○横川正市君 実は、一番大切な保障力というようなもの、これはまあ犠牲的に慈善心でやっているわけではないんですから、
加入者が幾らかぐらいならば慈善的に奉仕してもいいという金と、その金の質がまず違うんですね。ですから保障力というものを非常に強く求めているわけですよ。
一般庶民は、たとえば郵便貯金をしたら何ぼ金利がつきますかというようなことで金利計算をして預貯金をしていないんですね。だからそれと同じように、
保険料を掛けるときに、これをやったら幾ら金利がついて幾らになるからということをもうこまかく計算をして加入していないという、そういう層に対して、国営
保険というのはどういう責任と義務を負うのかという点では、私は、いままで国営
保険とは何か、それからそういう責任と義務とは何であったかというのを果たしてきていないと思うのですよ。
戦前はこれは戦争協力
資金であって、しかも戦後はこれは一回全く破産したわけですね。しかしその破産をしたということから、国営
保険だけれども補償を求めないということで、これは逐次事業が再建されてきたわけですよ。そうして、いま、戦争に負けたときと同じように、経済が今日ほどこんなに貨幣価値を失い、膨張する時期というのはないわけですね。だから、もうこれは第二のいわば
保険加入者への被害になってきておるというふうに私どもは見ていいんじゃないかと思うのです。だから国営
保険というのは、そういうことを
国民にしいないとか、
国民の利益を守るのですと、これは国が当然行なうことですという考え方に立てば、私は、戦争に負けたときと、いまのような膨張経済、貨幣価値の下落という時期は、同じような時期だと見ていいんじゃないかと思うのですよ。
そこで、国営
保険というのは、
民保と違って、生き残る道は何か。これはたとえば満州から引き揚げてきた、樺太から引き揚げてきた、
民間銀行に預けておった預金は出せなかったけれども、郵便貯金はおろされた、これが生活の基盤になったというような、これは
一つの例ですけれども、
特色が
保険の中に創設されて初めて
簡易保険というものは生きていくんだと思うのですよね。その点がどうもやはりあいまいで、いま
民保と
競争することだけにきゅうきゅうとするなら、
簡易保険というのは存在価値を失うだろう。そうでなしに、また別な
国民の利益を守る、そういう国の立場ということで、いわば損得、営利を
目的としない、そういうことで存在価値というものが
国民に
普及されていくことが
簡保としては必要なんじゃないかと、私はそういうふうに思うのですね。
だから、その点は、これはいまの時期をどう見るか。たとえば下村さんの意見でいえば、膨張すれば膨張しただけ通貨を発行し、通貨を発行されただけ所得がふえるんだから、これはかまわないんだという考え方で、単に
保険の
加入者の
保険金がどんどん高くなって
保険料が保障されていくということであればいいんだという漫然とした
経営のしかたというのは、私はやはり改める時期が来ているのじゃないか。
私は、一時は、こういう年限の長い
保険というのはもうやめてしまって、そうして国の行くべき道というのは何かといったら、傷害
保険だというふうに思ったんですよ。たとえば全体の
国民が千円かけて何百万か保障できる、そういう保障のしかたの中に
簡易保険の生きる道というのを考えたらどうかと、全部の
国民が加入した中でお互いに互助組織をつくっていく、そういうものが考えられていいんじゃないかというふうに思いましたけれどもね。
しかし、それではなしに、国の行き足らない
——たとえば災害
保険とか傷害
保険とか、こういった面では、いま三百万になったんですかね、ところが自動車その他の死傷その他に対しては一千万台の補償がされるという非常に違いがあります。その違いを
保険事業が埋めていくというような行き方もあるのじゃないかというふうに思いますが、いずれにしても、いまのこのままでいけば、
簡易保険の存在
理由というのは
特色を失ってしまって、事業全体の
経営は非常に心配すべき状態になるのじゃないだろうかというふうに思いますので、これは私どもの危惧か、実際そういう状態が起こってきているが、解決方策が別に考えられていればそれでいいわけですけれども、その点はぜひ検討する素材にしておいていただきたい、こう思います。
そこで、前段ですが、今度の改正法案がつくられるまでに、新
制度が創設されるあるいは
制度の改善をはかるという場合に、この改善をはかろうとする基礎的なものは、資料の面では何が要素になって改善をされたんでしょう。
それから実務者ですね、いわゆる外野の実務者が、実際上、
保険のいわば基盤であります新陳代謝のうちの積み重ねを毎日毎日やっているわけですけれども、そういう人たちの意見というのはこの中にどういう反映をしているのか、この点ひとつお聞かせいただきたいと思う。