○沢田政治君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました
国土総合開発法案につきまして、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
第一は、国土
開発計画についての基本的な政治姿勢についてであります。
田中
総理、あなたは、
日本が戦争に敗れ、都市という都市は瓦れきと化し、住むに家なく、求めて食なしという敗戦後の混乱のときに衆議院に出られ、特に、持ち前の情熱を国土の復興と都市の建設に注いできました。私もまた、今日まで終始一貫、
わが国の再び戦争に巻き込まれることなく、平和な国土の建設にそれぞれの部署で努力してきたところであります。
あなたは今日
総理となり、国の将来を負う
責任ある
立場に立って、わが民族、
わが国民が、およそ幸福とはかけ離れた国土の
破壊、人間
環境の
破壊につながる
日本列島改造を推し進めようとしているのであります。理念の違いというものが、かほどに大きな開きを招くものかと驚かざるを得ないし、残念でなりません。それはどこから相違の出発点が出たかということであります。つまり高度経済成長
政策、
生産第一主義が
国民の生きる道とかたくなに思い込んでいることが、現実とあるべき姿の相違の分岐点でないでしょうか。
いまから十余年前、六〇年代には、池田さんが推進した高度成長
政策は、一面から見るならば一応の
役割りを果たしてきたという評価もあります。年率一〇%という
国民総
生産の伸びは世界の驚異であったわけです。しかし、池田、佐藤と続いた自民党内閣の歩んだ道が、GNP世界第二位を誇ったその足元から、
公害世界一の悪名とエコノミックアニマルの冷笑を世界じゅうからいただいたわけであります。
総理、あなたは、池田内閣当時から、あるいは大蔵
大臣として、または党の政調会長、幹事長として、十分にその功罪を知り尽くしているはずです。あなたの著書「
日本列島改造論」の前段には、高度成長のひずみを、あたかも他人ごとのように書いているのであります。ところが、その
反省がどこにも見当たりません。そして、今後なお年率一〇%の
国民総
生産の伸びを前提とする高度成長
政策を基本に置いて、成長なくして福祉なしと言い切っています。首相に指名された直後に、
生産第一主義を生活第一主義に切りかえたい、政治の流れを変える、と言った、その政治の流れはどうなったのですか。あなたの閣僚の中の最も大ものといわれる福田さんは、時代は変わった。安定成長に流れを変えるべきだ、と
発言をしているのであります。本国土総合
開発法と、現在提案されている
関連する一連の
法律案は、すべて
総理たるあなたが主唱する
日本列島改造論の
具体化であるといわれていますので、まず最初に、その基本姿勢を
総理に
質問をいたすわけであります。
第二は、本法の基本理念についてであります。
昨年六月、スウェーデンの提唱によって、国連人間
環境会議がストックホルムで開かれました。その国連人間
環境宣言で、「ひとは、その生活において自由であり、平等であり、かつ尊厳と福祉を保つに足る
環境で、適当な
水準の生活を営む基本的権利を有し、将来の世代のため
環境を改善すべき厳粛な
責任を負う。」ということを言っています。一体、公共の福祉を優先させ、自然
環境の
保全をはかりつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件を配慮して、国土の均衡ある
発展をはかるとしているが、具体的に何が主眼なのですか。もともと人間は、経済という一つの
環境の中に存在しています。そして、それはさらに社会
環境によって包まれている。また、それは自然
環境によって包まれている。このような経済
環境、社会
環境、自然
環境というような
環境に包まれているのが私どもの生活なのであって、個々別々の地域に切り離されたものではないのです。人間が
環境の中で生存していく限り、
環境はすべての人間に対してと同時に
供給され消費される公共財なのです。その公共のものを私的なものにすることによって経済行為が営まれているのです。資本主義は、私的
企業の私的利潤追求の社会である限り、
企業の
拡大、巨大化、技術の革新に付随して解決できない
公害を発生させてきているのであります。そのことは、北海道から
九州、沖繩に至る、まさに
日本公害列島各地の
実態を見れば、いかに人間
環境が
破壊されてきているかがわかるのです。
総理、あなたの「列島改造論」では、過密と過疎の同時解決をうたい、過密の分散について、長期かつ総合的な
計画に基づいて社会資本を先行的に
整備することが重要であり、同時に、各地域に応じて地方に工業を配置し、誘導する必要がある。工業は地域
開発の起爆剤であり、主導力であると言い切っておるのです。さらに問題なことは、
昭和六十年には、基幹
産業の需要として、粗鋼で現在の二倍以上、石油精製を四倍、石油化学は四倍になるという指標のもとに地域
開発を進め、過疎を解消しようとしていることなのです。これは
公害の拡散、
環境破壊を
全国的に広げるということにすぎません。
基本理念と人間
環境をどのように
考え、国土総合
開発計画を推進していくつもりであるか、
総理並びに三木
環境庁長官、建設
大臣の見解を求めます。
第三点は、土地利用
計画についてであります。
第六条で、都道
府県知事は、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域及び自然
保全地域の五区分の土地利用基本
計画を定め、内閣
総理大臣の承認を受けなければならないことにしています。そして土地の権利者が土地の売買契約等をしようとする際には、予定対価の額や買い主の土地利用目的などを市町村長を経由して知事に届け出しなければならないことにし、また知事は、その土地利用目的が土地利用の基本
計画に合わないとか、公共施設や公益施設の
整備の予定があるとか、周辺の自然
環境の
保全の上から不適当であるとした場合には、契約締結の中止勧告をすることができることにしています。だが、届け出制や勧告だけでほんとうに実効があげられるでしょうか。
総理、あなたは、土地が投機の対象になっていることを十分承知をしておりながら、列島改造を公にし、投機熱をあおり、大
企業、不動産
業者の未曾有とも言える土地買い占めを招来させてきたのです。しかも、買い占めた七割は都市
計画区域、市街化調整区域であるといわれているのでありますが、われわれが反対し、与党多数によって可決した地価公示法一部改正では、その調整区域、都市
計画区域にも市価を追認するだけの公示
価格を設定することにしたのです。何と、語るに落ちた手法ではありませんか。
公有水面埋立法の一部改正案では、
環境保全などに実効は期待できないが、若干の手直しをして
国民の目をそらし、依然として、埋め立てが完成すると同時に
企業者の所有に移るという基本的な性格は少しも改めていないのです。いや、むしろ民主的な装いをもって臨海工業地帯の埋め立て造成を
促進しようと企図しておるのであります。四日市を見ても、鹿島を見ても、あるいは
瀬戸内海の工業地帯を見ても、それがどれほど海水の汚濁を進め、
公害をばらまき、何百人、何千人という人命にかかわる
公害病患者をつくり出してきているか、名目だけの
環境保全ではどうにもならないことを、
総理、建設
大臣、あなたたちはよく御存じのはずです。
企業の埋め立て免許はやめるべきだと思います。公有水面一部改正案は廃案にして、あらためて提出するよう忠告をいたしておきます。
総理、現在の
わが国の土地問題は、もう土地の利用
計画や若干の
規制などということによって処理される問題ではないのであります。今日の地価の上昇を押えるには、値上がり前の時点の
価格にまず地価を凍結し、自治体や公的機関が買い取り、公用地として
確保する道を開くこと、そして土地は、民族生存の場として、所有は私人に属したとしても、利用は社会公共の利益が優先し、
国民の受ける便益が公平であるように
原則を立てることであります。
総理、建設
大臣、自治
大臣、あなたたちはどのようにお
考えになりますか、
答弁を求めます。
第四点は、内閣
総理大臣の権限の
強化と地方自治についてであります。
本法の第四章では、知事が、投機的土地取引が特に激しく、また、暴騰が予想されるような地域を特別
規制地域として、三年以内の期間に限り、指定することができることとし、地域内での土地売買等は知事の許可制にしています。
ところで、区域や期間の指定は、公告によって効力を生ずることになっていますが、それには、内閣
総理大臣の承認を受けなければなりません。そして、承認、不承認は、
総理大臣が決定することになっています。さらに、地域の指定、解除、区域の減少等について知事に指定することができ、知事がその指示に従わなかったときには、そのことを国土総合
開発審議会で確認して、みずから
措置を講ずることができる規定になっています。むろん、知事側の正当な理由がない限りとなっていますが、正当な理由の判断
基準、指標というものは、何ら
法律に明記しておらないのであります。このことは、都道
府県の総合
開発計画が
全国総合
開発計画という国の
計画の
ワクに縛られる上に、その利用
計画も国の
計画に
規制され、地方自治体の自主性を制限するばかりでなく、
総理大臣が事実上知事の権限を奪い、直接、
開発計画に介入するということで、地方自治の否定にもつながるゆゆしき問題と言わざるを得ないのであります。この点について、
総理並びに自治
大臣の
答弁を求めます。
最後に、国土総合
開発計画における農業についての
考え方を
お尋ねいたします。
「列島改造論」の最初のほうに、「農村地域は農民にとって
生産、生活の場であると同時に、民族のふるさと、
国民のいこいの場でもある。人間は自然と切離しては生きていけない。世界に例をみない超過密社会、巨大な管理社会のなかで、心身をすり減らして働く
国民のバイタリティーを取戻すためには、きれいな水と空気、緑にあふれた自然を
破壊と
汚染から守り、
国民がいつでも美しい自然にふれられるように配慮することが緊急に必要である。」という美文調でつづっております。
本文全体を通じてもそうですが、ここでは工業化社会、超過密な都市社会の
日本の姿しかなく、そのために自然が羨望され、ふるさとが語られているにすぎないのであります。つまり、農業の深刻な今日的な
危機が少しもとらえられておらないことであります。要するに、
総理の頭の中には、高度経済成長
政策への巨大工業化の発想、そのための交通ネットワークの完成、ここから発生する
公害、
環境破壊をいかにして食いとめ、住民、
国民の反撃をかわそうかという姿勢が映ってならないのであります。はたして、そのような将来が
日本民族にとって幸福な社会につながるでしょうか。
今日、今世紀最大の人類の課題は、
増大する人口に対して、その
食糧をいかに
確保するかということにありましょう。
食糧の多くを海外輸入に依存しておる
わが国の農業は、はたしてこれでよいのでありましょうか。
高度成長のゆがみを受け、いまや農業就業人口は全就
業者の一五%を切り、四十六年末には七百五十万人を割っております。
政府の在庫米を見ても、本年、当年産の新米を含んで三百四十二万トンが推計されているにすぎません。
食糧については、可能最大限の自給経済体制をとっていくべきではないでありましょうか。国際分業といって、
食糧の海外依存は日増しに不安定なときにあたり、
農林大臣の見解を求めます。
私は、国総法は、農業を
中心に据え、福祉社会への構想を新たにして次の国会に再提出すべきものと思いますが、
総理の御
所見はどうでありましょうか。
以上で私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣田中角榮君
登壇、
拍手〕