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国務大臣(
田中角榮君) 大蔵省とまだ相談もしておりませんし、税制調査会の御審議を得ておらないわけでございますが、私はずっと前から、いま御指摘のような持論を持っておるわけでございます。これは、戦後のシャウプ税制、これはそれなりに非常に高い評価だったと思います。その結果、現在の税制がずっと戦後続いてきたわけでございまして、この税制はある
意味では
理想的な税制であると、こう言えます。それは
政府側から見ますとは財源確保には非常に確実なものでございますから、これはいいと思いますし、しかも、直接税と間接税のウエートを見ますと直接税中心主義でございますから、景気変動ということに対しても比較的財源は確保されるわけでございます。間接税にウエートを移しますと、景気の悪いときは税収はがたつと減ってしまう、こういうことでございまして、これはなかなかめんどうな問題でございます。しかし、
国民全体から
考えると、いま御指摘があったように、直接税というのはやっぱりふところに手を入れるというような感じがどうしても避けがたいというのが
一つあります。しかし、先進工業国に比べてみると
日本の課税最低限も
アメリカを除いては一番高くなっておりますし、それから所得税率も、他の国に比べて高いことはありません。
アメリカに比べれば低いという面もございます。しかし、何としても所得税率というのは、所得税中心主義は、どうも人権が侵害されるというような気がしてならないということが
一つございます。
それからもう
一つは、
国民所得が上がりますと、どうしても、減税をしても減税をしても納税人口がふえるわけであります。納税人口がふえますと、どうしても徴税人口もふえるんです。徴税
機構が追っつかない限度まで来ておるんじゃないか、こう私は
考えるんです。ですから、税務署はたくさんありますけれども、税務署に籍を置くけれども、全部東京と大阪に集まってもらって徴税の仕事をやらなければいかぬというようなことになっては、さなきだに大都市にたいへん人が集まるということになるわけですから、列島改造の面から
考えても、私はもうやっぱり限度に来ているんじゃないかという気がするわけであります。
そういう
意味で、なかなか、間接税にウエートを移せということには簡単に
——間接税に逆進税制である、大衆課税であるということですぐ反対しますが、私は、そうならフランスは、じゃ逆進税制であり、大衆課税をやっているのかということになるのであって、これはそう
考えるべきじゃないと思うんです。生活必需物資に対しては一定限の課税最低限をきめてやればいいわけでありますから、そういうことではなく、やっぱりもう一ぺん
考えなければならない問題だと思っているんです。それで
考えると、相当大幅な所得税減税が行なえると思うんです。ただ、所得税減税を大幅に行なえ、こう言っておって間接税は絶対反対だというと、足を縛って跳べとの議論に似たりということであって、なかなかそううまくいかないんです。ですから、そういう
意味で課税最低限も上げていかなければなりません。
それからもう
一つ、実際において必要経費は、認めておるものと認めておらぬものもあるんです。同じ文章を書いておる人でも、新聞記者は必要経費を認められないで文士は認められるという不公平感、こういうものはやっぱり二〇%でも三〇%でも必要経費をちゃんと
——全部一律でなくてもいいと思うんですが、二〇%でも三〇%でも引いて、そうしてそれに税率をかけるということになれば、そうすると非常に所得の多い人は利益があるんじゃないかというけれども、所得の多い人は、今度公的寄付をする限度額をうんと上げてやるとか、そういうことで調整をすべきであって、いま幾ら働いてもすべて税でもって徴収してしまうんだということでは、社会のよさも何にもなくなってしまう。こういうことであるし、それでは余ったら相続税のときにいただけばいいというような、調整をする
考え方でやっぱり税は
考えるべきだということで、私はそれでガソリン税を、目的税として議員立法を行なったわけであります。いわゆる自動車トン税という、反対もありましたが、自動車トン税の主唱を行なったわけであります。今度の土地の分離課税というものも行なったわけであります。
ですから、そういうことによって移動がふえれば、現行税制、土地は五年以上持っているものは一〇%、一五%、二〇%いっておりますが、しかし、移動が行なわれたため年に税収が八百億だったものが三千億になったというようなものもあるのでありますから、やっぱり固定観念ではなく、所得税の減税をするなら別なものに踏み切っていかなければいかぬ。私は飲酒税というようなことを長く出しておるんですが、なかなか採用されないけれども、飲酒税というようなものは、これは相当
理想的だと思っているんです。思っているんですが、なかなか主税当局の大賛成を得られないで困っているんですが、まあしかし、年度内でもってどうしようというんではなく、四十九年度
——野党の皆さんもみな一兆円減税をやりなさいと、こう言っておるわけであります。一兆円減税をやるとすれば、そのまま減税はやれないと思うんです。やるなら他に財源をどうして求めるか、しかも、それが大衆課税にならないような、俗にいわれる大衆課税というものにならないようなことを
考えていかないと、徴税
機構そのもの、何かの反税闘争とか税に対する不信感というものをやっぱりなくするためにも、もっと合理的な税制が
考えられなきゃいかぬ。それで、やっぱり根っこを幾らか引いてということになりますと成果はありませんし、それで、わかりやすい税制
——非常に税務署、大蔵省に長くつとめた
局長さんなどをやった人は税の申告でみんなわかるかというと、わからない。大蔵省の
局長やった人がわからないでもって、一般大衆がわかるわけありません。もっとわかるような税制にしたい、こういうのがほんとうに、私のこれは私見
——私見の域を出ていないわけでありますが、半ば公的意見でございます。