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峯山昭範君 私は、公明党を代表して、最近における異常な
商品投機に関して、
総理並びに
関係大臣に質疑を行なうものであります。
田中内閣は、発足当初より、
日本列島改造論を振り回し、バラ色の未来を宣伝してきたが、結果的に、
土地、株価の異常
騰貴を招き、最近は、
国民生活に密着した米、
大豆、
木材、ゴム、
生糸等まで、
投機買いによる異常な高値を示し、ついに、一丁百円もする歴史始まって以来の高いとうふを庶民の食ぜんに与えるような結果となり、いまや物価値上げの
田中内閣に対する庶民の怒りは極度に達しているのであります。
このように
国民の
生活必需品が異常に
急騰した裏には、
ドル不安に伴う外資の流入や、系列
銀行の大量の
融資等により、だぶついた
資金を手中におさめた
商社、大
企業の買いだめ、
売り惜しみの
投機買いが活発に暗躍していることは、連日報道されているとおりであります。しかしながら、
商社や大
企業をしてかかる
投機に走らせた根本は、歴代の自民党
政府の輸出第一、大
企業優先の高度
成長政策によって推進されてきた
わが国独特の
経済体質、産業構造に基因することも、きわめて明確であります。
本来、
わが国の
経済活動の究極的な目的は、
国民生活の安定、
福祉の向上にあるにもかかわらず、これを
あと回しにして、
経済成長オンリーで、輸出の増強に寄与するような
経済の仕組みにしてしまった結果として、今日のように二百億
ドルも外貨のため過ぎという現象を招来し、対外的には平価の
調整となり、
国内的には
調整インフレ
政策をとらざるを得ず、その
過剰流動性により、異常な
商品投機行為を招いたことは
政府の
責任であり、早急にかかる
経済体質、産業構造を
福祉経済に百八十度転換せしめなければならないと思うが、その
対応策と今後の決意のほどを田中
総理にお
伺いしたい。
次に、
投機規制に対する
立法内容について
伺いたい。
政府・自民党は、大
企業、
商社等による
商品投機抑制の具体策の一環として、初め、体刑も含めた罰則規定を盛り込んだ新規
立法を
構想として持っていたようですが、その後、後退に後退を続け、
関係省庁に
立ち入り検査、悪徳
企業の公表、
放出勧告程度の
権限を与え、ただ単に行政
措置の補完的な法形式にとどまるようであります。しかし、現在の
商社等に見られる
買い占めの実態は、物価上昇や
土地高騰の被害者である庶民の感覚からすれば、最近の不当な利益追求のための
売り惜しみなどの
商社の
企業行為に対する庶民の怒りは、きわめて大きいと言わなければなりません。
およそ、
資本主義経済体制下の商品取引についても一定のルールがあるはずであり、憲法でも自由の乱用は戒めている。
国民の大多数を不利益におとしいれても、大
企業や
商社だけが巨利を得るという
行為は、反
社会的行動と言わなければならない。そういう観点から、特に
国民生活物資については、不当な
買い占め等による暴利をむさぼる
企業に対して、
放出命令権と、体刑を含む罰則も取り入れた
立法措置を行ない、
商社の
社会的責任を目ざめさせるような
対策を講じてもよいのではないか。また、
商品取引所の改革にメスを入れる
考えはないか、田中
総理の
見解を
伺いたい。
第三に、
投機の
元凶といわれる
商社、大
企業の
投機行為と、
過剰流動性の
吸収策についてお
伺いしたい。
一昨年以来の通貨不安と貿易収支の大幅黒字による
ドル流入による
外為会計の大幅な
払い超、これに加えて、
ドルショック後の
金融緩和で
企業間信用が縮小し、一段と
商社の手元
資金がだぶついてきた。それにもかかわらず、
商社に対する
銀行貸し出しは回収されず、逆に
銀行の外国為替取り扱いのシェア争いなどから、対
商社貸し出し競争が激化し、昨年十月から十二月の都市
銀行の十大
商社向け
貸し出し増加は、前年同期増加額の二倍に当たる千八百億円にのぼったのであります。これを裏づけるごとく、昨年の前半までにも、通産省の
調査によると、十七
商社の株式保有は四十六
年度上期で二千四百四億円、四十七年上期は四千八百九十億円と二倍にはね上がっております。これは、上場主要
企業が保有している株式の約三割になる。また、
企業別に見ても、四十七年九月決算で株式保有額が四百二十億円もふえた大手
商社もあります。
このように、
商社、大
企業が自由になる巨大な
手持ち資金の運用の一環として、株や
土地に投下し、
投機が行なわれていることが明確であります。
政府は、当然、
国民生活を守る立場から、
融資引き締め、あるいは超過利益を法人税の重課税等により国庫へ
吸収するよう、租税
措置の新しい構造を練るべきであると思うのであります。大蔵省、
日銀は若干の
預金準備率の
引き上げや
融資規制をしているが、こうした今後の
金融税制等による効率的な
過剰流動性の
吸収策についていかなる
対策を
考えているか、
大蔵大臣の
見解をお
伺いしたい。
第四に、
商社の米の
買い占めの
対策についてであります。
商社の
投機買いは、
国民の主食である米にまで及んでおります。
モチ米は、従来、六十キロ一万一千円で推移してきたのでありますが、最近では一万五千円にまではね上がっておるのであります。これは明らかに
商社や米ブローカーの
買い占めによることが、
食糧庁の
調査によっても容易に推測されるところであります。大手
商社の資本力を
背景とした消費者不在の
買い占めを可能にしたのは、
政府の無
責任な物統令の適用廃止等による
食管制度の形骸化によることは明らかであります。ある
商社の幹部は、今度の円の実質的再切り上げによって
商社は大打撃だ、その穴を埋めるのに
大豆や米に手を出してどこが悪いとうそぶいているとの話もあります。現に、米菓業者や酒屋などの委任代行という名目を利用して
買い占めをやり、また、米菓業者が、直接産地の集荷業者から買うことは、
食管法違反とされているのに、現実には、未検査のまま米が動いていたといわれているのであります。このような違反
行為が野放しになっている事実を
農林大臣はどのように認識しているのか、
伺いたいのであります。
またその反面、取り締りのほうは、四十年の八百八十件をピークに、四十三年百四十件、四十六年に九十七件と減少し、事実上野放しの状態にあります。こういうやり方が
商社に
買い占めの機会を与えたことは明らかであります。酒米に始まり、現在大きな問題となっている
モチ米に次いで、四十八年産米の作柄いかんによっては、飯用米、つまりウルチ米までがその危険にさらされることも大いに
考えられるのであります。
農林大臣は、この
食管制度が
国民生活の安定に大きく貢献してきた見地から、
食管法の運用を再認識し、きびしく法を守る立場に立つべきではないかと思うが、
商社等の米の
買い占め、
投機買いに対する
農林大臣の
見解と国家公安委員長の取り締まり
対策について伺うとともに、現在不足が伝えられている六万トンの
モチ米の
供給と今後の
対策について、御
所見を
伺いたいのであります。
最後に、
輸入物資の
価格動向についてであります。
昨年における卸売り物価の上昇は、年初来、八・五%にも及ぶ
急騰を示したのであります。その要因を探れば、第一に
輸入物価の
高騰であり、第二に鉄鋼カルテル等に見られる
生産調整であり、第三に
公共投資を中心とする建築資材の上昇であります。これらは、いずれも
政府の無策に基因するものと言わざるを得ません。しかも、この上昇は、今日の
変動相場制移行後にも及んでいるのであります。実質上、円の一七、八%に及ぶ大幅な切り上げにもかかわらず、商品市況の異常な暴騰に便乗して
輸入食肉はこの一カ月で約二〇%も
値上がりしており、
輸入インフレの色彩がきわめて強まっているのであります。
政府は、口を開けば、
輸入物資の
価格引き下げの恩典を
国民に還元すると言っておりますが、実情はまさに反対になっているのであります。
政府は、今日まで、これらの
輸入商品の
高騰に対していかなる
対策を講じてきたのか、お
伺いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣田中角榮君
登壇、
拍手〕