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1973-04-03 第71回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月三日(火曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  四月二日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     田中寿美子君  四月三日     辞任         補欠選任      三木 忠雄君     塩出 啓典君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 林田悠紀夫君                 山崎 五郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 上田  哲君                 川村 清一君                 小林  武君                 杉原 一雄君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 安永 英雄君                 阿部 憲一君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 加藤  進君                 塚田 大願君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        郵 政 大 臣  久野 忠治君        建 設 大 臣  金丸  信君        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    江崎 真澄君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  増原 恵吉君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君    政府委員        警察庁交通局長  片岡  誠君        防衛庁参事官   大西誠一郎君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        田代 一正君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        防衛施設庁施設        部長       平井 啓一君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        国税庁次長    江口 健司君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林省構造改善        局長       小沼  勇君        農林省農蚕園芸        局長       伊藤 俊三君        農林水産技術会        議事務局長    中澤 三郎君        食糧庁長官    中野 和仁君        通商産業政務次        官        矢野  登君        通商産業省企業        局参事官     三枝 英夫君        通商産業省公益        事業局長     井上  保君        運輸大臣官房審        議官       原田昇左右君        運輸省港湾局長  岡部  保君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省自動車局        長        小林 正興君        運輸省航空局長  内村 信行君        郵政省人事局長  北 雄一郎君        建設政務次官   松野 幸泰君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省河川局長  松村 賢吉君        建設省住宅局長  沢田 光英君     —————————————        会計検査院長   白木 康進君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        国立予防衛生研        究所腸内ウィル        ス部長      多ケ谷 勇君        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君    参考人        新東京国際空港        公団総裁     今井 栄文君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○分科会に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十八年度一般会計予算内閣提出衆議 院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算内閣提出衆議 院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。分科会に関する件につきましておはかりいたします。分科会の日数は来たる五日、六日、七日及び九日の四日間とすること、分科会の個数、所管事項分科担当委員数及び各会派への割り当てはお手元に配付いたしましたとおりとすること、分科担当委員選任前例どおり委員長の指名並びに分科担当委員の変更につきましてはその取り扱い委員長に一任すること、分科会におきまして参考人出席を決定いたしましたときはその取り扱い委員長に一任すること、以上のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、委員長に御一任いただきました分科担当委員選任につきましては、お手元に配付いたしましたとおり指名いたしましたので、御了承いただきたいと存じます。     —————————————
  4. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。総予算審査のため、本日、新東京国際空港公団総裁今井栄文君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、小林君の質疑を続行いたしま  す。小林武君。
  7. 小林武

    小林武君 成田空港開港というのはいつごろになるのか、予定よりどのぐらい遅延したということになるのか。
  8. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 成田空港開港の時期は、いろいろの準備がおくれましたために、一番初めは四十六年の四月でしたか、そのころに開港するというめどを立てたことがあるようでございますけれども、その後、準備工事がおくれたりいたしまして、何回か開港の時期を、いつごろになるだろうという予想関係大臣から発表したことがあるようでございますが、いまの時点で申し上げますと、実は、これもまださだかではありませんけれども、いま、われわれのほうで懸命の努力をいたしまして開港の進捗をはかっておりますが、いろいろの条件が、いま私ども計画しておりまするのに見合ってくることになりますと、大体本年内には開港できるんじゃないかということを、私はいま予想をいたしておるのでございます。本年内には開港できるんじゃないかと考えております。
  9. 小林武

    小林武君 おくれの、その直接の、いま原因といいますか、これをやらなけりゃ開港できないという、その点は何と何で、どんな困難点があるのか。
  10. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 非常にたくさんの問題点がございました。私は、まあ就任以来三カ月余りでございますが、この点について就任以来鋭意取り組んでまいりまして、問題点一つ一つ実はつぶしてきておる状況でございますが、一番問題になりますのは、航空燃料輸送のためのパイプラインでございます。ターミナルビルとかあるいは滑走路等につきましては、ほぼこの工事が完了をしておると言ってもいい状態になっております。それで、燃料輸送のためのパイプラインでありますが、これは本格的に成田空港が完成をいたしまして、それに将来とも永続をして燃料が供給されるようになりますのには、非常にこれは、何といいますか、安定した確実な輸送方法が確保されなきやならぬわけでございますが、当初計画しておりましたパイプラインの問題につきまして、これは、鉄道とか河川、道路なんかを横断をするのに、初めの計画でまいりますと、まあ非常に工事上の困難なところが出てきたとか、あるいは千葉におきまして、千葉市内ルートで、沿道の住民の力から、このパイプライン千葉市内に布設するということについての反対連動が起こりまして、どうも初めの計画どおりにいかないというようなことで、実は、ある期間工事を全然停止しておったような時期がありました。しかし、本格的なパイプライン工事につきましては、そういうふうな事情がございますので、ルートを変更せざるを得ないということになりまして、関係各省と打ち合わせまして、いまほぼ、その新しいルートの設定ができそうな状態になってまいりました。しかし、これは、工事にすぐかかりましても、やっぱり三年間ぐらいはかかるのじゃないかと思うのです。でありますから、その間、成田空港開港しないで、そのままの状態でおくというわけにはいきませんので、いま、この本格的パイプラインルートの決定、それについての工事を進めるというようなことと並行いたしまして、暫定的に、燃料輸送をどうするかということを並行的にいま交渉をいたしております。このほうは、いろいろの条件がやはりございまして、この点もまだ全部クリアになったとは言えないんですけれども関係者が非常な努力をしてくれておりまして、現在では非常に明るい見通しになってきておりまして、そういった点を考えまして、先ほど申し上げましたように、そういう点が希望どおりにまいりますれば、本年内には開港できる見込みが出てまいりましたということを、さっき申し上げたような次第でございまして、毎日のように、この両方の問題に取り組んでおる次第でございます。
  11. 小林武

    小林武君 それでは、こう理解してよろしいですね。パイプラインの問題が解決すれば——これは暫定のほうも含めて、これは年内開港できると、こう理解してよろしいですね。
  12. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 開港には、その航行用燃料輸送方法さえ確保できれば年内開港は可能である、こういうふうに御理解いただいてけっこうです。
  13. 小林武

    小林武君 輸送というのは、燃料輸送ですね。
  14. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 燃料輸送ですよ。
  15. 小林武

    小林武君 もう一つ滑走路の点については大体よろしいと、こういうあれだったが、滑走路というのは、一体、かなり大規模国際空港になるわけですが、現在何木ということになるわけですか。
  16. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 四千メーター滑走路がもうできております。ただ、その滑走路をフルに使いますのには、地元の反対派がその滑走路の前面にこしらえて、まだ取り除いていない鉄塔がございまして、鉄塔二基ございます。これはしかし、関係方面等の協力によりまして、開港時までにはそれを取り除くような措置を講じなければならぬのでございます。
  17. 小林武

    小林武君 それは一本だけですね。何本かの滑走路が全部問題になっているわけですか。これはどうですか、総裁から詳細に答えてください。
  18. 今井栄文

    参考人今井栄文君) ただいまでき上がっております滑走路は、四千メーター滑走路が一本でございます。しかし、今後の第二期の計画といたしまして、二千五百メーター並行滑走路一本、それから、それとちょうどクロスする形になりますが、横風用滑走路三千二百メーター、これをもう一本、計二本の滑走路をさらに第二期工事として計画いたしております。
  19. 小林武

    小林武君 そうすると、この三本の滑走路が完成すれば、成田空港としては、その点では完全に完備したと、こういうわけですね。
  20. 今井栄文

    参考人今井栄文君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
  21. 小林武

    小林武君 そこで、その他の諸施設ができていて、いまの問題だけで長い間空港開港が延び延びになってきたということは、これについて一体どういう反省といいますか、これから新設の、たとえば関西空港の問題もあるでしょうししますから、どういう点を一体反省するか。反省するということは、決して自分のまずかったことを言うということだけではなくて、やはり、むだなことをやってもしようがないということなんだ。だから、そういう点で、適地を選ぶという点なども含めて、大臣から何か御意見があったら承りたい。
  22. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 非常に規模の大きな国際空港でございますから、こういう国際空港の新しい建設をするにあたりましては、もっと具体的に、地域自治団体でありますとか住民とか、そういった人たちとの関係を事前に十分に調査をし、そういう研究をした上でやらなければならないということが第一番でございます。  それから、わが国にはそういう広い土地がどこにもここにもあるわけじゃないのでございますから、やはり東京とか、あるいは近畿圏とかには国際空港が必要でございしょうが、そういう位置の選定にあたりましても、この地域との関係考えると同時に、やはり東京で言いますと首都圏中心関西で言いますと大阪等との間の連絡ということを十分に考えてやらないと、そういった問題について、なお東京大阪もやっぱり問題が残っているわけでございますから、もう少し十分な計画上の配慮が必要でなかったかということが第二点でございます。  それからもう一つ考えますことは、やっぱり騒音問題ですね、騒音の問題。これはまだ成田空港開港しておりませんから、われわれとしましては、今度の大阪空港について、周辺整備法律案をいま提案しまして御審議をいただこうとしておりますが、この騒音問題につきましては、もちろん、空港があるということは地域の繁栄というのにもある程度結びつく問題があるだろうと思いますけれども、それにも増して、この騒音問題が地域住民日常生活に相当の大きな影響を与えているという点を考えまして、そういった点について十二分の配慮をしなければならない。位置を決定するにあたってもそういうことでございますし、なお、決定せられた場合におきましても、騒音公害最小限度でなければならぬ。それに対する、多少の経費をかけましても、あらゆる配慮をして、地域住民日常生活に大きな障害を与えないような配慮をしていかなければならぬというようなことが考えられるのでありまして、そういった点を、まあ反省といえば反省でございますけれども、当然のことでございますけれども、そういう点について非常に考えさせられる点が多かったのでございます。
  23. 小林武

    小林武君 公団総裁にお尋ねいたしますが、いま騒音の話が出ましたけれども、離着陸における成田空港における騒音というのは、これは国際線でございますから非常な大きなやつが使われると思いますが、この点については、どのあたりが一番問題になるというようなことをお考えになりますか。これは成田周辺だけの問題ではなしに、飛び上がるまで、それからさらに、どこらが一番最高の騒音を出すというようこととか、その影響等についての御答弁をいただきたい。
  24. 今井栄文

    参考人今井栄文君) 騒音につきましては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、私どもとしても、地域方々に対して最大の関心を持っておるわけでございますが、当初計画いたしましたときは、現在の四千メーター滑走路中心にして申し上げますと、滑走路のそれぞれの両端から先は大体二キロ、それから、滑走路中心点から横は約六百メーターというふうな範囲におきましては、とうてい人が居住することは困難であろうというふうな関係から、できるだけ、その区域につきましては、騒音区域として移転を願うというふうなことで、今日まで極力地主の方々とお話しして用地買収をいたしてきておりますが、それ以外に、現実に飛行機が飛んで、ある程度の騒音一般日常生活被害を起こすような騒音があるということになれば、当然に、その二キロ、六百という騒音区域範囲は拡大して、それに対する手当てをしなければならない、こういうふうに考えております。  それは、現在の四千メーター滑走路でいいますと、成田から北方のほうと、それから成田から南のほう、たとえば山武郡芝山町その他につきまして、その二キロ、六百の範囲外についても、やはり同じような騒音被害があるということであれば、同じような騒音対策を講じなければならない、こういうふうに考えております。
  25. 小林武

    小林武君 その騒音の中において、がまんのできないというような、生活できないというような、そういう戸数、人数というものは大体どのぐらいになりますか。
  26. 今井栄文

    参考人今井栄文君) お答え申し上げます。  現在、御承知のように、北総地域はまだ人家がそれほど樹密なところではございません。実際に、たとえば非常に激しい騒音、八十ホンとかあるいは八十五ホン、九十ホンという騒音がどの範囲まで広がるかという点につきましては、具体的な、実は現地に即してのデータは持っておらないわけでございますが、羽田や伊丹と違いまして、現在、まだ比較的人家が少ない、森が多い地域でございます。私どもの想定といたしましては、あの周辺騒音影響を受ける範囲というものは、大体二千戸内外ではないかと思います。ただ、その騒音範囲が、はたして七十ホン程度で済むのか、あるいは八十五ホン以上の激しい騒音になるのかという点についての具体的なデータは、まだ私どもとしては持っておりません。
  27. 小林武

    小林武君 これは私の知識ではないんですけれども、何か、いままでの例によって調べてみると、銚子のちょっと海上で九十ホンぐらいのあれがある。その際には、非常に強力な、何かエンジンのかけ方でそうなるのだそうでありますが、そういうことになると、私は、それをどうこうするというような問題でなしに、運輸大臣に申し上げたいんだが、国際空港というようなものが、人口稠密地帯、特に日本人口の大半を占めているような、こういう地帯につくるべき一ものなのかどうか。そしてまた、それが先ほど言った足として使う場合に、便利がいいからという点だけではだめではないのか、大体、日本の国土の中にどのぐらい一体そういう国際的な空港をつくって、そして、それの間の連絡というのはどうすべきなのかという考え方に立たないというと、これはできないと思うんですが、どうですか、この点は。
  28. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) その点は、抽象論としましては、おっしゃるとおりだと思うのです。今度、成田空港の問題も、関西空港の、いまこれ、審議してもらっておりますが、そういう問題も、大体やはりあなたのおっしゃったようなことを考えながらやったものだと思うのです。成田空港の問題のとき、きまるまでに数年かかっております。東京湾のある一部分を埋め立てようとか、埋め立てる位骨も二、三カ所あったことは御承知のとおり。で、この場所だとこういうふうな弊害があるとか、あるいは航行の安全上障害があるとかいうようなことを、あらゆる角度から考えて、結局、絶対的にいいというところはないと思いますけれども、相対的に、幾つかの中では一番この場所がいいだろうということできめたものだと思います。それにつきまして、絶対的にあらゆる点から見ていいという空港は、日本のような狭いところでは、なかなかこれは選びにくいと思います。それなら国際空港がなくてもいいかといいますと、そうはいかないだろうと思います。どこかにやはりつくっていかなければならぬ。そういたしますと、いまの選定された成田空港につきましては、よって惹起されるであろうあらゆる障害というものを、力の及ぶ限りそれを克服しまして、そして地域との調和をはかりながら、やはり国際社会日本も各国と一緒になって、空港を利用して交流ができるようにという措置を講じるような考え方で進んでいかなければならぬと思うのでありますが、いまのとまろ、成田が結果的に見まして、あれでよかったのかどうかということについては、いろいろまたこれはお考えがあるかと思いますが、もうすでに何百億というふうに資本投下をしておりますので、これは、それに拘泥する必要はないといえばないですけれども、いまのところは、その当時から何年もかかって調査した結果、これが一番いいんだろうということでスタートしておりますから、それについて、われわれは、繰り返して申し上げますが、最大限の努力をして、あらゆる点についての障害をできるだけ除去しながら、よい空港にする義務があるということで、いまはそれで懸命になっておるのでありまして、その点は御了承をいただきたいと思うのであります。
  29. 小林武

    小林武君 これは公団の総裁に申し上げたいのだけれども滑走路が全部でき上がって、そしてフルに回転できるようになった場合に、相当のこれは飛行機がここへ集まってきて離着陸をやる。その場合には、あなたのおっしゃるように、七十ホンぐらいなんていうようなことを言ったら、それは間違いです。赤坂のあそこの、ちょうど東急の前のところが、いつだつて七十ホンになっている。だから七十ホンなんて、そんなことを言っておったらたいへんなことで、おそらく周辺に与える影響というのは大きいだろう、われわれが予測しない程度のものにだんだんふえていくだろう。将来、成田というものは、必ずしも成田全部で消化するということは、これは不可能であろうということになりますと、そういう配慮も含めた運営というようなことを考えないというとならないのではないか、これは答弁、特別要りません。  なお、運輸大臣に申し上げたいんですけれども成田空港というのは因縁づきのところなんですね。そうして、いまなお、それがなかなか納得いく段階にいかない。ある意味では、もう住民に、さらに今度、行政単位の地方自治体までこれに参加する反対の声というようなものも出るわけで、いわば、この成田空港というようなものは、これは見ようによれば、反対されたから、しゃくにさわると、あなたたちの立場では考えるかもしれないけれども空港を選ぶという点について非常な配慮が必要だということ、これはもう、ちょっとした見通し、読みでもってやっちゃいけないことだということを考えますというと、先ほど来、非常に柔軟な考え方運輸大臣はお持ちだから、まあ間違いないと思うけれども、いまもう大阪でもやっている。それから、大阪のいまの空港自体がまた問題になっているんでしょう。だから、そういうことを考えまして、先ほど来私は言ったんですけれども、大体、これは日本に何カ所ぐらいというようなあれがあるか、よく将来の展望を見て設置して、その間のことを考えるべきだと、こう思うんです。  それで、ひとつですね、それと——まあそれでいいです。
  30. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) おっしゃることはよくわかるんです。そういうつもりでわれわれもやっておりまして、一ぺんきめたから、何でもかんでもこれを押しつけて、地域住民に非常な迷惑をかけてもやり通すんだということではなしに、さっき申し上げましたように、多少経費はかかりましても、そういう方との話し合いをいたしまして、一軒一軒話し合ったらいいと思うんです。それで、どうしてもこれじゃ困るということであれば、代替地をつくって、そして住宅の移転補償をして、違った家に住んでもらいたいというようなことも、もちろん考えておりますし、予算措置も講じてございます。  要するに、そういった問題については、地域住民やら地方自治団体と対抗してやろうたって、これはやれないんです、今日では。それはもう明瞭ですから、そういった点については、われわれは最大限の努力をしてまいりますということを、さっきからも申し上げているわけでございますから、そういう意味で、ひとつ、まあお立場は違いましょうが、ぜひ皆さんにも御協力をいただきたいと思っているんです。  それから、騒音問題につきましては、私は技術者じゃありませんからよくわかりませんが、世界各国とも、やはり、日本のように大都市に非常に隣接してつくっているところはそんなにないかもしれませんが、それでもやはり騒音問題が非常に起こっているわけです。それで各国とも、何とかして騒音の少ない飛行機ですね、エンジンというようなものを考えようというんで、いま懸命に研究開発をやっておると聞いております。でございますから、同じような機種でございましても、新しくつくる飛行機は騒音公害が非常に少なくなるということも考えられます。そういった研究開発と並行いたしまして、この騒音の問題は、地域住民がまあまあがまんできる程度までは何とかしてこれは持っていかなければならないし、その努力は、これは経費がかかりましても何とかしてやっていこうというつもりでおりますので、その点はもう少し——将来に対しましてわれわれも希望を持っておりますけれども、もう少し先を見ていただきたいと思うわけです。  それから、周辺のことについては、何メーターとか何百メーターとかいうような、そういう、何といいますか、しゃくし定木な内規のようなものに別にこだわる必要はないと思うのです。そういう騒音が少しあっても差しつかえないような、たとえば倉庫とかなんとかというようなものは、これはそこにあってもいいと思いますが、しかし、日常居住することになりますと、あなたのおっしゃるように、まあ環境庁のほうでは八十ホンぐらいと言っておりますけれども、そういうのではがまんできないというようなところは、個別的に御相談をして移転補償をして、そして新しいところに代替地を求めて移転してもらうというようなことは、これはもう当然われわれとしてはやらなければならないことだと思っております。これについては、万全とはいきませんけれども、可能な限り最大限の努力をするつもりでかかっております。
  31. 小林武

    小林武君 どうも、大臣から万全をはずされるというと、万全でさえもなかなかようやらぬのに、万全をはずされたら何やるかわからぬという気持ちがないわけではないですけれども、それはそれとして、今度は国鉄総裁にお尋ねいたしますが、新幹線をつくるというのはどういうところまで進んでおるかということですね。  それから、時間がございませんから、まとめて聞きますが、一体、それは経営的に見て成り立つのかどうかということ、採算がとれるかどうかという問題、この点をひとつお伺いしたい。
  32. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 御質問は成田新幹線のことだと思うのです。建設のほうは、実は私ども直接担当いたしておりませんので、あるいは運輸省のほうから御答弁があるかと思いますが、経営の問題でございますが、できましたら私ども引き受けますので、いろいろ試算いたしてみますと、大体、開業後十年で償却前の黒字が出ると思います。それから、十四年ないし十五年で償却後の黒字というふうに考えておるわけでございます。
  33. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 成田新幹線につきましては、もうこれは昨年の二月に、五十一年度の末に完成することを目標に工事の実施計画を運輸省としては認可をしているのです。これは、建設日本鉄建公団が担当することになっておりまして、でき上がったら国鉄がその運営を引き受けるわけでございます。これも、さっきお話しになったような問題に関連をするのですけれども、この問題については、江戸川区そのほか関係住民方々から非常な反対の運動が起こっておりまして、予定の工事が、これは全然進んでおりません。いま全然進んでおらない。それで、着工することができないのです。できないのですが、何か工事方法を変えまして、あるいは地下の工事にするとかなにかいたしまして、新幹線による騒音公害というようなものも防止しながら、多少経費がかかりましても、これは何かの方法でこのルートをつけておかないと、乗客の輸送にも非常に差しつかえるというようなことを考えまして、この成田新幹線につきましても、打開策を、これは鉄建公団だけではなしに、運輸省も一緒に協議をいたしまして進めるように努力をいたしておりますけれども、ただいまのところは、これを完全に打開できるというめどが、まだついてないわけでございますが、しかし、これは地域方々ともよく接触をいたしまして、何とかして地域方々に納得のできるような方法で、工事に着手してもらいたいという希望をまだ捨てておりませんので、その方向でいま努力をしている最中でございます。
  34. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。  いまの成田新幹線の問題ですけれども、お答えを聞くと、全然目安が立たないのですね。空港のほうも、いつ開港になるか、ちょっとはなはだ心もとない状態ですけれども成田新幹線に至っては、全然これは見通し立たぬということですね。国鉄総裁のいまの御答弁によると、まあ、十年あるいは十五年たてば黒字になるかもしらぬようなお話ですけれども、それは成田空港東京だけを結ぶということで、なおかつ黒字になるという計算なのか、成田空港だけではとても見込みが立たないから、途中にニュータウンか何かこしらえて、駅をもう一つこしらえて、そこの人も運ぶと、こういうことを計算に入れての黒字ということなのか。それからまた、成田で終点にしてしまわないで、さらにそれを常磐線のほうに、あるいは鹿島港のほうにとか、延長するというような構想があるのかどうか、それらの点についても関連して質問したいと思います。
  35. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いまの成田新幹線は、あれをさらに延ばす計画は一応ございません。現時点ではございません。  それから、御質問の初めのほうの、途中の問題でございますが、いま千葉県があそこへ約三十万のニュータウンをつくっております。そのニュータウンのまん中に新幹線を入れますれば、そこに駅をつくるという予定でもって、成田新幹線は東京成田のターミナルのほかに、中間に通勤地域に一カ所という予定でもって計画を立てております。
  36. 小林武

    小林武君 防衛庁長官にお尋ねいたしますが、決算委員会におけるわが党の小谷守君の質問を会議録で読みましてお尋ねをするんでありますが、防衛庁から研究委託をした場合に、工業所有権というものの帰属については私は非常にふしぎだと思っているんです。国が金を出して、その帰属権が防衛庁ではなくて企業にいくというようなこと、これはほかの官庁にはないように思うのですが、どうですか。
  37. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 試作または技術研究を企業に委託して生じました工業所有権の取り扱いにつきましては、研究委託契約または試作契約に伴う工業所有権の取り扱いに関する訓令というのをつくっておりまして、これに基づきまして、工業所有権の対象となる発明または考案が、主として防衛庁の技術的指導による場合には、所有権は防衛庁に帰属する。主として企業の創意研究による場合には、企業側に属することとしておる。その判定が困難な場合には、両者が協議してその帰属をきめるという扱いにしておるわけであります。したがいまして、試作または技術調査研究によって得られた工業所有権のすべてが企業側に属するわけではございません。で、防衛庁の研究開発については、通産省の大型プロジェクト制度の目的とは違いまして、自衛隊みずからが使用するそういう装備品を目的とするもので、開発の成果を広く一般に利用させることを前提としたものではないわけでございます。しかしながら、当庁においても、国費の負担、特許法上等の面から検討を行なっておりまして、これはこの前決算委員会でもお答えをしたのでありまするが、改むべき点については、これは改めていくように、いま検討をいたしておるところでございます。
  38. 小林武

    小林武君 私は、改める点ばっかりだと、こう思っているんです。これは、かつて文部省で外国のいろいろな団体あるいは企業に委託研究をやった際に問題になったですね、やはり。その研究によって得たものの成果についてどうなるかという問題は、教育の中でさえ問題になったですね。この場合、防衛庁の金でやったんでしょう。国の金でやったわけですね。それがどうして一体企業の所有権になるのかどうかということです。これはわからぬです、そういうことは。私は、そういうやり方をやっているというと、将来悔いを残すことが起こると思っているんですが、防衛庁長官は、あれですか、それはあたりまえのこととして、多少何か悪いことがあるから検討しようという程度にお考えなのかどうか、もう一ぺん御答弁いただきたい。
  39. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) この研究開発のくふうが、申し上げたように、主として企業側にある、もちろん、そのための経費を国が支払うわけですけれども、そういう場合には、工業所有権は企業に属せしめるという、いままで、たてまえをとってきたわけで、明確でない場合、主として防衛庁が指導したということと、両者の間で明確でない場合には協議をして定めるというやり方をしておるわけですが、先般御指摘もありましたので、なお十分にその点については検討をいたしたい、まだその検討の結果はお示しできるまでには至っていない、こういうことでございます。
  40. 小林武

    小林武君 長官ね、私は、決算委員会で議論されたことについては、ただそういうことをちょっと見ただけです。しかし、防衛庁では、装備の生産及び開発に関する基本方針というものを出したのですか。
  41. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘の、装備の国産研究開発の基本に関する方針というのは、内部の一つのものの考え方及びその政策の一つの基準といたしまして、昭和四十五年に内部でいろいろと検討をしたものをまとめたものがございます。特別にこれが特に国産ということを奨励するというような特殊な意味を持っているのではなくて、御承知のとおり、自衛隊発足以来、昭和二十五年から四十二年——四十二年というのは、そのころずっとありました米軍の無償による供与品というものが全廃された時期でございますが、そのころ、当初の時期はそういう供与品が多かったのでございますけれども昭和四十二年を境としまして、そういう供与品もなくなり、また非常に装備品の内容が高度化あるいは複雑化してまいりまして、それに応ずるために、なるべく国でやらざるを得ないという客観的な事態もございました。このような事情を踏まえまして、私どもは、日本の産業技術のかなりの高度化をバックといたしまして、国でできるものはなるべく国で安く仕入れることができればという考え方で、そういう方針がありまして、それは決してすべてを国産だけでまかなっていくという、国産優先という考え方だけでは必ずしもございませんで、やはり費用対効果でありますとか、あるいは技術成果の波及の効果でありますとか、そのような総合的な点を勘案いたしまして、国産ということも一つのものの考え方として、これから一つの政策の基準にしていこうという程度のことでございまして、あくまで基本は技術波及の効果あるいは費用対効果という最も経済的な考慮を裏に加えていることは十分考えておる次第でございます。
  42. 小林武

    小林武君 自民党の船田中さんが責任者になっているところの安保何とかという団体で、船田私案として兵器の輸出ということを決定したことがあるというのをある本で読んだんですが、これはそういう事実がありますか。
  43. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 船田さんが、たしか装備の国産化懇談会というふうなものの会長をしておられて、議長になられて辞任をされて、そのあとまた再任をされたか、ちょっと確かでありませんが、そういうことで、国産化の問題についての懇談会の会長をしておられることは承知をしておりまするが、そこでいまお申し述べのようなことを決定したかどうか、ちょっと私、記憶がございません。
  44. 小林武

    小林武君 六九年の夏発表された船田防衛私案というのが、これは船田氏の一私案といっても、与党の安保調査会長である、当時ですね。その中で「防衛生産の市場がきわめて狭小な現状では、とうてい優秀な近代兵器の開発は期待されないので、台湾、韓国、ベトナムなど、東南アジア諸国へ武器輸出の道を開け」と述べているという、これはお聞きになったことございませんか。
  45. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) いまのような、何といいまするか、構想としては、私もしかとした記憶はありませんが、そういう意見がありますることは承知をいたしております。先ほど、ちょっと私御質問を十分に聞き得なかったので、国産化の問題であると思わぬで、政府委員に答弁させましたが、国産化の問題で政府委員から申し上げましたように、私どもは何でもかんでも国産化したいということではなく、特に費用対効果というものを十分に考える必要があるということを考えております。その場合に、やはり日本における国産ということの一番重大なネックと申しまするか、は、やはり需要が少ないということでございます。したがって、どうしても価格が高くつくということでありまするので、そういう点に関連して、これが近隣の国に輸出できればという考えが出たものというふうに考えまするが、これは、従来から政府のとっておる方針は、そういうことを認めておりません。現在もそういうことについての方針の変更というふうなことを協議をしたこともございませんし、変える意思も持っておらないわけでございます。
  46. 小林武

    小林武君 先ほどの装備の生産及び開発に関する基本方針というのは、あなたの答弁はちょっと違うように思うんですがね。あれですか、先ほど来の話のように、国産ということに重点は置いておらないという、そういうことはどういう点で明らかですか。私が見ているんでは、防衛産業の整備方針とか、この内容があなたのほうから出たものであれば、研究開発振興方針というようなものを見ると、これは国産化のほうに非常に重点を入れているというふうに見えるんですが、それは違いますか。
  47. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  実は先ほどの御答弁を繰り返すようになって恐縮でございますけれども、その当時、米軍の供与品、貸与品というようなものが大半を占めておったという状況から、ちょうど脱却しつつある時期にございまして、その時期におきまして、特に防衛需要に関しまして、いろいろと、やはり、たとえば航空機に載せます搭載電子機器でありますとか、あるいは航空機そのものの世界的な高度化状況でありますとか、そのようなものを踏まえまして、当時の日本におきます防衛関係の生産状況というものが、昭和四十四年、四十五年当時におきましては、まだ、きわめて成熟もしておりませんし、また、需要もきわめて小さい範囲でございました。そういうことからいいますと、すべて外国品、あるいは外国企業からのライセンス生産でございますとか、輸入でございますとか、全く国内の生産基盤なしに、ただ、そのままを外国から輸入するというような状況というものがかなり強くなりかかっていたというふうに聞いておりますが、その当時におきまして、現状と違いまして、わが国の外貨収支等がきわめてまだ安定せずということから、現在とはだいぶ事情が異なると思いますが、やはり外貨節約という観点もあったかと思います。そのような技術的な観点とか、あるいは外貨問題でありますとか、あるいは産業技術の水準でございますとか、そのような諸種の観点を踏まえまして、国内におきまして、全くそれが生産基盤も持たないというような状況では、きわめて不安定であると、そのような認識に立ちまして、国産ということに関しまして、やはり特殊のこういう需要に応じます技術向上というようなものは、やはり重視して考えるべきであろうという考え方が背後にありまして、当時のそういう方針が出されたというふうに聞いております。その方針の中にも、国産優先とか、あるいはすべてを国産化するとかいうことは必ずしも明確には出しておりませんで、やはりその経済効果でありますとか、技術水準の波及効果でありますとか、そういうものをたしか、そこにうたってあるというふうに私どもは理解しておりますが、そういう考え方でこの方針が立てられたというふうに聞いております。
  48. 小林武

    小林武君 聞いておりますじゃ困ります。  それでは、ひとつ防衛庁にお願いしたいんですが、時間がこっちにないから、やるわけにいかぬから、防衛産業の整備方針についての説明、それから研究開発方針について、これをひとつ、このものについて、あなたのほうの文章について説明してもらいたい。それについて説明しないというと、あなたの説明じゃ説明にならない。装備の生産及び開発に関する基本方針、それから防衛産業整備方針、その次は研究開発振興方針、これの文章について説明をしないというと、はっきりしません。
  49. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  ただいま、たいへん申しわけないんですが、手元に実はそのものの方針の書いたものを持ってきておりませんで、もしできますれば、また、それぞれの文言につきましては御説明をする機会を持たしていただきたいと思います。  先ほど私の答弁の中で……。
  50. 小林武

    小林武君 それなら、もう持ってなきゃだめなんですよ。持ってなきゃ、一体、自分の頭の中でつくり上げるようなもんで、文字面からやっぱり言ってもらわなければ話にならぬから、それじゃ、ものを持ってやってもらう。それじゃ、いつの時間でもいいですから、余ったところで、ぼく、やらしてください、二分ありますから。それでかわってけっこうです。
  51. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) その際、その御説明する機会を持ちたいと思います。
  52. 小林武

    小林武君 わずかな時間だから、どこにはさんでもいいですよ。ぼくは文句言いません。
  53. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 小林君の残余の質疑は次回に譲ります。     —————————————
  54. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 阿部憲一君。(拍手)
  55. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まず、福祉政策につきまして大蔵大臣にお伺いいたします。  政府は四十八年度予算に対して福祉重点の予算と豪語しておりますけれども、どの点が福祉重点予算と言えますか、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  56. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 具体的に四十八年度の予算について申しますと、これはただいままでも、いろいろの機会にお話を申し上げておりますように、わが国としては相当国力が充実してまいりましたから、これを財政主導型と申しますか、そういう考え方でもって、できるだけ福祉国家建設の方向に財政も切りかえてまいりたい、こういうことを基本的な考え方にいたしまして、一般会計においても、あるいは財政投融資計画におきましても、そういう心持ちで予算の編成をいたしたというのが基本的な考え方でございます。
  57. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあ予算の面におきまして、また財政投融資において、大いに福祉のほうに重点を置かれていると申しますが、それは社会資本の充実、整備ということに通ずると思いますが、この社会資本が整備されれば、すぐそのまま福祉が高まる、こういうことは一応は認められますけれども、それだけでは直ちに福祉につながるということは言い切れないと思います。まあ卑近な例ですけれども、幾らりっぱな図書館ができましても利用者がなければ何にもなりませんし、また、例がどうかと思いますけれども、たとえば、東京の中央区だとか台東区あたりでもって、すでに下水道はすっかり完備しております。それにもかかわらずバキュームカーが依然として使われている。こんなようなところを見ますと、これははたして福祉に役立っているかどうか。それを役立たせるのは、まず所得の再配分に政府がもっと留意すべきじゃないか。四十八年度の予算はその意味におきまして、私、非常に不満に思っております。  具体的にちょっと申し上げますと、例の五万円年金ですね。五万円年金を実現するためには、すぐもう年金の掛け金を上げよというのが続いてきますし、国鉄の再建をすると、こうしますと、すぐもう運賃を値上げしよう、こういうふうな運賃値上げ案を持ち出します。また健康保険についても同様でございまして、すぐ保険料を上げる、こういうことでございますが、これでは国民が自分たちの負担で福祉を買うようなものでございます。これが福祉第一の政策だと私は言えないと思いますが、田中内閣がほんとうにこの福祉優先の財政経済運営に変えていこうというならば、これはちょっとまだまだ不足であり、また間違っていないか、こういうように思うわけですけれども、大蔵大臣、御意見を承りたいと思います。
  58. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その限りにおいては、私もごもっともであると考えますけれども、要するに先ほど申しましたように、財政の面においても大きくかじを切りかえていかなければならない。この点については、おそらく阿部さんにも御同意をいただけると思うんですけれども、問題はその幅なり、あるいはスピードなりの点で意見が分かれるところではないだろうかと思います。ですから私どもといたしましても、たとえば福祉関係の、一般会計のほうで申しましても、まあ年金の話はあとでいたしますけれども、たとえば寝たきり老人であるとか、難病奇病であるとか、あるいは看護婦さんの問題であるとか、一般会計で主として手当てをすべきもので、いままで十分にやれなかったと思う点については、一般会計それ自体でも相当努力をいたしたつもりでございます。で、その結果が一般会計のこうした関係で二兆円の大台をこした点、あるいは前年との伸び率からいえば二八・八%をこえたという点、こういうところにこれは具体的にあらわれておると思います。これがまだ少ないではないかと、こういう点については、今後とも、四十九年度以降においてもさらに一段の努力を傾倒したいと、こう考えております。  それから年金等、あるいは健康保険等の問題につきましては、この点は、多少基本的な、私どもお互いの意見が食い違うところであろうかと思いますけれども、外国の例などから申しましても、やはりりっぱな年金制度を確立していこうということからいえば、ある程度のやはり負担というものは、国民自体でも考えていくべきではないかというふうな考え方で、これを財源的にも一般会計の負担に全部する、あるいは、あとでお話が出るかと思いますが、厚生年金積み立て金を全部取りくずして、その穴埋めを——穴埋めと申しますか、裏打ちをすると、こういう御意見になると、私どもとしては日本の現状や長期的な観点や、あるいは諸外国との比較等ということからいって、まあ相当のところまでは、ひとつわれわれ自身で国民の年金として負担すべきものは負担する、あるいは健康保険制度についても、ある程度のものは拠出をして、よりよき保険の給付の充実ということをはかるべきではないかと、こういう点になりますと、私は意見の食い違いがあるかと思いますが、そういう点についてはあとで御質問がいろいろ出るかと思いますから、お答えをいたしたいと思っておる次第でございます。  それからもう一つは、ただいま御指摘がございましたが、財政投融資でも、なるほど下水道とか、屎尿処理とか、公園その他に今度は重点を置いているようだが、それだけができたって、図書館も使う人がなければだめではないかと。これもお考えとしてはごもっともだと思いますけれども、やはり、しかし財政投融資というものは国民の大事な有償の預かり金でございますから、この運用については、やはり庶民一般が享受し得るようなところへ運用して、いわゆる大企業とか、あるいは輸出産業、基幹産業というようなところへ従来比重が多過ぎたとすれば、これを低くして、あるいはやめて、いま申しましたような国民生活全般に潤いができるようなところに配分するという基本的な計画を遂行していきたいと、こういう気持ちでございます。ただ、その切りかえの程度が、これもまだ低過ぎるという御指摘があろうかと思いますが、こういう点については将来とも長期的に考えて、できるだけすみやかに全面的な切りかえができるようにいたしたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  59. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあ大蔵大臣は今度の予算に福祉関係二兆円以上も出したということを強調されているようでございますけれども、まあ十四兆の中の二兆円というのが多いか少ないかは別問題としまして、受ける国民の側にとっては非常に不満が多いということ、いま大蔵大臣もそれを認識しておられるようですけれども、そういうことを踏まえて、今後さらに福祉の問題については取り組んでいただきたいと、こう思うわけでございます。  厚生大臣にちょっと伺いたいのですが、老人福祉年金、まあいま大蔵大臣からもちょっと触れましたけれども、福祉年金として、千七百円今度ふえることになっておりますけれども、これなども、いまお話し申し上げましたように、受けるほうの側、老人の立場からいえば、三千三百円、これだってまことに僅少な、年金というのがはずかしいような額に、いま現在では、すぎないわけです。それを上乗せして千七百円、これもまた、私非常に、あまりにも少な過ぎる。これはほんとうにもう少し額を上げて、少なくとももうこの四月から一万円にするとか、あるいは、さらに近い将来すぐに二万円にするとか、そのくらいのことを考えるべきだと思います。また、先ごろの五万円年金、これなんかにつきましても、現実に国民年金として五万円もらうのはいつかと言ったら十三年先だ、このようなことでは、結局受け取るほうの老人にとれば大きな失望を感ぜざるを得ないわけでございまして、もう少し、たとえば年金を受け取るほうの老人に対する配慮というものが必要じゃないか、このように思うわけでございますけれども、厚生大臣の御意見を承りたいと思います。
  60. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 国民福祉年金は、御承知のように、本年度、四十七年度は三千三百円、それが四十八年度で五千円、四十九年度で七千五百円、五十年度で一万円と、一万円ということになりますと、夫婦で二万円に、こういうことになることは御承知のとおりでございますが、御承知のように、国民年金法が十二年前に制定されましたときは、国民年金をどういう仕組みでつくっていくか、結局、やはりよその年金と同じように掛け金を納めていただいて、拠出制年金ということを中心にしようと、これは原則にしましようと。ところが、当時五十五歳以上の方々はこれから十年も二十年も保険料を納めていただくということはたいへんでございますので、当時五十五歳以上の方々は、もう拠出なしに、そのかわり七十歳になりましたならばひとつ、あの当時は千円でございましたが、千円の年金をあげましょうと、こういう仕組みにいたしまして、それは全額国費ということにいたしたわけでございます。すなわち、国民年金制定当時、拠出年金を本体とし、どうしても拠出の期間があまりない方々には無拠出で多少なり老後のゆとりを差し上げるようにしようと、こういう制度でできたものでございますので、制度の仕組みから申しまして、御意見は十分私わかります、わかりますが、全額国費でやり、しかも国民年金の経過的な措置としてつくった制度でございますので、思うように十分あげることできないことは、私もその点は残念だと思いますが、やはり全額国費であるということ、それから国民年金の一つの経過的な措置としてやるのだということは、当時の方々全部これ、御理解いただいて発足した制度でございますので、私としては、もっとあげたい気持ちはわかりますが、来年は五千円、夫婦で一万円と、こういうふうにいたしたわけでございます。しかし、私どもも今後とも一そう努力をいたしてまいるようにいたしたいと考えておる次第でございます。  なお、厚生年金の五万円ということでございますが、それは、一応基準を、二十七年保険料を納めますと平均標準報酬の六割、五万円ということにいたしたわけでございます。ところが、これを制度としてつくりますときには、いままで受けておられた方々、既裁定年金受給者と申しますが、この方々は、現在の基準は二万円年金なものでございますから、それでは気の毒だというので、それは二・二倍引き上げることにいたしておるわけでございます。  そこで、昭和四十八年度に厚生年金をいただける方は、大体全国で八十万人おるわけでございます、八十万人。そのうちで、二十年以上のいわゆる老齢年金受給の資格ある者が大体その六割、すなち、六、八、四十八——四十八万人が年金を受けるわけですが、その方々は、従来平均すると一万九千円とか二万円程度でございましたが、それを二・二倍上げるというふうなことからいたしますと、四十八万人の方のうち、大体そのうちの八万人は五万円以上になります。残りの四十万人は大体四万二千円から四万五千円と、こういう平均の受給金額になるわけでございまして、二十年以上の老齢年金を受けられる厚生年金受給者は、来年、再来年になりますと、ほとんど五万円以上になる、こういう仕組みでございます。これもいろいろ意見のあるところでございますが、やっぱり年金制度というのは、一定の長期的な保険料を納める期間と、報酬というものとにらみ合わして、どんな制度でもつくっておりますので、その点は十分御理解いただきたいと思う次第でございます。
  61. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 厚生大臣のお考えはわかりましたけれども、いまの年金の積み立て制度ですね、現在いまそれを御苦心されていると思いますけれども、これを賦課方式に今後切りかえていくということについて御意見を承りたいと思います。
  62. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 厚生年金の積み立て金を取りくずしまして、厚生年金を一挙に上げたらどうだと、こういう御意見のあることは私も十分承知いたしておりますし、そういう考えも私はあると思うんでございます。ところが、ここで私ども考えておかなければなりませんことは、わが国の老齢化社会というものの傾向が、ここ十年、二十年の間に老人人口が非常に急激にふえるというところが問題でございます。ヨーロッパその他の諸国におきましては、大体六十五歳以上の御老人の方々が総人口において占めてる比率は、もう一〇%、一五%、定着しておる社会になっております。ところが、日本は、いま六十五歳以上の老人の方々は、総人口に対して、たしか七%程度。これが五年、十年と、どんどんふえていきます。おそらく二十年たちますと、西欧先進諸国並みの老齢化社会ができまして、そこで一定の数が定着してまいります。そういうふうなことで、長い計算をしなければならない年金、しかも急激に老人人口がふえていく途中のいまの現段階でございますので、なるほど積み立て金をくずせば、それでけっこう保険料も上げないで済むと私思います。しかし、そうなりますと、この積み立て金というものは今後二十年くらいになりますと、全部ゼロになります。そうなったときに、保険料はどのくらいになるかというと、現在の保険料を二倍以上に急遽上げなければならぬ、こういうことになるわけでございます。そこで、私どもは、なだらかに保険料率を上げていって、それで二、三年分の年金を支給できるだけの準備金ができて、そういう段階になったならば、おっしゃるように、賦課方式に私は変わっていくと。これはもう西欧先進諸国もみんなそうでございますので、一定の時期が来れば、二十年後になればそういう形になってくる。これは私そうだと思いますが、急激に老人人口がふえておるいまの段階では、積み立て金を全部つぶして、後代の人が保険料が倍になるという事態は、やっぱり避けるのが賢明じゃなかろうかと、こういう考えでございます。しかし、御意見の趣旨は私も十分理解をいたしておるつもりでございます。
  63. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 大蔵大臣に伺いますけれども、いまお尋ねしました所得の再配分を税の面で見ますると、たとえば、サラリーマンの課税最低限は、これは私、公明党も主張しておりますように、百五十万円に引き上げるべきだと思います。というのは、配当所得だけの課税最低限は、いまたしか二百五十万円余りでございますが、それに比べたら当然だと思いますが、その辺、御意見を承りたいと思います。
  64. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は、公明党の御主張もかねがね存じておりますし、政府といたしましても、課税最低限度はできるだけ引き上げることにいたしたいと考えておりまして、これも考え方としては同じような線の上に私は考えが一致していると思うのでございますが、実際面から申しまして、いろいろくふうをいたしまして、最低限度の引き上げは、今回は百十二万から百十四万というのが標準家計の場合でございますが、こういたしますと、四十八年度におきましてもその最低限の引き上げ幅は八%以上になりますから、消費者物価の政府の経済見通しの五・五%以内に押えたいという気持ちと比較してみまして、これならば相当の引き上げである。それから欧米諸国と比較いたしましても、アメリカには及びませんけれども、その他の諸国よりは、最低限はむしろ日本のほうが上になったというようなところで、今回はこれを適切と考えて御提案をいたしておるわけでございますが、たとえば、いろいろの所得の控除というような点についても、具体的に各方面からもいろいろと御要請があがっておることも考え合わせまして、将来はこの限度をさらに一そう引き上げることに努力を続けてまいりたいと考えております。  それから、配当所得等との関係におきましても、従来から長く議論の存するところでございますけれども、これにはまた、税制上、あるいはその他理論的にもいろいろの議論がございまして、今日御承知のような税制になっておりますが、もう少しこれらの点も新しい感覚で踏み込んで、将来の問題としては前向きに検討をいたしたいということを私としては考えておるわけでございますが、なかなかこれはむずかしい要素がございますので、そう簡単には、感覚的に常識的に考えて、おかしいではないかという御異論のあることは私も理解できますけれども、なかなか税制の面で、クリアカットにそういう御趣旨に沿うことができない要素も相当あるということも御理解をいただきたいと思うのでございます。
  65. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 サラリーマンは、事業所得者と違って、源泉徴収によって完全に所得が捕捉されて、そうして課税されておりますが、また、しかも反面においては、必要経費は全く認められておりません。これでは税の公平の原則に反していることは明らかでございます。大蔵大臣は、サラリーマンの必要経費を認めようというお考えは持っておられますか。また、そうでないとしたらば、大幅減税など、何らかのサラリーマンに対する税の不公平解消の方法考えておられますかどうか、ちょっとお尋ねいたします。
  66. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この問題は、ただいま所得税法の改正についても別途御審議をお願いしているわけでございますが、大蔵委員会におきましても、たとえば教育費の控除とか、医療費の控除とか、あるいはまた未成年者が所得ある場合でも、これには非課税にしたらどうかと、いろいろの御意見が出ておるわけでございます。それに対して政府の見解といたしましては、そういうものも含めて、総合的に家族を単位にした標準家計においての課税の最低限度を引き上げるということで、集中的にと申しますか、処理をいたしたいと、こういう考え方で、先ほど申しましたように、四十九年度以降におきましては、最低限度の引き上げということをひとつ徹底して検討してみて、その中で、いまおあげになりましたような問題は総合的に解決するようにいたしたいと、こういうふうに原則的には考えております。しかし、同時に、各種の控除というものにつきましても、これも勤労所得控除というようなもので解決でき得るものもあると思いますけれども、いま私が具体的に申しましたような点についても、何らか税制上からいっても筋の立つような、そして納税者側の御要請にもこたえ得るような名案があれば、これを検討するのにやぶさかではない。何しろ、税の問題というものはまことに複雑でもありますし、国民としては一番大切な問題でございますから、相当の時間をかしていただいて、いまよく私どもが四十九年度以降と申しますと、そのくらいならいますぐにやれるではないかというお話もございますが、この四十八年度予算が成立いたしましたら、もうさっそくにも取り組んで、将来の、四十九年度以降の税制全般について、考え方としては、勤労者、サラリーマンの減税を徹底していく、そして法人については重課していく、さらに進んでは、日本の税制の体制を、直税と間接税との関係などは現在の状況でいいであろうかというところまで踏み込んで、ひとつ積極的に勉強を、この予算が通りましたら、さっそくに始めようということを寄り寄り相談しているような状況でございます。
  67. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 これから取り組もうとおっしゃるわけですけれども、この場合に、いまもお尋ねしました課税最低限、サラリーマンの課税最低限のバランス時期というようなものについてお考えだと思いますが、その時期を御明示願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  68. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ちょっと、その御趣旨をあるいは聞き違えたかもしれませんが、これは御承知のように、税制調査会も権威者が各方面からお集まりいただいておりますし、政府としても、ただいま私が申しましたようなことを謙虚にひとつ検討をし、問題提起をお互いにいたしまして、やはり結論として、新しい税制をつくり上げるというのには半年やあるいはそれ以上の時間はかかる。そして、四十九年度の税制改正案を、四十九年度の予算編成とあわせて、新しい時代に適合するような、できるだけりっぱなものをつくり上げたい、こういうふうな気持ちで現在おる次第でございます。
  69. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 社会資本の整備が直ちに福祉につながらないのは、今日まで政府がとってきた産業重視政策によるものと思いますが、この福祉優先、人間尊重に社会資本投資、あるいは公共投資が再編成されていって初めて実効が出ます。道路にばく大な投資をしても、むしろ産業優先であって、すべて福祉優先とは言えないと思いますが、政府はこれについてどうお考えですか。
  70. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 昔は、道路をつくる場合は、何でも道路をつくればよろしいというような考え方でおったわけですが、きょうこの時点におきましては、人間尊重という立場から、まず人間というものを中心にして考えるべきであると、騒音の問題や、あるいは排気ガスの問題や、その他その地域人たちと対話をして、合意の上で道路をつくるというようなことをやるべきだと、こう私は考えております。
  71. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そういう御方針で道路をこれからつくろうということでございますけれども、いままでの道路、特に高速道路とか、その他等々の道路につきましては、これはむしろ産業優先の道路と私は考えております。その道路投資が一般会計の中から実に一兆三百八十五億円行なわれておりますけれども、生活環境施設整備は、それに比べて二千二百六十一億円、大台が違います。これだけ見ても、産業優先であって、福祉優先の予算と考えられますか。もし政府が、生活環境施設整備を重視することによって福祉優先にしたということならば、それをお示し願いたいと思います。大蔵大臣、どういうふうにお考えですか、いまの道路と生活環境設備投資のアンバランス。
  72. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 公共投資の中で、どの部分が生活関連関係かいなかということの区分は、これはなかなか議論が存するところでございますが、たとえば、公共事業関係費において占める道路事業費というものを、これを直接生活関連でないと考えて、そのウェートというものを追ってみますと、三十九年度におきましては四三・四%というウエートを持っておりましたが、逐年四一・四、四一・六、四一・七、この辺は大体同じでありますけれども、三九・六、四十八年には三六・六%というふうに下がってまいっておるわけであります。生活関連の道路、生活関連の住宅、下水道、廃棄物処理、その他の経費につきましては、たとえば四十八年度におきまして公共事業全体の伸びは、災害を除きまして二八%でありますが、そのうち住宅は三五・一%、生活環境施設は六一・四%、その中で、たとえば下水道は五七・七%、廃棄物の処理は九三・六%、公園は七六・一%というような伸びになっていることからでも、大体その傾向を御推察願えるというふうに存じております。
  73. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 運輸大臣にお伺いしますけれども、港湾整備事業に一般会計から金を入れて、そうして石油港湾だとか、鉄鋼港湾等をつくるという方式が従来から行なわれておりますが、これはむしろ受益者である石油や鉄鋼の資本にやらせるべきではございませんか。そうした社会資本整備の発想の転換があって初めて福祉型に変わったと私は思いますが、四十八年度予算にそのような転換があったとすれば承りたいと思います。
  74. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 石油関係の港湾、鉄鋼関係の港湾、相当たくさんございますが、これにつきましては、御承知だと思いますけれども、専用埠頭のほうは、これはもっぱら石油あるいは鉄鋼の事業者の負担において行なっておるのでございまして、これは国費を投じておりません。ただ、こういう港湾におきましても、そういう特殊の専用埠頭に関連するような航路のしゅんせつでございますとか、あるいは泊地、防波堤というようなものにつきましても、そういう関係事業者から、たとえば防波堤を少し長くしてほしいとか、しゅんせつしてほしいとかという希望が申請として出てくる場合がございます。そういう場合におきましては、これは御承知のように、法律がありまして、企業の合理化促進法、それから特定港湾施設整備特別措置法、こういった法律の規定に基づきまして、これはやっぱり大部分は申請者に費用を持たしているんです。その割合は大体五〇%から九〇%ぐらい持たしておりまして、その残りの五〇%ないし一〇%の分を——これは内容によって違うわけですが、国と、それから管理者である地方公共団体が大体半々で持つというのが例でございまして、これは特別に、一般の船も出入しますので、防波堤とか、しゅんせつというようなものが、そういったものにも役立つという意味で国や地方公共団体が出しておりますが、受益者が受益の限度に応じまして大部分これは負担をしているというのが実情でございますから、その点は、もしその法律の解釈、運用について何か誤解がございますれば、いま申し上げたところがこれは現実でございますから、御了承いただきたいと思います。
  75. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 福祉型への公共投資を転換すると言いながら、そうなっていないと思いますのは、もう一つ例をあげますと、四十八年度の住宅建設の国の施策でございます。これまで中間所得者層向けの住宅供給をしてきたのは住宅公団ですが、住宅難が依然として解消していないにもかかわらず、四十八年度同公団の建設戸数は四十七年度の八万八千戸から八千戸減っております。これは土地取得難や公団の団地建設の際の地元の要求等々の結果、建てたくても建てられないといった状態にあることを反映しておると思いますが、これは従来の政府の住宅政策、土地政策の貧困がもたらした結果であると思います。政府では、この穴埋めかどうか知らぬけれども、特定市街化区域農地の宅地化促進臨時措置法というものを出そうとなさっているようでございますが、この内容について御説明願いたいと思います。
  76. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 住宅公団の住宅の八万戸問題につきまして、八千戸を切るという問題につきましては、まことにこの住宅難のおりにもかかわらず、遺憾千万なことでございますが、その問題につきましては、先生御指摘のとおり、ことに東京あるいは神奈川、千葉県あるいは埼玉県等においては人口をふやすということについて賛成できない、人口がふえるということは、学校の施設も公共施設もふやさなくちゃならぬ、その負担が増大しておる。こういうことで反対をいたしておるわけでございますが、この問題につきましては、政府といたしましては、学校施設の問題等や公共施設の問題等につきまして、大幅援助をしなければならないというようなことをやらなければ、土地の獲得はできないわけでありまして、私は、この住宅難のおり、一番大きな問題は土地問題を解決することが緊急な問題点であろうと思っておるわけでございます。この土地問題を解決するにあたりましては、いわゆる土地要綱や、その他御案内のような税制の改善あるいは優遇措置等によって、いわゆるむちを強く、あめも大きく、こういうことによって土地を持っている方の御協力を得るというような方法で宅地供出をお願いするということを考えておるわけでございます。
  77. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 私は、政府が四十八年度から、これまでの国が住宅を供給するという政策を改めて、将来これを民間供給に置きかえるというように方向転換されたような感じがしてしょうがないわけでございますが、いまも建設大臣からのお話で、土地問題が非常な大きな障害になっているということを量りましたけれども、この公共的な取得を容易にするために、業者への売却を防止する措置を講ずること、これが一番先決じゃないかと思いますが、土地利用権を尊重して、ある程度所有権に制限を加えるようにすることもこれやむを得ないんじゃないかと思います。住宅難を克服して、国民福祉を高めるためにも政府は真に実効のある土地政策を立てるべきであると思いまするけれども、政府の御意見を承りたいと思います。
  78. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 土地の問題につきましては、先生の御指摘のとおりでございますが、いわゆる民間デベロッパー等にまかしておるという問題につきまして、私は、この問題は住宅宅地適地であるならば新住法というような法律を活用して、そうして、ときには収用権も使うと、こういうようなことにしていくことによってこの問題が解決つくんじゃないかということを考えておるわけでございます。
  79. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 もう一つ、大蔵大臣建設大臣に伺いたいと思いますけれども、公定歩合の引き上げによって貸し出し金利が高くなりますけれども、ローンの金利引き上げ、返済条件の悪化及び窓口規制の強化などに基づきまして、国民の住宅建設への夢は一そうはかなくなるという感じがいたしますが、住宅ローンヘの原資と金利はいまのままにして、ほかとの金利差を国で補えるようなことにはなりませんか、お伺いします。
  80. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 御承知のとおりに、公定歩合には大幅な引き上げを行なうことになったわけでございますが、昨日も申し上げましたように、たとえば四十八年度の御審議をいただいておりまする予算の中で、中小、農業、その他で貸し出しの金利を従来よりも低くいたしております。同様に住宅関係につきましても、政府関係の住宅についての金利は従来より低くすることにしておりますが、この点はいわば特別の政策的な考え方でございますから、これはもちろん予算案に盛ってありますような低利の金利で実行することにいたしておる次第でございます。それから一般的な金利につきましては、長期、短期とをあわせまして、金利体系を公定歩合引き上げに関連いたしましてこれの引き上げということが当然実行されることになるわけでございますが、住宅関係あるいは中小、その他の点についての民間の金融の金利等についても、ただいまお話のような点については十分考慮の中に入れて金利の体系調整ということは考えてまいりたいと思っておりますが、これらの点は所定の手続等を経、あるいは自主的に原則的にはきめられるものでございますし、まだ内容的には、はっきり具体的な内容はまだきまっておりません。
  81. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ただいま大蔵大臣からお話があったわけでございますが、建設省といたしましては、住宅難、ことに青年に夢をという立場から考えてみましても、この住宅をたくさんつくっていただくという立場から考えれば、もう金利は上げてもらうということについては絶対反対でございます。
  82. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。  大蔵大臣のいまの御答弁で、ちょっと私不満なんですけれども、結局金利が引き上がってくる、企業からのいわゆるお金についての要求がはげしくなってくる、そういう需要がいまきびしくなってきた、多くなってきた。そうなりますと、一番先に締めつけられるのが、いままでは中小企業ということが大きかったのですが、これからくるのは住宅ローンということにきまっているわけです。一番先に窓口規制をされるだろう。そうでなくても、毎年のように、御承知のように住宅ローンのいわゆる需要というものは、ものすごく増加をしていることは御承知のとおりです。それだけに、まあこれから先の問題ということではなくて、政府が先取りをして、少なくも住宅ローンという庶民の夢をかなえていくものについては、長期の金利になりますけれども、これから先も一向変えないと、たとえ公定歩合が引き上がっても金利は引き上げさせないと、そういう措置をとらなきゃいけない。また、窓口規制できびしい条件ばかりつける、銀行の窓口の取り扱いできまってしまうなんということになればもう規制されることは目に見えているわけであります。そういうことをこれははっきりと通達なり何かで指示をしてほしいと思いますが、その点いかがですか。
  83. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) いまの御質問の趣旨、私ども今後の検討事項だと考えております。住宅金融とこういう引き締め時の関係をどう考えるかということにつきましては、これはわが国だけではなくて、英国あるいはヨーロッパ諸国でも同様の問題をかかえておるわけでございます。いろいろの方法がとられておるようでございます。たとえばアメリカなんかで一番多いケースでございますが、一定の毎月の返済額を減らさないで、金利の上昇、上下の部分を期間に反映して延ばしていくという方法もあろうかと思います。あるいは逆に、金利を固定化してしまうか、あるいは金利が弾力的に動くときにまた上下するかという契約を消費者の選択にゆだねるという方法もとられておるようでございます。現在、今後どうしていくかということにつきましては、目下金融制度調査会の住宅金融部会で検討しておるわけでございまして、先生も御承知のように、何ぶんわが国の住宅金融の歴史も浅いわけでございますし、それから残高もきわめて少ないわけでございます。そういう意味からいたしますと、今後新しいルールづくりをやっていくことが必要かと思います。ただ残高も少ないだけに、今日の窓口規制というものが、直接的に規制の対象になるというような段階には現在至っておりませんわけでございまして、金融機関といたしましても、今後いわゆる大衆化ということを言っております以上、わずかの残高を締めることによって、長期の経営のあり方に非常に大きな影響を与えるということを考えるような金融機関はきわめて例外であると私ども考えておるわけでございます。したがいまして、今後の住宅金融のあり方については、現在進行中の住宅金融部会において検討していきたいと、かように考えております。
  84. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 委員長、簡単に……。
  85. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 簡単に。
  86. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 一体、その答申はいつごろ出てくる予定ですか。
  87. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) できるだけ早く、ことしの秋ぐらいを目途としてやっております。
  88. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 国債政策について大蔵大臣に伺いますが、四十八年度は政府の経済見通しで一〇・四%の実質経済成長が見込まれておりまして、これは経済社会基本計画の五カ年平均の九%台を上回るいわゆる二けた成長でありますが、こうした年は、従来ですと、国債を減額する方式をとられたわけですが、四十八年度には二兆三千四百億円という大幅な増額ですが、これはどういうわけですか。社会資本のおくれを取り戻すということで、国債を景気政策としてよりも資源配分政策に重点を置いて使おうというお考えですか、承りたい。
  89. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 御指摘がございましたように、一つの基本的な考え方としては、公債政策というものは、従来的な考え方でいえば景気調節の機能というものが重きをなしておったと思いますが、元来、財政の機能の再配分と申しますか、そういう機能が一つ大きな役割りを持っているわけでございます。で、四十八年度の予算編成につきましては、その後者のほうの考え方を重点にいたしまして、資金の配分を現下の情勢下において国民的な要請にこたえたいということで公債政策を取り入れたわけでございます。同時に、いわゆる過剰流動資金ということばが現在もう国民的なことばになっているくらいな状況でございますから、これをある限度においては政府が引き揚げて、そして過剰流動性対策でもありますし、同時に、引き揚げることによってこれを財政機能として資金の再配分をする、望ましい方向にこれを使うと、同時に、政府の手に吸収された資金は、福祉国家建設のほうに重点的に配分されるようにしようと、こういう考え方でございます。したがって、同時に、そういう考え方でございますから財政法四条、五条の規定に従って、いわゆる建設公債、市中消化と、こういう原則は守ると、しかも、ある程度以上にこれが額が多いことは、一面からいえば好ましいことでございませんから、昨年度に比べますと公債依存度はむしろ低くしたい、こういうところに配慮をいたしたわけでございます。
  90. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 すると、この基本計画が描いています九%台の、あるいはそれ以上の経済成長が毎年続いたとしても、国債を出していくということでございますか。
  91. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この長期計画であらわれておりますところですと、たとえば端的に六兆円ぐらいの財政資金の不足ということが掲げられておりますから、それだけを取り上げてみると、それならそんなにたくさんの公債財源に依存するのかと、こういうことになると思いますけれども、それはその状況下におけるやはりGNPの状況であるとか、あるいは財政計画をどうやったらいいかということによって、おのずからこれを公債ということに依存するがいいかどうか、これは相当の検討課題であると思います。たとえば公債についていえば償還ということも考えていかなければならない。それから本来的に公債というものはあまり財政全体に対する比重が重くないほうがいいと、こういう考え方もございますし、やはりそのときどきの状況によって計画すべきものであって、六兆円という見通しの数字があがっているからといって、これはすべて公債財源であると、こういうふうに断定的にはごらんにならないでいただきたいと、こういうふうに考える次第でございます。
  92. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この四十六年度までは国債依存率は大体五%ということになっておりましたけれども、四十七年度に破れましたけれども、これは不況のためということでございましたね。ところが、そうだとしますと、いまは経済が過熱状態にある、過剰流動性をむしろ国債によって、何といいましょうか、熱を下げるというようなことを大蔵大臣言っておられましたけれども、私はそう考えずに、これはまた財政法の問題はあとでお伺いしたいと思いますけれども、二兆三千億というような国債を出すことは、どうも容易に理解ができません。ということは、政府に国債政策がなくて、ただそのときの情勢次第でもって、かってにきめられるというようなことに感ずるわけですけれども、その点はいかがでしょう。
  93. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま私の考え方は相当詳しく申し上げたつもりでございますけれども、やはり公債政策というものは財政の機能として景気調節という役割りもございますが、現在のような場合に、財政政策もひとつ財政主導型にして、そして、たとえば基幹産業とか輸出優先とかいったような時代から切りかえていくような、そして民間資金が相当潤沢になったというようなときには、やはり公債によって財政の配分機能というか、転換機能というものを重視すべきものであろうと、こう考えております。したがって、債券に対する寄与率というようなものは、私は本来としてはそう多くあってはいかぬものであると思いますから、四十八年度は四十八年度の情勢下においてこの方式が適切であると、こう考えると同時に、公債というものを出せば、これがすべて赤字であると断定され、これがインフレの根源でありと、こういう考え方はこういう時期においては私は当たらざるものであると、こういうふうに考えるわけでございますから、四十九年度以降、あるいは長期計画で示されている五十二年度というようなところでどうするかということは、これからの経済状況の変化に応じて、そのときに最も適切であるという方針をきめて、国会の御審議を経てきめるべきものであると、こういうふうに考えております。
  94. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時七分開会
  95. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、阿部君の質疑を続行いたします。阿部憲一君。
  96. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、財政法第五条に関してお伺いしたいんですけれども、まず財政法第五条の立法趣旨について、大蔵大臣にお尋ねいたします。
  97. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 財政法の第五条は、財政の健全性を確保するために公債の発行方法を制限した規定であると承知いたしております。具体的には、財政の健全性の見地から、公債の日銀引き受け発行を禁止しております。公債は市中資金によって消化するという原則を明らかにしておるもの、かように存じておる次第であります。
  98. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 政府は、この国債の市中消化を守るとの考え方でありますが、現実には、国債は、発行後一年を経過すれば、日銀の担保適格を持つものとして日銀に還流し、その分だけ巨額の紙幣増発がなされたと同じことになっております。これは明らかに財政法第五条に反した行為でありますし、財政法の立法精神は明らかに無視されている、このように思いますが、大蔵大臣の御見解を聞きます。
  99. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) よく一部に言われる議論でございますけれども、ただいま申し上げましたように、財政法第五条の規定によりまして、政府は国債を発行して、これを日銀に引き受けさせるということになれば、財政法に違反いたしますし、それから御指摘のように、それが通貨増発の直接の原因になる。これはもうお話のとおりでございます。そこで、国債の発行につきましては、財政法第五条の趣旨にのっとって、日銀の直接引き受けというようなことばやらないことはもちろん、国債の金融操作に使う手段としては、いわゆるオペレーションの問題がございますけれども、この場合においても、一年以上を経過したものでなければ買いオペの対象にしない。しかし、買いオペというものは、売りオペもあると同様に、これは国債に限りませんで、たとえば政府保証債その他の証券を売り買いの対象にして、そして金融情勢の繁閑に応じて通貨の発行状況を調節をするというのが中央銀行としての大きな役割りでございまして、その限りにおいては、一年以上の国債を他の適格の保証債と同様に、証券として売りオペ、買いオペの対象にするということは、これは当然なことであると考えます。  もう一つは、いまも御指摘の、担保として融資をする、日銀が貸し出しをするという場合もございますけれども、貸し出しは、御承知のように、金融機関だけに対するものであって、これはやはり金融の繁閑に応じ、あるいはそのときの情勢に応じて実行するものでございますから、直接の日銀の公債の引き受けということでない限り、財政法第五条にもとるものとは考えられません。同時にこれは、国庫と民間との間の収支の状況も同時に大いに注意していかなければならぬ問題でございまして、たとえば過剰流動性問題ということで、外為の散超ということが大きな問題にされておりますけれども昭和四十七年度の国庫収支の状況を見ましても、締めたところで、三月末の現在では、政府資金はむしろ揚げ超の傾向が非常に強い。それから、外為の散超もありますけれども昭和四十六年度に比べればこれはもう格段と少なくなっておる。こういうふうな政府と民間との収支の状況などを的確に掌握してオペレーションをやっていくということ、これもまた金融操作としては私はやらなければならない適切な手段であると、こういうふうに考えておる次第でございます。
  100. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 それではお伺いしますけれども昭和四十年に赤字国債が初めて出たのですが、昭和四十一年の国債発行以来の国債発行の累計総額はどのくらいになっていますか。  それから同時に、この累計総額のどのくらいが日銀に還流して紙幣の増発に結びついているか、その総額をお知らせください。
  101. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 日本銀行が買いオペとして市中から国債を取得する場合はどうなっているか、それから四十年以降発行の一般会計の長期国債の日銀による対市中オペレーションの累計額、これのお尋ねでございますが、買いオペ累計額から売りオペ累計額を差し引いた額を申し上げることが適切かと思いますが、四十八年二月末現在で一兆六千六十六億円に相なっております。
  102. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 これは明瞭に財政法違反の、巨額な紙幣増発と同じであると私は思いますが、ということは、財につながらない通貨がインフレ増大の大きな原因をなすからでございます、最近、インフレ激化を考えますときに、政府は節度ある財政規模を守って、そして国債の予定額二兆三千四百億、この全額を発行するというようなことをせずに、また、日銀還流も、法に基づいてはっきり私は禁止すべきだと思いますけれども、もう一度大蔵大臣の御返答をお伺いしたいと思います。
  103. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまも御説明申し上げましたけれども、日銀が買いオペレーションをして市中から国債を取得するというのは、日本銀行が一般的な金融政策の立場から、国民経済の成長に必要な適正な通貨量を見定めて、金融市場全体の適切な調節をはかるという見地から、通貨供給の手段として行なっているものでございます。まあこの金融メカニズムを通して、結果的に日銀が国債を購入するということになりましても、それ自体がインフレその他特に問題とするには当たらないと思うのでございまして、諸外国でも金融調節手段として一般に長く行なわれているものでありますことは御承知のとおりでございます。そうしてその場合でも、先ほど申し上げましたように、財政法第五条の立法の趣旨から見ましても、市中消化の原則というものが貫かれますように、現在、日本銀行としても、先ほども御指摘で御承知のとおり、一年をこえて保有された市中の国債に限って買い入れを行なうことにしているということも、この財政法第五条の趣旨に実質的に沿うようにするという趣旨に出たるものでございまして、これらの点につきましては、政府としては財政法第五条を順守しているものであると、こういうふうな見解をとっている次第でございます。
  104. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この国債の市中消化に関しまして、これを全うさせる必要があると思いますが、このための公債市場の育成ということに努力しなければならぬと思いますが、これについて、大蔵大臣はこの市場育成についての構想をお持ちでございますか、伺いたいと思います。
  105. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は私も同感でございまして、公債の市中の消化、そうして公債市場の育成ということはたいへん大切なことであると考える次第でございます。すでに国債の上場や市場集中などを通じて、公正な価格形成と取引の円滑化に現在までもつとめているつもりでございますけれども、今後とも国債の円滑な市中消化を確保するために、発行条件を弾力化するということが一方において必要である、それから流通市場のほうの整備ということもあわせて必要である、これらの点につきましては、今後御質問の御趣旨にも沿うように、積極的な検討をいたしたいと思います。  それからなお、御質問がございましたから申し上げますが、関連して申し上げますが、国債の個人消化については、別ワク非課税制度、これは限度は百万円でございますけれど、これは順調に活用されているようでございます。四十七年度で申し上げますと、市中消化分が一兆七千百五十億円、これは額面でございますが、その中で一三・九%に当たります二千三百八十億円というものが、証券会社等を通じまして個人等に消化されておるという状況でございます。
  106. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、国債発行に表裏の関係のありまする国債費についてお伺いしますが、四十八年度は国債費が七千四十五億円で、一般会計歳出に占める比率は約五%になりましたが、いままでの、四十年度からでございますが、この国債費の額とそれの一般会計歳出に占める比率をお示し願いたいと思います。
  107. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 四十一年からでございますか。
  108. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 四十一年から。
  109. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 一般会計の歳出において国債費の占める比率でございますが、四十一年度が〇・九%、四十二年度二・一%、四十三年度三・二%、四十四年度四%、四十五年度三・五%、四十六年度三・四%、四十七年度三・八%、四十八年度四・九%でございます。
  110. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この四十年度の決算で百三十億円と承っていますが、この国債費がもう四十八年度には実に七千四十五億円、いまの比率からいいましても四・九%を占めるというようになりましたが、この倍率は実に四十六・五倍になっています。同じ期間でこれだけふくらんだ経費はほかにはないと思いますが、これでは財政硬直化はますます避けられないと思いますが、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  111. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 計数的にはそのような状況になっておりますが、この点は午前中にもお答えいたしましたように、国債というものについては償還ということも考えなければならない。国債費の累増を考えなければならない。その面から申しますれば、国債の歳入に対する寄与率というものがあまり高いことは好ましいことではない。すでに諸外国に比較いたしましても決して低くはない現状でございます。ところで、一方において、やはり資金というか資源の再配分ということを考えます場合、やはり公債の持つ役割りは相当比重が高いと思いますし、それから社会資本の充実、これは必ずしも当年度において国民の負担にお願いすることが適切でないものもある。そこで財政の役割りというものが今後ますます増大するにつけて、そこの配分をどういうふうに考えるかということは非常に大きな問題だと思います。そこで、先ほども御指摘がございましたが、たとえば長期計画では国、地方を通じて六兆円の政府資金のアンバランスというか、穴があくという計画になっておるではないかと、それは公債財源だけでやるかというお尋ねに対しましても、私は、その点は非常に問題であって、いまにわかにこれを公債財源というふうには言い切れませんということを率直に申し上げたわけでございます。そのときどきの財政状況あるいは後代にわたる負担、国債費の累増というようなことも十分考え合わせまして、やはり節度のある考え方を用いていかなければなるまい、くどいようでございますが、四十八年度においてはそうした諸般の条件やその他を考えてみまして、この際としてはこの程度のものは適切であるというふうに考えた次第でございまして、将来は、将来についてまたあらためて年度ごとに十分考えていかなければならないと思います。
  112. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 大蔵大臣も御同感のようですけれども、国債の発行は将来の確たる計画、目途を持って当たるべきであります。歯どめが絶対に必要だと思います。健全財政の立場から申し上げますれば、みだりに国債に依存すべきではないことは当然であります。また、赤字公債はもちろん、建設国債でも、経済情勢の実態に即し、好況期には極力押えていくべきだと思います。税金で取るのはむずかしいので、ついイージーに国債にたよってしまう。これほど国の財政にとって危険なことはないと思いますが、まあ大蔵大臣よろしくお願いします。  そこで、予算制度面についてひとつお伺いしたいんですが、それは、国家財政の赤字、黒字は現在のわが国のような単式予算制度では正確な実態は把握されませんので、国家財政の正確な実態を知って将来への財政の展望を正確に可能ならしめる意味で、官庁会計の特殊性は十分承知の上でもって、資本予算と経常予算との二つからなる複式予算制度をわが国も採用すべきであると考えますが、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  113. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一般会計と、それから国の事業特別会計と、これはやや異なった立場でいまの御指摘の問題を取り上げてまいるべきではないかと思います。要するに一般会計あるいは国の会計全体に複式簿記を取り入れたらどうかと、こういうお考えと思いますが、確かに御指摘のように、財産の増減とか移動とかが総合的に把握される、あるいは運用状況を一覧し得るというような効果があると思いますけれども、国の、特に一般会計を中心にして見ますと、本来、企業会計と本質が違うのではないかと思います。で、何と申しますか、会計責任を担保するという従来からの金銭会計重視の考え方というものも軽視するわけにはいかないように思いますので、現在のやり方がそういう点からいえばこれでいいのではないかと、実は私は考えておるわけでございます。それから、これは少し次元の低いようにおとりになるかもしれませんけれども、複式簿記を採用ということになりますと、相当これは事務量が膨大になりますし、相当の混乱もありますし、かなり慎重に検討すべきものではないかと考えさせられるわけでございます。で、先ほど申しましたように、事業特別会計の経理については、ある程度企業会計的な手法が取り入れられておるわけでございますから、その辺のところで御指摘のような御趣旨を漸次生かしていくことにまあくふうをこらしてみるべきであるかなと、まあこれは非常に率直なお答えでございますが、そんなふうにただいまのところは考えております。
  114. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうしますと、大蔵大臣としてもまあずっとこの長い展望の中にこれを取り入れていこう、こういうようなお考えでございますね。
  115. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実は、御承知かと思いますけれども、臨時行政調査会で三十九年に出された意見の中に、事業会計等については複式簿記の採用といいますか、こういう考え方をとったらどうかという御意見をいただいてもおります、これは一般会計には触れておりませんけれども。ですから検討に値する問題であるということを申し上げたつもりでございます。
  116. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、物価問題について経済企画庁長官にお尋ねしますが、物価は、昨年以来消費者物価だけではなくて、卸売り物価まで暴騰しておりますのは御承知のとおりでございます。土地の異常な値上がりから始まって、木材、セメント等の建設資材、さらに綿布、綿糸等、繊維全般にわたる衣類の急騰、及び米、大豆などをはじめとする肉類、野菜など食糧、これらの値上がりはもう国民の衣食住全般を脅かしておりますが、消費者物価が東京ではもう九%にのぼるような全くインフレ状況になりまして、国民を不安と恐怖の中におとしいれておりますが、このような現状をどのように長官お考えでおられますか。また、物価に対しどのような姿勢で臨んでおられますか、お伺いいたします。
  117. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 四十七年度につきまして、非常に年度末になって卸売り物価が急上昇するという状況でございます。非常に困った状況というほかはないと思っておりますが、政府としましては、御承知のように、預金準備率の引き上げ等の過剰流動性対策、緊急輸入の実施、政府在庫の放出、個別業界に対する行政指導、商品取引所の立ち会い停止など諸般の施策を講じてまいりまして、先般も生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案を国会に出しておるようなわけでございます。で、実は昨日も公定歩合の〇・七五という、一般予想は〇・五ぐらいではないかということでございましたが、それを上回る引き上げをやったようなわけでございまして、いろいろな効果が漸次浸透してくるというふうに期待いたしておりまして、今後はまた変動相場制移行がこの輸入価格の低下、あるいは輸出需要の停滞を通ずる需給関係の緩和が物価面に好影響を及ぼすことが期待されておると存じておるのでありまして、また一方において、需要構造の変化による一部の分野における需給の逼迫、海外インフレーションの進行等の影響、消費者物価に対する卸売り物価の上昇の影響等が強まってくることが懸念されまして、この物価に対する環境はかなりきびしいというふうに考えておりますわけでございます。で、実は昨日も急遽一部の卸売り商の組合を視察いたしていろいろ話を聞いてみたのでございますが、まあ一般考えでは、とにかく製品在庫は確かにある、それが非常に偏在している。そこで、その値上がりもこの辺が峠であって、今後はこのような状況はよほど変わってくるではないかというのが一般の観測のようでございまして、商品取引所も、繊維のほうも視察いたしましたのでございますが、御承知のようにストップ安の状況で、情勢はだいぶ変わりつつあるというような認識を持ちましたわけでございまして、私は、特にこの法律ができまして立ち入り検査ができるということになりますると、よほどその物資が出てくるというふうに考えておるわけでございます。
  118. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま長官の物価に対する考え方も対策も承りましたが、ことしの消費者物価、卸売り物価の見通しとして、政府はさきに何か消費者については五・五%、それから卸売りについては二%ですか、このような目標をお立てになったようですけれども、これについて、おそらく私はこれを修正しなきゃならぬと思いますけれども、長官のお考え方を承りたいと思います。
  119. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 四十七年度、すなわちこの三月三十一日までの具体的な数字は、御承知のように、見込みが、卸売り物価で二・二%、消費者物価が五・三%でございましたわけですが、これが、卸売り物価が三%程度ではないか、それから消費者物価のほうは見通しの五・三%以内におさまる、こういうように見ておりますわけでございます。で、四十八年度に対する見通しでございますが、これは御承知のように、卸売り物価が二・〇、消費者物価が五・五ということで考えておったのでございますけれども、最近の状況から見ますと、これはなかなかやっかいなことになったと言わざるを得ませんが、これはやはり年度を通ずるものでございますから、私はもう最大の努力をいたしまして、この物価の引き下げに努力したいと考えておりまするので、まあいろいろ財政、金融あるいは貿易、近ごろの為替の円高になっておりまするこの関係をいろいろ見込みまして、できるだけこの目標数字に近づけるようにいたしたいとは思いまするけれども、いずれにいたしましても、また国会でも終わりました段階でよく状況を見て、見通しについても再検討をしてみたいと、こう考えております。いずれにいたしましても、私としてはもう最大の努力を傾けまして、この物価の安定、現在のような異常な高騰を引き下げるという努力をやりたいと考えております。
  120. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 長官も、お立場もあると思って、あまりはっきりしたことをおっしゃいませんけれども、まあ消費者物価あるいは卸売り物価とも、いまのお見通しでは、おそらく私は防ぎ切れないと思います。その点もう一度お尋ねしますが、どうでしょう。いまの状況でいけば、常識的にどのくらいになるかということくらいの御返事は、お見通しは伺えませんか。
  121. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 何ぶんにも現在四月に入ったばかりでございまして、これからまる一年先のことでございますので、どうもいまの段階で五・五がどれくらいになるかということは明確に計算できかねる状況でございます。しかし、大臣が申されましたように、五・五%という状況がかなりむずかしくなってきているということは事実でございますので、従来考えておりました以上に、やはり政策努力をさらに強化をするということがぜひとも必要だと考えておる次第でございます。
  122. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 先ごろの衆議予算委員会で、大蔵大臣が、消費者物価が政府の見通しを上回った場合には、物価調整減税の見地から、年度内減税を示唆されたと新聞には書いてありましたが、ほんとうにそういうようにお考えになっていますか、大蔵大臣にお伺いいたします。
  123. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 年度内と申したわけではございませんけれども、消費者物価というものは国民生活で一番大切なものでございますし、かたがた午前中も申し上げましたように、私としても特に勤労階級の所得減税ということについては、今後ともできるだけの努力をしたいと思っておりましたので、それとあわせて、考え方としては、消費者物価の予想以上の値上がりというようなことがあれば、これはますますもって勤労大衆の減税ということに結びつけて考えなければならない、こういう気持ちを率直に申したわけでございます。そういう気持ちを現に持っているわけでございます。
  124. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 年金に対してスライド制を行なおうということにつきまして、厚生省から、どういうふうになさるのか、お伺いしたいと思います。
  125. 横田陽吉

    政府委員(横田陽吉君) 年金のスライド制の導入の問題でございますが、年金に対してスライド制を導入するということは、実は長年の懸案であったわけでございます。で、今回の改正案で私ども考えております内容は、少なくとも物価上昇を埋め合わせるだけの年金の実質価値を維持するという観点から、年金の金額につきまして、物価上昇が五%を上回りました場合には、その上回った幅に即応いたしまして年金額を自動的にスライドをする、こういうような制度を導入することにいたしております。
  126. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 高騰する物価高から国民生活を守るためには、当面物価のスライド制は有力な救済策ともなります。私もその点では賛成でございます。しかし問題は、物価のスライド制というものを安易に採用しますと、ややもすると、政府の物価抑制対策はもちろんですが、世間一般にもインフレに対する警戒心を失わせる、そのような危険はないかと心配しております。本来は物価のスライド制などは考えないで済む社会をつくり上げるように努力すべきであると思いますが、経企庁長官、いかがですか。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 結論として、阿部委員のおっしゃいましたことに私は同感でございます。しかしながら、現実に物価は上がっておりますし、非常に血気盛りの者でございますれば、これに耐えていけるわけでございます。また組合等によって賃上げの交渉も可能であるわけでございますが、やはり老齢化しまして、そうしたことに対する対応能力の乏しくなった年金受給者に対しましては、やはり物価にスライドするという、こういう考え方をとるということがよろしかろう。これはまた多年の年金受給者あるいは恩給受給者の希望でございましたものでございますから、こういうふうに踏み切りましたわけでございますが、そういうことを考えなくてもいいような安定した経済状況をつくれという御意見は、まことに私もさようのとおりであると心得ております。  ただ、通常の経済状況下で物価が下がっていくという状況は、不況ということになりますものでございますから、一般論として言う場合、微騰といいますか、大きな変化がなく、少しずつ卸売り物価が上がっていくということが、景気を刺激し、経済社会の発展を来たすという面もあり、やむを得ないというふうに思っておる次第でございます。
  128. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この物価スライド制は、物価政策ないしは対策を考える場合に敗北主義だということが言われたのは、たしか福田さんが大蔵大臣当時だと思いますが、私は、理論的には福田さんが言われたように、スライド制は敗北主義だと、このように思います。インフレという政府みずからがつくった怪物に政府が敗北したわけだと、私は断言いたします。しかし、現実にはあまりにも激しい物価騰貴ですから、今日でスライド制をとるよりほか救済策がないことはわかりますし、私も先ほど申しましたように、この制度そのものには賛成でございますが、まあ、これまでの自民党政府は、毎年度経済見通しの数字は発表しても、その数字を実現するための具体的な施策を持ち合わせていなかったために、年率五%をこえるような物価騰貴が出現してしまったわけでございます。物価スライド制の導入によって、たださえゆるみがちな政府の経済見通しがますますゆるんで、物価の見通しは単なる飾りものになるおそれはないかとも心配しているわけでございます。私はスライド制を必要とするような慢性的な物価上昇を、すみやかにストップするように政府に強く要求いたします。そして、物価安定に対する経済企画庁長官の断固たる決意をお伺いする次第でございます。
  129. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は三年来の経過を見ましても、消費者物価が四・五、六%の予定が四十五年度は七・三でございました。それから四十六年度が五・七%。で、私は、ことしは幸いにいたしまして、前半とそれから暮れに、わりあいに野菜等の、あるいは果物などの季節商品の出回りがよろしかったので、このところへまいりまして非常に消費者物価が上がったわけでございますが、幸いにいたしまして五・三という目標の中へおさまったわけでございます。実は今度の目標を立てますときに、低く出してそれより高くなって当てにならぬと言われることは、はなはだ申しわけたいことでございまするので、まあ、五・五というのは、目一ぱいに出してこれを死守しようと、実はこう考えておったわけでございますが、最近の状況はたいへんにどうも困った状況でございまして、いま御指摘のように、いろいろ逃げ口上を言わないで——逃げ口上といいますと、海外の物価高ということは確かに言えるのでございますけれども、そういうことは言わないで、何とかひとつ目標の中におさめるように全力を尽くすというふうに考えておる次第でございます。  まあ、先ほどもちょっと触れましたように、最近、一応の卸売り物価の中でいろいろいわれておりまする生活関連物資の問題の商品、これはもうとにかく生産は十分できておるのでございます。生産が非常に落ちて、そして物資が不足して、それで上がっているという状態でなくて、生産が昨年より上がっておるし、しかし消費もそれほどふえていると思われないのに非常な妙な状態になっておりまするので、やはりこれは売り惜しみ、買いだめという先高見越しの心理が相当にあると考えまするわけでございまして、こういう点についてもひとつ党派を越えて御協力をいただきまして、国民のために安定した物価をつくりたいと念じておる次第でございますので、よろしくお願いいたしたい。
  130. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 政府は、四十六年十二月に総合交通体系についてとの政策をきめていますが、現在もなおこれを基準にして交通政策を行なっていますか。運輸大臣にお伺いします。
  131. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) お話しの総合交通体系、これは運輸政策審議会でも論議をされまして、その後それを受けて、関係閣僚協議会でもその骨子を踏襲いたしまして、大体政府としてはその方針をきめておるわけでございますが、具体的には、今度提案いたしておりますのもこれに非常に関係の深い法律案でございまして、細部にわたっては、まだ、御承知のように、総合交通体系というものは細部にわたって具体的にきまっていない点がたくさんございます。その点は別といたしまして、荒筋の点は、その方向に沿いまして交通政策を実施しようとしておるわけでございます。
  132. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この四十八年度の予算で出されています鉄道輸送、特に国鉄の位置づけが総合交通体系と矛盾していないかと思いますが、この総合体系では、鉄道の特性からいって、地方線、地方開発線は道路へ転換することになっていました。ところが、この予算では一躍六五%もアップしている。これはちょっと理解できないのですが……。
  133. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 一応そういうお考えをお持ちになるのはごもっともと思いますけれども、しかし、総合交通体系をよくごらんになりますと、やはり地方の閑散線につきましても選択的整備をしようということになっております。しかし、それを受けまして、実は本院ではまだ十分御審議をいただいておりませんが、昨年、国鉄財政再建法を提案いたしました際に、衆議院ではこの問題についてずいぶん論議がございました。その点について若干補足いたしますと、昨年提案いたしました際には、運輸大臣が地方の閑散線を選びまして、それを五年間ぐらいで地方の団体、自治団体ともよく話し合いをしながら、もうその鉄道としての機能を失ってしまったようなそういう線については、可能な限り自動車輸送に切りかえようという案を持っておったことは事実でございます。しかし、衆議院の昨年の審議段階で、ほとんど各党の議員から、そういうふうに非常に赤字だからといって、せっかくいまついている鉄道をやめてしまうのはいかがかと、これではますます地方の過疎状況に拍車をかけるじゃないか、やはりそういったものは、国が相当の援助をしてでも、そういった地方の閑散線は維持すべきではないかというような、非常に強い御議論があったことは事実です。で、そのほかに、われわれもまた反省をして考えますと、田中総理の言っておられますように、全国土にわたりまして豊かな町や村を築いていくためにも、やはり国鉄というものは全国の交通ネットワークの中心でございますから、そういう点に重きを置きますと、いま現在は非常に赤字で困っておりましても、今後のいろいろの過疎、過密の解消というような点からいきまして、政府においてこれからいろいろの施策を実行していく段階にございまして、そういうことでございますから、将来ともそういう国土の、何といいますか、国土を開発し、そして地域住民の福祉につながるような、そういった可能性の多い路線につきましては、今後もそれを維持していくようにしたほうがいいんではないかということで、その点については多少昨年の提案とは方針を変えまして、今度は自動車で代替輸送をしたほうが適当である、地域の方もそれでけっこうだというような路線もございますから、そういったものは従来の方針どおりに廃止をしようという方向で検討いたしておりますけれども、そうでないものにつきましては、今度の国鉄財政再建法の関係で、相当政府としては思い切った財政的補助をいたしまして、そういったものにつきましてもこれは残すようにしようという考えでございます。  それから、いま最後にお触れになりました、AB線のことだと思いますが、いわゆるAB線。これはおっしゃるようにふやしております。ふやしておりますが、これはさっき申し上げましたような趣旨で、実際に中途はんぱで、もういつつくかわからないというようなものは、そういう措置をとっておる鉄道というようなものは、必要の度合いに応じまして、事情に応じて早く経済効果を発揮したほうがいいじゃないかというようなことで計算をいたしますと、若干これをふやさないと、いつまでたっても、十年、十五年かかっても、なお開通しないというような路線が残りますから、そういったものにつきましては、重点的に予算の配分をしまして、早く経済効果が発揮できるような措置をとったほうがいいということで、若干の、何といいますか、投資の増加をしたわけでございます。ただ、この点は御承知かと思いますけれども、AB線の建設費は、その建設費の全額をこれは政府出資でやるんです、全額を政府出資でやるんです。そして国鉄は、そのAB線ができました場合は、それを無償で国鉄が借り受けるわけです。ですから、国鉄としましては、AB線の運営費は要りますけれども、資本費がないということです。で、そういうふうな特別の考慮をいたしまして、地方の開発にも役に立ち、地方の住民方々の福祉にもつながるような交通路の確保をしなきゃならぬということで、いまお述べになりましたような措置を今度はとっておるのでございます。
  134. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 私、いま大臣にお伺いしたのは、その地方の開発のために新線建設が必要だという、こと、これはまあ御主張わかりますし、また、鉄道との関連も考えながらというお考えも賛成なんですけれども、ただ、いま冒頭に申し上げましたように、総合交通体系で、特に地方線、あるいは地方開発線というのを道路に転換するんだということをうたっているのと矛盾していないかと思ったものだから伺ったわけでございます。  国鉄総裁に伺いますけれども総裁はこの間まで、地方線だとか地方開発線は赤字線としてむしろもう廃止していくんだと、このことを強く希望されたり、また主張されたように私は考えたんですし、また新設に対しても非常に消極的だというふうに記憶をしておりますけれども、最近豹変されたわけでございますか、お伺いします。
  135. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いわゆる新線の問題、あるいは赤字線の問題でございますが、私ども昨年の国会に提案いたしましたものにつきましては、いわゆる赤字線の廃止については、国鉄というよりもむしろ政府の責任でもって赤字線を廃止するのだというふうな、相当飛躍したところまでいっていただいたわけでございますが、その後、国土の再開発というような意味で、もう一ぺん赤字線地域を見直すんだということで、ほんとうにもう全然要らないものはこれは別として、多少なりとも今後発展の可能性のあるものについては、これをもう一ぺん検討するというふうに、政策が、いわば変わったと申しますか、重点の置き方が変わったというふうに考えましたので、その点は政府の御趣旨に従ったわけでございます。また、新しい線の建設につきましても、私どもも全部新線建設がいけないという意味ではなくて、ただあんまり総花式に、全国六十カ所も七十カ所もやっていたのではいつできるかわからない。そうでなしに、ほんとうにあと三十年、五十年、国民の足としてお役に立つものを重点的にやるべきだというふうに主張をしておったわけでございますが、今回の政府のお考えは大体そういう意味で、AB線の中でも、ほんとうに将来の交通系絡をなすものに重点的に予算を配賦してやるんだというふうな御趣旨でございますので、その点は私どもがかねがね主張しておったことをお認め願ったというふうに思っているわけでございます。
  136. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、私、総合交通体系と矛盾した点をあげたいのですが、新幹線の建設ですか、新幹線の建設は、山陽、東北、信越、成田と、こうなっていまして、その他の路線ごとの輸送量の見通し、その他の路線は輸送量の見通しや、経済効果、収支を検討してから整備することになっていますが、次々に新幹線の建設がきまって、建設費が計上されていますが、これはどういうわけでしょうか。また、どうきまっているか、建設予定、建設地等を説明していただきたいと思います。
  137. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 多少鉄道建設公団のほうにわたりまして、私の権限外のこともございますが、一応全般的に御説明申し上げますが、いままでのいわゆる新幹線の建設につきましては、一昨年の総合交通体系、いま先生の御指摘の総合交通体系によりまして、いま建設中の山陽線と、あと上越、東北、成田ということで、昭和五十二年ないし五十四年に開業ということで計上してあったわけでございますが、先般もいろいろお話がございましたとおり、やはり国土の再開発という意味で、新幹線をなるべく早くつくったほうがいいというふうな御趣旨によりまして、今回の予算におきましては、一応昭和五十四年度までに札幌と盛岡の間、いわゆる北東北と北海道の新幹線、それから北陸回りの、北回りのいわゆる新幹線、それから九州の博多−鹿児島、博多−長崎の新幹線、これだけをつけ加えまして、大体昭和五十七年度末までに約三千五百キロぐらいのものをつくり上げるというふうに計画を繰り上げたということになっているわけでございます。したがいまして、本年度の予算におきましても、金額的におきましては従来よりも相当上回った金額を計上しておりますし、また、来年度におきましても、四十八年度におきましても、いまいわゆる調査四線というものにつきまして、鉄建公団と私のほうと約五十億ずつ計上した次第になっておりますが、まだこの内容はきまっておらないわけでございます。
  138. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この新幹線が各地元でも非常に要望が強いことはよく十分わかりますけれども建設したものの、採算に合わないという経営上の問題の発生は、私は不可避だと思います。赤字になれば値上げすればいいのだ、このようないまの当局の姿勢のままで、また高速道路や航空機との競合をどうするかというような総合的な判断、政策なしに出発することは、私、いまも例にあげております総合交通体系できめた方針に反していると思うが、どうでしょうか。また、この列島改造論の話が出ましたが、これに忠実であればいいというようなお考えなのか。これは運輸大臣にもお伺いしたいと思います。
  139. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 交通機関は、いろいろ鉄道もございますし、それから航空も、いまお話しのように海運もございますし、自動車もございます。総合交通体系でもいろいろ各交通機関の特性というものをよく研究いたしまして、それぞれその役割りはこうあってほしいということを書いてございます。これはそのとおりだと思うのです。そのとおりいけばよろしいのですけれども、しかし、たとえば運賃は、自動車と国鉄と比較いたしまして、このほうが、このくらいのキロ数になると国鉄のほうが安いんだから、これは利用すべきだ、こう言いましても、いろんな荷主のほうの事情があるわけですね。これはもうお客さんなり、荷主の選択によってきまるわけです。単なる運賃政策だけじゃきまりませんし、交通関係のいろんなサービスを総合いたしまして、旅客なり、あるいは貨物のほうは、多少運賃が高くても、このほうを選択するというようになってきているわけですね。でございますから、総合交通体系のほうは理論的には書いてございますけれども、実際問題といたしますと、それを強制的に、この荷物は国鉄に積めとか、このお客さんは航空機に乗れとかいうわけにはいかないものですから、そこに実際との間に相当に食い違いが出てくるということだと思います。われわれとしては、しかしそういうこと、そういう現実とは離れまして、やはり一つの理想は理想として持っていなければならぬと思っているのです。それは総合交通体系に書いてありますような、本来かくあるべき姿、本来望ましい姿というものをいつも考えておりまして、実際の旅客の輸送なり貨物の運送というものがそれに近づくような政策をとっていかなければならぬというように努力をしているわけでございます。総体的に申しますと、それは遠距離の早く行かなければならぬというお客さんは航空機がいいだろうと思いますし、それから旅客につきましても、中距離、長距離のお客さんとか、あるいは貨物につきましても、そういったのは国鉄がいいだろうと思います。大都市を中心として、通勤通学の交通機関としましてはほかにいろんな機関もございますけれども、やはり国鉄の占める役割りというものは大きいだろうと思います。自動車のほうは中距離以下の貨物、旅客の運送に当たるのが一番適当だと思いますけれども、さっき申し上げたようにいろいろな要素がかち合ってくるもんですから、具体的になりますとこれは強制するわけにいかないし、やはり旅客や貨物の選択に対応できるような輸送の体制というものをそれぞれの交通機関が整備してくれることが先決問題だと、こういうふうに考えております。
  140. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 このような道路と鉄道との関連なんかにおきましては、例の西ドイツのレーバープランというのがございますね。これについて、レーバープランなる構想に対して運輸大臣はどのようにお考えになっていますか。
  141. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 私もそのレーバープランのことは調べて聞いております。これは西ドイツのほうでは一時成功したように聞いておりますけれども、しかし、国鉄がですね、鉄道がですね、貨物輸送を自動車にさらわれているということで、相当西ドイツのほうでは貨物の自動車による運送に対して税金をかけたりして、鉄道のほうに持っていこうという努力をしたようでございますけれども日本の事情はちょっとそれと違うと思うんです。で、私さっき申し上げましたように、これは無理やりに貨物の運送を自動車に奪われたために国鉄の貨物の輸送の分量が減りまして、貨物の収支が非常に悪化しているという事実は、これはそのとおりだと思うんですけれども、しかし、それをいまのような非常に人為的な方法で無理やりにいろいろ税金をかけたり、いろいろなことを行政措置をいたしまして、国鉄に無理やりに貨物を集中させるというような方法は、日本としては、これはよほど慎重に検討しなければいけない、むしろ私は消極的に考えております。それにはさっき申し上げましたような、国鉄自身がそういうトラックの輸送に負けないような貨物の近代的な、合理的な輸送体制を整えるということが先決でございまして、それによって競争してでも国鉄が貨物輸送の中核になれるというような体制を早く整備することが必要ではないかと思っておる次第でございます。
  142. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま運輸大臣からお話があったんですが、この総合交通におきまして、最も重要な役割りを演じている一つとして道路がございますが、これについて公安委員長にお尋ねしたいんですが、いま道路は御案内のように、非常に渋滞して、また、あるいは公害だとか、事故だとかいうことのために機能が十分発揮されていないわけでございます。特に都市の道路とか、またあるいは高速道路なんぞにはいろいろと問題がありますが、これについての委員長の忌憚のない御意見といいましょうか、お考えを承りたいと思います。   〔委員長退席、理事西村尚治君着席〕
  143. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) この貨物輸送の面につきましては、まず海運と陸運、陸運の中ではいまの鉄道輸送とトラック輸送というわけですが、トラック輸送に関する事故の防止、公害、いわゆる公害、広い意味での。これは私ども警察庁の関係としてはきわめて重要な問題だと思っております。したがいまして、本来この貨物輸送の根本を、まず海運と鉄道と道路輸送との分野をはっきり明確化する。そうして、同時にその機能をそれぞれしっかり整備していくことが何よりも根本の問題になろうかというふうに考えております。まあ、そういう点では関係各省庁と十分協議をいたしまして、私ども交通事故を含む広義の公害を防止するべく全力をあげてまいりたいという決意で、その任に当たっておるわけでございます。
  144. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあ自治大臣には、この道路を相当重要視して、まだいろいろなお考えを持っておられますけれども、現在の状況を見まして、どうも道路が十分な機能を発揮していない原因として、これはいろいろありますが、大型車、非常に大きなのもありますし、また重量車、まあこれは法律では、道路運送車両法では二十トンですか、までという限度がきまっておりますけれども、これなどの大きさとか、あるいは重さというものの制限についてどのように考えておられますか。  それからまたもう一つは、御承知のように、非常に何といいましょうか、過積みの問題がありますですね。これは一応自動車の運転手、まあ運転者の立場を非常に苦しくさせているのは御承知のとおりでありますが、何といいましょうか、やむなく荷主側とかあるいは経営者側の要求によって過積みをしいられているとか、あるいはまた過労をしいられているというようなことが間々ありますけれども、このようなことは私、もうほんとうに押えていかにゃならぬ問題だと思いますが、これについての御意見を承ります。
  145. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 大型トラックあるいは長距離トラック、しかも過積みのこれらのものが大体都心部に入ること自体が警察庁側からすれば好ましくない事態であると思っております。まあこれには、さっきも申し上げましたように、それぞれの分野を分担整備すること、そうしてまた、環状線などをその一翼として整備をいたしまして、都心にそういうものを入れない、これは根本の大事な施策だというふうに思います。そうして、警察そのものとしましては、いま御指摘のように、まあ交通の安全と円滑の確保、交通公害の防止というわけで、まず第一にその過積みのまあ重量違反、これがあります。それからスピード違反、これらに重点を置いて取り締まっておりまするが、特に御指摘になりましたような、大都市の交通混雑時間帯における大型トラックをどういうふうに処理するのか。これは乗り入れの規制、これはまあ先日から、御承知のように東京都内の環状線では七号線でございますね、規制をいたしております。特に騒音公害の問題と交通規制の強化を進めておるような次第でございます。なお、積載重量超過のトラックにつきましては、道路管理者側と協力をいたしまして重量計を設ける、そうして取り締まりをしておるというわけです。  それからもう一つ新しい対策としてですね、目下運輸省に協議をしておりまするのは、ダンプカーにこう、おおいをつける。開いて荷物を積んでまたこう締める。まあこんな構造にでもすればいわゆる過積みの問題が緩和されるのではないか。これはまだ結論を得ておりませんが、そういう方向で十分ひとつこれらの問題も検討をし、実行に移してまいりたいというつもりで対処をいたしております。
  146. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 もう一つ、ちょっとお伺いしますけれども、その過積み対策でですね、まあもちろんこれはスピード違反の取り締まりもありますけれども、スピードが非常にもう規定以上出過ぎていると、非常に危険を感ずるぐらいのスピードが出る場合だとか、あるいはまあ過積みで、たとえば十トン車に二十トンも積んでおる、これはよくあるそうでございますけれども、このような例のときには、自動車そのものにブザーならブザーとか、あるいはまたランプならランプがついて、一見スピード違反をしていると、あるいはまた過積みやっているんだということのわかるような何か方法はないかと思いますけれども、いいお考えお持ちですか。
  147. 片岡誠

    政府委員(片岡誠君) 運輸省の自動車局の所管事項と思いますけれども、私ども共同してやっておりますのでお答えいたしたいと思います。  そういう過積みであった場合に、一般にわかる、あるいはスピード違反していれば一般にわかるという考え方、一部採用されております。しかし、これの制度の問題もございますし、そういうことも含めて、先ほど大臣が申しました物理的に過積みができないような仕組みをつくるということも含めまして、何か車両構造その面からとらえて違反のないようにする方向でさらに検討をいたしたいと思っております。
  148. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 鉄道位置づけにつきまして、四十八年度予算が総合交通体系と矛盾すると思われまする第三の点は、大都市交通の分野であります。体系では、国鉄は大都市通勤通学輸送に業務分野の重点を移すべきである、こういうふうに述べていますけれども、四十八年度予算を見ますると、鉄道建設公団の大都市交通線の建設費は大幅に減少しているが、これはどうしたことか。これは運輸大臣それから国鉄総裁どちらでも御答弁願いたいと思います。
  149. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 大都市交通につきまして、私のほうが持ちますウエートは相変わらず重くなっているというふうに思います。  ただいまの御質問の点でございますが、ちょうど昭和四十七年度で一応昭和四十年度から始めました第三次長期計画のおもなものが全部終わりまして、最後に、一昨日開通いたしました武蔵野線でございますが、これは鉄建公団がやっておりましたので、これがおとといでき上がったわけでございまして、これを最後といたしまして、現在たまたま残っておりますのは東海道線のいわゆる横須賀線と湘南線を分けることだけが残っております。これはたまたま工事がおくれておりますけれども、それ以外は一応全部四十年度からの計画のものがすっかりできたわけでございます。  そこで一段落いたしたわけでございますが、いままでの、四十年度から四十七年度まで東京で約四千百五十億ぐらい投資いたしました。ただいま御審議願っている予算をはじめといたしまして、今後の十カ年におきまして、やはり東京で約四千億ぐらいの投資をいたします。ただ国鉄といたしまして、いままで関西地区に、非常に何と申しますか、ウェートをほとんど東京ばかりに集中いたしまして、東京の四千百五十億投資いたしましたのに比べまして、大阪はわずか六百四十億しか投資してなかったということで、ほとんど私鉄にたよってしまったということで、非常に大阪方面からの御要望が強くて、今度の十年間では東京が約四千億、大阪が三千億ということで、全体で七千億の通勤輸送の投資をするつもりでございますが、これは過去の八年間の四千七百億に比べますと相当大幅な増加でございまして、たまたま昨年に比べますと、ことしは大きなプロジェクトの最高の年が過ぎた直後でございますので減っておりますが、いずれまた大体年間平均七百億ぐらいのペースにふえてまいるということで、四十八年度がちょうどこれから新しい工事をやるスタートラインになりますので、たまたま工事費として減っているというだけでございまして、計画としてはやはり十年間に今後約七千億の投資をしてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  150. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあ国鉄だけに都市の通勤通学綿が込んでいるという責任を持っていくわけにはいきませんと思いますが、朝夕のラッシュ時の込み方などは大臣とか国鉄総裁御存じですか。これはもう終戦直後のあの乗りものの混乱期と同じです。もう二十年か三十年たってもさっぱりこれは緩和されていない。したがいまして、国鉄は計画が一段落ついた、だから次の計画でもって四千億円出すとかなんとか言っておられますけれども、この混雑をどうしたらば解決できるか、その解消に取り組むべきじゃないかと私は思います。  したがって、私も、このような混乱が相変わらず朝夕のラッシュアワーに続いているということ、このことを改めなければ、結局この間の上尾の事件のようなものも日ごろの輸送機関に対する不満のあらわれだ、このように思います。私は、したがいまして、国鉄総裁だけに申し上げているわけじゃございませんけれども、もう少し国鉄自身もこの混雑緩和といいましょうか、通勤通学のための対策というものを考えるべきじゃないか、このように思っております。  私、したがって運輸大臣にお願いしますけれども、国鉄がもちろんいまこのような計画を持っておられますけれども、これは非常に不十分でして、したがって私鉄を都心に乗り入れるとか、あるいはまた地下鉄の拡充をもっと積極的にできないかということでございます。もう一つは、モノレール、これを開発して利用するというようなことを推進していくべきだと思いまするけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
  151. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 大都市の通勤通学輸送がまだ非常に混雑率が高いということは私も承知しております。これを解消するために、これは毎年毎年運輸省としましては、単に国鉄だけではございませんで、民鉄もございますし地下鉄もございますし、またバスもございます。いまおっしゃったようなモノレールなんかはごく一部にしかございませんが、いろいろ構想を練りまして、なるべく早くこの混雑率を緩和するように努力しなければならぬということはおっしゃるまでもないのでございます。  しかし、ある路線が開通しますと、その当時一時はちょっと混雑率が緩和することは事実なんです。なんですけれども、この輸送力というものと見合った都市開発が各地で行なわれておりますとそんなに心配ないんですけれども、その間、これは何も建設省の公団だけが問題じゃないんですけれども、民間の人たちの経営するような住宅もたくさんできまして、そういったのが、先般の上尾事件でありますように、大体の輸送需要というもののは想定をして、たとえば、国鉄のほうもいままでの車両をふやして一つの列車が非常にたくさんの人を運べるようにしたり、あるいは場合によってある部分を複線化したり、いろんなことをやっておりますけれども、それを上回るような人口の増加があり、それがある程度かって気ままなかっこうでばらばらに動かされておるというところに問題があると私は思っておるんです。  先般来、そういうことを関係の閣僚の方にも御相談をしておりますが、これは輸送だけの問題でございません。そういう地域の開発の問題とかあるいは住宅問題、いろんなところにもう少し連絡をとり総合的にそういう計画を進めていかないと、この過密化現象というのはますますひどくなるでしょうから、われわれが考えております今度の法律案を通していただきましたら、十年先には混雑率がいま二五〇のところを一九〇にいたしまして、新聞ぐらいは自由に読めるようにしよう、こう言っているんですけれども、とうていいまの状態では、そういうことが、予期しない人口増加がありましてできないかもしれません。そういった点を考えて、もう少し関係各省連絡をとって計画をきめて、そうして輸送人員を——われわれのほうから見ますと輸送人員というものの見当がつくようにしてもらいたいということを提案をしておるわけなんです。これはなかなかむずかしい問題でございますが、関係閣僚ともそういった方向でひとつ相談をして、できるだけいまの状態を打開するように努力しようということになっておりますので、この点については将来の一つの——将来といいますか、ごく近いこれは将来でございますけれども、今後の宿題にしておいていただきたいと思うんです。これについては意欲的に取り組みまして、そういうふうな実績があがるように関係閣僚の間で相談をして必ず努力をしたいと思っておる次第でございます。
  152. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあ運輸大臣の御手腕に大いに期待しております。  次に、国鉄総裁にお伺いしたいんですが、国鉄が赤字だということは、独立採算の前提からすればこれはゆゆしいことだと思いますけれども、実は、この独立採算という前提は、国鉄が独占的な輸送機関であった時代に初めて成り立つものであって、総合交通体系を必要とするようないまの時代には成立しないと、このようにまた考えられるわけでございますが、今回国鉄が大幅な運賃値上げを基礎とした再建案を提出いたしましたのも、これは結局、独立採算のたてまえによるものだと、このように思いますが、いかがですか。
  153. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 私からお答えしたほうが適当だと思いますんで……。  いまの日本国有鉄道法のたてまえは、申すまでもありませんが、昭和二十四年にでき上がりまして、これは公共企業体というかっこうになっておるわけでございまして、この点は法律の面からいきましても明瞭でございますように、一方においては普通の運輸事業者と違って、非常に公共性の強いものだということで、従来は国営でございましたけれども、一方では企業をやりますから普通の監督官庁と違うという意味で、この企業性というものを重視いたしまして、一方で非常に公共性が強いけれども企業性もあるということで、公共企業体というものが生まれたものだというふうに私は考えておるのでありますが、その法律のもとにおきましては、いまおっしゃったように、初めの経過からいきますと独立採算制をとっていたことは事実でございます。今日でもその法律は変わっておりませんから、やはりそういう体系の中で国鉄というものは営業を継続しておるということには間違いがございません。しかし、昭和三十九年からこちらにかけて非常に国鉄の財政が悪化いたしまして、三十九年以来毎年赤字を出しております。で、そういうことでございますから、それに対しては、国としまして、こういう国民の足を預かっておる公共機関でございますから、これが赤字のために、なすべきこともできないということではいけないということで、国鉄の機能を発揮させるような意味で財政援助をしてきたのでございますが、だんだん社会状態が変わってきまして、国鉄に対する公共的な見地からの要望が強くなってきたわけです。これはもう事実でございます。いまのお話にありました通勤・通学輸送にいたしましても、地方の閑散線にいたしましても、これはもう引き合わないからやめたというわけにはいかないわけですし、そこに公共的な国鉄の使命があると思いますし、また、その内容につきましても、通勤・通学のほうは半分でやれ、五〇%以下でやれというような法律の規定がありますように、これは採算を度外視してやはり国鉄が国民に奉仕するという体制をとらなきゃならぬというふうな公共的な要求が非常に強まったことは事実でございます。  これに対しまして、いまおっしゃったような、ここまで来ると独立採算制も何もあったものじゃないと、むしろ国鉄の性格が変わったんじゃないかと、こういうふうな御意見かと思います。見方によっては、私は、それはあえて否定をするものではございませんけれども、しかし、今日の国鉄というものは、やはり運賃の——国鉄運賃法にも書いてございますように、やはり原価というものをもとにいたしまして、そうして独立採算制で経営するというのが今日の国鉄に関する法制の原則でございますから、その原則のもとに、私どもとしましては、公共的な要望の強いところに対しましては、他に例がないほど国鉄に対しましては国の厚い補助といいますか、保護を与えまして、そうして公共方面の要求に対応するような措置をとらせようというのが今日の国鉄財政再建法の趣旨でございまして、この点は、あるいは見方によって議論が分かれるところかもしれませんが、私ども提案いたしております趣旨はそういうことで、現行の日本国有鉄道法、それから国鉄運賃法、その他関係法令をもとにいたしまして、性格を根本的に変えないで——変えなくてもいいと思います、足りないところは国があとう限りの財政補助をして国鉄の機能をフルに発揮させるような体制を早くつくりたいと、こういうことで提案をしておるわけでございますから、その点は、御意見はあるいは違うかもしれませんが、そういう趣旨であるということについて御了解をいただきたいと思います。
  154. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 私、大臣が言われますように、この独立採算制というものに対し非常に疑問を持っておりますし、適当じゃないんじゃないかと考えておりますが、これは後にいたしまして、いまの国鉄の赤字、これは旅客運賃ではなくて、おもに貨物部門からの赤字であるということですが、これは事実でございますか。
  155. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 客貨別の原価計算と申しますか、の結果、一応いままで私のほうでやってきたもので計算いたしますとそうなりますが、実は、それには非常にたくさんの前提がございまして、その前提があまり世間に出ませんで、結果数字だけ出ておるわけでございますが、これはよく先生御承知のとおり、私のほうのいわゆる客貨の原価計算の数字は、一種の営業係数と申し、まあ普通の企業で言えば、いわゆる収支係数でございます。したがって、その収支係数とその企業で販売いたす物の価格とは直結いたさない、これはもう当然でございますが、それと同じように、私のほうの客貨別の原価と客貨別の運賃というものは必ずしも直結いたさないというところに一つの大きな問題があるわけでございまして、それはやはり客貨別の原価につきましての分け方、これがいろいろ多数の前提がございますが、この前提を全部検討した上でいろいろな議論がされないで、ただ結果数字だけでもって赤字・黒字という議論が出ますけれども、私どもは、実はその原価でなくって、いわゆる線区別の原価というものを公にいたしております。これは、法律にきめられました財務諸表と関連いたしまして正式に出しておるわけでございますが、この線区別の原価でございまするが、これは相当正確な、しかも、ほとんどフィクションのない原価でございますが、客貨別の原価と申しますものはいろいろたくさんの原価が入っております。したがって、単に客貨別の原価だけで赤字・黒字の問題はなかなか結論が出ないというふうに考えております。むしろ、線区別の原価で幹線系の線区の赤字と地方交通線の線区の赤字ということならばきわめて正確な数字が出て、しかもそれが財務諸表と一緒に公にしておるわけでございます。
  156. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 貨物部門が赤字かどうかということをお伺いしたんですけれども、非常にむずかしくお話しになりましたんで、一体貨物部門が赤字を出しているかどうかわからないような印象さえも与えてますけれども、事実おたくのほうで出されている表によっても、貨物部門が赤字を出しておるのだ、数字的に見ましても、旅客部門は十億ですか、一応黒字になっているけれども、大部分の一千七百億でしたか、これは貨物のせいだ、このようなことになっておりますけれども、私は、それが現実に鉄道の実態の上でもって貨物だけからこういうふうに出たとは即断はしませんけれども、しかし、そういうふうに考えられ、また、事実貨物が非常に成績が悪いということでございましょうから。  そこで、今度の旅客運賃ですけれども、貨物のほうに赤字の原因がある、数字的にどうあろうとも。確かにそう、だとすれば、赤字が出たからつて、貨物運賃はまあともかくとして、旅客運賃を二三%も上げる、これはどうもおかしいんであって、ことに鉄道がよく言われる受益者負担といいましょうか、このような原則からしても——私は、この受益者負担そのものについても別に特に賛成しているわけじゃございませんけれども、このような原則からしても、この旅客運賃の値上げということは非常に不合理だと思いますけれども、この点、いかがでございましょう。
  157. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私のほうでは、御承知のとおり、一つの線路の上に旅客と貨物と両方動かすわけでございまして、その原価の配分が非常にむずかしいということと、それから営業方針自身が、日本鉄道はもう発足以来、いわゆる旅客鉄道でございまして、むしろ貨物輸送というものは副業的な形でもって今日まで来ていることは、これは明らかでございますが、そういう意味で、現在の営業方針の中でどうしても旅客部門に相当ウエートが置かれて、貨物のほうにウエートが置かれないというような営業方針からいろいろな数字が出てきておるわけでございます。したがいまして、そういうふうな場合には両方一緒にいたしまして、総合原価と申しますか、国鉄の利用者全体で国鉄の経費全体を見ていただくというふうな、やはり総括原価と申しますか、そういう方針でまいりませんと、たとえば、同じ貨客と申しましても、新聞、雑誌は非常に赤字が出ているというふうな議論もございます。そういう意味で、個別的な輸送に限定いたしますと、これ、切りがなくこまかくなってまいりますし、逆に、東京付近でもうけて北海道で損してどうするか、あるいは新幹線でもうかって九州で損してどうするかというふうな、個別原価になりますと実に切りがないような大きな問題になりますので、私どもといたしましては、やはり客貨合わせた総合原価と申しますか、総括原価と申しますか、そういうもので運賃を考えるということが、二十三年に運賃法ができましたときからの一つ考え方でございまして、いろいろ御議論はあると思いますが、いままでそういうやり方でやっておりましたので、今回もその考え方を踏襲するという考え方でございます。
  158. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 国鉄に重ねて伺いますけれども、貨物の中には、荷主によって、また数量によって、いろいろ運賃に、何といいましょうか、割引制度といいましょうか、があるということを承っていますが、これは事実でございましょうか。もし事実とすれば、いまこのようなものに該当していまするおもな貨物の種類だとか数量だとか、また割引のレート、これをひとつお知らせ願いたいと思います。
  159. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私のほうで割引いたしておりますのに、いろいろございます。大きく分けますと二種類ございますが、一つは、いまの貨物運賃の制度が物の値段できまっておるわけでございまして、いわゆる、さっき先生のおっしゃった、国鉄しかなかった時代の従価等級主義というのがまだそのまま残っておりますが、いま四つ等級がございますが、その中で約六十数品目につきましては、本来当然二級であるべきものを四級にする、あるいは一級であるべきものを三級にするというふうな政策的な割引をやっております。これは全体で約四十四億の金になっておりますが、これは、国鉄の経営の面だけから見ますと、一切のリターンのないものでございまして、いわば社会政策的な割引と申しますか、米、米は本来の価格から申しますれば二級品でございますが、それを四級の運賃しかいただいてないということでございますが、こういう割引がまず第一でございます。いわば、ちょうど旅客で申しますれば、定期運賃を割引しているというよりも、もっと、鉄道の営業の面からだけ見ますればあまり営業にプラスのない純粋な国鉄以外の次元で考えた運賃割引がございます。これが、トン数から申しますと約二千八百万トンでございます。まあ一番大きいのは米でございます。あるいはその他、米麦、主として食料品でございますが、こういうものは、物の値段に関係なし、現在の鉄道の貨物制度に関係なしに、一番安い運賃で運ぶという制度が第一でございます。これの割引が、いま申しましたとおり、年間で約四十数億の割引になっております。  それから、それと違いまして、私どもの営業的見地から割引しているものがございます。これは、一つは出荷誘致と申しまして、もし割引をしなければ、トラック、船その他の関係で、よその交通機関に行ってしまうものを、ある一定の限界を設けまして、その限界以上であれば割引しても荷物が来たほうが得だという、こういう一種の全くコマーシャルによる計算がございます。これが年間六十六億の割引をいたしまして、その結果、約三百二十億の増収をあげておるわけでございまして、これは、どんな荷主でありましても一定の条件に従いますればどなたでも割引するということでございまして、これは品目は多々ございます。農産品もございます。たとえばミカンとかリンゴとかというものもございますれば、あるいは紙とかパルプとかいうものもございます。品物はさまざまでございます。  それからもう一つの割引は、いわゆる旅客で申します団体割引でございます。すなわち、相当国鉄を利用する数量が多いというものにつきましては、団体割引をすると同じような意味で割引をいたしております。これもやはり大荷主だから——いや、その荷主が経済力という意味でなしに、一定の客観的な基準によりまして、何トン以上ならば引くというふうな、きわめて算術的な割引のいたし方をいたしておりますので、たとえば、荷主から申しましても、いわゆる農協のような公益的な荷主もございますれば、その他一般の民間の会社、商社等もございます。また、そうでない普通の小荷主でありましても、これをまとめれば、一定の数量に達すればこれを割引するという制度もございます。そういう意味で、荷主の個々の経済的な力という意味でなくて、私のほうに出荷される貨物の態様によって割引するということで、これは鉄道に限らず、一般輸送機関のやっている普通のまあ割引と申しますか、先ほど申しました旅客で申しますれば、しょっちゅう多数の方が利用してくださるので団体割引をするのと同じ趣旨の割引、これもいわゆるコマーシャリズムから出た割引だと申しますか、そういう意味で政策的な、国鉄にいわゆるメリットのないという言い方は非常に極端な言い方でございますが、国鉄に商業的利益のない割引と、商業的利益のある割引と二種類あるわけでございます。  内容は、いま申しましたとおり、大体金額的に申しますと、政策的なものは四十四億、これはノーリターンでございます。それから営業的な出荷技術的なものは六十六億で、三百二十億のリターンがございます。それから団体割引的なものは十億でもって七十七億のリターンがございます。したがいまして、あとの二つが大体コマーシャリズムによる割引でございまして、これは主として帰りの空車を利用するとか、あるいは輸送力の余力を利用するとか、ちょうど旅客の団体が、お客さんの少ないときに割引率を高くして、お客さんの多いときに割引率を下げるというのと同じような意味で、主として交通機関全般のやっている割引制度と同じことでございます。
  160. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま、いろいろ伺ってまいりましたけれども、特別割引をしている荷主の中には、営業政策上といいましょうか、やむなくといえば、ほかに逃げるからということでありましょうけれども、しかし、現実に大手の、何といいましょうか、荷主ですか、あるいはその中に大企業が多いと思いまするけれども、そのような荷物を受けていることによって一応ペイしているならこれは問題ないですけれども、総括的に貨物部門がうんと赤字を出しているということは、要するに、その貨物についても相当な赤字を負担している、そんな赤字を負担しながらも、なおその大企業にサービスするといいましょうか、特定の荷主にサービスするというのは、ちょっと私理解しにくいのですけれども、私は、貨物部門の運賃の赤字を結局利用者負担ということでもって、一般の旅客、さらには一般の貨物の主にまでに対して値上げする、負担さす、そうしていくということにおきまして、ことに力のある大企業あるいは大手の荷主、大手筋というようなものに対しても、それを値上げにおいて特別扱いといいましょうか、本来ならそのような貨物に対して当然取り立てなければいけない、当然適正な運賃をもらわなければいけないのに、特別扱いをするということは、それが波及して、一般の旅客だとか、あるいはその他の荷主というものに影響するということは、これは非常に間違った行き方、じゃないかと、要するに、不公平なこと、じゃないかと思いますけれども、これは国鉄総裁、もう一度お尋ねしたいと思います。
  161. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 内容は、先ほど国鉄総裁から申し上げたとおりでございますが、国鉄の赤字というものと割引というものと、ただ単純に比べてごらんになると、素朴にそういうふうな疑問を起こされるのももっともだと思いますけれども、先ほど総裁が申しましたように、これは.要するに、どこかへ運ばなければならないのですから、結局、サービスが悪いとトラックにみんな逃げてしまうわけです。だから、国鉄としましては、さっき申し上げたように、幾らかの割引をいたしましても、そこに相当のメリットになるような収入が期待できれば営業政策上それをやるのは当然だと思いますから、そういう範囲でこの割引制度が残っておる。いままでの政策的な割引を全部やめましたけれども、いま言ったような営業上そのほうがプラスになるというようなものが残っておるということで御了解いただきたいと思いますし、それから、いまの割引制度につきましては、これはいろいろの問題があると思いますから、こういったものにつきましては、これからも実行上皆さんの誤解が起こらぬように、つまり、あなたがおっしゃった、何も大手の荷主に対してサービスする意味で割引しているわけではないのです。ないんですけれども、そういったことになることはよくないですから、いまのところは、どなたに対しても、どういう小さな荷主に対しても平等の条件で開放しているんですから、そういう意図は全然ないんです。ないんですが、そういう誤解を起こすおそれのあるようなものにつきましては気をつけて慎重に取り扱うようにいたしますから、この点も御了解いただきたい思います。
  162. 西村尚治

    ○理事(西村尚治君) これにて阿部君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  163. 西村尚治

    ○理事(西村尚治君) これより午前中の小林君の質疑を続けます。山口装備局長
  164. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 午前中、小林先生の御質問に対しまして、たまたま資料を持ち合わせませんで、御審議を中断いたしまして申しわけございませんでした。  先生の御質疑に対しましてお答え申し上げますが、先般の御質疑は、装備の生産及び開発に関する基本方針及び防衛産業の整備方針及び研究開発の振興方針につきまして、その方針の趣旨に沿って説明をせよという御質疑かと解釈いたしまして、それに基づきまして御説明を申し上げたいと思います。  最初に、装備の生産開発に関する基本方針についてでございますが、これは防衛生産及び研究開発に関しまして、両者に通じます基本的、一般的な方針をここに出したものでございまして、特にこの方針に基づきまして、現実の政策は御承知のとおり、各防衛力の整備計画及び年度ごとの業務計画及び予算に基づきまして、具体的な計画実施をいたしておるわけでございます。  この方針の中で、二、三、要点がございますので申し上げますが、第一の生産体制の整備につきましては、わが国の工業力が漸次増大してまいるに従いまして、この工業力を中心として、これをバックに防衛力に必要な装備を充実させたいというきわめて基本的な方針でございます。  その次に、自主的な開発、国産を推進するとございますが、この点につきましては午前中御説明申し上げましたとおり、それ以前の、四十二年度以前の段階におきまして、わが国の装備の大半がおもにアメリカからの供与品、貸与品によって占められておった関係から、これがこれから徐々に脱却いたしまして、ようやくわが国の技術水準及び工業力によりまして、自前の防衛装備ができるようになったというような背景に基づきまして、当然に自国の国情に適しましたものを整えるべきであるという方針を出したものでございます。  第三の点は、わが国には、戦前と違いまして現在国に兵器廠というようなものは所有しておりませんので、研究及び開発あるいは生産はどうしても民間企業というものを中心とせざるを得ないということでございまして、民間企業の開発力、技術力を活用するということでございます。  第四には、この生産開発を長期的な観点から効率的、安定的かつ経済的にこれを実施してまいりたいという方針を出した次第でございまして、これは当然にその背後には競争原理を導入しまして、適正な競争の上に立った適正な価格によりまして調達をするという原則を述べたものでございます。これが、あとの二つの方針の上に立ちますきわめて基本的な一般的な方針と考えております。  その次に、防衛産業の整備方針でございますが、これは産業政策的な企業の整備方針というようなものでは、実は決してございませんで、防衛庁が装備の調達をするに際しまして、企業と接触をするに際しての整備方針というふうに考えてつくられたものでございます。  この中で、基本的な点は三つばかりございまして、第一に、競争原理を導入するということを第一にうたい上げております。これはやはり限られた予算の中で最も効率的な装備を調整するという点からいいますと、どうしても競争原理というものを強く導入しなければならないという点が一つございます。  その次に、またこれとやや相反する実情でございまするが、たとえば航空機、武器等は、御承知のように、航空機製造事業法あるいは武器等製造法によります制約が法律上ございます。それからまた、技術的な技術提携、外国企業との技術提携というような面からの制約もございます。そのような点から、どうしても企業がいわゆる一般競争入札という形をとりにくい場合がございまして、そこには今度は企業の数が限定されてくるというような特殊性がございます。したがいまして、この競争原理の導入と企業少数化というものをどのようにバランスをとっていくかというような方針を実はここに出したわけでございます。  第二の点は、適正価格による調達という点でございまして、これは私どもが予算の範囲をできるだけ少なくいたしまして、その中で最も効率的な調達をしようという方針を強く打ち出そうという趣旨でございます。  その次に、規模の点がございますが、これは私どもは一朝有事の際といいますか、有事の際を予定して、いわゆる備蓄型の生産体制をとろうという趣旨ではございませんので、そのような、ただ生産能力を拡大するということではなくて、適正なリードタイムというものを考えまして、工業力を顕在化できる場合には顕在化し得るような技能水準を維持しておくというような趣旨でここに出したわけでございます。  第四は、武器の輸出でございますが、御承知のとおり、武器輸出三原則に従いまして、わが国としましては、現状のところは武器輸出は考えられないところでございます。  第五は、秘密保持の問題でございますが、これは企業におきます、企業間のいろいろとライセンス生産でありますとか、このような秘密保持の原則を出したものでございます。  その次が、防御生産基盤の確立とありますが、これは集中化をできるだけ防ごうと、特定企業への集中化を防ごうということで、防衛生産が一般的に広い範囲でその基盤から調達できるような基礎をつくっていきたいという趣旨を出したものでございます。  最後に、自国産業による開発、生産という点がございます。この点は、ここに最後に掲げてありますとおり、「今後の装備の開発及び生産は、原則として自国産業に限定するものとする。」というふうに書いてございまして、これは何かこう字面からいいますと国産一点ばりというように聞こえますが、実は趣旨は必ずしもそうではございませんで、開発と生産というものを外国企業に最初からまるまるまかしてしまうのがいいのかどうかという点からいいますと、やはり実情の知れない他国企業に開発から生産まで全部お願いしまして、それを向こうのある言い値で買ってくるということは、必ずしも私どもとしましては適切ではないと考えておりまして、開発、生産というものをなるべく自国産業に行なわせたいということは、ある程度やむを得ない方針であろうかと考えております。  それから最後に、研究開発の振興方針でございますが、これは、いま申し上げました二つの基本方針を受けまして、研究開発をどのように今後持っていくかという基本的な方針でございまして、現在でも、この方針は今後も堅持したいというふうに考えております。特に、午前中の先生の御質疑の中で私どもが気がつきました開発成果の国への帰属という点がございます。これは、この当時から私どもは実は考えておったのでございますけれども、必ずしも、運用面におきまして十分な措置がとられなかったために、いままでのところでは国への帰属分がほとんどない状況でございます。したがいまして、私どもは、今後原則として国への帰属をさせる方向で、今後の訓令ないし運用を改善いたしてまいりたいというふうに考えております。  この研究開発の基本方針は四つに集約できますが、第一は、長期的な研究開発計画をつくるという点が第一点でございます。  第二点は、研究開発におきましても競争原理を導入させたいというのが第二点の趣旨でございます。  第三点は、価格評価の適正をばかろうという点でございます。つまり、幾ら金がかかっても研究開発が進めばいいというものではございませんので、研究開発の各段階ごとに価格評価、費用対効果というもののチェックを今後適正にやってまいりたいというのが第三の点でございます。  第四の点は、研究体制の整備充実点でございまして、やはりまだ防衛庁にあります技術研究本部その他におきましての必ずしも研究体制は十分とは言い得ない状況でありまして、今後国が試験研究というものをできるだけ自力でやるような体制を整備してまいりたい。  以上申し上げたような趣旨で、この研究開発振興方針がつくられているというふうに考えております。
  165. 小林武

    小林武君 やはり日本語は日本語らしく書いて日本語らしく読まなければいかぬですね。「自国産業による開発、生産」「自主防衛の見地から、わが国を防衛すべき装備の開発及び生産は、わが国産業自らがあたることが望ましいので、今後の装備の開発及び生産は、原則として自国産業に限定するものとする。」と、こう書いてある。ここをあんた、どういうふうに解釈するの。さっきおもしろいこと言ったね。日本語らしくやってもらいたい。
  166. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  ただいま御指摘のとおり、今後の装備の開発、生産これは原則として自国産業に限定するといいますのは、この四十五年当時におきまして外資系企業あるいは本邦糸企業というようないろいろと考えがありまして、当時の解釈の中に、たとえばここに外資系企業をどうこうする、どういうように扱うかというような解釈もあったようでございます。それからまた、先ほど私が申し上げましたように、開発、生産というものを外国企業というものに全部依存する、依願するというような形、これはことに航空機その他におきまして、電子機器等におきまして、かなり技術水準の格差が現在ある、先進国とはある場合がございます。そのような場合に、開発、生産をすべて開発の段階から外国企業に依存していく、あるいは輸入を前提といたしまして生産を全部外国企業に依存するというような形、そういうようなものは、自国産業による開発、生産と同等に見るかどうかというような考え方があろうかと思います。この場合に私どもといたしましては、やはり自国産業というものを、今後技術水準の向上政策をとりながら自国産業から開発、生産をやっていきたいということで、ここには原則としてとございますが、むろん技術水準の高い企業、あるいは日本でまだ技術的にも開発できない機種等につきまして、当然、先ほど申し上げました適正価格により調達という観点から、輸入ということは当然考えなくちゃいかぬ、そういうこともむろんあり得るかと思います。  以上のように解釈しております。
  167. 小林武

    小林武君 あなたの解釈は正当な解釈でないですね、しかし、時間がないからこれはやられませんけれども。けさの防衛庁長官に対する質問ですね、質問の点は、先ほど来もちょっと話がありましたけれども、原則としてとにかく開発したものは国に帰属するという考え方、そのことが守られておって、しかも考えなければならぬことがあるんですが、ここに江崎さんいらっしゃるけれども、私は産軍が一緒になるようなやり方、そういうやり方は厳として避けなけなばならぬと思う。ここで江崎さんの発言だと新聞に書いてある。これは朝日の四十七年の三月九日の新聞「皆さんは用がある時は私どもの退職者をぜひ差向けて下さい。社長さんがおいでになったと同じ態度で接触します」と言ったと書いてある。  それから今度は、中曽根防衛庁長官は、経団連との懇談会の席上で、「産業界と自衛隊との人的交流を計画的、組織的に進める必要がある」、こう言ったと、ここに書いてある。私は、そのことと、ただいま研究の帰属が企業にいっているという事実、そういうものをからみ合わせれば、日本の一体いまの防衛体制というものはどういうことになりつつあるか、産軍が全く融合の形をとって、国民が最も心配する方向にいっているのではないかと、こう考えるわけです。だから問題にしている。このことを防衛庁長官からひとつはっきり言ってもらいたい。
  168. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) ただいまお申し述べになりました自国産業による開発、生産、これは何でもかんでも装備品は国産をするということでなくて、開発、生産という場合には原則として自国産業に限定をする、かように申しておるわけでございます。先ほど何といいますか、原則的に申し上げまして、やはり装備品というものは同じような価格というものが一つあります。同じような価格で同じような能力を持つものができるならば、これは国産でいくことがよろしい、これは単に第一回の装備を輸入、購入するだけでなく、自後の補給整備等を考えまする場合には、どうしてもやはり自国産であることが望ましいわけでありまするから、価格、性能等が同じようなものである場合には、自国産でいくことが望ましいということを申し上げたわけでありまして、同時に、費用対効果ということを申し上げたのでありまするが、わが国では、生産をする場合は大体数量、需要が小さいわけですから、そういう意味でどうしても割り高になるという欠点がまずつきまとう。したがって、多少は割り高になっても、その他のことを考え合わせて、いわゆる費用対効果、波及効果などを考えて、そうして自後の補給、整備というようなことを考えて、多少の割り高であっても、なおかつ国産にすることがいいというものもある、こういうふうに申したわけでございます。ただいま、開発、生産は原則として自国産業に限るというのは、説明もいま申し上げましたように、開発、生産でございまして、なお、あとの研究開発振興方針の中に書いてありまするが、「民間及び国の行なう」、これは国産という意味であるわけでありますが、「研究開発の実施にあたっては、計画、設計、試作等の各段階における評価の徹底を図り、各段階において研究開発の継続、中止等の適確な措置をとる」ということも申しておりまして、何でもかんでも国産にする、国産をそういう意味ですべてのもので原則にしてやるという趣旨では、この方針もなっておらないというふうに考えておるわけでございます。
  169. 小林武

    小林武君 時間がないのが残念ですけれども一言だけ言っておけば、私だって、何でもかんでもとおっしゃるが、何でもかんでもやるといってもやれるわけがないんですよ、そんなことは。そうでしょう。しかしながら、日本の……。
  170. 西村尚治

    ○理事(西村尚治君) それは発言ですか。
  171. 小林武

    小林武君 発言です。
  172. 西村尚治

    ○理事(西村尚治君) 時間があれですから。
  173. 小林武

    小林武君 時間はまだもう少しあるでしょう。  問題はあれでしょう、あなたおっしゃるけれども、結局このところでおもにわが国の装備の生産については日本の国でやるという方針に変わってきたんでしょう。そのことをはっきりしておいたらいい。何も生産することがどうだとか、よその国から買うのはどうだとかという議論の展開をしているわけではない。自衛隊は必要ないという人間がそんなことについて何も議論するはずがない、大体。だから、そういう言いわけがましいことはぼくは聞きたくはない。  それから、さっき申し上げた点については、いずれまた何かやる機会があるでしょうから、きょうはこれで終わります。
  174. 西村尚治

    ○理事(西村尚治君) これにて小林君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  175. 西村尚治

    ○理事(西村尚治君) 上田哲君。
  176. 上田哲

    上田哲君 天然痘問題は、伝染病に対する防疫体制の基礎的な欠陥を露呈したと私は思います。根本的な問題がありますが、そもそもこの問題は分秒を争う対策が要請されます。患者の、二十四日本格的な発熱、二十六日入院。この逓信病院の責任者である郵政大臣は、疑わしいという情報をいつ聞かれましたか。
  177. 久野忠治

    国務大臣(久野忠治君) 私が報告を受けましたのは四月の二日でございます。
  178. 上田哲

    上田哲君 厚生大臣はいつですか。
  179. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 本人が逓信病院に二十六日入院いたしました。で、三十一日の午後、逓信病院においては怪しいという連絡を予研その他にいたしたと承知しております。  私が直接聞きましたのは、本人が隔離病棟に、夕方五時に荏原病院に隔離されたと聞いたのは三十一日の夜七時ごろでございました、私が直接聞いたのは。
  180. 上田哲

    上田哲君 厚生大臣の直接監督できない国立病院であったために、こういうギャップができたという点はお考えになりませんか。
  181. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) こういう問題は一刻を争う問題でございますので、責任者同士でどんどん話を進めてまいります。したがって、私の耳に入りましたのは夕方の七時ということでございます。三十一日の夕方でございます。
  182. 上田哲

    上田哲君 逓信病院の責任者である郵政大臣が三日もおくれて聞いたということをどうお考えになりますか。十分だったとお考えになりますか。
  183. 久野忠治

    国務大臣(久野忠治君) 私に対する報告が事務的におくれたということは、たいへん私は遺憾に存じます。もう少し早く報告してほしかったと私は脅えておるような次第でございます。
  184. 上田哲

    上田哲君 そういうところに根本的な欠陥があるというのは、実はそこにいらっしゃる多ヶ谷先生が、臨床ではない病理学の多ヶ谷先生が、臨床ではない病理学の多ヶ谷先生がかけつけられて、お調べになってわかった。ところが、二十四日本格発熱、二十六日入院。その段階で、逓信病院ではこれを水ぼうそうだと診定をしたんです。どういう経過になっておりますか。
  185. 久野忠治

    国務大臣(久野忠治君) 上田委員よく御承知のとおり、東京逓信病院というのは歴史的にも非常に信頼度の高い病院であると私たちは認識をいたしておるわけでございます。でありますから、十分この加療に当たりましては努力をしたものと私は信頼をいたしておる次第でございます。  報告が非常におくれたということにつきましては、私は非常に遺憾に思いまして、後日、私自身から、もう少しなぜ早く報告ができなかったかということを言っておいたような次第でございます。御理解をいただきたいと存じます。
  186. 上田哲

    上田哲君 郵政大臣反省されるそうですから。  厚生大臣、水ぼうそうという診断であったというその辺の経緯をすっかり御説明いただきたい。
  187. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 私は、逓信病院に入りましたときにお医者さんがどういうふうな診断をされたか、承知いたしておりません。
  188. 上田哲

    上田哲君 報告してくださいよ、だれか。
  189. 西村尚治

    ○理事(西村尚治君) 郵政省の局長が答弁するそうです。
  190. 上田哲

    上田哲君 だれでもいいですよ。実態は、そういうふうに両方で——どっちだかわからないんじゃしょうがないな、これは。——あなた郵政省ですか。
  191. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) 郵政省の人事局長でございます。  二十六日に本人が入院したのでございますが、その症状が非常に非定型的な出方をいたしましたために、実は三十日の晩方になりまして天然痘の疑いが濃いという時点まで、その天然痘の疑いが濃いという診断ができなかった、こういうことでございます。
  192. 上田哲

    上田哲君 だから、その経過をずっと言ってください。初めからどうなって、ツツガムシだと思ったり、リケッチア病だと思ったり、いろいろしたわけでしょう。多ヶ谷先生が出てくるまで、たいへんなミステリーがあるわけですよ。
  193. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) 二十六日のお昼前に本人が入院いたしました。そのときは体温が三十八・五度、躯幹部、それから手足、こういったところに直径二ミリ程度の発赤、赤くなりますところの斑点が散在しておった、こういう状況であったわけであります。  それで、逓信病院といたしましては、ただいまお話にありましたように、リケッチア病のたぐいではないだろうかということで診断を続けてまいったわけでありますが、その後、二十八日になりまして水ほうを生じたわけであります。それで水痘ではなかろうかということでありましたが、三十日の晩になりまして、夜分になりまして、どうもこれは天然痘らしいというので、多ヶ谷先生に電話で連絡をいたしました。そしてあくる三十一日、土曜日でございますが、多ヶ谷先生が、十一時ごろと存じますが、参られまして、その疑いがきわめて強い、こういうことでございました。  そこで逓信病院といたしましては、所在の保健所に届け出をいたしまして、以後は保健所の指示と申しますか、に従いまして、患者の扱い、すなわち荏原病院に入院せしめるとか、あるいは第二次感染を防ぐためのいろいろな措置、すなわち逓信病院関係の職員、あるいはその患者、あるいは出入りの者、あるいは見舞い客、こういったものに対する員数の把握と申しますか、人間の把握につとめ、そういった人々に対する種痘を四月一日、それから二日、それから本日とやっております。また、本人の住居いたしておりました関係の者につきましても、四月一日に種痘をいたしております。また、本人の勤務しておりましたところ、すなわち本省につきましても、四月二日、月曜日でございます二日及び明日ということで種痘を実施し、あるいはする運びにいたしておる、こういう次第でございます。
  194. 上田哲

    上田哲君 そんなことは全然聞いていないんです。あなた方がどんなにあとの責任をとるまいとしたかということを聞いておるんじゃなくて、天然痘真性であるということにたどり着くまでの経過はどうであったかということを聞いているんです。わからないんですか。
  195. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) その点につきましては、ただいま前半に申し上げました二十六日から三十日ないし三十一日までの経過、その後本人が荏原病院へ三十一日の夕方に参りまして、その直後にほぼ真性であるという断定が荏原病院で下されたと、こういう経過でございます。
  196. 上田哲

    上田哲君 五つも六つも名前をあげて結論に到達しなかったという経過があるんです。その辺がわかっていなければ話になりませんが、じゃ伺いますが、これは天然痘ではないか、疑わしいと思った最初の人はだれですか。
  197. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) その疑念を発しました人は、逓信病院の内科部長でございます。
  198. 上田哲

    上田哲君 とんでもないことですよ、渡辺小児科医長ですよ。水ぼうそうだと思ったから、小児科医長が、これはおかしいと。水ぼうそうなら小児科へ行くじゃありませんか。ごまかしちゃいけないです。水ぼうそうだから小児科へ行って、小児科の渡辺医長が、これはどうもおかしいぞというところから疑いが出たんじゃありませんか。小児科ですよ。
  199. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) 私どもは、内科部長が主治医でございましたので、内科部長だというふうに聞いておるわけでございますが、先生の御指摘がありますので、その点につきましてはなおよく調べたいと思います。
  200. 上田哲

    上田哲君 すぐわかるよ、そんなことは。  まあいいでしょう。そんないいかげんなことじゃ困るんです。郵政大臣に聞きたかったけれども、お忙しいからしょうがないんですがね。厚生大臣、こういう事実関係はもっと大事にしなければいかぬですよ。これはつまり郵政省でなきやわからぬのですか。厚生省ではもっとわかっているのですか。
  201. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 公衆衛生局長から答弁させます。
  202. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 私どもは、どなたが診定したかという内容につきましては聞いておりませんけれども、患者の症状その他につきましては伺っております。  経過を申し上げますと……。
  203. 上田哲

    上田哲君 そこはいいですよ。わかっているか、わかっていないか。
  204. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) したがいまして、私どもの類推いたしますところによりますと、大体、最近……。
  205. 上田哲

    上田哲君 あのね、時間を省きますがね、さっき郵政省が報告しましたね。厚生省はそれ以上にわかっているんですか。ぼくはデータを持っていますからね。わかっていなければまた指摘しますけれども、わかっていますか。
  206. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 内容といたしましては、私どもといたしましては、最近ほうそうの患者が発生いたしておりませんので、医師の経験からいろいろ疾病等を疑った結果、最後に天然痘ということで、検査を頼んだというふうに考えております。
  207. 上田哲

    上田哲君 小児科医長ですね。
  208. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) その内容については伺っておりません。
  209. 上田哲

    上田哲君 困っちゃったな。  私はね、この誤診を追及しようとしているんじゃないんです。いいですか。いわゆる誤診を追及しようというのではないのですが、たとえば郵政省の病院であるとか、国立の病院であるとかということのズレがこういうところへ出てきたりする。そして、先生方がたいへんお粗末であったということを私は一言も言おうと思っているのではない。おっしゃるように、私は、逓信病院は優秀な病院だと思うのです。優秀な病院だと思うのですが、優秀な先生がそろっておられても今日経験者がない。多ヶ谷先生が出てこられたり、上田揆一先生が出てこられたり、大体六十代から七〇代の先生でないと、いま天然痘のことはわからぬと。だからこういう体制が放置されていたということがここにあると思うのです。それを、たいへん発疹のしかたが異常であったからなんといういいかげんなことを言わないで、防疫体制がどうだったなんということを言わないで、正確に今日防疫体制の欠陥がここにあるということをお認めになるのが私は本旨だと思うのですよ。
  210. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 逓信病院において最初どういうふうな診断をされたか、私も存じておりませんが、非常に真性の天然痘であるということの発見がおくれたということは、私もそういう認識を持っております。
  211. 上田哲

    上田哲君 どういう認識ですか。おくれた認識じゃないんですよ、ぼくが聞いているのは。非常に優秀な病院であっても、天然痘のわかる学者、医者は少ないと。そして国立と逓信病院の間にはそういうギャップも生まれると、こういう問題はやっぱり基本的な問題ではないかと言っているんです。
  212. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) お話しのように天然痘の患者が最近発生しなかったということからいたしまして、こういう方面の診断についての臨床的な経験というものは、最近非常にお医者さんになかったということが一つの原因であろうと私はさように考えております。
  213. 上田哲

    上田哲君 一つの原因じゃ困るのですよ。そういうことを言われるのならもっと具体的な例をあげなきゃならないけれども、基礎的な防疫体制がやっぱり天然痘には弱かったということをお認めになったらどうですか。
  214. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) まあ、その点はいろいろそもそも最初から、検疫とかそういったふうな問題をひっくるめて、私は相当反省すべきものはあったと、かように考えております。
  215. 上田哲

    上田哲君 客観的に多ヶ谷先生にお伺いしますが、防疫体制は基本的な欠陥はここにやはり存在していると考えますか、いかがでしょうか。
  216. 多ケ谷勇

    説明員(多ヶ谷勇君) ただいま御指摘のような事態は確かにございましたし、今後も起こり得ると思います。と申しますのは、やはり診断の疑わしきものをすべて通報するということが原則でございますが、臨床家といたしましては、あらゆるシチュエーションを考えて可能な診断をだんだん狭めていく、そのために数日の猶予期間を費やするということはどうしても起こりがちでございます。したがって、これは病院が民間であろうと国立であろうと、おそらく今後も輸入ケースがあれば、非常に幸運な場合にはもっともう数日早く通報がいくかもしれない、あるいは不幸な場合には全然違う病気が通報がいって大騒ぎになることもあるかもしれない。そういうことは必ずあると思いますが、それが今回のように本物であった。したがって、このおくれが非常に気になると、まあさかのぼって考えて幾らかどこかに欠陥があったかもしれないと、そういう分析は可能であろうかと思います。
  217. 森中守義

    ○森中守義君 関連。  厚生大臣、たとえば農林省が、畜産関係で中国の口蹄疫、こういうものにつきましては、きちんと多発国、汚染国ということで、かなり厳重にチェックしているんですよ。畜産と人を同様に論ずるのはどうかと思いますけれどもね、少なくともマラリアとか天然痘、コレラ、こういう多発国というものは、おおむね日本の厚生省でもチェックできておると思うのですね。したがって、こういう特定な地域に対する出入については、当然チェックされておく必要があると思う。   〔理事西村尚治君退席、委員長着席〕 で、そういう事前の措置が恒常的にとられておったのかどうなのか。そういう国から日本に入ってくる人、あるいは日本から行ってまた帰ってくる人、こういう者は当然旅券申請あるいは羽田等で十二分にチェックする私は機会と方法があると思う。そういうものが今回の場合には十二分にとられておったということにならぬのじゃないですか。これが、私はこの天然痘の問題の経過を少し具体的に究明される必要があるでしょう。事後の問題として、十分なる配慮が取られなきゃいかぬ、こう思うんですが、現在の実情どうなんです。
  218. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) これらの天然痘の汚染地域というのは、WHOでも、エチオピア、パキスタン、インド、今度の地域と、こういうふうに汚染地域であることは指定をいたしております。したがいまして、私ども出発するときにおきましては、検疫所におきまして、種痘の証明を持っておるかどうか、これは出るときに厳重にいたしております。ただ、今度の事案も、本人は間違いなく種痘をいたして行っておるわけでございます。そこで問題が一つありますのは、そういうダッカとか、その他のそういう汚染地域から飛行機に乗客が乗るときに、飛行機の中で、あなたはそういう汚染地域から飛行機に乗って、そして日本に着いたあと、どういうふうな行動をとるのですかという質問書をよくやるわけですが、コレラについてはそれをいたしております、質問書というものを。これは検疫についてあるいはお尋ねがあるかもしれませんが、コレラについては、そういう質問書を御協力をいただいて書いていただいておるわけなんです。そういう汚染地域から乗りました方々に、日本に着いてから——これは大体潜伏期が二週間なもんですから、自後十四日間、内地に着いたらどこにどういうふうにされますか、生活されますかということを聞くことにしておるんです。  天然痘につきましては、WHOの実はいろんな問題がありまして、それは聞かないということになっておるわけでございます。そこで、これはのちほどにもお尋ねがありましたらお答えしようと考えておりましたが、そういうふうなやり方をやっぱりこの際思い切って、こういう事案がありましたので、今後はコレラと同じように、乗客に質問書の提示を御協力を願おうということであれば、非常なチェックになるんじゃないかと、こういうふうにいまのところ考えておるわけでございます。現在のところでは、むこうから羽田に着きますときには、からだの調子のおかしい方には、ちょっとおかしいということを訴える人に対しては、どこか悪いんですかというふうに聞いたり、そのようなことはいたしてございますが、そういう検疫のところについてもう少しチェックの方法があったんではないかということを、私は反省として考えておりまして、今後は、そういうふうな汚染地域から乗る乗客につきましては、飛行機の中で質問書を提出していただく、こんなふうにしたいと考えております。
  219. 森中守義

    ○森中守義君 いま言われる、WHOがいろいろ問題があるので、これはそういう特殊なチェックをしなくてもいい、いいとは言われなかったかわからぬけれども、少なくともWHOの方針に従っておる。そこにすき間があったとこう言われるわけですね。で、そうなると、一体WHOというものは何を理由に多少とも手抜きをやっていいという見解を持っていたのか。また、厚生省としては、WHOがそれでいいと言ったからですね、それに従ったというならば、独自的な検疫体制というものをとられていない。これがむしろ今回は責められてもしかたがない、こう思うんですよ。その辺のいきさつというものをもう少し説明してもらいたいし、また天然痘に対する厚生省はどういう認識をお持ちであるのか。WHOはWHO、日本日本という立場からの検疫体制をとるべきではないか、とっておくべきではなかったかと、こう思うんですがどうなんですか。
  220. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) そういうふうな御意見であれば、確かに私どもも十全であったとは考えておりません。ただ、まあ御承知のようにイギリスなりアメリカなどにおきましては、天然痘というものは非常にもうほとんどなくなっておる。まあ、日本でも十何年なかったんですから、一人もなかったんですから、そういうふうな先進諸国におきましてはそういう状態になっておりますために、いろいろな質問書を提出せしめることは、やっぱり個人の行動の自由というものをある程度拘束することになりはせぬかと、こういう意見が先進諸国にはいろいろあるわけでございますので、天然痘についてはそういうふうな意味合いもあって、今日まで質問書に御協力をいただくというやり方はしてなかった。しかし、こういうふうなことの事例の反省の上に立って、まあWHOの考え考えとしても、日本としては水ぎわで食いとめにゃならぬということで、今回やるようにしようと、こういう反省の上に立って考えておる次第でございます。
  221. 上田哲

    上田哲君 厚生大臣の御見解は全く見識の低さ、私はもう国民はこれじゃ不安でたまらぬと思いますよ。そんなことならば、さっきの話、ひとつ小児科医長だったかどうかをすぐ報告して下さい。  そこでね、そんなら具体的に伺いますよ。厚生大臣はきのうの報告で、東京逓信の医師、看護婦の二次発生を心配していると言っておられるが、それはどういう理由ですか。
  222. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 私の承っておりまするところによりますと、感染の度合いの、感染するおそれのあるのは、本人が発熱をする時期ということからでございます。そこで、二十三日に発熱いたしまして二十六日に逓信病院に入院しておりますから、二十六日から三十一日までの間は、その患者さんに接触しておられる方々があるはずでございます、お医者さんなり、看護婦さんなり、その他の方々。そういう意味において、接触しておる方が相当おられるという意味合いにおいて、こういう方々は感染のおそれが私はあるんではないかということを申し上げておる次第でございます。
  223. 上田哲

    上田哲君 二十六日から三十一日までがたいへんなんですよ。看護婦さんとお医者さん二十二人が接触していますね。隔離していますか。
  224. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) そのように承知しております。
  225. 上田哲

    上田哲君 隔離しているというのですか。
  226. 北雄一郎

    政府委員(北雄一郎君) 確認と聞き間違いましたが、隔離はいたしておりませんが、外出等につきましては、みだりに外出をしないようにということはいたしております。
  227. 上田哲

    上田哲君 大事件じゃないですか。いいですか、厚生大臣。そんな、飛行機の中で人の人権でチェックするのしないのなんという話じゃないですよ。そんなことを言ってたら国民はどうするんですか。二十六日から三十一日までの六日間、個室といっていますけれども、患者は出入り自由の個室ですよ。病理的個室ではありませんよ、これは。そして水ぼうそうだと言われているから、白衣も着でないでお医者さんも出入している。看護婦さんはしょっちゅう行っている。水ぼうそうだというから、看護婦さんは患者の水ぼうそうに手でこうやってなすっていますよ。これは濃厚感染じゃないですか。それが、その二十二人を隔離してないんですよ。これは二次感染があるのはあたりまえじゃないですか。そんな実態を知らないで、飛行機の話をしたって、しようがないじゃないですか。
  228. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) さようなわけでございますから、患者さんやお医者さんが接触しておるという私は事態をとらまえて、行動を監視するようにということを指示しておりまして、それぞれ私は適切なる措置がとられておるものと了解いたしております。
  229. 上田哲

    上田哲君 隔離しなければ適切な措置じゃないじゃないですか。
  230. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 痘瘡の感染は、潜伏期におきましては一応危険がないというふうに学説でなっておりますし、感染いたしますとすれば、先ほど大臣もお答え申し上げましたように、発熱の時期からでございますので、先ほどお尋ねの病院の職員その他につきましては、いまのところは感染の危険はなく、ただ日常の行動におきまして健康等に注意をし、その異状が認められた場合には早急に申し出をするようにという指示を与えて、一応の行動の制限をとらしていると、こういうことでございます。
  231. 上田哲

    上田哲君 重大ですよ。患者は三十一日になってあわてて隔離しているわけでしょう、ほんとうの意味で。それならば、手でさわったりしている濃厚感染の可能性のある人、それが二次感染、三次感染じゃないですか。しかも、看護婦さん、お医者さんだったということは、病院ですよ、場所は。ほかの患者さんに感染していく可能性をチェックしなきゃいかぬじゃないですか。それを隔離しなければ、これは適切な措置とはどうしたって医学的には言えぬではないですか。これは大臣答えてください。
  232. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 私ども承知いたしておりますのは、発熱した時点から感染のおそれがあるものと承知いたしておりますから、いま局長が申し上げたように、行動の監視をしておると、こういうふうに理解をしておるわけでございます。
  233. 上田哲

    上田哲君 あのね、役人答弁、これをしていると国民はびっくりしますよ。だって、患者は三十一日に隔離しているじゃないですか。そして、あなたはきのう予防接種したじゃないですか。そういう状態になっているじゃないですか。そこまできていて、濃厚接触をした人たちを隔離するのがあたりまえなんだ。逓信病院はそうしてしまったら人不足でぐあいが悪いもんだから、隔離ができないという実態がここにあるんですよ。そんな議論を私はしたくないのであって、国民が心配をしているんだったら、この際、隔離体制をしっかりとるというのが厚生大臣としてはあたりまえではありませんか。
  234. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 真性の患者と認定されなければ、強制的に私は隔離させることはできないのではないかと、かように考えております。しかし、そういうおそれがありますから、そこで、行動の自由についてある程度の規制をお願いして監視をしておると、こういうことじゃないかと私は思います。すなわち、あの患者さんが隔離されましたのは、真性天然痘の疑いがあるということですぐ臨床していただいて、それで隔離をしたわけです。それで、家族は一番あぶないというので隔離をしたわけでございまして、看護婦さんやその他の方々は感染しているかもしれない、していないかもしれない。けれども、まだ発病はしていない。こういう段階でございますから、患者として隔離するということはちょっとできないのではないか。行動の監視は怠ってはならない、こういうふうにいたしておる次第でございます。
  235. 上田哲

    上田哲君 私は、隔離ということばを使ったのは、少し広義に使いましたから、ほんとうの意味の禁足ができれば、それも一つ方法なんですよ。しかし、完全な意味の禁足になっていないです。おっしゃるように、三グループあるんです。これは、家族と、それから国会を含めてそういう接触者、タクシーの運転手さんまで含めて。そのまん中にあるのが東京逓信病院の二十二人です。これに対する禁足体制が完ぺきである、二次感染をその意味で防いでおるとお考えになりますか。
  236. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) これによって二次感染を完全に防げるとは私らもすでに考えておりません。すなわち、数日間接触をしておるのですから、感染するかもしれない、しないかもしれない……
  237. 上田哲

    上田哲君 今日ですよ。
  238. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) ですから、本日の時点において、二十六日から三十一日までの間、患者に接触していることは事実でございます。ですから、接触しておることは事実でございますから、感染のおそれはある。しかし、いまお尋ねのように、そういうふうなことで厳重に行動の監視はしなさいということを言うておりますが、まだ不十分かどうか、私も専門的な立場において調べていただきまして、さらに監視を厳重にするということであれば、私は監視は一そう厳重にいたしたいと、かように考えます。
  239. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 接触者の行動につきましてのいろいろの規制その他につきましては、専門家の方々にお集まりいただきまして、私どものとった処置につきまして間違いはないというお答えをいただいております。
  240. 上田哲

    上田哲君 どうも責任回避ばかりしているのですね。多ケ谷先生、一言でけっこうです。中心のお医者さん、このお医者さんについての濃厚感染の度合い、二次感染の度合いは、私はヒフティ・ヒフティぐらいだと思いますが、一言でけっこうです。
  241. 多ケ谷勇

    説明員(多ヶ谷勇君) おっしゃるように、最も濃厚感染を受けているのは主治医だと思います。したがって、主治医が感染を受けて、まあ感染は受けている可能性というのはかなり高いと思います。感染して発病するかどうかということは、いまおっしゃるとおり、ヒフティ・ヒフティだと考えております。
  242. 上田哲

    上田哲君 これ以上議論をすると意味がないので、専門家のおっしゃるような見解を受けて、これは国民に不安のないように、場所が病院なんですから、厚生大臣、ひとつ責任のがれでないことをやってください。  私は、重大なことは、それだけではなくて、根本的な防疫体制がない。これは大体七十歳の権威を呼んでこないと天然痘かどうかわからぬのですよ。きのう通達を出されたけれども、各都道府県ではとてもそういう専門家はいないんです。これは有名無実の通達なんです。こういう体制は、基本的に、いま、二十年近く天然痘が出てこなかったために、わが国においては、天然痘に対する知識の退化、そして体制の退化、この二つがきていると思うのです。これを早急に埋めなきゃならぬと思うのですが、いかがですか。
  243. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 最近二十年間発生いたしませんでしたので、天然痘に対する恐怖意識と申しますか、まあ意識と申しますか、そういう点については非常に薄れており、欠除しておったのではないかと、これは私は率直に反省をいたしまして、今後こういう事態に対処するように対策を急ぐべきであると、かように私も考えております。
  244. 上田哲

    上田哲君 よく水ぎわ作戦といわれますが、多ヶ谷先生、われわれの国には、今日、交通事情の発達に伴って、いわゆる水ぎわ作戦というのはもはやあり得ないと思いますが、いかがでしょう。
  245. 多ケ谷勇

    説明員(多ヶ谷勇君) 仰せのとおり、防疫体制上、水ぎわ作戦ということは、その文字どおりの意味ではあり得ないと思います。したがって、特にこういう痘瘡のような潜伏期間の長いものは、やはり入国後の異常者をいち早く見つけてフォローアップする、それが防疫の根本だろうと思います。
  246. 上田哲

    上田哲君 問題になりますのは、いままで厚生省は任意接種の方向に踏み切ろうとしていた矢先です。とたんにこのことが起きたので、もう厚生大臣以下みんな接種したわけですよ。これはあなたも種痘後遺症になるかもしれないのです。たいへんなことなんです。総理までやらせれば、すぐにでも天然痘になっちゃうかもしれないのです。そういう状態は、厚生省のこれまでの見解、方針とは違うのですよ。どちらをとるのですか。
  247. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 実は、種痘につきましては、先般来、天然痘の患者があまり出なかったということもあったかとも思いますが、いろいろな後遺症等の問題が起こりまして、任意制にしたらどうだと、こういう意見があったことは事実でございます。ちょうど、私も、いまから十日ほど前でしたか、この事件が発生する前に、社労の委員会において、任意制にしたらどうだという御質問がありました。私は、私は多少古いかもしれませんが、私らの子供の時代のことを思い出しながら答弁をしたのでございますが、そういう任意制にしろという御意見はあります、確かに。けれども、私は、これは慎重にかまえるべきだ、そういう踏み切るわけにはまいりませんと。しかし、せっかくいま伝染病予防調査会の中で種痘の専門家の方々にお集まりいただいて研究をしていただいておりますから、その答申は尊重いたしますと、どういう結論が出るか別として。しかし、私は、どうも少し古いかもしれぬけれども、まだ任意制にいたしますということを踏み切るわけにはまいりませんと、実は十日前に答弁したばかりだったのです。私は、率直に言って、そういう感じを持っておりまして、任意制にするのはどうであろうか。専門家の意見も十分に聞いてこれは慎重に決すべきものである、私はさように考えております。
  248. 上田哲

    上田哲君 厚生大臣、いわゆるソフトワクチンCV1というものの考え方はどうでしょう。
  249. 加倉井駿一

    政府委員加倉井駿一君) 専門的な問題でございますが、私、聞いた範囲内でお答え申し上げたいと思います。  CV1につきましては、弱毒ビールスを使いましたワクチンでございまして、それによります免疫効果が従来の種痘の免疫効果と比較いたしまして若干弱く、それに追加免疫といたしましてさらに従来のワクチンを接種するという方法をとりまして免疫抗体を上げるという方法がとられるわけでございますが、その免疫抗体の免疫力価の上昇につきましてまだ十分な検討がなされておりませんので、それを採用していいかどうかという結論には到達いたしておらないわけでございますが、さらに十分なる実験を重ねまして、その免疫抗体を上げる方法その他いろいろこれは学問的に検討すべき問題もあろうかと思いますが、そういう点を突きつめまして、より副作用の少ないワクチンが開発されればそれを採用したいということでございます。
  250. 上田哲

    上田哲君 種痘を任意接種に切りかえようという厚生省がこれまで方針を打ち出そうとしていた、これは何かというと、アメリカがあと二年たったら全部消滅するという二年消滅説を出した、それにずっとついてきたわけですよ。その任意接種説がぐうっと出てきたと思ったら、今度はこんなのが出てきたものだから、わっと今度はあらゆる人に国会議員にまで急いで接種をするというような形になっちゃう。国民の皆さんもおやりなさいという。任意接種がいいのか、義務接種をすれば後遺症がどんどん出てくる、これはどうしていいかわからぬのですよ、国民としては。この辺を、厚生省も、その程度の厚生大臣の見解では、私は国民に疑惑を非常に招くと思う。これは私は多ヶ谷先生に御見解を承りたいのでありますけれども、私の考えでは、いま開発中のCV1というようなものを、さらに研究の余地はありますれども、いわゆるソフトワクチンを基礎免疫として拡大をして、その上にエマージェンシーに対応するような体制をとるということに早急に踏み切るべきではないかと思うのでありますが、これについてはいかがでしょうか。
  251. 多ケ谷勇

    説明員(多ヶ谷勇君) いま御質問の問題を二つに分けてお答え申し上げます。  まず、種痘の強制接種を廃止すると。これは任意接種とおっしゃいましたが、まあ実際のところは幼児に対する予防接種法による強制接種の廃止という一つの目標であります。これは、すなわち、先ほどおっしゃいましたように、幼児に初種痘をやりますと、ときとして非常に重篤な副作用がある。場合によっては死亡することもあるし、一生不幸な目にあう後遺症を残すこともある。それを防ぐためには、一応いろいろな方策は考えられておりますけれども、完全にそれを防ぎ得る方策というのはまだ学問的に確立しておりませんので、そういう幼児に対する強制接種をまず廃止しようと。そのかわり、その廃止する議論をする場合には、当然、今回のように、何年かに一ぺん、あるいは毎年一例ぐらいずつでも、輸入例が世界じゆうに痘瘡のフォーカスが存在する限りあるかもしれないと、そういうことを十分考慮した上で、そういうことによる被害と、それから毎年生まれてくる赤ちゃんに強制的に法によって痘苗を植えるということによる被害とを計算した上でバランスをとれば、当然強制接種はやめるべきであろうと、そういう議論でいろいろ小委員会で資料を検討してまいったわけでございます。したがって、まだ国の方針としてははっきりどちらということはきまっておりませんが、根本方針は、今回のようなインシデントがあっても変わることはないと。すなわち、今回のようなことがあってもなお廃止すべきだという専門家の議論、あるいはすでにそれを実施したイギリスなりアメリカの議論も同様でございます。事実、イギリスにおいても、これを廃止した後にもやはり輸入例が一例発生しておりますが、それにもかかわらず、このポリシーは続ける意向であるというふうに聞いております。  それからその次に、弱毒ワクチンでございますが、先ほど公衆衛生局長から返答がありましたように、アメリカにおきましてもCV1につきましてはいろいろ検討されておりますが、局長が言いましたような事実がございます。すなわち、免疫力において従来の痘苗と同じであるかどうかということを検討しますと、どうも幾らか弱いのじゃないか。しかも、その上に普通痘苗を重ねた場合ににも、なお中和抗体の上がりがむしろCV1で前処置したほうが悪いというような学問的データが出ております。これは少数例でございますが、われわれのところでも、昨年来、血清をいただきまして、臨床家がこういう実験をなさった、それで調べておりますが、やはりアメリカで言っているような事実がございますので、そういう中和抗体が上がらなくても痘瘡を防止できるだけの免疫ができるのかどうか、その辺にまだ学問的な検討の余地がございます。したがって、CV1で全国民に前処置をしておいてそのあとでリスター痘苗でもう一ぺん仕上げをするという方法は、まだ実施段階にまで確実なデータが出ておりませんことを申し上げておきます。
  252. 上田哲

    上田哲君 これから先の方法は、国内の免疫率を高めるということを強化すると。しかし、これは副作用がこわいと。もう一つは、隣国ですね、いま東南アジアに一ぱい出ているわけですから、ここと協力して押えていくと、この二つしかないわけです。私は、武器兵力による四次防じゃなくて、この防疫体制の四次防ということを考えたらいいと思う。ことばはたいへんおかしいけれども、そんなもののかわりにですよ。具体的に言えば、バングラデシュ、インド、パキスタン、ネパール、エチオピア、イラク、こういうところへ手を入れればいい。特に、ここには、いまのソフトワクチン、ハードワクチンというようなたてまえもありますけれども、問題は接種技術がないわけですから、接種技術と機動力、それからもう一つはワクチンと、この二つを入れた言うなればワクチン予防システムというようなものを大いに輸出する、援助すると、こういう形が、いまもう水ぎわ作戦がないとおっしゃる見解にも立って、これからの基本的な立場だと思うのです。これは、多ヶ谷先生、こういう考えはいかがでしょうか。
  253. 多ケ谷勇

    説明員(多ヶ谷勇君) 全く同感でございます。それで、ただいままだ完ぺきではございませんが、一昨年、エチオピアからの要請によりまして、私も現地を視察したのでございますが、その報告に基づきまして、海外青年協力隊と、それから車両その他、及び疫学者——お医者さん一名が、エチオピアの痘瘡せん滅作戦に昨年の九月から参加しております。それで、このようなことはWHOとしては非常に歓迎するところでありまして、さらに、いま御指摘のように、痘苗の無料供与というようなことも欧米各国ともやっておりますので、わが国も大いにそれをやり、一番問題はやはりインド、パキスタンのフォーカスだろうと思いますので、そこをせん滅するための協力はぜひわが国としてもやるべきことであろうと考えております。
  254. 上田哲

    上田哲君 厚生大臣、天然痘のみならず、古典的伝染病に対する平時における本格的な防疫体制、この場合は特に強制接種か任意接種かということの方式、ワクチネーションの方式を早急に立てることが一つ。そして、いま名前をあげた諸外国へ積極的にワクチンシステムを出していくと、この二つについて結論を早目に出すべきだと思いますが、いかがですか。
  255. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 種痘の強制あるいは任意という問題につきましては、私どもは全然まだ任意に踏み切っているわけではございませんので、専門家の調査会において慎重に御検討いただいて、今日のような事例も踏まえて慎重に検討していただきたいと考えております。  それから天然痘の汚染地域に対するワクチン体制の協力という問題、まことにこれは私はごもっともだと思うのです。向こうのほうで患者がおるのですから、こっちにはいないのですから、それをどうやってチェックするかというのが一番の問題でございます。したがって、私どもは、そういう協力体制につきましては、向こうの要望等を十分承りまして、必要があれば全面的に協力を申し上げたいと、かように考えておる次第でございます。
  256. 上田哲

    上田哲君 外務大臣、こういう外交はいかがですか。
  257. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういうプロジェクトの促進にあたりまして、外務省としてもできるだけ協力を惜しまないつもりです。
  258. 上田哲

    上田哲君 ファントムについて空中給油機について伺います。  この間、百里基地に行ってまいりました。時間を節約するために申し上げるが、全部で大体十四分三十秒のうち、二点給油、一点給油の比較をとりますと、一分二十二秒しかないということがストップウォッチで明らかになりました。これは戦術上全く意味がないと思うのですが、いかがですか。——久保さん、質問にだけ答えてください。
  259. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私どものほうではかりました場合には四分近くの差がございましたので、戦術的には十分に有用であろうと考えております。
  260. 上田哲

    上田哲君 入口を二カ所にすれば給油時間が半分になるというのは、これは小学校の算術なんです。ところが、実際には、F4EJファントムは五メートルの高さによじのぼっていかなきゃならぬということが一つ。そこへパイプを結びつけなきやならぬということが一つ。結果的には一分二十二秒しかない。こんなことで現実の問題としての地上給油に使っておりますということのメリットがないと、これは私は第一の詭弁だと思うのです。数字をあげてごらんなさい。
  261. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 航空自衛隊のほうではかりました場合に、二点給油で三分四十二秒、一点給油で七分三十一秒、差が約三分五十秒であります。
  262. 上田哲

    上田哲君 時間がもったいないんですけれども、アダプターの取りつけに一分三十秒、給油時間が三分五十秒、取りはずしが十五秒、合計五分三十五秒、地上給油、一点給油が六分五十七秒、差し引き一分二十二秒です。これは第一の全く詭弁でありまして、初めからパイプを結びつけておいて、そしてイチニサンでやるようなことだったら、半分になるのがあたりまえなんですが、半分にならなかった。私はここに非常に大きな問題があると思うのですが、それはまあすれ違いになるでしょうから、第一の詭弁であると指摘するのにとどめましょう。  お伺いしたいのは、地上給油口とそれから空中給油口は、同じパイプではできないと思いますが、どうですか。
  263. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) できません。
  264. 上田哲

    上田哲君 防衛庁は、そこをどうしていますか。
  265. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 現在、空中給油装置につきましては運用実験中でありますので、しかも、かって予算要求をしましたところ、そのパイプ装置の会社が倒産をしたので、自衛隊は持っておりません。そこで、運用研究をやるにあたりまして、それを持っておりまする三菱から借りてやっておると。で、現在、それはテストアジャスターというものでありまして、点検用を兼ねたものでございます。
  266. 上田哲

    上田哲君 実にこれがたいへんな詭弁であります。私は防衛庁長官に責任を追及したいと思う。防衛庁はこのアダプターを持っていないんです。この写真です。これが空中給油をするためにわざわざ五メートル上によじのぼってつけなきゃならないアダプターです。このアダプターは、防衛庁は持っておらぬのであります。これまでの四十五年に二個、四十六年に三個、四十七年に一個の要求をしたが、実現していない。四十八年度予算でいまこの一台の要求をしているにすぎない。防衛庁は持っていないんです。百里基地に八機のいまファントムがいながら、地上給油をしているという説明を前国会でしておきながら、実際にはやっていないんです。これがあるのは、三菱のが小牧基地に二台あるだけです。驚いたことに、国会でこのことが質問されるということになった三月の二十日、小牧へ行ってまいりましたけれども、三菱はこう言っております。何でか知りませんが、防衛庁が突然借りにきて、一台を持っていきましたと。これを持っていって、国会から六人の委員が行った前で、いかにも日ごろやっているようにストップウォッチを持たせて見せた。何というこれは許せない態度でありましょうか。(「問題だ、それは」「うそをつくな、防衛局長」と呼ぶ者あり)
  267. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 三月の二十二日に衆議院で御質問があったと思いますが、その日二十二日と二十三日については、運用実験研究の関係の装備機材の検討会が現地で行なわれることになっておりました。そこで、あらかじめ三菱から借りてそのテストをするということで、たまたま日にちが合ったというふうに私は思います。
  268. 上田哲

    上田哲君 あなたは、国会で、二点給油をやったら八分が四分になるのでそのメリットがあるからだと言っているではありませんか。やっていないではありませんか、防衛庁が、百里基地では。それを、国会から行ったら、二機並べて、まるで運動会のように、ヨーイドンでストップウォッチを持たせて国会議員六人の前で披露したではありませんか。やっていないことをやっているように見せておきながら、いかにもそれが一致したなどという、そんな詭弁が国会で許せますか。委員長、これは善処してください。委員長、お願いします。
  269. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 自衛隊側で知っておりましたのは、たとえば米軍機については、これは計算値と実数値を知っております。これはもっと大きな数字でありますが、そして、F4EJにつきましては、三菱で実験したものを自衛隊側では承知をしておったという、その数字を申し上げたわけであります。
  270. 上田哲

    上田哲君 全然国会を侮辱しておるですよ。こんな答弁を受けられますか。委員長、どうですか。やっていないじゃないですか。やっていないものを国会の調査団に向かって——そうでしょう、社会党だけじゃない、皆さんそこにいらっしゃった。ストップウォッチを持たせて、何ですか、これは一体。そんなごまかしが通りますか。
  271. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いま申し上げましたように、三菱でやりました実験値を申し上げたわけであります。そして、二十二日に現地で実験をやっているということ、その数字を知っているということは、私自身ここで国会で答弁をしておるときには知っておりませんでした。国会のあとで聞きましたら、その日の朝にやったら数字がこういう数字であったというふうに私は聞いたわけであります。
  272. 上田哲

    上田哲君 認めているじゃないですか。やったのは、自衛隊じゃなくて、メーカーじゃないですか。防衛庁はメーカーの下請か。そんな数値を持ってきて予算要求ができますか。審議はできませんよ、こんなことは。
  273. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 四時二十分まで休憩いたします。    午後四時三分休憩      —————・—————    午後四時二十三分開会
  274. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を続けます。杉原一雄君。
  275. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 私は、大きく分けて二つ、一つは土地と土地問題並びにその対策、これは関係省庁の責任者に対して質問をしたいと思います。第二は、農林省が計画している土地改良計画、十カ年計画、十三兆円にのぼる膨大なこの計画、内容、発想等について質問をしたいと思います。  第一点の土地、土地問題とその対策について、これは経企、建設、通産、環境、農林。私の質問は論理的には一貫しておりますので、つとめてことばを省きますから、当初から質問の内容と論理の展開等について十分留意していただきたいと思います。  質問に入る前に、去る三月六日に、あの有名な小説「大地」を書きましたパールバックが死なれたわけでありますけれども、私も若きころ、この小説「大地」を読みながら、いわゆる中華人民共和国の今日の巨大な建設と前進を、この中からも読み取れたと思うのであります。それは結局、大地を愛し、大地の中に限りない生命力を投入して戦ってきた、中国人民の皆さんの歴史とその戦いという中に、いわゆる土地そのものに対する民族的な考え方が、この小説の中にもにじみ出ていたと私は思います。あわせて、一月の下旬でございます、私は富山でございますので、ふだんならば一メーター内外の雪が全面をおおっているはずでありますが、一月下旬は、ことしは暖冬異変で雪はありません。しかし、冷たい風が吹いている中で、七十歳の老農夫が、ほおかむりをしながらあぜ塗りをしている姿に敬虔な思いをはせたのであります。土地を愛し、土地に生き抜くこの農民、農政がどのような風が吹こうと、そういうことにはとんちゃくなく、ことしの秋の実りを信じながら、精魂を尽くして働いている農民のこの姿の中に、農地とは何ぞ、土地とは何ぞ、そうした問題について私は無言の哲学と信念を持って働いている姿を想像いたします。だからこそ、一体土地とは何だ、それは空気や水と同じように、自然と同じように、人間を含めたあらゆる生物が、その生命とともに創造主に与えられたものであるという、敬虔な気持ちに立たざるを得ないのであります。  そうした観点に立ちながら、まず第一に経企庁の責任者にお伺いしたいと思います。一体、経企庁長官は、土地とは何だ、そうして総合計画を立てる立場から、一体いま直面する土地問題とは何だ、その対策は何か、こうしたことについて要約して答弁をいただきたいと思います。
  276. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申し上げます。  土地とは何かということで、できるだけ要約して私の考えを申し上げたいと存じますが、土地というものはわれわれの国民のものであるということであると思います。そうして国民が、みな、この土地によって生活の基盤を持っているものである。そして、これは限りのあるものであって、その意味でたいへん大切な国民の共有の財産であるというふうに思います。われわれは土地によって生活のかてを得るし、また生活の楽しみを知るし、そうしてまた、この土地を大切にしながら、子子孫孫にわたって土地による恩恵を得ていくのである。そういう観点からすると、土地というものを取り巻く環境を非常に大切にしなければならない。私どもは生命の泉の根源を土地に求めているのだ、そういう認識に立っていてよろしいのではないかというように思っております。
  277. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 だから、よく聞いておってくれと言ったでしょう。経企庁として土地問題とは何かということ、その対策は何だということ、あなたの所管のポイントを明らかにしてほしい。
  278. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもの経企庁といたしまして、そういう立場に立って、土地をいかに有効に国民のために使わせることができるかということを考えなければならない。その意味で私どもは、新全総なりあるいは新経済社会発展計画なりというものを昭和四十四年、五年につくったわけでございますが、その後いろいろな経済状況の変化がございまして、その意味で新全総を見直そう、こういうことに目下いたしておるわけでございます。一方新経済社会発展計画のほうは、これは本年度、四十八年度を起点とする五カ年計画、経済社会基本計画という名前のものをつくりまして、これは副題がついておりまして、「活力ある福祉社会のために」という副題をつけておりますが、そういうものをつくりました。目下、経済社会基本計画とこの新全総との調整をやっておるわけでございます。その意味で新全総を見直しております。  で、新全総は昭和五十年に改定版をつくろうということでございまして、経済社会基本計画は五十二年まででございますので、それ以後の国土のあり方というものをさらに見ていこうと思っております。  それから、さらにその前にさかのぼりますが、新産都市あるいは工特法による工業特別区域というものができておりまして、御郷里の高岡などもそこに入っておるわけでございますが、こういう点につきまして、その後の発展計画もレビューしてみるということで、その関係を見直しておるというわけでございます。
  279. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 はしなくも、いま私の質問を予定して御答弁いただいたわけですが、新全総の問題は、昨年のこの予算委員会で、佐藤総理も木村さんも明確に、八月まで総点検を行なうということであったのですが、ぼくが得た情報等によりますと、まだ総点検が終わっていないようです。そこで、総点検をやるとおっしゃったが、現在、中間でけっこうですが、総点検の結果、どうでしょう。すばらしいところと、また問題点があると思うのです。土地問題をからめて明らかにしてほしい。
  280. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 新全総の総点検に資しまするために、国土総合開発事業調整費というのが経済企画庁にございまして、この費用を使いまして、瀬戸内海地域の新産都市等における環境保全、都市整備等の調査を実施しておりまして、今後このような調査結果を分析いたしまして、検討して、総点検に生かしてまいりたいと考えております。  総点検の具体的な作業といたしまして、地方公共団体の意見を聞きまして、関係の各省と連絡をとり、また、大体八つの問題について考えておりますが、これを分けて申し上げますと、一、経済計画との調整、二、自然環境の保全、三、巨大都市問題、四、工業基地問題、五、農林水産業問題、六、地方都市問題、七、土地問題、八、地域開発制度でございまして、この八項目について進めておるところでございまして、さらに水資源の問題、交通ネットワークの問題等についてもあわせて作業を進めております。このうち土地問題、地域開発制度につきましては、総点検の結果を踏まえまして、土地税制の改善を行なうとともに、国土総合開発法等の所要の法案を取りまとめて国会に提案している次第でございます。  また、経済計画の調整につきましては、先ほど申し上げました経済社会基本計画の作成にあたって、総点検作業の結果を取り入れるようつとめましたわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、五十二年がこの計画の目標でございますので、それ以降についてさらに詳しく検討していく考えでございます。  そこで、これまでの総点検作業の結果につきまして、四月中あるいは五月に中間的に取りまとめまして、国土総合開発審議会に対してその結果を説明いたしたいと考えて、目下その用意をいたしておる次第でございます。
  281. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 この間、全国都道府県議長会が取りまとめたデータによりますと、十一月から二月までの間の土地利用計画の問題ですね、それは私こちらにデータがあるわけですけれども、長官のほうではそれをどう理解し、それに対してどう今後とも進めようとしているか。計画があまり立っていない県が多いわけですから、その点についての見解。
  282. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は全国で十五地区の新産都市で、指定以来、五千八百四十ヘクタールの工業用地を造成しているわけでございます。このうち遊休地の実態を把握することはなかなかむずかしい点がございますが、造成されて売却されていないものを遊休地と考えますと、現在で約二〇%の、千二百ヘクタールが未売却地でございます。このうち北海道の中央、道央、秋田湾、新潟、富山、高岡の四地区の未売却地がおもなものでございます。これらは、ここ一、二年の設備投資意欲が減退していること、あるいは環境問題の点から進出予定企業を再検討したことなどによりまして、売却がおくれているものと考えます。最近非常に環境問題についての関心が高まっておりまして、どうも進出企業が環境保全上好ましくないというものについては、これは再検討されまして、その結果も未売却の一つの要素になっておると、こう考えておる次第でございます。しかしまた、最近において経済状況が活発化しておりますので、この中で大体半分ぐらいは売却予定になっておりまして、あとの半分についても進出企業を選考中のもののほか、当初計画を変更して緑地として整備するという動きもございます。富山、高岡等におきましては、進出企業を選考中というふうに承っております。
  283. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 長官、それはぼくのまだ質問しておらぬことなんです。ちょっと前もって何か原稿書いたの読まれたのだろうと思うのだけれどもね。ぼくの質問したのは、全国の都道府県・町村会議長会のデータです。これには県として土地利用計画をきちんと立てた県、ここに書いてありますけれども、読みましょうか。これはあなたの答弁の範囲なんです。その点で、明確に利用計画を立てている県は少ないのですよ。なぜ立てられないか。これからそれに対してどう指導しようとするか。これは自治省の関係があるわけですけれども、きょうは自治省の大臣を呼んでおりませんので、長官の立場から明確にしてほしい。  幸いあなたは新産都の問題答弁していただきましたが、あなたの答弁をぼくは聞き違いではないと思うが、計画のうちの半分は計画どおり進んでいる、半分は進んでいないと。その半分進んでいない理由は何だ。なぜ半分進んでいないか。その半分の分をどうしようとするか。あなたは盛んに、私、富山県ということを意識してものを言っておられるようですが、隣県の長野ですからしかたがないんですが、その富山の新産都にしたって四〇%です。六〇%をどうするか。いまだにヘドロ、雑草地帯なんです。そうした問題に対する経企庁の指導の方針、基本的な考え方、それをいまみたいにだらだらと言うことでなしに、はっきり答えてください。
  284. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) お答えいたします。  いまお尋ねの点、二点あると思いますが、一つは、全国都道府県議長会議から出ていました問題に関連いたしまして、各県の土地利用計画がどうなっているか、あるいはそれに対して経済企画庁がどういうふうに考えているかというお尋ねであろうかと思います。  私どもやはり調べました結果、土地利用計画を策定しております県は神奈川県ほか五県にとどまっておりますし、現在土地利用計画を策定すべく検討しておる県が、石川県ほか二十一府県あるというふうに調べております。で、これらの県に対しましては、ぜひ急いで作業するようにお願いもしておりますし、つくられていない県に対しましても、なるべく早く検討してほしいということを実は申し上げております。しかし、各県と意見を調整いたしますと、この土地利用に関しますたくさんの法律がございまして、法律間の調整を必要といたしますし、それからそれをつくりました際にどのような効果があるかということで、条例にまかせてあるだけでは実効を期せないということから、各県とも、今回国会で御審議いただきます国土総合開発法の制定を待っているということの通告がございまして、私ども原案を、国土総合開発法をつくるに際しましても、各県とのいろいろ意見交換をしているところでございまして、国土総合開発法の案に基づきまして各県を指導して、できるだけ早い機会に土地利用計画の細部の検討を各県にお願いしたいという考え方でおるわけでございます。  それからもう一つの御質問は、新産業都市の土地造成についてであります。これにつきましても、やはり毎年私ども新産地区各県と連絡をいたしまして実績をフォローしておるわけでございますが、先ほど長官からお答えいたしましたように、三十九年から四十六年までに完成いたしました土地の面積は五千八百四十ヘクタールでございますが、その中でいままでに売却いたしましたものは約八〇%ぐらいでございまして、二〇%ぐらいが未売却で残っております。この二〇%の未売却分につきましては、地区ごとに検討をしております。大きなものは苫小牧地区あるいは秋田地区あるいは新潟地区あるいは富山地区という、ほぼ四カ所ではなかろうかというふうに思っておりまして、その四カ所ごとにそれぞれ事情がございますので、一括してこういう理由ということで申し上げられませんけれども一般的には、先ほど長官から申しましたように、環境問題その他から住民方々と業種の選考等について議論をしている地区もございますし、あるいは、近くきまるやに聞いている地区もございまして、事情はそれぞれ個別でありますが、私どもといたしましては、せっかく造成した土地につきましては、公害あるいは自然環境に留意して企業を誘致して、地域住民方々への雇用の面その他に対して利益がありますように促進するようお願いしているわけでございます。
  285. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 先ほど言った都道府県議長会の結果ですけれども、その結果について、あるいは土地利用計画ができておるのは神奈川、栃木、奈良ほか九県というようなことなども大事ですけれども、そういう調査の結果、たとえば新潟は去年の十一月にプロジュクトチームをつくる、それには住民参加を基調としてやるといったようなデータも出ておるわけであります。そうしたよい面をやはり取り上げながら今後の行政推進の中で生かしていくと、そういうところをひとつつかまえて御議論いただかないと、数の羅列だけでは、私はこういうことではやりとりする必要は全然ありません、そんなものは新聞見ればわかるんですから。そういう点でもう少しこうした問題に対する本腰の取り組み、それからいま長官が言った五月か四月ごろに総点検の中間まとめができると、こういうことなんですね。それは間違いないと思うんです。そこで、いま政府が発表した経済社会基本計画とのその取りまとめの関係が時間的に完全にずれてくるわけです。そうしますと、こうしたものを国民がどう理解したらいいのか、その辺のところは、役所の人でないとわからぬ、官庁エコノミストでないとわからぬようなところがあるんですが、それはどうするんですか、調整局長。そういったようなことはどう理解したらいいのか、ぼくはわからぬ。これにちゃんと書いてあるんですが。
  286. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 現在経済企画庁といたしましては、五十二年までの五ヵ年の経済計画を定めたわけでございますから、五ヵ年間その計画の基本線に沿って行政を進めていくということは間違いがないというふうに思います。しかし、この国土の開発あるいは保全につきましては、五ヵ年という短期の見通しだけでは不十分でありますから、やはり昭和六十年、あるいはさらにもっと長い期間の見通しをつけた上で、特に先ほどから御指摘いただいております土地とは何か、土地というものはどういうふうに国民のために利用していくべきかということをかねてこの検討を重ねまして、その検討結果が出ましたところで、場合によりましては、再び経済計画を見直すということも考え得るというふうに考えております。
  287. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そうしますと、点検はその後の修正の資料にするという理解のしかたでいいですね、それで。  先ほど長官のほうから今後の進め方について八つか九つの項目を羅列されたわけです。その中で、特にきょうは農水を中心に問題をしぼりたいと思うものですから、経済社会基本計画の八十九ページに農業の問題に触れているわけです。この構想を要約すればどういうことなんですか。土地が少ないから土地を何かしぼって高生産性の高能率の農業にしていくと、機械化すると、こういうはしょった理解のしかたでいいのかどうか、その辺のところを簡単に説明してください。
  288. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この基本計画では大体九十兆円の投資というものを予定しておるわけでございます。その中におきまする農業のあり方というようなことになりまして、これが八十八から九ページに書いてあるわけでございます。  私ども考えますところは、やはり農業政策というものは非常に大事でございまして、単に生産としての農業だけでなくて、緑を国民に与える。この緑の効用というものもまた非常に重要なことである。その意味で、やはり農業及び農村が健全に発展するように、高能率農業の育成だけでなくて、やはり高福祉農村というものをつくらねばならない。そういうことを一つの基本的な考え方にいたしまして農業の問題を考えておるわけでございますが、やはりその項目にもございますように、「高能率農業の育成と食料の安定的供給」、それから「集団的優良農地の確保と農地制度の改善」、「高能率農業の担い手の育成」、「価格・流通加工対策の充実」、「輸入農産物の安定的供給」、「環境保全対策の推進」、そういうようなこと、さらに、「高福祉農村の建設」並びに「森林・林業政策」あるいは「漁業政策」、そういうものについて考えをまとめておるわけでございます。
  289. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 経企庁の締めくくりとして、去年あたりちらほら出された農業の第三次産業化の構想、これは下河辺氏が考えたかだれが考えたか知らぬ。宮崎君か知りませんが、その構想はいまだにやはり持ち続けているかどうか。  それからおたくが出したかどうか知りませんが、たんぼの緑、山の緑、それから水、いろいろなことを価値評価された——何兆円かは知らぬけれども、されたことがありますが、その評価はその後そのまま修正しないで、そういう評価をいまも持ち続けているんだと、いま長官の答えの中にはしなくも緑の問題が出ましたから、その辺のところはどうです。
  290. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 第一次産業につきまして、単なる生産企業としてだけではなくて、いま御指摘いただいたような広範な角度から検討しておることは、前申し上げたとおりでございます。
  291. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは建設関係に、先ほど前提に申したような方向で答弁を願います。
  292. 松野幸泰

    政府委員(松野幸泰君) 大都市地域において、最近、地価の異常な高騰によりまして、住宅用地の取得難は一そう深刻化しておりまして、また、公共事業における用地取得費も増大し、土地問題の解決をはかることは、現下の最も重要な国民的課題となっております。建設省としては、かかる土地問題の解決をはかるため、土地に関しては、憲法の認める範囲内で最大限に公益優先の原則を確立し、広く公正に国民に利用されるようにすべきであることの基本的認識に立って、当面、一月に決定した政府の総合的土地対策の一環として、土地利用規制強化のための都市計画法の改正を行なうほか、宅地の大量かつ計画的な供給等の施策を講ずることとしております。特に、大都市地域における大規模な宅地開発事業の推進をはかるとともに、土地所有者による自主的開発の促進策について検討中であります。また、住宅不足の著しい大都市圏における市街化区域内農地について、本年度から原則的に宅地並み課税が発足することに伴い、その宅地化の推進に関する助成措置を講じたいと考えております。地価公示の対象区域を市街化区域以外の区域の宅地にも拡大し、これを一般土地取引の指標とするとともに、公共用地取得に際して基準とすることといたします。  以上、お答えいたします。
  293. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 さっきから聞いておってくれと言っておったんですがね。建設省は、土地が何だということなんです。土地とは何かということです。さっき冒頭で質問したでしょうが、繰り返し言わないと言ったから、それについて説明してください、土地に対する認識。
  294. 松野幸泰

    政府委員(松野幸泰君) 土地は、国民に納得のできるように十分活用してもらうように、施策として進めなければならぬと思います。
  295. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そういう解釈になりますか。何を言っているんだ。土地とは何ですか。
  296. 松野幸泰

    政府委員(松野幸泰君) まあ、そういう広い範囲に解釈していただきたいと思います。
  297. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いや、違う違う。少なくとも商品であるとかないかぐらいは言いなさいよ。そんなことぐらいはわかるでしょう。
  298. 高橋弘篤

    政府委員高橋弘篤君) ただいま、政務次官からもお答え申し上げましたけれども、そもそも土地というのは国土の一部を形成するものでありまして、御承知のように、新しくこれは原則として生産するというものじゃございません。したがいまして、そういうきわめて特殊な性格を持っております。私どもも、先ほどちょっとお話ございましたように、そういうような見方からしますと、土地所有権というものは公共の利益に適合したものでなければいけない。そういうことが強く要請されるものでございます。したがって、土地の利用というのは、公共優先ということの見地からいろいろこのことを考えなきゃいけないというふうに考えておる次第でございます。土地が商品かどうかということでちょっとお尋ねございましたから、つけ加えて申し上げますと、そういうような特性を持ったものでございまして、普通の商品ではない。そういう特殊な性格がございますから、土地利用上は制約を受けると、公共優先という立場から制約を受けるという財産であるというふうに考えておる次第でございます。
  299. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 先ほど政務次官のほうから、地価公示法に基づく土地の公示価格を明らかにしたと、四月一日、官報は四月二日と、これは質問がすでにあったと思いますが、しかし、それをどう評価するかということですね。今後、国策にどう生かすかということ、これは田中総理がよくデメリットやメリットという、かたかなのことばをよく使いますが、そういう観点からどうです。この間の三十何%値上がりしたあの公示表はどう理解しますか、一年間で。それで、地価公示というもののよしあしというものをどう考えているか、この辺のところを、原因究明をしたいんですが、そこまで時間がありませんから、見解を聞きたいと思います。
  300. 高橋弘篤

    政府委員高橋弘篤君) お答え申し上げます。  地価公示は、御承知のように、地価公示法で定めておりますとおりに、いわゆる自由な取引が行なえるとした場合におきまして、その際、取引におきまして通常成立すると認められる正常な価格ということでございます。これはいわゆるつくられたものと、また、ある程度固定されたものということでなしに、地価公示価格は、そういう通常自由な取引で成立するという正常な価格ということで、現在、公示をいたしておる次第でございます。今回の公示におきまして、大体五千四百九十地点ということでございまして、毎年、四十五年以来倍々々という、倍々ゲームでふやしてまいっております。私ども、四十八年度予算におきましては、これをさらに倍にしまして一万四千五百七十地点についてこれは公示するつもりでおります。来年の公示はそういうことになります。それを基礎にいたしまして、私ども、さらに都道府県及び市町村におきまして、これを基準にしてきめこまかく、これは建設省で考えておることでございますけれども、大体全国で二十四万地点を昭和五十年までには公示をいたしたいというふうに考えておりますので、そういうふうに全国的にそういう地点が公示できますと、これは大いにいろんな面で活用できるというふうに考えておる次第でございますが、現在におきましては、御承知のように、公共用地の取得のときの基準になるということが第一点。それから不動産鑑定士が鑑定評価する際の基準になるわけでございます。一般の土地取引におきましては、現在は指標、目安ということになっておる次第でございますけれども、今回の地価公示法の改正によりましても、そういう規定がなかったのを、地価公示価格を一般取引でも指標にしなければならないという責務を規定いたしました。同時に、これは企画庁で目下まとめられました国総法の中におきましても、その地価公示価格を著しく上回るという場合におきましては、中止勧告し、またそれを聞かないときには公表するという制度も考えられておる次第でございます。同時に、私ども、将来は、この地価公示価格を基礎といたしまして公的な評価がいろいろございます。そういうものの一元化をはかってまいり、そういう全般的なことを考えながら地価公示を活用してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  301. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 非常に大事なことをやっぱり避けて通っておられるようですね。だから、結局三〇%値上げを公示しなきゃならなかった理由、なぜそうなったかということの検討、それがいまの答弁の中の裏打ちになっていないじゃありませんか。つまり、地価の高騰は諸悪の根源であるというのがぼくの最終的な結論です。そういう言い方は乱暴ですか。三〇%上げて平気な顔をしている。なぜ三〇%上がったんだ、このことの追求がいまの説明の中に全然ないわけです。いやでしょう、やることは。しかしながら、結果的にはそのことの追求なくして、土地問題の解明はできないと思います。でありますから、そうした前提に立つならば、今日、なぜ土地の価格を上げざるを得なかったか、上がったのか、その問題点、たとえば資金が過剰流動しているというようなことなどもあるでしょう。土地収用法の適用のやり方の問題もあるでしょう。あるいは大都市にオフィスが集中しているということもありましょう。そうしてまた、結果的に土地投機をがんじがらめにしてできないような体制を整えられない今日の実情、泣きどころがあるわけです、皆さんのほうに。こうした問題についてのやはりいま少し御検討をしてもらいたい。ネットワークをもっと広げるのだと、そうするとますます精密な土地規制ができるのだといっているわけですが、そこで逆に全国農業会議所から「土地と農業を守る運動」という運動を提起している。もうすでに各都道府県ではこれが浸透している、やっているわけです。ところが、建設省が最も土地を必要とする省なんです。道をつくる、橋をかける、道路が必要なんですよ。そうすると、この運動との衝突がありますね。その辺をどう理解しますか。やれたらやってみなさいよ。
  302. 高橋弘篤

    政府委員高橋弘篤君) 農地と、それからそれ以外の公共用地その他宅地とか、そういうものの調和の問題の御質問だろうと存じます。全国におきまして土地利用の計画がきまります際に——現在、土地利用の現況というのは農地とか山林、原野、また宅地、それから道路、河川その他のそういう公共用地と、いろんなものに分かれておるわけでございます。今後の日本経済のいろんな成長なり国民福祉の向上のために、いろいろ土地利用が従来より変わってくるわけでございますが、そういう土地利用の基本計画というものを、現在国総法で考えておるような、そういう先ほども答弁ありましたような都府県計画なり、新しい全総計画の見直しでいろいろきめていくわけでございます。そういうような根本的な土地利用計画の中におきまして道路なり、また下水道なり、また住宅団地なりがきまっていくわけでございます。そういう土地利用をきめる際におきましては、もちろん国民福祉の見地から、と同時に環境問題も考えながら土地利用がなされると思いますから、そういう際におきましては、そういういろんな土地利用の調和というものは、そういう観点で都道府県知事がきめる際いろんな関係者意見を聞きながらきめていくと思います。その際におきまして農地がそれじゃどういうふうなかっこうで残っていくかという問題でございますけれども、これにつきましては農林省——関係者の中でも農林系統、農林行政の中で、将来の食糧行政、農業行政という見地からどの程度のものを残しておくべきかというようなことが考えられるわけでございますので、そういう他の行政とも十分調和をはかりながら、私どもの担当しております公共事業また住宅地の造成というようなものについても十分調和をはかって、環境を破壊することのないように、国民福祉のもとにおきまして土地利用というのを十分に考えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  303. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 では、通産省の責任者に先ほどぼくが冒頭に質問した点についてお答えください。
  304. 矢野登

    政府委員(矢野登君) はなはだ申しわけないんですが、時間にちょっとおくれて出席いたしましたので御質問の内容を承らずにおったわけでございます。
  305. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 向こうで聞いておやりなさいよ。
  306. 矢野登

    政府委員(矢野登君) お答えいたします。  通産行政から見て土地とは何か、また最近の土地問題とその対策はどうかと、こういうような御質問と承りましたのでお答え申し上げます。  通産行政面から見た土地は、生産流通活動の基盤である、したがって、産業の健全な発展をはかっていく上で必要な用地を確保することが不可欠の問題であるというふうに考えております。その場合、農林業用地、居住地用地等との調整、自然環境保全の観点との調整を十分にはかることが肝要であり、通産省といたしましては従来からこのような点に配慮しつつ生産流通用地の確保につとめてきております。最近の土地問題は、用地確保難に加えて特に地価上昇と投機的取引の問題であり、通産省としてはこれらの問題を解決しつつ生産流通用地を確保していくことが課題であると考えております。このためには計画的な土地利用の促進、地価上昇、投機取引の規制を行なうとともに、積極的に産業用地の確保を行なう必要があると考えております。したがいまして、今国会に提出されている国土総合開発法案及び関連法案による解決を期待しているほか、特に生産流通用地の確保については、まず第一番に国土総合開発法案の特定総合開発地域制度、工業再配置・産炭地域振興公団による中核的な工業団地の造成、工場適地制度、工場立地調査法、工業再配置利子補給制度、いろいろな制度を活用いたしまして積極的に対処していきたいと、こんなふうに考えております。
  307. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 まあ時間がありませんから具体的な問題でお尋ねします。  通産省、どうですか。大体電力は、あなた方構想する経済発展成長計画からいえば足らないでしょう、将来。その場合に、電力基地、発電基地をつくる場合に一番直面する問題は何です。そのことを明確にすれば一番ポイントがはっきりしてくると思うんですが、少なくとも昭和五十二年には、現在の成長率で進んでいくならば電力は、供給力は九千四百六十六万、需要が九千九百三十七万、予備力が足らないんです、四百七十一。マイナス四・七%になる、こういう状況です。そういう状況の中で最大の問題点は、いま当面している問題は、関西電力にしろ私の北電にしても問題は土地をどう確保するかということでしょう。これらについてどういう認識を持ち、どういう方針を持っているのか。私は、いまあなた方進めようとする経済成長に賛成しているわけでないので、現実、ただいまの皆さんが権力を握っておるから、その進めようとする政策の前途に土地問題があるということを警告をしながら、あえて、そのことをどう乗り越えていこうとするか、その決意を明らかにしてほしい。
  308. 矢野登

    政府委員(矢野登君) お尋ねのポイントが電源立地対策と、こういうことにいくと思うのでございますが、電力の需給面はお説のとおり非常に切迫しております。したがいまして、既設の設備でまいりますと五十二年にはマイナス四.七%ということになります。こういうことで、今後ますます増加してまいります電力需要に対処するためには電源立地をいかに確保するかということであると思うのでございますが、これに対して通産省は順次こういう面を検討しております。わが国の電力は国民生活の向上と国民経済の発展に伴って今後とも年々一〇%程度の伸びが予想されております。既設の電源及び現在までに電源開発調整審議会で決定済みの新電源だけでは、昭和五十一年度以降は供給予備力が大幅に低下いたします。すなわち、最近の試算によりますと、電源立地難が緩和できなければ御指摘のように五十二年度にはどうにも方法なくなってしまう、こういうことでございまして、電源立地難の打開には環境保全対策に万全を期するとともに地元住民の了解を得ること、これが最も大事な問題ではないかと考えております。このような観点から電気事業者に対しましては、積極的に地元との話し合いに取り組むよう強力に指導しておるところでございますが、今後とも地元住民の理解と協力のもとに的確な立地が進められるよう配慮してまいりたいと存じております。また電源立地難の打開策として、現在、発電用施設周辺地域整備法案、これを今国会に提出することにいたしております。これが本日閣議で提出案が決定いたしておりますが、これによって電源周辺地域の整備を推進いたします。そうして電源立地の円滑な確保に進めたい、こういうふうに考えております。
  309. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いま、最後の、新しい法律の閣議了解の問題ですが、そのねらいですね、特にいま問題になっておる電源立地を確保する場合に、どういう点が、一番その法案のねらいがどうなっているのか、規制のみ強化されていては困りますので、どこに魅力があるか、明らかにしてください。
  310. 矢野登

    政府委員(矢野登君) 政府委員にお答えさせます。
  311. 井上保

    政府委員(井上保君) お答え申し上げます。  現在の電源開発の問題点でございますが、ただいま政務次官から御説明申し上げましたように、一つは公害問題でございまして、これに対しましては、ローサルファ燃料の確保、あるいは排煙脱硫装置、あるいはガス化脱硫装置、あらゆる手段を尽くしまして、ローサルファの燃料を確保し、公害を少なくするという手を講じております。例をあげますと、現在九電力で一・〇四%ぐらいのサルファを五十一年には〇・五一%ぐらいにしたいと、こういうことでやっております。  それから、いま一つ問題点は、先ほど先生御指摘のございましたような地元との問題でございますが、これは電気の発電地帯と消費地帯考えますと、消費地帯は非常に経済メリットが落ちるわけでございますけれども、発電圏につきましては、なかなか電気の発電所の特性から申しまして、非常に雇用効果がないとか、そういうことで経済効果がないわけでございまして、そういう意味で地元に経済効果を落としたい、それが地元の同意を得る道である、こういうふうに考えておるわけでございまして、したがいまして、電源がそこにいく、あるところにできる場合に、その電源ができるというためには、あるいは工事用道路であるとか、あるいは水道であるとか、いろいろな公共関連の事業をやることが必要でございまして、場合によりましては、相当大きな金をそこにつぎ込んでおるわけでございます。そういうものができるという前提に立ちました場合には、当該地帯におきまして、それを踏まえまして、それと一体となった地域開発計画というものを考えるということが地域の開発あるいは住民の環境の向上のために非常に適切であるということでございまして、国といたしましては通常の公共事業の場合以上に、特殊のものにつきましては補助率を引き上げ、なお地方公共団体の負担分につきましては電力会社がそのある部分を肩がわりするというようなことをいたしまして、電源開発地帯の公共施設の拡充をはかってまいりたいと、こういうことでございます。
  312. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 もう一つ、最後に、矢野次官の答弁の中で工業再配置の問題が出たわけですが、これは言うまでもなく、昨年の十月の二十日の閣議決定、その後、仕事が進んでいる。しかし必ずしも私はスムーズに、しかも受け入れ側も喜んでされているとは思わない。各新聞の社説等では非常に人気が悪い、線引きやり直せというふうな説もあるわけですが、このことについて当局はどのように掌握しているか、なぜそういう問題が起こるのか、どこが問題点なのか、これを簡単に述べてください。
  313. 三枝英夫

    政府委員(三枝英夫君) お答え申し上げます。  昨年の十月二十五日に工業再配置促進法を施行いたしまして、現在その運用に当たっておるわけでございますが、二十五日におきまして線引きを実施し、その後は——十月の二日には工業再配置・産炭地域振興公団の設立を見まして、現在までにあと地融資あるいは移転融資、それから中核工業団地の造成の準備というふうなことに当たっている次第でございます。  そこで、工業再配置に関しましての世論でございますが、このねらいはあくまでも、貴重なるこの国土の総会的な均衡ある発展をはかる場合におきまして、工業のいわゆる集積力、経済発展の集積力というものにつきましての活用を全国的に均衡ある形で持っていこう、特に過密から過疎へ工場の立地の流れを変えることによりまして促進しようということでございますので、その限りにおきまして方針としましては、これは現在時点におきましても正しいものというふうに認識してございます。ただ、工業の立地のいままでのあり方、これが不幸にして公害あるいは環境問題との関連におきましていろいろ問題を引き起こしていることは事実でございます。したがいまして、さらにこの大きな立地の流れを定めました工業再配置法を補完するものといたしまして、個々の立地あるいは団地の立地にあたりまして、その造成なり立地のあり方につきまして一つの行動のよりどころになりますような準則を設定いたしまして、いろんな助成手段あるいは規制手段をもちまして誘導してまいりたいということで、本国会に工場立地法の御審議をお願いするということにいたしてございます。したがいまして、通産省といたしましては、工業再配置計画が国土の総合的発展というものに工業という分野から大きく寄与するものであること、また、それにつきまして、実際の立地造成等につきまして、その際に環境問題、周辺住民との調和問題、これが最大の問題であり、それに対する必要不可欠の対策を講じなければならない、こういう認識で対処したいと考えております。
  314. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 もう一つだけ、これは炭鉱その他、休山、廃坑が全国的にたくさんあるわけですね。これは公害サイドからきょうはお尋ねするのじゃなくて、その利用の面で、休坑は持ち主があるはずですから、廃坑を何か国土を愛するという立場から、利用するという立場から、何か利用している面、今後とも利用するような計画等があるかないか、あくまで廃の字は廃止ですから、それでゲームセット、こういうふうに考えているのか、通産はどう考えていますか。
  315. 三枝英夫

    政府委員(三枝英夫君) お答え申し上げます。  私のちょっと所管でございませんので、適切なお答えができかねるかと思いますが、休廃止鉱山、いま考えつきまして、単にそれは眠っている、あるいは廃止したままということで考える以外に、できるだけ活用策ということは、今後も考えていかなければならぬことだろう、特に地域社会との結びつきというふうなこともございますので、そのものとしての活用以外に、やはり地域社会という認識に立ちましての別途の対策をこれに結びつけまして、振興をはかっていくということが必要であろうかと存じます。
  316. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 環境庁長官が先ほどおいでになりましたから、第一問についてお答えください。
  317. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 杉原委員がいまはなきパール・バックの「大地」をお出しになって、人間の土地に対する愛着、感銘深く承ったわけでございます。私もパール・バック、小説でも読み、映画でも見て深い感動を覚えたものであります。土地というものは、人間の持続的な生存、これをやはり維持、発展さす基盤である、これはもう人間の生存にとっては基本の問題であるというふうに土地を考えているわけで、いま杉原委員が富山県の農家の例をおとりになって、もっともなことだと拝聴をいたしたわけであります。
  318. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは、先ほどおられたことにならないわけで、環境庁の自然保護とか、そういう観点から見た今度は土地問題とは何だと、あなたのその対策のすべてを言われるとたいへんですから、ポイントはいま何だと、そういうことだけ簡単に。
  319. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それでありますから、土地を離れて人間の生存というものは考えられない。ところが、このごろは土地の利用というものが、土地がこういう人間の生存にとって基本だというよりかは、何かこう手っとり早く商業主義というような点で土地が利用されておるような面がありますから、だから、どうしてもやはり日本の自然環境などは、これだけの自然環境というものは、これは絶対に保全していこうという地域を、私は地図をつくろうとしておるわけです。日本の自然環境保全地図というものを一年の間につくりあげ、これは専門家あるいは学者、いろんな人の協力を得て、これだけのやはり自為環境というものは保存したいという地図をつくって、いろんな開発をやる場合にはそういう保全地区以外で開発を考えるべきであると、これは残そうという、そういう環境を保存するための大きなやはり一つのよりどころになる地図をつくろうと、まあ、その上に自然環境保全法をこの十二日から実施されるわけですから、これでできるだけ自然環境の保全というものの地区を広げていきたい、いま少し狭過ぎるですよ。全体の国土の、まあ西欧諸国などを見ても二五%から三〇%はもう自然環境の保全地区として押えてあるわけで、日本は一三%程度じゃないでしょうかね。そういう点で自然環境を保全していきたいと、それは何かといったら、土地は人間の生息の母体であるからであると、これをむやみにやはり土地というものを荒らしてはいけないんだという考え方から出発するものでございます。
  320. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 長官の理想と申しますか、考え方に私も共鳴いたします。  ただ問題は、三月三十日閣議決定になりました富士地域環境保全整備特別措置法、これが閣議決定になって国会に送り込まれてくると思いますが、この中における第一条の表現等におきましても三木長官の理想が出ているわけです。ところが、残念ながら——世界的に国民の資産としての富士山、これを守るということは同感であります。ところが、先般来、各種委員会で出ていると思いますが、必ずしもそうでない。そこに爆弾の音が盛んに飛びかうというような実情等は、これは自然環境上最もけしからぬ風景でありますので、これについては、長官、簡単にどうですか、がまんできますか。
  321. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私もたまの音がしない富士山がいいと思っているんですよ。何とかしてこの演習場をどこかほかへ持っていけないかと防衛庁にも私は言ったわけです。ところが、広いでしょう、なかなかああいう地域がやっぱり見当たらないんだと、こういうわけですよ。したがって、これは永久だと私は思っていない。いろいろな、基地というものは変化をするものですが、この段階では、まあ杉原さんの立場と自民党の立場との基本的な違い、根っこに違いがありますからね。自衛隊とか安保条約に対する基本的な違いがありますから、御納得はなかなかいきにくいと思いますが、そういう現実の条件の中で、なるべく演習場であっても環境保全に対する協力を求めたい、自衛隊にも米軍に対しても。しかし、たま撃つことやめろと言ったら演習場になりませんからね。しかし、その以外のことできるだけ環境の保全に対して協力を求めたいと思っています。  しかし、それは一部分ですからね。富士の周辺二十キロぐらいをこれを保全地区にしたい、半経二十キロぐらい。その中においては環境の保全というものの趣旨を貫きたいと、いろいろな施設をする場合でもですね。あるいはいろいろなこの利用する場合においても、環境の保全という、それはこうすっぱりした、貫きたいのですが、どうも北富士というものについては、これはやはり演習場をいま撤去するわけにはいきませんので、その点はまあ国民の気持ちからしても、何とかほかに代替地があったら演習地は移転してもらいたいということ、国民の気持ちだと思います。私もそう思うわけです。現実がそういう点でできるだけ与えられた条件のもとに環境保全の目的を達したいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  322. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 長官、ちょっとまあ御無理かもしれませんけれども、いま当面している環境問題も幾つかあるわけですが、山形県のいま明らかにされたカドミ汚染米の問題、あるいはきょうの新聞で、前々から出てはおったんだけれども、よりおそるべきデータとして出てまいりました滋賀県のPCB汚染田の問題、これらについて環境庁ではどういうふうに掌握しているか、その実態はどうなのか、で、どういう行政指導をしているか、簡単に説明してください。
  323. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まず、山形の南陽市のカドミ汚染公害の問題でございますが、ここにおきましては、四十五年に農林省の調査によりましてカドミウムが一PPM以上含まれる米が一点検出をされたわけでございます。で、その翌年の四十六年、山形県がさらに調査をいたしたわけでございますが、その調査の結果によりましても、やはり一PPM以上のカドミを含む米が一点検出をされたということで、四十七年度におきましては県は、休耕を現在いたしておるわけでございます。まあしかし、検出点数は一点でございますけれども、その周辺についてなおいろいろ危険なおそれがございますので、四十八年度におきましては、さらに細密調査を実施させるということにいたしておりまして、その結果いかんによりましては、土壌汚染防止法の規定によりまして対策地域の指定その他の措置を講じたいと、かように考えております。  それから滋賀県の草津市の日本コンデンサの草津工場関係のPCB汚染の問題でございますが、現在、もちろん、同工場におきましてはPCB関係の操業をいたしておりません。問題は、かつて操業の結果流出いたしましたPCBによります汚染のヘドロその他の対策でございますが、現在、一〇〇PPMをこえますヘドロ等につきましてはしゅんせついたしまして、あれ、一ケ坪池といいますか、そこに全部収容いたしております。さらに、その池の中のヘドロにつきましては、上層部につきましてはこれをある程度固形化いたしまして、工場の中に搬出をいたすということにいたしておりますし、底層部のヘドロにつきましては、これはそのまま固形化をするというような措置を講じております。  なお、農用地の土壌中のPCBにつきましては、玄米の中からもPCB汚染が発見されておりますので、現在、さらに調査をいたしております。この調査結果によりまして私どもは対策を講ずるように今後研究を進めてまいりたいと、かように考えております。
  324. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 最後に、これはきのうの発表ですけれども、中央公害対策審議会硫黄酸化物環境基準専門委員会、委員長は鈴木武夫と、こうあるわけですが、ここの考え方、長官に対する答申ということになるでしょうが、これからいよいよ亜硫酸ガスの環境基準をきびしくすると、現在より三倍にも強くするというようなことなどが提起されているわけです。これはまだ正式に長官のところに届いていないと思いますが、長官はこれを受けてどう立つか、決意のいかんをお伺いします。
  325. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これでいま専門部会でお話のようなこういう答申が出たわけですが、これを手続としては、総会等にもかける手続があるんでしょうが、私はそれを受け取って、やはり硫黄酸化物の規制は強化しよう、これをできれば四月一ぱいぐらいにはきめたい、そうしてそういう大気の汚染というものは、いろんなやはり健康に対する被害も与えておりますからきびしくして、そのきびしい基準にみなが適合するように、いろいろ大気汚染の防止のためのみなが努力を払って、もう少しやっぱり汚染から大気を守らなければならぬというふうに考えております。
  326. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 かつての総理大臣のように三枚舌、二枚舌はないだろうと思いますので、四月に受けて立つ、より強化するというただいまの答弁を正しく受けとめておりますから、私は忘れませんので、ひとつがんばっていただきたいと思います。  次に、農林大臣に答弁を求めますが、先ほどからおいでになったと思いますので、第一問に対する答えをまず簡単に。
  327. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 農林省の関係から御質問のことを考えますると、農地あるいは山林で八五%を所管するということで、この国土の利用ということについては、まことに重大な責任があると思います。農林省は、食糧の安定供給を大きな目標といたしておるわけでございまするが、私は杉原委員の御質問の間に、一番先に浮かびましたのは、母なる大地ということばがあります。私はもうこのことばが、杉原委員にはお答えにぴたりとくるという気がいたしました。  それから、いま高度成長経済の批判もあり、反省もあるときでございます。その場合に、この土地から生んでくる無限の資源、これは農地といい、山林といい、これをうまく活用していきますならば無限の資源が生まれてくる。こういうものこそ、これからの日本経済の中では最も重要視していかなきゃならない、これを大いに活用していきたい、かように感じた次第でございます。
  328. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 建設省の責任者にお待ちいただいておりますから、若干順序は狂いますけれども、問題をひとつ具体、なまの問題を出してお答えをいただきたいと思っておるわけです。  きのう、実は現地へ行ってまいりました。これは自分の県のことですから申しにくいんですが、しかし、これは一つの単なる一局部的な現象じゃなくて、どこにも出る問題だと思います。と申し上げますのは、この二十七日に道路公団が、私の県の東半分の高速自動車道路の路線を発表したわけです。すると二十八日、上市町という町の宮川という部落ですが、あげてこの路線に対して反対運動が起こった。それはどういうことかというと、その宮川というところが、いよいよことしから機械を、田植え機あるいはトラクター、その他コンバイン、こういう機械も全部買ってしまたった、ことしから稼働するわけです。それで圃場整備、第二次構造改革、そういう路線、りっぱなところを構造改革をやったわけなんです。そこへいま、すっと、行く行くお馬が通るということで、路線が提示されたわけで、地元民のショックはきわめて大きい。たちどころに団結をして、反対するという意思表示を天下に明らかにした。そこで、私、きのう行ってきて様子を見ました。広い大きな圃場整備されたたんぼが斜めに切られておりますから、三角のたんぼが至るところに出てきているわけです。憤慨するのは無理からぬことなんです。これは事実なんです。そこで、私はこれ以上申しません。こうした情勢に対して、都市政策を担当する建設省が今後どう説得をするか。  それから農林大臣は、後ほど質問する土地改良計画その他についての質問との関連もあるわけですけれども、農民に対して今日までとにかく話をまとめてここまできて、圃場整備をやって、いよいよこれから田植えだというので、もうすでに野らに出て除草をやっておりました。こういう状況の中で農林大臣は、それはこうなんだと農民に説得して、勇気を持って農業を継続させるような説得力のあるお話をいただきたい。私に答弁するんじゃなくて、私にきのう訴えた農民に答えるようにしてください。そのまま私は向こうへ行って口移しをやります。だから、建設大臣並びに農林大臣、答弁をいただきたい。
  329. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 道路をつくる上におきましては慎重に対処しなければならない。いままでのように、ただ道路をつくればいいということであってはならないと私は考えておるわけでございまして、たとえて言えば、公共施設の問題やあるいは人員、あるいは病院、あるいは学校、あるいは住宅、公共施設等の問題等を、あるいは文化財等につきましても十分な配慮をしなければならないし、そうして騒音の問題や、あるいは交通安全の問題も考えなくちゃならぬ。その上になお一番大切なことは、そこを通るその地域住民の人のいわゆる対話というものがあって、そうして話し合いで円満に解決しなければならない、こういうようにも考えておりますし、また、耕地整理をされたたんぼ等につきましては、一生懸命に築き上げてきた耕地整理の区画も全部でき上がった、それを道路でいわゆる三角に切ってしまうというようなことにつきましても、十分な配慮をして話し合って、そうして、かんがい用水の問題等にも全部対処して、あとの農業の運営に困らないような対策をとり、それももちろん合意でなければやれない、こういうことで私は、あくまでも対話というものを尊重してやるべきだ、こんなように考えております。
  330. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 具体的な事例で御質問でございましたが、私はただいま承りまして、杉原委員が各省責任者にそれぞれお尋ねのように、建設省は建設省、農林省は農林省としての公共的な考え方、一体、農林省のほうからいえば、圃場整備もして、そしてここで農民の皆さんに食糧を供給してもらおう、農業の生産を営んでもらおう、これも当然公共的な目的の中に入ると思うのであります。そこへ道路の要請がきておる。この場合に一体、地域住民方々はそれをどう受けとめておるんだ、その道路ができることによってその地域の生活環境もよくなり、農業生産を営む上においてもいいんだ、こういうような見地で、ただいま建設大臣の言われましたように、いわゆる対話が行なわれて、理解がされて行なわれるとするならば、これはもう文句のないところでございまするが、どうもおあげになっておる事例には、何か地域住民の理解しかねるものを持っておるように承りましたので、この具体的な点については、また担当者のほうから必要に応じてお答えをするといたしまして、一体、この道路のほうが地元民として強い要請なのか、農業を継続していくほうが強い要請なのか、私は農林省の立場でございまして、国費も投じて圃場整備事業もやったとするならば、地域農民の立場でまず考えてみたいと思いまするが、しかし、建設大臣の言われましたように、これは関係者の間の腹蔵のない話し合いの必要があると、このように思います。
  331. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 表向きの話はそれでいいんですけれども、具体的に進めると、建設大臣、容易じゃありませんよ。あなたは話し合いですべて終わるように言われるけれども、話し合いの前提があり、方法があるわけで、そのことをいま追及しておっても時間がございませんので省略いたしますが、今後の動向について、行政指導の面で十分あたたかい配慮をいただきたい。私は、具体的にいまどうしろということは、ここで陳情しようとは思わない、そういうことで一応打ち切りたいと思います。  次に、土地改良計画について質問をするわけでありますが、農基法が三十六年に制定されたわけですが、その後土地改良というのは、いろいろな耕地整理その他の名前で、それに近いいままでの行政があったわけですけれども昭和三十六年以後の農基法の治政下において、農政下において、土地改良がポイント、ポイントでどういう進め方をし、ときには変化をしているわけです。その辺の成果と反省というものを簡単に概略的に御説明をいただきたい。それについては、後ほど若干の問題等を含めて質問いたします。
  332. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 四十一年より十年間、土地改良長期計画を策定して進めてまいってきておるわけでありますが、この場合は、農業機械化の基盤となる圃場条件の整備、また基幹かんがい排水施設の整備等の各種事業を進めてまいったわけでございます。そうして、これが本年度からの新長期計画に切りかえられるわけでございます。土地改良法を三十九年、四十七年に改正をいたしまして、関係事業の合理的な実施をはかるようつとめてまいったわけでございまするが、その間に、事業内容の充実のために、施工技術の高度化や新規事業の創設や補助率の引き上げや選択基準の緩和なども行なっております。要するに、農業基盤の整備は、生産性の高い農業を育成し、健全な農村を建設する上に最も基本的な課題の一つであると、こういう認識の上に、制度面や技術面で改善を要する問題については検討を行ないながらまいったと、こういう経緯でございます。
  333. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 何か、こうすらすらとよくいったような感じはしますけれども、そうじゃないと思います。いま、これから質問する若干の具体例について、的確な現状報告と、それに対する今後の見通しをお聞きしたい。  第一点は、八郎潟の干拓。数百億のばく大な国費を投入してやった八郎潟の干拓と、同時に、いま形成されている大潟村の現状、そしていま直面する問題点、今後の指針、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  334. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 八郎潟の干拓事業は——要領よく述べさしていただきます。農業近代化のための諸施策を結集いたしまして、生産性及び所得水準の高い農業経営の創設をしようと、こういうことで進めてまいってきたのでございまして、中央干拓地への入植については、四十二年から四次にわたって行ないまして、一戸当たり十五ヘクタールの田畑複合の営農方針でまいっております。そして、この四十八年に、さらに新規の入植者を入れる、こういうことで、これからの八郎潟の方針といたしましては、地域の特性に応じた農業生産を確立すると、いわば適地適作の考えを導入しながら田畑総合の経営をしよう、こういうことでございます。
  335. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 大臣、ちょっとね、八郎潟の場合、適地適作とか地域特性というと何も言うことないんですよ。これは一番いいことばかり全部並べてしまったんだからね。どうするんですか、どういう農業経営をやるんですか。一千戸を募集しておったわけでしょう。いまそうじゃないでしょう。これはあと第四次か五次かまた募集して、それで打ちどめになるのかどうか、その他、また新しい希望を持てるような何か構想があるのかどうか。それを述べていただかないと、いまのようなのでは、これは単なる官庁文書に終わりますよ。やっぱり大臣としての、これに対する今後の指針をばちっと出してくださいよ。
  336. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私は、ここでいろいろ事務当局から述べられたものを、いま要約して申し上げたのです。そうして、これからの方針としては、本年度さらに新規に入れよう、いままで御承知のように中止しておったわけですね。それで、これから入れて、田畑複合の経営をさせようと、それにはちょっとことばが足りませんでしたが、まあやはり八郎潟の実情というものは、八郎潟のそういう条件に適合する適地適作の農業経営がいいのではないかと、もっと露骨に言えば、八郎潟を中止した中には、一方において米の生産調整という事態もございまして、そこで足踏みしたきらいがございまするが、これからは田畑の複合経営でいくならば、いわゆる適地適作で八郎潟の干拓の事業を、これから計画の残りをひとつ完成させるにいいのではないかということで、ことしさらに入植をさせると、こういうことにしたわけでございます。
  337. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 次に、新潟県の農業試験場がやっている新潟市の嘉瀬の試験結果と、今後の対策と、こういう質問になるわけですが、しかしこれは、大潟村は大型機械、ここは中型機械、特徴があると思うのです。しかし日本の農業の将来を考えると、この二つは一つの大きな典型的なモデルになると私は思うのです。そういう意味で、実は残念ながら嘉瀬の場合は、昨年度で農民のほうからお手あげだという情報等が入ったりしておるわけですが、これに対して、試験の方向、その結果、四十八年度からどういうふうにこれは立ち上がって指導していくのか、これを簡単にしていただきたい。この特徴をはっきりしてもらいたいと思います。大潟村とは非常に対照的ですから。つぶすならつぶすと言ってくださいよ。
  338. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは、四十五年から四十七年度までの経緯につきましては、必要に応じてお答えをするとして、お尋ねの四十八年度からのことでございますが、これは継続して行なうことに決定をいたしております。この計画の目的は、直まき体系の初期過程の降雨対策試験を実施することにしておる。これは天候不順年においても可能な初期作業の方針を究明し、完全直まき技術の安定性を高めることを目的として、いま申し上げたような試験を今後三年行なう、国もこれに助成をするということにきめておりますので、お答えを申し上げておきたいと思います。
  339. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 今後とも続けてやるわけですが、十七県の農民はいやだと言っているわけですね。だから、問題は必ず起こります。農林省の指導行政がかなり展望のきいた、しっかりしたものじゃないと、これはたいへんなことになるのじゃないか。私は実は期待したいのです。この実験が成功することを期待したい。  特に、中型機械による農業の取り組みについて大きな期待を持っているわけですが、そういう報告を受けて実はがっかりしているわけですが、農林大臣がいまおっしゃったように、八郎潟、の嘉瀬、それぞれのパイロット、あるいは実験、試験地については精力的な取り組みをいただきたい。  第三点として、この間、参議院の農林水産委員会で北淡路の開拓建設の実態を見に行ったわけですが、これは現在の姿がどうかというよりも、問題は、せっかく線引きをして、ミカンを植えて、たくさんミカンをつくろうというようなことでやった仕事が、民間デベロッパー等が入って別荘地をつくるとかなんとかいって、買い占めに入っているという事実が明らかになっている。   〔委員長退席、理事米田正文君着席〕 そこで、これについての実態と、それから問題点と、今後の方針ですね。なかんずく買い上げられた土地をどうするか、虫食いになったところをどう埋めるか、このことについて明確な答弁をいただきたいと思います。
  340. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 詳しい資料がございませんので、後ほど構造改善局長から、必要に応じて補足をさせますが、現在の実情といたしましては、この委員会でもお答えを申し上げましたが、かりに、土地改良事業に該当しておるところを阪神地区のどなたかが順次買っておると、こういたしましても、これを何か宅地にでも利用しようということになりますれば、いま申し上げたような事業を遂行中のものにつきましては、これはもう農地法の規制がかかります。ですから、転用の届け出などが出されますれば、その場合に厳正に規制をしてまいりたい。また、この場合、その地域の皆さん方の合意の上で行なったのでありまするから、そこに参りました方々が、おれは反対だと申しましても、前所有者の権利義務を継承するのでございまするから、これまた、そのようなふうにはまいらないのであります。したがって、計画遂行の上にいろいろ支障はもちろんありましょう。そういうことを知らずに買ったとかいうようなことで、ごねる向きもありましょうけれども、しかし、農林省のほうからの行政指導の上においては、まず欠けるところがないわけであります。ただ、現地のほうで、多少計画を変えてまいりまするならば、それはそれなりの検討をしなければなりませんが、原則論を申し上げますると、いま申し上げたとおりでございます。
  341. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 局長、来ていますか。農地法でかけると言っているのですが、いいですか。
  342. 小沼勇

    政府委員(小沼勇君) お答え申し上げます。  工事で造成をしておりますけれども、造成以前の段階は農地法はかかりません。しかし、先ほど大臣が申しましたように、土地改良法に基づきます、百十三条でございますが、それによって権利義務を承継するということになっております。その点では拘束を受けることになるわけです。  それから、工事が完了した部分については植栽が可能でございますが、そこは農地ということになりますので、地目のいかんにかかわらず農地転用の規制がかかるということでございます。
  343. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 なかなか、法律を言われると、ぼくらアレルギーでちょっと困るんですが、どうしますか。いま買ってしまったところ、どうします。別荘をつくるのを黙って見ているよりほかないんじゃないですか。どういう方法をとります。はっきり言ってください。
  344. 小沼勇

    政府委員(小沼勇君) 現在、県並びに市町村も含めまして、いろいろの指導をやっておりますが、その一つは買い戻しでございます。買い戻しについても、現在若干進んでおります。それから持っている人が農業生産法人に加入するという、農業生産法人をつくって、そこでの営農に参加するというやり方を進めております。また、どうしてもむずかしい地域で、全体の事業に差しつかえないという地域でございましたら、これについては、地区除外という方法もございますが、これは計画変更を要するわけでございまして、これについても検討を進めております。また、どうしてもという場合に、代替地の問題がございます。従来もそういうことがないわけではございませんけれども、もしそこを別に使いたいという場合に、代替地を考えてやるということもくふうする余地があろうかと思います。  なお、全体といたしまして、今後、現在ダム工事等やっておりますけれども、何とかこの地域を完成させたいということで努力をしておりますし、県並びに市町村もたいへん熱心に、現在それを進めているということで、また今後、どうしても売ってもらっては困るということでございますし、そういう意味では、従来から二回も同意を取って進めてきたわけでございますけれども、御承知のように、土地改良法の拘束もございますし、それでも周知徹底されないという懸念がございますので、看板を大体十カ所ぐらい立てておりますが、ごらんになったと思いますけれども、そこで、これは国営の農用地開発事業をやっている地区であるということも住民にわかってもらい、みだりによそから買いに入るということのないようにという努力をしているところでございます。
  345. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 現地を見ながら痛切に感じたことは、農林省が昨年の十月発表した農産物需給の展望と生産目標の試案というものに対する権威であります。時たまたま十アールに二百五十本、十年後にはそれは百二十五本、二十年後ですか、七十五本にするという計画等から生み出されてくる、カン。全国的には、去年は三百三十万トンで、もてあましたのでありますけれども、この試算によりますと、四百三十万トンの将来を見こしているわけです。これは、人口増、あるいは需要増、いろいろの観点からこの数字をはじき出しているのか私ばわかりません。それは後ほど聞きます。ただ、そうした作業が、農林省の指導のもとに、淡路の実態を見て、進んでいるということを確認してきました。だから、この三百三十万で、もてあました日本、それに対して、また農産物の自由化で反対するわれわれ、いろいろ問題が錯綜しております。そこに加えて、四百三十万トンのミカンをつくる、どうして食べるのか。この辺の問題を、淡路のあの丘の上に立ちながらぼくは非常に悩んだんです、ハムレットのごとく。いかがですか、答弁をください。
  346. 小沼勇

    政府委員(小沼勇君) お答え申し上げます。  ミカンにつきまして、過剰の問題が、ちょうど気象条件と表年ということで、非常に出てまいったことは御承知のとおりでございますが、それぞれ国営事業でやっている地域がございます。そういう地域につきまして、さてどうするかということでございますが、ミカンを植えたいという農家もございますし、また、ミカンじゃなしに、この際、梅を植えるとか、カキを植えるとか、いろいろほかの作物を植えたいという農家もございます。この点については、それぞれの地域によって相違がございますけれども、北淡路の場合でも、全部が何が何でもミカンでなければならないというふうには考えておりませんで、これについて現地の営農指導員等もおりますが、今後のミカン需要とにらみ合わせながら、それぞれの地区の小さい部分でございますけれども、全体の絶対量の中から見ますと小さい部分でございますけれども、やはりその地域に合った作物で、ミカン以外にあれば、それは永年作物を導入するということをくふうしていくべきではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  347. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 次に、先ほどちらっと触れましたけれども、山形あるいは準津、琵琶湖湖畔の汚染田の問題を提起いたしましたが、これはそこだけでありません。全国相当数があると思うのですが、これは環境庁の立場でなくて、農林省の立場で、この汚染田を今後ともどういう指導で、技術面の指導その他を通じて、これを美田に復元するかということについての見通しなり方法、ビジョンを明らかにしていただきたいと思います。
  348. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御指摘のとおりに、重金属類——カドミウム、銅、亜鉛、鉛、砒素による土壌汚染の状況は、全国の概況調査によりまして約三万七千ヘクタール程度と見られております。このうち、カドミウムについては、細密な玄米及び土壌の調査を実施した結果、二十八地域、汚染推定面績約七百三十ヘクタールにおいてカドミウム一PPM以上を含む玄米が検出されたわけであります。  そこで、いまの対策でございまするが、農林省には農用地の土壌の汚染防止等に関する法律がございまして、これら汚染地域は、その汚染対策地域として指定をしておるわけでございます。現在八地域ほど指定をいたしておりまするが、福島県の日曹金属会津製錬所周辺とか、碓氷川流城地域とか、あるいは兵庫県の生野鉱山周辺地域であるとか、秋田県の杉沢、柳沢地域とかございます。これは必要に応じて資料を差し上げます。  そういうふうに指定をいたしまして、特に兵庫県の生野鉱山周辺地域、群馬県碓氷川流域地域につきましては、排土、客土等を内容とする農用地土壌汚染対策計画が策定されまして、国の助成によって昭和四十七年度の県営土地改良事業として改善対策事業に着手をしておるわけでございまするが、このような例に基づきまして、他の指定された地域、あるいは今後指定される地域についての対策を講じてまいりたい。  概略申し上げた次第であります。
  349. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 次は、休耕田の現状とその復元についてでありますが、農林省は最近休耕田の実態をお調べになったと思います。総括して二割ぐらいがおそらく作付がむずかしいだろうといわれているわけで、それは七万ヘクタールだと、こういうふうなことも報道されているわけですが、もう少し詳しく、休耕田の実態はいまどうなっているんだ、望むらくは、いよいよ復元して稲作なりそれぞれに使おうという場合には、作付可能かどうか、そうした面ではどういう指導行政を今後やろうとしているのか、こうした点を概略御説明をいただきたいと思います。
  350. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 伊藤局長から……。
  351. 伊藤俊三

    政府委員(伊藤俊三君) お答え申し上げます。  休耕田の面積は、四十五年度が二十六万一千町歩でございます。四十六年度が二十九万四千町歩、四十七年度が二十八万七千町歩、そういうことになっております。いままでは転作が逐次伸びてまいってきております。そういったことで、生産調整の中でのウエートは逐次減ってきているということは先生御承知のとおりであろうかと思います。四十八年度におきましては、生産調整の水田面積四十九万五千町歩のうち四十万七千町歩の転作ということを目標といたしまして、転作の促進ということに努力をいたしておりますが、その場合には、大体休耕は八万二千ヘクタール程度と考えております。私どもとしては、大いに休耕ということをやめて、転作ということに努力をいたしておるわけでございます。  で、休耕田の大部分といいますか、先ほど先生御指摘のように、約八割程度はそのままで耕作可能か、あるいは若干手を加えればやれるというような状況で管理をされておるわけでございます。もちろん二割程度は通常の手段では復旧できないような、これは都市の近郊でございますとか、あるいは谷地田だとか、そういうようなところでは、まあかなり、何といいますか、管理が粗雑になっておるというようなところがあろうかと思っておるわけでございます。
  352. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いままでは土地改良計画の問題について、特に若干予想されるいろいろな問題点を明らかにしていただいたわけですが、最後に、時間がございませんので、改良計画のやはり根本的基調になるものは何か、幾つかあります。しかし私は二つだけ大臣から明らかにしてほしいと思います。  一つは、三月十四日のこの委員会において、わが党の質問に立たれた足鹿先輩が食管制度の問題について大臣に質問をした。総理大臣答えていわく、食管制度の根幹は守ると言明いたしました。だが私は、足鹿氏はそのあと質問しておらないので——ふしぎに思うのですが、食管制度の根幹とは何か。これは総理大臣とあなたは一体でしょうから、まず農林大臣であるあなたは、食管制度の根幹は何か、しかもその根幹がいま守られているかどうか、このことを明確に答弁いただきたい。  第二点は、主食の自給率をどう押えるかということですが、先般、農水では農林大臣は七五%、そしてまた列島改造論では、明確に、繰り返し私読んでみたが、八〇%であります。この辺の食い違いをどう理解されているのか、実際は今後ともやる気がどこにあるのか、めどはどこにあるのか、この点を明確にしていただいて、私の質問を終わります。
  353. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 総理のお答えのことをいまちょっと私十分記憶をいたしておりませんが、私が繰り返し申し上げておりましたのは、食管制度の改正について、前足立農林大臣は改正の意思を明らかにされておったようでございまするが、私は、就任して、国際的な食糧需給の逼迫の状況からして、いま改正ということを口にすることによりましていろいろ問題が起きるよりも、いまは改正はいたしませんと、しかし、食糧管理制度の研究会があって、その研究をしておることは事実でございます。まあ、いい点があれば、運営面で取り入れることがあれば、それは考えてもいいかもしれませんが、いま食管制度をいじるということになると、そのほうのことが影響が大きいので、私は考えませんということを申し上げてまいったわけであります。  それから、いまの自給率の点、確かに総理は列島改造の書籍の中で八〇%ということを書かれております。しかしこれは、よく読んでみますると、主たる食糧の自給率を八〇%にするということでございまして、私の申し上げておる自給率は食糧の総合自給率で、十年先に、昨年十月の試案からまいりますると、七三ないし七七の総合自給率を確保したいと、こういうのをその中間の七五という表現で行なってまいっておりまするので、特に総理の意向と私の申しておることが相反するのではないと、このように認識をしております。
  354. 米田正文

    ○理事(米田正文君) これにて杉原君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次回は明日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時九分散会