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1974-03-27 第72回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十七日(水曜日)     午後零時十八分開議  出席委員    委員長 安井 吉典君   理事 伊藤宗一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐々木義武君 理事 田川 誠一君    理事 石野 久男君 理事 原   茂君    理事 瀬崎 博義君       加藤 陽三君    粟山 ひで君       河上 民雄君    近江巳記夫君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         科学技術庁原子         力局次長    生田 豊朗君  委員外出席者         原子力委員会委         員       稲葉 秀三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力開発に関  する問題)      ――――◇―――――
  2. 安井吉典

    安井委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、森山国務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。森山国務大臣
  3. 森山欽司

    森山国務大臣 原子力開発利用長期計画は、昭和四十七年六月改定されたものでありますが、その後、石油危機など、諸情勢変化があり、原子力開発利用をめぐる環境が大きく変化をしております。現在、総合エネルギー調査会でも、このような情勢変化を踏まえて、長期的なエネルギー需給計画見直しに入っていると聞いておりますが、原子力委員会といたしましても、将来の原子力発電開発規模見当をつけて、具体的な政策の立案に役立てることが必要と考えられましたので、この問題の権威である稲葉原子力委員に、昨年十二月以来試案の作成をお願いしてきたところであります。  約三カ月にわたる検討の結果を、第一次私案ということでまとめていただきましたので、本日、委員会皆さまに、稲葉原子力委員から報告をしていただくことになりました。  なお、今後は、この私案一つのたたき台といたしまして、より現実的な案を作成し、さらにその案の実現のためのタイミング、機構などの方法と問題点を考えてまいりたい所存でございます。
  4. 安井吉典

  5. 稲葉秀三

    稲葉説明員 ただいま御紹介にあずかりました稲葉でございます。きょうは、私の見解を表明する機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げたいのでございます。  実は、終戦後、私はいろいろな問題につきまして、国のエネルギー政策のお手伝いをしてまいりました。そのような観点から、一国経済の将来、また国民生活の将来というものを考えますと、やはりエネルギーがどのように充足できるかどうかということは、非常に大きな問題である、こういったような意識を持ち続けてまいった次第でございます。  たまたま昭和四十年代に入りまして、日本経済成長は非常に大きくなり、またエネルギー消費も拡大してまいりました。そして従前までは、必要な経済規模内容というものを決定すれば、エネルギーというものは大体国産輸入で手に入る、こういったような見方考え方が支配的でございましたが、四十年代に入りまして、そういったようなことにつきまして、再検討をしていかねばならぬ問題が、いろいろな角度から登場してまいりました。  たとえば、あとで御報告申し上げまするように、日本経済国民生活をまかなうエネルギーは、だんだん世界エネルギー革命に便乗いたしまして、石油に対する依存度が高くなってまいりましたが、これがはたしてずっと安価な形で供給できるのかどうか。また、ここまで経済が大きくなりまして、環境の問題とか公害の問題というものが登場してまいりますと、いままでのような形でエネルギーや国の経済発展を構想することができるのかどうか、こういったような問題が登場してまいりました。大体、私個人の感触では、昭和四十四、五年ごろから、そういったような雰囲気の大きな変化が起こり出してきたように思われます。また、今回の石油危機にあたりまして、私たちはその問題に対しまして、もっと根本的な検討をしていかねばならぬ、このようなことを痛感し、さき森山大臣から御紹介がございましたように、私も一員でございまする通産省の総合エネルギー調査会でも、それに対する検討を行ないつつある次第でございます。  そのような角度で、総合エネルギーの中で、やはり原子力につきましても再検討の必要を迫られている、このように思うわけでございますが、私は昨年の十一月の末に、皆さま方の御承認を得まして、原子力の非常勤の委員にさしていただいたわけでございますが、その直後におきまして、やはり原子力計画総合エネルギー計画の中で基本的に見直していく、そういうことに対するいろいろな見解とか見方を取りまとめろ、こういう御要請がございましたので、それに御協力をいたしまして、いろいろ検討いたしましたのでございますが、本日、お目にかけまするのは、むしろ私案内容というよりも、検討していかねばならない基本的な課題、このようなことにつきまして、皆さま方に御説明をさしていただきたいと思う次第でございます。――委員長さん、与えられました時間は何分ぐらいと……。
  6. 安井吉典

    安井委員長 約三十分のつもりです。
  7. 稲葉秀三

    稲葉説明員 そして、この資料は、大体お読み願ったと考えてよろしゅうございましょうか。安井委員長 速記をとめて。   〔速記中止
  8. 安井吉典

    安井委員長 速記を始めて。
  9. 稲葉秀三

    稲葉説明員 それでは、まず、私が今回取りまとめました考え方一つに、エネルギー基本的認識というものをどのようにしていかねばならぬかという問題がございます。それについて簡単に御報告を申し上げますと、これは世界的な傾向でございますけれども、経済成長率エネルギー消費というものは、世界的にほぼ一致いたしております。これは資本主義国だけではなくて、社会主義国を通じましてもいえることでございます。ただ先進経済国家では、経済成長率が一に対しまして、経済成長伸びが弱いということと、やはり効率的な考え方が普及しているのですか、〇・九ぐらいになっております。それに対しまして日本の場合は、少なくとも過去のパターン、最近のパターンをもとにいたしますると、経済が一〇%伸びるに対しまして、一一ないし一二%の一次エネルギー供給増加が必要となっている、こういう形になってきております。そして、私はそのことを三ページの表にあらわしているわけでございますが、数量であらわしますと、昭和三十年には、五千六百万キロリットル石油換算の一次エネルギーでございましたが、昭和四十七年度につきましては、三億五千万キロリットル石油換算を上回るエネルギー消費というものが日本に行なわれております。そして実質経済成長率は、この間エネルギーが七倍弱の伸びに対しまして六倍見当と、こういうパターンにいままではなってきておるわけでございます。しかも日本の場合におきましては、石油に対する依存度が非常に強くございまして、現在七五%というエネルギー石油に依存している。石油は前年に対しまして毎年毎年一〇%ぐらいの増大をしつつある、こういう傾向でございます。  さて、昭和四十五年以来、実はエネルギーパターンにやや基本的な変化が起こり出しました。つまり私たち従前のように容易に安い形で石油を手に入れるということがむずかしくなってまいりました。それはいわゆるOPEC攻勢によるものでございます。したがいまして、その前までは、世界石油供給過剰の時代でございまして、ぜひ石油を買ってもらいたい、こういうことでございましたが、その後におきましては基本的な変化が起こり、ドル建ての値段で申しますと、今回の石油危機が開始されまする昭和四十八年十月時点と、OPEC攻勢の始まりました四十五年時点とを比べますると、すでにドル建てで二倍半強原油価格の高騰というものが起こってきております。  もう一つ重要なことは、やはり国民経済水準が非常に高くなりますと、環境の問題、公害の問題が非常に大きくなります。そのような結果といたしまして、将来のエネルギーを充実していくということに対しまして、だんだん困難が加重されてきつつあった次第でございます。そこへ石油危機が登場してきた、このように考えます。  さて、そのようなことを背景にして、将来に対処するということを考えますと、やはりエネルギーに対する見方変化が必要ではなかろうかと感ずる次第でございます。  その一つは、いままでのように、経済国民生活をこのようにすれば、エネルギーというものは国産輸入で大体手に入る、こういう見方考え方をひっくり返して、むしろエネルギーがどのような内容努力によって、将来どこら辺まで手に入るのか。そのエネルギーをどのように使って、経済成長国民生活を維持していくのか、このような見方考え方を私たちは強めていかねばならない、このような感じを非常に強くした次第でございます。  そして、そのような観点から、一応過去のパターンというものを延長していろいろな見方考え方をいたしまして、一体エネルギー供給がどこら辺まで達成できるのか。さらにもう一つは、エネルギー供給量をでき得る限り増大するということを構想した場合、どのようなことになるだろうか。また、その双方を考え合わせて、まあ諸般のいろいろな事情を考えると、総エネルギー供給量は大体どこら辺までいくし、そして弾性値を考えて、経済発展というのはどういう形になるだろうか。その次は、経済性ということだけではなくて、経済性を考慮しなければならぬけれども、諸般国際関係事情とか国内環境問題だとか、そういういろいろなものを投入した場合において、エネルギーの各部門のあり方というものはどのような形になるのがよいのか。そしてその場合、原子力というものをどのように基本的に考えるべきか、こういうことにつきまして、私案というよりも、見方考え方を整理いたしまして、そして将来、政府やまたいろいろな各般のエネルギーのことについて関心の多い方が、いままでの見方考え方をまとめていただくという素材を提供しようというのが、とりもなおさず、この稲葉私案の基本的な考え方であるということを、まず御報告申し上げたいと思います。  さて、そういうことにつきまして、考え方数字を整理するという仕事を、実は一月ほどかかりまして、具体的に展開したものでございます。そして数字手がかりとして、お手元の一九ページのところをごらんになっていただきたいのでございますが、これは将来のエネルギー見通しにつきまして行なわれました過去におきまする公式的な推計でございます。そして、これをごらんくださいましてもわかりまするように、昭和四十二年に立てられました見通しと、四十五年に立てられました見通しとの間には、根本的といってもいいほどの相違というものが、そこに起きておるわけであります。昭和四十二年というのは、佐藤内閣のもとにおいて経済社会発展計画がまとまりまして、それを前提にした数字でございます。ただし、経済社会発展計画は、昭和四十二年から四十六年までのものでございますが、やはりエネルギー政策を進めていくということにつきまして、将来を延長して、その推計をした数値でございます。  次に、御存じのように、昭和四十二年ごろから日本経済は飛躍的に発展をいたしました。いわゆる高度成長時代に入りました。そしてほぼ四十六年度に行き着くはずの水準に、実は四十四年度に行き着きかけたということもありまして、そこでひとつ根本的な経済見直しをしようということで誕生いたしましたのが、新経済社会発展計画というものでございます。そして、その新経済社会発展計画をよりどころにいたしまして、長い目で考えると、やはり日本経済も将来鈍化をしていくだろう。新経済社会発展計画では、昭和四十五年から五十年度までの経済成長率を、実質一年平均一〇・六%と想定いたしております。それに対しまして、五十一年から五十五年度までは九・五%、五十六年から六十年度までは八・五%ぐらいの実質成長率想定いたしまして、そして各種エネルギーパターンを組み合わせて想定をいたしましたのが、現在までやや公式的な見解であるところの将来のエネルギー見通しでございます。そして、先生方がごらんくださればおわかりくださいますように、総エネルギー需要量は、石油換算で十億キロリットル前後ということになります。その場合の原子力が六千万キロワット、国内石炭が三千六百万トン、輸入原油が七億キロリットル前後、国産原油が六百三十万キロリットル、液化天然ガスが千四十万トン、各種バランスというものがこういうことになるだろうというのが、いままでの公式的な見通しでございました。  さて、今回の再検討にあたりまして、基本的に、私たち現実を出発にいたしまして、はたしてそういうことが供給可能なのかどうか、供給可能の場合においてはどういうことになるだろうか、ということをいろいろ検討してみよう、しかもエネルギー供給ということに重点を置いて、今度は経済や産業や国民生活がどういうことになるだろうかということをひとつ想定をしてみようという形で、はっきり申しますと、三つの段階における推定というものをいたしたわけでございます。  一つ段階は、現状ではエネルギー充足難というのがだんだん強くなりつつございます。さらに石油につきましては、将来――すでに現在において、日本世界一の石油輸入国でございます。今後もどんどん石油を買い付けるという国際的な条件というものはあまり考えられない。しかも石油は今度は非常に高くなる。つまり過去四年間に、今回の値上げというものを織り込みますと、約五倍強という形になっている。自然、日本は高いエネルギー経済を運営していくといったような条件をしいられる。先行きそういったようなことについても再検討をしていかねばならない。そういう要素を入れて、現実プラスアルファで将来を予測した場合において、一体どこら辺までその供給量増大できるであろうかということを第一に推定いたします。  第二に、今度はややエネルギーというものに重点を置きまして、まあ十億キロリットルというのが六十年度の目標だったのですが、ここで先生方がごらんくださればわかりますように、国内炭三千六百万トンというのが、どうもそこまで伸びるということがむずかしいように思われます。さらに国内石油開発規模、現在百万キロリットルでございますが、これが六倍ぐらいになるということは、まあそのようになり得るかもしれません、なるということを切望するわけでございますが、それを根っこに置いて、現在、将来のエネルギー推定するということもむずかしいと思います。また、石油輸入規模を七億まで持っていくということも、これは国際的にいろいろいわれている問題でございますけれども、なかなかむずかしいと思います。しかし、最大限エネルギーというものを充実していくということをすれば、今度は新しいエネルギー開発をどのようにここで画期的に進めていくか。たとえば輸入炭増大して発電をしていくということをどうしていくのだとか、さらに地熱とか太陽熱といったことに対してどうしていくのだとか、天然ガスに対してどうしていくのだという措置をとらなければなりませんが、やはり現実的な技術的、経済的可能性ということになりますと、私たちは、これから少なくとも十年、十五年間は、世界的な趨勢として、原子力を推進していくという措置をとっていかねばならないだろうと思います。しかし、そこにもいろいろな限界があるといたしますると、十億に近いところにまで努力をして、一体どの程度エネルギー供給力が可能であるのかということをひとつ推定してみる、これがいわゆる増大型ケースII想定したところの第二の予測値でございます。それにつきましては、お手元数字で明示しておりますのが第二二ページ、二三ページの表でございます。  そこで、私自身推定いたしました数値は、原子力につきまして、昭和五十年におきましては七百万キロワットぐらいの発電所は動いているだろう。そして、現在動いている、建設中である、計画中であるというはっきりした発電所は、合計いたしますと千六百五十万キロワットでございます。そして、あとで時間があれば御紹介申し上げたいのでございますが、今回の石油危機を契機に、アメリカも、フランスも、スウェーデンも、西ドイツも、電気原子力に傾斜していこうという努力を積極的に展開いたしております。  しかし、一応現状推移型プラスアルファでは、五十五年度の原子力を二千二百万キロワットと想定いたしております。これは既定計画の三千二百万キロワットに対しまして、実に一千万キロワット下になる、こういうことになります。そして、六十年度におきましても、現状プラスアルファ努力をいたしまして、三千七百万ぐらいではなかろうか。これは、あと先生方から御質問があるかもしれませんけれども、それほど根拠をもってそういうことを推定した数字ではございません。つまり全体のあり方推定するための、どこら辺までエネルギー供給できるか、原子力がやれるかということを想定した数値でございます。その場合に、それが稼働いたしますとどの程度電気が出てくるのか。そして、どの程度キロカロリーになるのかという計算を、その次の欄でしているわけでございます。  次に石油でございます。石油につきましては、一応過去におきますパターンは、五十年度三億二千万キロリットルの石油輸入する。そして、五十年度におきまする総エネルギー供給率は、石油換算四億四千万キロリットルという数値でございます。ところが、もしも石油危機なかりせば、あるいは石油危機の影響がそれほどないといたしますると、どうも自然の趨勢値で四億四千万キロリットル、三億二千万キロリットルという数値は、現実にそれを上回った数字になるわけでございます。と申しますのは、すでに去年の石油輸入が二億八千万キロリットルであります。今年度が三億キロリットル。本来から申しますと、いままでなかりせば、ほぼ四十九年度ぐらいに行きつく数値でございます。  しかし、どうも今後につきましては、国際的にいろいろなむずかしいことがございますし、メジャーの開発威力がだんだん少なくなる。といって、そう新しい石油を方々から買ってくるという条件がないといたしますと、ここではややそれを低目に推定をしなければならない、こういうふうに考えまして、あとで御批判をこうむりたいのでございますが、これは私個人推定をしたということでございまして、それほど私個人の頭が明敏だということではございません。一応手がかりといたしまして、石油輸入は、四十七年度の二億六千万キロリットルに対しまして、ここでは三億六千七百万、六十年が四億ぐらいという想定をいたしております。  石炭は、これはキロカロリー計算でございますから、実際はこれを実量に直すときには三分の二になりますが、過去五年間平均伸びの二%、こういったようなものを想定いたしまして、石油換算、五十年に七千百万キロリットル、四十八年度の実績値は、国内炭が二千二百万トン、輸入炭が五千万トン、合計七千万トン、それを石油換算いたしますと四千万キロ強、こういうことになるのではないかと思いますが、そういう推定をいたしました。  水力開発につきましては年間十億キロリットル、その他の点につきましては、あまり大きな見方をいたしませんで、従来の延長、こういうものを想定いたしまして、そして総エネルギー供給量想定いたしますと、五十年度が石油換算四億二千九百万、これでも過去の数値の四億四千万キロリットルにちょっと下がるというぐらいの数値でございます。五十五年度が五億四千万キロリットル、六十年度が六億一千八百万キロリットル。このことは、昭和四十五年につくりました前提としての十億キロリットルに比べますと、六〇%ぐらいのエネルギー充足率にしか、その場合においてはなりません、こういうことになる。  その場合、経済成長がどの程度までいくのだろうかということを、これも非常にラフな計算でございますけれども、やらしていただきましたのが、このお手元の三四ページの表でございます。  そのラフな計算というのは、つまり先ほど私が御報告申し上げました、経済が一〇伸びるに対してエネルギーが一一%、こういうのが弾性値でございます。それを弾性値一の場合とか、さらに〇・九八とか、つまりエネルギー使用効率がだんだん高まっていく、こういうことを想定した場合において、一応有効利用というものを想定をして、経済成長率は五十年度から五十五年度までがまあ五%ぐらいだろう、それから先はずっと急速に下がっていかざるを得ない、こういう数値になるわけでございます。  第二の想定は、供給力増大型というものでございまして、でき得る限り、十億キロリットルに近い形でやっていくにはどういうエネルギーの組み合わせが必要かということを、いろいろな角度から計算をしたものでございます。この場合、石油が問題でございますけれども、本来からいえば、国内石炭が減ってくる、さらにほかのエネルギーも減ってくるということを想定いたしますと、石油はなかなか減らないということになります。しかし、石油はやはり既定計画以上に増大するということは、数量価格の面において無理がある、こういうふうに想定いたしていきますと、どうしても現実的なエネルギーの調達は原子力に依存せざるを得ないということになります。  そこで、ここでは原子力を五十五年度において三千二百万キロワット、六十年度において六千九百万キロワット、六十五年度において一億一千五百万キロワット、こういうふうに想定をし、石油輸入を五十五年度において四億七千万、六十年度において六億、そして石炭年間三%増、水力については第一次案の五〇%増大ができる、そして、そのほかのものについてはやや強い形でこれをプッシュをする、こういうふうにして計算をいたしましたのが、実は石油換算九億三千百万キロリットルということになります。つまり、はっきり言えば、昭和六十年の既定計画におきまする十億キロリットル前後にも、そこまでやってもまだ達せられないという形になります。しかし、その場合は成長率はもっと増大もできるわけでございます。  さて、この双方を比較いたしまして、問題は、こういうことをにらみ合わせながら、ほぼどのような形に諸般事情を考えていくのが合理的なあり方か、その場合において原子力をどのように位置づけるべきかということが問題でございまして、それは実はこれからほんとうに衆知をしぼってやっていかねばならぬ問題でございます。  ただ、そういうことを、今後、各省また各専門家がおやりになるということを期待いたしまして、一つ数値をここにつくっている。総合エネルギーバランス経済発展とか国際関係とか、そういうことを考慮して、まあ現時点では、こういうのが私個人として一番よいと思いますという、控え目な形で出させていただきましたのが、実は三〇ページから三一ページにございますところの試算でございます。これは、はっきり申せば、森山大臣さきにおっしゃいましたように、今後の論議を引き出す一つ私案にすぎないわけでございます。私自身も、ほんとうにこういうことを進めていくためには、もっと統計も整備をする、関連分析もいろいろしていく、もっと経済以外のいろいろな要素の投入をもはかっていく、そういったようなことを、やはりこれから三月、半年、真剣にやっていかなければならないと思っております。  ただ、何らかのそういうことを期待するという意味におきましてつくりましたのが、この私案の試算IIIでございまして、それの基本的な考え方は、第I案では経済全体がうまく動いてくれないとき、第II案では供給力をそこまで、客観情勢世界エネルギーが変わった中で、非常に高いエネルギーを使ってどんどんやっていくということになると、どうも無理があるのではなかろうかという想定に立ちまして、その間においてどのくらいの数値を求めるべきかという形において出した腰だめの数字にすぎないのでございます。そこでは、私は、六十年度八億五千万キロリットルぐらいがいいところじゃなかろうかということを、実はこれも腰だめでございますけれども、頭に入れて想定をしたのでございますが、さて、一つ一つのいろいろな要素を考えていきますと、そこまでは入らずに、大体二〇%減の八億キロリットルという形にならざるを得なかったというのが、実はほんとうの取りまとめから出た結論でございます。  その場合において、一応どのように想定をしたのかと申しますと、原子力につきましては、昭和五十五年におきまして、三千二百万キロワットを二千八百万キロワットぐらいに想定する。これでもよほど努力をしていかなければならぬ数字だと思います。六十年度につきましては、ひとつもっと努力を集中していただいて、六千万キロワットの既定目標だけは今度は最小限達成していかなければならぬ目標としてやっていただく。六十五年につきましては、一億プラスアルファの目標というものをやはり想定する。石油につきましては、昭和六十年におきまして四億九千七百万キロリットル、こういうものを依存する。そして石炭水力その他に割り当ててやったわけであります。  ここで、私がこういう仕事をさせていただきまして感じましたことを申しますと、まず、新規のエネルギー開発というのがどうしても必要でございます。また、でき得る限り石油依存というものを脱却しなければならないと思います。また、原子力のための原子力をやる必要はございません。しかし世界的な趨勢であり、新しい資源開発につきましても、太陽熱とか地熱とか石炭の液化とかガス化だとか、そういうものについて、タイムテーブルと、それから出てくる効果というものを測定いたしますと、すでに世界がそういうふうに進んでおりますように、少なくとも当面十年、二十年という世の中におきましては、原子力というものを推進していくということは、一国にとってどうしても必要ではなかろうか、こういうことを示唆したものだと申し上げたいのでございます。  そして、問題は、そういうことを条件にして、今後どのような施策を展開していくのかということにあると思います。そういうことにつきまして、ここではいろいろ問題提示をさせていただきました。できるならば、ひとつ、そういうことを御吟味していただきまして、今後のあるべきことを進めていくということと、当面五年、十年、十五年という期間につきましては、やはり日本が最小限エネルギーを充実するということになりますと、石油をどうするか、原子力をどうするかということが、実は非常に大きな分かれ目にならざるを得ないと思います。ともかく、日本は総エネルギーの四分の三をいま石油に依存しております。電気についていえば、昔は水で電気を起こしておりましたのが、いまは三分の二の電気というものが石油から供給されている。しかも、それをずっとこれからもやっていけるという条件がないといたしますると、諸般事情を考えまして、どの程度規模において原子力を推進していくのかということが必要ではなかろうかと思います。そして御参考といたしまして、コストの計算でございますとか、海外でどういったような施策が展開されているかとか、かりに私が提示いたしました原子力努力型をするとなりますと、既定計画に比べまして、原子力の安全性を進める上においてどういうタイムテーブルで進めていかねばならぬか、こういったようなことを御参考のために提供さしていただきましたのが、この私案でございます。  すでに与えられました三十分という時間が経過いたしましたので、一応、以上をもちまして、私の御説明を終わらしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  10. 安井吉典

    安井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤陽三君。
  11. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ただいま稲葉先生からたいへん示唆に富んだお話をいただきまして、私、教えられるところが非常に多かったことでございます。  まず最初にお伺いしたいことは、ケースIIIの場合の、昭和六十年における総エネルギー供給量を八億五千万キロリットルにしたがったけれども、どうしてもできなかった、八億キロリットルだ、というふうな御説明がいまございましたが、どういう点に一番困難を感じられたのでございますか、お伺いいたします。
  12. 稲葉秀三

    稲葉説明員 先ほど、私があとで申し上げましたところで尽きると思いますが、原子力をもっと急いでやるか、それとも石油をもっと輸入するかということが、当面の十年間ぐらいにつきましては、大きな決定的な要素ではないかと思います。ただ非常に今回の石油価格ということが国際的にいろいろな波紋を呼び起こしました。たとえば原油が十ドル以上になりますと、オイルシェールやタールサンドがどんどん出てくるということも考えられる。それから、日本では私はあまり期待はできないと思いますけれども、やはりアメリカ、ヨーロッパの一部では、国産石炭というものが非常に大きくなってまいります。そのようなことがどのような情勢変化をもたらすかということを見きわめるには、少なくとも二、三年かかる。したがって、そういうことも考えねばなりませんけれども、現在私たちが手に入れる材料から想定できるのは、やはり原子力をもっと強くしていく。アメリカでもフランスでも、そういう傾向へ急角度に拍車をかけようとしております。スウエーデンもしかり、西独もしかり。ただ諸般事情を考えまして、私はやや――これはあとでおしかりをこうむるかもしれません。場合によりましては、これは高過ぎるといわれるかもしれません。しかし、日本の特殊事情を考えまして、少なくとも過去の第三次計画の目標は貫徹する、そしてもっとコンセンサスを得た上で大きくやっていくということが必要ではなかろうかということが、主として大きく足を引っぱりまして、私の第三案でも、十億キロリットルにならなかったということでございます。
  13. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その点はわかりましたが、それで石油価格が非常に高くなっていく。われわれしろうとですけれども、考えますのは、やはり水力とか石炭というふうなものの活用といいますか、増産といいますか、そういうふうなことをまず考えられるんじゃないかと思うのですが、この御試算になりました石炭水力供給量というものは、これはそういう点もお考えに入れて、この数字を出されておるのでございますか。
  14. 稲葉秀三

    稲葉説明員 これも、今後の推移を見ないとなかなかむずかしい問題だと思うのですけれども、一部国際的にあらわれておりまする傾向は、石油の値段が高くなりましたし、天然ガスの値段も高くなる、輸入する石炭の値段も高くなる、それから国内につきましては、これは補助政策で、最低限二千万トンの石炭は掘っていただくという形でやっておりますけれども、大幅にやはり石炭の値段が今後増高をするということも考えられます。しかし、遺憾ながら、日本国内石炭は、昭和四十八年度で二千二百万トンでございます。これが倍になりましても、実は将来のエネルギーバランスにおきまする国内石炭の比率は、実は三%ぐらいにしかならぬといたしますと、どうしても石炭だけでエネルギーというものの主軸にするということはむずかしい。また日本の場合は非常に賦存条件が悪いということもございまして、コスト高になるといたしますと、一部の方がおっしゃるように、石炭だけでエネルギーの問題が解決するとは、私自身は思わない次第でございます。
  15. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 そこで、石炭水力の問題はそれとして、この御試算になっておる、たとえばケースIIIの「最小限努力目標」の「その他」のところ、これはおもに何を考えていらっしゃるのですか。天然ガス、LNGということは書いてありますが、地熱とか太陽熱というふうなものは、どの程度にこの段階において利用できるというふうなお考えに立っておられますか。
  16. 稲葉秀三

    稲葉説明員 天然ガスにつきましては、私、総合エネルギー調査会のガス部会長をいたしております。また都市ガス調査会の会長もいたしております。そこで感じますことは、これは主としてやはり公害の問題ということもございまして、おくればせながら、わが日本といたしましては、まず第一に、東京と大阪の都市ガスは、いまから八年後には全部無公害天然ガスに置きかえる、そしてそのガスは主として輸入に依存せざるを得ない、それをさらにもっとこれから進めていって、他の都市にも普及する。それから一部大都市周辺の発電所は、大気汚染の問題もございますので、やはり天然ガスを活力にした発電所に置きかえていただく、こういったようなことも整備をしていかねばなりません。  地熱につきましては、今回、岩手県の盛岡でできまするのが五万キロワットですか、将来これがもっと大きくなり得るというのには、時間的な、いろいろな実験とかいう期間が必要でございます。それがどのようなところにまで、技術的、経済的に可能かということは、これからもっとお金を出して研究して進めていただきたい。一つは、やはり自然破壊の問題も起こってまいりますが、そういうことも見きわめていただきたい。ただ、現時点において私が感じますることは、地熱で大きく電力をまかなうということは、国際的にも成立をしない、国内でもまだ無理ではなかろうかと思います。  太陽熱につきましては、これも屋根の上に太陽電池をつくって、それぞれの個人のお湯とかおふろの水を供給するということはいいんですけれども、根っこの電気にまでやっていくというには、おそらく二十年、三十年という積み上げ努力というものが必要ではなかろうか、こういうことを考慮して、しかしいままでよりもそういう要素をもっと引き出す、こういったようなことを前提にして対処しなければならぬという見方考え方は入っているわけでございます。
  17. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その次にお伺いしたいことは、ケース皿の試算によりますと、昭和六十年度には総エネルギー供給量昭和四十五年に考えた新経済発展計画ですか、これの八割になるわけですね、八億キロリットルですから。こうなりますと、この場合において、ケースIIIの場合でも、国民生活にどの程度の圧迫がかかってくるか。現在の生活水準を相当切り下げなければならないとお考えになりますか。その点いかがでしょう。
  18. 稲葉秀三

    稲葉説明員 実はきょうは総合エネルギーの問題と、もう一つ電気の問題と両方ございますが、時間の関係もございまして、電気の問題に対しまする試算というのは御報告できなかったわけでございます。  ただ、いま加藤先生がおっしゃったことを前提にして申しますと、実際は、同じ表でも、四ページに書いてある表を見ますと、いかにエネルギーをたくさん使ったかということが出てくるのです。こういうふうに時間的に系列になりますとこうなりますが、少なくとも、過去十七年において、エネルギー消費高は七倍弱であったということは間違いないのです。そして今度の場合の試算でも、エネルギー全体が下がるという試算には、ケースIでもならない。ただ、はっきり申しますと、そろそろ日本は、石油をどんどん買ってエネルギーをふやして、そして経済国民生活世界の七〇%増し、八〇%増しでいつでもいけるんだというあり方は、ここいらで考え直していかねばならぬ。要するにエネルギーを考えながら、どの程度の速度で経済発展をこれから実行していくのかということがきめ手になるわけです。しかし、生活というものは毎年大体何%ずつ向上していかねばならぬという形になりますと、いつも経済がそれにふさわしいような形で増大しませんと、実は経済の中のアンバランスが大きくなりまして、物価が上がるとか国際収支が不安になるとか、貯蓄と投資の関係がむずかしくなるとかいう問題が起こってくる。そういうことを考えますと、実はもう少しスロー・バット・ステディに、これからの日本は、世界平均並みか若干それを上回った程度において伸びていくという考え方が、高エネルギー時代、省資源の時代においては必要であると同時に、こういうものを契機にして、なるべくエネルギーをたくさん使わない産業を育成していくとか、付加価値の高いものをどうしていくのかという、抽象的な知識集約化でなくて、具体的な知識集約化をどういうふうにしていったらいいかということを考えていかねばならぬ。  そこで、私の結びの中にもございまするように、やはりエネルギー中心のシンクタンクというものをひとつここで育成してやってほしい。現にアメリカでもエネルギーバランス表というのを四、五年かかってみなつくっているわけです。こういうふうに石油が来ないときには、どういうふうな組み合わせでいったら一番マイナスが少ないかという試算が出ているのです。それをやるためには、二年か三年お金と人をつぎ込んで努力していかねばならぬという問題もあるわけです。これはいまのところは、政府でいただきました統計と、私の素朴な頭でそういうことを想定しながらやったもので、経済がこうなるからといって、生活が落ちるということにはなりません。ただ、上がるテンポはいままでよりはずっと小さくなります。
  19. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 わかりました。確かに御提案のシンクタンクのようなものが非常に大事だと思いますね。きょうは突っ込んだ議論をもう少しさせていただきたいと思いますが、時間がございませんので、一番大事だと思う問題について、最後に一つお伺いします。  やはり安全性の問題とか廃棄物処理の問題は、原子力の利用を進める上において非常に大きな問題であることは言うまでもございません。御承知だと思います。この点について、稲葉先生はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  20. 稲葉秀三

    稲葉説明員 私も従来外側でそういうことを勉強しておったのでございますが、去年の十一月ごろから半分内側の人間にしていただきまして、そしていろいろ原子力の問題を検討さしていただきますと、やはり私が従来考えておりましたよりも、安全性というものは、一国の原子力平和利用の推進の上に、いかに重大であるかということを痛感いたしました。しかし私は、いま先生の御質問に対しまして十分お答えをするだけの資格がないわけでございます。いま私は文学士、経済学士でございますが、一生懸命になって技術のことも勉強をしている最中でございますから、あまり的確なお答えはできかねるのでありますが、現在まで勉強さしていただきました私の見解を率直に申し上げたいと思います。  その一つは、国際的に原子力開発というものが推進される場合において、やはり安全性というのは非常に大きな要素であります。しかし、わが日本の安全的な配慮が、国際的な努力に対して劣っているというふうには思いません。ただ日本の場合は、御存じのように非常に地域が狭くて、おまけに過去において原子爆弾の洗礼を受けた国である、こういう特殊性もございましょうが、決して外国以上にそれを軽視して進めているとは思いません。しかし将来どうしてもこれが必要だということであれば、やはり何よりも、安全性に対してどれだけの努力をするかということをもっと話し合って進めていく、そういう体制を築いていく。率直に申しまして、原子力開発、平和利用そのものには御反対はなさらないのですけれども、安全性の問題に対する評価、認識で、進むのがむずかしいというのがわが日本であると思いますると、ひとつそういうことに対しまして、政府も産業界も、またそういう御主張をなさる方も、もっとお互いに意思を疎通し合ってがんばっていく。はっきりいえば、エネルギーがなければ生活は下がっていく、インフレが起こってくるということは避けがたいのでございますから、そういったようなことを排除する話し合い、コンセンサスというのを何とかひとつつくることに努力をしてみたいものだと私は思っておりますが、ともかく先生のその御質問に対しまして、私は現在こうだというふうにお答えを申し上げる立場にはおらないわけでございますから、その点もあしからず御了承を得たいと思います。
  21. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 稲葉先生にお尋ねするのは無理だったかもわかりませんが、科学技術庁のほうで、原子力発電を進める上において、いま非常に問題になっているのは安全性の問題だと思います。具体的に、どういうところでどういう問題が起こっているということ、またこれに対してはどういう対策を講じつつあるということを、簡単でいいですからお答えいただきたいと思います。
  22. 森山欽司

    森山国務大臣 ただいま御質疑もあり、稲葉委員からお答えもありましたとおり、安全性の問題は、原子力の平和利用を進める上において最も重大な問題であることは申すまでもありません。したがいまして、四十九年度の予算の編成に際しましては、予算の概算要求におきましても、これらを盛り込んでおったわけではございますけれども、昨年暮れの現在開かれておる通常国会の開会の当初、参議院の予算委員会における質疑を契機といたしまして、予算の追加要求をいたしました。その結果、現在原子力の予算は全部で六百五十億円程度でございますが、その中で、安全性に関する予算は百五十億円を占むるに至っております。これは昭和四十八年度における安全性の予算、債務負担行為を合わせまして、約七十億の倍以上になるわけでございます。それで、この四十九年度の予算編成は、御案内のとおり、総需要抑制という見地から非常にむずかしい状況ではございましたが、政府といたしましても、特にこの点に留意をして、この予算要求、予算編成の直前のきわめて短い期間でございましたが、これを承認してもらったわけであります。しかしこれはことしだけに限るわけではございません。おおよそめどといたしましては、四十九年度、五十年度、五十一年度、この三カ年間をめどにいたしまして、この安全性の予算の、すなわち施策の飛躍的な増強をはかるようにいたしたいというふうに考えております。しかし、このたび稲葉先生のほうで、第一次私案の御発表がございまして、この内容検討のいかんによりましては、現在私どもが重点を入れております安全性の問題につきまして、さらにこの上とも一段の措置を要することがあり得るかもしれない。またそういうことでありますれば、さっそくにも昭和五十年度以降について織り込んでまいりたい。今後の問題としては、この稲葉私案に対する反響というものを考えながら、その問題に真面目に取り組むという態勢で臨んでおる次第でございます。  まあ予算面からのお答えを、私から申し上げたわけでございますが、技術的な側面につきましては、もし補足する点がございましたら、政府委員のほうから、ちょっとこまかくなって、時間がかかりますが……。(加藤(陽)委員「持ち時間が来ましたので、また次の機会に」と呼ぶ)それでは、ひとつこの程度でお許しを願いたいと思います。
  23. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 安全性の問題、もう少し突っ込んで、別の機会に議論さしていただきたいと思います。  この稲葉先生の案も、これは第一次私案で、もう少し前提などもこまかく承りたいのです。けれども、これは第一次私案で、この次、第二次、第三次と案を固めていらっしゃるのだと思うのです。ぜひ御努力をいただきたいし、政府のほうでも、この大事な問題について、いま長官もおっしゃいましたが、安全性の問題を含めて、真面目に取り組んでいただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。
  24. 安井吉典

    安井委員長 次に石野久男君。
  25. 石野久男

    ○石野委員 稲葉さんにいろいろお話を承りまして、第一次私案、まだ全部十分見ておりませんので、しっかりしたこまかいことの質問はまたあとにさしていただきますが、考え方の基礎につきまして、大体問題点は、エネルギーの長期計画をどういうふうに見るかということで、化石燃料が非常に少なくなってきているという現状から、今日の段階で、六十年度における所要のエネルギーをこういう形で受けとめるべきだというお話の趣旨はよくわかりました。特にここではエネルギーの全体の量の相当部分を原子力に依存しなければいけないだろうという発想に基づいて計画が進められておるし、そして最終的には、六十年度におけるところの原子力の所要量というものを、一億キロを上回るような量に計算されておるわけでございます。  時間もございませんので、私は主として、原子力に集中するにあたってと、それからもう一つは、総合エネルギー考え方についてお尋ねしたいのですが、総合エネルギーを考えますのに、六〇年代から今日に至る経済発展との見合いの中で、われわれは経済構造なりあるいは産業構造についての見直しをする必要があるということは、これは私どもそう考えるのですが、先生もまた、そのことはこの中には相当考慮されておると思いますけれども、長期計画を組むにあたりまして、六〇年代高度成長段階から七〇年代に移った今日の日本の国民経済の、いわゆる産業構造の見直しの問題についての概括した先生の考え方を、まず最初に聞かしていただきたいと思います。
  26. 稲葉秀三

    稲葉説明員 私、戦後ずっと現在まで、政府のいろいろな長期計画の取りまとめに御協力申し上げているわけでございますが、昭和四十年代になりまして、そういったような産業構造の改変ということを考えることなしには、日本の将来は構想し得られないという問題が起こってまいりました。  そのようなことの一つの柱は、つまり日本は資源がない国でございますから、いままでのようにどんどん世界の資源を受け入れて、それで資源型の産業を大きく育成していくということについては、おのずからだんだんと限界が出てくる。それから第二に、世界発展途上国でそういったような姿がだんだん実現をしてくる。そしてさらに、そういったような形だけでは、一時的に国際収支の均衡がとれても、将来にわたってそういうことができない。そういうことに加えて、どうもいままでのようにどんどんエネルギーをたくさん使ってやっていくということについては、相当考え直さねばならぬ余地があるという問題提起が、四十年代に入って起こってきたわけでございます。  そこで一つ出ました問題は、先ほど私が御指摘さしていただきましたけれども、この本の初めのほうにございますように、どうして日本経済拡大率以上にエネルギー消費が高かったのかという点につきまして、三つの点を指摘さしていただいております。その一つは、過去におきます経済成長率が終戦後一〇%とか一二%と非常に高い速度でやってきた。八%を上回りますと、どうも弾性値が一ぐらいになりそうだ、それがもっと高くなると、もっとエネルギーのほうが大きくなりそうだという点があげられます。第二に指摘をいたしました点は、エネルギーをたくさん使う産業の伸びが、日本においては過去において非常に高かったということでございます。たとえば製鉄業は、今日アメリカやソ連と肩を並べる産業にまでなり、国際競争力においては世界一の産業というところにまでなったわけでございますが、昭和三十年の粗鋼の生産高は九百万トンでございました。私が池田総理の所得倍増計画のお手伝いをいたしましたときには、昭和三十四年が千八百万トンで、四十五年に所得を倍にするために五千万トンの鉄をつくるという計数で、いろいろ通産省が鉄鋼業界と御相談したのですが、とてもそんなことは実現できそうもないといわれたのが、九千二百万トンでき、今年度は一億二千万トンを上回る鉄の量になっておる。そのほか石油化学関係が非常に伸びたとか、それからアルミニウムが大増産になったとか、そういう重化学工業型ということについて、ことに基礎産業における重化学工業型について、あとで先生から御批判もあると思いますけれども、これをつぶしてしまうということはできませんが、増設をやはり極力抑制する、そういったような措置をとっていかねばならぬ。そういたしますと、どうしても公害を起こさない、エネルギーをたくさん使わない、また外国の企業、ことに発展途上国の産業と摩擦を起こさないという形の産業を伸ばしていくというためには、いわゆる加工度の高い知識集約型の産業といったようなところに漸次移行していかねばならぬということになってくるわけであります。  さて、そのような問題を、昭和四十五年の新経済社会発展計画、それから昭和四十八年二月の経済社会基本計画におきまして、私は産業の計画委員長としていろいろお手伝いしたのですが、それを具体的に描き出すということがなかなかむずかしかったわけでございます。今後はやはりそういったようなことについてのコンセンサスを求めさせていただくということが、エネルギー問題を間接に解決する、環境問題を間接に直していく一つあり方ではなかろうか、そのように感ずる次第でございます。
  27. 石野久男

    ○石野委員 総合エネルギーを今後どういうふうに考えるかについては、立場の違いなどでずいぶん違うと思います。しかし先ほど来いろいろお話がありましたように、エネルギー資源の確保が非常にむずかしいという実情と、それから、六〇年代から七〇年代初期にかけまして、日本は高エネルギーの産業が非常に発達しておるということに対する反省などは、わが国における将来の国民経済を確保、維持する上において、この時期に考えておかなければならぬ問題だと私は思います。そういうような点で、いま十億キロリットルの段階まで近づけるために積極的な努力をすることのみがいいのではなくて、やはりもっと落ちついた形の、国民生活、実生活におけるほんとう内容的に充実した向上というものを考えることが、総合エネルギーで非常に大事だろうと私は思うのです。そういうような点で、先生が相当圧縮してお考えになっていられる点についても、私はなお若干の問題点があるような気がしているわけですが、お話を聞いておりますと、先生としては、すでに四十五年度の計画などがありますので、なるべくそれに近づけようという線が積極面として出ておるのではないだろうかという感じが私はするのです。そういうことについて、これはほんとうに観念的な質問になりますけれども、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  28. 稲葉秀三

    稲葉説明員 人間というのは、自分がやっております環境から抜け出すということはなかなかむずかしいので、私自身も、過去におきまして、実証的なエコノミストといたしまして、どういうふうに経済全体をうまくバランスをもってやっていきたいのかということを頭に入れて、いろいろな政策のお手伝いをしてまいりましたので、先生のおっしゃるような制約というものは、あるのではないかと私は反省をいたします。しかし一応経験を率直に申し上げますと、これは政府のお考えになっているよりも相当強い産業のやりかえを前提にしていかないといけません、ということを出したものであります。つまりはっきり言えば、エネルギー弾性値が一・一でいままで走ってきた日本を一に持っていくとか、ほんとう努力をすれば〇・九ぐらいにはなる。しかし〇・九以上になるということはむずかしい。またそれではとてもだめだとおっしゃるならば、もう生活の向上とか経済の向上はある震度落としていくということを、国民が受納していただかなければならぬ。まあまあ一〇%で走っております経済が、最小限五・五か六%ぐらいを確保していくということは、もう全体としての一番最低限の要請ではなかろうかという見方考え方、あるいはゼロ成長という議論も出ておりますし、ことしあたりは二・五とか三%しか成長しないということになるわけでございます。ある程度高度成長ということを、政治家の方も経済人も労働側の方も、いまや再検討していかねばならぬということになるけれども、わが日本では、実質経済成長五%以下になると、どうもうまく事が動かぬじゃなかろうかということが、過去の経験からこびりついておるわけです。それは確かに、もう一ぺん再検討してみなければならぬ重要な問題だと思いますけれども、そういう意味で、私のこういう試算にそういう点があると御指摘になれば、やはりそうかもしれぬというふうにお答えを申し上げるよりしようがございません。
  29. 石野久男

    ○石野委員 これはまたいろいろあとで――エネルギーの確保、拡大ということは一番大事なことでございますから、そういう観点で、長期計画を当然組まねばならぬと思っておりますので、その観点から、石油が、かりにOPECの側で日本に対する扱いを友好的な扱いをしてくだすっても、値段が上がってくるために、外貨の事情からうまくいかないというようなこともあり、先生のおっしゃられるように、それでは何にエネルギー源を求めるかということになりますと、問題はいろいろあると思うのです。ただ原則として、少なくともできる限り自前のものでやらなければ、将来の経済発展なり国民生活を維持する上に、不安定要素が残ってしまうのじゃないか。それは今度の石油ではっきりしたと思います。そういう点からすると、ささいなものであっても、かりに石炭の問題をもう少し考えるとか、あるいは地熱の問題をどう考えるかということなどが、この際もう一度見直されなければならないし、それは民間でなく、むしろ政府段階、国の段階で、見直されなければならぬというふうに私は思います。そういう点で、この観点が、どうも、私の感じを率直に申し上げさせていただきますと、原子力重点を置いて考えていっておるように見受けられる面がありますので、そういう点は、今後ひとつお互いに検討せねばならぬだろう、こう思っております。  そこで、稲葉先生が森山長官の命を受けて、原子力をいかにして所定の目標のほうに向けていくか、合わせていくかということの作業をなさったと思いますので、そういう観点から、長期計画を組むにあたって、現在、原子力について問題になっておることがたくさんございます。  まず第一番に、原子力は、これがもし公害さえなければこれにこしたことはない、こう私ども思っておるのです。ところが、原子力公害というものが出てくる要素が数多くございますので、原子力を拡大強化するということは、周囲の事情から、これでなければならぬという事情はわかりますけれども、しかし、それじゃ原子力そのものを見たときに、稲葉先生は、このケース皿の場合のような、こういう伸び率で原子力を考えていきます場合、この段階にいきますと、もう原子力は一応無公害原子炉、そういうものを頭の中に描いてこの数字が出ておるのかどうかを、まずひとつお聞きしたいのです。
  30. 稲葉秀三

    稲葉説明員 まず先生の第一の御質問についてお答えをいたしますと、確かに私、原子力の非常勤委員に、去年の十一月にさせていただきまして、原子力のお手伝いをしてきているわけでございますが、私は国民代表の一人として原子力委員になっているという気持ちで、今日まで働かしていただいております。そしてそのようなことと、過去におきましてエネルギーバランスということをやっておりましたので、やはり私としては、そういう御要請を受けました場合も、そういったような私の経験から申しまして、やはり全体のあり方を考えながら、最小限エネルギーを充実して、そして石油で落ち込んだり国産エネルギーで落ち込んだのを、ほかのエネルギー、特に原子力でやっていこう。しかもやはりいろいろな問題があるんだからという形で、わりあいI案、II案、III案とも、実は最後まで、私はきのうまで数字を大臣にはお目にかけなかった次第でございます。  その意味は、どうもこういう数字を出したらおこられるのじゃないか、こういうふうにも思ったのでございますが、確かにそのように御評価をくださるということは自由でございますけれども、原子力に肩を持とうという形で、私はこの数字をつくったものではございません。しかし、世界エネルギー変化だとか、技術の変化だとか、構造の変化とか申しますと、やはり化石燃料も有限だ、世界の将来はどうしてもエネルギーが必要だということになれば、おそらく学者の常識といたしまして、二十一世紀になれば、化石燃料から離れたエネルギーというものも充実をしていかねばならぬ。それの一番の大きな柱というのは、やはり液体水素の利用ということになっていくのではなかろうかと私は思っております。それをするためにも、何らかの形において、でき得る限り安全性を考慮しながら、やはり広い意味において原子力の利用を推進していくということは、どうも私たち人間、特に資源に恵まれない世の中で、何とかいままでは実績をあげてきたけれども、今度は資源は高くなっていく、むずかしい世の中になっていくという形において、少なくとも毎年四、五%の生活水準だけは実質的に上げていくということを実際にやっていかねばならぬ。そうなりますと、やはり当面はこれを拡大しておって、そしてそれの障害になるいろいろな要素を打開していく、こういう考え方にならざるを得ないのではなかろうか、こういう角度ではじき出しました数字でございます。確かにそういうふうな御評価を受けるというのは無理からぬことだと思いますけれども、一応作業をいたしました私としては、そういうつもりでやったのではないということだけ、ひとつ申し上げたいし、またもっと別の機会に、こまかく算定の根拠を言えとおっしゃれば、これは手品でも何でもないので、ただ過去の経験を積み重ねたものでございますから、そういう点は御説明申し上げたいと思います。
  31. 石野久男

    ○石野委員 私どもは、将来エネルギー中心のシンクタンクの方向へ産業を向けていく、そういう中で、国民生活をなるべく向上させるように持っていく。そのために弾性値をどういうところに置くかというような問題については、これは当然われわれ考えなくちゃなりませんし、そういうエネルギーを何で確保するかということについて、いま問題があるわけですから、私ども原子力がそれに見合うものだというふうにしていくために、いま安全性確保をどうするかということで、実は若干の意見の違いというか、場合によれば、決定的に違うものが出ているわけでございます。  そこで、長期計画の中へ、原子力を、少なくとも六十年代においては、前の計画よりもっとプラスアルファを上乗せするということになっていくについては、やはり私どもがいま心配しておる安全性の問題について、一つは炉自身の安全の問題がございます。それから立地を求めるための、その地域におけるところの住民の意識なり、それに対する協力体制が出るかどうかという具体的な問題、今度はこういう問題を予想しないで計画を立てたのではたいへんなことになるだろう。ことに原子力を中心にする場合には、原子力基本法の平和利用三原則というものは厳然として私たちの前にあるわけです。稲葉さんのおっしゃられるように、世界趨勢は確かに原子力へ向いているということは、私どもよく知っているのですが、そこで稲葉先生にひとつお尋ねしておきたいことは、この計画を通じて、いま申しましたような立地条件に対する対策はどういうふうに可能であるというお考えに立って、この案ができておるかということです。  それからもう一つは、炉の安全性の問題について、先ほどちょっと加藤先生に対して、専門外ですからというお話がありましたけれども、しかし、これは少なくとも具体的な指標になっていきますから、その問題が勘案されていないと、やはり欠落事項がそこに出てくると私は思いまするので、その点について、稲葉先生自身、どの程度安全性の問題についての確率を予想されておられるか。  それからもう一つは、廃棄物とか再処理などにおいて、いろいろ廃棄物や再処理の中から出てくる放射能障害について、まだ完全なめどが立っておりません。したがって、やはりこれだけの発電量になってまいりますと、炉が各所にできると思います。そういうところの廃棄物をどう処理するかという問題が一つ。  それからいま一つお聞きしたいことは、この炉を全国どこでも思いつきのところへ、全部そういうように、どこへでもここへでもやるような考え方で、立地の問題については、稲葉先生はどのようにお考えになっていらっしゃるか、そういう観点はこの長期計画の中にどのように織り込まれておるかということについて、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  32. 稲葉秀三

    稲葉説明員 実は、これは発電総合エネルギーの中における位置づけというものをさせていただいたので、私の仕事そのものから、いまの点はすぐに出てこないわけでございます。しかし、一応そういったようなことについてお手伝いをするについて、全然それができないものを規模別に裏づけるというわけにはまいりませんので、そういったようなことにつきまして、もっと検討をいたすべきでありまするけれども、一応そういったようなことも私自身の頭に入れてやらしていただきました。  まず六十年、つまりいまから十一年後に六千万キロワットの発電をしようとした場合、立地的にこの小さな日本ではできないのじゃないかという御設問に対しましては、私は、やろうと思えば十分できる、こういう見方考え方に立っているということを御報告申し上げたいと思います。  次に、ここではやはりでき得る限り安全性とか国民の納得を得てやっていかねばならぬということもございまして、少なくともこの炉でやれば認めていただけるとか、そういったようなものをひとつ早くつくって、そしてそれも一部の御批判がございますように、海岸線何キロおきに一基ずつつくるということではなくて、ときには、場所があれば、いろいろ安全対策に万全を期して、五基ぐらいまではつくるということにすればいいのじゃなかろうか、そういったような構想も立てております。  それからもう一つ、もしもこういう方向が是認されました場合において、私はここで、個々におきまして、高速増殖炉をどうするとか、それから現在の炉以外の原子炉開発にどういう措置をとるとか、高温ガス炉の対策をどうしていくんだとか、それから原子力の本命である核融合に対してどういう布石を打っていくのか、こういうことについて、いろいろ世界情勢も変わりました、それからいろいろなコストアップというものも必要でございます、そういうことを考えて、一体でき得る限り早期にそこまで体制整備をはかるについては、どういったようなことをしていかねばならぬかということを、原子力委員会や科学技術庁の総力をあげ、各省を動員して、御満足のいくような体制整備をひとつはかっていただきたいと思っております。  それからその次に、やはりそういうことをやりますと、廃棄物処理をどういうふうにしていくのか、それからさらに、再生をどういう形にまでしていくのか、外国に委託をするのか委託をしないのか、そういうことにつきましても、当然問題は起こってまいります。またウラン開発とか濃縮ウランというものについても、どういうことにしていくのかという問題も起こってまいります。私は、遺徳ながらそういうことに対しまする専門家ではございませんけれども、ほんとうにこれをあげて安全性の上にやっていこうとするならば、いままでも努力をしていただきましたけれども、エネルギーがこういうふうに事情変化をして、そしてやはり原子力発電をするのが一番安い電気が起こるということが実現するということを前提に、もっと政府の内部でそういうことをしていただく、また国民の皆さん方にそういったようなことを示していただくという体制整備、あるいは政府がどこら辺まで責任を持ちます、それから各府県との間をどうしていくということまで、あらためてひとつやっていただきたいと思うのでございますが、いままでの段階では、そいうことを全然無視したというわけではございませんけれども、一応私なりに検討さしていただきまして、率直に申し上げた次第で、さらにそのような点はもっと政府の総力をあげてやっていただく、また体制整備もひとつ努力をしていただく、研究所をもっと思い切ってやっていただく、それからさらに分析みたいなものについてももっと、ここへ持っていけばこれなら安心できるといったようなものをつくっていただく、こういうことに対しまして万全の措置をとっていただきたいということが、当然この私案の結論として出てくると思っております。
  33. 石野久男

    ○石野委員 もう時間がありませんので、一つだけ簡単に聞きますが、私は、安全性の問題を考えましたら、こういう発想はどうだろうかということを、ひとつ稲葉先生にお聞きしたいのです。  原子力発電は、安全性さえ確立すれば、私たちはうんとふやしてもいいという考え方を持っております。したがって、安全性の研究のために、たとえばケース第IIIの場合に、五十年、五十五年、六十年とこういうふうにカーブがずっとなだらかに上がっていくというんじゃなくて、ある段階で、いまつくっているものの中で研究開発をどんどんどんどん研究なさって、ある時期はずっと横ばいをしてもらって、そして一定の段階でぐっと上げるという形は――日本にはそれだけやる力があるわけですよ、機器産業の上には。そういう形をやる中で、安全性をがっちりと固めた上で、原子力へ移ってもらう。その間エネルギーの充足をどうするかについては、たとえば地熱とか――現状では、もし原子力につぎ込むだけの資金的なものを国が注入すれば、それらのものはほかでも充足されるんじゃないだろうか。あるいは場合によっては、石油を無理してでも、ある程度そこへ火力を入れていくというようなこともあるかもしれませんが、原子力に関する限りは、こういうでこぼこのない線でぐっと上がっていくんじゃなくて、ある横ばいの線の中で、一定の安全性を確保するというような配慮をなさるほうがよろしいのじゃないかという感じを私は持っているのですけれども、それについて、稲葉さんの所見をひとつ簡単にお話ししてください。
  34. 稲葉秀三

    稲葉説明員 それではお答えさせていただきたいと思います。  原子力開発を一定年度の間にこれだけやればいいじゃないか、しかもそれをなだらかにやるといろいろ問題が起こる、むしろ次善的に、いろいろやって、その間のエネルギーはやはり確保しなくちゃならぬのだから、原子力以外のエネルギーを充実していくということでどうだというお考え方は、確かにごもっともなお考え方だと思います。ただ、私がいままでずっとエネルギー問題に関係をしていただきましたことから申しますと、実はそういう事情がなかなか現実にはアダプトできないというのがどうも世界趨勢であり、日本あり方ではなかろうかという感じがいたします。たとえば、石油を思い切ってもう一億キロ特別に買い付けるということをやりますと、はたして買えるか買えないかという問題がございましょうし、実はこれからは、去年と同じ数量石油を入れまするのに百億ドル外貨負担がたくさんかかるとなりますと、国際収支の面の制約もございましょう。それから、私は、実は石炭鉱業審議会の需給部会長をいたしております。過去におきまして私どものやりました政策というものが非常に批判をされたという事実はございますが、私どもは、何らかの形において、崩壊する国内石炭を最小限守り通すという立場において努力をしてきた人間でございます。その間、もう石炭業をつぶしてしまえ、こういういろいろな産業などの意見もございましたけれども、それではいけないというような形で漸進的な対策を実施し、現在二千二百万トンの石炭をかりに山元で五千円と計算いたしますと、千百億円になりますけれども、現在国民が税金その他から投入しているお金は千百億円ございます。決して石炭を私たちは守らないといったことをやってきたのではございません。しかもいまの段階では、これから私は需給部会長として、電力会社やまた石炭を引き取られる産業に対しまして頭を下げたり、ときには強い圧力で、もっと石炭を何千円か値上げをしてひとつやらしてくださいということもやっていこうといたします。しかし遺憾ながら、そういう限度においておそらく増産でき承る限度というのは、せいぜい三百万トン、五百万トンだ、こういうふうになりますと、やはり国民の生活、産業というのは、実はなだらかに上がってまいりませんと、なかなかそのときそのときの波乱というものが大きくなってくるということになりますと、先生の御意見はいかにもごもっともでございますけれども、じゃあそれについてひとつ当分ちゃんと措置がしけるまでは原子力は見合わせろということは、ちょっと言いにくいですな。
  35. 石野久男

    ○石野委員 もう時間がありませんから、いまの意見には私は意見があるのです。ありますけれども、これでそれじゃやめます。
  36. 安井吉典

    安井委員長 次に瀬崎博義君。
  37. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先生の私案作成の御労苦には敬意を表したいと思うのですが、その基本的な立場についてお伺いしておきたいのです。つまり人間とのかかわり合いと言いますか、その日その日を精一ぱい生きている圧倒的な多数の日本の国民とのかかわり合いで見て、エネルギー確保の根本目的をそもそも何に置かれていらっしゃるのか、これをお聞きしたいのです。
  38. 稲葉秀三

    稲葉説明員 ちょっと御質問の意味がよくわからぬのですが、もう少しわかりやすい御質問をしていただきたいと思います。
  39. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ただいまの先生のお話ないしはこの資料を散見さしていただいただけでも、ほとんどが経済成長率との関係でエネルギー確保を試算していらっしゃるように見受けるし、ただいまのどなたかに対する御答弁でも、経済成長が五%以下になってくると、どうもうまくいかぬのではないか、このうまくいかないという対象は、先ほど私が申し上げました日本の国民一般ではなく、今日までのような高い利潤を大企業があげていく上ではうまくいかない、こういうことが端的な表現になるんじゃないか、そこを少しお伺いしたいというわけなんです。
  40. 稲葉秀三

    稲葉説明員 では端的にお答えをいたしますけれども、私、戦後ずっとこういう問題をフォローアップいたしておりましたが、国民生活というものも、産業の発展経済発展なしには成長しないという見方考え方をとっておりますので、その意味の御質問には、私は、両方を含めたものが経済成長率エネルギーの確保だという見方考え方をとっている。現に世界趨勢を見ましても、やはり過去二十年間平均五%ぐらいのエネルギー伸びであり、経済拡大の伸びというのが実証されているわけです。ですから、どこの国でも、国民生活が上がっていくためには、それのもとになるところの経済の成長がなければだめなのでございまして、それを二つに分けて、片や産業とか独占資本だ、片や国民だというふうに、経済活動というのは峻別できないという見方考え方に立っているということを申し上げたいと思います。
  41. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 きょう、ここはこういう経済問題を論ずる場所ではないのですけれども、実は、この案が多分に経済成長とのかかわり合いを中心に論じていらっしゃるので、いやおうなしにこれをお尋ねしなければならないわけなんです。本論ではありませんから、ごく簡単にお答えをいただきたいのですが、昨年秋の、われわれはつくられたと呼んでおります石油危機が示したように、今日の経済規模日本で、物不足や狂乱物価が生まれたその原因は、ほんとうの意味での供給不足ではなくて、大企業の買い占め売り惜しみ、これが主要な要因であったことは、これは国会の主たる論議にこれがなっていること、あるいはまた論戦の結果からも明らかだと思うのです。ですから、少なくともいまエネルギー供給の成長と経済の成長とを論じられたけれども、過去の成長を確保さしてきたエネルギー資源が、産業界にとっては一体どういうところに最も有効にこれが作用したのか、国民の立場から見たら、これがどういうふうな恩恵を受けたのか、こういうようなことも検討され、そういう中身もここにあらわれてこないと、二つは切り離せないのだ、両方考えているのだというお話にはなりにくい。ですから、やはり今後のエネルギー供給について、大企業のもうけ過ぎの抑制は一体どうするのか、またさらに、利潤確保あるいは利潤を拡大するために、無制限な設備拡張等でエネルギー資源の浪費をつくり出されるような経済が進んでいけば、これはいかにこういう計画をつくられても、私はむだになってくると思うのです。そういう点について、私がそういう必要性を強調することに対して、そんなことは考えるべきことじゃないんだと、こうおっしゃるのかどうか、その点だけ、簡単にお答えいただきたいと思うのです。
  42. 稲葉秀三

    稲葉説明員 三ページに、過去におきまする日本エネルギー成長率と、それから国産エネルギーの比率と、経済拡大あるいは国民生活の向上率というのをずっと言っておりますが、こういうふうに世界一のテンポでエネルギー消費伸びました背景として、先ほどの御質問に私はお答えするのを忘れたのでございますけれども、実は国民生活用のエネルギー伸びというものが、案外過去において高かったという事実がございます。たとえば電気というのも、昭和三十五年には電灯中心だった、それがだんだん多元的に使われてきた、そして電気冷蔵庫も使われ出す、クーラーも使われ出す、洗たく機も使われ出すということになりまして、国民生活用の電気というのは、一年全体の電気伸びよりも高く伸びてきているという事実がございます。それから都市ガスというのは一年に一四%ずつ伸びてきておる。それからもう一つ申し上げますと、プロパンに至りましては、やはり非常に便利なガスだということで、一ころは一年に三〇%ずつ伸びてきております。まだ日本はアメリカやヨーロッパの水準まで国民生活用の家庭におきまするエネルギーというのは到達をしておりません。ただ、ソ連とかヨーロッパだとかアメリカと比べまして、私たちが感ずるのは、わりあい暖房用のエネルギーという割合が低いのでございます。しかし、はっきり言えば、過去におきまするパターンは、産業用のエネルギーの犠牲において国民生活用のエネルギーが小さくなってきたパターンではないわけです。それははっきり事実の上で証明されると私は思っております。今後につきましても、私たち国民生活用のエネルギーを抑制をしようとは思っておりません。  それから、その次にもう一つ申し上げたいのは、電気について言えば、確かに産業用と国民生活用を比べますると三〇と七〇ぐらいになります。しかし、エネルギーの中で、農業用のものでございますとか、それからさらにまた、交通関係のエネルギーとか、そういうものをずっと分けてまいりますと――そういう統計は、先生がお調べになろうと思ったら幾らでもあるわけですから、それをよくお調べになった上で御質問を願いたいと思いますけれども、過去におけるパターンは、産業用のエネルギーの犠牲となって国民生活用のエネルギー伸びるべくして縮小してきたというパターンではございません。しかし、将来エネルギー伸びが従来のようになかなか伸びていかないといたしますると、私たちはもっと有効にエネルギーを使うということをしていかねばならぬ。私のここで示した弾性値を下げろということは、そういうことを意味いたします。それは一体どういうふうにしていけるのかと申しますと、エネルギーの高い産業というものの成長をもっと抑制していく、もっと有効にエネルギー国民生活用と産業用にしていくにはどうするかということも示していこう、こういったようなことを考えて、この私案というものはできているわけでございます。まあ確かにたてまえが違うので、生活用と産業用というのは別だ、大資本のために奉仕をしているんだという見方も、私成り立つと思いまするけれども、私自身はそういう見方考え方から出したものではございません。
  43. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう立場から出したものでないというふうに主張されると、われわれの立場との相違が明らかになってくる。ですから、私どもは今後の見通しを立てる上において、いま先生もお認めのように、現在なおわれわれ一般国民の生産水準という立場から見るならば、国民一人当たりのエネルギー消費量は決して世界一位ということではないわけなんです。逆に石油輸入量等については、これは抜群に日本が多いわけなんですね。ですから、そういう点について、今後われわれは国民生活水準を維持し向上させるという点でのエネルギー確保というものは十分考えながら、産業用については、やはり国民生活を守っていくという上で必要な産業を今後維持するという、そういうふうな資料内容としてわれわれに示していただき、御説明がいただけるようなことになっていることが必要なのではないか、こういう意味のことを私は強調しているわけなんです。  ただ、きょうはここでそのことを論議しに来たわけじゃないのですが、あまりにも経済成長率との関係を強調されるので、申し上げたわけです。本論の、いま先生の私案によれば、行きつくところは、どうしても原子力開発以外にないのだ、こういうふうなお説の上に立っている。私たちはこれに対しては違う見解を持っております。総合的に考えれば、まだまだ昭和六十年六千万キロワットという計画自体も検討の余地はあると思っておりますけれども、とりあえず、先生のお立場に立って考えた場合でも、やはり安全性の向上策やあるいは地域住民の理解の必要なことは認めていらっしゃるわけです。私も、おそらくそれを抜きにしては、どんなに統計上つじつまが合ったりっぱな計画がここに出てまいりましたとしても、それは必ず実際には実行できないことになってくる、そういうふうに思うのです。これはあとになってみればわかるじゃないかというふうなものだけれども、それをわれわれはやはり政治家として、お互いにいまここで将来を論議しているのだと思うのですね。そういう立場から見た場合には、いまちょっと分析問題に触れられましたけれども、日本分析化学研究所事件が明らかになった結果、逆に国民の政府原子力行政に対する信頼というものは、こういう私案をつくられる以前に比べて、根本的に失なわれてきているというのがいまの状態だと思うのですね。原子力委員のお一人でもあります先生に、この分析研究所事件をどのように見ていらっしゃるのか、特にこの分析研究所にかかわり合いの多い原子力発電所関係の環境放射能測定の疑惑が幾つかあるのですが、その全容どころか、大体すらも、政府からはまだ明らかにされていないのですね。こういうことで、はたして地域住民の理解が得られたり、あるいはまた安全性の向上を云々して、一体だれが信用するのだろうかというのが、私の素朴な疑問なのです。ひとつ原子力委員として、先生のお考えをこの問題に関してお聞きしたいと思うのです。
  44. 稲葉秀三

    稲葉説明員 私は、原子力委員になりたてのほやほやでございますから、あまり責任のある御答弁はできませんけれども、はっきり言えば、こういう雰囲気においてあの問題が出てきましたのは、まことに遺憾なことだと思います。しかし肝心なのは、やはりみんなが納得する放射能の測定とかそういうものを、客観的な事実として提供するという機関を、一日も早くつくるべきものだと思っております。
  45. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その客観点な事実関係を明らかにし得る機関の必要をお認めになった。現在までも、すでに日本分析化学研究所へ電力会社が委託して、いろいろな環境放射能の分析調査が行なわれているわけです。また各地方自治体及び電力会社自身も行なっているわけであります。こういうことも、こういう事件が起こった際なんだから、もし問題なしとするならば、すべての資料を、こちらが要求するまでもなく、明らかにされてしかるべきだと思うのです。自信があるならば、それをやられたらいい。ところが、事態は全くその逆である。きょうはもう時間の関係もありますから、私はここではほんのかいつまんでしか説明を申し上げません。しかも、これは稲葉先生にぜひ、こういう実態なんだということをお聞きいただき、原子力委員会でも御検討を賜わると同時に、主として政府側に対して要求したいということが、最後につくわけであります。  これは一例だけであります。分析研究所には、三台の波高グラフを描くことができる波高分析器があるわけでありますが、ややこしいので、私はそれに符号をつけました。Aというのは沃化ナトリウム・シンチレーション・カウンターつきの波高分析器、これは分析研の所有物であります。Bというのはゲルマニウム検出器つき波高分析器、オーテック社製の三十六ccもので、政府貸与の機械であります。Cが同じくゲルマニウム検出器つきでオーテック社製三十一cc、これは分析研の所有物であります。この三つあるのですね。  そこで、まず電力会社の波高分析ではこの三台のうちの一体どの機械を使ったのかという問題についてであります。二月二十一日の当委員会では、伊原次長は、東京電力の波高分析には沃化ナトリウムのヘッドの波高分析器、つまりAという機械を使っており、予算委員会で問題になった潜水艦に関係する問題の機械Bとは別の機械だ、こういうふうにはっきりと答弁された。ところが二十八日の委員会になりますと、同じく伊原次長は、実は分析研にある機械は三台で、沃化ナトリウムをヘッドとするもの、つまりAが一台、ゲルマニウムをヘッドとするものが二台、つまりB、Cがある、こういうように言われたのであります。先日の答弁は正確でなかったかもしれないが、趣旨としては、原潜に使った装置、つまりBとは別の装置AまたはBを用いていると考えるというふうに言いかえられたわけであります。さらに私の質問の結果、四十八年上期の分までについては、電力会社関係は沃化ナトリウムを使っている。つまりAを使っている、こういうふうになったわけです。さらにそのあと科学技術庁の平和利用研究の機器、いろいろ言い方を変えられるのでややこしいのですが、つまりこれはBであります。Bで電力会社の分に使ったとすれば、それははなはだおかしいとも言われたわけであります。ですから、このいろいろな複雑な言い回しや微妙な表現の変化をたとえ認めたにいたしましても、少なくとも四十八年上期までについては、電力会社関係の波高分析はAの機械を使い、原子力潜水艦の分析はBの機械を使っている、こういうことを政府側、伊原次長は主張しているわけなんです。私どもは、そうじゃなくて、電力会社関係の分析もゲルマ検出器つきの波高分析器、つまりBのほうでやっているのだ、こう言ってきたわけです。完全にここで平行線になっている。この時点で、結局資料が出されてきたわけなんです。この点の問題点あとで申し上げます。  次に、資料提出に対する政府側並びに与党である自民党さんの態度なんですが、二月二十一日の委員会で、私どもは、東京電力が分析研に委託した六十四種といわれる波高分析データの提出を要求いたしました。これに対して、同委員会で、伊原次長は、電力会社と分析研との間の私的契約に基づいて作成された資料なので、電力会社を指導してその資料を徴取したい、こういうふうに答えておられたのです。ところが、その一週間後、二十八日の理事会で、結局自民党の理事さんが多数で資料提出を拒否された、こういうことになりました。したがって、あらためて二十八日の委員会で、分析研測定台帳によれば、八-FK-一から五までの資料は、共産党の調査によれば、このうちの特に四番と五番は東京電力の測定ということになっているから、この五種類のデータの提出を要求する、こう申し上げたわけであります。その結果、政府側の答弁とわれわれの主張とは完全に食い違ったわけですから、それを明らかにするという意味で、五種類の波高分析器のデータの提出を政府側は約束された、委員長にもお骨折りを願った、こういうわけであります。  さて、提出された資料の問題点であります。この点については、まず第一に電力会社の波高分析は、少なくとも四十八年上期の分までは沃化ナトリウムヘッドの波高分析器を使用し、つまりAの分析器を使用し、政府提供のゲルマ波高分析器、つまりBは使っていないとする政府答弁が、たった四枚の資料の提出でくつがえされまして、結局電力会社の分析測定にゲルマ波高分析器、つまりBを使っていたことが明らかになったわけです。  次に、提出されたサンプル番号八-FK-四及び五のデータはいずれも、先ほど申し上げましたように、台帳面と全く食い違っていることになったわけなんですが、これについても説明がないわけであります。食い違っているというのは、八-FK-四というのは、私どもの調査では、測定ナンバーがGe一八〇七、東京電力の測定となっている。八-FK-五、これは測定ナンバーがGe一八〇九で、これも東京電力の測定となっている。ところが、出されました資料は、八-FK-四については測定ナンバーGe一七六八、ただしこれはデータが存在しない。あるデータはGe一八四〇で、これにマル再と書いてある。これは再測定したと思われる、こういう政府説明であります。こういう点で台帳と食い違いがある。それから八-FK-五については、台帳には確かに私どもの主張のようにGe一八〇九の測定番号で、東電が測定したとなっているけれども、実際にはデータが存在しないし、その事情はわからない、こういう政府側回答なんです。こういう問題が出てきたわけですね。つまり、たった五種類のデータを要求しただけで、これだけ問題があるわけなんです。この点はひとつ先生にも十分御認識をいただきたい。  そこで私は、こうなった以上は、やはり事態を明白にすることが国民の信頼を得る最も近い道であり、それ以外に科学技術行政の科学的たるゆえんはないと思うのであります。したがいまして、このゲルマ波高分析器で分析した電力会社関係の資料というのは、そんなにたくさんはないのです。かつ政府も、これの調査は一応終わっているというふうにおっしゃっておりますので、この波高分析データは当然提出していただきたい。これが一つ。  それからいま一つ、八-FK-四の台帳面測定番号はGe一八〇七、八-FK-五の台帳面測定番号は一八〇九です。この二つはいまのところ出ておりません。したがいまして、測定番号のほうからいってGe一八〇七と一八〇九の測定データを再調査していただき、あればもちろんデータを出していただくし、なければ、なぜないのか、その報告を出していただきたい。具体的にこの二点を政府のほうに要望し、回答を求めたいと思うのであります。  つけ加えて申し上げますが、私がこの前の委員会のときに、わざわざ議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づいて資料要求すると申し上げたのは、こういうことが裏にあるからなんです。私は、政府がいろいろ作為しているとは、いまの時点で思いませんけれども、しかし、部分的に欠落した資料があって、理由が説明されない。また台帳面と明らかに違っていることを認めながら、違っている理由が説明されない。これでは全く納得できないのです。とりあえず、私は通常の方法でいまの資料を政府に要求しますが、もしこれが思わしくない場合は、あらためて法律に基づく要求をしたいと思うのです。ひとつ答弁を願います。
  46. 生田豊朗

    ○生田政府委員 電力会社関係の分析研に委託いたしました調査の全般につきましては、先般も御報告申し上げましたように、各電力会社が全力をあげましてただいま再検討、再チェックを行なっている段階でございます。それにつきましては、科学技術庁といたしましても、通産省と協力いたしまして、それを十分見ております。ほぼまとまりかけた段階でございますので、まとまりまして私ども報告を受けました段階で、さらに通産省と協力いたしまして十分検討して、信頼性を確保するように努力いたしたいというふうに考えております。  それから、御指摘の非常にこまかい点につきましては、ただいま初めて伺いました点でございます。御提出いたしました四枚の資料の性格その他につきましては、先般御説明したとおりでございますけれども、御指摘もございましたので、もう一度検討いたしまして、あらためて御説明申し上げます、ということにさせていただきたいと思います。
  47. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間が来ているのでやめたいのですけれども、私が要求しているのは二つなんです。一つは、政府が貸与したゲルマの波高分析器で行なった電力会社関係の波高分析測定データの全部、これを出していただきたい。それからもう一つは、政府側のことばでいえば分析器の利用控というのですか、そこにあらわれておる測定ナンバーGe一八〇七とGe一八〇九、この二つのデータをあらためてさがしていただきたい。その結果の報告を求める。この二つなんです。もし、政府がこれをどうしても出さないと言うのなら、先ほど申し上げました法律に基づく処置を委員長にお願いしたいと思います。
  48. 生田豊朗

    ○生田政府委員 先ほどの一八〇七番と一八〇九番につきましては、再調査いたしまして、その結果は御報告いたします。(瀬崎委員「電力会社の資料は」と呼ぶ)  ゲルマの資料につきましては、先ほど申し上げましたように、全般につきまして再検討しておりますので、再検討いたしました結果を取りまとめまして、その取り扱いにつきましては、またあらためて御相談させていただきたい、こういうように思います。
  49. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そんなにひまがかかる話ではないのです。そういうわけで、一応私は証言法に基づく資料提出を委員長に要望しておきたいので、後日、理事会でお取り計らいをいただきたいと思います。お願いいたします。
  50. 安井吉典

    安井委員長 後日理事会でおはかりします。  次に近江巳記夫君。
  51. 近江巳記夫

    ○近江委員 稲葉先生の御努力には敬意を表するわけですが、まず初めにお伺いしたいのは、従来の計画というのは、政府の総合的な長期エネルギー需給見通しを受けて、これに基づいて、その一定率を原案に振り分けていたように私は思うのです。いわゆる上からの計画といいますか、現状追認の計画のように思うわけです。これと先生の私案とは根本的にどの点が違うのか、簡潔にお願いしたいと思います。
  52. 稲葉秀三

    稲葉説明員 お答え申し上げます。  実は、総合エネルギー見通しというのを、政府部内で二回にわたってつくったということは、もうすでに先生に御説明申し上げたとおりでございます。そして第三次原子力計画というのは、先ほど森山大臣から御説明になりましたように、四十七年の六月に改定をされたものでございます。それで、原子力開発利用長期計画総合エネルギーの一環ではございますけれども、過去におきましては、ある程度自主性を持っておつくりになった計画であろうと思っております。今回私がここで作業させていただきましたのは、総合エネルギーも長期開発計画も、もう一ぺんひとつやり変えて、そしてエネルギーをいかに充実するかという場に立って、全体のエネルギー供給の中で原子力を位置づけてはと、こういうことになります。
  53. 近江巳記夫

    ○近江委員 私も時間がなかったものですから、まだきめこまかな読み方はしておりませんが、エネルギー確保という点からいきますと、先生のような案が出てくるのもやはりふしぎでないように思うわけです。しかし私が思う問題は、今日、立地の問題であるとか、安全性の問題であるとか、環境汚染の問題であるとか、こういうことが非常に大きな問題になってきているわけですが、こういうような課題というものが、先生の計画の中に、どこまで織り込まれてお考えになっておられるかという点なんです。もちろん、この私案の中におきましても、たとえば結びの4ですか、若干安全性の問題には触れておられるわけでありますが、これはあくまでも乗り越えるべき課題というとらえ方なんですね。ですから計画自体においてどう取り込まれたのかという点を、もう一度ひとつお伺いいたしたいと思うのです。
  54. 稲葉秀三

    稲葉説明員 確かに、御指摘のとおりでございます。まず、私がこういう作業をいたしましたのは、一応大ワクにおいて、原子力というものに対する考え方総合エネルギーの中でどのように試算をしてみるか、位置づけてみるかということに対しまして、作業をさせていただいたものでございます。そしてこれが一つ参考になりまして、もっとはっきりした原子力の改定計画ができるということを私は切願いたしたいと思っております。その場合におきましては、先生が御指摘になりましたような点が、新しい改定計画におきまして当然出てこなければならないものだ、このように思っております。  ただこのケースI、つまり現状推移型というものでまいりますと、実はそういう現状努力現状の推移、つまり発電所もなかなか、石油についても建てなくなったり、原子力についても建てなくなったりして、若干努力をしてもこの程度供給にしかいかないでしょうということを、現時点において類推をしてみたというのもそのためでございます。私は、現状推移プラスアルファの努力ぐらいでは、とてもこれでは国民経済をまかなうということはできません、こういう結論にそれから達したのでございます。したがいまして、ケースIとケースIIをにらみまして、まあ最小限この辺ならと、しかし石油は前のようにどんどん入ってこないといたしますると、原子力を最小限この程度までやらねばならないだろう、こういう数字として出させていただいた次第でございます。もちろん、それをやるためには、それだけの努力、体制整備が必要だ、こういうふうに思います。
  55. 近江巳記夫

    ○近江委員 先生のお立場として、公害問題なり環境汚染の問題であるとか技術上の問題というのは、先生としては専門からちょっとはずれているようなニュアンスのお話があったわけですけれども……。
  56. 稲葉秀三

    稲葉説明員 実は私、原子力については関係をしておりませんけれども、国の計画をまとめるに当たりまして、環境経済発展をどのように位置づけるかという研究委員会委員長をいたしましたり、また電気につきましては、亜硫酸ガスの問題の専門委員会計画をまとめる委員長というものをいたしまして、過去において非常に苦労をしてきたという経験を持っております。
  57. 近江巳記夫

    ○近江委員 それであれば、これはあくまで先生の私案であり、第一次案になっておるわけでありますが、こういう環境保全の問題であるとか安全性の問題、さらに立地問題等を織り込みまして、それで、わが国におきます原発建設がどこまで実際行けるものであるか、これの検討を、私やっていただいて、そういう立場からもう一度先生の案を――もちろん先生は、これはあくまでたたき台であるという意味でお出しになったと思うのですが、そういう点におきまして考え直していただく、これは十分そのようにお考えでございますか。
  58. 稲葉秀三

    稲葉説明員 そのように努力をさせていただきたいと思いまするし、森山大臣もおっしゃいましたように、この一案で尽きるものではなくて、こういうものに対しまして、各界から御意見もいただきまして、第二案というものをもっと根拠を示してつくる、こういうことも努力をさせていただきたいと思っております。
  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、結びの1に、従来とは異なった方向で総合エネルギー政策を確立するということをおっしゃっているわけですが、逆にいいますと、従来のものは政策のよりどころにはならない、そういう経済エネルギー計画を国民の前に示していたというような、そういう感じにもとれるわけですけれども、これは、そういう反省に立たれた上でのこういうことばになったわけですか。
  60. 稲葉秀三

    稲葉説明員 これは人によって見方、評価が違うと思いまするけれども、私、ほんとうに過去十数年間、いろいろなエネルギー問題に関係させていただきました。そこで、私なりに意見を申し上げさせていただきますと、国会でも御決議がございまして、総合エネルギーというものの政策とか、それに対する審議機関というものが過去においてできているというのでございまするけれども、いままでの柱は、石炭石炭電気電気、それから原子力原子力、そういう形で、どうも関連性が十分でなかったという感じがいたします。  しかし、ともかくここで、世界石油異変が起こりまして、非常にわが日本にとりまして重大な変化というものが起こり、世界でもやはりそういうことに即応して、それぞれの国で新しい、どういうふうに対応していくのかということを考えていく。また国際的に、そういうことにどういうふうに対処するかといったようなことがいま行なわれている。こういうふうに思いますると、やはりここでは総合エネルギーというもののあり方をどうするかという問題については、行政的な関連性というものについてはもっと総合性を発揮していただく。場合によっては、そういうことをやるような組織というものもつくっていただく。私は、去年から通産省に資源エネルギー庁ができたということは、一つの進歩だと思っております。しかし、まだ当面のことにかかずらっておられて、長期的な政策というものに対して前進するということにはなっていない。また原子力ということにつきましても、まだ十分な体制がとられていない。しかも一番肝心の電気についていえば、経済企画庁と通産省と科学技術庁の間に、もっと有機的な連絡を持って、そして果断に進んでいただくという必要もあるだろう。今後、どうしても最低限のエネルギーを確保していくということであれば、一つはやはり行政の心がまえでございます。もう一つは、それを具体化するような組織化ということについても、この際、検討していただく必要があるのではなかろうか、こういう意味のことを考えまして、第一の提言をさせていただいた次第だ、こういうふうに御了解を賜わりたいと思います。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま稲葉先生から、従来の政策はばらばらであった、総合エネルギーというものが確立していなかった、これは、私も従来からこのことを言ってきたわけであります。その点、科学技術庁長官は、総合エネルギーという立場で原子力もとらえてやっていこうとなさっておられるわけでありますが、そういう政府の行き方について、政府を代表してどういう反省をなさっておられて、今後どうなさるか、簡潔にひとつお答えいただきたいと思います。
  62. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほどどなたからか、科学技術庁長官の命によりというお話でございますが、決して命令をしたわけではございません。原子力委員のお一人に、長い間この方面について研究を深められ、造詣のきわめて豊かな稲葉先生がおられるわけでございますから、稲葉先生にぜひ御検討を願えればということをお願いしたわけでございます。そして、お願いいたしました以上は、稲葉先生の長年の御経験を生かして、結論を出していただきたい。初めから、ああしてくれ、こうしてくれというような注文をしてやったわけではございません。私も昨日、稲葉先生からその内容についての御説明を受けたわけでございますし、また、きわめて重要なできごとでございますから、従来は、何と申しますか、こういうものの公表は、記者会見等だけで済ませるわけでございます。きわめて重要な問題であり、かつ、国会におきましては、累次にわたって、基本的には一体どういうふうに考えているか、エネルギー全体の中で原子力をどういうふうに位置づけて考えているかという御質疑があるわけでございますから、そういうことにつきましては、稲葉先生にお願いをして目下研究中であるとお答えをいたし、しかるべき時期にその結果を公表したいということを、国会のいろんな委員会の席で申し上げてまいりました。したがって、きょうは、そういうことを果たす意味において、衆議院の科学技術委員会の席で初めてこれを公表するようにという、異例の発表の形をとったわけでございまして、どうか委員長をはじめ委員各位において、御理解を賜わればと思っております。  ただいま近江委員からお話がございました点につきましては、先ほどの私の発言の中で、今後はこの私案一つのたたき台として、より現実的な案を作成し、さらにその案の実現のためのタイミング、機構などの方法と問題点を考えてまいりたいということを一番最後に申し上げたわけでございますが、問題自身は、やはり原子力というのは、世人の関心も持たれ、また問題も多く出てまいっておりますだけに、できるならば、やはりエネルギーの一環として、他によりいい方法があれば、またその道もとるべし、しかし他に方法がないとするならば、この道より日本エネルギー問題を解決する道がないとするならば、この問題に取り組んでいかなければならないことは、私は当然であるというふうに思っておるわけでございます。ただ、その際いろいろ問題になっておる点を考慮してやっていかなければならない。ただ、私は基本的には、毎回どの委員会でも申し上げるわけでございますが、軍事利用から出発をし、そしてわが国民はこれについての悲痛な体験を持っておるわけでございますし、また平和利用に入りましてからの歴史必ずしも長くないということでございますし、また新しい産業技術の段階として、テクノロジー・アセスメントというのをやっていかなければならない。そういう意味で、念には念を入れてやっていくという産業であり、技術であると考えておるわけでございます。がしかし、だからといって、私はこの産業なり技術が、だからあぶないという考え方は間違っている。そんなあぶないものならば、今日、この表の最後のほうにもありますように、世界各国でこれだけの大きな原子力発電計画を立てるわけがないのであります。私、ことしの初めにワシントン・エネルギー会議に出たわけでございますが、この招集国であるアメリカは、いつかも申し上げたと思いますが、プロジェクト・インデペンデンスという計画を立て、五年間に百億ドルの金を使ってエネルギーの自給をはかる。その項目としては、エネルギーの節約、石油及び天然ガス石炭、それに原子力、その他というふうな部門に分かれておりますが、アメリカは、一九六〇年代までは、油は全部自給したわけでございます。外国から輸入しなかったのであります。あのアメリカ、それだけ油も持っておるわけでございます。石炭は三百年分、露天掘りの山がわんさとあるということでございます。天然ガスも十分に持っておるわけです。それだけ資源を持っていながらも、アメリカが百億ドル出す国の出費のうち、実に四〇%、四十億ドルは原子力に使おうとしておるわけでございます。そして現在四十二基、二千五百万キロワットの発電を行ない、五十二基は建設中であるわけでありまして、将来展望につきましては、この付表に示してあるとおりでございます。ほかの国々も、例を一々私から申し上げるまでもございません。フランスのごときは、この間の会議の席上でも、とにかくこれからの発電は全部原子力だというのです。メスメル内閣がこの間総辞職をして、新しく再発足いたしましたが、フランスのエネルギー総合計画は、実に、いま計画中の火力発電はやめるというのです。そのくらい徹底しておる。そういう世界の大勢から考えて、それはテクノロジー・アセスメントで念には念を入れなければならないが、だから危険だという論理は間違いであります。しかし、いろいろ現在問題が出ているように、不行き届きな点がたくさんございますから、すみやかにこの段階を脱却するように、われわれは全力を傾倒して原子力発電をやっていかなければならない。エネルギー全体の中で原子力を位置づけて、そしてそれをやっていくについては、ここで書いてあることだけでは足りないのではないかと私は思います。ですから、申し上げましたように、タイミングの問題が一つあります。とにかく遠からざる時期に、思い切った金もかけなければいかぬ。体制も整備しなければいかぬ。それはどういう道であるかということは、現在の段階において、まだ具体的に固まってはおりません。しかし、こうやって国会の委員会の席上で発表し、委員各位からいろいろな御意見を伺い、でき得る限りの広い範囲の合意のもとに、新たなる体制を樹立してまいりたいと考えておるわけでございますから、どうかひとつ、まだ具体的にどうだという御質疑については、具体的にお答えをできる段階ではございませんが、しかし、そういう問題までやはり考えてこの問題にぶつかっていかなければならぬ問題である、そういうふうに考えておる次第でございます。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんから、終わりますが、いま大臣いろいろお述べになったのですが、資源エネルギー庁のデータでいきますと、一九七〇年の時点で、各国の一次エネルギー構成を見ますと、日本は〇・六%が原子力発電なんですね。ところがイタリアは〇・四、フランスは〇・四、西ドイツが〇・三、アメリカは〇・二と、先進諸国は日本よりかはるかに原子力は低いわけです。今後の計画は別としまして、七〇年の時点でいきますと、日本は一次エネルギーの中で原子力が占めておる位置というものは、むしろ高いわけです。しかも、私はこの前の委員会でも申し上げたわけですが、いまのこういう原発の状況からいきますと、昭和五十五年に運転可能な原発は合計二十三基、千六百五十二万キロワットにすぎないわけですね。今回の先生のこの改定でいきますと三千九百万……(稲葉説明員「二千二百万が見通しで、二千七百万」と呼ぶ)二千七百万。それでも、実際にいまいろいろなそういう立地問題、環境汚染問題、あるいは安全性の問題等もあるわけですし、それがそういう問題を解決して到達できるかどうかという問題があるわけですね。こういう点については、先生としてはどういうような確信を持っておられるわけですか。
  64. 稲葉秀三

    稲葉説明員 はっきり申しますと、ここへもってまいりまして、日本エネルギーの充足というのを自然の推移にまかせんか、いままで急角度世界一で伸びてきたのが、今度は非常なむずかしい曲がり角に来ている、特にそれが電気であらわれているという事実が出ております。はっきり言えば、過去におきまする日本経済パターンは大体三本立てになっておりまして、電気について言えば、その一つは、石油発電増大していくにはどうするかという問題でございます。もう一つは、ほぼ石油発電と同じぐらいの規模原子力発電を推進していくこと。そしてそれに対しまして、その他の発電をしていこう。そうして、そのとおりの到達はむずかしいのですけれども、昭和六十年に二億三千万キロワット、つまり現状から申しますと、二倍半ぐらいの電力設備を、経済発展前提としてつくっていかねばならぬという形が、いままでのコンセンサスでございました。大体、昭和四十七年ごろまではそういう形でやや鈍化しながら進んでまいりましたが、最近は石油発電ということに対しまする問題が非常に深刻になってきております。私は実は先ほど先生に御報告申し上げましたように、そのほうの仕事をやっているわけでございます。そこへ原子力につきましてもそういうことが起こる。かりにそういうことが起こるとすると、一体どの程度の電力の供給が設備と供給の面でできるのかということを、次の電力の試算表で出してきております。もしも急角度石油発電はつくってはいかぬ、原子力発電もつくってはいかぬとなりますと、昭和五十二年以降実は急激にエネルギー事情というものが変化をしてまいる、こういうことになってきております。したがいまして、総合的なエネルギーの立場に立ちますと、今度は電気なら電気という面をとって、では電気の面においては、原子力石油発電ということについて一体どの程度のコンセンサスを求めたらよいのか、こういうことを政府内部でも考えていただかねばなりませんし、政治家の皆さん方にも考えていただかねばならぬという問題が、実は非常に大きくクローズアップしてきている、このように思う次第でございます。きょうは、そういうことについて御説明を申し上げるということができなかったのでございますけれども、一応そういうことを御判断願う材料は、実はIからIIIの場合において、電気がどういう形になって設備と供給の面であらわれるかという試算を、これもさらに再検討をしていただかねばならぬと思いまするけれども、まとめて御参考のために出さしていただいた次第でございます。どうかそのような点に、きょうは申し上げる時間がございませんでしたが、そこまで、ある程度むずかしい事態に日本が直面しつつあるのだということだけは、ひとつお考え願いたいと思います。  それからもう一つ、私がこういう私案を、命令ではなくて御要請がございましたので、さしていただいたということは、いろいろな組み合わせのしかたが将来あり得るわけでございます。何も私のこの案どおりやれということではございません。そしてこれはいろいろな組み合わせをおまとめ願うのにおきまして、きわめて効果的に戦略決定の材料を実は皆さま方にも提示をしていく、そういうことになるだろうと私は思って出させていただいている次第でございます。どうかそういったようなことで、ひとつ政治家の皆さま方、各政党におかれましても、自分のほうなら、総合エネルギーはどうして、国民生活経済はここまで守るのだということを今後御推進願いたいということを、私はお願い申し上げたい次第でございます。これは原子力委員としてお願いするのではなくて、国民の一人としてお願いをするのだと、こういうふうにお考え願いたいと思います。それほどエネルギーという問題は、私たちの将来にとりまして、非常に重大な問題である、こう思う次第でございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、時間がないから終わります。
  66. 安井吉典

    安井委員長 次に、内海清君。
  67. 内海清

    ○内海(清)委員 実は三時から一つ会議がございまして、御出席の先生方もおいでになるような会でございます。もう時間がございません。いろいろ御質問申し上げたいと思いましたが、本日は、稲葉先生の御多年のエネルギーに対する御経験、それにもっていって、いわゆるエネルギー資源の現状を踏まえまして、一つ私案をお出しいただいた、この御苦労に対してまことに敬意を払うわけでございます。しかし、いまエネルギー問題は、いままででもいろいろ話がございましたように、いまわが国では、その推進が、端的に申しますならばなかなか困難な状態になってきておるということ、これにはやはり十分論議して、国民のコンセンサスを得てやるということが一番大事だと思うのです。しかしこういう案をお示しいただきましたので、今後は、この先生の案を中心にして、いろいろこれを分析もさせてもらおうし、研究もさせていただいて、討議していかなければならぬと思うのであります。  いろいろなにしておりましたが、時間がございませんから、これをひとつ技術的な点について、私は数字のほうから考えましてお尋ねしていったほうが、今後のあれにいいという点がございますので……。  最小限努力目標のいわゆるケースIIIの数字でお尋ねしたいと思いますが、まず原子力関係、これは特に今度の場合、原子力開発の位置づけということで、これが中心になると思いますが、この5表とそれから8表を見ますと、原子力関係につきましても、大体主として電力の面からごらんになっての数字ではなかろうかというふうに考えるわけです。ところが、先ほど先生もちょっとお話しございましたけれども、いま原子力の場合、御承知のような高温ガス炉などがすでに実用段階に入ろうとしておる。たとえば製鉄の問題であるとかあるいは地域暖房の問題であるとかいろいろあるわけです。だから原子力は電力のみでないわけでございまして、そういう点については、この数字の上ではどういうふうなお考えになっておるか、その点をひとつ……。
  68. 稲葉秀三

    稲葉説明員 実は先生四五ページのところをちょっとごらん願いたいと思います。二十三という表題のところでございます。実は総合エネルギーと電力試算をさせていただきましたあとで、私がどうしても申し上げねばならぬというところがこの二十三でございます。実は全体のエネルギーというのは石油に四分の三依存しているわけでございますが、総エネルギーの中で電力のエネルギーというのは三分の一弱でございます。そうすると、ほかのもので、はっきり言えば鉄がだんだん使われるとか、あるいはそういうものは主として熱というものをどのように使って、そして産業や国民生活をささえているかというところへ帰着するわけです。ところが原子力の利用は主として発電のほうへ向いております。ですから、発電の三分の一を原子力で置きかえましても、実は九分の一のエネルギーしか原子力で動かないという形になってまいります。そこで今度は熱をどのように経済的に、また環境を考えて使っていくかという問題が出てくるわけであります。その場合、原子力との結びつきについて言えば、先生が先ほど御指摘になりました高温ガス炉というものを将来どのように日本として有効に利用していくのか、していかないのかということが問題でございます。私は技術の専門家でございませんけれども、申し上げたいのは、まだ高温ガス炉といえども、主として発電炉として使われているというのでございますが、かりに千度あるいは千三百度という形で温度が上がっていけば――そこまでいろいろな努力をしていかねばなりませんけれども、今度は鉄が溶かせる、それから海の水とかが分解できる、それの残りで実は電気ができるといったようなところまで進んでいくわけでございます。日本として、これからそのようなものに一体どう取っ組んでいくのか、いまは原子力研究所が高温ガス炉について基本設計をなさったり、これから実験炉をおつくりになろうということになっておりますけれども、実は将来全体のエネルギーというものを考えますと、いままでは主として熱を油に依存しておったのが、この油の位置が逆転をしますと、これは産業の国際的な条件として非常にむずかしいという問題がございます。また国民生活用の暖房とか、そういうふうなものを一体どう処理をしていくのかということにも関連がございますので、そういう問題も引き続いて検討していかねばならぬという項目を、ちょっと蛇足でございますけれども、ここに指摘をさしていただいた次第でございまして、御趣旨の点は、私あまり専門家ではございませんけれども、御指摘と同じ見方考え方をさしていただいておる、こう思います。
  69. 内海清

    ○内海(清)委員 お考え方はわかりました。やはり製鉄などになってまいりますと、これが石炭にかわるということもございますので、そういう他の国内資源ともいろいろ関連も出てくるだろうというふうに考えます。だから、いま直ちには一応電力ということでお考えになって、こういう数字が出ておると理解してよろしゅうございますね。  それから、数字でたいへん恐縮ですけれども、水力でございますが、これはまた国産エネルギーでございます。これは先ほど来のお話でも、この国産エネルギーをできるだけ活用しなければならぬということは当然であります。ここに示されております五十年、五十五年、六十年という数字がございますが、たいへん恐縮ですけれども、われわれもなかなかすぐ出てきませんが、発電の設備の容量でいえばどの程度になるのだろうかということについてお伺いしたい。
  70. 稲葉秀三

    稲葉説明員 このグラフをごらんくださると一番いいと思うのですが、この青いのが実は水力でございまして、発電量でございますけれども、昭和三十年におきましてはやはり水力が圧倒的に大きかった。それがこうだんだん火力に移ってまいりまして、今度は赤一本になっておりますけれども、初めはこれは石炭の火力でございました。それがだんだん石油の火力に移りまして、先ほど申したように、電気供給の三分の二ぐらいが石油におんぶをしているという実情でございます。かりに五十年は一本にしてこれでまいりますと、ケースIの場合とIIの場合、IIIの場合は、五十五年、六十年度においてこういったようなことになるだろう、そして私たち計算は、水力による増強が一年十億キロワットとそれから十五億キロワットをとって進めてまいりますと、こういう形になるわけであります。しかし、水力の場合、一つ揚げ地発電を一体どの程度プッシュするかといったような問題がございます。それからもう一つは、どうもこれからの水力につきましては、私がそういうことを申し上げて恐縮ですけれども、どうもキロワットアワー十円をこすということを覚悟しないとむずかしい。そして石油発電が、私の計算ではおそらく六円くらいになります。業界の計算ではもっと高いのです。それから石炭が、これからの輸入石炭なんかによるわけでございますけれども、おそらく五円ぐらいになりそうです。そして原子力が三円五十銭から四円ぐらいの間に入る、こういうふうに考えますと、確かにもっと伸ばしていかなければなりませんが、そういう意味におきまして、電気におきまする水力の位置につきましては、ある程度のやはり限界というものがあるのではなかろうかという感じがいたします。
  71. 内海清

    ○内海(清)委員 私がお尋ねいたしましたのは、発電の設備容量の数字がほしかったわけでございます。これはいずれあとから計算してみてもいいわけですが、いまわかりますか。
  72. 稲葉秀三

    稲葉説明員 三七ページの表をごらんになっていただきたいと思います。これは設備容量でございまして、それのケースI、ケースIIというところで、水力というのがケースIIIについては出ております。ですから、昭和六十年に四千九百万キロワットということでございます。
  73. 内海清

    ○内海(清)委員 わかりました。ポケットにある水力の容量のがあるわけでして、それとちょっと比べてみたかったわけです。  それからもう一つお尋ねしておきたいと思いますが、通産省でやっておりますいわゆるサンシャイン計画、これは先生のこの表の中のその他という中に含まれておるわけですか。
  74. 稲葉秀三

    稲葉説明員 そのとおりです。
  75. 内海清

    ○内海(清)委員 わかりました。
  76. 稲葉秀三

    稲葉説明員 ただサンシャイン計画に対する私の評価というのがこの中に入っておりますから、その点はお読み願いたいと思います。
  77. 内海清

    ○内海(清)委員 いま一つ。そういう数字のことなどばかりお尋ねして、時間がございませんから、電気の場合、予備率と申しますか、電気の設備容量である程度の余裕を持っていなければいかぬということがあるわけです。この供給計画で、予備率をどういうふうにお考えになっておりますか。
  78. 稲葉秀三

    稲葉説明員 理想的な形では、八ないし一〇%予備率を持っていきたい、それは八月最大ピークに対してであります。
  79. 内海清

    ○内海(清)委員 それもこれの中に出ておりますか。
  80. 稲葉秀三

    稲葉説明員 ただそういう形には行きにくいだろうということを、設備その他の面で全部ここに示してあります。三九ページでございます。つまり現状推移でまいりますと、五十二年から予備率というものがほとんどなくなってしまいます。
  81. 内海清

    ○内海(清)委員 予備率というのはある程度確保しておきませんと、いろいろ実際問題として問題を起こす、かように思います。この点もひとつ、きょういただきましたので、内容を十分読んでおりませんで、たいへん失礼があったと思いますが、いずれこれをよく読ましていただきまして、このエネルギー供給というのはどうしても最も慎重でなければいかぬ。しかもいまの状態からいえば、できるだけ早くということにも相なると思います。しかし、拙速はこの際最も慎まなければ、国民のコンセンサスという点で問題が残ってくるだろう、かように思います。  これを読ましていただくにつきまして、わからぬ点をお尋ねしたわけでございます。ありがとうございました。  終わります。
  82. 安井吉典

    安井委員長 次回は、明二十八日午前十時理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十一分散会