○戸田菊雄君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
法人税法と
租税特別措置法の二法の改正案に対し、反対の立場から討論を行なうものであります。
初めに、
昭和四十八年度一般会計の租税収入は、十一兆七百八十六億円で、十兆円の大台を突破し、四十七年度補正後の九兆一千三百五億円よりも二一%(一兆九千四百八十一億円)増加しております。その中で、所得税の占める
割合は、ますます大きくなっております。
政府は、所得税の大減税を宣伝いたしておりますが、最近の地価を含む
物価の高
上昇を
考えれば、実質増税となります。
昭和三十八年、十年前の租税収入に占める所得税の
割合は二五%であり、法人税は三一%でありました。法人税を一〇〇とすると所得税は八〇%の
割合でありました。ところが、
昭和四十八年度は所得税が三八%(四兆二千四百十九億円)、法人税が三三%(三兆五千三百八十四億円)と、その
割合はまさに逆転いたしております。
このように、所得税の増大、法人税の減少は、
昭和四十年からであり、
昭和四十五年以降、急速にその傾向が顕著であります。つまるところ、大衆に対する重課税の反面、資本に対しましては、徹底して高資本蓄積を行なっているのであります。
以下、具体的な内容について、その反対の理由を申し上げます。
まず、法人税についてであります。反対の理由は、大
企業の税負担が軽過ぎるということであります。勤労所得者、特にサラリーマンの課税最低限は、最低
生活費まで食い込んでいるのであります。また、地方税の住民税負担、すなわち受益者負担は過酷なものであります。しかるに法人税率そのものが低いこと、付加価値構成比、通産省
企業局編の世界の
企業の経営分析、
昭和四六年版を見ましても、税引き純
利益は、
日本が二二・三四、アメリカが一三・九二で、差し引き、八・四三
日本が多く、また租税公課についても、
日本は一五・三四、アメリカが二五・八五で、差し引き
日本は一〇・五一少ないのであります。人件費については、
日本が三八・三五、アメリカが四八・一二で、差し引き九・七七、
日本はアメリカの二割以上も少なく、いかに低賃金であるかが実証されているのであります。さらに減価償却でも、
日本は一八・六一、アメリカが一二・五三で、差し引き六・〇八
日本が多く、各般の
政策で、
日本の大
企業は徹底して優遇
措置を受けておるわけであります。結局、資本分配率では、
日本は、アメリカの約二倍半多く、税負担と賃金がきわめて低くなっており、大
企業は多くの高利潤をおさめておるのが実情であります。また、
日本国内の他
企業との比較においても、大
企業は税負担率がきわめて少ないわけであります。
社会発展計画と税制
調査会答申でも税率の
引き上げを明確にしており、かつ、経済成長世界第二位と胸を張り、
生産能力の充足した現在は、負担公平の原則に沿うように年次計画を樹立し、直ちに法人税率の
引き上げを
政府は実行すべきであります。
次に、
租税特別措置法の反対についてであります。大
企業は、今日まで租税特別
措置で内部留保を強行して、資本の高蓄積をはかってまいりました。
また、特定の産業経済
政策の
政策目的のために税制の公平の原則を無視し、今日に至っておることはいまさら申し上げる必要はございません。
今回の改正でも若干の改廃合理化を行ないましたが、結果的には、無公害化
生産設備について初年度三分の一の特別償却をはじめ租税特別
措置適用の範囲は拡大をされ、かつ減収額は増大しているのであります。
公害対策等は一般
国民の税金によって
措置すべきではなく、
企業自身の負担で
措置すべきであります。このような
国民の世論に逆行し、税負担の不公平をさらに拡大し、租税特別
措置による巨額の減収は、つまるところ一般大衆に対する所得税、住民税などの重課、間接税の増徴など大衆重課税を招来するものであります。
以下、具体的にその反対の理由を申し上げます。
反対の第一は、憲法八十三条の要請に反するからであります。
租税特別措置法の
役割りは、財政支出で不足するところを税制面から補完しようというのが租税特別
措置の機能であります。
日本国憲法は、財政
主義を強調し、補助金のような国費の支出については、国会のコントロールは個別的かつ具体的でなければならないことを要請しているのであります。租税特別
措置という巨額の補助金に対しましては、実質的には全く国会の民主的なコントロールが及んでいないのであります。つまるところ、租税特別
措置は、実質的には憲法の財政議会
主義を形骸化せしめているのであります。どうしても
企業への助成が必要というのなら、目に見える補助金の形でなされるべきであり、それが憲法上の要請であるのであります。
第二は、利子所得、配当所得の分離課税は直ちに全廃すべきであります。租税特別
措置は、総合累進構造を形骸化せしめ、税の不公平を拡大する、その元凶が利子所得、配当所得の分離課税にあることは、いまさら申し上げるまでもございません。
租税特別
措置の改廃合理化を実行するなら、前述の分離課税の廃止こそ、まっ先に実行すべきであるはずであります。ところが今回の改正でも、所得税の課税最低限は、夫婦子供二人で百十二万一千二百六十円——四十八年度分——に対し、配当所得最低課税は二百七十五万七千二百五十円、おおよそ二倍半になっておるのであります。株を大量に持ち、大金持ちで、その配当や利子で寝食いをしている不労所得者に対しては、徹底した優遇
措置をとっておるのであります。結果は、租税制度の持つ所得再分配及びビルトイン・スタビライザーの機能を著しく減殺し、一般の納税者の納税モラルを極度に低下せしめ、ますます所得税、住民税、間接税の大衆重課を
促進することになっているのであります。
政府は直ちにこの分離課税制度を全廃すべきであります。
第三は、交際費には全額課税すべきであります。法人の交際費は年間一兆円をこえております。そのうち課税される部分はきわめて僅少であります。今回の改正で税率を従来の千分の七十から千分の七十五と、〇・五%
引き上げておりますが、交際費課税の計算では、四百万の定額と期末資本金等の全額の千分の二・五を除いた超過額に課税されることになっております。今日の取引の交渉は、支払い金額とそれらに対する反対給付であります物の質量いかんによってきめられるものであり、交渉相手の供応贈答等は
関係がないはずであります。そうした交際がはでに行なわれることは、背任汚職を生み、かつ商談交渉も非理論的、非事務的となり、
商取引のモラルも低下するのであります。社会的風潮も全く好ましいものではありません。いま、
国民の世論はきびしくそのことを訴えておると思います。本質的には経営上の経費にならない交際費を一〇〇%課税することは、きわめて妥当な
措置と言わざるを得ません。
第四は、
土地税制の改正についてであります。地価騰貴の要因に
田中総理提唱の
日本列島改造論の
発表が一役買っておることは間違いのないところであり、
政府が今回
土地税制創設に踏み切らざるを得なかった理由には、抜本的
土地対策がなかったこと、
内閣の命運そのものに
影響すること等があったことは容易に理解できるのであります。ゆえに、予算編成の終了段階で急ぎ創設した経緯からも、全くどろなわ式の
審議手続を経てまとまったと聞いているのであります。
すなわち、市町村税としての
土地保有税(取得
価格の一・四%)四十九年度からの実施と、
土地取得税(同三%)四十八年七月から実施の創設、国税として法人の
土地譲渡所得税法(税率二〇%)施行後一年の猶予を置くことになっておるのであります。
土地保有税は現行固定資産税と同じもの。
土地取得税は不動産取得税と同じものであり、もし現行の二税を時価なり取得
価格なりで課税するならば、課税はその中に包含される内容であります。すなわち、課税創設によって、時価課税を実行するものと
調整措置を行なうものと併存し、地方税制を著しく複雑化することになるのであります。
土地譲渡税については、新法施行後一年の猶予を置くことになっておるのであります。従来の開発
利益はもちろん、猶予期間中に発生する開発
利益に対しての特殊な負担を課さない仕組みであります。また、課税対象から民間デベロッパーを除き、ほかに除外対象の範囲を拡大している事実は、現在盛んに
土地買い占めを実行しております
土地投機の大
企業に対しては全くの抜け穴をつくり、地価抑制並びに
土地投機の抑制などと言っておりますが、全くのざる法と言わざるを得ません。当面、
国民の望んでおります
土地問題、地価問題の解決とは、ほど遠いものであります。
ほかに、中小
企業諸団体の多年の要望でありました
事業主報酬制度の創設が実施されたわけであります。本制度設定については、わが党も
賛成でありますが、特典が青色申告者に限ることになっております。
事業主報酬控除の
考え方は、個人
企業と法人
企業との課税上の均衡をはかることが
目的である以上、青色申告者に限定する理由はないはずであります。
事業を行なう者は、税法上すべて記帳を行ない、青色申告の特典を全納税者に適用すべきであります。
以上、今回の改正に対する反対理由を申し上げましたが、大
企業にとって重要な
措置は、一切手つかずに温存されて、一貫して大
企業優遇
措置を持続しようとする
政府の態度に強く反省を求め、反対討論といたします。(
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