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藤原房雄君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております
地方公営交通事業の
経営の
健全化の
促進に関する
法律案に対し、反対の討論を行ないます。
まず、反対の第一は、今日重大な
経営危機に直面している
公営交通企業に対し、今回の法案は目先の赤字
対策に終始し、将来の展望に欠けている点であります。
地方公共団体の
経営する
バス、路面電車、
地下鉄のいわゆる
公営交通事業は、
昭和三十年代後半より、人件費の高騰、
建設投資の元利償還金の急増、
交通渋滞等の環境悪化により、乗客の減少を招き、毎年
経営の悪化は深刻な状態になってきているのであります。この間、四十一年度に財政再建に関する制度が新設され、
バスと路面電車について第一次再建
計画が実施されているにもかかわらず、
経営の向上は見られず、ますます悪化の一途をたどってきたのであります。このことは、
都市交通の
経営危機の根がきわめて深いところにあることを示すものであり、これに対する抜本策を講ずべきであるのに対し、今回の法案では、財政措置のあとはみられるものの、必ずしも赤字要因に対する反省が見られず、相変らず企業
経営の改善、効率化を押しつけているのであります。
公営交通事業の
経営の危機をもたらした最大の要因は、国の
都市政策がなかったことであり、路面渋滞等、企業環境の悪化を招いたのであります。こうした外的要因の悪化を是正せずして、
公営交通事業の真の
健全化は不可能であります。
公営交通事業が、その本来の目的である住民福祉の向上と
地域住民の足の確保に資することを目的としている以上、この際、発想と姿勢を大きく転換して、長期的展望に立った
都市交通環境の抜本的改善整備の諸施策を積極的に推進することが必要であり、その時期にきているにもかかわらず、何ら新規の施策が見られないのはまことに遺憾であります。
反対の第二は、再建債の元利償還費が
地方財政を圧迫することであります。
今回の改正により、八百七億円にのぼる不良債務は、再建債を発行して一時たな上げし、その金利はほぼ全額を国が肩がわりし、元金償還と国の補給する部分以外の利子支払いは、自治体の一般会計から十五年をめどに返済することになっています。
申すまでもなく、
地方自治体は、生活関連施設の整備や福祉行政の充実等、財政
需要は年々増大しているのであります。その上、一般会計から元金を返済することは、ただでさえ苦しい
地方財政をますます困窮させる結果となるのであります。
公営交通問題研究会が報告しているように、八百七億円の元利償還にあたっては、国と
地方公共団体の一般会計が折半負担し、
地方自治体の財政負担の軽減をはかるべきであります。
反対の第三は、
公営交通事業の料金の決定方式の改善がなされていないことであります。
公営交通事業の料金は、
利用者を含めた住民代表が、
地方議会で公聴会を開くなどして慎重に審議しており、その上に国の認可を得なければならないのは、全くむだな二重行政であります。このような仕組みのために、タイムリーな料金改定に支障を生じ、
経営悪化の一因となってきたことを
考えますと、早急にこのような弊害を取り除き、認可制を届け出制に改め、料金決定制度の改善をはかるべきであります。
反対の第四は、行政
路線に対する国庫負担制度が設けられなかったことであります。
公営交通は、住民の足を確保するため、新興団地への
路線など、採算を度外視して
運行しなければならない、いわゆる行政
路線を多くかかえております。これに対し、本年度より、
経営再建を行なう
交通事業の
パス購入費の一部を、五年間に限り
補助する措置がとられておりますが、これでは、必ずしも十分な
対策となっていません。
行政
路線については、その公共的な性格を考慮し、早急に客観的基準を定めて、
路線の設定と国庫
補助制度の確立をはかるべきであります。
反対の第五は、
地下鉄建設費の
補助が、実質六六%となっていない点であります。
地下鉄建設の
補助については、本年度より純
工事費の五〇%方式から六六%方式に増額されていますが、
対象工事費を総
建設費の七六・五%に押え、その六六%、すなわち実質五〇・四九%が今回の
補助額であります。また、この支払い方式が六年分割であるため、実質
効果は五〇%を割っているのが実態であります。
地下鉄建設費の
補助については、実質六六%、
建設時一括交付する制度を確立すべきであります。
反対の第六は、独立採算制についてであります。
地方公営企業の
経営は、独立採算制の原則のもとに、公共性と経済性を両立させることが要請されておりますが、現在の
地方公営企業の中では、独立採算制を実行するだけの基礎条件の整っていない企業が多いのであります。
欧米諸国では、すでに
都市公共
交通の固定施設、固定設備を公共財源でまかない、その運営のための費用は、
利用に応じて、料金で支払う
方法が一般化しているにもかかわらず、わが国においては、いまだに認められていないのはまことに遺憾であり、いまや、
都市交通は公共財であるという観点に立って政策転換をはかるべきであると思うのであります。
最後に、公営企業全般にわたる赤字
経営の現状についてであります。
公営交通事業以外の病院事業、水道事業等の企業については、何ら
経営の
健全化の
対策がなされておりません。今後、住民福祉向上のために、その
対策を講ずべきであります。
以上、反対のおもな理由を述べ、反対討論といたします。