○
前川旦君 私もあなたのいまの御
意見に八割方賛成なんですよ。ですから、私
どもの言っていることを直ちに無抵抗、完全服従という形で図式化しておっしゃらないでほしいと思うんです。それはたいへんな誤解なんですから、その点はしっかりしていただきたい。
で、私がしきりに一生懸命
考えてみて、本土決戦というかっこうでの
防衛戦争というのは、とてもじゃないけれ
どもやれないだろうと。そうすると、とにもかくにもわれわれがいま一番
考えなければいけないことは、
日本に対して攻撃がある、武力進攻がある、侵略があるという、そういう可能性をみんなの
努力で少しずつでもつみ取っていくことがもっと大事なんではないだろうか、そのことを私は
日本の安全保障の中に据えていかないといけないと思う。確かにことばとしては
防衛白書にも平和外交を積極的に進めると、こう書いてある。しかし、よく見てみると、中心が武力による
防衛、武力による
防衛の足らざるところを外交
努力で補うというような
発想法のように私は見える。そうではなくて、やっぱり一番大切なのは、外交
努力による武力進攻という状況のない環境をつくり出す、そのためにはわれわれは一体何をしたらばいいのだろうか、そこのところで私はいろいろコンセンサスのできる可能性があると思うのですよ。ですから私は、たとえば日中の間でも、早く日中友好条約を結んで、一日も早く結んで、日中不戦、武力不行使、そういう条約がかたくできるということは、はるかに安全の上での大きな前進である。相対的なものです。はるかにもっと前進である。日ソの間でもそういう
努力をしていくということも一番大事な問題である。それに全力を注ぎ、一日も早くそういうことをする。それから朝鮮半島の問題でも、われわれは緊張を激化するようなことに手をかすようなことをしてはいけないと思いますよ。それでやっぱりいままでの
——これからのことは言いません。いままでの安保
体制下で韓国との間の経済的なつながりとか、軍事的なつながりを言われましたね。やはり緊張激化に手をかしてはいけないという私
どもの悲願とは乖離していたように思います。もちろん朝鮮民族に対しては
日本人はたいへん大きな罪を犯したのですから、それに対する罪を償はなければいけないけれ
ども、それは民族に対して犯したことであって、一つの国だけに限られるべき問題ではありませんから、同じ経済援助にしても、学校とか、病院とか、そういった人道的なものを中心にして、平等にするという方法もあるだろうし、いろいろな方法が
考えられると思いますので、
考えていけば。ということで、緊張激化を緩和するという
努力をどうやってするかということに私は与野党話し合う余地があると思うのですよ、一生懸命
考えていく。
それから核の問題もどうでしょうか、全面核戦争になったら
日本は確かにお手あげです。しかし、これがもうないという保障もありません。これは偶発戦争という危険もありますからね、決してゼロとは言いがたい。それから核の抑止力は、なるほど力としては対等の核所有国同士に働くけれ
ども、同盟国まで有効に働くかどうか、なかなかそれは確信が持てない。ですから、たとえば核の問題にしても、私
どもが核の問題について
考えたいことは、少しでも安全度の高いほうを慎重に
考えて、少しでもそちらそちらを歩くような
努力が
考えてできないものだろうかどうか。私は、特にラテン
アメリカで非核地帯の条約が結ばれ、今度中国が中南米条約に調印するということが新聞で報じられております。これは八月十八日の読売の
記事ですけれ
ども、周恩来首相がこの条約に調印するとなると、五つの核所有国の中で、四つまでがこの中南米条約に調印するということになれば、
あと一つ入れば完全に非核武装地帯になるわけですね。ですから
日本も、それから
日本だけでなくて、アジアのいろいろな国と、たとえば非核武装地帯にして、その非核武装地帯を核所有国がそれぞれ保障するというふうな、そんな
方向も私は危険を避ける
——効率の問題ですけれ
ども、危険を避ける道としてさがしていくことができるのではないだろうか、そういう真剣な
努力を積み重ねることで、武力進攻という不幸な事態を避け得る可能性をさがしていくために
努力するのがわれわれの任務ではないだろうか、私は実はこういうふうに思ったりするのです。ですから、これは一〇〇%あなたと一致するということにならぬかもしれませんけれ
ども、
長官の御
意見をこの際伺いたいと思います。