○
政府委員(
吉國一郎君) お答えいたします。
もともと「当分の間」という用語は、法令の上では不確定の期限をあらわす
意味で使っております。たとえば戦後の法令で申し上げますと、いまの
地方自治法の附則第八条のほかに、罰金等臨時措置法第一条、これは罰金や科料の額等が、戦前の立法では、非常にその後の貨幣価値の変動によって合わなくなりましたので、罰金や科料の額等に関する特例を定めております。これは
昭和二十三年に制定をされましたが、「当分の間」ということで、「当分の間、この
法律の定めるところによる。」というような
規定をいたしております。また、検察庁法のこれも附則でございますが、第三十六条で、区検——区検と申しますか、区の検察庁の検察事務官に、検察官が不足するような特別の場合には、「検察官の事務を取り扱わせることができる。」というような
規定、これは例外でございますけれ
ども、そういうような
規定がございます。また、戦前の例で申し上げますと、「当分の間」ということばのかわりに、昔は「当分ノ内」というようなことばを使っておりましたけれ
ども、たとえば
日本銀行法の第七十五条では、
日本銀行が保有しております金の地金だとか、金貨の評価のしかたを特例を設けております。これは
日本銀行法が
昭和十七年でございますが、
昭和十七年以来、いわゆる「当分ノ内」ということで、その特例は生きております。さらに非常に古い例を申し上げますと、明治四十一年に現行の刑法が施行されました。その刑法が施行されましたときに、それまでの旧刑法、これは太政官布告で、明治十三年に制定された、
法律と同じ効力を持っている法令でございますが、その旧刑法の中の、公選の投票の偽造に関する罪というような一連の罪を、刑法施行法で、なおその効力を有するとやっております。明治四十一年に、なおその
法律としての効力を有すると、「当分ノ内」効力を有するとしておりますから、今日まで、明治四十一年というのは一九〇八年でございますから、もう非常に長い間存続している。それでは一体、「当分の間」あるいは「当分ノ内」というのはどういう
趣旨であるかということになりますと、要するにこれは臨時の措置を定めたものであって、いずれは将来改正または廃止が行なわれるであろうということを
法律は予想していると思います、あくまで臨時の措置でございますから。しかし、その改正なり廃止なりのための
法律が制定されるまではなおその効力を有するということでございます。
法律で、臨時の措置ということでそういう文言が入った
規定があります以上は、あくまで臨時の措置として、できるだけ早く恒久的な制度に変える必要があることは
法律の
規定からうかがわれるところでございますけれ
ども、具体的に、それではいかなる改正措置なり廃止措置を講ずべきかということについて、先ほど来
関係四大臣からお答え申し上げましておりますような事情がございまして、具体策が立たない以上は、やはり改正または廃止の措置がとれない。とれないで、
法律が、改正の措置がとられない以上は、そのまま存続をするということが
法律の解釈に相なるであろうと思います。