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政府委員(内村良英君) まず最初に、
昭和四十五年の
農業協同組合法の一部
改正により
改正されたおもな事項をこの際申し上げてみたいと思います。
第一は、
農協による
農業経営の受託でございます。第二は、
農協による農地その他の土地の売り渡し等の事項、第三は、
農業協同組合連合会等の会員の議決権及び選挙権の数の特例、第四は、総代会
制度の整備、第五は、農事組合法人
制度の改善ということであったわけでございます。
そこで、これらの事項につきまして、その後の
状況はどうなっておるかということを申し上げますと、
農協による
農業経営の受託につきましては、
昭和四十六年度から実施している稲作以外の作物にかかわる
農業経営等の受託の推進のための補助事業により四十七年度において
農業経営の受託を行なった組合は、二十四組合でございまして、受託面積は約四百十五ヘクタールということになっております。これがまず
農協による
農業経営の受託の実施に移された後の
状況でございます。
第二は、
農協による農地その他の土地の売り渡し等でございますが、いわゆる農地等処分事業、この
実施状況でございますが、
昭和四十七年十二月末における農地等処分事業の
実施状況は、組合員の委託によるものが組合数で百十六、開発面積が四百二十七ヘクタール、組合員からの買い入れによるものが五十組合、九十七ヘクタール、こういうことになっております。
それから農用地供給事業でございますが、この事業の中心をなすものは、農地を農地として取得し、これを農地のまま組合に供給する事業でございますが、この事業を実施するために、
農協が農地保有合理化法人として指定される必要があるわけでございます。で、
昭和四十七年度までに、この法人の指定を受けました
農協は、全国で二組合のみでございます。
それから
農協連合会等の会員の議決権、選挙権の数の特例でございますが、
昭和四十七年十一月二十日現在におけるこの特例の採用
状況を見ますと、採用している県が十三県、
検討中の県が十二県、採用する意思のないものが二十二県となっております。実施中の十三県のうち中央会、連合会、経済連、共済連及び厚生連のそれぞれについて実施中のものは十二県、中央会のみについて実施中のものが一県でございます。
それから第四に、総代会
制度の整備でございますが、
農協合併による規模拡大に伴い総代会
制度を採用する組合は、年々増加の傾向にございまして、これによって組合運営の効率化がはかられていると考えられるわけでございます。
それから農事組合法人
制度の改善でございますが、
昭和三十七年に農事組合法人
制度が創設されて以来、協業等集団的生産組織の農政面での役割りの重要性にかんがみ、農事組合法人をめぐる諸
条件の変化に対応してその経営の安定をはかるとともに、設立の円滑化をはかる措置がとられてきたわけでございます。で、この間、農事組合法人の設立は年々増加いたしまして、
昭和四十七年三月末現在で三千三百九十六組合に達しておりまして、経営類型別に見ると畜産、果樹、養蚕等の成長作物の単一経営がその大宗を占めておるわけでございます。
で、四十五年の
改正のその後の
実施状況は以上のとおりでございますが、四十五年の
改正はただいま申し上げました諸点からおわかりのように、当時の経済
情勢の変転によりまして
農協が
農業経営の受託をやる。すなわち兼業農家が非常にふえているというようなことから、
農業経営の受託をやって
農業生産を維持していくということ、それから農地の問題がかなり流動化してまいりましたので、そういった面に
農協が参加していく。
それからあと
農協運営に関係のございます連合会等の会員の議決権及び選挙権の数の特例あるいは総代会
制度の整備等の問題は、これはだんだん
農協が大型化していくということに伴いまして
農協の運営についてそういった措置が必要になるということからとられた措置でございます。
それから農事組合法人の
制度の改善の問題につきましては、やはり
農業情勢の変化にあわせてそういった措置をとらなきゃならぬということで、このような
改正が行なわれまして、その後の
実施状況はただいま申し上げましたとおりでございます。
そこで、そういった
改正が四十五年になされたわけでございますが、それでは今般の
改正というものはそれとの関連でどうなっているのかという点でございます。御
承知のとおり、今般の
改正につきましては、
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案の提案理由の際に
大臣から御説明がございましたように、
改正の第一点は、組合の金融機能の拡充をはかることでございます。これにつきましては、最近における組合員の経済活動の多様化というものが起こっておりますと同時に、組合の事業規模の拡大等に対応いたしまして、信用事業を行なう
農業協同組合に対して、手形の割引、組合員の債務の保証、内国為替取引、有価証券の払い込み金の受け入れ等の取り扱い及び金融機関の業務代理等の事業能力を、また信用事業を行なう
農業協同組合連合会に対しましては有価証券の払い込み金の受け入れ等の取り扱いの事業能力をそれぞれ付与しようとするものでございます。これはただいまも申し上げましたように、非常に最近組合員の経済活動が多様化している。すなわち経済活動の範囲も広がっておりますし、それから経済取引の規模も大きくなっているというところから、組合についてもそのような金融機能の拡充が必要だということから起こっているわけでございます。
それから、
改正の第二点は、
資金の貸し付け範囲の拡大でございます。御
承知のとおり、最近はいろいろ地域開発その他で農村におきましても環境の整備あるいは産業基盤の確立ということが非常にいわれておりますと同時に、それに必要な
資金というものが必要になってくるわけでございます。そこで、そういった
資金需要に対応いたしまして、
資金の貸し付け範囲の拡大をはかるということが第二のねらいでございます。
それから第三の点は、組合の行なう宅地等供給事業の事業範囲の拡大をはかることでございます。これはただいま申し上げましたように、四十五年の
改正の際に農地等処分事業というものを始めまして、
農協が組合員の委託を受け、あるいはみずから売買をして宅地等供給事業を行なえるようにしたわけでございますが、そういった事業をやってみますと、組合員のほうから、売るということよりも所有権を維持しておいてこれを貸したいと、貸してやりたいんだと
——先祖代々の土地をそう簡単には手放せないと。これを貸すことを組合が、われわれの信頼する組合がやってほしいというような要望もございまして、そういった四十五年の
改正によって始まった農地等処分事業の延長と申しますか、そういった形で組合の行なう宅地等供給事業の事業範囲の拡大をはかりまして、いわゆる賃貸借という形で宅地等供給事業ができるということにしているわけでございます。
それから第四の点は、共済規程の変更手続の簡素化でございまして、これも組合規模が大きくなるということと同時に、共済の場合には単協がいわゆる共済責任を保有しておりませんので、そのつど一々総代会ないし総会でやるというのはたいへんだということもございまして、定款で総会付議を要しないことができるということにしたわけでございますが、これは組合運営の心要上起こった
法律上の手当てでございます。
それから最後に、
農業協同組合連合会の権利義務の包括承継の道を開いたわけでございますが、これも最近において郡市単位の広域合併等の進展に伴いまして、
農業協同組合連合会が会員数が減少したことにより法定解散する場合があるわけでございます。これは特に専門
農協等に多いわけでございますが、そこで会員が一人になってしまうというようなことも起こりますので、その会員たる組合が当該
農業協同組合連合会の機能を円滑に承継することができるように合併に準ずる手続により、その権利義務を包括承継することができるようにするということで、これも最近の組合の広域化等に伴う
農協及び農村
事情の変化に伴う組合としての対応措置ということでございまして、四十五年の
改正からさらに最近におけるいろいろ
農業を取り巻く
事情の変化あるいは
国民経済の変化に対応して今般の
制度改正が行なわれているわけでございます。