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1974-05-22 第72回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十二日(水曜日)     午後一時三十二分開議  出席委員    委員長 安井 吉典君   理事 伊藤宗一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐々木義武君 理事 田川 誠一君    理事 石野 久男君 理事 原   茂君    理事 瀬崎 博義君       加藤 陽三君    前田 正男君       粟山 ひで君    山原健二郎君       近江巳記夫君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         科学技術政務次         官       長屋  茂君         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君  委員外出席者         原子力委員会委         員       井上 五郎君         警察庁警備局警         備課長     山田 英雄君         文部省大学学術         局審議官    笠木 三郎君         気象庁観測部長 有住 直介君         国土地理院参事         官       村岡 一男君         参  考  人         (動力炉核燃料         開発事業団理事         長)      清成  迪君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(使用済核燃料の  再処理地震予知及び食品加工技術に関する問  題)      ————◇—————
  2. 安井吉典

    安井委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  使用済み核燃料の再処理に関する問題調査のため、本日、動力炉・核燃料開発事業団理事長清成迪君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安井吉典

    安井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行ないますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 安井吉典

    安井委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。
  5. 石野久男

    石野委員 本日は清成理事長においでいただきまして、いろいろ御苦労さまでございます。  再処理の問題をお聞きします前に、先に井上原子力委員長代行にお尋ねいたしたいのですが、原子力委員会田島委員辞表云々のことが新聞に報じられておりました。それによりますと、辞表委員長代行井上さんのところまで来ておって、まだ長官のところへは、委員長のところへは出ていないやに承っておりますけれども、本件につきまして、どういうふうになっておりますか。最初に、そのことを、井上さんからちょっと聞かしていただきます。
  6. 井上五郎

    井上説明員 田島委員から、原子力委員を辞任したいという御相談を、私、内々受けておりまして、かつ私の手元辞表をお預けになったわけでありますが、私は原子力委員ではございますけれども原子力委員を任免するといった立場にはございません。さような意味におきまして、私が田島委員辞表を受理するとかいうような立場にないということは、田島委員にもお話しをしたと同時に、今日も、さような意味で留保しておるわけでございますが、お話しのとおり、私はこれを原子力委員長である森山科学技術庁長官にもお取り次ぎをいたしておりません。ただ私といたしましては、環境放射能については日本の最も学識経験の深い方であると考えておりますので、極力慰留をいたしておりますし、この件につきましては、森山大臣にもお話をいたしておりまして、森山大臣も、全く同様というか、あるいは私以上にぜひ慰留をしたい、かようなお考えのように私は伺っております。
  7. 石野久男

    石野委員 まだ井上さんのところに、辞表が保留の形で持たれておるようでございますが、実際には、田島委員は、原子力委員としての仕事辞表提出以来していないのだろうと思いますけれども、そして片方では、井上さんのほうから、森山大臣のほうへまだそれを提出してないということになりますと、これは原子力問題ではきわめて問題の大きいときでございますだけに、委員が実質的にその任務を果たし得ないような事情に置かれているということは非常にまずいと思うのでございますが、そういう問題を、委員長代行井上さんはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。いつまでも保留しているということになりますと、ちょっと理解に苦しむのですが……。
  8. 井上五郎

    井上説明員 お話しのとおり、私、この問題をいたずらに長期に放置し得る問題だとは考えておりません。しかし、原子力委員は、御承知のように大臣を含めまして七名、実質六名でございますが、先般も、たとえば武藤委員がなくなられまして、しばらくの間欠員があったといったようなこともございます。しかし、この問題に関しましては、ただいま御指摘のようなこともございますし、非常に原子力問題が忙しい時期でございます。できるだけ早期に、この問題につきまして、円満なと申しますか、御本人納得の上で、正常な形になるべく、努力をいたしております。
  9. 石野久男

    石野委員 私はあまりくどくお聞きすることをしたくはございませんが、辞表最初に出されたのは三月の初めだと思います。それが一たん返されて、四月になって辞表が出て、それからまた一カ月になっておりますが、いつまでもこういう空白の状態に置くということはまずいと思いますし、井上委員長代行が、実際には自分任免権はないけれども手元に置いて慰留するということについては、やはりいろいろなお考えがあろうと思います。その点については、私もあまりあれこれ申しませんけれども、じんぜんとしてあまり長くなるということはまずいことだと思います。最近のうちに、この問題について何らかの明るい見通しがつく予測があるのでございましょうかどうかということを、ひとつお聞かせください。
  10. 井上五郎

    井上説明員 全く御指摘のとおりで、私いたずらに遷延するつもりもございませんが、私が考える限りにおきましては、私ども、と申しますのは他の委員も含めてでございますが、と同時に、原子力委員長である森山大臣も込めまして、極力慰留をし、その考え方で御納得がいき得るものと考えておるということしか、今日は申し上げかねますが、お話しのとおり、極力早いうちにこれを解決したいと考えております。
  11. 石野久男

    石野委員 私は、こういう問題を本委員会で取り上げることをあまり好ましく思いませんけれども、これが病気だとか何かの場合ならこれはやむを得ませんが、新聞の報ずるところ、仄聞するところによりますと、田島委員の辞任の理由の中には、やはり原子力委員会の中における安全性問題について、田島委員意見がかねてからあり、今回の人事任命の間に、これらの問題について、ある種の田島委員不満等があって、辞表が出たというふうに聞いております。もしそうだといたしますなら、やはり原子力業務の上で、非常に私たちとしても関心を持たなければならないことであろうと思うわけです。早急の間に、安全性の問題についても、あるいはその他原子力一般についてでございましょうが、特に環境保全の問題について、やはり原子力委員会が、委員の中の一人に辞表提出があったということにかんがみても、そういう問題を十分補強していく、あるいはまた、そういう意見を十分に取り入れていくということがなければ、いたずらに一人の委員をやめさせるとか慰留するとかという性格のものでなかろうと思うのです。そういう意味で、いろいろ人事のことですから、お話をしにくいこともございましょうけれども、政策の問題あるいは運営の問題に関連しての観点からすれば、ある程度、やはり井上さんから、私どもの憂えていることについての御所見を承れるかと思いますので、そういう点についての御所見を、ひとつこの際聞かしていただきたい。
  12. 井上五郎

    井上説明員 まことにごもっともな御指摘でございまして、御承知かどうか存じませんが、原子力委員会安全会議というものを設置いたしました。もとより、安全という問題は原子力委員会の最も重要な任務でございますが、今日までやってまいりました方法だけでいいか、ことに原子力が推進されなければならないという時代の要請からいっても、もっと安全を量的並びに質的に増強していくには、具体的にはどうしなければならないかということを審議いたしております。  一方、原子力委員会がかねて環境安全専門部会というものをつくりまして、学識経験者非常に多数の方々を御委嘱いたしまして、その問題について近く答申が出ることになっております。そのいずれから考えてみましても、安全というものについて、今日以上に十分な体制を整備しなければならないということについては、全く御指摘のとおりに考えますが、しからばその具体策として、委員が、大臣を除きますと六名でございますが、その中に安全の専門家がふえなければならないか、あるいは委員は、安全の問題と同時に原子力開発に関するもろもろの事項を判断をし政府に進言をする立場からいえば、いろいろな方が必要であるわけでありますから、委員の内部にそうした方を増強すると同時に、必要な機関を設置して、その中で十分増強していくという二つの行き方があるかと考えております。これらは近く決定をしたいと考えております。
  13. 石野久男

    石野委員 その考え方は、それなりに井上委員のお考えでございましょうが、この際私のお聞きしたいことは、田島委員辞表の問題にからみまして、委員欠員にはなっておりませんけれども、事実上欠員と同じような形にいまなっていると思います。こういう事情が続くことはよくないと思いますし、委員は確かに六名おりますけれども、その中の一人でございますから、非常に重要な役割りを果たしている。ことに田島委員の場合は、環境保全問題等についての権威者でもございますし、委員会の中では、そういう意味における役割りを持っている方だと思います。その方が、自分意見等委員会運営との間に若干のそごがあるからという理由が、辞表のおもな理由だろうと私は推測している。これは間違っているかもしれません。そうだとすれば、いま田島委員慰留するということを言っている段階で、その慰留のあり方は、かねてから森山長官は、自分もそれを慰留したいということは言っていました。手元には来ていないけれども慰留をしなければならぬということを、本委員会でも何べんも言っておることでございますので、そういうことについての、田島委員辞表を撤回せしめるような状況が、もうすでに慰留工作の中で明るい見通しが出ているのかどうかということを、実は私は聞きたいのでございますから、そういう意味での質問をいたしました。だからそういうことについて、ぜひひとつ簡単に的確なお答えをいただければ、こう思います。
  14. 井上五郎

    井上説明員 現段階におきまして、私どもは極力慰留お話しし、かつさような意味で御了解を得られるべく、努力をしておるということを申し上げ得るのが現段階でありまして、できるとかできないとかいう段階に参っておりません。これ以上のことを申し上げ得ないことは、御趣旨に沿わないかもしれませんけれども、これは全く実情でございますので、さようなことで、ひとつ御了承ちょうだいしたいと思います。
  15. 石野久男

    石野委員 森山大臣にお尋ねしますけれども田島委員辞表井上さんの手元にあって、長官手元にはまだ来ていないようですが、しかし、長官の統括されます委員会の中にこういう問題が起きているということは、無関心でおれないことだろうと思います。いま承りますと、慰留の意思はあるけれども見通しの問題について、私ども率直に言えば、大体近いうちにこうなりますよという明るい返事をもらえるような——期間的にもずいぶん時間がありますからね、実をいいますと、もうかれこれ二カ月になります。それが必ずしも、いまのお話を聞いておりますと、そう話が順調に進んでいるようでもございません。これはまずいんじゃないか。かりに長官のところまで辞表が来なくても、こういう事態があったら、長官はやはり積極的に、その辞表を受けとめるかどうするか知りませんけれども工作に入らなくちゃいけないと思いますが、長官はどういうふうにこの処置をなさるつもりでありますか。
  16. 森山欽司

    森山国務大臣 必ずしも好ましい事態ではございませんから、できるだけ早く解決に努力をいたしたいと思っております。本問題について私がコメント申し上げておりますことは、前々から申し上げますように、極力慰留したい、その線に沿って努力をしている次第でございます。
  17. 石野久男

    石野委員 これはあまり長くやっておりますと質問の時間をとりますから、やりませんけれども、しかし、私は科学技術特別委員会の一員として、原子力委員会人事の問題で、こういうふうな好ましくない事態が出ている。それをどの方向にどういうふうに処理すればいいのかは、それはもちろん委員長長官考え方にあろうと思いますけれども、しかし国の機関であり、そして私たち原子力についていろいろな論議をする場合の一番中心的な位置づけを持っておる、原子力委員会のこういう事態を放置するわけにはいかない。そして、それもきのうきょうの問題ならば、私はいまの長官のことばで、ああそうですかと、言うことを聞きますけれども、何べんもこの問題は長官にお尋ねしていることでございます。話がうまく進まないということは、やはり田島委員の要望することが、慰留条件としてかみ合っていかないんだというふうに理解して、私ども考えていていいのですか、どうですか。その点、これは長官にひとつお伺いしたい。
  18. 森山欽司

    森山国務大臣 私からお答えすべき立場にあるかどうか存じません。別に格別そういう条件とかなんか、そういうようなことを考えておるわけではございません。要は、お互いに気持ちよくやれるような委員会にしなければならぬということで努力をしておることだと、私は思っております。
  19. 石野久男

    石野委員 それでは、これは私は希望しておきますが、田島委員辞表を出された理由というのは、私ども仄聞しておる限りにおいては、今日の原子力委員会が当然満たさなくちゃならないような、いろいろな、委員として真摯な立場での要望が、その中に幾つか盛り込まれていると思い言ます。特に委員会の中におけるところの安全問題について、専門的な部門を強化するということ、委員自身の中にそういう常勤の方を置いてもらったほうがいいんじゃないかという意向もあるやに聞いておりますし、これはやはり今日原子力問題で、委員会自身が積極的に御努力なさっていると同時に、原子力に関連する地域においていろいろな問題も起きておることも考えますと、この人事問題についての不明朗な事態は、早急に解決しなくちゃいけないだろうと思います。そのことを、少なくともあと一月もということではなしに、ここは旬日の間に解決するような努力をしていただきたい、こういうように私は思うのです。これは井上委員がまだ辞表を握っておられるそうでございますから、井上委員自身のお考えもありましょうが、井上委員のそのことに対するお考えと、長官考え方を、ひとつこの際聞かしていただきたいと思います。
  20. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題、円満に解決すべく、極力努力をいたします。
  21. 井上五郎

    井上説明員 冒頭に申しましたように、私は辞表を受理して何らかの措置をするという立場ではないのでございます。ただ、田島委員のいろいろ御意見を伺いまして、それを大臣その他関係同僚委員諸君ともお話し合いをいたしておりまして、私といたしましては、その間円満にお話し合いができるものと、いまもって考えておるわけであります。いたずらに遷延するとは考えておりませんし、できるだけその希望のもとに、ものを進めたいと思っております。人間関係は、申すまでもなく相互の信頼でございますので、これ以上、私、今日申し上げ得ないということを御了承をちょうだいしたいと思います。
  22. 石野久男

    石野委員 これでおこうと思いましたけれども、いまの最初の、私が受理する権限がございませんということをここでおっしゃるのでしたら、井上さん、もうその辞表をあなたから返して、長官に直接出させるようにしたほうがいいと思うのですが、あなたがやはりそれを持っているということは、何かの工作をし、何かの見通しを持てるという自信があるからそうしているんだろう、私たちはそう見ているのでして、それを私は受け取る権利がないんだなどというようなことをここで言われて、しかも辞表を握っているということは、どうも意見が首尾一貫しないというように私は思うのです。こういう辞表が出たけれども、私は長官に渡さないで、私のところで何とか工作を講じたいと思うので、これは預かっておりますと言うなら、これはわかりますけれども権限がないということを何べんもそう繰り返されるのでしたら、私は井上さん、やはりその辞表は、長官のところへあなたのほうから出されるか、あるいは本人にお返しになって、本人から直接長官へ出されるか、どちらかの方法をとるべきではなかろうか、こう思います。これはもう多くは言いませんから、この問題について、井上さんの御所見だけ簡単に教えてください。
  23. 井上五郎

    井上説明員 私、お話ししてございますが、どうも私が受け取るべき立場でもないし、もし何でしたら、田島委員が直接、総理大臣任命権を御承知のように持っておられるのですから、お出しくださってもやむを得ないのでございます。私としては、同僚であり、長いつき合いでございます。極力お話をしておるというのが実情でございまして、それはどうも私が受理をし、私が処置をする立場でないということは、もう再々申し上げたとおりだと考えております。
  24. 石野久男

    石野委員 これはもうかみ合いませんから、私は申し上げるのですけれども、それをそのまま私が聞きおくと、了解したことになってしまうのですよ。しかし、ものごと筋道としては、それではぼくは通らないと思うのですよ。どうしても受け取る権限もないしするのでしたら、それはやはり直接森山長官のところへ出すように、お返ししたらどうでしょうか。そうしないと、一日や二日ならいいですけれども最初に出したときからいえばもう二月になるのですよ。まずいと思うのですよ。  それで、この非常に重要な機関の中の委員を、こういう形でたなざらしするようなことでは、私はよくないと思います。本人のためにもよくないし、それから原子力行政の上からいってもよろしくないと思うのです。もう明らかになっているのですから、もし井上さんが、どうしても、いや、いいんだ、もうそんなやかましいことをいわないで、おれが何とかするから、もうちょっと目をつぶってくれ、こういう言い方なら、私は了解するのですよ。そうじゃない。受け取る権限はありませんと片方で言いながら、それで片方では、工作の面での何はやってはいるのでしょうけれども、責任は私にはないのだというようなことではまずい。これは長官、やはり、もうここまできたのでしたら、辞表の取り扱いについては、少なくとも、方法はともかくとして、私は一週間以内くらいに片づく見通しがあるのかどうか、ひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  25. 森山欽司

    森山国務大臣 そうせっかちに——まあ、できるだけ努力をするということが必要なんでして、何とかひとつ気持ちよく、そして円満に、お互いに信頼して仕事ができる環境づくりをする。それはやはり時間が要りますから、そういうつもりで極力努力しているわけですから、まとまっても、まとまらなくても、早く一丁あげろというようなことで処理すべきことでないと私は思う。そういう意味で、私は初めからこの問題について、いままで気持ちよく、私の立場ではやってきたつもりでもあるし、別に意見が違ったわけでもないしするから、ひとつ極力慰留したいという姿勢のほかは一切コメントしないで、今日までまいったわけですけれども、どうかひとつそういうことで、なおそういう努力を尽くすということで御了解を願いたい。それ以上申し上げようはないだろう、こう思います。
  26. 石野久男

    石野委員 不明朗な形の引き方は、どうも私はしたくないのですよ、実をいいますと。人事のことですから、あまりこまかいことは私は触れたくないのですけれども筋道があると思うのですよ。そして、やはり病気ではないのだ、この辞表を出したのは問題があるのだ、その問題についての話がつかないから、こういう状態になっておるのだということならば、その点を明確にする必要があるので、やはりこれはひとつ——まあ、そう急ぎなさんなという話ですが、森山さんらしくないと思うんだ。森山長官は、もう急がなくてもいいようなものでもどんどん急いでいて、急がなければならぬものを、こういうふうにほうりっぱなししておくという、そんな手はないですよ。全くそれは趣旨は一貫していませんよ。とにかく長官に、この問題についてはひとつ早急に解決するように希望しておきますし、それで、どうもやはり不明朗だということだけをひとつ申し上げておきます。  ところで、それでは質問に……。(森山国務大臣「あんまりぼくが何でも急ぎ過ぎるみたいに言われると、実際困るね、そんなつもりはないですよ」と呼ぶ)それなら、考え方を聞かしてください。
  27. 森山欽司

    森山国務大臣 私は、何でもかんでも急いでいるつもりはありません。むしろ、大事なことをやるわけでありますから、できるだけ急がないで、時間をかけてやりたいと思っておるわけです。しかし、事と次第によりましては、総力をあげて、夜眠らなくてもやらなければならぬこともございますし、そういう気迫でもってやりましたことにつきましては、それは急ぐように見られるかもしれませんけれども、主観的には、とにかく万全を尽くしてやりたいという気持ちで万事やっておるわけでございますから、そういう意味で御理解を願いたい、こう思います。急がなくていいことを急いで、急ぐべきことは急がない、こういう御批判は、私はいかがか、こう思います。やはり私はもう十分に時間をかけてよく考えて万事やりたい、こう思っておる。だから、普通の人が一日八時間働いていることも、もし急ぐと見られる場合に、私自身はその倍の十六時間も働くし、場合によっては、夜も眠らないで二十四時間働いてやっておるのであって、決して急いでおるのではないのであって、十分検討して行動しているつもりでございますから、急ぐべきことを急がず、急ぐべからざることを急いでおるという御批判はいささか、やはり責任ある立場で行動しなければならない者といたしましては、それはいかがかと思う。私は先ほど来申し上げたが、やはり真剣に、何とかひとつうまくいくようにと思って——それは人間のやることでございますから、うまくいくようにと思ってやっても、うまくいかぬこともいろいろございます。いつもこの委員会で御批判をこうむるゆえんのものは、うまくいくようにと思って努力しておって、しかもなおかつうまくいかぬという面で、御批判をこうむっているものであろうと思いますが、主観的には、とにかくそういうふうに一生懸命やっておるわけでございますから、今回の事態につきましても、誠心誠意対処しておるということについて、どうかひとつ御理解を賜われれば、こう思う次第でございます。
  28. 石野久男

    石野委員 人事問題はあまりせっかちでやってもいけませんけれども、田島辞表問題は、今日の事態から見て、急ぐべきものだ、処置を急がなくちゃいけないものだと、私も思いますし、おそらく大方の世間もそう思っていると思います。これは確信を持って言えると思う。大臣は、この問題は急がないほうがいいような御所見ですから、全くやはり私と見解が違うので、いまの大臣の答弁は、これは世間さまがどういうふうに見てくれるかということで判断してもらうよりしようがないと思っている。とにかく、人事問題について、田島さんの問題はあまり長くたなざらしにしないように、努力をなさるなら早くなさったほうがいいだろう。同時に、田島さんが要望されておると仄聞している点は、非常に合理的であり、私は大事なことだと思いまするので、そういうことを含めて、やはり田島委員納得のできるような形での慰留ができるなら、早急にそうしてもらう。できないなら、できないような処置をしていただくように、ひとつ御判断をいただくようにお願いしておきたいと思います。  急がなくてもいいものを急いでいるものの一つに、いわゆる原子力の地域整備に関する法案の非常にせっかちな審議のしかたがあると思うのです。大臣はまた、ここのあと四時か五時ごろから大蔵へ行き、商工へ行ったりするのだそうですが、そういう科学技術庁の長官としては、原子力問題への責任が大きいだけに、私は、こういう点はきわめて慎重にゆっくりと考えるような態勢をとられたほうが賢明であろうと、実は思うのですよ。  そこでお尋ねしますが、いまの実情から見まして、ことしの四月に原子力の長期計画が、原子力開発利用基本計画が出ておりますが、どうも計画と実行とはたいへんなすれ違いというか、違いが出ていると思うのですね。そこでこの際、再処理工場の問題へ入ります前に、これは非常に大事な問題ですからお聞きするのですけれども、昭和五十年、もう来年でございますけれども、五十年、五十五年、六十年、この五年間隔で稼働する原発はどのくらいと、現在の実情から見て予測されておりますか。それを先にちょっと聞かしてください。
  29. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 現在の計画では、御承知のように六十年六千万、五十五年三千二百万、五十二年は約千五百万ぐらいというぐあいに考えております。
  30. 石野久男

    石野委員 いまのこの数字は、計画の上では見ておりますね。私どもそれはよくわかるのですが、実際にいまの実情から見て、原子力局は、これは可能であるというふうにごらんになっていらっしゃるのかどうか、その点をひとつ聞かしていただきたい。
  31. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 その点につきましては、先般、この委員会で、ちょうど稲葉先生がケースI、ケースII、ケースIIIということで御説明になりましたものを拝借いたしますと、ケースI、つまり現状のまま推移するということで、稲葉先生は、私案といたしましては、五十五年は二千二百万という数字を掲げておられたように思います。なおケースIIIの場合には、五十五年は二千八百万というぐあいに、そのとき説明しておられたと思います。
  32. 石野久男

    石野委員 稲葉私案というのは、まだ固まっているわけでもございませんでしょうが、一つの私案でございましょうが、原子力局は実際に原子力行政をやっておられるわけでございまして、各地の事情は一番よくわかっていると思うのです。そういう状況から見まして、この数字は、率直に言って達成できると思いますか、どうですか。
  33. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 冒頭申し上げました現在の計画、五十五年三千二百万というのは、現状のままいけば困難であると考えております。
  34. 石野久男

    石野委員 おおよそどのくらいに見積もられておりますか。
  35. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 その辺を公に検討いたします場合に、稲葉私案として、稲葉先生に私案をお願いしてございまして、それに基づきまして、近く公に考えたい、こういうことでございます。
  36. 石野久男

    石野委員 これは率直に言いまして、稲葉私案は私案として、これは計画線なんですよね。私がいま聞いているのは、現状から見まして、計画の数字は幾つも出てくるけれども、実際にはなかなかできませんでしょう。昨日も、実は私は商工でお聞きしましたとおり、たとえば女川のように、電調審を通って、四年間たってもまだ着工もできないでおるのがあるわけですよね。そういうことが行政の問題としては非常に大事なわけですから、私は、いま行政担当をなさっておる科学技術庁原子力局としては、このままでいったら、とてもこれはこの程度しかいかない、こういうような見通しはあるだろうと思うので、それをちょっと聞かしてほしい、こう言っているのです。
  37. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 事務的に正確に詰めますには、電調審に申請の出方その他を正確に把握しなければなりません関係もございまして、先ほどの稲葉私案というものの三つのケース等を参考にして、これからいたしたいと考えておるところでございます。
  38. 石野久男

    石野委員 それは、稲葉私案を参考にして検討するのはわかるのだけれども原子力開発利用長期計画が四十七年に出て、ことしは、もう四月の初めに、こういうやはり四十九年度原子力開発利用基本計画というものを出したわけです。これは四十九年度の分ですね。この四十九年度の分をつくるにあたりまして、実情は四十七年のそのときよりはだいぶ違ってきているということがこの中に入っていると思うのですよ。ですから、時々刻々情勢の変化があるし、予測されたようなものが必ずしも予測されたとおりにいっていないというのが実情のようだから、そこで、私はそのことを聞くわけなんです。
  39. 井上五郎

    井上説明員 私、お答えするのに、数字的に申し上げかねるわけでありますが、四十七年の四月に、いま御指摘の長期計画の改定をいたしました。そのときには、おそらく何人も石油危機というものが起こるとは考えておらなかった。言うなれば、一つの目標値であるということは御指摘のとおりであると思います。ところが、その後、昨年中は電調審に新たな原子力発電所の設置の申請も出ないといったような、たいへんマイナスと申しますか、予想を裏切る傾向が著しく出まして、はたして予定のようなものができるかといった御指摘があったことは、事実さように考えます。であるからこそ、私どもといたしましては、稲葉委員をわずらわしまして、稲葉私案という形であの三案をつくりまして、もし今日のまま放置するであろうならば、五十五年において三千万キロワットはとうてい実現ができない、二千数百万キロに終わるのではないであろうかという一つの私案、それから希望的な案、あるいはやや可能性の高いと考えられるような三案をつくった次第でありまして、これは電源三法等の地域対策、また安全を強化することによって国民の信頼をかちうる、ないしは国民的コンセンサスを得る、もろもろの努によりまして、相当程度の達成度はでき得る、三千万キロワットきっちりであるということを、私、数字的に申し上げかねますけれども、それに近いものは実現できるであろうし、六十年までには目標値である六千万キロワットは私はできないことではない、かように考えておるのが実情でございます。いまさら申し上げるまでもないのでありますけれども、石油危機以後、欧米諸国におきまして、原子力政策に非常に重点が移っておる、これはいまさら申し上げるまでもないのであります。私ども、かつてつくりました原子力開発計画を、たとえばフランスで行なわれているごとく非常に、いわば倍増するといったような、そういうドラスチックな政策をとるとは考えておりませんけれども、大体大づかみに申し上げますならば、四十七年度にできました目標値に近いものができ得る、少なくともできないとは考えないというように考えております。
  40. 石野久男

    石野委員 井上さんから、大体四十七年度長期計画の線、それから稲葉私案の提起された問題等をにらみ合わせた上で、現在の国会に付議されております電源地域整備等の法案が出てくれば、それができれば、そしてそれに対して国民のコンセンサスが得られればできるだろう、こういうお話でございました。そういってくれれば非常にけっこうだと私は思いますけれども、率直に申しまして、私はいま国会に付議されております整備法の内容というのは、なかなかあの法案ができましても、率直に申しまして、地域において現在施設の設置をはばんでいる地域住民の考え方意見、そういうのとかみ合わないのじゃないだろうか、こういうふうに実は思うのですよ。法案ができることは、それはあるところではまたいい面もありますでしょうから、それはそれなりにあったとしても、あの一条、目的に書かれているような、やれ福祉の増強、それ自体は何も悪いことじゃございませんけれども、しかし、地域において原発が設置を円滑に行なうことのできなくなっている理由、そういう地域住民の要求している、あるいは不満を述べておるものとはかみ合わない。きのうも実は原子力局長から、各地におけるところの反対運動の、その地域における理由は何なんだと聞くと、ほとんどが安全性の問題と環境保全の問題についての意見なんですよね。やはり福祉向上としてあの法案の中に書き込まれているような、港湾をつくってくれなければいけないとか、道路をどうだとか、学校をどうだとかいうような、そういう要求はいまのところないのですよ、実をいうと。だから的はねらっているけれども、どうもすが目で、矢はどこかへ流れ矢になってしまいはしないだろうかという心配を実はしておるのですよ。ですから、井上さんのお話のようには、世間さまはちょっとそう見られないのじゃないだろうかと思うので、それで実は私はお聞きしたのです。科学技術庁としては、いま原子力委員会井上さんからお話のあったような事情に、原子力発電所の設置がいき得るものだというような、一定程度の確信なり自信というものは持てますか、どうですか。
  41. 森山欽司

    森山国務大臣 私は先ほどの質問の御趣旨が、この両三年中ぐらいにおいて、現在建設中の原子炉の完成できるところで、大体年度末に幾らぐらいになるかというようなことの御質疑かと思いましたものですから、そこまでこまかく計算したものを手元に持ち合わせませんので、黙っておったわけでございますが、しかし大筋、昭和四十七年の原子力委員会の長期計画、五十五年三千二百万キロワット、六十年六千万キロワットという従来の計画がございます。そしてだいぶ世の中が昨年来、中東紛争に基づく石油事情等も変わってまいりましたし、またかつは、ここ二、三年来における原子力界の動向についても注目すべきものがございますから、私の責任で、稲葉原子力委員——まあ原子力委員と申しますよりは、この種の問題について長年御勉強になられた稲葉先生に、御検討方をお願いいたしまして、まあこういう非常に動いている時代ながら、腰だめ的な考え方をひとつまとめて対処しなければならぬということで、いわゆる稲葉私案を御作案を願い、またすでにこの委員会を通じて発表もいたしたわけでございます。これは第一次私案でございますから、第二次私案にもなり、またこれは科学技術庁あるいは原子力委員会としても、少なくもここにつくりました案は単なる案にとどまらず、それは昭和五十年以降の予算要求等のベースともいたしたいと考えておるわけでございます。  これと相呼応してと申しますか、ここで一石を打ったものですから、通産省のエネルギー調査会でも、全体的な見地もかねて、エネルギー問題全体を考えまして、中間報告を六月ごろ出されるものだというふうに、私どもは予想をいたしておるわけでございます。しかし、これは稲葉先生御自身も、そのエネルギー調査原子力部会にも御参加でございますから、その通産省のエネルギー調査会の意見と、科学技術庁並びに原子力委員会としての原子力発電に対する考え方というものは、ほぼ平仄が合った形において進んもまいるものだ、実際問題として、そう考えておるわけでございます。  しかし、ここではっきり言えますことは、五十五年三千二百万キロワットという当初の予定は、昭和四十七年六月の電調審で、新規増設一基というような数字でございまして、四十八年はゼロでございますから、今日まで約二年間、新規の発電所の申請がないという状況を考えまするときに、これは三千二百万キロワット、昭和五十五年に期待するということは、私ははなはだ困難だというふうに考えております。  したがって、先ほど井上委員からもお話がございましたし、この稲葉私案によりましても、あれは第三案で、まあ努力して実現可能なる目標からいたしますならば、数字はたぶん二千八百万キロワットぐらいではないかというふうに記憶いたしております。それも実現は可能であるけれども、しかし努力が必要だということで、努力の中身につきましては、先ほど井上委員からお話があったとおりでございます。そういうことで、私どもといたしましては、できるだけの原子力発電を実現しなければならないと考えておるわけでございます。  それができるかというお尋ねがございましたが、御案内のとおり、今日のエネルギー事情から申しまして、これは、昔のように安い電力が好きなだけ入ったという時代と、時代が一変したわけでございますから、そしてそういう時期において、わが国のみならず、世界各国において、このエネルギー対策というものを、それぞれの国の実情に応じて立てておるわけでございまして、アメリカは申すまでもございませんが、石炭はあれだけふんだんにあり、油は一九六〇年代まで自給自足をやっておる、こういう国におきましても、このたびのエネルギー自給計画であるプロジェクトインデペンデンスによりますれば、支出百億ドルのうち四〇%、核融合を入れますと五〇%に近い額というものが原子力発電に投ぜられておるという実情から見まして、すなわち、アメリカのような国でも、現在発電しております原子力発電は、現に稼動中のものが四十三基二千五百万キロワット、わが国の総発電量のおよそ三分の一がすでにアメリカでは実用になっております。そして五十三基が現在建設中であるわけでございます。フランスにおきましても、これからつくるものは全部原子力発電だということを言明しておる。単に紙に書いたのを言うのではなくて、私自身は、ワシントンでフランス政府の代表者から、あれだけ、あのワシントン会議いやだいやだと言っていたフランスの代表から、そういう意思を聞いておるわけでございますし、またドイツも同様でございます。  ということは、これはもう当面のエネルギー事情を解決するためには、これは資源がある国でも原子力というものと取り組まなければならない。いわんや資源のない国においておや。エネルギーの多角的な利用ということは、これはもろちんやらなければなりませんけれども、その国その国の実情に応じて、いろいろ問題があっても、その問題を克服していくということになってまいりますれば、その本命は原子力発電であるということはもう間違いございません。  私は、その意味において、わが国の少なくも今世紀におけるエネルギーの新規の方向といたしましては、これは原子力が主軸になるものであるというふうに考えておるわけでございます。これなくして、いかにしてこれからのわが国の経済成長と国民生活の安定をはかることができるのか。私は、昔のようなあの十何%なんという経済成長は考えておりません。五%から六%の地味な経済成長、その程度のことをやらなければ国が立っていきません、人間がふえていくわけでございますから。また、きょうよりはあすが少しでもいいということが人間の希望でございますから、そういう意味において、きわめてつつましやかなる経済成長を考えましても、それを充足すべきエネルギーには限界があり、そのエネルギーの限界を維持すべき大きな責任のあるものが原子力になっておるわけでございますから、これは、それができるかできないかより、やらざるを得ないということが一つになるわけでございますし、それからまた、安全性の問題、いろいろお話がございますが、前々から申し上げますように、社会の通念といたしましては、現在の軽水炉発電というものは、安全性について私は心配はいたしておりません。ただ施策といたしまして、テクノロジーアセスメントという方向の上に立っておるわけでございますから、念には念を入れて、安全性の確保につとめるとともに、従来の施策の足らざる面といたしまして、これから御質問もあるでございましょう廃棄物の再処理とか、廃棄物の処理問題等について、そういう点で、従来の施策としてまだまだ充実させなければならない面に、これからの重点を移していくべきものであるというふうに考えております。  そういう安全性に基本的に心配があるものなら、何で一体、あれだけの資源を持っておるアメリカが、現に二千五百万キロワットも発電し——これは四十三基でありますが、五十三基というものを建造するか。そんなにあぶないものだったら、なぜフランスがやるのだ、なぜドイツがやるのだ、日本だけがなぜあぶないのかという議論があるのか、そういうところに、私は問題点があると思っておるわけでございまして、そういう意味で、どうかひとつ、前々から申し上げますように、国会においていろいろ御論議のあります点は、もうとにかくやはり人間というのは、いろいろ叱吃御激励を受けませんと、つい人間はなまけものでございますから、やはりときどきいろいろ言われなければだめだ。だから私は、先生からいろいろな御批判があって、意見は違うことがずいぶんありますけれども、しかし、それはそういうことを気にしてやらなければ、進歩がない、前進がない、ぼやぼやしてしまう、そういうことがないようにということで、先生のいろいろの御質疑、御説示にも耳を傾けておるわけでございますが、基本的には、軽水炉の発電は、社会の通念としては心配がない。しかし、安全性確保のためには、さらに念には念を入れ、また施策の足らざる面については、その足らざる面に施策の重点をこれから向けていこうということには、私は全く異存がないわけでございます。しかし、だからといって、安全性に疑念ありとは、社会の通念としては、いささかも思っておらない、そういうふうに考えておるわけです。  そこで、当面の例の法律の問題も、きのうも先生と御論議申し上げたわけでございますが、そういう点に議論があるから、あの電源施設周辺整備法で、地元に対してお金を出すということが、何か、安全性に疑問があるから、札びらでほっぺたをひっぱたいて黙らせるというような、そういう印象を受けさせるようなものでは全くないのである。安全性の問題は、当然その前提として考えなければならないけれども、あの法律自体の目ざすところのものは、せっかくつくった電力が、地元には格別のありがたみはなくて、町場の工場や町場の住民の人たちが電力の恩恵を受けるわけであります。  たとえば、栃木県は私の出身地でありますが、今日、総電力量の四分の一は、福島の原子力発電所からその電気が参ります。電気にしるしはございませんから、石油発電だか原子力発電だかわかりませんけれども、それはもうそのありがたみは受けておるわけでございますけれども、肝心の、やっている福島県の地元は、そう格別の開発利益の恩恵を受けておりません。でありますから、そういう開発利益を地元にも均てんさせるという、そのつり合いをとるという、開発利益の還元という意味において、あの法律があるわけでございまして、決して、安全性の問題とからめて、ああいう法律がつくられたわけでは全くないのであります。  それから、石野先生から、きのう、美浜の問題、それから敦賀の問題の御指摘がございましたところ、きょう敦賀と美浜の市会議長が私のところへ参りまして——きのうの御質疑を、あの現場で聞いておったそうでございますが、自分たちはこの今回の電源周辺地域整備法の成立を一日も早かれとこいねがっておるのであって、何かそういう点に御疑念があるというようなお話だそうでありますが、敦賀の市長も美浜の市長も、この法律の成立を一日も早かれと祈念はいたしておっても、これに対して別の考え方をいささかも持っておらないのだということを、けさこちらへ参ります際に——先生のきのうの御質疑を傍聴席で聞いておって、それで大臣である私に対して、とにかくあの美浜や敦賀の市民は決してそう考えてないということで、両方の議長が私のところへ参りました。でございますから、それはいろいろな意見の方はあります。しかしあの法律の趣旨はそういうことである。きのうもお願いをいたしためでありますが、石野委員は、原子力事情に一番詳しい、いわば国会における長老でございます。そして、時代の変化がこれだけあるということについても、十分御理解がある。そしていろいろわれわれに御指摘がある点は、そういう点をよく御承知の上で、大局的見地からいろいろ御指摘があるものだと、私は理解いたしておりますから、この席でも、石野委員のおっしゃることについては、なるほどということについては、一緒にやりましょうと、私は申し上げておることもあります。しかし、中にはそうではない問題もございます。しかしこういう問題は、開発利益の還元という意味において、政府考えておることは、安全性とからめて、安全性についていろいろ問題があるのを、札びらでほっぺたをひっぱたくなんという、そういうひきょうな考え方はいささかもしておらないことを、どうかひとつ御理解を願います。よくおわかりになっておるものだと、私は確信をいたしております。そういうことを言う人はあります。言う人はありますが、そういう考えの人たちに対して、政府は大まじめな、この開発利益の地元環元のために、今回の法律案をつくったのだということを、どうかひとつ御理解を願いたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  42. 石野久男

    石野委員 結局は、整備法の問題に入ったようでございますが、その前に、大臣からいろいろお話がありまして、原子力にはもう世界も取り組んでおるし、日本は何といっても原子力を軸にして、この人口増に対応するエネルギー問題の解決をしなければならないのだという考え方なり発想に、私は全部反対しておるわけじゃないのです。  私は、原子力というものが、重油や何かよりも、燃料問題等について非常に便利に使えるということをよく知っております。ただ私どもの心配しているのは、それはやはり安全性というものを確保しなければならないという前提があるのでしょう。そうしてその安全性の問題について、福島の猪苗代湖の発電の問題なんかも出ましたが、水力と原子力との違いということも、これは少なくとも科学技術庁長官はわかっていなくちゃいけないだろうと思うのですよ。それが水力と原子力お互い考えを一緒くたにしていいものであるならば、私は別に原子力基本法なんというものは必要ないのだろうと思いますよ。原子力基本法が議員立法としてできたゆえんのものは、核分裂というものの持っている意義が、平和利用と戦争利用との紙一重の境目にあるというだけでない。それだけではなくて、核分裂から出てくるところの放射能障害等は、他の産業の公害とはまた別途のものだ、こういう意味もあるからこそ、公害基本法はこの問題をまた排除しているわけなんですよ。この問題を原子力基本法にゆだねているわけなんですよ。  だから、私は、電力をつくるところの地元に利益を還元させようという考え方に反対しているわけじゃありませんよ。かねてから申し上げておりますように、原子力と水力と火力、特に重油火力ですね。重油火力と水力、それと原子力との間には、扱い上違いがあるじゃないか。その違いがあるということを、科学技術庁の長官なり原子力委員会は明確にすべきではないか、ということを私は言っているのです。立法上のたてまえからすれば、整備法の中でこれらのものを一つに扱っていることに疑義があると、私は言っている。これは別途に扱ったほうがいいのだ。水力や火力について、火力というのは重油火力ですね。あるいは石炭の火力もありますが。そういうものはそれとして、それと原子力は別途の扱いをするならば、私は理解は進むというのですよ。そのことの意味は、原産会議がかねてこの周辺整備の要請をしたときに、うたっておったはずだと思います。そういうことが国会の中で一つに合わさってしまったから、困難な問題が出てきていると思います。だからこういう点について、森山長官が、もう電力は一つだから、色はついてないからということを言っていながら、原子力と火力、水力——火力、水力というのは、いつも言うように原子力を除くのですが、これらのものとの違いを明確にしないで、一緒くたにして話をするということは、原子力のすべてを握っておる森山長官として、ちょっと考え方がどこか抜けておりやせぬかと私は思うのです。これは少し考えてもらいたい。  そういうことと、それからいろいろありました。アメリカやフランスがいろいろのことをやっているということを言われますけれども、アメリカはそういうふうにどんどん進めておる。それではアメリカの規制措置というものは日本よりゆるやかなのかというと、そうじゃないのですよ。アメリカのほうが、もっときびしい検討を加えて、いろいろな点で問題提起をしておるじゃないですか。だから私は、日本におけるところの原子力の発電を進めるということそれ自体を、まっ向から、何の理由もなく反対しているのじゃなくて、これを進めようとするならば、やるべきことがあるだろうということを言っているのです。  特に私は、きょうは井上委員も来ておられますから、これだけの整備法を出してくるのには、どんなことをしたって、たとえば廃液処理の問題であるとか、放射性物質の廃棄の問題についての、もっとしっかりした規制措置というものをする必要があるのじゃないか。あるいはまた、温排水の問題一つにしても、実をいいますと、明確な規制措置というものができていない。そういうようなものを明確にしていかないと、地元での反対運動に対応することができないだろうということを申し上げているのですよ。ですから、少なくとも、これらの規制措置というものが立法化されるような前提工作が十分進んだ上で、この整備法というものが出てくれば、われわれもやはり十分納得する面があるのですよ。だけれども、それなくして整備法だけ進んでいけば、これは問題点にちっとも触れませんから、ただ金だけ配られるということになってくるので、札びらでほっぺたをたたくなんというようなことが出てくるのです。だから私は、そういうような問題についてのものの考え方というものは、少なくとも科学技術庁長官はわきまえておるべきじゃなかろうかと思いますよ。そういう点で、森山長官は非常に多くのことを申されましたけれども、やはり肝心な点で一つ忘れているものがありますよ。それは少し考えてもらいたいと思うのですよ。  それから、やはり地元で利益の還元を求めておる。そしてきのうは敦賀や美浜の市長さん方や議長さんたちが来て、あの質問を聞いていらっしゃった。きょう大臣のところへ来て、私たちはもう無条件でお願いしております、こうおっしゃる。そのとおりで、私はきのうもそう言った。そしてまた皆さんにお尋ねしたときに、反対している人はどういう層で、賛成しているのはどういう層だと——賛成しているのはほとんど町村の自治体役員の方々でしょう。それはきのうも原子力局長も言ったでしょう。そのとおりですよ。私のところでいえば、東海村の村長さんなりあるいは議長さんが私のところに来ておりますから、何とかやってくださいと言って。それで議長さんのごときは、この法案ができればこのぐらいの予算までついてくるんですよということまで言っております。だからそれほど渇望している層のあることもよく知っておりますよ。しかしその人たちは、地域住民の不安に思っていることはまた違うのですね。またむしろ、いま森山長官の言われたような非常に高い次元かどうか知りませんけれども、推進派の中心になっているわけなんですよ。その声だけを聞いておってはだめなんですよ、大臣としては。大臣は、賛成の意見も聞かなければいかぬけれども、反対の意見も聞かなければならぬですよ。反対している意見も、反対の理由がなければこれはいいですよ。しかし反対する人々には十分な理由があるじゃないですか。その理由にこたえていないじゃないですか。だから私は、それにこたえることが先決だと言っているのです。  井上さんにお聞きしますけれども、私は地域住民の反対運助に対してこたえるためには、やはり廃液問題だとか排気問題、こういうものについて、もう少しはっきりした規制措置というものを皆さんのところで考えて、政府が出されてもいいし、やはりそういうようなことをはっきりする。温排水に対する規制措置もする。そういう前提工作が不必要なのか、それは要らないのかどうなのかということについて、ひとつ井上さんの御所見だけ承っておきたい。
  43. 森山欽司

    森山国務大臣 ちょっとその前に一言。何と言いますか、電気にしるしはありませんね。できた電気に原子力も火力も水力も、それは使うときには、原子力の電気だからといって格別差があるわけではない、ということを私は申し上げたのでありますが、しかしこの発電につきましては、もう私から申し上げるまでもなく、原子力基本法もあり原子炉規制法もあり、たくさんの法律がございまして、特に原子力の問題につきましては、一つは軍事的な利用というものについての十分な警戒心的な立場をとるために、自主、民主、公開の三原則を持っておりますし、また放射能の問題がございますから、原子炉規制法でやかましい規制をやっておる。そして技術史的に見ましても、放射能に対してはテクノロジーアセスメント、これはわが国産業の中でもほとんど唯一ともいうべき新しい手法の技術論の上に立って、これを実践しておるわけでございますから、これは私どもは、原子力発電とそれから従来の火力発電を同じになんで、もう夢にも考えておらないということは、どうかひとつ御理解を願わないと、何か同じようなものだというふうに、同列に考えておるということでございますが、われわれは原子力の問題を取り扱うときには、少なくもわが国の国是といたしまして、軍事利用というものは、今日では現実的にはたいして問題になりませんけれども、しかしとにかくそういうことに対する保障として三原則を掲げており、原子炉規制法等の法律に基づいて、もうしっかりした体制で臨んでおる、またそういう意味では格段の違った態度をもって臨んでおるわけでありますから、科学技術庁長官である私が、そういう問題についてはなはだ認識不足にやっておられるという御指摘を受けますと、黙っておりますと、何か私がいかにもそういう問題について認識不足みたいなことですが、全くそんな点はございません。どうかひとつその点は、石野先生とはお互いに思ったことを言ったりしたりする、そのことは私ども——特に科学技術庁も、ことしの初めの分析研みたいな問題がございますからね。いままでぼやぼやした点がございますから、いろいろ御叱正を受ける点については、私はこれはもう越えていかなければならぬ関門だと思っておりますから、そのことを私どもはあえて避けません。けれども、私ども原子力発電に臨んでおるきわめて真剣にして厳粛なる姿勢というものについて、何か御疑念をはさまれますと、私も黙ってすわっておるわけにはいかなくなるわけでございまして、その点は、よけいなことを申し上げるようでございますが、これも誠心誠意、先生の御質疑に四つに取り組んでおるわけでございますから、どうかひとつ、そういう点については御疑念を解いていただきたいと思います。  それから、いまの廃棄物の再処理とか廃棄物の今後の処理問題等につきましては、私からも御説明申し上げていいのでありますが、ただいま井上委員のほうに御質問がまいりましたし、私ばかりしゃべってもどうかと思いますから……。そのうち、私もよそへ回らなければなりませんので、井上さんのほうからどうぞひとつ。
  44. 井上五郎

    井上説明員 ただいまの御質問にお答えをいたしますが、基本的には、先刻森山長官が行政府を代表されまして、今日の軽水炉による原子力発電というものは、行政的見地から十分安全であるというお考えを述べられまして、私もそれに同意でございます。しかし原子力委員というものが、特別法によりまして、行政府とは別個に一つの職分を与えられておるという立場から申しまして、今日原子力の利用というものは十分安全であるけれども、それでいいと、少なくともそれだけで国民のコンセンサスが得られないという意味におきまして、より一そうの安全、百尺竿頭一歩を進めた安全というものがいかにあるべきか。先刻申しましたように、これには量的並びに質的な一そうの調査をしていく必要があるのでありまして、先ほどどなたかから御指摘がありましたように、アメリカの審査と日本の審査と、必ずしも私は日本の審査がルーズであるとかゆるいとは考えておりません。しかし、非常に膨大な予算と非常に膨大な人員をもって審査をしておることは事実でございます。といたしますならば、日本が今後こうした膨大な原子力を推進する上におきまして、原子力の安全体制が現在のとおりでいいのかどうかということを、先刻来申しておりますように、安全会議というものをつくりまして、組織的にあるいは体系的に、また技術的に、あるいは考え方の上においてどういうふうにそれを推進すればいいかということを、せっかく進めておるわけでございます。  また同時に、先刻来御指摘がございましたが、五十五年三千万キロ、六十年六千万キロと一口に言うが、その可能性はあるのかと。この可能性は、やはり詰めを行なっていかなければならないわけでございます。とすれば、具体的にはどういうことをしなければならないか。今日まではまず発電をするということが当然考えられるわけでございますが、今後は核燃料サイクルというものに重点を置いていかなければならない。御指摘がありますように、使用済み燃料はどうするのか、廃棄物の処理はどうするのか、温排水はどうするのか、等々の問題につきまして、原子力委員会は、委員会立場として検討を加えておるわけでございます。あるいは後ほど御質疑が出るかもしれませんけれども、現在の再処理設備は非常に不十分な小容量のものではございます。しかしこれを日本がいち早くやっておいたということは、今日考えて非常によかったと私考えるわけでございます。たとえば、ただいま御指摘がございましたが、廃棄物につきましては、昨年予算に計上いたしまして、廃棄物処理センターというものの調査費がついておるわけでございます。いまは非常に高レベルの廃棄物というものはまだ出ておらないわけでございますが、当然こうしたものについての対策というものを、いまにして研究開発しなければならない。これには日本独自の研究と同時に、あるいは必要であるならば海外との協力等々を考えていく。そうした安全に対する戦略と申しますか、実際的な措置をいかにするかということを、せっかく委員会を中心にいま検討を進めておる次第でございます。
  45. 石野久男

    石野委員 いま井上委員からは、原子力委員会が取り組んでおる姿勢を承りました。私も、原子力問題について各地にトラブルが大きいから、そのトラブルを一日も早く排除していくためには、それなりのいろいろな対策が必要だろうということで、実はやはり温排水だとか廃棄物の処理の問題、排気の問題、廃液の問題等についての規制措置というものを、一般の国民大衆が見てもわかるようなものが出てこないと、地元で問題があったときに、それに対応できないだろう、それを対応できないままで納得させるといったって納得しやしないんだから、そういうものをつくることが政府としても必要なんであろう、それからまた、原子力委員会としてもそれをやらなければならないんじゃないのですかということを私は聞いておるわけなんで、それは並行的にやればいいんだということでは、私は解決しないだろうと思うから聞いておるのですよ。特に、今度の整備法案なんか出ておるのを見ますと、地元で反対があるために、電調審を通って施設に入ろうとしても、できませんということはちゃんと書いてあるのだからね。その反対の理由は何だというと、安全性の問題でございます、環境保全の問題であります、いま一つには福祉の問題だ、こう二つ並べてあるわけです。私は二つとも理由があると思っております。だけれども理由があるけれども、ウエートがどちらにあって、どちらのほうから早く解決すればうまくいくのかということぐらいは、私たちにもわかるわけなんです。その際、福祉問題を先にやったら、前の安全性の問題やあるいは環境保全の問題が解決するのかというと、現実の問題はそうじゃないのですよ。ですから、私たちは皆さんの立場に協力する意味で、安全性の問題あるいはまた環境保全の問題について、規制措置の問題にまず手をかけるべきじゃないかということを申し上げておるのですが、そういう点についていかがかということをお聞きしました。  それはあとでもう一つお答えいただきたいのですが、先ほど森山さんから言われた中で、そしてまた井上さんも言われておりますが、いわゆる軽水炉については、社会的通念からして、安全性にもう心配はないんだ、こういうお話でございました。これはいろいろな考え方があると思うのです。だけれども、私たちからしますと、軽水炉についてはいろんな事故が多発している。そのことについて中曽根大臣のことばをかりれば、これは新しい技術だから試行錯誤をやるのは当然なんだ、こういう言い方をしているのですね。この中會根大臣の言う試行錯誤ということばと、いま森山長官の言われる、もう安全性については心配がないんだということはたいへんな開きがある。中曽根さんの、試行錯誤はやむを得ないんだというのを、森山さんはきのう聞いておられたと思いますが、そのことについて、森山さんはどういう所見を持っておられますか。
  46. 森山欽司

    森山国務大臣 聞いておりますと、中曽根大臣が一ぺん試行錯誤ということばを使いましたね。私は隣にすわっておったので、試行錯誤は適当でないのではないか、そうすると、何か試作段階にあるような感じがする、そうしたら、いや、そういう意味じゃないんだということで、表現としては必ずしも適切な表現をされたとは思っていないし、御本人もいささかその点は考えられておったような印象を、私は受けたわけでございます。しかし、この問題について私が申し上げているゆえんのものは、毎回同じようなことを申し上げるようでございますが、原子力開発は軍事利用から始まったことは御案内のとおりであります。それが戦後、平和利用に移り、そして実用段階に入ってまだ二十年足らずで、科学、技術、産業の中で最も新しいというか、若い産業であるわけであります。でありますから、実用段階に入って二十年足らずという、そういう期間でありますだけに、反面においては、新しい技術のやり方を取り入れておる。それはどういうことかと申しますれば、たとえば、同じ発電でも、火力発電、石油発電の場合は、とにかく電気さえ出せばいいのでしょうというので、石油を燃やすわけですから、石油を燃やせば中にある硫黄分は表へ出るわけであります。前は硫黄が幾ら出て、亜硫酸ガスが出て、これが公害になろうとも、そんなことはおかまいなしにやったわけであります。時代がだんだん変わってまいりましたから、この公害を除去するために、脱硫装置とかあるいは排煙脱硫とかいうことを考えてまいったわけでありまして、いわば公害問題はあと取りの、火力発電は産業であるわけであります。ところが、原子力発電というのは、そういう意味におきましては、放射能についてテクノロジーアセスメントをやっている。放射能は、御案内のとおり、エックス線以来、戦前からの長い歴史を持っておる。ICRPも長い歴史を持っていることは御案内のとおりでございますから、そういう知識の集積の上に立って、放射能に対しては公害先取りの設計をし、また運営をするようなシステムになっている点は、大きな差であります。でございますから、たとえば、機械でありますから故障はつきものであります。また、人間でありますから、間違ってやることはあります。ミス操作はあるのであります。しかし、そういう故障やミス操作がありますれば、かわりのシステムが動くとか、あるいはまた機械がとまるとか、二重、三重の防護措置を講じておりますから、原子炉のような自動車をつくっておったら、どんなに操縦のうまい人でも、百メートルをとまらないで走るということは困難なぐらい、やかましく、念には念を入れた装置になっておるわけであります。でありますから、私は新聞を見て、原子炉がとまったというのは、安全のしるしとして見ておるのであります。いろいろ考え方はございまして、御案内のとおり、政治論として、反米、反独占とかなんとかいっている政党もございますし、またそれに近い考え方もあるし、また、そういうことを言う人があれば、それに相呼応して、いろいろな考え方も出てまいるわけでございますが、技術論として見ますならば、原子炉がとまったというのは、安全のしるしだと私は考えておるわけでございます。  それからまた、一年に十二カ月のうち二カ月半ぐらい、原子炉は定期検査をやるわけでありますし、それは政府が監督してやるわけであります。そうして、見ると、使っている燃料棒の鼻曲がりが見つかったり、あるいはまた蒸気発生器にこまかい穴があったというのが見つかるわけであります。そういうものは、要するに定期検査という制度があるから発見されたのであって、そのもの自体は解決しなければならない問題点ではございますが、これまた安全のしるしだというふうに私は考えております。燃料棒の鼻曲がりにつきましては、たとえば前は、アメリカは全然かえなかったから、これでいいわという考え方もありましたが、日本は日本で、少し気をつけようというので、アメリカはかえなくても日本はかえるというようなふうに、だんだんと進歩してまいっておりますし、また、いままではそういうものを一々外国まで返さなければなりませんが、今年度予算で要求しております大型ホットラボができますれば、わが国においてこれについての検討が進んでいくというようなことでございまして、基本的には、今日、軽水炉の発展段階においては、社会の通念からいえば、これは私は安全と見るのが当然であろうと思います。しかし、学者は、これは十万年に一回、百万年に一回あるかもしれないよというような確率論を出しておるのでありますが、人類の歴史は、まだ歴史としては一万年ないわけでありますから、それが十万年に一回、百万年に一回ある事故があり得るからといって、学者はあるという、それをまた政治的に云々するということは、笑うべきことであると私は思っておるわけであります。でございますから、原子力の発電というのは、軽水炉の発電というものは、今日安全である、そのように私は確信をいたしております。  しかしながら、先ほど来申し上げますように、テクノロジーアセスメントでございますから、念には念を入れなければいかぬわけでございますし、世の中が進んでまいりますれば、技術の進展もございますから、そういう技術の進展によりまして、どんどんそういう改善を加えていかなければならないことはもとよりでございまして、私は、基本的には、軽水炉発電は、今日の段階においてはもう心配ないものだと思っております。  中曽根大臣がこれについて試行錯誤という表現を使われましたが、通常の表現においてはあまり好ましい表現であるとは思いません。これは察するに、石野委員のきわめて馬力ある質問ぶりに対して、あなたの顔色を見て、ああいうことばを使われたのであろうと思いますが、私は中曽根大臣よりはあなたと懇意でございますから、そんな、その場の調子いいような表現は使いません。それははっきりものを申してやっておるわけでございますから、どうかひとつ、きょうの——どこかの委員会で中曽根さんに会ったら、科学技術で試行錯誤というようなことを言って、非常に未熟な産業みたいな印象をあなたから受けておられたようだが、これからは、石野さんから御質問があったときには、ああいう答弁をなさらないほうがいいということを、私からも申し上げておきます、誤解を招きますからね。しかし、これは閣内意思不統一ではございませんで、表現の差でございまして、言わんと欲するところは、私はほぼ同じものだというふうに理解しております。
  47. 石野久男

    石野委員 非常に大事な問題です。中曽根さんの問題についての御所見はあなたの所見ですが、しかしほんとうに閣内における原子力についてのものの考え方の違いが出ていると思います。しかし問題は、大臣、ちょっと困るよ……。学者の何万年かに一度出るようなことを大げさに取り上げるとは笑うべきことだ、これは取り消しなさい。こんなことを言われるということは、同時に、ぼくも笑うべきことを言っておることになる。こんな失礼なことがありますか。学者が学問的な信念に基づいて真理を説いているのです。社会的通念ということを盛んに言いますけれども、社会的通念ということを言うのならば、何で、一つの町の町長や議長は推進派になるけれども、多くの人たちは反対に回って、しかもそのことが、事実問題として、電調審を通ったものが施工までもできないというような状態にいまなっているのです。それはおかしいじゃないですか。それは社会的通念。どちらでいくのですか。それは取り消しなさいよ。
  48. 森山欽司

    森山国務大臣 いまの発言につきまして、学者が学者の立場から、技術論として、科学論として御論議をなされることは、それぞれの御見解によるところであります。しかし、十万年に一回とか百万年に一回とかいうようなことにつきまして、これは社会通念からいえば、まず心配ないというべきことであろうと私は考えております。にもかかわらず、やはり心配ありませんかと聞けば、かりにそれが十万年に一回でも百万年に一回でも、心配ありますという、学者のお立場では、お答えになります。しかし社会の通念からいえば、これはないと答えるのが、私は適当であろうと思うのであります。そういう意味で、先ほど笑うべきということばを使いましたことが、もし不適切でありますならば、それは委員長、必ずしも適当ではないと思いますし、先に時間がございますから、先生のおっしゃるとおり取り消さしていただいてけっこうであります。
  49. 安井吉典

    安井委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  50. 安井吉典

    安井委員長 速記を始めて。  石野君。
  51. 石野久男

    石野委員 清成さん、お忙しいところをどうも。  再処理工場が近く稼働といいますか、試運転のようなものに入るようですが、いまのところ事情はどういうふうになっておりますか。そこのところから、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  52. 清成迪

    清成参考人 それでは簡単にお答えいたします。  御承知のとおりに、東海の再処理工場は、現在もう大部分工事が終了いたしまして、いまほんのだめ押しの工事というのが残っております。ただ、海中放水管というようなものはまだちょっといろんな事情がございまして、着工の運びに至っておりませんけれども、これらもいろいろと御了解を得る努力をしておるところでございます。おそらくきわめて近く御了承を得られるものと、私どもは確信いたしておるわけでございますが、そういうようなことから、大体ことしの夏ごろから、いまおっしゃいました試験運転という形に入れるだろう、こう思っておるわけでございます。  それで、この再処理工場はわが国でも初めてのものでございますので、われわれ実は非常に慎重にこれを立案しておりますので、十カ月からあるいは十二カ月ぐらいになるかと思いますけれども、慎重に試験運転をやりまして、来年から本式の運転をやるという期待を持っていま進めておるところでございます。しかし、非常に新しいものでございまするし、われわれ初めてのものでございますので、そういう確信はありましても、なおかつ期間が、多少のズレぐらいはあるいはあるのじゃなかろうか、私はそういうふうに見ておるところでございますが、ただ、これにつきましては並行して解決しなければならぬ問題がいろいろございまして、これに対していろいろといま苦慮しておるところでございます。  それは、まだ実は漁業に対するいろんなお話し合いが完全にはついておりません。したがって、これをいろいろと努力をしまして、これの解決をいまやっておるところでございます。近いうちに何とかお話し合いがつくだろう、こう考えておるのが一つ。  それからもう一つは、最初われわれが考えておるものと少し変わった事情が起こってまいりました。それは、われわれは、最初は、各方面からの核燃料の使用済みになったものは、海上で輸送してまいりまして、従来のように日立港に陸揚げをして、そして日立港から陸路を東海の工場に持ってくる、こういうふうに考えておったのでございますけれども、最近と申しますか、昨年いろいろ日立市のほうから、非常に港がふくそうするし、あの辺の道路が相当に混雑をする状態にあるので、そういう点で、日立港への陸揚げというものは何とか取りやめてほしいというようなお話がございまして、これは非常に実はわれわれとしては計画にそごを来たしますので、困っておるわけでございますが、その後いろいろと努力をいたしまして、日立市方面のおっしゃる事情もわれわれよく聴取をいたしまして、役所その他ともいろいろ御相談をいたしまして、日立市のおっしゃるようなふうにだんだん向けていかなければいかぬだろうということで、専用の港を別に前向きに考えていくというようなことで、調査を開始いたしました。  そういうような前向きの姿勢でやってまいりますが、しかし、実は再処理という仕事は、御案内のように、非常に実は大事な核燃料サイクルの一環でもございますし、それからまた、電力各社の使用済み燃料のいろんな計画とも関連するものでございますので、われわれ、大体この予定のとおりには進めていきたい。これは、われわれのほんとうの使命と考えておりますので、そういうふうにやっていきたいと思いますので、それに大体合うように、港ができますまでの間は暫定的に使用を認めていただきたい。これは実は、ふくそうすると申しましても、一挙にぱっとフル能力の二百十トンに最初からなるわけじゃありません。数年をかけましてだんだんふえていくということでございますので、十分その辺のところは、専用港の構築と、そういうもののふえ方というものとは調子をとっていけるのではないかというふうに考えておりますので、そういう点で、ひとつ暫定使用をお認め願って、大体そういう線できておったところでございます。したがいまして、今後も日立市とは緊密な連絡をとりまして、何とかこの暫定使用ということだけは認めていただく。そして、われわれもそのかわりには、輸送の時期やら方法というものに対しましては十全の配慮を払うということで、御迷惑がかからぬような形で、できるだけやっていきたいというふうに考えております。  これがいま一番差し迫った大きな問題と思いますが、そのほかのところは、多少おくれはあるのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、ことしの夏ごろから試験運転を、約十カ月から十二カ月の間それを続けて、十分確信を持った形にしていきたい、こういうふうに思っております。そういうふうなことで御了承を願いたいと思います。
  53. 石野久男

    石野委員 港の問題とそれから漁業問題、対外問題がまだ解決されていない、こういうことのようでございますが、再処理問題については、別にまた事業団自身として考えなければならない、たとえば排水の問題とか排気の問題だとか、いろいろあると思います。私はそのことはあとで聞きますが、まず最初に、日立との関係で、専用港の問題ですけれども、まだ専用港ができるまでの間、暫定的使用ということについては、日立との間に了解がついていないのですね。
  54. 清成迪

    清成参考人 これは大体、暫定的には使用は差しつかえないだろうという話は聞いておりましたのですけれども、その後、日立の市会の中の専門の委員会と申しますか、何か私、名前をちょっと忘れましたが、そういうところで、大体反対の決議をしようじゃないかというようなことで、まだ市会の決議までにはなっておりませんけれども、そういう動きがあることは承知しております。しかしこれに対しては、できるだけ私、事情を委曲を尽くしまして御了解を得たい、そして暫定使用ぐらいはどうしても認めていただきたいというふうにいま考えておりますが、実際には、暫定使用の御同意を得ておりましたのに、市会の一部で、使用をしないような決議をしようじゃないかという空気が起こっておることは承知しております。しかし、これだけはどうしても私はやっていただきたいというふうに思います。石野さんあたりにも、茨城県の地元でございますので、できるだけひとつ、この再処理工場を何とか早く運転に入れる、そうして核燃料サイクルを日本で完成するということのための御尽力も賜わりたいと思っておるところでございます。
  55. 石野久男

    石野委員 いや、頼まれても、なかなかやっぱりこれはいろいろ理由が、なにがありますから、市会でやはり反対決議があるということを私は聞きました。これは非常に最近、放射能問題とか原子力問題についての認識が市民層の中に高まってきて、そういうことが、こういう決議を市会でもさせるようになってきたと思うのです。それらのことを含めて、私はかねて先ほどから言っているように、事前に規制措置というものをもう少し明確にしませんと、市民層の安心感というものは出てこないのだよということをしばしば申し上げておるのですが、そこでかりに、事業団のほうで、これは専用港ができるまでの間は使用させるとかなんとかいう場合、大体この二百十トンというのは、一つのキャスクにすれば非常に簡単なものでございましょうけれども、おそらく各地の原子炉から出入りするということになれば、どのくらいのものを幾つ積んでくるのか知りませんけれども、これは予測される限りにおいては、二百十トンというものが来るのには、船としては何ぞうぐらいの出入りがあるものだろうか。そういうような計算は大体しておられますか。
  56. 清成迪

    清成参考人 専門の連中はやっておるはずでございます。私はこまかい数字はいま覚えておりませんけれども、いまの二百十トンになりますと、どのくらいですか、おそらく年間に十七回ぐらい、大体一回が三週間程度、このくらいのものがやはり出入りをするというふうに聞いております。しかし詳細なことでしたら、また専門屋からお答えさせてもよろしゅうございます。
  57. 石野久男

    石野委員 こまかいことがわかればいいんですけれども、いますぐわからないんでしょう。どうなんですか、わかるのですか。
  58. 清成迪

    清成参考人 それじゃ、専門、これも来ておりますから——それじゃ、何か私、これはなれませんので、よう知りませんけれども、いずれこまかい数字はお出ししてけっこうでございます。
  59. 石野久男

    石野委員 少なくとも、いま大ざっぱにいって、年間十七回ぐらい、月に一回以上一回半ぐらいの船の出入りがある、こういうことになるのだと思います。日立港のほうで、この船の出入り、月一ぺんずつの船の出入りが、三週間ぐらいの間停泊してやることでございましょうけれども、問題になるのは当然のことだと私は思うのです。  それと、いま一つ、専用港の問題をいま考えつつあるのだということですが、当然やる以上は考えなくちゃならないのだろうと思います。もし専用港の問題を考えるとしますと、いまのところ、事業団の中では、いつごろにそれをつくるかということのめどを立てておられますか。
  60. 清成迪

    清成参考人 これはいまわれわれとしては考えてはおります。しかしこれは実を申しますと、この専用港という問題は、まだこれをどんなふうな経理措置で、どういうふうな形でやるということは、事業団単独ではなかなかこれは言い切ることはできないということでございまして、これは実は政府に間に入っていただきまして、どんなふうな形にするかということはきめていただきたいと私は思っておるところでございます。  そこで、この方法は、そんなふうな形で辱めていただきますけれども、期間としては、いまさっき申しましたフルの能力になりますのは大体五十四、五年というようなところですから、それに間に合うように埠頭ができるということは、これは肝心なことでございますので、できるだけ早く役所のほうと御相談をして、どんなふうな形——役所だけでもいかぬと思います、これは電力会社との大きな折衝も要りますので、どんなふうな形でどうやるかということを至急に相談して、推進したいと思っておるところでございます。その推進が多少ごちゃごちゃ取りまぎれまして、少しゆるやかになっておったことは、これは私も認めますが、今後われわれが中心になりまして、どこがどうあろうとも、やはり被害者と申しますか、これは事業団でございますから、それができなければ実際にはほんとうに再処理工場が運転しないのですから、われわれが中心になって、推進をするということだけはひとつやりたいというふうに考えております。
  61. 石野久男

    石野委員 原子力局長に聞きますが、いま清成理事長から、専用港の問題について政府考えてもらわなければならぬということでございますが、それに対して、いまどういうなにをしておりますか。
  62. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 専用港の問題につきましては、関係者、政府だけでなくて関係者で、当然利用者ということも含めて、検討しなければならないことで、関係者の間で検討いたしておりますが、これをもう少し、いま参考人のおっしゃったように、レベルの高いところで急がせて、何とか促進したいと考えております。その際には、やはりそういうようなことについての促進その他、政府としての果たすべき役割りは、強力に推進していきたいと考えております。
  63. 石野久男

    石野委員 そうすると、いまのところ、政府としては、関係者との間で検討しているというけれども、事業団の側、理事長の側からすれば、もちろん電力会社や何かとも相談しなければいけないが、これは政府考えてもらわないとまずい、こういうふうに言っているわけですよ。いま局長は、レベルの高いところで考えてもらわなければいかぬと言う。森山長官がいないので困っちゃった。  だから、こういうような問題があるから、委員長、これはやはりどうしても長官に来てもらわなければ困るのですよ。港ができなければ、再処理工場をやったって仕事ができないのですよ、実をいうと。その仕事のできないような再処理工場をつくったってどうにもならないので、これは出発点なんだから、長官を呼んできてもらわなければ困る。
  64. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 補足させていただきます。  レベルの高いと申し上げましたのは、いままで部長クラスで、非常に事務的に、まず技術等について詰めなければいけない、その辺を詰めておったようでございますが、これはもうちょっと、そういう各関係の事業団、関係の方面で、もう少しそういう方面について、これからの推進になるレベルという意味において申し上げたわけでございます。
  65. 石野久男

    石野委員 いま局長の話を聞いておりますと、やはり部長とか何かのところでいろいろ詰めるのでしょうが、そのままで引き下がると、これは理事長の話されたように、昭和五十四年度くらいまでは、これは港というものが手がつかない、五十四、五年ぐらいまでは手がつかないということですね。政府も、それじゃ港にはならないということなんだ、これは。そういうことですね。
  66. 清成迪

    清成参考人 いまのは、五十四、五年ごろまでに埠頭を完成するということを申しておりましたので、それができなければ手がつかないとはわれわれ考えていないので、暫定使用はぜひひとつ日立に認めていただいて、ずっと仕事は進めていきながら、日立市の御希望を五十四、五年ごろに満足させるように持っていきたい、こういうことでございます。
  67. 石野久男

    石野委員 これは五十四、五年のころまでに埠頭を完成させる。完成させるというのは理事長の願望ですね。だけれども、これは政府の決心がないと困っちゃう。これはそのまま受けとめるわけにはいかない。政府の決心を聞こうにも聞けないのだが、もしこのままでいくとすれば、暫定使用というのは——普通、暫定といいますと、普通の考え方からいえば半年か一年ぐらいだろう、こう思うのです。これはこのままでいくと、日立には五十四年ぐらいまでには埠頭は完成しない。その間、暫定というのはいまから五年間ですよ、こういうことなんです。たいへん問題が大きくなっちゃいますよ。これに対して政府はどう考えるのか。これは長官にちょっと聞かなければならぬと思うのだが、局長が答えられるなら、答えてください。
  68. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 いま理事長のおっしゃった五十四年というのは、どうしてもその辺のところまでには、完成と申しますか、非常に明確にそういう形にしていくことが絶対必要であるという、そういう目標としてはギリギリのところだと思います。それはこれから、さっき申し上げました関係者が十分検討して、できるだけすみやかに、幅広い方法考えていきたいと考えております。
  69. 石野久男

    石野委員 局長はそういうことをおっしゃるが、それは政府の見解で、そして五十四、五年まで、それ以前にいつごろまでということはいえないけれども、とにかく五十四、五年。四、五年というと、率直に言って一年間差があるのだから。四、五年というのは、早くて五十四年です。一番早いのは一月に完成して——その前年の十二月三十一日に完成しても四、五年ということになるのですね。それでもこれから六年間ですよ。暫定というのは六年間だということを日立の市会が聞いたら、ちょっとこれは暫定じゃ通りませんよ。しかしこれはわかりました。そういうことなら、それでけっこうです。
  70. 清成迪

    清成参考人 いま私が申しましたのは、ちょっと誤解があると思います。五十四、五年というのは、二百十トンというフル稼働をするようになるのは五十四、五年と、先ほど申しましたですね。だから、港はそのときには完全に二百十トンをやれるようなものができていなければならぬ。そこで、港が二年でできるんなら、これは非常にけっこうですし、われわれもそういう努力をしなければいかぬ。港が実は五十四、五年ごろにしかできないというので、日立にはそれまでの暫定使用になるじゃないかということは、必ずしもそうなるかならぬかはわからぬということでございます。
  71. 石野久男

    石野委員 清成さんにことばを返すようだけれども、港に二百十トン完全に全部出入りするのは五十四、五年だ。港ができるのは、十トン入れる港だって、二百十トン入れる港だって、港としては、一定の竣工式を行なわないと港とはいえないと思うのですよ。その間に、まだ未完成のところに、かりに十トンのキャスクのあれを持ち込んでいくというようなことはかえって危険で、原子力に関しては私はまずいと思います。十トンであろうと、二百トンであろうと、一千トンであろうと、少なくとも港がちゃんと完成した上で出入りしてもらわないと、私たち周辺地域住民はかえって不安を感じます。そんなせっかちなやり方をされたのでは困るのです。ですから、二百十トンが満ぱいになってくるというのが昭和五十四年か五年ぐらいだけれども、埠頭は少なくとも五十三年にできているとかあるいは五十二年にできているというならわかるのですけれども、それについての見通しがいまのところないわけなんですね。だから、実をいうと、それが私たちにとりまして不安なんですよ。不安というよりも、仕事をするについての前提工作が不備なんだと言いたいのです、率直に言って。それでお聞きしますけれども、こういう状態のもとで、もし日立が出入りを差しとめるといった場合には、どういう便法を講じますか。
  72. 清成迪

    清成参考人 これは何とかわれわれが努力しまして、暫定使用を認めていただく、誠意を披瀝して、やっていただくという一手しか、私考えておりません。何かほかの手というのはちょっと考えられませんので、できるだけ理解をしていただくように努力を傾倒するというふうにしか考えておりません。
  73. 石野久男

    石野委員 私は清成さんにお尋ねしたいのですけれども、ちょうどいまの整備法も同じなんでございますが、現地の日立市民、萬田市長をはじめとして、市議会の専門委員会が、日立港に使用済み燃料を積んだ船の出入りを拒否するという決定をするところまでいっておりますね。これに、ただお願いします、お願いしますじゃ、とても解決はすまいと思うんですよ。反対するには反対する理由があるのだから、その反対する理由が排除されなければ、おそらく市会は、そう簡単にイエスとは言ってくれないだろう、こう思うんですよ。だから、その何とかお願いしたいというときに、拝みます、頼みますというような非科学的なことでは、少なくとも科学の先端を行く原子力としては、まずかろうと思います。どういう方策があるかということを、これは私は心配するから言っているので、とてもじゃない、そんな拝みます、頼みますで、ああいう決議がひっくり返るものとは思いません。それを無理にやろうということになると、また地域整備法みたいに、福祉政策だなんということで、金をつぎ込んで持っていくというようなことになってしまいますから、それじゃまずかろうと思います。何か方法考えていないのですか。
  74. 清成迪

    清成参考人 これは私たちも前から、日立の方の御意向はよく聞いておりますが、そういうようなことを通していろいろ考えておりまして、要するに暫定のことは暫定として、専用港というものをほんとうに前向きに本式に考えて進むということであるならば、大体暫定使用を認めてもいいんじゃないかというように伺っておりますので、われわれがいままで、その前向きの姿勢の示し方が足らなかったと私は思います。したがって、今度は十分に御満足のいくような前向きの姿勢を出していきたい。それじゃ、それはどんなものだとおっしゃいますけれども、これはいろいろと申しますか、私はほんとうに誠意を披瀝していきたい。政府のほうにも、そんな形をほんとうに示していただきたい。それから電力のほうも、本式に私これからいろんなことを話しまして、何とかほんとうの意味の前向きの姿勢を出していただきたい。正直に申しまして、多少、責任の押しつけ合いというふうに感じられるところがあったのかなという感じがいたしますので、そういう点を、今後われわれできるだけはっきりさした形でもって推進をしていく、ということを考えておるわけでございます。
  75. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 ちょっと補足をさしていただきます。  先般のこの委員会でも、あるいは御答弁申し上げたかと存じますけれども、この前の日立市議会の特別委員会の御決議ですか、決定でしたかは、当方関係者のやっておりますることについての説明に対する御理解が十分得られなかった点がずいぶんあるのではなかろうか、そういうような点を誤解のないように、これから十分、さっき申し上げました関係者の協議、検討を強力に、すみやかにやって、そして御理解を得られるような方法をもって、その辺は今後対処していきたい。少なくとも先生の御指摘のように、見通し等はすみやかに御納得のいく理解が得られるような形で持っていきたい、かように考えております。
  76. 石野久男

    石野委員 私もその理解が進むようにと思って、いろいろの質問をしているのですが、ただ、暫定期間というようなことを事業団のほうでおっしゃっていても、一般の人たちというのは、もういやですよというやつを、それでも頼むから、ほんのわずかの間だからということの暫定というのは、半年か一年くらいだろう、こういうので通念として——先ほど社会的通念というのが出ましたけれども、通念として、そういうふうに考えるのである。ところがいまのように、昭和五十四、五年ごろまでには二百十トンになります、満ぱいがその時期でございますから、港はその辺でよろしゅうございます、とは言わなかったけれども、そのことの裏は、そういうことになってくると見なければいけない。そうすると、私は昭和五十四、五年というのはほんの四、五年だと思ったら、数えてみると、六年ぐらいかかっちゃう。これでは現地では理解は進みませんよ。だから積極的な意図というのは、少なくとも一年か二年の間に手がつけられる。それで、あそこで外港として出す港が福島の大熊あたりで成功していることだし、久慈港もやっておりますから、外港はどういう形で出るかわかりませんが、技術的な面からいえば、計画どおりのものができるだろうと私は思います、やろうとすれば。それにしても、港を一つつくるのは、一年のうちにはできないだろうと思います。これは二、三年はかかると思うのです。そうすると、もう現在一定の計画なり調査費がつき、予算措置までついておって、早くて二年か三年でしょう。それもできていないで、まだこれからでございますというと、五、六年はまたたくうちに過ぎてしまう。これは清成さん、誠意を示すということを言われても、なかなか通用しにくくなるだろうと思いますので、そういう点は、原子力局なりあるいは原子力委員会ども当然考えるべきなのだろうと思いますが、政府との間に、それこそコンセンサスがなければだめだろうと思う。ところがコンセンサスを得られるべき政府考え方は、やはり清成さんの線より出ていないとすれば、これはとても、私は地元の方々の納得する線にはいかないだろうと思います。そういうことを前提として再処理工場を見ますと、再処理工場の稼動は、そのこと自体が非常にむずかしくなってきます。めんどうな問題が出ると思います。しかし、これは大臣にどうしても、どういう考え方かということを聞かないと、局長さんだけの話では、私は政府の意向も全然わかりませんので、これは大臣にどうしても、この意向は承りたいと思います。そうしてその意向によっては、また考え方がずっと——質疑のしかたも実は違ってくるのですよ。だから、長官を置いておいてもらわなければ困るというのだ、自民党のお方。(「短い時間です、いま来ます」と呼ぶ者あり)短い時間といったって、困っちゃう。次から次へこういう問題が出てくる。
  77. 安井吉典

    安井委員長 続けて、どうぞ。
  78. 石野久男

    石野委員 それで、私は、いま港の問題で、そういうものが一つありますが、清成理事長はもうおわかりだと思いますけれども、射爆場の返還があそこで行なわれた。一方では、あそこに流通港湾構想というものがあると聞いております。この流通港湾というものは、およそ事業団としても何がしかの知識をお持ちかどうか知りませんが、そのお話については、事業団としては何かタッチしておりますか。お聞き及びのところがありますか。
  79. 清成迪

    清成参考人 風のたよりには聞いておりますけれども、ここで申し上げるほどの、それに対する意見はございません。
  80. 石野久男

    石野委員 この流通港湾の問題について、私ども政治家という立場でも、非常に問題がありますし、特に私は地元でありますので、非常に関心を持っております。去る予算委員会の分科会で、運輸省の港湾局長に、この問題のお話を聞きました。そうしますると、大体構想としては、あそこで年間四千五百万トンから五千五百万トンの流通港湾の構想だと、こういうわけです。そうして主として北海道——東京をつなぐ接点としての、フェリーボートが主になる港になる、そして船は非常に大きいものになるのだ、こういうお話ですね。一万トンクラス以上のものが入る。年間出入りする船が十万隻以上になるでしょう、こういうことが港湾局の考えておる構想なんですね。このことを私は聞いて、すぐ隣に原子力の専用港が当然近い将来にできますよ、そのことは、この構想を組むにあたって、運輸大臣、頭の中に入れておりますかと聞いたら、それは私は知りません、こういうわけだ。それで、そういうものができるということであるならば、これはまたもう一度考え直ししなければいけません、こういうお話でした。その後、われわれの同僚の久保君が運輸委員会でこの話を聞いたときに、運輸省としては、これを一度白紙に戻すという話もあったと聞き及んでおります。そうなってくれば、別に問題ありませんけれども、しかし実際には、地元の茨城県における作業といいますか、いろいろな根回し工作はどんどん進んでおりまして、周辺地の各自治体は、流通港湾をつくる前提で、いろいろなものができているように見受けられます。そこで、この流通港湾と、当然すぐ至近地にできるところの原子力港と——一説によりますと、流通港湾の中に、原子力のそれを含んでセクションをつくるのだということも、ちょっと風のたよりには聞いておるのです、そこまでいっているかどうかわかりませんけれども。十万隻の船があそこの沖合いで出入りする。そして隣の日立港は一千万トン、すぐ隣の大洗港は二千万トンの構想だといわれるわけでしょう。それから少し離れたところでは鹿島港。これは海上交通がたいへんな錯綜をすることになる。飛行機のニアミスに似たようなことが起きる可能性が出てくるわけですよ。東海村の原子力地帯というものを片方に置きながら、原子力専用港をあの辺につくるという構想との関係、これでいいのかどうかということですね。これは原子力安全性の問題からしても、当然考えるべきことであろうと私は思いますが、その点について、清成さんのお考えと、井上さんにもひとつ所見を聞かしていただきたい。
  81. 清成迪

    清成参考人 いまの流通港の問題を詳しく御説明になって、意見を求められたわけですけれども最初に申し上げますことは、この再処理の陸揚げ港というものと流通港ということは、私たちと申しますか、事業団としては、一緒にしては全然考えておりません。先ほどからお話がありましたような大きな構想の流通港というものは、とうてい短期にできるものとも思えませんので、いまわれわれ事業団に与えられた使命としておるところから考えて、それを私たち一緒に考えておるということはないわけです。  それで、いまお話しの大きな意見を求められました点につきましては、私たち石野さんと同じような心配は感ぜられます。感ぜられますが、はっきりどうという意見を申し上げる立場には、私はいまのところないので、こういうのはやはり国の政策というものを承って、関係のあるところにつきましては、われわれ意見を申し述べるという形をとっていきたい、こういうふうに考えております。
  82. 井上五郎

    井上説明員 再処理にからみましての輸送問題、これは確かに非常に問題でありまして、これは日本だけの問題ではなくて、欧米におきましても非常に問題でございます。またわれわれといたしましても、運輸当局等ともいろいろ相談をしておるというのが現段階でございますが、ただいま御指摘のあの地域に流通港をつくるということにつきましては、私自身存じません。全く存じませんことを、架空でお答え申し上げるということは、かえって恐縮でございます。この問題は、御指摘のように十分事務的にも調査をいたしまして、もし必要ならば、後刻見解を申し述べるということで、私、存じませんことを申し上げることを、お許しいただきたいと思います。
  83. 安井吉典

    安井委員長 石野さん、御要求で、大臣戻られております。御質問ください。
  84. 石野久男

    石野委員 いま大臣が来ましたけれども、ちょっといまのついでですから、一言だけお伺いしておきますが、井上委員清成理事長に、私、これを聞きましたのは、実は、環境整備の問題なり地帯整備の問題は、これは海の上だから別だというわけじゃございませんので、原子力安全性確保の問題、特に海上輸送の問題については、これからどういう船を使うつもりなのか、あるいはどういうキャスクを用いるのかということなども、私は専門じゃないけれども、一応お聞きしたいと思っております。  けれども、その前に、一方に専用港をつくろうという意図があるのに、すぐ隣に、ちょっと戸をあければすぐそこに、年間五千万トンに及ぶ船が出入りする。もしもちょっとした事故があったらたいへんなことになってしまうだろうと、私どもは思っております。だから、そういうこともありますので、ああいうところにそういうことを構想するのは、それは便宜主義から言えば非常にけっこうだろうけれども原子力安全性というようなことを考えた場合、これはとてもじゃない、常識で考えられないことのように私は思っておるものですから、だから、当面、原子力政策の非常に重要な位置にあります井上さん、あるいはまた、現実に事業体を運営なさっておる清成さんあたりに、その所見を承りたかったわけなんです。  いま、十分つまびらかにしていないということのようでございますけれども、現実には、地方自治体において、この問題の結論を迫られております、率直に申しまして。もう私のところの勝田市などでは、近いうちに、これに対する結論を、市会で出さんならぬような状態にまで追い込まれてきている。知事はじめそういう方向に進んできておるわけですよ。そのときに、原子力委員会もつんぼさじきであり、事業体の清成さんもつんぼさじきであるということになりますと、これは非常に事が大きゅうございますので、そういう意味から、ちょっとお尋ねしました。いずれ、この点については、両先生とも十分事情をお聞き取りいただいて、また所見がございますれば、お聞かせいただければ、非常に私としてはうれしいと思います。これはお願いしておきます。  大臣おいでになりましたが、大臣あまり行ったり来たりしていると、私は次から次へと、大臣がいないと進めない問題が出てくるものですから……。  大臣、やがて近いうちに再処理工場の試運転が始まるというのですが、その試運転が始まることもさることながら、再処理工場へは、各電力会社から使用済燃料を持ち込んでくるわけです。その持ち込んでくるについて、日立港を使う予定のものが、いま使いにくい事情が出てきておる。清成さんからのお話によりますと、政府が仲立ちをして、専用港をつくることへのなにを早急にやってもらいたい、少なくとも昭和五十四、五年のころにと、こういうことなんですね。政府はこの問題についてどういうようにお考えになられているのか。大臣のお考えを承りたい。
  85. 森山欽司

    森山国務大臣 動燃事業団にあります再処理工場の輸送関係の港は、当初日立港をあてにしておりました。現在も日立港をあてにいたしております。が、相当大量にもなりますし、俗なことばで言って、あまりたくさんで、日立港の一般荷役等に御迷惑をかけるというようなことはいかぬので、暫定的ということで、専用港を考えたい、こういう考え方で臨んでおったわけでございます。しかるところ、日立市市議会の特別委員会におきまして、この問題について、従来の私どもの方針と違った御決議があったやに仄聞いたしておりますので、率直に言って、これは困ったことだなと、実は思っておるのであります。そういつまでもということではなくて、近い将来につくりたいと思ってやってまいったわけでございますから、できるならば暫時使用ということで、何でもかんでもお願いして恐縮でございますが、これは石野先生の地元でございますから、極力専用港の建設を急ぐことにいたしますが、暫定的な問題といたしましては、私どももお願いいたしますが、この再処理問題が原子力発電の推進の上にきわめて重要なことだということは、前々から御指摘のことでございますから、どうかひとつ先生のほうからも、市の当局等にお口添えを願えればと、こういうふうに思っておるわけです。いつまでもやろうというのではありませんから、どうかひとつそういう点、よろしくお願いをいたしたい。逆に、ひとつこちらからお願いをするわけであります。
  86. 石野久男

    石野委員 そこのところまでは、同じ御答弁を清成先生からもいただきました。それでは困りますということで、暫定的にということだって、暫定と言ったって、それこそ十万年、百万年でも、百万年の一番最初だったら、あしたにでもなるけれども、百万年のあとはずいぶんうしろです。暫定だって幅がある。暫定というのは、どこまでというめどなんだということを私は聞いているわけです。
  87. 森山欽司

    森山国務大臣 できるだけ早くやるように努力をいたします。きょうの段階は、その程度でごかんべん願いたいと思いますが、そういう意味で、ひとつぜひお力添えを——とにかくいつまでもやるわけじゃないんだから認めてやれよと、先生におっしゃっていただけば、これはしかたがないわと、聞いていただけるのではないかと思っております。お願いするばかりではなくて、私どもも真剣に、この点について、市の当局、県の当局等と一回お話を申し上げるようにいたしたいと思います。  それから、百万年、十万年問題がお話にございました。先ほど私が申し上げましたのは、学者の方々がそういう御理論をお持ちになって、学問の世界でそういうことを御発言になることは、全く異存はございません。ただ、社会の通念として、百万年に一回、十万年に一回というような問題が、だから安全性に危惧の念があるとおっしゃると、いささか受け取りかねる、こういう意味でございまして、笑うべきであるということばは、不適当な表現でございましたから、先ほど取り消した次第でございます。どうか私の意のあるところをひとつ御理解願いたいと思います。確率論で、十万年に一回と言ったって、きょうから十万年が始まるんだから、あしたかもしらぬぞという御意見もございますが、これは一つの確率論の理論みたいなものでございますから、私どもは、きわめて社会の通念というようなところで考えておるわけでございますから、どうかその辺のところは、万事よく御存じなんですから、私どもは先生に比べれば後輩であり、かつしろうとでございますから、しかし言わんと欲するところは、ひとつ御理解を願いたい。不適当だと言われれば、先生のおっしゃるとおり取り消しましたから、どうかひとつ御理解を願いたい。
  88. 石野久男

    石野委員 よく通念ということばがありますが、通念ということばは、かりにいまこの港の問題でいえば、暫定的ということは、いま日立の市会で、暫定的にぜひお願いいたします、反対決議があるけれども、ぜひお願いしますという、暫定ということばは、社会的通念でいえば、半年か一年ですよ。それがいま清成さんからのお話を聞くと、五、六年先ということになってしまうのですね。だから、それについて、政府がそういう暫定というものは、大体五、六年先のことなんでしょうか、それともその暫定というのは、あと一、二年のことなのでございますかということを聞きたいから、それで私は大臣に御答弁を求めているわけなんです。この暫定というのもまたいろいろあるから、社会的通念でいえば一、二年が暫定ですよ。半年か一年のことなんですよ。しかし、事実上はそうじゃない。大臣は五、六年先のことを暫定と言うのでしょうか。
  89. 森山欽司

    森山国務大臣 暫時というのを、きわめて常識的に申し上げておるのでございますし、御案内のとおり、ことしやっと一応形ができまして試運転に入るわけですね。来年の後半ぐらいですか、いよいよ実際にやりますのは。ですから、日立港に格別のお力添えを願いますのは、来年の後半以降になろうかと思うのでございますので、まあそれから暫時の間と、こういうことでひとつお力添えを賜わりたい。それからあとどうするのだという話につきましては、よく、私どもの間で使いますアズ・ロー・アズ・ポシブルじゃありませんが、アズ・スピーディー・アズ・ポシブル、アズ・スピーディー・アズ・レディリー・アチーバブルということでひとつまいりたいと思いますので、その辺のところは一生懸命やりますから、ひとつお力添えを願えまいか。それは県のほうにも市のほうにも、私どももお願いをいたします。原子力研究所の労働組合では、例の定員問題なんか一緒にやりましょうと、こう申し上げておるわけでございますから、こういうのは、暫時の間くらいだったらひとつ考えてやろうというようなふうに、地元代議士として、お力添えを賜わればと思っておるわけでございます。
  90. 石野久男

    石野委員 暫時ということばの意味が、社会的通念からすれば、われわれは半年、一年というふうに見るけれども、皆さんのほうの暫時というのは五、六年先だということがはっきりしたから、それはそれでいいですよ。これは地元の人が考えることですから。ただ、申し上げておきますけれども、これは清成さん、苦労しましょうが、日立の市会は、そういう暫時というのはなかなか受けられないだろう、こう思います。ですから、非常にむずかしいことだと思います。港に船が出入りするということになれば、当然、輸送の方法についての、船はどういうようにするのですかという問題が出てくるわけなんですよ。あるいはキャスクはどういうものなのかということもございますが、こまかいそういう技術的なものは抜きとしまして、大ざっぱなことで、船は専用船でも事業団が持つつもりでおるのかどうかということが一つと、それからやはり、そういう船を使うときの緊急時体制というものがどうしても必要なんだろうと思いますが、それについての対策ができているのかどうか。これをひとつ、できている、できていないでけっこうでございますから、あまり説明は要りません。大臣ばかりしゃべられて、ひとつも時間がなくなって困っているのだ。ひとつ簡単に御答弁いただきたい。
  91. 清成迪

    清成参考人 どんな船を使うか、どんなキャスクを使うかということは、大体私のほうの専門屋の中では議論が進んでいると思います。ただ、船のほうは、いまどんな船を使うかというところまでは行っておりませんけれども、キャスクだけはもう大体いろいろ検討が進んでおるようでございます。それから、もちろん船で運搬するときの緊急時対策というようなことも、同様に専門家の間では議論されていると思いますが、私、ここでこういうふうにするのだというこまかいことは、実は存じませんので、書いたもので、後ほど御返事をいたしたいと思います。
  92. 石野久男

    石野委員 操業を開始する前には、事業団としては、やはり当然のこととして、東海地区における海洋調査どもやらなくてはいけないことになっておりますが、それはもうできておるのでしょうか。それとも、科学技術庁としては、それに対する適切な指導をどういうようにしておられるか、この点をひとつ……。
  93. 清成迪

    清成参考人 海洋調査という意味があれなのですけれども、実はまだ——先ほどもちょっと申しましたように、海洋調査という意味が、ただ単に、海流とかあるいは温度の分布とか、そういうことでございますれば、これはもうすでに何年か前からやっておりますけれども、いまおっしゃるのはそういうことじゃないと思いますので、実は先ほども申しましたように、まだ放出管の工事が同意を得ていない。われわれがほんとうに調査をやりたいと思っておりますのは、放出管から実際に水を流してみて、そして、それがどういうふうにディストリビュートしていくかというふうなことを調査したいわけなんです。そういう方面のことをやるいろいろな準備はしておりますけれども、まだそれができていないという点でございます。これは今後御同意が得られ次第、できるだけ早くやってまいりたいというふうに考えております。
  94. 石野久男

    石野委員 これはいま理事長からもお話しのように、コールドテストをやる場合、放出管はまだできていないのだ、だからどういうふうに放水が海で分布するかというようなことは、知りたいことを知らない、わからない。来年ホットテストをやる場合になりますと、そういう全然経験のない中で、なまのものを流すことになりますね。こういうようなことについて、実をいいますと、私たちは非常に心配するのですよ。これは原子力委員会においては、この問題についてやはり考えなくちゃならないことだと思いますし、それから科学技術庁としても、こういうような、率直に言うと、世間は非常に廃液の問題で心配をしておるし、先ほどお話がありました、またこれからお尋ねしなければならぬ問題の漁業権問題等もございますが、漁業権の問題の出てくる理由は何かといえば、実をいうとそのことなんですよ。そういうようなことについて、事業団としては、やりたいからやることなんでしょうけれども、それを指導なさっておる科学技術庁としては——事業団は、非常に残念だし、心もとないことであるけれども、やらなければならぬので急いでいるのだろうと思いますけれども、そういうことを指導する立場に立っておる森山長官は、こういうことをどういうようにお考えなんですか。それでいいのだというふうに考えているのですか。
  95. 森山欽司

    森山国務大臣 事務当局が先にやって、それからやります。
  96. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 海洋調査につきましては、御承知のように、先ほど理事長が、動燃事業団それ自体の分につきましては、排出管との関係があって、その当該施設のすぐ前の海で、徐々にやっていくということは、これからお出しするかもしれませんが、一般的に、原研とか水産庁とか放医研とか動燃自体も、四十三年からやっております。そういうところの海洋調査はございますので、それを十分活用の上、今後は、先ほど申し上げましたような実際の放出管の設置とにらみ合わせまして、もっと直接的な海洋調査を、これは再処理施設の許可の報告書にもちゃんと書いてございますから、これは強力に進めたいというぐあいに考えております。
  97. 石野久男

    石野委員 だから、そういう事情であるから、海洋調査の問題は、安全審査の中の義務づけられた行為でもあるのですよ。そういうことが可能でないような、テストから本番へ入っていくという、そういうことを可能にしていないテストをあとに、本番へ入っていくということについては、安全審査の要請事項とも違ってくるのじゃないか、この点についてはどうなんですか。これは原子力委員会でもいいです。
  98. 清成迪

    清成参考人 いまの問題は、おっしゃることはごもっともでございますが、われわれの考えでは、急ぎまして、この放水管を御同意を得て設置する、それをやりまして、それで普通の化学的な酸、アルカリ、そういうようなものをまず最初に流しまして、それで大体の海洋調査をやって、それの大体の見当がついてから、放射性のものをテストしていくというふうに考えておりますので、いきなり放射性のものを流すというようなことはやらないつもりでございます。ただ酸、アルカリというものもありますけれども、あくまでもこの眼目としますところは、放射線がどういうふうな形で分布していくかということに一番主力を置きたいと思っておりますので、それができないうちは、放射性のものを流すことはおくらしてもやむを得ないと考えております。
  99. 石野久男

    石野委員 大臣にお聞きしますが、やはり放水管問題は、漁業者の反対で、なかなか思うように進まないでいるわけです。漁業者の心配しているのは、それを認めることによって、自分たちの生業に非常に大きな影響が来るであろうということの心配をしているわけです。反対している漁業組合は、このことによって、とった魚がもし売れなくなったときだれが補償してくれる、そこまでだれも補償してくれないではないかという心配があるわけなんです。これは漁業組合だけの問題ではなくて、海産資源を保持しなくしはならないという立場にあるわれわれの政治的な観点からしても、非常に大きな問題でございますから、漁業者の理解が得られないようになっている事情が那辺にあるのかということについて、政府の施策が行き届かないと、この問題の解決は出てこないだろうと思うのですよ。大臣は、そういう問題についてどういうように配慮するつもりでおりますか。
  100. 森山欽司

    森山国務大臣 この問題はきわめて重要な問題でございますので、放置しているわけではございません。真剣にこの問題を検討し、またこれに対する対策を講じつつあるわけでございますが、私どもといたしましては、実際できましてテストに入ります前の段階で、万遺憾のないように十分やってみたいと思っておるわけでございます。  海水から出ます自然放射能は、昨日石野委員の言われましたとおり十七でございますか、十五、六、二十になりませんので、自然放射能に比較してそう多いものではございませんけれども、しかしながら、そういう点に少しでも問題のないような体制をつくらなければならぬと思っておりますので、できましてからテストの前に、公団で十分な体制をとりまして、地元の御了解を得られるように、できるだけの努力をいたしたい、こういうつもりでございます。
  101. 石野久男

    石野委員 これは大臣に尋ねなくてはいけないのですが、再処理工場が稼働することになりますと、安全審査……。
  102. 安井吉典

    安井委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  103. 安井吉典

    安井委員長 速記を始めて。
  104. 石野久男

    石野委員 では、一問だけにします。  再処理工場から放出されるところの放射能被曝は、安全審査によると、いつも周辺値三十二ミリレム、こういっているのですよ。ところが私たちの調べによりますと、安全審査の中で示されておる再処理工場施設から出る被曝だけでも、全身被曝年四十三・七ミリになります。これは、この本の中の一〇三ページの三項、それから一一二ページから一一三ページにわたってちゃんと書いてあります。そして東海二号炉から出てくるものは年間〇・八五ミリになります。それから、東海一号炉から出てくるものは——二号炉ができるころには一号炉はあるのかどうかわかりませんけれども、年間一・二ミリレムです。それから、原研の東海研究所二号、三号、四号、JPDRの四カ所から出てくるものの計算で十・五ミリレム。合計しますと、年間五十六・二五ミリレムになる、私の計算では。この点について、間違っていないと思いますから、あとで御答弁をいただきたい。  こうだとしますと、この被曝レムというものは、昨日も大臣が、一般人に対しては五ミリレムのところまで持っていっていますよということを盛んに言いましたね。そういう計算からいきますと、全身被曝五十六・二五ミリレムというのは、たいへん大きいものになるのです。その中で、特に再処理工場の被曝を与える量は非常に大きいわけです。こういうような事情の中で、勝田、那珂湊、東海地区住民に対する被曝ということになると、非常に大きいと思います。クリプトン一日当たり八千キュリー、トリチウム一日当たり二百キュリー、低レベル廃液が大体〇・七から一キュリー。これを十分の一にするというわけですが、こういうものはどの程度になるかわかりませんけれども、そういう中でこれだけの被曝が出てくる。  この中で、私たちが非常に心配しなければならないのはクリプトン85の問題で、これは半減期が十年八カ月と、非常に長い。しかし呼吸とともに肺に入っていきまして、遺伝病や白血病をふやすおそれがございます。本件について原研の押野昌夫氏は、昨年の日本原子力学会年会を名古屋大学でやったときに、非常にきびしい報告をしております。クリプトン85の問題をこのままほうっておきますと非常におそろしいことになるだろう。押野さんが千葉の袖ケ浦で採取した試料によりますと、これは国連科学委員会の線量よりもはるかに多いのです。そして、これはおそらく全日本的な濃度と見ていいだろうという報告をしているわけです。この点について、昨年事故があってやめられた梅澤次官は、二百二十六億のほかに数十億をかけてゼロにする装置をして、クリプトン85を閉じ込めるという考え方であるということを言っておりますが、そういう点はどのようになっているかということ、これが第二点です。
  105. 安井吉典

    安井委員長 石野君に申し上げますが、大臣は、何か大蔵委員会の時間があるそうでありますから、できるだけ詰めて……。
  106. 石野久男

    石野委員 では、簡単にこれだけ結論を聞かしてもらいますけれども、クリプトン85、これは一日八千キュリー出るわけです。さっき言ったように、これは地元民に対して非常に大きな被曝を与える大きな要素になる。これをとめないで再処理工場をやることは非常にまずいと私は思うのですが、梅澤前次官も、ゼロにすることについて努力すると言っておりますが、大臣はその点についてどういうふうに考えておられるか。
  107. 森山欽司

    森山国務大臣 クリプトン85につきましては、八千キュリーというお話ですが、これは被曝線量に直しますと三十二ミリレムであります。御案内のとおり、自然放射能が百ミリレムであり、また一般人に対しては五百ミリレムという限度から比べれば、一般人に対する線量限界五百ミリレムの十分の一でございますし、それから自然放射能の二分の一程度でございますから、それは原子力の発電所は五ミリレムまで行っておりますけれども、再処理問題は、これからどんどん減らすようにはいたしますが、現段階においても、安全性については心配はないというふうに私は考えておるわけでございます。これは気体状になったものでございまして、液体状の問題につきましては十何ミリレム。ミリレムに直しますとその程度でございまして、これまた、私は同様に考えておる次第でございますから、これらのキュリーとミリレムの換算等の問題は、専門家が非常にたくさんそろっておられまして、十分それぞれあれいたしますし、それが今日の安全性の問題においては、決して問題にならないような数量であるというふうにお考えを願って差しつかえないと思います。この問題につきましては、自然放射能以下であり、規制線量以下であるという点だけを、私は明確に答弁させていただきまして、以上は、専門家がおりますから、何も打ち合わせはしておりませんけれども、十分答えられるはずでございますので、どうかひとつ御了解願いたいと思います。  どうか委員長、恐縮でございますが、よろしく……。
  108. 石野久男

    石野委員 いま森山長官から、八千キュリーは被曝線量に直せば三十二ミリレム、そのぐらいのことはこっちもわかっているけれども、それはそれとしまして、いまのように、平常時の放射能のたれ流しというものの周辺住民に対する量というものはたいへんなものになると思うのです。これに対する対策がいまのところはない。それはいま森山長官のなにではっきりしましたが、もう一つ聞きますけれども、これは井上委員にお聞きしますが、安全審査書の中には、プルトニウムの件について、それが環境にどういうふうに影響するかという問題についてはあまり触れていないのですよ、実をいうと。プルトニウムの問題については、貯蔵の問題は触れております。プルトニウムの環境保全上の面から見ての被害あるいは恐怖という問題は、非常に重大だと私たちは思っておる。ここでひとつお聞きしておきたいことは、安全審査書の中で、プルトニウムや高レベルの放射性廃液の貯蔵の問題で、この四〇ページには、プルトニウムについてはこういうふうに書いてございますね。貯蔵能力は合計約〇・五トン、金属プルトニウム換算で、そうなっておるのです。これは再処理のウラン二百トン当たりに大体一・五トンのものが出るというふうに見ますと、四カ月ぐらいで、ここにある容器三基は満タンになってしまう計算になりますね、実質問題として。それから高レベルの放射性廃液、四三ページに書いてありますが、ここには四基ございますね。この四基について、これは大体何年分ぐらい廃液をたくわえることができるのであろうかということを、あわせてひとつお答えいただきとうございます。
  109. 安井吉典

    安井委員長 石野君に申し上げます。  お約束の時間がだいぶ経過しているようですから、そのように御配慮ください。
  110. 井上五郎

    井上説明員 先ほどいろいろ廃棄物についての御質疑がございまして、大臣が答弁をいたしましたが、若干補足をさせていただきますと、再処理工場において、一般の原子力発電との比較において相当多量の放射性物質が排出される、これはもういまさら申し上げるまでもないのでありますが、そういうことから、あれを認可されましたのが昭和四十三年か四年だったと思いますが、そのときに特に評価委員会をつくって、運転上監視をしていくということで取り締まりをしていく。それが、結果的にはかりに御指摘のような数字であっても、一般の住民に特に被害があるとは考えておりません。おりませんけれどもへさきの前田大臣の時分に、ゼロレリースを努力するといったような表現を使われたと思うのでありまして、実質上無害を目標としまして、その後いろいろな施設を加え、あるいはまた実験をしておるというのが現状であると思います。  それから、プルトニウムにつきまして、あまり詳しく書いてないではないかという御指摘でございますが、放出液の中から出ますものあるいはガスとして出ますもの、つまりクリプトンであるとかルテニウムであるとかセリウムであるとかというものに比べて、プルトニウムの放出量はきわめて少量である、現実には問題にならないということで、一般の放出物質の中で、プルトニウムを特に問題にしておらないわけでありますが、プルトニウムを貯蔵するということは、御指摘のとおり非常に問題でございます。ただいま御指摘の数字を私ちょっとよく存じておりませんので、これは当然将来にわたって十分の施設をしなければならないのでありますが、これは時間的の問題でございます。と同時に、これは、いろいろ科学技術的の問題以外にも、社会的な心理的な影響があるではないか、ただいま御質疑のとおりだと思います。さような意味におきまして、一般の方々がなるほどこれは十分であるという、信頼と申しますか、御安心いただけるだけの十分な貯蔵設備をしなければならないものと考えております。
  111. 石野久男

    石野委員 時間が非常になにしておりますけれども、これは清成さんに確かめておきたいわけですけれども、やはり再処理作業を行なうようになってくれば、当然のこととして、廃棄物がどんどん集まってくるわけです。その廃棄物の中で、いろいろな処理をして、結局プルトニウムを分離し、そのプルトニウムを貯蔵したりいろいろなことをやらなくちゃいけません。そうすると、プルトニウムは、御承知のようにやはり臨界事故を起こす非常に大きい要素を持っておりますから、これが十分でない場合は、私たちが予測しないような事故を引き起こしかねない問題だと思います。そういうことについての十分の対策のないままに仕事が進むということは、率直に申しまして、どうしたって周辺地の住民は安心しないのです。そういう点については、あらかじめやはり十分できるような施設というものをつくってからにしてもらわないと困ると私は思います。  それから、クリプトン85を毎日八千キュリー出す、それの年間被曝が三十二ミリレムだと言っておりますけれども、しかし表の全体から見れば、そのほかに廃液や何かを全部含めますと、再処理工場全体で四三・七ミリレムの被曝になるわけですから、そういうふうに大臣は簡単なことを言いますけれども、率直に言いまして、そう簡単じゃないのです。こんな簡単なことで地元の心配している人たちを説得できるのだったら、皆さん御苦労なさらないはずなんです。そういう点で、これは十分配慮しなくちゃならぬ問題だろうと思う。  それからプルトニウムの問題について、先般も日本に参りましたタンブリン博士が最近勧告を出しているのですよね。その勧告によりますと、非常に重大な問題がございます。これはこまかいことを言いませんけれども、五十グラムのプルトニウムのなにをちょっとばらまきますと、三億人に対する肺ガン発生の危険が出てくるという勧告をしているわけですよ。ですから、いま非常に微量なものだからいいのだということには、なかなかならないと思うのです。先般、私は外務委員会のときに、井上委員から、ピコキュリーの問題はたいしたことないじゃないかというようなお話を承りましたけれども、プルトニウムについては、ピコキュリーというのは非常に重要になってきます。そんな簡単なものじゃありません。一万とか二万ピコキュリーじゃなくて、二、三千ピコキュリーで、もうたいへんな問題が出てくる。そういう意味から、いわゆるホットパーティクルについて問題が出ているわけなんでございますから、こういうような問題についての動燃事業団なり原子力委員会というものの監視がないままに、再処理工場の稼働に入るということになりますと、地元の住民は、どんなに税金で何かつくってやるというようなことをいったって、納得はしないと思うのです。そういう点について十分な配慮をした上でなければ、やはり稼働に入ってもらっては困る、こういうふうに私は思いますので、そういう点について、原子力委員会なり、あるいは動燃事業団の理事長であられる清成さんは、どういうふうにお考えになっておられるか、この点をひとつ確かめておきたいと思います。
  112. 井上五郎

    井上説明員 先般、私、原子力船の入港について御質問を受けたときに、ピコキュリーの問題で、数ピコキュリーあるいは数十ピコキュリーであって、そのときの核種から申しまして、それが問題でないということを申し上げた記憶があるのでありまして、プルトニウムの場合と同列に、その問題を申し上げた記憶はないのでございます。もちろん誤解はないと思いますが、その点だけははっきり申し上げておきます。  プルトニウムが非常な毒物であるということは、確かであると思います。放射能の問題よりか、むしろ吸入されたときに、毒物としての問題がいろいろ起こるであろうし、そういうことを十分用意をしないでやってはいけない、御指摘のとおりに考えます。私どもといたしましては十分の措置をとるし、先ほど申しましたように、そうした問題が、一般の原子力発電、なかんずく軽水炉の発電所に比べて多々あるということを考えまして、認可の当初から、評価委員会を設置するということが条件づけられておるわけでございます。その趣旨に沿って、ただいま御指摘の点で、ひとり住民の方のみならず、これならだいじょうぶであるという御信頼を得られるような、万全の措置を期したいと考えております。
  113. 清成迪

    清成参考人 ただいま石野さんから、たいへん御懇切なお話がございましたが、われわれ再処理工場をやっておる者としましては、安全に関しましては、大体安全審査の結果を拳拳服膺するつもりで、厳重に守っていくつもりでおるわけでございます。  そこで、クリプトンの問題なんかは、先ほどお話がありましたように、現状のところでは、大体安全審査で、これはもう十分だいじょうぶという許可のあった形でやっていきたい。さらに原子力委員政府からのいろいろな御指示によりまして、それを極力また、アズ・ロー・アズ・プラクチカブルじゃございませんけれども、減らせるだけのことは減らしていくという研究をやっていくつもりで、いま取りかかっております。ですから、われわれとしましても、これは法にきめられた形を厳重に守っていくという態度でやっていきたい。  それから、先ほどのプルトニウムの問題でございますが、先ほどおっしゃいましたように、プルトニウムの現在のキャパシティは大体〇・五トンということでございますが、これは大体五十年度ぐらいまで貯蔵する形ができておるわけでございます。これは単純に割りますと、先ほどのお話のように四カ月ということでありますが、最初はずっと軽稼働をしていきますので、実際には五十年度ぐらいというかっこうになるわけでございます。それで、このプルトニウムにつきましては、だんだんとこれからまた貯蔵の意味では、硝酸プルトニウムの溶液で、臨界の安全設計を、先ほどおっしゃいますように、施したステンレスのタンクにおさめていく、これをだんだん酸化プルトニウムに変えて、貯蔵しやすいような形に持っていこうというように考えております。それから高レベルの廃棄物なんですが、これは現在のところ、約五年ぐらいの貯蔵の設備を持っておりますが、将来としましては、まただんだんこれをふやしていくということはやっていきたいと思っております。実はこういうようなことにつきましては、石野委員の御心配のようなことのないように、ほとんど専門家はやっておりまして、局とわれわれのほうと、あるいはその専門の外部の人間をまじえましたいろいろな場所で、十分に検討を尽くしておるはずでございます。ですから、こういう点は、そのようなことから、大体御安心を願っていいんじゃなかろうかとわれわれ思いますし、また詳細なほんとうの議論でしたら、そういう場でもって十分やらしていただきたいというふうに考えておりますので、まだ設備が整っていない、あるいは何も結論が出ていないというのに、何でもやみくもにただ再処理の運転を急ぐというばかりではなくて、これらは大体のところ、専門屋の間では全部ついておるというふうに私考えておりますし、そういうふうに御理解願いたいと思います。
  114. 石野久男

    石野委員 あと一問だけお願いします。  いま清成さんから、専門屋は非常によく考えておるとおっしゃいますし、井上さんからもお話がございましたが、実は私たち未熟ながらいろいろ勉強していきますと、安全審査の中で、特にプルトニウムの問題がはずされて、あまり触れられていないことが問題だということは先ほど指摘いたしました。もう一つ非常に大事だと思いますことは、事故時におけるところの被曝の評価が、これはヨードなんかについては行なわれておるのですけれども、やはりプルトニウムの問題は全然触れていないのですよ。この問題は、臨界事故で環境へのプルトニウムの放出はどの程度になるのかというようなことの配慮は、どうしても安全審査の中でもう一度検討してもらう必要があると私は思っております。これは井上さんにぜひひとつお願いしたいのです。全然触れておりませんから。これなどは、私たちのなにから見ますと、検討を加えた場合に、よほどの体制固めをしていませんと、一たび何かの事故があったときに処置ができなくなっちゃうだろう、こういうふうに思っておりますので、この点についての配慮を、ぜひ原子力委員会の安全審査部会でも、もっと真剣に取り上げるべきであるということを申し述べまして、私はこれで質問を終わらせていただきます。
  115. 井上五郎

    井上説明員 プルトニウムの問題について、十分慎重に扱えという御指摘、全く同感でございまして、原子力委員会がいままでプルトニウムの問題を審査しておらないじゃないか、これは私が関係した当時ではございませんので、私が直接関係をしたということは申し上げかねますが、当時検討はいたされておるように私は聞いております。ただ、いま御指摘のように、この問題はやはり一般の方が非常に御関心の高い点でございますので、なお十分検討を加えるようにという御指摘は、まことにごもっともだと思います。さよう心得て考えていきます。
  116. 安井吉典

    安井委員長 清成参考人には、長時間ありがとうございました。  次に、山原健二郎君。
  117. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の東京大学の地震研究所並びに応用微生物研究所、これに対する文部省のとった措置、との件について質問をいたしたいと思っています。  それで、きょうは大臣もいらっしゃいませんし、政務次官もすぐ出かけられるということでございますから、政務次官に、一番最後にお聞きしたかったんですけれども、科学技術庁の立場から、今回の措置について、どういう見解を持っておられるか、わが国の地震研究並びに微生物研究がどういう影響を受けるのか、この点について、最初に伺っておきたいのです。
  118. 長屋茂

    ○長屋政府委員 地震の予知に関する研究を強力に推進いたしまして、一日も早く予知の実用化をはかって災害を未然に防止することは、今日におきまして、科学技術がになうべき大きな使命の一つであると考えております。  このために、政府といたしましては、地震予知の推進につとめているところでありまするが、このようなときにあたりまして、わが国の地震研究の中枢的機関ともいえる東大地震研究所が、四年近くにわたりましてその機能を十分発揮していない、こういう事態は、単にこの分野におきましてのわが国の研究の停滞をもたらすばかりではなくして、地震対策全般のおくれという事態を招来するおそれもございまして、まことに遺憾な事態であると考えておる次第でございます。  かかる意味におきまして、いろいろとむずかしい問題はあるかと思いまするが、地震研究所が一日も早くその機能を回復して、わが国の地震研究の推進に十分の貢献をする日の一日も早く参ることを切望いたす次第でございます。
  119. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の文部省のとった措置について、いま政務次官が言われましたように、わが国の中枢機関としての役割りということでございますから、たいへん重要な任務を持っているわけですね。この文部省の措置について、何か科学技術庁として、それはどうだろうか、わが国の地震研究あるいは微生物研究において、そういう措置は今回の状態では困るというふうなことをやられたんですか、やむを得ないというふうに受け取っているんですか。
  120. 千葉博

    ○千葉政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、先生はもうよく御案内のとおり、地震予知につきましては、実は萩原尊礼先生中心に、政府関係の研究所が中心になりまして、さらに各方面の学者先生方を動員いたしまして、四十九年度十五億程度のお金をかけて、地震予知を推進しているわけでございますが、実はこの地震研につきましては、これはもう四年もの間機能を停止しておりますので、これを除外して、もうそういった体制でいま進めているわけでございますが、ただいま政務次官が所信を披瀝しましたように、この地震研の頭脳は使いたいということがあるわけでございますが、いま言ったように使えない状態にありますので、一日も早く、こういった頭脳を——いま地震問題はたいへん問題になっておりますが、その予知がいま一歩というところにきておりますので、科学技術庁としては、この紛争が解決して、この頭脳を早く使うことができるようになることを期待はしておるわけでございまして、こういったような観点から見ますと、このたび文部省がいろいろとこの東大の紛争解決に努力している点は、私どもも評価しておるわけでございますが、一日も早く旧に復することを期待しているということでございます。
  121. 山原健二郎

    ○山原委員 いまのお話によると、地震研が紛争が続いておるので、これは除外して、別途の機関といいますか、別途の組織でやると、こういうお話ですか。別途のものをつくるというお話ですか。
  122. 千葉博

    ○千葉政府委員 そういうことではございません。別の組織をつくるということは申し上げているわけではございません。ただいまやっておりますのは、先ほど申し上げましたように、地震の予知につきましては、気象庁の気象研あるいは建設省の国土地理院、それからさらにそのほかの東大以外のいろいろな地方の大学、こういったところの観測の施設を増強いたしまして、それで、地殻の変動あるいは地震のいろいろな観測、そういったものをいたしまして、いま地震の予知の実現を急いでおるといったところが実態でございまして、いま既存の施設を充実させて、それでこの予知を進めていこう、こういったようなことで進めておるわけでございまして、別につくるということは、考えておるわけではございません。
  123. 山原健二郎

    ○山原委員 結局、東京大学の地震研究所を充実させていく、こういうことですか。
  124. 千葉博

    ○千葉政府委員 いや、そういうことじゃございません。私の申し上げましたのは、気象庁、国土地理院あるいは地方の大学、それからさらに防災センターとか、そういったようなところの観測の設備を充実させて、それで予知を進めていく、こういったような段階でございますので、いま地震研については、こういった組織としていま私どもが進めている予知の中には入っておらないということでございます。したがいまして、今後地震研の頭脳について大いに期待したい、こう私は申し上げているわけでございます。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 私がしろうとなのか、よくわかりにくいのですが、科学技術庁としては、東大の地震研については、これはのけておいて、そうしてその頭脳だけは使いたい、その頭脳を使うのにあたって、いろいろ気象庁その他のものを有機的に動かしていきたい、そういう構想ですか。
  126. 千葉博

    ○千葉政府委員 私のいま申し上げているのは、いま地震予知を私ども進めておるその中に、地震研としていま入っておらないわけです。したがいまして、そこの施設を充実してその予知をするとか、そういった機関には、いまなっておらないわけです。いま地震の予知をやっておりますのは、国土地理院とかあるいは気象庁の研究所とかあるいは地方の大学、そういったところの観測網をいま充実させて、それで皆さんの観測データを持ち寄りまして、地震予知連絡会議ですか、これをつくりまして、その場でいま地震の予知の方策の研究を進めておるというのが実態でございます。  そういったことでございますので、東大の地震研自身は、いま私どもの進めております予知の中に入っておらないというのが実態でございますが、私の申し上げましたのは、あそこにすばらしい頭脳があるということも知っておりますので、そういった頭脳は、今後十分発揮また期待できるような状態にしてほしいということを申し上げておるわけでございます。
  127. 山原健二郎

    ○山原委員 南関東の微小地震については、それで、地方大学その他でできるわけですか。
  128. 千葉博

    ○千葉政府委員 南関東の微小地震というのは、私ちょっといまよくわからないのでございますが、御承知のとおり、極微小の観測につきましては、科学技術庁の防災センターが、埼玉県岩槻のほうに三千数百メートルの穴を堀りまして、それで微小地震の観測をすることにいま成功いたしたわけでございます。それで、こういったのが、御案内のとおりの南関東におきます直下型の地震でございますが、あの地震あたりの予知に役立つようなことになりはせぬか、こういったような期待がいま持たれているわけでございます。こういった点につきましては、今後地震予知連絡会議におきましても、測地学審議会での地震予知の五カ年計画の線に沿いまして、いろいろその連絡会議の場で検討いたし、いま申し上げましたように、防災センター中心の微小地震の測定、こういったものを充実強化いたしまして、それで予知に結びつけるように努力したいということで、いま各関係者が努力している、こういったような状態でございます。
  129. 山原健二郎

    ○山原委員 いまの連絡会議の構想はいつできたんですか。
  130. 千葉博

    ○千葉政府委員 地震予知連絡会議は、昭和四十四年の四月につくられております。
  131. 山原健二郎

    ○山原委員 私の質問は、今日的な意味質問をしておりますので、昭和四十四年といえば何年前ですか、そういうものをここへ引っぱり出されて、それと東大地震研の頭脳だけは借りたい、こういうわけですからね。何だかもやもやしてわかりませんがね。東大地震研究所の頭脳は借りたい——これは東大地震研の質問をしているんですからね。先ほどの、むしろあなたよりは、政務次官の書かれた答弁のほうが正確です。中枢機関として認めているわけでしょう。その中枢機関を、あなたの御発言では、頭脳としていただくだけだ、活用するだけだというような御発言ですから、非常にぼやけていますね。そんな姿勢ですか。だから、東大地震研なんというものは、おる教授の頭さえいただければ、あとは野となれ山となれでも、科学技術庁としてはかまわないのだということなんですかね。
  132. 千葉博

    ○千葉政府委員 先生もう御承知のとおり、いわゆる大学の研究所の性格でございますが、これはいわゆる大学の学のうんのうをきわめるため、こういった点の研究があります。したがいまして、科学技術庁のいま推進しております研究、こういった面は、いわゆる大学の目的のための研究の意味と、私ども国のほうからお願いするのと、こうありまして、それで、大学の面からの目的の設置理由、これについては文部省の所管でございまして、これについては、私ども言及しがたいのでございます。したがいまして、いわゆる一般の国の開発研究の推進、こういったような立場から見た場合、私どもとしては、大学に入ってもらわなければならない、こういうことは言いにくいわけでございます。  ですが、先生御指摘のように、それじゃどの程度期待しているのだ、こういう点でございますが、私どもとしては、もちろん組織としてあそこが活動できて、大学の頭脳が非常に有機的に、これが一元的に、組織として予知のほうに貢献できるように働いてくれれば、これにこしたことはないわけでございます。しかしながら、もう四年もの間動いておりませんので、私どものほうとしては、それにおんぶして進めるというわけにもまいりませんので、国の研究開発といたしまして、それは除外して、これは大学自体のいろいろな問題でございまして、私どもは地震研というものを期待しないでも、これを進めていかなければならぬ、こういう立場でございますので、私どもはそういったことでいま進めるということでございます。したがいまして、できることなら、先ほど政務次官が答弁申し上げましたように、一日も早くもとに戻って、組織的に有機的に活動できて、私どもの進めております予知のほうに役に立つようになっていただければ、これにこしたことはない、いまこういう考えでおるわけでございます。
  133. 山原健二郎

    ○山原委員 最後のところの答弁が、私一番まともだと思うのですよ。たとえ科学技術庁であっても、そういう研究所がある、そして国民の安全を守るという立場で、それをほんとうに効果あらしめていくということを期待するのは、科学技術庁として当然ですし、大学といえども、教育と研究があるわけですから、それが正常な形で発展していくということを期待するのは、科学技術庁としても当然ですね。そのことを、私はこだわったようですけれども、お聞きしておったわけです。  それから、文部省のほうに伺いますが、今度の措置、これは法律的にはどういう条項を適用して、今度の教官研究費の削減という措置に出たのですか、それを伺いたいのです。
  134. 笠木三郎

    ○笠木説明員 このたびの措置につきましては、かような関係になると承知いたしております。  文部大臣は、財政法、特に三十一条一項の規定によりまして、配賦されました当年度の予算に基づきまして、歳出予算の範囲内において、支出負担行為の計画等の示達及び通知をすることになるわけでございます。この場合、文部大臣は、国立学校全体の計画を立てまして、予算の範囲内で、各支出負担行為担当官、国立学校の場合は事務局長でございますが、それごとに支出負担行為の計画を定めまして、これを当該担当官に示達することとしているわけでございます。このたびの措置は、予算執行上の観点から、地震研及び応用微生物研究所に対します予算の一部を示達保留をしたわけでございます。いま削減と先生おっしゃいましたが、削減ではございませんで、配賦の保留をしたわけでございます。
  135. 山原健二郎

    ○山原委員 財政法三十一条に留保規定というのはありますか。
  136. 笠木三郎

    ○笠木説明員 この法律の条項そのものには、保留云々というふうな具体的な規定はございません。
  137. 山原健二郎

    ○山原委員 具体的基準がないのに、留保する場合の基準というのはどこへ置くのですか。
  138. 笠木三郎

    ○笠木説明員 いま申し上げましたように、予算執行上の責任は文部大臣が持つわけでございます。したがいまして、その執行上につきまして、このたびの事例で申し上げるならば、もし地震研究、応用微生物研究所のように、特に予算の執行について、正常な状態での活動が行なわれないという認定がされます場合には、その予算の執行については、文部大臣の責任において、いま申し上げましたように、一部の留保を行なうということも、その権限内にあるというふうに考えております。
  139. 山原健二郎

    ○山原委員 正常な予算の執行が行なわれないという理由は、どこに求めたのですか。
  140. 笠木三郎

    ○笠木説明員 先ほどお尋ねがございまして、科学技術庁の調整局長からもお答えがございましたように、昭和四十五年の夏以来、まる四年になんなんといたしまして、紛争状態が続いているわけでございます。で、大学当局及び両研究所当局の努力にもかかわらず、いまだにいわゆる正常な研究機能の回復が行なわれてないというのが、遺憾ながら現実の事態でございます。こまかく申し上げれば、両研究所間に紛争の態様についての差異もございますし、それからこれは先生も御案内と思いますが、教授、助教授につきましては、いまだに入所を妨害されております。講師以下の教官、それからその他の一般職員につきましては、ほぼ平常どおりの執務が行なわれているという事態でございますけれども、何ぶんにも頭脳の中枢でございます教授、助教授が、正常な研究機能を果たし得ないという状況でございますので、研究能率あるいは研究成果の低下ということは、遺憾ながらやむを得ない、免れがたい状況にあるというふうに認定をいたしました。
  141. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、今度の留保ということは、結局紛争ということが認定をされて、それが理由になっておるというのは、先ほど来のお話でも明らかですが、紛争状態にあるという報告は、文部省としてはどこから受けておるわけですか。
  142. 笠木三郎

    ○笠木説明員 これは東京大学の内部の問題でございますので、私どもといたしましては、東京大学当局から、定時的ないし随時必要な報告を受けまして、それに基づきまして判断をしているというのが実情でございます。
  143. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣は、紛争状態の認定ということはできるかもしれません。しかし、それに惜置をする場合には、少なくとも臨時大学問題審議会、これにかけなければならぬことになっているんじゃないですか。文務大臣が、これは紛争状態だというふうにかってに認定して、その認定に基づいて、直ちに予算上の措置を講ずるとか、あるいはそれに対する規定を直ちに適用するとかいうことになっているのですか。
  144. 笠木三郎

    ○笠木説明員 大学運営に関しましての臨時措置法の規定は、この場合の両研究所には該当しないと理解しております。したがいまして、この法律に基づいての審議会とは、本問題は直接の関係がないというふうに理解するわけでございます。なお、これは文部省独自の判断ということだけではございませんで、先ほど調整局長からもお話がございましたように、文部大臣の諮問機関といたしましての測地学審議会におきまして、第三次の地震予知計画を策定されました場合に、地震研の現状につきましての議論も、審議会の席上でずいぶんございました。いろいろな検討の結果、第三次地震予知計画につきましては、機関としての地震研の参加は一応見送るという形で、結論を出されたわけでございます。さような判断も踏まえまして、いま申し上げたような判断をしたわけでございます。
  145. 山原健二郎

    ○山原委員 いま、何審議会と言いましたかね。
  146. 笠木三郎

    ○笠木説明員 測地学審議会でございます。
  147. 山原健二郎

    ○山原委員 それはいろいろな審議会が、今日の東京大学の地震研、応微研の状態について、いろいろな話をし、判断をされて、いま紛争状態が続いておるとかいうことは、それは出てくると思うのです。しかし、紛争と断定をして、それに対する予算を削減するという措置をとるためには、三十一条でやれるのですか。その紛争ということは、どこが判断するのですか。出から、それに対して措置をとるということ、そんないろいろな審議会ががたがたいったって、ちゃんと大学には自治があるのですよ。だから、その自治の観点から、問題はいままで大学問題でいろいろな論議がなされてきているわけです。文務大臣の諮問機関にいろいろなものがあったとしても、それが今日の地震研はこういう紛争状態が続いておるといったところで、それは三十一条の規定するものになるのか。少なくとも紛争校と規定をして、それに対して措置をとるならば、何らかの基準がなければ、文部省の恣意的な気持ちで、あの学校は紛争校だ、そしてそれに対しては予算削減をやるんだ、こういうことになってまいりますと、これは明らかに行政権の大学の自治に対する介入なんです。何かそこに基準があるとか何かなければ、そんなうわさが諮問委員会で出たなどということでは、これは大学の自治というのはそんなことになっていないのです。そこはどうなんですか。
  148. 笠木三郎

    ○笠木説明員 先ほどの御説明で、多少ことばが足りなかったと思いますが、私が申し上げましたのは、紛争が原因でありますことは間違いないと思うわけでございますが、実態といたしまして、その紛争の結果、現実に教授、助教授が入所できないという場合が続いているわけでございます。したがいまして、教授、助教授が入所を正常にいたしまして、そこで完全な研究機能を営む場合と、入所できません場合の機能の態様とは、おのずから違ってくるというふうに理解しておるわけでございます。したがいまして、その観点に立ちまして、実質研究機能の低下が続きます場合には、その正常の場合に配賦されます研究費等々との間には、おのずから取り扱いに差があるであろうという観点でございます。  なお、財政法の規定は、総括いたしまして、各省庁の長に、予算につきましての執行の権限を与えているものでございまして、その執行の権限が具体的脚どう動きますかは、それぞれの省庁の長の判断によって、もちろんこれは予算の範囲内及び諸法令の関係内でございますが、処置をすることができるものというふうに理解しているわけでございます。
  149. 山原健二郎

    ○山原委員 そういう考え方ですと、これは大学の自治に対して、やろうとすれば相当な介入ができますよ。紛争だ、そしてその紛争の実態についてはあとで申し上げますけれども、そういう規定をして、そしてそれに対する措置をとるということになってまいりますと、大学の中では、紛争を解決するためにいろいろな努力が行なわれている、そういうものを文部省なら文部省で隠蔽してやるということになりますと、行政権が三十一条の「予算の配賦」を使って、それでどこまでも介入していける、こういうことをあなたは言っておられるのですよ。文部省の見解はそういうことですか。三十一条でできるという考え方ですか。
  150. 笠木三郎

    ○笠木説明員 予算上の執行の責任につきましては、いま申し上げましたように承知しているわけでございます。なお、私どもといたしましては、もちろん大学の自治、学問研究の自由ということにつきましては最大限の尊重をするということは、変わりがないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、四十五年の夏に始まりました紛争の影響によりまして、現在に至るまで、申し上げましたような実態にあるわけでございますが、その間、少なくとも四十六年度から四十八年度まで三カ年度経過したわけでございますが、その間は大学の努力に期待をいたしまして、一般的な経費の保留というふうな措置はしておらないわけでございます。ただ、まる四年を経過する段階になりまして、いまだに研究機能が正常化しないという段階におきまして、正常化された場合と同じ形式的な予算の扱いをいたしますよりは、なお実際の状況を見ました上で、必要な予算の配賦をするほうがより適切だろうという判断に立ったということでございます。
  151. 山原健二郎

    ○山原委員 そういう判断ですね。それは世間一般に通用する考え方かもしれませんが、それはいわゆる情勢判断というものなんですよ。法律上の問題ではないわけです。予算執行権があるからどうにでもできるんだということになってまいりますと、そんな前例を残すというのは非常に重大な問題です。だから、この問題について、私はこれ以上あなたに聞いてもあれですが、もちろん文部大臣の姿勢その他を聞かなければならぬと思いますが、あなたのおっしゃられる感覚からいいますと、非常に通俗的な論理が展開されて、そしてそれに対しては予算を留保していいんだ、こういう論争になってくるわけですよ。その基本の法律は財政法三十一条「予算の配賦」の条項ですよ。これをかって気ままにやられたら、たとえばあの自治体が気に入らぬ、そこにはいろいろ問題がある、そういう判断をすれば、そこにはストップするということだってできるわけですね。だから、そういうあいまいな論理では、この問題はだめなんですよ。まず第一番にそれを指摘しておきたいと思います。  五月九日に、伊豆半島で地震が起こりました。これは気象庁のほうに伺いたいのですけれども、気象庁の観測と東大地震研の観測と違いがありましたね。これは、私は気象庁の性格から来ておると思いますから、気象庁には気象庁の任務があるわけなんで、そういう差が出てくるのもまたやむを得ないと思うのでありますが、この点について、気象庁のほうから、どうしてその差が出てきたのか、簡単にお答えいただきたい。
  152. 有住直介

    ○有住説明員 お答え申し上げます。  気象庁といたしましては、津波警報を出す必要がございまして、発震後、緊急に震源位置と深さ、それから地震の規模、マグニチュードといっておりますが、それの推定を行ないます。その目的は、ともかく一刻も早く皆さんにお知らせしなければならないということ、これは防災上絶対に必要なことでございます。今回発表いたしましたのは、地震発生後約十分後でございますけれども——四点観測で、速報テレメーター網というのがございます。それから非常電報が入ります。地震が起こりますと、観測したところから逐次非常電報が入ってまいります。それが五、六通入ったとたんに、それらをもとにしまして、震源決定をいたします。その緊急措置をして、情報発表いたしまして、普通一時間ぐらいたちましてから——その一時間というのが、各所に情報を流しましたり御説明したりということで、非常に多忙なわけでございますが、一時間ぐらいで、まだ多忙ではありますけれども、もし情報が間違っていたらいけませんので、そこで再確認というものをやります。そのときに、約十キロメートルばかり北にずれているなということがわかったわけでございます。ですが、この程度の誤差ですと、緊急の防災対策という意味からは、まあ差しつかえなかろうかなという判断でございまして、特にそのとき情報訂正ということは行ないませんで、ただ問い合わせその他が参りましたときには、その後の解析ではこういうふうになりましたということはお話ししております。そういう意味で、時間をかければ最初から正確なものも出せるわけでございますけれども、やはり何といっても、一刻も早く情報をお知らせするというのが、気象庁の一つの重要な任務なものでございますから、多少のエラーはあっても、迅速に出すということでやらしていただいております。  それで、この正確な震源位置でございますけれども、地震の震源位置をきめるというのは非常にむずかしゅうございまして、もう御承知だと思いますが、いろいろなデータ、それから特に遠くの地震観測所の値、そういうものも入れまして、七、八十から百近い観測点のデータを全部総合いたしまして、その観測値から精密な読み取りをやりまして、それをチェックいたします。そして直せるところは、現地にも問い合わせて直しまして、非常に膨大な資料でございますので、それを大型計算機に入れて出します。それが、約一月後になりますが、月報という形で出ますので、研究その他にはそれを御利用いただくというたてまえでやらしていただいております。
  153. 山原健二郎

    ○山原委員 気象庁の問題は、いつかもここで取り上げたことがありますが、人員その他の面でも、非常に人数が少ないとかいう訴えも聞きました。気象庁には気象庁の任務があるわけですから、いまおっしゃったようなことだと私は思います。気象庁が最初に発表されたことと東大地震研の発表とはちょっと違っておるということも、いまおっしゃったとおりで、石廊崎直下の地震であることをキャッチしておるようです。このことは五月十四日付の新聞でもほぼ裏づけされておると思いますし、結局、伊豆半島沖地震は活断層が起こしたものであり、震源は海岸からせいぜい五、六キロメートルの地点であることを、東大地震研の村井、松田助教授が明らかにしておる、こういうふうに新聞も報道しておるわけです。だから、それぞれ任務もあるわけでございますし、現実には、東大の地震研としても活動しておるわけですね。完全に機能をストップしているわけではありません。しかし状態状態ですから、完全なフルな活動ではないと思います。  ただ、先ほど連絡会のことを言われましたけれども、連絡会の場合は、いまおっしゃったように、国土地理院に設置された地殻活動検知センター、気象庁における地震活動検測センター、東大地震研に設けられている地震予知観測センター、こういう三本柱でつくられておるわけですが、特に東大の地震研では、微小地震、極微小地震の観測網を全国的に持っており、また地殻変動の連続観測を行なっている。こういう中で、職員の方たちはたいへんなことだと思うのです。ああいう状態の中ですから、なみなみならぬ努力だろうと思いますが、一九七三年、昨年の一月から三月まで房総沖の群発地震をとらえ、そしてことし三月にも銚子、勝浦などで起きている微小地震も観測しておる、こういうことは南関東微小地震観測網によるもので、この南関東微小地震観測網は、地震の予知にとってきわめて重要なものであるといわれております。ある学者によりますと、南関東、東京も含めて直下型地震に対してすぐ使える地震予知の観測網は、この微小地震観測網、これしかないという意見があるわけですが、こういう見解は間違いですか。
  154. 村岡一男

    ○村岡説明員 私の了解いたします範囲でお答えしますと、先ほど科学技術庁のほうからもお話があったように、地震の予知というものは研究段階でありまして、皆さんいろいろな面からアプローチをされておりますが、いま先生がおっしゃられました直下型というのは、震源が陸地の内部にある。通例として、こういう直下型ということばがきまり文句としてあるとは思いませんが、要するに陸地内で、概してそう深いところではない、大きさも大きくない、しかしわりに近いので被害が大きい、それなりに非常につかみにくい、どういう前ぶれがあるか、そのつかみにくいところをどうやってつかむのかということで、皆さん苦労される。そのために非常な深井戸を掘られたりしておるわけですが、そういう方法が、そういう地震を探るのに有力な手段の一つであるということには疑いないと思います。
  155. 山原健二郎

    ○山原委員 いまの御説明によりましても、重要な機関であることは間違いないと思います。  そういう中で、今度四十九年度、第三次予知計画から東大地震研がはずされたことによりまして、研究がかなり大きく打撃を受けるのではないかと私は思うのです。さらにこういう状態の中で、今回予算の削減ということが出てくるわけですね。そうすると、まさにこれは兵糧攻めだ。将来の地震の研究活動の見通しが非常に暗くなってきた、こういう影響を与えているわけです。  それでその理由をただせば、とにかく数年間開かれていないんだからやむを得ないということばが返ってまいります。けれども、その紛争の実態というものをほんとうにつかんでおるのかどうか、私はこの点について、次に触れてみたいと思うのです。  もう、そう時間もありませんから申し上げますけれども、紛争といったところで、むしろ大学内の紛争というよりも、非常に少数の者がいま、かつての事件などを契機にして、四十四年あたりからいわば占拠を続けているわけですね。地震研にしましても、応微研にしましても、占拠を続けている。そして、その教授の方たちが入ろうとすれば、それは物理的な抵抗を受けるということが続いているのです。全く少数の暴力的な集団によって閉鎖されているという異常な事態ですね。もともと大学の自治、学問の自由を標榜する大学の中に、こういう、少数ではあるけれども、ときには武器を持ち、そして自治を破壊し、話し合いを行なえないような、物理的な力を加えるなんというのが存在すること自体おかしいのです。ところが、ここの地震研の入り口に教授たちが行こうとすれば、応微研の場合もそうだそうですけれども、サイレンが鳴る。そうすると、ばーっと二、三十人の者が集まってくる。その中には、山本義隆というあの全共闘の東大闘争の議長をしていた人物、こういう前科何犯という暴力分子がおるわけですよ。それから岡本公三の兄弟もおるわけです。全く学外者です。学外者がどこかにたむろしておって、そしてぱっとやってきて、教授たちを入らさない。この少数の暴力がどうにもならぬわけです。紛争だというけれども、実際は、あそこを構成している職員の多くの方たちではないと思います。学生諸君ではない。外部者が集まってきて、妨害をする。小さなあの入り口でございますから、あそこをからだで封鎖をすれば、どうにもならないという実態なんです。そういう状態なんですね。こういう状態について、警察庁のほう、お見えになっているようですが、どういう把握をされておりますか。私、いま名前をあげましたけれども、こういうのはどうなんですか。そのままいまも放置されているのですか。
  156. 山田英雄

    ○山田説明員 東大地震研の紛争について、私どもが把握している実態をまず申し上げたいと思いますが、本年の二月二十日、紛争の発端となりました宮村教授が海外派遣される。これが大学当局から公表されたこともございまして、職員組合では闘争終結宣言を発して、一応の解決を見ていると称しております。しかし、ただいまお話にもございましたように、もと全共闘系学生等を中心とするいわゆる全闘委と称する組織が、宮村教授が在籍のまま海外派遣した、そういうことでは解決にならないということで、教授団の研究所に入る、入所阻止運動というのを起こしておるようでございます。本年に入りましても、御指摘のように、二十人ないし三十人ぐらいの者が地震研の横の通用門にピケを張って寸教授団の入所を阻止するというケースがございます。三月中旬から四月中旬にかけて、大学当局から八回にわたって警察部隊の出動要請が行なわれまして、そのつど部隊を出動させて、警告、排除等の措置を講じまして、教授団を入所させたということがあったわけでございます。  そこで、四月中旬以降はどうかといいますと、地震研究所の玄関付近で二、三人の全闘委の者が監親活動をやっておる。それで、坪川所長以下四人の特定の教授に対して入所を拒否しているということの状態が続いていると見ておりますけれども、大学当局は、これに対して何らの措置も講じておらない。放任しておるわけでございます。  そこで警察の立場を申し上げますと、もちろん、大学構内といえども治外法権の場所ではございません。最終的な治安維持の責任は警察にある。これはいうまでもないわけでございますが、大学構内には大学自治が支配しております。したがって、人命に直接の危険が及ぶというような事態ならば格別、警察としては、学内の治安維持については、第一次的に大学当局の措置、判断にまつということを基本としております。したがいまして、警察が学内に立ち入るにつきましても、大学の要請にまつということを基本としておりまして、地震研のピケの問題についても、警視庁においては、その基本にのっとって、大学当局の適正な管理措置ということを期待しながら、当局とも連絡をとっております。先ほど御答弁申し上げましたとおり、要請があれば、直ちに部隊を出して、所要の警察措置を講じております。ところが、教授の入所を阻止するとか、あるいは部外者がたむろするとかいう点につきましては、やはりそれを犯罪として問擬するためには、管理者の明確な意思表示がなければならないわけですね。退去してください、あるいは部外者の立ち入りは禁止される、そういうことで初めて、不退去罪ないしは建造物侵入罪ということが問擬されるわけでございますが、現在、この点についての東大当局の積極的な管理措置ないしは意思表示というものは全くないわけでございます。そういう意味で、はたして現在の状態が建造物侵入罪、不退去罪あるいは威力業務妨害罪が成り立つかどうか、はなはだ疑わしい状況にありまして、警視庁においても実は苦慮しているところでございます。もっぱら大学当局の厳正な管理措置を待ちたい、こういうことで、強く申し入れを行なっている状況でございます。
  157. 山原健二郎

    ○山原委員 いま山本義隆とか岡本靖一の名前をあげられましたけれども、これはほんとうに大学を解体するという、地震研なんか解体するという思想の持ち主でしょう。そして長期にわたって国民の財産を不法に占拠して、そして入ろうとすれば暴力を使って排除する。これは少数であっても、暴力を持っているわけですよ。大多数の者が行こうとしても、暴力ではどうにもならないわけですね、無手勝で。そういうところに問題があるわけです。そういう中で、何とか解決しようということで、いまも言われましたけれども、今度教授会の出した案について、職員組合ですかが、総会におきまして、昨年の九月十一日にそれを受諾しております。そして最近におきましては、五月の九日には、御承知のように地震研職組あるいは学生自治会中央委員会、東大民青協議会、東大職組の四者会議の中で、自主的な解決をしていきたいという方向にいま動いているさなかです。私は、東大当局も、こういう問題についてほんとうに手ぬるいと思うのです。明らかに犯罪者ですからね。大学が管理しなければならない国家の財産を守るという立場において、暴力にゆだねたままにしておるということは、私も問題を感じておりますけれども、しかし、ともかく何とかこれを解決していこうとする動きがあるさなかに、これに対して財政法の三十一条を使って予算の削減をする、こういう挙に出ているわけですね。これは、結果的に見ますと、文部省のとっておる措置というのは、むしろ暴力集団を利用しているということさえいえるわけですね。この点がほんとうに大事なところであって、文部省も、そういう暴力によって、国家の機関、しかも重要な研究機関、しかもそこで学生を次から次に育てていかなければならないもの、これを教育もできないような状態にさせておる者に対して、当局に対しても、き然たる態度をとりなさい、そしてそれを激励していく、職員や学生の動きを激励していって、暴力集団を排除していくという援助、激励、そういうものがなくて、むしろ最終的な結論は、行政が入って予算を削減する、兵糧攻めにする。悪い者はひとつも困らない。困るのは、実際に研究者が困るわけです。しかも、あの中に入って、困難な中で研究を続け、今度の伊豆半島の地震の観測をし、いろいろな苦労をしておる人たち、それに対しては、何らの激励にもならない、問題解決の方向にも向かない結果を生み出しておるようなことをなぜやるかということを指摘したいために、こういうことを申し上げているわけでございます。  それから、応微研の問題ですけれども、応微研の問題は、元所長がなぐるけるの暴行を受けまして、そして二名の暴力分子が逮捕され、四十六年の五月には、第一審において有罪になっているわけですね。しかしいま控訴されておる。間もなく第二審の判決が出るでしょうが、第二審の判決が出たら、また最高裁に出すかもしれません。その間どうしておるかというと、第一審で有罪になっておる暴力分子が、応微研の中に現在おるわけなんです。だからどうにもならぬわけですね。そしてそれが飛び出してくる、こういう状態で、まるで放置されておる。無法状態だ。無法者がそのまま放置されておるというようなことで、どうして日本の科学技術を、あるいは研究や教育を守ることができるであろうか、こういう疑問を持っているわけです。これらの点については、当然大臣の見解も伺いたいと思うのですけれども、皆さんはどうですか。教育に携わる人たち、そして日本の科学技術に携わる人たちでございますけれども、こういう状態についてどう思われますか。もしそこで大多数の者が、教授たちが入っていくために、少数の者をかりに排除しようとすると、そこに物理的衝突が起こる。そうすれば内ゲバだ。それに対して警察権力が入るかもしれない。いつまでたっても解決しない。みなぼう然と手をこまねいて見ていなければならぬような状態であるわけですが、これを解決していくという方向を見出さなければならぬ時期を迎えていると、私は思うのです。そういう点を強調しておきたいのです。  ことに応微研の場合にいたしましても、お聞きしますと、との秋には国際会議が持たれるわけですね。その準備の中心に、ここがなっているということも聞くわけです。しかもこの地震研にしても、応微研にいたしましても、国際的な権威は高い。日本の国内においても、この二つの機関は、まさに中枢機関としての役割りを果たしていただかなければならぬところですから、それに対して打つ手は全部打ってみて、それでもなおかつ問題が解決しないというのであれば、いろいろな措置が考えられるかもしれませんけれども、いきなり予算を削減するなどという措置が正しいのかどうか。これはそれぞれ伺っておきます。文部省それから科学技術庁、本日おる最高責任者の方の見解を伺っておきたい。
  158. 笠木三郎

    ○笠木説明員 文部省といたしまして、予算の配賦について一部留保を行ないました判断につきましては、先ほど来御説明申し上げたとおりでございます。  それから、大学の内部におきまして、一部の暴力的な行為のために、正常な教育研究の態勢が阻害されておるという実態は、私どもたいへん遺憾な問題というふうに理解しております。ただ、大学内の問題でございますので、仰せのとおり、大学自治というたてまえから、大学施設の管理は、第一義的には当該大学において責任を持つというたてまえでございますので、私どもといたしましては、一刻も早く正常な状態に回復できるよう、今後とも大学当局の厳正な処置を期待するわけでございます。
  159. 千葉博

    ○千葉政府委員 先生がいま御指摘機関、これにつきましては、文部省の所管でございますので、その紛争問題につきましては、私のほうは外側から、国がいろいろ国民の御要請に沿いまして、地震の予知あるいはいろいろな微生物の研究、こういった点を促進する、こういったような立場からいいますと、こういった研究所の頭脳あるいはこれの組織的な活動に期待したい点が多々ございますので、私どもとしては、一刻も早くこの紛争が解決されまして、私どもの期待に沿うような、そういったような研究の促進のほうにぜひ力をかしてほしい、こういったような考えを持っております。
  160. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、私は、今日の状態で予算の削減をすべきではないと思っておりますので、こういう措置は直ちに中止をしてもらいたい。これは文部大臣に、所管大臣ですから、しっかりと伝えてもらいたいと思います。  それから警察のほうに、その山本義隆とか岡本とかいうような者は、いつでも釈放されているのですか。たとえば、どこの機関だってそうでしょう。部外者が来てたむろして、教室に入らさぬとか。そんなばかなことが許されるはずはないわけでしょう。しかもすでに有罪判決を受けておる、職員でもない者、それがまだ依然として蟠踞して暴力をふるうなどということ、これは思想信条の問題ではないのです。大学は、思想信条の違いがあって、そこでお互いに討論し合って、そして学問の保障された自由の中で、研究が発展をしていくというものですけれども、暴力で相手を支配しようなどということは、学問の自由でも何でもない。そういう者が、大学の中にかって気ままに出入りできるような状態を放置しているということなんです。それはあげて大学当局のき然たる態度をとらないところにあると、警察は思っているのですか。最後に、そのことだけ聞いておきます。
  161. 山田英雄

    ○山田説明員 ただいま御指摘のとおりに考えておる次第でございます。これは地震研の問題に限らず、最近凶悪の度を加えました内ゲバ事案についても、同様でございますが、大学が拠点化される、大学が内ゲバの場に供されるという事態も生じております。それにつきましても、警察は厳正な取り締まりを行なっておりますが、大学当局の暴力、違法事態に対するきびしい認識の上に立った厳正な措置がなければ、地震研の問題も、内ゲバの問題も 本質的な解決はできないと考えております。
  162. 山原健二郎

    ○山原委員 そういう暴力の問題ですけれども、これはきょうの課題と違いますが、たとえばこの間、法政でも、大学の構内でなくて、外で膨大な武器を持った部隊と衝突しておる。それから、大学の中へどんどん武器を持って入っておる。しかし、すぐそばには交番もあるわけでしょう。そういう通報に基づいて、学内に武器を持ち込ませないなどということに対しては、警察は何ら措置をしないのですか。それは大学の管理者の問題とは違って、最近大学で行なわれておるあの暴力集団の人殺しというのは、大学の中だけじゃないです。下宿に行ったり、喫茶店に行ったりして、やっているわけでしょう。しかも、多数の武器を持って電車に乗り込んでいる。そういうことがこの東京都内においても放置されておるという状態。しかも、それが学内でどんどん集合して、そこから進出していく。学校の外でやっている。そんなことに対して、あなた方の取り締まりは一体どうなっているのですか。
  163. 山田英雄

    ○山田説明員 これは事前に、軽犯罪法なり凶器準備集合罪なりの関係法令を厳正に適用いたしまして、多数の者を検挙しております。また、学内における凶器準備の実態につきましても、これを確認しました場合には、差し押えを実施いたしまして、凶器等を押収し、犯人の検挙をしている事例も数限りなくあるわけでございます。先ほど申し上げましたのは、大学の構内という点につきましては、大学当局の厳正な管理措置がなければ、警察が全部独自にやり得るという場所でもないわけでございますので、大学の厳正なる措置を期待したい、かように申し上げるわけでございます。警察独自でできる限度のことは、全力を尽くして手を打っておるわけでございます。
  164. 山原健二郎

    ○山原委員 大学の自治というものの大事さ、私どもはそのために長い間戦ってきた経験を持っているわけですが、大学の自治の大事さと、暴力の支配、これとの関係は、いまほんとうにお互いに検討しなければならぬ時期を迎えておると思います。これらの問題については、きょうの主題とは違いますので、また責任者も今日おいでになっておりませんので、私の質問はこれで終わります。
  165. 安井吉典

    安井委員長 次に、近江巳記夫君。
  166. 近江巳記夫

    ○近江委員 長時間の審議で、関係者の皆さんにはたいへんお疲れかと思いますが、私が最後でございますので、よろしくお願いしたいと思います。  私は、国会に席を占めさせていただきまして、この科学技術特別委員会に席を置かしていただきまして、一番最初に取り上げた問題が、食品添加物の問題でございます。この種の問題は、人の生命、健康に重大な影響を及ぼす、こういう立場から、私はそういう問題を取り上げてきたわけでございます。しかし、最近いろいろ心配な問題が出てきておるわけでございます。  そこで、まず初めに、私はAF2の問題をお聞きしたいと思うわけでございますが、御承知のように、AF2につきましては、一昨年の一月に東京医科歯科大学の外村教授らの実験で、微量のAF2を与えられた人間の染色体が突然変異を起こすことが明らかにされておったわけであります。その後、たしか昨年の三月であろうかと思いますが、国立遺伝学研究所の賀田変異遺伝部長あるいは阪大の近藤教授らが、そうした非常に心配な結果が起こることを確認しておるわけであります。また先日、たしか五月十六日であったかと思いますが、国立予防衛生研究所食品衛生部の研究グループの発表等を見ましても、こういう心配な問題が非常に出てきておるわけでございます。  そこで、私がまず最初にお聞きしたいのは、そういう学者のたび重なる警告があったにもかかわらず、昨年のたしか九月ごろであったかと思いますが、厚生省は各都道府県に対しまして、AF2の安全性は確認されておるという通達を出しておられるわけでございます。こういう点は、私は非常に軽率じゃないかと思うわけでございます。この点につきましては、当然、科学技術庁は調整機関として、全く一体の関係にあるわけでございまして、きょうは厚生省からも局長さんもお見えになっていらっしゃいますし、科学技術庁の局長さんにも、どういう考えでこういうことをなさったのか、まず初めにお伺いしたいと思います。
  167. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 昨年九月に、食品化学課の名前をもちまして、各県の担当者に文書を送りましたことは、先生御指摘のとおりでございます。出時、先生御指摘の国立遺伝研の研究結果が新聞紙上等に発表されまして、この新聞の報道に関連いたしまして、各都道府県から、いろんな問い合わせがわれわれのほうに参ったわけでございます。  特にこの食品衛生行政は、従来から、われわれ科学技術行政であるという認識があったわけでございまして、特に、第一線においてこの行政を担当いたしております職員は、すべて医師、薬剤師あるいは獣医師等の特殊技能者でございます。そういう意味におきまして、従来から科学的な解説を求められることが多いわけでございまして、われわれのほうからも、あるいは都道府県の段階において探知いたしましたいろいろなそういった事実等を、われわれのほうに、相互に情報交換というような形で、こういった文書が従来から行なわれておったわけでございますが、この新聞の報道に関連いたしまして、そういった情報交換という意味で、当時のわれわれの持っている資料に基づきまして、参考資料として、各都道府県の担当者にこれを送付いたしたわけでございます。ただ、その表現等につきまして、ただいま先生御指摘のように、あるいは必ずしも適切でない表現があった点につきましては、われわれも今後厳重に注意してまいりたいと思っております。  一応そういった経過でございます。
  168. 千葉博

    ○千葉政府委員 先生から、食品添加物を中心とした化学物質の人体への有害なる影響、こういった点についてたびたび御指示がございました。私ども科学技術庁といたしましては、政府全体の研究機関を動員いたしまして、この種の研究開発を進めておるわけでございます。日ごろの先生の、こういった点についての深い御造詣と、それからいろんなこまかい御指摘によりまして、PCBを中心といたしまして、いろいろの計測方法などが開発されまして、これが全国に普及いたしまして、この種の基礎的な問題については相当進んだ、こういったような認識を持っておるわけでございます。  AF2につきまして、いま厚生省側から御説明のとおり、厚生省のとられた措置につきまして、いろいろ見解を披瀝されたわけでございますが、科学技術庁といたしましては、この種の添加物の安全性の問題は、国民の健康と安全を守るためにきわめて重要である、こういったような認識に持っております。それで、AF2の安全性につきましては、現在厚生省において、その突然変異性につきまして、遺伝学的研究が鋭意進められておるということで、当庁としても、その成果には大いに期待しておるところでございます。当庁といたしましては、今後、こうした国民の健康と安全に関するような問題につきまして、十分総合調整の観点から、関係省庁とも連絡をとりつつ推進をはかっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 厚生省の環境衛生局長さんは、問い合わせがあったので情報交換をしておったのだと、そういう御答弁でございましたが、通達と情報交換とは違うかもしれないけれども、権威ある厚生省の情報交換というものは、これはもうやはり通達と同じなのですね。しかも、この際いわゆる学者がこういう指摘をしておるわけでありますから、そうであるならば、当然国立の研究機関もあるわけでありますから、これを調査しろと、当然そういう措置をおとりにならなければいけないわけであります。それを情報交換であるということで、都道府県に通達をした、これについては非常に軽率であった、そのように思われておると思うのですが、これは率直に反省されているわけですか。この点につきましてはどうですか。
  170. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 その情報交換は、あくまで具体的な客観的な事実のみを知らせるべきでございまして、そこに主観が入ってはならないわけでございまして、九月のその情報交換におきまして、必ずしも適切でなかったという点につきましては、われわれも反省をいたしておるわけでございまして、今後、先生御指摘のような誤解を受けることのないよう、十分注意してまいりたいと思っております。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、先日の国立予防衛生研究所の食品衛生部におきます、この研究グループの発表に対しましては、どういうような御見解をお持ちでございますか。
  172. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 国立予防衛生研究所の職員の実施いたしました実験結果につきまして、先ごろ食品衛生学会にこの結果が発表されたわけでございますが、この発表等につきましても、非常に重要な問題でございますので、今後この国立予防衛生研究所の実験データ等も資料といたしまして、食品衛生調査会で御検討願おう、かように考えておるわけでございまして、現時点におきまして、この食品衛生調査会の検討待ちという形でございますが、先日の学会におきますこの発表後の討論を、事実のみを申し上げたいと思うわけでございますが、その際二つの点において問題が提起されたわけでございます。一つは、この実験に使いました細胞が、ヒーラ細胞という細胞を使っておるわけでございますが、これは胎児のガン細胞でございまして、この細胞を使うことの是非についての質問が提起されております。それともう一つは、この実験に用いた実験方法でございますが、このAF2と肝臓のすりつぶしたものとをまぜての実験でございましたが、この肝臓のすりつぶしたもの自体がそういった細胞に与える影響というものが、コントロールとして実験されていないというような点で、さらに今後の検討を要するというふうな意見も出されたわけでございまして、特に、この発表に対しまして、国立予防衛生研究所の食品衛生部長のほうの御意見もお聞きいたしましたら、これは非常に重要なデータではある、しかしまだこれは完成したものではないし、また今後さらに研究を続けてまいりたい、こういう御意見でございました。われわれといたしましても、この研究については重大な関心を持っておるわけでございまして、今後この研究がすみやかに実施されますよう、われわれとしてもできるだけの協力をしてまいりたいと思っております。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう研究発表につきましては、まあそういう研究が、こういうやり方はおかしいじゃないかという、そういうチェックばかりよりも、やはりその提起されたことを真剣に追っかける、こういう前向きの姿勢で、今後終始していただきたいと思うのです。この研究については、十分反映をされたいと思うのです。  そこで、私は従来から申し上げておるわけでありますが、疑わしきは使用せず、そういう姿勢こそ、この食品行政の基本原則ではないか、こういうように思われるわけでありますが、その点、科学技術庁も厚生省も、どういうようなお考えであるかということが一つでございます。  それから、先ほど具体的に申し上げておりますように、このAF2の問題でございますが、この安全性が立証されるまで、いま調査会等でいろいろと検討なさっておられるということを聞いておるわけでございますが、この使用を一時中止させる、こういう措置をとるべきじゃないか、このように思うわけでございますが、この二点につきましてお伺いしたいと思います。
  174. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 食品添加物あるいはそのほかのいろいろな、本来食品でない物質を食品に加えるということは、これはわれわれとしても非常に好ましいこととは思っていないわけでございまして、特に添加物等につきまして、疑わしきはこれを使用させないという原則につきましては、まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、われわれも従来から、そういった態度で行政を進めておりますし、今後もなお一そうそういった態度で進めたいと思っております。  ただ、このAF2の問題につきましては、現在いろいろな意見が、賛否両論と申し上げましょうか、両方の意見が、学会等に発表されておるわけでございまして、まあこれらの問題を十分検討しなければならないと思うわけでございますが、特に先生御指摘のように、直ちにこの使用を禁止いたしまして、さらに検討を進めるべきかどうか、あるいは従来のままでもっと研究を進めるべきであるかどうか、そういった点、特に疑わしきは禁止すべきであるという先生の御意見等も含めまして、調査会におきまして、御検討を願う予定にいたしております。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、一時中止をすることも含めて、検討をなさっておられるということであるわけですね。
  176. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、それを含めてお考えになるということですが、ともすれば、こういう問題が提起されながらも、対処のしかたというものが非常におそいわけであります。そういうことで、この調査会等で、そういう結論というものはやはり急いでもらわなければならないわけであります。確かに実験ということになってきますと、いろいろな時間のかかることもわかるわけでありますが、やはりこれだけ国民がみな不安がっておるわけであります。こういうさなかにおきまして、どうしてもそれはやはり急ぐ必要があると思います。それはいつごろにその結論を出していただけるのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  178. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 食品衛生調査会の開催そのものは、これは早急に開きたいと思っております。その結論につきましては、その最終的な研究結果を踏まえての結論というものは、先生御指摘のように、これは相当時日を要するのではなかろうかと思うわけでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、現段階において早急に禁止して、そういった研究を今後続けるべきかどうかというような点につきましても、御検討を願うということでございまして、やはり現段階に発表されております諸データをもとにいたしまして、御検討を願って、早急に禁止すべきであるという御意見等につきましては、ここ数カ月のうちに結論が出るのではなかろうかと期待しております。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、これは有害が確認された場合、全面的にAF2の生産、販売、使用を禁止して、市販された商品の回収を行なわれるお考えはあるわけですか。
  180. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 調査会の御意見が、先生御指摘のように、早急に禁止すべきである、あるいは全面的に禁止すべきであるという答申が出れば、やはりこれは早急に回収すべきものと考えております。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう添加物等の問題は、これはあくまで国民優先の食品行政でなければいけないと思うのですね。そうした場合、この添加物の販売、製造、加工等を承認しようとする場合及びこの承認済みの添加物等につきまして、その安全性に関する実験結果等一切の資料というものが、案外べールに包まれておるわけであります。こういう資料等の公開はすべきであると思うのでありますが、それについてはどのようにお考えでございますか。
  182. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、この審議会のデータ等は公表すべきものと考えております。ただ従来の取り扱いにおきましては、企業機密等の関係がございまして、必ずしもこれが公表されていなかったことも事実でございますが、今後のこの食品衛生調査会の運営のしかたといたしましては、やはり学会で発表されたものあるいは学術雑誌に発表されたもの、そういったすでに公表されたデータを、すべてこの食品衛生調査会の資料として採用することにより、公開の原則を貫いてまいりたいと思います。さらに、この調査会で審議されました経過等につきましても、これを公開する予定でおります。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう資料の公開につきましては、これは広く学者、研究者等にやはりチェックをしてもらう必要があると思いますし、どうかひとつ公開の原則に立って、秘密にすることのないように、これは重ねて強く要望いたしておきます。  それから、承認済みの食品添加物は何種類あって、そういうものの安全性等につきましては、こういうような問題が続出してまいりますと、これは非常に疑わしいものになってくるわけでありますので、そういう点におきまして、これは当然チェックをする必要があろうかと思うのです。しかも諸外国におきましては、二世代にわたるそういうチェックもしているわけですね。わが国の場合はそういうものがないわけであります。そういう点におきまして、すべてがそういう色めがねで見なければならないような悲しむべき状態に入っておるわけでございますし、今後こういう添加物等につきましては、どういうようなチェックをなさっていかれるのか。厚生省のそういう具体的な基本方針というものを、ひとつお伺いしたいと思うわけであります。
  184. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 現在、厚生大臣により指定されております食品添加物の種類は三百三十七種類でございます。非常に数が多いわけでございますけれども、こういった添加物の毒性を再点検するということは、先生御指摘のように、その時代時代の学問の進歩に応じまして、新しい観点から、その毒性を絶えず再点検すべきものだと考えておるわけでございまして、指定の時点におきますデータのみをもって、永久にこれが安全であるというものではないわけでございまして、絶えず学問の進歩に応じながら、この再点検をやってまいりたいと思うわけでございます。  特に、従来、この添加物の指定に際しましては、急性毒性及び慢性毒性を中心といたしまして、その安全性の確認を行なってまいったわけでございますが、最近の学問の進歩によりまして、その遺伝に与える影響あるいは次世代に及ぼす影響、そういったものが必要になってまいったわけでございまして、昭和四十九年度の予算におきまして、そういった二世代にわたる毒性と申し上げましょうか、安全性のチェックということが予算的にも認められたわけでございまして、まさに先生御指摘のような観点に立ちまして、この食品添加物の再点検を行なってまいりたいと思うわけでございます。  なお、その再点検を行なう添加物につきましては、やはり重要性の高いものからこれを実施してまいる予定でございまして、とりあえず発色剤、あるいはただいま先生が問題にされておられますAF2を含みます防腐剤、あるいは酸化防止剤、こういったもの等から、とりあえず着手してまいる所存でございます。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、これは大体何年計画で終わるのですか。
  186. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 これは先ほど御答弁申し上げましたように、絶えずチェックするということでございまして、従来の慢性毒性の再チェックというものが、昭和三十七年から現在までやりまして、一応一巡いたしたわけでございまして、これがまた、ただいま先生御指摘のように、二世代に及ぼす影響というような新しい観点から、もう一度最初から再チェックということでございまして、やはりこの三百三十七種類の添加物につきまして、年次計画をもってやるわけでございますが、いつということではなく、できるだけ、能力の許す範囲内におきまして、多数のものを早急にやってまいりたいと考えております。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 二世代にわたるそういう問題ということは、諸外国でもやっておるわけでありまして、これはもう早急にやってもらう必要があろうかと思うのです。のんびりした、たとえば慢性については昭和三十七年からやっておるというようなことで、十年もかかるようなことであっては困るわけであります。これはもう国民の命と健康にかかわっておる重大な問題であるわけであります。そういう点におきまして、それは研究する期間というものは何年もかかることはわかるわけでありますが、やはりそれだけのスタッフと金をつぎ込んでやれば、これは短縮できるわけであります。こういう点におきまして、厚生省も行き詰まっておるわけでありますし、こういうときにこそ、科学技術庁は調整のそういう研究費もあるわけでありますから、こういうことを漫然と見ておるということではいかぬわけですよ。こういう国民に最も密着した問題等につきまして、こういう問題にこそやはり支出すべきなんです。これはひとつ千葉局長さんに、どういうように、一体科学技術庁は人の命や健康を考えておられるのか、あなたの決意をお伺いしたいと思うのです。具体的にどうされますか。
  188. 千葉博

    ○千葉政府委員 自来、私、たびたび申し上げておりましたように、この種の問題につきましては、科学技術庁も、いわゆる生活に密着した科学技術を振興するということを強くいま打ち出しておるわけでございまして、いま先生の御指摘の食品添加物、これは主として厚生省が専管となっておりますけれども、科学技術庁は全体の科学技術の振興、特に生活に密着したところということで、この種の問題については、重点的に、総合研究として取り上げて、研究開発を進めていきたい、こういうようにいま考えておるわけでございまして、特に厚生省の手の届かないような基本的な問題、それから各いろいろな分野との共通的な問題、たとえばこういった化学物質あるいは重金属も含めてでございますが、実験動物と人との関連——実験動物でいろいろ実験いたしまして、これは人にどういうように適用したらいいか、こういったような問題についての研究、これはもう非常に基本的な問題で、この種の問題がはっきりすれば、もっともっと添加物などにつきましても、的確にこれは結論を出し得るのではないかというような判断を、私、下しておるわけでございますが、こういったものにつきましては、私のほうも特調費を毎年一億ぐらいずつ出して、五年ぐらいの計画でやろうということで、いま盛んに進めて、これは全国的な規模でいまやっておるわけでございます。そういった点もやっておりますが、そのほか、厚生省の手の届かないような点がございましたら、私のほうも手を差し伸べまして、これを推進していきたい。こういったような意味で、実は私のほうも本年度から生活科学課という課を設けまして、この種の問題を重点的に取り上げたい、かようにいま考えておるわけでございます。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 厚生省から要請されて手を差し伸べるということは、私は後手だと思うのですよ。そういう未知の分野といいますか、部門部門の隘路があるわけですよ。ですから、そういうところを科学技術庁がさがし出して、厚生省は何をぼんやりしておるんだ、こういうところこそ研究しなさいという、指導性を発揮しなければいけないと思うのですよ。そういう点、何か要請されてから、予算の中でこれだけ出しましょうという姿があったと思うのです。ですから、科学技術庁も一歩前進してそういう姿勢に立つ、そうしますと厚生省は、科学技術庁からこういわれる、第一線を担当しておる厚生省として、こういうふうに指摘されることでは恥ずかしいということで、また力を出し合うわけですよ。そういう姿勢がかみ合ってこそ、ほんとうに、問題になってから手を打たなければならぬというような不細工なことは出てこないと思うのです。ですから、そういう点は、ひとつ科学技術庁は一歩も二歩も踏み出してもらいたいし、厚生省も、国民の健康と命を守るという点に立ちまして、ほんとうに全力をあげて、そういう新しい、隠されておる部門をさがし出して、先手、先手をとっていただきたいと思うのです。いままでの科学技術庁なり厚生省の行政というものは、全く後手行政ですよ。何かいろいろな障害が出てきて初めて、それからこうしょうか、そういう、船に穴があいたら、トタン板をさがしてきて、ぽんぽんと打って、まあどうにか沈まぬ、半分沈むようなかっこうで進んでおる姿が、科学技術庁や厚生省の姿だと思うのです。そうじゃなくして、もっと堂々とした、国民に信頼される姿勢をもって前進していただきたいと思うのです。最後に、両局長さんから決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  190. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生から非常に貴重な御意見を拝聴いたしたわけでございまして、われわれといたしましても、国民の健康を守る立場にあるわけでございますので、今後、先生の御意見の御趣旨を体しまして、積極的に国民の健康を守るような行政を進めてまいる所存でございます。
  191. 千葉博

    ○千葉政府委員 従来も、科学技術庁はこの種の問題に積極的に取り組んでいたつもりでございますが、先生の御指摘がございまして、ごもっともだと思いますので、さらに一そう努力したいと決意しておるわけでございます。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、終わります。
  193. 安井吉典

    安井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。   午後六時十二分散会