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国務大臣(
愛知揆一君) ただいまの御観察は、ニュアンスの相違はございますけれ
ども、問題の所在あるいはこれからの
日本として対処すべきところを、方向を御指摘になっておると、私も同感される点が多いように思います。
簡単にまず申し上げますと、最近の
国際通貨不安が相次いで起こりましたことに対して、こういうことが何としても再び起こらないように、そのためには、ともすると分極化する傾向もないではないので、
一つの
世界——
世界全体がまとまって、お互いに助け合い、知恵を出し合って
国際通貨制度を確立しなければならない、その基本的な
考え方のもとに、当面の通貨不安を退治していきたい、この基本的な
考え方については、私は完全に合意せられておると思いますし、そのことがコミュニケの上にも盛られておると思います。
そして、具体的な問題になってまいりますと、恒久的な通貨制度を確立するためには、たとえばSDRというものにもつと積極的な、建設的な期待をかけて、これを魅力のあるものにしたいと。これは実はかねがね二十カ国
委員会でも、
日本としても非常に強く主張しておったところでございますが、これが
考え方として合意がされておるわけでございます。同時に、アメリカのドルに対しましては、特に
日本の立場からいえば、さしあたり信認を回復していかなければならない。これに対しては、アメリカとしてもできるだけの
努力をしてもらわなければならない。そこで
交換性回復の問題というものが大きな問題として、先ほど報告申し上げました五つの項目の中の
一つにも大きく取り上げられておるわけでございます。
それから、よく世上の話にもなりますが、いわゆるユーロダラーと呼ばれるような式の国際的な、
投機的な資金の動き、これを規制をしなければならないということ、こういうことが中心であり、かつ、
各国は、それぞれ
国内の
経済政策においても、
インフレを防止することについてあらゆる
努力を集中すべきであるということも確認されているわけでございます。そして、国際的な合意によって確立しなければならない通貨制度の確立についての問題については、具体的な方法を取り上げて、そうして、これについては早急に、代理
会議と呼ばれておりますが、いわば
各国の次官クラスの共同の検討を早急に開始をする、そうして、おそくも九月に予定されておりますナイロビの
IMF次期総会には、
各国が合意し得るような対策といいますか、方策を確立しよう、こういうことを合意の上で、できるならば、それにもまた先立って七月の末ぐらいに、もう一度
関係国
蔵相会議を開き得るように、ひとつ代理
会議に対して強力に指示をし、また、それぞれの国が、それぞれ名案を持ち寄って、いわばスミソニアン体制にかわる、そして、まあこれは常識的に申しますと、ブレトン・ウッズ体制というような、
一つの
世界を盛り上げていくという
基礎観念のもとに、そういう具体的な対策を新しく建設しようと、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、二十カ国
委員会のコミュニケは、基本的な合意をまとめたという点については
成果はございますが、しかし、やや抽象的に流れているということは御批判のとおりでございますから、これを具体的に確立するということがこれからの残された問題であって、これに対して
日本としても早急な
努力を傾倒しなければならない、こういう
状況であると思います。
それから、通商問題との
関係でございますが、今回のこの多数国間の
会議におきましてはもちろんでございますけれ
ども、通商と通貨は車の両輪のようなものである。この
認識はすべて一致しているわけでございますが、何としても通貨問題が今日のところでは非常に緊急な問題で、これを多数
関係国の間で合意を確立しようというところに精力的な
努力や話し合いが行なわれましたものでありますから、この二十カ国
委員会として通商問題についてこれからどうするというようなところの協議とか、したがって合意とかは特に確立されたわけではございません。
ところで、それから御
質疑のありました点は、
日本の場合は日米の問題が非常に大切である、この日米の通商問題ということになりますと、これはまた非常に大きな問題でございますけれ
ども、今回の
会議の場において、あるいはこの
会議の
機会において、特に日米間で通商問題について相談をしたということがございませんし、また、アメリカ側からこの
会議の
機会を利用して、
日本側に対してどうしてほしいというようなことを特に提起された事実もございませんし、こちらも今回の
目的がそれ以外にあったわけでございますから、通商
問題等について格別の話し合いというものは行なわれませんでした。
以上、概略お答え申し上げます。