○神沢浄君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
昭和四十八
年度地方財政計画並びに
地方税法の一部を
改正する
法律案及び地方
交付税法の一部を
改正する
法律案に関連して、
田中総理及び
関係大臣に対して若干の質問をいたします。
まず第一に、総額十四兆五千五百十億円にのぼる
昭和四十八
年度地方財政計画についてでありますが、
政府の国際
経済情勢の見通しの誤りと
経済政策の破綻にもかかわらず、何ら是正することなく、ただ単に数字のつじつまだけを合わしたにすぎないまことに無責任な計画と言わざるを得ません。すなわち、一昨年のドルショックによる
経済情勢の悪化に対してとられた地方
財政対策は、総額五千億円の八〇%を占める四千億円が地方債の増額と交付税及び譲与税配付金特別会計の借り入れ金でありました。引き続いて、
昭和四十七
年度の
財政対策は、切り詰めた約八千億円の必要不足財源に対して、これまた、その八〇%を安易に地方債の増額と配付金特別会計の借り入れ金に依存しているものであります。四十八
年度計画においても全く同様な構造が引き継がれておるにすぎないものでありまして、地方
財政は四十六年以来常に不安定な要因の上にすわらされ続けているのであります。
しかも問題なのは、四十八
年度計画においては、いま、
わが国経済を大きくゆるがしている円のフロートについての影響が全く無視されているという点であります。きょうもなお、外為取引市場は閉鎖をされたままのようでありますが、円の
変動相場制がとられたのは二月十四日であります。この地財計画が閣議で決定をされたのはそのあとの十六日であります。まことに無責任と言わざるを得ないではないですか。この計画では、地方税収の
伸びを前年比府県税二九・七%、市町村税二四・一%としております。中でも、府県税のうち、
法人事業税は三六・八%、住民税の
法人税割りは三六・七%と、
政府はたいへん強気の見込みをしておるのでありますが、円の切り上げが大きく景気に影響して税収の大幅減少をもたらした事実は、きわめて最近において経験済みのことであります。
政府はこの計画にあくまでも自信があると言えますか。あるとするならば、十分納得のいく説明をまず
総理にお尋ねをいたします。そして、もしもないとするならば、そのため混乱と動揺を招くのは
政府ではなくて地方公共団体でありますから、この際、
政府は責任上、当然四十八
年度地財計画の組み直しをすべきだと思いますがいかがですか。この点、
総理及び自治大臣に所見をお伺いをいたします。
次には、地方交付税についてであります。
政府は、昨年に引き続き、四十八
年度についても臨時沖繩特別交付金三百八十八億のほかに、交付税及び譲与税配付金特別会計において九百五十億円を借り入れて、これを法定額の計算に加えて
措置をしているのであります。四十六年来の経過は、
現行交付税制度では、もはや地方の増大する
財政需要に応じ切れないことがきわめて明らかになってきたと言わざるを得ません。この点に関して
昭和四十七年末の地方制度調査会は次のように答申を行なっているのであります。すなわち、国における公共
事業の
拡大等に伴う
財政需要の増大や一般財源の不足を補うための地方債による振りかえ
措置など、
明年度はあとう限り一般財源によって
措置をするよう地方交付税の
所要額を確保すべきである。以上が調査会の答申でありますが、
政府はそのうち何一つとして実現をしていないではありませんか。それのみか、四十八年の借り入れ金九百五十億円さえも四十九年分から減額をするというのであります。
言うまでもなく、地方交付税は地方の有力な一般財源であります。国の補助金ではないのであります。問題は、
政府が自己の
財政の都合で左右する補助金化した現状の
運用の姿勢が大きな誤りであることを私は指摘せざるを得ないのであります。すでに制度的赤字は三年間連続をしております。しかも、四十八
年度においては地方制度調査会が指摘した点ばかりではございません。義務教育職員の一〇%ベースアップに必要な地方費百四十三億、地方自治法
改正による特別区の完全自治体化の
所要増五百数十億など、重要な制度の
改正を
政府が意図しておる以上、この際、当然交付税率の大幅な
引き上げと
配分についての抜本的
改革が断行されるべきだと思いますが、この点自治大臣及び大蔵大臣の所信を伺いたいと存じます。
次に、地方税制についてお尋ねをいたします。
今回提案されている
地方税法の一部を
改正する
法律案によれば、個人の住民税、個人の
事業税及び土地にかかわる固定資産税について
住宅用地に対し
軽減措置を講ずるとともに、特別土地保有税を創設する等となっておりますが、
改正案によっても、個人住民税の
課税最低限は、夫婦子供二人の標準家族で
所得税が百三万七千八百六十円となっておるのに対し、住民税は八十六万五千七百六十六円となっており、その差はいまだに十七万二千九十四円と、大きく開いております。なるほど逐年近づきつつある点は認識するところであり、
所得税と住民税との
性格論についても、もとより意見のあるところではあります。先ほどこの点についての御答弁もありましたが、納得のいかないのは、住民税といえども、税の
性格がいかになるといえども、
国民の生計費に食い込む課税はきわめて不合理と言わざるを得ません。早急に一致せしめるよう是正すべきであると思いますが、所見を伺います。
また、特別土地保有税については、
日本列島改造論が列島買い占め論と化しておる今日、大
企業等の土地投機を抑制することはもとより必要であります。しかし、保有百分の一・四、取得百分の三という低率で、はたして税の
目的が達成できるかどうか。しかも容易に抜け穴ともなりかねない除外条項が五十余も付帯するというに及んでは、その上、取得の課税の基準日を四十八年七月一日としたことは、ことさらにいわゆるかけ込み買い占めの便宜を供与することになり、法の空洞化を
政府みずからの手によって行なうことになりはせぬか、この点の解明を求めたいと思います。
次に、私はこの際、農地並み課税の問題についてお尋ねをしておきたいと思います。この問題については、昨年の一部
改正以来の経過にかんがみましても、いまや既定の事実として、
政府・与党間でも検討がされていたものであります。それにもかかわらず、今
国会に地方税
改正案として提案されていないということは、はなはだ無責任と言うべきだと思うのであります。何ゆえに
政府が責任を持って提案しないのか、
政府の所見を伺いたいと存じます。
自民党
政府の土地
政策の不在を農民に押しつけるということは、断じて容認できるものではありません。また税の
原則からしましても、市街化区域内といえども営農耕作が継続されておる限り、その固定資産税はあくまでも農地並み課税が保障されるべきものと考えますが、これまた、あわせて
見解を伺っておきたいと存じます。
次に、私は、地方税財源の強化の点についてお尋ねをいたしたいと思います。
地方税の歳入に占める
比率は、過去においては四〇%以上を占めてきたところでありますが、四十七年、四十八年と三七%台に低下をしてまいっております。地方自治はいよいよ転落の方向に向かっているわけであります。特に市町村税の
伸び率の低下ははなはだしく、四十八
年度計画においても、前年比、道府県税が二九・七%、市町村税については二四・一%と、大きく差が生じてきておる現状であります。地方自治のにない手が市町村であり、
福祉行政推進の
中心が市町村であるべきことは、論をまたないところであります。それゆえに、地方税の拡充、特に市町村税源の強化こそ、急務中の急務と言うべきだと思います。
さらにはまた、国の
経済政策の結果、人口、産業等の異常な大都市集中が生じ、それによって増加する
財政需要の問題すなわち大都市税源の
充実も、これまた喫緊の問題と言わざるを得ないと思います。この点に関しては、第十四次、第十五次の地方制度調査会も繰り返し指摘を行なっておるところであります。すなわち、事務所・
事業所税の創設をはじめ、都市新税の創設、さらには
法人に対する非課税及び租税
特別措置の撤廃とともに、法定外普通税、不均一課税の問題が提起をされておるのであります。ところが、これに対して、
政府は、何らの実現もはかろうとしていないのはなぜでありますか。これでは
政府は、地方行
財政の問題をことさらに軽視しようとしておるようにしか思えません。特に事務所・
事業所税の問題は、すでに一昨年来の懸案であるのにもかかわらず、放置したままでおるのはどのような
理由からでありますか、その点をも伺いたいと思うのであります。
次に、地方債について若干お尋ねをしておきたいと存じます。地方債の歳入に占める比重は、年々増大しつつあるところでございます。しかも今日、地方の行政が強く求められておるのは、
生活関連
社会資本の拡充の問題であります。そのための単独
事業や公営
企業投資等の推進については、地方債の持つ
役割りはますます大きいわけであります。このような観点からも、地方債の国による許可制を廃止することは、地方公共団体がすでに多年にわたって主張しておるところでもあり、
政府としてもいまや断行すべき時期と情勢に立っておるものと考えるのでありますが、御
見解を伺いたいと存じます。また、地方債の自由化とともに、
政府資金の充当率を高めて良質な地方債を確保することは緊急な課題だと思います。この際国は、地方
財政への圧迫を避けるために、
政府資金の構成比を高め、償還期限の延長等、貸し付け条件の改善をはかるべきだと考えますが、これまた御所見を伺いたいと存ずるのであります。
以上の点につきましては、自治大臣並びに大蔵大臣より責任のある御答弁をいただきたいと存じます。
さて、
最後に私は、地方行
財政に対する
政府の基本姿勢を、これは
総理にお伺いをいたしたいと思うのであります。
先ほど承りました
趣旨説明は、まことにおみ
ごとな作文でございました。しかし、私はあたかも羊頭を掲げて狗肉をひさぐの感を受けざるを得なかったのであります。すでにいままで個々に指摘をしてまいりましたように、今日、
政府・自民党の
財政政策によって、地方
財政の国に対する従属の度合いはますますひどくなっておるのであります。たとえば
趣旨説明では、地方財源の確保とその重点的
配分をうたっておりました。しかし、この計画の数字が実は正直に示しておりますように、著しく
伸びておるのは国庫支出金であります。たいへん落ち込んでいるのは交付税であります。どこに財源の確保と重点的
配分がありますか。これこそいわゆる補助金
政策の構造的
拡大を意味する以外の何ものでもありません。
政府は今日までこの補助金
政策を通じて、地方
財政の国への従属化を押しつけてまいりました。
政府の補助金
政策による地方支配は、地方
財政をがんじがらめにして、行政の自主性、自律性を奪ってしまっているのであります。それのみか、現状では地方自治の本旨をうたった憲法も地財法も、実は国自体の手によって全く空文化してしまっているのであります。