○
中村波男君 大臣の前向きの御
答弁をいただきましたので、ぜひひとつ権威のある
調査団を派遣されまして、
原因究明を急いでいただきたいと思います。
次は、四十六年の十二月に、新しい
飼料として
尿素とイソブチルアルデヒドを加えたわけでありますが、このイソブチルアルデヒドについての疑問というものは
富山県の
事故からさらに大きく明らかになってきておると思うのでありますが、私は、その前に、
尿素というものの
飼料というものについても大いなる疑問を持っておるわけであります。したがって、この
尿素について、これまた学者等の研究
意見等を総合いたしまして、
問題点を
指摘をして、この
飼料化についても再
検討を要求いたしたいと思うわけであります。
あらゆる
ダイブの宣伝
文書を読みましても、
尿素の欠点を補うのがいわゆる
ダイブなんだと、こういうふうに書かれておるわけでありますが、そのことは
尿素は
ダイブよりもより危険であるという裏づけになりはしないだろうか。そういう、客観的に見ましても、
尿素の
飼料化というものについては、相当危険度が高いように考えるわけであります。
私が言うまでもなく、
尿素飼料はその
使い方を誤ると非常な危険な
飼料である。これはだれもかれも認めておるところであります。
尿素飼料は水に溶けやすく、ルーメンの中のウレアーゼ、すなわち酵素の働きですみやかに分解してアンモニアになり、その一部はバクテリアの給源となるのでありますが、多過ぎるとルーメン壁からも吸収されて、血中
——いわゆる血の中にアンモニア濃度が激増し、
中毒になる。その
中毒が多発したために
尿素飼料化は、かつて
昭和二十七、八年であったと思いますが、大問題を引き起こしまして断念をした経緯があったと思うのであります。それだけがはたして問題だったのだろうかという疑問を投げかけるのであります。
乳牛の消化と栄養の生理に関する日本の草分け的研究者として知られております梅津氏は、「
乳牛の科学」という雑誌の中で、
尿素の
飼料的
価値を論じておられますが、その中で、その
問題点を整理しておられるのを申し上げてみますと、「第一胃内で蛋白質
窒素及び非蛋白質
窒素が経時的にいかに消長するかを調べた結果、
尿素を
飼料に添加して蛋白質が増量する条件としては、第一に
飼料中の蛋白質があまり多くてはいけない。第二に
飼料中の易分解性の」
——分解のたやすい「炭水化物がある程度多い方がよい。」「微生物に限らず、生物はその栄養摂取をはじめ、その行為において本質的にむだなエネルギーを費すことを避けるようである。おそらく、アミノ酸の存在する限りにおいては、微生物は
尿素から蛋白質を合成しようとしないであろう。蛋白質または、アミノ酸の少なくなった場合だけ、微生物はその隠れた能力を発揮して
尿素からでも微生物蛋白を合成するであろう。」「乳を生産する
乳牛は必要とする蛋白質量が大きいので、
尿素飼料の応用は困難であろう。育成中の
肉牛でも、
尿素は〇・〇五%の濃度以上では、微生物の発育を抑制するので、投与する
尿素の総量は自ら制限され」ようと
指摘しておられるのであります。
農林省が
尿素添加量の許容基準を三%以内としているのは、上記の基準から見ると、たいへん私は大甘でないかと思うわけであります。これは少し
実態として多いのではないかという疑問を持つのであります。
ここで、微生物の発育を抑制する理由の一端を、明治大学の高橋直躬氏は、非
たん白質窒素を栄養源にできるのは微生物中のバクテリア類だけで、原生動物
——プロトゾアにはその能力がないと論じておられますが、すなわち一般に
尿素を一%以上添加すれば、第一胃内のプロトゾアの激減を避けられないことを示唆しておられるわけであります。牛のルーメン内では、原生動物は細菌に比べはるかに少ないが、体積が大きいので、微生物
たん白質量においてはほとんどひとしいのであり、その重要性は軽視できない。プロトゾアはバクテリアを栄養源の一部として摂取し、粒状物
——炭水化物を摂取するなど、バクテリアとはその食性を異にする。プロトゾアの種類(属)と密度とは、当然牛の健康
状態や
えさの種類とともに変化し、牛の生理にとってきわめて重要な位置を占めていると考えられる。プロトゾアが牛にとって有害でマイナスの作用が大きいならいざ知らず、その有益な働きにより牛は健康を維持増進し得るのであり、その意味するところを十分反省せず、牛のプロトゾアを激減させ、その代謝を狂わせる近代畜産思想に根底的疑問を禁じ得ない、まあこう述べておられるわけであります。
したがって、梅津氏が
指摘をしておられますように、
肉牛においてまず行なわれるのが常道であるわけであります。なぜなら、
肉牛は一般に雄であり、分娩等による体力の消耗がなく、
乳牛に比べて
飼料中の
たん白質含有料が少なくて済むからであります。しかし、
肉牛の
尿素の
飼料的
価値について、大成清氏は、
配合飼料メーカーの
立場に立っても、なお
飼料的
価値に疑問がないわけではないと論じておられます。同氏は、
尿素は牛の成長の向上のためではなく、生産費の低下のために
使用されるのであるが、大豆かす以上には発育、肉質、
飼料要求率の向上は期待できず、同等またはマイナスの効果しか得られれいない
データがあるわけであります。
ジウレイドイソブタンの
試験成績表をいただいておりますが、これを見ましても、大豆その他のいわゆる濃厚
飼料と比べて成績がよかったという
データは一つもないわけです。差異がない、悪影響がなかった。このことは、いわゆるアメリカの大豆の輸入規制、世界的な
飼料の逼迫等々から、いわゆるやむを得ざる
飼料メーカー、その他のいわゆる苦肉の策として、こういうものへの要求が出てきたと見なければならないわけです。
また、今度
ダイブを
飼料に加えますいきさつというのを振り返ってみますと、さっき工藤
委員も少し
指摘をされたように、三菱化成が緩効性の
尿素をつくったと、
尿素は御承知のように、速効性でありますから、遅効性の
尿素をつくった。しかし、実際に
飼料として
販売をしてみると、
試験のように緩効性ではなかった。したがって、売れなかった。せっかく開発したのであるから、いわゆるこれを
飼料化ということを思いついて、
飼料化への研究が行なわれて、その結果として
農林省が認めるという私は、経緯を見のがしてはならぬと思うわけであります。そういう点から見ましても、問題は、これを
飼料に加えた
農林省の態度について私は大きな疑問を持っておるのであります。
そこでお尋ねいたします。
農林省が新しい
飼料をきめられます場合には、
飼料規格等設定委員会の議を経ておきめになるのですか、いかがですか。