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1973-11-08 第71回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十一月八日(木曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  十一月七日     辞任         補欠選任      白木義一郎君     黒柳  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君     委 員                 増原 恵吉君                 吉武 恵市君                 鈴木  強君                 黒柳  明君                 渡辺  武君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        内閣官房副長官  山下 元利君        警察庁警備局外        事課長      佐々 淳行君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君        法務省入国管理        局次長      竹村 照雄君        公安調査庁次長  渡邊 次郎君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (金大中事件に関する件)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず委員異動について報告いたします。  昨七日、白木義一郎君が委員を辞任され、その補欠として黒柳明君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 鈴木強

    鈴木強君 私は金大中事件について若干の質問をしたいと思います。  最初に、これは外務大臣に聞きたいのですけれど、大臣はきょうおいでになっておりませんが、今月の二日に韓国金鍾泌首相日本に参られまして、田中総理会談をし、金大中事件についてわれわれが一番おそれておりました政治解決について合意に達したと伺っておりますが、その合意内容について、結論だけでけっこうですから最初に明らかにしていただきたいんです。
  5. 中江要介

    説明員中江要介君) 御質問金大中事件解決につきまして、田中総理韓国金鍾泌国務総理との間に合意に達したという御発言でしたけれども、本来これは合意するか合意しないかという問題ではなくて、一方的に韓国日本において不祥事件が発生したことについて、日本に対して何らかの措置をとる、その韓国側がとる措置を、日本側がそれをよしとするかどうかという問題だと思いますので、まず合意という形ではなくて、したがいまして合意の文書とか合意内容とかいうのではなくて、韓国側がどういう措置をとろうとしているか、またとったか、それを日本側がどういうふうに評価して、本件国際責任に関する部分について日本側が納得するかどうか、こういう問題だと、こういうふうにまず思います。  で、金大中事件がそもそも日韓両国間にまたがる国際的な刑事事件でございますので、この刑事事件としての決着、その真相究明というのは、これは双方がそれぞれの手続に従って進めていくことは申すまでもございませんし、その面で今回決着したとは全く思っておりません。したがって、日韓両国とも捜査継続していく、そして国際刑事事件としての真相究明は、これはあくまでも続ける、こういうことになっております。  それでは国際問題、つまり外交問題としての本件について韓国はどういうことをしようとしているか、またしたかという点につきましては、今回の金鍾泌国務総理日本にこられるに先立ちまして、まず被害者である金大中氏みずからの記者会見がございまして、いわゆる自由の回復といいますか、それまでは韓国側捜査のために完全な自由が享受できなかったけれども自分は今後自由になった、そうして、いままでの行為が日韓間の関係に亀裂を生じたとすれば、それは自分の本意ではなかったという趣旨記者会見をして、金大中氏の身柄については、この記者会見によって今後……
  6. 鈴木強

    鈴木強君 いや、そんなことはいいんだよ。
  7. 中江要介

    説明員中江要介君) 自由が回復された。  その次に、金東雲一等書記官容疑の問題でございますが、これはわがほうの指紋検出及び照合の結果をもとにいたしまして、韓国側に犯人としての容疑を追及しておったわけでございますけれども、この点につきましては金溶植外相記者会見ではっきりさせられましたように、金東雲一等書記官免職にして、かつその監督責任については相応の措置をとる、こういうことになりました。  残りますのは、陳謝ということと将来の保証と、こういう問題でございます。で、金鍾泌国務総理田中首相との会談の主たる内容は、その部分に集中されておったわけでございます。まず、陳謝部分につきましては、被害者加害者もともに韓国国民であり、その事件日本国内で、しかも東京という首都で行なわれた、そのために日本政府及び国民に対して多大の迷惑をかけたことに対して遺憾の意が正式に表明されたほかに、朴大統領から田中総理あての遺憾の意を表明する親書も携行してまいったわけであります。将来の保証につきましては、今回の事件に関連いたしまして、韓国大使館員が介入していたという容疑が濃くなった、これにつきましては今後とも在日韓国大使館員のモラルの問題、それから、これにまつわるさまざまの疑惑があったことにかんがみて、将来とも公正妥当な日韓関係の樹立に注意し努力したい、こういう表明がありました。これによりまして、刑事事件としての側面ではなくて、日韓両国外交関係上の問題としての韓国側措置を、日本政府としてはそれをもって足りると、こういう判断のもとに外交的な側面決着を見たと、こういう判断をしたのが経緯でございます。
  8. 鈴木強

    鈴木強君 この事件はね、少なくとも首都東京のどまん中で、しかも白昼堂々と日本主権を侵された事件です、これは。これについてはこの委員会でも何回か質疑がございまして、政府としても真相を徹底的に追及をして国民の納得できる解決をしたい、うやむやなことはしないと、何回か——きょうは法務大臣もいらっしゃいますけれども、そういう御趣旨の御発言がございました。私たちは、当然のことでございます、主権の侵犯になるかならないかは、これはいろいろと今後の捜査の結果にまたなければなりませんが、少なくとも私たちは、日本主権が侵害され、侵犯された事件だというふうにもう考えて意見を述べておったわけであります。  そこで、今度のこの政治解決というのは、いままでそういう真相究明国民の納得できる線において解決をする、そのことが日韓友好の基本を築くものである、こういう点から見ますと、きわめて私は、問題をそらして——それは、田中さんと金鍾泌氏は納得したかもしれませんが、大多数の国民は納得していませんよ。そういう国民を欺くような形での政治解決ということは、絶対に私たちは認めるわけにはまいりません。  それで、いま、田中総理金鍾泌首相との会談内容について、合意であるか合意でないかは別として、お話を伺いました。それで、五日の日に、金鍾泌首相ソウル会談内容を明らかにしております。これを一つずつ確認していきますから、答えてくれませんか。  まず第一は、金東雲氏については、韓国側は引き続き捜査をし、その結果を国内法で処理する、日本側では金東雲氏の捜査を終結する、こういうことを第一項として発表しておりますね。警察のほうにも伺いたいんですけれども、少なくともこの事件が勃発をして、発生をして三カ月近くになると思います。特捜本部を設けられて相当な陣営と経費を使って一生懸命捜査に従事していただいておると思います。私たちも激励をしてきました。ところが、こういう政治的な解決によって、日本側では金東雲氏の捜査を終結するという、そういうことが合意されたとするならば、一体警察陣はこれに対してどういう態度をとられるのか、それも非常に私は問題点一つだと思うんですね。いずれにしても、こういう第一項目が会談内容として向こう金鍾泌首相から明らかにされているんだから、これは間違いないですか、あるんですか。
  9. 中江要介

    説明員中江要介君) 田中金鍾泌会談の中で、金東雲一等書記官について捜査継続するということを金鍾泌国務総理約束されたことは事実でございます。日本側といたしましては、金東雲一等書記官には強い容疑を感じていたわけでございますので、その金東雲一等書記官捜査は一体いつごろ終わり、そしていつごろその結果を知らせてもらえるのかという点を先方に追及したわけでございますが、それに対しまして、とにかく免職にして捜査継続して、金東雲一等書記官容疑を明らかに捜査してみたい、で、その間、その捜査韓国側捜査におまかせ願いたい、こういう発言があったわけでございます。日本側といたしましては、韓国側がそう言って捜査をする間は、その捜査の結果を知らせてもらうということで、その結果待ちということになるわけでございまして、日本側金東雲一等書記官についての捜査を打ち切るという話は全くなかったわけでございます。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、これは新聞にも「ソウル電」として載っておりますから間違いないと思いますが、日本側では金東雲氏の捜査を終結するということは言っておらないわけですね。そうすると、これは明らかに食い違いがある。この食い違いをどういうふうにして直すんですか。日本側意見向こうの言っていることと違うじゃないですか、これは。しかも五日の日に韓国国会でいろいろと質問がございまして——韓国金溶植という外務大臣がおりますね。その外務大臣記者会見で、一部の国会議員は、自分国会で、金前書記官に関して虚偽の発言をしたと言っているが、政府金書記官がこの事件に関与したという証拠を発見しておらないことは、すでに国会で明らかにしたとおりであるということを言っているわけです。だから免職にしたとかなんとか言っておりますけれども、それは一等書記官免職にしたのでございましょう。しかし、この含みというのは、ある程度金東雲という者の、日本捜査当局が突きつけた科学的資料に基づく指絞を付しての容疑事実というものを認めざるを得なかったというふうにわれわれは理解しておったのだが、そうでなくて、まだ今日に至っても事件に関与したことがないということを向こうでは言っているわけだ。ここにも日本捜査陣捜査の結果について、認めたるがごとく拒否したるがごとく、この辺も非常にあいまいですよ、これは。一体こういう食い違いが出ておって、たとえばソウルとの間に、ある程度捜査をしてその結果を国内法で処理するという中に、日本捜査当局が突きつけたこの容疑事実というものを向こうが認めた上でさらに捜査をするということなのかどうなのか、そういう点がきわめてあいまいですよ。だから向こうが発表していることが一つ一つ、われわれがあなた方から聞くのとは逆なんだからね。こういう事実関係に対する相違というものはどうして調整するのですか。これは国民としてはしごく迷惑ですよ、どうしますか。
  11. 中江要介

    説明員中江要介君) 先ほど申し上げましたように、金東雲一等書記官に対して韓国側捜査継続する、で、韓国側自分司法権のもとで本件を取り扱っているので、当分その韓国側捜査におまかせ願いたいということを向こうが言いましたので、それに対して田中総理は、それではそちらにおまかせするけれども、その結果は必ず日本に知らせてもらいたい、こういうことになっておりまして、そのことを韓国側が終結ということばを使われたというふうに報道されておりますけれども、実態はそういうことを意味しておられるのだろうと思います。で、もう一つ、わがほうの指絞その他の証拠そのものをそのまま韓国がうのみにしてどうするというのではなくて、そういうわがほうの捜査結果を韓国側が知らされて、そこで金東雲に対する容疑というものを感じたればこそ、まず免職にして、身分外交官身分でない形にして、そして韓国側が独自の捜査をこれから継続してやっていくという形になっておるわけでございまして、私どもといたしましては、韓国側がそういう捜査をした結果がどういうふうになるのかということを注目していきたいと、こう思っているわけでございます。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 警察庁外事課長に伺いますがね、田中金鍾泌会談というものの内容についていまお聞きのとおりですね。そこで日本側警察庁として捜査当局としては、特捜本部はまだそのまま続けておりますね。途中で部長をかえるというようなことは、それは人事の必要性からかもしらぬが、ちょっとわれわれ疑義を持ちますよ。それはおきますけれどね、こういう、かりに韓国側が言っているように、日本側では金東雲捜査を終結するというような話があったというのだが、これに対してあなた方どういう考え方を持ちますか。どうあろうと、これは警察当局は断々固として捜査を続けていくということについては変わりはないでしょう、どうですか、その点。
  13. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 警察庁本件捜査に関する体制並びに方針は従来と何ら変わるところございません。先ほど中江参事官から御答弁がございましたように、捜査継続をするということを田中金総理会談におきまして先方に通告をし、先方もそれを了承をしたというふうに私ども承っております。また金東雲一等書記官容疑に関しましては、私どもは九月の五日以後、終始一貫して、同氏の指絞が現場に遺留されておった指絞に一致をしたという事実を中心とする幾多の証拠によりまして、この者が何らかの形で事件に関与した容疑が濃厚であるということを継続的に韓国側に申し伝えておったわけでございますが、私ども承知をいたしております限りでは、今回の会談におきまして、韓国側金書記官本件に関与した嫌疑を認め、同人を免職をし、捜査継続をして、その結果により韓国の法に照らして処断をすると、こういうお約束をいただいたと解しております。したがいまして、金東雲書記官事件につきましては、一応捜査権が競合いたしたかっこうになっておりますが、韓国側捜査を行ない、処罰をするという意思表示をしたということを前提に、私どもは第一次的な裁判権を、現在身柄を持っております韓国側が持っておる関係で私どもはその結果を待つと、こういう態度でございます。また、その他の捜査方針につきましても、今回の会談で進展をいたしましたことは、私どもが主張しておりました金東雲書記官本件関与容疑韓国側が認めたという点に前進があるわけでございますが、共犯者あるいは強制移送のルートその他の関係につきましては、いまだ解明されておりませんので、捜査継続する方針でございます。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 それで、いまの警察庁外事課長佐々さんの御発言については外務省中江さん、それでいいですか。それに同感ですね。
  15. 中江要介

    説明員中江要介君) 外務省でも同じように考えております。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 それで、まあ金東雲容疑については、日本側のこの指絞を突きつけた科学的な資料によってこれを認めて、容疑は認めておると、こういうように理解いたします。  そこでもう一つは、田中さんと金鍾泌首相との会談の中で、今後このような事件が発生しないよう両国当事者は最善の努力をする、これはまああたりまえのことでしょう。もっと大事なことはこれから申し上げますけれども、この会談の中でもう一つこういうことが言われております。金大中事件はまだ真相は明らかにされていないが、どちらにも手抜かりがあった、日本側金大中氏に対し旅券に記載された目的以外の政治活動国内で許したことなど手抜かりがあった、これを双方が認めたというのですね。こうなりますと、この会談の中で、少なくとも旅券記載以外の政治活動金大中氏が日本でやったと、これを国内で許したこの責任は非常に重大だと思いますがね。そういう実は会談内容だということがソウルで報道されておる。明らかにされたわけです。その点は一体どうなんですか。
  17. 中江要介

    説明員中江要介君) 私は直接両首脳会談に立ち会っておりませんので、あとで聞かされた話を基準にして申し上げるわけですけれども、私が聞いております限り、両首脳会談の中で金大中氏の旅券目的外活動について云々されたことは全くなかったと、こういうふうに聞いております。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 さっきの、日本側では金東雲氏の捜査を終結したというふうに確認されたと、それからもう一つ、いま言った金大中氏の旅券目的外政治活動日本国が認めておったと、これは日本の国の手抜かりである。要するに自分たちの落ち度を今度は転嫁していこうという、そういう考え方に立った私は発表だと思うのですよ。これについては何か会談内容が、韓国向け日本向けと二つあるような報道もされておりますよ。どういう意図か知りませんが、少なくともこういうあなた方が聞いてないことが向こうで報道されるということになると、これは重大な問題でしょう、このまま放置できないでしょう。これは直ちにこの真相について究明をする必要があるでしょう。これはあなた、外務大臣ともよく相談をしてやってくれませんか。  それからこれは法務大臣旅券に記載された目的以外の政治活動国内で許したことは手抜かりだということを双方が認めたと、こう書いてある。これは重大でしょう。これはもう法務大臣からもちょっと伺っておきたいんです。
  19. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) この金大中君の日本滞在を許しました理由は、これはかねてから申し上げておりますように、第一は病気治療でございます。第二は自叙伝を出版する。その出版する自叙伝の原稿の校正である。病気治療と出版ということの御用件で滞在を許しておる。彼がわが国滞在中、その二つの目的以外の活動をしたという事実は認められない。あったかなかったかわかりませんが、これは私の所管をする在留管理責任でございます。在留管理という観点からこれを観察いたしますと、目的外活動をやったというその事実は認められない、全くないと、こういう強いことばで表現して差しつかえがないと思っております。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 中江さん、どうですか。この食い違い、どうですか。
  21. 中江要介

    説明員中江要介君) 私、先ほど申し上げましたように、旅券目的外活動について具体的に両首脳会談で話題になったということは聞いておりません。ただ、この問題について、今後こういうものをなくするようにしていきたいという約束韓国側がした、こういうふうに聞いておるわけであります。
  22. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、そういう食い違いについて外務大臣とも相談して、現地の大使と連絡をとって、これを取り消させなければいかぬでしょう、そういう事実がないならば。それをやってくれと言うんですよ。
  23. 中江要介

    説明員中江要介君) 御指摘の点は、韓国のわがほう大使館を通じまして、正確にどういう質疑応答国会でなされたかということを調査いたしまして、その間にわがほうで了解しているところと違ったものがあれば、これについて適当な措置をとるべきだと、こう私も思いますので、さらに調査してみたいと思います。
  24. 鈴木強

    鈴木強君 法務大臣にもお願いしたいんですが、これは田中金鍾泌会談ですから、あなたもそこに立ち会ったわけでもないし、どういう内容かについていまここであなたに伺っても答えはいただけないと思いますが、お聞き取りのような行き違いがあるわけですよ、これは。いまあなたは旅券を管理する法務省として、大臣として、責任を持って旅券に記載された目的以外の活動をやったことは認められないと明確にお答えになっているわけですから、それを旅券以外の政治活動をやったことを日本があたかも許しておったと、だから双方手抜かりがあったんだというような、そういうこれは新聞の記事ですからごらんください、そういう表現で載っておるわけですからね。国民はこれを見たときに何だという非常に不信感を持ちますよ。これはあなたの言われているのが真実でしょうから、そうであれば全く取っ違ったことをかってに韓国へ行って金鍾泌首相会談内容をこれは記者会見で発表しているんですからね。これはたいへんな問題だと思いますから、田中総理ともひとつよく相談をされて、この会談内容について前段の食い違い等もございますから、ひとついま外務省でもそうするということを言っておりますから、あなたもひとつ国務大臣として、また担当の大臣としてよく田中総理相談をしてやっていただきたいと思います。どうですか。
  25. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 御趣旨はよくわかりました。ごもっともですから、外務大臣と私との間でよく相談をしてみます。
  26. 鈴木強

    鈴木強君 それからこれは法務大臣にぜひ私は伺っておきたいんですけれども、今回の政治解決に至りますのには、一面におきましては日韓の国交をそこなわしたくないという、そういう大きな考え方があったと思います。それはわかりますけれども、少なくとも日本主権が侵犯されたとわれわれが断定できるような具体的なこの事実の上に立って問題を考えるときに、いまも警察のほうからもお話がありましたが、金東雲が少なくとも私たちKCIAの職責も兼任しておったと思うんですよ。兼任というかKCIAの一人であったかもしれません。したがって、そういう男が具体的に指紋を突きつけられ、その容疑を認めて犯行をこの人がやったんだというところまできているわけですね。しかも、あなたがこの国会答弁しているように、「個人的な事情で本件のごとき犯行を犯すわけがない。横合いからか、背景か、どこからか知らぬけれども、必ず指示を受けておる。受けずにやれるわけがない。こう判断をしていって間違いがないのではなかろうか。」と、こういうふうに御答弁がありましたように、金東雲個人でこの事件をやったなどということは大うそもはなはだしいと私は思うんですよ。これはやっぱり組織的、計画的な犯行であるということは間違いないですよ。そういう疑惑がますます深まり、捜査のほうでもかなりこう追い込んでいっているときに、金東雲日本に来てもらいたい、金大中に来てもらいたいといえばこれを拒否されて、もう警察のほうではたいへんな苦労をされて指紋検出努力をされて突きつけた。それから、せんだっても二、三日前に報道されましたが、この前もちょっと問題になりましたグランドパレスホテルから連行されるときに使われた乗用車、これも明確になりましたね。最近、「品川五五−も−二〇七七」という車に五人が乗っておったと、そして一人は床のところに寝かされていたということを見た人が証言をしてきているんですね。こういうふうにいまや金東雲をはじめ韓国人グループが組織的、計画的にこの問題をやったということは明らかですよ。あれだけの大がかりな犯行が資金的な面からいったってとても個人においてできるなんというものじゃないですよ、これは。しかも最近まで日本が何と指紋を突きつけようと金東雲は全く関係ないと、こう言って、白だ白だと言って逃げ回っておって、急に百八十度か三百六十度か知らないが方向転換をして、今度は黒だというふうに認めてきておる。こういう手品師みたいな魔術師みたいなやり方について、国民はだれ一人だっていまのやり方について信頼をしている人はありませんよ。何をしているんだという不満こそあれ、この問題について政府が政治的に解決をしたことに対して心から不満を持っておりますよ。納得できないという気持ちが率直ですよ、これは。だから、こういう中で何か降ってわいたように急に政治的に解決をして、まあ向こうのほうは捜査は続けるが国内法で処理して、その報告を聞く程度にして、日本のほうでは捜査はもうあまりできないような形に追い込まれるようなこの事件の処理というものは全く言語道断だと私たち思います。少なくとも主権の侵犯にかかわる問題でありますから、もっと徹底的に捜査をして、ほんとうにこれが計画的、組織的なものなのかどうなのか、個人としてこんなことができるはずはないでしょう、そういうところまでとことん真相究明して国民が納得する姿においてこの問題を解決しませんと、日韓間の友好なんというものはとんでもないことであってね、私はそれを非常におそれます。しかもKCIAの問題についても全く一言半句も触れておらない。今後ますますKCIA日本国内活動をたくましくするでしょう。われわれだって、日本人だって、うっかりしておられない。ましてや多くの韓国人が、六十万をこす韓国人がおるわけです。そういう人たちが安んじて日本の法律のもとで安心して生活ができますか、こんな解決をしておって。私はそういうことを思うときに、この事件捜査については徹底的にこれを続けて、徹底的に真相究明する、その上で解決するということでないといけないと思うのですよ。  まあ今度金鍾泌首相が来たのは朴大統領の親書を持ってきたそうですが、問題は日韓の経済協力をもっとやってもらいたいということでしょう、閣僚会議というのが中止されているから。そのためにいろんな手練手管を使って、そうして事件を一応収拾した形をとって、とにかく早く日韓会談を開いて経済協力を受けたいというのが本心じゃないでしょうか。少し私は乱暴なことばを使いまして恐縮ですが、少し腹が立ったものですから。私はきょうも山梨からわざわざ来たんです。これは黙っておれない。大臣も何回か私たちと真剣にこの問題については論議をされて、大臣大臣なりの断固たる所信を聞いてきておるだけに私たちは非常に残念に思うわけです。どうでしょうか、大臣。こういう処理が将来に悔いを残すということをお考えになりませんか。これはまずいですよ、こういうやり方は。率直なひとつ大臣の御所見を承りたいんでございます。
  27. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 鈴木先生のただいまのおことばは言い過ぎであろうと仰せになりましたけれども、私は言い過ぎでないと思う。先生仰せのとおりの方針でなければ、日韓両国の友好は続けられない、私はそのとおりだと思います。外務省が苦心をいたしまして、外交的側面で、私の見るところでは三つの点で決着をつけてくれた。これはそれなりに私は評価をしております。ありのままにものを見ております。しかし、問題点鈴木先生仰せのように、両国の外交的側面からの決着が特にこの日本の犯罪捜査の手続に悪い影響が及びやしまいか。これが及ぶということになれば、外交決着という政治が日本の侵してはならない捜査を左右したということにならざるを得ない。それは許すべきものではありません。そんなことはいたしませんということを政府も言っておる。私も言っております。それでありますから、そういうことのないようにずいぶん私は注意をして心配もしておりますが、田中総理のこの問題に処する態度も、日本捜査継続を中止さすとか、よいかげんにこれをおさめるとか、もう捜査はこの辺でよいのだというふうな態度は少しも見受けられない。そんなことはあるべきことじゃありません。いやしくも金東雲指紋が出ておる。指紋などというものを両国の政府が少し軽く見過ぎておるのじゃないか。三十二億の人類があるといわれておりますけれども、二つと同じ指紋というものはない。人類始まって以来二つと同じ指紋が出た事例がない。その指紋が出ておるのに、知らぬ存ぜぬ、無反省、まことにどうもこれ言いようがない、そういうわけのわからぬことを主張いたしましたのでは。それにものを言わして考えるときに、本人はおらぬ日本でありますけれども日本捜査陣の苦心によってあらゆる角度、あらゆる面からの捜査を積み重ねていくならば、ある程度の立証は、指紋が出ております以上は結論が出る、こういう確信でこの捜査自体は将来といえども継続する。日本本件に関する捜査は大手を振って一人歩きをしてもらいたい、政治によって左右されることは迷惑しごく、そんなことは許すべきものでない、こういう考え方で、あくまでも本件、特にこの金東雲関係する捜査については推し進めていくと同時に、金東雲のからだは韓国にあるんですから、韓国の国家に捜査権があることはもちろんで、また捜査をしなければならぬ大事な義務がある。韓国韓国捜査をする、日本日本で積み重ねてやっていく、そして韓国捜査の結果は誠意をもって日本に報告をせよということになっておる、こう私は了解をしております。そういうことでございまして、韓国捜査が済むまでは日本捜査をこれで終わるんだなどというけしからぬことがあるはずはございません。そういう態度ではございません。どうぞその点は御理解をいただきたいと存じます。
  28. 鈴木強

    鈴木強君 いまの法務大臣の御発言よくわかりました。それで、日本側態度がですね、これは法務大臣がおっしゃるんですから間違いないと思います。行き違いの点は、さっき申し上げたようにひとつ明確にただしていただいて国民の前に明らかにしていただく、こういうことにしていただきたいと思います。  それで、捜査当局にもう少しこれからの問題として伺っておきたいのですけれども、もうすでに私たちもここで伺っておりますように、金大中氏を連行したホテル・グランドパレスのエレベーターの中で金前一等書記官のほかに三人の共犯者がいた、こういう点がございますね。そのほかに最近また五人乗っておったというような証言も出ておるようですから、そういう点を含めて事実解明をしていかなければならぬと思いますが、少なくとも金大中氏の証言等からみると、二、三十人以上の人がこの事件に加担しておったということもいわれておるわけです。それに数台の車とモーターボート、五百トン級の船舶、こういう大がかりの犯行の資金、おそらくさっき申し上げたようにこういう金が金東雲のポケットマネーから出るなんということはとうてい考えられないことであって、ここにわれわれが組織的、計画的な犯行であると、こういうふうに断定をして間違いないという理由が出てくると思うんですね。こういう点を含めてこれから捜査をやっていただくわけですけれども、問題は、金大中氏も、まあ今回の政治解決といわれている中身を拝見しますと、何かもう自由の身になったごとき報道がなされております。しかし、金外相が五日の日にソウルで発表しているのを見ると、まだ旅券の申請もないというようなことですけれども、いずれにしても、自由になれば日本に来ようがアメリカに行こうがこれはかってでしょう。ですから、そうなれば日本のほうにも来やすい条件になるわけですから、金大中氏の来日を求めて捜査に協力していただく。また、金東雲氏も容疑が明らかになった以上は、それは大臣おっしゃるように韓国国内においていろいろな取り調べも捜査もやられていくでしょうけれども日本に対してもひとつ捜査協力のために来日をしていただくとか、あと梁一東さんでしたかね、それから金というもう一人国会議員がおりましたね、こういう方々を含めて、少なくとも間違いなく当時事件に関与したと思われるような方々の再来日ということをお願いして捜査を徹底的にやるとか、ひとつこういう方針で進んでほしいんですね。これは外務省なりあるいは法務大臣等の御協力を得なければいかぬと思いますから、いずれにしても、いま法務大臣おっしゃったような態度で進んでいくことが正しいですよ、これは。ですから、そういう方向でいってもらいたいと思うんですが、これらの未解決の問題について若干その後捜査が進んでわかる点があったら発表してもらいたいんですよ。いずれにしても、こういう政治解決がされるに際して、韓国日本捜査当局がこの事件に対してこれこれこれこれこういうふうな捜査をして、こういう事実がこうなっておりますということぐらい国民の前に明らかにする必要があるでしょう、こういう政治解決をするのには。そんなものは一つも発表されておらない。そうしてやぶから棒みたいな形でああいう政治解決がぱっと出てくるもんですから、一体どうしたんだという不満国民の中から出てくるのはあたりまえ。一体、どこまで捜査が進んで、今後、私が申し上げたような点についてどう説明されるのか。これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  29. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 前回の当法務書見会においてお答えをいたしました以後の捜査の進展状況について簡単に御説明をし、今後の方針について続けて御説明をいたしたいと思います。  その後捜査の進展いたしました点は、先ほど触れました金総理の来日によりまして、私どもが主張をしておりました金東雲一等書記官本件関与容疑韓国側が認め、かつ、金東雲に関する捜査継続をするということを認めたという点が一つ。  それから、これはごく最近になりまして、事件当日、八月八日の午後一時十九分ごろ、地下の車庫から出てまいりました「二〇七七」という車、これはニッサンスカイラインの二千ccGTという車だったようでありますが、目撃者はクリーム色の車であったと証言をいたしておりますけれども、この車に四人ないし五人の人が乗っており、日本住宅云々ということを言ってカードを、駐車券を渡し、それに時刻を打刻をしようとしたところ、停車することなくその車が発進をして、出ていってしまった。おい待てということで二度ほど呼びとめたけれども、とまらなかった。こういうことで、どうもその車の助手席に乗っておった人物が金東雲書記官に似ておるということと、その後部座席の床にどうも一人人が横になって寝かされておったようだ、こういう証言をいたしました。実はこの車庫の受付係の方の証言でございますが、その方の氏名、住所等は証人の安全保護のために御説明を差し控えさせていただきますが、この方は、実はすでに過去四回にわたりまして私ども事情聴取を行なってまいったわけであります。しかしながら、従来の証言は、その「二〇七七」という車がなるほど一時十九分に出てきておりますけれども、この車はクリーム色のコロナの4ドアの車で二人しか乗っていなかったという証言を繰り返しておりました。最近に至りまして——それまでは非常に、ほんとうのことを言うと自分の身に危険が及ぶんではないかという心配をされて供述を控えておったようでございますけれども、ごく最近になりましてほんとうのことを言う気になり、私どもにようやくその事実を提示したわけでございます。この結果、これはもうかねてから問題になっておりました犯行時間帯に地下駐車場におりました三十台の車のうち、犯行時間に最も接着をしておった「二〇七七」、これは実は都内だけで百六十一台ございまして、全国になりますと千二百十九台ございまして、長期にわたる捜査の結果、この「二〇七七」はほとんどつぶれました。「品川−五五−も−二〇七七」、この車だけが残ったという状況になったというごと、また、この車が九月の五日付で日本を去りました横浜領事館の劉永福副領事の所有にかかる車であるということ、それと、この車と八月八日の当日、地下から出た「二〇七七」が結びつく可能性がこの受付係の人の証言によって非常に強くなった、こういうところから、私どもはこの車が金大中氏の強制連行に使われた車ではないかという合理的な疑いを強くしておるわけでございます。  この車につきまして、まだ実は捜査当局、断定をいたしておりませんのは、三つ理由がございます。一つは、この車そのものの動向調査をまだやっておらない。つまり当日ほかのところにアリバイがあったとか、こういうようなことがまだ明らかでございません。それから色が若干違います。証言によりますと、クリーム色、白っぽいクリーム色ということでございますが、実際の「品川−五五−も−二〇七七」はメタリックグレーというシルバーグレーでございます。それから目撃者に提示をした限りでは、劉永福副領事がその車に乗っておったという証言を得るに至っておりません。以上のようなことから、この車が犯行に供せられた可能性が非常に強くなったということで、この点につきまして、捜査の結果を外務省を通じて韓国側に通報をし、その捜査結果の回答を待っておるところでございます。  そのほか、複数の共犯者があり、かなり長途にわたる強制移送のルートがあることは間違いないわけでございますが、再々御説明をいたしておりますように、私たちが持っております捜査資料というのは非常に限られております。グランドパレスの現場に残された指紋、現場に残された遺留品、現場を中心とするところの若干の目撃者、これをたよりに捜査を続けておるということと、金大中氏の簡単な供述書なるもの、これは韓国側から提示を受けましたものに新聞報道等によります一般情報も加えまして鋭意捜査を続けておりますが、いまだ共犯者あるいは強制移送のルートに関しましては、これと断定をするに至っておらないというのが現段階でございます。  今後の捜査方針に関しましては、依然として事件の全貌が明らかでございませんので、刑事事件として本件捜査を続行をするという方針をきめまして、金大中事件特捜本部捜査体制も現状のままとし、残されました未解明の車、これもほとんど解明が進んでおりますけれども、まだまだ残っておりますので、この関係、あるいは「アンの家」といわれまする金大中氏が運び込まれたアジトの捜査、あるいは強制移送に使われましたと思われます船、モーターボート等の捜査を続行をいたしております。  韓国側に対しましては、先般の首脳会談を通じまして、重ねて私ども金大中氏の来日——もしも御本人が行動の自由が保障されたのであるならば、来日をして捜査に協力をしていただきたいという申し入れ、並びに金東雲書記官の任意出頭ということにつきましても、将来、先ほど申しましたように、一応韓国側捜査をする、捜査の結果によって処罰をするという意思表示をしておりますので、静観をいたしますけれども、その結果のいかんによっては、これを再び持ち出すということ、それから重要参考人、目撃者であるところの梁一東氏らの再来日等につきまして重ねてお願いをしたところでございまして、また、先ほど申しましたように、私ども金大中氏の供述をはじめとする捜査資料をもっとほしいわけでございまして、この捜査資料につき、韓国側捜査結果がわかり次第、日本側に通報相なりたいということを重ねて要請をしておるところでございます。  私どもといたしましては、この共犯者強制移送のルートを、少なくとも日本国内に関しましては明らかにして、この事件の全貌を解明をいたしたいと、かように考えております。
  30. 鈴木強

    鈴木強君 最後にもう一つだけ伺いたいと思います、時間がありませんから。KCIA関係については、また同僚の佐々委員からもお話があると思いますから、これはもう私やめますが、それで九月二十五日の参議院の本会議で問題になりました、自衛隊の現役の職員が、金書記官に頼まれた興信所長の命令で、七月二十六日から二十九日まで、金大中氏のいる原田マンション張り込みの監視をしておったと、こういう事件がございましたね。これについて当時国家公安委員長にうちの安永議員のほうで質問をしておりますが、金大中誘拐の容疑者またはこれに準ずるものとして取り調べをしているのかどうか、それから金東雲書記官並びにそのグループ捜査の単なる参考人として調べているのかどうなのか、こういうような点で質問がございましたがね、その後この隊員のこの事件に対する容疑についてはどういうふうになっておりますか、これだけひとつ教えてもらいたい。
  31. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 元自衛隊関係者が、七月の下旬に佐藤と名のる男から頼まれて、金大中氏の所在調査をやったという点につきましては、前回お答えをしたところでございますけれども、この元自衛隊関係者は、私どもは、ただいま先生のおことばでございますけれども容疑者あるいは事件関係の被疑者ということで調べておるのではなく、金東雲一等書記官本件に関与したということに関する重要な参考人、証人ということで事情聴取を行なっております。  また、現職の自衛隊員という点につきましては、私ども、すでに退職届けを出した職員がその有給休暇——最後にまとめて有給休暇をとっておった段階、すでに辞令は出ておったようでございますが、そういう段階で、この元先輩のやっております、これも同じく元自衛隊員のやっております私立探偵社にいって調査をした、こういうふうに承知をしておりまして、現職の自衛隊員の関与ということについては承知をいたしておりません。
  32. 鈴木強

    鈴木強君 それは処理のしかたを、もう少し私も調べてみようと思っておるんですけれども、あなたがちょっと触れられたように、年次休暇というのがございますね、二十日間。これをとらない場合には次年度に若干繰り越しができますから、おそらくそういうものを含めまして退職年限というのは、その年次休暇が切れるときに退職するということになっているんですよ。だから、その発令を自衛隊のほうでどういうふうにやっているか私知りませんけれども、少なくとも年次休暇中であればこれは現役ですよ。現役でない者が休暇とれるはずはないんだから。便宜そういう方法をとっているのかもしれませんがね、それもおかしいですよ、率直に言うと。しかし、それはそれとして、そういうわけですから、その点はいいですがね、参考人として取り調べをして、結果的にはどうなんですか。それは金東雲に協力したということになるんでしょう、やっぱり見張りをしておったというんですから。その辺の、参考人としての意見を聞いてみた感じというのはどうなんですか、重大問題でしょう。
  33. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 私どもの印象では、この元自衛隊員の私立探偵社は、営業行為として報酬を受けてやったということで、実は最初佐藤という名前で申し込まれておったわけでございますけれども、どうもおかしい、こういうことで事件発生後に御協力をいただいた、むしろその元自衛隊員の方から非常に貴重な情報、捜査情報を積極的に提供をしていただいたというふうに、そういう心証を受けておりまして、この営業行為で行なったこと、これはまあ私立探偵社にとりましては、その依頼主について、これを警察当局に通報するということは企業生命にかかわることであるけれども、事の重大性にかんがみということで積極的御協力をいただいておりますので、私どもといたしましては、そういう犯意はなかったというふうに解釈しております。
  34. 鈴木強

    鈴木強君 委員長、これはまたあと他の委員会でやりますから、どうもありがとうございました。終わります。
  35. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、ただいま鈴木先生のほうから総論的な意味での詳しい御質問がございましたので、私はそれに続けて質問をさしていただきたいと思います。  まず、この金大中事件に、私ども日本国民がこの問題をほんとうに筋を通して解決してほしいということをもう強く訴えてまいってきたわけでございますが、私ども国民の要望というものは、なぜこの金大中事件に筋を通してほしいか、それには二つの意味があったと思うわけでございます。このうちの一つは、やはり金大中氏を救おうという人道上の意味、日本国内で起こった犯罪によって自由を拘束されているこの金大中氏の人権を守ろうではないか、どうしてもこれは日本国民としても守ってもらわなければ困るという人道的な見地から金大中事件解決してほしいという要望と、第二は、これは国家主権を侵害されてそのままでは困るという国家主権としての立場からのこの事件の筋を通した解決という二つの大きな意味があったと思うんでございますけれども、今度のいわゆる政治的解決というものを見ますと、この二つがいずれも踏みにじられてしまって、形の上では金大中氏の自由が確保されたような報道がこの十月末には一部その々うに報ぜられておりましたが、実際田中・金会談を経た後の現在の金大中氏の自由というものは、私ども見たところでは全く保障されておらないような状態のように感ぜられるわけでございます。これは日本新聞社あるいはまた民間の方々でも金大中氏と個人的に親しい方、あるいは親戚の方で日本に在住している人などがいろいろと電話をかけて直接話をしてみても、この話から金大中氏が自由を確保されたということはとうていうかがうことができない、非常にはっきりしない返事。しかも、こちらから尋ねることに答えるという程度で、向こうからは積極的に話ができないということは、これはやはりきびしい管制下に置かれているということを物語っているんじゃないかということで、まず人道的見地からの解決もこれでははかられておらない、国家主権の問題においてはもう言わずもがな、全く解決されておらないということで私ども大きな憤りを感じているようなわけでございますが、まあこの問題はあとで質問さしていただくことにいたしまして、いま鈴木委員のほうから御質問のあった、この捜査の点について、まずもう少しこまかい点について私のほうからもお尋ねさしていただきたいと思います。  いまグランドパレスから誘拐された車のことについて警察のほうの御答弁をいただきましたけれども、その後のこの経路について、これはいろいろと警察のほうで御捜査を進めておられると思うんでございますが、このことに関連して問題の「アンの家」でございますね、これは実さ近畿におる、特に阪神間に居住しておる在日韓国人の中でも、あのマンションである、このマンションであるというふうなかなり断定的な意見も出ているわけでございますが、もう捜査当局とすると、この点ははっきりとわかっていらっしゃるであろうと私思うわけでございますが、その点いかがでございますか。
  36. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 「アンの家」の捜査に関しましては、ただいま先生御指摘のとおり、地元の住民の方からもいろいろ御協力をいただいて捜査を進めておりますが、基本になりますのは何と申しましても金大中供述でございまして、金大中供述によって「アンの家」を推定いたしますと、Uターンをして高速道路から出たインターチェンジ、おそらく大津のインターチェンジであろうかと、その大津のインターチェンジを基点として考えておるわけでございますが、大津のインターチェンジから約一時間ぐらいのところ、そこで地下駐車場があり、エレベーターがあり、二階に上がったところにあるマンションで、板の間と申しますか、そういう洋間を通って畳の間があるところへ通された、で、韓国の女性らしい声が聞こえた、こういい条件のところを鋭意捜査をいたしております。おおむね近畿地方を中心として、「アン」という名前の家のみならず、それに似た日本姓も含めまして捜査を進め、またエレベーターつきマンションという形での角度からの捜査、これも続けておるわけでございます。現在までのところ何カ所かこの条件に合致をすると思われるものがございますけれども、残念ながら目撃証人その他この八月八日の晩の出入り関係等を証明をする事実関係がございませんで、現在までのところ「アンの家」を特定するに至っておりません。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 私のほうからちょっと伺いたいのでございますが、岡山に居住している金甲文さんという、これ在日韓国人の方でございますが、その奥さんの李弼祚さん、これが奥さんのお名前のように思うのですが、その方のマンションを捜査なさったことがありますか、その方の所有の、阪神間——神戸市内にあるマンションについて。
  38. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいま申しました対象は約千件をこえておりますので、両方の角度からやりましたのを合わせますと千件をこえますので具体的に私承知しておりません。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ私どもの調べたところでは、ここのマンションには、名義人は李さんになっているけれども、現実には李さんは全く住んでおらない。そして、ただここの電話料金が、八月八日、九日、十日あたりにたいへんな高額な電話料金が計上されている、しかもソウルとの間に国際電話がひんぱんにかけられた模様であるというふうなことが盛んにいわれているわけでございますが、そういう事柄についても、これは実は大阪、神戸に居住する方々の中ではもう全くここであるという考え方も非常に強いわけでございますが、そういうあたりはどうなっているわけでございますか。たとえば、千とおっしゃいましたけれども、そこの電話料金などについても全部に御調査、当たっているわけでございますか。そのほかどういうふうな角度からその千のマンションを物色しておられるのか、ちょっとそこを知らせていただきたいと思います。
  40. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 御承知のように通言の秘密という問題がございまして、電話料金だけで国際電電等に捜索令状なしに当たっていくということは現在の捜査手続法規上許されておりませんので、先生御指摘のはやっていないように思います。先ほど申し上げましたように、「アン」という姓名、これに近いいろいろな名前、それから金大中供述の条件に合致をする構造上の条件を持ったアパートとかマンションということでやっておりますが、先生ただいま御指摘の点は実はちょっと私具体的に承知をいたしておりません。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは入管にお伺いしたいのでございますが、これは韓国の女性の方で金鳳実、この人がことしの四月の十九日に羽田より入国しているわけでございますが、その人がどういう理由で入国しているか、また、どういう手続で入国しているか、すぐおわかりでしたらお答えいただきたいわけです。
  42. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) いまこの場に資料がございませんので、時間をかしていただきまして調査をさしていただきたいと思います。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしたら、たいへんおそれ入りますが、私の質問時間一時間ほどありますので、ほかの質問を先にさしていただきますから、その間にお調べいただきたいと思います。
  44. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) もう一回名前を。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 金鳳実、私どものわかっているところでは四月十九日にこれは羽田から入国しているらしいんですが、あるいは伊丹から入国していることになるかもわかりません。私どものつかんでいる情報では、大阪の韓国領事館が身柄保証をして入国になっているということなんでございます。  そうしたら、たいへん恐縮ですが、もしそれをお調べいただくとしますと、これも一緒にお調べいただけるならば、李玉姫、これはそれより前——ちょっと入国した時期がはっきりいたしませんが、もしおわかりでしたら、それも一緒に調べていただきたいと思うわけです。これはもういま正式に日本を出国しておるというふうに聞いておりますが、李のほうは。ことしの五月ごろに出国したんじゃないかと思います。
  46. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) さっそく私のほうで調査さしていただきます。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 警察に伺いますが、いま私名前をあげた二人は何かの関係捜査線上にはのぼってきておるんですか、おらないんでしょうか。
  48. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ちょっと心当たりはございません。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは続けて警察のほうにお伺いいたします。  実は本件事件の起こった八月八日の初動捜査の事柄につきまして、これは八月二十三日以来何回も警察のほうに当法務委員会で私自身もお伺いさしていただきましたし、また各委員会質問さしていただいているんですが、実は同じく大阪の府会におきましても、やはりこの金大中氏の大阪府警の捜査が府会で問題になりまして、そのことの質問がされておるわけでございますが、実はこの国会の御答弁と大阪府警の本部長の御答弁とが非常に食い違ってきているわけなんでございます。そういうことで、実は私これは時間がないのでそこまでできないと思いますが、これは大阪府会の府警本部長の答弁をテープにいまおさめてきたわけでございますけれども、そのあたりで警察のほうの本庁でおっしゃっていることとどうも話が違うという点なんでございますが、一体この事件が起こったときに、これは私のほうからもお尋ねしましたが、特に衆議院の地方行政委員会の議事録を見ましても、八月二十四日の質問に対しまして高橋警察庁長官が述べておられるのでは、「午後三時四十分、全国警察に対し、各空港、各港及びそれに通ずる主要道路につき検問、警戒を実施することを指示した」ということを言っておられるわけで、次の地方行政委員会、八月二十八日にも警備局長が同じく道路における検問は名神高速では滋賀県、大阪では茨木インターをやっていると御答弁になっておる。これは実は佐々外事課長のほうからも同様の趣旨の御答弁があったと思うわけでございますが、実は、これは大阪府で調べたところでは、茨木インターのほうはこういう高速道路の検問はやっておらぬわけなんですね。また、やるようにという指示は全然受けておらぬという話なんでございます。これは空港と港を警備するようにという指示を受けた。しかし、それに通ずる主要道路を検問するようにという、検問とか警戒を実施することについての指示というものは本庁からは受けておらない。したがって、そういう高速道路の検問はやっておらないという答弁になっており、また事実、茨木インターを調べたところ、そういう指示に基づく検問はやっておらない。茨木インターというのは、御承知と思いますが、大阪のうちでは豊中インターなどと比べるとずっと交通量は少ないわけでございますね。やるなら一番肝心の豊中インターをやらないといけないわけですけれども、豊中、吹田などはもとよりやっておらない。茨木もやったと答弁しておられるけれども、これは通常の午後十時から十二時までの——これは毎日やっている分です。これはやったけれども、この金大中氏の事件に関連して道路の検問をやるような指示も受けておらなければ、したがって、そういうことはやっておらないという、こういう答弁になっているわけなんでございますが、そのあたりはどうなんですか。この府会には府会に向くような、府会議員が満足するような答えをし、国会に出てくると国会のほうが満足するような、これはちょうどこの間の韓国の総理みたいなもので、あっちとこっちとそれぞれ向くような答弁をされたんじゃ、これはもう何のために審議しているかわからないと思うんですから、責任のあることをもっと言っていただかないと困ると思いますね。
  50. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 御指摘の点につきまして、実は昨日御連絡ございましたのでさっそく調査をいたしましたところ、なるほど八月二十四日の地方行政委員会警察庁長官が御指摘のような答弁をいたしており、また警備局長も私も茨木インターチェンジで高速道路の検問を実施したという御答弁を申し上げております。また、「検問警戒の実施状況について」という全国的な回答をとった際に、大阪からは茨木の検問の報告が入っております。したがいまして、私どもは、茨木インターチェンジにおいて検問を実施したというふうにお答えをいたしましたが、大阪府警側の説明によりますと、実は、この茨木インターチェンジの検問は、御指摘のとおり、特に金大中事件のために実施しているものではなくて、交通検問のために午後十時から十二時まで実施をしたものである。ただし、この実施の最中に、たまたまそういう金大中関係のがあったわけでありますけれども、この検問中に不審車両を発見しなかったということを報告したものであると。この点に、地方からの、大阪からの報告と——ども全国一斉にとりましたので、その点の詰めが若干甘かった点は私ども反省はいたしておりますが、必ずしも府会には府会に向けての答弁、あるいは国会では都合よくということではございません。この点御了承いただきたいと思います。私どもといたしましては、全国の高速道路の検問という問題につきましては、これは当委員会でもあるいはほかの地方行政委員会でも御答弁申し上げておりますように、実は一つの新しい警察取り締まり上の課題でございまして、この種の事件があったときに警察庁の指示によって一斉に高速道路のインターチェンジの検問をやるという制度が現在までできておりません。関連府県同士相互の連絡でもってやり合うという体制になっておりまして、この八月八日の午後三時過ぎの検問指令は管区警察局に対しまして私どもが指示をし、指示の内容は、偽りなく空港、港並びにそれに通ずる主要道路となっております。この点、高速道路の検問体制につきましては、現在、特殊国際事件対策委員会というのを設けまして検問のやり方の改善について検討いたしておるところでございます。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁でなんですが、特に使い分けをしたのじゃないとおっしゃるけれども、現実には、結果的には使い分けをしておられるわけです。そして、この事件が、現実に私ども大津へ出たのか茨木へ出たのか豊中へ出たのか知りませんけれども、ともかくその指示どおりにそのときにほんとうに指示をしておられたなら、これはもうそこのインターでつかまっていた、発見できた事件なわけですね。おそらく私は、そうはおっしゃるけれども、この事件については警察は一生懸命なさったとは思いますけれども、すべてを初動捜査のおくれということ、初動捜査のおくれのためにこうなったということにすりかえられておりますけれども、かりに初動捜査がおくれても、あの時期に高速道路、各インターをチェックするようにという指示が徹底して出ていたならば、これは間違いなくもうその三カ所のどこかでつかまった。私もそのとき思ったのです、茨木インターということを言われたのでね。これは大阪の地理を少しでも心得ている者なら、伊丹空港に出るにしても大阪港に出るにしても大阪市内に出るにしても、これは茨木インターでおりる人はまずないので、みんな豊中インターでおりるわけですね。なぜ茨木インターだけをわざわざおあげになったのかなとそのときふしぎに思ったわけですけれども、これは結局そういう指示はしないで、豊中インターから出たか出ないかは知らないけれども、ともかく見過ごしてしまったということなわけでございましょう。それだったら、やはりそのことははっきりと警察としても、いいかげんなことを言わずにはっきりしていただきたいと思うわけです。要するに、そういう指示は徹底しておらずに、いまあげた吹田インター、特に豊中インターにおけるチェックは金大中氏に関連しては何も行なわれておらなかったというわけでございますね。
  52. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 重ねて御説明をいたしますと、この高速道路のチェックのしかたにつきまして体制的な不備な点があったということにつきましては、それぞれの委員会で全部この事実を私ども反省をいたしております。当日お答えをいたしました具体的なインターチェンジの名前は、それぞれの県からの報告のあった具体的な名前をこの場であげたものでございまして、このほかにも非常に具体的な滋賀県の栗東であるとか、彦根、京都南、岐阜の関ケ原というような具体的な名前をあげましたものは、府県から報告のあった具体的なものを申し上げたものでございます。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、いま高速道路の件のことはこのあたりにいたしまして、この問題のグランドパレスにあらわれた畑中金次郎ですね、このことについてちょっとお伺いしたいのですが、捜査当局では畑中金次郎というのは特定の個人であるというふうにお考えになっておられるのか、あるグループを畑中金次郎というのだとお考えになっているのか、そのあたりの見解をまずお述べいただきたい。
  54. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) いままでの捜査結果では、畑中金次郎は複数であるというふうに判断いたしております。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは当初から複数だというふうに警察はもちろん考えておられたでしょうね。
  56. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) はい。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 考えておられたということですね。
  58. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) そのとおりでございます。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 大体警察の常識とすると、この韓国CIAのグループが日本名を使って何かの行動をする、そういうときに、大体普通何人のグループというふうに読んでいられますか。
  60. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) その点については、特に具体的な数字というものは承知をいたしておりませんし、また前例もございませんので何ともお答えいたしかねます。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま前例がないとおっしゃったんですけれどもね、ほんとうに前例はないんですか。私はどうも前例はたくさんあるんじゃないかと、この金大中事件のように大きな問題になるのは初めてでしょうけれども。いままでかなり前例があるんじゃないんですか。CIAの活動というようなものは、こういう話題になることは別として、警察などでキャッチしていられる分では、たいてい複数のグループが、普通私の感じているのは四、五人じゃないかと思うんですが、それが一つの特定の日本人の名前を使ってCIAの諜報活動をしている、そういうふうに警察のほうは大体キャッチされているのかどうか。あるいは私の一方的な主観なのかもわかりませんから、いま伺っているわけです。
  62. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) たびたび御答弁申し上げておりますように、警察はこれまで特に韓国CIAを視察対象といたしておりませんでしたので、そういう事実を掌握しておりません。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは非常に残念な話なんですけれどもね、在日韓国人の方々の話、多くの人々のいろんな話を総合してみると、視察対象というようなことは初めてかもしれませんけれども、やはり警察——ちょうど佐々課長が外事課だから申し上げるわけじゃないですが、外事課とはもう常に協力関係で、いままでいろんな仕事をやってきたという話がずいぶんあるわけなんですね。だから非常に外事課としてもやりにくいんじゃないだろうかと、そういうふうな話が、これはどこまで信用していいのか、私もちょっとなになものですから、実はそれについてのデータとか、あるいは写真も若干は持っているんですが、これは私としても裏づけのとれてないことですから、いまここで軽々しくお見せしようとは思いませんけれども、どうも聞いてみると、警察の某外事課の方とかつて組んで仕事をしたことがあるとか、そういう人がちょいちょいいるんですよ、残念ながら。どこまでほんとうかわかりませんが……。外事課長とすると何にもそういうことは御存じないわけですか。
  64. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 具体的な事例をお示しいただければ調査をいたしますが、私は承知をいたしておりません。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり私は、具体的な事例を持っていますけれども、ここで示したくないと言っているわけなんですね。おたくのほうでわかっていられたら、私のほう示す必要ないわけなんですけれども、何にも御存じないわけですか。
  66. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいまお話しのような例は私は承知いたしておりません。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは公安調査庁の方もお越しでしたらちょっと伺いたいんでございますが、実は私もその方個人は全然知らないので、何も申し上げたくはないんですが、実はある写真を私はもらいまして、これは韓国人、特に元韓国領事館などにつとめていた人たちの話では、この人は在日韓国人の青山という人だと言うて聞かぬわけです。ところが一方、これを法務省関係のある方に、お見せしますと、これはつい最近まで大津の公安調査局ですかの課長をしておった人間に間違いないというわけなんですね。実は私も非常にふしぎに思いまして、これ、いまのじゃない、ちょっと二、三年前の職員録を調べてみると、確かにこれは大津におられる何の何がしさんだと。名前をあげるのもちょっとお気の毒だから、いま名前言いませんが、と言われて調べてみると、確かにその方の名前もあるわけなんですね。で、住所を調べておたずねすると、最近まで——ちょっと近所の方、公安調査局というのは知らないで、法務省のお役人さんだと聞いておるというわけなんですね。ところが、いまその方はやめておられて、いまはもうおられないんですけれどもね、まあ名前を言うてもよろしいけれども、そういう人がいるわけなんです。まあ他人のそら似ということもあるし、あるいは一卵性双生児だっているでしょうから、よく似ていることもあるだろうと。しかし家族関係とか何やいろんなことが全部同じなものですから、やはり同一人じゃないかと思わざるを得ないわけなんです。何かそういうふうなことは、公安、調査庁とするとお気づきの点がありますか。
  68. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 昨日の夕方、御質問趣旨を承りましたので、さっそく関係局に照会いたしましたが、いまのところ思い当たる節はございません。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 実はその青山という人ですね、もう一人いるわけなんです。で、その人はどこにいるかといいますと、大阪府警の外事課におるわけなんです。それも同じことなんです、その写真が。いまやめておられるわけです。最近やめられたわけです。で、その写真を見せると、やはり在日韓国人のある種のグループの方は、これは在日韓国人の青山だと言う。同じ名前です。ところが、その方はれっきとした警察官なんです。外事課の警察官。どうもその青山という名前の人ばっかりが、ウリ二つの人が二人ずつそろっているというのも私はもう一つ合点がいかぬわけですけれどもね。何かそういうふうな人たちで組んで——実は私、やられた仕事の内容も若干教えてもらったわけですが、むろんこれも裏づけのないことですから、いまここで軽々と言うべきことじゃないと思いますので申しませんが。そういうふうなことが、これは私、たまたまこのことをいま名前あげましたけれども、どうもそれだけじゃないようなんですね。どうも一つの写真が、あっち側とこっち側と別々の人物になっている、ジキルとハイドのようになっているというような話が、これは単なるデマではないと思うんです。そのあたり警察のほうとすると何にもわかりませんですか。わからなければ次々資料出していかないとしようがないわけですけれども
  70. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 承知いたしておりません。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 それじゃ、これ、やむを得ませんからお名前を申し上げますけれども、これは大阪府警の外事課長をしておられた兵頭茂義さん。いまはやめておられます。ところが、これはいま言いましたように同じ時期に、というよりも、ずっと韓国人仲間では、実はあれは韓国CIAの青山だと。これはきわめて韓国CIAのグループの近い筋の人たちはそう思い込んでいるわけです。それと同じことを、これ、公安調査庁のほうもおっしゃってくださらないものですから、お名前をあげざるを得ないわけですけれども、これは昨年退職しておられます。まあ、いまはやめて民間の会社の寮の管理人をしておられるようなので、せっかく平和に暮らしていらっしゃる方の名前をあげたくないわけですけれども、滋賀公安調査局の第二課長をしておられた安部英夫さん、この人も同じく韓国人仲間では在日韓国人、しかも領事館に出入りしているCIAの青山という人だというふうに思い込まれている。一ぺん御調査くださいませんか、そのあたり。
  72. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) いま御指摘の青山英夫という人物、私、いま承知しておりませんが、御質問のように、公安調査庁に勤務していた者であろうと存じますので、お話しのような事実の有無については十分調査してみたいと思っております。
  73. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいま御指摘の兵頭茂義でございますが、私の承知しております限りでは、歴代の外事課長にこういう名前の者はおりません。外事課員の中におったかどうか、この点調査をいたしてみますが、その点、私の記憶では外事課長には該当者はおりません。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはそれじゃ外事課のほうで、課長じゃないのかもしれませんが、調査していただきたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  75. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 調査はいたしますが、どういう関連で——つまり青山という名前でどういうことをいたしたのかという、その具体的な行為の内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 いや、いままでのいきさつを聞いていると十分おわかりじゃないですか。大阪府警につとめておって、日本の側から見ると大阪府警の警察官ですよ。しかし、韓国糸の側の人から言うと、この人は韓国の領事館に出入りしているCIAの青山という人だというわけなので、非常に裏と表とから見るところがまるで違うから、私としても非常に疑問に思っている。重ねて言いますが、私はそういう情報まるまる信じているわけじゃないからですよ。ただ、そういう声が非常に多いので、確認をしてくれと言うているわけですが、しかし、これはかなり多くの人の言うていることは事実です。ですから、さっそく御調査していただけますね。昨年やめております。
  77. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 調査いたします。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 そのように、どうも韓国CIAというものが非常に日本の中にたくさんいるという、まあ国家公務員あるいは地方公務員が、それの何か兼ねておるかどうかということは別問題として。だから、それを調査してくれと言うているわけですが、日本人にも韓国から頼まれてその諜報活動を手伝っている者もかなりいるということでございますけれども、どうもこの話を聞いていると、韓国CIAのほうも、その中央情報部にお覚えがいいとたくさんの諜報活動費が出る。しかし、大体においてCIAに所属している者はかなりの給料はもらえるけれども、諜報活動費というものは大体現地でまかなうというのが基本的な原則になっておって、そのために、どうしても金のない人間ばかりを調べていたんじゃこれは金にならぬというので、ある程度金のある、小金のある在日韓国人がそのやり玉にのぼっているというのが、これは事実でございますね。そういうようなことは警察は御存じでしょう。この間も私、民団の、大阪の布施の支部長のことも申し上げましたね、さっそく調べるとおっしゃったですけど、調べられましたか、どうですか。
  79. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 御指摘の点、調査をいたしておりますけれども、そういう被害申告その他がございませんので、何とも実態がよくわかりかねます。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 被害申告なんかあろうはずがないでしょう。向こうの人はCIAと日本警察の外事課といったらみんな同じだと思っているから、そこへ被害申告する人はだれもないですよ。だから、同じじゃないのであるならば、そうそう受け身な姿勢でばかりいないで、警察はもっと調べてほしいと思うわけですよ。手口だって、警察は私、百もわかっていると思うんですよ。どういう人たちがCIAのやり玉に上がって、どういう方法で拉致されて、そうしてどういうお金が動いて、そうしてその人たちが釈放されているかということぐらい、これはみんな知っていることですよ。みんなというか、多少ともでも韓国問題に関心のある日本人ならだれだって知っていることでしょう。それは立場上言えないかもしれませんけれどもね。それでは、むろん加害者日本人じゃない、被害者日本人じゃない場合が多い。しかし、そうした事柄が起こって、大きなお金が動くのは日本国内なわけですね。それがどういうルートでどう回っているかは、それは韓国へ回る場合もあるかもしらないけれども、そういう事柄について警察が何にも解明してないなんというようなことは、話にも何もならぬじゃないですか。もう少し、私はここまで言うているんですから、わかっていることを——いままで、これ三カ月も四カ月も金大中事件一つとらえても捜査していられるのですから、そこら辺のところ、もうちょっと、自分のほうで探知したところではこうだぐらいの話はできるんじゃないですか。
  81. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 捜査当局捜査をいたしておりますのは、金大中氏誘拐拉致事件でございまして、そのほかの事件につきましては、先ほど来申し上げておりますように、わがほうに捜査の端緒がございませんので捜査をいたしておりません。したがいまして、ただいま御指摘のようなほかの誘拐事件があり、多額の金が支払われて釈放になったという事例は承知をいたしておりません。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは警察が本気になって捜査してない証拠だと思います。金大中事件というものだけを切り離して金大中事件の解明ができないことぐらい百も二百もわかり切ったことじゃないですか。そういうふうなものを全部関連させた上でなければ金大中事件というものがなぜ起こったかということがわかろうはずがないじゃないですか。それを、もしその御答弁をそのまま受け取るとすれば、警察は全然金大中事件については上づらだけ捜査しているような顔をして、中身は何も捜査していないということと全く一致すると思いますが、その点どうですか。
  83. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 金大中事件につきましては、私どもは誠意をもって懸命に捜査しております。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 それならそれで、一生懸命やっているとわかるぐらいの、多少はやっているんだなあとわかるぐらいのことは調べてもらわないと困りますね。これだけいろいろと次次、今度の前の七十一国会も含めてもずいぶん、この国会で申し上げただけでも情報を提供していますよ。これ、つなぎ合わしただけでもいろいろなことがわかりますよ。それもやっていられないわけでしょう。いま初めて聞いたような顔をなさいます。ただ、そういうことで在日韓国人が非常にもう薄氷の上に立っているような思いをしている。しかも、それに関連している、まあその家族であったり、使用人——使われておったり、あるいは身近なところにいると利害関係を持つ日本人も、同様にたいへんに不安な思いをしているわけですよ。それはわかるでしょう。この間の警察の御発表をそのまま受け取るとすれば、しただけでも、パレスホテルから出た車の目撃者が、CIAがこわいためにいままで言わなかったというんでしょう。その時代はまだ金大中事件が起こったばかりで、CIAのこわさというものがまだPRされていない時代ですよね。そのときでも日本人のその人はすでにそう言うたとするならば、それからあとみんながどんな不安な気持ちで過ごしているか。それを申告がないから警察は知らぬ、そういうことじゃ私はとてもかなわないんじゃないかと思うわけですよね。それを前にも、これは警察だけじゃなくて法務大臣にもお願いしているわけですけれども、告訴のない事件以外は法務省とするとタッチできぬとかいうような御答弁で、私はこれはやはりどこの省がやるのか何かは知りませんけれども、少なくとも在日韓国人とまた日本人とがたいへんに不安な気持ちでいる。冗談にも、会話の中にも出てきますよ。CIAがいるんじゃないだろうかなどということは、あらゆる会合で、きっとこの中にもCIAの二、三人はおられるんじゃないかというようなことはもうたいていの会のときにそういう話題が、これは日本人ばかりの会でも出るくらいにやはり日本人はみんな不安なんですよ。ましてや在日韓国人は非常に不安な状態で、正直言って、もうCIAのことなどこちらが聞こうものなら、ふだんりっぱな社会生活している人が、全身ふるえて最後まで何も声にもならぬ、もうがたがた、ほんとうにがたがたふるえて、おそろしいと言うわけですね。そういうふうな状態が日本国内でずっと起こっているのに、やはり私は、法務大臣はもうちょっと何とかこういう問題についての前向きな取り組みということをしていただきたいと思うわけです。まあ金大中事件が起こるまでは、あまりそのことが一般的な問題とは——まあなってはおったでしょうが、普及されておらなかったから、そういうことを特にお取り組みになっておらなかったにしても、もうすでに三カ月以上たっておるわけですから、そういうことについてその後法務省とするとどういうふうな方針をお立てになったのか、法務省としても前向きで考えるということは前から言うていただいておるんですから、どういうふうな事柄を国民の人権また在日外国人の人権を守るために考えておられるのか、まず大臣にそのことを伺いたいと思うわけです。
  85. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いま佐々木先生仰せのことは、在日韓国人のまあ一口に言うと人権に関する問題として強い関心を持たなければならぬのが法務省の立場と思います。そこで、なるほど仰せのようにそういう懸念が、不安が在日韓国人にあるのではなかろうか、また、はなはだしきは日本国民の一部にもそういう不安があるのではないか、これを取り除くためにどういう措置を講じたらよいか、責任のがれを言うのではないのでありますけれども、これはやはり警察当局ともよく相談をいたしまして、ひとつ具体的な検討を加えてみたいと、こう考えております。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、この金大中事件が起こりまして以来、法務大臣非常にこの問題について閣僚の中でも特に前向きの姿勢でこの問題の金大中事件と取り組まれてきて、国民の期待は法務大臣に集まっているというふうな状態なわけでございますけれども、この金大中事件の解明をしていくためにも、ぜひともいまの御答弁を具体的にどういう方法で在日韓国人の人権、またそれに関連する日本人の人権を守るために法務省としてとっていくかということを、私ぜひ前向きの姿勢でお取り組みいただきたいし、また、どのように今後お取り組みいただけたかということもまた重ねて次の機会にでも伺わさせていただきたいと思いますので、どうぞ国民が納得するような法務行政をひとつぜひともやっていただきたいと思うわけなんでございます。  それから、今度のまあ事件解決でございますが、法務大臣はもう終始一貫、この事件については筋の通った解決をするということを本国会でも御答弁いただいたわけでございまして、私は非常に心強く思っておったわけでございますが、まあ一部の文化人の——文化人というか一部の国民の中には、あれはもう最初から各閣僚の中でそれぞれ分担をして、法務大臣国民向けのPRをする、それからまあ外務大臣はちょっと渋い答えをするという、これは分担が最初からきまっておったんで、その国民向けのPRをされる法務委員会答弁を聞いて喜んでいたのが、入間がよっぽど甘いのだということで、また逆におしかりを受けているようなわけなんですか、まさかそんなことはないでしょうね。これは大臣はどういう事柄でそういう発言をずっとしてくだすったのか、ちょっとそこをおっしゃってください。
  87. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 申しわけございません。そういうことは全くつくったできごとで、つくったことで、そんな分担をきめて発言をしたなどということは、発言の前後の状況から見ましても、そんなことは全くございません。それで今度の問題でも、これは外務当局が外交の面でいたしましたその問題の決着でございます。私は、その決着についても評価すべき点は評価はしておりますけれども、それをもって日本捜査がひとり歩きのできないような結果になってはたいへんだということで、たいへんにこのことは心配もいたしまして、そういうことのないようにという当然のことでございますけれども、これを推し進めておるという事情でございます。適当に分担をきめて話をしておるのだなどということはゆめにもございません。たいへん片腹痛い心持ちでございます。そういうことはございませんので、どうぞ御信用いただきたいと思います。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあその御答弁伺って安心したわけですけれども新聞報道によりますと、アメリカの駐日大使が離任するときに法務大臣金大中事件について特にお話をされ、何らかの御依頼があったというふうなことが記事の上で拝見しているわけでございますが、それは事実でございますか。あったとすればちょっとその内容などをお漏らしいただきたいと思うわけですが。
  89. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私の舌足らずから幾らか誤解がございますので、この機会に御報告申し上げます。  アメリカ大使館の大使が離任に際して法務省大臣室にごあいさつにおいでをいただきました。それで、本来でございますと立ったままですわらずにお帰りになることが通常の例のようでございます。しかし、長く日本につとめていただいた大使でもあるし、私のほうから、まあすわれということですわっていただきました。そして私が申しました——向こうが言うたんじゃない、私が言うたんでありますが、私の言うたことは、一体金大中事件という事件を見て何と思うのか、アメリカは何の目的韓国を育てたのか、韓国日本と、この大事な両国を提携せしめてアジアの安定、極東の平和ということに寄与することが目的韓国を育てたんだろうと、こう言いましたら、それはそうだと。それならだめじゃないかと、このままでは。指紋が出てきておるのを知らぬ存せぬなんという国を相手に交際できるか、そういうことをそのままほっておいていいのか、それは日本が言うことじゃない、アメリカのやることじゃないか、こういうふうに私が言いましたところ、非常に何と申しますか、感激して私の手を握って言いましたことばは、おことばごもっともだと、新しく任命されたキッシンジャー長官にこのことを進言すると、こう言いますので、それは進言はけっこうだが、ほんとうにするのかと、この場限りのあいさつをしておるんじゃないのかと、ほんとうに進言をするのかということを私が尋ねました。これが要らぬことといえば要らぬことでございます。ほんとうに進言をする、そういう話は——そういう感触、そういう話は初めて聞いた、法務大臣そういう考えでおやりになっておるということであれば、これを必ず進言をするということを申しましたので、ぜひ進言をしてくれということを最後に私がつけ加えて、また二度目手を握って別れたと、こういう事情でございます。頼んだんじゃないかと、こう言われると、結果は頼んだようにもなっておるんですけれども、決して私は日本の外交をアメリカに頼んだんじゃない。日本の外交をやるならば、それは大平君がやりゃいいんで、私のやることじゃないんで、所管が違うぐらいな常識は持っておるわけです。ついそういう雑談になって、そういう雑談をして帰った。まさか新聞に書くと思わぬものでありますから、長い話は何をしておったんだと言って新聞記者が尋ね込んできたので、こうこうこういう話なんだと、こういう話をいたしましたことが新聞記事に出まして、たいへん各方面から誤解を招いたということでございますが、他意はなかったんであります。指紋を知らぬ存ぜぬということはけしからぬということが念頭にあっての発言で、アメリカだって韓国を指導する責任があるじゃないか、指導せぬとほっといたら両国はめちゃめちゃになるじゃないかということを言うたのがアメリカさんの気に入った、こういう事情でございまして、これという他意のある話ではございません。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 お話よくわかりました。日本国民のみならず、アメリカにまで大臣発言は非常に御評判がいいわけでございますけれども新聞にも、すでにもう私拝見したわけでございますが、大体この金大中事件ですね、まあちょっと解決までは長引くだろう、しかしまあ一年ぐらいで解決するんじゃないかと大臣の御発言にあったわけです。その横にちょっと要らぬことが書いてありまして、第六感によればと書いてありまして、その第六感がどうも気にくわぬわけですけれども、第六感によらずに大臣はどのぐらいの見通しを立てておられますか。まあよらずにというとおかしいですが、やっぱり第六感というものも科学的なある種のデータを総合した結果がそういう結論になっていると思いますので、大臣の率直な、この事件についての見通しというものをお聞かせいただきたいわけです。
  91. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) これは厳格に申しますと、捜査当局がお答えを申し上げる筋であろうと思うんです。法務大臣の現在の立場は、まだ事件の送致を受けておりませんで、やがて送致はしてくるものと存じますけれども、現段階においては送致を受けておりませんので、私が捜査当局ではまだないわけで、やがてそうなるであろうということでございます。そういう段階において、現在の捜査がどれぐらい続くものかということを法務大臣がかってな熱を吹いておると、こういうことになろうと思います。  申し上げかねるのでございますが、その当時私の申しました勘で申しますと、まあちょっと時間がかかる。十カ月ないし一年ぐらいはかからないと真相究明には時間的に事が欠くんではないか。といいますのは、被害者がおらぬ、加害者がおらぬ、それから梁一東、金国会議員をはじめとする、この二人の大事な現場の目撃者がおらぬ、参考人もいない、全部韓国へ引き揚げておる。捜査のできる、からっぽになっておる二二一〇号室にただ一つ。こういう中から指紋を取り出して、非常な苦心を重ねておる。これほど困難な、マイナス条件の多い捜査というものは、わが国犯罪史上初めてであろうと思います。その中で捜査当局が非常に苦心をしてその努力をしてくれておる、こういう段階でございますから、時間のかかるということは、これはある種の合理的基礎を持った話と私は思うのでありますが、どうしてもやはり十カ月ないし一年ぐらいはかかるのではなかろうかということを、私の思いを申し上げるとそういうふうに思っております。——本来は捜査当局の言うことでございます。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 入管のほうにお聞きしたいんですが、先ほどお尋ねしたことはお調べいただけたんでございましょうか。
  93. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) まだ来ておりません。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 ああそうですか。  それじゃ、いま捜査の見通しのことについて法務大臣からお話がございましたが、警察のほうはいかがでございますか。特に金大中氏が、これはあるいは外務省の所管になるのかもしれませんが、電話その他の——最近の電話によっても強く日本へ来ることを望んでいるというふうに受け取られることばの節々が非常に多いというわけでございますが、捜査当局とすると、これは正式に来日を要求しているわけでございますね。それから金東雲、これはもう来てもらうわけにはいかぬわけなんですか。それから例の二人の国会議員ですね、その人たちの来日はこれは強く要望しておられるわけですね。金東雲は、これはもう来てもらうわけにいかぬわけなんですか。そうじゃないんでもないんじゃないですか。というのは、共犯者がまだたくさん日本にもおる可能性が非常に多いわけですから。金東雲向こうの法律にかかるにしても、やはりその参考人として、共犯関係を調べるのに、やはり日本警察として金東雲をもっと強く呼ぶということを要求してもいいんじゃないかと思うんですが、そのあたりはどうなっているんですか。
  95. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) まず捜査の見通しでございますが、法務大臣答弁のとおり、被害者である金大中氏、それから重要目撃者でありまするところの金敬仁、梁川東両氏その他が韓国に帰国をしたまま、再々の来日要請にかかわらずまだ再来日が実現しないという段階でございまして、私どもといたしましては、手持ちの捜査資料によりましてじみちな捜査を続け、全貌を解明したいと努力を続けておるわけでございますが、捜査の時期、見通しにつきましては、この金大中氏の来日の時期あるいは韓国側からの捜査結果の情報提供、これがいつ行なわれるかによりましてかなり左右されるかと考えております。また、金大中氏につきましては、再来日を要請しておりますことは先ほど御答弁申し上げましたとおりでございます。金東雲書記官につきましては、私どもといたしましては任意出頭を求めておる姿勢は変わっておりません。しかしながら、先般の首脳会談で、韓国側捜査をし、責任をもって処罰をし、その結果を通報すると。その結果通報の中には共犯者の氏名等が当然含まれるもの、取り調べの結果判明をしたものが通報されるものと期待をしております。したがいまして、自国民不引き渡しの原則であるとか、あるいは外交特権保持者であったというような法律上の障害もございますところから、一応外交交渉の結果、これらの取り調べの結果が私どもになるべく早い時期に伝達をされることを期待をしております。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの件について外務省のほうも、いまの捜査当局の要望を韓国のほうに正式に申し入ればしてあるわけでございますね。
  97. 中江要介

    説明員中江要介君) わがほうの捜査に協力していただくために、被害者である金大中氏に再来日してもらいたいという要望、それから同時に、その場に居合わせてすでに韓国に帰っておられる梁一東、金敬仁両議員も参考人として日本に来ていただきたいという要望、それから金東雲一等書記官がわがほうの捜査の結果容疑が濃厚になったという時点で、韓国側金東雲一等書記官についても任意出頭をしてもらいたいという要望、これはいずれも捜査当局と緊密に連絡をとりまして、正式の外交ルートを通じて韓国側に申し入れてあります。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの田中・金会談の前に金大中氏は日本へ来られるんじゃないかという明るい見通しがぱあっと流れたんですけれども、あの会談のあとにすうっとそういうことが何だかしり切れトンボになったような感じがするんですが、会談の中で金大中氏の再来日ということを、これは国民の何よりも強い要望なんですけれども外務省としたらどの程度、どのようにこれを先方に、韓国側に訴えられ、しかもどういう話になっているんですか。どうもあの会談後の見通しが、会談前と比べると金大中氏の再来日の線が何かうしろに後退しているような印象を受けるような感じがするんですけれども、その間の話はどうなったんですか。
  99. 中江要介

    説明員中江要介君) 当初金大中氏が単なる被害者であるだけであるにもかかわらずソウルで事安上軟禁状態にあるんじゃないかということで、人権問題として関心が高まっておったわけでございます。で、その間に一度後官大使が面会されて、元気にしておられるということだけはわかったわけですけれども、その後、御承知のように、十月二十六日に金大中氏が新聞記者会見をされまして、そして、いままでは韓国捜査当局自分と外部との接触を禁止しておったし、また自分もそれを受けていたけれども、きょうからはそのような必要がなくなった、これは皆さんのおかげで、感謝にたえないという発言をされて、そして海外におけるいろいろな活動についての誤解を招いたことについて非常に残念に思うというようなことを言われて、そのあとの新聞記者との質疑応答の中で一体外国に行くつもりがあるのかどうかという質問に対して、金大中氏は目下のところ考えていないということを言われて、むしろ健康がよくないので、その回復に努力をしたいと、で、いまのような条件のもとでは政治活動を行なう意思もない、海外に行く予定も将来はともかくいまのところないと、こう言われて、むしろ金大中氏が海外に渡航することを含めてあらゆる自由を回復されたという形で新聞記者会見が行なわれた時点で金大中氏御自身が、将来はともかくいまのところ海外に行く予定はないと、こう言われておったわけなんです。で、その後、しかしそれだけ海外渡航を含めて自由を回復されたんなら海外に行かれるんではないかという期待があったわけですけれども、はっきりしておりますのは、ハーバード大学からの招請がきたと、それに基づいてアメリカに行かれるかどうかというのは、これは本人の意思次第だということがまずはっきりいたしましたその後、これは去る十月二十九日の韓国国会における外務委員会での金外務部長官の答弁の中に、金大中氏が海外旅行のために旅券の発給を申請すれば、ほかの一般の人と同様に処理する、ただ、ここで明らかにしておきたいことは、金大中氏に対して何らの制限も加えないだろうし、金大中氏が自由な身であるということであるという御答弁がありまして、そのままになっておるわけです。私ども金大中氏が全く回復された自由意思に基づいてどういうふうに行動されるのかということにはもちろん関心がございますので、韓国側でわがほう大使館を通じて調べたところ、現在までのところ海外に行くための旅券申請なりあるいは査証についての照会、そういうものは行なわれてなくて、全くこれは金大中氏自身の意思に待つということで、事態を見守っている、こういうのが現状でございます。
  100. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあその最初の会見というものがそういうことでたいへんにゆがめられた、あるいはサル芝居であるというふうな印象を——一番最初の、金大中氏が自由になった、自分政治活動もやめる、外国にもいま行くことは考えておらぬという発表ですね、これは非常に抑圧された状態の中で、全く自由を奪われた状態の中でのお芝居であるということが、日韓両国民にそのような強い印象を与えているわけでございますけれども、その後、電話がそれ以後かけられるようになったということで、これは日本からもずいぶん金大中さんに、これは報道陣の方ももちろんですが、一般市民の方からも、特に前から旧知の方々がずいぶんかけてるわけですが、その中でもあまり向こうからは積極的なことはしゃべれない状態である。しかし日本へ来たいかと言えば、もうもちろんだということなんですね。現実に金大中氏がはっきりと日本へ来たいと意思表示されたときには、これは日本へ来させてもらえるのか。というのは、韓国の場合は韓国がこれを承認しないと日本へ来れないわけでございます、出国できないわけですから。これは金大中氏が日本へ来たいとはっきりと意思表示した場合には、韓国政府はそれを承認することになっているのか、日本政府はこれを受け入れるのか、入国を認める——まあこれは認めてもらえる、認めるんだと思いますが、そのときに韓国政府はこれをじゃまをしないというところまで話が詰められているのかどうか、この点を私伺いたいわけです。というのは、日本国民がいま一番求めていることは、ともかく金大中氏に再来日、しかも近い時期に再来日してもらおうということですから、政府とすれば当然この線に沿って交渉していただいているものと思うわけですから、私その話の詰めばどうなっているのかということをいま伺っているわけです。
  101. 中江要介

    説明員中江要介君) その点につきましては、金鍾泌国務総理が来られたときに、田中総理から、金大中氏は出国を含めて、つまり国を出ることを、出国を含めて自由を回復したというふうにわれわれは聞いているし、本人もそういう記者会見をしているんだけれども、その点には間違いはないんだなということは、韓国金鍾泌国務総理に確認しております。したがって金大中氏は出国を含めて自由を回復しておられるとわれわれは認識しておるわけです。それから先は、手続の問題といたしましては、まず出国するために韓国旅券の申請をされることになると思います。旅券の申請につきましては、先ほど申し上げましたように他の一般の韓国人と同様に処理するのであって、金大中氏に対し何らの制限も加えないということを国会韓国外務大臣が言っておりますので、一般人と同様の取り扱いで処理されるものと思います。旅券を手にされまして、わがほうに来るための入国査証を申請されました段階で日本政府の意思というものが働くわけでございますけれども、その場合に、その渡航目的いかんにもちろんよるわけですけれども、いまのような状況で日本の友人に会って、同情してくださった日本の方々に感謝の気持ちを述べたいということで日本に来られるものに対して、日本政府が入国査証を発給しないということはないと、こう思います。
  102. 佐々木静子

    佐々木静子君 その韓国の一般の人と同様にというところがみそだと思うんですね。御承知のとおり一般の人はなかなか韓国の場合は、特に韓国情報部ににらまれているような人はなかなか旅券が出ない、出国の許可が出ないというのが、これが一般的にいわれていることでございますし、また、いまの韓国の権力側から、金大中氏を何かの理由をつけて出国をする条件に該当しないというようなことも、この一般の基準に合わせてあり得るわけなので、それを日本国民が心配しているわけなんですね、一般と同じようにという表現が。いま一般のことを言っているのではなくて、金大中氏が来れるか来れぬかのことを言うているわけなんですのでね。どうもそこら辺に奥歯にものがはさまったような感じを、私ども印象を受けるわけなんです。そこら辺はどうなんですか。一般のことじゃなくて、金大中氏を来さすのか来ささないのか、来ると言った場合に許可するのか、そこら辺の話は結局詰めなかったわけですか。もうちょっとこれは話を詰めていただかぬと、何のために首相同士会われたのかわからぬことになるんじゃないですか。
  103. 中江要介

    説明員中江要介君) その点について、いまおっしゃいましたように、中央情報部ににらまれている人間であるとかないとかいう点に関しましては、これは金大中氏が日本から強制的にソウルに連れ戻された時点以前の行動については、かりにそれが反国家的なものがあったとしても、これは不問に付するという点は韓国側がはっきり言っておるわけでございますので、今回ソウルに連れ戻された時点以前の行動について、金大中氏に制限なり差別なり拘束なりをするということはないという確約は得ております。  それからもう一つは、出国を含めて自由を回復しているということがございます。でございますので、あとは韓国の法令に従って旅券を申請されれば、その時点で韓国政府——それ以外の制限があるのかないのか、これは韓国側の問題ですけれども、今回の事件に関連しまして金大中氏が差別を受けることはないということは確信を得ておる、こういうことでございます。
  104. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、外務省とすると、結局金大中氏の再来日を要請している、そして本人が来ようという明確な意思表示さえすれば、これは日本に来られるという約束になっているんだというわけでございますね。そのように承知してよろしゅうございますね。
  105. 中江要介

    説明員中江要介君) 私どもは筋としてはそのように了解しております。
  106. 佐々木静子

    佐々木静子君 筋としてはというのが何かひっかかるんですが、それは要らぬのじゃないですか。そのように了解しているということでいいんじゃないですか。どう違うんですか。
  107. 中江要介

    説明員中江要介君) 私が申し上げました趣旨は、韓国側にその点を最後のところまで追及いたしますと、何ぶん本人が正式に出国の意思というものを韓国政府当局に言ってきていないので、それを前提とすると、どうするという判断がいたしかねると、こう韓国側が言うものですから、それを、その部分をちょっと筋としてはと、こう申し上げたわけでございます。
  108. 佐々木静子

    佐々木静子君 要するに本人が出国すると、日本へ来るという意思表示を明確にすれば来るということになっているということに承らしていただきますが、よろしゅうございますね。  それでは、いまの法務省の御調査わかりましたんでございますか。
  109. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) 先ほど先生から御質問のございました韓国婦人二人のうち、最初の金鳳実という方について私のほうでわかっておりますのは、その旅券番号、それから職業はオフィシャル——韓国語で公務員と書いてございます。目的は、これも同じくオフィシャル——公務、それから住所が韓国大使館、羽田入国が四月の十九日となっております。付与されました在留資格はこれは公用、公務でございます。なお、この婦人が日本をすでに出国しておりますかどうかという点、これはちょっとまだ調査が行き届きませんので、その点はわからない、これが現在までわかっているところでございます。  もう一人の婦人につきまして目下調査中でございますので、わかり次第御報告申し上げよう、こう思っております。
  110. 佐々木静子

    佐々木静子君 さっそくに御調査いただいて、どうもありがとうございました。  実はこれ、御調査でも判明しているかと思いますが、この金さんが、いま私申し上げましたこの金甲文氏夫人の所有する東灘のアパートにことしの、これはちょっと住み始めた年月がわからないんですけれども、五月以降住んでおって、そしてこの金さんが八月八日、九日にもここのアパートにおった、ところが、その後杳として姿を消している。まあそういうところからですね。しかも、いまお話にもございましたように、韓国領事館と、これでは館員なんでしょうが、かなり密接な関係のある人らしい。ところが、その後全く行くえがわからないというふうに私のほうの調査ではなっているんでございますが、これは旅券の上では、もうわからぬ場合はこれ、わからぬでしかたないわけなんですか。私が聞いているところでは、大阪の韓国領事が身元引き受けをして、これは大阪の韓国領事が身元を引き受けているからには、これからあとどこへ行ったかということはやはり保証する義務があるんじゃないかというふうに私どもは理解しているわけですが、そういうことにはなっておらぬわけですか、どうなっているんですか。
  111. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) これは私どもでは、この婦人の現在の所在、これはまあわからない。それから身元保証人でございますが、これは公用で来ております人物でございますので、特にこういう場合に調査照会というのは通常しないというのが慣例でございます。
  112. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあいまのお調べで、私どものほうで調べていたことと大体しかし入国の日にちとか、それから資格その他というものが一致していたということにおいては、私のほうの調査も全然間違っておらなかったということで、ある種の確信を持っているようなわけなんでございますが、これが世上いわれている金大中氏が拉致されて運び込まれたときに、高い声の若い女性の声がしたというのが、その当時の事情などから推察して、どうもこの金さんではないか。それから、特にこの姿を消した時期が、非常にほかの姿を消した人たちとのタイミングが一致するんじゃないか。そのあたりで、警察はどうなんですか、先ほど来申し上げておりますが。
  113. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 「アンの家」に居住をしておったその女性についての情報としてただいま承りましたが、「アンの家」の捜査につきましては、先ほど申しましたように、条件の合うところについて鋭意捜査中でございまして、私いまちょっと手元に詳細を持ち合わせておりません。また、もしも本件に関連性が非常に深いということになりますと、捜査上お答えできないということが出ようかと思いますけれども、ただいまいただきました情報につきまして、捜査資料として活用させていただきたいと思います。
  114. 佐々木静子

    佐々木静子君 私はこれ、もうあまり警察捜査してほしいとはちっとも申しませんけれども、あまりまたばかばかしいほどゆっくりやっていただくのもどうかと思うわけなんです。いま申し上げているように、かりにですよ。これは全く私の仮定の話なので、非常に多くの方の名誉の問題にも関すると思います。かりにですよ。いま申し上げているマンションというものを考えるならば、これは幸い民間人のマンションですね。だから、やはりじっと待っていれば、幾らじっとがまんの子でも、これはもう何カ月も待っていたならば、これは全部やりかえられてしまう。もうすでに改装されるんじゃないかということを、実は知る者はみな心配しているわけなんです。逆に言えば、警察は改装されるまで時をかせいでいるんじゃないかという説すらかなり流布されているわけなんです。ですから、警察がほんとうに国民の信頼にこたえる捜査金大中事件でやっておられるとすれば、やはりこれは国民の信頼にこたえる行動を形の上でもしっかりとその職務の上で示していただきたい、特にお願い申し上げたいと思います。  最後に、きょうは大臣、御苦労さまでございますが、この金大中事件については、大臣が非常に積極的に国民の輿望をになって立っておられる、そういう意味でこの事件の今後の取り組み方、そして先ほども答弁を若干いただきましたが、在日朝鮮人の人たちのいまおとしいれられている不安な状態、そして関連している日本人の不安な状態というものを、これは法務大臣としてただすためにどういうふうにやっていただけるかということを、最後に締めくくりに御答弁いただきたいと思うわけです。
  115. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいま御発言のことでございます。わが国治安に直接間接に影響があることでございます。いかなる方針を具体的にどうすればよかろう、また現実にどの程度の不安、除去すべき不安の程度はどの程度のものであろうかというような諸問題につきましては、警察当局ともひとつよく部下に懇談をさせまして、適当な機会に御報告を申し上げたいと存じます。
  116. 原田立

    委員長原田立君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時四十分開会
  117. 原田立

    委員長原田立君) これより法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  118. 黒柳明

    黒柳明君 私は、基本的なことからお伺いして、またこまかい問題に入りたいと思いますが、午前中の質疑を聞きまして、法務大臣の基本的な考え方、率直なまた御意見を承りまして、私もある程度評価すべきだとこう思っております。考え方として、一言で言いますと、法務大臣政治解決、外交的決着、これについてはやっぱりうまくないものがある、不満だと、こういうこと、まあ一言で言えば。議事録、こうありますけれども、大体そんな要旨になるかと、私こう思うんですが、そういうことで理解していいわけでしょうか。
  119. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) これ、先生ね、私のこれに対する意見は、外交当局で外交側面で行ないました決着というものは評価すべきものがあると。評価とは何だと、こう仰せをいただく点がないとは言えませんが、私は率直に評価をすべきものがあると。しかしながら、一つ心配する点は、これがわが国のせっかく真相究明を目標にしてやっております捜査の苦心に影響を与えるようなことになるとこれは本意でない、そういう影響のないように政府はしっかり心がけていかなければならないということを私は思うのでございます。そういう心配の念を取り除くようにやっていかなければならない。どこまでも捜査でやり切るんだと、そして真相究明して結果は出すんだと、こういう考え方を改めるようなことがあってはならないということをたいへんくどく私が申しております。その意味でございます。
  120. 黒柳明

    黒柳明君 だから、その政治的解決、外交的決着捜査の続行という面についての私は非常に疑念があるんです。これは当然表裏一体のものだと思うんですよ。総理も外務大臣もあるいは法務大臣も、真相究明しなきゃならないと、いま現在もその基本姿勢は変わってないみたいですね。だけれども、一段落つけよう、あるいはその一段落が最終段階になる可能性もある。ということは、外交的決着、政治的決着によって、法務大臣が非常に心配している捜査に対して何かしらネックが出てきちゃ困る、そうならないようにひとつ配慮を頼む。そういうことは、私は当然これだけの、八月八日から発生した——まあそうじゃない、私はあとで触れますけれども、三カ月間の問題ですから、何かいまになると、事件当初から政治的決着をいつどういう形でつければいいのかなということだけにこう両国政府が奔走してきて、それがつい十一月の初めに出たんじゃなかろうかという疑惑を非常に強く受ける。それが、いまこういう一段落か最終的段階かわからないけれども解決法が、捜査当局に非常に一つの問題疑惑、困るものをもたらすという可能性があると思う。政府ではここらあたり当然話しする時間もあったし、話ししなきゃならないんじゃなかろうか。  しかも、いま外務委員会が行なわれております。外務大臣こう言っているんです、きょうの衆議院の外務大臣ことば。過去の実例から見て、今回の場合は総理大臣みずから陳謝している——これは陳謝じゃないと言っているんです。ここらあたりは、私非常に韓国国会において、ただいま一、二指摘されましたけれども、食い違っている点が往々にしてある、その一つですよ。外務大臣は、陳謝に来ている、向こうの総理がですよ、将来二度とこういうことを起こさないということも約束していった、金鍾泌総理大臣関係者の処分も行なうであろう、韓国捜査も続行するであろう、もうこういうことから見て、決してこれは甘い政治的解決ではない、外交的決着ではない、十分に評価すべきものだと、こう見ているんです。私、それは外務大臣の分野、法務大臣の分野、これをコントロールする政府、まあこれはもう総理大臣に聞きたい。政治的解決とは何であるかということを聞きたいんです、外務大臣に。で、官房副長官に来てもらったんです、長官がいらっしゃらないんで。そういうおのおのの分野はあるけれども、この問題については、私は、そんな分野があって、しかもその両当事者の意見——ある意味では私もその外交的な努力、評価したいと思う一人なんです。党内でも私意見違うんですよ。国際間の問題というのは複雑だと、それはそれとしてたな上げすべきだ、だけれども現実は現実だと、こういうことなんです。ちょっと法務大臣と考え似ているかもわかりませんよね。だから、外務省のとった処置というものを一〇〇%悪だとしていませんけれどもね。それだけでたな上げできないんです、この問題は。当然そうじゃないですか。真相がまだ何にもわかっていない。むしろ、そのことによって疑惑を重ねたようなものなんですから。だけれども、そういう解決法しかないのか。  しかも、向こうの総理大臣が来たあとだって、一、二の点だっていろいろ意見が違っている。そういう向こう意見との違いというものを、まあ総理大臣のことですから——田中総理大臣、いいよいいよ、君、そんなこと心配するな、帰れ帰れなんて、一ぱい飲めよなんということで帰したのかわからないですよ、大きな人ですから、気持ちが。ぼくは、これじゃうまくない。現実、証拠が出ているじゃないですか。国会答弁韓国での食い違いが。そこらあたり、法務大臣も、現在の捜査のこれは最高指摘者じゃないにしても、当然司法の最終の責任者であるわけです。ここの段階においてもっと煮詰めた話をして、そうして外務大臣、総理大臣、この解決はうまくないぞと、こういう外交的解決をしたらあとに禍根を残すぞと、なぜこれを言わないのか。はたして言ったのか。だから、国会で、内向け外向けというような疑惑も出ざるを得ない。私はそんな疑惑を持っていないですよ。みんな一生懸命やっているなと心じゃ思いつつも、私みたいな純真な者でも、何かこう疑惑が起こってこざるを得ない。法務大臣、閣僚、何回もやったでしょう、集まって。まあ物価のことでもあるんですよ。そういう席で、面をおかして、総理大臣外務大臣に、こういう解決法じゃだめだと、さかのぼって、あるいはそのあとでも言いましたか。言ったことありますか。閣内の意見の調整というのはやったことあるんですか。総理大臣に、面をおかして、いまこの国会答弁したようなことはうまくないぞと、一応評価するけれども、私たちについては非常にやっぱり疑念が残るぞと、捜査に対しての何らかしらのうまくない面があればうまくないぞと、こういうようなこと言ったことありますか。閣内の意見調節、できているんですか。私、午前中の外務大臣のこの速記をちょこちょこっと写しただけでも、まるっきりこれ高飛車です。これでいいんだという考えです。微動だに反省の色はありませんよ。どうですか、法務大臣
  121. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 黒柳先生、御理解をいただきたいんですが、これは理屈を申し上げるんじゃないんですけれども、お聞きをぜひ願いたいのですが、捜査は何のためにやるのかと、こういうと、捜査は、犯人が何びとかということを発見して、そうしていかなる動機、情状によって、いかなる道行きでこのからだを韓国、自宅まで拉致したかという経過を鮮明にしてこれを処罰することが捜査の目標でございます。で、この目標というものは、両国外務省が取り扱いました外交的決着というものとは理論的関係がない。その理論的関係がない独立しておる存在である捜査のほうは今後ともやっていくんだと。現にやっておるわけなんです。二、三日前の発表をごらんになりましても現に捜査継続しておるんです。で、この捜査に何だかじゃまになるようなムードが出て、捜査のおじゃまをするようなことがあってはまかりならぬということを私はたいへん案じて、大きな声でこれを主張しておると、こういう事情でございます。それで、何か捜査の途中で政治的決着をしたことは捜査をうやむやにするんではないかというふうに影響が案ぜられておる、これはまことにありがたい考え方でございますが、私もそれを案じておりますけれども、現段階においてはその捜査に悪影響はない、捜査に影響はさせないんだ、捜査捜査で続けるんだと、そういう意味が明らかになっておりますと、いまおしかりのような事柄は出てこないんではなかろうか。捜査はこのままで終わるとか、いいかげんにするとか、これで終わるとかいうことを言っておるんじゃないんで、捜査はやるんだということを明らかにしておる、またやり切る考えでございます。そこのところをひとつ根本的に御理解をいただきたい。  評価もね、評価評価とみなが言うんですけれども、私たち評価は何も行き過ぎた評価をしていないんです。本来この事件というものは、一番むずかしい問題は、主権の侵害という問題もございますし、したがって、原状回復をさすべきだという問題もございますが、もっと大事なことはどんなことかというと、金大中君の自由、人権の問題として重要な意味がある。彼の自由、人権を守らなきゃならぬ、そういう自由、人権を守らなきゃならぬというこの大目的本件捜査が持っておるのでありますけれども、そういう目標に照らして考えるというと、金のからだを自由にしたと、それからこの間は、今後再び同様のことを繰り返さざる限りは過去は問わぬのだという方針を世界に鮮明にしておる、これは一歩の前進ではなかろうかという点は確かに評価すべき重要な一点でございますね。  それから金東雲の問題にしても、鮮明な指紋が出ておるのにかかわらず知らぬ存ぜぬと、こういう態度をとる国というものはあるもんじゃない、けしからぬものだというふうに考えておったやさきに、黒と認めたわけではないけれども容疑は確かに認めて金東雲の職務を免じたと、今後は韓国においても捜査をして、そうして捜査の結果は処罰をするということも明瞭に言明をするに至ったことも確かに第二の評価であろう。  それから大体先生も同じお考えだろうと思いますが、韓国がね、日本を一体何と考えておるのか、なめ過ぎておりますよ、なめ過ぎております。いままでのやり方というものは、話にも何もならぬものです。その話にも何もならぬなめ過ぎた韓国の国務総理ともあろう方がわざわざ出てこられて釈明をし、陳謝を表明された。罪を陳謝したのじゃないのだと、お騒がせをしたことを陳謝したのだという御説明のようでございますけれども、何にしても申しわけなかったという陳謝をされたということは、なめられておった立場から申しますと一歩前進である、この点も評価していい。  私はこの三点を評価しておる。評価をしておるが、心配をしておる点は、先ほどからくどく申し上げたように、捜査に悪影響があってはならぬと、これはもう取り返しのつかないことになるということをたいへん心配をして、捜査当局も引き続いて断じてやるんだという態度を明らかにしておるのでありますから、この点は御心配は要らないんではないかと、こう思います。
  122. 黒柳明

    黒柳明君 いまの点から二つね、なめられている日本、その法務大臣ですよ、ひとつがんばってくださいよ。総理大臣外務大臣がすべて日本じゃありません。法務大臣ですから主導権は完全に持ってくださいよ。なめられてはだめですよ。お願いします。いま二つ——後者からいきましょう。要するに、それではこの外交的、政治的決着捜査を妨害しないという何らかの裏づけ、保証韓国側からとった政治的解決があるならばさらにもっと前進であり評価できるし、心配もなくなったんだのにと、こういうお考えでしょう。何もないですわな、確かな。これからこまかく入りますけれどもね、金大中さんのことだったって裏づけはないんです、何も。どうですか、その点。
  123. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それは先生、裏づけ以上の裏づけがあるんじゃないでしょうか。この両国間の政治的決着で、捜査のじゃまはしないと、こちらはこちらで進める、向こう向こうで進めると、その上、向こうで進めた捜査内容については、詳細に誠意をもって報告するということまで言明さして取りきめが行なわれておるのでありますから、日本日本捜査をする、韓国韓国捜査をする。日本捜査をする理由は、日本で起こった事件だから日本捜査をするんです。韓国捜査をする理由は、現にからだを韓国が持っておるから韓国捜査をする。その捜査をした捜査内容は持ち寄ると——持ち寄るというよりは、向こうからこちらに報告さすと、誠意をもって内容を詳細に報告さすと、それをとらえてさらにこちらは検討を加えるということになっておるのでありますから、これは私は裏づけ以上の裏づけがちゃんとあるものと、こう考えます。
  124. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。ちょっと私も総合的にいままでの話と、いまの委員会での話は分析しませんとわからないんです。  なめられている、韓国に。じゃ、韓国になめられているというのは何ですか。指紋があれだけはっきりしているのにそれを無視した。これはもうさっきから言われました。そのほかに何ですか、韓国になめられているというのは。だから、どうもその点がすっきり、はっきりしないんですよ。その点と何ですか、あと、なめられているのは。
  125. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) なめられているというのは、理屈のない態度でしょう。指紋というものは……。
  126. 黒柳明

    黒柳明君 だから指紋はいいです。指紋はけっこう。
  127. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いや、先生、指紋ね、私がなめられているというのはこれを言うておる。
  128. 黒柳明

    黒柳明君 その一点……。
  129. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 指紋の一点をとらえて私はなめられておるということを言うんです。人類史上三十二億の人間があっても指紋というものは二人とないんです。この二人とないものをちゃんと明らかにしておる、たいへんな苦心をして捜査当局が明らかにしておるのにかかわらず知らぬ存ぜぬと言う。これはなめておる証拠だ、その点はね。そう考えるんです。
  130. 黒柳明

    黒柳明君 なめた点が一点、評価する点が三点と、こういうことですね。法務大臣のこの政治的、外交的決着に対しての具体的な見解。よろしいでしょうね。なめられている点が一点、これは指紋なんだと、それから評価する点は三点。もうさっきから言われましたこの三点なんだと、こういうこと。しかし、捜査については、両方、捜査続行し、あるいは向こう捜査資料をこちらにくれるんだという約束は一応あるからそれを待とうと、その保証をやはり期待しようと、こういうことですね。ですけれどもね、これはちょっと私の邪推かもわかりませんけれども、こういう一段落ということは、やはり本来ならば、さっき引用したように、真相究明して、それで政治的、外交的な手を打つのみこれは当然じゃないでしょうかね。なぜそれじゃ中間的に全然真相がはっきりしないのにそういう手を打ったか。私は政治的、外交的解決というのは決してそういう中間的なものにあるんだという意味ではないと思うんですよ。本来は最終的判断が下った、それに対して、まあ長沼がそうであるか別にしまして、政治的にはこういう意見もあるんだと、それで長沼の場合にはこういう意見が出てきたんじゃないですかね、これは言うまでもありません。  ところが、これは政治的、外交的な決断を下すなんと言ったって、何にもわからない中間にぼこっと下した。これ自体について非常にやはり疑惑が起きるのは当然だし、これが捜査——いままでだったって捜査が全部解明され、究明され、すなおに出たとは思いませんよ、私は。法務大臣はその点どういうお考えになっているか。しかも何回も言うように、韓国国会での発言が食い違っているんですよ。そういう疑念がまだ続いているんですよ。それが中間で政治的だ、外交的だとなるから、これは全部をむしろおおうものだという素朴な疑問が出るのはあたりまえじゃないですか。それを世論を代表してマスコミが指摘するのはあたりまえじゃないですか。どうですか、法務大臣、これはもう当然過ぎるくらい当然だと思いますよ。政治的解決が中間に出ていいなんという論理はありませんよ。むしろ長沼を見たって、政治的解決というのは、法的なもので、あるいはいろいろな条件があるかわかりません。できないから政治的判断を、というものが出てくるんですよ。それだって疑問があるじゃないですか。意見が分かれるじゃないですか。それが何にもわからない。中間にぽうんと来たからおかしいといって、一ぺんに疑惑が集中したじゃないですか。それはなぜかというと、その根底には、捜査真相というものですよ。捜査真相、これについて、いままでだって、三カ月、どうなったんだいと。まして韓国側ですべて容疑者を手元に置いて調べた資料がはたして来るのかな、こちらじゃ何を調べるのかな、すべての三カ月の疑問がそれで、さらにふっ切れないものにふたをおおったという質朴な私たち国民意見、これに対して法務大臣は、もうそのとおりだと言わざるを得ないんじゃないですか、どうです。
  131. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お説はよくわかります。そのとおりだと存じますが、私の言いたいことも一言聞いていただきたいと思います。  先生のおっしゃることは、私は胸一ぱいわかるんですよ。胸一ぱいわかるんだが、一口に言いますと、外交的決着をしたことによって捜査が中断されるならば先生の御意見のとおりなんです。捜査は中断されない。捜査は依然として継続するんです。捜査本部は看板をおろさないんです。おろしたらたいへんなことです、これは。そのまま継続するんです。継続した結果、主権の侵害ということが立証できた場合においては、新たなる事実の発生となります。その新たなる事実の発生が行なわれましたときには、両国の間に、その結果に基づいて新たなる両国政府の間に交渉が始まる、これは言明がちゃんとできております。外交交渉はこれで終わりなんだ、捜査はストップせいと言っておるんじゃないんです。捜査継続するんだ、継続した結果、主権の侵害が明白になった場合に、そういう新事実が出た場合には、新事実を背景にして新たに両国の間に外交交渉が始まるんだと、それは否定していないのでございます。そういうことでございますから、どうか、仰せになるように、途中で中断されたということの誤解になりませんようにひとつ御理解いただきたい。私の言うとること、少し無理がありますかね、これ。私は無理はないと思うんですがね。捜査捜査でやり切るんで、現にやっておるんで、二、三日前も発表しているじゃないかと。捜査が途中でよいかげんになるというなら、おことばのとおり、いかなるおことばがあっても返すことばはございません。それはひとつ御理解いただきたい。
  132. 黒柳明

    黒柳明君 私もそんなことは言ってませんよ。捜査がこれで立ち消えになるなんということは言っているわけじゃない。ただ、いままで捜査もスムーズにいってないように思う、率直に言って。それがまた変なものが中間に来たから、なお捜査がもう一歩後退するのじゃなかろうかという現実的な判断をせざるを得ない。それに対して、そのとおりだと思いますと言うんでしょう。そのあと立ち消えるなんて、そんなことは思っていません。ただ、そのあとについても、はたして向こうはほんとうに——それは主導権は向こうになるんじゃないですか、捜査の主導権は。身柄も何もだれもいないでどう調べるんですか。主権の侵害ということでしょう、大きくは。金大中さんの自由でしょう、完全な。どうこれに対して日本政府は主導的にこれを捜査し、自由というものを保障するんですか。できやしないじゃないですか。九〇%向こうが持っちゃっているじゃないですか、その力を。だからこそ、なおさら疑問が出るのは——こればっかりやっていると時間がおそくなっちゃうんで、この問題は一服しましょう。  ただ問題は、さっきにまたちょっと返りますけれども、全面的に外務大臣が、いいんだ、この判断——。これは、法務大臣がここで、なめられている——。これは明らかにおかしいじゃないですか、この一点だけとったって。どうですか。まあほんとうは総理大臣ですよ。官房長官もいつも逃げちゃうから、損な立場ですよ、副官房長官。しようがない。どうですか。これだけ片っ方は、甘くないんだ、こういう事件は二度と起こさない、関係者だって、さっきから法務大臣言ったのは、調べは続行するんだ、あやまっているんじゃないか、向こうの総理大臣が来て。こういう結末というものについて、外交的解決について、これはもう甘くない非常にりっぱなものだと片っ方じゃ言ってて、片っ方じゃなめられているなんて言ってて、まあこれこそおかしい。どうですか。まあ副官房長官、非常に何か代表する立場で当面はないと思いますけれども、総理大臣、官房長官いらっしゃらない、だからひとつ閣内の意見調整これはもう話し合いしてあると思う。これきりしがなかったのだということを私は暗々感じていますけれども、こう同日に行なわれた国会答弁で、まっこうから違ったのだったらそれこそ判断のしょうがないですな、こちら。どうこれから政府捜査続行——外務省のほうはむしろさっきから言われているように、韓国向けに、いいよ、いいよ、いいよなんて言うのかわからないですよ、どうですか、ここらあたり、いままでにもうちょっと話し合いできたでしょうよ。おそくないですよ、これからでも。総理にすぐ言ってくださいよ、おかしいと、こういう食い違いは。すみません、副官房長官。
  133. 山下元利

    説明員(山下元利君) このたびの事柄につきまして、閣内では十分意思を統一いたしまして、このたびの外交的解決をはかり、なお真相究明のために捜査を続行し、それについての韓国政府の協力も得ていることは、もう先ほど来法務大臣からもお話のとおりでございます。いろいろ表現の上におきましての先ほど問題もございますけれども、私どもといたしましては、あくまで真相を解明するためにさらに努力が払われることを信じておるわけでございますし、また閣内におきましても、そういった点については意思は統一をいたしておりますが、今後ともその方向で進みたいと思うわけでございまして、また、先生の御趣旨は総理大臣に十分伝えたいと思います。
  134. 黒柳明

    黒柳明君 要するに、場は違うのです、聞いている人は違うのです。ですけれども外務大臣法務大臣と、片っ方はなめられているのだということを前提に今後捜査しよう、片っ方も捜査しようということを言っています、外務大臣。第一、陳謝のこと、将来の保証のこと、関係者の将来の処分あるであろうことをもってこれはもう十分評価される結末だと。違うじゃないかというのですよ、これは。これ、まず違うと思いませんか。なお真相究明については続けます、これは同じことですわな。どうです、この点について、確かに私はあげ足をとるようなことで、またあの二つの委員会だから、もっともっといろいろなことがあったのじゃなかろうかということもわかりますけれどもね。片っ方じゃなめられている、それを前提に捜査はするのですからいいじゃないですかと、片っ方は、この解決は十二分にこういう三点出たのだから評価していいじゃないか、だけれども捜査は当然しますよと。根本的に当面の金大中事件の法務、外務の大臣が、前から若干違っていたのに、この場にきたってまた違うということは、これは根本的なやはり政府の姿勢がほんとうにどうなっているのかなと、こういうことなんです。ですから、総理大臣におっしゃっていただくこともいい。法務大臣にお答えいただいてもけっこうです。いいですよ。この点はこういうことであとは国民判断にまかせましょう。これ、やったって外務大臣いないのですから。また官房副長官も出されては困るでしょう。  そこで、まだあるのです。その次の根本的な問題。金大中さんの身柄の自由、主権が侵害されたかどうか、ここでしょうな、大きく二つは、この問題は。主権の侵害、残念ながらこれは何の結果も出てこない。これから出るかどうかも私はものすごい疑問だ、やりにくくなると思う。問題は、それじゃ前のまず第一点、金大中さんの自由の問題、先ほどからも社会党の先生からありました。公式な外交ルートを通じて再来日を要請しているというわけですな、外務省。それは軟禁されていたときには本人の自由がきかなかったのだからそうでしょう、だからやはり外交ルートを通じてその間においては再来日をさせてもらいたいということ、これは当然でしょうね。すでにもう軟禁状態が解かれたわけです。個人の自由意思で、もし本人が渡航手続をするならば渡航も自由であるという保証もされているのでしょう、韓国国会で、あるいは総理大臣の言明によって。であるならば、公式な外交ルートよりも、むしろ本人に対する接触、この点、どうなんでしょう。
  135. 中江要介

    説明員中江要介君) 金大中氏の再来日につきましては、今回の外交的決着を見た段階で、目下捜査当局と今後の扱いについて協議をしている最中でございます。その間、けさほどの答弁で申し上げましたように、従来要請しております分はそのまま続いておるわけでございますけれども、今回の一つの新しいステップがとられたことを踏まえて、あと金大中氏の問題、それからその他の参考人の来日の問題そういったものを捜査当局と協議して措置をとっていきたいと、こう思っているわけでございます。
  136. 黒柳明

    黒柳明君 私は、要するに公式外交ルートを通じて再来日を要請していると、これは外交的決着ができる前もあともというふうに理解しているんですが、そうじゃないんですね。軟禁状態に置かれた状態においては外交ルートを通じて再来日を要請した、韓国政府を通じて、間接的にですね。軟禁状態が解かれてから、あるいは十月の二十六日、あるいは厳密には十一月の一日ですか、金鍾泌総理大臣が来てから、その後それは再来日を要請してないということですか。
  137. 中江要介

    説明員中江要介君) 再来日の再要請はしておりません、まだ。
  138. 黒柳明

    黒柳明君 ああそうですか。そうすると、先ほどから公式ルートを通じて、外交ルートを通じて再来日を要請しているとはっきり言いました。それは時限があるんですね。いつまでの時限ですか。いまの時点じゃないですね、それは。
  139. 中江要介

    説明員中江要介君) 外交的決着を見る時点の以前に要請したものが、いつまでの時限というわけでございませんので、それはそのまま続いていると、こういう認識でございます。
  140. 黒柳明

    黒柳明君 だから、外交的決着がつく前、軟禁状態に置かれているうちに再来日を要請したと、その後について、決着ついたあとについては検討中だと、こういうことだ。金大中さんの再来日——まあこれは再々来日というのかね、再来日してないんだから再々と言わない、再来日だと思いますけれども個人の自由意思でいいわけでしょう。まだ個人の自由意思でパスポートの申請をしてないわけですね。だけれども韓国政府の、自由意思でパスポートを申請するならばオーケーだと、日本も当然オーケーだと。そうなると、当人に対して当然こちらの真相究明したいからぜひ——軟禁状態のときには外交ルートを通じて要請したけれども、本人に対して直接要請するほうが私はもうたてまえだと、筋だと、こう思うんですが、そのことも当然検討されているんですか。当然当人に対しての再来日の要請はしてないわけですね。これからするつもりですか。それをやらなかったらおかしいじゃないですか、どうですか。
  141. 中江要介

    説明員中江要介君) もう一度整理して申し上げますと、外交的決着がつく以前は、金大中氏は事実上まあ軟禁状態といわれたわけですけれども、完全な自由をお持ちでなかった。だから、その段階では公式の外交ルートを通じて再来日の要請を捜査当局の御要望どおりしておったわけでございます。で、今回の政治的決着を見る前に金大中氏自身が記者会見をされて、本日より自分は自由になったと言われたわけでございます。したがって、状況は、金大中氏自身の身柄の状況が大きく変化いたしまして、本人の自由意思で出国を含めて行動ができるようになった。その時点では金大中氏はいまのところは健康の回復も待ちたいし……。
  142. 黒柳明

    黒柳明君 それは聞いた聞いた。だから、その後要請してないんですねって。
  143. 中江要介

    説明員中江要介君) それは要請するかどうかということを、どういう方法で要請するのがいいかということは検討していると、こういうことでございます。
  144. 黒柳明

    黒柳明君 どうですか法務大臣、これは当然当人の意思が主体になった再来日ということになっているわけです。もう全部保証になったわけです。それでも当人いろいろ問題あるでしょうな。軟禁状態だって何かプレッシャーがかかっているという感じはします。いまも電話かけたって、やっぱり佐々木先生からあったように、もうこちらからの答えだけだと、向こうから言えないと。だから、もうすぐにでも当人に対して再来日を要請すべきじゃないですか。それで当人が来たい、手続したと、そこで何かここにネックがあれば、それこそいま法務大臣がおっしゃった——だからここに捜査解決一つの、外交的な解決一つのやっぱり保証されないものがあったじゃないかと、捜査がここで詰まっちゃったじゃないかと、だからこれはいけないんだと、それこそ法務大臣の疑念が——まあここで出ちゃうまくないですよ、そんなものないほうがいいんですよ。だけど、当然これはすぐすべきじゃないですか。いまはもう、だって軟禁状態を解かれてから何日たっているんですか。もう二週間たつじゃないですか。しかも約束されてからもう十日たつじゃないですか。政府、怠慢だ。副官房長官出て来てもらってよかったです。怠慢です、どうですか、政府。当然日本政府がやるべきことじゃないですか、これは。外務省当局あるいは法務省当局に命じてすぐ当人に要請しろ、どうですか、きょうからすぐにでもやらなければだめだ。
  145. 中江要介

    説明員中江要介君) その点につきましては、田中総理金鍾泌国務総理との会談においても金大中氏の身柄の問題が、当然でございますけれども、話題になったわけでございますが、その場合、その場面で韓国側の言いますのは、金大中氏は自由になったんだから……。
  146. 黒柳明

    黒柳明君 そうじゃなくて、そんなことじゃないよ。
  147. 中江要介

    説明員中江要介君) 本人の意思にまかせたい、こう言って……。
  148. 黒柳明

    黒柳明君 すべきだと思うがどうか。検討なら検討でけっこう、事務当局だから。
  149. 中江要介

    説明員中江要介君) その点は先ほど申し上げましたように、捜査当局と協議検討いたします。
  150. 黒柳明

    黒柳明君 だから、最高責任者に聞いているんですよ。どうですか、法務大臣。これは当然やるべきでしょう。
  151. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私の言うべきことではございませんが、おことばのとおり、いま言明をしておりますように、捜査当局相談をして検討中と申しておりますので、検討のでき次第処理をする。
  152. 黒柳明

    黒柳明君 方法、それは。方法です。基本的にはやるということじゃないですか。方法をどうやろうか、いまおっしゃったのは。
  153. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それはいまいかなる方法でいくか……
  154. 黒柳明

    黒柳明君 そうじゃない。
  155. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おいでを願いたいということになって、来日を求める手続というものも検討せなければいきますまい。そこで、その点は検討をして処置をすると言っておるのでありますから、これを御理解をいただきたい。
  156. 黒柳明

    黒柳明君 手続は検討、事務当局で。だけど、当人に直接再来日を要請することはあたりまえでしょう、こういうことです。
  157. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 当然そうすべきものであると存じます。
  158. 黒柳明

    黒柳明君 これはやっぱり外務、法務で、また外務大臣が実際手続やるんだから、いやそんなこと違うなんて言うと困るから、政府を代表して当然外務大臣——法務大臣の言うとおりだ、どうですか。当然個人にやるべきですよ、すみやかに。事務手続は、方法は検討すると、いいですよ、事務屋さんだもの、すぐやったほうがいいですよ。どうですか。いま法務大臣のことを繰り返せばいいじゃないですか。
  159. 山下元利

    説明員(山下元利君) ただいま法務大臣の御答弁のとおりでございます。
  160. 黒柳明

    黒柳明君 すみません、ぼくが答弁つくって申しわけありません。当然そうです。それでなきゃ、いま法務大臣が疑念の一つとしてあげた、捜査はやるんだけれども、これに何か一つのブロックができちゃ困るという疑念が、ここでこれがスムーズにいきゃ、ないことなんですよ。ああよかった、やっぱり約束で両首脳が会ってよかったなと、こうなるんです。これは一つのやっぱり踏み絵になるんじゃないですか。いま当人の意思、それが何らかプレッシャーがかかっていることは万人が認めるのです。やんなさい、日本政府は。個人。事務手続ということは、どういうことで、どう検討しているんですか、たとえば。ちょっと聞いておく。あんなに長く——いいですよ、やるというのですから。だから、事務的な手続、方法を検討しているというのは、こうこうこういう三つがあるのだけれども、どれにしようかという検討なんだと。
  161. 中江要介

    説明員中江要介君) 一つは、従来から行なっております再来日の要請の根拠は、捜査当局捜査の必要上再来日が希望されるということで要請しておったわけです。したがいまして、いま一度捜査当局日本側における捜査遂行上再来日が不可欠であるかどうかという点についても協議が要ります。もう一つは、方法についてですけれども、これは韓国に存在します、いまや自由を回復した一個人に対して日本政府がどの程度のアプローチといいますか、意思疎通、意思の伝達をすることが、これはまた韓国主権の問題もございますので、どういうふうにしてやるかということは別途慎重に検討しなければならない、こういうことであろうと思います。
  162. 黒柳明

    黒柳明君 そんな、おかしい。金大中さんが来日することが不可欠であるかどうか、不可欠にきまっているじゃないですか、そんなこと。ですから、法務大臣、いまの第一について、いま事務当局が検討しているのは二つ。第一点は、再来日を当人にすることが必要かどうかということをしているのだ——そんなことは必要にきまっているじゃないですか。どうですか、法務大臣。そんなことを検討するなんてばかなことないですよ。必要にきまっていますよ、そんなことは。
  163. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 黒柳先生ね……
  164. 黒柳明

    黒柳明君 まず第一点だけ。
  165. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いえ、いえ。ちょっとそれね、そう簡単じゃないのです。それは捜査当局意見も尊重しませんと、外務省やりようないんです。捜査当局意見を聞いて、いかなる手続によっていかなる招請のしかたをするかということは、これはやっぱり検討が要るんです、現段階では。
  166. 黒柳明

    黒柳明君 すみません。私も捜査当局忘れました。それじゃ捜査当局、どちらさまでしょう。捜査当局どうでしょう。これから直接法務大臣は当人に再来日を要請すべきだ、これは基本的だと思うのです。それについていま外務省は、事務的に捜査について不可欠かどうかということが一つ。不可欠にきまっているじゃないか。捜査当局、どうですか。再来日は不可欠ですか、事件真相究明について。——めんどうくさいな、こんな質疑は、もう常識的なことを。
  167. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 金大中氏の再来日につきましては、捜査当局は終始一貫してこれを要請し続けております。
  168. 黒柳明

    黒柳明君 こういうこと。もうこんな質疑をやっていたら、これはみっともないですよ、法務大臣。あたりまえじゃないですか。捜査当局は来日は不可欠にきまっている。どうですか、外務省。第一点はもう不可欠だと、捜査当局は。
  169. 中江要介

    説明員中江要介君) 捜査当局の御意向を尊重して、方法についてこれから協議することになると思います。
  170. 黒柳明

    黒柳明君 だから、手順として、第一点は不可欠かどうかを検討しているというんでしょう。不可欠だというんですよ。だから第一点、くずれちゃうじゃないですか。そうすると、その次の手順とは何ですか。
  171. 中江要介

    説明員中江要介君) 捜査当局が不可欠だという御判断がありますと同時に、金大中事件全般について、韓国側韓国側捜査をしておるわけでございまして、また、韓国側捜査継続して、その捜査結果をわが国に通報するということを総理と総理の間で今回約束されたわけでございますので、韓国側捜査というものとの関連もあるかと思います。
  172. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、もう韓国側捜査待ちで、捜査当局が不可欠であるという金大中個人を呼ぶよりも、むしろ韓国捜査待ちのほうがいいんだと、こういう意見ですか。  それから先ほどの第一点がまだ残っておりますけれどもね。その第二点の、要するに、確かに軟禁状態を解かれた個人の意思の尊重、だけれども個人の意思の尊重、当然ですけれども、こちらの立場は、あれは韓国もそうでしょう、言っていることは同じなんでしょう。真相究明したいというんでしょう。そのために、こちらは弱いんだから、だから、より積極的に個人の意思尊重、当然です。ですけれども、お願いしてでも来てくださいというのは、これ、あたりまえじゃないですか、こんなことは。個人の意思を尊重するということは、尊重することが前提になっても、来なくてもいいということですか。こちらは何が何でも来てもらいたいという考えですか、外務省としては。何が何でもやっぱり外務省としては来てもらいたいんだ、こういう基本条件があるけれども、いろんな客観的情勢があるからということなんですか。それとも、そういうことは考えないで、いろんな客観情勢を取捨選択しているんですか。来てもらいたいということは、そのあとにつくんですか。まず来てもらいたいのか、もらいたくないのか、当人、金大中さんに。
  173. 中江要介

    説明員中江要介君) これは外務省といたしましても、日本捜査当局の当初からの強い希望でございますので、来てもらいたいということを基本線にしていることは申し上げるまでもありません。
  174. 黒柳明

    黒柳明君 だから、はっきりしたじゃないですか、そんなことは。いまさらこんな議論をあっちこっちやって、もう十二分たっちゃったです、これだけで。そんな必要ない、当然来なければならない。それに対して、事件解決、まあ一応の一段落ですね。それから軟禁状態を解かれて、すぐさまやらなければならない問題じゃないですか、この問題は。何も検討することないじゃないですか。来日は不可欠かどうか、捜査当局と打ち合わせして。捜査当局なんか打ち合わせなんかする必要ない、そんなことは。怠慢じゃないですか、それ自体。当人が軟禁を解放されて自由の身になったけれども、当人の意思を尊重する、あたりまえだ、そんなことは。子供じゃあるまいし、なわつけて引っぱってこれるわけがないじゃないですか。だけど、こちらが解決しなければならないと言っていることばどおりにやるために、アクションを起こさなければならないじゃないですか。  どうですか、総括して、山下官房副長官。いまのこのやりとり、総括して、怠慢じゃないですか、政府は。おかしいじゃないですか、外務省のいまの意見、不可欠かどうかなんて、不可欠にきまっているじゃないですか。個人の自由を尊重して——けっこうです。だけど、こちらがお願いしてでもという姿勢を示さなければだめじゃないですか、真相究明のためには。どうですか。
  175. 山下元利

    説明員(山下元利君) 政府は、この事件の納得のいく公正な解決をはかることをもう基本方針としてまいっております。その中には当然金大中氏の来日の問題もあったわけでございますけれども、このたびの韓国側措置によりまして、金大中氏の自由が回復された時点におきまして、いまるる御答弁申し上げているとおり、外務当局のほうで種々検討していると思うわけでございますが、政府方針は先ほど申したとおりでございます。
  176. 黒柳明

    黒柳明君 いまの問題で最後に法務大臣に聞きますよ。外務省として不可欠かどうか、捜査当局、不可欠なんです。それから個人の自由を尊重します。だけど、こちらとしてはお願いしてでも来てもらいたいわけで、だから、これはもう積極的にやらなければならない、これは当然そうです——まあいいですわ、もう時間がないんだ。  それもすみやかにやって、それで、それにまた付随して、個人犯行だと言ったんです。黒だと断定して、事件関係している、ここら辺の、微妙なんですね。黒だと言ったのか言わないのか。白と黒というと、あまりにも黒白かけ離れているから、事件関係した容疑者だと。そうすると、ここに主権の侵害ということがまだ全然未解決ですね。いま言ったように、金大中さんの個人の自由を保障されたかどうか、これは再来日を日本政府が要請して、それで何かここにブロックが出てくりゃこれはおかしいよと、こうなります。これは一つはいま日本政府がやる、けっこうです。  もう一つ主権の侵害、これにつきまして、外交官特権というのはどういうものですか、条約的に。外務省ですな。ジュネーブ条約に、外交特権というのはどういうものですか、条約的に。簡単でけっこうです。
  177. 中江要介

    説明員中江要介君) 外交特権は国際慣習法として生まれてきたものをジュネーブ条約で成文化したものでございまして、発生的には、外交官というのはそれぞれ自分の国を代表しているものだから、その尊厳を傷つけてはならないという意味で、国家の尊厳を背負っているという意味で特権を認めるという面が一つと、それからもう一つは、そういう外交官が任国で十分な活動ができるためには、ある程度の便宜を与えなければいけないし、特権免除を与えなければ活動が不十分になるというので伝統的に認められている、こういうものと認識いたしております。
  178. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。ウイーン条約の三十九条二項、私しろうとなものですから写してきましたけど、要するに、「前記の者」——外交官ですな、外交官が「使節団の構成員として任務を遂行するにあたって行なった行為」云々、こうあります。要するに、外交官というのは使節団、韓国大使館韓国政府の構成員として任務を遂行するということでしょう。そうすると、この金大中拉致事件個人の行為だというわけでしょう、個人の行為。韓国大使館員として確かに肩書きにありますよ。個人の行為であるから、だけど、これははっきり任務じゃありませんね。韓国大使館あるいは韓国政府の任務じゃないですね。個人犯行と言っているんだから、韓国政府は否定しているんですから。そうすると、この時点においては私的な行動、まあ私たち私的な行動と言っていないんですよ、言っていないんですよ。主権侵害している、どっちかからの命令だ、こう思っているんですよ。だけど、それを一歩与えて、まず向こうからの個人犯行だということを踏まえた上において、外交官として韓国大使館韓国政府の構成要員としての任務じゃないですね、この金大中の拉致は。命令はしないと言うんだから、個人犯行だと言うんですから、そのときにはこのウイーン条約によると外交特権はないですよ、これは。個人の行為は任務遂行のためじゃない、どうですか、この点。
  179. 中江要介

    説明員中江要介君) 外交特権に関しましては、いま先生の御指摘のとおりだと思うんですが、それと同時に、外交官裁判管轄権に服さない、つまり刑事裁判管轄権、外交官の場合ですと、民事もそうでございますが、一般に裁判管轄権から免除されるというほうは、その行ない、行為が外交官の職務内の行為であるかどうかということと無関係に、在任国にある間は保障されている、こういうことでございます。
  180. 黒柳明

    黒柳明君 そうじゃない、それはおかしい。それはあくまでも構成団員の任務を遂行するってそのあとにある、その上において裁判権は免除されるんですよ。ちゃんとそこにあるじゃないですか、条文が。これはいまおっしゃった、確かに私が言ったあとからそうだと認めた。認めると裁判権というものはその行為に対してはないんですよ、免除される。これはおかしいですよ、そのあとに続いているんじゃないですか。その範囲において裁判権は免除されるんですよ、そこにある、どうですか。
  181. 中江要介

    説明員中江要介君) これは裁判管轄権に限ってもう少し詳しく申し上げますと、外交官が任国、たとえばこの場合ですと、日本国に在勤している間は、その行為の性質、その他職務の内外を問わず、身体の不可侵、裁判管轄権からの免除を享有することになっております。任国を離れましてから……
  182. 黒柳明

    黒柳明君 読んでください。その条項を読んでください。ウィーン条約のそこの条項を読んでください。
  183. 中江要介

    説明員中江要介君) 三十九条の「特権及び免除を受ける権利を有する者は、赴任のため接受国の領域にはいった時又は、すでに接受国の領域内にある場合には、自己の任命が外務省に通告された時から、特権及び免除を享有する。」、これが第一項でございます。それから第二項は「特権及び免除を享有する者の任務が終了した場合には、その者の特権及び免除は、通常その者が授受国を去る時に、又は接受国を去るために要する相当な期間が経過したときは、その時に消滅する。ただし、その時までは、その特権及び免除は、武力抗争が生じた場合においても存続するものとし、また、前記の者が使節団の構成員として任務を遂行するにあたって行なった行為についての裁判権からの免除は、その者の特権及び免除の消滅後も引き続き存続するものとする。」、こうなっております。
  184. 黒柳明

    黒柳明君 ここだけまたやっていますと、これは相当時間がかかってしまう。  もう一回整理しますよ。このウィーン条約の三十九条二項によると、「使節団の構成員として」、要するに、韓国政府大使館の構成員として任務を遂行したときに外交官、外交特権ということは裏づけが出るんですね。それが韓国政府あるいは韓国の公的の何らかの機関から命令された任務じゃないと。この場合においてはもう外交官としての行為じゃない。これはいいですね。ただし、そのあとですよ、そのときには裁判権も免れるんだということでしょう、いまおっしゃったのは。免れることができるんだ。——また違いますか、いまそういうふうにおっしゃった。ちょっと簡単に言ってくださいよ。
  185. 中江要介

    説明員中江要介君) そこは、職務外の行為につきましては、本人が任国を去ったあとはもう特権が主張できないというところが違うわけでございまして、本人が任国にいる間は職務内外を問わず特権免除を享有する、こういうふうになっております。
  186. 黒柳明

    黒柳明君 だから、ぼくもそういうことを言ったんですよ。外交官としての任務を遂行してないんです、この拉致という事実は。外交官であるんです、一等書記官であるんです、外部から見ると。だけれども、このウィーン条約によると、韓国政府個人犯行だと言ったんですから、構成員としての任務の遂行じゃないんです、そのときには。私的行為ですから。そのときにはこれは明らかに韓国政府あるいは大使館員関係がないものなんです。ただし、いまおっしゃったのは、それでも日本にいるときには裁判権の免除があると、ぼくはそう言ったんです。そのとおりです。そこのところを論議すると時間が長くなる。そうなれば、その私的な行動をしたときには外交特権を持っている外交官であるようなかっこうをして——外交官じゃないわけですよ。それを国外に逃亡さしてしまったわけですよ。裁判権がないんです。どうして国外逃亡する前にそれを取り調べるという意思が働かないか。裁判権がないんじゃないですか。私的な行為じゃないですか、それをやったときには。ぼくの言い方、まずいかな。もう一回言いましょう。構成員として任務を遂行したときには、確かに外交特権あるですね、外交官ですね。ところが、構成員として任務を遂行しない、これはそうでしょう、私的なことをやったんだから、個人犯行ですから。そのときには外交官ですよ、肩書きは。一等書記官ですよ。だけれども、それはあくまでもこの外交特権をウィーン条約によって約束された行動じゃないです、私的な個人犯行でしょう。これは明らかに犯罪行為ですよ。そうなったときに、だけれども日本にいるときには裁判権は及ばないんだけれども、その前にそれを取り調べることはできるわけじゃないですか。その犯人を国外に逃亡さしちゃったわけじゃないですか。
  187. 中江要介

    説明員中江要介君) 御質問の御趣旨はわかるんでございますけれども、残念ながら現在の国際慣習法としての外交官の特権免除といいますのは、本人が任国にいる限りは、その行為がかりにそれが私的行為でありましても裁判管轄権から免除されておりますので、本人が任国を去ってからあと、その特権免除が消滅するというところで区別があるだけであります。
  188. 黒柳明

    黒柳明君 この問題ね、そうじゃないですよ。だって、やったときは外交官じゃないんだ、その私的行為をやったときは。いま認めたじゃないか。私的行為は構成員としての任務を遂行してないんじゃないですか。その任務を遂行してないんだから、外交特権というのはこれはもう発生しないですよ、その時点においては。外交特権がある、肩書きはありますよ。だから日本のほうが遠慮しちゃっているんですよ。まあ言いたかったら、あと五分ですからそのとき言ってください。  それで、最後に聞きましょう、捜査当局に。こまかい問題一ぱいあったんですけれども……。このあとひっくるめて言ってけっこうです。  初動捜査がおくれたと。これは前から指摘されましたね。その事実後二時間もたっているんですからね。ところが、七月十日に金大中さんが日本に来て、それから八月八日に事件が起こる。この間、国会答弁においては、日本政府は、それは大統領候補だったけれども、別に肩書きもなくなったから特別に身近を警護するとかそういうことはしないと。要するに、個人の自由だと、こういうふうにおっしゃったですね。これは間違いありませんか。要するに、警察としては金大中さんというものはどこにどうなっているかわからないんだと、関知するところじゃないんだと、こういうことを国会答弁で私聞いておるんですが、それに間違いないと。そうですね。
  189. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいまの件につきましては、若干違う点がございますのでお答え申し上げますが、七月の十日に金大中さんが来日されましたときには、第一日目、本名でもって銀座・第一ホテルに泊まられました。二日目以降、ホテルを八カ所転々といたしました。かつ、その際に、日本人名の変名を三つ使いまして転々といたしました。警察に警護要請あるいは保護願い、その他の連絡もなかったために実はその所在がわれわれとしてはわからなかったというのが真実でございます。
  190. 黒柳明

    黒柳明君 わからなかったということは、要するに、別に関知するところじゃなかったということじゃないわけですか。関知はしていたということですか。
  191. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 金大中氏が一月に来日をされまして……
  192. 黒柳明

    黒柳明君 いやいや、七月のこと。
  193. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) はい、この時点におきましては、当時、「独裁と私の闘争」という本の原稿を校正をするという理由で入国をされ、病気療養で入院されるということもございまして、亡命の可能性もあろうかということで相当の関心を持って見ておりましたが、七月十日来日の時点におきましては、そういう警護対象としては特に関心を抱いておりませんでした。
  194. 黒柳明

    黒柳明君 だから、それはそういうことですね。それで初動捜査のおくれや何かも、それが全部とは言わなくても、やっぱり警察としては関知しなかったんだと、こういう国会答弁があったわけです。ところが、七月二十日前後にわたって、いわゆる原田マンション、この付近を、これは結局は調べていただくということになるんでしょう。書きとめてくださいよ。一人は四十五歳前後、体格的にはやせ型、めがねをかけています。百七十センチぐらい。もう一人は五十歳ぐらい。これも体格的にはむしろやせぎみ、身長百六十五、六センチ、めがねはかけてない。まあ中年——初老の壮年ですね。この人たちが二人、明らかに金大中さんを監視していたと。これは公安のほうであるか、どっかの刑事さんであるかわからない。明らかにもう八月八日の事件発生前において、しかるべきところでちゃんと警護のためか、あるいはほかの目的のためか、いているという事実関係があると証言をする人がいるんです。その人は何回も警察に、この人の写真を見せていただければ私は指摘できると。警察は、前から、いま言ったように、どういう目的かわかりませんよ。身辺護衛していたのか、あるいは自衛隊と一緒になってぐるになってやっていたのかわかりません、そんなことは。ともかく、もう八月八日にああいう初動捜査手抜かりをやったことは考えられない。前から知っているんだと、こういうことですね、端的に言えば。だから、この人を、私は目撃しているんだから、何回も見ているんだから写真を見せろと言っても全然見せないと、こんなことがあるんです、現実に。ひとつこのことを踏まえまして——私は警察がそんな手抜かりがあったり、変なぐるになっているとは思いませんよ。ですけれども、前からそういうことをやっているならば、こんな高速で不備があったとかなんとかいうことはあり得ないと。こんな世界一の警察がこんな手抜かりはあり得ない。そういうことが、もしかすると知っていたんだけれどもなんという疑惑になりかねないんです。ですから、このことについて——当然お知りでないと思います。ですけれども、このことについてすぐ調べて——私立ち合います。見せてください、顔写真を。どの人、それでこの人とこの人がいたと。何の目的で来ているのか、何の目的で何回にもわたって金大中さんの身辺に来たのか、警察の警護なのか、何かを予防するためなのか、あるいは八月八日に対しての何かの関連性なのか、わかりません。そういうことをもっと突っ込んで聞きたいんですね。やってくれますね。
  195. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいま御指摘の点は、あるいは私の推測でございますが、元自衛隊員の経営する私立探偵社の行動ではないかというふうに思われるわけであります。と申しますのは、事件発生の非常に早い段階でその趣旨のお申し出はございました。それを端緒にいろいろ捜査をいたしております。警察の公安の者が事前に警備または身辺警戒の目的金大中氏を張り込んでおったという事実はございません。
  196. 黒柳明

    黒柳明君 事実があるとは言いませんよ、そんなことは。だから、目撃者がいるんだから、何回も見ているんだから、顔、姿、かっこう、みんな知っているんだから、だからその人の要望通り見せれば——見せたって警察が悪いということじゃないですよ。何をやっていたのかということですよ。前から知っていたならば、そんなうかつなことをするわけないじゃないかということですよ。論理としてはそうなっているでしょう。ですから、そのことについて疑うわけじゃないですけれども、念のためにですね、もし警察当局の方だったらどういう目的で来ていたのか、それを知りたい。当然どういう方がどういうふうに来ていたのか知りたいと。その人がだめだったら——だから私はここではっきり要請しているんです。全部見せていただいて、それでその写真を見せていただければ、たったったったって、まあ警察が調べるなんということで、反対で申しわけないですけれども、念のために事前から警察が手を打っていたならば、こういうことで三カ月も長引くことはないんですよ、捜査が。そこらあたり一分の疑念があるから——こういうことなんです。ないという断定じゃない、目撃者がいるんですから。
  197. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 警察官を現場に配置をいたしておりませんので、その顔写真とおっしゃいましても、その……
  198. 黒柳明

    黒柳明君 見ればわかると言うんです、当人が。その人は要請を何回もしたって言うんです。拒否されたって言うんです。可能性はゼロじゃないんですよ。外事課長が全部知っていますか、警察官の配置を。知りゃしないじゃないですか。
  199. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 警察官の配置を全部知っているわけじゃございませんが、先ほど御答弁いたしましたように、警護対象として、あるいは視察対象として見ておったという事実がございませんので、そういう警察官が現場に配置になっていたという可能性はございません。
  200. 黒柳明

    黒柳明君 もう一回言いますよ、法務大臣、よく聞いておいてね。目撃者がいる。姿、かっこう、年齢、全部知っているんですよ。もし警察が事前から知っているなら、もっと手を打てて、もっとすっきりした捜査して、すっきりした解明ができたんじゃないかという疑惑、全国民持っています。私は持っています。法務大臣も一分あるでしょう。だから、その人を含めて、私も——警察を疑うわけじゃないですけれども、もしそういうことがあったならば、もしかすると逆転すると、元自衛官が拉致というケースだってあり得るんですよ。あったじゃないですか、現に。そうでしょう。だから、その可能性がゼロじゃないんだからと、こういうこと。全部の警察官の配置を知らないと現に言っているんじゃないですか。知らなきゃそういう事実がないと、外事課長の独断で判断できやしないじゃないですか。
  201. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいまの全警察官の配置を私は承知いたしておりませんけれども金大中氏の場合には、当然外事もしくは警護担当の公安二課の対象になろうかと存じます。その限りにおきましては、この対象になっておりませんので、警察官の配置はなかったと、また、そういう存在が掌握されておらなかったために初動調査の手落ちがあり、そのために金大中氏を海外に拉致される結果になったことに対しては、たいへん遺憾であるということを当委員会においても御答弁申し上げておるところでございます。この点で私どもは、事前にそういうことを承知しておって見のがしたということはございません。
  202. 黒柳明

    黒柳明君 そうですね、すみません、約束の時間が来ています。  全部配置知らなきゃ、なかったと断定できるか。それじゃいま現在、何人がどこでどう配置になっているか言ってください。これはちょっと委員長、時間が来ているけれども——なかったなかったってね、目撃者がいるから、可能性があるからと言っているのに、なかったなかったと。検討するとかなんとか言ったならまだかわいらしいですよ。ないない、ないって。あるっての、目撃者。目撃者の証言というのは、それじゃ否定できるんですか。捜査の対象にならないんですか。目撃者がいるって言うんですよ。姿、かっこうも、顔形も全部知っているって言うんです。それを、なかったなかったと言うわけにいかないじゃないですか、食い違いじゃないですか。調査すると言うときゃいいいじゃないですか、調べるとか……。
  203. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 捜査の一番最初の段階で、実は一部の方から、警察がそれを知らなかったのではないかと……
  204. 黒柳明

    黒柳明君 そんなことを言っているんじゃないのよ。
  205. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 警察官の現場に配置になっておった者を自分たちは見ておると、こういうお申し出がございまして、それにつきまして捜査をいたしております。しかしながら、その結果、それは公安の警察官ではなくて、先ほど申しました元自衛隊の私立探偵社の者であるということが後の捜査で判明をいたしております。
  206. 黒柳明

    黒柳明君 それじゃ、この人はだれですか、その人が言っている目撃者の姿、かっこうというのは、それはどういうことですか、その前の時点じゃないですか、だれかのことじゃないですか、目撃者はどの人——一致しますか。それを裏づけて言ってるんですか。自衛隊員だ、自衛隊員だって。そうじゃないと言ってるんですよ、目撃者は。自衛隊員は既成の事実で出ているじゃないですか。自衛隊員じゃないんです。調べてみる気ないですか。見せませんか。
  207. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) その目撃者の——どもの承知しております目撃者と申しますのは、あるいは……
  208. 黒柳明

    黒柳明君 そんなわけないじゃないか。目撃者どこにいるか、全部警察で知っているわけないじゃないか、そんなことは。
  209. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) はい、先生がおっしゃるその目撃者とは別の人物かもしれません。
  210. 黒柳明

    黒柳明君 当然そうだよ、何言ってるんだ。
  211. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) はい、しかし、私どもの承知しております経緯は以上のことでありますので、御答弁申し上げます。
  212. 黒柳明

    黒柳明君 あなたが知っていることとぼくの知っていることと一致しない——そんなことないじゃないですか。こんな審議は初めてだよ。あなたの知っていることとぼくの知っていることと全部一致ですか、そんなんだったらやりゃしませんよ。いままで出ていることと全部一致だから、ぼくは同じことを言ってるんだなんて、そんなことを踏まえてやってるんですか。そんな答弁おかしいじゃないか。あなたが知らない分野をやってるんじゃないか、ぼくはそういうつもりじゃないですよ。
  213. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) それでは先生のほうから資料をちょうだいいたしまして、その点調査をいたします。
  214. 黒柳明

    黒柳明君 資料はいま言ったじゃないか、背かっこうやなんか言ったですよ、それ資料よ、いまの。——けっこう……。  すみません、委員長。すみません、六分、七分、すみません、七分過ぎまして、申しわけないんですが、最後に一言。  この問題、要するに韓国国会でも、公権力が作用していたかどうかの捜査は相手側にある、日本にあると、こう言ってるんですね。これもおかしかことだと思うんです。ただ——また古い話で申しわけない、西ドイツの話を出しますけれども、あのときには十分な証拠がなくても政府は断定したですよ、西ドイツは、国際法違反だと。それをもとにして、それで向こうがあやまってきたわけでしょう、国外追放となったわけでしょう。ところが、いまのケースというのは、これはもう違うじゃないですか、いまの日本政府は。証拠があるとかないとかじゃなくて、違反だと、主権侵害だという態度じゃない。そうなってくれば、捜査向こうにまかせりゃ、すべてこれは主権の侵害はあり得ない。まあこれから可能性はゼロじゃない。いまの話じゃないけれども可能性はありますよ。だけれども主権の侵害だなんということで、向こうから捜査資料を出す、こちらが捜査によって侵害だという断定する資料なんかまずない。逆ですよ、西ドイツの場合と。いまの場合だったら全部これは個人的な犯行だと、こういう可能性が全部出てきちゃうんじゃないんですか。最後にこれだけお伺いしてやめます。すみません、ちょっと延びましてね。
  215. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 仰せのとおり、たいへん困難なものでございます。困難なものでございますが、あらゆる捜査を積み重ねて、韓国政府の職務行為だと、公権力の介入だという証明はしてみせると、こういう覚悟で捜査当局は全力をあげております。おまかせをいただきたいと思います。
  216. 黒柳明

    黒柳明君 そうですが、これは公権力の介入だということを絶対解明してみせると、非常に私は元気づきました。公権力の介入があるということを解明するために全力をあげて捜査すると、もう非常に力強い答弁だと思います。ひとつ前向きに——介入であることは間違いないですからね、そこまでやってくださいよ。すみません、申しわけありません、時間長くなって。
  217. 渡辺武

    ○渡辺武君 大平外務大臣は、十一月一日の晩の記者会見で、今回の韓国政府のとった措置について、これで外交的決着はついたというふうに語っておられます。また、けさの午前中の衆議院の外務委員会での外務大臣の御答弁では、主権侵害については韓国政府がどうしても認めようとしないこと、日本のほうの側からいえば、主権侵害の事実を認めさせるきめ手がないんだと、これではいつまでたっても解決がつかないんで今回のような措置をとったのだという趣旨のことを答弁されたそうであります。これは外務大臣だけじゃない。政府自身もです。今度の韓国政府のとった措置、これを一応了承して、そうして来月の中旬に日韓閣僚会議も開くと、四億五千万ドルといわれる対韓援助その他の要請にこたえるというようなことを正式に発表しているわけであります。しかし、今回の事件は、これは韓国政府の手による日本主権侵害という国と国との間の関係、まさにこれはそのものずばり外交的問題であります。一体何が外交的決着がついたというふうに言えるのか、これは国民だれもが非常に疑惑を感じているところだと思う。だから、今度の解決については、これはもう政治的な解決だ、主権問題主権侵害の問題についてはこれはうやむやのままにする解決だということが、これは一般世論だと思います。で、この主権侵害の問題を中心とする真相の解明、これこそが外交的な解決、あるいはまた公正な解決、これの前提条件でなければならない。これは当然だれもが考えることだと思う。今回の解決、かぎカッコつきの解決ですよね。一体真相究明されたのか、この点どう思っておられますか。
  218. 中江要介

    説明員中江要介君) 私どもといたしましても、今回の外交的決着によって真相究明ができればしたいと思っておったわけでございますけれども、結果的に真相究明を遂げることができなかったという点は、はなはだ残念遺憾に思っておるわけでございますが、この時点におきまして外交的に本件決着をつけるというつけ方といたしましては、今回の韓国側がとった措置を了とするのもやむを得ない、こういう判断で、真相究明のほうは先ほど来累次御答弁がございましたように、双方捜査をなお一そう強力に継続いたしまして真相究明をはかりたいと、こういう考えでございます。
  219. 渡辺武

    ○渡辺武君 とにかくいままで政府が繰り返し答弁したことがある。もういまさら私が申し上げるまでもなくよく御存じだと思いますが、真相究明し、内外に納得のいく筋の通った公正な解決を行なうというのが衆参両院の本会議その他の質問に対する政府の公式な答弁だったんです。いまのお答えですと、公正な真相究明という点はあと回しだという趣旨の御答弁ですよね。これは全く国民をごまかしたと、ごまかしの解決だと言わざるを得ないんじゃないですか。国会に対する政府責任ある答弁というのは一体どういうことになるのか、そう思わざるを得ない。どうですか、その点は。
  220. 中江要介

    説明員中江要介君) 私ども考え方によりましても、今回の外交的決着本件がすべて解決したとは思っておらないわけでございます。したがいまして、真相究明部分がはっきりしないまま残っておることは、私ども認めておるわけでございまして、その部分は引き続き捜査継続してそれに協力をいたします。しかし、外交的に本件がいつまでも日韓隣国同士の間でわだかまりとして残っていることがはたして適当かどうかという点について政治的に判断をされまして、わだかまりを除去するという意味で、この段階において外交的決着をつけて、今回遺憾ながら解明できなかった真相究明につきましては引き続き努力するということで、両総理の間で話し合いがまとまっていると、こういうことでございます。
  221. 渡辺武

    ○渡辺武君 両国間のわだかまりなんという表現を言われますけれども、これは日本主権に対する重大な侵害行為ですよ。単純なわだかまりというようなものでないことはこれは明らかでしょう、どうですか。しかも一つの国の主権に対する他国の侵害行為というのは、これはいわば外交関係の中でも最も重大な問題です。この問題をおろそかにしておいて日韓関係の友好関係なんというようなことを語ることができますか。とんでもない話だと思う。いずれにしても、きょうは時間もないので、その点深く論ずるわけにもいきませんけれども、いまのあなたの御答弁からしましても、今度のいわゆる解決なるものが全くこれはもうごまかしの手段にすぎない。真相については今後の究明に待つと言うけれども、これもおそらくうやむやのままで終わってしまうだろう、そう考えざるを得ないと思います。  特に、私は法務大臣に伺いたいんですけれども法務大臣、いままで御答弁、ほかの大臣に比べても比較的筋の通った御答弁をされてきたという点は私は認めたいと思う。その御答弁の中で、主権侵害の問題の解明こそこの問題の解決の前提条件だということも繰り返し言明されてきた。特に私が八月三十日の当委員会で、ちょうど当時政治的解決、別のことばで言えばうやむや解決の方向などというものが新聞紙上などに盛んに書かれておりましたので、その問題で大臣の御見解を伺いましたところが、こういう御答弁なんですね。「うやむやの解決なんということは、断じてそんなことは、賛成も反対も論外でございます。」と、こういう御答弁を私に対してされておられる。私は政治家として法務大臣に伺いたいんです。今度の解決こそうやむや解決だと思うんです。このような解決のしかた、これについて政治家として法務大臣どうお考えでしょう。賛成ですか、反対ですか。どう思われますか。
  222. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) たいへん強いおことばで御意見を承りましてまことに恐縮に存じますが、私はそう考えていないのでございます。これは午前の御答弁でも申し上げたのでありますが、外務当局が韓国外務当局との間にとりました数点にわたる決着というものは、観測のしかたでありますけれども、それぞれ、かすかではあるが、一歩前進である。確かに前進をしている。それはそれで評価すべきものだとすなおに見ておる。そこは先生のお考えと幾らか違うんです。ただ一つ問題は、まだ事件が最終的かつ全面的な決着をしたものでない。いま外務省当局が言うておりますように最終的なものではない、また全面的なものでない。これで一切解決したというべき筋合いのものでないんだと。それはどういうことかというと、捜査を今後継続して、こちらもしますが、向こうもやりますが、捜査継続いたしまして、そして全力を尽くして事の真相究明するんだ。究明の上新事態が出てきた——これを具体的に申しますと、主権の侵害ということが明白になってきた、国際法上明白になってきたという事態が起こってきたときには、その事態をとらえて両国政府の間に、今回の決着で十分のものでなくて、新たに外交交渉が行なわれるものだと、そこで真相究明するためのこの捜査の手続に全力をあげるんだと、こういうことでございますので、先生、捜査をうやむやにしたじゃないかと——したが、政治家としてどう考えるかなどというおことばは、私は幾らか意外に思うんですが、すなおにこの現状を見ていただくわけにはいかぬものだろうか。これをうやむやにするというなら、先生、私が承知しませんよ。冗談じゃありませんよ。うやむやにするなどという政府態度、あるべきものじゃありません。閣議における私の発言もございます。それは、しっかりその点は押えてあります。両国総理が話しおうた。捜査は終わるんじゃないんだと、おまえのところの今後の捜査向こう向こう捜査権がありますから、韓国捜査は報告をさす、こういうところまで話を持っていっておるのでありまして、今後の捜査をごらんいただきたい。これは決してうやむやになるような心配はないんです。また、うやむやにささないのだと、あくまでも究明する。究明の結果、主権の侵犯という重大事態が出てくれば、これに対してあらためて国際法に基づいて外交交渉をやるんだ、遠慮はしないんだという考え方なんです。うやむやじゃないんですよ、先生。そうじゃないんですよ。そういうふうに御理解をいただきたいとお願いをするんです。決してうやむやにするものではない。政治家の責任はと仰せをいただくほど、ちょっと時期が早いのです。それはちょっと早いですよ。私は政治家の端くれで政治家の責任を感ずる人間の一人でございますが、それはいまこの段階においてそう仰せをいただくことは私は酷だと思う。それから評価すべきものがありますね、今度の外務省のやったことで。外務省の腰が弱過ぎると、質問によるというと。腰がないんじゃないかと言うとる人があるんじゃないかと言うてずいぶん私も強く外務省のしりをたたく発言を公の席でどんどんやってきた。しかし、私は今回の何を見まして、捜査継続するという前提に立つと数個の点において前進があると、こういうふうに評価をしておるのでございます。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  223. 渡辺武

    ○渡辺武君 いままで韓国政府がこの問題については実に不誠実な態度しかとってこなかった。それはもう先ほど大臣もなめられているという表現で言っておられましたけれども、こういう相手側の態度に対して、日韓閣僚会議も開くべきでない、対韓援助もやるべきでないと、問題の真相がはっきりとするまでは強い外交的な措置をとるべきだというのが、これはもう一般の国民の世論だったと思うんです。ところが、どうですか、その真相究明そのものが、これがうやむやにされている。これから先やるんだとおっしゃいますけれども——あとから申します、うやむやになっている幾つかの点を申しますけれども、とにかくうやむやになっている。それにもかかわらず、日韓閣僚会議を開こう、対韓援助には応じよう、これがうやむやでないとどうして言えますか。その点は法務大臣もやっぱり政治家として率直に見るべきだと私は思いますよ。さて、しかし、この事件そのものについて私はうやむやな点を幾つか伺ってみたいと思うんです。  まず第一に、韓国政府は例の金東雲一等書記官容疑ですね、これを認めた。そして免職したのだということを盛んに言っておられる。そして日本政府もまさにこの韓国政府の言い分を了承したということになっておりますね。しかし、金鍾泌韓国首相は六日の韓国国会の本会議で、金書記官が黒であると言った覚えはない、日本政府が黒だと言っているにすぎない、こういうことを言っている。韓国政府がいままでとった態度というのは、これは法務大臣も御存じのとおりだと思う。金東雲はこれは事件に関与してないんだと、当日だってアリバイまであるんだということまで言っていた政府でしょう。それが韓国国会では黒だと言った覚えはないんだということを言っている。今度容疑を認めたというふうに先ほど御答弁がありましたけれども、一体韓国政府は何を根拠にして、どういう根拠で金東雲一等書記官容疑がありというふうに認めたのか、この点どうでしょう。また、日本政府韓国政府態度を了承、したと言うけれども。どういう根拠で了承されましたか、この点を伺いたい。
  224. 中江要介

    説明員中江要介君) 韓国の当局が金東雲一等書記官容疑をもし認めたとすれば、何を根拠に、またどういう理由で認めたのかという点は私ども関心事であったわけでございますが、これは十一月一日に金溶植外務部長官が記者会見最初に読み上げました声明の中にございますが、金東雲金大中事件関与の嫌疑に関しては、政府はすでに同人の職を免じ、捜査継続することとしたということで、その結果により、韓国のほうにより処理する、こういうことになっておりますので、厳密に言いまして、韓国政府日本側から強く提出いたしました日本側容疑事実をもとにいたしまして、金東雲一等書記官の嫌疑について、まず免職にして、捜査継続する、そうしてその結果により処断する。こういうことになっておりますので、いま黒だとはっきり言えないというのは、厳密な意味ではそういうことになろうかと思うのですが、私どもといたしましては、まず外交官としての職を免じて、そうして捜査継続するという措置をとったこと自身は、容疑がきわめて濃厚だということを実は前提にしての措置だと、これは行政処分でございますけれども、そういうように思われますが、これが司法手続的にはっきり黒だと言うには、まだ韓国が言っておりますように捜査継続して、その捜査の結果に基づいて、法により処断するというところまで待たなければならないという事情も、これも了としなければならないのではないかと、こういう考え方でございます。
  225. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本政府側の金東雲一等書記官についての容疑、これは指紋までちゃんととっておるのでありますから、これは動かぬところだと思うのです。しかし、韓国政府がそのような日本政府側のほうの主張をこれをはっきりと認めて、そうして捜査を始めたという趣旨に、継続すると言明したというふうに言われましたけれども、ほんとうにそうなんですか、どうなんですか。韓国政府のほうで独自に何か容疑の事実があって、そのことで捜査継続するということになったのですか、どちらなんですか。あなた方、単なる想像ですか、いまの御答弁
  226. 中江要介

    説明員中江要介君) その点につきましては田中総理金鍾泌国務総理との会談において、金国務総理は、金東雲捜査については、さしあたり韓国側捜査におまかせいただきたい、捜査の結果が判明次第必ず御報告する。こういうことになっておりまして、その段階で日本側は了承されたと、こういうふうに聞いております。
  227. 渡辺武

    ○渡辺武君 全くあいまいもこたるものだ。日本捜査当局が苦労して指紋までちゃんと押えた、そのことを認めたのかどうか、それさえわからないでしなう。今後捜査の結果どうなるのか、これは関与していなかったという結論が出るかもわからぬ、そういう可能性だってあるんじゃないですか、どうですか。
  228. 中江要介

    説明員中江要介君) その点はすでに行政処分をとっておりますし、また法によって処断するというところまで向こうが言っておりますところから察しまするに、全く白であるという結論は出ないという心証で本件判断しておるわけでございます。
  229. 渡辺武

    ○渡辺武君 だから、あなた方のその判断というのが、まことにこれがあいまいもこたるものだ。いままではっきり指紋という証拠があるということを、これを日本捜査当局が発表しているにかかわらず、アリバイまであるんだと、こういうことを言って開き直っていた政府が、もし容疑事実が事実であったならば、これは法によって処断すると言うにすぎないのであって、もし白だという結論を出せば、法によって処断するということもあり得ないでしょう。どうですか。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
  230. 中江要介

    説明員中江要介君) 私、必ずしも司法関係の専門家でございませんので、あるいは間違っているかもしれませんですけれども捜査継続中の段階では、はっきりこういう事実で黒ということはやはり言えないのだろう、こういうふうに思っているわけでございます。
  231. 渡辺武

    ○渡辺武君 だから、そういうあいまいなことで了承をして、外交関係を開くという解決自身がうやむや解決ということをはっきり物語るではないですか。  なお、続けて伺いますけれども韓国政府は、金東雲個人として関与したんだというふうに断定したといわれているんですね。個人として関与したものであって、政府が機関として関与したものでない、逆に言えばそういうことになります。一体どういう根拠をもって韓国政府はそういう断定を下したのか、これを伺いたい。これは一番肝心のところの一つです。  もう一つ日本政府は、この韓国政府の主張を了承したということで今度の外交的措置をとった。どういう根拠で韓国政府のその主張を了承したのか、これを伺いたい。   〔理事原文兵衛退席、委員長着席〕
  232. 中江要介

    説明員中江要介君) 金東雲一等書記官個人の資格でやったのか、あるいは公権力の介入というかっこうで公権力の行使、職務行為としてやったのかという点はしばしば論ぜられた点でございますし、私どもも何とかそれを明らかにしたいと思ったわけでございますけれども韓国側は、その点につきましては、事件の当初から一貫して公権力の介在はないと、こういう立場をとっておりましたし、また最近の段階におきましても、公権力が介在したということについては現在までのところ証拠がない。したがって、もし犯罪行為がありとすれば、それは私人の行為とみなさざるを得ないということでございまして、わがほうはそれに対しまして、国民の大きな疑惑もございますので、これが公権力の介在である、あるいは職務行為であるという点を明らかにすべく努力してまいったことは御承知のとおりですけれども、遺憾ながら現段階において韓国側の主張をくつがえすだけの確たる証拠をあげ得なかった。この段階においては、いまのそういう段階の前提のもとでは、今回のような金東雲犯行について捜査継続して、その結果によって法に従って処理する。その結果、公権力の介在あるいは職務行為ということが明らかになれば、これは先ほど法務大臣答弁がありましたように、それを踏まえて新たな措置をとるべきであるという点につきましては、田中総理金鍾泌国務総理会談の席上でもはっきりわがほうから留保を申し入れておりますし、大平外務大臣も陪席しておりまして、その点は重ねて先方に申し伝えてあるわけでございます。
  233. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、このいわゆる職務行為論という問題については、これは間違っているというふうに思っております。これはいずれ時間があらばあとのほうでもう少し論じたいと思いますけれども。しかし、その問題から若干離れたとしましても、あなた方自身が、韓国政府機関が、これが職務行為としてやったかどうかという問題こそ大事だということを盛んに強調しておった。その点の決着もつけないで、しかも韓国政府の言い分をこれを了解して外交関係に入っていく。うやむや解決でなくて何ですか、これは。法務大臣、よく聞いてくださいよ。こういうことをうやむや解決と言うんですよ。  ところで、私伺いたいのは、国際法の通説からしましても、ある国の政府機関員が、これがよその国で起こった不法行為について介在している。ちょうど金東雲のような場合ですよね。その場合に、その行為があなた方の言ういわゆる職務行為でなくて私人としての行為だという場合には、その挙証責任というのは、その国——その行為を起こした国ですね、その国にあるというのが私は国際法の通説だと思う。今度の場合でも、金東雲のやったことがこれは個人としての行為だというふうに韓国政府が主張しているというならば、その主張の根拠は一体何なのか。具体的にどういう証拠をもってその主張を裏づけているのか。これを明らかにしなければならぬ。明らかにさせる義務が私は日本政府にあると思う。法務大臣、その点は私そうだと思いますけれども、どうですか。
  234. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 渡辺先生御所論のとおりだと私はそのとおりだと思います。ちっとも無理なおことばはないと思います。ただ渡辺先生にお聞きを願いたいことは、今日の段階でそれを仰せになることはちょっと時期が早いんじゃないでしょうか、今日の段階では。それはどういうことかというと、相手の国は指紋が出てきても知らぬ存ぜぬと言うておる、関与はした覚えがないのだと。個人的犯罪を認めるとか認めぬとか、そんなことも言うておりませんよ。知らぬのだと、アリバイがあるめだと、こう言っている。ずいぶんでたらめなことが言えたものだと、指紋を否定する国がある、たいへんな国があるという感じですわね、これは。そうでしょう。それですから、相手の国がこう言うておるじゃないか、そう言われている立場ということはこちらは気にせぬでいいんでしょう。こちらはこちらで捜査をするのです。からだはなくても捜査はできるのだから、捜査をする。ただ捜査に困難性があるということだけなんです。その困難性を押し切って捜査をどんどん進めまして、そうして二二一〇号室の中から鮮明なる指紋を採取した。これが一つ。それのみならず、エレベーターに乗っけてこれを拉致する姿を目撃した者も出てきておる。この人だと、これに間違いがないという証言も出てきておる。リュックサックを買いに行ったときに、店の小僧さんが、この人が買いに来たんだということを言明をしておる、証拠も出てきておる。だんだんだんだんと固まりつつありますね。そこへ、最近発表しておりますところによれば、横浜の劉副領事の自家用車がとまっておって、これによって運ばれた嫌疑が濃厚であるというようなことが出てきておる。公権力の介在、職務行為であるということを否定さすことができない状況というものがわが国捜査当局の手によってだんだんと固まりつつある。そない相手の国が否定をしておるからということを日本国会で何も力を入れて言わぬでいいでしょう。それはそれでいいじゃありませんか。こちらはみごとに証明をしてみせる。全力をあげる。これをうやむやにするというんなら、おしかりがあってもしかたがない、政治家として責任をとります。うやむやにするんじゃないのです。うやむやうやむやと先生先ほどから何度もおっしゃる。うやむやじゃないというのだ、これは。うやむやであるかないかはこれから先をごらんくださいということを私は申し上げたいのですね。そういうことですから、韓国が否定しておることは私は立場上当然だろうと思う。否定をしても否定はささぬのだと、このとおり立証するのだと。さあこれをどうするかという段階にこれを持ち込むのがこれからの捜査で、こっちに力を入れてくださいよ。
  235. 渡辺武

    ○渡辺武君 法務大臣、少し勘違いされていると思うのですね。韓国政府はこの金東雲問題が起こってからもう一貫して、大臣自身が言われておりますように、これはもう何にも関係ないのだ、アリバイさえあるのだということを主張してきている。そうして、いま大臣がお認めになったように、金東雲の私人としての行為だということを彼らが主張するなら、それはこれこれこういう理由があって私人としての行為なんだということを立証する義務が韓国政府側にある。何の立証もしてないじゃないですか。そうでしょう。今度の金大中事件が起こった、数人の男がこれをやっている、それについて一体共同謀議がどこで、いつ行なわれたのか、グランドホテルにだれとだれが行って、どういう役割りでもって彼を拉致したのか、使った自動車はどういう自動車か、どこへ運んだか、船に乗したのはどういう経路で乗したのか、あるいは韓国でどういうふうにして金大中韓国国内で引っ張り回したのか、これらのことについて解明して、そのすべての行為について金東雲個人として関与しただけであったんだということを証明しなければ証明したことにならぬと私は思う。そのことを何にも要求してない。要求するのは無理だなんということを言っている、それ自体がおかしい。もうすでに久しい以前から金東雲の問題というのは起こってきている。今回ですよ、外交的な交渉を再開するにあたってです。というのは、日韓会談その他のことですけれども。この点を全く不問に付したままで日韓閣僚会議を開くとか、対韓援助をやるだとかというような外交関係を開く、ここがうやむや解決だと言ってるんです。この点について、韓国政府から何か具体的な立証があったですか、外務省の方に伺いたい。また、日本政府が、個人としての行為なんだと主張をしている、これを一応了承して、今度日韓閣僚会議を開くということをきめてるでしょう。一体その了承した根拠は何なのか、これを伺いたい。
  236. 中江要介

    説明員中江要介君) これは先生も御記憶と思いますけれども、八月八日に事件が起こりましたその日でしたか、九日でしたか、その直後に、最初外務省の法眼事務次官が駐日韓国大使を呼びまして、本件は公権力の介在、介入ということがあるとこれはたいへん重要な問題である、したがって、そういう点については慎重に捜査をし、事実を究明しなきゃならないという警告を発しまして以来、韓国側と折衝するたびごとにこの点については韓国側に警告をし続けてきておるわけでございます。ただ、いまの時点で両総理の間で話をしました段階では、残念ながらわがほうからこれに職務行為であるとか、あるいは公権力の介在した行為であるということを確証をもって韓国の主張をくつがえすことができなかった。したがって、その点は今後の捜査に待つと。そこで、したがってもうそれを問わない、不問に付すというのではなくて、その点は将来の捜査の結果に待つということにして、両国間の関係を正常に戻す努力をしようということに合意を見たわけでございます。それでは、韓国側で私的行為だということについて具体的な証拠をもって向こうは主張したのかという点につきましては、具体的な証拠をもって主張しているとは承知しておりません。
  237. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういうことで向こうは主張している、しかし、客観的な根拠ある証拠は示していないと。それを不問に付して、なるほどことばの上では今後の捜査に待つということに、それはそういうふうに答弁されておりますけれども、しかし、今度の日韓閣僚会議を開くにあたっては、そのまさに重大な問題について全く日本政府が不問に付したままで韓国政府の言い分を了承して、そして閣僚会議を開くことにしたわけでしょう。国民をばかにするのもはなはだしいと私は思うんです。内外の納得のいくような公正な解決だと言うけれども、内外ともに今度のやり方についてだれも納得してない。マスコミ関係だって、ただの一紙たりとも、今度の政府やり方について納得がいったなどと書いている新聞はただの一つもありゃせぬですよ。人をばかにするのもいいかげんにしてほしいと思う。しかし、これは金東雲だけじゃないと私は思う。在日韓国大使館、公使館、これの要員が今度の事件にたくさん関係していると疑われる節が私どもが考えても十分にある。  そういう点について、私はまず最初外務省の方に伺いたいんですけれども韓国大使館、領事館、これの関係者で事件以後外交官を離任した者の氏名、それから離任した日、日本政府に通告のあった日、これがわかっていたらおっしゃっていただきたいと思います。
  238. 中江要介

    説明員中江要介君) 順不同になりますけれども外務省に公式に文書をもって離任通知をしてまいりました在日韓国大使館、領事館の館員を申し上げますと、まず金東雲一等書記官、これは大使館一等書記官でございますが、これは二十三日付で離任になったという通知を十月二十五日に受け取っております。それから大使館の二等書記官韓京鎬は、八月十八日に離任の命令を受けまして、十月十一日に離任通知が届いております。横浜の領事館の副領事劉永福は、九月六日付で離任が発令になりまして、十月十一日付で通知が来ております。大阪の総領事館の安竜徳運転手は、九月七日付で離任の発令がありまして、十月八日付で通知が来ております。同じく大阪総領事館の副領事朴聖一は、九月十日付で離任の発令がありまして、九月十七日付で通知が来ております。在京大使館の、これは水産関係の高東祥水産官は、九月二十九日付で離任発令がありまして、十月一日付で通知を受けております。大使館の金祥稷空軍武官は、十月八日付で離任の発令がありまして、十月八日付で離任通知を受けております。それから大使館一等書記官朴魯洙は、十月十五日付で離任の発令がありまして、十六日付の文書で通知を受けております。大使館の二等書記官李至漢は、十月十五日付の離任発令で、十六日付で通知を受けております。それから大使館の農業関係のアタッシェ金寅洙は、十月十六日付で離任の発令がありまして、十九日付で離任通知を受けております。  以上でございます。
  239. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは出入国管理局のほうに伺いたいんですが、いま述べた人たちはいつ出国をされて、再入国はされたかどうか。この点ひとつ伺いたい。  それから、そのほかに事件日本を出られて、それで再入国されなかった方、日本にいる韓国公館の方でですね、それをちょっとおっしゃっていただきたい。
  240. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) ただいま外務省のほうから御説明のありました、離任いたしました各大使館員あるいは領事館員の出国についてでございますが、私どものほうで現在までに調査できておりますのは、これらの人がいつ出国したかというのはかなり網羅的に調査したつもりでございますが、その後にかりに入国している事実があるといたしますと、こちらのほうはまだ完全に調査できておりませんので、その意味では全体といたしまして完全な調査ではないということを最初にお断わり申し上げたいと思います。  金東雲一等書記官でございますが、これは八月の十九日に羽田を出国いたしております。それから大使館の韓二等書記官、八月の十八日に羽田を出ております。横浜領事館の劉副領事、九月五日に羽田を出ております。それから大阪総領事館の安運転手、九月七日に伊丹を出ております。同じく大阪総領事館の朴副領事、九月十日伊丹を出ております。大使館の高水産官、九月二十九日に羽田を出ております。同じく大使館の金空軍武官、十月八日羽田を出ております。それから大使館の朴一等書記官、十月の十五日羽田発。同じく大使館の李二等書記官、同じく十月十五日羽田発。それから大使館の金農業アタッシェ、十月十六日羽田発ということになっております。この離任通知に接しました各大使館員、総領事館員の出国につきましては私ども調査で以上のことがわかっておりますが、先生御質問の第二点の依然として在日韓国大使館員身分を保有している人、この人たちの出入というのは、これは非常に調査に手間どりますんで、私どもいま手元にその資料を持っておりません。
  241. 渡辺武

    ○渡辺武君 補足的にちょっと伺いたいんですが、大使館の洪性採一等書記官ですね、この方はいつ出国されて、入国はいつでしょうか。
  242. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) 最初に申し上げましたように、私ども出国のほうはいまかなり調べておりますんでわかっておりますが、ただいま御指摘の大使館の洪一等書記官、九月の六日に伊丹を出ております。その入国のほうにつきましては、先ほど申し上げました理由によりまして調査はできておりません。
  243. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう一つ伺いたいんですが、同じく大使館の二等書記官ですね、これは副領事をされておる方で柳春国さん、この方はいつ出国されて、入国はわかっているかどうか、ちょっと伺いたい。
  244. 影井梅夫

    説明員(影井梅夫君) 私のほうでわかっておりますのは出国でございまして、九月の六日伊丹を出ておられるようでございます。入国のほうについては同じ理由で現在わかっておりません。
  245. 渡辺武

    ○渡辺武君 大体私どもの調べたのとほぼ一致しておりますが、いま御答弁のあった在日韓国公館関係者の出国状況、これを考えてみますと非常に疑問の点が私は多いと思う。特に問題の金東雲一等書記官、これは家族三名、使用人一名、これも九月になってから韓国に帰っている。それから二等書記官の韓京鎬、この方も九月の七日に家族三名、使用人一名、やはりこれは帰っているという状況です。そうしてすでに日本の有能な新聞記者の方々がいろいろ調査されて、おそらく捜査当局からの情報などもとってのことだと思います。いままで韓国の在朝公館関係者で今度の金大中事件関係ありと思われる人物として新聞などに書かれた人たち、この中にたくさんあるわけですね。特に今回新たに問題になっております横浜領事館の副領事の劉永福氏、これは九月五日に先ほどの御答弁ですと羽田を出国された。そうしてすでに解任されているという状況。出国をし、解任する。解任されたかどうかわからないけれども、再来日したかどうか、この点でもわからない。私ども調べてみると、再来日はしていないという方々、これが新聞紙上でKとかRとかいうような頭文字では書かれているけれども、大体いま読み上げられた方々の頭文字に該当する。非常に疑わしい。一体捜査当局金東雲だけではなくして、いま名前のあがった人たち、これについて捜査をされているのかどうか。もしされているとするならば、どのような事実が判明しているのか、これを伺いたいと思う。特に十一月二日の読売新聞に「金書記官KCIA出身で、事件は、駐日大使館員としての公務に密接に関連して引き起こされたとの見方が一段と濃厚になった。これを裏付けるように、金書記官のほかにも、数人の韓国政府機関員が捜査線上に浮かんでおり、」云々という記事が出ております。これは捜査当局がそういうふうな見解を持っているんだという記事であります。特に捜査本部は、いろいろの点から「金書記官KCIA勤務当時と同様な職務内容と推測できる任務を、日本国内でも果たしていた」、「犯行動機は、いずれも韓国政府の根本にかかわる問題だった」、「犯行グループの中には、他に数人の政府機関員が浮かんでいる」というふうに判断しているという記事が出ております。この点もお含みの上、いまの質問にお答えいただきたいと思います。
  246. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいま入管御当局より読み上げられました、すでに出国もしくは出国をしてさらに離任届の出た韓国大使館関係者のうちで、金東雲氏のほか問題になりましたのが御指摘のとおり劉永福副領事でございます。この劉永福副領事の所有しておりました「品川五五−も−二〇七七」という車が犯行の際に用いられた容疑はきわめて濃い。こういうことが明らかになりまして、数日前この点を公表をいたし、かつ外務省に対しまして、劉永福氏の車がこれに使用された公算がきわめて大きい、こういう事実を外務省を通じまして韓国側に通告をし、その調査結果の回答を待つ、こういう申し入れをいたしております。  それから、これも当委員会でもしばしば出ております安竜徳運転手、これにつきましては、「アンの家」に行こうということを連行者のうちの一人が言ったという金大中供述がございまして、当然「アン」という名前を持っておる一人として対象になっておったわけでございますが、これにつきましては決定的な材料をまだ得るに至っておりません。  それから、その私どもが公表をいたしました事実は、九月五日の金東雲一等書記官本件に関与した疑いがあるということと、それから日にちをちょっと正確に覚えておりませんが、大津のインターチェンジで目撃をした連行車の状況、これは実は若干今回出てきたのと右ハンドルと左ハンドルの問題が違ってまいりまして、その点捜査の詰めを行なっておりますけれども、その点と、三回目公式に発表いたしましたのがこの劉永福氏の車でございます。それ以外たびたび各委員会でも問題になっておりますが、それぞれの新聞の取材も相当の根拠があってなされておると思いますけれども、私ども捜査当局責任をもって公表をした事実は以上でございまして、金東雲書記官の背後関係、その身分あるいは共同謀議の事実、資金関係、動機、これらにつきましてはいまだ未解明でございます。
  247. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま私申しました金東雲のほかに日本を離れてすでに解任されている、あるいはまた再入国してない、あの事件以後、しかも非常にあの事件に接近した日時で、たとえば大使館一等書記官の先ほど申しました洪性採、あるいは二等書記官の韓京鎬といいますか、それから同じく二等書記官の柳春国、あるいは大阪総領事館の朴聖一、あるいは一等書記官の朴魯沫、あるいは二等書記官の李奎漢、こういうような人たち、これについて捜査当局として、とにかくグループをつくって金東雲一人でなかったと、これはもうあなた方も認めておるとおりですからね。そうしてもう一人名前が出てきたのは、これは劉永福とかそのほかの人たち、いま私が名前をあげた方々、こういうような人たちについてあなた方は真剣になって捜査しておられますか、どうですか。
  248. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) たびたび御答弁申し上げておりますように、金大中事件の背後関係、これが複数の犯人によって行なわれたことは間違いないわけでございまして、その背後関係、動機等につきましては真剣になって捜査をいたしておりますが、現在までの時点では、捜査結果では、ただいま先生の御指摘のような名前につきまして、その人物が本件に関与をしておったということを疎明するに足る捜査資料の収集に至っておりません。
  249. 渡辺武

    ○渡辺武君 法務大臣、お聞きのとおりなんですよ。今後の捜査に待つと、そうして主権侵害の問題については、これはもういわば十分に究明していくんだというような趣旨の御答弁をいただいた。その決意たるやまことにけっこうだと思いますけれども、しかし、いまお聞きのとおりの捜査状況なんです。しかもわれわれが疑わしいと思っている人たちはみんな韓国に帰っちゃっている。こういう事態ではたして今後この主権侵害の問題について、日本政府責任で徹底的に究明できる自信がありますか。大体その条件がないじゃないですか。金大中氏の原状回復としての来日要求、これについてもう少し私は詳しく伺いたいと思いましたが、もう時間が来たのでやめますけれども、これを含めて、日本政府として疑わしいと思っている人たち、あるいは事情を伺わなきゃならぬと思っている人たち、現在韓国に帰っている人たち、これの再来日を政府として要求する、それを実現させるということが私はどうしても必要だと思うんです。その点について法務大臣を含めて、これは外務省の方にも伺いたいし、捜査当局にも伺いたいのですけれども、どうなさるおつもりなのかお答えいただきたいと思います。
  250. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いま仰せになりました人々の来日をあくまでも求めるという態度は、捜査当局の決断のとおり、どこまでもこれを継続して求めていきたい。しかし、求めましてもこれが実現をする見通しということはまことに暗いのであります。そこで行ないます方法としては、全力を尽くしてあらゆる角度から捜査を積み重ねまして職務行為、公権力の介入というものは解明する。もちろんこの捜査目的は犯人を糾明して処罰することが目的でございまして、その結果として公権力の介入、原状回復という問題が出てくる、主権の侵害が証明されるという筋になるべきものでございますけれども、これらの問題を究明するについて全力をあげて、今日先生仰せのようにこれは御同情あるおことばでありますけれども被害者がおらぬ、加害者がおらぬ、目撃者がおらぬ、参考人がおらぬ、全部韓国に帰っている、そういう悪条件の中で悪戦苦闘をして捜査当局努力をして今日までやってまいりましたが、だんだん成果をあげておる、指紋もあがっておる、目撃者も出てきておる、用いたといわれる、間違いないと大体において判定のできる車も出てきておる、こういう状態でございます。こういうふうに漸次だんだんと主権の侵犯、公権力の介入という方向に向かって容疑はますます濃厚になりつつある。この方針捜査当局努力をしておりますので、何にもできるはずがないではないかということはひとつ仰せをいただきませんように、しっかりやれという態度でおやりをいただきまして、どのような苦心をいたしても必ず捜査は結果において真相究明をしてみせる、こういう熱意を傾けて現にやっておるのであります。あらためて政府を代表してお誓いを申し上げる次第でございます。
  251. 中江要介

    説明員中江要介君) 私ども外務省といたしましては、累次申し上げておりますように、捜査当局がわが国の捜査を続行し、また、その万全を期するために必要だと判断されることはすべて韓国政府との外交交渉によってその希望に沿うように努力していきたい、こういう基本方針でやってきておるわけでございます。  で、ただいま先生がおあげになりました在日韓国総領事館員、大使館員の問題でございますが、これは通常の手続をもって離着任のときに通報してきているものを事実として御紹介したまででございますが、事件後離任したからといって、すべてこれを疑わしいとかかってとめるということはもちろんできない相談でございますし、確たる証拠なくしてそういうことは私人でもできない問題だと私思いますが、特に先ほども申し上げましたように、外交官身分で両国の外交関係努力している国家機関であるそういう人たちでありますだけにこれは慎重にしていくべきではないかと、こういうふうに思います。ただ、捜査当局の懸命の御捜査の結果、確たる証拠が出ました暁には、それを根拠にして必要な措置をとっていきたい、こういう方針でございます。
  252. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 捜査当局といたしましては、従来の捜査方針並びに捜査体制で捜査を続行いたします。外務省を通じまして韓国側の協力、すなわち被害者である金大中氏の来日をはじめとする捜査資料の提供方を依頼すると同時に、独自の捜査資料に基づきまして独自のじみちな捜査継続してまいる、真相解明のためにつとめる所存でございます。
  253. 原田立

    委員長原田立君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会