運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-09-18 第71回国会 参議院 地方行政委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十八日(火曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————    委員異動  九月十三日     辞任         補欠選任      鬼丸 勝之君     熊谷太三郎君      柴立 芳文君     上田  稔君      片山 正英君     志村 愛子君      藤原 房雄君     田代富士男君  九月十四日     辞任         補欠選任      志村 愛子君     片山 正英君      上田  稔君     柴立 芳文君      熊谷太三郎君     鬼丸 勝之君  九月十八日     辞任         補欠選任      田代富士男君     藤原 房雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 寺本 広作君                 占部 秀男君                 河田 賢治君     委 員                 鬼丸 勝之君                 片山 正英君                 増田  盛君                 秋山 長造君                 神沢  浄君                 戸叶  武君                 上林繁次郎君                 藤原 房雄君                 村尾 重雄君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    江崎 真澄君    政府委員        警察庁長官官房        長        丸山  昂君        自治省行政局公        務員部長     植弘 親民君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    説明員        警察庁警備局参        事官       中島 二郎君        法務省刑事局青        少年課長     村上 尚文君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君        自治省財政局財        政課長      石原 信雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○地方行政改革に関する調査  (当面の地方行財政及び警察行政に関する件)     —————————————   〔理事寺本広作委員長席に着く〕
  2. 寺本廣作

    理事寺本広作君) それでは、ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  本日、久次米委員長が所用で出席できませんため、私が委託を受けましたので、委員長職務を代行いたします。  理事補欠選任についておはかりいたします。  去る十三日、柴立芳文君の委員異動に伴い、理事に欠員が生じておりますので、この際、その補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺本廣作

    理事寺本広作君) 御異議ないと認めます。そ  れでは理事柴立芳文君を指名いたします。     —————————————
  4. 寺本廣作

    理事寺本広作君) 地方行政改革に関する調査のうち、当面の地方行財政及び警察行政に関する件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 占部秀男

    占部秀男君 大臣、午後やはり予定があるそうですから、私、簡潔に急所の点だけ質問いたしますので、明確にひとつ御答弁願いたいのですが、この三日の日に、御存じのように公務員制度審議会で、かねて政府が諮問しておりました、「国家公務員地方公務員及び公共企業体職員労働関係基本に関する事項について」、八年越しで結論をつけたわけであります。政府答申が行なわれたので御存じだと思いまするが、続いて十二日には、この答申と非常に重大な関連のある地方公務員争議権の問題について和歌山地方裁判所判決があったわけで、これは御存じのように、和歌山の高教組の勤評闘争についての裁判ですが、地方公務員法三十七条一項は憲法違反である、こういうような明確な判決がおりたわけです。  そこで、私、今後これらの問題についての自治大臣としての取り組む基本的な考え方というか、姿勢というか、そうしたものについてお伺いをしたいと思うんでありますが、まず、公務員制度審議会答申を見ますと、こういうことが書かれておるわけですね。この答申の「検当に当っては、公労使側委員とも、わが国の公共部門における労使関係実情を現状のまま放置すべきではなく、」と、まあその間文句があるんですが、労使の慣行を確立することが急務であるということ。それからもう一つは、第一次の公制審意見の一致を見た、公務員等争議権の取り扱いについては、立法政策の問題として解決すべきであると、こういうような点が答申のいわゆる前文として、全体を流れておる姿勢というか、そういうものになっておるわけでありますが、この点について、大臣の、答申のこの姿勢についての見解をひとつ承りたい。
  6. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 答申が出されましてから和歌山地裁判決が出て、三十七条一項は憲法違反だ、お示しのとおりであります。これは衆議院でも同様の質問がその直後出まして、私は卒直にお答えをしておいたわけでありまするが、ちょうどことしの四月二十五日のいわゆる全農林警職法事件につきまして最高裁判決がございました。多数判決といったような形ではありましたが、これはもう最高裁の厳たる判決であることは間違いございません。そうしますると、これは確定判決でございます。それから和歌山地裁の今回の見解は、確かに一つ判決としての権威は持つものでありまするが、その後、直ちに控訴されております。したがって、未確定判決と、こういうふうに言えるわけでありまして、すでに最高裁判決がありまする以上、確定判決がありまする以上、これが優先をするものというふうに私ども政府としては考えておりまして、和歌山地裁判決がどのようでありましょうとも、これによって行政的に何ら制約を受けることにはならないというふうに、閣議においても合意をいたしておるような次第でございます。
  7. 占部秀男

    占部秀男君 和歌山判決がいわゆる下級審判決であるということ、で、最高裁判決もその前にはあったことに関連をして、行政的にはといういまの大臣のお話ですが、それはそのまま私は承っておきたいと思うんですが、私の質問は、今後、公制審答申を扱う場合の大臣姿勢についての質問なんです。いまの行政面における大臣所管事項の処理の問題ではないんです。というのは、政府春闘会議との間で、御存じと思いますが、公制審結論が出た場合にはこれはもう尊重すると、こういう合意事項がなされておるわけであります。しかも、公制審のこの答申には、団結権あるいは団体交渉権の問題については二、三触れておりますけれども、事、非現業職員争議権の問題については、つまり、争議権を全面的に与えるべきであるということと、争議権を制限的に与えるべきであるということと、争議権を与えるべきでないという意見が三つ出て、それを併記してあって、それをどっちにどういうふうにするかということは今後の問題、つまり立法政策の問題であると、こういうふうになっておると思うんですよ。そこで私は、この春闘会議政府との間の、答申の出た場合に尊重するという合意を踏んまえて、そして今後この問題をどうするかと、こういう点をひとつお聞きしたいと、こう思ったわけです。
  8. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) お話しのように、非現業公務員争議権につきましては、三論併記という形で今後の立法政策の問題にゆだねたいとしておられるわけであります。私は、この裏には、やはり日本の健全な労働組合の成長を期待する意味も多分にあるというふうに思うのであります。私ども、民主政治を行なってここに約三十年に近くなるわけでありまするが、われわれ顧みて、日本のいまの民主政治というものが必ずしも他の先進諸国に比べて円滑、進歩的であるとは思えませんですね。やはりまだ民主政治をこなす上において未熟な点があることを否定することはできないと思います。そういうような意味において、やはり労働組合運動そのものにおきましても、戦後まだ日が浅うございまして、労働組合運動に挺身した個人々々の長い経歴を持った方はおられるにしましても、日本全体としてはやはりいまだしの感が国際的に見ればあると思います。そういうものを背景にして、要するに立法政策の場できめらるべきであると、こういうことを私は言っておるものと理解するわけであります。したがいまして、私がいまこの答申を受けてどう考えておるかという御質問であるとしまするならば、公務員地位特殊性職務公共性のというような点から申しまして、現段階ではまあこのままでいくことが望ましいのではないかというふうに考えておるものであります。  それからついでに、立ちましたから申し上げますると、地方公営企業職員争議権につきましては、地方公営企業特殊性というものを踏まえながら、いわゆる三公社五現業職員の問題を今後どうするかという問題とあわせて、十分慎重に検討をしてまいりたいというふうに思います。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 大臣が、このままでというのは大臣の御意見ですが、少なくとも終戦直後に労働三法ができて以来、公務員労働三権の問題については、いろいろな変遷がある中で今度の公制審答申が出たわけですけれども、この際、この答申にもあるように、スト権の問題も含めての労使関係というものを大きくやはり洗い流す時期ではないかと、こう私は考えるわけです。特にその中の地方公務員労働関係についても、同じようなことが言えるんじゃないかと思うんです。そこで、私はもっと、時間の関係もありますから、具体的にひとつお伺いしたいと思うんですが、まず団結権の問題なんです。地方公務員のですよ。地方公務員団結権の問題。  今度の和歌山地裁判決では、判決基礎になっておる、教員も含めての一般職員ですね、地方公務員全体の労働関係性格というものがはっきりと打ち出されておるわけですね。これに、すでに判決理由はお読みになったと思うんですが、地方公務員一般勤労者と異なるところはないと、ただ、私企業の労働者と、職務の上、あるいは公共性があるかないかのそういう制約はあるが、労働者としてはやはり変わりはないんだと、したがって憲法二十八条にいわゆる勤労者、これになるんだから、労働基本権は当然保障されるべきである、こういう考え方基礎的には貫かれておるわけです。こういう点について大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  10. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) やはり私は労働基本権というものは当然認められてしかるべきものでありまするが、公務員地位特殊性職務公共性というものからいたしますというと、どうもやはりこのスト権というものを認めるべきではないというふうに考えます。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 私はまだスト権に入っていないんです。団結権の問題に限定をしているわけです。いま当然大臣としては、二十八条の勤労者であるという点については明確にしていただけるんだと思うんですが、その点はあとあと団結権団体交渉権、その他に関連をしますから、これは明確にしておいてもらいたいと思うんですが、つまり、憲法二十八条にいう勤労者ということになれば、当然団結権の問題については、これは立法政策上の問題ではなくて、労働者としては本来団結権は持っておる、こういうことになるわけですから、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  12. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、団結権の問題につきましては、消防等は除いて、認めておるという実情でございます。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 いや、ぼくの言うのは、認めておるということじゃないんです。つまり、地方公務員法上の団結権の場合と、労働組合法上の団結権の場合と、団結と言っても内容が少し違ってきている。つまり、これをやる場合に、大臣御存じだと思うんですが、あの地方公務員法をつくるときに、つまり、労働組合法上の団結権を与えて、そしてその労働組合としての地方公務員労働関係については、いろいろな制約はあってもしようがないじゃないかという議論と、それから、いや、公務員だから、いわゆる一般労働者とは違うんだというようなことをだいぶ言われて、それで地方公務員法の中での団結権——団体という名前ですが——という場合と——最近は幾らか政府考え方も違ってきておりますけれども、あったわけです。  そこで、この際、私は公制審答申を行なった機会に、その点を明確にしておきたいと思うんですよ。つまり、憲法二十八条にいういわゆる一般労働者一般勤労者、それといわゆる地方公務員勤労者的な性格とは何ら変わりはないんだ、こういうふうに基本的に言えるかどうかという点をひとつ明確にしてもらいたい。
  14. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 若干立法の経緯その他、事務的な問題にお答えいたしますが、なるほど、地公法、国公法等が制定されます場合に、公務員憲法二十八条に規定するところの一般民間企業と同じ勤労者であるかどうかについては、非常に論議のあったことは占部先生の御指摘のとおりであります。当時は、憲法二十八条の勤労者というよりも、むしろ、十五条の全体の奉仕者論のほうが公務員については支配的な考え方であったということもまた、先生指摘のとおりであります。その点が非常に争点だったわけでありますが、最近に至りましてからは、公務員といえども憲法二十八条の適用を受ける勤労者である本質も有している。しかしながら、十五条その他の憲法上の制約があることは、先ほど大臣が御答弁をいたしましたように、公共、公務といった特殊な地位職務に従事しているといった点から、御承知のように、先般の四・二五判決におきましても、勤労者そのものを含めた国民全体の共同利益のために、公務員については必要な制約があってもいいんだ、それは憲法二十八条に違反するものではないんだという御指摘でございましたので、いま先生の御指摘団結権につきましても、憲法二十八条に規定する団結権本質は持っておりますものの、他の憲法上の制約があるという点は変わりないと思います。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 それで明確になったわけです。ぼくは他の憲法上の制約という問題はそれからあとに出る問題であって、基本的な問題は、二十八条の勤労者であるかどうかということが、やはり何といっても根底になる問題ですから、その点は明確にひとつしておいてもらいたいと思うんです。なぜ私がこういうことを言うかというと、今度の公制審答申内容を見てもわかるように、団結権の問題については——消防の問題はこれは別ですが、一般的な事務層についても何ら触れてないんですね、これはもう当然労働者勤労者としての団結権である、こういう明確な態度をとっておる。と同時に、この答申の中では、たとえば登録制度一つとってみても、これは答申されておる。昔は登録制度をつくったのは、登録をしてない団体、いわゆる組合とは交渉の相手にはならなくていいんだ、当事者が、当局が、というような考え方もあったんですが、この答申では、もう登録しようがしまいが、やはり正当な理由がある場合には交渉に応ずるべきであるということの、これ答申になっている。つまり、登録制度そのものができ上がったその当時の意義というものが相当薄れてきている。  それともう一つは、法人格の問題ですが、今度もこの「法人格は、登録制度とは切り離して、付与するものとする」、これはもう労働組合法上の扱いと何ら変わりはないわけなんであって、あの法人格の問題を出したときには、初め、登録したものに法人格を与えるという、話であったのが、だんだん変わってきて、いまはもう登録しようがしまいが、労働組合団体公務員組合には法人格を与えるんだということになる。そうなると、労働組合法上の扱いと何ら変わりがなくなってきておる、こういうふうな実態があるわけですから、したがって、ぼくは今度の答申を尊重するという場合には、少なくとも自治省としては地方公務員法そのものをやはり改正すべきではないか。どういうふうに改正するかというと、地方公務員法の第一条でしたか、目的がありますな。その中に、事務上の問題あるいはこの身分その他の扱い問題等がありますが、その中から、団体等に関する問題はこれは切り離してしまって、やはりもとのように、労働組合法上の地方公務員組合とする、こういうふうにぼくはこの際すべきではないか。制約問題はいろいろありますよ——あとでありますけれども。というのは、あなたも御存じのように、終戦後初めて労働三法ができたときには、地方公務員はその労働組合法上の組合であったわけです。スト権もあったのです。ただ、その後労調法ができて、労調法の三十六条で公務員はストライキができない、こういうことになったけれども、労働組合法上の労働組合員である。地方公務員法上のものではなかったわけです。それがだんんだ悪化して、扱いが悪くなって、今日のような制度になってきておるわけです。したがって、この公制審答申機会に、少なくとも制約問題その他は別ですけれども、地方公務員団結権はやはり労働組合法上の団結権に改正すべきではないか、それがまた正しい行き方ではないか、こう思うのですが、その点いかがですか。
  16. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 先ほど来申し上げておりますが、二十八条の勤労者たる性格を持っておりましても、他の憲法上の制約がございますために、完全に民間労働者と一緒になるわけにはまいらないだろうという考え方であります。  そこで、団結権関連する登録問題でございますが、公務員制度審議会におきましても、まず交渉の問題と、法人格の問題、二つ御指摘になっておりますが、先生もよく御理解いただいておりますように、なるほど、登録団体につきましては、交渉に応ずべき地位という規定ございまして、非登録団体にはその規定がない。しかし現実には、ここに書いてございますように、合理的理由がない限りは交渉を拒否していることは現実問題としてあり得ません。実際に各地方団体では、非登録団体といえども、必要なる予備折衝といいますか、そういった手続を経ました上でやるのを通例にいたしておりますから、その点を念のために——やはり労使関係を正常化するためには、そういった交渉というものは十分意を尽くしなさいという趣旨であろうというふうに理解いたしておるわけであります。したがって、この点に関しては特別に改変を必要とするものでないと思います。冒頭に、登録制度は存続させるというふうにうたってございますので。  ただ、法人格の問題につきましては、なるほど、現行国家公務員法なり地方公務員法では、登録団体に限って法人格が付与されておりまして、非登録団体には法人格がないということで、いろいろと問題があったわけでございますが、その点考えてみまして、法人格という問題と、登録団体という職員団体団結という問題とは、本質的に切り離してもいいんじゃないかというのが公制審の御趣旨であろうと思います。したがって、もしこの団結権に関して何らかの法律上の手当てを必要とするならば、登録関係では、法人格の条項を検討する必要があると思いますが、その点はまだ国家公務員とも同じ規定でございますので、政府といたしましては、関係者の間で十分連絡協議を整えた上で措置するということにいたしております。
  17. 占部秀男

    占部秀男君 きょうは、はっきりと右だ左だということの結論は出ないと思うのですが、いまあなたが言われたように、検討をしよう、その点についての検討を各省とも連絡してやろうという、それで私はけっこうだと思うのですが、ただ希望としては——法人格だとか登録問題、これは別なんですよ。ぼくがそれをどうこう直せというのじゃなくて、登録問題、法人格問題等、これを設けたそもそもの出発点は、一般労働組合法上の組合地方公務員法上の組合との団結権差別をしようというところに一つの問題があったわけですから、それがもういま法的な効力があまりなくなってきて、事実上はそういう点は差別をする必要もなくなってきているのが実態なんだから、したがって、しかも二十八条の「勤労者」ということに地方公務員もはっきりしているのだから、この際、地方公務員法上の団体扱いを、これを労働組合法上のものに直したらどうかと、こういうことをぼくは言っているわけなんです。その点をひとつ検討してください。  同時に、この問題は、団体交渉権の問題にも波及するわけですね。交渉のいろいろな——これは国鉄その他と違って、当事者能力は十分にあるわけなんですが、扱いについてはいろいろあると思うのですけれども、この点についても、今度の答申の中では、給与とその他の勤務条件とを切り離して考えておるのですが、これは非常におかしな考え方であって、やはり給与勤務条件という本のは一本で交渉に当たるというように変えるべきじゃないかと私は思うのですが、この点いかがですか。
  18. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) 答申の書き方が、給与給与以外の勤務条件と分けている点についておかしいではないかという御指摘、これは私から論評する限りではないだろうと思います。  ただ問題は、給与を含めました勤務条件につきましては、やはり公務員の場合は、勤務条件法定主義というものがかぶってまいりますし、それからまた交渉につきましても、いわゆる民間労働組合のような団体協約締結権を含んだものでございません。したがいまして、そこにおのずから制約があるわけでございますので、少なくともここに、答申で示されておりますように、話し合いの積み重ねによって労使間の意思の疎通につとめなさいという点は、従来から、政府といたしましても、各地方団体におきましても、そういったような気持ちで話し合いを進めておりますわけでございますから、今後ともそういうことで進めればいいのじゃないだろうかという気がいたしております。
  19. 占部秀男

    占部秀男君 時間の関係がありますから、どうせ次の秋の国会じゃ、この問題は相当深くひとつやらなければならぬ問題だから、このぐらいにしておいて、スト権の問題について簡単にひとつだけお伺いしたい。  今度の地裁判決では、スト禁止違憲であるという考え方、その違憲であるという考え方基礎というのは、一律に争議行為禁止しよう、こういうところにこの違憲であるという判決理由があったわけですが、私もやはり同じような考え方を持っているわけです。やはり公務員地方公務員の職種、あるいはそれが持つ権力的な内容、あるいはその仕事が国民生活にどう影響するか、こういうような、内容によって禁止すべき対象と、禁止されなくてもいい対象とが当然出てこなければならぬと思うのであります。で、簡単にいえば、管理職等はあるいは禁止というか、制約されるかもしれぬけれども、少なくとも公務員組合に組織された一般非現業あるいは現業職員については、これは当然この争議権というのは許されるべきであって、その点はこの判決と私は考え方が同じなんですが、特にこの前の東京地裁判決、それよりも今度の和歌山判決のほうが明確になっているわけですね、違憲であると。その間に、最高裁違憲じゃないという、まあ、いいじゃないかというような判決もあったようですが、それより今度の和歌山判決のほうが新しいのであって、やはりこういう点についても、ざっくばらんに、率直に、いまの労働情勢というものを勘案して、検討する必要があるのじゃないかと思うのですが、いまの違憲の問題についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  20. 植弘親民

    政府委員植弘親民君) その点について、先ほど大臣から明快に御答弁いただいたわけでありますが、先生いま御指摘の点は、和歌山地裁の全体の判決文書をまだ読んでおりませんので、詳細にお答えするわけにはまいりませんが、一応要旨というようなかっこうで拝見いたしますと、いま先生指摘のように、いわゆる昭和四十年の中郵判決の限定解釈説を援用したような立場でその論議がされていると存じます。まあ先生よく御存じですから、詳しく申し上げませんが、ところが、去る四月二十五日の全農林警職法事件におきましては、その点を明快に最高裁が判示をいたしておりまして、公共性がある一方、法律によりその主要な勤務条件が定められ、身分が保障されているほか、適切な代償措置が講じられているのであるから、公務員争議行為禁止するのは、勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からするやむをえない制約と言うべきであって、憲法二十八条に違反するものではないということを判示いたしまして、従来のいわゆる合理的限定解釈説というものを、いわゆる四・二判決で、都教組事件で示しました最高裁大法廷の判決を、いわば全面的と言っていいほど四・二五の判決はくつがえしたわけであります。したがいまして、いま先生の御指摘の点は、中郵判決以来、都教組事件——四・二判決においてはその線があったと思いますし、また一つのお考え方かと思いますが、少なくとも四・二五判決ではその考え方を明確に否定いたしておりますので、私どもはその四・二五判決の線に従って考えたいと存じております。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 それじゃ、これで時間がきましたからおしまいにしますが、判決文を全文を取って、そしてじっくりひとつやりたいと思いますから、きょうはこの辺で終わっておきます。  ただ、希望としては、大臣も、あなたも、これ以上は言えないかもしれぬけれども、もうそういう世の中ではそろそろなくなってきておる。そういう実態を今度の公制審答申の中からくみ取って、ひとつ前進できるように、ぼくはこの大臣の時期につくり上げてもらいたいと思うのですがね。特に今度の答申には、先ほど言ったように、三つの議論が併記されておる。こういうような中で、じゃ自治省はこの三つの議論のどれを正しいと思い、どれをどういうようにとるかということは、今後の地方公務員労働条件だけでなくて、職場におけるいろいろな問題にすべて影響する問題ですから、ひとつ進歩的にやってもらいたいと思います。これは希望ですから、大臣の答弁は要りません。  以上で終わります。
  22. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 答えておきましょうか。  これは判決文を取り寄せましてよく検討したいと思います。  三公社五現業の問題についても結論が急がれておりまするときだけに——まあ、そのことを私、さっき言い違えたわけですが、そのときだけに、これはやはり決着をつけなければならぬ。併記という意味は、われわれ政治家のほうに問題を投げかけられたわけですから、私はそういう意味で、占部さんのいまの御提議はよくわかるのです。ただ問題なのは、やはり労働組合スト権をめぐって経済闘争と政治闘争とを混同されたり、とかく経済闘争が政治的にエスカレートしたり、またそういうふうに指導される。こういうことが、やはり公務員特殊性ということと相まって、なかなかいまおっしゃるような結論づけができにくいということも現実であります。したがいまして、この労働組合そのもののやはり健全な発展、これが期待されるわけでございまして、私どももこの推移を見守りながら十分検討してまいりたいと思います。
  23. 神沢浄

    ○神沢浄君 財政関係の人、見えていますか——大阪府の摂津市長から保育所の施設並びに運営についての国の負担金にかかわる意見書が出ておりまして、この意見書についての内閣のまた意見が示されているようでありますが、この書類をいただきましたので、これについて若干の質問をいたしておきたいと思うのですが、この内容を見ますと、これは摂津市という一つの限られたところにおける保育所という、これまた限られたものを対象にしておるようですが、内容的にはきわめて重大な、いわゆる大きな地方行財政上の問題になっておる超過負担の問題について、きわめて代表的に取り上げられておると思うのです。ですから、これは非常に大きな問題ですから、いずれまた十分な時間を得まして、超過負担の問題については質問をしたいというふうに考えておりますけれども、本日は時間の関係もありますから、きわめて骨格的な問題だけについて簡単にお尋ねをしておきたい、こう思うのです。  そこで、摂津市長からの意見書の内容を見ますと、大きく分けて問題点は二つになっているようであります。一つは、せっかくけっこうな法律や制度があるわけですが、この法解釈、いわゆる国におけるところの法解釈の問題、地方が考えておることと、国の法制度に対する解釈とが非常に食い違っておる、こういう点から発生しておる問題だろうと思います。それからもう一つは、いわゆる基準単価の問題でございまして、これはいつも繰り返される点ですけれども、これがいわゆる国の考え方と現実というものが全く大きく食い違ってきておるところに、何としてもいままで解決がなされていないような問題点、この二つが主要なその内容だというふうに考えられると思います。  そこで、第一点として、この摂津市長の意見書が述べておりますように、法制度を地方側から解釈をいたしますと、過去五年間に、総額でもって八千七百六十五万五千円の施設関係では支弁が行なわれておるのに対して、これについての国の負担金はわずか二百五十万円、こういう非常に大きな相違というものが生じてくるということは、どこに原因、理由があるのかということを、国側が把握をしている点についてのまず御説明をいただきたいと思います。
  24. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) 今回の摂津市から提出された保育所にかかわる超過負担の問題の解消の件でございますが、ただいま御指摘になりました、金額の差が生ずる原因は何かという点でございますが、一つは、国庫負担金の支出の基礎となっております単価と、現実に市が実施しております単価との間にかなり大きな相違があるという点、それからもう一つは、措置児童一人当たりの基準面積といいますか、施設の規模につきまして、厚生省が定めております基準と、現実に住民の要請を受けて自治体がつくっております施設との面積の差、基準の差、この二つに要約できようかと思います。ただ、保育所につきまして特に極端な差がこれまで生じておりますのは、いわゆる頭打ちという取り扱いがなされておりまして、施設の規模いかんにかかわらず、一定額までを限度として国庫支出金を支出する、こういう取り扱いが従前なされておりまして、このことが、ただいまお話しのように、非常に大きな差を生ずる原因になっているものと考えております。
  25. 神沢浄

    ○神沢浄君 せっかく児童福祉法というような法律をつくって、そうして児童の健康で文化的な生活というものを国の責任でもって保障をされているわけです。それに基いて保育所の問題もあるわけなんですが、したがって全国的に見ましても、いまお話がありました——単価の問題はあとにいたしましても、施設のいわゆる基準面積、これらはこの摂津市のみの問題ではなくて、もう全国的にみて、どの保育施設についても、国が定めてあるところの基準面積を上回らざるを得ないというのが実態だろうと思うのです。そうであるならば、児童の健康で文化的な生活を保障する以上は、これはもう国側の責任として、実際に必要な面積というものがそうであるならば、やはり基準を変えなければおかしいではないか、そうすると、国が定めておる基準というものは現実に合わないということであれば、それをほおかぶりをしていつまでも押しつけておるという点に問題があるからこういうケースが生じてくるわけでありまして、しかも、これはただ一、二の局部に出ていることではなしに、おそらく、全国各地方自治体、市町村におきましては、もうどこにおきましても同様にやはり困難をしておる問題だろうと思うんです。そういう点については、国の意見書もありますが、たいへん何かばくとした表現でございまして、うまく理解で春ないようなところがあるのですけれども、しかし、改善につとめていこうということを書いておるようでありますが、これは大臣から伺っておけばいいと思うんですけれども、いかがでしょうか。実際に法に忠実に児童の福祉を考えるならば、これは基準の面積、施設の面積も当然実態に合わしたものに直していかなければならぬという、こういう点をお認めになって、そうして今後改善をはかろうというような趣意でもってこの内閣意見というものが出されておるのかどうなのか、その辺をまずお伺いしておきたいと思います。
  26. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 超過負担の問題はしばしば当委員会でも問題になっておりますし、また法審議のときにも附帯決議等でも明らかになっております。これはすみやかに解消すべきものと思います。そうして、私どもも同じように政治家として長いことこういうことをやっておりますと、全くひどいですね、あの基準単価というものは。これは閣僚になったから基準単価は合法でありますなんというばかなことは言えない、ほんとうに。全く市町村が地主に手を合わせて、義侠心に訴え、愛郷心に訴えて土地提供を願うというような形からまずはじまるわけですね。ですから、私は今度の問題でもそういうことが原因をなしておる。否定するわけにはいかぬと思います。  ただ、これは現在まで年度、年度で決着をつけておることでありまするから、これを契機にしまして、裁判は裁判できまることでありまするが、私ども政府側としましては、今後にかけて、いまおっしゃるような超過負担などということがないように極力この解消につとめる。これは御承知のように、もう昨年来これを、六事業でありましたが、精査しまして、この負担解消にすでに予算計上をしてやっておるという現実に徴しましても、特にこのごろは資材の値上がり等が活発でありまして、超過負担の問題というのは解消されそうでされていないというのが実情だと思います。これはもうお互い政治家としてよくわかりまするので、大蔵省側にじんぜん査定をまかせるという従来の態度でなしに、これはもう関係省庁が団結をして、十分連絡の上、やはりこの解消にはねばり強く、しかも熱意をもって当たらなければならぬと思っております。これは十分努力いたします。
  27. 神沢浄

    ○神沢浄君 いま、大臣からたいへん前向きの誠意あるような御答弁がありまして、私はそれ以上何も追っかけてどうこうと言うつもりもありませんけれども、ちょうどついでですから申し上げますけれども、実際、もう保育所の問題などというのは特に重要でもって、子供に板の腰かけへすわっておれといっても、いまはなかなかもうそういう時代ではなくなってきているわけであります。また遊戯の場所にいたしましても、国が現在きめておるような範囲でもってやれと言っても、これはもう今日においては非常に無理になっておるような実態というものがあるわけで、あるからこそ、こういう問題が起こってくると思うんです。保育所だけのことでなしに、この前私はちょっと触れたと思うんですけれども、非常に矛盾に感じておりますのは、学校にしてもしかり。最近においては清掃施設なんというものになりますと、各市町村などにおきましては、食糧の不足のときには市町村長の命取りは食糧問題だったと、供出の問題だと。最近においては、やっぱりみんなし尿や清掃の施設がこれは市町村長の命取りの問題になってきているわけですよ。あれらの点について、私などの周辺にも幾つも事例があるわけなんですが、場所をさがすのに大体これはたいへんなことでありまして、今度は場所をさがしますれば、公害の問題だとか、それ、煙の問題だとか、それ、においの問題だとか、いろいろありますから、それはもうかなりの出血的方途を講じなければ、もうすでに取得ができない。こういうようなものについては、国はもう機械的に定めた法制度の解釈を、非常に何と言いますか、まあ国なりの立場でもって非情に行ないまして、ですから、この保育所の場合もそうですけれども、清掃施設なんかの場合においても、私どもの知る限りでは、たとえば一億円要するところへ、それでは国からどれだけの補助が行なわれるかというと、ほとんど百分の四、五くらいのものでもっていま終わっているんじゃないですか、あるいはそれ以下かもしれません。これでは補助とか助成とか言える範囲のものではなくて、むしろ何か、ある市長などに言わせれば、少しくらい何も国からもらう必要はないわというような意見さえも生じておるような現状が実際あるわけなんです。これはひとつ、この保育所問題でもって意見書が出た、このことをひとつ契機にしまして、もっともまあ国側としては、かかわるところの法制度の生きた運用をやっていけるようなことを、この際、ひとつ真剣に考えていただくことが必要だと思います。これは申し添えるわけなんですが。  そこで、時間もありませんから、いまの単価の問題ですが、定められた基準単価自体がもうこれは食い違っていると思うですけれども、それに追いかけて、いま物価の値上がりがきわめてこれは極端であります。たとえば、八月などの場合では前年の同月比が一六、七%くらいになっておりますか、政府が発表したものにおきましても。こういう状況の中でもって、いま市町村では、ことしの予算執行でもって、ほとんどこれはおしなベて頭を打っておるわけです。大体、みんな業者がキャンセルをするんですね。かつて四月ごろ請負されたものが、もう今日においては、どんな無理をしたっても、とうていその後の物価の上昇についてはやっていけないということでもって、業者がほとんどキャンセルをしておるというのが実情で、それぞれ県や市などにおいてはたいへんな困難をいたしているようであります。  私は、実は山梨県ですけれどもですね、この間、県の当局からぼくはそういういわば悲鳴みたいなものを聞かされたんですが、ちょっと参考までにこの新聞の記事を申し上げますけれども、公共事業の関係でもって、まあことしは大体、さっき大臣のお話がありましたように、超過負担の問題については国側がある程度前向きに措置をされて、そして二〇%ほどの単価アップがされたことは事実です。ですけれども、それにもかかわらず、義務教育施設の場合は一平方当たりが四万五千百円に改正をされた、引き上げられてですね。ところが、どうもそれでは無理ではないかということで、県自体ではその改定をされたものにさらにその上乗せをして、一平方メートル当たり五万六千円ということでもって予算を組んだ。ところが、それでも、今日においてはもう入札のものについてはそんな単価では落札ができない。四月ごろ済んでおるものについてはキャンセルだと。こういうような事態が現実に出てきているわけなんですね。  こういうような問題につきましては、いま、これは何も自治省の問題ではなくて、それぞれ所管省の問題に分かれると思うのですけれども、しかし、自治体のそのめんどうを見る立場でもって、自治省としましてはこういう事態をどうそれじゃ克服をし、どう指導されていくかというような点を、まあ非常にかかわり合いの大きな問題ですので、この際お尋ねをしておきたいと思うのですが。
  28. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 自治省としては、やはり超過負担の解消というのは重大な責任であると感じております。したがいましてまあやかましく各省庁と連絡をとって、基準単価であるとか、基準面積であるとか、そういったものの取り上げ方の是正をして今日に至っておりますが、なお今後もこの問題は十分ねばり強く努力してまいりたいと思います。まあ、最近の具体的事例がもし御必要であれば、関係者から申し上げます。
  29. 神沢浄

    ○神沢浄君 いや、この際、私、ちょっとお尋ねしておきたいと思いますのは、さっき、まあ新聞記事など引例いたしましたが、現に工事ができないですね。せっかく予算を定めても執行ができない。ですから、当然それは取捨選択をいたしまして、特に緊要なようなものについては、これはもうまさか、できないからといって放任して放置してしまうわけにはまいらぬでしょうから、県自体は、やはりその業者の落札可能の範囲まで単価など引き上げて措置をしていくだろうと思うのです。しかし、それだと地方の財政というのは成り立たないようになってまいりますから、それらの状態に対して、国の側とすればどういうように自治体の財政問題克服のために手当をされていくか、どんなふうに考えておられるかというふうな点を実はお尋ねしておきたいと、こう思うのですが。
  30. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) 最近の異常な建築物価の上昇に対処するために、すでに本年度に入りましてから、一般公共事業につきましては、建設省あるいは運輸省、農林省等の公共事業を所掌する省庁でそれぞれ連絡されまして、契約の発注時点における実勢単価によって工事を施行する。当然、そうしますと、予定された工事量は消化できないわけですけれども、工事量を圧縮してでも実勢単価によって事業を施行する、こういう方針がとられております。これに対応しまして、公営住宅ですとか、あるいは学校のような、いわゆる標準単価方式で事業を行なっているものにつきましては、一般公共事業のような弾力的な扱いがしにくいわけでありますけれども、これについては、本年に入りましてからの実勢を調査して、すでに公営住宅につきましては建設省のほうで、また、公立文教施設につきましては文部省のほうで、調査資料をもとに単価改定が行なわれ、これによって補助金の配分等がなされております。ところが、一ぺん改定がなされた後におきまして、また、鋼材の値上がりですとか、あるいはビニール電線の不足とか、いろんな要素が重なって、その改定された単価でもなお工事が落ちないという事態が各所に発生しております。そこで、現在政府部内で、関係省庁で連絡をとりながら、まあ問題は資材の絶対的な不足という問題が背景にありますので、不要不急の工事を先に送る、いわゆる公共事業の施行繰り延べということが政府の方針として取り上げられまして、去る八月三十一日の閣議決定に基づいて、それぞれ関係省庁が具体的な繰り延べ措置を講じております。それからまた、必要な事業につきましては、資材を確保するという見地から、通産省をはじめとしまして、資材に関係のある関係省庁でそれぞれ必要な措置を講じております。と同時に、問題になりますその後の単価の実態につきましては、現在なお事態が動きつつある、流動的であるということで、把握がなかなかむずかしいのでありますけれども、早急にごく最近の実態を把握して、これに対処し得るような合理的な単価を定めるということをそれぞれ関係省庁が申し合わせして、いまその作業を進めておる段階でございます。したがいまして、それによって新しい単価がきまりますれば、その分を事業量の圧縮で消化するのか、あるいは義務教育のように、事業量の圧縮ということは不可能でございますから、その場合には、それに対する不足分の予算措置を講ずるというようなことが具体的に取り上げられてくることになろうかと思います。で、私ども自治省といたしましては、現実に事業の実施の責任を持っております自治体が、財政面からこのことのために窮地に立たないように、国庫補助金の面で措置するものは必要な予算措置を講じていただく。それから、裏負担に対しましては、起債その他の面で万全の措置を講ずるということで、必要な調査なり折衝を重ねておるところでございます。
  31. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、金大中事件について何点かお尋ねしたいと思います。  そこで、けさの朝日新聞を見ますと、金山前駐韓大使の記者会見で話したことが載せられております。これをまず主体にしてお尋ねをしてみたいと思うのですが、まず最初に、金山前駐韓大使が今回訪韓をしたという、これが、特別に何か政府の任務を帯びて出かけて行ったのか。どういう立場で行かれたかですね、その点をまず、外務省ですね。
  32. 中江要介

    説明員(中江要介君) 金山前大使が韓国に行かれましたのは、金大中事件が起きてからこれがたしか三度目と聞いておりますけれども、これは現役の大使をおやめになってから日韓間のいろいろな研究団体の幹部として往復しておられる、その一環の訪韓であると、こういうふうに聞いておりますし、今回の韓国訪問にあたって、特に政府として、いま御質問にありますように、特別の使命をお願いするとか、任務をお願いするとかということはなかったと聞いておりますが、ただ、日本政府はどういう立場でいるのかということにつきましては、それからまた日本の世論がどういうふうに考えているかということにつきましては、もちろん、この微妙な時期に訪韓されますので、十分個人的には御研究になって行かれたと、こういうふうに承っております。
  33. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、この金山前大使の言われていること、これについては全然政府としては無視してかかるという、こういう考え方ではないわけですね。その点はどういうふうに解していいですか。
  34. 中江要介

    説明員(中江要介君) けさの新聞に出ておりますようなお話をされたかどうかにつきましては、正式に直接の御報告を受けておりませんのでつまびらかにいたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、金山前大使が韓国でおっしゃっておられることは、金山前大使の個人の御感想というふうに私どもは受け取る次第でございます。
  35. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこでこういうことが言われているわけですね。「金大中事件がこう着状態に陥っている中で来韓し、その行動が注目されている金山前駐韓大使は十七日、宿舎のソウル半島ホテルで記者と会い1韓国政府首脳は、条件が整いさえすれば金大中氏の渡日を認める方針を明言している」と、まあこういうふうに言われているわけですね。そこで、これで答弁になるかならないかわかりません、いまのあなたのお話ですとね。私は、この金大中事件が大きな問題として取り上げられている中で、金山さんが向こうへ行ったという、これは注目されているということですね。そういう立場でこういう発言をしているわけです。  そこで、まず第一にお尋ねしてみたいのは、こういう韓国首脳の意向について、いままでに何らかの報告ですね、報告があったのかどうかということですね、この金山さんが言われているようなことについて。この点はどうです。
  36. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいまの金山元大使が話されたという内容については、先ほども申し上げましたように、正式の報告を受けておりませんので、どういう言い回しをされたか存じませんけれども、私どもとしては関心のある点であることは間違いございません。  ただ、その点について、いままでそれでは韓国政府首脳はどういうことを言っていたかといいますと、これは現在の駐韓大使である後宮大使に対しまして、向こうの首脳の言い方としては、金大中氏はいま韓国の捜査当局が捜査をしている段階であるので、再来日を認めるわけにはいかないと、こういうことを言っておるのが公式発言として残っているものでございまして、そのことから、いま再来日を期待することはむずかしい、それからこんりんざい再来日は不可能であるとも言っていないという点とございまして、その辺がどういうふうに発展いたしますかは、これからの動きを見るよりしようがない。で、現在までのところ、韓国首脳はどういうふうに言っているかという御質問に対しては、いま申し上げたところでとまっておるというのが現状でございます。
  37. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、この条件さえ整えば渡日を許すという、認めるという、こういう発言をしているわけですね。そこでね、条件さえ整えばという、その条件とはどういうような内容であるかという、そういったことを外務省としてはどういうふうにお考えになっているか、この条件という問題については。
  38. 中江要介

    説明員(中江要介君) これは韓国側がどういうことを条件として考えているかはなかなか憶測がむずかしいのですけれども、日本側からいいますと、現段階で金大中氏に来ていただきたいと言っておりますのは、何回もすでに話題になっておりますけれども、わがほうの捜査に協力していただくために来ていただきたい、こういうことでございますので、わがほうからはどういうことが条件かといえば、これはわがほうの捜査に協力できる状態で来ていただきたいということになろうかと思いますが、韓国側でそれじゃどういうふうに条件をつけるだろうかということについては、ちょっとここで推測でものを言うにはあまりにも機微な問題かと思います。
  39. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでね、そういうお答えは私はちょっとのんびりし過ぎていると思うんですよ。少なくとも金山さんは正式な訪韓ではないかもしれない、政府の要人として、いわゆる政府の立場から行ったんじゃないと、こういうことかもしれない。しかし、前駐韓大使である、こういう立場である。そこでこういう発言をしているわけですね。そこで、いま金大中氏の事件については、わが国内でもって沸騰しているわけですね、この議論が。そういう中で金山さんがこういうことを言っているわけです。条件さえ整えば渡日を認めるという韓国首脳の意向であるということを。だとするならば、いま私はお尋ねしたわけですね。その条件さえ整えばという、その条件というものを早くわが国としては把握するということが、これはやっぱり一つの責任だろうと、こう思うんですね。そこで、いわゆる正式な——金山さんの立場は正式な立場じゃないかもしれないけれども、当然その辺のところを直ちに確認をするという、どういういわゆる意向を韓国政府が持っておるのか、この点を私は早急に確認すべきじゃないかと、こう思いますがね。その点はどうですか。
  40. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省としてのんびりしているわけでございませんで、通常、こういう重要な時期に、重要な問題について、かりに個人的な立場であれ、前駐韓大使という立場におる金山大使の記者会見なり、記者団に対する話がありますと、公電でもって、正しいというか、正確な発言ぶりというのが来るわけでございまして、それはきのうのきょうでございますので、私の手元にはまだその正式の報告が来てないので、ちょっと何とも申し上げられませんけれども、いずれ報告が参りましょうし、もしそれがおくれているようでしたら、先生もおっしゃいますように、私どもも早急に、その実質的な内容についてこれは早くただしたいと、こう思っております。
  41. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 質問に入る前に、委員長、ちょっと申し上げたいのですけれどもね。法務委員会から中江参事官にすぐ出てほしい由ですと、こういう書きものが私に回ってきたのです。
  42. 寺本廣作

    理事寺本広作君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  43. 寺本廣作

    理事寺本広作君) 速記を起こしてください。
  44. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、この金大中氏事件については、私が申し上げるまでもなく、わが国の韓国に対する要請——あるいはまた警察庁の努力によっていろいろな事実が判明してきておる。そういう中で、いろいろと韓国に要請もしてきた。しかし、その答えを見ると、これは拒絶反応という以外にない。何ら誠意をもって答えているというふうには考えられない。そこで、そういういわゆる韓国政府姿勢ですね、これはほんとうにわが国の捜査陣と——わが国と韓国が誠意をもって、韓国自体が誠意をもってこの問題を解決するんだと、そういう取り組む姿勢というものが実際にあるのかないのかという問題、これは疑わしいと思う。そういった点について外務省はどういうふうに踏まえているか、とらえているか、この点をひとつ。
  45. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先生指摘のように、本件の捜査についての日韓両国の協力関係というのは、確かに期待しているように進展もしないし、なかなかうまく進んでいないということについては、外務省も非常に残念に思っておりますし、打つ手がないかということで毎日のように検討しておるんですが、いま開かれておりますアジア太平洋地域大使会議のために一時帰国してきました現在の駐韓大使の後宮大使が、帰国の前に向こうの金鍾泌国務総理に会いましたときに、韓国政府首脳としても本件を納得のいく形で解決したいが、いましばらく時間をほしいと、こういう話であったというふうに報告を受けておるわけでございまして、われわれからいたしますと、時間をかけることなく、早く納得のいく解決に持っていくことが日韓両国にとっていいことなんだということは、るる毎回先方に話しておるわけでございますけれども、韓国側としては、いましばらく時間の猶予をほしいと、こういうことを言ってきておりまして、その会談がありましたときの後宮大使の得られた感触といたしましては、韓国首脳も、本件は内外に納得いく形で解決したいという姿勢を示しはじめているというふうに受け取っておられますので、外務省は現在のところでは、いましばらく静観して韓国の出方を見ようじゃないかということにしておるわけでございます。
  46. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 しつこいようですけれどもね。いまのお答えはわかりました。そこで、この問題についての論議が集中してきた。その内容からいいますと、主権が侵害されたんではないかという、こういう問題が一つ大きな点でありましてね。なお、これについては、外務省としてはまあ法律的な立場からこの説明をやってきた。そして主権が侵されたかどうかという問題については、これは調査の段階で断定はできないと、こういうふうなことを繰り返してきたわけですよ。まあ言うならば、いまのお答えもそれに似たようなものだと私は思います。  そこで、現在も、いまのお答えからすれば、現在もやはりいままで繰り返して外務省の述べてきた、そういう考え方に変わりがないんだという、こういうことになりますね。その点どうですか。
  47. 中江要介

    説明員(中江要介君) 主権侵害と断定できないと言っております立場には、現在まで日本側が得た捜査の結果、それからけさほど韓国から示された韓国側の捜査の中間報告、そういうものをあわせ見ましても、まだ断定できないという状況に変わりはございません。
  48. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、そういうふうに繰り返してきたいわゆるいままでの経過、そしてその時点、それと、その後、いわゆる警察庁の努力によっていろいろとこの証拠固めがなされてきたわけです。そこで、たとえば金東雲一等書記官の指紋が検出されたんだと、あるいはまた劉副領事の乗用車、これがどうも金大中氏を運んだ形跡がある、こういう問題、また、最近では電金号の動き、これが非常に疑惑があると、こういうことですね。そういうふうに警察庁がだんだんだんだん積み重ねてきた。そして、言うならば韓国の官憲がいわゆるこの問題にタッチしているんだという可能性というもの、こういうものが、警察庁の努力でだんだんだんだん積み上げられてきている。ですから、いままで外務省が言ってきたその時点と、いまの時点はだいぶ違ってきておると思うんですね、こういう内容が明らかになってきた。そういう時点でも、なおかつまだ断定できない−一それは断定できないかもしれないけれども、そこに疑いを生ずる、こういうような姿勢に変わってきても私はいいと思いますね。その辺が、私は外務省のいまのお答えにしても、断定できないというそれだけでは私は済まされないと思うんです。それで済ましちゃうとすれば、あるいはここまで警察庁の積み上げでもってだんだんだんだんと問題が明らかになってきておる、そういう段階で相変わらず外務省が同じようなことを言っていたんでは、国民が納得しないと私は思うんです。もう少し外務省の自主的な姿勢というものをこういう時点ではっきりさすべきであると、私はこう思いますがね。どうですか。
  49. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私ども外務省として断定できないと言っていることは、疑惑がないということではございませんので、本件につきましては、当初から、国民世論の中でも、また国会の審議を通じましても、韓国の公権力の行使があったのではないかという疑惑が非常に強かったわけでございます。したがいまして、それを断定して韓国に日本の主権が侵害されたといってきめつけるには、やはりそれだけの証拠がはっきりしてからでないと、事柄があまりにも重要でございますので、そういうふうに申し上げているわけでございまして、警察当局のたいへんな御努力の結果、現在までのところは、金東雲一等書記官が関与した疑いがきわめて強いということについて相当の証拠があがったと。あとの件につきましては、まあこれは警察のほうから御答弁いただけると思いますけれども、それぞれ捜査の段階であるようでございますので、外務省としては、はっきり公権力の行使について確証を得た上は、これは断固たる措置で臨むということで対処しているわけでございます。
  50. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 まあその点ですね、理屈としてはわからないわけじゃありませんけれどもね。私はいま申し上げたように、一番最初の時点と、いまは大きくそういう捜査の段階で変化を来たしているということです。ですから、この時点で何らかの——外務省としては、相手の出方ばっかり待っているということじゃなくて、やはりもう一歩、外務省としての行き方というものは変化してきてもいいんではないか、こういうふうに感ずるわけですね。  そこで次に移りますけれども、大平外務大臣が、十一日の参議院の法務委員会で、国連総会までに解決することを希望するというようなことを言っていますね。で、これの解決時期の考え方ですね、この考え方について大臣が表明をしたということなんですけれども、警察庁の見通しですね、これはどういうふうに考えられますか。二十三日ごろまでに解決をするという、これ、希望するということを外務大臣は言っておるわけです。警察当局としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  51. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 警察当局としては、一日もすみやかに問題が解決することを望むものであります。ただ、警察としては、やはり現在の時点におきましても、金東雲氏については重要な容疑者として割り出しをしたわけですが、他の関係者についてはそのきめ手を得べく鋭意捜査中と、こういうことでございまして、大平外務大臣がいつどういう形でこの落着を望まれるかということは、外交的な配慮の上に立っての御意見であろうというふうに承り、外交折衝についてはあげて外務大臣にまかせる、私どものほうは事の真相を糾明するために鋭意捜査に全力を注いでいくと、こういうことで合意を見ておるわけであります。したがって、二十三日といい、あるいはまたしかるべき時期といい、われわれとしては、早く真相が糾明されることが望ましいという根本方針に変わりはないわけでございます。
  52. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大臣のおっしゃることよくわかります。それはもう鋭意早期に解決しようというその努力、またその努力をしていることも認めます。しかし、いわゆる一国の大臣、いわゆる外務大臣が、この事件について二十三日、言うならば二十三日ごろまでには解決したいという希望、これを発表したわけです。  そこで私の聞きたいのは、警察当局としていままで努力をしてきた、また今後もしていく、それはわかるんだけれども、大臣がこういうふうに言われていることについて、警察当局としての見通しはどうなんだろうかということが私は聞きたいわけです。
  53. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私の立場から申しますると、さっき申し上げたとおりでございまするが、しからば君はどう思うと、こういう御質問でございますね。これなかなかむずかしいところですが、やはりこういう外交的に微妙な要素をはらんだ問題というものは、外務大臣の方針、これにまあ同調をするといいまするか、理解を示すという形でいくことが、同じ内閣の閣僚としては必要ではないかというふうに思っておるわけでございます。したがって、二十三日といいますと、もう目睫の間に迫っております。先方ではまだ捜査は思うように進まない——今朝十時に、この金大中氏事件に対する韓国側の特別捜査本部が設置されて以来の発表がございました。その発表によりますると、まあいろいろ指摘しておりまするが、その中の重要な点は、「金東雲に対し捜査したところ、犯行に加担した嫌疑がない。金大中、金敬仁、梁一東に対しても、金東雲の犯行加担の如何を調査したところ、犯人らとは全く違うとそれぞれ陳述した」、こういう発表があるわけです。これは韓国とわが外務省と同時発表という形で発表された、その六項目目の文面をいまお読みしたわけであります。ただ、これだけでもよくわからない。これはわがほうでは指紋が完全に合致したということで、これをきめ手にして濃厚な容疑を追及しておるわけでありまするが、この指紋のことには触れておらぬのであります。  しからば、警察当局としては一体これにどう対応するかということになるわけでありまするが、もし韓国側が言われるように、嫌疑がない、金東雲はシロだというならば、これはやはり当然任意出頭でもして、わがほうは早く解決しようと言っておるんですから、その嫌疑を晴らすように協力されることが望ましいと、こう言わざるを得ないと考えておる次第でございます。
  54. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私がお聞きしたことずばり、それはちょっと無理でしょうという、こういう話も出てきそうもありませんので、また先へまいりますけれども、そこで、これは金山前韓国大使とは関係ございませんけれども、金首相が、事件解決のためにもう少し時間をかしてくれということを、これは正式に言っておるわけですね。そこで、先ほど申し上げたように、外務大臣は二十三日ごろをめどにして何とか解決したいという、こういうことを言っておる。私たちからすれば、全然状況わかりませんからね。そこへもってきて金首相はこういうことを言っておるわけです。そこで、もう少し時間をかしてくれということは、いわゆる大平外務大臣が二十三日ごろという一応のめどをつけて発言をしておる、それにこたえて、こういった、もう少し時間がほしいということを言っておるのか。その辺をやっぱり明らかにしてもらいたいなという気持ちです。ですから、そこら辺を外務省としては、もう少し時間をというそのめどの問題、これをどういうふうにとらえておるのか、この点ひとつ。
  55. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先ほど先生のおっしゃいました大平外務大臣の御希望の点でございますけれども、これはたしか参議院の外務委員会でおっしゃったんだと思いますが、二十三日から国連総会に出かけるので、それまでに何とか見当をつけるように努力すべきではないかという御質問がありましたのに対しまして、できればそういうふうに早くめどがつくのがいいんだけれども、自分としてはそれまでに目鼻がつく自信はないというような言い方をされたと私どもは聞いておるわけなんです。それで、希望としては、先ほど来ございますように、政府としては、もう二十三日を待つまでもなく、一日でも早いほうがいいとは思うんですけれども、二十三日にニューヨークに立つ以前にそれじゃ必ずうまくいくかということについては自信がない、こうおっしゃいましたその真意は、私ども、大臣といろいろ御相談しておりまして感じますのは、急ぐのあまり筋を曲げるということはこの際すべきでないという、非常に固い御決意があるわけと思います。したがいまして、いついつまでにしなきゃならないからといって、内外に納得のいかないような、筋を曲げた解決を急ぐということはしないと。そうかといって、筋を通すためにそれじゃいつまでもほっとくのかというと、それもできない。したがって、内外に納得のいく筋の通った解決を一日も早くするということで、抽象的に覆うと努力しているわけでございますが、そういう意味から、できれば、今回後宮大使が帰られる前に、金鍾泌国務総理と会ったときに多少のめどがつけばいいがという希望を持っておったわけでございますけれども、金鍾泌国務総理との話では、向こうも、納得のいく解決をはかりたいけれども、いましばらく時間的余裕がほしい、こういうことであったということで、この時間的余裕がほしいということが、いま御質問にありますように、大平大臣が二十三日までに目鼻がつけばいいんだけれどもという、その期限といいますか、そういう希望的な期間と関連があったかという点については、私は全くなかったように印象を持っております。といいますのは、韓国としても早く——もちろん韓国のほうがむしろ早く解決すべき問題と思っているに違いないんですけれども、これは韓国側の捜査の進捗状況その他から見て、いましばらく時間がほしい、こういうふうに受け取っておる次第でございます。
  56. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、もうしばらく時間がほしいという問題については、そのめどは全然つかぬということですね。新聞発表等からすれば、また韓国自体が、こちらのいろいろな要請に対して、拒絶的な反応と言っていいような態度を示してきておる。その中で、相当な捜査が韓国においても進んでおる。二十日から行なわれる韓国国会においても、そういったものを明らかにするというようなことを言っている、豪語しておるわけですよね、実際には。ですから、そのめどという問題がある。日本の国では、国会において大きな問題としてこれが取り上げられている、そういうさなかに、そんなゆうちょうな——われわれから言わせれば、非常にゆうちょうですよ。しばらくめどを——そうしてその反面、もう相当な捜査が進んでおる。今度の国会においてそういったものも発表すると、こう言っておるんです。だから、そのめどということについて、これだけ大きな問題として日本において取り上げられている問題であるわけですから、当然、そのめどについても、大体どのくらいかというようなことを私は明らかにしてしかるべきじゃないか、こう思うんですね。それに対して、やはり韓国の都合があるだろうから、都合があるだろうからといって、のんべんだらりと待っているような姿勢というものは、私は、これは納得できない。やはり外務省として、そのめどについてはそれはどうなんだという姿勢を示して初めて、私は外務省のその立場についての国民の納得がいくんじゃないかと、こういうように思うんですが、その点どうですか。
  57. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先生の御意見に全く私どもも同じ気持ちを持っておるわけでございまして、待ってくれ、待ってくれでいつまでも待てないという気持ちが一方にあると同時に、ちょっと待ってくれと言って、その二日後に当たります——三日後ですか、きょう、その捜査の中間報告というものが出されたわけですけれども、それを見ましても、先ほどもお話がございましたけれども、それほど非常に進捗して事件の全貌が明らかになるというところまではいってなくて、むしろ金東雲一等書記官は本件にかかわりがないとか、そういったことが入っていて、わがほうの捜査結果と韓国の捜査結果との間には、必ずしも一致している面が多いわけでもございませんので、まだまだ詰めなきゃならない問題はあろうと思います。で、ただ、向こうが待てと言えばいつまでも待つという姿勢では決してございませんので、ただ、あまり、事を急いで、結局筋の通らないことになる、あるいは内外に納得のいかない解決になるようなことは避けるということで、慎重に時期を見計らっている。こういう点で、これは非常に国と国との関係のじれったさというもので、まことに遺憾な点なんですけれども、やむを得ない時間の経過というふうに私どもは思っておる次第でございます。
  58. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 じゃ先にいきますが、これは大臣に伺いますが、最近、韓国側が極秘裏に李秉禧無任所相を東京に派遣しているということですね。これについて、警察庁や外務省はこの李秉禧無任所相と接触がありましたか。
  59. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) 李秉禧長官が日本に参っておった、どういうことで参っておったのか存じませんが、参っておったということは存じておりますけれども、私どもとしては接触いたしておりません。
  60. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは政治的な意味が大きいと思いますから申し上げますが、私も実は新聞で知って、君たちは知っておるかと。知ってはおりまするが連絡はありませんと、こういう報告を受けた程度で、全然接触はございません。
  61. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 外務省、どうですか。
  62. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省も李秉禧無任所長官とは接触はございません。
  63. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それで、どうお考えですか。日本で、わが国でこれだけ大きな問題として論議の的になっておる、そういうときに、こっそり東京へやってきて——国の相当の立場だということですね。それで、何の話し合いもしないで、何のために来たかわからぬけれども、もう帰ったかどうか知りませんけれども、そういう状態である。全然私ども知らぬという、こういうことは、日本の国を、わが国を韓国がなめ切っている、こう言い切れるんじゃないですか。その辺の考え方は、大臣あるいは外務省、どういうようにお考えになっているか。
  64. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省で承知しておりますのは、李秉禧無任所長官が台湾に寄った帰りに日本に寄ったということで、入国されたのは十日前後かと思いますが、十四日に日本を離れられたというふうに聞いておりますし、台湾に行かれる方が往復の途次日本に立ち寄られることはよくあるケースでございますし、こちらからも接触はもちろんいたしませんでしたし、向こうからも接触したいという希望もなくて、特にどうこうということなくて過ぎたというのが実態でございます。
  65. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは日本側としては、金大中問題に非常に神経をとがらせ、その早期解決を求める、こういう立場におりますから、李秉禧氏そのものが日本に立ち寄られるというと、何らかそこに関係があるんじゃないか、こういう推測も出るわけでしょうが、これは韓国全体からいいまするならば、やはり金大中事件とはかかわりなく政治は毎日存在するわけですから、無関係であったかもしれません。そのあたりはちょっと様子もわかりませんし、李秉禧氏が寄って、何ら政府側に接触がなかったから日本をなめ切っておるという結論は少し早いんじゃないかという感じがいたします。
  66. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 非常に、私から言わせれば、そういうお話はゆったりし過ぎていると思いますよ。日本がこれだけ国会でも騒いでいるのにもかかわらず、一国の相当の責任者の立場の人が来て、何のために来たか知らない、こっそり来てこっそり帰る、こういうことに対して、それはまあいろいろな、立場が立場だから、金大中だけの問題だけにとらわれているわけにもいかぬだろうというような発言ですけれども、私はそういう考え方は、それではとてもこの事件は、考え方としては早急に解決したいという考え方はあるかもしらないけれども、現実の面ではそういう考えでは解決ははかられないんじゃないかという感じはしますね。
  67. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ちょっと誤解があるといかぬから申し上げておきましょう。  これは誤解があってはなりませんので、あらためて申し上げておきますが、私が言うたのは、政治というものは絶えず動いておるから、台湾の帰途日本に李秉禧氏が寄った、ただしそれは、金大中問題等の渦中の人でなければ、これが直ちに外務省なりあるいは捜査当局なりに接触をしない、これはもう世間に、国際的にもあることですから、私は何も、ゆとりをもって言っておる、ゆうちょうに言っておるわけではなくって、一つの常識論を申し上げたという程度のものでありまするから、誤解のありませんように。
  68. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 もう時間が……。  そこで、警察庁の努力で金一等書記官の指紋が出てきた。それから劉副領事の乗用車、この問題、それから竜金号の疑惑、こういう事実がはっきりしてきたわけですね。この事実関係を韓国政府はどういうふうにとらえているかということですね。この点について、まずひとつ答えてください。
  69. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) 金東雲書記官の容疑の点につきましては、すでに御承知のとおりであろうかと思いますので省略いたしますが、劉副領事の車の点につきましては、劉副領事の持っておる車のナンバーが品川五五−も−二〇七七というナンバーでございまして、事件当日、ホテルの駐車場にいた車の中に下四けたが二〇七七の車があったということで、関係があるのではないかということが言われるわけでございますが、二〇七七の車につきましては、東京だけで百六十一台ございまして、現在その一台一台につきまして、当日ホテル・グランドパレスに来ておったかどうかということについて確かめておる最中でございまして、現在まだ全部調査し終わっておりません。したがいまして、私どもといたしましては、現在の段階では、この下四ケタ二〇七七の、ホテル・グランドパレスに、事件当時その駐車場にいた車が、劉副領事の車であると断定はいたしておらないわけでございます。下四ケタ二〇七七の車につきまして調査を進めまして、ほかに容疑のある車がないということになりますれば、その段階で検討をし、結論を出すということになろうかと思います。いまの段階では、劉副領事に具体的な容疑があると申し上げる段階には至っておらないわけでございます。  竜金号につきましては、御承知のように、先月末及び本月、韓国側から捜査の中間報告が発表されておりますが、その中に、船の捜査のところに、竜金号についても調べたところ、容疑がないということが出ておりまして、したがいまして、私どもといたしましては、竜金号につきましては、八月八日、九日の段階で乗組員に若干不自然な点があるということは承知いたしておりますが、その不自然な点が、この事件と関係して不自然であったのかどうかということについては、何ら私どもは判断する材料を持っておらないわけでございまして、したがいまして、竜金号につきましては現在のところ具体的な容疑はないと、こう申し上げるべき段階であろうかと、かように考えておるわけでございます。
  70. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あの、金一等書記官の指紋についていまお答えがなかったのですけれども、いまのお話だと、劉副領事も、これはだんだんいまの話を聞いていると容疑が薄れていくという感じですね。竜金号にしてもですよ。まあ私たちは、新聞を通してこれは有力な容疑じゃないかという感じを持つわけですがね。いまのお話ですと、だいぶそういった私の感覚というものが違っておると、こういうふうに思わざるを得なくなってきた。そこで、金一等書記官の指紋については、これについては韓国政府は何と言っているか。また同時に、外務省として、こういう事実が明らかになった。で、これについて、韓国政府に対してこの指紋について、あとから言うわけですけれども、時間がありませんからついでに言いますけれども、いわゆるこれについては、金一等書記官についてはアリバイがあるということも向こうは言ってきていますね。そんなものは当てにならぬのだと、極言して言うならば。そういうことを言っているわけです。そこで、それじゃこちらでもって調査した、警察庁で調査したその指紋はどういうことになるのか、その辺の関連といいますか、その点をぼくは明らかにする必要があると思うんですね。その辺を韓国政府に、指紋のことについてどういうような話をいままでにしてきているのか、その点、ひとつ明らかにしていただけませんか。
  71. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) 指紋の点につきましては、いまお話のございましたように、金大中氏が押し込められた部屋に遺留してあった指紋の一部と、金東雲書記官の捜査の過程で入手した指紋とが完全に一致いたしますので、目撃者の証言等もあって、金東雲書記官の容疑につきましては、私ども強い自信を持っておるわけでございます。今回、韓国側の捜査の中間発表があったわけでございますが、その指紋の点につきましては何ら触れておりませんし、また、いろいろの報道関係などで言われておりますアリバイの点につきましても、何ら触れておらないわけでございまして、金東雲氏の捜査につきましても、中間的な発表ということではなかろうかという印象を受けておるわけでございます。
  72. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いまの問題について一つだけ。  いまの問題ですね、これは警察庁は自信を持っているわけでしょう。自信を持っているわけだ。しかし、韓国はそんなばかなことはないんだと言っているわけですよ。そうでしょう。それに対して警察庁はどう考えているか。韓国はそんなばかなことはないと言っている、こちらとしてはこれはもう完全な証拠になると言う。それはそうでしょう、指紋ですからね。何のために、そこのいわゆるホテル・グランドパレスですか、そこに何のために行っておったのか、その辺の解明を私はさす必要があると思うんですよ、指紋があるんですから。それじゃ何のために金一等書記官はそこにおったのか。その点について、外務省はそういったことを強く韓国政府にその回答を私は要請すべきだと。どうですか、その点。
  73. 中江要介

    説明員(中江要介君) 当初、この金東雲一等書記官について任意出頭を東京で要請しましたときも、それから同時に韓国で後宮大使を通じて要請しましたときも、いま警察当局からおっしゃられたような、確たる証拠に基づいてきわめて強い疑いがあるので、任意出頭をして日本の捜査に協力してもらいたいということを申し入れておったわけでございます。それに対して、新聞報道その他で、金一等書記官はアリバイがあるとか、関係がないとかいうことがございましたけれども、けさの発表の、正式の向こうの中間発表の中で、犯行に加担した嫌疑がないということを正式に言ってきたわけでございますので、これは先生がおっしゃいますように、われわれが確たる証拠を持って話していくこととまっこうから対立する考え方でございますので、これをどういうふうに解明していくかということは、これからさっそく捜査当局とも相談いたしまして、どういうふうにするかをきめていきたい、こう思っておる次第でございます。
  74. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは私、先ほども申し上げましたように、こちら側は確たる証拠あり、向こうは関係がないというならば、やはりそれならば、かつて楢崎君が、韓国大使館の某氏を容疑者ではないかという疑問を差しはさんで写真を提示されたときに、進んで事情聴取に応じていただきました。そういう形で、金東雲氏もすみやかに事情聴取に応じたらいい、任意出頭に応じたらいい、これをやはり外務省を通じて言わざるを得ないというふうに考えております。
  75. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、これは外務省も帰りましたので……。  韓国政府は言うならば非常に強気の姿勢日本に示しておった、こう言わざるを得ないと思いますけれども、そこで、二十日から韓国議会が開かれると、こういうことですね。そこで、この金大中事件については相当な解明があるだろう、こう一応期待できるわけです。またそれを豪語しているわけですね、韓国政府は。そこでね、われわれの予測としては、いままでの韓国政府日本に対するこの事件に対する姿勢ですね、こういったものから考えられることは、日本の警察当局が期待するような結論はおそらくまず出ないだろう、こういう感じがするわけです。これはいわゆる推定になりますがね。その場合、警察当局としてはこれだけの一応証拠を持っておる。にもかかわらず、韓国の国会においてはその段階での論議、その中でわれわれが期待するような結論が出なかった場合、その場合、どういうふうになっていくのか、この事件は。その点を私は知りたいと思うのですね。また、どのようにその点を踏まえているか、考えておられるか、これをひとつ大臣からお答え願いたい。
  76. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) この問題は、両国将来のためにもうやむやで済ませられるという性質のものではないと思う。親善関係にあればあるほど、これはやはり両国の責任において、しっかり両国民が納得する形で、少なくとも日本国民が納得する形が出て決着させることが望ましいというふうに考えます。
  77. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大臣の言われることはわかりますけれどもね。納得のいく一もう納得ということはいつの場合にも言われるわけで、確かに警察当局においては金書記官の指紋があった。それが向こうは突っぱねてきておる。そういうことになりますと、韓国議会においてもどれほどのこの事件に対する解明が行なわれるであろうか、こう思います。そこでこっちはこういう証拠を持っておる、向こうはそうでないと言う。それが並行していったら、これは国民は絶対納得しませんよ、それでこっちが引き下がれば。そういう段階がきたときに、警察庁としてはどういういわゆる手を打っていくのかということですね。そこのところがわかりたいわけですな。知りたいわけです。その決意のほどというか。
  78. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはどうもむずかしい御質問で、多少仮定的要素が入るものですから、やはりこういう問題というのは、あまり警察当局は、仮定にどう対処するかということは、こういう席で公にしないほうがいいと思うのです。やっぱり身柄をもらいたいというあの主張を粘り強く続けていく。そして、特に今度のように、金東雲が関係がないということであるなら、関係がなければ、任意出頭だからすみやかに身柄をよこされたらどうですか、こういうことにならざるを得ませんね。ですから、私どもはいつ幾日までということは、なかなかこれは外務当局としても取りきめはむずかしいと思いますが、やはり常識的に考えられる線で向こう側も誠意を示され、解決していくことが必要だというふうに考えます。そのためには、さっき中島参事官がお答えしましたように、金東雲氏以外にやはり関係者とおぼしき者の証拠固めなどについても、これは警察としては今後一そうの努力を傾けていく、こういうことであろうというふうに私は信じております。
  79. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 思う質問これで終わりました。望みたいことは、いずれにいたしましても、この問題について韓国政府日本政府とのその立場が相反するような、こういうふうに国民には見えているわけです。そういう中で、これは大臣がたびたび言われているように、納得いく解決、韓国もそういうことを言っているわけですけれども、どこまで全く納得できるか、これはわかりませんけれども、いずれにいたしましても、いろいろと日韓の間柄については憶測されておるわけです。またいろいろなことが言われておるわけですね。そういう中で、これは全く国民が納得のいく解決をしなきゃならぬことは当然です。そこにはやっぱりおかしな妥協みたいな、おかしな政治的な妥協みたいなものは、外交的な妥協といいますか、そういうものがあったんではこれは解決ができない、こう思います。その点を十分に心するとともに戒しめながら、一日も早くこの問題が解決するよう私は祈りたいと思います。  以上です。
  80. 河田賢治

    ○河田賢治君 いま上林委員から金大中事件の御質問がありました。若干ダブってきた問題、それからまた新しくきょう韓国から寄せられた金東雲一等書記官に関する問題、こういう問題がありますので、若干この問題に触れて、ひとつ当局に尋ねたいと思うんです。  いま金東雲一等書記官については、むろん警察当局は、御承知のとおりこれはクロだと言っておる。しかし相手はこれは全くシロだと言っているわけですね。しかも犯行の輪郭はもうほとんどつかんだ。しかし、韓国のいろんな新聞なんかを見ましても、梁一東氏ですか、あの人なんかを調べたときでも、写真を見て何かおかしな捜査を、証拠といいますか、これはもう本人でないとか、見たことがないとかというような、ああいうのをとっている。あれはわれわれから見ても非常に不自然な問題があるわけですが、いずれにしましても、両国の間の立場というものがはっきりこの問題をめぐってシロとクロということに分かれたわけです。しかし、そうだとすれば、今後、日本の警察当局が、御承知のとおり、いろいろこれから証拠を固めていかなきゃならぬという、これは大きなまた警察当局にも責任が出てきたわけですが、しかし、これまで国会の論戦を通じていろいろ各委員会でのあれを聞いておりますと、金東雲以外の韓国政府機関員が参加しているかどうか、捜査の機密のことであり、言えない、あるいは金東雲以外の者に任意出頭あるいは逮捕状を請求するだけの証拠をつかんでないというようなことで、あまりこの方面の他の被疑者というものが出てきてないわけですね。  それじゃ一つお聞かせ願いたいのですが、さっき話が出ました、何ですか、グランドパレスの車、下四けたの二〇七七ですか、この車は、御承知のとおり、パレスへ入った時間、出た時間、こういうものは一応記入されてあるわけですね。それからこれの所有者がだれであるかということは、陸運局の届け、それからまたこの男が一これか、まあ別の男か知りませんけれども、ナンバーを変えてもらいたいとかいうようなことを言ってきた事実、こういうものがかなりはっきりつかまれておるわけですね。こういうものがある程度つかまれていながら、これがまだ十分捜査の発表を、きちんと被疑者だというようなことが言えないというのはどういうことなんですか、この辺をちょっと。
  81. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) 先ほど申し上げましたように、劉永福副領事の乗っていた車は品川五五−も−二〇七七番であるということにつきましては、陸運局に下四けた二〇七七の車を照会したときにわかったわけでございまして、したがいまして、この劉永福副領事の車が当時ホテル・グランドパレスにいたかどうかということについて鋭意捜査を進めておるところでございますが、先ほども申し上げましたように、ホテルの駐車場では下四けたの数字しかチェックいたしておりませんので、二〇七七番の車と申しましても、東京だけで百六十一台あるわけでございます。その一台一台につきまして、五時その車がどこにあったかということを調査をいたしておるわけでございますが、何ぶんにも、かかわり合いになりたくないという気持ちの人もおられるようでございますし、また、車を転売してしまったという人もおりますし、それから、当時こういうところにいたと思うというようなことを言われても、さらにそれを確かめることも必要でございますし、そういうことで、なかなか全部の車について確認を終えるということができない状況でございます。したがいまして、現在の段階では、当時、ホテル・グランドパレスにおった下四けた二〇七七の車が劉永福副領事の車であるという断定をする段階に至っていないということでございます。
  82. 河田賢治

    ○河田賢治君 しかし、新聞報道では、この車が日産のスカイライン二〇〇〇cc、色はシルバーグレー、四十七年八月、劉副領事が月賦で購入したと。それで、八日の午前十一時十三分、ホテル・グランドパレスに入庫して、午後の一時十九分には出庫した。入庫時には日本住宅公団の宴会に出ると言ってうそをついているとか、大津のインターチェンジでの目撃証言も大体クリーム色の品川ナンバーと、一致しておるとか、それから九月八日、都内の自動車の修理工場に修理に出している。翌日の九日に男が再び来て、ナンバーを外交官ナンバーに変えてくれと依頼している。従業員が不審に思って、あなたはどなたかと聞くと、韓国の大使館員だ、身分証明を見せろ、ナンバーの変更は外務省に申請すればすぐできるが、それには本人の委任状と申請書が要すると言うと、困惑した顔で、また来ると言って帰った。まあこういうふうに、いろいろかなり詳しく新聞なんかには報道されているわけですね。そうすると、グランドパレスホテルに駐車した車で、二〇七七だとか、あるいはまた車種がどうであるとか、あるいは大津インターチェンジでも大体目撃したものと一致しておるとか、さらに外交官ナンバーに変えてくれというようなことを言ってくれば、当然最大のここには疑惑が生ずるわけでしょう。そうすれば、こういう段階で、当然容疑者として出頭を要求する、あるいは参考人として呼ぶとか、いろいろなことができなければならぬと思うのですね。だから、その間にもう本人は、九月の五日に、ちょうど金東雲の指紋を公表した日に、いち早く危険を感じて韓国へいわば逃亡しているわけですよ。だから、一定の基礎ができれば、そう一〇〇%完全でなくても、どんどんやっぱり参考人として呼ぶとかというぐらいのことは手が打てなきゃならぬと思うのですね。そうでなければ事件がますます——韓国に遠慮されているのかしらぬけれども、事件の捜査を困難にすると思うわけですがな。こういう点はどうなんです。
  83. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) いまのお話でございますが、私が先ほど申し上げましたように、この劉副領事の車がホテル・グランドパレスに駐車していた下四けた二〇七七の車であるかどうかということについては、先ほどお答えいたしましたとおり、断定することはできないという状況でございまして、したがって、劉永福副領事が本件との関連で具体的な容疑があるという段階には至っておらないわけでございます。したがいまして、そういう段階におきまして任意出頭を求めるということは適当ではなかろうというふうに判断をして今日に至っておるわけでございます。
  84. 河田賢治

    ○河田賢治君 それはあなたのほうはそういうことをおっしゃるけれども、少なくとも何百台あろうとも、ずいぶん捜査官はいるわけですからね。二百台や三百台の車を調べるのにそんなに手間はかからぬだろうし、また劉副領事の所有であるということはもう早くから——東京陸運局の事務所にはナンバーが登録されておる、警視庁への登録もされておるということなんですから、初動捜査の時期に、韓国の、そういうかなり怪しい問題がたくさんあるわけなんですから、だあっと調べれば大体見当はつくんじゃないですかな。それで、結局本人は五日になって帰っておる。車はどこか、どうなったか知りませんけれども、とにかくこういうふうに処分されておるというようなことになってしまうわけです。
  85. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) 二百台ぐらいの車であれば、捜査員を動員すれば簡単に調べられるんじゃないかというお話でございますが、一台一台の車について慎重に調べをいたしておるわけでございまして、したがって、一台の下四けたの車についてシロかクロかをきめるのにもたいへん苦労いたすわけでございますが、私どもといたしましては、この下四けた三〇七七の車だけを調べているわけではございませんで、三十台の車を抽出いたしまして、それぞれの車について調べをいたしておるわけでございます。一台について百数十台、東京都内だけで百数十台の車があるわけでございますので、したがいまして、相当数の車を調べなければならない状態にあるわけでございます。現在三十台の車につきまして、十九台につきましては全部調べを終わりまして、あと十一台残っております。十一台につきましてももちろん相当進んでおりまして、全部の車を、なお平均百何十台の車を調べなければならないという状態ではございませんが、全部を調べ終わりませんと、何がクロであるかということをきめることは困難であるという状況でございますので、御了解いただきたいと思います。
  86. 河田賢治

    ○河田賢治君 私はそれは了解できませんがね。とにかく、韓国にしましても、七千人か八千人を動員してこの事件——どこまで調べたかわかりませんけれども、それを発表しているわけですね。そうすれば、ここで一番被害を受けている当事者である日本の警察が、やはりこういう問題に対してもっと積極的に、どんどん新しい——というよりも、まだ十分、調べがまだほんの緒についたばかりなんですから、次から次へとやはりこれに対する関係者を捜査して、シロかクロかをはっきりさせて、証拠をきちんとどんどんそろえていかなければ、今日の事態を、ほんとうに日本の体面も保ち、また警察の権威も保つようなことにはならぬと思うのですよ。私はそういう点で、まあそれは三十台あるとか十五台あるとかいって、ずいぶん長い間こういうことはずっと言ってこられているわけですね。確かにそれは捜査はかなり慎重にもやらなければなりませんけれども、しかし、いずれにしましても、今度の事件で韓国のいろいろ関係諸君がどんどんどんどん国に帰ってしまうというような事態を考えれば、やはりそこに焦点を当てて大急ぎでこれを調べなければ、何も、しっぽもつかめないということになってしまうわけですよ。この辺が私たちがいま警察当局、捜査当局にもっとしっかりやってもらわなければならぬ、こういう問題なわけです。まあそれ以上のここでおそらくお答えはできないでしょうけれども。  それでは次に、これまで法務大臣江崎国家公安委員長が、在日韓国の中央情報部員——KCIA、これはもう完全に政府機関ですが、これらの活動について、いろいろこれまで言われてきていることに変化があるわけですね。たとえば田中法相が参議院で九月十日ですけれども、実態調査はしないし、すべきでないと、こうおっしゃっていますね。KCIAの違法行為について確たる証拠がない限り捜査の対象とするわけにはいかないと、江崎国公委員長はおっしゃっているのですね。全くこれについてメスを加える意思がないということを表明されているわけですよ。また、国際勝共連合、これらの運動についても、公安委員長は、政治活動はしているが、暴力的破壊活動の団体とは認められず、憲法の精神から、活動を規制することは適当でないというふうにしておられるわけですね。ですから、こういうふうにして、KCIAの問題についてはかなりわれ関せずの態度である。しかし、法務大臣がかつて、本来の職務でなくても、KCIAにそそのかざれたり、その指示があったとすればまさに職務行為である、したがって主権侵害だと、大体指示なしにあれほどの犯行ができるわけがないということも、参議院の法務委員会で九月十一日に言われて、そして大体KCIAが背景にあるということをほのめかす発言もされていますね。ですから、こういう問題についても、問題は相当やはり警察当局も慎重に、というよりも真剣に、この問題を突き詰めていかなくちゃならぬと思うのですよ。ところが、九月八日の朝日新聞が、在日韓国人の青年、これ一人の証言を載せて大きく新聞に報道しているのですね。つまり、金東雲の写真を出し、「この人はスパイの先生」だと。新聞社ですよ、これ。そして、この金東雲が日本へ来まして、朝鮮総連や北朝鮮のスパイ派遣工作に当たった。そして、本人も、情報調査のために北朝鮮へ入っていけというようなことも言われた。訓練も受けているわけですね。こういうことがもう朝日新聞に出ているのですよ。新聞記者は勘が鋭いですから、こういうところをつかむのはうまいのかもしれませんけれども、しかし、日本の警察だってやっぱりこのくらいなことは何らか手を打って、金東雲が、KCIAの日本における一つの責任ある仕事をしておったというような事実をやはりつかむ必要があるんじゃないか。単なる外交官として日本に来ておるのじゃなくて、こういう仕事もやっていたということは、これは重大な私は主権侵害につながる問題だと思うのですよ。この点について、捜査当局はどういうふうにお考えですか。
  87. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) 九月八日の朝日新聞の記事によりますと、朝日新聞に投書した人はAさんという在日韓国青年ということになっております。記事の中にもありますように、Aさんは、名前を出すと韓国にいる家族に危害が及ぶと、おそれて匿名にしたものと思われますが、私どもとして、事実関係を調べようにも、匿名であるということでは手がかりがないわけでございます。また新聞にとりましても一、本人が匿名を希望する以上、ニュースソースを秘匿するというのは基本的な原則であろうかと思いますので、Aさんがこのような話を朝日新聞の記者にされたことは間違いなかろうかと思いますけれども、警察といたしましては、伝聞証拠だけで金東雲書記官をKCIAと認定するわけにはまいらないということでございます。
  88. 河田賢治

    ○河田賢治君 朝日新聞が書いたことについて、そのニュースソースは社としてはこれは出せぬと思いますけれども、警察自身がもっとしっかりした態度をとれば、今日、在日韓国人の中には、いろいろ政治的な理由もありましょうけれども、とにかく、韓国のあの非常な暗黒政治に対してふんまんやるかたない者もおるし、やはり金東雲書記官なんかに対しても非常な反感を持っておる者もおるわけですね。だから、公然とあなた方がもっとしっかりした態度をとれば、そういう人が——まあその人らの生命や、身の危険を防いでやらなければなりませんけれども、とにかくそういう人が出てくるに違いないと私は思うのですよ。ところが、どうも警察のほうでそういう捜査のやりかた、発表のしかたなどをやりませんから、進んでこういう新聞社には進言するけれども、警察に行ってひとつ進言して、このような問題が正しく処理されたいという願いは持っていても、これは出てこぬわけですね。そういうふうにお考えになりませんか。公安委員長、どうですか、この点は。
  89. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) 私どもといたしましては、いかなる人でございましても、危害が及ぶことをおそれておるということであれば、当然そういう人を守るということは、従来とも真剣につとめてまいったところでございまして、特にそういう点で問題があったというふうには考えておりません。
  90. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 相手が外交特権を擁する、特に大使館関係者であるという場合には、ただ一通りの容疑というだけで事情聴取をしたりというわけにもまいりません。したがって、慎重の上にも慎重に事を処理するというのは、これは外交慣例からいって当然な処置であるというふうに私どもは考えております。で、警察当局としては、鋭意やはり真相究明のために金東雲氏以外の証拠固めをしていくと、非常な熱意で現在も捜査中でありまするから、そういう点については御安心を願いたいと思います。
  91. 河田賢治

    ○河田賢治君 しかし、これまでいろいろと日本の警察当局もかなり強気な発言をされたこともあります。また、法務大臣なんかも、さっき申しましたように、かなり金東雲のKCIAのあれとして暗示をするような、示唆するようなことばも言われておるわけですけれども、大体日本政府、捜査当局を今日なめ切ったような態度を韓国の政府あるいは当局がやっておることは、やはりこちら自身が、日本政府やあるいは捜査当局のやり方に向こうが乗ずる機会を持ってるんだと、そういうふうに私たちは一応見るわけです。非常に総理や外務当局が、日韓友好関係をそこなわないことを第一として事件を処理すると、基本にするというようなことをおっしゃっておりますけれども、何も日韓関係を全般にそこなわぬでも、まずこれを処理するということが、やはり日本の主権の侵害というようなことであるとすれば、この問題に限っても、やはり正当に韓国に対する正しい、しかも強い申し入れをすべきだと思うのですよ。よく韓国の中の政治を見ると、李厚洛ですか、中央情報部のあれなんかが、韓国の政府機関は一切関与していないということを言っておりましたな。やっていたら私の首は投げ出すんだというようなことを言っているわけですね。だから、そういうもう一つの前提をもって、それでずっと捜査から何からみなつくり上げていくと、まあこちらから言えばそうなるわけですね。そうでしょう。向こうではアリバイがあると言っているけれども、こちらでは完全に指紋が一致して、その条件が整っていると言っているのですから、こういう問題について、やはり法務大臣や何かにしましても、非常に韓国との何か全般的な衝突になるのをおそれて、そうしていろいろとその表現を変えられると。向こうはますます。何といいますか、つけ上がると申しますか、まあこんなことは押していけばたいていだいじょうぶだというような調子でいまきているようにも見受けられるのですよ。ことに、御承知のとおり、最近の新聞を見ましても、これは日本の、かつての日本が帝国主義で、そうして韓国に植民地時代に苛酷な政治をやってきたと、そして日本へどんどん韓国人を連れてきて、不法、不当にも連れてきて、とにかく戦争中にはずいぶんあれをしたと。だから、そういうことのいわゆる向こうの国民感情というものをおそれて、とにかく、韓国に対してはあんまり刺激をしないようにと、こういうふうな考えがあると思うのですよ。しかし、私はそういうことに連座した覚えはないのだし、むしろ、そういうことに反対して私はきたわけなんで、だから、韓国に対しても、こういう問題ではやはり正しく私たちは主張できるいわば資格を持っているわけですね。ですから、この問題は、御承知のとおり、このように向こうと日本とが平行線をたどって決着がつかぬというような現在段階にきております。先ほど、外務省のほうも、この問題ではとにかく静観するというようなことで、次から次へこう日時を延ばして、うやむやのうちにいわば葬っていくような、そういう配慮が見られるわけですね。ですから、事の、やはりこの問題の解決の一番責任あるものは、日本の警察、捜査当局がこれに対する——非常に範囲が限られております。それからまた、事件が起きてからずいぶんともうどんどんと証拠がなくなるような、そういう事態になっておりますけれども、しかし、この問題はやはり日本が正当に主張し、そうして内外の世論も一やはりこれに対しては非常にみな見守っているわけですから、そうしますと、この問題の処理をするには、やはり国公委員長もこれは積み上げていくとおっしゃっておりますけれども、これを真剣にやりませんと、これはやはり問題は実ってこないと思うのですね。ですから、この点で私はまだまだほかにこういう関係した問題があると思いますけれども、適当な時期にはやっぱりどんどん発表して、次から次へと協力者も得ると。いろいろな方面からこれらの新しい事実をつかんでいかないと、あまりに秘密主義でやっておりますと、なかなかこの問題は進まぬことが多いのじゃないかというふうに考えるわけですね。ですから、もうこの問題については、私は最後に、国家公安委員長は一番の当の責任者ですから、そういう面では。  したがって、外交を強めるのも、弱い態度をとらせるのも、みな一にかかって公安委員長の責任になるわけですから、この際——警察当局も非常に努力はされておりますけれども、この際もう一そうこの問題に対する——こういうように朝日新聞の記者あたりはちゃんと新しい事実をつかんで、これがCIAの先生だというようなことまで出すのですから、警察力をもってすれば、このくらいのことはいろいろな情報はつかめると思うのですよ。この点について、もう一度公安委員長のひとつはっきりした態度をお聞かせ願いたいと思います。
  92. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私どもはやっぱり事態の真相を明らかにすることが何よりも第一だと思っております。そして両国の将来のためにも、この事件を国民が納得する形で解決すると、これであります。ただ、相手側も、その方向については、私、異存があろうはずはあるまいと思うんです。したがいまして、外務省が言っておる意味は、じんぜん手をこまねいて相手の出方を待つというのではなくて、今日もう後宮大使、二度も帰っております。かたがた、それなりの訓令を帯びて向こうに参りましょう。また、金鍾泌首相ともしきりに会見を重ねております。したがって、私どものこの誠意と努力というものは必ず実るであろう。そのためには、警察側としては、あまりはでなことは申し上げませんが、やはりねばり強く着実に証拠固めをしていく、これが何よりの喫緊事であろうということで大いに精励をいたしておる、これが実情であります。したがって、外交的にこういう問題がうやむやに葬り去られるとか、何かこの取引の材料になるとか、そういうことは絶対あってならぬというふうに考えております。
  93. 河田賢治

    ○河田賢治君 次は、京都の府警の問題について聞きたいと思うんです。  これはもう新聞にも出、またおそらく警察当局もとの問題については報告を受けておられると思いますが、とにかく、京都府警の峰山署の現職警部、巡査長二人が、少年六人の窃盗事件の情報だけを根拠に、にせの供述書をでっち上げて、そして書類送検して、そして京都府民とそれからまた一般に大きなこれは衝撃を与えたわけですね。これだけじゃありませんよ。京都府警なんかは、ずいぶんと毎年毎年いろんな警察の問題が出ております。とにかく、この事件の捜査で判明した事実を簡単に報告してもらいたい。あんまり詳しくは要りません。
  94. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもといたしましてもまことに遺憾な事件でございますが、簡単に経過を申し上げたいと思います。  四十六年の十一月の二十四日付の、京都府の峰山警察署長から京都の地方検察庁峰山支部に少年事件簡易送致をいたしました窃盗容疑少年六名につきまして、担当の警察官が少年らの取り調べを行なわずに、年末も近づいて書類整理を急ぐあまりに、被害者及び目撃者などの申告を過信して、少年たちの供述調書の署名、指印を偽造いたしました少年事件簡易捜査報告書、これを虚偽に作成をしたという事件でございます。  発覚の端緒は、ここに関係いたしました少年の一名が、ことしの六月の三日に京都府宮津警察署管内で人身交通事故を起こしまして、八月の三十日に京都の家裁の宮津支部へ呼び出しを受け、保護者とともに出頭いたしましたときに、交通事故の事情聴取をされたわけでございますが、その際に、担当の調査官から、交通事故はこれでよいが、二年前に君はどろぼうをやっておるではないか、今後も十分気をつけるようにと、こういう説諭をされたわけでございます。そこでその少年は、前にどろぼうをやっているということは全然身に覚えがないということで、そこで保護者が峰山署に出頭いたしまして、調査方を申し出たわけでございます。そこで、峰山署とそれから京都府警本部の監察官室で調査をいたしました結果、いま申し上げましたように、この指印とそれから署名を偽造して出しておったと、こういうことが判明をいたしたわけでございます。  以上でございます。
  95. 河田賢治

    ○河田賢治君 この塩谷という警部ですね、これは三十六歳ですかな、この人は、単にこれだけでなく、いろいろ調べた結果、まだ七件をさらに自供している。やはりこういう事件をどんどんどんどんつくり上げていたように供述しているらしいのですがね。問題は、これは非常に警察官のいろいろな仕事のしかたに私はだいぶ問題があるんじゃないか、こう思うわけです。いま、御承知のとおり、これは京都の地方新聞がこういうように大きく出しておりますが、それから毎日のように、最近は連載もので、京都府警の、警察の何といいますか、「出なおせ京都府警」ということで、ずっと連載ものを出しているのですね、この中に、非常にやはり体質的に問題にすべきことがあるということを書いているのですね。たとえばこの中に——まあいろいろありますけれども、大きい問題では、警察は月間などを催しまして、つまり年末なんだとか、あるいは窃盗やら、強盗のどろぼう捜査だとか、こういうような月間を設けて、これで点を取っている。こういうところに、特にこの警部自身は非常な勉強家で、ガリ勉屋で、そうして出世も非常に早かったらしいですが、とにかくこういうようにして事件をでっち上げる。こうなりますと、こういう警察のあり方そのものが相当私は問題になるんじゃないか。ほかでもこういう問題があるかどうか知りませんけれども、しかし、そういうことが一つの誘因になっていると思うわけですね。で、警察でこれが問題になりましてから、ずいぶんと現職警官がですね、いろいろと投書が新聞社やなんかにいっているわけですね。いろいろと警備、あるいは何ですか、防犯だとか、あるいはまた交通だとか、いろいろ警察のそれぞれの仕事の分野で、不満もあれば不平も出ている。そういうことで、たくさん内部告発がやられておるということがいわれております。それでこの問題について、おたくのほうでは、なんですか、「Bたれ」というのはおわかりなんですか。「Bたれ」、これは刑事部の中での略語だそうですが。
  96. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ただいま先生指摘のように、京都新聞でございますか、これのシリーズもので、「出なおせ京都府警」ということで、いいろ今回の問題その他を、総合的な見地から、警察の体質改善というような点について問題点の御指摘をされておるわけでございますが、その中で、ただいま先生のおっしゃっております「Bたれ」と呼ばれるものがそれであると、こういうことで、実は私ども全然耳なれていないことばでございますので、京都府警に問い合わせましたところが、京都府警も実はこれをよく知っておらなかったということで、よく第一線の署につきまして調べましたところが、確かにやはりこういうことばで呼ばれておる事柄があるということのようでございます。まあ結局、被害届けの取り扱いをAとBの二つにランク分けをいたしまして、そうしてBのほうは比較的少額の被害、あるいは盗まれたのか盗まれなかったのかわからないような事案、こういうあまり判然としないものはすべてBということに落として、統計上は被害額に載せないというような取り扱いをしておるというような報告があったわけでございます。これはまあまことに私どもとしては心外な問題でございまして、およそ額が小さくても、被害届けのあったものは、やはり判然とこれは被害のあった窃盗事件として取り扱うべき性格のものでございます。この原因としては、まあ私どもはそう考えたくはないんでございますが、やはり被害額に相応した検挙、被害の回復率といいますか、こういった点をめどに置く関係で、いわゆる分母に当たります被害額をできるだけ小さく押えるというような考え方が第一線にあるのではないかという懸念を持たれるわけでございます。
  97. 河田賢治

    ○河田賢治君 この新聞記者なども、非常にこの点数主義というやつを典型としてこれ、あげておるわけですけれどもね、こういうふうにやりますと、まあ勢いこういうでっち上げなんかもやりまして——しかも、少年はこれからまだ成長してくるんですね。一生こういう傷を負わされて、家族にも——しかも本人は知らなかったと。知らずにいたらいつの間にか前科者になっていたというような、こういうほんとにいわばばかげたことをやっているわけなんですけれども、やはり単に——今度十三日に警察のほうでお出しになって、綱紀の粛正とかいろんなことをおやりになっておりますけれども、ただああいう訓示だけではどうにもならぬじゃないかと。特に最近は、まあ確かに社会的にも、犯罪がどんどん醸成されるようなそういう問題がたくさんありますし、まあ警察官自身でも、やはりいろいろ社会生活が変わればそれに準じていろんな生活形態をとると思うんですがね。だから、そういう場合にやはりそれに応じたような、何といいますか、部内のやり方を変えていく。単なる一つの月間を設けて、これで幾ら検挙したとか、幾らこれをあげたとか、そういうことで成績をあげさすようなことだけでは——もちろん、検挙率が少なくて、あるいは何といいますか、そういう事件の起こらぬほうがいいわけなんですからな、本来からいえば。ですから、そういう点でこの問題の体質を、ほんとの警察官としての体質を、不偏不党な、しかも公平に人民の財産や生命を守るという、こういう立場に立つようにこれは相当教育もしなくちゃならぬと思うわけです。ですから、あのような例をあげられて、単なる綱紀粛正、あるいはしっかりやれというような、それだけじゃとってもこのように、まあさっきもお話がありましたように、一線の中でそういういろんな、何といいますか、Bたれだとか何だとかいうように、まあ一般的にはみんなそういうことで問題がいろいろ処理されている。上の人はあまり知らぬわけですね。ですから、ほんとの警察官の第一線におけるいろんな状況というものをもっとやっぱり上はつかんで、そしてそれに応じて、しかも仕事のやり方をもっと公正にやらせていくような、そういう指導をしませんと、まあそれは絶対にゼロになるとは言いませんけれども、できる限りやはりこういう問題を少なくしなくちゃならぬと思うんです。で、もう現に、これはあとの新聞で私も読んだんですけれども、例の金融関係ですね、古い署長あたりを中心にした。これにあなた、あれは訓示したその日に、された連中も紙園へ行って一ぱい飲んでおると。訓示した者がそこを通ったらばったり顔を合わしたと。何のために訓示したかわからぬというような、こういうことも起こっているわけです。ですから、これを見ますと、警察の訓示、あるいは上の人がそこで訓示しても、相当、署長以下でも、そんなことはもう馬耳東風に流した、これをやっているわけですな。ですから、ここでやはり私はもうちょっと、警察官としてこれからの仕事のやり方、こういうものに対して——それから手続ですね。これなんかも、私ら考えるのに、参考人を呼んだりあるいは本人を呼んだりすれば、これはその部だけでこうやってしまうと、詳細がわからぬわけですね。だから、受け付けるところは別にすると。参考人を呼んだとかあるいは何々を呼ぶというふうなのは別のところで呼んで、そうしてそれが来たか来ぬかを調べれば、そうすれば、もうかってなそういう処分はできぬでしょう。だから、やはりこまかいこういう犯罪はできるだけ、特に警官がこういうでっち上げをできぬようなシステムなんかもやはりちょっと考える必要があるんじゃないかと、まあ私がちょっと考えただけでもそういうことが考えられるんです。一人で何でもかんでも処理して、これは済みましたよと署長のところへ持っていくと、署長もめくら判を押してこれ、簡裁のほうへあげてしまうと、検察局にあげてしまうということになれば、これはどうにもならぬですからな。ですから、今度の事件で、ずいぶんと京都府の警察だけでなくこれはたたかれました。これは私はいい一つ——警察にとっては非常な権威を落としましたけれども、しかし、これでしっかりしてくれば、これは一つのいいことになるわけなんですが、とにかく、警察が非常な不信を今度の問題で抱かれたということは事実なんですね。そこで、こういう点について、大まかに、こういうことのいま事実があって、これに対して綱紀粛正とか、あるいは規律を正したいとか言うだけでは、さっき言ったように、私は足らぬと思うんですが、こういうことについてもう少し何らか考えておられるかどうか、この点をちょっと聞いておきたいと思うんですよ。
  98. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ただいまの先生の御指摘も、まことに身にしみてごもっともの御意見でございまして、私どもも、今後の対策といたしましては、ただいま先生の御指摘の点も含めましていろいろ考えておるわけでございまして、まず問題は、今度の京都の事件は、第一線の警察官ではなくて幹部であるという点に一つ問題点があるわけでございます。問題は、やはりこの幹部がいかなる心がまえをもって対処していくかという点にあるわけでございまして、この点については、その幹部に選考する過程にいろいろ問題点もあると思います。この点は、いわゆる点数主義といいますか、点取り主義ということで、筆記の成績だけがいいからということで上げるのではいかぬので、全人格的に評価をするというようなやり方を導入して、現に実際は導入していることになっておるわけでございますが、必ずしも結果的にはそうでないということも起こり得ますので、その選考の過程において十分考えていかなきゃなりませんが、幹部に一番重要な問題は、やはりわれわれのやっております仕事に対する使命感といいますか、これは一番重要だと思うのでございます。私も、今回の京都の事案につきまして、地元新聞から意見を求められましたので率直にお話をしてございますが、一番私ども当面心配しておりますのは、大部分のまじめな警察官が、これによって士気が低下をすると、そして当然その尽くすべき義務を果たさないということがむしろ心配なんであって、問題はやはり幹部が、いま申し上げましたような使命感に徹するということによって部下を引率をしていくということでなければならないというふうに考えておりますので、この点についての幹部の再教養と申しますか、この点にも十分力を注いでまいりたいと思っております。それから、先ほどこれもいみじくも先生が御指摘になりましたように、上下の——私どものこの階級社会におきまして一番大事なことは、やはり上下のパイプラインが太くなるということが必要だと思うわけでございますが、まあ上のほうで全般の実績を上げるためによかれと思ってやっておることが、下では案外これがそのとおり受け取られていないということが、まあたとえばいま御指摘のBたれとかいうような制度でも一見してわかるわけでございます。上下の信頼感といいますか、これを強めるための環境づくり、これを考えていかなければならない。  それから、これもやはり先生の御指摘ございましたように、事務の流れ、監督のやり方ということで、これはもっと合理的に考えまして、チェックの、自然にクロスエグザミネーションですか、が行なわれるというような体制を考えていかなければならないということで、この点はそれぞれ実務について、相互に、各それぞれの分野で検討しておるわけでございますから、なおなお至らぬ点も十分ございますので、この辺ももっと検討して、できるだけ合理的な事務の仕組みということに移行いたしますように努力をいたしたいと、こう考えておるわけでございます。
  99. 河田賢治

    ○河田賢治君 それから、この事件について私も京都でちょっと聞いたんですが、被害を受けた、盗まれたうちからは届けてないんですね。それでほかからいっているんですね、ほかの警察管内のほうから。これはだれかちょっとそこまで私も調べておりませんけれども、それは以前にそこに警部がつとめておったかもしれませんが。そういう本人から被害の届け出も出てないのに、そういうこともされているわけですね。これは非常に私たちは政治的にもちょっと勘ぐるんですけれども、御承知のように、各地に防犯協会とか、いろんな警察に協力する機関がありますが、ところが、そういう人はえてして——最近の大都会ではそうでもありませんけれども、かなりやはり古いいなかのほうですと、顔役とかいわゆるボスとか、こういうところが多いわけですね。そうすると、そういうのが政治的に利用して、何とかあいつのほうをやっつけるとか、あるいはもっと犯罪者を多くしようとかいうようなことが起こらぬとも限らぬと思うのですね。  まあ京都は、御承知のように、非常に政治的には激戦の地なんですね。ですから、この前の選挙のときでも、前のここの事務次官をやっておった人が来たときも、京都の子供はばかやと、こういうことを第一声に言ったことがあるんですね、京都駅で。まあ文部省でもこれは問題になると思うんですけれども、最近の愛媛県の、あそこの学校の子供の成績が一番だということをいわれているわけなんです。ところが、つい最近の新聞を見ますと、あそこで証人に立った学校の先生が、つまり成績の悪い答案はどんどん捨てちゃって、それでかってによさそうな答案をつくって、それで成績をよくすると、そうして日本一になったということを言われているわけですね。  これと同じように、教育の中にもこういうやり方がありますし、まあ警察でも、点を上げるということになればこういうことになる。しかも、地方にはこういうボス的な人なんかがたくさんおりまして、やはり何らかの形で警察に対する行政に影響力を与えると。これは京都の府警の新しい事実ではそういう問題が出ているわけですね、銀行関係なんかのときには。ですから、よほど防犯組織だとか、そういう協議会なんかをつくるにあたりまして、あるいはそれを現在つくっておっても、これらに対するはっきりした態度ですね、警察官として。こういうものに対してもしっかりと行政的な指導をやらないと、警察自体が腐っていくと思うのですね。これは一つの問題だと思うんですよ。ですから、ひとつこういう点と、それからあとはいろいろ警察の内部のやり方、あり方というものについて、私は十分な監督、指導を今後やってもらいたいと思うわけです。  そこで、法務省の方、来ておられますね。ちょっと家裁の問題についてお聞きしますが、御承知のとおり、警察から検察庁を経てこれが送られてきまして、これがいろいろとここで審判の開始をしないとかいうようなことできめるわけなんですけれども、こういうふうな——警察からまともなものがきておればいいのですよ。ある程度それで私たちも了解できます。しかし、警察からそういうでっち上げがきて、これをそのまま受理してしまうということになりますと、これはおそるべき——本人にとっては小さくてもいわば前科なんですからな。それを背負って一生歩くわけなんですね。こういうものに対して、それが客観的にあったかどうかということを、本来ならば裁判というものは調べなければならぬですね。ところが、それは軽微だからといって、それをそのまま信頼しておさめてしまうということでは、ちょっと手続上やはりここはおろそかになるんじゃないかというふうに考えるんですがね。件数が多くて、それからいろんなことがありましても、やはりこれは一応は客観的に、事実かどうかということは調べるとか何とかしませんと、警察から検察庁、それから裁判までそういうことで通ってしまいますと、これはたいへんなことじゃないかと思うんですね。何らかこの問題について法務省のほうはお考えになっているかどうか。特に少年の問題ですから、事は重大なんですよ。
  100. 村上尚文

    説明員(村上尚文君) ただいま先生から御指摘がありましたように、今回の事件は非常にわれわれとしても遺憾なことであろうかと考えておりますが、問題は少年事件でございまして、少年事件につきましては、これは成人、おとなの事件と違っておりまして、やはり少年の特殊性考えてやらねばならない。そしてまた少年の個々の事案に応じた処分を行なうことが重要である。そういうことを考えまして、現在の少年法の規定によりますと、少年の事件は細大漏らさず全部これは家庭裁判所に送らねばならない、かようになっておるわけでございます。  ところが、先生御承知のように、非常に少年事件は多うございまして、年間四十万ないし五十万の事件を警察官あるいは検事が担当したわけでございますが、そういった事件を全部一切漏れなく通常の手続によって家庭裁判所に送りますということは、これは不可能ではございませんが、なかなか事実問題として困難な面もあるわけでございます。また、きわめて軽微な、ごく簡単な事件につきましてもそういう手続をとりますことは、年の若い、また感受性が強い少年にとりましては、必ずしもプラスにならない。かえって、更生という面、あるいは少年の身上保護という面から見て、マイナスになる面が大きいのではあるまいか。  そういういろいろな点を勘案いたしまして、特に、ごく簡単な、軽微な事件につきましては、簡易な送致で送るという制度ができたわけでございまして、これが相当長期間にわたりましてある程度の成果をおさめて定着しておったわけでございますが、今回、このような事件が発生しておるということになりまして、先ほど申しましたように、非常に遺憾な点もあるわけでございますが、やはり根本は、何と申しましても制度より人の問題ではなかろうかという点もあるわけでございまして、やはりわれわれのほうといたしますと、先ほど来警察庁の方が答弁されておられますように、やはり根本は人であるという問題につきまして、もう一度この問題を反省してみる必要があるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  101. 河田賢治

    ○河田賢治君 少年法にも事件の調査の方針というものを一応書かれているわけですね。ですから、本来ならやはりこういう問題は、そういう裁判所で呼んだからといって、その本人がシロになれば、これはもうそれでけっこうなんですから。ところが、そいつをほったらかして、かえって本人の生涯にとってぬぐい去ることのできないような暗影を与えるわけなんですからね。やはりこれは人が足らなければ人は要求する、予算が足らなければ要求して、重大なこれは人権問題——ことに、青少年というのはこれからますます日本を背負っていく人間なんですからな。こういう者に対しては慎重なやはり裁判の手続なんかできちんとやるべきじゃないかと私は思うわけなんです。あまりこういうところを粗末にしますと、これからたいへんだと思うんですね、こんな事件がどんどん起こりますと。これは警察でもこれから気をつけてやられるでしょうけれども、しかし、こういう事件が将来にわたって全然起きないとは保証できませんからね。やはりそれに応じて裁判自体は——裁判というものはこれは公正にやらなければなりませんから、何にも調べずにめくら判を押すということは、これは裁判じゃないですからな。この点に対してしっかりと、やっぱり何らかの法改正が必要ならば、必ずこれはやらなきゃならぬとか、何とかしてやっていただく必要があると思うんですね。
  102. 村上尚文

    説明員(村上尚文君) 確かに、いま先生の御指摘のとおりの点、私も同感でございまして、先ほどは人の問題が根本であると申したわけでございますが、警察のほうにおきましても十分この点は御配慮願えると思いますし、また検察庁の検察官のほうにおきましても、かりに簡易送致を受けた事件であろうとも、十分目を光らしまして、眼光紙背に徹するということばがいいかどうかわかりませんけれども、十分その事件のすみずみまで目を光らして家庭裁判所に送る。また、家庭裁判所のほうでも、家庭裁判官あるいは調査官等が協力されまして、十分事の真相を究明して、ほんとうに事件を犯していない者につきましては、それ相応の処遇をするというふうに努力されると期待しておるわけでございます。  なおまた、蛇足でございますが、一点だけ補足いたしますと、先ほど法律改正の問題も先生指摘になりましたけれども、現在、法制審議会の少年法部会におきましては、少年法の改正問題を審議願っておるわけでございますが、この審議会で審議願っております少年法の改正要綱は、先ほど申しましたように、全件送致主義という問題を若干改めまして、警察、検察庁限りで事件を終わらせよう、家裁に送らずに終わらせようということも考えておるわけでございまして、そういう方面も法改正に織り込んで、十分考慮しておるつもりでおるわけでございます。
  103. 河田賢治

    ○河田賢治君 さて、一応審判でこれはシロだとして言い渡したわけなんですが、また警察署長も、本人のところへ行って親にあやまっている、こういうことなんですが、これはやはり警察官自身も一つの犯罪だと思うんですね。公文書偽造並びに公文書偽造行使ですか。これはやはり、ないて馬謖を切るじゃありませんけれども、やはり警察当局としてはきちんとこういう問題に対する処置をしませんと、これはやはりあとにいろいろな影響を与えますから、こういう問題がわかった限りは、きちんと私は処断すべきだと、こう思うわけです。そのことを一つ。  それから、あと一問なんですが、最近、日にちはちょっと忘れましたが、一週間ばかり前なんですね。大日本菊水会ですかな、そういうのが——例の奈良に本拠を持ついわば右翼団体ですね。これが来まして、共産党の委員会の前やら、それから京都の府庁前、こういうところをがなり立てて歩いた。これは明らかに、運行中にビラをまいたり、それからまた車の上へ上がって、そしていろいろどなりながら、たとえばこの中には、蜷川知事を殺せ、というようなこと——共産党の打倒だとか、蜷川知事を殺せとか、こういうことを公然とマイクでやって、そして一、二回、私服らしい人が何か注意を与えたらしいんですけれども、それはあまり聞かぬわけですね。そういう事件があるわけなんですよ。これは、たくさんいろいろの者が京都へは来ております。確かに。しかし、名前を出して人を殺せというのは、こういうことはちょっと最近異常なことだと私たちは思うわけなんですがね。一体こういう問題はどうなんです。殺人教唆とか何とかいう罪にはならぬのですか。道交法違反には明らかになると思うんですけどね。
  104. 中島二郎

    説明員(中島二郎君) いまお話のあった事案は、今月の十日に、大日本菊水会の会員四名が宣伝カー一台に乗車しまして、京都市内一円で、北方領土返還、自主防衛体制確立等の街頭宣伝活動を行なった際のできごとでございまして、京都府庁周辺で蜷川知事批判の街頭宣伝を行なった後、午後四時三十六分ごろ、共産党京都府委員会の前にまいりまして、駐車していた共産党の宣伝車の横に並んで停車いたしまして、車の上で太鼓を打ち鳴らしながら、共産党を批判、攻撃する内容の宣伝活動を行なったわけであります。このとき、共産党の委員事務所からも十四、五名が出まして、駐車中の共産党の宣伝カーから右翼批判の放送を始めまして、一時双方がアジ合戦となったというふうに聞いております。その際、右翼は、宣伝カーの上からビラ約二百枚を道路上に散布いたしましたが、現場の警察官から強く警告されたので、午後四時三十九分ごろ現場を離れております。その間約三分間であったと、現場の警察官から報告を受けております。  ただいまの事案につきましては、道路交通法違反は先生のおっしゃるとおり明らかでございますので、道路交通法違反で捜査を進めておったわけでございますが、十二日の日に、共産党京都府委員事務局長名で、暴力行為等処罰二関スル法律違反にあたる旨の告発状が府警察に出されまして、他方、大日本菊水会の側からも、京都の地検に対しまして、共産党京都府委員会を相手に威力業務妨害等で告訴をしておると聞いております。警察といたしましては、事案の真相を確かめることにつとめまして、適正に措置してまいる考えでありますが、ただいまお話しのありました蜷川を殺せという点につきましては、先ほど申し上げましたように、右翼と共産党の宣伝カーがマイク放送合戦を演じ、一時騒然とした状況下にあったわけでございまして、現場の警察官から聞きましたところでは、そのような内容を聞きとることはできなかったという報告になっております。京都府知事蜷川を殺せということばがあったかどうかということにつきましては、現在、捜査を行なっておりまして、真相を把握した上で措置してまいりたいと考えております。
  105. 河田賢治

    ○河田賢治君 私も直接その場を見たわけじゃないし、あとから聞いたわけなんですけれども、とにかくそういう放送もやったと、それからあとをつけていって、途中でも私服らしいのがとめているけれども、それも聞かずにかなりのところまで行って、四条大宮ですかな、あの辺まで行ってようやくやめたということを聞いておるわけです。とにかく、最近いろいろなこういう右翼団体がばっこして、東京あたりでも、中国の代表団に対して盛んにおとといあたりもやっておりましたが、とにかく、まあこのごろ盛んにこういう右翼団体が出て街頭宣伝をやる。しかし、その中には非常に激しい人身攻撃をやるとか、あるいはまたそういう殺伐なことをしゃべっておるということは事実なんですね。だから、こういう問題に対して、やはり普通の政策宣伝であるとか、多少右翼にありましても、彼らの主張や政策の宣伝を合法的にやる分にはお互いにいいわけなんですけれども、そういうようなきわめて不穏当な、殺人を教唆するような暴言をしたりするような場合には、やはりきちんとこういうものは取り締まりませんと、だんだんだんだんこういうものが放置されますと、ますますこれはもうエスカレートすると私たちは思うんです。現に、京都以外の福井の問題であるとか——不破書記局長ですね。あるいは宮本委員長を熊本で殺害せんとしたとか、こういうような、いま右翼は盛んにわが党に対する攻撃をやっておりますし、またいろいろなこれを利用するものもあって、したがいまして、こういうもののばっこをどんどんどんどん放任しておきますと、非常に私は危険な状態を生むと思うんですよ。われわれだってそれは正当防衛はやりますけれども、しかし、単に相手の街頭におけるいろいろな法律違反のような問題を、これを見過ごすことは、やはり警察自身の公正な、公平なそういう立場というものをなくするわけでしょう。世間から見れば、警察何しているんだということになるわけですね、こういう右翼の跳梁ばっこをほうっておきますと。やはりこういう点は、さっき警察のいわば腐敗や堕落の面を見ましたけれども、こういう問題についての確固たるやはり方針を持って、取り締まるべきものは取り締まるということをしませんと、これはやはり警察全体の威信にも関係するし、また、一般市民もこれによって大きな迷惑をかけられておるわけですから、厳重にひとつ今後公安委員長——最近の新聞を見ますと、いろいろなほかの問題が次から次へと今日起こってきて、しかもそれが放置されているというような事件があります。これは私きょうのここでの議案にしておりませんから申しませんけれども、とにかくこういう事態に対して、ひとつ公安委員長は、治安を維持する上からも積極的な方針をちょっと伺いたい、こう思うのです。
  106. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 前段の問題につきましては、きわめて遺憾な問題だと思っております。全国の多数の警察官がまじめにやっておりまするときに、例外的であったにしろ、ああいう不遜な問題が起きるということは、これはやはり戒めなければなりませんので、警察庁をして、規律を振粛するためにきびしくみずからを戒め、率先して国民の保護に任ずる警察のいわゆる基本姿勢というものをしっかり各クラスの幹部は部内に示せ、そうして事務執行の体制、監督機能の強化、身上把握の方法など、それぞれ改善につとめて、この種の事故が絶対に二度と起こらないようにということできびしく戒めているのが現状でございます。  それから、後段の問題等につきましては、すでに京都府連から告訴されておるというようなことも聞いておるのでありまするが、警察といたしましては、事案の真相を確めまするとともに、これらに対しては、仰せのように適正な措置をとってまいりたいというふうに考えております。もとより、右といわず左といわず、その行動が法に触れる場合は厳然としてこれを処置する、これが警察側の責任であるというふうに考えております。
  107. 寺本廣作

    理事寺本広作君) 本件に対する本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後一時五十三分散会      —————・—————