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説明員(
佐々淳行君) 前回の当法務書見会においてお答えをいたしました以後の
捜査の進展状況について簡単に御説明をし、今後の
方針について続けて御説明をいたしたいと思います。
その後
捜査の進展いたしました点は、先ほど触れました金総理の来日によりまして、私
どもが主張をしておりました
金東雲一等書記官の
本件関与の
容疑を
韓国側が認め、かつ、
金東雲に関する
捜査を
継続をするということを認めたという点が
一つ。
それから、これはごく最近になりまして、
事件当日、八月八日の午後一時十九分ごろ、地下の車庫から出てまいりました「二〇七七」という車、これはニッサンスカイラインの二千ccGTという車だったようでありますが、目撃者はクリーム色の車であったと証言をいたしておりますけれ
ども、この車に四人ないし五人の人が乗っており、
日本住宅云々ということを言ってカードを、駐車券を渡し、それに時刻を打刻をしようとしたところ、停車することなくその車が発進をして、出ていってしまった。おい待てということで二度ほど呼びとめたけれ
ども、とまらなかった。こういうことで、どうもその車の助手席に乗っておった人物が
金東雲書記官に似ておるということと、その後部座席の床にどうも一人人が横になって寝かされておったようだ、こういう証言をいたしました。実はこの車庫の受付係の方の証言でございますが、その方の氏名、住所等は証人の安全保護のために御説明を差し控えさせていただきますが、この方は、実はすでに過去四回にわたりまして私
ども事情聴取を行なってまいったわけであります。しかしながら、従来の証言は、その「二〇七七」という車がなるほど一時十九分に出てきておりますけれ
ども、この車はクリーム色のコロナの4ドアの車で二人しか乗っていなかったという証言を繰り返しておりました。最近に至りまして
——それまでは非常に、ほんとうのことを言うと
自分の身に危険が及ぶんではないかという心配をされて供述を控えておったようでございますけれ
ども、ごく最近になりましてほんとうのことを言う気になり、私
どもにようやくその事実を提示したわけでございます。この結果、これはもうかねてから問題になっておりました
犯行時間帯に地下駐車場におりました三十台の車のうち、
犯行時間に最も接着をしておった「二〇七七」、これは実は都内だけで百六十一台ございまして、全国になりますと千二百十九台ございまして、長期にわたる
捜査の結果、この「二〇七七」はほとんどつぶれました。「品川−五五−も−二〇七七」、この車だけが残ったという状況になったというごと、また、この車が九月の五日付で
日本を去りました横浜領事館の劉永福副領事の所有にかかる車であるということ、それと、この車と八月八日の当日、地下から出た「二〇七七」が結びつく可能性がこの受付係の人の証言によって非常に強くなった、こういうところから、私
どもはこの車が
金大中氏の強制連行に使われた車ではないかという合理的な疑いを強くしておるわけでございます。
この車につきまして、まだ実は
捜査当局、断定をいたしておりませんのは、三つ理由がございます。
一つは、この車そのものの動向
調査をまだやっておらない。つまり当日ほかのところにアリバイがあったとか、こういうようなことがまだ明らかでございません。それから色が若干違います。証言によりますと、クリーム色、白っぽいクリーム色ということでございますが、実際の「品川−五五−も−二〇七七」はメタリックグレーというシルバーグレーでございます。それから目撃者に提示をした限りでは、劉永福副領事がその車に乗っておったという証言を得るに至っておりません。以上のようなことから、この車が
犯行に供せられた可能性が非常に強くなったということで、この点につきまして、
捜査の結果を
外務省を通じて
韓国側に通報をし、その
捜査結果の回答を待っておるところでございます。
そのほか、複数の
共犯者があり、かなり長途にわたる
強制移送のルートがあることは間違いないわけでございますが、再々御説明をいたしておりますように、私
たちが持っております
捜査資料というのは非常に限られております。グランドパレスの現場に残された
指紋、現場に残された遺留品、現場を中心とするところの若干の目撃者、これをたよりに
捜査を続けておるということと、
金大中氏の簡単な供述書なるもの、これは
韓国側から提示を受けましたものに
新聞報道等によります一般情報も加えまして鋭意
捜査を続けておりますが、いまだ
共犯者あるいは
強制移送のルートに関しましては、これと断定をするに至っておらないというのが現段階でございます。
今後の
捜査方針に関しましては、依然として
事件の全貌が明らかでございませんので、
刑事事件として
本件の
捜査を続行をするという
方針をきめまして、
金大中氏
事件特捜本部の
捜査体制も現状のままとし、残されました未解明の車、これもほとんど解明が進んでおりますけれ
ども、まだまだ残っておりますので、この
関係、あるいは「アンの家」といわれまする
金大中氏が運び込まれたアジトの
捜査、あるいは
強制移送に使われましたと思われます船、モーターボート等の
捜査を続行をいたしております。
韓国側に対しましては、先般の
首脳会談を通じまして、重ねて私
どもが
金大中氏の来日
——もしも御本人が行動の自由が保障されたのであるならば、来日をして
捜査に協力をしていただきたいという申し入れ、並びに
金東雲書記官の任意出頭ということにつきましても、将来、先ほど申しましたように、一応
韓国側が
捜査をする、
捜査の結果によって処罰をするという
意思表示をしておりますので、静観をいたしますけれ
ども、その結果のいかんによっては、これを再び持ち出すということ、それから重要参考人、目撃者であるところの梁一東氏らの再来日等につきまして重ねてお願いをしたところでございまして、また、先ほど申しましたように、私
ども金大中氏の供述をはじめとする
捜査資料をもっとほしいわけでございまして、この
捜査資料につき、
韓国側の
捜査結果がわかり次第、
日本側に通報相なりたいということを重ねて要請をしておるところでございます。
私
どもといたしましては、この
共犯者、
強制移送のルートを、少なくとも
日本国内に関しましては明らかにして、この
事件の全貌を解明をいたしたいと、かように考えております。