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1974-04-25 第72回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十五日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 安井 吉典君   理事 伊藤宗一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐々木義武君 理事 中山 正暉君    理事 石野 久男君 理事 瀬崎 博義君       加藤 陽三君    羽田  孜君       前田 正男君    湊  徹郎君       粟山 ひで君    近江巳記夫君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁計画         局長      安尾  俊君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         科学技術庁原子         力局次長    生田 豊朗君  委員外出席者         原子力委員会委         員       山田太三郎君         科学技術庁長官         官房科学調査官 吉澤 奎介君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君     ————————————— 四月二十日  核融合実用化促進に関する請願(濱野清吾君  紹介)(第五四八八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力安全性  確保に関する問題等)      ————◇—————
  2. 安井吉典

    安井委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤宗一郎君。
  3. 伊藤宗一郎

    伊藤委員 当委員会では、しばらく原子力の問題で、特に分析研等の問題で、いろいろ慎重な審議が行なわれておりました。そのわれわれの委員会審議なり要望に基づきまして、森山長官をはじめ科学技術庁は、鋭意原子力発電推進並びにそれに基づくいろいろの問題で、日夜御努力を賜わっておりまして、その成果の一日も早く実らんことをわれわれは御期待申し上げておるわけでございます。このことにつきましては、さらに長官をはじめ役所の方々のなお一そうの御決意なり御推進を、あらためて御期待申し上げるわけでございますが、まず、それはそれといたしまして、われわれは当委員会で、科学技術行政推進をお互にはかっているわけでございますけれども、それもこれも、単なる科学技術振興なり推進ということにとどまらず、それはとりもなおさず、国民生活向上なり福祉向上に役立つという形での科学技術をわれわれは願っておるわけでございます。それはまた、科学技術の本来の目的でもあるわけでございまして、そういう観点から、きょうはその観点に限定いたしまして、いままでの問題から離れた形で、御質問申し上げたいと思います。  まず、大臣は、先般の当委員会での所信表明で、国民生活に密着する科学技術、その推進ということで、ライフサイエンス振興を取り上げられました。われわれも全く同感でございますが、そのライフサイエンスというのは、比較的耳新しいことばでもございますので、国民各位が、正直言って、わかっているようでよくわからないという面もございますので、この際、ライフサイエンスというものはどういう領域のものか、また、その中で、大臣はどういう意気込みで、このライフサイエンスという新しい科学技術行政推進振興に御努力をされるのか、所信表明の補足の形で、ひとつ御方針を、この際あらためて明らかにしていただきたいと思います。
  4. 森山欽司

    森山国務大臣 伊藤委員指摘のとおり、ライフサイエンスということばは耳新しいことばでございます。このことば意味につきましては、政府委員のほうからお答えをさせていただきたいと思いますが、科学技術庁といたしましては、科学技術庁が取り組んでおる、いわば先端的な学問技術という意味では、最も新しい分野に属するわけでございます。それで、この分野を伸ばすために、専門センターなどを一つ設けて、ぜひ推進してほしいという各方面からの御要望があったことは事実でございますが、四十九年度は、とりあえず理化学研究所の中に、このため一部門を設けて、将来のセンターへの布石ともいうべきものといたしたわけでございますが、一つの橋頭堡を築いたということでございまして、これから今後のライフサイエンスを大いに伸ばしていくための——必ずしも大きな布石ではございませんけれども、将来への第一歩を踏み出すという意味はあったかと思っておるわけでございます。しかし、国民生活に密着する科学技術ということでございまして、これからこれを伸ばしていかなければならないということで、今年度からいよいよ手をつけるわけでございますから、ただいまお話がありましたような点をよく考えまして、これを今後伸ばしていくという意味で、そういう角度から、これから諸般の手配をしてまいりたいというふうに考えております。  残余の点につきましては、政府委員のほうからお答えいたさせます。
  5. 安尾俊

    ○安尾政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、ライフサイエンスということばは、従来からございます生物学医学農学物理学、そういうふうなものと比べまして非常に耳新しいことばでございますが、このライフサイエンスということばは、一九三〇年ごろにアメリカカリフォルニア大学生物系の総合的な建物をつくったときに、ライフサイエンスということばをつけたというのが始まり、こういうふうに聞いております。現在では、アメリカ国立科学財団におきまして、科学領域を七つに分けておりますが、その中の一つとして、ライフサイエンスを位置づけておりまして、アメリカではもうすでに非常に定着したことばになっております。  一方、わが国におきましては、戦後、ライフサイエンスにつきましての下地がだんだんできてまいりましたが、特に昭和四十六年四月に、先生承知のように、科学技術会議の第五号答申が出されまして、その中で、その振興必要性を強調されたわけでございます。それから、このライフサイエンス重要性が広く認識されるに至ったわけでございます。  ライフサイエンスは一体何か、どういう学問かと申しますと、従来、十九世紀のころには、生物細胞というものがその中の構造や機能最小単位である、こういうふうに考えられておったわけでございますが、二十世紀になりまして、物理学が非常に発達いたしまして、物理学考え方あるいは方法などが生物学の中に入りまして、生命の原理が生体内の物質、たとえば高分子働きとしてとらえられるようになりまして、遺伝などが分子レベルで解明されるようになり、これに伴いまして、非常に広い分野応用面も開けてきたわけでございます。一言で言いますと、ライフサイエンスというのは、いろいろな生物の生きていることそれ自体に着目いたしまして、物理化学的な手法など各分野にわたります現代最高水準科学技術を駆使しまして、生命の仕組みや働きを明らかにしまして、それと同時に、その結果を保健、医療あるいは環境保全食糧確保、新しい工業等分野応用いたしまして、国民福祉向上をはかるところの総合的な科学が、ライフサイエンスということになっております。  ライフサイエンスにつきましては、科学技術会議懇談会報告に述べられておりますように、人類の将来を展望し人間活動と自然との調和をはかる上で最も重要な指針を与えるものである、こういうふうにいわれまして、人間生存科学である、こういうふうに申されておる方もおるわけでございます。
  6. 伊藤宗一郎

    伊藤委員 いまの御説明で、多少私たちも理解しておることと同じだということがわかったのですけれども、また非常に有意義なことでもありますけれども、ただ、いままでもそういうことであるならば、医学ならば医学生物学なら生物学ということで、それぞれの大学あるいは各省庁試験研究機関において、それぞれの立場で研究が進められておりまして、いまことさらにライフサイエンスとして振興をはかろうとしておるのは、ある意味においては、いたずらにことばの目新しさのみを追求したり、また制度的にも、いま大臣から、理化学研究所のほうに、一つの将来の布石として、ブランチを設けたというお話もありましたけれども、制度的に屋上屋を重ねるようなおそれがあるのではないかというふうに思いますけれども、そういうことを乗り越えて、これに真剣に取り組んでいこうということについての見解を、ひとつこの際しかと明らかにしていただきたいと思います。
  7. 安尾俊

    ○安尾政府委員 先生指摘のように、各大学あるいは厚生省農林省等国立試験研究機関等におきましても、各般ライフサイエンス関係研究を実施いたしておることは事実でございますが、しかしこれらの研究機関におきます研究は、それぞれの設置目標に沿いまして、ある限られた分野での研究が行なわれているというのが現状でございます。ライフサイエンス研究というものは、ある学問学問専門分野の間のところを含めまして、生物学はもとより物理あるいは化学あるいは数学、工学、こういうふうな多領域にわたって、研究者が今後共同して研究を進めていかなければ発展しないものでございます。  たとえて申しますと、老化制御研究におきましても、老化と申しますが、単に老化の時点だけでなくて、発生あるいは分化、成長、こういうふうな前の段階から、生物分子細胞、組織あるいは個体、集団、各段階にわたりまして、総合的に研究を進めていく必要がございます。現在これらにつきましては、文部省の国立遺伝学研究所あるいは厚生省国立衛生院国立予防衛生研究所栄養研究所などのほか、大学においても、この老化について個々研究が行なわれておりますが、先ほども申しましたように、それぞれ設置目的に限られた範囲内でやっておりまして、広く総合的に研究推進しておるところはないわけでございます。先ほども申しましたように、科学技術会議ライフサイエンス懇談会では、ライフサイエンス研究推進は、今後研究領域間の相互の密接な協調をはかる、それとともに基盤研究目的指向的な研究の間の連携を十分確保する必要を指摘しておりまして、特に目的指向的研究につきましては、研究推進中核体となりまして、さらに研究に必須の実験生物や情報、研修等各般研究支援機能を果たすライフサイエンス研究推進センターを新設すべきである、こういうふうに申しておりまして、したがいましてライフサイエンス研究は、各大学あるいは現在ございます国立試験研究所等において、それぞれ研究が強力に実施されることはもちろん必要でございますが、同時に、この懇談会報告にございますように、各分野を総合的に有機的に連携をはかって進めていくということが必要でございまして、そのような観点から、まあこれまでありますものに屋上屋を重ねるということは決してない、こういうふうに考えております。
  8. 伊藤宗一郎

    伊藤委員 それでは、わが国も、そういうことで、これからわれわれの科学技術行政一つの大きな柱として、ライフサイエンス振興していくことになるわけですけれども、いま局長お話では、一九三〇年代からこのことばも使われ、またこういうような研究が進んでいるということですけれども、欧米諸国でのライフサイエンスの実態はどういうことになっておりますか。また一九三〇年代からですから、まあ四十年もたっているわけでございますけれども、こういうライフサイエンスという考え方なり組み立て方で、いろいろな研究成果ができ上がっていると思いますけれども、そういう成果等について、国民にひとつわかりやすく御説明いただきたいと思います。
  9. 安尾俊

    ○安尾政府委員 欧米におきますライフサイエンス現状あるいは推進策というものにつきましては、先生も御視察なされたということを承っておりまして、御造詣の深いことと思いますが、科学技術会議では、昨年二月にアメリカ、それから十一月にヨーロッパ主要国、この二回にわたりまして、ライフサイエンスにつきましての調査をいたしております。  その報告の概要を申し上げますと、まず米国についてでございますが、米国全米科学アカデミーというところがございます。この調査によりますと、米国ライフサイエンス研究対象というものは、生物の各レベルのほか、数学モデルあるいは人工臓器等、理工学的な研究にまで及んで、非常に範囲が広うございまして、かつそれに従事します研究者の層も非常に厚いようでございます。また、各分野研究につきましては、基礎から応用まで非常に質の高い研究をやっております。御承知のように、ニクソン大統領が議会に送りました科学技術に関します教書の中に、アメリカでは特に最近ガン及び心臓病で死亡する人が非常に多いため、これらの研究ナショナルプロジェクト一つといたしておりまして、これにつきましては、アメリカ衛生院におきまして研究をいたすとともに、各方面にグラントあるいはコントラクトというようなかっこう研究費を出して、研究を強力に進めております。一例を申し上げますと、理工系で世界的に有名なマサチューセッツ工科大学におきまして、ここは医学部はございませんが、その生物学分野に、新たにガン基礎的な研究をする研究センターをつくるというふうなことまでやっております。そのようなわけでございまして、アメリカ連邦政府が配分する研究費を見ますと、これは開発費施設費を含んでおりませんが、ライフサイエンス関係に一九七三年度は二十一億ドル、邦貨に換算しまして約六千四百億円でございますが、を投入しておりまして、全研究費約七十三億ドルの二九%に相当するような予算を支出しておるわけでございます。それから、アメリカにおきましては、これら研究機関研究はりっぱであると同時に、ライフサイエンス研究に特に欠くべからる、たとえて申しますと、質の高い実験動物あるいは微生物の系統、こういうものを保存する民間の施設が非常に整備されておるということが、またアメリカにおきます一つの特徴かと思います。  一方ヨーロッパにつきましては、イギリス西ドイツフランス等調査しておりますが、これらの各国におきましても、いわゆるライフサイエンス重要性が非常に認識されておりまして、いろいろの振興策が講ぜられております。それに必要なライフサイエンス関係予算も年々増加傾向にあるように見受けられます。またヨーロッパでは、各国間の国際協力も考慮されておりまして、ヨーロッパ分子生物学機構のもとで、分子生物学研究所西ドイツのハイデルベルグに設置するよう、目下準備がなされております。個々の国で申しますと、イギリスにつきましては、御承知のように、昔から生物学につきまして非常に伝統的な力強さを持っておりますが、ケンブリッジ大学生物学等では、単に基礎研究をするだけでなく、応用的な研究機関研究者とも非常に密接に連絡をして、ライフサイエンス関係研究を進めております。それから、西ドイツにおきましては、人間生活向上及び環境条件の改善というものに対して、科学技術振興を大いにはかっていくということが一つ目標となっておりまして、ライフサイエンスが非常に重視されておりまして、分子生物学センター、あるいは放射線環境センター、あるいはドイツガン研究センター、この三つの大きな研究センターが新設あるいは整備拡充されて、目的指向的な研究が強力に進められております。と同時に、一方、基礎的研究面におきましても、大学及びマックス・プランク研究協会基礎研究が着実に進められておりまして、一例を申しますと、マックス・プランク研究協会の傘下の五十二の研究所のうちでは、二十八がライフサイエンス関係研究を行なっておるような次第でございます。それからフランスにおきましては、経済社会発展第六次五カ年計画、これは一九七一年からの五年間でございますが、この中で、一般科学研究に関して、ライフサイエンスを最も優先度をつけてする分野といたしておりまして、たとえて申しますと、人文社会科学の全分野を包括しております国立科学研究センター、CNRSと申しますが、ここの百二十六の研究所のうち四十二が、ライフサイエンス関係研究をやっておりまして、予算の比率を見ましても、一九七一年に二二%ぐらいを占めていたものが、最近は二五%に増加しておる、こういうふうなかっこうでございまして、欧米とも、それぞれの国情に応じまして、ライフサイエンス研究を強力に進めておるというのが各国現状かと存じます。
  10. 伊藤宗一郎

    伊藤委員 そういうことで、わが国もこれから欧米諸国に負けないようにやるわけですけれども、それはまことにけっこうで、それにわれわれも協力を惜しみませんけれども、ただ、現在の科学技術庁は、原子力とか宇宙とか、そういう関係技術者なり職員が多くて、そういう意味での体制はまあまあ整っていると思いますけれども、まことに申しにくいことですが、そういう整っている体制でも、先般の分析化学研究所のああいう捏造データを見抜くことができなかったということは、まことに残念なことでございますけれども、実際の姿であったわけです。ましてこれから手がけようとする生物系あるいは農学医学系関係職員は、科学技術庁にはきわめて数も少なくて、そういう意味からも、このライフサイエンス振興体制を十分取り得ないように私は見るのです。したがって、そういう意気込みライフサイエンスを手がけましても、また原子力関係の先般のような、ある意味では不始末といっていいと思いますけれども、そういうことがあっては、科学技術というものに対する国民の信頼あるいは期待というものは十分かち得ることはできないと思うわけでございますが、そういうライフサイエンス関係体制強化等について、どう考えておられますか。
  11. 安尾俊

    ○安尾政府委員 先生指摘のように、科学技術庁におきましては、医学農学等生物系職員の占める割合というものはさほど大きくございませんが、ライフサイエンス振興にあたりましては、計画局に、生物系職員を主体としましたライフサイエンス企画室というのを設置いたしまして、関係の各省庁と密接な連絡をし、また御協力をいただきまして、ライフサイエンス振興にかかわります企画事務を進めておるわけでございます。さらにまた、計画局ライフサイエンス推進委員会というものを設置いたしまして、ライフサイエンス研究分野で現在第一人者であるというふうな学者研究者委員に委嘱いたしまして、総合的なライフサイエンス研究推進具体策につきまして、御検討を願っておるわけでございます。さらに、科学技術会議ライフサイエンス部会というものを昨年度から設けておりますが、この部会におきましては、部会長をはじめとしまして、多数の生物系権威者委員お願いをいたしまして、ライフサイエンス推進方策基本事項につきまして、目下鋭意御審議を願っておるわけでございまして、これらの部会等の御審議の線に沿いまして、今後体制を強化していきたい、こういうふうに考えております。  なお先ほど大臣からも御説明がございましたが、四十九年度におきまして、理化学研究所ライフサイエンス推進部設置することになりましたが、研究の委託あるいは研究成果評価につきましては、専門家からなります研究評議委員会というものを設置いたしまして、事業が適正に行なわれるように進めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  12. 伊藤宗一郎

    伊藤委員 ライフサイエンスは、大臣あるいは長官の御説明どおり人間の存在、生存そのものの根源をつく、人間生存に直接かかわってくるたいへん大事な重大な問題をはらんでおる科学だと私は思います。たとえば羊水の分析によって胎児の男女の判別が可能となっている。もちろんこれは親にも教えないというようになっておると聞いておりますけれども、あるいは将来たん白質合成によって人工食糧がつくられる。さらには遺伝子を判別して新しい農作物の品種がつくり出される。またそういうことから発展をして、生命そのもの合成をされるというようなことに進んでまいりますと、これはもうたいへんなことでございます。したがってライフサイエンスは、その成果使い方一つによっては、人間にとって深刻な問題をもたらし、ひいては人間尊厳にかかわる問題をもはらんでいると思いますけれども、そういうことに対する対策は十分考えていると思いますけれども、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  13. 安尾俊

    ○安尾政府委員 先生指摘のとおりでございまして、ライフサイエンス遺伝子制御あるいは生命合成、また生物反応的な、あるいは制御的な機能を持つような科学技術を将来可能にするものでございまして、その応用方向を誤りますと、人間尊厳にかかわることが憂慮されるわけでございます。したがいまして、総合的な研究推進をはかるにあたりましては、多方面にわたっての影響を十分考慮し、テクノロジーアセスメントあるいは研究成果の厳密な評価等をすることが必要でございまして、ライフサイエンスが真に人間福祉に役立つように、これらテクノロジーアセスメントあるいは研究評価をして対処してまいりたい、こういうふうに考えております。科学技術会議ライフサイエンス部会には、生物学者のほかに、哲学あるいは宗教家等の方を専門委員お願いをいたしておりまして、今後のライフサイエンス推進方向は誤りのないように十分進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  14. 伊藤宗一郎

    伊藤委員 そういうことで、いろいろな配慮あるいはまたライフサイエンス重要性は一応わかったわけですけれども、先般国会を通過した昭和四十九年度の予算で、どういうことをやろうとしておるのか、簡潔でいいですから、目玉商品みたいなことで、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  15. 安尾俊

    ○安尾政府委員 科学技術庁としましては、ライフサイエンスにつきまして、従来からもいろいろ努力をしてまいっておりますが、昭和四十九年度におきましては、特別研究促進調整費の増額、それから理化学研究所におきます生物化学特定研究の課題をさらにふやしまして、一そうこれらの施策を充実させるとともに、先ほども申しましたように、新たに理化学研究所理事一名を含みます十名からなるライフサイエンス推進部設置いたしまして、一億円の予算事業を開始いたしたい、こういうふうに考えておりまして、これにつきましては、とりあえずライフサイエンス研究推進の基本的な計画、いわゆるマスタープランと、それから早急に着手する必要のあります老化制御研究につきましての体系化計画化というものに取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  16. 伊藤宗一郎

    伊藤委員 時間でございます。最後にお伺いいたしますけれども、まあそういうことで、ライフサイエンスを進めるにあたって、理化学研究所に十人程度職員、あるいはまた一億円程度のお金で推進体制が整ったというのは全く間違いでありまして、もう少し、これを本格的にやらねばならない重要性をるる御説明になったわけでございますから、そんな程度こそくなことでは、とても十分なことはできないわけでございまして、大体従来の科学技術庁は、多少分野が広いせいもありますけれども、やることに徹底を欠くきらいがあったわけで、特にいままでのお話を聞いて、ライフサイエンスについてはこんなことでいいのかということを私も率直に感じます。もちろん、ことしの予算はすでに済んだわけでございますから、やむを得ませんけれども、やはりもう少し徹底的にやるという意気込みでなければならぬと思いますけれども、そういうことについて、来年度の方針なども含めて、どういう考えか、ひとつ最後にお聞きして質問を終わります。
  17. 安尾俊

    ○安尾政府委員 先生指摘のように、四十九年度におきましてのライフサイエンス予算というものはさほど大きくございませんが、とりあえずマスタープランと、それから研究体系化あるいは計画化ということでございまして、現在の体制で、さらに委員会あるいは委託形式等で現在のところは十分対処できる、こう考えますが、将来は、ただいま科学技術会議ライフサイエンス部会で、いろいろ推進方策につきまして引き続き御審議をいただいておりまして、その線に添いまして一そうの努力をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  18. 森山欽司

    森山国務大臣 ライフサイエンスについてたいへん御関心を持っていただいて、ありがとうございます。申すまでもなく、人間存在に関する科学技術でありますし、これからの科学技術国民生活に密着する方向に進んでいかなければならぬ、それにしては四十九年度はこんな程度でいいのかというお話、まさにそのとおりであろうと思います。しかし新しい分野でございますので、これを着実にどうやって育てていったらいいかということにつきまして、私も科学技術会議の藤井議員なんかと、この問題のために数回会って、具体的にどう進めたらいいであろうかということをいろいろ研究いたしておる次第でございまして、御指摘がございましたような面につきましては、今後ともライフサイエンスの着実な前進を期するという角度から、五十年度以降について努力してまいりたい、そういう所存でございます。当面、先ほどのように、原子力だとか宇宙だとかいろいろ問題がありますから、そっちのほうを見ていないのじゃないか、こう言われると、確かにそっちのほうに非常に多忙であることは事実ではございますけれども、これらの問題についても、ただいま申し上げましたような角度で検討しておるということに御留意願い、今後とも御支援をお願いいたします。ありがとうございました。
  19. 安井吉典

    安井委員長 石野久男君。
  20. 石野久男

    ○石野委員 科学技術庁分野は非常に多岐にわたっておりますし、またやることがみんな新しいことが非常に多いわけですから、その多いことに対処する行政施策というものも非常に斬新なものであり、そしてまた民主的に行なわれなければならぬと思います。いまライフサイエンスの問題で、科学技術庁は一億円の金で、理事を一人置いて十人の人員でやる、それでも徹底しないじゃないかという伊藤委員からの叱咤激励を受け、長官は、一生懸命やりますという答弁をなさいました。原子力の問題はもう長いこと論議されておりますけれども、分野としてはまだまだ研究開発しなければならぬものがたくさんある、こう私は思っておりますが、大臣は、この原子力の問題について、そういうような考え方について、どういうふうにお考えになっておりますか、そこからひとつお伺いしたい。
  21. 森山欽司

    森山国務大臣 原子力関係で、ですか。もう少し具体的にちょっと……。
  22. 石野久男

    ○石野委員 もう一ぺん言いますが、ライフサイエンスの問題については、新しい分野で非常に重要だから、人間尊厳にもかかわるようなものであるということは、もうさきに質問の中で応答があって、はっきりしました。私もそうだと思っておるのです。原子力分野も、長いことずっと、これはわれわれも扱ってきたし、それから、科学者も技術者も、あるいは業界も扱ってきておりますけれども、しかし、原子力部門には、まだまだ未解明のものがたくさんありまして、ちょうどライフサイエンスに取り組むと同じような姿勢でこれに取り組んでいかなければならない、それほど、まだはっきりしないものがたくさんある、こういうふうに私は思っておりますが、大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
  23. 森山欽司

    森山国務大臣 申すまでもなく、原子力の平和利用の面に関しましても、これは実用段階に入って、特に原子力発電の場合、二十年足らずでございますし、学問的にもいろいろ解明しなければならない問題はあるわけでございますし、また政府の施策としましても、さらに充実を期さなければならない点があることは、もう申すまでもございません。
  24. 石野久男

    ○石野委員 原子力は実用の段階に入っているという考え方は、しばしば聞くのですけれども、この問題については、見解の相違も多分にあるわけでございまして、ある部門では確かに発電機が動いておりますけれども、しかしまた、事故もたくさんありまして、解明しなければならぬものがたくさんございます。そういうような意味を含めて、本年度はやはり相当予算措置をなさった、こう思います。  原子力研究所に対しての予算措置は、昨年の当初予算から見れば、ほぼ四十億の予算の増加をしておる。これは何回も聞いておることですけれども、予算はずいぶん増額されましたけれども、人員がどうもふえないというところに問題があるわけですね。大臣も、四名ぐらいの増員で、わしもびっくりしたんだという御答弁が、この前の委員会でございました。この四十億からふえた予算に見合うような人的な対策、要員の対策というものを、その後どのように具体的にお進めになっておられますか、また、これからどうしようとしておられるか、その点をひとつお聞かせいただきたい。
  25. 森山欽司

    森山国務大臣 これは石野委員御案内のとおり、この前もちょっとお答えいたしましたが、この原研関係予算がふえましても、直ちにこれは人を要するという予算だけではない。施設がふえていますから、これが動き出したときには人が要るということになりましょうが、そういう施設ができ上がるまでの段階というものがございますから、予算がふえたら直ちに人がふえる、こういうようなことにはならないと思いますが、しかし、仕事がふえてくれば、その仕事のふえ方の発展段階に従って、人のほうも要るだろうと私は思います。  ただ、原研だけのことではございませんが、政府自身の場合でも、一律五%削減というものがあって、こちらは相当要員をふやしたつもりであっても五%減らすので、原研のように人が多いと、プラス、マイナスして、まあプラスわずかというようなことになってくるわけでありまして、その点は、私もこれでいいのかというふうに考えております。一律にやるやり方についてですね。  それで、その点について、私は何とかしたいと思っておったのでありますが、これは四十九年度の予算から直ちにいますぐというわけにいかぬので、補正予算のときでも、ひとつこういうのを見直してやったらどうかと考えておったのでありますが、何か従来の慣例によると、補正予算のときにはなかなかそういう要員の配置等の問題はあまり議論にならぬ、こういうことだそうであります。  そういうことでございますが、私としては、いずれは補正の時期が参ると思いますので、そういう時期にこのことを、ただ従来のやり方がそうだからといって、拱手傍観をしておる気持ちはございません。そういう時期があれば、検討して、若干前進するような体制をとるべく努力をいたしたいと思いますが、従来の経過がそういうことであれば、やはり五十年度の予算から考えていかなければならぬということではないかと思います。そうなると、まあ原研だけ、要するにそういう政府関係機関だけではなくて、政府自身も、毎年毎年五%の人員削減をやっての上での要員増加であるということになってまいりますと、これは原子力研究所だけ違った行き方をするということについては、これは相当考えていかなければなりませんから、私もそういう意味で、原研がほんとうに人がどのぐらい足りないのかという問題について、真剣に取り組んでいきたいというふうに考えております。  私は、確かに、新しい仕事がふえていくのでありますから、人員の問題はそうだと思います。これは組合ばかりじゃなく、使用者側、原研の管理者側の人も強く主張をいたしておりますから、両方からそう言っておるので、できるだけそういう意味努力をして、できるだけ早い時期に取り組んで、いままでのような成り行きまかせでないような体制はとりたいというつもりでおるわけでございます。  ただ、いろいろこういうのは、予算定員というものと実際にいる実人員というのは、どこの役所も研究所も、食い違っていまして、その辺のところで、いわゆる定員が多ければ人件費の操作がやりやすいとか、いろいろな思惑等もありますから、よくひとつ実情を調べて、この問題について取り組んでまいりたいというふうに考えております。  これは御相談しますよ、そういう意味では。これは御相談してやるようにしますから……。あなたのおっしゃるように合格点を取れるかどうかは別にして、気がまえとしては、よく御相談してやるようにいたしますから……。
  26. 石野久男

    ○石野委員 定員の問題については、政府で一応の基準をつくっておって、そうして五%削減などというようなことがあるということも、われわれは聞いておりますが、それがいいかどうか、そしてまた、それが一律にやることがいいかどうかも問題があると思うのです。大臣が前向きで、予算はふえたけれどもなかなか実質的には人はふえないということの不合理さというものはお認めでございますから、そういうふうな点で、善処していただくことはよくわかります。気持ちはわかるのですけれども、お話がありましたように、本予算できまって、補正予算のときに人員の定員増加なんというのは、従来ともなかなかできないわけです。ですから、そういうことになりました場合に、これはやはり特殊状態として、内閣の中で主張していただかないと、とてもこれは要求を満たすことはできないだろうと思うのです。長官のところにも、たとえば原子力研究所の労働組合の諸君が、深刻な若手研究員の不足などというようなことで、資料として表まで出しまして、年齢別に表をつくっておりますよ、率直にいいまして。いわゆる三級、四級、五級、六級、七級、八級というところの人員がどういうふうになっているかということを表示しております。これなんかで見ると、確かに経験三年ないし五年のところの人員というのはほんとうに少ないのですね。研究者が四十八人しかいないということです。全部から見ると一割程度しかいないのですよ。だんだん高年齢になっていくという状態になっている。もちろん高年齢層でも研究はできると思いますけれども、若手の研究者をどんどん充足していかなければ、将来の発展というものは非常にむずかしい。だから、こういう資料はひとつ、所側でもできていると思う、実態は一つですから、同じものだと思います。こういうものをひとつ局のほうでもよく見てもらって、それで対策を考えてもらいたい。大臣が相談に乗るということですから、先ほど理事会のときにも、こういう問題の理事会での論議がございました。だから、各党ともこういう問題を論議する、同時に、科学技術庁としても、こういう問題をもう少し——ただ労働者の要求だからけしからぬというふうにしないで、真剣にひとつ取り組んでもらいたいということです。これは特に長官お願いしておきたいのです。先ほどの御答弁で、大体趣旨はわかっておりますが、特にその場合に、今度の予算が非常に増額されて、そして、たとえば昨年度の何でいきますと、ECCSのための規制問題等での研究費がずっとふえたわけですよ。あるいはまた、六千万キロワットの計画の発足のためのいろんな研究が出て、それに対して相当研究が集中化されている。そのときに今度は、従来あった研究の部門からみんなそこへ一つに集めるわけですね。そうすると、従来あった研究というものはそこだけ手薄になってしまうというようなことで、研究が中途はんぱになってしまうという面が、私たちしろうと考えでも予測されるわけですよ。先ほど伊藤委員から、科学技術庁がやっていることはどうも徹底していない、どうも中途はんぱだというお話が、前の政務次官からあって、これは私はまさにそのとおりだと思うのですよ。だから、そういう意味からいいましても、定員をもうちょっとやはり——一律そうだからというようなことだけでは、科学技術庁としての役割りを果たせないと思うので、特に大臣は、予算編成の段階で非常に強引に予算を取ってもらった。そのことをまた定員のほうにも、強引なやり方をしてもらう意思があるかどうか。ただ、これはさまっているんだからしかたがないということでは、幾らいい答弁をもらっても、それ以上に発展しませんので、大臣、これはひとつ閣議の中でも、特別措置の対策を総理と折衝する用意がございますかどうか、腹づもりをひとつ聞かしてもらいたい。
  27. 森山欽司

    森山国務大臣 総理とか閣議とかいう具体的なことは別にいたしまして、やはり要員の問題は、働いている人たちに対する一つの経済的条件、経済的地位の向上に関することでございますから、できるだけ協力したい。頭からいかぬなんて、いささかも思っていませんよ。大いにひとつそういう問題については、それは全部が全部聞けないかもしれませんけれども、いまあなたからお話があったような意味においては、われわれも何とか真剣に取り組んでまいりたいというふうに考えております。そうじゃないことでお見えになることも多いものですから、それはあまり熱さましをかけないように、そういうほうでは大いにひとつ一緒にやりたいと思っていますから、そういうふうにひとつまたいろいろ御指導をお願いいたしたいと思います。
  28. 石野久男

    ○石野委員 大臣は長いこと社労関係の仕事をなさっておられて、労働者に対する、あるいは従業員に対する考え方では、一つの見識をお持ちでございますし、そういう観点から、働く者が精魂込めて非常に効率の上がるような職場条件というものをつくる。それはただ観念的にものを言ったってしようがありませんので、一人で五人分、十人分の仕事ができるものじゃございませんから、予算がついた場合には、それに見合うような施設ができない間は、人員はどうだこうだというようなことをやったら、これはどうにもならぬと思うのですよ。五十億も六十億もの予算がふえていて、そして人員は、ほんとうはふえないと同じですよね。四名ぐらいだったら、どうにもならぬですよ。かりにその部門にうんと人を持っていけば、ほかがまた穴があくのですから、全体としては仕事ができないということになりますから、やはり大臣はそういう点をもうちょっと、予算をつけてもらったら人もつけるという配慮はしてほしい。それでないと、どうもけつが抜けているというような気がします。ぜひひとつ、私はその点を、これは大臣に、委員会に対して約束してもらいたいのです。ただ希望しておりますとか、やるつもりでございますじゃ、どうにもならぬ。これはほんとうに予算審議のときから、ぼくらこれじゃだめじゃないかということで、誠意を込めて何しているので、労働組合がそれのほかのことでも来ますけれども、ほかのことはほかのことでいいのですよ。だけれども、この予算と人員の問題については、つじつまが合いませんから、この点についてだけの決意をひとつ、これはほんとうにぼくは、ただここで応答しただけでは、具体的に何も出てこないのでは、しようがありませんから、補正予算のときにも出る見通しはありませんし、いまのままで、このままでいけばほんとうに人員はふえないですよ。何か特別措置をするということを、具体的にひとつ大臣考え方を意思表示してほしいですね。
  29. 森山欽司

    森山国務大臣 なかなか石野さん、むずかしい問題で、私もあなたと同じように、若干矛盾を感じておることは事実です。いつこれは直すのだ。とにかく今度の予算に関連して人員もふやす——何人だったかな、四十人ぐらい予算でふやすところだった。ところが三十六人が五%減員だというので、プラス・マイナス五人だというのですから、どうもあなたのおっしゃるのは、まことにそういう点については、原研の場合については確かに一つの問題点である、こういうように思っています。どうやったらいいか。私はこの前、国会で御質問があった際に、先ほど申しましたような心づもりでおりました。しかし、なかなかすぐに解決できるようなことになっておりませんが、微力ですが、一生懸命やりますから、あなたと一緒に、しかるべきところに一緒に顔を出してもいいです。これはやりますよ。ただ、それがいい結論が出るかどうかが、政府全体の方針だものですから、その中で原研の場合は特別じゃないかというような、そういうものが何かあれば、それを見つけて、何か措置できればと思っておりますけれども、なかなかそこまで約束しろといわれても容易ではありませんが、しかし、あなたと一緒にこういう問題を考えるということについては、異存がありません。
  30. 石野久男

    ○石野委員 私と一緒にといったって、ぼくは閣議に参画するわけにいかないので、だからやはりここでは大臣が、いろいろな理由があっても、総需要抑制の中で、あれだけの予算を取ったのでしょう。だから、大蔵だとか人事院だとかいうものとの、特に大蔵でございましょうが、三十六人も五%削減でぱっと削られちゃって、片方で予算のほうはうんと取ったわけでしょう。予算を認めさしたのだから、人員を認めさせられないというのは、やはりどこか抜けておったのだと思うのですよ、大臣努力方向が。
  31. 森山欽司

    森山国務大臣 こっちの追加要求で四十名ふえたのですよ。だけれども、一律削減で三十五を削っちゃった。だから、もし追加要求しなければ三十名近く減ったのですから、そういう意味では若干の前進があったのだ。しかし、ふやしたと思ったら、どうも期待がだいぶ違うじゃないか、そういう意味ではあなたと同感だ、こういうわけですから。私も、そういう仕組みになっているということについては十分な認識がありませんでしたから。しかし、これは政府一般でみなやっているところだ、こういうことでありまして、そこで、原研の場合困るじゃないかというようなことを特に強く言えるような、そういう勉強ができれば、こう思っておるのです。その辺のところが、まだわれわれが詰めてみてやらなければいかぬことだと思う。だからあなたのほうでは、こうこうこういうことで、原研の場合こうじゃないかという御論議もありましょう。私ども調べてみたら、やはりあなたの言うとおりだという面もあるでしょうし、いや、どうだろうねという面も出てくるでしょうし、人間ですから、いろんなことがほかにもありますから、だからそれはそれで、ひとつ大いにあなたと一緒にやれるように検討を進めたいということで、どうでしょう、きょうはそのぐらいのところで。おまえ必ずやれ、やると約束しなければ質問終わらさないぞというと、ちょっとぐあいが悪いのでして、いま申し上げたような見地から、これはこうしようとか、あれはああしようとかという御提案を願って、いろいろ御相談して、一律にこうだって、ここだけはおかしいぞとか、いろいろわれわれも中でがんばれるようなそういう体制をつくっていく、そういう対話の中に、新しい事態が生まれてきてしかるべきだ、こう思っておりますので、どうかひとつ御了解を願いたいと思います。
  32. 石野久男

    ○石野委員 大臣の誠意を信頼しまして、一応これはあとでまた御相談をさせていただく。これはぼくら相談したって、ほんとうに閣議に入れませんから、どうしたって、大臣にやってもらわなければしようがないので、それをひとつお願いしておきます。  そこで、人員の問題について、原研では若手研究者が非常に不足しているということを、労働組合自身でも訴えているんですよ。このことについてはどういうお考えでございましょうか。
  33. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 こういう科学技術研究関係、特に原子力では、若手が非常に必要であるということは、これは常識だと思います。それで、先ほど来、大臣説明のように、今回は実は三十六名減るということは、これはうっちゃっておいても減るわけでございます。実は五%減るときまっておるわけでございます。相当数の人員要求をいたしておりましたところ、あとからまた大臣が安全問題を中心にして追加要求をいたしましたことに伴いまして、その際に安全を中心にした人員要求をいたしましたときに、単に役所だけでなくて、原研のほうにも、役所と原研と合わせて幾らふやした、こういうようなかっこうに相なってまいりましたので、そういうようなつぼを、今後明年度以降とらえていきまするならば、そういう一般的な、いま申し上げました需要にもこたえられるという状況になっていくと考えます。
  34. 石野久男

    ○石野委員 定員の問題は、大臣がいまから努力してくださるということだから、三十六名の……。
  35. 森山欽司

    森山国務大臣 一緒にやるのですよ。
  36. 石野久男

    ○石野委員 一緒にやるのですけれども、その中で、特に研究所の中の若手の研究者がだんだんだんだん少なくなっていく。このことは、やはり研究所においては将来を見通して、年寄りが多くなったからいけないとかというわけじゃないですよ。しかし研究所の任務、性格の上からいきまして、若手が非常に少ない。定員だとかなんとかの関係から、若手の率がだんだん少なくなって、いまここで、これは原研労組が出している表ですが、たとえば三級の者で三年−五年の経験のある者は四十八人、比率にしますと一〇・七%だというのですよ。それから四級で六年−九年の経験者が九十二人、二〇・四%、それから五級が百六十九人で三七・六%、六、七、八級で百四十二人、三一・一%結局三級、四級、まあ十年以下の者が三一・三%というわけです。三分の一に足りないわけですよ。特に三年−五年というほんとうに若い諸君が、比率としては非常に少なくなる一方だということは、これは人員構成の上から、研究体制の上からいってもまずいのじゃないかという訴えがありますが、それについて、これは特に長官が——こまかい部門別にはいろいろ科学者のそれぞれの専門がありましょうけれども、しかし人員構成の上からいって、こういう傾向は研究所の態様としてはよくないのじゃないか。心配しているのは無理はないのじゃないかと私も思うのですよ。それについてのお考えはどうかということを、これは長官に聞いているんです。
  37. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほどの議論の中身になりますから、やはりある程度人をふやしてということがなければ、新しい人を入れられませんから、古い人はやめてもらうというほど研究所は歴史がそう古くありませんから——やめられる方もあるでしょう。新しい人をとれるようなそういう体制は、あなたが先ほどおっしゃったことの中で含めて考えていったらどうでしょう。満点はとれませんよ。満点はとれませんが、そういう方向については、できるだけ考えていくようにせぬと、ちょっと私どもも結果を聞いて面くらっているというようなことは、私どもも、そういう政府並びに政府機関一般にやっている一律人員削減というものについて認識が不足だったので、もしぼっておけば、ことしは減ったんですね、原子力研究所の人員が。そういう数字の結果になっておるのですから。これから大いに仕事もやってもらわなければなりませんから、それはそういうふうにひとつ考えていきたいと思います。
  38. 石野久男

    ○石野委員 ほっておけば減るということを盛んに言われるけれども、予算は五十億もよけいにとったんだから、予算との見合いなら、当然ふえるべきだということになるわけなんで、そこは努力が片ちんばになっているのですよ。予算、額だけはとったけれども人員はほうりっぱなしだということになるが、その反省は、大臣、しなくちゃいかぬと思うのです。  そこで、人員の問題については、処遇の問題があるわけですよ。これは私どもはきのう、各党ともみな要望書を原子力研究所労働組合から受け取ったのですが、この要望書の中で、いろいろあるのですよ。私は、この要望書の内容については、政府がこれに答えることでございますから、とかく言いませんけれども、その中で特にぼくはきのう聞いて、いままでそれを——ちょっとぼくらも長いこと原子力労働組合の問題なんかなにしておったのですが、原子力研究所の労働者あるいは動燃団の労働者には、家族手当がついていないのだそうですね。大臣、これはいまのなにで、やはり家族手当というものはいろいろ考え方はありましょうけれども、社労で非常に熱心にやられた大臣のことですが、この家族手当のついていないというのは、どうもやはり処遇の関係からすると、ちょっとおかしいと思うのだが、これはやはり何か考えてやる必要があるのじゃないですか。当然考えるべきだと思いますが、大臣どうですか。
  39. 森山欽司

    森山国務大臣 きょう専門家がいますから、少し専門家に答えさせて、それから私が……。
  40. 石野久男

    ○石野委員 時間がないから簡単でいい。考え方だけ聞かしておいてもらいたい。
  41. 森山欽司

    森山国務大臣 これは給与全体としまして、そういう制度がなくても織り込んでやっている。これは考え方はどういう考え方でこうなっているか、私、知りませんけれども、仕事を進めるについて、女房や子供持ちのほうが仕事の能率があがっているというかどうかということは、仕事の能率とは別だという考え方もあって、そういう制度は格別設けないで、配偶者手当等扶養手当に該当する分を給与の中に一律に含めてきめるという給与体系の立て方もあるわけです。おそらくそういうことでそうなっておるのではないかと思います。しかし他の政府機関等におきましては、家族手当、扶養手当の制度があるわけでありますから、その点ちょっとどうかという議論もあろうかと思います。この問題については、調査官あたりからちょっと答えさせて、それからにしてもらったほうが、ぼくはそこまで勉強してないので……。
  42. 吉澤奎介

    ○吉澤説明員 原研あるいは動燃について扶養家族制度を設けなかったということの意味、これは昔からないわけで、当時どういうことで設けなかったかということについては、はっきり承知しておりません。いま大臣がおっしゃったようなそういう考え方一つあろうかと思います。しかし国といたしましては、原研に対してもあるいは動燃に対しても、他法人と同様に扶養家族手当の支給に必要なお金は配賦いたしております。したがいまして、原研当局あるいは動燃当局が自主的な判断によって、扶養家族手当制度を設けないで、その原資を扶養家族手当以外の、本給とかあるいはほかの基準内の給与、たとえば研究員手当というようなものがございますが、そういった範囲内の給与に用いておるというのが実態であろうというふうに考えております。  国といたしましては、組合の要望などもございまして、原研当局が扶養家族手当を設けるということをいたしましても、それはけっこうなことでありますし、また設けないでいくというのも一つの見識でございましょうから、それについてとやかく申し上げる気はございません。そういうことでございます。
  43. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、家族手当の原資は配賦はしてある。だけれども、所側で、どういう形にかそれを組み込んでおるのだ、そういう御意見ですね。それは賃金構成の非常にむずかしい算定もありましょうし、そういうこともわれわれだって勉強しないといけませんが、いずれにしましても、それではべらぼうに原研の賃金が高いのかということ、あるいはまた期末手当がべらぼうに高くなっているのかということから見ると、必ずしもそうじゃないのです。そうすると、いまの調査官の御説明の点は、私どももう少し検討を加えませんと、あるいはまた当局側と組合の側とで、その論議がどういうふうにかわされているか、私はわかりませんが、時間がありませんから、あとの課題にさせていただきます。  大臣、期末手当の問題についても、他の公務員とか特殊法人と比べて非常に低いということを、この組合はいうわけです。これは事実の数字の比較からきていっていることです。それから、勤務時間はそれに比較して長いというわけですよ。ほかと比較して長い。そういうようなことを考えてくると、問題は非常に残ると思うのです。定年の問題についても、ほかと比べて非常に短いところで押えているというようなことへの不満が、この要望書の中に出ておると思うのですね。組合側がいってきていることは、一律におまえらむちゃくちゃなことを言うなということではなくて、内容を十分検討していただいて、やはり組合側は理屈があるから要求しているし、ことに狂乱物価の状態のもとでは生活が困難だから、この要求は出てきているわけですから、これらの問題に取り組むにあたっては、十分その内容をしさいに突き合わせる中で検討を加えてもらいたい、私はこういう要望をしておきたいのです。そういうことについて、大臣が、組合からきているのだからだめだということでやらないで、うまく折衝してもらわねばならぬと思いますが、ひとつ考え方だけ聞かしておいてください。
  44. 森山欽司

    森山国務大臣 経済的問題に関する限りは、石野委員がおっしゃるとおり、真剣に取り組まなければいかぬと思います。もちろん政府としての統一方針はございますから、しかしまた一つ一つの団体の特殊性もあるわけでございますから、それらを勘案いたしまして、十分真剣に検討させていただきたいと思います。頭からだめだなんて言いません、そんなことは、この種の問題についてはございませんから。問題の中身いかんによっては、ときどきかってなことを言いますが、それはいろいろ立場の相違がございますので、こういう問題は、一緒に検討するにやぶさかではありません。どうか今後とも御教示を願います。
  45. 石野久男

    ○石野委員 では、ひとつ真剣な検討を期待しまして、私の質問を終わります。
  46. 安井吉典

    安井委員長 瀬崎博義君。
  47. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、きょうは再処理工場の問題について質問を申し上げたいわけであります。  建設のおくれ等で、最初政府が予定した試運転やあるいは正式運転の開始のスケジュールが若干おくれているようでありますが、あらためて、現時点で、政府が予定しているそれらのスケジュールをまず聞いておきたいと思います。
  48. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 再処理工場は、御承知のように四十六年六月に着工いたしましたが、いま工事の約八五%まで進んでおりまして、本年夏ごろからコールド試運転をいたしまして……。
  49. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 夏とは、何月を予定していますか。
  50. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 その具体的なことは、いま正確に申し上げる段階でございません。  それから、本年冬ごろからホット試験を経まして、昭和五十年度から本格操業に入るという予定でございます。
  51. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 本格操業が五十年では、あまりにもこれは不明確なので、一応政府の予定でいいから、現時点ではいつごろを予定しているのか。
  52. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 いま正確に申し上げられる段階でないと考えますが、大体第二・四半期を目ざしております。
  53. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで第一は、原子力発電所と再処理工場は切り離して考えてよいものか、あるいは一つのシステム、ワンセットとして考えるべきものなのか、ということなんです。昨年五月九日の科学技術特別委員会でも、この問題は、参考人が招かれまして論議されております。安齋氏は「現在予定されている計画推進しようとする限り、核燃料再処理の必要性も急速に拡大いたします。」「再処理工場の設置が不可避であるにもかかわらず、その具体的な計画を一切示し得ず、原発のみを次々と認可していくことは、重大な問題であるといわなければなりません。」と意見陳述をされております。原子力発電所の建設と再処理問題との関係を、政府は基本的にどのように考えていらっしゃるのか、これはひとつ長官にお考えを聞きたいのです。
  54. 森山欽司

    森山国務大臣 原子力発電所建設を進めていきますれば、それに即応して再処理工場の充実をはかっていかなければならぬことはもとよりでございます。
  55. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では、原子力発電所と再処理工場は切り離しがたく一体のものとして政府は考えておる、こう理解していいわけでありますか。
  56. 森山欽司

    森山国務大臣 おおむねそういう考えのもとに、事を進めてまいりたいと考えております。
  57. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先日発表の稲葉さんの私案によれば、昭和六十年度六千万キロワットの原子力発電を、現実目標としてあらためて提起をされました。森山長官はさらに強気の発言も間々していらっしゃるわけなんですが、それに対応する再処理工場ということになりますと、現在動燃に建設中の再処理工場規模のものを幾つぐらいつくらなければ、対応したことにならないのでしょうか。
  58. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 いま建設中の再処理工場で、現在許可済みの発電所の分は、当分の間処理できると思いますが、さらにそれを上回る時期がくる場合には、外国に処理を依頼するということで、外国のほうも処理能力はあると調査されております。その後の第二再処理工場につきましては、民間でも第二再処理工場を建設しようということで計画中であり、原子力委員会計画も、第二再処理工場は民間で建設されることを期待するというのは、いまの原子力委員会の見解になっておりますけれども、第二再処理工場の詳細については目下検討中、こういうことでございます。
  59. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私がお聞きしたのは、先ほど長官の基本的なお考えによれば、原子力発電所と再処理工場は一つのシステムとして考えているというお話だったのですから、途中の経過はいろいろあろうけれども、やはり六十年度六千万キロワットの原子力発電所の建設を提起した以上は、それに対応する再処理工場の計画もあってしかるべきだということになれば、現在の動燃が建設中の再処理工場、日量の処理能力が〇・七トンぐらいですね。この規模の工場に直したら、一体何工場ぐらい要ることになりますか、こうお尋ねをしたわけなんです。これは常識的な話なんです。
  60. 生田豊朗

    ○生田政府委員 先ほど大臣が答弁されました、原子力発電所と再処理工場とが一体であるということの意味でございますけれども、再処理能力ということであろうかと思います。  それで、瀬崎先生の御質問でございますけれども、現在建設中の動燃の第一再処理工場、これが御承知のように、年間二百十トンの処理能力でございます。これが大体八百万キロワット程度の発電に見合うものということになりますので、計算いたしますと、六千万キロワットですと、その七倍ないし八倍くらいでございますので、二百十トンの工場でございますと、七つか八つということになりますわけですが、ただ、ここで申し上げたいと思いますのは、動燃の再処理プラントはパイロットプラントでございまして、この規模から申しまして、世界的な水準と比較いたしました場合に、経済規模に達しておりません。現在の欧米の再処理工場は、これの数倍の規模を持っておりますので、第二再処理工場を建設いたします場合は、国際的に競争力を持ち得る、つまり現在動燃が建設中の再処理工場の数倍の規模を持ったものが当然建設されるというように考えておりますので、この二百十トンの工場がたくさんできるということは、私どもは考えておりません。これの数倍の規模を持ったものがとりあえず一つ、それから今後の原子力発電推進の状況によりまして、またさらにそれをふやすということであろうかと考えております。
  61. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 たいへんな問題なんですね。現在の、いえば実験プラントですら、まだ日本では試運転にも入っていない段階で、いろいろと、あとでまた申し上げます、皆さんも御存じの問題点の指摘もあるわけなんですね。それを、第二工場以後は、現在のでは経済性がないから、数倍の規模でやっていこうということをいま、一つおっしゃったし、しかも、いきなり数倍の規模の第二工場と予定される分からは、民間でやりたいということもおっしゃった。これと現在の原子炉等規制法との関係を一体どう考えていらっしゃるのですか。
  62. 生田豊朗

    ○生田政府委員 現在の原子炉等規制法におきましては、先生承知のように、再処理事業は動燃事業団が行なうことになっておりますので、この第二工場以降の問題につきまして民間が行ないます場合には、当然その関連の条文の改正が必要だというように解釈しております。
  63. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 現在の規制法第四十四条で、わざわざ、動燃事業団以外の者は再処理の事業を行なってはならないと定められましたね。これは何も研究施設とか実験用施設とかいうふうに限っていないわけなんですが、このそもそもの精神はどこから来ているわけですか。
  64. 生田豊朗

    ○生田政府委員 わが国で最初の再処理施設をつくるものでございますので、いわば開発的な目標と、それから実際に再処理を行ないます事業的な目標とを兼ね備えたものというふうに考えております。したがいまして、その開発というところに重点を置きまして、動燃事業団がやるということで出発する、そういう意味だと了解しております。
  65. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そのとおりなんでしょう。結局、現在のはまさに開発途上のものであるという理解である。ですから、実際にこの工場が完成し、試運転も行ない、運転を開始し——私たち、それ以前の問題があると思うのですが、政府の予定どおりにいったとしても、ここに当然いろいろな問題がまた発生してくるであろうことは、普通常識だろうと私は思うのです。軽水炉の場合だって、実証炉だといわれながら、いろいろ問題を起こしているわけなんです。再処理のほうは、そういうことは当然、試運転なりあるいは運転開始後起こってくると思うのですね。そういうことも全然見きわめないで、現在の法律が現に生きているにかかわらず、行政当局が法律に反する将来計画をいま示しているわけですね。これはもちろん、長期利用計画にも出ておりますが。こういう態度は、国民の不信を買うもとだと私は思うのですが、長官、いかがですか。
  66. 森山欽司

    森山国務大臣 瀬崎さんのようには、私は考えていないのですがね。それで、長期計画が現在もあるわけでございます。がしかし、昨年来の情勢の変化に基づいて、再検討しなければいかぬということになっておる。まあ稲葉私案、第一次案は皆さまの前に御提示を申し上げたわけであります。あれで最終ということではございませんで、さらに第二次案——最終的には、やはり原子力委員会が責任を持った、政府全体としても、エネルギー計画の一環の中に組み入れられてしかるべき案に到達したものだと、私どもは期待いたしております。しかし、最終的な取りまとめはなかなか時間がかかりますから、当面、御案内のようなことで、一つ方向づけをしておるということでございます。  そういうことについて、たとえば核燃料サイクルという観点から、再処理の問題あるいは廃棄物の処理の問題を考えるということは当然であるわけでございまして、現在やっておるプラントは、先ほど次長から話がありましたように、八百万キロワット——現在できております日本の原子力発電は、いままで五基百八十万キロワットでありましたが、この間一基ふえまして、六基二百三十万キロワットですから、来年から稼働するもので当面の充足はできるわけでありますが、次どうするかという問題は確かにあります。そして、それについては、原子力委員会で、第二回目から以降のものについては民間でそれをやるというような考え方の線は、すでに示されておったようでございますし、またそういう線でいまのところ事が進んでいくだろうと思います。そうなれば、原子炉規制法の改正も考えなければならないというふうに考えておるわけでございます。また、そういう方向に進めてまいりたいと思います。しかし、プラントをつくるのに時間が若干かかりますね。そうすると、八百万キロワットぐらいまでの分は動燃事業団の分でまかなえる。次のものを民間でつくるとすると、何年かかかる。その間にもし若干のギャップがあれば、これは再処理あるいは廃棄物の処理等の問題につきましては外国のほうにお願いをするというようなことも考えながら、今日、事態に対処しておるわけでございます。ですから、どういう点に御疑念をお持ちなのか、ちょっとよくわからないのですが、どういう点でしょうか。
  67. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 どういう点かどうも心当たりがないと言われること自身が、たいへん問題なんですよ。つまり、いまの第一の工場、実験プラント、これは現行法の適用のもとに動燃事業団で行なわれている。これ自身が一体どういう結果を示すものかわからない今日の時期に、現在の法律では実行不可能な民間方式というものを早々と打ち上げる、そして法改正を前提に話を進められる、こういうこと自身が、国民の不信をたいへん招くのじゃないか。やはり現在ある法律をまず尊重し、その法律に基づいて行なわれている動燃事業団の再処理工場に対して、最も科学的で慎重な態度をとることが、国民の信頼を得る第一番だ、こういう意味なんですね。ただ、ここであれこれ論議をしているわけにいきません。結局、長官ないし科学技術庁の全体の考え方は、法律というものはきわめて軽く扱われて、電力会社その他の大企業側の要望がいろいろ働いてくれば、法のほうをそれに合わしていこうというお考えと受け取らざるを得ないような、いまの答弁だと思わざるを得ぬのですね。これに対してまた森山長官の答弁を求めれば、もうそれで時間が済んでしまいますから、それは省略して、次の問題に移ります。  第二は、すでに国会でも指摘されております再処理工場の放射性廃棄物の放出問題なんです。動燃の再処理工場の安全審査では、一日当たりクリプトン85で八千キュリー、あるいは液体放射性物質〇・七キュリーが放出されるとなっているわけなんです。これについても、昨年五月九日の委員会で、中島参考人が、この再処理工場というのは原子力発電所に直したら一年分ぐらいの放射能放出を一日で行なうことになるんだ、こういうふうな警告を出しておられるし、別な比較をとれば、百十万キロワットクラスの原子力発電所を五十基ないし百基分くらい集中立地したときと同等の放射能の放出を伴う、こういうふうにいわれているわけなんですね。  ここでまた長官に、これだけお答えいただきたい。こうした放射能物質の放出される状態のままで、再処理工場の運転が開始されてよいというお考えなのかどうかということです。
  68. 森山欽司

    森山国務大臣 どうも瀬崎委員は、自分のおっしゃりたいことだけおっしゃって、あとは切り捨てごめんのようなことでは困りますね。やはり私にもちゃんと答えさしてもらわないと困るので、たとえば先ほどの、民間で再処理工場をやるというような問題につきまして、いまの原子力規制法ができたのは二十年前ですか、今日と時勢が非常に違いますからね。そして、アメリカ等の例を見ても、民間でやっておるわけでありますし、規模も、原子力発電所が大きくなると同じように、処理工場も大きくなってやっておるわけです。いろいろ問題はありますよ。だけれども、やはり世の中が変わってくれば、国がやるのもいいですが、民間にやってもらうというのも一つの行き方——法律が二十年もたてば、そのままいつまでも同じというわけにいきませんから、必要があれば変える。それを変えようとすれば、非常に軽んじているというように言われることはまことに心外でございまして、そういうものをやらせると、電力会社は大資本だという公式論でお話をされる、それは私は同意いたしがたいのでございます。どうかひとつ瀬崎委員にも御了解願いたいと思います。  それから、何か再処理工場はえらい危険きわまりないようなお話ですが、私は一向そんなことは思っていませんね。現在の再処理工場について、そういうような考え方は、私はいささかも持っておりません。放射能でもって、そんなあぶないものであると思っておりません。そのことにつきましては、事務当局のほうからも答弁いたさせますけれども、このままでどんどんつくっていいかとおっしゃるが、私はどんどんつくってけっこう、そういう考えです。
  69. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いや、事務当局のほうはけっこうです。それは前から出ておる問題ですから……。
  70. 森山欽司

    森山国務大臣 あなたは、自分のおっしゃることばかり言われて、切り捨てごめんで——おたくだと、赤旗や何かすぐ記事になって、御自分の都合のいいことだけでやられちゃ困るから、あなたのおっしゃったことは、やはりこちらで裏づけて、心配ない状態だと私は理解しているので、事務当局のほうからちょっと……。
  71. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 先生指摘の気体廃棄物の場合に一日八千キュリーというのは、年間で全身三十二ミリレムということに換算できるかと思いますが、液体の〇・七キュリーというのは、同様の数字では十二ミリレムということに相なるわけでございまして、御承知のように、ICRPの勧告をもとにした法定の許容線量は五百ミリレムでございますから、それの一けた下の五十ミリレムをまた下回るというところで、昭和四十四年に再処理施設安全審査専門部会評価がなされているということでございます。
  72. 森山欽司

    森山国務大臣 ただいま申し上げたようなことでありまして、ICRPの通常人の被曝限度と申しますか、その五百ミリレムの十分の一のさらにそれを下回るような数字でございますから、それはアズ・ロー・アズ・レディリー・アチーバブルという考え方で、できるだけ低くするということには賛成でございます。しかし、再処理工場については、当面この程度というふうに考えて一向差しつかえない。これがいかにもあぶないようにおっしゃるそのお気持ちは、技術論でおっしゃっておるのか、政治論をやっておられるのか。技術論のような顔をしながら、実は政治論をおやりになっているんじゃないか。瀬崎先生、ちょっとその点、私は疑念を感じておるのです。どうして、それがあぶない状態で、このまま続けていいかというようなおっしゃり方をするのか、私ははなはだ疑問に思っております。
  73. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それは、ぼくは全く逆だと思うのですよ。長官こそ、事科学技術庁長官でありながら、本来最も科学的であるべきものを、政治論にすりかえられておられると思う。だから、私は引用するについても、私の主観を申し上げずに、わざわざ科学者の見解を申し上げて、これにどういう見解を示されるかお尋ねしたまでなんです。森山長官のお考えによれば、現在の再処理工場の安全審査の結論程度のものならだいじょうぶというふうにおっしゃったわけですから、それはそれでいいと思うのです。それに対して、私たちは私たちなりに、やはり科学者の見解などによって反論を行なうのであって、決して政治的なかけ引きや思惑によって反論しようとは思いません。  ただ、これはやはり相当問題になっているし、特に科学者の批判もあるわけです。ですから、昨年の三月三十一日の朝日新聞の記事には、再処理工場からの放射性排出物をゼロにしたい、昭和五十年の工場運転開始までに間に合わせたい旨の、前田前長官の発言が報じられたわけでございますね。これはまあ前長官、現長官ということで考えると、また感情問題になるかもしれない、自負心の強い森山長官にとっては。そういう考えじゃなしに、やはり政府を背負っておる方の発言という意味で聞いていただきたいわけです。なおこの問題については、これは新聞報道でございますが、委員会でも、前長官はあらためて補足説明をしておるわけなんです。「国といたしましては、技術的に可能な限り、できるだけ放射性物質の放出を低減化するための研究開発の推進、設備の強化をはかりまして、そのゼロ放出ということを目標として進めていきたい、」こうなっているわけですね。ですから、こういうことが一応今日までの政府の態度として表明されている以上、私たちは、やはりその具体化をはかられるのが任務であろうと思うのですね。安全であるのかどうかということについては、いろいろ科学的な論争があろうと思うけれども、少なくとも政治的には、ここまでの約束が国会で行なわれているわけでありますから、これの裏づけだけは踏襲してもらわなければ困ると思うのです。ですから、その点であらためて長官にお伺いをしておきたいわけです。
  74. 森山欽司

    森山国務大臣 ICRPの通常人の被曝許容量五百ミリレムという数字があり、それに対してこの再処理工場の場合は、三十二と十二という数字を先ほど原子力局長が申し上げたわけであって、それはICRPの許容量の十分の一よりもさらに少ない数字であることは、五百と三十二と十二という数字を見れば、もうおわかりのとおりでございます。職業人はそれのまた一けた上の五レムということであり、二十五レムという、他の身体に障害を与えるという数字もあるわけでございますから、アズ・ロー・アズ・レディリー・アチーバブルという観点からいえば、少ないに越したことはございませんけれども、許容限度からすればはるかに低い量でございますから、あなたが何か、非常に危険な状態のままつくってはいかぬとおっしゃるのは、非常に私はおかしい。  そこで、昨年の三月三十一日付の朝日新聞で、前田前大臣の御指摘の発言が報道されましたが、その真意は次のとおりであるといわれております。動燃事業団の再処理工場は、十分安全性確保されるという原子力委員会の安全審査答申に基づき設置が許可されたものであって、その工事についても国の厳重な検査を行なう等、安全性確保につとめております。工場からの放射性物質の放出については、ICRPの基準に照らしても十分に低く、その安全性は十分確保されているものと確信をしておる。しかし、放射性物質の放出量は、実用可能な限り少なくするべきであるという観点から、所要の研究開発を推進し、その進展に応じ実用化の可能なものから逐次採用して、できるだけ放出量の減少をはかっていくという趣旨で、前田前大臣は発言されたとのことであります。  私といたしましても、この趣旨に沿って、動燃事業団における研究開発予算を大幅に増額して開発を促進する等の措置を講じており、再処理工場からの放出量を一そう減少させるよう、今後とも努力してまいりたいと思っております。  なお、これは昨年の四月四日、当時の石野委員長の御指摘もございました。そのとき前田大臣は、ゼロ放出になるまで五十年に稼働いたしませんというふうにお伺いされると、そういうふうにゼロ放出にならなければ、五十年には稼働いたしませんという意味ではございません、五十年には稼働いたしますが、ゼロ放出に向かって五十年までに間に合うように努力しつつ進めていきたい、そういう意味でございます、というような御発言でございます。国会で答弁いたします際につきましては、私どもはそういうように考えておるわけでございます。その点どうか御了解願いたいと思います。
  75. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もし、いま読み上げた前田前長官と同じ立場だと言われるならば、五十年に間に合うように努力しつつも、間に合わなくても、その後ゼロに近づける努力はやる、こういうことなんですよ。ですから、現にどういう努力が行なわれ、しかもまだ実用化可能なものから、どういうふうに採用していくのかということが明らかにならないと、それこそ政治と科学が一致してこない、こういうことになるので、お尋ねをしているわけです。しかも技術的には、研究も、現に予算もつけられたから行なわれているわけなんです。クリプトン除去技術の開発などが完成して、そういうものが採用されるということが前提になって、運転が行なわれるべきではないかというふうにわれわれは考えているのであって、何も頭から反対をしているわけではないわけなんです。これが、そういうゼロを目ざすという政府の責任ある発言の実行だろうと思うのです。ですから、それをやってほしいのです。
  76. 森山欽司

    森山国務大臣 ゼロということを言われて、また一たんそういうような表現と見られるような発言をいたしますと、それでこうだと、こう出てくるんで、問題がある。ICRPにもありますように、アズ・ロー・アズ・レディリー・アチーバブルという意味で、前の大臣は申し上げておるのだと私は考えております。あなたが、そのICRPの基本的な考え方以上にゼロにできるなら、政治家が場当たりでゼロにできるなら、世の中の学者技術者は苦労しませんね。たいへんでございますから、だからアズ・ロー・アズ・レディリー・アチーバブルという意味で前田長官は発言しているものだと、私は確信をいたしております。
  77. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど森山局長の発言を聞いておると、いかにも、現在の安全審査の結果を危険なものと私が言っている、長官はそんなことはないんだ、だいじょうぶなんだ、こういうように一たん言い切っているのですね。しかし前田前長官の話を出せば、そういう立場であると、こういうわけなんです。これは非常に矛盾だろうと思うんですよ。そういう点では、前長官が、たとえ政治的発言にしろ、とっていた態度のほうが、まだしも私は、国民に対して幾らかでも忠実な態度であったかと思うんですね。少しその点は、系統的にいままでの発言等も見ていただきまして、お考えおきいただきたい点ですね。  第三は、液体放射性物質の海中放出の問題なんです。これも再処理工場の安全審査によりますと、低放射性の廃液の海域への放出については、昭和四十一年七月七日付原子力委員会決定に従って、引き続き調査研究が進められることになっているが、さらに本施設の操業に際しては、上記放射性審議会答申にも示されているとおり、周辺環境に関する監視の結果を公正に評価するための権威ある中央機関があらかじめ整備されていなければならないと考える、こうあるんですね。二つの点をここでお尋ねしておきたいんです。七月七日付原子力委員会決定に基づく調査研究は、一体どこの機関が調査に当たっているのか、またその調査結果はどこに発表されているのかということ、いま一つは、この安全審査でいわれている監視の結果を公正に評価する権威ある中央機関の整備は、どの程度作業が進んでいるのか、お答え願います。
  78. 生田豊朗

    ○生田政府委員 まず第一の調査でございますけれども、原安協——原子力安全協会でございますが、それが調査をいたしまして、二年ほど前に報告が出ております。それから動燃事業団も独自で調査をやっております。それから第二の御指摘の点でございますが、これはいわゆる中央評価機構の問題でございまして、現在、その中央評価機構を早急に設立する準備を進めている段階でございます。
  79. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 中央評価機構というのは、どういう構想のものなんですか。
  80. 生田豊朗

    ○生田政府委員 いま先生がおっしゃいましたような構想でございまして……(瀬崎委員「おっしゃいましたというが、私が読んだのは安全審査を読んだだけです」と呼ぶ)いえ、その放出されます放射性物質の環境に対する影響につきまして、一般的な評価を行なう、そういう会議でございます。
  81. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 当然こういうものがあらかじめ整備されるということが、安全審査の条件になっている以上、試運転等も含めて、この整備後でなければ行なわれないということですね。
  82. 生田豊朗

    ○生田政府委員 試運転の前に、いわゆる中央評価機構でございますが、それを設けるようにただいま準備を進めております。
  83. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その準備の状況はどういう段階か、どういう人選を予定されているのか、そういうふうなことをお尋ねしているわけです。
  84. 生田豊朗

    ○生田政府委員 まだ具体的な人選の内容、それからこまかい運営の規定その他を申し上げる段階まで立ち至っておりませんので、もうしばらく準備が進みまして、その辺明らかになりましたら、あらためて御報告申し上げる考えであります。
  85. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一方で試運転の予定だけきまっているんですね。  これが最後になるかもわかりませんが、使用済み核燃料の輸送問題なんです。再処理工場の説明によりますと、三・二ウラントンの使用済み燃料を輸送するためには、キャスク七十五トン、冷却水三十トンで、計百五トン、トレーラーの重量を加えますと二百トンをこす目方になるんですね、説明書からいけば。ホットテストの場合は、関電美浜より二十トン、東電福島より二十トン、原電、原研より五トン、計四十五トン使用済み燃料が運ばれることになっているんですが、その輸送全経路を明らかにしていただきたい。
  86. 生田豊朗

    ○生田政府委員 とりあえずは、日立港に陸揚げをいたしまして、日立港から国道を自動車——トレーラーになるかと思いますが、それで輸送いたしまして、再処理施設に持ってくるという計画でございますが、それと並行いたしまして、今後の問題もございますので、専用港の設置につきまして検討を進めている段階でございます。
  87. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さて、日立港を考える場合、日立市議会では、去年の十月十七日に、日立港利用による核燃料の輸送に反対する決議を出しておられるわけですね。この自治体の決議を無視するのかという問題が一つあると思います。これに対する政府の態度を表明していただきたいことと、それから先ほど申し上げましたような重量の車になりますと、久慈大橋とか茂宮橋というのが途中にあるそうですが、いずれも二十トン程度の重量にしか耐えない橋ですが、こういうのは一体どう考えていらっしゃるのか。いかがですか。
  88. 生田豊朗

    ○生田政府委員 まず第一の日立の市議会の決議でございますが、その決議も承っておりますし、それからそのしばらく前から、日立市当局とも御相談をいたしております。それで、私どもといたしましては、とりあえず暫定的に日立港を使用することは御了解いただいたというように了解しております。ただ、恒久的に日立港を使用することについてはいろいろ問題があるということでございますので、四十九年度から、関係者で——これはもちろん日立市、茨城県等の関係者も含まれておるわけでございますが、この専用港の設置につきましての調査委員会をつくりまして、発足させた段階でございます。  それから、橋の問題でございますけれども、これは御指摘のような点が一、二あるかと思います。その橋の問題と、それから交通規制の問題もございますので、その辺あわせまして、輸送に支障のないように準備いたすように、いま動燃事業団で調査検討を進めておる段階でございます。(瀬崎委員「現在は未解決ですな」と呼ぶ)  現在は未解決でございます。
  89. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間が参っておりますので、最後委員長お願いしておきたいことは、私どもも、原研労組のほうからは、三万円以上のベースアップ、公務員並みの家族手当の支給、それから定年延長並びに退職金の引き上げ等、まことにだれが見てももっともな、ある意味では謙虚過ぎるぐらいの要求を実現するようにという要請を受けているわけですね。森山長官に聞けば、答えは一緒になります。やはりこれが実現のためには、先ほど理事会のように、本委員会としても努力は当然すべきだろうと思います。ですから、今後の事態の推移を見守りながら、できるだけ早い機会に、委員会としても、先ほどから政府側が説明しているような事情等を含め、当事者の実際の意見等も求めるための調査に入られるよう、後刻あらためて理事会にはかられるように、お願いをしておきたいと思います。委員長に御回答を求めて、私の質問を終わりたいと思います。
  90. 安井吉典

    安井委員長 後刻、理事会で御相談いたします。  近江巳記夫君。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、先ほど理事会におきまして、原研の職員の皆さんが要求しておりますベースアップの問題、あるいは家族手当の新設の問題、時間短縮あるいは定年延長等の種々の問題がある、こういう問題について、次の理事会でぜひ協議してもらいたいと申し上げたところ、各委員の皆さんの賛成を得まして、今後討議していくということになったわけでありますが、これは政府としても当然非常に重要な問題であります。先ほど石野委員からも指摘がありましたとおり、予算だけをつけて研究成果があがるものではないわけであります。また、これは原研だけの問題ではなく、各研究機関共通した問題であると私は思います。  そういうことで、科学技術庁所管の各研究所、いろいろあるわけでありますが、次に理事会で検討するときに、いろいろな項目があろうかと思うのですが、たとえばこういうベースアップの問題にしましても、人事院の勧告があってからということになるわけでありますが、いまの物価狂乱のさなか、非常に生活もたいへんである、こういうことで、何とか暫定的な取り扱いはできないか、そういう問題、あるいは家族手当の新設あるいは時間短縮、定年延長等の実施あるいは人員増の問題、安全研究の問題、民主的な研究所の運営、こういうような問題につきまして、いろいろとまた政府のほうでも検討をされ、資料も提出をしていただきたい。これは原研をはじめ、いま申し上げた各種研究所があるわけでございますので、参考資料を出していただき、政府としても、こういう問題に対してどのように取っ組みをなさっていかれるか、ひとつ理事会等においても明らかにしていただきたいと思うわけであります。これをひとつ、特に委員長からも御配慮いただくようにお願いしておきたいと思います。
  92. 安井吉典

    安井委員長 いまの御発言の趣旨に従いまして、善処いたします。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、私は次に関電の美浜発電所の一号炉におきまして、核燃料棒及び蒸気発生器内の一次冷却水系の細管四本に損傷が発見された旨、たしか二十日であるかと思いますが、発表されたように思うわけでありますが、その詳細につきまして、ポイントをひとつお伺いしたいと思います。
  94. 井上力

    ○井上説明員 美浜一号機の定検でございますが、去る二月十二日から定期検査に入っておりまして、原子炉系それからタービン発電機系の各部にわたりまして、詳細に点検整備作業を行なっております。  蒸気発生器につきましては、八千八百五十二本の細管があるわけでございますが、すでにめくら栓をしたものが二千九本ございまして、それを除きました細管全数六千八百四十三本について、渦流探傷試験という試験を行なったわけでございます。その結果、四本の細管、内訳を申し上げますと、蒸気発生器が二基ございますが、Aの蒸気発生器に三本、それからBの蒸気発生器に一本の減肉指示が認められました。  さらに燃料につきましては、全数百二十一体あるわけでございますが、外観検査それから漏洩検査を実施いたしましたところ、漏洩の疑いのあるものが一体発見されております。  原子炉本体及びタービンにつきましては、現在までのところ異常は認められておりません。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 前回のときも、原因調査を厳密にするということをおっしゃっておられたわけです。そのときは原因はどういうところから来ておるのか、それからまたウエスチングハウス社の事故の解析結果がどういうことであったか、また今回の場合につきましても、何が原因であるかということにつきましてお伺いしたいと思います。どなたでもけっこうです。
  96. 井上力

    ○井上説明員 前回の蒸気発生器、燃料棒の事故の調査でございますが、これにつきましては、蒸気発生器の減肉現象の解明を行ないますために、三菱重工業におきまして、蒸気発生器を部分的に模擬いたしました実験装置をつくりまして、昭和四十八年四月から試験を行なっております。この結果、前回発生しました細管の減肉を生じたと同様の個所にある流動状態では、部分的な高温点の発生があるということとが確かめられておりまして、この影響によりまして、減肉が起こったものと推定されております。なお、今後とも引き続き、蒸気発生器の細管の減肉現象解明のための実験を行なわせるということにしております。  それから燃料棒につきましては、前回は第一領域燃料体四十一体のうちに二十体にコラプス現象が発見されたわけでありますが、これにつきましては、第一領域燃料体全部が非加圧型でございまして、前回定期検査時に全数取りかえました結果、今回すべて加圧型になったわけでございまして、今回の定期検査ではコラプス現象は発生しておりません。  なお、ピンホールにつきましては、前回第一領域四十一体のうち一体、その他の領域に三体ございましたわけですが、これもすべて取りかえております。  それから、こういったことで前回の調査をやったわけでありますが、今回の蒸気発生器、燃料棒の事故原因は何か、こういうことでございますが、今回の蒸気発生器の減肉の原因は、先ほど申し上げましたような調査に基づきまして、蒸気発生器二次側の蒸気、水の二相流体の流動が局部的に妨げられる、そういうことで、熱影響によるものではないか、そういうふうに推定されておりますが、先ほどのように、さらに減肉現象の解明のための実験を続けることにしております。  それから、燃料棒のピンホールにつきましては、おもな発生原因は、製作時に被覆管内に湿分が混入いたしまして、この湿分により、ジルコニウム燃料被覆管に水素化物が生成されるというふうにいわれております。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 総計八千八百五十二本のうち、今回のを含めまして二千十三本をめくら栓することになったわけでありますが、これは結局、単なる故障というよりも、設計段階でのミスであるとか、あれは基本的な欠陥じゃないかと思うのです。やはりこのように、現在の原子炉というのはまだまだあぶない、不安な点が非常にあるわけであります。この辺につきまして、設計段階でのミスであるとか、あるいは基本的な欠陥ではないか、このように考えるわけですが、こういう問題についてはどのようにお考えですか。どなたでもけっこうです。通産省だけじゃなくして、科学技術庁もどんどん答えてもらいたい。
  98. 井上力

    ○井上説明員 蒸気発生器の細管の問題につきましては、細管のリークの問題につきましては、原子炉の二次系に放射線モニターを設置いたしまして、漏洩が確認されれば原子炉を停止するということで、いかなる場合にも敷地周辺の公衆に対して放射線による影響を与えることがないというようになっております。また、蒸気発生器の細管の健全性の確認につきましては、今回の定期検査でチェックいたしましたように、定期的に行ないまして、過度の減肉から漏洩につながることのないように万全を期しております。さらに、蒸気発生器の細管の減肉発生のメカニズムにつきましては、いろいろな実験を行ないまして究明につとめておりまして、原子力発電所の安全性確保のために必要な措置がとられておるというふうに考えております。  それから、燃料棒のピンホールの問題につきましては、燃料製作時における品質管理のばらつきによるものと考えられますので、今後とも品質管理に万全を期していきたい、かように考えております。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 この問題については、原子力委員の山田さん、どうお考えですか、伺います。
  100. 山田太三郎

    ○山田説明員 このスチームゼネレーターのチューブの減肉の問題につきましては、原子炉の安全性の上から申しますと、非常に重要なポイントであるというふうに考えております。やや冗談めいて申し上げますと、いままでほかのいろいろな事故について新聞紙上で取り上げられましたけれども、それらに比べて一番ウエートの高い問題であるというふうに考えております。もちろんいま井上審議官から御説明いたしましたように、減肉から穴があくという段階に少しでもなれば、もちろんリークがわかるということにはなっておりますけれども、しかし、そういう不安な感じをいつも抱いておるということが、必ずしもいいことであるかどうかわかりません。通産省が定期検査を実態的にやっておるわけでございまして、それらの結果については、われわれも報告されております。したがいまして、通産省でやっておりますことは、十分信頼できるというふうには考えておるわけでございます。たとえば、この前は、燃料棒の曲がりの問題につきましても、通産省は非常にシビアな処置をとったわけでありまして、これはアメリカのやり方と全く違っておったわけであります。アメリカでは、例の曲がりの問題に対しても、そのまま運転しておるかあるいは若干の出力低減をしたまま、その曲がったままの燃料で運転しているということが実態であるようでございまして、むしろ日本のやり方にアメリカは驚いているのではないかというふうに考えております。そのくらいシビアな通産省と——通産省のコンサルタントとしては、御承知のとおり原子力発電顧問会がございまして、そこで十分な検討をされておると思います。そういう意味で、この美浜発電所運転の再開ということにつきましては、もちろん技術的安全上問題ないと思うのですけれども、やはりいろいろなことがそれに関連してあると思います。したがいまして、いますぐの措置ということでなくても、先生指摘のように、スチームゼネレーターをどうしたらいいかということについてはよく考えていきたい、こういうふうに考えております。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほども申し上げましたように、八千八百五十二本のうち、今回のを含めまして二千十三本、これはめくら栓した。これはたいへんなことだと私は思うのです。なぜこういうようなことが起きるか、先ほどお話を聞きましても、根本的な設計のミスじゃないとか、そういうような、何か小手先的な答弁のように私は思うわけですが、大体ここの原子炉を設置したときにおきまして、実際ウエスチングハウス社がやったのですか。下請にやらした、これも重大な問題があるということを私聞いているのです。この間の真相をひとつ報告してもらいたい。どこがどうやったのですか。
  102. 井上力

    ○井上説明員 お答えいたします。  美浜発電所一号機につきましては、ウエスチングハウス社がメーンコントラクターになってやっております。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、その下請はどこがやったのですか。そういう大ざっぱなことではだめですよ。これは通産省だけじゃなくして、科学技術庁、全部知っているわけでしょう。なぜこんな事故が起きるのですか、ここに大きな問題があるのですよ。
  104. 井上力

    ○井上説明員 現在問題にされております熱交換器につきましては、コンバッション・エンジニアリングという会社が製作をしております。コンバッション・エンジニアリングという会社は、熱交換器につきましては非常に経験を持った会社でございます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのときに作業したとか、いろいろなその辺の下請関係、それはどこがやったのですか。その下請の下請というのがまたあるでしょう。その辺をあなた方が解明しないから、ただ設計上の問題であるとか、そういう技術上のことだけ言っているのですよ。その辺に非常に大きな問題があるということを聞いているのです。それは科学技術庁は知らないのですか。あなた方は書類上だけ見て——施工のそういう細部に至るまで、どこが何をしたという、そういうところまでつかむのがほんとうじゃないですか。
  106. 井上力

    ○井上説明員 お尋ねの点につきましては、コンバッション・エンジニアリング社が責任をもちましてつくりまして、日本が輸入したものでございますので、コンバッション・エンジニアリングが主要部分は全部つくっていると思いますけれども、そのこまかい下請関係については、ちょっと現在資料がございませんので、わかりません。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 だから、その問題については、特に美浜一号炉は事故ばかり起こしているわけですから、製作段階において、一番細部の下請に至るまで、一ぺんひとつ全部リストを出してください、ここは何をしたかと。その辺のチェックをあなた方がやらないから、こういうことがどんどん起きるのです。これが重大事故につながるのですよ。書類上の安全審査だけやって、それで完全にでき上がる、違うのですよ、これは。施工上のミスということが——設計が幾ら完ぺきであっても、そのとおりできなければ、これは大事故につながるのです。そういうことを重視しないところに、今日この安全性という点におきまして、具体的ないろいろなこういう事故が起きてくるのです。これはひとつ委員長からも、よくその旨を申し入れていただいて、資料を提出させてもらいたいと思うのです。それを政府は出しますか。
  108. 安井吉典

    安井委員長 いまの資料の提出について、どうですか。
  109. 井上力

    ○井上説明員 御要求の資料につきましては、十分調査はいたしますが、どの程度の資料が御提出できるか、ちょっとわかりませんので、検討させていただきたいと思います。
  110. 近江巳記夫

    ○近江委員 検討はしてもよろしいけれども、そこには秘密があるかどうかわかりませんけれども、とりあえず、でき得る限りの資料を出してもらいたいと思うのです。これを特に要望しておきます。  それから、科学技術庁なり通産省は、ウエスチングハウス社に対しまして、どういうことをいま要請されておるのですか。これをひとつどなたでもけっこうですから、お伺いいたします。
  111. 井上力

    ○井上説明員 われわれの監督は、電気事業法に基づいてやっておるわけでございますが、電気事業法によりまして直接監督を受けておりますのは関西電力でございますが、関西電力に対しまして、点検を十分にやれ、それから原因の調査については、これも十分にやれというようなことで、強力に指導しておるところでございます。
  112. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは直接は関電かもしれませんが、これは政府の厳重な監督下に置かれているわけです。公害の各立法をかけたときも、原子力は別だ、こちらでシビアに政府が監督しておるからということで、全部はずしたのですよ。それにもかかわらず、これは第一次的には関電である。なるほど趣旨はわかるわけです。しかし、これだけ事故を起こしているわけですよ。それであれば当然、政府自体も、それでは関電に対しても、ウエスチングハウス社に対してはどういう要請をしたか、そういうことは掌握して、皆さんがチェックするのはあたりまえじゃないですか。そうでしょう。そんなことであなた方の監督がつとまりますか。同型のものはあと何ぼできるのですか。PWR型はたくさんあるでしょう、どんどんつくっているのが。原子力のポケットブックを見ても、高浜の発電所、大飯の発電所、玄海発電所、伊方発電所、これは全部そうですよ。そういう事故を起こしておきながら、掌握をしない。非常によくないですよ。科学技術庁は別個にでもそういうことをやっていないのですか、通産省と連携をとって。関電に言うてあるから、それだけですか。当然責任をもって、ウエスチングハウス社がやっているのだから、強力な要請をして、それに対してはどうであったかということをつかむのがあたりまえじゃないですか。科学技術庁局長か次長、ひとつ答えてください。
  113. 井上力

    ○井上説明員 御指摘の点でございますが、先ほど申し上げましたように、関西電力に対しまして強力に指導しておるわけでございまして、関西電力は、当然のことながら、自分が発注した先でございますので、ウエスチングハウスとは密接に連絡をとっていろいろな検討を進めている、こういうことでございます。  それから、同型のPWRが今後続々できるではないか、こういうお話でございますが、美浜一号炉の蒸気発生器は、先ほど申し上げましたアメリカのコンバッション・エンジニアリング製のものでございますが、それ以後のわが国の加圧水型の原子力発電所の蒸気発生器は別のタイプでございまして、現在のところ、美浜二号機の蒸気発生器では、細管の減肉現象というのは起こっておりません。しかしながら、運転中の原子力発電所については、毎年行なう国の定期検査におきまして、今後も御指摘のように十分な点検を行ないまして、安全を期してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  114. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 この件に関しましては、直接の担当は通産省でございますけれども、相互に連絡をとりまして、その内容及び事後措置については進めているところでございます。当庁だけで特別の措置をとるという立場にはないと考えておりますので、通産省と十分連絡をとっております。
  115. 森山欽司

    森山国務大臣 どうも私は、質問されると、その場で調子を合わせるような答弁をするのがはなはだへたくそでありますが、その点はお許しを願いまして、ただ、どういう考え方でおるかということをひとつ御理解願いたいと思います。  ただいま近江先生の話ですと、こういう定期検査の結果を見ると非常にあぶない、不安じゃないか、こういうお話でございますが、今日の原子炉につきましては、原則的に、私は次のように考えております。  まず第一番に、機械でありますから、故障はあります。人間が操作しておるわけでありますから、ミスをすることはあります。しかしそういう場合についても、機械であるから故障があり、ミスすることがありましても、安全装置がついておって、かわりの装置が動くとか、場合によってはとまるとかいう形において、安全の確保がされておる。それだけの起こり得るいろいろな場合を考えてのテクノロジーアセスメントというものの上に立って、原子炉というものはつくられておるというふうに、私は考えております。それからまた、いまの、今度発見されましたのは、一年十二カ月のうち二カ月半くらいの定期検査で調べておるわけであります。調べた結果、この前は燃料棒等に曲がり問題がございましたね。そしてそれについて、アメリカではかえなかったけれども、日本ではかえたのはどういうのだということで、これは参議院で議論になったわけであります。アメリカでかえなかったのを日本でかえたから問題なんじゃなくて、アメリカアメリカ——いままで何でもアメリカに右へならえしたけれども、このごろはアメリカがやっても、日本は日本の判断で、大事をとってやることもあるのだということで、たいへんけっこうな傾向じゃないかということを私は申し上げたのですが、この蒸気発生器の細管の検査の結果、いまお話があったわけでございますが、これも大局的に見ますれば、十二カ月のうち二カ月半くらいの定期検査があったからわかったのであって、これもまた安全の証拠ではないか。要するに機械がとまることも安全の証拠であり、そういうものが発見されたということも安全の証拠であるというふうに、私は考えておるわけでございます。とまったからあぶないのではなくて、とまったから安全なのです。またこういうものが発見されたから、安全なのであります。大局論はそういう考え方であってしかるべきではないかと私は思います。しかし蒸気発生器の細管のこまかい穴というのは、技術的に見まして、定期検査と定期検査の間にもしそれが放置されてきた際に、通常は機械がとまるのではないかということを山田原子力委員に聞いたら、これはとまるのだということであります。しかしそれは故障の中でも困った大きな故障であるというふうにお考えだということでございますから、今回の措置については、十分、これは通産省が主務でやっているわけでございますが、慎重に御措置になることであろうと思いますし、また私ども科学技術庁といたしましても、そういう点については、能率が十分発揮できない非能率な原子炉だとは思いますが、あぶない原子炉だというふうには、私は考えておらないわけであります。ただ、中の事故が項目としては大きな項目でございますから、そういう問題につきましては、政府としては特に留意して対処してまいりたいというふうに考えております。だけれども、どうでしょう近江先生、こういうことはわかるから安全なんじゃないですかね。定期検査という制度を、政府が監督をして十二カ月のうち二カ月半もやって、だからわかってくる。また機械ですから、故障があるというのは避けられません。しかし、あぶないときには、それは最終的にはとまるんだという、そういう仕組みになっているということは、原子炉が安全だということだと私は思っているのです。それなればこそ、私が申し上げたいのは、昭和三十八年から四十八年まで十一年間に、原子炉規制法によって事故と認定されたものは三十七件だと私は思います。そうして、いずれもこれは小事故でございまして、大きな事故は一件も起きておりませんし、特に人身に関係ある事故というのは三件ぐらいしかありません。そして、その三件はいずれもオペレーターのミステークによるものであり、しかもそれは許容量以下の放射能の被曝であったということが、結果において出ておるわけでございます。だから、原子力発電所あるいは原子炉があぶないんだということにはならない、近江先生、私はこういうふうに考えておるわけでございます。先生の御指摘の問題は、一つの問題点であると私ども思いますから、そういう点はよく考えていかなければならない。しかし、先生がお使いになった、あぶないとか不安を与える——まあ不安という点ぐらいまではあれですが、あぶないということはまずない、こういうふうに私は思っておるわけであります。電力会社にしましても、そういう能率の悪いのは、これからだんだんやり方を切りかえていくだろうとは思っておりますけれども——何も私は電力会社の肩を持って言っているわけではありません。ただ、全体としての今日の原子力産業の発展段階、それから原子力発電用原子炉の現在の技術水準からいって、そういう理解のもとにいってよろしいのではないか。これがもう先ほど来、能率が落ちておることは御承知のとおりでございます。そういう意味で、われわれもこういう問題点について善処はしてまいりますが、これは時間の制約がございますから、いろいろ申し上げる時間もございませんけれども、あぶないという御論議だけは、一回お考えを願ったらどうかというふうに私は考えております。どうぞひとつよろしくお願いします。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間の関係で、論争する時間はないわけですが、たとえば、この放射能の調査体制につきましても、私どもはもっとやるべきではないか、それは、長官はばか丁寧過ぎるということをおっしゃったわけでありますし、私たちは、こういうような事故というものが重大事故につながるおそれがある、また、これは、山田原子力委員も、いままでの中では非常に大きな事故であるということもおっしゃっておられますし、やはりこういう事故があるということは、私は非常に大きな不安である。そういう意味において、非常にあぶないということを申し上げておるわけでございまして、これは非常に、主観の違いということでありまして、いまこれを長官と論争する時間はないのです。私は一時八分で終了しなければいかぬ、こういうことでありますので、またこれは後日にしたいと思います。  次に、原子力委員会が安全審査をやっておられるわけですが、この美浜一号炉につきましても当然審査をされたわけです。ところが、現実にこういうような問題が生じておるわけでございまして、このことは、安全審査体制自体が不十分であるのか、あるいは単にウエスチングハウス社のデータをうのみにしたのが間違いのもとじゃないか、このように思うわけですが、この件に関しまして、安全審査自体をどのようにお考えであるか、山田委員にひとつお伺いしたいと思います。
  117. 山田太三郎

    ○山田説明員 現在、日本の安全審査体制は、先生御存じのとおり、設置許可段階におきましては原子力委員会で行ないますが、施工認可段階におきましては通産省が行なっておるわけであります。まあ、こういうように機構の違った形で安全審査が行なわれている国は、あるいはほかにはないのかもしれません。しかしながら、実態的に申し上げますと、工事施行認可以後、運転に至るまで——運転に入りますと、もちろん科学技術庁も関与してまいりますが、大部分は通産省でやっておるというようなことでございますが、その間は十分な連絡を、現在段階においてはやられておることは確かでございます。しかしながら、現在、環境安全専門部会の中で、この安全審査体制について、改善すべき点あるいは強化すべき点があるかどうかというようなことについての考えをまとめてもらっております。まだその答えについてはいただいておりませんが、この二つの省にまたがっておるということと、それから、それが慣行上うまくいっているということだけで十分であるかどうかということにつきましては、この環境安全専門部会の答申を得ましてから、われわれは大いに検討したいと思っています。  そんなことも、最近設置いたしました安全会議のテーマであると思うのでございますが、現在までの段階におきましては、決してうまくいっていないということを申し上げておるわけではございませんけれども、しかし、やはり二つに分かれているものを、制度的にかあるいは法律的にか、何かつなぐようにしたほうがいいのか、あるいは現状のほうがいいのかというようなことについて、検討してみたいというふうに考えております。
  118. 近江巳記夫

    ○近江委員 山田さんはいま非常に率直にお述べになったように思うのです。それで、原子炉のこういう施行段階、一番肝心なところにおいて、原子力委員会ですら明らかでない。ただ、連絡をとるという段階においてそれは明らかになるでありましょうが、やはり施行段階の細部のそういう安全問題ということになってきますと、明らかでない、これは重大な問題であると私は思うのです。これは今後の一つの大きな課題じゃないかと思います。これは原子力委員長である長官もこの場におられるわけでございますので、きょうは時間の関係で終わりますけれども、今後の非常に重要な課題である、こういう点で、政府間におきましても、原子力委員会におきましても、ひとつ十分な検討をしていただきたい、これを強く要望いたしまして、最後に、長官のその決意を簡潔にお伺いして、私の質問は終わります。山田さんでもけっこうです。
  119. 山田太三郎

    ○山田説明員 通産省と申し上げましたけれども、たとえば原子力委員会が安全審査をやります場合には、原子炉安全専門審査会におきまして、中立的な科学技術者に御意見を伺っておるわけでございますが、それと同様に、通産省におきましても、原子力発電技術顧問会というものをもちまして、そこの中立的な、しかも科学的な水準の高い検討を経ておるということについては同様であるということを、追加させていただきます。
  120. 森山欽司

    森山国務大臣 原子力発電所の安全性の問題につきましては、私は先ほど申し上げましたような前提の考え方の上に立っておりますが、しかし、それの定期検査において発見されました故障の取り扱いの問題につきましては、せっかく御指摘があったことでございますから、慎重に対処するように努力をいたすつもりでございます。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、終わります。
  122. 安井吉典

    安井委員長 内海清君。
  123. 内海清

    ○内海(清)委員 前回の委員会で、実は原潜の入港時における放射能の監視体制について、原子力委員会の御出席を求めて審議したわけですが、ちょうど長官は御不在でございまして、これについてもう少し、私の意見を交えながらお尋ねいたしたい、かように思うわけであります。  この分析研の問題からして、この議事録を見ますと、二月二十一日あるいは二十八日ごろから、沖繩のホワイトビーチあるいは沖繩港、こういうところに対しますコバルト60が問題になっておるようであります。私はこれをしさいに読んでみましたけれども、これの中におきます、これは御無礼な言い方かもしれませんが、長官の御答弁なり政府委員の御答弁を見まして、これでは十分な説得力が欠けておるんではないかというふうな気がするわけであります。  これは意見になりましょうけれども、たとえば、敦賀湾で検出されたコバルトの問題、こういうふうなものの検体の汚染原因が、原電から出たものか、あるいはその他のフォールアウト等から出たものか、ほんとうは厳密な意味ではなかなかわからないと思います。しかし、そういうふうなことを言っておったのでは、なかなか国民は納得しないだろう。国民は、ことにこの原子力問題については全くしろうと——私もしろうとでありますが、しろうとでありますから、一般大衆というのは、そういう発言に対して非常に不安を感じる場合が多い、私はこういうふうに思うのであります。  そこで、もし敦賀湾にそれが出たとするならば、これは原電にその可能性が多い、こういうふうなことをすなおに考えまして、それに対処していくのが当然ではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。  この敦賀湾の問題は、御承知だと思いますけれども、それが発見されて騒ぎを大きくしたのは、かねて原電が、放射能を放出することはないというふうに言っておったことが、一つの原因ではないかと私は思うのであります。そこで、原潜が参ります以上、放射能汚染のおそれがあるのかないのか、その点のけじめをつけて、すなおに対処することが、政府に期待される姿勢ではなかろうか、私はこう考えるわけです。  政府の「原子力軍艦放射能調査指針大綱」にも、「軍艦のもつ特殊な性格にかんがみ、特別な放射能調査」云々とあります。これはこの前もちょっとお話ししましたが、特に四十三年にソードフィッシュ号が入港しましたおりのが一番問題になったわけです。この原潜という特殊な船、これはわが国のほうで安全審査ができぬという一つの問題があります。しかも、そのときもわれわれいろいろ議論しておりますが、冷態起動の場合には一次冷却水が出ると考えなければならぬ。そのときにもいろいろ議論がありまして、工作船エージャックス号が隣について、電気を供給した、だから冷態状態ではない、だから出ない、というあれもあったわけですけれども、そういうふうな原潜の状態でありますから、したがって、政府みずからも、また国民も、原潜寄港に伴いましての放射能汚染ということにつきましては、疑いを抱いているわけでありますから、これに対してはすなおに対応していくという姿勢が望まれるのではないか、私はこう思うわけであります。  時間がよけいありませんから、いずれまたあれですが、そこで、原潜寄港という問題について、原潜が寄港することに反対であろうと賛成であろうと、わが国がいま条約上の問題で、事実問題として、原潜寄港を認めなければならぬということであります以上は、その環境モニタリングが、できるだけ厳正に実施されなければならぬことは当然であります。この点はICRPの勧告によりますと、原子力施設周辺の環境モニタリングは、放出が低いレベルであれば、施設からの放出管理をしっかりやっておればよい、こういうふうにいわれておりますが、もちろんこれだけで足るとは、特にわが国の場合は考えない、できるだけのことをやらなければならぬというふうに私は思うのであります。  この考え方から見まして、まず最初にお尋ねするわけでありますが、原子力軍艦に対しまする規制措置、たとえば放出のデータをこちらに提出させますとか、あるいは放出規制値を定めるとか、こういうふうな規制ができるのかどうか、この点をひとつお伺いいたしたい。
  124. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 先生指摘のように、いまお読みになりました「軍艦のもつ特殊な性格にかんがみ、」という点はございます。したがいまして、こちらから一定の排出にしろと、こう言うことは法令的にはできないとは思いますけれども、この辺は、先般先生も御指摘のように、昭和四十三年十月二十二日の外務大臣とジョンソン大使との間で、「大使は、寄港中における一次冷却水の放出は例外の場合であり、従って今後日本の港においては通常一次冷却水が放出されることはなく、これが現在の実施方式に即したものである旨を述べた。」というところで、いま行なわれておるわけでございます。  なおもう一つ先生指摘の、向こうから報告を受けるというところは、やはりその中で、米側が「引き続き海水および海底土の試料の定期的分析を行ない、その結果を日本当局に提供する旨および米国側は引き続き原子力軍艦の艦上の放射線管理および同軍艦の直接の近傍における環境放射能のモニタリングについて責任を負う旨を述べた。」ということで、現在は行なわれております。
  125. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、当時の三木外務大臣とジョンソン大使との間の協定でありますが、これを信用するということになるのだと思うわけであります。同時に、いまのお話で、いろいろデータも向こうが出す、こういうことのようでありますけれども、この放出の規制値も、やはりこちらとの話で、向こうが守る、定めるというふうなこともありますか。それはございませんか。
  126. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 第一のお尋ねの、現在アメリカからは定期的に横須賀、佐世保、ホワイトビーチのモニタリング報告というのが、年一回、日本側に渡されております。  それから検出限界と申しますか、許容につきましては、たとえばアメリカ科学アカデミーのような基準というものが一応ございます。  それから、発表されるときには、一定の基準によって、三区分ぐらいに分けまして発表されております。
  127. 内海清

    ○内海(清)委員 そういうことが一応行なわれておる。そのものをわれわれは信用する。こちらで安全審査をするということは、現実問題としてなかなかむずかしいわけです。そこで、たとえそういう放出に関しまする規制措置が講じてあったものといたしましても、原子力軍艦という特殊性にかんがみますならば、わが国としては、十分かつ積極的な環境モニタリングが必要であることは言をまちません。むしろわが国の場合は、自衛措置としては環境モニタリングのみがたよれるということであろうと思うのです。  そこで、そのあり方につきましては、二月二十一日の政府答弁によりますと、原子力委員会の環境安全専門部会で検討中だということが、この議事録にあるわけでありますが、私は、この部会設置目的から見まして、軍艦問題までがカバーされておるだろうかどうだろうか——。つまりこの答弁によりますと、それもカバーされておるように受け取れるわけでありますが、この問題がどうであろうか、というふうに考えるのであります。その点を、軍艦問題までもカバーされておるかどうかということを、ひとつお聞かせいただきたいと思うのであります。ほんとうにそうであるといたしますならば、どの程度、中間答申などでこの問題に触れられておるか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  128. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 環境安全専門部会と申しますのは、その中に環境放射能分科会というのがございまして、これは環境放射能一般問題につきましてやっておりますので、目下審議中でございますが、その中にも、当然、モニタリングに関することもございますけれども、軍艦に関しましては別に、御承知の、調査指針大綱に基づく専門家の意見を参酌してやっておりまして、こちらの環境安全専門部会は、広く一般的なことということに扱っております。
  129. 内海清

    ○内海(清)委員 これは、私も部会を見まして、そういうふうに感じたから、こうお尋ねしたわけで、二十一日の答弁には、検討中ということがあるわけであります。どうもこれは、私は少しこの部会設置目的等から見まして、どうか、したがってこの答弁というのは、正確なものではないんじゃないかというふうに私は考えたわけでありますが、その点いかがですか。
  130. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 その答弁は、ちょっと議事録を正確に読ましていただきたいと存じますけれども、繰り返しますが、環境安全専門部会は一般的な問題をやりまするので、あるいは事軍艦に関しましても、そういう一般的な、共通的な問題ではカバーする、こういう趣旨であったかとも考えられます。
  131. 内海清

    ○内海(清)委員 これは、私、議事録を持ってきておりますけれども、だから、そういうふうな不正確なものが出てきますると、やはりこれは問題があると思いますので、これは何かの間違いであったであろうというふうに私は考えるわけです。だからこれは、中間的な検討あるいは答申、報告もないわけだと思うわけであります。  それから次に、これも意見も入ると思いますけれども、環境モニタリングをする場合に、低レベルのものを追求するというのは、これは全く無意味とは申しませんけれども、私はあまり大きな意味があるものではないのではないか、こういうふうに思われるのであります。やはり効率的なシステムを考えるべきでありまして、たとえば、いまお話もございましたけれども、全米のいわゆるNASの試案といわれている、国立科学アカデミーから出しておりまする案があります。これは、この前もちょっと申しましたが、あそこでつくられておりまするような基準値を見ますと、コバルト60で見てみますと、ICRP勧告値に生物濃縮度のいろいろなファクターをかけまして、海水中の許容濃度はそれよりも五けたも少ないものとなっております。これを示しておるのであります。こうした手法を導入いたしまして、ICRPの、私がいま持っておるパブリケーションの七の「環境モニタリングの諸原則」にいわれておるように、決定グループ、それから決定核種、決定経路を定めまして、そして、その上に立って環境監視レベルを設定する必要があるのであります。そういう措置をとることが必要なんじゃないかと思うのであります。特にわが国では、海産物を摂取する量が多いですから、そういう点も考慮して、そういう一つの環境監視レベルというものを設定することが必要なんじゃなかろうか、私はこういうふうに思うのであります。それで、いま問題になっております数値は、ピコキュリーのオーダーでありますが、おそらくそれは、問題になっておりますものも、国立科学アカデミー案よりは数けた低いものだと私は思うのでありますが、これはいかがでありますか。
  132. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 いま御指摘アメリカ科学アカデミーの示された許容濃度で申しますと、御指摘のとおり、たとえば海水で、アメリカの場合は、港内の河口及び海岸線より十二マイル以内の近海あたりをとりますと、リットル当たり三ピコキュリーを基準といたしておるようでございますけれども、わがほうは、いま分析いたしておりまするのは、〇・一ピコキュリーぐらいまで分析いたしておりますから、先ほどの御指摘のような点からは、けたが違っておるということになると思います。
  133. 内海清

    ○内海(清)委員 そうだといたしますと、安全上に問題のないレベルである。そのようなレベルで問題がせんさくされるということは、これは現実的に、あるいは実際の上から見ましても、意味の薄いものではないか、私はこういうふうに思うのであります。そこでやはり国民も安心できるレベル、これを設定して、そしてモニタリングを効率的に厳格に行なって、国民の理解を得られるような措置を講じておく必要がある、私はこう思うのであります。それに対してどうお考えか。必要があるとすれば、今後そういうものを設定される意図があるかないか、これをお聞かせいただきたい。
  134. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 御指摘のように、分析は合理的に効率的にやるべきであって、目的に合うような結果を出すべきであろうと思いますけれども、いたずらに詳細であればいいということではないのではなかろうかと考えます。その意味では、御指摘のように、諸外国の例等も参酌いたしまして——大体分析という仕事そのものは、性格上、非常に小さな差というものは通常生じ得るものなんだそうでございまして、そういう通常生じ得る差も問題にするような分析をしても、あるいは意味がないかとも考えられますので、そういう検討を今後はいたしていきたいと思っております。
  135. 内海清

    ○内海(清)委員 大臣、いまお聞きになったようなことですが、やはりわが国の国情に合った、たとえば海産物の摂取量が多いとか、そういうものも考慮して、そういうことを含めて、この環境監視レベルというものを、一定のレベルというものをつくる。そしてそれをつくっておいて、そして国民の納得のいくような方法をとっていく。もちろん監視は厳格に行なわれなければなりません。そのことが特にわが国の場合、現時点ではどうしても必要だ、私はこう考えるわけです。大臣のお考えをお聞きしたい。
  136. 森山欽司

    森山国務大臣 分析がいたずらに低レベルを誇るというようなことは、本来の所期するゆえんではないではないかというお話でございますが、私もまさにそのように思います。そして分析専門家に聞きますと、表には出ないけれども、非常に誤差があるんだそうですね。出てきた結論に対して、プラスマイナス幾らというような誤差がございますので、そういう分析成果からいたしまして、もう少し妥当な分析レベルを考えてやっていく必要があろうというふうに考えます。  私は、この機会に内海先生に申し上げたいのですが、最初に敦賀発電所の問題にちょっとお触れになりましたね。これは原子力軍艦の問題、コバルトの問題でお話になられたのだと思いますが、これは私もちょっと調べてきました。  敦賀発電所のある浦底湾において、指標生物としての海藻類に、他の地区より高いコバルト60の濃度が以前から検出されて、その値は、科学技術庁放射能調査研究成果発表会において報告されているとおり、安全上問題とされるものではない。この原子力発電所、敦賀の炉の運転初期においては、海底土に一〇〇ピコキュリー・キログラム当たりのコバルト60が検出されたことがあるということで、これは安全上問題とされるものではないということであります。さらに当該発電所においては、海水への液体放射性廃棄物の排出については、極力その低減化をはかっておって、当初の排出量に比して十分の一以下に低減しておって、今後はこれらの海産物類におけるコバルト60の濃度は減少していくものと考えられる、こういうことでございますが、その点だけは御報告を申し上げておきます。  それから、アメリカ原子力潜水艦の調査は、先生も「軍艦のもつ特殊な性格にかんがみ、」という点を強調されましたが、元来、政府は、原子力軍艦寄港地周辺住民の安全を確保するために必要な調査をやるということなのでございます。ソードフィッシュのあとでもって、アメリカ側と日本側で取りかわした、あれはアメリカ側の発表かな、それによりますと、通例第一次冷却水を出さない、こういうことをいっておるわけでございますが、米軍がいうことでございますから、日米間の関係から申しまして、一応信用してかかる。あの連中はうそつきだ、いいかげんだ、という考えでいくのは好ましくないと思います。やはりそういうふうにやるものだ、こういうふうにわれわれは尊重してまいりたいと思っております。  しかしいまわれわれがやろうとしておる原子力軍艦寄港に伴う放射能の測定というものは、ここにありますように、「寄港地周辺住民の安全を確保するために、」やるのでございまして、入ってきた軍艦から第一次冷却水が出たかどうか調べるというようなことは、それが目的ではありませんし、それはやろうとしてもできません。潜水艦におしめでもつけてなければ、確保することはむずかしいのでございます。しかし第一次冷却水を相当量出しますと、これはいまのシステムでいって必ずわかります。ですから、いわゆる一滴論といわれるわけでございますが、一滴論というのは、そういう御論議をされたところに科学技術庁が巻き込まれて、そういうことになっておるわけでございますが、初めから原子力潜水艦寄港地周辺住民の安全のためにやるわけでございますから、それは一体現行は必要にしてどうかということでありますと、その点につきましては、日本は、アメリカ西ドイツ、イタリア、フランスイギリス等では全くやっていないような現地の放射能調査、すなわちポスト、ボート等による、海中、水中放射能測定というのを、御案内のとおりやっておるわけでございます。これは諸外国ではほとんど例がない。全然ないといってはあれでございますが、非常に乏しい例であります。日本はそういう点をやったあげくに、試料採取による放射能の年四回の定期的な測定調査のほかに、すなわち海水、海底土、海産物について定期的に年四回やってあるほかに、また原子力軍艦入港のつどやっておるというのも、こんなにやっておる国は世界じゅうにないのでございまして、アメリカの場合は年四回の定期調査、これは海軍省がやる。原子力委員会は年一回。西ドイツは入港のつど、イタリアは、入港前及び出港後、これは定期検査は別にありません。スペインは入港時のみ毎回三回、フランスは一、二カ月に一回程度イギリスでは三、四カ月に一回という程度でございますから、したがって、日本はその定期検査に加うるに入港のつどやっておるなんて、こんなに頻度多くやっておるところはございませんです。そこへ持ってきて、調べるのも、海水、海底土、海産物をやっておりまして、それも化学分析に機器分析に、五核種にわたってやっておる、こういうことでございますから、こんなにやっておるところはないのですよ。  そしてやっておりながら、低レベル過ぎるような、いたずらに名人芸を誇るようなことをやっておって、こんなことで能率があがるだろうか、ほんとうに必要なのかという、いま先生の御指摘があったわけでございますが、私はこの基本線を守ることについては異存はございません。これによって、ずっと見ていく。しかし、実は先般近江委員からお話がありましたように、アメリカ原子力潜水艦の入港の際に、アメリカ流のやり方をこれに加えろ、こうおっしゃったものですから、日本は日本流で、これだけのことを、世界じゅうでやっていないぐらいやっておるのです、それ以上やるのは云々と申し上げたところが、これが問題になったわけでございます。どうか近江委員も御理解を願いたいと思っておりますので、資料等をごらんになられれば、私の本旨はわかっていただけると思うのです。私は、周辺住民の放射能の測定というものに必要な限度は、確実に実行する。そういう意味で、たとえばいままでモニタリングのポスト、ボート——ポストからポイント等につきまして、ちょっと故障なんか出たところがございましてね、こういうのは私は困ると思っておりますから、そういうものは故障が起きないように、そしてもう少し監視をしていくように、きちんとやっていきたいと思っております。  それから、先生のおっしゃるような低レベルをいたずらに誇るという点は、再検討していっていささかも差しつかえないのではないかと思っておりますから、そういう点も考えていきたいと思います。  それから、いまはもう十年前と違いまして、機器分析がものすごく発達したのです。したがって、そういう機器分析に重点を置いて、化学分析というのは、それに対するクロスチェックみたいに持っていったらどうかとも考えておりますので、基本線はいささかもゆるがすつもりはございませんで、きちっとやってまいりたいと思っておりますが、いま申し上げたような点で、ずいぶんだっておりますから、その点は実情に合ったようにやっていきたいということで、どうか近江委員も、この前私の発言を新聞社がおもしろがって書いたものですから、ああいうことになったのです。ひとつよろしくお願いします。私も勉強したものですから。
  137. 内海清

    ○内海(清)委員 敦賀の問題は、私は御存じだろうと思って、詳しく申し上げなかった。ところが、一般大衆は、あそこでコバルト60が出るといえば、ああ原電があるからだということなんです。だから、それは科学技術庁も、一応原電をまず疑うた、しかし、こういうふうに対処して、調査分析してみればそうではないんだということを、国民に十分PRせぬと意味がないわけなんです。だから、原子力軍艦が入っておるのでも、そうなんです。原子力軍艦に対しては、いま長官は、おむつでもつけなければということですが、もちろんこっちができぬのだから、こっちの自衛手段としては、厳格なモニタリングをやるよりほかに手はないではないかということを申し上げたわけです。それからなお、いろいろこまかい化学的な分析が不必要というのじゃありません。しかし、そこまでいくまでに、日本としては、やはり環境の監視のレベルというものを、日本ではこれでだいじょうぶだ、世界各国に比べて、日本のいろいろな持殊事情も考えて、あるいは被爆経験国であるというような持殊事情も考えて、これでだいじょうぶだ、そのことをまず国民に十分理解を得ておくならば、非常な低レベルなものについては、われわれはその施設周辺を監視しておけば一応済むのではないかということを申し上げたわけです。だから、それには、いま言ったような前提があるわけですから、それを誤解のないようにしてもらいたいと思うのです。  これもまた意見になるかもしれませんけれども、原子力軍艦の放射能調査指針大綱というのは、この前申し上げましたが、御承知のように、四十三年の九月にできた。ソードフィッシュ号のあとです。これができまして、四十九年二月までに四回改正をされておるのであります。中身を見ますと、たとえば調査体制などに非常にややこしいものがあるわけです。これはこの前申し上げましたから、詳しく申し上げません。ちょっと見たぐらいではなかなかわかりにくい問題であります。こんな体制では、責任体制が十分でないと思うのであります。  そこで、問題なのは、これほど重要な問題につきまして、いろいろな監視体制にしても、軍艦の入港の監視体制にしても、最終的には、科学技術庁が責任を持たなければならぬと私は思うのであります。そういうことから考えまして、科学技術庁の指導あるいは積極的な介入というものが十分行なわれなければならぬと思うのであります。ところが、この大綱を見ましても、それが十分感じ取られないというところに問題があると思うのです。つまり、あちらこちらで調査したものを集めて、それを出すという、いわばあなたまかせの姿勢というものが依然として残っておるのじゃないかと思うのであります。こういう点につきまして、時間がありませんからきわめて簡単に言ってわかりにくかったと思いますが、これを見ますと、いろいろな体制が——いまも大臣は、モニタリングポストとかモニタリングポイントとかモニタリングカーとかボートとか、いろいろ言われましたが、それがなかなか、沖繩の場合と佐世保あるいは横須賀の場合でも、違う体制がある。そういうものは、もっと科学技術庁が実際にそういうものに責任をもって、指導あるいは介入して、国民の納得のいくようなものを発表する、このことが必要じゃないか、こういうふうに私は思うわけであります。  もう時間が来ましたが、最後一つ、資料としては、この前いろいろ申し上げました。原子力白書によりますと、寄港時における調査が放射能調査研究成果発表会でやられておるというのですが、これらも、中を見ますと、そのデータというものもきわめてまちまちになっている点があるわけであります。そういうことで、この前申し上げておりますので、これはあとで御研究いただいたらいいと思うのであります。そういうふうなことで、もう少し積極的に、監視体制については、科学技術庁もお考えいただいて、国民の十分理解の得られるような体制をやっていただきたいと思います。  これはあるいは参考になるかもしれませんが、この指針大綱にいいます平常値ですね、バックグラウンドというものは、各地についてどの程度のものをいうのかということがあるわけでありますが、これは何かお答えいただけますか。
  138. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生のおっしゃっておられますバックグランド、これはいろいろな値と申しますか、はかられる対象がございまして、たとえば空間のガンマ線量でございますとか、あるいは水の中の放射能の強さでございますとか、あるいは採取いたしました試料、それも海水、海底土、海産物、こういったものによってそれぞれ違うわけでございます。またそれも、たとえば核種によっていろいろ違います。また、場所によって違う、時期によって違うということでございます。したがいまして、簡単にちょっと数値ということではあれでございますが、十分その点は把握してやっております。
  139. 安井吉典

    安井委員長 内海君、時間を経過しておりますから……。
  140. 内海清

    ○内海(清)委員 それではこれで終わりますが、バックグラウンドの測定値を見ますと、かなり変動しておるわけです。このような変動に対して、国民に納得のいくような説明がしてほしいと思うのです。そのことが私は大事だと思うのです。しろうとがわかるような説明をしてほしいということであります。科学技術庁としては、各担当機関に委託して、そして単にデータを集めて公表するという姿勢だけでは、さっきも申し上げましたけれども、国民はなかなか納得せぬと思う。そういう意味で、この自然放射能の測定に対しましては、国民の理解を十分得るような、そういう努力をしてもらいたい、こういうふうに思います。そのことを強く要望しておきたいと思います。いろいろここで議論されますけれども、対象は国民でなければならない。国民が納得するような調査分析、資料の公開が行なわれなければならぬと思いますから、このことを強く要望しておきまして、終わりたいと思います。
  141. 森山欽司

    森山国務大臣 科学技術庁はたいへん口べた宣伝べたでありまして、こういう点について非常に足らざる面があったと思います。そういう面につきましては、せいぜい努力をいたすつもりでございます。いろいろ御示唆をいただき、ありがとうございました。     —————————————
  142. 安井吉典

    安井委員長 この際、御報告申し上げます。  原子力潜水艦の放射能調査に関する問題について、委員会の決議に基づき、去る十八日参考人より意見を聴取することにいたしておりましたが、諸般の事情により、委員会を開会することができませんでしたので、理事会の協議により、あらためて、来たる五月八日招致することといたしましたので、御了承願います。  次回は、来たる五月八日午後一時理事会、一時十五分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十一分散会