運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-07 第72回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月七日(木曜日)     午後五時十三分開議  出席委員    委員長 安井 吉典君   理事 伊藤宗一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐々木義武君 理事 石野 久男君    理事 瀬崎 博義君       稲村 利幸君    加藤 陽三君       梶山 静六君    羽田  孜君       粟山 ひで君    嶋崎  譲君       山原健二郎君    近江巳記夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁計画         局長      安尾  俊君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         科学技術庁原子         力局次長    生田 豊朗君  委員外出席者         原子力委員会委         員       井上 五郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 安井吉典

    安井委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 時間がございませんので、実はけさ分科会でちょっと御質問いたしました分析研のことで、まだ質問の残りがございますし、一件だけひとつ聞いておきたいのですが、理研との契約書の中に「調査結果の利用」というところがありまして、第十三条に「乙は、本委託契約の実施に伴い得られた調査結果を利用しようとするときは、様式第7によりあらかじめ甲の指示に従って行なわなければならない。」というところがあります。それから第十五条には、これは「契約不履行等の場合の措置」でございますが、「甲は、次の各号の一に該当する場合には、契約を解除し、又は変更し、及びすでに支払った金額の全部又は一部の返還を請求することができる。」その小さな見出しの1に「乙が契約書に記載された条件に違反したとき」、こういうふうになっているわけです。この十三条、十五条の関連性で、特にあらかじめ甲の指示に従わなければ調査結果の利用ができないということの意味、これがちょっとわかりにくいのですね。調査官が調査したものが自分で発表できないということの意味なのかどうなのか、そこをひとつはっきりしていただきたい。
  4. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 お答えいたします。  いま御指摘条文は、役所が委託契約をする場合の通例の条文、例文でございまして、本件につき特にそういうようなことを過去において指示したことはないと承知いたしております。
  5. 石野久男

    石野委員 「調査結果を利用しようとするときは、」「甲の指示に従って」という意味は、調査データについて手を加えるとかなんとかいうことではもちろんないのでしょうね。指示を受けなければ、そのデータを出せないとか使えないということになると、これは非常に意味が不明朗なところがありますが。
  6. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 先ほど申し上げましたように、一般に何か研究等を委託した場合に、その成果というような意味条文でございまして、本件につきまして、当庁のほうの指示がなければ発表をしないということではございません。ただ、評価委員会というものがございまして、たとえば何か評価する必要があるような値が出た場合には、その評価委員会を経て発表するというようなことばあるかと存じまするけれども、当庁の指示がなければ発表しない、そういう趣旨から出ておるものではありません。
  7. 石野久男

    石野委員 この意味は、データを出した作業員、いわゆる分析作業者が出したそのデータに何がしかの手を加えなければその表は使えない、こういう意味なんですか。そうじゃなくて、他に何かの指示をするという——甲指示という意味は、どういう指示なんですか。
  8. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますように、分析結果は、何らかの指示がなければ公表しない、そういう趣旨ではございません。
  9. 石野久男

    石野委員 その意味は、結局分析データが出たものに対しては、科学技術庁としては、それに手を加えさせるような指示、命令をするという意味ではないのですね。
  10. 牟田口道夫

    牟田口政府委員 そういう趣旨ではございません。
  11. 石野久男

    石野委員 きょう井上原子力委員長代理おいでになっておられるのですが、最近茨城の原発のところで、放射能を浴びた者が何の監視もなく自由に出歩いておるということで、県の議会でも問題になっております。これはしばしばあることで、下請業者などが入りました場合に、被曝した者に対する管理監督が十分にいかないために、被曝の実情がありながら外を幾らでも歩くということになりますと、安全管理の上からいくと非常にまずいことだと思うのです。きょうはもう時間がありませんから、これは長く追及しませんが、こういうような問題を原子力委員会というものが黙ってほうりっぱなしておいてはいけないのではないかというように思います。それからまた、監督官庁である科学技術庁としても、その問題については、これは十分な監視をすべきだというふうに思いますけれども、そういう点について、何らかの情報が入っておりますか。また情報が入っておるならば、それに対してどういう処置をするか、ひとつ聞かしていただきたい。
  12. 井上五郎

    井上説明員 私、まだ御指摘報告を受けておりません。内容によりまして、ちょっと事務当局から聞いてからお答えをいたします。
  13. 伊原義徳

    伊原政府委員 御説明申し上げます。  ただいま先生御指摘事故と言われておりますのは、昭和四十八年十月五日午前十一時ごろ、原子力発電会社東海発電所で起こりました作業者放射能汚染の問題かと思いますが、本件につきましては、一名が多少汚染がございましたので、規則に定められておりますとおりに、シャワーで洗い流しまして、その結果、外へ出てもいい程度に量が落ちたということで外へ出た。念のためにホール・ボディ・カウンターというもので検査も行なっておりますが、この汚染程度は非常に軽微のものでございまして、いわゆる汚染事故ということで報告義務が課せられておるものではございません。内部規程によりまして十分安全に処理が行なわれておる、こう考えております。
  14. 石野久男

    石野委員 安全の管理は十分できているということでありましても、しかしそういう問題について疑義があり、しかもそういう事故が起きたことも事実ですが、その事実は、結局茨城県のほうにも、あるいは当該東海村に対しても、何の通知もないわけですよ。こういうことはまずいということで、何べんも、これは県当局もあるいは村当局要求し、われわれもまた、このことを監視すべきだということを要請しているんだが、いつまでも実行されないのは、やはり管理体制の中に非常にゆるみがあるのじゃないか、われわれはこういうように感じるわけですよ。これは徹底的にひとつ、当局もそうですし、原子力委員会のほうとしても、この問題の管理をしてもらわなければいかぬと思う。その点について、やはり決意のほどをひとつ述べておいてもらいたい。
  15. 井上五郎

    井上説明員 御指摘の点はごもっともでございますが、ただいま伊原次長からお答えをいたしましたように、本件は昨年の十月に起こりました事件で、しかも調査の結果は、ただいま御報告がありましたように、きわめて軽微なものでございます。結果的に、あえて公表するまでの必要はないものと考えたものと私考えまするが、こうしたことは十分気をつけなければならないといういまの御指摘は、そのとおりでございます。しかし問題は、やはり程度の問題でありまして、非常に軽微なものを一々報告しなければならないというよりは、むしろこれに関連する、当局者がいかなる考え方でこれに取り組むかと、ただいま御指摘がありましたように、入念と申しますか、念には念を入れた真剣な態度で取り組まなければならないという御指摘はごもっともだと存じます。
  16. 石野久男

    石野委員 いま井上さんからのお話の、軽微なものは一々それをどうするということより、それに取り組む管理立場に立っている者の心がまえの問題であるという、こういう意味は、管理者心がまえの点は理解できますけれども、軽微なものについては一々報告しなくてもいいのだという考え方は、これはちょっと安全性管理の上からいって、われわれはやはり見のがすことはできないことばだと思うのです。  井上さんは、先般の委員会でも、ピコキュリーなんというのはもう微々たるもので、大したことはないのだというお話がございました。私はこれにも異議を持っているのです。ピコキュリーは確かに非常に微量なものですから、それは十年、二十年それだけのものを被曝しても大したことはないんだというような、こういう発想で安全性の問題を考えるということになると、安全性そのものに対する考え方に問題が出てくると思います。私はこの点については問題を残します。きょうは時間がありませんから、あとでまた……。井上委員長代理のそのことばは、非常に問題があるということだけ指摘しておきたいと思います。  大臣にお尋ねしますが、大臣はこの前、原子力産業会議に行かれて、新聞にでかでかと各社ともみな書いたのですが、大臣の、森山原子力委員長のこのあいさつがどうも私もちょっとわからないんですよ。でひとつこの真意のほどを聞かしてもらいたいと思うのだが。新聞によりますと、委員長は「産業界団体として」——原子力産業会議のことを言うのですね。「産業界団体として中立公共性をとった意義がわからない。新しい体制偏向があるのではないか」、これは有沢会長がとった新しい体制のことだろうと思いますが、この「中立公共性をとった意義がわからない。」ということの意味は、どういうことを言おうとしたのかちょっとわからないので、ひとつ委員長真意のほどを聞かしてもらいたい。
  17. 森山欽司

    森山国務大臣 原子力産業会議にぜひ出てくれということでございまして、去年は政務次官が出たということでありますが、ことしはぜひ出てこい、こういうことでございまして、まあ私もいろ意見があるから、あまり物議をかもすようなことを言いたくないからということで、遠慮を申し上げたのだが、ぜひにということでございました。格別原稿など持たないでお話をいたしたわけであります。  そのお話いたしましたゆえんは、ちょうど三月の五日が着任百日目でございました。それで、いろいろな話題のとり方もありますけれども、その百日間に、科学技術庁長官としていろいろぶつかった問題についての若干の問題を取り上げて、お話をいたしたわけであります。  それで、一つは、この原子力発電の建て直しということのために、予算の追加要求を行なってこれを実現した経過についてお話をいたしました。それに関連いたしまして、原子力発電が世界の趨勢であるということについて、先般ワシントンのエネルギー会議に出ましたが、その感を深くしたということを申し添えたわけであります。  いま一つの問題は、例の分析研の問題でございまして、これはまさにはからざる事態であって、こういうことを二度と起こしては相ならぬということと、これに対する善後措置に全力を傾倒して努力中であるということをお話したわけであります。  それで、原子力産業会議について私が話をしました趣意は、ともかく原子力発電の問題で、どうしてもこれを建て直しをしなければならぬということで、鋭意努力するに際して、やはり原産会議のほうからもいろいろ御意見があってしかるべきではないか、われわれのほうからも、もしおいでになればお互いにもの申すということがあって——そういう、産業団体であれば、産業関係あることでございますから、御意見もあろうし、こちらもそれを伺うし、こちらからもお話をしなければならぬ。ところが中立的な性格だ、こういうふうに書いてありますから、まあそういう産業団体であるというよりは、調査研究あるいは啓蒙的な、そういう団体もそれはあるわけでございまして、私は原子力産業会議の従来の状況は存じませんけれども、第二十二回臨時総会議案を見ると、「「日本原子力産業会議」という名称については、当面現状のままとし、将来さらに必要がある場合には、あらためて考慮する」というわけでありますが、かなり性格的な変更もお考えになっているのではなかろうかというふうに、私はこの方針を見て読んだわけであります。しかし産業会議といっておりますから、これは当面の産業代表する基本的性格は失っておらないものであろうと思っておりますから、当然原子力産業の中の最も大きな部面を占める原子力発電等については御意見もあろうし、われわれもお話ししたい、こう思っておったが、一向そういう機会がなかったという意味で、ここに書いてある中立的というのは、半分人ごとのようなふうにお考えでおられるのではないかというような趣旨で、私が発言をいたしたわけであります。  それからなおまた、こういう政府立場というのは、その意味では、業界業界立場がおありでありましょうが、わが国経済情勢から考えて、先行きわが国エネルギー政策としての見地から、原子力発電重要性というものを訴えておるわけでございますから、これはまた原子力産業の中で、たとえば電力関係方々とはまた立場を異にする面があります。そういう意味では、政府のほうが、業界との関係においてはむしろ中立的な国民的な立場考えて、そういう発言をしておるのであって、電力会社としては、これらの問題も、みずからの問題として、人ごとではなくして、みずからの問題として取り組んでいただかなければならぬというようなことを考えて、そういう発言をいたした次第でございます。  なお、分析研問題等は、非常に頭を痛めておるわけでございまして、泣き言を言うわけではないけれども、一体あれはどうなっておるんだぐらいは、原子力産業会議から声がかかってきてもいいではないかということもお話をいたしたわけであります。発言の要旨はそういうことで申し上げた次第でありました。
  18. 石野久男

    石野委員 そうすると、長官は、原子力産業会議というのは、大体電力会社の別な寄り集まりである、そういうような会議だのに、中立だとか公益性だとかというようなことはおかしいじゃないか、こういう意味での発言でございますか。
  19. 森山欽司

    森山国務大臣 原子力産業会議というのは、産業会議というからには業界団体であるというふうに私は考えております。しかし調査研究啓蒙というようなことをおやりになる団体、それを主としておやりになる団体も可能でございまして、たとえば日本原子力会議というようなものをお考えになられて大いにおやりになることも、決してあれでございませんが、産業会議ということになれば、これは御案内のとおり、原子力発電だけではありません。原子力産業はもっと幅広いわけでございますが、その中で大きな部面原子力発電が持っておるわけでございますから、その関連工業等を合わせたものを原子力産業というものであろうと思っておりますから、それはまさにそのお立場で、政府がいろいろ施策するについて、業界として希望もあればどんどん言っていただかなければならぬし、それからまた、政府がやろうとしておることに対して御意見もあろうし、われわれのほうも、そういう点は積極的にいろいろ、まさに——政府立場国民経済等考えて、いわば業界とはまた違う立場でございます。日本エネルギー政策という立場から、原子力発電重要性ということをわれわれは主張しておるわけであります。電力会社から見ますれば、まさに自分のことでございますから、半分人ごとのような印象を受ける中立性というようなことは、もう少し積極的に出てもらう必要があるのではないか、私はそういう趣旨発言をいたした次第でございます。  私がどのくらい理解しておるかわかりませんが、ここにも、原子力産業会議という名称についても、あらためて名前考えようということでございますから、かなりやはり従来の——従来の行き方もよく存じませんけれども、私がやはり疑問としておるような点は、中にお持ちなのではなかろうか。それがいい悪いということはありません。しかし、産業界として考えますると、私のような見方もあり得るだろう、そういう意味で御了解願いたいと思います。
  20. 石野久男

    石野委員 時間がありませんから……。そうしますと、長官お話は、政府はこういう原子力政策に対して中立立場をとるのは当然だが、産業会議というのは大体そんな中立なんというようなこと、人ごとのようなことをいっておったのではいかぬ、こういうような意味だと言われますから、それは非常に率直なものの見方であろうと思いますし、私も、むしろ産業会議をそういうように見るほうがいいのかもしれないと思います。そうしますと、産業会議自身中立を標榜して、有沢さんなりがあるいはいろいろな組織がえをしようということを言っておることと、長官の言っておることは、だいぶすれ違っておるということが、ここでよくわかりますから、私どもも本質的には産業会議というのはそういう——表面は非常に中立性を標榜しているけれども大臣の言われるように、本質的にはやはり産業界が集まっておるのだから、人ごとのように言っておってはいけないので、やはりそんな中立なんというなまぬるいことを言うなということのほうが、非常に率直だと思うのです、大臣の……。よくわかりました。そういうような意味であるならば、大臣発言はよくわかりますが、ただしかし、これは私たちができるだけ——産業界がそういうようなことをあまりまっしぐらに走っていかないで、もっと中立性を標榜しておる政府なりあるいはまたこれに批判を加えておる人々に、もうちょっと顔を向けてやっていくほうが、産業会議などはいいのじゃないかと思っておりますが、しかし、いま長官のそういうお話でありますると、発言された意味もよくわかります。しかし、これは、問題は出てくるように思いますね。
  21. 森山欽司

    森山国務大臣 国会で、あなたと何回も意見のやりとりをやっておるわけでございますが、調査研究啓蒙というようなことも非常に大事でございます。そうして、産業界として、そういう幅広いバックグラウンドを持ってやるということを私は否定いたしません。そうあってしかるべきものだ。しかし、従来の常識でいうと、産業会議というとやはり産業だ。産業界でそういうふうに幅の広い奥行きのある行動をしていく、こういう意味で私は理解してまいりたいと思っております。もし、ただ幅の広さ、奥行きだけでいくということになりますれば、そういうことを中心にする調査研究啓蒙というような、そういう機関は可能であります。ですから名前まで変えようかという御意見は、それであるのではないかと私は推定するくらいでございますから、それがいい悪いということよりも、私どもは、この仕事をするについて、ちょうど国会でこういうふうにいろいろお話をいたしますように、それぞれひとつ十分意思疎通してやっていきたい、そういう趣旨で申し上げたわけでございますから、どうか御理解賜わらんことをお願いいたします。
  22. 石野久男

    石野委員 あと二分間しかありませんが、ちょうど井上原子力委員長代行も来ておりますし、井上さんも原子力産業会議のほうには全然無関係じゃありません。むしろ関係が非常に大きいように思いますが、いま大臣原子力産業会議に対する所見の一端が——基本的な考え方を私はお聞きしたのですが、もし所見をいただけるならば、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  23. 井上五郎

    井上説明員 ただいま森山大臣から御意見がありましたとおりに、私も当時出席いたしておりましたのでそのように伺っております。私ただいまは原子力産業会議ともちろん直接の関係はございませんが、ただ御指摘のように、私、現職をお引き受けする前には若干の関係がございまして、あの公正にして中立ということばは必ずしも——非常に厳密に中立というよりは、産業界のみの代表である、あるいは何らかの一党一派代表であるという意味でなくて、やはり原子力国民全般の広い視野から開発をし支持を受けなければならないという、広義の意味のように私は了解をいたしております。
  24. 石野久男

    石野委員 いろいろ、私の意見もありますけれども、時間がありませんから、これでおきます。
  25. 安井吉典

  26. 山原健二郎

    山原委員 ただいまの森山長官発言を聞きながら、私はますますわからないのですよ。原子力産業会議中立性公共性というものを明らかにしたことは、その程度はどの程度のものかわかりませんけれども、今日分析化学研をはじめとして、原子力の問題に対する国民の不安、疑惑、たくさんあるわけですね。その中で中立性をともかく標榜しておるということは、科学技術庁長官として、ほめこそすれ、これが偏向だとかあるいはその真意がわからないとかいうような発言は、まさに今日の国民要求に対する反国民的な考え方ですよ。私はそのことをはっきり指摘しておきたいのです。実は私は昨年の九月二十日に分析化学研の問題を取り上げて、そしてこのインチキなデータの問題を、この委員会でやりました。ところが、その後、科学技術庁として、科学技術庁らしい態度をとっていないのです。そういうことが今日のような大きな問題に発展をしているわけですね。私はそのことを考えましたら、ほんとうにまじめに、原子力の問題についてはただ一つ官庁である科学技術庁というものが、もっと公正で、しかも科学性を持った立場をとるべきだと思うのですよ。そういう態度の欠如というものが、長官ことばの中にはっきり出てきておる、私はこの点を指摘しておきたい。それについて何か答弁がありますか。
  27. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほども申し上げましたように、業界団体が幅を持ち、奥行きを持っていくということについては、まさに賛成でございます。しかし、あくまでもそれは業界団体である。単に幅だけ、奥行きだけであるならば、それはそういう調査研究啓蒙機関というものもあり得ます。原子力産業会議考えておられる方向は、そういう産業団体としての立場を堅持しながら奥行きと幅を持っていこうというのか、あるいは名前まで変えようというふうに書いてあるところを見ると、性格まで変えようとするのか、その辺に、やはり私ども原子力行政関係いたしまして、はっきりしない面は感じておるということを申し上げるので、それが一つ一ついいとか悪いとか、偏向だとか、そういうことを、先ほど来再三申し上げますように、私は考えておるわけではございません。ただ私は、とにかく産業団体であるといたしますならば、これは人ごとではございませんから、たとえば原子力平和利用の中の最も大宗を占める原子力発電につきましては、これは人ごとではございません。産業界であるならばまさに自分のことでございますから、いろいろそれについては御意見もあろうし、それから要望もあろうし、私どもに遠慮なくそういうことについて話をしていただきたいし、私どもも、そういう産業界に対していろいろ意見も述べたい。もう少しそういう意味で、人ごとではなくて自分のこととして、中立的ということばに少しこだわり過ぎるのかもしれませんけれども、やってもらったらどうか。たとえ話として申し上げますれば——これはたとえ話でございますよ。お相撲取りで、お相撲を取るつもりの立場と、行司をやる立場はちょっとまた違いますからね。だから私は、ひとつ相撲取り立場で、とにかく電力というのはやはり民営でやるわけでございますから、その当事者になっておやりになる方々のお立場というものを中心にして、たとえば原子力発電の場合などはそういうふうに考えて、私がもっと連絡を密にして、人ごとではないような形でもって、産業界としてはわれわれのほうに、何といいますか、相互の緊密な連絡をしていきたいという趣旨で申し上げたわけでございます。  去年の九月の問題でいろいろ御意見がございましたが、その点につきましては、さきに衆議院の予算委員会で、山原委員名前もあげて、遺憾の意を表した次第でございます。
  28. 山原健二郎

    山原委員 今日は、産業界、大企業の横暴その他が国会の中で最大の問題となっておるときですね。あなたが発言された三月五日というのは、まさにそういう時点、国民の関心は、インフレ、物価高、物不足に対する怒りとなって、産業界の横暴というものに対して批判の目が向いておる、このさなかに発言されたことですからね。どんなに強弁されようとも、こういう不謹慎な態度をとるそのこと自体、その背景にやはり国民が納得できないものがあると私は思うのです。その点で、私はきょうは別の質問を用意しておったわけですけれども、それに関連して、一つ科学技術庁の姿勢について申し上げてみたいのです。  これは科学技術庁の資源調査会の三名の専門委員、それには資料課長の松宮さんも御一緒に行かれておりますが、あと課員の者も一人行っております。おそらくこの五名の方が、実は九州あるいは四国を回られて、昨年の十月二十五日、これはちょうど中東戦争が起こりまして石油問題が大問題になったときでありますが、このときに高知県の企画管理部長室におきまして、約三時間にわたって県の関係者と話し合いをいたしておるわけです。  その中身は、科学技術庁の単なる調査ではなくて、いまむつ小川原と宿毛といえば、CTS問題で世論が紛糾しておるさなかでありますが、そこへ参りまして、宿毛湾にはCTSは必要であるということを強調している。県はこのCTS問題について明確な態度をとるべきである、国際協力の中で、いままであいまいな態度をとってきたことを見直せ、こういう発言をいたしているわけです。これは私はいろいろな点から調査をしましたが、たいへんに重大な問題になっているのですね。宿毛湾というのは、御承知のように、国立公園に一昨年指定されたばかりのところです。そしてこのCTS問題については、漁民をはじめ多くの人々が反対をし、県論はもう沸騰するような状態で、ようやく県知事もこれについては慎重な態度をとらざるを得ないというところへ来ておるときに、初めて高知県を訪れた科学技術庁の専門委員、そして課長を含む職員がこういう発言をしていることに対して、いま県民はたいへん大きな疑惑を持っているのです。この事実について、私は簡単に経過を報告していただきたい。
  29. 安尾俊

    ○安尾政府委員 昨年の十月二十六、二十七両日にわたりまして、資源調査会の専門委員らが高知県に参りまして、県庁と中村、宿毛の両市役所で、関係方々と地域開発に関します調査を打ち合わせたことは事実でございます。ただ、この問題につきましては、先生御承知かと思いますが、昨年の十月二十七日付の日本経済新聞の四国経済面に、CTSは日本にとってどうしても三、四カ所必要で、宿毛湾はその中でも国際協力の食糧基地としての可能性も含め、重要な機能をになっておる、こういうふうなことを述べておると報じておりますが、これは一専門委員が発言した個人的な発言でございまして、発言に関する記事の内容も必ずしも正確でないように聞いております。現在までのところ、資源調査会としましては、これらにつきましていかなる勧告も報告もいたしておらないわけでございます。
  30. 山原健二郎

    山原委員 この調査団には松宮課長も同行いたしておるわけですが、その帰った後の報告書はございますか。
  31. 安尾俊

    ○安尾政府委員 この資源調査会の御報告につきましては、従来から資料を現地でいただいてきておりますが、その資料も検討した上、総合小委員会において報告することになっておりまして、目下検討中でございます。
  32. 山原健二郎

    山原委員 どこの企業でも、どこの官庁でも、調査に行けば、帰ったときには、この場所を調査した、あるいはここでどういう者と会を持って、そしてこちら側はどういう発言をし、向こう側はどういう発言をしたかという報告があるのが、これは当然のことです。報告書はありますか。
  33. 安尾俊

    ○安尾政府委員 現地に行きましての報告書は現在ございませんが、先ほども申しましたように、現地でいただきました資料を検討いたしまして、総合小委員会のときには、その現地の報告も含めて検討することになっております。
  34. 山原健二郎

    山原委員 この会合は三時間かかっておりますがね。私はその中身をよく知っているのです。かなり強烈にCTSをつくりなさいということを要求していますよ。高知県のほうは、全般の情勢を報告しただけで、これは慎重な態度をとっております。それに対して、専門委員らからは、資源問題としての石油確保、備蓄の重要性を訴えて、「CTSは日本にとってどうしても三、四カ所必要。宿毛湾はその中でも国際協力の食糧基地としての可能性も含め、重要な機能を担っている」ということ、その他いろいろなことが出されているのですよ。だから、たいへん問題になりまして、そうして一部の新聞記者の人たちもこの真相を確かめに行っておるわけですね。そうすると、たとえ個人の発言でありましても、この「栗原委員らの強調した“国是として”のCTSはまず、むつ小川原をソ連のシベリア・ヤクーツク油田との関係でとらえる。その原油加工を日、米、カナダ、ソ連四国の国際協力で実現するための国際基地としての役割を持っているという。これに対し、宿毛湾は中近東、東南アジアを単位とした基地で、日本の国内供給の主人公的役割を背負う。韓国の済州島、巨済島にできる大CTS群とブランチ的関係で結びつき、韓国との国際的機能分担の立場から原油と並行して農業などでの国際協力もセットされるとその意義づけを行った。」これは捏造する記事として出るものではありません。しかも、時間の関係で途中は省略しますけれども、たとえば、いま国会において問題になっております物資の隠匿を巧みにやれという秘密通達を出した伊藤忠、伊藤忠の問題についても、こういうふうに述べているのですよ。「すでに米国やメキシコでの日本資本による花栽培などはかなりの成果をあげて日本へ逆輸出しているといい、韓国についても伊藤忠商事による四百ヘクタールの茶園経営の例をあげた。商社による韓国での山地畜産や酪農も最近、真剣に検討され、農業技術面で発展の機会をつかもうとしている全羅南、北道などでは国際的な農業技術提携、合弁経営の可能性は大きいというわけ。CTSをおし進めようとしている伊藤忠商事は同時に韓国での農業経営などの面でもすでに結びつきを持っているので、総合商社のオルガナイザーとしての企画力、バイタリティーを宿毛地域の開発に積極的に引き込んで利用すれば、農漁民の新しい活路は必ずひらけるとしている。このような総合的見地にたった地域開発を行うなかで初めて瀬戸内の浄化、高知県の玄関——西日本の物流拠点も果せると思い切った見解をのべた。」、こういうふうに伝えられておるわけでございます。こういう、まさに、伊藤忠がバイタリティーに富んだ、しかもきわめてオルガナイザーとしての企画力、こういうものを持っている。だからこのCTSがここでできるならば、この付近の農業も畜産も栄えるんだ、こういうことまで発言をしている。これは重大な問題です。そこまで科学技術庁——科学技術庁として派遣した、専門委員であろうと、課長もついていっておるわけですよ。そういう調査機関がこういう無責任な発言をして、国民の間に大きな混乱と疑惑を起こさすようなことをしてよいのかという問題です。どうですか。
  35. 安尾俊

    ○安尾政府委員 ただいま先生の御指摘、いろいろ伊藤忠のお話等が出ましたが、これは海外の資源の供給体制一つの例示として本人は述べた、こういうふうに承っております。
  36. 山原健二郎

    山原委員 本人は述べたといっても、個人で行っておるのではないですよ。いいですか。個人でこの栗原さんという方、三名の専門委員が恣意的な気持ちで——あるいは専門家としてかどうかわかりません。この方は専門家かどうか。私は専門家ではないと思う。思いますけれども科学技術庁調査として行っておるのです。こういう姿勢ですね、個人とも、公的な立場ともわからないような、それを混同するような態度科学技術庁にあるのか。だから、この報告書も出ないというところにも問題があるわけです。こういうところに科学技術庁の姿勢というものが、いま分析研の問題などもありますけれども、ほんとうに科学的な立場に立った科学技術庁らしい態度というもの、これがいまほんとうに真剣に長官中心として打ち立てられなければ、問題は幾らでも起こってまいります。私は幾らでも資料を持っておるのです。もう時間がございませんけれども、こういう残念なことを、私は今後続けてはならないと思うのです。ほんとうに公正中立立場に立って、科学的な調査を行なっていく。そうしてそれを、帰ってきたならば、官庁なら官庁報告をして、そしてそれが正当な資料として使われるという態度、これが科学技術庁のとるべき態度だと思うのです。それを、公人としての態度と私人としての見解をごちゃまぜにして言うことが、どれほど現地に大きな混乱を与えておるか、私はこの点ではどうしても反省をしていただかなければなりません。だからこれは厳密に調査をしていただきまして、そういう事実があればこれを取り消していただく、これが科学技術庁態度ではないということを明確にする科学技術庁の姿勢というものが必要だと思うのです。そのことを申し上げたいのですが、長官はどういうふうにお考えになりますか。
  37. 森山欽司

    森山国務大臣 ただいま局長からお話がございましたように、御朗読になりました記事の内容は、必ずしもその専門委員の言わんとしたところではないようでございます。しかしあくまでもそれは一専門委員の個人的発言でございまして、現在までのところ、資源調査会として、これに関連したいかなる勧告、報告も行なっておらないことは、先ほど申し上げたとおりでございます。今後、発言等につきましては誤解を生ずることのないように厳重に注意をしてまいりたいと思っております。  この際、いろいろ問題があるからしっかりやれという御激励に対しましては、その御激励にこたえるように、全力を尽くす所存であります。
  38. 山原健二郎

    山原委員 これは松宮課長も同行しておりますので、報告書もおそらく出ておると思います。それを総合された綿密な調査書としては出ていないかもしれないけれども、少なくとも高知県庁の企画管理部長室においてこういう話があったというくらいの報告は、だれだって、子供だってできるわけでしょう。そういうことがなされていないルーズさ、そういうところにも問題があるわけでございますから、私はその点を調査して、報告をいただきたい。長官よろしいですか。
  39. 森山欽司

    森山国務大臣 今回の問題につきましては、どういう経過になっておるか、さらに調査を進めていきたいと思いますし、全体といたしまして、いろいろな問題につきましては、微力ではございますが、御期待に沿うように、できるだけ努力をいたします。
  40. 山原健二郎

    山原委員 ちょうど時間となりましたので、私の質問を終わります。
  41. 安井吉典

  42. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんので、簡潔にお願いしたいのですが、森山長官は、このエネルギー危機に際しまして、現在の原子力の長期計画の全面的な見直しを命じておられるわけでございますが、これにつきまして、どういう要素といいますか、背景でこれをお命じになったわけですか。
  43. 森山欽司

    森山国務大臣 御案内のとおり、原子力の長期計画は、制定当時の経済社会発展計画等を基礎にして作案をされておるものでございますが、今日のような経済情勢の非常な変化の時期にございますから、これを今後どうしていくかということは、真剣に検討をする必要があると思っております。しかし経済社会発展計画等の基本計画をいま再検討するのはなかなか容易でございませんが、政府としても相当時間をかけてやるという気がまえのようでございます。現にエネルギーの問題につきましては、エネルギー調査会といいましたか、通産省のほうでいろいろ検討いたそうといたしております。  それで、この前の委員会でも私から申し上げましたように、稲葉委員が何といっても長い間エネルギー問題を御研究になっておられるわけでございますから、その多年の御経験を生かして、稲葉先生に、この際——政府がやると、かみしもをつけてなかなかたいへんなことでございますから、稲葉先生の私案というような形で御勉強を願って、ひとつ御教示を願えまいか。そういう上に立って、少しでも勉強して事を進めていきたいという考えでございます。稲葉先生の案につきましては、委員長にもお話を申し上げたのでございますが、ほぼ輪郭ができあがってまいりましたので、できるだけ近い機会に、この委員会でひとつ御発表をさせていただいたらどうかということを申し上げておるわけでございます。経過はそういうように御了解願いたいと思います。
  44. 近江巳記夫

    ○近江委員 石油問題がこうなって、その直後に長官がこういう指示をされているわけでありますが、そうしますと、今後は、当初見込んでおりました昭和六十年一兆ドル経済、それに伴う七億五千万ないし八億の石油の輸入等も非常にむずかしい。そうすると、どうしても代替エネルギーということで、原子力もその一つであるというような背景でおっしゃったわけですか。
  45. 森山欽司

    森山国務大臣 原子力の問題をただ原子力だけの見地から取り上げるわけにまいりません。やはりエネルギー政策の一環といたしまして取り上げていかなければならない。そういう広範な、できるだけ広い視野の上に立っての今後の原子力開発計画を進めていかなければならないというふうに考えております。
  46. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、この長期計画は、長官も御承知のように、五十五年に三千二百万、六十年に六千万、六十五年に一億キロワットとなっておりますね。そうすると、これがさらに大きくなる、基本的にはそう見ていいわけですか。
  47. 森山欽司

    森山国務大臣 これは一回稲葉先生の私案等をお聞き願いまして、ここで委員各位からいろいろ質疑等を願ってみたいと思っておる事柄でございますが、私の理解しておるところでは、従来の計画プラスアルファでいいのではないかという御結論のように理解をいたしております。そこのところはいろんなファクターがございますから、いま私がお話しするだけ十分材料を持っておりませんから、委員長はじめ理事各位と御相談をしまして、一回御検討願ったらというふうに思っておる次第でございます。
  48. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、プラスアルファということになってくるわけですが、長官がお命じになったというその背景は、やはりこういう石油問題から、代替エネルギーということで、原子力にさらにウエートをかけなければならぬ。そういうことで、さらに積極推進という考え方が背景になっておると私は思うのです。  ところが、現状は長官も御承知のように、四十六年度に政府の許可を得て着工が決定した原発は、設備能力で合計五百二十三万キロワット、計画目標が三百八十一万キロワットですから、三七%この時点では上回った。四十七年には百十万キロワットに下がり、計画目標三百九十万キロワットの二八%になっているわけです。四十八年は原子力委員会に対する電力各社の原発許可申請は一件もない。したがって、計画目標三百三十万キロワットに対する着手率は〇%である。そうしますと、このままで推移しますと、五十五年に運転可能な原発は合計二十三基、千六百五十二万キロワットにすぎないわけです。長期計画の現行目標三千二百万キロワットの半分にすぎないわけですが、長官がいまおっしゃったように、プラスアルファということになってきますと、安全性の問題、あるいは環境汚染の問題、あるいはそういう立地条件、地元住民の感情等の問題、今後解決をしていかなければならないそういういろいろな問題がいま非常に山積しておるわけですけれども、そういう問題が山積しておりながら、エネルギー危機という背景のもとにさらに拡大をしていく。当然お考えになる要素としては、大体日本のような小さな島国に、しかも海岸線にあれだけの集中した原子炉を設置していく。特に柏崎であるとか福島であるとかあるいは敦賀湾ですか、これはもう御承知のように一千万キロワット、あるいは若狭湾においては一千六百万、こういう集中した地域においては、たいへんな環境汚染も起きているわけです。しかも一基の発電能力にしても百万キロワットだ。こういうようなことで、そういう危険性なりこういう問題が解決されずにまだあるわけです。そういう中で、そういうプラスアルファの拡大計画をとっていいかどうか。ですから、そのお考えの中の要素、そういうものは十分いれられておるわけですか、私がいま申し上げたような心配な問題点というものにつきましては。
  49. 森山欽司

    森山国務大臣 現在の原子力委員会の長期計画を改定するということをいま申し上げておるわけではございません。  ただ、わが国のエネルギー事情、当面の経済情勢、各般の点を考えて、エネルギー政策の一環として、原子力発電がいかにあるべきかということについての一試案を、指針として、参考としてこれから進めてまいりたい、こういうことでございます。その案によれば——私は数字をまだはっきり把握しておるわけではございませんが、いままでの計画では足りないのではないかというような見通しになっている、めどになっている、というふうに聞いておるわけでございます。  しかし、実際いま近江先生お話しのとおり、近年の電調審の計画と着手の実績のとおりでございますし、また非常にむずかしい問題をたくさんかかえておるわけでございますから、これをどうするかということは非常に重大な問題であり、非常に困難な問題であります。しかしながらこのままでまいりますと、昭和五十三年ごろは、電力の需要に対してどうしても供給のほうが下回るというような事態が予想されますので、そういうことをなくしたい、あるいは需要に対して供給が若干上回っても、そのゆとりは非常に少ないということになってまいりますと、相当な節電をやりましても、場合によっては戦争直後のような停電というような事態が起きてまいりますと、これはたいへんなことだと思っております。国民生活、産業に及ぼす影響は非常に大きいわけでございますから、そういうことが目に見えておりますだけに、何とかしてこの問題を打開しなければならない、それには幾多の困難があろうと思っております。しかしその困難を克服して努力を重ねていかなければならないと思っておりまして、そういう観点から、この委員会の委員各位からいろいろ御叱正をいただいておる点、政府といたしましては十分銘肝をいたしまして進んでまいりたい。重大ではあるが、きわめて困難な問題であるということはよく承知いたしております。しかしやらざるを得ない、そういうわが国の情勢にあるということについてどうか御理解願いまして、格別の御鞭撻を賜わりますようにお願いをいたす次第でございます。
  50. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がないですから、長官けっこうです。  では、ちょっと、あと井上さんにお聞きいたしますが、いま長官お答えになったわけでございますが、そういう経済的、政治的な上からの要請といいますか、そういうことに、原子力委員会が、やはりこういう現状を——いろいろな安全性の問題とか環境の問題、あるいは狭い日本に集中して、ほとんど全海岸線に将来は原子力発電所を持ってくるというような、そういう問題等考えてみた場合、ただ単に電力が足らないからやむを得ないのだ、そういう態度であってはならぬと私は思うのです。やはり一たび事故等、あるいは汚染等を考えていきますと、そこには日本の国土、国情に合わせて、これが限界であるという、そういうものを引いた上で、そしてまたいろいろなこういう要素を考えていく——やはり必要だからやむを得ないのだ、そういう努力をしながらやっていくのだ、そういう基本的な考え方が問題だと私は思うのですよ。井上さんはどのようにお考えでございますか。
  51. 井上五郎

    井上説明員 ただいまの御発言の中で、何か原子力委員会が、上からの命令によって、ある計画をつくっておるかのごとく、あるいは私の聞き間違いであるかもしれませんが、御指摘があったのでありますが、決してさようなことはございません。御案内と存じますが、原子力委員会というものは、設置法に基づきまして、日本原子力研究開発を計画的に推進する、それをいかにすべきかということについて立案をし、政府当局に進言をするのが職責でございますから、ただいま御指摘のような問題は、原子力委員会に課せられたる最大の任務であるというふうに考えております。  その前提に立ちまして、原子力委員会はさきに原子力の長期計画というものをつくりました。昭和四十一年であったかと思います。それをさらに昭和四十七年に改定をいたしましたのが現行の長期計画で、御指摘のとおり、五十五年に三千二百万キロワット、六十年に六千万キロワットというものをつくったわけでございます。もちろんわれわれはそれが可能であると考えてあれをつくったのでありますが、言うなればあれは一つの目標でありまして、これはやはり詰めをして、もっとこまかい計画を具体化しなければならないということをかねがね考えております。さような意味で、先般、安全委員会をつくり、あるいはまたこれについての具体化の各部門の問題、たとえば再処理の問題であるとか廃棄物の問題等々についてのそれぞれの研究を、別途開始しておるわけでございまするが、たまたま昨年の暮れから起こりました石油危機の問題につきましては、やはりその目標値まで考え直さなければならないのではないか。さような意味で、昨年の十月ごろであるかと思いますが、稲葉委員に新たに加わってもらいましたので、私どもといたしましては、その方面の日本の指折りの権威者である稲葉氏を中心に、この問題を検討いたしたわけでございまして、この石油の事情から、一体、全体としての日本のエネルギーの総需要をどう考えるか。そのことは、さらに言うなれば、GNPの成長率をどう考えるか、あるいはまた、産業構造の転換をどう考えるかということが前提になるわけでございますが、そうしたこと全部をきわめて短期に解決するということは、言うべくして行なわれないわけでございますが、こうした石油危機を迎えまして、少なくとも原子力発電の問題については、もっとこまかな詰めをしなければならない。さような意味で、先般稲葉委員から、ごくラフなと言ってはあるいは失礼かもしれませんが、一次私案が出ておって、また私どもといたしまして、委員会内部においても、まだこれの検討をいたしておりません。近くこれについての委員会としての案も決定いたしたいと思いますが、少なくとも、こうした石油が非常な暴騰をし、また同時に量的にも大きな期待がなかなか困難であるという事態におきまして、私どもは、原子力発電というものを、在来考えられたより以上に強化、推進しなければならない、かように考えております。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 稲葉私案ということでありますけれども、ただいまの井上さんの話を聞いておりましても、それは十分お互いの意思が通じ合って、その上で、一応当面は稲葉私案という形で出、また原子力委員会で決定するというプロセスを踏んでおるわけでありますけれども、しかし全体のニュアンスは、どうしてもそういう経済的、政治的な要請に基づく原子力発電のいわゆる今後の方向というニュアンスが強いわけです。そういう要請も私たちわかるわけですけれども、しかし先ほども何回も申し上げておるように、そういう日本の国土の広さ、あるいは地形、あるいはそういう安全性の問題、環境汚染問題等から考えていきますと、そこにはおのずと動かすことのできない根本的な線というものは出てくると私は思うのですよ。ところが、やはりそういう要請に引きずられていくというような空気は非常に感じるわけです。ですから、今後原子力委員会等で決定されるにあたりましても、そういう立地の問題であるとか、汚染の問題であるとか、安全性の問題であるとか、そういうことは最大限に考慮されて、引きずられないように、そういう形でやってもらわないと、これはもうたいへんな問題が起きると私は思うのです。ですから、その辺についての井上さんの考えをお聞きしたいと思うのです。
  53. 井上五郎

    井上説明員 ただいま御指摘がございましたように、委員会がいろいろな外的な要請に引きずられないように、日本の現状を十分考えて慎重に決定をしろ、全く御指摘のとおりでありまして、なかんずく安全問題、またサイト問題等々、非常な困難があるということは、私どもも重々考えておりますし、覚悟をいたしております。しかし、そのことは、私どもは決して不可能だとは思っておりません。具体的に申しまして、安全問題あるいは技術の開発問題は、まだまだ今後十分進むし、それによって、より一そうの大かたの国民各層の御同意も得られ得るし、得られるべく努力しなければならない、かように考えておりますが、私は、これは個人的意見になるかもしれませんが、しからば石油のこの危機に対して、日本において代替エネルギーは何があるか、アメリカにおけるごときプロジェクト・インデペンデンスというようないろいろな考え方が、短期間に日本で実現することは非常に困難であると考えますると、もちろん御指摘のような困難があるにもかかわらず、原子力の推進によってこの穴埋めをし、代替エネルギーの開発をしていかなければならないというふうに、私どもは基本的には考えております。これが冒頭に御指摘がありましたような、何か外部の要請によるということでは決してございません。冒頭に申しましたように、原子力委員会設置法の二条に指定されました法的な義務に基づいて、私どもは最善の努力をしたいと考えておるわけでございますが、ただいま森山長官からもお話がありましたように、この上ともぜひ各方面、なかんずくは先生方の御指摘によりまして、これ以上とも完ぺきなものを期したいと考えております。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんから、終わります。
  55. 安井吉典

    安井委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十九分散会