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参考人(島田賢一君)
最初の御
質問の、いまから患者さまといろいろとお話し合いをさしていただくわけでございますけれ
ども、そのことにつきまして、いま先生のおっしゃいましたように、なるべく早く迅速にものごとを片づけるのが本旨でありますし、会社といたしましても、判決が出ましたあとでなおかつそういうことで時間をとっているのは好もしいことではありませんので、御趣旨に沿った処置をいたしたいと思いますけれ
ども、ここで会社が
一つひっかかりますのは、私は昨年から
考えておりますことは、すべての患者さんに公平なる補償をしなければならぬ。患者さんの間に、あの人はたくさんもらった、自分は少なかったというふうなことがあってはならぬと。したがいまして、それは、公平なというのは均一なということではございません。先ほど申しましたように、補償というのは、個々の人の状態に合わしてのことなんだけれ
ども、もらう金額は多少違っても、個々の人
たちがおのおの、ある人はあれだけであっても、あれは多いけれ
ども、まあ当然だというふうに納得していただける補償をしなければならぬ。それには、いろいろな一定の基準がありますから、基準といいましても、一番大きいものはやっぱり症状
関係になるかと思いますけれ
ども、そういうふうに公平な補償をさしていただきたい。ところで、原資が幾らでもありましたら、この補償はできます。先ほど言いましたように、あと千人になるのか千五百人になるのかわからない患者さんを控えておりまして、いまここで私のほうの
範囲内でできるだけの補償をして、あっと言って、あとで出てくる患者さんに補償ができなくなったら一体どうするんだと、チッソという会社は。それでおまえは患者さんに対する補償を責任をとったということになるのかと。隆々とした会社でございましたら、このようなことは
考えなくても済むわけですけれ
ども、先ほど言いましたように、千人になるのか千五百人になるのか、人によっては三千人になるぞと、場合によったら一万人になるぞというようなことを言う人がおりまして、一万人にもなったらとてもじゃないけれ
ども私のほうだけではやれないのはさまっておりますけれ
ども、そうしますと、そういうことにひっかかってどうしてもそんなに即断できないことが出てまいります。これが非常に渋るという形に見えてまいりますことは残念です。まあここで私
どもが払えなくなったら一体どうなるんだろうかと。そうすると、あとで出てこられる患者さんは一体だれが補償金を払うんだろうかと。それから払えなかったらあとで出てくる患者さんは泣き寝入りをするのかと、いろいろな問題がございます。ここらの問題をさばきませんと、会社としての
態度は渋ったようなかっこうにならざるを得ない。早く片づけたいのですけれ
ども、問題の大きな重点はそこにあると思います。これが
一つでございます。
それからもう
一つ、労働組合の分裂しておりますことは、会社といたしましてまことに残念なことであります。まあ、いろいろと、労働組合の方方の中にも、会社が分裂さしたとか、いろいろなことが伝えられておりまして、そういうふうに
考えておられる方もおありのようですけれ
ども、これは三十七年——十年か十一年前の労働争議の際に発生したことでありますけれ
ども、残念ながら、現在では、あまりに長い百八十何日かの大争議で、いまの新しくできた労働組合が工場の中に籠城をしまして、外へは出られずに、それこそ、私はシベリアの捕虜になっておったことがありますけれ
ども、私がシベリアの捕虜になっていたと同じような状態で工場の中で籠城をしながらある
程度の生産を続けた。そういうものがずっとしこりになっておりまして、なかなか気持ちの上で和解できない。会社としては何とかこれの和解をはかりたいわけですけれ
ども、先生のおっしゃるとおり、私も何とか和解をしてもらったほうがいいと思いますけれ
ども、いまの感情疎隔がございましてなかなかこれが会社の思うようにまいりませんので、まことに残念ですけれ
ども、工場の生産が、故障も起こさず、事故も起こさず、けが人も出ず、しかも生産の効率をあげるのは、労働問題が平穏であるといいますか、非常によくいっているということでないと会社の業績もあがりませんので、私のほうもその
考え方で処置したいことはもう念願しているわけですけれ
ども、そういう問題がございますので、その点はひとつよく御承知おきをいただきたいと思います。過去に三十七年から三十八年にかけてそういう長期の大争議をやったのがよかったか悪かったかというふうなことは、これはもう過ぎ去ったことですから、そんなことをいまとやかく言ってみてもしかたがありませんので、いまから何としてこれを融和するようにしていくかというのが今後の会社の労働政策の基本であることは、先生のおっしゃるように、そういうふうな基本でもっていきたいと思います。ただ、
両方に分かれた方々ですから、どうしても中庸を歩むというのが会社としてもなかなか政策的にむずかしくなるものですから、いま御指摘になりましたような
状況が出ておりますことは、私も重々承知しておりますし、まことにこれは遺憾なことであるというふうに思っております。