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参考人(
広岡治哉君) それでは、最初に神沢先生の御質問にお答えしたいと思います。
御趣旨は、国の責任を明記すべきじゃないかという御趣旨であったと思います。同感でございますが、まあ簡単に私の
考えを述べさせていただきます。
最近では、
市民の自治意識が非常に高くなってきているわけでございますから、私としてはできるだけ
地方自治を徹底したい。したがって、
都市の
運営についてはそれぞれ個性があっていいというふうに
考えているわけです。その
都市の、自治体を構成する
市民の合意があれば、たとえばその
都市交通の運賃を無料にしたってそれはかまわない。無料論というのは現実にあるわけです。私個人は無料論に対しては賛成でありません。
〔理事寺本広作君退席、
委員長着席〕
施設や
設備を
公共財源でまかなって、
運営費用は
料金で徴収するのが一番よかろうというふうに
考えているわけでございますけれども、その辺は実は
市民の自治にまかせるべきではないか。それはどこから出ているかと言いますと、
市民のそういう
交通の必要を最もよく理解できる、その
都市のるという
考え方であります。ただしかし、そういう基本精神を生かしていくためには、現在の行政それから財源の配分、そういったものについて根本的な改革を行なわないとできないわけでございます。また、そういうふうに
地方自治を徹底いたしましても、なお全国にはいろいろ発達の
状況の違い、あるいは自然的な
条件、歴史的な
条件の違いもございます。国民的なレベルでナショナルミニマムを確保しようということになりますと、当然国としてやらなければならない財源の再分配ということも残ろうかと思います。ですから、そういう抜本的な改革をした場合には、私は国としては一般的な指導と助言、あるいは一般的な基準に従っての援助にとどまるべきだというふうに思うわけですが、現在は何しろ非常に中央集権的でございまして、
地方の各分野の行政は中央
政府の非常に強い介入のもとに行なわれている。過去に
公営交通事業の
経営を悪化させた
——主として外部の要因でございますが、外部の要因も、国の
政策に基づいて生じたというものがほとんどでございます。先ほど私は、
インフレ政策と
道路環境の悪化、これが
二つの直接的な
原因であるということを申し上げたわけですけれども、
インフレ政策にしましても、これを押える、物価を少しでも安定させるための努力をしようとすれば、中央の
政府の努力なしにはできないということでございます。
それから、特に
道路の問題について、先ほどの公述を補足しておきたいと思うのでございますが、一応自由な消費者の選択に従って、つまり、消費者の好みに従って
自動車が選択されていると、その結果、
バスなり
路面電車が使われなくなる、これはやむを得ないのじゃないかというふうに言われるわけでございますが、実はその背景には、非常に国の
道路重点、というよりも、
自動車を通すための
道路の
道路政策というものが重点になってきた。そのために、本来
道路というものは、実はいろいろな生活目的のために使われる多面的な
空間なんですが、これは
自動車のために占領された。
自動車によって起こるさまざまな公害とか
環境侵害、そういったものも放置されたまま
自動車はふえてきたというのが現状でございます。ですからそういう
意味では、
自動車は十分
道路なり
環境を保全するための費用を
負担しないで、地域社会に被害を与えながら、つまり、現在の公害
企業が、ちょうど公害を発生させてきて、たれ流しにしてきたと同じような
条件のもとに
自動車がふえているわけです。これでは
都市の福祉を上げることはできない。逆に
都市の
環境は悪化するばかりである。そこで、
自動車を制限しなければならないということになっているわけなんです。
そこで、その際に当然
市民の
交通の必要を満たすためには、それにかわり得るできるだけ効率的な
公共交通の便利なシステムを確保しなければならない。それを確保するばかりじゃなくて、これまでのように非常に
混雑した乗り心地の悪いものではなくて、もっといいものを
都市に入れていかなきゃならぬということになる。そういうものを整備していくためには、単に
利用者の
料金では
負担し切れないわけであります。それに対しては、たとえばアメリカの場合には、百億ドルという非常に巨額の
都市交通の改善のための資金を連邦
政府が用意して、
都市交通の改善に乗り出しているわけです。各国についてもそういう積極的な姿勢が見られるわけであります。
日本も当然、現在の機構でいえば、中央
政府も
地方自治体も積極的に取り組むべきだと思うのですが、その際の財源は、やはり現在の
自動車、その主としてガソリン税によって現在になわれているわけです。そのほかに税金がございますが、
自動車に
負担させる税金を
公共交通整備の財源として活用すべきであると、これが私の
一つの
考え方。それは当然なんだと、これは実は
自家用車がふえてきたことによる被害を
公共交通機関が受ける、
公共交通機関の、実は
乗客と労働者が受けるということでございまして、これを放置しておきますと、だんだん
公共交通の能率が下がって
サービスが悪くなって、しかも一人当たりの費用は上がっていきますから、結局、被害者がだんだん高くなる
料金を
負担しなきゃならぬという被害者
負担になっていくわけです。これは現在の競争システムの弊害でありまして、これは経済学の教科書で非常に簡単なモデルで、競争によって合理的に資源が配分されるというような
結論を導きますけれども、実際には社会的ないろいろな制度のもとで競争が行なわれているわけでありまして、その社会的な制度は、必ずしも自由な競争が最適の結果をもたらすというふうな仕組みにはなっていないということでございます。ですから、社会的な
環境に応じた対策をわれわれとしては当然発見しなければならない。
それからもう
一つの論点は、やはり
公共交通施設、たとえば地下鉄のようなものを念頭に浮かべていただければ適切だと思うんですが、
鉄道が敷設されますと、駅前の広場はものすごい土地の値上がりをします。それを目ざして土地の買い占めも行なわれる、こういう状態があります。あるいは都心に霞が関ビルのような建物ができると、どっと通勤者がふえる。そのために地下鉄を建設して運ばなきゃならぬ。その際に、一体利益を受けている者はだれなのかといいますと、毎日乗車している
利用者ばかりが利益を受けているわけではなくって、実際には非常にまとまった利益を入手することができる、それを資本として運用することができるところに非常に大きな利益が発生するわけです。で、これは、公共
施設の整備のほうは一般の
市民あるいは
乗客の
負担で整備しておいて、そこから得られる果実だけはある特定の人が独占するということは、非常な社会的な不平等をそこでつくり出すことになる。で、最近の商社の買い占めに対して非常に
市民が憤慨しているわけですけれども、こういった公共的な
事業が一部の人に非常にばく大な富を与える。それは本来は
都市の
市民の全体の努力の結果なんですが、それが少数の人に落ちるというようなことは、
市民の連帯といいますか、
市民みんなの力で
都市をつくっていくという、そういう
市民の精神に非常なマイナスをもたらすのですね。こういったものは当然手をつけて、間接受益者の
負担金として徴収して、それを
公共交通施設の整備の財源に回すということが必要であろうと思う。当然、たとえば東京都で現在そういう
事業所に対する財源構想なんかを検討しておりますけれども、実は中央
政府がやはりもっと積極的にそれには取り組まなければならないというふうに
考えているわけでございます。で、実は中央
政府の段階の各種の
審議会の答申でも、それは検討すべきであるという
結論は数年前から繰り返し出ているわけですけれども、ちっともそれが具体化しないということで、
市民はその点についてはしびれを切らしている状態ではないかというふうに思っているわけです。
簡単で、まだ足りないかと思いますが、神沢先生の御質問に対しては以上でお答えとさせていただきます。
それから藤原先生の御質問ですが、要するに、私自身は、今度の
法案は過去の
累積債務、そのうちの流動負債の流動資産をこえる部分を
不良債務というふうに
考えて、それをたな上げするということを骨子としているようです。私は現在から今後、
公共交通機関の置かれている立場からいって、過去の重荷はやっぱり除かなきゃいけない。これを
企業の
収入でもって返していくということは不可能だと、もしそういうことをやれば、
公共交通の
サービスはますます悪くなって、かえって
市民の
利用を妨げることになるだろうと思いますので、そういううしろ向きの
債務の処理も、これ当然必要だというふうに思っております。しかし、今後そういう事態を再び起こさないためには、やはりもっと
経営の
健全化できるような内外の
政策をとるべきであろうというふうに
考えているわけです。
で、そういう改革としてあげられるのは、もう時間がございませんので簡単に申し上げますけれども、まず第一に、
公共交通を優先する原則を確立する、これが何より大事だろうと。で、
公共交通を優先するためには
都市そのものを
計画する段階からセットしていかなければだめだと。これはハンブルグ運輸連合で運輸連合をつくった
一つの目的は、ハンブルグが
都市計画と
交通計画、特に
公共交通を中心にした
計画と一体化するということに運輸連合結成の
一つのねらいがあったわけです。その点は、非常に向こうの幹部も強調しておったところでございますが、日本ではその点が非常に悪いわけでありまして、その点をまず
公共交通を軸にした
都市というものを
考えていく。それはあらゆる段階で、
都市を
計画し、建設し、
運営するあらゆる段階でそれを
考えていくということが必要だろうと、これが第一点でございます。
それから第二点としては、何しろ、
公共交通の
サービスは、そのほかの面では
市民の生活というものはどんどん向上してきているわけですが、事
住宅と
交通に関する限りは非常に悪いわけです。ですから、これをこのままにしておきますと、
自家用車はふえるばかりだというふうに思います。
そこで、
公共交通の
サービスを改善する必要がある。で、その改善の一端については、先ほども申し上げたわけですけれども、車両とか、ターミナルとかあるいは
運行方式とか、そういったものを改善すると同時に、たとえば運賃の制度にしてもやはり
考える必要があるわけですね。現在のように、
鉄道と
バスは全く連絡がない。あるいは
鉄道と
鉄道でも、会社が違えば運賃はもう併算制で二本建てになってしまうと、こういうことでは非常に使いにくい。また、接続して乗ろうという者は不利になってしまう。あるいはハンブルグとかミュンヘンでは、地帯性運賃で、ある地帯の中では、ある二時間なら二時間の範囲内では、
鉄道でも
バスでも自由に乗りかえができるというふうな切符が発行されていますが、当然そういう
公共交通機関をもっと
利用しやすいものにしていくというくふうが必要なわけですね。たとえば国会あたりは、
自家用車でおいでになるのには便利かもしれませんが、
バスで来ようとしますと非常に不便なところなんですね、この辺は。それから地下鉄を
利用する場合にも、かなり銀座あたりに比べて不便でございます。こういうところへたとえば来ようという場合に、どこの会社の
バスでも、早く来たものに乗っていけて、自由に乗りかえができるということになれば、これはもっと
バスの
乗客がふえるわけです。昔の
路面電車というものは、そういうネットワークで乗りかえが可能であったわけですから、
お客さんは便利であったわけで、まさに
市民のげたとして使われてきたわけです。ところが、現在は非常にその点でおくれた状態にあるわけですね。その点で、
交通調整を含めて
サービスを改善する必要がある、これが第二点でございます。
それから第三点は、技術革新を積極的に導入する。技術革新を積極的に導入するためには、現在の
公営交通事業の
企業努力だけでは、
財政そのものが非常に悪いためにそれが不可能でありますから、これを改善するための基金を中央
政府がっくりまして、そして
都市に援助する。それからまた、開発研究について、国のレベルでもって積極的に努力するということが必要であろう。まあこの三点。柱をあげるとすれば、この三点が柱になるんではなかろうか。
最後の
結論として申し上げますと、これは国鉄の
再建でもそうなんですけれども、ともかく、
財政がこれほど悪くなって、つまり人間にたとえていえば、かなりの重病人でございますから、こういう重病人が立ち上がるためには、やはり本人が
再建するという意欲に燃えることが必要ですね。本人が
再建するという意欲に燃えるということは、やはり自分自身の仕事に対して誇りを持つ、将来に対して希望を持つということが何より先決の問題だと思うのですね。ですから、働いている人に勇気を与えるようなやっぱり理念ですね、これが示される必要がある、これが私の
結論でございます。