○峯山昭範君 私は、公明党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に対し、
総理並びに
関係大臣に
質問を行なうものであります。
防衛二
法案に触れる前に、
わが国の
防衛に関する基本的な問題についてお尋ねいたします。
米中接近、日中国交正常化、ベトナム和平の実現等を転機として、アジアにおける国際緊張は急速に緩和の
方向に向かっています。このような
国際情勢の中にあって、国民が望んでいたことは、田中内閣が日中国交正常化を契機として、アジアの平和と繁栄を築くための積極的なアジア平和外交を展開することでありました。ところが、国民の期待はみごとに打ち砕かれ、田中内閣は、訪中後直ちに、アジア諸国がひとしく脅威を持っていた五兆一千億円にのぼる四次防を決定したのであります。以後、田中内閣は、相模原補給厰からの戦闘車両輸送問題にからみ車両制限令を改悪、
沖繩へのB52大量飛来の黙認、横須賀の米空母
基地化、立川
基地への
自衛隊強行移駐、四次防予算の先取りとして問題になった三機種の
発注、横田
基地の強化拡充を目的とした
基地の集約化等、
日米安保優先、
軍事力増強政策を強行してきました。そして、今
国会に、
わが国の軍国化を目ざした
防衛二
法案を提案したのであります。
田中内閣がいかに強弁しようとも、昨年七月の組閣以来、田中内閣がとってきた政策は、
安保優先、
軍事力増強政策と言わざるを得ないと
考えますが、
総理は、今日までのこのような
一連の施策についてどのように
認識しているのか、お
伺いしたいのであります。
次に、
日米安保体制下における
日米間の
防衛分担についてお尋ねします。
米国は、同盟諸国にそれぞれ
責任分担を負わせる総合
戦力構想を発表しております。リチャードソン米
国防長官の
国防報告によると、「私は、
同盟国との協議、対話を期待し、総合
戦力概念を自由
世界同盟からできるだけ強力な
防衛寄与を得られるような形で実施したい」とあり、五月三日のニクソン米大統領の外交報告の中では、「
同盟国の
安全保障に対する公正な
責任分担」ということばを使っております。特に結論の部分では、「われわれは
責任を約束するのではなく、分担することを
考えている。われわれは古い友人との間にもっと
均衡のとれた関係を探求しており、これが最も差し迫った関心事である。」と述べています。このような
米国の総合
戦力構想に基づき、従来の
日米安保体制は大幅にその質的転換がはかられつつあります。
総理は、
米国の総合
戦力構想をどのように評価しているのかお
伺いしたいのであります。また、
米国は、総合
戦力構想に基づき、
日米安保体制下における
わが国の
防衛分担を従来以上、明確に
要求しております。
防衛庁が明らかにしたところによりますと、米海軍当局は、有事の際の
海上自衛隊の海上
防衛海域を明示することを要請してきているのであります。
今回の要請は、正式な外交ルートで行なわれたものではないとはいえ、今後問題となることは明らかであります。
総理は、
米国のこのような要請に対してどのように
考えているのか。また、
米国の要請を実現するためには、
憲法のワクを踏みはずし、さらに、
軍事力増強をはからなければならないとしたら、どのように対処する
考えか、あわせてお
伺いしたいのであります。
さらに、来春の第三次国連海洋法
会議では、領海の幅を十二海里にする国際合意がなされる可能性が強いといわれています。現在、
わが国は、領海三海里説に基づき
防衛区域を定めていますが、十二海里となると大幅に変更されることになります。
総理は、領海十二海里に対して、
防衛面からの対応策についてどのように
考えているか、お
伺いしたいのであります。その際、四次防計画との関係はどうなるのかもあわせてお
伺いします。
次に、
日米安保条約について
政府の
態度をお尋ねします。
田中内閣は、昨年九月の
日米首脳
会談で
日米安保の堅持を米側に表明いたしました。その結果、
わが国の
防衛責任は
増大する一方で、アジアにおける米軍の
肩がわりまで行なおうとしています。
米国の総合
戦力構想に組み込まれつつある
日米安保体制は、アジア諸国に脅威を与えるとともに、平和日本を軍国日本に逆戻りさせる危険きわまりないものであります。
政府は、
時代錯誤もはなはだしい
軍事力増強政策を改めるとともに、アジアの
緊張緩和に逆行する
日米安保体制はすみやかに解消すべきであると
考えますが、
総理の御
見解をお
伺いしたいのであります。
総理は、今
国会の施政
方針演説の中で、ベトナムの和平を「新しい平和の幕あけ」、「人類の
英知の勝利」と位置づけ、日本はこの際、「平和の享受者たるにとどまることなく、新しい平和の創造に進んで参画し、その責務を果たすべきであります。この際、平和を一そう確実なものとするため、核をはじめとする全般的な国際軍縮に貢献してまいりたい」と述べております。
総理は、この所信の中で述べられたことと、ただいま
議題となっております
自衛隊増強
法案とをどう関係づけられるのか。
総理は、
自衛隊は軍隊ではないから軍縮とは関係なしとでも言われるのか、お
伺いしたいのであります。
さらに、「過去十年間の日本の軍事費の伸び率は二一三%で、先進国中最高であった」とは、
米国の軍縮局の報告書に指摘されているとおりであります。
自衛隊を増強することにより、アジア諸国に現実に脅威を感ぜしめているのであります。
総理が幾ら国際軍縮に貢献するといっても、それを信じる者はいないと思うのであります。昨年三月のジュネーブ軍縮
委員会で
わが国の代表は、「まずアジアの軍縮に資したい」旨、明らかにしております。
総理は、この具体策を国民の前に示してもらいたいのであります。
次に、今
国会の予算
委員会での
答弁で、
総理及び
防衛庁長官は、「
わが国の安全が脅
かされるような脅威は現実にはほとんど存在しない」旨、明らかにしておられますが、これはすなわち、昨年、四次防決定後の新事態、ベトナム戦争終結、米中国交正常化の前進という、アジア
情勢の変化の中での
総理の
情勢判断であろうと思います。
かかる
発言は、
安保体制発足以来、初めてのものであり、この
情勢判断は、四次防決定の根拠を根底からゆるがすものであり、昨年の四次防計画の決定自体、全く誤った政治判断であり、この際、四次防を直ちに取りやめるべきだと思うが、
総理の所信を
伺いたいのであります。
次に、
基地問題についてお尋ねいたします。
沖繩の本土復帰が実現して、すでに一年になります。復帰にあたって、
政府は、米軍
基地撤去を公約しましたが、一向にその公約は守られていません。
沖繩特別
国会では、
基地縮小決議案が採択されています。
政府は、
沖繩基地撤去についてどのように
考えているのか、お
伺いしたいのであります。特に、
日米安保運用協議会では、
沖繩基地問題についての話し合いが行なわれましたが、その内容についても明らかにしていただきたい。
また、米側は
沖繩基地返還に関して、消極的であるといわれております。
総理及び
外務大臣は、
沖繩基地を維持していこうとする米側の
態度について、どのような
認識を持っているのか、また、米側の意向として、返還が望み薄な場合、どのような対応策を持っているのか、明らかにしていただきたいのであります。
一月二十三日の
日米安保協議
委員会で関東計画が合意され、その後、米側の発表により、
基地返還が早められ、返還後のあと地利用計画等については、今後検討されることになりますが、地元の意見が十分に反映されなければならないと
考えます。特に、一部には
自衛隊、機動隊等の
基地として利用したいという働きかけがあると聞いておりますが、このような
自衛隊等の
基地の
肩がわりは認めるべきではないと
考えますが、
総理の
見解をお
伺いしたいのであります。
また、返還される
基地の中には運動場等、市民が利用できる施設を備えた
基地も多い点を考慮して、利用計画が策定するまでの間、日曜日、休日等は
一般市民に開放すべきであると
考えますが、
総理の
考えを
伺いたいのであります。
次に、米軍の駐留に伴う日本の経費
負担の
増大と
肩がわりについてお
伺いしたい。
日米安保協議
委員会で、在
日米軍
基地十カ所の返還が合意されたのでありますが、その条件として、
基地の再編に伴う施設移転費や、老朽化した
基地施設の建てかえなどを中心に、数百億円にのぼる財政
負担を押しつけられているのであります。
アメリカの意図するところは、施設移転費の、
日本側負担にとどまらず、やがて、西ドイツ並みの
米軍駐留費の分担金の
負担、
自衛隊の大幅増強による
肩がわり、さらに、
アメリカ兵器の大量買い入れによる
ドル防衛政策への
協力などといった
要求にエスカレートする懸念が十分に
考えられますが、
総理は、これらの点について、どう対処される所存か、お
伺いしたいのであります。
次に、
防衛二法の内容に関する問題についてお尋ねをしたい。
自衛官の定数を約七千人近く
増員することにしているが、常時三万人近くの欠員をかかえているにもかかわらず、今回、再び大幅
増員を行なわんとする
防衛庁の意図は、全く
理解に苦しむものであります。現在でも、武器のだぶつきによる国税のむだづかいが問題になっているが、さらにこれに拍車をかけることとなり、全く遺憾千万と言わざるを得ないのであります。
一方、増原前
長官は、現
定員ですら充足困難と見て、
自衛隊の簡素化、省力化を中心とした十項目の
基本方針を骨子とする四十九年度業務計画を指示しているが、このような点からも、
定員増を撤回すべきであると、強く主張するものであります。
一体
政府は、本
法案の
増員がほんとうにできるものとして
国会に提出したのか、国民の納得できる
責任ある
答弁をお願いしたい。
次に、
南西航空混成団の
設置についてであります。
この部分が、
自衛隊の
沖繩派遣を正当づける根拠となるわけでありますが、すでに本年四月までに、四千人以上の
自衛隊員が地元民の猛反対を押し切って
沖繩に派遣されているのであります。これはもはや
臨時措置というようなものではなく、
部隊編成の変更といってよいのであります。
部隊編成の変更は、当然、
自衛隊法の
改正を待たなければ、通常はできないはずであります。
国会の意思とは関係なく、一
防衛庁長官の訓令等によって、
臨時という名のもとに、先取り的に実戦
部隊が
配備されるということは、シビリアンコントロールの見地からも、また
国会軽視という見地からも、きわめて重大な問題であり、この先取り的暴挙は断じて許せないのであります。
総理及び
防衛庁長官の
見解を承っておきたいのであります。
しかも、
防衛庁筋は、たとえ七月一日までに
防衛二
法案が
成立しなくても、当初の目標であった五千五百人の
自衛隊員を七月一日までに
沖繩に派遣を完了する
態度を固めたといわれております。これは、四十六年六月二十九日に調印された
沖繩の直接
防衛責任の日本国による引き受けに関する
協定、いわゆる
久保・
カーチス協定を根拠にしていると思うが、どうか。
また、政策が
防衛二法未
成立の
段階で五千人を上回る隊員を
沖繩に派遣することは、国内法を無視する暴挙であり、断じて認められないのであります。
総理は、この際、
久保・
カーチス協定と
防衛二法等の国内法とどちらを優先させるつもりか、お
伺いしたいのであります。
わが党は、
基地のない平和な
沖繩県づくりに逆行する
政府の一切の
軍事力増強政策に断固反対するものであります。よって、四次防及びその一環であるこの
法案は、直ちに撤回されることを強く
要求して、私の
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
国務大臣田中角榮君
登壇、
拍手〕