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国務大臣(
田中伊三次君) まず、どういう
原因でこういう
事態が起こるのであろうかという
先生の
お尋ねでございますが、これは、そのこと
自体私からお答え申し上げるのも
所管はずれのように聞こえるのでありまするけれども、
犯罪捜査という観点から一応ながめますと、やはり
物資の
不足が根本的には
原因となってこの
事態が起こるのではなかろうか、こう
観測をされるのであります。
たとえて申しますと、
羊毛なら
羊毛という問題、
わが国国内の
羊毛は絶対量は
不足をしていないという見通しと言えるのでございますが、原産地でありますオーストラリアで本年は
減産の
傾向にあるということが
わが国に伝えられますと、
現地が
減産だ、さあたいへんだということで、
わが国国内の
商社、
問屋筋、そういうものが若干の
買い占めを行なう、若干の
売り惜しみを行なうという
傾向が、
現地の
品不足という
傾向に影響されて、それが動き出す。全体として
国内で
品不足を生ずる結果になる。しかし、どこかに積み重ねられておるのでございます。たいへん敏感なものでございますから、
現地の影響が直ちに
国内に影響するという状態が実情ではなかろうか。やっぱり厳格に取り締まっていく必要がある。
売り惜しみ、
買い占めに対する厳正な
態度が必要であろうということが、
捜査の面からながめた見方でございます。
それから
生糸なら
生糸にいたしましても、本年、昨今の中国の
生糸事情が
減産の
傾向にあるということが、これは事実そのようでございますが、これが伝えられますと同時に、
国内の絶対量が
不足をしておらないのにかかわらず、
生糸の
存在が片寄ってくる。これが
品不足という結果を招来しておるというふうに考えられるのでありまして、この
生糸などの点から考えましても、やはり
取り締まりは厳正でなければならぬ。行き過ぎることもどうかと存じますけれども、厳格な
取り締まりを断行しなければならぬものというふうに、
取り締まりの面から、私の
所管事項自体ではございませんが、
品不足をそういうふうに
観測をしておるのでございます。
それから、いま
先生のお
ことばであります
食管制度でございますが、
食管制度をめぐりまして、
食管法違反には
食管法に
罰則があるのは御
承知のとおりでございますが、なおかつそれで十分でない場合、必要に応じまして、いま眠っておるように見える
物統令の
適用もやむを得ないのだと、こういうふうに私が
発言をしておるのでございます。
食管法はどういう場合に、
お尋ねに
関連をして
違反が起こるのか、
食管法自体の
罰則に抵触するのかと申しますと、第一は
商社が
生産者から直接米を
買い取る場合、これは
食管法違反が起こります。それから
ブローカーから
商社が米を
買いあさったという場合も
食管法違反が明瞭でございます。それからお米の
移動は、
許可を受けず米の
移動は許されないことが
食管法上の大原則になっております。
許可を受けないで
買い占めた米を
移動した、輸送したといったような、輸送の
違反というものが起こってまいりますと、これまた
食管法に抵触することになるのでございます。この
ブローカーから
買い求めたり
生産者から
買い求める、こういうことのほかに、もう
一つは
横流しというものがございます。
横流しというのでございますから、
卸売り業者、
小売り業者の持っております米を
買い占める、この
意味で
横流しになるわけでございますが、これまた
食管法の厳格な
規定に
違反する。こういう場合には
違反それ
自体、量のいかんにかかわらず
食管法を
適用してぴしゃり
刑罰を受けることになるわけでございます。
それで十分でない場合というのはどういう場合であるかと申しますというと、
買いあさるところまでは、さほど大きな
違反また悪質の
違反だということが言えないのでございますが、
買い占めた結果いつまでもこれを放出しないで、世の
米不足になりますことをねらいまして、そうして不当に高い
価格をもって売却をいたしまして、それで不当な
利益を受けるという場合が起こってまいりますというと、これは
食管法自体で処断ができにくい。この場合は
物統令に基づきましてやっていくわけでございますが、
物統令は御
承知のごとく、この場合には
懲役十年、いまから昔にあたりますときにできました
法律といたしましては、ちょっと驚くべき重い
刑罰がついておるわけでございます。十年以下、
罰金は十万円。当時の十万円というと大きな
罰金でございますが、
罰金は十万円以下、
懲役は十年以下という
規定がございます。それから、
買い占めて不当に高い
価格で売却して、巨額の
利益をおさめた、まあ一口に
暴利をむさぼったという場合には、そういうふうに
懲役十年以下、十万円以下という重い
罰金、重い
刑罰があるわけでございますが、そこまでは至らなくとも、
売り惜しみの
程度、
買い占めの
程度というものが度を越えておる場合、この場合におきましては、やはり
物統令に
規定がございまして、
懲役は五年以下、それから
罰金五万円以下という
規定が確かにあると記憶をしております。これをやはり
適用する場合もなくはなかろう。しかし、
刑罰のなにから申しますと、
食管法の
刑罰の
程度と似ております。似ておりますが、
食管法を
適用しにくい
事態が起こりましたときには
物統令を
適用してよいのではなかろうか。
ただ問題は、お前の言うておるこの物
統令適用という問題は、古い
法律で、もういまは消えてなくなっておる
法律ではないかというふうに
仰せになる方が間々ございますので、誤解を招くといけませんので申し上げておきますと、
昭和二十一年ごろにできました
勅令でございます。これはその後、たしか二十七年ごろに至りまして、
法律八十八号をもって、
物統令に対しましては
勅令に
法律としての効力を
国会が与えております。したがって、
物統令と称するのでございますが、今日は
法律でございます。
物統令と称する、形の変わった
法律でございます。これが
存在をしております以上は、これを
適用して当然である。戦後これができましたときには、戦後の
経済混乱を防止して物価の安定をはかるためにできたものではございますけれども、今日これを
適用するには、もってこいと言うと妙な
ことばでございますが、たいへんに的中をする。今日こそこういう
物統令という
法律が要るのではないかと思われるほどに、まことに
適用の条件も妥当なもので、今日のためにつくったのではなかろうかと思えるほど大事な要件が備えてございます。
そういうところから私は、
食管法食管法と一方的に言うておるが、なに
食管法じゃない、
食管法適用で不十分な
部分につきましては、事犯によるわけでございます、どれでもやるというわけでございませんけれども、
物統令を
適用してやるべきものである。
価格統制は、この
物統令の中の
価格統制に関する
部分はほとんど廃止同様でございます。現在残っておりますものは、お
ふろは残っております。
ふろは
物統令を
適用しております。これだけでございます。
ふろ以外のものは全部
撤廃をしておりますので、世の中から
物統令は消えたように見えるのでございますが、
価格統制以外は、いま私が申し上げますように、
売り惜しみ、
買い占め、もっと悪質なものは
暴利をむさぼった場合、こういう場合には完全に
適用のできる
内容を持っておる
法律でございますので、この
物統令と称する
法律を
適用してすべきものである、こういうふうに考えておるのでございます。
それで、おまえは
一体この
適用問題をどう考えておるかというお
ことばが先ほどございましたので、それについてちょっと一言、恐縮な
お願いでございますが、
お願いを申し上げたいと思いますことは、これをやりますにも、だれがどんな
買い占めを行なって、だれがどんな
売り惜しみをやっておるのかということが
調査ができませんと、ことに検察庁の
態度というものは、手錠をはめるというわけにいかぬわけです。それを
調査をいたしますために、ためにというわけではございませんが、
一つのきっかけとしてこれが得られると思うのでございますが、何としても過般
政府から御審議を
お願いしております
生活関連物資緊急措置法、これは社会党さん、野党からもお出しになっておるわけでございますが、この両
法律がたいへん、どちらがよいと私が言うのではございませんが、両
法律はたいへん重要な
意味を持っておる、こういうふうに考えますので、この
法律ができますれば、
現地に踏み込んで
調査をする。踏み込んで
調査をすることにじゃまをすれば
懲役にやる。
懲役一年。それから
調査をして
報告を命ずる。
報告にがえんじないときにおいてはこれまた一年以下の監獄にやるという、非常に厳格な
態度でございます。問題は、
幾らか、
勧告をいたしました場合に
勧告に応じない場合はそのままという、いわゆる
社会罰といったようなことで終わっておる点に問題があろうかと存じますけれども、問題は問題といたしまして御
審査をいただきまして、それで、どうかすみやかにこの
法律を
衆参両院を通過せしめていただきまして、
成立を
お願いしたい。これさえできますれば、自信を持って、
食管法の
適用もすれば
物統令の
適用もする。一罰百戒の効果が生じますように、大都会における
商社を
中心といたしまして
手入れができる。
手入れをするためにこの
法律をつくるのかといわれると、おしかりをいただくことになりますので、そうは言うのではございません。この
法律ができます結果は、結果として
手入れがしやすくなるのだ、こういうふうに考えて
お願いをしておる次第でございまして、どうぞ、この
法律の
成立に御
協力をいただきますように
お願い申し上げる次第でございます。