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神沢浄君 そこで、これは両度の
統一見解を
文書でみますと、発行者は
防衛施設庁名であって、(
政府統一見解)、こうなっているわけであります。そこで、
政府統一見解というからには、私は、当然内閣の統一した意思として出ておるものと思われますから、きょう内閣官房長官にも
出席要求をいたしたのでありますが、どうしても御都合がつかないということでもって事前に連絡がございまして、私の分まで山中
防衛庁長官に答えてもらうようにするから、それでひとつ了承してほしいと、こういうお話がありましたので、まあ私も考えまして、御都合がつかないのをそれ以上の無理を申し上げるわけにもいかないですし、加えて、私は、先ほどごあいさつがありましたが、山中
防衛庁長官が就任をされたということに、ひそかに一つの期待を持っている一人です。
というのは、どうも従来、この
入り会いの問題をはじめ、
北富士演習場にかかわる問題の審議につきましては、語弊があってはいけませんけれども、どうも
防衛庁や
防衛施設庁の答弁というのは、まことにお役所的答弁に終始をしておりまして、問題の核心などに触れ得ないし、何かほんとうに、お互いに住民のことを考え、あるいは国民の
権利のことを考えてやっていかなければならないような点に実際親しく触れてまいらないようなことに終始してきておるわけであります。そういう点は、私の考える限りにおきましては、山中長官のフレッシュな感覚に、ひとつ今後の審議の中でも大いに期待をいたしたい。私は、実は、この間の例の不発弾の暴発事故もございまして、あの際、何か立ち入りを
禁止するとかいうようなことがいろいろ言われたときに、就任早々の長官のところへ持ち込んだならば、国民の足をとめるなどということはできないということを、一言にして、まことに歯切れよく言われたという、あの事実からしましても、実は私は、今後この
北富士演習場問題というものに対する長官の歯切れのよい対応というものを期待をいたしてまいっておるところでありまして、したがって、きょうの論議につきましても、ひとつ忌憚のない御質問を申し上げますので、ぜひひとつ実りのある審議にしていただきたいと思うわけです。
そこで、いま両
見解を対照をして読んでもらいました。お聞きになっておっておわかりのように、昨年、
入り会い権を認めない
理由として掲げたのは
大正四年の大審院
判例であります。そこで、私は、
入り会い権の問題というようなもの以前の問題として、この
入り会い権の問題の審議というのが、参議院の当
内閣委員会におきましては、私の調べたところでは、少なくとも
昭和三十六年以降繰り返し引き続いて今日に及んでいるわけであります。そういう中で、ときには学者の
意見も聞きましたり、あるいは
関係当事者の
意見も聞きましたり、
現地の視察もいたしましたり、もうすべての審議の方途をとりながら積み重ねてまいりました。そこで集約されたものは何かというと、昨年の
統一見解がいっておりますように、現実の問題として
入り会いの
慣行というものは、これはもう存在することは当然だけれども、
大正四年の大審院
判例なるものが司法の最高意思として存在する限りは、これは行
政府とすればそれに従わざるを得ないという、これが実は今日まで十年を越えるところの長期にわたる論議の集約であったわけです。
これは私が参考までに申し上げますけれども、昨年の四月の論議の中で、私の質問でこういうことを言っているわけであります。「それじゃ質問を続行しますが、
施設庁長にお伺いしておきますが、一つ一つ片をつけていきたいと思うんですが、先ほど来ずっと論議をしてまいりました
入り会い権を認めないという
根拠は、これはもう私が午前中からの論議を通じて認識するところでは、
大正四年の大審院
判例のみを
根拠にしておるというふうに受け取れますけれども、それでよろしゅうございますか。」、こう聞いたことに対して、いまの次官、当時の
施設長官でありました島田長官から「この件につきましては、今朝法務省のほうからも御答弁がございましたように、
大正四年の
大審院判決もございまして、その後これをくつがえすだけの新しい
判例が出てきておらない。したがいまして、この考え方はその後も継続的に国としては持っておる、こういうことでございまして、私どもの
国有地の
入り会い権の問題につきましては、けさも申し上げましたように、大審院の
判決を
根拠にしておるわけでございます。」、こういうふうに答えておるわけであります。さらにその後、たしか十月であったと思うんですが、当
委員会においての審議の中におきまして、当時の足鹿
委員から、さっき
参考人が述べましたような
内容についての発言がありまして、そうして
政府の
見解を尋ねたことに対しまして、山下官房副長官は、こう答えているわけです。「御
意見は十分承りましたが、
政府といたしましては、司法権の意思というものが最終的に
最高裁の
判決で示されている限りは、それに従うことであると考えておるわけでございます。」、そこで足鹿
委員から「これは重大な御発言を聞いたわけですが、まだ
最高裁の
判決は出ておりません。近く出るでしょう。そのときにはそれに従うという御意思と私は受けとめます。注目いたして今後に対処したいと思います」、こういうふうなやりとりが行なわれているわけであります。
その後、御承知のとおり、本年三月に青森
判決が出ておるわけです。
最高裁におけるところの青森
判決は、
国有地上に
入り会い権が存在する旨をはっきりと明記をいたしてまいっておるわけであります。国側が述べてまいっておりました司法の最高意思なるものが、あらためて示されたわけであります。ですから、私は、当
委員会十年越しのこの審議は、そこでもって最終的にこれはきまったんだというふうに考えていたところであります。もう当然、自動的に
国有地上の北富士の
入り会い権につきましては、あの
判決と時を同じゅうして確定をいたしたものというふうに
判断をいたしていたところであります。ところが、先ほど対照して読んでいただきましたように、またまた新たな
統一見解なるものが
政府から発出をされておるわけでありまして、その
統一見解の
内容というのは、さっき朗読をいたしたごとくに、従来
政府が述べておりましたその
根拠は、全くこれはもう、たなに上げてしまわれて、そして全然新しい説明をもって
入り会い権を否定をいたしてまいっておるところであります。
その
入り会い権問題の
内容は私はあとから触れたいと思うんですが、
入り会い権問題の以前の問題として、それじゃ十年越しの当
委員会の審議の経過と事実というのはどうなるのか。私は、立法府と行
政府との
関係、国会と内閣との
関係という、非常に重大な意味を投げかけてまいっておるではないかと思うわけであります。申し上げるまでもございませんけれども、憲法において、国会が国権の最高
機関だというふうに定められているわけです。しかも、わが国におきましては議院内閣制であります。そういう中でもって、十年をこえるような長期にわたっての審議が当
委員会でもって積み重ねられ、積み重ねられ、その集約として、司法の最高意思が、大審院
判例が出ておる限りはしかたがないという、こういう
政府態度であったものが、それが改まった以上は、どうしてこれが自動的に確定できないのか。これでは、まるっきり、この
委員会の十年をこえるような長い間の審議というものは、全くこれは無視されて、弊履のごとくほんとうに内閣から無視されてしまっておるという、こういうことになっているわけであります。その点につきまして、先ほども申し上げましたように、官房長官にかわっての
立場も了承いたしているわけでありますから、山中長官から内閣としての
見解をお聞きをいたしたいと思います。