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1973-11-13 第71回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十一月十三日(火曜日)    午前十一時七分開会     —————————————    委員異動  九月二十六日     辞任         補欠選任      吉田忠三郎君     竹田 現照君  九月二十七日     辞任         補欠選任      鹿島 俊雄君     高橋雄之助君      大松 博文君     棚辺 四郎君      柳田桃太郎君     佐藤  隆君      竹田 現照君     吉田忠三郎君  十月四日     辞任         補欠選任      温水 三郎君     小枝 一雄君  十月十七日     辞任         補欠選任      平泉  渉君     桧垣徳太郎君  十月十八日     辞任         補欠選任      桧垣徳太郎君     平泉  渉君  十一月八日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     木内 四郎君  十一月九日     辞任         補欠選任      小枝 一雄君     温水 三郎君      木内 四郎君     初村滝一郎君  十一月十二日     辞任         補欠選任      杉原 一雄君     宮之原貞光君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 善彰君     理 事                 初村滝一郎君                 工藤 良平君                 中村 波男君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 小林 国司君                 佐藤  隆君                 高橋雄之助君                 鍋島 直紹君                 平泉  渉君                 足鹿  覺君                 辻  一彦君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 塚田 大願君    委員以外の議員        議     員  喜屋武眞榮君    国務大臣        農 林 大 臣  櫻内 義雄君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        農林政務次官   鈴木 省吾君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林省農蚕園芸        局長       岡安  誠君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁総務部長  杉山 克己君    参考人        糖価安定事業団        理事長      横尾 正之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十二日、杉原一雄君が委員辞任され、その補欠として宮之原貞光君が選任されました。     —————————————
  3. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動によりまして、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に初村滝一郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 当面の農林水産行政に関する件を議題といたします。  本件について質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 辻一彦

    辻一彦君 きょうは私、消費者米価とそれから余り米の問題について若干お尋ねいたしたいと思います。大臣と長官があとでお見えになるようでありますので、若干論議が重複する点があともあると思いますが、それはひとつお許しいただきたいと思います。  そこで、まず第一に次官にお伺いすることになりますが、物価がいま非常にどういう面でもどんどんと値上がりをしておる、悪性のインフレのきざしでないかというように非常な懸念が持たれている。こういう状態ですが、消費者物価が昨年比で一五%、卸売り物価が二〇%というように非常に上がっている。その中で公共料金である電力、ガスそれから運賃、こういうものが軒並みに上げられようとしている。せめて、物価対策から考えるならば、公共料金なかんずく消費者米価、何といっても国民生活に一番大きな影響を与える消費者米価を、これはまあ食管会計赤字であるとか、そういう議論は一応別にしても、今日の社会情勢の中で値上げをするということは何としても好ましくない、値上げをすべきでない、据え置くべきである。こういうように思いますが、これらについていろいろな段階での論議が重ねられておりますが、大まかにまずどういうようにお考えになっておられるか、このことをひとつ最初にお尋ねいたしたいと思います。
  7. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 物価上昇のおり、消費者米価を上げるべきではないという御意見、これもあることは承知をいたしております。しかし、今回政府として考えました米価において一三・八%、麦価において三五%程度であれば、年率一五%上がっております家計の伸び、それから言いますると、大体影響は〇・七%ぐらいではないかというふうに考えておるわけでございます。そうしますると、御承知のように、いまの生産者米価消費者米価逆ざや、そういうことを考え財政負担等考えてまいりますならば、やはりある程度の御了解はいただかなければならないんではないかと、こういうような考え方から、今回のような実は計算等もいたし、諮問等もいたしたような次第でございます。
  8. 辻一彦

    辻一彦君 農林省は当初一九%というような案があることを聞きましたが、そうして内閣では一五%でというので、田中総理発言もあった。それが農林省原案では一三・八%になって諮問が行なわれたと。再びこの諮問の結果をめぐって、これを修正するという動きがあり——大体いってこの姿勢というのは、私は、消費者米価据え置きにする、押えるということは当然であると思いますが、まことにこの消費者米価のきめる過程が一貫していないと思うのでありますが、この点について、一体、どう考えておられるか、この点いかがですか。
  9. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 米価決定に関しましては、従来から政府部内で調整した上で、諮問の案を作成し、これを米価審議会諮問するという手続をとっておるわけでございます。そのあと、さらに所要の調整を行なった上でこれを決定するということでございますが、やはり、昨今の物価問題に対する諸般議論がある関係から、確かに御指摘のように、いろいろ政府部内、あるいは政府与党間において、答申をちょうだいしました後においても論議がかわされており、いまだに決定を見ていない状況でございます。しかしながら、これも今日の情勢からすれば、やむを得ない仕儀ではなかろうかというふうに私ども感じておるわけでございます。
  10. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、いま米審あり方という点にも入っておるんですが、従来の生産者米価のきめ方を見ると、極端に言うと、私は米審あって米審なきがごとしと、こう言わざるを得ないと思うんですね。というのは、政府諮問が行なわれて、その諮問案はどちらにでもとれるような中身、そしてそれをあと、もみくちゃにして米価がきまって、いく。こういうやり方は、私は、米審あり方として非常に問題のあるところであると思います。消費者米価については、いままで、大体、こういうことはあまりなかったんですが、今度同じような形になろうとしている。私は、据え置きにし、そして最大限に押えていくということに当然賛成であるし、当然そうすべきであると、こう思いますが、こういう米審米価のきめ方というものは、米審権威を非常に失墜するやり方じゃないかと、こういうように強く思いますが、この点ひとつ食糧庁並びに政務次官、どうお考えになっているかお伺いをいたしたいと思います。
  11. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 米価決定過程におきまして、政府与党の間で意見調整をするということにつきましては、まあ重要な政治問題であります米麦価決定性格、それから現在の政党政治のたてまえからいって私は筋違いとまでは考えておりません。その調整過程におきましては、米価審議会での御議論なりあるいは答申は、十分尊重することといたしておりますので、与党調整することが米価審議会権威を失うというようなふうには考えておりません。
  12. 辻一彦

    辻一彦君 まあ生産者米価を私見ても、これは極力二〇%程度は何としてもことし上げるべきであると、こういう主張を最小限しておりましたが、だから一六%の引き上げ額についてはこれは異論があるわけではないんですが、しかし当初九%、こういう程度数字が出て、それがいろんな過程を経て二八%になっていく。これは私は、高く上げれば上げるほどいいわけだけれども、しかしきめ方としては、米審権威というものはもうどっかに吹き飛んでしまう、こういうように思いますが、これでも何か答申を十分尊重して米審権威を十分保ったやり方であると、こうお考えになっておりますか、いかがですか。
  13. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 米価審議会におきまして、政府諮問に対しまして具体的なパーセントなり、あるいはその内容についていろいろ答申を賜わるということもあるいはあるかと思いますが、一般的には基本的な考え方、その米麦価をきめるにあたって、どのような方針、考え方のもとに決定すべきであるかということを基本にして答申をいただいているのが従来多うございます。今回の米麦価決定につきましても、その意味では同様の答申をいただいておると私ども理解をいたしております。従来いろいろ確かにございましたが、私どもといたしましては、具体的にこの線でこうだというようなことだけでなしに、やはりそういう御論議を踏まえて、それなり政治情勢あるいは諸般の外的な条件、そこらを勘案して総合決定するということはあることであろうかと存じております。
  14. 辻一彦

    辻一彦君 この論議をそうやっても私はいまの段階といいますか、午前中では無理と思いますが、しかし、答申が出て、あとはもうどうなるかわからぬ、こういうようなことがずっと続けば、米審としても、もうどちらにでもとれるような答申を出す以外にないと、こういうことに私はなってくると思うんですね。今度の答申を見てもそういう感じがいたしますが、将来、これからの問題として、こういう米審あり方を検討すべきじゃないかと、こう思いますが、この点、次官、どうお考えになりますか。
  15. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 先ほど答弁申し上げましたように、この生産者米価なり消費者米価というのは、高度な政治的な判断を要する問題でございます。したがって、米審のいろいろの御意見は十分踏まえながら、こういう御意見を、こうした場合どうなる、こうした場合どうなるというふうに、具体的なその数字になりますと、そういう政治的な判断が要るものでありますから、実は答申を得た後に、農林省大蔵省あるいは党とも御相談をいただいて、具体的な数字が確定されるわけでございます。したがいまして、米審の御意見というものを全然無視したりなんかはいたしておらないと考えておりまして、十分尊重しながらやっておりますので、いまの米審をとりあえずどうするというような考えは持っていないような次第でございます。
  16. 辻一彦

    辻一彦君 いまのままで米審あり方がいいということはなかなか言えないと私は思うんですね。これはまあ別の機会にまた論議することにして、少なくもこのあり方については検討すべきでないかと、してもらいたいと、こういうことを要求しておきたいと思います。  そこでもう一つは、一体食管会計赤字と、こういうように言われまするが、食管法のたてまえからすれば、まともにやれば赤字が出る仕組みになっておる。特に、日本農業というものの農業構造考えれば、農基法によって高度政策をやって、かなり規模の大きい農家をつくろうとやっているが、これが全部うまくいかない、停滞をしている。これは小倉さんが、この間、一委員の立場からであると前置きをしておりますが、農基法はもう今日の状態に即さないということを言っているわけです。そうしますと、今日の農業構造から推すならば、農家所得補償というのは、どうしても労賃に相当する米価を上げていかなければ農家の、農民所得補償することはできない。どうしてもこれは上げざるを得ない。  また一面、今日のようないわゆる政府がこの経済政策、高成長の政策をとれば、これはインフレ——名前はいろいろありましょうが、実質的にはインフレの方向に進んでいる。こうなれば、社会情勢の中で公共料金をなるべく押えなくちゃならないという要請が出てくる。その中の一番問題は、どうしても消費者米価影響があるということになりますね。そうすると、これが家計影響、圧力のなるべく及ぼさないようにしようとすれば、どうしても消費者米価を押えなくてはならなくなる。これは当然だろうと思うんです。そうすれば食管法のたてまえどおりになるわけでありますから、赤字が出る。この食管会計中身、あるいはこの赤字を、私は、前に櫻内農林大臣は、たしか社会保障というような表現を持たれたと思いますが、一体農林省として、今日のこういう時点の中でこの食管会計というもの、出てくる赤字社会保障的な性格を持つものとお考えになっておるのか、あるいはそうでないのか、この点どうですか。
  17. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 非常にたくさんのことを一つでお尋ねいただいたわけでございますが、一番初めの、農民に対して労賃に相当するような米価は、これは年々の物価賃金上昇に見合って考えていかなければならないという点はそのとおりだと思います。  米につきましては、生産性向上生産費の低下をはかっていくということを念願とはいたしておりますが、その成果はなかなか期待できない。これだけ経済が成長して物価賃金が急速に上昇していくという中では、やはり生産者米価だけを据え置いて農民にだけ低い所得に甘んじていろというのは無理であろうと存じます。従来もそういうことで、生産費所得補償方式ということで、生産者米価については米の再生産——これは麦についても同様でございますが、確保をはかるということを旨として定めてまいったわけでございます。しかしながら、米価といいましても、これはやはり物の値段でございます。そうなりますというと、それ自身の値打ちもありまして、買い入れ価格売り渡し価格との間であまりにも大きな逆ざやがあるということは、これは不自然であろうかと思います。いろいろ、食糧管理の運営上、問題も引き起こす、さらに、財政負担の問題も無視できないということで、大幅な逆ざやは避けなければいけない。ある程度コスト上昇消費者価格に反映させることは、私は、こういう確かに物価上昇のおりから申しにくいことではありますが、がまんしていただかなければならないというふうに考えております。  それから、食管赤字は、そもそも——先生はそういうことばは使いませんでしたが、いわゆる二重米価といいますか、高い価格生産者から買って低い価格消費者に渡るように財政負担をあえてするような機能を持っているんだから、それは社会保障的な性格のものではないかということでございますが、確かに食管は、消費者に対しましては家計の安定をはかることを旨として定めた価格で配給を行なうということにいたしております。そのことによって国民の食生活の安定、向上に資する。さらには一方、生産者に対しましては、先ほど申し上げましたように、米の再生産を確保することを旨として定めた価格でもって買い入れを行なっております。そのことによって農家経済の安定をはかるという両面の役割り機能を果たしているわけでございます。その意味では、これを食管制度社会政策的な役割り、あるいは物価対策的な役割りを全く持たない、無関係だということにはならないと思いますが、制度本来の性格からは、その社会福祉的な機能にはおのずから限度があろうかと心得ております。  それから実際の具体的な取り扱いといたしまして、やはり農業政策全体との関連から食管特別会計予算食糧庁予算として、農林省予算として計上されておるわけでございます。社会福祉的な性格が全くないというわけではございませんが、そういうような観点からやはり食管赤字を負担するというような場合には一応の限度があろうかというふうに考えでおります。  それから食管法性格といいますか、機能に触れまして、当然の赤字負担ではないかというお話でございましたが、私も食糧管理制度というこれだけ大きな制度が国としてとられておる以上、それなり財政負担はあってしかるべきだというふうには思っております。しかし、その財政負担というものはやはりそれなりに筋のある理屈の通る限度でなければならないというふうに思うわけでございます。今日の逆ざや負担は一万三百一円で買った米を七千八百六円で売るというようなことで、売買逆ざやだけでも売り渡し価格の三二%にも及ぶ、それにコストまで政府はいろいろ経費がかかるわけでございます。コストまで加えると五〇%にも及ぶ、正確には五〇・五%でございますが、というような大幅な逆ざやになっておるわけでございます。この状態は私は単に財政問題だけではなく、食糧管理あり方、あるいはおよそ値打ちを持っている物自体価格体系という考え方からしてあまりにも不自然ではないかと思っておるわけでございます。  今回、政府が出しました考え方はそういうような考え方で当面末端逆ざや、いわゆる市中で流通しておりますところの価格と、それから政府買い入れ価格との逆ざやその関係をこれを是正する。これはいわゆる末端逆ざやと稱しておりますが、これを是正するということで案を出したわけでございます。いろいろの調整も行なわれまして、現在は米価審議会諮問しました際は一三・八%という引き上げの案になっておりますが、そういうことでお願いをいたしておるわけでございます。
  18. 辻一彦

    辻一彦君 いま、食管会計、それも社会福祉社会保障社会政策を全部顔を合わせてできない。しかし、社会保障政策的な性格を持つ、こういう御発言であります。私ももちろんそれでもって全部カバーできると、こういうふうに思いません。しかし、社会政策的な性格を持つとすればこれは赤字が出るのは当然ということになりますね。  そこで食糧庁農林省の中にこういう考え方はないんですか。いまの社会情勢を見れば二重米価はやむを得ない、そうすれば赤字は出る。こういうことは認めながら、しかしその赤字がだんだんふくれていくとすると、農林一般政策予算というものは圧縮される、圧迫を受けていく、これでは困る。だから政策予算を確保するためにはあまり消費者米価を押さえるということは困る。こういう考え方がちらちらあるようにも聞いておりますが、この点、食糧庁並びに農林省内にこういう考え方消費者米価を取り扱うことはないのかどうか、この点いかがですか。
  19. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 食管会計赤字規模がこのまま放置すれば四十九年度は七千二百億にものぼる。今年度の当初予算に比べまして約三千八百億円も赤字が増加するという見込みでございます。これをこのまま放置しました場合、財政問題全般についてこれは大蔵省の見解がございましょうが、いずれにいたしましても、自然増等でもって財源が大きくとられる際に、非常に財政運営の面で窮屈になるということは事実であろうと思います。その場合、そのしわがどこに寄るかといえば、これは大蔵省にもお尋ねいただきたいのでございますが、私どもとしては、実際問題として、ほかの各省の予算よりは農林省予算にどうしても大きく響くということにならざるを得ないと思っております。それはまさか文教予算を削れとか、社会福祉予算を削れとか、あるいは防衛予算を削れというような形でなかなか食管赤字の分担をしていただくというわけにはいきにくいのではないかというふうに思うわけでございます。ですから率直にそういう点ではそういうことを心配しておるということを申し上げざるを得ません。  それから先ほど社会福祉的な役割りを持つということについて先生のほうから念を押すようなお話でございましたが、私は当然に初めから社会福祉的な役割りを背負っておるということよりは、食糧管理あり方を通じてそのことが社会福祉的な効果、社会政策的な機能を果たしておるという事実を申し上げたわけでございまして、やはり食糧管理食糧管理として本来のあり方がある。そこで先ほど申し上げたことを繰り返すことになるわけでございますが、単に財政面の上から米価を上げなければいかぬ、麦価を上げなければいかぬということを申し上げておるのではなくて、食糧管理あり方として、価格体系あり方として、食糧庁としてもそうすることが必要であるというふうに考えているということを申し上げたわけでございます。
  20. 辻一彦

    辻一彦君 まあひとつ率直な答えを聞きましたが、私は、食糧庁内もそうでしょぅし、農林省の中にも、やっぱりこの赤字が広がれば、農林省全体の予算、まあ政策予算が圧縮される、一体その矛盾といいますか、これをどうするかと、これについての問題があると思うんですね。  そこで、先ほど私が申し上げましたように、日本農業構造考えると、規模を非常に大きくして、それでもって生産費をうんと下げていくということは言うべくしてなかなかむずかしい。どうしても米価労賃相当分としてかなり上げていかなくちゃいけないし、また、米は主食として国民の暮らしの中に占める割合を見ればこれはまたそう上げるわけにはいかない、どうしても押えていくということが大事だと。どうしてもここに赤字、二重米価による赤字社会保障的な、社会政策的な制約として出てくる。しかしこれが出れば出るだけ、また農林省自体政策予算が圧縮されていく形で私は問題があるので、むしろこういう論議がされたこの機会に、食管会計予算とそれから一般農林省予算ですね、こういうものを切り離すというような、そういうことについて検討すべきではないかと、こう思いますが、この点について次官——これはまあ事務当局お話ではちょっとどうかと思うんですが、次官どうお考えになっていますか。
  21. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) ただいま貴重な御意見を伺ったわけでございますが、いま直ちにそれをそうするというような結論をここで私から申し上げるだけの実は自信を持っておりません。御承知のように米、いまお話しのとおりに、日本の米の生産というものは、これは経営規模その他に伴ってかなり高い価格にならざるを得ない。しかしこれは食糧自給等観点からするならば、やはり国民全体にも御理解をいただいて、そして日本主食である米の供給というものを心配なくしていかなきゃならないと思います。また一面から、いまお話しのように、消費者米価というのは、なるべく据え置くべきだ、低く押えるべきだ、こういうこともごもっともな御意見でございます。しかしながら、先ほど来いろいろ御質問、御意見がありますとおりな状況でございます。また、社会保障的な観点からしましても、財政にも限度があり、あるいはまた米というものは、高額所得者も食べます、低額所得者も食べる。一律にそれを考えていいかどうかという、そういう問題等も出てまいります。そういうことをいろいろ考えますると、今後、日本農業構造全体、あるいは米の生産生産条件というもの、そういう全体を考えながらいまのお話の御意見も十分検討して結論を出さなければならない問題ではないかと、かように考えておる次第でございます。
  22. 辻一彦

    辻一彦君 これは大臣午後御出席になったらもう一度ひとつお伺いしたいと思っております。  それから、官房長は見えていますかね——見えてないですか。農基法の問題について、先日新聞を見ると、小倉米審会長が大臣答申を渡したあと、一委員であるがというたてまえで要望されておりますね。この中身を見ると、現行農基法は食糧安定供給の観点が薄いので、これを改正して農業食糧基本法を新たに制定してほしいと、二つ目に、わが国の食糧自給はやがて三〇%を切ることが考えられる、諸外国に比べて非常に低い云々と、こうありますね。そこで、二点ちょっとお伺いしたいのでありますが、これは小倉さんは一委員というようにして言われてはおりますが、農業基本法を制定された当時の責任者であり立案者である——責任者であると思います。もう一つは、現在の米審会長として日本の米や麦の食糧というものについてまあいろいろな面で十分理解をされている。言うならば、かつての行政の責任者であり、日本の農政を行政面からも理論面からも十分把握されておる、そういう小倉さんがこの二つについての発言は私は、非常に意味は重大だと、こう思います。  で、まず一つ伺いたいのは、従来農林省は、食糧自給率をしばしば七〇%から七五%自給と、こう言っていましたね。しかし、小倉さんは、いまや三〇%を切らんとすると、こう言っておりますが、あまりにもこの開きが大きいが、これは一体どういうことか、この点いかがですか。
  23. 杉山克己

    説明員杉山克己君) たいへん恐縮でございますが、当面いま責任者である官房長がここにおりませんので、ただいまの御質問、趣旨十分わかりましたから、さっそく伝えます。この委員会に間に合うように答弁させることにいたしますので。
  24. 辻一彦

    辻一彦君 まあこれはよく調べて聞かしてください。いままで何回も七〇%というような話を聞きましたがね、小倉さんが三〇%をいま切ると、こう言っているということは、非常に私は大きいと思うんですよ、問題が。  それから第二に、先ほど言いましたが、現行農基法は食糧安定供給の観点から薄いと、こういうふうに言われておるんですね。これは今日、農基法の欠陥をずばりと私はついておると、こういうふつに思います。私たちもいままで食糧政策というものを確立するために法制定をやりなさいと、農基法を変えなさいと、こういうことをしばしば言っておったわけですが、これは非常に考えは、私は中身を詳しくは知りませんが、似ておるんじゃないか、一致しているんじゃないかと、こう思います。そこで、農林省の中に、農業基本法を改正をし、いわゆる食糧の安定供給をはかろうというような問題について法制定の、あるいは基本法改正の検討を開始しておるような動きがありますか、ありませんか。
  25. 杉山克己

    説明員杉山克己君) いまの点につきましても、後ほど官房長なり官房審議官参りましてお答え申し上げますが、私ども承知している限りでは、基本法を直接改正するという目的でもっていまのお話しのような趣旨のことを検討しているということはございません。ただ、食糧確保の問題がきわめて重要であるということから、その問題自体について、まあ場合によっては農基法にも及ぶかもしれませんが、一般的、総合的な検討を内部ではいたしております。  それからなお、小倉会長のことでもって種々お尋ねがあったわけでございますが、私、小倉会長が確かにそういう意見を申されたその場にもおり合わせたので存じておりますが、小倉会長は、かつての農基法制定当時の責任者であるということを確かによく心得ておられまして、むしろ反省をこめて、私がこの際言うのはおかしいのであるかもしれないがということで非常に率直にお話されました。私ども大臣はそれを受けまして、十分検討するということをお約束いたしております。
  26. 辻一彦

    辻一彦君 やはり大臣や長官がいらっしゃらないと、なかなかその関係は伺うことができません。午後それはもう一度伺うことにいたしたいと思います。  そこで、まあ米価の問題については午後大臣、長官の出席を待って二、三点をあらためてお伺いすることにして、私はもう一つ余り米の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  一つは、いま消費者米価とあわせて今度は生産者の側のほうでは余り米が非常に論議をされております。ある意味においては、食糧庁政府筋ではちょっとじゃま者扱いにしている、こういうように私は感じます。天候が悪いということが懸念をされておったのが、まあ幸いことしは天候がよかった、こういうことで豊作になった。そういう点から米が一応超過米として出てきたということが問題になっておりますですね。もし、その逆に天候が悪くて六%程度、まあ言うならば四十万トンか五十万トンですね。四十万トンほど米が足りなくなる、少なくなる。それから生産調整が一一二%、予定よりも一二%進みましたですね。これが予定どおり一〇〇%におさまって、二十四万トンの差が出る。そうしますと、かなり大きな米不足が逆の場合には出てくることが考えられる。幸い、裏目に出ずに、気候も、天候もいいしで、こういう形になったわけなんですね。  そこで、私は、大臣はこの間アメリカへ行って、食糧の輸出を押えるというようなことはやらないでくれと、こういうことをわざわざ外国に行って頼んでおられる。その中で、せっかく日本の中で四十万程度出た米が何かじゃま者扱いにされているような感じを私は受けますが、これは困ったことなのか、いまの国際的な食糧需給の逼迫の状況、東南アジアにおける米が非常に足りないというような中で、日本で四十万トン程度余り米が出るということはよかったことなのか、この点一体どうお考えになっておるのか、いかがですか。
  27. 杉山克己

    説明員杉山克己君) いまのお尋ねは、ことし現に米が豊作等の関係で、よけいとれて、見込みを相当上回っている、いわゆるこれが農家に対する制度上の扱いとしては予約限度数量を超過した米になって、余り米としての位置づけが行なわれる。その余り米の話は、まさに単年度の需給の問題としては本年度も過剰でございます、単年度では。しかし、政府の在庫、この問題を考えますというと、いま直ちにその米が余り米であるかどうかということについては、これは実質は判断しがたいと思います。といいますのは、四十九米穀年度の初めにおきますところの、つまり四十八年十月末の米の在庫量というのは六十二万トンでございます。これが若干量ふえましたところで、百万トンを相当——相当といいますか、ある程度上回る在庫がこの年度末に期待できるという状況になる程度の話でございます。  私ども需給操作の観点からはある程度の在庫を持って、これが配給操作の円滑な実施のために必要であると同時に、不作その他事故が起こった場合の備蓄の機能も果たすということで考えておるわけです。その場合の必要量といいますか、望ましい量はおおむね百万トン程度考えているわけでございます。そうしますと、今年度、単年度需給として若干の過剰が生じても、また、この先、来年度以降豊凶の関係もございましょうし、あるいは生産調整がどの程度行なわれるかというようなこともございましょうし、需要だってどの程度変化するかわからないというような諸般のことを考えますというと、直ちにそれが余り米になって過剰処分されるのだと——余り米というのは、本来の意味での必要量を越えるというような意味でのロングランで見ての余り米でございますが、というふうには考えておらないわけでございます。したがいまして、その処分をどうこうするということをいまきめる、考える時期ではないというふうに思っております。
  28. 辻一彦

    辻一彦君 じゃ、続いて伺いたいと思いますが、具体的に超過米といいますか、余り米と俗に言われておりますが、超過米の実態は、どのぐらい具体的な数字として出る見通しなのか、この点いかがですか。
  29. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 四十八年産米につきましては、統計情報部の十月十五日現在の試算収穫量といういうものが出されております。これを見ますというと、約千二百十五万トンの生産見込み量になっておりまして、当初の見込み量千百七十五万トンに比べますと、約四十万トン上回るということになっております。この分が計算上は予約限度を超過する、いわゆる余り米になるというふうに考えられるわけでございますが、ただ最終的な収量につきましては、これは十二月の時点にならないというと確定しない。その時点までは、現在の統計情報部の見込みというのは一番権威を持ったものではありますが、若干の移動は、なおあるというふうに考えられます。  それから、私どもは、食糧事務所そのほか出先をいろいろ持っておりますので、その関係を通じて個別に調査いたしておりますが、どうも四十万トンまでは出ないのではないか、かなりそれを下回るのではないか。それも個別に見てまいりますというと、全国一律の問題ということではなくて、特定の数県についての問題として理解すべきではないかというふうに受けとめています。まだ現在のところ、大部分の地域で集荷を完了していない。完了した地域は、もちろん早場米の地域一部ございますが、大部分は完了していないということで、最終的にどれだけの数量が予約限度超過米として集荷されるかということについては、なお確定的なことは申し上げられませんが、いずれにいたしましても二十万トンを下回るのではないかというような観測もありますし、もう少し確定した段階でもって、きちんとした数字を申し上げたいと思います。
  30. 辻一彦

    辻一彦君 四十万トンと二十万トンはだいぶ大きな開きだけれども、あるいは三十万トンということもですね、食糧庁の見解を聞いておりますが、これは数字としては実態はつかめないのですか。もう大体米も収穫も終わり、かなり出て、あとは若干出るにしても、大勢は大体ついてきた時期だと思いますが、もうちょっとこの数字として、ほぼこの程度ということは推定できませんか。
  31. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 二十万トンを下回るのじゃないかという見方があるわけでございますが、ただそういうはっきりしたことを申し上げるには、まだ根拠が十分さだかでない。もう少し出回り状況を見て、確認した上でもってこれを発表するといいますか、公にしたいというふうに考えております。いまの段階では、ちょっとまだ無理でございます。
  32. 辻一彦

    辻一彦君 じゃ、特定の県とかいま言いましたが、地域別に見てどういう状況になっておりますか、個々の県はけっこうですが、ブロック別に見ての実態。
  33. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 東北六県のうち宮城とか、秋田とかの米どころ、それから新潟、それから西のほうにまいりますと、滋賀でありますとか、京都あるいは兵庫、それから山口、福岡、こういったところが相当量出ているというように見込まれております。
  34. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、その余り米が出たという、たとえば地域別にかなり片寄っているとすれば、どういう事情であると考えていますか。
  35. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 一つはやはりことしの豊作、作況が大きく影響していると思います。ただ特定の県につきましては、生産調整が計画どおり実現できなかったということのために、余り米が相当出ているというところも見受けられます。
  36. 辻一彦

    辻一彦君 それでは、そうなると、ことしの大体冬におきましては、天候は、これは農民の意思にかかわり合いのない結果であって、天候はよかったということは事実だと思いますね。ところが生産調整の計画実現という問題ですが、二月、三月の下旬ごろ、この委員会でも論議をいたしましたが、そのときには、国際的な食糧の情勢がかなり逼迫している。こういう中で東南アジアの米も十分ではない。日本でも国際的な長期気象は異常型になっておる。そういうことで米が必ずしも十分でないという心配があった。この点からかなり農林大臣は、この生産調整中身については柔軟な答弁をしばしば国会で繰り返されて、おった。そういうものを受けて、私は、各県においても、いわゆる米をつくるところで、もう少し米をつくりたいというところは、その幅を上げてもいいじゃないかと、こういうことを認めたか、あるいは黙認をしたという、こういう私は農政の姿勢があったと思うのですね。こういうものを次官、どうですか、冬の論議を踏まえてそういうことを、私はそういう柔軟な姿勢がずっと出ておったと思いますが、いかがですか。
  37. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 四十八年度の生産調整を実施するにあたりましては、先生おっしゃるとおり、米の需給等につきましても相当逼迫するのではあるまいかというような観測があったことは事実でございます。実施する過程におきましても先生御指摘のとおり、私どもはやはり農民の意思といいますか、それを相当尊重するようなかっこうでもって末端までおろすというような態度でもって実施したわけでございます。まあ当初の計画は、申し上げるまでもないと思いますけれども、一〇〇%生産調整が実施されましても、四十八年度におきましては二十五万トン程度の在庫というものはでき得るというようなことで私どもは予想をいたして進めたわけでございます。結果的には一二%ばかりオーバーいたしたわけでございますが、しかし地域的にはかなりの差がございまして、北海道が非常に、二三八%というような目標のオーバーをいたしましたけれども、内地全体では九七%というようなことでほぼ目標と同じような生産調整が実施されたというふうに考えているわけでございます。
  38. 辻一彦

    辻一彦君 いや、私の申し上げるのは、冬からいわゆる六月にかけて、かなり初めは予約限度数量というのが示されましたが、柔軟な態度が出て、そのために、ある県によっては、もう少し作付をなるべくふやそうとか、そういう呼びかけをずいぶん農民にしたところがあると私は思うんですよ。  そこでね、たとえば農林省がいままでは県内のいわゆる調整をやった、認めたが、県間調整をやったのはことし初めてですよ。いわゆる限度数量について、県間調整をやったということは。そういう二月における国会論議等におけるこの農林大臣の柔軟な答弁といいますか姿勢、それを受けてこの県間調整が行なわれたんでしょう。そうじゃないんですか。
  39. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 生産調整段階で、いま農蚕園芸局長のほうからお答えいたしましたように、農民の自主的な態度を尊重してその割当を行なったということは事実あったと思います。また、食糧庁のほうにおきまして、予約限度数量の割当は従来は県内調整はあっても県間調整は認めないというお話でございましたが、これは本来が個人に義務を課して、個人個人に限度数量を定めるという仕組みだったものですから、運用は従来はきわめて窮屈になされておったわけでございます。しかし、そのことは四十七年の実績をかえりみますというと、むしろ政府が予定しておった集荷量を集め得られなかったという結果にもなった事実がございます。やはり限度数量の割当のしかたに問題があるのではないかということで、いわゆる県内調整はもちろんでございますが、県間調整も認めることにしたわけでございます。お尋ねのとおり、必要量を確保するために本年初めて県間調整を行なうことを認めたわけでございます。
  40. 辻一彦

    辻一彦君 そこでね、私は国が、農林省のほうが、冬から六月にかけてかなりまあ農家の自主性を尊重する、こういうことで、どうも米がとれない場合には困るじゃないかという感じがかなりあって、この意欲的な農家の場合は、自主的にやろうとすれば、これを助長するような柔軟な姿勢が出たと思うんですね。県も、私は相当な県がこれを受けてそのような大体行政指導といいますか指導をやった。これはまあ確実に文書で認めておったかどうかということじゃなしに、少なくとも黙認といいますか、その程度のことは本省、農林省としてもやっておったんじゃないか。それを受けて県が、そして農民が、少なくとも限度一ぱい何としてもやらないけない。しかしできたら、そういう状況になれば少し努力をしようと、こういうのがずっと重なって、これに天候というものが幸いをして、相当米に力を置いた意欲的なところにかなり余り米が出てきている。こういう実態に私はなっているんじゃないか。  こういうことを考えると、この余り米を単にいわゆる一般的な余り米として考えていくというのじゃなしに、こういう農民のいろいろな努力によって出てきた余り米は、当然いまこの政府できめた価格がありますが、そういう価格でもって四十万トンあるいは食糧庁が言われるように二十万トンになるかもわからないが、買い上げるということが必要じゃないか、こう思いますが、この点について買い上げ等については、価格についてはどういうように考えておられるのか、この点いかがでしょうか。
  41. 杉山克己

    説明員杉山克己君) いわゆる余り米、予約限度を超過した米につきましては、基本的には従来の原則どおります指定法人に自主流通と同じルートでもって集荷、販売をしてもらいたいというふうに考えております。また、事実昨年、四十七年におきましても相当量の、二十四万トン程度でございますが、余り米がそういう形で処理されているという実績もございます。まあ本年の超過米につきましては、余り米につきましては、いろいろの事情がありましたが、ともあれ数量は確定しないながらも何がしか発生するであろうということは予想されるわけでございます。私どもは数量の確定を第一に詰めたいというふうに考えておるわけでございます。数量がある程度確定した段階でそれについての取り扱いも検討されるということになろうかと思います。私どもはそういうその出た数量、それからさらに販売に努力してどうしても売れない売れ残りというものが生じた場合には、従来の経緯もありますので、その状況を見ながら政府買い入れを検討したいと考えております。  それから、かりに本年産の余り米政府買い入れを行なうとした場合、その価格についてはどうするのかということでございますが、いずれにいたしましても限度数量の中のいわゆる正規の米と——限度数量の中の米と余り米とては、かつて四十六年一月に倉石当時の農林大臣と宮脇全国農業協同組合中央会、略して全中といっておりますが、その責任者である宮脇会長との間での覚え書きというものが取りかわされております。その趣旨に従って買い入れの際に検討するということになると思います。その倉石当時の農林大臣と宮脇全中会長との間では、「やむをえざる事由により予約限度数量を超えて生産された米は、農業団体等の意見をも聴取したうえで、生産調整を阻害しない範囲内でその取扱いを定めることといたしたい」ということに相なっております。
  42. 辻一彦

    辻一彦君 その覚え書きは私も承知しておりますが、農民にとってはいま米がとれて、この収穫を終わって売らなくちゃいけないという時期、しかもいろいろな点から機械なんかをどんどん入れれば、もう機械代を払うために出かせぎに行かなくちゃならない。そういうときに、その努力をしてつくった米で限度をこえた超過米がある。一体それが幾らにどうなるのか先がわからないと、こういうことでは非常に実態としては不安なんですね。そういうような私は、農民の声にこたえるためにも、やはり余り米についても、まあ数量を見てそうして将来それが売れて、まあ残ったら考えましょうと、こういうのんびりしたことではいけないのではないか。これはひとつ考えて、はっきりさしてほしいとこう思うのですね。そういう点で、その四十万トン程度、まあおそらく食糧庁のいろいろな数字からいえばそれを下回るということになるような大体お考えのようであるか、——まあそうなんでしょう。その場合ね、全部売ってみて残ったら考えましょうというのではなくして、かなりの量の余り米が出れば自主流通に全部乗せ切れるかどうかもむずかしい、そうすればかなりな量が残ってくるということを考えて、それに対してどうするかという考えを私はこの時期にはっきりすべきじゃないか。  それから第二は、いわゆるこの倉石・宮脇覚え書きがありますが、「やむをえざる事由」というのは一体何なのか。それからその中の二つ目は、いわゆるその「生産調整を阻害しない」ということですね、大体どういうことをいっているのか。ちょっと簡単でけっこうですから伺いたい。
  43. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 「やむをえざる事由」というのは文字どおりやむを得ざる事由でありますが、主として念頭にあったのは天候、豊凶の関係であろうと思います。  それから、「生産調整を阻害しない」というのもこれも文字どおり生産調整を阻害しないということで、いろいろな影響考えられると思います、その取り扱いといいますか、決定のし方いかんによっては。全体として、趣旨として生産調整を阻害しないということをいっておるわけでございます。
  44. 辻一彦

    辻一彦君 じゃさっき私が申し上げたいわゆる農林省の冬から六月にかけての生産調整に対する考え方、これは私はいろいろな曲折がありましたですね。やわらかい姿勢が出たというか、かなり自主的にこう認めていこうとする、それを受けて県がやり、農家に呼びかけた。その結果として天候が幸いして出てきた余り米、こういう状況生産調整を阻害する条件とお考えなのかどうか、この点どうですか。
  45. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 本年の生産調整なり、限度数量の——政府のいわゆる事前売り渡し申し込み限度数量、正確にはですね。いわゆる予約限度数量の割り当てにつきましては、確かに当時の国際的な食糧需給の事情、そのほかの状況が反映されたというふうに思っております。生産調整を阻害するか、しないかというのは、やはり今度の取り扱いがどうきまるかによって、それは結果によって判断されるのではないかと思います。かりに、一般の食管法三条によって義務を課されて政府に集められる米と全く同じで買うということになれば、これはやはりいま国が生産調整を、各種の奨励金を払ってやっておりますそれとのバランス、経済関係からいって大いに阻害することになるのではないかというふうに、私ども考えております。
  46. 辻一彦

    辻一彦君 じゃあ冬からのいろんな経緯を踏んで、その中で出てきた余り米というものをまともに買い上げれば、その生産調整を阻害する条件であると、こう考えておるんですか。
  47. 杉山克己

    説明員杉山克己君) そのとおりでございます。
  48. 辻一彦

    辻一彦君 それは私は非常に問題があると思うんですよ。というのは、再度繰り返すことになりますが、冬二月から三月にかけて予算委員会や、あるいはこの本委員会において、しばしば国際的な食糧事情ということが論議をされた。その中では、かつての、初めに打ち出した農林省生産調整に対する考え方とかなり私は変わっていたと思うんですよ。そういうものを県が受け、そうしてそれを農民が受けて、しかも、わりと米に熱意のあるところが努力をして出てきた余り米を、これをまともに買い上げれば生産調整を阻害する、こういうふうに言い切れると思うのは、私は非常に問題があると思うんですが、次官、この辺どうなんですか。これは私はもうちょっとひとつ考えてもらわなくちゃならぬことであると思いますが、どうです。
  49. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 辻先生からお話しの三月、四月ごろの食糧全体の御議論等があって、生産調整等のいろんな議論等のことは承知をいたしておりますが、その後いろいろ調整あるいはお願いした結果等において、予約限度数量の、先ほどお話しのような県間の調整もいたしたような次第でございます。ですから、農産物でございますから、天候等に支配される部面もあってそういう結果になったと思いますが、一面御承知のように、これからまたほかの麦とか大豆とか、そういうものを増産しなきゃならない、転作をしなきゃならぬということになりますと、米の生産自体総合的に考えてまいらなければなりません。そういう観点からも考えてまいりませんと、この処理がにわかにどうというような、私結論がなかなか得られないと思います。そういった、これから食糧全般の増産の問題、あるいは米内部で言いましても転作の問題、こういうものも十分考えながら、この取り扱いを慎重にしてまいらなきゃならないと、かように考えております。
  50. 辻一彦

    辻一彦君 全国の平均では、生産調整は一一二%ですよ。一二%こえているということですね。全般的にいえばむらはあったにしても、全体的にいえば予定したよりも一割二分だけ減反がよけいに行なわれたと、協力があったということになると思いますね。そういう私は実態を踏まえて、二月以来の論議を踏まえたときに、これはそういうものを買い上げるということになると、非常にあと生産調整を阻害することになるからいけない、というように言い切ることは、私、非常に問題があるので、これはちょっと納得しがたい点かありますが、これはひとつあと大臣や長官に、もう一度伺いたいと思います。  そこで、次官、どうなんですか、天候ややむをえざる事情、それから国際的ないろんな論議からかなり変化をしたその中で、農林省、県、農業会とこういう事情が伝わって、米の意欲が、かなりつくるのが起きて、ところによっては余り米が出てきた。こういうものを格差をつけるということなしに何とか買い上げていくということですね。こういうことはまあ四十万トンあるいは二十万トンという幅であればそう大きな額じゃないんですが、これからの備蓄という問題あるいは外交的に日本が米をもって東南アジア等にいろんな協力もする必要もあると、こういう点もひとつ含めて格差をつけずに買い上げる、それを備蓄のほうに回していくという、この考えについてどうお考えになりますか。
  51. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 率直に言って辻先生お話は、一般の米と同じように買い上げたらどうだという御意見だと思います。しかしながら、先ほど来答弁をいたしておりますように、その数量もまださだかでない点もあります。また、よって来たるいろんな原因等についても、まだ天候だけではないいろいろのこともあろうと思います。その点も今後、個々にいろいろ検討もしなきゃならぬと思います。それから同時に、これからまあ米以外の農産物とのいろいろの関係、そういうものを増産しなきゃならない、総合農政の観点、こういう点からも検討してまいらなければならない。そういうようなことから、ここでにわかに結論を出してどうこうというよりこれから慎重に検討しなきゃならぬ、かように考えておる次第でございます。
  52. 辻一彦

    辻一彦君 食糧庁にちょっと伺いますが、ちょっと私角度を変えて備蓄という角度から二、三伺いたいと思います。  で、この冬から春にかけては備蓄問題がずいぶん論議をされた。ところが米の指数が一〇六になった、まあちょっと豊作型になった。これは何か忘れ去られようとするような感じがしますが、備蓄論、私は非常に底が浅い論議じゃないか、こういうように思いますね。そこでせっかくこういう超過米が出たときに、これを四十万程度は備蓄米として確保していくと、こういうことが私は——食糧庁の中でどうするかという問題もありますが、もっと日本の全体の食糧政策という点から農林省考えてみるべきじゃないかと、こう思いますね。  そこで食糧庁に伺いたいのは、四十八年、ことしの十月末で在庫米が幾ら、四十九年十月末で幾らか、五十年の十月末で在庫米が幾らになるのかということと、それから工業用に大体——それちょっと三つだけ簡単でいいですから聞かしてください。
  53. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 四十八年度末、つまり四十八年十月末の現在で六十二万トンの古米の在庫でございます。古々米も一部含むものと思いますが、古米の在庫でございます。それがことしの豊作の結果を反映しまして四十万トン、先ほどの統計の見込みどおりふえるということにいたしますというと四十九年度末の在庫は、古米が百十七万トンになると見込まれております。五十年度末の在庫につきましては目下生産調整規模をどの程度にするか、全体としての需給を最終的にどの線で見定めるかということが確定しておりませんので、いまの段階では何とも申し上げかねます。
  54. 辻一彦

    辻一彦君 それからもう一つ工業用に、大体酒とほかの工業に四十八年が幾らで四十九年は幾らを見込むか、それから輸出用に、四十八年が幾らで四十九年はどのぐらいを輸出用に見込むのか、この点いかがですか。
  55. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 四十九年度の工業用は大体四十八年度と同じ程度の二十八万トンぐらいと見込んでおります。これは四十九年度に持ち越す過剰米のうち三十五万トンございますから、そのうちから充当することで当面の工業用原料必要量は確保されているというふうに考えております。それから酒米は、ここでちょっと数字は末尾まではっきり覚えておりませんが、五十五万トンから六十万トンくらいの間の数量でございます。ただし酒米は新米を充当いたします。
  56. 辻一彦

    辻一彦君 輸出はどうですか。
  57. 杉山克己

    説明員杉山克己君) どうも失礼いたしました。  輸出については、四十七年が三十七万トン、四十八年が六十九万トン、四十九年度は今後の推移によりますが、現在の在庫の状況からすればきわめて限定されるということにならざるを得ません。
  58. 辻一彦

    辻一彦君 それで、工業用の約三十万トン、それから輸出しておった六十九万トンですか、こういうのはいままで古々米によっておったと思うんですが、これから古々米がなくなった場合にどうしますか。
  59. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 工業用については、確かに古米、古々米がありますので、それを安い価格で実需者にしてみれば入手できるということで、それが好まれたので古米、古々米を充当いたしてまいっております。ただ、これは、かつてそういうものがなかったときは新米を充当いたしておったわけでございます。  それから輸出用につきましては、まさに過剰としての古米、古々米があったからそれを新しい用途として輸出したと、この点は実は飼料用についても同じでございますが、そういう特別な処分をしたということでございます。
  60. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、工業用には、おそらく古々米がもうなくなるんだから、古米もしくは新米を使わざるを得ないということですね。  輸出用ですが、いま過剰米処理の問題で出発したと。確かに過剰米があったから、これをここ四、五年ずっと輸出をした、かなり輸出したと思いますね。最高百二十万トンくらいは出ておったと思います。出している。そこで、大体大まかな数字で言うと、四十万トンから五十万トンはここ四年ほどはずっと輸出をしておる。その米は、主として東南アジア等に経済協力、救援米あるいはいろんな非常米という形で出されておるわけですね。それで来年、四十九年度は古々米がないから東南アジアの諸国から、アフリカからそういうお米の要請かあったときに、わが国は古々米がないからもう出せませんと、こういうことでいいのかどうなのか。いわゆる経済協力という問題、それから日本の外貨も今日いつまでも安心しておれない状況になりつつある。で、せっかくできた、国内生産した米で経済協力や救援ができれば一石二鳥という役割りもあると私は思うんですね。これからの経済外交、東南アジア等における外交を考えると、こういう米を、せっかくある米を有効に使って協力ができる、また、要請をされる道が私はこれから出てくると思いますが、そのときに一体その米を、古々米はございませんからもう終わりですと言うのか、どうされるおつもりなのか。これはちょっと食糧庁よりも、政務次官のほうはいかがですか。
  61. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 基本的な政策の姿勢といいますか、考え方については、のちほど政務次官からお答えいたしますが、事実関係について申し上げたいと思います。  まず一番初めにお答えすべきだったと思いますが、本年の余り米政府が買うか買わないかということにかかわりなく、政府の在庫は、本年増産になった分だけこれは結果としてふえます。買えば当然そのままストレートに政府の在庫がふえますし、それから買わない場合は、いずれにいたしましても、その米が余り米として市場に流通するということになりますと、胃袋は一定でございますから、政府の売却量が減って政府の在庫がそれだけ残るということになります。買わなくても政府の在庫はそれだけふえる結果、まず私ども同じだと見ております。それから、ことしそういうふうにふえた分は先ほども数字で御説明いたしましたように、本年末の分、米穀年度末の分が来米穀年度末において百十五万トンにふえるということでございますが、四十万トンふえたとしてですね。その百十五万トン程度の数量が、はたしてそういう輸出とか、特別処分を許すような過剰な持ち越し在庫という事態になるのかどうかという事柄自体判断の問題が一つございます。私どもは百万トンやそこらの米はむしろ国内の配給操作を円滑に行なうため、あるいはいざという場合の、これは四十九年なり五十年なりの先々の生産がどうなるかということも考え合わせての備蓄的な機能を果たさせたいと考えているわけでございます。ですから、ことしの余り米の問題とは関係なく一般的に過剰米が出た場合どうするかという御質問ならよろしいんでございますが、本年の余り米について過剰米だときめつけてこれを特別処分するとか、しないとかという対象としては私ども考えておらないわけでございます。
  62. 辻一彦

    辻一彦君 いや、私はそれを単なる過剰米にしないために余り米を備蓄のために買い上げなさい、買い上げたらどうか。そうすれば、これは私は東南アジア等の要請にも、赤字はおそらく出るでしょうがこたえることもできるんじゃないかと。いま古々米がもうないから、そういう要請があっても出せませんというんでは、私は東南アジアにおける日本の位置と責任からおしてそういう形ではいかないんじゃないか。その点を考えればせっかく米が余ってきた、超過米がある、このときにこれを正規の値段で政府が買い上げ、確保して、もちろん国内の第一は非常というか不作、それに対処するのが第一であるし、同時に、それが幸い天候がよくて持ち越されたとするならば、やっぱり東南アジアの中にそういう協力をしていく。こういうことにすれは——お金はかかりますが、私は、余り米をただ流通にまかせて、残ったら考えましょうというんじゃなくて、もっと積極的な対策を農林省として考えにゃいかぬと思う。この点をお伺いしたいと思いますが、まあこれについて、次官、御意見あれば伺って、あとは午後大臣がお見えになればあらためてお伺いいたしたいと思います。
  63. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) いまの東南アジア等に対する援助のためにもどいうお話がございましたが、御承知のように、日本の米は国際的に相当高いわけでございます。それからいままで昨年まで援助いたしましたのは御承知の古米等でございまして、これは特別の法律等をつくってやったような次第でございます、価格なりあるいは支払い条件等、そういうことを考えますと、かなりこれは政治的な高度の政治判断が必要でございますので、そういう観点から処理しなきゃならぬと思います。ぜひひとつ大臣にも伝えておきますけれども、辻さんのほうからもあらためてまた聞かれる機会があったらお聞きいただいてもけっこうだと思います。
  64. 辻一彦

    辻一彦君 午前中これで終わりますが、大臣は午後わずかの時間しかおられないので、私の申し上げた要点を大臣の耳にひとつ入れておいてください。そして効率的なひとつ答弁をいただくようにお願いしたいと思います。
  65. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 承知いたしました。
  66. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 暫時休憩いたします。    午後零時十八分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会
  67. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、当面の農林水産行政に関する件を議題といたします。  この際、参考人出席要求についておはかりをいたします。  本件調査のため、本日の委員会に糖価安定事業団理事長横尾正之君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、本件に対し質疑のある方は順次御発言を願います。
  69. 辻一彦

    辻一彦君 時間が非常に限られておるようでありますから、すぐお伺いいたしたいと思います。  午前中に一時間ほど伺った中で、どうしても大臣に聞かなきゃならない点がありますので、重複する点があろうと思いますが、それはひとつ御理解をいただきたいと思います。  第一に、消費者米価が、きょうあたり政府案がきまろうとしているようでありますが、最近においては、物価が非常に高くなっている。これは戦後の悪性インフレのきざし、前兆じゃないかと、こういうような心配すら出ております。その中で、消費者物価が一五%、卸売り物価が二〇%、昨年比に比較して上がっている。こういう状況の中で、せめて公共料金だけは何とか押えたい、特に公共料金の中で一番国民の暮らしに大きな影響は、消費者米価で、したがって、米価を何とか押えて、今日の社会情勢の中では据え置くべきじゃないかという声が、要求が非常に強いし、私もそう思いますが、これについて、もう話は煮詰まってきたと思いますが、どう考えておられるか。据え置くのか、あるいは上げ幅をどうするのか、こういう点について大臣の御所信をお伺いいたしたい。
  70. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) この諮問をいたす際に、自由民主党の総務会は、諮問は差しつかえないが、答申後に再度協議ができるようにせいというようなことから、党側との調整が残っております。ただいまここへ来る直前まで、党側との調整につとめておったわけでありまするが、私は答申をいただきまして、その答申は、末端逆ざやの解消を当面の目標とせよとか、あるいは麦の購入売り渡し価格は国際水準へ接近するのが適当であるとか、あるいは食糧管理の運営の円滑化のほか、現時点では物価情勢との関連を考慮せよとか、いろいろとこの答申の中に盛り込まれておりまするが、諮問一三・八%あるいは三五%の引き上げについては、直接触れられておりません。しかし私の受けとめ方としては、この答申では容認されておると、こういうふうに受けとめて、現在党側との話し合いをいたしておるのでございます。まだ、私のただいまの見解については党のほうからはそれで了解したと、こういうことにはなっておりませんが、農林大臣としての姿勢、あるいはこの諮問をきめるに協議に当たりました大蔵当局としては、あくまでも諮問どおりでいきたい、こういう姿勢で現在おるわけでございます。
  71. 辻一彦

    辻一彦君 いま数字をというのも無理とは思いますが、しかし天下の世論というか、もうこういう社会情勢の中で、消費者米価は最小限に押えるか、据え置けというのが大きな私は世論だと思うんですが、そういう声に対して、その据え置きのほうに、値幅を小さくするために努力をされる方向なのかどうなのか、農林大臣どうなんですか。
  72. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) この諮問に至るまでの間に、物価の諸情勢考えて、三月末までは据え置きにすると、このことも今回の米価審議会において報告をいたしておるところでございます。それからまた、この答申に、末端逆ざやの解消を目標にということから言えば、一九・五%の引き上げということになりまするのを、それを三分の二の解消へ持っていっておると、末端逆ざやの解消を目標として処理をしておるということは、これはもう答申と同一の考え方に立っておるのでございまして、現在のところ私としては、諮問をここで変えるということについては考えておりません。
  73. 辻一彦

    辻一彦君 その数字を伺うのは、いまの段階で無理と思いますが、私は物価高の中における大きな世論であると思います。この声を最大限に聞いて、なお農林大臣としてぜひ努力をいただきたい、こう思います。  そこで二つ目に、すでにいろんな形で論議をされておりますが、物価担当の小坂経済企画庁長官が、米審が行なわれる重要な時期にゴルフをやっておったと、そういうことが批判をされております。あのときの国会の答弁を聞きますと、くつろいだ気分でむずかしい話をすればうまくいくというような発言がありましたが、これは農林大臣が言われたのじゃないんですが、しかし、これは高物価に悩むインフレ下の国民感情を全くさかなでをするような発言であると私は思いますが、内閣の姿勢として、これを同じように責任を分担される農林大臣としてどうお考えになるか、これをお伺いしたいと思います。
  74. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 国民の重大関心事である消費者米価あるいは麦価についての重要な協議の段階におきまして、小坂長官の言われるようなことがあったでありましょうが、政治姿勢としてはまことに遺憾なことでございました。これは長官みずから種々御説明がございましたが、また、その姿勢については、国会を通じておわびを申し上げておると、このように聞いております。私も遺憾であり、このことについては国民に対して責任の一端のある者としておわびをする次第でござ  います。
  75. 辻一彦

    辻一彦君 時間の制約があって舌足らずになるんですが、米審あり方ですが、午前中もちょっとお伺いしましたが、生産者米価のきめられる過程を見ても、米審あって米審なきがごとしという感じがします。で、今度の消費者米価についても、いずれにもとれる答申案が出されて、あとは、これは私は押えられれば押えられるほどけっこうであると思いますが、きめ方としては、答申が出てもみくちゃになっていく、こういう形ですが、こういうあり方は、米審自体権威を落とすことになるんじゃないかと思います。その点で、これからの米審あり方について検討をすべきじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  76. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 米審の現状、あるいは米審の際における諸状況、そういうものについて私も考えさせられる点はございます。しかし、この米審を通じての生産者米価の際、今回の消費者米、麦価の際の御論議というものは非常に真剣なものでございまして、私ども諮問をしておる者としては、いろいろと傾聴させられ、また今後の諸施策遂行の上に参考になるべき意見が非常に多いのであります。そういうことで、私は米価審議会は尊重してまいりたい。また、今回は答申が、とりようによっては意見がなかなか統一されてないような見解をお示しの方がございますが、しかし少なくとも、本審議会としての意見を集約した、こういうことで後段に、(1)、(2)とうたわれておるということは、米価審議会が、その使命にかんがみて努力をせられたものと評価をしておる次第でございます。
  77. 辻一彦

    辻一彦君 いまの社会状況の中で、農業構造政策を進めても、なかなかそれが進んでいかない。規模を広げてもできない。そうすれば、農家所得はどうしても労賃にふさわしい米価を上げていくという形で補償せざるを得ない。また、これだけインフレ傾向になれば、どうしても、家計費の圧迫を押えるためには、消費者米価を極力押えなくちゃいけない。そこに二重米価として赤字が出るということは、食管法のたてまえから当然でありますが、こういう食管性格を、かつて大臣は、社会保障的というような表現で私伺ったように思うんでありますが、私もこの社会保障的な性格を持つ、社会政策的な性格を持つ、こう思いますが、この点どうお考えか。
  78. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 生産者米価生産者米価として算定の方法が明示されておるし、また、消費者米、麦価についても同様であります。その間に差ができて、それを食管会計へ一般会計より繰り入れを行なうというようなことが現に行なわれておるわけでございまするが、その一方において生産者考え、一方において消費者家計の安定を考えていくというその関係から考えまするに、社会保障というよりも社会政策的なものがそこにあるということは言えると思うのであります。しかし、その間に、あまりにも繰り入れ額が大きくなっていくということは——一方において財政に対する関係からどの程度が適当であるかということも考えなければなりません。したがって、私どもはこの管理費と申しましょうか、倉敷料とか、金利とか、あるいは流通費用の面であるとかというようなものは考慮して、政府において負担していいんではないか、それ以上になるのはいかがかというようなことから、末端逆ざやの解消のところまでが適切であるというふうに見ておるわけであります。
  79. 辻一彦

    辻一彦君 もう一点これについて、社会政策的に考えるということでありますが、そうなると、食管赤字がふえればこれは生産者消費者の両方に非常に響いてまいります。そうなるといまの予算の組み方では、一般農林予算政策予算を圧縮するというような形になりかねない。こういう点で私は、社会政策的な性格をかなり持つとすれば、一般農林予算食管予算は分けて切り離してやっていくということが今日の段階においても必要になってくるのではないか、こう思いますが、この点どう考えますか。
  80. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 食管会計を通じて一方において生産を維持していく、一方において消費者家計の安定を考えていく、こういうことでそこにある程度の差が出ることはいなめない。こういうことでございまするが、そうかといって、この農林政策の最も重要な稲作生産の面などを考えていきまするならば、食管会計は全然社会政策的な予算である、こういうようなことにはなり得ないと思うのであります。今回、低所得者層の対策を消費者米価引き上げに伴って考えたらばどうか、こういう意見がございまして、そのことは今度の諮問の中にも取り上げられておるわけであります。辻委員の御質問について私として考えられるのは、そういうような部分的な社会保障政策的なものが現にこの生産者消費者米価の中に導入されつつあるということを否定するものではございません。
  81. 辻一彦

    辻一彦君 それから先ほど質問して保留になっておりますが、小倉米審会長が、一委員の立場として、ということでありますが、大臣に対して要望されておる。一つは、これは農基法が食糧安定供給の観点からいうと薄くなっておる——薄い。だから改正をして農業食糧基本法を新たに制定してもらいたいということが一つと、もう一つは、食糧自給率が三〇%を切ろうとしておる、こう言われておりますね。そこでほかの国に比べて低いと、こう言われております。一つは、いままで農林省は食糧自給率を七〇%——七〇数%ということをしばしば言われておりましたが、日本の農政のことを理論的にも十分御承知の小倉さんが、いまや三〇%を切ろうとしておると、こう言っておるのは私はまことに重大だと思いますが、従来の農林省数字と三〇%はあまりにも開きが大きいがどう認識されておるか、その点お伺いしたい。
  82. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 小倉会長が一委員としての立場で、農業基本法を農業食糧基本法というようなことに考えてはどうかという御意見は言われました。で、私は従来、農業基本法が、制定以来の経緯を考えまして、それなりの効果があがってきておって、いま基本法をかえる考えはないと、こういうことを申し上げてまいりましたが、小倉委員がせっかくそういうことを提案せられましたので、私は米審を通じてその改正を行なうかどうかと、まあそういう必要があるかどうかというところからまずよく検討をしてみたい。また、その小倉委員は、きわめて短時間の間の表現でございまして、小倉委員自身の真意がどこにあるかも明らかでありませんので、その辺をただしながら、まずこの問題が議題になるかどうかというところから始めてまいりたいと、このように考えます。  なお、自給率の問題については官房長から必要があればお答えさせますが、たぶんカロリー計算でのことを小倉委員が言われたのではないかと、このように私は承ったのであります。
  83. 辻一彦

    辻一彦君 では、そちらから簡単に……。
  84. 三善信二

    説明員(三善信二君) いま自給率三〇%という数字は、実は私もよくわからない。オリジナル・カロリーの点からしますと、四十六年五五%になっております。それから、総合自給率では前々から御承知のように七四%に四十六年はなっておりますので、何かほかの特定の農産物をさして言われたのかもしれませんけれども、ちょうど見当たる農産物もございませんし、その辺よく小倉さんに聞いてみたいと思っております。
  85. 辻一彦

    辻一彦君 これはカロリー計算では三七%と、こう言われておりますが、これはひとつよく確かめてください。従来の数字が、どういう基礎で言われているのか私大事だと思いますから。  そこで、大臣米審を通して農業基本法の改正、あるいは農業食糧基本法というようなものについても必要かどうかということをはかってみたいと、こういうお話でありますが、米審を開いてやられる具体的な構想はおありですか。あるいは別の機関を設置をして検討される考えか、その点いかがですか。
  86. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 私は、議題になるか、ならぬか、そしてまた、現に会長の立場にある小倉委員がどのような真意にあるか、それらのことをお聞きして、それから考えてみたいと、こういうことでございます。
  87. 辻一彦

    辻一彦君 これは、まあ食糧供給が自給率が非常に低くなって、問題になっているということは、もうしばしばこの委員会でも言われてまいりました。私、そういう意味で非常に大事な境目にかかってきていると、こう思います。この点で、米審もけっこうでありますが、ぜひ検討される機関を考えていただいて、これはひとつ取り上げていただくようにぜひともしてもらいたいと思います。  そこで、最後に一つ余り米の問題でありますが、まあさっき午前中の質疑を通して四十万トン、場合によればかなりそれが少なくなって二十万トンになるかもわからないと、こういうことでありますが、余り米が一応出ると。そこでひとつ私は、今度の米の生産調整農民は協力した、一一二%という数字がそれを示しておると思いますが、大臣は、協力したと、こういうように受けとめておられるのかどうか、これが第一。  第二は、地区ごとに見ますと、やはりアンバランスがありまして、かなり余り米が出ておる地域がございます。しかし、これは、私は、二月から六月にかけて大臣をはじめしばしば予算委員会、あるいは本会議、この委員会で論議をされて、国際的な食糧の逼迫という中で東南アジアには米が不十分である、また、日本の気象状況等も考えると米の心配がある。こういう中で生産調整についても農民の自主性を尊重して、かなり柔軟な私は姿勢といいますか、態度を示されておったと思う。それを受けて県がかなり私は各農家に行政指導した面があると思います。そういう結果、天候が幸いして余り米が生じた、こういうふうに私は思いますが、もしそうであるとするならば、これは国において全量政府価格で買い上げるべきじゃないか、こう思いますが、この二点についていかがですか。
  88. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 作況指数をごらんいただけばわかりますように、一〇五とか一〇六とかというようなところへまいっております。したがって、そういう面から今回の生産量が上がっておるというこれが現実であると思うんであります。で、この生産調整については、できるだけ緩和をしたいということでございましたけれども、一一二%ということで、実はこのままでいけば予定の生産量が確保できるかどうかという懸念までいたしたのでありますが、幸いにして天候が順調で一〇五とか六の作況になったと、こういうわけであります。そこで、余り米が現に出ると、これについては予約との関係で予約量を満たさないところがあれば県内でそれは操作する、また、さらには都道府県の関係においても調整をする。しこうしてなおかつ余り米が出ると、こういうことになれば、それは宮脇全中会長と当時の倉石農林大臣との申し合わせによって、それは政府考えようということで終始いたしておるのであります。最終的には、いま申し上げたようなことで、よく考慮をいたしたいと思います。
  89. 辻一彦

    辻一彦君 じゃ、時間がもう終わりましたから、これで終わりますが、私はやはり天候とそして二月以来の農林省における米の心配、そういう点から、できるだけこの緩和を可能な限りしていく、こういうことが重なって余り米が生じた。だから、これはやはり政府においてこのあといろいろな形で、備蓄という方法もあるでしょうから、ぜひ買い上げていくと、同じ価格で。こういうことを特に検討を十分考えてもらいたい、こういうことを要望して終わります。
  90. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、時間も限られておりますので、農林大臣も簡潔に答弁をしていただきたいと思います。  まず最初に、現在、先ほども話がありましたように、消費者物価卸売り物価ともにかってない急上昇をいたしまして、最近はちり紙の値段が非常に上がるとか、そういうインフレ的な様相が非常に強くなっておるわけであります。したがって、現田中内閣にとっては、これはもう物価安定ということが最大の急務である。こういうことは田中内閣発足以来、あるいは佐藤内閣のときを比べて、いまぐらいそういうことが必要に迫られているときはないと思うんでありますが、そういうときを選んで消費者米価引き上げるという必要性ですね。なぜこういうときに消費者米価を上げなければならないのか、この点ひとつ農林大臣考えを簡潔にお伺いしたいと思うんですが。
  91. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 予算編成期も迎えておることでございまして、膨大な食管赤字をかかえておるということは、それなり財政に対する影響がございます。インフレ克服のために総需要を締めていこう、財政もできる限り締めたい、こういう方針からまいりますると、食管赤字を放置しておくわけにはいかない。他にもいろいろございますが、簡単にということでございますので、その点も考慮しながらこのたびの価格改定に臨んでおるわけであります。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 農林大臣は、答申を尊重する、尊重すると、こういう方針できていると思うんでありますが、今回の答申のように、これはまあ値上げについてもいろんな意見が併記されているわけでありますが、こういう答申を、どういう尊重のしかたをするつもりなのか、それはどうですか。
  93. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 先ほどもお答えしたように、私は、もうこの答申の通りを受けていきたい。その場合に、この諮問をいたします場合に、物価との配慮はどうかと、こうなりますれば、これはとりあえず明年三月末までの凍結と、こういうことを申し上げ、四月以降においての末端逆ざや解消の三分の二の値上げをお願いしようというのであって、物価情勢との関連を考慮してということについては、われわれは配慮をした考えでおるわけであります。それからこの食糧管理の運営の円滑化という点からいたしますれば、ぎりぎり七千二百億円もの赤字が出るというのを五千二百六十億円程度にとどめると、そうでなければ食管逆ざやというようなことから諸種の問題を起こすというようなことで、答申は私としてはただいま申し上げたような諸点で尊重しておる考えでございます。
  94. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 答申の第二項では、まあいわゆる末端逆ざやの解消を当面の目標ということで、長期的にまあ国際価格水準へ接近するのを適当とする、麦価の場合ですね。そういうようにやはり長期的にということですから、いますぐ上げるということでないと思うんですね。それからまあ二番目においては、当然物価情勢との関連を考慮していかなきゃいけない。そういうような点から考えますと、いまはこれほど物価問題が国民の生活を苦しめている、そういう時期をわざわざ選ばなくても、われわれ永久に据え置けというわけではないわけですけれども、もう少し時期を待つとか、そういう考えはないのかどうか。私はそうすべきじゃないかと思うんですけれども、その点はどうですか。
  95. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 昨年の例をあげるまでもございませんが、本来であれば消費者米価は、十月一日ごろに新米が出てくる時期を選んで改定をすべきであると思うんであります。それを半年引き延ばしておるわけでございます。また、この現下の異常な物価状況については、昨年十月以来一年余を、標準価格はそのままで経緯しておるのでございますから、この政府売り渡し価格が、主役になってこの物価を刺激したものでないということは、言うまでもないわけであります。これを据え置けということで二年もずっと置いて、さてこの答申に出ておるような末端逆ざやの解消をそこでするんだといっても、これはまたたいへんな問題になって、いわゆるショック的になります。でありまするから、やむなくまあ半年はひとつ凍結でいくが、その後においては、ある程度御協力をお願いしたい。このことは米審におきましても、極力私は説明につとめ、一方において生産を大いにやってもらわなければ、消費者の間に不安があるんだと、現にあったではないですかと、そうであれば、この程度の協力はぜひお願いしたいということで、今回の答申をちょうだいしたと思っております。
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回の値上げ物価指数にどの程度影響するかについては、午前中、また先ほども答弁がありまして、〇・七%ですか、その程度影響である。で、間接的な影響というのはどうなるのかですね。それはいままで米価値上げ等も何回か行なわれておるわけでありますので、そういう米価値上げというものが、直接的あるいは間接的にどういう影響を及ぼすのか、これについては農林省はどう考えておりますか。過去の実績について御説明を願いたい。
  97. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 消費者物価指数に及ぼす影響を、現在の総理府統計局の精米と麦製品についての消費者物価指数調査におきますウエート、それから今回の売り渡し価格の算定、それからその影響程度を試算いたしてみますというと、先ほど御質問にもありましたように、直接的な影響は米麦合わせまして〇・六八一ということに計算されております。これは間接的な影響はどうかということでございますが、米の場合、ほかに外食でありますとか、酒でありますとか、二次製品がございます。それらへの影響は約〇・〇八%というふうに見込まれております。それから麦製品の場合は、外食でありますとか、それからみそでありますとか、そういった二次製品への影響がございますが、それも計算してみますというと〇・〇一七%程度でございます。米麦合計のそういった二次的な影響考えましても、これは合計で〇・〇九七%、〇・一%に満たないというような数字でございます。  それから、そういう計算そのものを、直接的な影響はともかくとして、心理的な影響なり、あるいはそういった影響がさらに誘発して消費者物価全体を押し上げるようなことにならないかという、その意味が含まれての御質問かと思いますが、かつては米が確かに物価指数の中で非常に大きなウエートを占めており、かつ家計支出の中でも大きなウエートを占めており、物価に対する影響力は非常に主動的であった、大きかったという時代もございますが、最近の事情を係数によって観測いたしますというと、消費者物価全体の動きとの関連はそれほどはない。極端に申し上げますというと、米が上がった場合でも、全体の物価指数はそれほど動かない。逆に米の価格が動かなくても全体の物価指数はやはり上がるときはそれなりに上がっておるという傾向が見受けられて、両者の間の関連度というものは、それほど深くはないというふうに私どもは見ております。
  98. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま、今回の米の値上げで一食当たり三円アップであるという、そのように新聞の記事等で見たわけでありますが、そういう場合でも、これやっぱり計算で三円上がれば、それだけの値上げであればいいですが、外食であるとかそういうような食堂であればだいぶ物価も、三円だけ上げるということでなしに、そういうことで、食堂のあらゆるものがやっぱり値上げをしていかざるを得ない。そういうような点ですね、かなり私たちは間接的な影響というのが非常に大きいのじゃないか。農林省は米を値上げをしてもあまり影響はないと、そういう点に非常に食い違いがあるわけですけれどもね、これはどうなんですか。これは理論的なことよりもむしろ過去の米価値上げの場合のそういうデータですね。そういうものをやはり当然私は政府としても分析をして、それに対する検討も加えておかなければならないと思うのですけれども、そういう点過去の実績においてはどうなのか、その点御説明を願いたい。
  99. 杉山克己

    説明員杉山克己君) いま御質問の中にありました個々の末端の製品なり、外食といったものへの影響程度はどうかということがまずあるわけでございますが、これが計算上のものであるという御指摘はございましょうが、米につきましては、大体一食当たり百グラムとして十八円のコストがかかっておる。これが今回の一三・八%の引き上げですというと、大体二円から三円程度値上げということになります。十八円のものがかりに三円上がって二十一円になったといたしますと、これが外食の食堂でもって一食単位分がどれだけで売られているかということを見ますというと、四十円から八十円ぐらいの価格差がございます。この四十円なり八十円なりまでの価格のものがどういう価格で売られるだろうかということだと思いますが、これはむしろ私どもはほかの人件費なり、運搬費なり、諸般の経費のほうの値上がりのほうが大きいので、そういったものによってむしろ動かされるのではないか。いま、米代が原料代として三円上がったからといって直ちにそれでもって全部が全部上がるというふうには考えておりません。ただし、こういうものには便乗値上げというものはつきものであるということは、確かに一般的におそれられるというか、考えられるところでございます。  そこで、私どもは、こういう数字をむしろお示しすることによって、米自体の原価のアップはこの程度の話なんですと、そのことによって世の中の一般便乗値上げ関係する人みんな心して、それを防ぐようにしていただきたいという意味も込めていろいろお願いしているわけでございます。いま米で申し上げましたが、食パンにつきましても、同じようにして食パン一斤当たり約五円程度値上げで済む計算でございます。七十円のものが七十五円とすれば、原麦の値上がりは十分それでもって解消できるという計算になっておりますが、それで七十円のものが八十円になったり九十円になったりするということがあれば、まさにこれは便乗でございます。私どもはそういった便乗値上げは、これは起こさせないように関係業界に対して十分指導するということで、また、国民の皆さんにも十分そういう実態を承知していただくということで対処してまいりたいと思っております。
  100. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど農林大臣は、食管赤字ということを非常に少なくしたいと、こういう気持ちはわからないわけはありませんけれども、今回の政府諮問したパーセントだけ上がったとすれば、大体千九百四十億ぐらいの増収になると聞いておるわけでありますが、大体来年度の自然増収なんかは四兆円ぐらいあるのじゃないかといわれております。きのうか、おとといの新聞を見ましても、鉄鋼大手四社の九月期の決算を見ても、実に新日本製鉄のごときは純利益が前期の約倍も上がっておると、そういうように非常に、日本鋼管、住友金属、神戸製鋼もしかり。これは一つの鉄鋼業界の例でありますが、そういうようなわけで非常に四兆円も自然増収があるのに——いま物価ということがあまり問題にならなければいざしらず、こういうときに、政府として一番国民にとって、特に、低所有者ほど影響の大きい米価を上げるということは、物価政策としても非常によろしくないんじゃないか。そういう点、これは農林大臣というよりも、田中内閣の閣僚の一人としてそういう点はどう考えておるのか、簡単にひとつお願いをしたいと思います。
  101. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 自然増収をどのように財政上配分していくか、これはこれからの問題だと思うんです。ただ、農林省の立場からいうと、この場合五千二百六十億円食管へ繰り入れてもらうのですから、四兆円と直接に関係して考えれば四分の一以上のものを入れると、こういうようなことにもなります。  それからもう一つ、私の頭が痛いのは、現在でも食管会計農林省予算の中で三五・二%を占めておる。こういうような点で、われわれとしては、他の所要の生産面に寄与するような予算を相当確保したい。こういうことになってくると、この食管への繰り入れというものをどの程度にするかということで、今回のような五千二百六十億円はひとつお願いをしたいという結論に至ったわけでございます。
  102. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはいろいろの委員会で問題になったわけでありますけれども、四十六年度の農林白書の、主要国における農業関係予算額の比較を見ましても、農業就業人口一人当たりの農業関係予算額というのが、アメリカなんかは六十二万一千円、西ドイツが二十二万三千円、フランスが三十七万四千円、イギリスが四十五万七千円、これは昭和四十四年度ですけれども、それに対して日本は八万六千円と、こういうように農業関係予算額というものを見ましても、わが国は、アメリカのような、そういう非常に広大な農業の、いろいろな立地条件のいい国ですら農民一人当たり六十二万円も金を出しているのに、日本は、ましてや土地も狭いし、あらゆる面で非常に条件が悪いわけですから、しかもいまそういう世界的に食糧の危機ということになれば、やはり日本としても自給率も高めていくという、そういうような問題から考えても、やはりほかの国よりはどうしても農業に多額の予算をつがざるを得ないというのは、これはやはり私は国民的な一つの要望に合致するのじゃないかと思うのですがね。そういう点、農林大臣はどう考えているのか。私は、これは別に食管に繰り入れるということは農業だけではない。国民全体のやはりプラスになっていく予算ですから、これはやはりもっと大蔵省にも強く要求すべきである。それが一つですね。  それともう一つは、来年度は二兆円の減税をすると、このように総理は言っているわけで、減税にはわれわれ別に反対するわけではありませんけれども、やはりそういう減税によって恩恵を受ける人と、実際税金を納めていない人たちは、これさ減税の恩恵も受けないわけでして、そういう人たちのことを考えるならば、やはり農林大臣としても、やはり閣僚の一人として、米価は今回値上げをすべきではない一私はこのように考えるわけなんですが、現時点においてはですね。この二点について御答弁をお願いしたい。
  103. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 農林省予算を、これを多く獲得して、そうしてもっと生産を上げていくということについて異論はございません。現在大まかに言って国の予算の一割は農林省のほうへ割り振ってもらっておるのでございますが、いま農林省予算だけを各国に比較して日本が低いと、こういう御指摘でございましたが、他の各省の予算も、おおよそ同じような国の財政上で見ておる面は低いのではないかと思うのであります。まだこの農林関係では、そういう一般会計以外の金融措置、その他の諸施策がございまするので、いまお示しの点から直ちに日本の農林関係予算が非常に低いものであるということは、にわかに断じがたいのでありますが、しかしお示しの数字からいたしますと、はっきり低いことは明らかになっておるので、今後農林予算の獲得に万全を尽くすということは言うまでもございません。  それから、この減税の恩恵を受けない方々が多数である。したがって米価引き上げについては慎重に考えるべきだと、それはごもっともでございます。そういう点からいたしまして、いろいろ御論議はございまするが、御承知の標準米を設けまして、そうしてマージンも低利に押え、それらの確保については、各店頭に置くことを義務づけるというようなことをいたしておることも御理解いただきたいと思います。
  104. 塚田大願

    ○塚田大願君 だいぶいろいろ論議がありましたから、私はごく簡潔にひとつ大臣にお聞きしたいと思います。  いまの物価上昇インフレ問題につきましてはもう論ぜられたとおり、いまの物価上昇というのは朝鮮動乱以来だというふうに評価されておる。そのときに政府が、ほんとうにインフレ物価値上げを押える最後の歯どめであるべき公共料金、米麦の値上げ、これをあえてやられるということは、やっぱりこれは重大な問題で、いわばいまの時点でいえが最大の政治問題であるといっても差しつかえないと思うんであります。それだけに論議が非常にやかましく行なわれていると思うわけであります。今度の米審以後の情勢を見ましても、内外でとにかく据え置き論が非常に強くなってきておるということは大臣も御承知のとおりでありますが、そういう中でなおかつ政府が非常に態度を依然として明らかにしないということは、私はやはりここに二つのあやまちを政府はおかしておるんではないかと思うんです。  その第一点は、やはり何といっても、いまも大臣がおっしゃったけれども生産者米価が上がるんだと、だから消費者米価も上げてもらわなきゃこの逆ざやは解消できないと、こういうふうに非常に単純に言われますけれども、じゃ一体食管法の精神というのはどこにあるのだという点で、私は、重大な認識のあやまちがあるのではないかと思うんです。大臣は、食管法は御承知のように、再生産を維持するという点、それから家計の安定だと、そのとおり第三条、第四条に言われておることを言っておられますけれども、私は一番大事なのは第一条だと思うんです。食管法の第一条は、やはり国民食糧の確保、国民経済の安定ということがうたわれておるわけです。私はここに食管法の最大の理想といいますか、目的があるのではないか。このことは私は何も食管法だけに初めて出たのではなくて、国民食糧の確保と国民経済の安定ということは、これはもう昭和の初めから約半世紀にわたったいわば日本の農政の根本理念だったと思うんです。これがやっぱり食管法に生かされて今日に至ったと、そういう点から見ると、ただ逆ざや解消、逆ざや解消と言われますけれども一体それならこの食管法はどうなったのだということを私はまず第一に指摘したいと思うんです。もし大臣のおっしゃるように逆ざや解消論であえて米、麦価を上げるとおっしゃるならば、これはもう政治というものが全くないというふうに断ぜざるを得ないと思うんですが、まず第一点について大臣の所信をお伺いいたします。
  105. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 食管法の目ざすところまた、農林省の最大の使命、それは食糧の確保であり、安定供給である、また国民経済の安定に寄与しなきゃならぬということは言うまでもございません。いま逆ざや解消から御論議をせられましたが、私としては、食管会計赤字というものはおのずからやはりある限度があるものではないかと、このように理解をしておるわけであります。  先ほども四兆の自然増収があるじゃないかと。しかし今回の措置をとってもなおかつ五千二百六十億円というものを繰り入れるというのは大きな額であるということを申しておるわけであります。今回の答申でも、そういう赤字を解消する上においてはいわゆる末端逆ざやを当面解消する目標にせよと、こういうことで、これは私もそのまますなおに受けておるわけでございまして、ただ単純に逆ざやがあるからどうということでない、ということについては御理解をいただきたいと思うのであります。ひとまず……。
  106. 塚田大願

    ○塚田大願君 その論議はまたあとでもう少ししたいと思うんですが、私が指摘したい政府のあやまちとしての第二点は、今度のこの値上げ案なるものは非常に技術主義だということですね。その点を申し上げたいと思うんです。と申しますのは、いわばいろいろ言われておるんですけれども、今度の食管赤字を減らしてその分だけ四十九年度の農林省の新規予算を認めてもらおうというふうな動きが農林省の中にあった——あるということは一部にも報道されておりますが、その真偽は別といたしまして、とにかくこの食管赤字がこれだけだんだんふえてくると、農林省の新規事業が大蔵省に上って制約される。こういう不安があることも私は確かにそうだと思うんですけれども、しかし、それだったら予算編成の技術問題でありまして、決していまのこの食管法でいっている国民食糧の確保、国民経済の安定という、そういう大きな大前提というものが無視されてしまうのではないか、こう思うわけです。  事実、私があえてそういうことを申し上げるのは、今度の米価政府の案の決定経済を見ましても、私はそれを感ずるんです。たとえば食糧庁案が十月二十九日でありましたか、つまり一九・五%ないし一七・三%上げたいという農林省の案が最初出ました。そうしたら十一月四日になりますと、あの田中総理が、一九・五%引き上げるのはどうも少し高いというふうに感じたと。新聞では一五%台が攻防だと言っているが、これはいいことを言ったと、こういうふうに田中総理は評価をいたしました。そうして米審が開かれたその直前に政府諮問案決定をいたしました。一三・八%という諮問案。このときに倉石自民党政調会長は、きのうは一三・七%といってきたけれども、七だと質屋に行くみたいで、かっこうが悪い。だから八なら末広がりだから縁起がよいということで一三・八%にしましたということを新聞で言いましたね。ずいぶん国民の重要な米価決定するのに、やれ縁起がいいとか悪いとか、七じゃ悪い、八にしようと、こういう感覚できめたとすれば私はやはり重大だと思うんですね。だからこそ、小坂長官のあのゴルフ問題がやはり爼上にのせられるということになったと思うんです。米価決定するときに、ゴルフをやっているとは何ごとだと、これは国民的感情としまして当然だと思うんですよ。しかし、何もこれは小坂長官だけでなくて、農林省自体がこの米価決定する経過を見ましても、非常にふまじめだ——ふまじめと言うと、少し語弊があるかもしれないけれども、技術主義だと、数字だけちょっちょっと動かして適当にきめている。こういう印象を私は払拭できないと思うんです。そういう点で私は今度のこの米価決定やり方は非常に不当だというふうに感ずるんですが、この私の技術主義という批判に対して、大臣はどういうふうにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  107. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) いろいろ御見解を承ったのでありますが、先ほども触れましたように、今回の予算編成の大方針としては、総需要をできるだけ押えよう、そういうときに、画一的に各省に予算要求は二五%までというようなことに財政当局としてはならざるを得ないと思うんであります。一応のそういうめどの中で考えていかなきゃならぬということは私はやむを得ない事態だと思うんです。そうして、その後においてなお特に必要なものについては予算を増額していくと、また、要求をしていくと、こういうことは当然起きてくるのでございまして、そういう一応のめどを与えるということをもって技術主義であると、こう言われても、ちょっとそれは私どもとしては困ることでございまして、やむを得ざる措置ではないか、このように受けとめておるわけであります。
  108. 塚田大願

    ○塚田大願君 私が技術主義だと言ったのは、第一に指摘しましたこの食管法の精神で、これは一つの問題として言ってるわけでありまして、つまりもちろん予算編成には一つの技術は必要でございましょう。技術でございます、編成は。しかしながら、やはり食管法の精神を忘れて、こういう予算編成だけに身をやつしておる。そこにこういう今度の非常に不明朗な米価決定のしかたというものが生まれたんではないか、こういうことを私はお聞きしているわけです。  さてそこで、あと時間が三、四分になりましたから、最後のじゃ、今後どうするかという問題でありますが、先ほど大臣逆ざや解消だけを考えておるんじゃない、それを単純に言ってるんじゃない。こうおっしゃいましたけれども、それならば私は——米審の会議の中で、消費者の中から、この食管赤字物価特別対策費で処理をすべきだという意見とか、あるいは食管赤字社会政策費として政府として考えるべきだと、農林省というワク内で考えるべきではない、こういう意見が出たと思うんです。これは先ほどからも意見が出ました。私もこれはまことに至当な意見だと思うわけです。やはり私はこういう意見に耳を傾け、これにこたえていくというところに生きた政治というものがあるんじゃないかと。いままさに物価上昇インフレの荒波に国民が飲み込まれて、たいへん苦しんでおるそのときに、そのときにこそ政府が思い切った手を打つというところにこそ政治というものが私はあるんじゃないか。  ですから、先ほども出ましたけれども、税の自然増収四兆円あるじゃないか、これも一般に国民がみんな言ってる。大臣は六千億あるいは七千億の赤字があるからと言って盛んに言われますけれども、四兆円に比べれば六千億や七千億は何でしょうか。しかも、防衛費には一兆円気前よくぼんと出している。防衛費なんかは全くこれは見返りのない出費であります。しかし、それには気前よく出す。しかし、国民の食糧の確保と経済の安定のための六千億、七千億は出せないというのは、これは私はだれに聞いても筋は通らないと思う。防衛費お出しになるのはけっこうです。しかし、それだったらなぜこの食管赤字を埋められないのか、こっちのほうにも出しなさいというふうに私は主張したい。この論議はあるんですけれども、時間がきましたから、——ついてにこういう論議は単にわれわれや一般の消費者が言うだけでなくて、農林省の中にも私はそういう意見があるということを指摘したいと思うんです。  きょうは、中野食糧庁長官がお見えにならないので、たいへん残念ですけれども、中野食糧庁長官がこういうことを言っているんですよ。これは「アフ」という雑誌です。——ことしの九月号の座談会です。これに中野食糧庁長官はこう言っていますよ。これはこまかく読みませんけれども、要するに、今度の食管赤字のうち一千五百億円ぐらいは経済企画庁の物価局の予算でまかなうべきである、こういう主張をしておるのです。つまり、いまの米価生産費プラス所得補償方式でしょう。生産費のほうはよろしい。しかし所得補償方式は、これはその分として一千五百億ぐらいになるけれども、これは当然物価局の予算でやるべきだ。片一方、二千億ぐらいが農林省予算になるはずだ。その他、政府として千数百億ぐらいはいろいろ事務費や人件費はかぶらなきゃいけない。こういうふうに長官自身が言っておられるのです。これは常識だと思うのですね。この点、長官がいないから長官自身に答えてもらうことはできませんけれども大臣としてそういう点も含めて、私がいま申し上げましたこの食管会計赤字政府の責任において解消していく。いわば政府政策費として支出すべきではないか。農林省予算なんというんじゃなくて、必要があったら別に特別会計をつくってもいいでしょう。あるいは先ほども論議に出ましたけれども、大体農林省がこんなことをやっているからいけないんだ、食糧省をつくったらどうだという意見すら出ましたけれども、そういう点で私は思い切ってやはり農林省、農林大臣がここで政治的な手を打っていただく必要があると思うのです。そして米価はあくまでも据え置く、こういう立場をひとつ貫いていただきたいと思うのですが、それもあわせてひとつお答え願いたい。
  109. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 中野食糧庁長官の言われたことも一つ考え方であるとこう思います。しかし、現在、財政当局との折衝の中におきましては、まだそれらの意見というものが了解を得られる、あるいは実現をするという段階にはまいっておりません。  それから、今回の諮問の中におきまして、低所得者層についての社会保障的措置を講ずるということを明白にいたしておりまして、これにつきましては、四月の、現実に引き上げをするまでの間に、関係各省庁において案を練ることになっております。これは、従来のただ食管赤字議論しておったのとは違いまして、社会政策費的な要素というものが今回初めて認められたというように私は見ておるのでございまして、今後、低所得者層対策に対しまして、収入の少ない方が、安い、まずい米を食うのだというような、そういう措置でなく、何か現実的に了承の得られるような社会保障的措置を講じたいと、関係省庁で意見の統一をいたしたいと考えておるところでございまして、私どもは私どもなりの努力は続けてまいる考えでございます。
  110. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間の制約もありますので、サトウキビの生産者価格の問題を中心にして大臣にお尋ねしたいと思います。  いま大臣の頭の中は米価の問題しかないのですが、それでは困るのです。サトウキビの問題は、もう二十日までに結論をおろさなければならない問題でございますから、米価同様にひとつ重大な関心と熱意を示していただきたいとこう思います。それを前提にして若干お尋ねいたしたいと思います。  先般沖繩の農民の方々が千二百名、引き続いて奄美さらに種子島の農民の皆さんが千三百名ほど大挙して上京された。しかもこれは、農民の諸君がなけなしのさいふをはたいて、実に八千万という臣額な金をそれぞれ捻出をして、何としても自分たちの声を政治の中で実現をしたいという熱烈な、しかも血の叫びで、私はやはり上京になったものだと見ておるわけでございます。それだけに、それらの皆さんの要求でありますところの、最低生産者価格を一万三千円以上に引き上げろ、あるいは生産費所得方式を採用してもらいたい、さらには近代化促進のためのいろんな国の補助を拡大をしてもらいたいという要求は、私は当然の要求だと思うのでありますが、その点に関しますところの大臣の御見解、御所見あるいは御感想なりをまずお伺いいたしたいと思います。
  111. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) ただいま宮之原委員がおっしゃいましたように、奄美大島、沖繩の皆さん方が大挙自費を捻出して御上京になられました。しかも、ほんとうに真剣に平穏裏にその要請運動を展開せられました。両班とも私の部屋にもお見えになりましたが、真剣な御論議で胸を打たれる思いがいたし、この要請運動に対しては心から敬意を表しておるものでございます。  この二十日に迫りましたサトウキビの最低生産者価格決定につきましては、ただいま最善の努力を払っておるのでございまするが、パリティ計算による計算額はこれはもう当然出てくるわけでございまするが、この十五日に前年度の生産費が幾らになったかという数字が明らかになってまいりますると、さらにこの価格決定についての具体的な協議に入れると思っておるのでございまして、多数のああいう真摯な運動を念頭に置きまして、微力ではございまするが、私としてのベストを尽くしたいと、このように考えております。
  112. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それから、大臣も御承知だと思いますけれども、沖繩では、海洋博という一つの課題の中から労賃が異常な暴騰をし、そのためにサトウキビの生産者が非常に手薄になっている。そういう事態からサトウキビが一万八千トンも立ち枯れをするという状態が出ておるわけであります。その事態は大臣もよく御存じだと思いますが、これをどうお考えになって、どう対処しようとしておられるのか、まずそのお考えをお聞きいたしたいと思います。
  113. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 収穫期に際しまして労務費が高騰いたしました結果、遺憾ながら御指摘のような事実のあったことはまことに残念に思うのであります。  昨年の価格決定の際に予期せざる事態が起きたのでございまして、今回の価格決定に際しましては、昨年の価格が基礎にはなりまするけれども、いまのような事態も配慮しながら善処をすべく考慮をしておるところでございます。
  114. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それからもう一点お尋ねしますけれども政府は国内産糖の自給率を昭和五十七年までには二六%から二七%前後に高めたいという目標をお持ちでございますが、自給率はしかし残念ながら低下しておるということは私は否定できない事実だと思うんです。特にサトウキビ産糖の自給率は、資料を見ましても低下をしておりますし、さらに沖繩あるいは奄美のサトウキビの収穫面積、生産量、さらには甘蔗糖の産糖量を見ましても、減少をしつつあるわけでありますが、こういう事態の原因はどこにあるというふうに理解をしておられましょうか、大臣
  115. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 宮之原委員の御指摘については、全体的に言って、四十五年から四十六年に低下をいたしましたが、四十七年では砂糖の全体の産糖量は上がってきておると思うんであります。また、サトウキビの場合におきましても、これは四十五年から四十六年に下がり、四十七年には若干これは十アール当たりの収量ですが上がり、四十八年も若干上がったと。その生産量として、サトウキビの場合は四十七年、四十八年対比は下がっております。しかし四十六年、四十七年は上がっておるというような数字はなっておると思いますが、そういうことは別といたしまして、沖繩におけるキビ産業というものは基幹産業であって、これが生産振興につとめるということは沖繩の問題を考えるときに欠くべからざるものであります。キビ産業、パイン産業等を中心にして考える、こういうことでございまするので、先ほどのお話のような、立ち枯れの状況が起きるとか、生産意欲が今後においても引き続き減退をするようなそういう事態を招いてはならないということで、価格の問題はもとよりでありますが、その他の、基盤整備や機械導入やそれらの振興施策を講じていくことにつきましては、当然の措置であると、このように考えております。
  116. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この自給率の低下の問題云々については私も手元にデータを持っていますけれども、それは後ほど局長の皆さんからまた答弁願ってきちんと改めたいと思いますが、ただしかし、私がいま先ほど来指摘をしましたところの、今月初めの大挙の農民の皆さんの陳情団、あるいは沖繩の一万八千トンのキビの立ち枯れという状況、あるいはまた自給率、特にサトウキビのほうは低下しつつあるというこの事実は、これは何人も否定できないわけでございますが、そういうことは一体何に原因しておるとお考えになっておられるのか。  私は、率直に申し上げますけれども、いわゆる糖価安定法二十一条の規定をするところの再生産を確保するための最低生産者価格が不当に安い、低い。ここに最大の原因があるのだとこう思っておるわけなんですが、その点大臣は同意をなされますか、どうですか。
  117. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) その価格決定時にはそれぞれのデータに基づいて合理的にきめられておると思うんであります。それがその後に、事情の変化、今回の場合は海洋博による労務費の非常な高騰というようなものの影響を受けた。こういうことで、価格そのものがこれが再生産を確保できないようなことで年々きたと、こういうふうにはこれはちょっととりにくいと思うんであります。ただ、昨年からことしにかけての問題はあったということについては十分認識をするわけであります。沖繩農業の全般的な場合を考えていきまするならば、それなりに原因は幾つかあると思います。水の不足であるとか、土地基盤整備のおくれや地力の低下であるとか、経営規模の零細性であるとか、農業技術の水準の低いことであるとかいうようなことがあると思います。それらにつきましては、当然沖繩農業の振興のためにわれわれとして行政的にやり得ることについては努力をする考えでございます。
  118. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 生産性が高まらない云々というところには、それはさまざまな原因がありましょう。しかしながらやはり一番根本は、農家の皆さんの、サトウキビ農家生産意欲がわかないことには、これはどうにもできないでしょう。幾ら多額の金をかけて基盤整備やあるいは構造改善を声を大にしてみても、ほんとうにサトウキビをつくってつくりがいのある、自分の生活が維持できるようなキビ価格引き上げてもらわぬことには、これは農家の皆さんに幾ら奨励しても、私はこれは何にもならないと思っている。それだけに少なくとも一番の根本は、先ほどの申し上げたところのキビ価格生産者価格引き上げ、このことが私はやはり重点に置かれなければならないと思う。その点、従来の農林省考え方は若干私はさかさまになっておったんじゃないだろうかと思う。これは私、四月の、いまでも覚えていますが、二日の日に、予算委員会でも農林大臣にただしました。あるいはこの間、九日の衆議院の農水の農林政務次官の答弁を聞いておっても、依然としてこの考え方は変わっておらないということに私は非常に憤激を覚えたんですがね。というのは、やはりサトウキビは生産性を高めるところの余地のある農作物だから、まずその生産基盤を整備をするとか、あるいは構造改善をやって合理化をはかりたい。あわせてこの生産者価格の問題について考えていきたいという考え方が今日まで一貫してとられてきたところの私は農林省の態度だと思う。そういうような政策をとっておってきたから、先ほど来私が指摘をしたところの問題が出てきておるんです。一番大事なことは、私自体もちろん生産基盤の整備とか、構造改善の事業の重要さということは否定しません。しかしながら、今日、より一番大事なことは、その肝心なサトウキビをつくるところの生産者の意欲を増大をさせていくというための生産者価格引き上げということが先決だと思うんですが、これ大臣どうですか。
  119. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) いま御指摘のように農林省としては生産性を高めるということで、この構造改善事業、生産基盤の整備、機械の導入というようなこともやっておることは、これ事実でございまするから、だから御批判がございましても、この事実を否定するわけにはいかない。それはやはりやらなければならないことだと思います。宮之原委員のおっしゃるように生産意欲を向上させる上においては価格が非常に大きな要素である。これは私も否定をいたすものではございません。従来においても、それらを考えながらやってきておるけれども、遺憾ながら昨年度の価格決定後の問題は、非常に沖繩キビ農家影響を与えた。したがいまして、今回パリティ計算をいたして、そして、その後どういうことを勘案していくのかと、こう言えば、前年産価格決定以降の物価及び賃金上昇に対する配慮であるとか、あるいはそのほかのいろいろ要素があると思います。そういうようなものもあわせ考えながら今回のキビ価格の最終決定を講じたいと、こういうことを申し上げておるような次第でございます。
  120. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、ここで大臣と論争するところの時間の余裕がありませんが、少なくとも従来以上に、農林省のものの考え方としては、生産者米価を大幅に引き上げるということの重要性は、去年にも増して、倍して理解をされておるということは理解してよろしゅうございますか。いかがでしょうか。
  121. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 私としての基本的な考え方としては、宮之原委員の御指摘のとおりでございます。ただ、それが御満足のいくようないろんな諸要素が整うかどうかということについてはにわかに予側できないので、私が軽率に御答弁を申し上げたことで間違った予側が出てもいけませんので、宮之原委員のおっしゃるそういう方向で私がものを考えておるということだけは明らかであります。
  122. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうぞひとつ考えておられることだけじゃなくて、ぜひともひとつ大臣の力で実現をさしていただきたいと思います。文字どおり、結果的にはやはり大臣がこの委員会で約束されたことが実現されたと、こういうような結果になるように私は心から期待を申し上げておきたいと思います。  なお引き続きまして、このパリティ方式によるところの算定問題について若干大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。  具体例をあげての質問は後ほど局長の皆さんにやりたいと思いますので、基本的な問題についで大臣のお考えを聞きたいのですが、サトウキビの場合、大臣のいわゆる告示価格は、常にパリティの算出基準よりも低いんですね。しかも、農林省のデータによりましても、このパリティだけでは再生産補償できるものとはどうも私ども判断が、結論が出しかねるのです。したがって、少なくともサトウキビの生産者価格の場合にはパリティの算出方式ではどうにもならないと、これがやはり実際にサトウキビをつくっているところの農民の叫びなんですね。したがって、ここから生産費所得補償方式をという声があがっているわけでございますが、私は先ほど来大臣にもただしておりますように、農民生産意欲をさらに旺盛にしていく、しかもまた、奄美と沖繩の農家が生計が成り立っていくというようなこと。それにはまた国内産糖の自給率を高めていくためには、何としてもやはりこの砂糖の増産ということが緊急の課題になっておりますだけに、そういうようなことを勘案いたしますれば、この際やはりもうパリティ方式から生産費所得補償方式に踏み切るところの段階にきておると思うのであります。で、まあ私のお聞きするところでは、農林省考え方はいままではノーという考え方を示しておるわけでありますが、これはひとつ私は検討に値するところの課題だと思いますが、検討するところの御意思はございませんか、どうでしょう。
  123. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 前段のパリティ計算よりも決定価格が下回っておるという点につきましては、これは基準価格を出して、そして決定価格ということで、最低生産者価格保障という意味合いから若干下回っておったことは事実だと思います。  それからこのパリティ方式を生産費所得補償方式に変えないかという点については、私もしばしばお答え申し上げておりますように、今後生産性向上が期待できる作物であって、一方において、生産性向上のための諸施策が講ぜられておるのと相まちまして、その合理化のメリットが生産者に還元される現行方式がこれが妥当なものであるということで一貫してまいっておることを御了承いただきたいと思います。
  124. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この問題はどうしても私は理解できないのです。この間もいろいろ衆議院の農水でも答弁をされておるところをお伺いいたしますと、おおよそ局長あたりの答弁はこう言っているんてすね。——米はほとんどの農家がつくっておるところの完全生産、完全消費の作物である。しかし、サトウキビは、日本経済の全体から考えると地域的な作物であるとか、あるいは異常な労賃のアップには対応できないという欠陥があるけれども、長い目で見ればパリティのほうが安定するんだ、こういう理由を、大臣のいま答弁されたところの還元云々という一つの論拠とともにこれを表明をされておるのでありますが、私はこれはおかしいと思うんですよ。なるほど米はほとんどの農家がつくっております。キビは確かに特定の地域でございます、現象面で見ますれば。しかし、サトウキビはわが国甘味資源確保の上の重要な作物でしょう。そのことは、甘味資源特別措置法の中にも規定をされております。しかも、砂糖の自給率を上げるという国の政策からすれば、きわめてこれは重要な作物であるということは論をまたない。しかも沖繩、奄美では米に匹敵するところの主要作物でございましょう。こういうようなものを考えていきますならば、これは日本経済全体の中ではローカルの作物ではなくして、まさに日本経済全体の中でもきわめて重要なやはり位置づけをしなければならない作物であるということは、これは明白に言えると思うんです。あるいはまた、長い目で見れば云々というふうに、いまはインフレでずうっと、どんどんどんどん物価労賃が上がるからいまはいいけれども、やがて安定したならばこのほうが得ですよという言い方をやったって、戦後一貫して、日本物価とかいろいろな労賃とかはずうっと上がってきておりましょうが。もしこれが一時的なものであるならば、米だけが何で一時的な利益をもたらすところの例の方式をとるのかとこういう反論を出さざるを得なくなるんですよ。したがってこの点が、私はやはり農林省の説明では納得できかねさせるところのものがありますだけに、十分ひとつもう一回検討していただきたい、こういうことを強く大臣に御要請申し上げておきたいと思います。  なお、時間がありませんので、あと一、二問だけ大臣に行ないたいと思いますが、もし先ほどの答弁のように、あくまでもパリティに固執されるとするならば、今回の場合は、すでに発表されておるように一五・四一%でしょう、千七十一円しか上がらない、もしこのまま右へならえするとするならば。これでは八千二十一円にしかならないんですね。一万三千円の農民の皆さんの切実な要求から見れば、はるかにほど遠いものがあるといわなきゃならない。一体、あくまでもパリティでやられるというならば、その上積みを私は農林大臣としても政治的に考慮しておられるという意味だと思うのでありますが、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  125. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) すでにお答えを申し上げましたように、今後考慮すべき事項といたしましては、前年産価格決定時以降の物価及び賃金上昇に対する配慮、あるいは昭和四十七年産生産費及びこれを基礎とする昭和四十八年度推定生産費との関係など、いろいろ考慮をして考えたいということを申し上げておる次第でございます。
  126. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうもそういう答弁では、これはいままでの方式から一歩も出ないということになるとすれば、とてもじゃないですけれども、九千円台もおぼつかないじゃありませんか。しかしながら、先ほど来、私はるる現地の事情、あるいは何でああして大挙して来られておるかというところの背景を考えてみるならば、あの切実な叫びというもの、たとえば米価には政治的な加算をした、そういう要素があるのに、あの地域の人々であるものであるから、あくまでもパリティしか尊重できないということでは片手落ちじゃないでしょうか。もしほんとうに農民の皆さんの立場、あるいは今日の日本の砂糖政策の中に占めるところのサトウキビ産業の位置づけということを考えるならば、たとえば、いまの現在の方式以外にできないところに上積みするところの、たとえば、ちょうど麦がやっておるような生産の奨励資金とか、あるいはまた、それと見合うところの方式を具体的に私は、生産補償費とか、そういうものをやはり積んで考慮すべきだ、こう思うのです。私は、ここでそうするということを大臣が約束するのはたいへんだと思いますが、そういう問題も含めて大臣としては検討しつつあると、こういうふうに理解したいと思いますがいかがでしょうか。
  127. 櫻内義雄

    ○国務大臣櫻内義雄君) 今回のキビ価格の問題につきましては、あのように大挙要請運動にもお出かけになっており、また、実情についてもつぶさに聞いておるところでございまして、先ほどからいろいろな角度からお答えを申し上げておりまするが、これらの諸状況を十分勘案しながら最善の努力を払って結果を得たいと、このように考えております。
  128. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もう時間がありませんからこれで質問を終わりますけれども、その最善の努力の中身について従来等の方針というものを固執することなく、いろいろな可能な方法をひとつ考えていただいて、この切実なやはり農民の皆さんの要求にこたえられるような処置をひとつ大臣に私は御努力をお願い申し上べて質問を終わりたいと思います。  次に、大臣がおられませんので、関係局長にお伺いいたしますが、先ほど大臣に質問でもお聞きいたしましたように、何か先ほどの大臣の答弁から見ますと、サトウキビの自給率が私は低下しつつあると思うのですがね。低下しつつないような何かデータがあるみたいなニュアンスの御答弁だったのですが、そうなんですか。   〔委員長退席、理事村滝一郎君着席〕
  129. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 砂糖の自給率の御質問でございますが、私どもの資料によりますと、昭和三十年におきます国内の産糖量が十二万九千トンでございます。四十年が五十六万六千トン、四十五年が六十四万二千トンというように順次産糖量は増加いたしております。ただ四十六、四十七はそれぞれ四十六年が五十四万六千トン、四十七年が六十一万トン前後というように多少伸びが減っておりますが、これは主として沖繩を中心をいたします干害の影響によりまして産糖量が減ったわけでございます。自給率は需要との関連でございますが、三十年代は大体百万トン台で推移いたしましたけれども、四十年に入りまして、四十年が百九十二万トン、四十三年、二百三十八万トンというように相当需要のほうがふえた関係から、自給率も三十年の一一%、四十年の二九%から減りまして、四十五年二二、四十六年、一八というようなかっこうになっております。四十七年度は大体二〇%前後というふうに私ども考えております。
  130. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ここに農林省のあれがありますが、これは農林省の資料なんですがね、「砂糖類の需給総括表」というのがありますがね。これを見ますと、たとえば、自給率はいま答弁がたしかありましたように、これはてん菜糖と含めまして二九・四五%、四十一年、二五・三三、四十二年、二六・七〇、四十三年、二四・九九、四十四年、二二・〇八、それから四十五年、二二・三一、四十六年、一八・三七という数字が出ておるのですよね。これから見れば、これは自給率は減少しつつあるということはこれは否定できないでしょう。それは何か衆議院における答弁を聞いておりますと、たとえばサトウキビがどうだ云々というのは、あたかも沖繩におけるところの干ばつのときだけが低くなったようなあなた答弁されておりましたけれども、ところが事実と違うと思うのですよ。昭和四十年からずうっと見てみれば、そこだけ特別に引っ込んでおることは事実だけれども、ずうっと一つの方向としてはこれはやはり減産の方向をたどっておりますよ、これはだれが何と言おうと。  しかも見てごらんなさいよ。サトウキビと、てん菜糖との比重にいたしましても、昭和四十二年まではサトウキビ、甘蔗糖のほうが比重が大きかった、大だ。しかしながら、四十三年からはてん菜糖のほうが、これは少なくともやはり量としては多くなってきているんですよね。これから見ますと、従来サトウキビが主体であったけれども、いまやそのてん菜糖が主体になったような形で変わっておる。こういうデータなりあるいは沖繩、奄美におきますところのサトウキビ甘蔗の生産の推移を見ましても、そのことは私は言えると思うんです、この表を見ましてもね。  これは私は先ほど大臣に聞きたかったのは、こういうことの要素というのはそれはもろもろの要因があるでしょう。しかし、その根幹の最大のものの一つは、何としてもやはり生産者に対するところの生産者価格の低さということがこれは農民生産意欲を減退させておるということは事実ですよ。これはあなた方も否定されないでしょう。どうですか。
  131. 池田正範

    説明員(池田正範君) ただいま御指摘いただきましたように沖繩における現地の客観条件から見て、サトウキビの生産が、より他のものに比べて有利ではなかったという条件が、このような形に追い込まれた一つの有力な原因だということは言えるだろうと思います。
  132. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、ここにサトウキビ生産農家の経営実態調査という、これは沖繩の石垣市の農家の方の経営実態調査表ですが、をいま持っておるわけでございますけれども、これを見ましても、サトウキビによるところの所得調査——いろんなものをずっとやって結局キビをつくり、それでサトウキビに対するところのいろんな資本利子とかあるいは労賃、そういうものを払って差し引き残高か——この農家は八町歩、畑をつくって、その中でサトウキビは夏植えの四町歩をつくっている農家ですね、また、パインを二町歩つくっているところの農家のようでございまして、夫婦と子供三人でございますけれども、そのサトウキビの所得調査のあれから見ますれば、サトウキビのこの実情から見ますれば、結局サトウキビの生産だけから得たものから、いわゆるいろんなものを差し引いたところの残高は六十三万五千一百一円、これを夫婦で分けてみますれば、そして、それを十二カ月に割るとすれば月五万三千円、しかも、その五万三千円のうち、さらにトラクターなり土地購入資金の還元資金として月四万円を支払っている。実質一人の手取りは一万九千百六十七円しかならない。こういうデータを出しているわけですが、これでは食えないんだと、こういうことを言っている。私は、単なるこれは一つの例でございますけれども、これは沖繩、奄美を含めて大かたの農家の実態じゃないだろうかと思うんです。それだけに、最低その生産費ぐらいは見合うところのやはり価格というものをきめてもらうという、このことはやはり農家としては私は当然の要求だと思うんですがね。それだけに今日までのこの最低生産者価格決定の様子を見てみますと、ほど遠いものがあったと言わなきゃならぬと思うんです。その点は、ことしは十二分に考えて皆さん方は作業しておられるのかどうか、その点をまずお聞きをいたしたいと思います。
  133. 池田正範

    説明員(池田正範君) 御指摘の点につきましては、先ほど農林大臣からもお答え申し上げましたように、最近における経済事情の変化というものが非常に生産事情の悪化をもたらしているという実情は、これは目をおおうことはできないわけでございます。その辺の実情というものは、当然価格算定の中で参酌されるべく最大の努力をするということを農林大臣から申し上げましたが、その方向で決定されるものであろうというふうに私ども考えております。
  134. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 次は、現在の糖価安定法のあり方の問題について若干お尋ねをしたいと思いますが、安定上限価格、下限価格が毎年改定をされておりますね。しかも、その傾向を見てみますと、確かに四十年から四十五年前後にかけてはこの価格は下る傾向を示しておったわけでございますが、ただ一昨年来これが非常に高くなりつつある。特にことしは上限が五万四千円と四千二百円アップされている。下限が二万七千円と千四百円アップにされておるわけでありますが、これは私は国際糖価の暴騰、無協定時代という情勢からいたしますれば、これはそういうことは肯定できるわけでございますが、問題は、このことと国内産糖の合理化目標価格との関連でお聞きをいたしたいんです。  もちろん、法律上は何らこの二つのかかわりはないかもしれませんが、実際のこの国内産糖を発展をさせるという立場から考えるとすれば、この国内産糖合理化の目標価格、これはたしか四、五年前指標としてきめられておったと思うんでありますけれども、四十八年度のこのサトウキビの合理化目標価格というのはやはり依然として国際価格の面からだけ見ましても、四万六千三百五十円という形に据え置かなければならないものなのかどうか。確かにこれは施行令の第二条の示すように、国内産糖の目標生産費をきめるところの期間は五年と書いてありますから、ことしはこれに当てはまらないかもしれませんけれども、しかし当てはまらないといっても、先ほど申し上げたところのやはり国際価格との関係あるいは国内産糖の自給率を高めようという立場に立つならば、何らかこの問題についても検討されてしかるべきだ、こう思うわけでございますが、その点いかがでしょうか。
  135. 池田正範

    説明員(池田正範君) 現在の糖価安定制度の仕組みはただいま御指摘のとおりでございます。その考え方の基礎にありますことは申し上げるまでもなく、現在の日本の砂糖の自給構成が現実に二〇%前後の自給率である。八割程度は輸入に依存されざるを得ない。今後かなりの努力をいたしましてもその自給率を簡単に引き上げることは相当に技術的な問題としても無理があるというふうなことから、全体としての価格安定帯というものを設けて、そうして将来の課題としてはやはりだんだんに国産糖の合理化をはかってこの上下の安定帯の中に生産費を持っていこうというのが、先ほどの合理化目標価格、毎年おきめ申し上げておる合理化目標価格の基礎になる五年に一ぺんずつきめますところの目標生産費というものであるわけでございます。  したがいまして、理想的に申し上げれば、この目標生産費が達成をされ、これにより毎年の合理化目標価格が糖安制度のもとで上下限のまん中にきめられるという形でセットされますと、非常に理想的な形になるわけでございますが、一方、ただいま先生御指摘のように、国内の国産糖の生産費というものは必ずしも思うような形で下がっていかないという問題が出てくるわけでございます。したがいまして、実は、これは目標生産費は五年に一ぺんということでございまして、四十四年にきめましたものがちょうどこの砂糖年度で終わりがきまして、来年の九月までに改定をしなければならない時期に差しかかっておるわけでございますが、実はすでにきめました本年度のてん菜糖の価格にいたしましても、また、昨年の甘蔗糖のサトウキビの生産者価格にいたしましても、それぞれをベースにいたしまして事業団の買い入れ価格を算定いたしまするというと、当然そこで計算をされます価格というものは上限価格をこえるおそれが出てきたわけでございます。  そのこと自体は直ちにこれを糖価安定制度の仕組みにひびが入るのではないかとおそれる向きも一部にはございますけれども、私どもといたしましては、やはり国産糖というものの生産を徐々に増加をしていく、そうして将来的にはやはりこのメカニズムの中にはビルトインされるような方向に努力をし続けることは大切だけれども、当面の問題としてはなかなかこれは困難である。そういう意味からいたしまして、全体の問題点を含めて来年度の合理化目標生産費設定の際までに一つの課題として検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  136. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは立法の趣旨からいえば、それはまたわかりますし、何年でしたか、それをつくった前後でしたかね、たとえば、国内分みつ糖の原価と外国分みつ糖の原価を昭和五十二年ぐらいまでにとんとんにしていきたいというひとつの合理化目標から見れば、それはわからぬでもないですよ。しかしながら、現実にこういう国際砂糖の価格というものの暴騰から、どうしてもやっぱり自給率を高めていかなきゃならないということになれば、その期間を、合理化の一番最終年度——五十二年をさらに五、六年延はしてても、やはり国内の生産者生産を、自給率を高めていく。そういうことは相当やはりいまの段階では真剣に考えられなきやならない段階にきていると思うんですよ。したがって、私は、やはりあまりにもこの合理化目標価格というものに固執するあまり、角をためて牛を殺すような結果になったんでは困ると思うんですよ。  それはもちろん後ほど事業団にもお聞きしたいと思いますけれども、いわゆる事業団には、国の産糖との調整金やら、あるいは交付金といろいろな制度もあるわけですから、それを活用する中で、私は、少なくとも国内産糖の合理化目標額というものをある程度上げることによって、国内産糖の価格をやはり自動的に上げていく。そういう処置というものがとられてこそ、今日のこの国際的な砂糖政策を転換せなきやならぬ時期に、それにマッチするところの政策がとられると私は思うんですよ。その点、これは来年の問題ですと言わないで、相当やはり早急に手を打つ必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょう、政務次官、その問題は。ちょっと政務次官にこれはやっぱり政治的な判断を要するところの問題でございますから、ひとつお聞きしたいんですがね。
  137. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 先ほど、大臣先生といろいろ御意見、御質疑等あったので、いろいろ大臣のお考え等もおわかりかと思いますけれども、そういう問題先生意見も十分参酌しながら検討してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  138. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはまさに政務次官答弁ですがね。まあ質問があると思って用意されておらなかったんで、私もそれ以上は申しませんが、少なくともこの問題はやはり来年の問題だということじゃなくて、私は率直に申し上げますれば、農林省自体この砂糖政策を転換しなければならぬ時期にきていると思うんですよ。そういう段階の中でこの問題は相当前向きに検討されて——これがやはりことしのこの砂糖、国内産糖の買い入れ価格にも濃い影響を与える、ひいてはこれが生産者価格にもプラスの方向になっていくという立場から、ぜひとも検討してもらいたいと思うんです、この問題は。その点いかがでしょうか、局長
  139. 池田正範

    説明員(池田正範君) 農林省といたしましても、先ほど御指摘のように、角をためて牛を殺すと申しますか、制度を守って国産糖をつくる者がなくなるというような愚は、これは絶対に避けなければいけないと思います。その意味でやはり国産糖全体の長期路線、これはどういう形でいくかは問題いろいろございましょうけれども、増産という形が漸時とられていく、少なくとも減産は防がなきゃいかぬ。そういう形のひとつのてこ入れを考えていく。その中でもいまの糖安制度の仕組みなり、あるいは当面の価格決定なりというそれぞれの歯車が全部遺憾なく組み合うような形に、最善の努力を尽くすというつもりでいるわけでございます。
  140. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この機会に事業団の理事長もお見えでございますのでお尋ねしたいと思いますが、この安定積み立て金ですね、あるいは国内産糖との調整金ですね、この状況はどうなっていましょうか、ちょっとお話し願いたいと思います。
  141. 横尾正之

    参考人(横尾正之君) お答えを申し上げたいと思います。  まず安定資金の問題でございますが、先生も御承知のように、昨年の一月ごろから相当高水準の高原相場で外糖の価格が推移をして今日に至っております。したがいまして、それを反映いたしまして、法律に基づきます平均輸入価格は高水準になってまいりまして、上限価格をこえるという状況が続いてまいったわけでございます。したがいまして、その結果、安定資金の支出が続きまして、四十七事業年度末の安定資金の残高を申し上げますと、約百二億という数字に相なっております。四十八年度に入りましてもなお安定資金の支出は続いておりますが、年度途中でございますので、一応四十七事業年度末の数字を申し上げた次第でございます。  それから、国産糖の売買に伴います売買価格の問題でございますが、これまた先生承知のように、政府決定をいたされます買い入れ価格買い入れをいたしまして、瞬間タッチ方式で売り戻しをいたすわけでございますが、その売り戻しは、輸入指定糖の売り戻し見合い価格を基準として、輸入糖とプールをして売り戻すという趣旨で売り戻し価格をきめておるわけでございますが、その場合に、買い入れ、売り戻しに伴います売買差額が生じます。その売買差額は国から交付を受けますところの交付金と、それから、先ほどちょっと申し上げましたけれども、輸入指定糖の売買に伴いまして一定条件のもとで入ってまいります調整金収入等を財源にいたしまして国産糖の売買価格の支払いに充てる。こういうことに相なっておるのでございまして、四十七事業年度につきましてその売買の状況を申し上げますと、国内産糖の売買の数量は六十一万二千百八トンでございます。その売買価格の支払い総額は六十三億七千四百万円になっておりますが、交付金で四十四億二百万円、調整金で十九億七千二百万円を充てた、こういう次第に相なっております。
  142. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、私は不勉強でわからないんですが、パリティ価格の問題について若干お聞きしたいと思うのですが、このパリティ価格の算定の方式は、前年の最低生産者価格掛ける分母が前年の三月から十一月の平均パリティ指数、分子が当該年の三月から九月までの平均パリティ指数、こういう方式になっておるようでございますが、分母と分子がそれぞれ月の数が違うという意味は、正確な平均値がはじき出されかねないんじゃないだろうかというしろうと考えを持つのですが、そこの違うところの理由はどういうことでしょうか。
  143. 池田正範

    説明員(池田正範君) 純理的に申し上げますと、ただいま御指摘のように、分子と分母の月数というものが厳密に合っていることが理想である、これはおっしゃるとおりでございます。その意味で、前の年の三月から十一月までの平均に対するその年の三月から十一月までという生産期間を対応いたしましたパリティをとることが理想でございますが、現実には十一月の二十日までにその年の年産の価格をきめなければならぬという技術的な制約がございまして、直近という形でとっておるわけでございます。
  144. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 直近ということになれば十月までは出ませんか。私どもが聞いておるのは、十月は何か二二%前後に数字がはじき出されるということを聞いておるのですがね、それは違いますか。
  145. 池田正範

    説明員(池田正範君) 十月の数字は今月末に大体決定をされるということでございまして、若干の差でございますけれども、現在の段階では九月までということにいたしておるのでございます。
  146. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私はやはりここにも実際生産者の立場に立てば、これぐらい物価が異常な高騰を見せているところの時期は、やはり算定方式のあり方というものについても十分理解できないところの側面があるんです、率直に申し上げて。こればかりに十月というものは普通常識的には十一月の中旬ぐらいまでには出そうなものですがね。それがいまおっしゃったように、十一月末でなければ出ないというならしかたがないですけれども、これはせめて十月ぐらいはこの中に入れていくような努力というものがなされてこそ、私は農民の皆さんも納得ができるところのパリティの科学性が出てくると思うんですが、これはひとつ今後の検討課題にしてもらいたいと思うんです。  そこでお聞きをいたしたいんですが、先ほどもちょっと私質問申し上げたんですけれども、サトウキビの場合の最低生産者価格が、農林大臣の告示価格が、四十一年から四十七年の間を見ましても、パリティ指数の算出価格よりも低く押えられているということは事実じゃないでしょうかね。何か先ほど大臣は、上がった場合もあり、低くなっているときもあるというお話だったようですが、これは私はやはり四十一年から四十七年の間は大体低く押えられていると、こう見ている、同額かもしくは低く。しかも、これを今度はずっと計算してみると、法定方式をトン当たりずっと七年間の通算をいたしますと、これはサトウキビの場合は九百四十一円、平均で百三十四円押えられているかっこうになっているんですよ。これをもし加重方式をとるとするならば、七年間の通算で四千六百四十二円、平均して六百六十三円ずつ、これは農家の皆さんからとってみればパリティよりも低く削り取られている、自分たちの取り分を農林省から押えられた、こういうようなやはり感じを持たざるを得ません。したがいまして、これを反当たりで見てみますれば、平均トン数、たとえばこの七年間、これを六・三七トンと計算をいたしますと、実に法定方式では毎年平均して八百五十三円五十八銭、これに加算方式をもし加えるとするならば、四千二百二十三円三十一銭もこれが減じられているというのが数字の上から見るところの大臣の告示価格なんですね。一体こういう不合理があっていいんだろうかと、こういうことが農民の皆さんの率直な気持ちなんですよ。糖価安定法の二十一条は確かにこれはあくまでも基準で、物価その他の経済事情を勘案をしと、こう書いてある。それならば、パリティではそういう数字を出しながら、実際の大臣告示価格は引き下げたというのは、物価その他の経済事情を勘案して引き下げたんですかと、こういうふうに質問したくなるんですが、その間の事情はどうなるんですか。
  147. 池田正範

    説明員(池田正範君) 確かに御指摘のように、四十年以降パリティ基準の価格に比べまして、決定価格が若干低目にきめられていることは事実でございます。基準でございますから、したがって、経済事情その他の総合勘案ということになるわけでございますが、まあ現実にきめられます数字以降、ずっと全体としての生産性向上の度合い等を勘案をいたしまして、先ほどおしかりはいただきましたけれども、国産糖を幾ぶんでも合理化の方向へ近づけていくという、いわば若干の、何と申しますか、望ましい生産性のアップ分といったようなものが政策的に加味をされて、そのことが今日まで若干のパリティ価格、基準価格よりも低目にきめられた一つのいきさつであったように思うわけでございます。ただそのことが、現実問題としてはサトウキビの生産を減らしてしまったということの御指摘も同時にあるわけでございますので、私どもといたしましては、その辺の経緯をよく含んで考えて、次の生産価格については検討してみたいと考えている次第でございます。
  148. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ちょっと私はいまの答弁では納得できませんよ。あなたのことばじりをとらえるわけじゃないけれども、告示価格はパリティよりも若干低いといって、年間、その当時は百円とか百五十円しか上がっておらなかったところのときに、たとえば昭和四十一年で見ますれば、これはあなた法定方式から二百四十円も違っているのです、告示価格が。四十二年が百二十三円、四十三年が百七十円違う。四十六年に至っては二百十四円も違っているのですね。わずか一年に百五十円とか百円とか二百円ぐらいしか上げておらないのに、片一方では、わずかといいながら、ぼんぼんぼんぼん、こういわゆる農民の立場から見れば、パリティよりも低く押えられたのじゃかないませんよ、あなた、これは。一体皆さんは、農林省ですからね、農民の立場に立つというお考えなのかどうかということも疑わしくなるのです、率直に申し上げれば。しかも、先ほど私が申し上げたように、反当たりでいえば、すでにその法定方式でも年平均八百五十三円五十八銭というものがこれはやはり削り取られておるという計算になってしまうのだ。あなたの話では、このことが生産性向上の度合いということを考えたというならば——やはりあなた方先ほど糖価安定法の合理化をするのだという大目標だけ掲げて合理化でもって——農民の生活とか、キビの生産をつくっておるところの人たちの立場を考えないで、合理化でもってどんどんなたを加える、ふるう。そのことばだけを先行させておるというところに大きな問題点がありはしませんか。ここに私は従来の農林省の農政、サトウキビ生産に対するところの政策を変えなきゃならない根本があると言うのです。  たとえば大臣は、先ほどパリティ方式を保障するところの要素として合理化のメリットが出てくるからと、こうおっしゃった。一体キビ産業に対して合理化のメリットがどの程度どう出てきましたか。なるほどてん菜糖には出たかもしれない、ビートには。しかしキビ価格には出ましたですか。どうなんですか。どういう合理化のメリットが出ましたか、こういうように低く押えることによって。それがあったらお聞かせ願いたい。
  149. 池田正範

    説明員(池田正範君) 非常に厳密に議論をいたしますとまた御批判も出てくるだろうと思いますが、たとえば四十一年に十アール当たりの家族労働時間が百三十七時間かかっておったというのが、四十六年の生産状態のもとでは百八時間に減っておるというふうに、全体としてなかなか五十アールとか四十五アールとかいった平均の非常に低い地帯でございますので、したがって、これを集約化し、集荷機械等の機械化をはかるといたしましても、なかなか生産性向上ということの効果はあがりにくいのでございますけれども生産者の方々の長年の御努力のあれもございまして、いま申し上げたように、徐々ではございますけれども、あがってきつつある面もなしとはいたさないわけでございます。まあしかしながら、それらがあがってくるというふうなことになりますれば、当然それに対して、そのあげるためのいろいろな諸措置も同時に基盤整備その他について、非常に不完全でございますけれども、最近では若干の国の投資も積極的に行なうという面もございますので、したがって、いまの差し引かれてきた面に見合うのかどうかという問題については確かに問題点は御指摘のようにあると思いますけれども考え方といたしましては、そういった面も一応考慮の中に入って従来はきめられてきたのであろうというふうに思うわけでございます。
  150. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それは皆さんのねらいはどうあるにしても、現実には糖価安定法の精神からいってもパリティの算出価格を基準とし、物価その他の経済事情を勘案をし、再生産を確保することを旨として定めるとあるでしょう。何もおたくの言うように合理化を目標としてと書いてないのですよ。少なくとも、物価というものはどんどん上がってきている。経済状態というのは、沖繩や奄美の状態以上に本土におけるところの国民所得というものはぐいぐい上がってきておる。あなた方も御承知のように、奄美においての群民一人当たりの所得というものは日本全体の平均の半分にも満たない四九%なんですよ。そういうところの事情というものを勘案されるとするならば、少なくとも、やはり糖価安定法の精神に基づくところの物価その他の経済事情を勘案するというならば、パリティで算出されたものにプラス何がしかのものがあるはずです。あるというならわかりますよ。それが逆に引かれておるということについては、これはやっぱりおかしいと思いませんか。これは次官、そうお考えになるでしょうが、少なくとも。ここのところに農民の皆さんの大きな不満があるんですよ。それだけにもうこれはたまらぬと、こういうことから八千万の、自分のふところから金を出して、大挙して何とかしてくれと陳情して来るところの要因があるんです。この点をやはり皆さんは考えてもらわなければ——ただ、デスクの上でこの問題を考えられておるということと実際は違っておるんですからね。その点を私はもう答弁を求めませんけれども、ぜひとも、その償いを今度の生産者価格決定される場合にはやっていただきたい、考慮してもらいたい、こういうことを強くお願しておきたいんですがね、いかがでしょう。  まあ、局長あたりが衝に当たられるわけですから、その点はひとつ、私は、罪ほろぼしということばは悪いかもしれぬけれども。少なくとも、やはり従来のやっておったものに対するところの、今度は配慮ということは相当あってしかるべきじゃないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  151. 池田正範

    説明員(池田正範君) 先ほど来申し上げておりますように、最近における経済事情が、特に沖繩、奄美といった離島にきびしく影響を与えている、あるいは最近におけるサトウキビの生産事情がおもわしくない方向に向いている、しかも、政府としては、国産糖の増産を、自給率を上げていこうという気持ちを捨てていない。このことからお察しを願えますように、私どもといたしましては、少なくとも、この退勢を食いとめるために最善の努力を価格面の決定にあたってもいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  152. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 実は私は、この問題とビートとの価格を比較したくはないんですけれども、何もビートの足を引っぱるつもりじゃないんですよ。しかし、ビートの場合は、いまの説明では、これはまた逆な形を生んでおるんですよ、価格決定は。これは、御承知のように、同じく昭和四十一年から四十七年の間を見てごらんなさいよ。法定方式で通算して、大体、平均一円。もし加重方式をとるとするならば、これは千百六十五円、平均百六十六円の逆にプラスしたものが大臣告示価格として出ておるんです。反当たりで申しますと、これは七年間の平均反当を三・七九トンとすれば、これは法定では、大体、毎年三円七十九銭の増。加重方式では、六百二十九円、十九銭増という形でビートにはいっているんです。これは今度は逆におそらく答弁願えば、これは物価とか経済事情を勘案しましたと、こういう答弁がはね返ってくるかもしれませんけれども。サトウキビのほうは、合理化ということを考えましたというならば、一体どっちか——どうして差別をするんだと、こういうことになりかねないんです。ですから、私はもう答弁をあえて求めませんけれども、この矛盾、このやり方というものに対して、これは沖繩や奄美の農民の皆さんが非常に不満を感ずるのは当然でございましょう、これはだれが考えても。  さらにもう一つ私は申しましょう。このサトウキビ農家の最大の不満の一つは、サトウキビとビートの再生産者価格の開きが年ごとにやはり増大をしておるということですよ。これはそれぞれやっぱり価格的な根拠があると思います、そのあれしたところの。たとえば、昭和四十二年度から四十七年度を見れば、四十二年度の差は八百五十円でした。しかし、四十七年度は千三百円になっておるんですよ。私は、それはそれぞれ質問すれぱ、いろいろ、それは合理化することのお答えが返ってくると思いますけれども農民の立場、生産者の立場に立つならば、どうしてこんなに年々開きをつくってくれるんだろうと、しかも、さっき私が申し上げたところの告示価格が、パリティより片一方はプラスされておる、片一方はマイナスされておる。こういうような点から見れば、なかなか私は納得できないところの問題なんですね。したがって、これらの問題点等については多くは私は申そうと思いませんけれども、相当やはり今度からはこれらのやはり農民の素朴な疑問、不満というものにこたえていくような私はやはりあたたかみのある皆さん方の行政ということを、特にこの機会に要望申し上げておきたいと思うわけです。  なお、もう一つ私がお聞きしたい点がありますけれども、時間の関係でやめますけれども、こういうビートとの関係で一、二申し上げましたけれども、先ほどから申し上げているように、ビートが優遇され過ぎておると言っているんじゃないんです。ビートに比べてサトウキビはあまりにも冷遇されておりはしないかという実感か、これはやはり南西諸島の農民の皆さんにはあるということなんです。しかも、この北海道と奄美、沖繩というものは条件の違いがありますよ。それはほんとうに、確かにその糖価安定の合理化という目標からいくならば北海道は広いところの地域です。大農式でしょうから、いろんな機械化、省力化というものがどんどん、どんどん私は効率をあげていくと思うんです。しかしながら、あんた方御承知のように、沖繩、奄美という地域の条件を考えてみるならば、そうはいかないという、その違い。それだけに今日におけるところの基盤整備、構造改善の進捗状態もこれは違っておるという点は、やはり皆さんも理解をしていただかなければならぬ。その上に私ども考えなきゃならないのは、これは衆議院でも言われておりましたけれども、沖繩は昨年まで異民族の支配下に二十七年間も呻吟した。その前には沖繩は戦場になって十八万の市民も含めて犠牲になった。こういうことで、私どもが政治的な配慮を加えるとするならば、返ってきたとたんにただ冷酷むざんに、ただそれパリティ方式だ、パリティ方式だといって機械的に適用することによって、この生産者を、一万八千トンもの立ち枯れを招くような状態に置くということは、私は政治的に考えてみてもこれはまずいと思うんです。こういうような北海道と奄美、沖繩という地域的な条件の違い、沖繩の今日まで置かれておるところのやっぱり政治的な条件、特異な条件ということを考えるとするならば、これは、ことしは私はこれを償うところの思い切った生産者価格というものがきめられてしかるべきだと思うんです。これはやはり政治的な相当な判断を要するところの問題でございますけれども、これは政務次官政務次官としては、もうやがて内閣改造もあると、うわさですけれども、少なくとも、これをきめるまでは次官でおられると思うんですからね、大臣と一緒になって、この問題について私はやっぱりいま私がるる指摘したところの問題点、いろんなまた問題点ということを考えていただきましてほんとうにやっぱりあたたかみのあるところの処置をやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょう。御決意のほどをまず次官からお聞かせいただきたいと思うんです。
  153. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 貴重な御意見なりあるいら実情の御披瀝をいただいて、私も非常に勉強に相なりまして、また、お話聞きますと、まことにごもっともでございますので、御意見を十分生かせるように私としても努力をしてまいりたいとかように考えます。
  154. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ひとつ政務次官大臣ともどもに最大の努力をしていただきたいということを強く私お願い申し上げておきたいと思います。  なお、若干質問を続けさしていただきたいと思いますが、次は、生産費とパリティの関係でございますが、キビの生産費の推移を見てみますと、これは農林省資料でございますから間違いないわけでございますけれども、四十二年から四十六年までずうっとこう出ておる。そうして、それぞれの最低生産者価格というものがきめられておるわけでありますが、その中で、私は昭和四十五年、四十六年までの、この農林省の出したところの生産費でございますから、若干私はこの生産費の出し方にも異議ありますけれども、一応これは肯定した立場で見てみましても、そういう立場から見ると、少なくともこの四十七年の、昨年の最低生産者価格の六千九百五十円というのは、これは生産費農林省資料によってさえも割っておるということは、これは否定できないところの事実だと思う。まあこの間沖繩の八千百四十五円を、あれは一ドル三百六十円の計算だと一生懸命抗弁されておりましたけれども、どういうことを言われようとも、鹿児島のものを見ても七千三百二十六円の生産費でございますからね。これは六千九百五十円よりは高いことは明らかでございます。それだけに私は、この生産費という立場から見ても、再生産につながるところの生産者価格がきめられておるということはおせじにも言えないんじゃないだろうかと、こう思うんです。したがって、特に私は昨年のに関連してお聞きしますが、この点どういうふうな御見解なんですか。その点をまずお聞かせ願いたいと思うんです。
  155. 池田正範

    説明員(池田正範君) 御案内のように、パリティを基準といたしまして、参考といたしまして生産費決定いたします際には、その年の生産費というものはまだわかっていないわけでございます。その意味で、前年度の生産費の確定を待ちまして、これにパリティアップを考慮するという形で一応その年の推定生産費を計算し、これを参考にしてきめるというやり方をとらざるを得ないために、そういうやり方で現在までやっておるわけでございます。そういたしますと、前年度六千九百五十円をきめました際におきますところの生産費の結果は、現在は実はまだ十五日に、先ほど大臣から申し上げましたように、一応出るというふうな話でございまして、前年度の生産費は明確にはなっておりませんけれども、私どもが前々年度の生産費をベースにいたしまして、そこときにおけるパリティアップをして計算をいたしました結果によりますと、沖繩の場合には、これはちょうど時期が、三百六十円から三百五円といった形でずっとドルとの交換比率が変化しつつある時期にいろいろ経営に必要な費用の投下が行なわれたという時期がございますので、全部投下費目別にばらしまして、一応投下費目別、時期別の沖繩におけるそのときにおける交換比率というものを加重で平均をいたしまして、そうして推計をいたしました結果が六千九百円をちょっと上回る程度数字に実はなったわけでございます。同時に、沖繩以外の鹿児島におきましては、これは内地のものを使うわけでございますが、この農林統計は七千百八十円という程度のものが出たわけでございます。そこで、それぞれの数量のウエートというふうなものをかけますというと、大体七千円前後という形になりまして、かなりきつい点ではございましたけれども、推定生産費ではそれほど大きい割り込みではないというふうな感じを当時持って計算をいたしたわけでございます。しかしながら、その後の物価の進む上昇から見ますれば、これは明らかにいまの段階では圧迫ということは言える。そういう意味からいたしますと、いま先生の御指摘のようなことになろうかと思うわけでございます。
  156. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ことしの諸物価の値上がりですね、特に労賃等の値上がりを見てみますと、どうも私はやはり現象的にはパリティを基準にしたところの方式では、とても再生産補償するところの見通しはもうないんじゃないだろうかと、こう思っておるんです。それで、先ほど来、農林省としても米と同じような方向にそろそろ踏み切るべき時期じゃないだろうかということを申し上げてきたところでございますが、これは具体的にこのデータ——これは私いま持っているのは、沖繩県の四十八年度のキビ原料価格算定の要因になったところの一つのデータでございますけれども、それぞれの農家のこれを見ても、とてもじゃないですけれども、もうパリティの方式では破産したと、こう申し上げてもいいんじゃないだろうかと思うんです。したがってこの問題については、先ほど大臣からあくまでもこれは守りたいんだと、こういう答弁がありましたので、いまさらまた局長の皆さんにお話ししても、御意見を聞いても同じ答えしか返ってきませんので多くを申し上げませんけれども、しかし、やはり、これはもう早急に検討されてしかるべき問題だと思いますよ。  どうも先ほどのことばじりをとらえるわけではないんですけれども大臣はパリティを固執しておるのは、合理化のメリットがはね返ってくるからだというお話がありましたが、私が先ほど具体的に指摘したのは合理化のメリットどころか、むしろ不満というものがたくさん惹起しておるという問題、あるいはサイウキビというものの認識という立場から考えてみて、今後の日本の砂糖政策あり方というもの等々を考えてみた場合に、ぜひとも、この問題については私は前向きで今後ひとつ検討課題として検討していただきたいと思います。  そこで、時間も多くありませんので続いて尋ねますが、なお、その前に言っておきますけれども、どうも私どもとしてはパリティではもう破産していると見ておりますから、次の国会では私ども社会党としてはこのパリティ方式での法改正を出すつもりでございますから、どうぞひとつこの問題は前向きで事務当局考えていただきたいということを申し上げておきます。  そこでお聞きしたいんですが、先ほど来パリティには幾つかの欠陥があるということはお認めになっているんですよ。物価上昇、いろいろなものに適切に適応できないところに問題点があるということ、こういうことを考えてみますならば、今回の告示価格には再びパリティの持つところの欠陥が——また来年のいまごろになって、去年も間違いましたというようなことのないような十分な処置をするんだ、その努力をするつもりだということは、私はそのように理解してよろしゅうございましょうか、いかがでしょうか。
  157. 池田正範

    説明員(池田正範君) 物価騰貴のもとにおけるパリティ価格の算出の欠陥ということは、これは技術問題でございますから当然私ども認めておるわけでございますけれども、現在の段階価格を移動した場合に、物価全体の上昇状況等についても、これもわれわれとしても十分これを検討しておかなければいけないというふうに考えますので、したがいまして、本年度の価格決定にあたりましては、このパリティを基準とし、経済事情、物価事情を参酌するというこの経済事情、物価事情の参酌についても十二分にそれらの推移、見通しというふうなものを頭に置いて検討してみたいというふうに考えておるわけでございます。
  158. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 検討中ですからはっきり私も答弁できないと思いますが、少なくともいまお話をされた点は、この間発表された一五・四一%である。それは大体千七十一円、いままでのを加えると八千二十一円になりますが、それより以上になるということは否定できませんね、局長。またぞろ去年みたいなかっこうにならないでしょうね。これははっきり言えると思うんですがね。しかしならら、誤解のないように言っておきたい点は一万三千円ですからね。これをその上にどういうふうにいろいろ積んでいくかという、ここのところをくふうしてもらいたいんですよ、先ほど来私が指摘しておるのは。だからこれにちょっと色をつけたらいいくらいに思われるとそれは大きな間違いですね。この要求というのは与党も野党も私は共通だと思うんです。きょうは与党の皆さんからキビの問題についての御質問はなかったのですけれども、私と同じ思うでおられると思うんですよ。したがって、国会内の全政党あげてのこれはやはり共通の課題なんだ、要求なんだということは理解しておいてもらいたい。  そこでお尋ねしたいんですが、同じくことしパリティ方式で算出をされてすでに確定を見ましたところの麦、大豆、でん粉がございますね。これはパリティでは幾ら幾ら出て、その上にどれだけ積んで最終的な一四%とか、一六・三%とか、一六・二%というあれが出ているんですか。それをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  159. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 麦はちょっとこれ食糧庁のほうでありまして、ちょっと私ここに記憶はございませんけれども、大豆につきましては、パリティと、それから生産費等を勘案し、さらにやはり経済事情、需給事情等を勘案したわけでございますけれども、前年対比一六・三八%のアップだったと思いますけれども、これはパリティより下がりまして、しかし、生産費より上がるという、いわば中間的な価格できまったわけでございます。
  160. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 でん粉はどうですか。
  161. 池田正範

    説明員(池田正範君) でん粉につきましては、でん粉用の原料用バレイショにつきましては、これは一一一・三五というパリティそのままを採用しております。ただ、カンショでん粉を製造いたします原料用のカンショにつきましては、パリティは一一・三五のアップでございましたけれども、カンショの生産事情その他を勘案いたしまして一六%のアップということで決定をみたわけでございます。
  162. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 サツマイモは二八%になっていますね。そうすると、一一・三五にそれだけ生産費、いろいろなものを加えてやったという意味ですね。いろいろな勘案をしたということですね。  したがいまして、先ほど来申し上げておるように、もうこの一万三千円をどう上積みするかということになりますが、上積みの角度というのは、少なくとも、やはりこのでん粉に関連をするサツマイモの比ではないという点だけはぜひともひとつ認識をしておいていただきたいと思うんです。したがって、私は率直に申し上げて、いまの方式だけとるとするならば、これはやっぱり限界がありますわ。とても一万三千円までいかないということは明白です。したがって、それを積むためにどうすればいいかという問題を、パリティ以外の問題として、この算出方式以外の問題として、奨励費とか、生産補償費とか、そういうことをひとつ先ほども大臣にお願いしましたけれども、皆さんも考えていただいて、大臣が前向きに検討できるように、ひとつ事務当局のほうからも積極的な御協力をお願い申し上げたいと思うのです。  最後にお聞きしておきたい点は、実は分みつのための製糖工場の赤字の問題ですね。もう時間がまいりましたのでこれ一問で終わりますがね。この赤字対策の問題ですけれども、南西諸島、奄美、熊毛で大体十六億円余り、沖繩で大体十億と、あるいはこれをひっくるめて三十億だと、こういうようなことも言われておるわけでありますが、それに対するところの具体的な救済策ということを十分考えてもらわなきゃならぬ段階にきておると思うわけです。ただ、私がそんなことをぽかんとお聞きしますと、それはまあ借り入れ金の利子補給だとか、長期低利資金の制度とか、操業資金云々だと、こういう抽象的な答弁じゃなくて、もっとひとつ具体的にこの問題、もう考えてもらうべき段階だと思うのです。そこで、いつも引き合いに出されるのは、沖繩は臨糖がある、しかしながら奄美と熊毛にはないと、どうしてもやはり臨糖を奄美にも適用してもらいたいという声が強いんですがね。その点は事務当局としては検討されたことがありますか、どうですか。
  163. 池田正範

    説明員(池田正範君) 先生も御案内のように、沖繩と奄美とは一見よく似たところもあるのでございますけれども生産事情としては非常に変わった点もございます。一つは、やっぱり四、五十アールという非常に零細な農業経営規模の上に生産されておるという生産サイドから見ると、沖繩も奄美もほとんどかわらない条件のもとに立っておるわけでございますが、一方、これを集荷して製糖をいたしております糖業メーカーの生産規模からいたしますと、沖繩の場合には離島の、一部大きいのもございますけれども、離島の規模というものは、御承知のように非常に零細でございまして、本島の一部はほとんど国際級の大きなものもあるわけでございます。したがいまして、これらを一本価格決定をいたしますというと、いずれかがきわめて不利になるか、いずれかがきわめて有利になるかということになりますので、どうしても価格を一本できめるということにいたしますと、片一方で何がしかの企業関係に対する助成措置が必要になってくるということに一つはなるんだろうと思います。それだけでなくて、ある地域における極端な干ばつその他の変動等の要素が会社の企業経営に与える影響等を緩和するといったような意味も初期にはあったように思いますけれども、まあ本質的にはそういった差がある。実は、生産者価格は一本できめますけれども買い入れ価格につきましては、鹿児島の南西諸島とそれから沖繩とは別々に現在きめておるわけでございます。その意味で鹿児島には鹿児島のそれぞれの中間経費を見込んだ買入価格をきめておりますので、したがいまして、その計算そのものについてのいろいろな御批判というものは企業サイドからも別途にあろうかと思いますけれども、この価格のきめ方のたてまえ論からいたしますというと、こちらに臨糖費があるからこちらにも臨糖費というふうな形にはならない。むしろ形としてはそういう必要が片一方にないという仕組みで実は今日まで計算をいたしてまいっておるわけでございます。したがって、いま麦その他の奨励金をからめての御指摘になったわけでございますけれども、そういういわば生産の場に対する別途の補助金というふうな形のものではなくて、その生産費、材料代として、そのサトウキビを使ってできる製糖の費用というものを見込んで買い入れ価格をきめておるというふうなことから、その企業に対して別途に糖業臨時振興資金を、助成金を出すという形は、やはりいまの形のままではなかなか問題があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  164. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私もその臨糖が設けられた宮古島台風ですか、大台風のね。その前後の経緯、うわさは知らぬでもありません。あるいはあなたが御指摘になったところのいわゆる先島の諸島と本島との生産費のいろいろ違い、あるいはそれぞれのキビ作のいろんな合理化の状況、いろいろなこれは違いはありますよ。しかし、率直に申しますけれどもね、奄美のこの島々というのは、沖繩本島と対比されるのじゃなくて、むしろ先島の諸島と同じ条件にあるのが多いんじゃないですか、それぞれの地理的な条件というものを見た場合にね。そうなるとすればするほど、この臨糖費という問題は相当やはり考えなきゃならない問題です。もしこれが臨糖費という名目ができないとするならば、それにかわる何らかの方法をとるということはやはり真剣に私は考えられるべき段階に来ておると思うんです。たとえば、まず製糖会社に対するところの借り入れ金の利子補給とか、あるいは長期低利資金の融資だとこういうけれども、そうなると一体返済能力があるかどうかというまた問題が出てきましょう、率直に申し上げて。赤字で倒産一歩のところが相当あるんだから。そうなると、やはり普通一般的にいわれているところの低利資金とかなんとかいうことだけじゃなくて、もっとやっぱり本腰を入れた、これはやっぱり倒産前の製糖会社に対するところのてこ入れというものがあってしかるべきだと思う。たとえば、ちょっと例は悪いですけれども、ドルショックでいわゆる中小企業の繊維産業に対して遊休施設を政府が買い上げたと、こういう例がありますわね。そのような処置ということも、これはやはり奄美、熊毛地帯におけるところの製糖会社に対するところの配慮ということは考え段階に私は来ておると思うんですがね。どうですか、そういう問題を今後検討してみる御意思はございませんか、頭からだめだと言わないで。
  165. 池田正範

    説明員(池田正範君) あの臨糖費を頭から考慮の余地なしと申し上げたというよりは、むしろいまの砂糖の買い入れ価格の仕組みが、片一方は臨糖費という仕組みを介在させないと埋まらない形になっております。片一方は別途の形で積み上げておるので、それに関する限りは臨糖費が入る余地がない。むしろ買い入れ価格が安過ぎる、あるいは中間経費の見方が足らないというふうな形の問題点としてむしろ出てくる筋のものであるということを申し上げたわけでございます。しかしながら、現実には安い安いといわれるキビを使いながら、なおかつ離島の糖業メーカーが非常に赤字を出しておるということは事実でございます。したがって、やはりこの赤字をどう解決していくかについては、これは企業の中の経営の合理化というふうなものについての要請はむろん考えなければいかぬと思いますけれども、いまのままでなかなかむずかしいという点もございますので、先ほど御指摘になったようなスクラップをどう処置するかというふうな問題も含めまして、実は私どもとしても前回きに取り組みたいと考えておる次第でございます。
  166. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これで終わります。
  167. 初村滝一郎

    理事(初村滝一郎君) この際、おはかりいたします。  委員外議員喜屋武眞榮君から発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 初村滝一郎

    理事(初村滝一郎君) 御異議ないと認めます。喜屋武君。
  169. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) 私がこれからお尋ねしたいことは、去る衆議院における農水委員会の席上で論議されたサトウキビの問題それを櫻内農林大臣の御答弁に基づいた質問をいたしたいと思うわけでありますが、残念なことに農林大臣がいらっしゃいませんで、その点まことに残念に思う次第ですが、これもやむを得ないと思いますので、どうかひとつそのおつもりで責任ある御答弁をお願いいたしたいと思います。  まず第一にお聞きしたいことは、沖繩並びに奄美がどのような今後社会情勢に変わっていこうが、基幹作物としてのサトウキビを放棄するわけにはいかない。こういったある意味では宿命的な、ある意味では誇るべきそういった基幹作物であるということ。これについて、日本の農政の立場から、そのような考え方になってこれを保護、育成していくという、こういう基本的な考えがあられるかどうか、まずお聞きしたい。
  170. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) やはり奄美、沖繩等におきます気象条件並びに土壌条件等を考え、また、現状のサトウキビの作付の状態等を考えますれば、やはり将来もこういう地域におきましてはサトウキビ栽培というものがそこの農業者のやはり基幹的な経営形態であるということはあまり変わらないのじゃないか。やはりほかの作物に大幅に、かつ急速に転換をするということは考えられないというふうに考えます。
  171. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) であるとするならば、その大事な、現在及び将来に向けても大事に守り育てていかなければいけない基幹作物であるにもかかわらず、沖繩並びに奄美のキビ作がまさに危機に瀕しておる。そして沖繩及び奄美の農民の生活の破綻にいま結びついておる、まさに重大な壁に直面しておる。こういう現状の中から沖繩及び奄美の農民が何としてもトン当たり一万三千円以上をこの際実現してもらうのでなければ生産意欲を高めて、そして前向きで、希望を持って守り抜いていくことができないんだと、こういった決意を込めて、先ほど来お話がありますように、陳情、要請があるわけなんですが、この実情を十分理解していただくならば、まさに沖繩及び奄美の農民の危機、そして基幹作物としてのサトウキビが崩壊に直面しておる、こう言わざるを得ませんが、それはお認めになりますか、どうですか。
  172. 池田正範

    説明員(池田正範君) 先ほど農林大臣からも答弁申し上げました中にもございましたように、沖繩、奄美の農民が二千数百人大挙して上京し、その苦衷を訴えるという現実というものは、これは率直に認めるべきであるし、また、私どももそれらの心情というものを十分理解した形でこの問題の処理に当たる義務があるというふうに考えておるわけでございます。
  173. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) であるとするならば、この熾烈な要求のトン当たり一万三千円以上に対しては、そんなにやきもきなさらぬで、明確にこたえてあげるというこの答弁が当然だと思い、また、ほしいわけですが、衆議院における農水委員会での農林大臣の答弁は、パリティ価格だけなら一五・四一%アップのトン当たり八千二十一円となるが、これがそのまま農林省案として使われるのではなく、物価その他経済事情を考慮に入れて算定、さらに政治的配慮を加算し、その要求価格に近づけたい、こう御答弁しておられるわけですが、これからしますと、その要求額に近づけたいということで、その一万三千円以上ということは非常に希望が持てないという、こういう受けとめ方もいたすわけですが、いかがですか。
  174. 池田正範

    説明員(池田正範君) 価格を実際に作業に入りましてきめますためには、前年度の生産費がわかりません。いわゆる参酌をすべきメルクマールがございませんので、現在それを待ちまして作業をし、努力をするという段階でございますので、具体的な数字は御容赦いただきたいと思いますが、しかし、私は、価格決定する前の公の立場で大臣がおっしゃられたそのことばは、かなりある意味では政治的な含みを持たして、前向きで御答弁になったものというふうにそばで聞いておる次第でございます。したがって、農林大臣としては、かなりの決意を持ってお臨みになるつもりであるというふうに私どもは事務的に受け取っております。
  175. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) そこで政治的配慮からの加算については後に申し上げますが、パリティ方式に基づく加算という、そのことについても私、二、三の疑問を持っておりますので、その点お尋ねしたいと思います。  先ほど来話が出ておりましたが、過去七カ年にわたるその告示価格は、パリティ価格よりも常に低く押えられてきた。ことばをかえていいますならば、切り捨てられてきたと、こう私は言うのでありますが、時間もございませんので、一応念を押して確認してみたいと思いますが、その切り捨てられた額、昭和四十一年に告示価格から切り捨てられた額が二百四十円、確認いたしますので、ひとつそのつもりで——昭和四十二年に百二十三円、昭和四十三年に百七十円、昭和四十四年に五円、昭和四十五年に百五十五円、昭和四十六年に二百十四円、昭和四十七年に三十四円、締めて九百四十一円、これだけ押えられた、切り捨てられたと、こう数字ははじいておりますが、それは間違いありませんか。
  176. 池田正範

    説明員(池田正範君) 切り捨てられたという御表現でございますが、パリティをそのままなまで計算いたしてパリティ価格を出しましたものと決定価格との差を足しますと御指摘のようになると思います。
  177. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) 私がそう申し上げますのは、それがその年度年度でそれなりのまあ理由づけによってそうされたかもしれませんが、事ここに至れば、私はこの九百四十一円というものがトン当たり六千九百五十円にプラスして、いまからでもおそくはない、過去のものの犠牲を、それを全部拾い上げて、まとめて九百四十一円を加えて七千八百九十一円、これに基づいて一五・四一%を掛けるべきである、こういう考え方を持っておりますが、いかがでしょうか。
  178. 池田正範

    説明員(池田正範君) 確かにこのパリティを計算式どおりに計算して、これをとったという決定からいたしますというと、御指摘のように、累年のものの加算はいま御指摘のような価格になりますが、それをさかのぼって全部根っ子にいたして、それに現在のパリティ指数を掛けるというのは、まあ方式としては多少批判の余地もあろうかと思います。しかし、先ほど宮之原先生からも御指摘のあったようないままでのパリティ基準価格決定価格との差というものをずっと累積をして、それぞれパリティに掛け、価格決定との差額を出し、その差額についての補てんを何らかのもとでせよという指摘というのは、地元からもそういう意向があることは私どももよく了解をいたしておるわけでございます。しかし、まあ御指摘は御指摘といたしまして、従来からきめられました、決定された価格というものをいまから振り返って、その時期において、その価格がはたしてどれだけ適当であったか、不適当であったかという評価というものはなかなか、まあいろいろとプラス・マイナス両面からの議論もできる面もあろうかと思います。しかしながら、まあ私ども毎々申し上げておりますように、現段階でサトウキビの生産というものが、他の労働に比べて相対的に割りに合わない労働になってきておる。そのために他の労働に雇用をされてサトウキビの耕作を放棄するといった傾向が、沖繩あるいは奄美の現地に出つつある。その実態はやはりよく考えて、次年度のサトウキビ生産者価格決定にあたっては考慮しなければいかぬ点であるということについては、先ほどから申し上げるとおりでございます。
  179. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) これは当然、まあ過去のものだからいまさらということじゃなしに、何かよりどころがあるからば、それを手がかりにしてやるというこのことがまた、沖繩への私は特別な配慮、そしてまた、キビ作を守る沖繩、奄美への私は一つの施しでなければいけない。こう思いますがゆえにあえてお聞きしたわけなんです。  次に、これは宮之原委員も指摘されましたが、私もこれは問題があるというふうに思っておりました一つは、その農業パリティ指数をはじき出す問題点の、分子と分母の、農家が購入する物品を五百三十から五百四十を選ぶ。で、割るほうの指数は昨年の三月から十一月までの九カ月分の平均をとったのに対して、割られるほうの指数は三月から九月までの七カ月分の平均をとっておる。まあこのことについても先ほど御答弁があったわけですが、それは事務的にはなるほどそういった困難な点はあるかもしれませんが、しかし、より事実に近づける、真実に近づけるという努力さえ払うならば、決して困難ではあっても不可能ではない、こう思うわけなんですが、そういった点。これがそのまま放置されるというとたいへんなことになる。いろいろな立場から損害をこうむらなければいけない、こう思っておるわけなんですが、このことについてもう一ぺんひとつ御答弁を願いたいと思います。
  180. 池田正範

    説明員(池田正範君) 御指摘のように、分母と分子の採用月数が違うということは、まあ技術的に無理があるにいたしましても、確かに御指摘の感はあると思いますが、まあ物価がわりあいに安定して落ち着いております際にはここに一カ月、二カ月の差はございましても、パリティではじき出されます指数そのものには多くの差がないのが本来望ましい形態なんだろうと思いますけれども、いまのような短時日でかなりの物価上昇が見込まれるような時期には、これを九月に切ることが算出価格の上にマイナスの影響になって出てくるということは、これは検討事項としては言うまでもないことでございます。したがいまして、私どもといたしましては、衆議院でも申し上げたのでございますけれども、パリティ指数を基準としながらやはり生産費物価経済事情を参酌せよと法律が書いておりますところのその考え方というのは、やはりパリティ指数というものに対する本質的な欠陥というものが、あらゆる場合に常に適合できない欠陥というものがあることを頭の中に置いてこれらの参酌事項というものを入れてきたというふうに解釈できますので、まさにいまのような時期については、やはりこれらの御指摘の点について十分パリティの欠陥を補足するためのいろいろな因子の検討ということをやらなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  181. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) まあパリティを基盤にして幾らひねくり回しても、こね回しても、どうしても長い目で見た場合にも、現状打開していくにも救いがたい。こういうふうに考えられまするが、当面の解決は政治的配慮ということでいま検討されつつあると見ておりますが、将来に向けてどうしても生産費所得補償方式でなければいけない。まあいろいろ理由も申し上げたいですけれども、時間がありませんが、そういう方向に持っていくことがほんとうに沖繩及び奄美のこのサトウキビを救っていくことであるし、それがまた、わが国の甘味資源の普及という面からも当然期待されべきことである。こう思うわけなんですが、そういう法改正、これについていかがお考えでしょうか。
  182. 池田正範

    説明員(池田正範君) たまたま糖価安定制度のもとにおける目標生産費の改定期日も迫ってきておりますので、全体として今後の国際糖価の動き、見通し、これと国内の輸入糖価の実情、さらには国産糖の今後の供給状況生産状況といった複雑な要素というものが、かなり当初考えました糖安制度のもとにおけるものとは違った色合いを見せつつあることも事実でございますので、私どもといたしましては、本質的には、やはりこの糖価というものを安定させていくといういまの法律のたてまえ論というものを尊重しながらも、いまいろいろ御指摘になりましたような点を含めてどういう形で検討するか、いろいろとひとつ勉強してみたいと考えております。
  183. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) まあいま当面しておるこの問題を切り開いていくには、残された道は政治加算だと、政治的配慮だと、こういうふうに受けとめておるわけなんですが、その政治加算の条件になる、沖繩についてはどういうことがその政治加算の条件としてとらえておられるか、それをお聞きしたい。
  184. 池田正範

    説明員(池田正範君) 事務当局でございますので、政治加算の話はちょっと私からはいたしかねますが、しかし、先ほど来申し上げておりますような、パリティ指数というふうなものを基準にしながらも、いまの経済事情なり、あるいは生産費の動きなりというものを十分踏まえまして検討するということは、事務的にもこれは十分やらなけりゃならぬことでございますので、したがって、最近における経済事情の推移等を考えますというと、やはり従来から見て、かなり上向きの結果というものは出てぐることが一応の推定としてはできるわけでございます。それらを含めて十分ひとつ検討いたしまして、御期待の方向へ少しでも近づくように、全力を傾けたいと思うわけでございます。
  185. 喜屋武眞榮

    委員以外の議員(喜屋武眞榮君) 沖繩の場合、非常に複雑な経済変動情勢があるということは御承知だと思います。また、さらに、かてて加えて、例の海洋博に関連した揺れ動きが大きい。収拾のつかないところまで直面しているということも御承知かと思います。そこで、この糖価安定法によってさえもパリティ指数に基づいて、物価経済事情を参酌して再生産確保を旨として云々と、こうあるわけなんです。このことからしても、当然大幅に再検討さるべきことである。これが私は当面する沖繩の経済情勢あるいは社会情勢に対応する政治的配慮だと、こう申し上げるわけでありますが、時間が来たようでありますので、政治加算のさらに裏づけとして一、二申し上げまして終わりたいと思うのであります。  この沖繩における物価指数とキビ値の関係をごく大まかにつかんで申し上げますと、昭和四十五年を一〇〇としますと、昭和四十八年七月現在までに一四五とはじき出されております。ところが、キビ値のアップは一〇五・七三、そうすると、物価指数とキビ値の関係はまさに約九倍、九分の一、こういうアンバランスであります。第二点には、沖繩の面積の一三%を占めておりますいわゆる軍用地、その軍用地料とキビ値の比率を申し上げますと、軍用地の含まれておる中で、農地の地料反当たり二十二万円、これは差はありますが、平均的には二十二万円。キビ反収が反当たり四万二千三百五十七円。そうするとキビなんかつくる必要はない。軍用地料がはるかに得をするといったような、こういう矛盾、これも約五倍と、五分の一の比率になっております。さらに、米価アップとキビアップの——われわれは米価に値するのはキビ作ととらえておるわけですが、この関係を申しますならば、四十七年、四十八年のアップが二百円であります。ところが、生産者米価は一六・一%。で、そのキビ値のアップは約三%にすぎない。こりいう大まかにとらえてみましても、これも幾多の矛盾が、裏を返せばそれだけ犠牲をしいられておる実情であります。  先ほど宮之原委員も述べられたが、私も強調いたしたいことは、沖繩への一つの問題の解決の姿勢は、償いであるか、恩恵であるか、ここに発想の私は大事な、基本的な問題があると、こう思うんです。恩恵的な姿勢からするならば、幾らやってもみんなありがたく思えぬ。ところが戦前、戦中、戦後、しかもなお復帰後も今日までそのような状態にあるということは一体何が原因しておるのであるか。そこをたどっていくならば、沖繩が本土並みになるのはこれは償いの心を持って臨むのでなければ、もう百年河清を待ってもその差別は、格差は埋まらない。こう私は思って、遺憾に思う次第でありますが、どうぞひとつそういうところに高度の政治的配慮をお願いいたします。時間がまいりましたので私終わりたいと思いますが、どうか最後のそういう私の要望に対するひとつ御決意を承りまして質問終わりたいと思います。
  186. 池田正範

    説明員(池田正範君) 御承知のように、サトウキビ価格生産者価格というのは、これは砂糖という国際的な商品をつくります原材料代でございます。したがって恩恵でもなければ何でもないちゃんとした経済行為で、したがって、できれば、それが売られた工場か、それを加工して精製して製造された砂糖が、マーケットに通常な形で売られることが望ましいわけでございます。最終的なやはり理想形態としては、生産者価格も加工経費もみなそういう方向に持っていくという、やはり将来の目標を置かなければ、砂糖行政というものはまことにつまらないものになってしまうわけでございます。ただ、そうは申しましても、離島等の非常に天然自然の変えることのできない条件というものがございますから、したがって、その分については、これはどうしても別途の政策的配慮は要るということでございまして、したがいまして、私どもといたしましては、それらを十分区分けして、単に奨励金を出すとか、恩恵を与えるとかといった、そんな気持ちでは全然なくて、むしろサトウキビ産業を、りっぱに国内の甘味資源の供給源として基礎づけたいというふうに日夜考えておるわけでございます。そのためには、やはり先ほど申されたような形で、ほかの労働部門に就労をしていくというふうな形になりますと、その結果は、あと耕作放棄という形につながって、いわゆる自給率の低下という思わしくない方向を来たしますので、私どもとしては、これを何とか食いとめるために、価格面でのやはり一そうの勉強をしなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。  それから軍用地の問題につきましては、先生の御指摘を別にいまここから反論する気持ちで申し上げるわけではございませんが、毎毎この地元の知事さんあたりを通じていろいろ私も同じようなことを聞いておりますので、実は防衛施設庁の施設等を通じていろいろ調べておるわけでございますか、沖繩でも北部、中部——場所によって多少違うようでございますし、また、特に特別の地帯でそういういま御指摘のような地帯がないというふうなことは私ども確認できませんけれども、どうも一般的に見ておりますところでは、確かにいまの二十万ベースというのは中部地域における宅地が大体いま御指摘のベースに当たるのではないか。農地、特にたんぼのほうが幾らか高いわけでございますけれども、   〔理事村滝一郎君退席、理事工藤良平君着席〕 畑等になりますというと北部で二万五千円前後、中部で大体三万二、三千円前後というのが、大体の借料の平均というのが防衛施設庁から実は私ども承知しておる数字でございまして、私どもといたしましては、それがあるから安くていいんだというように決して申し上げるわけではございませんけれども、あらゆる農地の借り上げ料が二十万ベースであって、サトウキビの収穫が四万二千円だというふうなことでもないのではなかろうかというふうに思います。  しかし、まあそう申し上げたからといって米価との格差があることについて別に弁護をしょういうわけではございませんけれども、全体としての生産性向上を可能にするような点については、やはり今後ともある程度の御努力を願って、そしていわば正月に帰ってきて、そこで刈ってまた別の労働に専念をしなければならないようなサトウキビのつくり方をせずに、もう少しやはり積極的に地盤の整理もし、また同時に、品種の改良もし、改植もするといった農業らしいやり方で定着できるような、そういう考え方価格にやはり当面重点を置いていく必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  187. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は午前中に米価の問題について大臣に御質問いたしましたが、非常に短時間でございましたので、なおあとで、この米価の問題について質問したいと思いますが、このキビ価格の問題も、これまた非常に重大な問題でございますから、私はまず第一に、このキビの価格問題について若干質問してみたいと思います。  いま聞いておりますと、答弁がほとんど事務当局だけなんで、これはひとつせっかく鈴木政務次官もいらっしゃいますから、まあひとつ次官にまず第一にお聞きしたいと思うんです。この沖繩、鹿児島のキビ生産農家の話をいろいろ聞きましたし、また、私自身も沖繩にも参りましていろいろ実情を見てまいりましたけれども、今日、沖繩や鹿児島の農家の方々がトン当たり一万三千円の要求を出しておるわけでございます。私は、これは現実に事態を見ますと、これはやっぱりぎりぎりの要求ではないかというふうに実は考えているわけです。何も沖繩を特別扱いにしろとかなんとかというふうなことは、私は言うつもりはございませんけれども、とにかくつくればつくるほど赤字だということは、これはまさに不合理な問題でありまして、だれが見てもこれは不合理であります。ですから、この不合理をまず第一になくしていくということが先決問題だろうと思うんです。  ところで、農林省がこの七日にサトウキビ最低生産者価格というものを決定されると聞いておるわけでありますけれども、とにかくその価格決定を前に発表したパリティ計算によりますと、トンで八千二十一円でありましたか、これを見ますと、その中の労働費の評価というのは一時間当たり二百三十円。ところが、ことしの生産者米価の労働評価は四百三十九円でありまして、約半分です。沖繩の労働と本土の労働がどうしてそんなに違うのか、同じ農家で。この評価が私は非常に不合理だと思いますし、私のこの考えている不合理だというのは、これは決してめずらしい、何も格別なことではないんで、この点で政務次官これはどういうふうにお考えになっているのか。合理的だとお考えか、それとも不合理だとお考えなのか、まずその点をお聞きしたいと思います。
  188. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 農産物価格に対する労働報酬について、米に場合は、いま御指摘のように一時間四百円くらいになる、サトウキビは二百円くらいになるというようなお話がございますが、私、数字的にはよく承知しておりませんけれども、確かに米の場合は、ほかの内地の農産物と比較しても、かなりそういうアンバランスがあろうかと思います。したがって、サトウキビと米だけを比較して特殊なあれだと、こういうようなことではなくて、実はあるいは内地の麦なり豆なりほかの農産物と比較した場合にもそういう問題が出てこようかと思います。さようなことで、実はできるならば、農民の安定した生活ができるような労働賃金が得られるような農産物というものの価格というものは私も必要だと思っております。しかし、いま問題になっておりますところのサトウキビの問題これは法律できめられております農業パリティ指数をまず基準にいたしまして、さらに経済事情あるいは生産費物価、そういうものを参酌してきめるということになっております。ところが、先ほど来いろいろ御質問等がございますように生産が減っておる。あるいはほかの当地の労賃等と非常に格差があるということでございますので、これはパリティ指数は基準にいたしますけれども、先ほど来のそういったお話を十分参酌の上に決定をしてなるべく格差のないようなそういう状態にしなきゃならぬ、かように考えておる次第でございます。
  189. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は、次官のいまの御答弁を聞きますと、やはりキビに対する認識というものが非常に間違っているんじゃないかと思うんです。なるほどいま次官は、米と比較すればそうかもしれないと、しかし他の農産物と比べればそんなに違うはずはないんだというふうなことをおっしゃったけれども、キビというのは、沖繩やその他鹿児島、奄美におきましては、いわば米と同じ位置づけなんですね。で、本土の場合でもなるほど米は生産者所得方式という形になっておりますが、その他の作物、麦にいたしましても畜産物にしてもやはり非常にまだ低い。そこで生産所得補償する価格制度をつくれというのが大きな要請になってきておる。しかし現実にはまだそういっても政府がそれを認めてない。したがって、非常に生産費を割るような赤字を出しながら農家は麦や大豆やその他畜産物をつくっておられるんだけれども、しかしまあとにかく米があるから米で何とか支えながら他の農作物もつくっているというのがこれが実情だと思うんです。ところが沖繩の場合には、その根幹であるべきサトウキビ、米とも匹敵すべきサトウキビの価格がこうなんですから他の農作物もつくる支えもないと、こういう実態だと思うんです。そのようにその状態の違いというものがあるわけです。ですから、私が申し上げたのは、サトウキビのこの問題というのは、いわば内地における米と同じような位置づけでものを考えないと、全くその対策というものが狂ってくる。その点を私はまずお聞きしたわけなんです。そういう意味で、私はこのパリティ方式、まあ米だけは別だと、その他はパリティ方式だというふうな、まことに木で鼻をくくったような冷たい応答ではなくて、やはりほんとうに生産費所得方式をとるということがいま政府に求められている決断ではないかと思うんです。田中内閣は決断と実行だということをよく言われますけれども、この辺で農林省も私は決断していただいていいんではないかと思うんですが、どうでしょうか。
  190. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 私が申し上げたのは実は低くていいんだという考えを申し上げたんじゃなかったわけでございます。それをそういうふうに受け取られれば訂正をいたします。なるべくなら私は、ほかの作物だって米と同じぐらいに上げたいという希望を持って実は申し上げたような次第でございますので、どうぞひとつ御理解を賜わりたいと思います。さらに沖繩におけるサトウキビの位置というものは確かに内地の米と同じような重要度を持っておることは承知をいたしております。しかし、いろいろ耕作条件、規模、そういうような点からいきますと、非常に困難をいたして、生産性が上がっていないことも事実でございます。当然、価格の面では考えると同時に、そういった生産性向上するいろんな施策もあわせてやってまいらなきやならぬ、かように実は考えておる次第でございます。
  191. 塚田大願

    ○塚田大願君 次官大臣のような答弁をしろということは無理かもしれませんけれども、少なくとも私は、鈴木政務次官農業問題のエキスパートで、農民の苦労もよく知っておられるという評判の方ですから、私はひとつ次官の努力に大いに期待したいと思うんです。このキビ価格の問題は、まさに非常に深刻なんですね。現地へ行ってみればこれはよくわかることなんです。喜屋武さんなんかは、もう現地の方ですから、言いたいことは一ぱいあっても、なおかつ言いようがないということだろうと思うんですけれども、私ども行きまして見ましても、確かにこれは不合理だと、これでは日本農業はほんとうに終わりだという感じがしみじみするんですね。とにかくキビもだめなら、ほんとうにそれこそ出かせぎ以外何にもないということになっちゃいますので、そういう意味で非常に重大な問題なんですから、最後に次官、ひとつそういう点で前向きにこの問題を努力願いたい、私が申しました生産費所得補償方式という方向でひとつ考えて努力していただくように、このことをまず最後にお願いしておきたいと思うんですが、その点でも一言御所信をお聞きしたいと思います。
  192. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) ただいま御理解ある御質問で、大臣でもないからあまりはっきりしたことを申し上げられないだろうと、そのとおりなのでございますけれども、実情は私もよくわかります。また、皆さんの主張されることも、私も個人としては、かなり同感の点もございますので、十分そういう観点から努力をしてまいりたいと、かように考える次第でございます。
  193. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃ、キビ価格の問題はそれぐらいにいたしまして、先ほどの質問の続きをしたいと思うんです。  この米価の問題でありますが、政府が発表いたしました今回の米価値上げ、これについてのいろいろ計算が発表されました。「米麦の政府売渡価格改定の消費者物価指数に及ぼす影響」といったような資料でありますけれども、これを拝見いたしますと、とにかく今度の値上げでも家計への影響は〇・五%だと、消費者物価への影響も〇・六八%ぐらいだと、だからたいしたことはないと、こういうふうに言われております。しかし、私はこの計算のしかたは非常に無責任な計算のしかたではないか。ある意味ではごまかしだと私申し上げて差しつかえないと思います。たとえば、この発表の指数にも出ておりますが、麦製品が三五%値上げをした場合、菓子その他に及ぼす影響というのは五・〇%であると、五・〇%の上昇率だと、こういうふうに二の資料は言っております。では、この計算でいきますと、いまたとえば二十円のパンが五%上がったといたしますと、二十一円ですね。はたして二十円のパンが麦製品の値上げで二十一円で売られるか、政府のおっしゃるような五%だけの値上がりで売られるかという問題です。私は、そういうことはないだろうと思う。まずこれは端数は切り上げられる、少なくとも二十五円になるだろう。これは今日、物の値段から言いまして、一円とか二円なんというのはもうこれは計算の中に入らない。まず二十五円になるだろうと思うんですね。こういう事実を無視して、ただ事務的、技術的に計算して家計への影響は〇・五%だと、消費者物価指数への影響は〇・六八%だということをおっしゃいましても私は消費者は納得しないだろうと思うんです。   〔理事工藤良平君退席、理事村滝一郎君着席〕 この点、どうでしょうか。まず、その辺の計算のしかたについて、農林省どんなふうにお考えなのか。
  194. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 家計なり、あるいは消費者物価指数への影響については、私どもはまさにそういう統計がとられている実態に着目して、その考えられる理論的な方法に従って推定をいたしたわけでございます。その場合、当然いまの麦製品のほうをとって御質問だったわけでございますが、原麦の価格が、麦の価格が上がったことによって粉価格に直接どれだけ影響するか、それから粉価格が上がったことによって二次製品——パンでありますとか、めんでありますとか、そういったものがどれだけ直接影響を受けるかという計算をまずいたすわけでございます。その場合、それぞれの原価構成というものがございまして、原価構成の大部分はむしろ今日では人件費とかほかの経費が大きくなっておりまして、原材料費の占める割合は、物によって違いますけれども、かなり相対的に低くなってまいっております。そういうような関係から直接的な影響は、まさにいま先生御自身が数字を読まれましたそういう菓子等の麦製品にありましては、五%程度影響というようなことになってまいるわけでございます。ただ、そのことが実際の二次製品——パンなりめんなりの形成されている価格自体にどういうふうに影響するかということになりますというと、これは私は粉価格あるいは原麦価格の直接の影響以外のいろいろな要素が働いてくると思います。すでに今日までもそういう二次製品につきましては、人件費でありますとか、そのほかの経費のアップからそれなり価格上昇を見ているということも事実としてございます。  今回、政府が原麦の価格を上げました場合、それがどれだけ響くかということについては、これは私は企業のビヘービアといいますか、態様によってそれぞれ違ったところが出てくると思います。たとえば二十円のパンが五%上がって一円原価では上がるわけでございますが、その一円を実際の価格に反映させるかというと、私はいろいろあって、先生おっしゃるように、ほかのものも突きまぜて二十五円くらいに上げるところもあるいはあり得るかと思いますけれども、その場合、一円程度値上げであるならば、むしろそこは競争の世界でもありますし、二十円でがまんするというものも出てくると思います。といいますのは、私どもかつて原麦の価格を若干上げたことがございましたが、その場合は二次選品に及ぼす影響はそれほど大きくないのだから、二次製品業界はこれを理由に値上げはしないように、というような指導通達を出しまして、それがかはり守られたという実績もございます。その意味では、今回私どもむしろこういう数字をお出ししますのは、そういう内訳になっているのだから便乗値上げはしてはならぬぞ、というような指導をするとともに、国民の皆さま方にもそういう原価の割合、原価構成になっているのであって、それ以上の値上げというのは、これはその企業のそれなりの理由があるか、あるいは便乗というものであって、そこはよく監視して、そういう便乗値上がりの生じないようにしていただきたい、という意味を込めて、この数字をお示ししたわけでございます。
  195. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は、その考え方が非常に甘いと実は言いたいわけです。たとえば二十一円——一円しか上がらないんだから二十円で売ろうと、こういう神さまみたいな業者がおられるならばけっこうです。ところが、いま御承知のとおり、もちろんそういう方もないこともないでしょう。しかし、一般的に考えますと、物の物価が安定しているときだったら、おそらくそうなるだろうと思うんですね。薄利多売のほうがいいという結論になると思います。そのほうが実際もうかるということになると思います。ところが、いまのように諸物価が全部ウナギ登りに登っているときに、あるいは人件費その他が非常に上がっているときに、まず一円でも下げましょうなんという人は、神様のような業者は私は出ないだろうと思うし、そんなものを期待していたらこれはえらいことになると思うんです。行政上たいへん大きな失敗を起こすことになるだろうと私は考えます。ですから、なるほど一円、五%と言えば一円。しかし、いまの情勢から言えば二十五円になりあるいは三十円になるかもしれない。もう灯油一つの問題、トイレットペーパーの一つの問題を取ったってそうなづですから、もう当然そういう結果になる。そこをやはり行政当局は見越して、それはきびしく指導するとおっしゃるけれどもあとになってからでは、私はおそいのであって、いつも行政が立ちおくれているというのは、そういうところからくるんだろうと私は思うんです。そういう意味で、私はこの問題を一見何でもないようですけれども、特に指摘いたしましたのは、今度の米麦の値上げというものが非常におそろしい結果になりますよということを申し上げたかったわけであります。  それからもう一つ——もう一つというよりもまだ幾つかありますけれども、次にお聞きしたいのは、先ほど大臣とも論議をいたしましたし、また午前中の質問で総務部長もいろいろ説明しておられたのですが、いわゆる食管法でいう家計の安定という問題、この家計の安定というこの問題ですが、この間政府が発表されました、米穀の政府売り渡し価格の改定内容というのを発表されました。これを見ますと、家計の伸び率と引き上げ幅の関係の中に、家計の伸び率は今日四〇・三%。ところが精米価格の上昇率は一三・四%だと。差し引き二六・九%、これが精米価上昇率の上限だと、こういうふうに上限を出しておるわけです。——ありますね、御承知のとおり。これを、そうしますと二六・九%まで上げても、この食管法による家計の安定に反しないということになるんですか、どうなんですか。あなた方のお話だと家計の安定という食管法はあるけれども、それはまた違った話なんだと、こういう説明をるるされたわけですけれども、この説明によりますとまだ二六・九%まで上げてもいいんだと、これ以上。論理的にはそういう結果になりますが、この点はどういうことでしょうか。
  196. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 私どもが、米価審議会諮問いたしました場合の資料、その中に、確かに先生御指摘のように、家計の伸びと引き上げ幅との関係を説明した部分がございます。食管法の規定によりますというと、第四条でございます。「政府ハ其ノ買入レタル米穀ヲ第八条ノ二第二項ノ販売業者又ハ政府ノ指定スル者ニ売渡スモノトス」「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ売渡ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」。「消費者家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということの内容が、どういうふうに理解されているかという話だと思います。  いまのその家計の伸びと引き上げ幅との関係を示しましたのは、これは過去五年間の、最近五年間の平均におきますところの家計の伸び、それが実額で言いますというと、平均が八万八千五百九十六円でございます。それに対する最近四十八年八月における可処分所得の実額が十二万四千三百十八円ということで、その間の伸びが四〇・三%になっておる。可処分所得でもって家計を代表せしめているわけでございます。この伸びの範囲内でその米価引き上げがとどまっておるかどうかということを検証するということでございます。精米価格の従来の上昇率、この期間におきますところの上昇率が一三・四%ありますから、これを差し引きますというと、二六・九%は確かに先生がおっしゃられるように、家計上昇観点から見た場合、精米価格を引き上げ得る上限であるということになります。  じゃあ、これ一ぱい引き上げることは食管法違反でないのかというお話でございますが、食管法自身はただいま読み上げましたように、家計の安定をはかることを旨としてということで抽象的な表現になっております。私どもは、従来その家計の安定を何でもって判断するかといえば、いろいろな指標がございますが、この可処分所得の伸びの範囲内でおさまるならば、それは家計の安定をはかったことになるだろうという理解のもとに従来から考えてまいったわけで、別段その一般まで引き上げることが妥当だというようなことを申し上げているわけではございませんが、食糧管理法の趣旨からすれば、家計の安定をはかっているということになるということになろうかと存じます。
  197. 塚田大願

    ○塚田大願君 いや、それはね、この農林省が発表された二六・九%まで引き上げたりなんかしたら、これは論外だと思うんですね、それは常識的に考えて。家計の伸びがこれだけだから、そこまで目一ぱいやってよろしい。まあ、こういうことはさすがにおっしゃらないだろうと思うんですけれども、しかし今度の一九・五%あるいは今度の諮問案の一三・八%にいたしましても、とにかくですね、これはやはり私ども先ほどから論議いたしましたけど、家計の安定というふうなことではなくて、これは結局家計の破壊に通ずるんではないか。悪く言えば生かさず殺さずというところで一応とめておこうと、こういうことになるんじゃないかと思うんですね。どうも部長のお話を聞いても、どうも生かさず殺さずの程度なら文句はないだろうというふうに聞こえるんですけどもね。これでは私はやっぱりたいへんなことだと思うんですよ。ですから、やはり家計の安定ということが食管法にある以上は、いまのような物価上昇の時代に、政府が率先して公共料金を上げるということは、その考え方としてこの食管法の精神をうしろ向きに理解しているんではないか。やはり前向きに理解するとすれば、私はその引き上げるべきではないという結論が出るんではないかと思って質問をしているわけです。その点どうですかね。この点次官なんかはどんなふうにお考えですか。これは次官に、ひとつ偉い人に聞いたほうが確かだろうと思うんだが。
  198. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) まあ、全然上げなければ、それだけ家計のほうのゆとりといいますか、圧迫にはならないこと、これは論を待たないのでありますけれども、それにいたしましても、やはり政府の負担といいますか、そういう面も一面で考えてまいらなければなりません。午前中からいろいろ御議論等もございましたように、それがはたしてどの程度限度かということで意見が分かれるわけでございますので、実は農林省といたしましては、このぐらいは御理解をいただけるんじゃないかと、こういうことで諮問をいたしたような次第でございます。
  199. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃあ、最後にもう一つ、この逆ざや解消論についてお尋ねしたいと思うんです。政府は口を開けば逆ざや解消ということを盛んに言われる。午前中もこの点で批判をいたしましたけれども一体逆ざやのどこにですね、私は、問題があるのかということをお聞きしたいんですね。逆ざや逆ざやとおっしゃる。そうすると、まあ政府は、本来、先ほどもそうだけれども、物にはコストがあると、米麦だって商品なんだと、だから、当然コストを反映しないひずみのある価格関係は是正しなければいけない、こういうことをおっしゃる。この論で言えば、確かに政府買い入れ価格引き上げたんだから、売り渡し価格も上げるのは当然じゃないかということになるだろうと思うのですけれども。  ではここでお聞きしたいんですが、生産者米価というのは、本来の物のコストということになるんですか、ここをお聞きしたいのです。というのは、生産者米価というのは生産費補償方式ではないですね。今日、御承知のように、生産費補償方式ではなくて、生産費及び所得補償方式でしょう。これできまってくるんですな。ですから、当然生産費よりも高いものになってくるのは当然なんだ。それなら、その生産者米価が上がったから消費者物価も上げるんだと、逆ざや解消だとおっしゃるならば、まさにその所得補償分も、つまりほかのことばで言えば、本来の、物のコストでない分までも消費者に負担させるということになるんじゃないですか、逆ざやの解消論というのは。私はそういうふうに理解しておるんです。それでは、その点まず一つお聞きしておきたいと思います。
  200. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 今日、米の政府買い入れ価格につきましては、まさに生産費所得補償方式ということで決定してまいっております。その場合、まあ直接的な算定されたあるいは調査されました生産費だけでなく、いろいろな操作を加えまして都市均衡労賃、あるいは地方労賃とか、いろんな労賃の単位のとり方はありますが、そういう賃金単位に評価がえをいたしまして、所得補償ということを行なっていることは事実でございます。その所得補償の部分については、これは生産費ではなくて、まあコストではなくて、まあそれはむしろいわば先生おっしゃいませんでしたが、社会保障的な別途の性格のものであるから、それを消費者に転嫁するのはおかしいじゃないかという御質問かと思います。ただ、私どもコストと言います場合には、実際に食糧管理特別会計においてそれを買い入れ、そしてそれに種々の経費を加え、実際に国の財政負担になっているその原価という意味でございます。  それから先生のおっしゃられました農家生産費あるいは米自体生産費というもの自体値打ちに即した評価のしかたを考えてみます場合でも、そういう所得補償のものが、これが生産費でないとまではなかなか断言しきれないと思います。やはり生産費の見方というのは、いろんな考え方もあり得るところかと思います。そこはもう、実は議論の分かれるところで、本日、初めてこの議論を承ったようなわけですから、私も断定的なことは申し上げられないのでございますが、いろいろな考え方はあろうかと思います。  それからかりにです、先生のおっしゃられるようなそこの部分を、別負担というような計算をいたしましても、今日の逆ざや負担は、コスト逆ざやで計算しました場合には、売り渡し価格の五〇・五%にもなっているという、もうその部分をはるかに越えた、ずっと金額の大きな逆ざやなのでございます。ですから、そこらを抜きにした議論でも、やはり一三・八%程度値上げはお許し願いたい。いま私ども考えておりますのは、売買逆ざやとか、あるいはコスト逆ざやを全部解消するということではなくて、当面食糧管理上いろいろ問題の多い末端逆ざやだけを解消したい。しかも、その三分の一程度はなお政府が負担して、三分の二程度をその解消していただきたいという、まあごく一部の解消につながる上げ率のお願いなのでございます。
  201. 塚田大願

    ○塚田大願君 その生産費及び所得補償方式というこの方式の問題をちょっと論議になりましたが、もちろん部長が言うように、生産費というものの概念をどういうふうに見るかという、いろいろこれは論議があろうかと思うんですが、少なくともいまの米価生産者米価の算定方式は、パリティ方式ではなくて、生産費及び所得補償方式という明確な方式が打ち出されておると私は思うので、この点について、私は、コストの問題というのはちっとも混乱はないのではないかと、きわめて明快であるというふうに考えておるわけです。が、これはさておきまして、とにかく所得補償方式、所得補償の分、つまり上積みといいますか、生産費以外の積み上げられたものについての分まで、いわゆる逆ざや解消では、私はどうしてもこれは納得するわけにはいかない、こう考えるわけであります。で、午前中の、ですから論議でも、私は中野食糧庁長官が雑誌でちゃんと言っておられる。人もあろうに食糧庁長官がそう言っておるんですね。所得方式の分はこれは企画庁の物価局の予算にすべきだと、小坂企画庁長官に私は話しておりますということまで雑誌に出ておるんですね。そういう、事ほどさように、農林省食糧庁の一番えらい人がそう言っているほど、やはりこの、問題というのは私は問題のあるところであって、万人がひとしく見ていると申し上げても私は差しつかえがないんではないかと、こうまで申し上げたちわけです。  とにかく、この食管法のたてまえからいえば、生産者米価というのは「米穀ノ再生産ヲ確保スル」ということを第三条に書いてありますね。第四条には家計を安定させる。そこには明らかに断絶があるんですよね。別の問題として食管法はちゃんとこれを定義しているわけですから、それを生産者米価が上がったから消費者米価も上げるんだ、逆ざや解消だというこの論は、私はやはり間違っておるというふうに考えるわけです。明らかに断絶がある。と申しますのは、これも私だけが言っているんじゃないですよ。えらい人が言っておるんです。農林省の出版している本にちゃんと出ていますよ、「食糧管理月報」がございますね。これの十一月号に原田さんという人が書いていますね。これによりますと、いま私が申し上げたとおりです。生産者米価はこの再生産を確保するためだ、それから売り渡し価格消費者家計を安定させるためだ。だから、そこにはおのずから遮断、その二つの価格というものはおのずから遮断をされておるのです。こういうふうに言っていますよ。消費者家計を安定することを旨としているため、買い入れ価格売り渡し価格はおのずから遮断されております。当然なんですこれは。食管法をちゃんと読めばだれだってわかるんです。そういう、にもかかわらずこの逆ざや解消ということを盛んにおっしゃる。私はもうたいへんな大きな勘違いをしているのじゃないかと思うんですが、この点はどうです。
  202. 杉山克己

    説明員杉山克己君) まあ長官が雑誌にどういうことを書かれたのか、私自身その雑誌を見ておりませんので、正確にはまああるいはお答えにならないのかもしれませんが、長官がかりにそういうことをおっしゃって、それが記事になったとすれば、それはおそらく実際問題として、いまの財政負担が結果的に社会保障機能をはたしているという事実を、これを比喩的に言ったものかというふうに考えられます。長官自身が、全くそういう別個の性格のものであって、本気でもって、企画庁予算でもってそれはめんどうみるべきものだというようなことを言ったというふうには考えられません。これはまたしかるべき機会に、長官に私自身もただしてみたいと思います。  それから、別な人間が農林省の職員であろうかと思いますが、「食糧管理月報」の十一月号に生産者米価消費者米価、まあ具体的には政府買い入れ価格政府売り渡し価格のことかと思いますが、遮断されているということを述べているということでございますが、これはその職員の理解が私は不十分なのだと思います。  それから、食糧管理法自身の理解についてでございますが、確かに政府の米の買い入れ価格につきましては、三条でもって「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とあります。しかし、その前段のところをもう少しごらんいただきますと、「生産費物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」とあります。この「経済事情」の中には、需給事情だとか、もろもろの米をめぐるまさに経済的な諸条件、その中にはこの売り渡し価格消費者価格ということも含められております。同じように四条の政府売り渡し価格のところにも、「家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とありまして、これは全く政府買い入れ価格政府売り渡し価格が遮断されているというわけのものではない、そこでつながっているんだ。お互いに配慮してきめられるべきものだということを意味していると私ども理解いたしております。ただ、実際の従来の政府買い入れ価格なり政府売り渡し価格がどのようにしてきめられてきたかといえば、時期も異なり、それぞれ、その生産の事情なり、流通の事情なり、あるいは家計の事情なりをその場でもって判断してきめてきたことが、必ずしもそういう原価主義的な考え方に十分基づいて相互の連関を十分に勘案した価格ではなかったというような結果になったことも事実でございます。そのことが今日の逆ざやを招いているということになっていると思います。その経緯がそれは間違っておったかとか、ぐあいが悪かったかといえば、それは従来それぞれのいきさつがあり理由があって成り立ってきたものと思いますが、今日においてはこれ以上逆ざやを放置することはできないという判断に立って、その両者の関連を見定めて、やはりコストのあるものについては、売り渡し価格にこれを反映さすべきであるということで対処することにいたしておるわけでございます。
  203. 塚田大願

    ○塚田大願君 もう時間がなくなったそうですから最後に一つだけ質問いたしますが、その前にいまの総務部長の答弁では、中野食糧庁長官の言っていることは何かいわば比喩的に言われたんだろうというふうな説明でしたけれども、そうではありませんよ。小坂経済企画庁長官に私はちゃんと話をしましたとまで書いてあるんですね。たいへん具体的な話なんです。その資料をさっき記録部で貸してくれといったから貸してやりまして、いまここにありませんが、原文をなんだったらよく読んでいただくとその辺の経緯はよくわかります。総務部長が解釈しているようなものではありません。ものの考え方として、やはり基本的にそうでなくてはいけないんだということをおっしゃっておる。そういうことですから、その辺どうも政府の意思統一がまことに不十分だと私は考えておりますけれども、それはそれとしてひとつ詰めていただくことにいたしまして……。  最後にもう一つだけお聞きしたいのは、先ほど「諮問についての説明」、この諮問案ですね、この中にあるんですけれども逆ざや解消の根拠に「不正規流通の誘発」ということが書いてある。最初に先ほどお聞きしましたのは、「本来の物のコストを反映しないひずみのある価格関係であり、」云々というところをいまお聞きしたんですが、これからお聞きしたいのは「不正規流通の透発等」云々というこの点なんですけれども、私は以前にこの委員会で問題にしたことがあるんですが、あの大新聞であります日本経済新聞に、四十四年から、自由米と言えば聞こえがいいんですけれども、要するに一言で言えばやみ米ですね、やみ米の相場がずっと掲載されておりまして、私は現物を持ってきてここで質問をしたんですけれども食糧庁はそういうことを知っていながら、当時どういうことを言ったかというと、米の需給が緩和している時期だから特に問題ないというふうな趣旨のことで、いわば違法行為を私は黙認してきたと思うんですよ。ああいう新聞にやみ相場が立っておるのを、黙って、これを制止もしない。しかも、これがことしの春問題になりましたモチ米の投機なんかで、丸紅が起訴をされるというふうなところまでとうとういってしまった。この事態を考えてみますと、どうも、総務部長は盛んに食管法の説明を私にしてくれましたけれども、この食管法なんというものは、この事実一つをとっても、私は死文化されて、無視されてしまったと思う。総務部長、政府側は、いろいろ説明されますけれども、そんなのは百の説法へ一つで、こういう事実一つを取り上げるだけで私はその辺の実態というものは非常にはっきりすると思うんですが、一体ほんとうに政府は、まじめに、こういう問題について真剣に食管法の立場でいまの米価の問題を解決するように努力なすっていらっしゃるのかどうか、その点を部長からも御意見があればお聞きしますし、次官からもひとつ最後の御答弁をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  204. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 今日、自主流通米制度ができ、それから政府米についても物価統制令の適用をはずすというようなことでもって、直接的法規に基づく価格規制はなくなっております。したがいまして、価格についての食糧管理法違反ということはストレートに出てまいりませんが、御指摘のように、かつて統制価格——物価統制令に基づいて統制されておりましたその価格があったときは、それに違反した価格でもって米が流通した事実があったということは私ども承知しております。それに対する取り締まりが十分ではなかったではないかという御指摘、まさに形式的に条文どおりの解釈をすればそういうことは認めざるを得ないのでございますが、ただ、経済統制法規というものは、いつまでも、それこそ刑事犯に臨むような厳格な態度でそれを処理すべきかということになりますというと、世の中が変わって経済現象に対する人の考え方も動いてくれば、それなりに、それに応じた対応といいますか、運用がある範囲であってしかるべきではないかというふうに思うわけでございます。そういうことが、しかし放置されるべきではないということから、厳格な取り締まりをやるという方向ではなくて、私がさっきに申し上げましたように、むしろ非現実的になっている価格統制をはずすという方向で対処いたしたわけでございます。  それからもう一つの御質問の逆ざや関係、特に末端逆ざや関係が不正規流通を誘発するおそれがあるということを申しております。これは、もちろんそういうことがあってはいけませんし、そういうことがあればこれは政府財政負担のもとにおいてそれを悪用するということですから非常に性質が悪い——悪質だということになろうかと思います。そういうことを取り締まるために私どもはもちろん全力を尽くしますが、この問題は、単にそういうことが頻発するとか、起きて困るというような話ではなくて、そもそも制度的にそういうものが起こり得るような価格体系の存在することがまずいといいますか、ぐあいが悪いんだということで私どもは申し上げているわけでございます。まあ日本農民が一斉にそういうことをやるようになるとも思いませんし、まずまずそういう心配は、過去に全然実例がなかったわけではございませんが、まずないとは思っております。しかしながら、制度的にそういったものの存在を許すような理論的な価格関係というのは、私どもはぐあいが悪いんだということで申し上げているのでございます。
  205. 鈴木省吾

    説明員鈴木省吾君) 食管法につきましては、農林省としては、もちろんその法に定められたとおり、厳正に運用してまいるつもりでございます。しかしながら、ただいまも答弁をいたしましたように、経済の実態と申しますか、時代の変遷に伴いまして、その法の範囲内である程度弾力的な運営をしていくということも、これはまた必要であろうと考える次第でございます。そういうような考えのもとに食管の基本的な精神というものは当然これは堅持してまいりたいと、かように考えております。
  206. 初村滝一郎

    理事(初村滝一郎君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑はこの程度にとどめます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十分散会