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説明員(
越智勇一君)
先ほど事務局長から申しましたとおり、
学術会議は非常に大きな
二つの使命を持っておると私どもは
考えております。その
一つは、国の科学政策の基本的な形になるような重要な問題を
審議して、そうしてその実現をはかるという事柄と、学問の
研究連絡をいたしまして、その能率の
向上をはかるという
二つの使命があると思うのです。
この
審議をするというようなことにつきましては、その基盤であるところの
研究者との連絡、そういう人の意見が十分反映せられるようにわれわれはつとめていかなければならないというふうに
考えております。それがためには、
日本の中でも、
研究者は御存じのとおりすべて学会を持っておりますが、
学術会議が今日公認している学会も約四百ぐらいございますけれども、それ以外にまだ公認はせられておらぬのを合わせますと、千ぐらいございます。人といたしましては約五十万人ぐらいおるわけですから、その
研究者と緊密な連絡をいろいろな形でとって、そういう第一線で働いている
研究者の意向を十分に取りまとめて、そうして国の科学政策の根本を立てるという
考え方を持っております。
それからもう
一つ、
研究の連絡というような事柄につきましては、やはり内外の学会との連絡を十分にしなければなりませんから、その
一つといたしましては、
国際会議が今日大体四百から五百ぐらい、ぜひともやらなければならない
国際会議というものがございますが、それに対して
学術会議が代表を派遣することができるというのは、ようやく六千万円ぐらいのお金ですから百人ぐらいで、百
会議に一人がようやく出るというような事柄でございます。それからまた、
国内で
国際会議を今日開いておりまするのは、大体年によっても違いますけれども、三十ないし四十ぐらいありますけれども、
学術会議が主催をして、そうして
国際会議を開くことができる
予算的な措置が講じられておるのはようやく三千万円ぐらいでありまして、数にして三つか四つというようなことでございます。これはどうしても、
国内で
国際会議を開くというような事柄についての世界の要望は非常に高いわけですから、ぜひともわれわれはそれをもっと大きくしたいというような
考え方は持っております。
そういうような事柄によって、少なくとも科学政策の基本になるような長期的な、あるいは非常に高度な形というような事柄については、
学術会議がその責任を持っておるというふうにも私ども
考えておるのですけれども、いままでは科学政策の基本と申しますると、
研究者は真理を追求すると申しまするか、科学をやるということで申しましょうか、そういうことそれ自身はいいことである、善である、真理の追求ということはそれ自身でもうすでにいいことであるという
考え方と、自然を征服するのは人間の英知であって、これは非常に大事なことである、称賛すべきことであるというような
考え方がいままでは基本的にあったのですけれども、それは
日本の
学術会議だけと申しませんけれども、世界の科学者がそういう
二つの信念に基づいていままでやってまいりましたので、いわゆる学問というものが非常に進んでまいりまして今日の文明を築かれたのでございましょうけれども、それが今日になりましては、逆のマイナスの面が非常に大きくなってきている。
一つは公害の問題だとか環境の問題だとか、物価の問題だとか、国土、産業の問題だとかというような事柄にマイナスの面が大いに起こっておりまするが、それはかつて善であり、かつて称賛すべき事柄であるという信念に基づいてやっておった
研究者というのが、いまにして
考えると間違っておったわけです。それ自身としては間違っておったことであるというようなことの自覚を、今日の
学術会議は十分反省いたしておりまして、この九期の初まりには、
学術会議はそういう
二つの、いままで許されておったというか、そういうような信念に基づいておった事柄が間違っておったというようなことについての反省をいたしまして、学問をしたその結果が、社会的にどういうふうな影響を持つかというようなことを
考えて、その行き先まで見届けて勉強しなければならないという自覚に立っております。それはしょせんは人間の幸福につながる。もちろん、物質的に繁栄するということも幸福の一面でありましょうけれども、今日のように環境の問題、公害の問題、物価の問題というようなことが起こってきますると、これはまたマイナスの面もありまするので、そういうことも十分反省し見届けながら勉強するというような決意を新たにいたしておりまするので、第九期の始まりには、総会の申し合わせの決議といたしまして、私がいま申し上げました
二つの事柄については固い決議をいたしております。
そうして
学術会議といたしましては、たいへん口はばったい言い方になるのですけれども、やはり科学とか教育とか宗教とか芸術とかいうような事柄は、これは政治の揚だけではなくてもっとより共通の場、ことばをかえますると、宗教は宗教の、あるいは芸術は芸術の、学問
研究というようなことは、そういうことに携わっておる
人たちの意見というものが十分尊重せられ、それが政治に反映して、そして国民全体のしあわせになるというような形になるものであるというふうに私どもは
考えておるので、そういうような意識を十分反省し、今日
考え方を改めて、そしてやっていこうというふうに
考えております。
したがって、今日の
学術会議といたしましては、過去にいろいろなことがございましたでしょう。いいこともあり、あるいは欠陥もあったかもわかりませんけれども、これからは二度と再びそういうふうな間違いがないようにしようという決意をあらためておりまするので、しかしそれをやるがためには、やはり
予算というようなものがどうしても現実の問題は起こってまいりまするので、去年の
予算ということにつきましては私どももまだ十分議論を尽くしておる状態ではありませんでしたから、
総理府のほうへ要求いたしましたのも、きわめて事務的なと申しまするか、在来の型でありましたけれども、来年度はぜひそういうようなことも十分お認めいただくようにわれわれのほうで準備をいたしまして、そしてやろうというふうに
考えております。