運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-02-22 第71回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十二日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員異動  十二月二十六日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     山本敬三郎君      小枝 一雄君     鬼丸 勝之君  十二月二十七日     辞任         補欠選任      鬼丸 勝之君     小枝 一雄君  一月二十七日     辞任         補欠選任      中西 一郎君     前田佳都男君      渡辺一太郎君     鬼丸 勝之君      中村 英男君     竹田 現照君      野々山一三君  一月三十日     辞任         補欠選任      鬼丸 勝之君     新谷寅三郎君      増原 恵吉君     斎藤 十郎君      前田佳都男君     中西 一郎君  一月三十一日     辞任         補欠選任      阿部 憲一君     原田  立君  二月二日     辞任         補欠選任      新谷寅三郎君     鈴木 省吾君  二月三日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     森中 守義君  二月五日     辞任         補欠選任      森中 守義君     鶴園 哲夫君  二月六日     辞任          松下 正寿君     —————————————    委員長異動 一月三十一日阿部憲一委員長辞任につき、その 補欠として原田立君を議院において、委員長に選 任した。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君     委 員                 木島 義夫君                 鈴木 省吾君                 中西 一郎君                 山本敬三郎君                 吉武 恵市君                 加瀬  完君                 竹田 現照君                 鶴園 哲夫君                 野坂 参三君   委員以外の議員        議     員  阿部 憲一君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        法務政務次官   野呂 恭一君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房会        計課長      住吉 君彦君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   田宮 重男君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢口 洪一君        最高裁判所事務        総局経理局長   大内 恒夫君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)  (昭和四十八年度法務省及び裁判所関係予算に  関する件)  (裁判官の任用及び辞任等に関する件)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、一言あいさつを申し上げます。  私、このたびはからずも、阿部委員長のあとを受けまして、委員長に選任されました。はなはだ微力でございますが、皆さま方の格別な御指導、御協力をいただきまして、職責を全うしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 阿部委員長から発言があります。
  4. 阿部憲一

    委員以外の議員阿部憲一君) 一言あいさつ申し上げます。  私、このたび法務委員長辞任いたしました。二年有余にわたりまして、この長い間法務委員長の職務を大過なく過ごすことができましたことは、これひとえに委員先生方の御協力のたまものと、厚く御礼を申し上げたいと思います。  なお、後藤先生からは、当初私が委員長に就任しましたときから、理事として一方ならぬ御協力をいただきましたことを、この席をかりまして御礼申し上げます。  どうも皆さまありがとうございました。     —————————————
  5. 原田立

    委員長原田立君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  まず、法務行政基本方針について、田中法務大臣からその所信を聴取いたします。田中法務大臣
  6. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 遅刻をいたしまして、おわびを申し上げます。  私は、昨年末、三たび法務大臣に就任いたしました。内外の諸情勢が大きく転換しつつあるこの時期にあたりまして、国家繁栄の基礎である法秩序維持権利保全使命とする法務行政に課せられました使命は、まことに重大なものがあると存じます。私は、この使命を遂行するため、法務行政各般の適正な運営に最善の努力を尽くす所存でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。  本日はせっかくの機会でございますので、就任のごあいさつとあわせて、当面その実施努力をしたいと考えております法務行政重点施策につきまして、所信一端を申し述べたいと存じます。  まず第一は、法秩序維持についてであります。  社会、経済の発展と国民の福祉の向上をはかることは、政府に課せられた重大な使命でありますが、このための諸施策を効果的に実施いたしますには、特に法秩序がゆるぎなきものとして確保されておらなければならないことは申すまでもございません。  ところで、最近における国内の治安情勢を見ますと、表面上は一応平穏に推移しておるように見られるのでありますが、反面、一般犯罪につきましては、社会情勢の急激な変貌による新たな形態の犯罪の発生、犯罪内容の他様化複雑化犯罪手段方法巧妙化が見られ、また、一部過激派集団は、組織の再建をはかりつつありまして、今後の情勢推移いかんによっては、再び不穏な行動に出るおそれがなお予想せられ、当面の治安は必ずしも楽観を許さないものがあると見られておるのであります。私は、このような情勢にかんがみまして、国民一般順法精神の高揚につとめ、法と秩序を無視する風潮を一掃し、また、不法事犯に対しましては、警察その他の関係機関とも密接な連絡を保ちつつ、十分な資料の収集を行ない、適切かつ迅速な刑罰法令の適用につとめまして、これら犯罪の根絶を期してまいりたいと存じます。このため、昭和四十八年度におきましては、所要検察官等増員を行なうほか、検察その他関係機関執務体制などをさらに充実整備いたす考えでございます。  第二は、犯罪者処遇及び改善更生についてでございます。  矯正施設収容者に対し適切な処遇を講じまして、善良な国民として社会に復帰させるためその改善更生をはかることは、きわめて重要なことであります。このため、昭和四十八年度におきましては、昨年度に引き続いて、これら収容者教育指導職業訓練などにつきましてさらに充実向上につとめるとともに、食糧費作業賞与金及び職業補導賞与金増額等を行ない、収容者処遇改善をはかる所存であります。また、保護観察対象者につきましては、民間篤志家保護司等との協同体制のもとに、これら対象者が再び罪を犯すことのないように積極的に再犯防止方法を講じ、また、民間篤志家協力に報いるために予算増額をはかりますなど、保護観察制度充実に十分な配慮を払ってまいりたいと考えております。  第三は、国民権利擁護についてであります。  まずその第一は、人権擁護についてでございます。あらためて申し上げるまでもなく、基本的人権擁護民主政治基本でありまして、国民のそれぞれが互いに他人人権を尊重し合いながら幸福を追求するという態度の必要であることは言うまでもないところであります。しかしながら、自己の利益を主張して他人人権を顧みない風潮が依然として見られますので、今後ともあらゆる機会を通じまして人権尊重啓発活動を行ない、一方、人権擁護委員をはじめ人権擁護関係機関充実強化をはかりまして、これによって国民の間に近代的な人権思想普及徹底をはかることができますよう努力する考えでございます。  その二は、民事行政事務、特に、登記事務処理体制についてであります。最近の社会開発の進展に伴いまして、登記の需要はますます増加の傾向を示しておりますが、これら登記事務の大部分を処理いたします登記所は、その規模配置等におきまして必ずしも今日の社会情勢に適応したものとは言いがたい実情にあります。このため、これらの登記所を適正な規模に集約し、その配置適正化をはかりたいと考え民事行政審議会登記所適正配置基準等につき諮問をいたしておりましたところ、昨年九月その答申を見たのであります。法務省といたしましては、その内容を十分検討し、適正妥当な登記所配置計画を策定、実施をいたしまして、あわせて、事務処理合理化機械化などを推進いたしたいと存じます。  第四は、出入国管理行政充実でございます。  最近におけるわが国国際的地位向上国際交流の大幅な増大によりまして、わが国出入国者数は年々増加の一途をたどっている状況でございます。その結果、出入国及び在留管理に関する事務は、量的に著しく増加をするとともに、質的にはますます複雑困難なものとなっております。このような事態に対処するために、私は、さらに機動力充実による出入国手続の迅速な処理につとめるほか、出入国手続簡素化在留制度合理化等をはかりまして出入国管理行政充実を期し、もって、時代の要請に応じた出入国管理制度を確立してまいりたいと考えます。  第五は、法務省施設整備充実であります。  法務省施設は、その組織複雑性から庁数もきわめて多く、三千余を数える実情にあります。しかも、これらの施設の約五〇%は、建てかえを要する老朽施設地方公共団体から借用しておる施設でありまして、早急に整備する必要があります。しかしながら、これらの施設を一挙に整備することは国家財政の事情からも不可能でありますので、法務省といたしましては、老朽狭隘度のはなはだしい施設から順次、その整備改善実施しているところであります。このため、昭和四十八年度におきましては施設整備として七十二億円の予算を計上いたしまして、昨年度に引き続き所要施設整備充実をはかってまいりたいと考えております。  なお、以上申し述べた諸施策を効率的に実施するためには、法務省組織整備職員確保待遇改善等につきましても、格段の留意を払ってまいりたいと考えます。また、当面な諸法律の改正案につきましては、成案を得次第、順次国会に提出いたしまして御審議をわずらわしたいと考えておりますので、何ぶんよろしくお願い申し上げます。  以上、法務行政当面の諸施策につきまして所信一端を申し述べましたが、委員各位の格別の御協力によりまして、その実をあげることができますように一そうの御支援、御鞭撻をお願い申し上げる次第であります。ありがとうございました。
  7. 原田立

    委員長原田立君) 野呂政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。野呂法務政務次官
  8. 野呂恭一

    政府委員野呂恭一君) このたび法務政務次官を拝命いたしました野呂恭一でございます。  浅学非才の身でございますが、田中法務大臣と誠心誠意適正な法務行政の推進につとめまして、その職責を果たしたいと念願をいたしております。どうかよろしく御指導、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げまして、私のごあいさつといたします。  ありがとうございました。     —————————————
  9. 原田立

    委員長原田立君) 次に、昭和四十八年度法務省及び裁判所関係予算について説明を聴取いたします。住吉法務省会計課長
  10. 住吉君彦

    政府委員住吉君彦君) 昭和四十八年度法務省所管予算内容について、概要を御説明申し上げます。  昭和四十八年度の予定経費要求額は、千四百五十億九千二百三十八万三千円でありまして、これを前年度予算額千二百九十七億八千六百九十万九千円に比較いたしますと、百五十三億五百四十七万匹千円の増額となっております。増額分の内訳を大別いたしますと、人件費百十二億二千五百四万二千円、一般事務費二十八億四千七百六十七万六千円、営繕施設費十二億三千二百七十五万六千円となっております。  まず、増員について申し上げますと、第一に、検察序において百四十五人が増員となっております。まず、交通関係事件処理円滑適正化をはかるため、検察事務官九十四名が増員となっており、また、公害犯罪に対処するため、副検事五人、検察事務官三十一人、公判審理迅速化のため検察事務官五人、公安労働検察強化のため検察事務官十人が増員となっております。  第二に、法務局において事務官二百九十一人が増員となっております。まず、登記事務の激増に対処するため、二百八十二人が増員となっており、また、国の利害に関係のある争訟事件処理充実するため六人、人権侵犯事件等増加に対処するため三人が増員となっております。  第三に、刑務所における職員勤務条件改善するため、看守百五十七人、医療体制充実するため看護士あるいは看護婦でございますが、十二人が増員となっております。  第四に、非行青少年対策充実するため、関係職員六十七人が増員となっております。  その内容は、少年院職業補導充実のため教官二十八人、少年鑑別所観護活動充実するため教官十七人、保護観察所面接処遇強化のため保護観察官二十二名であります。  第五に、出入国審査業務適正迅速化及び在留外国人資格審査充実をはかるため、地方入国管理官署において、入国審査官二十一人、入国警備官三人が増員となっております。  第六に、破壊活動調査機能充実するため、公安調査官二十七人が増員となっております。  以上のほか、法務本省において、司法試験事務処理体制充実するため、事務官一名が増員となっております。  増員内容は以上のとおりでありますが、御承知のとおり、昭和四十六年八月の閣議決定に基づく定員削減計画による昭和四十八年度削減分として六百三十四人が減員されることになりますので、所管全体といたしましては、差し引き九十人の定員増加となるわけであります。  次に、一般事務費につき、それぞれ前年度当初予算と比較しながら御説明申し上げますが、まず、全体としましては、前年度に比し、旅費が五億八千三百十四万一千円、庁費が九億六千三十二万八千円その他の類が九億九千三百五十六万二千円の増額となっております。  以下、主要事項ごとに御説明申し上げます。  第一に、法秩序確保につきましては、さきに申し上げました副検事五名を含む合計四百八人の増員経費及び関係組織人件費を含めて八百八十三億四百万円を計上し、前年度に比しまして百五億九千二百万円の増額となっております。  その増額分について申し上げますと、検察庁関係といたしましては、三十三億四千二百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、検察費一億九百万円、公害犯罪事件等各種検察活動充実をはかるための経費三千二百万円、検察官執務体制整備充実経費二千百万円が含まれております。  次に、公安調査庁関係といたしましては、六億一千五百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、調査活動経費五千四百万円が含まれております。  次に、矯正関係としましては、六十一億四千三百万円が増額されておりますが、この中には、関係職員人件費のほか、職員待遇改善経費八千百万円が含まれております。  次に、保護関係といたしましては、四億九千二百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、保護司等との連絡通信費事務能率器具等保護観察体制整備をはかるための経費三千八百万円、保護司実費弁償金一億百万円、更正保護委託費三千六百万円が含まれております。  第二に、国民権利保全強化につきましては、まず、登記事務処理適正化に関する経費といたしまして、さきに申し上げました事務官二百八十二人の増員経費及び関係職員人件費を含めまして二百二十一億二百万円を計上し、二十八億三千二百万円の増額となっております。その増額のおもなものは、登記諸費二億百万円、全自動謄本作成機等事務能率機器整備に要する経費五千七百万円、謄抄本作成事務の一部を請負により処理するための経費一千六百万円、地図の維持管理整備に要する経費一億二千三百万円、公共事業関係登記事件処理に伴う経費一億三百万円であります。次に、人権擁護活動充実に関する経費といたしましては、二千六百万円の増額となっております。そのおもなものは、人権擁護委員制度充実をはかるための経費一千万円、啓発普及活動及び人権侵犯事件調査強化をはかるための旅費庁費八百万円、人権擁護委員実費弁償金六百万円であります。  第三に、非行青少年対策充実強化につきましては、一部治安対策関係と重複しておりますが、さきに申し上げました少年院教官等六十七人の増員経費及び関係職員人件費並び収容関係諸費を含めて百三十二億九千八百万円が計上され、前年度に比して十五億七千九百万円の増額となっております。  その増額分について申し上げますと、まず、検察庁関係としては、四千七百万円が増額されておりますが、これは検察取締経費でございます。  次に、少年院関係といたしましては、八億一千五百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、生活備品充実に要する九百万円等が含まれております。  次に、少年鑑別所関係としましては、三億三千九百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員人件費のほか、生活備品充実に要する九百万円等が含まれております。  次に、保護観察所関係としましては、関係職員人件費及び補導援護費において三億七千四百万円が増額となっております。  第四に、矯正施設収容者処遇改善につきましては、五億三千二百万円の増額となっております。これは、作業賞与金支給計算高を一一%引き上げるための所要経費五千万円、生活用備品日用品医療器具等充実のために要する経費として七千万円、公害防止等に要する経費七千五百万円が増額となったほか、被収容者食糧費につきましても菜代成人につきまして二七・三%、少年について三二・四%の引き上げによる給食内容の大幅な改善がはかられ、これに要する経費として三億六千九百万円が増額となっております。  第五に、出入国管理業務充実についてでありますが、さきに申し上げました入国審査官等増員経費及び関係職員人件費を含めて五億一千八百万円の増額となっております。その中には、出入国在留管理等経費二千二百万円、舟艇建造費等機動力充実経費として二百万円が含まれております。また、港出張所を兵庫県東播磨港等三カ所に新設することにしております。  次に施設整備につきましては、登記所適正配置実施に伴う施設整備費五億匹千百万円及び沖縄施設整備費七億三千万円を含めて七十二億四千八百万円を計上し、前年度当初予算に比し十八億一千六百万円の増額となっております。  なお、このほか、大蔵省及び建設省所管特定国有財産整備特別会計において、高知刑務所等二十五施設施設整備費として四十九億四千五百万円が計上されていることを申し添えます。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求概要であります。  終わりに、当省主管歳入予算について御説明申し上げます。  昭和四十八年度法務省主管歳入予算額は、五百十億二千五百一万六千円でありまして、前年度予算額三百四十九億八百二十万八千円に比較いたしますと百六十一億一千六百八十万八千円の増額となっております。  以上が、法務省関係昭和四十八年度予算案についての御説明概要でございます。
  11. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者大内恒夫君) 昭和四十八年度裁判所所管予定経費要求額について、御説明申し上げます。  昭和四十八年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、八百四十六億三千三百八十九万一千円でありまして、これを前年度予算額七百三十五億三千七百一万四千円に比較いたしますと、差し引き百十億九千六百八十七万七千円の増加となっております。  これは、人件費において六十三億六百四十三万五千円、裁判費において三億二千六百六万九千円、最高裁判所庁舎新営費において二十九億八千八百三十三万円、下級裁判所営繕費において一億四百九十八万九千円、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費庁費等において十三億七千百五万四千円が増加した結果であります。  次に、昭和四十八年度予定経費要求額のうち、おもな事項について説明申し上げます。  まず、最高裁判所庁舎の新営に必要な経費であります。最高裁判所庁舎の新営は、三年計画で行なわれておりますが、その最終年度分工事費及び事務費として七十一億八千二百二万七千円、新庁舎備品調度品等を新たに取りそろえるため、備品費として六億一千四百五十五万六千円、合計七十七億九千六百五十八万三千円を計上しております。  次は、人的機構充実のための経費であります。特殊損害賠償事件等処理をはかるため、裁判所書記官四人、裁判所事務官三十人の増員に要する経費として二千八十四万四千円、地方裁判所の交通刑事事件業務過失致死傷事件)の適正迅速な処理をはかるため、判事補三人、裁判所事務官二十四人の増員に要する経費として一千九百九十一万四千円、家庭裁判所資質検査強化をはかるため、家裁調査官十人の増員に要する経費として一千百十八万九千円、簡易裁判所民事事件特則口頭受理の活用をはかるため、簡易裁判所判事四人、裁判所書記官四人、裁判所事務官二十四人の増員に要する経費として二千六百五十九万六千円、家庭裁判所充実強化するため、専任の家庭裁判所長を置く庁の増設一庁に要する経費として百十七万九千円、合計七千九百七十二万二千円を計上しております。  次は、裁判運営能率化及び近代化に必要な経費であります。庁用図書図書館図書充実をはかる等のため、裁判資料整備に要する経費一億七千百三十四万四千円、裁判事務能率化をはかるため、検証用自動車等整備に要する経費一億百九十九万六千円、電子計算機による事務機械化準備のため、研究開発に要する経費一千六十七万五千円、合計の二億八千四百一万五千円を計上しております。  次は、公害訴訟処理に必要な経費であります。公害訴訟を適正迅速に処理するため、協議会を開催する等に必要な経費二千七百二万八千円を計上しております。  次は、裁判官海外視察充実に必要な経費であります。裁判官海外視察等に必要な経費一千八百九十一万五千円を計上しております。  次は、下級裁判所施設整備充実に必要な経費であります。下級裁判所庁舎の新営、増築等に要する経費として裁判所庁舎の新営及び増築、新規五十二庁、継続十六庁に必要な工事費及び事務費等四十九億五千二百三十三万七千円を計上しております。  次は、裁判費であります。国選弁護人の報酬及び日当増額するに必要な経費として六千五百九十四万二千円、証人等日当増額するに必要な経費として四百七十七万二千円、合計七千七十一万四千円を計上しております。  以上が昭和四十八年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。
  12. 原田立

    委員長原田立君) 以上をもって説明は終了いたしました。  ただいまの所信及び予算説明に対する質疑は後日に譲ることとし、これより一般調査について質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私は、きょう最高裁判所に対しまして若干お尋ねいたしたいと思います。  実は、昨日の一流紙の夕刊並びに本日の各一流紙の朝刊に、田中二郎最高裁判事が辞表を提出したという記事が大きく報道されているわけでございます。この新聞に報道されてある事実は大体においてこのとおりでございますか。この事実関係についてお伺いいたしたいと思います。
  14. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 昨日及び本日の新聞に出ております点は、田中最高裁裁判官が辞表をお出しになったということでございますが、これは、事実でございます。
  15. 佐々木静子

    佐々木静子君 この本日の一流紙の記載によりますと、この田中二郎最高裁判事が「退官願 私儀、このたび一身上の理由により、退官したいので、御聴許下さるようお願いします。」そして、日付が三月三十一日というふうになっている。これが三月の十九日に石田長官に提出されておったということ、この事実もそのとおりでございますか。
  16. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのとおりでございます。
  17. 佐々木静子

    佐々木静子君 まずちょっと私ども合点がいきませんのが、この三月の三十一日付で出している退官願いについて、この田中判事の辞任ということが現在もうすでに辞任されるというふうなぐあいに一般に印象を与えるような報道のされかたになっている、これは、退官願いの日付は三月三十  一日でございます。まだいまより十日先のことでございますが、これは、どういうことでこういうふうになっているのでございましょうか。
  18. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 退官願いは十日先ではございませんで、三月でございますから、もう一つ、一カ月以上先ということでございます。で、裁判官は一応三月一ぱいということで、お仕事の関係でございますとか、そういうこともお考えになりまして退官したいというお気持ちをお持ちになったようでございます。ただ、御承知のように裁判事務は、きょう言ってきょう急にやめるというようなことになりますと非常に困る面が出てまいりますので、そういうこともおもんばかられまして、あらかじめ石田長官に、三月の末にやめたいからということで辞表をお出しになったということのようでございます。
  19. 佐々木静子

    佐々木静子君 私が間接に聞いているところでは、十九日に石田長官にこの退官願いが出され、そして、昨日の最高裁の裁判官会議では、特にこの問題は討議されず、裁判官会議が終わったのちに、局長クラスの方々の会合でこの問題を討議されたのちに、各最高裁の裁判官に電話で報告されたというふうに承っておるんですけれども、それは事実でございますか。
  20. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一身上の御都合により退官をしたいという御希望をお出しになったということは、これはいろいろと討議すべき問題でもございませんので、長官がお手元に辞表をおとどめおかれたというのが事実でございますが、実は、昨日の夕刊でございますが、読売新聞の夕刊に大きく記事が出たわけでございます。そういうことになりますと、この記事の真否ということをめぐりまして、かえってあいまいにしておくことは憶測等を呼ぶのではないかというようなこともございまして、田中裁判官の御真意もよく伺いまして、一方秘書課長が田中裁判官の御真意を新聞社等にも伝えるということがあったわけでございます。そういうことがございましたので、事務当局では、その記事はこういう趣旨のものであるということをまあ関係幹部に連絡をしたというのが実情でございます。裁判官にも、そういうことで新聞が出ますと、裁判官から、これはどういうことなんだというお尋ねが当然出てまいりますので、秘書課長はその旨を各裁判官にお伝えした。これが事実でございます。
  21. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私三月三十一日と二月三十一日とちょっと思い違いをしておったのでございますが、三月三十一日といえばなおのことでございますが、手持ち事件の処理その他で、三月三十一日付でおやめになりたい。三月三十一日に裁判所をおやめになるということが裁判所の御都合上好ましいことであるということはわかりますけれども、この退官願いが出て審議なさるんですから、そうすると、願いが出されたのは十九日、それでいろいろと御検討の上三月三十一日退官なさるというのが本来の筋じゃないですか。何か非常にこの手続的な面から見ても何となく不明朗な感じを私ども与えられるのでございますが、そのあたりは一まだ四十日も先の日付の願いを出して、それについていま検討されたとかいうようなことが非常におかしな感じを受けるんですけれどもそのあたり、もう少し納得のいくように御答弁いただきたいとと思います。
  22. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 退官願いそのものを御検討申し上げるというようなことでではございません。私どもの通常の退官されるような場合の人事でございますが、下級裁判所等におきましても、大体三月三十一日付というのが、新任等がございますので、一つの定期異動の時期ということになっているわけでございます。おやめになりたいと思われる方は、人によりましては一年ほど前から、もしくは半年ほど前から、そういうことで、三月三十一日前後にやめたいということで、あらかじめ辞表をお出しになるというようなことは、これはこれまでも間々あることでございます。田中裁判官の場合もそういうことで、あらかじめ迷惑を皆さんにかけないようにという御配慮からであろうというふうに考えておりますが、長官にお申し出になったわけでございます。もし外部にこういったことが出なければ、私どものほうでそれをとやかく御検討申し上げるというようなことをすべき筋合いのものではもちろんないわけでございます。しかし、どういう経過からかは存じませんが、こういう記事が昨日の夕刊に出てしまいました。出てしまった以上は、かえってあいまいにしておくのはいかがであろうかということで、裁判官の御内意を伺った上で、裁判官にかわりまして、どういう意味で辞表を出したのかというようなことを新聞に秘書課長が発表したというのが事実でございます。
  23. 佐々木静子

    佐々木静子君 この手続的な面でも非常に私ども、いま説明を伺いましたが、普通の下級裁判所の裁判官と全く意味を異に——立場が違っているわけでございますから、その点についても私どももう一つ納得しかねる点があるわけでございますけれども、昨日及び本日の一流紙各紙とも、これは最高裁のいまの反動的な空気に不満を持たれて、あるいは司法の危機との関連ということで、田中二郎判事の退官によっていよいよ危機が切迫しているということが痛感される、あるいは田中二郎裁判官のようなリベラリストの方がいまの最高裁の中ではおられないというような状態にまで立ち至ったのだということが、これはそろって各一流紙で報道されているわけです。このことについて、これは事務当局としては、これは事実ですかと申し上げても、すぐにはこれは人事局長の立場としたら、さようでございますとはお答えにはなりにくいだろうと思いますので、私は事実ですかということはお尋ねいたしませんけれども、日本の各一流紙がこのように報道しているということについて、最高裁とすると、どのようにお考えになりますか。このような報道が各紙で、これは国民の声を代表する、世論を代表するものの声として、各紙で報ぜられているということについて、最高裁自身お考えになってみる、いまの最高裁の当局のあり方としまして何か考えなくちゃならないところがあるのではないかというふうにお考えになっておられるかどうか。その点についての御答弁をいただきたいと思います。
  24. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 田中裁判官がこのたび辞表をお出しになりましたこと、私どもといたしまして非常に残念なことでございます。長官は極力御慰留なさったようでございます。私どもといたしましても、その気持ちとしては全く同様でございます。長らく最高裁の裁判官をおっとめいただいて、その博識というか、学殖を裁判の上に遺憾なく発揮していただきたいということは、今日におきましても、私どもとしては念願しておるわけでございます。しかし、このたび秘書課長を通じて御発表になりました裁判官のお考えというものを承ってみますと、一学究として、長年、一生の事業として考えてきた仕事をまとめていきたい。そのことのためには、定年を待っておったのではもうおそくなるので、いまからでなければいけないというふうに考えるということのようでございます。それからまた、これは裁判官の御持論でもあったのではないかと思いますけれども、最高裁の裁判官といえどもやはりもう少し若い人たちが入っておったほうがいいのではないかということをお考えになっておったようでございます。で、そういうことのために、まあ口で言うだけではなくて、自分がこの際辞表を出すということはそういうふうに考える一つの助けになるのではないかということをお考えになったようでございます。そういったことが、裁判官がこの際辞表を出そうとお考えになった理由であるというふうに私どもも承っております。で、そういった裁判官の御真意というものは、日ごろ裁判官に接しております私どもとしては、まことにそのとおりであって、おっしゃることばどおりお受け取りしていいのではなかろうかというふうに感じておるわけでございます。しかし非常に、それにもかかわらず、やはりおやめになることを惜しむという気持ちは私どもにもございます。各界にもそういった気持ちがあるようでございます。新聞紙等にも、そういう気持ちを前提にしていろいろな記事が出ているようでございます。裁判官の御真意というものをもう少しわかっていただければ、ああいうような記事には必ずしもならなかったのではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、その点は非常に残念でございますが、しかし、そういうふうな記事になるということは、これは私どもも十分、それはそれといたしまして、客観的な事実として受けとめて対処していかなければいけないと、このように考えております。
  25. 佐々木静子

    佐々木静子君 田中二郎裁判官が、非常に人格的にもりっぱなお方であり、在職中非常にごりっぱなお仕事をなさったということについては、私ども何の異論もないわけでございまして、田中二郎裁判官がおやめになるについてのおことばとか、言われたこととかなんとかということについていま申し上げているのではないわけで、田中判事が、自分の研究をやっていきたい、あるいは最高裁の判事の若返りのために、若返りということはかねての自分の考えであったから、自分も定年を待たずにやめたいというふうに説明されても、それを額面どおり受けている者は、少なくともこの一流紙で知る限りにおいてはまあだれもおらない。特にこの最高裁の元裁判官の方たちさえも、みんな声をそろえて、これは額面どおりには受け取れない。最高裁の中の空気が、田中判事をして辞表を、退官願いを出させしめるに至ったものであろう、あるいはそのようなものと推察されるというふうな報道が、これ、各紙とも載せられているわけでございます。いま田中さんがどういうふうににおっしゃっているかということを私は聞いているのじゃなくて、田中さんがそのように言われても、少なくとも多少とも裁判所の事情を知っている者はだれも額面どおりそれを受け取っておらない。そのことについて、最高裁とすると、どのように考えているか。特に先般来、青法協問題その他で、裁判官の再任、新任などの問題がありましたときに、これは最高裁当局が、その司法の公正らしさ、公正であるとか不公正であるとかという問題ではなくて、裁判官には公正らしさというものが要請されるのだということを強調しておられるわけです。少なくとも、この一流紙で見るところにおきましては、最高裁というものが、何かここに、この田中判事の再三の御言明にもかかわらず、もっとそこに裏があるのではないか、田中判事がここで最高裁の裁判官としてとどまっておられないというような空気が最高裁の中にあるのではないか、これはみんなが、少なくとも新聞報道で見る限りにおきましては、だれもがそのように受け取っている。それはもう全く最高裁当局が言われるその公正らしさというものが最高裁自身において保証されておらない、最高裁自身がみずからの手で公正らしさというものを棄損しているわけです、失わしている。そういうことについて、最高裁とすると、どのようににお考えなっておられるか。そのことについて御答弁いただきたい。
  26. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 田中裁判官の御辞任の御意思の御発表がそういうふうに受け取られておるということは、裁判官の御本意でもないと思いますし、私どもも非常に残念なことでございます。
  27. 佐々木静子

    佐々木静子君 何も、私の質問に対するお答えに全然なっておらないと思います。私は、田中判事がこういうふうに報道されることが本意であろうかなかろうかという質問をしているわけじゃ全然ないわけでございまして、この公正らしさということを強調している最高裁において、国民の世論を代表する各紙が、田中判事が自分の御研究をなさりたい、あるいは定年を待たずに裁判官の若返りのために退職したいと言われても、それを額面どおりに受け取っている人たちは、新聞報道で見る限りにおいてはほとんどおらない。このように、最高裁というものは、国民から見ると非常にゆがんだ姿勢をしているというふうに認識されている。そのことについて、最高裁の事務当局はどのような責任を感じているのかということをお尋ねしているわけです。
  28. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官の再任、新任問題等を通じまして、できるだけ、あとう限り公正でありたいということは、しばしば申し上げておりますように、私どもの念願いたしておるところでございます。なお、一部にいろいろの御批判があるようでございますが、ここ近時の裁判所の司法行政というものをごらんいただきますれば、私どもが日ごろ申し上げておることは決してうそではないということはおわかりいただけるのではなかろうかというふうに思ってるわけでございます。そういった気持ちというものは今日でもなお少しも変わっていないわけでございます。今後とも中正、公正に司法行政の任務を処理していきたいと考えております。しかし、ただいま佐々木委員御指摘のようなふうに取れるようなニュアンスを持った記事等が出ておるということは非常に残念なことでございます。今後ともなお、そういったふうに見られることのないように、なお一そう厳正さ、公正さを維持していきたいと考えております。
  29. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、人事局長は、残念であるで済むかもしれませんが、国民はこういうふうなことで、最高裁の姿勢というものが非常に国民の意思と離れてきているということに対して疑惑を持っている。これは裁判の不信につながるものであり、国民にとって非常に不幸なことである。ですから、人事局長は、残念であるで済むかもしれませんが、これは国民にとっては、残念である、では片づけられないと思うのでございます。これは、いままで最高裁の裁判官の判事の退官かあるいはそういうことについて、各紙がこういう報道をいろいろとされたことがあるか、いままでの日本の裁判史上において。これは最高裁の姿勢がこのように暗いものであるから、反動的なものであるから、田中さんのようなりっぱな裁判官さえこのような空気の中におれなくなった、——これは真偽のほど等は私は知りませんが、そういうふうに各紙が報道されるということは、いままでの裁判史上にあったかどうか。  いま人事局長は、再三御説明しているからよくわかっていただいているとおっしゃいましたが、もしよくわかっておるならば、このような報道が各一流紙でなされるはずがないと思います。これはわかってないから、人事局長の言われることを額面どおり国民が受け取っておらないから、新聞にこういう形の記事で出るわけでございますね。そういう意味において、現在の最高裁の事務当局の責任というものは非常に重いと思うわけでございます。この点について、御反省といいますか、今後どのように対処していこうと——まあ人事局長一人お責めしてもいささかお気の毒な気もいたしますけれども、人事局長としてもどのように考えておられるか、人事局長というよりも最高裁長官代理者としてお越しになっていらっしゃるのですから、最高裁のお立場を、各新聞紙からこのような目で見られるという事態を招いたことについての責任、それに対してどのように善処していくか、これは、単にそのお立場の人が困ったことだというささいなことでなくして、国民裁判というものに対して非常な疑惑を持つに至らせたという責任を国民に対してどうおとりになるか、どういうふうにお考えになっているか、それをお述べいただきたいと思います。
  30. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 私どもは、佐々木委員の御心配のようなことは絶対にないと確信いたしております。その立場というものは今後も堅持いたしたい。厳正、公正な裁判ということは、裁判の面におきましても、またこれをサポートいたします司法行政の面におきましてもこれまでどおり堅持いたしていきたいという固い覚悟を持っておるわけでございます。で、そういう実際の司法行政等を通じまして、このような疑惑と申しますか、疑念というものを国民の方が一刻も早く晴らしていただけるようになお細心の努力をいたしたい。そのことによって、私どもがいまの佐々木委員のお尋ねの問題に対する答えを申し上げるよりほか方法がないのではないかというふうに、固い決意を持っておるわけでございます。
  31. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私一人が心配しているんじゃなくて、日本の代表的な各紙がこのように見ておるということをこれは謙虚にお考えになる必要があるのではないか、またお考えにならなければいけないのではないかと思うわけですが、いま最高裁が国民の疑惑を解くためにも一致した姿勢をとろうというお話でございましたが、まずとりあえずの問題として、いま裁判官の新任、再任の問題が起こっておる、ちょうどその問題の時期でございますけれども、いま裁判官の定員は何名不足しておるか。定員何名のところ現在何人おるか、そのことについて、何名不足か、数字をあげてお答いただきたいと思います。
  32. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 現在、裁判官の定員は全部で二千六百二十八名でございます。二千五百三十九名現在員がございますので、欠員八十九名と相なっております。
  33. 佐々木静子

    佐々木静子君 この八十九人は判事補によって補充されることも可能なわけですか。
  34. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実はその八十九名の内訳と申しますのが、判事五十三名、判事補九名、簡易判事二十六名、こういうことに相なっております。補充計画はかなり入り組んでおりますけれども、終局におきまして、この四月に新たに判事補になります二十五期の修習生が任官いたしますと、大体判事、判事補の充員をすることが可能になってまいります。簡易判事につきましては、その後の減粍も見込みまして、夏ごろに行ないます簡易判事の採用によってこれを補充していきたい、このように考えております。
  35. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、新任の、この四月に任官する判事補によって充足される数は何人ということになっておりますか。
  36. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 今後修習生の中からさらに希望者が出てくる、あるいはその中に都合により任官を取りやめるという者もあろうかと思いますので、数字はまだ確定的なものではございませんが、現在のところ約七十名が裁判官を希望いたしております。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 希望しているのが何人かというのじゃなくて、いまあいているポストですね、判事補の定員に足らない、新任の判事補によって充足され得るポスト、これは何人分かということです。
  38. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 七十名の希望者全員を採用し得る余裕はございます。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると七十人以上の席があいているということでございますね。希望者とか、希望があるとかないとかという問題を伺っているんじゃなくて、現在空席になっている席ですね。それが新任の判事補によって補い得る席が何名分空席になっているかということを伺っている。
  40. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 現在判事補の定員だけを見てまいりますと、欠員が先ほど申し上げました九名でございますが、退官を予定される者、それから判事補から任命資格を取得しまして判事になる者、それから判事補の中から簡易判事本官に切りかえる予定の者、そういう者を入れますと、結局正確には六十八名の欠員が三月末をもって予想されるわけでございます。そこで、先ほど経理局長からも御説明いたしましたように、判事補増員が三名、本年度御審議をいただいております増員三名ということでございますので、正確には七十一名の欠員ということが三月末をもって予想されるわけでございます。で、いま申し上げました希望者はそれに埋めることができる。なお必要があれば判事補から簡易判事の本官に切りかえますと、簡易判事の採用のほうが減りますけれども、判事補としては採用することができるということに相なるわけでございます。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、いまの御答弁で、判事補が七十一名、そして、あるいは地裁から簡裁のほうに回る人ができると。その分もあわせて余分が出てくるというわけでございますね。実はこれは先日、昨年の十二月の二十一日だと思うのでございますけれども、司法修習生と人事局長との間の二十五期任官説明会における矢口人事局長の御説明というものがあったように承っているわけでございますが、そのときの質問では、裁判官の定員は三百六十九人空席、不足している。そのうちの新任判事補の空席は九十九名というふうなことが言われているわけでございますが——これは修習生の側からの質問に出ているわけでございます。それに対して人事局長から別に御否定の御答弁はなかったように聞いているのでございますが、そのあたりはいかがなんですか。
  42. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) いまお示しになりました数字というのは、どういうことで出てきた数字なのか、私よくわかりません。で、任官説明会に参りました私の基本的な態度は、いま申し上げましたような数字の計算のもとに、御希望者は大体、定員がないから採らないというような問題は起こらないという前提でございましたので、その辺についての説明は特にいたしておりません。ただ、修習生の側から、私が任官説明会に参りまして、いろいろの質問があとで出ましたけれども、そういった点についての質問はないわけでございますので、したがって、その点に関する問答というものはいたしていないというのが実際でございます。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはその後また、二度目の人事局長との会談の場所を司法修習生が全体会議で持ちたいということをお願いしておるが、まだそれが実現がかなわないということを聞いておるわけですが、その質問書に記載されていると思うのでございますが、二十五期の裁判官の任官の採否は何月何日ごろにきまるわけですか。
  44. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 二十五期の裁判官希望者の採否の問題でございますが、三月の二十八日から三日間採用の面接をいたしたいと考えております。大体これは、四月二日にいわゆる考試委員会が開かれまして、そこで考試の合否の判定が行なわれる予定でございます。したがいまして、裁判官の採用ということを御決定いただく裁判官会議は四月四日水曜日の定例裁判官会議に相なるのではなかろうかというふうに現在のところ予定いたしております。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、この四月四日の裁判官会議一回できまるわけでございますか。大体この新任の裁判官の任官については、裁判官会議、例年一回できまっているというのが通例でございますか。
  46. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 大体一回でおきめいただいておるのが前例でございます。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 この四月二日の考試委員会で大体選考するというふうなお話がございましたが、この考試委員会のメンバーはどういう方で構成されているのですか。
  48. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ちょっといま資料を持ってまいりませんでしたのですが、最高裁長官が委員長になりまして、最高裁の裁判官、下級裁の裁判官、弁護士会御推薦の委員の方及び研修所の教官というメンバーで構成されております。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 話は変わりますが、先ほど申し上げた十二月二十一日の矢口人事局長の修習生に対する御説明の中で、大学を卒業し、しかも司法試験に合格している人であるから、法曹になる人はかなりレベルが一般的水準から見ると高いということが考えられるが、その後二回試験に合格したということで裁判官として適当だということになるのかどうかということについての御説明について、そういうことで適というような要素が大体濃いが、特段の事情なき限り適として見受けられるのではなかろうかというような御発言があるわけでございますが、この特段の事由というのを、どういうことを特段の事由というのか私どもちょっと、非常にこういうむずかしいことばの解釈というものがにわかにわかりませんので、何と何と何が特段の事由と言うのか、御説明いただきたい。
  50. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実は、この任官説明会での私の申し上げたことは、まあできるだけ話し得る限度において、具体的に、裁判官というものを希望する方々、あるいは希望してもいいと考えておられるような方々に、裁判官に安心してなっていただくということを目的としたものであったわけであります。そういう意味での、正式な講演会とか何とかというものではございませんので、私そこで使いましたことばは、私がいろいろと申し上げたことを別に原稿を持って言ったわけでもございませんし、みんなの顔を見まして、後輩の顔を見まして、まあ安易と言うと少し語弊がございますが、平易な気持ちで話しかけたものでございます。そこの中におけるごく一部のところをとらえられましておっしゃられても、ちょっと前後のいろいろな事情がございますので、いまここで、そのとき特段と言ったじゃないか、その特段というのはどういう意味だとおっしゃられてもちょっと御返事を申し上げかねるわけでございます。しかし一般的な問題としましては、まあ大体普通の方ならばいいんだという趣旨をわかってもらおうと思ってそのときは申し上げたのではなかろうかというふうにいま思っております。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは単なることばのあやとかという問題じゃなくて、現実に私ども一般人の目から見ると、普通の方だと思う方が二回試験に合格されているのに裁判官に不採用になっている方があるわけです。別に普通の方ではないというふうにはとても思えない方が、昨年におきまして、その前におきましても不採用になっているから、この特段ということについての基準をお伺いしている。これは私はことばじりをつかまえてお尋ねしているというのじゃなくて、これはすでに人事局長のお手元にも届いていると思いますが、二十五期のこの修習生のクラス委員会のほうから、皆さんがこの特段の事情ということに非常な不安を持たれまして、特段の事情というのは何であろうかということでたいへん心配しておられる。そして書面をもって人事局長に、特段の事情とは何と何かということをお尋ねしているけれども、現在、いまもってそれに対するお答えがないということで、これはもう今度修習を終ろうかという修習生のほとんど大多数の方からの要望でございます。これは人事局長自身もお認めになるように、司法試験にも合格した、かなり高い水準にあるところの知識人が非常に不安を持っているこの特段の事情というものがわからないということになりますと、やはりこれはもう少しわかるように御説明いただかないと、これは一般の人にはとてもわからないわけでございますので、いま具体的にお尋ねしているわけであります。
  52. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 結局申し上げたかったことは、司法試験に受かってきておられる方であるから、まあそういうことを言うと一般の方におこられるかもわかりませんが、一般の方から見てみんな優秀な方だということになるだろう。しかしその中でもいい人に来てほしいんだということを申し上げたいつもりで申し上げたことでございまして、それ以外に、特段というのはどういう事情かというようなことで一々頭に浮かべ、あるいは考えて、こういう事情こういう事情と、しかしそれは言うべきでないから言わないというような意味で、考えて申したことではございません。全体の大体一般的レベル以上の、もともと一般的レベル以上の方でございますから、その中でも大体一般的レベル以上の方であるならば問題ないという趣旨で申し上げたことで、現在そのことばをどういうところで使ったか正確には覚えておりませんけれども、それ以外に他意があるわけではございません。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、その前回の十二月二十一日のときの御発言では、その特段の事情というようなことについてあとで修習生の質問があり、それに対するお答えで、まず年齢の大体四十五歳以上くらいだと、裁判官としてお仕事するのに年齢が非常に短いから、そういう点はあまり好ましくないんだ。あるいは身体障害者の場合、裁判官としての実務にたえかねるほどの身体障害の場合は困るんだとか、そういうふうな、それは私ども常識的に考えて特段の事情に当たると理解して差しつかえないと思うわけですけれども、その例におあげになった二つのほかに、特段の事情があるのかないのか、ないならないとはっきりおっしゃっていただいたら、一番頭の悪いものでもさっとわかるんじゃないですか。ないならないでおっしゃっていただき、もう一つまだあるならあるでちゃんと具体的に教えていただきたいと思うのでございます。
  54. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) むしろあまり特段の事情ということばを神経質にお考えいただかなくてもいい。したがってどちらかといえばないと申し上げることのほうが真意でございます。ただ、こまかに検討をいたしておりませんので、そのときどういうような意味合いで、どういう前後で使ったか、ちょっと現在になっては正確に記憶がございませんので、そう神経質に考えていただく必要はないというふうに御理解いただけませんでしょうか。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 私が御理解いただいても、修習生の大ぜいの人は非常にそのことで頭一ぱいの状態でございますから、それは人事局長がちょっとことばのあやで言うたから神経質に考えるなといわれても、もしそうであるなら、直ちにきょうの午後からでも修習生との会合を持たれまして、特段の事情というのは他意がないんだ、ほかに何もわけがないんだとはっきり御言明なされば、それは神経質に考える必要がなかったということになると思うんです。いかがですか。第二回目の会合というものを修習生たちが非常に不安がっているわけで、二回目の試験が目の前に迫っている。しかしこの二回目の会合を人事局長がまだお持ちくださらぬということで、非常に将来のことについて暗い気分で一ぱいでおられる。現実の問題として落ち着いて勉強もできぬというようなことで、お電話をいただいたり、あるいはそういうふうな陳情も事実いただいているわけでございまして、それは先輩である人事局長がそのような不安をなくすることが一番大きな仕事じゃないかと思うんですけれども、さっそくにでも、修習生が強く要望しておりますように二回目の会談をお持ちになったらいかがでございますか。お持ちになりますかどうか。それをお答えいただきたい。
  56. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官を希望しておられる方がそういう点について非常に御疑念であるならば、これはお目にかかって申し上げなければいけないと思います。ただ、そういう裁判官の御希望の方が会いたいといわれるならば、代表の方にお会いしましょうということを私のほうから申しておるわけでございます。決してそれを拒んでおるわけではございません。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはしかし裁判官希望者だけの問題ではなしに、これは修習生全体の、これから先どういうかっこうにしても法曹の一翼をになう人間にとって重大な問題であり、そして、裁判官希望者だけを差別して会うというようなことも、これは修習生の、いままで仲よくやってきたそういうふうなことに、またひびを入らすものになるということが予想されるわけでございますから、これは前回も全員との懇談会をお持ちになったのでございますから、今度も二回の試験より前に、一応そういう機会を早い時期にお持ちになったらどうですか。先ほどから言われるように、特段の事情というものは何もないのだというお話、何も特段の事情というものは、ちょっと言うたけれどもこれは全く意味がなかったのだ、何もそういうものはないのだというならば、五分で済む話でございますから、忙しくてもお会いになれると思います。また、それが本来のお仕事じゃないかと思います。これはお会いになりますか、なりませんか。
  58. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 任官の説明会と申しますものは、元来そういった人事一般の問題を、修習生全員の方と討議するとかという性質のものではございませんで、裁判官に任官しようかということを考えておられる方々に対する手引きというような趣旨でやっているものでございます。したがいまして、この前いろいろとたくさんの方に来ていただきまして、それはそれで非常にありがたいと思っておりますが、趣旨は、あくまで任官希望者に対する問題で、修習生全員に対する説明会という趣旨のものではございません。その限度において、私ども、任官希望者の方々がいろいろ御疑念を持たれるならば、これは万難を排せざるを得ないわけでございますが、現在、その他の仕事におきましても非常に多忙でございまして、一般の問題として修習生の方々にお会いするというまでの余裕はございませんので、いま佐々木委員がおっしゃるような趣旨でございましたら、現在のところ会うつもりはないわけでございます。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 しかし、修習生がこれは将来何を志望しようと、裁判所の、いまは最高裁に属しているし、修習生でございますから、その修習生の中のもうほとんど大多数の者が、人事局長ともう一度話し合いをさしていただきたいというならば、これは拒否されるという理由が私は全くわからないのでございますが、それじゃどういうわけでお会いにならないのですか。
  60. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 修習生の、科目と申しますか、修習生の修習の一環として、裁判所における人事といったようなものの話し会いをするというようなことであれば、これは別でございます。しかし、この任官説明会というのは、あくまで現在研修を、修習をしている者の中で裁判官もできるだけおいでくださいということを、私どものほうから出向いて御案内を申し上げるという性質のものでございます。現に大部分の方、ほとんどの方といっていいと思いますが、それぞれ弁護士になる、検察官を希望する、裁判官を希望するという志望がはっきりきまっているその段階におきまして、なおその他のほうにおいでになる方まで対象としてお話しするということは、私は、元来いたしております任官説明会の趣旨を逸脱すると言わざるを得ないわけでございます。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 先ほどの田中裁判官のことの御答弁におきましても、その司法に対する国民の疑惑というものを減らすように、最高裁の当局として大いに努力したいというお話であったのでございます。いままでやってないからこういういろんな疑惑が出ているわけですから、いままでやってないからといって、やらなければ疑惑は広がるばかりですね。ですから、こういうことが新聞に載っているというこの真偽のほどは別として、最高裁当局とすれば自慢にできる話ではないわけでございまして、その疑惑を晴らすためにも、これから法曹になる若い人たちが人事局長に会いたいと言っていれば、会ってやるのがこれは人事局長の仕事じゃないですか。私はそう思うのです。お会いになりませんか。
  62. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 抽象的には、できるだけいろんな裁判所の現在の司法というものを関係者に理解させるような措置をとるべきであるという、抽象的な問題といたしましては私も仰せのとおりだと考えております。ただ、私がお会いしたほうがいいのか、あるいは教官等を通じてお話しをしたほうがいいのか、あるいは書面をお出ししたほうがいいのか、いろいろとやり方の問題はございます。その辺のところは私の仕事の関係等ともにらみ合わせまして、今後十分に慎重に検討さしていただきたいと考えます。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 そんなことは、本来国会でこんな話をするということ自体が非常に情けないことでございまして、これはもう最高裁が自分のところで採用しておられる修習生と、ちゃんとスムーズに話し合いさえできておれば、何もここで論議する必要もないわけでございますので、そういう意味におきましては、何も人事局長ばかりをお責めするわけではございませんけれども、いままでこういう事態を招いたということにつきましては、やはり人事局長としてももっとお考えいただきたいし、最高裁当局として、もちろん最高裁長官にもっと真剣にお考えいただきたいと思うわけです。  それから、今度の裁判官会議、四月四日というお話でございましたが、これはやはり同じく十二月二十一日の人事局長の御説明の際に、これは例年人事局長その他最高裁の事務総局の局長が人事関与なさるのはどういう程度関与なさるのかという質問に対しまして、人事局長が、判定されるのは最高裁の十五人の裁判官によって構成される裁判官会議だということをおっしゃっておられるわけです。そして裁判官会議で種々の資料、皆さんが、皆さんというか修習生自身が出した身上書とか履歴書、戸籍謄本、写真、そういうような一件書類を差し出して、判断されるように、書類を裁判官会議に提出される。そして人事局長さんといたしますと、そういうふうなことを裁判官会議で御判断いただくことに資料を提供しようという役割りをしておるにすぎないというような御答弁でございましたが、それはそのとおり間違いないわけでございますか。
  64. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) それは最終的に御判定いただくのは、十五人の裁判官会議でございます。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 それで私、実は昨年ですね、裁判官のやはり同じくこの新任の場合の問題につきまして、これは話を掘り返すようで非常に申しわけございませんが、かなりもうこの人の問題は公表されておりますので、前回は名前を出しませんでしたが、今回名前を出します。岩城さんという方と今井さんという方の採用の問題ですけれども、あれは裁判官会議の前日に、人事局長が岩城さんと今井さんをお呼びになって、今井さんに、任官志望を取り下げるように、これはこのときの御説明には、裁判官会議で採用されないということがいよいよ濃厚になってきたから取り下げるようにという御勧告をなされたように前のときの御答弁で——何でございまたしら議事録を読み上げてもよろしゅうございますが、おっしゃっておられるわけなんです。どうもこれからうかがいますと、書類をそろえて裁判官会議に提出するということ、それからおまえはどうも裁判官会議で通りそうもないから任官志望を撤回しろ、裁判官会議の前の晩の夜の十一時半まで人事局長が当該修習生に勧告をされるということ、去年現実に起こった事実と、それからことし修習生に御説明になった人事局長の御説明というものがたいへんに食い違っているというふうに私は思うのですけれども、いかがなんですか。
  66. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 前回、この問題については詳細に申し上げたと思いますが、私、裁判官の希望を撤回しろというふうにその女性の修習生の方に申し上げたつもりはございません。採用にならない公算が大きいから局付事務官としての希望も出したらどうかということを申し上げたわけでございます。最終の御判定はもちろん裁判官会議でございます。しかし、私は人事を担当いたしております者として、どういうような結論が出るであろうかということは、それはものによりますけれども、ある程度仕事、職務上予想がつく場合もあるわけございます。したがいまして、そういったことを前提にいたしまして、こちらのほうの希望も出してはどうかということをすすめたわけです。片っ方は撤回しろ、そのかわりこちらのほうを出しなさい、そういうふうな言い方はいたしてない、そういうふうな趣旨で前回も御説明を申し上げたと思います。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは先日の修習生との会談のときにもそのことが問題になっており、人事局長御答弁になっておられますね。そのときのお話では、これは裁判官会議の一これは人事局長お一人でなさったことではなくて、裁判官会議の前日に本人に志望を撤回するようにという勧告をしたのは、事務総局全員で会議を持って、これは撤回させるようにということになって、それを代表して、自分がその所管であるので人事局長がそのように言ったのだという趣旨の、これは録音テープで、私も、これは成立に争いがあるとおっしゃれば——証人をつれてこられて、立証できませんし、私自身その場にいたわけではございませんので、ここでその御答弁をそのまま読み上げるということはいささか過ぎたことだと思いますので、あえて読み上げはいたしませんけれども、そういう御説明をされたというように、多数の修習生が録音テープを持参して私のほうに説明しておるわけでございますし、録音テープをとったいきさつとか、録音テープをとることの是非については、私も何とも申し上げかねますけれども、そういう御説明があったとすれば、前回の法務委員会での御答弁と非常に食い違っているように思います。どういうわけでそういう食い違った御答弁をされたわけですか。
  68. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 私、任官説明会で説明をいたしました。それを私に無断で録音をとって、無断でこういう印刷をいたしまして、りっぱな印刷物ができておるわけでございます。これはさらにその後の公開質問要求というのに、別紙ということでそれをつけてまいりまして、私の手元にもございます。しかし、私、おことばを返すようですが。そういうことをすることが、いわゆるマナーの問題としてどうであろうかということについては、かなり私は問題があると思います。おとなげがございませんので、そこまで取り上げて問題にするつもりはございません。中身は大体私の、数字等は少し違ったところがあるようでございますが、大体正確に書いてあるようでございます。そういうことを前提にいたしまして、この今井修習生の問題が出たところでも、私はその内容には入っておりません。その問題は言いたくない。教官方にはよくその事情は御説明してあるから、もし聞きたいなら教官方からでもまたゆっくり聞いていただいたらどうか、というような趣旨で申し上げたわけでございます。いまここに持っております。ちょっと見ましても、そういったこまかな点についての内容に入った説明はいたしておりません。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま一番最後のところに、私、読むつもりはございませんが、この趣旨では、事務総局あるいは事務局段階で、不適当と思われる者がそのあたりで局長が適当にチェックされる、そしてそれを裁判官会議に持っていくんじゃないかということを質問したのに対して、人事局長は、私の個人の独断的なことでやったのではなくて、事務総局でも面接をし、局長レベルでゆっくり相談をして、いろいろ考えた末、まあ自分が担当者であるから代表して今井さんにお話をしたんだという御答弁に、この印刷物におきましてはそのようになっておるわけでございまして、私自身その場におりませんから、これがそのとおりだとかどうだとかいう問題でいございませんが、いずれにしましてもこういうことが起こるということは、これは司法の将来について黒い疑惑を残すのじゃないか、そのときには、これは人事局長としましても虚心たんかいに、いまのように何の意図もないのでございましたら、特段の事由ということについても何らの全く意味がない御発言であったとするならば、それなりに修習生にお会いになって納得するようにお話をなさる必要があるんじゃないか、慣例はないかもしれませんが、必要があるんじゃないか。それがいまのような田中判事退官に対する疑惑を呼ぶのだというような一連の問題ともつながっていると思うわけでございますので、先ほどそのような不必要な疑惑を晴らすように善処したいというような趣旨の御発言でございましたから、あるいはそれならそのようになさったらどうかということを申し上げておるわけなんです。これはこういうことで、いままでやっていないからということでまたそれを踏襲されるということになると、ますます疑惑が深まるばかりでどうにもならなくなると思いますけれども、やはりそれでもいいと局長はお考えになるわけですか。
  70. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) いわれのない疑惑等があっていいはずのものではございませんので、そういったものは十分晴らしていかなければならないというふうに考えております。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから今月の十六日に二十五期の司法修習生の大会アピール、大会決議がなされまして、その決議文が人事局長の手元にも届いているんじゃないかと思うのでございますが、それによりますと、これから裁判官にもなろう、検察官にもなろう、弁護士になろうといういわば良識を代表する方々が修習生ではないかと思うんでございますけれども、その人たち四百三十一人出席のうち、二十五期生に対して裁判官の任官拒否をするなという意思表示をはっきりしている人四百十七名、また二十二期以来の任官採用拒否に反対するというのが三百八十一名、そして現行のこの特段の事由とか何とか奥歯にもののはさまったような言い方をして説明するための手段に使われるところの二回試験というものを廃止するように要望するというのが何と三百八十七名が意思表示を明白にしているわけでございまして、このように将来の司法をになう人たちのうちの過半数がこのような要望を出して大会決議に及んでいるということについて、これは謙虚に耳をお傾けになる必要があると思うのですが、この事柄についてどういうふうに対処していかれようとお考えになっていらっしゃいますか。
  72. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 二月の十六日に修習生大会が行なわれたということは、その事実は新聞等にも報道されましたし、研修所からも報告を受けておりますが、そこでなされました決議等につきましては、まだ何も私の手元に届いておりませんので、詳細についてはどういう決議が行なわれたか承知いたしていない状況でございます。
  73. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私がいま申し上げましたので、そのことについてどうお思いになりますか。
  74. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まあ、最初は任官拒否でございましたね。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 任官拒否です。
  76. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 任官拒否というような問題は、これはやはりこれまでも申し上げておりますように、全人格的な評価によって、判事補として適当な方であるならばすべてその方を採用するという方針は、最高裁として変わりはないわけでございます。思想、信条、特定の団体加入等によって差別するつもりはないということは毎度申し上げているわけでございます。  また、二回試験をやめろということでございますれば、これもたびたび申し上げておりますように、長年やってきておりまして、十分試験として存在価値のあるものでございます。いま直ちに二回試験をやめろと言われましても、それをやめるというつもりはございません。二回試験のやり方そのものについては日々検討していかなければならないと思います。考試そのものをやめるというつもりは現在のところはございません。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ最初の、裁判官として適当であるというか、特段の事由がないということばをいまお使いになりませんでしたが、資格があって裁判官になる権利がある人は、全員裁判官を志望する以上は採用するというふうな姿勢に切りかえない限り、この問題はこれは簡単には解決しないんじゃないか。もし、いまの御説明ではそういう趣旨のように思いますので、それならそれで、ふさわしい人であるとか、ふさわしいと言ってもだれがふさわしいときめるのか。人事局長がふさわしいときめるのか。だれがふさわしいときめるのかということが重大な問題ですから、ふさわしい人ということばで論争していってもこれは価値観の問題ですから何にもならないわけでございます。ですから、裁判官の資格がある者が裁判官を志望したときは裁判官になる権利があるのだという、それならそれで、もしそうだとすればそれではっきりしていただきたいし、権利があるのに採用できないならできないで、そういう人がいるならば、それならふさわしいとか何とかいうふうなわけのわからぬことばじゃなくて、具体的にどういう人だということをはっきりと明言されなければ、この問題はいつまでも疑惑に包まれたまま残る。ひいては司法全体に大きな不幸をもたらすと思うわけでございます。  それからこの決議文、まだごらんになっていらっしゃらないということでございますので、あえて申し上げますと、その当日ほとんど全員の賛成の決議で、いま私が再三申し上げておる特別決議というものが追加されまして、これに対して修習生の大多数の、公開説明会を再度要望する、それに対して最高裁が拒否の回答をしたことはけしからぬから坑議するという決議がなされておるということと、それから司法研修所の大講堂の、講満会開催のための大講堂使用不許可に坑議するというのが出ておるのです。これについて私ちょっとお伺いしたいのですが、実は本日、予定どおりにいくと、元最高裁裁判官の真野毅さんを講師に招きまして修習生が講義を聞くということで、大講堂を使わせていただきたいという申請をしたところ、大講堂は修習生のためにあるのであって、修習生以外の者が大講堂に入ることは許すことができないからということで不許可にしたということを聞いておるわけであります。これはだれが聞いてもおかしいじゃないですか。要するに、修習生は大講堂に入っていいけれども、講師である真野さんは修習生でないから講堂に入ってはいかぬという、そういう説明のようなんでございますけれども、それこそどこの世界にも通用しない話じゃないですか。これは人事局長の所管であるのかないのか知りませんが、これはおかしいじゃないですか。修習生が、しかも元最高裁の裁判官であり、現在弁護士である、法曹としての大先輩である真野先生に講演をしてもらおうということで、真野先生もそれを承知されて、大講堂で一同集まって話を聞こうというのに、修習生は入ってもいい、しかし真野先生は修習生じゃないからそこに入ってはいかぬというので不許可にした。これは全く裁判官のほんとうに法律の隅をほじくったいわゆる悪徳代言人の抗弁のような、これは恥ずかしいとお思いになりませんか。そんなことぐらいさっさと許可したらいいじゃないですか。
  78. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 研修所が真野裁判官の講演会に講堂を使うことを断わったということは、私が研修所から報告を受けておりますところによりますと、研修所の施設はカリキュラムに定められた修習生の修習のために使われるのが原則である。例外として、付随的にこれに資すべき修習生の自己の研究、討論のために使用させる、それ以外の目的には使用させないということによるものでありまして、真野元裁判官自身が人格高邁なりっぱな方であるというそのこと自身について異論を言っている性質のものでないというふうに承知しております。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 結局本日、場所を移しまして、東京弁護士会の大講堂で修習生が真野元裁判官の講演を聞く会を持つわけでございますけれども、これはやはり最高裁としてお考えにならぬといかぬと思います。というのは、いまの話を聞いただけじゃ、良識派であるリベラリストの田中判事が最高裁のこういう空気の中にはいまいる気がしなくなったのだというふうに一般に報道されても、この話を聞けば、これはなるほどなと思うのが一般の国民の常識じゃないかと思います。裁判官は、これは一般の国民より偉いと思っていらっしゃるかいらっしゃらないか知りませんが、これは一般国民と非常に感覚的にかけ離れているということだけは、この一事を見てもはっきり言えると思います。これは、そうですか、それじゃすぐ開きましょうと、あるいは人事局長は言えないかもしれませんが、今後大いにこの点について検討していただきたい。これは次の法務委員会で今度のこの問題、続けて質問いたしたいと思いますから、それまでによく御検討していただいて、これは先ほどおっしゃった最高裁が国民から疑惑を持って見られているということに対して、そういうことじゃいけないから疑惑を解くようにしたいという、その御答弁を実践に移した御回答を次の法務委員会でお聞きできるように、それまで一時この問題を中断しておきたいと思います。  きょうの質問はこれで終わります。
  80. 原田立

    委員長原田立君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十分散会      —————・—————