○石田(幸)委員 それでは厚生省にお伺いをいたすわけでございますが、いま
海上保安庁から報告がありましたように、四十七年度二千六百五十七隻、四十八年度二千六百十五隻、こういうふうになっておるわけでございますが、いわゆる海難事故者の中で死亡者が相当多いことはしばしばニュース等で知られておるわけなんであります。また、その事故の悲惨さというのは、陸上の事故とは全く違いまして、私たちが想像する以上の、極端に言えば、簡単に死に至るというような事故になってしまう場合がかなりあるわけですね。したがって、そういうような問題が起これば、いわゆる残された家族の、御主人がなくなられたあとの経済的な安定を求めようという要求は当然無理からぬものがあると思うのです。こういったものは、いま船員保険によって一時支給あるいは年金等になっておるわけでございますが、その
状況について私ちょっと申し上げますので、それに対する意見を承りたいと思うわけでございます。
一つは、その従業員の遺家族の場合の実例を申し上げますと、
昭和四十七年五月二十八日に起こった第8十勝丸の場合、十八人が全員死亡という
状況になっておりますね。その
状況を調べてみますと、その遺家族で船員保険の最高の年金をもらった人が八十五万二千円、最低が五十万六千円、一時金として
乗組員の厚生共済保険によって百万円、それから船員保険年金から、第一子に対して年額七千二百円、第二子に対して四千八百円、こういうふうになっております。この第8十勝丸の場合は、いわゆる任意の生命保険に入っている人がかなりあったわけでございますが、全く入ってなかった人が二人おる、こういう
状況であったわけでございます。
そこで、私も
現地へ行ってこれをいろいろ調べてみたのでございますけれ
ども、遺家族の実態というのはきわめて同情すべきものがあるわけです。
一つは、その遺家族の場合は、自分たちの生計を保つために漁協
関係に働いている人がほとんどであります。ところが、女性であるために日当が非常に低い。去年の四月に私は
調査に参りましたけれ
ども、日当千円前後というのが普通であります。時間給の場合で百五十円から百八十円くらい。こういうようなきわめて低い労働
条件の中で働いておられる。あるいはまた、たまたま生命保険等の外交をやっている人も中にはおりますけれ
ども、そういうような
ケースにいたしましても、働き手がいわゆる日給月給でありますから、病気になったときなんかたちまち家計に赤字を生ずる。場合によっては生活保護を受けなければならぬ、こういうような場合も出るようでございます。また、残された遺家族の特徴というのは、そういう海で遠出をする人というのは、高年令層というのはいない。大体中年層から青年層が多いわけですね。そういったために未亡人も比較的若い人が多い、こういう
状況でございます。
具体的な実例を私は聞いたのでございますが、たとえば未亡人が子供を連れて、若いから、自分はもう実家へ帰りたい。しかし、家にはなくなった主人の両親がおって、子供を連れていかれては保険金がもらえない。今度は老夫婦が生活ができなくなってしまうということで、子供の所属をめぐってその未亡人としゅうとさんの間で大げんかが起こっておる、こういうような実態も実はあるわけなんです。まあ老人夫婦があきらめて生活保護でも受ければいいのですけれ
ども、やはりいなかの人でございますから、生活保護を受けること自体がその
地域で指をさされかねないという
状況があって、なかなか生活保護を受けようとしない、こういうような実態があるわけです。したがって、こういう問題を解決するためにはどういう
対策がいいか、いわゆる年金制度という問題をいろいろな意味で考えなければならぬ。
もう少し申し上げますと、今度は年金で生活をしていらっしゃる家へ行きまして私もいろいろ
状況を聞いてみました。ところが、年金に対してかなり不満を持っておる。それは物価上昇が非常にきびしいので、十年も
経過している場合はどうにもならないような、まあお小づかい
程度にしかならなくなってしまう。そういうような
状況になっている。年金は主たる生活の資金ではないというふうにならざるを得ない。そういったところから年金の物価スライド制を強くこの人たちも望んでおるわけです。中にはいろいろな方がいまして、年金のほうがいいという方も事実おられるわけです。たとえば、子供さんが比較的大きくて、あと三、四年しんぼうすれば子供も社会に出て働いてくれるだろう、そういう三、四年の間であるから、年金をもらって、そしてその間子供の養育費に充て、その他の生活費は自分たちがさらにまたかせいでいく、こういうようなことでやっていける家も多い。こういうところはもちろん年金を望んでおるわけです。ところが、先ほ
ども申し上げているように、未亡人が比較的年令が若くて、実家に帰りたい、あるいは将来の物価高を心配しまして、とても年金だけではやっていけないから、一時金をもらって下宿屋か何か商売でもやって生計を立てたい、こういうような希望の人もずいぶんおるわけですね。そういうわけでこの年金という制度については、その人の生活
状態によって一時金として全額もらう、その人の希望によっては年金がもらえる、こういうような両方の制度が適用できるような方向にならぬものか、この点が私の最もお伺いしたいところのポイントなわけであります。いかがですか。