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国務大臣(
新谷寅三郎君)
お答えいたします。
まず第一に、自家用トラックと
物価との関係について
お尋ねがございましたので、その点について申し上げます。
物価の
上昇の要因として考えられますものは、需給関係でありますとか、市場の
競争条件でありますとか、コ
ストの
上昇というように、いろいろありますことは言うまでもございませんが、
現実の
物価上昇は、これらの諸要因が複雑にからみあいましてもたらされるわけでありまして、物資にもよりますけれども、一般的には、
貨物の
輸送力が大きな要因であるとは言えないと思います。
確かにお説のとおりに、流通
経費の中のトラックの
輸送費、特に自家用トラックの
輸送費がかなりの
部分を占めてきていますことは事実でございまして、この製品価格の
上昇につながるという御
指摘は、物資によりましては、これはある
程度首肯できるところであると私も考えます。しかし、一面、自家用トラックには販売活動に用いることによりまして、顧客のサービスの向上がはかられるとか、集配等の人力の節約によりまして、中小
企業等の
経営合理化に役立つなどのメリットがあることも事実でありまして、したがいまして、
輸送効率の面だけをとらえて自家用トラックを抑制するという考えにつきましては、これはもう少し大局的に、あらゆる角度から慎重に検討したいと思うのであります。
それから
総合交通体系の確立に関する問題でトラックのことを
お尋ねでございましたので、お誓えいたします。
国鉄の
貨物輸送の
シェアが低下してきましたのは、
貨物輸送設備の
近代化がおくれまして、荷主の要求する速達性、定時性のあるサービスを供給できなかったことにあるのでありまして、これが
国鉄貨物部門の
赤字の要因にもなっておると考えます。
総合交通体系の観点からは、
貨物輸送の分野におきましても、各
交通機関がそのサービスの特性、たとえば
鉄道につきましては高速性、大量性、
自動車につきましては機動性、小口性、随意性、
海運につきましては
経済性、大量性といったような特性に見合った分野において、その
役割りを十分発揮できるようにすることが必要であると考えます。
政府といたしましては、このような観点からいたしまして、
国鉄貨物輸送については、大量性、高速性という
鉄道の特性を十分に発揮させ、荷主の求める
輸送サービスを供給することが、まず何よりも大事であると考えております。このために、現段階におきましては、
国鉄貨物収支の改善のためには、
鉄道と代替的な面があります
自動車輸送を規制するというような手段ではなしに、フレートライナーによる
自動車との協同一貫
輸送でありますとか、物資別の適合
輸送の
推進などによりまして、荷主の要求する速達性、定時性のあるサービスを供給できるようにすることが、
総合交通体系の観点からは適切であると考えております。今回の
再建計画におきましては、このような
貨物関係投資が十分行なえるように、
政府助成を抜本的に強化することといたしております。
御承知のように、
貨物輸送におきましては、流通革新が進行しておりまして、一般の物資につきましては、複数の
交通機関の長所を適切に組み合わせた協同一貫
輸送方式、また大量定型
貨物につきましては、物資別の専用
輸送方式が普及しつつあるのでありまして、その方向に誘導していくことは、
貨物輸送体系効率化の観点からも必要であり、今後ともその
推進につとめてまいりたいと考えております。
なお、
総合交通体系の確立につきましては、
昭和四十六年の十二月に決定されました
総合交通体系に関する
政府の
基本方針に基づいて、関係各省庁がそれぞれの所管に応じて鋭意
努力をしておるところでございまして、今回の
国鉄財政再建計画も、この方針の趣意によって進めようとしているものでありまして、
計画期間中には、できるだけこれを前進せしめなければならないと考えております。
それから、今度の
計画で
国鉄の
再建ができる自信があるのかと、こういう
お尋ねでございました。
今日の
再建計画は、これまでの
計画が
改定を余儀なくされました
原因につきまして、十分に反省をいたしました結果、
国鉄が過去における投資不足のために、所得等の向上とともに高度化する
輸送需要に十分追随できる
輸送サービスを提供できなかったことに、
財政悪化の
最大の
原因があるものと考えまして、
新幹線網でありますとか、
複線電化の
拡充強化でありますとか、
貨物輸送のシステム改善等を行ないまして、
鉄道サービスの質的な改善をはかるとともに、あわせて
過密過疎を解消する
国土開発
政策に対応する等、陸上交通の
大動脈としての
国鉄の
役割りを十分に果たせるように、十兆五千億の投資を行なうこととしたものでございます。しかしながら、これらの投資は、懐妊期間が長く、かつ採算性が低いために、
財政状況が
悪化している現在の
国鉄が行なうことは困難でございますので、その過去
債務に対する措置とともに、
工事費については、その資金コ
ストが
出資と合わせて三%になるように、画期的な補助を行なうことにいたした次第でございまして、この結果、
再建期間中に
国鉄の諸施設は
近代化、
合理化せられまして、その
輸送サービスも十分な
競争力を回復することを期待しておるのでありまして、それ以後、
わが国の陸上交通の
大動脈としての
国鉄の
使命を十分果たしつつ、
財政の
再建も行ない得るものと信じておるのであります。
次は、
運賃制度のことでございますが、
お尋ねの、
旅客運賃は
新幹線に負っているといいながら、黒字であるのになぜ
旅客運賃の値上げをしなければならないのかというような
お尋ねであったと考えますが、
国鉄の
運賃料金体系は、今日まで沿革的に、貨客を合わせまして、また全国二百六十の線区を合わせました総合原価主義の
計算方式をとっておりまして、貨客別、線区別あるいは列車別等の個別原価対応の
運賃料金の立て方にはなっておりません。
旅客及び
貨物運賃の水準は、それぞれにつきまして全国一律でございまして、また、全体としての
収入で全体の原価をまかない得るような形で、サービスの質、市場の
条件、従来の沿革あるいは
社会経済情勢等の諸点を勘案してきめられているものでございます。その結果といたしまして、貨客別あるいは線路別に
収支を見ますと、これらの間に内部的な補助関係が生じておることは事実でございますが、このような総合原価主義に裏づけられた受益者
負担の考え方というものは、電報、電話でありますとか、
新聞とか雑誌等、全国一律の料金制を採用している
部分にも見られることでございまして、この点は
利用者の方々も、
利用者一体性の観点から御納得を得られるものと考えております。
また、貨客別の
収支につきましては、同じ線路施設を貨客で共用しておりますので、これを正確に明らかにすることは困難であります上に、
貨物輸送を行なっていない
新幹線につきましては、御
指摘のとおりにこれを別に考えるべきものであって、
新幹線の黒字一千八十八億円を別にいたしますと、
在来線につきましては、
旅客、
貨物とも大幅な
赤字になります。このような前提
条件のもとではありますが、
貨物の
収支が逐年
悪化を見ていることは確かでありまして、その
原因は、トラック
輸送の発達、産業
経済構造の変革等の環境
条件の変化の中にあって、これまで
国鉄が投資面におきましても、またダイヤ設定等の営業面におきましても、常に
旅客中心の施策を行なわざるを得なかったというような事情から、
貨物輸送の
近代化が立ちおくれまして、荷主の要求に十分こたえられるような良質のサービスを提供し得なかったことによるものでございます。このような状況のもとで
貨物運賃の大幅な
改正を行なうことは、
国鉄貨物輸送の
競争力をさらに弱め、かえって減収をもたらすことになると思います。したがいまして、
貨物収支の改善をはかるためには、今後われわれは約一兆八千五百億円の投資をしたいと思っておりますが、これによりまして
貨物輸送の設備の
近代化をはかり、特に
新幹線の設備に応じて、
在来線を
貨物優先により活用し、拠点
貨物駅間の直行
輸送体系の
整備でありますとか、あるいはコンテナによるトラックとの協同一貫
輸送の
推進によりまして、荷主の要求するような速達性、定時性のある高度の
輸送サービスを低コ
ストで提供し得る
貨物輸送にシステムチェンジをはかることが必要でありまして、こうした
内容を織り込んだ
再建計画の達成時におきましては、
貨物収支の不均衡は非常に大幅な改善を見ることができると信じておるのであります。
それから、現在の自家用トラックの規制を強化すべきではないかという御質疑がございました。
自家用車の
輸送効率は、営業用車に比べまして低いことは事実でございます。しかし、トラック
輸送に対する需要の
内容は多種多様でありまして、物の
輸送のみではなく、商取引活動とも一体として利用できることなどの利点が自家用車にありますので、直ちに効率性だけで自家用車に対する規制措置を講じるという考えはございませんが、公害でありますとか、交通混雑等の問題に対処する観点からいたしましても、今後激増する自家用車に対する対策は、これは真剣に検討しなければならぬと考えております。
また、自家用トラックによる営業車との同様の行為、これに対する
運賃ダンピング等の
道路運送法違反行為、過積み運転等の道交法違反行為などにつきましては、これは
輸送秩序を確立する上からいきましても、引き続いて、この監査
体制の充実強化をはからなければなりません。関係省庁と十分連絡をとり、この取り締まりを強化したいと考えております。
それから
運賃制度のことでございますが、大資本に奉仕する
運賃制度だということがございましたが、そのようなことはございません。
国鉄は、
鉄道営業法の定めるところによりまして、荷主のいかんにかかわらず、平等の運送
条件によりまして運送をしておるのでありまして、特定の荷主を優遇するようなことは行なってはおりません。
それから
人員の
合理化の問題について
お尋ねがございましたが、先ほど
江藤議員に対しまして
お答えしたと同様でございまして、要するに、省力化、
合理化等が可能でございますから、五十三
年度末までには、自然退職者を中心といたしまして十一万人の要員の縮減を行なうことが可能であると考えるのでありまして、しかしながら、これはこういった
合理化、
近代化が進むのでありますから、これによりまして、お示しにあったような安全の確保には、不当な
労働強化ということはこれはもちろん避けなければならないと考えておりますが、それが可能であるということを信じております。
それから
国鉄の
経営機構の問題でございますが、
国鉄を
再建し、
国民生活の向上、
国民経済の
発展に貢献させるためには、各界各層の御意見を十分に伺いまして、
経営の上に反映させることは必要であると考えております。したがって、これまでも、機会のあるごとに一般
利用者の要望は十分に把握するように
努力をしてまいりました。今後も、一般の方々の御意見を十分参考にいたしまして、一そう
国鉄の運営を民主化するように、さらに検討をしなければならないと思います。
大体、以上が私に対する
お尋ねだったかと思います。(
拍手)
〔
国務大臣小坂善太郎君
登壇、
拍手〕