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1973-03-15 第71回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月十五日(木曜日)    午前十時九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 徳永 正利君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 山崎 五郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 川村 清一君                 小林  武君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 安永 英雄君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 加藤  進君                 青島 幸男君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大蔵大臣臨時代        理        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        郵 政 大 臣  久野 忠治君        労 働 大 臣  加藤常太郎君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   金丸  信君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      江崎 真澄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       坪川 信三君        国 務 大 臣       (行政管理庁長        官)       福田 赳夫君        国 務 大 臣       (防衛庁長官)   増原 恵吉君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田佳都男君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        科学技術庁長官        官房長      進   淳君        科学技術庁計画        局長       長澤 榮一君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        社会保険庁年金        保険部長     八木 哲夫君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省住宅局長  沢田 光英君         —————        会計検査院長   白木 康進君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君    参考人        日本銀行副総裁  河野 通一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  理事会におきまして、本日からの総括質疑順位につきましては、お手元に配付いたしました質疑通告表順位とすることに協議決定いたしました。  そのように取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これより、前回に引き続き、質疑を行ないます。小林武君。(拍手)
  5. 小林武

    小林武君 総理にお尋ねいたしますが、総理と自民党の宮澤さんの質疑速記録で見まして、たいへん印象が深かった。総理政治姿勢なんというようなことで聞くよりかも、政治理念ということでお聞きしたいというような気持ちを起こしたわけであります。その際に宮澤さんからもお尋ねになっておりますが、難問を解く処方せんがないという、こういうくだりがあるわけでありますけれども、難問を解く処方せんがないというのは、その難問とはどういうことでございますか。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 難問を解く処方せんがないということよりも、過去の歴史において、日本歴史において、このように明確に相異なる重大な問題がぶつかってきて、お互いに相反するような情勢に対してこれを一どきに解決しなければならない、こういうようなことが過去に大きな例を見出すこともできない、こういう趣旨のことを述べたわけでございます。  その一つは、国際収支改善改善というよりも、いままで国際収支改善というのは、外貨不足に悩んでおった日本が、国際収支均衡という中に外貨をためるということが主にされておったわけでありますが、今度はそうではなく、蓄積された外貨をいかにしてうまく使うか、しかも、国際収支均衡を保持するというのは、輸出拡大ではなく、輸入の拡大輸出を押えなければいけないというような、いままで考えてきたようなのと逆な問題が起こっておるわけでございます。  また、もう一つは、物価を安定せしめなければならないという問題にありながら、国際収支改善のためには輸出を内需に振り向けなければならないということで、その意味では物価抑制とはある意味で逆な政策拡大政策をとらざるを得ないという問題が起こっておるわけであります。その上なお、社会資本充実とか、社会保障充実という新しい問題を、計画的に、新しい立場と視野と角度から急速に社会保障政策拡大していかなければいかぬというような問題を、同時解決を迫られておるというようなことは、こんな顕著な状態はかってなかったと、こういうことを申し上げておりまして、過去にその例を求めることができない、こう、すなおに述べたわけでございます。
  7. 小林武

    小林武君 大体、質疑は前段と後段の二つに分かれておりまして、前半に関しては、そういう内容よりも、むしろいま当面している外交上の問題を中心にしたことについての答えなんです。  そこで、私は、非常にそこで注目いたしましたことは、まあ日本の過去の、戦前の、昭和の初めのころのある種の日本の国の栄光の時代とでもいいますか、そういうものから——これは総理、書いているんですから、ぼくが言っているのじゃないですからね。——それから、十六年から二十年までの間のどん底に落ちたことを指摘されている。そしてまた、いま振り返って見ると高い稜線の上にわれわれは立っているという、そういうことを述べて、一歩誤れば重大な段階になるという、こういう論旨の進め方なんです。これについては、単に経済、財政の問題だけではないということでありますことは、その後半のところにいってから述べられているところが、いわゆるベトナム戦争の問題、アメリカベトナム戦争にとった態度、そういう問題に触れているわけですけれども、その点は、あれですか、あなたの難問のうちには入っておらないわけですか。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 長いこと続いてきた二次戦争以後四半世紀余にわたってきた力均衡、これによって平和を維持しようという状態から、ベトナム戦争終息という事態、やっぱり力による平和にもおのずから限界というものを見出して、世界は新しい世界スタートした、その中で日本が果たさなければならない役割りも当然あるわけでございますし、また、外交的に見ましても、いままでは、言うなればいまよりも単純な外交基本があったわけでございますが、今度は分裂国家というものもありますし、東西の接点において困難な問題が起こっておるし、いまその大きな問題の中で、三つ残っておった、ヨーロッパにおいては独ソ条約というものも締結をせられたり、話し合いがだんだんと進んで平和の方向に向かっておる、また日本の近隣における南北朝鮮の問題も話し合いが進んでおる。日中の間にも国交正常化ができた、そして世界が注目しておった南北ベトナムの問題もついに終息に至ったと、こういう新しい事態は、歴史的に考えると非常に新しい事態であり、処理にはむずかしい問題でございます。しかし、その中で平和憲法を持って四半世紀やってまいった日本方針誤りでなかったと、しかし、これから現実的な問題に対処して、平和に寄与していく過程においてはもろもろの困難も存在する、こういうことはそのとおりでございます。
  9. 小林武

    小林武君 そこで、この問題について、先ほど来申し上げているように、非常に私は注目したわけですからお尋ねいたしますが、第二次世界大戦あとベトナム戦争というものをわれわれが見た場合に、世界の大きな歴史の流れで、この戦争はわれわれに何を教えたかということ、あれだけの犠牲を払いながら、いまアメリカ一つ挫折感を持って、国民をあげてそういう挫折感を持っているということも言える。これについて一体総理はどういうふうにお考えですか。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げましたように、やっぱり力による解決ということではなく、話し合いということによらなければならないということの一つスタート結論を得たものであり、新しい歴史スタートをなすものだと、こう考えておるわけであります。これはアメリカ北ベトナムというのではなく、そこにも述べておるとおりでございますが、非常に長い混乱が続いたわけでありますが、その背景には中ソという大きな勢力が存在しておったことは否定できない事実でございます。米ソ戦わば、中ソ戦わばなどということを言われてもおりますし、いろいろなこともございました。過去においては、キューバの問題に対して一触即発を思わせるような事態もあったわけでございますが、しかし、ベトナム問題に対してはほんとうに力の大きな、南北の問題というよりも、米中、米ソというような勢力が長い長い混乱を続けたということは、これはもう何人も認める事実であると思うわけでございます。そういう意味で、まあしかし、お互いがここで決着をつけることが平和を維持するゆえんでもないし、問題を解決することもできないという、一つの、挫折感というよりも、一つ結論を得た、人類の英知がやはりつくり出す一つ結論だと思っておるわけでございます。
  11. 小林武

    小林武君 そういうアメリカのいわゆるベトナムに対する態度、その他世界の各所におけるアメリカ政策というものを一つの教訓としてながめ、われわれ日本国民のこの種の問題に対する選択をするにあたって、総理はどういう考え方をお持ちでございますか。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 申すまでもなく、私は、施政方針演説で述べましたとおり、平和憲法を確保しながら二十五年間、四半世紀余にわたってきた日本基本的な考え方誤りでなかった、これからもやっぱり平和主義を貫いてまいらなければならないし、世界平和維持に関して日本が応分に寄与し、貢献してゆかなければならないという面についても、いままでより積極的に持てる力、経済力技術力等を投入しながら平和に寄与してゆく基本的な姿勢はこれを推進すべきであると、その感をますます深くしたわけでございます。
  13. 小林武

    小林武君 そうなりますというと、日本に自由な選択余地があるわけでございますから、安保体制というようなもの、安保条約というようなものに対して、少なくとも武力をもって相手方に対する、いわゆるベトナム戦争の二の舞いのようなことに立ち至ったならば、安保条約が締結された場合はたいへんな支障を来たすわけでありますから、それを改めるということは十分あり得ると、こう判断してよろしいですか。そういうお考えの上に立っているということですか。
  14. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 安保条約というものを締結した基本には、国連等機構世界平和維持に至る完ぺきな状態ができるまでの間ということでございまして、これは相手のあることでございまして、日本が言っておりますように、国連がそのような機構を完備すれば、お互いが、どこの国もみずから大きな軍備を持つというようなことはないわけでございますが、しかし、ヨーロッパにおいても、やはりNATOがあるとともにワルシャワ条約機構という、そういう状態の中にヨーロッパの平和が築かれておるわけでございます。また、どこの国でも、いま自分の国だけで守ろうというのではなく、世界のほとんどの国々、しかも、大国でも複数以上の安全保障体制というものをとっておるという現実でありますから、いますぐ中立政策をとらなければならない、またとり得るんだという聞えは持っておらないわけでございます。また、中立を宣言しておる国でも、複数以上の安全保障体制を確保しておりますし、自衛力は持っておるわけでございますから、それはやっぱり相対的に、地球の上における状態人類のものの考え方そういうものがどのような結論を得てゆくかという過程においてだんだんと対応して考えるべき問題であって、私は、現時点においては、日米安全保障条約をどうする、手をつけていろいろ検討する、再検討をするというようなことは考えておりません。いまの状態においては、日米安全保障条約を依然として維持してゆかなければならないという基本に対しては変わっておりません。
  15. 小林武

    小林武君 初めの考え方あとのお答えとはだいぶ違うんですがね。自由な選択があって、先ほど、いま人類というお話がございましたけれども、人類という立場に立ってものを考えるとなったら、むしろ国と国との関係よりかもっと高い立場の次元の話になる。そこまでお考えになったならば、どうなんですか。いまの段階では、総理としては、どんな場合でも安保と道連れにどこまでも行くという、こういうお考えですか。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日米安全保障条約はこれを維持していくということに対しては、全く変わりはありません。しかし、日本国際紛争武力解決することはできないという憲法の明文もございますし、日本の自衛隊は全く専守防衛、もう混乱をせしむるなどということは全く、外に対して影響を与えるということは全く制限をされておるのでございますから、現状を変える必要はない、現状を変えてはならない、このように考えております。
  17. 小林武

    小林武君 これでやめますけれども、安保条約というものは一つ拘束性を持つわけです。このことはもう申し上げるまでもない。その拘束性の上にあなたの理想というものは実現できないと思うんですがね。政治理想というもののあれはできないはずです。国民のためにもそうできないはずです。安保とどこまでもいかなきゃならぬということをすでにもう大前提に置いてこれからあなたは外交その他の政策をとっていくと、こう理解してよろしいですか。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 安保は依然として堅持をしてまいるということは変わっておりません。安保を堅持しておっても、ものは片づかぬというわけはないんです。安保があるうちは日中の正常化はできないんじゃないかといっておったが、ちゃんとできました。日ソの間でも第二回の交渉は続けようと、こういうことでございまして、それはその国その国のやはり自主的な判断があるわけでございますから、日米安全保障条約を前提にしておりながら、理想達成に邁進すべきであるし、それは可能であると、このように考えておるわけであります。
  19. 小林武

    小林武君 まあ一言つけ加えますというと、これは幾ら言っても安保に取りつかれているようですから、これ以上のことを進めてもだめでしょうけれども、この論争の中に、私は注目していいのは、やはり第二次世界大戦のわれわれの経験、その後の、第二次大戦後のアジアの問題、その他国際的な間における紛争の問題、戦争の問題をとらえて、あなたのお考えの中にも、いまや、やっぱり全面的に平和になったということは言われないと思うんだけれども、その中に日本国民がいま一体占めているこの平和のあれをくずさないということのためには、少なくともいまの指導者というのは非常な大きな責任指導力を持っている、持たされておると、こう考えるべきだ。その場合に、安保というものがその大きな理想の前にどうしても必要なこととは私は考えないのでありますが、この点はあなたと私は考え方が違うし、時間もありませんから次に移りたいと思います。  中国大使館のあれがきまったようでございますが、外務大臣、どういうぐあいになっていますか。中国大使館、何かそういうニュースがあったんですが。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 去年の九月の共同声明におきまして、双方大使館設置するということに合意をいたしまして、その設置につきまして、双方政府がそれについて協力し合うということになったのでございます。その後、中国側におきまして、わが国の大使館設置につきましていろいろ御心配をいただきまして、執務支障のないように、今日暫定的でございますけれども、大使館設置されておりますことは御案内のとおりでございます。在東京の中国大使館でございますが、当面ホテルを借りまして暫定的な執務体制にあるわけでございますけれども、先方からは、旧中華民国大使館あとを使用いたしたいという希望を寄せられたのでございまして、日本政府といたしましては、日本におきまして、中国の名におきまして権利を行使する立場にあるのは中華人民共和国政府と承知いたしておるわけでございまして、そういう意思を先方が固めておる限り、これに対して異議を差しはさむ余地はないものと考えております。
  21. 小林武

    小林武君 異議を差しはさむべきではないという程度のものなのか、これは日中共同声明の第四項の約束事項とお考えになっているのか、どっちですか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) すべてのことは、日中共同声明の精神によってやってまいっておることでございます。ただし、新しく国交正常化されましたので、そのラインに沿いましてすべてのことを措置していかなければならぬことは当然だと思います。
  23. 小林武

    小林武君 どうもはっきりしないのですが、あれですか。向こうのほうはそれを希望した。それで日本は、第四項によっての約束事項であるから、このことは、中華民国大使館のあれを使うということについて、全くそういう決定をしたと、これは考えてよろしいですか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 旧中華民国大使館は、日本所有のものではないわけでございまして、いわゆる中国所有なんでございます。そして、先ほど申しましたように、日本におきまして正常化の結果中国の名において所有権を行使する立場にありますのは中華人民共和国政府であるという立場をとっておるわけでございまして、私ども日本政府がそれについてとやかく申し上げる立場にないわけなんで、中国の財産なんでございます。
  25. 小林武

    小林武君 共同声明の第四項の中に、「両政府は、国際法び国際慣行に従い、それぞれの首都における他方の大使館設置及びその任務遂行のために必要なすべての措置をとり、また、できるだけすみやかに大使を交換することを決定した。」とあるわけですが、この第四項からいったら、いまの外務大臣お話はいささか何か歯切れが悪いというか、落ち着くところまでちゃんとやってないような気がするんですが、この第四項の中にあることについて、これは日本としてひとつ責任があるわけでしょう。日本として、「両政府は、」と、こうあるわけですから、われわれの果たすべき責任は果たしたと、こうわれわれは理解してよろしいかどうかということです。そのことだけでよろしいです。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本政府といたしましては、そのラインに沿いまして、できるだけのことをやっているわけでございます。
  27. 小林武

    小林武君 じゃ、そのように理解いたしてよろしいわけですね。  次にお尋ねしたいのは、日中航空協定です。これは台湾——中国の内部の問題でございましょうけれども、廖承志氏が日本に来る際に、羽田——台北——上海——北京と飛んでは困る。それでは二つ中国になると、こういう考え方で、この点について日本政府並びに各方面に話があったのかどうか、その点はどうですか。聞いておりませんか。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ公式にそういう話は聞いておりません。
  29. 小林武

    小林武君 どうなんですかな。これはいまだ全く話の上には乗っていないと、こう理解してよろしいんですか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまお尋ねの航空協定につきましては、去年の暮れ以来、中日両国の間に交渉が始まっておるわけでございまして、去る七日交渉団が北京におもむいたことも御案内のとおりでございまして、いま交渉中である、交渉中の案件であると、そのように御承知願いたいと思います。交渉中の段階におきましては、その交渉の内容につきまして御披露申し上げる自由を持っていないということも、また、あわせて御了承いただきたいと思います。
  31. 小林武

    小林武君 これは運輸大臣にお尋ねいたしたいのですけれども、日航は台湾への飛行便の便数を減らすときまったところが、外務省並びに運輸省は、それに及ばずと言ったということは事実であるかどうか。まず運輸省のほうからお尋ねしたい。
  32. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 私はそういう事実は承知しておりません。
  33. 小林武

    小林武君 外務省のほうは知りませんか。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことは承知しておりません。
  35. 小林武

    小林武君 この問題について、どうなんですか。日本側としては解決するべきことであると考えて、積極的にこれに対して意思表示をするという、こういう意図があるかないか。ひとつ総理大臣にお尋ねしたい。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 航空協定はできるだけ早く仕上げなければならぬと考えております。また、仕上げることができると考えております。
  37. 小林武

    小林武君 総理大臣にお尋ねいたしますが、廖承志氏が日本へ来たいと言っている。来るなら、これは途中台湾に寄るわけにもいかない。飛行機で来れないならば船ででも行こうかと、これは冗談だろうと思うけれども、あなたはどうですか。中国の要人を迎えるにあたって、こういう問題をやはり早く解決して、日中国交という、いわゆる政府間の問題にあなたはそれをきちんと据え置いた方ですから、それをやる御意思はございませんか。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日中航空協定というものを一日も早く締結したいということは、共同声明を出すころからの話し合いでございます。それがいよいよ軌道に乗って、交渉が始まっておる。外務大臣の述べるとおり、これは確実に締結できるという見通しでございます。廖承志氏一行が日本に来られるときには、私たちも特別機で行ったわけでございますから、特別機でおいでになるということがあれば、何も船にお乗りにならなくてもこれはお迎えできると、こう考えております。日中間の航空協定は必ずできる、こういう考え方でございます。
  39. 小林武

    小林武君 それを、しかしどうなんですか、一歩進めて、いわゆる特別機で来なくても、それを機会に航空協定をしっかりしておいてやるというわけにいかんのですか。どうなんですか。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたの言われることが望ましいことでございますが、これは長く友好を維持しなければならない協定ですから、そんなに急ぐこともない。急ぐこともないということは、いつでもいいんだということではないのです。それは前段にあるように、あなたが言われるとおり、ばたばたとできて、航空協定締結後第一便ということであれば最も望ましいことでございますが、これは先ほど申し上げたように、両国でいま交渉団を出して折衝しておるのでございますから、この折衝に待ちたい。しかも、いま申し上げましたように、必ず円満に締結できるという見通しであります。
  41. 小林武

    小林武君 一体当面、あれですか、事務的に、ただ時間が足りないというのか、支障の点があったら支障の点はどこか。それから政府の意思としては、早々と、とにかくやりたいという意思は持っている。そうするとどこかに引っかかっているところがあるわけですから、何ですかそれは。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) こうかんな協定案文でございますので、それを詰めてまいらなければなりません。それからまた路線の問題につきましては、付表できめるわけでございますが、それにつきましても合意を見なければならないわけでございますので、若干の時間をかしていただかなくちゃならぬと考えております。
  43. 小林武

    小林武君 動力車労組の順法闘争と上尾駅における暴動事件の経緯について報告を求めます。国鉄及び警察庁のほうから御報告願います。
  44. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 御報告申し上げます前に、一昨日の事件によりまして多数の乗客に御迷惑をかけ、また国民にいろいろ御不安の念を抱かせましたことについて、深く遺憾に思い、申しわけなく思っております。  要点につきまして簡単に申し上げます。  一昨日、三月十三日上尾駅におきまして起きました事件のいきさつを申し上げますと、当日は、午前六時六分に電車が上野に向けて出まして以来、平常ならば六時から七時までの間に約四本の電車が十五分おきに出るはずでございました。ところが、御承知のように非常にダイヤが乱れておりまして、約一時間のブランクがございまして、そしてやっとその次に参りました、八三二という電車が参りましたのが前の電車の一時間あとでございます。したがいまして、その当時ホームには相当数のお客さんがおられましたために、しかもその電車自身が満員に近い状況で参りましたために、ほとんど上尾のお客さんが乗れなかったという事態がございました。そのときに、ドアを締める締めないのことでもって、ちょっとしたいざこざから非常にごたごたが大きくなりまして、お客さんがホームの駅長室に乱入され、あるいは電話機等を破壊する等の新聞にあったような事態になったわけでございます。その後、七時四十分ごろ、その電車の前に入るべき電車がおくれて参りまして、そしてその電車とそれとどっちを先に出すかというようなことで若干のトラブルがまたあったようでございます。その辺から非常にお客さん並びに町の方々も入ってこられたと思いますが、騒ぎが大きくなりまして、たまたま付近にとまっておりました特急電車に投石をする等の事態がございました。九時四十五分から十時ごろには、大体上尾駅に約一万名のお客さま並びに町の方々がおられたというふうに思いましたが、当時また警察官も少なく事態の収拾は非常に困難でございました。集まった方々の投石、破壊等が続いておったわけでございます。その前に、八時三十五分に上尾の駅長と助役は負傷いたしまして、病院にかつぎ込まれて入院いたしました。ちょうど十時ごろには大宮と高崎の間に約十八本の電車がとまっておりまして、その乗客が約三万人というふうに推定されます。その後、逐次事態はおさまってまいりまして、午前十一時ごろから運輸大臣からの緊急の御指令でバスを約二十台手配ができまして、バスによりまして大宮方面にお客さんを運びました。その辺から非常に事態はおさまりまして、十三時四十分ごろには、上尾の駅に私どもの人間が入ることができ、おおむね十五時三十分ごろには各駅の群衆の模様は全部おさまりました。五時二十分ごろ並びに五時半ごろに高崎線の上下線が開通いたしまして、夕方の帰りの輸送につきましても間違いがあってはいかぬということで、特に運輸大臣から関係の施設等にも指示いただきまして、約七十台のバスでもって帰りのお客さんを運んだわけでございますが、バスでもって運びましたのは延べ三百二十四台、約二万六千人のお客さんを運びました。  いずれにいたしましても、非常な混乱でもって約一時間——朝六時から七時までの間に電車が一本も入ってこなかった。したがって、その次に来た電車が非常に満員であったという事態からこういう事態が起きたわけでございまして、朝のラッシュに電車が乱れますと、非常にこういう危険があるということは、これの小さい事態が方々あったわけでございますが、なかなかどこでもってこういう事態が起こるかわからないということで、あらかじめの手配がとれなかったことは非常に申しわけなく思っております。  以上、簡単でございますが状況を御報告申し上げました。
  45. 山本鎮彦

    政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。  ただいま国鉄のほうからお話がありましたとおりの状況で、乗客約二千名が列車の窓ガラスを破壊するというようなことで、運転台に乱入して運転士を追い出す、さらに駅長室に乱入して電話線を切断して駅員に暴行を加える、信号機を破壊するという状況が起きまして、これに対して一一〇番で鉄道公安室のほうから連絡がございまして、直ちに埼玉県警察本部では事案の鎮圧、拡大防止のために、午前八時に県警察本部に警備本部を設置いたしまして、上尾駅をはじめ混乱が予想される主要駅に七百名の警察官を配備して警戒に当たり、その中で、上尾駅で七人を窃盗罪、公務執行妨害等の容疑で逮捕いたしました。  その後、上尾関係のいわば波及事案ま起きるのではないかということを心配いたしまして、自後首都圏各駅の関係、予想される方面、警視庁その他関係府県に連絡をいたしまして、所要の警備体制をその後次の翌朝までとらした次第でございます。
  46. 小林武

    小林武君 運輸大臣と国鉄総裁にお尋ねしたいのですが、暴動事件まで惹起したこのような状況が起こっているのに、いまだに問題の対立が継続したままで、これは国鉄当局並びに労働組合の間でですね、解決がおくれている理由はどこにあると思いますか。この点について得意見を伺いたいと思います。
  47. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 国鉄からの報告によりますと、当初から組合と国鉄の関係におきまして四点ぐらいの交渉事項があったようでございます。漸次それが交渉の軌道に乗りまして、最終的には一、二点を残しまして大体合意に達しておるということでございましたが、その最後の問題につきましては、これは双方とも昨年来の国鉄労組との関係、交渉の経過もございまして、なかなかその解決点には達し得ないというようなことで今日までおくれておるということを報告を聞いておるのでございます。  しかし、これは御質問外でございますけれども、こういう状態は放置できませんので、運輸省といたしましては、労働大臣とも十分連絡をとりながら、一日も早くその解決のために努力をするようにしておる次第でございまして、なお私といたしましては、国鉄当局に対しまして、こういう事態を一日でも放置することは、これは国民に対して非常な御迷惑をかけることでありますから、あとう限りの努力をして労使双方の間の信頼感といいますかを回復して、そしてお互いにいまの国鉄の当面しておるいろいろの困難な状態、これに対しまして協力一致して邁進できるような体制を早くつくり上げる、それには当面のこういう順法ストを早く解消するようにということを当局に対しては指示をしておる次第でございます。
  48. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま運輸大臣もおっしゃいましたが、実はいまなお交渉の継続中でございまして、私自身、当事者でございますので、いろいろ申し上げることもはばかったほうがいいような問題もございますので、きょうはしばらく私におまかせいただきたいと思っておりますが、いまこの席でどっちがいい悪いと言っても、どうしたらおさまるかということに私は全力を注がなければいけないということで、いきさつその他については私の口から申し上げないほうがいいと思いますので、これだけでかんべんしていただきたいと思います。
  49. 小林武

    小林武君 その点はわかりました。しかし、問題の解決にあたって私が考えますのに、これまで、いま運輸大臣も申されましたけれども、不信感がつのっているということ、およそこの不信感のつのっているというところには、労働者としての基本的な権利というものが十分に行使できないという、そういう場合に非常に深刻な状況になるというのは、私も経験からそういうことをはっきり申し上げることができる。それにもっとやっぱり問題点がありますのは、運輸大臣とそれから国鉄総裁の話を聞きましても、運輸大臣は、国鉄総裁から御報告をいただいてという、こういうふうに言っている。いわゆる当事者能力というものは国鉄総裁に私はないとまでは言わぬけれども、非常に最終的な段階でものをきめるということが不可能の状況にある、いわば当事者能力が完ぺきでないということです。このことは、労働者としてはのれんに腕押しという状況になるわけです。こういう状況でやってまいりますというと、紛争が未解決のまま次々にこれが積み重ねられて、そうしてそれには労使間の簡単な問題でも、非常な複雑な、いままでの積み重ねの上に立った問題として扱われるものですから紛糾をするわけです。私は、この点では国鉄総裁とか運輸大臣とかというその当事者だけではなくて、総理大臣をはじめ皆さんが、この労働問題をどう解決するかということ、具体的なやっぱり方策を明らかにすべきだと思うんです。そうでなしに、問題の当事者をどうこうするというようなことはなかなかできないし、いまは国鉄総裁がここでいろんなことを申し上げるのはと、言うことを遠慮されたことは私はかえって好感を持って聞いております。そういう点で、こういう当事者能力を持たない相手と、組合員がスト権を封殺されて労働基本権というものを持てない状況において、ほんとうの問題を解決する経営者と労働者とのよい慣行というものは生まれないと、こう考えるんだが、これについて労働大臣、運輸大臣等からひとつ御意見を承りたい。
  50. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 主として、当事者能力の問題についてのお尋ねでございますから、お答え申し上げます。  国鉄も公共企業体の一つでございまして、現行法のもとにおきましては、予算の範囲内においてはもちろん当事者能力があることは言うまでもございませんが、その予算の範囲を越えてまいりますと、公労法の規定に従いまして国会の承認を得なければ、当事者だけでは解決できないという制度になっておることは言うまでもございません。しかし、いろいろの公共企業体がございますけれども、私の承知しておる範囲では、国鉄に関しましては、当事者能力が非常に低い、どうにもできないというような状況ではないと考えます。予算の範囲内におきまして相当に幅の広い交渉ができるのじゃないかと思います。しかし、お尋ねになりました制度的な問題につきましては、これは御承知でもありますように、ただいまILOの問題に関連いたしまして、この当事者能力の問題をどういうふうに扱うかということにつきまして、御承知のように公務員制度審議会におきまして、非常に幅の広い、また高い視野からこれをどうすべきかということについて御審議を願っておるのでございまして、これは他の公共企業体と同じように、やはり公務員制度審議会の早く結論を出していただいて、その結論に従ってわれわれは制度の改善をはからなければならぬということを考えておる次第でございます。
  51. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 当事者能力については、運輸大臣から話がありましたが、労働条件のいろいろ決定については現行制度でも十分持っておると思います。予算の問題は、これは国会できめられましたので予算の制約を受ける。それから基本権の問題でありますが、スト権の問題でありますが、これはもう御承知のように国民の日常生活、こういうような重大な関係もありますし、いま国鉄にスト権を認めてもいいかどうか、これはなかなか国民が納得するかどうかという疑問の点もありますし、御承知のとおり、現在三者構成の公制審で鋭意審議中でありますので、政府としてはこの結論、公正な結論を期待いたしておる現状であります。
  52. 小林武

    小林武君 これは、総裁はよろしいか、総裁は言えない……。  公務員制度審議会というのが、これはもう小田原評定の典型的なものです。何をやっておるのだかわからぬというふうに、中に入ってみればそうでもないだろうけれども、われわれがはたで見ているというと、もう解決すべき時期がきているのに、いつまでもだらだらだらだらやっているということ、こういうあれは、一体いつになったらこれがはっきりするのか、担当のひとつ大臣からお伺いしたいし、もう一つ国鉄総裁にはっきり言ってもらいたいことがあるのです。  それは、国鉄というのはわれわれ考えた場合に、国鉄の合理化、この国鉄の合理化というようなそういう場合に、利用者というもののサービスをあと回しにする場合が多いですね。それからそのしわ寄せを今度は労働者に持ってくるというやり方をやる。私は、何といいますか、今度の動労の問題でも二人乗務するというような場合は、どこでもというわけにはいかぬにしても、時間の問題あるいは特に問題の多いところについてはやるのがあたりまえだと思う。それは労働者に楽をさせてやるとかなんとかという問題の前に、事故が起こったらどういうことになるかという問題になるでしょう。日本じゅうに新幹線ができた場合に、ある週刊誌か何かに、事故が起きないということは言い切れないのだから、どんな大きな事故が起こるかわからぬというようなことを言っている。国鉄は絶対事故起こしませんなんというようなことは、あなたはまさか大口たたくわけにもいかぬでしょうからね。私はそういうことを考えた場合に、労働者の言うことだって正しいとこう思っているのですが、一体その合理化政策というものが、お客さんをあと回しにしたり、あるいは全然これを見失ってしまったりするというような考え方、労働者がすべてをしょい込むというような形があったとすれば私重大な問題だと思うのだが、これについての総裁の御意見を承りたい。
  53. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 先に公務員のほうから……。
  54. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 御指摘になりました公務員制度審議会の審議の状況でございますが、重要なる基本的な問題に関する——国民も非常に重要な問題としてその推移を見守っておるさなかでございますが、公務員制度審議会におきましては、それぞれの立場から、あらゆる角度から真摯な討議が続けられておりまして、公益代表の方々も労使両方の代表と十分討議を重ねられておるさなかでございます。私は、公制審の正当なる、公正なる結論がすみやかに出ることを期待いたし、それを踏まえまして、政府といたしまして、重要なこの問題に対する取り組みをいたしたいと考えておる次第でありまして、非常に積極的に、累次にわたって、今月に入りましても会議を重ねられ討議を続けられておることに対し、私は深く期待いたしておるような次第であります。  以上お答えいたします。
  55. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 国鉄の合理化あるいは近代化の問題につきまして、全国でいろいろな問題が起きていることも、私、十分承知いたしております。また、各種の委員会におきましてもいろいろお話を承っておりますが、私どもといたしましても、やはり企業経営の近代化あるいは合理化ということはしなければならないと。しかし、もちろん先生おっしゃったとおり、何と申しましても利用者あっての国鉄であるということは十分肝に銘じているつもりでございます。したがいまして、極力地元の方々御了解を得、御同意を得た上でやるべきことをやるというふうに考えておる次第でございますが、全力をあげてそういう方向に進み、もちろん利用者の方々にもある程度の御協力は願わなければならないというふうに思いますが、決して独断、一方的にやるというふうなことでなくて進めてまいりたいというふうに思っております。また、安全問題その他につきましても、私、やはり長年こういうことをいたしておりますが、何といったって四六時中頭を離れないのは安全問題でございます。これは、いわば口幅ったいことで申しますれば、私どもの哲学とも申すべきことでなければいけないというふうに思っております。で、全力をあげてやってまいりましたが、昨年以来非常に事故が多く、まことにこれは私の不徳のいたすところだというふうに思っておりますが、これには、単に人力によるだけでなしに、やはりマン・マシーン・システムと申しますか、人力と機械力のコンビネーションで今後の新しい鉄道の安全を確保していくという考え方でもって進めてまいりたいと思います。  しかし、非常に私、不敏でございまして、各種の事故が続発することは全く申しわけなく、私の不徳のいたすことだと思っております。
  56. 横川正市

    ○横川正市君 関連。  いまの総理府総務長官の答弁に関連して一問お聞きをいたしたいのですが、たとえば郵政省と全逓という労働組合との紛争関係では、中郵事件というのがありまして、最高裁判所は、国民生活に著しい影響のない権利行使についてはこれは刑事罰を科さないという判断を下しております。  それから、最近の最高裁判所では、労働者が休暇を行使する場合、いままでは行政府あたりのあるいは管理とか指導とか監督とかというものが運用の中に入ってくることを認めておりましたが、これは認めないということで、個人の裁量でこれを行使することになっておるわけです。  私は、公務員制度審議会の非常にだらだら審議をしている最高の原因というのはどこにあるかといいますと、三者構成の中のいわば政府代表といいますか、あるいはこれに準ずる方々のものの考え方が、いま言われているような最高裁判所の判断よりも数歩おくれて、ほとんど今日に期待できるような前向きの姿勢を一向にとらない。そして、いまこの審議をされている内容の焦点というものは、ILOの国際的な会合の中でもほとほとあきれるほどに固執されているところに会議が前向きにならないという原因があるのじゃないかと思うんですが、このことは、あなたのほうで進まない原因の中に何と何があるか。その進まない大きな原因はここにあるのではないかという、こういう点についてお気づきになっておらないかどうかですね、これをまずお伺いしたいと思います。
  57. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) おことばを返す意味じゃございませんけれども、公益側の代表の各位は、政府の代表というような意味で御推薦を、また御討議をお願いいたしておるような立場でないということはひとつ御理解をいただきたい。そういうような意味考えますときに、私はいま行なわれている三者間の討議というものを正しく理解いたし、また、私がそれに対する批判をとやかく申し上げるというべき筋合いのものでもないと、私はあらゆる角度から十分正しく公正に三者間で討議をされておるということを信じてもおり、期待もいたしており、それに政府がとやかく口をはさむ筋合いでもないということは、ひとつ横川委員、御理解いただけるんじゃないかと、こう思います。
  58. 横川正市

    ○横川正市君 私は三者構成というものが三すくみの状態になっている。その三すくみの状態の中の一つの原因である、いわば使用者側代表といいますか、中立委員でないそういう人たちのものの考え方に、この現状に合った前向きの姿勢というものがないというところに、この三すくみがそのまま議事をおくらせておるんじゃないかと、こう指摘しているわけであなたのいういわゆる三者で出ておられる方々も、何回か使用者側代表の方に会って話をしておりますけれども、具体的な話を煮詰める状態にない。おくれている原因はそこにあるんだろうと私どもは思うんですが、その点をどう考えておるかとお聞きしているんです。
  59. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) ただいま申しましたように、いわゆる政府といたしましては、公益側の各位に対しましても、あるいは使用者側代表あるいは労働者代表の各位に対しましても、それぞれの立場に立って政府はかくお願いいたしたい、かく問題点を解明願いたいというべき筋合いで公制審制度というものができ上がって、そして審議をお願いいたしているものではないと、こう考えておるような次第でございますので、公益側の立場の各位も、御指摘は御指摘として私は十分承ってはおりますけれども、非常に大事な、国民的重要な課題としての国益の立場に立ってそれぞれ御審議をいただいておると、そして公益側の委員の方々も、ことしに入りまして使用者側と十分懇談されておると、また労働者側とも十分協議を続けておられるというようなことで、私は一方に偏した角度からそうした問題の討議を続けておられるものではないと、公正な立場で、中立的な立場で、十分ひとつ重要な問題としての使命感を持って御討議をいただいておるものと、私は信じておる次第であります。
  60. 横川正市

    ○横川正市君 もう一問。総理府総務長官、まあ席へ行かなくてもいいですがね。あなたは公務員制度審議会の結論をいつまでに期待しておるんですか。ただもうのんべんだらりと、あなたのいうようにお互いお互いの意見だけを、おれは正しい、おれは正しいと言ってるような審議会に何を期待するわけですか。そしてそれは重要な問題解決につながるものがおくれているという現実に対して、責任はどうとるわけですか。
  61. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 私はすみやかに御討議の結論を待っておるということでございます。しかし、非常に熱心な討議を続けられておることに対して、私はお願いをしている立場からは批判すべきでもなく、また、それに対するリミットを申し上げるという筋合いでもないと、すみやかに公正な結論を得られるということを期待申し上げておるような次第であります。
  62. 横川正市

    ○横川正市君 何もしないことを期待しているんじゃないですか。
  63. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) いや、私はほんとに横川さん、おことばを返すんじゃありませんが、真剣に私は討議をされておるということを信じており、期待をいたしておる、またすみやかなる結論の得られるのを待っておるということでございます。
  64. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連して。
  65. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 関連ですから、簡単にお願いします。
  66. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 上尾駅というのは、私は利用者の一人として現状を非常によく知っているわけです。そこでこの暴動事件は、平素の状況から考えれば、起こるべくして起こったとも言えると思うんでありますけれども、この事件の背景を考えると、多くの問題があると思います。  まず第一点としては、いま小林さんなり横川さんとの間でやりとりがありましたけれども、労使の紛争解決の手段が現状のままでいいかどうかということが一つ。いま総務長官のほうから一生懸命やっておられるという話なんですが、すみやかにと言ったって、去年からそういう話があるんですよ一去年からすみやかにと言っている。年が明けてしまったんです。それでなおかつ小田原評定をやっているんです。ところが、一方では動労の問題は火の手が上がっちゃっているわけです。火の手が上がって、どんどん延焼しようとしているときに、まだ、慎重に、すみやかにということを繰り返したって何にもならぬじゃないですか。政府責任において、これでいいのかどうかということを、それこそ決断をしなければならぬ。この問題は、政府として、もう目前の問題として、当面の問題として、どうしたらいいかということを考えるべきときが来ていると思いますから、その点はやはり労働大臣がどうしたらいいかということについての結論を出すべきじゃないか、こういうことが一つです。  それから、上尾の事件についていろいろと状況を聞いてみましたけれども、これは、順法闘争に便乗をして、集団強盗の計画的犯罪もこの中にあったんじゃないか、こういう気がいたします。というのは、五十万だか六十万の現金が盗まれた、それから自動券売機から七、八万の金が盗まれた、こういうことがあった。それらの問題について一体警察庁としてどのような捜査を行ない、どのような事実を確かめ得たかということを聞きたいと思います。  当日の状況は、電車の前から七両目のドアを一部の者が押えて締めさせなかった。ドアを締めることができなければ電車は発車いたしません。七両目と六両目の者が一緒になってドアを押えていた。ドアを押えるというのは一人じゃなかった、何人かでドアを押えて、どうしてもドアが締まらない。そこでそのままとまってしまった。あとの電車が来るまでとまってしまった。それから今度は電話線を切った。電話線を切ったあとで駅長室へ乱入をして、きさまら殺すぞと言っておどかした。おどかした人と、それから駅員の話によると、親切な人がいて——ほんとうに親切だったかどうかわかりませんけれども、ここにいては殺されてしまうから早く逃げたほうがいい、こういうふうに言われた。それでそこにあった、目の前にあった現金だけを持ってその駅員は逃げて、埼玉銀行に行ってそれを預けた、こういうことです。それからそのあとで、その中に乱入した者はボストンバッグを用意して、そこに現金を——どれだけあったかわかりませんけれども、五十万か百万かわかりませんが、現金を入れて逃げてしまった。こういう事実があるわけですね。こういう事実がどうも明らかになっていないようなんです。警察につかまった者八人は釈放されたそうでありますが、これは駅の備品を持っておって、だから備品だから大したものはない、そういうものを持っていて、それがつかまった。一番大口のほうの犯人はどこへ行ったかわからない、こういう状態があります。  したがってこれらの順法闘争に便乗した、こういうどろぼうですか、強盗ですか、そういう問題に対してどの程度警察側としては調べておるのか、それが第二点であります。  それから第三点としては、この上尾の駅の輸送体制。ふだんからここは非常に込むところです。順法闘争のあるなしにかかわらず、ここはもうほとんど朝のラッシュでは乗り残しが生ずるというのが常なんです。したがって、ちょっとでもダイヤが狂うと、これはもう乗れないという状態は十分に平素から予想できたことです。しかも、ダイヤの面から言いますと、この時間帯は急行が何本も走っておる。急行の合い間を縫って利用できる電車は何本もない。そこに常日ごろから利用者のふんまんがうっせきしておった、こういうことがある。その列車の車両も、上野まで行って折り返しをする。折り返しの急行になるために、急行の車両をついでに使っておる。急行の車両ですから、食堂車だとかグリーン車がついておる。それをこの通勤輸送に使っておる。そういうような、通勤者にとってがまんのできないような条件が積み重なっておる。これらの問題に対して、国鉄は輸送力を増強するということはいままで何一つやっていない。かつて荒舩さんが運輸大臣のときに、この高崎線はたいへんだから複々線にするということを言ったことがあるが、ラッパに終わってしまった。こういうように全く冷遇されておる。無視されておる。これに対して国鉄が何らの手も打たないということになると、またこのような事件が再発をする可能性があると思う。きょうの新聞の埼玉版には、この再度発生の可能性がある、現状の打破は早急にやらなきゃいかぬと、こういうことが書いてある。  そこで、今度は国鉄当局として、いままでの上尾駅の輸送体制については全く無視をされておった、冷遇をされておった、これらの問題を一挙に解決をしないことには、順法闘争がなくてもあっても、踏切事故であろうと、あるいは雪がよけい降ったとか雷が落ちたとか、そういったようなことでも、すぐがたがたになっちまう、こういう状態を一体どうするのかという問題があります。  以上の三点について的確な御答弁をいただきたい。
  67. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 以上の三点につきまして、政府側の答弁を求めます。
  68. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) いわゆる現在の順法闘争に対する政府の最後の手はないか。これはいろいろの法規の問題もありますが、結論は、労使が国民的視野に立って理解ある良識のもとに話し合いをして解決する、これ以外には現状としては法がありません。ただ私として、政府を代表して、一回、二回労使を呼んで注意を喚起して、かような国民の生活に重大な影響が及び、国民が怒るようなことは、とりあえず争議を中止して、真剣に両者が協議をしてくれと、こういうことを要望いたしまして、好転したり、またいろいろ二転三転いたしましたが、すみやかなる労使の話し合いをやって、そして根本的な解決をするところを期待しておる次第であります。
  69. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 国民にサービスしなければならない立場の人たちが、乗客を犠牲にして、まあいろいろ理由はあるにしろ、連日にわたる順法闘争が続いた結果、ああいう形が起きたことはいかにも遺憾に思います。そこで私どもとしては、この種事案の発生に際しましては、まず関係者の人命の保護を第一、それから重要施設を確保すること、それから群衆を誤りなきように整理誘導すること、まあこれにつとめるわけであります。  いま御指摘の具体的事犯につきましては、警備局長が来ておりまするから、お答えをいたさせます。
  70. 山本鎮彦

    政府委員(山本鎮彦君) 三月十三日の国鉄順法闘争に伴う上尾駅事件に関しては、いままで調べたところ、駅長室から定期券ナンバーリング、定期券、トランジスタラジオ、こういうものを窃取した者たち四人を窃盗罪で逮捕し、一人を公務執行妨害罪で当時現行犯逮捕したほか、取材中の新聞記者に暴行を加えた者二人を暴力行為等の現行犯で逮捕いたしております。  なお、当日、上尾駅での被害でございますが、事務室から最初現金数十万円が紛失したという疑いが持たれておったのでございますが、そのうちのかなりの額は、駅員が避難の際に持参しておったということがあとで判明をいたしまして、現在、結局現金の被害は二十万円ということになっております。さらに、自動販売機から持ち去られた現金もあるということで、現在、この面、調査中でございます。  その他、計画的な犯罪であったのではないかというお話でございますが、この点についてはいま鋭意捜査中でございますので、判明をいたしておらない段階でございます。
  71. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 高崎線の問題につきましては、かねがね瀬谷先生からも強い御要望がこれあり、御承知のとおり、最近におきましては、大宮における高崎線と東北線の立体交差を完成し、また、大宮−赤羽間の複線をさらに三複線にするというふうな工事が済んだわけでございます。そうして、その結果、高崎線の通勤電車はおおむね十二両編成を大体十五両編成にいたしました。したがって、昭和四十年ごろと比較いたしますれば、輸送力といたしましては約四割の増加でもって、東京に入っています放射状線の各線から申しますと、輸送力の増強としては相当上のほうでございます。  ただ、お示しの上尾の問題でございますが、非常に上尾市は最近人口の増加が急激でございまして、昭和四十年ごろと比較いたしますと、人口は約倍になっております。ほとんど、高崎線沿線でも一番大きな増加率でございまして、大体熊谷と同じ程度の人口になっております。それが大宮のすぐ入り口にございますので、結局、遠方から、あるいは中距離から来ました電車がほとんど満員で来るという状況でございまして、したがって、上尾の方々がなかなか乗れないという状況はおおむね私どもよくわかっておったわけでございます。まあ、最近のそういった状況のもとに、たとえば上尾通過、午前六時半から九時半まで三時間は、一本の急行列車も入れておりません。全部通勤電車でございます。したがって、十五両編成の通勤電車を三時間ぶつ続けに走らすということは、大体東海道と輸送力としては大差はございませんが、ただ、車の面では、いまおっしゃったように急行の車を使っております。これはドアが二つしかないとか、いろろろな問題がございますが、これはなるべく早く一般の通勤型に取りかえたいというふうに思っておりますし、また、できれば上野まで入れることに——非常にまだ上野の問題が無理がございますので、あるいは大宮までの列車をふやすということなどにつきましても、いろいろ検討中でございますが、いずれにいたしましても、高崎線そのものにつきましては、非常に、東北線と違いまして最近人口の増加が多く、東京付近でもほとんど一番多いというふうに言われております。しかし、いまの高崎線の現状から申しますと、ほとんどあれに並行して複々線にすることは不可能でございます。もう用地の取得がまず絶対にできないというふうに思われております。したがって、それより少し離れたところに新幹線をつくりまして、そうしていまの在来線から、急行、特急等を全部新幹線に移す。また大宮−赤羽間も、ほとんど急行、特急等を新幹線に移してしまうということになりますと、いまの高崎線、東北線はほとんど通勤及び貨物輸送ということになりまして、初めてそこで通勤の本体の列車ができる。ちょうどいまの東海道口と同じことになるというふうに思います。  したがって、とりあえずは、いま申しましたような電車の増発を緊急にいたしたいというふうに思っておりますが、根本的には、何と申しましても、それだけの人口がふえるのに私どものほうの輸送力がつかない。住宅はわりあいに早く一年でも一年半でもできますが、私のほうは、一たん複線化しようと思えば、用地取得に三年、五年かかるということで、なかなか人口増加に対しまして私のほうの輸送力の増加がつきません。したがって、私どもとしては、もうかねがね、住宅をつくる際には足を考えてつくってほしいということをもう何べんでも申し上げておりますけれども、やはりとにかくつくるというほうに重点がいきまして、できたあと運べないという事態になることが間々でございます。上尾につきましても、今後約三万戸の住宅がふえるというふうに伺っておりますけれども、三万戸の住宅がふえますと、約二万六千人の通勤者がふえます。そうすると、二万六千人ですと、一個電車二千人乗っていただくといたしましても、十数本の列車を増発すると、これはほとんどいまは不可能でございます。したがって、住宅政策と輸送政策はどうしても私は一緒にしていただきたい。あらかじめ話はございますけれども、いつの間にかできてしまうというのが偽らざる現状でございます。そうして、国鉄何しているといってしかられるのでございますが、私どもは、やはり何とかもう少し、住宅をぎりぎり、ほんとうに入居するまで——足を考えて住宅をつくっていただきたいということを、この席で言わしていただく次第でございます。
  72. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 委員長、ちょっと……。
  73. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) もうだいぶ、二十分も関連質問に立っておりますから。あと関係もあるから、特に瀬谷君は本質問もありますから、ひとつその程度で。
  74. 横川正市

    ○横川正市君 委員長
  75. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) じゃ横川君。
  76. 横川正市

    ○横川正市君 私どもは、多数決政治の中で多数になれてしまって、言いたいことを言わないで済ますということがあってはまずいから言うのだけれども、いまの公安委員長の答弁は、これはむき出しに、何といいますか、いままでの政治の中の、私どもとしてはたしなめなければならぬことをむき出しにした答弁なんですよ。これは私のほうで、速記録をとって新たに審議をしたいと思うので、速記録をとることを委員長からひとつ指示してください。
  77. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 了承いたしました。  小林君。
  78. 小林武

    小林武君 総理にちょっとお尋ねしたいのですが、きのう羽生委員の、相当の責任と言った発言についての御答弁ですが、私がこれ、速記録で確かめたのではありませんけれども、聞いている限りでは総理の御発言はこういうふうに聞こえるのですね。円切り上げの問題というのはなかなか発表すれば影響力が大きいから、結局ああいう場合には断固やらないというようなことを言わざるを得ないのだ、それを言うことについて責任をとられるべき筋合いでないというような趣旨の意味が含まれておると思うのです。そういうことに私はとったんだが、一体それはどうですか。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 時期を見誤ったことは、はなはだ遺憾でございますという意思を表明いたしておりますと、こういうことでございまして、相当な政治責任でございましょうと。絶対にやらないと、こう言っているのに、もしやったらどうするかと、仮定の質問にはお答えできませんと、こうは述べなかったわけでございます。そういう述べ方をしておる方もありますが、その上もしやったら責任はどうするのかと、こういうことでございましたから、相当の責任が生ずると存じますと、こう答えておったわけでございますから。きのうは再度御質問がございましたので、確かに予想よりも非常に早かったし、そういう意味ではなはだ遺憾でございますということは、私も明確に述べておるわけでございまして、相当の責任と言ったのは、もうあの当時言えないことを聞かれたのでそう言う以外になかったのでございまして、何も責任はありませんという感じではありません。それはもう影響があるわけでございますから、相当な政治責任がございます。政治責任というのは、そのために自後措置を十分にやらなければいかない、責任を果たさなければならないという真摯な立場で申し上げておることを御理解いただきたいと思います。
  80. 小林武

    小林武君 まあ、私の聞き方も多少悪かったかもしれないと思いますけれども、その前にも衆議院では、何か総理は、その責任問題について努力をするという意味のことを述べたんだというようなお話もあった。それと、きのうのあれがありましたから、そういうことになるというと、この種の問題とか、あるいはいろいろ外交上の問題とか、一切国会の中では事が起きないうちはとにかく知らされないというような、そういうような状況になるおそれがあると、こう考えているわけです。この点は、いずれ後々の問題ですから、ここでいま時間かけてやるわけにいきませんけれども……。  そこで総理一つだけお尋ねをしたいんですけれども、私は円の切り上げの問題については、やっぱり政府としては非常に、何といいますか、軽くお考になっているのじゃないかということが一つです。というのは、前回の四十六年の八月十五日のドルショックの場合においても、ドル売りが始まって、それを市場を開いたままとにかく乗り切れると思った。乗り切れると思って開いたんでしょう。それについては、何かというと、結局円対策、この八項目の効果の問題とか、もう強力な為替管理を日本はとっているからだいじょうぶだとかという過信があったんじゃないか。そういうことから、一体あの際には手当てとしては間違ったんじゃないかと、こう思うことが一つです。それからもう一つ、あなた、ホノルルでニクソン大統領と会った場合、両三年のことについて何か話し合ったらしい。この両三年にどういう一体——三年ある。両三年というのは、二年でも三年でもまあいいけれども、ドルショックがあったときからホノルル会談というのは約一年ですわ。その間に、両三年とは何か一つの、それは計画どおりそう簡単にいかなくても、一つのやっぱり目標というものは出るわけです、効果があるかないかということは。それから現在まで約半年なんです。そうして、あなたのおっしゃるところだというと、効果というのは両三年になれば出てくるんだと、こう言ったんだが、このことだって、一体実績はどうなっているんですか。はたしてアメリカがああいうことをやらなかったら効果があらわれて、そうして相手方に信頼できるようなことができたのかどうか、そのあれをひとつ説明していただきたい。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ホノルル会談におきまして、日米の貿易収支のバランスをとるということが第一でございますし、また、日本国際収支そのものを均衡させなければならないという問題があるわけでありますが、これだけ大きくなった問題が、一年や半年でどんなことをしても直るものではないと思いますと。向こうは、大体四十六年三十二億ドルのものを、四十七年度には少なくとも二十九億九千万ドル、四十八年度では十九億九千万ドル、十億ドルぐらいずつ下げないと、日米間ではどうしてもいろんな問題が起こると、こういうような交渉でございました。これは大統領の交渉ではありませんが、第一線の諸君、これは事務ベースの会議をやっておりますので、専門家会議をやっておりますから、そういうことでありましたが、とてもそれはそんなに簡単にできると思いませんと、私はこう言ったんです。両三年以内に経常収支の黒字幅を国民総生産の一%以内に押えたいと、こう思いますと、こう言ったわけです。これは三年間でございますから、まあ、そうでしょうということで、首脳会談は合意して理解を得たわけでございますが、その後アメリカのドルの価値維持がまだできなかったという問題がございます。日本においてほんとうに三年間でどうなるのかと、こう思いますと、まあ両三年と言ったのは、三年の間に、非常に向こう側が要求しております電算機の資本の自由化というものを三年のうちにやろうということで、予算措置をして、いま三グループに分けてやっておるわけであります。そういう問題も解決できるだろうと。また、ことしには資本の自由化というものはこれはどうしてもやっぱりやらざるを得ないという考え方で、いま外資審議会で御審議をいただいておりますが、物価問題から考えてみても、やはりただ総代理店制度の問題とか、輸入組合の問題とか、追跡調査だけで片づく問題じゃないので、やはり資本の自由化というものにある程度踏み切っていかなければならないと、これは特にOECDにおける問題もございますし、新ラウンドの会議がことし開かれるわけであります。これはどうしてもこれを続けなければならないというような問題で、関税の引き下げ、資本の自由化、輸入の自由化というような問題が行なわれてまいります。もう一つは、UNCTADの会議で述べましたように、日本国民総生産の〇・二三%である政府ベースの援助を大幅にふやしますと、こういうことを述べておるわけでございますから、それも一挙に〇・七%までこれは伸ばされるもんじゃありません。やはり三年間ぐらいでもって少しずつ——まあ少しずつではなくて、積極的に伸ばしていこうと、こういうことでございまして、七〇年代の末までに〇・二三%を〇・七%に上げるように努力しますと、こう言ったわけでありますから、両三年という問題と、相当な問題が片づくと思います。それから知識集約的な産業に移さなければならないとか、産業構造そのものの変化を求める。これは公害対策上どうしても求めなければならないという問題もございますし、やっぱり社会保障や生活関連の、生活基盤強化のために政策を転向しなければならないということは、もうすでに長期経済計画の諮問をいたしておりましたので、そういうことを全部合わせていくと、両三年以内に、私が述べたように、国民総生産の一%以内に経常収支の黒字幅を縮められるかどうかは別にして、基礎収支のバランスということはできるんじゃないかと、こういう見通しをつけておったわけでございます。  そういうことを考えておったわけでございますが、今度はヨーロッパで突然起こったドルの投機問題から、ちょうどアメリカ経済の問題と合わせて、アメリカが一方的に一〇%切り下げると、こういう問題が起こったわけでございまして、日本も困っておりますが、西ドイツなどは、過去四回ももう引き上げておるわけでございまして、努力はしておっても、なかなか、これ相対的な問題がございますので、この問題が基本的に解決できなかったということで、見方はいろいろあると思います。あると思いますが、農産物の自由化一つ考えてみても、そう簡単にいかないんでして、やっぱり三年間ぐらい見なければというような感じがハワイ会談では前提になっておりましたので、すなおにそう述べたわけであります。ほんとうにどうなったと思うかと言われますと、新しい事態も起こってまいりましたし、新しく起こった事態に対して付加しなければならぬ政策もありますので、その当時の政策を引き伸ばしてどういう数字になるかということは、さだかには、御納得いくような答弁にはならぬと思います。
  82. 小林武

    小林武君 総理がこのホノルル会談をやった際のアメリカ態度というのは、私はなかなかこれは相当の検討の上に立って向かったと思うんですがね。それに、このドルの問題について、アメリカがやりだしたらすごいんじゃないかと思うのは、実はドルとポンドの争いというのは、ちょうど太平洋戦争のころやっているんです。あの戦争のまっただ中で、いわゆるともに相手方と手を結んでいる同盟の立場にあるものが、あれほど激しくやり合うという、あのやっぱりアメリカやイギリスの考え方というものを考えると、私は田中総理がそこで両三年のうちにというようなことを、ほんとうに信頼してやったかどうか、これははなはだ失礼だけれども、田中さんがそれだけの説明ができたのかどうか。そうでなかったら、田中総理は、もうそこでとにかくお互いに相当いやな顔をしながら別れてきたのか、あるいはもうそうなったらしかたないから、大体やらざるを得ないという覚悟をきめてきたのか、そんなことを私は想像しているんですよ。その点はどうですか、一体。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 円平価の再度の調整ということよりも、やっぱり第一回の円平価の調整というのは、これは歴史的な事実であったわけです。これはもう十年間ももんできて、その後初めて多国間通貨調整ということができたわけでありますし、これは世界各国も、専門家も、学問的にも、へたをすると三年間ぐらいかからなければこの効果はあらわれない。どんなに早くても一、二年はかかるんだと、これはアメリカも認めてスミソニアン体制をとったわけでございますから、そういう意味では一年二カ月で相手が一〇%引き下げるということは、これはあまり考えておらなかったと思うんです。ですから、日本のマスコミも今秋にはあるぞと、こういうことでございましたし、西ドイツの経済相も絶対に固定相場を維持すると、こういうことをみんな言っておったわけでありますから、これは常識的に考えてもそうだと思います。ただ、非常にドラスティックな手を打つということは、これは西洋人は大体そうでございますし、しかも今日の段階においてこういうものはドラマティックなものであって、国民自体がそういうような手段を打たなければならないんだと、これはニクソン新政策が発表されたときにあれが第一段であったわけでありますので、アメリカはそういう手をやっぱりやるなということをみんな考えるべきだったという議論の存在することも私も承知をしておりますが、日本自体が、いつも申し上げておりますように、おととしの一月まで、やっと四十五億ドル——外貨すべてを引っくるめて四十五億ドルというのであって、現実的に流動性を持つもの、現金でもって持っておるものは当時の輸入の三カ月分もなかったわけであります。それが急速に年間百億ドルもふえたというのは、これは新事態なわけでございまして、これに日本が対応するにはやはり三年ぐらいはかかるというのが、私としてはすなおな考え方であったわけでございます。しかし、やはり開放下、自由体制化、南北問題、新ラウンド、日米間の貿易収支の改善、こういうものは避けがたいものであるということに対しては、国民の理解を得ながら一つずつ強力に解決をしていこう、こういう姿勢でございまして、アメリカもこれは理解できると思ったわけで、今度のやつはヨーロッパが目標であったということでございます。今度、第二回目はアメリカも予想しておらなかった、アメリカも、やっと西ドイツと話し合って一〇%切り下げたものは、アメリカも予想しておらなかったものであって、これは全く一時的な投機であって、片づくと思う、アメリカはしばらく静観の態度をとると、こう言っておったんですが、静観はしておれないということで——それはそうでしょう。いろんな世界の雑誌で、外国にあるところの多国籍企業の持つ金の一〇%が動けばまたがたがたするんだというような、いろんな評論が行なわれておりますので、やはりアメリカも矢つぎばやに、これは二十カ国蔵相会議の前に六カ国、十カ国、十三カ国というような会議を開いて、今月の末の会議につなげなきゃならぬというふうに、アメリカ自体も少し事態の推移などということを言っておれないような状態になっておるということでありまして、日本は真摯な態度国際収支改善と取り組んでおった。そのためには大き過ぎるんじゃないかと言われながら、あの事態において補正予算の御審議もお願いをしたわけでございますから、その点はひとつ御理解をいただきたい。
  84. 小林武

    小林武君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、一つは、総理大臣の言う両三年で国民総生産の一%ですか、というのは一体どのぐらいのあれになるのか、それが一つと、もう一つは、大蔵大臣、大蔵大臣でもきょうの大蔵大臣でない、きのうの大蔵大臣のお話では、これは同時に日銀の総裁の御意見もそうであったように思うんですけれども、為替制度そのものには問題がないんだ、ただ投機をやる、投機が問題なんだというような御意見がきのうあった。ちょっとそれをぼくは書きとめたんですが、これにちょっと。ぼくの聞き方が悪くなければそうおっしゃったと思うんですが、私はそうは思わないんですが、このあれを、大蔵大臣と、それから日銀の副総裁おいでになっていると思いますが、それを一問お聞きすれば……。
  85. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 愛知大蔵大臣不在中臨時を相つとめますが、どうぞよろしくお願いいたします。  ただいまの御質問でございまするが、大体両三年、まあ三年ぐらいたたないと通貨調整の効果が出てこないというのは、これは定説でございまして、すでにボルカー財務次官もそういうことを日本で言っていったわけでございます。そのように理解しておりますが、それで幾らになるかということでございます。四十七年の見通しでは、御承知のように、貿易収支は八十九億五千万ドルでございまして、経常収支が六十二億ドルになっております。四十八年の見通しでは、この見通しが八十一億ドルが貿易収支の黒字でございまして、それを経常収支で四十九億五千万ドルに持っていこう、こういうことになっております。いまの三年ぐらいたったあと国民総生産、GNPでございますと、大体一%というのは三十二、三億ドルではないかということでございまして、一応私どもは総理の御意思を受けまして、ことしの見通しは四十九億五千万、こうしてさらにこれを三十億ドル台に持っていこうと、こう考えておったわけでございます。  それから第二の御設問でございますが、これはいま総理からお述べになりましたように、アメリカは大体一〇%引き下げたというところでいいじゃないかというふうに思っておりましたようでございますし、それから今度のGテンの会議でも各国の為替相場のいどころは大体妥当だという考え方を持っているようでございます。そこで、こういう状況が起きたのは一体何かというと、過剰ドルが投機をいたずらしたということではないか。例の国際的な過剰流動性になっておるユーロダラーというものが、これが今度の根本原因であるということで、やはりその動き回る過剰ドルを今後投機に向かわせないようにするにはどうしたらいいのか。それから世界的な基軸通貨であるドルというもののいどころを一体どういうふうに考えたらいいか。これはやはり交換性の問題が大切でございまして、交換性をどういう形で回復さしたらいいのかということが関心事であるべきであるというふうに思っております。新米ですからどうもよく……。
  86. 河野通一

    参考人(河野通一君) お答え申し上げます。  ただいま御質問の点は、大体大蔵大臣からお答えになりましたところと私ども同じように考えております。先週の金曜日に行なわれました十四カ国会議のコミュニケにも載っておりますように、いまの、現在の為替相場の基準というものは、ことばは非常に悪いのかもしれませんが、リアリスティックだということを言っておるわけでございます。問題は結局、通貨の不安の大きな原因はやはり投機にある。その投機をささえておる基本は、やはりドルを中心とした大きな浮動的な資金があるということであります。この浮動ドルが一体どのくらいあるのかというのは、これはいろいろな説がありまして、はっきりしたことは申し上げられませんが、案外大きいということは間違いない。それに対して防ぐ方法は何だろうかということがこれからの会議の中心になると思います。なかなかこれを一挙に食いとめるということは実は困難だと思いますけれども、何らかの方法によって、この過剰ドルというものを投機から、投機に結びつくことをできるだけ防いでいくという、何かいい知恵を出してまいらなければならない、かように考えておる次第でございます。
  87. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) たいへん失礼いたしましたが、私は三十億ドル台と申したようで、約四十七億が正確でございます。訂正をさしていただきます。
  88. 小林武

    小林武君 私が尋ねたのは、日銀総裁が、投機の動きによって今度起こったと、為替制度そのものが不適当なことによって起こったのではないと言うけれども、少なくとも、しかしこれ、投機が起こるというのは外国為替そのものに原因があるということを考えますと、投機を起こしたということ、そこだけに限定してものを見るという考え方は間違いだと、ぼくはこう判断するわけなんですよ。それで書きとめたんですよね、そのときに。それをやっていると大体昼の時間が来ますから……。
  89. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっと関連。  日銀総裁がおるすでございますから、副総裁お忙しいと思いますので、協力する意味で、関連で一、二問。  これは国内の過剰流動性のほうの対策として、明日から預金準備率を引き上げるということになりましたね。二月二十三日の閣議で経済企画庁長官が、投機の対策あるいは過剰流動性の吸収のためには預金準備率の引き上げが好ましいというような御発言をなすって、それで閣議でその方向がきまって、それで三月二日の日銀の臨時政策委員会で準備率の引き上げがきまったというふうに報道されておりますが、それはそのとおりでございますか、どうですか。ちょっとお聞かせください。
  90. 河野通一

    参考人(河野通一君) 御質問の趣旨があるいは聞き間違えておるかしれませんが……。
  91. 田中寿美子

    田中寿美子君 経過です。
  92. 河野通一

    参考人(河野通一君) 先般第二回目の準備率の引き上げを決定いたしました経緯につきましては、常時、大蔵省はじめ、政府の方々とも十分事前の連絡をとりながら、最近の経済の動きにかんがみまして、こういう政策をとることが必要と判断いたしたわけでございます。
  93. 田中寿美子

    田中寿美子君 報道されるところによりますと、預金準備率の引き上げとか、あるいは公定歩合の引き上げも、しばしば、総理もあり得るようなお話をしていらっしゃるわけなんですが、そういう金融に対する政策に関して、閣議のほうが先行しているような気がするわけなんです、閣議だの行政のほうが。それで、私が副総裁並びに経企庁長官にお伺いしたいのは、預金準備率の引き上げとか、あるいは公定歩合の引き上げですね、それで、いままで公定歩合も下げてきたし、金融はゆるめていたわけですね。今後金融を引き締めるということで、過剰流動性や投機が解決になるというふうに日銀のほうでも考えていらっしゃるのかどうか。円の切り上げ幅が二〇%をこえるかもしれないという時期なんですけれども、報道によりますと、むしろ日銀はしぶしぶであったというふうに書いてあるわけなんですが、これは総理とか大蔵大臣とか経企庁長官考え方のほうが先行していたのかどうかということ、それから昨日、足鹿委員からも、日銀の自主性が足りないんじゃないかという指摘があったわけなんですけれども、日銀にはたいへんりっぱな政策委員会というものがあるわけなんで、金融政策に関しては、私は行政が先行したら中立性が失われると思うのです。どうもその辺が、政策のほうがどんどん先行していっているような気がするんですが、日銀副総裁にお聞きしても、そんなことありませんとおっしゃるかもしれないんですが、それで、さっきその経緯をお聞きしたわけなんで、こういうことに対して、さっき、つまり投機とか過剰流動性の吸収に、預金準備率の引き上げあるいは公定歩合の引き上げが役立つという見通しを持っていらっしゃるのかということですね。今後、あるいはデフレ傾向が起こるかもしれない。そういうことまで考えても、なおこれは妥当な政策だというふうに思ってそうなすったのか。それから日銀がそれを主導的におきめになったのかということです。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の名前があがりましたので、お答えをさせていただきますが、私は、金融というものは、金融の実際の作動と申しますか、というものは、やはり日銀が中立的な立場で行なうのがいいと思っておるのでございます。ですから、たとえば公定歩合を上げるにしても、あるいは準備率を引き上げるにしましても、いつ幾日、どのくらいやったほうがいいと、こういうところまでは私は申すべきでないし、これは金融当局の自主的な判断にまかすべきだ、こう思っております。ただ、物価を預かっておる者といたしまして、何せどうも騰勢がひどい。やはりもっと金融を締めたほうがいいんじゃないかという一般的な意見でございますね。そういう点は申すのは政治家として当然であるというふうに思いまして、愛知大蔵大臣とも話して、さようなことをきめさせていただいたわけでございます。しかし、実際それをいつ発動するかということは、これは日銀のなさることである、かように考えております。金融当局といえどもアンタッチャブルではない。これは政治はすべてにタッチャブルである、こう思っております。
  95. 河野通一

    参考人(河野通一君) いま大蔵大臣からお答えがございましたが、準備率の引き上げあるいは公定歩合の話も出ましたが、こういう金融政策の具体的な事柄を、いつ、どの程度行なうかということは、これは日本銀行で自主的にきめていくべきことであるし、また、いままでもそうしてまいったつもりでおります。ただ、金融政策経済政策の中の大きな一つの柱でございますから、事前、及びその過程において、政府御当局といろんな形で意見の交換をし、また、考え方を調整していくということは、これは常にあります。今度の場合も、もちろんそういうことをいたしました。今後においても、おそらくそういう問題が起こってきました場合には、そういう意見の調整は当然行なわなければならない。それは何も日本銀行の金融政策における自主性をそこなうものではない、かように考えております。
  96. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) それでは午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  97. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、総予算三案に対する小林君の質疑を続行いたします。小林君。
  98. 小林武

    小林武君 先ほど来、日銀の副総裁にも、関連でもお尋ねいたしましたし、この国際通貨の制度の中で外国為替というものはやっぱり一のつ危機をもたらす大きな役割りをやっているということ、この点を考えますというと、私は何と言いますか、投機ということに重点を置いて、そこを押えればというのは、やはり本末転倒のような気がするわけですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  99. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) やはり列国が協調してまいります場合に、それぞれの国が国内政策を第一に考えてインフレを押えていく、健全な経済の成長をしてくれることが一つだと思いますし、そういうことが反映されていろいろな通貨の関係もきまってくるわけでございますから、やはり根本はその点も問題だと思います。しかし、現実に投機があるということになりますと、いまの八百十億ドルとかいうユーローダラーというものが投機に向かうということが現に考えられるし、将来そういうことがさらにふえていくという場合を考えますと、この問題もやはり非常に重要な問題として扱わなければならぬということだと思います。
  100. 小林武

    小林武君 大蔵大臣ね、そのことは投機というものについて、私は、その重要な役割りを果たすということは認めるわけですよ。しかし、投機の起こる原因というのは、IMF体制の中で、いわゆるあれでしょう、為替の差益を生ずるという、そういう通貨の問題が起こるからこそ、そういうことになるのじゃありませんか。だから問題は、このIMF体制というものはそんなに安定しておって、制度そのものが絶対あぶなくないという体制ではないということ、こういうことはしかしあれじゃないですか、言えるんじゃないですか。むしろ、そこから生ずるところの外国為替に集中する、為替差益を求めるところの投機が動き出すということは、そういう制度の欠陥の上に成り立つのじゃないですか。
  101. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いまアメリカのドルというものは基軸通貨になっておるわけでございますが、このドルに対する信任がゆらいできたといいますか、いまのおことばをそのまま拝借すれば、IMF体制そのものが変化を求めつつあるということはいなめないと思うのでございます。そでやはり、ただいま申し上げたように、わが国としてはどういう立場をとるべきかというと、まず国内のインフレを押えて、健全な経済成長の姿をわが国として努力するということ。それから資本の移動というものは、やはり規制が必要であると考えられる。それから準備資産といたしまして、やはりドルの役割りにかわるに何かSDRというようなものを、せっかくできたものでございますし、これを育成強化していくということが必要だと思いますし、また米ドルの交換性回復は各国ともこれを望んでおるのでございますから、これを健全に育てていくということが必要だと考えております。
  102. 小林武

    小林武君 いや、まあそういうこともあれですけれども、私の聞いているのは、先ほど来から言っているのは、結局考えるのは、このあとの問題をどうするかということ。一体、新しい通貨体制というものはどうするのかということを考えなければならない段階にきた。その際に、きのう日銀の総裁が、問題は投機ですと、為替制度そのものには別に問題はないんですというような発言があった。だからぼくは、それはやはり間違いではないかと、むしろ、IMF体制というもの、その中に、もうすでに問題点があって、そういう差益を求めるところの投機的なものが起こるということになるわけですから、問題はそれを考えながら対処しなければならないのではないかと、こう考えて質問しているわけですが、しかし、まあそこはもうそれでいいんです。そういうことを踏まえながら、一体大蔵大臣としては、新しいといいますが、この後に、通貨制度というものにどんな一体改革をしていかれるのか、そこのところを聞きたいわけなんです。
  103. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) やはりIMF体制というものが一つの節に来たということが今度の問題になっているのだということは、私も思っております。  そこで、今後でございますが、やはりドルというものが、まあかつてのポンドにかわって基軸通貨になってきたと。これに対しての投機が起こるような状況というものは、おっしゃるとおりドルが弱いということであると思うのです。そこで、しかしいま、じゃあドルにかわるものは何かといいますと、やはり各国ともにドルを持っているということについては、ある程度の不安を持っているわけでございます。これはいなめないことでございますが、さりとて、それじゃ国際間の決済通貨としてドル以外に何があるかというと、やはりドルだということになっておるわけでございますから、個々の問題としては、やはりドルの交換性を回復するということであると思うのです。しかし、その交換性は、金とすぐに交換するようなことを考えるかというと、これはアメリカは百億ドルしかないんでございますし、日本だって二百億ドル近いものを持っているんでございますから、これ一ぺんにかえるということになったら、これは不可能なことでございますから、何かそれにかわるSDRというようなものを各国が力をつけていって、逐次基軸通貨の信任を回復するような方向に持っていくにはどうしたらいいかと、——私は新米で、どうも結論が出ないんでございますけれども、そういう方向で考えたらどうかというふうに思っております。
  104. 小林武

    小林武君 新米、新米と言われても、それはもう、その以前は党の政策担当の大幹部ですからね、新米、新米と言われても困るのだけれども、私は、そのIMF体制というものの制度の中に危機の必然性があると、だから必然性があれば、その危機というものは一定期間にしばしば起こるんだということになるわけでしょう。しばしば起こるということになったら、被害を受ける立場から言えば、一体どうしたらいいかということになるでしょう。だから田中総理、先ほどから、とにかく貿易収支の黒字をつくったということについてはそれはわがほうも若干責任を感じなきゃならぬと言うし、協調的な立場でものを考えるということも当然だ。しかしながら、さんざんそれで苦しめられるというのは容易じゃないということになるわけです。このあとの対策というものは、これはやはり日本は相当発言もし、責任を果たしながら発言もして体制をつくらなきゃならぬでしょう。そういった場合に、ぼくはドルが交換性を、金との交換性を回復したということだけで一体おさまるのかどうか、そんなことが、何だか愛知さんの考え方にもそんなのがあったようだし、日銀の総裁もどこかの新聞に言っている中にもそういうことが言われている。一体どういうことなんだ。それだけでいいのかどうかということなんだ。それ、聞きたいと言うんですよ。
  105. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう十年前からの世界じゅうの問題でございます。ドルが基軸通貨として戦後四半世紀ずっとやってきたわけでありますが、ドルというものの価値が維持できないようになれば、アメリカ側は非常に強いことを言っているわけです。アメリカだけに責任を負わしてドルの信用を回復をしろと言えば、それはアメリカ自身が鎖国的な、ちょうどあの第一次大戦と第二次大戦のような状態をとる。そして安全保障の問題その他に対しても、まあアメリカが応援をするようなわけにはいかぬからということを言外に述べているわけであります。そうすれば、第一次大戦と第二次大戦の間にはアメリカは全くアメリカモンローに閉じこもっておったために、国際的には非常に縮小均衡の方向に向かって戦争が始まったわけでありますし、アメリカはその陰において世界の保有金の七〇%も確保したわけでありますが、流通しないような、国際流動性を確保しておらないアメリカのやり方がそのまま通るものではないので、やむを得ず二次戦の終息にはアメリカ自身が介入せざるを得なかったわけでございます。で、まあその後、戦勝、戦敗両国ともドルを基軸通貨として戦後の拡大均衡を続けてきたわけであります。いままた、その上に南北問題という大きな問題をかかえておりますから、ドルを基軸通貨として守っていくためには、アメリカも努力をするかわりに、世界の各国も協力をしてもらいたい。いま、これアメリカ立場でございます。そうでなかったら新しい基軸通貨をおつくりになったらどうですかと、こういうことで、まあ世界の発券銀行というような構想もありましたし、で、まあ国際通貨基金というものを、やはり現実的に再建をする方向でいかなきゃいかぬじゃないかということで、今日まで十年まいりまして、その過程においてSDRの制度で、まあ糊塗してきたというか、それ以外にはあまりいい方法がないということできたわけでございますが、やはり今度は、まあ当面する問題としては、ドル価値の維持ということが一つの問題だろうと思うし、そのほかに、やはりIMF体制というものは、ドルの交換性がなくなれば、もうIMF体制そのものが崩壊したということにもなるわけでありますから、そういう意味で、一体新しい方法、新しい機構というものがあるのか。四半世紀とにかく意義ある機関として効力を持ってきたわけでありますが、そこらが二十カ国蔵相会議だけではなく、IMF全部の問題だろうと、だからまあ、ソ連がいままで国連の加盟国でありながらIMFには加盟をしておらなかったのに、近ごろは加盟をするという問題も報道されております。やっぱりこういう国々がみな入りながら、縦小均衡をもたらさないような状態で基軸通貨をどうするのか。やっぱりきまるまでの間はドルを維持していかなけりゃならぬわけでありますから、そういう両面、ずっと十年間問題としてきた問題を、これからはやはりドル問題を契機にしてもっと研究しなければならない、こう思いますが、日本自体としても、各国が勉強してもなかなかいい案がないものを、日本もこれはということがないわけでありまして、具体的には、いまの当面するドルの問題に対して、まあアメリカがどの程度一体負担をするか、各国がどの程度一体負担をするかというような問題で当面の解決は私はつくと思います。当面の解決はつくと思います。これはまあお互いがなるべく自分よりも他の国の協力を求めるということで、まあそこらが折衝の非常にむずかしいところであろうと思いますが、いずれにしても、ドルの問題をまず片づけて、あわせて新しい国際通貨、国際流動性の確保という問題は新しい課題として研究していかなきゃならぬ問題だと、こう思います。
  106. 小林武

    小林武君 ちょっと情けないような気がするんですよね。経済大国だというようなことを口になさるいまの政府が、この通貨制度であまり下手、下手みたいな話。実際において、アメリカのドルが金交換を回復して安定したところにいくというようなことを断言できるかどうかということです。これはポンドとドルがその地位を争った場合の状況を考えてもそうです。それは、ドルとしては自分の、何というか、栄光というか権威というようなものを放てきするというようなことはなかなか容易じゃないだろう。しかし、もともとどうなんですか、ブレトン・ウッズ制のその以前のときに、ホワイトとかケインズがどういう一体議論をしたかというようなこと、そこまでさかのぼって考えて、新たなことを、ひとつ世界通貨体制というものを考えるべきだというような、そんなことを日本だって一言ぐらい言ったって、政府考えたって、何もこれ大したことないんじゃないですか。その一体大きなところを見せるぐらいのあれがなかったら——これからだんだん先にしぼんでいくというあなたたちのお考えなら別だけれども、これから日本の国の発展ということをお考えならば、これはもうしばしば危機が到来するということは必然的にあるのですから、そうでしょう。そんなことをしばしばやられちゃたまるかということになるでしょう。どうやったら一番安定した国際通貨制度があって、国際貿易というものが拡張し、拡大するかということを考えたら、ぼくは何だか消極論も消極論、何だか貨幣制度の安保体制みたいなものだね。そうじゃないですか、これ。
  107. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ気宇はできるだけ雄大にいくほうが私はいいと思いますけれども、ただ問題は、お話にございましたように、ブレトン・ウッズ体制からIMF体制へ、この四半世紀やってきたわけでございますが、やはり根本は金なんですね、ドルというよりも。金というものが、一体、非常に拡大してきた世界経済をまかなう基本としていつまでその生命が続けられるかということになりますと、やはり金の産出というものは限られているのでございますし、人間の英知というものは非常に大きな大量の財貨を創造しているわけでございますから、これの間のアンバランスというものもやっぱり出てくるのは必然でございます。そこで、どうして一体金がいいのだろうかと、金というものにどうして執着するのだろうかという哲学的な思索も一方に持ちながら、新しく国際協調の精神によって、人類の英知をもって一つの新しい国際的に通用する通貨制度というものを考えるということはわれわれも考えるわけでございます。  ただそこで、小林委員にも一緒にお考えいただきたいと思いますことは、いまのソ連とか中国とか、こういうようないわゆる現在のブレトン・ウッズ体制のできたころに参加していなかった国が、今後どういう態度をとるんであろうか。願わくばわれわれはこれと一緒にいきたいわけです。共存したいわけです。しかし、このIMF体制の基本には、やはり各国が全部コンフロンテーションをする、全部持ちものをさらけ出すという規定がございますわけですね。ところが、一部の国では、どうもなかなか、自分の国に入ってきてほかの国のものがいろいろ調査するというようなことはエスピオナージであるという考え方があるのですね。そういうものをもっと一つにできるようになりますと、今後の一つの新しい国際的な交換の基準というものも英知によって創造することができるんじゃないかと思いますが、私ども、その点について少しまだむずかしい点があると思いますので、おしかりを受けるかもしれませんけれども、いまの程度のことを申し上げているわけでございます。
  108. 小林武

    小林武君 まあここらでやめましょう、これね。何ぼやったって切りない。時間はなくなるし……。しかし、これははっきり、やっぱり腹の中に入れておいてもらいたいと思いますことは、これは決して何も野党だから言うとか、与党だからどうだとかいうことじゃないのですよ。それは、アメリカのドルが金の交換を回復すれば安全だというような状況には決してないわけです。そうでしょう。野積みするぐらい金塊を持っていたのが、いまやどういう状況になっているかということを考えたら、それはアメリカだって永久に繁栄するなんていうことも言われないでしょう。日本だって相当な金塊を持つことになるかもわからぬ、金を集めるということに。だから、この制度については、一体将来の世界の通貨体制というものはどうあるべきなのかということを、この段階にきたらやっぱりお互い責任をもつて、各国が責任をもつて当たらなきゃならぬことだということを言っているんですよ。だから、その点を理解してもらえれば——ここで何ぼやったって切りないですから、これは打ち切りますわ。  それでは 予算のことをちょっと質問いたしますが、この長期経済計画というのはこの資料なんかに出ているんですな、こっちのこの資料には。——ああ、それですか。
  109. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 出ておるつもりでございますが……。お手元に配ってある、これでございます。
  110. 小林武

    小林武君 経済社会基本計画……。
  111. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) はい。
  112. 小林武

    小林武君 ああ、そう。
  113. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは四十八年を起点といたしまして、五十二年を終期とする五年の計画でございます。
  114. 小林武

    小林武君 なるほど、わかりました。  そこで、これは長期経済計画というものは、いわゆる今度のあれを初年度にするということなんですが、それで、これからは、日本の財政政策というのは財政主導型に変わっていくということのように見えますけれども、これ、従来と変わったところはどこなんですか、これは。
  115. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お手元の資料の一六ページをごらんいただきますと、「計画の目標と政策体系」がございますが、その中で四つの目標を言っておりますが、これは「豊かな環境の創造」と「ゆとりのある安定した生活の確保」、「物価の安定」、「国際協調の推進」、この四つでございます。そこで、環境をまずよくせにやならぬというので、硫黄酸化物による大気の汚染と水質の汚濁、これを大体半分近くに減らそうという計画を持っております。それから環境施設——都市公園、下水道、廃棄物処理、これに多くの財政投資をしょう、それから全国交通通信ネットワーク、これは新幹線鉄道網と高速自動車国道をつくろうということ、それから加入の電話を大いに促進しようということでございます。それから農林環境の整備ということで、これは農用地と保安林の確保、それから特に社会保障というところがございますが、ここで振替所得を十二兆三千億ということで、四十五年度の二・七倍にしようということを言っております。この中で、年金、社会福祉施設、それから住宅、雇用環境——週休二日などでございます。それで、その次の一八ページに参りますが、物価の安定、国際協調の推進というところまでが目玉でございまして、そういうところに大いに財政を大きくつぎ込もうと、こういう計画でございます。  ちなみに申し上げますが、これは、田中総理の私案である日本列島改造論という考え方が大きくこの骨子に取り入れられておるわけでございます。
  116. 小林武

    小林武君 財政主導型に移行していくと、そうすると財政金融政策としては公債発行をこれからどんどんやりながら昭和五十二年ですか、五十二年、そこまで年々そういう予算の組み方をやっていくということになりますか。
  117. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  118. 小林武

    小林武君 それは好況とか不況とかということに関係なしにやっていくということになりますか。
  119. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その間に若干のそれは修正がございますけれども、やはり安定した成長をしようと、その間には経済の平均の成長を九%程度、物価は消費者物価で四%台に押えたいと、こういう企画を持っております。
  120. 小林武

    小林武君 いままでは不況のときに公債を発行してやっていくと。公債をやっていくということになりますと、どんな場合でも大体修正ということあるらしいですけれども、このあれでは、非常に大きな投資をやる財政主導型に移行した場合には、景気——好況、不況を問わず公債を発行していくということになりますと、大体、一番最終年度ごろに至るまでの間の各年度ごとの公債依存度というものはどういうことになっているんですか。
  121. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 仰せのとおり、好況、不況に応じまして、不況のときは公債が多少よけいになりましょうし、という点はございますけれども、いまの公債が一六・四%でございます。前年度の公債依存度が一七%でございまして、補正予算を入れると一九%となっておりまして、ことしの予算では一六・四%でございますが、まあ大体その程度、一五、六%ぐらいが平均ではないかというふうに考えておるわけでございます。年度途中に何年は幾らというのは出しておりません。
  122. 小林武

    小林武君 じゃ、ないんですか、これは。その大体のあれはないんですか。
  123. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府委員から申し上げます。
  124. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 計画の数字としては、公債依存度という数字は出しておりませんけれども、いま長官から御答弁申し上げましたように、大体四十八年度の姿、四十七年度の姿、この辺の姿がほとんど横ばい程度で推移すると、こう見込んでおります。一応の試算でございますが、昭和五十二年度においての、いわゆるこの財政支出と収入との差額——政府バランスと申しておりますが、これが総支出に占める割合は用地費も含めまして一六・六%と、こういうふうに一応試算しております。
  125. 小林武

    小林武君 それは国債依存度ですか。依存率ですか。依存率でもどうでもいい。
  126. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 国債依存度と普通申しますときには、一般会計ベースで申しますので、ちょっと数字が違っておりますが、この一六・六に見合った一般会計ベースでの試算は一七%程度に一応見込んでおります。
  127. 小林武

    小林武君 こうなりますと、一体これ、この本年度の予算——まあ、これ、暫定予算をやりましたときに、これはインフレになるんではないかと。もう連続、好況、不況を問わず、どんどん公債というものを発行していって、これが二八%とか一七%とかということになりましたら、これはどういうことになるんですかね。そこは、ぼくは今度経企庁長官と二枚鑑札で聞きたいんですけれども、この間お話しの、この御答弁の中に、インフレ論のあれがわが党の北山議員の間にかわされた。ぼくははなはだあれで、面と向かってこういうことを言うの悪いですけれども、インフレというものに対してあなたの御答弁というのは、ぼくは、これはあまりにも国民がかわいそうだと、こう思ったんですよ。そうでしょう。これはもうぼくは、何といいますか、何とかいう外国の人の名前を出して……。
  128. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) サミュエルソン。
  129. 小林武

    小林武君 サミュエルソンを出して、そうして、どんどんどんどん継続的に物価が上がっていくのをということを、それからインフレマインドというようなことを言う。こういうあれは、これ、いただけない議論だと思うんですよ。そういうインフレ論をやられて、一体、いまの日常の国民の生活というものから判断した場合、国民がインフレだなということを言うのと、あなたの言うのとの差ね、この点はもう少し国民の側に立った、いまは何ですか、インフレですか、インフレでないのですか、どうなんですか。
  130. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最初に公債の問題ですが、実は経済構造を変えるといいますか、もっと福祉主導型の、政府公共投資の多い、そういう形にしようとしますと、公債を出して全体の構成を変えるということを考えておるわけです。いままでの形のままいくんでしたら、あるいは公債がなくて、そして民間設備投資がふえて、その回り回ってきたものをもって福祉をやっていくという、そういう形ですと、大体その年の歳入でその年の歳出をまかなうということはいけると思うんですけれども、どうも大きな変化を望む形からすると、公債にたよるのが早道ではないかということを考えているわけで、しかしその際にインフレを起こしてはいけないということは、私は小林委員のおっしゃるとおりだと、全く間然するところはない、差異はない。  そこで、いまの現状をインフレと見るか見ないかということでございますが、私どもインフレーションということばと、世俗的にいうインフレというのと少し違っているように思うんでございますが、国務大臣として御答弁申し上げる場合には、学問的な分析によるインフレーションという意味で御答弁したほうがいいと思って申し上げるわけです。それは、やっぱり物価が加速的に、大幅に、継続的に上がっていく、こういう状態をインフレーションと言うということは学問的な、いま今日の定義のように、通説はサミュェルソンの学説をとっているものが多いものですから申し上げたわけです。今日の状況をインフレと見るか見ないかと、こういうことでございますが、私は非常に危険な状態にあるというふうに申し上げていいと思うんです。一歩誤るとインフレになるという状態、それには政府も大いにがんばらにゃいかぬし、国民の皆さんもインフレを起こさぬように努力していかなきゃならない。これは政府国民が一体になって経済をささえているんでございますから、そういう意味で、ぜひインフレだけは避けたい、こう申し上げておる次第でございます。
  131. 小林武

    小林武君 そこが何といいますか、なかなか納得いかないところなんですよ。物価が継続的に、加速的に上昇するというようなことは、いま上がっているんですよ、いま上がっているんですね。卸売り物価を見ても、消費者物価を見ても、連続的に速度を増して上がっていっているんです。これ認めるでしょう。そうしたらインフレでないですか。しかし、いまのところはまだインフレではないと言うのは、ちょうどガンの患者に前ガン症状だとか、いま、ほんとうのガンになったとかと言うことと同じだと思うんですよ。しかし、ガンをわずらっている病人にしてみれば、前ガン症状もガンもいずれはガンになるんですから、そんな医学の、学問的なことを言われたつて、わしなんかガンになったらほんとうに大あわてにあわてる、そういうことを言われたって。おまえ、まだ前ガン症状だなんと言ったって、先のないことがわかっておったら青くなりますよ、それは。そういうあれを使っちゃいかぬのですよ。だからインフレではどうかということは、政治家が考える場合には、一体国民がどう受けとめているかということですよ。物価がどんどんどんどん上がっていく、果てしなく上がっていくんだと、こういう状況の中で生活が立たぬじゃないかということになったら、国民の側から言ったら、これはインフレマインドだとか、それは加速的に何だからなんというようなことを学問的に何ぼ言ったところで国民はぴたっとこないのですよ。国会で言うことじゃないんですよ。書斎の中で経済学者がやるなら、ぼくは何ぼやってもいいと思うんですよ。それは。私は、これはインフレ状況になっている、インフレだと思っている。しかも、そのインフレは調整インフレの傾向にあるということ、その学者の説に私は賛成します。調整インフレである、政府の。黒字を減らすということがたった一つのとは言わなかったけれども、具体的に言ったら、あの貿易収支の黒字を減らすということなんですということを、いま行っている愛知さんが答弁されているのですね。どうやって減らすのだ、減らすもの、何を考えればどうかというと、田中総理にお尋ねしても両三年というようなことを言うけれども、一番いいのは、調整インフレやれば実質的にはとにかく円切り上げをやったような状況になるわけですから、私はそういうふうに見ているのですが。それはけしからぬと、おまえ、そういうことを言うのはけしからぬと言うなら、けしからぬというようなひとつ反論を出して、ぎゃふんと言わさしてもらいたいな。
  132. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうも尊敬する小林委員にぎゃふんとか反論とか、そういう大それたあれは持ちませんけれども、一言、私の考えを申し上げますと、まず、ガンでもいい、前ガンでもいい、そんなことを言われたら、おっしゃるように青くなりますわね、いま、ガンをなおす方法はないんですから。私は、いまの状況は直す方法があるということを申し上げているので、これを変なことに持っていってしまうとたいへんだから、国務大臣として、政治家として、ガンではないのだと、だからみんなで一致してこれを直しましょうや、こう申し上げているわけなんでございます。しかし、決して楽観せよと申し上げているのじゃなくて、非常にこれは大事なところにきておるので、われわれやはり心持ちを締めて、この難局を乗り切っていかなければならないということを申し上げているわけです。ところが、一方において非常に予期せざるといいますか、ある者は予期していたんじゃないかとおっしゃる方もありますが、為替の変動がございまして、円の切り上げというものは、そうしたものに水をさすデフレ的な効果を持つわけでございます。私どもはこの問題と取り組みながら、できるだけインフレにならぬようにもっていきたい、こう申し上げておる次第でございます。
  133. 小林武

    小林武君 ぼくは、逆に言えば、ガンと比較したのはまことに悪かったのですけれども、ガンじゃ先が短くなるからあれだけれども、インフレならまだ手当ては幾らでもあるということですよ。そうでしょう。インフレをどうやって終息させるかというようなことはいままでの政治家は幾らでもやってきた。だんだんひどくなればひどくなるほど終息のあれをやれば国民は苦しまなければならない、ある程度。非常な経済的な不安、逼迫の中に押し込められるわけですから、それは苦しい。だから、むしろそれをなるべく早い時期に見つけて、回復できない問題じゃないのですから、私はそれはインフレだということを早く言ったほうがよろしい。そうして対策はこうだということを出すべきだ。ところが、インフレじゃないのだということを言う。そうして政府のあれは膨大な、とにかく三十五兆でしょう、地方財政まで入れたら。こういう予算をいまの段階で出すということが適当なのかどうかということは、わが日本社会党はとにかく絶対だめだという考えを持っております。そういうたてまえに立っておる。しかも、これは愛知さんのことばを言うまでもなく、とにかく円切り上げを回避さしたいという念願のこれは予算の組み方でしょう。しかし、その前に先手をとられちゃった、こういうことになったら、私はそれについての政治的な手直しというものがなければいかぬと思うのですが、これは総理大臣、いかがですか。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 諸外国もインフレ傾向にありますし、日本の長いこと横ばいであった卸売り物価も上昇過程にございます。また、昨年の下期に入ってから景気の急上昇ということで、消費者物価も比較的落ちついておった去年に比べて、ことしは上昇傾向にありますので、いろいろな施策をとりながらインフレーションが起こらないような施策を行なわなければならない状態にあることは事実でございます。しかし、その反面、輸出の抑制だけで国際収支改善ができるわけではありませんので、やはり輸出の内需への転換ということも必要であります。そういう意味で、国内景気の、国内の購買力を上げなければならないということがございます。もう一つは、減税もし、また社会保障拡大しなければならないというところに、相反する問題を二つも三つも四つも同時に解決しなければならないということで、非常に悩まなければならない現実にあることは事実であります。ただ、結論的に申し上げますと、いままでは、財政主導型というよりも財政が誘導的な役割りを果たしたかもしれませんが、いままでの状態や指数を見てまいりますと、民間主導型で、政府が当初一〇%の成長を考えておったものが一一%になり、また、一五%の設備投資を予測しておったものがその倍になりというような状態でございました。そこで、社会資本のアンバランスや社会保障の問題とか、公害の問題とか、いろんな解決しなければならない問題が出てきたわけでありますから、今度はもろもろの問題を解決するには、自然の流れだけにまかしておかないで、率直に申し上げますと、金融とか、民間の経済活動は多少セーブをしながら、国民が要請をし、いまやらなければならない問題をやるには財政主導ということにならなければなりません。ただ、景気刺激のために財政が主導的役割りを果たすというのではなく、当面する社会保障やいろんな問題、公害問題とか、いろんな問題を解決しなければならないということになれば、ある程度いままでの民間の動きを押えながら、計画経済ではありませんが、やはり計画的に、重点的に投資を進めなきゃならない。それは財政を中心にしていかなきゃならないということより道はないわけでございます。ですから、そういう意味で、今度からは当分の間、正常な状態、また、望ましい社会環境をつくるためにも、財政が相当なウエートをもって運営せられなければならないと、こういうことに理解をいただきたいと思うわけでございます。ですから、いままでのように、経済のほうも、民間の活動も全部野放しにしておいて、それに付加して大きな財政投融資をということではないわけであります。今度の公債発行なども、必要によっては公債が日銀に還流するからというので、窓口規制や、選別融資や、いろんなことで押えておりまして、しかも、過剰流動性を吸い上げる役目に公債が利用されて、その金がほうっておけば土地やいろんなものの投機に回るものを、それを公債というもので吸い上げて、望ましい計画的な社会投資に回そうと、こういうことですから、考え方としては、私は間違っておらぬと思うんです。しかし、この財政の運用、財政の運営、経済運営に対しては、やはりそのとき、そのときの情勢をしさいに把握をしながら、いやしくも、その財政がインフレ助長に影響を与えるような、反映するような執行というものは慎まなきゃならないということで、これが財政の執行に対しては慎重な態度で配慮をしてまいりたいと、こう考えます。
  135. 小林武

    小林武君 まあ、これに出てたから言うわけですがね、昭和五十二年までの。これを財政主導型でやっていけば、先ほど言ったように、大蔵省の方の話でも、一六%ぐらい難なくやっていくわけです。これはもう、好況不況の差別なくいくわけです。少なくとも好況、あまりインフレ的になったら財政をぐっと引き締めるというあれは、この財政主導型によって。しかも、五十二年までの行程を一応決めたからにはあと戻りできないような状況になっているんです。そういう財政の組み方で、しかも今度は膨大な予算を組んだということは、これはたいへんなことだと思う。そういうことでは、インフレ、インフレになっていくんじゃないかと。私はそんな、何ぼ金をあれしても、インフレの中じゃだめだと思うのは、私はじきこの間まで建設委員をやっておったけれども、一体、道路をつくるつくると、こう言うが、道路をつくると言うが、道路の土地の取得というものはどういうようになっていますか。土地取得費というものは、あの予算の中のどれだけ占めているかということです。これは建設大臣にお伺いしますが、どうですか。
  136. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 二六%でございます。
  137. 小林武

    小林武君 金額にして幾らですか。
  138. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) いま記憶しておりませんので、あとで御報告いたします。
  139. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 公共事業費の総事業費中に占める用地補償費の金額を申し上げます。  四十八年度の総事業費五兆九千七百億円のうち、用地補償費の見込み額は一兆一千六百億円でありまして、その割合は一九・四%でございます。公共事業の具体的な計画は、その実施計画を待ちませんと確定いたしませんが、これは従来の比率によりますところの推計でございます。
  140. 小林武

    小林武君 まあ、時間がないからやめますけれども、とにかく、東名をつくったときの道路の土地の取得費よりかも、今度の東北縦貫という、いわば僻陬のところを通っている道路費のほうがずっと多いんです。それで五千億ぐらいのあれが出ているらしい、土地取得についてのあれがね。そうなるというと、一体、道路をつくる、つくるといっても、それはもうインフレを高揚させていったらどうにもならなくなるということを考えますと、私は、その点では、やはりこの予算というものを、われわれが言うようにもう少し検討する余地があるのではないかと、こう思うのです。  まあ、切りがいいからこれでやめます。
  141. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて小林君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  142. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 西村尚治君。
  143. 西村尚治

    ○西村尚治君 私は、この機会に、まず劈頭に政府にお尋ねと申しますか、御要望申し上げたいと思いますことが一点ございます。それは国鉄の問題についてでございます。午前中に、社会党の同僚議員からこの問題についての御質疑があったようでございますけれども、私たまたま席をはずしておりました。重複する面がありますれば、その点御容赦願いたいと思うのですけれども、私は国民の一人といたしまして、すなおな気持ちでこの問題についてのお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  新聞を見ておりますと、なかなか国鉄労使の紛争が意外に長引いておる。心配でならぬわけでございます。列車、電車のダイヤもなきに等しいようなさながら状況で、何万、何十万という人が非常な不利、不便をこうむっておる。出勤時間にも間に合わないでいらいらする、用事も足せない、中にはけが人も続出するというような状況でございまして、まあ、そういったいらいらした気持ち、やるせない気持ちというものが、やり場がなくっておそらくあの上尾駅の事件のようなものに発展したのではないか、このまま放置しておきますと、またいっそういう事態にならぬとも限らぬのじゃないか、そのことが非常に心配でならぬのでございます。まあ、公衆に聞きますると、どうも国鉄管理者何しているのか、政府なぜ早く手を打たぬのか、なまぬるいというようなことを言っておる人も事実ございます。反面、どうも国鉄の組合も、順法闘争、順法闘争と言っているけれども、あんなこと一体許されていいのかと、われわれをどうしてくれるのか、行き過ぎじゃないかということで、非常に怒りをぶちまけておる人もあるわけでございまして、労使双方にそれぞれ言い分はあると思います。思いますけれども、早くひとつ話し合って、歩み寄って一日も早くひとつ妥結を、解決を見るように政府も指導をしていただきたいと思い、心から願うわけでございますが、きょうは国鉄の総裁は見えてないようですけれども、主管大臣でありまする運輸大臣、これに対しまする見通しと申しまするか、御見解、御決意、それから加藤大臣が調停にお入りになっておるようでございますが、今後の見通しといいますか、また、御決意といいますか、ちょっとお聞かせ願えますれば幸甚だと存じます。
  144. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 午前中の御質疑に対しても同様なことをお答えしたと思いますが、国民立場から、とにかく労使の間の紛争であるとはいえ、国民の足を守っておる国鉄が、このような状態では本来の機能を発揮してないではないかという、非常にいらいらした気持ちが国民の間にあることは事実であろうと思います。私ども関係の者といたしましては、先般来この労使間の紛争が起こりまして以来、連日この紛争が一日も早く終止符を打って、国鉄がその本来の機能を発揮できるような体制に持ってきてもらいたいということで、関係大臣とも連日のように協議をいたしまして努力をしておるのでございます。先ほどもちょっと御報告いたしましたように、なかなか問題は深刻な点があるように思います。しかし、当初数点の争点があったようでありますが、だんだんそれが労使間の話し合いによりまして集約されてまいりまして、残るところは、一、二点になっておるように聞いております。昨日も、一昨日も、この問題につきまして労使が精力的に団交をいたしておりまして、まだ結果は画然と予想はできませんけれども、国民のそういった非常に強い、国民の足を守れというそういう要請にこたえるために、労使とも良識を持ってこの紛争に対処しておると思います。したがいまして、今後ともほんとうに一日も早くというよりも、一時間でも早くこういう状態終息いたしますように、関係大臣とも協議をしながら、最善の努力を重ねなければならぬということを考えておる次第でございます。
  145. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 西村議員にお答えいたします。  国鉄の順法闘争でありますが、数日前からこれはたいへんなことになる、こういうように推移を、政府も閣僚もほんとうに心配しておったんであります。八日に御承知のように公労委にあっせんの申請があった。公労委が九日打ち切った。これはたいへんだというので、さっそく私が関係——労使を呼びまして、大体、国民が迷惑をこうむるのだから、この際、高い視野でひとつ解決してくれと、だいぶうまくいったようでありましたが、一グループのほうが、帰ってからどうも妙になった。こういうので、これはまた今後深刻な場面に突入するんじゃないかと憂慮いたしまして、あらゆる手を打ちました。ところが、上尾事件が起きまして、関係の大臣とも相談いたしまして再度入りまして、十三日の晩は、大体戦術ダウンをいたしたんでありますが、最終的なダウンとはいえない点もありますので、各種の手を打っておる次第であります。要は、やはり高い視野に立って、率直に国民の声を背景に労使が良識を持って解決する、これが当面の必要のことであろうと思います。  以上です。
  146. 西村尚治

    ○西村尚治君 それでは、私は、きょうは物価、住宅、資源、そういったような数点につきましてお尋ねを申し上げたいと思いますが、都合上、資源問題について、まず、お尋ねいたしたいと思うのでございます。  最近、世界各国でこの資源の問題というものが非常にやかましく論議されております。世界有数の資源大国でありますアメリカにおきましてすら、この問題がきわめて大事な緊急な課題として取り上げられておりまして、近く大統領教書まで発せられるということが報じられているわけでございますが、アメリカにおいてすらそうでございます。ましてや、わが国におきましては、申し上げるまでもないことですけれども、資源にはきわめて恵まれない。産業の原動力である資源、これも、ほとんど大部分を海外のほうからの輸入に仰いでいるという状況でございまするから、この問題はなおさら重大な問題であるわけでございまして、ですから、まあわが国でも、もう最近は各方面でこの資源の問題が、御承知のように、いろいろと取り上げられて論議されているわけでございます。いまのままのテンポで資源の消費の率というものが伸びていきますと、もう、わが国は早晩これはとんでもない、たいへんな事態に逢着する。早くいまのうちから頭を切りかえて、資源の節約なり、あるいは新しい資源の開発利用、そういうようなものに努力すべきじゃないか、そういうのが大体識者の意見、結論のようでございますが、産業計画懇談会——通産大臣も御承知だと思いますが、財界人と一部の有識者で結成されております産業計画懇談会、ここの資料を見ますと、近年わが国の資源の消費率——資源と申しましても、木材だとか食糧品だとか、再生産の可能なそういったものは別としまして、鉱物資源に限って申し上げるわけですけれども、資源の消費率の伸びというものが、毎年一九%になっている。GNPの伸び、あるいは工業生産の伸びをはるかに上回っている。この状態でいきますと、一九八〇年には実に二十一億トンの資源を輸入しなければならなくなるということが出ております。他方、世界の資源の産出の中で輸出可能なものですね、それが同じ時点、一九八〇年には、いまのテンポでいきますると、二十・四億トンしかない。ところが、日本は同じ時点で二十一億トンを必要とする。そうなりますと、その時点になりますると、日本世界じゅうの輸出可能の鉱物資源というものを全部一人占めにしなければいかぬ。それでも足らないということになるのだということが書いてあるのですが、これは見方にいろいろございましょうけれども、しかし、大体そういう傾向というものは、どのデータを見ましても、趨勢としましては間違いないようでございます。したがいまして、何としても、これはまず第一には、産業構造の切りかえ、重化学工業中心の行き方から知識集約型のほうに切りかえていくことがまず第一だ。それから資源の節約運動、そういうPRをすることも大事だ、同時に、科学技術の一そうの促進、振興をはかって、新しい資源を開発して利用するように、いまから取り組む必要があるというようなことが、大体の結論、方向になっているようでございます。  そういうことを一々お尋ねしておりましたらきょうは時間がございませんから、きょうは石油と電力に限って通産大臣にお尋ねしたいのでございまするけれども、実は科学技術庁長官に、通産大臣に対する質問に関連してお尋ねしたいと思っておりましたところが、科学技術庁長官のほうは、きょうは何かアジアの科学技術担当大臣の国際会議で、その議長として、どうしても間もなくお出かけにならなければいかぬということでございまするので、非常にこれは飛び飛びになってあれですけれども、とりあえず順序、都合上、科学技術庁長官のほうに取りまとめてお尋ねいたしたいと思うのですが、私のお尋ねせんとする趣旨は、まああとで通産大臣にお尋ねしたいわけですけれども、石油資源というものは、どうしてもこれは有限です、限度がある。それにかわるものとして、新しいエネルギーというものを開発する必要がある。その一つとしまして、原子力ですね。これは、いますでに世界的に開発されておりまして、実行段階に入っておるわけですが、まあわが国でも、動力用としまして原子力の火がともってから十年になるわけです。東海地方に、すでに炉もできておるわけですが、あれからもう数年たつ。実用段階にそろそろ入っておるわけですけれども、この原子力開発の現状、見通し、そういうようなものにつきまして、ひとつ簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  147. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) まず最初に、この資源問題につきまして西村委員が特にお取り上げをいただきましたことに、非常に私は敬意を表したいと思うのでございます。  資準開発につきましては、あの有名はローマクラブの提案もございます。われわれが現在最も注目すべき問題ではないかと思うのでございます。それに関連しまして——そういう大きい問題は私の担当ではございません。ただ、原子力発電の現在の規模並びに見通しでございますが、現在、原子力発電は五基ございます。そして発電容量は、発電規模は百八十二万キロワットでございます。さらに、現在工事中の原子力発電の設備は十六基ございまして、それが完成いたしますると千二百八十万キロワットの発電設備の容量になるわけでございます。また、原子力の開発、長期発電計画におきましては、昭和五十五年度には約三千二百万キロワットの発電規模になるわけでございます。この時におきましては、全体の発電容量が一億七千四百万キロワットでございまして、その約五分の一、一八%程度になるかと思うのでございます。それから昭和六十年度におきましては約六千万キロワットでございます。このときにおける発電全設備容量は、火力とか水力とか、そういうものを全部入れまして二億三千六百万キロワットでございますから、原子力が約四分の一になるわけでございます。また、昭和六十五年度におきましては約一億キロワットでございます。このときの火力、水力、すべての発電設備の容量は三億キロワットでございますから、原子力が約三分の一になる見込みがございます。
  148. 西村尚治

    ○西村尚治君 非常に将来有望だと、エネルギー源として非常に貴重な役割りを担当してもらえるべく、期待できるような数字をいまおあげになったわけですが、これはまあたいへんけっこうなことだと思いますけれども、昭和六十年度に六千万キロワット、電力源の中で二五%を占めようという、これはまあほんとうに意を強うするあれですけれども、ただ問題は、その核燃料ですね。それに要するウラン、特に濃縮ウランになるわけですけれども、それの確保の見通し——これは、日本の国産というものは残念ながらあまり多く期待できない。海外に依存しなければいかぬ。それの確保の見通し、そういうようなことについてはどういう対策、どういう見通しでございますか。
  149. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) ただいま御指摘、御質問の核燃料の問題でございますが、まず、天然ウランと濃縮ウランという問題がございます。  最初に、天然ウランのほうを簡単に申し上げたいと思うのでございますが、天然ウランは、わが国ではまことに埋蔵量が少ないのでございまして、推定でございますが、約八千トン程度でございます。ある場所は、御承知の人形峠、あの岡山県と鳥取県の境界のあたりでございます。それから東濃地区——岐阜県の多治見地区、その辺にございますが、全体の量がわずかに八千トン程度であります。しかるに、先ほど申しましたように、昭和六十年度の原子力発電の規模が六千万キロワットといたしますると、ウラン精鉱、すなわちU3O8でありますが、ウラン精鉱が六十年までの量、累積量といたしまして約十万トンの天然ウランが要るわけでございます。したがいまして、どうしても外国から購入をいたさなければなりません。購入には短期契約と、そうして長期契約と二つございまして、精力的にこれに取り組んでおるわけでございますが、大体五十五年までは、もうすでに確保はしておるというふうに御了解いただいていいんじゃないかと思います。なお、その後におきましても精力的にその手は打っております。長期的には、とにかく海外探鉱、探鉱開発をいたします。それがために、民間企業に対しまして探鉱資金の助成をいたしまして、成功払い方式で大いに民間企業にやってもらっております。と同時に、動燃事業団という特殊法人がございますが、カナダ、オーストラリア方面におきまして、この天然ウランの基礎調査に取り組んでもらっております。そうして六十年ごろには所要量の約三分の一程度は海外探鉱で獲得したいというふうに、そういう目途で進めております。  それから、ちょっと長くなりますが、次は濃縮ウランの問題でございますが、御承知のように、現在の原子力発電は軽水炉によっております。軽水炉という炉を使う以上は、濃縮ウランを用いなければいけないということは御承知のとおりでありますが、この濃縮ウランにつきましては、現在、米国にはほとんどを依存しております。その依存の根拠といたしまして、日本と米国の間に日米原子力協定というものを、現在の協定は昭和四十三年に締結をいたしました。その協定によりますると、昭和四十八年に着工するものを含まして、二十七基分のものについては全部その手当ては終わっております。それは約三百二十八トンでございます。ただし、昭和四十九年以降の着工する発電所のものにつきましては、いま協定改良の交渉中でございまして、近くアグリーメントに達しまして協定が署名されますれば、国会に上程をいたしまして皆さまに御審議をお願いするということになろうかと思います。ただし、この濃縮ウランにつきましても、米国の供給力が、昭和五十五年にはもう供給が限界にくるようであります。自由主義世界の需要量がアメリカの供給力をオーバーするようでありまして、ということになりますと、これはたいへんでありまするから、いまアメリカとフランスから国際濃縮計画というプランを申し入れてきております。国際濃縮計画——米国と日本と、あるいは米国とフランスと寄って、ガス拡散法という方法で濃縮ウランをつくろうじゃないかという、そういう提案がございまして、その提案にわれわれは参加してはどうかということで、目下その結論を、四十八年中には結論をつけたいと考えまして、いまその作業に精を出しておる最中でございます。  さらに、もう一つは、ぜひひとつ御協力をいただきたいんでございますが、外国にばかりたよるんじゃいけないと、どうしても濃縮ウランを国産化しなければいけないというプロジェクトに、ことしから、昭和四十八年度から本格的に取り組むことにいたしまして、四十八年度予算で審議をお願いしておりまするうちには、濃縮ウランの国産化、遠心分離法による国産化の予算といたしまして五十二億のものを計上いたしております。そうして昭和六十年ごろには大体日本に必要な濃縮ウランの約三分の一程度は国産でまかないたいというふうに考えております。  ちょっと長くなりましたが、以上です。
  150. 西村尚治

    ○西村尚治君 いまアメリカからだけ輸入しておるわけですけれども、いつまでもアメリカ一国にたよっておることは、どうも不安ではないかという気がしておったわけですけれども、いま日仏提携の問題、それから国内での一そうの開発計画をお述べになりました。ぜひひとつそういうことについても御努力願いたいと思うわけですが、それはそれとして御努力願わなければいけませんけれども、いずれにしましても、石油もそうですけれども、いわゆる化石燃料エネルギーというものには限界があるわけでございますね。したがいまして、こういったもの以外の新しい開発、まあこのウランの関係では高速増殖炉、もっと熱効率のいい高速増殖炉の研究も進められておるそうですけれども、これもまだだいぶ先のごとになるようでございますが、あわせて、いま世界的に取り上げられております核融合の問題、これは海水の水素を利用するというわけですから、この材料は無尽蔵にあるわけですが、科学技術庁のほうでもかなり本格的にこの問題に取り組んでいらっしゃるということを聞いて期待しておるわけですけれども、高速増殖炉の問題と、それから核融合発電の問題、これにつきましての見通しなり、計画なり、そういうものをちょっとお聞かせ願えましたらと思います。
  151. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) まず最初に、新しい炉の問題でございますが、現在の軽水炉はウランの利用効率といいましょうか、非常に悪いわけでございます。全体の約一%程度しか利用効率がございません。したがいまして、何としても利用効率を上げる炉を開発しなければいけないというところから考えておるのが、新型転換炉並びに高速増殖炉でございますが、新型転換炉は大体ウランの利用効率が約三%程度になるということでございます。それから高速増殖炉につきましては約八〇%程度の利用効率を持って非常にすばらしいものだと思うのであります。この新型転換炉につきましては、現在原型炉を建設中でありまして、大体五十年代の後期ですね、いまから大体十年ぐらいだと思いますが、これははっきりしたことは言いかねますけれども、大体その程度に、五十年代後期には実用化するんじゃないかというふうに考えております。
  152. 西村尚治

    ○西村尚治君 それは新型のほうですね。
  153. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) 新型です。  また、高速増殖炉につきましては、四十九年に実験炉をつくりまして、そうして五十三年に原型炉をつくりまして、六十年代にはこれはやはり実用化に達し得る見込みで進めておる次第でございます。  また核融合の問題でございますが、これは一番われわれが興味を持っておる問題でございますが、御指摘のように、現在の核分裂の場合はウラン燃料が要ります。しかも、そのウラン燃料は、全世界じゅうをさがしましても確認埋蔵量というものが約百十四万トン程度しかいま確認されておりません。おそらくは、まだまだふえていくと思いますけれども、現在の段階においては約百十四万トンであります。したがいまして限度があるわけです。それに対しまして、核融合の場合は重水素を原料といたしまして——海水の中には無限にあると言ってもいいぐらい材料が豊富でございます。水を燃料とするというわけで、非常に原料が豊富であるという意味において、われわれは最も核融合に興味を覚えて研究に取り組んでおる次第でございます。しかも、クリーンエネルギーと申しましょうか、放射性廃棄物というものが核融合の場合は非常に少ない、ほとんどないというふうなメリットもあるわけでございます。したがいまして、当庁といたしましては、日本、原子力研究所を中心といたしまして、理化学研究所並びに電子技術総合研究所等、研究所が連携をとり、また大学とも連携をとりつつ、この研究に精力的に取り組んでおります。  それから特に、これはちょっとお知りをいただきたいことは、原子力研究所におきましてトカマク型磁場装置というのがございまして、この磁場装置におきまして、外国よりも二、三倍長い時間、プラズマを閉じ込めておくことに成功をいたしております。二、三倍長い時間と申しましても、〇・〇二秒でございますけれども、それだけ長く閉じ込めるのはなかなか大成功だそうでありまして、そういう点から見ても、現在の核融合については、日本の技術というものは決して外国にあまり負けていないということを申し上げたい。ただ、見通しでございますが、昭和、これも六十年代には核融合の動力実験炉の建設ということを目ざして進めておりますので、今後二十数年たてば、これは実用化に達し得る見込みで進めておる次第でございます。
  154. 西村尚治

    ○西村尚治君 高速増殖炉のほうはどうですか。
  155. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) 高速増殖炉につきましては、大体いまから、十五、六年——十七年ぐらいと見ております。大体の見当ですから。
  156. 西村尚治

    ○西村尚治君 それじゃ通産大臣にお尋ねいたしたいと思うのですが、石油の問題、いまアメリカ——世界的に非常に問題になっております石油でございますが、これは世界の石油の生産量というものは、毎年八%ぐらいの伸びしかない。しかもそのうちで輸出可能のものが大体三分の一程度であろうというのが、これも産業計画懇談会のほうで発表しておるデータによるわけですけれども、そういうことを指摘されております。これに対しまして日本は、いまのテンポで消費率を上げていきますると、やはり一九八〇年代、八〇年のころ、このころには六億トン近く必要じゃないかということが載っておるのですね。それに対しまして、世界の生産のうちで輸出可能のもの、いまのテンポではじきますと一二・五億トンぐらいだということになる。一二・五億トンぐらいの供給可能量の中で、日本が六億トン近いものを、輸入を必要とするということになりますと、アメリカも同じそのころになりますと、御承知のように自国生産だけでは足りませんから、大量のものを海外輸入に依存しなければならなくなります。さらにヨーロッパだって相当必要になる。どうもこれは世界的な石油争奪戦ということになりかねないような気がいたすわけでございますが、これは、ただデータのとり方はいろいろあるようでございまするので、通産省、政府のほうとしては、そういったようなことについて、どういう見通し、計画を、需給について、日本の国を中心としてお立てになっておりますかどうか、これをちょっと需給の見通しを。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一九八〇年ごろになりますと、率直に申して石油の需給関係は完全に調和が狂ってしまう情勢でございます。いまのお話にありましたように、日本が約六億ないし七億キロリッター必要とする。そのときアメリカはどの程度であるかと計算しますと、指数計算では十三億キロリッターになっておるわけです。そのときに供給力が、いま先生がおっしゃった程度であるとしますれば、ECの分ももちろんない。そういうことでございますから、石油だけを見ればきわめて悲劇的な前途であるわけでございます。しかし、最近ガスの開発とか、あるいは新しい油田の開発等の試みもございまして、懸命な努力はしておりますけれども、必ずしも予断を許さぬ、そういう状態でございます。大体世界の石油需給につきましては、一九八〇年の見通しでは、需要は現在の二十六億キロリッターから五十億キロリッター前後まで全世界では達すると見られております。それでいまのところ、いろいろなものを世界じゅうで供給し合わせれば、物理的にはほぼ需要に見合うバランスをとれるだろうと推測されておりますけれども、物理的に見るということでございまして、経済採算とか、その他を見ると、必ずしも楽観を許さない、そういうことでございます。わが国の需要は現在二億六千万キロリッターでございますが、先日石油審議会で、五十二年は三億三千万キロリッター、これが一九八〇年には少なくとも四億五千万キロリッターになるものと予想しております。まあ一応の試算が六億ないし七億という数字が出ていましたが、通産省としては四億五千万キロリッターが少なくとも要ると、そう見ておるわけでございます。そういう中にあって、お話のように、問題はアメリカがいままで世界輸出国でありましたのが、八〇年前後、八三年ぐらいになると五〇%以上輸入する国に変わってまいります。それから、OPECの諸国、世界の石油のほとんど大部分を出しておりますOPECの諸国がいわゆるパーティシペーションということを要求してまいりまして、八〇年過ぎ、八三年でありますが、五一%の油はその産出国が支配すると、そういうことになっております。ことしから二五%支配することになりました。そうなりますと、いままでいわゆる世界の石油独占資本といわれるものがそのアラビアの王様や、国々から獲得して世界に供給しておったわけでございますが、その占有率が減って、石油原産国の発言が、あるいは直接供給がふえてくるわけであります。そういう面から見て、世界の石油戦線に非常に大きな変化がありまして、現にそういう状況が出てきて、この間アブダビ石油におきましてジャパンラインが直接アブダビの国からパーティシペーションオイルを全量取ると、そのために価格を乱したといって非難されている面もあったわけでございます。そういう大きな変化に対応して、日本も石油の国策を立てなければなりません。われわれはまず第一に、世界と協調してやるということ、日本だけで独善的にやらない。第二番目は、東西南北、四方八方から資源の手当てをするということ。中近東だけに偏していることはこれは危険性がある。したがいまして、インドネシアからも、あるいはベネズエラからもペルーからも、あるいはアラスカからも、あるいはシベリアからも、あるいは中国からも、あるいは北アフリカからも、ともかく世界じゅうから手当てをしておこうと、それが第二でございます。それから、自国が支配し得る、そういう国産原油といわれるもの、海外から供給するものも含めましてこれは三〇%は確保したい、そういう目的で、これから、せっかく努力しておるところでございます。  油の問題はともかく大問題でございまして、これは全国民とともに重大関心を持って進めてまいりたいと思っております。
  158. 西村尚治

    ○西村尚治君 ただいま大臣のお話でございますと、私どもが見たり読んだりしておりますデータよりかかなりゆとりのある、物理的には少なくともだいじょうぶだというお話でございましたが、ただいまもお話がございましたように、各国競って資源をあさるようになりまするし、またOPECその他どんな攻勢に出ないとも限りません。なかなか楽観を許さぬだろうという気がするわけでございますね。いまお話しになりましたように、国内産三〇%、これも非常に大事なことだと思いますが、今後ひとつどの地域でどういう品質のものをどの程度確保するかという具体的な計画、おそらく資源エネルギー庁というものを通産省で今度おつくりになろうというのは、そういった問題に鋭意真剣に取り組もうという意欲のあらわれだと思うわけでございますが、ひとつそういった長期計画、中期計画というしっかりしたものを立てて、ぜひ国民を安心させていただきたい。  それから、いまお話しのありました国際と協調ということがほんとうにやっぱり非常に大事じゃないかと思いますので、ひとつ中曾根大臣、提唱なさいまして、一大国際協調機関、そういうようなものをおつくりになることもぜひひとつ考えていただきたいと思います。  それで、時間がありませんので、少し電力の問題につきましてお尋ねいたしたいと思うわけですが、石油は石油の問題としてあくまで安全確実な入手の道を講じなきゃいかぬわけですが、何と申しましても、これは有限だと思うわけでございます。チュメニだとかその他いろいろ新しいものが見つけられるようでございまするけれども、有限だと思います。私は、それを消費する大宗である電力、この電力につきまして、先ほど原子力の問題核融合開発の問題など科学技術庁のほうから聞いたわけでございますが、この一連の問題といたしまして、核融合とか高速増殖炉、これは将来の夢として非常に大きな期待が持てるとか思いまするけれども、先ほどのお話のように二十年、三十年先のことになるわけでございますね、実用化しますまでには。  そこでお聞きしたいんですけれども、わが国のいまの電力の需給状況ですね、どうも関西電力、東京電力などというのはだいぶ、節電運動というようなことで、いろいろ節約を呼びかけておるようでございます。どうも電力が十分でないようだといったようなまた不安——不安と申しますか、感じを国民に与えておるようでございますけれども、まず電力の——いま石油の関係をお聞きしたわけですけれども、電力の需給の見通しですね、これから五年、十年の。それについてちょっと一言お漏らし願います。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本のエネルギー総需要量の中の分布を申し上げますと、大体化石燃料、最近は石油の需要が非常に伸びてまいりまして、七三%ぐらいです。それから石炭が一七%ぐらいです。それから電力が、水力で六・数%、原子力はまだ〇・六%ぐらいです。ガスが一・三%ぐらい、ですから、まあ電力の比重は落ちてまいりましたけれども、化石燃料の石油の部分が非常に大きく伸びてきているわけでございます。が、しかし、わが国の産業上非常に重要な資源であることは間違いございません。最近は、昭和四十七年の例を見ましても、建造許可、設置許可が千百万キロ程度出たのに対して、実際着手できたというのは三百二十万キロ弱でございますね、その程度でありまして、公害問題とか、あるいはそのほかの問題でなかなか着工ができない。そのために需給がかなり逼迫してまいりまして、ことしの夏は、昨年にもありましたけれども、関西電力不足が起こるのではないかと憂えて、いろいろ手配をさしているところでございます。昭和五十一年には供給予備率が二・一%に低下するものと見込まれます。適正水準は八ないし一〇%です。つまり供給量の八%ないし一〇%の余力をいつも置いておくわけですけれども、それがだんだん落ちてきて二・一%ぐらいしか余力がない。どこかが故障するというと供給不足が生ずる、そういう数字になるようでございます。一番のポイントはなかなか立地ができないということでございますので、まず公害対策に万全を期する、住民の皆さんに公害の心配をおかけしない発電設備を設置する、それが第一と、それから第二番目には、今度の議会に提出して御協賛をお願いいたしたいと思うわけでございますが、電源の周辺地域の整備法を出しまして、地元住民のプラスになるような電源開発を行なう、そういうような政策を推進しまして、電力需給を全うせんとしておるところでございます。
  160. 西村尚治

    ○西村尚治君 電力需要に応ずるために供給体制をもっと強化しようということで発電所の計画がある、それが地元の反対でどうも次々に延び延びになっておる、いま大臣のお話のようなことを新聞などで見まして、私どもも実は心配しておるわけですが、これはやはり、これまたいまお話のように、発電所が来ても公害をばらまくだけで、どうも地元にうまみがないと、そういうようなことが原因のほんとうのところじゃなかろうかと思うわけでございますが、まあそれにつきまして、いまお話のその設置する場所の地帯の整備をする、そういう法案を出そうということでございます。となりますれば、それが実現いたしますれば、地元も相当これは整備され、潤うことになるわけですから、立地促進に非常に役立つだろうと思うわけでございますが、ただ、それにしましても相当な計画がまだ渋滞しておる、中断しておるように聞くわけですけれども、この立地につきましては、電力会社だけにまかさないで、ひとつ通産省が本腰を入れて乗り出して地元説得了解工作をやっていただきたいと思うわけですが、その立地——いまのお話ですと昭和五十一年ですか、五十一年には予備軍が二二ですね、ということになりますと、ほんとに私はこれは楽観を許さぬと思うんですよ。八%、一〇%というのが正常数値であるのに対してたったの二二%、しかもそれが五十一年になりますとそういう時期が来る。ところが電源開発、これはもう着工しましてからおそらく三年、五年を要するだろうと思うわけですが、そういうことを考えますと、私はほんとうに一刻も猶予ならぬような気持ちすらするわけでございますので、法律は法律として通す、それからいま懸案のものは通産省も乗り出して本腰で地元の説得工作をしてやるということでひとつ御対処をぜひお願いしたいと思います。  それから、新しいエネルギー源といたしまして、さっき申しかけました核融合と高速増殖炉、こういうものも大きな将来夢が託し得られると思いますけれども、さしむきのところとしまして、私は、いま通産省でも地熱発電というものをだいぶ開発なさっておりますね。これは計画中のものも合わせまして十数万キロとか聞いておるわけですが、これは非常にいい、日本の国は御承知のように火山国でございますから、地熱はそれこそアメリカなどよりかずっとその面では資源大国と言ってもいいかと思うわけでございますが、この地熱発電というものをもっともっとひとつ促進してもらえないものかどうかですね。このエネルギー、何か小規模なものでないと、これはなかなか大規模なものに適しないといったような難点があるようなことも聞きますけれども、小規模でも各地につくればそれだけプラス、助けになるわけですから、この地熱発電に取り組む御意欲、御方針、御計画、そういうものをちょっとお漏らし願えたらと思います。
  161. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 火力、水力、原子力あるいはそのほかあらゆる資源を有効に活用すべきものでございまして、日本の場合は御指摘のように確かに火山国でございますから、地熱発電の可能性はかなりあるわけでございます。現在運転中のものが三万一千キロワット、計画中のものが十三万五千キロワットございます。で、埋蔵可能量が大体二千万キロワットと推定されております。科学技術庁におきましても地熱発電には非常に力を入れておりまして、通産省といたしましても協力してやっているわけでございますが、本年度予算で約八千八百万円開発のための費用を計上しております。
  162. 西村尚治

    ○西村尚治君 八千八百万円というと何だかあまり多くないような気がいたしますが、これは今後さらに努力いたしていただきますことといたしまして、もう一つ太陽熱発電というのがございますね。潮流発電とかいうのもありますけれども、世界的に少し研究が進んでおりますのに太陽熱発電というのがありまして、大臣のもとの工業技術院でもすでにこの研究に着手しておるようでございます。私が聞きましたところでは、まだそれほど進んでいないようですけれども、これは非常に今後、特に夏分などには熱量が、電力をよけい必要としますが、その夏分の電力需要にたいへんプラスになるんじゃないかと思うんでございます、太陽熱発電というのは。あそこの堀米博士というのに私聞いてみましたら、もう開発経費さえもらえばここ数年で開発できるというようなことをおっしゃっておりましたが、じゃいまどれくらいあなたのほうで研究費があるのかと聞きましたら、こんなことは言いにくいのですけれどもと言って、まあ工業技術院として一括して行って、その中で分けてもらうらしいんです。工業技術院長その他に遠慮しながらおっしゃったので、こういうところで言っていいか悪いかわかりませんけれども、百数十万円、二百万円足らずだというんですね、年間。そんなことではとても思い切った大事な、貴重な研究開発というようなことはできないと思いますので、これは担当者から頼まれたわけじゃありませんけれども、私はかねがねこれは関心を持っておりまして、国家的な見地からこういうものはほんとうに鋭意研究に専念してしてもらうべきだと思うわけでございまして、そういう意味でお願いするわけですが、もっとひとつ太陽熱発電などというものについても思い切った研究費をつけてあげて、もうフルに能力を発揮して貴重な開発ができるようにひとつ御指導をお願いしたいと思うわけでございます。これは本人から決して頼まれたことじゃございませんので、誤解のないようにお願いいたしておきます。これは、私実は大臣も御存じだと思いますけれども、アメリカなどでは相当壮大な計画があるんでございますよね、太陽熱発電につきましては。超大型の人工衛星を打ち上げまして、そこで太陽電池——そこで直接蓄電いたしましてそれをマイクロウエーブで地上の受電所に送電をするという、これはNASAとそれから民間の何社かがタイアップいたしまして、そういう計画を近くやろうというような計画まで発表されておるのです。ただマイクロウエーブで電力を地上に流すということ、何だか非常に危険なような気がするんですけれども、よくわかりません。しかしそういう計画があることは確かです。しかしそういうのに比べますと、いまの工業技術院でやっております方法はもっと私は実用性、実現性があるように思うんでございますよ。どうかひとつこういうところにも気を配っていただきまして、みんながほんとうに総力をあげて新しいものを開発できるように、この上ともの御配慮をお願いいたしたいと思います。それを要望いたしまして、この資源関係は終わりといたしたいと思います。  次に、物価関係につきまして少しお尋ねいたしたいと思うんですが、まあ私、今日国民の最大の関心事は物価問題ではなかろうかと思うわけでございまして、福祉の充実、給与の改善、こういうことももちろん大事ですけれども、しかし物価が上がらないでほしいという、これがほんとうの国民の切なる願いじゃなかろうかと思うわけでございます。まあ、この国会の開会劈頭、総理大臣も施政方針演説で、物価については最も重点を置いて対処するということをおっしゃっております。経企庁長官も同趣旨のことをお述べになっておる。やはり国民の気持ちをくんでのこれはお話だろうと思うわけでございますが、ところがこの物価の問題につきましては、申し上げるまでもなく、このところいろいろ悪い要因が重なり合っておりますわね。海外の大豆だとか木材だとか、海外における不作事情、こういうものもございまするし、投機というようなものが原因をなしておる面もございまするし、しかも卸売り物価、長年安定を続けておったものが昨年の八月からどんどんどんどん続騰しておるというようなこと、こういうことを考えますと、これはなかなか容易ならぬ事態だと思うわけでございまして、経済企画庁長官は、物価のほうは何とか五・五%、四十八年度においては五・五%の線で押えたいということをおっしゃっております。はたしていまの状況でそういうことが可能だろうかどうか、非常にこれは案ぜられるわけでございます。しかし五・五%に押えたからそれでいいというわけじゃございませんで、預金や貯金の率から見ますと、これはまたほんとうに五・五%だってあまり感心したことじゃないわけでございますが、しかし少なくとも設定されたこの五・五%というものをはたして達成できるものかどうか、大体こういう問題、いままで各審議の段階におきまして出尽くした問題ではありますけれども、一応その見通し、それから物価値上がりの原因だとか対策とか、そういうものをちょっと一通りお聞かせ願えましたら……。
  163. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 仰せのように、非常に物価の問題は国民の重大関心事でございますし、政府としてもほんとうに真剣に取り組まなければならぬと考えておるわけでございます。まあいろんな原因がございますけれども、やはり根本的にはこの過剰流動性の問題があると思います。これはいろいろなルートで提供されてまいるわけでございますが、やはり金融機関の貸し出し増加によるというところが最も多いということで、これを抑制することによって有効な規制をいたしたいと考えておるわけでございます。  そこで、この対策としましては、先般来から預金準備率の引き上げというものに手をつけまして、一月十六日、それから明日また第二回の引き上げをやろうということになっております。それからさらに、日銀の窓口指導強化による都銀等の貸し出しの増加抑制。それから土地関連融資の規制。さらに大口商社等を主体とする企業別手形買い取り制度の創設。さらには、商社向けの融資の抑制ということをいたしておりまするわけでございますが、しかし、まあただいま御指摘のように、かやのつり手を上げるように、あっちこっちでぼこぼこと非常に国民生活に関連の深いものが上がりますので、私どもとしても、しんからこれに頭を痛めておるわけでございます。  有効な対策といいますと、まあそういうことで、実は消費者物価のほうは幸いにいたしまして暖冬で野菜等の季節商品が潤沢に入ってくる。あるいはイワシが豊漁だ、サバもまた豊漁というようなことで、どうやら四十七年度の消費者物価は五・三%と予定しておりますが、五・一%ぐらいでおさまるんじゃないかと思っております。ただ、卸売り物価のほうが、これは二・二%という予定でございますが、これがなかなか海外等の物価、ことに羊毛あるいは繊維類、こういうようなものが上がってまいりまして、これはすぐに消費者物価に響いてまいるもんでございますから、非常に憂慮しておるわけでございます。で、それについては、先生御承知のように、先般来党とも打ち合わせをいたしまして、過剰の売り惜しみ、あるいは買いだめ、そういうものに対してはひとつ法をもって規制しようということで、物価調査官というものを、通産、農林、それから経企庁にもつくりまして、相携えて、ひとつそういうものに対して押えるように向かおう、しかも、押えに向かった結果、公表等の措置を講じますけれども、著しく不当なことをやっておるということが明らかになれば、これはもう不当価格による告発をする、物統令を適用するということも考えようということになっておるわけでございます。  一方、やっぱり消費者のほうでも、ぜいたくをするということはあたりまえというような気分を引き締めていただかなければならぬ。まあ、はなはだ一方的な言い方でおそれいりますが、真にそう思うんですね。たとえば、この間、ガーゼが足りない、いまもその問題がございますけれども、これは、足りないことも、一部に買い占め等があることもそうなんですけれども、やはりデパート等へ行ってみると、若い御婦人はガーゼの寝巻きを着て寝るんだそうですね。これは気持ちがいいでしょうけれども、そういうことになってくると、これはなかなか足りないということになる。(笑声)絹織物等もですね、非常に厚い布地のものを着る。やっぱりこの消費の抑制ということも、みんなの、国民のみなさんが協力していただかないといかぬのではないかと、かようにも考えておるわけでございます。
  164. 西村尚治

    ○西村尚治君 この物価騰貴の原因はいろいろあるわけでございますね。特にその中の一番の元凶——元凶と言うとあれですけれども、大きな原因をなしているものは、いま大臣御指摘のように、過剰流動性だろうと思うんですよ。過剰流動性。この過剰流動性というものが一体どれくらいあるのかと、ある銀行の調査した発表によりますと、七兆五千億などという数字もあがったりしておりますが、そうでない、もっと低めのものもありますけれども、一体、どうも私どもは見当がつかぬわけでございますが、こういうものに対して、まあ一次、二次の準備預金率の引き上げ、その効果というものは三千億なり六千億なり、まあ相乗効果があるのだということもおっしゃっておりまするけれども、そういうことだとか、窓口規制などで、はたして効果があるものなのかどうなのか、どうも私どもわからぬのですが、だからといって、しかし公定歩合に踏み切っていいものなのか。為替レートの切り上げの率なんかが、もし意外にあれしますると、たいへんなデフレということになる。そういうようなことで、ほんとうに私どもわからぬのですが、その辺のところ、どういうふうに長官考えになっておるものですか、ひとつ教えていただきたい。
  165. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ、四十六年度で、外貨が円にかわります外為払い超でございますね。これが四兆三千億といっております。それから、その年度の銀行の貸し出しが十二兆七千億、それから四十七年度になりましてから外為の払い超が一兆七千億で、その間の銀行貸し出しが十七兆三千億。でございまして、まあ四十六年度は御承知のようにニクソンショックのあとのドルの買いささえがございましたので、非常に多いわけでございます。で、これの吸収をだんだんやっておるわけでございますが、いま御承知のように、為替がフロートしておりますから、まあ大きな買いささえの問題はないわけでございます。しかし、どうもまだだぶつきはいなめないように思います。まあただ——私は代理でごさいますから、あまりよけいなことは申せない立場でございますけれども、ただどうも一方、物価が高くて不景気と、不況下の物価高と、こういう点はなかなか心配になりますものでございますから、そのさじかげんを大蔵当局、日銀当局がいろいろ考えておられるのではないかというように思うのでございます。しかし、いまの日本の公定歩合というのは先進工業国の中では一番低いのでございまして、いまの情勢で少し上げても、日本は金利が高いからといってユーロダラーがその意味から流れ込んでくることはないのではないかというふうに思いますので、まあこの公定歩合の問題もやはり考えていって、要するに適正なる総需要を持つということが根本だろうというふうに私は思っておるわけでございます。
  166. 西村尚治

    ○西村尚治君 物価抑制の目標五・五%、これができればけっこうですけれども、かりにこの五・五%を上回るということになりますと、私は預金や貯金をする人がほんとうになくなるのじゃないかということを心配するのでございますね。それで、先般衆議段階で民社党のどなたでしたか、提案がありまして、預金——いま定期は一年ものが五・二五%、利子がですね。それから一年半ものの定額で五・五%ですか。それを上回ると申しまするか、物価の値上がり率が五・五%を上回る場合には、この預金の金利をそれにスライドアップさせる方式を考えてもらいたいという提案に対しまして、日銀総裁は前向きで検討するといったような御答弁があったように思います。ところが、あとで新聞を見ますと、大蔵当局は非常に難色を示していらっしゃるということも見ました。まあ確かにこれは非常にむずかしい面があろうかと思いまするけれども、どうしてもそれができないときには、私は、せめて特定の、一定の、この五年なり十年なりの長期の定期につきましてでも、少なくとも何とかそういう面を考えてもらいたい。と申しまするのは、サラリーマンなどが長年つとめまして五十歳なり六十歳なり定年でやめまして何百万円かの退職金をもらいますわね。そういう人たちは、株だとか土地に手を出すだけの余裕も才覚もございませんから、一番安全な道ということで貯金をして、そうしてその利子を当てにして老後の生活設計をする。こういう人が非常に多いと思うのでございますよ。ところが、どうも物価のほうがどんどん預金利子より上がってしまうと、生活はもう全くくずれてしまう。他方、土地だとか株を持っておる人は、それだけで、いながらにして、その値上がりによって資産というものはどんどん太っていく。一方、預金者はもう資産が実質的価値が低下してしまう。これじゃ、これはどうしてくれるのだということで、庶民はたいへんな不信、不安の気持ちを抱くようになるのじゃなかろうか。ですから、そういうことを考えますと、これはもう大問題であるのでありまして、少なくともこの五年とか十年、何か、どういうふうに規定するかわかりませんけれども、そういうものに対してでもスライドアップするというような方法はほんとうに考えられないものかどうか、その辺ひとつ、むずかしいと思いますが、どうですか。
  167. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大問題で、あるいは総理大臣からお答えするのがいいかもしれませんけれども、おまえやれということですから申し上げますが、どうも物価に預金をスライドさせるという考え方は、これは非常にむずかしい問題があると思います。どうも物価と預金のレートというものが並行していくという考え方は、世界じゅうどこでもとっていないわけでございます。そこで、先生も実は郵貯の問題のときにもいろいろ御心配いただいたんでございますが、いま百万円以下の個人の預金というものが全体の六割を占めておるわけでございます。全くおっしゃいまするように、営々として働いた貯蓄が報われないということは、何とかひとつ考えたい。額に汗してたくわえたものは、何かそこに価値が保全される特別なものはないものかというふうに私は心情的には考えるわけでございますが、さて、制度ということになりますと、これはなかなかむずかしい問題なので、十分考えさしていただきたいと思っております。日銀総裁も、センチメントとしてそういうことを言ったんだということを私にもあとで言っておられたようなわけでございます。おっしゃるとおり、土地を持っている者は持てる者、土地を持たざる者は持たざる者ということになりますと、やはり国民の連帯感にひびが入るという点で非常に大きな問題だと考えておるわけでございます。
  168. 西村尚治

    ○西村尚治君 それからこれは、愛知大蔵大臣はいらっしゃらないんですけれども、五・五%を上回るようなときには減税をいたしますということを、これまたどこか、衆議段階かでおっしゃったように新聞で拝見しましたが、総理にお尋ねしたいのですけれども、総理は、その問題とは直接関係ないわけですが、もともと所得減税論者だということを承っておるわけでございまして、先般、一月の末ごろでございましたか、新聞記者会見をなさいまして、どうも正直言うと所得税は少し高いかもしらぬ、理想を言えばいまの半分くらいにしたらいいんじゃないかというようなことをおっしゃった記事があったように記憶するのですが、これはそのときの談話ですから、それをそのまま期待するのは無理かと思いますけれども、どうも、日本人一人当たりの税負担額はそう外国に比べて高いわけではないのに、にもかかわらず非常に高いという感じを持つのは、やっぱり直接税中心だからじゃないかという気がするわけです。そこで、そのときの談話、どういう御心境でおっしゃったのかしれませんけれども、今度所得税を減税しようというようなお気持ちがおありなのかどうか。ぜひそれをやっていただきたいと思います。  それから、そのときの構想としまして、これは仄聞するところによるる、大蔵当局の意見かもしれませんけれども、免税点を上げるというようなあれでなくって、相当高率の必要経費率というものを差し引いて、税の構成、体系を考えようというようなことがあるやに聞いております。そうなりますと、私はこれはサラリーマンにとってはたいへん朗報、福音じゃないかと思うわけでございます。そういうようなことにつきましての御構想などがありますれば、ひとつお漏らし願いたいと思います。
  169. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大蔵省とまだ相談もしておりませんし、税制調査会の御審議を得ておらないわけでございますが、私はずっと前から、いま御指摘のような持論を持っておるわけでございます。これは、戦後のシャウプ税制、これはそれなりに非常に高い評価だったと思います。その結果、現在の税制がずっと戦後続いてきたわけでございまして、この税制はある意味では理想的な税制であると、こう言えます。それは政府側から見ますとは財源確保には非常に確実なものでございますから、これはいいと思いますし、しかも、直接税と間接税のウエートを見ますと直接税中心主義でございますから、景気変動ということに対しても比較的財源は確保されるわけでございます。間接税にウエートを移しますと、景気の悪いときは税収はがたつと減ってしまう、こういうことでございまして、これはなかなかめんどうな問題でございます。しかし、国民全体から考えると、いま御指摘があったように、直接税というのはやっぱりふところに手を入れるというような感じがどうしても避けがたいというのが一つあります。しかし、先進工業国に比べてみると日本の課税最低限もアメリカを除いては一番高くなっておりますし、それから所得税率も、他の国に比べて高いことはありません。アメリカに比べれば低いという面もございます。しかし、何としても所得税率というのは、所得税中心主義は、どうも人権が侵害されるというような気がしてならないということが一つございます。  それからもう一つは、国民所得が上がりますと、どうしても、減税をしても減税をしても納税人口がふえるわけであります。納税人口がふえますと、どうしても徴税人口もふえるんです。徴税機構が追っつかない限度まで来ておるんじゃないか、こう私は考えるんです。ですから、税務署はたくさんありますけれども、税務署に籍を置くけれども、全部東京と大阪に集まってもらって徴税の仕事をやらなければいかぬというようなことになっては、さなきだに大都市にたいへん人が集まるということになるわけですから、列島改造の面から考えても、私はもうやっぱり限度に来ているんじゃないかという気がするわけであります。  そういう意味で、なかなか、間接税にウエートを移せということには簡単に——間接税に逆進税制である、大衆課税であるということですぐ反対しますが、私は、そうならフランスは、じゃ逆進税制であり、大衆課税をやっているのかということになるのであって、これはそう考えるべきじゃないと思うんです。生活必需物資に対しては一定限の課税最低限をきめてやればいいわけでありますから、そういうことではなく、やっぱりもう一ぺん考えなければならない問題だと思っているんです。それで考えると、相当大幅な所得税減税が行なえると思うんです。ただ、所得税減税を大幅に行なえ、こう言っておって間接税は絶対反対だというと、足を縛って跳べとの議論に似たりということであって、なかなかそううまくいかないんです。ですから、そういう意味で課税最低限も上げていかなければなりません。  それからもう一つ、実際において必要経費は、認めておるものと認めておらぬものもあるんです。同じ文章を書いておる人でも、新聞記者は必要経費を認められないで文士は認められるという不公平感、こういうものはやっぱり二〇%でも三〇%でも必要経費をちゃんと——全部一律でなくてもいいと思うんですが、二〇%でも三〇%でも引いて、そうしてそれに税率をかけるということになれば、そうすると非常に所得の多い人は利益があるんじゃないかというけれども、所得の多い人は、今度公的寄付をする限度額をうんと上げてやるとか、そういうことで調整をすべきであって、いま幾ら働いてもすべて税でもって徴収してしまうんだということでは、社会のよさも何にもなくなってしまう。こういうことであるし、それでは余ったら相続税のときにいただけばいいというような、調整をする考え方でやっぱり税は考えるべきだということで、私はそれでガソリン税を、目的税として議員立法を行なったわけであります。いわゆる自動車トン税という、反対もありましたが、自動車トン税の主唱を行なったわけであります。今度の土地の分離課税というものも行なったわけであります。  ですから、そういうことによって移動がふえれば、現行税制、土地は五年以上持っているものは一〇%、一五%、二〇%いっておりますが、しかし、移動が行なわれたため年に税収が八百億だったものが三千億になったというようなものもあるのでありますから、やっぱり固定観念ではなく、所得税の減税をするなら別なものに踏み切っていかなければいかぬ。私は飲酒税というようなことを長く出しておるんですが、なかなか採用されないけれども、飲酒税というようなものは、これは相当理想的だと思っているんです。思っているんですが、なかなか主税当局の大賛成を得られないで困っているんですが、まあしかし、年度内でもってどうしようというんではなく、四十九年度——野党の皆さんもみな一兆円減税をやりなさいと、こう言っておるわけであります。一兆円減税をやるとすれば、そのまま減税はやれないと思うんです。やるなら他に財源をどうして求めるか、しかも、それが大衆課税にならないような、俗にいわれる大衆課税というものにならないようなことを考えていかないと、徴税機構そのもの、何かの反税闘争とか税に対する不信感というものをやっぱりなくするためにも、もっと合理的な税制が考えられなきゃいかぬ。それで、やっぱり根っこを幾らか引いてということになりますと成果はありませんし、それで、わかりやすい税制——非常に税務署、大蔵省に長くつとめた局長さんなどをやった人は税の申告でみんなわかるかというと、わからない。大蔵省の局長やった人がわからないでもって、一般大衆がわかるわけありません。もっとわかるような税制にしたい、こういうのがほんとうに、私のこれは私見——私見の域を出ていないわけでありますが、半ば公的意見でございます。
  170. 西村尚治

    ○西村尚治君 それじゃ、物価関係、時間がありませんからその程度にいたしまして、住宅の関係、これは物価関係するわけでございまするけれども、少しお尋ねしたいと思いますが、いま物価問題と同じように国民が大きな関心を持っておるのは、住宅、宅地の問題であろうと思うわけでございます。これについていろいろお聞きしたいと思っておりましたんですけれども、時間がありませんのでかけ足でお尋ねしたいと思いますが、いま四十六年度から第二次五カ年計画をお立てになっておりまして、九百五十万戸という計画でおやりになっておりますね。これは予定どおり、計画どおり進んでおりましょうか。その進捗状況をちょっと……。
  171. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 予定どおり進んでおりまして、九百五十万戸、公的、公営三百八十万戸、予定どおり進んでおるわけでございますが、ただ住宅公団の関係の東京周辺、この周辺の千葉、埼玉、神奈川、この辺につきましてはややおくれをとっておるという状況でございます。その状況は、実は、神奈川にいたしましても、千葉にいたしましても、埼玉にいたしましても、もう人口をよそから入れることはお断わりだと、それはいわゆる学校もつくらなくちゃならない、水道も入れなくちゃならない、そういうようなことでございますから、鋭意、公団といたしましては、この問題はできるだけ財政相な処置もして、そのほうに住宅が建つような考え方をいま進めておるわけでございます。
  172. 西村尚治

    ○西村尚治君 おおむね順調に計画どおり進んでおるということでございますが、場所によってはそういうふうないろんな障害があって思うようにいかない。千葉県だ、埼玉県だというので、公団団地のくるのを忌避するという、それもよく新聞で発表しておりますが、こういうものにつきましては、公共関連経費だとか、そういうようなものを思い切りひとつ政府のほうで援助してあげまして、よく話し合いをして促進できるようにしていただきたいと思うわけですけれども。  もう一つ、庶民がはだで感ずる、受けておる感じ、これはどうも、このところ団地のほうは、計画どおり進めばはいれる人は入れてもらえるわけでございましょうけれども、最近、所得が向上いたしますために土地つきの一戸建ての個人住宅がほしい、そういうマイホームの夢を持っている人が非常に多くなってきておる。ところが、どうもこの土地というものが大手企業に独占されてしまって、われわれ庶民にはなかなか手が出ない。どんどんどこもかしこも高騰してしまって、そういう何というか気持ちを持っておるわけでございます。そういうものに対して、私は、政府としましては市街地などには高層住宅あるいは共同住宅、そういうようなものを中心につくってもらうことは、これは大いにやってもらわなければいけませんけれども、その土地つきの家がほしいという人に対しては、少し通勤距離は、時間は長くなるかもしれません、一時間くらいかかっても、やっぱり土地つきの家がほしいんだという人もかなりあるんですよ、われわれの周辺にも。ところが、なかなか土地が高くて手が出ない。そこで、そういう人たちについては——その土地の状況なんかもお尋ねしたいと思いましたけれども時間がありませんが、まだ大体余裕があるはずでございまするから、そういうところは民間デベロッパーだけにまかしておかないで、ひとつ政府方針、公社、公団の方針としても、共同住宅一本やりじゃありませんけれども、重点主義でなくて、もう一つ、そのほかに並行して一定距離以遠のところ、それでも土地がほしいという人がかなりあるわけで、土地造成、宅地造成、そういうほうをひとつ今後積極的にやってもらうべきではないかということを考えるわけですが、そういうことについてはどうでございましょうか。
  173. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 土地の問題につきましては、非常にいま逼迫いたしておることは御承知のとおりでありまして、需要供給のバランスが合わないところに、いま土地がない、土地がないから住宅が非常に困窮しておるということであります。そこで、この偏重した不均衡なものを緩和するために住宅公団、あるいは公社、あるいは地方公共団体等に積極的に働きかけて、いわゆる土地取得ということを考えておるわけでございまして、いまアンケートをとってみますと、マイホームという考え方を持っておる方が八割もあるわけでございます。そこで、今回御審議願いますいわゆる持ち家住宅の制度などもその辺をねらいまして、いわゆる家賃を払いながら自分の住宅にすると、こういうような考え方でございますが、どちらにいたしましても、住宅自体も、賃貸住宅も必要でありますし、また賃貸宅住と持ち家住宅のかね合いはどの辺に持っていくべきかというところも相当検討しなければならない問題点もあろうと思います。そういう意味で、住宅建設五カ年計画という問題について、ひとついま一回考え直してみたい、洗い直してみたい、このように考えておるわけでございます。
  174. 西村尚治

    ○西村尚治君 公団が率先して宅地造成のほうもぜひやっていただきたいと思うわけですけれども、しかし、この宅地造成ということになりますと公的機関だけじゃなかなかこれは言うべくして十分な期待はできないわけですから、どうしても民間デベロッパーの協力を得なきゃいかぬと思うのですよ。ところが、民間デベロッパーの造成、分譲というものを野放しにしておきますと、どうも地価はウナギ登りに上がる、結局、庶民は手が届かぬということになるわけでございまするので、政府が一方では推進すると同時に、民間デベロッパーの造成する宅地分譲につきましても何とかひとつ強力な指導をしてもらえぬかどうかということです。それは、今度の租税特別措置法を見ますと、適正利潤でしかも個々公募によって分譲するデベロッパーについては税制上優遇するということで、適正価格で分譲することを間接に奨励するような仕組みはここにできておりますけれども、私は、どうもそれじゃなまぬるいじゃないか。そうでなくて、それもいいかもしれませんけれども、むしろ民間デベロッパー、民間セクター、こういうものを担当するものについては政府が適正価格で公正に公募によって分譲するという方式によるように、まあ千葉県などではだいぶそういうような動きがあるようでございますが、強力に指導をしてもらう必要があるんじゃなかろうか。まあ適正価格ということにつきましてはまたいろいろまだ問題もあるでしょうけれども、きょうは時間もございませんが、そういうような方向について、ひとつ御考慮願えないもんでしょうか、どうでしょうか。
  175. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ただいま御指摘のとおり、建設省もその面につきましては、そのような指導をいたしておるわけでございますが、実際問題としてそれじゃなまぬるいというお話もあるわけでございまして、十分その間の問題につきましては検討いたしまして、どちらにしても土地がないことには住宅が建たないわけでありますから、積極的に取り組んでみたいと考えております。
  176. 西村尚治

    ○西村尚治君 宅地問題でいろいろお尋ねしたいと思っておりましたが時間がなくなってしまいましたが、一つ郵政大臣にお尋ねしたいんですけれども、ちょっと問題が変わりますが、テレビ電波の問題ですけれども、最近、都市内にビルが林立しますために、いわゆるビル陰難視聴という、ビルの陰になってしまってさっぱりテレビが見えないという地域が非常に多くなっておるはずです。今後、新宿副都心なんかがさらに完成しますと、中野、杉並一円はもう見えなくなってしまうということすら懸念されておるわけでございますが、このビル陰障害というものは現在どれくらいあり、何万世帯ぐらいあるのか。また、これから何カ年かするとどれくらいになりそうだという、その辺をちょっと……。おわかりでなかったら事務当局でもよろしゅうございます。
  177. 久野忠治

    国務大臣(久野忠治君) テレビジョン放送の難視聴というのは、いま非常な重要な問題になりつつあることは御指摘のとおりでございます。ただいま御指摘のございましたビル陰の難視聴、これは昭和四十七年三月末の調査によりますると三十三万世帯、五十一年度末には約六十万世帯に達するであろうといわれておるのでございます。それだけではございません。現在では、新幹線によりまするテレビの難視聴、それから高圧電塔、これによる難視聴、または発電所等の高い煙突による難視聴、それから、または基地あるいは空港等における難視聴、いろいろの問題がたくさん出てきておりまするので、これらの多岐にわたっておりまする難視聴の問題を多方面から調査検討する必要が生じてまいりましたので、四十八年度の予算案の中には四百七十九万円の調査費を計上いたしまして、調査会を設置いたしまして早急に結論を出したい、かように存じておるような次第でございます。
  178. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 西村君、時間あと一分です。
  179. 西村尚治

    ○西村尚治君 調査会で結論を出したいということですけれども、これは非常に、この都市内の人は四苦八苦して、有線をつないで見ておるわけです。たいへんに経費もかかりますし、気の毒なんです。原因者責任ということで、特定のビルが原因しておるというときにはそこに出してもらってやっておるところもありますけれども、ビルが林立しますと原因者というものがわからない。そこで、私が提案したいと思いますのは、原因者責任というその線に沿って、今後都市内のビル、そういうものについては、四階なら四階以上のものについては一定の負担金、分担金というようにものを徴収できるような仕組みを考えてもらえないかどうかということ、これはもう時間がありませんから一応要望しておきます。建設大臣にもひとつ……。
  180. 久野忠治

    国務大臣(久野忠治君) ただいまの御質問は、一つ考え方であろうと思うのでございます。しかし、これは多方面に影響の及ぶことでございます。ただいま御指摘のとおり、原因者責任主義をとっておるわけでございます。そこで、建築主とそれから聴視者の間で合議をいたしまして、そうして共同アンテナを立てまして、それによってテレビジョン放送を見ることができる、こういうような制度にはなっておるわけでございます。しかし、これは法律上の制度ではないわけでございます。でありまするから、ただいま御指摘のように、何らかの制度によって原因者から負担金もしくは分担金を徴収してはいかがかという御意見でございますが、この負担金の性格であるとか、あるいはまた負担の額であるとか、その他検討すべき事項が多々ございますので、貴重な御意見としては拝聴いたしましたが、今後、私は、調査会等を通じてこれらの問題を検討いたしてまいりたい、かように存ずるような次第でございます。
  181. 西村尚治

    ○西村尚治君 最後に、総理それから外務大臣に、お尋ねと申しますか御要望申し上げたいんですけれども、それはほかでもない北方領土の問題でございます。先般、新聞で見ますと、日ソ間の懸案解決のための話し合いの場を持ちたいという趣旨の田中総理書簡がブレジネフ書記長に受理されたと、それから、その間の大使との話し合いもかなり友好的であったというような記事が出ておりました。これは、私は国民にとって非常に朗報じゃなかろうかと思うわけです。と申しまするのは、沖繩が帰った、日中国交も正常化したと。歴代内閣の努力によりましてそういうことが実現したのは非常にけっこうですけれども、沖繩が帰っても戦後は終わらないということばにかわって、いま北方領土が帰らなくては戦後は終わらないといった気持ちを国民の大部分は持っておると思うんでございますが、あの四つの島が不法に、と言ってはちょっとあれかもしれませんけれども、いわれなくソ連が占領したままでいつまでも残っておるということは、どうしても国民として納得できない問題でございます。これは非常にむずかしい根気の要る問題だと思いまするけれども、今後、日ソ間の会談が持たれます際には、平和条約締結の前提として、必ず、この日ソ問題の解決を見てからその条約の締結に移るんだという姿勢でぜひとも御対処願いたいと思うんです。それにつきまして——ちょっと時間がなくなりましたが、国民の中には、こういうことを懸念しておる者があるんでございますね。日ソ間に話し合いを持たれるのはいいんですけれども、チュメニ油田の開発の問題がいろいろと言われておると。これも大事ですけれども、そのほうの話をただ進めてしまうということが、どうも——日ソ間の話し合い、領土問題が解決しない前にこういう問題の話し合いを進めてしまうということは、今後、ソ連に対して日本の国が発言力を弱めることにならないかということが一つですね。それからもう一つは、その問題が解決しない段階でこの経済問題の話し合いを進めてしまうことは、日本として領土問題をたな上げしたように誤解されるおそれがありはしないかというようなことを懸念する向きがあるんです。
  182. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 西村君、簡単に願います。
  183. 西村尚治

    ○西村尚治君 ありますので、そういう点につきましてはどうでございましょうか。  それと、とにかく、最後までいろいろむずかしいことだと思いまするけれども、国民の悲願でありまするから、この北方領土の返還は、何としてもなし遂げるんだという強いお気持ちで、粘り強く熱心にソ連を説得していただきますことを、特に、心から要望しておきます。
  184. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 答弁はいいんですか。
  185. 西村尚治

    ○西村尚治君 いまの最後の答弁——最初のあれはどうでございますか。その点、ちょっと一言答弁していただきたい。
  186. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘いただきました点につきましては、国民世論を背景にいたしまして、しんぼう強く、かつ、熱意を持って問題の処理に当たる所存でございます。
  187. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて西村君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  188. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 田中寿美子君。(拍手)
  189. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、こういう際だから、ほんとに人間を大切にする、ほんとうの福祉型経済に切りかえてほしいという要望の立場に立って御質疑いたしたいと思いますけれども、その本論に入ります前に、けさの小林委員の御質問に対するお答えに関連しまして、少し、国際通貨問題についての政府の収拾策ですね。昨日もたくさんのことを総理も言われました。それから愛知大蔵大臣もおっしゃいました。一体、ドルの交換性を回復するようにアメリカには主張するとおっしゃったけれども、具体的に言えばどういうことをなさるということになりますか、総理大臣。
  190. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは国際会議でもって、アメリカも含めて検討する問題でございますが、ドルの価値を安定させるためには、やっぱりドルと金との交換性というものが回復されないところにドル不安があるわけでございますから、   〔委員長退席、理事米田正文君着席〕 金との交換性を強く要請をするということは、もうこれはアメリカを除く各国の要求だと思います。これは金とばかりやらなくてもいいんです。これは、SDRと交換するという問題もございますし、いろいろな問題がございます。しかし、アメリカが、各国が持っておるドル全部に対して金と交換性をすぐやれといっても、これはなかなかたいへんな問題だと思いますから、どういうような状態に各国が協力し、どういう状態において交換性が回復するのかという問題は、これからの二十カ国蔵相会議が今月末あるわけでありますが、これらの機関を通じてやはり重大な焦点になる問題であろう。そういう意味で、日本も当然そのような要求、要請を続けるわけでございますが、しかし、これはもう、どれだけのものを金やSDRに一体交換できるのか、交換性を回復するにはアメリカだけでできるのか、別の国がどの程度信用を供与するのかという問題もありますので、これは、具体的には、会議の内容としてこれから積み重ねられていく問題だと思います。
  191. 田中寿美子

    田中寿美子君 きのう総理がいろいろおっしゃいましたことを私もメモしているんですけれども、まず、アメリカ経済を立て直さなきゃいけないんだ、だからつまり、国際収支を回復しなきゃいけないということを言っておられます。それから、アメリカの多国籍企業から流れてくるドルを吸収しなきゃだめだ、それからまた、ドルを基軸通貨にしていくためには部分的にたな上げもということばをおっしゃっています。それからまた、ドル価値の維持をするために、双方が、みんな努力するんだ、それから、日本でもある意味で金との兌換を要求するんだ、それから、SDRの手段をとることもある——これは愛知大蔵大臣もおっしゃったんです。一体、ドルの交換性を回復するということのためには、アメリカ国際収支改善されなきゃ絶対にできないことだと思うんですが、国際収支はそんなに簡単に改善するとお思いでございますか。これは大蔵大臣にも伺います。
  192. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いまアメリカは国内的には非常に努力をしているということが言えると思うのでございます。御承知のように、一昨年の八月十五日にインカムポリシー、われわれの言う所得政策に踏み切ったわけでございまして、すべての所得を凍結する措置に出ました。いまこれが第二段階を経て第三段階になっておるわけでございますが、第二段階ではそれを若干ゆるめまして、ガイドポリシーというふうに直しまして、賃金が二%ないし三%、物価が五・五%程度上げていいということにしまして、そのガイドラインを一応踏襲しようということにきておるわけでございます。ところが、最近になりまして、またこれがだんだんくずれつつあるわけでございますけれども、とにかく、その努力というものは相当認めていいと思うんでございます。国内的にはアメリカのドルを強くしょうというふうに努力しているやに見えるわけでございますが、一方において、多国籍企業に対して投資する措置をもっと簡単にしろというようなことも言っているわけで、どうも、そういうことを言っておられると、なかなかアメリカのドルに対する信認というのは各国に疑われるんではないかということが大かた言われておるところでございまして、ECの蔵相の集まりでもそういうことが問題になっていることは御承知のとおりでございまして、日本としても、ごたぶんに漏れず、同じように考えているわけなんでございます。しかし、アメリカもこの際そういう気持ちになっているのでございますから、これは、われわれとしては、やっぱりみんなでこれを助けていくという考え方が必要だと思います。今日、日本もドルはたくさん持っているわけでございまして、この価値がくずれることを喜ぶ者はないわけです。ドルの価値を安定するためにわれわれとしても努力することは、アメリカのためでもあると同時にまた日本のためでもある。また、世界の、ドルというものが基軸通貨になっている各国のためでもある、かような観点からひとつ協調していこうではないか、こういうことだと思うのでございます。
  193. 田中寿美子

    田中寿美子君 それを、具体的に言うとどういうことかということなんですね。アメリカ国際収支の回復ということは、傾向的に見て貿易の収支だとか、あるいは金の準備率とか、そういうものが六七年以降すっと悪いんですね。こういう傾向を持っているのが、一体回復できるものかどうか。
  194. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういう点があるので、アメリカは一〇%の切り下げをしたんだと思うのでございまして、そうした基点に立って、先方は一段階下がってかまえたわけですから、その回復の努力をみんなで認め合って一緒に努力していくということで可能であると考えます。
  195. 田中寿美子

    田中寿美子君 そのために、昨日総理が、ドルのたな上げもすることがあるというようなことをおっしゃった。これはどういうことになりますか。
  196. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、一つずつ全部別々ではなかなか効果をあげないんです。これはいろんな手段がございますが、どういうふうに決着がつくかということは、これから愛知大蔵大臣も出て、各国はそれなりにみんな利害得失がございますから、自分の国はこのほうならいい、自分の国はしかしそれではなく別なほうでなければならぬという、利害は全部違うわけでございますが、ドル価値を基軸通貨としてドル価値を維持しようという考え方は共通でありますから、そういう意味で、そこで相加平均値のようなものができて、その中でどれが採用されるかということでございます。これはアメリカ責任でもってやっているドルを、何で一体そんなにしてみんなの国がささえなければならぬのかといえば、アメリカがどこの国でもやっておるような方法をドラスチックにとれば、アメリカ責任だけでやれますよと、こうまあ暗に言うわけです。それは日本アメリカとの間に四十一億ドルも逆超があるんですから、これはまあ社会主義国と同じように、貿易のバランスはとります、輸入と輸出のバランスはぴしっと年間押えますと、こうやられれば、これはアメリカ国際収支はよくなるにきまっておるんです。おりますが、それは縮小均衡につながってしまって、世界の平和を維持するゆえんではないし、各国に影響が当たりますから、そんな簡単なドラスチックな手段でやれない。  やれないからと言って、じゃほっといてもいいのかといえば、まあ第二段としては、特定の国に特別課徴金をとろうという、ミルズ委員長がいま一五%の案を出しておりますが、一〇%切り下げられて一五%課徴金を取られたら対米輸出はとまってしまう、こういうことでありますから、これもなかなかのめないんです。これは、絶対課徴金は取っちゃいかぬ。いずれにしても、多国関調整でもってきめましょうと、こういうんでさしあたり共同フロートに入ったわけでありますし、日本はそれ以前にフロートしているわけでございます。ですから、それはやっぱり基軸通貨としてのドルの価値の維持というのは、アメリカだけに要求できないという問題があります。ですから、お互いがこの問題に対して協力をし合いながら結論を出そうと。そんなことを言っていると、アメリカは自分で何もしないですべてに要求することもあるじゃないかという極端な議論をなす人もありますが、これは共通の利益を守るためである。だからその中の具体的な問題としては、いろいろ御質問がありますから——金との交換性が停止されたから、アメリカのドルがこんな問題を起こしたんだからということは事実です。そういう意味で、交換性を回復するということに対してはだれも異論がない。異論がないが、先ほど申し上げたように、全部、出ておるドルに対してすべての交換性をしろと言ったら、日本が持っている二百億ドルをすぐ持っていけば、アメリカの手持ち金は百億ドルしかないわけですから、交換できません。  ですから、その意味で、具体的に詰めていろいろ御議論されますと、では、流通しておるものを全部アメリカが介入して買い取るという議論も出ておりますし、共同フロートをしてヨーロッパ各国が介入しようという案も出ておりますし、少なくともアメリカは、これからの正常な取引によるドルに対しては兌換性をやっぱり確保しなさいというようなことは、当然出てくる問題だと思うんです。そういう場合、手持ちをしておる各国のドルの幾らをたな上げするとかたな上げしないとかじゃありませんが、これは連銀債でもつてどういうふうに凍結するのか、いろんな問題があると思うんです。国際機関でもって一時預かるとか、きのうも基金をつくったらどうかという御提案がありましたが、そういうことは、いろんな国が自分たちの国益も守りながら何とかしてひとつ当面するドルの問題を片づけて長期的にも道を開きたい、こう考えておるわけでございますから、ただ交換性を回復せよといっても可能性は非常にむずかしい、こう思っておりますので、そのたな上げということにこだわられてはなかなか答弁しにくいわけでありますが、いずれにしても、何らかのことをお互いが共同して負担していかないとこの問題は片づかないと、こういう感じで申し上げたわけであります。
  197. 田中寿美子

    田中寿美子君 ドルのたな上げというのは凍結ですね、相当たいへんなことですよね、ドルの凍結ということは。で、EC諸国がみんなもうドルに見切りをつけていき、金のほうを選ぶ傾向にあるというようなときに、日本はもう一生懸命でドルを基軸通貨にささえるために、またドルと一生懸命に組もうとしているというような傾向が見えるもんですから、もしドルのたな上げなんということは、日本のたくわえた富に対してはたいへんな重大な影響を及ぼすと思いますので、総理がきのうドルのたな上げをおっしゃったことに対して、そう軽々には言ってもらうことはできないんじゃないかということなんです。それが一つ。  それから、SDRに向かっていく方法もあるとおっしゃいました。きのう福田前大蔵大臣も、SDRあるいはドルの基軸通貨としての価値というものにたいへん信頼を置いているように言われたんですね。政府はやっぱりそういう方向に向かっていると思われますが、どうですか。
  198. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 金というものに対する魅力が現在非常に強いことは否定いたしませんけれども、それでは、金というものが一体どのくらい生産されていくのかというと、二%くらいではないかという説がございますが、金を需要するものはもっともうそれの何倍という多いものがあるわけで、そうなりますと、とても需給のバランスがとれないわけです。そこで、アメリカが金とドルの交換性を回復してくれることはこれは望ましいことですけれども、なかなかこれできないだろうと思う存です。そこで、何か金以外の——金もそれは含めてもちろんいいわけですが、以外のものも含めて、いわゆる交換性を回復してくれるということを世界じゅうで一緒になって考えようじゃないかという建設的な方向を望むということが、きのうからの総理の御発言その他であるというふうに私は理解しておるわけでございます。そういう点で愛知大蔵大臣も大いに会議でまた活動してくれるだろうと思いますし、いずれにしても、これは対岸の問題じゃなくてわが国自身の問題である、そういう見地でこれと取り組まなきゃならぬ、かように考えておる次第でございます。
  199. 田中寿美子

    田中寿美子君 SDRというのも金と兌換できるものじゃないわけですね。私は、四十三年のときにやっぱり予算委員だったんですが、あのときにわが党の羽生先生の御質問に対して、当時の宮澤経済企画庁長官が、SDRというのは——先ほど経済企画庁長官もそのことばをお使いになりましたけれども、人類の英知であるということをおっしゃって、人類の英知というものが黄色い金属などに負けるはずはないと、たいへん強気のことをおっしゃって、SDRもう一辺倒みたいだったわけなんです。一体そういうことで、SDRの場合だって、やっぱりアメリカ国際収支が回復しなかったらそれをたよりにする、本位制にするということはむずかしいと思うんですが、いかがですか。
  200. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) SDRというものが、人類の英知というと大げさですが、まあそういうものですね、関係者がいろいろ苦心した結果、そういうふうにいいものをつくっていこうじゃないかということを考えているわけで、そこで、やっぱりエゴイズムが働くわけでございましょうね。そういうものができる前には、それは金のほうがいいじゃないかと、現に金を買っているものは、金の価値が三倍にもなればこれはもうかるわけなんですから、そういうエゴイズムが各国の間でいろいろ出てくると、こういうことを何とかためるというのが国際会議の私は意義だろうと思います。田中先生も国際会議のベテランだからよく御承知でしょうけれどもね。そういうことで、私どもは今度のドルの交換性の問題についても、やはりドル、金、SDR、そうして将来のSDRの価値を皆がどうして盛り上げるかということが非常に大きな問題だと思うのでございます。  ドルは、御承知のように、いまのユーロダラーというのは八百十億ドルあるといわれておりますけれども、まだまだふえるわけでございますね。これは石油産出国の支払いがどんどんふえていくということになれば、ユーロダラーはふえることはあっても減ることはないわけですから、その問題とも関連して、投機というのはなぜ起きるかと——先ほど小林さんの御質問にもありましたけれども、やはり価値がゆらいでいて、もし将来安くなるなら高いうちに売れということが投機なんでございますから、そういうことがないようにするにはどうしたらいいかということを、やはり繰り返すことになりますが、結局人の問題じゃない、自分の問題、世界を構成している関係国の協調により、そして人類の英知によって生み出されるべき問題なんだということであろうと思う次第でございます。
  201. 田中寿美子

    田中寿美子君 EC諸国の共同フローティングですね。あれをどういうふうに考えていらっしゃるのですか。私は、もうドルに対して相当見切りをつけつつあると、だけど日本は一生懸命にドルと、またドルのかさの中に入ってきたから今後もという、運命をともにしようとしているような気がするんですけれども、その辺はどうですか。
  202. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) EC諸国は、これは何と申しますか、われわれよりもアメリカとの間の関係が長いわけでございますね。われわれは四半世紀で非常にアメリカと近くなっているわけですが、ことにイギリスなんというものはもう非常に長い関係がある。そこで私の考えでは、これはもうドルというものを見限るわけはないというふうに思うんです、これは自分の分身なんですから。そこで、ところがドルがどうも少しかってなことをしていると、いわゆるこの間から方々で聞かれるたれ流しでございますね、あんまりことばはよくないんだけれども。どうもこのたれ流しが過ぎるんじゃないか、そこで反省させてやれというのは私は非常にあると思いますが、さりとてこれは愛のむちであって捨てるためのものじゃない、かように思っております。
  203. 田中寿美子

    田中寿美子君 金の交換性回復というようなことを要求するというふうに、アメリカに向かっても交換性回復するように努力せよということを申し入れるというふうに何回かおっしゃっておりますね。で、ドルの交換性回復ということはなかなか簡単なことではないという認識がありませんと、またアメリカと運命をともにしてひどい目にあうだろうということです。で、金との兌換の問題ですね、これはどういうふうにお考えですか。
  204. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちょっとよく聞き取れなかったのでございますが、金との兌換は容易なことでない……。
  205. 田中寿美子

    田中寿美子君 金準備が少ないですね、日本は。今後の……。
  206. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今後のやり方ですか。この金の準備の中からできるだけ金を、金準備が少ないから、手持ちのドルの中からできるだけ金を買えという御意見はもう方々にございますわけですし、われわれもそのことはかえたほうが有利であるとは前から認識しているわけでございますが、それはかえるのやめようじゃないかという決議がもうすでにございまして、日本がその決議に相反して金を買いあさるということは慎むべきであるということで今日まできたわけです。ところが、日本の手持ちのドルがふえたというのは、昭和四十六年以降急速にふえたのでございまして、その前は、やはり何といいますか、いまの日本の手持ちドルというものは、ある程度担保価値として、外国から金を借りたりする場合に使われたというようなことがございまして、その意味で、やはり日本が、こう経済的にどんどん成長していく段階では、借金をして成長しなければならぬ時代もあったわけで、その場合の担保価値として手持ちドルというものが使われていたんだと思うわけでございます。今日に至って、非常に、そんな値打ちのないものをたくさん持っていてまずいじゃないかという御意見もわかりますわけですけれども、発生的に考えてみると、これは十年も前から百八十億ドルもいまのように持っていたなら別でございますが、近々、この三年のできごとであるという点をひとつ御理解願いたいと思う次第でございます。
  207. 田中寿美子

    田中寿美子君 金価格の引き上げの問題については、日本政府はどういう方針でいかれたわけですか、大蔵大臣は。
  208. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 金の引き上げ……。
  209. 田中寿美子

    田中寿美子君 価格引き上げも一つのドルの交換性回復のあれになりますね、そういうことに対してはどう考えますか。
  210. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 金の価格が引き上げられますと、金を持っている国は非常に有利になるわけです。いまフランスとソビエトが一番有利になるんじゃないでしょうか。われわれは残念ながら金はあまり持っていないということで、この問題に対してはむしろ局外者的な立場でおったんではないかと思いますが、これは私よく存じませんから、事務当局から。
  211. 林大造

    政府委員(林大造君) お答え申し上げます。  金の価格引き上げにつきましては、学者その他にはいろいろな議論もございます。しかしながら、国際的な準備として金の位置をどういうところに位置づけるべきかということは、非常にむずかしい問題でございまして、いわゆる二十カ国委員会におきましても、その点の議論はいろいろございます。しかし現在のところは、今後国際的な準備の中で、ドルの地位は次第に後退していく。そしてSDRの地位が向上していくということにつきましては一致した見解がございます。しかし金につきましてはなかなかむずかしい問題があるので、まあ研究してみようじゃないかということで、若干あと回しになっているような状況でございます。  で、金の問題につきましては、現在、今回の通貨危機に際しましてもいろいろな風評が流れておりますが、現在私ども、最も金を多く持っておりますアメリカとか、あるいはヨーロッパ諸国がいかなる考えを持っているか、従来と違った考えを持つに至ったかという点につきましては、一切情報を得ておりません。それは公式に意見をきめていないということだと思います。すなわち、従来どおりの意見を持ち続けていくということだと存じます。
  212. 田中寿美子

    田中寿美子君 現在会議中のことでございまするから、はっきりとしたことも申されないと思いますけれども、やっぱり私たちは、EC諸国はドルに対してたいへん不信感を持っておって、金のほうを指向しつつある。しかし、いまおっしゃったようにSDR、という考え方もあるでしょう。とにかく日本は、ドル一辺倒であった過去に対し、今後そういう方向で、また同じことを繰り返さないようにしてほしいということの意見を述べて、また別のときに議論させていただきたいと思います。  続いて、先ほど政府経済見通しについて、小林委員からも訂正の必要があるんじゃないかという意見が出ました。私も、四十八年度経済見通しも、それから例の長期計画という社会経済基本計画——五年計画ですね、これについても、こういう状況の中では、政府がつくったときとたいへん経済情勢も違うから直さなければならない点がたくさんあると思いますが、しかしきょうは、私、時間の関係で、この問題、特に物価と成長率の関係あるいは円の切り上げ幅などとの関連で、どうしても訂正しなければならないことが起こると思うんですけれども、また一般質問に譲ります。  ただ一つだけ、先ほど経済企画庁長官のことばに、ちょっと、私はことばじりをとらえるんじゃありませんけれども、ガーゼの寝巻きというのは安いんです。いままで千円ちょっとで買えたものなんです。合成繊維のネグリジェだとかパジャマのほうがよっぽど高いんですね。ぜいたくじゃありませんで、男性の飲み食いや交際費のほうがよっぽど物価を引き上げていると思いますので、その辺は認識を改めていただきたいと思います。  そこで、こういうような状況の中で経済を、総理も、その経済社会基本計画の第一年度の計画を実施していくんだというふうに何回か説明していらっしゃいますが、ほんとうの意味で、いま福祉型の経済に切りかえなければならない時期だというふうに思います。そういうことについて、一体、福祉型の経済というものはどんなものであるというふうに考えていらっしゃるのか、総理にお伺いしたいわけです。
  213. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 福祉型の経済というのは、経済の成長の成果が国民生活の向上に反映をし、資するように運営をされなければならない、こういうことでございまして、率直に申し上げると、いままでの経済はドルがたまったということになるわけでございます。ドルが百億ドルばかりたまったわけであります。いま二百億ドルの中で、九十億ドルのドル債権、ドルを外国から借りているものがありますから、これを全部一括返済すれば百億ドル余、ドルとして残っておるわけでありますが、こういうことではなく、やはり日本人が働いた成長の成果というものは、国民生活の向上、また社会福祉の向上、恵まれない人たちの施策に十分投資をされて、日本人全体がこの国に生まれたことを真に喜び合えるような社会をつくっていくういうことであろうと思います。
  214. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへん抽象的なんですよ。もう少し具体的に、たとえば労働者の労働条件とか賃金はどのくらいであったらいいか、欧米と比べて。あるいは生活環境設備だとか、あるいは社会保障ですね、そういうものが経済全体に占める割合がどういうふうであるべきだというようなことをお伺いしたいわけです。そうでなかったなら、抽象的なことだったら、いままでの経済でもみんなそうおっしゃっていたわけですから。
  215. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) やはり福祉型経済というのは、いま総理の仰せられたとおりでございますが、具体的にとおっしゃいますと、日本の現在の社会というのは、一番特徴的に言えるのは完全雇用であるということであると思うんです。一億人の経済に完全雇用があるということは世界じゅうにないと思うのであります。ところが、その賃金が低いではないかというお話がございます。それは比較対照によってでございますが、アメリカに比べれば確かに低いのですが、イタリアよりは上である。他のイギリス、フランス等にはだんだん接近しつつある。しかも、上昇率が最近非常に高いのでございますね。大体五年間の平均が一五%ぐらいになっております。これは生産性も高いので、二けたの生産性であるから賃金上昇率も二けたということはあっていいことだと思って、私は別に否定しているわけではないのですが、客観的事実として高い。ですから、これはおそらくヨーロッパの諸国を抜くでございましょう。それがまず第一でございます。  それから、やはりしかし、そういう働けなくなる谷間の人もおるわけでございますので、その人々に対する福祉施設というものを非常に重視しなければなりませんが、それはまず第一に年金だと思います。それから第二は、医療その他のサービスが満足すべき状態において受けられるということ。それから第三には、福祉施設が完備しているということであると思いますので、そういう面に対する努力をしたいと思っております。  先ほども議題になりました経済社会基本計画の中で、振替所得、これが現在六%ぐらい、四十六年度で六%の四兆五千億円でございますが、これを二・七倍にして十二兆円余にしようという計画を持っておりまして、そうすると全体のGNP対比が八・八%というふうになるわけでございます。しかし、これはヨーロッパの、しかも北欧の国などに比べますと確かに低いのでございます。で、私どもはそれを六十年ないし六十五年に至って北欧並みにしよう。三つの試算をやっておりまして、資料の中についておりますが、一三%、一七%、二二%ということにいたしまして、それだけに上げていこうという計画を持っております。ただ、問題は、一億人の人口がいるということと三、四百万人の人口の国であるということの違いがございまして、これは相当にそこへ持っていくには努力を要することだと思っているわけでございます。いずれにいたしましても、私どもは財政主導型の経済によりまして、そうした福祉的な支出を、いままでの産業・輸出優先の経済から切りかえて、多いものにしていくようにいたしたいと考えている次第でございます。
  216. 田中寿美子

    田中寿美子君 労働者の賃金の問題ですけれども、これは日本政府の統計に出てこない零細なものが一ぱいあるわけですね。これは決して欧米並みではない。それから、それだけじゃなくて労働時間の問題、このごろは、週休二日制というのは政府のほうからも言うし、経営者のほうからも出ているくらいですね。この際これをやらなければいけないとか、時間短縮しなければいけないとか、定年制を延ばさなければいけないというふうに言われておりますね。そういうことと、それから社会保障があって所得を補っていかなければならないわけですね。その点が非常におくれているから、社会保障ダンピングなんていわれているわけですね。こういう汚名をなくすほどの社会保障を進めませんと、福祉型経済というふうにはいえないと私は思うんです。  で、経済企画庁で昨年一月ごろ、日本の福祉に関しての指標を出しました。あれは御存じでしょうか。ヨーロッパに十年おくれている。
  217. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 御指摘の資料は経済白書のことかと思いますが……。
  218. 田中寿美子

    田中寿美子君 いや、違います。福祉指標の試算ですね。
  219. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) ちょっとその該当のあれがわかりませんけれども、確かに、たとえば社会保障給付費で比較してまいりますと、対国民所得比でわが国が一九六六年ないし六七年ぐらいで六%程度であるのに対しまして、大体欧州諸国で一五ないし二二%ぐらい、アメリカは八・一%、ちょっと低うございますが、かなりの差がございます。この主たる差は年金給付でございまして、御承知のように、わが国はまだ人口の老齢化の面で欧州諸国に比べて十五年程度の差がございます。そういうこともございまして、こういった差が出ておるわけでございますが、もしいまのままの状況で推計いたしますと、わが国の人口の老齢化の状況が欧州諸国と大体足並みをそろえるのは十五年ぐらいあとということになってまいります。そういったところで、もしかりに推定をいたしますと、いま長官がお答えいたしましたように、社会保障給付費においてもかなり高い数字になりまして、急速に欧州水準に近づくと、こういうふうに考えております。
  220. 田中寿美子

    田中寿美子君 経済企画庁が試算して、昨年の一月発表したものですけれども、福祉の試算ですね。昭和四十年における英国のレベル、水準に達するのに五年間に百兆円、四十年ベースで、投資をする必要がある、欧米に十年のおくれがあるということが発表されましたし、これは民間の調査でもそういう同じようなことが発表されております。  ところで、厚生大臣は、衆議院の社会労働委員会で、十年後には国民所得の一五%を社会保障給付費として出すと言われましたね。これは幾らを出されるおつもりですか。
  221. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 社会保障の諸外国との比率につきましては、先ほどお話のありましたように、一九六六年で社会保障給付費は国民所得に対して六・一。それが今回の五カ年計画によりまして振替所得が八・八ということになりますと、大体国民所得に対する比率は一〇%と、こういうことになるはずでございます。しかし、一〇%でいいんだといったふうなつもりではいつまでたっても社会保障は伸びぬじゃないか。そこで厚生省のペースにおいてはその五カ年後に一〇%というのを一一%くらい持っていくような計画を立てようではないか、これが私の率直な気持ちでございます。そういうふうなことをいたしますと、そのあと五年すなわち今日より十年後になりますと、大体一五%というものにはなるはずでございます。そういうふうなことになりますと、一九六六年の統計で見ますと、アメリカは低いのですが、イギリスなどはたしか一九%程度であったと思います。そこで、その他も大体一五%、一六%という程度でございますから、十年後に一五%まで持っていくように努力をすれば、まあ何とか西欧先進諸国並みに近づけることができるであろうということを申し上げておるわけでございます。  なお、なぜ今日わが国の社会保障給付費がおくれておるかということは、一番の原因は年金額が安かったということであります。年金額が安かった。そこでこの年金額を上げていきますと、そういうふうになりまして、それじゃそのころになると西欧諸国ももっと進むだろうと、こういう意見が出るのでございますが、西欧先進諸国におきましては、今日すでに老齢化の現象が完成をしております。日本は今後老齢化の現象に急速に進んでいくというわけでございますから、何とか十年後になりますと西欧先進諸国並みに追いつけるような態勢に入るのではないか、こういうふうに私ども考えておる次第でございます。
  222. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま社会保障関係費でお話しになったんですね。ですから、これは欧米諸国にはストックの所得が相当ありますので、そういうものと合わせてみると、まだまだ足りない。それからフランスやドイツは一五・六%というようなことで、たいへんまだおくれているわけですね。ですから、少しもっとテンポを速める必要があると思うんです。これはまたあらためて社労委員会でやりたいと思いますけれども。  そこで、私は特にハンディのある人たちに対する生活保障に重点を置いてほしい、置くべきだと思うんです。インフレ論もあります。確かにインフレで物価が上昇していて、そうして零細企業は倒れていったりする。所得の格差がたいへんひどくなっているわけですね。こういうときに、ハンディのある人、老人とか身障者とか生活保護者、低所得層のためには、特に手厚い政策を急がなければだめなんですね。特に、これも衆議院で、いわゆる谷間の老人、六十七歳から六十九歳、約百三十万の人はあらゆる年金から除外されている。この人たちに対する対策を急ぐ必要があるわけなんです。これも厚生大臣が衆議院で、何とか別ワクにでもしてこの対策を講じたいと思うというふうに言われたんですが、具体的にどういう計画を持っていらっしゃるのか。法案審議の過程において解決策を必ず見つけるとおっしゃいましたね。どういうふうなことを具体的に考えていらっしゃいますか。
  223. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 現在の国民年金法が施行になりましたのはいまから十二年前でございますが、その十二年前のときに、当時五十五歳以上の方につきましては掛け金を掛けて拠出制年金に入れるのはとてもできない、こういう方々は七十歳までお待ちいただきまして、無拠出の老齢福祉年金というものを差し上げることにしましょう、こういうたてまえで出発をいたしたわけでございまして、いまお述べになりましたような方々以上の高齢者の方々は、すでに七十歳以上になっておる方がたいへんございます。そういう方々には、四十八年度は夫婦で一万円の年金。そこで七十歳に達してない、当時五十五、五十六、五十七、現在六十七、六十八、六十九と三年齢層になってくるわけでございます。  そこで、私が申し上げるまでもなく、すでに今日は、厚生年金であろうが、国民年金であろうが、公務員の共済年金であろうが、国民皆年金体制にすでに入っておるわけでございます。そこで、この三年齢層の方々はほんとうにお気の毒だというふうなこともありまして、何とか解決をしようではないかということを考えておるわけでございますが、御承知のように、この問題を解決するためには制度が非常に入り組んでおりまして、拠出制の年金で解決したほうがいいのか、あるいは無拠出年金の体制で解決したほうがいいのか、解決はしたいと考えておりますが、どういう体制で解決したほうがいいのか、幸いに年金法の改正をこの国会に提案をいたしておりますので、法案審議の段階で何とかこの問題は決着をつける、こういう決意で努力をいたしておるような次第でございまして、どういう体制で片づける気なのかということになりますと、まだ結論は得ておりませんと、こう申し上げるのでございます。
  224. 田中寿美子

    田中寿美子君 法案審議の過程において解決策を必ず見つけるようにいたしますとおっしゃっているわけですから、もう法案は出ているわけですからね、この国会で具体的に審議しなければならないわけです。対象者の数もわかっているわけですが、一体何が困るのかということなんです。  七十歳以上の老齢福祉年金を、私たちは六十五歳まで引き下げよということを要求しておりますけれども、それを六十七歳まで下げるということは考えられないのですか。
  225. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) ただいまお答え申し上げましたが、先生が御指摘になりましたような形で解決したほうがいいのか、さまざまそれは方法があるわけでございますので、国会の審議の過程において皆さま方の御意見を十分承りまして、法案の審議の段階解決をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  226. 田中寿美子

    田中寿美子君 全然同じことばの繰り返しなんですが、厚生省当局でまだ具体案がないとは考えられないのですけれども、どのくらいの予算をつけようというぐらいの考え方はないんですか。
  227. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) ただいまもお答えいたしましたが、拠出制年金でやったらどうかという意見も実は私の部内にはあるのでございます。というのは、任意加入の五年年金というのがございますね、それとの関連において、そういう意見もあるではないか。ですから、法案の審議の段階で国会の皆さん方の、立法府でございますから、皆さん方の御意見も十分拝聴いたして解決をいたしたいと、こう申し上げている次第でございます。
  228. 田中寿美子

    田中寿美子君 厚生大臣にアイデアがなくちゃ困るんですね。全然ないのですか。福祉型予算にする気があるのでしょう。
  229. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題は非常に超党派的と申しますか、野党の方々の御意見も十分伺って妥当な方向を見出したいというのが、厚生大臣の気持ちであることは田中委員も御承知だと思うのでございまして、どうぞ、おまえのほうから出せとおっしゃいませんで、いろいろお考えをお述べいただきまして、そして妥当なところで結論を出したいと思います。これについては先般、衆議院のほうで愛知大蔵大臣が御答弁申し上げまして、この問題については、何らかの結論が出るならば、妥当な施策をとりたいということを財政当局として言明しておられるわけでございます。必ずしも、この予算の問題ではないと思いますと、こう言っているわけで、他にはいろいろ解決の方法があるということを示唆をいたしておるわけだと存じます。
  230. 田中寿美子

    田中寿美子君 大蔵大臣がそういう発言をなさったことは、私も知っております。新聞で読みました。ですから、何かアイデアがあるのでしょう。どういうことを考えていらっしゃるのですか、大蔵大臣。
  231. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 実は、先ほども申し上げましたように、五年年金の任意加入をもう一回やろう、こういう法案を出しております。そういうふうな関係もありますので、この方々にも二年ぐらい——ざっくばらんに申します、二年分ぐらいの保険料を納めていただいて、そして七十歳になったときに拠出制の年金ということになりますと、それが夫婦で今度はだいぶ上がるわけでありますから、そういうやり方もどうだろうかという意見もあります。それから、田中先生先ほどお述べになりましたように、無拠出の年齢を引き下げたらどうだ、こういう御意見もあります。そういうふうなさまざまな御意見がございますので、法案を幸いに出しておりますから、国会の専門家の皆さま方の御意見を十分承りまして、与野党一致でいい線を見つけるように必ず決着をつけたい、こういう熱意を持っておるわけでございますから、ひとつこの辺で御了承願いたいと思います。
  232. 田中寿美子

    田中寿美子君 あと質疑しますけれども、財源は相当あるのですから、そんな、いまごろ五年年金をもう一ぺんかけさせる、六十七歳以上の人にそういうことを要求するような方法ではなくて、これまで冷やめし食わされていたわけですから、ぜひ、これを救う立場で無拠出制の年金の年齢引き下げということで解決してほしいと思います。もう幾ら言っても押し問答になりますから。  この際、ちょっと一つお尋ねしたいのですが、済生会八幡病院の火事のことなんです。この火事の状況について、ちょっと説明していただきたいのです。
  233. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先般、恩賜財団済生会八幡病院で火災が起こりまして、当時二百数十人の患者がおられたのでございますが、患者さん十二名、付き添いさん一人、おなくなりになりましたことにつきましては、私もまことに遺憾なことと存じておる次第でございます。  この火災発生と同時に、すぐ厚生省の医務局から二人ほど現地に派遣をいたしまして、原因の究明、さらにまた、収容されておりました方々を近隣の病院に収容しなければなりませんので、そういうふうな手配をさせますと同時に、現地の医務局長をして私のかわりに、なくなられた方々に対して弔問をいたさせた次第でございます。  そういうふうなことになりました原因でございますが、これは消防庁の方々と現地においていろいろ調査をしておるわけでございますが、報告によりますと、職員の医者が一階の病室で休んでいるときの蚊やり線香からカーテンに燃え移って、それがダクトを通して煙が先に非常に早く上にのぼっていったということでございます。当初そのお医者さんは、何とか消そうということで非常に患者さんと一緒に骨を折ったために、消防署への連絡も多少おくれたといったふうな原因もあったと思いますが、このダクトの関係で煙が早くもう四階に上がってしまった。こういうふうな、火煙のことでなくなられたというふうに承知もいたしておる次第でございます。   〔理事米田正文君退席、委員長着席〕  そこで、この事件がありまして、直ちに私、厚生省の事務次官名をもって全国の知事に対し、防火体制の確立を急ぐようにということ、特に、病院ばかりではございません、老人を収容いたしておりまする施設につきましても、何とか防火体制を確立するようにという通牒を出したわけでございますが、私としては、今度のほんとうにお気の毒な事件の反省の上に立って、今後病院の防火体制なり何かについて最善の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  234. 田中寿美子

    田中寿美子君 社会党は三月九日に——八日未明にそれが起こったのですね——九日に調査団を派遣して、事情を調べてきたわけなんです。そこで、いまのような経過のとおりでございますが、病院の構造ですね、これにたいへん問題があると思うのです。ここは二百三十一人の患者がいる相当大きなところですね。宿直が十三人。この構造その他について、消防法の規定ではどういうふうになっているのですか。
  235. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 消防法のほうは私詳細ではございませんが、医療法上申しますと、病院は二階建てが原則でございます。二階以上に建てるときには耐火構造でなければならない、こういうふうに、なっておるようでございます。耐火構造でなければ三階以上の病院はつくってはならぬ。  そこで、いま私指摘いたしましたダクトの問題なんでございますが、どうもこのダクトがふさがってない、あいておるというところに問題があったようでございまして、これは先ほどもちょっと現地からの報告によりますと、構造を改善しろという命令が出たというふうなことを承っておりますが、確実にはわかりませんが、出たというふうに承っております。もちろん、出たということであれば、こういう構造改善はさせなければならぬ問題である、かように考えておる次第でございます。
  236. 田中寿美子

    田中寿美子君 監督上の責任はどこにございますか。
  237. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) この病院は済生会病院でございまして、公的病院でございますが、第一義には知事が監督の権限を持っておるわけでございまして、医療法上も立ち入り検査をする権限があるはずでございます。
  238. 田中寿美子

    田中寿美子君 なくなられたのは、ほとんど全部と言っていいぐらい婦人なんですね、そして子供なんですが、今後の問題ですけれども、この被災した病人たちの治療をどうするのか。それからこの施設の問題、それから今後の監督、どういうふうになさいますか。通牒だけじゃだめでしょう。
  239. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 今度の、ほんとうに遺憾なことを反省いたしまして、その上に立って種々な防火体制の確立に努力をいたしたいと考えておりますが、まず第一に、いま申し上げましたような鉄筋コンクリートの病院のダクトの穴があいておるといったふうなことは、やっぱり最近の火災でございますと、あいておりますと火煙が非常に早く上に上がる。その火煙のためになくなるという例も非常に多いようでございますので、この構造問題について消防庁の御協力もいただきまして、現地でそれぞれの病院等について、こういうふうな構造上の問題につきまして再検討をさすというふうにいたしてまいりたいと、かように考えております。  それと同時に、それぞれの病院では、今日まで消防庁の御協力もいただきまして、こういう際の誘導行動についていろいろ準備をしておる向きもあるようでございますが、こういう病院に入っておりまする病人でございますから、健康な方と違って、誘導という考え方よりも救い出す、こういったふうな考え方で、こういう非常事態に対処するような措置について十分訓練をさすなり指導をさせるというふうにする必要があるのではないか、こういうふうに考えて、そういう方面について努力をいたす考えでございます。
  240. 田中寿美子

    田中寿美子君 自治大臣、どうですか。責任をお感じになりませんか。
  241. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは全力をあげて消火活動に当たりましたし、また現に、はしご車等を使いまして相当な救出をいたしたわけでありまするが、煙の回りが早くて十全を期せなかったことは、いかにも残念に思っております。現地にすでに二名の者を派遣いたしまして、詳密に調査をさせました。まだ具体的な報告を聞くに及んでおりませんが、これは連日委員会等がございまして及んでおりませんが、十分今後、こういう繰り返しのありませんように対策をしてまいりたいと思います。
  242. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 建設省もこの問題につきましては調査に参りまして、ただいま厚生大臣から申しましたようにダクトがあいておる、これは設計のミスであるか、あるいは建設の手抜きであるか、いまそれを調査中でございます。
  243. 田中寿美子

    田中寿美子君 病院は、今度の八幡の済生会病院だけではないと思います。これはたいへん入り組んだ建物だったようですが、この際、これは厚生大臣や自治大臣に、あるいは建設大臣もですけれども、全国の病院の、特にたくさんの人の入っている病院の総点検をしていただきたいということ、それから、それに対して今後の監督をどのようにしていくかということについての御決意を聞きたいと思います。
  244. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先ほどもお答え申し上げましたように、消防庁並びに建設省、関係各方面の御協力をいただきまして、構造の問題について、まずさしあたり総点検をいたしたいと考えております。今度の事件がああいうふうになりましたが、ほんとにダクトがあいておったといったふうな問題もありましたので、こういう問題についてまず総点検をする。で、改造する必要があります場合には、医療金融公庫等においてその資金をめんどう見るようにもしようではないかということを、先般も打ち合わせをしておるわけでございまして、まず構造上の問題をひとつ総点検をする。それと同時に管理体制と申しますか、看護婦さん、職員、その他の方々の管理体制、それも、救出するという考え方に立った責任ある管理体制を強化していく、こういうふうにいたしたいと、かように考えておりまして、こういう事件が、ほんとうに二度も起こらないように努力をいたしたいと考えております。
  245. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 消防庁におきましては、過去の建築基準法に適合しておりましても、現在の消火設備から申しまするならば不備なものに対しては厳重に注意喚起をしたり、また管理者を置いて徹底的に防火活動につとめていただけるような体制づくりを現在推し進めておるわけです。特に御指摘の病院等におきましては、災害の場合に、その被害者がハンディキャップがあるということ、避難をするにしても、非常に容易ならぬ条件下にある人々でありまするから、厳重に点検をいたしまして、今後こういうことがありませんように注意をしてまいるつもりで部内を戒めております。
  246. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) お答えいたします。  設計から建設の関係につきましても十分に注意いたしまして、許可の場合は万々こういうことのないように注意してまいりたいと、こう考えております。
  247. 田中寿美子

    田中寿美子君 期限を切ってちゃんとやっていただきたいということ、それから、そういう監督というのは、たいていたいへん不足しているわけですね。ですから、なかなかやれませんから、計画的にぜひそれをやっていただきたいということを要望いたしておきます。  次に、年金のことなんですが、社会保障の中で年金というのは一番主軸になるものです、所得保障でございますから。総理大臣なんかは、年金というものを一体どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  248. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 年金は、いまの社会保障の中の一番大きな問題という理解をしております。一生働いてきて、働けないようになったときに、自分がかつて働いたということ、拠出をしておいたということで、老後に対して不安がないということは、これは生きるためのもうかなめの問題であります。自民党におりましたときも、年金問題というものを何とかひとつ解決をしようということを声を大にしたわけでございまして、今度いよいよ制度の上では西欧先進国と比肩できるような状態スタートしたということは、それなりに私は日本歴史の中でも非常にいいことであったと考えますし、これからも年金の整備ということに対してはひとつ精力的に取り組んでまいりたいと、こう考えております。
  249. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういう認識が実は間違っているわけです。西欧先進諸国の中で同じようなもう制度になってきた、日本歴史における画期的なことだと考えていらっしゃれば、大間違いでございます。  この間、老人たちのデモがございました。「老反会」とか「もうがまんならん隊」とかいう、まして自民党支持の人たちが超党派で日比谷公会堂に集まって、あとデモしておられました。そして、こういう紙を置いていかれました。「我等老人死んでからでわおそすぎる命あるうちふやせ年金」と。  これは、今度の年金に関する政府の提案は、根本的な年金制度の方式としては私は非常に不十分だと思います。つまり、拠出してためていって、それを受け取るような考え方というのは、これは社会保障じゃない。社会保障というのは、働ける人が働いてそのときに働けない人を見てあげる、世代同士の孝行だと思うのですね。ですから、いま若い人は、年とったときにはまたそのときの若い人たちに見てもらう、こういうふうになっていかなければならない。そのためには、いまのような財政方式をやっていたのでは、いま提案されているものだってほんとうに実際の生活とはこういうふうに離れていきますよ。その辺は、私は、厚生大臣はもっともっと意欲を持ってもらわなければ困ると思うのですがね。  問題は、すぐ財源の問題だということになるわけです。私は、いますぐでも、五万円年金と政府の言っていらっしゃるのは、あれは不当表示だと思いますけれども、五万円年金でも、あるいは私たち社会党が言っている六万円年金だって、ことしからでも実現できるだけの財源がある。ただ、その財源を使わないだけだ。そういう意味で、私たちは、厚生年金や国民年金の積み立て金を取りくずして賦課方式にしなさいということを要求しているわけなんです。厚生大臣は、これに対してどうお答えになりますか。もうわかっているんですけれどもね、いつもおっしゃることは。
  250. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 幸いにいま資料を持っておりましたのでちょっと申し上げたいと思うのですが、だいぶ手きびしく不当表示だという御批判がごさいましたが、厚生年金のほうは——実態からまず申し上げてみたいと思うのですが、厚生年金のほうは、歴史が古い関係上、一応の成熟を見ております。そんなことで、五万円年金になりましたときに本年度中に受給者がどの程度の金をもらえるかということから申し上げてみたほうがいいと思うのですが、ことし、大体、年金を受けます者は八十万人程度でございます。そして、今日まですでに年金を受けておりまする既裁定年金受給者、この方々は、今日までは、御承知のように二万円年金でございます。そういうふうなことにつきましては、今回の改正に伴い、二・二倍引き上げるわけでございます。そういうふうなことをいたし、新規のものと合わせまして八十万人の年金受給者が発生いたしますが、そのうちの六割、四十八万人は、二十年以上加入をいたしておりましたので、これは本格的な年金の受給者になりまして、四十八万人のいただける年金額は、月額にして四万二千円から四万五、六千円が平均でございまして、五万円をいただけるのは八万五千人から九万人ということになっております。それからその残りの四割の方は、いわゆる十五年年金でございまして、経過年金でございますから、これはとても五万円年金という線までは近づけない。平均いたしまして三万円程度であろうかと考えております。これは、加入年数に差があるためにやむを得ないわけでございます。御承知のように、年金は、すべてのよその年金も同じでございますが、一定の基準を設けまして俸給と年数でございますから、そういう差のあるのはやむを得ない。したがって、五万円年金は、必ずしも厚生年金に関する限りは六割が四万二千円から四万五千円ということでございまして、五万円の者は一割ということでございますから、この点はあまり不当表示ではないと考えております。  問題は、国民年金だと思います。国民年金は、これは私は率直に申しますが、できましたのが十二年前、標準としてあの当時十二年前につくりましたときには、二十五年加入いたしまして夫婦一万円の年金というのから出発したのが十二年前、その後四十四年に改正して二万円年金になり、それが今度五万円年金になるわけでございまして、この方々はほんとうにこれは成熟しておりませんから、二十五年たっていないのですから、この五万円年金をいただける人は今日ございません、はっきり申します。ただし、いわゆる任意加入で入っておりました十年年金、あの当時五十歳から五十五歳の方、この方は現在夫婦で一万円でございますが、今度の改正によりますと二万五千円になるわけでございまして、十年で二万五千円、十一年で幾ら、十二年で幾らというふうにふえていきまして、二十五年たつといわゆる五万円年金と、こういうことでございまして、その点は五万円をいただいている者はいないと、これは私は率直に認めざるを得ないと考えております。  そこで、お尋ねの点でございます。こういうふうな状況でありますから、積み立て金を取りくずして、もう保険料は据え置いて保険金を取りくずしてやったらどうかと。これは、おっしゃるとおり、そういうことをいたしますれば、五万円年金も六万円年金も間違いなく私は可能であると思います。しかし、年金というものは、もうすでに御承知のように、国会議員の互助年金は十年、役人は十何年、こういうふうに、十年、二十年、三十年と長期にわたって計算をしなければならぬと、これが一つの問題でございます。しかも、今度の年金は、御承知のように、物価スライドでこの五万円の価値を維持しながら進んでいこうという年金でございます。さらにまた、もう一つ考えておかなければなりませんのは、先ほども申し上げましたように、わが国の老齢化現象は西欧諸国以上に急ピッチに今後進んでいくということでございます。統計も、御承知だと思いますが、幸いにありますから申しますと、四十八年度における六十五歳以上の年齢は七・五%、八百十万人でございます。それが五年後になりますと、八・三になって九百四十万、十年後になりますと、九・二ということで、六十五歳以上の方は一千万、こういうことで、二十年たちますと、大体一千七百七十万、すなわち今後二十年で西欧先進諸国が二百年、百年かかって完成した老齢化社会というものは実現する、こういうことでございますので、なるほど、おっしゃるとおり、現在ある金で、しかも現在の老齢年金受給者の数が少ないときに、現在の被保険者の金だけで年金を出すということは可能でございますけれども、二十年、三十年という長い将来を見通し、そして将来どんな場合でも五万円の価値を維持したような年金額を将来にわたって保障するということであれば、どうしても年金が成熟する昭和七十年代というのが成熟の時期だと思いますが、そのときになりましても二、三年分の給付をまかなうだけの準備金はとっておかなければならぬ。そしてそれと同時に、掛け金負担を急激にふやさないで徐々に上げていくと、こういう政策をとらざるを得ないのでございまして、私どもは、これを修正積み立て方式と申しておりますが、将来わが国も西欧諸国並みに老齢化社会というものが実現したならば、私は、お述べになりましたそのときこそ老齢人口は平準化してまいりますから、そのときになったならば賦課方式というものも可能であろうと思いますが、いま老齢年金というものを成熟化させようという、しかも老齢化人口が急ピッチで伸びようというこの際でございますので、田中先生のような専門家の御意見ではございますが、どうもいまにわかに賛成いたしかねると、かように考えておるような次第でございます。
  251. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま説明なさった年金の方式の中身については、私は社労委員会でじっくりやりたいと思います。考え方そのものが非常に問題なわけなんですよ。だから、成熟していないから、老齢人口が成熟するまでいまから二十何年——昭和七十年というと、私たちみんな生きていませんけれども、そういう時期まで待たなければちゃんとならないという考え方では、いつまでたったってほんとうにいまの老人が困っているわけなんです。それで、これはアメリカなんかだって、ルーズベルト大統領のときに、一九三七年に、六十五歳以上の老人に対する年金制度をつくったわけですが、それはもうどこの国だつて新しく年金制度をほんとうにちゃんと賦課方式でやろうと思うならば、相当ドラスチックなことをその時期においてやらなきゃならないわけなんです。経過措置としてやらなきゃならない。だから、その年までは積み立ててもいないくせにという考えは、もう一切社会保障ではやめなきゃいけない。長年積み立ててきた人も、いま積み立てていないけれども困っている人も、ある時期には特別の措置をもって全部やらなかったら、年金制度というのはスタートしないのです。それで、それに対して財源をいままで積み立てた人の積み立て金を全部取りくずしてしまえと。それだけじゃないですね、私は。やはり、これは、掛け金の比率の問題、国庫補助だとか、あるいは労使の関係とか、そういうことを全部考えながら、次第次第に若い世代が老人の世代をいつでも見れるような方式に考えていこうというのが私は、厚生大臣はそれぐらいの理想を持ってほしいと思うわけなんです。  そこで、私も、一生懸命にこの財源を見つけること、どうしたら老人が困らないように、安心して豊かな老年期が過ごせるようにできるかということを考えながら、いろいろと財源を見ておりまして、厚生年金、国民年金の積み立て金が財政投融資資金の中の大きな一つの原資になっているわけですから、これをしさいに調べていたわけなんです。そして、その調べていたときに、たいへんいろいろ疑問が出てきた。そこで財政投融資の資料の提出を大蔵省にお願いしたわけです。ところが、この薄っぺらいこれ、二十六年以後のを全部集計したもの、これ以外にくれないわけですよね。これでは収支の状況がわからないから、もっと詳しいほんとうの資料があるはずだと、大蔵省に。出してくださいということを再三要求しましたけれども、提出してくれないんです。全部の議員に出せなくても、特にこのことを一生懸命に検討しようと思っている議員になぜ出せないのか、その理由を説明してほしい。
  252. 橋口收

    政府委員(橋口收君) お答え申し上げます。  財政投融資計画は、毎年作成をいたしまして、国会における予算審議の参考資料として提出をいたしておりますが、いま先生がお示しになりました資料は、年に一回財政経済統計月報として作成をいたしております。で、いま先生がお話しございましたのは、私、ちょっと理解しかねるのでございますが、こういう席で申し上げてよろしいかどうかわかりませんが、先生から個人資料として要求のございました資料は、特に調製をして提出いたしたつもりでございます。
  253. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっと聞こえなかったんですが、はっきり言ってください。
  254. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 先生から特に個人資料として御要求のありました資料は、特に調製をして提出いたしたつもりでございます。
  255. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 調製して提出するというわけですね。
  256. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 提出をいたしました。
  257. 田中寿美子

    田中寿美子君 いいえ、いただいていません。提出できないという書類をもらいました。
  258. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいまお尋ねの御趣旨はよくわかりましたが、あれはたしか財政投融資資料という資料だと思います。これは役所の中の純然たる内部資料でございまして、関係各省とかあるいは関係機関の協力あるいは好意によって集計したものでございます。したがいまして、一切外部には提出をいたしておりません。
  259. 田中寿美子

    田中寿美子君 これでは、厚生年金や国民年金だけじゃない。財政投融資というのは、その中に資金運用部資金も含まれている。資金運用部資金というのは、貯金も入っているし、簡易保険の積み立て金も入っていて、そして財政投融資の非常に大きな財源になっているわけですね。ですから、私は、庶民の貯金や拠出金を使って財政が投資をするのについてどういうふうにやっているのかということを知る権利があると思う。ことに、国民年金や厚生年金に関してはですね。ですから、この資料を少なくとも私は克明に見たい。私だけにだって渡してもらってもいいと思う、全部の議員に無理であれば。それを何回か要求しました。理事会を通じても要求しましたけれども、内部の資料であるから出すことはできないという資料をいただきました。委員長、資料要求。私は「財政投融資資料」というのを大蔵省の理財局に要求したわけです。それは、さつき申し上げましたように、財投の原資の使われ方、それからそれがどういうふうに回収されているのか、どういうふうに利子がついているのか、そういうことを見て一定の年金の財源を考える参考にしたがったわけです。それで要求しまして、理事会からも要求してもらいました。しかし、大蔵省からは、それは部内資料であるから出すことができないと言われたわけです。私は、非常にこれは必要で見たかったから、国会図書館の文献も探してみました。ないので、結局、古本屋を探したわけです。古本屋のカタログにこれは三つの店で発見したわけです。三つの店で、あるところは十冊以上「財政投融資資料」というこの分厚いのが昭和三十一年ごろから四十五年ごろまでみんな売りに出ておりまして、価格が一冊大体八千円から一万二千円です。私は、そんなに買うことはできないから、これだけ一冊一万円で買ってきました。大蔵省がくれないから、しかたないから、資料として買ったわけです。ですけれども、これは四十五年ですから、一番もつと最近のを知りたいわけです。ですから、昭和四十七年度の「財政投融資資料」の中から、特に還元融資に関するところ、それから日本開発銀行に関するところ、それから日本輸出入銀行に関するところ、さらに産業投資特別会計の産投に関するところ関連しておりましてこれはずいぶんたくさんあるんですよね。たとえば日本開発銀行なんかでしたら、その貸し出し先がたくさんありますし、だから相当のあれになると思いますけれども、もし四十七年度のそれをいただければ参考にしたいんです。委員長、お願いします。
  260. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 五時半まで休憩をいたします。    午後五時十六分休憩      —————・—————    午後五時五十分開会
  261. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  本日の田中君の質疑はこの程度にしまして、田中君の残りの質疑は資料提出後行なうことといたします、  明日は午前十時より開会することとして、本日は散会いたします、    午後五時五十一分散会