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参考人(一
楽照雄君) 一楽でございます。
先ほどは
委員長からきわめて御丁重なるご
あいさつをいただきまして、恐縮をいたしております。おことばに従いまして、率直なる私の
意見を申し上げさしていただきます。
四件の
法案になっておりまするが、私が従来最も関心を持ってきておりましたのは
農林中央金庫法の
改正でございまするので、まずそのことを、その案についての
意見を申し上げさしていただきまして、他の問題は、時間の都合によりまして、質問のときに延ばしていただきたいと考えております。
農林中央金庫は、御
承知のとおりに、大正十二年に産業
組合中央
金庫として成立したことは御存じのとおりでございます。そして戦後になりますまで、日本の
協同組合は産業
組合という名前によって、実態は
協同組合であるということで、これはもうどなたも御異存のないことだろうと思うわけでございます。戦争を経過しまして、産業
組合が
農業協同組合という名前に変わり、市街地においては
生活協同組合というように変わり、また、
農林中央金庫は、
昭和十三年から漁業
協同組合も傘下に入れるということになっております。すなわち
農林中央金庫の前の名称、産業
組合時代と言っていたときは、
協同組合の中央
金庫であったわけでして、何も
農業とか、漁業とか、水産とかと限定された産業
金融機関ではなかったわけでございます。企業
金融機関ではない、産業
金融機関ではない、
協同組合の
金融機関であった。では
協同組合とは何ぞやと。これは職業
組合ではない、全的人間の
組織であるということは、これは国際的に一致した通説でございます。そうしますと、今日のように、
農林中央金庫をいかにも
農業のため、漁業のため、林業のための
金融機関であるかのごとくに限定して考えるのは、産業
組合中央
金庫時代と比べて非常に範囲が狭められたことになっているんじゃないかと。したがいまして、
法律改正の
機会には、私は、産業
組合中央
金庫に
相当するように、
協同組合中央
金庫と名前を改めるべきであると。それは名前だけのことではなくして、中央
金庫の
性格をどう見るかということであります。その
性格づけが非常に
一つの
組織としては基本的に大事なことだと思う。今日においてはその点についての認識がどうもぼやけてはっきりしておらないと思う。この
機会に
確立することができればそうしていただきたいもんだと、かねて考えておるわけでございます。このことと、こういう
趣旨から言いますと、当然に
生活協同組合は復活して、この
金庫の傘下に入れるべきであると、準
会員なんという差別をしないで、堂々と正
会員として加入さすべきであると思います。
それから、今回中央
金庫法改正を
農林中金関係等から強く要望されました理由は、とにかく
資金量がふえて、いわゆる余裕金の消化ということにはもう少し自由に範囲を広げてやりたいと、こういうことであります。これは私はきわめて必要な、また切実な希望であると思います。この点については、ひとつ積極的にその道を開いていただきたいと思います。ただ、しかし、その
資金運用の方途を広げるということは、やはり中央
金庫の
性格にかんがみて、できるだけ
協同組合の精神、
考え方に沿ったような
方向でやるべきである。したがいまして、私は、この大量の
資金は、
一つには、
庶民金融——企業
金融ではない
庶民金融、それを
供給するその財源に使ってもらいたい。もう
一つは、社会福祉の方面に使ってもらいたい。この今日の日本の
金融組織におきましては、
地方公共団体等に対して、福祉
金融、支出金を、社会投資の
資金を
供給するのは大蔵省の
資金部しかないくらいで、その財源もこれからそうふえないと思います。それから、
庶民金融のほうに至っては、ほとんどこれぞといった機関がないわけです。戦争前に庶民
金庫というのをつくってありました。また恩給
金庫もつくってありました。戦後それは
国民金融公庫に変わりました。変わったときに、これは驚くなかれ、と言いたいくらいですが、
庶民金融の中で、
庶民金融をとって中小企業
金融になっているのです、
国民金融公庫の
内容が。そのくらい
庶民金融というのは、戦後
金融体系の中で欠落しているわけです。したがいまして、
庶民金融の方面に
金庫の金を流して、また、今後企業
金融に比べて飛躍的に
拡充しなければならぬ社会福祉
施設に金を流していく。そういう点につきまして、
一つには
生活協同組合を
金庫の
会員とすることによって、この
生活協同組合を通じて
庶民金融を流すことができる。さしあたりの問題とすれば、住宅
金融なんかですね、もう切実なる要望だと思うのです。で、
生活協同組合は
金融事業はやりませんから、貯金は取り扱いできませんけれ
ども、
金庫から金を借りてそれを
組合に貸すということは現在の
制度でも十分やれるわけですから。ちょうど
金融事業をやっていない森林
組合が
金庫の傘下になって、金借りる専門ですけれ
ども、貯金はあまりしないです。しかし、これは
生活協同組合を
会員にすることによって、
庶民金融として市場に流れていく。これは
金庫の
資金がはけて
金庫の運営がしやすいということじゃなくて、それが社会的な意味が非常にあるじゃないかということ。それからもう
一つは、公共団体に対する
貸し出しを、
農村における産業基盤または
生活環境の
整備のためだなんて、限定したようなしないような、読み方によればどうでもとれるようなそんなことじゃなくて、これは
地方公共団体がやることは、それは
地域住民のためにその福祉に役立つ、あるいは
地域の経済にも役立つことしかやらないのですから、何らの制限なく
地方公共団体には出したほうがいいんじゃないか。この二つの道を大きく開きますと、
資金の用途は広く開けるのではないかと思うのでございます。
なお、その場合に、私は、
生活協同組合に出す
貸し出しは、
生活協同組合を
会員にするわけですから、これは本来の業務になるわけですし、それから、
地方公共団体に出すほうは、これは予備金の
運用ということになると思うのです。現在出ておりまする
法案においては、
貸し出し部面において予備金の
運用の、としてではなくて業務としてやるというような表現になっておりますが、私は、これはことばにはあまりこだわる必要はない。意味は同じですからいいわけですけれ
ども、教育的な効果からいいますと、どうも従来のとおりに
会員以外に対する
貸し出しは、やはり余裕金の
運用の中でやったほうがいいんじゃないか。教育的な意味において、私はそう信じております。
なお、この中央
金庫に対する諸般の監督等は、これはもう政府出資があったときと違いますし、また、
協同組合も五十年以上の歴史を持って、それぞれの機関の
職員も数も多くなるし、質も
向上してきておるわけでございますから、具体的な、こまかいケース・バイ・ケースの監督というようなものは、これは極力避けていただきたいと思うわけです。また官庁による監督というものは、必ずプラスにはならない。行き過ぎになりますとかえってマイナスの場合もあり得るわけです。ことに
金融というものは中立性というものが非常に大事なわけでございまするから、あまり政府との監督
関係を強くすることはよろしくないと思います。と同時に、自主的な管理、具体的にいいますと、監事の監査と、自治監査、そういうものは大いに
強化しなければならないと思います。これは各
協同組合を通じての問題、
農林中央金庫だけではないと思います。そういう意味において、私は
一つのくふうをして監事の権威を高める方法を考える。その
一つの方法として、中央
金庫の場合には監査に要する費用は総会において決議をして、一定金額、わずかな金ですけれ
ども決議して、そして監事の補助
職員は監事が採用するというようにして、この執行部に対しての独立性というものを
強化する方途、こういうことは理論的のみならず、過去の実情から見まして、私は監事を質的に
強化し、その
機能と権威を高めるということは、これは
一つのくふうでございます。こういうことをやっていただきたいと思います。
なお、具体的にいろいろ
意見はあるわけでございまするが、時間がありませんのでこれで一応終わりといたしますが、もしもう少し私の
意見を
参考にしていただける方がありますれば、私ちょうどプリントに書いて印刷して七ページほどのものがありまするからお読みいただければありがたいと思います。