、政治的な判断はともかくといたしまして、政府署名をいたしました当時から今日に至るまでの客観的な事態の推移、これが政府が当時指摘いたしました問題点の解明にあたってどのように評価したらいいかという点、十分材料を整えて国会の御判断を仰ぐ用意をしなければならないのではないかと思いまして、せっかく準備を続けておる段階でございまして、先ほど申しましたように、政府としてはできるだけ早く国会の御判断を求めるというようにいたしたいと考えておりますが、事は重要な問題であるだけに十分の準備を整えて十分な御納得を得た上でやらなければならぬと存じまして、必要な用意をいまいたしておるところでございます。
  24. 石井一

    石井委員 諸外国からの日本に対する批准促進要請、こういうふうなものはあったのかどうか、最近ジュネーブあたりでの国連のこの問題を討議する会議あたりで非常に活発な動きがあったのかどうか、この点についていかがですか。
  25. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 ジュネーブ軍縮委員会、これは日本はメンバーになっておりますが、この会議における軍縮問題の討議におきまして、主要国、特にアメリカ、ソ連から、このNPTに対する日本参加の問題についての関心が表明されたという事実はございます。
  26. 石井一

    石井委員 それでは時間もやってまいったようでございますから、最後に一問だけ、日韓閣僚会議についてお伺いをいたします。  これは堂森先生がきょうこの問題を突っ込んでお伺いになるようでございますから、与党の私といたしましては、現在の情勢下でも日韓閣僚会議というものを年内に開催されるおつもりなのかどうか、その場合に、これまでと同じような形での閣僚会議になるのか、あるいは外務大臣としてはやはり内外情勢というふうなものも踏まえて多少形の変わったものにされようと思っておるのか、基本的な日韓閣僚会議に対処する外務大臣としての御所見をお伺いしておきたいと思います。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 繰り返し申し上げてまいりましたように、閣僚会議年内に開催する方針に変わりはございません。ただ、これもまた間々申し上げておりますとおり、日韓間の経済協力問題その他につきましてのきびしい批判がありますことは私もよく承知いたしておるわけでございますし、またいままでの、既往の閣僚会議自体にも改善しなければならないこともございまして、そういった点を念頭に置きながら、しかも最近のようないわばエネルギー危機から生ずる経済の困難、それは当然経済協力にも及んでまいる状況でもありますので、そういった点も十分念頭に置いて開催の態様、その議題の内容等につきましては精細な吟味を加えて、いささかも国民の疑惑を招くことのないようなやり方でやらしていただきたいものと考えております。
  28. 石井一

    石井委員 終わります。
  29. 木村俊夫

  30. 堂森芳夫

    堂森委員 質問に先立ちまして委員長にお願いするのでありますが、資料要求であります。  一つは、中東派遣国連軍に関する、安保理事会で先般決議をされておりますが、その決議内容についての資料。第二番目は、国連軍参加国指揮系統はどうなっておるのかという点であります。第三は、現在の国連軍実施状状についての資料、この三つの点について資料を提出してもらえますように、配付してもらえますように委員長にお取り計らいを願いたい、こう思います。
  31. 木村俊夫

    木村委員長 ただいま堂森委員から要求のありました資料、御提出をお願いします。
  32. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、日韓閣僚会議、きのうでありますか、前駐日韓国大使李氏と外務大臣が会見されまして、その席でも日韓閣僚会議年内にこれを行なうということについての方針は変わっていない、ただしその大きな前提条件といいますか、前提条件ということばは使ったかどうか、まあこれは私の想像ですが、金大中氏の自由な出国ということをもっと前進するということが大きな前提になるというような意味発言をされたという報道新聞等で読んだのでありますが、きょう私は、結論的に申しますと、今日の事態では日韓閣僚会議をやるべきでない、こういう観点からいろいろ質問を行ないたいと思います。  その前に、これは蒸し返しのようでありますけれども、私は日韓の間に起こった金大中氏の事件、そして日本政府のこれに対してとってきた態度というもの、処理のしかた等については、私は日本及び韓国人たちの間にも多くの政治不信外交不信というものが大きく巻き起こっておるし、世界じゅうの心ある人たちからも私はある意味では失笑を買っておる、こう思うのでありますから、そういう観点から蒸し返しになるようでありますが、いろいろとお尋ねしておきたい、こう思うのであります。  私の知っておるところでは、十月の三十一日でありますか、後宮ソウル駐在大使向こう韓国の前外務大臣の金氏でありますか、との会談で政治的な解決をはかろうということが合意に達した。そして、かいつまんで言いますと、この金大中拉致事件は、いわばこれは金東雲という一等書記官犯罪人であることは向こうも認めた、しかしこれは国家的な意思によって、国の命令とか公的な命令とかの関係でやった犯罪ではない、私的な犯罪であるということを日本側も認めた、そして日本警察当局が求めてきた金東雲一等書記官日本への任意出頭は求めない、これはやめようというようなことに合意が達した、こういうようなことではなかろうかと思うのです。そして大事なことは、金大中氏の自由な出国、これは結局両国の間には合意には達しなかったということも重大な問題であります。大平大臣は、この委員会でも絶えず、内外人たちが納得するような筋の通った方法解決をするのが政府方針であります、こういうことを終始一貫して言ってこられました。しかし日本側主張というもの、当然求むべき韓国側のそういう返答、実行等はほとんど日本主張は通ってないのであります。  そこで私は最初に、警察庁の方おられますね。——何かほかの委員会に行かれるそうでありますから最初にお尋ねしておきたいのですが、警察当局は、金東雲書記官は犯人の一人であることは間違いがない、そういう確信のもとに任意出頭を求められたと思うのであります。そしてその後両国政府の話し合い、私はなれ合いだと思うのでありますが、ああいう結果になって、そして金東雲氏は韓国国内法によって処断をされる、こういうことであった。そして向こう向こう捜査を続ける、こういう話だったと思うのでありますが、その後韓国政府から、金東雲あるいはこれと協力した、犯罪をやった人たちがなければならないと思いますが、そういうことについての捜査韓国側が続けておって、そしてその内容、結果等について、日本警察当局に連絡があったのか全然ないのかということをまずお聞きしたい。  それから、日本警察当局は自来、十月末から十一月以来ずっと引き続いて独自の捜査を続けておるのかどうか、あるいはもうやめたのだ、もうああいう野合ができたから、なれ合いができたからやめたのだという態度であるのか。  それからもう一つは、あなたは急がれるそうでありますからまとめて聞いておきたいと思いますが、日本政府韓国政府の間には、金東雲一等書記官の私的な犯罪であるという話し合いができたということでありますが、あなたのほうは私的な金東雲書記官犯罪だと判断をしておるのか、あるいは警察はそんなことわからぬというのか、そんなことがわからぬようなら私は大いに警察当局の能力を疑うものでありますが、どういう判断をしておるのか、もうやめておるのか、そういうことについて答弁を願いたいと思います。
  33. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  韓国側から通報があったかどうかという第一点でございますが、現在まで通報はございません。  それから、引き続いて捜査をやっておるのかどうかという御質問でございますが、われわれとしてはこれまでどおりの捜査方針のもとに、これまでどおりの捜査体制で現在も捜査を引き続いてやっております。  それから、第三点の金東雲一等書記官の行為が私的なものであるかどうかという御質問でございますが、金東雲が、この犯罪は少なくとも組織的に行なわれた犯罪だと思いますが、彼がその中である程度重要な役割りを果たしたというふうには認めておりますけれども、その組織の全貌、あるいはその背後関係、あるいは資金関係、そういうものについてはまだ捜査が進展しておりませんので、彼がどういう立場でこの役割りを果たしたか、そういうことについては、現在われわれとしてはつまびらかにできないという状況でございます。
  34. 堂森芳夫

    堂森委員 警備局長、もう一ぺんお尋ねしますが、十月の末、十一月の初めごろに話は妥結がされておるわけですよ、一応両国の間に。自来もう十一月、十二月も二十日でありますが、五十日たって何ら連絡がないということは、当時はどういう話し合いであったのですか。政府、あなたのほうには今後連絡するという話であったのか。それからあなたが警備局長として持っておる情報は、いま向こうで何らかの向こうの法律によって、国内法によって処断がされておるというのか、あるいは何もされていないのか、そういうこともお聞きでありますか。それから、事件内容等について、さっきあなたが答弁になったように、内容について、今後わからんのじゃないですか、どうですか。そんな逃げるような答弁じゃだめです。
  35. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  最初のお話でございますが、これは当時外務省を通じての御連絡によれば、韓国側は、金東雲一等書記官については韓国側で十分捜査をして、その結果をこちらに通報するということでありまして、その時期等については、われわれは向こうの良識にまかせているという、こういう外務省のお話でありますので、そのとおり承っておるところでございます。  現在どうしているのだろうかということでございますが、この点については、外務省のほうからいまのところ何ら通報がございませんので、われわれとしては承知いたしておりません。
  36. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、以上いま私が短時間にお尋ねしたような状態で、この事件については、警察当局捜査等については何らの進展もないということに尽きると思うのです。おそらくやってないのじゃないかというように私は考えざるを得ないのでありますが……。  そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、今月の十三日に駐日李前大使は田中総理大臣を訪問して離任のあいさつをしておる。そのときに、これは私、新聞で読んだ内容でありますが、田中総理大臣は、この金大中事件は長期的な展望に立って解決をしなければならぬと考える、それであなたが帰国したら朴大統領や金総理にそう伝えてくれ、こういうことを言ったと、これは新聞等報道されておるのであります。それからまた、あなたがきのう李前大使に会っておる。あなたに表敬訪問をしておる。そしてあなたがその席で、日韓閣僚会議年内やることの方針は変わってないというようなことも言った。そしてその際、金大中氏の自由な出国という問題がもっと前進することがたいへん重要なことであるというようなことを言ったということが載っておるのであります。その二つの、田中総理が言ったこと、あるいはあなた、まあ知らぬといえばこれはどうにもならぬですが、あなたがきのう言ったという、この自由な出国ということはどういうことでございますか。その点についてもう少しあなたの言われた意味を御答弁願いたい、こう思います。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 この不幸な事件につきまして、内外が納得のいく公正な解決をはからなければならぬということは、いまなお変わりません。そういうに信念に変わりはないわけでございます。さればこそ、この事件の刑事事件としての捜査は、日韓捜査当局において続けられておるわけでございます。  私どもがいたしましたことは、国際刑事事件としての捜査は従来どおり続けるといたしまして、日韓関係がその間におきまして停滞してまいるということは望ましくないことでございますので、第三国が見ましても、外交的落着をつけるに必要と思われる条件が満たされた場合におきましては、日韓関係外交的な処理は処理として、別途進めてまいる必要を感じまして、そういう措置を講じたのでございます。  その場合、金大中氏という被害者の問題、この事件が起こりましてから当初からたいへん重大な問題になっておりましたし、また人権問題といたしましても朝野の関心の的でありましたし、この問題の処理は非常に慎重にやらなければならぬということで、われわれとしては相当苦心をいたしたわけでございます。  それで、今度の外交的な落着をつけるにあたりまして、先方は、金大中氏につきましては別件で訴追したり逮捕したりすることはいたさないつもりであるということ、そして金大中氏の出国を含めての自由は保障するつもりであるということの言明を外交ルートを通じていただいておるわけでございまして、私どもは、そういう先方の言明がどういう形においていつ実現してまいるかということを注視いたしておるわけでございます。そういう立場におるわけでございます。  しかしながら、国内外の世論は、そういうことが早く実現されることを期待いたしておると受け取れるわけでございまするし、また私どももそれが望ましいと考えるわけでございまするので、私どもは、そういう早期のお約束の実現が望ましいという趣旨は、あらゆる機会に先方当局に伝えてあるわけでございまして、昨日も李大使が離任のごあいさつにお見えになりました機会に、そういう私どもの希望を伝えておいたわけでございまして、そういうことは絶えずやっておるわけでございます。
  38. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣、そんな弱いこと、望ましいとか——当然じゃないんでしょうか。日本へ正当なビザを持って入った第三国人を、政治的な意見を異にするというようなことで、こんなもの、だれが見たって、世界じゅうの人はKCIAがやったとみんな思っていますよ。それに対して外務大臣として、望ましい望ましいと言って、そんな態度でいいんでしょうか、あなた。もっと強く、金大中氏の自由な出国日本へ来ることをも含めて、当然これは要求すべきだ。望ましい望ましいと言って、ただ、もみ手のような態度韓国に臨んでいられるというところに、私は、今度のああいう世界じゅうのもの笑いになるような解決といいますか話し合いになる。あんなもの解決じゃないです。なれ合いです。  これは私、新聞で読んでいるのでありますが、五島さんという慶応の大学の教授が先般見たところ、五島教授の話によれば、金大中氏は拘禁性ノイローゼ——拘禁性というのは、長い間刑務所に入ったり未決に入ったりあるいは軟禁されたり監禁されておると、だんだんとノイローゼがひどくなって精神異常を来たすという症状のことですが、そういうものになっておる、そして肉体的にも精神的にもかなり心配するような状況になっておる、こう専門の医師が言っておるのですよ。自由はおろか、それはもう完全に監禁されておると同様な状況にある。  それからまた、外務大臣はお知りでしょうか。朴大統領の側近の人がアメリカに行って、せんだっても新聞に書かれておりましたが、絶対に朴政権は金大中氏がアメリカなどへ出ていくということは許すことはない、現在の段階でそんなことはないと言った、こういうようなことも情報が流れておるということも新聞に報道されておりました。  それからまた、きょうも新聞に、私、読んでおって見たのですが、京都で十六日でありますか、京都在住の文化人を中心に結成されておる金大中事件を考える会、そういう会があって、いろいろな宗教人等が集まって、そのときに南北統一問題について特別講演をしたベ・ドンホという人が、民族統一協議会首席議長ですが、日韓閣僚会議が済めば金大中氏は逮捕、処刑されるおそれがあるという講演をした、こういう報道がなされておる。  一体、こういうような推測が各地で行なわれておるのを外務大臣承知でございますか、そういうことは全然お耳に入らぬでございますか、まずその点をお伺いしておきたいと思います。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 推測とかいうもので私ども措置を誤ってはいけないわけでございまして、私どもこの問題が大事だと思いまするので、金大中氏が現に韓国におられるわけでございまして、その韓国政府からそういう言明を得ておるわけでございまするので、私どもはそれを信頼いたしておるわけでございまして、そしてそれが早く実行されることを期待いたしておるわけでございます。堂森さんはそういう態度はたいへん弱いじゃないかということでございますけれども、事外国なのでございまして、弱い強いという問題でなくて、私どもがなし得る限界までは私どもはやっておるつもりなのでございまして、そういう国と国との政府政府との間にそういう厳粛なお約束があるわけでございまするから、それを信頼して、その実行が一日も早いことをわれわれは期待いたしておる、それを注視いたしておるというわれわれの立場は、私は間違った立場でないと考えておるし、それが一番正しい立場であると私は考えておるわけでございます。
  40. 堂森芳夫

    堂森委員 私は何も外務大臣に、けんかせい、こう言っておるわけじゃないのでありますが、それは国と国の関係でありますから必要なエチケットをわきまえた丁重な態度で臨む、それは当然でありますが、主張すべきそういう立場が弱いということは、これは私は否定し得ないと思うのであります。  そこでさらに、時間もありませんので進めていきたい、外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、最近韓国内において学生の騒動といいますか、韓国内におけるいろいろな大学、高校等に至るまで、反朴政権の騒動といいますか、決起といいますか、そういうデモンストレーションといいますか、いろんなことが行なわれておる。あるいたはまキリスト教の信者のカソリックの人、プロテスタント、いろんな人たちも、非常な広範囲で反朴の運動が盛り上がってきておるが、これらの人たちの中心的なスローガンが一体どういうものであるか、外務大臣はどうお考えになるのか、どういう印象を受けておられますか、これをまず聞いてみたいと思うのです。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国におきまして、学生、文化人、宗教家等の間におきまして、言論の自由その他学問の自由、自由民主主義体制の確立、あるいは対日経済隷属の中止、それから金大中事件の真相の究明、それから情報政治の中止ないしは中央情報部の解体、そういったスローガンのもとで現政権に対する批判が運動の形で起こっておりますことはよく承知いたしております。
  42. 堂森芳夫

    堂森委員 私は外務大臣の、それは局長が出した資料を読まれたのでしょうが、認識は非常に不足しておられると思うのです。大きな中心は日本の対韓援助をやめろという要求でありますよ、あなた。あれは日本の資本が前の韓国を支配してきたと同じような状況に再び朝鮮半島、韓国を置くようなことであるから対韓援助はやめろ、こう言うておるのですよ、あなた。これが大きなスローガンですよ。違いますか。それから、金大中氏も、あの人の書いた本を私拾い読みしたのですが、いまのような姿の対韓援助を続けていくと、こんなものは日本韓国の両国民族の友好親善、よい関係の前進には役立たぬ、役立たぬどころか、いまのような姿は害になると金大中氏も言っておるのですよ。そういうことを御存じでしょうか。そんなことはないとお考えでしょうか。私、御答弁願いたいと思うのです。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 私が述べました対日経済隷属の中止ということもスローガンの一つになっておるということはいまも申し上げたとおりでございまして、そういう考え方が韓国内にありますこともよく承知いたしております。
  44. 堂森芳夫

    堂森委員 私はあるどころじゃないと思うのです。たとえば私、新聞情報しかわかりませんけれども、あそこに何か名門のカソリックか何かの女子大、梨花女子大学というのがあるそうですね。何か名門だそうです。いわば韓国における名家のお嬢さんたちが行く女子大学らしい。あそこの大学も学生が決起し出した。そしてその大きな中心スローガンは、日本の対韓援助反対である。これはやはりどうしてもがまんができないということが大きな中心的なスローガンである、こういうふうにいろんなものは報道されております。私はそういうことを外務大臣はやはり頭に置かなければいかぬと思うのです。それは学生運動、学生がやっておる運動を一々頭に置くわけにいかぬというようなことでは、私は外務大臣としては妥当な外交を進める上において大きな支障がくると思うのです。  そこで、今日における日本の対韓援助というものは、従来までの対韓援助というものは、ほんとう韓国国民の皆さんの大多数の人が心からこれに感謝をしておるか、あるいはよいことをしておるといってこれに協力的な態度でおると判断しておられますか。いや、反対が多いんだ、世論的にも反対が強いんだというふうな判断をしておられますか。この点お伺いしておきたい、こう思います。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 ひとり韓国ばかりでなく、いずれの国におきましても、その国の経済の自立をはかっていく場合に、対外的な外国からの借款を受けてやるべきか、それとも自力による更生を考えていくかということにつきましては国論が必ずしも帰一していないことは、私はいずれの国においても見られる現象であろうと思います。そしていずれの考え方にもそれぞれ私は傾聴に値する論拠があると思うのであります。それが第一点でございます。  しかしながら、第二点といたしまして、わが国は幸いにいたしまして戦後の廃墟から立ち上がりまして、世界各国の理解と協力を得て今日の復興を見るに至ったわけでございまして、われわれといたしましては、われわれの繁栄というものを一人占めしていい性質のものではなく、やはりこれは恵まれない諸国民と分かち合わなければならない性質のものであるということで、対外経済協力ということは私は大かたの日本人がこれをやらなければならない、やるべきものであると承知して理解しておることと思うのであります。  そしてその場合、韓国はやってはいけない、ほかの国はいいけれどもと、必ずしも私はそう理解していないと思うのでございまして、したがって第三に問題になるのは、いま現にやっておる経済協力がはたしてそういう批判に耐えて国民の納得を得られるものであるかどうか、また韓国民から見ましてもそれは理解できないわけのものでもないというものなのかどうか、そういうことについて、私はほんとうはまだ十分の理解というものが浸透していないのではないかということを感じるのでございます。  したがって、私どものいまの問題は、対韓経済協力というものを、そういう批判の中にあるわけでございますから、どういう姿において、どういう規模においてやってまいるかということを内外が納得するような形において実行するかということこそが、いま問題であるのではないかと思うのでありまして、そういうことのために私どもは懸命にこの問題の検討を進めてまいらなければならないのだと率直に考えておるわけでございます。
  46. 堂森芳夫

    堂森委員 私は外務大臣に、日本が他の国に経済援助、協力をすることはいかぬ、こういうことを言っておるのじゃないのです。韓国にもやることに反対ではないのです。ただ現在行なわれておるような姿で、もっと率直に言いますと、日本がせっかく与えた協力、援助というものがほんとうに善意に向こうで使われておるかどうかという問題もありましょう。私は、いろいろな問題があると思うのです。  かつて一九七一年でありますか、韓国の朴大統領の三選が行なわれた選挙があったのです。あの際、向こう日本から援助が行きました。セマウル運動、農村の近代化運動、これに対して日本から金額は一億二、三千万ドルぐらいでありますか、詳細はよく覚えていないのですが、その資金の援助について韓国においてたいへん大きな国民的な問題が起きてきた、こう言われておるのです。あのセマウル運動というのは、私の知っている範囲では、ほんとうにおくれた韓国の農村の近代化という目的とはおよそ離れた意味で使われた。  たとえば屋根をトタン屋根かほかのものにふきかえるために使われたとか、ほんとう意味での農村の近代化になる、生産力を高めるような意味での援助のほうには使われなかったということも言われておる。それからもっと悪いことは、これが朴大統領の選挙の費用に化けたというようなことまでも言われておる。それは向こうで言われておることでありますからあれでありますが、日本からの援助が、経済界あるいは高級官僚の人あるいは広く政財界の上のほうの人たちのリベートになっておるとか、私、ゆうべ時間がおそくなったものだから十分調べられなかったけれども向こうの新聞にも堂々と書かれておるような事実がたくさんあるわけです。そういうことを外務当局はよく調査しておられるのでしょうか。そんなことはないというお考えでありましょうか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 いまセマウル運動の話がございましたが、過去十年間の韓国経済の推移を見ておりますと、確かに九%内外の実質成長を維持してまいって、生産力も上がったし国民の所得もふえてまいったわけでございますけれども、重化学工業の方面が一七、八%と非常に高度に伸びて、農村の側におきましては三%内外しか伸びていないという非常なアンバランスでございます。したがって、韓国政府として農業政策に重点を置くという考え方を私は前々からとるべきでないかと考えておったのでございますが、そういう方向でセマウル運動というのを起こしましたことはけっこうなことであると私は考えておったわけでございます。去年の日韓閣僚会議でセマウル運動につきまして協力を求められたときに、その中で農業基盤整備の事業につきましては、確実なプロジェクトでございますならば協力を惜しむものでないというお約束はいたしたわけでございますが、まだ金が出ていないわけでございまして、これはまだ実行いたしておらないわけでございます。いま精査いたしまして、二つのプロジェクトにつきまして内容がようやく固まってきた段階でございまして、交換公文を交換いたしましてそれから実行に移るわけでございますので、いま堂森さんが言われたように、何か先に金が出てそれが非常に不当に使われたという、そういうことでないわけでございますので、その点は御正確にひとつ御調査をお願いいたしたいと思うのでございます。  ただ、いまあなたも御心配のように対韓経済協力というのは、一口にそう言っていますけれども、これは政府ベースのものとそれから民間の責任でおやりになっておるものとがございまして、それがごっちゃになりましてたいへん混雑しておるようでございます。私ども政府ベースのものは目的をきちんといたしまして、そして事業の実態を見きわめた上で正確に実行いたしておるつもりでございまして、民間でそれぞれの民間の企業がその責任において、その危険においておやりになっておる場合に、ものによってはいろんな不都合が起こっておるのかもしれませんけれども、それと政府ベースの経済協力とがごっちゃになりましたような議論がよく行なわれるわけでございますが、そこはよくかみ分けて御批判をいただかなければならないのじゃないかと考えております。
  48. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がもうありませんので終わらなければいけませんが、外務大臣も御承知のように、あなたの与党の中にも今日の段階では日韓閣僚会議は開くべきではない、こういう意見もたくさんあるように新聞等では報道されております。それからまた韓国内における学生運動というものは、かつての李承晩政権の末期のように燎原の火のごとく広まりつつあるというようにいわれております。そして学生運動の中心的なスローガンの一つは、日本の対韓援助というものは日本経済的侵略である、こういう断定をして、学生たちあるいは知識階級等にもそういうような運動がだんだん大きく広がりつつある、こういう状態である。  それから、政府金大中事件というものに対する解決のしかたが、初め言っておったのとまるで違う。世界じゅうの人たちあるいは日本国内のたれ一人納得をしていないと思うのであります。そういうような取りきめといいますかなれ合いをやって、そして今月中に何とかして閣僚会議を開こう、こういうようなことではわれわれはどうしても納得することができない。そういうものを開いちゃいかぬ、そういうような主張をするのは私は当然の理由があると思うのでありまして、外務大臣にもう一ぺん重ねて御答弁願いたいのですが、閣僚会議年内に開く方針は変わらぬのですか、どうですか、そして金大中氏の自由な出国というものに朴政権は踏み切るというふうにあなたは確信しておられますか、近い将来早急にそういうことが実現すると思っておられますか、お尋ねしておきたいと思います。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓閣僚会議というのは、日韓間における定期的な閣僚の会議でございまして、私どもといたしましてはこれを一応金大中事件とはかかわりのないものであると考えておるわけでございます。  ただ、私もたびたび申し上げておりますように、そうは申しますけれども、こういう会議をやるにつきましては、こういう状態というものを決して無視してやるわけにはいかないわけでございまして、対韓経済協力につきましていろいろな批判があることも頭に置きまして、この態様、議事の内容、その場合のやり方等につきましては十分私は気をつけてやらなければならぬと考えておるわけであります。  金大中事件というのは、刑事事件としての処理は処理としてやっておるわけでございます。それで、これの外交的処理というのは、たびたび御批判でございますけれども、この種の国際刑事事件の処理といたしましては決して恥ずかしくないように私はやっておるつもりでございまして、第三国から見ましても日本政府は適当になれ合いでやったというような批判を受けることはいさぎよしとしないわけでございますので、そういうことは私はやっていないつもりであるわけでございます。  いま問題にいたしておる金大中問題というのは、一つの大きな政治問題でございまして、いわば韓国の体制という問題に対する一つの象徴的な事件として国の内外に問題になっている事件のように私は思うわけでございます。それはそれとしてそういう批判、評価が現にあることは私もよく承知いたしておるわけでございますが、そのことのために定期閣僚会議をやめなければならぬとか延ばさなければならぬとかいうことは、ちょっと本末転倒の議論ではないかと考えるのであります。ただやるべきことはやる、また金大中事件の処理は処理としてやるべきことはやってまいらなければならぬのが、私の責任じゃないかと考えておるわけでございますが、こういう状況であることは十分踏まえた上で慎重に事を運ばしていただきたいと私は考えております。結論から申しますと、既定の方針は変えていないわけでございます。
  50. 堂森芳夫

    堂森委員 もうやめようと思ったのですが、いまのは暴言ですよ。あなたらしくないですよ。第一金大中事件日韓関係を象徴したような事件とは一体何ですか。あなたはいつも神秘的な発言をするので、私は頭が悪いのでわからぬのです。  それから日韓閣僚会議と金大事件は無関係、どうしてそんなことを、詭弁をおっしゃるんでしょうか。大いに関係はありますよ。金大中事件が起きたということがきっかけで、当然なければならぬような日韓関係のいろいろな問題点が出てきたということでありますよ、あなた。無関係、そんなことをどうしておっしゃるんでしょうか。われわれはどうしてもあなたのそういう答弁には満足できませんけれども、まあそれは見解の相違だ、おまえとは並行線だということになればどうにもなりませんが、時間がありませんから、これをもって終わります。どうしても承服できませんからそれだけ付言しておきます。
  51. 木村俊夫

    木村委員長 河上民雄君。
  52. 河上民雄

    ○河上委員 あまり時間がございませんので、きょうは本会議が一時からということで、お約束の時間より少し切り上げて質問したいと思います。したがって、質問も短くしたいと思いますけれども、答弁のほうも簡潔に、あまり神秘的な表現にわたらないようにお願いをしたいと思います。  先日来中東問題につきまして、私はこの委員会でも、また先日のいわゆる石油二法に関連する連合審査におきましても、外務大臣にお尋ねしたのでありますけれども、二、三補足的にもう一度明確に御意見を承りたいと思いますので、初めにそのことをお尋ねしたいと思います。  まず第一に、私はいま中東問題においてわが国の立場を打開するためにはどうしてもアラブが求めているものに対してやはりあるしるしを、あかしを立てることが必要である、こういうことで、その一つとして、十月十九日本委員会において私が質問をいたしました山城丸事件について、政府は抗議をする意思があるのかどうかということをお尋ねをいたしましたが、依然としてもう二月たっております今日、なお調査中というお答えでありましたが、私としてははなはだ不服でございますが、あの問題につきまして政府は泣き寝入りをするつもりなのかどうか。つまり、通常の保険で日本郵船が損害を補てんすればそれでいいというお考えなのかどうか。やはりこれは非常に政治的な問題であるし、当然抗議すべきものである。その条件をいま整えつつあるのだということなのか、その点をまずお尋ねしたいと思います。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 抗議すべきものは当然抗議しなければならぬので、泣き寝入りするつもりは毛頭ございませんで、ただ抗議する以上はちゃんと材料を整えてやらなければなりませんので、いま山城丸はギリシャの港に曳航してまいりまして、サルベージアソシエーションに依頼いたしまして、日本郵船の社員の立ち会いの上、いませっかく調査いたしておりまして、少なくとも今月一ぱいかかるそうでございます。そういった調査を全部踏まえた上で、それを吟味して、抗議すべきものは堂々抗議しなければならぬと思うのでありまして、それを踏まえずに抗議をせいと言われても、私はやっぱり政府としてはちゃんと材料を整えてやるべきなのが政府の任務ではないかと考えておるわけでございます。
  54. 河上民雄

    ○河上委員 それではいまのお話では技術的な調査にあと一月かかるということでございますが、私は一月後にこの委員会でもう一度お尋ねしたいと思います。  それから第二に、この前の二階堂官房長官の声明の中で、パレスチナの人たちのことに触れまして、いわゆるアラブ寄りといわれる声明の内容ですけれども、その中でパレスチナ人の権利というものの承認と尊重ということを言われたわけでございます。その中に「パレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され、尊重されること。」という表現があるわけです。その場合「国連憲章に基づく」ということばがありますが、これは一体国連憲章のどこに基づくものでありますか。
  55. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 国連憲章はすべての国際紛争を平和的手段によって解決する、それによって国際の平和と安全の維持に資するのだということを根本原則の一つといたしております。したがいまして、いまのパレスチナの民族の平等権あるいは自決権について、国連憲章に従ってという一種のことばがついておりますのは、パレスチナ人が自決権を実現する過程において平和的手段によって行なうべきであるということが、この国連憲章に従ってということの一番大きな意味でございます。
  56. 河上民雄

    ○河上委員 国連憲章の第一条の第二項に「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎を置く諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。」という文言があります。この「パレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利」ということで「正当な権利」というところへつなぐわけでありますから、この第一条第二項をさしているものだと解釈するのが当然だと思いますけれども、いかがですか。
  57. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 御指摘のとおり一条の二項をさしておりますが、同時に、いまの平和的手段によって国際紛争を解決すべしという原則は、国連憲章の各関係条文にところどころ出てまいります。たとえば第二条の原則という規定がございますが、これは七つの項になっておりますけれども、たとえばその第三項に「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」というような項もございます。
  58. 河上民雄

    ○河上委員 そういうことはもちろんでありますけれども、この部分ではパレスチナ人の権利を認めるかどうかということだと思うのです。その権利の主張方法についてはまたその次の問題だと思うので、まずこれは当然第一条第二項を踏まえての表現だというふうに考えるべきだと私は思いますけれども大平さん、いかがでございますか。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 私は仰せのとおりだと思います。
  60. 河上民雄

    ○河上委員 この前の私の質問に対しまして、外務大臣は、この問題は当事者間で解決に当たってほしいというような希望を表明されたわけですけれども、昨日もローマ空港で非常に残念な事件というか非常に衝撃的な事件が起こっているわけでありますが、その根底にはやはりパレスチナ人の民族自決の権利の主張というものが横たわっておる、これを認めるかどうかということがあそこで問われているというふうにも見られていると思うのであります。もちろんその主張方法についてはいろいろ議論はあろうかと思いますけれども、その根底には、いまおっしゃった第一条第二項の主張というものがあるというふうに見るべきだと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  61. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 仰せのとおりです。
  62. 河上民雄

    ○河上委員 それでは当事者間で話し合ってほしいというお話の中に、当事者間というのは、イスラエルとそれからアラブ諸国というほかに、パレスチナ人の自主的な組織、いまのところPLOに一応包括されているわけでありますけれども、そういうような組織も当事者間の中に当然想定されておるのかどうかですね。先日の大臣の御答弁の中にありました当事者間ということばの中にそれが入っておるのかどうか、大臣にもう一度確認さしていただきたいと思います。
  63. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 二十一日からジュネーブで中東の和平会議が開催される予定になっておりますが、そのテーブルにどの範囲の当事者が参加するかという問題があろうかと思いますが、パレスチナ人民を代表するものは何であるか、あるいはそれをどういう形で認めるかは、全体の当事国、つまりこの和平会議参加するそれぞれの人たちの間できまるべき問題でございますので、ちょっとわれわれとしてははっきりしたことを申し上げられません。
  64. 河上民雄

    ○河上委員 それではその結論に従うということでございますか。
  65. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 当事者間の話し合いの結果を尊重するということでございます。
  66. 河上民雄

    ○河上委員 将来かあるいは近い将来におきまして、パレスチナ人の民族自決の要求、民族自決の原則、独立について協力を求めるために、PLOの代表が日本を訪問するというようなことがありました場合に、外務省としてはその入国を認めるおつもりですか。
  67. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 PLOの代表が日本に入国を希望いたします場合には、当然査証の申請があると思いますので、その時点において検討いたしたいと存じます。
  68. 河上民雄

    ○河上委員 こういう事態でございますし、今日の石油危機というものも関連するわけですが、先日、中曽根通産大臣も、石油危機を解決するためには、単に経済的な立場だけではもう打開の道はないのだ、アラブの大義を認めた上でやらなければいかぬということを言っていましたけれども政府全体としても、そういう観点でこの問題を処理されることを希望したいと思うのです。  あまり時間がありませんので、次に移りたいと思いますが、先ほども質問に出ましたけれども核防条約について二、三お尋ねしたいと思います。  まず第一に、唐突にと言うとあるいは大臣のほうは御不満かもしれませんが、先般急に、参議院の予算委員会において、核防条約批准の問題が出されまして、いまのお話でも、批准を求める意向である、その作業を進めているということでありますが、その前に、日本国際原子力機関との間の核防条約に関する査察協定締結の交渉はどうなっておりますか。
  69. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 この核防条約に三年半前に日本署名いたしましたときに、先ほど触れました政府声明の三つの点、特にその第三番目の原子力平和利用において他の国との実質的平等性確保ということが政府声明で強調されたわけでございます。それを受けまして、国際原子力機関との間に、予備交渉という形で、はたして他の国との実質的平等性確保できるかどうかという話し合いを進めてまいりましたところ、本年の十一月に至りまして、いまの点についての原則的了解が成立したわけでございます。
  70. 河上民雄

    ○河上委員 わが国核防条約に調印したとき、政府発表がございました。その声明の中で、わが国批准するために三つの条件が必要である、つまり、核保有国の核軍縮への努力、第二は、非核保有国の安全保障の確立、三番目には、平和利用の面での不利益をこうむらない、この三条件が満たされたという判断のもとに、今回批准を求めておられるのかどうか。いかがでございますか。
  71. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 ただいま御指摘のありました三つの点につきまして、現在までの間に相当な進展があったとわれわれは考えております。  特に第一の核軍縮の実施状況でございますが、この核不拡散条約が成立しました翌年、つまり昭和四十四年末から、御存じのように、米ソ両国の間に戦略兵器制限交渉、これはSALT交渉と申しますか、これが開始されまして、昨年の五月に暫定協定が成立しております。さらに、本年六月、米ソ両国の首脳会談において、来年中には質的な規制を含むSALT交渉の恒久協定を締結するという両国首脳間の決意を表明した基本原則が締結されたことは、御存じのとおりでございます。それからまた、ジュネーブ軍縮委員会におきまして、海底非核化の条約が成立したこと、あるいは目下全面的な核実験禁止問題について優先的に審議が行なわれているというような点を見ますと、核軍縮の実施状況、第一点につきまして、相当な進展があったとわれわれは考えております。  第二に、非核兵器国の安全保障の問題でございますが、わが国が核不拡散条約署名いたしました後の国際情勢を見ますと、一般的に申し上げられますことは、核大国をめぐる緊張緩和が進展して、その結果、全体としてわが国をはじめとする非核兵器国の安全度を高める方向に動いてきている。特に、日中国交正常化による中国との友好関係の開始は、わが国の全般的安全保障の強化に貢献しているというふうに考えております。  それから第三の点は、先ほど私が申し上げましたように、原子力平和利用の面において他の国との実質的平等性確保について、国際原子力機関との間に原則的な了解に到達したわけでございます。
  72. 河上民雄

    ○河上委員 いまそういうような政府の御判断のようでありますけれども、私どもの立場から見まして、ほんとうにそうであるか、また、私どもがかねて要求しておりましたような条件がどの程度満たされているかにつきましては、きょうはもうあまり時間がございませんので、きょうは経過をお伺いするにとどめて、またいずれさらに今後追及さしていただきたいと思います。  もう時間がございませんが、最後に、最近日中貿易協定の仮調印がなされたということを新聞の記事で私ども拝見いたしておりますけれども、正式の調印はいつごろ行なわれるおつもりですか。また、これについて国会承認を求められるのかどうか。
  73. 高島益郎

    高島政府委員 正式調印の日程につきましては、まだきまっておりません。  それから、この協定につきましては、当然国会の御承認をいただきます。
  74. 河上民雄

    ○河上委員 相互に最恵国待遇を与えることになっておりますけれども、たとえば日中間の関税といわゆるガット関税との関係はどうなるのか。  また、これまでございましたいわゆるココム制限という、冷戦の遺物でありますけれども、これにつきまして、オーストラリアなどはココム非協力宣言を出しておりますけれども日本政府もこの問題をどういうふうに解決されるか、この二点を伺いたいと思います。
  75. 西田誠哉

    ○西田説明員 ただいまの御質問の点につきましてお答えさしていただきます。  わが国は、関税につきまして、日中両国の間に相互に最恵国待遇を与えることになっておりますので、わが国がガットの義務として他のガット加盟国に与えている関税上の待遇は、自動的に中国にも供与されることになる次第でございます。それからまた、ガットにおきます多角的関税交渉の結果も中国に均てんされることになりますので、ガット加盟国との間には差が生じないというふうに理解しております。  それから、ココムの点について御質問がございましたけれども、今度の日中貿易交渉におきましては、このココムの点につきましては、全然話に出なかったというふうに了解いたしております。
  76. 河上民雄

    ○河上委員 出なかったということにつきましてはあれですが、日本政府としては今後どういうようにお考えになっておりますか。
  77. 西田誠哉

    ○西田説明員 私どもといたしましては、やはりココムの申し合わせというものを忠実に守っていくということでございますので、従来どおりこの申し合わせに従ってこれを実施していきたいというふうに考えております。
  78. 河上民雄

    ○河上委員 それはちょっとおかしいと思いますし、オーストラリア政府態度とは非常に違うと思うのです。時間がなくて残念でございますけれども大平外務大臣、どういうお考えですか、ちょっとそこだけ大臣に御答弁願いたい。
  79. 西田誠哉

    ○西田説明員 オーストラリアの点について御質問でございましたけれども、オーストラリアはココムの加盟国ではございません。従来ココムの申し合わせに従って協力をしていくという態度をとっていたわけでございますが、昨年の十二月に労働党政権が発足いたしましてから、ココムの申し合わせに従っていくという従来の方針を転換したわけでございます。したがいまして、ココムの正式な加盟国である日本とは立場が違うというふうに了解いたしております。
  80. 河上民雄

    ○河上委員 最恵国待遇を一方で与えながら、ココムの制限を依然として堅持するというのは、ちょっと矛盾だと思うのですが、日本政府としてココム撤回を宣言してもいいのではないかと思いますけれども大平外務大臣いかがでございますか、これで私、一応質問を終わりますけれども
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 いま政府委員が御答弁申し上げましたような態度でまいりたいと考えております。  日中交渉におきましても、先ほど申しましたように、この問題は先方からも現に提起がなかったことだけを付言しておきます。
  82. 河上民雄

    ○河上委員 これで終わります。
  83. 木村俊夫

    木村委員長 金子満広君。
  84. 金子満広

    ○金子(満)委員 大平外務大臣に中東問題、石油問題について質問したいと思います。  御承知のように、あすは十九日でありますが、リビアの原油の取引問題で国際入札があす行なわれる予定になっております。すでに、リビアの政府日本に原油の供給をする意思がある、あるいは申し出があるというようなことについては公にされておるわけであります。当然これは受け入れるべきだと私は思うのでありますが、いま政府の中で検討しているというようなこともいわれますし、大平さんは先日の連合審査の席でも、リビア原油を日本政府が直接買うかどうか通産省とも協議し、できるだけ早く結論を出したい、早くといってもあすのきょうでありますから、出さなければあすに間に合わないわけで、そういう点でどういうような結論になっているのか、現状をひとつ知らしていただきたい、こういうふうに思います。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 本件につきましては、かねてから通産省のほうから御相談がございまして、その後私のほうでもいろいろ検討を重ねまして、きょうじゅうには政府として意見をまとめて、いずれにせよリビア側には何らかの返事をしなければならぬわけでございます。きょうじゅうにまとめるべく、いま最終の調整をいたしておるところでございます。
  86. 金子満広

    ○金子(満)委員 検討もいいわけですが、検討検討で、へたな検討は休んでいるのと同じなんで、事態は進展しないわけです。きょうじゅうに出すということであれば、大平外務大臣は——中曽根さんのほうは入れてもいいというような意味発言をすでにされておって、また新聞紙上などで見ますと、外務省がだいぶ抵抗しているという意味報道もあるわけです。外務省の責任者としての大平さんはここで、何か向こうで出すのではなくて、あなたがどう考えているか、その考え方を国民も聞きたいと思っているだろうし、またこの外務委員会で答弁する責任もあると思うので、ひとつその点をはっきりお答え願いたいと思うのです。これは機密ではないと私は思います。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 政府が石油を買うとか買わぬとかいう問題ではないのです。問題は日本政府——日本の石油会社が応札するかしないかという問題は、企業の責任の問題、企業の判断の問題なんでございまして、私ども関心を持っておりますのは、リビア石油というのは係争にかかるものとそうでないものとあるわけでございますが、いままで調べましたところ、大部分がいわゆる係争にかかるものと判断されるわけでございます。そういうものに対して日本政府がどういう立場をとるかということこそが日本政府の問題なんでございまして、応札するかしないかという問題は、これは企業側の問題と御承知願いたいと思います。日本政府の立場につきまして、最終調整をいまいたしておるということに御承知願いたいと思います。
  88. 金子満広

    ○金子(満)委員 買うのは直接は企業であることは当然ですが、政府として、係争中のもの、つまり熱い油は買わないんだという態度を今後もとり続けるのか、変えるのか、ここのところは非常に重要な問題だと思うのです。これは企業の側に聞くまでもなくて政府自身が態度をきめることであって、態度をきめたからといって企業が買わなければならぬという義務も生じないし、買わないといってもいいわけです。ですから私は、企業の側に責任をなすりつけるのではなくて、政府が自主的に、この問題について日本政府としてはこう考えるというものがあってしかるべきだ、こういうように思うのですが、その点どうですか。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 いみじくも金子さんがおっしゃるとおりなんです。買うか買わぬかの問題は企業側の問題なんでございまして、日本政府は係争中の油についてどういう態度をとるかということこそが問題なんでございまして、そのことについて意見調整をいたしておって、きょうじゅうにはちゃんと政府態度をきめてまいるとお答えいたしておるわけです。
  90. 金子満広

    ○金子(満)委員 わかったような、わからないような話なんですけれども、つまり、この問題について考えなければならぬのはどういうところなのか、熱い油を買ったとした場合に何を心配してそういうことを言っているのか、その心配のことをひとつ大臣答えてもらいたいと思うのです、考えなければならぬというその内容を。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 これは政府が意見調整をいたしますと、いずれ明らかになりますので、いまの段階で最終的な意見調整を急いでおるというところでひとつごかんべんをいただきたいと思います。
  92. 金子満広

    ○金子(満)委員 熱い油を買った場合には、メジャーとの関係がどうだとかこうだとかいう点はすでにもう世間でいわれているとおりであります。私は大平さんを含めて日本政府のそういう態度が、端的にいえば対米従属のエネルギー政策だと思うのです。だれに気がねをしているのですか。もしメジャーに気がねをしているのだったら当たってみたらどうなんです。何もしないでただこう考えている。そして何が心配かという内容も出さない。とにかく、とにかくということで時間がズレていっているわけですね。  私はそういう点からいえば、たとえば石油危機をどう打開するかという中で対米従属のエネルギー政策を変えていかなければならぬということを私どもしばしば言っているわけであります。たとえばアメリカの軍隊、在日米軍に緊急警戒態勢が出されても、日本政府としてはそれに厳重に抗議するということをしない。アメリカの軍隊に石油を供給している。あるいはまた、これは先般の参議院の予算委員会でありましたけれども、天然資源の恒久主権の問題についても、イスラエルの占領した地域の資源についてはその恒久主権を認めるということには賛成しました、こういう態度を表明しましたが、何のことはない、二、三日前の同じ国連では全般的な恒久主権については前と同じく棄権をしているわけですね。都合のいいところはふっと出す。しかしこういうような態度を考えてみたときに、私は、口ではアラブ寄りだけれども腹の中ではアメリカ寄りだ、こういう点は端的にこう出ると思うのです。  そこで一つ伺いしたいのですが、いま三木特使がアラブを訪問しています。アラブ諸国を訪問していますが、その中でこういうことをしばしば言っているわけです。国連決議を無視しているイスラエルは非難されるべきである、正義はアラブの側にある、こういうふうに言っているわけですが、アラブの側に正義があるという三木さんの発言大平さん肯定すると思いますが、どうですか。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国はかねてから武力によって占領したものを継続して保有していく、占有していくということに対しましては根本的に反対であるということは前々から主張し続けてきておるわけでございまして、それはまさに正義であると思うのでございます。十一月の二十二日の官房長官談話ではそのことに触れて明確に述べておるわけでございまして、三木さんの言われることに間違いはありません。
  94. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうすると、イスラエルは不正義だということになりますが、そうですか。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 したがいまして、イスラエルを名ざしで、イスラエルに対して遺憾の意を表したわけでございまして、その十一月二十二日の官房長官談話をお読みいただきますと、初めてそこにイスラエルを名ざしでわれわれは遺憾の意を表してあるわけでございます。
  96. 金子満広

    ○金子(満)委員 ですから、遺憾ということじゃなくて、遺憾であるという内容はイスラエルは不正義の立場だ、片方が正義の立場であれば当然相手側は不正義の立場である、こういうことだと思いますが、遺憾ということの内容は不正義ということですか。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 占領を依然として継続していることはたいへん遺憾なことであるということをイスラエルを名ざしで申し上げてあるわけでございまして、這般の日本の立場は明確になっておると思います。
  98. 金子満広

    ○金子(満)委員 私はそこを聞いておるのではなくて、そのイスラエルが占領しているという行為は正しくないから遺憾の意を表したのだと思うのです。その遺憾という内容は不正義だということであるかどうか、ここを聞いているのです。これはだれだって聞きたいことだと思うのです。いいかげんな、そうであるようなないようなことでなくて、そこは大平さん、明確にしたほうが国内的にも国際的にも私は非常にいいと思うのです。もう一度そこを伺いたいと思うのです。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 占領継続は不法であるということを、あなたは不正義であるというようにおとりになっておりまして、私どもはこれは不法で許さるべきものでないという立場を堅持いたしておるわけでございます。
  100. 金子満広

    ○金子(満)委員 非難されるべきである、それは不法だからだ、そしてなかなか不正義ということを大平外務大臣は言わないのでありますが、もう一つそこを進めて、私は伺っておきたいと思うのです。つまりイスラエルが行なっている行為は侵略である、私はそう思います。これはアラブ諸国にとっても非常に重大な問題だと思うのです。これはアラブ、中東の問題を見るときにイスラエルが侵略であるかどうか、ここは原則の問題であり、基本的な問題なんです。  ここのところをあいまいにしておったのでは、大平さんは不正義ということばもなかなかお使いにならない。いわんや侵略ということばもお使いにならない。これではアラブが口先だけだと言うのも無理はないと思うのです。明白に侵略なんですよ。そしてまた中東問題を真に解決つけるとすれば、侵略された側と侵略したというものとは区別しなければならぬ。そこのところが何か混然一体のような両方がこうだというようなことでは済まされない。この点について日本政府は、きのうきょう起こった問題じゃないのですから、一九四八年から今日まで二十五年間に四回も戦争をやっているのですから、これはもう考えるまでもないことであって、その点をひとつ明確にしてもらいたいと思うのです。侵略と答えられるか、侵略とは答えないか、この二つのどっちかを言ってください。
  101. 松永信雄

    ○松永政府委員 お答えいたします。  不正義であるかどうかという点、まあ不正義ということば自身があまり法律的な観念ではないと存じますが、私どもの立場からいたしますと、イスラエルが違法な行為、国際法上認められない占領を継続している、それは違法である、不法であるということであると存じます。
  102. 金子満広

    ○金子(満)委員 繰り返しますけれども、違法とか不法とか不当とか、こういうことばはいつでも出ます。それは国際法上のことばかどうかという解釈を私は聞いているのじゃないのです。とにかく二十五年間も長い間四回にわたって、四八年のパレスチナ戦争、五六年のスエズ戦争、六七年の六日戦争、そして今度の戦争ですよ。みんな同じことをやっているのです。そして日本政府の立場を二階堂さんがおっしゃいましたけれども、イスラエルは占領地域から撤退しなさいというのは、六七年に占領した地域のことを言っているのだと思うのです。占領ということは不当である、これはあたりまえのことですよ。そういう中で私はあれこれの解釈とか慎重とか検討とかでなくて、イスラエルが現に行なっている行為が侵略と言えますか、侵略ではないと言えますか、この二つのうちのどちらかを今度は外務大臣に答えてもらいたい。この一言というのは、中東問題を解決する上でも石油問題に関連しても、私は重要な一言になると思って聞いているのです。だから、答えられなければ、その問題について侵略と言えませんというなら、それでもけっこうだし、侵略と言えますというなら、それでよろしいわけですから、その点大平さん、明確に短いことばで答えていただきたいと思うのです。
  103. 大平正芳

    大平国務大臣 侵略ということばが、国際法上なじまないことばでございますので、侵略的な行動があって、その占領が続いておるということは不法なことである、違法なことであるから、それは撤退すべきものであるということを明確にすることで必要で十分でないかと私は考えております。
  104. 金子満広

    ○金子(満)委員 ですから占領が続いているということは、侵略が続いているということじゃないですか。はっきりしているのです、国連憲章の中にも侵略という文字があるのですから。これは政治的な解釈や何かじゃないのですよ。ですから、大平さんがなぜここのところを避けるかというのです。ここの問題ですよ。
  105. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 侵略ということばは確かに国連憲章の中にございますけれども、侵略が何を意味するか、侵略の定義につきましては、この数年来国連総会で、あるいは国連関係機関委員会をつくりまして討議しておりますが、まだその内容が確定いたしておりません。
  106. 金子満広

    ○金子(満)委員 だから、国連で侵略の特別委員会で討議しているのも私知っていますよ。知っているけれども国連という国はないのです。日本国という国はあるのですよ。その国に外務省があることも明白なんです。その外務省の最高の責任者である大平さん、あなたがこれを侵略と見ることができるかできないかということを聞いているのですよ。これが言えないほど情けない話はないと私は思うのですよ。きのうきょう起こった事件じゃないのですから。中東外交が手薄だったとかなんとかいう性質の問題じゃなくて、これは本質の問題なんです。あなたが答えられなければ答えられないということが国際的にはっきりするだけなんです。だから、こういう時期だから私は答えるべきだ、そういうことを言っているのです。不当だとか、不法だとか、正義だとかなんとか、そういうことよりもっと明確に、原則の問題だから私は聞いているのですよ。
  107. 大平正芳

    大平国務大臣 したがいまして、日本政府としては十一月二十二日に官房長官談話の形をもちまして中東紛争に対しまする解決の原則はこう心得るということを内外に宣明いたしたわけでございますから、あの談話をもって御承知を願いたいと思います。あれがぎりぎりの日本政府態度の表明とお受け取りをいただきたいと思います。
  108. 金子満広

    ○金子(満)委員 それでは侵略ということは外務大臣としてここで言えないということですか。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 あまり問題になることばを言わないほうが外務大臣としては慎重であって、しかるべき職責としてはそのほうがよろしいんじゃないかと考えます。
  110. 金子満広

    ○金子(満)委員 ですから、そういう態度が私は、中東外交に対して手薄だったとか、あるいはこういう事態が起こってからどたばたするようなことになるのですよ。私は、大平さんだけ責めているわけじゃなくて、ずっと続いた自由民主党の政府の中で外務省があの一番最初の四八年のときから意思表示をどう行なってきたか、全部見ましたよ、いつでも明白なことを言っていなくて、言わないほうが何とかいいような解釈で今日まで来てしまった。これはもう事実ですよ。こういうことを考えたときに、こればかりやってもしようがありませんから、きょうのここのところのけじめは、大平外務大臣はイスラエルの行為について侵略ということは言えない、こういうことで理解していいですか。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 この間の政府声明で、日本態度は明確にいたしてあるということで御了解をいただきたいと思います。
  112. 金子満広

    ○金子(満)委員 それは何回も聞いているのです。だから、私は侵略ということは言えない、こういうことで理解していいかと聞いておるのです。いいのですよ、大平さん、私は何と答えても別に拘束しないのですから。全くあなたの自由なんですから。侵略ということは言えなければ言えないでいい。
  113. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたが、どのようにお受け取りになるかもあなたの御自由でございます。
  114. 金子満広

    ○金子(満)委員 それでは侵略ということは言えなかったということで次に進みます。  ことしの八月二日の日米共同声明があります。日米共同声明は大臣もよく御存じのとおりでありますが、その共同声明の十一項にこういうことがあります。  これは長いから必要なところだけ読みます。総理大臣と大統領は、「エネルギー資源の安定した供給を確保するための努力をひきつづき調整してゆくことに合意した。両者は、」つまり日米は、「この関連で産油国との間に公正、かつ調和のとれた関係を求め、」と書いてあります。  そこで伺いたいのですが、公正、調和というのは一体どんなことか、このことを聞きたいと思います。産油国との間に公正で調和という、そのことはどういう意味をしているか、これを聞きたいと思うのです。
  115. 大平正芳

    大平国務大臣 日米両国とも産油国に対しましては消費国の立場を持っておるわけでございます。私どもが懸念いたしますのは、産油国は産油国でグループをつくり、消費国は消費国としてグループをつくって、これが対立的な状態になることが一番いけないことと考えておるわけでございまして、でき得るならばその間に理解と協調が進むようなぐあいに国際協力を持ってまいるということが望ましいと考えておるわけでございまして、そういう意味合いを込めての表現であると承知いたしております。
  116. 金子満広

    ○金子(満)委員 公正と調和を産油国に求める、要求するということですよ。こういうことは私はほんとうに平等で互恵の立場であるかどうか、これは疑いたくなります。で、アラブの諸国の主権を無視してはもちろんいけないし、そうした中で産油国に対して日米が共同して努力して公正で調整を行なっていく、日米が産油国にこれを求める、こういう考え方は、この共同声明は世界じゅう知っておるわけでありますから、こういう点で日本に対してアラブが一定の政治的評価をしているのは、私はあたりまえだと思うのです。  つまりこの日米共同声明で、いまあなたがどう思おうが思うまいが、日本政府はがんじがらめに縛られておるのです。ここから出られないのです。ここから出られないからこそいろいろのことを慎重に慎重に検討検討を重ねてじんぜん日が過ぎて、過ぎれば過ぎるほど石油危機が逼迫してくる、ここにいま来ていると思うのです。これがいまなんです。ですから、私ども日本政府の対米追従のこのエネルギー政策を転換させなければ、どんなに口先でアラブ寄りだとか、いろいろ特使が出るとかいっても、事態は変わらないじゃないですか。  私はこういうことを考えたときに、この共同声明に出ている十一項目というのは、明らかに今日間違いである。こういうことをアラブの人たちが知らないはずはないし、世界じゅう知らない人はないですよ。そういうことを考えたときに、どうしても私は繰り返し——最後に、三つだけ伺って時間が来ましたから質問を終わりたいと思いますが、一つは、前に戻ります。リビアの石油、原油を日本政府は当然買うべきである、何らためらうことはないのですから、それは買うべきである。これが一つ。もう一つは、中東問題について二階堂長官談話が出たけれども、いつまでもあの程度でとどまっていては世界じゅうだれも信用しないのです。日本は全く口先ばかりだ。だから中へ入ってもっと突っ込んで、私はいまこの段階で、イスラエルが侵略だということぐらい言えないような情けない日本政府だとは思いたくないけれども、言わないのだからしかたないけれども、これはぜひはっきりしてもらいたい。それから三番目に、こういう日米共同声明のようなものに拘束されないで、これから脱皮して政策を転換させなければならぬ。この政策転換がない限りアラブの不信は永久に残るだろうし、日本国民政府に対する不信はもっと大きなものになるだろう。こういう点でひとつ政策転換ということをするかしないか、最後に答弁を求めて終わりたいと思うのです。
  117. 大平正芳

    大平国務大臣 金子さんの最初と二番目の御質問、だめを押された御質問に対しましては、先ほど申し上げましたことで御了解いただきたいと思いますが、第三点については私は異論があるのです。あなたは日米同盟関係にあるから、今日の経済、石油危機との関連において、政策転換をしないと道は打開しないじゃないかという御提言でございますが、第一に私は、そういう認識は少しオーバーでもあるし、また正確でもないと考えております。アラブ諸国の中でもアメリカと近しい関係にある国もありますし、そうでない国もございまするし、また今度のアラブ諸国の産油国側の供給制限措置を見ておりましても、アメリカとの関係の濃淡というようなことでこのことが行なわれておるわけでは決してないことは、あなたは百も承知であろうと思うのでありまして、問題は、アラブの側が石油を武器としてどう活用するかということは、中東紛争解決手段として石油を最も有効に活用する意味合いにおいて実行されておるわけでございまして、その国がアメリカとどういう関係にあるかということがそのクラシフィケーションのものさしになっておるようには私は見ないのであります。したがって、第三点の御提言につきましては、私は首肯するわけにはまいりません。
  118. 金子満広

    ○金子(満)委員 では最後に、私の意見を申し上げたいのですが、認識が違うのは当然ですよ、認識が同じならいまのような事態になっていないのですから。ですから、私の言っていることと大平さんの言っていることのどっちが正しいかということは、現実の事態を見ればはっきりしているのですから、もしあなた方の考え方が正しいなら、こんな危機的な状態はこないわけですよ。私はそういうことを考えたときに、政府のいままでとってきた認識が間違っておる、対米追従のエネルギー政策というものが間違っておるからこそ今日の事態が展開されているのだ、このことははっきりしていると思うのです。そういう意味大平さんは認識が違うと言っておりますけれども、私どもは認識はもちろん違っています。しかし、認識いかんにかかわらず、いま日本政府がとっている政策を転換しない限り、この石油危機を打開していく道はない、このことを最後に申し上げて質問を終わります。
  119. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  120. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は少し異なった角度からこのアラブの問題についてお話を進めたいと存じます。  まず、外務省は、いま問題の起こっているいわゆるアラブ地域、中近東地域の国々に対して、どういう陣容で臨んでいられるかを伺いたいと思います。大使館が何ぼあり、総領事館が何ぼあり、メンバーは何人であり、そしてそれに対する予算はどういう予算を配分されておるのか、そして外交関係のあるのはどの国であり、外交関係のない国はどの国であるのか、述べていただきたい。
  121. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 お答え申し上げます。  中近東とわれわれで呼んでおります地域には二十二カ国ございますが、そのうちアラブということになりますと十八カ国でございます。その十八カ国のうち大使館のございますのが十一カ国でございます。  陣容は、重点的な配置をいたしておりますが、アラブの中ではエジプトあるいはレバノン、こうした国に重点的になっておりまして、残りの国は大体大使以下四名ないし五名ということでございます。  外交関係につきましては、すべての国と外交関係がございます。ただ、ただいま申し上げましたように、十八カ国のうち十一カ国、これが実館を置いてございまして、その残りの国にはそれぞれ兼轄で大使を配置いたしております。  人数でございますが、人数を申し上げますと、イラクは五名、クウェートが五名、サウジアラビア六名、シリア五名、レバノン七名、アルジェリア四名、エジプト十名、スーダン四名、チュニジア三名、リビア二名、モロッコ四名、こういうことでございます。  予算と申しましても、在外公館を維持するための予算は通常の予算に計上されておりまして、そのほか経済協力とかそうした予算は別途組まれております。
  122. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これで十分であるとお思いでありますか。またはそれが十分でないとお思いなら、来年度どうなさるおつもりですか。
  123. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 われわれ常々中近東地域を担当いたしておりまして、在外公館の強化充実ということに努力はしてまいったのでございますが、来年度予算におきましては特に官房の協力を得まして、まず大使館実館の新設、それから中近東方面の各館に対する定員の増加、あるいは非常に僻地でございまして、一番難渋いたしておりますのが通信関係でございますので、通信関係の充実、こういうことを目途といたしまして来年度予算の要求をいたしております。
  124. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大使館「ジッ」館の新設というのは、このアラブ地域に十館という意味ですか。私が伺ったのは、この地域に対する来年度の組織、システムその他予算について十分かどうか、十分でなかったら何をどうしたいのか、それを言っていただきたい、こう言っているのです。
  125. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 私がただいまお答え申し上げましたのは、もちろんアラブを中心といたしました中近東に対する充実を目途とした考え方でございます。——十館ではなくて、私が申し上げましたのは実館でございまして、十でございませんで、実際に大使館を置くという意味でございます。
  126. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 来年度の予算編成をいまやっておられる最中でしょうから、まだ計画ができていないのかもしれません。ですけれども、どうも熱意がないことおびただしいですね。大体五人しかいない大使館なんというものは、運転手にそれこそ食事用の当番に門番まで入れれば、これはどういうことになるかといったら、だれもいないのにひとしいじゃないですか。こんな五人とか三人とかで、この重大外交を扱うおつもりでいらっしゃるのですか。どうなさるおつもりなんですか。何にも考えてないんですか。私は、アラブ外交の基礎的方針があるとかないとかまだ議論したくない。それ以前なんだ。何にもする気がない。直す気もない。考えてもいない。何にもやる気もない。担当者もいない。ないないないのないない尽くしで、何かやろうというような顔をしてここでいま答弁をなさろうとする。だから、ぼくは言うのです。どうするのですか、これは。
  127. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 私の答弁、多少舌足らずなところがございまして、申しわけないと存じますが、私がただいま申し上げました数字は、すべて日本から、外務省から現地に行っております者の数でございまして、運転手その他は当然現地で雇用いたしておりますし、日本から参りました職員のほかに、現地補助員としてクラークその他にこれも雇用をいたしております。  もちろん、御指摘のとおりに陣容がいささか充実を欠きますのは、われわれも認めるところでございまして、そのため急遽来年度の予算で充実をはかりたい、かように考えております。
  128. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それじゃもう少し、基礎的なことを次から次へ聞いてみましょうか。  中近東課の中でアラブ語のわかる人、何人いますか。また、あちらの大使館のほうでアラブ語が実際上通訳のできる人は何人いますか、言ってください。
  129. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 外務省全体で、ただいま現役でアラビア語を専門といたします者が、三十七名おります。そのうちの大部分が、通訳をできるだけの語学能力を備えておると承知しております。
  130. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大使のうちで何人いるのですか、現地に行っている大使の中で。
  131. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 ただいま現役の大使では、アラビア語の方はおられません。
  132. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 課長以上や局長以上では何人いるのですか。
  133. 田中秀穂

    ○田中(秀)政府委員 課長以上では一人、ただいまエジプトにおります公使がアラビア語でございます。
  134. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 お寒いのはわかっているけれども、これはもう話のほかですね。これじゃ何にもできないのじゃないかと私は思う。また、来年度予算については私は申し上げておきたいが、これは外務大臣よく聞いておいていただきたいのですが、この大使館の箱を大きくしたり、そこに大使を派遣するのも大事です。しかし、ことばの通じない者を何人か出したって、それはもうナンセンスですね。向こうの言うことはこっちがわからぬ。こっちの言うことは向こうがわからない。そして不完全言語である英語か何かでお互いにかろうじて語をし合う、あるいはフランス語でちょっと話す。それはもう外交以前だろうと私は思うのです。だから、結局ハイジャックが起これば商社にたよるしかないというような状況にすぐなってしまう。私は、この人数が少ないというよりも、これらの地域に関心を持たなかった日本外交、要するに理解しようとつとめなかった外交姿勢、また理解してもらおうとしなかった姿勢というものが問題になろうかと思うのです。  だから、メンバーを当然そういうふうに補強なさると同時に、それがまず第一で、第二に私が申し上げたいことは、その文化交流ということがこの予算の中に全く考えられてない。いま言われたのは、通信費充実だとか定員増とか大使館が何とかというお話しかなさらない。ところが、外交の基礎になるのは相互理解ですよね。相互理解が何にもないところで外交しようとしたって、話をしようとしたってうまくいくわけがないじゃないですか。これをどう思われますか。こんなのでいいと思われますか。また、文化交流の具体的な話からまずやらなければならないが、文化交流の費用としてこの地域に何ぼ何ぼを割り当てておられるのか、それから伺いましょう。
  135. 堀新助

    ○堀説明員 文化交流の予算は、先ほど答えました中近東局長ではなく、私、文化事業部長のほうで取り扱っております。  いまの御質問に対しまして、外務省が監督いたしております国際交流基金は、本年度アラブを主とする中近東地域に対しまして、使える総額の五%を本年度の予算で考えております。
  136. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは幾らですか。
  137. 堀新助

    ○堀説明員 金額にいたしまして五千八百万円でございます。
  138. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 人件費抜いて幾らですか。
  139. 堀新助

    ○堀説明員 人件費は全体にかかりますので、この中には入っておりません。これはアラブ地域に対する純然たる文化活動の事業費でございます。
  140. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 五千八百万というのは、申しわけないですけれども、ビラでいったら一回分の選挙のビラにも足りないですよ、こんなもの。こんなもので何かやろうとお思いですか。日本を理解してもらおうなんて思っているのでしょうか。これで足りるのか足りないのか、どうされるのか。その辺から少し直されたらどうですか。外務大臣いかがです。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 いままで中近東諸国から研修生を千五百六十名受け入れております。また、専門家を三百七十名派遣いたしておるわけでございます。この数は渡部さん御指摘のように、決して多くはないわけでございまして、いま仰せのように語学のハンディキャップがございます。社会体制が非常に違っておるところでございまして、たいへんむずかしい障壁があるわけでございますが、よほどの努力をしないとこれをふやしてまいるということは困難でございますが、私どもといたしまして鋭意、こういう要望も強うございますので、強化してまいりたいと考えておるわけでございます。  いままで私どもが特に中近東地域をネグレクトしたというわけでは決してないのでありまして、どちらかというと、日本は東北アジア、東南アジアの方面に経済協力にいたしましても文化協力にいたしましても、多くの予算、エネルギーを割愛することが多かったわけでございまして、これから他の地域におきましても漸次拡充をしなければならぬと考えておりましたやさきでございまして、そういう方面の推進には一そう努力を重ねてまいるつもりでございます。
  142. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ことばがむなしい感じがしてしかたがないのですけれども、お話が空転しているような感じがいたします。というのは、あまりにも程度がひどいからです。ことばのわからない者同士がおつき合いをするのではしようがないというので、ことばを両方でわかるようにまずしましょうというようなことを早急きわまる対策にしなければならないと思う。そうしたことについて最初の手が打たれないで、三木特使の持っていったものは現金であり、ダムであり、道路である。こういうやり方の外交をすると次に受けるショックというのは何かというと、エコノミックアニマルとしての日本というものしかクローズアップされてこない。だからこそ、人間の心をとらえる外交という基礎的な姿勢をまずやってこなければいけないと私は思うのです。それがなくて、三木さんが油ほしさにおじぎして歩くというようなニュアンスを与えたとしたら、それは私は日本外交にとってはマイナスと言うしかないだろうと思うのですね。だから文化関係の問題について、私は何回か申し上げたのですけれども一つの数字を申し上げておきたいと思うのです。  文化政策関係費として組まれている予算が日本は大体少な過ぎる。国連において、文化関係予算というのは国家予算の一%にしようという案が後発の国からすでにあったのですけれども日本は〇・一%にすぎない。イギリスですら〇・三%、フランスでは〇・五%、これは一九七三年時でありますけれども、西ドイツにおいては一・〇%、一%をこしておる。ソ連においては一九七一年〇・九六%。ところが日本は〇・一%、 ソビエト、西ドイツに比べれば割合にして十分の一ですね。そういう程度の文化予算であります。  しかも文化系予算の中でいやになりますのは、このいわゆる文化交流基金というものの正体というものが、その重点というものがかかっておりますのがほとんど人件費であり、実際にはもう十億円も使えないような状況で予算が組まれている。先日、田中総理、大平外務大臣が訪米されたときに、あるいはヨーロッパへ行かれましたときに、多少文化基金として積み上げられた特殊なお金を加えたとしても、その内容というのはまことに微々たるものであります。アメリカが各種機関で出すものを加えれば八百億というような金額を出してくるのに比べて、日本の文化関係に対する費用がいかに少ないかおわかりいただけるだろうと私は思います。  そこで申し上げるのですけれども、アラブ外交の基礎をやるにあたって、まずその辺を明確にしなければいかぬと思います。  それから、時間がなくなりましたから、私はいま共産党の方が言われましたもう一つ前のところを、これはこの次の宿題にして考えていただきたいと思うのです。というのは、私は何から言おうとしているかというと、アラブ外交の一番先、わが国がアラブ外交で明確であり続け得なかったのは、もう一つ前の原因があったと思います。それはイスラエル国家の建設のときにさかのぼって、わが国はイスラエルとアラブの紛争、数千年以前から今日に至るこの紛争に対してどういう感覚を持っているか。それに対して明快なる判断というものを持っていなければいけないと思うのです。それが不明確であり、そこへもってきて今日の紛争が重なり、それがまた不明確である。どちらが侵略ともいえないような状況になってしまう、どちらが正義かもいえなくなってしまうという状況については、それはむしろ現段階でのみ外交を考えるためであると私は言いたいわけであります。  どうかその辺の根本的な問題からもう一回考え直されて、少なくとも直ちに自主外交をとれとは私は自民党内閣に要求するつもりはない。しかし、判断と計算と評価について自主的な外交というものはとり得るのではなかろうか。そういう意味でもう少し研究されて、対策をお立てになったらいかがか。口はばったいようでありましたけれども、これを申し上げておきたい。いかがでございますか。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのこと、私も全く同感でございまして、深い歴史的な究明と認識と理解の上に立たなければほんとう意味での生きた外交はできないことでございまして、その点は御指摘のとおりだと思うのでございます。しかし同時に、現在置かれておる立場におきまして判断を誤ってはいけない、計算を狂わしてはいけないという御指摘もあったわけでございまして、そういうことに遺憾のないように全力を傾けなければならぬと考えておるわけでございまして、両々相まちまして実のある外交をやってまいらなければならぬという御指摘の御提言は身にしみてありがたく存ずる次第でございます。
  144. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ加えますと、私は、外交というのは一つの国を見てそっちのほうだけに急回転することではないと思う。それはアラブとイスラエルの現下の紛争に対して、アラブ側の言い分に道理があり、また国連二四二号決議を支持する立場からの日本政府の方向、非常に微々たるものではあるけれども、それは少しはいい方向に向いていると私は思う。しかしそれと同時に、その日本の立場をイスラエル側及びアメリカ人社会におけるユダヤ人たち、世界じゅうに散らばるそういう人たちによく理解せしめるということもまた外交としてはきわめて重要なことになると思う。アラブのほうには三木特使を飛び出させる、ところがアメリカのほうには知らぬ顔、ユダヤ人には何にも知らないというやり方でやっていきますならば、一辺倒け飛ばし外交とでも言うべきものになってしまう。これはその都度その都度、日本外交は頭打ちしたとたんに次の瞬間どっちを向くかわからない、こういう非難が当たってくるのじゃないでしょうか。  私は、かつてルーズベルトやあるいはチャーチルがヤルタにおいてソ連のスターリンと会った際に、スターリンが冗談のように、日本というやつはこん棒でなぐらなければ方向をかえないロバみたいなものだ、力一ぱいなぐると次の瞬間には別の方向に向かって走り出すとやゆしたという話を聞いたことがありますけれども、まさに日本外交は油で突き当たるとアラブへ傾斜する、貿易で突き当たるとまた別の方向へ傾斜する、お金で突き当たるとまた向こうへ行く。全くどっちへ向いているのかわけがわからないじゃないかという方角に向かって進むということは、日本外交の信頼をつなぐ道ではないと私は思うのです。  だから私は、そういう意味では、アラブ外交をやるのだったらイスラエルに対しても明快な意思表示をし、これはわが国態度としてかくかくしかじかあるべきものである、あなた方の態度は間違っておるとまできちっと道理を言い含めるだけの外交というものが必要ではなかったか、私はこう思うわけなんです。ところが三木特使には山ほど権限を与え、そしてお金をばらまかせ、そしてイスラエルのほうには知らぬ顔で行き、そして次の瞬間にまた別の事態が起こったらそのときにはまた別の方向へ向かって走り出す、これはわが国外交に不信を招かせるばかりだと私は思う。私は、どちらの国に好意を持って論評するという立場でなくて、日本外交の右往左往路線というものを明確な形にしなければ、日本外交は結局信用を失うだけでなく、信用を失うということがどんなに大きなマイナスになって次の瞬間にはね返ってくるかわからないという立場でこれをひとつわかっていただきたい、こう思っているわけであります。
  145. 大平正芳

    大平国務大臣 渡部さんの言うように、一方から衝撃を受ければ無反省に飛び出して、一方的に傾斜してしまうというようなぞんざいなことはいたしておりません。イスラエルに対しましても、アメリカに対しましても、アラブに対してと同様な私ども措置はちゃんと講じておるつもりでございまして、三木特使を一方において派遣して事足れりといたしておるわけでは決してないことだけはせめて御理解をいただきたいと思います。
  146. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間がありませんから、それじゃ外務大臣、いまアメリカ国内で起こっている、ロサンゼルスやサンフランシスコの日本大使館や総領事館等に対して押し寄せてきているアメリカのユダヤ人たちの運動、それは警備をつけなければならぬほどの運動になっていることをどう思われますか。また日本航空のアメリカの出先に、ユダヤ人グループから次から次へと抗議と乗りものに対するキャンセルが続いているという事実をどう思われますか。また日本人のいろいろな商売をしていらっしゃる皆さん方が、ユダヤ人の各商社のグループから、おまえの品物は売らないと言われている問題についてどう取り扱われているのですか。政府がやっていることは何にもやってないとしか見えないではないかと日本人たちは言っております。またユダヤ側の責任者たちは、日本政府からの的確な説明を聞いている模様がありません。私は、ことばだけで外交をやるのでなくて、真実を込めて外交をやるべき姿勢というものをもう一つ取り戻していただきたい。そうでないと、ほんとうの理解がないと相手の間違いを改めることもできないし、相手のよい点を支持することも疑われるし、日本外交はその基盤ができていないのだと私は思います。そうでないと、このイスラエル、アラブの問題のような最高にめんどうな問題というものを解決する糸口すらつかめないで、一つ判断は次の不安を生み、一つの決定は次の紛争の引き金を引くと私は思うのです。これはひとつ指針として御考慮をいただきたいと私は思っております。  終わります。
  147. 木村俊夫

    木村委員長 永末英一君。
  148. 永末英一

    ○永末委員 中東問題について伺います。  十月二十四日から二十五日にかけて、アメリカ側は全世界のアメリカ軍に対して警戒態勢をとらせました。日本の自衛隊は何かしましたか。
  149. 伊藤参午

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  今回の第二次中東戦争に際しまして、日本の自衛隊、特に航空自衛隊が、米軍がとったといわれるような警戒態勢をとったといったような事実はございません。
  150. 永末英一

    ○永末委員 いま航空自衛隊だけを申されましたが、一切何もしなかったということですね。
  151. 伊藤参午

    ○伊藤説明員 そのとおりでございます。陸海空自衛隊を通じまして一切の態勢をとっておりません。
  152. 永末英一

    ○永末委員 アメリカはこの警戒態勢をとるについて、事前に日本政府に通告ないしは協議がございましたか。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 ございません。
  154. 永末英一

    ○永末委員 これをとられたあとでフランスの外務省は、事前通告なしにアメリカがこういう警戒態勢をとったことに対して強くアメリカ側に抗議をいたしました。大平さんは、そういう態勢をアメリカがとったことについて、その後何かされましたか。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカがアラーム態勢をとりましたのは十月二十五日と記憶いたしております。それで、二十六日にアメリカから事後に通報がございまして、その機会に、これは、事前に通報するということは決して安保条約上の義務ではございませんけれども、事前に通報があってしかるべきものではないかという意味のわがほうの見解は先方に伝えておきました。
  156. 永末英一

    ○永末委員 事後に通告をされて、わが政府に対してアメリカ側から何らかの要求がございましたか。アメリカ側から日本政府に何かしてくれということはございましたか。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 別にございません。
  158. 永末英一

    ○永末委員 いま、事前にひとつ知らせてくれろと言っておいたというお話でございますが、何もなかったからいいようなものの、警戒態勢をとれば一触即発ということがないとも限らない。したがって、ヨーロッパのほうは、各国ともきわめて明確にこれを拒否をしている事実がございますね。そのことがアメリカとヨーロッパ諸国とのいままでの協調関係にひびを入れるのではないか、NATOというシステムがくずれるのではないかということすら一時懸念をされました。わがほうは、日米安保体制にひびが入るほどに重大な問題だとお考えになりましたかなりませんでしたか。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 日米安保条約と申しましても、やはり根本は日米間の信頼が基礎でなければならぬわけでございます。条約上の権利義務の問題は別といたしまして、事前通報がないということはたいへん遺憾なことであるという日本政府の見解は先方に伝えておいたわけでございます。日米信頼の上から申しまして、私どもは遺憾なことであると考えております。
  160. 永末英一

    ○永末委員 十一月二十二日に官房長官談話ということで、新しい日本政府の中東問題に対する見解が発表されたと伝えられておるわけでございますが、この官房長官談話は、外務大臣も全文そのまま承認をしておられるわけですね。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  162. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は、この考え方は国連決議二四二号の解釈についてアラブ側の解釈に立ったと言われたことがございますか。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは二四二号の解釈を明確にすべきであると考えて、十一月二十二日の官房長官談話を発出いたしたわけでございます。その解釈は、見る人によってそれはアラブ寄りの解釈ではないかという評価がありますが、それはあえて否定いたしません。
  164. 永末英一

    ○永末委員 それでは、この二四二号そのものがいろいろな要素を含んだ決議なんですね。したがって、従来この二四二号に対してイスラエル側の受け取り方とアラブ側の受け取り方が違っておるということは天下周知の事実でございまして、だからこそ今回の戦闘がまた起こったのではないかと思われる節がございます。  さて、いま大平さんは、アラブ側の解釈に立ったと言われても否定いたしませんというのでございますから、この官房長官談話と二四二号について何を一体考えておられるかを明らかにしておきたい。  第一点は、官房長官談話の最初に「二四二の早急、かつ、全面的実施」ということを言っておられますが、たとえば「国際水路の航行の自由」なんということをどう考えておられるのですか。日本政府はどういうことを主張しておられるのですか。
  165. 大平正芳

    大平国務大臣 二四二号決議は、当初から日本はこれに賛成いたしてまいりました決議でございまするし、これはまた当事国も含めまして満場の賛成で成り立った決議でございます。  それから、中東紛争の解決の指針として、いままでのいろいろな解決の試みはこの決議を離れたことがないわけでございまして、しかしいま永末さんが言われたように、この決議をどう解釈するかにつきましては、それぞれあいまいさが残っておったと私は思うのであります。従来、日本も占領地からの撤退ということを言うておったわけでございますが、今度の声明で、全占領地から撤退すべきものであるということを明らかにした点が第一でございます。  それから、従来イスラエルをシングルアウトして遺憾の意を表明したことはなかったのでございますが、その声明でそのようにいたしたことが第二点でございます。従来と違ったところでございます。  それから、第三点といたしまして、今後の事態の推移をわれわれは注目すると一番最後に書いてございますけれども、その事態の推移いかんによりましては、イスラエルに対するポリシーを再検討せざるを得ないであろうという警告を挿入いたした点、この三つが従来からの前進であると私どもは考えておるわけでございます。いま国際水域というお話が出ましたが、問題は、中東紛争の解決はこういう原則によってやるべきものであるという日本政府の立場を明徴にいたしたものと私は考えております。
  166. 永末英一

    ○永末委員 一九六七年の戦闘というのは、まさに国際水路の航行の自由というのが直接の発火点でございました。したがって、二四二号は原則は一応書いてございますが、その細目にわたる一番初めにこの問題が書いてある。いま大平さんが言われたように、全占領地域からイスラエル軍の撤退を言ったということに力を入れましたが、それならば、アカバ湾に面するいわゆるシナイ半島というのは占領地でございますから、そこから撤退せよということをいっておられるのだと思うのです。しかしそのことは同時に、エイラートなりあるいはシャルム・エル・シェイク、ティラン海峡の航行の自由ということについて、これは国際水域と見るかエジプトの領海と見るかという重要な問題。日本政府はやはり国際問題でございますから見解はあると思うのです。その辺をぼかして言われておったのでは、何を言っておるか一つもわからぬ、こうなるので、一つのポイントであるから伺っております。お答え願いたい。
  167. 松永信雄

    ○松永政府委員 ただいま御指摘ございましたように、一九六七年の決議が採択されましたときにおきまして、そのときの紛争の発火点になりました国際水路における航行の自由の問題、これが紛争解決の際には自由な航行が尊重されるべきであるということが国連におけるコンセンサスとして認められたということでございます。
  168. 永末英一

    ○永末委員 わからぬじゃないですか。どういうことなんですか。全占領地から撤退せよと言った。そうしますと、まさにエイラートのすぐ西側はエジプトのものですね。それからティラン海峡、そこもまたエジプトのものなんでしょう。それにどうせよというのですか。何も言わないのですか。どっちなんですか。
  169. 鈴木文彦

    鈴木(文)政府委員 占領地からイスラエルが撤退したあと、そこのそばにあります国際水路といいますか、その法律的地位の問題とはこれは別個でございます。したがいまして、先ほど大臣が申されましたように、二四二号の決議は中東和平が公正かつ永続的な解決に至る指針ということで安全保障理事会で採択されたわけでございますが、この国際水路の自由航行の問題、これはたまたまこの中東紛争の発生の大きな原因であったという観点から、当然にこの中東和平のこれからの和平会談において重要な一環として当事者の間において解決が探られるというふうに私たちは見ております。
  170. 永末英一

    ○永末委員 時間がもう少しでございますので明確に簡単にお答え願いたいのですが、官房長官談話の二の(四)項で「パレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され、尊重される」、当然のことでございますが、大平さんはイスラエル国家の存在は認めていかれるわけですね。
  171. 大平正芳

    大平国務大臣 その(三)に書いてあるとおりに心得ております。
  172. 永末英一

    ○永末委員 (三)のところで「域内のすべての国の領土」の「すべての国」の中にイスラエルは含んでおるとあなたはお考えになっておる、かように了解してよろしいですね。
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように心得ております。
  174. 永末英一

    ○永末委員 この官房長官談話の最後のところで、「今後の諸情勢の推移如何によってはイスラエルに対する政策を再検討せざるを得ないであろう。」、それから一カ月たっておるのですが、どういうことになっているのですか。それ以後何か変わったのですか。
  175. 大平正芳

    大平国務大臣 十八日に予定されておった和平会談が二十一日に延びたそうでございますけれども、これから和平会談がどのような経路をたどりますか、私どもといたしましては早急に和平がもたらされることを期待いたしておりますけれども、この状況を十分注視いたしたいと思いますし、日本政府としてその時点時点で最も適切と考えられる外交施策を考えてまいらなければならぬと考えております。
  176. 永末英一

    ○永末委員 先ほど当初に、官房長官談話で、アラブ寄りと解釈せられてよい、二四二号に対してアラブ寄りと解釈をしていいと言われましたが、イスラエル国家の存在を認めていないアラブ国家もあるわけですね。その辺がちょっと私は違うのではないかと思いますが、いま再検討などということを日本政府が中外に向かって言っておる。中外というのは、外国に向かって言っておる。どうするのかわからないということはいろいろ幅がございますね。ある人はこのことばで、アラブ側の一部から日本政府要求されておると伝えられておるイスラエルとの国交断絶をやるのかということすらいわれておるのでございますが、再検討をして、一番ひどいときにはイスラエルに対して何をするつもりですか。
  177. 大平正芳

    大平国務大臣 いままでアラブ諸国側からのいずれの国からも、公式に具体的な要請は受けておりません。はっきりしておるのなら再検討などと言わなくていいのです。はっきり書けばいいわけなんでございます。再検討と書いたところに意味があるわけでございます。
  178. 永末英一

    ○永末委員 先ほど二十一日ごろ交渉がまた再開せられるだろうと言われましたが、まだ二十一日どうなるかわかりませんね。それが終わるまで、もうわがほうは再検討でじっと見ておる、こういうことですか。大体三木さんが帰ってくればわがほうのペースで、大体この辺でこういうことがこれからのイスラエルに対する政策でございますと発表しようとお考えなのか、その辺をひとつ伺いたい。
  179. 大平正芳

    大平国務大臣 これからの事態の推移を注意深く見守ってまいりまして、その時点時点で日本にとって最善であるという道を探求してまいりたいと考えております。したがって、私どもといたしましては、最大限の弾力性をもって常に当たっていかなければならぬと考えております。
  180. 永末英一

    ○永末委員 時間が参りましたのでこれで終りますが、大平さん、われわれがある態度をはっきりしないことが要らざる懐疑の気持ちを相手方に与えておる。たとえば、もしわがほうの日本商品に対するボイコットとかいうようなことがあちらこちらの世界におりますユダヤ人関係の商売の人々から起こってきたら、それからばたばたしてはいけませんね。したがって、私はあなたが慎重な態度をとっておられること、それは悪いことではないと思いますが、しかし先ほど申しましたように、三木さんが帰ってくる。いろいろなことが少し明らかになってくれば、再検討なんというようなことを言わなければ話はわかりますが、言ったからにはその決着は早い機会にやはりこれですということをお示しになるのが、日本外交の自主性のためにいい道だと私は思います。このことだけのお考えを承っておきたい。
  181. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申し上げたことを繰り返すことになるわけでございますが、今後の事態の推移を見ながら、その時点で最善と思われる外交政策をやってまいるということでひとつ御了解をいただきたいと思います。
  182. 永末英一

    ○永末委員 もう繰り返しませんが、大平さん、あなたは最善だと思っておるけれども外交というのはある意味では時との争いですね。だから、その出すものが最善だと思っておるときにはすでに最善でないかもしれない。その意味合いで、慎重はけっこうですが、時を失わぬように希望いたしておきます。  終わります。
  183. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十八分散会