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1974-03-19 第72回国会 衆議院 運輸委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十九日(火曜日)     午後一時十一分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 江藤 隆美君 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 孝行君 理事 佐藤 文生君    理事 佐藤 守良君 理事 太田 一夫君    理事 兒玉 末男君 理事 三浦  久君       阿部 喜元君    井原 岸高君      小此木彦三郎君    唐沢俊二郎君       國場 幸昌君    關谷 勝利君       細田 吉藏君    宮崎 茂一君       山村新治郎君    綿貫 民輔君       金瀬 俊雄君    久保 三郎君       神門至馬夫君    斉藤 正男君       坂本 恭一君    紺野与次郎君       石田幸四郎君    松本 忠助君       河村  勝君  出席政府委員         経済企画庁長官         官房参事官   有松  晃君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         運輸政務次官  増岡 博之君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         運輸省船舶局長 内田  守君  委員外出席者         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ――――――――――――― 三月十四日  大阪国際空港騒音対策に関する請願木下元  二君紹介)(第二六八七号)  公共用飛行場周辺における航空機騒音による障  害の防止等に関する法律の一部を改正する法律  案反対等に関する請願外二十一件(木下元二君  紹介)(第二六八八号) 同月十八日  帆船から汽船に登録替えされた船舶職員の資格  の取扱いに関する請願浦井洋紹介)(第二  八七二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  国鉄複線電化促進等に関する陳情書  (第三一一号)  北陸新幹線小浜設置に関する陳情書  (第三一二号)  九州新幹線八代設置に関する陳情書外一件  (第三一三号)  国鉄身体障害者旅客運賃割引規則改正等に関  する陳情書(第三  一四号)  筑豊地域国鉄合理化計画実施反対に関する陳  情書(第三一五  号)  国鉄水戸線、両毛線の相互乗入れ及び複線  化に関する陳情書  (第  三一六号)  地方鉄道事業助成に関する陳情書  (第三一七号)  大阪国際空港の深夜郵便機廃止に関する陳情書  (第三一八号)  大阪国際空港航空機騒音環境基準値即時適用  等に関する陳情書  (第三一九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六六号)      ――――◇―――――
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。小此木彦三郎君。
  3. 小此木彦三郎

    小此木委員 まず、今度の改正の中で「我が国国際海運の健全な発展支障を生じないと認められるに至ったときは、速やかに廃止するものとする。」この「支障を生じないと認められるに至ったとき」という、この時点の判断が非常にむずかしいと思うのでありますけれども当局からこの抽象的な条文を具体的に説明してほしいと存じます。
  4. 増岡博之

    増岡政府委員 先生承知のように、いまの状態では、わが国船主船台を確保しようと思いましても、あらかじめ外国船主から船台を占領されておるという状態がいまでも続いておるわけでございます。したがいまして、このような措置をわが国船主に対してとっておるわけでございます。したがいまして、少なくとも数年の長期計画のもとに、わが国船主船台を確保するために、発注ができるような状態、あるいはまた、わが国の船団が必要な物資を輸送するに十分な力をつけた時期、そういう両面を考えて適当な時期というふうに考えておるわけでございます。
  5. 小此木彦三郎

    小此木委員 この改正中身にも非常に抽象的な表現が多いわけでありますけれども、この中身には幾つかの意味や条件があると思うのです。私には三つ意味があると思われるのでありますけれども、この一つ一つにつきまして、具体的によくわかるように説明していただきたいのであります。
  6. 内田守

    内田政府委員 今度の改正案の附則に書いてございます三つの点と申しますのは、そこにございますように、一つは「国際海運に従事し得る船舶建造需要動向」、それから第二点は「その建造能力」、それから第三点は「我が国国際海運に必要な船舶整備状況」、その三点を勘案して船舶建造調整を行なわなくても支障がないというふうなことになったわけであります。  第一点の「国際海運に従事し得る船舶建造需要動向」と申しますのは、たとえば、御承知のように現在ですと輸出船がすでに四年、早いものについては五年先まで受注をしている状態に対しまして、国内船につきましてはせいぜい一、二年先の状況にございます。で、そういう状況が、今後の建造需要という点から船台が一、二年先に十分確保できるというような状況を勘案するということでございます。  それから、その裏といたしまして、建造能力でございますが、もちろん一つ造船所の量的な建造能力という点もございますし、もう一つは、御承知のいろいろな多様化した船型がございます。したがいまして、同じ建造能力と申しましても、技術的にむずかしい船であるとか特殊な構造の船については、おのずから建造能力というのは狭められているわけでございます。そういう意味におきまして質的、量的な建造能力ということになります。  それから最後の「我が国国際海運に必要な船舶整備状況」と申しますのは、先ほど政務次官からも御説明いたしましたように、たとえば積取比率であるとか、そういう点からわが国国際海運がそういう整備のあるめどを達成したときというふうに考えておるわけでございます。
  7. 小此木彦三郎

    小此木委員 それでは、「我が国国際海運の健全な発展に資する」ということばがあるわけでございますが、この「健全な発展」ということば解釈でございます。そもそもこれは、たとえば中核六社のような形での発展あるいは育成をいうのであるか、あるいは一匹オオカミ的な船社が、ただ単に利益をあげ、あるいはただ単に船腹の量をふやすことを「健全な発展」というのか、あるいはそれ以外に意味があるのか、はっきりと答弁願いたいのであります。
  8. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 私どもはやはり日本海運というものは、貿易立国のたてまえから、必要な輸出貿易のために適切な定期船中心とする輸出の物品を運ぶための海運力を持たなければいけない。それから輸入につきましては、輸入大宗物資である特に鉄鉱石石炭石油というようなものを中心とする必要なエネルギー原材料の確保につとめなければならぬということで、一応現在の海運計画では五十年度に輸出五〇%、鉄鉱石五五%、石炭五〇%、石油類六五%というものを邦船で積み取りたいという目標を立てまして、それに向かって努力をしているということであります。
  9. 小此木彦三郎

    小此木委員 私は、この「健全な発展」という意味解釈が非常にむずかしいと思うのであります。まあ、広い視野から国際協調ということを念頭に置きますれば、わが国海運造船だけがひとり大きくなる、ひとり発展するということも、ある意味において不健全であると考えますし、また、これは時間があったらあとで聞きたいことでございますけれども海運運賃と物価問題ということも、この「健全な発展」という意味と必ずしも無関係ではないと思うのです。だから私は、この「健全な発展」という意味、内容を当局が十分検討して、反省すべきは反省しながら、結論をすみやかに出すなり正すなりしていただきたいと思うのであります。  言うまでもなく、これに付随するいわゆる計画造船の出発というものは昭和二十二年であり、また臨調法が二十八年、これが一心同体となって進んできたわけでありますが、そして、それゆえにわが国造船及び海運世界に誇るに足る姿を示す上に多大の貢献をしてきたと私は思うのであります。したがって、私はこの臨調法というものが、国際海運及び造船界需要動向わが国商船隊整備に果たしてきた役割りを高く評価いたしますし、その必要性もそのメリットも非常に大きなものと認めているのであります。しかし、計画造船についてはいささか議論の余地と申しますか、見直しの時期が来ているんじゃないかということを考えざるを得ないのでありますけれども運輸省はどういうふうに考えておられるのか。ということは、四十七年の審議のときにも、私はこの問題で質問をいたしたのでありますけれども、当時の経済情勢の中で経済政策軌道修正が必要であると当局が言った。そして、経済計画の指標が手直しされれば計画造船も当然修正さるべきであるということをはっきり見解を示したわけであります。ところが、が然その時点から半年もたたないうちに、造船海運界は好況を取り戻した。かと思うと、いま田中首相のいわゆる参考書のない時代、処方せんの見つからない時代、こういう有史以来の世界的な経済動乱時代に突入してしまったわけであります。  四面海に囲まれたわが国は、常に船舶が必要である、こういう情勢を踏まえていけば、この答えは私は非常にむずかしいと思うのでありますけれども、再びまた、私はこの際、計画造船とはそもそも何であるか、その見直されるべき時期がいま再びここにやってきたんじゃないか、これに対する明確なる答弁を願いたいのであります。
  10. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生お説のとおりでございまして、私ども計画造船による海運政策というものは、一時的な景気の変動によって修正すべきものではなくて、経済が構造的に変革して経済政策変更を必要とする場合には、当然わが国海運が必要とする船腹量も、長期的視野で見て変更していく必要がある、造船計画もこれに応じて変更していくものであるというふうに、結論としては考えております。  そこで、先生お話がございました過去のことをちょっとだけ触れさせていただきたいと思うのですが、確かに、前回四十七年にこの臨調法の御審議をいただきましたときに、海運政策見直しをしなければならぬということを当時の海運局長が申し上げたと思います。ちょうど四十六年の暮れに円の切り上げがございまして、確かにそういった影響を受けて海運造船業界もかなり深刻な不況を予想した事態だったと思います。そこで、国の政策も当然それに基づいて先ほど申し上げました根本的な経済計画変更を迫られておりましたという時点であったと思いますので、当時海運もそれに基づいて計画変更をすべきだということを申し上げてまいったのがその当時の事情であったと思います。  そこで、国の経済計画変更が、その後半年ばかりおくれて、四十八年の二月になって現在の経済社会基本計画というものが打ち立てられて、四十八年度から五十二年度に至る国の経済計画が新しく樹立されたということは御承知のとおりでございます。  そこで、私ども海運政策としては、この御審議をいただきましてから少しおくれた四十七年の九月に、今後の外航海運政策あり方についてという諮問を運輸大臣から海運造船合理化審議会にいたしまして、それで国の計画にフォローすべく国の計画の樹立を待っておったわけでありますが、それが実は四十八年の二月になったということでございまして、御承知のとおり、その間四十九年度の予算編成時期も控えて、四十八年の一月にひとまず中間答申ということで四十八年度と四十九年度の造船計画を立てたという経緯であったと思います。  そこで、中間答申のままで現在に至っておるわけでございますけれども、その間、実は昨年の秋ごろから私どもは、新しく出ました経済社会基本計画に基づいて、たしか経済成長率は九・四%という数字が示されたと思いますけれども、それに基づいて新たな海運政策を打ち立てるべく計画をしておったのでございますが、昨年の秋以来の石油をめぐる経済変動の大きな流れがございましたので、現在海運造船合理化審議会で逐次御審議をいただきながら、実は国の経済計画が本格的に樹立されるということも期待しながら、現在海運造船合理化審議会海運政策の新たなあり方を御審議いただいておる段階でございます。
  11. 小此木彦三郎

    小此木委員 国の経済計画にフォローしようと思うと、動乱の中でいろいろな現象が起きてくる、そういうくっついてやらなければならないような方法しかやり方がないということになってしまうわけでございますけれども、しかし、われわれ自身も、何かもっと確固としたやり方がないものであるかということを研究するし、やはり当局においても当局なりの独自な考え方というものを今後進めていくべきではないかと私には考えられるような気がするのでありますけれども、それはまたこれからの問題といたしまして、次に、わが国国際海運に従事し得る船舶建造能力について、先ほど局長から、一口に、現代日本造船技術が、量的な問題だけのとらえ方ではまずいんだ、高度化あるいは多様化した中でもって質的なとらえ方もしていかなければいけないということがあったわけでありますけれども、それでは、質的なとらえ方をしていく上において、その対応策として船舶建造技術が、わが国の場合、諸外国と比べて遜色がないものであるのか、また、質的な船舶の種類としてはどういうものがあるのであるか、それをお答え願いたいのであります。
  12. 内田守

    内田政府委員 わが国造船技術につきましては、量的なことは当然でございますけれども、質的には、基本的には世界一流技術を持っております。ただ、船型が多様化してまいりますと、それぞれ船質によって特色というものも出てまいりますし、そういう意味におきまして、造船技術と申しましても非常にきめこまかい特色と申しますか、段階と申しますか、そういうようなものがあらわれてきているというのが現状でございます。     〔委員長退席佐藤(守)委員長代理着席〕 特に、最近の需要は非常に多様化してまいっておりますところへもってまいりまして、今度の電力・石油危機等に関連いたします、またあるいは、スエズ運河が開通するというような見通しから現在断定的には申し上げられませんけれども造船所に対する引き合い状況とか、そういう面から見ていろいろ船型が多様化しているという実情にございます。  例を申し上げますと、一つは、従来から多少生産実績がございますけれども、最近特にこれから目立ってまいります点は、いわゆるプロダクトキャリアでございます。これは先生承知のように、今後アラブとかインドネシア等開発途上国等石油精製基地を建設すると、従来原油で運んできたタンカー相当部分がナフサとかそういう石油製品を運ぶ船にかわってまいります。そうなりますと、たとえばプロダクトキャリアとは御承知のとおり腐食防止等タンクの内部を特殊塗装するというようなことになり、また板等特殊鋼を使ってむずかしい溶接等が必要になってくるというようなことになってまいります。そうしますと、船型的にはデッドウエートでわずか六万トンか七万トンぐらいのものでございますけれども、従来いわゆるその程度原油タンカーをつくっている中級以下の造船所が、現状においてはこれらの船を建造する技術的能力は必ずしも十分とは言えない面もあるわけでございます。  それから、あるいは先生承知のように、数年前から出ております高速コンテナ船につきましても、その船型工作等についていろいろ特殊な技術がございます。これにつきましても船型的にはそう大きくございません。三万トンとか四万トンのオーダーでございますが、これもいわゆる一流造船所と申しますか、そういうところに現在では建造技術というのはしぼられてくるのではないか。  それから、最近いろいろプロジェクトが巷間出ておりますいわゆるLNGでございますが、これにつきましても、御承知のように、マイナス百六十度の液化天然ガスを運んでくるわけでございまして、特殊なタンクを内蔵する船でございます。これにつきましては、現在日本ではいわゆる大手の数社が一応建造能力があるわけでございますけれども、今後のLNG需要という面から考えますと、それ以外の造船所技術能力、そういうようなものを一方で指導しつつ、同時に、さしあたりいま申し上げましたような船が出てまいりますと、おのずから建造調整というのは非常にきびしくなってくるというふうに考えているわけでございます。
  13. 小此木彦三郎

    小此木委員 いまのお話しのLNGというのは、むしろ時間がないからそっちは抜かしまして、プロダクトキャリアのほうですが、その引き合いがかなりきているということですが、その状況あるいは将来どのくらい量的に伸びるということになるわけですか。将来の見通しも聞いておきたいと思います。  それから、ついで原子力船ですね、原子力船国産化というものは可能なのであるかどうか。それから原子力船の、金のほうの面で、予算の面で、ウランというものは、たとえば一万トンの船に対して一体どのくらいのものが必要であるか。要するに、一万トンの船に対して何トンぐらいのウランが必要であるか。それからウランそのもの輸入価格というものはどのくらいであるのか。さらに、そのウラン石油と同じように価格流動性があるのかということも聞いておきたいと思います。  要するに、石油資源を含めて資源の問題が、今後波状的にさまざまな形で資源の少ないわが国のど首を締めつけてくるということは容易に想像できるわけでありますから、そのとき原子力船というものはどうしても必要なんだという考え方はだれしも同意を持つと思うのです。だから私は、この際、その原子力船のことについて説明をしていただきたいと思うわけであります。
  14. 内田守

    内田政府委員 最初お話のございましたプロダクトキャリアでございますが、現在までに建造ないしは建造されつつあります船は全部で四十四隻という状況にございます。  今後の見通しでございますけれども、先ほど申し上げましたように、いま非常にそういう経済変動の中で引き合い状況は、数年先の特に開発途上国における石油精製工場というものに対する先物の引き合いと申しますか、そういう状況でございますので、数値的にどのくらいふえるだろうかというようなことは、ここでちょっと私自身も断言できるような状況ではございませんけれども、少なくともいま申し上げました数字から、各社の状況は飛躍的に引き合い状況が多いというような状況でございます。  それから原子力船についてでございますが、御承知のように原子力船の第一船の「むつ」は、いま青森の陸奥湾に定係しておるわけでございますが、これは目的からいって実験船ということで、ある程度経済的な問題を別にいたしまして建造されつつあるという状況でございます。第二船につきましては、現在のところは、一番新しいものといたしましては、昭和四十七年の六月に原子力委員会原子力開発利用長期計画というものが決定されまして、それにのっとって原子力船を含む原子力開発計画というのが進められているわけでございます。その中におきまして、原子力船の第二船以降につきましては、確たる、たとえば何年にどういう建造計画を立ててどうするというようなところまでは、当時きめられておりませんけれども、特に舶用原子炉中心とする開発促進必要性、あるいはそれに対する手法等を、その計画に述べられておるわけでございます。  現在の研究状況を申しますと、国といたしましては、われわれのほうの船舶技術研究所のほうで、いろいろそういう今後の原子炉開発についての研究と、それから科学技術庁研究補助金日本造船研究協会でそういう研究が行なわれている。また、民間におきましても、それぞれの企業において研究が続けられているという状況でございまして、経済的にいろいろ今後問題があろうかと思いますけれども、現在までの状況から見て、国産原子力船開発というのは、時間はかかるかもしれませんけれど一、技術的には十分可能であるというふうに考えております。  それから、ウラン価格でございますが、「むつ」の例で申しますと、たしか二・七七トン買い入れまして購入費は、直接それから加工費その他を入れまして約七億円でございます。  それからなお、実際に原子力船建造船価とか、それから初期の価格等は、いま申しましたように通常の船よりもちろん価格が高いわけでございますけれども石油価格が今後上昇すれば、平常的な燃料費そのものを比較いたしますと、原子力船経済性と申しますか、そういう時期は相当当初よりも早まってくるんではないかというような見通しを持っておるわけでございます。
  15. 小此木彦三郎

    小此木委員 では、ちょっとここで科学技術庁の方に聞きたいのですけれども、御承知のとおり、原子力船定係港が、当初横浜に置かれる計画があったわけであります。ここでいろいろな経過をたどって青森県のむつ市に移ってしまったわけでありますけれども、言うまでもなく、原子力船の問題は、その危険性と申しますか、原子力船放射能海水汚染ということになるわけであろうかと思うのです。  そこで、私はよくわかるように説明してほしいのでありますけれども一体原子力船放射能というものは人体にどんな危険を与えるのか、しろうとによくわかるように説明してもらいたい。と同時に、ついでですけれども一体原子力船放射能による海水汚染と中国やソ連などの水爆実験による死の灰と異質なものでありましょうけれども、しかし、しろうと考えでは同じような意味での危険性というものが常に感じられるわけです。だから、その被害度というものはどちらが大きいのであるか、これをはっきりと説明してもらいたいのです。
  16. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま先生の御質問でございますが、まず最初の点の原子力船、特に平和利用原子力船がどの程度放射能危険性を持つかということにつきましては、まず二つの観点から申し上げますと、大きな事故が起こる可能性があるかどうか、これにつきましては、設計段階で十分に国といたしましてその安全性を審査いたしまして、起こり得る最大の事故を想定いたしまして、それでも大きな放射能の流出がないということを確認いたしまして初めて国として原子炉設置の許可をいたすわけでございます。さらに、建造途中におきます検査あるいは運航上の保守保安、その点につきましても厳重な国の規制がございますので、そういう意味で大きな事故は起こり得ないし、万一起こっても影響を与えないようにできております。  いま一つは、そういう大きい事故がなくても、平常運転で多少でも放射能が漏れてくるのではなかろうか、こういう御心配があると思います。その点につきましては、原子力船設計をいたします場合に、そういう放射能が外に漏れないような設計にいたしております。したがいまして、航行中にそういう放射性物質原子力船から漏れてくるということはまずないようになっております。ただし、運航しておりますと、放射性物質原子炉の中にもちろんたまってまいりますし、多少系統の中で蓄積するものがございます。そういうものは適当な期間を置きまして港においてそれを取り出しまして、十分な監視のもとにその処理をいたす、それで放射性物質を完全に処理をいたしまして、周辺環境に絶対影響を与えない、こういうやり方になっております。したがいまして、一言で申しますと、原子力船が運航いたしましても、放射能汚染によって環境がよごれるということは、常識的な意味でいってないと御理解いただいてよろしいかと思います。  次に、ないと言うけれども、多少は漏れるかもしれぬという前提での御質問かと思いますが、原子力船が将来航行する場合の、それも先生の御質問は、相当多数の原子力船が航行する場合という前提でかと思いますが、それによる海水汚染水爆実験によります放射性降下物の汚染を比べますと、放射性降下物は、これはもう量的に非常にばく大な量でございまして、それが長い年月をかけて地球上に落ちてくるということでございまして、それに比べますと、原子力船によります海洋汚染は、全体の量から申しましても、全く比べものにならないほど微々たるものでございますし、また、局地的な汚染といたしましても、放射性降下物による降下より大きいとは考えられない、こういうことでございます。
  17. 小此木彦三郎

    小此木委員 この問題は、もっと具体的な例をあげて突っ込んだ質問をしたいのでありますけれども、残念ですが、時間がありませんので、ここで打ち切ります。  そこで、先ほどの「我が国国際海運の健全な発展」ということば解釈に戻りまして、私は海上運賃と物価との関連ということで聞きたいことがあるのであります。これは運輸省経済企画庁両方に聞きたいのでありますけれども、由来日本海運業界というものは、他の業界に比して比べものにならないほどの財政資金その他によるところの国の手厚い保護を受けてきたのであります。もちろん、それはそれなりの理由もあり、必要性もあったわけであります。また一方、港のあらゆる業界の中で、船社は常に優位を保ち続けてきたわけです。こういう見地に立つと、伝統的に優先して国の保護を受けてきた、あるいは歴史的に船社優先の地位を保ち続けてきた海運業界が、いま国の最優先の課題である物価政策に協力しないという道理はないと私は思うのです。運賃は国際市況に左右されるからしかたがないのだという議論もございましょうし、あるいは協定できめられるものにとやこう言うのは非常識じゃないかという考え方もございましょうし、あるいは海運業界というものがすべて常に好況であったわけではないのだからしかたがないというような議論もあると思うのですけれども、しかし、そんなことはどんな業界に関しても言えることだと思うのです。問題は、海運運賃というものが輸入される物資価格の中にどのくらいのウエートを占めているか、それをどのように運輸省あるいは経済企画庁が認識しておられるかということを私は聞きたいのです。  時間がありませんから、具体的な一つの例を出しますと、たとえば木材、それもラワン材、つまりベニヤ板に向くような良質なラワン材に限って言いますと、フィリピンのミンダナオ島のダバオ積みの場合に、日本木材輸入協会南洋材部会と南洋材輸送協定との協定価格運賃は、たとえば四十七年五月から九月まで七ドル四十五セントであった、これは立米当たりであります。十月から四十八年の九月まで七ドル五十五セントであった。さらに十月から四十九年三月までが十一ドル二十セントであるわけであります。もちろんこれは基本的な運賃でありまして、積み地が多くなったり揚げ地が多くなったりすればよけいなものが取られますし、ボーナス運賃というようなものもある。さらに、バンカーサーチャージ、つまり油が上がるたびにそれが付帯料金として加算される、しかもこれは毎月毎月変更される、また協定以外のスポット買いの場合はもっと料金が上がる、そういうところにやみ運賃というものも横行する。経済企画庁は、この種のラワン材の運賃というものが原木の何%くらいに当たるか考えてみたことがあるか、お聞きしたい。  さらに、時間がないからついでに申し上げます。大体、これは運輸委員会の中での問題としてはちょっと的はずれかもれませんけれども、ラワン材の産出国と日本の商社と、それから石油産出国とメジャーズとはちょうど同じような関係じゃないかというような気がしてならないのであります。ちょうど同じような関係を持っておると思うのでありますけれども、いまかりに四十九年の一月か二月くらいにいま申し上げたフィリピンのミンダナオ島のダバオからラワンの上質なベニヤ板を買った。ちょっとメモをとってお聞き願いたいのでありますけれども、たとえばそこで立米当たり良質なものがFOBでもって七十ドルくらいした。運賃が、いろいろなものが加算されて、三百円の固定レートで十七ドルから二十ドル、一番低い運賃をとって八十七ドルということになるわけです。そうすると、この八十七ドルに三百円をかけますと二万六千百円という答えが出てくる。日本のメインポートにおけるいろいろなチャージが五%かかるとすれば、その五%をプラスしたものが二万七千四百円ということになる。これを石に換算するには三・六で割ればいいわけでありますから、七千六百九十円ということになるわけです。これにさらにステベ料金その他を加えると、石八千円という答えになってくるわけです。そうすると、運賃はどういうことになるか。運賃は十七ドルでございますから、それに三百円かけると五千百円。それは立米当たりの運賃でございますから、さらにそれを三・六で割りますと千四百二十円という数字が出てくる。石当たりの運賃であります。ですから、石八千円の原木の中の約二〇%というものが運賃ということになるわけです。原木が七十ドルと申しますけれども、原木の値段が安くなれば安くなるほど、この運賃の比率というものは高まってくることはあたりまえの話であります。この運賃の比率というものは、一般の物資の輸送に比べてどちらがパーセンテージが高いか。いろいろ聞きましたけれども、この問題のお答えを願います。
  18. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生御指摘のように、具体的例で、木材の運賃については私どもも実は先生から御指摘をいただいて勉強してみました。かなり高くなっていることはもうすでに先生お説のとおりでございます。私ども輸入額全体に占める海上運賃の割合というものを実は四十八年で調べてみましたら、暫定の数字でございますけれども船舶による輸入額が三百四十六億五千八百万ドルで、船舶運賃の収入が四十九億七千万ドルで、比率は一四・三%という数字でございます。  それからもう一つ、実はこれはちょっと古いので恐縮ですけれども、四十六年に原油輸入していましたときに運賃のコストがどれくらいのウエートを占めておったかということでございますが、いまの数字で申しますと、原油の値段がもう変わってしまって、ちょっと申し上げるのが非常に変な感じでございますけれども原油の平均単価がトン当たり十五・八ドル、それに対して平均運賃がトン当たり三ドル三十一、したがって二〇・九%という数字でございます。木材につきまして、先ほど先生からも御指摘いただきました。私もメモをいたしましたが、かなり高い比率を占めているというのはそのとおりでございます。  ただ、私どももほんとうに安定した輸入というものをはかりながら、もちろんその中には安定した低位の運賃ということも考えておるのは当然でございまして、計画造船で運んでおります油などは、国際水準のスポットと違いまして非常に安く運んでいる。これは我田引水で恐縮なんでございますけれども、幸いにして石油危機のときにも船舶の不足というものはあまりなかった。また、国際運賃に対して、日本船の長期積み荷保証のある低レートの運賃が、国際的な油の輸送運賃に対して抑止的な効果をあげたということは考えられるのでございますが、木材の場合は、先生御指摘のように、実際に高いということはそのとおりだと思います。
  19. 有松晃

    ○有松政府委員 ただいま運賃と物価、特に木材についての海上運賃影響がどの程度あるかというお尋ねかと思います。実は海上輸送運賃、はなはだ申しわけないのですが、これは自主運賃でございますので、データを企画庁としては持っておりませんが、先ほど運輸省局長からお答えがありましたような実態ではなかろうかというふうに承知をしております。特に、最近船舶関係の需給の逼迫というようなことから海上運賃が高騰したということは事実のようでございますけれども、その後の経済動向の推移と申しますか、現在では需給が若干また緩和に向かいつつあるというふうにも承知しております。いずれにいたしましても、木材その他の物資の輸送における運賃のコストというものは、低減をはかっていくという方向で諸般の政策を講じていく必要があろうというふうに感じておる次第でございます。
  20. 小此木彦三郎

    小此木委員 これは答弁は要りませんが、参考のために聞いておいていただきたいのです。  要するに、海上運賃をどうこうするということは非常にむずかしい問題であることは言うまでもないのでありますけれども、しかし、たとえば、先ほど私が言ったように、FOB七十ドルの原木をフィリピンから持ってくる、そしていろいろなチャージを加えて八千円のうちの二割近くのものが海上運賃で占められている。では国内輸送のトラックがどのくらいの運賃であるかというと、たとえば東京から清水まで、百キロから百五十キロ圏、それが十トン車のトラックで大体三万八千円から四万二千円くらいするわけです。ということは、一トン平均して四千円くらいだ。ということは、石千円になるわけでありますから、石八千円の原木とすればこれが大体一二、三%くらいの計算になるわけです。海上運賃のほうが高い安いの議論をそこだけでもって論じるということは、単純な算術計算からすればそういう結果になるだけのことでもって、一がいにだからどうしろこうしろということでは済まない問題でございますけれども、これは参考のために経済企画庁は聞いておいていただきたい。  と同時に、いま一つ海運の問題に戻りまして、商社が物を買い占めていた時期というのはこれは確かにあったわけです。ところが、物を買い占めると同時に船そのものも、買い占めというとことばはおかしいのでありますけれども、船そのものをひとり占めしちゃって、ほかの中小業者に回さなかった。船そのものを独占してしまって、木材輸送をひとり続けていた。こういうことから私はやみ運賃というようなものが横行してきたのじゃないかと思うのです。と同時に、これは協定なんだということになればそれまでの話でございますけれども、三百円の固定レートでもってやっている場合と、TTBすなわち電信買い相場というものがありまして、これがたとえばTTBが二百九十円だ、固定レートが三百円で十円の差があるというと、この十円の差をいいほうにつけて、要するに船社が得なような形でもって金を取った時期もある。これは協定でもってそうなっているんだからしかたがないのかどうか、そこらあたりをひとつ説明していただきたい。と同時に、先ほど私は、港の中で船社優先だというようなことを盛んに言いましたけれども、近ごろリテンションチャージというものを海運会社が盛んに取っているのであります。そういうリテンションチャージというようなやり方というものは従来あったのかどうか、また、これはそういうような契約上当然あり得るものなんだ、やるのが当然なんだ、そこらあたりをひとつ説明してほしいのであります。
  21. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 たいへん申しわけないのですけれども、私ども実はそういった商取引の実態というのをちょっと研究不十分なので、先生からいま御指摘ございました点は、もうちょっと勉強さしていただきたいと思います。
  22. 小此木彦三郎

    小此木委員 要するに、私がこういうことを言うのは、何回も言うとおり、国の最優先的な過保護を受けながら、船社が横暴である、港の中でも。要するに、リテンションチャージというのはこういうことらしいのです。たとえば一種のデマレージと考えればいいと思うのですけれども運賃トラブルか何かでもって、滞船日数が延びた、それが船側の都合でもって延びたならばそれでいいんだけれども船社側の都合でもってトラブルが起きて滞船した場合にも、リテンションチャージというものを取って、いわゆる港運いじめをする、そういうような形というようなものが許されていいかということをあえて私は申し上げたいのです。  時間、時間ということなので、この問題はこれで打ち切りますけれども、いま一つだけ聞きたいことがあるのです。  それは日中海運協定のことでありますけれども、これはごく簡単にお答え願えればけっこうでありますが、ことしの二月十一日の日本経済新聞の報道によりますと「政府は近く中国政府に対し、日中海運協定の締結のための本格的な交渉を開始するよう申し入れる方針である。」とのことであったわけであります。その後この問題の経過はどういうふうになっているのか。ということは、日中海運協定の締結を促進しろとかなんとか私はここで言っているわけじゃない。要するに、大阪港や横浜港にはもう優先埠頭もできている。一部の海運会社においては、コンテナ船を往来させようかというような計画もある。現実に、十五年も前から船も貨物も往来している。現場がこんなに進んでいるのに、それに対応する当局の姿勢というものがいまのままでいいのかどうか、最恵国待遇とかその他いろいろな条約の問題もありましょうけれども、そういうものを締結しようとしまいと、ほんとうは同じなんだということになれば、何もじたばたしなくてもいいわけでありますけれども、しかし現場がそのように進んでいる現状を見過ごしていていいのか、これをひとつ政務次官からお答え願いたいのであります。
  23. 増岡博之

    増岡政府委員 御承知のように、日中国交回復のときに、まず航空協定をやろうという話し合いがあったようでございまして、それが目下進行いたしておるわけでございまして、その間海運協定のことについて全く頭の中で考えていないということではございませんで、むしろ航空協定に次いで、時間を置かないで解決ができる問題であり、また先生御指摘のとおりの状態でございますから、解決をしなければならない問題であるというふうに考えております。海運局のほうでもそのような配慮をしておるところでございます。
  24. 小此木彦三郎

    小此木委員 質問を終わります。
  25. 佐藤守良

    佐藤(守)委員長代理 斉藤正男君。
  26. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 私は、今回提案をされました臨時船舶建造調整法の一部改正についてお尋ねをするわけですけれども、今回の提案の目的あるいけねらいについてでありますが、本法の目的は法文に示されているとおりでございまして、「臨時に船舶建造についての調整を行い、もってわが国国際海運の健全な発展に資することを目的とする。」ということになっておりますから、船舶建造について調整をしてわが国海運の全きを期す、こういうことは明らかなわけでございまして、お尋ねするのもやぼでございますけれども、私があえてねらいは何かということで聞きたいのは、昭和二十五年五月一日法律百二十九号で制定をされている造船法という法律があるわけであります。よく調べたわけではありませんけれども、この造船法では、この船舶建造についてのチェックができないんだと、したがって昭和二十八年八月一日に法律第百四十九号で臨調法がつくられた、こういうように、一通りの法案の流れからいくと見ることもできると思うのだが、いや、その前に臨調法にかわるような法律がなかったわけではない。これに類する法律があって、造船法というのは実は船をつくる造船所、すなわちドックなり船台中心に規制をした法律であって、船舶建造そのものについてはこれでは調整できないんだということからこの臨調法が生まれてきて今日に至ったということであろうかとも思うのですけれども、しかし、これは時限立法であって、あくまでも臨時の法律だということになっておりますので、今回のこの改正案の提案がねらっている、そのほんとうにねらっているものは何かということについて、まずお答えをいただきたいと思うわけです。
  27. 内田守

    内田政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、われわれの関係いたします法律造船法というのがございます。これは、先生が御指摘されましたように、造船施設の許可関係のことでございますが、御承知のように造船というのは注文生産で、先ほどもちょっと申し上げましたように、船型その他が多種多様でございまして、いま御提案申し上げておりますように、船舶建造調整という面は造船法では処理しがたいということでございます。で、この建造調整のねらいということでございますが、先ほども申し上げましたように、特に最近輸出船の受注が非常に先物まで出てき、かつ船型が多種多様になっているときに、質、量ともに日本船舶建造を確保するということがこの建造調整法でなければなかなかできないということで、ねらいというのはまさにいま申しましたことに尽きるかと思います。
  28. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そういう趣旨であろうと思うわけでありますけれども、「この法律は、昭和三十二年三月三十一日限り効力を失うこととして、商船隊の再建が一応目標に到達すると考えられる時期である四年間の臨時立法とすること。」ということですね。先ほど申し上げましたように、最初は四年間の期限で立法されたことは間違いがない。しかも、その理由として、「商船隊の再建が一応目標に到達すると考えられる時期である四年間の臨時立法とすること。」こういうことになっていたにもかかわらず、第一次の改正が、昭和三十一年第二十四国会で行なわれ、第二次の改正昭和三十五年第三十四国会で行なわれ、第三次改正昭和三十九年第四十六国会で行なわれ、さらに第四次の改正昭和四十三年第五十八国会で行なわれ、つい最近では、おととし、昭和四十七年第七十回国会で行なわれ、そのときには内容について、船の大きさ等について若干の修正が行なわれておりますけれども、いずれにいたしましても、この二年以上数年間の延長ということで、今回の改正を含めると六次の改正になるわけでありますね。立法当時、四年たてばわが国商船隊の再建は終わるだろうという見込みで、臨時立法、時限立法にしたのだけれども、その後五回の改正が行なわれ、今回が六回目だなんということは、私はちょっとわからないわけでありますけれども、そういう改正を行なって、しかも今回は時限立法のような時限立法でないような、あやふやな表現になっているわけですね。いままでの立法では、期限を切っていついつまでということになっておりましたけれども、今回はそうじゃない。一体、どうしてこういうことになったのか。すなわち、この法律は、船舶建造調整を行なわなくとも、わが国国際海運の健全な発展支障を生じなくなったときに廃止するものとする、これはいつのことやらさっぱり見当がつかぬです。判断は運輸省がやるんだと思いますけれども、これでもなお臨時立法だといえるのかどうなのか、私にはちょっとわからぬですけれども、いかがなものですか。
  29. 内田守

    内田政府委員 本法の制定当初は、確かに先生おっしゃいますように、戦争の壊滅的な打撃から商船隊を興させるという目的で、四年間の時限立法として制定されたものでございます。しかしながら、第一次の改正前後から、先生承知のとおり、それまでは主として国内船と申しますか、日本船舶建造という当時の造船状況造船所の事情という面からのみ着目すればよかったわけでございますけれども、いま申しました第一次改正の前後から、日本輸出船と申しますか、外国船の建造が飛躍的に増大したわけでございます。その意味におきまして、日本海運の健全な発達という目的からの建造調整が、内外合わせた造船視野の中でとらえていく必要があるということになってきたわけでございます。  それから、その後の状況で数回延長をお願いしておったわけでございますけれども、これは御提出しております資料にも書いてございますように、商船隊の整備計画を勘案しつつ、そのつど四年ごとに見直しするというたてまえで、その後の延長につきましては、たとえば四年間で日本海運整備されるという目標ではなくて、むしろそのつど見直して、必要であるか必要でないか判断しつつ今日に至っているわけでございます。  今回特にそういう時限を明記しなかった理由でございますけれども、少なくとも、先ほど来御説明申し上げておりますように、建造調整が相当期間続くであろうという予想に加えまして、先ほども御説明しましたように、石油、電力危機を契機といたしまして、これからの非常に変動する経済情勢について、質、量ともにその見直しの時期を確定的にいま明示するということが非常に困難であるということによるものでございます。  なお、附則の書き方そのものにつきましてあいまいだという御指摘がございましたけれども、時限の法律といたしまして思想的にむしろ当分の間という考え方を、ここに附則に書いてございますように、三つの事項を勘案いたしまして、先ほど申しました日本海運整備等を勘案いたしまして、もはや建造調整を行なわなくても支障がないという事項としての限定がついているということでございまして、この法律の思想はあくまでも臨時的な法律でございます。
  30. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 わかったようなわからないような説明ですが、少なくともいままで五回改正が行なわれてきているわけでございますけれども、それぞれの改正が、有効期限を何年延ばすという以外は、前回の改正で船の大きさについて修正を加えただけであって、いずれにしても期限の延長で終始してきていると思うんですよ。第一回の改正からちょっと内容を説明してくれませんか。
  31. 内田守

    内田政府委員 法律の制定当初の趣旨は、先ほど申し上げましたとおりでございます。  それから第一次改正の直接の考え方は、先ほど申し上げましたように、その当時より輸出船が飛躍的に増大したということで、なお建造調整を必要とするということでございます。第二次あるいは第三次、第四次につきましては、そこに御提出しました資料等にございますように、たとえば第二次あるいは第三次でわが国の商船隊が整備されることが達成できるということではなくて、その時点時点においてなお四年程度は必要であるということから四年延長したということであります。
  32. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 資料をいただいておりますのでよくわかるのですけれども、第一次が三十六年三月三十一日までですから、三十二年三月三十一日限りということで制定されたものが三十六年になったのですから、これは四年ですね。それから第二次が四十年三月三十一日まで延長するというのですから、これは四年、それから第三次はやはり四十四年三月三十一日で四年、四次が四十八年ですからこれも四年、五次がどういうわけかこれ五十年三月三十一日までで二年、必ずしも四年周期じゃないわけです。そうして、今度必要なくなったときまでは存続するということで、今度は二年でもなければ四年でもないということですね。考えようによっては永久立法だとも考えられる。考えようによっては、もういいから四年たたなくてもやめるんだということにもなると思う。一体運輸省は、この当分の間いつごろまでを考えているのですか。それは計画経済でもなければ統制経済でもないので成り行きまかせだ、やってみなければわからない、それまでは続けるんだ、こういうことなのか、あるいは一応のめどは立てておられるのか、その辺はいかがでございますか。
  33. 内田守

    内田政府委員 成り行きまかせというと非常にあれなんでございますけれども、こういう経済的に非常に変動している状況でございますし、少なくとも五、六年はかかるということは言えるのでございますけれども、何年までというような時期がいまの段階で確定できないということから、逆に申しますと御提案しましたような形になったわけでございます。
  34. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そうすると、この造船なりあるいは船舶建造の実態というのは、法律で規制をしなければ、外国船によって船台が占有されてしまって、国内船建造というものは二の次に回されてしまう、そういう実態であったし、今後もそういう状態は続くと判断をされてのこと以外に理由が考えられないわけであります。それほど外国建造の発注が多いのか、そしてまた、造船界外国船に飛びつくように注文を受け、国内船については冷たい態度で臨んでいるのかという反問もしたくなるわけであります。その辺は造船工業界なり造船産業の経営者なりの考え方というのは一体どうなっているのでありましょうか。
  35. 内田守

    内田政府委員 御承知のように、現在日本造船業界というのは、決してみずから世界のシェアを広げていくというようなことではなくて、まず基本的に、日本造船界というのは、御承知のように、ある意味では世界船腹供給国と申しますか、造船の面での役割りを一方で果たしているわけでございます。決して日本船をどうこうというのではなくて、基本的には日本造船界日本船舶を優先的にものを考えるという考え方はあるわけでございますけれども、現実の問題といたしまして、先ほど来申し上げておりますように、海外船主の体力と申しますか、先物と申しますか、三年あるいは四年等相当先物を注文してきている現状でございます。一方、日本の場合には、一年ないし二年先というような状況にございまして、これは造船所の心がまえとかそういう問題を通り越しまして、残念ながらそういう現状にある。したがいまして、そういう状況が、もちろん別に質的な問題もございますけれども、続くようなことがむしろ早く解消するのが当然でございますし、また、同じ土俵で、そういう建造調整を行なわなくても、希望する時期に希望する質の船を建造し得るというのが当然通常の状態でございますし、その間はやはりこういう建造調整法によって調整せざるを得ないのが実情でございます。
  36. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 世界造船シェアの五〇%を担当しているわが国造船工業が、なぜそういう結果になってきたのか。もちろん優秀な造船技術を持っている、あるいは大小くまなく造船能力整備している、いろいろあると思うのですけれども、もし世界造船能力の五〇%をわが国造船界がシェアとして持っているということになるとするならば、国内船建造について調整しなくてもいけるというような時代は永久に来ないのじゃないかと思うのですよ。また、世界に占めるわが国造船界のシェアがどんどんどんどん低下していくということになりますと、これはまた造船産業そのものに対して一つの見方を持たなければならないとも思うのです。技術が優秀だ、それからさまざまな態様の船をつくる能力も持っているという以外に、わが国造船界の最大の特色として単価が安い、船が安くできるということもあると思うのです。こともあるというよりも、それが最大の魅力で外国船の注文が殺到し、船台の先物買いが行なわれているんじゃないかというように思わざるを得ないんですけれども、どうして外国船主がこれほど日本造船産業に注文をよこすのか、その理由を数点あげてみてください。
  37. 内田守

    内田政府委員 かつてはある時期には船価が安いということももちろんございました。しかしながら、やはり一番の理由は、一つ技術力の優秀さであるということが一つと、それからもう一つは、従来から日本造船界は納期について確実にこれを順守して、契約どおりの時期にそれを渡していたということがむしろ大きい理由だと思います。それから、いま先生御指摘になりました船価の問題につきましては、特に最近に至りましては、今度の石油、電力の問題は別にいたしましても、そういう面からのみの国際競争力というものは相当接近して、それが大きな武器になるというようなことには現状ではなっていないということでございます。
  38. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 どうもそういうことになってくると、わが国造船産業に外国船主の発注が殺到してくる理由というのがあまり明白でなくなってくる。私は、きょうはそういう問題に触れませんけれども、いずれ機会を得て触れていかなければならぬ多くの課題を造船産業は持っていると思っておりますから、いずれ機会を改めてお尋ねをいたしたいと思います。  それでは、具体的に船舶建造について調整を行なってきた事実、それは数字の上でこれだけ外国船の発注がある、国内船の発注がこうだ、したがって、これは調整をしないと国内船建造に重大な支障があるというようなことが続いてきたと思うのですね。こう毎回毎回、六次にわたって改正をしてきた根拠として、具体的にその調整必要性あるいは調整の例をあげていただきたいと思います。
  39. 内田守

    内田政府委員 法律的に造船所建造申請をして、それまで何らの指導もなくて不許可にするというような事例はございません。当然事前に計画を立て、こういう工期にこういう船をこの船台を使用するというような計画に対しましていろいろ指導してまいっておるわけでございます。  そこで、具体的にというお話でございますが、これは建造許可ごとにしょっちゅう例がございまして、たとえば輸出船あるいは一定の大きさのタンカーを線表、工期等を提出して、こういうことを受注したい、あるいは受注して許可を得たいというような場合に、たとえば計画造船等に予定ないしはそういう余地のある船台については、工期の繰り下げとか、あるいは船台の前というとおかしいのでございますけれども、そういう輸出船建造等に際しまして具体的に指導しているというのが実情でございます。
  40. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 抽象的にはわかるのですよ、しかし、具体的にこの法律が生きて作用し、外国船の発注によって船台が満ぱいであったのへ、どうしても計画造船なり、あるいはそうでなくても国内船の発注を割り込まさなければならぬというようなことで調整できた例があるのかどうなのか。法律があるから造船会社のほうで国内船の発注を船台をあけて待っている、そういう余裕はいまの造船界には私はないと思うのですね。そういう余裕はないと思う。したがって、法律が作用し、法律が働いてこのような船舶建造調整が現実に行なわれたという例があるのかどうなのか。局長がわからなければ課長でもけっこうであります。それでないと、何かしら割り切れない。法律の効果、作用といったものが私には理解できないのであります。なるほど外国船主の発注が多いことは理解をしています。それで船台が占有されてしまって、国内船の割り込む余裕がないというような事例があったのかどうなのか。
  41. 内田守

    内田政府委員 先ほど申し上げておりますように、この臨調法を一〇〇%適用して不許可にするというような事例はもちろんございません。ただ、こういう臨調法というものが存在することによりまして、各造船所とも事前に国内船建造というものはわかっておるわけでございますし、矛ういう意味で、先ほど来申し上げておりますように、外国船の受注ないしは受注後等に対して、わがほうに対してそういう計画等申し出があるわけでございますけれども、そういうときに、いま申しましたように、線表、工期等を勘案して幾つかの指導をしたという例はございます。  ただ、何丸がどういう場合にどうしたかということになりますと、具体的に、いま申しましたように、指導でございますので、申請書を出してどうこうしたという事例ではございませんので、いまちょっとどういう船がどういうことであったということは言えないと思います。  それから、もう一つは、そういう量的な問題と質的な問題がございます。たとえば、御承知のように大手の造船所で従来にない巨大なタンカー建造するというような場合にも、この臨調法を前提にいたしましてその船質等を調整検討した例もございます。  それからまた、具体的に、遺憾なことではありましたけれども、手抜き工事という事例が日本造船界にあったわけでございます。そういう場合にも品質管理等を調査し、十分技術的に自信があるまでこの臨時船舶建造法による許可を一時的に保留したという例もあるわけでございます。
  42. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 どうも少し、やはり法律があるから船主もこの法律を考え、船の建造の発注をする、発注を受けた造船界も、この法律があるので受注の調整をみずからもやって、法の違反にならないように、法律があることだけでたいへんな調整役割りを果たしているというようにも受け取れるし、また反面、どうもその程度のことなら何も臨調法までつくって調整する必要もないんじゃないかといようにも思われるわけです。  そこで私は、四十七年の国内船建造実績あるいは許可実績等について、国内、国外に分けて、四十七年の実績というものはもう出ているはずでございますから、お答えをいただきたいと思うわけです。
  43. 内田守

    内田政府委員 昭和四十七年度の建造実績を申しますと、これは進水ベースで申しますと、国内船は九百四十八隻、五百三十三万二千総トンでございます。それから輸出船は二百八十五隻、八百七十五万七千総トンでございます。合計で千二百三十三隻、千四百八万九千トンでございます。  それから、この法律によりますその年度における許可実績は、国内船は百八十三隻、三百六十八万五千総トン、輸出船は三百四十一隻、千七百七十八万四千総トン、合計で五百二十四隻、二千百四十六万九千総トンでございます。
  44. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そうすると、申請隻数、国内船並びに輸出船、それから実際に許可した国内船、国外船の隻数並びに総トン数、かなりの開きがあるということは、数字の上から明らかであります。これらのものは、たとえばその申請されたうち、積み残しができる、これは翌年度に回っていくのか、あきらめていくのか、それほどういうことなんですか。
  45. 内田守

    内田政府委員 先ほど申し上げましたように、国内船の場合には、この百八十三隻というのは竣工ないしは進水は、その年度ないしは次の年度に若干なだれ込むということになろうかと思います。それから許可実績の輸出船のほうでございますが、これは先ほど申し上げましたように、ほとんど納期としては三年先あるいは四年先のものということになりますので、建造実績と許可実績との中は必ずしも一致していないということでございます。
  46. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 いずれにしても、船台は一ぱいであり、ほうっておけば国内船の割り込む余地がない、こういうように解釈していいのですか。
  47. 内田守

    内田政府委員 一般的にいえばそういうことになると思います。
  48. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 その理由は一体どこにあるのでしょうか。要するに、造船会社が外国船の注文を受けて、ほうっておけば注文どおりの建造をしてしまう、国内船主も注文はするけれども、そのときにはすでに船台の先買いが行なわれておって、割り込む余地がない、こういうこと以外に率直に考えて理解する方法はないのですよ。したがって、法律によって調整をし、国内船について船台の確保をしなければならないのだ、簡単に言うとそういうことですか。
  49. 内田守

    内田政府委員 簡単に、質的な問題を除けばそういうことになろうかと思います。  ちょっと数字的なことも含めて申し上げますと、最近の輸出船というのは特に先物がふえてまいりまして、去年の九月末で日本造船界の主要な三十六工場の手持ち工事量等を調べますと、輸出船は九二%、つまり先物をとっておるということでございまして、その納期は四、五年先のものがほとんどでございます。その理由といたしましては、外国船主の発注が、非常に豊富な資金量にささえられ、かつ需要と申しますか、先物の対応の機敏さとかあるいは今後の船価等の物価の値上がりというような投機的な観点もあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういう需要の活発さとそれからもう一つわが国造船業という立場からも、今後のある程度の安定操業ということを考えた場合には、若干先物まで確保しておきたいという受注意欲というものも当然ございますので、いま先生の御指摘になっておられるような状況にあるというふうに考えております。
  50. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 わかるのです。わかるが、それだけ先物を持っている造船界の実態から、やはりこの法律調整指導をしていかなければ国内船建造は不可能になって、国内船建造は締め出されてしまう。したがって、必要最小限度の国内船建造を割り込ませるためにも、やはりこの法律が必要であって、こういう形のものに改正をして出したんだ、こう解釈をしてよろしいか。
  51. 内田守

    内田政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  52. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 次官にちょっとお尋ねしますけれども、こういう形のものであっても、今度の改正で五回改正をやってきましたけれども、何年何月何日まで改正をする改正をするといってやってきたのですね。今度初めて、いままでとは違った形のものになってきたのであります。もう一ぺん、くどいようですけれども申し上げますと、本法の有効期限が「昭和五十年三月三十一日」となっているのを「国際海運に従事し得る船舶建造の需給の動向及びその建造能力並びに我が国国際海運に必要な船舶整備状況に照らして、船舶建造についての調整を行わなくとも我が国国際海運の健全な発展支障を生じないと認められるに至ったときは、速やかに廃止するものとする。」ことに改めるということで、少なくも今度は時限立法ではない。次官、これでも時限立法の一つでございましょうか。それともそうではないということなのか。先ほども局長から答弁をいただいたわけですけれども、行き当たりばったり、成り行きにまかせるというわけではないけれども国際海運に従事し得る船舶建造需要動向及びわが国商船隊整備状況に照らして、船舶建造調整を行なわなくてもよくなったときには廃止するのだという表現でありますが、これは、私はしろうとでありますけれども、時限立法、臨時立法の法律の性格を一変させるものだというようにも思わざるを得ないのでありますが、法律の性格からいって、これでもやはり臨時立法なんでございましょうか、いかがですか。
  53. 増岡博之

    増岡政府委員 御指摘のとおり、たびたび延ばしてまいったわけでありますけれども、これは主としてわが国海運界育成のための計画造船のほうの年限が四年であり五年でありましたということにつながっておったのであろうと思います。そして、今回先生御指摘のようなことでございますけれども、現在の情勢を考えてみますと、いまにわかに計画造船を何年間ということを定めましてやるには、いかにも経済情勢が流動的であり過ぎるという情勢から、実は当分の間ということにいたしたかったわけでございますけれども、それではなお遠のくような感じがいたしますので、むしろこのように、こういう状態ができた場合、必要がなくなった場合とはっきり書きましたほうが、限定的なものの考え方に立っておるということではないかと思っておるわけでございまして、そういう意味で時限立法であると考えておるわけであります。
  54. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 多少押し問答になりますので、この質問はここで打ち切りますけれども、私はこの際、石油危機に伴ってわが国造船工業界もいろいろな問題をかかえてきたというように判断をするものであります。特に、造船工業会へ入っているような大手の造船工業はとにかくとして、中型造船工業会あるいは小型船舶工業会等々においては、いろいろな制約が特に加わってきていると思うのであります。そこで、当面して運輸省は、以下私が申し上げるような問題に対してどういう態度をとってきたか、これからとろうとしているか、ひとつ伺いたいと思うわけであります。全部申し上げてしまいますから、一々お答えを願いたいと思います。  その第一は、造船甲鋼材のメーカー渡し価格を当分凍結をして、中小零細造船に対する適正な価格による適切な供給を維持するため、共同購入などの諸対策と行政指導を講ずるべきだというように思うのですけれども、通産省に対し、あるいは業界に対し、運輸省が取り組んだ姿勢につきましては私も承知をいたしておりますけれども、どのようにお考えであるのか。  二番目は、造船関連工業に対する原材料の供給流通関係を点検、改善をして、舶用機器材の確保と価格の適正化対策を講ずるべきだと思いますけれども、これに対してどういう措置をとったか、あるいはとられようとしているか。  三番目に、中・小型輸出船の市場開拓を積極的に進め、政府は自治体の協力も得て、その保証による共同受注など必要な助成措置を講ずる時期が来ていると思うが、対策はどうであるか。  四番目に、大手企業との系列、下請関係をきびしく点検をし、近代化し、下請単価の適正化などを通じて中小企業へのしわ寄せを排除する行政指導につとめるべきだというように思いますが、考え方はいかがでありましょうか。  最後に、中小造船の企業基盤の強化と体質改善のため、生産設備の近代化、技術水準の向上、新製品需要研究開発などに対する適切な助成措置を講ずるとともに、事業の共同化、協業化など構造的な改善政策促進すべきだというように思いますけれども運輸省考え方はいかがでありましょうか。  五項目にわたってお答えをいただきたい。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 内田守

    内田政府委員 第一点の造船用の鋼材の問題でございますけれども、これは先生承知のように、大手造船業というのは鉄鋼メーカーと長期的な契約を結びまして、ある程度安定した価格で入手しておるわけでございますけれども、中小造船は間に二次とか三次の販売店等が入っておりまして、そういう場合が非常に多うございますので、値上がりとかそういうようなことに対しまして非常に敏感な状況にあるわけでございます。私どもといたしましては、昨年夏やはり鋼材の価格の高騰がありまして、一時は二倍近くの値上がりを見たわけでございますが、そのため中小造船業が大手と同じように、長期予約による購入とか、あるいは昨年と同じような鋼材のあっせん相談所等の利用ということが行なわれ、今回もそのような希望を出しておるわけでございます。私どもといたしましては、鋼材の価格そのものの凍結という問題につきまして、従来から通産省とも話し合っておるわけでございますけれども、今後とも政府全体の物価抑制策の一環として、通産省にこの鋼材の価格抑制ということを強く要望していく所存でございます。  それからもう一つは、現在、従来からわれわれがやっております中小造船対策といたしまして構造改善というのがございますが、その一環といたしまして、そういう鋼材を中心とします資材の共同購入の推進であるとか、あるいは地区にそれぞれ小型船舶工業会等がございますので、そこを窓口として一括購入をはかるというような指導を行なっておりますし、今後もそういう点を推進していきたいというふうに考えております。  それから、関連工業製品の問題でございますけれども、御承知のように造船関連工業につきましては、船価の四〇%ぐらいが造船関連工業でございまして、またそれが大部分が中小企業でございます。で、政府系の中小向けの金融機関としまして中小企業金融公庫あるいは商工組合中央金庫等がございますが、これらと日本開発銀行の設備資金あるいは運転資金の融資あっせんを行なって、従来から舶用機器の供給あるいは価格の安定をはかってきておるわけでございますけれども、特に最近の資材の価格の高騰、それから場合によっては入手困難というようなことが間々あるわけでございます。そういう面につきまして、特に主要材料につきましては、先ほどの鋼材と同じように、価格抑制あるいは入手確保について、所管の通産省等にお願いをしているという実情でございます。  なお、今後の問題でございますけれども、特に需給不足ぎみである一部の資材については、いわゆる海外から調達するということも考えていいのではないかということにつきまして検討しているという実情にございます。  それから第三点の中小造船業の輸出の問題でございますけれども、これは先生承知のように、基本的には、中小の船というのは、それぞれの仕向け国が自国で建造するというようなことがございまして、大きい船のように活発に入り込むというのは非常にむずかしい面もあるわけでございますけれども、いま先生御指摘のように、安定操業という面から見れば、やはりある程度輸出船というのは確保する必要がある。そういう意味で御承知日本中型造船工業会等を指導いたしまして、毎年東南アジアであるとか、あるいはアフリカ、中南米等に企業の代表等を編成いたしまして、海外の市場調査あるいはPR等をやっておるわけでございます。  なお、法制的なあるいは税制的な措置といたしましては、資本金十億以下の中小企業の海外市場開拓の助成措置といたしまして、租税特別措置法によりまして海外市場開拓準備金制度が認められております。この制度を今後とも活用させるようにしてまいりたいということでございます。  それから、いわゆる下請関係あるいは大手企業との系列の問題でございますが、特に最近中小造船業が船舶の大型化等によりまして、造船所自体あるいは船の構造が変化してまいっております。そういう意味で中小造船業といえども、大型船建造を目ざして施設の整備をはかりつつある実情でございます。その場合に、建造技術等については改善を要するような余地が非常にございますので、これにつきましては優秀な技術を持っておる大手造船所技術等の指導をさせるようにしておるわけでございます。  なお、造船業は、御承知のように二百数種の関連産業をかかえておる一つの総合産業でございますので、特に下請の問題が重要になるわけでございますが、これは先生御指摘のように、下請企業につきましては、経営とか技術とかいろんな面で向上をはからせる必要があることは申すまでもございません。  そこで、われわれの法制的な問題としましては、昭和四十六年に造船業を下請中小企業振興法の指定業種に指定する一方、下請企業の全国組織といたしまして社団法人である日本造船協力者団体連合会というものを設立されまして、そして発注の分野であるとか、発注の方法であるとか、あるいは単価決定等のいろいろな取引条件の改善とか、あるいは親企業と適正なルールを締結させるというような面で指導しているという実情でございます。  それから、その次の中小造船業の体質強化、改善等につきましては、御承知のように総トン数三千トン未満の造船業というのは昭和三十四年から中小型鋼造船業合理化臨時措置法というのがございまして、近代化を実施してまいったのでございますが、さらに四十一年度から四十七年度企業近代化促進法の指定業種といたしまして合理化を行なってきたわけでございます。しかし、中小造船業というのは、最近の経済動向とかあるいは技術革新とか労働力とかいろんな問題をかかえておりますので、昨年七月に、いま申しました中小企業近代化促進法の政令を改正いたしまして、その中小造船業の範囲を一万総トン未満の船を製造、または修理する企業ということに中小造船業を定めまして、特定業種に指定したわけでございます。こういう特定業種に指定されますと、集約とか業務提携とか構造改善事業を実施する企業に対しましては、中小企業金融公庫の構造改善融資制度による設備資金とか、あるいは運転資金の融資、あるいは中小企業振興事業用資金の優先使用等金融面でいろいろ助成を行なうということができますし、またさらに二分の一の割り増し償却制度等税制面での優遇措置も設けられておるという実情でございます。  なお、この中小造船業の構造改善計画につきましては、私ども先ほどお話のありました社団法人である日本中型造船工業会とそれから地区の社団法人小型船舶工業会を計画の作成主体とさせまして、いろいろ準備を進めております。現在、千三百社のうち約七百社が参加して、明年度から五カ年計画で実施するということになっております。
  56. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 局長から、要望した五点について何をやってきたか、さらに何をやろうとするかということにつき詳細な答弁をいただきました。  最後に次官、いま御答弁いただきましたけれども、やはり目まぐるしい変動下におけ現体制の中で、中小造船業界というのはよほどふんどしを締めていかないと、たいへんな事態になりはしないかという心配が多分にあるわけであります。したがいまして、ある程度の施策は私も了といたしますけれども、なお今後積極的にこの中小造船業の振興のために抜本的なことを考えていただかなければならぬと思うのです。特に社外工の問題、下請の問題等々大きな問題をかかえているのが中小造船業界の実態であろうというように思います。先ほど局長から、外国船主の発注の多いのは技術が優秀だ、あるいは納期が忠実に守られるというようなことが言われましたけれども、その優秀な技術の裏に、いわゆる職人といったような人たちの伝統の技術が、この近代化、機械化の波に押しつぶされてだんだん滅亡していくというような事実もあるし、納期が確実に守られるというその裏に、非常に過酷なスケジュールによる作業の圧縮というようなものも半面にはあるわけです。こういう問題は後刻またあらためてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、特に次官から中小造船工業に対する政府の施策のあり方といったようなものについて一言答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  57. 増岡博之

    増岡政府委員 御指摘のとおり、先ほど船舶局長から技術、納期がいいから輸出引き合いが多いのだと申しましたけれども、おそらくその半ば以上は、おっしゃるように関連企業の技術あるいはまじめな納期、そういうものが貢献しておるのだろうというふうに私自身も思っております。  それともう一つ、先ほどお話のございました共同購入、協業化等の問題につきましても、これは一つには人事の面で非常にむずかしい面が出てくると思いますけれども、現在あります税制あるいは金融上の制度を十分に活用いたしまして御趣旨に沿うように指導してまいりたいと思います。
  58. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 終わります。
  59. 三池信

  60. 紺野与次郎

    ○紺野委員 最初に、この臨調法の第二条にこういうことが書いてあるのですね、二千五百トン以上の船をつくる場合には運輸大臣の許可を得なければならない、そしてその許可をする場合の基準が次のものでなければならないというところで、第三条二項で「基準の適用は、その判断の基礎となる事項につき、運輸大臣海運造船合理化審議会にはかり、その意見を尊重して決定し、これに従ってしなければならない。」でありますから、この法案は非常に大きな存在と結びついているということで、それはこの海運造船合理化審議会の考えを聞かなければ大臣もこれを決定できない、基準が定まらないというふうなことになるのだと思います。それで、この海運造船合理化審議会というものの存在ですけれども、最近、この十年間の審議会の会長はどういう人がなっているか、これをちょっとお聞きしたいと思います。
  61. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 十年間というお尋ねでございますけれども、急なお話なので十年間はちょっとわからないわけでございます。これは会長と申しませんで、委員長ということでございますが、現在は永野重雄さんでございます。
  62. 紺野与次郎

    ○紺野委員 永野重雄氏は、どういう役職ですか。
  63. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 商工会議所の会頭でございます。
  64. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、財界の御大なわけですが、その前はどういう人だったか、ちょっと聞かせていただきたいんです。
  65. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 これは間違いますと非常に失礼になりますので、ちょっと調べさせていただきたいと思いますが……。
  66. 紺野与次郎

    ○紺野委員 こういう非常に重要なものを知らないというのは、ちょっとぐあいが悪いですね。これは財界の大もの、経団連とか日本商工会議所とか、そういうところの会頭たちが会長なんです。こういう点で日本の財界のトップレベルが主宰する審議会、こういうものに運輸大臣はうやうやしく意見を聞いてそして仕事をするという法案であるということを、このことは明らかにしているわけであります。  ところで、申し上げたいのは、この海運造船合理化審議会が一番大きな仕事としてやっているのはどういうことですか。
  67. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いま財界ばかりでとおっしゃいましたけれども、メンバーを見ていただきますと、各般にわたった有能なお人にお集まりいただいておるのでございまして、人材はいろいろにわたっているということを申し上げさせていただきます。  それから、この所掌事務につきましては、海運及び造船にかかわる事業の合理化に関する重要事項を調査審議するということでございまして、船舶の需給計画に関する事項であるとか、造船の合理化に関する事項でありますとか、大事な仕事をしている審議会でございます。
  68. 紺野与次郎

    ○紺野委員 では、計画造船ですね、日本海運及び造船にとって決定的な役割りを演じており、ばく大な財政資金やその他市中銀行の金までここに投入しているわけですが、その計画造船は、ここでそれに対するいろいろの意見の決定をしておらないんですか。
  69. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 お説のとおり、計画造船わが国海運にとって政策的にたいへん重要な事項でございますので、逐次運輸大臣から御諮問をして、この審議会で御審議をいただいて答申を得ておるということでございます。
  70. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、この計画造船、現在までにどれだけの金を政府が出し、また資金全体としても市中銀行を含めてどれだけの金を投入してきたか。そのことによって造船業がずっと動いてきているわけですから、そういうこととこれが関係があるわけでありまして、まずその基礎的な問題についてちょっと知らしていただきたいと思います。
  71. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 計画造船は、新しい最近のことから申しますと、四十九年度で三十次船ということになっております。十年間ばかり申し上げてみますと、これに投入しました財政資金の金額は、三十九年度、二十次船で四百十七億七千九百万円、それから四十年度、二十一次船、八百八十一億五千四百万円、四十一年度、二十二次船、九百十四億三千六百万円、四十二年度、二十三次船、八百七十九億五千八百万円、四十三年度、二十四次船、九百七十四億七千三百万円、四十四年度、二十五次船、九百六十四億七千九百万円、四十五年度、二十六次船、一千五十六億三千七百万円、四十六年度、二十七次船、千百三十四億九百万円、四十七年度、二十八次船、一千三百四十一億百万円、四十八年度、二十九次船、九百四十八億五千七百万円、四十九年度、三十次の予定は九百十五億円でございます。
  72. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、こういうもの全体を通じてとにかく一兆円以上でしょう、国から財政投融資その他で資金を回したものは。
  73. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 お説のとおり一兆円をこえると思います。
  74. 紺野与次郎

    ○紺野委員 特に、利子補給は、十年前の三十九年からずっと計算してどれくらい利子補給していると思いますか。
  75. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 利子補給に支給の額を年度と年次を追って予算額で申し上げますと、順序は逆になりますが、四十六年度、二十七次、百四十九億二千二百万円、四十五年度、二十六次、百四十一億一千百万円、四十四年度、二十五次、百三十億七千五百万円、四十三年度、二十四次、百八億四千六百万円、四十二年度、二十三次、八十五億二千六百万円、四十一年度、二十二次、六十億五千九百万円、四十年度、二十一次、三十一億七千四百万円でございます。
  76. 紺野与次郎

    ○紺野委員 要するに、われわれの計算では、三十九年度から四十八年度までで一千二十八億円の利子補給をしているわけです。これらの巨額の一兆円以上の金を出し、さらに利子補給だけでも二千億というふうな国のばく大な金を使って日本造船海運を、とにかく再建するというかやってきた、こういうことに経団連とか商工会議所の会頭たちが中心にすわって、これらの巨額の金を投入してきているというこの重みを、われわれとしては十分にここで見る必要があると思うのです。そして、このようにした計画造船とこの臨調法との関連ですね、この計画造船に対して臨調法というのはどういう役割りをしてきたのか、どういう関係にあるのか、もうちょっと具体的にお話を聞かしてください。
  77. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海運造船合理化審議会でございますが、財界だけが何かこういった多額の金の計画をかってにきめてきたということではございません。もちろん毎年毎年の予算で国会に御審議をお願いして、一般会計なり財政投融資なりのワクをきめてきたのがこの数字でございます。  なお、海運造船合理化審議会は、現在四十五人委員がございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、学識経験者六人、それから報道関係四人、それから学者三人、それから労働界二人、その他いろいろ御関係の方が入っていただいておって、決して一方に偏した編成と申しますか、機構とは私どもは考えておりません。  それから、計画造船の制度は、いま先生お述べになりましたように、戦後間もなくから始められまして現在に至っております。臨調法は、わが国海運の健全な発展のために、具体的にはわが国の外航商船隊の建造のために必要な船台を確保するということを目的としているものでございます。一方、その計画造船は、わが国海運に必要な、また日本経済にどうしても必要な船舶を国の財政資金によって整備していこうとするものでございまして、計画造船による建造船舶というものはわが国の商船隊の中核となるべきものでございます。したがって、臨調法によって確保すべき船台のうちで最も優先的に配慮してきたというのが実態でございます。
  78. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それで問題は、その計画造船の歴史の中で、特に大型船がつくられるようになってきたのはいつごろからですか。
  79. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 大型船というのはタンカーとかその他専用船によっていろいろ船型が違いますが、一般的にいってほぼ十年ほど前から大型船というものは出現してきたと思います。計画造船にもそのような傾向であったと思っております。
  80. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それも不正確なんだな。昭和三十六年、一九六一年の当時から大型船がずっとつくられるようになる、タンカーとかあるいは大型の——日本の高度成長政策をとるということから、非常にばく大な鉄鉱石とか、あるいはその他の原材料、それから燃料としては油、つまり石油ですね、——その前の三池闘争というのがありますが、これは三十四年と三十五年ですね。あの三池闘争によって、炭鉱はあれを機会として大きく打撃を受けまして、炭鉱は廃墟に追いやられるようになる。そしてエネルギーは石炭から石油へというふうに転換する。それで油タンカー、大きな大きなタンカー船というふうなことで、その後非常に大型船が建造されるようになってきているのでありまして、これがはっきりと、資金面からいっても、三十五年までは大体百九十三億円ぐらいのものから、一挙に四百億というふうに三十六年から上がっておりますけれども、そういうふうにやはり計画造船の中でも二つの質的な転換点として、昭和三十六年、石油への転換やあるいは高度成長、重化学工業への原材料輸送という大型船時代造船業全体、そういうものをつくろうというふうに変わってきているわけですね。  それからもう一つ、その次の一つの質的な転換じゃないかと私思うのですが、いわゆる集約時代というものが始まりますね。いろいろな中小造船その他から、今度はいわゆる中核六社というところに造船が主として集約されていくというふうになる。中核六社を形成する。膨大な財政のこれらの資金がそこに主として集中されていくというふうになったのは、大体どうです。
  81. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 大型になったのは、先生おっしゃるとおりでございます。わが国は、もう申すまでもございませんけれども、原材料の輸入、製品の輸出というかっこうで貿易立国を国是としていかなければならないのでございます。そのためには、やはり海運で安定的な輸送、低廉な輸送をはかっていく必要がございます。特に原油鉄鉱石石炭というのは、その数量においてわが国輸入物資の大宗を占めるものでございまして、昭和四十七年度の輸入量五億三千三百万トン中、この三品目で四億二千万トン、約八〇%にのぼっているわけでございます。したがって、これらのものを運びます船というものは、タンカーその他の専用船ともに、国の経済成長とともにどんどん大型化してくるというのはこれは当然の傾向であったと私は思います。  なお、三十九年度から五カ年間にわたって、先生お話しのように、再建整備期間というものがございまして、現在の六中核体を中心とする集約型の日本海運の再編成というものが行なわれました。ただ、このときは実は国の経済成長がどんどんと進みますのに、国の経済計画にマッチして、それを運ぶところの日本海運の体力が非常に脆弱で疲弊しておりました。そこで海運各社が、償却不足をかかえて、とてもこれ以上銀行から借金ができないというような体力でございまして、もちろん国際競争力にもたいへん欠けるところがあるという状態でございましたので、どうしても日本経済に役立つような日本海運というものを育てるためには、集約合併をはからなければならないということで、中心にはいわゆる中核と称する六社が、かなり困難な合併条件を克服しながら六中核体という中心ができました。それからそれに系列というかっこうで結びつく運航業者のグループ、それから専属と申しまして、用船関係で結びつく用船船主のグループ、そういったものが六中核体を中心にしてピラミッド型で形成をされて、かなり困難な集約条件を克服してそういった形態ができました。そのために、その後の日本海運のコンテナ化あるいは大型化、それから自動化というような傾向も進んで現在に立ち至っておるのでございまして、それぞれその時代時代として有意義であったし、また、日本海運日本経済に役立ち得たということを私は考えております。
  82. 紺野与次郎

    ○紺野委員 ところで、その大海運業者が出現したわけですけれども、この六社ですね、六社の名前と、それが持っている商船隊ですね、それぞれどれぐらい持っているのですか。
  83. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 六中核体の名前は、日本郵船株式会社、大阪商船三井船舶株式会社、川崎汽船株式会社、ジャパンライン株式会社、山下新日本汽船株式会社、昭和海運株式会社でございます。それぞれ現在持っております船腹量がどのくらいあるかを申し上げますと、日本郵船株式会社が百四十五隻、三百六十二万トン、大阪商船三井船舶株式会社が百三十八隻、三百二十二万トン、川崎汽船株式会社が七十七隻、二百二万トン、ジャパンライン株式会社が五十隻、百九十八万トン、山下新日本汽船株式会社が五十隻、百四十三万トン、昭和海運株式会社が二十七隻、六十七万トンでございます。
  84. 紺野与次郎

    ○紺野委員 ですから、つまり非常にばく大な国の金を投入してこういう、これは世界トップ十の中に全部入っちゃうのですね。ですから、世界でも第一流の船会社になったわけです。だから、そういうところに、一つの大企業に育成ということでは、もう大きな役割りを果たしてきたんだとは思うんだけれども、さらにこれはそういうことでもうこれ以上計画造船なんかしなくったって、自分の足で、自分の船で立って歩くというか、やれるところに来たんじゃないかというふうなことから、いま海運界では問題になっている、計画造船を続けるか続けないか。それほど、時代はそういうふうになってきている。そして、四十五年の海造審ではこれに対してどういうふうな態度をとったのですか。
  85. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 現在この六中核体がこういうふうに大きくなったんだから、もう国の助成は必要がないのではないかというお話につきましては、いま先生お話のとおり、海運造船合理化審議会で慎重に御検討をいただいておる最中でございます。ただ、私どもとしては、やはり日本経済とともに日本海運貿易立国を国是として必要な船腹をつくっていかなければならないというのは、今後も決して変わらないと思っております。もちろん国の経済成長率とともに、またその質的な変化とともに、海運のあるべき姿が変わっていくのは当然でございまして、そういった点から検討をいただいておるというのが現在の情勢でございます。  ただ、国際的に申しまして、日本海運は、やはり船員費も上がりましたし、諸経費も高騰しまして、また円の切り上げがかなりマイナスの要素にも働きましたし、国際競争力はなくなっておるというのが実態でございます。また一方、国際的に見ましても、国家の助成というものが、やはり各国ともに自分の商船隊を健全に育てるために適当な助成方策を加えておりますし、また先進国に限らず、開発途上国においても、別の面から自国船を擁護しようというかなり極端な政策が行なわれているのは御承知のとおりでございます。そういった情勢を踏まえて、今後の海運政策あり方というものを今後とも検討していきたいということを考えておるのでございます。
  86. 紺野与次郎

    ○紺野委員 これでもまだ金がほしいというふうに言っているというんですが、同時に、海外進出ですね、リベリア船だとかパナマ船だとか、いわゆる便宜置籍船ですね、そういうものに海外進出をして、日本海運業者、造船業者が、こういう外に出ていって、そして逆にそれをチャーターバックをしたりあるいは用船をしたりして、そうしてやっていくというふうなものにいまや変わりつつあるというか、それにゴー、それでいいんだ、どんどん海外に進出をやれというような方向をきめたんじゃないですか、昭和四十五年海造審はそういう転換点をあれしたんじゃないですか。
  87. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生御指摘の点は、おそらく四十五年の答申の中に、相当量の外国用船の活用をはかるということが出ておるという点の御指摘かと思います。私どももやはり、国際的に見まして、日本の純粋な邦船だけで必要な物資の安定輸送をはかるということはかなり困難でございます。したがいまして、大体標準的に五〇%ということを考えましても、その目標には純粋な日本邦船だけではとうてい到達しないという現状でございますので、ある程度外国用船をいたしまして、日本船と同じように手足のごとく使える外国用船を日本の船会社が利用して、それで安定輸送のために働き、また運賃もかせぐということにしたほうが、単純な外国用船をそのときどきのいわゆるスポットと申しますが、短期的な方法で手に入れるよりも国家的にも有意義だということを考えまして、外国用船ということを四十五年ごろから考えてきたのでございます。  現在、そういうかっこうで輸出仕組み船だとかチャーターバック船だとかいうことについて、日本船員の雇用安定との関係でとかくの御批判をいただいておるのは私どもよく存じております。ただ、経済現象としてはこれを全くやめろとかということにはなりません。必要なものはこういうかっこうでも調達をしていかなければならないと私どもは考えております。
  88. 紺野与次郎

    ○紺野委員 国の金を一兆何千億使ったり、それから利子補給を何千億ととったり、こういうことをして大きくなったものが、いまや用船、それでこの用船には、日本船員が乗っているんですか、それとも外国の船員ですか。
  89. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 純粋な日本船によります積取比率を四十七年で申しますと、輸出は目標額五〇%に対しまして二八・七%、それから鉄鋼石は五五%に対しまして三九・七%、石炭は五〇%に対しまして三一・一%、石油は六五%に対して四三・九%というようなかなり低い数字になっております。したがって、日本船だけでどうしても補えないところを外国用船で補おうということでございます。  ただ、日本計画造船も、四十五年の計画のときには、四十九年度は四百二十万トン、四十八年度は三百八十万トンという、かなりな建造量の伸びを示す数字計画を立てておったのでございますが、その後の経済変動に伴いまして、四十八年度は二百万トン、それから四十九年度は二百五万トンということに数字をたいへん縮減して計画造船数字を立てているというのは御承知のとおりでございます。したがいまして、国内の資金調達だけで足りません点を外国船主と結びついて、かなり日本と密接に結びついた外国用船というかっこうで、チャーターバック船などの建造外国船主と結びついてやっているという実情でございます。  なお、日本船員の雇用安定については私どもも問題があると思いますので、特に海外売船などについては、許可のときに、その当該の船舶を売船することによって船員対策がどうなっているかということを、私どもは説明を聴取して売船の許可をするという実態にいたしております。
  90. 紺野与次郎

    ○紺野委員 だから、非常に国の金を使いながら、最後は用船あるいはチャーターバック、売船、いろいろな最近のやり方によって、安い外国の、東南アジアその他の船員を使う、そして、もうけるためには日本船員の高い賃金を払うのはごめんだ、安い外国船員を使ったほうがいいというふうなやり方ですね、こういったものに、大体昭和四十五年からの用船主義というもの、あるいは海外のいろいろそういう便宜置籍船を活用するとか、そういうふうなものに変わってきているのですね。ですから、その点で国民は、また労働者は、あるいは海員は非常に不満だ、けしからぬ、日本の国の金を使って、最後は日本の労働者をどんどん捨てて、そうして他国の、東南アジアその他の安い、大体四分の一ぐらいの賃金で使える船員を使うというふうなやり方をする、こういったことが、この海造審という、神さまだか何だか知らぬけれども、変な考え方でやっている。こういう点を私は強く抗議したいと思うのです。  さて、これについて、さらに私は、これと関連して今度は裏側から、こういう日本海運造船の長足な大企業の育成ということがあったわけですが、これを可能にしたというか、これを裏づけにしている造船業、この造船業はいつごろから新しい造船所あるいはドック、こういうものをずっとつくり始めてきているのか、ちょっと聞かしてもらいたい。
  91. 内田守

    内田政府委員 昭和三十六年ごろからだと思います。
  92. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それで、ほんとうは具体的に言ってもらうといいけれども、時間が少ないから……。  そういう点で、現在そういうふうにして大きくなった造船所は、七大造船所といわれますね、これは三菱重工、石播、三井造船、日立造船、川崎重工、住友重機、日本鋼管、これらの最近の大手といわれる造船所のそれぞれの特徴ですね。特に造船能力、それから船台はどの程度の規模の船台を持つようになったかについて、ひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  93. 内田守

    内田政府委員 いま手持ちの資料でございますと、昭和五十年での数字でございますけれども日本全体の造船能力というのは一応千八百七十万トンと見ておるわけでございますけれども、いま御指摘の企業について、ちょっといまトータルでございますが申し上げますと、三菱重工、石川島播磨重工、日立造船、川崎重工業、三井造船日本鋼管、住友重機械、佐世保重工業、函館ドックまで入れまして、九社で一応造船建造能力と見られるのは年間千五百五十九万トンと考えられます。  それから個々の造船所能力でございますが、いろいろな船台を持っておりますので、最大の船台だけ申し上げさしていただきます。  三菱重工業は、これは総トン数でございますが、香焼島に新たにできました。これはもうすでに稼働中でございますが、総トン数で二十五万トンのドックを持っております。それから石川島播磨重工は、二十五万一千トンでございます。それから日立造船は、建設中でございますけれども、有明に二十五万総トンでございます。それから三井造船は、三十一万三千トンでございます。それから川崎重工は、三十万トンでございます。それから日本鋼管は、三十万トンでございます。それから住友重工業は、二十一万トンでございます。それから佐世保重工は、二十三万トンでございます。それから函館ドックは、十六万一千トンでございます。
  94. 紺野与次郎

    ○紺野委員 だから、非常に巨大な造船所ができているんですね。千八百七十万トンの総造船能力に対して、この九社で千五百五十九万トンというのですから、中小造船所というようなものは、ほんとうに見る影もないようなシェアしか持っておらないわけなんですね。そういう巨大造船所ができておる。ところが、最近OECDですか、ヨーロッパの造船関係のあれが音をあげているのですね。日本造船労働者の賃金が非常に安い、こう安くてはどうにもかなわぬから、何とかしてくれということを一昨年言ってきているのですね。こういうふうな造船所で非常に低賃金が行なわれているということと、それから災害が非常にふえておる。大体、災害の発生等は一年間に百人くらいの死亡者が出ているのですね。こういうふうな状態です。この間、われわれは静岡の金指造船ですけれども、あそこに行ったときにも、非常に造船台での労働が危険であるということをわれわれは聞きました。現場にも行ってみましたけれども、こういうふうな大きな独占的な大企業が、今度は労働者に対しては、ここの場合にも、造船所でも非常に危険な作業をしているし、低賃金である、こういうことで死亡者も出ておるというふうな状態になっているのだけれども、これに対してはどこが監督しているのですかね。
  95. 内田守

    内田政府委員 造船業としての監督は、もちろん私ども運輸省でやっておりますけれども、具体的な職安法とか労働災害等については、労働省が所管しております。
  96. 紺野与次郎

    ○紺野委員 特に、私はここで問題にしたいのは下請なんです。ちょうど船員の間に東南アジアの海員をどんどん置きかえていくということがありましたが、造船業において実際に行なわれている状況を見ますと、下請の労働者が七万五千人、それから本工といわれる者が十一万、職員が三万ないし四万、こういうふうにいわれております。しかも、本工十一万ないし十二万のうちの三〇%は間接の労働者である。そうすると、実際に造船台その他で働いている本工というものは七万。ちょうど下請労働者と半々だ。半分が下請労働者、半分が本工、こういうふうな労働でやっている大きな、一千五百万もつくる造船業者、こういうものを正常と思っておりますか。ちょっと聞きたいと思います。
  97. 内田守

    内田政府委員 私どもの調査でございますと、造船業のいわゆる下請依存度と申しますのは、昭和四十七年十二月現在で四一%でございます。総工員数は十九万二千名でございますけれども、下請工はいま申しました四一%で、七万八千名ということでございます。  なお、最近は、造船業の建造実績というのは非常に伸びているわけでございますけれども造船業の従業員数及び下請依存度というのはここ数年横ばいでございます。確かに、先生おっしゃいますように、下請の依存度というのは高いのでございますけれども、御承知のように、造船業というのは労働集約型産業でございまして、先ほども申し上げましたように、二百数種に及ぶ関連産業がこれにつながっておる、いわゆる総合組み立て作業でございまして、したがってその度合いも大きいということになろうかと思います。かつては確かに工事量の季節的な変動という面をおもな理由として、下請依存ということがあったわけでございますけれども、最近では工事量が増大し、かつ安定化してまいっておりますので、むしろ下請というのは定着化している状況にございます。
  98. 紺野与次郎

    ○紺野委員 労働省の方、来ておりますか、来ておりますね。職安法四十四条では、何人も四十五条以外の、つまり労働者供給事業を行なってはいけないし、また、そこの労働者を使ってはならないというふうにいっているわけですけれども、この職安法四十四条と、造船業で普遍的に広闊にやっているところのこの下請労働の広範な採用というものと、法的にどうですか。
  99. 加藤孝

    加藤説明員 職安法四十四条で規制いたしております労働者供給事業につきましては、具体的にはその施行規則第四条におきまして、どういう状態であるならばそれが労供にならないかということの要件を列挙しておるわけでございます。四つの条件があるわけでございます。下請のやっております作業のやり方が、一つには、作業の完成について、事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものでなければならぬという条件がございます。それから、作業に従事する労働者を指揮監督するものでなければならないという条件がございます。それから三番目といたしまして、作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものでなければならぬという条件がございます。それから四番目といたしまして、みずから提供する機械、設備、器材もしくはその作業に必要な材料、資材を使用し、または企画もしくは専門的な技術もしくは専門的な経験を必要とする作業を行なうものであって、単に肉体的な労働力を提供するものであってはならぬ、この四つの条件をすべて満たす場合において、それが労働者供給事業ではない、こういう規定が施行規則の四条一項にあるわけでございます。造船業におきます下請企業につきましても、この四つの条件に照らしまして、それがこれらの条件を満たしていない場合においては、それは労働者供給事業になるという問題があるわけでございます。
  100. 紺野与次郎

    ○紺野委員 だから、造船業で行なわれているのはどうだというのです。どういうように思います。
  101. 加藤孝

    加藤説明員 造船業において行なわれております業務の一般的なものにつきましては、私どもこの労働者供給事業であってはならぬということでの指導監督をいたしておるわけでございます。現にいまお話のございました金指造船につきましても、現在告発をされておりまして、その関係での調査を進めておるわけでございます。
  102. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、金指造船でも明らかにこれは不法であるというふうにいって、労働者は告発しているわけですけれども、あなた方はこれについてどう思っていますか。こういうやり方を好ましいと思っておりますか、どうですか。
  103. 加藤孝

    加藤説明員 現在まで金指造船につきましての調査で、一応問題がございましたのは、下請企業の従業員について、親会社のほうの指揮命令下にあるものが一部ございました。それは、先ほど御説明申し上げました、作業に従事する労働者を指揮監督するものでなければならぬのに、下請が指揮監督をしないで、親会社が指揮監督をしておるというところに問題があったわけでございまて、この点につきましては指摘をいたしまして、会社のほうが是正をいたしたいという事情がございます。  それからもう一つ、それが企画もしくは専門的な技術もしくは専門的な経験を必要とするものでなければならぬということでございまして、そういう意味で、それが専門的な技術もしくは専門的な経験を必要とするものであるかどうかということについて、現在調査を進めておるということでございます。
  104. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、その下請会社が指揮監督しなければいけないということですね。条件の一つですね。ところが、ほとんどの下請会社は一〇〇%親会社の資本なんです。これが多いんです。ですからそういう場合はどうですか。実際にはその造船所の資本が一〇〇%だというふうな下請会社がかりに監督するという場合は、それはトンネルで、実際上はその法に違反しているんじゃないですか。
  105. 加藤孝

    加藤説明員 その下請会社についての資本構成の問題は、直接指揮監督になろうかという問題は生じないわけでございます。それは、下請会社に対して、注文主としましてこれこれしかじかの作業をやってほしい、こういう仕事をしてほしいという注文が下請に対して出る。下請がそれを受けて作業をいたします場合に、これは下請会社の責任においてやらなければならぬものでございまして、それはたとえば下請会社の職長であるとか、その現場責任者であるというものの指揮監督を受けてやるという限度においては、そういう資本構成の関係は直接の問題にはならないわけでございます。
  106. 紺野与次郎

    ○紺野委員 だから節穴だというのです。あなた方のあれは全く現実を見ておらないということなんだ。しかも、親会社が一〇〇%そういう形で出資金を全部出して人を集め事業をしているんですね。これも職安法四十四条に私は違反していると思うのですが、そういうふうにして、しかも最近のあれだと一コース八時間、その賃金の半分をピンはねしているといわれているのです。ですから、かりに一万円を会社が一応出した形になっているけれども、五千円でそれを五〇%はピンはねしてしまう。こういうふうな世界的な造船所世界的な海運、それをささえておるものは、全く腐った、前近代的というか、ぼろぼろになったそういう不正な労働関係にささえられている。こんなことをあなた方は——あなたは労働関係ですね。今度はこっちの運輸省の方々にも聞きますけれども、こういう状態を正しいと見るのかどうか。それをなくして、労働者は同じ身分で差別なく造船所の中で働くという方向に行くのが当然ですよ。それをまっ二つにぶった切って、片方はこういう人足みたいなことで諸権利もほとんどありません。労働組合にも入っていない。こういうことで、国の金をかすめとっているようなそういうふうな海運業のあり方とかこういった弱点をいいと思うのか、それとも正しくないと思うのか。それを聞かせてもらいたいですね。
  107. 内田守

    内田政府委員 ただいま例示にあげられました造船所につきまして、いろいろ労働関係法令の違反が労働省から指摘をされておるわけでございまして、私どもも非常に遺憾であるということで、直接そういう面の法律的な面はともかくとしまして、当事者に対して、そのような改善については従来から指導しておるわけでございます。確かに、そういう意味で下請の問題につきましてややともすれば逸脱したような事例があるわけでございまして、そういう面につきましては、私ども今後とも厳重に監督等をしてまいりたいと思います。  ただ、先ほどちょっと申しましたように、下請というものがある程度定着しております現状からいたしまして、私どもこういう下請企業の経営とかあるいは技術とか、そういう面にわたるいわゆる親企業との関係の改善をはかるために、先ほどからもちょっと申し上げましたように、昭和四十六年から下請中小企業振興法の指定業種といたしまして振興をはかるとともに、造船関係の下請企業の全国的な組織を、公益法人を設立いたしまして、経営の安定とか技術水準の向上とか、あるいは労務災害の防止策とか、従業員の訓練等いろいろ指導を進めておるわけでございまして、今後とも御指摘のような事例のないように監督指導をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  108. 紺野与次郎

    ○紺野委員 じゃ、時間が来ましたので、次の方方に迷惑を及ぼさないためにも私はこれで終わりますけれども、くれぐれも、先ほどから明らかになったように、日本海運業といい造船業というのは巨大な企業になっているんですよ。ところが、その足はたいへんおくれた、そしてぼろぼろのような制度にささえられているということですね。そこをやはり改革することが非常に重要ではないかということを申し上げて、一応私の質問を終わります。
  109. 三池信

    ○三池委員長 松本忠助君。
  110. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 まず、政務次官にお伺いいたします。  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案の提案理由を伺いました。御承知のようにこの法律は、昭和二十八年の第十六国会に全会一致で可決されました法案でございますが、このときは昭和三十二年の三月三十一日限り効力を失うということになっていたわけでございます。ところが、その前年の三十一年の三月、第二十四国会で第一次の改正がなされまして、三十六年三月三十一日までこれが延長され、その後、第二次の改正というのは三十五年の五月、三十四国会でございまして、四十年三月三十一日まで、引き続いて第三次、第四次、第五次というふうに、効力を失うその直前にいっていつもいつも延長延長を繰り返してまいりました。第五次の改正では、その有効期間が五十年三月三十一日まで延長されているわけです。これはもう御承知のとおりであります。すなわち、臨時立法であったわけであります。頭にも臨時という字が冠してあるわけであります。  今回の改正につきましては、従来のように暦の上で確定した日というものをきちっと押えたのでなくて、半ば無期限とも言えるようなものでございます。趣旨説明によりますと、「有効期間を、国際海運に従事し得る船舶建造の需給の動向等に照らして、船舶建造についての調整を行なわなくともわが国国際海運の健全な発展支障を生じないと認められる状態になるまで延長する」というような、いわゆる無期限な延長になっているわけでございます。なおまた、「臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案要綱」として御提出になったものにも、この法律は、船舶建造調整を行わなくとも我が国国際海運の健全な発展支障を生じなくなったときに廃止する、こういうふうに期間の延長並びに廃止の時期というものが非常にあいまいなことばで表現をされているわけでございます。こうしたことを認めるのは一体だれなのかということでございます。  いま申し上げましたような、わが国国際海運の健全な発展支障を生じないと認められる状態になった、そこまでは延長するんだ、あるいは廃止の時期というのは、国際海運の健全な発展支障を生じなくなったときに廃止するんだ、こういうことを言っているわけですね。こういうことになりますと、一体だれがきめるのかということですね。いままでは日限というものがあって、その日限によって、その日が来れば当然終わるんだ、その日にはもう終わりになるんだ、こう言ってきたわけです。ところが、繰り返し繰り返し五回も——しかも今度は、第六回目では言うならばもう無期限です。そのような状態まで持っていくということについて、一体だれがそのことを認めるのかということを私お伺いしたいわけです。
  111. 増岡博之

    増岡政府委員 御指摘のとおり数次にわたって改正をいたしておるわけでございますけれども、それはそのときどきのわが国経済の伸びでございますとか、あるいはまた開放経済に移っていった、国際経済の変化というようなことが理由でございまして、今後ともこの法律を存続しなければわが国海運界、ひいては国民のために必要な物資の運送ができないということでございますのでお願いを申し上げておるわけでございます。したがいまして、この法律を通していただきました後、そういうような必要がないという御判断は、これは当然立法府でございます国会のほうで御判断をいただくことに相なると思うわけでございます。
  112. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 国会のほうで御判断なさるのではないかと思います、というような表現でございますが、まさしく国会でそのことは判断するというふうに、はっきりおっしゃるわけでございますか。
  113. 増岡博之

    増岡政府委員 そのとおりでございます。
  114. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、国会においても延長の必要はない、廃止すべきである、こういうことを国会議員が、もっと具体的に言うならば運輸委員会の委員が相談してきめたという時点において廃止すると理解してよろしいわけですか。
  115. 増岡博之

    増岡政府委員 運輸委員会なり本会議なり参議院で法律で決定をいたしていただきましたら、その時点から廃止になるわけでございます。
  116. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうしますと、もう一方的に立法府のほうで、衆参両院でそういうことが決議になったときは、これは廃止すると理解しますよ。いいですね。
  117. 増岡博之

    増岡政府委員 私の説明不足でございますけれども、これは政府提案にかかるか議員立法になるかにかかわらず、国会でおきめいただいた時点から廃止になるということでございます。
  118. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それはちょっと私おかしいと思うのです。船舶局長、どう思いますか。
  119. 内田守

    内田政府委員 手続的には廃止のための法律を立法するわけでございます。法律でもって廃止するわけでございます。したがいまして、いま政務次官がお答えになりましたように、われわれのほうで、その時期を検討し、政府側から、こういう附則に書いてありますような時期に立ち至ったと判断した場合には、われわれのほうから政府提案として国会に提出いたしますし、また、先ほど政務次官がおっしゃいましたように、議員立法として、この法律がもう継続する必要がないという御判断に立って立法された場合には、この法律と同じように、あるいは他の法律と同じように立法措置がとられて廃止される、こういうことでございいます。
  120. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 この問題は、いままではもう、言うならば日限を切ってきました。その時点が来る直前に、大体一年前に、これをさらに延長するというやり方でやってきたわけですけれども、今度は全く無期限なんです。言うならばそういう状態は主観によってきめられると思うのですね。ところが、われわれとしては、そういう時期に達したんだからもう必要ないじゃないか、こうなりますけれども、やはり議会制民主主義のたてまえからいって、大ぜいの人間がそうでないと言えばそれに従わなければならない。これは数の上で採決すれば当然のことだろうと思いますけれども、今回はこの問題は、私ども考えましても、非常にこの点で明確を欠いているわけです。いままでのようないわゆる時限立法できたこういうものと違うわけであります。この取り扱いについて今後慎重にやらなければ大きなあやまちをおかすと思います。いま政務次官のお答え、あるいは船舶局長のお答え、いずれにしましても私どもこれをよく脳裏に刻み込んでおいて今後対処したい、このように思うわけでございます。  次に伺いたいことは、外国船主の発注と国内船主の発注の状態を見てみますと、外国船主の発注のほうが非常に先行していることがわかるわけであります。国内船主を保護するたてまえからして、外国船主の発注についてはある程度の制限を加えるべきではないかと思うわけです。要するに、現在の手持ち工事量を見ましても、国内船が三十九隻、三百十五万二千総トン、輸出船が四百八十九隻、三千六百三十七万二千総トン、こういうことでございます。比率で見ますと、国内船は隻数では七・四%、総トン数では八%、輸出船のほうは隻数では九二・六%、そして総トン数では九二%というふうなものを占めているわけでございます。  これでは国内船主の発注が制約を受けていて、外国船主が優遇を受けているとしか思えないわけでございます。そしてまた、日本の高度の造船技術というものを安売りし、労働力の切り売りをしている、このように私は思いますけれども、この点を政務次官はどう思いますか。
  121. 増岡博之

    増岡政府委員 私どもは、わが国海運界を育成する意味でこの法律をつくってまいったわけでございまして、決してそのような——パーセンテージからいけばそのような数字になるのかもしれませんけれども、これまでの外国船主の発注が豊富であり、またその資金量が、長期的な予測のもとに、あらかじめ四年も五年も前から投下できるという現実の前に、結果としてこのような数字になっておるということであろうと思います。
  122. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 船舶局長、この問題はパーセンテージだけでいま政務次官が言われましたが、確かにパーセンテージは国内船が非常に少ない、輸出船が非常に多いということは、もう私が申し上げたとおりです。だからこそ私は、要するに国内の船主が圧迫を受けているのじゃないか、日本造船技術というものを切り売りしているのじゃないか、日本の国内の船主というものに対して制約を加えているのじゃないか、だから外国船主のほうが日本の安い労働力を使って優秀なる造船技術を持っているこの日本へどんどん発注してくる、そうすると日本船主のほうは、発注したくとも船台の関係がありますからそういかない、結局外貨を獲得するのだというような言い分から、そっちの方向へばかり持っていくのじゃなかろうかというような危惧があるわけです。そうなりますと、国内船主の発注が制約を受けた結果は、国内船主というものが自分たちの力を十分に発揮することができない、外国のための日本造船業になってしまうのじゃなかろうか、政務次官はこの点に対して、過去からの実績がずっとそうなっているのだ、やはり納期というものがあって、日本でもあるいは外国でも、いつまでにおさめます、こう言って注文は受けているわけだと思うのですね。そうなれば何も外国のだけが現時点において確かに多いから、日本のほうは十分に納品ができているかというと、そうじゃないと思うのです。やはりいままでの関係からしても、どうしても外国偏重だと私は思わざるを得ない、こういう点について船舶局長どう思いますか。
  123. 内田守

    内田政府委員 日本造船業の場合、世界的な造船供給力の立場と、もちろん先生御指摘の日本船舶をその中で当然最優先に供給するという立場とあるわけでございますが、実際の建造需要、それから供給の状況から考えますと、大手の例ですと大体七対三ぐらいで輸出船国内船建造の量がバランスしている状況でございます。いま先生御指摘のお話は、輸出船の場合には、船主の発注が、資金の問題あるいは需要に対応する機敏さという問題から相当先物を注文してくる、結果的には手持ち工事量等が逆に、七、三ではなくてそれが九対一というような状況になっているということだと思います。それで、これは外国船主の立場ももちろんございます。ございますけれども造船業の立場から見ても、ある程度の安定操業という見地からは、どうしても常時ある程度の手持ち工事量というのは持っていたい、これはまた造船業にとっても当然の立場になるわけでございます。  そこで、私ども今度御提案しておりますように、臨時船舶建造調整法によって、そのような状況であればこそ、日本船舶建造ワクと申しますか、そういうようなものをまず優先的に各造船所なり船台なりを確保いたしまして、そうしてその余地と申しますか、その残りを、先ほど申しました輸出船建造というようなものに充てていくというような運用を、従来もやってきておったつもりでございますけれども、今後のいろんな経済変動とか、需要活発というようなことに対処すれば、ますますそういうことに留意していきたい、かように考えております。
  124. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 要するに、いままで七、三でやってきたというのは、単なるあなた方の考え方であって、現実にこうやって手持ち工事量は七、三どころでないわけですね。隻数でいえば九二・六対七・四、あるいは総トン数でいえば九二%対八%、七〇%対三〇%という線じゃないわけですよ。手持ち工事量がこういうことは、いままでに現にそういう発注を受けるとき、何でも外国船のほうを先に受けてしまって、国内船を圧迫しているじゃないか。あなた方は七、三だ、七、三だとおっしゃるけれども、現実に手持ち工事量が残っておるのを見れば、まさしくいまあなたが言われたようなことは間違いなんだ。現実にここに残っているわけですから。  そういう点を考えてみたときに、私は国内船主に対してもう少しあたたかい思いやりをして、船台をあけ、十分に発注に対してもやるべきじゃないか。それを先にやって、そして余力をもって外国船をやるというなら私は当然のことだと思うのですよ。そういう点について、あまりにも七、三の線から離れ過ぎている点を私は言うわけです。
  125. 内田守

    内田政府委員 具体的に申しますと、四十九年度、五十年度あるいは五十一年度の中に、たとえば四十九年度の例でございますと、三十次船あるいは二十九次船の残りももちろんございますけれども、自己資金船あるいは計画造船等をまずワクを確保いたまして、そしていま先生御指摘になりましたように、そのあとで輸出船を埋めていっているというのが実情でございます。
  126. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私は、特にこの問題についてこれ以上詰めませんけれども、やはり今後の指導というものをそういう点に、あなた方が七、三ということを過去から思っているのなら、やはり七、三にすべきじゃないかと思うのです。現実には七、三ではないということ、これはお認めにならざるを得ないと思うのですね。そういう点をひとつ注意をしてもらいたいということです。  それから、いわゆる超大型船といいますかを建造できる設備、ドックです。これについてもお尋ねしたいわけです。  いただきました資料によりますと、四十八年四月現在では十三基のドックがございます。修繕ドックのほうが十基、こういうことが資料には出ております。いわゆる超大型船だけですよ。それで見た場合ですよ。昭和五十三年四月という時点をとらえて見た場合には、この設備は逐次拡大増強をしていくのか、それとも現状程度で維持されるのか、これに対しての見通し。もし拡大増強されるとするならば、何年ごろにはあとどれくらいのドックがプラスされるかということについて、ひとつお答えを願いたい。
  127. 内田守

    内田政府委員 造船施設の問題につきましては、昭和四十六年の六月に、海運造船合理化審議会に、日本造船施設としての適正規模というものを諮問いたしまして答申をいただいておるわけでございます。それで、現状と申しますのは、昭和五十年におきまして、日本造船能力を千八百七十万トンというように年間の建造量を押えておるわけでございますけれども、その後の五十年以降の整備につきましては、今後海運造船合理化審議会のさらに御審議の問題もございますし、それから今後の需要という問題もございますので、その辺が今後の検討ということになろうかと思います。  単独の造船施設がどのくらいに最大船型がなるかというような問題も一つございます。それにつきましては世上、造船所等におきまして幾つかの造船所が当面百万トン、現実に百万トンの船をつくるつくらぬは別といたしまして、施設としては百万トンを建造できるような施設を目標に計画を持っておるところもあるようでございますけれども、いま申しましたように、今後の需要動向を勘案いたしまして、審議会等で全体のワクを検討を進めるとともに、対処していきたいと思います。  なお、石油・電力危機とかいろいろな需要の問題、それから今後のスエズの開通の見通しとかいろいろな問題についての船型の大型化についていろいろ議論が出ておりますので、いま申しました百万トンという数字も、当初造船所等がいっております昭和五十三年とか五十二年とかいうような時期に到来するかどうかも、むしろ今後検討してみなければわからないのじゃないかということでございます。
  128. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私の質問は、超大型船のドックについてのみお伺いしておるわけですよ。全体のワクじゃないのです。小さいものは、それはたくさん造船所があるわけですから、問題は、超大型船のドックというものは限られた数であるわけですよ。その中でどうやっていくかということを私は言っておるわけです。それは、このあとの質問に、要するに手持ち工事量の中に大型のものがどれくらいあるかということもあります。それからまた、将来の受注の問題そういったものをひっくるめて私は五十三年という一つ時点をとらえてみて、どのように船舶局としては考えているかという点を聞きたいわけなんです。質問の趣旨にお答えください。
  129. 内田守

    内田政府委員 当面超大型船の建造施設は横ばいになろうかと思います。
  130. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 要するに、横ばいということは、私が申し上げました設備増強拡大をしないで、現状程度で維持される、五十三年までは現状のようないわゆる超大型船については、資料にありますような十三基のドック、修繕ドックが十基、こういうことで横ばいの状態でいくということですね。
  131. 内田守

    内田政府委員 超大型船の船台ないしはドック数は大体横ばいだと思います。
  132. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それではもう一つ伺いますが、現在の主要工場全部でなくていいです。いわゆる三十六工場というのがございます。それらの手持ち工事量は、先ほども申し上げましたように、資料によりますと、五百二十八隻、三千九百五十二万四千総トン、こういうことでございます。これが完成され、引き渡されるというのを年度別に見ますとどうなるのかということです。たとえていうと、四十九年度にはどこの会社では何隻何トン引き渡す予定になっておるという、現在の要するに手持ち工事量を基礎に考えてみたときに、いつになったらそれが解消されるのかということを伺っておきます。
  133. 内田守

    内田政府委員 代表的な企業でよろしゅうございますでしょうか。
  134. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いわゆる大型の九つの最も大きな造船会社がありますね。その九つなら九つについて言ってくださればけっこうです。
  135. 内田守

    内田政府委員 いまから申し上げますのは、四十九年の二月末現在の資料で申し上げます。  今後受注しないとしての話でございますけれども、三菱重工業は、四十九年度で三百七十七万二千トンを手持ち工事量として持っておりますが、これが最終は五十二年度で手持ち工事量はなくなる。具体的にいえば五十三年度からゼロということでございます。それから石川島播磨重工業は二百四十一万三千トンの手持ち工事量に対しまして、これも五十二年度まででございます。それから日立造船は百七十万トン手持ち工事量を持っておりますが、これは昭和五十二年度まででございます。それから川崎重工業は百四十九万六千トンでございますが、これは五十三年度まででございます。それから三井造船は百六十万一千トンでございますが、これは昭和五十二年度でございます。それから日本鋼管は百三十八万六千トンでございますが、これは昭和五十三年度でございます。それから住友重機械は八十二万四千トン持っておりますが、これが昭和五十二年度まででございます。それから函館ドックが二十九万一千トンでございますが、これが五十二年度まででございます。したがいまして、全部五十二年度までで、川崎重工業と日本鋼管のみが五十三年度までございますが、これはいずれも隻数では五十三年度におきまして一隻ずつでございます。
  136. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いま局長さんは、一番最初に、三菱重工は工事手持ち量が三百七十七万二千総トンだ、それが逐次こうやっていくと、三菱の場合は五十二年で終わるとおっしゃいましたな。全部そういうふうにおっしゃったけれども、これはちよっと違いませんか。私ちょっと違うように思いますよ。
  137. 内田守

    内田政府委員 表現をちょっと間違えました。最初に手持ち工事量と申しましたのは、昭和四十九年度の竣工の手持ち量でございます。
  138. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうでしょう。いまお話しの、最初に言われた数字というのは四十九年度に引き渡すべき数字ですよ。それでなければ数字は合いっこないんです。ちょっと答弁がおかしいと思いますので、御注意申し上げるわけです。  そうしたことで、結局代表的なものが、四十九年二月でいいますと、先ほど私が申し上げておりました手持ち工事量よりもふえておるわけですね。これはわかります。四百九十四隻、四千四百五十九万一千総トン、こういうふうに工事手持ち量が二月現在で見るとふえているということですね。これは理解できます。わかりました。  それから次に伺いたいことは、いまのは五十二年で終わるところもありますし、あるいは五十三年までかかるところもありますが、引き続いて諸外国からも引き合いがあるでしょうし、国内の船会社からも引き合いがあるだろうと思います。当然これは引き続いてなければ、その時点において工場がストップしちゃうわけですから、当然その後も引き続いてあるわけだと思います。しかし、現在の状態から見まして、経済状態が非常に不安定でもございます。先ほどまた、局長が言いました、電力需要がどうの、油がどうの、いろんな状況が加味していると思いますので、なかなかこれは予測することはむずかしいと思いますけれども、これから五年先ぐらいの要するに見込みは立たないのかと思うわけですな。要するに、先ほど船台の面も聞きました。そして、いま手持ちの工事量が五年先にはどうなるかということも聞きました。  そこで、さらに最後に聞きたいのは、五年先にどれぐらいの受注があると見込んでいるか。国内船輸出船、いずれにいたしましても合計でけっこうです。どれくらいのものを見込んでいるか。その辺のところが七、三になるか七、三にならないかということが問題だろうと思いますよ。
  139. 内田守

    内田政府委員 先ほど申し上げましたように、海運造船合理化審議会で、われわれ当時需要の予測をいただきましたのは、昭和五十年で千八百七十万トンという一応能力と申しますか、需要を見込んだわけでございます。先生御指摘の昭和五十三、四年と申しますか、ちょうどいま申しました手持ち工事量がなくなる時点において一体どのくらいになるかということでございますけれども、まことに申しわけないのでございますが、私どものほうで需要見通し数字というのを実は持っておりません。むしろ、先ほどちょっと申しましたように、現在海運造船合理化審議会のほうで昭和五十五年あたりを目標にして、先ほどの昭和五十年の千八百七十万トンに相当するような数字をいろいろ今後御検討いただくというような実情でございますので、いま大体どのぐらいの見通しになるかというようなことは、ちょっと数字的には残念ながら持っておらないというのが実情でございます。
  140. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 五十五年度の予測というもの、いずれにしても造船審議会にたたき台は出さなければならないのじゃないですか。そのたたき台をつくるのはやっぱり船舶局と違うのですか。そういうことを考えれば、やはり五十五年はこれこれだ、五十三年ぐらいはこうだ、それが国内船はこうだ、輸出船はこうだぐらいのことは大体握っているのが当然だろうと私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  141. 内田守

    内田政府委員 現在事務的にいろいろな作業をやっておるわけでございます。それで、そういう需要予測をいろいろ見るモデルと申しますか、計算のやり方と申しますか、そういうようなことをいろいろ詰めておる段階でございますが、御承知のように、電力ショックとかいろいろな問題が入ってきておりますので、そういうようなものを加味して、今後の需要予測を立てるというのは、むしろこれからどういうふうに数字を立てていくかという段階でございます。
  142. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 要するに、いままでのような時限立法になっておりますと、いやでもおうでもわれわれの頭の中に残して、一体全体どうなっているのだろうか、船舶局に来てもらって話を聞くこともできるでしょうし、あるいは一般質問でそれをやることもできると思います。しかし、今度こういうふうにいわゆる法律として、何日になれば廃止するのだといったような一つの網をかぶせておいたのが、今度はなくなってしまうわけですよ。政府側の資料を私どもがちょうだいしておかない限り、どういう状態にあるかということは全くわからないわけですね。そういう点を私思いまして、今後この資料も、やはり最近の資料というものをどうか船舶局のほうで運輸委員に定期的に配ってもらうということをしないと、全く野放しになってしまって、わからなくなってしまうのじゃないかという心配があります。そこで、ひとつこの点はお願いをいたしたいと思います。  これはあなたのほうで、少なくとも衆参両院の運輸委員に、さっき最初の御答弁にあったように、一つの材料を提供しなければ、これは廃止する時期あるいはこの延長が無期限になっている、その延長に歯どめをかける時期というものがわからぬわけであります。これはひとつ資料の提供を常時心がけていただきたい、こういうふうに希望するわけでございます。  それから、労働省の方いらっしゃいますか。伺いたいことがございます。それは造船技術の中でも特に高度な技術を要するもの、たとえて申しますと、溶接作業というようなものはたいへん高度な技能を要するわけでございます。こうした高度な技能を有する優秀な技能者の引き抜き合戦が非常に行なわれているということを私ども耳にするわけでございます。金に糸目をつけないでそういう優秀な技能者を引っぱりっこしているのだ、こういう話を聞きますけれども、これはもちろん表面に出ておりません。したがいまして、陰でこそこそやっているわけです。こういうことは、ほんとうに計画造船する上からはこういう人たちが非常に必要なわけでございますので、こういう点についてどのようになすっていらっしゃるか、それが一点。  それから、こうしたもあの防止対策、たとえて言いますと技能者を次から次へと養成していくというような対策はどうなっているか。さらにまた、一般の造船労務者に対して、雇用の状況はどうなっているか。こういった三点について、それぞれの担当の係の方からお伺いをいたしたいと思います。
  143. 加藤孝

    加藤説明員 造船の技能者の不足のために、そういう熟練工の引き抜き合戦があるという話は私どもも耳にしておるわけでございますが、この引き抜きということが、企業の側から言いますと引き抜きではございますが、労働者側から見ました場合に、それがよりいい労働条件のところへ移っていくというような観点から見ますと、これは労働者のほうも職業選択の自由とか企業選択の自由というものがございますので、より労働者が希望するところから口がかかった場合に、それを移ってはいかぬということはなかなかむずかしいと思います。  ただ問題は、御指摘の、特別に何も労働条件とかそういった面でよくないのに、金を出して引っぱり出すというようなところがやはり一番問題であろうと思いますけれども、この辺につきましては、企業間でもひとつフェアなルールをつくっていただきたいと思いますが、基本的には、御指摘のように、技能労働者の不足を解消するための施策というものが進められなければならぬ点でございます。それからまた、さらに労働条件一般につきまして、各企業においても十分その向上をはかるという対策がないと、この引き抜きの問題は基本的にはなかなか解消できないのじゃないか、こういうふうに考えているわけでございます。それぞれ御指摘の問題につきましては、また担当の課のほうからお答え申し上げます。
  144. 内田守

    内田政府委員 私ども造船関係の主として技術者の教育という面からちょっと御報告させていただきますと、技術者の教育となりますと、当然学校とか社内教育とかいろいろあるわけでございますけれども、学校につきましては、先生方御承知のように、いわゆる日本造船科という科を持っている工業高等学校は全国で十六校ございます。卒業生は毎年七百名でございます。それから、いわゆる造船学科を持っている大学は九大学ございます。これは毎年約三百名の卒業生を出しております。そのほかに造船会社が独自にいわゆる社内の高等学校を設立して、自社の従業員を教育している例もございます。それで、四十八年度の例で申しますと、大手の造船所の職員の採用者というのは六千三百名でございましたけれども、そのうちいま申しました技術系の大学院の卒業者が五%、それから大学卒が一〇%というようなことで、いわゆる上級技術者の密度というのが最近非常に高くなっております。それから、社内教育につきましては、それぞれの企業におきまして一般の普通の中学なりあるいは高等学校を卒業した場合には、職業訓練法に基づいた研修を大体一年間ぐらいやりまして、それから現場に送り出すというような状況になっております。それからなお、公益法人、たとえば中型造船工業会とかあるいは小型船舶工業会とか、そういう民間団体、それからもちろんわれわれも入りまして、中小造船所に対しましては随時新しい技術、製品等についての講習会を開催してやっておるということでございます。
  145. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 加藤業務指導課長さん、さっきの高級な技能を持っている人、そういう者の引き抜きが行なわれております。これは表面的には労働条件がいいところ、いいところへ移っていくことをだれもとめるわけにはいかぬのだ。しかしその陰に、いわゆる支度金と称して多額の金が積まれているのです。その実態を知っていますか。
  146. 加藤孝

    加藤説明員 具体的にはどのくらいの金額がどういう形で支払われているかは存じておりません。
  147. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 要するに、移っていくときに表へ出ない金があるのですよ、支度金と称して。(「裏金だ」と呼ぶ者あり)そう、裏金。そういうものがあるから移っていくわけです。たいてい、こういう技能者なり技術者なりは、学校の問題があるし、やはり奥さんは、なれたところに住みたいわけだ。それにもかかわらず、よその造船会社へ、たとえば石川島播磨から函館ドックへ移るというような、なかなかむずかしい地理的な問題もありますよ、しかしそれを乗り越えて、学校の問題も乗り越えて、そして移っていくからには、かなり高額な裏金があるんだ。そういう実態を掌握したことがあるかというんだ。ありませんか。
  148. 加藤孝

    加藤説明員 一般的にいま御指摘のような話を聞いたことはもちろんございますが、その金額については存じておりません。
  149. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 これはもちろん担当の役所というのは、そういうことを知っておりますと言えば、指導して取り締まらなければならぬのだからそれは言えないわけだ。わかっています。しかし、そういう実態があるということをよく御存じになっていただきたいと思うわけです。やはりどこでもそういう労働者は、高級な優秀な技術技能を持っている人間というものは確保しておきたいわけです。しかし、それが現実には引き抜かれていくわけです。そういう問題について目を光らせなければいけないのじゃなかろうかと私は思うわけです。  次に、いよいよもう終わりでございますが、いままでの建造ドックの問題、手持ち工事量の問題、将来の需給の問題、こういったものを私は五十三年というものを一つのめどとしてまとめてみたいと思ったのですが、御答弁が不十分な点もあります。それからさらに、ただいまの労働省の御説明がありましたような技能者、労務者の関係、こういうものを伺いましたけれども、要するに、日本造船技術というものが世界に冠たるものである以上、これからもこの業界は長く長く繁栄してもらわなければ困るわけです。そういうことを考えましたときに、要するに本法ができましてからもう二十年を経過するわけです。そうでしょう。しかも、さらに永久的に続くであろうことが今度の改正からは言えるわけです。  そこで、政務次官に伺いますが、この頭にくっついている臨時という字です。これはあくまでそのままお残しになるわけですか。
  150. 増岡博之

    増岡政府委員 先ほども申し上げましたように、確かに長年にわたって続いておるわけでございますけれども、その間のわが国並びに国際経済情勢の変化、あるいはまた、今日におきましての経済が非常に流動的であるというところから、実は当分の間ということにいたしたかったわけでございますけれども、それでは歯どめが足りませんので、わが国海運界が正常な運行ができるようになるまで、あるいはまた、ドックの建造につきまして、先ほど先生の御指摘のございましたような状態が安心してできるような状態になるまでという意味で、これは歯どめということでございました。したがいまして、臨時ということを残さしていただきたいと思うわけでございまして、こういう法律は、私といたしましては恒久的なものでないほうがよかろうというふうに思っております。
  151. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 一応理解いたしましょう。  そこで、最後に伺いたいことがございますが、田中総理が今春東南アジア方面を旅行されまして、行く先行く先でたいへん評判が悪かったことをわれわれはニュースで伺っております。そこで、東南アジアの諸国といま日本造船技術を持っているところが仕事の提携を行なっている、あるいはまた、日本と合弁会社をつくる、こういったことがいわれているわけでございますし、現にやっているわけでございます。私たちの承知している点では、石川島播磨がシンガポールや台湾でやっているということも聞いておりますし、あるいはまた、三菱重工も台湾の高雄でやっているというようなことを聞いております。こうしたことを伺っておりますので、その現状についてはどのように把握されているか、また将来どうあるべきか。先般の田中総理の訪問等のことを考えてみて、これらに対する対応策が十分出ていることと私は思いますけれども、どのようになっているかを伺いたいわけであります。
  152. 内田守

    内田政府委員 最近、特に先生おっしゃいましたように、発展途上国、特に東南アジア諸国でございますけれどもわが国に対しまして造船関係の協力要請というものが非常に出ております。先ほどから申し上げておりますような世界造船業の指導的な立場にあるわが国といたしましては、そういう発展途上国への造船関係の技術的あるいは経済的な協力は非常に重要な一つの目玉だというふうに考えておりまして、従来から積極的にこれに協力しておるわけでございます。  まず政府ベースでは、資本協力としてバングラデシュにフェリーの無償供与をやっております。それから各種船舶そのものの供与等をやっております。それからインドネシアに対しましては、造修施設のための資材供与等、そういう協力をやっております。それから技術協力といたしましては、インドネシアに対しまして海運造船アドバイザリーチームを派遣しております。これは運輸省の職員も含めて派遣しておるわけでございます。それからタイに対しましては、修繕ドックの建設のための調査をやっております。それから造船技術研修生の日本への受け入れというような各種の技術協力を行なっているわけでございます。それから、一方民間ベースにつきましては、現在はシンガポールで日立、石播、三菱、それからマレーシアで住友重機械、それから台湾に石播、韓国に川崎、函館ドック等がそれぞれ合弁企業を設立する等、技術的な援助あるいは業務的な援助をやっているというのが実情でございます。  それで、私どもとしましては、先ほど申しましたように、わが国造船業というのは指導的立場にございますし、発展途上国への造船業の経済協力というのは、今後とも積極的にやっていきたいというふうに考えております。  その場合、民間企業の海外進出につきましては、もちろん先生御指摘の現地との摩擦とかそういうようなことがないように、かつ一方では、造船業というのは、先ほど来出ておりますように、国際協調という面もございますので、そういう面も十分勘案いたしまして、当該相手国の地域における造船業の健全な発展がはかられるように、今後とも協力し得るよう行政的に指導していきたい、こういうふうに考えております。
  153. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 詳細な御報告をいま船舶局長からいただきました。とにかく田中総理の東南アジア訪問が非常に悪評であったというところの原因を考えてみたときに、やはり現地の人を動物扱いするというとたいへん申しわけないような表現でございますけれども、現にそういうことがあった。そういうことが結局日本と東南アジアの諸国との間の友好関係にひびを入れてしまう、そういうことを考えますと、非常に重大な問題だと私は思います。したがいまして、要するに親善友好といいますか、あらゆる国に対して機会を均等に与えて、そうして造船技術を持っているものはどんどん出して、そして一そう諸外国にも利益を供与していく。また、日本もそれによって受くべきものは受けてもいいと思います。やはりそういう点も考えてやっていかなければならないと私は思いますので、この点についての十分の指導監督をお願いしたいと思うわけでございます。  あと運輸大臣に対しまして質問がございますが、この点を保留いたしまして、きょうの私の質問を終わります。
  154. 三池信

    ○三池委員長 次回は、明二十日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会