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政府委員(
内村良英君) 最近のいろいろ
農業をめぐるきびしい
条件から、資金需要が、
制度金融で予定しているだけのものが出てこないではないか。私もそれは非常に残念に思っております。これはやはり
農業自体の中に、そういった資金需要をもっと及ぼしていくようなことが必要かと思いますが、今度の
農協系統金融の
改正につきましては、そういった
条件等も十分考えながら、
改正案を考えたわけでございまして、まず第一に、
農業の
近代化を進める上で、
規模が大きく、
生産性の高い経営をつくらなければならぬということは、先生るる先ほどから強調されておりまして、私
どもも、その必要が非常にあるのじゃないかというふうに思っているわけでございます。そこで、そういった経営ができてくれば、物的な
自給率も高くなるのではないかということでございます。と申しますのは、これは
一つの具体例でございますが、必ずしも全部それは当てはまるかどうかわかりませんけれ
ども、先ほどから麦の問題が非常に出ております。私も過去において麦の問題では非常にやってみたことがございます。そのときの経験からいきますと、先ほど先生が、高
能率の機械化
農業をつくって麦作をやれば反当労働時間も減るし、収益もあがるんだ、それでいけと。まさに先生がおっしゃると同じことで実はいろいろ運動を展開してみたわけでございます。その結果、一番問題なのは、裏作だけでも農家が
土地を人に貸さない。期間借地でもなかなか
土地が集まらない。したがいまして、基盤
整備ができているということはもちろん大事でございますけれ
ども、今日では基盤
整備が多少できてなくてもある程度、五ヘクタールなり十ヘクタール集団化してやればかなり経営の、
生産性の高い麦作ができる、これはもう技術的にははっきりしているわけでございます。と同時に、
日本はちょうど収穫期がつゆのときに当たりますので、もう一週間収穫が早い品種を何とかしてつくりたいということで技術会議等ともいろいろ相談いたしまして、何とかしなければならぬ。これは時間がかかる問題でございますが、現在
農林省の技術者の連中が一生懸命それに取り組んでいるわけでございます。ところがなかなかうまくいかない。ところが私が最近聞きましたところでは、ある県で、ある農家の人が一生懸命
土地を借りて、自分の自作地は二町歩ぐらいらしいんでございますけれ
ども、たまたま都市近郊で、離農する人が多いというようなこともあって、何とかかんとか水稲十町歩の単作経営をつくった。その農家がそれじゃどうしているかと申しますと、夫婦二人で水稲やりまして、裏作の麦も全部つくっているということを聞きました。と申しますのは、米の、水稲の機械は全部麦にも使えるわけでございます。それから水稲の米に要するいろいろな施設はまた麦に使えるということで、そういったような大
規模農家ができてくれば、
物的生産性もあがってくる、
生産力もあがるということがあるのじゃないかと。もちろん
集団的生産組織等つくりまして、そういった形で
生産力をあげていかなければならぬということもございますけれ
ども、そういった大型経営が非常に大事だということはまあ私
どもも非常に強く認識しているわけでございます。そしてそういった
生産性の高い農家をつくるにつきましては、やはり相当な資金需要がある。ところが
単協が、まあ先生よく御
承知のように、何となく
農協という性格から平等性があるわけでございます。これはよく言われることでございまして、特定の人に、
——あの農家が育ってくれればかなりいい大型経営ができるけれ
ども、やはりみんなから集めた金だ、一人の人に一千万円とか二千万円という金を貸すわけにはいかぬと、みんなの金なんだと、こういう感じがございます。これはある
意味では当然のことだと思います。そういった
単協の
金融についての行動意識と申しますか、そういったものをある程度考えながら、そういった農家には信連なり
中金が大口の金を直接貸すことができるということにすれば、かなり
農業の
近代化に役立つわけでございます。ただ、その場合に末端の
金融というものは
単協によってになわれているわけでございますから、それを
中金なり信連が割って入るというふうなことは、やはり
系統金融としては問題があるというところから、それについては協調融資と申しますか、あるいはさらにまた、
金利の問題等考えれば、
公庫資金との結びつき等も考えなければならぬわけでございます。そういったものを考えて、今後伸びていくであろう、
規模が大きくて
生産性の高い経営について直接貸しをする。同時に、やはり
集団的生産組織というものを私
どもは無視できないと思います。そこで
集団的生産組織等につきましても、できればそういった金を貸していくというようなことが必要なんではないかというのが今般の
改正の第一点でございまして、具体的には農林
中金による
農業者等への直接貸付等の措置を開いたわけでございます。
それから第二の問題でございまして、まあ
農業の金なんだから、当然
農業に返すべきである。まあ私
どももそう思うわけでございます。
そこで一方、
農業の
現実というものを考えました場合に、
規模の高い農家をつくる場合におきましては、やはり第二種兼業とかあるいは第一種兼業の一部の人は
農業をやめまして、大きなほんとうに
農業をやろうという人に
土地を貸してくれることが一番望ましいわけでございます。これは離農促進とかいろいろ問題もある問題ではございますけれ
ども、やはり
現実にはそういった
施策を進めていかなければ、大型経営ができないというところから、農地地域工業導入促進法等の
法律ができているということでございまして、そういった面にもやはり
系統資金を使ったらどうかということを考えて、そういった面に
系統資金を使えるというふうな
改正をしているわけでございます。と同時に、先ほどから
お話が出ておりますけれ
ども、
農村地域の
産業基盤及び
生活環境の
整備、これもやはり魅力ある
農村というものをつくるためには必要だということでございますので、そういった面の資金もやはり
系統資金が見たらいいのではないかということでございまして、ある
意味では、
農業生産の根本的改造という点から見れば、資金措置としては手ぬるいではないかという御批判があるかと思いますが、私
どもといたしましては、
農政審議会でもいろいろ御審議をいただきましたし、現在の
農業金融の直面しているいろいろの問題を解決するために、現在の時点におきましては、これが最善の措置ではないかということで、今般の
改正法案を御
提案申し上げている次第でございます。