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1973-03-27 第71回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十七日(火曜日)    午後一時五分開会     —————————————    委員の異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      河口 陽一君     木村 睦男君      吉田忠三郎君     上田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 山内 一郎君                 小林  武君                 小柳  勇君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 安永 英雄君                 吉田忠三郎君                 内田 善利君                 塩出 啓典君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 加藤  進君                 星野  力君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大蔵大臣臨時代        理        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        労 働 大 臣  加藤常太郎君        建 設 大 臣  金丸  信君        自 治 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  増原 恵吉君    政府委員        首都圏整備委員        会事務局長    小林 忠雄君        経済企画政務次        官        橋口  隆君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 秀敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        文部政務次官   河野 洋平君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林大臣官房技        術審議官     遠藤 寛二君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省農林経済        局長       内村 良英君        農林省構造改善        局長       小沼  勇君        農林省農蚕園芸        局長       伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        農林水産技術会        議事務局長    中澤 三郎君        食糧庁長官    中野 和仁君        林野庁長官    福田 省一君        通商産業省化学        工業局長     齋藤 太一君        工業技術院長   太田 暢人君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  住田 正二君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       道正 邦彦君        労働省職業安定        局審議官     中原  晁君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省住宅局長  沢田 光英君        自治大臣官房審        議官       山下  稔君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより、昨日に引き続き、内田君の質疑を続行いたします。内田善利君。
  3. 内田善利

    内田善利君 理事会で結論が出ておりますけれども、その問題には触れないで、一言、二階堂官房長官にお聞きしたいと思いますが、政府見解として、現在南ベトナム政府臨時革命政府などの間で話し合いが続けられている最中であり、その一方だけが、復興のためにとして来日申請しても、これは事実上困難であり、立場を変えて南ベトナム政府代表が申請してきても原則は同じだと、こういうふうに言っておられますが、その真意をお伺いしたいんですが。
  4. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 先日来問題になっておりまする方針につきましては、本委員会において法務大臣がお述べになったとおりでございます。私が、いまお尋ねになりましたことは、きのうの前者会見におきまして法眼次官が言った真意はどういうところにあるのかと、いろいろ聞かれますから、私は、会って話を聞いてみなけりゃわかりませんが、いろいろ聞かれますと、こういうことなども考えられて法眼次官が発言されたのではなかろうかということを、私がそんたくして申し上げたのであって、私が、法眼次官が言ったことについて、まあ申し上げればこういうことを考えて言われたのじゃなかろうかということを申し述べたわけでございまして、私の真意は、昨日予算委員会理事会において申し上げたとおりでございます。
  5. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連。  いまの官房長官答弁ではっきりしてきたんですが、これはいまの答弁の中だけだと、きのうの会見で言ったことが、新聞記事だけではあれですけれども、否定したことになるわけです。はっきりと、田中法務大臣の本委員会での発言は、きのうも追認なさいましたけれども、それは変わっていないのか、こう理解していいのかということが一つ。  それからいま一つは、いまのこのままですと、先ほどの質問の趣意からいきますと、南ベトナム政府並びに南の臨時革命政府、ともに、復興のための話し合いが行なわれている間は入国を認めないというふうにとられたので、どちらもいけないというふうにおとりになっているかどうか。それとも、ただ、法眼事務次官が言ったのは、こういうことだろうという推測なのか、そこのところだけ聞かしていただきたい。
  6. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 田中法務大臣が、本委員会において述べられたことは、変わりはございません。そのとおりでございます。  それから後段のことにつきましては、まあ、法眼次官がどういう真意で言ったのか、どうなんだと聞かれますから、私の推測にすぎません。
  7. 内田善利

    内田善利君 それでは昨日の問題に触れますが、興人グルタチオン並びにCDPコリン医薬品としてつくっておるわけですね。
  8. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 昨日は、資料の調査が問に合いませんで、御迷惑をかけました点をおわび申し上げたいと思います。  ただいまの御質問グルタチオンCDPコリンでございますが、資料を調査いたしました結果、廃液培養液とするトルラ酵母そのもの医薬品としておりますのは、きのう御答弁申し上げましたトータミンだけでございますけれども、いま御指摘二つ医薬品は、いずれもトルラ酵母中の特定成分を抽出いたしまして、それを原料として製造されておる医薬品で、御質問のとおり、興人製造が承認されております。  なお、その安全性の問題につきましては、トルラ酵母自体も、昨日申し上げましたように、問題のあったことはないわけでございますけれどもグルタチオンあるいはCDPコリン、こういったものは、御案内のように、トルラ酵母中の特定成分を抽出して原料としておる高純度のものでございますので、安全性につきましては問題がないものというふうに考えております。
  9. 内田善利

    内田善利君 安全性はテストしましたか。
  10. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 承認の段階におきまして、たとえばCDPコリンにつきましては、急性毒性あるいは亜急性毒性慢性毒性催奇形性等につきまして詳細な資料提出を求めまして、薬事審議会において審査をいたしております。  それから、グルダチオンにつきましては、これは昭和二十年代から引き続き他の社においでも発売されておる医薬品で、人体内にもあるものでございますが、その後の効能の追加等の機会におきまして、詳細な臨床データ提出を求めまして、その臨床データによりまして安全性の確認を行なっております。
  11. 内田善利

    内田善利君 三共ゾーキトータミンを中止した理由はどうですか。
  12. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 三共ゾーキからの報告によりますと、昨日もお答え申し上げましたように、廃液たん白というような名称で多少世間的に問題になりました時期でもあり、また、同社の売り上げからいたしましても、そう大きな量ではないということで、企業のイメージを尊重するという立場から自発的に発売を中止した、そのような報告でございます。
  13. 内田善利

    内田善利君 三共ゾーキは三・四ベンツピレン分析しておらぬので、これに一・〇PPB内外の三・四ベンツピレンがあるので、これは疑わしいので、分析のために中止したと、こう言っているんですが、どうですか。
  14. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 私どものほうに三共ゾーキから報告が参りましたのは、いま申し上げましたような商業上の理由から中止をいたしたということでございますが、いま先生指摘の三・四ベンツピレンの問題につきましては、私どもといたしましても、さらにこういうものの問題、慎重を期する必要がございますので、昨日申し上げましたように、国立衛生試験所におきまして、同じものを取り寄せまして、現在の時点で分析を行なっておるところでございます。
  15. 内田善利

    内田善利君 石油たん白廃液たん白の三・四ベンツピレンの比較はどうですか。
  16. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) いまお尋ねトルラ酵母、いわゆる廃液たん白につきましての三・四ベンツピレン分析は、現在、申し上げましたように、衛生試験所で行なっておる段階でございますので、その結果を待ちませんと、ちょっと比較することは困難であろうかと存じます。
  17. 内田善利

    内田善利君 それじゃ、全然検査しないで、いま使われておるわけですね。
  18. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 廃液栄養源といたしますトルラ酵母自体医薬品は、昨日も申し上げましたとおり、現在は発売を中止しておりまして、使われていないのでございます。
  19. 内田善利

    内田善利君 飼料としてはどうですか。
  20. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げます。  パルプ廃液からのトルラ酵母による飼料につきましては、四十六年に、農林省といたしまして企業を指導いたしまして分析試験結果が出たところによりますと、三・四ベンツピレンは〇・二九から一・一PPBということに相なっておりますが、これは企業試験でございますので、私どものほうといたしましては、肥飼料検査所におきまして、東京及び福岡肥飼料検査所におきまして、分析試験並びに動物実験を、安全性について慎重を期するために、現在行なっておるところでございます。
  21. 内田善利

    内田善利君 昭和四十六年のその分析データをあげていただきたいのですが。
  22. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) ただいま、その結果だけを申し上げさせていただきますと、三・四ベンツピレンは〇・二九から一・一PPBでございまして、砒素が〇・二から二・六PPM、鉛が〇・七から一・九PPMカビ毒——アフラトキシンの系統でございますが、検出されていないということでございまして、御必要がございますれば、さらに詳細な資料をお手元に整理いたしまして差し上げたいと思います。
  23. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 関連
  24. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 一問。
  25. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの分析結果のことについて一問ということですが、問題点二つあります。  一つは、この分析結果の出る実験中身でありますけれども、いただきました資料によりますと、ウイスター系ラットを雄と雌をおのおの十一頭ずつで実験をされております。それから飼育期間は、わずか十三週間です。それから病理組織診断はヘマトキシリン・エオジンと、それからパスと二つしかやっておりません。それから肝臓とか、いろいろ調べてありますが、あの病理組織分析から見ますと非常にずさんである。まず、ウイスター系ラットしか使ってない。これが問題。もっとやらなくちゃいけないと思います。それから十三週間では、あまりにも観測期間が少な過ぎます。それから今度は、病理組織中身でありますけれども、非常にその辺の記載もずさんであります。こういうずさんな実験で、その結果で、はたしてこれは発ガン性は絶対ないと断定をするには非常にいいかげんである。まず、この実験がずさんでは絶対ないという根拠をあかしてもらいたい。私はずさんと断定をしたいと思います。  それからもう一つの問題は、いまベンツピレンだけが問題になっておりますが、この分析結果によりますと、かなり重金属があります。一つ、十條製紙のほうでは砒素が二・六、鉛が〇・七、カドミウムが二・二、銅が五・八、亜鉛が六・六、マンガンが二六・一。それから興人製飼料用酵母のほうは、砒素が〇・二、鉛が〇・八、カドミウム〇・五、銅が七・六、亜鉛が六・六、マンガン一〇・四一それから山陽国策パルプのほうは、砒素が一・三、鉛が一・九、カドミウムが一・三、銅が四・七、亜鉛が七・〇、マンガン二六・〇、こういう重金属がかなり出ております。これは牛や豚に食わす飼料だからかまわぬとおっしゃるかもしれませんが、食料品についてはカドミウムの米の一・〇PPMしかきまっておりませんが、飲料水でいきますと、砒素は〇・〇五PPMカドミウムが〇・〇一、銅が一・〇、亜鉛が一・〇、鉛が〇・一PPM、これが一応基準になっております。こういう点から見ますと、特に問題であるカドミウムあるいは銅、これは非常に多いわけです。特にカドミウムは二・二PPM入っておると、こういうことになりますと、もちろん動物が食べるものであるから直接人体ということにはならないかと思いますけれども、非常に問題である。どうしてこのパルプ工場から、こういうパルプ酵母からできたものにこんなに重金属がたくさん入ってくるのか、その辺の理由は、きちんと厚生省のほうとしてはチェックをされ、そうして、これでもだいじょうぶと、こういう結果を出されておるのかどうか、その二点をお伺いしたいと思います。
  26. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、四十六年に企業を指導いたしまして行なった試験については、ややその点におきまして、飼育期間その他問題があったことは確かでございます。したがいまして、これにつきましては、われわれは、約十数年これを使用されておりますし、世界各国におきましても相当な国におきまして製造販売されておりますので、また、昭和三十九年には東京医科大学等実験もございますので、安全性等については問題はないと思っておりますが、企業試験等について、なお不十分なところがあるということで、ただいま、先ほどお話し申し上げましたように、東京及び福岡肥飼料検査所におきまして、分析試験並びに動物飼育実験を、急性亜急性及び慢性について十二分にやりまして、データを得たいというふうに考えておるわけでございます。  なお、重金属等の問題につきましては、これはいろいろ御指摘の点もございますけれども食品添加物その他、各もろもろの物質に関する成分度合い等については、いかなるものをもって多いか少ないかというような点については、なおこの点については、われわれとしては、専門の方面と連絡をとって検討したいというふうに考えております。
  27. 内田善利

    内田善利君 この三つの企業がいつから製造を始めたのか。
  28. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げますが、最も早い企業昭和三十一年ごろからでございます。
  29. 内田善利

    内田善利君 三十一年ごろからつくられておるのが、四十六年になって安全性をテストしておると。それまでは野放しに使われておったわけですね。
  30. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げますが、私どもは、繰り返すようでございますが、廃液酵母についての安全性については現在問題はないと思っておりますが、従来は、飼料につきましては、一定の製造の届け出その他がございましたが、家畜栄養の視点でその品質の取り締まりなり指導が行なわれておりましたが、特に飼料畜産物を通じます人体安全性等につきましては、この四十年以降の諸般の要請という点から検討を始めたわけでございます。
  31. 内田善利

    内田善利君 安全性は問題ないという、さっきの答弁でしたけれども砒素が二・六PPMカドミウムが二・二PPMマンガンに至っては二六・一PPM、それからセレンも〇・三以下と書いありますが、これも問題だと私は思うんですがこの辺の見解はどうですか。
  32. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 先ほどお答え申し上げましたように、従来、鉛、砒素その他について許容基準がございます食品添加物等につきましても、その食品に応じましての許容限度にはいろいろ幅があるようでございまして、この飼料等について、特に多いかどうかということについては、なお検討いたしたいと思うわけでございます。  なお、セレン等お話がございましたが、〇・三PPM以下ということに相なっておりますが、私どもが承知しております文献等では、五ないし一〇PPMを投与することによって中毒症状を起こすというような報告も受けております。
  33. 内田善利

    内田善利君 まだセレンについては環境基準も何もないわけですが、カドミウムについては環境基準もありますし、排出基準もあるわけですが、環境基準カドミウム二・二ははるかにオーバーしているわけですね、この点はいかがですか。水銀も同じ。
  34. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 御指摘の、飼料を通じます畜産物を通しての濃縮と申しますか蓄積、カドミウムについてはどうであるかという点については、われわれ遺憾ながら実験等の結果を持っておりませんので、この点については、なお安全性の問題の一環といたしまして、先ほど申し上げました実験等とあわせまして、やらせていただきたいと思います。
  35. 内田善利

    内田善利君 全然実験等データを持っていないということですがね。労働省衛生研究所もやっておりますし、あなた方が持ってきた資料日本科学飼料協会データなんです、持ってきてもらったデータによって私は言っているわけです。
  36. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げますが、廃液たん白酵母たん白原料として配合飼料に全体の二%程度しか配合されないわけでございまして、したがって、その成分等につきましても、さらにその含有量が具体的に家畜の体内に入る場合には少なくなるというふうに思っておるわけでございますが、繰り返すようでございますが、この点についての検討をさらに進めさせていただきたいと思います。
  37. 内田善利

    内田善利君 年間パルプたん白製造量から配合飼料を比べると非常に少ないわけですね。この辺はもう御存じだと思いますが、その少ないものがはたして妥当なのかどうかと、こういう点ですが、いかがですか。
  38. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お話のとおり、配合飼料年間千八百万トンでございましてその中の、その量から見ますと、この酵母自体について非常に少ない数量であるから、これについての取り扱い検討したらどうだというお話でございますが、いままでの経緯なり——経緯と申しますのは、各種の安全性について、その不十分さについては御指摘を受けたものもございますけれども、国といたしましても、ただいま国の機関において責任ある実験を行なっているわけでございまして、それらの結果を十分見まして、安全性についての検討をいたした上で、それらについて今後の取り扱いを考えていきたいというように思っております。
  39. 内田善利

    内田善利君 どうもよくわからないのですがね、石油たん白飼料の場合よりも、いまの廃液たん白のほうが、三・四ベンツピレンにしても、発ガン物質が二倍も含まれているということがわかっているわけですね。それでもなおかつ、いまのような答弁が出るわけですが、生産量はこの配合飼料の量から比べると微々たるものだと、こういうことに対して、もう少し配慮ができないかと、こう聞いているわけです。
  40. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 先生ただいまベンツピレンにつきまして御指摘がございましたが、ベンツピレンについては、先生のほうが御案内かと思いますが、各種食品中に、この酵母飼料以上に、通常われわれが食する自然界の食品についても、その条件によって、あるわけでございまして、その点について、どの程度がその許容限度であるかというような点については一がいに結論が出ないかと思っておるわけでございます。
  41. 内田善利

    内田善利君 厚生省、いかがですか、この三・四ベンツピレン飼料に含まれておるということ、それが人体に濃縮して入ってくるおそれはないわけですか。
  42. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 通常の場合は、食品からはベンツピレンは出ませんが、ただ、肉など焼いたり、あるいは薫製、そういったように処理した場合には、ベンツピレンが一PPBのオーダーぐらいでもって出てくるという事実はございます。
  43. 内田善利

    内田善利君 そういうのは、どこでテストしているわけですか。
  44. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 国立衛生試験所を中心としてやっております。
  45. 内田善利

    内田善利君 国立衛生試験所を中心としてテストしておるならば、その安全性について、もう少しオープンで発表していただいたらどうなんでしょう。
  46. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) いままでも別に隠しておるということではございませんで、研究の発表などにはしておるわけでございますが、一PPBのオーダーでございますと、世界的にも、この量ですと害はないというふうに、通説になっておるのでございます。
  47. 内田善利

    内田善利君 私は、きのう三木副総理から言われましたように、人間生命の尊重という立場で、いま問題になっておりますので、これに対して、いままでテストもなし、公の機関でチェックしたこともなしに廃液たん白飼料が使われておる、あるいはまた薬品まで使われておるということから、これで心配ないのかどうかということを、きのうからお聞きしておるわけです。
  48. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 飼料につきましては、繰り返すようでございますが、第一次大戦後から西欧諸国において酵母飼料企業化されまして、第二次大戦後は、さらに世界各国におきまして、十カ国ないし十二カ国等で製造が行なわれておりますし、相当長期間の使用によって、特にいままで問題という点については生じておらなかったわけでございますし、また、これらの飼料安全性が、この飼料について安全性が起こる以前に、昭和三十九年、東京医科大学におきまして、マウス、ラット等について実験の結果、無害であるというようなデータもわれわれ承知しておりますので、現在のところ、その安全性については特に問題はないというふうに承知しておるわけでございますが、いろいろな国民的な不安というような問題もございますので、重ねて申し上げますように、国の試験、研究、検査機関において公の立場で厳密な実験をただいま行なっておるところでございます。
  49. 内田善利

    内田善利君 もう少し人間の健康という、生命尊重ということから、厚生省も、また飼料の監督官庁である農林省のほうでも、もう少し一体となって——石油たん白のときも責任がどこにあるのかわからなかったわけですが、この飼料たん白についても、廃液たん白についても、やはりその責任を明確にしていただきたいと思うのですが、その点、厚生大臣、いかがでしょうか。
  50. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 廃液たん白も、牛や豚が食べれば人間に影響があるということは当然でございまして、私ども安全については疑ってはいなかったわけでございますが、今後とも健康を守るということが厚生省の一般的な大事な仕事でございます。生命尊重、健康保持というふうな観点から、今後とも農林省当局と十分な緊密な連絡をとりまして、いやしくも国民に不安を与えないように、今後とも努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  51. 内田善利

    内田善利君 水俣判決から、日本全国は、やはり水銀汚染の問題、農薬の問題、あるいは燐の関係等で、日本全国土が総汚染されている、一億総水俣病になりかねないと、こういうときにあるわけですが、特に農薬についてもきょうは質問したかったわけですけれども、農薬もまだ野放しで残留しておる。残留農薬の問題一あるいは土壌汚染の問題、いろいろお聞きしたがったわけでありますが、時間がありませんので終わりますけれども、これはほんの私たちの調査の一例でありますが、ちょっとこの間問題にしたわけですけれども、ビールのにがみをつくるホップですけれども、ホップにボルドー液、まっ白になるくらいにボルドー液がかかるわけですが、このボルドー液の中の銅が、やはり食品である、また国民がもう常用しているビールにも入っているのではないかといって調査を始めたわけですが……。
  52. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 内田君、時間が参りました。
  53. 内田善利

    内田善利君 これは名前をあげましてデータをあげますが、サッポロビールが〇・〇六PPM銅、キリンビールが〇・〇六、アサヒビールが〇・〇四、サントリービールの純生が〇・〇一、エビスビールが〇・〇四、かん入りのキリンビールが〇・〇四、アサヒビールが〇・〇二と、このように銅が入ってきているわけですが、こういったことも、やはり残留農薬という面から心がけて注意していかなければならない問題じゃないかと思いますが、この点、厚生省にお聞きして質問を終わりたいと思います。
  54. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) ビール中に銅が検出されるということは、ただいま内田先生が御指摘のとおりでございますが、この原因は、おそらくは、使用するボルドー液、消毒に使用するボルドー液に起因するのではないかと思われます。硫酸銅のFAOあるいはWHOの食品添加物専門委員会によります人体の一日の許容摂取量は、〇・五ミリグラム、体重一キログラム当たりでございます。これは銅としてでございますが、それから比較します場合には、このビール中の銅の量はごく微量でございますので、人体に与える影響は無視できるというふうに考えております。なお、酒類中の微量重金属の点につきましても、今後いろいろと検討を続けてまいりたいと考えております。
  55. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて内田君の質疑は終了いたしました。
  56. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 吉田忠三郎君。(拍手)
  57. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 私は、限られた三十分の時間でありますから、ごく簡単に、農業の基本の問題、それから酪農と乳価の問題、さらには農産物の自由化の問題、最後には農民の出かせぎの問題を中心として、おもに農林大臣に質問いたしたいと、こう考えております。  最初に、農業の基本政策であります。わが党は、かつて池田内閣当時にこの問題に触れまして、高度経済成長政策の中で一番犠牲になったのは農業ではないかとただしたことがございます。これ対して、当時の池田総理大臣はお認めになりました。したがいまして、このためにはアフターケア的な施策として、政策として、革命的な農政を樹立をいたすという国会答弁がございました。この考え方を佐藤内閣、現田中内閣が踏襲されているわけでございますけれども、農林大臣、革命的な農政というものは何であるかということをお示しをしていただきたい、こう思います。
  58. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) なかなかこう簡単にお答えしにくい御質問だと率直に申し上げます。私は、池田、佐藤、田中と、この三内閣の歴史的経緯を農政上で申し上げる時間的余裕はないと思うのでありまするが、しかし振り返ってみて、農村に多数の人をかかえておった当時から、高度成長経済に伴って都市部へ労働力が供給されていって、そしてそこに過密、過疎問題を起こすというような、まあそういう大きな変転をしてまいったと思うのであります。そしてその変転に際して、私どもとしてはそれなりに、農政の上にこれは根本的なこれからの施策を考えなきゃならないと。たとえば現在の過密、過疎という、おおむね農村地域のほうが過疎にさらされておるという場合におきまして、これをどういうふうにして打開をしていくか、思い切った施策をしなきゃならないというところに総合農政の問題が起きてきたと思うのであります。私は、現在の農村の状況からいたしまして、これは思い切ったことをやるということであれば、先進国の状況、欧米並みのような農業経営にもっていくことが至当ではないか。特にこの高度成長に伴う人口減少の面から見ますれば、そういうことを考えざるを得ないのでございまして、そういう点から、いまの私の立場では、今度の予算の面でも大きな柱として申し上げておる高能率農業、高福祉農業ということがいまの農業の上において最も必要であるということを強調しておるわけでございます。で、このことがお尋ねの革命的ということに適応するかどうかは別といたしまして、しかし農村の現状がこのままではいけないと、それをいま申し上げたような方向で打開をしていくという意味合いからいたしますれば、革命的と言えば少しオーバーでございまするが、私どもとして、思い切ったこれから農政をいたしたいという心組みを、この点でおくみ取りをいただきたいと思うんであります。
  59. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、革命的ということばは私が使ったんじゃないですよ。いいですか、三十九年の、しかもこの国会の本会議で、社会党が農業の基本に触れてただしたときに、当時の総理大臣である池田さんが、この革命的な、つまりこの好況政策の矛盾打開のために、農業に対してはアフターケア的な政策、施策として、革命的な農政を樹立をいたすという大みえを切ったんです。それを踏襲して、ここに会議録がございますが、昭和四十年十一月です。これは参議院の委員会において私みずからが質問をした、佐藤内閣時代です。そのときの政府の答弁にもそういうことが言われているんであります。これ、間違えちゃ困りますよ。大臣、革命的な農政樹立ということばは私どもが使ったんじゃないんです。いまあなたの答弁を聞いておりますと、何が何か、政策であるかどうかさっぱりわかりません。しかも、これからそういう農業をやりたいんだと、こういうことです。何年たったと思いますか。もう一回、革命的な農政というのは何かということを聞かしてください。
  60. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 革命的なというそのことばには、常識的な意味が当然あると思うんですね。しかしながら、私はこの農政の担当者として、いま御指摘のような、池田首相や佐藤首相が使われたということも私の記憶にもございます。しかし、いまその責任の衝に立っている私としては、それを現実にどうやっていくかという点から申しますると、先ほどお答えしたような、これは思い切った農政をやるという意味だと、そういうふうに踏まえておるわけなんであります。
  61. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、確かに政策は現実ですよ、ね。ですから革命的だということは、思い切った農政をやるんだと、まあそれならそれでけっこうです。じゃあ、しからば、いまあなたは農政のいわゆる主務大臣ですから、当局者ですね。いまの農林省に思い切った農政という具体的な政策がありますか、ないんですか。あるなら、お示ししてください。
  62. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 政策は、もとより一つ思い切ってやるというんではない、いろいろな施策の総合ということによって効果を考えるわけでありまするから、その辺の御理解は先生にちょうだいできると思うんであります。そういう点から、現在のこの農政上の国家予算の中ではどの程度かというようなことでいきますと、まことに概略で恐縮でございますが、一兆五千億円入れておると。こういうことになってまいりますると、それなりに一応各種施策を総合した結論を予算で見る限りにおきましては、その一兆五千億とか、あるいは財投とかの集計というものが、他の政策と比較いたしまして、そう私は劣っておるものでないと、こう思うんであります。
  63. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 予算の金額的なものとか何か、大臣ね、見て、私は劣っているとかいないとか言っているわけじゃないんです。基本的な政策を持たない農政というのは私はないと、これは農業だけじゃなくってね。ですから、こういうことが、つまり池田内閣が高度経済成長政策をとったときからこの国会で幾たびか議論してきたところだ。それに対する、時の総理大臣並びに農政の担当大臣であるそれぞれの大臣から答えられている、そういう答えたことについての具体的な政策をお持ちであるかどうかということを聞いているんですよ。
  64. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 三十九年、四十年と、もう六年も七年も経過しておることでございまするから、その間の実績に対する評価はおのずからされておることと思うんであります。したがいまして、私がそういう経緯の後における農政担当者としての心がまえをお聞き願っておるのだと、こういうふうに思ってお答えをしておるわけでございまして、たとえば今回の予算の上から思い切った基盤整備をしようとか、構造改善をしようとかいうようなことを四十八年度予算でお願いをしておると。限られた予算の中ではあるけれども、私としてはそれなりにつとめたつもりでもあるし、また、ただ単に生産基盤や構造改善だけではいけないと、農村の環境整備についても新たな考えを持つのがよかろうというので、今回、五年の三千二百億円の環境整備のモデル地域四百カ所をつくるようなこともお願いをすると、こういうことでつとめてきておるわけでございます。それで、私はいまのお尋ねの中で、もちろん自由民主党としての前の池田、佐藤の両内閣についての農政のあり方を顧みて、反省すべきところは反省し、足らざるところは足らざらぬようにやるべきであるということは、もちろん認識をいたしておりまするが、これらはすでにもう数字の上で、また現実に実績の出ておることでございまして、それこれを申し上げるよりも、また、私としてそれをかれこれ言うべき立場ではないと思うんです。客観的に十分判断をされておることと思うのでございまして、したがって、先生の御質問をそのまま、これからの行き方について私なりの心がまえを申し上げておると、こういうことでございます。
  65. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 農林大臣ね、あなたの今日ただいまの努力は私は否定しているんじゃないんですよ。何回も伺いますがね、つまり、政府自由民主党として一貫した私は農業に対する基本政策というものがないんだと思いますよ。現に私ども農林省のいろんな計画、あるいは政策等々の案を見てまいりますけれども、すべて案ですよ。あるいは試案、こういうことになっている。いわゆる日本農業をどうしていくんだ、どうあるべきかという基本の政策がないんです。だから私は、この際、農林省などという名前を改めて、農林試案省とでもしたらいいのじゃないかというぐらい、すべてのものが案ですよ、出されているものが。案だらけと言うんです、これ。こういう状態だから日本農業が低迷するんです。これが最大の原因だとぼくは思っているんですが、大臣、どう思いますか。現状のわが国の農業というものをどのように把握しているか。もうちょっと具体的に申し上げますと、あなた方政府が想定したように日本農業が進んでいるかどうかということですよ。
  66. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私は概略してこうながめて見まするに、申し上げるまでもなく、われわれの立場は、こういう零細農業の実情ではいけない。したがって、農業の経営規模を拡大しようと、またその合理化をしようと、あるいは機械化をしていこうと、技術の向上をはかろうと、いろいろと申し上げてまいったわけでございます。そして一方におきまして、御批判のございました高度成長経済に伴う労働力の減少ということもございましたが、それを克服しながら経営規模の拡大や合理化、あるいは機械化等は進めてまいってきたのでございまして、それはそれなりの成果はあげてきておると思うんであります。その成果のあがり方についての御批判等については、これは謙虚に聞くべき点もあろうと思いますが、大きく方向を考えますならば、それは十年前、二十年前をお考え願いまするならば、日本農業の経営規模がどうなったかと、それからそれぞれの作目の生産性はどう変わったかということになれば、いずれも規模が大きくなり、生産性は向上をしてまいったと思うんであります。ですから、その流れとして私は間違っておったとは思わないんであります。
  67. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 規模の拡大であるとか合理化、農業の近代化をやってきて成果はあがっている、間違っていないと、こういう答え方ですよ。私は、それ以前の問題として、大臣、そんなにあなたがおっしゃるようにりっぱな成果があがっているということであるならば、今日の農業どうですか。離農はどうなっていますか、離農。日本全体のいわゆる農家をやめる、離農する率をひとつ言ってください。これは畑作、水稲、酪農業、この三部門でけっこうですから。
  68. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) この離農という意味がなかなか私むずかしいのではないかと思うんです。本来農業を大いにやっていきたい、こういうことでありながら、思うようにいかないから農村を離れたと、おそらくその意味における離農を言われておると思うんであります。しかし、一方におきまして経営規模の拡大をしようと、能率のいい農業にしようと、こういうことになれば、二軒の農家が一軒になる、三軒の農家が一軒になるということが好ましいのでありまするから、したがって、そういうような実態というものを頭に置いて考えていきまするならば、今度の施策の中でも特にお願いをしておりまするように、過密、過疎の問題を起こすということはいかがかと、そして農村の実態が、農村におっても農家としての収入がふえるようにというようなことで、そこに工業の導入などをして、農工一体的なものをはかろうというような構想も打ち出しておるわけであります。いままででありますと、それらの配慮が足りませんから、一方において能率のいいものに、生産性を高める上にというようなことから、農村人口の減少をもたらしたけれども、しかしそれには毀誉褒貶があったと、そこのところはこれからの施策の上においてさらに考えて、知識集約型の工業などを持ってきて、そして、いまの農村において農工一体の実をあげながら、農家としての収入増をはかるのはどうかというように、この考え方が現実に即して変わりつつはございまするが、ただ単に、離農者が多いということだけでは私は非難するということについて、多少われわれはわれわれなりの考えを申し上げざるを得ないところがあると思うんです。
  69. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 何か大臣は、ぼくがいまのあなた方のやっている農政、非難しているように誤解して聞いてるですな。ぼくは非難しているわけじゃないんですよ、批判しているわけでもないしね。いまあなたのおっしゃっているようなことでは、日本の農業の今日的な現状を把握してないということになる。  先般、私は宮城県の農業実態調査に行ってきました。大体二ヘクタールくらいの水稲のところでございました。いまあなたのおっしゃたように、規模の拡大であるとか、機械化、近代化で、この農家が二軒あったものが一軒に統合されますから、そういうことで減少したというものじゃないですよ。生活ができない、農業専農では食っていけないという実態なんです。この委員会でも幾つか議論あったように、農薬の値上がり、農業機材の値上がり、あるいは機械化にしても機械の値上がり等々、たいへんな諸掛かりがかかるわけであります。ですから、二町や三町の水稲経営では農業専農では食えない、だから離農ということになるんですよ。本州で二町、三町という耕作面積を持った水稲農家というのは大農じゃないですか。大規模でしょう、農林大臣。北海道ではざらにありますけれども、本州では大規模な農業経営と言わなくてはならぬとぼくは思います、いまの実態で。それが食えない。農業専農では生活できない。だから離農するんです。  そこで、離農はどうであるとか、こうであるという議論はちょっとおきますが、具体的に資料を見ればわかるんです、どの程度か。年々歳々農家を離れる人々は多いんでありますが、水稲農家でどのくらい、畑作農家でどのくらい、酪農家でどのくらい、数字を示してください。
  70. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いま、水稲農家あるいは酪農農家の減少についての数字をということでございます。いま手元にございませんので、これは資料としてお出しさしていただきたいと思います。
  71. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 資料はあとで提示をするということですから、それはそれとしておきますが……。
  72. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 二時二十五分まで休憩いたします。    午後二時十分休憩      —————・—————    午後二時二十七分開会
  73. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を続けたいと思います。吉田君。
  74. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 農林大臣、現状の農業をながめて、当面、農業に対して緊急に手だてをしなきゃならぬ問題、あなたあると思っていますか、ないと思っていますか。
  75. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私が十二月下旬に就任をいたしまして、そのときに一番感じましたことは、国際的な食糧の需給の逼迫ということでございました。また、当時十月に、御承知のこれからの農業の生産指標も出ておりまして、それを見ましたときに、飼料をもう少し自給率を高めるほうがよくないかというように見た次第でございまするが、そういうことで、私としてはこの新しい国際情勢、食糧需給事情を、これを頭に置いてのこれからの農政に対して、従来の考え方に多少は自分の意見を入れていかなきゃならないというような感じを持ったのでございます。そういうところが私自身としての見方でございまするが、従来の農林当局の検討のこれからの重要施策というものについて、お尋ねの緊急にやらなければならない問題というようなことについては、これは、いま御審議を願っておる昭和四十八年度の予算の中にいろいろと盛り込んでおるわけでございまするが、基盤整備も新しい土地改良十カ年計画でいこうと、あるいは本日衆議院のほうでお願いをいたしました漁港整備の新しい計画をしなきゃならない、あるいは農村の総合整備を新たに計画しなきゃならないというようなことを、それぞれお願いを申し上げておりまするが、これらの点が、いまの農村にとって緊急に必要なことではないかと、まあいろいろと申し上げたいことがございますが、一応、私の考えの一端を御参考に申し上げればそういうところでございます。
  76. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣、ちょっと答えがピントをはずれているのですよね、質問に対する。ですから、ちょっと具体的に申し上げますが、大臣もごらんになったと思いますが、最近の新聞、連載されまして、「病める酪農」、こういうタイトルで出ているのですがね。ですから当面、やはり日本農業は危機だと、こう言っている。私もそう思うんですよ。ですから、日本農業の危機を打開するためには何をしなければならないかという問題が一つあると私は思う。それからもう一つは、価格安定の問題があると思うんですよ、農畜産物の。こう思うんですがね。大臣はどう思っていますか。
  77. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 当面の農村の行き詰まりと申しましょうか、あるいは農業経営の困難さを打開する上におきましては、これはいまお触れになられました価格安定政策ももとよりでございます。また、先ほどから申し上げておる諸般の構造改善、基盤整備の、大きくいえばこの三つの柱を遂行していくことによりまして、いまの農政の行き詰まりというものを打開するのが基本的に考えられると思います。
  78. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 それから農林大臣、現行の基本的なものがあるとかないとかという議論は別にして、農政の基礎になっているものは何ですか。
  79. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 農政の基礎になっておるものは何かと、ちょっと私としてつかみにくかったのでございまするが、農業の一番基礎といえば土地であると思うんですね。それからまた、土地に対しての水であるとか、あるいは農村における労働力と、こういうものが総合してこなければ農業にならないんでありまするから、したがって土地については、農地の生産性を高めるようにしていきたい。水ということになりますれば、いかにしてかんがいをよくするか、それから農業労働力、これが最も合理的に使われるような仕組み、またそのことによって農業従事者の収入がはかられるように、また私どもとしては、同時に農家としての収入増がはかられて、生活の安定が期せられるようにと、そしてそれらの総合が、今度は国民の要望のほうからいけば食糧の安定した供給と、こういうことになると思うんであります。
  80. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、農業でいえばそういうことなんですよ。ぼくが聞いたのは農政の基礎です、農政の基礎。だから法的に申し上げますれば、現行の農政の基礎というのは、私は何といっても農業基本法だと思うんです。御案内のとおり、この農業基本法は昭和三十六年に制定したものですね。これがぼくは基礎ではないかと、こう思うんですがね。大臣、どうお考えですか。
  81. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これはもう文字どおり基本法でございまするから、これが農政の基本であると。私は、この基本法に基づくところの各般の具体的な施策、きめのこまかい施策をとっていくこと、これをいかにやっていくかというところにも、さらにまたより意義があると、こう思っております。
  82. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いま大臣が答えられたわけでございますがね。これは釈迦に説法ですがね。農基法の骨子は申し上げるまでもなく農業経営ですね。それから生産状況を新たなものにして、先ほど来農業についても答えられたわけですがね、新たなものにして、価格政策を併用して農業の所得の格差を解消する、こうなっていますね、農業基本法では。そこで、この法律が制定されましてからかなりの長年月を経過しているんでありますが、現在、この法律の精神にのっとったように、農業所得の格差が是正されたり解消されたと大臣は思っておりますか。
  83. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 純粋の農業所得だけを頭に置いて考えますると、格差是正は十分でないと思います。しかし、農家所得という見地から申しまするならば、勤労者世帯と農家世帯の所得というものはほぼ均衡をとりつつあると、こう思います。しかし、私がいま農政の担当の責任者として考えまするときに、農業それ自体の所得を一そう向上させるということに努力をすることはもとよりのことだと思います。
  84. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、いま答えられたとおりなんですよ。農業そのものの所得が減っていっているんですよ、あとで触れますけれどもね。農外所得がふえている。それは出かせぎしているからですよ、出かせぎね。これにも問題ありますから、あとで労働大臣にも伺うわけですがね。そういうことで若干一般勤労所得に接近してきている、こういうことなんです。本来私は、農業は農業専農でいわゆる農家所得というものをふやしていくように、勤労所得との格差を解消、是正する、こういうことでなければならないと思うんですね。そのことが、農業基本法が定められた私は最大のものじゃないかと思うんですがね。どうなんですか、これは。
  85. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 仰せのとおりだと思います。ただ、現実の面から申し上げますと、いまの日本の農業の実態というものが、すべての方が専業農家でいけるような、そういう実態であるかと、この辺は施策の実施に当たる者として考えまするときに、なかなかむずかしいところだと思うんですね。非常な無理をして、そして農業経営の規模を拡大してやるというようなことよりも、その地域、地域の事情に応じたある程度のところで、そして、先ほども申し上げたように、農工の一体の実をあげるとか、あるいは農家所得が向上するようにするとかということによって、それぞれの農家に満足をしていただくというのも、これも決して批判されて、そういうことではいけないんだということではないと思うんです。だから、その基本としてはもう仰せのとおりでございまするが、しかしまた、ただいま申し上げたような考えをも加味していく必要のある日本農業の現実だということも認識をしていかなければいけないんではないかと、こう思います。
  86. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 先ほど大臣が、国際的な食糧、つまり不足の問題、危機の問題、ちょっと答えられましたね。わが国にもそういう状態がございますよ。ですから、日本の食糧政策から見ても、現状の、農林省が、いろんな大臣が答えられたようなそれぞれの施策で対処しているわけでございますが、これでは私はたいへんなことになるのじゃないかと、こういう感じさえするんであります。なぜかならば、所得だけではなくて、現状の農業生産というのは伸びているのですかあるいは低下しているのですか。この辺はどうですか。
  87. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは全体的に——一言で伸びておるとか減退しているとか言いにくいと思うんです。それぞれものによって違うと思うんですね。最近一番問題になりました大豆をとってみますれば、三十六年以降年々減退をしておる、それから、米のように政策上抑制をしておる、こういう場合がございます。しかし、私どもが一番考えなきゃならぬことは、それぞれの農家にとって適地適作で能率的にやれるというものをも阻害するようなことであってはいけないということで、そういうことで、皆さんのいろいろ御批判はございましたが、昨年十月につくられました、しかも、この農業の専門的見識のある方々が皆さん御参加を願った。これからの「農産物需給の展望と生産目標の試案」というもので参りまするならば、この方向に乗るところの各種の農業、たとえばわれわれは、米とか野菜とかくだものとか肉とか生乳とか乳製品とか、こういうものについては、でき得る限り完全自給ないし八割の自給をしたいと、このような目標を立てて遂行をしていくわけでございまするので、これらのものにつきましては、施策の万全を尽くして後退のないようにつとめたいと、このように思います。
  88. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 政府が今日まで一連の構造政策というものをとってきたことは私は認めているわけですよ。ですが、その結果、いま答えられたように、米はこれは政策的に押えておりますから、それは別として、その他の農業生産性というのは、おしなべて低下をしてきているのですよ。これは価格政策とも関係あるのですよ、大臣。政府のいままでの農産物の低価格政策ということに非常に関係があるわけです。あるんでありますが、いずれにいたしましても、農家経営者側から見ればその投下資本が回収できない。できないから、結果、今日の離農の増加率で見れば明らかなんです。政府の想定した離農率から見るとはるかに上回っている現状なんです。ここに私は、今日のこの日本農業の危機だと言われるゆえんがあるのじゃないかと、こう思っているのですがね。ちょっとこの辺の把握は大臣と私とかなりの差があるのですがね、これはどうお考えになっていますか。それから、こういうような農業の社会の実態を私は農林大臣として放置するわけにはまいらぬと思うんですよ。ですから具体的に伺いますけれども、農基法もでき上がりましてから、大臣が答えられたように、国際的な食糧事情の問題、わが国の食糧事情の問題、客観的に情勢が変わっているわけですよ。ですからこの辺で農基法だって改正の必要があるんじゃないかと私は考えます。  もう一つは、米の問題でありますけれども、政策的にたしか生産量を押えております。押えておりますけれども、私は、もはや減反休耕政策というものはやめなきゃならぬ時期に来ているのじゃないかと、こう思うのですがね、大臣どうですか。
  89. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) お尋ねは、前段と後段と二つでございますが、最初のほうの価格政策についての御批判がございました。これにつきましては、現在主たる農産物七割についてのいろいろな角度からの価格政策をとっておるわけでございますが、私はこれは不十分であるということに同感でございます。ただ、この価格政策をとるというゆえんのものは、言うまでもなく、国内農業の保護的な考え方もあり、ある程度の国内での供給というものをはからなければならない。で、現実には、従来の経緯からいたしますると、消費者側の立場から考えまするときに、ある程度の輸入による安い食糧の供給ということ、これも全然等閑視するわけにはいかない。でありまするから、私は、いま非常に情勢は変わっておるけれども、なお、就任後に申し上げておることは、その点は、いまの開放経済下における日本農業のあり方というものについて、多少は弾力を持って考えていきたいということを申しておるわけでございまするが、しかし、国内でできるだけ食糧の安定的な供給を得るという必要性から見ますると、価格政策についての不十分さは私も認めるところでございまして、これは、何ぶんにも国の予算の全体の中における農業のほうへの配分を効率的に求めようという場合に、全体を見ておる大蔵省との間で、常にいろいろないきさつのあることは、先生も御承知のところだと思うのであります。  それから後段のほうの農業基本法の関係でございますが、これもときおり、私、皆さんから御質問を受けました。しかし私は、この基本法というのはちょうど憲法と同じようなことで、これがそのときどきの情勢に応じて手直しをしていくということではいけない。ほんとうに大局的に、あるいは根本的にもう直さなければならないというところに来ておれば別といたしまして、先ほども触れましたように、こういう基本法をもとにして各種の施策が講ぜられておる、あるいは見通しも立てる、あるいは計画性をもって施策をやるということでございまするので、基本法以外のところで十分見ていくのがいいのではないかと、そういう意味合いから、いろいろな情勢を最も最近に取り入れた昨年の十月の試案というものを重要視しながら、しかもその試案のつくられた当時の状況からすると、去年のような国際食糧の需給逼迫はここには反映していない。その点は少し考えていかなければならないというようなことを申し上げておるわけでございます。  なお、それに伴っての、これからの米に対しての施策について御見解を述べられました。いまの異常天候というものがどのように長期的に見通されるのか、昨年の場合、またことしになってからの国際的な気象状況というものからすると、相当心配すべき要素があると思います。また、日本の場合におきましても、ことしのような暖冬状況というものが、はたして農作物に影響がいいのか悪いのか、これは当然いままで行なわれてきた農業の上におきましては、これだけの天候の状況の違うということは、秋あるいは来年というふうに、いろいろと影響は私はないとは言い切れないというようなことを考えていきまするときに、この米の問題につきましても、日本におきましては一生懸命やれば増産のできるものである、しかも、一方においてアジア諸地域の米の最も必要な地域で米不足であるというようなことを考えますると、いままでの減反政策がいいか悪いかということについては、私は検討を要すると思うのであります。ただ、四十六年の二月に閣議の決定をいたしまして、そして四十六、四十七、四十八と減反政策をとってまいったのでありまするが、しかし、ことしで一つの区切りをしておると思うんです。休耕奨励金はことしで打ち切って、あと四十九、五十というところまでが四十六年の閣議の決定でございまするので、やはりこれは当初考えたときにもなかなか味わいある配慮がしてあるなということで、本年はこの計画に基づいての転作奨励というものを十分いたし、それを定着せしめつつ、同時に私は、しばしば申し上げるように、一方において高能率農業をやろう、適地適作をやろうというのであるから、そのことは米の政策の上においても十分反映しながら、もう一つこの異常天候などの諸要素は別途考慮をいたしたいといういま考えに立っておるわけでございます。
  90. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 たいへん長々しい答弁ですがね。端的に、ぼくは時間ないから聞いているんですよ。で、基本法の問題はそれはそれでいいとして、食糧政策上、減反休耕はやめたらどうかと、こう言っているんですがね。
  91. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 減反休耕はいまくどくどしく後段で上げたような考え方でいきたいということを申し上げておるわけでございます。
  92. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間がありませんから、次に酪農の問題を聞きますがね。現状の酪農畜産生産というのは低下していますか、上昇していますか。
  93. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 酪農については、お手元にたぶん資料がおありだと思うんですが、四十七年、四十六年と対比いたしまして、全国的に見まするならば、四十六年に飼育頭数百八十五万六千頭が四十七年百八十一万九千頭になっておりまするから、三万七千頭と、相当な減少でございます。ただ、この場合に、加工乳の主産地である一道六県を対比してみますると、七十九万五千頭から八十万五千頭と、一万頭ほどふえておるということでございます。これは私思いまするに、現在の各地の都市化の進展とか労働事情、あるいは環境問題等、こういうものがからんでまいりまして、主として都市周辺の酪農というものが非常に減退しておるんではないか。まあ、飼育頭数からいえば二、三頭ぐらいまでのところの酪農農家が、これがやめていっておるんではないかというふうに見るのでございまして、全国的にいえば確かに酪農は後退しておる、しかし主産地から見ればそうでもないというのが、この数字の上からは見られる偽らざるところでございます。
  94. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、乳牛の頭数をぼくは聞いたのじゃなくて、生産が低下しているか上昇しているかと聞いたんです。で、あなた答えませんけれども、低下していっているのですよ。たいへんな状態ですね。で、これは農林省の統計の中に明らかになっていますがね。たとえば乳牛の飼養戸数などが、昭和三十七年が四十一万五千戸ございましたね。農林省の統計ですよ。昭和四十七年は二十四万一千戸。五割以上減っているのですよね。それから乳量だって減っているでしょう。乳量、これどうですか。
  95. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 事実関係についてお答え申し上げます。  乳量、飼養戸数につきましては、先生がおっしゃるとおりでございますが、その飼養規模におきまして、ただいま大臣が申し上げましたように、一−三頭層の減少、時間の関係でこまかくは申し上げませんが、それで十五頭以上の多頭化農家の増加が著しいというのが傾向でございます。  それから乳量につきましては、先生指摘のように、四十四年ごろまでは年率一〇%近く、年によってフレがございますが、四十一、二年はまあ一%ないし二%みたいな年もございましたが、全体として、五年なら五年をとりますと、七%とか一〇%の数字でございましたが、四十六年は一・二%、これは暦年でございますが、四十七年が二%というように、この二年間停滞の模様があることは先生の御指摘のとおりでございます。
  96. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣、いま局長答えたように、全般的に減っているわけですよ。だからこういう点を大臣は把握をして、この酪農業についても考えなければならぬと思う。そういう意味で、大臣ね、昭和四十年、四十六年、過去二回にわたりましてこの酪農近代化基本方針というものを農林省が策定したわけです。これは成功したと思いますか。
  97. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 一がいにこの成功、不成功を直ちに申し上げにくいのでございまするが、たとえば酪農経営が二十頭から三十頭ぐらいなところが理想的で、そういう経営者がふえていくのがいいとか、まあ現在では四十頭ぐらい、経産牛の数で四十頭ぐらいなところと言われておりまするから、まあそこが目標だと思うのです。そういうような目標を考えての酪農施策というものを検討してみますると、やはりその方向へ行っておると思うのです。それと、先ほどから申し上げるように、全国的にはもうおっしゃるとおり後退しているんですが、しかし、きょうも御答弁の中で何べんか申し上げたように、われわれとしては適地適作と、こういうことで、そこでその主産地の模様などもつけ加えて申し上げたわけでございまして、この点はもう少し慎重に検討する必要があるかと思いまするけれども、大体そのいい方向は出ておるというふうに、たいへん恐縮ですが、私は見ておるんです。
  98. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 全く私と逆な把握のしかたを大臣は残念ながらしているようですがね。それは、もう私はこの四十年、四十六年の基本計画というのは失敗したと思っています。失敗しなければ、つまりこの方針、計画は改める必要ないわけでしょう、大臣。なお、いま農林省では五十二年のこの計画方針というものを策定しているでしょう。その内容のあらましをちょっと示してください。
  99. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 要点について御説明申し上げます。  四十四年度が基準年度でございまして、五十二年度につきまして、四十四年度乳量といたしまして四百五十七万五千トンが八百十四万五千トン、それから経営の目標といたしましては、土地条件の制約の有無あるいは複合形態をとるものと区別してございますが、それぞれ四十頭、三十頭、十頭ということに相なっております。
  100. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣、いま理事者も答えたように、計画目標はあるんですよ。それに対する達成率、どうなっていますか。たとえば乳量などは、これは八百万トンを目標として想定しているんですよ。現状から考えてみるとこれは夢のようなものですよ、夢のようなもの。四十年にも達成していません。四十六年だって五〇%も達成していないんじゃないですか、実績。どうお考えになりますか。
  101. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) お示しのとおりに数字はなっております。そこで、まあ先ほども、成功か不成功かは私としてなかなか申し上げにくいところだと、しかし傾向としてはこうこうと申し上げておるのでございまして、ただお示しのとおり、計画に対して実績はどうかといえば確かに計画どおりにはいっておりません。したがいまして、これは見直すほうがいいという見地に立っております。
  102. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 これは傾向を申したと言うけれども、私は傾向を聞いているわけじゃなくて、具体的に失敗したんですよ。なぜすなおにそういうことを反省できないですか、農林省当局は。失敗したんだ。大臣は、主要生産地ではあまり心配はないと、こう言っています。酪農の主要生産地というのはどこですか。北海道じゃないですか。北海道の主要生産地で、現にいわゆる農家戸数のみならず乳量の生産も落ち込んでいる。しかも、全国平均より落ち込んでいるんですよ。ここに私は今日の酪農の危機があると思うんですよ。どう把握しておりますか。的確に答えてください。
  103. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 先生の御質問について、事実の点についてお答え申し上げますが、第一次酪農近代化方針につきましては、四十六年に目標が十六頭でございましたが、現実の戸数も、規模が平均戸当たり十六頭になっているということで改定をして、ただいま先生が問題になさっております第二次酪近計画がございます。それで、伸び率につきましては確かに相当第二次酪農近代化計画は高い伸び率、年率七・九%というような乳量についても伸び率を持っておりましたが、この計画が開始されましたあとの伸び率は約三%というようなことであれしておりますが、牛乳生産についても四十一年、二年にもうやはり二ないし三%に落ち込んだ事態もございまして、ある程度長期に見てのフレが、ミルクサイクル等もあるということもわれわれは考えておるわけでございます。
  104. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 全国的な平均でしょう。北海道の場合は一%より伸びていないじゃないですか、四十七年度。
  105. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答えを申し上げます。  最近におきます北海道の伸び方は丁二とか——この二、三カ月の生産量でございますね、非常に落ち込んでおります。ただし、大臣が先ほど申し上げましたように、十六頭以上の多頭飼育につきましては、その戸数は着実にふえておることは先生も数字で御案内のことかと思います。
  106. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣、いま答えたように減っているんですよ。盛んに農林省は規模拡大、多頭化のことを言っているんですがね。規模拡大、多頭化だけでその伸び率が伸びたからといって、つまりこの計画が成功したとはいえないんですよ。現にこの規模拡大、多頭化の政策を踏まえて営農した人々はたいへんな債務になっているじゃありませんか。一戸当たりもう一千万、二千万のいわゆる債務をしょっておるんです。こういう問題が解決しない限りは、酪農家は飼育戸数は減っていくのはあたりまえじゃないですか。この点をどう把握していますか。
  107. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 正確を期する上で局長から御答弁を申し上げておるんですが、私は、私の言っておることにはそう間違いがないという判断に立つんです。たとえばいまの規模別戸数動向を北海道の場合考えて、十頭から十四頭の場合は、確かに四十五年七千五百戸が四十七年六千七百戸に減っております。しかしながら、十五頭から十九頭、二十頭から二十九頭、三十頭以上と、それぞれみなこれはふえておるのであります。また北海道はと、こう言われましたので、北海道全体の上から考えまして一体全国に対するシェアがどれぐらいかと、こういえば、四十五年は——これは飼養頭数です——二七・一%、四十六年は二八%、四十七年は三〇%二と、こういうふうになっておるのでございます。また生乳生産にしても、四十五年が二四・七%、四十六年は二六・一%、四十七年は二七%と、こういうような次第でございまするから、私は全般的に見ておっしゃることはもう肯定をしておる、しかし、その地域地域の事情を踏まえての適地適作というような見地からいけば、方向としては私は間違っておらないんではないかと、こういうふうに申し上げておるんであります。なお、この酪農近代化計画、あるいは「農産物需給の展望と生産目標の試案」等のこの計画の実績とか、これから、見込みとかいうようなことからの数字については、これはもう正直に先ほど申し上げたように、近代化計画を比較——四十四年度から五十二年度の分は七・九伸びるようになっておったが、実績は二・九で、これはもうおっしゃったとおりだと、こういうことでございます。
  108. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、いま大臣読み上げた資料を私は持っているんですよ。ですから頭数ですね、飼養頭数、それから規模拡大はこのとおりですよ。ここにもあるんです。問題は乳量の生産ですよ。酪農民は何によって生産するんですか。飼育頭数がふえればいいとか、規模が拡大すればいいというものじゃないですよ。生活乳量で生活するわけでしょう。その生産乳量が落ち込んでいるんですよ。このことはどうかと聞いているんですよ。計画より落ち込んでいるでしょう。
  109. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いま私がお答え申したように、どの数字でおっしゃっているのか、生乳生産量は四十五年二四・七のシェア、四十六年二六・一、四十七年二七%、それから量にしても、これはそれぞれ百十八万五千トン、百二十五万八千トン、百三十三万五千トンと、こうなっておるのでございまして、これは何かお手元に間違ったものを差し上げてますかね。大体私の持っている資料はそういうことですが、なお念のために局長のほうから。
  110. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げますが、やや長期の傾向を申し上げますと、生乳生産量につきましては、全国の伸び率、最近の三カ年が、四十四年が一一二・三、四十五年が一〇五・六、四十六年が一〇一・一でございますが、北海道におきましては、四十四年が一一七・六、四十五年が一一一・七、四十六年が一〇六・一、四十七年については、まだ年度の数字が出ておりませんが、先生がおっしゃっておりますのは、最近の乳量の伸び率が落ちておる、対前年度を割っておるのではなくて——くどいようで恐縮でございますが、伸び率が落ちておるのが問題だというふうにわれわれ理解しております。
  111. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いま局長が申されたことで、前年に対してたいへんな落ち込みですよ。そういう意味を申し上げたわけです。しからば、なぜ一体こういう現象が起きたかという、その問題点を把握しなきゃならぬと思う、問題点を。これは農林大臣どう答えようとしても、その問題点の第一は、最近の飼料の高騰ですよ。家畜飼料の高騰。第二は、牛肉価格の暴騰なんだ。第三は、これはもうここ数年間、政府が政策的に押えてきた乳価の低価格が第三の問題になっていることは間違いないんだ。この点はどうですか。
  112. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 申し上げる見地が若干違うと思うんですね。先生は前年対比の伸び率の減退をもって、北海道の酪農は減退と、私は実数で、いやそうでない、大体方向はいいんだ、こう申し上げておるので、そこの考え方のスタンドポイントの違いをそのまま、これは酪農が後退しておって、それは、価格が低い、肉や飼料が高いというようなところへお話を持っていくことに私としてはちょっと同調しかねるのであります。ただ、現実に伸び率が悪い、伸び率の悪い原因をさがせばどうだ、こういうことでおっしゃるといたしまするならば、それはそれなりに私としても一応の理解はできます。
  113. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間がありませんが、大臣、たいへんなあなた認識不足だと思うんですよ。ちょっとこれ差し上げますが、これをごらんになってください。これを読んでください、北海道のです。  そこで具体的に聞きますが、大臣、ではいまのこの原料乳ですね、加工原料乳、この価格はこれでいいと思いますか、大臣。保証価格ですよ。これでいいと思いますか。
  114. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 問題点は幾つかあると思います。まあ現在、今年度の加工原料乳の価格をきめるべく作業中でございまするが、その基本になる飼料価格についても、いろいろ現在検討されておるところでございまするので、にわかに結論を申し上げにくいんでありまするが、幾つかの要素について検討をすべきものはあると私は認識しております。  なお、このただいまの資料は、見出しだけこうずっと拝見をいたしました。現在、一方において食肉の高騰しておることによって、一方におきまして、乳牛までが屠殺されておるという事実があちこちにあるということを聞いておりまして、これはわれわれとしても非常に注意もいたし、そういう事態ができるだけ早く解決のできるようにしなきゃならないということについては、私としても十分認識をしておるつもりでございます。
  115. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ですから大臣ね、認識だけじゃなくて、具体的に、たとえば保証価格の問題ですよ。昭和四十三年を一〇〇とすると、現状どうなっておりますか、現状。しかも、値が上がったのはわずかに二円九十六銭だけです、二円九十六銭。これがいまのあなた、乳価の価格政策として低価格ではないのか、私はこう言っているんです。
  116. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 数字的にはただいま局長のほうから答えさせまするが、ただ、私よりももう現実をよく御承知であられておっしゃっておると思うんですが、非常な過剰のときもあったというようなことの影響もあったわけでございまするが、しかし、いまのこの時点に立ち至って、一体これで加工原料乳価がいいかどうかということにつきましては、私も先ほどから申し上げるように、いろいろと検討を要すべきところがあるということを申し上げておるようなわけであります。
  117. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 具体的に聞きますが、大臣、諸物価の高騰との関係、配合飼料の値上がりの関係、飲料用の乳価との関係、いま申されたように、肉牛の価格との関係、これを明らかに示してください。
  118. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げますが、加工原料乳は、先生御案内のとおり、主要な加工原料乳地帯におきます生産費につきまして、需給事情、生産状況も勘案いたしまして、特に飼育管理労働につきましては、地域の製造業賃金と評価がえをしております。したがいまして、そういう算式になっておりますので、その生産費を見る場合において、それぞれの物価、最近の直近の三カ月の物価、賃金等を参酌して見るということで、物価についての反応がなされておるわけでございます。  それから、乳廃牛の価格は確かに二十五万、三十万と高くなっておりますが、最近の傾向、この十二月、一月の傾向は、対前年比は、くどくどしく申し上げませんが、低下をしておりまして、むしろ先ほどもいろいろ御議論が出ました一−四頭数等の小規模階層が酪農をやめる場合の乳牛というものが乳用牛について多数売られておって、それが拡大の農家に回らないで肉のほうに回るという点があるというような事情に相なっておるわけでございます。
  119. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いまの答えの中にも出てきましたが、妊娠した牛までいわゆる枝肉に回されているという現状が北海道にあるわけですよ。これは北海道だけじゃないと思います。全国的にあるわけですよ。ですから、農林大臣がおっしゃっているようなそんな楽観した把握のしかたでこの酪農業というものをとらえたら、たいへんな間違いを起こすと思うんですね、私は。
  120. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 決して楽観をしておるわけではないのであります。現在、ことしの加工原料乳価の決定の直前のことでもございまして、私がここで軽はずみにいろいろ申し上げるのはいかがかと、こういうことで、でき得る限り私としては控え目に申し上げておる気でございます。したがって、数字等についてはいま間違いのないところを申し上げておるわけでございまするが、先ほどから申し上げるとおり、価格形成の中の幾つかの要素について十分検討をする必要な点があるということを申し上げておるわけでございます。
  121. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間がありませんから、最後に結論的なことを言いますけれども、どんなに農林大臣が言い回し方をじょうずにしても、農林省の役人がどういう答えをしようとも、いわゆる保証価格というものは低く押えられていることは、これはもう他の物価と比較をしてみても明らかなんですよ。ですから、この際、やはり、農林省はいつもこの酪農の問題については言っているのでありますが、わが国日本農業の戦略部門だと、こう言っているんですな。戦略部門だと、こう言ってきていますね。それであったら、そのような価格についても施すべきものは施さなきゃならぬと、私はこう思うんですよ。ですから、酪農民が、規模の拡大、頭数の増大等々、これは農林省の指導によってそれを信じ切ってやっているわけですから、酪農のみで生活できるような価格を制定してやるのが私は正しいと思う。特に加工原料乳ですから、飲料との差はどのくらいあると思いますか。特に北海道のように原料加工乳の生産地の酪農民というのは、この問題を非常に重視していますよ。
  122. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 当面の保証価格についての私の考えは、先ほどから申し上げておるとこうでございますが、北海道における酪農農民の現状というものにつきましては、私としても、過去の経緯を見まするときに、二十頭程度の規模に持っていくような指導をしておって、さらにそれか四十頭程度の規模がいいのじゃないかということをいま農林省としても申し上げておるというようなことからいきますと、その間に多額の負債もでき、経営も非常な困難を来たしておるというような実情も、十分想像ができるわけでございます。そういうことで、いま、農林省といたしましては、北海道庁の協力を得まして実態把握につとめております。そして、この実態把握ができますれば、すみやかに負債整理の問題についてももっと積極的な具体的な構想を打ち出しまして、何といっても北海道において大いに酪農をしていただかなきゃならぬと。いわゆる適地適作という見地でいきますならば、北海道は酪農であると。また、ときには戦略産業であるとまで申し上げた以上、もっとわれわれとしても前向きの姿勢をとってまいりたいと思います。
  123. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 あと時間が二分よりありませんから、価格の算定であるとか自由化の問題は、あとあと私は農林水産委員会質問いたすことにして、最後に、農家の出かせぎの問題について伺っておきたいと思います。この出かせぎ問題は、先ほど来申し上げたように、専農では食えないから、農外収入を得るために出かせぎをする。これが、政府の減反政策が進んでまいった段階で、より増大してきているのであります。その結果、一つには労働災害、一つには蒸発、あるいは一家離散をしなけりゃならぬという、非常に社会問題が続発をしていますね。こういうことに対して、労働省はどういう対策を持っておりますか、労働大臣。
  124. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 吉田委員の御質問のように、労働行政の中でも、いま、季節移動労働者と言っておりますが、出かせぎ労働者は労働行政の谷間のようなかっこうで、いろいろ労働省といたしましても対策を講じておりますが、やはりこれはふるさとを出て遠くへ行くのでありますから、留守家族の問題、家庭的な問題、いろいろのほんとうに同情に値する問題でありまして、やはり、農業収入が相当な額であれば、これは好んで行くのでありませんと思います。さような意味で、労働省としては、いろいろな対策をきめこまかにやっておりますが、公共職業安定所の利用の促進とか、就職前の健康診断とか離農講習の実施、就労先での援護・相談、賃金不払いの防止、留守家族のいろいろなお世話、福祉センターの設置、通年雇用の推進、季節移動労働者手帳の発給と、そしていろいろな問題を確保する。いろいろ申し上げましたが、しからばがっちりとこれがうまくいっておるかといえば、これは何といっても安定所を利用する方が少ないという関係上、的確な就労関係を把握いたしておらない、できないというような隘路もありますので、今後ともかような問題に対しましてもう少し労働省もきめこまかくがっちりといくと、こういう方向で大いに援護措置を推進していきたいという所存であります。
  125. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いま労働大臣は答えましたけれども、これは労働省の「雇用対策基本計画」の一文を読んでいるんですよ。私はこのことをずいぶん調べてみた。これは農林省にも何もありません、対策は。厚生省もない。労働省はややいいほうなんです。しかし、この労働省の基本計画の三四ページにわずかに二十行あるだけで、そのことをあなたはいま答えただけですよ。これで対策じゃない。問題はどういう問題があるかということは、時間がありませんから申し上げますけれども、賃金不払いの問題、それからその次に健保と日雇健保のいわゆる二重掛け金の問題資格がつくのは三カ月ですから、御承知のように。その間につまり災害疾病になった場合に一体医療費をどういうふうに補償するかというふうな問題、たくさんあるんです、こういう問題は。こういう問題をきめこまかく具体的に対策をしなければ、たいへんな問題になると思う。いわゆる農村の出かせぎの人口は、時間がありませんから聞きませんけれども、たいへんな数ですよ。どんなにりっぱに政府がいわゆる産業経済の発展を考えてみたって、国の開発、あるいは建設業、公共事業は、ほとんどこの農村のつまり出かせぎの労働力がささえているんですよ。これをどう考えますか。
  126. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 吉田君、時間が来ましたから。
  127. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 御指摘のとおり、新幹線だとか、いろいろな高速道路、公共事業、この労働力がいまの出かせぎに相当な依存をしておることは、間違いないと思います。出かせぎのほんとうの効果というものは、ほんとうに重要であります。さような意味で、いま労働省の「雇用対策基本計画」だけであるとおほめのようなおことばもありましたが、今後、この問題に対しましては、先ほど申し上げたように、十何項目も羅列いたしておりますが、まだがっちりいっておらない点もありますので、また、いまの健康保険の問題、国民保険の問題でありますが、これは厚生省のほうとの関係がありますので、私から、ちょっと出ていった場合に二カ月か三カ月かまた二重になると、これは厚生省とも相談いたしていきます。賃金の不払い、これはもうだいぶ減っておるのでありますが、基準法にも違反いたしますし、保証制度の促進、それから建設業者に対しましては公共事業を引き受けるときにその資格の要素にするとか、または、下請業者が賃金不払いのときには元請業者に対して建設大臣並びに都道府県知事が勧告をすると、いろいろな方途をもちましてさような不幸な状態がないようにはこれはもうだいぶん確信を持っておりますので、今後、お説を大いに尊重するというか、お説に沿うように努力いたしますことを申し上げます。
  128. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 一問だけ、時間がありませんから。
  129. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 簡潔に。
  130. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 農林大臣ね、田中総理大臣は、この問題に触れまして、いわゆる農村の周辺に工場を建てたらいいじゃないか、それで解決と、こう言っている。私は、この考え方はさか立ちしていると思うんですよ。なぜ農民が本業の農業で食えないかという、ここをとらまえなければこの問題のほんとうの解決でないと思うが、農林大臣、どう考えますか。
  131. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 本質的には、もうおっしゃるとおりでございますが、これも先ほど御答弁の中で申し上げましたが、日本農業の実態というものが、農業だけでよりも、農工一体的な行き方をするほうがより好もしいという場合もあると、そういうことをも考えて、われわれとしては、知識集約型の工業の導入についても申し上げておるんだと、こういうことを申した次第でございまするが、おっしゃるように、でき得るならば、出かせぎなどもないように、あるいは工場へ家族の者が働きに行くよりもみんなで農業がやれるほうがいいのでありまするが、しかし、なかなか一がいにそうはいきませんから、そこで現実に即しての施策の必要性が出てくると、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  132. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて吉田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  133. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 瀬谷英行君。
  134. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最初に外務大臣に質問したいと思いますが、先般の北方領土問題についての川村議員の質問の際に、総理大臣から、北方領土問題と同時に解決しなければならない問題として竹島と尖閣列島があるというお答えがあったわけです。この竹島と尖閣列島についてまずお伺いしたいと思いますが、現在この両島はどういう状況になっておるか、お伺いしたいと思います。
  135. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 一九五二年の一月十八日の李承晩宣言以来、政府は、韓国政府に対しまして、竹島は歴史的事実に照らし、また、国際法上の見地から、明らかに日本の領土である旨を繰り返し主張し、しばしば韓国政府に口上書による申し入れを行なってまいりました。  本件は、韓国との間の国交正常化の際にも不幸にして解決されず、結局、両国は、本件紛争を外交上の経路を通じて解決することにつとめ、これにより解決できなかった場合には調停によって解決をはかる旨の紛争の解決に関する交換公文が締結されました。  現在におきましても、機会を見まして口上書によりわが国の立場を繰り返し先方に伝えますとともに、竹島周辺の海上巡視を年一回実施することにより、わがほうの主張を形の上におきましてもあらわしておる次第でございます。  政府としては、本件解決に適した雰囲気が生ずるのを待って、外交経路を通じまして交渉を始めたいと考えております。  最近におきましては、昨年八月に行なった海上巡視の結果に基づきまして、十月二十六日、韓国の竹島不法占拠に対し抗議し、即時撤退を求める口上書をわがほうから発出いたしましたが、韓国側は、十二月十一日、同じく口上書をもちまして、同島が韓国領土だと主張し、従前からの態度を変えていない次第でございます。
  136. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、現在もなお、韓国は竹島を不法に占拠していると、こういうことですか。
  137. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
  138. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 だいぶ、日韓国会のころ、やはりこの問題で質問したような記憶があるんですが、そのときから全然進展してないわけですよね。外交上の経路により調停によって解決をするんだということですが、全然未解決になっている。これはきわめて遺憾なことだと思うんですけれども、じゃ、これから具体的にどうするつもりなのか、その点、お伺いしたいと思うんです。
  139. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま御報告申し上げましたとおり、現在双方の主張は先鋭に対立したままでございます。しかし、われわれといたしましては、本件が解決されるような雰囲気の醸成をはかってまいらなければなりませんし、そういう情勢の招来と並行いたしまして、何とか外交的解決で片づけなければならぬ問題だと心得ておるのでございます。しかし、遺憾ながら現状は、御指摘のように、状況は改善のきざしを見ていない状況でございます。
  140. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 韓国は韓国の領土であるということを一方的に言っているということでありますが、それは根拠があることなんですか。
  141. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 日本政府といたしましては、韓国の竹島領有の主張は根拠はないというふうに考えております。
  142. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、この種の調停による解決という手段はどういう手段があるのか、その点、お伺いしたい。
  143. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど大臣からお答えしましたとおり、また、日韓国会の当時政府側から答弁いたしましたとおり、この竹島の問題につきましては、当時一緒に締結いたしました紛争の解決に関する交換公文というのがございまして、その中で両国政府はこういうことを約束いたしております。「両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかった場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」と、こういうことでございまして、原則といたしまして外交交渉によって解決いたします。これがどうしても解決できないという場合に、第三国、つまり調停国を両国の合意する国として選びまして、その国の調停によって解決をするということを約束いたしておるわけであります。
  144. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 調停による解決手段をいままで講じていなかったのかどうか、あるいはこれからそういう解決手段を講じようとする気がないのかどうか、その点、お伺いしたいと思うんです。
  145. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど大臣から御答弁がございましたとおり、現状では実はまだ外交交渉そのものが始まっておらないわけでございます。したがいまして、適当なしかるべき雰囲気ができたときにおきまして外交交渉をやって、その外交交渉がどうしても成功しないという段階になりまして調停ということになるというふうに考えております。
  146. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しかるべき雰囲気ができたときというのは、どうもわからないんですね。一体どういうときが、しかるべき雰囲気なのか。どうやって、そのしかるべき雰囲気をつくるのか、われわれにはちょっと理解しがたいわけですよ。これは具体的にいうと、どういうことですか。
  147. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 領土問題というのは、本来、どの国にとりましても非常に重要な問題でございまして、彼我の主張にいま大きな開きがあるわけでございますけれども、われわれがしかるべき雰囲気と申し上げるのは、そういう、日本にとってたいへん深刻な課題を外交交渉の場で同じテーブルについて話し合える雰囲気、そういう雰囲気というものを期待いたしておりますが、そういうことをやりましても両国の間に重大な関係の亀裂が生じない、そういう状況を何とか発見したいと念願しておるわけでございます。
  148. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 外交交渉をこの問題についてやるという気がないのかあるのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  149. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日韓の間には、閣僚の定期協議をはじめといたしまして、ひんぱんな接触の場があるわけでございまして、私どもはその機会を見ておりまして、いま申し上げましたようなチャンスをとらえたいと念願しておるわけでございますが、まだ残念ながら、そういう、ここぞというチャンスをつかみかねておるのが現状でございます。
  150. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いままでの御答弁によると、これは疑う余地もなく日本の領土であるということは確認してもよろしいんですね。
  151. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは変わらない政府の信念でございます。
  152. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 北方領土の問題は、これはいろいろ問題はあると思うんです。千島列島を放棄したといったようなこと、択捉、国後が、かつては南千島という範囲にあったというようなこと等を考えると、なかなかこの問題は理屈の上からいうと困難さが伴うと思うんです。しかし、竹島の問題はそのような疑問の余地がないということになると、これはいつまでも、日韓国会以来長い年月をかけて、そのまんまほったらかしにしておくということは、これはできないことじゃないかと思うんですね。やはり外交交渉で詰めていく、外交交渉がどうしてもだめなら調停による解決方法を考えるということを、順繰りに事を進めるのがほんとうじゃないかと思う。いままで何もしていないというのは、いささかこれは怠慢ではないかという気がいたしますが、その点はどうでしょうか。
  153. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せごもっともでございまして、何とかそのチャンスをつかまえなければならないと腐心いたしておりますけれども、まだつかみかねておるというのが偽らない現状でございます。しかし、私ども政府としてこの問題についてこれを懈怠していく、努力を懈怠するというつもりは毛頭ございません。
  154. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまのところをもう一回。カイタイをするということはどういうことですか。
  155. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 努力を怠るつもりは毛頭ございません。
  156. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、疑う余地もなく日本の領土である、それはもう政府も何回も確認をしておるということになると、たとえば、日本とアメリカとの間で射爆場を貸してくれという問題が出てくる。それじゃ竹島を貸しましょうといったような話が出てきた場合、これは韓国は口を差しはさむ余地はないことになってくるわけですね、たとえばの話です。そういうことになりますか。
  157. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日韓交渉の際にかわされた交換公文のラインに沿いまして、まず、そういう場合、外交交渉を始めなければならぬ性格のものと心得ております。
  158. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いままで経済協力を向こうから要請してきておる。ソウルに、たとえば地下鉄の建設あるいは鉄道の敷設といったような問題についても協力の要請があるわけなんです。それらの要請に対して日本が応じながら、一方において竹島の問題だけほっかぶりするということは、いかにこの島が小さな島であっても、国民としては理解のできないところなんです。だから、今後のいろいろな問題の交渉がある場合に、竹島というものを忘れないで、これを取り上げてやっていくという努力が当然必要ではないかというふうに考えるのでありますが、外務大臣としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  159. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、そういうラインで努力を怠ってはならないものと心得ております。
  160. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それから尖閣列島の問題ですけれども、尖閣列島は一体今日どういう状況にあるのか。また、この解釈でありますけれども、外務省のパンフレット等によりましても日本の領土であるということを強調しておるように見受けられるわけですが、この点はどうでしょうか。
  161. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 尖閣列島がいわゆる南西諸島の一部であり、したがってわが国の領土であることは、議論の余地のない事実であると考えております。昨年五月十五日、米国による沖繩返還に際しまして、尖閣諸島に対する施政権はわが国に返還され、現在はわが国の施政下にあるものと心得ております。政府としては、尖閣諸島がわが国の領土であることが明白である以上、これが領有権問題につき、いかなる国とも交渉する考えは持っておりませんが、このような領土問題をめぐりまして、わが国と周辺諸国との関係に悪影響を及ぼすことは好ましくありませんので、今後とも問題を重大化しないように慎重に配慮いたしますとともに、わが国の立場に対する関係各国の理解をできるだけ得るようにやってまいりたいと考えております。
  162. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 周辺諸国との関係、あるいは各国の理解ということで、外務大臣の御答弁だと、これは複数になっているわけですが、これは具体的に言いますと、台湾政府と北京政府と両方という意味なんですか。
  163. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国民政府は、一九七一年六月十一日と一九七二年五月九日に外交部声明を出しまして、尖閣列島に対する領有権を主張されております。中華人民共和国政府外交部は、一九七一年の十二月三十日に、これまた声明を発表いたして、わが国の主張についての抗議をいたしておる次第でございます。わが国といたしましては、一九七二年の三月八日に「尖閣諸島の領有権問題について」という外務省の基本的な見解を内外に発表いたしたのでございます。そういうような関連もございますので、周辺諸国との間の関係を頭に置きながら、この問題が重大化しないように外交上の配慮を加えながらまいりたいというのが私どもの気持ちでございます。
  164. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この尖閣列島はたいへんに複雑だと思うのです。国民政府並びに中華人民共和国政府、両方が領土権を主張する。何によってそういう主張が行なわれるのか。いろいろと問題が出てくると思うのです。これは歴史的には、どういうことになっているのか、その点、それぞれの政府との見解の食い違いはどこにあるのか、その点をお伺いしたいと思うのですが。
  165. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 台湾政府は、一九七〇年ごろから、特にあの近海における鉱物資源の可能性ということが着目されるようになりましてから、この問題を提起いたしまして一その主張の重点は、特に歴史的、地理的かつ地質的に、もともと中国のものであるということでございまして、これは台湾の付属島礁の一部である、したがってこれは日本が日清戦争の後に中国から譲渡を受けました台湾及びその付属島礁の一部であるから、これは当然に中国のものであると、こういう主張でありまして、私ども、しさいに検討いたしました結果、国際法上、そのような台湾側の主張が根拠のあるものであるということにはならないという結論を得ております。  また、中華人民共和国政府も、少しおくれまして、尖閣列島は中国のものであるという主張をいたしておりますが、同様に、やはりこのほうの主張におきましても、台湾及び付属島礁の一部であって、したがって日本が日清戦争の後に割譲を受けました台湾及び付属島礁、その付属島礁の中の一部であるという点を中心にいたしております。その論拠といたしまして、やはり同様に、歴史的かつ地理的に中国のものであって、中国の古い古文書の中にも、もともと中国の支配権、中国の支配のもとにあった島であるということは、文書、そういう古文書の中で明らかであるという主張をいたしておりまするけれども、しかし、私ども日本政府といたしまして、明治二十八年一月十四日に、閣議によりましてこの島を日本領土とはっきりいたしましたその前約十年間にわたりまして、しさいに、この島がどこの国の占有にも属しておらないということを十分に確認しました結果、閣議の決定をいたしましたものでございまして、当時の清国のいかなる形における領有の形跡もないということは当時の文書から明らかでございます。
  166. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、この問題の解決は、またきわめて複雑になってくると思うのですけれども、一体現状はどこがこれを占拠しておるのか、今後の解決方法としてはどういう手順を踏まなければならないのか、その点をお伺いしたいと思うのですが。
  167. 中江要介

    説明員(中江要介君) お答えいたします。  現状は、わが国の完全な施政権下にある、こういうことでございまして、いま解決を要する問題というふうには認識いたしておりません。
  168. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 要するに、台湾政府あるいは中国政府、いずれもこの島を占拠あるいは支配はしていない、こういうことですか。
  169. 中江要介

    説明員(中江要介君) そのとおりでございます。
  170. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、竹島とは今度は形が違うわけですよ。しかし、領有権を主張された場合の争い方、どういう舞台でもって争うということになるのか、その点はどうですか。
  171. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先ほど条約局長から説明いたしましたように、わが国は、完全な施政権を及ぼし、完全な管轄のもとに置いている尖閣諸島に対して、他の国が領有権を主張した場合には、その主張の根拠のないことを機会あるごとに説き、また、関係諸国の理解も得て、これが紛争に顕在化しないように努力すると、こういう方向をとるべきだと、こう考えております。
  172. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 中華人民共和国との国交回復にあたって、この島の帰属についての問題は保留の状態になっているのか、話し合いというものは行なわれているのか、その点はどうですか。
  173. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 全然話し合いになっておりません。
  174. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 話し合いになってはいないけれども領土として主張しているということの根拠は、これはどういうところにあるのか、その点はどうですか。
  175. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど条約局長が御説明申し上げたような根拠を踏まえて、中華人民共和国政府のほうで、外交部で声明が出たことは事実でございますから、先方政府におきましてはそういう見解を持たれておるものと思います。しかしながら、去年の九月の日中首脳交渉におきましては、この問題についての言及はございませんでした。
  176. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、台湾政府のほうが依然として領有を主張している、問題が残っているということになるかもしれないけれども、それらの台湾政府との外交交渉というのは一体どんなことになるのか、その点をお伺いしたいと思うんですが。
  177. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 去年の九月、日中間で国交が正常化いたしました結果、台湾の政府との間に外交交渉の手はないわけでございまして、政府が外交交渉を行なう手段を持たないのであります。
  178. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、台湾政府が何を主張しようとも、これは問題にはしない、ならないと、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  179. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先方政府と日本政府との間の外交交渉というのはあり得ないということを、私、申し上げたわけでございまして、先方の政府が外交部の声明をいたしておるという事実は知っておりますけれども、日本政府は、政府と政府とのおつき合いがないわけでございますので、それに対しまして政府としてアクションをとる道はないわけでございます。
  180. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 尖閣列島の問題は、政府の答弁を聞いておれば、何ら国際法上にも問題はないということのようでありますけれども、中華人民共和国政府並びに台湾政府が、それぞれ台湾の一部であるということを主張して、どうしても領土権の主張を引っ込めないということになると、後々の問題としては複雑な形になるというおそれがあるんでありますが、それらの問題を解決をするためには、紛争が起きないようにするためにはどうしたらいいのかという問題がありますが、その点についての懸念は、いまのところ、ないというふうに、まあ確認をしてよろしいのかどうか、伺いたい。
  181. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) この問題が紛争の火種になることのないように、われわれは配慮していかなければならないと考えております。
  182. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 現在、この島に対して政府機関の人を配置をしているというようなことはございますか。
  183. 中江要介

    説明員(中江要介君) 現在、尖閣諸島に常駐の人員を配置しているということはございませんが、時宜によりまして周辺のパトロールは実施していると、こういうふうに承知をしております。
  184. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、まあ無人島の状態であるということですか。
  185. 中江要介

    説明員(中江要介君) 無人島ということでございます。
  186. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 漁業上の基地とか、あるいはそういったような用途に供されるということはないのかどうか、その点、お伺いしたい。
  187. 中江要介

    説明員(中江要介君) 相当昔は、漁場としてあの島が利用されたことがあったように記録には残っておりますが、現在のところは、ほとんど漁業上の利用価値というものはないというふうに聞いておりますし、一時は、あの島に特産の鳥の剥製をつくるというような産業もあったようでございますが、いまは、そういうものも継続されているということは聞いておりません。
  188. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先般、自民党の鍋島議員が東ドイツを訪問をされたということであります。これは、東独政府から正式に招待を受けて向こうのほうにおもむいて、そしていろいろと現地を回ってこられたということでありますけれども、東独との国交関係というものは、近い将来において樹立をされるという見通しがあるのかどうか。現在、どのような話が進展をしているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  189. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 東独との外交関係の設定交渉は、去る三月七日、モスクワにある日本大使館におきまして、日本側が新関大使、東独側がビットナー大使の間で第一回の交渉が行なわれまして、第二回の交渉は、昨日、三月二十六日、東独の大使館で行なわれておるはずでございます。展望といたしましては、実質的にむずかしい問題は私はないと考えておりますので、そう遠くない機会に外交関係設定の運びにまいり得ると考えております。
  190. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 鍋島議員が東独へ行って、その際に、河野参議院議長に対する招待状も向こうから受けてきたということなんでありますけれども、今後の東独との関係、これは、西独と東独と両方を、そうすると、承認をするという形になるわけでありますけれども、こういう形が、そうすると年内、近い将来に樹立をするというふうに確認してよろしいですか。
  191. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さよう私も考えて、心得ております。
  192. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 東西ドイツの関係がこういうかっこうになってきたという段階でもって、じゃ、近いところに目を転じて、南北朝鮮の問題はどうかということになってくるんでありますが、こちらのほうはどういうことになりますか。政府としての、たとえば北側に対する折衝、あるいは国交の問題についての話し合いということを進める準備があるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  193. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 東独の場合におきましては、東独と西独との間に基本条約が一応でき上がりまして、そういう関係を踏まえて、これは日本ばかりでなく、諸外国も、東独との外交関係を、西独との外交関係と並行して設定するという運びに漸次なりつつございます。  南北朝鮮の場合におきましては、去年の七月四日、自主的な、平和的な統一を目ざしての対話が始まったばかりでございまして、私どもといたしましては、この南北対話の進展状況というものを注目いたしておるわけでございまして、その進展に応じて、日本としての姿勢をきめてまいらなければならぬと考えております。目下のところ、国交樹立までは踏み切れませんので、文化、学術、スポーツ、経済等の関係分野で、漸次接触を拡大してまいるという方針をとっておるわけでございまして、いまその方針を変えるつもりはございません。
  194. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 鍋島議員にお伺いしましたところ、自民党の議員で東独を公式に訪れた人は初めてだそうでありますが、北朝鮮も、昨年は、やはり自民党の現在の閣僚が現地へ行っているわけです。かなり交流というものは、あらゆる面で進められてきていると思うのでありますけれども、東西ドイツの問題とは若干性格が違うかもしれませんけれども、しかし、東西ドイツよりもさらに近い距離にあるわけでありますから、南北朝鮮の問題も、日本が両国の国交正常化に役立てば非常にいいことだし、また、それができるできないにかかわらず、北との交流も深める必要があるんじゃないかという気がするわけです。単に、スポーツとか学界ということだけではなくて、国交樹立という方向に向かっていくためにはどんな障害があるのか、その障害というものはあまりなく、さらに前進をする可能性があるのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  195. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほどお答え申し上げましたように、南北の対話というものは、朝鮮半島全体の統一を平和的に統一したい、しかもそれは自主的に統一したいという道標をもって行なわれておるわけでございます。したがって、これは第三国がとやかく干渉すべき性質のものではないと思っておるわけでございまして、仰せのように、朝鮮半島の問題というのは、日本にとって非常に近接した重要な問題でございますだけに、この問題に対する対処のしかたは、十分慎重でなければならぬと私ども考えておるわけでございまして、その対話の進捗ぶりというようなものを見ながら、用心深く進めてまいるべきものと、いま考えておるわけでございまして、それが非常にスムーズにいくものか、非常に困難な過程を経るものか、そういう展望については、さだかにわからないわけでございますけれども、ただ、いま申し上げられますことは、その自主的、平和的な統一についての対話の進展というものをじゃましちゃならぬということと、それの進展ぶりを見ながら、関係の拡大はいま申しました分野におきまして、徐々につとめてまいるべきものであると、いま心得ておる次第でございます。
  196. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 外務大臣への質問は終わります。  大蔵大臣、労働大臣一緒にというつもりでおったのですが、大蔵大臣が見えてないし、労働大臣が先を急ぐということですから、しようがないから労働大臣のほうから先に質問いたします。  春闘の時期であって、いろいろ各組合で賃金引き上げ要求等が出ておるわけなんです。各組合ごとの要求というものは、労働省で承知している限り、たとえば、どういうところがどのくらいということがわかると思うのですが、その内容をまず報告してもらいたいと思うのですが。
  197. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) 春闘に関する賃上げ要求は、大きくくくりますと、春闘共闘委が二万円前後、それから同盟が二二%、一万五千円、公務員共闘が二万円以上、公労協が二万一千五百円以上、全官公が二〇%というふうになっております。各単産別の要求もございますが、全部読みますか。
  198. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 一応読んでください。
  199. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) はい。私鉄総連が二万円、鉄鋼が標準労働者一万三千円、合化労連が一万八千円ないし二万円、新聞労連が一万八千円ないし三万六千円、電機労連が十五歳四万二千円、二十五歳六万五千円、食品労連が二万円前後、それから同盟では、海員が外航二万四千五百九十一円、内航二万三千四十五円、造船重機労連が定昇抜きで一万四千円、電労連が三十八歳で一万八千四百円、全金同盟が一万六千円以上、全繊同盟が一万円ないし一万五千二百円、それから自動車労連が一万八千円というようなところがおもなところでございます。
  200. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大体において二万円前後、一万円以上、いわゆる五けたの要求が現実のものになってきておるわけです。これは、卸売り物価がずっと連続十三カ月上がっておる、したがって、そのはね返りは、いやおうなしに消費者物価に来るということは目に見えている。そんなようなことから、労働者の要求というものが高額になってきたのは、これはやむを得ないというふうに政府としても認めるものなのかどうか。労働大臣としての御見解はどのようなものでしょうか。
  201. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) いま政府委員から御説明申し上げましたように、今回は昨年に比べまして相当大幅な賃金の要求でありますが、一方、企業のほうは、ドルの切り下げで、円の相場制の移行というような関係で、数年前の不況のようなことを考えて慎重にやらなくちゃならぬと、こういうような意見もありますが、労働省は、いろいろな諸条件の問題について、これを認めるか認めぬかと、こういう点については、私一人でそれはどうだということは言いにくいので言えませんが、ただ、労働省としては、日本経済の発展に沿って労働賃金が改善される、値上げされるということは、これは当然望ましいことと考えております。この問題は、この間も組合の代表といろいろ私も会いましたが、やはり労使が自主的に話し合う、これは政府のほうも、民間も、組合も、もう同一意見であります。そういう意味で、自主的に労使が話し合って合理的な妥協点を見出すと。これに対して、これがどうだこうだといって、認めた認めぬとかいう、その事前に批判がましいことは労働省としてはいたしません。やはり、何といっても、経済の発展、国民的な広範囲な視野に立って、労使が自主的に妥当な公正な賃金の改善をされることを労働省としては望んでおります。  以上のとおりです。
  202. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 労働組合側の要求というのは、いわば、その低賃金、低福祉政策から脱却をしろということになると思うんですね。円の切り上げの問題にしても、円が切り上げになる、あるいはドルが下がるといったような問題がいろいろ出てきましたけれども、日本の労働者がせっせと働いて、その働いた報酬がそのまま十分に自分のふところに入ってこないで、しかも、それが円の切り上げの口実になるというようなことでは、はなはだ引き合わないわけです。したがって、その低賃金政策から脱却をするということは、日本の労働行政のあり方として、これはもう、むしろ当然のことというふうに考えていいんじゃないか。一々、どこの組合が幾らいいというようなことは、それは労働大臣としては言えないかもしれない。しかし、根本的には低賃金政策から脱却すべきであるという考えを大臣として持っていらっしゃるのかどうか。その点をお伺いしたい。
  203. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 先ほど私が瀬谷議員に申し上げたとおり、経済の発展に見合って改善されると。低賃金で現在あるかないか、これはいろいろな見方がありますので、低賃金をひとつ大幅に上げるということを労働省が認めよと、これはいまの段階で、なかなか微妙な段階でありまして、しからば、いま言ったようにドルの切り下げ、円のフロート制の移行、かようなことは、これはまあ企業のほうが申しておるんで、労働省としてはそれをとやかくこれも批判いたしておりません。いいか悪いかと批判いたしておりません。やはり、当然物価の上昇並びに経済の発展、あらゆる観点から考えて、これが改善せられることは私として望ましいと、こう先ほど申し上げたとおりで、春闘を目前に控えて、なかなか微妙な点がありますので、ちょっと申し上げにくい点がありますが、ごかんべんを願いたいと思います。
  204. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 その春闘を目前に控えて微妙だというのは、まことにどうもわからないわけですがね。しかし、おのずから要求には要求の根拠があるんですよ。だから、それはすなおに認めるということが必要じゃないかと思います。  そこで、大蔵大臣が見えておりませんので、これまた労働問題についてお伺いしますが、この間、動労の順法闘争なりストライキがいろいろと問題になりました。しかし、動労の中央委員会では、もし処分をされたら、さらに順法闘争で戦うということをきめているということなんです。そうすると、労使の間には、まあルールのない闘争が無限に続いていきはせぬか、こういう心配があります。悪くすると、どろ沼闘争になってしまう。こういう問題に対して、労働行政の責任者として、ただ、あれよあれよとながめているだけでは能がない。一体どういうふうにしたらいいかということは早急に考える必要があると思うのですが、その点はどうでしょう。
  205. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) お答えいたします。  あれよこれよと、こう見るばかりじゃなく、これはもうほんとうに日夜それに頭を傾倒いたしまして、あの当時などはほんとうにもう寝なかったんでありますが、しからば、組合側の言うこと、動労の言うことを全部うのみにすると、これは解決するかわかりませんが、これでは国鉄当局の管理運営、将来の発達、こういう点から考えても、これはなかなか無理だし、また、労使がいろいろな点で対立——二人乗車だとか、保安の安全だとか、いろいろな問題がありますので、その点に対して大臣として介入することはできないと。しかし、このままでどろ沼では困ると、こういう意味で、今後、何といったって、あのときにも申し上げましたように、労使がよく反省して、国民的な高い広い視野に立って、よく自主的に話し合うと。私はあの当時、そのときに感じたんでありますが、当局もこれはよくやっております、組合も熱心でありますが、やはり何だか、こう、そこに感情的なそごがあったのじゃないか。こういうような関係も見られますので、やはりよく双方が理解し合うことがこの問題の解決であり、そして、ああいうような緊急事態、国民に多大の迷惑をこうむらす、上尾事件を惹起すると、緊急事態になったときには政府は介入いたしましたが、でき得べくんば、正規な公労委でこれがあっせん、仲裁、調停と、こういうような方向で私は事件が解決することが望ましいので、やはり労使とも、日本のこの国鉄などの問題は、世界に類のない国民の貴重な足でありますので、この点からよく話し合って、困難な中にも双方が解決点を見出すと、これが一番この際妥当と思います。労働大臣が乗り出していって、政府がさっそく乗り出していって、的確な策があるかと言えば、これはその機に臨んだときにはやらなくちゃならぬときもありますけれども、現在はやはり労使が自主的によく反省して、そして感情を抜きにして、双方理解し合うというような立場に立っていただくことを大臣としては望んでおる次第でございます。
  206. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 その紛争解決の手続が、いままでの状態のままでうまくいくかどうかという心配があるわけですよ、これはね。うまくいかないから、こじれてきたというふうに見なければならぬわけです。ただ、こじれてきたんだから、うまくいかない原因は何かということを考えて、労働行政の面から考え直す必要があるんじゃないか。単に労使ともに反省して、だけじゃ、事は片づかないと思うんですが、その点はどうですか。
  207. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 労働行政のあり方からいたしましても、これは考えております。しかし、いまの法規上、私の考えていますことを、あの際どうするこうするというような実行が、なかなかあの状態では不可能でありますので、今後の機に臨み、そして情勢に応じては、いろいろ考えておることを抱いておりますが、いまさっそく、的確な、こういう方法があるからこうだということを申し上げかねる点をひとつ御了察を願いたいと思います。
  208. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この前の御答弁でも、公制審にゆだねて、その結論を待ってるという話だったでしょう。ところが、その公制審にゆだねてという話は去年から続けているんですよ。去年からことしになったって、ちっとも結論が出てない。だから、私がこれじゃ卵を産まない鶏と同じだと、こう言ったわけなんです。このまま、またことしも過ぎるということであれば、これは公制審そのものについて再検討してみなきゃならぬということになりはしないかと思うんですがね。ともかく労働省としては、現行の手続がこれでだめだったならば、よりいい方法がないかということを考える義務があると思う。公制審が結論を出さないで、いつまでもぐずぐずしてるようだったら、公制審そのもののあり方について、これは考えなきゃならぬということになるんじゃないかと思うんですが、その点はどうですか。
  209. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) なかなかこの問題は、総理も、ちらっとこう、新聞に出ておりましたが、いまの、現行の法規の公制審を否定するというようなことは私として申し上げにくいんでありますけれども、いわゆるこれは日本の労使の関係の最大のガンでありますので、これがどうしても解決しにくいという点については、政府としても責任があることでありますから、いろいろ皆さんの御意見も拝聴し、大いに皆さんの御意見を聞き、国会のいろいろな御意思も尊重し、そして対策が出る場合があるかもわかりませんが、現状として、軽々にこの問題に対しまして触れることは、これはまあ瀬谷議員から、ちっとしっかりせいと、こういうふうなおしかりこうむるかわかりませんが、この範囲でひとつ御了察をお願いしたいと思います。
  210. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 当事者能力が十分与えられていない当局と、スト権のない組合とが、ルール抜きで争ってしまってどろ沼闘争に入るということになると、一番飛ばっちりを受けるのは利用者なんですよね、ほかの企業と違うんですから。利用者が一番迷惑をこうむるわけです。ですからこれは、スト権を与えられないといったようなことでがんばっておりますけれども、スト権の問題は占領行政の遺物だと思うんですね。占領行政の遺物にそのまま政府が便乗しちまったということになると思う。しかし、スト権を与えないために、順法闘争などという手段が編み出されているわけですね。これを、今後問題が解決しないたんびに続行されるということになると、これはたいへんだと思うんですよ。そこで、国鉄は、財政再建の運賃値上げ法について、三方一両損という言い方をしてます。しかし、このスト権を与えないために起こっている現在の闘争では、これは三方一両損どころじゃないんです。闘争をやっているその組合のほうも、順法闘争というのは二時間で行くところを三時間かかるんだから、これまたたいへんなわけです。それから、当局のほうも、対策にどうやって手を打っていいかわからないで、うろうろするんだから、これまたたいへんです。それから利用者のほうも、毎日毎日時刻表を当てにできない状態になっちまうんだから、これまた、たまったものじゃない。と、三方一両損どころじゃなくて、三方みんな損になるわけです。だから、この三方みんな損の状態にしないために、たとえば、スト権を与えるなら与えて、半日なり一日なり、きちっとストライキをやって、その間に問題を解決するということができるようになれば、時間の点でも、利用者も得をするし、当事者も得をするし、ということになりはしないかということなんですけどね、そういう点をくふうする必要がないのかどうかですね。
  211. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 瀬谷議員のおっしゃるとおり、三すくみでありますが、三すくみの中にも、私は、三つの中で労使が国民的立場——国民の迷惑、これが私は、政治においても経済においても、あらゆるものにおいてこれが優先すべきものと思います。そういう意味で、スト権を与えてやったほうがいいでないかとか、いろいろ戦術を編み出したと、その戦術が国民に迷惑になる場合には、私は、あまりとるべき策と思いませんし、また当局も、やはりこの当面の重大性を考えて、これに対するいろいろな交渉をすると。あの当時、組合とも私三回話をいたしましたが、あの当時の情勢は、まあスト権の問題より順法闘争の問題、保安の問題、夜間のいろいろな問題、こういうのが主でありまして、つけたりにスト権もどうだというので、私は——これは加藤大臣の言でありません。日常、世評では、今回の順法闘争は当局にとってもマイナスであったと、運賃値上げの前に、どうも運賃の値上げに世論が悪くなる、国民から。また、組合のほうに対しましても、スト権をもらうという場合にああいうことをやったんでは、スト権が与えられぬのでないかと、スト権のない組合でもああいうことをやるのだから、スト権を与えたらどんなことをされるわからぬ、気違いに刃物というような意見も——これは私の意見でありませんが、世間ではそういうような批評をいたしておりますし、このスト権の問題は、もう私が再三申し上げたように、法律に基づいておる公制審に、政府がもう早く出してくれと委託をしたのでありまして、これがいま鋭意審議中で、すみやかに出ようという前に、いまお説のように、スト権を与えて、それに対する規制の方法をやったら、いまの順法闘争から国鉄の問題がすらっと解決するじゃないかと、こういうような御意見もあることは十分私拝聴いたしておりますが、しからば、いまスト権を与えたらいいか悪いかという点については、国民全体がこれに対して納得を得られるかどうか。これもなかなか、いま先ほど世評のうわさを申し上げたような、いろいろな難問題もありますので、やはりスト権の問題は、いまさっそくこれに対して公制審と別に政府がとやかく言うことは、これはなかなか困難であります。やはり公制審のほうも、この時局を認識して鋭意審議中でありますが、すみやかに結論を出して、その結論を見て公正妥当な結論に従って、政府として現時点を十分考えて、この問題に善処いたしたい所存であります。
  212. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これは、法律が内容的に不備であれば、守られないだけではなくて、こういう順法闘争のような妙なはみ出したかっこうになっちまう。で、おとなの考え方でこの問題を取り上げるのならば、二週間も三週間もこういう順法闘争のような、方法のない形でもってねばられるよりは、一日、二日のストライキでもって問題を解決するということのほうが、これはお互いに得じゃないかという考えに到達してもいいんじゃないかと思うのです。これはスト権を与えたらどういうことになるかというけれども、そのスト権を与えないために、順法闘争という戦術が出ているわけですね。そうすると、これは節度のないどろ沼闘争というものが、たとえば、処分をする、また順法だということになると、これは節度のないどろ沼闘争が無限に続くというおそれがある。だから、これはやはり、より悪い状態だと思うのですね。そのより悪い状態を避けるために、節度のある労使の慣行なり、問題解決のための手続というものをここに確立する必要があるんじゃないかということになると思うのですが、その点はどうでしょう。
  213. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 順法闘争も、またストの問題も、これは公労法で、もう違法であるというようなことになっておりますので、大臣がそれを認めたような、順法闘争もいいと、また順法闘争よりはストがいいでないかと、こういうことは、私からそういう発言は、これはせいと言うほうが、瀬谷さん、無理であります。違法のことをやってもいいと、そのほうがさっぱりしておるじゃないかと、組合の方々には——組合も御承知のように三つありまして、もうこんなのであったら順法闘争よりこっちのほうがいいというような、国民が迷惑せぬというような意見があることは聞いていますが、大臣から違法のことを、ええもうついでにこっちのほうがいいでないかと、これは言ったら、先ほど言ったスト権の問題もこれでたちどころに解決いたしますので——なかなか、そうは、私が簡単に申し上げられない点を御了察願いたいと思います。
  214. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 労働大臣に頭を下げられても、こっちも、そうですかと言うわけにいかないんですがね。たとえば、じゃあ、踏切事故の問題一つ取り上げてみます。踏切事故でもってダイヤが狂うと、これはもう順法闘争、ストライキ、一緒くたにしたような結果になるわけですね。たとえば、ことしに入ってから高崎線と東北線で踏切事故がどのくらいあったか、ダイヤが乱れるような踏切事故がどのくらいあったか、そのことを参考までにお聞かせ願いたいと思います。
  215. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 四十七年度の初めから去る二月末までに東北本線大宮−宇都宮間七十九キロ、踏切事故と申しますのは、死者——いわゆる通行者、自動車を含めまして死者十一名、けが人が同じく十一名、合計二十二名、踏切が百六十七カ所、それから高崎線大宮−高崎間、これも七十五キロ、大体似たような距離でございますが、死者十三名、けが人八名、計二十一名、踏切は百九十六カ所、大体大宮−宇都宮、大宮−高崎問で同じぐらいの数字でございます、これは念のため申し上げますが。
  216. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ことしになってから。
  217. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) はい、さようでございます。四十七年度になりましてからことしの二月まででございます。三月はまだ終わっておりませんから二月まででございます。これは国鉄職員は入っておりません。たまたまおりませんでした。これは全部外の、部外の通行者あるいは自動車のドライバーというふうな方々です。
  218. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 踏切は一体、たとえば何メートルに一カ所ぐらいの割りになりますか。
  219. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 全体で約二万キロございますので、いま踏切が三万ちょっとございます。したがいまして、六百メーターに一カ所ぐらい。これはずいぶん場所によって違いますが、ごく全国的に平均いたしますれば、二万キロを三万ちょっとで割りますので、約六百メーターに一カ所ということになります。
  220. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これは全国平均でも六百メーターに一カ所。そうすると、東京周辺の過密ダイヤを組んでいる高崎線、東北線になると、もっと間隔が短くなるだろうと思うんですね。それを一つ考えてみましても、じゃ、たとえば五百メートルおきに一カ所踏切があると、そこのところを危険だから徐行するということをされると、それがいけないと言えなくなるわけですね。で、また、こういう無人踏切をいまの急行は時速百キロぐらいで走ります。時速百キロでもって通過をする現行ダイヤが安全とは言い切れないだろうと思います。だから、こういう場合に安全第一に考えて、順法だというんでスピードを落とすということをされた場合に、これは取り締まりようがないです。いけないというふうにきめつけようがないわけですね。だから、これは順法は違法だなどと言うけれども、もしこれを安全に徹してやられたならば、一体どういうことになるか。それでもなおかつ、これはけしからぬというふうに言い切れるのかどうかですね。その点はどうですか。
  221. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) これはもう、先生よく御承知のとおり、たとえば踏切上に人影があるとか、あるいは車が来そうだというときには、これはもうすぐ停止手配をとりますけれども、見通しのいいところで、そしてしかも踏切上に何もないというところで徐行する理由はないわけでございます。もちろん、動力車の乗務員としましては、踏切その他、踏切といわず踏切でない線路上でも、何か異物がないかということは、しょっちゅう前方を注視する義務があるわけでございます。したがって、前方注視の義務の範囲内では、もちろん必要によっては徐行する必要もございますが、そういうとき、何にもないときに徐行するのは、これはいわゆる闘争手段としてやるとすれば、これは違法な手段であるというふうに言わざるを得ません。
  222. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 三十秒に一回ぐらいの割りで踏切があるわけですね、三十秒に一回ぐらい。だから、そういうところで安全に徹底されたら、なかなかこれ、ダイヤは正規に守り切れないことになっちゃう。そこで、根本的な解決方法としては、むしろ踏切を廃止をするとか、全部高架にする、立体交差にするということが一番根本的には必要だろうと思うんですが、そういうことをやるべきではないと思うんですが、まず、これは運輸大臣の考え方をお伺いしたいと思う。
  223. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 御承知のように、踏切の改良につきましては、何回か閣議でもきめまして、次計画を立てて実行しております。大体お話しのように、都市における踏切というものはだんだん立体交差になってまいりまして、今日では、これは多少数字に誤りがあるかもしれませんが、今日立体交差をしておる踏切の数が八百二、三十カ所あるんじゃないかと思います。国鉄といたしましても、これは民鉄のほうの関係もありますが、国鉄といたしましても、踏切の改良につきまして、立体交差それから構造改善というようなものを含めまして、四十八年度予算を見ましても、大体年間八十何億かの予算を用意いたしておるのであります。で、おっしゃるように、全部が立体交差というのは、これはまあ非常に安全でありますけれども、中には交通量の関係でそんなにまでしなくてもいいというものもあるわけでございます。だから、大きな都市であるとか、あるいはいなかであるとかいうことではなしに、そういう交通量の多いところは安全のために立体交差にするというのが望ましいのじゃないかと思います。御承知のように、現在では年次計画をもちまして、四十六年から五十年でございましたか、五カ年間に大体その危険な踏切というものは立体交差にするとか、あるいは構造改善をするとか、あるいは場所によりましては自動車の通行を禁止するような措置もとろうじゃないかというので、関係省の間で打ち合わせをいたしまして、それの年次計画をいま遂行しているという状態でございまして、これで足りるか足りないかところ問題でございます。で、だんだん交通量がふえまして、いままであまり車の通らなかったところも通るような道になってくる可能性もたくさんあるわけでございますから、そういった点をこれからも具体的に調査をしながらこの五カ年計画を遂行していけば、踏切に関する限りにおいて、そんなに大きな被害を招くようなことがなくなるんじゃないか。現に、踏切の関係の事故というものは非常に激減しております。なお、今後ともそういう方向で努力するのが適当であると、私はそういうように考えております。
  224. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 一昨日でしたか、私は高崎線の、国鉄と私鉄と並行している踏切のところで状況を見ておりましたら、私鉄と臨時列車と両方が前後して走る。その間何分ぐらい待たされたかわかりませんが、自動車のほうは一キロ以上渋滞をしてしまいました。こういう町中を踏切が平面交差で存在をするということがもう前時代的だと思うんですね。だから、今後の問題としては、少なくとも人口十万以上の都市は全部高架にして立体交差にするというくらいにしないと、渋滞をすれば待たされるほうはいらいらしますから、勢い、事故の回数も多くなるんじゃないか。したがって、根本的な対策として、大都市は全部立体交差にすると、特に交通量の多いところから順次それを進めていくという方針に徹底すべきではないかと思うんですが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  225. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) いまも申し上げましたように、その方向に向かって努力をいたしておりますが、今後とも、この交通量が非常に多くて通行者が非常に迷惑をしておるとか、また、安全度が非常に危ぶまれるというようなところは立体交差を実行すべきだと考えます。
  226. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この間の上尾の駅でいろいろと暴動が起きましたけれども、あの上尾の場合には、たまたま順法闘争という条件があったわけでありますけれども、そうでなくとも非常に混雑するところです。で、調べてみましたら、上尾と東京の間は三十八・五キロなんですね。それと同じ距離のところをこう調べてみると、常磐線でいえば我孫子です。それから中央線でいえば立川、総武線が千葉、京浜線が磯子、横須賀線が戸塚です。で、大体において横須賀線の戸塚以外は国電区間になっております。で、横須賀線にしても、高崎線とは全然違うわけです。十分以上間隔がなく電車が発着するようになっている。ところが、一方この上尾だけは、一挙に地方のローカル線並みに、昼間の時間帯では一時間以上待たなきゃならぬ。こういうふうに極端に差があるわけですね。したがって、上尾の問題は、少なくとも常磐線、中央線、総武線、京浜線、横須賀線並みに輸送力を増強しないと、今後やはり何かあればああいう騒ぎが出てくるんじゃないかという懸念があるわけでありますが、総裁としては、どのような策を講ぜられる用意があるか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  227. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 高崎線の問題につきましては、前回も御質問がございましたが、いま高崎線にいわゆる腹づけと申しますか、くっつけてもう複線を一本つくることはほとんど不可能だと私は存じます。つくるのならば離さなければいけない。離すならばむしろ新幹線をつくって、現在の高崎線を極力通勤に充当したいという考え方でいかなきゃならないと思いますが、まあ現在高崎線に特急、急行群が約二十数本——約三十本近く入っております。これが新幹線ができますれば全部なくなりますので、その分にたぶん五割増しぐらいの割合で列車が入るというふうに思っておりますし、さらに北陸新幹線ができますれば、それにさらに二十本ぐらいの列車が減りますので、若干ダイヤを調整いたしますれば、両方合わせると今後、現在の高崎線から急行、特急を全部抜きますと五十本以上の列車が入るというふうに考えます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり早く新幹線をつくって、そしていまの在来線をちょうどいまの東海道のように通勤専用に使いたいというふうな考え方を持っておりますが、それまでの対策といたしましては、前回申し上げましたように、とりあえずいま御審議中の来年度予算が成立し次第、約四十両の高崎線には特別な車がちょっと要るものですから、一一五Kという車ですが、この車をとりあえず予算成立し次第約四十両ぐらい発注するようにいたしたい。そういたしますと通勤時間帯に約一本から一本半ぐらいの列車がふえることになると思います。しかし、先般も申し上げましたように、さらに、上尾付近に何万という人口がふえるということになりますと、とてもこれはいまの私のほうの輸送力ではできませんです。もしやるならば初めから、どういうふうにしてそのお客さんを運ぶか、どうして入居者を運ぶかということをきちっと計画を立ててやらなければいけないというふうに考えております。したがいまして、さしあたり現在のダイヤに対しましてふやし得る列車をふやす、さらに根本的には、新幹線によって在来線をほとんど通勤輸送にしてしまう、これは東海道と同じでございます、そしてさらにそれのプラスアルファとして、先般御質問のございました、いま埼玉県知事から私のほうに一つの案として提示されている案について検討中でございますが、これらを総合的に考えなければいけないというふうに思っております。
  228. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 新幹線建設の前にやるべきことが多々あると思うんですね。いま、新幹線ができれば急行、特急の分がそれだけ浮くからということでしたが、ラッシュの時間帯は急行、特急が通ってなくてもぎりぎり一ぱいでふやしようがないというのが高崎線の現状です。これらの問題を一体どうするかということがさしあたっての問題です。武蔵野線ができる。したがって、武蔵野線の竣工を待って具体的に東京周辺に入るための輸送力増強を考えるということもこれは必要だろうと思うんですが、新幹線のためにそっちのほうも待ちぼうけを食うということではたいへんだと思うんです。それらの点について、当局として直ちに具体的な方法を考える用意があるのかどうか、お伺いしたい。
  229. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま申し上げました、埼玉県の知事から私のほうに御提案の問題は、その二つの問題を一挙に解決しようという、非常ないわば名案でございまして、いま私どもはそれを事務的、技術的に検討中でございますが、結局、線路のふやし方の問題でございます。したがって、線路をふやすには、やはり用地買収からいろいろございますが、そう家をつくるように簡単にはできないわけでございます。したがって、それまでは現在の線路でもってできるだけの輸送力をつけていく、あとは、やはりさっき申しましたが、新幹線と通勤輸送のうまいコンビネーションでもって考えていく、こういう方法だと思います。ことに大宮−赤羽間は、ごく最近やっと三複線になったばかり、これは一番輸送力の多い区間でございますが、これは東北線と高崎線が入っておりますのでそうなりますが、今後とも、さしあたりの輸送力の増強問題と将来の問題と二つに分けて考えなければいけないというように思っております。
  230. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) これは国鉄からは答えにくい問題でございますが、地下鉄の延長の問題がございます。御承知のように、六号線、七号線とも、一方は浦和まで、一方は大宮まで延ばそうという答申が都市交通審議会から出ておりまして、私のほうではそれに応じまして、大宮、また浦和まで延ばすのがよいではないかということで、大体その方向できめよかうと思っております。それをさらに、高崎線でございますから、さらに北に延ばしたらどうか、こういうような御意見も出るかもしれませんが、この点は、ただいまのところは、この大宮という駅が、私はしろうとでありますけれども、非常にこれは将来東北新幹線あるいは北越新幹線等々の中心になりまして、たいへんなこれは交通の中心になるわけでございますが、これを中心にして、どういうようにさばいたらいいのかという問題が起こってきておるわけでございますから、そういった問題との関連におきまして、将来この地下鉄の六号線、七号線というものをどこまでどういうようにして延ばすのがいいか、あるいはそうでなくとも、いま国鉄総裁が申しましたように、この新幹線と並行いたしまして通勤専用の路線を一つつくるということで、それを急いだほうがいいのか、そういったことを彼此勘案いたしまして、いまの混雑率の緩和を早急にはからなければならないというような考え方をもって進んでおるのでございます。
  231. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 地下鉄の六号線と七号線ですけれども、現在、大宮の駅にその地下鉄の六号線、七号線を入れるとなると、これは技術的に非常に困難だろうと思うのです。だからむしろ大宮を迂回して、地下鉄六号線を高崎線の上尾周辺に入れて、相互乗り入れを行なうようにする、あるいは地下鉄七号線を浦和でなくて東北線の蓮田近辺まで延長して東北線に乗り入れをする、そういうような方法をとれば、それぞれの高崎線なり東北線なりの線増をしなくとも輸送力をふやすということは可能になってくると思うのですが、それらの点は、国鉄だけではなくて、地下鉄がこれは入らなければならない問題なんですが、それは運輸省として考えていただくことができるのかどうか。
  232. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) その問題は検討に値する問題だと思って、先ほども申し上げたわけでございますが、ただ、この問題につきましては、相当に経費の問題がつきまとってまいりますので、それらの財政的措置というものとも関連をさせながら、今後早急に結論を出すべく検討を続けたいと考えております。
  233. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大蔵大臣、経済企画庁長官がお見えになったのですけれども、時間がなくなってしまったので省略しなければなりませんが、先ほど春闘の問題、それから労働組合の要求、物価の値上がり、今後の物価の値上がりに対して一体どの程度の賃金引き上げというものが妥当かということを聞いたわけです。しかし、労働大臣としては、なかなか立場上微妙な問題だということに、ことばを濁されたけれども、物価の値上がりの見通し五%だ、六%だと言っているけれども、過去において政府の見通しがそのままだったことがあるのかどうか。必ず狂っているわけです。それから言うと、実際の値上がりというものはどの程度になるのか。経済上のいろいろな情勢の変化というものはあると思うんでありますけれども、それと組合側の要求というものが、これは妥当なものと思われるのかどうか。これは認めていいと思われるのかどうか。その点もあわせてお伺いしたいと思うんです。
  234. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最近の物価の状況というものは、瀬谷委員指摘のように、非常に乱高ですね。下のほうがなくて、たいへんあちこちで高くなってきている。ことに卸売り物価が非常に最近高くなってきておりまして、どうもこの状況では相当に思い切った手を打たにゃいかぬのじゃないかというふうに考えておりまして、すでに二回目の預金準備率の引き上げ等行ないましたけれども、もう一手、金融の引き締めが必要なんではないかというふうに考えておるわけでございます。日銀当局においてもそれぞれ考慮しているように考えるのでございますけれども、さらに、それだけでなくて、いろいろな面からこの物価抑制策を考えなきゃなりませんと思いまして、まあ、先般来、国会へ提案しておりまするこの売り惜しみ買いだめに対する措置もその一環でございますけれども、それと関連いたしまして、国外の物価の状況というものも相当に高くなっておる。これも、輸入物価が高くなっておるというんで、悪材料でございます。しかし、円の実質的な切り上げということがデフレ要因として働いておりまするので、まあ、私どもいろいろ頭を悩ましておりまして、その間に、もう全体の総需要との見合い、あるいは貿易政策、また為替関係の変動の量等、いろいろ考えまして、何とか見通し内におさめたいと考えておりますが、卸売り物価のほうがなかなかちょっと……。御承知のように、二・二と言っております。昭和四十七年末が二・二で、四十八年度が二・〇、これがなかなか努力を要すると存じます。小売り物価のほうは、五・三ということが四十七年度末でございますが、これは、いまのところ何とかいけるんじゃないかというふうに考えておりますが、ただ、卸売り物価が上がったことがすぐに小売り物価に影響するという面もございまして、その点から、四月以降、またこの高い状況がどうなっていくかということで、この年度平均五・五というものを何とかおさめ込みたいと思って努力しているわけでございます。  そこで、いま御設問の春闘賃金の問題でございますが、これは、まあ、私も少し前に労働関係に携わったことがございまして、やはりその時以来、労使の関係というものは労使が自主的な立場で団交してきめるもんだという、これは鉄則であるというふうに考えておりますし、それからまた、その賃金の決定というものも、やはり国民経済的な視野に立って決定さるべきだということを申しておりまするので、私もこの立場がよろしいと思いまして、当局として幾らが妥当であろうということを申しますことは当を得ないことだというふうに思っておりますので、この点はひとつごかんべんを賜わりたいと思っております。
  235. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先般、土地の問題について総理にいろいろと質問したんでありますけれども、まあ、土地の値段が下がらなかったら責任とるというように言われたんですけれども、やはりこれは田中総理の責任という問題じゃなくて、これはきわめて重要な問題だと思うんです。したがって、だれが総理になろうとも、万難を排してやらなければ、これはもう破局的な状態になってくると思うのですね、土地の問題は。したがって、その抜本的な対策というものはここに確立する必要があると思うのですが、土地問題について今日までの政府のほうから発表された見解は、どうもまあ大手術を要する重症でありながら、その対症療法が、何といいますか、塗り薬か、マッサージか、おまじない程度、これじゃ根本的に解決がつかぬだろうという気がいたしますけれども、思い切った私権の制限に踏み込んで土地対策を講ずるという気持ちがあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  236. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 瀬谷委員が御心配いただきますように、私も同様に考えておりまして、この土地の問題というのはたいへん重要でございまして、何とかせねばならぬ問題でございますが、根本的には、土地というものは一般の商品とは違って、これは公共の福祉と切っても切れない関係にあるものであるという認識をもちまして、であるから、土地の所有権というものは別といたしまして、土地を利用する権利——利用権というものは、これはもうきびしく公共の福祉のために制限せらるべきものであるというふうな観点に立っておるわけでございます。その観点に立ちまして、きょう閣議決定をいたしまして、国土総合開発法というものを決定いたしたのでございますが、この構想というものは、とにかく土地の利用全体で三つに区分いたしまして、普通の市街化区域の中におけるものと、それから市街化区域外の都市計画区域というものにおきまするものと、それからそれ以外の区域におきまするものと、これを二千平方メートル、それから五千平方メートル、一万平方メートル、こう、それぞれに分かって、それ以上のものは届け出をする、こういうことにいたしておるわけでございますが、この届けして、知事に届け出をする。で、知事は市町村長あるいは委員によって構成される審議会の意見を聞いて、そしてこれの中で不適当なものがあれば、これに対して勧告をする、その用途には不適当であるということを勧告をする。その勧告がいれられざる場合には、公表して大衆の批判にさらし、その大衆の批判によって適正なる用途に向けられるように誘導するということでございます。そのほかに、さらに特別規制区域というのを設けまして、これはインターチェンジの周辺であるとか、あるいは非常に新しく発展する市の中核となるべきところであるとか、そういうものをきめまして、これは知事がきめるわけでございますが、きめると同時に、内閣総理大臣の認可を得るというふうなことにしておりますが、これは一種の凍結でございまして、これによりますと、この期間は三年間、そうして必要があれば二年間延長するということになっておりますが、これで凍結をいたしまして、妙なものに使われないようにする、こういうことにいたしておりますわけでございます。一方、土地税制というものは、これがまた、国の税と地方税とに分けまして、土地保有税と土地譲渡税に分けまして、一般の会社でございますれば、その法人所得の上に二〇%乗せるから、大体七割は税金として納めるようになると、そういうようなことをきめたわけでございます。これはもう非常に大ざっぱに急いで申し上げましたので、幾多脱落しているところがあると存じますが、要は、冒頭に申し上げましたような土地の利用というものは、これ、公共のためにせねばならぬ、こういう気持ちを持ってきているわけでございます。  そこで、まあ一ころ非常に過熱ぎみでございました土地ブームというものが、やや鎮静してきたかに見えるわけでございます。で、これは一方に過剰流動性というものがございまして、例のドルを買いささえた、それから来る外為資金の散布超が大体五兆円、それからそれを根っことして金融機関が貸し出した、あるいは不況であるからもっと景気をつけにゃならぬという意味で貸し出した、これが三十兆円、そのくらいございまして、これがまあ非常に景気刺激になっておりましたのを、いろんな面で押えてきた。で、土地に対してのいろいろな、政府が本気でこれを押えるぞというような姿勢、あるいはその根っこである過剰流動性がだんだん吸い上げられてきた、ということ等から、多少この土地の問題で変化が起きているやに私ども感じておるわけでございます。三月二十六日の日本経済に「土地売り手市場に変化、業界買い控え機運」というのが出ておりまして、私ども、ややこれは効果が出てきたんではないか。こういう機会に、政府と言わず、政治に携わる方々の皆さまにお願いして、むしろ超党派的に、土地というものは買ってももうからぬものなんだと、これは一般の人たちのためにこそ利用さるべきものであって、土地でもってもうけようなんとする者は非常に性根の悪い根性なんだというふうなことを、みんなお互いで周知徹底せしめることによって、この土地の異常な騰貴を押えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  237. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まあ、思い切った方法とすれば、政府が業者から土地を全部強制的に買い上げて、その政府自身が、土地を必要とする者に提供するというような方法をとる、あるいは、首都近辺の土地の値上がりということを考えたならば、この経済社会基本計画にも書いておりますけれども、首都の機能の配置について調査を進める必要がある。平たく言えば、政府を東京からどこかへ持っていくということでしょう、これは。これについては、かつて河野建設大臣の当時にそういう案が出されたことがあるんでありますけれども、これは単に考えるということだけじゃなくて、本気になってやれば、えらいセンセーションを巻き起こすと思うし、土地の価格にも変動を生ずると思うんでありますが、単に思いつきではなくて、そういう考え方があるならば、政府自身が思い切った方策を、ここで打ち出すべきではないかという気がいたしますが、その点、どうですか。
  238. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は、一月元旦に宮中に参内すること毎年でございますが、するたびに、一月元旦は、自動車がゴーストップにかかるだけで、宮中にそのまま直行できる、そうして東京の空は澄んでおる、あるいは私のうちから富士山がよく見える、こういうようなことを考えてみますと、ちょうど元旦の日は、東京から三、四百万の人が、外に出ておるのだろうという、私は、感じがいたしておるわけでございます。そこで、東京から三、四百万の人口を間引きするところに、いわゆる東京の再開発というものがあるんじゃないか。それには、学校を移転するという問題もなかなかむずかしい問題もある。その他、工場の移転といってもなかなかむずかしい問題もある。率先して行政の府が、あるいは国会が、あるいは資本が、こういうところで移転をすることによって、ひとつ範をたれると。実は、その問題につきましては河野構想というものがあったわけですか。河野さんも残念なことに、おなくなりになりまして、そこで、実はアンケートをとって、国民の大部分はどういう考えを持っておるのかということで、そのアンケートを一万人とるべきであるか、一万五千人とるべきであるか、そういうようなことを考えて、そのまたアンケートのとり方はどういう方法でとるべきであるか、百キロ圏内に重点を置くべきであるか、全国を平均してやるべきか、いまその問題を検討をいたしておりまして、そこで、アンケートをとった結果、国民の大部分がそれを望むのであるならば、調査会でもつくって、そうしてまた国会の先生方にも御協力をいただきながら、この問題を掘り下げてみたいと、こんなように考えておるわけでございます。
  239. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 このアンケートということでございますけれども、やはり具体的に——これはいまのお話だと、全く試案の試案という範囲を出ていないようでありますが、しかし、この深刻な土地問題を考える場合には、やはりそれは思い切った決断を下して、具体的に検討を進める価値があるのじゃないかと思う。そういう考え方がこれはおありになるのかどうか。経済社会基本計画そのものにも載っておりますから、その点を十分にお聞かせ願いたいと思うのです。
  240. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 試案の試案とおっしゃられれば、試案の試案ということにもなろうと思うのですが、前向きでひとつ、私は、しかしこれは慎重にやらなければならぬということだけは確かであろうと思います。国民の考えはどこにあるかと、そこを十分にひとつ把握しながら推し進めてまいりたい、こんなように考えておるわけでございます。
  241. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ、非常に大問題でございますので、慎重の上にも慎重にやるほうがいいというふうに考えてはおります。しかし、基本計画にも書いておりますところでありますし、八百五十万円の調査費をつけまして、まあ主体は首都圏整備委員会でございますわけです、建設大臣がやはりその整備委員会を監督していらっしゃるわけでございますから、十分に慎重に御調査を願っていきたい、こう考えておる次第でございます。
  242. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて瀬谷君の質疑は終了いたしました。  次回は明日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十六分散会