○
楠正俊君 同様の例といたしまして、私はよく知っております
幼稚園の例をちょっと御披露いたしまして、
大臣の御
所見を承りたいのですが、
武蔵野市に
武蔵野東幼稚園という
幼稚園がございまして、私も二、三回見学に行ったことがあるのです。前の
高見文部大臣も、私、
お願いしまして視察に行ってもらったのです。
高見文部大臣に、私、
予算委員会の
部屋の前でばったり前に会いまして、八百名の園児の中で、驚くなかれ百五十八名の
自閉症の
子供を預かっている
幼稚園があるのだ、それは
武蔵野市で、近いから一ぺん見てくれと言ったら、ぜひそれは見に行こうということになりまして、
高見文部大臣行きまして、非常に感銘をして帰られたということがあったのです。これはもう百五十八名の
自閉症の
子供を預かるということは、二、三名でもこれは手がかかってたいへんなんですね。これは私は、まあ
世界の奇跡に近いほど
——ちょっと表現はオーバーだけれ
ども、たいへんなことをやっておられる
幼稚園だというように見ておるわけです。そこで
早期治療とか、それから
普通児と
自閉症児が一緒になってやっているといった
統合教育と申しますか、そういったことが非常な
効果をあげて、いままで
ことばをしゃべらなかった者もやがて
ことばが出てくる。全然
コミュニケーションがなかったお友だちとも
コミュニケーションが出てくるというような
効果をあげておる。
大臣、
自閉症という
病気をよく存じておられると存じますが、赤ん坊のときおんぶしておりますと、赤ちゃんを、何かこう重くてしようがないというのですね。どうしてこう重いのかなと思っておりますと、何か、石の地蔵さんのように硬直しておるわけです。普通の
子どもならば、
おかあさんの背中に寄り添うという
コミュニケーションを知っておるわけですね、本能的に。ところが、こうなっておるものだから、重くてしようがないわけなんです。おかしい、おかしいと思っておりますと、
ことばが単語しか出てこない。これはちょっと頭がおかしいのじゃないかと心配して病院へ連れていきますと、これは
自閉症だということで、私の
部屋なんかもときどき
自閉症児の
おかあさんが
子供さんを連れてきますと、ぱっと入り込んできまして、あの
議員会館の
部屋に、窓からぱっと見て
清掃車、
清掃車というようなことを言って、また、さっと帰ってきまして、
秘書室にある冷蔵庫のふたをぱっとあけて
ジュース、
ジュースと言うんですよ。私は、そういうあれをよく知っておりますので別に驚きもしないんですが、普通の方が見たら、これはどういう
お子さんかな、しつけの悪い
お子さんじゃないかというように見るといったのが
自閉症です。たとえば、
おかあさんがバスなんかで連れて
学校に行く、
幼稚園に行く、そうしますと
集中力がものすごくあるものですから、何かこう一点を見つめますと、前の人の
めがねなら
めがねを見ておりますと、
めがね、
めがねと、こう思うわけですね。
おかあさんが知らない間にぴょんと飛んでいって前のお客さんの
めがねをぱっと取ってしまうというような
病気だというように思っていただければいいんですが、まあわかりやすく言うと、
山下清画伯、あの方あたり、やはり一種の
自閉症だと思うんですね。
はり絵、あれに夢中になると、そればっかりに集中して
分散力というものが非常に少ない、こういった
子供さんを百五十八名も八百名のうちに預かっている
幼稚園、こんなものはどこへ行ったって、
世界のどこを見渡したってないわけですね。ここで私非常に驚いたことは、
園長さんはじめ
先生たちの
教育に対する
情熱ですね。これの打ち込み方はたいへんなものなんですね。したがって、親がまたその
先生を非常に尊敬して、親がそういう
障害のある
子供に対する
理解が非常にあるというようなことが感応道交して、
普通児の
子供がそういった
障害のある
自閉症の
子供さん
たちと、これは
子供の
世界というのは全くおとながはかり知れないすばらしいものがあるんだなということを感ずるんですが、実に抵抗なく融和をしていくというところ、それが非常にいい刺激になって、この
自閉症の
子供がなおっていくといったそういう
統合教育が成功しているという
幼稚園ですね。ここでだんだんだんだんそれが語り伝えられまして、
北海道から
九州から、おやじさんはつとめがあるから
北海道に残る、
九州に残る、奥さんが
子供を連れて、
東京のアパートに入って、そこの
幼稚園にぜひとも入れてくれ、入れてくれ、といってきて、もう満タンを越えちゃっているわけですね。ところが、その近所を見渡しても
土地が高くて手に入れることができない、それを拡張することができない。ちょうど幸いに
米軍の払い下げの
敷地がある、そこを何とか借りてはみ出たそういった気の毒な
お子さんもともに大きなところでもって収容できるような
教育がしたいという
園長さんの
情熱もむなしく、その
敷地は全部
武蔵野市の
市民の
いこいの場としての
グリーンパ一クにしようという決議が行なわれておる。したがって、市長も
理解がないわけではないが、
市民の
いこいの場のほうがまず
公共的な立場からいって先決であるというような判断のもとに、なかなかそれを迎え入れようとしない。私は
公共的な、
——その
公共ということは一体どういうことかと考えますと、こういった問題が解決されなければ、
公共施設、
グリーンパ一クにするということ、それはむしろ二の次になるんじゃないかと思うほど、こういった問題こそ、
公共的な問題であるというように考えておるわけでございます。これは、この
学齢に達した
子どもが五十九名も入っておるというのですね。これは違法といえば違法ですよ。あえて違法をせざるを得ないようなそういった
状況だということを
大臣も御
理解をいただきたいのでございますが、この
幼稚園がその
敷地を借りるにしましても、何するにしましても、そういった
子どもを
教育するためにはどうしても
文部省がそれに対する
理解を示すということによって
大蔵省も、きょうは
大蔵省は見えておりませんのではなはだ私は残念なんですが、
分科会の都合でどうしても来られないということで、
大臣から私は
大蔵省に強く要望してもらいたいのですが、あれは
国有地になるわけですから、返還された暁は。
大蔵省がもっと積極的に、相当積極的にやってくれているようなことを聞いてはおりますが、もっともっと積極的にこういった問題に取り組んで
予算をつけてもらうとか、返還に
協力してもらうとかということをやってもらいたいということを強く希望しておるわけでございます。それにつきましても
文部省が、たとえば
実験協力校というのですか、そういうものに
武蔵野東幼稚園を
指定するということができないかといって、かりにできなかったならば、
国立特殊教育研究所というものがあるのですから、この
特殊教育研究所が
実験協力校に
指定をするといったことができるならば、
文部省も積極的な
姿勢を示しておるということが
大蔵省に反映するわけですが、その点、
大臣いかがですか。